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1951-07-24 第10回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年七月二十四日(火曜日)     午前十一時三十六分開議  出席委員    委員長 若林 義孝君    理事 池見 茂隆君 理事 小西 英雄君    理事 坂口 主税君 理事 受田 新吉君       淺利 三朗君    北川 定務君       庄司 一郎君    高橋 權六君       福井  勇君    小林 信一君       中曽根康弘君    岡  良一君       堤 ツルヨ君    今野 武雄君       羽田野次郎君  委員外出席者         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (管理局引揚課         長)      吉岡 俊夫君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         厚生政務次官  平澤 長吉君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局長)    田辺 繁雄君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局援護課長) 山本浅太郎君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  石井 昭正君         郵政政務次官  山本 猛夫君         郵政事務官         (郵政局管理課         長)      板野  学君         建 設 技 官         (住宅局長)  大村己代治君     ————————————— 七月二十四日  委員伊藤郷一君及び奈良治二君辞任につき、そ  の補欠として福井勇君及び淺利三朗君が議長の  指名委員に選任された。 同日  中曽根康弘君が議長指名委員補欠選任さ  れた。     ————————————— 六月五日  海外同胞引揚に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  海外同胞引揚問題に関する件  留守家族援護に関する件  引揚者定着援護に関する件     —————————————
  2. 若林義孝

    若林委員長 これより会議を開きます。  本日は主として海外同胞引揚げ問題、留守家族援護に関する件及び引揚者定着援護に関する件につきまして議事を進めることにいたしますが、終戦後六年を経、国内もほとんど復興し、講和条約締結さへ近きに控えた今日、いまなお多数の同胞が未帰還のまま残留せられておりますことは、まことに痛心のきわみでありまして、留守家族の心情思うに余りあるものがあります。また引揚者定着についても、いまだ悲惨なる生活を送つておられるものもありまして、その援護は十分とは申せません状態であります。過般来各府県を数班にわかれて御視察を願つたのでありますが、その調査の結果等を含めまして、なお昨日来全国留守家族大会が東京におきまして開かれまして、悲痛なる叫びがわが国会へも届いておるのであります。それらを中心といたしまして、関係当局意見をただし、本委員会の使命を十分に果したいと考えるのであります。発言の御通告がございますが、ただいま援護局並びに郵政関係当局が見えておられますので、まず郵政関係に関する御質疑から発言を許します。庄司一郎君。
  3. 庄司一郎

    庄司委員 本員は外務省政府委員厚生大臣郵政政府委員等に簡単な質疑をしてみたいと思うのでありますが、さしあたり郵政大臣代理山本政務次官がお見えでありますから、簡単に二点に関して伺つてみたいと思います。  その第一は、山本政務次官におかれては、万国の郵政関係の国際的な大会でございましたか、さような会合に日本政府代表されて御臨席をなされた際に、終戦六箇年いまだに帰られません境遇にあるところの幾多のわが在外同胞のために、そのすみやかなる帰還の日を実現せんがため、あるいは政府職員という立場ではなかつたかもしれませんけれども、大きな国民外交的な手を打たれたということを当時新聞報道において本員は拝見をしたのであります。よつて本日は、郵政政府委員という立場としてはあるいはどうかと思いますけれども、とにかく日本政府代表されて行かれた、郵政大臣の御代理であられたのでありますから、全国留守家族諸君に多少なりとも前途に光明を持たせる意味においても、かような公式な席上において、あるいはローマ法王に、あるいはフイリピンでございましたか、政府要路等に向つて熱烈に要請されたそれらの顛末、経緯並びにその結果等に関して、簡単なりといえどもお伺いすることができ得るならば、まことに本委員会としても参考一端なり得ることであると思うのであります。その点最初お伺いしてみたいと思うのであります。
  4. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 私の現在の所管ではございませんが、お尋ねなりました点をお答え申し上げます。仰せの通り私は政務次官現職のまま世界連邦会議に列席をいたしました。この問題等につきましては、当然私どもも心から憂慮いたしておりますので、世界連邦会議の席上におきましても、全世界から集まりました代表に対しまして、海外抑留をせられております人たち実情日本の遺家族の実情等をつまびらかにいたしまして、全世界代表の好意ある良識によつて、一日も早く海外抑留されております同胞日本帰還が促進されますよう協力をせられたい旨を述べて参りました。なお同時にマニラ郊外に収容せられております戦犯死刑囚及び濠州におりますところの死刑囚人たち助命請願に関しまして、ローマ法王に閲見を申し入れました。快くローマ法王ピオ十二世は会見を差し許されまして、お目にかかつたのでございますが、その際にも、抑留者の問題、戦犯死刑囚刑量軽減等につきまして、でき得るだけの尽力をしようと誓つてくれられたのであります。そのためか、あるいはどうかわかりませんが、おととい、さきおとといでありましたか、ローマ法王庁におります私の友人から手紙が参りまして、濠州の方は死一等を滅ぜられたと伝えております。なおマニラ戦犯死刑囚、あるいは海外抑留せられております方面関係のことに関しましては、ローマ法王庁はあげて尽力中であると手紙を寄せて参つておるのでございます。全世界をあげての平和を念願といたしまして集まりました、理想主義者の集まりでありましたローマにおける世界連邦会議におきましては、全世界代表ともこの日本の衷情を心から取上げてくれまして、協力を与えようと誓つてくれたのでありますが、ローマ法王庁におきましても、ただいま申し上げましたように、鋭意あとうる限り、法王庁の力の及ぶ限り尽力をしようと誓つてくれましたことは言をまたない事実でございます。以上を申し上げて御参考に供する次第であります。
  5. 庄司一郎

