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1951-05-09 第10回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月九日(水曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君       大村 清一君    菊池 義郎君       仲内 憲治君    福田 篤泰君       並木 芳雄君    武藤運十郎君       高田 富之君    高倉 定助君       黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君  委員外出席者         外務事務官         (條約局條約課         長)      高橋 通敏君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 三月二十六日  委員近藤鶴代辞任につき、その補欠として福  田一君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員福田一辞任につき、その補欠として近藤  鶴代君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十八日  平和擁護に関する決議案河田賢治君外二十五  名提出決議第七号) 同月二十九日  国際連合教育科学文化機関憲章を受諾すること  について承認を求めるの件(條約第三号) 同月二十八日  戦犯者減刑助命に関する請願増田甲子七君  外一名紹介)(第一五六五号) 四月二日  戦犯者減刑助命に関する請願滿尾君亮君紹  介)(第一七三八号)  全面講和等に関する請願砂間一良君外一名紹  介)(第一七三九号) 同月十三日  グリニツチ島の燐鉱石採掘に関する請願(庄司  一郎君紹介)(第一八六〇号) の審査を本委員会に付託された。 三月三十一日  海外同胞救出国民運動費国庫負担等陳情書  (第四九六号)  海外胞引揚完了促進に関する陳情書  (第五〇一号) 四月六日  比島に使節派遣に関する陳情書  (第五九九号) 五月四日  国際社会復帰に関する陳情書  (第六四〇号)  在外資産補償の調査に関する陳情書  (第六五八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際連合教育科学文化機関憲章を受諾すること  について承認を求めるの件(條約第三号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件(條約第三号)を議題といたします。政府側より提出理由説明を求めます。島津政務局長
  3. 島津久大

    島津政府委員 ユネスコ憲章受諾に関する件の提案の理由を御説明申し上げます。  ユネスコは、今次大戦中にロンドンに参集しておりました連合国亡命政府文部大臣を中心としまして構成されました連合国文部大臣会議を母体といたしまして、世界平和の維持を目的とする教育科学及び文化世界的組織となることを目ざして発足をいたしたのであります。ユネスコ憲章は、一九四五年十一月十六日にロンドンで作成されまして、一九四六年十一月四日に効力を発生いたしました。またユネスコ国際連合との間の協定によつて国際連合專門機関になつております。ユネスコは、国際連合設立目的である国際平和と人類の共通の福祉に、教育科学文化の面を通じまして貢献をしようとするものであります。このために、いわゆるマス・コミユニケーシヨンの方法によりまして、加盟国国民一般に広く知識普及をはかろうとするものであります。加盟国の数は、昨年十二月十五日現在で五十九箇国に達しております。  政府はこの機関加盟しまして、国際教育科学文化事業積極的協力をいたすことは、はなはだ有意義であると認めまして、また国会におかれましては、昭和二十四年十一月二十九日に参議院、同年十二月一日に衆議院の決議によりまして、政府に対してユネスコ参加のための措置を講ずることを要望され、国内にも広くユネスコ加盟の希望が表明をされておりました事情にかんがみまして、かねて加盟の準備を進めておりましたところ、昨年十二月、連合国司令部から、わが国ユネスコ加盟に異議がないとの申越しがありました。そこで政府は、ただちにユネスコ事務局に対しまして、わが国加盟申請いたしました。わが国加盟申請は、本年三月十四日、憲章規定に従いまして、国連経済社会理事会過半数による承認を得ました。この承認は、さらに本年六月パリで開催されますユネスコ執行委員会及び総会提出され、執行委員会過半数及び総会の三分の二の多数による承認を得ることが必要であります。政府はこれらの承認によつてわが国がこの憲章を受諾して、ユネスコ加盟国となり得る状態となりました場合には、ユネスコ憲章を受諾することといたしたい考えでございます。  何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御承認あらんことをお願いいたします。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に逐條説明を求めます。高橋條約課長。
  5. 高橋通敏

