運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-05-25 第10回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十五日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君       淺香 忠雄君    伊藤 郷一君       小川原政信君    菊池 義郎君       近藤 鶴代君    仲内 憲治君       中山 マサ君    福田 篤泰君       並木 芳雄君    武藤運十郎君       砂間 一良君    高倉 定助君       黒田 寿男君  出席政府委員         内閣官房長官 菅野 義丸君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (条約局長)  西村 熊雄君         外務事務官         (管理局長)  倭島 英二君  委員外出席者         大蔵主計官   稻田 耕作君         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         金属課長)   中山  章君         通商産業技官  江原 文夫君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 五月二十四日  委員星島二郎君辞任につき、その補欠として福  田篤泰君が議長の指名で委員に選任された。 五月二十三日     ―――――――――――――  未帰還邦人完全送還に関する請願若林義孝  君紹介)(第二三一五号)  平和に関する請願今野武雄紹介)(第二三  五〇号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  閉会審査に関する件  委員派遣に関する件  国際情勢等に関する件  平和擁護に関する決議案河田賢治君外二十五  名提出、決議第七号)   請願  一 小笠原諸島日本復帰に関する請願苫米    地義三紹介)(第三四九号)  二 同(菊池義郎紹介)(第七六三号)  三 奄美大島諸島日本復帰等に関する請願(    上林山榮吉君紹介)(第九二七号)  四 同(井上知治君外九名紹介)(第二二二八    号)  五 満洲里公館立替金審査促進に関する請願(    岡西明貞紹介)(第七三二号)  六 海外同胞救出運動強化並びに留守家族援護    の請願大石ヨシエ紹介)(第一二七三    号)  七 アナタハン島の同胞引揚促進に関する請願    (岩本信行紹介)(第二二二九号)  八 グリニツチ島の燐鉱石採掘に関する請願(    庄司一郎紹介)(第一八六〇号)  九 終戰後外地における被接收船舶の返還に関    する請願關谷勝利紹介)(第一三七二    号) 一〇 海外同胞救出国民運動強化に関する請願(    北澤直吉紹介)(第八九六号) 一一 未帰還邦人完全送還等に関する請願(玉    置信一君紹介)(第一五三二号) 一二 未帰還邦人完全送還に関する請願若林    義孝紹介)(第二三一五号) 一三阿波丸の代船建造措置促進に関する請願(    岡田五郎紹介)(第八六九号) 一四 移民問題に関する請願今澄勇君外五名紹    介)(第八九七号) 一五 在外資産補償に関する請願外一件(淺香    忠雄紹介)(第一〇〇三号) 一六 個人在外資産補償に関する請願岡西明    貞君紹介)(第一一二七号) 一七 全面講和等に関する請願砂間一良君外一    名紹介)(第一七三九号) 一八 平和に関する請願今野武雄紹介)(第    二三五〇号) 一九 日本国民活路確認運動に関する請願(宮    腰喜助紹介)(第八五〇号)   陳情書  一 小笠原住民帰郷促進に関する陳情書    (第四二七号)  二 沖縄日本復帰に関する陳情書    (第二    〇六号)  三 沖縄諸島日本復帰に関する陳情書    (第三四〇号)  四 海外胞引揚促進等に関する陳情書    (第五三    号)  五 海外胞引揚促進等に関する陳情書    (第二一二号)  六 海外胞引揚促進等に関する陳情書    (第三二三号)  七 海外胞引揚完了促進に関する陳情書    (第五〇一号)  八 海外胞引揚完了促進に関する陳情書    (第七九七号)  九 アナタハン残留者引揚促進に関する陳情    書(    第七八七号) 一〇 南阿連邦輸入関税引上げ緩和に関する陳    情書    (第六    一号) 一一 GATT(関税並びに貿易一般協定参加    促進に関する陳情書    (第三二六号) 一二 ILO産業委員会並び連合海事委員会に    日本代表全面的参加に関する陳情書    (第三九四号) 一三 一九二四年のブラツセル協定参加に関する    陳情書    (第三九五号) 一四 国際社会復帰に関する陳情書    (第六四〇号)     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。
  3. 山本利壽

    山本(利)委員 議事進行について……。この前の委員会最後において私の方から、シベリア抑留の数が約二十万であるということが対ソ覚書全文の中に載つておる、わが方では三十七万と従来発表されておつたという問題について御質問申し上げたところ、それはこの次の委員会、つまりきよう答弁するということでありました。さらに追放解除の遅れておる問題について御質問申し上げましたところが、きよう官房長官を呼んでおくということでありました。それも私了承いたしました。さらに通産大臣に対して、パラオ島の問題等についてお聞きしたいと御出席を求めておいたのでありますが、まだお見えになつていないように思いますから、そこらをよく委員長の方から督促していただいて、万一官房長官及び大臣が御出席不可能の際には、前から質問申し上げておりますから、今日適当な責任者から御答弁いただくようにおとりはからい願いたい。最後になつてだれも出ないからというようなことのないように、ひとつ……。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 お答えいたします。御要求に従いまして外務当局は参つております。それから通産大臣はさしつかえがあるそうで、通産省の当該役人が参つております。これは適当の機会発言を許すことにいたします。それから岡崎官房長官はさしつかえがあると申しまして、今日は参れないそうであります。
  5. 山本利壽

    山本(利)委員 岡崎官房長官のかわりにどなたか責任者がかわつて答弁願います。
  6. 砂間一良

    砂間委員 議事進行について……。きようの公報によりますと、外務委員会日程として、平和擁護に関する決議案が終りの方に載つておりますが、これはきわめて重要な議案でありますから、議事順序を変更して、まず最初に平和擁護に関する決議案議題に供されんことを望みます。
  7. 守島伍郎

    ○守島委員長 昨日理事会を開きまして、最後にまわすことにきめました。私どもはあなたのお出しになりました決議案はそれほど緊急を要するものと認めておりません。これはこの前お答え申し上げた通りでございます。  まず閉会審査に関する件につきましてお諮りいたします。本委員会におきましては、本会期の初めに国政調査承認を得まして、国際経済に関する総合的調査講和会議に関連する諸問題、国際情勢に関する問題の三項目につきまして種々調査研究をいたして参りましたが、なお閉会中も継続して審議いたしたいと存じますので、ただいまの三項目につきましての閉会審査議長に申し入れたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければさように決定いたします。     —————————————
  9. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に委員派遣承認申請の件についてお諮りいたします。ただいまの閉会審査の件が議院の議決で本委員会に付託されました場合には、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議がございませんければさようとりはからいます。  なお委員派遣についての委員派遣の期間及び人選、派遣地等決定につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議がなければさようとりはからいます。
  12. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に請願審査をいたします。日程第一、小笠原諸島日本復帰に関する請願苫米地義三紹介文書表第三四九号及び日程第二、同じく、菊池義郎紹介文書表第七六三号を一括して議題といたします。紹介議員説明を求めます。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 小笠原島が信託統治になりそうであるというので、六千の島民がみな心配しておるわけであります。この小笠原島は講和条約草案の中にも信託統治にせられるようにも何か現われておるのであります。それはどうも日本政府折衝陳情が足らぬのではないかと考えております。小笠原島がアメリカを守るための防衛圏の一環として日本を含めて必要であるならば、またその軍事基地として必要であるならば、われわれは小笠原島を提供して、しこうしてアメリカ軍隊によつて日本を守つてもらう、その利益の方がいかに大きなものであるかということを考えまして、喜んでこの小笠原島を信託統治にしたいのでありますけれども軍事基地としてはほとんど三文の価値もない、その証拠にはアメリカ兵隊小笠原島に一兵もとどまつておりません。これからずつと離れました硫黄島は軍事基地としてはまことに適当で、平坦地でありまして、飛行場もあります。それでアメリカ軍隊がそこに進駐して駐屯しておりまするが、この硫黄島だけを信託統治にして、何とかこの小笠原をば日本に返してもらいたい、これをわれわれは希望にたえないのであります。行つてごらんになるとわかりますが、山岳が重畳して飛行場も何もつくり得ない、そういう所なのです。それだからこそアメリカ兵隊は一人もおらないのです。それを軍の司令部でも知つておるのか知らないのかさつぱりわからないくらいなんです。いわんやアメリカ本国に了解せしめたならば、おそらくアメリカ本国の輿論としても、小笠原信託統治にする必要がないということがはつきりとわかるであろうと思う。どうか外務省といたしましては、根強くその実情を訴えて、そうして小笠原島を残すようにしていただきたい。もし小笠原島のうちでどの島の一つでも向う信託統治にしたいというようでありまするならば、父島、母島、姉島、弟島というように七つも八つもありますから、そのほかの島は日本に解放してもらうということに陳情していただきたいと思うのであります。あそこは信託統治になりますと、六千の島民向うへ帰つたとしても、その島民の国籍やなんぞの問題が生じまして、まことに不自由、やつかいなことになりますので、そういう点も考えなければならない。まず第一のわれわれの考え方は、アメリカ信託統治にしたいというその原因はどこにあるかといいますと、やはり軍事基地として適当ではないかというふうに誤解しておるのではないか。その点を根強く陳情されまして、そうしてアメリカ人考え違いを正して行きますならば、おそらく小笠原島は日本に残されることを信じて疑わないものであります。どうぞよろしくお願いいたします。
  14. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側から何か御発言はございませんか。
  15. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま三四九号並びに七六三号の御趣旨小笠原諸島日本復帰に関する請願でございますが、小笠原諸島はもちろんでありまするけれども一般領土に関しまする国民の要望は、あらゆる機会をとらえまして連合国側に伝えておる次第であります。連合国側におきましても、ただいまお述べになりましたような趣旨並びに国民の意のあるところを十分に了解し考慮をしてくれておると存ずるのであります。今後におきましても、あらゆる機会に御趣旨を伝えたいと存じます。
  16. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はございませんか。
  17. 黒田寿男

