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1951-05-17 第10回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十七日(木曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君       淺香 忠雄君    伊藤 郷一君       植原悦二郎君    大村 清一君       小川原政信君    菊池 義郎君       近藤 鶴代君    仲内 憲治君       並木 芳雄君    松本 瀧藏君       三木 武夫君    武藤運十郎君       砂間 一良君    米原  昶君       高倉 定助君    黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 吉田  茂君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 五月十六日  委員川島金次君及び砂間一良辞任につき、そ  の補欠として武藤運十郎君及び立花敏男君が議  長の指名委員に選任された。 同月十七日  委員立花敏男辞任につき、その補欠として砂  間一良君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する件を議題といたします。質疑を許します。ちよつと申し上げますが、時間の制限がございまするから、お約束の時間をお守りくださいますように、それから関連質問は時間の制限がございまするから途中では許しません。最後に時間の余裕があつたならば許すことといたします。北澤君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員 時間の関係もありますので一括して御質問申し上げますので、総理からも一括してお答えを願いたいと思います。  第一点は、四月六日のワシントン発UP電報の伝えます対日講和條約の草案の中にあるのでありますが、この草案の第三章の領土に関する部分におきましては、日本千島列島ソ連に引渡す、こういうふうに規定せられておるのであります。この千島なる字句は、ダレス特使声明等にもかんがみまして、歯舞諸島を含まないものと了解せられるのでありますが、もしそうでありますならば、條約調印の際に、この点をはつきりして置くことが必要だろうと思うのであります。これに対しまして総理のお考えを伺いたいのであります。  第二点は、この草案の第四章の安全保障に関する部分におきまして、日本国際連合国際連合憲章に従つてとるというところのいかなる行動に対しましても、あらゆる援助国連に與える義務を受諾する。こういうふうに規定されておるのであります。これは日本の可能な限度においてあらゆる援助を與える、こういう意味と了解するのであります。たとえば現在日本武力を持つておりませんので、武力による援助はできないと思うのでありますが、そういう意味におきまして、あらゆる援助というのは、日本の可能な限度においてあらゆる援助を與える、こういうふうに了解してさしつかえないのであるかどうか、伺いたいのであります。  第三点は、この草案の第四章の付属の説明の中で、将来日本がこの安全保障に貢献できるようにするために云々と、こういうふうに述べられておるのでありますが、ダレス特使のロスアンゼルスにおきまする演説等におきましても、日本は今後安全保障に対しまして、日本としての貢献をなすべきであり、安全保障に寄與し得る実力を持つている国がいつまでもただ乗りをすることは許されない、こういうふうに述べられておられますることにもかんがみまして、日本が将来自衛力を持つということを期待しておるというふうにも考えられるのでありますが、この点に対しまするお考えを伺いたいのであります。  第四点は、トルーマン大統領声明によりますと、太平洋の安全保障機構一環としまして、講和後、日本及びその周辺に暫定的に米国軍隊駐留せしむることにつきましての日米協定を考慮して、これに関して日本政府話合い中であるというふうに発表せられておるのでありまするが、この日米協定講和條約と同時に締結せられますものでありますかどうか。また暫定的というふうに言われておるのでありまするが、この日米協定というものはいつまで存続するというふうなことになるのでありますか、この点を伺いたいと思うのであります。  第五は、草案の第六章によりますと、終戦日本が受けました救済及び経済援助に対しては、日本は支拂わなくてもよろしいように考えられるのでありますが、もしそうであるとするならば、これは日本に対しまするアメリカの非常な好意と思われるのであります。これはその通りに了解してさしつかえないものであるかどうか、この点を伺いたいと思うのであります。  第六は、在外資産の問題でございますが、賠償に充当せられます個人在外資産、それからまた講和條約によりまして放棄せられます日本人個人請求権等に対しましては、でき得れば政府におきましてある程度の補償を與えるということが適当だろうと思うのでありますが、これに対しまして政府はいかなるお考えを持つておられますか、この点も伺いたいと思うのであります。第七点は、対日講和條約に関しまして英米間に専門家の会談が行われまして、その結果は、英米意見相当程度に接近したというふうに新聞に伝えられておりますし、また最近の新聞報道によりますと、フランスはアメリカの提案に同意したというふうな報道も行われているのでありますが、これは、もしそれが事実であるとするならば、非常に喜ばしいのでありますが、この点に対しまして、政府の方に何か確たる情報があるかどうか、伺いたいと思うのであります。  第八点は、ダレス特使は四月二十三日の工業クラブにおきまする演説等におきまして、日米経済協力ということを非常に強調せられておりまするし、またきのうのマーカット司令部経済科学局長声明におきましても、日米経済協力につきましては、非常に明るい見通しを述べられておるのでありまして、はなはだわれわれの意を強うするものがあるのであります。この際日米経済協力の基本的の構想についての総理のお考えを伺いたいと思うのであります。特に日本にとりまして最も大事な経済自立のためには、何をおきましても、重要原材料輸入確保するということが最も緊要だろうと思うのであります。今日国際的に原料事情が相当重大でありまして、厳重な原料割当が行われておりまする現状でありますので、今後の重要原材料確保につきましては、相当重大な関心を国民としては持つておるわけであります。こういうことに対しまする見通しがありまするならば伺いたいと思うのであります。また原材料輸入確保につきましては、当然その裏づけとなる外貨手当が必要となると思うのでありますが、外貨は現在においても不足をしておりまする現状でありますので、借款等によりまする外資導入ということが、どうしても必要だろうと思うのであります。またマーカツト経済科学局長声明におきましても、米国政府及び民間資本導入が有望であるというふうにも述べられておるのでありますが、政府はすみやかにこの外資導入することにつきまして、どういう構想を持つておられまするか、伺いたいと思うのであります。特に外資導入と非常に重大関係があります国際通貨基金加入するの問題につきまして、具体的の見通しがありましたら、伺いたいと思うのであります。  最後にお伺いしたいのは、近々日英間の支拂協定交渉が行われようとしておるのでありまして、いわゆるドル・クローズの存廃問題が各方面の注目の的となつておるのでありますが、この問題は要しまするに、日本ドル圏ポンド圏とに対しまして、どういう方針をとるかという根本問題に帰着すると思うのであります。今後の日米関係を考慮しまするならば、政治的、経済的、文化的に両国の関係をますます緊密にすべきことは当然中の当然でありまするが、しかしながら一方におきまして、これによつて日本と民族的、経済的に密接の関係があるアジア諸国との間に、多少なりともみぞができるようなことになりますると、これは避けなければならぬことと思うのであります。かつて日本日英同盟を結ぶために、米国あるいはアジア諸国あるいは英国の自治領等との間に、日本との関係が円満に行かなかつた例もあるわけであります。従いまして、日米関係を強化することはもちろんでございまするが、他方におきまして、日本アメリカ協力をして、東南アジア経済開発に参加し、アジア諸国との経済関係をさらに密接にするということが、私は日本外交基本線一つであろうと考えるわけでありまするが、これにつきまして、総理のお考えを伺いたいと思うのであります。きのうのマーカット経済科学局長声明におきましても、米国日本生産潜在力東南アジア原料生産等に最大限に利用されることを信じており、日本軍需生産手一ぱいである国から入手することのできない生産財及び消費財を、東南アジアその他の国に供給する非常にいい機会に恵まれているのでありまして、この方面米国援助を受けるべきであるというふうなことが述べられておるのでありますが、日米経済協力一環としまして、日米が提携して、東南のアジア経済開発に参加するということが望ましいと考えるわけでありますが、こういうことに対しまする総理の御所見を伺いたいと思うのであります。  