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1951-05-11 第10回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十一日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君       小川原政信君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    仲内 憲治君       並木 芳雄君    武藤運十郎君       米原  昶君    高倉 定助君       黒田 寿男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (政務局情報部         長)      田村 景一君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君 五月十一日  委員高田富之君辞任につき、その補欠として米  原昶君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際連合教育科学文化機関憲章を受諾すること  について承認を求めるの件(條約第三号)     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件(條約第三号)を議題といたします。質疑を許します。並木君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 私は文部大臣にお尋ねしたいことがありますので、そのときに外務当局にも一緒に質問しますから、あとでけつこうです。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは北澤君。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 四、五点政府当局者にお伺いしたいのですが、第一点はこのユネスコ憲章前文に、過般の第二回世界大戦は、個人及び人類の不平等の原則の宣伝によつて起きたというようなことを宣言しておるのでありますが、これはユネスコ参加した国が、この個人及び人類の不平等に反対であるということをはつきり宣言したものと思うのであります。日本は従来から人類平等ということを唱えておつたのでありまして、こういうふうにユネスコ憲章前文に、人類の不平等に反対であるというような原則を書いたということは、従来の日本主張各国が同調した、こういうふうに見てよろしゆうございますか。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ただいま御指摘になりましたユネスコ憲章前文の文言、人種平等の主張を表明している部分は、同じく国際連合憲章前文にも、また各條項にもこの趣旨は至るところに現われております。人種平等の観念は、日本が第一次世界大戦ヴエルサイユ会議で提案をいたしまして、国際連盟規約の起草に関連いたしまして、日本側から提出したことのあることは、われわれの記録に新たなところでございます。大体同じ思想国際連合憲章の中なり、ユネスコ憲章前文なりに姿を現わしたということは、少くともそういうことを初めて国際会議へ提起いたしました日本としては、うれしく思うところでございまして、北沢委員と同様な感想を持つておる次第でございます。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは、国際連合加入国は、当然ユネスコ加盟国になり得る、そういう権利を持つておるというふうになつておりますが、先般の政府の説明によりますと、ソ連、ホワイト・ロシヤ、ウクライナ等は、国際連合加入国でありながら、これに参加しておらない、こういうお話であつたのでありますが、それは一体どういう理由で入らないのでありますか、もしその理由がわかりましたら伺いたい。と申しますのは、このユネスコというものは、御承知のように、国際間の相互理解を進めて、そうして各国民の精神の中で平和を保つというふうな、国際平和を理想とする大きな文化的な機関でありますが、ソ連のように平和擁護平和擁護と盛んに平和を主張している国が、国際的な平和機関参加しておらないということは、どろもソ連の行つていることと、言つていることが、食い違つておると思うのでありますが、どうしてソ連その他の国々ユネスコ参加しないのか、その理由がわかつたらお伺いしたいと思います。
  8. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 国際連合加盟国でありまして、ユネスコ参加していない国は、現在のところ九箇国ございます。その九箇国は、白ロシヤ、チリー、エチオピア、アイスランド、ニカラグア、パラグワイ、ウクライナソ連邦、イエーメンでありますが、ユネスコ理想から申しまして、こういう国々参加することが望ましいということは申すまでもございません。ソ連邦白ロシヤのような国がユネスコに加入しておりません理由は、はつきりいたしませんのでありますが、ソ連邦も一九四三年の文部大臣会議にはオブザーヴアーを派遣いたしました。しかしユネスコ設立しますときに際しましては、教育文化の事項は、国際連合経済社会理事会が、その衝に当るべきものであるということを主張いたしまして、ユネスコ設立協力を拒絶いたしたのであります。それ以来ユネスコの方でほ力を尽くしまして、ソ連参加を求めておりますが、今日までのところ成功いたしておりません。  この反対的態度根本的な理由につきましては、第一回総会の際に、ユーゴスラビアのオブザーヴアーソ連圏を代表いたしまして、ユネスコ憲章、マルクスの唯物弁証法を勘定に入れていない、この失敗はソ連邦西欧諸国間の知的協力を阻害したと言つてソ連圏内西欧諸国間に、知的分野における協力関係が成り立ち得ないのは、このユネスコ憲章において唯物弁証法を取入れなかつたところにある、ということを言つておるのであります。しかしながら、これ以外に、たとえばユネスコ主要事業であります大衆通報——マス・コミユニケーシヨンによりまして、直接知的協力の面において大衆に呼びかけるというようなやり方は、世にいう鉄のカーテンを引きおろしまして、西欧側との自由な交流を回避いたしておりますソ連邦としては、なかなか受諾いたしたいところもあるのではあるまいか。今申し上げましたイデオロギー的な理由以外に、そういつた政始的な理由もあるのではあるまいかと想像される程度でございます。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたい点は、憲章の第七條国内委員会組織の点であります。私の了解するところでは、日本には国内委員会設立をまだ見ておらぬと思うのであります。ユネスコに関しまして、日本におきましてもいろいろな協力団体ができたのでありますが、あるいは財政上の問題、いろいろな問題で今日までなかなか日本国内協力団体組織希望通りつておらぬように思うのであります。この日本における国内委員会組織状況について伺いたい。それから私はこういうものにつきましては、ある程度政府において補助金を出さないと、なかなかうまく行かないと思うのでありますが、政府財政的な補助を與えるような措置を一体お考えになつておりますかどうか、その点をお伺いします。
  10. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ユネスコ憲章七條規定いたしております国内協力団体に関する規定は、條約の規定といたしましては、義務的な規定ではございません。必ずしも締約国国内委員会を設くべき義務はないわけであります。ただ設置を勧奨されておるという関係にございます。しかし実際問題といたしまして、現在五十九箇ヶ国ばかりユネスコ加盟国がありますが、そのうち五十国以上がそれぞれ国内委員会を持つております。そういうことから考えまして、われわれといたしましても、日本国内委員会を設置した方がよろしいという考えで、この具体案について目下慎重に研究中でございます。設けるということになりますれば、国家行政組織法に基きまして、やはり法律によつて、こういう委員会を設けるという措置をとるべきものでございますので、自然その国家財的負担という問題も、立法によつて解決される、こういうように考えております。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 国家がそういう国内委員会に対しまして補助を與える、その補助の具体的な何か構想を持つておられますか。
  12. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 法律によつて設置される委員会でございますので、従つて補助という問題は起らないわけです。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 どうもこういう委員会は、ただ民間だけの寄付とか、何かそういうものにまかしておくわけには行かないと思うのであります。いろいろ民間団体、特にこういう文化団体を見ますと、やはりそういう財政上の困難から、仕事がなかなか希望通り行かぬというのが実情だと思います。私はどうしてもこういう委員会をつくられる場合には、ある程度国家補助しててるということでないと、国内委員会仕事というものが、所期の目的を達し得ないと思うのでありますが、政府といたしましては、こういうものには補助を與えないという方針でありますか、あるいはこれに補助を與えてでも育成して行きたい、こういう考えでありますか、ひとつ文部大臣の御意見を伺いたいと思います。
  14. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はやはり政府ができるだけこれを育成して行くというのですから——普通の考えでいうと、補助ということになりますが、政府自分でつくるのだから、これは事業費だということでございます。どういう意味でも、政府がそれを育成して行くということが重要だと思います。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 ユネスコ憲章に関する質問は以上でやめまして、これに関連して伺いたいのですが、結局講和條約というものが、近く調印されて、日本外交権を回復するわけでございますが、講和條約以後の日本外交としましては、結局経済外交文化外交、この二つの柱が私は日本外交根本になると思うのであります。戦争前のような政治外交というものは、今後の日本外交におきましては、そう重きをなさない。結局経済外交文化外交ということが、将来の日本外交基本線になると思うのであります。そこで政府におかれましても、今回外務省機構改正に関する案を国会に出されまして、国際経済局というものをつくられまして、大いに経済外交をやろうというような構想を具体的に立てられたようでありますが、こういうふうに日本ユネスコ参加を認められましや、そうして世界文化方面に大いに活躍できるというふうになりました今日におきましては、私はやはり外務省国際経済局と並んで、文化局というようなものを置いて、そうして文化外交をそこで一つにまとめてやるということが必要だと思うのであります。現在におきましては、こういう文化に関する外交と申しますか、国際文化に関する政策は、外務省文部省両方にわかれておる。そこにいろいろの問題があると思うのでありますが、また将来講和以後、日本文化外交を強力に進めるという点から申しますと、これは一本にして、どこかでやらなければいかぬ。そのためには、私は外務省文化局というようなものを置いて、そうして文化外交を強力に進めるというふうなことを必要と考えますが、そういう点に対しまして、外務当局はどういうお考えを持つておられますか。
  16. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御意見のように、文化に関する外交が非常に大事だということは、まことに御同感でございます。これを機構的にどういうふうに具体化するかということになりますと、講和にも関連いたしまして、外務省の機能が全面的に活動して参るわけでありますが、その際に全般を考えまして、機構改正も考慮いたしたいと思います。御指摘の点、当然近い将来に具体的に考えたいと考えております。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは、ユネスコ憲章にありますように、これは国際的な文化交流によつて世界各国間のお互い理解を深めて、そして戦争を防ぐというふうな思想から、こういう組織ができておるのであります。そういうふうな国際間の相互理解を深めるということは、まことに必要だと思うのでありますが、特に東洋西洋との間には、文化において非常な違いがある。宗教も違い、習慣も違い、語学も違うようでありまして、東洋西洋との間の文化交流と申しますか、あるいは相互理解増進ということが、ヨーロッパ諸国間の関係、あるいはアメリカ諸国間の関係と、非常に隔たりが多いのでありまして、そこに先ほど申したような宗教相違、あるいは語学相違習慣相違生活様式相違があつて、いろいろな困難があるのであります。政府におかれましては、日本西洋諸国とのそういう文化交流あるいは相互理解増進ということにつきまして、今申しましたような障害を、一体どういうふうな考えで除去する御方針でありますか、この点特に文部大臣に伺いたいと思います。
  18. 天野貞祐