    庄司委員 まことに御苦労さまで、ございました。大へんありがたいことでございます。  第二にお伺いしたいのは、去る第十国会において——おそらく政務次官においても、お帰りの後においてそれぞれ他の政府委員よりお聞きとりのことであつたと思いますが、第十国会国民より提出をされた請願の中に、留守家族援護するために、全国三十有万世帯の留守家族約百七十万でざごいますが、それらの留守家族の一部の人を除いて、その大部分の留守家族はあるいはその父いまだ帰らず、夫いまだ帰らず、その留守家族生活の実態というものは、まことに悲惨をきわめているものが非常に多いのである。しかるに政府対策としては、未復員者給与法、あるいは特別給与法というような法律を制定されて、該当者には多少すずめの涙程度の給与が交付されておる。また生活保護法に準拠して、民生委員の申請により、市町村を経てそれぞれ多少の生活援護費が給与されておる場面もあるが、大体においてありとあらゆる困難な生活終戦六箇年においてなめつくし、売る物は売り、金にかえるものはこれをかえ、悲惨な生活のどん底に陥つておる留守家族が大多数である行政府はこれを見殺ししてはならない。あたたかい愛の手をあくまでも積極的に延ばしてもらいたい。その一つ方法としては、あの赤い羽の共同募金制度はあるけれども、それらの共同募金分配は、今日留守家族の面へは均霑していないのである。そこで郵政政務次官におかれては、それぞれ審議機関を持たれておるそうであるが、かりに名前をつければ愛の切手というようなものを発行されて、郵便切手現行八円のものを十円にするとか、さよう方法で得たるところのその幅を留守家族生活困難者等に、また在外同胞引揚げ資金一端にこれを交付される御意思はないか。こいねがわくはさような生きた仕事をしてほしい。しかるに郵政省におかれては、毎日新聞社が主催さたれ全国風光明媚なるところの山岳、港湾、あるいは沼湖、その他の名勝、あるいは景観の地を紹介するために、それぞれ観光地特別切手発行されておるが、これらははなはだもつてぜいたくなやり方である。ただいま申上しげたような趣意において、全国留守家族の中の生活のまことに困つておる同胞のために、ドイツではすでに発行している愛の切手というようなものを発行され、それより得たある一定の差額利潤をもつて、これを適当な方法において、あるいは厚生省等にその交付分配の権限を委託され、そしてこの全国留守家族——あるいはその間には病のために悩む者あり、あるいは子供の教育が十二分に行えない気の毒な同胞もあり、また留守家族の中には、最近におけるこの司法警察関係の統計を見ましても、いわゆる街頭のパンパンガール、さようないまわし方面生活のために堕落せざるを得ないよう境遇の者も若干見えて参つた。これらの気の毒なる同胞援護するために、思い切つて愛切手発行され、その資金をもつて全国幾多の困窮の底にある同胞援護する方途をとつてもらう方法がないか、願わくはさようにしてほしいというよう請願が本委員会提出されて参つたのであります。第十国会における在外引揚げ促進特別委員会慎重審議の上にこれを採択することに決定いたしておるのであります。なおまた全国留守家族の同盟、いわゆる全協等におかれましては、あなたのお役所最高幹部のところに何回も陳情に行かれて、国会において取上げられたる請願採択趣旨のすみやかなる実行を懇請されておるよう状態であります。よつて山本政務次官におかれては、外国のさよう制度も見て来られたのであるから、観光地帯を紹介するための特別切手さえも発行されておるのである、いわんや生きておる人間、生きんとしておる苦悩の同胞を救援するために、思い切つてあなたの方のお役所にある特別切手発行に関する審議会等にこれを付議され、そしてこの気の毒なところの同胞を救援する御意図に出る方法がないものであろうか。あるいは内閣次官会議等へもこの問題を持ち出されて、皆さんの御賛同を受けてすみやかに仮称愛切手発行によつて、気の毒な同胞を救援する方途を講じていただくわけには行かないでしようか。政治は空理空論であつてはならない、すなわち現内閣が高く掲げておるところの社会保障は、ただテーブル上のペイパー・プランであつてはならない。愛の切手のごときは、けだし名実ともに最も人の心を愛し、あたたかい愛情を普遍化するところのけつこうな方法であると考えておるのであります。これに対して政務次官はどういうお考えであるか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  6. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 私の所管についてお答え申し上げます。御質問の要旨は愛の切手発行しないか、もう一つはそれによつて得た利益をもつて留守家族援護関係に資したい、こういうお尋ねように聞いたのでございますが、郵政省といたしましては、御承知通り先年来共同募金関係の一円を加えたお年玉つき年賀はがき発行いたしまして、今年のごときは、御承知ように四億円を共同募金委員会の方におまわしをいたしてございます。これは各県の共同募金委員会の方から引揚げ援護関係団体の方におまわしをしておるはずでございます。なおこれらの金額等につきまして、過少に過ぐるというようなことがございますれば、各県にございます引揚げ援護関係方々共同募金委員会の方に御交渉くださいまして、この中からさらに増加をせられるようにおとりはからいを願えればたいへん仕合せと存ずる次第でございます。なお来年の正月使われますお年玉つき一円を加えました年賀はがきも、省議によりまして三億五千万枚を発行することに決定をいたしまして、目下その作成中でございますが、かくいたしますれば、今年の四億円には満ちませんけれども、三億五千万円の金を共同募金委員会の方へおまわしすることができるはずでございます。どうか各県の共同募金委員会の方へ御交渉を願つて、増額をせられますようにおとりはからいを願えればたいへんけつこうと存ずる次第であります。なお愛の切手等につきましては、郵政省郵務局におきまして鋭意請願の御趣旨に沿うよう研究を進めて——承知通りこれらの切手発行等につきましては、郵政審議会の議を経なければ相なりませんので、御趣旨によりまして郵政審議会の方に遅滞なくお伝えを申し、郵政委員会の議を待つて当局といたしまして善処いたしたい、かよう考える次第であります。
  7. 庄司一郎

    庄司委員 山本政府委員のせつかく御好意ある御答弁でありますが、あなたのお役所お年玉つきはがきで得られたる四億円の共同募金提出は、まことにけつこうでありますが、ただいま本員の伺つておる、また念願しておる全国留守家族、またその母体である都道府県留守家族連合会、そういう会を通して、あるいは地方庁を通して、留守家族の方にはびた一銭行つていないのであります。その共同募金分配は、大体地方都道府県においては同胞援護会、これには行くのである。だが留守家族団体、あるいは留守家族そのものには行かないのであります。こういうこまかい末端のことをよく山本さんにおかれましでは御研究を願います。行つていないから、さよう請願が出て来たのであります。留守家族団体、あるいはその個々構成メンバーである留守家族に普遍化され、普及化されて、あたたかい愛の結晶分配されるならば、何ぞや事新たに請願が提案されて来る理由はないのであります。そこでただいま申し上げたよう趣旨において、特に留守家族生活は疲れ果てておる、これを救援し、これを擁護するために愛の切手発行してほしい、それをひもつきにして地方交付分配、あるいは流してほしいという請願が現われて参つたのであります。お年玉つきはがきの四億円、あるいはその三分の一なり四分の一なり留守家族の家庭に、お台所に愛の結晶として潤い得るならば、まことにけつこうであります。また郵政省としては、せつかく集めていただいた四億円のうち、その一部を留守家族方面にもひもつき的な流し方をされるならば、これはたいへんありがたいことでありますが、そういうこまかい点をひとつ御検討いただいて、社団法人であるところの同胞援護会には行くけれども、留守家族団体あるいは個々の成員には行かない。ここをはつきりしていたたいて、ただいまお願いを申し上げた愛の切手発行に関しては、国会において採択をされたのでありますから、国会採択がつめたい結果を招来するようなことであつてはならない。どうか欧米をまわられて近代的な社会保障の最も感覚の鋭い山本さんにおかれては、ぜひ留守家族が救援されるように、十分の可能性を持つて事ができ得るように、最善の御努力を懇請いたしまして、この件に関しては本員の質問をこの程度にとどめまして、厚生省並び外務省関係の本員の質問を保留さしていただきます。
  8. 堤ツルヨ

    堤委員 議事進行について……。ただいま十二時であります。委員会のあることは、すでに公報をもつて相当以前から各出席を求めておる大臣または政府委員方々にも御存知のことであります。二時間もわれわれは持ちましたが、政府関係方々がかくのごとく御出席にならないでは何ら意味をなしません。私は皆さんそろつてお出ましにならないのを少し不可思議に思うのであります。何かやむを得ない用事があるかとも思いますけれども、このままで委員会を続行されましても意味がございませんから、全員長におかれましては即刻出席を求めて、意味のある委員会ができるようにおとりはからいを願いたい。
  9. 若林義孝