    黒田委員 ただいまのことに関係しまして政府に一、二点お尋ねしてみたいと思うのであります。  第一には、今アメリカの対日平和条約草案と称せられておるものが出ております。これを私ども研究してみますと、今問題になつておりますような琉球あるいは小笠原諸島アメリカ施政権者とする信託統治地域にする、こういう方針が現われておるようであります。そこで私はこの問題に対しまして疑問としております点を二点だけ政府にお尋ねしてみたいと思います。  第一は、この第二次世界戦争の結果、敵国から分離される地域として琉球諸島及び小笠原諸島信託統治地域になりますためには、直接関係国によつて、このことが協定せられるという必要があると思うのであります。その直接関係国の中には、少くとも連合国における五大国が含まれておるのではなかろうかというように私ども考えております。そうなつて参りますと、たとえばソ連も直接関係国に入るというように解釈できることになると私どもは思いますが、単独講和というようなことで、しかも他面直接関係国ソ連が入るということになる解釈をいたしますと、アメリカ目的としておりますこれらの地方信託統治地域にするということについて、よほど困難が生ずるのではなかろうか、これは疑問として私はそういう考えを持つております。直接関係国とはいかなる国を具体的にはいうか、それには今の連合国の五大国が含まれるかどうか、こういう点につきまして外務省の御見解を承つてみたいと思います。これが第一点であります。
  18. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問につきましては、日本政府見解というものを申し上げるよりも、むしろ国際連合において、この点がどういうふうに今日まで取扱われて来ておるかということを御報告、御答弁申し上げた方がより正確だと存じます。今日までの先例によりますと、直接関係を有する国という規定意味する範囲につきましては、国際連合における公的の解釈というものはまだ確立しておりません。ただ言えることは、施政権者となるべきものが認定して、直接関係を有する国と認める国に対して草案を提示して、その意見を聞くというふうな手続がとられて来ております。簡単に申し上げますと、施政権者となるべきものの判定に、今日までの先例によつておるということが言えると思います。
  19. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと、今のアメリカ施政権者にするということは、どこがきめるのです。かつてアメリカ施政権者になるということがきめられるものであるか。アメリカ施政権者にすることそれ自身が、やはり直接関係国というものの協定によつてきまるのではないかと思いますが、その点いかがでしよう。
  20. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私は今はつきりした記憶はございませんが、あの当時のUP電報の中には、たしかアメリカ合衆国を施政権者として信託統治制度をしくということに同意するという情報が入つてつたと存じます。ですから、平和条約においてアメリカ施政権者となるということがきめ得ると私は思います。
  21. 黒田寿男

    黒田委員 それはしかしあの条約に同意するという範囲で、アメリカ施政権者とするということに、ある範囲での国が同意するかどうかは知りませんけれども、そういうことで、国際連合としての信託統治における施政権者にきめられるかどうかということについて私は疑問を持つております。国際連合がことに信託統治にするということは、対日講和条約関係しておる範囲国々信託統治じやなくして、国際連合それ自身信託統治領になるのでありますから、どうも私はそういう一、二の国々だけがかつてアメリカ施政権者にするということにきめられるかどうかについて疑問を持つております。私の疑問は——この国際連合規約にある、憲章規定にありまする直接関係国施政権者がきめるのだという外務省見解でありますが、その施政権者をきめるのはたれであるか。それはかつて国際連合加盟の一部の国だけが、国際連合のそういう重要な問題について決定できるかどうか。やはり規約にあります直接関係国というのは、施政権者がきめるのではなくして、別に何らかの基準で国際連合それ自身としてきまるというように私は解釈すべきじやなかろうかと思う。そしてこれは第二次大戦の性質からいたしまして、少くとも五大国関係国の中に入るべきものだと私は解釈しております。この点はきようはこれ以上質問いたしましても、ちよつと堂堂めぐりになるのではないかと思いますので、ただいまの御説明で、私にははつきりしなかつたということで、この程度でとどめておきます。  それからもう一点だけお尋ねしておきます。これは私かつて島津政務局長にもお尋ねいたしまして、そのときにもはつきりしないままで残されておりましたので、きようあらためてこの機会に関連いたしまして、もう一度西村条約局長にもお尋ねしてみたいと思うのであります。それは信託統治地域に指定せられるということは、日本人の中にはやがて時期が来たならば、また情勢次第によつたならば、日本領土として復帰されることがあり得るだろうというような望みを持つて、そういう希望のもとで一つ信託統治地域ということにつきまして、いろいろ議論いたしておる人が多いようでありますけれども、私はどうも国際連合憲章規定の精神から行くと、一たび日本から分離せられまして、日本領土でなくなつて信託統治領域にされましたその地方の、この次に進むべき行き道は、自治または独立という方向に向つて行く、こういうようなことに国際連合憲章規定ではなつておるように思えるのであります。今までの例といたしましては、かつて日本国際連盟委任統治となつておりました南洋諸島が、大戦アメリカ信託統治地域なつたのでありますが、その南洋諸島に関するアメリカ信託統治協定条文を研究いたしましても、やはりこの地域に指定されました南洋諸島が、自治または独立意味であつて、これを信託統治地域住民発展促進するというようなことがはつきりと出ているわけです。国際連合憲章にもそういうふうになつておりますので、安易にもう一度日本に返るというようなことを考えて、信託統治地域に指定せられることを日本人といたしまして観察いたしておきますと、そういう観察と非常に違つた方向に持つて行かれてしまうのではないか、私はそういう疑問があるのであります。たとえば住民投票によつて、もう一度日本に返り得るような道があるのかどうか。少くとも憲章規定によつては、私はそういうことはどこにも書いてないと思う。この点は国際連盟時代委任統治規定と違うように私には思える。特にこれらの地域住民自治または独立に向つて進むというようなことが、国際連合憲章規定にもはつきり書いてある。国際連盟委任統治規定にはそれほどの規定はなかつたと思いますが、こういう憲章規定を私見まして、結局一たび分離せられて信託統治地域にされてしまつたならば、琉球及び小笠原は、自治ないし独立に向つて進む。もう一度日本に返るという趣旨は本来はないのだ、こういうように解釈すべきが憲章規定解釈ではないか、こういうように考えておるのでありますが、政府はこの点についてどういうふうにお考えになつておりますか、これについて御見解を承りたいと思います。
  22. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私は前回政務局長が御答弁くださいました趣旨と全然同感であります。同一の考えを持つております。私見としてつけ加えさせることを許していただければ、なるほど黒田委員がおつしやる通り憲章の第七十六条、信託統治制度基本目的規定しております条項ロ号では、目的は大体住民自治または独立に向つてこれを援助して行くということにあるということをうたつておりますが、忘れていけないことはその上にある条項でございます。それは「その地域人民特殊事情と、人民が自由に表明した願望とに適合し、かつ」となつておるわけでありまして、自治なり独立なりも、それがその地域に住む住民の自由に表明した願望に適合しておる限りにおいてそうである、こう解釈すべきものでございます。私はこれ以上その点について説明いたすことは差控えたいと思うのでありますが、黒田委員にはどうかロ号の前段もよくお考え願いたいと思います。
  23. 黒田寿男

    黒田委員 実は私も今西村条約局長の御指摘になりました文句は、注意して読んでおるのであります。そこでできれば西村条約局長の御解釈のように私も解釈してみたいと思いまして、参考のために第二次大戦後新たにアメリカ信託統治になりました南洋諸島に関するアメリカ信託統治協定、この協定条文を調べてみたのであります。その第六条にこの問題が取扱われておりまして、この六条の条文から行きますと、こういうふうになつております。「国際連合憲章第七十六条(ロ)に基く義務を履行するに当つて施政権者は、次のことをしなければならない。」私はこれは外務省の專門家の諸君に対して決して説教するという意味ではありません。どうも私はこれを読んでみて、西村条約局長のように簡単に考えることはどうかと思つて質問したのですが、それには六条の(一)といたしまして、「信託統治地域に適した政治制度発展を助成し、且つ、信託統治地域及び関係人民特殊事情に適した自治又は独立に向つて信託統治地域住民発展促進すること。」ということになつておりまして、人民特殊事情と、人民の自由に表明した願望というのは、自治または独立に向つて進む進み方を書いてあるにすぎないのではないか、自治または独立に向つて進むというより、全然別個に人民が自由に表明した願望に従えば、そうにもなるというように切り離して考えることができるかどうか、この問題であります。これは私も西村条約局長のように実は解釈できないことはないではないかと思いまして、今申しましたように南洋諸島に関するアメリカ信託統治協定を読んだのでありますが、どうもこれによると、特殊事情人民の自由に表明した願望に適合するということは、自治または独立に向つて進むその行き方をただ表わしておるにすぎないような気もするのであります。そこで私が疑問としておる点は、この点であります。私はそういう疑問を持つております。しかし西村条約局長のように離して理解できるということになりますれば、先ほど申しましたように、また日本にもう一度琉球諸島民あるいは小笠原島民の自由に表明した願望によつて返るというようなことが期待できないこともありません。ただこの点は、西村条約局長の御解釈になるほど、そう私にははつきり思えないのでありまして、ことに参考のために引用してみました南洋統治協定が、私の今申しましたような表示の仕方になつておりますので、そこで私は疑問を起してお尋ねしてみたのであります。これもやはりいろいろ解釈の相違とかいうことになるかもしれませんが、私は別に自分でまだ確定した、こうだという断定を持つておるわけではございません。これも疑問としてお尋ねしてみたのであります。幸いに西村条約局長のようなことになれば、最悪の場合にもなお見込みがあるということになるのであります。これもしかし私は疑問として提出いたしまして、ただいまの西村条約局長の御答弁を承つたということで、きようはこの問題はこれでとどめておきます。
  24. 砂間一良

    砂間委員 ただいまの問題に関連してでありますが、この領土の帰属につきましては、ポツダム宣言カイロ宣言決定に従うということと、それから残された四つの島以外の諸小島については、われらの決定するところというふうになつていたと思うのです。このわれらという国の中には、どことどこが含まれるというふうに政府はお考えになつておられるのか、聞きたいと思うのであります。
  25. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 連合国においてと解釈しております。
  26. 砂間一良

