運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-02-21 第10回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十一日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君    佐々木盛雄君       竹尾  弌君    山本 利壽君       植原悦二郎君    大村 清一君       菊池 義郎君    仲内 憲治君       中山 マサ君    並木 芳雄君       高田 富之君    黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (条約局長)  西村 熊雄君         大蔵事務官         (管財局長)  吉田 晴二君         厚生事務官         (児童局長)  高田 正己君         水産庁長官   家坂 孝平君         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利 昇一君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより会議を開きます。国際情勢等に関する件を議題といたします。それではただちに質疑を行うことにいたします。質疑通告順にこれを許します。菊池君。
  3. 菊池義郎

    菊池委員 西村局長にお伺いいたしたいと思いますが、アメリカ軍隊日本に駐留する場合、ただ漫然ととどまつてつても、第三国の侵入を受けました場合に、アメリカ軍隊はこれに対して戰うところの法的根拠がないわけでありますが、そういう場合においては日米防衛協定とかなんとかいうものを結ぶのでございましようか。
  4. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 話合いの程度は、十一日のダレス使節それから吉田総理の両声明それからその後総理が国会でなさいました御報告の中にありますような、ごく大体論だけでございまして、あの方向従つてどういうふうな形になるかというようなところまでは行つておりません。それでありますから御質問の点に対して今から明確に御答弁申し上げますような事態には、まだ固まつていないのであります。どうぞさように御了承願います。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 そういうことになつたならば、という前提のもとにお答え願いたいと思います。アメリカ軍隊が駐留するようになつた場合には、もちろんそういうとりきめができますかどうか。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問趣旨は、あるいは平和条約後もアメリカ軍日本に駐在するというようなことになるならば、そのためにとりきめというようなものができますかという御質問かと存じますが、多分そういうことになると思つております。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 草葉政務次官にお伺いしたいと思いますが、今日ソ連は百七十五個師を持つており、それから中共は百個師の軍隊を持つてこれを世界に呼号し、中ソ同盟条約日本アメリカとを敵であるということを公然とその条文の中にうたつております。そして中共日本武力によつて占領するということを公言しておるわけでありまして、われわれとしてはゆだんができないのであります。幸いにアメリカ軍講和後において日本に駐留してくれるということは、まことに感謝にたえない次第でありますが、いずれにいたしましてもただ彼らが申訳的な形式だけの軍隊であつてはあぶないのであります。日本といたしましては独自の想定がなければならぬ、これらの敵を向うにまわして日本を守るのには、一体どのくらいの兵力がなければならぬかというようなこちらに計算がなければならぬと思うのでありますが、この点について政務次官にお伺いいたしたいと思います。われわれは單なるアメリカ形式だけの軍隊であつてはかえつて危險であると考えるのであります。
  8. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見のようなことを十分考えながら、兵力による外国侵略に対する防衛というものを予想される場合におきましては、どのくらいの兵力が必要であるというような具体的な問題になつて来ると存じますが、これはいろいろそのときの国際的な動きなり、あるいは情勢によりましてもちろん異なつて参ることであり、またアメリカ軍駐兵が、日本の希望します範囲において具体的にどのくらいの兵力量になつて来るかというようなことは、まだもちろん具体的な相談もできておらないわけでありますから、これらの国際的の動きに応じた方向で、その具体的な話合いができて参らねばならぬ。従つて日本として一体どのくらいが妥当なりやという問題ももちろん起つて参りましようが、そこまでまだ具体的に申し上げる段階にはないと存じます。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 私はアメリカ軍隊がどのくらいとどまらなければならぬかというようなことをお伺いするわけではなく、北鮮の方から南鮮に突然になぐり込んで来た、がらあきにすると必ず彼らは来るにきまつておる。その目的のいかんにかかわらず、あるいは自分たちの勢力をふやすために、あるいはアメリカ日本を大して重要な戰略地域でないと考えて、西欧防衛第一主義に持つて行こうと考えている、その空虚をねらつてつて来ないとも限らないわけでありますから、日本といたしましては、それがため警察予備隊を増強するとかなんとかいう考えがなければならぬ。アメリカ軍隊ばかりたよることにはならないと思いますが、これがためにおよそこれらの仮想敵向うにまわして、日本といたしましては大体どのくらいの兵力があればいいということくらいは、政府として当然に考えに置かなければならぬと思うのであります。その点をお伺いしたのであります。
  10. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは御承知のように国内治安に対しましては警察予備隊等の十分なる整備、充実によつて、その遺憾なきを期する。従つて警察予備隊国内治安の確保ということに中心があり、またそれ以外には行われないことは、しばしばその都度申し上げている通りであります。従つて講和後におきまする外国侵入、あるいは侵略というものに対する空白状態に処する場合の兵力というものは、日本が希望するならアメリカの兵を駐兵させてもいいということで、結局外国侵略に対する処置といたしましては、日本の多くの希望しているアメリカ駐兵ということになる。従つてそのどのくらいの駐兵が結局外国侵入に対する処置に対して妥当なりやという具体的の問題になつて来ると思います。そういう意味において、今日の話合いのその量というものは決定して来る。日本がこれだけの侵略を予想しながら、どうしても外国侵略に対しては、これだけの兵力量がなくてはならないというので、日本予備隊等を用いてするというのではないのであります。結局外国侵略に対しては空白になる。その空白アメリカ駐兵によつて処置をしようということに相なつて来ると存じますので、この点ただいま申し上げた通りであります。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 西村条約局長にお伺いいたしますが、無条件でもつて降伏いたしました場合は、講和条約内容につきましても、日本は法的にはまつた異議をさしはさむ余地がないものかどうか。これも抽象的意見でありますが、この点伺いたい。
  12. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員質問のように、私どもとしては五年前に無条件降伏したことは、絶えず念頭に置かなければならないことと存じております。これは条約問題を考える場合にも、その事態はお互いに忘れないで考えて行きたいと思つております。しかし今日対日平和問題について指導的な役割を演じておるアメリカは、今度の使節団意向にも現われておりまするように、講和問題について日本コンサルテーシヨン——話合い日本側の希望を聞きたい、こういう態度に出ておられるわけでありますが、無条件降伏の事実を念頭に置きつつ、しかしながら今申し上げましたようなアメリカ態度というものを考慮に入れて、平和問題を処理して行かなければならないと考えております。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 今のお答えは、法理を離れての道徳的なお話でありまするが、無条件降伏した以上は、結局そうすると、法理的には異議をさしはさむ余地はないということになるわけでありますか。
  14. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 法理論のところは、突き詰めて行けば、無条件降伏をした国であるから、連合国の方でこういう平和条約をつくりたいから、これを受諾しろと言われた場合には、受諾しなければなるまいという御質問だと存じます。私は法理論としてはさよう心得ております。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 それでは、講和条約の中に、もし日本の再軍備を禁止した条項を、戰勝国で入れると言われた場合には、日本はこれを承認しなければならないということになるわけでありますが、それらについて何かかわつた見解でもございますか。
  16. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 われわれの承知しておる範囲内では、連合国におきましては、今のところ、日本の再軍備をしてはならないという事柄を、平和条約の中に入れようという傾向はない。少くとも各種の報道を通じて知り得ました結果は、そういうふうな意向はないものと了解いたしております。従つて質問のような事態はないのではないかというふうに考えております。あえて法理論の問題としても、お答えしない方が妥当かと存じます。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 つまり、もしそういうことを向うから言い出された場合においては、結局これを認容しなければならぬことになると思うというようなお考えでございましようか。
  18. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 今の段階におきましては、再軍備禁止とか、そういうような将来平和条約内容となるような事柄につきまして、かくかくの事項は政府として出すということはできないとか、そういうふうな事柄を今日言うべき時期でもなし、また言うべき立場にもないと私は考えます。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 法理論的にはそうなるということを言外に示されたわけでございますから、それではこれ以上お伺いする必要はございません。  政務次官にお伺いいたしますが、私が考えておりますのは、講和に先んじまして、日本政府といたしましては、日本国はあくまでも反共陣営に所属し、反共陣営に加盟するものであるということを、はつきりと世界に宣言した方が、日本ために有利であると考えるのでありますが、いかがでありましようか、こういう点に対する御見解を承りたい。
  20. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本反共陣営に参加して、民主主義諸国と協力して行くということを、はつきりと声明したらどうか、これはすでに今まで再三、あるいは総理声明あるいは演説等におきまして、日本の将来に対しては、共産主義陣営を排して、民主主義陣営に協力しながら進んで行くということを十分明確にいたしておると存じますから、従つてもちろん国民の多数もそのことをよく了解していただいておるものと了承いたしております。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 たびたびの総理答弁にはそういう意味は現われておりますけれども、それをさらにはつきりさせるためには、やはりある形をとつてこれを表明する必要があると思うのでありますが、こういう点についてどうお考えになりますか。
  22. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見の点は御意見として十分伺つておきます。
  23. 菊池義郎

    菊池委員 日本が地域的の集団保障体制に加入をいたしましたときに、日本といたしましても、から手でその責任を果すことはできない。仲間が血を流しておる場合に、日本ふところ手をして傍観することは絶対に許されないことであります。そういう場合に、集団に対して日本としての責任を果さんがためには、これは再軍備によるか、警察予備隊によるか——そういう場合においては、予備隊は当然戰いに参加せんければならぬものであると考えるものでありますが、政府の構想はどうでありましようか。こういう場合において、軍隊によつて集団に対する責任を果すか、あるいは予備隊によつて集団に対する責任を果すか、この点をお伺いいたしたい。
  24. 草葉隆圓

    草葉政府委員 集団的な地域の安全をはかるという問題は、しばしば御質問にも出ており、御答弁申し上げました通りでありまして、現在まだその段階にないことは御承知通りであります。従つてこれが具体的なやり方について、どういう方向と、またその内容等によつてどうなつて来るかという問題によつて、おのずから違つて参ると存じますから、今ここでそれを想像しながら申し上げることは、かえつて妥当ではないと存じますので、御承知を願いたいと思います。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 小笠原、琉球、沖繩諸島アメリカ信託統治にするということは、大体七原則により、またダレス氏の言明に徴しまして、これを動かすことはなかなか困難のように考えられますが、政府としてなお折衝いたしまして、軍事基地だけをアメリカに貸して、島は日本に残す、そういうような考え方をもつて折衝していただけないものかどうか、そういう用意はないものかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  26. 草葉隆圓