    天野国務大臣 やはりそういうことをするのがユネスコ目的であつて教育とか科学とか文化とかいうものを通じて、もつぱら相互理解ができることと思つております。こういう文化一般世界性を持つておりますから、東洋西洋理解しがたいといつてみても、また世界性お互いになければ、ほんとうの文化とは言えないのですから、理解できると私は思つております。ことに西洋人東洋文化理解することは非常に困難でありますけれども日本人西洋文化理解することは、それに比すればいくらかやさしいのではないか。すなわち分析的な思想の発達しておる西洋文化というものは、日本人には割合やさしいのではないか。そういう点において、日本人が一方においては東洋文化を十分に本質的に持ち、他方においては比較的理解しやすい西洋文化というものを自分らのうちに取入れるというところに、日本人使命というものもあり、そういう点からして、私は学問とかそういう文化ということばかりではございませんが、相互理解ということは、そういう点において十分今後できるりではないかという希望を持つております。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 ただいま大臣の御答弁にもありましたように、西洋人たち日本文化理解するについては、いろいろ困難があるということはその通りであります。日本人西洋文化理解するのは、比較的そう困難でないと思いますが、西洋人たち日本文化理解することは相当困難がある。そこで日本文化世界に紹介するということにつきましは、いろいろの困難があるのでありまして、私はその点についてこれを特段措置を講じないと、なかなか日本文化世界に紹介して、そうして日本に対する世界理解を深めるということについて、いろいろな困難があると思うであります。そこで政府におかれましても、日本文化世界に紹介して、日本文化に対して各国理解を深めて、日本に対する理解を深めるというふうな方針について、特段の御努力を願いたいと思うのであります。  これに関連してお伺いしたいのは、現在日本日本文化世界的に紹介すると申しますか、そういう意味で、国際文化振興会というようなものがあるのでありますが、現在の活動状況につきまして、文部省からでも、外務省からでも、どちらでもけつこうでありますが、御説明願いたいと思います。
  20. 田村景一

    田村政府委員 お答えいたします。国際文化振興会は、御承知通り戦前から外務省外部団体として大きな活躍をしておつたわけであります。今度新憲法になりましてから、こういう団体に対する補助金というふうなものが打切られました関係上、文化振興会自身自分で資金をとりまとめて来なければならないというような状況になりまして、今まで大分やつておりました事業も、一時中止するというような状況にございます。最近は一部の継続事業であります辞典の編纂というようなことをいたしておりますが、これも十分な金がございませんために、相当な時間を食つておりまして、まだ完成しないという状況にございます。われわれもその事業自身は非常に有益なものだと思つておりますので、何かの方法でこういうようなものに援助をしたいという希望はあるのでありますが、これはいずれ日本が独立しましたあかつきにおいてやつてみたいと考えております。
  21. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまのお話で、文化振興会活動状況がわかつたのでありますが、先ほども申しましたように、政府におかれましては、大いに文化外交方面努力したいと思う、こういうのでありますので、こういう民間団体政府外交政策と表裏一体となつて、そういう国際文化方面に強力に活動してもらうことが必要であると思うのであります。ただいまのお話では、やはり財政上の関係でなかなか仕事がうまく行かぬということでありますが、憲法規定もあるのでありますけれども、何かの立法措置によつて、やはりこういう政府文化外交政策に対して、援護をして行くような民間団体に対しましては、ある程度の補助金をやらなければできないと思うのであります。政府におかれましても、そういうふうな点に今後ともひとつ強力に研究を進めてもらうことを要望いたしまして、私の質問は終ります。
  22. 並木芳雄

