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1951-06-21 第10回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年六月二十一日(木曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君       植原悦二郎君    小川原政信君       菊池 義郎君    近藤 鶴代君       仲内 憲治君    中山 マサ君       並木 芳雄君    武藤運十郎君       米原  昶君  委員外出席者         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (条約局長)  西村 熊雄君         通商産業事務官         (通商鉄鋼局鉄         鋼政策課長)  川島 一郎君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 六月一日  講和条約草案を調印前に国会提出すべき決議  案(淺沼稻次郎君外百二十六名提出決議第一  九号)  対日講和のための四大国外相会議開催要望に関  する決議案河田賢治君外二十四名提出決議  第二四号)  日米軍事協定及び駐兵反対に関する決議案(河  田賢治君外二十四名提出決議第二八号) の審査を本委員会に付託された。 同月五日  国際経済に関する件  講和会議に関する件  国際情勢に関する件 の閉会中の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する件を議題といたします。まず政府側より最近の国際情勢についての説明が求めます。草葉外務政務次官
  3. 草葉隆圓

    草葉説明員 最近の国際情勢につきまして、先回御報告申し上げた以後におきまする情勢を御報告申し上げます。  まず朝鮮動乱のその後の情勢でございますが、朝鮮動乱は勃発以来まさに一年になんなんといたしておりまして、国連諸国平和解決努力もその後ほとんど効を奏せず、依然一進一退の戦闘が続けられて今日に至つておるのでございます。五月中旬国連軍中共軍の第二次春季攻勢を撃破いたしまして、再び三十八度線以北に追い返し、いわゆる鉄の三角地帯といわれております鉄原、金化、平康の要衝を制圧いたしまして、戦局を好転いたしたのでございます。この機会に再び国連諸国の間に和平解決をはからんとする努力が行われて参りまして、朝鮮に派兵いたしておりまする十六筒国の間で、三十八度線に沿つて三十二キロの幅の非武装地帯を設けることを骨子とする停戦案に、意見一致したとも伝えられておるのでございまするが、またこれと前後して、リー国連事務総長なりアチソン国務長官の口からも、和平の誘いとも見られまする意思表示が行われて参つたのであります。しかし中共側はいまだ和平に応ずるけはいを示しておらないばかりでなく、国内におきましては、かえつて抗戦意識をあおつて戦闘を継続せしめる態勢の強化に努めておりまして、中共の第三次攻勢のきざしさえ見られておる状態であります。  かような状態にありまして、アメリカブラツドレー統合参謀本部議長が上院における証言にも申しましたように、味方の損害をできるだけ少くして、共産軍に大きな損害を与えて、侵略の引台わぬことをさとらしめて、その間国連を通ずる交渉によりまして、和平を求めざるを得ないように仕向けようとしているように見られるのであります。従いまして、結局国連軍共産軍との根気比べ状態を呈しておるのが、現在の朝鮮動乱情勢と思われる次第でございます。  次に先回御報告申し上げました後の四国外相代理会議状態を申し上げますると、去る五月三十一日、モスクワ駐在アメリカイギリスフランス三国の大使によりまして、ヴイシンスキー・ソ連外相に対して、五月二日に三国側提案いたしましたいわゆるABCの三つ議題の中のいずれかを基礎として、七月二十七日からワシントンで四箇国外相会議を開催するように提案いたしたのに対しまして、六月四日グロムイコ・ソ連代表は、北大西洋条約問題と、欧州におきまする米軍基地の問題を議題に入れることを条件にして、これに応じようという回答をいたしたのでございます。そこで三国側は六月十五日に、議題についてはすでに四箇国間に広汎な一致を見ておるのであるから、これ以上議題に関する未解決の点について論争することはやめて、一致した範囲内で外相会議を開催すべきことを提案いたしたのであります。これに対するソ連回答がまだなされておらないのでありまするが、この回答のいかんによりまして、いよいよ四箇国外相会議を開催するかどうかということがきまることと相なつて参ると存じます。  次にイランの石油問題について見ますると、イラン政府は最初から、アングロ・イラニアン石油会社国有化の問題について、英国政府には発言権がないといたしまして、英国政府との交渉を拒否して参つたのであります。これに対しまして英国政府は、五月二十六日、ハーグの国際司法裁判所に提訴いたしましたが、カゼム・イラン外務大臣国際司法裁判所あてに、イラン政府は、国際司法裁判所アングロ・イラニアン会社イラン政府との紛争に裁定を下す権限を有していないと考えておるという旨の電報を打ちまして、応訴の意思のないことを明らかにいたしたのであります。  その間イラン側といたしましては、第一に、会社の接収に伴う補償を与えるということ、第二に、新会社純益の二五%以内を旧会社に支払う用意があるということ、第三に、従来の貸付使用者に対する供給確保については特別に考慮しておるということ、こういうことを漸次明らかにして参つたのであります。  またイギリスモリソン外相は、ほかの関係事項について満足な解決ができ得るならば、何らかの形におけるイラン石油業国営化を考慮する用意があると述べまして、国有化を頭から否定するものではないことを明らかにいたして参つたのであります。  こうして両者の間には、幾分歩み寄りの可能性があるように見受けられて参つたのでありますが、六月三日に至りまして、会社側イラン政府の要請に応じて、会社側代表イラン派遣を承諾いたしました結果、去る十四日から、イラン政府会社側との代表会談が開かれて参つたのであります。この代表にはイギリス政府の指名しました者が含まれておりまして、これはイラン政府の了承しておるところでございまするから、この点につきましても、両者の間に互譲の跡が見受けられると存ぜられるのであります。  会談におきましてまずイラン側から、正式の討議を開始する条件といたしまして、第一には、イラン石油国有化法が可決された去る三月二十日以来の純益の二五%を補償に充てるため、イラン政府及び会社の双方の同意する銀行にこれを寄託する、第二には、右以外の石油売上高即時イランに引渡すこと、という二点を要求いたしたのであります。今度の会社代表派遣につきましては、もともとイギリス政府は従来から主張しておりました法的権利を保留することを条件として派遣承認して参りましたのに対しまして、イラン側は、国有化を既成の事実とするの態度をとつて参つたのであります。この間にイラン国内におきましては、反英米宣伝が盛んに激化されつつありますることは、大部分のイギリス人従業員の家族の引揚げ待機イスフアハンにおいて行われ、また十七日イスフアハンにおきまする米人の刺殺事件となつて現われておる点からも見られるのでありまするが、かような不安な情勢に対しまして、イギリス政府は十六日、中東のイギリス防衛軍イギリス人安全撤退のために非常事態をとることを命じた趣でありまして、他方北部国境にはソ連軍神経戰的な集結も伝えられておる状態であります。  かような緊迫した情勢のうちに十八日開かれましたイギリス閣議が、さきに申し上げましたイラン側の要求を拒否するに決して、またイラン当局アングロ・イラニアン会社との会談は十九日夜完全に決裂して、イラン政府は二十日の閣議で、アングロ・イラニアン会社の全石油施設を接収することに決定して、アングロ・イラニアン会社は消滅したと宣言をし、国立イラン石油会社がこれにかわることになつてイギリス油田地帯に残留しておりまする全イギリス婦女子引揚命令を出したと報道されて参つたのでありますが、その詳細は、なお今日はつきりとはいたしません。しかしこのような状態から考えまして、事態の将来における困難性を示しておるものと存ずるのであります。  次に米国議会の最近の動きについて、この機会に申し上げておきたいと思います。米国議会におきまするマツカーサー元帥解任問題をめぐりまする証言は、御承知のように、マツカーサー元帥証言あとを受けまして、マーシヤル国防長官ブラツドレー統合参謀本部議長コリンズ陸軍参謀総長ヴアンデンバーグ空軍参謀総長シヤーマン海軍作戦部長という順序で四月十九日から五月三十一日までの長期間にわたつて続けられて参つたのであります。六月に入りましてから、アチソン国務長官が、一日から九日まで、七番目の証言に立つたのでありますが、これらの証言は、厖大な量に達するものであります。これまでの証言では、要するにソ連の戦備、経済力及びそれに伴う極東情勢並びに対中共軍戦略に関するマツカーサー元帥アメリカ政府側との見解の相違に重点が置かれたのであります。マツカーサー元帥満州爆撃国府軍使用中共沿岸封鎖という提案に対しまして、政府側はこれらの提案朝鮮動乱世界大戦に導くものであるとして、米国宥和政策をとるものではなく、第三次大戦に備えて、むしろ戦争を阻止するために、朝鮮戦線において時をかせごうとするものである。切迫した第三次大戦の危機を防止する唯一の手段は、自由国家側軍備充実を促進することにあるという点を明らかにすることに努めて参つたのであります。