以上九点につきまして、総理の御所見を伺いたいと思うのであります。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。日本国土領土範囲については、あるいは帰属については、すでにポツダム宣言の中にも一応はきまつておるのであつて原則としてはきまつております。この原則においていかなる範囲ということになつて来ると、これは今後の交渉になりますが、政府としては千島その他従来歴史的、地理的に日本領土になつてつたところ、また日本領土帰属すべきものと考えられるものについては、すべて資料を連合国司令部に出しております。この点については、日本政府、ことに日本国民要望については、相当連合国において考慮してくれることと私は信じます。何となれば、ダレス特使ヴエルサイユ條約が一に連合国ドイツに対する圧迫征服者としての押しつけがましい條項によつてヴエルサイユ條約が失敗をし、またその結果ドイツにおいてナチが興つたというような過去の失敗から考えてみてこのたびの講和條約においては、過去の行きがかりは忘れて、対等国として講和條約に入りたいという考えをしておりますから、日本国民要望は相当受入れてくれるだろうと私は確信いたします。そこで範囲ということになつて来ますと、今日ここでこれだけの範囲とか、要望すべき範囲はこうであるとかいうことは、当局者として言明ができないのみならず、言明しない方がいいと考えます。領土の問題は相当ゆとりのある話で、あまり要望がましく、押しつけがましくするということは、かえつて問題を困難ならしめて、結果は悪いと思います。領土の境界のごときは、万世不易のものではないので、時の状況によつて始終かわるものであり、ことにこの間ダレス氏が来られての話の間にも、三十度が二十九度になるというようなわけで、時々刻々の情勢によつて違うのでありますから、あくまでもこれだけはよこせ、これだけは日本帰属であるといつて強制がましくすることは、相手方をしてかえつて態度を硬化せしめますから、結果においてはよくないと思います。ゆとりのある問題としてお考えを願いたいと思います。これは始終申しておる通りであります。  次は国連加入條件についてのお話でありますが、国連加入の問題についても同じようなことであつて原則原則として、その原則に対する可能なモデフイケーシヨンはあり得ることだと思います。ことに軍備を前提としての條件のごときは、現在日本としては入れることができないのでありますから、それに対してどうするというようなことは、自然当局者において考えられることだろうと思います。加入條件については、将来のことに属しますから、ここで言明はいたしたくないと思います。  また安全保障従つて自衛権の問題になりますが、日本自衛権範囲は、結局日本国力発達とともに伴う問題であつて日本の力が強くなればなるほど、従つて自衛権は強化せらるものでありますが、自衛権と申すと、いかにもただちに軍備をいたさなければならないように考えらるるのでありますが、必ずしも今日の意味合いにおいてはそうでないと思います。またそうでなくていいと思うのは、現在日本において再軍備のなすべからざることはしばしば申しておるのでありますが、この状態においてただちに再軍備に入るということは、日本として不可能であり、たとえば共産主義に対する防衛として再軍備をする、その結果国税の増徴ということにもなり、また日本経済生活圧迫ということにもなれば、共産軍を防がんとして、内に共産主義を養成するようことになれば、元も子もなくなるわけでありますから、今日のところでは再軍備はできない。再軍備ができないとすればどうするか。自衛権がすなわち再軍備ということであるならば、これは私の賛成せざるところであります。しかしながら国として存在する以上、独立する以上、自衛権のない国は想像ができないところでありますから、自衛権はいかにしても充実しなければなりませんが、これは国情に応じての話で、国力不相応軍備を持つということは、やがてみずから倒るることになり、その先例太平洋戦争前の日本軍備にかんがみても明瞭であると思います。この自衛権はすなわち日本国力に相応した問題で、国力充実とともに自衛権充実は十分はかられると考えるよりほかいたし方がないと思います。  安全保障に関する日米の間の協定、これはせんだつてダレス氏が、このたびでなく、この前一月に見えたときの話において、日本をして国防真空状態に置くということは、日本としてのみならず、米国として、また世界の平和から考えてみても、うつちやつておくべき問題でないから、日本希望するならば、アメリカは駐兵の措置を考えるということを進んで言つてくれたのであります。これは常に申す通り、国内における治安は自力でもつて十分保障ができ、保護ができるのでありますが、集団的に攻撃を受けた場合、これは集団的に防禦いたすよりほかしかたがないのであつて日本軍備がないために日本国防において真空状態にある。その空虚につけ込んで日本独立を侵す、あるいは安全を侵すという場合には、これは集団的に防衛の方途を講ずるよりほかしかたがない。すなわち米軍駐留あるいはその他空軍、海軍の援助によつて日本の安全を守るという方法を講ずるよりほかしかたがないのであります。そこで日米協定はいかんということでありますが、今日は日米協定というほどのところまで参つておりません。互いに原則論をいたしたので、原則論としては、米国とともに共産主義の進撃に対して、共同防衛に当るという原則話合いをいたしたまでであつて細目協定等にはまだ至つておりません。また米国政府自身も、細目については具体案を持つておらないようにその当時承知いたしたのであります。  経済援助については、昨晩来の新聞に明瞭になつておる通り日本に対して十分の経済援助を與える、すなわちアメリカ経済一環として日本経済活動あるいは経済組織考えられる。ともにともに共産主義防衛に当ろうではないかという趣意かも出たものであつて、そのためにどうしたらよいかという細目については、これからの相談に入るわけであります。たとえば原料の問題にしても、資金の問題にしても、どれだけの原料を與え、どれだけの割当日本に與えるか、特に日本のためにデイスクリミネート——逆に、よこさない方のデイスクリミネートの話でありますが、日本の力のある限り、日本のいわゆるインダストリアル・ポテンシヤリテイを十分活動し得るに足るだけの原料の供給については考えよう。よつてつて互いに相助け合う。これも日本自身努力によるべきであり、日本自身の力によるべきものである。日本の力がないにもかかわらず、よけい原料を無理に割当てるというようなことはいたさない。しかしながら日本にして自主的といいますか、日本の力に応じ、また日本努力に対して十分の考慮をいたす、そういう意味合いにおいて日米協力関係に入りたい。これはマーケット少将新聞声明をよく読んで、ごらんになれば、むろん御了解になることと思います。  在外資産の問題でありますが、これも原則としては、日本から賠償をとらないかわりに、在外資産はその所在国においての賠償に充てるということに原則がなつております。これは原則であります。しかしながらこの原則に対して、いかなる程度までこれを緩和するかということは、その国の手心一つで国によつてつておると思います。イギリスアメリカ等の実例を聞いてみても、あるいは緩であり、あるいは嚴である。また厳重な手続をとつて処分をいたしたものに対しても、何とか緩和方法がないか、現にアメリカ政府のごときは、すでに始末済みのものに対しても、何か緩和方法がないかということを考えておるようであります。しかしこれは相手方日本に対する関係においてどう考えるかということは、相手方政府手心にまつことでありますから、今後の成行きについてごらんを願いたいと思います。  原料輸入手当については今申した通りであります。なるべく日本経済を支障なからしむるのみならず、発達援助したい。そして日本生産能力発達によつて東南アジアその他の国に対する援助の一助になす一つの機関にしたいということをはつきり申しております。そこでこれもまた具体問題についてはこれからの交渉に入ることと思います。  通貨基金加入ということ、これも昨年大蔵大臣日銀総裁が行かれた当時から話に乗つておるので、なるべく早く加入手続をとり、また加入いたしたいと思います。現にとろうという手続を研究中であります。  ダラ・クローズをどうするか、これもこのたびの日英通商協定の主たる題目の一つであります。これをどういうふうに取扱うか。またイギリス側希望はどういうところにあるか。これがはつきりといたさないために、政府としてはこうする、ああするということはここに言明ができないのでございますが、しかしいずれにしても日英通商の量において、昨年よりも一層増大せしめたいというイギリス側希望であり、またわれわれの方も希望であります。その結果増大した貿易に対して、このダラ・クローズをどうするか、これに対してはイギリス側希望もあると思います。日本側希望もあります。この問題に対する協議はこれから始まるのでありまして、これも成行きについてごらんを願いたいと思います。一応お答えします。
  5. 守島伍郎

