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1951-05-23 第10回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十三日(水曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君       淺香 忠雄君    伊藤 郷一君       植原悦二郎君    大村 清一君       小川原政信君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    近藤 鶴代君       仲内 憲治君    中山 マサ君       福田 篤泰君    並木 芳雄君       松本 瀧藏君    武藤運十郎君       砂間 一良君    米原  昶君       高倉 定助君    黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (条約局長)  島津 久大君         外務事務官         (条約局長)  西村 熊雄君         海上保安官         (警備救難部         長)      松野 清秀君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 五月十九日  委員砂間一良辞任につき、その補欠として江  崎一治君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員小川原政信辞任につき、その補欠として  尾崎末吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員尾崎末吉君、江崎一治君及び福田篤泰君辞  任につき、その補欠として小川原政信君、砂間  一良君及び星島二郎君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 五月二十一日  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一四五号)(参議院送付) 同月二十二日  奄美大島諸島日本復帰等に関する請願(井上  知治君外九名紹介)(第二二二八号)  アナタハン島の同胞引揚促進に関する請願(岩  本信行君紹介)(第二二二九号) の審査を本委員会に付託された。 同日  アナタハン残留者引揚促進に関する陳情書  (第七八七  号)  海外同胞引揚完了促進に関する陳情書  (  第七九七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一四五号)(参議院送付)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会開会いたします。  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案内閣提出第一四五号)を議題といたします。本案につきましては質疑及び討論もございませんようでございまするから、ただちに採決に入ります。  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案内閣提出第一四五号)について採決いたします。本案原案の通り可決するに御賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 守島伍郎

    ○守島委員長 起立多数。よつて本案原案の通り可決いたしました。
  4. 砂間一良

    砂間委員 議事進行について……。私は委員長議事運営やり方につきまして、きわめて遺憾の意を表するものであります。と申しますのは、委員会における議案審議は、大体委員会に付託された議案提出されたその順序に従つて審議して行くのが普通のやり方だと思うのであります。ところがこの平和擁護に関する決議案につきましては、すでに二月からこの委員会に付託されておりまして、その後もう三箇月近くもたつておるのであります。それを何らの理由なくして、委員長審議をほつたからかしにしてある。うんだとも、つぶれたともわけがわからぬで、たな上げにしておる。どういうわけでこの審議サボつておられるのか、委員長からはつきりひとつその理由と事情を明らかにしていただきたいと思います。私どもの考えるところによりますと、今日日本国民の最も要望しておる切実な問題はこの平和の問題でありまして、この平和擁護に関する決議案は、全日本国民の声を盛つたものであるというふうに確信しておるのであります。今この朝鮮戦争等をきつかけにいたしまして、戦争の脅威が非常に強くなつておるときに、こういう決議案審議ということはきわめて重要だと思うのでありますが、委員長はこういう重要な案件審議をまるでほつたかしにしておいて、そうして在外事務所設置だとかなんとかいう大して重要性もないやつばかり先にやつておるということが、私どもはまことに理解に苦しむのであります。この平和擁護に関する決議案は、案文を読んでみましても、だれでも異存のないところだと思う。    平和擁護に関する決議   日本は、ポツダム宣言の受諾により、武装解除徹底的民主化を通じて、平和国家の建設を義務づけられている。   特に、日本は原爆の惨かを最初にうけ、戦争の悲惨と罪悪を身にしみて体験している。従つて国民は新  戦争を心から恐怖し、憎悪し、その危険におびえている。   よつて政府国民の要望にこたえ、平和を守るため、次の措置をとられたい。  一 平和を守るための一切の国民運動を奨励助長すること。  二 犯罪的戦争を宣伝し、ちよう発し、並びにこれに協力する一切の行為を禁止する措置を講ずること。   右決議する。
  5. 守島伍郎

    ○守島委員長 議事進行は簡単にお話ください。
  6. 砂間一良

    砂間委員 簡単にやります。自由党といえども反対の余地はないと思うのであります。ともすれば、平和擁護運動が何か共産党の一つ外郭運動であるというようなでたらめなデマ宣伝をやつている向きもないではありませんけれども、すでにこの平和擁護運動は、あらゆる学者、思想家、宗教家……。
  7. 守島伍郎

    ○守島委員長 簡単に議事進行だけにしてください。
  8. 砂間一良

    砂間委員 各界各層人たちがこぞつてつておるのでありまして、たとえば天皇の義弟に当る東本願寺の法王大谷光暢氏のごときも、これに参加しておられます。またクリスチヤンの団体であるとか、あるいはいろいろな間の諸団体が、こぞつてこの平和擁護運動を強力に進めておるのであります。こういうときにおきまして、国会がこの国民の声を代表して平和擁護に関する決議をするということは、最も時宜に適した、また最も重大な問題だと思うのであります。そういう案件成規手続をとつて国会提出され、しかも委員会審議に付託されておるのに、その審議を二箇月近くもほつたかしておいて、そうしていつ審議するかわからぬような、そういうふうな委員長議事運営やり方に対しましては、私どもはどうしても合点が参りません。この際委員長はいつこの議案審議してくださるのか、それをひとつはつきり明示していただきたい、と同時に、これまでサボつてたな上げにして来た理由を明らかにして、ここで弁明していただきたいと思うのであります。
  9. 守島伍郎