アチソン証言に至りましては、アチソン長官がかつて台湾軍事的価値を否定いたしましたこと、また米軍なりアメリカ軍事使節団台湾派遣に反対いたしました事実、遠くは一九四五年のヤルタ会談から現在に至りまするまで、アメリカ極東政策をめぐつて論議が行われたのでありまして、その背後には、アチソン長官個人に対する反感もあつたようでありますが、この機会国務長官が更迭するのではないかとの臆測さえ行われたのであります。これに対しまして、トルーマン大統領は、アチソン長官証言はきわめて妥当であり、彼を解任するの意思はないと言明いたした次第であります。その後十一日からは、ウエデマイヤー中将証言が行われ、まだ三、四名の証言が残つておるようでありますが、一応この問題はすでに山を越えた形であると存じます。  次にフランスの総選挙について申し上げたいと思います。フランス国民議会議員の総選挙は、去る四六年十二月以来、五箇年ぶりに六月十七日に施行されたのであります。今度の選挙について、その結果を申し上げまする前に、今回適用されました新しい選挙法について一言触れておきたいと存じます。この新選挙法比例代表制多数決制とを折衷いたしたような方式によつたものであります。すなわち一県一選挙区とし、その区の議席と同数の候補者をもつた各党の名簿に対して投票するのであります。もつとも全国三十県以上にわたつて候補者を立てておりまする政党は、その候補者名簿についてほかの党派とも連立関係を結ぶことができるといたしております。そして投票の過半数を得ました単独名簿なり連立名簿が、その区の議席の全部を占めることと相なります。連立名簿の場合は、連立名簿の間に当選者比例代表制で配分する。絶対多数のないときは自動的に比例代表制が適用されて、最高平均点の方則によりまして、各名簿間に当選を配分するのであります。なおパリ及びその付近の二県におきましては特例が設けられております。このような方式のねらいは、結局政府与党連合戦線を張りまして、共産党と極右のド・ゴール派に対抗するというところのねらいがあつたわけであります。これとほとんど同様な選挙法は、イタリアの今回の地方選挙でも実施されたのでありまするが、イタリアの場合は、全国の市町村を人口一万以上と一万以下の二つにわかちまして、選挙の結果絶対多数を得た政党なり政党ブロックに対して、一万以上の場合は議席総数の三分の二、一万以下の場合は五分の四を与えて、残りの三分の一なり五分の一の議席を、得票に比例して残り政党に配分するという方法をとつたのであります。これで政府与党であるキリスト教民主党が、ほかのすべての民主主義政党共同戦線張つて左翼政党に対抗することをねらいとして行われたのであります。  さてフランスの今回の総選挙は、第一に共和主義政体擁護を目標といたしておりまする中道派政府与党連合と、第二には中道派の政治の無力無能共産党の反フランス的行動を攻撃しつつ政党政派を超越した国民の結集を呼びかけておりまするド・ゴール派と、第三に共産党とのこの三つの争い、選挙である。これにさらに加えて第四勢力といわれておりまする、ド・ゴール派とも中道派すなわちいわゆる第三勢力とも相いれない保守系諸派バ第四勢力として割込もうといたした。こういう選挙情勢を呈したのであります。開票の結果の全貌はまだ判明しておりませんが、政界の分野には激変はなさそうであります。ド・ゴール将軍国民連合が、今回初めて国民議会選挙に出て、第一党になるだろうということは、すでに予想されておるところであつたのでありますが、今回の選挙は、ただいま申し上げたように、特に目立つた結果が現われなかつたところに、むしろ特徴があるといえると存じます。換言すれば、大体におきまして国民が依然として中道政治を支持しておることを示すものと考えてよかろうと存じます。しかし中道派中心勢力として百五十一名を擁しておりましたカソリツク民主主義人民共和党の激減によりまして、これを中心としておる政府与党各派議席過半数を占めることができずに、今後の政局安定は一層困難になつて来るだろうと思われます。また社会党人民共和党急進社会党抗戦同盟等の従来の与党連合が引続いて政権を担当しようといたしまするならば、いわゆる第四勢力保守派の協調を必要といたすのでありますから、従つてそこに従来の政策が、従来以上に右翼的に輝いて来ることが考えられるのではないかと存じます。  最後に、対日講和のその後の動きについて御報告申し上げます。ダレス特使のいわゆる対日講和解決準決勝戦といわれましたロンドンにおきまする米英会談は、主として対日講和に参加すべき中国代表の問題及び台湾の将来に関する問題等こつきまして意見一致いたしませんところから、一時は難航が伝えられて参つたのでありますが、六月十三日、ダレス特使パリからロンドンにもどられまして会談再開両者は急速に合意に達したのであります。十四日イギリス外務省及び在英アメリカ大使館共同コミユンケを発表いたしまして、対日講和条約草案その他すべての主要懸案について、両国間に万全な意見一致を見たことを明らかにいたしました。しかしその具体的内容につきましては発表されないのでありますが、伝えでおりますところを要約いたしますると、第一に、中国政府の問題については、講和日本外交政策に関して完全な主権を回復し、講和相手国として中国のいずれかの政権を選ぶことを可能ならしめられること、第二に、台湾については草案には触れずに、ただ日本は四つの大きい傷並びに若干の近接諸島を保持することのみを規定することということに意見一致を見たようであります。その他賠償の問題、日本在外資産あるいは東京の総司令部に保管されておりまする金塊、それから自衛のための日本の再武装許可等について一致を見たといわれておるのであります。なお関係筋がその日言明いたしましたところによりますと、英米両国合意は、対日平和解決の基本的諸項のみに関するもので、通商経済賠償、戦時中の抑留者に対する損害賠償等多数の懸案事項は、講和日本自身において取扱われる問題である、つまり関係国との個別的交渉によることになるだろうとも伝えられておるのであります。なお右コミニケによりますると、今後この合意の結果が両国政府によりまして最終的に承認されますると、まず対日戦に大きな役割を果しました諸国と協議の上、対日講和草案はほかの対日参加諸国にも回付されまして、できるだけすみやかに意見を求めた後に、最後的に条約案の作成に着手する運びとなるものとされておるのであります。  今回の会談の結果についての反響の二、三を見て参りますると、アメリカにおきましては、ニユーヨーク・タイムズの社説におきまして、今回の解決はある意味では問題をただ延期したものにすぎず、台湾はいつかは独立国あるいは二つ中国のいずれかの一部としての地位を確保しなければならず、また日本政府はいつかは中国のいずれの政府講和するかを決定しなければならない。もし日本共産主義諸国家の侵略に対する保護を西欧側から受けておるにかかわらず中共を選ぶとするならば、事態は複雑なものとなつて来るだろうと論じております。またイギリスでは、今回の会見につきまして労働党部内に相当不満なものがあるようでありまして、イギリス政府といたしましては、中共を犠牲にしてアメリカに譲歩しました点、及び台湾問題について今後党内のかなりの反対を乗り切らねばならないものという観測が伝えられておるのでありまして、労働党の左派の意見をよく代表いたしまするニユー・ステーツマン・アンド・ネーシヨンは、ダレス特使努力を攻撃いたしまして外交上のイギリスフランス協力の欠如に由来する悲しむべき結果が、ダレス氏のロンドンパリにおける活動によつて立証され、また結局中国政府選択日本にまかせることになつた結果、日本政府国民政府を選ぶことは違いないところである。また日本の再武装に制限を付さずに、将来の日本による侵略に対する保障が与えられておらないことは、不吉なことであるという論調を掲げておるのであります。他方ダレス氏のパリ会談におきまするいろいろな問題等も残されておりまするが、これらの問題は新聞等で報道されておる通りであります。  こうしていろいろな問題の懸案も、解決を要する焦点がだんだん明らかになつて参りまして、大局におきましては一応解決されたと見ることができると存じますし、また対日講和促進につきましても、関係国の足並がだんだんとそろつて参りましたことは間違いない事実と存じます。  今後この線に沿いまして、ダレス特使米国国内におきまする各方面との折衝に尽力をし、アリソン公使はパキスタン、インド、フイリピン等との交渉を続けて参つておるようであります。この間ソ連からアメリカに第三次の覚書がさらに送られたのでありまするが、ソ連覚書は従来の主張を繰返しただけでありまして、対日講和の大勢には影響することがないと存じます。かくて対日講和の促進はだんだんと強められつつあることを感ずる次第であります。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 これより質疑に移ります。並木君。
  5. 並木芳雄

    並木委員 ただいまの草葉次官からの御報告の中に引用がありましたが、私は閉会から今日までの間に起つたと報せられるいろいろな問題の中で、特に中共国府かという問題に関連しての質問をいたしたいと思います。これは中共国府というふうに申しますと、あるいは政府としては答弁しにくいかもしれませんので、かりに中共に相当する立場にあるものをA国といたし、国府立場にあるものをB国として、そうして一般論的に質問いたしますからお答え願いたいと思います。  まず日本A国を選ぶ場合がもし起つたとするならば、それは今まで承認されていない国でございますから、まずそのA国承認してからでないと、対日講和相手国として選ぶことはでないと思うのでありますが、この点はいかがでしようか。
  6. 島津久大