    ○守島委員長 並木君。
  6. 並木芳雄

    並木委員 私は第一に吉田総理大臣に対し、世界危機日本自体危機について、首相判断誤りがあるので、これを修正すべきであるかどうかという点をお尋ねいたします。  首相は今度の国会でも、第三次大戦は起らないとの楽観論を唱えました。しかしここ数日来明らかにされたマーシャル国防長官などの証言をめぐつて感ずる危機は、はるかに首相の感覚より深刻であります。証言一つをとつてみましても、ソ連はいつ何どき西欧を侵略するかもしれない。ソ連との全面戦争は非常に危険な起り得べきことである、とある。また長官は、もしアメリカが今後一年半にわたり、至世界的紛争を回避できたなら、危地を脱したことになろうという意見同意を與えております。危機は将来ではなくして、むしろ目前にあることを痛感するのでありますけれども、これでも、これでもなお首相は今までの判断に修正を加える必要がないと言われるかどうか。少くとも首相楽観論は、絶対的な根拠があつたわけではないということがわかつて来たのでありまして、首相がかつてみずから誇つたところの多年の外交官としての経験と勘も、もはや現実には神通力を失つたのではないかと思うのであります。世界危機に相呼応して、日本自体危機も重大であります。マーシャル国防長官の別の証言によればこんなことがあります。ソ連はウラジオ、大連、旅順、ハルピンに兵力を集中しているばかりでなく、樺太にも日本の捕虜を中心とした部隊を集結している。また中共空軍の増強をも見のがし得ないものがある。これらの動きはソ連の意図を示すに十分であつて、もし満州を爆撃するならば、朝鮮はもとより、日本及び琉球に対する報復爆撃を予期せねばならない、その場合日本、ことに北海道の防衛が重大問題になるし、この事態は世界戦争を不可避ならしめるものである。首相神経戦にかかるなと言つていましたけれども、日本を取巻く危機について、いまさらのように驚かれておるのではないかと思います。わが民主党は、芦田前総裁を初めとして、首相楽観論に警告を発して参つたのでありますが、明らかに首相判断誤りがあつたと思いますので、この際国際情勢大戦可能性日本の直面せる危機についての首相の見解を明らかにし、あわせてこれが対策をも披瀝していただきたいのであります。  第二に首相にお伺いしたいことは、首相は再軍備にはあくまで反対するか反対するならば日本の受持つべき地上部隊は、どうしてつくるつもりであるかという点であります。首相は再軍備には反対だと言われた。私は首相日本危機に目をおおつているのではないかと思います。講和後の真空状態をほつておいてよいか、安全保障をいかにして確保するつもりであるか、五月九日の本会議演説の中で、この点に全然触れなかつたのは不可解千万であります。講和條約と同時に、別途日米防衛協定を結ぶことに同意を與え、米軍駐留希望したのではなかつたのですか。この日米防衛協定は、首相がよく言われる集団防衛の中に入るのかどうか、そうして国連憲章にいわゆる地域的とりきめの一種ではないかと思うのですが、その構想を明らかにしていただきたいのであります。ただ単に他力本願だけでやつていたのでは、たとい独立してもほんとうの独立にはならないと思うのです。自主自衛方法を講じなければいけないと思います。ダレス氏も、マツカーサー元帥も、日米防衛協定の結ばれたあかつきは、海空軍アメリカが受持ち、地上部隊日本が受持つべきであることをほのめかしております。しかるに首相は再軍備には反対だと言われる。それだけではありません。民主党が再軍備を唱えるから、濠州やニュージーランドなどが釈然としないのだとばかり、これを党利党略に悪用しておるのであります。首相は職を賭しても再軍備反対し続けるかどうか。もつとも首相は近く隠退するとも伝えられるので、あるいは在職中は反対だという意味ならば、一応話の筋は通るのであります。しかしあくまでも反対するならば、地上部隊をどうしてつくるつもりであるか。よもやうやむやのうちに警察予備隊を実際上の地上部隊に切りかえ、表面上はこれは軍隊ではないんだということになるのではないかと思いますけれども、いかがですか。首相が案外のんびり構えておりますので、この点いささか気がかりであるがゆえに、特に確かめておきたいのであります。われわれは民族独立のために、地上部隊を別途に持つべきであり、これが費用は将来不用となるべき終戦処理費をもつて充てて、あわせて憲法の改正ということも考慮すべきであると考えておるのでありますが、これらに対する首相の決意を伺いたいのであります。  第二にお伺いしたいのは、條約署名前に、條約の内容を国会に示すべきであるがどうか。これは大量の追放解除を控えて特に必要と思うのであります。首相は本会議での答弁で、條約の草案は発表しないことになつているから、発表しないのだと言われました。なるほど條約草案はまだ関係国の間で折衝中でもあり、あるいは今ただちに発表せよということは無理かもしれません。しかし国会は国権の最高機関であり、先ほど首相が申されました通りダレス氏は征服者対被征服者関係に立つての條約ではないと言われております。従つて條約署名までには、必ず條約の内容を国会に示すべきものであると思うのでありますが、首相にその意思があるかどうか。私は少くとも国会外務委員会には、必要ならば秘密会でもよろしいから、條約の内容を提示すべきであると思うのですが、この点どうであるか。これをしも行わずして、條約の署名に臨まんとするがごときことあらば、それこそ民主主義の原則を踏みにじるものであり、国会軽視、秘密外交と言われても返す言葉がないと思うのであります。ここでお尋ねしておきたいのは、近く講和前に大量の追放解除が行われんとしております。その数は十数万に及び、鳩山一郎氏のごとき、いわゆる覚書によるものの解除も含まれると予想されておりますが、その通りであるかどうかということであります。これらの人々は、今まで講和について意思表示することを停止されていた気の毒な人々であります。これら有力なかつ多数の人々の意見を徴する意味においても、近く総選挙を必要とするものであると同時に、また條約署名から批准までの間に相当の期間がありますから、いかなるはずみで政変が起らないとも限らないのであります。こういうような場合に、国論が大きく割れるようなことがあるならば、ゆゆしい問題に直面するのでありますが、吉田首相はこのことを考慮しておられるかどうか。こういう場合に備えても、できるだけ條約の内容を国会に対し明らかにして、万遺憾なきを期すべきであると思いますけれども、首相の所信を伺いたいのであります。  最後に第四点といたしまして、昨日発表されましたマーカット声明についてお尋ねしたいのでありますが、時間がなくなりましたので、一言だけ申し上げます。日米経済協力もけつこうでありますけれども、これはよほど政府が注意して参りませんと、楽観を許さない事態が起るであろうと思うのであります。このことは、昨日私の方の三木幹事長が談話を発表しております。私は、運営をうまくやらなければ飢餓輸出に陷るおそれがあり、しかもこれに加えてインフレのおそれがあり、ひいては国民生活を圧迫して、生活水準を低下させることをおそれるものであります。よつて日本の物資買付参加には、これに見合う原料をリンク制により確保することが絶対に必要であろうと思います。言いかえれば下請制度的でなく、あくまでも委託加工的の制度をとることが必要ではないか。それともう一つ為替レートのことが問題になつておるようでありますけれども、私は現在の一ドル三百六十円を、三百三十円あるいは三百円程度に引上げることによつて、こういう国民経済圧迫し、悪性インフレに陷るおそれを防止すべきであると思うのでありますが、これらの点に関して首相のお考えを聞きたいのであります。  以上四点首相の明快なる御答弁を要求して私の質問を終ります。
  7. 吉田茂

