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1951-03-07 第10回国会 衆議院 外務委員会水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月七日(水曜日)     午前十時四十分開議  出席委員   外務委員会    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 竹尾  弌君       淺香 忠雄君    伊藤 郷一君       植原悦二郎君    大村 清一君       小川原政信君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    近藤 鶴代君       仲内 憲治君    中山 マサ君       福田 篤泰君    並木 芳雄君       砂間 一良君    高田 富之君       黒田 寿男君   水産委員会    委員長 冨永格五郎君    理事 二階堂 進君 理事 林  好次君    理事 上林與市郎君       石原 圓吉君    小高 熹郎君       田口長治郎君    永田  節君       平井 義一君    水野彦治郎君       井之口政雄君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官   島津 久大君         (政務局長)外         務事務官    西村 熊雄君         (條約局長)水         産庁長官    家坂 孝平君         農林事務官   山本  豐君         (水産庁次長)  委員外出席者         外務委員会専門         員       佐藤 敏人君         外務委員会専門         員       村瀬 忠夫君         水産委員会専門         員       杉浦 保吉君         水産委員会専門         員       徳久 三種君     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際捕鯨取締條約に加入することについて承認  を求めるの件(條約第一号)     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会水産委員会連合審査会を開会いたします。  慣例に従いまして私が委員長を勤めますから御了承願います。  国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求めるの件(條約第一号)を議題といたします。まず政府側より提案理由説明を求めます。草葉外務政務次官
  3. 草葉隆圓

    草葉政府委員 鯨族保護増大目的といたします国際協定締結の必要につきましては、大分前から提唱されたところでありますが、これに関しまする主要な條約としましては、一九三七年の條約及びこれを修正しました三八年、四五年等の諸議定書がありまするが、わが国当事国ではなかつたのであります。当初は準備不十分のため会議自体に参加することができませんで、その後保留付で、すなわち南氷洋で使用されまする母船北太平洋への転用禁止という問題を保留する、そういう條件付で参加しようとするところまで至つたのでありまするが、今回の世界戰争の勃発によりまして、さたやみとなつていたのであります。捕鯨に関しまして、戰後一九四六年十二月にワシントンにおきまして捕鯨取締りの條約が締結されたのであります。今般一月十七日付をもちまして、司令部から正式の許可がありましたので、わが国国際協力の立場からこれに加入したいと存ずるのであります。  この條約の趣旨といたしておりまするところは、従来の捕鯨協定趣旨を一層徹底したのでありまして、各国が競うて鯨を濫獲いたしましたため、鯨族が死滅に瀕しておることを認めて、鯨族捕獲を適当に制限して、その増大をはかりながら、長い期間にわたつて最大の捕鯨量を維持して行こうとするものであります。  これがため、たとえばこく鯨、せみ鯨という特定の鯨の捕獲禁止し、またひげ鯨につきましては、南氷洋においては十二月より四月まで捕鯨期間をきめるという、特定の鯨について、特定期間特定区域についてのみ捕鯨許可しようとするものであります。これらの禁止または制限は、この條約と不可分の一体をなす附表規定されておるのでありまして、條約によつて設定された委員会におきまして、随時それを変更することができることに相なつております。  わが国は元来司令部の覚書によりまして、特別の許可特定制限のもとに捕鯨を営んで参つたのであります。司令部制限は、この條約の制限とほとんど同一のものでありまして、従つてこの條約に加入しても現在とほとんど違わずに、特別の制限を受けることはないのであります。  この條約の現在の当事国は、イギリス、アメリカソ連、フランス、オーーストラリア、カナダ、フインランド、ノールウエー、スエーデン等十六箇国であります。この條約への加入は、第十條の第二項によりまして、單にアメリカ合衆国政府に対して加入通告をすることによりまして完了するのであります。  以上の手続等によりまして、国会の御承認をいただきました上、ただちに加入通告をなして、この條約の当事国たらんとするものであります。何とぞ十分御審議の上すみやかに御承認を賜わらんことを申し添えまして提案説明といたします。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に西村條局長
  5. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 簡單に條約の逐條説明を申し上げます。  この條約は、前文本文十一箇條附表、この三つの部分からなつております。前文捕鯨国際取締制度を設けまして、鯨の適当な保存をはかり、捕鯨産業の秩序のある発展を可能にしようとするために、この條約を結ぶものであるということを明らかにしてございます。本文十一箇條は、大体総則的な規定と、国際捕鯨委員会設置に関する規定と、委員会権限任務に関する規定と、締約政府義務それから最終條項、この五つの部分に大別できます。  第一の総則的な規定一條二條でございます。  一條は、第一項でこの條約が不可分の一体として附表を含んでおるということを規定いたしております。第二項は、この條約の適用される範囲を定めたものでございます。範囲締約政府管轄のもとにある船及び鯨体処理場、それからこれらの船が捕鯨に従事するあらゆる水域に及ぶということになつております。  第二條は、この條約で使われております技術的な用語の定義を定めたものでございます。  第二部は、委員会設置に関する規定でございまして、第三條でございます。第三條によりますと、この国際捕鯨委員会は、各締約政府が一名ずつ出しております委員会によつて、構成されております。そうして四分の三の多数決によりまして、この條約に付属しております附表、具体的に申し上げますれば、捕鯨取締り規則修正する権限を持つておりますきわめて大切な委員会でございます。委員会の会合は、その決定するところに従つて行われるという規定になつておりますが、従来から毎年一回七月に開催される習慣になつております。  第三部は、委員会権限任務に関する規定でございまして、四條、五條、六條の三箇條であります。第四條によりますと、委員会は鯨に関する研究及び調査を單独または他の適当な団体と共同で行い、その成果を刊行物として発行するということになつております。  第五條は、第一項で捕鯨作業を規律する規則を定めております。この條約の附表修正委員会が随時行うことができること、第二項ではその修正をなすにあたりまして考慮すべき指導原理を明らかにし、第三項はこのようにして行われました修正に対して、締約政府異議を申し立てることができるということ、それから修正効力発生について規定いたしております。修正は、修正後九十日の間に締約政府から何ら異議を申し出さなければ、その政府については当然有効となるという建前になつております。第四項は、このような修正が一九四九年七月一日以前には効力を発生しないということを規定いたしております。この一九四九年七月一日以前には効力を発生しないと断つてありますのは、実は従前の捕鯨取締りに関します協定とか議定書関係からこうなるのでございまして、大体一九四五年にできました議定書によりまして、四六年ないし四七年の捕鯨期間取締り規則が定められ、それに引続いて四六年のこの国際捕鯨取締條約という恒久的な條約がそれにかわることになりましたが、この條約は従つて大体四九年の捕鯨漁期から実施されるというような勘定になります。従つて実施されたこの附表が、その修正が問題になつて、その修正は少くともその次の漁期従つて四九年七月一日以降、こういうふうなことになつて参ります。従前ありました協定との関係上、この修正が四九年七月一日以前には効力を発生しないという規定が生れておるのであります。  第六條は、委員会締約政府に対しまして、鯨に関する事項について随時勧告を行うことができるということを規定いたしております。  第四部は、締約政府義務に関する規定でございまして、七條八條、九條の三箇條であります。  第七條によりますと、締約政府は條約が要求する通告その他必要な資料委員会が定めまする方式及び方法で、国際捕鯨統計局または他の団体に伝達する義務があることになつております。  第八條によりますと、第一項及び第二項は科学的研究のため、鯨の捕獲処理をすることが例外的にこの條約の適用から除外されるということを定めたものであります。締約政府はこのような捕獲処理などのために特別許可書を與える。また捕獲した鯨、その收得金の処分を指示しなければならないということが、この二つの項によつて明らかにされております。第三項と第四項は鯨の科学的及び生物学的資料の提供に関する締約政府義務に関しまして、締約政府はその第四條及びこの條の第一項に基く研究調査の結果を含めまして、入手し得る科学的資料委員会が指定する団体に送付しなければならないということ、また母船及び鯨体処理場作業に関する生物学的資料を得るための措置をとらなければならないということを規定いたしております。  第九條は、條約の規定侵犯に関するものであります。第一項は締約政府が條約の遵守及び侵犯処罰のための措置をとらなければならないこと。第二項は、禁止された鯨の捕獲に対しては、仕事の成績との関係で計律する賞與または報酬を支拂つてはならないということ。第三項は條約の侵犯があつた場合に、その犯罪について管轄権を有する政府が起訴しなければならないこと。第四項は各締約政府が自己の管轄下侵犯に関する詳細な情報を委員会に伝達しなければならないということを規定いたしております。  第五部は最終條項でございまして、十條と十一條でございます。  第十條は、批准加入効力発生に関する條項であります。  第十一條は、條約からの脱退に関する條項であります。この條項によりますと、締約政府は前年中に脱退通告を行うことによりまして、その次の年の六月三十日に條約から脱退することができることになつております。また他の締約政府は、アメリカ合衆国からこのような脱退通告に関する通知を受けましてから一箇月以内に脱退通告を行えば、第一の脱退通告国と同じ日に脱退することができることになつております。こういう規定になつておりますけれども、今日まで現実に脱退した国はまだございません。  以上が條約の大体の構成でございます。捕鯨取締り実体規定を設けました附表につきましては、水産庁長官の方から申し上げました方が事実上の御知識もありまして適当かと思いますので、私の説明はこれで終ります。
  6. 家坂孝平