    高橋説明員 簡単にユネスコ憲章の條を追いまして説明したいと思います。  ユネスコ憲章は、その内容、活動が非常に重要なものでありますが、その規定といたしましては、前文と十五箇條からなります非常に簡単な、法三章的な規定でございます。  初めは、このユネスコ憲章前文でございますが、これはこの憲章主義精神を最も確定主張したものでありまして、原則的な重要な意義を持つていると考える次第であります。  御承知の通り、ここにはまず初めに、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」この有名な文句がうたわれている次第であります。そうしてこのために、政府間の政治的または経済的な協定ももちろんでございますが、真の平和は「人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない」ということをはつきり宣言しているわけでございます。そしてこの認識に基きまして、憲章当事国は、すべての人に教育の十分で平等な機会を与えること、それから客観的真理が拘束を受けずに探究されること、それから思想知識が自由に交換されること、そして国民の間において、これらの相互の伝達の方法を発展させる、そしてこの基礎のもとに相互理解をますます深くし、進めるということをうたつている次第であります。こういう目的のために「ここに国際連合教育科学文化機関を創設する。」ということをうたつている次第であります。  その次は本文に入りまして、第一條にまず目的及び任務をうたつている次第でありますが、大ざつぱに申しますれば、この目的任務としますところは、まず第一に諸国民間の相互理解の仕事に協力し、必要な国際協定勧告すること。次は民衆の教育文化普及とに新しい刺激を与えること。その次、Cとしまして、知識を維持し、増進し、かつ普及すること。この三つ目的ないし任務とすることをうたつている次第でございます。そしてこれがために、いわゆるマス・コミニユケーシヨンと申しておりますが、大衆通報のあらゆる方法を用いること——大衆通報と申しますのは、新聞ラジオ雑誌等、その他あらゆる方法で、大衆に対しましてその思想を伝達し、理解させるというような簡単な方法でありまして、これによつて国民相互に知り合うということであります。  それから教育文化普及とに新しい刺激を与える。そのために加盟国の要請によりまして、教育事業の発展のためにその国と協力する。  それから人種、性または経済的もしくは社会的な差別にかかわらない教育機会均等の理想を進めるために協力する。それから児童に対する教育方法、これも考慮しなければならないということであります。  そして第三の目的として知識を維持し、増進し、かつ普及することといたしましては、「世界の遺産である図書、芸術作品並びに歴史及び科学記念物の保存及び保護を確保し、且つ、関係国民に対して必要な国際條約を勧告すること。」というようなことをここで規定しておる次第であります。  ただここで特に断つてありますのは、第三項といたしまして、こういうことと、いわゆる国内事項または国際法上もつぱら一国の管轄に属する事項といつておりますが、その問題との関係を明らかにしているわけであります。「この機関加盟国文化及び教育制度の独立、統一性及び実りの多い多様性を維持するために、この機関は、加盟国国内管轄権に本質的に属する事項に干渉することを禁止される。」従いましてこういう方法相互協力するということでありましても、国内事項に干渉することは、当然国際法上禁止になつておる次第であります。  第二條は加盟国地位、すなわちどういう国々加盟国たり得るかということを規定しておる次第であります。まず第一に「国際連合加盟国地位は、国際連合教育科学文化機関加盟国となる権利を伴う。」すなわち国際連合加盟国は当然ユネスコ加盟国たり得る次第であります。  それから国際連合加盟国でない国、それもやはり特定の手続を経ることによつて加盟することを得る次第であります。その手続と申しますのは、これはわが国の場合もそうなのでありますが、まず申請をいたしまして、その申請国際連合経済社会理事会過半数承認を受けること、そしてその次にユネスコ機関であります執行委員会勧告があること、これも多数決の勧告であります。この二つ勧告に基きまして、総会の三分の二の多数で機関加盟国となることができる次第であります。  この二つ方法があるのでありますが、第一の方法、すなわち連合国であつて、当然加盟国たる地位を獲得するのでありますが、そういう意味で加盟国なつたものは、ただいま五十一箇国であります。しかし反対に国際連合加盟国ではありますが、当然その有する権利を行使しなかつたものと申しますか、加盟国でありながらユネスコ憲章加盟手続をとらなかつたものと申しますか、そういう国々としては、国をあげてみますと、白ロシヤ、チリー、エチオピア、アイスランド、ニカラグア、パラグワイ、ウクライナ、ソ連邦、イエーメンというような国々が、国際連合国でありますが憲章加盟国では、ございません。他面国際連合加盟国ではなくて、しかもこのユネスコ憲章加盟国となりました国といたしましては、現在八箇国ございます。これも国をあげてみますと、オーストラリア、セーロン、ジヨルダン、ハンガリー、イタリア、朝鮮、モナコ、スイスというような国々でございます。  第三條以下は、このユネスコ憲章機関、いわゆる諸オルガンと申しますか、諸機関を定めておる規定でおります。この機関として総会執行委員会事務局三つが掲げてあります。総会と申しますのは、簡単に申しますれば最高意思決定機関であり、執行委員会はその実施機関、それから事務局事務をする機関、この三つ機関が存在するわけであります。繰り返して申しますれば、総会の構成を申しますと、機関加盟国代表者から構成される。加盟国代表者は五名以下の代表任命することができるわけであります。その際に国内委員会設立されているときは、これと各加盟政府は協議してその代表者任命しなければならないという規定が掲げてあります。  この総会任務としますところは、機関の政策と事業の主要な方針を決定すること。すなわちこの最高意思決定機関ということが言えると思うのであります。そして必要な場合には、教育科学及び人文学知識普及とに関する国際会議を招集する。今までたびたび種々なる国際会議を招集しているわけであります。たとえてみますれば、一九四九年六月、デンマークで成人教育に関する国際会議というのが開かれ、また同年の六月にはパリ科学文献抄録に関する国際会議が開かれました。そしてこの国際会議には日本からもオブザーヴアーが出席することができた次第であります。それから同年の八月には、自然保護に関する国際技術会議というのが開かれております。またパリで一九五〇年の三月には点字統一に関する国際会議というのが開かれておりまして、この会議には日本からもオブザーヴアーが出席いたしております。こういうふうな国際会議を招集することのほかに、総会勧告国際條約をやはり採択する次第であります。そして今まで数多くの勧告をなしております。また国際條約も、これは数は多くはございませんが、従来二、三採択になつている次第であります。すでに総会採択しました條約としましては、第三回総会教育的、科学的及び文化的性質聽視覚的資材の流通を促進する国際協定、それから第五回の総会教育科学及び文化上の資材の輸入に関する協定というような協定採択になつております。そして「各加盟国は、この勧告又は條約が採択された総会の閉会後、一年の期間内に、その勧告又は條約を自国権限のある当局提出しなければならない。」という規定がございます。それから次は、総会はやはり国際連合との関係に関する権限を持つておりまして、国際連合にも助言を与えるのでございます。また加盟国ユネスコ当局に対していろいろな報告を出すのでありますが、この報告を受領し及び検討する。その他事務局長任命、いろいろなこまかい権限が定められております。  そうしてこの加盟国総会において一個の投票権を持つております。代表は五名の代表任命しておるのでありますが、投票権は一個の投票権を有する。それから決議過半数によつて行います場合と、重要な問題の三分の二多数によつて行う場合とがございます。  次は手続及びオブザーヴアーに関する一つの技術的な規定であります。少くとも総会通常会期として毎年会合いたします。また臨時会期として会合することもあります。  以上がごく大ざつぱな総会に関する逐條的な御説明でございますが、今度は総会意思を実行する機関として、ここに第五條以下に「執行委員会」というのが書いてあります。執行委員会は、加盟国任命した代表の中から総会が選挙した十八人の委員及び助言的資格で職権により列席する総会議長で構成する。」おもに加盟国代表者の中から選挙した十八人の委員で構成するわけであります。但し同一の加盟国から二人の委員を出すわけには行かないということが規定されております。またこの委員の選挙にあたりましては、「文化多様性及び均衡のとれた地理的分布にも考慮を払わなければならない」ということを書いております。  次は、そのほかこの執行委員会委員任期規定、それから会議における任務でございます。すなわち「総会の権威の下に行動する執行委員会は、総会採択した計画実施責任を負い、且つ、総会議事日程及び事業計画を準備する。」すなわち総会採択した計画実施することがその主要な任務となつておる次第であります。次にこれは定期会合として、毎年少くとも二回会合しなければならない、また特別会期として会合することもある次第であります。  それから次は、事務局規定でありますが、「事務局は、事務局長及び必要な職員で構成する。」事務局長任命は、総会承認する條件執行委員会指名する。執行委員会指名して、任命行為総会がこれを行う次第であります。任期は六年であります。それから事務局長事務局職員任命するわけであります。この事務局職員任命は、誠実、能率、技術的能力最高水準を確保することに最大の考慮を払うことを條件として、できる限り広い地理的基礎に基いて行わなければならない。またこの職員がどういう性質のものであるかということを第五項に規定しておるのでありますが、職員はもつぱら国際的なものである、いわば一つ国際的役人としての地位を持つておるのでありまして、その任務遂行にあたりまして、いかなる政府からも、またこの機関外のいかなる権力からも訓令を求め、また受けてはならない。またこの機関加盟国の側におきましても、事務局長及び職員責任の国際的な性質を尊重すること、またこれらの者の任務遂行にあたりまして、これらの者にいろいろな影響を与えたり、左右しようというようなことのないことを約束しなければならないという規定を置いております。  第七條に参りますと、先ほど、ちよつと触れました国内協力団体規定でありまして、「各加盟国は、教育科学及び文化事項にたずさわつている自国の主要な団体をこの機関事業に参加させるために、その特殊事情に即する措置を執らなければならない。」そうしてその措置としてここに一つ示唆しておりますが、「広く政府及びこれらの団体代表する国内委員会設立によることが望ましい。」ということを申しております。そうしてこの団体は「総会における各自国代表団及び自国政府に対して助言的資格で行動し、且つ、この機関関係があるすべての事項について連絡機関としての任務を行う。」というような、その任務規定しております。前に申しましたように、各国が代表団任命するときも、この機関と協議するというようなことが示唆されております。  それから次は加盟国による報告でございますが、先ほども申しましたように、加盟国総会に対して定期的な報告をする、特に教育科学文化活動及び機関に関する自国の法令や規則や統計について、並びに勧告や條約に基いてとつた措置について、報告しなければならない次第であります。  次はこの機関予算でありますが、予算に関連しまして、各加盟国財政的負担の割当を承認する、すなわち各加盟国は、それぞれいわゆる分担金というものを負担する次第であります。これはあとでまた詳しく御説明あることと思いますが、分担金はほかの場合と同じく、その予算とその国の国民所得基礎として計算するのであります。そしてたとえば本年におけるユネスコ予算総額は約八百二十万ドルでありますが、それに対しまして、わが国国民所得から計算しますと、約一・九八%がわが国負担になるのじやないか、すなわち約十六万ドルというふうな、ごく大ざつぱなところでありますが、こういうふうな計算になるのじやないかと思います。  それから第九條におきましては、国際連合との関係でありますが、すみやかに国際連合との関係を持たせる。これは協定がすでに国際連合との間になされまして、その国際連一つ專門機関なつた次第であります。  その他第十一條におきましては、単に国際連合のみならず、他の国際機関との関係におきましても、種々連繋関係を持つことができるということを規定しておるのでありまして、今まで非常に多くの国際機関協力をいたしておる次第であります。たとえば国際労働機関であるとか、世界保健機関食糧農業機関郵便連合電気通信連合民間航空というような多くの專門機関協力しておる次第であります。  それからこの機関法的地位としては、国際連合と同じような一つ法的地位、すなわち法人格を持つておる次第であります。  第十三條以下は、改正解釈効力の発生というふうな規定でありますが、改正につきましては、本質的な重要な改正は、総会採択になりましてから、さらに加盟国の三分の二がまたそれを承認するということが必要であります。ささいな、軽微な改正は、単に総会の三分の二の多数によつて承認を受けたときに、ただちに効力を発生する次第であります。かかる軽微な憲章改正としまして、従来とは多少改正になつておる点もあります。それは軽微な改正でありますから、一々御説明申し上げる必要はないかと思いますが、大体第四條、それから第五條に関するいわゆる会議手続規則というようなものではないかと考えております。  はなはだ粗雑でありますが、説明を終ります。
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 本件に関する質疑次会に譲ります。     —————————————
  7. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に国際情勢等に関する件を議題といたします。質疑を許します。並木君。ちよつと並木君に申し上げますが、法務総裁はまだお見えになりませんから、お見えなつたら、そのときに質疑を許すことにいたします。
  8. 並木芳雄

