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1951-03-07 第10回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月七日(水曜日)     午後二時二十一分開演  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 竹尾  弌君       淺香 忠雄君    伊藤 郷一君       植原悦二郎君    大村 清一君       小川原政信君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    近藤 鶴代君       仲内 憲治君    中山 マサ君       福田 篤泰君    並木 芳雄君       砂間 一良君    高田 富之君       黒田 寿男君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 三月七日  委員小川原政信辞任につき、その補欠として  高橋權六君議長指名委員に選任された。 同日  委員高橋權六君辞任につき、その補欠として小  川原政信君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月六日  奄美大島諸島日本復帰等に関する請願(上林  山榮吉紹介)(第九二七号)  在外資産の補償に関する請願外一件(淺香忠雄  君紹介)(第一〇〇三号)の審査を本委員会に  付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際捕鯨取締條約に加入することについて承認  を求めるの件(條約第一号)     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会開会いたします。  国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求めるの件(條約第一号)を議題といたします。本件に関する質疑を許します。高田君。
  3. 高田富之

    高田(富)委員 先ほど質問関連して簡單に御質問したいと思います。  私は今回のこの捕鯨條約に入ることが、やはり講和との関連で相当重要なものであるということが政府によつて明らかにされたいと思うが、どうもその点があいまいなので、先ほどから繰返して御質問しておるのですが、この條約の結ばれます前に、吉田総理から総司令部に対して書簡を送り、それに対しまして、なお返事の意味書簡が参りまして、あれとの関係において、やはり今回の捕鯨條約が講和を前にいたしまして非常に重要な意義を持つておるというふうに考えるわけなんです。それで一体この間のあの書簡やりとりによりまして、講和後、前の既得権ではないでしようが、昔の日本出漁しておつた方面へは行くけれども、條約は尊重するのだ、行つてなかつたところには行かないのだというふうなあれだつたと思うのであります。従つてまだあの書簡やりとりの当時には、講和の前に條約が結ばれるということまでは、想像していなかつたとも考えられるのであります。そこでそれが発展して講和前に結ばれるようになつたということは、そこにまた特別な飛躍路展した意味がくみとられるのではないかと思うのであります。それらの関係を——あの書簡やりとりと今度との関係をひとつ明らかにしてもらいたい、こういうように思うのです。
  4. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 事務的な事柄でございますから、事務当局から御説明申し上げます。この国際捕鯨取締條約に加入いたすことになりました次第は昨年の二月米国政府から最高司令官に対しまして中間指令が発せられました。その趣旨は、技術的な国際條約であつて日本政府参加したいという意思表示をしたものについて、最高司令官占領管理のために役立つと判断したものについては加入を許してよろしい、こういう趣旨のものでございます。でございますから、その後しばらく時日が経過しましたあと事務当局といたしましては、きわめて非公式になるべく早くわが方としては参加を認めていただきたいと思いまする現在国際機関国際條約を列挙いたしまして、好意あるごあつせんを要請いたした次第でございます。昨年の夏ころでございました。種々あつせんの結果、ある種の国際條約については、参加手続をとつていいだろうという意思表示が昨年の秋にございましてその一つ国際捕鯨取締條約でございます。そういうふうな非公式に参加手続をとつた方がよろしいだろうという指示がございましたので、昨年の暮れになりまして正式に許可申請をいたし、それに対して一月七日になつて許可の覚書が発出されたような次第なのであります。そういうふうに講和の問題とは別個に、昨年の夏前からの内部的話合いの結果、今日のような正式な加入手続をとるという段階至つたものであります。ただその時期がダレス使節来訪の前後になりましたものですから、その間に何か密接な関連があるかのようについ誤解されがちでございますが、全然そういう事実はございません。以上の通りでございます。
  5. 高田富之

    高田(富)委員 ちよつと聞き落した部分があるのですが、これは中間指令が昨年二月にあつたというのは、一般的に占領管理に役立つようなものであれば、條約に入る意思があれば入れてもいいというのですか、それとも捕鯨釈約その他漁業條約ですか。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 正確な文句は、似術的な性質の條約であつて最高司令官において占領管理のために役立つと認めるものという文句になつております。
  7. 高田富之

