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1951-02-28 第10回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十八日(水曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君       植原悦二郎君    菊池 義郎君       仲内 憲治君    中山 マサ君       福田 篤泰君    並木 芳雄君       武藤運十郎君    砂間 一良君       高田 富之君    高倉 定助君       黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         賠償庁次長   石黒 四郎君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         通商産業事務官         (通商局長)  黄田多喜夫君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 二月二十六日  委員山本利壽辞任につき、その補欠として北  村徳太郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員北村徳太郎辞任につき、その補欠として  山本利壽君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  山本利壽君が理事補欠当選した。     ————————————— 二月二十四日  国際捕鯨取締條約に加入することについて承認  を求めるの件(條約第一号) 同 日  日本国民活路確認運動に関する請願宮腰喜  助君紹介)(第八五〇号)阿波丸の代造措置促  進に関する請願岡田五郎紹介)(第八六九  号)  海外同胞救出国民運動強化に関する請願北澤  直吉紹介)(第八九六号)  移民問題に関する請願今澄勇君外五名紹介)  (第八九七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  連合審査会開会に関する件     —————————————  国際捕鯨取締條約に加入することについて承認  を求める件(條約第一号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず理事補欠選挙を行いたいと思います。去る二十六日、理事山本利壽君が委員辞任されましたので、理事が欠員となつておりますので、補欠選挙を行わなければなりませんが、これは先例によりまして委員長より指名いたしたいと思いますが、御異議ぐざいませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認めます。御異議がなければ山本利壽君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求めるの件(條約第一号)を議題といたします。  まず本件について政府当局より提出理由の御説明を求めます。草葉外務政務次官
  5. 草葉隆圓

    草葉政府委員 鯨族の保護、増大を目的とします国際協定の締結の必要につきましては、大分以前から提唱されたところであります。これに関しまする主要な條約として、一九三七年の條約を及びこれ修正する諸議定書がありましたが、わが国当事国ではなかつたのであります。わが国は当初は準備不十分のため、会議自体に参加することができず、その後留保付で、たとえば南氷洋で使用された母船の北太平洋への転用禁止を留保するというような留保付で参加しようとするところまで来たのでありましたが、今次の世界戦争勃発によりまして、またさたやみとなつたのであります。  捕鯨に関しまして、戦後一九四六年十二月に、ワシントン捕鯨取締條約が締結されました。今般司令部の一月十七日付正式許可がありましたので、わが国国際協力立場から、これに加入いたしたいと存ずるのであります。  この條約の趣旨といたしますところは、従来の捕鯨協定趣旨を一層徹底したものでありまして、各国が競うて鯨を濫獲しましたために、鯨族が死滅に瀕しておりますることを認めて、鯨族捕獲を過当に制限し、その増大をはかりながら、長い期間にわたつて最大の捕獲量を維持して行こうとするものであります。これがために特定の鯨の捕獲禁止し、たとえばこく鯨だとか、せみ鯨というような特定の鯨の捕獲禁止し、またたとえばひげ鯨につきましては、南氷洋において十二月から四月までというように、特定の鯨につきまして特定期間に、特定の区域についてのみ捕獲許可しようとするものであります。これらの禁止なり制限は、この條約と不可分の一体をなしております附表に規定されておりまして、條約によつて設定された委員会によつて、随時変更することができることになつておるのであります。  わが国は、現在司令部覚書によつて、特別の許可と、特定制限のもとに捕鯨を営んでおるのであります。司令部制限はこの條約の制限とほとんど同一のものでありまして、従つてこの條約に加盟いたしましても、現在と違つたところの特別の制限を受けることはないのであります。  この條約の現当事国は、イギリスアメリカソビエト連邦フランスオーストラリア、カナダ、フインランド、ノールウエ一、スエーデン等十六箇国であります。この條約への加入は第十條の第二項によりまして、単にアメリカ合衆国政府に対して加入通告をすることによつて完了するのであります。こういう理由によりまして国会の御承認を得ました上、ただちに加入通告をなして、この條約の当事国たらんとするものであります。  何とぞ十分御審議の上すみやかに御承認賜わりまするようお願いを申し上げて、提案説明といたします。
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 お諮りいたします、国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求めるの件(條約第一号)につきましては、水産委員会より連合審査会開会の申出がありましたが、これを受諾するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたします。  なお期日につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  8. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければさようとりはからいます。本件はこの程度にいたしまして次に……。
  9. 並木芳雄

    並木委員 議事進行国際捕鯨取締條約は非常に重要な条約で、われわれとしては外務大臣にじきじき質問したいこともありますから、水産委員会との合同委員会でもけつこうです、必ず外務大臣が出て来るようにとりはからつていただきたい。
  10. 守島伍郎