    草葉政府委員 いわゆる南西諸島の問題につきましても、従来再三御質問があり、またお答えも申し上げておる通りでありまして、国民の要望、熱望は十分伝えておりますが、この領土の問題について、日本がかれこれいたす態度をとることについての政府の所見を申し上げることは妥当でないと存じます。御意見の点は十分了承いたしておきます。
  27. 守島伍郎

    ○守島委員長 法務総裁がお見えになりましたが、お急ぎになるそうでありますから、順序をかえまして並木君、その次に黒田君にお願いいたしますが、非常に時間が少いそうであります。
  28. 並木芳雄

    並木委員 大橋法務総裁にお尋ねいたします。米軍日本駐屯することは、日本が結局武力を保有することになる、そういう建前からこれは憲法に抵触するのではないか、こういう質問が昨日の外務委員会吉田総理に対して出たのであります。これに対して総理は、これは自分憲法解釈であるけれども自衛権日本は持つておるのだから、その自衛権に基いての外国武力を使うということは憲法違反ではない、というふうに答えられました。あくまでもこれは私の憲法観ですと断つておられましたので、私どもにはその根拠がまだはつきりしておりませんし、駐兵というものはどういう形で行われて来るのか、それによつてもおのずからまた異なるところもあろうかと思いますので、この際権威者である法務総裁に、何ゆえに憲法に抵触しないのか、その根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 特に権威者というわけでもございませんが、政府を代表いたしましてお答えを申し上げます。憲法第九条におきまして戰力保持を禁止してありまするゆえんのものは、これは日本国が自身のものとして戰力保持するということを禁止せられたものでございまして、外国戰力保持するかどうかということについて、日本国憲法は何らの規定をいたしておるわけではございません。従いまして外国条約上の権利に基きまして、日本国土において戰力保持いたしまする場合におきましても、これは日本戰力ではなく、あくまでも外国戰力考えなければならぬのであります。従いまして憲法第九条とは何らの関係なき事柄である。このことは御承知通り終戰以来すでに五年有余の間、わが国土には、降伏条項に従いまして、連合国軍隊占領軍として駐屯をしておられまするが、これがわが国治安について責任を負うておられるわけでございまして、今日この占領軍日本国土駐屯しておるということは、これは何らわが国憲法第九条と関係のない事柄である。それと同様でございまして、将来講和条約の後におきましても、外国軍隊日本駐屯するというような場合におきましては、これは第九条と関係がない、こう考えております。
  30. 黒田寿男

    黒田委員 私は並木君と大体同じ趣旨質問になると思いますが、関連してやらせていただきます。私は今の法務総裁の御答弁にはなはだ首肯しがたい点がたくさんありますからお伺いいたします。  第一には、憲法第九条でその保持を禁止したのは日本軍隊で、外国軍隊保持を第九条では規定していないと言われました。もちろん外国軍隊保持なんかについて日本憲法が書くべき筋合いではないのであります。問題は外国軍隊日本駐屯するというところにある。そこでこの問題について、外国軍隊日本駐屯するということは、日本戰力という意味にはならない、憲法日本戰力保持を禁止しておるその戰力にはならないのだと言われる。それは日本との何らかの契約に基いて外国軍隊日本駐屯しておる場合と、そうでない場合と、わけて考えなければならぬと思います。法務総裁の言われます通り日本が米国とあるいはほかの外国とでも同様でありますが、外国条約をもつて日本自由意思による条約に基きまして、日本自衛ということとも結びつけた意味で、外国軍隊日本駐屯するということになつて来れば、やはり私はそれは日本ため戰力だということが言えると思います。そういう協定なくして、またその協定目的日本自衛というような目的でなくして、あるいは何らか法務総裁の言われるような意味において駐屯できるような場合があるかもしれません。占領軍の場合を申されましたが、これは私は重大な問題であると思いますから、あとで質問しますが、今仰せられましたように、協定によつて日本自衛ということを目的として来た以上は、日本の保有しておる軍隊でなくてアメリカの保有しておる軍隊でも、やはり日本自衛ためにする武力であるということが言える。しかし憲法では交戰権を放棄いたしまして、自衛戰争をも放棄し、かつ自衛ため武力の保有をも認めないということになつておるのでありますから、私はそういう協定趣旨に慕いて外国軍隊が来た場合の、その外国軍隊は、やはり日本ため戰力である、そうするとやはり憲法規定に違反すると私はこう思う。いかがでしよう。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 黒田君の憲法論に私は全然同意することはできません。
  32. 黒田寿男

    黒田委員 同意することはできないというと、外国軍隊日本自衛という目的ため駐屯した場合には、日本ためにする戰力保持には、ならないと解釈されるのですね。
  33. 大橋武夫

    大橋国務大臣 外国軍隊日本自衛に協力いたしまするために、日本の同意を得て駐屯をいたしました場合においては、それは外国日本自衛ため保持しておる戰力であります。
  34. 黒田寿男

    黒田委員 日本自衛ためにというのは、日本日本自衛ため外国軍隊に来てもらつておるということになるのじやありませんか。
  35. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は黒田君のため答弁をしておりますが、これは黒田君の答弁でなくて私の答弁である。それと同じことであります。
  36. 黒田寿男

    黒田委員 いや、法務総裁外国軍隊日本自衛ため駐屯するということは、やはり日本自衛ため外国軍隊駐屯をしてくれるということになるのですから、従つて日本日本自衛ために、外国軍隊というところの戰力日本が持つということになるのはあたりまえじやないですか。そういうふうに解釈するのは、私は常識の法則に合つておると思う。
  37. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私はむしろ黒田君の常識を疑わざるを得ないと思います。
  38. 黒田寿男

    黒田委員 どうも常識論になつて来ますから、私は、それではこの点は法務総裁常識を疑うということにして、やめておきます。それからちよつと関連して、今重大な問題だと思いますけれども……。
  39. 並木芳雄

    並木委員 その点、関連関連ですからひとつ……。先ほど法務総裁は、終戰以来わが国土には連合軍占領軍として駐屯しておつた、だから今後講和条約後といえども、それと同じだというふうに私聞いたのですけれども、これは違うのじやないですか。法務総裁のような御意見は、あるいは条約を履行するため保障占領としての概念でなければ出て來ないと思う。自主権を回復した日本が、今までのような状態と同じで連合国日本駐屯するということは、ちよつと考えられないのですが、その点どうですか。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私の申し上げたことが誤解を生じて、はなはだ遺憾でありまするが、外国軍隊国内駐屯するという事実は、これは現在も、またかりに講和条約の結果そういうことが起りましても、その場合は同じであります。ただ駐屯という事実だけを述べたのであります。目的に至りましては、お説の通りつたくこれは異なつておる、こう言わざるを得ないと思います。
  41. 黒田寿男

    黒田委員 外国軍隊駐屯という問題で、たまたま占領軍の問題に触れられましたので、私はこの点について明らかにしていただきたいと思います。大体外国軍隊日本駐屯する場合を想像してみて、第一は今日本占領下にあるという意味で、占領軍として外国軍隊駐屯しておる場合、それから今日問題になつておりますような、一種の軍事協定に基きまして外国軍隊駐屯して来る場合、もう一つは、保障占領というような意味において外国軍隊駐屯しておるような場合、こういうような場合が常識考えられると思うのです。そこで私この前外務委員会で実は質問したのですが、どうも要領を得ませんでしたのは、もう一つ外国軍隊日本に来ておる例がある。今私は三つ例をあげましたが、もう一つは、国際連合軍朝鮮において戰つております。あの国際連合軍が今日本駐屯しておる、こういう問題がもう一つあると思う。大体われわれ考えまして四つあると思う。この国際連合軍日本に来ておりますのは、何らかの国際条約に基いて駐屯しておるというのでは私はないと思いますが、日本を占領しておる連合軍でなくて、朝鮮で戰つておりますあの国際連合軍が、わが国にとにかく基地を持つておる、これは事実でありますから、たれでも認めるところだろうと思う。日本のある場所から飛行機朝鮮へ飛んで行つておる。これは公知の事実でありますから、別に秘密でもありません。そういうように基地を持つておりますし、それから海軍基地も持つておる。それからまた輸送日本の車両を大いに用いておるし、通信日本のものその他を利用しておると思うが、その根拠が私どもによくわからない。占領軍としての連合軍日本駐屯しておるということは私らによくわかります。しかし、いわゆる国際連合軍日本駐屯しております何といいますか、国際法上の基礎というものが、私どもにはどうもよくわからないのです。これをちよつと法務総裁から承りたいと思います。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私ども解釈といたしましては、国際連合軍隊日本には駐屯いたしておらない。日本駐屯いたしておりまする連合軍が、国際連合軍の一部として事実上の活動をしておることは事実であろうと思いまするが、しかし日本において駐屯をいたしておる限りにおきましては、それは休戰条約によつて駐兵権がありますところの占領軍である、こういうふうに考えております。
  43. 黒田寿男

    黒田委員 駐屯という言葉が法律上適当であるかどうかということは別問題といたしまして、私そんなことで議論しようと思いません。しかし今法務総裁がおつしやいましたように、日本占領軍として来ております軍隊の一部が、国際連合軍という性質で活動している、こういうふうにおつしやつたようですが、そうですが。
  44. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本駐屯しております連合軍の一部が朝鮮に参りまして、そうして国際連合軍隊の一部として活動をする、こういう事実はあるだろう、こう申し上げたのであります。
  45. 黒田寿男