    高田(富)委員 そうしますと、そういうあれに基いて、日本の方で捕鯨條約だけをとりあえず出して許可なつたというふうに了解するわけですが、日本政府として何かほかにも、一般的な條約についてせつかくそういうあれがあれば、いろいろと希望を出して行れ考えがありますか、また現に出しておりますか。
  8. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 先刻も申し上げましたように、われわれの方から懇請いたしましたのは、この国際捕鯨取締條約に限つておりません。その他の国際機関、ある種の国際條約も含まれております。
  9. 高田富之

    高田(富)委員 そうしますと、今後これを皮切りとしまして、いろいろと講和前でも、條約が許されて行く見通しを持つてよい、こういうふうに解釈していいですね。
  10. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 すでに御承知のように、ユネスコに対しても日本は正式に加入申請をいたしております。また世界保健機関に対する加入も正式に申請いたしております。これらもみな昨年の夏前からの懇請の結果でございます。
  11. 高田富之

    高田(富)委員 それからこの機会ちよとついでに、さつきも申し上げたのに関連してお聞きしておきたいのいすが、この間の書簡の往復によりまして、結局講和が結ばれたときには、今までのマツカーサー・ラインという制約は、解かれるということを前提としておると思うのですが、その場合特に日本漁業では、北洋漁場あるいは東支那海等非常に重要なのでありますが、そういう重要関係国との間に條約が結ばれない場合、つまり全面講和でない場合においても、このマツカーサー・ラインというものは全面的に撤廃せられるという見通しの上に立つておるわけでございましようか、その点ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  12. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 講和に関しまして、アメリカの構想、その七原則一つに、日本は多辺的な国際漁業條約に加入しなければならないということがうたわれてございます。こううたわれています理由は、私どもこういうふうに解釈いたしておるわけであります。平和條約が成立いたしますれば、自然その当然の結果といたしまして、自主独立の国となる、従つて現在ありますような、マツカーサー・ラインというものはなくなる、そういたしますと、日本漁船の公海における漁業は自由であるという考え方から、戰前のようにまた一度に進出いたしまして、各国国際條約または国内的の措置によりまして、漁業資源保護にいろいろ苦心をいたしておりますその漁場に、無統制日本漁船出漁して荒しはしないかという懸念があるわけであります。そういう懸念がないように、平和條約におきまして、日本国際漁業條約に加入して忠実にこれを履行するということを明らかにさせなくちやならない、こういうところから来ておるわけでございます。ところが平和條約ができましてから、捕鯨のように現存條約があります場合には、割合に早くその條約に参加することによつて日本漁業国際的取締りを遵奉するということができましようが、そういうふうな條約がないような場合には、ある期間いわゆる交渉するために時間が必要でございます。ですからその期間関係国との間に円満なる交渉によりまして、国際漁業條約というものができるまでの間、日本が一方的に権利を濫用しないがために、あの書簡におきましては、いわゆる日本が一方的に自制をするということを約束したというところに、吉田総理ダレス特使との間に往復された書簡意味がある、こう考えております。
  13. 高田富之

    高田(富)委員 これで終りたいと思うのですが、それで講和ができて條約が結ばれるまでの間、いわゆる真空状態ができる、その間に昔の権利のあつたところは行くけれども、條約があればそれを尊重する、現在、国際條約がなければ、そこへ昔の権利に従いまして、こちらから出て行くということも考えられるので、もしマツカーサー・ラインが撤廃されますと、紛議の起る危劍性が非常に感ぜられるのです。それで向う側が、全面講和でない場合を予想しているのですが、その場合にマツカーサー・ラインを突破して来たものに対し拿捕するとか、いろいろなことが起る危劍性が非常にある、こういうふうに思うのです。このマツカーサー・ラインの撤廃というものは、関係国、具体的にたとえばソビエトとか中国とか朝鮮とか、そういう方面と、講和締結ができていないのに撤廃されるということを想像すること自体が非常に無理なように思うのでありますが、そういうことをやはり政府は想像しておりますか。
  14. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 平和條約がどういう形においてでき上るかという点に帰着いたしますが、その点につきましては、現段階において私どもは確とした見通しを立てておりません。なるべくならば平和七原則に従いまして、関係国すべての国が参加するような平和條約ができればよろしい、こう考えております。
  15. 高田富之