    ○守島委員長 お答えいたします。あなたの御意見はあなたの御意見として承りますが、あなたの方からお出しになつたものを、私どもはそう重要で緊急なものと認めておりません。それでほかの議案にかかつております間、延ばしておりましたが、近く理事会を開きますから、その理事会で決定いたしましてとりはからいます。  なお原案に帰りまして、本案につきましての報告書の作成は、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議ないと認め、さようとりはからいます。     —————————————
  11. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に国際情勢等に関する件を議題といたします。政府側より発言を求められておりますから、これを許します。外務政務次官
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先回国際情勢について御報告を申し上げました後におきまする私ども関心を最も引いておりまする国際問題は非常に多く、その内容もかなり複雑でありまするが、以下特に重要と思われまする。そうしてまた世界関心を集めておると思われまする問題につきまして御報告を申し上げたいと思います。第一は、朝鮮問題についてでございます。朝鮮問題につきましては、戦局状態は、最近共産軍の攻勢の再開によりまして、一層活発化して参つた感がいたしまするが、しかし世界視聴を集めておりまする点は、これら戦局自身の問題ということよりも、むしろ朝鮮動乱に関する諸種の国際的な動きにあるように思われるのであります。この点から見ますと、マツカーサー元帥解任後、北鮮側では国際連合総会議長安全保障理事会議長に対しまして、国際連合軍戦闘行為を停止して、平和擁護協議会の議決に基いて、和平解決を求むべきであるというような意味の電報を送りましたが、この声明に対しましては、三人調停委員会におきまして検討の上、応答しないことになつたのであります。またアジア・アラブ十二箇国は、このような新事態に対しまして、北京におりまするインド大使を通じて、再度中共意向を打診いたしましたが、中共側から国連側の対中共非難決議の撤回を要求いたしましたために、これも失敗に帰した次第であります。  このように、さしあたり和平の望みがないと見ましたアメリカは、去る七日、国連の対中共集団処置委員会に対しまして、中共北鮮支配下の地域に対する戦略物資全面的輸出禁止を要請いたしました決議案提出するに至つたのであります。この案は、従来中共に対しまする経済制裁反対しておりましたイギリスなりフランスなりが、このアメリカ案に同調するに至りましたために、この委員会総会では棄権を除く全会一致をもつて可決され、これによりまして、二月一日に国際連合総会において決議いたし、その共産侵略行為を非難された中共は、今やその行動に対しましても、実質的な制裁処置がとられることとなつた次第でございます。  なおイギリスは、これに先だちまして、中共に対するゴムの輸出を今後完全に停止する意向を明らかにいたしたのでありまするが、この処置国際連合集団処置委員会におきまするイギリス態度とともに、最近の国際情勢が、イギリス中共に対しまする態度に、微妙な影響を與えておりますることを示すものであろうと存じます。国際連合が漸次中共に対する経済圧迫を強化して参り、これをなすにつれまして、民主陣営諸国態度も、次第に硬化の方途をたどつて来ておる状態でありまするが、共産陣営の方におきましては、最近二つの点が特に注目を引く点と思われるのであります。  その一つ国連マリクソ連代表がオースチン・アメリカ代表に対しまして、朝鮮動乱解決について米ソ会談を開こうという瀬踏み的なことをいたしたという点であります。これは両方の当事者とも否定しておるのでありますが、しかし非公式にあつたという事実そのものは否定していないようであります。  第二の点はアメリカ上院ジヨンソン議員が、朝鮮動乱勃発一周年を期して、三十八度線を境として停戦をし、外国軍隊は年内に撤退することにすべしということを提唱いたしまして、それがソ連プラウダ紙に大きく報道されたという事実であります。これまでのソ連報道機関は、このような反対側提案に対しましては、ほとんどこれを無視して来ておつた状態でありますのに、この報道がただいま申し上げましたように強く大きく取上げられました点が、注目を引く点でございます。  なおアメリカ上院におきまするマツカーサー元帥解任の問題についての軍事外交合同委員会におきまして、マーシヤル長官がなしました証言の発表せられないものの中に、朝鮮動乱の将来に対して大きな楽観材料となるべきものがあつたと言われておるのでありまして、一上院議員はこれを漏らしたことによりまして、その後委員会の席で陳謝をいたしましたが、その内容につきましては、新兵器に関するものであつたことを示唆する報道も行われておるのであります。このマツカーサー元帥解任の問題をめぐりまする論争で、朝鮮動乱に対するアメリカ政府当局方針が、いろいろな角度から明らかにされましたが、その根本が朝鮮動乱の拡大を避けつつ、あくまでも侵略を排除することにありますことは、言うまでもないことでございます。こうして、まだ手放しの楽観はもとより許されないと思われまするが、朝鮮動乱の局地的おちつきのきざしが漸次濃化しておると思われる次第でございます。第二の問題は、軍拡中心にしました材料配分等に基いたイギリス閣僚辞職という問題が、相当注目を引く問題であろうと存じます。イギリスでは四月の末にベヴアン労働相ウイルソス商務相との辞職相当注目を引いたのでありますが、辞職の直接の原因となりました点は、従来徴收を免除されておりました、御承知のめがねなり義歯の代金の半額を、患者から徴収することになつたという点についての問題でありますが、しかしそれはそう簡単な問題ではなくて、その背後には相当深い問題がひそまれておつたと思われるのであります。これに対しましてベヴアン労働相は、イギリス下院におきまして辞職理由を述べました中に、アメリカの再軍備計画が、国内民間消費圧迫によらずして、生産増強によつてこれをまかなおうとしておることは、事態を重大化しているものである。すなわちこの方法で行われて来るとするならば、世界原料不足は一層進んで来て、アメリカ以外の国々民間経済はそのために破滅するであろう。再軍備を行う一方、国民生活水準社会保障計画は従来通り維持されなければならないという意味のことを述べて、その立場を説明されたのであります。この辞職契機といたしましてイギリス労働党はひとまず党内の団結を固めて、一応その危機を脱したのでありまするが、戦後六年にわたる耐乏生活によりまして、一般大衆もようやく労働党を離れつつあるといわれておる点もあるのでございます。ことにその後の補欠選挙状態を見ましても、あるいは五月一日に実施されました全イギリスの各都市の市会議員選挙の結果に現われました状態から考えましても、保守党の総選挙実施の要求が日々強くなりつつある状態でありまして、一部ではおそくともこの秋までには総選挙は必至であろうと見られておる状態と思われます。このイギリスの二人の閣僚辞職につきましては、世界の再軍備計画に伴いまする原料不足が、今申し上げたようにその背景となつておると思われるのでありますが、ウイルソス商務相はその辞職理由の中で、イギリス世界原料供給上妥当な配分を受けておらないと申しておりますし、また現在程度の原料入手では、四十七億ポンドによる再軍備計画は、とうてい実行はできないと申しておるのであります。この点から見ましても、各国の軍拡に伴いまする原料需要の増加に伴つて、軍需を主とする原材料の買い進みは需要供給関係に大きな変化を示して、米国西欧諸国の間にも軋轢を生ずるに至つたことは明らかでありまして、この点で原料供給がはたして需要を保つて行くことができるか、実際の状態において原料が足りない状態であるかどうか。またもしそうだとするならば、早急の増産によつてこれを補給することができるかどうか、あるいはまた民間需要の削減によつてこれをまかない得るかどうか、こういう問題を検討しまして、国際的に需給の調節をはかることが、たいへけな急務となつて参つたのでありまして、すでにこの点につきましては、先回報告申し上げました国際原料割当機関がかような趣旨から設けられて、かつ原料別割当に関する委員会がすでにそれぞれワシントン会議を開かれ、各種別手続規定を定めますと同時に、小委員会を設けて、割当原料に対する検討が行われておることを申し上げた次第であります。この会議には共産主義国を除きまして、生産消費に特に関係の深い国々が参加しているのでありますが、まだその結果が終了いたしたものはないようであります。生産消費国家にはどのような割当が今後行われるかということは、まだ不明でありますが、しかしこの結論が出まするまでには、相当いろいろな困難な問題があつて、これを克服しなければならないだろうと存じます。わが国におきましても、この問題につきましては、先回も申し上げましたように、重大な関係を持つものでありまして、ワシントンに現在使節団を派遣して、主として米国よりの原料入手に努力せしめますと同時に、貿易協定を通じて、諸外国からもでき得る限り、多くの原料を輸入するよう努力をいたしておる次第でございます。  それから最近特に大きな注目を引いておりまするイランの問題について一言御報告を申し上げておきます。イランの問題は去る三月イラン国会がアングロ・イランアン、いわゆるAI国有化法案を可決いたしましてから、世界視聴を一時に集めた感があるのであります。この法案の可決を契機といたしまして、排外的国民主義はいよいよ高揚をいたし、左右両翼による極端な反英、反米デモが行われ、さらに南部油田地帯におきましても左翼によるストが発生して、イギリス人三名、イラン人多数の死傷者さえ出すに至つた状態であります。この間ワシントンではイラン問題に関する御承知米英会談が開かれて、その結果満足すべき結果をもつて終つたと、簡単にコミユニケが発表されましたが、当時イランアラ首相は、米英イラン干渉だと声明を発した次第であります。この国有化具体案について、国会提案注目されておりましたが、四月二十五日、委員会から提案されましたAI接収についての勧告は、その後御承知のように上下両院を通過いたしまして、五月二日には国王の署名もなされるに至つたのであります。この問題を契機といたしまして、英国からなされました重大警告に自信を失いましたアラ内閣は遂に総辞職をいたしまして、国民戦線派モサデグ博士に組閣が委嘱されまして、現在モサデグ内閣によつて処理をされておる状態であります。このモサデグ内閣の所属いたしておりまするのは、いわゆる国民戦線派でありますが、これは極右的民族主義政党でありますから、そこに一層反米英的であると考えられますと同時に、反ソ的であるとも思われるのであります。最近国内共産運動に対しまして相当強く取締りをいたしておるようであります。現在のところアメリカイランAI国有化を認めますと同時に、イギリス技術的管理及び石油の対英供給持続を認めることによつて、紛争の解決を期待しておるようでございますが、イギリスといたしましては、イランの一方的措置が他の中近東諸国における権益協定に将来相当大きく波及を来すことをおもんばかりまして、イランが現在の方針を固持する限り、国際司法裁判所に提訴をも辞せない態度と考えとを持つておるようであります。十九日イラン政府に手交されましたイギリスの覚書にも、このイギリス態度が述べられておると伝えられておる次第であります。なお同国の共産分子は、接収貫徹を期する、今申し上げました民族主義的な現内閣が、対英交渉という難関に直面するこの時期を待つて政権の掌握をねらつておるといわれておりまして、三箇月以内に接収を終ろうとする現内閣が今後どのような態度に出るか、まことに重大な状態になつて来ておると思われます。  次にオーストラリアの総選挙の問題について、一言申し上げます。四月二十八日行われましたオーストラリアの総選挙は、国際的にも非常な注目を拂われておつたのであります。それは労働党は従来アメリカの対日講和案のように、再軍備禁止条項を含まない平和条約には絶対反対であると唱えて参つておりましたから、従つて選挙の結果、野党が勝利を得ました場合には、アメリカ欧州政府とこれまで進めて参りました講和の下相談も、一応御破算になるのではないか、またなるわけであると考えられます点から、相当大きくこの総選挙の結果が注目されておつたのであります。しかし選挙の結果は、上院では比例代表によりますために、まだ判然とはいたしませんが、下院では政府党が多数を制しまして六十六対五十五という結果を示したのであります。上院でも、いろいろな報道を総合いたしますると、政府党は前回よりも数議席を増して、労働党とほぼ同数の議席を獲得する模様でありますから、保守党政権を維持する点については、従来通り維持し得るという状態に相なつて参つたのであります。なおアメリカ政府は、この濠州の総選挙に先だちまして、アメリカオーストラリア、ニュージーランド間に安全保障に関するとりきめを結ぶ用意がある旨を明らかにしたことが、この関連におきまして想起される次第であります。  最後パリにおきます四箇国外相代理会議状態について一言申し上げておきたいと存じます。四箇国パリ外相代理会議は、開会後二箇月を経ました今日、なお続行中でありますが、アメリカイギリスフランス側ソ連の主張の背後の対立の焦点は、ソ連西ドイツの再軍備問題を第一義的に取扱つておりますのに対しまして、アメリカイギリスフランス側西ドイツの再武装問題は、現在の国際的緊張の結果であつて、それは決して直接の原因ではない。ソ連東ヨーロッパ諸国が厖大な軍備を持つているからこそ、西ドイツの安全の問題も起つて来るのであつて国際的緊張原因を全般的に検討すべきであると主張いたしておるのであります。こうして三月五日開会いたしましてから、ほとんど進展を見ない状態にかんがみまして、三国側は五月二日に三つ議題草案を新しく整理して提案いたしまして、ソ連に対しまして、そのいずれかに同意するように示したのであります。しかしその三つ提案に対しまして、ソ連側はそのいずれにも同意を與えておりませんが、現在のところこの提案中心として四箇国間に討議が続けられておる状態でありまして、この討議においてソ連側は、新たに北大西洋条約アメリカ軍事基地の問題を議題に加えることを主張いたしましたが、この点に対しましては西欧側のいるるところとはならなかつたのであります。ドイツの非武装化の問題は、開会以来ソ連が最も重視しておる問題でありまするが、この問題を議題のどこに置くかという問題を、外相会議自体で決定しようとするアメリカ提案が、ソ連代表によつて受入れられたとも伝えられますので、四箇国外相代理会議もそろそろ大詰めに近寄つた感があると思われるのであります。すなわちこの四箇国外相代理会議議題を決定する予備会議がどつちにころぶかは、世界政局全般の将来の発展に相当大きな影響があると存ぜられまするが、朝鮮動乱の帰趨とともに世界関心を集めている重大な点と存ずるのであります。  対日講和の問題につきましては、先般総理大臣から本会議において、また本委員会におきましてその内容を御報告申し上げた次第でございまするが、その後の国際的な動きにつきましては、新聞等に詳しく報道されておる域を脱しておらないと存じまするから、この点につきましては、総理の御説明以上につけ加える点がございませんので、以上をもちまして最近の国際情勢の御報告といたします。
  13. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは質疑を許します。並木君。
  14. 並木芳雄