    並木委員 私はユネスコ憲章を受諾するにあたりまして、天野文部大臣二つの点を確かめておきたいと思うのです。その一つは、ユネスコというものは実際の効果をもたらしておるものであるかどうか、こういう点であります。それから他の一つは、ただいま北澤委員からもちよつと触れられましたが、ユネスコ加入後の国内態勢についてでございます。  まず私はこのユネスコの実効について、国民の間で相当疑問が持たれるのじやないかという点を指摘したいのでございます。それは、ユネスコ憲章前文宣言のところの冒頭に「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」とこう書いてあります。これはまことにもつともだと思います。それから次に「相互風習生活を知らないことは、人類歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑不信をおこした共通の原因であり、この疑惑不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争なつた。」こう書いてあります。これも私はもつともであろうと思います。ですから観念的には何ら異論をさしはさむ余地はないと思うのでありますけれども、さて現実世界を見ますと、なかなかこのような理想通りに行つておらないので、むしろ非常な隔たりがあると思う。いわゆる鉄のカーテンの向う側の風習生活は、私たち日本人には知ることができない、また知らされておらない。しかも終戦以来国際情勢は悪化してこそおれ、決して好転しておりません。年頭の書簡にはマツカーサー元帥も、日本憲法理想は、現実の前に自己保存の法則に道を譲らなければならないだろうということを述べられておりますし、つい最近は、マーシヤル国防長官がこういうことを証言されております。われわれが定義を下しているような民主主義共産主義国家間の闘争は永続的なものである。それはすでに五箇年以上を経過したが、さらに今後も長く続くであろう。私はこの世界的闘争を迅速かつ決定的に解決しようと思うならば、第三次大戦に訴える以外に道はないと思う。こういうように証言されておるのであります。また他の証言でしたか、アメリカは中共と戦つておるのではない、共産主義と戦つておるのだというような点もあつたかと私は記憶しております。そうすると戦争をなくすことがユネスコ目的であり、心の中に平和のとりでをつくろうということが宣言にうたわれておりますけれども、それが実際にできないのじやないかという少くとも疑問が起るのであります。ですから私ども鉄カーテンのあちら側の風習生活を知る機会から、すますま遠ざかつておる今日、文部大臣としてはどういうふうにして、このユネスコ目的を達する確信があられるか、それを知りたいのであります。要するにこの現実理想との矛盾を、文部大臣としては、いかなる所信をもつて日本国民に訴えて行くか、これはもつと掘り下げれば、共産主義民主主義とは永遠に相いれないものであるのかどうかという根本問題にもなつて行くと思いますので、この際こういう点を明確にしていただきたいと思います。
  23. 天野貞祐

    天野国務大臣 現実のきびしさを痛感することにおいては、私も並木さんと同様でございます。で鉄のカーテンがかたくおろされている、その先を知ることが非常に困難である、もしくは不能であるとさえも言つてよい。そういうきびしい現実に直面して、ユネスコというようなことを言うのは、一種の観念論ではないかという疑問が起るのも当然だろうと思います。けれども、私たちがいつでも考えておかなければならないことは、人間はただ現実につくられるだけじやなくして、現実をつくるカを持つているのである。歴史にただつくられて行くものじやなくして、歴史をつくるのが人間の本性であり、また人間使命でもある。だから私たちは、ただ理想にはせ、現実を忘れるということだけを排撃するというのではいけないのであつて現実にとらわれることもまたいけない。常にわれわれは現実におりながら理想を持つて、その理想によつて現実をつくりかえて行く。そういうところに人間存在意味があると思うです。だからこの鉄のカーテンがかたくおろされておるといつて、私たちは絶望してしまうことはないのであつて、鉄のカーテンの魚にも、文化もあれば学問もあり、芸術もあるのであります。そういう学問とか芸術とか、広くいう意味教育とか文化というものは、いつでも自己世界に伸ばそうという世界性を持つておるのを特徴としておるのであります。いかに鉄のカーテンをかたくとざしても、ソ連の持つている教育科学文化——広い言葉でいうならば文化でありますが、その文化というものは、必ずその狭い範囲を破つて世界に伸びようとするカを持つておるものなのです。だから私たちは、鉄のカーテン永遠にとざされるという考え方じやなくして、鉄のカーテンもわれわれの努力によつては、上る日が来るということを自分たち考えるものなのです。こういうことがすべて戦争によらなければ解決できないというような考えは、徹底的に排斥すべきであつて、私ども文化的な努力によつて鉄カーテンを上げさせ、世界の平和がもたらせるんだ、そういう努力をすることにこそ、人間存在意味があるんだと私は考えておるものでございますから、ユネスコ仕事がただちに鉄のカーテンを上げさせることはできないけれども、しかしそういう希望は十分に持ち得るという考えでございます。また世界は決してソ連だけではなく、他の国もたくさんあるのです。その国々の間の理解と、知的、精神的な了解ということもユネスコの大きな仕事なのですから、ソ連という障害があるからユネスコ意味がないではないかということは言えないし、ソ連についても、私は今のような希望を抱くものでございます。  それから第二点の、さらに根本に掘わ下げると、一体共産主義民主主義というものは永久に相いれないものではないかという御疑問、これもわれわれの非常に考えなきやならない問題でございます。共産主義は、申すまでもなく平等というものを原理としておる。民主主義は自由というものを原理としている。この自由と平等というものは、矛盾したものであつて、相いれないものを原理としておると言えるのであります。けれどもこの相矛盾したものが一つに相即しない限りは、政治というものは成り立たないのであつて、もしソ連のように平等ということに徹底するというと、個人の自由というものを奪つてしまつて、その結果は独裁主義にならざるを得ない。けれども反対民主主義といつても、自由という原理にあまりに拘泥すると、いわゆる資本主義的な弊害が強くなつて来て、貧富の懸隔が強くなつて来て、とうてい政治が成り立たなくなる。だから政治というものは自由と平等という矛盾したものが相即するところに成り立つて行くといわなければならない。それを相即させる原理は「昔から自由、平等と並べていわれるところの博愛とか愛とか、そういう原理によつて自由と平等とが相即することができるようになるのだと私は考えるのです。そういう愛というのは、一方からいえば理解ということを常に根底に持つておるものでありますから、ユネスコ相互理解、精神的、知的な連絡をはかるということが、いわば世界的な連帯ということ——連帯というのは、広い意味においては愛といつてもいいのですから、そういう両者を融合する原理ユネスコ根本的に持つておるといわなければならないと思うのです。でありますから、この二つ原理は矛盾しておりますけれども、具体的な政治形態としては、将来は必ずこれが二つの契機として総合されて、愛の地盤において、あるいは連帯の地盤において総合されて、新しい政治形態を生んで行くべきもので、そういう政治形態こそ、われわれのはるかに想仰する理想でなければならないという考えでございます。けれども理想はあくまでも理想であつて、それに容易に到達できないからといつて断念すべきではなくて、どこまでも自分たちユネスコ的な努力によつて、一歩々々そこに近づいて行くべきであるという考えでございます。
  24. 並木芳雄

