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1951-02-14 第10回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十四日(水曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君       大村 清一君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    仲内 憲治君       中山 マサ君    福田 篤泰君       並木 芳雄君    松本 瀧藏君       武藤運十郎君    高田 富之君       高倉 定助君    黒田 寿男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     千葉  皓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 二月八日  委員川上貫一君辞任につき、その補欠として砂  間一良君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  ついでに申し上げますが、あした午前中委員会を開きまして、外務大臣は十時に出席せられることになつておりますから、あしたはどうぞ皆さん時間をお守りくださいますようお願いいたします。  次に国際情勢等に関する件を議題といたします。まず外務当局から発言を求められておりますから、これを許します。
  3. 草葉隆圓

    草葉政府委員 前回申し上げました後におきます国際情勢について申し上げたいと存じます。  まず対日講和の問題でございますが、東京におきまするダレス使節団政府当局との話合いの模様につきましては、昨日総理大臣が本院の本会議で申し上げました通りでございまして、ここにあらためて繰返す必要もないと存じます。ただ講和問題に関連いたしまして、最近フイリツピン、濠州、ニユージーランド等で、太平洋條約というような内容を持つたものの締結の提唱が活発に行われておりまして、これに対しまして、アメリカ側も同情的な意向が表明せられておるのであります。従つてダレス大使マニラあるいはキヤンベラあるいはウエリントン等を訪問されまする際に、この問題が一つの重要な議題になるであろうとの観測が強いのでありまして、現にマニラでは、すでに十二日キリ大統領ダレス大使との会談におきまして、この問題が討議せられたようであります。実はフイリピンにおきましては、前々から申し上げたこともありますように、従来から賠償問題につきまして、強い主張をいたしておりまして、フイリピン政府は去る十一日公式声明におきまして、キリ大統領は今週マニラで行われるダレス特使との会談で、八十億ドルの対日賠償要求を強調するはずであると発表いたしたのであります。これに対しましては、ダレス大使記者会見におきまして、アメリカフイリピン日本に対する賠償要求正当性は認めるが、しかしこの問題は、要求が妥当であるかどうかといつたようなことの問題ではなく、その要求を満足させる経済的な方途を見出せるかどうかという問題にあるのであつてアメリカは現在の情勢下では、賠償を獲得する実際的な方法を見出すことができないのであるという意味のことを述べられ、さらに平和の目的は第一次大戦後のヴエルサイユ條約の場合のように、單に敗戦国に條約の諸條項を受諾するように強制するだけでは達成できないのであるという意味のことを申しておられます。これをもつて見ましても、アメリカ政府の対日講和問題に関しまするかくのごとき基本方針は、ダレス大使東京でもしばしば言明せられたところでありまするが、これをさらにマニラにおいても繰返して強調されておりますことは、私ども日本国民といたしまして、まことに感謝にたえないところであります。次に朝鮮動乱についてその後の状態を申し上げますると、戦局は、御案内のように一進一退の状態でございまするが、さらにアメリカ国際連合軍として、新しく増強を、いたしておるようでありまして、だんだんと優勢なる地位を占めつつあるように見られるのであります。また一方、国際連合におきます平和的解決動きは、その後停頓状態にあるようでありまするが、アメリカが提案いたしました中共非難決議案は、先回申し上げました通り、一月三十一日国連総会政治委員会におきまして、賛成四十四、反対七、棄権九という状態でもつて可決され、本会議でも同様の票数をもちまして二月一日可決されたのであります。この反対の七票は共産ブロツク五箇国のほかに、インドビルマを含んでおります。棄権九票はアジアアラブ十二簡国の中の七箇国と、スエーデン、ユーゴとを含んでおるのであります。朝鮮動乱平和的解決のために、従来共同して参つておりましたアジアアラブの諸国が、この決議案の表決に際しまして、それぞれ異なつた態度をとるに至つたのが見られるのでありまして、レバノン、イラン、イラクの三箇国は賛成をし、インドビルマ反対をし、その他の七箇国は棄権をしたという状態を現わしております。なおインドビルマ反対は、中共行動を是認して、これを非難するために反対したというのではなくて、現在の情勢においてこの決議をすることは、問題の平和的解決を阻害するおそれがあるという意味反対をいたしておりますることは、申すまでもないことでございます。この決議案趣旨弁明にあたりまして、オースチン・アメリカ代表は、との決議案国際連合軍に新たなる行動をとる権限を與えるものではないということを申し、さらにこの決議案で提案されているあつせん委員会は、ただちに活動することが可能であり、中共当局平和的解決に門戸をとざしていないことがわかるならば、調停の試みられる間、集団処置委員会仕事は差控えられるであろうと述べておるのであります。このあつせん委員会総会議長と、その議長の指名しました二名をもつて、組織することになつておるのでありまするが、いろいろな紆余曲折の結果、最近ようやく決定いたしまして、総会議長エンテザーム議長スエーデン、メキシコのそれぞれの代表が任命されたのであります。そうしてここに再び平和解決動きが再開されることとなることができまして、アメリカ当局平和解決の望みをまだ捨てていないと存ずるのであります。  欧州におきまする四箇国会議の問題について申し上げますと、昨年十一月三日、ソ連政府ドイツの非武装化に関するポツダム協定履行問題を審議いたしまするために、米英仏ソ四箇国の外相会議を提案いたしまして、その後ソ連と三箇国との間に会議議題等の問題で応酬がかわされておつたのでありまするが、最近ソ連から三国にそれぞれ回答をなし、ドイツの再軍備問題に限らず、世界全般の問題について討議する外相会議を開くための準備のために、パリあたり予備会議を開くということが申されたのでありまするが、最近いよいよ三月十日この会議パリで開くことに決定いたしたようであります。  次いでアメリカフランス首脳部会談についてでありまするが、トルーマン・プレヴアン会談は、先月の末プレヴアン仏首相がワシントンを訪問いたしまして、二日間にわたりトルーマン大統領会談いたしました。その結果、アメリカインドシナにおけるフランス軍に対する援助増強するということ、またフランス欧州防衛計画を今後とも強力に推進するということ、この問題について両国の合意がなされたというのであります。なおプレヴアン・フランス首相は、その後ローマにおもむきまして、一昨十二日からイタリア首相以下首脳部会談を行つておるようであります。  最後漁業問題に関しまする日米間の紳士協定について申し上げておきます。漁業問題につきましては、対日講和に関するアメリカの示しました七項目の中に、日本漁業に関する多数国内間條約に加入することに同意する、という趣旨がありまして、講和の一環として重要視されておることがわかるのであります。今回ダレス大使吉田総理会談におきましても、先方から、日本人が将来米国漁業資源を荒すことの懸念を表明され、特に東太平洋ブリストル湾さけ漁業——これは御承知通り戰前農林省試験船を出しましたため、米国で相当な問題となつて外交交渉となりまして、その結果日本側から自発的に漁船を出さぬことを声明いたしましておちついた問題でありまするが、このブリストル湾さけ漁業を、アメリカ西海岸地方の業者が問題にしておりまして、対日講和の場合の障害となるおそれがありまする点を指摘されたのであります。わが方といたしましては、公海の漁業の自由という原則と、漁業問題の基本的考え方を披瀝しまして、彼我ダレス吉田の両者間におきまする話合いの結果、自発的に次のような趣旨のことを申し入れることにいたしたのであります。その第一は、書簡にもはつきりと示してありまする通り日本政府国際漁業協定に忠実に参加する方針を確認し、あらゆる水域における漁業資源の侵犯を禁止する。この禁止に違反する者は厳罰に処するという点であります。第二は、官民合同委員会を設けて、この禁止が遵守されるようにいたすということ。第三には、外国政府の任命した代表者委員会にオブザーヴアーとして出席するよう招請するということ。そしてこれを確認する意味におきまして、昨日発表いたしましたように、総理ダレス大使との間に二月七日付の文書をとりかわした次第でございます。以上であります。  この機会に、昭和二十六年度の外務省関係予算を一通り申し上げたいと思います。  外務省所管の二十六年度予算総額は、十二億二千六百四十八万九千円でありまするが、その内訳の大体を申し上げますと、第一は外務大臣官房経費であります。これは普通どこでもあります官房関係経費であります。その総額一億四千九百六十八万円、それに旧外地官署所属職員恩給事務処理、並びに明治以来の日本外交文書編纂公刊のため必要な経費三百七十二万八千円、合計一億五千三百四十万八千円であります。  第二には政務局経費であります。政務局でいたしておりまする外国に関する政務処理内外新聞通信並びに報道に関する事務処理、法令の審査、行政の考査、所管行政総合調整国際経済機関に対する協力国際経済事情調査、太平洋戦争並びに日本管理に関する資料の収集等政務局所管仕事に要しまする経費として二千七百五万八千円、また情報啓発事業及び国際文化事業並びに通商利益増進保護に関する費用といたしまして二千百七十六万三千円、合せて四千八百八十二万一千円でございます。  第三は條約局の経費でありまして、国際條約その他国際約束締結国際法及び渉外法律事項処理国際連合その他国際常設機関との協力に関する事務等経費といたしまして九百八十四万四千円、国際條約等に新たに加入する等の経費としまして百八十九万七千円、合計一千百七十四万一千円であります。  第四は調査局経費でありまして、一般国際情勢各国政治経済外交に関する調査研究を行う経費といたしまして一千二百十一万一千円、その他国際情勢基本的調査研究に必要な経費としまして三百四十一万一千円、合計一千五百五十二万二千円を計上いたしております。  第五は管理局経費でありまして、邦人海外渡航在外財産に関する事務旅券発給査証に関する事務朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋都島等の旧外地及び沖縄に関する残務整理事務、未引揚げ邦人調査に関する事務等を行います経費として一千八百二十六万九千円、また在外邦人の戸籍及び国籍関係事務旅券及び渡航並びに査証事務夫引揚げ邦人に関するいろいろな調査事務在外公館等借入金整理事務、旧外地官署残務整理事務に必要な経費といたしまして五千百六十七万二千円、並びに旧外地官署所属引揚げ職員給與支給等に要しまする経費として八千万円、合計一億四千九百九十四万一千円を計上いたしております。  第六は連絡局経費といたしまして、中央における連合国官憲との連絡事務、及びこれに関連する各庁事務総合調整等に要しまする経費として二千六百八十万円を計上しております。  第七に、連絡調整事務局経費でありまして、これは全国十二地方に設置せられておりまする事務局、ここで地方における連合国官憲との連絡事務並びに関連する各庁事務総合調整をつかさどつておりまして、これに要しまする経費として五千十万八千円を計上しております。  第八は、外務省研修所経費であります。これは外務省職員等に、外交再開の日に備えまして、遺憾のないよう必要な研究を行わしめているのでありまして、この経費として一千九百七十万八千円を計上しております。  第九は、在外公館経費でありまして、明年度におきましては、在外事務所二十館を予定して、その経費として四億九千四百四十六万二千円、及び主要な在外事務所九箇所に設置上ます商品見本展示室経費として五千三百六十七万五千円、合計五億四千八百十三万七千円を計上しております。  第十は、出入国管理庁経費であります。不法入国者強制退去に関する  一般事務なり、正規入国者管理事務外国人登録に関する事務、及び不法入国者の護送、収容、送還のため必要な経費として合計二億九十九万一千円を計上しております。  最後に、国立国会図書館支部図書館経費として百三十一万二千円を計上しております。  以上十二億二千六百四十八万九千円が昭和二十六年度の外務省予算となつております。一応御説明申し上げます。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは通告順に従いまして、質疑を許します。菊池君。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 この前島津さんが答えてくださらなかつたので、質問に先だつてちよつとお伺いしたいことは、ダレス特使総理との間における会談内容、つまり具体的な内容について、外務当局の方々は、総理からよく聞かされておられるのであるかどうか、また厳重に口を緘されておるのであるかどうか。そういう点についてお伺いしておきませんと、質問がむだになつて、むだしやべりになりますから……。
  6. 草葉隆圓

