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1950-12-13 第10回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月十三日(水曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 小川 半次君 理事 西村 榮一君       大村 清一君    小川原政信君       菊池 義郎君    栗山長次郎君       仲内 憲治君    並木 芳雄君       山本 利壽君    高田 富之君  出席国務大臣         通商産業大臣  横尾  龍君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務次官  太田 一郎君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (条約局長)  西村 熊雄君         大蔵事務官         (主計局次長) 東條 猛猪君  委員外出席者         総理府事務官         (特別調達庁財         務部長)    川田 三郎君         外務事務官         (管理局引揚課         長)      武野 義治君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 十二月六日  委員高田富之辞任につき、その補欠として林  百郎君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員林百郎君及び中村寅太辞任につき、その  補欠として高田富之君及び中野四郎君が議長の  指名委員に選任された。 同月十一日  委員福田篤泰辞任につき、その補欠として中  島守利君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中島守利辞任につき、その補欠として福  田篤泰君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国政調査承認要求に関する件  国際情勢等説明聽取に関する件     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開催いたします。  まず国政調査承認要求の件についてお諮りいたします。本委員会といたしましては、前回と同様衆議院規則第九十四条によりまして、国政調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じます。  まず調査する事項は、  一、国際経済に関する総合的調査  二、講和会議に関連する諸問題  三、国際情勢に関する問題  次に調査の目的は、  一、国際経済の現状及び動向調査   し、国民外交並びに国策樹立に   資す  二、講和問題に関連するわが国の内   外の政治的経済的動向を検討し、   基本的国策樹立のための準備研究   を行う  三、朝鮮事変の推移を注視し、その   国際情勢並びにわが国政治経済   に及ぼす影響等を検討する  調査方法は、関係方面より意見聴取及び資料要求  調査の期間は、本会期中といたしまして、ただいまの国政調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議がなければさようとりはからいます。     —————————————
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に、国際情勢等に関する説明聴取の件を議題といたします。政府より発言を求められておりますからこれを許します。草葉政務次官
  5. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先会報告申し上げましたその後におきます国際情勢の一般について御報告を申し上げます。  まず朝鮮戦局について申し上げます。先会報告申し上げましたように、十一月二十八日、マツカーサー元帥中共軍二十万以上が北鮮国連軍の正面に陣を張つてつて、まつたく新しい戦争に直面しておると声明いたしまして以来、朝鮮戦局についての世界の関心は、まことに異常なる緊張をいたしましたことは御承知通りであります。その後十二月二日にマツカーサー元帥はさらに見解を発表いたしまして、約六十万の中共軍国連軍の前面にいることを発表いたされたのであります。ちようどこの十二月二日にはコリンズアメリカ陸軍参謀総長ワシントンを出発して、東京並びに戦線を視察することになりました。  なお戦局といたしましては、二日の夜から国連軍は平壌の撤退を開始して、四日の総司令部発表によりますと、北鮮国連軍に対抗中の共産軍の兵力は二十六万四千程度である。その背後には約五十五万の中共軍があり、さらに多数の中共軍がこれらを支援するために中国本土を北上中であると発表され、これらは突然起つた衝突のためではなくして、長期にわたる計画に基くものであつて準備は久しい以前から行われており、戦場投入決定は、少くとも北鮮軍の敗北が明らかとなつたあとであるということを発表されておるのであります。ところがその後戦局もだんだん国連軍作戦等によりまして、国連軍は一時はその運命を相当危ぶまれておつた状態でありましたが、だんだんと作戦等によりまする状態で、小康を得かかつて参りましたように思われるのであります。コリンズ参謀総長トルーマンアトリー会談最終日の八日に会議に出席して、朝鮮事態は重大ではあるが、国連軍は自力でこれに対処し得ると思う、という意味を述べたと伝えられておりまする点から考えましても、やや小康を得た形をとられて来たと存ずるのであります。また一昨日現地を視察いたしましたマツカーサ元帥も、敵軍の性格と能力が根本的に変化したことによる、大きな危険があるにもかかわらず、国連軍は現在のところ比較的安全だと思うという声明を出しておるのであります。  このようにして戦局小康は、事態收拾に有利に作用する一つの要素であると思われるのでありまして、ちようど二年前に国際関係を極度に緊迫緊張させましたベルリンの封鎖問題も、遂に破局に至らずして平和的に処理されたのでありまするが、今回の朝鮮問題も、何とか平和的に收拾されることもまた不可能ではないと思われる見通しが、戦局そのものの上からも考えられて来るようになりましたし、また私どももかくあることを強く希望してやまないところであります。この戦局関係いたしまして、先会報告申し上げましたトルーマンアトリー会談か、十二月四日から八日までワシントンで行われたことは御承知通りでございまするが、結局朝鮮事態緊迫化に促されて、ことに十一月三十日にトルーマン大統領記者団会見におきまして、原子爆弾を使用する用意があると誤り伝えられまして、西欧諸国に非常な衝撃を与え、アトリー首相も、原子爆弾使用という事態のまことに重大な様相にかんがみまして、即日トルーマン大統領会見を申出て、その同意を得て、この会見が行われることに相なつた次第でありまするが、この結果につきましては、共同コミユニケ発表されまして、詳細その内容が伝わつておりまするが、要するところ、その趣旨といたしましては、国連とそれによつて立ちまする諸原則をあくまで擁護して、いわゆる宥和政策を排撃しながらも、事態平和的解決を希望するという点であると存じます。  この希望達成いかんは、今後インド中心としております事態平和的解決への動きなり、ただいま申し上げました朝鮮戦局自体動向いかんに、かかわつているところが大きいと考えるのであります。  そこでただいま申し上げましたインド中心といたしました国々の、いわゆるアジア中東国々のこれに対する動き、これが本月の初めから強く動き出しておりますことは、御承知通りでございますが、ラウ国連インド代表が、本月の一日に中共伍修権代表会見いたしました後、数回会談が行われ、五日にはインドその他アジア中東の十三箇国は共同して、中共政府北鮮政府が三十八度線で進撃を停止して、極東の危機を解決する方策を検討する余裕を与えるよう要請いたしたのに対しまして、中共アメリカ台湾水域から撤退すること、中共代表中国正式代表と認めて、ただちに国連に参加させることを条件としておると伝えられております。この問題につきましては、アメリカは一般問題ではなく、朝鮮問題だけに限つた解決方法を希望しておるやに伝えられておりまするので、困難な動きが見られておつたのでありまするが、一昨日十一日にアジア中東十三箇国の代表は三回目の会談を開きまして、朝鮮におきまする中共軍停戦要請と、国連調停委員会の設置というのを中心の話題といたしましてこれを決定いたし、これをもつて国連総会政治委員会提案する運びに進んだようでありまするが、その中でフイリピンは、朝鮮問題だけに限るという主張から、一般問題の取扱いには反対いたしまして、従つて十二箇国による提案という形をとつて参つたと存じます。昨日総会政治委員会に対しまして、いわゆるフイリピンを除きました十二箇国の提案として、第一には朝鮮の戦闘をただちに停戦して、細目を定めるために三人委員会を設置する。三人委員会にはエンテザーム議長を含める。第二には停戦のラインを設定する。第三にはその上で数箇国からなる委員会をつくつて、一般問題の討議をなす。特に数箇国と主張しておるようでありまするが、むしろその数は政治委員会できめるべきものであつて、ただこのラウインド代表は、自分考えからすると、大体七箇国からなる委員会をつくつて、その七箇国は、米、英、仏がこの問題最初に取上げておるし、ソ連もそうであるから、ソ連を加えてインドエジプト——自分の方とエジプトとはこの直接の問題に携わつておるから、インドエジプト中共は直接の利害関係の国であるから中共。結局自分考えとしては英、米、仏、ソ連インドエジプト中共を加えたこの七箇国の委員会が適当であろうと思うが、この決定政治委員会決定すべきものであるという意味提案をいたし、これに対しまして、英米賛成をしましたが、国民政府反対いたしたようであります。これをまず先議として議決すべきであるという表決に対しましては、これを多数をもつて可決をして、多分本日の総会議題としてこれが表決に付せられるのではないかと考えられるのであります。  アメリカ軍備拡張に対しましては、トルーマン大統領が十二月一日に議会に教書を送つてアメリカ国防強化のために必要な資金として、国防省関係の費用として百六十八億四千四百余万ドル、原子力委員会関係として十億五千万ドル、その他合計百七十九億七千八百余万ドルの追加予算要請いたしたのであります。これで本年度の国防省の総予算は、これが決定になりますと、実に四百十八億余ドルということになりまして、このほかに原子力あるいは対外軍事援助費関係予算を含めますと、五百億ドル近い軍事関係予算と相なるかと思われます。当初予算に対します軍事費予算が三五%であつたのに比べますと、六十数パーセントの状態に相なると考えます。今度の追加予算朝鮮動乱直後なされました追加予算をはるかに上まわつております点から考えましても、アメリカ政府が今回の朝鮮戦局事態をまことに重大視しておりますことが、うかがわれると思いますが、しかし大統領教書の中でこの支出要請は、決して戦争予算ではなく、もしや戦争予算であるならばこれ以上の巨額の資金が必要である。ただ長期にわたる緊迫状態に対処する準備をしておかなければならないから、この予算を提出したという意味を述べておるのでありますが、この点はトルーマンアトリー会談共同コミユニケ発表されました点にも同様な線が述べられておるのであります。  次に対日講和のその後の状況について御報告申しますと、その後特に目立つた動きはございませんが、ただ注目いたされます点は、今月の四日に北京放送をもちまして、中共政府周恩来首相兼外相が対日講和につきまして、北京政権成立以来最初公式発表をいたした点でございます。これによりますと、大体先会報告申し上げましたソビエトの覚書の線に沿つておる——関連しておると思われます内容でございますが、中国人民共和国政府中国代表政府として対日講和条約の草案の作成なり調印参加の権利がある。北京政府の参加しない会議は無効である。台湾、澎湖島は中国領土である。千島、樺太はソ連領としてすでに決定しておるのであつて、いまさらあらためて討議する必要はない。琉球、小笠原諸島については、特にアメリカ管理下に置くというとりきめはこれまでない。日本の再軍備及び米国軍日本軍事基地として使用することには反対である。対日講和はあくまで全面講和でなければならないというような意味内容盛つた講和声明発表いたしたようでございます。  最後に引揚げ問題につきまして、この機会に御報告を申し上げておきたいと思います。日本代表といたしまして中山齋藤、倭島の三君が国際連合に参られましてから、その後の引揚げ問題国際連合における動向を注目して待望いたしておつたのでございますが、今月の七日国際連合社会人道委員会、いわゆる第三委員会におきまして、第二次大戦におけるソ連に抑留された約百五十万の調査に関する件が議題として取上げられ、ただいま申し上げました中山齋藤、倭島三君もオブザーバーとして出席し、ドイツからは四人、イタリアからは国連常駐のマシヤ、このそれぞれの国の代表オブザーバーとして出席し、それぞれの国の資料を配付いたしたのでございます。一昨十一日に、アメリカイギリスオーストラリア三国の提案が一部修正いたされました内容においての議題が討議されたようでございますが、この第一は捕虜をまだ帰さぬ国に対して、国連捕虜名前死亡者名前等情報国連報告させる。第二は三人からなる委員会を来年の五月までにつくつて、その報告が四月一ぱいになされないか、それが不満なときには五月以降に会議を開いて、ソ連実情報告を求め、またみずから調査を行い、捕虜引揚げについて適当な手段を講ずるという意味内容を持つた問題が討議され、各国いろいろと論議がされたようでございます。幸いにその表決の結果は、賛成四十三、反対五、棄権八、欠席が四であつたようでございますが、このような状態におきまして可決されたのであります。この可決されました会場の状態から考えますと、日本抑留者引揚げ問題は、むりからぬところである。いやむしろ正当と考えられるという印象を強く与えて、人道上の根本に触れた問題として打拾てておけないという正義感が強く支配して、ただいま申し上げましたような多数の賛成によつて可決される運びになつたようでございます。私どもはこれによりまして、来年の四月一ぱいまでにソ連から情報が提供されるように可決になつておるのでありまするが、それを待つまでもなく、一日も早くソ連から情報を受けることを希望いたす次第でございます。ことにこの第三委員会におきましては、また今までにおきましても、アメリカサンプソン夫人イギリスマグドナルド卿オーストラリアのローレンス・マックインテー、これらの代表の三国側の強力なる活動と努力によりまして、日本抑留者引揚げ問題がこのような状態において各国の支持を受けました点に対しまして、日本政府といたしまして、これらの御努力に対して衷心より感謝いたす次第でございます。
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 それではこれより質疑を許します。並木君。
  7. 並木芳雄