    砂間委員 その連合国というのは、どことどこの国をさすのでありますか。
  27. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点につきましては、過日のアメリカ対ソ覚書に解明いたしてありますから、それによつて御承知を願いたいと思います。
  28. 砂間一良

    砂間委員 アメリカの対ソ回答は別といたしまして、日本政府はどういうふうに解釈しておられますか。
  29. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本政府としては、連合国間の決定にまちたいと考えております。
  30. 守島伍郎

    ○守島委員長 砂間君もういいでしよう、同じことです。関連質問はこちらが先に出ておりますから……。
  31. 砂間一良

    砂間委員 そんな途中で切つてはだめですよ。もう少しです。簡単にしておきます。  ポツダム宣言の原署名国は、英・米・中国であつたと思います。これにあとからソビエトが加わつております。従つてこのわれらというのは、少くとも英・米・ソ・中の四箇国が含まれるということは間違いないと思います。それをこの四箇国の合意によらずして、ある一、二の国だけが、かつてに切り離してやるということができるかどうか。なおこの連合国は、これまでの諸協定におきまして、領土的野心がないということを何べんも繰返して言つておるのであります。しかも明らかに民族的にも、地理的にも、歴史的にも、風俗的にも、この日本の本土に接近しておる、特に小笠原のごときは、東京都の行政区域になつております。そういうものを無理にむしりとつて、これをポツダム宣言協定に違反して、一、二の特定の国が、かつて軍事基地にしたり、信託統治にするということは、これは明らかに国際条約の違反ではないかと思うのでありますが、その点につきまして、日本政府は、そういう違反の条約であつても、これに賛成し、署名するつもりかどうかという点をはつきり承りたいと思います。
  32. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 もう一ぺんワシントンとモスクワとの間に往復されております外交文書を御熟読願いたいと思うのです。対ソ覚書で、アメリカも口をすつぱくして言つておりますように、ソ連も加えての対日平和条約をつくろうとしているから、どうです、参加なさいと言つて説得している途中にあるわけなんです。その段階にあるわけでございまして、あなたがおつしやるように、将来締結になりまする対日平和条約から、ソ連なりその他の特定国が除外されるということは何ら確定的になつておりません。むしろ参加を説得いたしておるわけであります。領土問題の条項のところをごらんになりますと、ポツダム宣言条項を引いて、自分たちが考えておる条約にも、それがその通りになつておるではないかと説得いたしておるような次第であります。こういう段階にありますときに、日本政府は、御質問のようなことに対して答弁すべき時期にも達して来ていないし、そういう立場にもございません。もう一ぺんよくお読みくださるようにお願いいたします。
  33. 守島伍郎

    ○守島委員長 北澤君の発言を許します。
  34. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの請願に関連して御質問したいと思います。この小笠原諸島琉球諸島のように、日本と歴史的、民族的に非常に関係のある島々は、ぜひ日本に返還してもらいたいのでありまして、もし万が一こういう諸島国際連合信託統治になるという場合を予想してみるわけでありますが、その場合におきまして、同地方に従来住んでおつた日本人の国籍の問題がどうなるか、この国籍の問題は、結局そこにあります日本人の財産の問題に非常に影響があります。もしも国籍がその土地の住民ということになりますと、日本人在外資産として賠償に充てられることはないのでありますが、日本人ということになりますと、日本人在外資産として賠償に充てられるということになるわけであります。でありますから、国籍の決定いかんが、いろいろの面で非常に大きな問題になるのでありますが、そういうふうに小笠原島あるいは琉球諸島信託統治なつた場合の従来の住民の国籍の問題、それからもしその住民日本の国籍を持つた場合におきまして、その所有財産はどうなるか。新聞に出ております対日講和条約草案の第六章に書いてありますように、それが在外資産として賠償に充てられるのか、あるいはその例外規定として、一九四五年九月二日前に連合国の中に住居を許されて、しかも特別の措置を受けなかつた在外資産はこの例外規定に入るか、それをお伺いいたします。
  35. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点はきわめて具体的な点に触れておりますので、今日の段階では御答弁を差控えた方がいいかと思います。御了承を願います。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 国籍の点は、講和条約できまるであろうということが、従来政府の答弁であつたわけです。国籍の帰属が、北澤委員の御質問になつ信託統治なつた場合のその住民の国籍の帰属、たとえば琉球列島もそうですが、それは対日講和条約のときにきまるであろうというのが、今までの答弁であつたのです。しかし今の西村条約局長の答弁は、対日講和条約だけではまだはつきりしないという意味ですか。
  37. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私は、信託統治制度に関連いたしまして、住民の国籍の問題が、平和条約によつて決定されるであろうということを答弁いたした記憶は毛頭ごございません。私が記憶し得る限りにおきましては、信託統治制度のもとにおける住民の国籍は、どうなるかという御質問を受けたに対しまして、国際連盟時代に特殊の公の解釈は下されておりましたが、国際連合のもとにおきましては、まだそういう公的の解釈は下されておりませんということを、御答弁申し上げたことだけがあると記憶いたしております。その点訂正いたしておきたいと思います。  今御質問の信託統治制度のもとに置かれたと仮定して、現地住民の国籍がどうなるかという点につきましては、今の段階においては御答弁しない方がよろしいと思いますということを、北沢委員に御答弁申し上げた次第でございます。
  38. 並木芳雄

    ○並木委員 答弁しない方がいいと思うということは、むずかしい問題があるのですか。当然こういうふうになるだろうというコースがあるのじやないですか。新しいケースなんですか。
  39. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 各般の事情を考慮いたしまして、現段階におきまして、政府当局からその点についての考えを述べない方が、どの面から見ても賢明だということであります。     —————————————
  40. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に日程第三、奄美大島諸島日本復帰に関する請願、上林山榮吉君紹介、第九二七号、日程第四、同じく、井上知治君外九名紹介、第二二二八号を一括議題といたします。それでは専門員の説明を求めます。
  41. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 本請願の要旨は、終戦前鹿児島県の大島郡に属していた奄美大島諸島は、終戦後同県とはまつたく分離せられ、内地居住者との経済、交通に大なる不便を来し、住民の生活上の苦痛は大なるものがあるのみならず、他面密出入国または密輸出入による犯罪等も、頻発している状態である。ついては、内地と大島諸島との経済、交通の円滑化をはかるとともに、講和条約の締結にあたつては、ぜひとも同諸島の復帰を実現されたいというのであります。
  42. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側から何か御発言はございませんか。
  43. 草葉隆圓

    草葉政府委員 両請願につきましては、政府といたしましても、奄美大島諸島と内地との経済交通の円滑化、あるいは同島の帰属を含む領土問題等につきまして、従来もしばしば申し上げました通り国民の要望を関係方面に十分伝えて参つたのでありまして、この点に対しましては、今後ともそのようになお一層はかりたいと存じます。
  44. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はございませんか。
  45. 並木芳雄

    ○並木委員 奄美大島も、やはり条約草案によりますると、信託統治になるものと了解されるのでしようかどうか。その点をお確めしておきたいと思います。
  46. 草葉隆圓

    草葉政府委員 伝えられておりまする二十九度以南が信託統治となりますると、当然含むという結果になります。
  47. 砂間一良

    砂間委員 アメリカの対日講和条約草案にある二十九度という線は、どういう関係でそういう線を引かれたのですか。何かそこに戦略的な大きな意義があるとか、あるいは特に地理的に非常に離れているとか、あるいは住民が、全然人種が違うとか、そういうふうな特殊な事情があるのでありますか。どういう関係で二十九度が引かれたのでありますか。
  48. 草葉隆圓

    草葉政府委員 二十九度あるいは従来の三十度という点につきまして、別に日本政府が、アメリカがどういう考えであるかということを申し上げる立場にないと存じます。従つてどういう意味かということを、私どもも十分ここで申し上げかねると思います。     —————————————
  49. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは次に、日程第五満洲里公館立替金審査促進に関する請願岡西明貞紹介、第七三二号を議題といたします。門員の説明を求めます。
  50. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 本請願の要旨は、終戦に伴う満洲里公館関係者の引揚げに要した立てかえ金の審査処理については、引揚げの際たどつた道と、台帳、領収書の証拠がありながら、いまだに留保されているのは遺憾である。ついては、すみやかにこれが審査促進をはかられたいというのであります。
  51. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側から何か御発言はございませんか。
  52. 草葉隆圓

    草葉政府委員 在外公館の立てかえ件数は、約二十一万余件であつたと記憶いたしますが、それは最近全力をあげてこれが書類の整理等を進めて参つております。満洲里公館の関係におきましては、実は遺憾ながら現在まだ完全に審査が終了いたしている段階にはないのでありますから、今後できるだけ早く審査を終了いたしたいという点におきまして、事務的に努力を進めて参りたいと存じます。
  53. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はございませんか。——なければ次に移ります。     —————————————
  54. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第六海外同胞救出運動強化並びに留守家族援護請願大石ヨシエ紹介、第一二七三号を議題といたします。専門員の説明を求めます。
  55. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 本請願の要旨は、現在留守家族は、肉親奪還のため、全力を尽して闘争運動に邁進する決心を示しているが、五箇年有余の間待ち焦がれ、心身ともに疲労しており、またこれら家族の多くは老人、婦女子で貧困者である。ついては、救出運動並びに留守家族の援護に対し援助されたいというのであります。
  56. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側から何か御発言はありませんか。
  57. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御請願の御趣旨、まことに御同情にたえないと思います。従来ともこの海外同胞の帰還促進の問題につきましては、再三国会あるいは国連方面にも、それぞれの努力がいたされて参つことは、御承知の通りでありまして、国連における昨年の第五回総会の第三委員会における決議等によりまして、本年の四月三十日をもつて、この捕虜の関係の解決を目ざしながら、各関係国の報告等を聴取し、その結果によつて三人委員会を設置して、実地に調査をする段取りに運んで参つている次第であります。従いまして政府といたしましても、今後これらの関係の十分なる活動によりまして、一日も早く、海外同胞の引揚げが完了いたしまするよう、今後とも努力をいたして参りたいと存じます。
  58. 山本利壽