    草葉政府委員 承知しておるつもりであります。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 日本米軍講和後駐留して日本の安全に任ずるとも言つておられ、これに総理も同意をせられたようでありますが、向うが進んで置かないで、日本が希望して軍隊を置いてもらう場合、もちろんこれは日米協定によるでありましようが、その経費は大体どつちから出ることに話がきまつているのか、これを伺います。
  8. 草葉隆圓

    草葉政府委員 まだそういう内容の具体的なことは、講和の際のとりきめでないと、はつきりしたことは申し上げかねると思います。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 そうすると、駐留してくれます軍隊兵力は大体どのくらいになりますか。終戦後日本に駐在したあのくらいの兵力でありますか。
  10. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これも講和の具体的な状態になつて初めて両国間で決定する問題だと考えております。今どこに何者という状態までは進んでおらないのであります。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 その大体の兵力、つまり日本の安全を保障するに十分な兵力をとどめるというのは、申訳的の兵力であつてはならぬわけです。たとえばダレスの、日本が希望するならばという條件は、希望しないならばほつたらかすという意味にもとれるのであるから、申訳的軍隊であつてはならぬ。日本の安全を保障するに足るだけの軍隊でなければならぬと思う。そういう点について大体のところを……。
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 昨日も総理が申し上げたように、いわゆる国内治安日本で万全を期するが、国外の問題については、日本では力がないというような意味のことを申し上げました。従つて国外の侵略に対し、駐兵という点において、それに相当する方法でないと有力でないということは、ただいまの御質問と同様であります。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 日本外敵侵入を防ぐために集団安全保障を求めるのであるか、あるいは日米協定によるのであるか、これはどつちでありますか。
  14. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これもどちらということが確定的に決定されるのは今後の問題でありますので、さよう御承知を願います。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 昨日の総理の議会におけるダレスとの会談報告でありますが、その報告の中で、国力の回復を待つて日本集団安全保障を求める場合に、列国に対してそう役割を果さなければならないということを言われたのでありますが、その日本役割を果すについての方法、それは再軍備によるのか、あるいは警察予備隊増強によるのであるか、その他いかなる方法によるか、この点総理からさだめしお聞きになつておられると思いますので、お話を願います。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 それはいろいろな方法が考えられるように思います。しかし現在の、敗戦後の日本経済状態では、日本の力に相応するだけの方法以外にできないことは申し上げるまでもないことでありまして、むしろそれを越えることは、かえつて国力を進展するゆえんでないことは、昨日も総理から申し上げた通りであります。従つて日本の実情に印する最も妥当なる方法というものが、中心の問題になつて参ると思います。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 その方法ですが、再軍備その他何によるか、それは大体腹に納めておられるだろうと思うのでありますが、その点で最も妥当なる方法はどういうことですか。
  18. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただちに再軍備というようなことは、とうてい今の日本の力ではできない……。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 警察予備隊ですか。
  20. 草葉隆圓

    草葉政府委員 従つて外敵侵入に対しては、日本が希望するならばアメリカ援助を受ける、こういう段取りに進んで来ておると御了承願います。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 当分の間はでありましようが、国力が回復せられたる場合において、その後においてどういう方法をとられる構想を持つておられますか。
  22. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはその国力の回復した当時の国際情勢にもよりましようし、その当時の状態によつて日本国民が十分に最善の方法を検討するということに相なりまするから、従つて現在からこの方向で進むということをきめてかかるのは、むしろかえつて妥当ではないと存じます。
  23. 菊池義郎

    菊池委員 日本がもし再軍備をするとなると、その経費援助です。西欧に対する援助のごとく、日本にも援助してもらえるダレスさんとの何か話合いでもあつたのでありましようか、どうですか。これはもう当然考えられることです。
  24. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまも申し上げましたように、再軍備というのは、現在の段階においては困難な状態にあるということは、総理も申し上げた通りであります。従つてただちに講和と同時に日本が再軍備をして、そこで相当な援助を得るという段階話合いではないことを御承知を願いたいと思います。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 再軍備につきましては、すでに英国連邦各国が大体制限づきでもつて承認しておるというような状態でありますが、アメリカ輿論を見ましても、七五%が日本の再軍備を許すべしということが輿論調査に現われておる。それでもう今となつては再軍備を唱えても、ちつともさしつえないと思う。ただ経費の問題がありますが、再軍備について総理は最初からこれを否定して来られた。憲法の改正はせぬ、憲法は守るべしということを言つておられる。憲法を当分守り拔く決意を固めておられるならば、外敵侵入に対しては、アメリカに当分たよるといたしまして、内乱に対しては七万五千ではまだとても足らない、予備隊では足らないと私は考えております。民主党あたりでも予備隊を二十万ぐらいにしたらどうかというような意見もあります。私は少くとも三、四十万あるいは四、五十万ぐらいにしたらどうか、その経費の出どころがなければ、これは義務制度にして、たとえば納税の義務、教育の義務みたいに昔の徴集制度にして、そうして増強したらどうですか。そういつた構想政府においてはあるのでしようか。
  26. 草葉隆圓

    草葉政府委員 一応は昨日総理から現状で十分であるが、さらに内容なり、すべてを増強するということは申し上げた通りでありますが、これは国内治安に関しましてはむしろ法務府関係になりますので、私どもは昨日総理が申し上げたことをもつて進んでおる次第であります。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 それからわれわれに関係のある小笠原についても、小笠原信託統治はどうもダレスさんの言うことを見ましても讓らない風が見えますが、これに対して総理は、結局アメリカ信託統治意見に譲歩せられたのかどうか、こういうことはお聞きすることの方が無理かもしれませんが、もしできることでしたならば……。
  28. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本政府としましては、降伏文書に調印し、その後ポツダム宣言を十分に忠実に履行して参り、今後の国際情勢動きによる対日講和の一日も早く締結されることを熱望しております。ただいろいろの領土の問題につきましては、国民の意思は十分伝わつているとは存じますが、今申し上げましたような意味におきまして、日本政府としましては、十分アメリカの熱意に信頼して進んでいる次第であります。
  29. 菊池義郎

    菊池委員 私はこれで終ります。
  30. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは並木君。
  31. 並木芳雄

    並木委員 私はあとから天野文部大臣精神的自衛力国際文化の交流、こういうことについて質問したいと思いますから、ほかに質問の方があつたら先にまわしていただいてよいのであります。ただ一つだけこの前のひつかかりがありますので、お尋ねしておきます。  例の七原則の第四なのであります。「安全保障、」この中に「日本国区域における国際の平和と安全の維持のために、日本国施設と合衆国の及びおそらくはその他の軍隊との間に継続的協力的責任が存在することを考慮する。」この「施設」についてこの前お尋ねしておいたのですが、どういうものをさすのか、そうしてどういう概念でもつてダレスさんとの交渉政府話合いに当られたか。これがやつぱりはつきりしておらなければ、安全保障の問題というものの話合いが進められなかつたと思うのです。この点をお尋ねいたします。
  32. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはこの前の御質問で、政務局長から一応お答えいたしたと存じますが、この「施設」の内容につきましては、またさきに菊池委員から御質問がありましたようないろいろ具体的な状態が決定をいたしまして、初めて施設というものの内容が具体的にきまつて来ると思います。従つてそういうこまかい具体的な問題はまだ発表申し上げるところまでは参つておりません。
  33. 並木芳雄