    並木委員 この間の外務委員会首相は、国連による安全保障だけが日本安全保障とは限らないという意向を漏らされたように記憶しております。私どもはすぐそれに対してどういうことかと聞き返したかつたのですけれども、時間の割当上反問することができなくて今日に至つたわけでございます。草葉政務次官にそれを補足して説明していただきたいと思うのです。結局これは国連依存という心境にゆるぎが出て来たのかどうか。あるいは国連による安全保障というものが、朝鮮動乱によつて困難になつて来たことを意味するのか。その国連によらないとするならば、どういう形の安全保障というものが考えられるか。これをまずお伺いいたします。
  8. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先般外務委員会なり予算委員会外務大臣がいろいろお答え申し上げましたのは、必ずしも国連による安全保障以外に、まだ他に安全保障方法をとるのだという意味じやなかつたのであります。今お話のように、朝鮮問題国連戦局がたいへん危ぶまれる状態になつたので、日本国連協力というのをゆるめたのじやないかという御質問でございますけれども、そういう考えは毛頭ないのでありますから、この機会にこの点はつきりと御了承願つておきます。
  9. 並木芳雄

    並木委員 そうすると首相の言われたのは間違いですか。
  10. 草葉隆圓

    草葉政府委員 決して間違いではございません。首相はそういう意味で申されたのではないので、速記録等こちらも調べましたが、そういう意味ではなかつたと思います。
  11. 並木芳雄

    並木委員 いやしくもあれだけのことを言われたならば、国連によらずとすると、どういう形の安全保障考えられるかという私の質問にはお答えできると思うのです。
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は新聞でそういうふうに報道されている点が多かつたのではないかと思うのですが、速記録等におきましては、むしろ国連協力はやめて、ほかの安全保障の道をとるのだというような意味をもつてお答え申し上げたのでは毛頭ないのであります。
  13. 並木芳雄

    並木委員 草葉政務次官責任を負いますね。首相はときどき次官の言うことは責任は負わないということを言われますが、責任を持つてお答えいただけますね。
  14. 草葉隆圓

    草葉政府委員 それはさよう信じております。
  15. 並木芳雄

    並木委員 また首相は、講和は遅れるかもしれないと言われております。しかし一方アメリカ方面には、朝鮮の新事態に即応して講和は早くなるのじやないかという意見も見えておる。こういう点は、一週間ばかりしかたつておりませんけれども、今日現在として政府はどうお考えになつておりますか。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実はこれも、首相講和は遅れるということは申したことはないのであります。これはそういう考えなり印象をお持ちになつたかしれませんが、そういう態度なり発表なりはとつておりません。私先に対日講和のときにつけ加えて申し上げるのを落しましたが、ただいま御質問にもありましたように、最近は朝鮮問題中心にして、むしろ早くすべきであるという主張も相当強くあるようでございまして、日本政府といたしましても、決して朝鮮問題のために講和が遅れるということは考えておらないのであります。
  17. 並木芳雄

    並木委員 この機会にひとつお確かめしておきたいのですが、今までの自衛権論議におきましては、日本領土内ということがその限界のように私了解しておつたのであります。ただ朝鮮の新事態の成行きによりましては、朝鮮を守ることも日本自衛権の中に入つて来るのじやないかというふうな、これも私しろうとですから、政府の皆さんがお考えなつたら、非常におかしな質問になるかもしれませんけれども、そういうようなことが出て来るのではないか。つまり自衛権というものの発動には、日本領土を守るということがあくまで限界になつておると思いますが、この点いかがですか。これをなぜ私お聞きするかと申しますと、前の北鮮南鮮との動乱のときには、さほどでもなかつたかもしれませんが、いよいよ中共軍というものが出て参りますと、日本に対する脅威というものが相当違つて来るのじやないか。そうすると勢い朝鮮を守ることは、やはり日本自衛権発動になるのだというふうな議論が出て来やしないか、それをおそれておりますので、お伺いしておるのです。
  18. 草葉隆圓

    草葉政府委員 そうは考えておらないのでありますが、詳しい法規上、条約上のことはまたひとつ条約局長から御答弁を申し上げます。
  19. 西村熊雄

    西村政府委員 私が学問的な御答弁を申し上げると、しよつちゆう問題を起しますので、簡單にという御注意があつたのであります。(笑声)並木委員が、もの国際法の御本をちよつとお読みになれば、御質問は出ないはずだと考えます。自衛権というものは、大学でもう御講義をお聞きになりましたと思いますが、一国の権益に対して急迫不正な侵害行為が行われて、その他の解決方法がない場合、やむを得ず侵害を受けた国がとる、排除する行為です。それだけお考えになればまずおわかりになると思います。それ以上の御説明は差控えます。
  20. 並木芳雄

