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1951-01-31 第10回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年一月三十一日(水曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 山本 利壽君       伊藤 郷一君    植原悦二郎君       菊池 義郎君    仲内 憲治君       中山 マサ君    福田 篤泰君       並木 芳雄君    武藤運十郎君       高田 富之君    高倉 定助君       黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家消防庁長官 新井 茂司君         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君 昭和二十五年十二月十六日  委員中野四郎辞任につき、その補欠として中  村寅太君が議長指名委員に選任された。 一月二十九日  委員中村寅太辞任につき、その補欠として高  倉定助君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  理事小川半次君の補欠として山本利壽君が理事  に当選した。 一月十六日  海外同胞引揚促進等に関する陳情書  (第五三号) 同月二十六日  南阿連邦輸入関税引上げ緩和に関する陳情書  (第六一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  お諮りいたしますが、小川半次君が理事辞任を申し出られましたので、これを許可することといたしまして、この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長より指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認めます。さようでございますれば、山本利壽君を理事指名いたします。(拍手)     —————————————
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは国際情勢等に関する件を議題といたします。まず最近の国際情勢につきまして、外務当局より説明を求めます。
  5. 高田富之

    高田(富)委員 議事進行について申し上げます。  本日外務委員会を開催いたしますことは、時たまたまダレス特使の来朝にあたりまして、今日わが国民のあげて注目するところとなつておるわけであります。従つてこの外務委員会の本日の議事には、当然ダレス特使との間に折衝されます政府当局の基本的な考え方につきまして、でき得る限り詳細な報告があり、これに対して各党からも質疑が十分活発に行われることを、全国民がひとしく注目しておるところと確信するものであります。しかるにここに大臣出席がありませんことは、まことに不可解でありまして、いかなる理由によつて出席しないのか。なお出席しないにもかかわらずこの委員会を開こうとするにあたりましては、委員長考え方もお聞きしておきたいと思います。この点について明快な御答弁をお願いしたいと思います。
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 私もでき得る限り外務大臣に早く出ていただきたいと思いまして、外務大臣にお話をいたしておりますが、外務大臣はいろいろおさしつかえがありまして、本日は御出席できません。それで、最近の次の機会に出ていただくというように外務大臣にお話いたしております。外務大臣におさしつかえあれば、いたし方ございません。  それでは政府当局の御説明を求めます。
  7. 草葉隆圓

    草葉政府委員 最近の国際情勢につきまして、その後の問題についての御報告を申し上げます。大体朝鮮の問題と対日講和の問題が、特に重点的に考えられまするので、この二点につきまして御報告を申し上げたいと思います。  朝鮮の問題は、昨年末御報告申し上げまして以来、ことに昨冬クリスマス前後から活発に活動の情勢に展開しました中共攻撃によりまして、一月三日には、国際連合軍京城を放棄し、韓国政府は再び釜山に臨時首都を移すのやむなきに至つた次第でありまするが、その後の戰局は、現在水原、利川、驪州、原州等の線を中心にした一帶におきまする攻防が行われておるようでありまして、最近国際連合軍の態勢の建直し等によつて、有利に展開しつつあるようであります。  一方朝鮮問題の平和的解決にあたりましては、国際連合におきまして昨年の末にアジアアラブ諸国の停戰調停によりまして成立いたしましたいわゆる三人委員会も、その後北京政府交渉を拒絶いたしました声明によりまして、一月三日国際連合総会政治委員会に対して、中共との会談を行うことに失敗したという旨の報告書を提出いたしたのであります。その後停戰の原則に関しまして協議を進めておつたのでありまするが、この委員会は十一日、戰闘を即時停止して、次いでただちに極東問題全般解決をはかるために、米、英、ソ、中国の四大国交渉を開くことをおもなる内容といたしました新停戰案を提出いたしまして、十三日の政治委員会で可決されるに至つたのであります。しかしこの停戰委員会に対しまして、中共はまず停戰の條件をきめた後、行わるべきことであるという趣旨によりまして、これを拒否しますと同時に、いわゆる米、英、ソ、中国フランス並びインド、エジプトの七箇国会議中国に開いて、中国において協議をすることを提案いたしたのであります。アメリカはこの中共提案回答に受諾し得ぬ旨を明らかにいたしますと同時に、二十日には政治委員会に対しまして、中共が侵略を行つておる事実を認め、中共軍撤退中共に対する集団的な処置の考慮を要求する決議案を提出いたしました。アメリカのこの強硬態度に対しましては、アジアアラブ十二箇国の諸国はもとより、イギリスフランス等西欧諸国も、積極的な行動をとることに愼重な態度をとつて参りまして、事態を靜観しておりましたやさき中共がさらに新しい提案インド政府を通じて送つて参つたのであります。これはさき中共回答提案と本質的にはほとんどかわらないものでありますが、多少その態度が緩和されておるように見られるのであります。すなわち、もし国際連合極東会議を開くならば、動乱解決の第一段階として、期限付の停戰に応ずる。また国際連合が、すべての外国軍隊朝鮮撤退原則的に実行に移すならば、中共政府中共義勇軍に対して、朝鮮からの撤退を勧告することに同意するという趣旨のものであります。その後本月二十四日に至りまして、中共政府はさらにインドを通じて、新しい提案を送つたと伝えられておるのでありますが、同じ二十四日に、アジアアラブ十二箇国は、さきに申し上げました七箇国会議を招集することを要請する決議案を国連に提出いたしたのであります。その後この十二箇国とアメリカ提案をめぐりまして、政治委員会でなお討議が続けられておりまして、まだ本日までその採決がいたされておらない状態のように承知をいたしております。  以上朝鮮動乱平和的解決のために、国際連合のわく内で、いろいろな努力が行われておりますが、中共軍介入に対する各国考え方には、いろいろの相違がありまして、その結果、中共政府に対する態度及び動乱解決方法についても、各国の間の主張に多少の相違が見られるのであります。  次いで、イギリス連邦首相会議は、一月四日から九日間、ロンドンで開かれたのは御承知通りと存じまするが、朝鮮問題につきまして、中共承認問題と関連して論議せられ、その結果停戰三人委員会提案の支持が確認されたようであります。中共承認問題につきましては、無條件承認して国際連合加入を認むべしと主張いたしまするインドなどと、朝鮮における動乱が継続中は認むべきでないというオーストラリア等意見がわかれて、イギリスがその妥協案として、中共朝鮮で停戰に応ずることを條件に、国際連合加入を認むべしと提案をして、各国首相同意を得たと伝えられておりまするが、しかし政権承認につきましては意見一致は見られなかつたようであります。  次いで、対日講和の問題につきまして、その後の動きを御報告申し上げておきます。対日講和の問題は、ダレス特使日本を訪問されましたのを機会に、内外の注目の的となつておりまするが、現状を要約して申し上げますると、アメリカは御承知の七項目提案基礎といたしまして、各国の意向を打診しておりましたが、前回も御報告申し上げました通りソ連代表との十月下旬の会談最後といたしまして、一応非公式会談終つたのであります。その後これに対しまする公私の見解が伝えられておるのでありまするが、米国提案に対しまする正式回答といたしましては、十一月下旬のソ連質問的な回答並びにオーストラリア、ニユージーランド及びフイリピン等三、四の国にすぎない状態のようであります。この七項目アメリカソビエトおのおの両国におきまして発表されたところで明瞭でありまするが、ソ連の覚書に対しましては、十二月二十八日、アメリカマリクソ連代表回答をいたしたのであります。一方先ほど申し上げましたように、朝鮮に対する中共介入によりまして、平和回復努力が妨げられ、その解決が遅延するに至りまして、対日講和もそのために遅れるのではないかという見通しが強く抬頭いたして参つたのでありまするが、アメリカにおきましても国務、国防両省の間において意見相違があるように伝えられて参つたのであります。しかし本年に入りまして、トルーマン大統領年頭教書、あるいはマツカーサー元帥年頭声明にも触れられましたように、積極的推進アメリカの決意が明らかにされまして、さらに両省意見相違解決されたかのごとく、十一日にはダレス顧問大統領特使として日本に派遣することが公表され、今回の来訪と相なりまして、大いに対日講和の進展を期待いたしておる次第であります。一月四日から十二日まで、さきに申し上げましたイギリス連邦関係首相会談ロンドンにおいて開かれました際にも、対日講和に対して積極的に討議されたようでありますが、その内容は非公式になつておりまするので、詳細にこれを知ることは困難であります。しかし最後に発表されましたコミユニケによりますと、この会議では、他のいろいろな問題と並んで、対日講和の問題及びこの條約に含まるべき保障処置の問題を討議したといわれ、また共同宣言におきましては、日本及びドイツとすみやかに講和を締結する必要があると発表されたのであります。これらの点におきましては、各連邦首相意見一致したと思われるのであります。またその他の消息筋の報道によりますると、この問題に関連いたしまして、第一には、中共並びにソ連両国を含めて対日戰に参加したすべての国家が対日講和会議に参加すべきであること、第二に中国政府として中共政権を参加させるということは、必ずしも中共政府承認するという意味ではないこと、第三にはソ連中共会議に参加することを拒むような場合は、両国の参加なしにでも平和條約はすみやかに起草されねばならないということ、こういう点において意見一致したと伝えられております。また日本の再軍備につきまして、英連邦首相会議におきまする大部分の意見は、米国と同調する用意があるが、その際次の保障を要求するというように見られておると伝えられております。その第一は、日本の兵力を非共産圏にかたく結びつけるということ、第二は、アメリカ日本軍隊を駐留させる権利を持つべきであるということ、第三は、対日講和調印国は、将来日本がその一国を攻撃した場合には、日本に対抗することに同意をするということ、第四は、将来日本海空軍のうち攻撃的性質を持つものを制限するということ、また講和條調印後の日本経済的地位についても、日本の産業に一定制限を設けるべきかということにつきまして、あるいはイギリスインド、パキスタンの間に意見一致を見なかつた点があると伝えられておるのであります。  以上前回報告申し上げました後におきまする、特に朝鮮問題並びに対日講和の問題の動きを御報告申し上げます。
  8. 守島伍郎

