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1951-05-16 第10回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十六日(水曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君       淺香 忠雄君    伊藤 郷一君       大村 清一君    小川原政信君       菊池 義郎君    栗山長次郎君       近藤 鶴代君    仲内 憲治君       並木 芳雄君    松本 瀧藏君       川島 金次君    砂間 一良君       米原  昶君    高倉 定助君       黒田 寿男君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 五月十二日  委員砂間一良辞任につき、その補欠として立  花敏男君が議長の指名委員に選任された。 同月十五日  委員武藤運十郎君及び立花敏男辞任につき、  その補欠として川島金次君及び砂間一良君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 五月十二日  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一四五号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一四五号)(予)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  今日は外務大臣出席される予定でございましたが、よんどころない渉外事項の用事ができまして、急に中止になりました。これは最近の機会に出てもらうように交渉いたします。
  3. 並木芳雄

    並木委員 議事進行について……。首相の出席はもう一週間も前からきまつて、きのうも念を押したら大丈夫だという話だつたのですけれども、急に渉外事項というのはどういう突発事項ですか。どこに行つておるか、委員長は確かめておられるのですか。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 内容確めておりません。
  5. 並木芳雄

    並木委員 この大事な委員会出席予定されておつたにかかわらず、突発事項が起つたのに対して、委員長は当然確かめて臨むべきであるにかかわらず、どうして確かめないのですか。
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 私は外務大臣を信用いたしております。外務大臣がよんどころない渉外事項であると言われれば、それを必ずしも確かめる必要がないということを確信いたしております。のみならず、きのうの夕方連絡がございまして、その後連絡がとれません。けさ参りましても連絡がとれませんから、その点を確かめる時間もございませんでした。お答え申します。
  7. 並木芳雄

    並木委員 単なる渉外事項という一片の通知で、きようの出席を取消されて、委員長としては国会の権威を失墜したと感じないのでありますか。
  8. 守島伍郎

    ○守島委員長 ちつとも失墜したとも思いません。
  9. 並木芳雄

    並木委員 きようは午前中のみならず、午後もあることですから、午後にでも都合をつけて——けさつてわずかに一時間ばかりしか出ない、こういう話であつたのですから、必ず出る時間があると思う。朝から晩までかかるどういう突発渉外事項が起つたのか、午後からでも出席してもらうように段取りがつかないかどうか。
  10. 守島伍郎

    ○守島委員長 私は午後はさしつかえありということをかねて承知いたしておりました。ただ午前はあいている、だから多分出られるであろうということで、皆さんに申し上げておきました。しかしそのときにあなたにも、万一さしつかえがあるかもしれぬから、そのときは取消されるということを申し上げておきました。きようは午後はさしつかえがあるはずです。ですから明日以後、最近の機会に出てもらうように交渉いたします。
  11. 砂間一良

    砂間委員 議事進行について……。平和擁護に関する決議案外務委員会にたしか去る三月末に付託になつておると思います。その後一箇月半以上も経過しておりますのに、委員長はこれを一向審議する機会を與えておりません。一体どういう事情があつて成規手続をとつて委員会に付託された議案審議をサボつておられるのであるか、委員長の弁明を求めます。
  12. 守島伍郎

    ○守島委員長 どの議案をいつ、どうかけるかということは、委員長権限に属しております。お話がございますから、理事会に諮りまして、また相談いたします。
  13. 砂間一良

    砂間委員 きようの公報を見ますと、あとから提出されたほかの議案は、本日の外務委員会審議するように載つておりますが、平和擁護に関する決議案審議は載つておりません。理事会に諮つてあとできめるというお話でありますが、いつの理事会に諮つて、いつきめられる予定か、会期もも     名          称   在ワシントン日本政府在外事務所   在ニューヨーク日本政府在外事務   所   在サンフランシスコ日本政府在外   事務所   在ホノルル日本政府在外事務所   在ロスアンゼルス日本政府在外事   務所   在シアトル日本政府在外事務所   在オタワ日本政府在外事務所   在メキシコ日本政府在外事務所   在リオテジヤネイロ日本政府在外   事務所うそう長くありませんので、今週中にやるかやらぬか、ひとつおよその見通しを伺いたい。
  14. 守島伍郎

    ○守島委員長 それは私が最善の措置をとることにおまかせを願います。     —————————————
  15. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案内閣提出第一四五号)(予備審査)を議題といたします。政府例より提委理由説明を求めます。草葉外務政務事務官。     —————————————   日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案    日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律   日本政府在外事務所設置法昭和二十五年法律第百五号)の一部を次のように改正する。   第二條第一項の表を次のように改める。  第九條第一項を次のように改め、同條第三項を削る。  職員に対して支給する在勤手当及び住居手当支給年額は、別表各号に定める額の九割から十二割までの額の範囲内において、アメリカ合衆国に設置ざれる在外事務所職員については当該職員の職、アメリカ合衆国以外の国に設置される在外事務所職員については当該職員の職並びに当該在外事務所所在地物価水準及び当該国通貨の対米為替相場基準として、それぞれ外務大臣が定める。     附 則     —————————————  この法律は、公布の日から施行する。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  今次の改正は、ワシントン外六箇所に在外事務所を新たに設置すること、及び在外事務所職員在勤手当及び住居手当支給額決定方法を変更することの二点であります。  まず第一に、七在外事務所の新設について御説明いたします。日本政府はすでに日本政府在外事務所設置法によりまして、十八箇所に在外事務所を設置して参つたのでありますが、その後も引続きその増置方を総司令部を通じて関係諸国交渉しておりましたところ、このたびワシントンロンドンオタワメキシコリマ、ジャカルタ及びスラバヤの七箇所に在外事務所を設置することについて、各関係国の承諾を得ましたので、これらの在外事務所前記日本政府在外事務所設置法の第二條第一項の表に追加し、同時にこの機会に総計二十五に及び在外事務所を北米、南米東南アジア及びヨーロッパの地域別に配列して同表を改正するのが、改正の第一点であります。  次に第二に、在外事務所職員在勤手当及び住居手当支給額決定方法の変更について御説明いたします。在外事務所に勤務する職員在勤手当及び住居手当は、従来は日本政府在外事務所設置法第九條によりまして、アメリカ合衆国に設置される在外事務所については別表を適用し、その他のものには別表の九割から十一割までの範囲内で所在地物価水準所在国通貨の対米為替相場とを基準として、外務大臣が定めることとなつていたのでありますが、在外事務所の数が漸次増加して、その人的構成等が複雑化して来るに従つて、在勢手当及び住居手当決定基準として、各職員の職を考慮に入れる必要を生じて参つたのであります。そこで前記法律の第九條第一一項の改正案によりますと、在勤手当及び住居手当支給年額は、すべて別表の九割から十二割までの範囲内とし、その範囲内において外務大臣が各職員について支給額を決定するのでありますが、その基準としては、アメリカ合衆国にある在外事務所については当該職員の職を、その他の在外事務所については当該職員の職のほかに、従来通り物価水準及び為替相場考慮するということにしたのであります。これによりまして在勤手当及び住居手当年額は各職員ごとにきめられることになりまして、実際に即した支給をいたすことができるのでございます。  なお附則におきまして、この法律施行期日を定めましたのであります。  以上がこの法律案を提案いたしまする理由並びに説明でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御採択を賜わらんことをお願い申し上げる次第でございます。
  17. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はありませんか。
  18. 北澤直吉

    北澤委員 ただいま御説明になりました日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案について、二、三点質問いたします。  第一点は、今回の法律案によりまして、ワシントンに新しく在外事務所が設置せられることになつたのでありますが、現在日米経済協力というふうなことが、各方面の非常な注意を引いておるのであります。従いましてワシントン在外事務所機能と申しますか、仕事日米経済協力ということが相当大きな部分を占めて来なければならぬというふうなことでありまして、私はワシントン在外事務所の働き方いかんによりまして、この日米経済協力という問題が大きな影響を受けると思うのであります。従いましてワシントン在外事務所人的構成というものは、これは相当重大な意味を持つておると思のうであります。そういうわけでありますので、まずこのワシントン在外事務所人的構成につきまして、政府でどういう構想を持つておられますか、この点をお伺いいたします。
  19. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま御質問にありましたように、ワシントンに置こうといたしまする在外事務所は、従来よりも相当お話のように内容を充実した、そうしていろいろな意味におきまして、アメリカにおける従来の在外事務所の持つておりまする機能以上なものを持ちたいと存じておるのであります。従いましてこれが人的配置等につきましても、最もそれに適応するような人たちを駐在せしめて、人員等におきましても、従来以上に多数を配置したい、かような考えを持つておるのであります。従いましてそういう点からも、在勤その他の手当等につきまして、従来よりも増額したいといの方針をもちまして、今回御審議をお願いしておるような次第であります。
  20. 北澤直吉

    北澤委員 そうしますと、このワシントン在外事務所人的構成相当充実した構成にするのでありますか、先ほど申しましたように、日米経済協力ということが、ワシントン在外事務所相当大きな仕事でありますが、このワシントン在外事務所職員には、政府の役人ばかりでなく、民間のその方面専門家をも入れるお考えがありますかどうか、その点をお伺いいたします。
  21. 草葉隆圓

