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1951-02-20 第10回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君       伊藤 郷一君    植原悦二郎君       大村 清一君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    仲内 憲治君       中山 マサ君    福田 篤泰君       並木 芳雄君    武藤運十郎君       高田 富之君    高倉 定助君       黒田 寿男君  出席国務大臣         内閣総理大臣外         務大臣     吉田  茂君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 二月十九日  満洲里公館立替金審査促進に関する請願(岡西  明貞君紹介)(第七三二号)  小笠原諸島の日本復帰に関する請願菊池義郎  君紹介)(第七六三号) の審査を本委員会に付託された。 同月十四日  海外同胞引揚促進等に関する陳情書  (第二  一二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。
  3. 山本利壽

    山本(利)委員 議事進行について。先般来外交問題については、参議院外務委員会及び衆議院予算委員会等において、いろいろ首相からも答弁があつたのであります。参議院外務委員会祕密会なつたそうでありますけれども、本日は、もし参議院や、今までの衆議院委員会で言われたこと以外に特別なことをお聞かせ願う部分がありますれば、これを祕密会として、他の部分については公開にされんことを希望いたします。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 山本君のお話がございますが、本日の会議政府から祕密会といたしてくれという御要求がございますから、それに御賛成をお願いいたしますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」「反対」と呼ぶ者あり〕
  5. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは異議があるようでございますから、採決いたします。  本日の会議祕密会とすることに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 起立多数。よつて祕密会とすることに決定いたしました。  それでは議員以外の傍聽者は御退席を願います。      ————◇—————     〔午前十時四十三分祕密会に入る〕
  7. 守島伍郎

    ○守島委員長 これより祕密会に入ります。  ただいまより、国際情勢等に関する件を議題といたしまして質疑を許しますが、時間の制限がございますから一皆さんお約束の時間を嚴重にお守りくださいますようにお願いいたします。それからもう一つは、時間が非常に少うございますから、関連質問は、時間の余裕がございましたらあとでお許しいたしますから、途中ではお許しいたさぬことにいたしたいと思います。仲内君。
  8. 仲内憲治

    仲内委員 私は時間の制限もありますので、主として太平洋同盟について総理にお尋ねいたしたいと思います。講和後における日本安全保障形式と申しますか、むしろ私はこれを段階と言いたいのでありますが、それは第一に、いわゆる真空状態を守るための、日米の單独の協定というものが、やむを得ざる措置として考えられておると思うのであります。次に地域的な集団保障、いわゆる太平洋同盟がその一つ形式として今日問題になつていると思うのでありますが、さらに第三には、理想的な集団安全保障形式といたしましては、また段階といたしましては、国連に正式に日本加入して、その一員として責任を果すと同時に、国連の十分な保障を受けるということが最も理想であると信ずるのでありますが、第一に、日米單独協定による防衛態勢は、もちろん過渡的の、いわゆる真空状態を守るための一時的のものでなければならないというのであつて、できるだけすみやかに、これは集団保障形式に切りかえらるべきものであり、ないしは自衛態勢に切りかえらるべきものであると存ずるのであります。第二の国連加入は、理想ではあるが、いわゆる拒否権の問題を考えますときに、非常な困難、おそらく不可能に近い困難があると思うのでありまして、たとえば中共アメリカによる承認というような時期に、これと交換ででもなければ、日本国連加入はできないじやないかというようにも考えられるのであります。要するに、さしあたりわれわれが一番関心を持たなければならないのは、この地域的集団保障、すなわち今日具体的には太平洋同盟の問題として取上げられておる問題であると思うのでありまして、現にダレス大使も、比島あるいは濠州において、この問題をそれらの当局と話し合つておられるという報道も聞いているのでありますが、この太平洋同盟につきまして、先般総理衆議院予算委員会における質疑お答えになつて、いわゆる太平洋同盟の現在の構想では、日本の負うところの責任負担というものが重過ぎる、大き過ぎるというような御意見であつたと伝えられておるのであります。なるほど日本太平洋同盟参加の場合における犠牲、負担というものは大きいとは考えられますが、それこそは、むしろ日本が進んで負うべき大きな役割であつて日本独立後において東亜の安定勢力としての重要な、国民のプライドを基本とする責任を負おうという意気込みを拂つて立ち上る上においては、この集団保障太平洋同盟というようなものに参加する以上、日本の地理的な、また歴史的な立場から、当然ほかの国々よりも重い責任負担にたえて、そうして安定勢力としての役割を果すというところ、日本独立また参加意義があると思うのでありますが、この点に対する総理の御意見、並びにこの太平洋同盟の問題につきましては、これに関連する日本の再軍備の問題について、濠州あるいはフイリピン等においては、いまなお日本軍国主義再現に対する疑惑が深い。この疑惑を解いて対日講和促進し、そうして日本安全保障に心から協力してもらうということの促進をはかる上におきまして、むしろ太平洋同盟形式が、濠州、比島その他の国の賛成を得やすいという意味で、われわれはこの太平洋同盟はむしろ積極的に日本賛成すべきであるという考えを持つものでありますが、この点に対する総理の御意見、さらに第三は、太平洋同盟構想には参加国島国のみに限つておるようであります。太平洋の島嶼の諸国、すなわちアジア大陸を包含しない構想のように聞いておるのでありますが、島国のみに限ると、そこに共通の利害関係からいたしまして、結束がかたい、あるいは防衛態勢がしやすいという利益はあるかもしれませんが、同時にアジア大陸を全然除外するということは、現在アジア大陸の中にも、いわゆる民主主義陣営の強い防禦者として立つておる国も多いわけでありますし、中共ないしソ連の今後のアジア大陸に対する発展、勢力の拡大を予想するようなことになつて、これら残されたアジア大陸における民主主義諸国立場をデイスカレツジするような印象を與え、そうしていわゆる防共陣営をむしろ弱める結果になりはしないか、むしろ大陸諸国といえども、民主主義に徹し、平和のために防共陣営参加しようという国が多分たくさんあると思うのでありまして、これを太平洋同盟でも、あるいはアジア同盟でもよい、この地域的集団保障参加せしめるということが、かえつて望ましいことであるというふうに考えておるのでありますが、以上の点につきまして総理の御所見を承りたいと存じます。
  9. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま太平洋同盟でありますか、いろいろお話がありましたが、政府としては何ら承知しておらないのであります。また政府に対して、具体的にこうしてくれというような提案は何ら出ておりませんから、従つて私といたして、簡單に申せばお答えができないと申すだけであります。しかし現在の国際情勢から申して、攻撃が集団的に来るとすれば、その防衛は集団的に考える以外に方法がないじやないか、たとえばアメリカにしてもイギリスにしても、共産主義攻撃に対しては、集団的に考えている今日であつて日本だけが独力でもつて防ぐ方法を立てるといつたところで、事実むずかしいことであるから、集団的攻撃に対しては、また集団的防禦考えるほか方法がないじやないかという原則論を私は主張しておるのだが、それ以上にしからば太平洋同盟はどうなるか、こうなるか、その構想についてはどの国も確たる考えがないのであろうと思います。またよく新聞などの伝えるところに縛ると、この太平洋同盟は二つの意義があるのではないか。一つ防衛そのものであるけれども、フイリピンとかその他では、これは日本に対する防衛であつて日本の再軍備が行われ、再び軍国主義が行われるというようなことがないように、日本を縛る意味でもつて太平洋同盟という考えもあるようであります。いずれにしても、その形については何らきまつたことがないというのが確かであり、大西洋同盟のごときようなところまで具体化しておらない今日において、政府当局者はこれに対していろいろな議論をするということは少し早計であるので、まず将来あるいは現在においても、日本の将来の行き方についてはいろいろ疑惑のあるときでありますから、当局者としてはたとい申したところが試案にすぎない。また決定した提案でないものを申すということはよくないと思いますから差控えますが、原則としては今申す通り集団攻撃に対する今日であるから、集団的防禦考えるよりほか方法がないじやないか、そうするとお話のように太平洋同盟というようなことにもなりましよう、また国連への加入というような問題にもなるでしようが、その具体的の態様は将来に属するところとして、日本としてみずから防衛のできない問題に対しては、集団的に考えるより方法がない、こう言うほかお答えのしようがないと思います。  さて、再軍備論については、かねがね申す通り、私は今日軽々しく言うべきものではない。国内的に考えてみても、ずいぶん親を失い、子を失い、夫を失つて、この敗戰の記憶まだなお新たなるときに再軍備をする、すなわち敵に備えて再軍備をするということになると、国民のうちにはずいぶん不安を感ずるであろうし、やる力があつてできるかできないかということまで行けば別でありますけれども、日本の今日の経済力にして、軍艦一そうつくるのにもたいへんなことであります。また砲台一つこしらえるにしても、たいへんなことであります。日本防備はすべて取拂われて、新たな防備をしなくちやならぬ、また新たに軍艦をつくらなくちやならぬというようなとき、しかもその軍備に要する費用というものは莫大な費用で、アメリカのごとき金持ちの国でも負担にたえ切れないというような状態であるのに、日本だけが敗戰なお時のたつておらない、しかも多少復興はしたといつても、これは昨年の下半期以来の話であつて、この日本の国力において再軍備を始めるということであれば、それは砲台一つ築くだけでもたいへんなことだと思います。事実できないことを今日とやこう問題にして、いたずらに国内に不安を増すということはよくないのみならず、またたとえばアメリカのごとき国にしても、日本の再軍備ができないということはよく了解しておるのであつて、その他の再軍備以外の方法を、日本国民としては頭を働かして共産攻撃集団攻撃に対して、共同防衛参加するという他の方法考えるべきであつて、なおそれでも及ばないという場合には、再軍備というものは最後に考えるべきものであつて、軽々しく言うべきものではないというのが私の持論であります。一応お答えします。
  10. 守島伍郎