    並木委員 この一月余りの休会の間に、相当大きな動きがありまして、私ども政府に尋ねたいことが山積しております。漸次質問を繰広げて参りますが本日はとりあえず、きのうのソ連覺書につきまして、政府当局はどういう所感を持たれるか、それをまつ先にお尋ねしたいと思います。
  9. 島津久大

    島津政府委員 ソ連覺書の問題につきましては、新聞でいろいろ報道されております。何分全文が十一ページにわたる長文なものという話であります。全文をよく読みませんと見当がつかないような実情でございます。なおまたこの問題は、かねて繰返して申しますように、連合国間の問題でございまして、日本政府はこれを批判するような立場にないわけであります。この点御了承願いたいと思います。
  10. 並木芳雄

    並木委員 大体答弁はそう来るだろうと私は予期しておりました。きのうラジオ岡崎官房長官はやはり、政府としてはとやかく言えないけれども、これによつて日講和條約が遅れるようなことはないと思う、こういうことを言われておつたのです。この点いかがでしようか。井口次官が京都で記者団に語つたところによつても、最終條約草案は六月初めころにできて、ダレス大使も七、八月ごろには調印の運びになるよう努力する旨確言されたので、政府はこれに全幅の信頼を寄せておるというように語つておられるのです。こういう点から考えても、今回のソ連覺書ないし回答というものを、むろん織り込んでこういう予測がなされておるものと見られるのでありますが、その点政府の御見解はいかがでしようか。
  11. 島津久大