    並木委員 ですから私はしろうとだと断つておる。要するにこれは国民の方でもそう専門家ばかりはおらないわけです。やはりそれに対する政府答弁というものが、非常に参考になるから私はお聞きしておるのですが、要するに日本領土侵害されざる限り、絶対に自衛権発動の対象とはならない、こういうふうに了解していいわけでございますね。それと、いわゆる領海というものは当然領土に入ると思いますが、いかがでしようか。
  21. 西村熊雄

    西村政府委員 私は今国際法の定義を申し上げましたが、そのときに何も一国の領土に対する云々とは申しておらないのです。一国の権益に対して急迫にしてかつ国際法上不正なる危害行為を加えられたときに、危害を受けた国が他にそれを排除する方法がない場合に、やむを得ずとる、普通ならば国際法上とり得ない排除措置自衛権というというのです。従つて学問的には領土領海というものに限定されたものではないということになるわけです。要するに侵害を受ける一国の権益の所在という点になるわけです。
  22. 並木芳雄

    並木委員 ですからやはりそこには相当むずかしい問題が実際として起つて来るように私は拝承したわけです。領土的には、地域的には絶対に起らないですか。ちよつとくどいですが、日本権益という言葉で現わされてしまいますから、私了解しにくいのですが、権益というものは、必ずしも領土内、領海内にのみ限らない。もう少し具体的に申しましようか、朝鮮というものが緊迫して来て、いよいよ日本権益というものが侵されるおそれがある、他に方法がないというような場合には、日本から朝鮮に人を送るというようなことが自衛権発動になり得るか、こういうような点なのですが……。
  23. 西村熊雄

    西村政府委員 そうはならないと思います。並木委員にお勧めいたしますが、どうか立さんの平時国際法上の自門衛に関するものを御一読願いたいと思います。そうすればよくおわかりになると思います。もう少し知りたいと思われますならば不戦条約締結当時に、あの関係国は主として不戦条約の関連において自衛権の留保をいたしております。そのときのイギリス政府通告文などをお読みになると非常に参考になると思います。
  24. 並木芳雄

    並木委員 引揚げについて外務省情報部発表の名簿は、その住所、氏名その他詳細公表すべきであると思いますけれども官報か何かに全部載せる用意があるかどうか。それからあの数字国連発表された数字と一致しておりますかどうか。それと中共国連に加盟を許されれば、引揚げは促進されるのではないかという意見をなす者がありますけれども、これに対して政府はどうお考えになりますか。
  25. 草葉隆圓

    草葉政府委員 個別的な名前と三十一万——一昨日はつきりと名前はわかつておると発表いたしましたが、これは国連でも同様に言われておる点だと存じます。しかし代表が参りまして、この点はいろいろ当時の報告がありますとなおはつきりすると思います。  それから官報に載せる意思があるかという点につきましては、現在はそこまでは考えておりません。  中共国連に加盟すると引揚げが促進されるかという御質問でございますが、引揚げ問題は、政治的に中共が加盟する加盟しないの問題にかかわらず、人道委員会において取上げられましたように、それとはむしろ別個のものであつて、加盟しなくても、引揚げ問題は促進すべきものであると考えます。
  26. 並木芳雄

    並木委員 この際私は調達問題について、ちよつとお尋ねしたいと思います。調達は今まで終戦処理費でまかなわれておつたと思いますが、最近の事態は、国際連合という関係で二本建になつておるのではないかと思うのです。終戦処理費関係国際連合関係調達とは、どういうふうに区別されておるのでしようか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  27. 川田三郎

    川田説明員 特別調達庁説明員からお答えいたします。国際連合調達とは区別されております。現在アメリカ自身調達しておりますものは日本政府官庁においては関与しておりません。また終戦処理費から調達いたしますものは、全部軍の成規の調達命令によつてつておるものであります。二種類はありますが、全然その間に関係はございません。
  28. 並木芳雄

    並木委員 現実の場合に、これが混同されるおそれがあるのではないかと思うのです。今まで終戦処理費関係調達して来ておつたものは、それは割に円滑に処理されておつたようですが、国際連合の線で来た調達の場合には、特別調達庁あたりでも、本件についてはまだ承知しておらないというふうな係官の答弁に接したこともあるのですが、現在はその点円滑に行つておりますかどうか。たとえば施設をするために農地の接收をする場合がございます。そういう場合に、従来ならば当然一つのルートがあつて、十分事前に周知せしめられてから調達が行われておつたのです。ところが最近の状態では、それが急ぐためでありましよう、十分現地の日本人に周知されないで調達が行われる場合がある模様なんですが、そういう場合に、ただいま申しましたように二つの流れがあると思う。終戦処理費の方はうまく行つておるのですが、いわゆる国際連合関係の場合、円滑に行つておるかどうか、そうしてその費用はどういう勘定で出されるのでありますか。
  29. 川田三郎

    川田説明員 国際連合の方でやつておるものかどうかということも、確然と私どもの方にはわかりませんが、横浜におきます軍の在日兵站部自身がアメリカ政府予算によりまして、アメリカ人の調達官によつて調達されるものがあるということは承知しております。しかしそれが、不動産の接收の例をおあげになりましたが、不動産の場合でありましても、私どもは何ら関与いたしておりませんので、円滑に行つておるかどうかということは、ここで御答弁申し上げかねる次第であります。
  30. 並木芳雄

    並木委員 実際の場合二つがあり得るということが考えられるわけですね。そうすると、これが終戦処理費関係であるか、国際連合関係であるかという、その区別の一線を引く標準を政府はわかつておるかどうか、これがなかなか現実の場合にはいろいろトラブルを起すのです。
  31. 川田三郎

    川田説明員 日本政府責任においてやるべき調達であるかどうかの一線は、いわゆるPDといわれておりますプロキユアメント・デマンド、日本語にいたしまして調達要求書であります。この線に沿うものであるならば、日本政府はただちにその調達に入らなければならない。同時にこれが文書をもつて明らかにせられていないものは、日本政府といたしまして調達をせなくてもいいというはつきりした線が引かれております。
  32. 守島伍郎

    ○守島委員長 簡單に願います。
  33. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点だけにいたします。  この間首相からも、終戦処理費については減らすように努力するという答弁があつて満足したわけですが、大体来年度の終戦処理費というものは、どのくらいになるか見当がついていましようか。ぞれから終戦処理費に関連して終戦処理收入というものがあるそうですが、この終戦処理收入というものの明細はどうなつておりますか。
  34. 東條猛猪

    ○東條政府委員 昭和二十六年度の予算につきましては、まだいろいろと話合いをいたしておりまして、終戦処理費につきましては、はつきりした計数を申し上げる段階にただいま至つておらないのでございますが、私どもの想像しておりますところでは、本年度よりは増すことはなかろう、若干減るのではなかろうかというふうにただいまのところ推測をいたしております。それから終戦処理收入の問題でございますが、これは過般補正予算で御審議をいただいたのでありますが、終戦処理支出に伴いまして終戦処理收入が行われるわけでありますが、本年度の補正予算と合せますと、九十八億程度の追加をいたしております。大体そういう状況になつております。
  35. 並木芳雄

    並木委員 明細はどんなものがありますか。
  36. 東條猛猪

    ○東條政府委員 明細はいろいろございますが、これはただいま特別調達庁政府委員からも御説明申し上げました通りでございまして、終戦処理支出に伴います終戦処理收入の内訳は、たとえて申し上げますれば、こちらに駐在しておられますところの進駐軍関係の方々が、規定以上の女中とか、あるいは家事使用人をお使いになつた場合、正規の割当以上にそういう使用人をお使いになりました場合、いわば雇用料に当りますものであるとか、あるいは通常の場合以上のいろいろ運輸関係の費用がかかつておるとか、あるいはサービス等を提供しておるという場合におきましては、それに伴いますところの收入の提供を受けております。これはいろいろ関係がございまして、特別調達庁にいたしましても、大蔵省にいたしましても、十分にその明細を申し上げるだけの準備をただいまいたしておりません。
  37. 守島伍郎