    若林委員長 ただいま堤ツルヨ君から政府関係者出席についての御発言があつたのであります。きよう関係者委員会といたしましては手続をふんで、政府関係者もそのことを目標に出席の用意があつたようでありますが、一つは閣議があること、一つはある人がちようど出がけに、留守家族の各団体方たち政府当路者陳情にまかり出ておる時間とぶつかつたわけであります。その陳情を聞いておられますのと、また参議院におきましても本委員会が開かれておりますので、重複をいたしております。そういう意味で入れかわり立ちかわり、また全部そろうということもなかなかむずかしいものでありますから、まず御出席関係当局から意見を聴取するようにいたしたいと思つたのであります。きようは平日と違いまして、本委員会出席を求めております関係官庁留守家族方たちが悲痛なる叫びをもつてつておられます。そういう関係がありますので、ひとつ御了承願いたいと思うのであります。
  10. 堤ツルヨ

    堤委員 いたずらにこれだけの国会議員を待たしておいて、そうしたことは少し委員長の不手ぎわだと思います。そうしたことが予想されますならば、なぜ時間的にずれをこしらえて委員会お開きにならないか、私はきよう考えるのであります。われわれは委員会に出るのが本分でございますから、何事もしないで待つておりましたけれども、さようなことを知つておりながら委員長がこの十時から開会されるということは、私はある意味においては誠意を欠くものである。かように解釈をいたすものであります。どうかもう一度お考えを願いたいと思います。このままでは開いていただいても意味がございません。
  11. 若林義孝

    若林委員長 堤委員からの御発言でございますが、私は誠意をもつて、この時間を選んだのであります。これは響く人には響いておることだと思います。この件に関しては御了承願いたいと思います。  なお山本郵政次官が見えておりますから、関連する事項で御質疑のある方は御発言を許します。、
  12. 受田新吉

    受田委員 ただいま庄司委員質問に対しての山本さんの御答弁の中で、郵政審議会にこの記念切手発行する件をお諮りしたと言われたのか、しようと思うと言われたのかはつきりしませんでしたが、この点すでに審議会にかけておられるかどうかをお尋ねしたいと思います。
  13. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 受田委員にお答え申し上げます。請願の御趣旨を体しまして、郵政省郵務局におきましては、この問題につきまして鋭意検討を続けておりまして、最後の段階に入りますれば、御承知よう郵政審議会の議を経なければならない、かように申し上げたのでございます。
  14. 受田新吉

    受田委員 郵政審議会開催回数はどのくらいになつておるのか、毎週一回とか一箇月に一回とか、こういう郵政審議会開催状況についてお伺いいたしたいのであります。
  15. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 回数の制限はございません。必要に応じまして随時開催されるように相なつております。
  16. 受田新吉

    受田委員 現実の問題として、審議会が最近いつごろ行われたでありましようか。六月以降の分をお伺いします。
  17. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 四月中に行われたのみでございまして、あとはさして重要事に迫られておりません関係から、それ以降はまだ開かれておりません。
  18. 受田新吉

    受田委員 この抑留同胞救出記念切手発行する請願は、すでに第五国会においても本院においてこれが取扱われておるのでございます。また第七国会においてもこれが議題にされて来たので、第十国会で事新しくこの問題が取上げられたわけではありません。従つてこの抑留同胞救出記念切手は、単に一般記念切手と違いまして、特殊の要務を持ち、また講和を前に控えまして最終段階に達している問題であつて、これから先何回も——ほかの結核対策の問題とか、特殊の問題であつても、そう急に事を要しないようなのと違いまして、講和直前重大段階における特殊の記念切手発行で、しかも長くこれが繰返されるという性質のものでありません。従つてこの記念切手は、このたび発行しなければ用をなさないという非常に差迫つた記念切手であつて、帰らざる人たちに対する愛のはなむけとして、一般国民に周知徹底させるという特殊の任務を持つておるのであります。この記念切手が、本院ですでに三回にも及んで採択されたという請願趣旨は、そこにあるのであります。政府において、早急にこれを取扱うべきであるという衆議院議長内閣送付請願であります。従つて郵政省としては、早急にこれを取扱わなければならないという国会要請にもかかわらず、すでに第十国会終了後二箇月になんなんとしている今日、なおかつ政府態度が決定しないで、郵政審議会にはかることの可否についても結論を得ていないということは、非常に遺憾であります。  私はこの意味において、この記念切手は当然取扱うべきものか、郵政省としては、政府態度として取扱うべからざるものかという態度はつきり早くおきめになつて、そうしておきめになつていただけば、われわれとしてさらに次に打つべき手があるのでありまして、荏苒時日を費やしているということは非常に遺憾でありますから、政府態度をすみやかに決定すること、しかもこれは当然取上ぐべき性質のものであつて、類似の記念切手要請がたくさん出ていて、どれにしたらいいかという判断に苦しむ性質のものでないので、政府としては早くこれを取上げていただきたい、郵政審議会をすみやかに開いて、これにかけてもらいたい。もう一つは、先ほどの庄司委員からの質問の中に、共同募金配付対象の中に引揚げ関係団体が入つていないこと、引揚げ団体はその運動を展開するのに非常に苦痛を感じておるということ、これらの問題についてでき得べくんば郵政審議会お開きになつて、そうして厚生省当局を呼び出し、外務省当局を呼び出して、内閣全体の問題としてこれを解決していただく。一郵政省の問題でなく、国民運動の問題という立場から、政府はあげてこの問題を取扱うという趣旨によつて早急に態度をきめていただきたい。平素熱意のある山木次官として、この問題について特に決意をあらためて努力をしていたただきいということを要請しておきます。
  19. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 本省といたしましては、愛の切手に関しますお考えと同断でありまして、さつそく郵政審議会誠意をもつて御伝達を申し上げます。なお郵政省の行つておりまする共同募金配分関係につきましては、郵政省は二十六万の従事員をあげてこれを取集めますことに鋭意努力をいたしておるのでありますが、取集められました結果といたしましては、厚生省の方に配分方はすべてゆだねておるような次第であります。郵政省の取集めます共同募金関係の処置におきましては、あらゆる擁護関係をする方面に配分されてほしい、そういうような建前から二十六万の従事員をあげてこの事に当らせておる次第であります。配分関係等におきまする責任を回避する意味ではございません。配分関係等におきましては、一切厚生省におまかせいたしておる次第であります。御了承願いたいたいと思います。
  20. 中曽根康弘