    黒田委員 それでわかりました。とにかく新たに外国から来たのでも、今までおつた連合軍の一部がその作用をなしておる、これは了承しました。要するに、日本に対する占領軍としての機能を営んでおる軍隊のほかに、朝鮮において活動するという別個の目的機能を持つたところの軍隊日本におる。これは駐屯という名称を用いるか用いないかということはどうでもいい、とにかく事実上おる。それが日本基地から飛行機を飛ばしておりますし、海軍基地も利用しておるだろうと思う。これは事実でありますから、それが日本との関係においてはいかなる法的根拠に基いて日本をそういうふうに利用し、また日本輸送を利用し、通信をも利用しておるのか、これが私はわかればよろしい。別にそのことをどうこうと言うのではありませんが、法的根拠がわからないままにぼんやりさしておくということは、私ども質問を受けたときに困る。この前政府質問したのですが、はつきりお答えにならなかつたので、この際法務総裁から明快なる御答弁を承りたいと思う。
  46. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国際連合軍隊、いわゆる国連軍というものは、これは日本国内に駐屯するということは私はないと思います。日本国内に駐屯しておる限りにおきましては、それは休戰条約によつて定められたる占領軍である。これが朝鮮へ出動いたしましたる場合において、かの地において連合軍として活動されるものである、こういうふうに考えております。
  47. 黒田寿男

    黒田委員 この問題であまり時間を費したくないのですが、しかし事実上日本から飛び旧しておる飛行機がありますし、日本におる場合は日本を占領した連合軍であるけれども、海を渡ると、どの辺の境界からか、たちまち連合軍になるというようなことは、私ども考えられない。ですから、国際連合軍と称する日本占領以外の目的を持つた軍隊が、駐屯という言葉はどうでもよろしいが、とにかく日本におるということを私は国民として認めないわけには行かぬと思う。それならば、その法的根拠はどうであるかということを私はお尋ねしている。
  48. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本におる限りにおきましては、それは日本占領のためにおる軍隊で、国外に出た後においていかなる任務をするか、それは国内における取扱いと何ら関係ないというふうに私は考えております。
  49. 黒田寿男

    黒田委員 それではその限界はどこにあるのですか。日本の陸地から一寸離れた場合には国際連合軍になつて、どこそこの飛行場におつたときには日本占領軍になるというのですか。そういうことは私は納得行かないのであります。どうも詭弁に思われてしようがない。飛行機でいえば、日本の土地を離陸した瞬間から朝鮮に出動する国際連合軍になつて、一歩地上に車輪がついたその瞬間に日本占領軍軍隊になるというのでしようか。それは日本から船で送られる兵隊さんのことに関しても私は同じだと思う。そんな区別というものはできるものじやありません。その区別がつかないままで、法務総裁のような答弁をされましたのでは私どもにはわからぬ。また法務総裁常識をここで疑わざるを得ない。もう少し明快に伺いたいと思います。
  50. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は飛行機が飛び立つたとたんに国連軍になつて、着陸したら占領軍になるというふうには考えておりません。日本国内にある限りにおいては、それは占領軍であり、日本政府としては占領軍として取扱わなければならぬものである。また国民占領軍としてこれを取扱うべきものであるということを申し上げたわけであります。日本の領土外においてそれがいかなる法的の性質を持つものであるかということにつきましては、日本政府として関知するところではないのであります。
  51. 黒田寿男

    黒田委員 国外に出て仕事をする、国外に出て国際連合軍としての任務に服することと、日本に一時的でもそれがおるということと、私どもは離しては考えられないのであります。どうしても日本というものが利用せられておるということを私ども考えざるを得ないのであります。これは当然のことだろうと私は思います。それを無理にわけようとされるから、どうも私どもには明快な御答弁に受取れないのだろうと思います。とにかく朝鮮に行くということと、それが日本におるということとの間に結びつきがあるのでありまして、どうしても私は出て行けば国際連合軍で、帰つて来れば日本占領軍というわけには行かないと思います。しかしこの問題は、いくら繰返しても同じことを答弁されるのであります。遂にきようも私の結論は、政府から明快な回答を得られなかつたということで、質問をやめるよりしかたがないだろうと思いますので、この問題は質問をやめます。
  52. 並木芳雄

    並木委員 法務総裁にお尋ねいたします。先ほどの総裁の、国際連合軍日本国内には駐屯しておらないのだというお説に対して、かりに百歩も千歩も讓つて考えましたときに、講和条約が結ばれて、日本が一本立ちをしますれば、今総司令部の上に国連旗が翻つておりますが、それが続いて翻るためには、当然日本国際連合または国際連合軍との間に、別途のとりきめがなされなければならないと思いますが、いかがでしようか。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国際連合日本が協力するということは、ただいまは事実上の問題でございまして、いわゆる占領軍に対する協力という形で、事実上間接的に国連に協力をいたしておるだけでございますが、将来日本が国連に加入するかどうかということは将来の問題でございます。その場合において、日本がいかなる協力をするかということは、その際にきまるべきものと思います。ただいまどういうふうなことになるということを予想することは、少し無理かと存じます。
  54. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと私の趣旨が徹底しなかつたかもしれませんけれども、国連に加入する問題ではないのであります。国連軍が日本駐屯して、国連旗を日本に立てるとするならば、日本は別途の何かの協定が必要ではないかという質問であります。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国連旗が翻つておるということは事実だと思いますが、私どもはこれは占領軍の司令部である、こういうふうに考えております。
  56. 並木芳雄

    並木委員 それでは私は吉田総理がどうものんきに構えておるという点で、ちよつとお尋ねいたします。ダレスさんは今濠洲方面をめぐつて、すでに日本に対して再軍備をさすべきだということを、濠洲その他の国々に説いてまわつておる。にもかかわらず、きのうも吉田さんはのんきなことを言つているのです。吉田さんとダレスさんとの食い違いの点を考えますと、どうしても吉田首相としては、現在の予備隊というものを将来地上軍に切りかえて行くのだ、こういう腹ができていると思います。今の点は否定しておりますけれども、その点について裏づけるために私はお聞きするのですが、予備隊の今の裝備はどういうふうになつておりますか。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 予備隊の使用いたします武器としての裝備は、カーバイン銃及び若干の軽機関銃であります。
  58. 並木芳雄

    並木委員 それは将来また別の裝備が加わる見込みはございますか。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 予備隊国内治安を維持することを目的といたして創設されたものでございますから、将来国内治安の上からいつて予備隊の裝備を現在よりも強化する必要があるという段階になりますならば、その国内治安の必要の程度に応じて、裝備は強化する必要があるであろう、こう存ずるのであります。
  60. 並木芳雄

    並木委員 予備隊の現在の実在数はいかほどになつておりますか。
  61. 大橋武夫

    大橋国務大臣 定員は七万五千ということでございますが、今日事実は相当の欠員がございまして、七万一千弱ということになつております。
  62. 並木芳雄

    並木委員 国警の方では増員の案がきまつたようでありますが、警察予備隊の増員についての法務総裁考えはいかがでありますか。
  63. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国警についての増員ということも、まだ決定をいたしたという段階ではございません。しかしそうした必要があろうと思つて、目下研究をいたしております。しかしながら警察予備隊につきましては、ただいま政府といたしまして、人員を増加するという点は何ら考えておりません。
  64. 並木芳雄

    並木委員 将来必要になれば、むろん申請して、増員することは考えられると思いますが、いかがですか。
  65. 大橋武夫

    大橋国務大臣 やはり予備隊目的機能から見て、国内治安上どうしても増員が必要であるということが明らかになりましたような場合におきましては、その際適当に措置しなければならぬと考えます。
  66. 並木芳雄

    並木委員 講和条約が結ばれますれば、当然警察予備隊というものは、日本政府自由意思によつて増員することができると思いますが、いかがですか。
  67. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国内治安の問題でございますが、講和条約内容がどういうことになりますかわかりませんので、今お答えするということはちよつとむずかしいかと思います。
  68. 竹尾弌

    ○竹尾委員 関連して……。この間私が法務総裁予備隊のことでお尋ねしたときに、総裁は予備隊は絶対に将来も増員しない方針である、こういうふうにお答えされたと思いますが、その点もう一度はつきりさせていただきたいと思います。
  69. 大橋武夫

    大橋国務大臣 将来絶対に増員しない方針でするということをお答えしたことは、記憶いたしておりませんが、現在の段階においては増員ということは、絶対に考えていないという趣旨を申し上げたのじやなかつたかと思います。
  70. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私のお聞きした印象は、国警の方は増員する場合もあるが、予備隊の方はおそらく将来も絶対にないだろうというふうに、御答弁は速記録を見ないからよくわかりませんが、そういうぐあいに私は受取つたのでございますけれども……。
  71. 大橋武夫

    大橋国務大臣 もしさようなことを申し上げたといたしますれば、これは私の申し違いであると存じます。将来長きにわたつて予備隊を絶対に七万五千から、どういう事情があろうとも増加しないというようなことは、考えられないわけでありまして、現在といたしましては七万五千を増加するという考えは全然持つておりませんが、しかし遠い将来において、日本国内治安の実情から申しまして、予備隊の増加が必要であるというような場合におきましては、あらため考えなければなるまい、こう考えておる次第であります。
  72. 並木芳雄

    並木委員 最後にもう一つ……。現在予備隊が持つておる程度の裝備であるならば、これはあくまでもやはり近代的兵器とは言えない。こういう前提のもとに、予備隊を地上部隊に切りかえるといろいろ問題が起るから、別途に国防保安隊というようなものをつくれば、議論を避けることができるのではないか。そういうような点から、予備隊と同じ程度の裝備を持ち、かつ地上部隊の役をなすところの国防保安隊というようなものをつくるお考えがあるかどうか、同時に警察予備隊というものを地上軍に切りかえて行くことは絶対にないということを断言せられるかどうか、その点をお伺いしたい。
  73. 大橋武夫

    大橋国務大臣 世の中のことはなかなか絶対にというようなことは考えられないと思います。私の申し上げ得ることは、ただいまの段階といたしまして、警察予備隊軍隊にそのままかわるというようなことは考えておらない、こういうことであります。未来永劫先の先まで絶対にというようなことは、かような問題については申し上げることはできないと存じます。  それから現在といたしましては、予備隊のほかに別途に軍隊に類似したようなものをつくるという考えはございません。
  74. 守島伍郎