    ○守島委員長 北澤君。    1
  38. 北澤直吉

    ○北澤委員 朝鮮動乱については、あとで外務省の政府委員にお尋ねいたしますが、その前に通産大臣がお見えになつておりますから、この朝鮮動乱日本の特需の関係、あるいは一般貿易関係につきましてお尋ねいたします。  朝鮮動乱が非常に重大な段階に達したことは申すまでもないのでありますが、これによりまして日本の特需の将来につきましても、重大な影響があると思うのであります。どうも従来日本側は、ややもすれば特需の問題につきまして、甘く見過ぎておつたようであります。過般ドツジ公使が来ましたときにも、特需の問題をそう楽観してはいかぬというようなことを言つておりますが、今日の段階を見ますと、まさにその通りでありまして、特需の将来ということにつきましては、朝鮮動乱が重大な段階に入れば入るほど、おもしろくない影響が来ておりまして、最近では特需のために発送したものが途中でとまつておるというような状況でありまして、特需の将来についてはわれわれは必ずしも楽観してはいけないと思うのであります。この点について御意見を伺いたいと思います。
  39. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 特需の問題について御質問でありますが、特需のために内地の市場を圧迫しはせぬかというおそれがありますので、これに対しましてはなるたけ早く、なるたけ多く原料を輸入することに今努力中であります。朝鮮動乱が漸次進行し、または長引くにつれましてその傾向は顯著になると思います。最近途中で停滯しておるという話でありますが、この点についての原因はよく調べておりませんから、調べましてお答え申し上げたいと思います。
  40. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほど外務政務次官からいろいろお話があつたのでありますが、もし中共軍が三十八度線でとまるということになりますと、当然特需の問題についてもある程度、何と申しますか、望みがあるのでありますが、もし万が一、中共軍がもつと南の方に来るということになりますと、この特需というものは相当減つて来はしないか。むしろ最悪の事態においては、国連軍朝鮮半島から撤退するということになりますと、朝鮮向けの特需はゼロになるというところまで——われわれはそれを希望しませんが、おそれるのであります。それについて御意見を伺いたいと思います。
  41. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 今の、中共軍が三十八度線から越して来る、または国連軍が撤退するということにつきましては、私としてはそうまでならぬのじやないかというような考えを持つております。もしもそうなつたと仮定してのお話と思いますが、私は特需に対しましては、これは一時的の変態的なものであるので、これをもつて産業を考えることは多少、あまり特需により過ぎるという傾向を起しはしないか。従いまして私ども通産省といたしましては、特需は一時的のものとして、これを除外して通産行政を考えたい、それに特需がプラスである、こういうことで行くのが道ではないかと考えます。従いまして特需のためにある特殊の工場を、非常に増大するというようなことはなるべく避けて、現在をもつて能力を上げて、また他の利益のあるものと相呼応してやつて行くことが、この変態の事情に対する道ではなかろうか、こう考えます。
  42. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に伺いたいのは、中共との貿易の問題であります。最近政府は、香港を含めて中共向けの輸出品の船積みを一時停止したわけでございますが、最近の新聞によりますと、アメリカでは、全商品にわたつて中共向けの船積みをとめたというふうな報道があるのであります。そこでお聞きしたいのは、今回の日本側の中共向け船積み停止の措置は、これは日本側だけでやつたのが、アメリカ要求によつてつたのか。もしアメリカ要求によつてつたとすれば、アメリカが全部の商品について船積みを停止したということになると、日本に対してもそういうことを要望して来はせぬか、実はこう思うのでありますが、今回の通産省のとつた中共向け商品の船積み禁止の措置は、アメリカ要求によつてつたのかどうか、その点を伺います。
  43. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 本月の六日に中止いたしました中国向け、満州向け並びに北鮮、香港、マカオ向けの在来ありました要許可品目、いわゆる外国為替並びに外国輸出管理令によります処置、それを朝鮮動乱の現段階におきまして、もう一度再検討する必要があると考えるので、一度許可したものでも再検討して、許可を与えるものは与え、また与うべからざるものは与えないということにしたい、こういう考えであります。しかし御了解をいただきたいのは、全部のものでないのであります。おもに鉄鋼品あるいは機械類でありまして、繊維類はそのままになつております。いわゆる要許可輸出品目という考えであります。
  44. 北澤直吉

    ○北澤委員 今後輸出禁止の品目はさらに増加する見込みがありますか。
  45. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 現在の段階におきましては、そういう考えはしておりません。ただし今後の朝鮮動乱の推移によつて、再び考えるべきものじやないかと考えます。
  46. 北澤直吉

    ○北澤委員 中共に対する輸出の措置でありますが、従来日本政府におきましては、中共に対する貿易は、政治と経済は別である、従つて戦争をしておつても貿易はできるのだというような考えを持つてつたのでありますが、これはどうしても政治と経済とは密接不可分なものでありまして、今回のように朝鮮動乱がああいう段階になりますれば、どうしても中共との経済関係というものは、ある場合に杜絶しなければならぬというふうにわれわれは見ておつたのであります。現に日本軍が中国を占領した場合におきましても、日本軍は中共地区に対して経済封鎖をしておつた。でありますので、私どもはこの朝鮮動乱の今後の成行きから見ますと、中共との貿易についてはあまり期待は持てない。従つて日本の貿易は、結局中共以外の地域、南方、東南アジアという方面日本の市場を開拓するほか道がないわけであります。そこで問題は、中国への輸出をとめましても、輸出品の主要な部分は鉄鋼品というのでありまして、これはほかのところに向けられるのでありますが、問題中共からの輸入のものです。開らん炭とかあるいは満州大豆あるいは塩あるいは鉄鉱石、こういうものが従来入つて来ておつたわけであります。特に輸出計画によつて、バーターでやるものは、日本から輸出禁止をすれば、当然向うから報復的にとめられるという心配があるのであります。問題は、オープン・アカウントでやつているものです。一体中共の方はオープン・アカウントで日本に輸出するものまでも報復的にこれを阻止するような風がありますかどうか、その点も伺いたい。
  47. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまのところでは私まだ聞いておりません。今の政治と経済と結びついて行くということはお説の通りであります。そのことにつきましては、通産省といたしましては慎重に考えまして、輸入の面に関しましても、いろいろ考慮する必要があると考えております。
  48. 北澤直吉

    ○北澤委員 結局中共から来たそういう石炭とか、塩とか、大豆とか、そういうものはもし万が一来なくなると、よそから持つて来なければいかぬ。政府の方では粘結炭というようなものはアメリカから輸入するというようなことを言つておるようでありますが、世界的に軍備拡張の気構えであつて各国とも輸出の統制を相当強化しておる。結局そうなりますれば、日本で原材料の輸入の確保ということは非常にむずかしい問題であります。特に西ヨーロツパの軍備拡張となれば、各国ともそういう戦略資材は、西ヨーロツパの方に統制的に持つて行くというふうな空気になりはせぬかと思うのであります。そういう日本の今後の輸入の確保の点につきまして、政府はどういう考えを持つておられるか。それからまたそういう輸入の確保という点から見ますと、私はある程度政府の貿易——これまで政府は民間貿易をふやすということでありますが、そういう現在の段階におきまして、日本の必要資材の輸入を確保するという見地から申しますれば、どうしてもある程度政府貿易というものを残さなければならぬ。あるいはまたこういう段階でありますから、必要な資材を、ある程度備蓄という点から申しますと、どうしても政府の特別会計か何かつくつて、そうしてやることがいいのではないか、こう思うのでありますが、その点のお考えを伺いたい。
  49. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 政府貿易のことでありますが、政府といたしましても、これについてはある程度の政府貿易は残す必要ありと、こう考えております。また備蓄その他のことに関しましては、ただいま考究中であります。それから先刻のお話の鉄、石炭その他のものについては、大体の見当をつけて今促進をしつつあるのでございます。あるものについてはもはや中共あるいは満州あたりから来るものを、ほかに転換して買うようにいたしつつあるのでございます。詳細については、たとえば塩のごときは、これはもう御承知のように分散的にやつておりますから、大してこれに対する心配はいらないのじやなかろうかと考えます。大豆のごときに関しましては、これは量もあまり多くないので、アメリカから輸入できはせぬかと思つております。それから鉄鉱石に関しましても、これはアメリカにも要請しておるし、また幸いに——というと何ですが、この鉄鉱石は、御承知のように中国からあまり入つていなかつた、非常に少かつたのであります。おもなものは粘結炭だと思います。これに対しましても最近十——十二で約三十万トンぐらいの許可を得られそうな段階にある。その次に対しましても、極力その方向で交渉する余地ができつつありまして、さしあたりしのげるのじやないか。しかしながらさしあたりということだけではいかぬので、通産省といたしましては、せつかく通商官を向うにやつて事情等も見て参りまして、また報告も順次来ると思うのであります。これらに対応いたしまして、いろいろの手を打つて行きたい、こういうふうに考えております。
  50. 守島伍郎