    家坂政府委員 捕鯨捕獲作業につきまして、いろいろこの條約の附表でもつて規定を設けられてあるのでありますが、それを要約いたしまして申し上げたいと思います。  この條約の加入国は、自国の捕鯨母船または陸上の鯨体処理場政府監督官を配置しまして、條約本文規定する事項のほか、左の制限禁止事項取締りを行わねばならないということに相なつておるのであります。  その一つはせみ鯨及びこく鯨の捕獲禁止しております。これは非常に現在濫獲の結果その頭数が減つていますので、全面的に捕獲禁止しておる、こういう内容を持つておるのであります。それから稚鯨及び授乳期の母鯨捕獲禁止しております。  それから第三は、捕鯨母船操業区域に関しまして、いろいろの制限を付しておるのであります。  それから第四は、ひげ鯨捕獲期間制限、これは全水域におきましては、大体一年のうちに継続六箇月を規定しておるのであります。だから半年は全然ひげ鯨に属するものは捕獲することができない、かように相なつております。  それから第五は、南緯四十度以南、すなわち私ども南氷洋と申しております水域でありますが、そこにおきましてざとう鯨捕獲制限しております。ただいまでは千二百五十頭以上をとることができない、さように制限しておるのであります。  それから第六には、南氷洋におきましてひげ鯨捕獲する漁期制限しておるのでありまして、ただいま規定されておりますのは、十二月の二十二日から翌年の四月の七日までしかとることができないのであります。  それから第七には、南氷洋におけるひげ鯨捕獲頭数制限しております。これは各国捕鯨母船を派遣しまして、捕獲しておるのでありますが、その捕獲の総数が一万六千頭という制限を付しておりまして、先ほど申し上げました四月の七日までとれる漁期にはなつておるのでありますけれども、一万六千頭に達しますれば、いつでも中止しなければならないという規則に相なつております。  第八は、各鯨の種類につきまして、捕獲体長制限を付しておるのであります。鯨の大きさによりまして、制限をしておるのであります。たとえば南氷洋におきましては、しろながす鯨は七十フィート以上。七十フイート以下のものはとることはできない。かような制限をつけておるのであります。その他の鯨におきましても、おのおのその体長によりまして、制限をしております。  第九は、鯨体完全利用に関する制限禁止をしておるのであります。内臓物とかそういつたものは捨ててもかまいませんが、肉その他のものは必ずこれを処理して、完全に利用しなければいかぬ。かような制限あるいは禁止がつくられておるのであります。  第十には、母船式捕鯨におきましては、捕獲より処理までの時間的の制限を設けておるのでありまして、捕鯨船が鯨を捕獲いたしまして、母船のところまで持つて参りまして、デツキに上げるまで、三十三時間以内でなければならないというような規定があるのでありまして、これは完全に利用するということと、それから鮮度のよいうちにせつかくとつた鯨の十分なる利用をさせるべきであるという考えから、そういう規定がつくられてあるのであります。  十一には、労務者に対しまして、報酬支拂い條件制限があるのでありまして、これは捕獲しました頭数のみでなく、鯨の種類とかそうしたいろいろの條件も勘案して、支拂い條件としなければならぬというような制限であります。  十二には、その他捕獲に関する通報等の完全なる履行。いろいろこの国際條約におきましては、捕獲に関する規定法規を問題がありますたびに改正するような機会がありますので、そのためにはどうしても完全なるデータがなければいかぬということで、この捕獲に関する通報等を迅速正確に報告する義務を課せられておるのでありまして、これの完全なる履行を求められておるのであります。  以上のほか、加入国関係法令の制定、改訂の場合や、捕獲生産の結果等、委員会の指定する事項を、その都度国際捕鯨委員会に報告すべく規定しておるのであります。  大体附表に織り込まれておりまするおもなる内容は、ただいま御説明申し上げたような内容に相なつておるのであります。
  7. 守島伍郎

    ○守島委員長 それではこれより質疑に入ります。北澤君。
  8. 北澤直吉

    北澤委員 捕鯨その他漁業の問題につきましては、各国の間に従来いろいろの問題がありまして、そのためにいろいろの漁業に関する国際協定ができたわけであります。そこで日本講和條約に関連いたしまして、アメリカのいわゆる対日講和七原則の中には、今度日本との講和を結ぶ場合においては、日本漁業に関する多数国間の條約に加入することに同意することが規定されておるのであります。従いまして日本講和條約を結びました以後におきましては、漁業に関する多数国間の條約に加入することに相なろうと思いますが、特にこの捕鯨に関する條約について、講和條約の締結以前に加入することになりました特別の理由ないし事情につきまして、お伺いしたいと思います。
  9. 草葉隆圓

    草葉政府委員 特に講和條約を待たずに、現在急いで加入する何か特別な理由があるかという御質問の要旨と存じますが、戰前の日本捕鯨業につきましては、諸外国の間にいろいろ非難ということがあつた関係もありまして、できるだけ早く加入することによりまして、これらの問題も解消すると同時に、諸外国の信用を裏づけることが、一層必要ではないかと考えられます点と、現在操業いたしております南氷洋捕鯨船団等につきましても、できるだけ早く加入いたしますことによりまして、いろいろとあるいは政治的に、あるいはその他技術的に受けまする利益が大きいのでありますから、そういう意味におきましても、なるべく早く加入をいたしたいと思つております。さらに今後例年開かれます委員会等の事業にも、この條約に加盟いたしておりますと、技術的にあるいはいろいろな意味におきまして、日本の主張をなし得る関係もありますので、講和條約以前におきましても、この條約に加盟いたしますることがたいへん大事であると存じまして、加盟を急いでおる次第であります。
  10. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは、この捕鯨に関する協定のほかに漁業に関する国際協定がありますが、講和條締結の前に加入するのは、この捕鯨取締協定だけであるか、それともそのほかに講和前に締結するようなものがございますか、その点について御説明を願いたいと思います。
  11. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在は、とりあえず国際捕鯨取締條約に加盟したいと考えております。
  12. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたい点は、この條約に加入いたしますれば、この條約の規定従つて、たとえば捕鯨をなし得る地域とかいろいろな点がありますが、現在日本占領下にあつて日本漁業についてはいわゆるマツカーサー・ラインという制限があるのでございますが、この條約に加入しますれば、捕鯨についてはマツカーサー・ライン制限がなくなるわけでありますか、それともやはり講和條約ができまして、そういう制限がなくなるまではこのマツカーサー・ラインというものがあつて日本捕鯨船は従来許可されておつた範囲内において操業ができることになるのですか。
  13. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在までマツカーサー・ラインは、御承知のように近海捕鯨の線のいわゆる外側にあります。近海捕鯨は、言葉をかえて申しますと、マツカーサー・ラインの内部にありますので、一般漁業と同じく、その操業につきましては、総括的に許可を與えられております関係上、さような点はないと存じております。
  14. 北澤直吉