    並木委員 しかしこれは、今度の安全保障に関連しては一番重要な問題なのです。原語はフアシリテイーズと書いてあります。訳語によつて便益というふうにも訳してある。外務省の條約局の方では施設と訳しておるのです。これはやはり専門家であるところの外務当局で、フアシリテイーズとは何ぞやということが相当具体的に定義づけられないなれば、どうしてこういう話会いが進められるか。私どもはそういう疑問を持つ、その概念はどうですか。
  34. 草葉隆圓

    草葉政府委員 研究としましてはいろいろなことが研究されると存じます。ただ具体的に参りますると、あるいは協力なり、具体的な施設なり、すべてのことが入る場合もありましようし、従つて具体的にこれこれというときに、初めてこのフアシリテイーズというのが具体性を帯びて参りますので、ただいま申し上げた通りであります。それならば施設はどういう施設であり、どういう姿であるかということは、その具体的の協定ができまする際には、はつきりと相談し合うことに相なると思うのであります。
  35. 並木芳雄

    並木委員 いろいろ研究されたことがあるということは、今のお話からよくわかりますが、研究されたものの中には人というもの——施設と人をあれするのは、私どもとても考えられないのですけれども、人を通じての便益と訳したときにはそういうことが出て来るかもしれない。人というものを中心にしたものも、今言われたいろいろ広いあらゆるものが含まれるという中に含まれて、研究の対象となつておつたかどうか、お伺いしたい。
  36. 草葉隆圓

    草葉政府委員 研究をしましても、これはごく抽象的なことでありまして、かえつて抽象的な、一般的なことを申し上げると誤解を生じまするから、ただいま申し上げましたように、具体的な問題が生じまして、それによつて両国で相談し合うというときに、初めてはつきりして参る問題であります。
  37. 並木芳雄

    並木委員 政府としてはこれを広く解釈するか、それとも狭く解釈するか。私はできるだけこのフアシリテイーズ意味を狭く解釈すべきではないかと思うのですが、政府は今までの話合いの過程及び今後において、これをどういうふうにできるだけ縮めて持つて行く考えであるか、伺いたい。
  38. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先ほども申し上げました国際情勢の様相によりまして、日本が希望するならば駐兵をする。その日本の希望の状態によつて、狭くも広くも解釈し得るのでありまするから、その情勢によつて、初めて外敵侵入に対する方法という点から割出されて来る問題だと存じております。
  39. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは黒田君。
  40. 黒田寿男

    ○黒田委員 念のためにお伺いしでおきたいと思いますが、ダレス特使吉田総理との今のお話合いの新聞紙上その他によつて報ぜられておるところを拜見いたしますと、大体安全保障の問題は、狭い意味講和條約の中には入らないで、別個の條約でつくるというふうにきまつたと思いますが、その点どうでありますか。
  41. 草葉隆圓

    草葉政府委員 講和條約が具体的に形の上に現われませんと、今ここではつきりと申し上げかねまするが、大体はお見込みの通りで間違いはないかと存じております。しかし実際は条約文の上に現われたときに、初めてそれがもつと明瞭になりまするから、こうだということは今ちよつと言いかねると思いまするけれども、大体はその御見当でけつこうじやないかと思います。
  42. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつとはつきりしませんでしたが、別個になる、大体今までの経過によつてそういうことになると思うのです。それならそれでけつこうでありますが、そういうふうに解釈してかまわぬですか。
  43. 草葉隆圓

    草葉政府委員 大体御意見でけつこうだと思います。
  44. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは大体そういうことを前提としてお話を申し上げたいと思うのであります。少ししつこいようでありますけれども、私どもどうしても一応解決しておかなければなりません問題でありますから、お尋ねいたしたいと思いますが、そうなつて参りますと、普通の講和条約は、私ども勝者と敗者という関係で、勝者の意思が押しつけられるというようになつても、これはやむを得ない問題であると考えておるのであります。ところがただいま大体の見通しとしては、安全保障の問題は、そういう意味での講和条約の内容にならないで、わが国が講和条約によりまして一応独立の国となり、自主権を回復いたしましたあとで、会議的に外国協定をする。こういう見地から私は質問してみたいと思うのですが、そうなつて参りますと、私はやはり憲法の問題を国民としては一応真剣に解釈してみなければならないと思うのです。これはみんなが疑問に思つておることでありますから、とにかくできるだけのお答えを願いたいと思うのですが、安全保障の問題として今菊池君の御質問に対しまして、次官のお答えになりましたところでは、まだいわゆる単独の軍事協定になるか、あるいは地域的集団保障の体制になるか、そういうことはよくわからないとおつしやいましたが、私もそれはまだそうであろうと思います。しかしながらいずれにいたしましても、アメリカとの単独な軍事協定になりまして、それにまた太平洋の諸国が後日になつて参加するという形式になるか、あるいはまた初めからいわゆる太平洋條約というような地域的な集団保障体制の中にわが国が入つて行くか、これはどつちにいたしましても、結局は広い意味において一種の軍事協定が結ばれるということになるのだということは、これはもうそう予想できると思いますが、いかがでございましようか。
  45. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ダレス特使との会談におきましても、その後発表もいたしましたし、また御承知のように日本が希望いたしまするならば、日本に駐兵をする、日本は大いにこれを歓迎しておるのだという意味におきましての協定というものは、そういうことで進んで参ることは当然でありまするから、その意味の御質問内容であつたと存じまするので、さよう御承知を願いたいと思います。
  46. 黒田寿男

    ○黒田委員 第一にはおそらく一種の軍事協定になる。結論から言えば、具体的に単独の軍事協定になるか、地域的の集団保障体制になるかわかりませんが、広い意味においてそういう軍事協定の性質を特つたものになるということは、大体そのようになると予想してよろしいでしようね。
  47. 草葉隆圓

    草葉政府委員 軍に関する話合いであるから軍事協定だということになると、まあそういう言葉でも使い得るかとも存じますが、今申された内容は、今申し上げたような内容であります。
  48. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうもはつきりいたしませんが、その点はそれといたしまして、もう一つ次の問題は、今ちよつと次官もお触れになりましたが、そういうことになつて参りますと、結局外国軍隊日本に駐屯することになる、これも予想しなければならないと思いますが、いかがでございましようか。
  49. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お見込みの通りだと思います。
  50. 黒田寿男

    ○黒田委員 第三の問題は、そのようになつて参りますと、やはり軍事基地をわが国において提供するということに、必然的にならざるを得ないと思うのですが、この点はいかがですか。
  51. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはさつき並木委員からのお話にもありましたが、施設内容がどうかという問題に結局はなつて来ると存じます。そういう意味において御了承を願いたいのであります。
  52. 黒田寿男

    ○黒田委員 その点はちよつと明瞭を欠いておると思いますが、常識上から考えますれば、先ほどの第一段の推論から申しますれば、当然軍事基地の提供ということにならざるを得ないと思いますけれども、これはしかしこれ以上は質問しないことにいたします。  そこで憲法との問題が起るようでありますが、わが国は自衛権を行使するためにも軍事力は用いない、こういうように私どもは——これは一般の多数の学者並びに政治家の解釈だと思います。芦田氏のごときは自衛のためには武力を持つてもいい、こういう御解釈のようであり、またごく少数の憲法学者の中にはそういう意見を持つておる人もあるようでありますけれども、大体通説といたしましては、第九條第二項によりまして、自衛権の存在は認めるけれども、その行使の手段として武力を用いることはしない、こういうように解釈しておりますが、これは念のために政府の御解釈を承つておきたいと思います。
  53. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはいわゆる自衛のための武力を持たないという意味におきましてのただいまの御質問で、いろいろ議論があるがというお話でありましたが、すでにこの点は何回も御答弁は申し上げておる通りでありまして、武力を持たないという一応の見当をもつて進んでおりますことは、大体御質問内容と同様だと存じます。
  54. 黒田寿男