    ○守島委員長 山本君。
  11. 山本利壽

    山本(利)委員 先般ダレス氏が来朝されまして、吉田首相始めいろいろの人々に会われたのであります。この労に対して首相も感謝の意を表せられたのでありますが、ほんとうのことを言えば、ダレス氏が来朝される前に、吉田首相はああいう人々会見、懇談して、各層意見をまとめておかれるとか、あるいは話がまとまらなくとも、日本のこれこれの人はこういう意見を持つておると、ダレス氏に報告されるの用意がなければならなかつたと私は思うのであります。その上でなお念のために会つておると言われるならば、これを拒む必要はないのでありますけれども、そういつた点にまで首相が手を盡しておられる、講和に対してそういう手まで盡しておられるということが、私は国際的にダレス氏及びアメリカその他の国々に、非常なよい結果を現わしたのではないかと思うのであります。一軒の家の家族意見は、そのうちの戸主がとりまとめておるべきであつて意見がまとまらなくとも、妻の意見はこうだ、長男の希望はこうであるということを言うだけにはしておくべきだと思う。いかに親切な人であつても、よその者がやつて来て、一々自分家族の者を呼び出して聞かれるということは、私はどうかと考える。いかに敗れたりとはいえ、一国の首相としての権威は、国民のために保持していただきたいと私は考えるものであります。しかし過ぎ去つたことはいたし方がないのでありますが、今回ダレス氏に会つた人々も、ダレス氏の言葉から受けた印象、またはその解釈が違つておるかもしれぬ。また会つておのおののかつて希望を述べておるわけでありますから、この際首相はそれらの人々を集められまして、いろいろ懇談し、さらにはその将来に対する一つの対策をお立てくださることが、私はいいのではないかと考えるのであります。この点に対する首相の御意見をまず承りたいと考えます。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見は御意見でありますが、私の見るところは多少考えが違つておるので、むしろダレス氏は日本の民意といいますか、国民希望のあるところを知りたい。日本国情を知りたいといいますか、日本講和に対する日本国民希望を知りたいというために来られたのでありますから、各界各層の人にダレス氏が、必要と思う人に、いいと思う人に、会うことを希望する人に会われて、そうして日本国情そのままを聞き取られて行くということが、ダレス氏の使命を全うするゆえんであり、また日本国情を知り盡していただくゆえんであると私は考えるのであります。しかしそのやり方が惡いというのは、これは一つの御意見でありましようが、私はそうい、りような趣意でもつてなるべく広く会われるように、そうして直接言葉を聞かれるように一政府が代表して話をして、そうして政府のかつてのいいことを言い、あるいは自由党一部のかつてのいいことを申しておるというふうにとられては、また日本輿論のあるものを製造して、相手方に押しつけようとしたというような疑いを持たせることもよくないので、私はダレス氏が率直に各方面意見、しかも自分が、この人の意見を聞いたならば、というような人の意見を自由に聽取せられて、そして日本国民の要望はここにある、日本輿論の傾向はここにあるということを直接に聞き取られることが、最も有効なりと確信して、私は何ら輿論統一といいますか、よく国論の統一ということを言われますが、そういうことをすることが民主主義に反すると考えましたから、やらなかつたのであります。しからば将来はどうするか。これは将来の輿論のおもむくところに従つて善処する。このお答えは始終申す通りでありますが、それが私はいいと考えておりますから、なおこの態度は維持するつもりでおります。
  13. 山本利壽

    山本(利)委員 では、去る十四日の国民民主党苫米地委員長質問に対する首相の御答弁の中に、私のダレス特使に対する話合いについては、すべて祕密である。一体外交祕密であるというのが本体であつて祕密でない外交はおかしな話なのであると言われて、野党方面からは官僚外交の馬脚を現わすという声明書が出され、各新聞とも首相言葉には賛意を表していないようであります。一体今回のダレス氏との会見は、首相の申しておられるように、ネゴシエーシヨンではなくてデイスカツシヨンである。また国民希望するところを率直に述べられたまでのものでありますから、別に祕密になさる必要は私はなかつた考える。国権の最高機関である国会において、自分はこれこれの希望を伝えたと、明確に報告されてこそ、国民は喜ぶのであります。祕密にされると疑心暗鬼を起すのでありますから、外交交渉過程においては、ある特殊の部分祕密にする必要もあろうが、本来外交祕密にすべきものではないということを、この席上で前言をお取消しになるか、ただいま申しましたように御訂正になる方を国民は喜ぶと考えるのでありますが、いかがでありましようか。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は前言を取消す考えは毛頭ありません。何となればこれは私の信念であつて、この信念をかえろとおつしやつても、私にはかえることはできません。またかえるような、いいかげんなことを申した考えではないのであります。一体外交祕密であるのが本則であるというのは、これは私が言つておるのみでなく、くろうとはみなそう申しております。たとえばソビエトのレーニンが立つたときでありましたか、その当時外交公開外交ということを主張していましたが、今日ソビエトぐらい非公開祕密外交をやつておるところはないのであります。というようなわけで、どの国——たとえば民主党において、党の幹部においていろいろ議論がせられた、それをことごとく公開すると、いうことは、私は民主党自身でも、それはなかろうと思います。これは外交でないといえば外交でないのでありますが、外交もその通りであつて、舞台裏のことをすべて公開する、それが外交の本髄なりということであるならば、できる話もできなくなることが往々あります。でありますから、私は話をまとめる上から言つてみると、ある経過をたどるまでは、話は祕密にしておかなければ、できる話もできないと思いますから、外交本質はもしある政策を行うためであるならば、これは祕密にして、そうして舞台芸は別として楽屋裏の話は公開すべきものでないと私は信じますから、私の所論はかえません。
  15. 山本利壽