    中曽根委員 議事進行についてちよつと。きよう委員会を開いた趣旨はすでに委員長も御存じの通り金国大会があつて、それに時を同じくして国会としても熱意外国に訴えなければならぬ、こういう趣旨が私は本旨だと思うのであります、そこでわれわれが委員会においていろいろ論議をする対象というものは、当然講和条約引揚げの問題でなくちやならぬ。いわゆる捕虜条項があるかないかということが中心問題で、それが心配で実は全国大会が行われているのです。従つて当然この委員会には主管大臣たる外務大臣、或いは厚生大臣が出て来なければならぬ。きよう十時からわれわれは待つておるけれども、一向その顔を現わさぬ。われわれは何もお茶を濁しにこの委員会に来ておるのではない、そこで一体何時に厚生大臣外務大臣外務大臣が来られなければ外務次官が来られるのか、それを明確にしていただきたい。われわれはお茶を濁しにここに来たのではない。これは委員長も御同感だと思いますから、そのことを明確にしていただきたいと思います。そうしないで、一体あつちに仕事で出た、こつちから面会があつたというようなことで、一時になるか二時になるかわからぬというようなことでは、この委員会を開いた趣旨がわからぬということになりますので、委員長の決意と、これからどういう処置をとられるか伺いたいと思います。
  21. 若林義孝

    若林委員長 外務政務次官は、陳情団に応接終了後ただちに出席の旨の申出がありました。厚生大臣は閣議終了後ただちに出席せられます。まず厚生大臣にかわつて援護庁の田辺局長が見えておりますから、郵政省関係については……。
  22. 中曽根康弘

    中曽根委員 私ども先ほどから待つていると、なるほど外務次官は引揚者団体と話をしておるということですが、もうすでに一時間以上たつておる。あるいは閣議にしても、大体十時なり十一時ごろから始まるのであつて、そんなにだらくと閣議をいつまでもやるはずはない。一体どういう状況にあるかもう一回尋ねていただきたい。それで一時から来るなら一時から、二時から来るなら二時からときつぱり開会閉会の進退をきめていただきたいと思います。
  23. 若林義孝

    若林委員長 内閣官房長官の出席は午後二時半になつております。それから厚生大臣も閣議終了後これに準ずるのではないか。それから外務政務次官はもうただちに来るという連絡になつております。それから郵政大臣は出張中でございます。——援護局長に御質疑を始めて異議ございませんか。
  24. 岡良一

    ○岡(良)委員 援護局長ではございませんが、山本次官にお尋ねをいたしたいと思います。中共地区並びにソビエト社会主義連邦における同胞引揚げについては、ローマ法王庁としては将来の努力についてどういうようなお約束をしておられましたか、ちよつと、お尋ねいたします。
  25. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 私がローマ法主に謁見を差許されましたのは、本委員会に御出席になつております福井勇代議士外私も含めまして五名の代議士が謁見を差許されたのでございます。全般のお考えといたしまして、海外抑留されております日本海外抑留者、中共といわず、ソ連地区といわず、全体のものを含めての関係でお願いをし、お答えをいただいた次第でございます。
  26. 岡良一

    ○岡(良)委員 四月の二十日の日に私もヴアチカンでピオ十二世にお目にかかりましたが、その日ピオ十二世にたくさんの謁見があつたので、十五分ばかり一問一答でお願いをして、あとは国務卿のモンテーニ氏と約三時間ばかり私は引揚げ問題について従来のお骨折りを謝し、今後のことについてもお願いをいたしましたが、実は非常に残念なことには、モンテーニ氏ははつきりと、中共地区あるいはソビエト社会主義連邦等における、いわば共産党が天下をとつている地区における引揚げ問題については、ローマ法王庁としては、ローマ法王庁の枢機卿や大司教がすでに大なる迫害を受けている状況であつて、われわれとしては直接何らの手を下し得る余地がないということを申しておられましたが、山本次官はこれらの点について、もつと明確なお答えを得られなかつたでしようか。     〔「一緒に会つたじやないか」と呼ぶ者あり〕
  27. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 五人一緒に会いました。今申し上げましたように、本委員会にただいま御出席福井代議士を含む五名の代議士がローマ法王ピオ十二世にお目にかかつたのであります。ただ今お話のように、どこの地区どこの地区というようなことに関しましては、個々のお話をいたしませんでした。あとでローマ法王庁の国務長官から、戦犯死刑囚助命請願等のことをも含む海外抑留者に関するノートを提出するようにとのことでありましたので、ノートを提出して参つた次第でございます。でありますから、われわれとして中共地区あるいはソ連地区というようなことを限らずに、全般においての海外抑留をせられておる人々、あるいは戦犯死刑囚として外地の戦争犯罪人の収用所に収容せられておりまする人々等のことに関しましてノートを提出いたしまして、この種の件を陳情して参つた次第であります。お話のように、われわれは五名で参りました代議士団といたしまして、五名一緒にローマ法王に会見をいたしまして、この種のことを陳情して参つたことを明確にしておきます。
  28. 岡良一

    ○岡(良)委員 実はこれらの問題は、事実云々という点は、御存じのよう留守家族方々も従来ローマ法王庁のお骨折りや、あるいは万国赤十字社のお骨折り等については、非常な感謝を持つておるのみならず、将来についても非常な期待を持つておることは政府も御存じの通りであります。われわれも万国赤十字社のルーガー総裁にも、ピオ十二世にも数百通の留守家族手紙を携えて行きまして、ローマ法王庁なり万国赤十字社の将来についての予想なり見通しについて、はつきりとしたお答えを伺つたものですから、相当長時間にわたつてわれわれは懇請をし、また向うの見通しについても仔細にその事実について事情を聴取いたしたのでありますが、ローマ法王庁の答えはそういうわけで、モニテーニという国務卿のはつきらした御答弁では、先ほど申しましたように、実に希望が薄いということがはつきりしたのであります。なおまた万国赤十字社のルーガー委員長も、現在のところこの俘慮問題を万国赤十字社が扱うのは、今から数十年前にできた万国俘虐協定に基いた協定にのつとつてつている、これにはソ連も日本も中共も参加しておらない、従つて何ら法的根拠によつてこの問題を取扱うところの権限はないのである、ただ人遣的な立場においてこの問題について今後とも骨を折ろうとしておつたのではあろけれども、現在はとにかく、万国赤十字社そのものにソビエトが入つてもらいたいという要求をルーガー氏自身が昨年五月ソビエトに言つたところが、現在はもはや二つの世界の対立がはつきりしておるのであつて、ノイトラールな万国赤十字社というようなものは考えられないという手ごわい返事を承つているので、この引揚げ問題について挑発的な手を打つということは、赤十字社としては差控えなければならないという余儀ないはめに陥つているというようなことを、ルーガー総裁自身が実は、はつきり申されておつたのであります。そういうようなわけで、まことに残念ではありまするが、法王庁なり万国赤十字社の今後の努力というものに対しては、われわれ引揚特別委員会といたしましても、また留守家族団体といたしましても、きわめて悲観的な見通しが実は立つのでありまするが、もちろんこれが悲観的であればあるほど、なおはつきりとほんとうにわれわれ自身の力によつて、特に百五十万からの未帰還者を持つているドイツ等とも結んで、われわれ自身の力をもつて大きくこれを世界の道義と良心に訴えて行くという手が、むしろ勇気を鼓舞される姿で開かれておるのでありますけれども、こういう点については、政府といたしましても今後はもつとはつきりした実情について御調査をいたされまして、ほんとうにすべてわれわれ留守家族を中心とする国民と、西ドイツの同じ犠牲を浴びている国民、あるいはイタリヤのそれを含めた姿における国際的な規模において、われわれがこの問題を自力で解決して行くということが特に必要ではないかということを痛感いたすのであります。願わくば政府におかれましても、こういう事情について、もつとはつきりと具体的な点を十分に御調査なされて、われわれの意のほんとうにいかにあるべきかという点についての重要な基礎資料を今後御検討願いたいということをお願いいたしまして、私の発言を終ります。
  29. 山本猛夫