    ○守島委員長 北澤君、簡單にお願いします。
  51. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう二点であります。大臣の仰せのように、輸入の確保については非常に御努力になつておるようでありますが、この点特に御尽力をお願いしたいのは、幸いに日本は最近特需関係と輸出貿易の増進のために、外貨が非常に多くなつた、四億ドルある。しかしこれはもちろん輸出貿易のよくなつた点もありますけれども、それに伴つて輸入がよくできないというところに外貨がたまつた。しかしこういう実情でございますと、それだけ日本に外貨がたまつたのだから、そんなら来年の中ごろまでに日本の経済は自立できるかということでありますが、この日本の外貨がたまつたのは、日本の輸入がなかなか思うように行かぬというところに大きな原因がある。もし輸入ができればそう外貨はたまらぬのであります。従いまして、私はアメリカあたりがあまり日本の経済というものを楽観し過ぎないようにするためにも、私は輸入というものを非常に促進してその面から、あまり外貨がたまらないように、やはり日本の経済の実態が、日本の国際貸借上に現われるようにする必要があると思うのでありますが、その点に対する大臣の御所見を伺いたい。
  52. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの御質問ごもつともであります。外貨が相当量たまつておりますので、これの大半を輸入促進に、向けるということに、大体閣議におきましては申合せまして、その方面において努力することにいたしております。さよう御了承願いたいのであります。
  53. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に、最近私聞いたのですが、南阿連邦におきまして、日本に対して高い差別関税をかけるようなけはいがある、またパキスタン等においても高い関税をかけるけはいがあるというようなことを聞きまして、こういう方面に対する日本の輸出についても、必ずしも楽観を許さないということのために、結局問題は、こういう国との貿易において、日本が最恵国の待遇を受けるということになればいいのでありますが、現在イギリスで行われている国際一般関税協定の会議でありますか、日本がその国際一般関税協定会議に参加ができれば、これは日本に最恵国待遇ができて、そういう関税上の差別待遇を置かれないだろうと思いますが、その国際一般関税協定会議に対する日本の参加の問題について、政府はどういうふうな手段をとられるか、これを伺つておきたいと思います。
  54. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの南阿の関税、そしてまたパキスタンのごときも関税を上げはせぬかというようなうわさがあるので、非常に心配しておるのであります。パキスタンにつきましては、これは通商官が帰りに寄つて、そうして事情を考究し、またこちらからの意見も申し述べることにいたしております。  今のお話の関税のことに関しまして、会議に参加したい希望はやまやまでございます。しかし現在のような占領下にありましては、その要望がいれられるかどうかということは、はなはだ私としては疑わしい次第ではないか、これはむしろ外務省あたりからの御意見が私も承りたいというふうな気がしておるのであります。何を申しましても、関税政策でシヤツト・アウトされるということに対しましては、よくわれわれは時の趨勢を見まして善処すべき必要がある、また国としてこれにある程度の手を打つべき必要がある、こういうふうに考えております。さよう御了承願いたいと思います。
  55. 守島伍郎

    ○守島委員長 佐々木君。
  56. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は外務省に大体三つの問題につきまして、簡單に承ります。  ます第一は先ほども政務次官から御説明のありました日本人の捕虜引揚げ問題……。
  57. 高田富之

    高田(富)委員 委員長。通産大臣に対する発言の通告がしてあります。
  58. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは順序が違いまして、また時間がこんがらかりますから、ごく簡單にお願いします。高田君。
  59. 高田富之

    高田(富)委員 さつき、ほかの委員の方からも御質問がありましたが、今回の中共貿易に対する制限措置は、通産省で独自に自主的におやりになつたものであるか、それとも何らかの命令によつて、おやりになつたものであるか。
  60. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 それは自主的にやつたのであります。
  61. 高田富之

    高田(富)委員 私は従来通産当局それから安本その他におきましては、中共貿易には相当力をお入れになつて、最近幸いにして逐次これが増加の傾向にあるという御報告をいただいて、産業経済界におきましても、当局の御努力に対して相当感謝するとともに、一層の促進方を懇請して来ておつたというふうに承知しておるのであります。ところがそういうふうに自主的にこれを大幅の制限をされたということになりますと、今までの当局の御努力というものは、かえつてここで水泡に帰するばかりでなく、当局に対する業界の信頼も相当沮喪しまして、今後の通産行政の上にかなり大きな障害になるおそれがある。最近は相当この問題につきましては各方面から遺憾の意を表明しております。おそらく大臣のところにもたくさんの陳情、請願等が続統来る形勢にあると思うのであります。どういう理由で、このような不可解な措置を自主的におとりになつたか、ひとつ明快にその間の事情をお知らせ願いたいと思うのであります。
  62. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 先刻他の委員の方にお答えいたしましたように、朝鮮動乱の現段階におきまして、私は要許可品目を再検討する必要あり、こういう考えでやつたのであります。もちろん中共に対する貿易は、平時におきましてはあなたのお話の通りであります。しかし朝鮮事変の推移がそうした方がいいというような私の考えでやつたのでありますから、さよう御了承願いたいのであります。
  63. 高田富之

    高田(富)委員 しかしこれは非常におかしいと思うのです。中共日本は別に戦争をしておるわけではございませんし、なお向うはこちらに対して積極的に貿易を拡大しようと望んでおると思うのであります。それを何もこちらから戦争状態における経済封鎖のような手段をとるということは、自分の損失であるばかりでなく、将来も今後お互いに貿易を拡張して行こうと考えておるやさきに、そういう措置をおとりになるということは、はなはだ理能に苦しむのです。おそらくこういうことは私ばかりではなく、全産業経済界の声だと思うので、この際すみやかにこの措置を解除するように努力する考えでありますか、どうかということを、ひとつ言明していただきたい。
  64. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 努力するかどうかというお話でありますが、それでありまするので、一箇月を限つてつて、そして事情を見ましてから、再びそのまま継続するか、あるいは元の状態にもどすか、そのときに考えたいと思います。その他のことにつきましては、私どものところにはそう大して嘆願も来ておりません。これはあなたは共産党であるかないか、私は存じませんが……(「そんなことはないだろう」と呼ぶ者あり)いや、初めてですから、存じませんです。それですからあなたの考えと私の考えは見解が相違しますので、この点はあしからず御了承を願います。
  65. 守島伍郎

    ○守島委員長 もうおやめ願います。あなたはもう最後です。それを特に関連して許しておるのですから、また次の機会に通産大臣においでを願つて、時間を与えるかもしれませんが、もうやめてください。佐々木君。
  66. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は外務省の引揚げを担当しておられる事務当局の方に、もつぱら事務の問題で承りたいと思います。未帰還者三十七万名のうち、三十一万六千三百三十九名までの調査政府当局の手によつて完成されたということにつきましては、私は心からの敬意と感謝をささげるわけであります。そこで私はこの際承つておきたいのでありますが、この調査の基礎資料というものが、留守家族からの届出であるとか、捕虜の通信であるとか、その他現地の通信、ないし未帰還者に関する帰還者の報告、及び各種の名簿などによつて、確実に名前や消息がわかつているものだけが三十一万六千三百三十九名であるということが、外務省情報部発表となつております。そこで私は一通りこの分類を知りたいのであります。留守家族からの届による者が何ぼか、捕虜の通信による者が一体何ぼか。そういう具体的な数字をひとつこの際——資料の提出を私求めておいたつもりでありますから、本日は御用意なさつておると考えますので、その資料を明らかに示していただきたいと思います。  さらにまた、これを中共地区あるいはソ連地区の地区別による区別も、数字の分類ができておりますならば、それをも明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  67. 武野義治

    ○武野説明員 せつかく佐々木委員の御質問でございますが、第一の分類の点は、差控えさせていただきたいと思います。  第二の点も、今申し上げかねる次第であります。
  68. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 差控えるということは、理由がわかれば私は喜んで了承しますが、どういう理由ですか、それをはつきり説明していただきたい。
  69. 太田一郎

    ○太田政府委員 私から御説明いたします。先ほど政務次官から御答弁があつたと思いますが、三人の代表国連の方におきまして、第三委員会でこの問題を提出していただきますところの濠州、英国、アメリカの各委員並びに日本に同情のある関係国に対しましては、いろいろ詳細な資料用意いたして持つて参つたのでありますが、サンプソン夫人が三十一万六千という数字発表せられたのでありますが、どの程度の数字国連第三委員会の許可を得まして関係国にまわしたかどうか。またどの程度の数字を話したかどうかということにつきましては、非常にいろいろな角度から見ました資料をたくさん持つてつておるのであります。まだその問題については連絡がございませんので、今日発表することを差控えたい、かように考えます。
  70. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は先ほどから申したように、この調査をなさつた当局に対して、心からの敬意と感謝をささげながら聞いておるわけでありますが、この発表に文によりますと、留守家族からの届出や捕虜の通信その他現地の通信の累計が三十一万六千三百三十九名ということが明記してある。従つてその分類ができないというわけはないと思う。またそれを特にこの際秘密にしておかなければならぬという理由も、私にはあまり納得しかねるわけなのですが、それほどこれには深い含みがあるのかどうかということを、もう一度重ねて承つておきたいと思います。  さらにソ連政府側ではタス通信が先般発表いたしました、戦犯が二千四百五十八名、重病人が九名、これ以外に生存者はないというのを確認しておるようであります。従いましてソ連側の発表日本調査によるこれとは、相当の数字の開きも出て来るように考えられるわけでありますが、外務当局におかれましても、この生存者の数等については、どのようにお考えになつておるかということも、あわせて承つておきたいと思います。
  71. 草葉隆圓