    島津政府委員 最初に井口次官の言明についてちよつと申し上げておきますが、これは次官談というようなことではなくして、記者団質問に対して、ごく非公式に常識的な話をしたということであるそうであります。何月ごろどうなろうというようなことを、外務省としてはつきり見解を申し上げたことではないのであります。しかしながら、御承知のように、ダレス特使は再三、講和條約を早く完成するという決意を述べられておるのであります。その方針には私は何らかわりはないものと思います。ただそれが今度のソビエトの出方に対して、どういうことになるかということは、これまた確たる見通しを申し上げる立場にないわけであります。報道によりますと、アメリカ政府既定方針をかえないで邁進するというようなことが報道されておるのであります。
  12. 並木芳雄

    並木委員 それでは覺書の中の條項について一つ。これは技術的な問題ですから、政府から答弁いただけると私は思いますが、ちよつとお伺いしたいと思います。それは、引用されております中に、アメリカは、ポツダム協定によつて外相会議任務講和條約の起草であると規定しておるにもかかわらず、講和條起草のための外相会議の招集を執拗に無視した、こう言われておるのであります。ここにいうポツダム協定と申しますのは、一九四五年八月二日発表のポツダム協定、そうしてその第二項に外相会議の設置という項目があります。これをさすものであろうかとも思いますが、この点どうでしようか。そうしてこれをさすとすれば、この中にはヨーロツパのことをあげておるのであつて、これが対日講和條約に適用されないのではないかと思われるのですが、この点もあわせて御回答願います。
  13. 島津久大

    島津政府委員 ただいま御質問の点は、大体並木委員の御見解と同様に解釈してよろしいと思うのであります。四五年の会談で、日本に関するポツダム宣言というほかに、ポツダム協定というものがあります。これは欧州に関することでございます。これに基いて外相理事会というものが成立しておるのであります。そういうふうに解釈をいたします。
  14. 並木芳雄

    並木委員 それからもう一つ、これは解釈の仕方になりますからお尋ねしておきたいのですが、日本軍備の問題が触れられております。これに対して制限を設けないのはいけないというふうな書き方で、常識的にこれを私どもが拜見しますと、日本軍備は全然禁止するわけではないのだ、軍備は許すけれども、ある程度の制限を必要とするというふうに解釈さるべきものであると思いますが、この点政府はどういうふうに読んでおられるか、お尋ねしたいと思います。
  15. 島津久大

    島津政府委員 ただいまその報道の資料を持つていないのであります。従いましてまた先ほど申し上げましたような理由で、政府の読み方というものを申し上げにくいのであります。御指摘になりました点をごく常識的に考えまして、何か非軍事化というようなものが先にありまして、それがあとでまた軍備の制限ということになつております。その点はやはり正確な飜訳文というようなものでも見ませんと、何とも見当がつかない次第であります。
  16. 並木芳雄

    並木委員 この覺書にも日本国際連合加盟ということを認めておりますが、政府としては講和條約前に国際連合加盟を申込みをすることを考えておられるかどうか。これはもし講和條約が延びるということもあり得ることですから、講和條約を待たずとも、講和條約締前に国際連合加盟手続もできるかと思うのです。そういうことを考えておられるかどうか。
  17. 島津久大

    島津政府委員 講和條約前に手続をとり得ないことはないと思うのであります。ただいま、いつどういうふうにして手続をとるという決定までにはまだ至つておりません。
  18. 並木芳雄

    並木委員 それでは私はたくさんありますけれども、大橋法務総裁に対する質問に時間をいただきますから、今日はこれで打切つておきます。
  19. 黒田寿男

    ○黒田委員 関連して……。ただいま並木委員から問題にされましたソ連覺書の内容ですが、私ども今まで新聞で見ておる程度以上知りません。これは外務省の方では詳しいことはわかつておりますか。わかつておれば至急ひとつ委員会の方へお知らせ願いたいと思います。
  20. 島津久大

    島津政府委員 新聞報道以外に何も承知しておりません。
  21. 黒田寿男

    ○黒田委員 しかしそうしますと、何にもわれわれとしてはこれを早く知るという方法を持たないわけですが、外務省として特にその内容を一日も早く全面的に知る方法をとつていただきたいと思います。ただ私ども新聞で見ておるというだけでは、十分な判断はできませんから、特別にそのおはからいはできませんか。
  22. 島津久大

    島津政府委員 われわれも御同様一日も早く全文を見たいと思つております。しかしこれは日本政府に示される性質の文書ではございませんが、極力早く入手したいと思つております。特別の方法はないように思つております。
  23. 黒田寿男

    ○黒田委員 日本に示されたものではありませんが、外務省は国際情勢については情報機関もありますし、日本政府に示されたものでないとしても、日本にとつては非常に重要な問題でありますから、ただそのようにぼんやりした考え方でなくて、ひとつ情報機関を動員して、一日も早くその情報をとつていただきたい。これは私の希望でありますが、おそらく私だけでなくて、委員全員の御希望でありましようし、日本国民もぜひそれを欲している。ひとつぼんやりして待つているだけでなくて、至急全内容がわれわれに知り得られるような方法をとることに努力していただきたい。  それからもう一つ、これはちよつと委員長はお尋ねしますが、いつも国際情勢に関して質問いたしますときには、委員会から委員会の間における国際的動きについて、政府委員からの一応の御説明があつたわけです。きようは政府は何もなさらないようですが、これはどういうわけですか。
  24. 守島伍郎

    ○守島委員長 お答えいたします。実は昨日理事会を開きまして政府が各会ごとに前に説明するのは必要ない、こつちから要求するときだけにしようということをきめまして、今日は要求いたしておりません。ですからこれから先、皆さんの間でそういう御要求が非常に起りましたならば、また理事会に諮りまして、今までのようにやらせるようにいたします。今回は昨日の理事会できめましたように、要求いたしませんでした。
  25. 並木芳雄