    ○守島委員長 外務大臣交渉いたします。     —————————————
  11. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に国際情勢等に関する件を議題といたします。まず最近の国際情勢について外務当局より発言を求められておりますから、これを許します。草葉政務次官
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 最近の国際情勢につきまして一、二の点を申し上げておきたいと存じます。  まずスターリンソビエト首相記者会見についての声明内容並びにこれに関する各国反響等につきまして申し上げたいと存じます。  二月十六日、スターリン首相は二年有余沈黙を破りまして、御承知のようにプラウダ記者との会見においてその質問に答え、ソ連軍備増強説朝鮮戦局国連中共戦争と平和という大体四点について、その見解を明らかにしましたことが、モスクワ放送によりまして伝えられたのであります。その要旨は大体伝えられておる通りでありまするが、第一には、イギリスアトリー首相が、ソ連は戦後も軍備を減少せずにますます増強していると述べたが、これはどうかという質問に対しまして、アトリー・イギリス首相言明ソ連に対する中傷と考えると答え、ソ連が戦後三回にわたつて復員している事実、平和建設と軍備拡充を同時に行うことは破産を意味するとなして、ソ連平和的建設を強調いたした点であります。  第二は、朝鮮に対する干渉をどう考えるかという質問に対しまして、もし米英が最終的に中共平和提案を拒否するなら、朝鮮戦局干渉者たち敗退に終るのみと答えております。さらに、何ゆえ米英将校は、中国朝鮮将校に比べて劣つておるのだろうかという質問に対しまして、将校の質が劣つておるというわけではなくて米英の兵隊が対日、対独戦の場合と異なつて、対朝鮮中国戦を正しくないと見ておるから、戦意がないためであると答えた。朝鮮中国が自国の領土あるいはその国境の安全を守るために戦うのは当然であると強調いたしておるのであります。  第三には中共侵略者と断じた国連決議をどう思うかという質問に対しまして台湾を奪い、朝鮮に侵入して中国国境まで追つたアメリカ防衛者とし、国境を守り、台湾回復のために努力しておる中共侵略者となすなどということは、一片の良心さえないことを示すもので、国連戦争の道具と化し、その侵略的仲介をなしておるのは、北大西洋條加盟国中の国連加盟十箇国とラテンアメリカ二十箇国であつて、これらの国は国連戦争と平和の運命を決しておると答えておるのであります。  第四には、第三次世界大戦不可避と考えるかという質問に対しまして、現在のところでは少くとも不可避とは考えぬが、戦争屋国民を欺満して戦争にかり立てることに成功すれば、戦争不可避となるから、平和擁護運動は、今日戦争誘発の暴力をあばき立てる手段ととして、絶大な意義を有すると答えておるのであります。  以上のスターリン首相言明は、過去二箇年有余沈黙を破りまして、究然なされましただけに、発表の時期や内容につきまして、ソ連の意図が那辺にあるかとい至とについていろいろと臆測されたのであります。  なお戦後スターリン首相が国際問題に関しまして意見発表いたしました機会をたどつてみますると、四六年の二月の総選挙のときに演壇に立つた以外は、エリノア・ルーズベルト、スターリンなどの会見、それからウオーレスの公開状に対します回答、それから外人記者との書面インターヴユーの形によりまする関係で、共産党機関紙プラウダ記者との会見という形式でみずから所信を発表いたしましたのは四十六年の三月、チヤーチルフルトン演説、いわゆる鉄のカーテンという言葉を初めて用いましたあのフルトン演説におきましてなしましたチヤーチル演説に対する反駁、四十八年の十月ベルリンの封鎖に対しまして、アメリカの空輸が成功し始めましたころのベルリン問題をめぐる西欧を非難いたしましたときになしましたのに次いで、今回が第三回目であると思います。この声明に対しまして各国に与えました反響中心として、今回の発表検討いたしてみますると、どうして今の時期に発表したかという時期に対する検討——内容は今申し上げました四つの点がおもだつた点と存じまするが、これらの内容についての検討という大体二つの点から、各国反響等中心にして検討いたしてみる必要があろうかと存じます。  第一の発表の時期につきましては、御承知のように最近の朝鮮戦局は、中共北鮮軍ともにだんだん不利に傾きつつあります際でありますし、また北大西洋防衛態勢具体化は、これまただんだんと促進しつつあります際であります。また日独の再軍備の問題も相当問題にされて参りましたし、さらに東欧の情勢にかんがみまして、先般アメリカユーゴ援助の方針を明らかにいたしましたのと、これらの点を考えて参りますと、ソ連の不利と見られる最近の一般情勢が今回の声明発表の重要な背景であろうと見られておりますが、アメリカ国務省スポークスマンはこの点につきまして、この声明は来るべき第二回平和擁護協議会開催——これはもう時間的に去る二十一日から二十六日までベルリンソ連占領地区で行われたのでありまするが、あの第二回平和擁護協議会に備えて、その共産圏内に最近ソ連に対する不満が高まつたので、世界全部が歩調の乱れていることを示しながら、ソ連圏における失われた地歩の回復を企図したことをおもな理由としてあげておるわけであります。またスフオルツア・イタリア外相も、これはアメリカなり西欧国民に対してなしたということよりも、ソ連並び衛星国人たちに対してなされたものであるからあまり重要視する必要はないと批判をいたしておるのであります。ことに最近四大国会議につきまして、その前提として四国外相代理会議が開かれることに進められつつありますが、この点に関連しましてソ連は、この代理会議開催の場合、自分の有利に会議を導くためであろうという観察も行われております。また二月十一日、イギリス下院アトリー首相はイーデン前外務大臣質問に答えまして、イギリス外交政策演説の中で世界を緊張させ、イギリスを再軍備のやむなきに至らしめた真の原因は、ソ連帝国主義にあることを明らかにいたしましたことを、スターリン首相が第一にこの点を取上げて、これを直接の契機とする形をとつておると言われているのでありますその他国連筋では、声明発表の日が、ちようど最近採択されました中共非難決議に基きまして、中共に対する制裁処置検討しますためにできました集図処置委員会が、第一回の会合を開く日でありますること、また同じくその決議に基きましてできました新あつせん委員会がやはり第一回会合を開こうといたしました日、これは実際はメキシコ代表の病気のために延期のやむなきに至りましたが、これらの同じ日であつたということが強く注目されるところであろうと存じます。  その声明内容についての反響を見てまわりますと、ソ連軍備増強説を英国の中傷として非難いたしました点につきましては、アメリカイギリスフランスは一様にこれを強く反駁いたしまして、ソ連が多数の兵士を召集解除させたことは疑いないが、現在ソ連兵力西欧諸国の全兵力を合せたよりもはるかに優秀であつて西欧諸国が自衛の第一歩を踏み出さざるを得なかつたのも、主としてソ連のこの侵略政策を恐れて、巨大な兵力の脅威を感じたからであるといたしまして、ソ連いくら曲説を繰返しても、事実をおおい隠すことはできぬのであると言つております。イギリス政界筋では国防問題でアトリー首相が大多数の支持を得ましたことは、ソ連をひどく失望させて、スターリン首相アトリー攻撃をいたして、直接英国民に呼びかけたものと観測しておる向きもあるようであります。第二に、朝鮮動乱に対します見解につきましては、特に国際連合各国代表部におきまして、綿密な検討が加えられたようでありまして、朝鮮戦局現状と照合せて、スターリン首相が今回特に声明を発したことにつきまして、ソ連極東政策に何らかの変更が看取されないかが注目されたようであります。特にその中で注目を引きましたものは、もし米英中共提案を最終的に拒否するならば、朝鮮動乱は、干渉者たち敗退に終るであろうと述べた点であります。これはソ連が、国連中共非難決議をもつて最終的に中共提案を拒否したのではなくて、まだ交渉の門戸を開いておるものと見ておるかもしれないという意味で、今後の中共の出方なりソ連態度が注目されておるのであります。その他一部には、干渉者敗退に終るであろうという点に着目いたしまして、ソ連中共援助のために、あるいは本格的に動乱に介入いたして来るのではないかという悲観的な観察もあるようでありますが、これはあまり有力とは思えないようであります。  第三に、国連中共非難決議に関する部分につきまして、まず、中国国境に近い朝鮮侵略したアメリカ、ということを言い、また、その国境を守り台湾回復しようとしている中国、というような表現を用いまして、国境という字句が反復強調されていることが、たいへん注目されておるのであります。また国連侵略的核心といたしまして、北大西洋條加盟国中の国連加盟十箇国とラテンアメリカ二十箇国があげられているのも関心を引いているのであります。  第四に、国際連台戦争手段と化しつつあるという点を強非難しておりますことにつきましては、ソ連国際連合脱退可能性が一部に論ぜられているのでありまするが、一般にはこれはソ連国際連合に対する非難罵倒に重点があつて、今ただちに国連を脱退するという可能性はないと考えられている説が多いようであります。  第五に、最後に、戦争は少くとも現在のところ不可避でないという点でありまするが、ソ連自身戦争か平和かのかぎを握つていると考えております西ヨーロッパ側では、異常な関心がこの点に注がれたようであります。モスクワ西欧外交官辺は、これは一面において警告であるが、他面世界はまだ戦争を阻止する道を通り過ぎてはいないというソ連指導者見解の重要な宣言であると解しているのであります。デ・ガスペリ。イタリア首相はこの問題につきまして、われわれも同様の信念を持つておる、しかしソ連は平和への貢献を事実をもつてなすべきであり、示すべきであると信ずる、と述べまして、自由世界との交渉を断たれておるソ連においてはとにかく、西欧諸国民にとつてスターリン言葉一片宣伝としか見えないだろうと語つており、西ドイツスポークスマンも同じように、戦争不可避でないという点につきましてだけは満足を示しまして、その他の点につきましては、ソ連の融通のきかぬ態度がそのまま現われておるといたしまして、別にこれとして取立てていないのであります。なお四大国会議開催に関しまするソ連覚書その他で、最近ドイツ問題が相当重要視されておる際でございますが、この会見では従来の主張と異なりまして、ドイツ問題を全然取上げていないことが大きく注目されております。アメリカ国務省スポークスマンは、世界の緊張の原因ドイツ中心としたものでないことを認めた点で、スターリン首相がわれわれと同じような意見であることは、この会見のたつた一つの新しい特色であると述べておるのであります。四大国会議に関しまする交渉では、イギリスアメリカフランス国側は、議題ドイツ問題だけに限定せずに、広範囲な議題を要求しておりましたやさきでありましたから、ソ連ドイツ問題に言及しないことで四大国会議に含みのある態度を示したものと見られておるのであります。  大体これがスターリン首相声明に対しまする反響でありまするが、この機会にこの一つ中心となつております二月十二日のアトリー首相下院におきます外交演説は、その内容があまり伝わつておりませんので、次にこれに関係します分の二、三について申し上げておきたいと思います。第一はイギリス軍備拡充がどういう原因であるかという点、第二は、朝鮮問題について、次は対日講和について、最後ドイツ問題についての点を申し上げたいと思います。  アトリー首相イギリス下院におきまして、二月十二日に外交演説行つたのでありますが、第一には、政府は戦後一貫して国際連合原則にのつとつて対外政策を行つて来たし、また今後もイギリス政策基調国連支持と、加盟国としての義務を引受けることにその基調を置いておるという点であります。一方ソ連及びその衛星国は、敗戦後厖大なる軍備を擁し、非共産圏に対して敵対的、破壊的宣伝を行つておる。これこそわれわれが再軍備を必要と考えるに至つた理由であると申しております。  その第二は、世界には偽りの平和宣伝が行われており、あたかも全世界が非武装されていたのにかかわらず、突然一、二の国から再武装を始めたように言つているが、実際はソ連とその衛星国厖大なる軍備にわれわれは直面しておるのであつて、彼らは戦後復員しないのみか、ますますその軍備を増強しつつあり、これが世界の大きな不安を結果しておる。特に世界情勢を緊迫化したのは朝鮮動乱である。これは世界に再び戦争による侵略が現われたことを示すものであつて、これこそ国連る対するまつこうからの挑戦ともいうべきものである。  第三には、この朝鮮動乱に対しては、国連原則にのつとつて、紛争の早期かつ局地的解決に努力して来た。中共軍の介入については、中共侵略したことは疑いないが、しかし調停委員会その他によつて解決の見込みがつくまでは、制裁を加えるべきでないと考えておると申しております。  第四は、朝鮮戦局が最近安定しておるので、和平交渉についてはよりよい條件にある。政府アメリカ国政府と話し合つて、三十八度線を越えるかどうかという問題については、十分了解し合つておる。政府は、国連において完全な了解に達するまでは、三十八度線を越えるべきでないという実際的な見解を出しておいた。さらに政府は、極東問題解決のための交渉が行われ、特に台灣問題が討議されることを期待する。極東問題の全般的解決のためには、問題を紛糾せしめている根本原因がどこにあるかということを十分に見る必要があつて、そのためには中共承認、その国連加盟を希望するものである。ダレス氏の日本訪問は探求的なものであつて政府も、アメリカ国見解については、若干承知しておる。英連邦各国意見が十分聞き入れられることを主張したい、と申しております。  第五には、西欧防衛については、特にアイゼンハウアー元帥の任命以来、具体化が促進されつつある。ドイツ軍欧州統一軍の中に統合する問題は、困難な問題であるが、これは現在各国政府間で討議されつつある。  第六は、ドイツの非武装化は完全に実施されたが、戦後ソ連が復員せず、東独衛星国に入れて警察軍をつくり、これを軍隊として訓練をし、装備をしておるために、欧州は不安に陷れられ、従つてドイツの再軍備問題は、東独現状と照し合せて考える必要がある。ソ連と真の合意に達し得るならば、ドイツの再軍備は重要でなくなるが、そうでない限り、西ドイツを含む西ヨーロツパ防衛を考慮せざるを得ない、と申しております。  最後の第七は、西ドイツの再軍備が許されなければ、占領軍がその防衛を受持たねばならぬが、これは実際的ではないのである。また非武装化占領軍が撤退することも実際的ではない。残された道は、ドイツ人西欧防衛の一翼として一体化されることであり、そのためには、第一にドイツ軍備に先だつて北大西洋條加盟国の再軍備を急がなければならぬ。第二には、旧ドイツ軍の復活を許さぬように、西欧統一軍の中に一体化されなければならぬ。第三には、ドイツ人自身との合意の上に行われなければならないという、以上の点を二月十二日の下院における外交演説の中で強調しておるのであります。  次に対日講和の問題について、前会御報告後のことを申し上げたいと思います。ダレス使節団は、御承知のように十一日日本を立ちまして、フイリピンオーストラリア、ニユージランドにおける会談を終え、二十五日ワシントンに帰られたのでありまするが、十二日ダレス・キリノ会談が行われ、この会談におきまして賠償問題、地域的安全保障問題、台灣問題等が詳細討議されたと発表されましたが、ネリ・フイリピン外務次官の語るところによりますると、賠償問題に関する限り、アメリカはドアをあけておく態度をとり、フイリピン立場日本支払い能力の点から、実行可能な解決を歓迎するだろう、といわれております。しかし講和問題一般については、双方とも何ら具体的な確約はなさず、ダレス特使フイリピン見解を考慮すると述べたにすぎなかつたと伝えられております。その後キリ大統領国家最高会議におきまして述べましたところでは、キリ大統領ダレス特使に対して、もし日本賠償を支払えないならば、日本は、八十億ドルの賠償要求に対し、少くとも暗默の承認を与えるべきこと、アメリカフイリピン賠償要求に対し、道徳的支持を与えるべきことを申し出たといわれております。  次にアメリカオーストラリア、ニユージーランド三国会談は、十五日から四日間キヤンベラで行われたのでありまするが、十八日会談終了後、共同コミユニケ発表されたのであります。それは対日講和條約及び太平洋地域の安全保障問題に関するアメリカオーストラリア、ニユージーランド代表の、キヤンベラ会談共同コミユニケという表題のものとに発表され、次の諸点が強調されております  第一は、三国は問題の解決及び重点の置き方に相違はあるが、日本を力の真空状態に放置して、非友好的勢力によつて容易に蹂躙されないようにすることが緊要であるという点で一致した。第二は、日本の軍国主義復活を防止するために、日本を民主主義の仲間に入れ、国際連合憲章の原則、特に国際紛争を平和的に解決するという原則を実行させるようにするという点で一致したこと。第三に、日本の再軍備の問題については、いかなる性質の提案も、検討しない考慮されなかつたこと。第四は、地域的安全保障とりきめの必要については、オーストラリア、ニユージランド代表によつて強調され、アメリカはこの見解に対して同情的な考慮を払つたということ。なお日本の再軍備につきましては、ダレス特使はキヤンベラに到着しました当日、記者団との会見で、私が日本に滯在中、日米間に日本軍備についての討議は行われなかつたと述べております。かくて約一箇月にわたりまする太平洋諸国の旅行を終えまして、二十五日ワシントンに帰還いたしましたダレス特使は、記者団に対しまして太平洋諸国地域における平和と秩序と正義とを、積極的かつ協力的な行動によつて強化する道が開かれたという確信を表明いたしましたが、ダレス特使は二十七日トルーマン大統領に対しまして、今回の旅行の成果について報告を行い、今後関係各国との協議をさらに続けられるものと思うのであります。特使一行が長途の旅行を無事終えられて、しかも多大の成果を收められましたことにつきましては、御同慶にたえないところでありまして、全国民衷心より感謝するところでありますと同時に、対日講和の急速なる促進に対しまして、今後の特使の活躍により、講和の締結される日の早からんことを心から期待する次第であります。
  13. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは質疑に移りますが、質疑は通告順によつてこれを許します。まず竹尾君。
  14. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私はただいま草葉政務次官スターリン声明に関する説明に対して若干お尋ねしたいと思います。これはこの間もお尋ねしたのですけれども、外務当局は非常に愼重の態度をとられまして、ほとんど答弁らしい答弁をされなかつた。きよう前もつてお尋ねいたしますが、私の質問はきわめて常識的であります。常識的であるがゆえに、お答弁もそうむずかしい御答弁ではございません。そこで私の答弁に対して、ある程度の親切さをもつてお答えくださるかどうか、それをまず伺つておきます。
  15. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問に対しましては十分御丁寧にお答え申上げます。
  16. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それでは私もひとつできるだけ親切にお伺いします。  まず第一に確かめておきたいことは、これは質問一つの前提でありますが、総理大臣兼外相は、今までしばしば衆参両院の本会議あるい委員会におきまして、安全保障について、外部からの侵略に対しては独力ではとうていこれを防ぐことができない、共産主義の侵攻に対して共同防衛しなければならぬ、こういうことをしばしば述べられておりました。なおこれは新聞の報道でありますが、アメリカの方も長く日本と手を携えて共同防衛に当りたい、こういうことを言つております。そこで安全保障ということはスターリン声明に関連いたしますが、主として共産主義の侵攻ないし脅威に対して、安全を保障するという意味でございましようかどうか、そこをひとつお尋ね申し上げます。
  17. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在世界におきまする武力による攻撃あるいは侵略を行つておりまする勢力が、いかなる政治的性格を持つておりますかは、従来しばしば国際情勢あるいは日本立場における総理の演説において申し上げた通りでありまして、周知のことであると存じます。これは御見解の通りであると思います。
  18. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それではそれで了承いたしました。  そこで第二にお尋ねいたしますが、ソビエト連邦はこれは一九四七年だと思いましたが、例のコミンフオルムの結成にあたりまして、それまで人民戦線の名のもとに米英と提携して、そうして当時のいわゆるフアツシヨ勢力と称する日、独、伊の打倒に当つた。これは打倒されたわけでありますが、ところが一九四七年のコミンフオルムの提携に際して、従来の人民共同戦線を放棄いたしまして、そうして米英との関係をはつきり断絶いたしました。そうしてコミンテルンの結成当時の世界政箇の遂行に乗り出して来た、こういうふうにとつて間違いないと思います。そこで今度のスターリン声明は、さらにこの世界政策の強行を裏づけるためになされた、こういうふうにとることもできる。朝鮮事件の解決にあたりましても、中共の介入はこれをソ連は是認しておると見られるだろうと思います。こういう点につきまして、外務当局の御見解をひとつ確かめておきたいと思います。
  19. 草葉隆圓

    草葉政府委員 全体の御質問の御趣旨は了承いたすのでありますが、ただ従来の政策を放棄して新しい政策にかわり、従来米英と提携しておつた政策、根本的な方針が新しくかわつて来たということはあながち考えられない。これは本質的にやはり世界共産革命の一線に乗つた方法として、あるいは提携をし、あるいは強く出るといういろいろな政策的な転換であつて、本質的なものではないと考えます。従いまして、朝鮮動乱に対する中共の介入を是認いたします点につきましては、これは同様である、御見解の通りだと思います。
  20. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私の言い方がちよつと要点を得なかつたかもしれませんが、私は人民戦線の戦術を当時のコミンテルンがとつたということ、それは暫定的な一つの戦術でありまして、それを一九四七年のコミンフオルムの結成によつて放棄した。従来のソビエトの政策は、一九一九年のコミンテルンの結成の当時、一つ世界政策としてこれを最後まで強行ずる、これはいわゆるコミンテルンの本質でありまして、それに立ち返つた。一九三五年のコミンテルンは第七回大会ですが、第八回大会ですか、ちよつと忘れましたが、その当時とられた人民戦線の戦術を一九四七年に放棄した、こういうぐあいに私はお尋ねしたわけで、政務次官が人民戦線の戦術が本質的である、こういうふうにとられることはちよつとどうかと思います。私のお尋ねはそうではない。従来のコミンテルン結成当時の世界政策に立ち返りまして、そうして米英最後に残された帝国主義国家であるとし、これを打倒して世界政策を断行するのだ、そのために今度のスターリン声明がその強行を裏づけるのではないか、こういうお尋ねなんです。
  21. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問の要旨はよく了承いたすのであります。従つて、さきに申し上げましたような状態の根本方針に基きまして、その政策、戦略戦術はそのときの社会情勢によつていろいろかえられる。この二月十六日の声明は、一方におきましては、ただいまも申し上げましたように、あるいは再軍備軍備拡充の問題について、イギリスアトリー首相に強くアツピールいたしますと同時に、一方におきましては、国連を強く非難して戦争の道具と化したと言い、あるいは一方におきましては、しかしこの戦争は避けることもできないものではないという点を強調いたしておるのでありまして、この点に対しましては、戦争不可避という問題は、西ヨーロツパ諸国並びに世界諸国は、その主導力がソビエトにあると解釈して、この言葉を強く注目いたしておると存じます。従いまして私どもも第三次世界大戦に発展するという可能性につきましては、十分人類の幸福のためにも、このスターリン首相言葉が、誠実に実行されることを望んでおるのであります。しかしただこれが一つ政策の上に現われまするものでありまするから、今後の情勢の推移に十分な関心を持たれると存じます。
  22. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それでは第三のお尋ねに移ります。ただいま政務次官の御報告にもありました通り、アトリー首相ソ連軍備の増強を非難しておる。それから最近の新聞電報で見ましても、バイカル以東のソ連の極東軍は非常に厖大になつておる。五十万といわれ、飛行機二千台といわれておる。こういう点について一衣帶水の地位に置かれておるわれわれといたしましては、特に外務当局としては、そういうような点について、具体的に極東の軍備ということについても、相当御調査をされるのではないかと思われますが、この点につきまして、できますれば外務当局の御説明をお願いいたしたいのであります。
  23. 草葉隆圓