    ○守島委員長 それではこれより質疑を許します。きようは質疑の通告が非常にたくさんありますから、十五分かせいぜい二十分くらいで皆さん切り上げていただきたいと思います。北澤君。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 きようは吉田外務大臣が御出席になりませんので、私は大臣に対する質問は後日に留保しまして、外務当局にお尋ねいたしたい。ただいま委員長から御注意がありましたが、この講和問題は、日本民族の運命に関する非常に重要な問題でありますので、私は今国会外務委員会におきましては、この委員会委員各位が十分に論議することが、私は国民の御期待に沿うゆえんであると思いますので、ひとつなるべく時間を制限しないので、そのためにはたびたび開いて十分論議を盡した方がいいと思いますが、きようは時間の制限がありますので、時間の範囲内でお伺いいたします。  第一に伺いたいのは、御承知のようにこの問題は国民全体が非常な関心を持つておる問題であります。従いまして、ただいまダレス特使が参りまして、政府当局がいろいろ交渉をしておるのでありまして、もちろんこの交渉というものは非常な機微関係にありますので、なかなか外部にも十分に発表できないという点もあると思いますが、国民全体が非常な関心を持つておる。そこでもちろんこの條約が調印された場合におきましては、国会批准衆議院参議院に付議されるというわけでありますけれども、私はできれば條約の調印以前においても、可能な範囲において、政府当局はせめて衆議院外務委員会、あるいは参議院外務委員会というものと密接な連絡をとりつつ交渉してもらいたい、こういう希望を持つておるものであります。現にダレス特使アメリカを立つて参ります場合におきましても、アメリカ上下両院外交委員会において十分協議をいたして参つた、こういうような報道もありますので、私は本講和條約の調印以前においても、非公式でけつこうでありまするからして、政府当局両院外務委員会との間に密接な連絡をとりながら進んでもらいたい、こういう希望を持つておりますが、まずその点について御意見を伺いたいと思います。
  10. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見ごもつともと存じます。できるだけ政府もこの外務委員会等を通じまして、十分連絡をとりながら進みたいと思つております。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 この條約が調印されますれば、ただいま申しましたように、日本におきましても、それからまた連合国側においても、批准があるわけでありますが、マツカーサー元帥声明を見ましても、またダレス特使のステートメントを見ましても、アメリカ側においては、今年中にはこの條約の効力が発生する、すなわち今年中には批准を終了したい、こういうふうな意見のように見受けるのでありますが、これに対しまして政府はどういう見込みを持つておりますか。やはり今年中には調印もそれから批准終つて講和條約が効力を発生する、こういうふうな見通しを持つておりますかどうか。その点をお伺いしたいと思います。
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在の段階では、まだはつきりお答え申し上げるところまでは行つておらないと存じまするが、これは総理も御答弁申し上げましたように、なるべく早く締結されることを強く希望いたしておりますることは、アメリカ日本も同様でありまするから、この希望は決して無にはならないのではないかと考えます。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 私はその次に、先ほど次官からも御説明がありました、米国政府が正式に発表いたしておりますいわゆる対日講和原則というものにつきまして御質問申し上げるのであります。新聞によりますと、ダレス特使も、この七原則中心にして日本側とも話を進めておるこういうような報道でありますので、私はこの七原則についてわれわれの希望を申し述べ、それからまた可能な範囲において政府の御意見を伺いたい、こう思うのであります。その七原則の第一点におきましては、日本との交戰国の全部または一部であつて提案されて合意される基礎において平和を成立させる意思を有するものが調印する、こういうふうになつております。それは、でき得れば全面的に日本との戰争に参加した国が全部講和に参加するということが希望でありますが、もしそれが不可能な場合には、一部の連合国日本との間に講和を結ぶ、こういうふうになつております。われわれといたしましても、もちろん全面講和は、それができれば、それに越したことはないのでありますが、現在の状況においては、きわめて困難であると思いますので、一国とも多く、一日も早く講和條約を結びたい、こういう考えを持つておるわけでありますが、ここでひとこお伺いしたいのは、最近の新聞報道によりますと、いわゆる多辺的條約と申しますか、一本の講和條約に日本連合国調印をする、いわゆる多辺的條約になるか、あるいは日本米国日本イギリス日本フランス、こういうふうに個別的の條約になるか、そういう二つの案が考えられておるようでありますが、政府におきましては、これが多辺的の講和條約になるか、あるいは個別的の講和條約になりますか、もし見通しがありましたらお伺いいたしたい。
  14. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実はまだ具体的にそこまで私には見通しがつかないのであります。これは今後の問題だと存じますが、そういう情勢になりますと、さきにも申し上げましたように、お伝え申し上げます。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 次に伺いたいのは、国際連合に加盟する問題でございますが、このアメリカの対日講和原則の第二に、日本国の加盟は考慮される、こういうふうに書いてあるのでありますが、申すまでもなく、国際連合日本が加盟する場合には、安全保障理事会承認を要するところが安全保障理事会におきまして、御承知のようにソ連その他四大国拒否権を持つておりますので、日本国際連合加入ということは相当困難ではないか、ソ連拒否権を行使するということを考えますと非常に困難ではないか。現にイタリアは、講和條約において連合国イタリア国際連合加入を支持するということを書いておるにもかかわらず、今日までソ連拒否権の行使によつてイタリア国際連合加入できないという状況でありますので、私は国際連合日本加入するという問題は、講和條約にこういうふうに書かれましても、これは相当時間を要し、また相当困難は問題でないかというふうに考えるわけでありますが、この点は次の安全保障の問題の際に伺いたいと思つております。  次に伺いたいのは、領土の問題でありますが、向うの対日講和原則によりますと、日本朝鮮独立承認する、それから合衆国施政権者とする琉球諸島及び小笠原諸島信託統治制度日本同意する。それから台湾澎湖島南樺太及び千島列島地位については、イギリスソビエト中国合衆国が将来決定することを日本は受諾する、條約が効力を生じました後一年以内にその決定がなかつた場合には、国際連合総会が決定することを日本が承諾する。こういうふうになつておるのでありますが、われわれ日本国民といたしましては、この領土問題というものにつきましては、これは非常に重大な関心を持つておるわけであります。朝鮮独立を承諾するということにつきましては、われわれといたしましても異存はないのでありますが、琉球諸島小笠原諸島、この日本の民族的に、あるいは政治的に日本に非常な関係のある琉球諸島及び小笠原諸島領土権の帰属については、日本国民全体として、私は非常に重大な関心を持つておると思うのであります。現にいわゆる大西洋憲章と申しまして、ルーズヴエルト大統領チヤーチル首相調印しました大西洋憲章、それからそれを確認しました連合国共同宣言によりましても、連合国戰争によつて領土の拡大を欲しない、領土の変更をする場合は、住民の意思に反してはやらぬというようなことを宣言しているわけであります。それからまたカイロ宣言におきましても、日本が力をもつてとつ領土日本から奪い取るということを書いてありますが、力によつてとつたものでないものを日本からとるというようなことは書いてないのであります。そういう点から申しまして、私は琉球諸島小笠原諸島というものは、決して日本戰争の結果とつたものではなくて、もともと日本領土であつたのでありますので、私は日本国民の全体は、この小笠原諸島琉球諸島というものの領土権は、ぜひとも日本に帰属さしてもらいたいということを、心から強く念願しておると思うのであります。この点につきましては、あるいは政府といたしましては、今のところはつきりした見解を述べ得ないと思うのでありますが、国民といたしましては、この琉球小笠原諸島がぜひとも日本領土権に帰属するようにしてもらいたい、もしどうしてもこの両諸島国際連合信託統治になることに日本同意しなければならぬというのならば、その信託統治というものにつきましては、一定期限をつけてもらつて、その期間が経過した場合においては自然に当然日本領土になる、こういうふうに善処してもらいたいと思うのであります。それから千島の問題でございますが、これも私から申し上げるまでもなく この前の国会委員会でも申し述べたのでありますが、この千島も決して日本が暴力によつて外国から奪い取つたものではないのであります。御承知のように安政元年日本ロシヤとの條約によつて、いわゆる南千島、擇捉、国後等はもともと日本領土である。北千島はこれはもともと日本のものでありません。これは安政元年の條約によつてロシヤ領土であつたのでありますが、それがその後千島樺太交換條約による平和的交換によつて、北千島日本のものになつたのでありまして、決してこれは日本が力をもつて外国から奪い取つたものではないのであります。のみならず現在ソ連が占拠いたしております歯舞諸島、この北海道の一部であるところの歯舞諸島というものは、千島ではないと思うのであります。従いまして、われわれはここに書いてある千島というものは、ほんとうから申しますと、これは北千島であつて、実は南千島なり歯舞諸島は入らぬ、こういうような解釈を持つておるのでありますけれども、いずれにしましても、私どもは千島の問題も、これは歴史的、民族的に日本と非常な関係があり、しかもこれは日本が武力をもつてとつたのではないのであります。これもぜひとも日本領土に帰属してもらいたい、こういう希望を持つております。その他の台湾樺太澎湖島の問題は、これはアメリカ側提案通りで私はけつこうだと思うのであります。この点について、もし政府として御見解があるならば伺いたいと思いますが、政府として現在それを発表するのは非常に機微関係があるというのならば、今私が申し上げましたような日本国民全体の希望を、ひとつよく取入れて交渉に当つてもらいたい、こう思うのであります。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 北澤委員の御意見を含めた御質問十分政府もくみまして進みたいと思います。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 次に伺いたいのは安全保障の問題であります。今度の講和條約で最も大きな問題は、領土の問題と安全保障の問題だと思うのであります。アメリカの案によりますると、国際連合実効的責任を負担するというような満足すべき別途の安全保障をとりきめるまで、日本国区域における国際の平和と安全の維持のために、日本国の施設と合衆国の及びおそらくはその他の軍隊との間に継続的、協力的責任が存在することを考慮する、こういうふうに書いてあるのであります。先ほど申し上げましたように、日本国際連合にすぐ加入できるならば、これは問題は比較的簡單でございます。また国際連合加入しましても、現在の国際連合がまつ二つにわかれて戰争しておるというような状態におきましては、国際連合が有効的に日本安全保障をし得る能力は、私は必ずしも十分でないと思う。従いまして、現にヨーロツパにおきましては、国際連合安全保障能力を補充するために、北大西洋條約というものができておるわけでありますので、私どもは国際連合に加盟することが可能でありましても、そのほかにこれを補充するような日本安全保障に関する協定というものがなければならぬと思うのであります。そこでアメリカ提案によりますと、国際連合が実効的な責任を負つて日本安全保障のとりきめができるまでの間は、アメリカ軍隊日本の施設との間に協力関係が存在するようにしたい、こういうことであろうと思うのであります。これをそのまま読みますと、これはアメリカその他の軍隊が、講和條約締結後日本に駐屯するということが、暗に含まれておると思うのであります。現にこれに対しまして、ソ連からアメリカの方に照会をしまして、それに対するアメリカ回答を見ましても、現在の国際状態におきましては、国際連合憲章の第五十一條の規定によつて、個別的及び集団的な自衛権の立場からこういうような日本安全保障に関する協定が結び得るのだ、その協定の中には、外国軍隊日本に駐屯するということも規定してよろしいのだというふうにアメリカの方では答えておるわけでありますが、それを見ましてもアメリカその他の軍隊講和條約締結後も日本に駐屯するということを示しておると思うのであります。その場合に、ここに私の注意したいのは、日本国の施設について外国軍隊との間に協力をする、こういう関係であります。私は講和條約締結後日本の安全を保障するために、日本アメリカその他の間に協定を結ぶ場合におきましては、これは独立国と独立国の関係でありますので、日本安全保障については、日本人と連合国が対等、平等の立場で條約を結ぶ。アメリカ日本軍隊を駐屯させて、一方的に日本の施設を使うのでなく、日本連合国がお互いに相談をし合つて、そうして日本の施設その他の使用を考える。ちようど各国が北大西洋條約をつくつたように、各国が相談し合つて その安全の保障をやるということになります。私はやはり日本安全保障につきましては、もちろん日本は今のところ軍備を持つておりませんから、提供し得るものは施設のほかにはありません。その施設を提供するにしても、やはり日本連合国との間に対等の関係があり、両方相談の上に使う。決して日本に駐屯する軍隊が一方的な立場から日本の施設を使うことなく、これを双方対等の立場で相談し合つて日本安全保障を講ずる。こういうふうにしたいということをわれわれは考えておるのでありますが、この点について政府の御所見を伺いたいと思います。
  18. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見の点は私ども同感に考えております。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 この問題はきわめて微妙な関係があり、また現に話合いが進行していると思いますので、これはまた次の機会に伺いたいと思うのであります。  そこで次に移りまして、日本の政治的、通商的とりきめというものに関する点について伺いたいと思うのであります。アメリカ側の案によりますと、日本国は、麻薬及び漁業に関する多数国間條約に加入することに同意する。戰前の二国間條約は、相互の合意によつて復活することができる。新しい通商條約の締結まで、日本国は、通常の例外に従うことを條件として、最惠国待遇を與える。こういうふうに書いてあるのであります。これをそのまま読みますと、われわれとしましてはどうも非常に不満足なのでありまして、たとえば日清戰争があつたあと、日本と清国との間に結んだ講和條約におきましても、支那の方は日本に一方的に最惠国待遇を與えておる。これに戰敗国が戰勝国にやる普通の例であります。ところが今度のアメリカ態度を見ますと、日本は戰敗国として扱わない、どこまでも日本は対等の国として扱うのだというふうなことがアメリカの責任者の口から発表されておるわけでありますので、私は日本の最惠国待遇につきましては、一方的に日本外国に與えるばかりでなく、相互信用によつて日本も與えるが、連合国日本に最惠国の待遇を與える、こういうふうにしてもらいたいと思うのであります。現にイタリアとの講和條約におきましても、イタリアは相互的に外国から最惠国の待遇を受けるという條件で、イタリア連合国に最惠国の待遇を與える、こういうふうに対等的になつておるわけでありますが、これは日本の場合におきましても、日本連合国に最惠国待遇を與えるが、連合国日本に対して最惠国待遇を與える、こういうふうにぜひしたいと思うのであります。講和條約締結と同時に、最も大事なことは、日本の経済の自立達成でございますが、日本の経済の自立達成は、もちろん貿易のいかんによるわけであります。今後日本の貿易の進展いかんが、日本の経済自立をきめる最も大きな要素と思うのでありますが、日本が貿易発展をはかるためには、どうしても世界の各地において日本の通商貿易に対しまして最惠国待遇を受けるということなくしては、私は日本の貿易発展は期し得ないと思うのであります。外国においても、あるいは国際貿易憲章あるいはそれの一部と思われる一般関税協定においても各国は最惠国待遇を與えて通商上の公平を確保する、こういうふうになつておるのであります。この点はぜひとも今度の講和條約におきましても、日本も最惠国待遇を與えるが、連合国日本に対して最惠国待遇を與えるというふうにぜひとも直しともらいたい、こう思うのであります。  それからまたここでもう一つつけ加えたいことは、今申しましたような国際貿易に関する協定、あるいは関税に関する協定、あるいは国際通貨基金に関する協定、あるいはその他の文化のことに関するいろいろな国際間の協定があるのでありますが、日本は、講和條約締結後におきましては、ぜひともこういうふうな多数国間の経済、文化に関する協定にも互惠、平等の立場において参加できるようにぜひお願いしたい、こう思うのであります。現にきのうの新聞によりますと、ユネスコ加入に関する、日本の要請書がユネスコに付託されて、これが今後の手続を経て日本のユネスコ加入というものが、非常に期待される状況なつたというふうな報道がありますので、われわれは非常に意を強うするわけでありますが、一つのユネスコばかりじやありません。そういう国際間の経済文化に関する多数国間の協定におきましても、日本は平等互惠の立場において、これに参加できるようにひとつぜひ希望したいというのでありますが、これに対する最惠国待遇の問題と、今の国際條約に関する日本加入の問題につきまして、政府の御意見を伺いたいと思います。
  20. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問内容はよく了承いたす次第であります。また国民といたしましても同様な感じが強いと存じます。ただ平和條約の内容をなしております部分が多くございますために、現在政府としてこれに対する直接の意見は差控えたいと思います。御意見はよく了承いたしました。
  21. 守島伍郎