    並木委員 今必要ないという言葉がそのまま速記に載りますと、われわれあげ足をとられますから、断つておかなければなりませんが、今までのような草葉次官のああいう報告は必要ない。あれをわれわれがとつつかまえて政府はどう考えるかと聞いても、これは外国電報、新聞報道なんですから、何も責任をとれない報告です。きよう吉田さんは何と言われるかわかりませんが、あとで質問したときに責任をとつてもらえる報告ならば、われわれは歓迎する。またそれを求めている。今までのようなあれでは、何も政府立場がはつきりしておりませんから、ああいう種類のものは御遠慮願いたい。こういう意味ですから、一言断つておきます。
  26. 守島伍郎

    ○守島委員長 私の見解を申し上げます。きようは政務次官にも出ておりません。またこの次の次には、多分外務大臣が出ることになるだろうと思います。そのときには積極的にお話がございましよう。そこできのうの理事会の話では、私の言い方が少し言い過ぎだつたかもしれませんが、要するに内容のある説明をしてもらいたい、しかしながら一週間に二度も繰返す委員会に、内容のあるものをそのたびにやるということはなかなかできないであろう、そこらはうまいぐあいに見合せてやる、こういうことで、皆さんの御要求及び私の見解に基いて、その都度考えまして、要求したり要求しないことにしたい、そういうふうに思います。ほかに何か御質疑ありませんか。
  27. 黒田寿男

    ○黒田委員 それからこれも議事進行についてでありますが、外務次官がおかわりになりまして、まだ外務委員会に——私もなるべく出席しておつたつもりでございますが、まだお出にならない。もしお出になれば、私どももいろいろと質問をしたいと思います。これまたひとつできるだけ出ていただくように、委員長の方からも要求していただきたいと思います。
  28. 守島伍郎

    ○守島委員長 彼は政府委員ではございませんが、御要求がありますれば、その趣旨を伝えておきます。そしてできるだけ出席するように申します。  それからついでに黒田君に申し上げますが、これは私から言うことであるかないかしりませんが、私は外務省におりました経験から、外務省であのソ連の通告文の覺書のテキストあるいは比較的正確なる内容を知ることは、もう御要求がなくとも、極力努めておると私は想像いたします。なお外務省側にも申し上げますが、極力できるだけひとつ早く知らせていただきたいと思います。
  29. 並木芳雄

    並木委員 私はさつき自分だけの時間をとつては申訳ないというので、御辞退したわけです。しかしほかに申込みがあつたようですが、その方が棄権されるならば、私の方へ時間をいただきたいと思います。
  30. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかの方は棄権され、それから菊池君が要求されておりますが、御出席願えませんので、並木君御要求がございましたら、許します。
  31. 並木芳雄

    並木委員 それでは私は外務当局に伺います。対日講和條約の草案をめぐつて、この間ダレス氏が来訪されましたけれども、大体あの草案は、政府はこれを受取つたと言い、そして検討済みと思いますが、すでに検討済みであり、これに対して了承の段階を経ておるかどうか、それをまずお伺いしたいと思います。
  32. 島津久大

    島津政府委員 ダレス特使との会談の内容につきましては、従来総理から申し上げておる通りの状況であります。また本日も多分午後一括して報告があるはずでございますから、その際お聞き取りを願いたいと思います。
  33. 並木芳雄

    並木委員 日米駐兵暫定協定の問題でございますけれども、これは当然対日講和條約と別個の協定または條約というものができるものと思われますが、それは準備されておるかどうか。
  34. 島津久大

    島津政府委員 御指摘のような点は、当然特使との話合いの中にあつたわけであります。その具体的なことにつきましては、再々繰返しますように、何とも私申し上げる立場にないわけであります。三月三十一日でございましたか、特使がロスアンゼルスで演説されておる、あれをお読みになりますと、大体の構想がわかると思います。
  35. 並木芳雄

    並木委員 あれは相手の国はアメリカだけなんですか。それとも報道を読むと、必ずしもアメリカ一国には限つていないのです。たとえばアメリカのほかに英国などがこれに参加して、軍隊を駐留せしめるというような話がなかつたのですか。
  36. 島津久大

    島津政府委員 その点は、私何も承知をいたしておりません。
  37. 並木芳雄

    並木委員 その駐兵暫定協定は、講和後に当然日本が地上部隊というようなものを中心とした軍備を持つということを前提にしておるものと思いますけれども政府はその点どういうふうに了解しておられますか。
  38. 島津久大

    島津政府委員 いずれの場合にも、軍備を持つ、持たないというような問題は、決定をしたことはないと思うのでございます。ただいまのお話のように、協定の前提として軍備云々ということがどうなつておるかということは、これまた私どもとして言明の限りではございません。
  39. 並木芳雄

    並木委員 日本は相当広範囲の協力をしなければならないであろうと思いますけれども、この協力についてどういうふうに具体化しておられるか、その点をお伺いします。
  40. 島津久大

    島津政府委員 話合いの具体的な段階に、どの程度まで行つておるかという御質問と思いますが、これもはなはだ申訳ないのでございますが、たびたび繰返しますように、私申し上げる立場にございません。
  41. 黒田寿男

    ○黒田委員 関連して……。これは国会の休会中の、日付の順序から申すと  一番早く問題になる事項として、私ども新聞で知つたわけで、私もこれはまつ先に尋ねたいと思いましたが、きようは條約局長もおいでになりませんけれども新聞で拜見しますと、西村條約局長、井口外務次官などが、シーボルト大使、ジヨンソン陸軍次官補その他の人々等と交渉に当つておられる。それから、井口次官からシーボルト大使に対し、この問題に関して資料を提出した、こういうようなことも出ております。そこで私ども、これは非常に重要な問題でありますので、いろいろと政府質問したいと思いますけれども、きよう條約局長も見えておりません。先ほど井口次官のことを問題にしましたのも、実はこのことを質問したかつたからですが、きよう條約局長はどういうわけでお見えになりませんか。要求がなければ来ないということではなくて、少くとも外務省の各局長は、私どもどんなことを質問するかわかりませんので、いつも出て来ていただかなければならぬと思います。きようは何か特別な御事情があつておいでにならなかつたと思いまするが、この次にはぜひ出て来ていただきたい。  それから、きようは次官もお見えになつておりませんが、これもどういうわけですか。こういう委員会では、私ども用意しておつたことも質問できない。今外務委員会は非常に重要な委員会として、内外から注目されておりますので、ひとつ政府当局はもつと勉強していただきたいことをお願いしておきます。これは私も質問がありますが、きようはこれだけ述べましてこの次詳しく質問いたします。
  42. 守島伍郎