    吉田国務大臣 明快にお答えいたしますが、私の神道力はまだ衰えておらないと確信いたします。(笑声)しかしそのためにマーシャル国防長官とワシントンにおける討論をここに繰返す勇気はございませんから、マーシャル氏の議論に対してはあえて反駁いたしません。尊敬して拝聴いたします。  それから再軍備については、すでに申した通りであります。しからばただちに警察予備隊地上部隊に切りかえるか、これは断じて切りかえないつもりであります。警察予備隊は、その目的というところを明示して募集したのであつて警察予備隊警察予備隊であります。これをもつてただちに地上部隊に切りかえることは断じていたしません。  條約は国会にかけるか、これは憲法に規定してあります通り国会にかけて国会の協賛を求めることは必ずいたしますから、御安心を願いたいと思います。  マーカット声明は飢餓輸出になる、——なるかならないかは今後のことであります。飢餓輸出を目的としてマーカットとの間の会談をいたしておるのではないので、断じて飢餓輸出にならないようにいたしますからして、この点についても御安心を願いたいと思います。そのために原料確保とかあるいは外資導入とかいうことについて考えております。但し先ほどの御質問に対して申し残しましたが、外資導入はそう簡単にできるものではないと思います。というのは、アメリカ経済は、今日一種の軍備から来たブーム、好景気が出ておるのであつてアメリカにおける資本に対する利潤というものは相当上昇いたしております。普通でも一割以上の利潤を収めておるそうでありますから、極東に資本家が金を持つて来て、それがアメリカにおいて受けるだけの利潤だけでは、投資をしないことは明らかであります。ゆえにいわゆる民間資本がただちに日本導入される、やすやす導入せられるということは、これはなかなか簡単に行かない話で、いわんや今お話のような第三次戦争が起るというようなうわさを日本においても、この外務委員会においても高唱せられる議員があることでありますから、なかなか臆病なる資本家は、大事な金を東洋に持つて来るためには、相当の保証があり、利益があつて、そして誘導されるにあちずんば、持つて来ないと思います。ここに非常な苦心がありますが、これは米国政府日本経済産業を援助して、そしてアメリカ経済一環をなさしむるという政策的の政策が加わるに至つて初めて外資が来るのであつて、自由資本が日本にやすやす来ると思えば、われわれの間違いであると思うのであります。でありますから、この外資導入は言いやすくして、実行される場合にはなかなか種々の困難が伴うのであります。その困難を排除して、日本外資導入の機会が生ずるように、われわれとして努力いたしておる次第であります。  為替レートをかえるか。今日においは為替レートをかえる考えはありません。為替レートの一定、一ドル三百六十円ときめたことによつて、為替が安定し、また日本の金融も経済も、輸出輸人ともに三百六十円を基準として一応安定をし、その線に沿うて発達いたしておるのであります。その土台を容易にくずす考えは今のどころはございません。  それから、近く政変があるとかなんとかお聞きいたしましたが、政変はございません。私はなかなか引退いたしません。(笑声)この点はまことに申しにくいことでありますが、はつきり申しておきます。
  8. 守島伍郎