    草葉政府委員 報道ではただいまお述べになりましたように、いろいろ報道され、あるいはすでに日本をめぐつた包囲態勢が二月をもつてでき上るというような報道等もあるようでございまするが、しかし外務省といたしましては、それらの報道は報道として承知いたします以外に、何ら確報をつかみ得ない状態であります。従つてこれに対する明確な現状をお話し申し上げる材料を持ち合せない次第であります。
  24. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そういたしますと、外務省としてはそういう調査にほとんど何も手をつけておらない、こういうことになりますか。
  25. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御案内のように在外公館を持ちませんので、直接日本政府としてこれをキヤツチする、調査をする具体的な方法を持たないことを御了承願いたいと思います。
  26. 竹尾弌

    ○竹尾委員 その調査の具体的な方法を持たれないというとこは了承いたします。しかし何か外務省として調査をされておらなければならぬはずですが、それも全然ないのですか。
  27. 草葉隆圓

    草葉政府委員 それはいつかも御答弁申し上げましたように、直接の耳がないとか、手がないところにおきましても、あらゆる感覚を利用して世界の移推につきましては勉強いたしておる次第であります。
  28. 竹尾弌

    ○竹尾委員 その点はそれではあまり追究いたしません。  それでは第四に、これは新聞報道でありますけれども、来月御承知のように米国の州兵二個師団が日本に来る、あるいは安全保障のためであればさらに米軍を増派する、こういうような報道があるのであります。マツカーサー元帥はこの間ニユーヨークで開かれた反共大会にメツセージを送りまして、これも新聞の報道でありますが、共産主義の脅威を警告いたしまして、アジアの戦場で共産主義を徹底的に打破しなければ、アジアは全部共産主義の支配下に置かれる、こういうようなことを言われておるのです。これらの事実は当然日本の再軍備と、それから今問題になつておりまする太平洋同盟の結成に具体的な関連を持たざるを得ないと思います。アメリカと共同防衛に立つ日本の決意いかんということが、ここでもやはり問題になろうと思いますが、この点につきましてさらに外務当局の御見解、心構えをひとつお聞きいたしたいと思います。
  29. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この点に関しましては総理大臣もしばしば演説をいたし、あるいは御答弁を申し上げました通りに、日本としましては自国の防衛に対して国民全部が愛国の熱情に燃えながら、これに当るということは、これは最も本質的な問題であると存じますし、またこの本質的な日本国民の心構えは永続するものであると期待いたします。
  30. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それでは第五に、スターリン声明の中で、今おつしやられた通り、全世界の人民が平和擁護の道を守り、これを最後まで守りぬくという條件が備われば、大体世界大戦は回避することができる、こういうように言つておる。これはソ連の得意とする、いわゆる平和攻勢の宣伝であるというぐあいにもとれましよう。彼らは、いわゆる平和攻勢が平和への道ではなく、われわれの見方によればこれは戦争への道である、そうして彼らの世界政策遂行のために、反面のそうした実践を行つておるというふうにとる向きが非常に多いと思います。今パリに本部を置きますいわゆる世界平和擁護者連盟、この連盟が全世界的に手を伸ばしまして、あるいはニユーヨークに、あるいはパリに、モスクワに、日本に、そうした世界平和擁護者大会を開いております。この影響は特に日本においても見のがし得ないことであろうと私は思いますが、このいわゆるソ連の平和攻勢に対して、何か、日本として手を打つべきではないかとも考えられますが、この点につきまして当局の御意見を承りたいと思います。
  31. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お説のように世界平和擁護連盟ないし協議会、あるいは世界平和会議等が逐次開かれて、昨年は十一月、ポーランドで行われ、第二回は、つい二十六日をもつて終了いたしました状態であります。この前後におきましても、あるいはストツクホルムにおきまする大会、この決議に現われたストツクホルム・アツピール等によりまして、世界平和運動が強く世界に行われておりますことは承知をいたしております。またこれが一つの共産主義運動の平和運動としての一環をとつておることも私自身承知をいたしておりますが、しかしこううい運動に対しまして、日本政府がこれをかれこれ言う立場でもありませんし、現在日本政府としてはこれに関していかような方法もとり得ないことは御承知と存じます。
  32. 竹尾弌

    ○竹尾委員 これは最後のお尋ねになりますが、ただいまのスターリン声明に関する御説明の中で、ソ連のこの声明国連脱退の宣伝である、そうした説はあまり支持できない、こういうようなことがございましたが、対立が激化すれば、あるいは国連からソ連が脱退しないということは、これは保証できないと思いますが、その点について当局の御見解はいかがなものでしようか。
  33. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは先にも御説明申し上げましたように、一部の評論あるいは見解の中には、国連脱退をにおわせる伏線ではないかというように解されておる向きもあるようでございますが、これは多くの与論の協力を得ておるという程度に至つていないので、従つておそらくこれは今後の問題でありますので、私どももこれに対してかれこれ批評することはできないのでありますが、大体世界全体のこれに対する批判、輿論といたしましては、ソ連国際連合脱退という意思の前提ではなかろうということが、多くの批判の一応の結論ではないかと存じます。
  34. 竹尾弌

    ○竹尾委員 外務当局としてはいかがでございますか。
  35. 草葉隆圓

    草葉政府委員 外務当局がこれを批判することはどうかと思いますが、私どもも多くの結論に大体同感し得ることではないかと考えます。
  36. 竹尾弌

    ○竹尾委員 これで私質問を終りますが、外務省といたしましては最近非常に親切に御答弁くださいまして、私ども多いに満足いたします。
  37. 守島伍郎

    ○守島委員長 仲内君。
  38. 仲内憲治

    ○仲内委員 私は先に通商局長にお尋ねしたいと思うのですが、日本繊維協議会の当委員会に対する陳情によりますと、わが国の繊維製品の南アフリカ連邦向け輸出に対して、従価五〇%の輸入関税を課せられておる。これがためわが国の毛織製品及び綿製品は、ほとんど南阿向けの輸出が杜絶の状態にあるということでありますが、はたしてこれが事実であるかどうか。
  39. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 もし現在それが事実であるかとおつしやいますと、事実ではございません。もう少し詳しく御説明申し上げますと、南阿連邦は八月二十五日に、ある種の商品に対して最高関税を課するという措置をとつたのであります。その適用を受けました国は、関税及び貿易に関する一般協定、いわゆるガツトと申しておりますが、それの非参加国、それから南阿連邦と貿易協定を結んでいない国に適用されるのであります。それらの国々はすなわち日本、メキシコ、ポルトガル、西ドイツ及びソ連衛星国ということになるわけであります。その結果といたしましては、わが国の羊毛製品の輸入関税は、ただいま仰せになりましたように、おおむね約一〇%から五〇%、綿製品は一〇%から三五%に引上げられたのであります。その結果といたしまして、わが国の綿製品及びなかんずく羊毛製品、これは南阿はわが国の一番大きな得意先でありますが、これらの輸出が非常に停頓いたしまして、羊毛製品のごときはほとんど契約ができないというふうな状況に立ち至つたのであります。日本政府当局といたしましては、これが撤廃にあらゆる努力を払つたのであります。これは通じ得るあらゆるチャネルを通じましてその撤廃に努めたのであります南阿政府の回答は、今回の南阿政府の関税の引上げ措置は、一般的に最惠国並びに特惠国以外の国を対象としたものであつて日本に対する差別待遇では絶対にないということ、それからその理由といたしましては、国内産業保護のためにとられたものであるということ。それから西ドイツはその後除外されたのでありますが、これを除外いたしたのは、一九四八年のガツトの加盟国の署名している西ドイツに対する最惠国待遇に関する協定というのがございまして、結局西ドイツをガツトの加盟国に招請するというふうなことがございました結果、その協定に従つて西ドイツを除外した。決して日本政府そのものを単独にねらつて、悪い特別待遇をやつたわけでは絶対ないわけでありますという回答があつたのでありますが、その後もいろいろ努力をいたしました結果、ことしの一月二十日になりまして、南阿の政府はある種の日本品に課税したところの高い輸入関税を引下げるということを発表いたしました。その結果綿布のうち、あるものは最高五〇%から二五%、それから羊毛製品中のあるものは最高五〇%から二五%、それぞれ引下げられるということになつております。
  40. 仲内憲治

    ○仲内委員 ただいまの差別待遇でないという御説明はとにかくとして、要するに日本が南阿連邦と特惠もしくは最惠国協定がないということが一番問題であると思うのであります。今の御説明にもありましたように、同じ占領下にある西ドイツは、すでに昨年の十月以来高率関税を除外されておるという事実があるにもかかわらず、日本は何ゆえにこの恩惠に均霑できないか。これは要するにガツト協定に参加しておらないということでありましようが、何ゆえにガツト協定に日本西ドイツと同様に参加することを認められないか、その点伺いたい。
  41. 草葉隆圓

    草葉政府委員 西ドイツにつきましては今局長からも御説明がありましたが、一九四八年の九月に十三箇国の間でドイツの輸出品に対しまして、最惠国待遇を与えるという趣旨の協定が成立いたしました。またイギリスフランス、ギリシヤ、トルコ、アイルランド、イタリア、韓国、この諸国はそれぞれ米国との個別協定によりまして、最惠国待遇を与えることを約束したのであります。南阿連邦はさきに御説明のあつた通りであります。わが国につきましては米国が過去三回にわたりまして——一九四九年の第三回総会、それから五〇年の二月から四月まで行われました第四回総会、それから昨年の十一月から十二月までに行われました第五回総会、この過去三回にわたりましての各総会に対しまして、わが国の輸出品に対する最惠国待遇の許容をアメリカ提案してくれましたが、実はその都度不成立に終つておるのであります。アメリカとの個別的協定によりまして最惠国待遇を約しておりまするのは、ギリシヤ、トルコ、アイルランド、イタリア、韓国の五箇国であります。貿易協定によりまして同様の待遇を与えることを約しておりますのは、ビルマ、パキスタン、台湾、タイ、フイリピン、インドネシアの六筒国であります。ただいまお話のように、ガツトの加盟ということは、その総会にわが国を招請することを決定する必要がありまして、この決定がされてからこれに参加をする、こういう順序に相なるのであります。
  42. 仲内憲治

    ○仲内委員 この問題の解決は、要するに日本がガツト協定に参加を待つのが本筋の解決であると思うのであります。ひとり関税の問題に限らず、講和を迎え、そして経済自立を念願する日本としましては、要するに国際経済協定すなわち国際貿易憲章を初めとし、このいわゆるガツト——関税並びに貿易一般協定に加入することが、一番望ましい解決方法であると思われますし、またいわゆるダレス原則の第五項にも、新しい通商條約の締結に至るまで、日本国は通常の例外を除いて最惠国待遇を連合国に与うるということを提案されておるのでありますが、これはその裏返しとして、同時に日本にも相互的に相互主義の原則に基いて、最惠国待遇が与えられるものとわれわれは了解するのであります。現に最近は総司令部のメモランダムによりまして、来月の半ばから連合国の多数の国々と直接交渉の権限が与えられるように報道せられておるのでありまするが、講和前におきましても、この新しい覚書に基いて、こうした協定への参加についての努力を、政府は続けられる方針であるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  43. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問の御趣旨はよく了承いたすのでありますが、ただいまも申し上げましたように、ガツト総会が国際関税会議わが国を招請する必要があるのであります。しかし今申し上げました昨年の十一月から十二月に開かれました第五回総会では、かような決定はなされておらないのであります。従つて第六回総会が本年の九月にジユネーヴで開かれることになつておりまするが、国際関税会議は今のところ近い将来開かれる見込みは少いのであります。それは実はアチソン国務長官が二月二十三日下院におきまして、一九五四年の六月までの間は、大規模な国際関税会議は行われない模様であるという趣旨のことを言明されたのであります。従つて第六回総会におきまして、次回の関税会議にあたつて日本を招請することが決定いたしましても、アチソン長官などの言葉検討いたしますと、必ずしも五四年とは申さずとも、幾分か会議の開催期日が遅れるのではないかと予想されるのであります。こういう意味におきまして、御趣旨の点は十分了承いたしまするが、事務的ないろいろな手続等の問題が以上申し上げたように起つて参りますので、この点御了承願いたいと思います。
  44. 仲内憲治

    ○仲内委員 そうすると、日本が現在最惠国待遇を受けておる国は、どことどこでありましようか。
  45. 草葉隆圓

    草葉政府委員 さつき申しましたようにギリシヤ、トルコ、アイルランド、イタリア、韓国でありまして、貿易協定によりまして同様の協定を与えておりますのは、ビルマ、パキスタン、台湾、タイ、フィリピン、インドネシア、以上の六箇国であります。
  46. 仲内憲治

    ○仲内委員 主要な国でまだ日本に最惠国待遇を与えておらない国が非常に多いと思います。また今度の総司令部のメモランダムでは、直接交渉のできる相手のうちに、南阿連邦は入つていないように思うのであります。これはおそらく英本国との折衝ということであろうと思いますが、この英本国に対して、この問題の解決ないしは英本国と日本との最惠国待遇についての話合いをする用意がありやいなや、お伺いいたしたいと思います。
  47. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはお話のように貿易の進展上最も大事な問題でありますから、政府はできるだけの方法を講じたいと存じまするが、ただ関税等の問題は、先ほど申しましたような問題を含んでおりますので、いろいろと問題があろうと存じまするが、御趣旨の点をよく了承いたしまして、つとめて御希望に沿うようにはいたしたいと存じております。
  48. 仲内憲治

    ○仲内委員 もう一点最後に、講和條約も近づき、また在京各国代表との直接折衝も認められるという段階に達し、しかもわが国経済自立達成のためには、各国との貿易、通商の関係の深い国とできるだけ早く通商協定を結ぶ、あるいはまた講和前においても、ただいまお述べになつたガツト協定、ブレトン、ウツズ協定あるいはパナマ憲章への参加を要請するというような、講和後の経済自立に備えての準備が、今日においてきわめて必要が多いと思うのであります。この点にかんがみまして、日本の国際通商の基本的方策を立てる必要があることはもちろん、できるだけこれが実現に努力を開始すべき段階にすでに達しておるというように思うのでありますが、そのためにはいわゆる多くの国々との通商折衝、通商協定の面に積極的に準備を整え、できるものは実現するという態勢を整える上において、現在の外務省の機構ではあまりに貧弱ではないか。できるなれば、この際従来の通商局というものを——、今日通産省に通商局はありまするが、もうすでにこれの性格とはおそらくわれわれは違つたものと了解しておるので、外務省の従来のいわゆる通商局、この通商局の設置ないしはこれらの観点かちする外務省の機構の整備の刷新について、特に政務次官から御意見があれば伺いたいと思います。
  49. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話の点はよく了承いたすのでございます。また講和前に交易協定締結権を日本に移すというようなことは、実は問題自体がまだ具体化しておらないのでありますし、従つて機構の整備につきましても、そういう関係から現在のところ、御趣旨はよく了承いたしまするが、具体的な考えを持つておらないであります。但し、一般的に講和に関連いたしましたいろいろの機構問題につきましては、現在外務省として十分これに即応する整備を整えねばならないと、目下十分検討を加えておる次第であります。
  50. 植原悦二郎