    草葉政府委員 そういう点につきましては、実は従来から国会側の御要望もありまするし、今度のワシントンだけではなく、将来の在外事務所あるいはさらにこれが発展いたしまする場合におきましてのその内容等につきましては、適当な民間人等の採用というようなことも、かつて御答弁申し上げましたように、また総理からもこの点につきまして御答弁申し上げましたように、十分考慮して参りたいと存じておりますが、現在は公務員法等関係がありまして、ただちにこれを実現しかねる状態になつております。しかし、できるだけ各関係方面からの相当関係者と十分協力いたしまして、その内容を充実したいと考えております。
  22. 北澤直吉

    北澤委員 次に在勤手当及び住居手当について今回改正が行われるのでありますが、これによりますと、アメリカにおける各在外事務所在勤手当及び住居手当基準にしまして、その他の国は、その他の国とアメリカとの為替相場、それから物価水準というものを基準としてきめる、それでその範囲別表の九割から十二割ですか、その範囲内である、こうしてあるのでありますが、戦争前の状態を見ておりましても、日本在外公館のそういう手当というものは、日本通貨支給される。もちろん為替相場基準としておりますけれども、日本通貨でもつて支給する関係上、結局為替相場影響在外職員が受けるということになつておるのであります。ところが三井物産あたり外国支店を見ますと、そこの三井物産外国支店職員は、全部現地通貨でもらう。たとえばアメリカでありますと全部ドルでもらう、イギリスならポンドでもらう。従つて為替相場がかわりましても、影響を受けない。正金銀行あたりでは半分を日本通貨でもらつて、半分を現地通貨でもらうというふうになりまして、その点は半分だけ救済されておりますが、日本在外公館の人は、全部日本通貨でもらうというふうなことのために、いつも為替相場によつてもらう金が動揺することになるのであります。今回のこれによりますと、やはり日本通貨支給することになつておるのでありますが、そういうふうに全部または一部を現地通貨支給する、そうしてこの在外公館人たち為替相場いかんによつて手当に異同を来すというふうなことのないようにできないものでございましようか、その点をお伺いいたします。
  23. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は別表にありますように——従来お話のような、ずいぶん困つたような状態もあつたようでございますから、現在は米ドル中心として別表ではいたしております。従いましてその御心配のなるべく起らないようにいたしておるつもりであります。
  24. 北澤直吉

    北澤委員 アメリカの方はドルでありますが、アメリカとその以外の国との関係におきましては、その為替相場基準とするとしておりながら、やはり九割ないし十二割という範囲を設けておるのは、どういうわけでありますか。
  25. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは先にも御説明申し上げましたように、在外事務所に駐在いたしまする職の関係、あるいは地域関係等から、従来の九割、十一割では不十分である。従つて具体的に申し上げますと、もう一割増額いたしまして、従来よりも十分な活動のできるようにしたいというのが中心の目標であります。
  26. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点伺つて私の質問を終りますが、今回の改正によりまして、メキシコリマその他の方面にも在外事務所ができることになつたようでありますが、最近中共に対する重要物資輸出禁止ということがだんだん具体化されまして、結局中共日本との貿易というものは、将来はあまり期待できないと思うのであります。そうしますと、どうしても日本貿易の対象は、東南アジアあるいは中米、南米その他の方面に求めなければならぬのであります。今回こういう方面在外事務所ができまして、そういう方面日本との貿易の増進に大いに寄與することになつたことは、まことに喜ばしいのでありますが、現在のところ、日本中南米貿易というものの大体の輪郭なりともお伺いして私の質問を終ります。
  27. 島津久大

    島津政府委員 中南米方面との貿易実情につきましては、ただいま数字を持つて来ておりませんので、正確なことをお答えいたしかねるのであります。しかしたとえばブラジル在外事務所が二箇所できまして、その活動の模様ないしは報告に徴しますと、従来ブラジル日本との貿易が必ずしも振つていなかつた。それが漸次日本の方に向いて来たという事実はあるのであります。その他の箇所はまだあまり目立つて報告するような材料もないのであります。しかしブラジル、ウルグアイ、ペルー、そういうように国以外にも、日本と従来も貿易上非常に緊密な関係にあつたものもあり、極力その他の方面にも進出されるように努力するつもりでおります。
  28. 松本瀧藏

    松本(瀧)委員 簡単に一、二点御質問したいのですが、第一点は、在外事務所員ステータスの問題ですが、外交官としての資格を與えられておるかどうか、あるいはそれに準ずべきものを與えられているかどうか、あるいは国によつて差異を生じているかどうか、これをちよつとお開きしたいと思います。
  29. 草葉隆圓

    草葉政府委員 大体におきまして外交官としての待遇を與えられております。国によつてこれはいろいろかわつておりますが、従来の外交官あるいは領事官というのと同等の待遇という状態ではないのであります。具体的にその国の状態につきましは政府委員から御説明いたさせます。
  30. 松本瀧藏

    松本(瀧)委員 インドにおきましては外交官ステータスというものは認めてないことを私は聞いておるのでございますが、それからお伺いします。
  31. 島津久大

    島津政府委員 政務次官からお答え申し上げましたように、形式上は外交官でもなければ領事官でもないわけでありますが、実際上国によつてはいろいろの面でそれらに近いような待遇を與えられておる、国内的に課税でございますとか、あるいはまた外交官ないしは領事官のリストというものに実際上載せられておる、そういうような待遇で常時取扱われているところもある、これは国によつて違つております。
  32. 松本瀧藏

    松本(瀧)委員 もう一つお伺いしたいのですが、ワシントンにおきまする在外事務所ステータスと、今度ロンドンにそれを設置されるということになつておるそうですが、それにおけるステータス、いろいろ話によりますと、ロンドンにおいては副領事にしかこれを取扱わないという話を聞いておるのですが、そういう事実はありましようかどうか。
  33. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在のところまだ特にそういうふうなところまでは話はございませんし、従来とかわりがないという方針で進んでおります。
  34. 松本瀧藏

    松本(瀧)委員 もしこのステータスというものがはつきりしました場合に、その事務所員の位と申しましようか、格と申しましようか、そういつたことを考慮しておきめになるのでしようかどうでしようか。
  35. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは先ほども御質問にありました問題と関連いたしまして、ワシントン並びロンドンはいろいろな意味におきまして、相当重要な在外事務所の役割をいたすことが多いわけでございます。従いまして駐在いたします場合におきましても、その内容等におきましては十分考慮をしていたすべきものだと考えるのであります。
  36. 仲内憲治

    仲内委員 私はむしろこの在外事務所なる名称について政府の御意見を伺いたいのです。これはもちろん占領下ですから、公使館とか領事館としてきめるのは無理と思いますが、海外で、ことに在留民の感じから行くと、在外事務所オーバー・シー・エージェンシーといいますと、何だかツーリスト・ビューローあたりと印象が違わない、政府代表といえば公使館領事館と言いまして、因習といいますか、慣習が非常に多い、ことに在留民の多い加州あたりから今日日本に訪問して来る者の御意見を聞きましても、在外事務所などというものはちつともぴんと来ない、何とか領事という名前をつけてもらえないか、この点は吉田総理にも強く進言したということを聞いているのであります。できることならたとえばコンシユラー・エージエンシー、ことに領事事務については、もう講和を間近に控えて、事務の性質からいつても、おそらく領事資格ないしは領事館という名前を使わせてもらつても、大したさしつかえのない段階ではないかと思うのです。名称というものが在外事務所機能を十分発揮する上において、非常に災いをなしている。できるだけひとつ関係方面とも折衝せられて、できるなら領事という名前——いわゆるコンシュラー・エージエンシーというものができれば非常にぴんと来る。そこに行けば日本政府代表として通商なりの事務を扱つてもらえるという、古いしきたりに応じた信頼感を持てる。この点は強い要望であります。政府はどうお考えでありますか、あるいはまた取上げていただけるかどうか。     〔委員長退席竹尾委員長代理着席
  37. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ごもつともな御質問だと存じます。在外事務所というだけでは不十分でありますので、日本政府在外事務所とさらに丁寧にいたしたものの、しかし実質におきましては、ただいま御質問のようなことが多かろう思います。しかしいろいろな意味におきまして、これは将来、当然独立いたしました場合におきましては、正常の姿に返つて行くべきものと存じております。当分のうちは従来の名前によりまして、正常な姿に一日も早く返ることを念願しながら現在進んでいるような次第であります。
  38. 砂間一良

    砂間委員 二、三の点について御質問いたします。在外事務所活動内容についてでありますが、これまで在外事務所を設置したところでどういうふうな活動をやつているか、また日本貿易やあるいは商況等について非常に役立つているかどうかというような点について、ひとつ具体的に御説明願いたいと思います。たとえばキャンセルとかあるいはクレームという問題につきましても、在外事務所職員当該国政府に対して、いろいろ交渉したり何かする権限があるかどうか、あるいは権限がないにしても、事実上そういう問題も扱つているかどうかということにつきまして、なるべく具体的に御説明を願います。
  39. 島津久大

    島津政府委員 在外事務所は非常にたくさんございまして、この活動を一一具体的に御報告申し上げることは煩にたえないのでありますが、御指摘になりましたように、在外事務所におきましては通商促進につきまして、相当具体的な問題を取扱つておりまして、当初盲貿易を打開する目的で設置されたようなものであります。その目的は十分に達しておると考えております。大体一番初めには個々の業者その他からいろいろな照会がございまして、そういうようなことの仲介あつせんをいたしまして、駐在国と日本との間の通商活動をそういう面からも促進または打開して参つたのであります。次いでまた政府間の問題、あるいはその政府のいろいろな経済上の活動実情につきまし、随時有益な報告をよこしておるのであります。そのほかお話がありましたような具体的なクレームの問題というようなことにつきましても、その解決に十分資しておると考えております。ただ貿易の数量その他から申しまして、事務所ができたので、その国との貿易がどのくらい上つたかというような計算は、はなはだむずかしいのであります。全般から見まして、十分機能を発揮しておると確信をいたしております。ただその所在国との直接の交渉というものは、この設置法権限にもうたわれております通り、直接の交渉ということは正式にはできないのでございきす。しかしこれまた実際上交渉に近いようなこと、あるいは両国との間の貿易の話合い、そういうものを側面から促進するようなことは、最近各所において有効に行われておるというふうに考えております。
  40. 砂間一良