    山本(利)委員 ちようどよい機会でありまするから、ここでこの前の私の質問の御答弁をいただきたいと思うのであります。この前質問いたしました要点は、ワシントン二十日発のUP特電によると、今回米国政府対ソ覚書を発した、その全文が発表されておるのでありますが、その中に約二十万の日本人兵士が家庭に帰つていないということが書いてあるが、これまでわれわれの方では三十七万とたびたび政府から聞いておつた。するとこの二十万というのはどういう数字かという問いに対して、この二十万は兵士だということを一応この間答えられましたけれども、はたしてそうか。二十万が兵士であれば、あと十七万の兵士以外の者がおるはずである。そういう点についてすでに質問を発しておいたのでありますから、ここでちよつと倭島管理局長からの御答弁を得たいと思います。
  59. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先回の御質問に対してこの機会に御答弁申し上げたいと存じます。先回ただいまの御趣旨のように、約二十万の日本兵士が家庭に帰つて平和的な生活に復帰することを妨げているというような意味の対ソ回答があつたのであります。二十万というと従来の三十六万九千とはえらい違いじやないか、こういう質問で、次会に申し上げましようと言つておいた次第でありますが、ここには二十万の日本人兵士が家庭に帰り、平和的生活に復帰することを妨げておるという意味のように示されておるのであります。従いまして、この文句自身につきまして今日本政府がこれを批判することは差控えたいと存じます。ただ日本政府は、従来通り三十六万九千三百八十二名の未帰還同胞はなお残つておる、この未帰還同胞の引揚げ促進は熱望をもつて期待いたしておるということだけは、はつきりと申し上げておきたいと思います。
  60. 山本利壽

    山本(利)委員 もしそういたしますならば、この点に関して、この二十万という数字をめぐつて国民の間及び対外的に非常な疑惑を生ずるわけでありますから、この際日本政府は、ソ連圏内に抑留されておる数字はあくまで三十六万九千と承知しておるということを声明するとか談話の形式で発表されなければ、この二十万ということが今後の基本数字になるのではないか、その点について……。
  61. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは先回も申し上げましたように、三十六万九千三百有余の数字を一々——これは現実の人々でありますから、あるいはおなくなりになつた人とか、いわゆる未帰還の人人でございますから、詳細にその留守家族等につきまして今外務省は調査をいたしております。その総数三十二、三万の現実の名称、個名、本籍地はすでにわかつている次第であります。それでこの三十六万九千のほかに二十万という数字が現われて、ただいまのような対ソ回答の中にあるのでございまするが、これらの問題につきましても先ほど申し上げましたように、国連の三人委員会等に対して各関係国が報告をし、この報告に基きまして三人委員会等が今後活動するという段階になつておるのでありますが、日本政府は、今申し上げましたような詳細な資料等も手元に持つておるのでありまするから、ただいまの点につきましては、不日最も適当と思いまする機会に、詳細発表いたしたいと存じます。
  62. 山本利壽

    山本(利)委員 なおその他の点に関して重要な問題と考えますことは、今回のアメリカ政府によつて発表された二十万は、大体兵士であると仮定いたしまして、その他の者について——日本国民から申しますと、兵士であろうと一般人であろうと、留守家族の者及び国民全体がその帰還を非常に待ちわびておるのでありますから、今後アメリカ政府においても、兵士のみの数字でなしに、全体を込めた三十数万を対象に御努力願いたいということを、日本政府から重ねて申し入れていただく必要があると考えます。
  63. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ソビエトの従来の発表を見ますと、タス通信その他におきまして、常に一般邦人のことは、ほとんど触れずに発表いたしております。一度も一般邦人については触れておらないと記憶いたしております。しかし現実におきましては、ただいま御質問にありましたように、相当の一般邦人が現に未帰還のまま残されておると存じておりますが、この点につきましては、御趣旨は十分ごもつともと存じます。
  64. 山本利壽

    山本(利)委員 この際基本的な問題でありますから、西村条約局長にお願いしておきたいと思うのであります。今回の戦争が終結になつてわれわれは無条件降伏をした、それはポツダム宣言に載つておる条件によつて降伏しておるんだというふうに考えるのであります。そうすれば、そのポツダム宣言について相手方においてもよく履行されておる場合においては、われわれの方でも十分にそれに従つて行くことは当然でありますが、この帰還者の問題等につきましても、ソ連側においては、まつたポツダム宣言における向う側の責任を履行されていないように考えるのであります。今回の米国政府によつて発せられた対ソ覚書におきましても、交戦国中ソ連だけが降伏条項に反しまして、約二十万の日本兵士の復員を妨げているという意味のことがうたわれておるのでありますが、こういう場合におきましては、ポツダム宣言ソ連に関する限りわれわれは従わなくてよいのかどうか、この国際慣例のいろいろな点について御説明を承りたい。国民一般の感情からいうと、片方で履行されないのであるから、ソ連に対してはわれわれの方でもポツダム宣言に従う必要はないのであるという気持が漸次盛り上りつつあるのではないか、かように考えます。
  65. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問は多分に政治的な問題だと存じます。私どもといたしましては、連合国のある一国がポツダム宣言のある条項について守る守らぬの問題は別として、ポツダム宣言の各条項は忠実に履行して行きたいという立場にあるわけであります。
  66. 山本利壽

    山本(利)委員 初め申しましたように、われわれはあらゆるものについて無条件ではなかつたわけで、ポツダム宣言を受諾したのであるから、その点に盛られておることについては完全に果されることを国民は期待しておつたのであるから、こういうような各条項について、連合国の全体の国ではなしに、ある特殊の国によつて侵犯される場合においては、このことを適当な機関に常に外務当局としては申入れをしておられるのか、ただ黙つておられるのか、そこらの点についての御答弁を願いたい。
  67. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ソ連地区におる未帰還邦人の帰還促進については、日本政府としてはあらゆる機会に、あらゆる方法で懇請いたしておるわけでございます。
  68. 砂間一良

    砂間委員 今の問題に関連して一つ……。もしかりに未帰還同胞がなお海外にあるとするならば、一人でも、一日も早く帰つていただきたいということにつきましては、私どももまつたく同様でございまして、留守家族の方方に対しても、深く御同情にたえないことであります。ところが先ほど請願趣旨説明を聞いておりますと、留守家族の肉親奪還とか、あるいは海外同胞の救出というふうな非常にはげしい言葉を使われておるのでありますが、この奪還とか救出というふうなことになりますと、あたかも監獄へでも乗り込んで行つて、監獄をぶちこわして救い出して来るというふうに聞えるのでありますが、この奪還というのは、海外へこちらから出かけて行つて、腕ずくで救い出して来るというふうな意味でありますか。もしそうであるならばその具体的方法はどういうふうなことを考えておるかということを、ひとつ請願の提案者の方から御説明願いたい。  なお先ほど来政府委員の御説明を聞いておりますと、三十六万九千の未帰還者がいるというお話でありますが、一体この三十六万九千の人たちは、どことどこの国に何人くらいずつおるかという明細をひとつ発表していただきたい。ソ同盟におきましては、すでに昨年もう抑留者は全部日本へ返してしまつたということを、タス通信を通じて発表しておるのであります。もしおるとするならば、どこの国におるのか、そしてまたそのどこの国に何人いるという証拠は、どこにあるかということを詳しく説明していただきたい。それが第二点であります。  その次に、先ほど山本君の御質問にありましたように、日本は無条件降伏といいましても、ポツダム宣言を無条件に受諾したのでありますから、従つてそのポツダム宣言に違反したことがあつた場合には、日本は必ずしもそれに服従する義務はないと思います。そこで先ほどのポツダム宣言の第八項にあるわれらの決定ということでありますが、西村条約局長もさつき申されましたように、もし全面講和ができまして、ソビエトもどこもみんな加わつてつくられるものであるならば、それはけつこうでありますけれども、もしかりにソビエトが加わらない場合には、つまり連合国が欠けるわけであります。従つてわれらの決定ができないわけでありますが、そういうふうな場合にも、もし連合国の一、二箇国が、日本ポツダム宣言に違反するような条約を押しつけて来た場合には、日本政府として、それを受諾するつもりかどうか。また受諾する義務があるかどうかという点を御質問したいと思うのであります。
  69. 守島伍郎

    ○守島委員長 今の御質問の第一点は、提案者がここにおられませんから、奪還云々というのは、政府当局としてはお答えすることができぬだろうと思います。ほかの点について政府から御答弁ございますか。
  70. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この三十六万九千三百八十二名と申し上げました数字は、ソ連領、ソ連軍の戦闘区域、ソ連の勢力下というシベリア、満洲、関東州、北鮮、樺太、千島等に居住しておりました日本人並びに日本軍の数であると御了承願います。  それから、ただいまタス通信をもつてソ連は全部引揚げてしまつた、従つて現在は一人もおらないじやないかというお話もございましたが、タス通信の発表そのものを集計いたしましても、一万二百四十四名の全然発表されておらない数字が出て来るのであります。これはタス通信の四十九年並びに五十年の発表、並びに終戦直後の発表を集計されましても、出て参る数字であります。このほかに、今申し上げましたように、日本政府といたしましては、総数におきまして三十六万九千のなお帰らざる人たちがあると確信いたします。なおソ連は、最初五十九万四千が捕虜の総数であつたと発表いたしております。その後一昨年になりましてから、突如七万八百八十名を戦闘地区において現地釈放したということを発表いたしました。そしてこの七万八百八十名も五十九万四千の中に加わつておると発表いたしておりますが、日本政府が調査いたしたところによりますと、七万八百八十名の現地釈放というのは、現在帰つて参りました人たちについて詳細調べましても、さような事実はないのであります。またソ連は、死亡者に対しましては一口も従来発表をいたしておりません。しかし実際帰還者の実情からいたしますると、相当多数の死亡者があつたという事実は否定ができないのであります。以上をもつてお答えといたします。
  71. 砂間一良