    北澤委員 私のお尋ねしたいのは、この表によりますと、たとえば北太平洋方面は全面的に捕鯨許可区域になつておりますが、やはり日本といたしましては、少くとも講和條約ができるまではマツカーサー・ラインを越えて捕鯨できない、こういうのでありますか。
  15. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今の御質問ちよつと私はつきりいたしませんでしたが、結局捕鯨條約に加盟すると、捕鯨に関するマツカーサー・ラインはなくなるか、あるいは何か司令部監督上の問題が生ずるか、こういう問題についてはどうなるかという御質問でございますでしようか。——そうしますと、マツカーサー・ラインは、今申し上げましたように、その外側にあります関係上、監督的な問題につきましては、司令部権限、いわゆる占領軍権限といたしまして、占領目的達成のために必要と認められまする場合におきましては、捕鯨の実情の監督ということが継続されると存じますが、適当と認めなければそのようなことは撤廃されると存じます。これはまつたく司令部占領目的の、そのときの状態によつて決定されることだと存じております。
  16. 北澤直吉

    北澤委員 私の質問がはつきりしなかつたと思うのでありますが、私のお伺いしたいのは、現在近海捕鯨南氷洋捕鯨につきましては——この協定によりますと、北緯二十度以北北太平洋においては母船式捕鯨業許可されている。ところが、マツカーサー・ラインというものがある限りは、北緯二十度以北北太平洋捕鯨はやはり制限を受けて出られない、こういうのでありますか。
  17. 草葉隆圓

    草葉政府委員 マツカーサー・ラインの外は、引続き司令部許可によつて操業ができるものだと思います。
  18. 北澤直吉

    北澤委員 次に移ります。この協定によりますと「この條約に署名しなかつた政府は、この條約が効力を生じた後、アメリカ合衆国に対する通告書によつてこの條約に加入することができる。」こういうようになつておりまして、アメリカ政府に対する通告書によつて、この條約に加入し得るということになつておりますが、実際問題としまして、アメリカ政府がこの通告を受けるか、あるいは今回のように、司令部日本のこの條約に加入するのを許可するという場合には、その前に一応関係国政府の了解と申しますか、同意と申しますか、そういうものを得る必要があるのか、あるいはないのか、その点をちよつと念のために伺つておきます。
  19. 草葉隆圓

    草葉政府委員 国際捕鯨取締條約は、ただいまも御説明申し上げましたように、鯨族保護のために国際的に日本が大いに協力態勢をとるという、いわゆる日本といたしましても、国際間の協定に入つてそれを大いに守ろうとする進歩的な捕鯨態勢をとつて来るのでありまして、従いまして、現在の規定におきましては、御質問のようにアメリカ通告をいたしましたことによつて手続が完了いたすのであります。従つてその前に関係加盟国にこちらから申すということは必要ないことであります。従つてまた現在の関係加盟国は、日本加入についてはむしろ期待を持つて参加を歓迎してくれるだろうと存じます。
  20. 北澤直吉

    北澤委員 次に移ります。第九條によりますと、この條約の侵犯に対しまして、各国においては適当な措置をとる——国内法だと思いますが、この捕鯨協定違反に関する処罰についての各国国内法でありますが、これは各国国内法規定との間に均衡のとれた、全部一律の国内法があるのかどうか。あるいは各国国内法規定の間にバランスのとれない点があつた場合に、どういうふうに調整するのか。そういう点を伺つておきたいと思います。
  21. 家坂孝平

    家坂政府委員 各締約国におきましては捕鯨取締條約の内容に沿いまして、おのおの国内的の法令をもつて取締りに当つておりますので、大体各国ともほとんど一致したような形に行われておるものと考えていただいてもさしつかえないと思います。
  22. 北澤直吉

    北澤委員 私特にお伺いしたいのは、この協定にはソ連邦が入つておるわけであります。一体ソ連邦はほかの国と同じような意味国内法を持つておりますか。またそれをどういうふうに実行しておりますか。
  23. 家坂孝平

    家坂政府委員 ソ連もこの協定加入しておりますので、毎年の委員会には委員を派遣してこの討議に入つておりますから、大体国内法におきましても、この條約に沿つたものを実施していると考えております。しかし最近のソ連に関するその国内法については、私どもの手元には資料がないのであります。
  24. 北澤直吉

    北澤委員 各国とも大体同様に、この捕鯨協定違反処罰についての規定を設けておるのでありますが、日本だけがまじめにこれを守つても、もしよその国がそうでないとすると非常と不公平になると思います。私は各国とも同様に、国内法をまじめに確実に実施するという点につきましては、この上とも御留意願いたいと思います。  次にお伺いしたいのは、この国際捕鯨協定によりますと、国際捕鯨委員会というのがありまして、日本がこれに加入すれば、そこに日本政府代表の一人が委員として入るということでありますが、終戰以来今日まで、国際会議におきまして、日本代表が出る場合には、常にオブザーヴアーとか、あるいは司令部から行く代表テクニカル・アドヴアイザー——技術顧問というような形で行きまして、独立の代表として行く場合が少かつたのでありますが、今度の協定に参加しますれば、この国際捕鯨委員会における日本代表というものは司令部関係なく独立の立場において、日本政府の命によつて行動し得るものであるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  25. 草葉隆圓

    草葉政府委員 加盟をいたしますと、日本委員としまして当然この委員会代表を正式に送り得ることと存じます。
  26. 北澤直吉

    北澤委員 そこで伺いたいのですが、日本がこういう国際協定に参加した場合におきましては、そこにおける日本代表司令部とは別個に、独立の日本代表として活動し得る、こういうふうに了解してよろしいのでありますか、その点をもう一度お伺いいたします。
  27. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは御所見の通りと存じております。
  28. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点最後に伺いたいのですが、この協定の中におきまして捕鯨許可する区域につきましていろいろ規定があるのですが、これはいわゆる公海に関するものであつて各国の領海というものはこれに入らない、こう思うのでありますが、この点念のために伺つておきます。
  29. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは公海はもちろんでありますと同時に、領海の捕鯨も入つておる次第であります。
  30. 北澤直吉

    北澤委員 この協定に掲載してあります北太平洋捕鯨許可区域でありますが、そうしますと、ソ連とかあるいはアメリカとかカナダ、こういう国におきましては、その自己の領海においてもこの協定制限を受ける、こういうふうな解釈でありますか、その点をはつきり伺いたい。
  31. 草葉隆圓