    ○守島委員長 十一時に法務総裁はお約束があるのですが、もう二十分以上過ぎましたのみならず、ほかの質問がたくさんございますから、今日はこれで……。
  75. 黒田寿男

    黒田委員 それでは私は、法務総裁に対しての質問は留保しておきます。
  76. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私きわめて簡單に一点承りますが、私は何回となくこの委員会において意見を申し上げましたので、ただ政府当局のお考えだけを聞けばけつこうであります。民主党の芦田均君は、現行憲法範囲内においての再軍備は可能であるということを主張しておられます。かつまた、たとえば金森徳次郎氏であるとか、あるいは一、二の憲法学者の中にも、これと同様の見解を述べておる方があるようであります。これは最近の新聞を通じてでありますが、これらに対しまして政府当局はどのようにお考えになつておるか。たとえば現行憲法第九条の解釈論によつて自衛ため軍備はかまわないのだ、自衛ための戰争まで放棄したものではないのだという主張に立つておられるようでありますが、これに対しまして政府当局の新しい事態に即応する意味におきましても、もう一度明確に御答弁を願つておきたいと思います。
  77. 大橋武夫

    大橋国務大臣 憲法第九条第一項によりまして、日本国民は、国権の発動たる戰争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久に放棄する、こういうことが規定されておじます。ここに国際紛争の解決の手段として放棄するという意味は、いわゆる侵略戰争その他侵略的な武力をさしているものであるということは明白であり、侵略目的としないところの自衛や、制裁のため戰力武力の行使、または武力による威嚇は一応第一項には入つていない、こういうことが考えられると思うのです。しかしながら第九条の第二項を見ますと、「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。国の交戰権は、これを認めない。」こういうことをはつきり定めておるのでございますから、自衛や制裁のためといえども、戰争はもちろん、武力行使を行うということはできないし、またいかなる戰力保持できない、こういうふうに考えております。これに対しまして、第二項はその冒頭において「前項の目的を達するため、」云々とございますから、自衛や制裁のため戰力保持は、憲法上さしつかえないという論もあるのでありますが、この第二項に「前項の目的を達するため、」とありますのは、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するという第一項の趣旨を受けておるのでありまして、従つて第二項の戰力保持と国の交戰権は、国際紛争を解決する手段であるとそうでないとを問わず認められない、こういうふうに考えておるのであります。そうしてこの点は憲法審議の帝国議会以来、政府の一貫してとつておる解釈でございます。
  78. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 法務総裁に対してはこれで打切りまして、次に移ります。  関連質問で大分時間をとられておりますから、私は簡單に承ります。外務省の特に西村条約局長に承つておきたいと思いますが、先ほどの質問の中にもありました日本自衛権、とりわけ集団自衛権の問題に関連してであります。昨日も外務委員会におきまして吉田外務大臣は、集団的な攻撃が予想される場合において、これに対する集団的な自衛の対策を考えなければならないとおつしやつたと新聞は伝えております。今世界を見ますと、申すまでもなくアメリカ諸国の間に相互援助条約ができ、西ヨーロツパ諸国の間に集団自衛条約ができ、さらにアメリカ、カナダ、西ヨーロツパ諸国との間にも北大西洋条約というものができまして、集団防衛のとりきめを行つております。これに対してソビエートとその衛星国との間におきましても、集団的な防衛協定ができておりまして、まさに世の中というものは集団自衛の時代であるといつてもさしつかえないと思うのですが、そこで問題になりますのは自衛ということであります。自衛ということは申すまでもなく、自己を防衛するということでありまして、ほかのものから攻撃を受けた場合に、その攻撃を受けたもの自体が、攻撃するものに対してみずからを守るということが自衛であろうと考えます。ところか集団自衛というものは、自分防衛するのではなくて、実は他のものを防衛するということであります。ところが自衛権というものの本質から考えますと、直接に攻撃を受けない国が援助するというためには、その攻撃やその脅威が他国にも直接つながつておるというのでなければならないと思います。同時にまたもう一つ、その危害が自衛権の本質から申して、非常に緊急なものであるという条件も必要ではなかろうかと考えるのであります。かようなことを考えますと、たとえば南アメリカの一国が攻撃を受けた場合において、北アメリカの国々が他国のため防衛するということ、あるいは大西洋を隔てたヨーロツパに対して、アメリカ集団自衛権を発動する、ないし太平洋を隔てた日本に対して、アメリカが将来日本防衛ため自衛権を発動するというような場合におきまして、それがはたして本来の正しい意味におけるところの自衛権ということができるかどうか。たとえば将来日本アメリカとの間に防衛協定ができる、ないしそう伝えられるいわゆる太平洋同盟などというものにおきまして、その同盟国が他国から攻撃を受ける、あるいは日米の軍事的とりきめ等におきまして、今ダレス氏の七項目によつて伝えられるところによりましても、日本の安全保障のとりきめがアメリカとの間に行われようとしておると伝えられるわけでありますが、そういう場合において、日本自衛ためアメリカが軍事力を発動してくれるというような場合において、それを軍団的自衛ということを申しておるわけであります。国際連合憲章によりますと、連合国に対して武力的攻撃が発生した場合において、安全保障理事会が国際の平和と安全を維持するに必要な措置をとるまでの間、連合国が個別的または集団的にその固有の自衛権を行使することを憲章は害するものではないという規定が第五十一条にあるわけでありますが、この日本がみずからの国を守るという、個別的自衛権は、本来固有の権利として当然認められるでありましようけれども、他の国が日本ために軍事力を発動することが、はたして自衛と言うことができるかどうか、つまり集団自衛権というものに対して、どのようにお考えになつているかという。その解釈を承つておきたいと思います。
  79. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ただいまの御質問の点、たいへん私はむずかしい問題と思いますが、国際連合憲章との関係において、私が理解している範囲内において御答弁申し上げたいと思います。国際連合憲章ができましたときに、大体サンフランシスコ会議の中途までには、今御指摘になりました第五十一条の自衛権に関する規定は入つていなかつたのであります。そうして国際連合憲章によりますと、国際の平和や安全を害するような事件が起つた場合には、なるべく地方的な安全保障のとりきめを活用して、それによつて解決すること、但し地域的な安全保障とりきめに従つて武力を行使する場合には、事前に安全保障理事会の許可を得なければならない。これは現在第五十三条ですか、この規定があつたわけであります。そうしてその例外として、但し旧敵国の侵略の再現に対して措置をとる場合はその限りでない。従つて旧敵国に対する安全保障とりきめがある場合には、安全保障理事会の介入なくして、ただちに武力的措置をとり得るという憲章の建前になつておるわけであります。ところがそれによりますと、それではその当時すでに南米、中米、北米諸国は相互援助条約を結んで地域的に安全保障のとりきめがあつた。そうしますとそれによつていわゆる紛争を解決するため武力措置をとろうといたしても、安全保障理事会の許諾にかかることになります。ところが安全保障理事会には、いわゆる五大国の拒否権がありますので、あるいはそれは動かないことになる可能性がきわめて多いわけであります。そこでこの関係をいかにして調整するかというのが非常に大きな問題になつたわけであります。それについてはソ連とそれ以外のフリー・ワールドの二つにわかれて、深刻な意見の対立があつたのであります。それで米英側におきましては今問題の第五十一条を設けまして、いわゆる現実の武力攻撃が発生した場合には、加盟国はいわゆる固有の自衛権を單独に、または共同して発動して、いわゆる武力行動をとつてよろしい。但しこれは安全保障理事会がいわゆる国際連合の一般的規定によつて、具体的措置に出た場合には中止しなければならない。こういう規定になつているわけであります。そこから生れて来ている次第でありまして、従つてここに見えております集団自衛権というものは一つ武力攻撃が発生する、そのことによつてひとしくそれに対して固有の自衛権を発動し得る立場にある国々が、共同して対抗措置を講ずることを認めた規定であると解釈すべきものであろうと思うのであります。従つて御指摘のようにいろいろむずかしい点がありますが、今のように解釈して参りますと、この集団自衛権というものも割合にわかりやすくなります。従つてごらんになりまするように、その後できましたブラツセルの条約にしましても、北大西洋条約にいたしましても、その重要な条項といたしまして、締約国の一に対する武力攻撃は、締約国すべてに対する武力攻撃とみなすという条項が入つているわけであります。いわゆる一つ武力攻撃によつて、ひとしく自国の安全が直接急迫せる危害に立ち至るということが事前にある、そういう関係があります国国の間に今度はお互いに共同いたしまして、自衛権を発動いたしましようというのが、いわゆるアメリカ相互援助条約、ブラツセル条約、北大西洋条約といいますような、国際連合ができましたあとの地域的集団安全保障体制のモデルとなつておるわけであります。
  80. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 自衛権というものの本質から申しまして、先ほど指摘いたしました通り、セルフ・デフエンス、つまり自己を防衛するということがまず条件であろうと考えますし、同時にその危害が非常な緊急なものでなければならぬということも、再三西村条約局長から御説明を聞いたような次第でございます。こういうような条件から考えますると、あるいは地理的に非常に接近しておるもののその防衛が、ただちにもつて締約国全部に響いて来るというような場合においてはそうでありますが、たとえば大西洋を隔てた、太平洋を隔てたというような地理的にも、また時間的にもかなりのつながりがそこに非常に薄いというような場合におきましては、はたしてその場合の共同軍事行動というものを、自衛権の発動ということができるか、どうか、私は疑問を持つたから御質問申し上げたわけなのです。たとえば将来日本が、いわゆる伝えられます講和の条件によりまして、事実は別の問題といたしまして、日本アメリカとの間に、日本の安全保障に関する軍事的なとりきめを行いましたときに、ないし伝えられるような太平洋同盟というものができましたときに、日本が非常な脅威に直面して、日本自体はまさに不正な危害が加えられたという緊急な場合において、たとえばアメリカ軍が、あるいは太平洋条約の加盟国が、日本ため防衛をしてくれる、軍事力を発動してくれるということは、これもやはり集団自衛権の発動と解釈すべきものであるかどうかという点について承つておきたい。
  81. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点は、現段階におきましては御答弁いたしかねると思います。ごく一般的な意見の交換がありましただけでございます。
  82. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは私は日本の問題、ダレス氏との間においてどういう話がきめられたかということは別といたしまして、将来の日本の安全保障というものを、今ここで架空的にわれわれがいろいろ考えたときに、地域的にもまつたく遠く離れた国々が、日本ため防衛をしてくれるという場合においては、それはやはり国際連合憲章第五十一条に指摘しておるところの集団自衛権というのかどうか。今日のように世界集団保障の時代に入つてしまいますと、西村氏の見解をもつていたしまするならば、これから行われる戰争というものは、ことごとく自衛ための戰争以外にはないということすら言い得るのではないか。一方の国が攻撃し、それに対してもう一つ世界が、これを守るという場合においては、これは自衛戰争以外の戰争は認めないというのが国際連合憲章の精神でもあろうかとは考えますけれども、そういう場合において——日本ダレスさんとの話合いというものは別といたしまして、これからの一切の集団的保障体制が発動する軍事力というものは、ことごとく集団自衛権の発動である、こういうふうな解釈をされるのかどうか。
  83. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問趣旨が私はくみとれませんが、今日集団的安全保障の条約といたしまして、だれも引用いたします全米相互援助条約やブラツセル条約、北大西洋条約というものをごらんになりますれば、いわゆる地域的に相当広い範囲内にある国が、相互の間におきまして外部からの武力攻撃があつた場合には、すべての国に対する武力攻撃であるとして、お互いに自衛権を発動するということを約束しておる事実をお考え願いたいと思います。
  84. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 これ以上は論争になりますから、またあらためて私もよく研究した上で御質問いたしたいと思います。  次にせつかくきようはお見えを願つておりますので、大蔵省の方に承つてみたいと思います。池田大蔵大臣は十九日の記者団会見におきまして、元の呉の海軍の工廠を、アメリカの商社ナシヨナル・バルク・キヤリヤーに譲り渡すということを決定した。値段は数日中に大蔵省できめるということをおつしやつておるわけでありますが、まず私はどういうふうな構想で、またどういうふうな条件でこのアメリカの商社との譲渡契約をなされようとしておるか、その全貌について——議論をするわけではありません。正しくひとつ御説明願いたいと存じます。
  85. 吉田晴二