    砂間委員 あとの点は……。
  72. 守島伍郎

    ○守島委員長 あとのお答えはございませんですね。
  73. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ポツダム宣言の問題は、実は私どもソ連地区であろうとも、どこの地区であろうとも、ポツダム宣言にありまする条項を深く信用しまして、従つて終戦後は平和的、生産的な生活にすみやかに復帰のできることを望んでおり、期待を、いたしておつたのであります。しかるにほかのすべての国はこの状態になつて参りましたのに、ソ連の勢力下におきまする三十六万九千だけは、まだこの状態にないのをはなはだ遺憾に思います。
  74. 守島伍郎

    ○守島委員長 前会国際情勢等に関する件について、山本委員から追放解除の問題について官房長官出席をこの委員会に求められておりましたが、官房長官はさしつかえがあるそうで、かわりに菅野官房副長官が見えました。非常にお急ぎになるそうでございまするため、ちよつと請願の審議を休みまして、答えてもらうことにいたします。なるべく簡単にお願いいたします。山本君。
  75. 山本利壽

    山本(利)委員 ごく簡単に申し上げます。前会すでに要旨を申し上げたのでありますが、講和会議を迎えるにあたりまして、わが国民が非常に待望しておりますことは、できるだけ大幅に追放が解除せられて、それらの人も相ともに国民の総力を結集して講和会議を迎えたい、しかも現内閣はその要望に沿うて、大体地方選挙前にこれが行われるのではないかと喜んでいたのでありますが、その後六月であるという情報が新聞紙上等に伝わつております。それがさらに最近に至つて、また延びるのではないかというふうなうわさがありまして、追放を待ち焦がれております人々及び一般の者も失望しておるわけでありますが、その間の消息、及び今後現内閣において追放についてはいかような手を打ち、いかなる範囲において順序を追つて解除の手続をとられるか、そこらの点について御説明を賜わりたいと思います。
  76. 菅野義丸

    ○菅野政府委員 お答えいたします。お説のごとく講和会議も近づきまして、追放になつておられる方々のお気持を察しまして、政府は以前から、できるだけ多くの人を追放解除いたしたいと努力して参つたのでございます。そして実際におきましても、比較的追放の理由の乏しいような人たちにつきましては、相当多数の解除を見て今日に至つておるわけであります。しかしながら、まだ追放になつておる人たちが相当数ございますので、依然として政府はこの努力を続けけて行きたい、かように考えておる次第でございます。最近新聞紙上等におきまして、いろいろの推測が出ておりまして、今お話のありましたように、六月ごろにあるではないか、あるいは地方選挙の前にあるべきではなかつたかというような記事が出ておるのでございますが、これはまつたく今のところ根拠のない記事でございます。今いついかなる程度に追放の解除があるかなどということは、確信をもつて申し上げる段階ではないのであります。ただ先般リツジウエイ最高司令官の声明がございまして、日本政府にある程度の政令その他の法令の審議権を委譲されたのでございます。先方の司令部の指令によりましてできましたいろいろな政令等につきまして、日本政府に再検討をするということを許されたのでございます。これは申し上げるまでもなく、再検討でございまして、これを改正する権限ではないのであります。改正を決定するのはあくまでも司令部でございまして、ただ政府といたしまして、その後の実施の状況等から見まして、現状と引比べて、はたして現在の法令が妥当であるかどうかを、検討するだけの権限を与えられたのでございます。それからもう一つは、あくまでもこれは民主主義を堅持するという範囲の中のことでございまして、これを根本的になくすとかなんとかいうことは、日本政府に与えられた再検討の権限ではない。かように信じております。そういう意味合いにおきまして、追放の問題もその根拠は、ほとんど全部指令に基くポツダム政令のようなものでできておりますので、この追放の問題も、政令の改正というような意味におきまして、検討する対象になるということは事実でございます。現に政府といたしましては、いろいろな方面から、根拠になつておりまするところのポツダム政令等につきまして、愼重に検討を加えておるということは事実でございます。しかしながら先ほど申し上げました通り、これを改正する権限は全然ないのでありまして、改正する権限あるいはどの程度に改正するかというようなことは、あくまで現在におきましては司令部の権限でございます。従いまして今日ここでもつてどういう程度にいつ追放の解除を行うかというようなことは、日本政府といたしましては、とうてい申し上げられないのでございまして、ただお話のように、日本政府といたしましては、できるだけ多くの人を追放解除したいという熱望をもつていろいろ検討しておる、これだけのことは申し上げられるのであります。
  77. 山本利壽

    山本(利)委員 そういたしますと、先般来新聞紙上等において発表されておりました、この次には約十万の者が解除されるであろうとか、中には十二万とあつた新聞もあつたかと思いますが、十万とか十二万とかいつたような数字、並びに解除されるそのわくのはずし方について、いろいろ載つておりましたが、これは捏造の記事と認められますか。
  78. 菅野義丸

    ○菅野政府委員 新聞紙の名誉のために、私は捏造というようなことは申し上げたくないのであります。ただ政府がいろいろ研究いたしておりますると、その段階におきまして、いろいろなことが外部にも漏れまして、もしその案が実施されれば、このくらいになるというようなことは、これは新聞社としては当然考えることだろうと思います。全然根拠がないとか、新聞がかつてにつくつたなどということは申し上げませんが、結局確定するのは、最後にポツダム政令なり関係の法令をかえて、実際に追放解除の手続を終つたときでなければ、確定しないのでございまして、それまではいろいろ研究の段階あるいは案の段階としてはいろいろございますが、そういう意味合いにおきまして、あれは根拠がない、こういうふうに申し上げておる次第でございます。
  79. 山本利壽

    山本(利)委員 最後決定ということは、もちろん日本政府にないということは了承いたしますが、ただいまのお言葉によつて、先般来発表されておる数字の線で何とかしたいと思つて御努力中である、かように解釈してよろしゆうございますか。
  80. 菅野義丸

    ○菅野政府委員 新聞によりましていろいろ数字が違いますから、どの線でということは言えませんが、先ほど申し上げました通り、できるだけ多く、できるだけ早く、この方針で進んでおるのであります。
  81. 山本利壽

    山本(利)委員 もう一つ、これは非常に国民の待つておることでありますし、政府がおやりになれば、まことに善政として、もうあなた方のお手柄になることでありますから、申し上げておきたいのでありますが、この点は、そういたしますと先般新聞紙上に出ました範囲より以上を御期待になつておるわけでありますか、大体あそこらのところでありますか、私も一生懸命でお尋ねしておるのであります。
  82. 菅野義丸

    ○菅野政府委員 数のことは私は申し上げられませんが、できるだけ多く、できるだけ早くということであります。
  83. 並木芳雄

    ○並木委員 関連してちよつと……。今聞いておると、岡崎長官よりも歯切れがいいですから(笑声)、ぜひこの機会に確かめておきたいのです。実は新聞の記事は捏造ではないということもわかつたし、漏れることもあるということもわかつたので、私はむしろ予想でもいいから、ああいうことは政府は積極的に堂々と漏らしてもいいと思うのです。その中に翼壮というものがなかつたのです。翼壮関係が、ずいぶん全国にやはり待ち焦がれておるのですが、あの記事を見ますと、大政翼賛会及び下部組織というような文字が使つてつたかと記憶しております。従つて翼壮のごときは当然含まるべきものであると解釈されるのでありますが、これは今度問題になつておることと関連いたしまして、どうして翼壮だけが特に漏れておるだろうかという声を聞いておりますので、御質問するわけであります。
  84. 菅野義丸

    ○菅野政府委員 並木委員のお尋ねでございますが、先ほど私が申し上げましたのは、あるいは言葉が足りなかつたかもしれませんが、案が漏れたというのではなく、研究の段階におきましては、いろいろ評議をやつておりますので、そういう片鱗が漏れたのではないか、こういうふうに申し上げたのでありまして、決してきまつた案があるわけではないのでありますから、その点御了承を願います。  それから、ただいまの翼壮の関係でございますが、今具体的にどれをどうするということは、先ほど申し上げた通り、実際においてはまだ司令部に持つて参ります案ができておるわけでもないのでありまして、まだ検討の最中でありますから、この機会にどれをはずすとか、どれを残すというようなことは申し上げられません。しかしながら先ほど申し上げました通り、民主主義の原則に反しない限り、できるだけ多くの人を、できるだけ早い機会追放解除いたしたい、この方針といいますか、熱意は依然としてかわらないことだけを申し上げます。
  85. 並木芳雄

    ○並木委員 じやそれとは別に、むろん政府考えとしては、大政翼賛会と大日本政治会のようなものが入る以上は、翼壮も当然入るべきだ、これは常識的のことだ、翼壮だけが特に重く扱われておるということは不公平であると思うのですが、その点の見解はつきりしていただきたい。
  86. 菅野義丸

    ○菅野政府委員 追放の原因にはいろいろな理由がございまして、簡単に私ここでどれとどれと振合いを保つべきだということは、確信をもつて申し上げられませんが、もちろんこの追放の原因になつておりますものをはずすことにつきましては、よくその当時の事情、あるいはその他の原因との振合い、そういうようなことを慎重に考えてやるのでございまして、政府が極秘裡にやつておるということはいかがかというような御意見でありますが、この追放の問題は、ここで申し上げるまでもなく、非常に国際的にもいろいろデリケートな関係にございますし、また政府の、なるべく早く、なるべくたくさん解除したいという気持に沿わないような結果になるおそれもございますので、できるだけ慎重に、しかしなるべく不必要な物議をかもさないようにいたしたいと思います。
  87. 山本利壽