    ○植原委員 ちよつと関連して……。仲内君のただいまの御質問に対して南阿の日本に対する関税ですな、ガツト協定があるとかないとかいうためのお言葉であつたと思いますが、形式上はその通りだと思います。ただ特に注意を要することは、南阿に対する羊毛の英国との競争は日本だ。そこで形式はそうだが、実質は日本のねらい撃ちだ、と、こう解釈すべきじやないかと思うのです。そうすればその見地から将来の問題を考えなければならないと思うのですが、形式はなるほどそれで一応弁明はできますけれども、ほかに南阿に対して羊毛品を入れる国はないのですから、今御指摘になつた国々のうちで、結局英国との競争権は日本が一番多いんだから、つまり繊維品に対してそういう名目のために日本に対して特殊扱いをしたものであると解釈して、将来の策を立てるべきではないかと私は考えます。あえてお答えはせないでも、その点は今御注意を願つておきたいと思います。
  51. 草葉隆圓

    草葉政府委員 十分今の点は了承いたす次第であります。
  52. 守島伍郎

    ○守島委員長 文部大臣がお見えになりましたが、文部大臣は午後のお約束があるのでお急ぎになるそうでありますから、順序を違えまして北沢君に発言を許しますが、文部大臣に対する発言を先にして、ほかのはあとにして……。
  53. 北澤直吉

    北澤委員 私は文部大臣に対しまして日米文化の交流の問題につきまして伺いたいのであります。先般ダレス特使日本に参られまして、吉田総理との間に講和に関連する各種の問題について、お話があつたのは御承知の通りでありますが、ダレス特使日本を去るにあたりまして声明を出されまして、その中には、われわれは両国文化関係の発展について話し合つた、われわれが将来求める両国関係は、単なる契約上経済上の結びつきにとどまらないで、両国間には人間的な友好と相互尊重の感情が必要である、われわれは両国民が相互に知識、文学芸術の結晶を吸收し、創造的持続的な精神力の根源をわかち合うことによつて、両国民が利益を与えられるような協力関係が生れることを待望しておる。これがダレスさんの声明でございます。そこで、このダレス特使と一緒に参られましたロツクフエラー氏があとに残りまして、日本の各方面の人たちとお話合いになつて、その結果、ロツクフエラー氏が日本を去るにあたりまして、これも一つのステートメントを出しておるのであります。それによりますと、日本で日米文化の交流について各方面の專門家とよく話し合つて、自分は非常に興味が深かつた、その中で特に自分が有望であると思つたのはこういうことである、とこう申しまして、第一は日米間の人の交流と申しますか、こつちから留学生を送るとか、向うから交換教授をよこすとか、こういうような日米間の人の交流、こういうことは非常に重要であるから今後ともその人をふやしたい、特に若い人々に重点を置いてやりたい、こういう点を強調しております。それから日米間の文化交流の機関として、いわゆる文化センターと申しますか、インーフオーメーションセンターを置く、こういう考えが一つ出ております。それから外国から日本に学者が来た場合に、日本の学者と共同して研究をするセンターをつくる、こういう点をあげております。それから両国間の美術品の交換という点をあげております。最後に、書物の飜訳の問題がこれまで非常に日米間の文化の交流に障害をなしておつたのだが、飜訳出版の問題についても努力したい。こういうふうに具体的に日米文化の交流について意見を出しております。この意見については自分はアメリカへ帰つたあと、ダレス特使に勧告したい、こういうふうに述べられているわけでありますが、こういう具体的な日米間の文化の交流の方法について、文部大臣はいかにお考えになつているか。それからまたこの具体的な案を一体今後どういうふうに日本側としてお進めになるお考えでありますか、伺いたい。
  54. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は先ごろ衆議院の予算委員会でもつてこういう意見を述べました。すなわちただいま申されたこととほぼ一致することでございますが、どういうことによつて文化の交流ということをやるかというならば、私が望むことの第一は留学生制度の確立である。また第二には教育、学術及び文化に関する資料の交換。第三番目には、教職員、研究者その他の文化関係者の交換である。第四番目には文化アタツシエの設置である。第五番目には著作権の問題。こういうことを述べましたが、ただいま伺います点もほぼこれと一致いたしていると思つております。こういう点は、たとえば留学生の交換というようなことも、すでにフランスとも、平和條約はできませんけれども、行つていることでございまして、私は非常にこれが両国の文化の上にも、また国民相互の了解という上にも役立つていると思つております。だから今後もそういうことをアメリカともやつて行くということ、これはそうむずかしいことでなくてできる。また教授の交換というようなことも私はそう困難なくしてできることで、現にアメリカからたくさんの教授が来て、こちらの大学でみなやつておるのですからして、そういう点も今後そう困難なくて行われると思つております。ただ飜訳権のことなどは、これは困難があるかもしれませんが、これもどうにか打開して、飜訳というようなものが自由になされるようにすること。また文化アタツシエの設置ということでも、そうむずかしいことではなくできることではないか。今あげられたような諸点は、規模の大小はしばらくおくとするならば、そうむずかしくなく実現できることだと私は思つております。アメリカから学ぶべきことも非常にあり、同時にまたわれわれの文化の持つている特色、そういうものもこちらから向うに伝達するに値することが多々あると信じております。そういう意味で文化の交流が行われれば、両国の了解にも役立ち、非常によいことではないか。ただいま述べられたような諸点はすべて賛成でもあるし、またその実現を期することは、必ずしもそうむずかしいことではないと私は思つております。
  55. 北澤直吉

    北澤委員 ただいま文部大臣のお話にありましたように、日米文化の交流でありますからして、向うからばかりもらうのではなくて、こちらからも与えなければならぬわけでありまして、この点は現にロツクフエラー氏が立つ前に、私も一時間ほどお話する機会があつたのでありますが、ロツクフエラー氏もこう言つておりました。科学の面においてはアメリカ日本に与えるものがあるが、哲学とか美術——アートというものにつきましては、アメリカ日本に学ばなければならぬ点がたくさんあるから、日米文化の交流というのは相互的に行くのだ。一方からだけ与えるのではなくして、お互いに与え得る関係にあるのだからして、そういう相互的な関係において両国の文化の交流をやつて行きたいという話をしておりました。  そこでお伺いしたいのは、留学生の交換等の問題でありますが、現在日本の留学生がアメリカに行く場合におきましては、大体ガリオア資金で行つていると思うであります。これが講和條約ができまして、ガリオア資金等がなくなつた場合におきましては、アメリカへ行く日本の留学生は、日本政府の費用でやるようにお考えでありますか。それとも米国の方からある形式の援助を受けて、あるいはロツクフエラー財団の援助とか、そういうふうな関係においてやるお考えでありますか。その点を伺いたいと思います。
  56. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまおつしやいましたように、科学とか技術という点においては、われわれは大いに学ばなければならぬけれども、しかし同時にまたこちらから向うに伝えるに値することは多々あると私は思つております。ことに思想、芸術というような面においては多々あると思つております。そういう点はすでに申し上げた七とでございますが、留学生を出すことについて、一体それは日本の金であるのか、向うから何か援助を受ける考えなのかというお尋ねでございますが、私の考えとしては、向うがこちらに積極的に補助をしてくれようというならば、喜んでそれに応じたいと思います。しかしこちらから向うにそのために金を出してほしいと言うことは、国家としては言う立場にないと私は思つております。金持ちを見れば、すぐ何か寄付をほしいというようなこじき根性では、とうていこの日本国は立ち行かないと思つております。従つて自国の力でやれば、今までのようにたくさんの留学生は出せないでしようが、国力の及ぶ範囲で留学生を出せばいいのだ。しかし向うから好意ある提供を受けるならば、それはもちろん喜んでお受けしたいという考えでございます。
  57. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの大臣のお話では、向うから援助してくれるというならば喜んで歓迎するが、こちらからそういうものは要望すべき筋合いではないという点は、私は全然同感でございます。そうしますと、日米文化の交流につきましては、日本側としても予算をとつてやらなければならぬと思うのであります。もちろん向うから援助があればいいと思いますが、そういうものがない場合におきましても、両国の友好関係を増進するという意味におきまして、私は文化の交流面において相当経費が必要だと思うのであります。ところが二十六年度予算を見ましても、日米文化の交流という方面に対する費用は、予算に計上されておるのが非常に少いと思うのであります。両国の友好関係を画期的に増進しようということになつておる今日におきましては、今回衆議院を通りました二十六年度の予算ではやむを得ないのでありますが、文化の交流について、もつと画期的な予算を計上するように、特に文部大臣の御努力をお願いしたいと思いますが、その点についてお伺いいたします。
  58. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまでもアメリカから来る教授のために四千八百万円計上しております。ただ留学生の費用としては、それに対する事務費のようなものしか計上しておりませんが、しかし計上はしております。今後も十分なことは日本の経済状態においてできませんけれども、ある程度のことはできると私は思つております。
  59. 北澤直吉

    北澤委員 結局今後日本の進み方としましては、この間も総理が議会でお述べになりましたように、結局日本アメリカが共同して共産主義の侵略に対抗して行くということになるのでありまして、政治、経済あるいは文化各方面におきして、今後両国の関係をますます緊密にすることが、私は特に必要だと思うのであります。特にその中で最も必要なことは、何と申しましても、その底に流れるところの両国国民の精神的な結合だと思います。もちろん経済的にも政治的にも提携しなければならぬのでありますが、そのもとをなすところの両国民のほんとうの心からの理解、尊敬と申しますか、提携が基礎になつて、初めて両国の共同防衛ができると私は思うのであります。そういう点から申しまして、私は文化的な提携ということに非常に大きな期待を持つておるわけでありますが、どうぞ大臣におかれましても、こういう点に重点を置かれまして、予算の裏づけその他については、こり上とも御尽力をお願い申し上げまして、質問を終ります。
  60. 山本利壽

    山本(利)委員 関連して簡単に文部大臣及び外務政務次官にお尋ねいたしたいと思います。ただいま北沢委員からの質問に対する御答弁にありますごとく、日本の留学生派遣あるいは両国の教授交換等によつて、両国の文化交流がなされるということは、まことにけつこうなことでありますが、この際特に当委員会として考えなければならぬことは、それらのたくさんの人々を外交的にも有効に使うという観点からの、何らかの指導が必要ではないかと私は思うのであります。現在いまだ大公優等の派遣もないこの際、多数の日本の若い人にあるいは学徒の人々がアメリカ国民に接して、いかに日本が文化主義あるいは民主主義国家になりつつあるかということ、また日本国民の感情をアメリカ国民に伝えさせるということが、国民外交の重大なる観点ではないかと思うのであります。単に知識を得るとか、あるいは日本の文化芸術を伝えるとかいうことも、まことにけつこうでありますが、その上に今の外交的観点に立つて行動せしめる。とかく日本人というものは非社交的でありまして、ことに学資金その他に非常に乏しい場合において、アメリカにおいてどのような生活をしておるか。単に貧乏人の子供を金持ちが頂つて何か自分たちのものを与えて返すといつたような状況になることは、私は外交的には好ましくないと考えるのであります。だから文化交流という意味だけでなしに、外交的観点から、先ほど北沢委員の言われたように、相当の資金を組んで、この人々を活用すべきであると考えるのであります。決して悪い意味でこの学徒たちを外交的に使おうというのではありませんが、よい意味においてほんとうに国民外交の第一線たらしめなければならぬと考えますが、すでに文部大臣及び外務省方面においては、日本のこういう点をアメリカ国民によく伝えようというような資料を次々にお与えになつておるのかどうか。今日まではただめいめいかつてなことを言つて、戦災にあつたみじめさであるとか、あるいは戦争に反対の空気だとかいうようなことを、学生、学徒が単にめいめいに伝えておるのか。そこのところがいかに指導されておるか。もし指導されていなければ、今後どういうようなお考えを持つておられるか。この点を文部省及び外務当局にお伺いいたしたいのであります。
  61. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は留学生などについて一番必要なことは、結局において両国がよく理解し合うということだと思います。それについては、私どもとしては留学生がほんとうに日本人としての自覚を持つ——一方においては、こういう非常に間違つた戦争をしたことについでの決定的な敗戦意識を持つていると同時に、他方においては、日本人というものの持つておる長所というか、特質というか、そういうものに対する自覚を持つて、傲慢でもなければ卑下もせぬというほんとうの意味のプライドを持つて、よき日本人として彼らの間に接触して行くということが、一番大きな外交であると思います。そういう観点から、ほんとうに日本人としての自覚を持つと同時に、プライドを持つて、卑下することもなく、真実に向うの知識を吸收することに力を注ぐということを、今まではやつて来ておりまして、特に外交的なことは考えておりませんが、私はただいまも申されましたように、作意的なことは非常にむずかしい点があつて、よき日本人としてほんとうの意味の勉強をするということが、最もよい外交であるということを考えていました。しかしただいまおつしやるようなことも、今後は私どもの方でも研究し、考えて行かなければならないと思います。ただいままでは以上述べましたような観点から、留学生を出しておつたということを申し上げたいと思います。
  62. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問の点はまことに適切な御質問であり、よく了承いたします。また私個人といたしましても、結局現在の留学生その他一般人たちが向うに行つて日本人の美しさを示すなら、これが無言の外交になつて来るという点におきましては、まつたく同感であります。従つてそのような状態の人が多く行つてくれるということが、百の文章よりもいい場合が多かろうと思います。また具体的にこれを事務的にやります上に、いろいろな関係が生ずる場合もありましようが、よくこの点につきましては御趣旨を尊重いたしまして、また文部省等とも相談いたしまして、今申し上げたように、りつぱな美しい日本人が行つて、そのありままの姿において勉強をするということ自体が、無言の外交になるようなやり方がとられることを望んでおる次第であります。
  63. 山本利壽