    並木委員 文相の所信と御熱意は拝承いたしました。ところで現実をつくり、歴史をつくり、新しい政治形態にまで持つて行こうという具体的な方法は、どういうことかということに結局なつて参ると思います。先ほど西村條的局長の答弁の中にも、ソ連ユネスコに加入しておらない理由をあげられて、この憲章でマルクスの唯物弁証法を取入れなかつたから知的協力を阻害したということなどがあげられておるとの模様でございます。そうするとこちら側では、常にそういう熱意を持つて心の中に平和のとりでを築こうとやりましても、向う側でどうしてもこれに対して応じないとすると、そういうものをどういう方法によつて克服して行くか。マーシヤル長官の証言は武力に訴えるべきではないというふうに言われておるのですけれども、武力に訴えずしてこれを克服して行く方法は、どういうところに見出されるでありましようか。私どもは実際問題としてやはり国民の前にそういう点を明らかにして行きたいと思う。共産主義が引込むか、民主主義が引込むかによつてのみ達成されるのか、両方が両立しつつそこに永遠の平和がもたらされるのか、その方法はどうするか、こういう点でございます。
  25. 天野貞祐

    天野国務大臣 それは私が答えるにしてはあまりにむずしい問題でございますけれども、しかし私の考えからいえば、やはり戦争というものによるのではなくして、自然に了解する日が来ると私は思うのです。歴史を固定的に考えるというのが間違いであつて歴史というものは常に動いておるものなんで、現在はそういう状態であつてもわれわれが誠意をもつて——ソ連だけが外国ではなく、多数の国があるのですから、そういう国々の間にユネスコの精神を徹底して行けば、自然にソ連もこれに加入する日が来るのではないかという考えを私は持つております。
  26. 並木芳雄

    並木委員 かつては全面講和を唱えられた天野文部大臣の面目がほうふつとしておると思います。そこでこの際文部大臣にお尋ねしたいのですが、共産主義というものは暴力革命を伴うものである、必然的にイエスかノーか、敵か味方かで、中立的な存在は許さないのだ、わが陣営に屈服するか、敵対するかの一つであるということをよく言われておるのですが、もし共産主義がその現実の行動において、暴力革命というものを伴うと断ずるならば、ただいまの文部大臣のせつかくの理想と熱意というものも、これは絵に描いたもちになつてしまうのではないかと思うのです。この点天野文部大臣はどうお考えになりますか。
  27. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は現実を無視してただ理想を言おうというわけではございませんから、客観情勢の変化によつては、そういうただの理想的な考えばかりではいけませんけれども、またこちらがいくら誠意を尽しても、先方が応じないというならばしかたがありませんけれども、しかしこちらはこちらで十分な心構えを持つて、他の国々とみんな一致して、そして他の国々との間の平和を確立し、他の国々の間にユネスコ的な精神を充満させて行けば、将来ソ連もまたこれに加わつて来る日があるのではないか、そういう考えでありまして、いわゆる全面講和論とは私は同じでないと自分考えております。
  28. 並木芳雄

    並木委員 天野文部大臣は、中立の思想を持つておられるインドのネール首相、ああいう行き方に対して、今日の段階においてどうお考えになつておりますか。それからただいまのお話を伺いましても、共産主義思想として弾圧することはもとより、共産党の非合法化のごときものも、文部大臣としては当然反対であると思いますけれども、この点もあわせて明らかにしていただきたいと思います。
  29. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は終戦後は中立ということができると思つておりました。終戦後は、ここに歴史に新しい段階が来て、中立ということができ、日本がこの憲法通りに行けるものだと思つておりました。けれども客観的事態というものが非常にかわつて来ておりますから、その通りにはなかなか行きにくいようになつて来てしまつた、客観情勢の変化を非常に強く感じておるものでございます。共産党の非合法化というようなことは、これは時と場合によつて考えらるべきことで、ただちに賛成とも反対とも言いかねる問題であります。
  30. 竹尾弌

    ○竹尾委員 関連して……。私の質問は佐々木君のあとの四番目になつておつたようですが、今佐々木委員の了解を得まして外務当局文部大臣一つお伺いいたします。  ユネスコに関連しまして今天野文相は、ソビエトに対して鉄のカーテンをあけさせる、こういうお言葉のようでございましたが、これは共産党の諸君あたりから見ると、あるいは物笑いかもしれぬと思います。と申しますのは、ソビエトがむしろソビエト文化世界に宣揚するために、このユネスコ設立前に——これは文化委員会でちよつとお尋ねしたことがありましたが、対外文化連絡協議会と申しますか、ヴオツクスという機関が全世界にソビエトを中心に網を張つております。これはソビエト大使館に終戦前に事務所があつたくらいで、これが日本で相当活躍しておつた。日本ばかりではございません。各国でこのヴオツクスほ相当顯著な活動を続けておつた。そこでこういうユネスコ設立を見たということは、おそらくその真意におきましては、ソビエト文化の全世界的な普及と申しましようか、そういう浸透に対して、平和のとりでと申しますか、一つとりでをこしらえる、こういう意味もあつたではないかと想像されるのでありますが、それはともかくといたしまして、その後のソビエトのヴオックス活動について、外務当局でも知らぬというようなことはあり得ないと思うので、大体どんな活動をされているか、その点について、ひとつ知つている範囲でけつこうですから、御答弁願います。
  31. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 戦後におきまするヴオツクスの活動につきましては、今資料を持ち合せません。帰りまして調査した結果、もしわれわれの手元でわかることがございましたならば、後刻御報告申し上げることにいたしたいと思います。
  32. 竹尾弌

    ○竹尾委員 わかりましたが、この機関の活動は、おそらく将来ユネスコと対立する非常に深刻な活動になると思います。それで、このユネスコソ連傘下の国が入らないという一つの大きな理由は、ヴオツクスを持つているから、こういうふうにも解釈できると思いますので、この点非常に大問題でありますから、ひとつできるだけの資料を集められて御報告願いたいと思います。  それから次に文相にお尋ねいたします。今の文部大臣お話によりますと、ユネスコ思想的背景と申しましようか、そういう思想的ないし哲学的な基礎と、ソビエトの持つマルクス・レーニン主義の哲学的基礎とを折衷いたしまして、そこに何か一つの基礎を見出して、その基礎の上に立たれてこういう運動をされたいと私はとりましたのですが、そこでユネスコ思想的背景と申しましようか、そういうものがどういう哲学的な基礎に立たれておるか、このヴオツクスがそうしたマルクス・レーニン主義の哲学の上に立つた一つ思想機関であるのでございますから、それに対してこのユネスコ機関がどういう背景を持つているものであるか。またおるべきものであるか。これは国内委員会ができた場合に、どういう基礎のもとにこれを指導されんとしておるか、その点につきまして、特に哲学者としての文相にお尋ねいたしたいと思います。
  33. 天野貞祐