    砂間委員 在外事務所を今後なお増設するというような見通しがありますか。あるいは置くとすれば、何箇所くらいどことどこへ噌設するというふうな下交渉でもやつておられるかどうか。
  41. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今政務局長からも申し上げましたように、在外事務所仕事関係上、なるべく多くの地域に設置することを希望いたしております。できるならば年度内には十数箇所を増設いたしたい。但しどこどこという具体的なところまではまだ進んでおりませんが、なるべく関係の深い国々には多く設置いたしたいという希望をもつて現在進んでおります。
  42. 砂間一良

    砂間委員 これは手続上の問題でありますが、在外事務所を一箇所か二箇所ふやすたびごとに一部改正法律案というのを出されるのでありますが、これは何とかもつと簡便にできないものですか。つい一箇月半ばかり前にも私ども在外事務所設置法の一部改正案というのを審議して、同じようなことやつたわけでありますが、同じ会期中にニへんも三べんもこうやつて同じような法律案が出て来るということは、立法技術上からいつても、あまりうまい方法ではないと思いますが、何かそういうふうな点について、もう少し簡便な方法は考えておられないのですか。
  43. 草葉隆圓

    草葉政府委員 国会開会中は、現在の法律の趣旨からいたしますると、国会の御承認を得るということになつております。閉会中は政令に委託されておりまするが、従つて開会中の場合は、煩瑣ではございまするけれども、御承認を願うということをいたしております。しかし将来どんどんふえる場合には、簡単に政府に一任するからやれというようなことで、さらにその内容等を検討することはあるいは必要かもしれませんが、現在におきましては、国会の御承認によつて進んで参りたいと存じます。
  44. 黒田寿男

    ○黒田委員 簡単に質問いたします。ワシントン在外事務所を設置するということにつきましては、政府も非常にこれを重大視しておられるのでありますけれども、事実この法律ができる前に、ワシントン在外事務所は設置ぜられておるというような話も聞いておるのでありますが、これと関連いたしまして、政府が特にワシントン在外事務所設置に力を入れておられるのは、日米経済協力問題を処理するという目的が強く頭に置かれておるように思います。この問題について、大体のことでよろしいが、政府はどういう内容、性格を考えておられるか、外務省としましての御見解を承つておきたいと思います。
  45. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ワシントン在外事務所は、従来の在外事務所仕事をいたしますることは当然で、ございまして、また全体といたしましても、地理的に考えまして、いろいろと通商促進等の関係も一層生じて来ると思います。また経済問題につきましても、他の事務所以上に仕事が増大して来るということも予想されるのであります。従つてお話のような意味経済協力というような立場も考慮されて、当然仕事内容としてとられて来ると予想いたしております。しかしその経済協力とはどういう内容かというようなことは、今後の問題と存じまして、在外事務所はその使命に向つて十分達成するような方法をとつて行きたいと考えております。
  46. 黒田寿男

    ○黒田委員 今のところ日米協力問題の内容について、どういうことを考えておるか、そのことは別に外務省として考えることはありませんか。
  47. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在のこころ、外務省といたしましては、経済協力をワシントン事務所でこういう方向で進めるということは考えておりません。     〔竹尾委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 黒田寿男

    ○黒田委員 何べん繰り返してみましても、具体的なことはお聞きできないのでありますから、また別の機会にします。
  49. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかに御質疑がなければ次に移ります。     —————————————
  50. 守島伍郎

    ○守島委員長 国際情勢等に関する件を議題といたします。並木君。
  51. 並木芳雄

    並木委員 私は條約草案を国会にかける問題について、これは主として西村條約局長になると思いますが、若干質問してみたいと思います。  この間吉田首相の演説によりますと、條約の草案は発表しないことになつておるから発表しません、こういう本会議の答弁でありました。今諸国との間で條約草案をめぐつて交渉が進められておる際でありますから、あるいはそういうことがあるかもしれません。しかし草案がいよいよ本ぎまりになつたあかつきには、これは公表できる段取りになると思われるかどうか、まずこの点をお伺いします。
  52. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 現在関係国間におきまして作成のために努力されております対日講和條約案が、ある段階に達したときに公表されるものであるかどうかということは、日本政府の関與すべき問題ではございませんで、主としてこれを担当してやつておられる連合諸国間の問題で、連合諸国間の決定にまつはかなかろうかと存ずるのであります。
  53. 並木芳雄

    並木委員 少くとも野党側に対しては講和條約の草案というものを示して、そうしてその意見を徴し、国家百年の大計である講和條約に万遺憾なからしめるようにするのがよい方法ではないかと思うのです。いわゆる超党派的の外交の行き方であろうと思いますけれども、お聞きしますと、アメリカなどでも條約草案というものは、あらかじめ野党側に提示することになつておるようでございますが、政府としては少くとも野党には條約草案を提示することができるように、連合国に申入れる所存はないかどうか。
  54. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 並木委員の御質問は、性格上政府委員の一員にすぎません條約局長から、御答弁申し上げる性質の御質問ではないと思いますので、私からの答弁は差控えさせていただきたいと思います。ただ合衆国におきましては條約草案を野党に見せて、その意見を聞いておる慣例になつておるように思うというお話でございます。私どもの了解している範囲では、さような慣行はございません。しかし現在は合衆国におきましては、外交について超党派というものが行われております。その関係から重要な外交問題については、政府当局の方で両院の外交委員会の有力者——政府與党も政府反対党も含めての両院外交委員会の有力者の少数の人と、意見を交換しておられる、こういうのが実情であるように了解しておるわけでございます。従つて並木委員の御想像なさいますように、アメリカにおいて條約案を反対党の議員にまで提示して、そして一々御相談になつておる、そこまでは至つていないように了解いたしております。もちろん事の真相は外から察知する手段もございませんので、私どもの想像というものは、もつばら新聞記事によつて推察しておるという程度のものでございます。
  55. 並木芳雄

    並木委員 では連合国に申入れをしてもらいたいというわれわれの要望は、吉田総理大臣じきじき要望することにいたします。  今の御答弁に関連して、講和條約の草案というものが、政府だけでもつて調印の運びに至るということになると、これは相当重要な問題を起すのではないかと思うのであります。講和條約の署名が行われて、しかる上に批准の前に国会の承認を求める段取りになろうとは、この前の局長の答弁でございました。そこできのうでしたか、おとといでしたか、岡崎官房長官は、多分九月に調印、来年の三月か四月ごろに成立の運びになるであろう、こういうことでありますが、日本において調印後批准の間に相当の期間があれば、その間に政局というものが、どういうきつかけで変化を来さないとも限らないのであります。もし調印をしてしまつて、その場合——私が申し上げるのは、全然與党にも野党にも草案を示さずして、発表せずして、内閣だけが調印をしてしまつて、そして批准に行く間に、政変というものが起つた場合に、次にでき上つた国会において否決をされるということもあり得るわけであります。そういう場合はどういうふうになりますか、局長にお尋ねしたいのであります。
  56. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 ただいまの御質問には別に答弁はいらないと思います。政府が條約を批准するについては、国会の承認を必要とするという明確な規定がございます。その際国会によつて承認が與えられなかつたということになれば、政府としてその條約を批准するはずがない、こう思うのであります。従つて條約は日本に対しては成立いたさないという結果になるわけであります。
  57. 並木芳雄

    並木委員 これはいささか困難な問題になると思うので、局長にお尋ねするのはちよつと無理かとも思いますけれども、私がお聞きするのは、講和前にさえ追放の解除が予定されておる。追放解除の中には、相当大きな発言権を持つた人もおるわけです。そういう人々も今度の講和條約草案というものには何ら意見をさしはさまずして、調印に至るのですから、その調印に至つた場合に、たとえば批准前に総選挙が行われる。そうしたときに国論が沸騰して、今のような私が懸念する事態が起らないとも限らない。でありますから十分この点に留意をして、あらかじめ少くとも野党に対しては十分講和條約の草案を示して、超党派的行き方をすべきであるというところから出ておるのです。これに吉田総理大臣にじきじきお伺いすることにいたします。  次にお伺いしたいのは、近くダレス氏が英国に行きまして、残された一つの問題を解決するという報道が伝えられております。それは今度の対日講和條約に中共が入るか、国府が入るかという問題だとのことでありますが、新聞の報道によりますと、国際法上ということを断つて、その点が触れられておりますので、お尋ねしたい。今まで中共が、中国を受継ぐものはもはや中共政権であるから、領土問題などについても、自分たちが当然権利があるのだというような主張をしておつたようであります。そうすると、今度の対日講和條約に国民政府が参加して、そしてきめられた條約というものは、その建前からいつて、当然これは実際的にも中共政権というものが、将来世界の承認を得たときは、受継ぐことになると考えられますけれども、その点いかがでしようか。あわせてこういう場合の国際法上の解釈についてもお伺いしたいと思います。
  58. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 御質問の問題は、国際法上から見ましても、解決不可能な問題だと私は考えております。一つの国家がありまして、その一つの国家に二つの政府がありまして、両方ともひとしく正統の政府であるという立場をとつておる。それだけでなくて、その以外の国が約半数ずつ、片方の政府に対して正統政府なりとの承認を與えておる。こういう事態がいわば中国の現状であります。こういう事態の国家がある場合に、ある多数国間で條約を締結しようとする。こういうときは、必然片方の政府を承認している国は、自分が承認している国が中国の正統政府であるから、この国が署名すべきものであるという立場をとることは、きわめて当然のことでございますし、残る半数の国家が、自分の承認する国が條約に署名すべきものであるという立場をとること、これまたきわめて当然なことでございます。まさにフイフテイ・フイフテイの立場ということになるわけでございますから、いわゆる純粋の国際法上の問題としては、そういう事態が続く限り、解決は法理上下し得ないというのが私の結論でございます。
  59. 並木芳雄