    山本(利)委員 もう一つ申し上げますが、ただいまの点に関して外国へ留学した場合に、日本の資料を持つて来なかつたということをほとんどの学生が痛感しておると思うのであります。場合によりましては、留学生そのものの採用試験というものは、語学本位でやられがちであろうと思いますから、出発します前に、少くとも一箇月とか二箇月というものをどこかに收容して、先ほど申し述べましたように、どこの国へ出してもはずかしくないような一つの常識、及び日本人として伝えさせなければならないことを教育してから派遣されるということも、非常にけつこうなことだと思います。いろいろの点については、なお御研究の上おやり願うことにいたしまして、私の関連質問を終ります。
  64. 守島伍郎

    ○守島委員長 菊池君。
  65. 菊池義郎

    ○菊池委員 日本の漁船が東支那海におきまして、しかもマツカーサー・ラインの圏内において中共の軍隊につかまつているということが、二十七日の水産委員会でも大分問題になつておるのでありますが、沿岸三海里以内に乗り込んだというならば拿捕する権利もありましようが、明らかに彼らのやり方は国際法を侵犯するものであると思うのであります。それで日本政府といたしまして、今日こういう問題について、加盟国ではありませんから国連に提訴する資格はないわけでありますが、司令部に対して何か陳情とか折衝とかをやつておられますか、どうですか、これをお伺いいたしたいと思います。
  66. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまお話のような具体的な問題が、最近ひんぴんと起りつつあるようであります。まことに遺憾に存ずる次第でございますが、この問題につきましては、それぞれ関係方面ともよく連絡をいたしながら、現在も進んでおる次第であります。かような事件がなるべく起らないように、また起つた場合の処置につきましては、ひとつ善処したいと存じます。
  67. 菊池義郎

    ○菊池委員 ワシントンのニユヨーク・タイムズからの電報を見ますと、ダレスさんが向うの国務省に対して出した報告の中に、アメリカの兵隊を駐在させる場合に、その反対給付としてのいかなる要求も日本にはしないであろうと言つたということがあるのでありますが、これまで私はたびたびこれを質問しても答えられなかつた。この間総理もまた、この経費は向うで持つということを、自分がもし前に言つたとすればそれは取消すということを言われたのであります。ダレスさんが向うでこういうことを発表しておる以上は、日本政府といたしましても、これを国民の前に発表して、安心を与えた方がいいと思うのでありますが、これは事実でありましようか。総理とダレス氏との会談内容は、みんな筒抜けにわかつておるとこの前おつしやつたのでありますが……。
  68. 草葉隆圓

    草葉政府委員 新聞の報道で、さようなことがあるという報道そのものは承知しておりますが、今のお話のように、総理大臣が取消す取消さぬという問題は、別にあらためてここで御答弁申し上げる性質のものではないと存じます。
  69. 菊池義郎

    ○菊池委員 私は向うの発表と歩調を合せて、日本の方でも発表すべきものであると考えるのでありますが、それはどうお考えになりますか。
  70. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは必ずしも向うが発表したという形のものではないと存じます。いずれさような状態になりますならば、お話のような内容その他も含めた発表等もある時期があろうかと存じます。今のお話はアメリカの報道として伝わつておるのでありますから、さようお答えを申し上げます。
  71. 菊池義郎

    ○菊池委員 二十六日にダレス氏が国務省に報告したその報告書の中に書いてあるというわけでありますから、これは決してうそではないと思います。また日本の外務省当局も知つておられるはずなのでありますが、こういうことは皆さんも御存じありませんですか。ちつともさしつかえない。隠す必要のないことを何も隠すには及ばないと思います。こういうことはどしどし発表して、国民に安心させたらよろしいと思う。これは国民の喜ぶことです。
  72. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見のような点も多々あると存じます。しかし今アメリカでの報道は、さような一種の推測があるいは正しいとも考えられますし、また正しくないと言える場合もありましようが、これは一種の報道であります。従つてこれから講和の内容がだんだん固まろうといたしております際に、先般総理はその問題でもしそういうことを言つたとするならば、それは取消すというような意味のことを言われておりますので、これはあらためてここで申し上げることはどうかと思う次第であります。
  73. 菊池義郎

    ○菊池委員 それではその発表はかんべんして差上げます。  またこれも報道にすぎないとおつしやるかもしれませんが、同じ通信の中に、日本の領土保全については、アメリカは義務を引受けないということを、ダレスさんが吉田総理に強調したということが書いてありました。それは事実でありますか。こういうことは何も秘密にする必要は毛頭ない。
  74. 草葉隆圓

    草葉政府委員 それも、なるほど新聞にはそういう言葉の訳し方で出ておりまするが、原文等を見ませんと、今はつきりこの訳が妥当であるかどうかということも、実はお答えしにくいと存じます。
  75. 菊池義郎

    ○菊池委員 さつき島津さんにその原文の話をしましたが、新聞社にも英語のできる人は多々あります。まさか間違えるようなことはありはしませんよ、そんなばかなことは。これは答弁にならぬ。もしそういうことがあつたといたしますと、実に私らは心配でならない。いくら日本アメリカで軍隊をとどめてくれたとしても、それはほんの形式だけの、申訳の駐兵にすぎないということになりますので、たいへんなことです。北鮮が南鮮になぐり込みをかけましても、国連が奮起いたしましたが、日本の場合、ああいうふうにもし共産軍が侵入した場合に、日本の領土保全について引受けないということを強調しておりますので、これは実に心配な話である。結局アメリカの駐兵はほんの形式にすぎないというようなことも判断できるわけで、実に心配でたまらぬのであります。御答弁ができなければ、これもかんべんしておきます。
  76. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実はこのことをもつて強く答弁を求められるのは困難かと存じます。この報告書の中にも、次のように強調したと解せらるるというので、その解せらるるということが必ずしも妥当なことかどうかは今後の問題でございまして、一応レストン記者はその感覚においてかように打電しておりますので、これをただちに国際的な問題として解決することはいかがと存ずるのであります。
  77. 菊池義郎

    ○菊池委員 朝日新聞には、強調したとはつきり言い切つておりますが、これはどうでもいい。  先ほど仲内委員からも触れたことでありまするが、総司令部許可によりまして、日本は二十何箇国と直接に外交の折衝ができるような立場に立たされたのであります。これについて外務当局といたしましては、今後のわが対外国策に関しまして、必ずや抱負経論が山積することと思うのでありますが、今後の直接交渉に関して、何らか具体的の計画がありましたら、お示し願いたいと思います。
  78. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は先般許可を得ましたのは、まだ直接の関係国との外交折衝までは参つておりませんので、東京にありまするミツシヨンとの事務的な連絡も、従来は総司令部を通じていたしておりましたのを、直接にいたすことができるようになつたのでありまするが、しかしお話のように、対日講和を目睫に控えたような状態におきまして、外務省は事務的にもあるいは政策的にも、いろいろと解決すべき問題が多いと存じております。しかしここで具体的に御相談申し上げ、御発表申し上げる段取りにはまだ至つておりませんが、さような状態になりますると、もちろん御相談申し上げたいと思つております。
  79. 守島伍郎

    ○守島委員長 並木君。
  80. 並木芳雄

    並木委員 私は賠償問題について質問したいと思います。賠償問題はだんだん好転しておると考えておつたのですけれども、さつきの草葉政務次官の御報告にもありました通り、フィリピンなどではやはり相当の要求をされるように報ぜられております。そこでこの問題は、今度の講和会議を迎えるについて日本としては重大問題の一つであろうと思います。先般吉田総理大臣が、予算委員会で八十億ドルなどというものを要求されても支払い能力がない—私は聞いておつたわけではありませんから、はつきりは知りませんけれども、あれだけの答弁を見た感じでは、非常にすげない感じがする。賠償問題などというものに対して、日本がそういう態度や気持でいいのかどうか、相当重要な問題であろうと思いますので、こういう点から二、三お聞きしたいと思います。まず、この間ダレス氏がおいでになつたときに、吉田総理からこの問題について相当話があつたと思うのですが、政府としてはどういうようなことをダレス氏に申入れをし、またダレス氏からどういうような話があつだか。吉田総理大臣が八十億ドルなんかとても払えないと言い切ることそれ自体、私はやはり相当の根拠がなければできないことであろうと思う。そういう点からひとつ答弁をお願いいたします。
  81. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ダレス・吉田会談と一口に申しますものの内容、ことに賠償等の問題の内容につきましては、実は総理が御報告申し上げ、あるいは予算委員会、本委員会等で申し上げました範囲でありまして、それ以上は実は申し上げる材料はないのでありますから、その点よろしく御了承願います。
  82. 並木芳雄

    並木委員 ダレス氏が訪問されて、賠償に関する問題は、今までよりも日本に有利になつたと思われる節があるかどうか。
  83. 草葉隆圓

    草葉政府委員 その点については、ここでお答えするのは差控えたいと思います。
  84. 並木芳雄

    並木委員 フイリツピンで八十億ドルという要求がダレス氏に出されたという報道を聞いて、今日政務次官としては、これに対してどういうふうにお感じになりますか。
  85. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは前々からフイリピンにはさような報道が伝わつておりまするし、それとにらみ合せまして、ダレス氏が行かれました際にも、話題の一つとして、先に申し上げましたように大きい話題の中心になつて現われて来たと存じます。
  86. 中山マサ

    ○中山委員 関連して、これも新聞の報道でございますけれども、フイリピンからある視察団とでも申しますか。それが日本へ来て、第一の報道は、この賠償金について、どこまで取立てることができるかということを調査に来るという一つの報道がありましたが、第二の報道では、それは調査ではない、日本のいろいろな機械がアメリカ物よりも向うに使用上便利な点があるので、それを買いつけるために見に来るのだというような一つの報道がございましたが、外務省としてはどちらが真相であるとお考えになるのでございますか。
  87. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は私どもも、ただいまお話にありましたように、報道としてはよく聞いておりまするが、まだ具体的にこちらの方には入つておりません。従つて具体的に入りましてから、またいろいろ御相談いたしたいと思います。
  88. 並木芳雄

    並木委員 その点、現在経済調査団が見えておるそうですけれども、それは賠償の調査とは全然関係がないのですか。
  89. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 お答えいたします。われわれの関係しております範囲においては関係はございませんように承知しております。
  90. 並木芳雄

    並木委員 フイリピンでは電気の機械あるいは生糸などというものを現物で取立てようという考えもあるようです。またダレス氏がアメリカへ帰られての報道によりますと、砲の照準器ですか、きようの新聞でちよつと見たのですけれども、何かそういう要するに戦争の役に立つようなものを日本でつくらせるようにしたいというようなことが出ておるのです。そうすると、こういうようなものがだんだんと現物の賠償物資に振りかえられて行く可能性があるのではないか。そこでフイリピンの現物賠償に対する要求の態度というものを、どういうふうに政府は考えておられるか、お聞きしたい。
  91. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のような新聞の記事はありましたが、それは私の見ましたところでは、アメリカ日本の工業力の向上のために、あるいはパラシユートとかあるいは絹製品とか、望遠鏡というようなことで直接フイリピン関係ではなかつたのではないかと記憶しておりますが、これは記憶違いかもしれません。将来のフイリピン賠償にそういう傾向があるかどうかという問題が中心の御質問の点であつたと存じますが、これは何ともお答えいたす限りではないと存じます。
  92. 並木芳雄

    並木委員 フイリピン、濠州をまわられて、太平洋地域協定とかなんとかでいろいろ相談された結果の報道でございますから、やはり私どもはそれに対して相当注目をするわけです。そういうところから、将来太平洋同盟というようなものができたときに、その一環として日本から取立て得るものとして、こういうようなものが話題に上つたのではないかと思うのです。日本として吉田総理のように、八十億ドルなどというものを支払う能力は全然ないのだ、というような態度で臨んでいいんですかどうですか、そういう点をあわせて質問いたします。
  93. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今の報道は、日本の工業力を向上するためには、どういう品物がさしあたつていいかという問題の第一として、あるいは照準器とか、あるいはパラシユートであるとか、あるいは絹製品とかいうよ6なものが取上げられているという報道であろうと思うのであります。従つて直接賠償関係ではないという気がいたします。
  94. 中山マサ

    ○中山委員 先ほど政務次官のお話の中に、この八十億ドルを默認するならば、というお言葉がございましたが、その默認という意味はどういうことでございましようか。今は払わないが、いつの日にかは払うという意味でございましようか。こういういわゆる精神的責任があるという意味なのか、そのデリケートなところを御説明願いたいと思います。
  95. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は私も御報告なり御説明で申し上げております言葉をそのまま申し上げたので、その默認の内容、あるいはアメリカが持つ道徳的な内容が、いかなる内容であるかはちよつと御返答いたしかねると存じます。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 関連してさて。賠償問題で私どもが一番ただいまのところ関心の的としておりますのは、根本方針だと思います。従来日本に対する賠償は、既存の施設等につきまして一回賠償の方針で行くというように考えられておつたのでありますけれども、しかし私は必ずしもそういう方針ではないと信ぜられる報道もあると思うのであります。そこで一回賠償で、今日本の持つておりますあるいは過去において持つておつたものを取運びをされておりますが、そういう既存の経済的な価値を一回限り賠償として持ち去るのだということになつて参りますならば、吉田総理のように、とてもそんな八十億ドル——私はほかの国はまだその他の賠償の要求を持つておると思いますが、ないから結局どうもそういうことはできないというようなことで、ないものをどうしてくれるのかということでも、あるいは問題の解決がつけられるかもしれない点があるかと思われますけれども、なかなかそう簡単に行かないので、私ども聞いておりますところは、ちよつと日にちははつきり記憶しておりませんが、極東委員会における賠償方針は、従来日本人が考えておりましたような一回賠償ではなくて、将来において生産される物資に対する継続的な賠償、将来日本において創造せられます経済的な価値を将来にわたつて引続き賠償させる、極東委員会におきまする一番新しい決定としての極東委員会賠償方針はむしろこう私は思う。こういうようになつているとすれば、その極東委員会の方針が、今後の講和問題におきまして、必ずしも日本賠償面に適用せられるかどうかわかりませんけれども、現在払うべきものがないから、というだけで賠償問題は簡単に片づかないと私は思います。一体政府は一回賠償で済むというお見通しを持つておられますか。それとも極東委員会がきめておりますように、将来日本が創造いたします価値に向つて、引続いて賠償に充てるというような方針で賠償をさせようとしているか。外務省の方はこの点につきましては一体どういう御見解を持つておられるか。これが一番大切な問題であろうと私は思います。一回で済めば、吉田総理大臣のように、ないからといつて払わないで済むと思いますが、将来のものをとつて行くということになると、そう簡単に済まないと思います。そして極東委員会の方針は、先ほど申しましたように、私は日にちは記憶しておりませんが、極東委員会賠償に関する最も新しい方針——少くとも今まで決定しておりますうちでの一番新しい方針は、現物による一回賠償でなくして、将来の生産物に対する賠償、こうなつておりはせぬかと思います。そこで私どもは賠償問題については楽観していないので、これをちよつとお聞きしておきます。
  97. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 事務的な方面だけお答えいたします。  極東委員会のきめました方針の中には、今一回賠償とおつしやいましたが、機械施設を持ち去る意味における賠償のほかに、将来の生産物の賠償ということも入つており、また在外資産を賠償に充てることも書いてございます。それは新しいとおつしやいましたが、新しくございませんので、終戦後占領直後きめられました向うの賠償方針の中に、そのことが入つておる次第であります。ただ実際にそれを現在までとりましたのは、機械施設その他を持つて行つただけで、ほかのは問題にしていなかつたというだけでございます。講和條約に関連しまして賠償といいます際、われわれといたしましては、そういうものを全部含んだ意味で申し上げておるのであります。
  98. 黒田寿男