    天野国務大臣 私が先ほど鉄のカーテンを開くことも、歴史の推移によつては必ずしも不可能でないと言つたことは、すぐ今できるとかそういうことではなくして、そういうことは人類一つの理念として考えて行つていいのではないか。ただユネスコというものは、一つの観念論だとかそういうことでなしに、人類がそういう理想を持つているべきではないか、そういう考えなんです。ユネスコは、どこまでも平和とか自由とかそういうことを原理としているものですが、しかしどこまでも二つ世界観というものはこれは相いれないものだ、絶対にいれないというのでは、いつまで立つて世界の平和は成り立たないのではないか。だからして、二つ世界観を契機として、私どもの言葉でいうならば、これを揚棄して、そうしてもう一つ上の立場に立つたそういう一つ世界観を考えることによつて世界中を平和に導く道があるのではないか、ユネスコはそういう高い立場に立つて行くべきものではないか、そういう考えです。
  34. 並木芳雄

    並木委員 先ほど天野文部大臣のお言葉の中に、客観情勢のかわり方ということがありました。まことに客観情勢は急変したと思います。しかしこの客観情勢というものは、偶然の原因で急変したのか。先ほど私がお尋ねしました共産主義の本質がたまたま現われて来たのか。そこのところの御認識をどつちに持つておられるか、その点をお伺いしたいのです。
  35. 天野貞祐

    天野国務大臣 歴史の中にはただの偶然というものはないと思つております。すべてそういう一つ歴史的必然性があつて、そうしてこういう客観情勢ができて来たと思うのです。しかし歴史的必然というのは自然必然と違いますから、いつでもそこに人間の自由、意思を持つている人間の創造性をそこに生かして行くということがあるのは当然でございますが、しかし私は、ただ偶然にできたものではなくして、いわば歴史的必然をもつてこの客観情勢の変化ということが起つて来たのだと思います。それならば、並木さんに問われない前に答えておきたいと思うのです。それならばそんなことはなぜ前から知つておらないのか、歴史的必然というものは前からわかつておりそうなものだというのですが、私自身は、日本憲法ができるときには、これで行くのだ、世界はここに新しい時代が来たんだ、従来の世界というのは、いわゆる個人主義的な原理を持つて、国と国とがお互いに勢力の均衡を保つて行く、そういう世界であつたのが、今度は世界一つとなつて、ほんとうにここに平和が来るのじやないかという考えを抱いておつた。ところがそれは私の考え違いだつた。ということは、私はあまり早急であつた、まだ世界はそこまで来ない。中立ということが今の日本には不可能になつて来たということを私は客観情勢の変化というわけに言うのです。それは不明だつたといえば確かに不明だつたといわざるを得ません。
  36. 並木芳雄

    並木委員 文相のお話を聞いているうちに、私は文相の人柄と正真性というものを感知しまして、何ですか文相は近く辞表でも出されるのじやないか、野党ならば本来喜ぶべきことでありますが、私はむしろ心配したいような感じを受けております。学校などで実際教育をするときに、もう戦争はない、平和だ、仲よくしろといつている教育のその目前に飛行機が飛び、大きな戦闘行為が行われているのですから、こういう点についても非常に学校の先生方は困つておるようです。そういう現状にあたりましても、文部大臣はあくまで、ただいま不明といえば不明だつたかもしれないというお言葉がありましたけれども、やはりあくまでこの理想を貫く熱意を示し、そうしてその方法があるということを断言していただきませんと、私どもはこのユネスコ憲章を受諾するにあたつて、オーケーが與えられないわけです。相当の金を今度使います。五、六千万円でしよう。そうすると、オリンピック大会なんかに使つた方がけつこうじやないかというような声も出ますので、とにかく十六万ドルと聞いておりますから、そういう巨額な金を使う以上は、現実の問題として、私どもはやはりはつきり最後の結論をお聞きしておきたいと思います。とにかくあくまでも理想である、現実の問題とはかけ離れて行く、しかしいつかはそれに到達できるということの見通しが断言できないと、やはりこういう問題は取扱いにくいと思います。
  37. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は一個の学究ですが、政治家である並木さんからそういう論をお聞きすることは非常に意外と思うのです。ここで必ずソ連を加えることができるとか、そういう見通しがないならば、もうユネスコはやらぬとか——そうじやなくして、私は政治はやはり現実に処して行くべきものであつて、一歩前進すればそれでよいのであつて、必ずしも理想が実現できないならやらぬ、そういうオール・オア・ナツシングという考え政治には適用しないのじないかという考えを持つております。並木さんからそういうお話を承ることは、私ら学者とか思想家はそれでよいけれども政治家から承ることは非常に意外だということを申し上げておきます。
  38. 守島伍郎

    ○守島委員長 佐々木君。
  39. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は本日天野文部大臣世界哲学を聞こうとは考えておりませんから、ほかに質問する人があつたらどうぞ……。
  40. 守島伍郎

    ○守島委員長 仲内君。
  41. 仲内憲治

    ○仲内委員 ただいまいろいろソ連参加しておらない問題に関連して御意見があつたのでございますが、やはり理想論としては、文相の言われる通りでありましようが、現実政治論として、国際條約の効力の問題から考えます場合にも、このユネスコの基本的な目的から行きまして、すなわち文化交流を最も必要とする民主主義に対応する共産主義といいますか、社会主義のソ連が入らないということは、このユネスコの基本的な使命に、非常に大きな障害をなす。それはあたかも国際連盟が国際団体として非常に理想的な規約を持つておりながら、当時有力なアメリカ合衆国が入つておらなかつたために、国際連盟というものが有名無実に終つたと同じような意味合いにおきまして、現実論として否定できない弱点であると思うのであります。ただこれを天野文相の言われるように、理想論として、やがては鉄のカーテンの開くのを待つということも無意味ではないと思いまするが、今議論のありましたように、この鉄のカーテンの開くのが先か、あるいは原子力の実力によつて開く方が先か、これはおそらく時が解決するでありましようが、幸いに天野哲学が解決してくれればけつこうであると思うのであります。もちろんこのユネスコ日本がこの際参加することに、われわれは理想として異論を持つものではないのでありますが、完全な民主主義に対応する共産主義、社会主義国のソ連が入らぬという以上は、現実の問題としては、民主主義国間の文化交流ということが中心にならざるを得ない。そうなればむしろ日米の文化交流ということが実際には中心になるのではないかと思うのであります。この日米の文化交流につきましては、前回ダレス特使が見えられたときに、ロツクフエラー三世が同行されておるのであります。承るところによれば、ロツクフエラー三世の方では、日米の文化交流について相当具体的な案を持たれて、日本の朝野と折衝されたというように承つておるのでありまするが、文部当局ないしは外務当局は、ロックフエラー三世と日米の文化、あるいは兼ねて国際一般文化の問題について、具体的にどの程度の話があつたか、またその後文化交流についての具体的な進行がどの程度に行われておるか。むしろ私はユネスコ以上に実際的な効果の期待できる問題として、この機会に承りたいと思います。
  42. 天野貞祐