    吉田政府委員 ただいま御質問のナシヨナル・バルク・キヤリヤーの問題でございますが、この問題につきましては、実は昨年以来いろいろと、特に運輸当局とNBCの幹部の方と交渉があつたように聞いております。非常に重大な問題でございますし、もちろんこれは国際的な問題でありますので、大蔵省の方で最後的にとりまとめと申しますか、決定をしなければならぬと思いますが、何分わが国の造船業その他いろいろな方面に重大な影響を持ちますので、こういう方の主管省の運輸省の方で従来いろいろ折衝をしておいでになりましたので、その点についてはあるいは運輸省の方から御答弁があつた方がいいかと存じます。ただいま会社側と大蔵省、特に管財局の方との間の事務折衝といたしまして、評価の問題についていろいろと話を進めているわけであります。しかしまだその具体的な条件については別にそういうことがきまつておるわけではありません。ただいま相手方との折衝の段階にあります。これにつきましては、いろいろな条件をつけて——条件によりましてはその評価がかわつて来るという関係にありますので、いろいろ考えてはおりますが、まだ特にここで具体的に申し上げるというほどのまとまつたものはできてないわけであります。
  86. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 値段の交渉にまで入るというからには、かなり条件等においても話合いが進んで来なければならないと思う。売り渡すのかどうかという方針をきめるにあたりましては、今日の運輸界の現状であるとか、あるいは将来の日本の産業界の影響等も考えまして、いろいろな関連について十分な御検討をなさつた上で譲渡の意思を決定されたことと考えるわけです。従つてすでにもう値段の問題が論議に上つておるという段階でありますから、相当条件等についても進んだものがあるのではないかと私は考えます。たとえばこの使用期間を何箇年間の使用にする、あるいはどういう条件でもつてこれを貸しつけるのか、あるいはそこでだれがどこの船をつくるのかというようなことにつきまして、重大な関係があると思うのでありますから、相当私は構想がまとまつておると考えるのでありますが、大蔵当局の管財局長が不幸にして御存じなければ、他の運輸省関係の方でもけつこうでありますが、従来それらのことについて折衝に当られた経過等をお答え願いたいと思います。
  87. 甘利昇一

    ○甘利政府委員 運輸省の船舶局長でありますが、私から従来のいろいろな経過について簡單に説明申し上げます。  この会社はアメリカで二万八千トンから三万トンくらいのタンカーを三十四、五はい持つておりまして、四つの大きなタンカー会社と、そのタンカー会社の船のみを建造し、あるいは修繕するナシヨナル・バルク・キヤリヤーと称する一つの造船所から成り立つております。この造船所の所長である、ミスター・ハワーンが昨年末参りまして、日本であいておる工廠があるから、それを使つて自社の船の建造と修理のみをするということを条件にして、呉の工廠を貸してくれないかというような話を持つて來たわけであります。運輸省といたしましては、日本の造船工業に及ぼす影響もありますので、いろいろ検討いたしました結果、ナシヨナル・バルク・キヤリヤーが、自分の会社の船のみをつくるということであれば、わが国の造船工業には別段影響がないということが一つと、当時わが国の造船所は、資金的に船主の能力がないものですから、建造資金の大半は見返り資金に依存しておりまして、依つて年間の建造量は、見返り資金の額によつてきまつてつたために、造船能力に比して非常に少かつたわけであります。従つて外国の船をつくります鋼材にしましても、あるいはその他の機械類をつくります工業にいたしましても、相当余力があつたわけであります。従つてこれらの関連産業が相当な苦況に立つていたということもあります。そういう点から内地の造船工業には別段害がないという点が一つと、それからこの工廠のドツクは、当時の賠償庁の見解によりますれば、破壊される運命にあるということが一つありましたので、どうせ破壊されるものであれば、今使つてもおらないし、また将来このようなドツクを使う機会も近いうちにはないという見解から、売つてもいいのではないかという考え一つありました。もう一つは、当時呉工廠は、占領軍から命令されました日本海軍の軍艦の破壊、撤去をやるために使用されたのでありまして、その工事も大体終りまして、それ以外の船舶の修理あるいは建造は許可されておりませんので、従つて工員も順次解雇されまして、非常に労務者としても不安な気持になつております。またその工廠を唯一のたよりにしております呉市民及び広島県民にとりましても、非常に大きな社会問題となりまして、この際そういう話があるならぜひやらしてもらいたいという陳情が、市並びに県民の方からも失業対策という意味からありました。そういう点からもいいように考えられますし、もう一つは、今その会社がつくろうとします船は、重量トンにしまして約六万トンのタンカーでありまして、これは現在一番大きなタンカーが二方八千トンあるいは三万トンというようなタンカーでありますが、六万トンと申しますと、いまだかつて世界がつくつたことのないような大きなタンカーであります。これを米国の最も得意とします全溶接をもつてつくる、従つて溶接その他技術上のいろいろな点で、日本海運の学ぶべき点が非常にありはしないかという点も考えられます。特にわが国の造船業は、戰前といえども、あるいは戰後といえども世界各国に比して、決して技術的に、あるいは工作面において劣るのではありませんが、溶接で船をつくるという点については、非常に劣つておるものでありますから、こういう面において、もしこの工廠においてその会社が溶接工を養成する、あるいは溶接工を養成するためにそういう学校をつくるというようなこと、あるいは現にそういうところでそういう大きな船を実際つくつてみせるということは、日本の造船技術の向上に相当役立ちはしないかという点から考えてみまして、運輸当局としては別段これに異存はないのではないか、こういうような結論を出したわけであります。
  88. 守島伍郎

    ○守島委員長 ずいぶんプログラムがたくさんございますし、一方水産庁長官がお見えになつておりますから、なるべく早くそつちの方に移るようにして、簡單にやつてください。
  89. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは簡單にやります。  今譲り渡しの経過はわからないですか、交渉の条件について、たとえば何年間どこの国がどういうふうに使うという条件について承りたい。
  90. 吉田晴二

    吉田政府委員 これは先ほど申し上げましたように、まだ具体的にきまつたわけではありません。一応向うの希望といたしましては、その使用の期間は十年ないし十五年ということを申しております。なおこれもあるいは運輸省の方から申し上げた方が適当であるかもしれませんが、先ほど触れられたと思いますが、その会社の使用船舶だけをつくる、こういうことを向うから申しておりますので、そういう条件に従つて評価の方もいたした方が適当である、こういうふうに考えております。
  91. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一つ簡單に承つておきますが、日本の船主が注文した船をつくるということはないわけですね。
  92. 甘利昇一

    ○甘利政府委員 はい。
  93. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 まだ承りたいことはたくさんありますが、委員長の要求によりましてやめておきます。  次に賠償関係の方に承つておきます。これは私も現地に行つて見て参つたのですが、賠償指定工場になつておりますが、譲り渡すというのは、講和条約の後という意味ですか、それとも賠償解除後譲り渡すというのですか。
  94. 吉田晴二