    山本(利)委員 いろいろ首相にお尋ねし、私の意見も申上述べたいのでありますが、時間がございませんから、簡潔に参るよりしかたがないことを残念に思います。現在フイリピンとか濠州等において、なお反目的な疑惑が多いようでありますが、これらの諸国民感情をやわらげるような手段は、日本としては今までとつてないように思うのであります。日本外交がないということ首相はたびたびおつしやつておられますけれども、ダレス氏がフイリピン、濠州、あるいはニユージーランド等をまわつて奔走しておられるのでありますから、この際日本国首相として、小異を捨てて大同につき一日も早く講和会議をしてもらいたいという意味意思表示、あるいは懇請的な声明を出されることが、それらの国国に対する国民感情をやわらげる一手段であると考えるのでありますが、いかがなものでありましようか。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の承知するところでは、フイリピン、その他、現在の日本に対してはなはだ熾烈な反感がある国においては、一片声明ぐらいではなかなか解けるものではなかろうと思います。またいろいろな、難中の事実等を聞いてみますると、相手方の、たとえばフイリピンとか、マレーとかいうようなところにおける国民の受けた残虐な行動といいますか、損害については、かなり深刻なものがあり、たとえばマニラのフイリピンの大統領の家族は、日本軍のために殺されたとかいうようなことがあるので、日本に対する反感というものは相当年月を経て、そうして国民の久しきにわたる努力によつて、初めてぬぐうことができるのであつてマレーその他における住民の反感というものは、根強いものであることを考えるならば、單に一片声明とか、あるいはまた代表者を出して弁明するとかいうようなことでは、なかなかぬぐい去ることがむずかしいのではないかと思うのみならず、かくすることによつて、かえつていろいろな問題を引起すことがあり得ると思います。でありますから日本に対して反感を持つておる国々の気持を直すためには、国民が協力して、相当時間をかけて、その感じを融和することに努めなければむずかしいということを、よく御承知願いたいと思います。
  17. 守島伍郎

    ○守島委員長 山本君。ほんの二、三分しかありませんから、簡單に願います。
  18. 山本利壽

    山本(利)委員 まことに時間の点は残念に思いますが、一体再軍備とかその他の言葉が叫ばれて、先ほど来お話がございましたけれども、現在警察予備隊というものは、国内治安維持をするについても非常に私は薄弱であると考える。それは二箇年間勤務したら六万円やるとか、月に五千円與えるとかいつたような意味で募集されて入つたものでありますから、ほんとう自衛的な態勢を整えるについては、何となくたよりないという感じ国民は持つておるのでありますから、この際は、決して外国に対する、いわゆる戰火を交えるといつたような意味軍隊ではないということを明確にして警察予備隊をはつきり解散して、自衛軍——という言葉が惡ければ、自衛隊として、警察予備隊は警察官となるかあるいは自衛隊に入るかして、この際態勢を整えることが私はよいのではないかと思う。しかもその費用の点について、首相経済力が許さないということを言われますけれども、現在の予備隊費用とか、数字的なことは省きますが、あるいは終戰処理費の転用とか、見返り資金運用等において、これはまかなつて行けるのではないかと考えるのでありますが、この点に対する御意見を伺います。
  19. 吉田茂

    吉田国務大臣 警察予備隊本質は、当時予備隊を設置するときに申したのに、明らかにいたしておきましたが、これは警察予備隊であります。軍隊ではないのであります。従つて治安維持以外のことには、すなわち兵隊としてこれを使う考えは毛頭ないのみならず、治安維持のためなら、これによつて一応の治安維持は盡し得ると思います。しかしながら、将来なお治安が危殆に瀕した場合には、さらにまた考えますが、ただいまのところでは、現在の組織でもつて治安を維持するに足ると考えます。
  20. 守島伍郎