    草葉政府委員 もちろん自己の領海内におきまする捕鯨につきましても、この條約の制限を受けると解釈いたします。
  32. 守島伍郎

    ○守島委員長 二階堂君。
  33. 二階堂進

    ○二階堂委員 捕鯨取締條加入の問題につきまして二、三の点を私簡單にお尋ねいたしたいと考えます。  講和條約を前にして、わが日本がかくのごとき協定に参加する運びになりましたことは、私ども水産人といたしましてまことに喜びにたえない次第であります。かような運びに至りましたことにつきまして、米国側の好意に私どもは深く感謝をいたすものであります。私は政府当局にごく簡單に質問いたしたい点は、私先般アメリカに参りまして、水産の問題でいろいろ業界の連中や、あるいは政府当局の方々と懇談をいたして帰つて来たのであります。その当時私どもといたしましても、捕鯨日本にもたらす経済的な面に非常に大きなものがあるということを痛切に考えまして、捕鯨取締條加入の問題等につきましても積極的にアメリカ政府と話をいたしたのでありますが、そのときにアメリカの当局といたしましても、わが日本が一日も早くこの取締協定に参加することができるように、また積極的にアメリカとしてもかような日のあることを願つておるというようなことでありました。委員長ちよつと速記をとめて……。
  34. 守島伍郎

    ○守島委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  35. 守島伍郎

    ○守島委員長 速記を始めて。
  36. 家坂孝平

    家坂政府委員 二階堂委員のお尋ねにお答えいたします。ただいまの捕鯨漁業につきまして制限を受けておるという形は、GHQから南氷洋捕鯨出漁に許可を與えられましたときに、現在の国際捕鯨取締條約に基いて実施をしろ、こういうことが一点あるのであります。あとは沿岸の捕鯨漁業につきましてはマツカーサー・ライン制限をもつて実施しておるという二つの制限が考えられるのであります。
  37. 二階堂進

    ○二階堂委員 日本が正式に加入いたしました後においても、アメリカを除くほかの加入国には、日本に対して船団の制限であるとか、あるいは申合せによつて捕獲頭数制限を加えるというような考え方が、相当強いということを私どもは考えなければならぬし、アメリカ当局としても、その点を非常に心配して指摘しておられるのであります。私どもは現在におきましては南氷洋における制限頭数は一万六千頭であると考えております。そのうち大体年間において一万二千頭くらいの捕獲をいたしておる現状かと考えます。そうすると大体制限頭数にまだ四千ばかりあるわけであります。大体そのうち日本がとつておりまする頭数が一千二百頭。戰前におきましてはたしか六船団でもつて四千頭ばかりを捕獲し、そのうちから鯨油十万トン、鯨肉一万トンくらいのものを日本に持つて来ておりました。現在は鯨油約三万トン等を日本に持つて来ておるのでありまするが、わが国の経済その他いろいろな観点から考えてみまして、特に水産業界としましては、この二船団を三船団まで持つて行きたいというような希望を持つておるわけであります。このような事態にあるときに、正式にわが国が平等な立場で加入を許されると考えるのでありますが、そういうような立場にあるわが国に、かりに先ほど申し上げましたような非常な制限を加えて来るというようなことになりましたならば、一体どのようなる考えをもつてこれに対処される用意があるか、この点についてお伺いいたします。
  38. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 二階堂委員の御質問にお答えいたします。どうか第五條の第二項をごらん願いたいと思います。それによりますと、委員会附表修正する場合に準拠しなければならない指導原理を規定いたしております。そのabcのcでございます。「(c)母船又は鯨体処理場の数又は国籍に対する制限を伴わず、また母船若しくは鯨体処理場又は母船群若しくは鯨体処理場群に特定の割当をしないもの」。御杞憂になるような制限を加えるわけには行かないという原理になつております。
  39. 二階堂進

    ○二階堂委員 かような規定によつて、そういうようなことが心配がないとするならば、非常にけつこうだと考えるのでありまするが、私どもが向うで伺いましたアメリカ外の加入国の意見は、これは従来一般水産についてでもでありまするが、捕鯨につきましても、日本が非常に濫獲漁業をやる、侵略漁業をやるといつたような立場から、日本の水産全体がまだ国際的な水準に到達していないという点を強く指摘いたしておつたのでありますが、この点私ども日本の水産人といたしましても十分に注意をいたし、日本国際的にはむずかしくない水産になるということに、政府としても非常なる努力と監視を続けて行かなければならぬのでありまして、わが国水産の立法上の措置もかような点に非常な努力をいたしておる点は事実であります。この捕鯨の問題につきましても、各国わが国の将来の捕鯨について、あるいは一般水産につきまして非常な注意をしておるときであり、一面におきましては、先ほど申し上げましたようなわが水産界の強い希望があるのでありますからして、この点を十分に考慮に入れられまして、今後これらの加入等の問題に対しまして善処されんことを、切に希望いたしまして私の質問を終ります。
  40. 守島伍郎

    ○守島委員長 田口君。
  41. 田口長治郎

    ○田口委員 南氷洋の現在の捕鯨船隊の状態をよく調べてみますと、ほかの国の漁獲能力に比べまして、日本の船隊の装備がはなはだ劣つておる。ことに最近の状態から申しますと、各国競うて母船の数をふやすとか、あるいはキヤツチヤー・ボートの数をふやす。そうしてすべてが能力的になつております。この点から考えまして、日本の船隊の実情は、母船にいたしましても旧式の船舶を改造したものである。あるいはキヤツチヤー・ボートの数にいたしましても、諸外国に比べると非常に劣つておる。一定の期間内に一定の数量を漁獲する場合におきまして、かくのごとき非常に装備の悪い能力の上らないような船隊では、結局予定の漁穫を上げることがだんだんむずかしくなつて来るんじやないか、こういうことを考えるのでございます。かかる場合にこの條約に加入して、日本の特殊事情をつぶさに説明する、そうしてある程度了解を受ける、こういうようなことも一つでありましようけれども、根本的には日本の船隊の能力をできるだけ優秀に改変して行く、こういうことが将来の重大問題と考えるのでございまして、この点に関しまして、政府はいかにお考えになつておりますか、一応御意見を承りたいと存じます。
  42. 家坂孝平

    家坂政府委員 ただいままでの南氷洋捕鯨の実績から見ますると、あながち日本捕鯨能率というものが非常に低下しておるとも考えておらないのであります。しかしなお今後はその効率を上げることにつきましては、十分意を用いるつもりでありますが、来るべき出漁には第三図南丸、また新日進丸の二万トン近い母船も大体就漁できるかと考えておりますので、この点効率を上げるためには非常な有力なる條件どなるのじやないか、かように考えております。またキヤツチヤーなどの能率につきましても、電気もりなども使用いたしまして、今後ますますその効率を上げるべく努力を続けて参りたい、かように考えております。
  43. 田口長治郎

    ○田口委員 南氷洋から持つて参ります鯨油につきまして、従来日本で漁獲いたしました鯨油は、南氷洋から直接にヨーロツパの方に持つてつておる、こういうことが普通の状態でございますが、今年はいろいろな国内油脂資源の関係からいたしまして、ことにドイツ方面に持つて行くものを持つてつていない。こういうことで最近の新聞の報ずるところによりますと、日本の鯨油がドイツに行かないということで、ドイツでは一大恐慌を来しておるように報じておるのでございます。また日本におきましては、今までヨーロツパに持つてつて、すぐ金にかわつておつたこの鯨油を、日本に持つて来ましたために、捕鯨業者は三万トン近くの鯨油をかかえて金にかわらないで現在困つておる。日本の油脂工業者にこれを売らんといたしますけれども、油脂工業者はその融資の方法がつかないために手の出しようがない。通産省は中に入つて非常に措置に困つておる、こういうような状況に承つておるのでありますが、この油の処置ということが日本捕鯨業にとつて、非常に重大問題と考えるのでありますが、この点について政府はどうお考えになつておりますか、お伺いいたします。
  44. 家坂孝平