    島津説明員 ただいま御質問の第一点についてお答えを申し上げます。答えやすいようにA国というお話でございますので、A国ということでお答え申し上げますが、A国についての承認の問題は、国を承認するという問題ではなくて政府承認の問題でございます。そこで政府承認の性質は、本来承認する国の一方的の行為であります。しかしながら条約承認規定を置くことも法的に可能なのであります。  これにつきましては先例もございます。一九二一年十一月五日のソ蒙修交とりきめの第一条及び第二条におきまして、締約国はそれぞれ相手方政府唯一正統政府と認めるという規定がございます。明示的な条項がない場合でも、その条約平和条約とか、通商航海条約というような重要なものでございますと、その条約締結自体によつて相手方政府を黙示的に承認したことになるのでございます。そうでない条約の場合には、承認とは解されないわけであります。これにつきましては、英国が一九二一年三月十六日ソ連政府との間に通商協定締結しております。そうしまして一九二四年の二月一日に至つて初めてソ連政府承認をいたしております。また一九二二年六月五日のチエコとソ連との間の暫定条約第一条、これにはこの条約相手国政府の正式承認問題と無関係であるということを明らかにしております。以上が第一点に対するお答えであります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと聞き漏らしたところもあるかと思いますが、そうすると私の質問に対する答えとしては、必ずしもA国承認してからでなくても、相手国として選ぶことができるという場合もあるということですか。
  8. 島津久大

    島津説明員 順序としてまず政府承認行為があつて、それから離れて条約締結が行われるという場合もありますし、また条約締結することによつて、それによつて承認されるという場合もある、そういう場合をわけて御説明を申し上げた次第でございます。
  9. 並木芳雄

    並木委員 わかりました。そうすると私は特に日本独立を回復した後において選ぶ、こうきめた点は、A国というものを承認してから初めて相手として選び得ると思つておつたから、これはあたりまえのことをあげたんだなと思つていたのです。ところが今のお話ですと、条約を結ぶことによつて承認をするという場合もあり得るのでありますから、必ずしも日本独立してからでなくても、A国講和相手として選ぶこともできるわけですね。そういうわけですね。
  10. 島津久大

    島津説明員 独立を回復する前に承認ということはないと思います。ただ時間的に、たとえば講和条約を結ぶ際に、それと同時に承認ということはあり得ると思います。
  11. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、特に独立を回復して完全な自主権を得たあとにというふうに前提がついているのは、何かそこに含みがあるのでしようか、どうでしようか。
  12. 島津久大

    島津説明員 今回の米英会談内容として伝えられておりますところは、報道の範囲にとどまるのでございまして、どういう意図があるかわからないのでございます。またどういう形式で選択が行われるかというようなこともわからないのでございますが、いずれにいたしましてもただいま御質問の点は、特別な意味があるようには、私どもは考えておらないのでございます。
  13. 並木芳雄

    並木委員 次に私は、承認のやり方についてちよつとお尋ねしておきたいのです。これは要するに承認というのはどういう手続をふんで行われるか、新しい憲法のもとにおいては、やはり憲法第七十三条による内閣の事務に入るのかどうかということです。入るといたしますならば、ただいまもお話がありましたが、承認というのは一方的の行為ですから条約ではない。従つて第七十三条の三号の条約締結ではないというふうに私は考えておるのです。第二号の方の「外交関係を処理すること。」の中に入つて来るのではないかと思うのですが、そうであるかどうか。そうであるとするならば、条約の場合には国会承認を必要としますけれども、この第七十三条の二号の方の「外交関係を処理すること。」というのは、国会承認を必要としておらないのです。そうするとA国承認するというような重要な問題について、全然国会承認を経ないというやり方になるのかどうか、これはつり合い上ちよつと了解しにくいので、その点を確かめたい。
  14. 島津久大

    島津説明員 最初に御説明申し上げましたように、二つのやり方があると思うのでございます。その承認条約によつて行われる場合は、条約について、御指摘のように憲法第七十三条三号によつて国会承認を得る、これはもちろんそうであります。ところが一方的行為で行われる場合には、第二号の規定にありますような外交関係の処理として内閣の事務に入る、こういうことになるわけであります。
  15. 並木芳雄

    並木委員 その点はわかりました。そうすると、外交関係の処理で行くというときも、やはり国会承認を経ることが、実質上憲法にはなくても必要ではないかと私は思います。そこでお伺いしたいのは、いやしくもある一国を承認する場合に、政府としては、当然国会の了解を求める手続をとるべきではないかと思うが、どうかということです。
  16. 島津久大

    島津説明員 法律問題といたしましては、ただいま御説明申し上げた通りでございます。それ以外の取扱いについては、私からお答え申し上げかねます。
  17. 並木芳雄

    並木委員 ちよつとくどくなりますけれども、条約によらずして政府承認する易行には、国会承認は求めないというわけですね。その点をちよつと確かめておきたいと思います。
  18. 島津久大

    島津説明員 憲法規定からいたしましてそういうことになると思います。
  19. 並木芳雄

    並木委員 その点は、今後の検討の余地があると私どもは思います。憲法に関する検討の余地がありますので、それはそれとして次の問題に移ります。  そこでB国ではなく、かりにA国承認いたしました場合、要するにA国講和条約締結した場合には、今までのB国日本との関係はどういうふうにかわつて来るでしようか。この場合に考えられる問題として、A国B国の両方を条約相手として選ぶか、こういうふうなことはどうかという問題なのです。
  20. 島津久大

    島津説明員 A国の中に対立した二つ政府がありまして、その片方の方の政府承認した場省どうなるかという御質問と思いますが、これは当然承認した方の政府との関係が生ずるのでありまして、そうでない片方の政府A国代表する合法的の政府とは認められないということになります。
  21. 並木芳雄

    並木委員 具体的に何か権利義務の関係でありませんか。
  22. 島津久大

    島津説明員 つまり承認されなかつた政府日本との関係がどうなるかと申しますと、これは国際法上の関係がないということになります。
  23. 並木芳雄

    並木委員 前に伝えられておりました対日講和条約草案の中に、日本中国における一切の特殊権益を放棄するという条項があるようでございますが、この一切の特殊権益というものはどういうものですか。この際お聞きいたしておきたいと思うのです。
  24. 島津久大

    島津説明員 これはおそらくは従前いわゆる不平等条約といわれておりました中国と外国との関係に当ると思うのであります。たとえば租借でありますとかあるいは駐兵権利、内水あるいは沿岸の航行権、一方的な最恵国待遇、そういうようなことをさすと思います。
  25. 並木芳雄

    並木委員 そこでその問題に関する最後の質問として、私は政務局長では答えにくいと思いますから、次官に質問するのですが、要するにA国B国かということは非常にむずかしい問題であると私どもは率直に感ずるのですけれども、そういうふうにお感じになりますかどうか。それとも政府としては簡単に結論の出る問題であるかどうか、先ほど私が質問した中にもあります通り、もしむずかしい場合には、あるいはA国B国と両方とも相手にするということも考えられないか、こういう大きな問題を——与党の方々から聞くと、きようあたりが政務次官最後の外務委員会の出席になるらしいというから、そこをひとつはつきりしておきたと思います。みやげ答弁をひとつ……。
  26. 草葉隆圓

    草葉説明員 この点は私がさきに国際情勢動きについて御説明申し上げました通りに、さような情勢が伝えられておりますが、日本政府といたしましては、いずれはこの内容がはつきりして参ると存じますが、いま一応の報道にすぎないのであります。将来どのうよになるか、かりに伝わつております報道のようにいたしましても、政府は慎重な態度をとつて来ると思います。
  27. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点だけお尋ねして私の質問を終ります。それはこの際お尋ねしておきたいのですが、条約というものが憲法に違反するようなことはないと思いますけれども、もし抵触する疑いが起つた場合に、最終的にはどこが合憲であるか、違憲であるかを決定するかということなのです。最高裁判所のようでもないですしもちんろ内閣などにあろうはずのものではなし、われわれ国会の手にあるのじやないかとも思うのですが、この点権威ある御答弁をお願いしたい。
  28. 島津久大

    島津説明員 どうも権威ある御答弁をいたしにくいのでありまして、係官の私見として、憲法には条約が違憲であるかどうかを審査する権限がどの国家機関に属するかということに関する文明の規定はございません。これは違憲の条約締結されるようなことを憲法自体が予想していないからだというふうに考えられます。また実際問題といたしまして、いかなる内閣でも条約締結にあたつてはこの点を慎重に考えまして、いやしくも違憲の疑いのあるような条約締結しないでございましようし、また国会条約締結に対しまして承認を与える際に、十分この点を検討されることでございましようから、憲法に明文がないために支障を生ずるようなことはなかろうと思います。
  29. 並木芳雄