    ○守島委員長 もう時間がございませんから、次に竹尾君。
  21. 竹尾弌

    竹尾委員 時間がございませんから、ごく大ざつぱな問題を六つばかりお尋ねしたいと思います。  第一番目は、国民の一番知りたいのは、講和がいつごろできるか、その方法はどうか、こういうことだろうと思いますので、そういう点につきまして、外相の御所見を伺いたい。  第二番目は、緊迫せる国際情勢についての見通しでございます。外相は、この委員会の席上で、これは昨年でありましたか、世界には危機が訪れておらない、外相の長い外交官の御生活の勘によりますと、ここしばらく戰争はない、こういうようなお言葉がございました。ところが去る二月十三日の御演説の中で、国際情勢の緊迫せる現状においては云々、こういうようなお言葉を使われまして、現在国際情勢が緊迫したということをおつしやられておりますが、これは昨年の外交官生活の勘によりまして、戰争がないということと、現在の、現状についてのお考えと、どうも多少食い違いがあるのじやないかというような感じがいたしますので、その点についてひとつお尋ねいたします。  それから第三番目は、再軍備のことですが、これはしばしば御質問の方がございましたが、ダレスさんのお言葉、それから外相は再軍備はあまり急ぐ必要はないというようなこともおつしやられましたけれども、結論としては、いずれ再軍備を決意されておるのじやないかというような、これも感じがいたしますので、その点につきましての御所見を伺います。  それからその次は賠償の問題でございます。これにつきましては、いろいろ質問者もあつたようですけれども、この問題は一体どういうことに相なりますか。この点につきましてお尋ねをいたします。  それから戰犯と追放の問題でございますが、戰犯につきましては、総理大臣といたしまして、いろいろダレスさんと懇談を遂げられた、こういうようなことでございましたけれども、その点について、もう一度ひとつ御所見を伺いたい。  それから、先日のスターリン声明でございますが、あのスターリン声明が世界に非常な反響を及ぼしておるようでありますが、この点につきまして首相外相としてひとつ御所見を承りたい。  最後に、これは首相が休会明けの施政方針の中でも、大いに日本の精神力の高揚を説かれておりました。まことにごもつともと思いますが、この間天野文相もこの委員会で、大いに道徳の高揚を説かれているようでございました。そこで新聞雑誌などでも——雑誌の文芸春秋の三月号でも、日本の背骨をどういうふうにつくつて行くかというような座談会も催されておつたようでございましたが、この日本の背骨を大体どんなふうにしてつくり上げる御所存でございますか。  大体以上の点につきまして、簡單に御答弁願いたいと思います。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 講和の時期、方法というお尋ねでありますが、講和の時期は、米英ともになるべく早く講和をしたいということでありますから、つまり相当短かい期間でもつてできるものであろうと思います。しかしながらいついつかというようなことの言いにくいことは、御想像の通りであろうと思いますが、しかし相手のあることでありますから、できると思つたことができないこともありますし、早くできると思つてもおそくなることもあります。おそくなると思つても早くなることもありますし、かりに今日は非常に早くなるだろうと思つても、国際の情勢でもつてどうなるかわかりません。一九四七年でありますか、第一次吉田内閣がやめるときには、その年の秋にはできるだろうというような話をされておつたのが、それが今日に至つたようなわけでありますから、時期については楽観、悲観ともに許されないと思います。まず将来の客観情勢もしくは連合国の間の関係によることと御承知願いたいと思います。  そこで方法ということは、全面講和か多数講和かということでございましようが、これも客観情勢によることであり、連合国の意向によることであつて、米国の今日の考え方は、一応全面講和で各連合国に当つてみて、そしてなるべく早く対日講和を結ぼうという二とにあるようであります。さてそれができなかつた場合にどうなるかというようなことは、これも将来の客観情勢によることでありますから、何とも今お答えができません。  また国際情勢の見通しが違うじやないかということですが、私としては見通しは違わぬつもりであります。私の言つていることは、第三次世界戰争がそうたやすく勃発するものではないということです。国際情勢はその後どうであるかというと、考え方によつては切迫しております。またその切迫した形勢が一応治まるというのも、これはそのときどきの形勢によることおつて、たとえば朝鮮において動乱が生じた。そしてそれが昨年の十一月ごろでありましたか、クリスマスまでには片づくと考えられておつたのであります。しかしながら突如として中共参加した。そこで形勢が逼迫した。その形勢逼迫が、今日はまたいくらか中共軍の出方が鈍つて来た。そこで形勢は緩和せられたというようなわけで、始終客観情勢は、あるいは切迫したような様相を與え、また緩和したような様相を與えますか、今日一般的に1私は新聞雑誌等によつて承知した以外の知識はないのでありますが、たとえば朝鮮において動乱が起つた。そしてその動乱に対して連合国が、なるべく第三次戰争の発端にならないようにと考えて、小さな事件から大きな事件にならないように、朝鮮動乱については国連としては適当な処置をとつて、なるべく小さく治めるつもりでおつたが、治まらなかつた結果、あるいは朝鮮から連合軍は追い拂われて、日本までにもただちに災いが及ぶかというような状態なつた。そういう状態になつてみると、たとえばヨーロツパ方面は、問題は極東ではないではないか、すなわち問題はヨーロツパではないか、ヨーロツパの方がもつと危險であるから、あまり極東に力を費してもらつては困るというような感じが出たのが、国連における十二月前後の話であろうと思いますが、それが今日はさらに緩和されて、中共の進出は鈍つて来た。さてどうなるかというのが今の状態でありましよう。  それから国際の情勢は始終かわるのでありますが、あるいは楽観に傾き、あるいは悲観に傾くのであるが、しかしながら、大体の方向としては、戰争勃発までには行かないと見ている人の方が多いと思います。たとえばアメリカあたりではことしの六月にはとか、あるいはユーゴスラビアあたりではこの麦のできるころ、すなわち四月、五月の間にソビエトが出て来るだろうとか、いろいろな観測はありますけれども、これによつて世界大戰争を勃発せしむるような計画的なことはするはずがない、むしろ偶然の結果から勃発することはあり得ると思いますけれども、計画的にこの際第三次世界戰争を起そうという気持を持つている国は一国もないはずだと思います。つまり大体論としては第三次戰争は容易に起らない。起らないが、その以前において神経戰の苛烈なることは、これは現在日本ばかりではありません。ヨーロツパにおいても、何かアメリカからすればヨーロツパは今にもソビエトあるいは共産主義陣営のために滅ぼされやしないか、あるいは降参しやしないかとまで極端にアメリカ等で考えている向きがありますし、またヨーロツパからいえば、国連軍はその初めの予定を越えて、あるいは満洲まで行つてしまうのではないが、あるいは満洲に入つてさらに北支那に入る、あるいはその他へ入つて、第三次戰争がこの方面から起りやしないかというので、国連に対するあるいは朝鮮における国連軍に対するヨーロツパにおける心配の種になつておるというのが、現在の状態であろうと思います。また私は現在朝鮮において中共軍が出て来て、そして苛烈なる戰争をしても、アメリカ国連軍は朝鮮から追い拂われるというようなことは断じてないと考えておるのですが、現在のところは私の見方の方が正しいと思います。中共軍に対するアメリカ軍の、国連軍の與えた損害は非常に厖大な損害であつて、そのために中共軍の進出が鈍つたということは事実であろうと思いますし、さらに流行病が起り、チフスが起り、非常な損害であるということも、決してうわさではないだろうと思う。というのは現に三十八度線のところを出入しておるような状態でありまして、初めの北朝鮮における戰況とはまるきり今日は違つておる。それはどういうわけであるかといえば、損害かあまりに大きかつたことであろうと思います。さて将来はどうか、雪解けにでもなつて、そうして朝鮮の道路も何もない——道路はこわされてしまつた、鉄道もこわされてしまつたという現状において、そして国連軍は飛行機なりジープなりあるいはその他の輸送機関を持つており、一方は牛車で運ぶというようないくさをしておりますから、雪解けになればなるほど、暖かくなればなるほど、中共軍の進出の勢いは鈍るべきはずだと思います。ゆえにその朝鮮における戰況から考えてみて、とまに一喜一憂することはありますが、大体において朝鮮方面から第三次世界戰争が起るとも考えられない。すなわちわれわれとしては第三次戰争に対してそう神経を悩ますべきものではない。のみならず、神経を悩ますということは、かえつて神経職にかかることである。むしろわれわれとしては神経戰の方が戒むべきものであると思います。これはごく私の想像論でありますけれども、日本立場は非常に危險であるといわれておりますが、しかしそれはむしろヨーロツパの方がより危險であろうと思います。  再軍備については、しばしば申す通り。  賠償問題については、これはまだいろいろ議論があつて、賠償を取立てたいという国もあります。しかしながら賠償を取立てようとしてどうする、これは講和條約のときになつて各国の要望がはつきりいたすわけで、これに対するわれわれの方便は、将来のことになりますからして、ここに申し上げにくいのであります。  戰犯については、戰犯、追放ともに講和條約のときにはつきりいたすと思います。講和條約によつて決定せられることと思います。追放も講和條約後においてはまずないと思います。  スターリンの声明に対しては、外国の政府声明でありますからして、私としては批評を差控えます。  さて国民の精神高揚の方法はいかんということでありますが、われわれの心配いたしておることは、敗戰の結果、日本国民の精神において相当の打撃を生じ、また空白を生じたということは事実であります。これをどうして直すかということは教育の問題でもありますし、一つ国民生活の安定ということでもあろうと思います。まず物質的に申せば、国民生活の安定をはかつて、復興といいますか、日本国民生活水準を高くすることに努めることが、また飜つて国民の精神を高揚することにもなるでありましよう。あとは教育の問題でありますから、これは触れません。
  23. 守島伍郎