    並木委員 私は大橋法務総裁に質問したいと思います。ただいまも草葉次官から最後のところで報告がありましたけれども、対日講和条約をめぐつて政府国会に対する報告は、まことにおざなりであるような感じがいたします。私は、先日来の政府の言動を見るときに、いかにも国会軽視のきらいがありますので、実ははなはだ遺憾としておる。わが国憲法がはたしてこれを許しているのかどうか。あるいは憲法違反の疑いもあるのではないか。そこで私は、対日講和条約締結に関連し、憲法上の疑義について、責任国務大臣たる大橋法務総裁の見解をただしたいと思うのであります。  第一に憲法第六十二条の国政調査についてであります。憲法第六十二条には「両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」とあります。ここにいう国政調査とは、どういう事項をさすのか具体的には示されていませんので、無制限であると思いますけれども、この点いかがでしようか。従つて条約案の調査も当然この中に含まれると考えていいかどうか。もしそうだとするならば、国会内閣総理大臣に対し、条約の草案を提出するよう要求できると思いますけれども、この点いかがですか。しかるに吉田総理は条約の草案を国会に示しておりません。総理は、条約の草案を発表しないという約束をしたり、国会に示さないということはできないわけで、この点あるいは憲法違反の疑いがあるのではないかと思うのでありますが、総裁の見解をまずお聞きしたいと思います。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまの並木君の御質問の第一点は、憲法第六十二条の国政に関する調査というのがどういう事項をさすか、具体的には示されていないから、無制限であると思われるがどうか、ということであります。憲法第六十二条の国政調査権の範囲は非常に広いのであります。従いまして、もちろん条約に関する調査も、このうちには当然入つておるというふうに解釈をいたしております。しかしながら憲法自体は、議院の調査権及び調査の手段といたしまして、証人の証言等を要求する権能を認めておるのにとどまるわけでございます。これに対応した義務までを定めたものとは認められておらないのであります。この義務は憲法から来るのではないのでありまして、証人につきましては別に議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によつて規定をいたしてあります。これを見ますると、第五条におきまして、「各議院若しくは委員会又は両議院の合同審査会は、出頭した証人が公務員である場合又は公務員であつた場合その者が知り得た事実について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該公務所又はその監督庁の承認がなければ、証言又は書類の提出を求めることができない。」ということになつております。そして第二項におきましては、「当該公務所又はその監督庁が前項の承認を拒むときは、その理由を疏明しなければならない。その理由をその議院若しくは委員会又は合同審査会において受諾し得る場合には、証人は証言又は書類を提出する必要がない。」第三項「前項の理由を受諾することができない場合は、その議院若しくは委員会又は合同審査会は、更にその証言又は書類の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣声明を要求することができる。その声明があつた場合は、証人は証言又は書類を提出する必要がない。」こういうような規定があるのでございます。これらの規定の趣旨は、公務員が証人となりました場合、祕密事項については一定の手続及び条件のもとに証言を拒否できるということを定めておるわけであります。これらの規定の趣旨から考えますと、条約の草案をあらかじめ国会報告いたしますことが、相手国との関係上、国家の重大な利益に影響を及ぼすような場合におきましては、政府としてその公表を拒否できるわけでありまして、かような法律の規定を背景といたしまして、政府は、相手国の希望その他相手方との交渉の必要上、条約草案を一定の時期まで公表しないという約束もいたし得る根拠があると解釈をいたしております。
  16. 並木芳雄

    並木委員 それでは私は質問でございますから、その次に移ります。  第二点といたしまして、外交関係国会報告することについてお尋ねしたいと思います。憲法第七十二条には、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案国会提出し、一般国務及び外交関係について国会報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」とあります。この第七十二条は、内閣総理大臣の権限を定めたように読めるのでありますけれども、そうであるかどうか、それとも権限とともに義務をも定めたものであるかどうか。外交関係について国会報告するということは、権限であるか義務であるかということであります、もし義務であるとするならば、なぜ吉田総理大臣は、条約の内容国会報告しないのであるか。これはただいまの総裁の御答弁ともあるいは関連して来るかと思いますが、報告しない点はあるいは憲法違反の疑いが生じて来ることにもなりますので、法務総裁の考えをお示し願いたいと思います。
  17. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先はどの点は、憲法第六十二条と関連いたしましてのお答えでございましたが、今回は憲法第七十二条の関係についての御質問であります。憲法第七十二条の規定は、内閣総理大臣の権限を定めたように読めるが、はたしてそうであるか。一般国務、ことに外交関係について国会報告することは、権限であると同時に義務でもあるわけではないかという趣旨の御質問と存ずるのであります。憲法第七十二条の規定は、内閣総理大臣の権限及び所掌事務の範囲を定めたものでありまするが、同時に一般国務及び外交関係について国会報告いたしますることは、内閣総理大臣の義務でもある、こういうふうに解しております。従つて外交関係についてあるいは一般国務について国会報告することは、内閣総理大臣の権限でありますると同時に、確かに義務である。しかしながらその義務は、国政及び外交の全般の状況についての報告で十分なのでありまして、この第七十二条の要求はそれ以上ではない。特定の事項、ことに時期的にそれを公表いたしますることが国家公共の利益に反するような事柄まで必ず報告しなければならぬという義務までを課しているものとは解しておりません。
  18. 並木芳雄

    並木委員 きようはお伺いするだけにいたしますから、第三に移ります。憲法第七十三条、国会に対し条約の承認を求めることについてお確かめしたいと思います。  憲法第七十三条の三には、内閣の行う事務として、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」とあります。条約は署名によつてすでにその内容が確定するのでありますから、署名はすなわち実質上の締結であると考えられるのであります。従つて事前に、すなわち締結前にというのは、署名前にと解すべきではないかと思うのでありますが、法務総裁のお考えはどうであるか。すべて条約が署名前に国会の承認を求めることが新しい民主主義の憲法の建前であり、国権の最高機関たる国会を尊重することになるのではないかと思うのでありますが、総裁の見解をお尋ねしたいと思います。「また時宜によつては事後に、」という但書は、私はあるいは不要であるのみならず、有害ではないかと思うのでございます。国会が開かれておらなければ、臨時国会を開けばいいのでありますから、不便は感じないと思います。従つてこの点不要ではないか。のみならずこの「時宜によつて」ということを内閣が幅を広く解釈して濫用するおそれがないとも限らないと思うのであります。条約を締結しておいて、いつまでも国会の承認を求めないでおくこともあり得るわけです。国会はこの場合、つんぼさじきに置かれるおそれがあります。法務総裁は「時宜によつて」をどう解釈されますか。国会が開かれていなければ、臨時国会を開くか、次の国会には必ずかけるというように、ごく狭い意味に解すべきであると思いますが、いかでしようか。私は事後承認の但書は、これをむしろ憲法から取除いた方がいいのではないかと考えるのですけれども、この点法務総裁のお考えをお聞きしたいと思います。
  19. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まず憲法第七十三条第三号の「事前に」という点の意味でございまするが、条約には御承知の通り調印のみによつて完全に有効に成立いたしまするものと、調印後の批准によつて成立いたしまするものと二通りあるわけです。従いまして「事前に」というのは、文字通り条約が確定的に成立する前にという意味でございまして、調印のみで完全に成立するものにつきましては調印の前、また批准によつて成立するものにつきましては批准の前ということを意味するものと解しております。  次に「時宜によつて」ということは、どういう意味であるかということですが、これは場合によつては、あるいは都合によつてはといつたような意味に近い相当広い意味を考えておるわけであります。従つて政権の裁量の幅が非常に広くなつておるということは言い得るのでありまするが、これは諸外国でも条約締結については、比較的行政部に重点を置かれておるところでありまして、わが憲法といたしましても、その通例に従つたものと存ずるのであります。内閣がこれを濫用することを心配せられておられるようでありますが、事後の場合におきましても、いずれは国会の承認を求めるものでありまして、その際に批判を受けるわけでございまするから、政府は十分なる良識をもつて行動することは当然であり、濫用ということは考えられないと存ずるのであります。ことに日本憲法は諸外国の実例に比べまするというと、広くすべての条約を国会の承認を求めるという建前になつておるのでございまして、この点は一部の国におきまして、条約のうち特定の種類の条約に限つて国会の承認を求めるというようなやり方に比べますると、日本憲法の範囲は非常に広くなつておりますので、これらの点から考えましても、やはり「時宜によつては事後に」承認を求めるという場合も相当あり得るということを考え、またそれがために適切な規定をいたしてある、こう考えますると、現行憲法はこのままでさしつかえないと考える次第であります。ことにたとえば一例をあげますると、政策には大きな関係のない技術的な条約を、国会閉会中に結ぶという場合におきましては、当然事後の承認ということが考えられることであります。これらの場合を救済いたしまする規定といたしまして、現行憲法はこのままでさしつかえなかろうと考えます。
  20. 並木芳雄

    並木委員 その場合、国会が開かれておらなければ、必ず臨時国会を開くか、次の国会にはかけるというふうに、「時宜によつて」の意味を狭く解釈されませんかどうか。
  21. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これはやはり条約の内容によることだと存じます。その辺は行政部の良識に基いて判断をいたしまして、憲法の規定の誤りなき運用を期して参りたい、こういうことであると思います。
  22. 並木芳雄