    並木委員 はつきりさせるためには、要するに憲法に何か明文をつくらなければだめだということになりますか。憲法に反するような条約を結ぶことはあり得ないということは、それは島津局長が非常に善良な人間で、主観的にかつ良心的にそういうふうに考えられるかもしれないけれども、一たびフアツシヨ的な人間が総理大臣にでもなれば、またどういうはずみで憲法に抵触する条約を結んで、時宜によつては事後承認ですから、そのうちに国会にかけると言いながら、ずるずるべつたりで国会にかけないというようなこともあり得るわけであります。それで私は心配ですからお聞きするのですが、やはりそういう憲法に抵触する疑いのある場合はあると思うのです。ことに今度のような場合には非常に起りやすいのじやないかと思います。その程度ではちよつとわれわれとしては心細いのですが、どうですか。
  30. 島津久大

    島津説明員 どうも事務当局といたしましては、先ほど申し上げたようなお答え以外には、ただいまのところお答え申し上げることはないと思います。御了承願いたいと思います。
  31. 草葉隆圓

    草葉説明員 国会承認条件といたしておりますから、さような際におきましては、おそらく当然国会承認すまいと考えられるのであります。
  32. 守島伍郎

    ○守島委員長 菊池君。
  33. 菊池義郎

    ○菊池委員 この前調査をお願いしておきましたところの南洋群島における軍艦、商船の引揚げに日本が参加することができたという経緯及びこれまでのその仕事の状態をお伺いしたいと思うのです。通産省からお見えになつております鉄鋼政策課長にお伺いしたいと思います。
  34. 川島一郎

    ○川島説明員 お答え申し上げます。太平洋諸島の信託統治地域内におきます船舶の引揚げにつきまして、去る三月末におきまして総司令部の工業課の方からその要領についての内示を受けました。内容といたしましては、太平洋諸島信託統治地域管理長官が当該地域における予想されます八十八隻の沈船の引揚げ及び解体処理の点につきまして、日本を含めてある一会社に対してその権限を許可するという意味の要領でございます。この引揚げ作業に参加を希望する会社は、指定されました期日までに当該長官に引揚げについての申込みを提出してもらいたいというふうな内容でございまして、各社から司令部にもいろいろ折衝が行われたわけでありますが、司令部側の意見といたしましては、日本政府においてまとめて適格者を出してもらいたいという申入れがありまして、去る五月十二日政府の方からサルベージ会社五社をこの申込み会社といたしまして、名簿提出いたした次第であります。その後総司令部の方からおそらくこの太平洋諸島信託統治地域管理長官のもとに申込書は提出されたものと存じますが、爾来今日に至りますまでこれについての的確な指示は現在のところいただいておりません。以上の通りでございます。
  35. 菊池義郎

    ○菊池委員 太平洋諸島というのはおもにどの辺でございますか。
  36. 川島一郎

    ○川島説明員 この覚書に指示されております地域は、太平洋諸島の信託統治地域となつておりまして、例示されております地域は、アンガウル、パラオ、サイパン、トラツク、以上の地域が一応明示されております。
  37. 菊池義郎

    ○菊池委員 過般新聞に発表されましたが、引揚船の写真まで出ていたのですが、これはどこかサイパンかパラオかから引揚げたのですか。
  38. 川島一郎

    ○川島説明員 ただいま御指摘の点は、おそらく過般トラツクにおいて引揚げが完了いたしました第二図南丸の件ではないかと思いますが、それ以外につきましては隻数は一応示されておりますが、船名その他については全然不明であります。
  39. 菊池義郎

    ○菊池委員 その引揚げた軍艦、商船あるいは鉄くずとか、そういうものは結局どうするのですか。日本で使うことができるのですか。
  40. 川島一郎

    ○川島説明員 この要領によりますと、日本をも含めて引揚げの入札が行われるわけでありますから、必ずしも日本に帰属するというふうな形にはなつておりませんが、もし日本が適当な一会社に許可されまして、この船の引揚げがなされました際には、これを改造して船として使用することもできますし、またスクラツプ——くず鉄として使用することもできるというふうに一応なつております。
  41. 菊池義郎

    ○菊池委員 引揚げて使える船はおよそどのくらいありますか。それからスクラツプの量はどのくらいですか。大体の見通しを伺いたい。
  42. 川島一郎

    ○川島説明員 これらの船についての正確な実情の調査が現在のところ全然行われておりませんし、従つて今のところ何隻が引揚げられ、何隻が船として使用されるかという点は、的確なところは全然わからないのでありますが、一応情報としてわれわれに伝えられておるどころによりますと、ただいま申しました八十八隻、総トン数にいたしまして約四十一万総トンでありますが、この中で約三分の二はおそらく引揚げ不可能であろう。それからスクラツプとして利用されますものがスクラツプ量として約五万トンくらいであろうというふうな情報は受取つております力
  43. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから最近の新聞に、小笠原その他の島を日本に残してもよいというようなダレス氏の意見が発表されております。それに関する外務省筋に人参ました情報をお聞かせ願いたいと思います。
  44. 草葉隆圓

    草葉説明員 いろいろ情報として伝わつておりますが、まだ外務省では今の点等につきまして正式に承知いたしておらないのであります。
  45. 菊池義郎

    ○菊池委員 これは外務省の方に対する希望でございますが、もう少し積極的に動いていただきたい。小笠原は全然軍事基地にならぬから、話ようによつたらとれる。現にわれわれはプライヴエートの外交で、あなた方を抜きにして三百人ばかりばかりの人を向うへ入れることを折衝いたしまして、成功しております。そのうち出ることになつております。そうして向うにある産物をとつて来るのに、三箇月の期間を許されている。これはやがては小笠原も日本にとれる前提ではないかと考えておりますが、もう少し積極的に動いていただきたいと思います。小笠原から来ている連中はしびれを切らして、外務省の役人は人形みたいだと言つている。これは何も無能無策の意味ではないと思います。外務省の方は男つぷりがいいという意味だと思います。そのいい男つぷりを示して折衝していただきたいと思うのです。話によつてはとれると思います。硫黄島は向うの軍隊が駐屯いたしまして、飛行場もでき、平坦地でありますが、小笠原は山岳地帯の島で全然使いものにならないので、兵隊も一人もいない。そういうわけで小笠原のことについては私極東海軍司令部へ行つてみましたが、さつぱり事情を知らない。それから鳥島のことについても話しましたが、鳥島はどこにあるか一生懸命地図で探している状態です。皆様が行つて話さなければちつともわからない。どうぞ外務省においても民間に劣らない折衝をしていただきたい。  それからフイリピンの対日賠償につきまして、最近フイリピンの何か最高会議において八十億ドルは無理であるが、二十億ドルは必ずとれるという見込みをつけて、二十億ドルはとろうという決定をしたということが報道されておりますが、これに関する情報が外務省におわかりでしたら、お伺いしたい。
  46. 草葉隆圓

    草葉説明員 フイリピンの賠償問題は従来から再三情報として伝わつておりますし、またその賠償の問題につきましては、事たいへん重大な問題でありますので、ダレス特使日本訪問の帰途、フイリピン等を訪問されて、いろいろと懇談をかわしておられる情報等も、その後承知いたしておるのでありますが、ダレス氏も去る三月三十一日の演説で日本からすでに受取つたもの、ないし連合国の領土内にある日本財産以外に、賠償を取立てることは実際的ではないと思う。しかし米国としては白紙の気持で、日本の攻撃によつて最も深刻な被害を受けた諸国と、活発な意見の交換を行うという内容の発表をいたしておられるのでありますが、これらにもありますように、日本は実際にはすでに賠償可能性のないことは、ダレスさんによつていろいろ了解に努力されていることと存じます。しかしフイリピンにおきましては、ただいまのような情報も伝わつておりますが、日本政府といたしましては、これらの情報は情報として承知いたしている次第であります。
  47. 菊池義郎

    ○菊池委員 フイリピンの向うの会議でもつて日本賠償能力ありやいなやを調査するために、国連から選ばれた調査員を日本によこすというようなことを向うで決議したようでありますが、それについての国連各国の意向はどうでありましようか、そういつたような情報が入つておりませんか。
  48. 草葉隆圓

    草葉説明員 今菊池委員のお話のような情報が伝わつておりまするが、先ほど申し上げましたように、ダレス特使努力は、相当強く日本賠償というものを白紙の立場から考え、かつ日本経済の自立という点に強い影響を来すようなことをおそれながら日本立場を了解して、各関係国と折衝をしておられることと存じております。従いまして、さような問題につきましても、十分日本立場を了解しながら、国連関係諸国は了解してくれると存じております。
  49. 菊池義郎