    草葉政府委員 留守家族からの調査あるいは情報あるいは引揚者のそれを分類して発表したらどうか。これは一件について幾つも重なつておるのもあります。家族からも届出があり、本人からの通報もあるというのもあります。この三十一万をきちつとわけるということは第一困難です。一つのカードに幾つも重なつておる場合、そういう意味では一つであります。ただこれは家族の届出だけという問題であつて、三十一万の内容、むしろ御質問はそういう厳格な意味ではなしに、内容をもう少し詳しく発表してほしい。そういう意味におきまして、あるいは府県別、地域別という分類というのが当然考えられると思いますけれども、これは太田次官の答弁しました点で御了承願いたいと思います。それから数が食い違つておりまするので、結局引揚げ問題調査という国連で取上げた問題になつて来ておるのであります。
  72. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私たちは共産党の諸君とはおのずから異なつた立場から、特に私自身が引揚げ問題を担当しております立場から、まじめに私はこれを承つておる。これは国民の声であることをまず御承知願いたい。今回の日本人の捕虜をも含む捕虜引揚げの決議案が、国連総会の社会人道委員会において幸いにして可決されたことに、われわれ非常な感謝をささげるものであります。結局この三人委員会等の特別委員会の設置によりまして、おそらくは現地への調査団の派遣等の問題が日程に上つて来るのじやなかろうかと私は考える。こういうときにおきましては、今日まだ帰らないところの未帰還者を持つておる留守家族の人々の気持の上からも、また国民全般の国民感情の上から申しましても、できるならば今度の国連総会日本オブザーバーが派遣されたことく、この調査団の派遣にあたつて日本代表を、またオブザーバーとしてでも派遣をするようにひとつ懇請をしてくれということが、国民の偽らない気持であると考えるのであります。そういう意味におきまして、これらのそういう現地調査派遣団に対する日本代表もまたオブザーバーや何かの形において派遣する、そういうことを懇請してみるというようなことに対しても、この際何らかお考えになつていないかどうかということも、ちよつと承つておきたいと思います。
  73. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問の点はよく研究いたしまして、今後進めて参りたいと思います。現在の昨日の決議の状態がもう一つはつきりいたしませんが、結局四月一ぱいソ連からの詳細な満足すべき報告がない場合に、それぞれの関係地域の調査団が出るという状態になつて来るかとも存じます。その場合にあるいはソ連にそういうものが行けるようになつた場合には、日本からも調査団に加わつたらどうだという意味だと存じます。この点につきましてはよく研究いたしまして、御希望に沿うように努力いたしたいと思います。
  74. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 あと二つの問題について簡單に質問いたしたいと思います。最初に、先ほどの並木君の質問に関連しておる問題でありますが、先ほどの草葉政務次官答弁を聞いておりますと、質問もそうでありますが、非常にこんがらがつております。それは国連に協力する政府の態度というものと、国連によつて日本の永久的の安全保障を求めるという問題はおのずから別なのであります。今度勃発いたしました朝鮮動乱に対して、国連に協力するかどうかという問題と、日本の完全保障を国連によつて求めるということは、根本的に私は別個の問題であると考えるのであります。そこで私はその後者の日本安全保障を、いかなる態勢に求めるかという点についての吉田総理大臣の発言に関連して、この際承つておくわけでありますが、首相の議会におきまする答弁によりますと、あるいは政務次官もおつしやつたことく、新聞の誤伝であつたかは存じませんけれども、われわれの知るところによりますと、国連による安全保障ばかりを考えておるわけではないという意味のことをおつしやつたと伝えられております。この際私承つておきたいことは、国連による安全保障の根本方針というものは、日本政府の一貫してかわらざるところの基本方針であつたと今まで承知しておりますし、またここにおられる政府委員の方々も、しばしばこの委員会を通じて言明されたことと記憶しております。先ほどの御答弁によりますと、いささかこの点があいまいでありましたから、あらためて承つておくわでありますが、国連による日本安全保障という根本方針に、何らかの変更があるのかどうか、今日専任外務大臣のないもとにおきまして、外交問題を担当しておられますところの草葉政務次官は、十分これについては御存じであると思いますので、この点の御答弁を求めます。
  75. 草葉隆圓

    草葉政府委員 従来の方針とかわつておりません。その点御了承願います。
  76. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次はもう一点最後に承つておきますが、それはアメリカではいよいよ朝鮮動乱と世界の危機に対処するために、トルーマン大統領は非常事態の宣言を行うのではなかろうかと、今日の新聞は伝えております。そこで日本も、国連に心からの協力をするという根本方針に立却いたしまして、この空前の世界危局に対しまして、日本国内の政治、経済、社会その他万般にわたつての非常時の体制を整備する必要があるのではなかろうかと、私は考えるわけであります。先ほどの政務次官の国際情勢の御説明を承つておりましても、きわめて楽観論に終始しておるようでありますが、政府はいつまでも朝鮮戦局や世界政局に対する楽観論に終始することなく、今日の世界危局に直面しておりまする日本の置かれております立場、従つてそれに処さなければならないところの日本の決意というものを率直に表明して、国民の進むべき道を明らかにするということが、むしろこの際必要ではなかろうかと、私は考えるわけであります。そこで今申しました朝鮮戦局をめぐる世界危局に対して、外務当局はあくまでも楽観論に終始されておるのかどうか。またこの非常時に臨むところの国内体制の強化について、何か考えていないかという点を、明らかにお願いいたしたいと思います。
  77. 草葉隆圓

    草葉政府委員 アメリカが近く非常事態宣言をするのではないかという報道が、最近ひんぴんとして伝わつておるようであります。しかしこの非常事態宣言につきましての内容等も、一応は承知いたしておりまするが、まだ十分に承知はいたしておりません。しかしいずれにいたしましても、世界の情勢は先ほど一応御報告申し上げましたような状態で進んでおりまするが、決して今の政府朝鮮問題をはなはだしく簡單に楽観しておるというのではないのでありまして、よくその推移を見ておる次第でございます。しかしアメリカと即応して日本にもさような非常事態宣言のような体制をとる必要がありはしないか、あるいは国民に対して十分世界の情勢を知らせる態度をとる必要はないかという点につきましては、国内の非常時体制というのは、これはよほど将来研究をすべきものであり、また現段階でただちにこれが完全にとらるべきものでもないと存じます。ただ世界の情勢をよく国民に知らせるという方法は、先般総理もお答え申し上げましたように、今後情報部等から、つとめて世界情勢の正しい判断の資料にするような報告はとつて行くべきものだと考えております。
  78. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後に私はもう一点だけきわめて簡單に伺いたいと思います。講和会議問題に関しましては、先般のいわゆる外交白書なる形におきまして、政府の所信を明らかにされたわけでありますが、私はこういう際に、常に外務省の申しておりますような安易な戦局の楽観論というものが、かえつて国民に非常な不安感を与えておると考えます。私は今日の世界の危局は空前の危局であろうと考えます。従いまして、こういうときにおきまして、この事態の重大性というものを、もう少し徹底的に認識させていただく必要がありはせぬかと思う。そういう意味におきまして、先般の朝鮮動乱に処する日本の立場といつたようなものを、今後も外務省情報部等におきましてどんどんおやりになることを、むしろ私は歓迎したい。  最後に重ねて伺つておきますが、今日政府は、世界が非常な危局に直面しておるということについては、世界危機の存在しておることについては、十分お認めであろうと考えますが、この点に対する御見解を伺つておきます。
  79. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問と御見解にありまするように、朝鮮動乱以後の世界の情勢はまことに重大であり、好ましからざる事態である。世界はこの推移をたいへん心配いたしておる状態にありますることは、あらゆる方向から現われておるのであります。この点に対しましては、われわれ政府におきましても、十分世界の情勢を把握することに努め、かつまた御意見のように感じておる次第であります。
  80. 守島伍郎