    家坂政府委員 今年度の鯨油の販売につきましては、ドイツに契約がほぼ一万二千トンばかり——総收獲高の約半分ぐらいの量がほとんど契約が成立しておつたのでありますが、いろいろ国内の油脂の獲得の関係もありまして、輸出禁止をしたのであります。従いまして業者にとりましては、非常に経済的に圧迫を受けるような結果に相なりましたので、目下鋭意油脂金融の面につきまして、政府においても努力を続けておるような状態であります。できるだけ早い時期に、業者の経済的の苦難を救いたい、かように考えておるのであります。
  45. 守島伍郎

    ○守島委員長 並木君。
  46. 並木芳雄

    ○並木委員 私は、まず委員長質問いたします。これは非常に重要な国際條約の審議でありますから、先般来吉田外務大臣に出席するように強硬に申入れをしておいたのですけれども、本日お見えになつておらないようですが、これはどういうわけですか。
  47. 守島伍郎

    ○守島委員長 お答えいたします。御希望がございましたから、私は熱心に外務大臣と交渉いたしましたが、外務大臣は、今日はよんどころない渉外関係のさしつかえがあるそうでございまして、御出席になれません。
  48. 並木芳雄

    ○並木委員 私はまことに残念に思います。国際捕鯨取締條約も大切であるかもしれませんが、ワン・マン取締條約も、私は必要ではないかと思うのであります。(笑声)祕密会議なら出て来るけれども、こういう公開の会議なら出て来ないというような気持で、お高くとまつておるのではないかと思いますけれども、今後こういう條約の審議には必ず出るように、特段の御注意をお願いしたいと思います。  外務大臣がおりませんからよんどころなく他の方々に御質問いたします。先ほどの御質問にもございましたが、現在日本はこの條約に加盟しなくても、それと同じような、これに準じた取締りに参加しておるというふうに聞きましたが、それは大部分あるいはほとんど全部同じですか。あるいはどこか特に現在の方が、この條約よりも厳重であるというような部分があるかどうか、まずそれをお伺いします。
  49. 家坂孝平

    家坂政府委員 ただいま国内法によりまして捕鯨取締りをやつておりまする法令は、この国際捕鯨條約と内容的におきましてはほとんど同一なものと相なつております。
  50. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると特に加盟を急ぐという理由のうちに、先ほど草葉次官が技術的あるいは精神的の理由があるということを言われましたが、これに加盟しなければ特に特別の何か不利益があるかどうか、この点をお伺いします。
  51. 草葉隆圓

    草葉政府委員 加盟いたしますことによりまして、いろいろな先に申し上げましたような利益がありまするために、加盟いたしませんとそういう利益がないことになります。
  52. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、積極的には加盟しなくても特別の不利益はない、こういうことですか。
  53. 草葉隆圓

    草葉政府委員 加盟いたしませんと、たとえば委員会等におきましての日本の主張その他資料の提供等が受けられないと思います。
  54. 並木芳雄

    ○並木委員 捕鯨に関する條約では、このほかにどういうものが予定されておるか。
  55. 草葉隆圓

    草葉政府委員 国際的なものとしては、これが現在実際行われておりまするものと存じまして、そのほかには別に加入すべきものはないと存じます。
  56. 並木芳雄

    ○並木委員 問題はこの取締りでございますけれども、実際取締りというものはうまく行つているのでしようか、私ははなはだ疑問を持つのです。たとえば広い海上でございますから、それをどういうふうにして監視をしておるか、また自国の監視員が船に乗りましても、そこはなかなか條約に基くところの取締りの実効が行われないのじやないか、また鯨によつて制限されたものをとつつかまえたりすると罰せられるようになつております。しかしつかまえる前にこれは見わけができるのでしようか。つまり何フイートまではつかまえてもいいけれども、それ以下はいかぬというような規定があるようですが、これは専門家ならばちやんと的確にわかるのでしようか。しかしすれすれのようなところでは、私はなかなかむずかしいと思いますが、そういうようなものは一体どういうふうになつておりますか。要するにこの條約が結ばれる実効はそういうところにあると思いますので、その点ひとつお伺いいたします。
  57. 家坂孝平

    家坂政府委員 実際問題といたしまして、砲手がもりで鯨を打つわけでございますが、熟練した砲手は案外水中における鯨の大きさというものを見わける能力が非常に優秀でありまして、大体間違いないのであります。従つてことに日本捕鯨船に乘つておりまする砲手は、特に遵法精神に非常に燃えておるものでありまして、最近の国際委員会などに司令部の方からもオブザーヴアーで出ておられましたが、日本違反の率が低いので、非常にほめられたこともあるような状態であります。その点は御安心していただいてもけつこうだと思います。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 その点は日本の優秀な技術に信頼することにいたしまして、ただ間違つてそういうものをつかまえたときにはどうなるのですか。それからその参考までにお聞きするのですが、この一箇年くらいにどういうような違反が具体的に取上げられたか、そしてまたその違反に対してどういう処罰が行われたか。その具体的なものを一、二あげていただきますと、私どもには非常に参考になると思います。
  59. 家坂孝平

    家坂政府委員 ただいま違反内容ちよつと資料を持つておりませんので、今お話を申し上げられませんが、あとでお知らせしてもいいかと思います。先ほど申し上げました成績がよいというその内容でありまするが、沿岸捕鯨におきましても南氷洋捕鯨におきましても、特に戰後においては、政府の厳重な取締りが行われまして、違反が減少しておるのは、先ほど申し上げたような状態であります。悪質の違反はほとんどないという結果に相なつております。それで南氷洋の状態を申し上げますると、二十四年、昨年度になるわけでありますが、違反の容疑のあるものを含めまして五件あつたわけであります。これは総捕獲頭数の約〇・二%にすぎないのであります。それからなお二十四年度におきましては、沿岩捕鯨、小笠原捕鯨を含めまして、容疑とも入れまして十件、総捕獲頭数の〇・七%くらいに当つているのであります。  なお御参考に申し上げまするが、詳細はまだ不明でありますけれども外国南氷洋捕鯨における違反の率は、大体一ないし二%くらいといわれておるのであります。それに比較いたしまして、日本違反率は非常に低い、かように私どもは自信を持つておるのであります。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 国際捕鯨委員会は、今年の七月開かれる予定だと思いますが、どこで開かれる予定ですか。そして日本からは一人の委員のほかに、一名以上の専門家及び顧問を派遣することができるとなつておりますが、これはおそらくなるべく大勢派遣する予定だと思いますが、何人くらい、またどういう方面の人を選んでやる予定であるか、その点をお伺いいたします。
  61. 草葉隆圓

    草葉政府委員 本年はケープタウンで行われる予定になつておりまして、規定にもあります通りに委員としては一名出席いたしますが、そのほか随員等の専門的の立場の人も行くことになるかとも存じます。それらの内容は、いずれ條約の御承認を得ました上で、十分検討して進みたいと存じております。
  62. 並木芳雄