    高田(富)委員 これで終ります。
  16. 守島伍郎

    ○守島委員長 菊池君。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 採決を急ぐために私は質問をやめます。
  18. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは黒田君。
  19. 黒田寿男

    黒田委員 簡單にお尋ねいたしますが、日本がこの條約に加入する積極的利益という点につきましては、先ほど政府の方からの御説明がありましたが、過去において日本がこの條約に参加しなかつた理由につきましては、まだ詳しい御説明を聞いておりません。この條約ができましたときに、日本参加しなかつたのには何らか積極的理由があるか、あるいは参加しない方がいいとする利益日本にあつたのであるか、かりにそうであつたとしますならば、その利益とこれに加入する利益との比較較量というものは、どういうふうになるのですか、この点をひとつつておきたいと思います。
  20. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本戰前におきまして、関係諸国と非常な関係があつたにかかわらず、捕鯨取締條約に参加しなかつた一番大きな原因は、日本南氷洋に対する出漁が、他の関係国に比べて非常に遅れていたということであります。他の国よりも非常に遅れて出漁したにかかわらず、鯨族保護という意味において南氷洋捕鯨に、條約をもつて取締りを設けるという、そういつた諸種の條約に参加することは、捕鯨業後進国としては利益でないという考え方が、主として日本業界にあつたということが、一番大きな原因と今まで私どもも予解いたしております。ロンドンの会議代表を出して参加いたしましたあと日本政府が一番同意を澁つた点は、南氷洋出漁さした船団を、その同じ年に他の海域で作業させることはできないという仕組みになつております。捕鯨船団割合に少い日本としては、できるだけ船を活用したいという見地から、はなはだ同意しにくかつたという事情があつたようであります。しかしこの最後の点につきましては、関係国の方で折れまして、日本のために特にそういう留保をするということを承諾いたしてくれましたので、やつと日本政府といたしましても、捕鯨取締協定参加するという方針を決定いたしまして、日本代表は正式に声明いたして帰つて来たわけでございます。それに間に合いますように国内手続を進めているうちに、第二次世界大戰が起りましたので、捕鯨の状況に非常な変化が生じたということ理由にして、日本政府参加するという約束をしておきながら、遂に参加手続を延ばしますという通告関係政府にいたしまして、今日に至つたようなことでございます。こういうふうないきさつが、実は国際漁業会議における日本漁業の非常な不信の一つ原因になつてありますが、将来におきましては、さようなことはいたしませんでできる限り国際漁業に関する限り、国際協力精神によつて行動して行くべきものかと私どもは考えておる次第であります。
  21. 黒田寿男

    黒田委員 今西村條局長のお話を承りまして、大体理由が二つぐらいあつたと思うのですが、あとに述べられました方の理由につきましては、日本参加を拒む根拠がなくなつたように思いますれども、前に指摘せられましたものにつきましては、今も同じような利害関係があるのではなかろうか、かような疑いもあるのでございます。それともそういう点は今消滅しておるのか、こういう点を念のためにお聞きしておきたいと思います。
  22. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもは、戰前にいわれました日本漁業界としてこの種の取締協定参加しては困るという理由は、あまり強い理由ではなかつたと存じております。外務当局といたしましては、農林当局に対して協定参加方を極力説得いたした事情にあります。現在におきましては、戰争前よりもつと大きな理由からして、この種の国際協定には日本は進んで参加しなければならない。要するに、国際漁業資源というものを国際的に保護して、その資源増殖をはかるということは、結局それがわが国水産業の発展のために有益であるという立場に立つておるわけであります。
  23. 黒田寿男

    黒田委員 もう一つだけお尋ねしてみたいと思います。これは先ほども問題になつたことでありますけれども講和條締結に特にこのような條約に加入が許されるということは、見方によりますれば、非常にわが国に有利であるというようにも解釈できる思うのでありますけれども、まれそういう観点に立てば、この條約に加入した後は、捕鯨問題に関する限りはこの條約の制限のもとに置かれるのみで、二重に降伏国に対する連合国指導監督下に置かれるという必要はないように私どもには考えられるのであります。こは先ほどもこの点についての御答弁があつたようでありますけれども、どうも私にはつきりのみ込めないのですが、万一違反事項などがありましたような場合に、それではこの條約に基いて罰則を受けるというようなことになるのであるか、それとも連合国指導監督に反するというような意味から罰せられるのであるか。同一事項について二通り処罰方法があるということも私ども常識上考えにくいことでありまして、條約ができた以上は、この條約の制限によつて罰し、律せられて行けばよろしい、こういうように考えるのですが、この点どうですか。
  24. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 條約の侵犯に対する処罰につきましては、條約に規定がございまして、各條約政府に一任されております。従いまして国内法による処罰があるわけでございます。占領管理のもとにおきます日本捕鯨漁業は、占領軍当局監督のもとに行われておりますが、その監督内容は、午前の会議水産庁長官から御説明がありましたように、この四六年の国際捕鯨取締條約の規定従つて捕鯨をやれ、こういう指令になつておりますので、全然同一内容のものでございます。
  25. 黒田寿男