    ○菊池委員 ちよつともう一つ……。先ほどの南洋群島から引揚げました日本人が七万数千、アナダハン島からも最近引揚げる——この南洋群島はすべからく日本講和会議後における、独立後におけるところの移民地としてアメリカに折衝しますならば、必ず彼らは聞いてくれると思うわけです。日本の残しました多くの工場施設、三十足らずの会社の施設が向うにそのまま残されており、南洋群島の開発がまだ未成功に終つておる。向うの土人はほとんどもう役に立たない。アメリか人がやつて来て開発するということはとうていできないのです。日本人でなければできないということはアメリカは知つておるのですから、日本の折衝いかんによりましては、これらの施設もくれましようし、燐鉱の採掘を日本に許したという日米経済協力の線に沿つて日本が折衝いたしましるならば、あるいは引継ぎができるのではないか。私は十分その可能性を信じておるのでありまするが、一つは日本の移民地として、この南洋群島を足場として、さらに表南洋に進出する試練地として選ぶことができるわけであります。アメリカは決してそういことうを不本意なりと考えるはずもありません。すでに日本がいくさに敗れて、まつたく平和愛好の国民になり切つているということを、アメリカ日本に進駐してはつきり知つておりますから、向うの開発に日本人が使われ、あるいは日本人自体が率先して向うの開発をやるということは、日米経済協力の考えからいたしまして、向うは必らず許してくれると思うわけであります。そういう点についてこれまで外務省として折衝したためしはありませんかどうか。相手がいるのですから、これは必ずできると私は考えております。
  50. 草葉隆圓

    草葉説明員 お説のように、現在アンガ・ウルで燐鉱開発会社が許可を得まして、燐鉱の採取を行つておりまする以外には、日本会社に事業の継承を許可された例はないのであります。しかしただいまお説にありましたように、南洋群島のこれらの経済関係においての問題は、将来いろいろな意味におきまして、経済協力というような点からいたしましても重大な問題でありますので、従来ともそうでございましたが、日本といたしましても、十分お説の点を進めて参りたいと存じます。
  51. 菊池義郎

    ○菊池委員 別の問題になりますが、社会党が今日講和三原則なるものを提唱いたしまして、左右二派にわかれて争つておる。国民はこれに非常に迷わされておる。どつちの方が正しいかさつぱりわからない。外国の政府におきましては、しばしば政党政策主張に対しまして批判を加えて、国民を啓蒙しておるのであります。日本政府はそういうことをちつともやつたためしがない。そういうことでもつていかに見識が違うかということがはつきりわかるのですが、講和三原則のうちの他の原則は別といたしまして、彼らが唱えておりますところの再軍備反対、軍事基地貸与絶対反対ということは、私は実にゆゆしき問題だと考えている。これは申すまでもなく、共産党の思想とまつたく同じである。結局共産党とはまつたく一線を画せんければならぬところの社会党が、かくのごとき共産党と協調するがごとき態度はまことにおかしい。それはまあどうでもいいといたしまして、この点について国民は非常に迷つておる。われわれ議員の間でもどうもさつぱりわからぬ。政府側がこれに対するところの意見を一言いえば、なるほどと国民は信ずる。国を守るには当然軍備がなければならない。防衛に最も必要な、侵略防止に必要なところの軍隊は必要ない、軍事基地を貸与することは絶対反対である、こういう意見は外務省としてどういうように考えられるか。侵略のある場合に、力のないところに向つて、世界至るところにおいて、共産軍侵略を加える。朝鮮の例しかり、そういう場合に社会党のこの原則に従うならば、日本はどうなるかということについて、外務省はどう考えておられるか、はつきりとこの点についてもう一度おつしやつていただきたい。
  52. 草葉隆圓

    草葉説明員 国民の間にいろいろ意見があり、その意見を率直に述べられますることに対しまして、政府がかれこれ申し上げることではないと存じます。従いまして、ただいまお説にありましたように、かりに社会党におきまして、あるいは平和三原則という主張をされましても、それはその主張に対する批判はむしろ国民がいたすべきものであつて政府がこれに対しましてかれこれ批判をすることは妥当ではないと存じます。政府は従来から講和に対しましては、はつきりした態度をとりまして、一日も早く、一国も多くの国々と講和を進めて参りたい、この線をとつておるのであります。従いまして、この線を強く堅持しながら進めまする上について、これらの平和三原則にどういう関係を生ずるかという点は、これは生じて参りまするが、一般の主張に対しまする関係におきましては、ただいま申し上げた通りに御了承願つたらと思います。
  53. 菊池義郎

    ○菊池委員 もちろん政府はそれに答える義務はありませんが、答える権利はいくらでもある。だから、権利も自由自在に活用しておつしやつていただきたいと思います。ほかの原則は別どいたしまして、社会党が唱えるような軍備がなくともいい、軍事基地反対ということを推進して行きまするならば、侵略があつた場合にどうなるかというこの点をお答え願いたい。
  54. 草葉隆圓

    草葉説明員 この問題は従来から再三政府として所信を表明しておる通りでありまして、別に最近の改まつた情勢における展開は来しておらないと存じます。従つて従来の政府の主張で何ら間違いないと私どもは存じております。
  55. 守島伍郎

    ○守島委員長 佐々木君。
  56. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は本日岡崎官軍長官の出席を要求しておいたのでありますが、不幸にして出席がありませんので、外務当局の見解をこの際明らかにしておきたいと思います。  私のお聞きいたしたいのは、このたびの追放解除の問題に関連してでありますが、もとより追放解除の事務は、外務省でなく、別の機関において担当されておつたわけでありますけれども、そもそも追放ということが指定されるに至つた源を考えますときに、ポツダム宣言の第六項目の規定従つて、ポツダム宣言の受諾に伴う占領政策のために追放ということが行われておつたわけなのであります。従つてこの追放解除の問題も、外交上国際上重大な影響があると考えますから、外務当局はどう考えておるかということを承りたいと思うのであります。それは昨今の新聞等のジヤーナリズムの上に現われて来ます追放解除というものをつらつら考えますと、これはあたかも凱旋将軍が再び復活したかのごとき印象を受けたり、あるいは昨夜のごときは、東京の各料亭や、あるいは柳暗花明のちまたにおいては、たいへんな騒ぎであつたということを聞いたわけであります。あたかもこれが何か救世主がここに復活したような印象を誤まつて一部には受けないわけでもないのであります。もともとポツダム宣言第六項目の規定は、日本国民を欺瞞し、日本国民をして世界征服の過誤を犯さしめるに至つた者の権力並びに勢力は永久に除去せられなければならないとしてあります。もとよりその権力というのは、いわゆる官——公のものであろうと考えます。並びに、勢力というのは、民間の影響力、勢力を持つたものであろうと考えますが、早い話が、このたび非常に新聞をにぎわし、そうして追放解除された人々の中にも、私はかなり著名な、日本をして世界征服の過誤を犯さしめるに至つた権力や勢力であつた者があるようにわれわれは考えるのであります。私は日本国民である以上、陛下に忠誠を誓つてつて、その国民が、陛下の詔勅によつて戦争が始まつたから、なんじらは朕に協力しろというおぼしめしが出たときにこれに協力することは、国民としてもとより当然であり、やむを得ないことであると思いますが、しかしながらポツダム宣言に、日本国民をしてそういう過誤を犯さしめるに至つたところの権力や勢力というものは、永久に除去しなければならぬということが規定されておるわけであります。この鉄則というものは、たとい追放解除になりましようとも、あるいは講和が結ばれましようとも、その後とても文字通り永久に守らるべきものであると私は考えるわけであります。これに対しまして、政府は一体いかようにお考えになつておるか。また私は最近の解除されております人々の言動等を見ましたときに、何か非常に自分たちが輝かしい定跡を残して来たところの勝利者であるかのごとき、殊勲者のごとき印象を受けないわけでない。本日の朝日新聞の漫画を見ましても、私は諷刺深い漫画を発見した。何か親分らしいのが前科がありまして、それがおそらくは青天白日の身となつたのでありましよう、酒、さかなのごちそう攻めにあつておるというような漫画、諷刺画が出ておつたのであります。これらを見ましたときに、われわれはこのたびの追放解除に何かもも少し意義があるのではないか、また追放解除を受けた者にも何か一つのモラルがあつてもいいのではないかということを考えるわけであります。従つて外交上から見て、外務当局がこのたびの追放解除というものをどういうふうに考えておるか、並びに先ほど申したところのポツダム宣言の鉄則は不変のものであるべきだと私は考えるが、どういうふうに考えているかということにつきまして、政府当局としての見解を明らかにしていただきたいと思います。
  57. 草葉隆圓