    ○黒田委員 それは賠償庁次長と私と考えておりますところがちよつと違いますが、私が新しいと申しましたのは、最新という意味ではなくて、先ほども繰返して言いましたように、極東委員会のきめた方針のうちでの一番新しい、今の時期等を振り返つて見まして一番接着しておる時期、こういう意味でありまして、そこでその日にちは先ほども言いましたように、きようはちよつと資料を持つて来ておりませんので、記憶いたしておりませんが、日本は一定の程度の現物賠償をすでに相当やつておりますが、あの現物賠償が実行せられておりますあの過程の中で、私は極東委員会がそういうわれわれから見れば新しい、すなわち一回賠償で済むと思つてつてわれわれに対しまして、新しい決定としての生産物賠償ということを、私は決定したように思う。それがわれわれにも相当大きな問題の提供として受取られたように私は思つておるのであります。私が言うのは、初めから極東委員会がそうきめておるのじやないのであります。日本人の賠償について考えておりました既存の方針をくつがえすような生産物賠償というのが、その後になつて決定された。そうして極東委員会としては、私はそれが一番新しい決定になつておると思う。私の最新というのはそういう意味であります。私は自分の研究した資料でそういうようになつておりますので、吉田総理大臣のように簡単に考えられない、こう思つておるのであります。ひとつ御調査をお願いいたします。
  99. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 私もこまかいものを持つておりませんので、いついつかに何の決定があり、いついつかに何の決定があつたということは今ちよつと申しかねますけれども、少くとも一、二年の間に新しい決定があつたとは存じませんので、その以前にございましたものに書いてあることと存じます。その当時からそういうものはあるかもしれぬということは、われわれも承知しておりました次第であります。
  100. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 関連してきわめて簡単に石黒さんに二点くらい伺つておきます。第一は先ほどの黒田君のような御主張もあるわけでありまするが、われわれの考えておりますところによりますと、賠償問題はその後いろいろな賠償使節団が参りまして、一番最終的には、われわれが記憶いたしますところによりますと、マツコイの声明によりまして、これ以上のものは日本から撤去しないという方針が決定され、しかもすでに持ち去られた分は、主として従来日本の軍工廠等の関係のものだけが持ち去られたのでありまして、総額から申しますと、最初に賠償に指定されたもののわずか三%、四%くらいなものにしか当つていなかつたように記憶しておるのであります。従つて平和産業に関する限りは、一切のものを撤去しないというようなマツコイの声明が行われていまして、従つてその後の賠償問題というのは、マツコイの声明のラインに沿つて交渉が進められておるものとわれわれは想像いたしておるわけであります。ただいまの黒田君の説によりますと、これはわれわれの考えとは根本からまつたく違うのであります。非常に大問題であるわけであります。私が先ほど申しましたわれわれの考え方が、大体政府のとつておる態度ではなかろうかと思いますが、この点に対する政府見解を承りますと同時に、もう一点は賠償を要求いたしておりますものはフイリピンばかりではなく、たとえばソ連のごときも要求いたしており、極東委員会におきましても、額は忘れましたけれども、相当莫大な対日賠償を要求しているかのごとくに記憶いたしておるわけでありまするが、いずれにしてもソ連が要求しておることは確かであります。ところがソ連が終戦以来いわゆる満蒙地区に入りまして、朝鮮等にも入りましてこれらの地区から、日本が長い間持つておりました一切の権益をことごとく撤去いたしたわけであります。撤去するにあたつてソ連側の声明いたしておるところによりますと、これは戦利品だというわけで、実は持ち去つたわけでありまするが、これらのソ連が持ち去つた額は、ポーレーの賠償使節団の報告書等においても、額は忘れましたが、相当莫大なものであります。このソ連側の申しております戦利品だというのは、当然賠償の対象になるべきものでありまして、単なる戦利品としての取扱いを受けるべきものではないとわれわれは考えておるわけでありまするが、賠償庁の当局におきましては、この問題をどんなふうにお考えになつておるか、この二点を承つておきたいのであります。
  101. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 われわれも大体御意見まつたく同感であります。先ほどお話が出ましたのは、極東委員会の決定した方針がどうであるかということで、それに議論が行つたのであります。もちろん対日賠償の動き全体としましては、極東委員会の決定以後、お話のごとく連合国のうちの有力なるアメリカが、これ以上の賠償をとらないという方針を明らかにいたしましたし、また近くは対日講和條約七項目の案の中におきましても、とらないということを再び強調いたしておるのであります。日本政府といたしましても、ぜひさように連合国間に決定あらんことを熱望しておるところであります。  満州にありました日本の在外資産を、ソ連は戦利品として持ち去つたということを主張いたしておるということは聞いておるところでありますが、おつしやいました通り、戦利品としてはもらいたくないという考えをわれわれは持つておるのであります。
  102. 黒田寿男

    ○黒田委員 やはり今の問題ですが、ちよつと誤解が佐々木君にあると思います。私は自分が主張したのではない。主張から言えば私も日本人の一人としまして、できるだけ賠償は軽くて済む方がよろしい。これは佐々木君の御意見に全然異なるところはない。私が言うのは、意見を主張したのではない。私はマツコイ声明もむろん読んでおりますが、マツコイ声明は、アメリカの代表といたしましてアメリカ態度を表明したというものにすぎないと思います。私の記憶違いであるかわかりませんが、こういうマツコイの声明のありました後に、極東委員会といたしましては、新しいそういう生産物賠償というようなことを決定したのではないかと思います。それで宿題としておいてもよろしいが、ただ私がきよう指摘したいと思いますことは、そういうことがあると思いまして、あまり日本人が賠償に対して安易に考え過ぎておるということだけ、私はお互いに日本人として、また政府当局としても、もう少しく私は厳粛に考えなければなるまいと思います。そう賠償問題を簡単に、ないからよろしい。結局払えないものは払えないのだというように、簡単に行くものじやない。少くともそのくらいの心構えを持ちながら、しかもできるだけ少くて済むような方向に向つて努力するというのが、今われわれのとるべき態度だと思うから言うのである。それで私は、マツコイ声明のあとに、極東委員会がそういう態度を決定したのだと思う。ただこの賠償庁次長が言われたように、極東委員会がきめたことが、ただちに日本の講和條約の際における方針となつて現われるものではありません。しかしまたアメリカが言う通りのものが、講和における賠償方針としてそのまま現われるものでもないのであります。だから私どもの今申しますように、根本の心構えというものは、政府は安易に過ぎる。今こそ直接に講和の問題にはなつていないように思いますけれども、たとえば中国に対しても、私ども日本のためにはモきるだけ賠償は少い方がよろしいと思います。けれども日本の軍隊があれだけ荒しまわつた中国から、将来賠償を要求せられた場合に、ないから払えないといつて、済むということは、国際道義が許さない、そういう安易なことを考えはいかぬ。そこを私は日本人はもつと敗戦というものに対して厳粛に考えなければならぬ、それを私はここに指摘しておく。あまり私は政府は安易に考え過ぎていると思う。私は将来賠償問題は大きな問題として日本に起ると思う。そのくらいの覚悟を持ちながら、しかもできるだけ負担を軽減するように努力するという、私は心構えを持つておるのであります。あまり安易な問答が行われておりますから、ちよつとこれだけ申し上げておきます。なお私が申し上げた問題については、私自身もなお研究してみます。賠償庁においてもひとつ御研究願いたいと思います。
  103. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 ただいま一つの御意見発表がありましたが、その前提といたしまして、極東委員会においてマツコイ声明以後に新しい決定があつたのではないかというお尋ねがございました。それに対して事実をお答えいたします。マツコイ声明は一九四九年五月に発表いたされたのであります。極東委員会の最初にして最後賠償に関する根本方針は、一九四七年六月の決定であります。その中に、御参考までに申し上げますれば「賠償は、現存の日本国の資本設備及び施設または現存のもしくは将来生産されることのある日本国の貨物であつて、極東委員会……の條項に従つて……日本国から取り立てられなければならない。」ということが書いてございます。お話のごとく将来の生産物もここに並行して書かれております。
  104. 並木芳雄

    並木委員 私の質問から討論に発展したようですけれども、これは私の当初の志ではないのです。私はやはり八十億ドルというような数字を聞かされますと、日本人としてびつくりするのです。こんなにはとうてい支払い能力はないし、これに対して当然そういう御要求の意思はあつても、請求権を放棄してもらいたい、われわれの負担を少しでも軽くしてもらいたいという気持から、そこで吉田総理大臣も、ああいうことの答弁をさらりとやつてのけているように思われるから、これにはダレス氏との間の話合いで何か根拠があるのではないかという質問になつて来たわけです。今日も吉田総理自身が外務大臣としてここへ出て来るならば、私たちは質問ができて、そういう疑点も氷解するのだろうと思います。政務次官ばかりですから、つい委員の間で討論なんかも起つてしまうわけです。そういう点で、この間もわれわれが受けた感じは、もうすでにある程度の賠償を送つているのだから、あれで済んだのだという印象を与えるのです。こういうことに対してわれわれが一方的な意見だけ、とりきめだけに耳をかして、他方でまじめな要求があつた場合にも、それに対してもう払わないでいいのだどいう気持は、これは公平な見地から見ても、やはり愼重に行かなければならぬと思います。そこで今まで賠償として送り出した金額は幾らぐらいになりますか。
  105. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 送り出しました品物の価格は、われわれ事務的に一九三九年度の円の価格をもつて現わしておりますが、その円によりまして一億七千万円程度でございます。
  106. 並木芳雄

    並木委員 さつき佐々木委員からちよつと質問が出ましたが、満州国にあつた日本の財産について、金額にしてどのくらいだというような、何か見積りができていますか。
  107. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 私が承知しております数字は二十億ドルということがいわれております。ポーレー報告書にもそう出ております。
  108. 並木芳雄

    並木委員 現段階においては、在外資産はどういうふうに処理される見通しであるか、その点をお伺いしたい。
  109. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは先ほどからいろいろお話のありました、一九四七年六月の極東委員会の決定の基本方策におきましては、御承知のように在外資産の処分は、各所在国の自由なる見解にまかすというのでありますが、しかし対日講和に対しますアメリカの七項目の一つとしてあがつております中には、連合国は原則としてその地域内の日本人財産を保有する、こういうことがいわれておるのでありますることは御承知の通りであります。それによりまして推測して参りますると、平和條約におきましては、在外資産については多くを望むことはできないと存じます。このアメリカの七項目の一つにあります方針によつて進められるのではないかと存じます。
  110. 並木芳雄

    並木委員 この際先般来問題になりました呉工廠のことについてお伺いしておきたいと思います。あれは近く賠償指定が解ける見込みがあるのですか、どうですか。まずその点をお伺いいたします。
  111. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 あれだけが解けるような見込みはありません。
  112. 並木芳雄

    並木委員 ああいう話が、起つたのを見ますと、たとえば十年も十五年も貸すということは、講和條約を突き抜けて先へ行つてしまうことになるのです。当然これは、賠償は、一応も二応も、講和條約で解決がつくという前提にはかわりないと思うのですけれども、この点どうですか。
  113. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 もちろんお説の通りであります。
  114. 並木芳雄

    並木委員 そうすると十年も十五年先まで貸すという話は、講和條約が目の前にぶらさがつておるのにちよつとおかしいじやないですか。その点説明していただきたい。
  115. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 その話はまだきまつたわけではありませんことは御承知の通りであります。かりに何か契約でもできたとすれば、講和條約までは賠償施設として貸すし、その後は賠償施設でないものとして貸すということになります。
  116. 並木芳雄

    並木委員 もしこれが外国人に貸すことができるという状態であるならば、日本人にも貸せるのではないか、だから外国人に貸す前に日本の産業でこれを利用する方法を考うべきだと思うのです。先ほどもちよつとお話に出ましたように、いろいろ新しい品物などをつくる必要もありましようし、造船の方の関係を見ましても、ついこの間までは造船所は飽和状態で困つておつたように考えておつたのが、急激に今度は船をつくらなければならぬという状態になつて来ておるのでありますから、これはよほど政府が愼重に、造船のために利用できるというような場合には、まず日本のために日本人の利用者があるかないかということを調べるのが先決ではないかと思うのですけれども、この点はどうか。
  117. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 お説の通りであります。それから外国人に貸すとおつしやいましたが、この点もまだきまつておるわけではありません。外国法人であるか、日本法人であるかわかりません。ただ今の御質問はわれわれの所管でございません。おそらく運輸省の関係になるか思いますが、われわれの聞き及んでおります範囲では、大きなドツクでありまして、現在の情勢のもとにおきまして、日本側であのドツクを経済的に活用するということは、考えられぬというふうに聞いてあります。
  118. 並木芳雄