    天野国務大臣 この点は、文部省はロツクフエラーさんとは何も関係いたしませんでしたから、外務省の方にお願いいたします。
  43. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 前回ダレス使節が見えられましたときに、ロツクフエラー夫妻も同行されました。当時の会談におきまして、われわれの方といたしましては、将来日本世界文化交流に積極的に参加して、お互いに利益を與えると同時に、利益を受ける立場に立ちたい。ことに日本両国の間には緊密な文化関係設立が望ましいということを申しまして、相互に全然同感であるというようなお話があつたように記憶いたしております。その際ロツクフエラー夫妻は、政府部内に対して接触せられるよりも、主として直接民間関係団体ないし個人に対して接触せられたようでございます。ロツクフエラー夫妻の活動による直接の結果については、まだ今日具体的に承知いたしておりません。将来けつこうな実が結ばれるように希望いたしておる次第であります。
  44. 守島伍郎

    ○守島委員長 米原君、文部大臣に対する質問だけをこの際許します。
  45. 米原昶

    ○米原委員 簡単に文部大臣質問します。天野文部大臣が、マーシヤル国防長官の、民主主義共産主義の対立は、実力をもつて解決するよりほかしかたがないという考え方に敢然と反対されて、自己の信念を通されたことに対しては、私は敬意を表するものであります。もつとも文部大臣理想と先ほど言われた現実の問題との関係でありますが、先ほどの政府委員の説明で、は、ユネスコにソビエトが参加しないという理由の一点として、いわゆる弁証法的唯物論の考え方がこの憲章に入つていないというような、非常に哲学的な言葉で説明されたのでありますが、私はこの点はもつと簡単に、理想現実の問題だと思うのであります。つまり突き詰めれば、戦争は人の心の中で生れるものである、この点が問題になつたのだと思う。先ほど北澤委員が、たとえば人種平等の問題について、これは日本が先鞭をつけたものだ、こういう発言をなさつた。確かにヴェルサイユ会議で人種平等の主張々出したのでありますけれども、同時にそのとき日本の軍閥は、いわゆる二十一箇條條約によつて、中国に対して破廉恥きわまる要求を出した。一方で人種平等ということを言いながら、民族不平等の考え方を明らかに実際の面においてはやつておつた。こういう矛盾があるわけであります。そういう考え方がひいては後になつていわゆる大東亜共栄圏という、いかにも白色人種に対するわれわれアジア人種の立場を擁護するような美名のもとに、事実は日本民族によつて他の民族を支配する侵略的な実際行動をやつたのであります。この点が実際には問題である。非常なりつぱな言葉も、現実にはそれと反対な行動をおおい隠すようなことに使われておる。そういうことであつては、このユネスコ理想ほ達成せられるものではない。単に人の心の中で生れるということでは解決つかない。ここが議論の中心になつたと承知しておるのであります。単に人の心の中の問題、理想の問題とせず、同時にその理想を達成し得るような経済的、社会的、政治的な條件をつくわ出すことをこの中に含めて行くものでなくてはならない。それが両々相まつて行くものでなければ、戦争をやめて平和への協力をすることもできない。そこが議論の焦点になつており、その問題が現在なお尾を引いておる。私は天野文部大臣の言われるように、いわゆる民主主義共産主義の対立は、これは武力で解決しようとしても、結局は現実戦争では解決できない問題だ、そういうふうになつて行くのがむしろ事実だと思うのです。その点について文部大臣はいかに考えておられるか。先ほどは理想現実とはどうも成り立つて行かないという考え方を持つておられるように伺いました。一方では理想ということを言つておられる。それは実にりつぱな理想だけれども理想では行かないということを同時に言つておられる。しかしそれは現実をほんとうに科学的に分析して、その理想に合致させるという考え方を持つていないのではないかというふうにしか私には受取られない。その点がはつきりすれば、私は文部大臣考え方は、実際に国際平和の基礎として実現できるものであると思うが、この点についていかに考えておられるか承りたいと思う。
  46. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は思想的な世界観の解決が戦争によるということはわれわれの理想でないと、私は理想論を述べたのです。しかし現実において非常に不当なことが起つて来れば、暴力的にどうだとかいうことがあれば、そういう戦争ということの可能性はあるかもしれぬけれども思想の問題は、自分思想家としては思想のみで解決をしたいということを申し述べたわけであります。その点について今の御発言は少し私の考えとずれておるように思いますから、まず訂正をいたしておきたいと思います。そういうような思想の面でもつてこの二つ世界観というものを融合させて行きたいというのがユネスコの精神だという、私はユネスコの精神をここで解釈したわけであります。実際問題をここでどうしようというのではなくて、ユネスコの立場からいえば、こういうことで二つ世界観というものをどうかして調和させて行きたい。そのことも思想的に考えると決して不可能なことではないのではないかという考えでございます。
  47. 米原昶

    ○米原委員 ではもう一問お尋ねするのですが、先ほどからソビエトの問題について、たとえば鉄のカーテンという言葉が使われておりますが、たとえば日本にソビエトの映画が来る。これについても一年に七本ですか、そういうような制限が課されておる。しかもそれが実際は検閲によつてそういうことができないというようなことを聞いておりますが、そういうような形であるとすれば、鉄のカーテンは一体どちらにあるかといわぎるを得ません。そういう形においてソビエトの方に鉄のカーテンがあるというのは非常に誤つているのではないか。少くとも先ほどの文部大臣考え方からいえば、もつと自由にソビエトのそういうものも入れ、そして日本人の立場からして、公平な立場で悪いものは悪い、いいものはいいと批評するような雰囲気をつくるということが、文化交流させて行くゆえんではないかと思うのですが、一方的に鉄のカーテンは向うにあるのだというのは少しそういう目で見ると変だと思うのです。その点についてお伺いします。
  48. 天野貞祐

    天野国務大臣 私の了解するところでは、ソビエトの共産主義というものは、これを世界に押し広めてしまつて、そして世界共産主義のもとに、自分のもとに支配してしまおうという考えがあるる。考は、そういう考えだというと、向うからこちらに入れて来るものをこちらがよい気になつて受けていたら、国が成り立たなくなつてしまうおそれがあると思うのです。だからそういう意味では、ソビエトがこつちに示すものに対して、こちらが用心深いということも、これはいたしかたないことではないかと思うのです。あなたが私に向つて客観的、公平であれと言われるならば、あなたももう少しやはり公平な立場に立つてものを言つてほしいと思うのでございます。
  49. 守島伍郎

    ○守島委員長 もういいでしよう……。
  50. 米原昶

    ○米原委員 もう一つ……。
  51. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかの問題ですか。
  52. 米原昶