    並木委員 そうしますと、今度の対日講和条約も、必ずしも国会閉会中であるからといつて臨時国会を開かないということも言えるわけですか。
  23. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは条約の内容によりましてきまるべき事柄でありまして、ただいま対日講和条約内容も決定いたしておりません。その決定いたしましたる内容に従いまして、政府においてそのとき良識に従つて判断をいたし、そうして臨時国会を開いて事前に御承認を得るかいなかということを決定すべきものであろうと存ずるのであります。但し事の性質といたしまして、今回の講和条約というがごときことは、わが国といたしまして非常に重大な事柄であるということは考え得られることでございまして、その場合に事前に臨時国会を開き、国会の承認を得るかいなかということは、それによつて常識的に御判断をいただいてしかるべきことだと思います。
  24. 並木芳雄

    並木委員 第四に、条約を国会が承認しない場合及び修正承認ということについてお尋ねしておきたいと思います。条約を締結したあとで国会の事後承認を求めたとき、国会がこれを承認せず、否決する場合は必ずしも起り得ないことではございません。たとえば與党、野党の数が非常に接近しておるときとか、連立内閣のときなどにはあるいは起るかもしれないのであります。この場合、条約は効力を失うのかどうか。要するにこの場合の条約の効力について、日本憲法の建前をお伺いしておきたいと思うのです。  それから事前たると事後たるとを問わず、国会は条約の内容をわが憲法の建前上修正して承認することができるかどうか、これもあわせてお尋ねしておきたいと思います。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 事前に国会の承認を求められたる場合におきまして、国会が承認しないという場合におきましては、当然その後に政府が批准をするということはあり得ない、あるいは調印をすることはあり得ないわけであります。この場合にはその後条約が成立するという問題を生じないのでありまするが、事後に国会の承認を求めまする場合におきましては、政府当局といたしましては、条約締結にあたつて国会の方の承認が得られるような確信のある内容の条約を結ぶことは、これは当然でありまするから、一般問題として国会の承認を得られないということはないと存じまするが、万一にも国会の承認を得られない場合におきましては、その条約の効力はどうなるかと申しますると、条約自体は相手国との関係ですでに有効に成立いたしているわけでありますから、国会の不承認によつて条約が法律上当然に効力を失うものとは考えないのであります。しかし政府といたしましては、国会で承認されなかつたという事情をよく先方に了解させまして、当該条約を廃棄することに努めるべき政治的責任は当然負わなければならない、かように考える次第であります。  それから次に修正の問題でございまするが、条約の締結権そのものは憲法内閣の権限となつておるのでありますから、国会が承認されるについて修正承認ということは、法律的には考えられないと存ずるのであります。もとより将来の改正の機会に対する修正の希望を述べられるということはあり得ると思います。条約そのものを修正して承認するということは、国会としてはあり得ないと考えます。
  26. 並木芳雄

    並木委員 それでは最後に条約の種類についてお尋ねしておきたいと思います。憲法の条約という言葉は、国家間のとりきめの総称であつて、狭い意味の条約ではないと思うのでありますがどうであるか。つかり国家間のとりきめには、条約という言葉のほかに協定とか協約とか約定とか規約とか議定書とか宣言とか憲章とかいろいろあります。しかし日本憲法にいう条約は、すべてこれらのものを包含しておるものと解すべきであるか、この点を明らかにしていただきたいと思います。もしそうでないと、条約という文字を使わないで他の文字を使つて国会の承認を経ないところの約束ができ上つてしまうおそれがあるからでございます。祕密協定のごときものが結ばれる心配があるからお尋ねをしておきます。先ほどちよつとこの点法務総裁の答弁に触れられたようでございますが、わが国憲法は広くすべての条約を含むように御答弁の中にあつたようですが、ただいまお尋ねしたような点はつきりしていただきたいと思います。従つて伝えられる日米防衛協定ももちろん条約であつて、当然国会の承認を要するものと解釈できると思いますけれども、この点もあわせて明らかにしていただきたいと思います。
  27. 大橋武夫

    大橋国務大臣 憲法の条約という言葉が、形式上何々条約という名前のもののみではなく、協定、約定、議定書、宣言、いかなる名称たるとを問わず実体的な意味に解すべきものであることは、お説の通りであると考えるのであります。しかしここに申しておりまする条約というものは、すべての国家間の約束ことごとくを意味するのではないのでありまして、国家と国家との間におきまする国際法上の権利義務を定めましたところの基本的な約束を意味するものと考えるのであります。かような基本的とりきめから派生いたしまするところの、これが施行についての施行細則的なとりきめとか、きわめて技術的な特定行政庁対特定行政庁の間の事務的なとりきめとかいうようなものは、これはこの条約といううちには入らないと存ずるのであります。また純粋に国の私法上の権利義務に関するものだけを内容といたしたような事柄、こういう私法上の約束はこの条約のうちには含まれておらない、かように解釈をいたしておるのであります。しかして、ただいま例外的に申し上げましたような基本的とりきめから派生いたしております施行細則的なとりきめであるとか、あるいは行政庁対行政庁のきわめて技術的な事務的なとわきめであるとか、あるいは私法上のとりきめであるとか、こういつた事柄は憲法第七十三条第二号の「外交関係を処理すること。」というこの内閣の権限によりまして、内閣のみで単独に行い得るものと考えているのであります。しからば日米防衛協定というような事柄が、かりにこの条約に入るであろうかどうであろうかということでございますが、これは国家の防衛につきましての国家間の権利義務を規定いたしました当然国際法上の権利義務に関する内容を含むものでありましようが、そういう内容を含んでおりますものは、ここにいう条約と解すべきことは、これは法律上当然だと考えております。
  28. 守島伍郎

    ○守島委員長 菊池君。
  29. 菊池義郎

    ○菊池委員 私の話はこれはちともうかる話でありますが、南洋群島のサイパン、テニヤン、ロタボナペ、ヤツプ、パラオ、そういう所に沈められておりまする軍艦、商船八十八隻の引揚げに参加するように日本が許可されたとのことでありましたが、この引揚げられました軍艦、商船は引揚げたあげくは日本でもつてこれを所有することができるのでありますか、どうですか。沈没した軍艦、商船であつても、これは戦利品に入るものでありますか、どうですか。
  30. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 なかなかむずかしい御質問だと思います。沈んでいる場所によることだと思いますが、公海の場合には無主物というものになりましよう。一国の領海内に沈没している場合には、その領海の所有国のものでありましよう。こういうふうに考えているわけであります。実例を申し上げますと、図南丸の場合には日本側で引揚げまして、そうしてアメリカの方から日本側で買いとつた、こう了解しております。場所によつて判断することだ、こう思います。
  31. 守島伍郎

    ○守島委員長 ちよつと申し上げますが、法務総裁は非常にお急ぎになるそうでございますから、法務総裁に対する質問だけを……。
  32. 菊池義郎

    ○菊池委員 法務総裁はよろしゆうございます。つまり南洋群島は戦争の終結するまでは日本の委任統治領であつたようなわけなんでありますから、その領海内に沈められておりますところの軍艦商船は、その所有権はどういうふうになるか。私がお伺いしようというのは、沈められている商船の中で十何隻これを使うことができるというような新聞の報道がありましたのでお伺いするのです。議論のための議論ではないのです。
  33. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 南洋群島につきましては、すでに一九四七年に信託統治協定が有効に発効いたしておりますので、何といいましても、同地域は合衆国の施政権のもとにある、こう了解すべきものだと思うのであります。ただそういう関係が、日本一国に対する関係においてまだ確定しない、こういうことは純粋の法律上の問題としては言えることでございましよう。しかし日本以外の関係においては、完全に信託統治行政が確立いたしております。従つてその領海内に沈没いたしております元日本の軍艦、または商船といえども現在日本のものであるという主張は成り立たない、やはり施政権国の管轄のもとに帰属しておる。従つてそれを引揚げるなり、それを取得するについては、施政権国である合衆国側の同意を必要とするというふうになると考えるわけであります。ヤツプ島において引揚げました商船の場合も、すでに合衆国側の許可を受けて引揚げて、しかもそれを買いとつたということになつておると私は了解いたしております。
  34. 菊池義郎

    ○菊池委員 アメリカがいくさに勝ちまして、南洋群島を占有しておるのでありますが、ああいう委任統治領というものは、講和会議を必要とせずして、ただちに戦勝国の領土になる、あるいは委任統治領なりに変更することはできるものですかどうですか。
  35. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 可能、不可能の問題は別といたしまして、すでに一九四七年に委任統治の制度が施行されております。平和条約は、連合国がすでにとつている措置を、日本において承認するという意味においての規定は置かれることになる、こう考えます。
  36. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうすると引揚げられる八十八隻の船、これはもうみな元の日本軍艦、日本の商船でありますが、そのうちの軍艦などはやはり連合国がこの前日本に残された六百八十隻の軍艦のうち、百二十隻英、米、ソ連、チヤイナの四箇国でとつて、あとは全部日本に残して使用を命じておる、その中に入れていいと解釈してさしつかえないのですか、どうですか。
  37. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 御質問の意味がわからないのでございますが……。
  38. 菊池義郎

    ○菊池委員 つまり戦勝国の戦利品であります日本の軍艦、日本に終戦当時残つてつた六百八十隻のうち百二十二隻だけ連合国がとつておるのです。小さい駆逐艦、海防艦百二十二隻だけとつて、四箇国でわけて、あとは全部日本に残して使用を命じておる、そのうちからして大きな軍艦二百隻だけは解体しろ、そのあとを使えという命令が出ておるのです。もし引揚げた軍艦の中で使えるようなものがあつた場合、それを商船につくりかえて使うとかなんとかいう━━できるかできぬかはわかりませんが、それを何かに利用しようという場合、当然にその命令の中に含むものであるとして、自由に使つてよろしいものであるかどうか。
  39. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 御質問は、終戦時連合国の方で、戦利品として獲得した兵器の処理の問題であると思いますが事務当局としては主管関係でございませんので、御答弁するだけの資料を持つておりません。
  40. 菊池義郎