    並木委員 この前大蔵省の政府委員説明によりますと、呉工廠はどうせ破壊される運命にあるのだということを、賠償庁の方から言われたと、ここで答弁しているのです。そういうことはあるのですか。
  119. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 それは少し言葉がきつ過ぎるのであります。こわされる可能性の問題であるかと存じます。御承知のように、賠償施設は今指定されておりますのは、動かし得るものもありますし、動かし得ないものもございます。賠償の関係等で撤去できないものは、破壊することもあり得るかもしれぬという程度のものであります。
  120. 並木芳雄

    並木委員 呉工廠と同じような状態にあるものがほかにどこかありますか。今申した破壊される可能性があるというもの、あるいはこの讓渡または貸与の話題に上つておるもの、また上る可能性のあるものです。
  121. 石黒四郎

    ○石黒政府委員 今のは多分造船関係あるいはドツクに関してと思いますが、似たようなものと申し上げますれば、要するに元海軍の造船所であります佐世保、呉、舞鶴、規模の小さいのでありますれば大湊等のドツクがございます。そして造船活動にはあまり使わないように、司令部から命ぜられております。別に破壊その他具体的問題としては、現在のところ申し上げるようなものはございません。
  122. 並木芳雄

    並木委員 それでは法務総裁に……。これはほんとうの私お尋ねなんです。ということは、私陳情を受けまして、非常にむずかしい問題で、もしこういうことが事実だとしたら、これはまじめな意味において、総裁にお伝えし、そうして調査もしてもらわなければならぬのじやないか。この陳情の趣は、検察取締りに関連して、人権蹂躪、人種的差別の行われた疑いがございますので、その点を取上げてみたいと思います。それは去る二月一日、東京都の北多摩郡昭和町というところで麻薬取締りがあつたのだそうです。それに関連して、非合法的な、あるいは人権蹂躪的な、あるいは人種的差別をしたような行為がなされた、こういう申出がございました。この申出は昭和町の華僑の悦来自治会の会長である陳庭新という名前で、要請書として私のところにもたらされたのです。この要請書を読んで見ますと、もしこれが事実だとすれば、国際的な問題も起り得るのではないか。ひいては憲法違反の疑いも起るのではないかと思いますので、お尋ねするのですが、何よりもこの陳情の趣旨を把握していただくために、これを読んだ方が私はむしろよいと思います。簡単ですから……。
  123. 守島伍郎

    ○守島委員長 ちよつと並木君に申し上げますが、あまり外交に関係のないことのようですから、簡単にお願いいたします。
  124. 並木芳雄

    並木委員 いや、ある可能性があるものですから、お聞きするのです。
  125. 守島伍郎

    ○守島委員長 時間もございませんから……。
  126. 並木芳雄

    並木委員 それでは内容の点は、この前法務府の方へ私お伝えしておきましたから、よく御当局は御承知だと思いますので……。もちろんこれは一方的な陳情を受けたにとどまつておりまして、現地に行つて私調べたわけではございません。また確証に基いて糾彈的な質問をするものでもないのです。またこの中にあげられた箇條でも、專門的な立場からいたしますれば、問題にならないような箇所もあるかと思います。しかし要請書の提出者は、取締りそれ自体にはわれわれとしては何ら異議はない、とはつきり断つておりますし、また右の行為は日本警察官及び日本官吏のみの行為であるということを、要請書の中に明言をしてあります。そういう点から考えて、特に悪意があつたわけでもないと思われる節がありますので、非常に謙虚な、まじめな立場から、この点についての当局の調査あるいは取締りの状態における全貌というようなものを、この際承つておきたいと思います。
  127. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お答えを申し上げます。二月一日、昭和町のアパート悦来莊居住の中国人に対しまして、押収捜索が行われまして、十二名を逮捕いたしております。これは主として進駐軍が軍事裁判所の令状に基いてする捜索に対しまして、日本警察が協力をいたしたものでございます。一名に対しまして、同時に並行して日本の刑事訴訟法による手続も行われたのでございまするが、日本側の捜査は、すべて刑事訴訟法にのつとつて、あらかじめ夜間捜索の令状を得ております。また女子の身体検査のために、東京麻薬取締官事務所の婦人職員二名を同行する等の用意をもつて臨んだのでございまして、違法の点はないと考えております。進駐軍側の捜査は、進駐軍の手続規則に準拠するのでありますから、必ずしも刑事訴訟法と同様ではありませんが、この捜査の結果、若干の麻薬が発見せられまして、日本側において一名、進駐軍側において十一名を逮捕いたしております。後、この十一名も日本側が引継ぐことに相なりまして、東京地方検察庁が送致を受け、すでにこのうち四名は麻薬取締法違反、ドル不法所持等によつて、起訴済みの次第であります。御承知のごとく、麻薬は何分分量の目立たないものであり、かつ麻薬常習犯人はきわめて巧妙にこれを隠匿しておるのが通常でございますから、この種の捜索は厳格に執行されたであろうということは、推測されるのでありまするが、これは決して相手が中国人であるというゆえに、特に苛酷な取扱いをしたものでは断じてございません。本件の捜査に関しましては、中国使節団から東京地方検察庁に対しましても、今お話のような点について調査の依頼がございます。しかしこれは現場におきまする金銭の紛失、及び女子を不当に裸体にして身体検査をしたという二点を除きまして、他の点につきましては、ことごとく根拠が不確かであつたという理由で、使節団でこの調査申入れを撤回せられておる事実があるのでございます。この二点につきましては、ただいま地検で調査をいたしておりまするので、この結果を待ちまして、適当に処置しなければならぬと考えております。
  128. 並木芳雄

    並木委員 それでは法務総裁にほかのことで二つだけ質問しておきます。実は治安省とか保安省とかいうものの新設に対して、私の方ではかねてから党としても主張し、賛意を表しておるのです。昨今ようやくこの治安取締りの機関というものを一本にして、治安省というようなものを設けるという報道もありますけれども、むろん法務総裁として相談にあずかつておると思いますから、その点をお伺いしたいと思います。
  129. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 治安省ということにつきましては、私まだ何ら知つておりません。
  130. 並木芳雄

    並木委員 もう一つお尋ねしておきたいのですが、憲法第六十六條の第二項に使われております言葉に「文民」というのがあるのです。ところが最近警察予備隊関係で、おれは文官ではないのだというようなことを言つたのを私聞いたのです。これはどういう意味だか私にもよくわからないのですが、思いあわせてみると、憲法に文民という言葉が使つてあるのに対して、あるいはここに言う文民ではないという意味なのかどうか。事実警察予備隊の中では文民ないし文官とは違うのだというような取扱いをなされておるのですかどうか。文民の憲法上における意義——こんなものは必要ないとばかり思つていたわけなんです。軍隊を放棄し、軍人というものはいなくなつ日本としては必要ないと思つたけれども、文民が存在しておる理由と、そして今考えてみると、警察予備隊などでそういう言葉が使われる余地があるのかどうか、こういう点について説明をしていただきたい。
  131. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 文民は英語のシヴイリアンに相当いたすのでありまして、武人に対する言葉として観念されておるのであります。ところでわが国の現行憲法の上で申しますと、戦力を保持しないという建前になつておりまするから、現在武人である者は存在しないわけであります。もつとも憲法第六十六條第二項は、平和主義的な憲法の基調から申しまして、軍国主義者等が国の重要な地位に立つことを防止するという趣旨であると考えられるのでありまして、このような趣旨から現実的に考えますと、過去において職業軍人としての経歴を有した者のごときは、これは第六十六條第二項のいわゆる文民には当らないということも言い得るわけであります。これは憲法改正の際以来、政府としてさような解釈をとつておる次第であります。なお警察予備隊についてはどうかという御質問でございますが、警察予備隊はそれ自体何ら武力に関係ないものでございますから、この隊員は文民であるわけであります。ただ今何かこの間において隊員間に誤解があるのではないかと思われるような節について御質問があつたのでございますが、現在の建前といたしまして、予備隊の機構は、その定員七万五千百人のうち、七万五千名は制服を来た隊員、そして残りの百人は予備隊本部の制服を着ない職員であります。これが憲法上はどちらも文民であるわけでございますが、便宜制服勤務者あるいは非制服勤務者というふうに区分をいたしている場合もありますので、それらの点が誤解を生じまして、制服勤務者は文民にあらずというようなことを、数の多いうちでございますから、誤つて考えている者もあつたのではないかと存ずるのであります。政府の解釈をいたしましては、ただいま申し述べた通り、文民である、こう解釈しております。
  132. 菊池義郎

    ○菊池委員 関連して法務総裁にお伺いておきたいのであります。最近しきりに警察予備隊を増強するという声がありますし、またわれわれもそれを希望してやまないのですが、これに対する御所見を伺いたい。
  133. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊の増強の措置といたしまして、七万五千の定員を増加するという点につきましては、ただいま何ら考えておらないところであります。但しその装備につきましては、あるいは武器の点におきましても、また車両その他機動力の点におきましても、できる限りこれを改善いたして、能率的にいたしたい、かように考えております。
  134. 菊池義郎

    ○菊池委員 きようの新聞のダレスさんのアメリカにおける国務省に対する報告の内容について、われわれは驚いておるのですですが、それを見ますと、日本の領土の保全に関しては、アメリカは全然責任を負わない、義務を負わないということを強調しておる。そういうところを考え、警察予備隊をどうしても増強しなければならぬと考えておりますが、横田喜三郎さんでしたか、われわれと同じことを言つておられました。それはどういうことかと申しますと、日本の憲法をちよつぴり改正して、警察予備隊を義務制度にして、これを三十万とか五十万とかに増強したらどうかとわれわれは考えでおるのですが、それに対する法務総裁はどういうお考えを持つておりますか。
  135. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ダレスさんのお話については私まだよく承知いたしておりません。この際これに関連してお答えを申し上げることはむずかしいと思います。
  136. 守島伍郎