    ○黒田委員 大体政府の方も私どもの考えと、また多数説と一致しておると思います。それを確かめておきまして、その次に起る問題でありますが、そうなつて参りますと、日本が自衛のために武力を用いることをしない、自衛の方法は別個に——これは吉田首相もしよつちゆう申しておられますが、武力というものと結びつかないでも、自衛の方法はあるということを言つておられる。私どももその点では吉田首相のごとく従来考えておつたのでありますが、ところが今回、日本軍備を持たないけれども外国と軍事協定を結びまして、日本の自衛権の行使として外国軍隊を用いるということになつてくれば、これは憲法におきまして、戦争を放棄し、平和主義を宣言したその趣旨と両立しない、憲法のこの精神と反すると私は思います。これはこの前も申しましたが、もう一ぺん繰返して申しますけれども、たとえば私自身がピストルを持たない、短刀を持たないから、自分は非武装だと申しましても、やはり私が合意の上で護衛をつけておる、柔道何段の護衛が私についておつて、それがピストルを持ち、短刀を持つて、私を護衛してくれておるということになれば、それでは私は非武装とは言えない。私どもは常識を持つておりますから、常識から考えるならそう考えられます。日本自身が軍備を持たないといいましても、外国軍備をもつて自衛するということになれば、これは結局対外的には同じではないか。警察力は対内的のものでありますけれども、軍事力というものは対外的のものであります。私どもはすべて対外的に考えなければならぬ。言いかえれば、外国はどう思うかという立場に立つてわが国を省みなければならぬ。そうなつて参りますと、日本自身が武力を持つことが憲法違反であるならば、外国の軍事力と自衛のために結びつくということも、同様に憲法の精神に反する、こういうように私どもは解釈せねばならぬと思う。この点いかがでございましようか。
  55. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ほかの国から外敵を守るためにでも、日本に駐兵することは、憲法違反ではないかという結論的な御質問でありますが、そのことだけをもちましては憲法違反にはならないと思います。憲法は、申し上げるまでもなく、日本国に自衛権がないというているのではありませんし、また自衛権というような国家固有の権利は放棄できるものではないのであります。従つて憲法が明文上禁止いたしておりますことのほか、日本が平和と安全のために、自衛上必要と思いますようなことを行います場合でも、憲法の規定によつてその精神に反しているというようなことは、無理な解釈ではないか。憲法に違反しているということは考えられないと存じます。それなら他の国際的に中立を守つております国におきましても、ぐるりの国々がそれぞれ世話をしたりいろいろしている場合におきましても、そのことがすでにその国の憲法違反になるのではないかというような議論が生じて来ることになると思います。
  56. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつと次官は私の質問趣旨を誤解しておいでになりはしないか。私は日本の自衛権がないなどということを決して言つておるのではありません。いやしくも独立国家であります以上、自衛権を持つておることは当然のことであります。個人において正当防衛権を持つておるのと同じことであります。従つて私は自衛権がないというような議論をしておるのではありませんが、自衛権を行使するための手段として武力を用いるということは憲法禁止しておる、これを私は申し上げておるのであります。念のために私は吉田総理のよく言つておられることを引用してみると、吉田総理はこう言つておられる。今までの武力がなければ自衛権を全うし得ないというのは古い、しかも誤つた考えである。列国の平和的日本に対する信頼が、日本国民の平和に対する決意が、わが国の安全保障の核心である、こういう答えをよくしておられる。総理はそういうふうに始終言つておられるのでありまして、これは総理も決して自衛権を否定しておるのではない。私自身も日本の自衛権を否定しておるのではありません。また総理が再軍備をしないということを繰返して申しておられましたのは、やはりこういう御趣旨からではなかつたかと思う。しかるに日本自身は再軍備をしないけれども外国軍隊の力によつて自衛権を行使する手段にするということになれば、結局同じことである。憲法の戦争放棄という見地から見れば、外国の目から見れば、同じである。従つて日本の再軍備が現在の憲法に違反するという解釈をとる以上は、自衛権の行使として外国と軍事協定を結ぶということは、同様に憲法の精神に反すると思うのです。私はそう思う。次官はそう思わないというかもしれませんが、しかしそう思わないとおつしやるならば、もう少し私どもに納得の行くような御解釈を願わなければならぬと思うのですけれども、どうも今のお話は私としては納得が行かないのです。私どもやはり憲法の精神に反すると考えておる。——なお私の質問を続けてよろしゆうございますか。
  57. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君に申し上げますが、文部大臣がおいでになつてお急ぎになるそうですから、そのあとでお願いいたします。——それでは並木君。
  58. 並木芳雄

    並木委員 昨日の吉田総理の演説に関連いたしまして、本日午後は私の方の苫米地さんが質問に立ち、あしたは松本委員外務委員会質問に立つことになつております。私は吉田首相の演説に関連いたしまして、天野文部大臣に精神的の自衛力、あるいは自衛精神といつてもいいでしよう。精神的自衛力日米文化ないし国際文化の交流などについてこの際御所見を承りたいと思うのです。昨日の演説を聞きまして、私どもは何か満たされない、うつろな宙に浮いたような感じがいたしました。それはやはり今の政府が知らしむべからず、よらしむべし、今度の講和対策なども、われわれの手だけでやるのだ、国民はただ命令するところについてくればよいのだというようなけはいがうかがわれますので、私は首相の言にもありました、場合によつては犠牲を拂わなければならない、そういうようなときに、その犠牲の対象となる者はだれだ、結局若い学徒であり、青年じやないか、そのような点を中心として、そういう者に対して、ほんとうに精神的の自衛力、これが裏づけとならなければ、どんな仏をつくつても魂が入らない。日本安全保障というものはだめだ。この際ひとつ天野さんに大奮発をしてもらわなければならないのじやないか。そういう前提のもとにお尋ねするのであります。  まず首相は最も問題となるものは、わが国の安全保障の点であると前置きをいたしまして、「いずれの国も共産主義の侵攻に対して共同防衛をもつてするのほかなく」と断言いたしております。終戦以来五箇年有半、戰争のない世界、少くとも日本には戦争が完全にないのだということを前提として、憲法では戦争も武装も放棄して、教育上は画期的な青少年の学校、家庭、社会教育というものが行われて来たのです。ところが今や戦争の脅威にさらされる日本に急変して参りました。間接的侵略、直接的侵略が現実の問題として取上げられて参つたのです。文相はこの切りかえをどういうふうに教育行政の上で反映して行くお考えでございましよう。教育基本法あるいは学校教育法などに改正を加える用意があるかどうか。ありとすればどういう点であるか。しかも共産主義の侵攻という言葉が首相の口から公然と出ておるのです。そうすると思想の自由を認める現在の憲法のもとで、文相はこれをどう聞かれたか。憲法との調和をどういうふうに文相は苦悶しておられるか。憲法改正をしなければここまでは行けないのではないかというものが、やはり若い者の中に疑問として相当あるのでございます。そういう点に対しての解明をお伺いしたいと思う。
  59. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいまの御質問の要点は、要するに日本の置かれている現実が非常にかわつて来た、だから教育もこの際切りかえてしまうことが必要なんじやないかという御趣意に帰着するかと思います。確かに日本の現実は非常にかわつて来ているということは明らかな事柄でございますが、しかし教育基本法に述べられている教育の精神というものは、その現実の相違にかかわらず存立するものだと私は信じております。でありますから教育基本法をさしあたつて改めるという考えは持つておりません。しかし教育の個々のやり方とか教育法というようなものは、いろいろ改めることが必要かと思いますが、基本法の精神、日本がほんとうに平和を愛して行くという精神は、現実の相違にかかわらず、これは一番大切なことであつて、私は何らかえる必要がないと考えております。
  60. 並木芳雄

    並木委員 共産主義の侵攻の点についてはいかがでしよう。
  61. 天野貞祐

    天野国務大臣 もつと立ち入つて論ずることが必要でしたら、ここで論じてもよろしいのでありますが、つまり精神的な自衛力といいますか、並木さんのお言葉によれば自衛的精神力、そういうようなものを涵養することが、私はそれに対して最も重要だと思います。この精神力というのは、もとよりこれが必要にして十分な條件ではございません。けれども必要な條件であります。これがなくては一国は存立して行かない。そういう意味で、私はその精神的自衛力といつても、まず何よりも大切なことはやはり道徳力だと思う。国の青年あるいは学生たちみんな——必ずしも学生といわず、すべての青年たちを、ほんとうに力のある日本人にすることが最も必要なことだと思うのです。ところが力のある日本人というのはどういうものだと言うならば、健康があるということも力でありますし、いろいろな技能力を持つているということも力でございますが、しかし根本において道徳力を持つているということがなくては、ほんとうの意味の力ある日本人とはなれないと思うのです。そういう道徳力というものがないならば、いかに技能にひいでていても、いかに知識を持つていても、そういう知識とか技能とか財力とかいうものが、かえつて害をなすということさえもあり得るのでございまして、だから道徳力の涵養ということが筋金になるわけだと思うのです。ところが道徳力と申しますと、世間に非常に誤つた考えは、道徳力というのは、要するによい心がけなんだ、良心的だということでもつて道徳力と思うのですが、これももとより道徳力でありますが、それでは十分でないので、そういう道徳力だけでなしに、もうと人間の知性を開発するということが、非常に重要な道徳教育の要素だと思う。それでなければ、いかに国を愛しても五・一五とか二・二六というような事件は、その人たちは非常な愛国の熱情をもつてやりますけれども、それが非常に間違つているということなんです。だからもつと頭を明るくすることが必要です。そういう情熱を理性によつて照すことが必要である。そういう意味の教育です。ほんとうの意味の徳育というもの、そういうものを振興することによつて、青年ばかりでなく、一般に社会をもつと健康にしよう。一体道徳的に堕落して栄えた国家というものはないので、一番の国家の源泉は、そういう意味の道徳力にあると私は信じておりますので、そういう線に沿うて、学生はもちろん一般社会の青年をも指導して行きたいという考えを持つているわけでございます。従つてそういう力のある青年なんです。しかしそれが同時に日本人でなくてはいけない。日本人という自覚を持たなくてはならない。そういう点からして、私はいわゆる激情的な愛国心ではなくて、はげしい頭の暗い愛国心ではなくて、頭の透明な、理性に照された——私の言葉て言うならば、静かな愛国心を涵養して行きたい、というのでございます。大体の輪郭を申せばそういう考えであります。
  62. 中山マサ

    ○中山委員 関連して……。近ごろの青少年層で、いろいろ間違つたことをやりまして、法廷に引出されなければならないようなことになつたときに、なぜにこういうことになつたかと質問された場合には、いわゆる昔は天皇を中心という一つの線によつて教育されて来た自分たちが、この敗戦によつてその線を失つてしまつた。だからよりどころがないから、こういうことになつたのだというような、これは多分申訳的な言いぐさであろうとは思うのでございますけれども、こういうことを言う青年男女が非常に多いということを私は見ておりますが、この際終戦後今まで教えられておりました修身というような科目が全然廃されているというところに、私は新しい指導力がないのじやないかということを、私も長らく教育界におつた人間でございますから、私の頭が古いのかもしれませんけれども、そういうことに私はこのごろしきりに考えをいたすようになつて参りました。この際新しい講和というものが與えられまして、もう一ぺん日本が新日本として立つて行くこの時代におきましての文部大臣として、何か今先生がおつしやられましたところの静かなる愛国心というようなものを養うところの、いわゆる古い言葉でいえば、修身というような科目を置いていただくことはできないものでございましようか。いわゆる青年の時期の特徴といたしましては、批判と破壊というようなものがあげられていることを、私はある書物で読んだのでございますが、まことに青年層のこういう特質というものは、共産主義とぴつたり合うものがあると私は思つております。青年時代のこういう特質によつて、共産主義がだんだんと発展して行つて、何も指導精神がないというところと、三つめものが三つどもえになつて、こういう国内不安が起されているのじやないかということを、私は非常に心配しているものでございますが、この際そういういわゆる静かなる愛国心というものを、尋常一年生から養つて行くような指導力を持つている科目をお置きになる御意思はないものか、私は文部大臣にお尋ねをいたしたいのであります。
  63. 並木芳雄