    草葉説明員 佐々木委員の御説まことにごもつともな点がたくさんあると存じます。いわゆる追放の問題につきましては、本質的に当時示されました方針に基きます線によつて追放が開始され、これによつて追放該当者が決定いたしたのでありますが、この追放の本質的な問題は、将来とも民主主義日本の建設のためには必要な精神であろうと存じます。ただその該当の範囲の問題について今回追放解除がなされ、今後におきましても、この線に沿つて広く追放解除の方針がとられて来つつありますことは、ただいまお話の通りでありますが、日本といたしましては、近く講和を迎えんとして、民主主義国家としてのりつぱな再建を、みずからも期待し、世界も期待しているところであります。従つてこの線に沿つた立場におきまして追放並びに追放解除ということも当然考えられて参る点であります。追放解除を受けました方方も、この線に沿いまして講和後の独立日本に十分協力するために、その力の最善をいたしてもらいたいと、私どもは平素念願をいたしております。従いまして追放解除にあたりましては、ただいまお話になりましたような点から、むしろ誤まつて日本の真意を誤解されることのない行動が最も望ましいのではないか、この点は強く私どもも考えております。要するに全力をあげまして講和の日を迎え、同時に独立国家としての日本の美しい民主主義をつくり上げるために、すべての国民努力を結集して進んで行く際でございます。この際に少しでも世界各国からの疑いを招くようなことは、お互い十分謹慎し合うべきものだと考えております。
  58. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 政府の考えておられます気持だけはわかるわけでありますが、先ほど私の質問いたしましたポツダム宣言の中の、日本国民をして世界征服の過誤を犯さしめるに至りたるものの勢力並びに権力は永久に除去せられざるべからずというこの規定は、講和独立後といえども守らるべきものであり、なお存続すべきものであると私は考えますが、当局はどういうふうにお考えでありますか。
  59. 草葉隆圓

    草葉説明員 お説の点もつともであると存じます。私どももポツダム宣言あるいは極東委員会の決定等につきましては、十分これが行わるべきものであり、また行うことを誓つて参りたいと存じております。その指令の範囲内において追放解除というものは初めて可能になつて来ると存じます。従いまして、今回の追放解除もその線内でありますので、今後におきましてもポツダム宣言の精神あるいは極東委員会の決定の精神等は十分遵守して参りたいと存じます。
  60. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に先ほど来問題になつておりました、いわゆるA国B国との選択権の問題でありますが、私は並木委員の感覚とはやや感覚を異にいたしまして、A国だのB国だのということをこの際言う必要はないと思いまして、私は中国国民政府政権中共政権というふうに明らかにして御質問いたしたいと思います。  ただいまの草葉次官の御報告の中にもありましたように、ダレス特使の奔走によりまして、ロンドンで発表されましたコミニユケによりますと、日本独立後、中国国民政府中共を自由に選択する権利を日本に与えるということがあつたわけでありますが、もとよりこれは正確な文書が外務省に到達していなくてもけつこうなことでありますが、その中で草葉次官お話では、そういうときが到来したときに、そのいずれの政権承認するやをあらためて考えるのだというような、きわめて間の抜けたような御答弁であつたわけでありますが、私はこの今日の吉田政権というものの性格から考えまして、何と申しましても、これは反共の政権である。今日の日本政府は、世界周知の通り反共の政府である。従つてこの反共の政府がそのときが来たなれば、あらためて考慮した上で、いずれを選ぶかということを決定すべきであるというようなことをおつしやることは、まことに筋道の通らない話であると、私は考える。政府といたしましては、この外国の政府承認する権利を、憲法第七十三条によつて政府が持つておるという先ほどの御答弁であります。政府がその権利を国会にも諮らずして自由に行えるだけの権利を持つておるとみずから公言しておる政府といたしますならば、この二つ政権のいずれを選ばんとするかということにつきましては、もう先刻御用意がありてしかるべきであると私は思います。従つて私は国民にそういうあいまいな気持を与えることなく、勇敢に国民政府というものを承認し、これと善隣関係を結ぶべきであるという考えを明らかにされる必要があると考えますが、いかがでしようか。
  61. 草葉隆圓

    草葉説明員 これはさきの報告の通わといたしますると、独立後に日本がいずれかの政権を選ぶことの可能性が生ずる。従つて独立後の世界の情勢が現在の情勢通りにありまするか、あるいはまた動いて参りますかによりましても、違つて参ると存じます。この通りにずつと進むということばかりは考えられないのではないか、従つて今の情勢において、日本独立後の仮定において意見を発表するということは、むしろ妥当でない場合が生じ得ることが起りはしないか、かように存じます。
  62. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 不幸にして見解の相違ならいたしかたないと思います。  次に私は先ほどの御説明によりましても、講和の時期が間近に迫りつつあるという印象を強く受けるわけでありますが、総理もこの条約締結にあたつては、国会承認を求めるということを言明されております。それがいつ、いかなる形式においてなされるかは存じませんけれども、私はこのたびの講和締結にあたつては、たとえば講和の全権等が任命されるときにおきましては、当然国会側を代表する人々も、その中に参加するのが是政の常道であろう、また最も妥当な行き方ではなかろうか、このようなことを考えるわけでありますが、国会代表の参加という問題につきましては、いかようにお考えになつておるかという点を承りたいと思います。
  63. 草葉隆圓

    草葉説明員 この点につきましては、御質問の趣旨をむしろ強い国会の御意見と存じまして、よく了承いたしておくということにいたしたいと思います。
  64. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 あともう二点だけ私は承つておきたいと思います。今伝えられております講和草案、実際の原案も外務省に到達をしておるそうでありますが、その草案等によりますと、日本の請求権が打切られることになつておると思うのでありますが、たとえば満州における日本のかつての権益等を、ポーレイの賠償使節団の報告によりましても、二十億ドルという莫大なものをソ連側は戦利品だといつて、これをソ連領内に運び去つておるわけであります。私はこれらのものは当然日本の戦利品ではなくして、むしろ賠償の対象になるべきものである、こういうふうに考えますから、講和回復後において、日本に主権が確立されたあかつきにおきましては、それらの戦利品に対して、その代償ないし返還方を要求する権利がわれわれにあると、このように考えておるわけでありますが、これらにつきまして、どのようにお考えになつておるか、まず承りたいと存じます。
  65. 島津久大

    島津説明員 ただいま御指摘のような、満州に起りました事態、これにつきましてはいろいろ問題もあろうと思うのでありますが、日本在外資産全体について、おそらく講和の際に問題が坂上げられるということになると存じます。ただいま御指摘のような点は、将来どういうふうにするというようなことは、そういう在外資産全体の問題とも関連して参ることでありまして、この段階でちよつと言明しがたいと思います。
  66. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 時間がございませんから、もう繰返して申し上げません。  次にもう一点承つておきたいことは、極東軍事法廷によつて正式裁判を仰いで決定した戦犯の死刑等の問題は別でありますが、中共地区やソ連地区におきまして、いわゆる人民裁判なるものの名において、われわれの側から申しまするならば、不法に死刑をされておる者がかなりたくさんあるということを、われわれは引揚者から聞いておるわけです。それらの処刑した者については、ソ連政府から何らかの機関を通じて日本側にわかるように連絡があるかどうかという点、さらに私はその人民裁判等によつて死刑になつておる者に対して、これはまつたく不法に死刑にあつたのでありまして、正常なる国際法上の手続を経て死刑にされたものではないと私は考えるのです。従つてこれらに対しましては、損害賠償を要求することも、講和後に持ち越された問題であり、日本の権利であろうと私は考えるわけであります。従いましてそれらにつきましては、今から十分なる資料を収集しておく必要があると私は考えます。外務省におきましては、未復員の調査をされ、資料を集めておられますが、それと同時に、それらの不幸な、死刑等を執行された人人、しかも不法に正式な手続をふまずして、異国に消えた人々に対する資料の収集等にりきましても、十分用意がなければならぬと私は考えております。従つて外務省といたしましては、独立後においては、そういう損害賠償等を要求する権利があると考えるが、どう考えるか、あるいは国際司法裁判所に提訴するだけの権利もある、それらについてどういうふうに考えておるか、また資料の収集等の点についてはどういうふうにやつておるかということも、あわせてこの際明らかにしていただきたいと思います。
  67. 草葉隆圓

    草葉説明員 お話のように、終戦直後におきます外地の引揚げが前後いたしまして、いろいろなこんとんとした情勢になりました。従つてたいへん不幸な状態が現出しましたことは、私どももよく了解をいたしております。従いまして引揚げの問題とあわせまして、外地にありました邦人の保護、なお未引揚者の引揚げその他の点につきましては、外務省は関係省と十分協力をいたしまして、現在もなお調査を強く進めておる次第であります。その結果によりましては、いろいろ今後に残された問題も生じて来ると存じますが、とりあえずは、外地の問題といたしましては、未引揚者の引揚げということに相当強く主力を注ぎながら、これが促進をいたしておる次第であります。
  68. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は繰返して申し上げませんが、答弁漏れしたから承ります。その人民裁判やその他のことによつて、不法に、すでに殺されたというような人々に対しては、どう考えるか、未復員の問題とは別の問題であります。
  69. 草葉隆圓