    ○守島委員長 佐々木君。
  9. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はただいま総理最後にお答えになりましたことに関連して承つておきたいと思つたのであります。ただいま他の質問者の意見の中にもありましたように、講和締結の前もしくは後において、衆議院の解散を行えというような論が一部に行われております。論者の言うところによりますと、第一には講和の前に国民の総意を聞くべきであるというようなことも申しておりますが、これは少くとも二年前の総選挙におきまして、講和問題をわれわれはひつさげて、国民の総意を聞いた結果が、わが党の圧倒的勝利となつて、今日の吉田内閣をつくつておるわけでありますし、その後の地方選挙等におきましても、国民の意向には何ら変化ないものと私は認めております。従つて少くとも講和前に解散を行うがごとき措置は必要でなかろうと考えます。  第二の点は、先ほどの質問者が指摘いたしました追放解除者をすみやかに政界に登場させようという論であります。これに対しまして、私は根本的に反対をいたします。今日まで追放が指定されておつたということは、そういう人物が日本の再建にあたつて登場することは、好ましくないという意味からであつた考えます。ところがこのたびそれが解除になつたために、あたかもこれを非常な英雄が出現したかのごとくに迎え、そうして、われわれ国民の信託を受けて議席を持つておりまする国民代表と置きかえようというがごときは正常な政治常識の許すところではないと私は考えます。これはあたかも敗戦の直後におきまして、野坂參三君を初めとする共産党の諸君たちが、日本の再建にあたつては最も好ましくない人物でありながら、あたかもこれが救世主のごとくに迎えられたところの当時のばか騒ぎと同じものであろうと私は考えます。かような点から考えましてこの追放解除者を迎えるために、国会の解散を行うというようなことには賛成することはできません。  またその次には、講和の締結によつて一段階を画して、再出発をなすべきであるという論者もあるわけでありますが、これにもわれわれは賛成できません。なぜならば講和條約の締結そのものよりも、その後に来るところの、先ほど来各委員から指摘されておりますところの、日本安全保障の問題であるとか、経済自立の問題等、まことに日本の運命を決定する重大な問題が山積しておるわけなのであります。かような点を考えますると、私は講和締結前はもとよりのこと、後におきましても、この国難を突破するためには、今日幸いにして吉田内閣の持つておりまする安定勢力によつて、内閣を提当すべきであると私は深く考えるのであります。従つて首相はこの際その決意を国民に明らかにし、もつて今日の政局の暗雲の一掃に私は努めていただきたいと考えます。あわせてこの際近く行われると伝えられておりまするところの、講和を控えての内閣の改造の構想等につきましても、総理の御所信のほどを承りたいと考えます。  さらに次には、先ほどの講和條約の締結前に、国会の承認を求めるというお話がございましたが、これは條約の批准前に承認を求めるという意味であろうと考えますが、一部には調印前に草案国会に提示して承認を求めよということを主張しておる向きもあるようでありますから、條約締結前という意味を、この際総理から承つておきたいと考えるのであります。  さらに大橋法務総裁は、先般憲法改正のための国民投票の法制化を準備しておるということを言明しておられますが、首相講和後に憲法の改正を考えておられるとも考えないわけでありますが、近く当然結ばれるであらうと考えます日米防衛協定そのものは、もとより日本にその個別的自衛権を発動する軍備がないから、アメリカ日本安全保障をしてくれるというわけではありますけれども、従つて憲法とは関係ないということにはなるわけでありますが、アメリカの反共陣営の中に日本が参加するということになつて参りますと、憲法との関係の問題も生れて来るのではなかろうかと考えるのであります。従つて日米防衛協定のために、憲法改正等の問題が起つて来るのかどうかという点についても承つておきたいと存じます。  さらに日米防衛協定については、ただいまのところ、まつたくその輪郭、構想だけであつて、具体的な話がないというお話でございましたが、私は講和條約の締結と同時に、時間的空白を置くことなく、ただちに日米防衛協定というものが結ばれなければならぬものだと考えているわけでありますが、その間の時間的空白については、どういうふうにお考えになつているかということについても承つておきたいと思います。  さらに最後には、共産党の非合法化の問題につきまして私もいろいろ考えたことがありますが、時間がございませんので、この非合法化の問題を政府はどのようにお考えになつているかという点、以上の点につきまして承つておきたいと存じます。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。  先ほど並木君の御質問の中に、追放解除に対する答弁を落しましたから、佐々木君に対する答弁と同時にいたしますが、追放解除はなるべく多量にいたしたいと思います。できるだけ多数の人に解除を與えたいと思います。但し解除についての原則がありまして、原則は動かさないように、その原則の適用でありますがなるべくその適用を広く受けるようにいたしたいと考えております。具体的の話は現在研究中でありますから申しませんが、方針といたしては、右の通りに御承知を願いたいと思います。  解散でありますが、始終解散々々と言われて、そのたびごとにわれわれはびくびくいたしますが、(笑声)特に必要の生じない限りは、解散はなるべくいたしたくないと思います。これは国の安定を害することになりますし、過日の地方選挙等において、相当国民は、迷惑とは申さないけれども、ずいぶん安定を害したところもあるようであります。講和前後においては、国はなるべく安定を害せず、一致協力する、国をあげて協力態勢でもつて行きたいと考えます。またかくすることによつて講和條約の内容が緩和せられることと考えます。日本国は安定いたしておる、日本国において動揺はない、革命は起らない、共産党が出て来ないというような安心を與えることが第一であります。しかしながら、ずいぶんこのたびの地方選挙においても暴論、暴言は相当あつたようであります。そうして海外には正論よりも暴論の方がとかく伝わりやすいのでありますから、なるべく国は安定した形でもつて講和條約の内容を日本の有利にいたしたいと考えますから、解散はなるべく避けたいと思います。はなはだお気の毒でありますが、当分いたさないつもりでおります。  改造でありますが、改造も、これは必要な範囲でいたしますので、政治はそのときどきの実情に即応いたすべきものと考えられますから、改造いたしましても、なるべく小範囲、改造せずに済むことならば改造いたしません。  條約締結前に国会の承認を求めるか求めないか、なるべく承認なり、実情は国会に報告いたしたいと思いますが、しかしながら、かくすることによつて、せつかくの條約談判の進行を妨げるというようなことがあつてはなりませんから、これも必要の限度にとどめたいと思います。しかしなるべく実情は国会に報告いたしたいと思います。  憲法改正についても、現在のところは、私は憲法改正を必要と思いません。またかりに防衛協定について憲法改正の要が生ずるかもしれないというお尋ねと思いますが、相手国、と申すよりは、米国政府も、日本の憲法はよく承知しておるので、憲法を改正しなければならないような無理な希望は申し述べないだろうと思います。のみならず軍備については、まつた日本国の自由であると言つておるので、再軍備するかしないかということは、これは民主党が天下をとれば、憲法改正の必要が生ずると思いますが、わが党が天下をとつている間は、さしあたりのところ憲法の改正の必要を認めません。  共産党の非合法化については、私が絶えず申す通り、これは共産党が非合法的活動がはげしくなり、日本の治安が維持できないというような事態に立ち至れば、非合法化するようにいたさなければならぬと思いますが、今日は共産党は屏息いたしておるように考えますから、さしあたりのところは非合法化は考えておりません。しかし必要が生ずれば、自然そういう必要な処置はとらなければならぬかと思いますが、ただいまのところは、ただちにということは考えておりません。
  11. 守島伍郎