    山本(利)委員 私の質問の途中で関連質問が入つたので……。この点で特に私が申し述べておきたいと思います点は、今まで追放を解除されましたたしか三万数千だつたと思いますが、これはわれわれからいえば、追放解除が特別な恩典ではなくして、追放されるのが、実は間違つていたのである。自分は追放されるべきではないという理由を、いろいろ証拠を出して御審査を願つて、それで解除になつたのであるから、決して追放になつていたのを、その後の本人の業績とか、いろいろの点で、この人間は民主主義とか文化主義の国家を建設するのに役に立つ人であるから、解除してやろうという意味の恩典は毛頭なくて、追放されたのが間違つていたのだ、これはけしからぬことではないかという申請をして、初めてああ悪うございましたと言つて許してもらつたのだと私は解釈しておりますから、現内閣のお手柄でも何でもなしに、むしろこれらの者については、何か慰藉の方法があつてもいいというぐらいに思うのでありますので、今後はほんとうの意味の解除になるように、この追放のときの原因——このことは私たびたび申し上げおるのでありますが、その原因をお調べになると同時に、追放されておつた期間中の本人の行動ということを十分お調べ願つて、今後の日本建設に役に立つ人は、ひとつどんどん解除していただきたいということをお願い申し上げて、私の質問を終ります。
  88. 砂間一良

    砂間委員 ちよつと……。先ほどから追放解除のことがいろいろ問題になつておりますが、二十万に近い多数の公職追放者の中には、中にはあやまつて追放されたという人もあると思います。たとえばいなかの方の山の中の村長さんやあるいは青年団の幹部等が、上の方から、戦争中にやれと命ぜられて、その通りにやつたことが、それがいけなかつたというので追放になつたのです。そういう人はまつたく気の毒でありまして、これは十分な審査の結果、解除してやるのがあたりまえだと考えるのであります。しかしながら大多数の追放者あるいは戦争犯罪人の中には、他国を侵略いたしまして、そうして日本を敗戦の悲惨な目にあわせた戦争犯罪の責任者がおるのでありますから、そういう人はやはりいつまでも追放しておきまして、そうして国家の風上にも置けない、人の前にも出させないということが、しかるべき措置だと思うのであります。ところが最近では、国際法廷で判決を受けたような重い戦争犯罪人どもが、巣鴨の刑務所からのこのこ釈放されて出て来る。そうかと思うと、鳩山みたいな反動の張本人なんかが、解除になるといううわさもあり、また大幅に追放解除するというようなことが盛んに新聞に伝えられておるのであります。しかしながら戦犯の扱いというものは、これは極東委員会決定によりまして、連合国がやつたことでありますが、それを連合国に諮ることなしに、アメリカの一存によつてつてに、あの人は追放から解除する、これは出す。そういつたような人を警察予備隊の士官にしたり将校にするというようなことは、明らかに軍国主義の復活でありまして、これはポツダム宣言日本の非武装、民主化という趣旨にも反すると思いますが、こういうふうなことをアメリカの一存でかつてにやつていいのでありますか。またその指令をそのまま日本政府が実行いたしまして、これはポツダム宣言の違反にならないかというような点につきまして、政府の御見解をお伺いいたします。
  89. 菅野義丸

    ○菅野政府委員 先ほど申し上げました通り、追放の解除は、民主主義の原則を堅持するという点につきましては、これは絶対にその範囲内によつて行うのでありまして、先ほどから申し上げました通り、それを越えてというようなことは絶対にございません。  なお連合国アメリカの間のことは私どもよく存じませんので御了承願いたいと思います。     —————————————
  90. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは請願審査に入ります。  日程第七、アナタハン島の同胞引揚促進に関する請願岩本信行紹介、第二二二九号を議題といたします。専門員の説明を求めます。
  91. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 サイパン島の北方七十海里にあるアナタハン島に生存を確認せられた二十二名の家族を代表して、引揚げ促進を願い出たもので、この二十二名は、昭和十九年五月、旧日本軍の命令により、内地からトラック島に進出の途次、同島付近で敵機の空襲により沈没、陸上に避退した海軍徴用船兵助丸、曙丸、海宝丸の乗員でありまして、その全家族から帰還促進方を外務省に申出ておる。一日も早くこの引揚げ方を実施されたいというのであります。
  92. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はございませんか。それでは次に移ります。     —————————————
  93. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第八、グリニツチ島の燐鉱石採掘に関する請願庄司一郎紹介、第一八六〇号を議題といたします。専門員の説明を求めます。
  94. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 本請願の要旨は南洋殖産株式会社は、もと委任統治南洋ポナペ支庁管内グリニツチ島において、きわめて良質で豊富な燐鉱石の所在地を発見し、昭和十二年三月、南洋長官に採掘願を提出し、同年十二月及び同十三年三月の二回にわたつて調査団を派遣し、太平洋戦争の勃発とともに、南洋群島の連合軍によつて占領され、採掘計画も中止のやむなきになつた。ついては、わが国の肥料事情にかんがみ、同地方の燐鉱石採集の必要性を認識され、国連当局に力説し、善処されたいというのであります。
  95. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府委員の御意見を伺います。
  96. 江原文夫

    ○江原説明員 燐鉱石の確保の問題については、終戦直後から非常に私ども努力して参つたのであります。特に元の委任統治領の問題につきましては、総司令部としても、特別の考慮を払われまして、現在一部のものにつきましては、すでに輸入しつつあるのであります。グリニツチ島は、戦争前には、まだ具体的な開発に着手しておらなかつたのであります。従いまして、現在詳しい資料もあまりないのでありまして、今後調査研究して行きたいと思います。しかし現地が国連の信託統治領になつておりますので、なかなか簡単には参らぬと思いますが、これは御趣旨をよく考えまして、これから調査研究して参りたいと思うのであります。
  97. 山本利壽

    山本(利)委員 これは先般御質問いたしたことでありますが、ちようどよい機会でありますから御答弁願います。この二十三日に、横尾通産相は、総司令部にマーカツト経済科学局長をたずねて、過般の東南アジアの資源開発、資本技術供与に関するマ局長声明の具体化の第一着手として、日本・パキスタンの経済提携及びパラオ島のボーキサイト開発について懇談するという記事が載つておりますが、講和会議後における日本の経済復興ということが、非常に重要な問題でありますので、この点に関しての横尾通産相とマ局長との間に行われました懇談の結果について伺いたいと思います。
  98. 中山章

    中山説明員 パキスタンの問題とパラオの問題と二つ御質問でございましたが、私パラオの問題についてのみお話申し上げたいと思います。パラオは昭和十三年ごろからボーキサイトを日本で掘つておりまして、十九年までの間、およそ三十万トンのボーキサイトを日本へ持つて来ておつたわけであります。そうしてその地区に大よそ四百万トンの埋蔵量があるというのでありますが、その後、戦争後は日本の軽金属はビンタン島からボーキサイトを入れておるのみでございましたが、これは非常に値段等も一方的になり。高くなつて参りましたので、もう一箇所ボーキサイトの入手の場所を見つけて来なければならぬ、こういうことで、昨年の三月と九月にそれぞれ通産大臣がマーカツトに開発方を申し出たのでございますが、今日までこれが許されていなかつたのであります。たまたま最近二十六年度のボーキサイトの契約をビンタン島といたしましたところが、トン当り十ドルぐらい高い値段になりましたので、対米協力の問題につきましても、そういう高いボーキサイトを買つておりましたならば、価格的に折り合わないということ、並びに東南アジアの開発というようなことがマーカツトの声明に出ておりますので、それをチヤンスに、第三回目の懇請をしたわけでございます。その結果といたしましては、パラオ島はただいまアメリカの海軍の軍政地区になつておりますので、七月一日から内務省の所管に移るらしいというようなことを、マーカツト会談で、向うから話があつたそうでございます。司令部では、たしかヴオーンという方と、ケネデイという方と、マーカツトと、三人おられたそうでありますが、ヴオーンさんの言われるには、アメリカにおきましてはボーキサイト源というものはもう十分確保されておるので、パラオのボーキサイトはわずかのもので、アメリカは期待しておらぬ、むしろこれは日本へやるべきだということに、司令部の方の意見がなりましたので、さつそくもう一回ワシントンの方へ交渉するというような結果になつたように聞いております。以上申し上げます。
  99. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまの話で非常に高くつくという、その原因はどういうところにありますか。
  100. 中山章

    中山説明員 ビンタン島から買つておりますものは、距離的にもパラオの倍になつておりますので、フレイトもビンタンから持つて来ると非常に高い、それが一つ。それからもう一つは、日本では昭和十三年ごろ掘つた経験がありますので、原価計算を一応してみまして、掘る値段はそう違いませんが、やや低く輸入することができる。その一番大きな問題は先ほど申し上げましたフレイトの問題が一番大きな問題になつて来る、こういうことでございます。
  101. 山本利壽

    山本(利)委員 この新聞の記事に、これはパキスタン方面であろうと思うのですが、技術者なんかを派遣するといつたことがあるようであります。この南方の諸島からいろいろボーキサイトその他のものを掘り出すという場合に、内地から相当数の労働者等を送つてやることが、非常に安くつくのではないかといつたようなことも考えるのでありますが、そういうことは許されないのでありますか。ただ値段が一方的にアメリカ政府等によつてコントロールされて、漸次高くなつて行くのか。そうでなしに必然的に生産コストが高くなるのか、そこらのところは通産省当局においてはどういうふうに御検討になつておりますか。
  102. 中山章

    中山説明員 その点は先ほど申し上げましたように、現在インドネシア国になつておりまして、もともと掘つている会社はオランダの会社でございますが、インドネシアの国家ができましたので、オランダの会社にさらに税等をかけるという点もあるかと思うのであります。それと今のフレイトの問題で高くなつておるのであります。まずさしあたりの問題といたしましては、パラオにつきまして再三懇請をしておりますし、しかも今まで日本人の手でやつておりましたので、まず第一にそこをやるべきである。同時に附帯して技術者とかあるいは労務者等は、やはり資源の開発のためには東南アジアのいずれの地区にも送り込むようにすべきである。こういうように考えます。
  103. 山本利壽