    ○並木委員 次に一九五〇年七月の委員会の決定によつて、国連の専門機関の機構には入れないことに決定したという事項がありますが、このいきさつがはつきりしておらないのです。これが議題に上り、国連の機構にこの委員会を、この機構を入れないようにしたということがわかつておりますれば、それをお伺いしたいと思います。何がゆえに入れないようにしたか。
  63. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 詳細な資料を持つておりませんが、この條約によりますと、鯨族保護、それから捕鯨取締りについては、国際連合の専門機関の方でも、非常に関心を持つておる者があるようだから、適当と認むるならば、その機関の中にこの委員会を吸收してもよろしい。それを議題として委員会は審議するという規定になつておつたわけでありますが、五〇年の委員会で出された結果は、吸收させない、独立に存続して行くという結論になつたことだけをわれわれ承知しております。その詳細な理由というものは、資料がございませんので、ちよつとわかりかねております。
  64. 並木芳雄

    ○並木委員 それではその点はひとつ調査しておいていただきたいと思います。  最後にもう一点だけ参考にお伺いしたいのですが、先般ダレス氏がアメリカに帰られまして、歯舞諸島は日本に帰属さすべきだというような御意向を記者団に漏らされたようでございます。そこでそれとは別に、日本政府としては、歯舞諸島という場合には当然色丹島などを含むものと私どもは了解しておるのですが、歯舞諸島といわれるあの中には、色丹島その他どういうものを含んでおるか、その点をお伺いします。
  65. 草葉隆圓

    草葉政府委員 歯舞諸島と申しまする中には、従来から色丹島を含んでおると私どもは解釈いたしております。
  66. 守島伍郎

    ○守島委員長 砂間君。
  67. 砂間一良

    ○砂間委員 先ほどの並木君の質問にも関連するわけでありますが、国際捕鯨取締條約に加盟しなくても、大体国際協定守つて行けば操業はできるわけでありますか。
  68. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在はもちろん占領下でありますから、出漁その他につきましては、全部その指導監督のもとにありまするが、国際捕鯨條約に従つて加盟ということは——占領下におきましては従来の通りに進み得ると存じまするけれども、しかし幸いに一月十七日付で総司令部から許可をもらいましたが、それに日本加盟をしない態勢をとつて来ることは、いろいろな意味におきまして、将来妥当ではないのではないかと思うのであります。
  69. 砂間一良

    ○砂間委員 戰前は日本はこういう協定には参加しておらなかつたと思います。この捕鯨協定加盟しないで、かつて気ままに捕鯨をやるといつた場合の罰則といいますか、そういうふうなものはどういうふうになつておりますか。
  70. 草葉隆圓

    草葉政府委員 戰前におきましては、先ほども提案のときに申し上げましたように、加入する態勢にはなりましたが、今回の大戰によりましてそのままに相なつた次第でございます。しかし国際捕鯨取締條約に加盟せずにかつてにいたしますることは、やはり国際協力の立場から申しましても、世界的な日本国際條約遵守の精神から申しましても、まことに損失の点が多いし、かえつて日本の純真な心持をむしろしりぞけられる立場をも生ずるかと存ずるのであります。
  71. 砂間一良

    ○砂間委員 そうしますと国際信用を喪失する、それから国際関係の上でいろいろ精神的その他において不利な点があるというだけでありまして、別に制裁規定というふうなものはないわけでありますか。
  72. 草葉隆圓

    草葉政府委員 特別に制裁規定というものはありませんが、規定以上のそういう意味を含んで私どもは考える方がいいのではないかと存じます。
  73. 砂間一良

    ○砂間委員 加入するにつきまして、先般の新聞報道等によりますと、アメリカを初め十四箇国かの大体の内諾と申しますか、了解が終えてあるというふうな記事が一部の新聞に出ておりますが、国際捕鯨取締條約に加盟しているすべての関係国について、日本が今般この條約に加盟するということにつきまして、大体了解を得ておるのでありますか、その点ひとつお伺いいたします。
  74. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはアメリカ加盟通告することによりまして加盟はできるのでありまするが、日本加盟に対しましては、先ほども申し上げましたように、まことに進歩的な国際條約の遵守の精神から参つておりまするので、各加盟国はおそらく喜んで迎えてくれるだろうと存じております。日本といたしましては、アメリカの方に加盟を通知をするということの手続でございます。
  75. 砂間一良

    ○砂間委員 ただ日本は現在占領下でありまして、また正式に講和條約も締結されておらないような状態であります。従つて正式の国の外交権というふうなものは、まだ国際的には認められておらないではないかと考えております。ところが国際條約に加入するということは、これは一つの外交権の行使だと思うのでありますが、この占領下にありましても、こういう国際條約に加入する外交権を自主的に行使するということが、関係国によつて承認されておるのでありますか。
  76. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは御承知のように連合国最高司令官の許可がありますと條約の加入ができるのでありまして、終戰後におきましてもあるいは万国郵便條約なり、あるいは国際電気通信條約なり、また関税上の観光国際連合設立條約の修正意見書等にも、いわゆる国際條約、こういう條約にも加盟いたしておる状態でありますから今回も同様であるのであります。
  77. 砂間一良

    ○砂間委員 連合国最高司令官の承認があればできるというただいまの御説明でありましたが、連合国最高司令官は連合国を代表しておる司令官であると思います。しかしながら連合国最高司令官マツカーサー元帥のこれまでとつて来られたいろいろな措置につきましては、連合国の間でもいろいろ問題になつておるような点が、他の場合にはあつたのであります。郵便條約や何かは別といたしまして、今回の場合においても、そういうような点については全然問題はないのでありますか、その点はつきりひとつ伺つておきたいと思います。
  78. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本政府といたしましては、連合国最高司令官の指令に基きまして、また最も希望しております條約加盟というものができるのでありますから、何らその関係におきましての問題はないと存じます。
  79. 砂間一良

    ○砂間委員 この條約に加盟しますと、母船監督官が乗つて行くことになると思うのであります。これまでは総司令部の方々が監督の立場に立つてつておられたと思うのでありますが、この條約に加盟いたしますと、総司令部関係関係官というものは全然乗つて行かないで、日本政府の自主的な独自の監督官が行かれるわけでありますか、この点はどういうふうになりますか。
  80. 家坂孝平

    家坂政府委員 今の南氷洋母船には、監督官規定にありまする通り二名乗つておるのであります。従つて司令部側からも乗船しておられる方もありますが、これは監督官ではなくして、代表として乗つておられるのであります。
  81. 砂間一良

    ○砂間委員 国際捕鯨取締條約に加盟いたしましても、やはり司令部代表か何かが依然として乗つて行かれるのでありますか。
  82. 家坂孝平

    家坂政府委員 加入後におきましては、あるいは司令部の意思によりまして、代表が乗られることになるかもしれぬと思つております。
  83. 砂間一良

    ○砂間委員 国際捕鯨委員会日本代表が出る場合に、先ほどの政務次官の御説明によりますと、独立して自主的に日本代表が出られるようになると思う、こういう御説明でありました。その点はその通りでありますか。
  84. 草葉隆圓

    草葉政府委員 その通りであります。
  85. 砂間一良

    ○砂間委員 そういたしますと、この点非常に複雑な関係になつて来るのではないかと思います。現在日本はまだ講和條約が締結されておりませんで、占領下でありまして、連合軍の総司令官が日本に来ておられるのであります。ところが捕鯨関係においては、南氷洋に出漁する場合の監督官も、それからまた捕鯨委員会に出る日本代表も、自主的に完全に独立の権限を持つて行ける。何ら連合軍司令官の干渉あるいはさしずというものは受けないでやつて行けるかどうかという点でおりますが、その点をひとつはつきり伺つておきたいと思います。
  86. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは條約に加盟いたしましたその條約に従いまして、当然日本代表として委員を派遣し得ると存じます。ただ現在は占領下であるからというお話でありますが、ほかの條約も同様であります。占領政策においての総司令部の行き方というのは、おのずからそこに——條約に加盟いたしましたあとにおきまする委員の派遣選出というのはほかの條約と同様でありますので、さよう御承知願つておきたいと思います。
  87. 砂間一良