    ○守島委員長 私からちよつとお答えいたします。数日前外務省に参りまして、そして政務次官は出られるかと聞きましたら、政務次官は何か旅行しているそうで出られないそうです。それから條約局長にはぜひ出てくれということを要求いたしておきましたが、何かよんどころない用事がございまして、きよう出られない、こう申して参りました。次会からはなるべく出るように伝えます。
  43. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 議事進行と関連して、あえて私はこの際政府の注意を喚起しておきたいと思います。先ほどの並木委員の対米覺書に対する島津政務局長の答弁を聞いておりますと、非常にロジツクにおいて合わない点があります。あなたはフル・テキストがないから正確な答弁ができないという主張をされている。その背後には、もし正確なテキストが入つたならば、これに対する政府見解を表明する用意があつてのことだと私は考えるわけです。ところが第二段におきまして、この対米覺書なるものは、ソ連からアメリカに対して行つた意思表示であつて、第三国のものであるから、日本の関知するところではない、こういうふうな趣旨のことを述べられております。この二つの間には、その背後にあなたのお持ちになつております気持にも、非常にロジツクの合わない点がある。まつたくあなたの本日の答弁は、言いのがれの答弁としか私は考えることができない。そこで私は、何も正確なテキストがなくても、ただいま新聞に報道されている程度のものを材料として、われわれが政府見解をただすことは十分できると思います。またこれらに対して政府見解を表明することもできると思う。必ずしも正確な、一言半句も間違いのないテキストが来なかたつならば、これに対する政府見解を表明することができないわけのものではなかろうと私は考える。現に外務省当局見解として、新聞には報道されている面もあるわけであります。従つてこれらの点につきましては、私は必ずしも正確な全文が来なければ、何らの意思表示ができないというようなことについては、この際私は政府委員の者君たちの反省を求めたいと考えます。  それから同時に、これは第三国の間に行われた意思表示であつて日本政府の関知するところではないということに至つては、私は言語道断だと思います。伝えられる覺書の中に、ただいまダレス特使との間に話が進んでおりますところの、講和会議の方式の問題についても言及している。また條約の内容についても言及している。第三国の問題でないのみか、現に日本の運命を決定する重大な交渉が、今ダレス特使との間に進められて、あなた方自身がそれにタツチされている。これをまつたく対岸の火災のように、第三国の出来事であつて日本の関知するところではないというようなごときことは、国会に対しても、また国民に対しても、決して忠実なゆえんではないと考える。このような見地から、この委員会政府委員の単なる言いのがれの場にしないで、ほんとうにもう少し誠意をもつて、こういう問題とまつ正面にとつ組んでいただきたいということを、あえて国民代表たるの立場に立つて、特に国会の権威の立場に立つて委員会の尊嚴の擁護のためにも、私はあえて皆様方の注意を喚起しておきたいと思う。  なお委員長に申し上げておきますが、こういうふうな政府の態度の反省されない限り、当委員会会議をここで継続しても無意味だと私は思う。幸いにして本日は総理から講和内容に関しての意思表示があるそうでありますから、それを終つた後、あらためてこの委員会を開いて政府当局の反省の上に立つて、新しく委員会を招集されて、そこでわれわれの意見を開陳いたしたいと思います。
  44. 島津久大

    島津政府委員 ただいま反省をするようにという御意見が、ございましたが、私ども十分反省をいたしまして、誠意をもつて御答弁をいたしたいと思うのであります。先ほど御叱責になりました点は、私の言葉が足りなかつたと思いますので、もう一応繰返して申し上げたいと思うのでありますが、それをお聞きになりましたならば、おそらくただいまおつしやいましたことは見当が違つておるということがおわかりくださると思います。  私が申し上げましたのは、ソビエトの例の覺書というものに対して、日本政府当局として批判をする立場にないということが第二点であります。第一点で申しましたことは、批判するしないということとは無関係に、新聞に今まで出ておりますことが正確であるかどうかということは、全文を見てみなければわからない。従つて批判するしないという問題と離れまして、情報としてこれを研究するにも、今まで出ておる程度では正確を期し得ない、そういう趣旨でお話したのでありますから、決して私は言いのがれはいたしません。
  45. 並木芳雄