    黒田委員 この條約に違反したような行為が日本領海外において行われる場合には、いわゆる日本法律で罰せられるということになるのですね。
  26. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 さようでございます。
  27. 黒田寿男

    黒田委員 それはどういう具体的な法律になつておりましようか。これはあくまでお聞きしなくもいいかもしれませんが、これは私が知らないからちよつと念のためにお聞きしたい。
  28. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 條約の第九條第一項に「各締約政府は、この條約の規定の適用と、その政府管轄下の人又は船舶が行う作業におけるこの條約の規定侵犯処罰とを確保するため、適当な措置を執らなければならない。」こういうことでございます。
  29. 黒田寿男

    黒田委員 いやそのことは私はわかつておりますが、日本では具体的にはどういう処罰條項であるかということであります。
  30. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 お手元に差上げました書類の中に現行取締規則全部差上げてございますから、それによつて御承知願います。
  31. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと、これは日本の国外において日本船舶内において行われた犯罪、こういうふうに見てよろしいのでございますか。
  32. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 要するに船舶内というよりも、この規定が言つているのは、いわゆる出漁の時期、出漁の場所、捕獲し得る鯨の種類、その大きさ等について規定いたしております。そうして各捕鯨船には各締約国政府から派遣された監督官がいて、いわゆる漁船の條約規定侵犯の有無を絶えず監督するという仕組みになつておるわけでございます。
  33. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにて事件に関する質疑は終了いたしました。  討論に移ります。討論通告がありますので、これを許します。北澤君。
  34. 北澤直吉

    北澤委員 私は自由党代表しまして、ただいま議題となつております国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求めるの件について賛成の意を表せんとするものであります。  従来日本は事実上この條約の規定従つて捕鯨行つて来たわけでありますが、今回日本はこれに参加を許されたわけであります。しかして正式に日本がこの條約に参加しますれば、政府当局の御説明のように、たとえばこの條約によつて設立せられる国際捕鯨委員会におきまして、日本がその正式の構成員として発言権を持つというようなことを考えましても、やはり日本が正式にこの條約に参加することが、日本としまして利益があると思うのであります。のみならず、日本は現在占領下にありますが、なるべく早く国際社会に入つて国際社会の一員として日本国際的の地位を高めるということが必要であります。そういう意味から申しましても、日本がなるべく多くの国際協定参加することが、日本対外的立場を有利にするという点から考えましても利点があると思うのであります。  もう一点は、講和條約を目前に控えまして、日本対外信用を高めることが最も大事と思うのであります。従来日本漁業につきましては、海外においていろいろの誤解もあり、また非難もあつたのでありますが、日本漁業につきましては漁業に関する国際條約を忠実に守るということをはつきり示すことによりまして、日本に対する諸外国信用も高まるわけでございますので、こういう意味から申しまして、私は日本がこの條約に参加することにつきまして、自由党代表しまして賛成の意を表する次第であります。
  35. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に高田君。
  36. 高田富之