    ○守島委員長 武藤君。
  24. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 第一にお伺いいたしたいことは、ダレス特使が去る二日に日米協会において演説されたそうでありますけれども、そのときに新聞の発表によりますと、こういうことを言つておられるようであります。戰後のいわゆる国際的盗賊行為は、大部分国内防備を怠つたために発生したものである。これはそれを守る人自身の責任である。中略しまして、従つてまた日本国政府及び人民は、第一にその国土において防禦方法を常にとる責任がある。みずからの自由を保持しようと思うすべての国家は、自己の国境が敵軍によつて突破されないため十分な障壁を保持する義務がある。こういうふうな趣旨の演説をされたそうであります。これから見ますと、ダレス特使日本にも武力による防禦方法を要望しておるのではないかというふうな印象を受けるのであります。つまりアメリカ日本に対する考え方が、新憲法制定当時とは根本的に違つて来たのではないかという印象を強く私どもは受けるのであります。申すまでもなく、日本は非武裝平和国の立場をとつたのでありますが、その基本的な現われとして、新しい憲法をつくつた考えるのであります。この憲法の立場は、申すまでもなく戰争の放棄、軍備の廃止、交戰権の否認というような、まつたくの非武裝の立場であり、その場合における日本安全保障は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意した。」という憲法の前文にある通りの気持であつて、武裝を持たないということであつたと思うのであります。この考え方は、日本がこの態度を決定して、この憲法をつくることにつきましては、もちろん日本の自主的な意思によつてつた態度であり、つくつた憲法でありますけれども、日本がこのような態度を決定し、このような憲法をつくるにつきましては、連合国、特にアメリカの強力な示唆があつたのではないかと思います。またこの態度をとり、憲法をつくつた後におきましても、アメリカを初めとする連合各国は、この態度を認め、この憲法を承認いたしておるわけであります。そうしますと、先ほど私が申し上げました、ダレス特使によつて表現されるアメリカ日本に対する考え方は、憲法制定当時とは根本的に立場を、考え方をかえて来たのではないかというふうに考えられる、ダレス特使吉田首相がお会いになりまして、いろいろお話をなさつたようでありますけれども、その結果大体において満足すべき了解に達したというようなお話でございます。そういたしますと、日本が武裝をする、軍備を持つということにつきましては、先ほど来吉田首相は、軽々に言うべきではないというふうに言われましたけれども、実際、軍備をしようという約束をなすつたかどうか私は知りませんがとにかく精神的には憲法をかえ、再軍備をしてもいいのだというような、以心伝心の了解があつたのではないかというふうに私どもは印象を受けるのであります。先ほど来伺つておる首相祕密外交信念によりますと、なかなかほんとうのところは、お話ができないのではないかと思いますけれども、せつかく祕密会にしたわけでありますから、一つぐらい舞台裏の話もお聞かせ願いたいと思うものでありまする
  25. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は秘密外交論者でありますから、主義として舞台裏の話はいたしませんが、しかしダレス氏の言われたことは、私はこう了解いたします。すなわち、今日自由国家と共産国家と両主義国が相対峙しておる、もしこのままにして、自由国家が滅ぼされるということになれば、これは世界の文明の破滅であり、いろいろなりくつがありましようが、とにかくこれは好ましからない行動である。この自由というものはわれわれ共同して防衛すべきものだ、従つて日本としてもこの共同防衛の一環をになうべきではないかというような趣意と思います。しかしてこの共同防衛に何をもつて貢献するかということになれば、あるいは軍備ということもありましようし、あるいは私の言うように、もう小し軍備以外に頭を働かすべきものじやないかというような議論も立ちましようが、しかし私に対してダレス氏は、アメリカとしては考え方は違つたということは少しも申してはおられません。また満足なる了解に達した、それは何かと申せば、これは舞台裏のことに属しますから申しませんが、しかしわれわれの説明に対しては、ダレス氏も相当満足して了解せられたろうと思います。またダレス氏の意見についても、私は十分敬意を拂つて聽取したのであります。この点両者の間において考え方の食い違いはありません。しからばどういうことについて妥協したか、食い違いがなかつたかと言われますと、これは舞台裏のことに属しますからして申し上げにくい。
  26. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 私は頭が惡いので、頭を十分働かせられないのでありますけれども、ダレス氏の言つておられる、日本責任をとれ、義務もあるというようなことであつて、この義務と責任を果すということになると、ダレス氏の強い表現から見ますと、どうも再軍備する以外に方法がないというように、私どもの頭では考えるよりほかないのでありますが、何かそのほかに、たとえば日米防衛協定なり、あるいは地域的な集団防衛同盟なりがかりにできて、そのうちへ日本が一国加わつたというふうな場合に、日本がそれに対して貢献すべき事柄というのは、軍備以外に何か便益というふうな言葉で表わされているもので、どんなふうなことが話されたのか、話されなかつたのか、考えられたのか、こういう点を重ねてひとつお話を承りたいと思うのであります。
  27. 吉田茂

    吉田国務大臣 大分舞台裏の話に切り込んで来られますが、これは私の方で申しにくい。しかし日本軍備をすることばかりが貢献とは考えられない。ということは、いろいろな説明の仕方もありましようが、たとえば日本の安全については、アメリカ側は、防備のない日本であるからして、万一の場合には一日本独立が侵されるというときには、もし希望するならば、アメリカの兵隊をそのまま置いてもいいという話は、新聞で発表せられておる通り、そういう話はありました。これは日本独立日米協同して保護してくれるわけでありますが、しからば日本はその場合に、こういう條件であるから、アメリカの兵隊を置いてもらいたいということを申したわけではないのであります。一方的にアメリカが好意をもつてといいますか、共同防衛という立場からしての話であつて、これに対して希望するならばということであります。将来アメリカ側がこういうことを希望する、ああいうことを希望するという場合には、これに対してできるだけの協力を惜しまない、また協力するということを考えるべきであつて、しからばそのいかなることについて協力を求めるか、ダレス氏からも、アメリカ政府からも、何ら具体的に申込みはありませんが、主義としてわれわれは協力するという考えでおります。その協力の具体的問題については具体的になつておりませんからお答えいたしません。
  28. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 アメリカ日本希望するならば、軍隊も駐屯しよう、日本の周辺も守つてやろうという申出があつたそうでありますけれども、それをかりに受入れて、それではお願いしますということになり、日本はこれに対して積極的に軍備を持たないという立場をとつたといたしましても、外国の軍隊日本に駐屯しまして、日本防衛のためにやつてくれる、日本がそれをお願いをして、受入れて便宜を供與するということになりますと、日本自衛のためにみずからの軍隊で武裝することも、他国の軍隊で武裝することも、これは同じく軍隊軍隊でありまして、やはり非武裝平和国家の憲法の立場に反するということになるのではないでありましようか。言いかえますならば、そういうふうな防衛協定が結ばれて、アメリカ日本に駐屯し、日本を守つてくれるという場合には、やはり日本自身の軍隊ではありませんけれども、憲法の改正を行うほかにはないのではないかというふうに考えられますが、この点に関する外相の御見解を承りたいと思うのであります。
  29. 吉田茂

    吉田国務大臣 今日外国、たとえばイギリスにおいても、イギリス国内アメリカの飛行部隊がおるというふうなわけで、共同防衛考えから見て、もし自力に及ばない強い外国の勢力が来た場合には、外国の援助あるいは外国の協力を求めるということは、日本においてのみこれを非難することはできないと思います。もし日本が自由な主権の発動といいますか、行為によつてアメリカとの間にある援助條約を結ぶ、アメリカの援助によるという協約を結んだ、ところがこれは主権の行動でありますから、何ら拘束を受くべきものではないと思います。しからばそれが日本国の名誉でないという話であろうと思いますが、それはその通りであろうと思います。でき得べくんば、自力をもつて防ぎたいが、客観情勢はこれを許さないという場合は、日本独立を保護することが大事でありますからして、かかる協約を結んでも一向さしつかえないのみならず、これが憲法違反なりとは私は考えません。憲法には日本防備をすることは許されておりません。これは日本自身が防備をなすことを許さない主義であり、またしない考えでありましようが、しかし日本の国を守るという自衛権が国として存在する以上は、その自衛権の一つの発動として、外国の協力がある場合にこれの協力を求めたところが、それは自衛権のためであるからさしつかえないと思います。これが私の憲法の見解であります。
  30. 守島伍郎