    並木委員 もう一つだけ聞いておきます。この間のリッジウエイ最高司令官の声明によつて、法令の検討が政府でも始められたのでありますい、この中には、当然憲法自体の検討ということも含まれておると思いますけれども、この点どうなつておりかすか。
  60. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 最高司令官の憲法公布の日に発表されました声明の問題の部分は、憲法は含んでいないと了解いたしております。
  61. 守島伍郎

    ○守島委員長 砂間君。
  62. 砂間一良

    砂間委員 今進められている単独講和の問題についてでありますが、ああいう形で進められている単独講和というものは、法律上、條約上から考えても、非合法でかつ無効なものではないかというふうに私どもには考えられるわけであります。  まず第一点といたしまして、日本は一九四五年九月二日のあの降伏文書で連合国に降伏しておる。その連合国は米・英・ソ・中というこの四大国であることは降伏文書にはつきり書いてあるわけであります。ところがその連合国に対して降伏したにもかかわらず、その中の特定の一、二の国だけと條約を結ぶということになりますと、これは降伏文書にも違反することになるし、また日本が無條件で受諾したポツダム宣言にも違反するつまり日本政府は條約違反を犯す、法律違反をあえてする、こういうふうなことになるわけでありまして、これは国際法上の解釈からしても、そういう単独講和條約というものは無効になりはしないかということであります。  それから第ニ点といたしましては、中国を代表する政府としてアメリカのダレス氏が考えていることは、台湾の国民政府であるというふうなことが新聞で伝えられております。これは今の並木君の質問にもあつたことでありますが、條約局長の御説明によりますと、国際法上の解釈としては、これは解決不可能な問題であるということでありました。しかしながら、法理上の解釈はともかくとして、現在中共代表している正統政府は中華人民共和国であります。この中共政府が中国四億五千万の人民を代表している実際上の政府でありまして、蒋介石政権というのは、これはもう台湾へ亡命しているただ名ばかりの政府にすぎない。かりに国民政府が対日講和條約に調印するということになれば、これは何ら実体のない幽霊のような亡命政権が調印したということになりまして、日本との戦争によつて最も大きな被害を受けた中国の四億五千万の人民は代表されていない。それとは依然として交戦状態が続くということになりますと、これはまつたく無意味なものになりはしないか。ことに昨年十二月四日の中共の周恩来外交部長の声明の中には、第一にこの点をはつきり言つているわけであります。「日本帝国主義は、一九三一年九月十八日対中国武力侵略を開始、わが国土の広大な地域を荒廃せしめ、中国人民の生命財産に莫大な損害を與えた。」中を省略いたしまして「従つて当然中華人民共和国は対日講和條約の準備、起草、締結に参加せねばならない。ここに私は、わが中央人民政府は中華人民唯一の合法政府であり、この政府が対日講和の準備、起草、締結に参加すべきであることを厳粛に宣言するものである。反動的国民党残存分子は中国人民を代表すべき権限は絶対に持たず、従つて対日講和準備のためのいかなる討議、会議にも加わる資格ない。われわれは、対日講和の内容やその結果がいかなるものであれ、すべてそれは中華人民共和国が参加せざる限り不法かつ無効なものであるとみなす。」中国の実際上の政府は、中華人民共和国の参加しない対日講和條約は、不法から無効なるのであるということをはつきり宣言しているわけであります。それからまた、中国とソビエトを除外した対日講和ということになりますと、これに参加しない中ソの二大隣国は、依然として日本と交戦状態にあるわけであります。そうして降伏文書あるいはポツダム宣言によつて日本を占領管理する連合国の有力な一員であるわけでありますから、かりに米英とだけ講和條約が結ばれた場合には、中国やソビエトは参加しておらないのですから、中国やソビエトはいつでも日本に進駐して来て、日本を占領、管理するという大義名分が立つわけであります。そうしますと、これは中国やソビエトが日本に進駐して来る来ないは別といたしましても、日本の八千万国民といたしますと、いつ占領、管理にやつて来るかもわからぬという非常に不安な状態に置かれるわけであります。日本国民の頭上にはこの二つの未解決の首かせが残つているというようなことになります。しかもそれは依然として戦争状態を継続している。こういうかつこうになるわけでありますから、これでは講和にならない。こういうふうな点からいたしまして、単独講和條約というものがかりに締結されたとしても、それは法律的に考えても、また実際上から考えても、真に平和を確立し、そして国際間の戦争の跡始末をつけるということにならない、妙ちきりんなものになると思うのです。しかもそういうふうなことを日本政府みずから進んで、好んで推し進められて行つているということにつきましては、私どもは国民の一員としてどうしても納得が行かないのであります。これらの点について政府はどういうふうに考えておられるかを第一にお尋ねしたい。  なお吉田総理は、ソビエトを中国が対日講和を妨害しているというような、まつたく根も葉もない逆宣伝を言うておるのであります。先般ソビエトから、対日講和草案がワシントン政府関係国に送られたというような新聞報道もありましたが、あの新聞報道の一部分を見ましても、私どもがダレスのアメリカ案と、そうしてソビエトの案の内容を比較してみた場合に、どつちが日本国民にとつて利益であるかということは、一目してはつきりしておる。ダレスの考えているアメリカ案は、日本に軍事基地を設定する、それからアメリカの軍隊を駐屯させる、さらにその上再軍備というふうなことをいわれておるのでありますが、しかも貿易日本の産業の自立というふうな点につきましては、名目上はともあれ、実際上は非常な制限を加えておる。ことに中国貿易の禁止等は、日本経済自立にとつて致命的な打撃になると思うのでありますが、全面講和ができさえすれば、それらの障害は一切なくなつてしまうわけであります。事実またソ連のごときは、すでに一九四七年の十二月ロンドンの外相会議におきましても、日本との講和のための四大国外相会議を開けというふうな提案をやつておるのでありまして、最近アメリカが講和問題をかつぎ出したそれ以前から、最も熱心に対日講和の問題について、その解決を一日も早くしたいということを言うておるのでありまして、妨害した事実はどこにもない。(「内容が悪い」と呼ぶ者あり)内容の点からいえば、これは両案を比較してみれば国民には明らかな通り、ソビエトの案がはるかにいい。また全面講和、特にソビエトと中国を含めたところのこの四大国との全面講和ができさえすれば、もう国民としましては、からつとした気持になりますし、どこの国も攻めて来ることもない。そうすれば再軍備をする必要もなければ、また軍事基地を設定する必要もないわけでありまして、こういう全面講和を何で日本政府は振り捨てて、そうしてしやにむにダレスの単独講和の方へ日本を引きずつて行こうとするのか、私どもははなはだ了解に苦しむのでありますが、それらの條約上の解釈の点、また実際問題からしても講和にならないというふうな点について、政府はどういうふうに考えておられるか、ひとつ詳しい御見解を承りたいと思います。
  63. 草葉隆圓

    草葉政府委員 このことにつきましては、従来とも再三御答弁申し上げておる通り政府といたしましては、一国とでも多く、一日も早くかつまたそのために内容の粗雑になつた講和ではなく、十分なる講和のできることを望んでおりますることは、再三政府の意思を発表いたしておる通りであります。従いまして、ただいま砂間君のお説のように、これによつて條約違反であるとか、あるいは国民の多数がこれを望んでおらないというような見解は政府は持つておりません。国会の皆さん方のこの問題に対しましての十分な御支援と、国民多数の布望とによつて政府は現在進んでおるとい確信を持つて進めております。  以上をもつてお答えといたします。     〔「法的に説明しろ」と呼ぶ者あり〕
  64. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 法的の説明をするような御質問ではないと思います。ただ御答弁申し上げたい点は、今日考えられており、関係各国が努力を集中いたしておる対日條約は、日本と戦争関係にあります五十二か三と私は了解しておりますが、五十余箇国との間の戦争関係を終了させまして、平和関係を克復するための平和條約でございます。そういう平和條約を成立させるための努力が進められておりまして、日本としては今政務次官がおつしやられましたように、一日も早くその努力が結実いたしまして、なるべく多くの国との間に平和関係が回復されることを希望するという立場にあるわけであります。御質問の方は、日本は今一、二の国と平和條約を締結しようとしているとおつしやいましたが、さにあらず、一、二の国がそういう努力から脱漏しようとしている形にある。しかもなおかつまだきまらない問題であります。問題は純粋に連合国家の問題でございますので、日本政府としては、その決定を待てばよろしい、こう考えるわけであります。法律上の問題は私は起らない、こう考えておるわけであります。  中国の代表がどちらの政府であるべきかという問題、この問題も法律上の問題としてきわめて解決が困難であるということは先刻御答弁申し上げました。この問題の解決のためにもまた目下話合いが進められております。新聞報道によれば、その問題がダレス特使の訪英の主たる目的の一つであるということを新聞は報道いたしております。われわれといたしましては、連合国間の協議の結果、円満な解決が一日も早くつきますようにという立場をとつておるわけでございます。これまた法律問題と申しますよりは、単に政治的な問題でございましよう。従つて御指摘になりましたような事態が起るか起らないかということは、今日まだ予見を許さないわけでございます。御疑念を持つておられるような点は、いずれ平和條約ができますときには、むろん政府といたしまして御答弁申すことになりましようが、今日は将来の起るかもしれぬ問題にすぎませんので、御答弁の限りではないと私は考えます。
  65. 守島伍郎