    高田(富)委員 私は日本共産党代表いたしまして、ただいま議題となつております国際捕鯨取締條加入に関する件につきまして反対の理由を一言申し上げたいと思います。  第一に、この條約に入ることによつて、現実的に実質上格別現在までの実情とかわつたところがないように、御説明を承りました結果考えられるに至つた次第であります。これが純粋に技術的な観点からする占領政策遂行上ぜひとも必要なものというふうに考えることも、いささか無理であろうと思うのでありまして、実際しただいま連合国最高司令官管理のもとで今まで行われておるわけであつて、しいて條約に加入しなければならない各別の実質上の理由も、また技術的な理由もないというふうに思われるのであります。入りまして後におきましても、今までと同様な管理下に置かれるわけであつて、この條約に関する限り、独立国として完全に扱われるものでないということも明らかになつた次第であります。でありますから、結局しいてここでこの條約に入るということは、これは捕鯨問題とは離れまして、やはり講和との関係においてのみこの意義が考えられるというふうに私は考えられるのであります。結局私ども国際社会に早く復帰したいという希望、それからまたそのために対外信用を高めるようにしなければならぬということ、これらはすべてまつたく同感であります。しかしなるべ早く国際社会復帰したために、対外信用を高めたいためになすべきことは、これは連合各国全体に対しまして、真に信頼を得るような公正な方法をわれわれが誠実に実行することによつてのみできることであつて、ただ一部分々々々の問題について、この條約に入り、あの條約に入るというような形でそのような信用を高めるとか、国際社会復帰するという道を選ぶべきではなく、かえつてそのようなことをいたしますれば、特定の国に対しましてのみ独立国として扱いを受けながら、他の方ではそうでないというふうな対立関係を深め、猜疑心をもつて見られるような結果にもなるのであつて漁業條約については、今われわれが全体の国政の上でポ宣言に基く誠実な信頼を回復する道を歩みさえすれば、講和締結後はただちに関係各国との間に漁業條約は当然締結できる、またそういう道を選ぶことが、ほんとうに漁業條約を直接わが国関係の深い諸国との間に一齊に取結び得る唯一の道である。かように考える次第であります。従つて一言にしていえば、やはり單独講和の事実上の実績を積み重ねて行くというような、なしくずし的なやり方ということに帰着すると思うのであります。従つてどもはさような意味におきまして、これに加入することに賛意を表しがたい次第であります。
  37. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君。
  38. 黒田寿男

    黒田委員 私は労働者農民党立場から、国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求めるの件に対しまして、承諾を與えることが適当と思うのであります。その理由簡單に申し上げてみます。  第一には、一般的に見まして、わが国国際條約に加入することは、日本国際社会への復帰の一過程をなすものと積極的に理解いたしますので、しいてこれに反対すべき理由はないと私は思います。  それから第二には、この條約についての加盟問題という具体的な観点から見ましても賛成したいと思うのありますが、憲法の前文におきましても明らかにしてありますように、私どもは  「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて政治道徳法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」というように示されております。戰前わが国がこうした性質の條約に加入しなかつた事由には、先ほど西村條局長が申されましたが、やはり日本の航海自由を理由といたしまして、無統制漁場を荒しまわろうとする機会を失いたくないという自国專念利己心というものがあつたと考えるのであります。こういうような経緯にかんがみまして、特に憲法精神にのつとりまして、私は本條約に加入すべきであると考えるのでありましてれこの條約に加入するについての利益という点をももとより指摘しなければならないのでありましようが、單にそれだけでなくて、わが国が近く国際社会復帰する日を迎えようとしております現在、過去におきましてのごとくでなく、将来は国際道義を十分に尊重する決意があるということを、機会あるごとに諸外国に示すということは、私ははなはだ意味のあることであると考えます。本條約に加入することも、またこのような意思表示一つであるというように考えますので、この観点からも私は賛成したいと思います。  簡單賛成の意を表しておきます。
  39. 守島伍郎

    ○守島委員長 討論はこれにて終局いたしました。  それでは国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求めるの件(條約第一号)について採決いたします。  本件を承認すべきものと議決するに御賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  40. 守島伍郎

    ○守島委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決定いたしました。  なお本件についての衆議院規則第八十六條による報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異存ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認めます。  なおこの際外務当局より発言を求められておりますから、これを許します。草葉外務政務次官
  42. 草葉隆圓

    ○草葉政府委員 ただいま御承認をいただきました国際捕鯨取締條約につきまして、今後正式に加入いたしました上は、本委員会において御審議を願いました御精神並びにその御趣旨に十分のつとりまして、鯨族保護のため今後取締りを十分にたしますとともに、この條約の精神を遵守いたしまして、今後積極的に国際協力の実をあげて参りたいと存じている次第でございます。
  43. 守島伍郎

    ○守島委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十七分散会      ————◇—————