    並木委員 天野文部大臣の静かなる愛国心はほんとうに傾聴に値すると思うのです。今中山さんからもお話が出ました通り非常にけつこうなんですけれども、今日までの教育の方法が、国家を中心としたり、社会のためにとか、あるいは国民全体のためにというような気持をなるべく忘れさせよう、忘れさせようとして来たのじやないか、どつちかというと、個というものを中心として、個性を大事にするということが強調されたために、つまりこの百八十度の転回をするときに来て、切りかえが非常にむずかしくなつちやつたのではないかと思うのです。愛国心を静かなる愛国心によつて養い、祖国愛というものを燃え上らせるのはいいのですけれども、ほんとうに燃え上らせるには、ただその程度の方法でいいかどうか、中山さんの質問はそこからも来ていると思うのです。天皇はすでに国の象徴たるにとどまつております。また君が代というものも一部には半信半疑をもつて歌われている、こういうような状態では、静かなる愛国心が一たび動く愛国心になつたときに、若き学徒青年というものは、どういうものを中心として立ち上るか、それが私どもの聞きたいところなんです。国連旗のもとにと言つても、あるいは民主主義を守るためにと言つても、自由を確保すべしと言つても、まだまだなかなか世の若い人々には徹底しておらないのじやないかと思うのです。  そこで文部大臣は、ただいま修身教育というお話も出ましたが、かつての教育勅語は問題にならないまでも、何らかこれにかわる、ちよつとこれは私見ですが、たとえば愛国の誓いというようなものをつくつて、これでいわゆる精神的自衛力の結集をはかる一つの目標というものを定めることが必要ではないかと私は思うのです。そういうようなお心構えが文部大臣にあるかということをあわせてお答えを願います。
  64. 天野貞祐

    天野国務大臣 まず修身科というような科目が必要ではないかというお考えですが、修身というと人が非常に誤解をしておると思うのです。修身というのはだれもできないような、先生も口でばかり言つて実行しないようなことを教えるのが修身であるというように世間で考える。あるいは忠君愛国だというようなこと、非常特別な場合における非常の事柄を教えるようなことが修身なんだ、そういうことが修身ならば修身はいらないのです。けれどもそうではなくして、ほんとうの意味における人間の生き方とか、あるいはまた国民としての心構えとかいうようなことをよく教えるということが、私はぜひ必要だと思うのです。そういう科目を小学校から大学まで一貫してあるということがよいことだと自分は信じております。しかし今ただちにそういう科目をつくらなくとも、社会科というものがすでにそういう役目を演じておりますから、しばらくこれによつてやろうと私は今考えておるわけですが、このたび文部省から発表したのをもつて私があれですべて満足いたしておるわけではございませんので、さらに研究をいたしたいと考えております。  それにつきまして小学校でございますと、修身ということに当ること、子供に礼儀を教えるとか、あるいは子供にどういうように勉強したらよいとか、いろいろなことを教えて行くというようなことは、これは必ずしも専門家でなくともできることで、すべての先生がそれを担任すべきことであつて、すべての先生はただ学科を教えればよいというのではなくて、子供の道徳教育ということを常に念頭に置いてやるべきものだ、と申しても数学の先生とか、国語の先生に一々いわゆる道徳的な話をしてくれというのではなくして、それぞれの先生がほんとうに自分の科目を正確に教え、また生徒に質問などを受けて、自分が間違つておつたならば淡白にそれを認める、あるいはどんなできない子供でも、その子供を尊重して行くとか、そういうことがすぐれた道徳教育だと思つておるのです。そういうことは小学校あるいは中学くらいではそれで足りますけれども、その上の高等学校とかあるいは大学の前期というようなことになつて来ますと、ただいま並木さんのお話にありました個と全というような問題、そういうようなことをはつきりさせないと、学生が十分自分の行為をして行く指導原理を持つことができないと祖う。だからそういうことになると、専門的な一つの科目が必要ではないか。これを社会科と呼ぼうと、修身科と呼ぼうと、倫理学科と呼ぼうと、何と呼んでもいいのですが、実践的なそういう働きをして行くのに必要な知的解明ということが、私は必要になつて来はしないかと思う。そういう意味で、私は今中山さんのおつしやつたような、一つの何かの科目を小学校から一貫して、系統的に立てて行くことが必要だという考えを抱いております。  並木さんのお考えはごもつともでございまして、戦時中非常に個人というものを無視して、すべて全体主義という考えから個というものは意味はないのだ。個人というものはただ国家の方便であつて、はなはだしきに至れば、個人というのはただの人的資源だというようなことさえも言つて、個人と言つてもいけない。人格ということを言つてもいけない。自由ということを言つてもいけない。その無謀な全体主義が、日本の社会において、いかに横暴をきわめていたかということは、当時思想界に住んでおつた者の痛感いたしたことでございます。ところがその反動として、昨今ではまつたく個人ということだけを考えて、そうして個人の、いわば母体となるべき社会とか国家というものを何も考えないという点に、現下の悩みがあるということは、今並木さんのおつしやつたことにまつたく同感いたすものでございます。そこで個人の単なる安逸ということでは、とうてい人間の存在の意義というものは見出されない。そうではなくして、個人といえども常に国民なんだ。われわれの血潮の中にはわれわれの祖先の脈搏が、今日なお脈々として波打つておるのだという自覚を、すべての学生に持たせたい。われわれはこの国土に生れ、この国土に育ち、この国土に死ぬのだ。そうしてこの国というのは、われわれのいわば母体なんだ。自分たちはこの国と一にして二、二にして一、そういう関係に立つておるのだというふうなことをだんだん自覚させて行くということが、先ほど申した力のある日本人をつくつて行くのに必要だ、そういうことも一つの科目として、そこに専門家がいて初めてできるのじやないかということで、中山さんのおつしやつたような一つの科目は私も必要ではないかという考えであります。
  65. 高田富之

    ○高田(富)委員 先ほど来文相の静かな愛国心、精神的自衛というようなことにつきまして、いろいろとご高説を承つた次第でありますが、文相は、現在どうかは承つておりませんが、つい最近まで、非常に御熱心な、全面講和が理想であるということの主張者であつたとかねがね承つております。やはり学問の自由ということが文教政策の中心として、ポツダム宣言によりまして降伏しまして以来、今日まで一貫して来ておつたという文相の確信のもとに、当然これは全面講和によりまして、広く世界に知識を求め、そうして各国のいろいろな思想、文化というものを取入れつつ、わが民族の状態に適応するようにこれを消化し、よきをとり、あしきを捨てる。こういう見地から、どうしても文教の自主独立、自由な発展というものなしには、学問の自由もなし、民族の知性の向上もあり得ないという、きわめて当然な見地に立たれての全面講和論であつたかと推察するものであります。こういうような見地から見ますると、昨日の総理の御演説の中にも、今後アメリカとの間には相当文化的な方面でも緊密な提携をし、一体となつて進んで行けるようになるということは非常に喜ばしいということを述べておられるのでありますが、文相といたしましては、この際そういう方向にのみ行くことは、日本の今後の文教の独立、発展という見地から見て、いささかあなたの御所見とは食い違いがあるのではないか、こう考えられるのでありますが、文相のお考えをお伺いしたい。
  66. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は全面講和ということについては、かつて国会においても自分の意見を述べましたのをここに繰返すことは、まことに恐縮でございますが、せつかくの御質問でありますから、ごく簡単に私の考えを述べますと、私は初めから全面講和が実に望ましいということをこいねがつています。今日といえどもその点においては何らかわるところはございません。全面講和というものに対して、私は非常なあこがれを持つています。けれども初めから私は、全面講和ができないときには単独講和はいけないかというと、それはいかぬという結論を自分は得ることができないから、一番最初に朝日新聞社から問われたときも、返事しなかつたのはそのわけでございます。全面講和ができなければどこまでも講和をやらぬ、このままいつまでもやつて行くというのも、私は二つの見解だと思つています。しかし私はその見解を抱くことができないから、初めからそういう主張をしたことは一度もございません。岩波関係——岩波関係と言うと少し語弊がありますが、平和問題懇談会というものにおいて、願望として全面講和ということをやるのだ。私はそのとき確かめたのです。これは必ずこれでなければいかぬという論なんですかと言うと、そうじやない、願望としてだというので、私はそれに署名したのです。今日としても、願望ということに署名せよといえば、喜んで署名いたします。そういう点では、願望としては何でもかわらないのですが、実際問題としてそれができないということになれば、これはいたし方ないのではないか、そういう考えを抱いております。  それから学問の自由というお話が出ましたが、学問の自由というのは、日本の発明した言葉のように私は思います。これは学問研究の自由、あるいは学問教授の自由、学問修得の自由といつてドイツでもつて大学の自由として数えられていることを、おそらく三つを集めて学問の自由という言葉で表現せられておることじやないかと思います。学問そのものの自由ということはあり得ないのです。学問をやる者の、主体の持つている自由、研究、教授、学習、そういうものではないかと思います。そういう自由というもの、いつでも人間の持つている、そういう政治的な意味の自由というものは、無制限ではないので、限界のないところには自由はない。そういう意味で、私どもは現在といえども日本の学問には自由があると思つております。私は哲学の研究者ですけれども、いかに哲学を研究しても、ちつともさしつかえないばかりではない、もつともつと研究しなければならないと思うのであります。私は、自由がない、自由がないという声を聞くことが大にして、ほんとうに持つてる自由を活用することはまだ足らないと思う。もつと大学の諸君などに、自由を活用して、ほんとうに研究をしていただきたいという考えを持つております。  アメリカと文化交流をするということも、まことにけつこうな話で、アメリカの文化にもわれわれの大いに学ぶべきことがあるから、そういう意味で私の考えは少しもずれていないと思います。
  67. 守島伍郎