    山本(利)委員 それから横尾通産大臣とマーカツト局長との会見の結果できましたことは、追つてこれは発表されるものでありますか。
  104. 中山章

    中山説明員 まだ結論は出ていないのでございまして、向うへ連絡するということでございますので、向うへ連絡するということの発表はできると思うのでありますが、これは昨日新聞にも出たと思います。
  105. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは次に移ります。     —————————————
  106. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第九、終戦後外地における被接收船舶の返還に関する請願關谷勝利紹介、第一三七二号を議題といたします。専門員の御説明を願います。
  107. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 終戦後外地で連合国に接収された日本船舶は二百八十三隻、総トン数十八万四千八百四十九トンに達し、関係船主は三十三社に及んでいる。これらの船舶は、戦時中の拿捕船と異なつて、戦闘行為終結後、現地の連合国役務の必要上接収されたものと解釈できるから、役務完了の上は、国際法上返還されるべきものである。ついては、戦時中厖大な船腹を失つたわが国海運界のために、これらの船舶が返還されるよう総司令部と折衝されたいというのであります。
  108. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はございませんか。  それではただいままで審査いたしました請願について採決いたします。日程第一より日程第九までの各請願は、いずれもこれを採択の上、内閣に送付すべきものと議決することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議がなければさよう決定いたします。次に移ります     —————————————
  110. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議がなければさよう決定いたします。次に移ります
  111. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第一〇、海外同胞救出国民運動強化に関する請願北澤直吉紹介、第八九六号を議題といたします。紹介議員北澤君の説明を求めます。
  112. 北澤直吉

    北澤委員 この請願趣旨は、要しまするに三十六万余の未帰還者の帰還を促進してもらいたいということであります。ただ問題なのは、これに対しまして、海外抑留同胞救出国民運動総本部というものができたのでありますが、これに要する経費の点が明らかでないのであります。そこで請願者といたしましては、同運動に要しまする、経費を予算化しまして、予算の中からその経費を出してもらいたい、こういうふうな請願なのでございます。国の財政の状態ともにらみ合せて考える必要がありますが、要しまするに請願の要旨は、救出運動に対しまして、国から補助金を出してもらいたいということであります。
  113. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はございませんか。——次に移ります。     —————————————
  114. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第一一、未帰還邦人完全送還等に関する請願、玉置信一君紹介、第一五三二号を議題といたします。専門員の説明を求めます。
  115. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 本請願の要旨は、対日講和会議に臨むに際し、次の事項を国際連合国側に要望されたいというのであります。  一 未帰還邦人完全送還  二 日本人海外移住、門戸開放、機会均等  三 在外私有財産の返還以上であります。
  116. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はありませんか。——次に移ります。     —————————————
  117. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第一二、未帰還邦人完全送還に関する請願若林義孝紹介、第二三一五号を議題といたします。専門員の説明を求めます。
  118. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 終戦後五年の今日、三十余万の日本人が祖国に帰ることを許されず、その生死さえも不明である。ついては、第一、講和条約中において、ポツダム宣言第九条の捕虜送還に関する署名国の約束を確認されたい。第二、戦後特殊の事情のもとに発せられた法令中、戦争犠牲者の待遇、援護、補償に加えられた制限は、講和後まで持ち越されないようにせられたいというのであります。
  119. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はございませんか。——なければ次に移ります。     —————————————
  120. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程一三阿波丸の代船建造措置促進に関する請願岡田五郎紹介、第八六九号を議題といたします。専門員の説明を求めます。
  121. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 本請願の要旨は、阿波丸代船の建造に関しては、第七国会に請願書を提出した結果、見返り資金融資その他による援助措置を講ずる旨の確答があり、去る八月、日本郵船の要望により、七千トン型貨物船の建造に対する見返り資金全額融資の措置が決定された。その後、関係方面の了解が得られないままに今日に至つているが、日本郵船としては阿波丸代船の建造をあくまで念願している。ついては、見返り資金融資による援助措置が困難である場合には、適当な措置を講じてぜひとも建造を実現されたいというのであります。
  122. 稻田耕作

    ○稻田説明員 この問題でございますが、今専門員からお話がございましたように、政府といたしましては、見返り資金の道を講じまして、努力いたしたのでございますが、それがうまく行かなかつたのであります。それでこれにかわる財政的な措置ということが考えられるのでありますが、御承知のようにこの問題につきましては、殉難者に対しましては、見舞金の措置が講ぜられまして、また船舶自体に対しましても、特別なケースといたしまして、見舞金が出たのでありまして、財務当局といたしましては、ほかとのつり合いもございまして、これをもう一度取上げてというようなことは、ちよつと困難に存じておる次第でございます。
  123. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの御説明、了承いたしますが、政府におかれましても、見返り資金が十分ある間は、見返り資金の中からこの阿波丸の代船建造に対しまして、ある程度の融通をしようということで、司令部の方との話を進めておつたようであります。最近見返り資金が減つて、特に対日援助資金の減額、打切りによりまして、見返り資金の将来があまり期待できないということで、いろいろ財政上の問題はあると思うのでありますが、もし見返り資金から出ないとすれば、見返り資金以外の方法で、何か政府で今後御方法を御研究くださるということにお願いしたいと思います。
  124. 砂間一良

    砂間委員 この阿波丸事件につきましては、第五国会でこの請求権を放棄するというようなばかな決議をやつたのであります。私どもその当時反対したのでありますが、自由党の諸君が多数をもつて押し切つた、こういういきさつになつております。これは明らかにアメリカの方の間違いだつたということがはつきりしておるのでありますから、この遺家族に対する補償並びに代船建造等については、日本に請求権があるわけでありますから、そういう見返り資金の方から融通するとか、あるいは政府にめんどうを見てくれというような、国内問題としていいかげんに処置をつけなくて、幸いにこの講和の問題もいろいろ論議されておるようなときでありますから、あらためて講和会議に持ち出しまして、そうしてアメリカの方で損害を賠償してもらう、そういうふうにしたらどうかと思うのでありますが、その辺について政府はどうお考えになりますか。
  125. 草葉隆圓

    草葉政府委員 政府は国会の意思を尊重いたしまして、国会におきまして決議をされましたので、それに基きまして阿波丸に関する問題は解決をした。国内的にその遺族並びに船主に対しましては、慰藉の方法を講じて参つたものであります。
  126. 並木芳雄

    ○並木委員 政府としての答弁は、見返り資金が無理であろうくらいで片づけないで、当然見返り資金がなくなつたらば、これにかわるべきものはどういうふうにするつもりであるということを述べるべきが本筋であると思うのであります。現に見返り資金によつていろいろ行われておる事業なり、工事なりがあるのでありますから、そういうものとも関連して行きますけれども、見返り資金がなくなつたり、減つたりした場合に、政府として、これにかわるべき対策を持つているか、この際はつきりしていただきたいと思います。
  127. 稻田耕作

    ○稻田説明員 お答えいたします。御承知のように、船の問題というものは、なかなかむずかしい問題でございまして、われわれも船の予算をお預かりいたしまして、ここ三、四年やつて参りましたがこの前の、昨年の今ごろは、船が大分だぶついておりまして、御承知のような低能船舶の買上げというような法案を御審議願つたような始末でありまして、その直後、今度は朝鮮事変を契機といたしまして、国際的なフレイトの上昇がありまして、船がまたたいへん値打が出ますし、大切になつてつたわけでありますが、そういつたわけでありまして、この見舞金の算出の場合は、阿波丸に対しまして、簿価によつて計算いたしたのでありますが、それが今から比べてみますと、非常に少い額になるのでありますが、一応財政的には——見舞金というのは、平たくいえば、御承知のように包み金のようなものでありますが、これに対しまして、またあとでこの問題を取上げるということは、ほかの今まで解決を見ておる問題とのつり合いもありまして、なかなかこれを持ち出すということはむずかしいと思うのであります。それにかわるものとして御要望されておりますのは利子補給の問題、建造船舶に対する利子を、市中金利と見返り資金の利子との差だけでも補給してやれないかという問題がありますが、これは御承知のようにまた内外ともに問題のある点でありまして、隠れた補給金ではないかというようなあれまでありまして、対外的にも、日本の船舶が国家の援助を受けておるのではないかというような感覚を与えますと同時に、国内的に見ましても、阿波丸だけを拔き出して利子の補給をやるということはいかがかと存じます。これもとるべき策ではないというふうに考えております。
  128. 並木芳雄

    ○並木委員 政府見解はそれでわかるのです。私どもは、今もお話のありました通り、実際に包み金の程度であつたということを政府が認めるくらいなんですから、気の毒だと思つておる。やがて独立しますし、そのあかつきは、今は政府はそう考えておつても、私ども決定に従つてどういういい対策がさらにでき上らないとも限らないわけなんです。そのときにたまたま財源がないからということで、これを困難な事態に追い込まずにおきたい。私の先ほどの質問はそこにあつたわけです。だから見返り資金でも何でもいいわけですが、金があれば見舞金もたくさんやりたいし、また阿波丸の代船に対しても助成して行きたいという要望が私どもにあるわけです。そこでもし見返り資金がなくなつたり、あるいは減つたときに、これに対する財源はどうするか。なくなつてしまえばしかたがないでは、われわれは聞き流しにできないわけです。現に見返り資金でやらておる工事もたくさんあるはずでしよう。そういうものが途中で打切られた場合に、うまく年度末に打切られたならばいいが、そうでなければ政府としては困るわけです。そういうものに対する金のつなぎをどうして行くか、そこを聞いておるわけです。だからもう少し根本的なところをお答え願いたい。
  129. 稻田耕作

    ○稻田説明員 もう少し具体的に申していただきたいのでありますが……。
  130. 並木芳雄

    ○並木委員 もう少し具体的に申しますと、見返り資金というものは、なくなるか、減らされるかという見通しでございましよう。そうすると、見返り資金でやつて来たものが打切られたならば、打切られたままに政府は放置するのか。それでは困るからというので補正予算なら補正予算を出して、それに見合う金をそこに注ぎ込んでもろもろの国策を遂行して行くか。それとも、こういうふうに見返り資金にいかにも期待をかけておるようですが、この本質は、見返り資金からであつてもなくてもいい。どこの財源から出てもいいわけなんです。見返り資金が一番出してもらいやすいようですから、請願者は、そうしておるのだと思う。そうすると要するに根本問題として、見返り資金が打切られ、または減らされたときに、これに対する政府の財政的の対策いかんということなんです。
  131. 稻田耕作