    ○守島委員長 砂間君、同じ問題ですか、違う問題ですか、同じ問題なら、この委員会でもほかの委員会でもしばしば繰返されておりますから、時間を浪費するだけでございますから、ほかの問題でなければ発言は許しません。
  66. 砂間一良

    砂間委員 そんな横暴なことはない。それでは議員の発言権は……。
  67. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは黒田君に発言を許します。
  68. 砂間一良

    砂間委員 もう一ぺん……。
  69. 守島伍郎

    ○守島委員長 違う問題ですか。黒田君に発言を許しました。黒田君おやりください。
  70. 砂間一良

    砂間委員 今のは答弁になつておらないじやないか。
  71. 守島伍郎

    ○守島委員長 それじや簡単におやりなさい。それでは黒田君の発言は取消します。
  72. 砂間一良

    砂間委員 今の條約局長の答弁ば答弁になつていない。日本が降伏したときに、アメリカとも別個に降伏條件を結んだ、あるいはソビエトとも中国とも個々に降伏文書に調印したんだつたらこれは別問題でありますが、連合国として、しかもその連合国は四大国であるとして降伏文書には調印したのでありまして、合同行為として降伏文書が作成されているわけであります。それをもつとさかのぼれば、ポツダム宣言、ヤルタ協定、カイロ宣言、それから一九四二年一月一日のワシントンの連合国宣言までさかのぼるわけでありますが、一貫したこの大国間の協調の上にずつと進んで来ておるわけでありまして、そうしてあの日本が戦争の終るときの降伏文書にも、相手は連合国として降伏文書の調印がされておる。その場合に連合国の意図はともあれ、日本政府として、日本は連合国に対して降伏したのであつて日本政府とすれば、相手は連合国でありますから、連合国に義務を負うておるわけであります。それを連合国とかけ離れて、中の特定の一つ、あるいは二つ、あるいは三つになるかもしれませんが、そういう特定の国とだけ講和條約を結ぶということは、これは日本の国としては條約違反になりやせぬかということです。ところが條約局長は、連合国のことだからわからぬというようなことを言われましたが、五十二箇国とかいうふうにたくさんの数をあげられたのでありますが、国は五十だろうが八十だろうが、それは二百万や三百万のオランダやベルギーみたいな小さな国と違つて、三億というふうな人口を持つている大国とは、世界政治における比重が違う。     〔発言する者多し〕
  73. 守島伍郎

    ○守島委員長 静粛に願います。
  74. 砂間一良

    砂間委員 だからこういう中国、ソビエトを除外しておるのでは講和にならぬと思う。しかもそれは日本政府として、国家自体とじてポツダム宣言あるいは降伏文書に対する條約違反を犯すということになる、こういう点についての政府の見解を聞いておるのであります。條約局長のさつきの答弁ではちつとも答弁になつておらぬ。連合国間でやつておることだから、こつちにはわからぬというふうなことでは、まつたく答弁をそらしておるのであります。また日本政府とすれば、全面講和を望んでいるのだというようなことを言うておるのでありますが、望んでいない証拠には、去年の七月か八月に出した外務省の外交白書の中には、まだダレスが単独講話ということを言い出さない先に、日本政府みずから単独講和ということを言つた。しかも昨年十二月のごときは、アメリカが十二月十六日に対支経済封鎖をやるより前にすでに封鎖をやつている。こういうふうに日本政府自体が単独講和、単独講和という方向へ先に進んでやつて来ている。これは実にけしからぬ。たといアメリカが単独講和をやろうとする意思を持つていても、日本政府とすれば、ぜひ中国とも、ソビエトとも相談して、みな一かたまりになつて来てください、そういう努力、そういう懇請をするのがあたりまえだ。それをやらないでおいて、みずからアメリカが言いもしない先に、その鼻息をうかがつて、単独講和、単独講和という方向へ先走つてつて行く。実に日本政府として国民を裏切るもはなはだしいと思う。こういうふうなやり方でやつて来ておるのでありますから、いたずらに連合国側に責任を転嫁するというような、けちな根性でなくて、もつと日本政府としての責任ある態度で、特に條約違反ということは日本政府の義務違反になるわけでありますから、その点についてはつきりした答弁をお聞きしたい。
  75. 守島伍郎

    ○守島委員長 御答弁ございます。     〔「必要なし」「答えられないだろう」と呼ぶ者あり〕
  76. 守島伍郎

    ○守島委員長 答弁はないそうです。それでは黒田君。
  77. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は質問したいことがたくさんありますが、きようはとりあえず條約締結と国会の承認との関係につきまして、三、四点御質問申し上げてみたいと思います。これは私は議論をするということよりも、私自身疑問を持つておる点もありますので、疑点を明らかにする見地から伺いたいと思いますから、そのつもりでお答え願いたいと思います。  第一にお伺いしたいと思いますことは、憲法第七十三條第一項第三号に、内閣の事務といたしまして「條約を締結すること、但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ること」となつておりますが、時宜によつてということは、具体的にはいかなる場合であるか、対日講和條約のごときものの承認を得ますような場合には、事前に、時宜によれば事後にでも国会の承認を求めるのか、こういう問題に関連しまして、対日講和條約の場合にはどういうように考えられるか、まずこの点をお聞きしておきたい。
  78. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 対日講和條約につきましては、ほぼ條約案の批准を必要とするという條項が入るものと考えられますので、署名と批准との間に十分時間もございますし、その間に国会の承認手続をとる余裕は十分ございます。従つて時宜により事後に承認手続をとるというようなことは、ほとんど考えられないと考えております。
  79. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは次の質問に移りますが、條約を締結するという行為の中には、どのような行為が一体属するものかということについて、疑点を明らかにしていただきたいと思います。大体私どもは、普通條約が締結せられるということを考えます場合に、まず署名、これは調印ともいわれるのであります。それから批准いたします必要のない場合は別でございますが、批准の場合は批准の交換あるいは公表の手続、こういうことで條約が締結せられるということが漠然と常識的に考えられる。しかしもう少しこれを厳密に、このような一運の行為のうち、憲法第七十三條で條約を締結するというその締結の意味は、どの範囲までの行為を含んでおるのであるか、これについてお伺いしたいと思います。
  80. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 締結するという文字の意味は、交渉開始から効力発生までの間のあらゆること、こう考えております。ただ但書によつて事前または事後に国会の承認を必要とするという條件がつけられております。いつを標準として事前、事後を判断するかという問題になるわけでございますが、その点につきましては、たびたび申し上げましたように、條約が日本に対して確定的に成立する時期、そのときを標準といたしまして、そのときの前に国会の承認手続をとるのが事前であるし、最終的に成立してしまいましたあと国会の承認を求めるのが事後の承認である、こう考えておるわけでございます。この点は国際法上、條約で批准という制度が設けられております理由をお考えになりますと、きわめて明白にわかると思います。條約につきまして批准という制度が成立しました大きな理由は二つあります。どの国際法の本にも書いてございますが、第一の理由は、條約を交渉するときに、全権委員は條約締結権者から訓令を持つて交渉する。そうしてでき上りました條約を持つてつて来るわけでございますが、十九世紀末までは通信、交通機関が発達しておりませんので、一々請訓をする要がなかつたわけであります。従つて全権委員相当広い範囲権限を持つてつて、そうして條約に判を押して来た。そうして帰りまして本国政府の締結権者に対してそれを提出する。そうしますと締結権者としては、いわゆる全権委員権限内で行動して来たかどうかをしさいに点検する必要があつたわけであります。従つて署名によつて最終的に効力を発生させ得ない事情がありましたので、條約の中にその條約は批准を要するという條項が必ず入るようになりまして、そうして本国政府の條約締結権者の権限をそこなわないようにしたのが第一の理由であります。しかし現在はそういう必要はほとんどなくなりました。交通と通信が発達いたしましたので、国外に出て交渉する場合も、政府のひざ元で交渉するとほとんど同様、毎日電話によつて文言を連絡して行くということができるようになりましたので、その理由は今日全然ございません。今日二十世紀になりましてから、條約案に批准條項が入れられるようになりましたのは、大体民主主義憲法を採択している国はほとんど例外なく、ある種の條約——講話條約、通商航海條約、国家の財的負担を伴う條約など、大体明示いたしておりますが、特殊の條約について国会の承認を必要とするという制度をとつておる国が大多数でございますので、各国において、国会の承認手続をとる余裕批准條項を置くという制度がいまなお行われておるわけであります。この事態をお考えになりますと、よくわかりますように、批准というものが留保されているのは、主として現在では民主主義国家の憲法のもとにおきまして、行政部が締結権を持つておりますが、締結について国会の承認を必要とするというのが、大体例外なく要請されておるので、その機会を與えるために批准條項が置かれる、こういうわけであります。従つて署名、批准手続を必要とする條約におきましては、署名後批准前に国会の承認を得るというのがほとんど万国共通の慣例でございまして、私ども事務当局者としては、一点もその点について疑問を持つたことはございません。
  81. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、従来疑問とせられ、また論ぜられておりましたのは、署名ということが——私はこの前も質問いたしましたのは、署名ということが締結という行為の中に入るものであるならば、国会の承認が締結前ということになれば、署名前ということになりはしないか、こういうような憲法上の解釈ができないこともないように思いまして、質問したのであります。これはしかし署名前は草案であるから国会に出せないというような議論もあるでありましようが、私どもが疑問を抱きましたのは、締結行為の中に署名ということが属するのであるならば、署名前国会の承認ということが、事前に国会の承認を得るということになるであろう、こういう疑問を起した。これについてはどういうように答えられるでありましようか。
  82. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 條約を締結するということは、一瞬間の一つの行為で終るわけではございませんので、やはり交渉から交渉案文の確定をいたしまして、それから署名、その後批准、批准書の交換というような、一連の国際法上の行為を必要とするわけであります。それを含めて條約を締結することというのがその意味でございます。もし黒田委員のようなお考えになりますと、実は條約締結権者は交渉を始めるときから国会の承認を必要とするのじやないかという極端な解釈になるわけでございます。それは決して政治の実際にそぐわないと私は信ずるわけであります。ただ條約には批准というようなことを必要としないで、署名だけで、確定的に成立する場合があります。そうしてこういう種類の條約が、最近は、漸次多くなつて来ております。従つて名前に承認の手続をとる必要がある場合は、相当今後も生れようかと思うのであります。
  83. 黒田寿男