    ○守島委員長 武藤君。
  12. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 私は大体次の六点につきまして、外務大臣に伺いたいと思います。  まず第一に、講和條約と安全保障協定とは、これを同時に締結することなく、切り離して締結することはできないものであろうかということであります。申すまでもなく講和條約は、第一に日本が完全なる敗戦国であり、かつポツダム宣言を受諾しておる結果といたしまして、その條約において日本の意に満たないものがかりにありましても、これを絶対に受諾しないというわけには行かないかと思います。しかしながら講和後の日本安全保障の問題は、まつた日本自身の問題であります。日本だけの意思によつて解決し得る国内問題であります。     〔委員長退席、竹尾委員長代理着席〕 従いまして、これを講和條約と同時にしないで、切り離しまして、講和後の内外情勢により、もしその必要がありますれば、十分な考慮と国民的討議のうちに、これを締結する方が得策ではないでしようか。首相もすぐ侵略されるようなことはないというふうな御見解のようでありますから、なおのこと、あわてて講和條約と同時に締結をしなければならないということはないのではないかと考えるのであります。ことにダレス構想によります安全保障方法が、伝えられるごとく、アメリカとの防衛協定ないし駐兵協定ということでありますならば、この協定は、アメリカとの単独講和の後にソビエトとの講和條約締結に重大な障害となりまして、政府でも理想と考えておられる全面講和はもちろん、なしくずし講和というものも、結局その道がこの防衛協定のためにとざされてしまうのではないかというふうに考えるのであります。  第二点にお伺いしたいことは、単独講和後——多数講和でも本質的には単独講和と同じでありますから、単独講和という言葉を使います。単独講和後、ソ連、中共などとの関係はどうなるのか、またどう調整するつもりなのか、この点をお伺いしたいと思います。首相は先般参議院におきまして、加藤シヅエ女史の質問に答えて、仮定の問題には答えられないというような趣旨の答弁をされたように私は記憶をしております。また衆議院において鈴木茂三郎氏の質問に答えて、講和希望しない国はしかたがないという趣旨の御答弁をなさつたように記憶をしております。しかしながら単独講和が現実の問題であるならば、単独講和と同時に直面するところの対ソ関係、これは同様の意味においてやはり現実の問題であります。     〔竹尾委員長代理退席、委員長着席〕 政府としては、当然これに対する見通し、及びこれに対処する具体的方策を持つておらなければなるまいと思います。またソ連陣営は日本としては絶対に無視することのできない巨大な存在であります。アメリカ陣営との単独講和後においても、なお一日も早くソ連陣営との平和回復に努力し、これとの調整をはかることが、理想としては全面講和に賛成をされる政府の責任のある態度ではないでしようか、こう考えのであります。  第三には、日米防衛協定または駐兵協定というものは、暫定的という言葉を使われておるようでありますけれども、結局において永久化する危険はないであろうかということであります。アメリカと単独講和をして、アメリカ軍の駐屯を許す限り、日本はソビエトの拒否権によりまして、国連加入することはもちろん、国連安全保障を得ることはおそらく不可能でありましよう。一体いつになつたら、日米防衛協定にかわつて国連安全保障が得られることになるとお考えになるか、その見通しはどうでありますか。  それから日本の再軍備は、先ほど来の質問に対しまして、経済力が許さないからと言われますけれども、首相は結局は再軍備をするという腹でありますか、また一体いつになつたら、経済上自衛に十分な再軍備ができるという見通しでありますか、これを伺いたいと思います。先ほどの御答弁を伺つておりますと、再軍備は当分しない、しかし独立国として自衛権がない国はないから、自衛権は存するというふうに言われておりますが、それならば進んで再軍備はしないで、自衛権充実させる方法は何かという、積極的、具体的な案についてはお示しがございません。この点をもつと積極的に、警察予備隊を地上軍にしないというような、消極的な、否定的な形においてお答えをなさらずに、自衛権充実させる方法は再軍備以外にあるとすれば、どういう方法でやるのか、これをお伺いしたい。また伝えられる外国との防衛協定、外国軍によつて日本の安全を守ろうとする、そのような方法である防衛協定、駐兵協定というものも、やはり日本自衛権充実させる一つ方法首相考えておられるかどうか、この点もお伺いしたいと思います。  第四に、これは先ほどから並木君並びに佐々木君から御質問がありまして、お答えがあつたようでありますけれども、なお重ねて私は法律家の立場から詳しくお伺いしたいと思います。講和條約と安全保障協定とは、ともにこれを署名調印前に国会に提出をして承認を求むべきではないでしようか。事前に国会の承認を求めるということは、民主的主権在民憲法の原則であります。これは申すまでもありませんが、先ほどの首相の言葉じりをとらえるわけではないが、協賛という言葉を使われましたけれども、これは昔の欽定憲法の言葉でありまして、條約締結権が天皇に属しておる場合における国会の機能を表わす場合の言葉でありまして、主権在民の場合における国会の機能を表わす言葉ではないように考えます。事前に承認を求めることを原則とした憲法の目的は、申すまでもなく、條約の内容に可能な限り、国民の意思を反映せしめんとするものでありまして、ただイエスかノーかだけでなく、必要があれば草案を修正し得るものであります。またそうしなければ国民希望をいれることはできないと思うのであります。ことに調印によりまして、條約の字句、内容は最終的に決定をいたします。批准はただ国内法上における形式的な手続にすぎません。すなわち調印後は、政府国会もその内容を全面的に否定することはできるかもしれませんが、これを修正するという余地はなくなるのであります。従いまして調印後国会に提出をしたのでは、たといそれが批准前でありましても、事前に提出をするという立法の趣旨というものは、半ば失われてしまうのではないかと考えます。事前事後の法律上の解釈は別といたしましても、いやしくも首相が事前に国会の承認を求めるという民主的なりつばな態度であります限り、その態度を徹底いたしまして、これを調印前に国会に提出をいたしまして、いわゆる秘密外交の汚名をそそがれるのがよろしいのではないかと考えます。もし政府が事前に……。
  13. 守島伍郎

    ○守島委員長 武藤君、時間が少くなりますから、どうぞ簡単に切り上げを願います。
  14. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 事前にこれを国会に提出すると言いながら、調印後でも批准前であるならば事前だと強弁して、調印前の国会提出を拒否するならば、これは国民国会を欺瞞するという結果になるのではないかと思うのであります。この点についてはつきりお伺いをしたいと思うのであります。  なおこれに関連をいたしまして、第五に、政府は批准條項のない條約はこれは先般西村條約局長なんかが分析しておられましたけれども、批准條項のない條約は、事前とはすなわち調印前だというような解釈でありましたけれども、講和條約と同時に締結を予想されておりますところの防衛協定ないし駐兵協定その他に批准條項がないとするならば、これらは政府の見解に従いまして、調印前に国会に提出するという御趣旨であるかどうか、この点を承わりたいと思うのであります。  最後に先般の本会議におきまして、首相は、ワシントンから交付されました條約草案というのは、発表しないという約束であるというふうな御趣旨の御説明が、ございましたけれどもこれが新聞に漏れてしまつたということでありましたが、受取られた草案というのは、新聞に漏れたあのニュースと重要な点において大体一致しておるかどうかということをお伺いしたいと思います。  以上六点についてお伺いをいたします。
  15. 吉田茂

    吉田国務大臣 講和條約と安全保障協定とは別な時期に結ぶがいいのではないかというお話でありますが、これはいいか悪いかということは問題であります。また現在安全保障協定にしても、それから講和條約にしても、確定できてないのでありますから、いずれ原案を見ました上で、別な時期にする方が得か、別な時期にしない方が得かということは、條約の内容もしくは協定の内容を見て定めるよりしかたがないと思います。  単独講和後におけるソ連、中共との調整はどうであるか、これはしばしば申す通りソ連、中共が日本講和関係に入ることを拒否する以上は、いかんともできないという議論は、私は今でもそう確信しております。見通しはいかんと申しますが、これについては神通力がございませんから、国際情勢の発展にまつよりほかしかたがないのであります。  また日米防衛協定または駐兵協定は永続する可能性があるかと言われますが、條約に永続性もしくはこれがことごとく暫定的ならざるものは実はないのであります。これが永続するかしないかも、これは将来の国際情勢による話でありまして、永続するかもしれず、永続しないかもしれず、日英同盟のごときもかなり永続するというような、あるいは当局者の間においてはこれを外交の基本にしようというような話合いがあつても、国際情勢の変化においては遂に破棄しなければならぬということになりましたので、永続するかあるいは暫定的であるかということは、一に将来の国際情勢にまつよりほかしかたがないと申すよりいたし方がないのであります。  また再軍備は結局する考えであろうというお尋ねでありますが、結局するかしないかは——あるいは日本が破産することになれば、再軍備をしようにもできないことになりますし、また再軍備をし得るだけの力ができれば、再軍備することが独立国としての体面でもありますし、また自衛権の発動ともなることでありますが、しかしながら私は、再軍備をもつて、それで自衛権のすべてだとは考えないのであります。しからば何があるか、再軍備以外に自衛権としては、外交もあれば経済協力もあれば、あるいはいろいろな日本の安全、自衛をなすだけの手段というものは、決して軍備に限られたものではないと私は思います。少くとも今日においては再軍備以外の自衛、再軍備以外の安全保障考えるべき時期である。こう考えますから、結局はとにかくとして、再軍備はただいまいたす考えは毛頭ないのであります。  講和條約案というのは、アメリカの対日講和條約案でありましようが、これは新聞に出た通りであるかないか、これは発表いたさない建前でありますからして、その内容は何ともここで言明はいたしません。  それから調印前に国会に提出するかどうかという点については、先ほどはつきり申し述べましたが、なるべく講和條約の内容、條約の経過等については国民に知らせたいと思いますから、憲法の規定いかんにかかわらず、でき得る限りいたしますが、しかしながらそれによつて講和條約の内容その他に触れて、講和條協定の進行を害するような事実があれば——そういうことになることをおそれますから、なるべくいたしますけれども、模様によつてはいたさないかもしれず、これは一に講和條約談判中の模様によることであります。しかし趣意としては、なるべく広く国民国際情勢についての知識を普及せしめる上からいつても、條約の内容等はなるべく早く知らせて、国民協力を得たいと思います。しかし時期いかん、いつかと言われてもちよつと申し上げにくいのであります。
  16. 守島伍郎