    ○守島委員長 北澤委員に申し上げますが、一応これで打切りを願います。あとでまた時間がございましたらお許しいたしますから……。
  22. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点だけですからお願いいたします。時間の制限があるようでありますからもう一点だけ伺つてやめます。その点は第六の賠償の問題でございます。  今度の対日講和に関するアメリカの案によりますと、日本からの賠償はやめる、これまでとつたものは別として、これ以上はとらないというふうになつておりまして、われわれは非常にこれは歓迎するのでございますが、ただ問題は連合国の領域内にある日本の財産、日本人の財産の問題でございます。これは賠償の一部に充てるというわけでありますが、連合国領域内における日本人財産は、連合国原則としてこれは保有するというふうなことになつておるわけでありますが、私はこの点について日本人の一人として希望申し上げたいのであります。戰時国際法におきましても、私有財産はこれを尊重するというのが原則でございます。そういうわけでありますと同時に、また先例を見ましても、イタリア講和條約の場合を見ましても、講和條約そのものにおきましては、連合国にあるイタリアの財産は一応連合国がこれを保持して、その中から賠償の分をとる、こういうふうになつておりますが、講和條約以後のイギリスイタリアの協定、イタリアアメリカとの協定、あるいはイタリアとブラジルとの協定において、そういう英仏ブラジル等におけるイタリア人の財産は、これをイタリアに返還するというふうに、私は解釈しておるわけでございます。そういう前例もありますので、私は連合国領域にある日本の財産、特に日本人の私有財産、そういうものはひとつぜひ日本側に返還してもらうように、政府において御善処願いたいとこう思うのであります。特に申し上げたいのは、最近政府におきましても外資の導入、外国資本の導入ということを盛んに言つておりますが、外資の導入に対して、まず外国にある日本のそういう財産というものを日本に返してもらうことが、外国人に対する、何と申しますが、負担にはならぬのでありまして、私は、外資の導入より以前に、まず外国にある日本人の資産を日本人に返してもらうというふうにぜひお願いしたいと思うのであります。この点についても、政府としていろいろ機微な立場はあると思いますが、もし御意見を伺えれば伺いまして、私の質問を終りたいと思います。
  23. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見の点はよくわかりますので、承つておきます。
  24. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは佐々木君。
  25. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこの際委員長に要望かたがたひとつ注意を喚起しておきたいと思うのであります。それは先ほどの北澤君の熱心な御質問にも非常な時間の制約が加えられておるようでありますが、講和問題はきわめて重大な国の運命に関する問題でありますから、十分審議の時間を與えるように、そのためには場合によつては一人の委員で一日を費してもいいと私は考えております。しばしばこういう委員会を持つことによつて、時間的な制約をなるたけ少くするというふうなとりはからいをお願いいたしたいのであります。この点を強く要望いたしまするが、しかし本日はせつかくスケジユールが組まれてしまつておるそうでありますから、そのスケジユールに私は忠実に従つて、きわめて簡單に質問いたしたいと思います。時間の制約もそのようにありまするし、また本日御出席政府委員は、すでに本委員会においてわれわれが苦い経験を味わつておりまして、いろいろ承りましても、その立場上、あるいは御本人のお持ちになつておりまする勇気の関係もありまして、とても満足の行く答弁を願えないかと考えますので、いずれあらためて——二、三日中には総理も御出席であろうと考えますし、かたがた私もダレスさんに会うことになつておりますから、その節われわれの考えておりますことは申し上げてみたいと考えます。ただ私は、先ほど北澤君が申したことを敷衍し、補足する意味において、二つの点だけについて承つておきたいと思います。  まず第一点は、先ほど北澤君が申しましたことく、外交につきましては非常にテクニツクもあるでありましようし、また外交問題を、いかに民主主義の世の中になつたからといつて、ことごとくガラス張りの中でやれというようなやぼなことを、私は申し上げるわけではありません。しかしながら、もし今度講和條約が締結されることになりますると、御承知のように国会承認も得なければならない。いわんやその問題が、もし伝えられるがごとく、現に七項目の中に入つておりまする日本安全保障の問題や軍備の問題等になりますと、單なる国会承認ばかりでなくして、国民の総意を聞かなければならない重大な問題でもあります。そういう意味から申しまして、今度の講和交渉につきましては、常に国民がこれに対して批判を加え、これに対する国民意思を反映しつつ講和の締結をいたしたいという考え方から、今日吉田さんが非常な誠意をもつてダレスさんとの間に交渉を進めておられますことについては、心からの敬意と感謝をささげながら、なおかつ私は申し上げるわけでありますから、なるべくその可能なる限りにおいて、講和の進行の問題につきましては、その輪郭くらいは国民にも知らせておく必要があるのではないかと私は考えるわけであります。その点につきましては、先ほどの北澤君とまつたく同感でございまするが、これに対して、それでは一体どういうふうなお考えをお持ちになつているか、またどういうふうな方法で、いつどういうふうな形式でやろうとお考えになつておるかというような点も、ひとつこの際承つておきたいと考えるわけであります。
  26. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お尋ねの点、ごもつともと存じます。また国民もたいへんこれを知らんとしておられると存じますが、現在の段階におきましては、実はまだそこまで申し上げろ段階にはないと存じます。御意見十分拜承いたしました。
  27. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 その点は決して私ども無理を申し上げておるわけではありませんから、よくわれわれの意のあるところをおくみとりの上で善処されんことを特にお願いしておきます。  第二点は、先ほど北澤君が取上げました問題の安全保障の問題でありまするが、この七項目によりますと、国際連合が実際的な責任を負担するというような満足すべき別途の安全保障のとりきめが成立するまでの間は、日本国内における国際の平和と安全を維持するために、日本国の施設と合衆国及びおそらくはその他の軍隊との間に、継続的、協力的責任が存在することを締結国が認めなければならぬという一項目があるわけでありますが、先ほど申しました北澤君の説によりますると、日本の施設の提供や施設を共同して使用するというようなことについて、双方が対等の立場に立つて相談の上でこの問題を取扱うというだけではなくして、さらに進んで日本のこういう安全保障の問題は、講和條約と別個の問題だろうと私は考えるのであります。講和條約によつて日本安全保障をきめるのではなくして、日本講和條約によつて独立国となつてから、その独立国である日本アメリカ、おそらくはその他の国との間に、日本安全保障の問題をきめるのが筋道であろうと私は考えるわけであります。ダレス特使のスポークスマンの談によりますると、第一回の吉田・ダレス会談におきましては、今度の講和條約に臨む基礎的な哲学の点において、双方に忌憚のない意見の交換があつたということを承つております。今度の講和條約というものが、戰勝国が戰敗国を律するという従来の講和の観念を捨てて、将来に絶対に禍根を残さないという見地から、日本アメリカというものができるだけ対等の立場に立つて、戰勝国が日本に押しつけたというような悔いを千歳に残して、再び不幸な世界の紛乱をかもすことのないような、おそらくそういう点についての哲学の意見の交換があつたのではないかと私は考えるのであります。さような見地から考えますると、今度の講和條約において、日本の基地は使うのだ、あるいは施設を使うのだ、あるいは場合によつては、日本の人的資源を提供するのだというような、おそらくそういう意味の継続的、協力的責任であろうと考えまするが、そういう問題は、日本独立国となつた後に、独立国となつ日本アメリカ、おそらくはその他の国との間に当然締結すべきものであると考える。従つて安全保障の問題というものは、この七項目の中に入つておりまするけれども、講和條約とは別個の問題として取扱わるべきものであると私は確信をいたしております。しかしその間に時間的な空白があつてはならないと考えまするがゆえに、時間的にはおそらく日本独立国となつた瞬間において、その独立国となつ日本と締結されるということにならなければなりませんけれども、本質はおのずから別個の問題であると考える。従つてこの講和條約の中には、安全保障の問題、いわんや日本と他国の軍隊との間の継続約、協力的責任分担の問題などは、織り込まれないのが筋道ではなかろうかと私は考えるわけでありまするが、これらの点につきまして、政府のお考えになつておりますことを承りたいと考えます。
  28. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは私はさき北澤君の御質問のときにも申し上げましたが、そのときにもあるいは不十分であつたかと考えます。また佐々木君から重ねての御質問でありますが、御意見はよくわかりまするし、またごもつともの点もたくさんあろうと思います。ただ講和條約の内容、あるいはその前後における問題でございますので、御意見の点はよく了承いたしまして、ただいまここではつきり申し上げることはかえつて差控える方がいいと存じますので、御了承を願いたいと思います。
  29. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは、今官房長官がお見えになりましたが、非常に時間がないそうでありますから、順序を狂わせまして、竹尾君、官房長官に対する御質問だけ簡單にお願いいたします。
  30. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私は講和会議と重大な関係にあります追放解除の点につきまして、官房長官にまずお聞きしたいと思います。  昨日記者団との会見で、この点につきまして官房長官のお話があつたのでございますが、少し了解に苦しむ点がございますので、あらためてお尋ねいたします。政府は追放の解除を講和会議と関連して、希望條項あるいは要望事項と申しましようか、そういう事項として、これを講和会議の締結の諸国と話合いをする御意思があるかどうか、この点につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
  31. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 こういう問題は非常にデリケートな点がありまして、緩和をするために何か話合いをするといえば、必ず反対が起る。それから何もしないのだといえば、国民の方から反発が起るというようなわけで、なかなか取扱いがむずかしいので、この際ははつきりした言明を差控えたいと思います。ただ新聞に出ましたのは原則論でありまして、何も実際の問題と関係があるわけではないのであります。それからこの問題は講和條約とも直接には関係はないと思つております。
  32. 竹尾弌

    ○竹尾委員 もう少し私具体的にお尋ねしたいのですが、今官房長官の御答弁によりますと、私がこれをお尋ねしても、みな御答弁できないというようなことになろうかと思いますが、どうですか。
  33. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 どうもなかなか御答弁できない点が多いだろうと思います。よく前にもそういうことがしばしば新聞に出まして、新聞に出ると、そういうことは実現しなかつたという事例もなきにしもあらずであります。
  34. 竹尾弌

    ○竹尾委員 非常に微妙な点になるようでございますけれども、またきわめて抽象的なお尋ねでありますが、とにかくそういうことに対して努力はいたしておるのでございましようか。
  35. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 これは吉田総理も、この前の国会の本会議であつたと思いますが、あるいは予算委員会でしたか、ちよつと覚えておりませんが、今後とも努力するということを言明されております。その方針はその通りであります。
  36. 竹尾弌

    ○竹尾委員 その方針に沿うて、所管の官房長官は何か具体的な話を進めておる、こういうふうに今のお言葉では了解したのですが、それでよろしゆうございますか。
  37. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 具体的なお答えはこの際差控えたいと思います。
  38. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それではやむを得ませんから少しほかにまわり道をいたしますが、新聞にちよつと出ておつたのですが、ダレス氏が追放該当者とも何か会見されて話合いをされる、こういうような新聞記事があつたと思いますけれども、もしそういうことが実現された場合、これは追放令と関連してどういうことになるか。これについて官房長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  39. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 第一に私はブレス氏がどういう人と会うかということは聞いておりません。また追放された人と会うと言われましても、会い方によるだろうと思います。たしかこの前来られたときも、シーボルトさんのレセプシヨンに追放に該当される人も呼ばれていたと思います。別にむずかしい話をするのではなく、顏を見てあいさつをするという程度のこともありましようし、どういう話をされるのかそれもわかりませんから、何とも申し上げようがございません。ダレスさんに聞かなければわかりません。
  40. 竹尾弌

    ○竹尾委員 普通の懇談程度の話ならよろしいという御見解のようにとれますけれども、もしそういうことが実現した場合は、もちろん政治に関連した事柄を話し合うのではないかというぐあいにとれる。そういうことになると、政治的な追放該当者であるそういう人がダレスさんと会うのは一向さしつかえないことになる。これは私どもが非常に苦い経験を持つておるのでお尋ねするのですが、ちよつとしたことで追放令違反というようにいわれた場合がたくさんございます。そういうことと関連して、大きな場合にはそれはやつてもよろしい。しかし小さいことは非常に嚴重に取締る、こういうことになると、どうもとんちんかんな、変な気持がするのですが、その点もう一度お伺いしたいと思います。
  41. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 竹尾君のお話は、非常に仮定の上に仮定を積まれておる。第一ダレスさんがそういう人に会うかどうかわからないのに会うと仮定しまして、それから政治上の問題を話すかどうかわからないのに話すと仮定して、その上のことでして、どうも私には御答弁ができないと思います。おそらく政治上の問題などを話されることはないじやないかと想像はしております。
  42. 守島伍郎