    ○守島委員長 菊池君。
  81. 菊池義郎

    ○菊池委員 西村局長にお尋ねいたします。台湾問題につきまして、私が数箇月前に、台湾国連の信託統治にすべく、領土権の現在の保有国たる日本が、イギリスアメリカに折衝、陳情してもいいのではないかということを申しまして、「アカハタ」に大分たたかれたのでありますが、中共軍が三十八度線で兵をとどめるという代償といたしまして、中共は、台湾は当然カイロ宣言によつて中共のものであるべきである——つまり戦わずして台湾をとろうとしております。ところがアメリカ大統領も、最近は私の意見と同じことを言い出しまして、私もなるほどと思つておりますが、台湾の将来の地位は国連の統治にまかせるということを言つております。アメリカにもわれわれと志を同じくする人がおると思つてまことに愉快にたえないのであります。それでお伺いいたしたいのは、結局カイロ宣言なるものの効果がなくなつたから、アメリカがそういうことを言い出したのではないかということも考えられる。つまり革命の手段によつて政権がかわりましたる国に対しましては、列国の権利義務なり、あるいは宣言なりは帳消しになるということは、国際法の原則になつておりまして、ロシヤの革命当時においてもそういうことが見られたのであります。その結果アメリカはそういうことを言い出しているのか。それでなければ、中共が言つておりますように、カイロ宣言というものは現在でも効果があるものでありまするか。国際法の権威でありまするところの西村局長に教えを受けたいと思うのであります。
  82. 西村熊雄

    西村政府委員 菊池委員の御質問に対しては、私が御答弁申し上げるよりも、アメリカの方にお尋ねくださつた方がよろしかろうと思います。私としては御返答申し上げる立場にないということを御了承願います。
  83. 菊池義郎

    ○菊池委員 立場でなくても、学者としての見解をお述べになることはちつともさしつかえない。何らアメリカにもどこにも遠慮なさる必要がないと思います。それでなければ学者としての信念はどこにあるのですか。
  84. 西村熊雄

    西村政府委員 カイロ宣言がどうなるか、どういう効力を今持つているかということは、カイロ宣言締結当事者の問題でございまして、日本政府事務当局としては、あれこれ申し上ぐべき筋合いの問題ではございません。
  85. 菊池義郎

    ○菊池委員 それではお伺いしませんが、第二の問題は、中共朝鮮に侵入し、しかしこれがさらに交渉のいかんによつて南鮮に侵入するかもしれぬ。もしアメリカその他国連の意向が西欧防衛第一主義に移行いたしまして、極東特にこの日本を軽視するようなことがあるといたしますならば、しかして国連軍朝鮮から撤退するというようなことになりますと、全線にわたつて至るところにゲリラ戦が起ることは必至であると思うのであります。しかして朝鮮におけるところのゲリラ戦は、ひいて日本においても必ずその延長としての共産党の蠢動が頻発するとを、われわれは予想せざるを得なのであります。ところで総理もこの前、日本安全保障国連にのみたよることは考えておらぬということを言明しておられます。しからばそのたよるべきもう一つの安全保障は何であるかというと、結局自衛以外にないということが想像されるのでありますが、しからば軍隊を持つかと聞きますと、軍隊を持たぬ。何によるか、結局警察予備隊以外にないと思うのでありますが、中共にはすでに一千万の軍隊があるという。ソ連は精巧なるところの武器を持つておる。両方から何かのきつかけに侵入して参りましたならば、どうにもしようがない。鎧袖一触どころの騒ぎではない。それでわれわれは警察予備隊でもさらに増強して、これを五倍なり十倍なり、あるいは日本は財政の点においてたよることができなければ、今まで軍隊を使つたように徴用制度にでもして、もつと増強する必要があると思うのでありますが、そういうことについて関係方面と折衝せられたようなことはないのですか、どうですか。これは重大問題であると思う。
  86. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今までまださようなる折衝をしたことはありません。
  87. 菊池義郎

    ○菊池委員 向うからは日本のそういつたようなことについて何らの話もないのでありますか。
  88. 草葉隆圓

    草葉政府委員 まだ存じておりません。
  89. 菊池義郎

    ○菊池委員 簡單にもう一つ。これは話が違いますが、私は映画が好きで一週間に三回くらい映画を見る。ところで青年男女のはらわたを腐らすような淫奔きわまる外国の映画が多いと思います。外務省といたしましてこれに対して何とか手を打つてもらいたいと思うのでありますが、これに対する外務省当局の御意見を承りたいと思うのであります。
  90. 草葉隆圓

    草葉政府委員 外務省におきましても、文化の交流で、文化課を置いて、今後の国際間の文化について、前会にも申し上げましたように、大いに意を注いでおる次第でございます。ただ、ただいまのは多分、映画であまりよくないのがあるから、こういうものに対して、将来そういうものはむしろ上映しないような手を打つた方が、いいのじやないかというような含みじやなかつたかと思いますが、ただこれを輸入する、せぬ、あるいは上映する、せぬということよりも、今後のこれに対する国民の民主主義的な訓練ということが、むしろその重点になつて来るのではないかと思います。そういう点を考えながら進んで行くことが必要ではないかと存じます。
  91. 菊池義郎

    ○菊池委員 国民の認識と申しましても、青年男女にそういうものを識別する力があつたものじやない。それを求める方がむしろむりです。日本なんというものは未開国でありますから……(笑声)何といつても情ない話であります。文化の点においては、はるかに先進国に劣つておると考えます。どうしても外務省といたしましては、文化課を十二分に督励いたしまして、青年男女に害のあるような映画は輸入しないような手を打つていただきたいと思うのであります。これに対する政務次官の御答弁を願います。
  92. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは取締りという言葉は今は当てはまらぬと存じますが、そういう意味における一種の映画指導という意味のことは、またほかの省の部局でやることと存じますけれども、お話のように最も優秀な、また世界の文化を紹介するに最もよいというものにつきましては、今後大いに外務省も努力して行く考えであります。
  93. 太田一郎

    ○太田政府委員 先ほど佐々木委員引揚げ問題についての御質問に補足いたしておきます。三十一万六千という数字について、これはいろいろな形で発表したらどうかというお話がありました。佐々木委員がごの引揚げ問題について非常に御熱心なことは私もよく存じておりますし、実は私も非常に一生懸命にやつておるつもりでありまして、とにかく三十七万のうち、この五年間にあらゆる努力をいたしまして、外務省で三十一万六千何百というカードをつくりまして、この人はだれがどこで見た、どういう通信があつた、留守宅からどういう報告があつたというようなことを一々カードにつくりますことは、これはやつております者から申しますと非常な努力でございまして、今日やつと三十一万六千何百という数字発表することができたことは、私どもとしても非常に喜んでおるわけであります。佐々木委員の御希望はまことにごもつともでありますから、なるべくそういうことにしたいと思つております。  なお三十一万六千のうち、約三十万というものは留守宅からの届出があるものであります。そのほかに本人から通信があつたとか、何とかいうものも加わつておりますが、要するに留守宅から通知のあつたものが約三十万あるということを御了承願いたいのであります。ただ御承知通り、千島でありますとか、樺太でありますとか、あるいは満州などにおきましては、長い間そこに定着いたしまして、一家族そろつてそつちへ移つているというような人があるために、留守宅がないという問題もありますし、そのほか広島とか、長崎というようなところのように、留守宅が全部焼けてしまつたというような問題もありますので、これはそのほかにもダブつているわけですが、留守宅の届出ができないというものもあるということは、佐々木委員も御推測願いたいと思います。ちよつと補足いたしておきます。
  94. 守島伍郎

    ○守島委員長 高田君。
  95. 高田富之

    高田(富)委員 今の引絡げ問題について簡單にお伺いいたしたいのですが、今の御説明によりますと、三十一万六千は留守宅からの報告によるものであるということでありますが、そうすると、その留守宅なるものの中で、未帰還者給与法、特別未帰還者給与法等によつて給与の支給を受けている者は、現在両方合せて三万ぐらいだつたと思うのですが、そうするとそれ以外の者は、留守宅からの通知があつてというくらいはつきりしておりながら、そのほとんど全部の者が未帰還者給与法による給与を受ける資格がないということは明らかになつているのですか。
  96. 武野義治

    ○武野説明員 ただいまの未帰還者あるいは特別未帰還者給与法の該当者の問題につきましては、厚生省の方からお聞き願いたいと思います。
  97. 高田富之

    高田(富)委員 はなはだ不誠意な話ですね。これは非常に問題になるわけです。現在給与を受けるために、もらいに行つても、もらえなかつたという例もあるということを、ある委員が引揚委員会で言つている。それにはどうしても留守家族の実態をつかんでいる外務省が、報告があつてちやんとわかつているはずですから、そうすればこれこれの者は給与を受ける資格がある者であるということを、ちやんと通知をして、そうして給与を受ける資格のある者にはどんどん払わせるということをしなければ、厚生省で調査をする、外務省で調査をする、外務省は外務省で調査をする、まるでその間に連絡もないし、食い違いがあるというのでは、まつたくお話にならない。この三万と三十万はばかに開きがあり過ぎる。その三十何万という留守家族は、おそらくこれはないのだろうというふうに引揚げ関係では理解しておるわけです。これは常識的に考えられぬ。しかし留守家族があるということに外務省ではなつておる。これはちやんと明確にして連絡をしなければいかぬと私は思う。どうしてそれをはつきりさせられないのですか。
  98. 武野義治