    ○守島委員長 米原君。
  17. 米原昶

    ○米原委員 私は一問ずつお尋ねいたします。先ほど並木君も触れられたことでありますが、第一に警察予備隊の問題であります。総理は御承知のように、われわれはこの警察予備隊はその訓練といい、実質的には軍隊である、こういう主張を持つて来ました。これに対して政府は今までこれはあぐまで警察である——もちろん日本の憲法には軍隊が許されてないのですから、政府としてはそう考えられるのが当然でありましようが、われわれは実質的には軍隊であるということを主張して来たのであります。ところがマッカーサー元帥は、去る五月五日のアメリカ議会における証言で、この警察予備隊の問題に触れまして、われわれは警察予備隊アメリカの陸軍の師団によく似た形式によつて組織した。人数は七万五千名で、これが四個価団に編成されている。訓練は好成績で進行している、こういう説明がありました。そのあとで、この予備隊を小規模な強力な兵力に転化することができるかという議員の質問に対して、むろん警察予備隊は優秀な地上郡隊に転化することはきわめて容易である。われわれは日本国の防衛海空軍援助を送ることはできるが、地上部隊日本人の間から供給せられるであろうということをマツカーサー元帥証言しておるようであります。先ほど総理はこの日本警察予備隊は、そういうふうには絶対に使わないということをおつしやいました。ところがこの点について先日の本会議での議員の質問に対して大橋法務総裁は、マッカーサー元帥のこの言明に対しては同感であるという意味のことを答弁しておられます。そうすると総理のただいまおつしやつたことと若干違うように思うのですが、この点はどういうふうに解釈したらいいのか、このマツカーサー元帥証言総理は否定されるのであるか、この点を最初にお伺いいたします。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 元帥が何と言われたか、今日ここで記憶はいたしませんが、可能であると言われたとするならば、可能なりとしても、政府はこれによつて警察予備隊をただちに軍隊にするという考えは毛頭ありません。これは警察予備隊設置の当時においても言明いたしておるのでありますが、一に国内治安のために予備隊を設けたものである。かりに可能といたしましても、政府としては今日これをただちに軍隊に編成がえをする考えはないことをここに明言いたします。また法務総裁は何と言われたか私は知りませんが、お話によると同感だと言われただけの話で、ただちにするとは言われてないはずであると思います。
  19. 米原昶

    ○米原委員 それで大体政府の御意見は明瞭になりました。つまり実質的には軍隊的な訓練が施されており、いつでも軍隊に転化することは可能であるが、それはやらない、こういう点だと思うのであります。  もう一つ次にお伺いしたいのは、先ほど北沢君も指摘されましたが、講和條約以後国際連合に加盟する問題であります。先ほどの総理の御答弁でも、国際連合に加盟を申請されるのは当然だと思いますが、それが拒否されるかもしれない、その場合でもこの講和條約では国際連合の憲章というものは守つて行く、こういうことを明らかに言われておると思うのでありますが、その点はいかがなのかどうか、聞きたいと思います。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。私がただいま申したのは、たとい可能なりといえども、政府としてはこれを編成がえする考えはない、こう申したのであります。可能なりといえどもこれは軍隊にはいたしません。  それから国際連合に加盟を許されなかつた場合にはどうするかということでありますが、これは仮定の問題でありますからお答えいたしません。
  21. 米原昶

    ○米原委員 その場合のことを言つているのではなくて、そういうことがあるなしにかかわらず、国際連合憲章は遵守して行く意図であるかどうかということであります。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 御承知の通り国際連合憲章なるものは、世界の平和維持を目的といたしておるものでありますから、私としてはその憲章はなるべく守り、また日本政府はその憲章の企図する筋に沿うて参りたいと思います。
  23. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、先ほど北澤君も触れられました、この新聞に伝えられているいわゆる講和條草案なるものにも、ただいま総理のおつしやつたようなことが出ておるわけでありますが、たとえば安全保障の問題において、国際連合の規定に従つてあらゆる援助国連協力する、こういう問題が当然起つて来ると思うのであります。たとえば現在の朝鮮事変に対して協力するという問題が義務的に当然生じて来るとわれわれは思いますし、総理も大体そういう意味にお答えになつたと思います。そういたしますと、たとえば朝鮮の戦争が続いておれば、現在でも国連協力ということをいわれておりますが、当然これに協力するという形で警察予備隊を派遣するという問題が起るのではないか、なるほど軍隊ではないから、軍隊としては使わないとおつしやるけれども、トルーマン大統領も、朝鮮出兵は警察行為である、こうはつきり言つておるのでありますからそういう意味からいつても、実質的にはやはり警察予備隊の派遣という問題が起るのではないかと思いますが、その点はどうなるか、明瞭にしていただきたい。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 その点ははつきりお答えいたしますが、警察予備隊を朝鮮に派遣するがごときことは断じていたしません。
  25. 米原昶

    ○米原委員 警察予備隊は絶対に送らないということを総理として言明されたわけですが、そのほかの協力ということは当然行われると思いますが、いかがですか。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは常に申しております通り日本としては共産主義勢力に対しては反対いたしたいと思いますから、米国軍あるいは国際連合軍が、共産主義反対するという意味合いにおいて、日本軍備以外の協力はいたす考えであります。しかしながら戦争に加入して戦うというようなことはしないつもりであります。
  27. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、たとえば現在、これも国会でしばしばわれわれの問題にした点でありますが、日本の飛行場から朝鮮に飛行機が飛んでいる、こういう問題について、現在占領下におるからということで、一応今まで法務総裁からも説明がしばしばあつたのでありますが、講和條約が結ばれたあかつきには、占領下ではないが、やはり飛行場から飛行機が飛ぶことなどは自発的に認めることになるかどうか、はつきりしていただきたい。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 将来のことはお答えいたしません。そのときの状況に応じて政府考えます。
  29. 米原昶

    ○米原委員 少くともただいまの答弁は逃げられたのにすぎないと思う。先ほどの北澤委員に対する答弁では、原則としてそういう軍隊を出すというような形の協力はしないけれども、可能な形でそういうものをやるとおつしやつたのでありまして、そこが非常な問題になるのでありますが、先日ソビエト政府は覚書をアメリカに送つた、これは新聞に伝えられておることで、すでに日本から飛行機が飛んでいることなどが非常に問題になつている。ところが少くとも現在占領下にあるという事態で、條件は違うと思うのでありますが、これは講和條約後日本が自発的に協力するという形になると、当然中ソ友好援助條約によつて日本とこれと結びつくところの国の侵略に対しての戦いという形で、今アメリカの議会で問題になつておるところの世界大戦を誘発することになるのであります。今結ぼうとしておる講和條約は、そういう形に行くという点が一番問題になると思う。実質的には中ソとの戦争が——この講和條約がきつかけとして大きな戦争が起る可能性が、ここにはつきり包蔵されておるのではないかと思うのでありますが、そういう可能性がないというならば、ないということを説明してもらいたいと思います。
  30. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはいろいろ解釈もあるかもしれませんが、今日日本の飛行場からアメリカの飛行機が飛び出すのを妨げる何らの何はないのであります。むしろ降伏條約によつてアメリカの総司令官の指揮のもとにあるから、総司令官の行動については、日本政府としてはこれを阻止し、もしくは妨害することはできないのであります。その結果がどうなるか、これはどうなるかということの結果によつて判断いたさなければなりませんが、そうなるかならないか、はたしてソビエトが日本に対して攻撃をして来るか来ないか、この点については、今日見通しといえば、私は見通しはないと申すよりいたし方がないのでありますが、ソ連が好んで日本に対して進撃をするというようなことは、単にアメリカの飛行機が日本の飛行場から飛び出しておるからというので、日本に対する開戦の理由にするということはないと思います。
  31. 守島伍郎