    ○黒田委員 いろいろ慣例というようなことをもつてただいまもお示しになりましたが、どうも私にははつきりしない。憲法に批准前と書いてなくて——批准を要するものがないときは問題はありませんが、少くとも批准を要するときに、批准前と書いてなくて締結前と書いてありますので、私はこの質問をしたのであります。先ほど締結という行為の中にはどういう事実上の行為が含まれるか、どの範囲までの行為を憲法第七十三條による締結という行為の中に含んでおるかということを質問しましたのもそれでありますが、私は條約局長の仰せられることも一理あるように思いますけれども、憲法の解釈といたしましては、條約を締結するという行為の中に、少くとも署名する、調印するというような行為は入つて来る。ずつと前の予備交渉というようなものはそこまで行かないにしましても、少くとも調印とか、署名とかいう段階になつて参りますと、憲法第七十三條の締結ということに入るのではないか、そう私には解釈されてしかたがない。そうすると、その後の條文と同項の條文とを比較研究いたしまして、署名前、調印前に国会の承認を得ることが必要じやないかという議論が立てられるように思う。これはしかし非常に議論あるところであろうと思います。従つてこの点は局長の御説明だけでは私にはどうも納得が行かぬ。私はこれを議論しようとは思いませんが、納得したいと思うのです。従来の慣例から申しますれば、局長のおつしやるようなことであつたと思いますけれども、憲法の解釈としては、どうも合点の行かぬといろがありますが、きようはこの点は疑問のままにしておきまして、ただ対日講和條約締結の過程における政府の態度について、私憲法上の点から疑問とするところを少し質問してみたいと思います。  なるほど草案のままで国会の承認を得られないのだという議論は、私は一つの議論だと思いますが、しかし調印してしまうまでに、国会に何らかの形において講和條約の草案を示して、そうして国会の各派の意見を聞く、こういつた行為をとることが、私はむしろ憲法の精神に沿つておると思います。この点は疑問ではなくて、そうだと思います。だから草案として提出はできなくても、草案がある程度まで進んで参りまして、大体調印に近いというようなところまで行きましたような場合には、少くともそれを国会に示す、もし政府が積極的に示さなければ、議員の方からこれを質問いたした場合に、政府はその内容を明らかにする義務がある、私はそう思う。私は憲法論としてそう申し上げます。これは議論ではない。なぜ私がこう言うかと申しますと、吉田総理は、大体外交のことは秘密が本則だ、こう言われる。私はそれに反対なんです。むしろ外交のことはできるだけ公開主義で行くのが本則である、それが憲法の精神だ、こう私は解釈しておる。私がそういう議論をします根拠は、憲法第七十二條にそういう問題が現われておると思う。多くの人は、今問題になつておりまする憲法第七十三條の第三号を議論の対象にされるのでありますが、この第七十三條の三ではなく、第七十二條に、内閣総理大臣は——途中は省略いたしますが、内閣総理大臣は外交関係について国会報告するという規定がある。これは学者のこの條文の説明によりますと、この外交関係について国会報告するということは、総理大臣の報告義務である、こういうふうに解釈しております。私はこの学者の説が正しいと考える。そこで少くとも対日平和條約というような重要な問題につきまして、国会に対しその経過を十分に説明をする義務が総理大臣に私はあると思う。総理大臣が義務があることは、外務大臣が義務があるということになると思う。そこで外交に関することは、総理大臣の言うように、秘密をもつて本則とするというのではなくて、むしろ公開をもつて本則とする。ただ外交交渉の過程において、ときに秘密を保たなければならぬような問題もあるから、それはある時期の間だけ秘密にしておく、私はそういうものにすぎないと自分では思う。そこで私は第七十三條の議論はきようはお預かりとしておきましても、少くとも第七十二條によつて、講和條約の草案が相当なところまで行つたと思うときには、もし総理が、政府がこれを示さなければ、議員の方で示せという要求をしましたときに、これも一種の外交関係でありますから、政府総理大臣はこれに対しその内容を明らかにする義務があると私は考える。そういう法律的根拠、憲法の根拠に立つて、草案のまま議案として出すということがいいか悪いかということは、私は疑問として残しておきますが、少くとも草案を調印前に全然国会に示すことなくして調印に至るというような行為を、かりに今後政府がとろうとしますならば、それは憲法違反である、少くとも憲法の第七十二條に反したる行為であると私は考える。そこで私が政府質問したいのは、今がそういう時期であるかどうかということは別問題としますが、少くとも調印前に草案がある程度まで確定的になつたころに、適当な時期をはかつて国会にこれを示す考えがあるかどうか。私は政府考えなければ、私どもの方で要求します。議員が要求する、国会が要求すれば、私は説明しなければならぬと思う。いつまでも秘密々々というような性質のものでないと私は考える。アメリカでもそんなに秘密にしてはいないのでありますから、そこで私はこれを質問するのでありますが、一体政府はそういうやり方をされるつもりであるかどうか。それとも調印までは締結前の行為であつて国会の承認を求めるという意味においての議案の提出、その他一切の講和條約の内容について国会に示し、かつその意見を聞くという行為はなされないつもりであるか。私はこれは疑問ではなくて、そういうふうに考えておりますが、これに対して政務次官の御意見を承りたい。
  84. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように、憲法第七十二條には「外交関係について国会報告し、」明文があります通り従来とも今まで対日講和の問題につきましては、総理大臣も再三国会にその内容交渉の経過を御報告申し上げております。ただ問題の、いよいよ調印署名の前に、その内容が確定したときに国会報告するかどうかという具体的な問題は、にれはその條約によつても違いましようが、ことにこの対日平和條約の場合には署名によつて初めて條約案の内容がそのときに確定するということが強く考えられると思います。従つてその前に、従来とも総理大臣、外務大臣としてとつておりまする国会に対する報告という形は、当然この憲法第七十二條による行為でありまして、従つて十分国会を尊重した行為と存ずるのであります。ただ今申し上げましたように、平和條約の場合に、署名前にこれをなし得るかということは困難な場合が多く予想されると存じます。
  85. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君には時間を三十分ばかり差上げております。時間の関係がございますから、簡単に願います。
  86. 黒田寿男

    ○黒田委員 次官の説明では私はこの第七十二條による報告ということにならぬと思う。私はこの第七十二條報告には、少くとも今までの総理大臣がやつたような、新聞を見ればわかるというような報告ではなくて、少くとも講和條約の草案を議案として出すのではないけれども、草案としてではあるけれども、適当な時期に講和條約締結前、もつと詳しくいえば、署名前国会に示して、諮問して行くような、それほどの内容を持つた報告をなされるつもりであるかどうか、こういう意味で私は聞いたのであります。條約局長はどういうふうにお考えになるでしようか。
  87. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 政務次官と同様に考えております。黒田委員は條約案について日本政府限りで、それを説明とか提示などができるかのように誤解がおありかと思うのでありますが、日本政府の立場は條約案の作成についての交渉の相手方でも何でもないわけで、単に意見を開陳する機会を與えられているという立場にございます。従いまして、その條約案の取扱いということは、主として連合国側の決定にまたなくちやいけない、こう思うのであります。
  88. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はもうやめますが、ただ條約局長の御説明はあまりに形式論に過ぎている。政府というものはそういうものじやない。やはり国民に対して示すべきものはもう少し示す、私はそうあるべきだと考えますが、しかしきようはこの問題は私ばかりで時間をとつても何ですから、この程度で終ります。
  89. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは川島君。
  90. 川島金次