    並木委員 ただいま佐々木委員から動議のような形で議事進行について発言がございましたけれども、私は質問している当事者なんです。佐々木委員は用意をされて来るはずでありましたけれども、きようはそれを棄権された。その質問している当事者の私から、別にああいう政府委員を不信任するような発言はないのでありますから、まだ時間はあることですし、あともう少しと思いますから、続いて許されんことを希望いたします。  大橋法務総裁見えましたから、総裁にごく重要なことを二、三質問いたしたいと思います。  第一は、先般ダレスさんがおいでになつて、重ねて間接的並びに直接的侵略ということをあげて、相当事態は容易ならぬものであることをわれわれに印象づけたのであります。この一箇月余りの間、国会が休会になりまして、総裁に国内治安の状態などについてお尋ねする機会がなかつたのを遺憾と思いますので、この機会にまずその後の国内治安一般状況についてお尋ねしたいと思います。それに関連いたしまして、共産党幹部の追放された者がいまだに逮捕されておりません。最近では懸賞までかけて搜査をするというようなことを、新聞の広告か何かで私は見たような気がするのですが、どうしてそんなにむずかしいのか。また一説にはわざと逮捕しないのだろうなどという流説も行われておるようでありますけれども、こういう点について私どもはまつたくその真相を知るに由がないのでありますから、この機会に総裁から御答弁いただきたいと思います。それから思想的の方面について共産党の非合法化の問題というものは、その後影をひそめたようにも思われますが、どうなつておりますか。立消えになつておるかどうか。あるいは聞きますと、特審局の方面では相当の人員の増加をして思想取締りということをやつておるようでございますが、この点もあわせてお伺いしたいと思います。  それからこれも国内治安に関連している問題ですが、警察制度の改正及び警察法の改正という話は、前からも総裁は非常に熱心に企画立案されておつた。これは国内治安とにらみ合せて非常に重要な問題であると思つておりますが、この点総裁はあくまで断行されないのであるかどうか。私は総裁の運命をかけての問題であろうと思いますので、どういう決意をもつて警察制度及び警察法の改正について臨まれておるか、そういう点についてお尋ねいたします。
  46. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御質問がございましたので、お答え申し上げます。第一に最近一箇月におきます治安状態の御質問でございまするが、この一箇月は選挙中でございまして、主として選挙の取締りに主力を注いでおつた次第でございまするが、選挙中におきましては、格別選挙以外に主要な治安上の問題は発生を見ておりません。ただ五月一日にはメーデーの関係で全国的に一応警戒はいたしましたが、幸いに無事故に過ぎたような次第であります。現在のところ、治安の問題につきまして、特に変化があつたというふうには私どもは考えておりません。この点につきまして政府といたしましては、警察予備隊の訓練は漸次その進捗を見ております。また警察につきましても、現在のところ治安上遺憾ない活動が期待できると考えております。  それから次に共産党幹部の逮捕の問題でございまするが、日本共産党潜行八幹部の所在につきましては、爾来関係機関の緊密な連絡のもとに鋭意搜査を継続いたし、逐次搜査上進展は見ておりまするが、いまだ所在を発見するに至つておらないのであります。その原因は種々ございまするが、調査人員の不足並びに調査費用、調査員の調査能力の不十分及び搜査に関しまする機動力の欠如等がおもなものでございまして、これらの点につきまして、ただいま対策を研究いたしておる次第でございます。なお懸賞金をかけて搜査をいたしておるという風説が伝えられたことがございまするが、搜査機関といたしましては、懸賞金をかけておるという事実はございません。それからわざと逮捕をしないのではないかという流説もあるようでございまするが、これはまつたく流説にすぎないわけでございます。さようなことは決してございません。  それから警察制度の改正の問題もありまするが、警察制度の改正につきましては、私といたしましては今年一月以来関係各方面と折衝をいたしまして、ほぼ成案を見るに至つておりまするので、なるべくすみやかな機会に今国会に提案をいたしたいと考えております。  それからもう一つ共産党の非合法化の問題でございますが、共産党につきまして非合法化は、従来と同様の考えのもとに目下研究を進めておるような次第でございます。
  47. 並木芳雄

    並木委員 追放解除に関連しまして、やはりこれは国内治安対策の意味も含まれているのではないかというふうに見る向きもありますけれども、その点はいかがですか。
  48. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 追放の解除と治安対策というものとは格別の関係はございません。
  49. 並木芳雄

    並木委員 特審局の人員を増加して、思想対策に当つておるということに対しての御答弁はいかがですか。
  50. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 特審局の人員につきましては、昨年八月ポツダム政令によりまして増員をいたしました。これは従来六百各程度のものでございましたが、この政令によりまして、約倍数の千二百程度に増員をいたしております。この増員は、その後引続き人員の採用をいたしておりまして、ほぼ完了をいたしたような状況でございます。
  51. 並木芳雄

    並木委員 では次に警察予備隊についてお尋ねをいたしたいと思います。  マッカーサー元帥の証言によりますと、「警察予備隊を小規模ながら強力な国際安全保障兵力に転化することができるか」との質問に対し、強い同意の気持を表わし、次のように述べたと報ぜられております。すなわち「むろん警察予備隊を拡張し、これを優秀な地上部隊に転化することは容易である。日本日本自身の安全に寄与しなければならないことは当然だと思う。われわれは、日本の防衛に海空軍の援助を送ることができるが、地上部隊は日本人の間から供給されるであろう。しかし、これによつて太平洋諸国が脅威を受ける可能性は少しもない。」こういう証言でございます。これは私は、従来政府がしばしば述べておつた点と違うのではないかという少くとも疑いをさしはさむものでございます。そこで総裁にお尋ねしたいのですが、警察予備際を地上部隊に切りかえることがあるであろうという話があつたかどうか。それから総裁は、地上部隊にこれを切りかえることができると考えているかどうか、やればできると考えているかどうか、将来切りかえる計画を持つておられるかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  52. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この点につきまして、従来政府が述べておりまする点とまつたく違つておるという並木君の御説でありまするが、違つておるとは私は考えておりません。と申しますのは、現在の警察予備隊、これを地上部隊に切りかえることが可能であるかどうかという問題でございまするが、地上部隊に切りかえるという可能性につきましては、さような方針がきまりますれば、これは切りかえることは不可能ではなかろう、かように考えるのであります。しかしながら、現在までのところ、地上部隊に切りかえるという方針政府といたしましてはもちろん決定もいたしておりませんし、またさような計画を全然持つてもおりませんし、またさような話を従来聞いたこともございません。
  53. 並木芳雄

    並木委員 同じくマツカーサー元帥の証言によりますと、「ソ連は北海道を占領できるかもしれない」という箇條があるのであります。これは前回総裁にお尋ねしたときの答弁と符牒が合うと私は思うのでありますけれども、北海道方面の危機というものはやはり相当深刻なのであるかどうか、そうしてその守りは手薄ではないかどうか。この前警察予備隊の配置を、重点的に北の方に持つて行くという計画を発表せられましたけれども、その後どういうふうにこれが行われましたか、この点についてお伺いしたいとともに、警察予備隊全体の増員の計画を持つておられるかどうか、伺いたい。
  54. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊の北海道におきまする部隊配置といたしましては、札幌に第二管区総監部を置いております。そうしてその指揮のもとに函館、帶広、惠庭、美幌等に部隊を配置いたしておるのであります。将来の計画といたしましては、その他の箇所にも営舎の新設を行いまして部隊を配置いたしたいという希望を持つておりますが、予算の現状から見まして、目下のところ具体的にまだその計画を立てる段階には至つておりません。次に予備隊の増員の問題でございますが、目下のところその計画を持つておりません。現在の段階におきましては、訓練の強化と隊員の質的充実という方面に努力をいたしておる次第でございます。
  55. 並木芳雄