    ○砂間委員 そうすると大きな線では、やはり占領政策に違反しない範囲ということで制限を受けて行くことになるのでありますか。
  88. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは日本が今占領下にありまする点は同様です。しかしそれ以上に国際連合、国際條約、各種の條約に加盟することを連合国最高司令官が許可をされ、それに日本加盟いたしました以上、條約につきましては独立の條約の一加盟国として、十分なる活動がなし得ると存じております。
  89. 砂間一良

    ○砂間委員 條約に加盟した面においては、独立国として平等の立場でやつて行けるような、こういうかつこうになるけれども、大きな面において、占領下であるから占領政策によつて制約を受ける、こういうことになりますと、形の上ではいかにも日本が自主的に独立が広げられたような形になつておりながら、やはり占領政策で左右されるということになりますと、これは実質上はやはりいろんな干渉と制限を受けるということになるのではないかと思うのでありますが、その点はどうでありますか。
  90. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問のような問題は起らないと存じております。占領政策に最も役に立つ妥当なものに、いわゆる国際條約に加盟することを占領軍最高司令官は許可をいたして、その手続を進めて、そうして加盟をするということに相なりますので、決して二重の問題は起り得ないものと思います。
  91. 砂間一良

    ○砂間委員 ちよつと方面をかえてお伺いいたしますが、今南氷洋母船が出かけて行つて鯨の肉だとか鯨油だとかいろいろとつて来ております。これをドイツへ持つてつて売るなり、あるいは日本へ持つて来るなり、アメリカに売るなり中国に売るなり、これはかつてに自由に処分できるのでありますか。それとも、どつちの方にまわすとか、あるいは幾らで、どこで買いたいというふうな制約を受けておるのでありますか、その実情はどうでありますか。
  92. 家坂孝平

    家坂政府委員 製品の販売先につきましては、この條約につきましては別に制限はないのであります。
  93. 砂間一良

    ○砂間委員 條約については制限はないということは、これは常識的に考えられます。しかしながらたとえば中共貿易にしましても、日本国民の大多数の意思に反して、中共との貿易を禁止する、こういうような政策が一方ではとられている。こういうような場合におきまして、これが占領政策ということであるならば、やはり鯨油なり何なりの販売や処理についていろいろ制約される、そうすると捕鯨條約の面だけでは独立して自主的にやつて行けるようなかつこうになつてつて、しかも実質上は外国に隷属したようなかつこうになるという点が、私どもは非常に矛盾を感じておるのであります。こういう点がはつきりしませんと、今講和條約の前に早急に急いで條約に加盟しなければならぬという点がはつきりしないのであります。たとえば日英貿易協定にしましても、日本が英国と貿易協定をやるというかつこうにはなつておりますけれども、しかもその貿易を実際に取結ぶ人は、これは日本人ではなくて、総司令部の方が行つて日本代表してやつておられる、そうして日本政府あるいは日本人というものは、單なるオブザーヴアーのかつこうで陰にひつ込んでいる、こういうような形では、いくら日英貿易協定や、あるいはその他の国際的な関係で、日本が自主性が與えられて行くようなかつこう、ゼスチュアが広げられましても、それは何にもならないのではないかと思う。そういうような点におきまして、この国際捕鯨取締條約に加盟するということは、真に日本の自主性と独立性を持つたものになるかどうかという点について、私どもは多分に懸念を持たざるを得ないのであります。そういう点について政府のはつきりした見解をお伺いしたいと思います。
  94. 草葉隆圓

    草葉政府委員 私からお答え申し上げます。何らそういう点については、御心配の制限もないと存じます。
  95. 砂間一良

    ○砂間委員 これで終ります。
  96. 高田富之

    ○高田(富)委員 ただいまの砂間君の質問に関連して、若干御質問したいのでありますが、今回のこの捕鯨條約への参加につきましては、これは各新聞とも、この種條約に対する最初の加入であつて講和を前にして非常にその意義は大きいというふうに、きわめて重大視しておるのであります。しかるにただいまの政務次官のお答えでは、前にもたくさんの條約や協定に入つておるし、何も新しいことではないということでありますが、私はそれは非常におかしいと思う。何か今回の條約に入ることは、今までの諸協定、諸條約に入るのとは非常に違つた、しかも最初の條約加入としての性格上、重大視すべきものがあるというふうに感ずるのでありますが、そういう何か理由がありますか、それとも全然そういうことはありませんか。
  97. 草葉隆圓

    草葉政府委員 別に私はないと存じております。ただ日本国民の国際條約を遵守します美しい心持のなるべくすみやかなる現われというものを、こいねがつておる次第であります。
  98. 高田富之

    ○高田(富)委員 そこは非常に重要なところで、しつこいようですが、もう一つお伺いしたいのですが、先ほど来各委員の御質問に答えまして、今度は今までのような、未成年者が後見人と一緒に会議へ出て行つて、後見人がしやべくるというようなものでなくして、今度は独立してほんとうにアメリカとも対等に列席してやれるようになるというような御説明があつたので、私はそういう点で、非常に今度は実質的にも前のとは違つた取扱いを受けておるのではないかというように感じました。この点をひとつもう一度明確にしていただきたいと思います。  それからもう一つ私感じましたのは、前に入つたいろいろな協定とか條約というものは、これは入らないと日本の占領政策も実際円滑に行かない、日本の占領政策を遂行する上から、連合国最高司令官として、日本をこの種の協定や條約に入れなければ、占領政策がやれないというような、たとえば電信だの郵便だのというものは、日本だけで自粛するといつても始まらないので、貿易にしてもそうでありますが、相手のあることでありますから、日本だけでやるというわけには行かない。どうしても技術的に入らなければならないものに、後見人つきの未成年者が入つて行つたという今までの関係ではなかろうというふうに私は感ずるのであります。この二つの点について従来との違いがあるかないかを御説明願いたい。
  99. 草葉隆圓

    草葉政府委員 従来の郵便あるいは電気、あるいは関税等の條約につきましても、加入後におきましては、先ほど申し上げました今回の場合と同様、今回も従つて従来の場合と同様、日本代表委員が参加をする。また今回の捕鯨條約におきましても、加入することによつて日本の信用並びに利益という点から考えますと、少しも違つたことはないと存じております。
  100. 菊池義郎

    ○菊池委員 砂間君の質問に関連する質問です。これを見ますと、この條約に加盟しない国がたくさんあるのでありますが、條約に加盟しない国に加盟列国が何か制裁を加えるような国際的の條約が他にあるのでありましようか、どうでしようか。これは西村局長にお伺いしたい。
  101. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御指名がありましたが、私からかわつて申し上げます。実は十六箇国の加盟はいわゆる捕鯨についてのとりきめであります。この他の国々はさほど捕鯨の上からは大きいと認められないのではないかと考えます。
  102. 守島伍郎