    ○守島委員長 もう時間がございません。高田君。
  31. 高田富之

    ○高田(富)委員 最初にお伺いいたしたいことは、先ほど総理はスターリン声明については批評を差控えたいということでありますが、これは非常に重要な問題であり、世界的に相当の影響を與えておると思いますので、念のため二、三点について、簡潔でけつこうでありますから御見解を承つておきたいと思います。  第一点はソビエトの平和政策ということに関連しておると思いますが、こう言つております。「ソビエトといえども、民需用工業を発展させながら、すなわちヴオルガ、ドニエープルに水力発電施設のような建設計画を開始する一方物価を引下げる組織的政策を持続し、数千億ルーブルをドイツによつて破壊された国家経済の建設に投資すると同時に、その武裝兵力を増強し、軍需工業を発展させ得ないことを容易に理解するだろう、このような政策はいかなる国をも破産に導くだろう。」というように言つておるのでありますが、このような平和政策を実行しておるという、この事実につきまして、総理はこれを否定せられますか、あるいはこれを肯定せられますか、どうですか。  次にお伺いしたいことは、最もわれわれに関係の深い中華人民共和国を侵略者として宣言した国連の決議についてでありますが、「私はこれは恥ずべき決定だと考える、中国領土—台湾—を奪取した上、中国国境まで朝鮮を侵略している合衆国が防衛する側にあり、その国境を防衛している中華人民共和国が侵略者であると主張するには理性の最後の痕跡さえも失わねばなるまい。」こう断言しておるのでありますが、総理は理性の最後の痕跡さえも失わない立場において、いかようにこれを理解せられますか、伺つておく必要があると思うのであります。  それからもう一点は、戰争は不可避でないという点で、「いや、現状のもとでは不可避であるとは考えない。全世界の民衆が平和の理想防衛自分の手に握り、それを最後まで防衛すれば世界戰争は回避できる、」云々という民衆の平和擁護の理想というものを非常に重要視しておるのでありますが、総理はこれにつきましてどういう見解を持つておられますか、ぜひひとつお聞かせ願いたい。
  32. 吉田茂

    吉田国務大臣 先ほど申しました通り、スターリンの声明について、とやこや私が日本政府の代表として、というのはおかしな話でありますが、責任の地位にある私が、スターリンの声明に対して自分はこう考える、ああ考える、あるいはこれは不当だというような批評は差控えたいと思います。
  33. 高田富之

    ○高田(富)委員 それではやむを得ませんから、次の三つの問題につきまして、まとめて簡單にお伺いしたいと思います。  第一はこの間首相声明の中に、講和後の米軍駐屯を日本国民の大多数が喜んで心から迎えるというふうに言われておりますが、一体講和後も引続いて外国軍隊が駐屯するということを認めるのは、私どもかつて日本が、満洲国承認にあたりまして、日満議定書によつて日本軍の駐兵権を認めさせたことを連想せざるを得ないのでありますけれども、実際問題としてどのような違いがあるか、たとい占領軍が駐屯軍というふうに名前がかわりましても、占領目的のための管理というのが、今度は軍事的な作戰的見地からの管理ということになるわけでありまして、事実はむしろかえつて制限的な管理を甘受しなければならないような状態になるのではないか、防衛のためというようなことも言われましたけれども、日本独立国である満洲国を防衛してやろうというような好意から軍隊を駐屯させてやつたのであつて、何ら他意はないというようなことは、今日日本人のだれも信用する者がない、かように思うのであります。この総理言葉はどういう根拠に基いて言われたものでありますか、第一に伺いたいと思います。  次にお伺いいたしたいことは、先ほど来いろいろ御質問がありましたフイリツピンとか、オーストラリアその他の国々が、日本軍国主義の復活を懸念しておる。このことにつきまして、私はあながち根拠がないとは言えないのではないかと思いますので、若干御質問したいと思うのですが、最近戰犯者の釈放であるとか、追放の解除が非常に大幅に行われ、これが政界、官界、財界、労働団体、警察予備隊というような方面の要職に続々復帰する傾向にあります。なおさらに大幅の解除を要求している声が非常に最近は強い。また先般ダレス氏に対しましては、追放中の鳩山氏その他の人々が面会したというような報道もあるようなわけでありまして、こういう事実ははたしてそのような懸念を生むことになりはしないか、またがつて対日理事会で英国代表から日本の財閥が復活しつつあるというような問題を提起されたことがあるのでありますが、集排法、独禁法などの運用等に相当不信を抱かれる節があつたと思うのでありますが、最近では特に講和を前にして、独禁法の改廃が非常に強く主張されておる。こういうふうなことは、財閥の復活企図と見なされるおそれがないでありましようか、またソーシヤル・ダンピングは極度に危惧されているのでありますが、現在労働基準法の改廃ということを自由党等においては相当強く要求しておりますが、これらはますますこの危惧を深めるのではないか、またがつて軍事基地でありました千島の返還というようなことを盛んに唱えられますことも、一種の排外主義の宣伝であると思うのでありますが、すべてこういつたようなことは、軍需工業の公然たる復活、また予備隊の名目での軍隊の復活というようなことをあわせ考えますときに、日本軍国主義の復活企図を云々せられる根拠となるのではないかというように思うのでありますが、総理の御見解を承りたいと思うのであります。  最後に講和の見通しについてでありますが、先般ダレス氏と首相の会談で、原則的な了解は成立したと言われておりますが、そのような講和がはたして実現の可能性があるかどうか、中ソ両国がこれに参加しないということは、これは論ずるまでもないと思う。なぜならば、これは両国を敵としての日本防衛、あるいは再軍備というようなことが眼目になつておるのでありますから、これは問題でありません。しからば中ソ以外の国々が締結する見通しがあるか、まずインドを初めとするアジア・アラブ諸国はみな中華人民共和国の国連加盟を支持しておる。これを侵略者と断ずる国連決議には反対している。イギリス及び英連邦も対日講和條約参加希望しており、朝鮮事変以後これら諸国の動きは、中華人民共和国政府と敵対的な立場に立ちたくないという非常に強い意思があることを示していると思うのでありますが、そういうふうな状態でありますので、今進められているような米日間の講和構想というものは、中華人民共和国と明確に敵対関係に入るものでありますから、これらの国々が入るということはちよつと考えられない。といてこれをやろうということになれば、アメリカ及び日本がアジア及び全世界から孤立すると、いうことにもなりますので、そのようなことをはたしてアメリカがやるかどうかということは疑問である。結局私は現在考えられる講和というものは、四大国の好意に基く全面講和以外には実際問題として可能性がないのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、総理の見通しにつきましてお伺いしたいと思います。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 日満議定書云々というお尋ねでありますが、当時における日満議定書なるものについては、私は責任を負いませんから、従つてこれに対してお答えをいたしません。またもしアメリカ日本希望によつて日本の安全のために駐兵をする希望があれば、駐兵をしてもよいということは、私はけつこうなことと考えて、国民の大多数は私の趣意に同調するであろうと思います。少くとも自由党は同調いたします。  それからフイリピンその他において、日本の今日とつておる——とつておるといいますか、問題になつておる集中排除、あるいは労働法等の改正、あるいはまた千島返還、軍需工場を復活せしめるというようなことが、刺激を與えるというお話でありますが、これはまだ具体的な問題となつておりませんから——刺激を與えるか與えないか、これはもう少し経過を待つて、はたして法制の改正とか、あるいはまた軍需工場を復活せしめた場合にどうなるか。存外フイリピンその他において関心を持つておらないかもしれず、持つか持たないか、私においてここで断言はできませんが、しかしながらいかなる場合においても、日本は外国を征伐するような考えで、軍国主義者が当時持つてつたような考えを抱いて、将来において何らの設備をする考えがないことは、いろいろな方法をもつて相手国に徹底するように努めるつもりであります。  講和の実現の可能性いかんというようなお尋ねでありますが、これはアメリカは、先ほど申した通り、全面講和考えを持つて各連合国に一応交渉をするはずと私は了解をいたします。
  35. 守島伍郎