    草葉説明員 これは地域によりまして、いろいろかわつた情勢を来しておると存じます。引揚げの途中におきまする情勢において、あるいは外国部隊による処置なり、あるいは邦人同士の中における人民裁判等による問題がいろいろあると思います。今それらの事情を詳しく調査を進め、また調査をすでに完了しておるのもあります。なお不十分なものもあるのでありますが、現在ただいま申し上げたような調査を進めております。ただ外地におきます全部の場合が必ずしも一様な形では来ておらないと思います。
  70. 中山マサ

    ○中山委員 関連して——。この間鞍山から来ました手紙の中に、技術者でありますが、自分が知つている範囲内の技術はみんな向うの人に教えてしまつた。今することは何もない。向うでは帰るのはいつでも帰つてよろしい。しかし帰ることを受入れる国が十分なる運営をしていないのだということを言われているので、これは米国がじやまをしているのか、それとも日本自体がじやまをしているのか、その点が知りたい。何とかして帰れるように英国大使館に頼んでくれ、その一つの事実といたしましては、同僚であつたドイツ人が奉天まで出まして、そしてそこの英国領事館に頼んで、飛行機に便乗させてもらつてドイツに帰つたという実例があつた。自分は船で帰らなければならないのだから、日本の方でも何とか英国の大使館にひとつ頼んで、船に乗れるような措置をとつてもらつてくれという手紙が長野県の小川平二先生のもとに参りましたので、私が頼まれて大使館まで行つて参つたのでありますが、外務省は外務省として、こういう事件をどういうふうに取扱つてくださつていらつしやるのでございましようか。そしてドイツに帰つた実例があるのでございますから、私は私としていろいろお願いして参りましたけれども、外務省はどういう措置をとつて——こういうふうに向うでは、いつ何どきでも帰つていいのだといつておりますにもかかわらず、帰るところの措置がとられていないことをまことにふしぎに思つて日本がじやまをしているのかということを問い合せた手紙が現在来ておりますので、私は外務省のこれに対する今後の態度を承りておきたいと思います。
  71. 草葉隆圓

    草葉説明員 まだ相当数の邦人が中共地区に残留しておると予想いたしております。従いましてこれらの人たちができるだけ早く引揚げをいたす方法を講じたい、今お話にありました飛行機はほとんど中共地区かちはなかつたのでありますが、シベリア地区かちは飛行機の場合がありました。中共地区からは船で個人的に帰つて来られました方々が相当数に達しております。しかし個人上りもむしろ集団引揚げというものがどうしても必要であると存じまして、従来とも司令部を通じて、司令部はさらに中共承認しております関係国を通じて強く日本の懇請を取扱つてくれられておるとかたく信じておりますが、不幸にして今日までその実際の開始ができずにおる次第でございます。しかし今後とも中共地区の引揚げにつきましては、外務省といたしましても、根気強く懇請をして参りたいと存じております。
  72. 中山マサ

    ○中山委員 集団引揚げはまことに望ましいところでございますけれどももし集団引揚げまで間がございますものならば、私はたとい単独であろうとも引揚げ得る者は、今のようにいつ何どきでも帰すのだというような場合には、手紙を出すことによりまして出国の証明書をとらせて、何とかそこに処置が願えないものであろうかということを私は強く要望するのでございます。集団というものはなかなかやつてくれませんので、帰れる者は先に呼びもどすという方法をとつていただきますれば たとい一軒の留守家族でも助かるであろう。それが一つ。  もう一つは きのうの新聞でございましたか、長崎に帰つて参りましたところの拿捕された漁船の人たちの報告によりますと、向う側はマ・ラインを一つも厳守していないのだというようなことがございますので、マ・ラインまでだと思つて出漁する人でも、向うがそれを認めない場合には、次々と拿捕される可能性があると思いますが、そういう問題はどこへ持つてつてそのマ・ラインを確認してもらうか、そこまで侵さない者は拿捕されないようにするという御措置は、どういうふうにしていただいておるのでございましようか、伺つておきたいと思います。
  73. 草葉隆圓

    草葉説明員 お話の通りにまだ集団引揚げが困難な情勢にありますので、その間できるだけ個人引揚げを進めて、個人引揚げの場合には、今お話のように出国の手続を大体向うはとつてくれておると存じます。また今まで引揚げて来た人たちの実際を聞きますと、そういう手続を向うも了承しながら進めてくれておりますが 問題は船便でございまして、結局現在は定期航路を日本も持たないし、また一定の航船がないような状態でありますので、この船に日本から船賃を寄託して処置をするというような方法がとれにくいので、日本国内の留守家族もその点にたいへんに困つておられるし、また政府といたしましてもこの処置に困窮いたしておる次第であります。ただ今まで帰つて来られました実情は、たまたま出国のすベての手続が済んで、偶然に寄港した船に最も理解ある処置をとつてもらつて、乗船させてもらつてつて来たという状態になつておると思います。この船便とそれらの旅費について最も現在は困難性がありまして、これらの点の処置に実は具体的には困つておるような次第であります。  また漁区のマツカーサー・ラインの問題につきましては、日本の漁業はマツカーサー・ラインの範囲内において現在出漁を許可されておる次第でありまして、マツカーサー・ライン外に出ることは禁ぜられておる次第でありますから、日本漁船はお話の通りにマツカーサー・ラインをかたく厳守して、その中で漁撈に従事いたしておる次第であります。昨年来漁船の拿捕事件等がありまして、たいへん心配いたす情勢をたびたび見て参つておるのであります。これらの点につきましては日本としましては、日本の漁撈がマツカーサー・ラインを越さないように監視船をして監視せしめますと同時に マツカーサー・ライン内において安全なる漁撈をいたしておるものを拿捕されるということはまことに不穏当であり、国際関係におきましても当然これは不法なことでありまして、これらの現実の問題が従来しばしば起こりましたから、この問題につきましては司令部等にそういうことのないように現在懇請をいたしますと同時に、従来から拿捕されました船の返還等につきましても、交渉を進めて参つておる次第であります。
  74. 中山マサ

    ○中山委員 私が英国大使館に行つた交渉の結果といたしましては、出国証明書をとつて上海まで出て来て、二箇月先の乗船契約をした場合に、あるいは中共から出る人たちがほんとうに日本に帰らないかもしれないというおそれをもつてそれを拒否するかもしれない、その場合には、ここの大使館に連絡をとつてもらえば、この人は必ず日本に帰る人であるという証明をしてやるということをこの間おつしやつていただきましたのでございます。そうして参りますと、今の船賃の問題になつて来ると思いますが、それは何とかしていただけるものでございましようか、その点私は伺いたいのであります。もしいわゆるブツキングができまして、その船賃の問題があつたときに、英国の船でこちらへ着港したときに、日本政府が支払つてやるという保証でもしていただけるものでございましようか、その点はどうでございましようか。
  75. 草葉隆圓

    草葉説明員 上海等の場合は、今のようなお話で話が進んで参りますと、十分その留守家族もそれこそ心をおどらせて待たれることだと存じますから、船賃等の問題につきましては、あるいは政府として困難な場合においても、他の方法によりましてもそれは可能性がありはしないかと思われます。ただ中共の北の方なり、地域によりましてずいぶん違つておるようでございますから、一口には申し上げかねるとは存じますけれども、確実にさような場合は、これはいかような方法でもあるいは講じ得る方法がありはしないかと存じます。
  76. 守島伍郎

    ○守島委員長 米原君。
  77. 米原昶

    ○米原委員 岡崎官房長官がおられないので、私も追放解除の問題については、簡単に一つだけお聞きします。  私の聞きたいと思つておりましたのは、佐々木委員が先ほど言われた点に尽きるわけなのでありますが、それに対する草葉政務次官のお答えを聞いておりますと、佐々木委員が言われた、あたかも追放解除者を凱旋将軍のごとく迎えている実際の事態、これに対する認識がやはり不足しておるように思うのであります。このことがアジアの、ことに日本侵略を受けて非常な損害を受けたアジアの諸民族に与える影響は、決して好ましいものではないと私は考えるわけであります。その点に関連してこういううわさを聞いておるのでありますが、今度の追放解除の問題が問題化しましたときに、フイリピン政府とオーストラリアの政府から抗議的な意見が出て来たという非常にもつともらしいうわさを聞いておるのであります。そういう事実があつたのかどうか、こういう点を伺いたい。
  78. 草葉隆圓