    吉田政府委員 ただいまの点、これは賠償指定工場です。従つてこれがどういう条件になりますか、これは関係方面の意向をただしてみませんと、はつきりいたさないわけです。賠償解除になつてやられるものか、あるいは賠償のままやられるのか、そういう点については関係方面の了解がなければわからない問題でありますので、こういう問題が実は出るほど、某々方面で取扱いますためには、よほど愼重にお願いいたしませんと、非常にむずかしい問題があると思います。
  95. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 むずかしいかどうかしらぬが、担当しておられるかんじんの大蔵大臣みずからがおつしやつておるわけです。むずかしい問題ならば、むしろ御注意をそちらの方にお願いしておきたいと思います。  次に水産庁の関係についてお伺いいたしますが、先般吉田総理ダレス氏との間に交換されました漁区の問題についてであります。ことに今度の吉田ダレス特使間の往復文書というものは、日本が独立国となつて、そうして漁業協定が締結されるまでの暫定的な措置として、日本が自発的に東部太平洋だとか、べーリング海峡等の漁場に出漁しないということを申し出た。日本みずからが漁業の濫獲をやらないというようなことによつて、諸外国の不安を一掃し、もつて講和条約を有利にしようというような意図から出されたことと考えられるのでありますが、水産庁当局は今度の約束や措置をもつて日本の漁業界の前途に一つの光明でももたらされたようにお考えになつておるのかどうか承つておきたい。私はこれを見ましたときに、現在のところソ連の近海の漁区というものは、今のところごらんの通り状態でありますし、また今度の交換文書によつて、アラスカ方面の漁区をも放棄するというようなことにもなりますし、また南支那海、中国、台湾方面も、今日の現状におきましては、日本にとつて有望な漁区というわけにも参らぬようなわけであります。そうなつて参りますと、必然これは当分は南太平洋方面に向つて日本の漁区を伸ばす以外に考えられないと思うのでありますが、本日新聞を見ますと、南太平洋地域におきましても、講和条約のできてから後も出漁を許さない。マリアナ漁区の出漁を許さないということを、アメリカの太平洋諸島信託統治局長代理が国連の信託理事会で答弁をしておる。こういうような現情から考えてみますと、今度のとりきめというものは、生死の関頭にさまよつておる日本の漁民にとつては、非常な朗報ではなくして、むしろ非常な束縛を受けるように考えるのです。これらについてどういうふうにお考えになつておりますか。並びに昨日の西村条約局長の御答弁によりますと、講和条約締結後マツカーサー・ラインが撤廃になると、漁業協定締結まで漁区が真空状態になるので、日本は一九四〇年に操業していなかつた地区には進出しないということを、進んで申し入れたものであるというふうなことをおつしやつておるわけでありますが、マツカーサー・ラインにつきましても、今日非常に漁民が悩んでおるわけであります。これは講和条約の締結と同時に撤廃されるという建前になつておるものかどうか。また今度のアメリカとの交換文書によりまして、日本アメリカとの間に基本的な漁区に関する条約ができましたときにおきまして、ちようど今日の全面講和、多数講和というような方式と同じように、他の、たとえば中共や台湾とかいう地区との漁区の条約は、どのように取扱われるのかどうかという点についても、時間がございませんので概括的御質問申し上げたわけでありまするが、お答えを願いたいと思います。
  96. 家坂孝平

    ○家坂政府委員 お答えいたします。日本の水産は、戰前かなり世界の海洋に進出しおつたのでありまするが、終戰後海洋の操業区域が制限されまして、非常に悩みを続けておるような状態であります。それで今度講和条約が締結されますと、私ども考え方といたしましては、戰前のごとく各国の沖合いに参りまして、自由奔放に操業するということは、なかなかむずかしいのじやないか、かように考えておるのであります。従つて各隣接諸国家とおのおの漁業協定というようなものを結ぶか、あるいは集団的にいろいろの取締りをする委員会というものを組織して操業するか、いろいろの方法が行われると思いますが、とにかく戰前のように自由にはなかなか参らないのではないか、かように考えておるわけであります。日本の今後の漁業進出のやり方が戰前とは異なる。その場合に、現在におきまして、繁殖保護も十分心がけてやろうというような意思表示を何かの際にやつておくことが、非常に好都合に取運ぶゆえんではなかろうか、かように考えておつたわけであります。たまたまこのたび総理からダレス特使あてにああした内容の書簡が出ましたことは、非常に私ども考えておりまするところに適合したお考え考えまして、私どもとしましては、適切なる御措置であつた考えておるのであります。従つてこれが今後の講和条約締結後の日本の水産界、またひいては漁民に対しましても、いい結果をもたらすものじやなかろうか、かように考えております。  それからマツカーサー・ラインの撤廃の件でありますが、これは私どもあまり外交方面のことは知りませんので、はつきり申し上げるわけには行きませんが、講和条約が締結されますれば、もちろんこのラインは撤廃されるもの、かように私は考えております。  それから講和条約締結後におきまする台湾あるいは中共方面との関係でありまするが、これはやはり先ほども申し上げましたある種の漁業協定というようなものを結びまして、そのわく内においてお互いが操業し合うということに相なるのじやなかろうか、かように考えております。
  97. 守島伍郎

    ○守島委員長 山本君。
  98. 山本利壽

    ○山本(利)委員 日本の安全は日本の手で守る権利があり、義務があるとか、自衛国民の自尊心であるというようなことを申しましても、終戰以来今日まで、戰争犠牲者に対して与えられた精神的及び物質的な待遇は、ずいぶんひどかつたように思うのであります。戰死した者が一家の家計の中心であつたような場合には、その遺族たちの生活がどんなにみじめなものであるかは世人の知るところでありますし、また傷痍軍人等の現状がどうであるかということも、よく知られておるところであります。さらに戰死者の遺骨を迎えて葬儀をするような場合に、戰時中の葬儀との差があまりにひど過ぎはしなかつたか。あるいは年々の慰霊祭を各町村で行つていても、ただ遺族たちだけが集まつて、肩身の狭い思いをしながらやつておるような場合もある。こういつたような状況では、今後再軍備であるとか、あるいは自衛力の強化だといつても、国民は再び立ち上る元気が出るかどうかと考えるのであります。そこで今日までの戰争犠牲者に対して、どういうような待遇が与えられておるかという現状と、さらに政府において今後これらをどういうぐあいに改善して行こうとしておるかということを、具体的に承りたいと思うのであります。
  99. 高田正己

    高田政府委員 戰争犠牲者に対してどういうふうなことをやつておるか、今後どういうふうにやるかという御質問でございまして、私から——厚生省の一局長からお答えをするのには少し不適当な、非常に大きい問題でございますが、私どもの方で関連しておりますことについてお答えを申し上げたいと思います。  御遺族を初めといたしまして、傷痍軍人の方々、その他戰争の犠牲になられた方々のうちで、非常に生活にお困りになられる方々の援護につきましては、これは私の局の所管でございませんが、御承知の生活保護法でもつて御援護申し上げておるわけであります。生活保護法の適用におきましては、これらの方々が非常に多くの部分を占めております。数字は正確なことは私申し上げられませんけれども、そのうちで子供をかかえた未亡人の方々が、半分以上を占めておるということを私は承知いたしております。なお私どもの方では、今申し上げました子供をかかえた未亡人の方々の私どもの立場からの御援護の一が法といたしまして、住宅に困つておられる方々に対して母子寮を設置いたすとか、あるいは働きに出られるための御便宜のため保育所を設置いたすとか、さようなことを私どもの方の直接の仕事としていたしております。これらに関しましては、御承知のように二十五年度から予算等もその前と比べますると、飛躍的に増していただきまして、多数のさような施設を設置いたして参つたわけでございます。二十六年度におきましても、二十五年度以上にかようなことをやつて参りたいと存じております。広く戰争犠牲者というお話でありまするが、そのうちの御遺族の問題だけにつきましても、たしか第五国会であつたかと思いまするが、両院の御決議がございまして、その御決議の内容を見ましてもわかりますように、非常に役所の立場から申しますれば、各省にわたる問題がこれに関連をいたして来るわけであります。一例をあげて申しますれば、その子弟の教育の問題になりますと、育英の問題として文部省のことに相なつて参ります。税金の問題になりますれば、大蔵省の方とか、地方財政の方を所管しておる役所の方の問題になつて参ります。供出というようなものになりますれば、またよその省ということになつて参ることと存じます。私どもといたしましては、これらの方々の代弁をいたしますような意味で、さような他の省にわたる問題につきましても、極力これらの方々のお立場に立つて、いろいろと関係各省と連絡をいたしまして、少しでもよくなるような努力を今日までいたして参つたのであります。御指摘の通り関係方面の覚書等もあつたりいたしまして、十分なるところに参つておらないわけであります。特に戰争犠牲者の方々に対する国家補償的な意味合いの問題につきましては——これは私どもの所管ではございませんけれども、今日非常にみじめな姿に相なつております。これらにつきましては何とか打開をいたして、これらの犠牲者の方々にお報いできるようになることを、私どもといたしましても希望をいたしておるわけでございます。
  100. 山本利壽

    ○山本(利)委員 国家補償的な方面が非常にみじめであるということを当局でも認められておるようでありますが、その隘路はどういう点にあるのかを承りたいと思います。
  101. 高田正己

    高田政府委員 遺族の方々について申し上げます。一口に申し上げれば、終戰後関係方面から発せられました覚書によるということでございます。これは私どもの方の所管でございませんので、その関係の向きから詳細を御聽取を願いたいと思います。
  102. 山本利壽

    ○山本(利)委員 政務次官にお尋ねいたしますが、終戰直後におきましては、戰争に参加した者に対して優遇的なことがあつてはならないというような遠慮もあつたでありましようが、なおそういう関係連合軍方面においても、あるいは日本政府の方においても続いておるものかどうか。なお今後の見通しがどうであるかということについてお伺いいたしたいと思います。
  103. 草葉隆圓

    草葉政府委員 戰争犠牲者に対しまする問題は、ただいま児童局長から大体の御答弁がありましたが、第五国会で、衆議院では遺族援護に関する決議、参議院では未亡人並びに戰歿者遺族の福祉に関する決議、両方の決議が満場一致で通過いたしました、たしか七項目の具体項目が出ておつたと存じます。従つて政府は各項目につきまして決議の趣旨を十分尊重しながら、これが具現のために今日まで努力をいたして参つております。大体の内容はただいまお話の通りでありますが、また全体としまして国家補償的な方面がたいへん十分でないという点につきましても、ただいま答弁にありましたように、覚書によつてそれが発せられております関係から、現在にわかにその決議の趣旨のようには進みかねておると存じます。しかし国会の決議の趣旨に沿いまして、政府は十分その趣旨をくみながら、遺族の上に相当な方法を講じて行くという熱意と考えとは十分持つておりますので、今後その線に沿いながら進みたいと考えております。
  104. 山本利壽