    ○守島委員長 よろしゆうございますか。——山本君。
  43. 山本利壽

    山本(利)委員 官房長官にちよつとお尋ねをいたします。ただいまの追放解除の問題を要望することは、外交的にあるいはGHQ方面に対して、非常にデリケートな問題であるからというお心づかいが非常に多いのでありますが、この点について、追放になつておる人たちを解除することが、民主主義の国を建てるとか、あるいは文化国家を建設するのに非常に害がある。だけれどもこれを許してもらいたいという立場であるならば、これは非常に遠慮しなければならぬことだと思うけれども、追放された人々には当時の中央の責任者によつて、ただ指名的に大政翼賛会の役員になつたとか、あるいは翼壯の役員になつたとかいうので、追放されておる人が非常に多いということと、なお追放の指令を受けてから今日まで、非常に政治的には制限されておる、あるいは公職にはつかなかつたけれども、文化的に、あるいはその他民主的な問題で、郷土のために、その地方のために非常によく盡しておる人がたくさんある。こういう人を解除してこそ、今後国連側に立つて大いに協力する、アメリカ側に立つて大いに協力するのに非常によいから、ぜひしてもらいたいという立場に立つて声を大にすることは、私は少しも遠慮することはないと考えるのであります。こういう問題について官房長官のお考えを承りたいと思うのであります。
  44. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 国内の追放に該当した方々につきましては、全部の人に先般機会を與えて訴願の自由を許したわけであります。訴願した人もしない人もありますが、訴願した人については約一年半の時間をかけまして、訴願委員会で愼重に研究したのであります。そうして解除すべきものと、すべからざるものとをきめたのであります。従いまして全部の人が一応機会を與えられて、その機会を與えられた人については、一年半の長い間かかつて全部これを研究し、結論を出したのでありますから、訴願委員会の結論が誤つてつたということになれば別な問題でありますが、私は訴願委員会の愼重なる決定は正しいものと思つております。その結果、一部の人は追放解除をされたのですから、現在のところは、他の人は追放解除に値しないものであるという訴願委員会の結論を信頼せざるわけには行きません。  なおただいまお話の、たとえば形式的に役員をしておつたようなものはどうかというような点につきましては、これは司令部からのメモランダムに基きまして政令が出ておるのでありまして、メモランダムの内容をとやかく批評することは、私は差控えたいと思います。
  45. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまのお話の件について、私が考えまするのに、この特免の申請を今までに、昭和二十二年の三月と、二十四年の二月と二回、訴願審査委員会というものが設けられて行つておるのでありますが、初めの委員会では、わずかに百四十八名の者が追放解除になつた。そして先般は先ほどおつしやつたように、一年半も費して一万九十名ばかりの人が追放解除になつた。しかしこれは、その解除になつた人々も、自分たちが解除になるくらいなら、もつともつとたくさんの人が解除になつてしかるべきであるということを、いろいろな新聞雑誌上においても意見を発表しており、世間の人たちもそういうことを非常に強く感じたのであります。ことにそれは自分たちが追放されるのは不合理である、これこれの條項に自分たちは当てはまつていないと思うという立場から特免を申請したのであると私は思う。その中でいろいろ審査されて、ただ機械的に、場合によつては、この人は一年以内こういう職にあつたのだから、なるほどこれはよかろうというふうな意味での追放解除が多かつたように考えるのであります。先ほど申しましたように、追放されるときに、いろいろな條項に当てはまつたかもしれないけれども、その後の国際情勢及び国内情勢が非常に違つており、その後におけるその人の態度というものが、日本の再建については非常に役立つておるというような実例を私はたくさん知つておるのに、それは解除されないで、ただ機械的に一部の者が解除になつている。先ほどは一つの特免申請の機会を與えられて、その中から察査が進められてたということでありますが、その申請をしない人の中にも私は特免してよろしいと思う者が、まだ相当たくさんあると思うのであります。ことに彼らとしてはほとんど機械的に追放処置を受けてから今日まで、自分がほんとうの意味で社会的にも国家的にも活動しようと思いながら、その機会を與えられなくて、経済的にも非常に困つておる。またその人が、その家族が、あるいは一族の者が肩身狭く、精神的にもあるいは物質的にも非常に困窮をきわめておる。だからそういう人を探して特免してこそ、ほんとうの恩典が恩典になるのであつて、そういう点に政府はあたたかい心を使つていただきたいと思う。今後国際的に協力し得る人が多いから、ぜひそういう人は今後も続いて特免すべきだ、解除すべきだという声を、政府は少しもはばからずあげてもらいたいというのが国民の声ではないか。不半分子をいたずらに多くつくるということは、私はよくないのではないかというふうに考えるのでありますが、その点官房長官の御所見を承りたいと思います。
  46. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 私の意見は今までずつと申し上げた通りであります。今おつしやつた意見は承ることにいたします。
  47. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私もその点につきまして、とくとお尋ねしたかつたのですが、山本委員のお言葉の通りでありまして、申請期間があつたと申されても、あとでそういうものがあつたということに気がついた人もたくさんあるのです。それで市町村長であつて、ただ單に翼賛会の辞令をもらつたという点だけでひつかかつている人が、現在たくさん残されておるのであります。こういう人たちは、今度の講和会議に関連してどうなるかという気持が非常に強く動いておりまして、ぜひこの機会に解除してもらいたいという声が、日本全国に起つておるということは、官房長官もよく御存じだろうと思うのであります。ただいまは愼重なお言葉でありましたが、実際にはそういう方向に御努力されておると私は思いますが、その点どうなんですか。
  48. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 これはたびたびのお言葉ですが、ただいまのところは竹尾さんの御意見として十分承つておきます。
  49. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは仲内君。
  50. 仲内憲治

    ○仲内委員 まず第一に外務当局にお伺いいたしたい点は、先ごろ西ドイツが国際連合教育科学文化機関、いわゆるユネスコに加入するよう申請を行つたとの報道がありました。また最近において英文毎日及び朝日新聞紙は、日本加入申請について報道しておるのでありますが、政府はこの全国的に関心を持たれておるわが国のユネスコ加盟の問題について、いかなる考慮を拂つておられるか、伺つてみたいと思います。
  51. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問国際連合の專門機関の一つであります国際連合教育科学文化機関、いわゆるユネスコの加盟問題でありますが、このユネスコの加盟につきましては、積極的に国際間の文化交流に協力いたしますることは、わが国あげての強い希望と存じまして、政府におきましては、今般総司令部の当局の許可を得まして、パリにありますユネスコ事務局長あてに国会承認條件といたしまして、加入申請書を提出いたした次第であります。わが国の加入に対しましては、国際連合経済社会理事会の過半数の支持を得ますることと、ユネスコ執行委員会の勧告に基きまして、ユネスコ総会の三分の二の多数を得ますることを必要とする次第でありまするが、この総会は六月十八日にパリで開かれる予定と聞き及んでおります。その三分の二の多数を得ることが必要條件でありますが、このわが国民の真摯なユネスコ協力活動に対しましては、必ずや諸国の共感を得るものと実に心より期待をいたしておる次第であります。     〔委員長退席、竹尾委員長代理着席〕  政府におきましては、この機会にわが国のユネスコ加入の問題に関連いたしまして、総司令部当局並びにアメリカ政府の絶大な好意に対しまして衷心より感謝を申し上げますと同時に、従来ユネスコの活動を今日の隆盛に導きました関係諸団体の御努力に対して、深甚な感謝を表する次第であります。従つて総会並びにそれぞれの機関におきまして、日本加入が支持されますことを心より望んでおる次第であります。
  52. 仲内憲治

    ○仲内委員 次にいわゆる個別講和または單独講和の場合において、日本と第三国すなわち講和に参加しない諸外国との法律上の関係につきまして、主として西村條約局長にお尋ねしたいと思います。その第一点は、まず日本と中立国との関係でありますが、これは日本講和の成立によつて日本の主権が回復し、その結果当然外交権の復活となるわけでありますから、日本と中立国との間には、完全無制限な外交関係が復活することと思うのでありますが、まずその点……。     〔竹尾委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御指名はありましたが、この点私から答弁いたします。実は戰争状態が存続しておるということと敵対行為、こういう問題等につきましての大体の御質問承知いたしまするが、戰勝国はいつでも再び敵対行為を開始する自由を持つておるものではないと存ずるのであります。ことに、わが国の降伏文書に調印した連合国が、これを承認して敵対行為の中止が行われておりまするいわゆる降伏文書調印後、すでに数年を経過いたしましたあとにおきまして、ある戰勝国とわが国との間に、講和によつて平常関係が回復されたあとにおきまして、他の戰勝国が理論上の戰争状態の存在を口実として、新たに日本の占領をあるいは企図するようなことは、国際連合が存続し、戰勝国がその加盟国となつておりまする今日、あり得べからざることであつて、かりにそのようなことが試みられましたといたしましても、国際連合なり他の戰勝国は、これを黙視しないであろうと存ずるのであります。このことはすでに昨年の二月、内閣総理大臣から、文書をもちましての質問にも、お答え申し上げておりますので、あわせてつけ加えておきます。
  54. 仲内憲治

    ○仲内委員 次に日本講和を結ぶに至らない連合国との関係で、一番法律的な関係からわれわれ心配し、またむずかしい問題と考えておりまする点は、原則として停戰のままの、つまり現状が継続するものと思うのであります。そうして日本のこれらの連合国、つまり講和に参加しない連合国との関係は、降伏文書に従うべきものと思うのでありますが、この基本的な考え方について……。
  55. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問の点、降伏文書調印国において講和に加盟しなかつた場合における国の関係という御質問と存じます。私どもも大体さように存じます。
  56. 仲内憲治

    ○仲内委員 この降伏文書によりますと、日本はポツダム宣言の條項を誠実に履行すること、並びに右宣言実施のため連合国最高司令官またはその他特定の連合国代表者が要求することあるべき一切の命令を実行することを約しておるのでありますが、この点に関して講和後においてはいわゆる最高指揮官というものはなくなるというように考えられるのでありますが、日本と第三国、すなわち講和に参加しない連合国との関係は現在のようなスキヤツプを通ずる方法をどういうふうに調整せられるのであるか。すなわち直接第三国と日本との交渉折衝というものが行われるのか、あるいは間接にいかなる機関を通ずることになるのか、この点について……。
  57. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはいろいろな場合が予想されると存じますが、御質問のような場合も考えられると存じますけれども、今ただちにこれをお答えするということは差控えた方がいいじやないかと思います。
  58. 仲内憲治

    ○仲内委員 ポツダム宣言に基く命令の過失ないし違反の事実の判定の問題であります。現在は極東委員会ないし対日理事会の権限にあると思うのでありますが、これもいわゆるスキヤツプ同様なくなるというように想像されるわけでありますが、そうすれば個々の外交交渉によるということになり、第三国が直接にわが国に折衝し、あるいは強制するということも想像されるのであります。日本国の立場からは、その違反の事実があるかないかの判定を、あるいは救済の方法を、国際連合なり国際司法裁判所に訴えるというような方法が考えられましようが、その救済の点について……。
  59. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この点も私ただいま御答弁申し上げました点で御了承を願いたいと思います。
  60. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは並木委員、法務総裁はまだお見えになりませんが、ほかの政府委員がお見えになりましたから、どうぞ御発言を……。
  61. 並木芳雄

    ○並木委員 齋藤国警長官、新井国家消防庁長官その他の方が見えておりますけれども、私の質問は大橋法務総裁との関連においてお答えになるようになつておりますから、総裁が見え次第さしていただくことにして、あとまわしに願います。
  62. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは竹尾さんもそうですか。
  63. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そうです。
  64. 守島伍郎

    ○守島委員長 では菊池君。
  65. 菊池義郎

    ○菊池委員 先ほど北澤君から、ほとんど一人でもつてしやべつてしまつて、ワン・マンぶりを完全に発揮され、われわれの発言を封ぜられたかつこうでありますが、(笑声)ただいま仲内君からもユネスコの運動で話があつた日本政府はユネスコの運動には非常に熱心になつておられるのでありますが、私はユネスコ運動よりも、日本政府が最も力を注いでもらいたいことは、世界連邦の運動でなくてはならぬと思う。世界連邦は七十幾つの国家群を一つにつなぎ合せて、そうして世界憲法をつくり上げて、その憲法のもとに世界各国を縛つて、最初から戰争の起らない法治社会をこの地球の上に建設しようというわけで、これくらい意義のある運動はないと思うのであります。ところが国会において世界連邦建設の委員会というものが設けられておりますが、これは国会法に基かないインチキな委員会でありまして、これまた何ら価値がない。そこでわれわれは近き将来において、国会法に基くところの委員会をつくり上げたいと思うのでありますが、政府といたしましても、この世界連邦の目的のために議員が外国へ行く場合には、できるだけの便宜をはかつていただきたいのですが、これまで政府の手によつて便宜がはかられたという例を聞いたことがさつぱりないのであります。はなはだわれわれは遺憾に思うのでありますが、この点についてまず政府の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。私は世界連邦の運動こそ重大問題であると思うのであります。
  66. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ユネスコにつきましては、先ほど申し上げましたように、これはやはり国際連合の重要な專門機関として、国民ひとしく熱望されておると存じまして、加入の手続をいたした次第であります。  世界連邦の問題につきましては、ことに菊池委員は従来から御活動になつておると拜承いたしておりますが、政府におきましては、別に決して世界連邦会議等の参加をかれこれするという考えはなく、むしろ大いに民意を伸張する方法をとつて行きたいと存じております。今後におきましても同様であります。
  67. 菊池義郎