    山本(猛)説明員 私ども五名の代議士団は、本問題につきまして、ローマ法王陳情することだけを金科玉条と考え陳情をしたのではございません。本問題は、国際間のあらゆる良識をあげて本問題を解決しなければならないという考えの一環に沿うて、ローマ法王に謁見を申し入れ、さらにあなたのお話をされる国務卿あるいはカトツク・アクシヨンの本部長に会いまして、この問題に関しましての協力要請いたしましたのであります。従つて私どもは、ローマ法王庁において悲観的な考え方をしておるから、これは見通しが非常に困難であるというよう考えは持たないのであります。さような悲観的な考えがあればあるほど、われわれは熱情を込めて本問題の解決に当らなければならない、そういうような全般的な考えの一環といたしまして、ローマ法王庁を訪問いたしたのでございます。でありますから、私どもは私どもの歩きました欧米各国の要所要所におきまして、たとえばフランスの政治家の人々、あるいはあなたもおいでになりましたイギリスの政界の人人等にもこの話を持ち出しまして、そうしてこの問題は国際人としての良識の建前に立つてれ私どもはあげて本問題を熱情を込めて解決をしなければならないというよう意味合いで、私どもは法王庁をたずねたのであります。法王庁請願をすれば、法王に陳情すれば、あるいは国務卿にノートを提出すれば、この問題が解決するものであるというようなことを金科玉条として訪問いたしたのでありませんことを御了承願いたいのであります。
  30. 福井勇

    福井委員 山本郵政政務次官からちようど私の名前が出ましたので、関連事項といたしましてちよつと申し上げておきます。  ローマにおきましての私たちのこの問題に関する運動請願の状況については、山本郵政政務次官のお言葉と少しも違いがございません。私の申し上げたいことはそこでありますが、なおその後私たち帰国いたしまして、去る六月二十二日にシーボルド外交局長とその日の午後四時に会見いたしまして、この問題について相当長くひざを交えていろいろ懇請したり、あるいはまたいかなる運動をした方が効果的でございましようかということについて懇談したのでありますが、たまたまその中に、講和条約締結直前になつておるので、いろいろ各国々の方面に刺激を与えるような問題があつてはというので、一応公の内容の発表を差控えた方がよかろうというシーボルドさんの意見によりまして、本委員会とか、あるいはその他のしかるべき団体への公表ということはまだ差控えておる現状でございます。付言しておきます。
  31. 若林義孝

    若林委員長 本件に関する御発言はございませんか。——暫時休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  32. 若林義孝

    若林委員長 休憩前に引続き再開をいたします。  外務政務次官その他まだ御出席ございませんが、幸い文部省大学学術局長の稲田清助君が見えましたので、留守家族の子女教育に関する当局の取扱い方について質疑を試みたいと思います。これに関し発言を許します。
  33. 小林信一

    ○小林(信)委員 私はこの留守家族その他戦争のための犠牲者という方たち援護の問題を、一般生活困窮者と一緒に考えるか、それとも国民感情というふうなものを相当考慮して、別個に取扱うかというふうな基本的な問題をお聞きして、しかる後に文部省当局留守家族あるいは遺家族の方たちの子弟の教育に対して、どういうふうに特別に考慮されるかということをお伺いしたいのですが、そういう根本的な問題はまたいずれあとにしまして、この際稲田局長に、私たちが地方をまわりまして幾多目撃した問題からしてぜひともお伺いしなければならぬ点を申し上げるのでございます。  私たちがたまたま視察の途中、車中で目撃したのでございますが、私たちの参りましたのは北陸地方あるいは東北地方でありまして、米の産地であります。従いまして米をわずかずつ持つて運ぶ方たちがあつたのでありますが、もちろんそれによつて生活を維持しておるよう方たち外れしかも御婦人でありました。それで同行の議員の方たちが、これに対していろいろ質問を試みて、結局その方たち留守家族方たちであり、あるいは遺族の方たちであつて、それで夫をなくされ、あるいは夫を抑留されておるために、自分の生活を維持するというよりも、夫のいない、あるいは夫のない婦人としての責任から、せめて子供には、両親のある子供と同じような教育をさせて自分の責任を果し、いない夫に対して、あるいはなくなつた夫のために自分が責任を果すというような、そういう非常に私たちが涙をもつて聞かなければならぬようなお話を聞いたのでございます。ほかに職業を見つけようとしても見つけることができない。法的にはこれは違反しておることかもしれぬけれども、こうしなければ、子供のことを考えるときにやむを得ないものがあるのだというようなことで、子供の教育に対する切々たるものを私たちは伺つたのでございます。その結果同行議員の中には、奥さんこれは非常にわずかでございますが、帰りにキヤラメルなりつてつてくださいと言うところまで私たちは動かされるものを持つたのでございますが、ここで具体的に、局長は非常にお忙しいようですから、私二、三項目を申し上げて御意見を承りたいと思います。  今年度わずかでございますが、教科書の無償配給がなされました。しかし一般的な状況から考えますと、一般父兄はこれによつて義務教育の負担が軽減されたというような感じを持たないし、実際におきましてもそういう効果がないようでございます。私はこの際、もしああいう財源が今後捻出できるならば、留守家族方たちで、しかもそういうよう生活の困窮と闘いながら、子供たちの将来のために、その責任から十分な教育を与えてやろうという人たちのために、教科書の無償配給というようなことがこの際文部省として考えられるならば、これは非常にその方たちの御心配も軽減されることであるし、またわれわれ一般国民といたしましても、わずかではございますが、感情的にも非常にうれしいものが出て来るのでございます。  それからなおその方たちのお話の中に、こういう問題があつたのであります。最近どこの学校でも修学旅行が必ず行われる。ところがその修学旅行の際、一番親として忍びがたいものは、ほかの子供たちが喜んで修学旅行に参加するけれども、私たちの子供は参加することができない。ただ参加することができないというだけでなく、ほかの子供が歓喜に浸るのに対して、私たちの子供はかえつて逆にさびしいものを抱かなければならない。私はせめてこういう気持だけは与えたくないのだけれども、今の私たちとしてはするすべがないというところまで承つたのですが、こういう具体的な問題に対して、文部省当局も運輸省あたりとも交渉なされまして、全額国庫で負担して修学旅行をともにさせるというようなことは不可能であつても、その際の汽車賃というようなものは、国有鉄道と御相談になつて、無賃乗車というようなことができるならば、これも非常にわずかでございますが、ありがたいことだと思うし、またその御婦人たちが子供に対する責任を果して行くにも大きな励みとなるのではないかと考えておるのでございますが、この際文部省といたしまして、育英資金制度あるいは教科書の無償配給、あるいは修学旅行の際の無賃乗車、あるいは汽車で通学をしなければならぬようなところを東北地方ではたまたま見たのでりますが、もしそういう点につきましても御考慮を願えると、非常にその人たちが救われるのではないかと思うのでございます。以上のような点につきまして、文部省としてお考えになつておられる点、あるいはすでに実施されておられるような点につきまして、お伺いできればけつこうだと思います。
  34. 稻田清助