    ○山本(利)委員 社会保障制度的の面から、單に戰争犠牲者だけでなしに、一般のみじめな人たちを救つて行かなければならぬという点は、よくわかるのでありますが、私が今日この問題をここに持ち出したのは、初め申しましたように、自衛力の強化とかいつたようなことが最近強く叫ばれるので、その点に関してヨーロツパ方面をまわつて来た人たちの報告によりますと、ドイツあたりでは、連合軍の意思に、特に時には抗してでも、戰争犠牲者に対してはずいぶん骨を折つておる、国民が協力してそれを援護しておる。この点は学ぶべきではないかというような報告を聞いておるのであります。外務当局としてはそれらの観点について、戰争犠牲者に対しては一段とこれが救援に努力せねばならぬということをお考えになるかどうか、ただ一般的に扱うべきものと考えられるかどうか、その辺の御意見を承りたい。
  105. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御所見のようにこの戰争犠牲者に対しましては、今後一層十分具体的に進めて行かねばならないと考えております。
  106. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは問題を追放の問題に移したいと思うのであります。昨年の秋に一万九十名ばかりの人が追放解除になつて、続いて旧陸海軍の将校三千名が解除されたのでありますが、まだ十九万数千名の者が残つておるのであります。これらの者に対しては、首相は解除の道を開くと、あの直後に言明せられたのでありまして、なおその後の本会議において私から緊急質問をいたしました際には、首相にかわつて、林副総理から、確かに追放解除の点については努力する。但し具体策は今お持ちがないという御答弁でありました。しかもその後相当の日にちが過ぎておりますから、ここに重ねてお伺いするのでありますが、昨日の委員会において、首相は戰犯の問題及び追放問題は、講和会議のときに解決されると思うというような意味のお言葉があつたと思うのであります。そうすればこの講和会議までは、追放解除の問題はそのままに伏せておかれるように方針がかわつたのであるか、あるいは去る十六日の閣議で、労働追放の特別解除に関する方針を決定したというようなことが新聞に報ぜられたのでありますが、こういつたような労働あるいはその他の方面についても、講和会議までにもできるだけはかどらせるということに努力しておられるかどうか、そうして努力しておられるとすれば、その具体案はどういうことであるか、といつたような点について承りたいと思います。
  107. 草葉隆圓

    草葉政府委員 追放解除問題につきましては、別にかわつた方針をとつておるわけではございませんので、従来の方針に従つて進んでおります。
  108. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいまの御答弁では、従来の方針に従つてつておるということでございますが、そうすれば、講和会議までにも今後引続いて時折追放解除を行われると解釈してよろしゆうございますか。
  109. 草葉隆圓

    草葉政府委員 従来の方針通りに努力はいたしまするが、その点はいかように相なりまするか、申し上げる範囲ではないと存じます。
  110. 山本利壽

    ○山本(利)委員 努力いたしておるということでありますから、重ねてお伺いいたすのでありますが、この労働関係の追放解除が、かりに予定通り行われるとすれば、続いてはどういう方面のものを解除するように御努力中でありますか、承りたいと思うのであります。
  111. 草葉隆圓

    草葉政府委員 労働関係も労働省関係になつておりまするから、私の方で申し上げることは差控えたいと思います。その後の問題につきましては、先ほど申し上げました答弁で御承知を願いたいと存じます。
  112. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは竹尾君。
  113. 竹尾弌

    ○竹尾委員 昨日の外務委員会の席上で、吉田外相は、スターリン声明については遠慮をしたいというようなことであつたと新聞は伝えております。そこで私はこれにつきまして、本日重ねてお尋ねをしたいと思つておりましたのですが、何か外相が遠慮されておるのに、ほかの方が御答弁されるかどうか、そういう点もちよつと疑問に思いましたから、一応とりやめたのですが、それからまた政府委員室の方で、質問があれば受けるというようなことであつたそうで、私ちよつと部屋におらなかつたのですが、そこであまりむずかしいお尋ねはしたくないのでありますけれども、これにつきまして二、三外務当局にお尋ね申したいと思います。  第一番目は、あのスターリン声明の中に、侵略の中心をなしておるものは、北大西洋条約加盟国の十箇国と、それから中南米諸国の二十箇国でございましたか、いわゆる全米相互援助条約に入つておる国ということになりましようか、そういうものである。ところで北大西洋条約加盟国の十二箇国のうちで、二箇国を除外しておる、その除外された二箇国はどういう国であるか、その点につきましてひとつ御意見を承ると同時に、なぜこの二箇国を除外したのか、あの意図をどういうぐあいにお考えになられておりますか、まずそれを御質問いたします。
  114. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは率直に申し上げますと、スターリン氏自身に聞きませんと、その意図はわからないのでありまして、私どももその判断に苦しんでおる次第でございます。
  115. 竹尾弌

    ○竹尾委員 もちろんこれはスターリンに聞かなければわからぬかもしれませんが、私はあれだけの重大な声明である、しかもスターリン自身が声明をするときには、必ずその後に何か具体的事態が生じて来る、こういうことが最近の幾多の例によつても、明らかなわけでございまして、日本といたしましても、これは安閑としておられない重大声明である、こういうふうにとつておりまするから、私は何もスターリンの意見を聞くのではない。外務当局として、できなければ、どなたでもけつこうでございます。個人の御意見でもけつこうでございますか、どういうふうに考えておられるか。
  116. 草葉隆圓

    草葉政府委員 別に個人の意見もないようでございますから、明瞭な点はわかりにくく存じます。
  117. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そういたしますと、どうもこれからお尋ねするお尋ねも、ほとんどそういうような式の御答弁であれば、お尋ねしない方がむしろいいのじやないかとも思いますが、せつかくでございますから、もう二、三お尋ねいたします。スターリンは、もし各国が世界が努力するならば、平和の維持ができる、こういうようなことを言つておるが、平和の維持が可能であるということは、そこにいろいろ国際情勢が紛糾いたしまして、日本としても、ただ默つておるというようなことにはなれないと思うのですが、この点につきまして、また今のような御答弁ではいただかない方がいいのですが、ひとつお尋ねいたします。
  118. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは、どこの国でも努力するならば平和の維持は十分できるということは、各国ともそれぞれ声明しておりまするから、同様そうであろうと思つております。
  119. 竹尾弌

    ○竹尾委員 何かさつぱり答弁にならぬように思う。せつかくお尋ねしようと思つても、そういう答弁であれば聞かない方がいいのであつて、もうお尋ねしない方がいいと思います。しかし、兼攝外相が遠慮したい、こう言うからあとの外務当局の方が遠慮するというようなぐあいにとれますが、そういうことではわれわれとしてはどうしても納得行かない。みずから言論の自由を放棄するようなものであつて、外相がそう言われたから、個人としての意見は申し述べられないというようなことは、どうしても納得いたしかねるのですけれども、外相がそう言われたから答弁を差控える、こういうことでございますか、そこをはつきりひとつ承りたい。
  120. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実はただいまのスターリン氏の声明につきまして、日本政府の立場からこれを批判する立場には実は今ないと存じます。従つてこれは單に外務大臣としての立場で言われたからというだけの問題ではなしに、皆さんの御意見は十分けつこうと存じまするが、日本政府の立場におきましてこれを批判することは、現在は差控える方が妥当であると存じます。ことにただいまの御質問の十二箇国を十箇国にした問題等につきましては、私どももこれを解釈いたす材料を持たないのでありまするから、実は率直にお答えを申し上げた次第であります。
  121. 竹尾弌

    ○竹尾委員 批判は差控えた方がよろしい、こういうお言葉でございましたが、とにかくあれだけ世界に反響を及ぼしておる声明である。日本は、日本の現状として、敗戰国であるからそういうことをしてはならぬのか、あるいは遠慮すべきか、これは議論の問題はございましようが、あれだけの声明が出ておる。しかもその反響が全世界的に及ぼされておる、そのときにただ外国の首相の声明であるからこれは差控えるとか、あと何も論議の御用意もないというように結論づけられるかもしれませんが、それでは、この声明に対して外務当局としてほとんど何も考えておらない、こういうようにとれるようですが、そういうことでございましようか。この声明に対して十分検討はされておるのでございますか。その点をお伺いいたします。
  122. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は本日の委員会の最初に、この声明につきます外国の反響というのを御報告申し上げたいと存じておりましたが、まだ全部がとりそろえられませんので、いずれ次会によく外国の反響を御報告申し上げたいと存じておる次第であります。ただわれわれの外務省といたしまして、ここでこれに対するこれこれの批判をすることは差控えたいと思います。
  123. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そういたしますと、そうした各国の反響をとりまとめられて御報告していただく、そうなれば、その裏に当然それをとりまとめられている以上は、何か外務省としての御意見があるはずでございますが、その際私がお尋ねしたら、御答弁してくださいますかどうか。それをあらかじめ伺つておきます。
  124. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはきよう御答弁申し上げました範囲答弁以上にはできないと存じます。どうぞその点御了承願いたいと思います。
  125. 竹尾弌

    ○竹尾委員 はなはだ不満足ですが、どうもさつぱり反響がありませんから、これでやめておきます。
  126. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは次に仲内君。
  127. 仲内憲治