    ○菊池委員 軍艦は別といたしまして、商船でありますが、十何隻引揚げて使えるものがあつたという。これは当然日本がもらうことができるものであると考えてよろしいものかどうか。また使えない商船、軍艦、莫大な古鉄です。この古鉄は日本がもらい受けることができるのかどうか、この点お伺いしておきたいと思います。
  41. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 御質問の要旨がよくわからないのですが、どこで引揚げた十何隻の商船かによつて御答弁が違うと思いますので……。
  42. 菊池義郎

    ○菊池委員 それはつまり元の日本の委任統治領でありました南洋諸島です。
  43. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 南洋諸島で十何隻の日本の商船が引揚げられたという話もまだ聞いておりませんし、御答弁いたしかねます。しかし御質問に対しては冒頭御説明申し上げた通りでございます。
  44. 菊池義郎

    ○菊池委員 新聞に十何隻使えるものがあるということが報道されております。そうして日本がその南洋群島の軍艦、商船の引揚げに参加を許されたということは、これはもうはつきりしているのです。
  45. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 御質問のような問題は、もう少し事情を具体的に明らかにしてから御答弁した方が間違いなかろうと思います。またないしは外務省関係ではなくて、他に関係主管庁があるように思いますので、その方から御答弁申し上げた方がよろしかろうと思いますので、今日は答弁を差控えさせていただきます。
  46. 守島伍郎

    ○守島委員長 小川原君。
  47. 小川原政信

    ○小川原委員 この際少し込み入つておるようですが、外務当局にお話を申し上げたいと思います。この海を隔ててアジア大陸と対峙しておるわが国は、今日の二大対立からのがれることはできない。そこでわれわれの一番心配しておりますることは、アジア大陸にソ連中共がどういう備えをしておるのであるか、その備えの概略を承りたい。
  48. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実はただいまの御質問まことに重大な問題だと思います。従つて外務当局といたしましても、これらの点につきましては、なるべく詳細な資料を得たいと努力をいたしておりまするがまた同時に一方はそういうもしや備えがありますならばありますだけ、そういう点をなるべく発表しない方法をとるだろう。ただ最近新聞あるいはマツカーサ元帥の解任に関する証言等によりまして承知いたしておる資料の程度でありまして、今の御質問の大陸地方におきまする備えという点につきまして、確実な資料を持ちかねている状態であります。
  49. 小川原政信

    ○小川原委員 わかりました。おわかりにならないものは尋ねることができないからしかたがない。そこで、全然わからないのでありますか、ソ連の海、陸、空の活動というものは、国家としてここで御発表になることにおさしつかえがあつて御発表にならないのか、全然わからないのですか、その点をひとつお聞きしておきたい。
  50. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは実は御承知のように従来と違いまして正式に在外公館を持たないのでありますから、いわゆる国家として知つておるということは申し上げかねると私は思います。ただ従来から朝鮮動乱に関します総司令官なり、あるいは今申し上げましたような情報におきまする発表等におきましては、いろいろあるいは漠然と、あるいは具体的に発表されておりまするが、日本政府自体がみずからの手によつて資料を集めるという方法は、現在持ちませんので、さよう御承知を願いたい。
  51. 小川原政信

    ○小川原委員 さらにお聞きするのでありますが、おわかりにならないものは、これはいたし方ありませんが、これはりくつでもなければ、ごく何でもないことなのですが、北海道の近海に近ごろ機雷が続々流れて来ます。これはどういうふうに御当局は見ておられますか。
  52. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問のような具体的な状態は、北海道その他でもちよいちよい現実において承つております。これは海流の関係等から流れて来る場合もあろうと存じまするが、どういう原因によつてという点につきましては、実は承知いたしかねておる状態であります。
  53. 小川原政信

    ○小川原委員 原因を私は聞いておるのじやない。これは政治的に考えれば、そのくらいなことはばかでもわかる。そんなことをお尋ねしているのではありません。機雷が近ごろ流れるということは、まつたく大戦後の機雷であるのか、あるいはいたずらをされておるのか、それとも何らかの目的によつてつておるのであるか、そういうことを国家がわからないのでありましようか。わからぬとおつしやれば、これはそれきりのことでありますが、その辺をわれわれは国民として聞いておく必要があるのである。海流によつて流れることは当然のことです。(笑声)
  54. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは戦争中のすべての機雷が、処理済みとも考えられませんから、機雷によりましては、あるいはそういうものもあるかとも存じます。しかし朝鮮動乱等によりまして、その後機雷等の敷設というものが全然ないとも考えられません。従いまして機雷が太平洋戦争関係があつたものか、全然ないものかは、機雷によつてこれを判断する以外にはないのではないかと思います。ただ世界の最近の情勢が、今申し上げたような状態でありまするから、全部の機雷が太平洋戦争の残物ということばかりは断定しかねるのではないかと存じます。
  55. 守島伍郎

    ○守島委員長 小川原委員にちよつと申し上げますが、その問題は直接外務省には関係ないように私は思います。そうしてそれに直接関係のあります運輸省及び海上保安庁の役人を今呼んでおります。参りましたならばもう少し詳しいことをお聞きすることができるかもしれません。外務省との間にはこんにやく問答になるかと存じますので、ただいま呼んでおります。
  56. 小川原政信