    ○稻田説明員 ただいまの留守家族の問題に関連いたしまして、文部省において考えておることについての御質疑に対しお答え申し上げたいと存じます。ただ私の所管といたしまして、お話の教科書であるとか、あるいは児童生徒の修学旅行等につきましては、直接扱つておりません関係上、御質問に対しまして具体的に詳細にお答え申し上げることのできないのを遺憾といたします。しかしながら御承知ように、ただいま御指摘になりました問題は、本質的には留守家族方々に対しまする就学奨励の問題でありまして、現在の取扱いといたしましては、こうした就学奨励費は、厚生省においてお取扱いになつておられることであります。従いまして文部省といたしましては、教育の充実という観点におきまして、厚生省の御当局とこうした問題につきまして、将来にかけて十分に御協議をいたして善処いたしたいと考えております。それからこの奨学費の問題につきましては、御承知ように現在育英会において奨学金を支給いたしております。その選考の標準といたしましては、第一にもちろん学生の学力、人物優秀であることが第一要件でありますが、また半面家庭の経済上そうした援助を必要とするという事実につきまして、詳細に調査いたしております。その調査の際に、必然そういう子弟の方が留守家族ないし未亡人の子弟であるというような点は、もちろん評価せられるのでありまして、予算の金額に幅があるわけでございますが、将来この金額がもし増額せられるとすれば、現在以上こうした面に振り向けられることができるだろうと考えております。
  35. 若林義孝

    若林委員長 外務政務次官出席しましたから、これから外務省関係に関しまする質疑を許すことにいたします。小西英雄君。
  36. 小西英雄

    ○小西(英)委員 質問に入る前に、一言外務省の草葉さんにお尋ねいたしたいのであります。昨日共立講堂において留守家族大会があつだことを外務省において存じておつたかどうか。それにまただれか係官なり出席したかどうかということを、まずお尋ねしたいのであります。
  37. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ただいまの小西君の御質問、昨日来の全国大会承知いたしておる次第であります。従いまして、外務省からも私を初め出席いたす予定かでありましたが、どうしても昨日ほかの都合で出席いた上かねておりますので、明日出席いたす予定であります。また外務省からは、他の者が当日の会議の模様を拝聴に参つた次第であります。
  38. 小西英雄

    ○小西(英)委員 今のお答えによりますと、幹部の大臣なりあるいは首脳部の方が見えてなかつた。それで本日十時からこの大事な特別委員会を開いておりますが、それにも出席が非常に遅れたわけでございます。われわれ国民一般より聞く声は、外務省がきわめて冷たい感じを與えておる。私たちがこの際この大会を開いて、そうして留守家族の方と手に手をとつて、一方国民といたしましては、無条件降伏の立場から考えて、非常に長い月日とはいいながら、ポツダム宣言を忠実に行うて来た結果において、寛大なる講和あるいは草案ができておるという、全体的に国民一つの明るみを持つておるということは事実でありますが、その半面に、このポツダム宣言をつえとも柱ともたより、世界人道上から見て、正しいものが必ずやこの留守家族の前にも報いてくれる。それはこのポツダム宣言の中にある「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」というこの一項にた上り、今日まで忍び忍んで、一切おとなしくポツダム宣言を国民ひとしく守ると同時に、留守家族の諸君も、ソ連といえども必ずこの連合国としての条約を守られる日が近いよう考えておりましたところ、この講和の草案の発表の結果、いずれの見出しにも引揚げの問題について触れていないので、その明るい反対に奈落の底に落されたような感じを持ち、昨日の大会の中に、もう待てません、もうしんぼうができませんという声が出て参つておる事実に徴しまして、外務省はどう考えておられるか。百数十万の人がこの帰らざる人に陰ぜんをすえて待つておる心境がわかつてくださるかどうか。この宣言の引継ぎとして、草案の文書の中にこれが盛られたからといつて、必ず留守家族方々においても容易に帰れるというがごとき感は、決して抱いておりませんが、国家のために命をささげ、知らざる国民が戦争にかり立てられ、命を張つた三十数万がいまだはつきりしない今日、その衝の責任にある外務当局が、ほんとうに命を賭してでもこの引揚げ問題を完遂してやろう、あるいは国連に対していろいろ陳情しておるとか、国連が日本より以上の努力をしているということは、いろいろ承るのでありますが、日本国民がみずからその輿論を起して、世界の正義に訴えるよりほかはありません。その際きわめて重要な責めにあるところの外務当局は、この問題をどう考えておるか。また条約とポツダム宣言の関係について、米英と講和締結がなされた後に、この草案の中に引揚げ関係が消えてしまう。その後におけるところの内容、ポツダム宣言とその関係、ポツダム宣言の条項がなくなつてしまう場合に、義務的に法律的な証憑の余地がなくなるのではないかという心配をいたしております。その点について明快なる御答弁をお願いしたいのであります。
  39. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ただいまの小西君の御質問の御要点は、今回十三日に発表されました対日講和の平和条約草案の中には、未帰還者の処置についての条項が全然うたわれておらないのであつて、しかもポツダム宣言の中にはこのようなことがはつきりいわれ、それをわれわれは信じながら今日まで来たが、いよいよ最終段階になつて、平和条約草案は全然これに触れておらない、この点についてどういう見解と考えを持つておるかという御質問の御要旨であつたと拝承いたすのであります。ただいま御質問にありましたように、十三日の発表の条約草案には、この問題には全然触れた条項を見出し得ないのであります。私どもはポツダム宣言にあります条項を信じて、九月二日の降伏文書に調印して参つたのでありますから、従つて日本国民全部は、海外にあります抑留同胞のすみやかなる帰還を信じて参つたのであります。しかし事実はこれと反しまして、お話の通り、今なお現在ソ連勢力圏内にありまする同胞三十六万九千余人の多数が未解決のままに残されておる状態であるのでありまするから、これが解決は、国民全体こぞつて一刻も早く解決することを熱望いたしておる点であります。従いまして、この問題が従来の関係から、できるならば講和条約草案等にも表わし得られるならば、それを期待をし、また熱望をいたしておつたのでありまするが、現在の草案におきましては、お話の通りに出て参つておらないのであります。しかし従来からこの問題は、あるいは国際の問題とし、人道の問題といたしまして、日本政府国民ともどもに強く世界各国に向つてこれが解決を熱望し、要望して参り、また本院等におきましても、強くこの点をお取上げ願いまして、国際連合等に対しましての処置も、いろいろとおとりを願つた関係から、昨年第五国際連合総会におきまする第三委員会におきまして、イギリス、アメリカ、オーストラリアがこれを取上げ、御承知よう状態で、現在三人委員会を組織する段階にまでなつてつておる状態でございます。でありまするから、講和条約の草案におきまして、これが現われて参つておらない現在の状態でございまするが、しかしそれかといつて、かりにこのまま現われて参らないといたしましても、未帰還同胞の現実の問題は、それで解消したとは私どもは考えておらないのであります。三十六万九千三百八十二名の、従来から日本政府で発表いたしておりまするこれらの未帰還者の問題は、当然日本国といたしまして、あるいはまた国際連合といたしましても、十分国際関係においても、また人道的な立場においても、解決すべき最も重要な問題と存じて参つております。以上お答えいたします。     〔委員長退席、池見委員長代理着席〕
  40. 小西英雄