    ○仲内委員 私は簡單な質問です。これは外務省だけでお答えはできないかとも思いますが、日米のいわゆる経済協力の問題であります。最近の報道によりますると、日本講和後の経済自立の問題、これは再軍備はもちろん、集団安全保障における防衛力の分担の問題にも関係がありますし、また日本の主権回復を裏づける重要な前提をなすという議論は、吉田総理もしばしば言明しておらるるところであります。そうしてまたわれわれもこの経済自立がすべての根底であるという点には賛意を表するものでありますが、ただ講和ができますれば、いわゆるガリオアその他の現在におけるアメリカの対日経済援助が打切られるということも予想せられるところでありまして、いかにして日本の経済自立の目的を達成するかということは、非常に困難を伴う問題であり、また国民の関心の大きい問題であると思います。資金の問題、原料の問題等、日本の産業が復興自立するためには、講和後においても連合国、ことに米国の援助なしには、その目的を達成することが困難であると思うのでありまするが、ダレス特使からも、講和後における日本への経済協力について、日本人の生活水準を向上せしむるためには援助するというような言明もあつたのであります。また米国財界の大立物と言われるロツクフエラー三世も、現にダレス・ミツシヨンと行を共にされ、いまなお日本にとどまつて、文化、産業の面において、対日協力態勢の確立について、わが国民間代、表と折衝せられて、いろいろ話が進んでおるということを伝えられておるのでありますが、日本内地における動きと相呼応して、一万田日銀総裁が先日来アメリカにおいて、アメリカの要路と、外資導入、あるいは原料輸入ないしは日本の生産施設を動員する加工事業の促進というような点について、相当活躍せられておるという報道もありまして、その結果いわゆる日米合同経済委員会というようなものが設置せられるということが考慮されており、これに対して、わが国からも近く民間の経済使節団が渡米するだろうというような報道があるのであります。要するに日米の経済協力の問題について、実際においていかなる進展を見ておるのか、また今後の見通しはどうであるかという点をひとつ伺いたいと思います。
  128. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように、最近の外電によりますと、渡米中の一万田日銀総裁が日米間の経済協力の話合いを相当具体的に進められ、あるいは軍需産業生産なりを日本に請負わせる計画のもとに、日米合同の経済委員会等の設置というようなことが伝えられておりまするのは、御質問通りに、私どもも新聞等で承知いたしておりますが、この問題につきましても、外務当局といたしましては全然関知しでおらないことであります。従つてその具体的なことは承知をいたしておらないのであります。どうぞさよう御承知を願いたいと思います。
  129. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は高田君ですが、時間がございませんから、簡單にお願いいたします。
  130. 高田富之

    高田(富)委員 これは、秘密会で時間もなくて総理から重ねて聞くことができなかつたので、ちよつとこれを補足的に伺いたいのですが、西村さんにお答え願いたいと思うのです。これは非常に幼稚な質問のようではありますが、一般国民が非常に考えておることだと思います。実は日米の講和のただいま提示されておる内容について、講和話合いがだんだん進められておるというときに、これは愉快なことではありませんけれども、どうしてもかつての満洲国承認当時のことを連想せざるを得ないという声を相当聞くのであります。なるほどいろいろ考えてみますと、もつともな点もあるのであつて、例の昭和六年の九月から満洲事変が起りまして、そうして日本軍が軍事行動をやりました。もつともこれは宣戰布告をしてやつたのではないけれども、事実は戰争をやつたわけでありまして、一年ばかり占領をしておつた。それが翌昭和七年の九月十五日に、占領状態から独立国として満洲国を認めた形にかわつたわけです。そのときに日満議定書というものをとりかわしまして、これによつて日本は満洲国を独立国として承認をした。その後ドイツ、イタリアも承認して来ましたから、形は講和会議ではないにしても、一種の個別講和、多数講和のような形をとつている。その九月十五日の日満議定書で、満洲国の独立を認めると同時に、日本軍隊をとどめておく駐兵権を認めておる。しかしこれも日満共同防衛という建前からの、一種の集団的な安全保障というような見地からの、日本の好意による、また向うが積極的にこれを希望するという形で取結ばれたものでありまして、その後の満洲国の実情については、これはもう今日言うまでもないのでありますが、あの場合に行われました日清議定書のようなものを、今日日本国民のうちで連想する者があると私は思うのでありまして、この点がどういうふうに具体的に違うということが、よく国民にわかるように御説明願つておく必要があると思うのですが、西村条約局長からお答え願いたいと思います。
  131. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 今度の話合い趣旨、輪郭は、十一日のダレス特使の声明にきわめて明確に説明してございます。その程度以上を出ておりません。日清議定書などというような具体的な外交文書と比較することは可能でないのです。全然そういう段階に至つておりません。
  132. 高田富之

    高田(富)委員 そういう段階に今至つていないとしましても、そういうふうなことが予想されておるということは、否定することができないので、今早期講和を非常に熱望しておる政府とされましては、当然今私が述べたような疑問に対して、明快に相違点を説明していただくことが必要だと思うのでございますが、どうでしよう。
  133. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ある二つの事柄をとらえて、その間の相違点を説明するためには、いわゆる両方とも同じ程度に固まつた上でないとできないことです。片一方は全然漠とした話にすぎません。原則的な話合いにすぎないのであります。それを日清議定書というような、われわれが思い出してもきわめて不愉快なものを持つて来て、その相違点を説明しろと言われても、だれもできないことであります。お釈迦様といえども、これはできないことであります。
  134. 高田富之

    高田(富)委員 たいへん不愉快なことを思い出させたようでありまして、これ以上あまり追究しても何ですから……。  次にお伺いしたいのですが、アメリカから提示された七原則の中に、朝鮮の独立を承認するということを書いてあります。朝鮮の独立を今度日本講和によつて承認するということになるのでありますが、これは実際は独立しておる朝鮮を、日本講和でもつて正式にただ承認を与えるというだけのことであつて、実際は独立しておるのだということなんでしようね。どうなんですか。
  135. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それも、どうなるかは、でき上ります講和条約の条文の書き方一つであります。
  136. 高田富之

    高田(富)委員 そうしますと、現在はまだ朝鮮は独立しているかいないか不確定の状態にある、こういうわけですね。
  137. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 独立しておりますけれども、この独立は日本との関係において法的に確立していないという段階にございます。
  138. 高田富之

    高田(富)委員 そうすると、日本との関係では法的には確立していないが、他の日本以外の国との関係では独立しておるということになりますと、正式には朝鮮はいつから独立したのですか。
  139. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは私も記憶がございませんが、国際連合の決議もございますし、各国の承認通告のデートもございます。それを総合すれば、具体的に説明はできます。
  140. 高田富之

    高田(富)委員 そうすると、これは独立しているという状態は、あとから承認するので、独立しているという事実関係は承認以前にあるのじやないかというふうに私は考えるのですが、その事実上の独立というのは、承認と関係なしにいつということが言えますか。いつ幾日ということは言えないかもしれませんが、大体いつということは言える性質のものですね。
  141. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは高田委員にお願いしますが、国際法の国家承認というところをごらんになりますとわかります。国際法の上からも二つの大きな意見の相違のある点であります。国家というものは承認を受ける前にすでに存在するやという問題で、存在している国を承認するにすぎないという、何か宣言的な効力を認める学説があります。また、国家というものは独立しておつてもそれは事実であつて、ほかのすでに国際法団体の組成員をなしておる国家が承認することによつて国際法団体に加入するものであるというふうな創設的効力をとる学説もありまして、学説が一致いたしておりません。これは国際法学者の問題として残しておいたらいいと思います。
  142. 高田富之

    高田(富)委員 国際法に非常に詳しい局長でありますから、お教え願いたいのですが、そうしますと、今の朝鮮状態は、承認している国もあるし、承認しておらない国もあるということは別といたしまして、ポツダム宣言によつても、あるいはその前のカイロ宣言によつても、朝鮮の独立ということがはつきり言われておつて、そうしてその後現在のような状態になつておるのですが、これを簡單にいえば、独立しておる朝鮮に政治的に現在二つの政府のようなものがあるんだ。朝鮮そのものは独立しておる状態だが、政府としては二つのような形になつてつて、そのどつちかを承認したり、しなかつたり、国際法的にはやつかいな状態になつておるというふうに理解すべきでしようか。
  143. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 一現在の朝鮮というものの国際法上の地位は、きわめて説明に困難な、また珍しい事態だと思います。というのは、朝鮮の独立ということにつきましては、二つの政府があつて、国際社会を構成している団体いわゆる独立国のあるものは、片一方の政府朝鮮独立の正統政府とすることによつて朝鮮の独立を承認いたしておりますし、また他方の相当数の国家は、片一方の政府を正統政府と承認することによつて朝鮮の独立を承認いたしております。まさに二頭のへびというものをお考えになればいいわけであつて、片一方の頭を承認している国は、それがいわゆる独立朝鮮であると言うし、片一方は自分たちの承認している方が独立朝鮮であると言つておるわけです。実に説明に困難な一種の崎型的な事態だと思います。
  144. 高田富之

    高田(富)委員 そうしますと、日本はこの条項によつて朝鮮の独立を承認しろと書いてありますが、朝鮮の独立を承認するという日本の行為は、そういう状態にあつて、しかもなお朝鮮は独立の状態にあるということを承認すればいいのか。それともどつちかの政府を承認しなければいかぬという意味でありますか。
  145. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それが先ほど第一問で答弁いたしたように、でき上る講和条約規定の仕方一つにかかるわけで、それではいかなる規定が置かれるかということは、われわれ現在承知いたしておりません。
  146. 高田富之

    高田(富)委員 まだよくわかりませんが、この程度にしておきます。次に中国の問題は少し事情が違うと思うのでありますが、連合国一つとして中国というものがありまして、その中国にも二つの政府がある。事実上は中国の四億七千五百万というものは、現在中華人民共和国政府の統治下にあり、経済的、政治的、法律的に実権を持つておるという事実関係があつて、しかも一方では、台湾にあつてなお政府であるということを言つておるわけでありますし、国連にも入つておる。ところが今国連の方でも、中華人民共和国の国連への加盟ということが相当問題になつて、手続上は問題が残つておるようですが、すでにイギリスはこれを承認しておるという関係で、日本としましては、講和を結ぶ相手として、当然いろいろの手続上の問題があるといたしましても、実力を持ち、かりに国連に入ることが承認された場合は、国連加盟国として権利義務を履行する能力を備えておるこの中華人民共和国を相手方として締結したいという希望を出す権利があると言うわけには行かないかもしれませんが、至当なのではないかと考えられるのですが、そこは法的にはどういうことになりますか。
  147. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私はこう考えるわけであります。対日講和問題に関連して、中国の正統代表者としていずれの政府を参加せしむべきかという問題は、日本の問題ではなくして、第一義的に連合国間の問題であると考えます。その問題は、おそらくわれわれの意見によらないで、連合国間の話合いによつて解決されるのでなかろうかと考えております。
  148. 守島伍郎

    ○守島委員長 本日はこれで散会いたします。  次会は公報で御通告いたします。     午後零時五十一分散会