    ○小川原委員 それでは所管が違うと言われるか知りませんが、外務省に対しまして一つお尋ねしておきたい。これは最後にお尋ねをしようと思つてつたのですが、週報に、北海道に対する六月攻勢とか七月攻勢とか、人民政府軍ということが続々書かれております。これはあなた方の御所管でないとすれば、それまででありますが、何かそういうことが入手されておるでありましようか。
  57. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまのは多分売つております日本週報であつたと存じますが、日本週報が何かの資料でそういうふうに書いておると存じますが、これは外務省と直接関係はございません。
  58. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は佐々木君。
  59. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は対日講和条約に関連して伝えられております講和条約の草案を大体の構想として外務当局の見解を二、三聞いておきたいと思うのであります。もとより講和条約の成文は外務省に到着をしておりまして、皆さんも御承知のことであろうと考えられます。決して私はその講和条約の成文の内容について、本日ここで論議をするわけではございません。新聞に報道されておる程度の案文、構想を土台としてお聞きをするわけでございますかすら、条約の内容でないから、さほどかた苦しくお考え願わなくてけつこうだろうと思います。  まず承つておきたいことは、いわゆる条約草案として伝えられるものによりますと、今度の条約の締結によつて日本及びその領海における日本国民の完全なる主権を認めるということになつておりますが、そうすると、ポツダム宣言あるいは降伏文書や、その後これに関連して発せられた幾多の指令等におきまして、日本の徹底的な武装の解除ということが命令されておるわけでありますが、このいわゆる条約草案なるものを読んでみましても、たとえば安全保障の項目を見ますと、武力を行使することを慎むという言葉が書いてありまして、決して武力を禁止するということは書いてありません。またさらに個別的、集団的固有の自衛権を日本が持つておることを認める、そのために集団安全保障のとりきめに参加することを認めるということが、これは一般に通説として信じられておるところでありますが、そういたしますと、今度の講和条約というものの骨子は、日本の自衛権の発動としての個別的ないし集団的武力の行使ないし再軍備というようなことを、決して禁止する前提のもとに立つたものでない、こういうふうにわれわれは考えるわけでありますが、そういたしますと、今度の講和条約ができますと、今までのポツダム宣言や降伏文書やその他の指令等との関係は、どういうふうになるかというような点について承つておきたいと存じます。
  60. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 その点は、従来米国政府におきまして、対ソ回答の中に回答を与えておる点でございます。従来連合国間に存しておりましたいろいろな公文書、いわゆる日本の処理に関する公文書、カイロ宣言、ポツダム宣言、ヤルタ協定、降伏文書、こういうようなものは、平和条約ができるまでの占領期間における連合国の対日政策を規定したものであつて、こういう文書に包含されてあるいろいろな条項が、平和条約後なお効力を持続するためには、それが平和条約のうちに取入れられなければならないし、取入れられておるという範囲内においてのみ、平和条約後も効力を持つものである、こういうことを言つております。この点は先日発表になりました米国の対ソ覚書の中にも繰返し述べられておる点でございます。
  61. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 今私の質問いたしましたことのお答えがなかつたようでありますが、この日本の完全なる主権を認めるという規定や、あるいはまた武力をやたらに使用することを慎むというふうな条項や、あるいは個別的、集団的固有の自衛権を日本が持つておることを認めるというような規定等を総合して考えますと、今度の平和条約は、自衛権の発動としての武力行使ないし再軍備というようなものを、禁止したという原則のもとに立つものではない、こういうふうに考えるのですが、いかがでしようか。
  62. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 その点は私どももそういうふうに考えております。
  63. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それから次はまつたく事務的、技術的な点でありますが、いわゆる伝えられる条約草案によりますと、日本朝鮮、台湾、澎湖島及び南極圏に対するすべての権利、領有権、請求権を放棄するという規定があるわけであります。朝鮮、台湾、澎湖島並びに南極圏に対する権利、領有権、請求権の具体的に特におもなものがあつたら、それをお聞かせ願いたいと思います。
  64. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 御質問は南極圏にあると了解いたしますが、南極圏に対する日本の主張と申しますのは、皆さん御承知の白瀬探検隊によりまして、今手元に資料を持ち合せておりませんので、ここに正確な緯度、経度を申し上げることができませんが、二つの地点について先占の権利を白瀬中尉が主張いたされました。そうしてその白瀬中尉の要請がもととなりまして、これまた年代を正確に申し上げるだけの資料を持ち合せておりませんが、正式に取上げまして、これを合衆国政府に通告いたしたことがございます。政府ワシントン駐在の大使を通じまして、公式に国務省に申入れをする前に、合衆国の地学協会でありましたか、そこでは白瀬中尉の主張を認めまして、同協会で発行いたしております地図などには、全部大和雪原というような名称も書入れておつたほどであります。合衆国のいわゆる地学協会と私は了解いたしておりますが、そういつた学術的団体はすでに承認いたしておりまして、そういうふうな関係から、その後わが政府の方で正式にアメリカ政府に対して申入れをしてあります。その申入れの趣旨は、やはり南極圏における白瀬探検隊によつて先占された地点に対して、先占権を主張する、これはまだ放棄しないという趣旨の申入れでございます。そういうふうないきさつがございましたので、おそらく合衆国政府におきまして、条約草案を起草されるにあたつて、従来政府が維持しておりました主張といいますか、それをこの際放棄するということを明白にしたものであろう、こう考えております。
  65. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それはよくわかりました。最後に、いわゆる条約草案なるものの最終条項におきまして、本条約は、いかなる国もこれを調印遵守しない限り、その国に対しいかなる権利、領有権及び利益も与えない、日本の権利、領有権及び利益は、本条約を調印、批准ないし遵守しない国の利益のために縮小され、また害されることはないという規定がございます。そういたしますと、今度の対日条約が効力を発生いたしましたときに、条約に参加しなかつた連合国との間の領土権の帰属の関係はどうなるか。たとえばこの最終条項の規定に従いますと、かりにソ連が対日講和条約に参加しなかつた場合におきましては、南樺太、千島等の領有権は、これをソ連に帰属せしめないという規定になると思うのでありますが、そういう場合に、条約が効力を発生したときに、条約に参加しない連合国、具体的に申しますならば、たとえばソ連との関係において、南樺太、千島というような関係でありますが、そういう領土権が一体どこに帰属するのかという点を、ひとつ御説明願いたいと思います。
  66. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 おそらく佐々木委員のお読みになつたヘンスレーの条約案というものは、新聞に載つた約文を御参照になりましたのでいそういう御疑念がお起りになつたかと思いますが、私どもの手元でヘンスレーの英文と、新聞に載りました日本文とを比較いたしまして、私どもの方で手を入れたものによりますと、御質問の条項の意味はこういうふうになつております。この対日平和条約に署名し、批准し、または加入しない限り、どの国もこの条約に基いて権利、権限または利益を取得することはないというのが一段であります。御質問の点は、これによつて回答できるのでありまして、かりにソ連というものがこの条約に署名しない、批准もしない、また加入もしないということになりますれば、領土条項に南樺太及び千島はソ連に帰属するという規定が入つておりましても、その規定によつて何らの権利も権限も利益も得ないのである、こういうことになるわけであります。従つてこの両地域は依然として法律的には、日本の主権というものがまだ放棄されていない、こういう事態になるわけであります。
  67. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に最終条項の方で、本条約が日本と条約批准国との間に効力を発生した後、三年以内にいつでも本条約に参加することができるということになつております。そうすると、三年以内に条約に参加したときは、まず第一に、今申した南樺太や千島は、当然ソ連の領有に帰するものと思われるわけでありますが、この点はどうか。  さらに第二は、三年以内にもしも参加しないときは、これらの島々の領土権は永久に日本の領有権に帰するのか、その領土権ははたしていずこに帰属するか、この二点についてお聞かせ願いたいと思います。
  68. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 この条項は、平和条約がいずれかの国との間で効力を生じたあとで、三年間だけはこの条約に署名しなかつたものが加入できる、こういう考え方であります。むろん条約の加入というものは、条約が効力を発生したあと、その条約に署名していない国が当事国となる条約でありますので、こういう効力が生じた後に、加入という問題が起り得るわけであります。ですから加入の期間を三年と限つているところに、規定の意味があると思うのであります。これは日本と連合国との間の戦争関係というものをできるだけ早く終了させたい、いつまでも無期限に加入を認めるということでは、いつになつたら全面的に戦争関係が終了するときがあるかわからないので、それにあるタイムリー・リミツトをつけて、なるべく各国の加入を促進したいという趣旨から入つているのではなかろうかと一応考えている次第であります。この条項で、御質問はもしソ連が三年以内に加入して来なかつた。むろんその場合条約に署名もしておりません。署名もしないでいて条約の効力発生後三年たちましても、その間にソ連邦が加入して来なかつた場合には、それでは南樺太、千島における主権の関係はどうなるか、こういう御質問であつたように思うわけであります。その場合には何と申しましても、日本といたしましては、純粋に法律的の問題といたしましては、日本の主権というものは両地域になお残る、こういう立場をとらざるを得ない、こう思うのであります。
  69. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後にもう一点だけ承つておきますが、これは最終条項によりまして、日本はいかなる国との間にも本条約によつて、条約参加国に与えられるとされているものより、より大きな利益を与えるような講和条約なり、賠償の解決を行わないという意味の規定があります。そうすると、今度できまする講和条約よりも、大なる利益を与えるような講和を、他の国と結ぶことができないわけであります。しからば、同等のまたはそれよりも小なる利益を与えるような条約を、日本との間に個別的に締結をするというようなことができるものかどうかという点を、最後に承つておきたいと思います。
  70. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 私は特にまず冒頭にお断りしておきたいと思います。それは佐々木委員があげられましたのは、いわゆるヘンスレーの条約草案なるものについての御質問であります。それに対して私がすでにお答え申し上げたことが、同僚からの今御注意も受けましたが、なるほど政府当局としてはしない方がいいじやないかと思うわけでありますが、つい私の方で仮定の上に立つて、仮定の御質問に対して私は御答弁申し上げました。これはまつたく仮定の上に立つての仮定の御質問に対して、私が一事務当局として、ほんとうに軽い意味で仮定的な答弁をいたしたものだと御了承をお願いしたいと思います。それがために政府の見解というようなものをコメントするという意思は毛頭ございませんので、その点御了承願いたいと思います。ことに新聞関係の方にお願いいたしたいと思いますのは、この私の答弁を新聞記事などにしていただかないように懇請いたします。従来とも同じようなケースで、たびたび私は政府の最高責任者に御迷惑を及ぼしておりますので、また同じようなあやまちを繰返すことになるのじやないかと思いまして、はなはだ慚愧の至りにたえません。その点御了承を願いたいと思います。  そこで先ほどの御質問に対してお答え申し上げます。その条項の意味は、考えられているこの草案——この草案といいますのは、この仮定になつております草案の条件よりも、有利な条件で、平和解決をこの草案に加入して来ない国と日本は結んではいけません、こういう意味でございます。だからこれは私どもは全面的に講和になるということを切望いたしますが、そういう形にならなかつた場合には、日本は爾余の国との国交関係を平常化しようとする場合に、この平和条約よりも有利な条件を相手国に与えてはいけませんよ、こういう意味であります。それでは逆に佐々木委員の御質問になりましたように、より不利な条件で平和関係を回復することを承諾するようなものがあつた場合はどうなるか、そういう場合には、この条約によつては阻止されていない。こういうことでございます。私ども事務当局としての解釈でございます。どうか政府の見解とおりにならないように、くれぐれもお願いいたします。
  71. 守島伍郎

    ○守島委員長 砂間君。
  72. 砂間一良

    砂間委員 ただいまの領土の問題に関してお尋ねいたします。三年以内にたとえばソビエト等が対日講和条約に参加しなかつた場合には、南樺太や千島の領土権については、純粋な法律上からすれば、日本の主権が持続するものと思うという、先ほどの西村条約局長の御発言でありますが、その点についてもう少しお伺いしたいと思います。  日本は降伏文書の中で、ポツダム宣言の条項を誠実に履行するというふうなことがはつきり規定されております。そのポツダム宣言の中には、第八項に、カイロ宣言の条項は履行せらるべく、また日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国並びにわれらの決定する諸小島に局限せらるべし、こういうふうになつておりまして、南樺太や千島等はこのわれらの決定する者小島という中に入るのではないかというふうに私考えるわけであります。ところがこのわれらの決定する諸小島の中では、ヤルタ協定によりまして、すでに南樺太や千島の帰属については、連合国の間で協定がもう成立しておるわけであります。従つてポツダム宣言の八項にいわれておる、われらの決定する諸小島の中で、少くとも南樺太や千島の帰属については、もう連合国の間で決定がなされておる、こういうふうに解釈するわけであります。このポツダム宣言日本が降伏文書の中で、はつきり誠実に履行するということで受諾しておるのでありますから、すでに連合国間で決定されておる南樺太や千島の帰属について、もしソビエトが対日講和条約に参加しなかつた場合には、これらの決定がすべて無効になつて日本の主権が依然として及ぶというふうな条約局長の解釈は、はなはだ不穏当な、日本としまして少くとも連合国に対して義務違反、条約違反というふうなことになるのじやないかといふうに思うのであります。その辺につきまして、もう少し詳しく御説明していただきたいと思います。
  73. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 一体戦争の結果起りまする戦敗国の領土処分というものは、戦勝国と戦敗国との間の平和条約によつて最終的に確定されるのでございます。これは国際法の動かすべからざる原則でございます。カイロ宣言は純粋に三連合国家の申合せでございまして、あそこの趣旨は、戦争に勝つたあと日本の領土処分はどういう方針でしようという大綱の申合せをしたものであります。ヤルタ協定は、これまた三国間において、日本の職後における領土処分の問題についてこうしようという三国間限りの申合せ、日本の領土処分の大綱についての申合せであります。ポツダム宣言はカイロ宣言のみを言及しておりますと同時に、それに加えて日本の諸小島の帰属は自分たちの方で、連合国の間できめる、こういうことを言つておるわけであります。ですから降伏文書におきましてポツダム宣言を受諾いたしました日本といたしましては、カイロ宣言とポツダム宣言は十分了承いたして降伏しておるわけでございますが、ヤルタ協定に関する限りは、日本は全然その存在を知りません。従つてヤルタ協定と日本との間には、何ら直接には法的関係は存在し得ないのであります。繰返し繰り返し申し上げますが、一国の領土条約の最終的処分というものは、平和条約によつて確定されるものであります。今考えられておる平和条約草案なるものにも、カイロ宣言やヤルタ協定やポツダム宣言の趣旨に沿うての条項が考えられております。その趣旨のことはアメリカの対ソ覚書によつてもはつきりと説明いたしております。そういうものが日本に対して法的に有効に成立するのは、対日平和条約が効力を発生することによつてであります。従つてこの平和条約に参加しない国がもしあるとするならば——私はそういう国か一国もないことを希望いたしますが、もしあつて、その国が取得すべき領域についての条項が存在しておるとしまするならば、そしてその国がこの条約に加入しないということになれば、その国と日本との間においてはやはり現在の状態が存続いたします。すなわち領土の主権の帰属というものは未決定のままに残る、いわば日本の主権というものは法律的にはなお日本のものとして存続する、こういうことになるわけであります。この点は私一点の疑いもないものであります。既存のいろいろな連合国間の文書というものは、アメリカも繰返し繰り返し言つておりますように、対日講和において最終的に決定する。法定効果を持つものではなくて、連合国が他日締結される対日講和に織り込む領土方針を規定しておるものにすぎないのであります。
  74. 砂間一良