    ○菊池委員 先ほどの佐々木君からの発言でありますが、一人の人に全部の時間を與えてもいいというようなことがありましたが、私はそういうことは賛成できないのであります。やはり公平にしやべる機会を與えてもらいたいと思うのであります。みなおのおの独特の意見を持つておるのでありますから、その機会を與えてもらいたいと思います。何も長くしやべつたからといつて、その意見がいいというわけのものではない。短かいからといつてその意見が当らないというわけのものではない。簡にして要を得、寸鉄人を殺すような意見こそ、最も傾聽すべき意見だと思うのであります。この点私は絶対に反対をいたしておきます。  それから領土の問題であります。北澤君からも最初るるお述べになりましたが、小さな島は私は大した執着はありませんが、大きな島に対する執着があるのであります。たとえば台湾であるとか、樺太であるとか。自由党におきましては、こういうことについてその発表したものにおいては全然触れてありませんが、触れてなかつたからといつて、それに対する執着がないという意味ではないのであります。くれるならば、もらつておきたい。台湾問題なんかについて今までわれわれが質問いたしましても、なかなか政府当局からはつきりした答えがない。台湾日本が清国より盗んだものであるということをカイロ宣言に書いてある。品物を盗んだというならば、これはわかるのでありますが、領土を盗むということは、古今東西例があつたためしがない。とつたというならばいい。盗取したものであると書いてある。これが第一間違いであります。  それから当時のカイロ宣言の発表されたのは、三国の協定によつたのでありますが、当時の中国の代表者でありました蒋介石は今日台湾にいる。革命の手段によつて政権がかわつた。革命の手段によつて政権のかわりました国に対しては、列国の権利義務は消滅する。従つてカイロ宣言はすでに実行不可能に陷り、無効になつたものであると私は解釈しているのであります。従つて台湾領土権というものは今日まだ依然として日本に現存すると解釈することもさしつかえないと私は思うのでありますが、そういう台湾であるならば、この際日本といたしましても遠慮なくどしどし、日本に帰属せしめてもらいたいと言つてちつともさしつかえないと思う。外務当局の神経のこまかいことは実に驚くにたえたるものがあるのである。十を望んで五を得ることができ、五を望んで一を得ることができるくらいが、今までの日本の外交の折衝の結果であるということは、いろいろの例がわれわれに示しているのでありますが、われわれは言うべきことはどしどし言つて、そうして裁定は向うにまかせるというような態度とつた方が一番得ではないかと思う。言わないと、ほしくないと誤解されるおそれがある。それでは困る。台湾にしても、南樺太にしても、どしどし主張するところは主張した方がよろしいと思う。日清戰争にしても、日露戰争にいたしましても、決してこれは侵略戰争ではなく、向うから、いくさをしなければならぬように圧迫せられて、しかたなく受身の立場に立つて日本が立ち上つたいくさであつたのでありますから、これを侵略戰と解釈することは当らないと私は思うのであります。しからば日本としてもこれらの領土について主張することに何の躊躇する必要があるか、私はこういうふうに考えるのでありますが、この領土に関する日本政府態度についてお伺いいたしてみたい。
  68. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本政府態度についてその考え方を述べよというお話でありますが、これは従来たびたび申し上げている程度の態度で御了承願いたいと思います。今あらためてここで具体的に一々についてそういうことは差控える方がよいじやないかと思います。
  69. 菊池義郎

    ○菊池委員 台湾に関する国際法的の解釈ですね、領土権がいずれにあるか、それについて島津さんにお尋ねいたします。
  70. 島津久大

    ○島津政府委員 特に御指名があつたわけでありますが、ただいま政務次官からお答えを申し上げました以上に、私からつけ加えて申し上げることは何もございません。
  71. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君。
  72. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は今問題になつております対日平和條約に関する合衆国の七原則ということについてお尋ねしたいと思いますけれども、きようは時間がございませんので、その具体的問題にはおそらく入れないと思いますが、その前提となることにつきまして、與えられた時間の中でごく二、三の点だけお尋ねしておきたいと思います。これは全面講和か、單独講和かということに関する問題と関連を持つのでありますが、連合国の側からの場合と、わが国の方から考えた場合とにつきまして、私ども多少疑問を持つておりますので、それを明らかにしていただくという意味でお尋ねしてみたいのであります。きようは私の意見は述べないで、ただ疑問だけを承るということにしたいと思います。  第一は、一九四二年一月一日のいわゆる共同宣言というものは、現在共同宣言に加盟いたした国の間において有効なものであるかどうかということについてであります。ことにこれは要するに單独不休戰、單独不講和ということを共同宣言として発表しておりますが、連合国の間に、この宣言を守る義務がいまなお存在しておるかどうか、ことに対日講和の場合に、この宣言が有効であるかどうか、もし有効でないとするならば、どういう理由でそう考えられるか、これは連合国側のことでありますから、あるいは日本政府に尋ねるのはちよつと適当でないかもわかりませんが、しかし実際はわれわれといたしまして、非常に関心の対象になる問題でありますので、もし御意見が承れましたら、ひとつ聞かしていただきたいと思うのであります。
  73. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは連合国の解釈を日本政府が、いわゆる推察した解釈を下すことは妥当ではないと存じますが、ただこの問題についてソ連質問に対するアメリカ回答の中にはつきり出しておりますので、連合国の一つとしてのアメリカ意見は、これによつて御了承願えると存じます。
  74. 黒田寿男

    ○黒田委員 それではこの問題につきましては、きよう私の意見は述べませんから、この程度にしておきまして、それから今度はひとつわが国の立場から考えてみたいと思うのでありますが、その前提といたしまして、政府にお尋ねしてみたいと思いますことは、これは事実の認識の問題でありますから、これも意見の問題ではありませんので、そういう意味でお答え願いたいと思います。それは対日講和條約に関する合衆国の七原則なるものの中に、たとえば領土の問題あるいは安全保障等の問題につきまして、ポツダム宣言に表示せられておりますものと異なる点があると私は思うのでありまして、これは異なるか、そのままであるかということを答えていただけばそれでよろしいのであります。私は異なることがあると解釈しておりますが、この点政府はどのように御認識になつておりますか、これを伺いたいと思います。
  75. 草葉隆圓

    草葉政府委員 その問題はちよつと御趣旨がはつきりのみ込めませんが、多分具体的にポツダム宣言の内容にあるこれこれの條項と、いわゆる講和項目の中に盛られた具体的な領土の問題とが食い違う点がありはしないかという御質問だと思います。これに対しましても、ソ連質問に対しましてアメリカが十二月二十八日回答いたしております文書の中に、その点をはつきり答えておるようでございます。それによつて私ども了承いたしたいと存じます。
  76. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは先ほどの連合国側の問題とは違うのでありますから、連合国側の問題については、アメリカソ連との間の応答について知つてくれと言われるのは、私はそれはそうであろうと思いますけれども、今私が質問いたしましたのは、わが国の側から見た問題でありますから、これはアメリカがどう言つておるとか、ソ連がどう言つておるとか、またそういうものの中から、たといわれわれが引用いたしまして、そのままそのような解釈をもつてもいいという部分もあつたといたしましても、そういう答え方を政府としてなさるべきものではない、日本政府はいかに考えるか、これをはつきり私は伺いたいと思います。
  77. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは七原則そのものの提案アメリカ政府でなされておりますので、従つて原則の具体的な内容ということは、むしろ日本アメリカ提案をいろいろと研究いたしてする態度ということよりも、アメリカが七項目内容をはつきりこれこれと解釈した、その解釈に基くことが最も妥当である、こう考えております。
  78. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうもかゆいところに手が届かないようであります。それではやむを得ませんから、私は具体的に申してみます。ポツダム宣言の第八項に「カイロ」宣言の條項は履行せらるべく、また日本国の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれらの決定する諸小島に局限せらるべし」とあります。このことをいまさらここで述べることはおかしいと思いますが、あまり答えがはつきりしないから、やむを得ないと思います。そしてこの第八項でカイロ宣言の條項が吸收されるということになつておりますが、このカイロ宣言をここでもう一度述べることはあまりしろうとくさくなりますからやめます。こういうものと、七原則の中に現われております領域の問題の帰属方法につきまして、これも私はもうここで朗読いたしませんが、その項目だけにしておきますけれども、どうも私ども違いがあると思うのであります。  それから安全保障の問題でもそうでありますが、ポツダム宣言の第十二項には、「前記諸目的が達成せられ、かつ日本国国民の自由に表明せる意思に従い平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立せらるるにおいては、連合国の占領軍はただちに日本国より撤收せらるべし」とあります。これはまあ講和会議という言葉は使つておりませんけれども、事実上講和が成立するときには、第十二項に書いてあることが成立しておると私は解釈してよろしいと思いますから、講和会議ができた場合には、連合国の占領軍がただちに日本より撤收せらるべし、こういつておりますが、これらと今度提出されております七原則安全保障の項に書いてありますこと——安全保障に書いてあることは読みませんが、常識のある者が見れば違うのでありますが、違うと解釈されますかどうですか。このはなはだ明白なることを、しかしこれは次の質問に関連がありますので、特に念のためにお聞きしておきたいと思います。これは簡單にお答えできると思いますから、違うか違わないか、ひとつ率直にそれをお答え願いたいと思います。
  79. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは違うか違わないかで比較するのは少しむりではないかと存じます。従つてつた立場の二つのものを、相違するか一致するかということをここでお答えすることは、筋道に違うような気がいたしますので、さよう御了承願いたい。
  80. 黒田寿男

    ○黒田委員 それならば情勢が違つたのだから、違うような規定をしなければならないようになつたのであるとか、なんとかいうような御説明でもおつけ加えになつて説明になればいいのです。ただ今おつしやるようなことだけでは、どうも私はつきりしません。そこでやむを得ません。これはもうこれ以上質問しましても、割切れたようなお答えが得られないと思いますから、そこで私はこの点はその程度にして、しかしこの違うことをいいか悪いかという価値判断は私はいたしません。事実の認識の問題に対しまして、私は違う、こういう認識のもとで私は質問を続けて行きたいと思います。  そこでこれだけのことを質問しておきまして、次に念のためにお尋ねしたいと思いますことは、ポツダム宣言の効力はいつまで続くのであるか、講和條約が締結せられるまでは、私どもはポツダム宣言の規定、これを日本が守るべき最高の外交文書として見なければならぬと今まで考えて来ておるが、それでよろしいのでありましようか。
  81. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御見解通りだと存じます。
  82. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうすると、わが国は降伏文書署名国全部に対しまして、ポツダム宣言を受諾しておるのであります。そこでかりにこれらの諸国の全部が一致した意思によりまして、ポツダム宣言の内容情勢の変化によりましてかえて来る。あの当時は日本にこういう降伏條件を押しつけれども、情勢が変化したのであるからというので、署名国全部が一致した意思のもとに、ポツダム宣言の内容をかえたものをもつて日本に対して来るということになれば、これは別問題でありますけれども、降伏中でありますから、これはやむを得ません。しかし一部の国との間にのみ、この宣言の内容と異なるような契約を結ぶというようなことになつて参りますと、日本としてそれ以外の国に対しまする関係において、ポツダム宣言違反ということになりはしないか、こういう心配を私ども持つわけであります。これも私ども意見ではなく、疑問としておることでありますから、ひとつお答え願いたい。そういうことになるかどうか。
  83. 草葉隆圓