    ○守島委員長 高田君、通告者がたくさんございますから、関連質問は一応おやめ願います。
  68. 高田富之

    ○高田(富)委員 それでは、あとで時間がありましたら……。
  69. 並木芳雄

    並木委員 先ほどの私の質問に対して文相は、その意気や壯とすべき所見を述べられたのでありますが、私はどうして、教育行政、文部行政として具体化していただかないといけないと思うのです。これを、漸次という言葉をお使いになつたかと思いますが、なかなか漸次じや間に合わないのじやないかと思います。文部大臣は相当悩んでおられて、四階の図書館で、スイスの中立という本を読んでおられるそうでありますけれども、私は文部大臣がこの期に及んで相当苦しい心境を持つておることは推測にかたくありません。それと同時に、吉田総理大臣をたしなめる唯一の閣僚も、また天野文部大臣ある、私どもはそう期待しているわけです。そこでたとえば国の精神的自衛力というものを涵養する一つの骨幹として、地域青年団、あるいは地域婦人会というものがありますが、これが民主的に育成されておる今日において、その運営がもつぱら経済的の原因で行き詰まつておるところが多い。そういものに対して力を入れて、経済的に育成して行くべきじやないか。最近聞きますと、ユネスコから日本の青年団体に対して、寄付などもあるやに聞いております。そういう際でもございますから、ひとつ先ほどの気持を具体化する方法として、そういうことを実行していただきたい思いますが、そのお考えがあるかどうか。
  70. 天野貞祐

    天野国務大臣 まず今おつしやいました補助のことから申します。そういう青年団などを補助することは、社会教育法によつて禁ぜられております。なぜかと申しますと、戰時中の青年団などが、非常に片寄つた考えであつたということが、原因でありましよう。それで今補助はできないことになつております。またかりにできるとしても、私はここに問題があると思うのです。政府が先に立つて、そういう青年団を補助して活動さすということになりますと、以前の翼壯団というようなものと同じ感じを世間が受けて、私どもが今まで考えているようなほんとうの意味の愛国的情熱というもの、愛国心というものを養うことに、かえつて逆行するおそれがある。そういう点にいろいろむずかしいことがある。今の社会は、いわば政府のやることを悪く言わぬと人気のないような点もあつて、人がむやみに政府のやることを非難するという傾向もないではございませんから、よほどそういう点は愼重に指導して行かなければならないと思つております。また先ほどおつしやいました愛国の誓いというようなことも、そういう形ではどうも今の人にアツピールしないというか、適しないと私は思います。そこで私は靜かなる愛国心などという表現を用いるわけでございます。並木さんの御精神には私も非常に同感ですが、その方法としては、並木さんのおつしやるところでは私はどうかと思つております。私は決して漸次というのではなく、できるだけ今の時代に即応して行きたいという考えを持つております。ついでながら、私が総理をたしなめるなどということは、私の考え及ばないところであります。(笑声)総理の指導のもとにいたしておるということをここに申し述べることを許していただきたいと思います。
  71. 並木芳雄

    並木委員 それでは大分時間をいただきましたから、最後にもう一点お伺いしたいのは、首相の演説にもありました国際文化の交流であります。日本文化の交流と申されたかもしれませんが、私は日米だけでなく、これはどうしても国際文化の交流というところまで広げて行かなければいけないと思うのです。それから日米文化の交流でも、首相は米国協力関係に入ることが最も適宜の方策であるというようなことを言つておりますが、この日米協力関係に入る場合でも、十分両者の気持と気持が通じないと、ぴたりとしたことが行われないという場合があると思う。ちよつとした例を引きましても、町の女、これなども若い人の気持を聞いてみると——町の女になるような人は非常にお気の毒で、私は個人的な立場では同情しますが、これを通じて案外若い人たちが、反米思想といつてはおかしいが、そういう反感を持つのです。そういう点でやはりこれは両者の文化の交流ということを急いでやらなければいかぬ。こういう点においてロツクフエラー氏がおいでになつたということは、非常に意義があると思う。そこで文相はこの際どうしてもこの抱負について一言なかるべからざるところだと思うのですが、どういう方向に日米文化の交流を持つて行くか、そしてひいては国際文化の交流を持つて行こうとするか、抱かれておる具体的のものを幾つかでも披瀝していただいたならば幸いだと思います。
  72. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は、この文化の交流ということは、何もアメリカだけではなくして、世界中とすべきであるという並木委員の御意見は、当然のことだと思つております。現に平和條約ができないにかかわらず、昨年から日仏間に留学生の交換をするということが始まつているということなどは、実に喜ぶべきことだと思つております。アメリカに対しても同じことで、できるだけ文化的な交流をする。しかしその際に最も重要なことは、言うまでもなくわれわれの自主性であつて、こじき根性でやろうという考えを決して私は持つておりません。自分らがほんとうに独立的な日本国として、そして将来ほんとうの自尊心を持つて文化の交流をやりたい。その項目をということでございますから、私がちよつと考えたところを申せば、留学生制度の確立とか、教育、学術及び文化に関する資料の交換とか教職員、研究者その他の文化関係者の交換とか、文化アタツシエの設置とか、著作権の問題を解決するとか、そういうようなこともさしあたつてどもの考えるところでございます。私があくまでも強調したいことは、われわれがどこまでも独立自尊の精神を持つて、そして外国の文化を消化して、それをほんとうに自分たちのものにする。そういう意味において、どこまでもわれわれは日本人だ——けれども日本的であるということは、決して国際的であるとか、世界的であるとかいうことと矛盾することなくして、最もよき世界人をつくるには、最もよい日本人をつくらなければならないというのが私の考えであります。
  73. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は集団保障とか、軍事協定の問題と憲法との関連について、たびたび政府質問したのでありますが、いつもまだ現実の問題ではないとか、その他の理由ではつきりした答えが得られなかつたのでありますが、結論に対する賛否は別といたしまして、とにかく草葉次官からはつきりとした政府の見解を示されたそのことは、私は一つの前進であつて、非常に参考になると思うのです。ただ念のために、こういうことを申し上げては失礼でありますけれども、お聞きしたいと思いますが、先刻の、自衛権の行使のために外国と軍事協定を結ぶということは、憲法違反にはならないという次官の御意見は、これは政府の御意見として承つておいてよろしゆうございましようか。こういうことを質問しますのは、たいへん失礼でございますけれども、あとから、あれは自分だけの意見だというようなことになると、どうもはつきりしません。政府はこう考えておるという意味で、それを代表して次官は一定の断定を下されたのであるか。この点を念のためにお聞きして、それから私の質問を続けます。
  74. 草葉隆圓

    草葉政府委員 さよう御解釈願つてけつこうであります。
  75. 守島伍郎

    ○守島委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  76. 守島伍郎

    ○守島委員長 速記を始めてください。それでは高田君。
  77. 高田富之

    ○高田(富)委員 この前にもちよつと御質問したのですが、もしも中国、ソビエトを除外いたしまして、さしあたりアメリカ等と講和を結ぶということになりました場合に、講和締結しなかつた国々と日本との間には、依然として降伏文書による義務を誠実に履行する立場に立つわけであります。従つてポツダム宣言にのつとつて、それらの国々に対しましては、日本がこれを履行して行く義務が当然残る、たしかこういうふうな答弁を次官がなさつたように記憶しております。そういたしますと、この講和によりまして——どういう條約になるかということは、大体七原則で明らかにされておる通りでありますが、なお詳細な條約案が提示されまして、そういうものに従つて條約が結ばれる。そうするとその條約に従つて日本が進む方向、いろいろな権利義務関係と、それからポツダム宣言降伏文書によつて日本が負うている義務との間に、いろいろな矛盾ができて来ますから、事実上これは非常にむずかしいことになるのでありますが、しかしそれにもかかわらず、やはり国際法上あるいは国際信義の上から、いろいろな点から見まして、この前御答弁になつたように、條約の締結されていない国との間には、依然として降伏文書並びにそれに伴うポツダム宣言履行の義務が残るという御見解にはかわりありませんか。
  78. 草葉隆圓

    草葉政府委員 前々回御答弁申し上げました内容と同一でございます。
  79. 高田富之

    ○高田(富)委員 そうすると、そういうことになるわけですね。
  80. 草葉隆圓

    草葉政府委員 従つて講和を結びません国とは、御見解のように全部が講和状態に入りませんから、降伏文書等による関係が続けられる。しかし、さらにその後の国際間のいろいろな進展によりまして、この問題の解決等にも資して行く場合はあろうと存じますが、單に法理的、あるいは国際法的に考えると、御意見のようになつて来ます。
  81. 中山マサ