    砂間委員 戦敗国の領土問題は平和条約によつて最終的に決定せられるものであるということは一応わかりますが、しかし先ほど条約局長の申されましたポツダム宣言やあるいは極東委員会の諸決定等は、平和条約締結までの暫定的な占領政策をきめたものであるから、講和条約が成立したならば、そういうものは全部御破算になつて無効になつてしまう、こういう解釈は、アメリカ側は一方的に盛んにやつておるわけでありますが、また条約局長もそれに同意せられているような御説明があつたのでありますが、私はその点に少し理解のできないところがあるのであります。たとえばヤルタ協定は米・英・ソ三国間の協定でありまして、これは対日講和が成立するしないにかかわらず、これらの三国間の国際協定というものは十分効力を持つて行くものであります。あるいはポツダム協定等にいたしましても、これらの協定は講和条約の成立するしないにかかわらずやはり協定は協定として、それが破棄されない限りは有効であるというふうに私は考えるものであります。従つてヤルタ協定によつて三国間で南樺太や千島の帰属が決定されておる。それがたとえばソビエトが対日講和に参加しなかつたから、それでヤルタ協定、米・英・ソ間のこの協定が無効になるというふうな考え方は、少し論理の飛躍ではないか。(「実質的に三国間で破棄しておるではないか」と呼ぶ者あり)三国間の協定は協定として、対日講和が成立するしないにかかわらず、これはやはり有効です。こういうふうに考えるわけであります。ところでこの対日講和についてでありますが、これはもうこの前の前の委員会でも私質問して、その答弁がはなはだ不誠意でありまして、納得が行くような答弁ができなかつたのでありますが、日本は降伏文書におきましては連合国に対して降伏しておるのであります。それでソビエト、中国をも含めた連合国と全面講和が結ばれるならばこの問題はないのでありますが、この降伏文書に違反して、またこれまでの国際諸協定等に違反いたしまして、そうしてこそこそと連合国の中のある特定の国と講和条約を結んだというふうな場合におきまして、未参加の国があつたから、それでそれらの国々日本に対する講和問題についてのいろんな権利を失つてしまうというふうな解釈は、これはきわめて一方的でありまして、また非常に乱暴な、むちやくちやな解釈であるというふうに私どもは考えるわけであります。しかしこの問題は今日は時間もあまりありませんので、またあらためて別の機会にゆつくりひとつ質問したいと思うのでありますが、南樺太、千島は別といたしまして、他の方面の、たとえば琉球、小笠原等についてでありますが、ついこの前の委員会におきましても、奄美大島の方々が十何方の署名を持つて日本に返るようにしてもらいたいという陳情を持つて参りました。     〔発言する者あり〕
  75. 守島伍郎

    ○守島委員長 御静粛に願います。
  76. 砂間一良

    砂間委員 あるいは小笠原の人たちもやはり全島をあげて、日本一つになりたいということを言つておるのであります。     〔発言する者あり〕
  77. 守島伍郎

    ○守島委員長 御静粛に願います。
  78. 砂間一良

    砂間委員 この琉球、小笠原の帰属については、ポツダム宣言の第八項によりますと、われらが決定する、こういうことになつておるのであります。ここにいうわれらということは、これは連合国、ことに降伏文書の中には、連合国は米・英・ソ中国のこの四大国であるということがはつきり書いてあるのでありますから、従つて小笠原、奄美大島、琉球等の帰属については、このポツダム宣言の第八項にいわれておる、このわれらが決定するという、その意味からいたしますと、これは当然連合国であつて、しかもその連合国は四大国でなければならぬ。しかるにアメリカの今の対日講和の草案を見ますと、アメリカが単独で一方的にきめている。これをかつて日本本土から切り離しまして、そうして要塞をつくつたり、いろいろな軍事基地をつくつたりしておるというようなことになつておるのでありますが、こういうアメリカ講和条約案というものをかりに日本が承認するということになりますと、これはポツダム宣言の違反にもなると思うのでありますが、こういう領土の——いわゆるわれらの決定する諸小島という中に含まれる、具体的には琉球、小笠原等の帰属について、アメリカ講和条約草案を受諾するということは、ポツダム宣言の違反になるのではないかと思うのでありますが、その辺の解釈は外務当局としてはどういうふうな見解を持つておられますか。
  79. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 今、おつしやいました御意見には、全面的に賛成いたしかねるわけでございますが、どういう考え方でそういうふうな御結論になるか、実はふしぎに思う次第でございます。今日御質問になつておる点に対しては、先日の合衆国の覚書が完全に答弁を与えております。一体共産党の方のおつしやるように、対日平和条約は四大国でつくらなければならぬという、こういう主張それ自身がすでに大体連合国間で大きな争いになつておるのでありまして、今日まで米ソ間にとりかわされました文書を冷静に読んでみまして、私は四大国で対日講和条約はつくらなければならぬという議論の根拠というものはないと思うのであります。合衆国はいわゆる対日戦争に積極的に参加した国全部が一緒になつて条約をつくるべきものである。もしソ連の言う通り、四国外務大臣会議講和条約案をつくるということになるならば、終戦直前一週間だけ対日戦に参加した国以外に、もつとく対日戦に対して絶大なる寄与をした国の平和条約締結参加を奪うことになる。こういう不当な結果になるような手続は絶対に承服しないということを強調いたしております。なおまた唯一のソ連邦の方で最も有力な論拠として引用いたしておりますベルリン会議議事に関する議定書でありますが、外務大臣理事会、の権限についての規定、それの明文を引用いたしまして、外務大臣会議に授権いたしておる事柄は、欧州における五国の平和条約草案、それに対独平和条約草案の起草、これだけになつていて、その他の問題については四国間に同意したその他の事項を外務大臣会議にかけてよい、こういう明文規定になつている。ところが対日平和条約問題については、合衆国は四国外務大臣会議にかけることに賛成しない、従つて問題にならないということをあわせて言つておるわけであります。従つて条約起草の手続がどういうふうになるかということは、繰返して申しますように、主として連合国間の問題であつて日本政府としては連合国間の決定を待つて、それによつて一日も早く一国でも多くの国と平和の状態に入りたいという立場をとるわけであります。従つて合衆国が今日全面的な講和を最終目標として、できるだけ多数の国との間に、一挙に対日関係において平和関係が回復できるような平和条約をつくろうと全面的に努力をしておられますに対してわれわれがこれに協力し、その努力が一日も早く実を結びますようにという立場をとることは、何ら従来の連合国間の公の文書の精神に反するところはないのであります。むしろそういつたアメリカの努力に対して、そつぽを向いている一、二の国の態度こそ批判さるべきでありまして、日本政府態度が批判さるべき理由は毛頭ないと信ずるわけであります。また平和条約における領土条項がどうなるかということも、アメリカの対ソ覚書にはつきり言つておりまするように、アメリカが考えておる条約草案そのものは、まさにポツダム宣言にいつている通り、ポツダム宣言にはカイロ宣言の諸条項は必ず実施され、日本の主権は本州、北海道、九州、四国並びに連合国の決定する諸小島に局限されるとしるされているが、米国の条約草案はまさに日本の主権を右規定の通りに制限しているのであると、こう言つております。その通りになつている草案を受けるか、受けないかは、各連合国政府の決定されるところでありまして私どもとしては批評の限りでありません。
  80. 砂間一良

    砂間委員 もう一点……。
  81. 守島伍郎

    ○守島委員長 もう時間がありません。小川原君。ただ小川原君に申しますが、もう時間が非常に少くなりまして、もう一人質問される方があります。から簡単に願います。
  82. 小川原政信

    ○小川原委員 私の質問はごく簡単であります。今保安庁の方がおいでたようですからお尋ねしたいのですが、本月の七日ごろから非常に機雷が北海道の周辺を流れるということで、連絡船が遂に夜間就航を停止してしまつた、こういう状況にあるのですが、今もつてこれが復活しないのであります。どういうような状況にあるか、非常に道民が危惧を抱いておるようなわけでありますから、詳細なお話を承りたいと思います。
  83. 松野清秀