    草葉政府委員 具体的にどういう内容のものになりまするかは今後の問題でありまして、今その仮定のもとに、ただいまの御質問にどうだということは御答弁いたしかねると存じます。
  84. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうもはつきりお答えを得られませんので、これはやむを得ませんから、この点もその程度にしておきます。そこで私はきようは時間がございませんから、もう一つ御意見を承つてみたいと思う。きようも佐々木君などからお話がございましたが、私どもが降伏文書を受けましたのは、これは無條件連合国意見をそのまま受諾したのでありまして、いわゆる契約的基礎の上に立つものではない。こう解釈するほかはないと思います。はたしてあのポツダム宣言を受けたということそれ自身が、国際法上どういう解釈をすべきものかということについては、いろいろ議論する人がありますけれども、しかしやはりいろいろ調べてみますと、これは日本との関係において契約的基礎の上に立つものではなくして、ポツダム宣言の受諾は、いわゆる無條件降伏というものだというように解釈すべきだろう。しかし講和條約ということになつて参りますと、これはやはり普通は国際間の契約ということになると思うのであります。そこで私どもこの七原則を見て考えさせられますことは、この講和條約は、いわゆる降伏文書を受諾いたしましたような意味におきましての降伏條件の受諾ではなくて、とにかく戰勝国と戰敗国との関係ではありますけれども、自由意思を持つたものとの間の契約だというように解釈して行きたいのでありますが、しかしどうもここが私どもにはつきりしないのです。一体いつから日本はそういう自由意思を持つて條件を受諾し得る地位を回復するのか。これは講和條約ができた瞬間から、日本独立国となつて、それ以後は自由な意思を持つ独立国として、対等の地位で諸外国と條約を結ぶ地位日本が回復する。けれどもその前は、その瞬間までは、やはり戰敗国といたしまして、自由意思はまだ認められていない、こういうように解釈しなければならないのではなかろうかというように私どもは考える。しかし私は国際法の專門知識を持つておりませんから、はなはだ幼稚な質問かもわかりませんが、しかし私にはそういうように考えられるのであります。そこで私がしろうとといたしまして疑問を持つておりますのは、講和條約は條約の一種であるから、先ほど申しましたように一種の契約を結ぶことでありますけれども、戰勝国と戰敗国との講和であるという意味におきまして、通常時における條約締結の場合とは状態が違うのであります。そこで私は講和條約において取扱うべき問題の内容を、こういう見地からひとつ限定さるべきものではなかろうか。言いかえれど、戰敗国として條件を受諾するのに適当な項目講和條約の内容にして、それからそうでなくて、自由独立国といたしまして、そういう見地から外国との條約を結ぶに適したような性質の問題は、私は講和條約の中からは省いて行くということが適当ではないか、こういうように考えますので、これをもう少し具体的に申しますと、日本が太平洋戰争におきまして侵略国といたしましての烙印を受け、戰敗国になりまして、その責任は私ども負わなければならないのでありますから、過去の責任に関しまして、自由なる意思を持たぬものとして、ある一定の條項を押しつけられるということもやむを得ない。ダレス氏は日本を戰敗国としての取扱いをしないとは言つておられます。非常にけつこうなことだとは思いますけれども、しかし私どもそういうふうに甘く考えてはいけない。やはり戰敗国は戰敗国のような態度をとらざるを得ないと思います。そこでそういうような自由意思が十分に加えられない問題がある。それはたとえば領土の問題とか、賠償の問題というようなものは、これは過去の責任に関するものでありますから、こういう問題については、私は講和條約締結以前の日本が、講和條約において取扱われる内容といたしまして、戰勝国との間の交渉の対象にしていいように思いますけれども、たとえば安全保障というような問題になつて来ると、私は性質が違うと思います。安全保障という問題は、これは将来の問題として、わが国が第二次大戰において犯したその責任を問われる問題の範囲に属するものではなくして、将来日本はどうするかということに関係する問題であると私は思う。そこで安全保障に関するような問題は、私はほんとうの意味で講和会議ができて、日本が自由独立の国の地位を回復いたしまして、しかる後に諸外国とこの問題について討議し、決定すべき問題である、こういうように私には考えられるので、この安全保障に関する問題は、対日講和の條項の中からは省くべきものである。日本政府としては、これは省いてもらいたいという要求をすべきものである。先ほど多分佐々木君もそうおつしやつたかとも思いますが、私は私の考えから、こういう考え方に基いて、この問題は七原則の中から削つてもらいたい、日本政府としてこういう要求をダレス氏に対してなされたらどうか、私はこう思う。そうして将来の問題と過去の責任の問題とが混合せられ、戰敗国の問題と自由なる独立国の問題と混合せられて、講和條約の中に織り込まれるということは、私は適当ではないと思います。これに対して政府はどのようにお考えでございましようか。
  85. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見としてよく拝承いたしますが、ただ問題は平和條約締結までは、完全な自主権がないから、その問題は相手国から講和の成立、講和條約の内容批准されるまでは、こちらは、いわゆる戰敗国は何も自主的な意見は述べられないのではないかというひとつの前提だと存じます。従つてそうなることにおいて講和條約そのものは、戰争状態にあつた戰勝国から戰敗国が押しつけられた場合黙つて受けて、その後で自主権が一応回復してから、いろいろの問題を相談すべきじやないかという御意見のように伺いましたが、御意見は御意見として、私ども必ずしもそうばかりも考えておりません。
  86. 黒田寿男

    ○黒田委員 次官のお答えは私の質問いたしました点を必ずしも正確につかんでいただいていないように思いますけれども、きようは時間もございませんから、私はこれで質問を終ります。  最後に一つだけ、私はこの委員会の運営の方法について希望を申してみたいと思うのです。いよいよ合衆国からの七原則提案せられておりますが、私はきようのような方法で各党各派が一人一人でいろいろな問題に同時に触れて行くというよりか、私が最初に言つたように、領土の問題についてはどうか、あるいは安全保障についてはどうか、賠償問題についてはどうか、国連に加入する問題についてはどう思うかというように、七原則に従いまして項目をわけて、きようはひとつ安全保障の問題をやつてみようというようなことで、委員長のタクトのもとに、各党があらゆる意見をみんな出し合つてみて、党派心を離れて——しかし党派によつて意見は違いましよう、その意見は出してもよろしいと思いますが、そういうようにいたして一つ一つを研究する。その方が能率が上るのではないか、外務委員会といたしましての成果が上るのではなかろうかと思うのであります。これは私の希望として御採用になるかどうか、一応お諮り願えればけつこうだと思います。
  87. 守島伍郎

    ○守島委員長 今黒田さんの申されたことは、また理事会でよく御相談いたしまして——あなたのサゼスチョンは一つのおもしろいサゼスチョンと思いますが、今の段階でそうやるかどうか、また細目をどうして行くかといういろいろな問題がありますから、理事会でよく諮りまして決定することにいたします。  あと高田君の質問が残つておりますが、十五分くらいでどうですか。
  88. 高田富之

    高田(富)委員 時間の関係がありますから、総論だけひとつお伺いしたい。  まず第一にお伺いしたいことは、今般ダレス特使がこちらに参りまして、これに対しまして、各政党あるいは各団体から、いろいろの要望事項が出されておる。特に国会の開会中のことでありますので、政府といたしましては、この特使に対しまして政府の所信を述べ、要望を確信を持つて出しておることと想像はするのでありますけれども、遺憾ながら本会議におきましても、きわめて断片的かつきわめてあいまいな含みのある答弁に終始せられております。ことにわが党の質問に対しましては、大臣は答えないという状態でありまして、一般の新聞等におきましても、政府態度が非常にあいまいである、国民はこの点について、非常に不信を持つておるというような論調も昨今見えておるのであります。私も委員会の劈頭にも申しましたように、この際私が質問するまでもなく、政府といたしましてはこのような態度で要望事項を述べると、議会に発表があつてしかるべきであると考えるのであります。もしもいろいろデリートな問題があるというなら、秘密会を開くという方法もありますし、そういう問題に触れないでも、一般に発表せられておる要望事項に関しまして、政府見解というものをはつきり出されることが、国家興亡の重大なる講和に臨む政府の確信ある態度として、当然かようなことがとられるべきであると考えるのであります。従つて私はここでややもすれば、政府が現在ダレス特使に会つていろいろなことをやつておる、基本的には一致したということを報道されるということが、何か通俗な言葉でいえば、やみ取引的な印象を與えないでもない。はなはだこれは私は遺憾であると思います。今後政府当局としては、ダレス特使に対して折衝して行くにあたつての成案ともいうべきものがあると思うのでありますが、それを発表する、まとめて本委員会あるいはその他のところにおきまして、国会に対して発表する意思があるかないかということをまず第一にお伺いしておきたいと思います。
  89. 草葉隆圓

    草葉政府委員 別に政府態度があいまいだという意味ではないのであります。ただ御承知のように、ダレスさんが来訪されましたのに対して、いろいろと対日講和関係についての行き方をとつておられますので、現段階政府が自主的にどうこうということは行く段階でももちろんありませんので、さよう御承知を願つておきたいと思います。
  90. 高田富之

    高田(富)委員 それではその次にお伺いしたいことは、ダレス氏がこちらへ来たということ、このことにつきまして、政府といたしましてはこれをどういうふうに理解し、その意義をどう考えておるかということも、これは折衝に当る前に重大な問題として当然考えておられると思うのであります。と申しますのは、ダレス特使日本に来て、いろいろと各界のおもな人々と会つて、そうして向うの案を示し、またこちらの意見を聞くということは、これは対日講和の問題につきまして最初に聞かれる最も大きな外交上の工作でありまして、これに対する反響といたしましても、連合各国のうちある国々はこれを喜ぶものもあるかもしれない。しかしまた他面におきましては、これを従来の国際規範を侵すやり方である。少くとも連合各国の間に、さらに話が進められ、共同歩調でこの問題を日本に対して示すべきであるのに、ダレス特使が突如として日本へ来てそういうようなことをやるということ、それ自体が対日講和の将来に相当思わしからざる影響を及ぼすのではないかというふうな批判を加えておる国があることは御承知通りであります。こういうような問題について、ただ簡單に見えたからこれでこうこうというようなことで飛びついて行くということだけで万事終れりという、それほど簡單なことではないのであります。このダレス特使の来朝ということにつきましては、政府はいかようにこれをそういう観点から見ておられるのでありますか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  91. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは私本日の冒頭の国際情勢の御報告の中にはつきり申し上げましたように、ダレス特使の今回の来訪につきましては、対日講和の進捗に対して大いに期待をいたしておる次第でございます。
  92. 高田富之

    高田(富)委員 ダレス特使がそういうふうな形で参りまして、折衝を重ねておる、しかもこれに対しまして、批判的な論説を出してある国々もあるという状態のもとで、これに折衝をここで重ねて行くということになりますと、結局講和を早められるというただいまの政府の御答弁によりますれば、單独講和ないしは多数講和という形で、連合国全部の講和でない、一部の講和が早められる、單独講和のコースに今や最終的に乗つたものであるというふうに理解して政府はこれを迎えておるのでありますか。
  93. 草葉隆圓

    草葉政府委員 單独講和、多数講和あるいは全面講和というこの言葉の内容は別といたしまして、普通使われておりまするそういう点につきましては、まだ別に考えてはおりません。
  94. 高田富之

    高田(富)委員 政府は従来とも全面講和は理想的なもので、非常にけつこうである。できればこれに越したことはないということは一応言つておるのであります。今の御答弁によりましても、なおその希望を持つているかのごとき御答弁であります。しかしながら今回そのような国々の反対的な態度があるにもかかわらず、なおダレス特使がこちらへ来て、このようなことが行われておるということ自体は、今まで政府が理想と考えておつた全面講和から一歩遠のきまして、現実に今や全面講和が不可能になつたということに、これは当然政府としても今は理解しておる、こうわれわれは想像するのでありますが、そうではないのでありますか。
  95. 草葉隆圓

    草葉政府委員 それは高田君の御推察でありまして、決して私どもはさように考えておりません。むしろよくそういう点は考量されておると存じております。
  96. 高田富之

    高田(富)委員 それでは具体的に、もし今示されておる七原則中心に、基本的には一致した——昨日の新聞でも報道されておるが、そういうふうなことで了承して、ダレス氏がさらに本国に帰り、その後これを基礎にして、全面講和の方向へこれを発展して行き得るというような可能性が残つておるというふうに考えておるのでありますか。
  97. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは今後の折衝の問題であると存じますので、現在日本政府がこれに対して即断をすることは誤りを生ずるおそれがあると存じます。
  98. 高田富之

    高田(富)委員 これはすでにソビエトアメリカの七原則をめぐる質問応答によつても明らかにされておる通り、実際現在進められておるこの條件、またやり方等からいたしまして、アメリカといたしましては、ソビエト及び中華人民共和国その他の国々の反対があるということを予想し、しかもなお講和を推進するという強い決意を持つたからこそ、今日ダレス氏の来朝ということが行われておるということは、これはまつた国民の常識的に判断するところであります。なおあえて政府がそうではない、まだ全面講和の可能性があるというようなことを言うとすれば、まつた政府は自分のやつておること、また真に腹の中で希望しておることを率直大膽に言う勇気を欠いておるというふうにしか考えることはできません。私は少くとも今日示されておる内容及びこの講和の折衝の経過というものからいたしまして、今や政府最後的に單独講和、多数講和の方向に同調し、これを希望し、進んでおるものと解釈せざるを得ません。そこでもしも今のような形で進められて行きますと、この七原則の中の最も重大な問題として、日本に対する安全保障の問題が提起されておるということにつきましては、先ほど黒田委員その他からも御質問がありましたように、そういうことは独立国になつてからあとでやるべきものではないかというふうな法理論もあります。法理論としてはその通りであろうと思いますが、しかし事実といたしましては、今回の講和において一番眼目になつておるわけであるのは、何よりも最大のかつ緊急の眼目になつておるものは、安全保障の問題であると考えざるを得ないのであります。しかもこの問題が中心になりまして、全連合国の協同が不可能になる、あるいは可能になるということの最も大きなわかれ道になつておると考える。この安全保障中心といたしまして示されたあれを見まするならば、講和をともかくもアメリカが非常に急いでおる。どういうことがあろうとも、たとい一部の国々が反対しようとも、やつてしまおうという強い決意をもつて臨んでおるということは、やはりこの安全保障問題と結びつかせざるを得ない。先ほどの政府国際情勢説明にもその点はあつたと思いますが、こういうふうな国際情勢の中で、日本の再軍備あるいは日本との軍事上の同盟條約、日本への外国軍隊の駐屯ということの緊急性から、対日講和が急遽アメリカによつて取上げられた。かように解釈することはきわめて自然であると考えるのであります。  しからば、そこでお聞きしたいのでありますが、その安全保障の問題が中心になつて講和をやるということが急がれておるということになれば、今政府がこれに飛びつこうとしておる講和というものは、講和によつて戦争状態を永久に終了し、平和の状態をとりもどそうという本来の平和條約の名に値する平和條約ではなくして、新たなる戰争に対応するための再武装をやめるための條約ではないか。今国民は第三次世界大戰がどうなるか。日本戰争に入るかどうかということが最大の関心事でありますが、講和の問題もまたその点から今は国民の最大の関心事となつているのであります。従つて今のような状態政府講和交渉に応じ、これを進めて行くということになれば、これは平和のための講和ではなくして、戰争のための講和ではないかという疑惑を当然起さざるを得ないのであります。はたして政府はそういうものではないということを断言できるかどうか。できるとすれば、いかなる理由によつてこのような疑問を国民から拂拭することができるかを御説明願いたいと思います。
  99. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問高田君の御意見は、一方的な御解釈に基いた部類が多いのではないかと私存じます。一日も早く講和を結ぶというのは、むしろわれわれ日本国民の熱望であり、また政府もそういう熱望を持つておりますることは、総理からもたびたび御答弁申し上げ、また施政方針演説におきましても申し上げました通りであります。むしろ高田君のお話のように、再軍備のための講和ということで、戰争状態に持つて行く講和でありましたら、現在のような状態の方が、かえつて駐屯、駐兵というような意味は、まだまだ高田君の御希望に沿うような状態が多いというふうにとられると存じます。そうじやなしに、ほんとうの政治的な自立権を回復して、日本国民が進んで行くという意味においての講和というのが国民の熱望しているところであり、この熱望を反映して今回のダレス特使の来訪になつたと私どもは強く確認をいたしております。
  100. 守島伍郎