    川島委員 私はこの委員会に初めて出席したものですが、二、三お尋ねをしている中で、あるいはすでにこの委員会で論議が半ば盡されているものも重複するようなことがあるのではないかということを危惧いたすのですが、簡単に二、三点をこの機会にお尋ねをしておきたいと思います。  今同僚の黒田委員から憲法第七十二條を指摘されまして、外務大臣国会に対する外交問題に関する責任がただされたのであります。私がこの憲法論を指摘いたしまするまでもなく、後段の黒田委員の所見の通り、外交の本則はやはり公開でなければならぬ。ことに日本民族の独立と日本の将来の平和とを確保するということにつながる重大な講和問題に対して、政府はすべからく国民とともにこの講和條約に入るという心構えが私は絶対に必要だ、こういうふうに確信をいたしております。ことに先般ダレス氏がアメリカの某大学でなされました講和條約草案の概略説明におきましても、また去る四月六日のUP電報の伝えるところの日本の講和條約の内容から推察いたしましても、ただいまちよつとお話が出ましたように、今度の対日講和條約というものは、戦勝者が戦敗国に一方的に押しつける講和ではない。あくまでも善意を誠意のもとに立つて、平等の立場で日本との講和を結ぶ、こういうきわめて謙虚な、しかも公明な態度、まことに好ましき態度でこの講和條約に入るという態度を明らかにいたされました。そういうことを私どもは前提として考えた場合に、この講和條約の草案が、すでに政府の手元に届いているということは、先般の本会議で総理みずからが言明されたところであります。そのすでに届いておりまする草案と、さらにまた先般四月六日にアメリカワシントンUPの伝えまする講和條約の、かなり具体的詳細にわたつた草案が、おそらく全世界の新聞に報道されておるのではないかと思う。こういう重要な事柄について、日本に対しては、総理の言葉をもつてすると、秘密にしてほしい、こう言つておる。ところが日本側の新聞でも、アメリカからUPが報じました條約の内容というものが具体的に載つておる。しかもその後この重大な問題についてアメリカ政府当局はこの具体的な、しかも詳細にわたる草案の内容等に対して、何ら打消しの処置が講ぜられておらないといたしますれば、このUP電報の伝えましたる講和條約の草案というものは、おそらく真実なものであり、アメリカ政府当局があえてこれを打消すほどのものでないという事柄をみずから裏書きいたしておるように私は感じる。一方においてアメリカはほとんど公開的な草案の審議をやつておる。しかも上院、下院を通じて、軍事外交委員会等においてこの問題の協議にもすでに入つておる。新聞にも出る。しかも講和條約締結の態度が対等の立場だ、こういうことになりますれば、民族の運命を決するような重大な問題でありますから、従来の日本の條約の締結と違つた立場において、国民がある程度率直な希望というものを付し得られるような余地というものを残し、またそういうことに政府みずからが努めるという責任があろうと思います。そういうことによつてのみ初めて国民とともに條約が締結されて、わが日本民族の独立と平和とを、国民のみずからの力でかちとる、こういう態勢というものが、がつちりと生れて来るのではないか、こういうふうに思う。にもかかわらず、私どもの印象では、どうも政府は秘密々々ということを重ねておるような感じが非常に多いと思うのであります。そこで私は当局に伺いたいのですが、今からでもおそくはありません。今後この対日講和條約をめぐるところのあらゆる可能なる情報、資料等を政府は極力収集に努め、それを逐次この外務委員会報告し、そして国民とともにこの対日講和條約の草案に対する審議を真剣に進めて行くという、この態度こそがきわめて必要であると思うのでありますが、そういう心構えが、憲法論は抜きにいたしましても、今後あるのかどうか、それについてまずお伺いしたい。
  91. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように国民とともに講和を結ぶ態度をとるということは、これは当然であります。従いまして外務大臣として総理大臣も、従来ともなるべくその内容を御報告申し、あるいは声明を出すというような態度をとつてつたのであります。またこれに合せてアメリカあるいはダレスさんも、常にその内容を演説し、あるいは声明等を出して参つたのであります。また外務委員会におきましても、従来ともなるべく講和の問題は各国の動向等をここで御報告申し上げて参つたのであります。入手されます範囲においての最も確実と存じます点は、従来努めて御報告をいたして参りました。今後特別の動き等があります場合におきましては、また国際情勢といたしまして御報告申し上げたいと存じます。
  92. 川島金次

    川島委員 そこでお伺いしますが、先ほど私が申し上げました四月五日ないし六日にわたつてワシントンのUPが報じておりましたアメリカの講和條約草案、これは政府のもとに届いております。しかも日本の国内の全紙に具体的詳細に報道されている、これを総合いたしまして考えた場合に、われわれ国民としては政府に発表できないと言つているけれども、このUPが伝える講和條約草案の内容というものが真実のものである、これがほんとうの内容だ、こういうふうにわれわれは国民として了解してさしつかえないのか、それをひとつ御見解を承りたい。
  93. 草葉隆圓

    草葉政府委員 大体今までの講和の内容等につきましては、総理の声明、国会の御報告等でその内容の骨子は申し上げているのでありますから、このUPの問題はただUPのヘンスレー記者が打ちました記事でありまして、これについては政府といたしまして、その内容の云々を申し上げる責任は持ち得ないと思います。
  94. 川島金次

    川島委員 この問題については政府も明白に答えることは無理だと思いますから、その点は了承いたします。  そこで私は先ほど対日講和の問題について国民とともに外交すべきだ、同時にまたアメリカ当局ですらこの講和條約は対等の立場でやるということになれば、われわれ国民の立場においては国会を通じて、その事前に講和に対する積極的な意見、希望あるいはわれわれの理想、こういつたものを打出して、それをできるだけ対日講和の中に織り込んでもらう、こういう日本国民全体の念願であろうと思う。そういう事柄について政府が積極的にこれから国民の輿望、希望、理想を取上げて、対等の立場においてできるだけ国民の感情にマッチし、理想にマッチするような講和條約を締結するような取運びをするという積極的な態度を、今後示して行こうとする考えであるか、その点をひとつ……。
  95. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは従来とも総理が再三申し上げております通り、国民の意見をひとつ率直に反映していただき、政府はこれをまた率直に反映するように努める、従来とも努めて参つた次第でありますが、今後も同様でございます。
  96. 川島金次

    川島委員 そういうことであれば、私はきよう初めて外務委員会に伺つたのですが、どこの委員会でも私の微力な経験によれば、委員会等で答弁の限りでないというようなことは、いかなる党の質問であろうと、その質問に対して、きわめてふまじめな質問であれば別でありますが、ふまじめでない正当なる当然の質問に対して、その質問に答える限りではないというような態度をとることは、私は国民とともに外交を行うという態度でないと思う。私は共産党であろうと、自由党の諸君であろうと、国民的な立場において真剣な立場で質問をする場合にはやはりできるだけ論理を盡し、情理を盡して答弁できるものはするという積極的な態度こそ、最も望ましい態度であろうと思う。そういう事柄に対して、私は本日初めて外務委員会に参りまして、いささか異様な感を実は持つた。この平和講和を行おうという問題について、あまり平和的でない審議の仕方が見られるということはまことに遺憾に存じます。そういうことのないように私は今後当局に御留意を願いたいと思います。  時間がありませんから、もう一つだけ伺います。もう一つはこの今問題になつておりまする講和條約の締結とともに、われわれの最も重大な関心は、いかにして日本が独立するかということと同時に、重大な問題として考えていることは、いかにして日本が平和であるか、この問題が少くとも日本民族の念願の焦点になつているところであろうと私は考えるのであります。講和條約は締結せられたが、そこに日本の平和確保という問題について、いささかでも不安があるような形であつては、私は国民の希望するところのものでない、こういうふうに考える。そもそもこの講和條約とともに並行して問題になつているのは、日本の安全保障、しかもこの安全保障については、われわれはでき得べくんば国連の加入を認めてもらつて、国連による安全保障ということで持つてつてもらうことが一番私は好ましい形だと思う。しかしながらダレス氏、また日本政府の態度から見ると、そのことは一応目下のところでは不可能だ。そこで第一段としては日米防衛協定の問題、その前に、あるいは暫定的にアメリカ軍の国内及び周辺における駐兵、こういう問題によつて日本の一時の真空状態をおのずから埋めて、日本の安全を保障しよう、こういうことになつている。しかもこの問題についても、日本が望むならばという一つの條件がついておつて、まことに私はもつともだと思う。そこでこの真空を埋めまする日本の安全保障について吉田総理の言われる、すでに日本国民が最も歓迎してこれは望んでおるということは、ダレス大使の言明から見ましても明白に報道されておる。国民全体がはたしてこれを望んでおるかどうかは議論の余地を残しますが、とにかく実際問題はそういうことが言われておるらしく思われる。そこでお伺いするのでありますが、このアメリカとの日米防衛協定といいますか、この協定に対する成案というものは、まだできておらないというふうにも私は聞いておるのですが、おそらく日米両国の間に、成案というものはできておらぬでも、構想ぐらいはあるのじやないか、こういうふうに私は国民の一人として想像するものであります。またそうあるべき時期ではないか。この日米の問題に関する、安全保障に関する構想というものが、アメリカに、あるいは日本政府にありといたしますれば、大体どのようなものであるか、それが発表できるものであれば、この機会に、重要なことでありますから、お聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  97. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この点に関しましては、従来もお答えを申し上げましたように、また総理からも前回ダレスさんが見えました一月、二月の際、またそのあとでも安全保障に関するとりきめにつきましての関係の問題については申し上げておる通りでありまして前回の話合いで大体一般的な意見の交換も終つておりますことは、従来申し上げました通りであります。あれ以上の内容はございません。さよう御承知を願います。
  98. 川島金次