    ○守島委員長 高倉君。
  36. 高倉定助

    ○高倉委員 一点だけお伺いしたいと思いますが、領土問題につきまして講和原則において琉球、小笠原諸島を国連信託統治に、台湾、澎湖島、南樺太、千島列島につきましては、英米ソ華の四箇国の決定に待つというのでありますが、ダレス特使との会談において、吉田総理は小笠原、琉球の返還を要求されたいというように新聞に報道されているのであります。ダレス氏とどんなぐあいに話合いが行われたか。ことにこの千島列島といたしましては、現在ソ連に一括占領されている色丹を含む歯舞諸島は、昔から北海道の一部に属しておりまして、千島列島の中には入つていないのであります。これは明白な事実であります。従つて日本領として確認さるべきものであると私は信ずるのであります。歯舞諸島は根室の半島の突端にありまして、地理的にも千島列島とは全然別個の島でありまして、昔から根室場所の一部として古くから日本人が居住しております。安政年間の神奈川條約におきましても、日本に属することが問題となつたことがないのでありまして、一八七五年の千島、樺太交換條約の対象となつたものでもないことは言うまでもないのであります。このヤルタ協定のいわゆる第三に、千島列島はソビエト連邦に引渡さるべしというようになつておりますが、これらの島は千島列島に属しておらないのでありまして、一九四五年九月二日の降伏文書の直後に課せられたところの一般命令第一号によりまして、日本本土に接続するあらゆる諸島として、合衆国の太平洋陸軍最高司令官の占領下に帰すべきものであつたと思うのであります。当時これらの島に駐屯いたしておりました日本軍隊が、南千島駐屯の八十九師団の指揮下にあつたために、千島本隊とともにソ連極東軍最高司令官に降伏しまして、その占領下に属して、爾来今日に至つておるのであります。かような意味から行きまして、この歯舞諸島はヤルタ協定の中に私は入つていない、かように考えておるのでありますが、これらに対しまして、ダレス特使との間にどういうようなお話合いがありましたか。また單独講和締結の場合におきまして、ヤルタ協定はどういうふうに取扱われるものであるか、これをお伺いしたいのと一もう一つは海外移民の問題でありますが、人口問題の解決につきましては、過剰人口対策として海外移民政策を行うことが、これはもう農業方面におきましても、最も重要なことであると思うのであります。こういうような海外移民問題に対しまして、ダレス特使との話合いがどういうふうにされたか、内容をお聞かせ願えればけつこうだ、かように考えるので、この二点だけお伺いをいたします。
  37. 吉田茂

    吉田国務大臣 領土問題は、米国政府立場としては、この問題はすでに解決された——降伏條約その他において解決された問題であるという立場をとつております。そしてダレス氏との間にいかなる話があつたかということでありますが、これは楽屋裏のことに属しますから、お答えはいたしません。但し日本アメリカとの関係は久しきにわたつて将来反好関係を持続したいという考えであることは明瞭であります。従つて日本国民の要望、希望は、考慮に入れるであろうと私は想像いたします。これは想像であります。  單独講和の際、ヤルタ協定はどうなるかということでありますが、これは将来のことに属しますし、また講和の内容をなすことと思いますから、お答えはいたしません。  移民問題については、何ら話し合つたことはありませんが、しかし状況は、日本の今日将来における重大問題は、人口問題の解決ということでありましようし、従つて移民という問題は、日本の将来にとつて重大な関係のあることは御説の通りであります。しかしこれはまだ日本が今日取上げるのには少し時期が早いと思います。これは将来、日本国情、あるいはまた米国政府その他が日本の人口問題を解決することが、世界の平和、世界を安定せしめるゆえんであるというような考え方から自然起りましようが、今日取上げるのには少しまだ時期が早いと思いますから、お答えはいたしません。
  38. 高倉定助

    ○高倉委員 歯舞問題は……。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは先ほどの領土問題になりましよう。領土の問題については、お答えはできない。
  40. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君。
  41. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はきようは一問題だけ質問いたします。最初に質問の趣旨を述べてみます。米国提案の対日平和條約七原則の中には、第一にソ連の同意なくしては実現し得られないもの、第二にソ連との協議を前提としなければ実現し得られないもの、第三にソ連の参加のもとで協議することを明示しておるものがある。しからば米国提案の七原則が中心議題となるはずの対日平和会議は、全面講和にならざるを得ないのではないか。首相はこれについてどう考えておられるか、また先日のダレス特使との会見の際に、この問題につきまして、何らか意見の交換がなされたか、これが質問の趣旨であります。以下少しそれを説明した上で、首相の御答弁をいただきたいと思います。  第一に七原則の中には、ソ連の同意なくしては実現し得られないものがある。それは七原則中の第二原則、すなわち国際連合への加盟問題であります。国際連合憲章の規定によれば、連合への加入につきましては、大国が拒否権を持つておるのであります。米国が日本の加盟を考慮するという以上、ソ連に講和会議への参加を求め、この会議日本の加盟について、ソ連の賛成を得るための努力とあつせんが、わが国のためになされなければならないものと考えます。何となればソ連を除外した会議での、日本の国際連合加盟問題を考慮してみたところで、それは日本にとりましては、から頼みをさせるだけのことでありまして、欺満ではないといたしましても、私はナンセンスであると考えるからであります。  第二に七原則の中には、ソ連との協定を前提としなければ、実現し得られないものがある。七原則中の第三原則、すなわち領土問題に関する原則の中にこれがあると私は見るのであります。琉球諸島及び小笠原諸島を、合衆国を施政権者とする国連信託統治にするという問題であります。米国がそれを欲し、かりにそれに日本が同意したとしましても、国際連合憲章の信託統治制度に関する規定によりますれば、第二次世界戰争の結果として、日本から分離せられる地域としての琉球及び小笠原諸島につきまして、これを国連の信託統治制度のもとに置くにつきましては、これらの地域をいかなる條件のもとに置くか、どの国が施政権者になるか等の問題につきまして、信託統治協定がなされなければならない。今私が指摘したい点は、この協定は、直接関係国によつてなされると定められておる点であり、この直接関係国には、第二次世界大戰の結果として、敵国から分離せられる地域については、連合国側の五大国が含まれる。すなわちソ連も直接関係国の一つとして、琉球及び小笠原諸島の信託統治協定に参加するということになつておるという点であります。私はそういうふうに見ます。従つて米国の欲するごとく、琉球諸島及び小笠原諸島を、米国を施政権者とする信託統治地域にしようとする場合も、ソ連との協議という過程を経ない参加のもとで協議することを明示しておるのは、第三原則すなわち領土に関する原則のうち、台湾、澎湖諸島、南樺太及び千島列島の地位に関する部分でありまして、この問題に関しましては、連合王国、ソビエト連邦、中国及び合衆国の決定を日本は受諾する、こういうふうになつておりまして、ソ連の参加を明示しておるのであります。このように検討してみますと、七原則を中心議題とする平和会議は、米国が七原則中の第一原則で、講和の当事国が必ずしも日本の交戰国の全部でなくてもよいというような方針を示してはおりますが、それにもかかわらず、他の原則の中に、ソ連の同意なくしては、実現できぬものがある。またソ連との協議を前提としなければ、実現し得られないものがある。またソ連の参加のもとで協議を行うということを明示しておるものもあるのでありまして、ここに私は米国提案の中に矛盾があると思う。しかし問題は、これを実質面から、すなわち内容の上から見るべきでありまして、その場合には七原則を中心議題とする講和会議は、当事国の範囲におきまして、ソ連も参加しなければならぬもの、すなわち全面的でなければならぬものということになつておる。希望するというのではなくてなつておる、私はさように理解しているのであります。そこで日本は全面講和のためにあらゆる努力を盡さなければならぬ。それがまた日本の利益にもなるというふうに私は考えております。総理はこの点につきまして、どういうふうにお考えになりますか。またダレス特使とこの点につきまして、何かお話合いでもいたしましたか、お伺いしたいと思います。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 先ほど申す通りアメリカ政府としては、全面講和といいますか、各連合国に一々当つて、そうしてその同意をもつて日講和條約をなるべく早くこしらえ上げたいという趣意でもつて、将来交渉せられるはずであります。しかしながらそれは七原則に照して見ても、ソ連の同意を必要とする、もしくは参加を必要とする。その参加は得られないじやないかというお話でありますが、得られるか、得られないかはこれは将来に属する問題でありまして、アメリカ政府としては、全面講和の建前でもつてまず進んで行く。しこうして、それができなかつた場合には、そのときに考えるというよりほか、私はアメリカ政府としてもいたし方ないことであり、いわんや日本政府アメリカ政府のラインに沿うてなるべくその成功を斬るという以外に、ここに申し上げることはできないと思います。
  43. 守島伍郎