    ○守島委員長 高田君、十五分過ぎましたから、もう一ぺんだけ……。
  101. 高田富之

    高田(富)委員 それでは時間がありませんから、続いてもう一つだけこれと関連しましてお聞きしておきたいのですが、今の安全保障の問題では、ともかくも日本に対しまして侵略の危険性があるので、これを防衛するという見地から、どうしてもやらなければならぬということを主張されていると思いますが、一体そういうふうな侵略の危險性があるということを具体的には何を指さし、どういうことを言つておるのか、この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  102. 菊池義郎

    ○菊池委員 ただいま高田君の御意見でありまするが、ソ連がもし日本に対して完全な全面講和をする意思ならば、むしろアメリカに先だつて日本の意向を十二分に打診するだけの親切がなければならぬと思う。しかるにアメリカはほんとうにこの日本人の意向をただすべく、彼らは懇切なる熱情を込めてダレス氏を送られたのであり、ソ連としてもむしろこういうことを歓迎すべきであつて、そういうことを非難することは全然ないと思うのです。何を非難するのです。われわれとしてははなはだ奇怪にたえない。
  103. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの高田君の御質問には、あらためてここで御答弁申し上げる点はないと存じます。
  104. 高田富之

    高田(富)委員 関連して……。
  105. 守島伍郎

    ○守島委員長 高田君もう時間です。次に並木君。
  106. 並木芳雄

    ○並木委員 大橋法務総裁がおみえになりましたから、私は自衛力の強化、国内治安対策というものを私の党では強く主張しまして、きようも代表がダレス氏に面会することになつておるのです。その中で申し上げるうちの重要項目の一つになつておりますから、この問題を取上げてみたいと思うのです。それにはどうしても警察あるいは警察予備隊、消防、それから非常事態宣言法案の計画といつたようなものが含まれますので、特に本日は齋藤国警長官及び新井国家消防庁長官に来ていただきまして、総裁と一緒にお答え願う点が出て参つた場合においては御答弁を願いたい、そういう仕組みでございますからよろしくお願いいたします。  第一に朝鮮の事態の認識という問題は相当大きな前提となると思うのです。大橋総裁はこの前きわめて重大な時局であるというふうに率直な表明をされました。今日はあのときから見るとさらに悪化しているのじやないか。なるほど戰局は小康状態を呈しておるかもしれませんけれども、いつまたわれわれの一憂も二憂もしなければならないような状態にならないとも限らない。この点は吉田総理といえども、大橋法務総裁といえども、自分の意見とか政策とかいうものと違つて、何分にも戰局の見通しでございますから、これはだれだつて違うこともありましよう。ありましようけれども、吉田さんのようにいたずらに一喜一憂することなかれ、あるいは右顧左眄することなかれということは、そう言われれば言われるほど、国民は何だか上調子に響くのです。タバコを民営にしないという政策を首相が言われれば、国民はやらないだろうというふうに確信は持つてますけれども、事この問題にはなかなか納得が行かない。     〔委員長退席、竹尾委員長代理着席〕  従つてそういうことを言う以上は、何かそこに具体的な根拠がなければならないわけです。單なる勘でもつて大丈夫だ、日本は安全だ、第三次大戰にはならないのだと言われたのでは、ちよつと納得が行きませんので、大橋法務総裁の朝鮮の事態に対する現在の認識と、その見通しの根拠とをまず承りたいと思います。
  107. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 朝鮮問題につきましては、わが国ときわめて近接いたしております朝鮮半島におきまして、ああした事態が起つておるのでございますから、これがわが国内の治安についても全然無関係ではあり得ないことは当然でありまして、かような意味におきまして、国内治安を十分に確保するという上において、これはきわめて重大な問題であると考えておるわけであります。
  108. 並木芳雄

    ○並木委員 やはりきわめて重大だという見方がほんとうであろうと思う。そこで私は現在の情勢は、いわゆる自衛権発動の事態とまでは言えなくても、自衛上の緊急状態というくらいのところまでは来ておるのではないかと思う。従つて自衛力を高めて自衛態勢というものを急いでつくり上げなければ、いざというときには間に合わないおそれがある。これをもう少しつつ込んで申しますと、いわゆる国家非常事態の布告、こういうものが必要である段階だと思う。国家非常事態の布告とはつきり言えなければ、国家非常事態に準ずべきものとして、少くとも政府としてはこれに対する万全の対策を講ずべきであろうと思う。たとえば退避訓練とか、対空防空対策などというものは、全然民間の間には言葉もなければ、けはいもないというようなことは、かえつて国民も何か不安の念にかられるのでありますが、こういう点に対する法務総裁の御所見をお伺いしたいと思います。
  109. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま私が重大な問題であると申しましたのは、これは国内においてもこの問題を十分に考慮して、治安上の施策をしなければならぬという意味において申し上げたのであります。しかしながらこれはただちに国内の治安の状態が緊急状態になつておるという意味ではないのでございまして、朝鮮事件におきまする国内治安の情勢を一言にして申し上げますと、共産党員及びこれに同調いたしまする一部朝鮮人が、占領目的違反の言論及び先般来お聞き及びの通りの集団暴力事犯等を起しておりますが、これらを除きましては格別注目すべきことはなく、むしろ終戰後の異常な犯罪情勢から、漸次平常のそれに復帰しつつあるというような状態でございます。また共産党員並びにこれに同調する一部朝鮮人の暴力事犯等につきましても、ただいまのところ現在の警察力の普通の行使によりまして、十分に取締り得る状態である、かように確信をいたしておる次第であります。
  110. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、またちよつと楽観的な感じを與えて来るようにもなるのですが、それについてちよつとお伺いしておきますが、共産党員の逮捕の対象となつておる者、そういう者に対しても思うようになつていないのではないか、すぐそういうふうに国民も疑問を持つと思う。従つてそれほど今日は尖鋭化していない、むしろよくなつておるとおつしやるならば、ああした方面に対する状態はどうなつておるか、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  111. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 共産党の残りました八幹部の逮捕が遅れておるということは、きわめて遺憾に考えておる次第であります。これにはいろいろ捜査上の盲点がございまして、捜査当局といたしましては、これらの技術的克服に今努力をいたしておる次第でございまして、でき得る限りすみやかに成果を上げたいと考えております。
  112. 高田富之

    高田(富)委員 ただいまの二つ質問でありますが、朝鮮人の本国送還ということは、これは明らかに国籍、人種による差別待遇であつて、憲法並びにポツダム宣言の明瞭な違反であると思う。しかもこの事件につきまして、当初から、この前の委員会においても申し上げましたが、あらかじめ政府において一つの架空のプランをでつち上げて、これを押しつけるためにやつたということは、調査の過程においてもわれわれはこれを指摘し、政府に対しても嚴重に抗議しておるところでありますが、事態は客観的に調査いたしました結果、まつた朝鮮人諸君の失業、重税その他によりますところの生活苦から来る陳情等に対する不当な圧迫が因となつておるということは、今や天下周知の事実であります。これに対しまして、法務府は特に朝鮮人問題をこの国際関係と結びつけまして、そうしてこれに不当な彈圧を加え、本国送還という違法措置をあえてとるということは、まつたくこれは現下の講和を前にいたしまして重大な国際問題でもあり、われわれはこのような措置に対しまして、政府が何らわれわれの抗議に対して反省することがなく、さらにその背後関係を云々いたしまして、われわれ平和と独立のために、ポツダム宣言の嚴正実施のために闘つておるわが党に対しまして、非常な誹謗をあえてし、そうして大臣のごときはまつたく市井の無頼漢のような言辞を弄して天下の公党を侮辱いたしまして、私どもはこれに対しましては裁判所においてこれを取上げ、堂々とこれと闘う所存で告訴はしてありまするけれども、これに対しましても、この機会に以上二つの背後関係云々の問題、それから朝鮮人の送還問題について、政府は反省する考えがあるのかないのか、ここでひとつはつきり御答弁を願いたい。
  113. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府高田君の御意見とはまつたく所見を異にいたしております。
  114. 並木芳雄

    ○並木委員 大橋法務総裁がそうやつてわれわれのために保証してくださることは非常にけつこうだと思うのです。しかし政府にある立場からなかなか言いたいことも言えない。もつとほんとうは重大だけれども、重大なように言うと、たいへんだ。そういうことがあつては困るのです。事が起つてしまつてからでは間に合わないのです。そこで私どもはその対策の一つとして、国家非常事態の布告、こういうようなものの準備を整えておきたい。こういうものに対して国家公安委員会、その方面においてやはり研究するのが一つの任務になつておりますけれども、どういうふうになつておられますでしようか、それをお伺いしたい。  それから警察法の第七章に国家非常事態の特別措置という一章がありますけれども、これはわずかに第六十二條から六十六條まで五條しかございません。これで見ると国家非常事態についてのわれわれの観念というものははつきりしないのです。どうしても一つにまとまつた国家非常事態宣言法案、こういうようなものが必要になるだろうと思う。一体国家非常事態の特別措置とここでいわれている、そういう観念はどういうふうにわれわれは了解していいが、あまり漠然としておりますので、定義すらもわからないのですが、大橋法務総裁から、たとえばこういう場合が国家非常事態に相当するというふうな御説明がいただければけつこうだと思うのです。それとともに、国家非常事態宣言法といつたようなものの立案準備を進める用意があるかどうか。
  115. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国家非常事態の準備と申しますか、国家公安委員会といたしましては、非常事態の宣告がありました場合において、いかなる措置をとるべきであるか、これにつきましては、かねてより十分に関係機関を督励いたしまして調査研究いたしました案を持つております。これはさような事態になりますれば、ただちに実施することが可能な状態に相なつておるのであります。     〔竹尾委員長代理退席、委員長着席〕  また国家非常事態は、どういうふうな場合であるかという点でございますが、現行法上別に定義はございまんので、いかなる事態を国家非常事態と申すかということは、今後漸次実例によつて定まつて行くほかはないと考えまするが、一応国家非常事態の布告が予想される事態といたしましては、あるいは内乱、騒擾等の事変及び相当広い地域にわたりまして大規模な水害、火災、震災等の天災地変が発生いたしまして、これによつて国家的に治安が撹乱されるあるいは撹乱されるおそれがあるというふうな事態がこれに該当するものと考えておるのであります。  なお国家非常事態宣言法につきましては、ただいま御意見もございましたが、今後もその内容を十分に研究いたしてみたいと存じます。
  116. 守島伍郎

    ○守島委員長 並木君、十五分になりましたから……。
  117. 並木芳雄

    ○並木委員 ずいぶん急いでいるのですが、途中で水が入つたし私はずいぶん遠慮しているのです。十分納得の行くまでお伺いしようと思います。あまり言論と彈圧しないように、吉田総裁のまねをしないようにお願いします。
  118. 守島伍郎