    ○守島委員長 菊池君、あなたの御質問は関連の関連ですから、あとにまわしていただきたいと思います。あなたの時間はあとにとつてございます。
  103. 高田富之

    ○高田(富)委員 そこでもう一度その問題に関連してお伺いしておきたいのですが、漁業関係の條約は、講和條約と関連して今までの諸協定と違つた意味がある。七原則の中にも漁業協定のことがちやんと書いてあるし、今回書簡を総理が出しまして、これに対して司令部の方から御返答があつて講和ができたらマツカーサー・ラインが撤廃になる、そうしたらほかの国が驚くだろうから、そのときは向うの條約は守ります、昔行つてなかつたところには行きませんということを明らかにした。これと今度の條約に正式に入つたということとは、やはり同じ目的のものだろうと思うのですが、そういう意味でやはりこれは非常に講和と直接関係のある重大問題ではないか。今までのいろいろな協定とは非常に違つた、講和と直接関係のある重大なことではないかというふうに私は考える。またそういうことになれば、先般のあの書簡に基きまして、当然各国のこれに対するいろいろの反響があつたろうと思います。従つてもしできればこの條約ばかりでなく、別の方の漁業條約を講和前に太平洋関係の諸国と結ぶという段取りにも、おのずからなるものと私どもは想像せざるを得ないわけです。こういう意味でこれは非常に重大視するのですが、そこら辺のお考えはどうなんでしようか。
  104. 草葉隆圓

    草葉政府委員 国際捕鯨取締條約に加盟するということは、実は前々からの問題であつたのでありますが、今回幸いに一月にその許可を得ましたので、このような手続と相なつたのであります。直接には別に関係があるわけではございません。ただ戰後に日本が新しく立ち上つて参りまする上に、十分国際條約を遵守するという現われにおきましてはこれも同様でありまして、いずれの條約にもひとしく日本国民が熱望しておる点と存じます。
  105. 高田富之

    ○高田(富)委員 さつきの並木委員の御質問に答えられまして、歯舞諸島の中に色丹島が入るという御返答でしたが、これは連合国最高司令官の覚書の中にも、日本の主権の及ばない地域として、千島列島、歯舞諸島、色丹島とちやんと書いてあるんですよ。それが同じものだ、一緒だということをあなたがお言いになる根拠はどこにあるのですか、その根拠をお示し願いたい。
  106. 草葉隆圓

    草葉政府委員 同じことだと申し上げましたのは、従来日本人といたしましては、地理的にも歴史的にも同じこととして従来とも取扱つてつておりますから、さようお答え申し上げたわけであります。
  107. 守島伍郎

    ○守島委員長 井之口君。
  108. 井之口政雄

    ○井之口委員 私から二、三御質問いたします。もし日本が独立国であるならば世界の公海において漁業は自由にできる。ところが今日は占領下にあるために、マツカーサー・ラインというものがあつて、自由に世界の公海に出て魚をとることができない。従つて漁民は国内に群集して、狭い漁場の中でみな魚をとることができないために、漁獲は非常に困難である。これは皆さん方御承知の通りであります。ところが鯨に関する限りは、南氷洋方面へ出て行くことを特別に今日までマツカーサー元帥によつて許可されて来たが、今この捕鯨條約に入りますると、独立しない前においても、将来特別の許可を得るという必要は全然なくなつて来るのであるかどうか、その点をひとつお伺いいたしたい。
  109. 家坂孝平

    家坂政府委員 條約に加入いたしましても、講和條締結前におきましては、船舶の航行についてはやはり許可がいると思つております。
  110. 井之口政雄

    ○井之口委員 船舶航行の許可なくして鯨をとるわけに行きませんが、してみると、結局これに参加しても、日本捕鯨その他の漁業方面は、やはり首根つこを締めつけられておつて、どうにもそれ以上には出て行かれないという結論になるわけですか。
  111. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私の方から御答弁申し上げます。この條約に加入後、現在総司今部によつて行われているような監督ないし許可が必要であるかどうかということは、一に最高司令官の裁断によるところであります。
  112. 井之口政雄

    ○井之口委員 それではその点はもう追究しないことにいたします。しかし、たとい国際條約に入つたとしても、もし将来マツカーサー元帥によつて、今行つているところの捕鯨許可を取消される場合もあり得るかどうか。あるいはまた国際條約に入つたのを、これは都合が悪いから取消すというようなことは行われ得るかどうか。
  113. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 国際條加入日本国に許す許さないということは相当重要な問題だと思います。相当愼重考慮された上、要請に対して正式に許可されたような事柄を、重大なる理由なくして一方的に取消しないし変更されるというようなことは私はないだろうと思います。結局のところは一に最高司令官の裁断によるところでございます。
  114. 井之口政雄

    ○井之口委員 しからば重大な理由ある場合が起ることをひとつ考えてみたいと思いますが、対日理事会においてこの問題が将来問題となり、あるいは極東委員会においてこの問題が問題となるような場合にはどうなるわけでありますか。
  115. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 最高司令官が日本政府に対して、日本政府の要請によつて国際会議または国際條約に加入することを許可する権限は、一九五〇年二月二十五日の中間指令によつて付與されているところでございます。
  116. 井之口政雄

    ○井之口委員 その許可されたものに対して、さらに対日理事会であらためて生じた客観的情勢に従つてこれが問題となる場合はいかがでありますか。
  117. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の問題は純粋に連合国間の問題でありまして、日本政府としてかれこれ意見を表明する立場にありません。
  118. 井之口政雄

    ○井之口委員 それではもう一つ方面をかえてお尋ねいたしますが、こういうふうに日本政府としても許可があれば、つまり條約を結んで、そうして国際間の漁業日本の権利を伸長することができる、こういうことができるといたしますれば、今東支那海並びに南支那海等々に起つているところの不祥なるところの拿捕事件、マッカーサー・ラインを突破して行つてそうして拿捕される、先には李承晩政府によつて、さらに蒋介石政府によつて、今日は中華人民共和国によつて拿捕されておる。しかも李承晩政府並びに蒋介石政府から拿捕されたもの、百何十艘というものがいまだに帰つても来なければ、どうなつているかわからぬ。もし日本政府が真に漁民のための利益を考え、漁民の利益を守り、そうして周囲の国と衝突を起さず摩擦を起さずやつて行きたいと思うならば、中華人民共和国とか北鮮、その他いろいろなこれに関係を持つところの国とさらにあらためて協定を結ぶように努力する意思はないか。またその努力は必ず効力の上において実行されるものと思うかどうか。この点をひとつ伺いたい。
  119. 草葉隆圓

    草葉政府委員 最近の東支那海におきます漁船拿捕事件はまことに潰憾と存じております。ことに今後の問題につきましては、かようなことのないように関係国と話合いを進めることはもちろん私どもの望むところでございます。
  120. 井之口政雄

    ○井之口委員 最近の不祥事件にのみ私は局限して言つたのではないのであります。蒋介石政府がうんと拿捕した。さらに李承晩政府の方がうんと拿捕している。百何十艘がいまだに行方不明。こういうようなものに対して、今までずつとやられていなければならない性質のもんだ。それに対してどうなんです。交渉が今までされていたかどうか。あるいは将来もその交渉が実を結ぶ可能性があるかどうか。
  121. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この問題につきましては水産委員会におきましてもよく御答弁申し上げている通りであります。
  122. 井之口政雄

    ○井之口委員 最後にもう一つお尋ねいたしますが、この條約に参加いたしまして、そうしてマツカーサーの方においてマツカーサ一・ラインを北方へ突破することをもし許可して、そうしてべーリング海その他の方面——これは許可漁業地区ではありませんが、この方面に、たとい鯨はあまりとれないでも、ある臨時的な必要のもとにどんどん船を出すというような場合があり得ないとも限らぬ。こういうような場合に、国際間に、この條約ができたために、いろいろな摩擦を起すというようなことを政府は予想していないかどうか。
  123. 草葉隆圓

    草葉政府委員 鯨のおりません所に捕鯨漁船を出すようなことはないと存じております。
  124. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは連合委員会はこれで散会いたします。  午後二時から外務委員会を開きますから、そのときに質問の残りも許します。     午後零時三十六分散会