    ○守島委員長 総理にまだ少し時間がございますが……。
  44. 菊池義郎

    菊池委員 今までの各委員質問に関連して、二、三お伺いいたしたいと存じます。
  45. 守島伍郎

    ○守島委員長 ごく簡單に願います。
  46. 菊池義郎

    菊池委員 簡單です。御答弁簡單でけつこうです。  米国が日本軍隊をとどめるといたしまして、その経費までも向うで持つてくれるということになりますると、日本もこれに対して何かの反対給付的の條件でも設けなければならぬとわれわれは考えるのでありまするが、この点について何か考慮しておられるところがありますか。
  47. 吉田茂

    吉田国務大臣 お話のような駐兵といいますか、日本アメリカの兵隊が駐留した場合における費用云々ということは、新聞に出ておりますが、私はそういうことを言つた覚えはないのであります。あるいはそういうことを希望すると申したかは、よくはつきり覚えておりませんが、少くとも米国政府持ちなりということを言つたことはありません。もし言つたとすれば取消します。またダレス氏との間にそういう話をいたしたわけではありません。反対給付は何にするかというような交渉に参られたのではないのでありますから、米国政府考えを言われ、それに対して私はけつこうだという考えを申しただけの話で、交渉問題として具体的に、その場合における條件は何々というような話はいたしておりません。
  48. 菊池義郎

    菊池委員 それからもう一つ講和の実現の後、自主権が回復せられると、自衛軍を持つことも日本の自由でありますが、米国がもしこの武器彈薬その他の裝備について援助してくれるようでございますれば、われわれはすべからく自衛軍を持つべしと考えておるのでありますが、これに対して総理はどういうお考えでありますか。こういう問題についてお伺いするのは無理かもしれませんが、無理でございますれば、せめてお顔の色にでも現わしていただきたい。(笑声)
  49. 吉田茂

    吉田国務大臣 御質問の要領をちよつと……。
  50. 菊池義郎

    菊池委員 講和後における自主権が回復する。自主権が回復するとすれば軍備を持つてもさしつかえないこともちろんでありまするが、もし日本の経済が許さなければ、アメリカに援助を求めて、向うが援助してくれるという場合に、自衛軍を編成してはどうかというのであります。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは仮定の問題でありまして、お答えすることは困難であります。日本としてすでに独立する以上、日本の安全はみずから守るのが原則であつて、仕合せにしてそれだけの力ができた場合には、むろん軍備を持つなり、自衛方法を講ずべきでありますが、今日ではできないというのが私の建前なのであります。しこうして将来軍備を持つだけの余力ができ、また国際情勢も持つことがいいという場合になれば、軍備を持つ持たぬということは、独立後の日本としては自由であります。これはダレス氏も言われている通り日本国みずからが決定すべき問題でありまして、何らの拘束も何もいたさぬということを言つておられるが、これは多分米国政府考えを言い表わされたものだと思います。
  52. 守島伍郎

    ○守島委員長 もう時間がありませんから、並木君。
  53. 並木芳雄

    ○並木委員 私は、やはり首相が本会議で、外交祕密たるべきであると言われたことは、取消していただきたいと思うのです。首相としては、主権在民の新憲法で外交の方針を定めるべきであつて首相はこれに基いて外交を行うということを十分御承知である。だから私どもは、祕密外交家である首相を持つているということを、実は外国などに知られたくない。ぜひこの点は取消していただきたい。あくまでもこれを証拠立てる意味において、先般のダレスさんとの会見で、首相講和條約の草案ができましたならば、当然調印前に日本の国会にかけるように、その申入れをされたと思うのですけれども、はたしてされましたかどうか。  それから米軍の駐屯について、先ほどもこれは憲法に抵触するものではないという御意見でございましたが、そういたしますと、これは條約履行のための保障占領という形をとるのでありましようかどうか。アメリカ軍をお借りするとか、あるいは代理してもらうとか、あるいは委任をするとか、その他兵力、武器の無償提供というようないろいろの形があろうと思いますけれども、これらの点はやはり憲法に抵触する、少くとも疑点が残つて参ると思うのです。私はおそらく首相は條約履行のための保障占領というものを前提としてのお考えではないかと思うのですが、この点を明らかにしていただきたいと思います。  最後に、国際連合軍というものは今日本に駐屯して、国連旗が総司令部の上に立てられております。これは日本を占領する連合軍とは性質を異にするもので、二本建になつている。連合軍との関係は、この間のお話で相当進んだようでございますけれども、国際連合軍との関係はどうなつておりましようか。当然講和條約とともに国際連合軍との関係は一旦解消いたしまして、何らか別途のとりきめが行われなければ、国際連合軍というものは日本に駐屯できないと思うのですが、こういう点についての首相の御所見をお伺いしたいと思います。これで私は終ります。
  54. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。祕密外交を取消せというお話でありますが、これは先ほど申した通り祕密外交が本体であつて祕密外交でなければ、できる話ができなくなることもあるから、祕密外交を放棄して、そして公開外交をやれとおつしやつても、これは私にはできませんから、いずれあなたの方で内閣をとられたときにおやり願います。(笑声)  それから調印前に條約を国会にかける。これは憲法の規定に、国際條約については、国会の同意を経なければならぬと書いてあります通りに、政府としては処置いたします。  米国軍の駐屯は、保障占領であろうか。これは従来から申す通りダレス氏と私との話は交渉ではないのであつて、両国政府の気持を話し合つたわけでありますから、その駐屯が保障占領になるか、ならないかわかりません。ただアメリカ政府としては、防備のない日本に対して、万一の場合、兵隊を置いてやる用意があるという話を聞いただけの話で、その場合に反対給付はどうするかとかなんとかいう交渉をいたしたわけではないのであります。  国連軍に対して、占領軍と別個のとりきめを要するか云々ということでありますが、これは国連に入つた後の話でありまして、国連に入ることを許されない今日におきましては、この問題は具体的になつておりませんから、お答えいたしません。
  55. 守島伍郎

    ○守島委員長 北澤君。
  56. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほど総理の御答弁の中において、戰争犯罪及び追放について御答弁があつたのですが、その御趣旨は、講和後においては、新たに戰争犯罪人の訴追を行うようなことはない。追放については、それを維持するかあるいは改良するかは、講和條約後に決定される、こういうふうな御趣旨と私は解釈するのですが、念のためにその点をお伺いいたします。
  57. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはダレス氏と別段話し合つたことでもございませんし、ただ私としての感じを述べれば、戰犯問題も、追放問題も、講和條約で決定されるであろうと想像いたします。これは別段話し合つたわけではありませんから、私の想像だけを述べます。
  58. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは外務大臣に対する質疑はこれで終了いたします。  これで祕密会を閉じます。     〔午後零時十七分祕密会を終る〕      ————◇—————
  59. 守島伍郎

    ○守島委員長 お諮りいたしますが、今日の秘密会議の記録中、特に秘密を要するものと考えらるる部分がありますれば、衆議院規則第六十三條により、その部分を印刷配付いたさないことにいたしたいと存じますが、この点委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  それでは本日はこれで散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。     午後零時十八分散会