    ○武野説明員 ただいまの引揚援護庁関係からお答え願いたいと申し上げたのは、支給の該当者の数でございます。私どもは引揚援護庁との間に十分連絡をとつておりまして、そうした給与を受ける該当者につきましては、誠意をもつて調査に当り、また連絡上遺憾のないようにやつております。御承知のように、外務省では特別未帰還者給与法の関係で、いろいろ調査をやつておるわけですが、あの法律では現実に生存というものが確認され、留用状態にあるという制約がございまして、だれでも彼でもがそれに該当するというものではないのであります。従いまして、確実なそういつた現地からの情報に基いてやつております。従つて該当者は相当少いということは考えられます。実際に支給の対象になつている数につきましては、関係の援護庁あたりからお聞き願いたい、こういうわけです。
  99. 高田富之

    高田(富)委員 これはさつきも質問があつたかと思いますが、樺太には幾ら、どこには幾らというように、残留している地域別に人数を明らかにする。それから留守家族はちやんとわかつておるから、府県別にどの府県には幾ら、どの市町村には幾人ということを、はつきり発表していただく必要があると思うのです。それらの留守家族がわかれば、われわれも自分の地元のところへはちやんとあいさつにも行かなくちやならない。それはどうしても援護運動の先頭に立たなければならぬのでありますから、それをひとつ明確にやつていただく必要があるのです。それが不明確で、とかく数字論議ばかりやつてつたのでは、家族の人たちに対してもはなはだ申訳ない。至急に府県、市町村別の数字をお示し願いたいと思うのです。さつそくこれはやつていただきたいのです。
  100. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先ほど佐々木委員の御質問内容も同様でございまして、今高田君のお話の点も、先ほどお答え申し上げましたように、なるべ御希望に沿うようにいたしたいと思います。ただ数が多いのでございますから、ここ近々というわけには参りません。なるべく早い機会にするようにいたしたいと思います。
  101. 高田富之

    高田(富)委員 正式に発表しているのだから、さしつかえのあるはずは全然ないと思うのです。ぜひ至急にひとつやつていただきたい。
  102. 草葉隆圓

    草葉政府委員 なるべく至急にいたします。家族は通報もございますし、こちらも連絡しておりますから、よく家族自身は承知しておられるはずだと存じます。
  103. 高田富之

    高田(富)委員 それは至急にお願いすることにしまして、時間がなくなりますから、もう一つだけ外務次官にお伺いしておきたいと思います。これは総理大臣もしばしば言明しておりますように、何も單独講和でなければならぬと言つておるわけではない。全面講和、けつこうでございます、これが理想的でありますということは、常に言つておると思う。ところが最近の情勢を見ますと、朝鮮におきましても事態がああいうふうに発展して参りまして、イギリスインドその他の国、特にイギリスあたりでは中華人民共和国政府を承認し、これを国連に加入せしめるという立場をとつておる。この間のアトリー首相とトル—マンの会談におきましても、この辺のイギリス主張が非常に明確に出ております。同時にこの問題について、関係各国会議が持たれようという形勢にもなつておる。またヨーロツパにおきましても、ソビエトの提案による四大国会議の可能性も出て来ておる。こういう事態でありますから、むしろ單独講和をこの事態の中でやろうと考える国がありましても、これを押し切ることは、現在の情勢においては、はなはだ困難になつて来ておる。あべこべに、全面講和によつて事態收拾しようとする方向へ動きつつあるというのが、今の動きではないかと思うのです。そうしますと、最近の周恩來外相の対日講和に関する原則を公式に発表されましたことは、これはわが国にとりましても、すごぶる重大な関心事でなければならないと思うのであります。今まで單なる理想として総理が常に考えており、はなはだ実現性の困難と思つておりましたことが実はきわめて実現の可能性が出つつあるという状態にあると思うのです。ここで政府代表されまして、次官からこの状態に対しまして、特に周恩來外相の対日講和に関する公式発表につきまして、政府の日ごろの全面講和けつこうであるという立場から、これに対する見解を発表していただきたいと思う。     〔「内容による」と呼び、その他発言する者あり〕
  104. 守島伍郎

    ○守島委員長 お静かに願います。
  105. 草葉隆圓

    草葉政府委員 周恩來中共政府首相兼外相の十二月四日の声明に対する見解を日本政府発表することは、私は妥当ではないと存じます。ただ高田君の今のお話は、こういう世界情勢になつたから、政府は單独講和を今まで主張しておつたのが、全面講和でなくてはならないじやないかということに、ここで切りかえて意見を述べたらどうかという意味が多く含まれておるように感じましたが、政府は今回の第九臨時国会の初頭に総理が施政方針で申しましたように、一日も早く、一国も多く講和を結ぶという線にかわりはないのであります。この点、あらためてここで申し上げます。
  106. 高田富之

    高田(富)委員 実はそれは私が聞こうとしておる答弁ではないのです。というのは、あなたの方から先に、政府は今まで單独講和主張しておつたが、全面講和に切りかえられる意思はないかという質問ではないかというふうにとられるところに、まことに心外な点があるので、私はそう言つておらない。理想はぜひ全面講和がいいのだけれども、今の情勢ではやむを得ず一国とも多く、早くやるというのが政府の立場である、こう私は理解しておりますからこそ、今回国際情勢が、政府考えておる理想が実現できそうな方向へ動いておるのではないか。だから中共でああいうふうな発表をされましたことについては、これはほんとうにけつこうなことである。われわれの理想とするところが、次第に実現される傾向になつて来たというふうな御見解の発表が期待できる、こう私は思つて質問をしたのであります。ですからその点をもう一度はつきりと言明していただきたいと思う。
  107. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは戦争状態にありました全体の国々講和を結ぶというのは、いつも総理も申しますように、最も好ましいことであります。また希望しておる点でありますが、現実がそう行かない場合には、一日も早く、一国とも多く講和を結ぶという線には、かわりはないと申し上げたのであります。
  108. 高田富之

    高田(富)委員 そうしますと、結局理想は全面講和だというふうなことを言つておるのは、これは單なる遁辞にすぎなくて、あくまでも單独講和あるいはいわゆる多数講和で押し切つて行くのだ、情勢はどうなろうとも、この方針にかわりはないというのが政府の立場である、かように了解していいわけですね。
  109. 草葉隆圓

    草葉政府委員 政府は受身でありますから、向うからずつと日本との講和を希望されて来る国々に対しましては、もちろん喜んでいたす次第であります。従つてこちらから、おい来いという立場じやないので、日本としては従来から申しておりましたことと同様であろうと存じます。こちらが主催をして、そうしてこちらが対等の地位における講和という立場になりますと、全面講和でなければならないという主張が、成立つ場合もあり得ると存じまするが、そうじやない立場でございまするから、ただいま申し上げたようなことを考えている次第であります。
  110. 高田富之

    高田(富)委員 そこでこの間もしばしば問題になりました外交白書ですか、ああいう立場で行きますと、結局二つの世界になつてしまつているので、この両方の世界が一致して日本に対日講和をやるということは、とうていあり得べからざることだ、どつちかへくつつかなければいけないのだというようなことで、初めからきめてかかつてしまうような立場は、今のあなたの言明によりますと、これは間違いである、あくまで受身なんだから……。そういうことであれば中国からああいう呼びかけもあり、情勢はさつき申し上げたように動いておるのでありますから、ああいうような白書を発表するという態度は、この際捨てなければならない。あれは非常な間違いである。非常に積極的にこちらが出てしまつておる。ですからああいう外交白書のようなものは、すみやかに訂正するか、あるいは撤回することがこの際最も時宜に適しておると考えるのでありますが、そういう意思はありませんか。
  111. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはこの前実は外交白書という意味ではなかつたのでありますが、そういう形で皆様方の御意見なり御質問を受けたのであります。「朝鮮動乱とわれらの立場」という、あの八月、九月の出版物のことと存じますが、あのときもるる御答弁申し上げましたように、あれは世界の情勢のありのままの姿を率直に伝えたのであつて、決して政府が政策をもつて外交方針を示した白書という意味ではないとお答え申し上げた通り、そういう意味の世界情勢を率直にありのまま訴えたのが、あの「朝鮮動乱とわれらの立場」でございますから、従つてここで今その問題を取消すとか、取消さぬとかいう問題とは、おのずから違うと思つております。さよう御了承願います。
  112. 守島伍郎

    ○守島委員長 本日はこれで散会いたします。     午後一時十四分散会