    ○稻田説明員 この問題は財政の最高政策に関する問題だと思うのでありまして、私が私見を申し上げるより、大蔵大臣あたりから答えていただいた方が当を得ておるのではないかと思います。
  132. 並木芳雄

    ○並木委員 事務局として腹案はないのですか。
  133. 稻田耕作

    ○稻田説明員 事務局といたしましては、見返り資金もまだ相当ございますし、そう根本的な問題を検討しておらないのであります。     —————————————
  134. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第一四、移民問題に関する請願今澄勇君外五名紹介、第八九七号を議題といたします。専門員の説明を求めます。
  135. 佐藤敏人

    ○佐藤専門員 対日講和の促進に伴い、講和条約の立案の全貌が明らかにされて来たが、講和条約の重点でなければならない人口問題解決には触れていないようにうかがわれる。過去の戦争が本問題に基因していることを思うとき、これが解決は焦眉の急務である。ついては、講和条約中に日本移民問題を規定する重要案件を国会の権威にかけて要請されたいというのであります。
  136. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑がなければ次に移ります。
  137. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第一五、在外資産補償に関する請願外一件、淺香忠雄紹介、第一〇〇三号、日程第一六、個人在外資産補償に関する請願岡西明貞紹介、第一一二七号を一括議題といたします。紹介議員淺香君の説明を求めます。
  138. 淺香忠雄

    淺香委員 この請願の要旨は、敗戰によつて日本人の外地財産はことごとく喪失するの結果を見るに至つた。ことに外地居住者は、永住の地を失うとともに、親子二代、三代築き上げた一切の財産を一朝にして失うこととなり、まる裸の姿にて本土に移転を命ぜられたのである。従つて引揚者が多年外地において取得蓄積した資産は、国際慣例の上からも、また新憲法に基く人民の権利上からも、当然補償されるべきものである。ついては、すみやかに在外資産の確認と補償を実施されたいというのであります。
  139. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑ございませんか。
  140. 北澤直吉

    北澤委員 先ほど阿波丸の代船のときに問題になつたのでありますが、憲法第二十九条によると、「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。私有財産は正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」こういうように正当な補償ということが書いてあるわけであります。そういうことからいたしますと、今回の講和条約によつて、個人の在外財産が賠償に充てられるというような場合に、ある程度国がこれに補償を与えるということが憲法の規定から見ても必要だと思いますが、そういう点についての政府のお考えを伺いたい。
  141. 草葉隆圓

    草葉政府委員 請願なり、ただいまの御質問の趣旨、ごもつともと存じます。ただ在外資産の問題は、結局講和条約によりましてその取扱いが確定せらるべき性質のものと存じておりますから、これに対しまして具体的に政府の所信を今申し上げることは差控えたいと思います。
  142. 並木芳雄

    ○並木委員 この前私の方の苫米地さんが質問に立つたときに、樺太とか台湾、朝鮮のような旧日本領土日本人資産は、在外資産でなく国内資産であるから、在外資産から除外すべきではないかという趣旨の質問をしてあるのでありますが、ただいま次官から講和条約のときにきまるであろうというお話でございました。草案を見ますと、これにちよつと適当するところではないかと思われる項目がございます。「しかしながら日本は、一九四一年十二月八日以後一九四五年九月二日に至る期間中に、戦後日本が主権を放棄した領土または連合国信託統治下に置かれている地域に所在する一切の日本または日本人の財産権および利権については、以下に掲げる場合を除くのほか、その取得保有、処分に関する一切の権利を各連合国に対し与えるものとする」。この中の「戦後日本が主権を放棄した領土または連合国信託統治下に置かれている地域」という文字の中に、先ほど苫米地さんの質問にありました樺太、台湾、朝鮮のようなものが入るのでしようかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  143. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは講和条約領土条項規定いかんによるわけでございます。いずれ対日講和条約ができれば、その点については御説明、御返答をいたすことができるかと存じます。
  144. 菊池義郎

    菊池委員 他の地域は別でありますが、今日米国が占領しておりまする南洋群島、もとのわれわれの委任統治領ですが、ここには砂糖会社、あるいはコプラの会社、あるいはアンガウルの燐鉱会社、その他二十幾つの会社がありますが、この在外資産はたいへんなものです。米国ならば相手が話がわかる国でありますから、日米経済協力の線に沿つて日本の外交において政治力を十二分に発揮すれば、アメリカの勢力圏にありますところの南洋群島の在外資産は何とかなると私は考えておる。こまかい法律上の詮議は別といたしまして、こういう点について日本政府といたしましては、何か折衝を続けておられるかどうでしようか。
  145. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問の御要点はごもつともと存じます。なるべくそういうふうになりたいと希望いたしておりますが、現在のところ、はつきりと申し上げる段階にまだないのでございます。
  146. 菊池義郎

    菊池委員 たとえばさつきも、名も知らない小さな島の燐鉱の話がありましたが、マンガウルの燐鉱石はたいへんなものです。日本がたいへんな設備をいたしまして、土人を何千も使つてつてつたのです。それをぴたつとやめてしまつたというようなわけなんです。継続の事業と、向うに残された在外資産は、相手がいいのですから——ソ連なんかでは話にならぬのですが、アメリカですから何とでもなると思う。外務省の政治力はこういう方面において十二分に発揮すべきであると思うのですが、どうぞひとつ諸君の奮励努力を切望してやまないものであります。
  147. 淺香忠雄

    淺香委員 在外資産補償に関して、政府においては十分な調査を今日までやつておられますか。
  148. 草葉隆圓

    草葉政府委員 できるだけ十分な調査をいたしております。     —————————————
  149. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に日程第一七、全面講和等に関する請願砂間一良君外一名紹介、第一七三九号及び日程第一八、平和に関する請願今野武雄紹介、第二三五〇号を一括議題といたします。紹介砂間委員の御説明を求めます。
  150. 砂間一良

    砂間委員 最初に日程第一七、全面講和の即時締結要求と再軍備反対についての請願の要旨を御説明申し上げます。  最近新聞紙上に、日本国民の多くは、必ずしも全面講和を望んでいないこと、また講和条約後に外国軍隊が駐屯することを希望しているという記事が報道されています。今現実には、戦争準備のために、戦争中とまつたく同じく、生活必需物資は値上りし、物はなくなり、非常に生活は苦しくなつています。私たちは戦争の恐怖を感じ、わが子、わが夫を戦場に送る戦争に反対です。日本の婦人はみな、一国ないし数国との講和によつて、一方の国とは仲よくなつても、他の国とは敵となる片手落ちの独講和に反対し、どこの国とも仲よくなる全面講和が結ばれることを心から希求しています。また日本がアジア諸国に対する侵略基地となり、日本人がアジアの人々を殺さなければならない再軍備に反対しております。これは最近の各労働組合、なかんずくその婦人たちの態度、あるいは多くの婦人団体が、再軍備反対と全面講和締結を決議していること、あるいは昨年六月ダレス特使に対し、全面講和締結、戦争反対の希望を提出した平塚雷鳥氏外四名の婦人が、先日重ねてダレス特使にこの希望を提出したことによつて、あるいはまた商店の店先で、家庭で、常に戦争はいやだ、どこの国とも仲よくなりたいということが、話題になつていることなどによつて証明されます。ところが新聞やラジオは、この日本婦人の意思に反した報道をし、それがあたかも国民の世論であるかのごとく見せかけています。国会では全面講和締結へ向つての努力はまつたく払われず、政府国民の世論を押えて独講和を押しつけようとしています。重ねて申します。私たちは、日本軍事基地になり戦争を起す独講和に反対し、全面講和を望みます。国会はすみやかに全面講和の即時締結、再軍備反対を取上げられるよう請願いたします。というのがこの請願趣旨であります。何とぞ満場一致この請願を御採択あらんことをお願いいたします。  次に日程第一八、平和に関する請願の要旨を申し上げます。この請顔は、東京都北多摩郡清瀬村上宮教会清瀬療園の平和懇談会から提出されたものでございまして、佐藤己未夫君外百三十四名の署名のある請願でございます。請願の要旨は長いのでありますから、簡に御説明申し上げます。過ぐる太平洋戦争において私たち日本人として人類最初の原子爆弾をこうむり、その惨禍を身をもつて味わいました。その言語に絶した凄惨さのゆえに、また生あるものすべてを絶滅せずにはおかない強烈なる効果のゆえに、私たちは心から原子兵器を憎みます。私たちは原子兵器の使用に反対せざるを得ません。いな、原子兵器禁止を各国に要求する義務があると考えるのであります。太平洋戦争が日本の敗戦に終つてから五年半、歴代政府の努力にもかかわらず、国民の生活が安定したとは言えない現在、戦争の危機が叫ばれ、再軍備が提唱されております。私たちの療養所においても、国家予算の見地から生保打切り、一部負担の増加、あるいは医療従業員の減員等、医療の目的とは逆行するような措置がとられております。他方日雇い労働者の生活等を見ても、再軍備等のために非常に生活水準が低下している。それは困るからどうかこの戦争に反対してもらいたいというのであります。さらに人間が人間を殺戮することは罪悪であります。人間の大量殺戮である戦争は、たといそれがいかなる名目のもとに行われようとも、大いなる罪悪であります。このゆえにこそ戦争は防止されねばなりませんし、現に行われつつある朝鮮戦乱も早急に終結されなければならないのであります。この際私たち日本人として、世界平和の実現のために、朝鮮戦乱の終結の一刻も早きことを、米・英・ソ・中四大国にお願いしたく思います。また私たち日本人の渇望してやまぬ講和も、将来における戦争の可能性をなくするためには、米・英・ソ・中の四大国間の協調による講和でなければなりません。私たち日本人は、そういう最も望ましい形で講和が実現されるよう、米・英・ソ・中の四大国で話し合つていただくようお願いしたく思います。というのがこの請願趣旨であります。何とぞこの請願を満場一致御採択あらんことをお願いいたす次第であります。
  151. 守島伍郎

    ○守島委員長 きようは時間がございませんから、これに対する質疑等は次会に延ばしまして、本日はこれにて散会いたします。  次会は公報をもつてお知らせいたします。     午前零時五十分散会