    ○小西(英)委員 ただいまの御答弁によりますと、やはり努力はされて来たということは見受けられるのでありますが、われわれはこの際どうしても米英側に、この草案の附属文書の中にはつきりとこの問題を書き入れてもらいたい。なぜかと申しますならば、この在外同胞帰還促進全国協議会あるいは各所において、政府を通じあるいは直接に、この草案をつくつた主体者たるダレス氏に対して懇願いたしたのでありますが、ダレス氏の答弁が、今まで法律的な規定をいたしても侵す国には処置がない、むしろ道徳的立場からこれを何とかするより処置がないというのが、簡単に申しますならば、これに対する答弁なのでありますが、法律をつくつてもやはりどろぼうが繁昌するというような例を考えますならば、やはりこのポツダム宣言の第九項の条項にひとしきものを、講和の際にやはり米英が責任をもつて、今後といえどもこの基本方針についてはどうしても完遂するまで責任を負うという条項がない以上、日本と米英その他の国家とこの件がなくして講和を結ばれたと仮定いたしますならば、三年か五年、いずれにしてももしソ連勢力範囲の国家と講和を締結する場合には、やはり未解決のままになるのではないかと心配いたすので、この点をぜひとも草案の中に書き入れてもらいたいということを、特にわれわれ要求するのであります。書き入れるかどうか、講和の締結の使節が参る際でもおそくないのでありますから、これを入れてくださるかどうかという所信をお尋ねしたいのであります。
  41. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 御質問の点まことにごもつともな点であろうと存じます。また三十余万の未引揚げ留守家族の皆様方並びに国民全体が熱望いたしておる点であると存じております。この点に関しましては、従来とも日本政府といたしましては、関係国にこの実情を強く訴えながら、これが解決のために精進努力をいたして参りましたが、講和の条文の問題につきましては、ただいまお話の通り状態になつております。今後とも努力はいたそうと存じますが、しかし今度の講和の問題は、まことに従来からの関係で、ここで私がお答えを申し上げるたけではつきりするような情勢にないと存じまするので、もしやそういう状態が実現し得ないような場合におきましても、他のいろいろな方法におきまして、日本政府並びに日本国民の強い熱望を現わし、あるいはこれが国際的な問題として取上げられる方法等も十分検討をして、国民の熱情にこたえるように進めて参りたいと存じております。
  42. 小西英雄

    ○小西(英)委員 先ほど来の問題についての明快な管外がございませんが、さらにこの条項が入つたからとて、必ず三十六万の人が帰れたり、あるいは簡単にその問題は解決できないと思いますので、講和調印後におけるところの外務当局は、この未帰還者問題について、どういうふうな具体的方法によつていろいろな外交方針を進めて行くという考えを持つておられるか。あるいは現在聞くところによりますならば、この担当局であるところの主管局が、行政機構改革に伴い、なくなるというふうなうわさも承つておりますが、それらの点について御答弁をお願いしたいのであります。
  43. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 この引揚げの問題は、実は一方ただいまお話のように、講和会議そのものにも反映して来べき大きな重要な問題でもあり、従つてただいま御答弁申し上げました通り考えを持つておりますが、しかしそれまで待つまでもなく、従来とも国際連合で進んで参つております、六月末に発表いたしました三人委員の活動を、一方においては強く要請しながら、この活動における解決ということも強く期待をいたしておる次第であります。従つて、この国際連合三人委員会引揚げ特別委員の活動は、講和会議の開催以後期間をとりませず、なるべく早く活動を開始しながら、この日本の未帰還引揚げの未解決の問題に資してもらいたい、かように熱望いたしておる次第であります。
  44. 小西英雄

    ○小西(英)委員 三人委員会の問題でありまするが、五月にできるはずのところ、六月になつたりして、非常に遅れ遅れになつているということは、一面引揚げの問題は、戦争が遠のいて、現在世界各国とも、あるいはドイツ、イタリア等においても、その当局者が非常に熱を欠いておるような輿論の示し方でありますので、この三人委員会ができて以来どういう活動をいたしたか、もしここで答弁できるならばお願いしたいと思います。
  45. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 三人委員会の設置以前からも、あの国際連合で取扱いました後におきましても、輿論は三人委員会の活動が十分なされ、引揚げがすみやかに、そして完全になされることを念願いたしておりましたが、これも十分でなかつたと存じます。従いまして結局第三委員会で結論を持つて進んで参りました三人委員長の設置ということに相なつてつたのでありますから、政府といたしましては、三人委員日本にもすみやかに来ていただいて、現実にわれわれが三十六万有余の未帰還者の中で、三十四万程度はつきりつかんでおります家庭の状態、並びにその家庭等につきましての詳細な調査をして、そして現実に日本の主張はこの通りであるということを確認しながら、相手国にもこれを訴えてもらうよう方法を強く希望して参つておる次第であります、これらの方法を従来ともとつてつたのであります。
  46. 小西英雄

    ○小西(英)委員 他に委員もたくさんおるので、最後に簡単に外務省に申し述べたいことは、われわれ現在までいろいろ輿論として聞く現在の日本外務省なるものは、引揚げ問題に対しては非常に冷たい。映画人であるとか、あるいは講談師であるとか、役人の旅行その他経済視察団等の出張等には非常に熱があるが、引揚げ問題はあまり熱がないといううわさを聞いております。特に抑留者がどうなるか、目前の切実なる不安を持つて参おりますこの際、政府並びに外務省はこれらを積極的に克服して、国民の意の存するところをくんで明快に見通しをつけて、それらについて献身的の努力をしなければならない義務を持つておると思います。今後とも外務当局——今までは、外務省としては存在しておつても何ら発言がないとしばしば答弁されたのでありますが、九月締結後においては必ずそれ以上に——中共等についてはこの問題が解決しない前に、いろいろな商品の取引ができ、金銭の授受がせられておるにかかわらず、引揚げ問題の方が促進していないという事実に徴しても、相当責任を持つてこれらの促進方に努力してことこそ、われわれの要望する外務省となるので、もう少し熱意を持つて——熱はあるのでございましようが、熱が輿論を通して現われてないということは事実であります。政府において特に努力されんことを切望して、私の質問を終りたいと思います。
  47. 池見茂隆

    ○池見委員長代理 委員長から申し上げますが、本日の質問外務省に対するところの質問がその大多数を占めておりますから、これから先の質問に対しましては、おそらくそういつたことはないと存じますけれども、重複しないように、要点みみをきわめて明快に御質問をお願いいたしたいと思います。そこでこの中に建設関係質問堤委員より出ておりますから、政府委員の暗闘の関係等を考えまして、建設問題をはさむことにいたします。堤ツルヨ君。
  48. 堤ツルヨ