    ○中山委員 その点に関しまして、この間新聞紙上に、そういう場合ができて来たときは、対日理事会がそういうことに対する管理に当る人を指名するということが書いてございましたが、これはどういうことになるのでございますか、お尋ねしたいと思います。
  82. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今後の問題で、今にわかに私もどうとは申し上げかねるのでありますが、ただ対日理事会において指名した者がするというようなことまでは現在考えられておらないと存じます。また考えられないのではないか、もつと今後の動きによつて考えるべき問題であろうと思います。
  83. 高田富之

    ○高田(富)委員 けれども、これはちよつとおかしいと思うのです。やはり降伏文書によつてこれを履行するということを政府が確認しておるとすれば、当然その場合には、今中山さんの御質問なつたような事態が起り得ることもちやんと予期していなければならないし、もしそれをいろいろな国際関係等で妨害になるというふうに相手方が認めれば、この妨害を排除してでも、合法的に日本に対しまして降伏文書に基いた義務を履行せしめるために武力を行使されても、まつたくこれは国際法上正当な権利を行使するのでありますから、われわれは当然それを甘受せねばならない、こういうことになると思いますが、それはどういうふうにお考えになりますか。
  84. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実はただいまの御質問意味はつきりいたしかねたのであります。結局御質問は、戰争状態にあつた国のうちで、数箇国が平和條約を締結して、数箇国が締結していない場合に、その締結していない国が、何かの方法をもつて日本に対して当つて来るというような問題の御質問でございますか。——これは現在の私どもの考えといたしましては、そういう場合もあり得るとも存じますが、必ずしもそうではないのではないか。一応戦争状態は終了しておる。しかし講和をそれらの国々も望んではおるけれども、その運びに至つておらないという意味において、その残つた国々がさらに集まつて何分の方法を講ずるというようなことは、いろいろな情勢から考えましても判断しかねるのでございます。
  85. 高田富之

    ○高田(富)委員 一応事実問題とわけまして、ポツダム宣言、降伏條項等を日本が忠実に履行するという国際信義の建前からしても、動かすべからざる日本政府の態度、これはやはり明確にしておかなければならぬと思うのです。従つて先ほども言われたように、依然としてそれらの国々に対して降伏文書の厳守、ポツダム宣言の厳守ということを日本が誓うという態度であるとすれば、それが実行されない違つた内容を持つ條約に調印をしてしまつたという事態が起りました場合には、これに対しまして、相手方が持つておる国際法上の当然の権利を行使して、日本に進駐して来るというようなことがありましようとも、これはいかんともできないはずであるし、日本政府としても、そういうことは国際信義の建前、国際法を遵守する建前から認めるということは、先ほどあなたが言明された通りでありますから、そういう事態がないだろうということでなくて、そういうこともあり得るということを考えた上において、やはりこのときには理論上こうだということがはつきりしないと非常におかしい。国民もどういうふうに判断してよいのかわからないことになつてしまう。首尾一貫して国際法を遵守し、国際信義を重んずるという立場をとつているようであり、またとつていないようでもあるので、事実問題を抜きにしまして、そういう問題と思います。
  86. 草葉隆圓

    草葉政府委員 さきにも申し上げましたように、敵対行為が続いているというのと戦争状態の終了というのとはおのずから違う。戦争状態の終了は講和によつて明瞭になる。敵対行為はすでに終了いたしておると存じます。従つて今後は、それぞれの国との講和という形で戦争状態が終了すると存じます。そういう意味におきまして、講和を結ばなかつた場合の処置を今日本がやつておくということについては、にわかに同意いたしかねるのであります。
  87. 高田富之

    ○高田(富)委員 そういたしますと、一部の国と講和を結ぶけれども、他の残つた国ともやはり至急に講和を結びたいと思つている、結ぶように考えているから、そういう国と結ばないということを前提とした場合は考えるに及ばぬ、こういうように考えてよいのです。
  88. 草葉隆圓

    草葉政府委員 最初からその方針で参つております。戰争状態にありました全部の国と、できるなら講和を結ぶのは当然であります。戦争の終了を現わす方法として当然であります。しかし、そういう情勢は、過去におきましてもなかなかできておりません。日本におきましての今回の場合でも、かりにできないような場合を予想いたしてのお話と存じまするが、そういう状態にありましても、今後早く結ばれる状態になりますることは、これは日本国民として当然望むところであろうと思います。
  89. 高田富之

    ○高田(富)委員 そういたしますと、今の御答弁で、とりあえずアメリカ講和を結んだ、あるいはこれに続いて若干の国と結んだ、しかしどうしてもなかなか結べない国が最後に残りそうだが、これに対しても早く講和を結ぼうという願望と努力を捨てるものではない、こう理解していいと思いますが、これでいいですね。
  90. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見通りであります。
  91. 高田富之

    ○高田(富)委員 そういたしますと、最初に取結ぶ講和内容というものは非常に重大だと思うのです。この内容が、もしも将来全面的にずつと各国日本に対して講和を結んでくれる可能性も、日本人が考えて考えられるというのならこれに対して努力をする。早く中国もやつてください、ソビエトもやつてくださいという願望を持ちつつ、国際関係の協調を促進する立場にわれわれも立つ。これは非常に話がわかる。しかし最初に取結ぶ講和内容が、後にわれわれが望んでおる、講和をしたいと思つておる相手方の国々と、とうてい氷炭相いれないような、二律背反的なものを内容とするものに調印するということになりますれば、今あなたの言われた願望は、まつたく問題にならぬということになるのでありますが、その点はどうお考えになりますか。
  92. 草葉隆圓

    草葉政府委員 おそらく講和内容は、今後だんだんと具体的になつて参りましようが、二律背反的な、永久の世界の平和のために、日本講和を結ぶことが阻害になるような講和では絶対にないと存じます。
  93. 高田富之

    ○高田(富)委員 それは一種の詭弁でありまして、もうすでにアメリカ日本に示しました七原則に対しまするソビエト同盟の回答、それから周恩来中国外相の声明、特に周恩来外相は、中華人民共和国を除外して行われる一切の講和の準備、手続は、すべてこれは無効であるということを明確に言明いたしておりますし、両国ともポツダム宣言による日本の完全な非武装化、ポ宣言十二項による外国軍隊の撤退ということを根本といたしておりますし、他方におきましてはまつたくそれと逆のことを根本といたしております。こういうふうにまつたく事実が氷炭相いれないものでありますので、これを今あなたの言つておるような立場で承認するというようなことは、とうてい考えられないといわざるを得ないのです。そこで中国におきましては先ほども私が申し上げました通り、もしそういうふうなことをして、中国及びソビエトに対する国際信義を日本が無視、蹂躙する、そうして降伏文書を事実上破棄するというような行動をとるにおいては……(「破棄しないよ」と呼ぶ者あり)単独講和というのは事実上破棄です。こういうふうなときには、これに対して合法的な何らかの強力な手段を講じてでも、やはりそういうことをやるというような決意を、中国及びソビエトの国家人民がするということも、われわれは国際信義の立場、国際法上甘受しなければならない当然の責任がこちらにある。みずからその責任を背負つて出るということになると思うのでありますが、どうですか。
  94. 草葉隆圓

    草葉政府委員 私どもの見解では、決してそうではないのであります。むしろソ連及びアメリカの間におきましては、いろいろ七項目を中心にした応答がなされておるようでありまして、今後もさらに進捗いたすとは存じますが、世界の国々は日本の立場をよく理解してくれましたが、今後結ばれるであろうと存じます講和には、おそらく十分な理解と協力をして守れて、決して無謀なる方法をもつて来ることはないと信じております。
  95. 守島伍郎

    ○守島委員長 もう時間がありませんから、北澤君。北澤君に御相談いたしますが、簡単ならばお願いいたしますが、時間がございませんから……。
  96. 北澤直吉

    ○北澤委員 時間もないようですから、外務省予算の問題についし簡単にお伺いいたします。この二十六年度の外務省予算ですが、これは二十六年度中に講和條約が調印されて、批准の交換が済んで効力が発生する、こういうことを予想してつくられた予算であると思つて間違いありませんか。
  97. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは平常の予算を組んでおります。従つてこの年度内にさような状態になりますと、それに即応した予算をさらに検討いたして参らなければならないと思います。
  98. 北澤直吉

    ○北澤委員 そうしますと、本来はこの予算は現状のままで推移するという決定をして、二十六年度予算を組まれたものでありますが、総理大臣の国会におきまするお話によりましても、今年中には講和條約ができる確信がある、ちやんと調印されて、効力を発生する確信がある、こういうふうに申されておるわけであります。従いまして二十六年度の途中におきまして、そういう事態ができて来ると私は思うのでありますが、そうしますと、この外務省予算というものは、根本的に私はかわつて来るのではないかと思います。まず機構の点から考えても、あるいは金の上から考えましても、非常に大きくかわつて来なければならぬ問題と思うのでありますが、まずお伺いしたいのは、外務省の機構の問題であります。私は終局講和條約ができまして、そうして日本国際社会に入つて行くということになりますと、外務省の今の機構は、これは大幅に拡張しなければならぬ、こう思うのであります。たとえば講和條約が結ばれますと、各所に通商條約が結ばれますが、そういうような見地から申しますと、どうしても通商局というものができなければならぬ。この講和後の通商上の無條約状態を脱して各国と通商條約を結ぶためには、元の通商局をつくつて専門的仕事に当るということも必要でありましようし、それからいよいよ日本が独立国として立ち上つた後におきましては、日本国際世界における情報を収集し、日本の立場を宣伝、啓発する元の情報部のような強力な組織がないと、外務省としても仕事をやる上に困ると思うのであります。そういうふうな講和後におきまする外務省の機構につきまして、もし構想がありまするならば伺いたいと思うのであります。
  99. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問内容にありまするようなことは、十分考えて行かねばならないと存じまするが、いろいろと各省間にも関係いたしまする問題であらまするし、外務省たけでもつてこれを決定することはできないような大きい問題もたくさんありますので、十分研究しながら愼重に進んで参りたいと存じます。
  100. 北澤直吉