    ○守島委員長 佐々木君。
  137. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は日本共産党の非合法活動の中で、国際な関連性を持つものについてのみ比較的簡単に承りたい。  まず第一にここに私持つて参りましたのは「国会情報」という日本共産党国会事務局水谷新平を編集発行人として発行された新聞であります。これを先般来街頭において配布しておりますのを、私のある友人が受取りまして、私のところへ持つて参つたわけであります。内容はすでに御承知かとも考えますが、先般川上貫一君が衆議院の本会議において質問演説の形式をもつて行いまして、その内容がきわめて占領軍に対する反抗に満ちたものである。またそこに引用されるものが、非常に虚構捏造の事実の累積であるという点を指摘いたしまして、私自身が衆議院の本会議において懲罰動議の提案理由説明したものであります。これに盛れております全文は、川上貫一君が本会議において行いました五十分間にわたる演説の全文であります。しかも川上君の院内における発言は速記録の上には記録されるでありましようけれども、これは早い話が、官報あるいは公報等によりまして外部に配付されます場合におきましては、当然院外でありまするから、プレス・コードの適用を受けまして、川上君の演説内容も、紙面の上ではさらに削除をされるという点がなければならぬのであります。現に官報等におきましては、私が川上君の演説内容を引用したことすらが、プレス・コードに抵触するという理由をもちまして削られておるようなわけであります。ところがここに共産党の名において出しておりまするものは、一言半句もこれは削つてありません。原文そのままのものであります。国会内における機密がそのまま外部に出ておるわけであります。そこでまず第一に大橋法務総裁に承つておきたいでありまするが、先般の川上貫一君の本会議における演説内容が外部に出たときにおきましては、当然私はプレス・コードの適用を受けるべきものである、かように考えまするけれども、その点についてどういうふうにお考えになつておりますか、承りたい。
  138. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先般の川上君の演説内容が、印刷によりまして外部に配布される場合におきましては、当然御質問の通り、現行の諸法令に抵触する点があると存じます。
  139. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に、連合国占領軍目的に有害な行為に対する処罰令、これはその後改訂を加えられて、占領目的阻害行為処罰令とかいうふうになつたのじやないかと思いますが、これの第二條でありましたかに、「この勅令において、占領目的に有害な行為といふのは、連合国最高司令官の日本帝国政府に対する指令の趣旨に反する行為、」それからいろいろなのがありまして、「その指令を履行するために、日本帝国政府の発する法令に違反する行為」と規定されております。またプレス・コードというのは、これは昭和二十年九月十九日連合国最高司令部発表のものでありますが、進駐軍に対し破壊的な批判を加えたり、また進駐軍に対して怨恨を招くような事項を掲載してはならぬということが規定されておりまして、これがプレス・コードに抵触することも先ほど総裁が指摘された通りであります。従つて外部に宣伝されておりまするこの「国会情報」なる新聞は、当然これは占領目的阻害行為処罰令にも抵触し、その適用を受けるべきものであると私は考えるわけであります。この処罰令の罰則におきましては、「この勅令に違反した者及び占領目的に有害な行為をした者は、これを十年以下の懲役若しくは七万五千円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」ということも規定されておるわけでありまして、私はこれは明らかに占領目的阻害行為処罰令に違反するものであると考えまするが、これに対する法務総裁の見解を承りたいと思います。
  140. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 大体同様に考えております。
  141. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に団体等規正令の第二條におきまして、政党その他の団体は、「その目的又は行為が左の各号の一に該当する」ものはこれを結成することができないと規定し、さらにその第一号におきまして、「占領軍に対して反抗し、若しくは反対し、又は日本政府が連合国最高司令官の要求に基いて発した命令に対して反抗し、若しくは反対」ということを明らかに規定いたしておりますることから考えまして、今回の共産党のこの印刷物は、当然団体等規正令の第二條に抵触するものと考えるわけでありまするが、法務当局はこれに対してどのようなお考えを持つておられるか伺いたい。
  142. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 団体等規正令は、これは司令部の指令によつてできたものでございまして、この運用につきましては、常に司令部当局と緊密な連絡の上でいたしておる、かような実情に相なつておるわけであります。これに抵触するかどうか、また抵触する場合においていかなる措置をとるべきであるかということにつきましては、さような事情もございまするので、十分に研究をいたしたいと考えております。
  143. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 連合国当局と日本政府との間におけるいろいろ微妙ないし複雑な事情もあるでありましようが、少くとも條文の解釈から申しまして、団体等規正令の明示しておりますことに明らかに抵触する——法理論上の解釈を申しておるわけでありまして、そのように私は考えるわけでありますが、はたしてこれに抵触するかどうかわからぬというようなあいまいな解釈は、この條文のどこを押して見ましても出て来ないと考えるわけであります。そこで政治の問題はしばらく抜きにいたしまして、法理論上の立場から、法務総裁の御意見を承りたいのであります。
  144. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現実にこの団体等規正令に抵触するかどうかということは、これは法理論上の問題ばかりでなく、実際上の問題と離すことができないと考えまするので、なお研究をいたしたいと思います。
  145. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 法務総裁と私とは同じ自由党の中にあり、特に反共的な立場と理論を同じくしておるわけでありますが、微妙な国際関係等もあるわけでありまするが、理論上におきましては、首尾一貫しないものもたくさん持つておられるようでありまして、この点私はまことに遺憾でありますが、政治上の立場からやむを得ないかとも考えるわけであります。ただ私たちが今日各種の法律や法規に照して考えましたときに、これは団体等規正令の第二條に抵触することは明々白々であります。従いまして、もし第二條に抵触するといたしまするならば、第四條において規定をいたしておりまするような団体の解散條項があります。第四條におきましては、今申しました第二條の規定に該当する団体として主務大臣の指定するものは解散するということも規定をされているわけであります。法理論上団体等規正令に抵触するということが明らかになりますれば、日本は国敗れたりといえども、共産党と違つて法治国でありますから、法の命ずるところに従い、解散等の措置を主務大臣の責任においてとられんことを特に私は望んでおく次第であります。法理論上の問題はその程度にいたしまして、私は国会の権威とそれから国会の威信、特に今後の講和会議というものを前に控えまして、非常に微妙な困難な立場に置かれておりまするわれわれ国会立場から考えましても、院内におけるところの機密を要することあるべき事項が、ことごとくきわめて悪意に満ちたところのデマ宣伝によりまして、外部へ逆宣伝されるというようなことになりますと、とうてい国会の威信や国会の必要なる機密を保持することはできないと考えます。従いまして私はこれらに対しては、当然当局の必要なる措置をとつてもらわなければならないわけであります。この国会事務局内に日本共産党のフラクシヨンがあつて、現に水谷新平という発行人が、内部から非合法活動をしておるということが明らかであります以上、国会内部における共産党分子のかかる行為に対しましては必要なる措置をとつてもらわなければならぬということを、国会議員の責任において私は痛感するわけでありますが、それらの点につきまして、法務総裁の所見を伺いたいと思います。
  146. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国会におきまする論議は国会内の問題でございまするが、この論議が外部に発表せられましたる場合において、その内容が諸法令に抵触するということに相なりまするならば、当然これに対しましては必要な取締りをやるべきものであると考えます。また国会の職員のうちで、法に抵触するような行為があつたという場合におきましても、これまた法による取締りに出なければならぬということは当然のことでございます。この点は国会の職員たると一般の者たると区別をいたして考えておるところではございません。
  147. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 さらに一点だけ要望かたがた伺つておきますが、共産主義の理論につきましては、すでに千万御承知の大橋法務総裁でもありまするし、今日世界の共産党のとつておりまする戦術というものが、たとい表面どのような仮面をかぶり、どのようなカムフラージュを時にとりましようとも、その実体につきましては明らかに御承知であろうと思います。特に先般も野坂君自身が、日本共産党中央委員会の議決をもつて発表いたしました自己批判等においても、議会政治を否認するのだ、憲法を蹂躙するのだ、暴力革命をやるのだということを明らかにいたしておるわけでありまして、この非合法活動をする目的を持つて団体結社をするということは、決して憲法に規定いたしますところの団体結社の自由の適用を受けないものである。ちよつと例が違うかもしれませんが、たとえばここに殺人強盗をやる目的を持つて殺人団をつくるという場合においては、その殺人団の組織は当然法の拘束を受けるはずであると私は考える。共産党の性格というものが憲法を蹂躪し、国会を蹂躪し、国法を蹂躪するのだという目的を持つて、今日共産党を組織いたしておるわけでありますから、そのような憲法を無視せんとするものの言論、結社の自由というものは、憲法によつて保障されたものではないと私は考えるものでありますが、これに対する大橋法務総裁の御所見を伺つておきたい。
  148. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 憲法を破壊するがごとき活動が、憲法によつて保障されるはずはないという御趣旨のお尋ねでございましたが、これは確かに理論上さようあるべきものであると思いますが憲法上の諸権利の制限につきましては現在の憲法の建前といたしまして、これを制限いたすについての法的な根拠がいることは明らかでございまして、さような憲法を破壊するがごとき行為につきましては、それぞれ法的な根拠に基いて必要な取締りをいたす、こういうことに相なるわけでございます。
  149. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後に一点、これで打切ります。  野坂自己批判以来の日本共産党のいろいろな決議やあるいは動向、その指令や、いろいろなものを総合いたしまして、ここに日本の共産党が非常に非合法の性格を現わしておるということは、もう申すまでもないと思います。現に日本共産党が合法政党として存在したいという希望があるなれば、徳田球一君や野坂參三君が地下にもぐるということもあり得ない、当然法の命ずるところに従つて出頭しなければならないわけであります。共産党というものが非常な非合法的なものであるということは、これは憲法を蹂躪することが明らかである。そこで私はもう論議は避けますが、日本政府ももうそろそろ共産党そのものの本質をよく見きわめて、共産党そのものの合法性に対して真劍に考えるべきときではなかろうかと私は考えます。一昨年のアメリカの独立記念日であつたかとも思いますが、マツカーサー司令官が日本国民に告ぐると言つて発表いたしましたメツセージの中におきましても、日本共産党の暴力的性格というようなものを指摘いたしまして、日本国民が共産党の活動に対して、合法性を認めるべきかどうかという疑問の問題をわれわれ国民に投げかけておるわけであります。われわれ国会も、また特に政府も、今こそ良識と善意を持ちまして、この共産党の合法性そのものに対して、マツカーサー司令官の投げかけた言葉にこたえるときが来ておるのではなかろうかと私は考えておるわけであります。  そこで政府当局はその共産党の合法性そのものに対する態度を決定することについて、最近お考えになつたことがあるかどうかということを承りますと同時に、私は最後政府のもう少し理論と実際の一致した対策をとつていただきたいと考えます。共産主義そのものの非合法性ということが明らかであるなれば、これに対して当然法治国であるから、法の適用によつて対処すべきがあたりまえだ。にもかかわらず、共産党の非合法性の性格を一方において認めておきながら、その共産党の活動を自由に放任するというがごときは、まさにこれは理論的には自殺行為であります。従つて最近政府におかれまして、共産党の存在そのもの、合法性そのものについてお考えになつたことがあるかどうかということをお尋ねし、私の所見の一端を申し述べて強く要望しておく次第であります。
  150. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党の、特に日本における共産党の非合法化の時期が来ておるのではないかという御趣旨の御質問でございますが、この問題につきましては、政府といたしまして目下愼重に考究をいたしておるわけでございます。
  151. 高田富之

    ○高田(富)委員 ただいまの御答弁に関連いたしまして、簡単に二、三の御質問をしたいと思います。  第一は川上議員の演説並びにこの国際情勢の問題でありますが、この問題につきまして、ただいま懲罰委員会等におきまして、演説内容について詳細な検討が行われて参つたのであります。大体これは終つたそうでありますが、結局最後に懲罰委員会委員長自身も、この演説内容、思想、そういうことを問題にするのでない、ただ若干言葉の上で非常にまずい言葉がありはせぬか、それをお取消しになる意思がないかというようなことを言つておられたようであります。事実これは相当練られておるので、無責任に演説したわけではない。相当考究し、検討されまして、責任を持つて述べた演説でありますから、さような佐々木が御懸念くださるようなことはないというように確信しておるし、事実委員会の経過においてもそのことが明らかになつたと思うのであります。そのためになかなか懲罰できない。(「違う」と呼ぶ者あり)そこへ持つて参りまして、大橋法務総裁の今の御答弁によりますと、これが外部に発表されると現行法規に抵触するというようなことを言われるのは、はなはだ奇怪であります。国会においてはそういうところはほとんどないことが明瞭になつておるとわれわれは確しております。そういう結論がまだ最後的に出ませんが、そのやさきに、この席上で、これが国会外であれば現行法規に抵触するというように先ほど断言されたようでありますが、これは非常にむずかしい問題であります。国会審議に影響を及ぼさないとは限りません。そこでもし実際に抵触するというならば、どこの箇所のどこが何の法令に違反するかということをここで明らかにしていただくことがぜひ必要だと思うのです。これをまずひとつお聞きします。
  152. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この演説につきましては、私どもの役所といたしましても十分研究をいたしてあるわけでございまして、その研究の結果の結論を申し上げた次第でありますが、どこの箇所がどういうことかということになりまするならば、後ほどまたあらためてお答えさせていただきたいと思います。
  153. 高田富之

    ○高田(富)委員 しかしこれは演説をしておりましたときにも、そういう著しい問題があれば、あるいは議長が職権をもつて途中でとめるというようなこともあるのでしようが、そういうこともなく、非常に国会の権威を重んぜられて、議長の職責を全うされて、最後まで千何百名の傍聴者の前で演説も無事に完了しておるようなものでありますから、すでに一般にこれは公表されておるのであります。こういうふうに公開の席上におきまして、権威ある議長のもとにおいて堂々と合法的に最後まで述べられました演説を、あとになりましていろいろな難くせをつけ、さらにいろいろ研究してみたらどうも法律的にも違反しておるということを言われることになりますと、これは実際最も大事な、法律の中の基本である憲法の権威を擁護しておる国会の本会議場における議長の正しい職権の行使に対しても、いろいろと司法部の方から事実上干渉をやつて来るという結果にもなりまして、これは国会としてはなはだおもしろくないところであります。従つてこの件につきましては、そういう刑事上の問題として、あとからいろいろな難くせをつけるような態度をとられないように、先ほどのお答えがありましたので、私は特に御注意を喚起しておきたいと思うのです。  それから共産党のやつておることは非合法であるとか暴力であるとか、同じようなことをいつも繰返されるのでありますが、これらの点についても、やはり自由党内部からもいろいろと今のような御批判が出るように、政府は非常にあいまいであります。もう少しこれは明確にする必要がある。われわれ自身が、日本共産党が国会に出て参りまして、そうしてわれわれの主張を堂々と闘い、特にわれわれの基本的な点は、日本の法律の中の最も基本になつておる、占領下の日本における基本になつておるポツダム宣言、極東委員会の対日基本政策並びに憲法、こういうふうな法の根本に対しまして、私どもは断固としてこれを擁護するということを終始一貫、貫いておるわけであります。しかるに最近におきましては種々の点におきまして、これらの敗戦後の日本が国際的な規範のもとにあつて着々再建されなければならぬ立場にありながら、この規範を犯しつつあるというところから種々の問題が派生的に起つてつております。たとえばさつきも佐々木君が言うように、合法的にやつておるならここでやつたらいいじやないか、何もいなくならぬでいいじやないかというようなことを盛んに言いますけれども、追放令の問題にいたしましても、これはポ宣言あるいは極東委員会の対日基本政策に明らかな通り、かつて侵略勢力を復活するおそれあるものを追放する、こういう民主化の方向へ進むべき障害物の排除のために設けられた法律が、あべこべに、平和を死守し、このポ宣言を厳守する立場に立つものに対してややもすれば向けられんとする傾向がきわめて濃厚になつて来た。つまり大きな非合法行為を犯しつつある疑いのある政府に対しまして、これに反省を促し、そうして真にわれわれ国際的に通用する合法的な日本の再建を主張するものに対して、これを非合法化呼ばわりをするという事態に現在は立ち至つておるのであります。従つて政府としましても、そうした派生的な問題のりくつで解決のつかないものが、日本共産党に対する処理の中にあるのはけだし当然であります。あたりまえであります。もしそういうことで共産党を非合法扱いにしようということになれば、世界の法律がこれを許しません。国際的な法規、規範がこれを許しません。従つてわれわれは今目を小さくせず、国内の一つ一つの法律自体が、大きな国際的な規範に違反しておるのではないかということこそが、講和を前に日本国会の論議すべき第一の重要な問題であります。こういうときにあつて法務総裁はよろしく、個々の国内法自体が今や合法的であるかどうかが問題にされなければならぬ重要なときに大局的な対日講和を前にする日本の国際條約に対する信義いかんということが問題になつておるときに、日本共産党が世界の正義、世界の法的な正しい立場に立つている主張に対しまして、いささかこれに耳を傾けざるを得ない情勢が非常に濃厚になつて来ておるということから、もう一段と反省せられ、もう一段とお考えを大局的の見地に置いて、そうしていやしくも共産党のやつておることが暴力だとか、非合法だとかいうような、世界の半数が認めないような暴論を軽々にお述べにならぬように、私は特に御注意をしておきたい。  最後一つこの点で御質問したい。それは先般ダレス特使が参りましたときに、相当詳細にわたりまして対日講和中心とした講演をされました、この講演の中の最後の方でありましたか、今ここに文章は持つて来ておりませんが、従来の国際諸條約、諸文書というようなものは、美しいりつぱな言葉で飾られてはいるが、過去の歩んで来た社会の道に踏みにじられた紙くずのようなものである云々という言葉があるのであります。これにつきましては国内の有力な新聞等においてもこれを社説に取上げまして、今共産党や社会党はポツダム宣言をたてにとつて講和論議をしておるが、はなはだこれはおかしい、ダレスさんでさえも諸條約、諸文書というものは紙くずである。美しい言葉で、飾られているが、踏みにじられた紙くずであると言つておる時代に、何をポツダム宣言を云々するのであろうかというような社説さえも掲げられておる状態であります。これは私は法を守護する立場にある法務総裁とせられまして、軽々にこれを看過すべき傾向でないと思う。いやしくも今日私どもが講和を前にして第一に考えらなければならぬことは、国際的な信義を重んじ、国際諸條約に対する確固たる、これを死守するというこの誠意と熱意を世界に披瀝することこそが、これこそが当面私どもの第一に果すべきことでなければならぬと思うのです。従つてこの種の言論に対しまして、法務総裁はいかようなお考えを持つておられるか、この点をひとつ明快に御答弁を願いたいと思います。
  154. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 高田君の宣伝演説をつつしんで拝聴いたしました。
  155. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは本日はこれで散会いたします。  次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時五十分散会