    草葉説明員 ただいまの御質問のようなことは、外務省といたしましては承知をいたしておりません。
  79. 米原昶

    ○米原委員 外務省としては承知をしておられないので、これはやはり岡崎官房長官がつかまえられましたときにお伺いすることにいたしまして、この問題はあとにします。  それから最初に問題になりました英米会談の問題に関連してでございますが、新聞で伝えておる北京の中華人民共和国の政府の方を認めるか、台湾の中華民国の方を認めるかという問題を日本に一任したということは、単なる情報の範囲を出ないわけで、実際にコミユニケには何も書いていない。しかし大体はそういうことがあつたのだろうとわれわれは推測するのでありますが、そういう意味では英米両国の対立が伝えられておつたにかかわらず、それが相当接近して来たということは事実だと思うのであります。ところが新聞の情報を見ると、一方ではそういうふうにきわめて簡単に、これはいわゆる米国草案を基礎にした講和が間もなくできるだろうというふうに一般には、書かれているにもかかわらず、ロンドン会談があるいは準決勝だ、決勝じやないのです。こういうふうに伝えられて、何かまだ問題が残つているという報道があるわけであります。われわれとしてはそういう点がどういう点かと想像するよりほかにないのでありますが、この中華人民共和国と中華民国と、そのどちらかを日本にまかせるということだけでも、それだけの問題としては若干おかしい点があると思う。まだもう一つ何か条件があつて、それが未解決なので最終的な解決に到達し得ないといわれているのではないかと思われるのであります。そこで考えられるのは、朝鮮事変の解決ということ、それからソビエトの最後の覚書でありますが、こういうことかまだ何かひつかかりが残つておるのではないかと思われるのであります。朝鮮事変の解決に、この間もマーシヤル国防庁官が見えてどういう話があつたかしりませんが、そういう方面の情報は、外務省としてはどの程度とらえられておるのか、朝鮮事変はどういうふうに解決せられるという見通しであるか、こういう点を情報をできるだけ聞きたい。
  80. 草葉隆圓

    草葉説明員 朝鮮事変の動乱の見通しにつきましては、私ただいま説明いたしましたことが実は外務省といたしましての見解でございます。従いましてあれ以上特にこの対日講和の問題と関連したという意味は実は考えておらないのであります。
  81. 米原昶

    ○米原委員 英国が対日講和の問題にせよ、極東の問題の解決についていろいろ異論を言つて来ましたのは、実際には朝鮮事変に関係があるかと思うのであります。朝鮮事変に非常に縛られている限り、アメリカの軍事力が極東の方に集中されて行く。それがヨーロツパの、いわゆる英米の考えているヨーロツパの防衛でありますが、そういうことが不可能になつているという点に不安があるからだと思うのであります。そういう意味ではやはり朝鮮事変の関係は、非常に密接なものを持つているのじやないか。また中華民国か中華人民共和国かという問題も、朝鮮事変と密接な関係があるのじないかと考えざるを得ないので私は聞いたのでありますが、その点が情報が明らかでないとすれば、もう一点先ほどの政務次官の説明では、ソビエトの新しい覚書の問題でありますが、前の覚書内容が同じだというような御説明でありましたが、この具体的の最後の覚書に書いてある点を見ますと、もちろん今までソビエツトが言つて来たいわゆる外相会議、これは米国回答に対して、いわゆるポツダム協定の文書を引用して、外相会議を持つのは当然であるということは反駁はしております。しかしながら実際に提案しておる最後の提案を見ると、その外相会議の問題には最後の提案では触れないで、この七月、八月中に対日戦に軍隊を派遣して参戦したすべての国の代表より成る講和会議を聞くべきであるという具体的提案をやつたわけであります。しかもそれがどういう形であるかというと、現在ある対日講和条約の諸草案は、米国案、英国案いろいろあると思うのでありますが、そういうものを検討するだめに、対日戦に参加したすべての国が参加して、講和会議を七月、八月中にやるべきであるという、これが今までにソビエトが提案したものとその点が非常に違うのじやないかということは、常識的にもわれわれ考えられるのでありますが、全然米英会議のコミユニケではこの点に触れていない。外相会議の問題には触れておりますが、この点を全然無視してあのコミユニケが発表されたところに、何か問題が残つているのじやないかとうかがわれるのであります。しかもこういう形の講和会議ということになりますと、これは明らかにいわゆる全面講和でありまして、これをしかも一方的に拒絶するという形になると思うので、非常に問題が残つて来るのであります。しかも日本側が、こういうものを拒絶した形で新しい講和条約を受諾するということなにると、九月二日の例の降伏文書における日本の義務、これに違反することにおのずからなるのじやないかと考えるのであります。その点についての見解を聞きたい。
  82. 草葉隆圓

    草葉説明員 従来からソビエトは三回ほど対日講和についての覚書と申しまするか、質問回答と申しまするか、それをアメリカに送つておると存じます。今回のは、なるほどお話のありましたように、期日を定めてそうして参加国の会議等を示しましたことと、多分記憶いたしておりまするのは、日本の再軍備についての問題を黙認しておるような形において回答しておつたと記憶しておりまするが、しかしただいまお話にありまするように、対日戦に参加したすべての国を参加せしめましても、その内容におきましては、従来通りに四大国のいわゆるポツダム方式による拒否権付審議というものが中心の考え方になつておりましたら、多数、それ以上いくら集まりましても、審議形式というのは従来とかわりがないという結果になりはしないかと存じます。
  83. 米原昶

    ○米原委員 その点を私は聞いておるのでありまして、この覚書が出ました当時一部の新聞に報道された、今おつしやいました点が、具体的な提案としてはひとつも触れられていないのです。問合せもせず、全然この点には触れない。結局この点には回答していないという形になつておる。こういうことで問題はまだ残つておるということなんです。
  84. 草葉隆圓

    草葉説明員 御質問の結局準決勝という意味は、まだこれらの問題、極東の問題、ソビエトの回答問題等が残つておるから、いわゆる決勝でなしに準決勝という見解が生じて来るではないか、その中にはただいまお話がちりましたような問題等を含めての意味においてのことではないかという御質問であつたと存じます。しかしこの講和の問題につきましては、日本政府の観測といたしましては、ただいま情勢報告を申し上げました通りに、準決勝というのはいわゆるロンドン会談におきまする最後の仕上の一歩手前であつて、今度ダレスさんあるいはアリソン公使等が各地をまわつて帰りましての草案がいろいろつくられて、これを関係国に最後に示すことによつてのしめくくりができると存じておりますので、従つてその間、先ほど情勢報告で申し上げました以外に、特にこの問題について、こんとんとした状態は現在ではないと存じます。
  85. 米原昶

    ○米原委員 それではもう一点だけ、これはこの委員会でたびたび問題になつたかもしれませんが、この覚書で非常に詳しく外相会議の点が論ぜられておるが、法的に政府としてはどういうふうに解釈しておられるかという点を聞きたいと思う。このポツダム協定を見ますと、はつきりとこの外相会議の設置の意義が前文に書いてある。これには講和会議の準備は要するに外相会議でやるべきだということが最初に原則的に出ておるのです。そのあとで緊急に結ぶべきものとしてヨーロツパのことが書いてある。またドイツのことが書いてある。原則問題としては、講和会議はこれで全部やるということが最初に書いてある。その点をソビエトの覚書も指摘しておるので、そこに議論があると思う。原則としては、この協定をそのまま読めば、ヨーロツパのことも日本のことも何も書いていない。原則としては来るべき講和会議の準備は外相会議でやるのだということが最初に書いてあるわけです。ソビエトの覚書も明らかに指摘しておるのです。その点を政府としてはどう解釈しておるか、またどういう態度をとられるかということについてお伺いいたしたいと思います。
  86. 草葉隆圓

    草葉説明員 これは当時参加いたしました国々が、それぞれその当時の状態を元にしてあるいは回答し、あるいは質問をしておられますので、ソビエトの覚書に対しまして従来とも再三アメリカ回答いたしておるのでありますから、その両国質問並びに回答に対しまして、日本がこれに註釈を加えることは妥当でないと存じます。
  87. 米原昶

    ○米原委員 そうではないのです。日本立場として法的にどちらが正当か、条文をそのまま読んでどちらが正しいと解釈せられておるかということなんです。今までのソビエトとアメリカで往復された質問なり回答なりを見ますと、ソビエトの方は外相会議設置の根本問題の最初に掲げておるところを強く言つておるわけなのです。それからアメリカの方は、このあとに出て来るいろいろな具体的な問題としてあげられておる問題、つまり緊急かつ重要な任務として外相会議はこういうことをやるのだと書いてある、そのことだけを言つておるわけです。その点をどう解釈しておるかという点です。
  88. 草葉隆圓

    草葉説明員 当時の会議におきまして、ソ連もこれを承認しながら十分承知をいたして進んでおられると存じますから、当時の会議の問題についてこれを承認し、あるいは参加した国々との間の問題として私ども従来ともその覚書なり回答に対しましては、十分細心の注意はいたしておりまするが、日本政府として、その宣言あるいは条文に対して、両方の国々がいたしておられます解釈に新しい解釈を加え、これを批判するという必要もないと存じます。
  89. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは本日はこの程度で散会いたします。     午後零時二十六分散会