    ○北澤委員 機構の問題につきましてもいろいろ御研究中と思いますが、問題は機構とともに人の問題が問題になるだろうと思うのであります。講和條約ができました後に、日本が独立しまして外務省の機構を拡張する場合におきまして、相当数の人を得なければならない。特にこれまで日本国際関係におきまする経験ある人を、外務省として必要とすると思うのでありますが、現在研究所においていろいろやつておりまする人以外に、多数の人を一体どういう方面からとるのか、そういう点について、もしお考えがありまするならば伺いたい。
  101. 草葉隆圓

    草葉政府委員 終戦後、かつて委員会でも申し上げましたように、だんだんと機構が縮小されて、従つて機構はあるいは急いで講じられますけれども、人の問題になると、なかなか簡単には参らない場合が多いのであります。幸いに各省に外務省から出ておりまする外務省出身の有能な人たちもおります。かつまた、今後十分人材を養成するという方向には力を注いで参らなければならないと存じます。目下いろいろな点におきまして、具体的に考慮をいたしておる次第であります。
  102. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほども文部大臣からお話がありまして、日本外国との文化の交流という問題は非常に重要であつて政府としてもできるだけやる、こういうふうなお話であつたのでありますが、この外務省予算を見ておりますると、たとえば情報啓発、事業実施に必要な経費国際文化事業実施に必要な経費というものを見ますと、去年よりは多少ふえておる。情報啓発事業の方は、去年は六百八十五万円であつたのが、ことしは千六百六十二万円、文化事業の方は、去年は百十七万円が、ことしはこれより減つておる。そういうわけでありまして、せつかく政府の方では、そういう国際的な文化の向上その他についても非常な方針を持つておりまするけれども、これを裏づける予算の面から申しますると、もちろんこれは文部省と外務省の両方にわたつておると思うのでありますが、外務省のこういう方面に対する予算が非常に少い。せつかく講話條約を結んで日本が世界に乗り出して各国との友好関係を増進して、そうして日本の信用を得るというような場合に、こういうようなおそまつな予算で、一体外国との文化の交流ができるかどうかと私は疑うのであります。もちろん財政の全般を見合して予算をつくる必要はあろうと思うのでありますが、こういう点をもう少しとれなかつたものかどうか、そういう点につきまして、これまでの経過をひとつ……。
  103. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これと並行いたしまして、いわゆる講和條約も本年中には少くとも進み得る可能性が多く見られて参つております。従つてただいまお話のありましたように、講和條約が済みましたら、外務省予算外務省のそれぞれの機構等も今般的に考え直して、皆様方の御協賛をいただかなければならないということに相なつて参ると思います。そういう意味におきまして、平常年度の予算としては一応この程度にしまして、来るべき講和後の外務省日本外交という立場からの予算は、十分な検討を加えながら進んで行かなければならないと存じておりますので、一応平常年度はこの程度にとどまつた次第であります。
  104. 守島伍郎

    ○守島委員長 北沢君、時間がありませんから、次の機会に御希望でありますれば機会を與えますから……。佐々木君。
  105. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは御要望に沿いまして、きわめて簡単に結論だけを申します。実は昨日発表になりました吉田総理ダレス大使の間に交換されました日本漁業問題に関する交換文書に関連して二、三承つておきたいと存じます。ちよつとお聞きしますが、農林省関係の方はお見えになつておりますか、いらつしやいませんか。——それでは主として外務省に関連する事項についてのみ承つておきます。  今度の交換文書趣旨というものは要するに日本が、講和條約によつて独立して、漁業協定というものが正式に締結されるまでの自発的な措置としての暫定的な漁場の各種の制限を加えたものでありまして、さらにそのために関係各国のオブザーヴアーを加えた委員会の設置などを日本みずからが、提言するというようなことによつて、主としてアメリカ日本漁船に対するところの不安や脅威というものを解消することによつて、もつて目の前に追つております講和会議にいい影響を與えようという、深い配慮から行われたものと考えるが、こういうことがこの交換文書の中に表われておりますこと自体について見まするならば、今日死活の岐路に逢着いたしております日本漁業問題につきましては、決して朗報ではなくして、非常な制限を加えられたものであると私は考えるのであります。そこでまず承つておきたいことは、講和條約が締結されたならば、ただちに、ないしは時間的には少くともその間に何らの空白なくして、ほとんど同時に日米漁業協定というようなとりきめでもできるというような見通しのもとに、これまでこういう交渉が行われたものか、どうかという点をまず承つておきたい。
  106. 草葉隆圓

    草葉政府委員 講和後ただちに漁業協定ができるように望んではおりますが、必ずしもそうは参りかねる場合もあると思います。その点は御了承願いたい。
  107. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それではこの文書趣旨をよく読んでみますと、最初に講和條約ができた後、何らかの時期に日米漁業協定というものが結ばれ、これを基本的なラインとして、たとえばソ連であるとか、あるいは中共であるとか、あるいは台湾関係等のそれぞれの個別的な協定を結んで行くというような構想のようにわれわれは考えられるのでありますが、いかがでありましようか。
  108. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実はここにもありますように、従来世界漁場に対する日本漁業の脅威というものが、相当災いしておつた場合が多いのであります。従つて今後今まであります世界の漁業関係の條約というようなものは、日本は十分これを守つて、さようなことのないようにするのがまず第一点になつて来ると存じます。従つて今後の冬日との問題等につきましては、相当合、後の問題になりますが、一応十分日本としては漁業の面において誠意をもつてつて行くということをはつきりと確認する立場をとつて、このような交換文書と相なつた次第であります。
  109. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 非常に失礼な話ですが、おそらくは政務次官はあまり漁業問題について詳しく関心をお持ちではないのではないでしようかと私は率直に考える。どなたかもう少しこれに関しまして交渉に当られてよくおわかりの方がいらつしやらないのですか。これだけ重大な日本の漁民と申しますか、漁業全体の死活に関する問題をとりきめたのでありますから、その間には相当な見通しや考え方があつてのことだと私は考えるのであります。  それでは基本的なことを承つておきますが、一体外交上の専門のことでありますから、これを知らぬとおつしやることはないだろう。今度の漁業協定ができますと、たとえば日米漁業協定というものができますが、これを見ましても、たとえばべーリング海だとかアラスカ方面とか、こういつたところの漁業が非常な制限を受けておるのであります。従いまして講和ができた国とはその結果漁業協定が結ばれると考えますが、全面講和の場合と同じように、講和のできない国との間の漁業権の問題はどういうふうに残るかということをまず承つておきたい。
  110. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問最後のところをちよつと聞き漏らしましたが、先ほど来非常な日本漁業の制限になるという御意見があつたのでありますけれども、この全体の趣旨から申しまして、決して一方的に不利な立場に日本漁業が立つというような性質のものではないと考えます。たとえばアメリカとカナダとの間に協定がありまして、その協定趣旨日本は守るということは、それらの国と同様の立場で、たとえば魚族の保存であるとかなんとか、そういう目的を達することになるのでありまして、日本だけが不利な立場に立つという関係にはならないと思います。
  111. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後に一点だけ、外務省プロパーの問題でありますから承つておきますが、これは先ほど来繰返し申しますように、ほんとうに重大な漁業権のわが国の権益に関する問題であります。申すまでもなく、憲法におきましては、第六十條並びに第六十一條におきまして、條約の締結に国会の承認を必要とすることも規定をせられておりますし、また憲法第七十三條によりますと、内閣の行う行為として、外交関係処理することと、しかしながら條約を締結する場合においては、事前に、もしくは時宜によつては事後に、国会の承認を経るということになつておるわけであります。それでこれから漁業協定の問題が具体的に浮んで来るとは考えますけれども、少くとも主権在民の精神から、またこの新しい憲法の精神から申しまして、このような重大な権益に関連する問題でありますから、私は当然これは事前に国会の承認を求めるのが、正しい民主的な行き方だろうと考えておるわけであります。さような点から申しまして、この漁業條約というものの具体的な草案が、国会にかかることはもとよりでありますが、こういうものについてはもつと事前に国会に全貌を提出いたしまして、当然国会の審議を求めるということが望ましいことと考えるわけでありますが、そういうことをする用意があるかどうかということを承つておきたい。
  112. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この漁業問題に関します吉田総理ダレス大使との往復文書に盛られました内容話合い、これは実は従来から漁業問題について、相当世界の漁業界を日本漁業界が刺激をしておる。従つてそれが講和に與える影響を、先ほど申し上げましたように考慮しながら、ひとつ十分今後においては、日本漁業は最も紳士的にまた正義に立つて進んで行こうという内容でありますことは、ごらんになるとわかる通りであります。従つてこの内容は、実は事前に御相談申し上げる程度のものではないと存じます。むしろこの文書は、従来から不安になつておりました日本漁業界に対して、ある一種の——むしろ逆にはつきりした安心を持つて進んでいただけることだと信じます。従つてこの前提に立つて、今後具体的に問題が進んで参ります條約等におきましては、あるいは事前に、あるいは事後に、そのときの情勢に応じまして——御相談の機会がなかつたら事後になりますけれども憲法に示されました状態において、十分国会の意思を尊重して参りますことは当然でございます。
  113. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは本日はこれで散会いたします。次会は明十五日午前十時から開きますが、先ほど申し上げました通り、今の予定では、外務大臣は時間通りに参られますから、御質疑をなさる予定の方は、どうぞ時間通りにおいでを願います。  本日はこれで散会いたします。     午後零時三十五分散会