    ○米原委員 今の問題ですが……。
  53. 守島伍郎

    ○守島委員長 それは議論になりますから……。佐々木君。
  54. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は、国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求める件のみならずこれと類似の一般の條約締結にあたつての方式等につきまして、一般論としてひとり承つておきたいと思います。  今度の国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて国会が承認を與えましたならば、これは憲法七條に天皇の行う国事の中に規定いたしておりますが、第八項目の「批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。」という項目の対象となるのかどうかということをまず承りたい。
  55. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の項目に該当いたさないのであります。
  56. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは、今日まで相当たくさんな條約が終戦後できておりますが、これらについて「批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。」という項目の定めによりまして、天皇が認証された例はありますかどうか。
  57. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 今日までのところございません。
  58. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 一体批准行為というものはだれが行うのでありますか。また具体的に一体どういうことをするのかという点を承りたいと思います。批准という行為は一国の元首が條約を確認する行為であろうと思うのですけれども、新しい憲法下におきましては、むしろ国会の承認ということが実質上の批准行為にも当るのではなかろうかと考えるわけでありますが、具体的にだれがどういう形式で批准行為を行うかということについてお話を願いたいと思います。
  59. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 憲法第七十三條第三号によりまして、條約の締結は内閣の権限とされております。従つて條約の批准権は内閣にあるわけであります。但し憲法規定によりまして、内閣は條約を締結する場合には、事前または事後に国会の承認を必要とするという條件がついております。天皇は條約の締結に関連いたしましては、批准書に認証をされるだけの権限を持つておられます。この点は明治憲法のもとでは條約の締結権が天皇にあつたのと全然違つたものであります。
  60. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 天皇の認証行為というのは具体的にどういうことをされることですか。
  61. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 まだ先例がございませんので、実はこの方式その他は確定いたしておりません。目下私ども事務当局において研究中でございます。
  62. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 昨日の総理の本会議における答弁の中で、講和條約は締結前に国会の承認を求めるということを言われておるわけでありますが、ここで総理が指摘された締結前ということを外務当局はどういうふうに見ておられるか。どの段階を條約の締結と見ておられるか。たとえば署名、調印並びに批准等の、どの段階を締結前あるいはあとというふうにお考えになつておるかという点をまず承つておきたいと思います。
  63. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その問題は従来数回当委員会、それから参議院外務委員会でも御答弁申し上げたことがございます。第七十三條第三号につきましては、これはこういうふうに解釈いたしております。條約の締結は内閣がいたします。但し内閣は憲法規定によりまして、締結の前にまたは時宜によつてはあとに国会の承認を経ることを要請されております。問題は、だからいつをもつて條約締結の時と見るかによりまして、事前となり事後となるわけであります。條約の締結とは、問題の條約が日本にとつて確定的に成立する時期をもつて事前または事後と解釈すべきものだと考えております。ところが條約には二種類ございます。署名によつて当然効力を発生する場合と、署名のあとさらに批准行為を必要とするものがございます。批准條項の入つております條約におきましては、従つて署名のあと批准前に国会の承認を経れば、すなわち事前の承認でございます。署名によつて効力が発生する。いわゆる確定的に成立する條約におきましては、署名前に国会の承認や経ることが、すなわち事前の承認であります。さように解釈いたしております。
  64. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は今度の対日講和條約の性質等から考えまして、当然これは批准の規定があろうと考えます。従つて総理の言われた事前にということは、批准の前にという意味に、外務当局は解釈されておるかどうか。
  65. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 将来できます対日平和條約の実施條項がどういうふうになるかということはまだ確定いたしておりませんが、大体佐々木委員と同様批准條項が入るものと考えております。従つて署名後批准前に国会の承認の手続をとられるものと事務当局においては了解いたしております。
  66. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一点承つておきますが、先ほどもお聞きしたと思いますが、終戦後日本との間にできました條約は、万国郵便條約及び小包郵便物に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、それから価格表記の書状及び箱物に関する約定、その他について承認を求めるの件、国際電気通信條約に加入することについて承認を求むるの件、その他一八九〇年七月五日ブラツセルで署名された関税表刊行のための国際連合設立に関する條約、あるいは国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求めるの件、あるいはまた世界保健機関憲章を受諾するととについて承認を求めるの件、大分たくさんの條約ができておるわけでありますが、これらについては批准という行為は、全然必要がなかつたというふうにお聞きしたのですが、それで間違いないでしようか。
  67. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 さようでございます。今申されました條約のうちには、むろん批准條項がついておるものもございますが、批准條項のついておる條約といえども、批准できるのは署名国家だけでございます。署名しない国はそのほかに加入條項がございますので、その加入條項によつて加入して当事国となるわけであります。しこうして今日まで日本政府が加入いたしました数多の條約は、いずれも批准の手続によらないで、加入條項において加入いたしたものであります。
  68. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 この批准書というものは先ほどのお話によりますと、内閣がつくり、これに対して天皇が憲法七條に基いて認証されるというのでありまするが、この批准書というようなものはすでに——初めてのことかしりませんけれども、この方式等ができ上つておると考えますが、具体的に今度かりに対日講和條約ができたときに、その署名調印から批准行為を経て天皇の認証に至るまでの法理論ではなくて、具体的にどういうことを行つて行くかということをひとつ話をしていただきたいと思います。
  69. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 批准書の方式は目下事務当局の段階で研究中でございます。いずれ批准條項が入つております條約を、その條項に従つて批准するというような問題が起ります際には、むろん十分方式その他も決定いたしておかなくてはならないと思います。かりにその方式などが決定しておると仮定いたしまして、一つの批准條項のある條約というものを、批准するまでの段取りというものをごく簡単に申し上げますと、その問題の條約が署名をされましたあと、でき得るだけ早い機会に正確な日本の翻訳文をつくりまして、批准は国会の承認が必要でございますから、大体国会の開会の時期と見合せまして、問題の條約について批准手続をするについては、国会の承認を求めたいから閣議の決定を求めるというような趣旨の閣議決定請求書を、主管大臣から内閣総理大臣あてに提出いたします。それによつて、問題の條約を批准するについて、国会の承認手続をとるということについて閣議の決定をするわけであります。閣議の決定を経ましたら、慣例に従つて書類が国会の方へまわります。国会へまわりましたあとの審議手続は省略いたしまして、国会の承認が可決されましたということが、衆議院議長から内閣総理大臣あて公式に通告がありますれば、さつそく用意してあります批准書に批准権者であります内閣総理大臣の御署名を得て、しかる後に陛下の御前に出して陛下に認証をしていただく そうすることによりまして批准書は完成いたしますから、條約の規定によつてその批准書を当該の政府にいわゆる寄託ないしは交換する、こういうことになるわけであります。寄託ないし交換は、問題の政府の所在地に在外公館がある場合には、そこにおります公館長がやりますし、ない場合には、批准書交換または批准書寄託のための全権委任状を持つた特使が行つて、そこで交換され、寄託をして来る。そのあと條約の規定によつて効力が発生する、こういうようなふうになります。
  70. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと関連して條約局長にお尋ねいたします。さつきの條約に署名したあと批准前国会にかけられるであらうと思うという答弁は、これは相当重要な答弁であろうと思います。吉田首相もこの点をずつとぼかしておりまして、締結前にということを言つて、決して署名の後批准の前というようなことを言つておらないのであります。先般のダレスさんのお話でも、征服者と被征服者との関係においてでなく、信頼の上に立つたところの友好的な條約にしたいということを申されておる。そういう関係からも、私どもはぜひ署名前に條約の草案が、国会の承認を得るような形をとられることを切望するものでありますけれども、この点について、政府としては全然そういう申入れをされなかつたのかどうか、お伺いしてみたい。
  71. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうお話一つもなかつたものと了承いたしております。一体一国の政府が條約を締結して、いかなる手続によつて処理するかということは、各国憲法規定するところであります。日本政府としては、日本憲法規定に従つて問題を処理する事柄でございまして、相手国政府に相談をいたす必要のない事柄でございます。
  72. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君。
  73. 黒田寿男