    ○松野政府委員 今お話がありましたように、事実最近津軽海峡に機雷らしいものが流れておるような報告がありますので、海上保安庁におきましては、現在青森、函館方面に配属いたしておりまする船艇の全勢力をあげまして、主として津軽海峡の西口付近に重点を置きまして、晝夜警戒に当らせているわけであります。むろんこの機雷の発見ということは、夜間は非常に困難であると思いますが、なおレーダーが効果があるかどうか、そういう点にも疑問がありまするが、最近配船いたしておりまする巡視船は、レーダーなどもつておりますので、そういうものも活用しまして、今申し上げましたように、特に西口に重点は置いておりまするが、要するに津軽海峡全般にわたりて晝夜哨戒いたしまして、その早期発見と、事故の防止という点につきまして、全力を注いでやつておる次第であります。
  84. 小川原政信

    ○小川原委員 機雷らしいものというのですから、機雷とは限つておらないのですか。
  85. 松野清秀

    ○松野政府委員 それは実際津軽海峡へ入つて来たものは、捕捉したものがないので、機雷らしいというのであります。
  86. 小川原政信

    ○小川原委員 私は遠慮されているような気がしてならないのです。あまり遠慮されぬで、機雷か機雷でないか、そのくらいのことはわからぬのですか。  それからそのものがどこの国のものかわからないのですか。そういうものもひとつわかつたら発表してもらいたい。遠慮することはないと思う。  それからもう一つお尋ねしておきたいのですが、これはわが国の監視船では爆破できぬということを聞いておるのですが、そういうことはないでしようか、どういうものでしようか。そういう点をお話願いたいのです。
  87. 松野清秀

    ○松野政府委員 この機雷が流れておるというような情報は、漁船から入つておるわけでありますが、そういうわけで、はつきり機雷とまでは申し上げられない、かように申し上げた次第であります。  なおこれがどこの国の機雷であるかということでありまするが、(「新聞に出ている」と呼ぶ者あり)新聞に出ておりまするが……。
  88. 小川原政信

    ○小川原委員 遠慮せぬで言つてください。遠慮してはいけません。国民の重大な関心事ですよ。
  89. 松野清秀

    ○松野政府委員 今申し上げたように、津軽海峡へ入つて来ておりますもので、捕捉したものはないのでありまするから、これがはたしてどこの国のものであるかということは、ちよつと申し上げかねるわけであります。  なお海上保安庁の船で、そういうものを見つけた場合に、爆破する力がないかどうかというようなお話でありますが、現在海上に配置しております船が、全部爆破する武器を持つておるわけではありませんが、そのうち若干隻は爆破するだけの装置は持つております。
  90. 小川原政信

    ○小川原委員 北海道の周辺に、監視船は一体どのくらいおるのですか。北の方に行けば、ほとんど毎日のように続々と漁船は拿捕され、機雷は流れる、私は実は余分のことですが、外務省の情報は一番確かなもので、よく知つておられると思うたから聞いたのです。所管も知つておるのです。われわれ国民は、そのくらいに関心を持つているのです。けれども所管でないと言われるなら聞く要はないけれども、今北海道民四百万はあげてどうなるかという心配をしている。政府はしつかりここで声明をいたしまして、決して不安なことはない、安心しておれという体制をとつてもらわなければならぬ、それで私はどうも官吏はあまり気に食わぬ、こういうことを言つたら人の領分を侵す、こういうことを言つたらあつちにさわる、そういうことでなく、遠慮なくどしどし言つて、そうしてわれわれはそのことを聞いて、それに対処しようという決心で聞いているのです。理論の展開をしているのではない。今実際問題として、北海道はどういうところにあるか、北海道といえば小さいけれどもわが国の四分の一の領土です。これをいかにしなければならぬか、わが国の独立は一体どうして行かなければならぬか、こういうことなんです。それであるから遠慮なく私も聞きますから、遠慮なく言つていただきたい。そういうわけでありますが、監視船は何ぼおるか、そうしてどういう働きをするのか、どういうことを雑ないところで話をしていただきたい。
  91. 松野清秀

    ○松野政府委員 現在津軽海峡の警戒に当てておりまするのは、青森におります二十三メーターの内火艇一隻、江差に配船しております二十三メーターの内火艇二隻、函館に配船しております七百トン級のプロツク一隻、さらに函館に配船しておりまする旧海軍の飛行救難艇が一隻、大体この勢力があの付近に配船しております船であります。現在海上保安庁におきましては、昨年のマツカーサー書簡以来ずいぶん船艇の増強はいたしておりまするが、船の建造には相当期間を要しまする関係で、現在なお巡視船の総勢力七十隻をもちまして、八千余海里に及ぶ沿岸の、治安の維持、航海の安全の確保というような大きな任務をやつておるわけでありまして、むろん津軽海峡に機雷が入るというようなととは、重大な事態でありまするから、できる限りの船は集中しなければいかぬのでありますが、今申し上げたような状況でありまして、ほかにやはり遭難なんかも毎日何件かあるというような状況でありまして、現在におきましては、それ以上には集中することは困難であるという状態であります。なお現に私の方の、特にそういうような機雷の処分、あるいは掃海というような面を担当いたしておりまする航路啓開本部長を現地にやつおりまするが、いろいろ現地の事情等もよく調査いたしまして、できれば現に内海あたりの警戒に使つておりまする船も、一部分はまわしたいということも、現在計画中でありまして、今申し上げましたように航路啓海本部長が行つておりまするので、最近のうちにそういう点もわかると思いまして、できるだけ増強をしたい、かように考えておる次第であります。
  92. 小川原政信

    ○小川原委員 よくわかりましたが、航路はいつごろ復活する見込みでしようか。
  93. 松野清秀

    ○松野政府委員 航路の復活と申しましても、むろん船をいくら集中しても、それはもう全部確かに絶対安全というまでには、網でも張らなければ、容易に期待し得ない、かように考えておりますので、今後は、やはり浮遊機雷が津軽海峡へ入り込みますれば、むろん漁船なんかもおりますから、発見されると思いますが、やはり一応ある期間は、実績から見て絶対機雷が入つて来ないという見通しがつかなければ、絶対安全というようなことは、いつになつたら言えるかということは、今ちよつと申しかねる段階でございます。
  94. 守島伍郎

    ○守島委員長 山本君。
  95. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ごく簡単に一、二点お伺いいたします。今回米国政府によつて対ソ覚書全文というものが発表せられて、それがワシントン二十日発のUP特電でわが国にも伝えられておるようでありますが、その中で約二十万の日本人兵士が、家庭に帰り、平和的生活に復帰することを妨げておる、日本国民は、これら日本人兵士が降伏条項に約束されているように、平和的職業に復帰するのを待ちわびているという文句があるのでありますが、今までわが国の方では抑留されている人間は三十七万というふうにたびたび承つておるようであります。これをアメリカの方では約二十万と発表されたのでありますが、この点に関する食い違いはどいうものでありましようか。もし三十七万であるなれば、すぐこの点の訂正的な声明というものを、わが国政府は海外に向つてする必要があるのではないか、あるいは二十万が正しかつたなれば、全国民にそのように政府は訂正方を発表すべきではないか、かように考えますが、この点について御答弁願いたい。
  96. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今御質問の点につきまして、実は従来三十六万九千三百八十二名ということを政府は発表しており、またこのことは昨年の十一月の国際連合総会におきましても、委員会におきましても、オブザーヴアーとして行つて、大体その数を確認しながら発表いたしております数字でございます。中山さんのお話でその当時政府が発表した数字であります。ただいまのアメリカの発表の中に二十万とありますのは、兵士という数字で現われておりますので、従つて大体三十六万九千という中の兵士というのを取上げての発表であろうと想像いたしております。
  97. 山本利壽

    ○山本(利)委員 そうしますと、ただいますぐに御答弁が願えなければ、約三十七万のうちの二十万というのが兵士であつて、その他が兵士でないのかどうか。ただ今ここではそうだろうという御想像でありますけれども、今わからなければ、この次の委員会にでもこの点は発表していただきたい。なおこの委員会でなくとも、留守家族の者、その他全国民はこの問題については非常に関心を持つておりまするから、権威ある対ソ覚書の全文の中に二十万という数字が出ると、いろいろ思想的にも混乱すると思いますから、政府の善処方を要望いたします。
  98. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今手元に資料を持つておりませんので、ただいまの御質問の点につきまして、次会に詳しく御報告申し上げます。アメリカの今の数字は兵士というので現われております。
  99. 山本利壽

    ○山本(利)委員 本日横尾通産相は、総司令部にマーカツト経済科学局長を尋ねて、日本、パキスタンの経済関係の問題、さらにパラオ島の開発等について、いろいろお話があるように新聞紙上に載つておりますが、パラオ島の領土的所属というものと、それから産業的に見た場合のわが国との関係について、ひとつ簡単に御説明を承りたいと思います。
  100. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの点は、今ちよつと手元に資料を持ちませんので、他の機会にお譲りを願いたいと思います。
  101. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは今の点は、私のお願いしました以上に、その産業開発に関する内容についても、これは横尾通産大臣からでもよろしゆうございますから、詳細にひとつ承りたいと思います。  もう一つ承りたいのは、講和会議を前にいたしまして、大幅に追放解除が行われるということが大体発表されており、世間の人はこれを待ちわびているわけでありますが、また最近の記事によると、政府の都合か自由党の都合かでこの講和会議前における——それも一般には六月には大幅解除があると期待しておつたのでありますが、それが遅れるかもしれないといつたようなうわさを聞くのでありますが、この追放解除の問題について承りたいと思います。
  102. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は追放の問題は内閣官房長官が出まして御答弁を申し上げる方が適当であろうと存じますから、私からお答え申し上げるのを差控えさしていただきたいと思います。
  103. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは時間の都合で私は差控えますが、きよう私の質問いたしましたことはいずれもとつさであつて、御答弁が不完全であると思いますから、この次の機会に最初にお願いしたいと思います。
  104. 守島伍郎

    ○守島委員長 ではこの次に外務省から御答弁を願いたいと思います。  次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時四十七分散会