    並木委員 では最後にもう一点だけお尋ねいたします。それは、リツジウエイ総司令官の声明によりて、いよいよ法令の改廃ということが具体化して参りましたけれども、現在どのように検討の歩が進められておるか、これを具体的にお伺いしたいと思います。特に私は、憲法改正の際に国民承認を得る方法は、特別の国民投票によつて表明されなければならないということになつております。けれども、この国民投票の制度はまだ法制化されておりません。そこで、これは当然かつすみやかにやるべきであると思いますけれども、その準備をなされておるかどうか、その点をあわせてお伺いいたします。
  56. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 連合国最高司令官の指導に基いて制度せられました法律、政令の中には、必ずしも現在のわが国の実情に適合しないものもございますから、再検討の権限を与えられましたのを機会に、これが適切な是正をはかりたい、かように政府といたしては考えているわけであります。なおその具体化につきましては、目下準備をいたしておるのでございまして、適当なる機関によりまして逐次検討をいたして行く考えでありまするが、現在のところまだ具体的に申し上げるような段階になつておりません。  それから第二に、憲法改正に伴う国民投票の法制化がいまだ行われておらぬという御質問でございますが、これはまつくた御説の通りでございまして、国民投票のための特別の法律をすみやかに制定すべきものであると考えておるのでございます。もちろん国会方面におかれましても、当然御研究中のこととは存ずるのでございまするが、政府部内におきましても、全国選挙管理委員会等におきまして、関係資料を収集いたして現在研究中でございます。必要に応じていつでも法制化に着手できるように準備をいたしておるような次第であります。
  57. 並木芳雄

    並木委員 その中で、追放解除に関する処置というものは、どういうふうに法制的措置がとられるのでありますか。今度相当大幅の追放解除が予定されておりますので、この点についてお尋ねしておきたいと思います。
  58. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まだ具体的に準備にとりかかつておりませんので、内容につきまして申し上げる程度になつておりません。
  59. 並木芳雄

    並木委員 よろしゆうございます。
  60. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 この際、リツジウエイ声明によりまする法令の改廃、修正の問題に関連して法務当局と外務省に聞いておきます。  それはこの法令の改廃に関して、すでに六人委員会ですか政府においても設けられて、これから仕事にかかられるそうでありまするが、当然先ほど来問題になつておりました公職追放令であるとか、あるいは団体等規正令、独占禁止法、集中排除法、物資統制令、警察法、労働関係法あるいは農地改革法、六・三制、そういうものまでも含めたものが再検討されるのではなかろうかと考えるのでありますが、ただいま政府部内におかれましては、さしあたり、どういう問題から手をつけようとしておるのかという点を、まず承つておきたいと思います。  さらにこれと関連いたしまして、外務当局にお聞きしておきまするが、リツジウエイ声明によりまする法令の改廃に伴つて、たとえば通商協定の締結権であるとか、金融協定の締結権とかいうものも、当然再検討の俎上に上るものではなかろうかと考えるのでありますが、外務関係において、どういうものが今後問題になつて行くかという点についても承つておきたいと思います。  さらにリツジウエイの声明を見ますると、適切な連合国の政策指令を日本政府が引続き完全に履行するであろうとの期待のもとに、日本政府による諸法令の再検討と修正を許すということが声明されております。またこれらの改革については、既定の手続によつてなされるということが声明されておるわけであります。そうすると、今度の法令の改廃につきましては、日本政府が自主的にこれを推進するのはもとよりでありますけれども、最後的な承認というものは、やはり総司令部が決定権を持つておる、こういうふうに解釈すべきものだと思うわけでありますが、法務当局はこの点についてどのようにお考えになつておりますか、以上の点について承りたい。
  61. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まずどういう点から入るかという最初の御質問ございまするが、ただいままだこの委員会の最初の会合も持たれておらないような状況でございまして、さような点をこの委員会において相談をしてきめて行くということに相なつておるのであります。従いまして、ただいま委員会においてどの問題から取上げて行くかということは、ちよつと申し上げかねるのであります。  それから最後の御質問の、日本が自主的に検討を加え、これを実施するに際しては成規の手続によるべきであるという点の解釈でございますが、これは占領治下にあります関係上、もちろん関係当局の完全な了解のもとになし得られるもので、その点は従来の法令制定その他と同じ手続を必要とする、こう考えております。
  62. 島津久大

    島津政府委員 通商協定その他の渉外的な権限の委讓を予想しておるかという御質問だと思いますが、あの声明ではその点は意味されていないと思います。この点は別に考慮されることになるものと思います。
  63. 高倉定助

    ○高倉委員 関連して……。ただいま総裁より、ソ連との関係における北海道の重要性にかんがみまして、第二管区の札幌、函館、帶広、惠庭、美幌等で予備隊の訓練をしておられる。ところが最近小樽に上陸いたしましたアメリカ州兵二個師団の一部が各キャンプに入つたように聞いております。これに対して、ことに札幌と惠庭方面の予備隊が撤退いたしまして、そのキャンプを返さなければならぬ、かようなことを聞いておるのでありますが、この点に対してどういうような形において処理されておりまするか。
  64. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 アメリカ州兵師団の来日に伴いまして、元来米軍用の兵舎の一部を警察予備隊において借用いたしておりましたものを、この際返還しなければならないということに相なりまして、札幌付近における兵舎を返還いたした事実はございます。そうしてこの札幌等におりましたところの警察予備隊の隊員の一部を帶広、美幌等に移動せしめたようなわけであります。
  65. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければ、本日はこれにて散会いたします。  次会は十一日金曜日、午前十時より開会いたします。     午前十一時四十五分散会