    ○守島委員長 米原君、時間がありません。黒田君発言を許します。
  32. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は残された問題を少しばかりお尋ねしてみたいと思います。  第一は日米駐兵協定の問題でありますが、これは詳細のことはまだきまつてないというように総理は先ほど申されておりましたので、そこまではお聞きしようとは思いませんが、根本的に一、二私の疑点としております点についてお伺いしたいと思います。  最初前提のもとにお尋ねしますが、この日米駐兵協定なるものは、四月十八日ホワイト・ハウスから発表されましたトルーマン大統領声明の要旨を見ましても、その他いろいろなこれに関係する文書を見ましても、日本からこのとりきめをしてくれということをアメリカに要求したのだからしてやるんだ、こういうように私どもに解釈できるような発表が公式になされておるのであります。そうしますと、吉田首相ダレス大使あるいはトルーマン大統領直接に、こちらからこういう協定を結んでもらいたいということを、申し出られたように解釈しなければならないと思いますが、念のためにまずこのことをお伺いしておきます。
  33. 吉田茂

    吉田国務大臣 どつちが先かといつて先陣を争うわけではありませんが、自然に両方の気持がそこに合致した、こう言つたら一番実体を得たと思います。
  34. 黒田寿男

    ○黒田委員 これはこれ以上追究しません。  その次に、この條約の性質は関連いたしまして、私は国際連合憲章の精神と日本憲法の精神と、この二つの面から二点だ参けお聞きしてみたいと思います。それは、この日米駐兵協定なる條約の性質は、いわゆる同盟條約であるか、それとも安全保障條約であるかという問題について、私どもには少し疑問があるのであります。今まで新聞で発表せられました範囲のものを拝見いたしますと、もつとも総理はそう詳しいことはまだきまつていない、こう言われますけれども、日本の大新聞にも相当詳しく協定の内容として伝えるものが出ております。そういうものを私ども見ました範囲では、どうもこれは国際連合の精神から出た、いわゆる安全保障條約というものではなくて、同盟條約だというような性質に、むしろ私は解されるような協定になつておりはしないかと思います。大体第三国からの防禦のための援助アメリカに約束してもらうということになつておるようであります。これはもちろん経済援助も含まれておると思いますけれども、このような同盟條約は、第三国に対しまして一種の脅威になるとも解釈せられるのでありまして、私どもはこういう性質の同盟條約を結ぶということは、国際の平和安全にとつて有害である、そういう性質の同盟條約ではないかという気持がするのであります。安全保障條約ということになつて参りますと、同様に国家の安全を保障する條約ではありますが、しかしながら今回の日米駐兵協定の内容とは違つて、主として当事国の間で互いに侵略をしない、それから條約の当事国のうちの一つが侵略をされた場合に、他の当事国がそれに対抗して、侵略されたものを援助するというような意味安全保障條約は、私は国際連合において、その精神に合致したものとして認められると思うのでありますけれども、どうもこの日米駐兵協定の性質はそういうものではなくて当事国が互いに侵略しない、または條約の当事国の一つが侵略された場合に、他の当事国が援助してやるという性質のものではなくして、単に第三国に対する攻守とは申しません。攻撃ということは国際法上許されないことでありますが、しかし少くとも防禦について第三国を目標といたしまして締結される條約のように私は思われる。今まで発表されたものの内容から私はそう思われます。  それから第二に、いま一つそういう疑問を起しました点は、これも総理は否認せられるかもしれませんが、日本新聞には発表せられております。たとえば毎日新聞の四月二十一日に発表されております日米駐兵協定なるものの内容を見ますと、将来地域的集団安全保障に発展するということが書いてある。将来発展するのであるから、今は地域的集団保障ではない、今地域的集団安全保障があるならば、将来そういうもの転化するということはないのですから、やはりこれはそういう面から見ましても、どうも私はいわゆる集団安全保障條約というものではなくして、同盟條約ではないかというふうに私には思われる。そうなつて来れば、これは国際連盟当時もありましたが、これは国際連合からもこういう性質の條約というものは、憲章の精神に反するものとして、むしろ禁止せられておるように私は解釈しておる。どうも今まで発表せられた内容では、私にはそう思われますので、ひとつその点総理から納得の行くように御説明を伺いたい。
  35. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、私はあなたに反問いたしたいのでございます。日本政府総理大臣の言葉を信用するか、新聞を信用するか、これを第一に伺いたい。私の申したことは——重ねて申しますが、今日協定なるものはでき上つておりません。過日国会において鈴木君の質問演説の中に、できた事実と認められるものがあると言われたものでありますから、そういう協定の原文があるならば、私として拝見いたしたいということを申したのであります。もし黒田君においてそういう協定が手に入つておられるならば、私も再び拝見いたしたいとここに申すよりいたし方がないのであります。要するに話合いがあつた程度であつて、いわゆる協定というようなものはございません。まだ独立もしない日本協定権のあるはずもないし、またアメリカとして国際連合憲章に反するような協約あるいは協定をなすはずはないと御承知を願いたいと思いす。
  36. 守島伍郎

    ○守島委員長 お約束の時間が参りました。——それでは簡単ならよろしゆうございますから、簡単にお願いいたします。
  37. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは簡単に質問申し上げます。ただ私お尋ねしたいのは、なるほどまだ協定はできておりません、これは国際法上から日本協定を結び得ない地位にあるということはわかつておりますが、しかし大体においてこういう協定を結ぼうという意思はあるということは明らかであると思います。それから内容と言われましたが、なるほどまだ決定せられたものではありませんけれども、たとえば四月二十一日の東京毎日新聞に前文、本文というようなことを出しまして、相当詳しく出ております。その前に西村條約局長あるいは井口外務次官その他の人たちがシーボルド大使その他アメリカ側の外交当局といろいろ専門的交渉を進められた、また資料もいろいろ提出されたということで、どの新聞にも相当詳しく——朝日新聞にも出ております。知らないのは総理大臣だけということになつております。もとより私は……。
  38. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君、簡単に願います。
  39. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは決定したものではありませんので、詳しいことはお聞きいたしませんが、その根本論について総理大臣の御所見を伺いたい、こう思いましたが、もうこういう時間の御催促を受けましてはおちついた話もできませんから、次の機会に他の委員会で外務大臣に御質問申し上げます。
  40. 守島伍郎

    ○守島委員長 本日はこれにて散会いたします。     午前十一時三十九分散会