    ○守島委員長 皆さんに公平な機会を與えるためなんです。
  119. 並木芳雄

    ○並木委員 国家自衛力強化の一環として、私どもは消防ということを考えざるを得ないのです。警察がこれに当るのは当然でありますけれども、消防ということを考えてみますと、この春などは、各地の出初式、こういうものを拝見しますと、なかなか活気があるのです。そうして秩序整然実に久しぶりに見るような、意気昂然たるものがあるのですが、そこべ来て警察のあるいは消防署関係の方々、あるいは市町村の理事者などのあいさつを聞いておりますと、いずれも一旦事あるというような言葉は使いませんでしようが、とにかく事あるときは、国内治安のために警察とともに協力して大いにやつてもらうのだというようなあいつが含まれておる。それでその法的根拠がどこにあるのかと思つて調べてみましたところ、消防組織法の第二十四條に「消防及び警察は、国民の生命、身体及び財産の保護のために相互に協力をしなければならない。」こういう一項目があるのです。これは法文自体とすれば、実に無限な、かつ強力な権限と責任を消防に付與しておるのじやないかと思われます。消防組織法の第一條でしたか、そこには国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとかなんとかいうふうに書いてあつたと思います。しかしこの第二十四條で見ると、この法律に基礎を置いてやれば、消防は警察と十分協力して常時国民の生命、身体及び財産の保護のために力を盡すことができる、いや、保護しなければならない。そうだとするならば、消防は準警察的と申しますか、警察に準ずるような組織力と力を持つておるものではないかと思うのです。そこで私どもは消防というものを自衛力強化の一環として考えて行くように、国家としても財政的にもこれを助成し、国家的な組織というものを考えて、今の消防組織に対する改正といつたようなものも考慮されてしかるべきではないかと思う。こういう点について法務総裁並びに関係官の御意見をお伺いしたいと思います。
  120. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま並木君のお述べになりましたことく、消防組織法の第二十四條によりますというと、警察と消防とは、国民の生命、身体及び財産の保護のために相互に協力するということが明らかにうたつてございます。これは同一の目的を持つておりまするところの警察と消防が協力すべきであるということを述べた趣旨でございます。しかしながら警察といたしましても、また消防といたしましても、その本来の使命と申しますか、任務と申しますか、これには一定の限界があるわけでございまして、たとい協力関係に立つ場合におきましても、消防はおのずから消防としての任務、警察はおのずから警察としての任務をそれぞれ分担をいたし、その分担の上に協力がある、かように考えておる次第でございます。
  121. 並木芳雄

    ○並木委員 私ももちろんそうだと思つて研究してみたのですけれども、この第二十四條自体は、どうしてもこれだけ読んだのじや、そういう色つきの解釈がつかないと思うのです。この運用によつては、先ほど申しましたように、相当大がかりな、かつ強力なものができるのじやないかと思うのです。今全国で消防署員及び消防団員というものはどのくらいの数に上つておりましようか、この際ちよつと参考までにお聞きしたいと思います。
  122. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 常設の消防署員の数は、約三万でございます。その他の消防の関係者、消防団員と申しますか、それが約二百万ございます。
  123. 守島伍郎

    ○守島委員長 もう時間がないのですが、あと竹尾君に発言を許さなければなりません。もう一時になりましたので、またこの次の機会に……。
  124. 並木芳雄

    ○並木委員 もう一つ……。
  125. 守島伍郎

    ○守島委員長 ではほんとうに簡單に……。
  126. 並木芳雄

    ○並木委員 今の消防組織法の第二十四條というものは結論的にはどういうふうに……。今の御意見ですと、どうも私が申し上げたような点はだめだというふうになるのですか。それともこの法律の運用上そういうことも考えられるということになるのでしようか。この第二項を見ますと、やつぱり非常事態の場合における措置というようなことがあつて、非常事態というような言葉も使つてあるのです。その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  127. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 第二十四條といたしましては、さきにお答え申し上げましたるごとく、この規定は消防は消防の本来の使命、警察は警察の本来の使命をそれぞれ分担をいたし、その分担をした範囲内において、相互にその活動を能率的ならしめるために協力する、かような趣旨でございまして、消防が警察のすべての活動に対して全面的に補助をするというような役割を與えられておるものとは考えておりませんし、また現在消防の指導においても、そこまでは指導いたしておらないという次第でございます。
  128. 守島伍郎

    ○守島委員長 竹尾君。
  129. 竹尾弌

    ○竹尾委員 もう時間が切れたようでございますから、私は総括的に五つばかりお尋ねいたしまして質問を終ります。  第一番目は、自衛権の問題が最近非常な重大な問題になつておりますが、それに関連いたしまして、警察予備隊の現状は治安の維持等この点に対して非常に弱いじやないか、こういうような心配がたいへん起つておるようでございます。はたして現状の七万五千と申しましようか、これだけの数で自衛権に関連した治安の維持、あるいは暴動の鎭圧というような点に十分これで事足りるかどうか、これが第一の質問であります。  第二は、予備隊の訓練状況につきまして、いろいろの情報が私の耳にも入つております。全部ほとんどアメリカ式の教育、訓練を受けておる、しかも時間の関係上いろいろ不備な点もありましようが、下級幹部と申しましようか、下士官の階級の警察士補、あるいは軍隊からいうと少尉階級から大尉でございますか、警察士、そういうような下級幹部の養成に関連いたしまして、いろいろ試験制度のために、そういう試験にパスしたいというようなことから、本筋の訓練はそつちのけにして、そうした自己の地位を得たいためにいろいろはげしい競争が行われておる。こういう点で本筋の訓練というよりも、そういう方面に予備隊員の頭が向いておるので、非常に内容的には予備隊自体は弱くなつておる。それからこういうことを申し上げてよいのかどうか存じませんが、星條旗のもとにことごとく訓練されておる、こういう点について、はたしてこれでよいか悪いかというような心配が相当あるので、この訓練内容及び訓練を将来どういうような方向に向つてするのか、その点につきまして第二番目にお尋ねいたします。  第三は、予備隊の最初の約束の俸給が拂われておらない。給與が最初の任官と申しましようか、最初採用された当時と、実際もらつておる予備隊員の俸給というものがどうも食い違いがあるので、その点について非常に不安を感じておる、こういう話を聞きますが、その点はいかがでございましようか。  第四番目は、予備隊員の中で、現在訓練を受けておるけれども、自分たちは、将来国内における治安の維持に当るのではない、国外の、たとえば朝鮮動乱であるとか、そういうようなものに動員されるのではないかというような不安が非常に高まつておるということを聞いておりますが、そういうことがございましようかどうか。  第五番目は、この予備隊の経費の問題でございますが、これは創設当時に見返り資金二百億をもつて充当されたそうですけれども、本年度は国内の予算の百六十億でございましようかそれをもつてまかなう、これで十分であるかどうか。さらにこれは並木君あたりの質問に関連いたしますが、このままで、七戸五千の予備隊をもつて、将来治安の維持が可能であるかどうか。それについては、予備隊を増員させるようなお気持であるかどうか、その点をお伺いいたします。  それから予備隊の下部組織がほとんど十分とは言われない。方々にいわゆるキヤンプがありますが、これは訓練の内容の充実に伴いましていろいろ改善されるでありましようが、そうした各府県にあるあの部隊は、将来どのような内容を充実させて行くのであるか。聞くところによりますと、連隊というような名前をつけるという話も聞いておりますが、そういう下部組織の充実の点についてお尋ねします。  それからこれは最後でございますが、現状のような訓練の状況では予備隊の充実が不十分である。たとえば一例でありますが、幹部の地位に立つ人がほとんど作戰指揮の経験を持つておらない。かつての召集の主計将校が作戰の指揮をしておる。かつての技術将校が参謀の地位に立つておる、こういうようなことを聞きますが、そういうことで実際この予備隊の充実ができるかどうか  それからまた追放と関連して参りますけれども、現在職業軍人は御承知のように全部追放になつておる。しかしこの職業軍人を無害の程度において追放を解除して、これを予備隊の方に一部分充当するというお考えがありましようかどうか、特にこの職業軍人の中でも、かつての下士官以下の憲兵の部類に補助憲兵というのがございますが、あの補助憲兵は職業軍人でなかつた、ほとんど憲兵隊の伝令をやつた程度のものにまで追放の該当をさせておる。こういう点を考えまして、将来の予備隊の充実にあたりまして、一部職業軍人を追放解除されるのがよろしいかどうか、こういう点について法務総裁の御答弁をお願いいたします。
  130. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まず最初に警察予備隊増員の問題でございますが、国内治安は国際情勢と大いに関連を持つておるのでありますが、現在のところ、国内治安について大きな不安があるとは考えておらないわけであります。従いまして、警察予備隊の増員について、世上いろいろ臆測もあつたようでありますが、目下の段階において増員をするということは、政府といたしましては考えておりません。むしろ現在はすでに入隊いたしておりまする七万五千の内容の充実のために、努力をいたすべき時期である、こう考えておるわけであります。  次に訓練の問題でございまするが、アメリカ国旗のもとにおいて訓練をしておるという事実は、警察予備隊にはありませんので、警察予備隊において使用いたしておりまする国旗は、これは日章旗でございます。もしアメリカの国旗が警察予備隊の近所において飜つておるといたしまするならば、それは特にこれらの警察予備隊に援助を與えるための米軍将校の事務所において、米軍のしるしとしてのアメリカの国旗が飜つておる、そういうことはありますが、これは警察予備隊に直接関係のない、アヌリカ側の部隊の旗でございまして、警察予備隊は常に日章旗のもとにおいて訓練をいたしておるという次第でございます。  なおまた国旗は別といたしまして、一時アメリカ軍の将校あるいは下士がこの警察予備隊員の訓練に直接関與いたしたことはございます。これはなぜであるかと申しますと、警察予備隊において使用いたしておりまする兵器は、ことごとく米軍かり貸與されたものでございまして、これの操作等の技術的な面におきまして、事実上アメリカ人の指導を受けたことはあります。しかしながら現在におきましては、日本側の各級の指揮官がすでに整備せられてあるのでありまして、この日本人だけで一切の訓練をやるという状態に相なつておるのであります。もちろん指揮権につきましては、すべて日本人にあるのでありまして、米軍がこれが指揮をとるということは断じてないのであります。  それから訓練に関連いたしまして、幹部の試験の問題でございまするが、昨年暮れまでの間一般隊員から幹部を募集いたしまするために、これが選考試験を行いまして、この試験のために一部の隊員が特に試験勉強をするというようなこともいわれておつたのでございまするが、事実はその問題はきわめて簡易な常識問題でありまして、いずれも無理のない試験でありますから、決して試験のために特別の勉強をしなければ合格しないというようなものではなかつたのであります。そうして、またこの試験を受けるについての資格あるいは試験の結果の判定等におきましては、常に平素の訓練というものも考慮に入れて決定をいたしておるのでありまして、試験勉強のみで試験に合格するといつたような試験をいたしてはおりませんので、これがために特に訓練を怠りがちであるという事実はなかつたものと確信をいたしております。  それから次に給與に関する問題でございますが、この点は大蔵省とのいろいろな折衝が遅れておりましたので、昨年暮れまでは当初予定いたしましたる給與を支給することができなかつたのでありまするが、幸いにこの点も円満に妥結いたしまして、昨年暮れをもちまして全員に入隊当初から約束した通りの給與の全額をすでに支拂つているわけであります。  それから警察予備隊が国外に動員されるという不安があるがどうかという点についてでございますが、警察予備隊は決して国外に動員されるということはない、またそういうことは警察予備隊本来の性格に反するものである、こういうふうに十分に隊員に説明をいたしておりますし、ただいまでは予備隊の中にさような不安は一掃されておる状態であります。  また予算の問題、これは二十五年度において二百億、二十六年度において百六十億と相なつております。もとより決して十分な予算であるとは考えられませんが、しかし他の経費等の振合いもありまして、百六十億をもちましてできる限りのことをいたして参りたい。ある程度のものはこれで十分である、こう考えております。  また現在各地にありますキヤンプが将来どういうふうに整備されるか、この点は大体警察予備隊の組織といたしましては、七万五千全体を警察予備隊総隊と呼びまして、これに最高の指揮官を置いてあります。そうしてその下に管区総監四名、管理補給総監一名を置きまして、四つの管区隊及び一つの管理補給部隊というものに編成をいたすのであります。なお管区隊の中には連隊、またその連隊の下に大隊、中隊、小隊、分隊こういうふうに編成をいたしまして、それぞれ連隊長、大隊長、中隊長、小隊長、分隊長というように一本の指揮系統が最高の指揮官から出る、こういうことになるわけであります。従いまして現在ありまするところの各キヤンプにおける部隊をそれぞれいずれかの連隊、大隊等に所属をいたし、それはさらにそれを総轄いたしておりまする管区隊に所属する、こういうことになつております。  それから最後に、現在の訓練、特に指揮官において、作戰指揮の経験がない者が大部分である。これはお話の通りでございまして、警察予備隊創設に際しまして、政府はこれが旧軍隊化することを極力警戒いたしまして、追放令によりまして追放せられたる人たちは一切これに入れない、こういう方針をもつてつておるのであります。その点は今後においても、この方針をもつて進むことには、かわりはないのでございます。従いまして、その結果、当然過去において作戰指揮等、実戰の経験のある者が非常に少数であるということは言い得るのでありまするが、しかしその中におきましても、追放に該当しない旧軍人は相当この中に採用せられております。また相当な指揮官として任務についておるのであります。特に今後におきまして、警察予備隊の幹部とするために、旧将校を追放解除するというようなこと、また旧下士官を追放解除するというようなことは政府といたしましては考えておりません。しかしながら幸いにいたしまして、昨年秋に、陸海軍の兵学校あるいは士官学校を卒業いたしました若い将校の一部が追放解除の恩典に浴したわけでございます。これらの諸君は今後適当な訓練をほどこしまして、警察予備隊に採用できるような道を開いて、そうして現在の指揮官の訓練が不足をいたしておるその欠陷を補うように努めたい、かように考えておる次第であります。
  131. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時二十一分散会