    ○黒田委員 私も実は少し詳しくお伺いしようと思いましたけれども委員長いろいろお急ぎのようでありますから、今の佐々木君の御質問に関連して一つだけ質問しておきます。ただいま西村條約局長は、憲法第七十三條第三号の條約を締結するという行為は、署名及び批准を含む、こういうふうにおつしやつたように承つたのでありますが、そういうふうに承つてよろしゆうございますか。
  74. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 さようであります。私が申し上げましたのは、第七十三條第三号の規定によりますと、條約の締結権は内閣にございますので、條約に署名する権利も條約を批准する権利も内閣にある。但し但書によりまして、署名をし、批准をするについては、事前または事後における国会の承認が條件となつておる、こう申し上げました。そうしてさらにつけ加えまして、條約には二種類ある。署名によつてすぐ最終的に成立するものと、署名によつても最終的に成立しない、署名いたしましても、一つの條約案にすぎない場合のものがある、すなわち批准條項があるものである。前者の場合——署名によつて最終的に成立する場合は、政府は署名前に憲法規定によつて国会の承認を経なければならない。但し場合によつては事後でもよろしい、こういうふうになつておる。後者の場合——批准條項がある場合には、政府は署名後批准前に国会の承認を得ればすなわち事前の承認になる、こういうふうに御説明申し上げたわけであります。
  75. 黒田寿男

    ○黒田委員 この問題はまだ非常に論議を要することと思いますから、私は次会に譲りたいと思いますけれども、ただ一つだけどうしても、簡単に考えてもちよつと條約局長の御説明に矛盾があると思いますのは、條約の締結には調印及び批准を含む、そしてその締結前に国会の承認を求めるということになれば、調印前に承認を求めるということになるのではないでしようか。何となれば、調印は締結行為になるのですから、そうすると締結前に承認を求めるということならば、調印前にも承認を求めるという、私どもそういう理論で解釈しておりましたが、これはもつと後日機会を改めて議論してみたいと思いますけれども、ちよつと私が簡単に考えても、條約締結の中に調印及び批准が含まれるものならば、締結前に国会の承認を得るということは、すなわち調印前に承認を求めるということになるのではないか、これをお伺いします。
  76. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 憲法規定は、明白に條約を締結することは内閣の権限であると規定いたしております。従つてそれは署名、批准だけでなくて、署名、批准に至るあらゆる交渉も全部含むわけであります。交渉の発案から案を決定いたしまして、署名し、批准するまで内閣の権限であるということを明記いたしておるのであります。但し條約締結については、国会の承認が必要であると書いておりますので、しかもその承認は事前を原則とし、時宜によつては事後でもよろしい、こうなつておりますので、問題はいつをもつて事前といい、事後というかという問題に帰着するのであります。そうしますと、あらゆる條約は同一方式のものではないのであつて、大別して二種類にわかれるものであります。従つてわれわれの解釈といたしましては、條約が日本に対して最終的に成立する前に承認手続をとれば、すなわちそれ事前承認である。最終的に成立したあと国会の承認手続をとるのがすなわち事後の承認である、こう解釈いたしております。これは二年来始終検討いたしております。
  77. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君、議題に直接関係のないことは後日に譲つていただきたい。
  78. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は西村條約局長の答弁は納得できません。しかしこれはまた機会を改めて別な機会にもう少し私の意見を申し述べて、また局長の御意見を承りたいと思います。きようはちよつと納得できぬということを申し上げておきます。
  79. 守島伍郎

    ○守島委員長 竹尾君。
  80. 竹尾弌

    ○竹尾委員 お急ぎのようですから、私は質問をやめます。
  81. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにて本件に関する質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論を許します。米原君。
  82. 米原昶

    ○米原委員 私は日本共産党を代表いたしまして、ユネスコ憲章を受諾することについて承認を求める件に対し、簡単に意見を述べるものであります。  先ほど質疑の際にも触れましたが、憲章でうたわれている平和のための協力という理想については異議はないのであります。しかしながら、たとえば日本の軍閥が東洋平和のためならばと称して侵略戦争をやつたということを見ても、単に平和のためというだけでは問題は解決しないのであります。むしろ逆に侵略を擁護するような役割すら果すおそれがあるのでありまして、現実ユネスコの現在の運営状態を見るならば、ことに朝鮮事変以後いかなる態度をとつているかは、外務省の発表しておられる文書によつても明らかであります。そのためにユネスコの事務局長も渡米し、自身が非常な圧迫を受けたということ、あるいはインド代表がこの問題に対して一方的な党派的な態度になつてはいけないと警告を発しておるということはもつともであります。そういう意味でも現在の状態のユネスコに加盟することは、間違いであるとわれわれは信ずるものであります。  第二に現在の日本国内の問題でありますが、現在の政府のやつておるやり方を見るならば、憲法に書かれておるところの戦争を絶対にしないという考え方とは逆な方向に、あらゆる面で戦争宣伝的なやり方、あるいは平和運動に対する弾圧、あるいはたとえば民主団体の主催する全面講和の大会まで禁止するというような弾圧政策をやつておる。こういう形をやりながらこのユネスコに加入するということは何であるか、これは明らかに平和の仮面をかぶつた侵略戦争を合理化するものである。かかる意味において私は本件には絶対に賛成できません。
  83. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにて討論は終局いたしました。  それでは国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件(條約第三号)について採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに御賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  84. 守島伍郎

    ○守島委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決定いたしました。  なお本件についての衆議院規則第八十六條による報告書の作成については委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午前十一時五十九分散会      ————◇—————     〔参照〕 国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件(條約第三号)に関する報告書     〔都合により別冊附録に掲載〕