    川島委員 大体あれ以上でないと言われますが、しかしあれ以上であるのじやないか。私も思い、国民もそれを想像し期待しております。そこでお伺いするのでありますが、それができないというところがいろいろ議論が残るゆえんのものであろうと思うのであります。  そこで私は最後に、このあれ以上のものではないということを前提としてお伺いするわけなんですが、日米の防衛協定をかりにやるといたしました場合に、軍隊の数とかあるいは駐屯の場所とか、あるいはそれに伴うところの費用の関係とか、こういつた事柄について何か向うから情報があつたかどうか。あるいはまたこちらからの希望というのですから、こちらからそういう事柄について具体的にこの防衛協定を行います場合には、積極的に打出して、こちらから持つて行くものであるかどうか、その辺はどうなりますか、この機会に伺いたいと思います。
  99. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問の具体的な内容につきましては、また決定的なとりきめをいたしておらない次第でございます。
  100. 川島金次

    川島委員 私はとりきめと言うのじやないんです。防衛協定の事前的な態度として、向うから押しつけられるものではないでしよう。はつきりと日本の希望によつてこたえる、こういうのですから、おそらくこの問題についても日本側から、端的にいえば政府の方から具体的な問題を持ち出して、そうして協定の交渉に入る、こういう形になるのではないかと私は期待しているのですが、そうではないのですか。
  101. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この点につきましては、すでにしばしば御説明申し上げました通りに、国連憲章の精神をくみましたいわゆる地域的とりきめとして、日本がこれを希望し、アメリカ日本にそういう意味において駐屯をするというその具体的内容につきましては、どのくらいどこに、どういう方法でというようなとりきめが進んでおらないのであります。今後の問題に属するものだと存じます。
  102. 川島金次

    川島委員 くどいですが、そこです。その問題についてとりきめる場合にその具体的な問題は、こちらから積極的に持ち出すのか、あるいはアメリカの方から試案が出て、それに対してやるのか、どういう形ですか。それによつてはたいへん違うのです。日本の方から積極的に出すのと、そうでないのと、たいへん内容において違つて来るものができると思う。その点を私は聞いておる。
  103. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはごもつともと存じます。こちらからどうしてもこれだけは必要だとか、向うから積極的にこれだけは必要だとかいうような問題が起つて来ると存じますが、こういう問題は国際情勢、日本の環境等、十分その当時におきます状態を話し合つてその当時におきます相談を進めて行くべき問題だと存じます。
  104. 川島金次

    川島委員 相談し合うことはいいですが、日本側の相談する基本的な態度が非常に重大なのです。それで私は尋ねするのですが、その基本的な態度はどうですか。まず相談する双方の立場において、一方の日本側はどういう基本的な態度で臨むことになるのかという点です。
  105. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは日本のいろいろな国際的な立場なり、東亜におきます情勢なりが、結局影響して来ると存じます。従いましてこういう問題につきましても、いろいろ国民の間にも意見等もあろうと存じまするから、そ、ういうものは大いに反映させて上がるべきものであると考えておまります。まだ政府がこういう具体的の方法をもつて行かなければならないという最後決定というような決定を今運んで、それによつて進もうという方針はとつておりません。この点はさよう御了承願いたいと思います。
  106. 川島金次

    川島委員 最後にお伺いいたします。うなぎ問答で要領を得ないのですが、なるべく要領を得さしてもらいたいと思うのです。もしかりに日米防衛協定を結ぶ場合に、その協定というものは、政府考えておるところでは双務的な協定になるのか、あるいは片務的な形において締結せられるのか、この心構えが政府にはあると思いますが、その点はどうなんですか。簡単にお尋ねしますから簡単にしかも具体的にお答え願いたいと思います。
  107. 草葉隆圓

    草葉政府委員 双務的あるいは片務的という問題につきましても、これは結局相談の結果によつて決定すべき問題と存じております。従いまして、その成立いたしまする内容によりましては、双務的なものもありましようし、片務的な状態になつて来るものもあろうと存じますが、この点も決定いたしておる次第ではございません。
  108. 守島伍郎

    ○守島委員長 佐々木君。
  109. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は、主として憲法の規定に対する解釈並びに外交上の手続の問題を西村條約局長に承りたいと思います。  今度の対日講和條約の調印の場所がどこになるかということは、まだわれわれの不幸にして知らないところであります。かりにこれが外国になりましようとも、あるいは東京で行われましようとも、條約締結にあたつては、もとより講和條約締結に対する全権委任状並びに信任状というようなものを出すことになると思うのでありますが、さよう考えてけつこうでありますか。
  110. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 全権委任状を出すことになると考えております。
  111. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そういたしますと、その全権委任状並びに信任状というものは、私は内閣の行う事務であろうと考えるわけでありますが、いかがなものでしようか。
  112. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 私どもも内閣でやることと考えております。
  113. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、條約の調印にあたつて、かりに吉田外務大臣あるいは吉田総理大臣がこれに当るというような場合におきましては、吉出総理大臣が自分で自分に対して全権委任状や信任状を出す結果になるわけでありますが、さよう考えてよろしゆございますか。
  114. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 さように考えております。
  115. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そのような例は今までもどこか——日本ではもとより昔の明治旧憲法のもとにおいては、陛下か親しく信任状や委任状を出されておつたわけでありますが、外国等においてはそういうことがしばしば行われているかどうかお伺いいたします。
  116. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 外国の信任状を見る機会を全然持ち合せませんので、先例等も心当りございません。
  117. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そういたしますと、憲法第七條の天皇の国事に関する行為の規定の第五号において、全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証するということになつており、政府の出しました全権委任状ないし信任状を陛下が認証されるわけでありますが、具体的には陛下の認証ということがどういうふうな形式によつて行われるものかということを、初めての例でもありますから、ひとつ承つておきたいと思います。
  118. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 今日まで行われております第七條による陛下の認証形式は、結局認証式を要する職に任命する際に認証をされる先例がございます。その先例等も加味いたしまして、目下一番妥当な認証の方式というものについて研究を進めておりまて、間に合うように最後的な書式をつくり上げたいと思つております。最初の例でございますから、慎重に研究をいたしておるのであります。
  119. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それから、先ほど来の政府委員の答弁並びに私の考えによりましても、明治憲法のもとにおいては陛下があ持ちになつてつた外交大権というものが、ことごとく政府の方へ移つて来たというふうに解釈できるわけであります。同じく憲法第七條の第九号で、外国の大使及び公使を接受することも陛下の行う国事の中に入つておるようであります。そういたしますと、信任状を出す場合においては政府が行い、外国の使臣の信任状を接受する場合にはこれを天皇がおやりになるということは、理論的に非常に矛盾していると私は考えるわけでありますが、どういうふうにお考えになつておりますか。
  120. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 佐々木委員が御指摘になりました点は、外務当局といたしましては、新憲法制定当時すでに問題にいたしまして、そういうふうな齟齬を来さないように修正をいたしてもらいたいという強い希望を持つていたわけでございますが、結局その通りなりませんでこういうふうな形式になつたわけであります。従いまして、日本に関しましては、外国から派遣されます大公使は天皇が接受するが、日本側から外国に派遣します大公使は内閣から派遣する、こういう結果を来します。しかしこういう方式は各国の憲法にはなくまつたく新例でございますが、おそらく日本の憲法がこういうふうな方式を規定いたしておりますので、関係接受国側から特に問題にされることもなかろうと思つている次第であります。できるだけこの齟齬が目に立たないような方式がないものかと、事務当局としては信任状その他の書類の方式を研究いたすについては考えている次第であります。苦心の点はそこに存するのであります。
  121. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 よくわかりました。そうすると今度の日本との講和條約の締結にあたつて外国から来る全権代表は、その全権委任状並びに信任状を天皇陛下に奉呈することになり、日本側では吉田内閣総理大臣が、おそらくはその本人である外務大臣吉田茂氏に信任状なり全権委任状を出し、それを陛下が認証し、その結果署名調印の運びになる、こういうふうな手続になると思うのでありますが、そうでありますか。
  122. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 その点はちよつと佐々木委員思い違いがおありかと思うのであります。信任状は大使、公使、全権委任状は集約作成のために招集される国際会議に出る人が商議に参加し、その会議ででき上つた條約その他の文書に署名する権限を與えるということを証明する文書でありますから、かりに今対日平和條約の調印が国際会議という形式であるところに開催されると仮定いたしますならば、この会議に参列します各国の代表は全権委任状を持つて来るわけであります。そうして、お互い忙それを提出して、それが正当だ、りつばなものであるということを会議自身で認めまして調印をするということになります。従つて会議主催国の政府ないし元首との関係は生れないわけであります。
  123. 守島伍郎

    ○守島委員長 国際情勢等に関する意見はこの程度にとどめましてちよつと御報告いたします。  先ほど総理大臣の秘書官から連絡がございまして、外務大臣の本委員会に関する出席問題、それにつきましては総理大臣とは直接まだ連絡がとれぬけれども、多分あしたかあさつてにひまがとれるであろう。それは午後総理と直接連絡がとれるようになつてきめたい、こういう申入れがございました。それで私は午後交渉いたしまして、できるだけあした、できなければあさつてぜひ出席をしていただくように交渉をしようと思つております。もし総理が出られますようになりますと、おそらく十時きつかり出て来るだろうと思いますから、当日は十時きつかり御出席くださいますようにお願いいたします。  本日はこれで散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時三十三分散会 第十回国会衆議院外務委員会議録第三号中正誤 一頁二段一〇行目「在外公館等立替金即時返還に関する陳情書(別府市浜脇魚薬町泉孫内浦崎俊亮外七名)(第一九六号)」は削除すべき誤