    堤委員 お急ぎのようでございますから、私も他の方々と同じよう厚生省並び外務省当局に対しまして質問を持つておりますが、特に建設省の方に先に、それらを保留いたしまして局長にお伺いいたしたいのでございます。実は二十六日には、この第十国会を終えて全国的に引揚者定着援護の問題について視察をいたしました私たち各委員からつぶさな御報告があり、なおかつこれに対して局長にもあらためて要求があることと思うのでありますが、私から特に今日お尋ねいたしたいのは、今住宅問題は大きな社会問題としていろいろと取上げられております。私は北海道、さらに北陸三県を視察いたしました。他の委員方々も同じお考えをお持ちになつておられると思いますが、公営住宅法が実は第十国会を通過いたしまして以来、引揚げて参りました人たちの住宅の問題に関しましては、この法律が大きな隘路となりまして、修理の問題にいたしましても、また新築の問題にいたしましても、非常に悲観せざるを得ない状態にあるのでございます。私たちが見て参りましたところ、衣食住の問題を通じて、引揚者定着状況を視察いたしますのに、どこへ行きましても住宅が一番大きな問題でございます。子供がトラホームになる、また肺結核が続出する、親は教育上困つておる、道徳的にも頽廃する、いろいろな問題を投げかけております。なお私が視察いたしました北海道のある地方——これはまた報告のときに詳しく申し上げますが、引揚者を収容いたしておりますところの寮の中では、半数が被保護世帯である。これらの人たちも、今ここでもう少し住宅の問題を解決してあげたならば、立ち上り得る人たちが相当あるというよう実情も拝見して参りました。まことに引揚者のために寒心にたえない問題でございますが、局長は建設省に属しておられまして、もつぱら建設行政の見地から、今までこれらを統轄して来られたのでございます。この緊急の引揚者の住宅問題をつぶさに御存じのことと思いますが、これに対して今後いかなる手を打たれようとしておられるか、この点について少し御丁寧な答弁をいただきたいと思います。
  49. 木村忠二郎

    ○木村説明員 ただいまの堤委員の御質問にお答え申し上げます。ただいまお話がありましたように、第十国会で公営住宅法が実施されまして、従来厚生省所管しておりました引揚者住宅の面が非常に弱まつたというお話でございます。私的のことを申してたいへん恐縮でございますが、私もともと厚生省で住宅をやつておりました関係上、厚生省とは従来から非常に緊密でございますし、今後も緊密にやれると思います。この引揚者住宅につきましては、従来の数字で見ましても、公営住宅の約四分の一は引揚者の方が利用されておるようであります。またこれは地方庁あたりもそのお気持が十分あるので、こういうふうな現われだと思うわけであります。今後も厚生省と緊密に連絡をとりまして、御心配のないようにいたしたいと存じます。
  50. 堤ツルヨ

    堤委員 局長は今まで厚生省においでになりましたので、特に公私ともに仲よく密接な関係をとつて、今後の引揚者の住宅の問題には、厚生行政の面から見た角度においてこれを重視するという御答弁があつたことは、まことにうれしいことと存じます。しかし実際は今までもそういう心づかいがあつたことと思うのでございますが、地方の末端に参りますれば、そのお心は行き届いておりません。実際に現われておりません。非常に悲惨な状態にありますところの引揚者の住宅の問題——社会保障制度の問題、それから子供の教育制度の確立、それから現在の住宅問題の解決、この三つの柱はどうしても民生安定のために、なお講和調印後の日本再発足のために、即刻解決されなければならない大きな政治問題であると存じておりますが、局長におかれましては、どうかでき得るならば、局長自身が地方にお出ましになりまして引揚者がいかに悲惨なところに今日なお多くおるか。私は北海道を視察して参りまして、今度はつくづくその感を深ういたしました。でき得るならば、局長はひとつ北海道を歩いていただきたい。四十八万の無縁故の引揚者を入れました北海道庁におきましては、十四支庁あげて非常な努力と非常な犠牲を払つて参りました。今後未開発の北海道は、日本のために大切な宝庫となつてつております。四十八万の引揚げ人たちが、いかに立ち上つてくれるかということが大きな問題であろうと思うのであります。かくのごとき引揚者の住宅問題におきましては、立ち上り得ないと申しても決して過言ではないと思うのであります。どうか地方をよく御視察になりまして、建設省の権限内に握つておらずに、あなたの御認識がそこまで深うございますならば、ひとつ厚生省に移管して、厚生省にやらせるような度量まで持つていただけないものか、私はこういう意見を持つものであります。と申しますのは、地方どこに参りましても、長官並びに市町村長の申します問題は、庶民住宅の問題にいたしましても、あらゆる公営住宅の問題にしましても、引揚者住宅の問題にいたしましても、建設省が所管しておるというところに隘路があるということを指摘せられておるのでございます。こういうことも御理解のある局長だという御自称ではございますけれども、ひとつよくおくみとりになつて、十分御考慮の上、でき得るならば短時日の間に、この公営住宅の問題並びに引揚者の住宅の問題を厚生省に移管していただきたいという希望を持つております。これは大臣にもお話申し上げなければ解決がつかない問題かと思いますけれども、局長の御所存でもある程度これを左右することができると思いますので、将来御移管になる気持があるかどうかということを御質問申し上げまして、私の希望を添えておきたいと思います。
  51. 木村忠二郎

    ○木村説明員 お答え申し上げます。地方の府県並びに市町村でこの住宅行政を実施しておりますのは、結局建築を担当している部局で実施しております。地方の局長を通じて行つて、最後の末端はやはり建設省の仕事を大部分やつているところでございまして連、絡をよくすれば、特に厚生省に移管せぬでもやれるのじやないかと思います。
  52. 堤ツルヨ

    堤委員 私は局長の御認識が少し不足しておるのではないかと思います。というのは、こういうことを申し上げますと、建設省の方からはきらわれるかしりませんけれども、厚生省と建設省とどちらが強いかというような問題になつて参りますと、これは圧倒的に建設省が至るところで強引でございます。これはもう一つつつ込んで申しますならば、建設省には強引な業者がついておられます。法律一つつくるにいたしましても、たとえばこの前の第十国会においてわれわれが厚生委員会において立案いたしましたこの庶民住宅法と、建設省で考えた公営住宅法などというものの通過の経過を見てみましても、非常に大きな圧力が建設省にあつて、建設省の力が厚生省を圧しておるというような感が深うございまして、交渉の経過におきましても、末端に参りましても、局長の認識のように、民生部長が建設関係人たちを説き伏せて、強引に民生行政の中に引入れて、自分の理想通りにして行くということはできない現段階でございます。でありますから、私はあくまでもこれは大衆が要望いたしております通り、厚生行政の一環として住宅問題を考え、公営住宅に関する限り、また引揚げ住宅に関する限り、庶民住宅に関する限りは、おそらくこれは厚生行政の見地からよろしく厚生省に快く移管されるのが大衆の輿論と合致するのではないか、かよう考えております。各都道府県に参りまして——県庁の色合いにもよりますけれども、至るところで私たちが見聞いたしますのは、やはり民生部の方が消極的であつて、建設系統の部の方が強引でありまして、どうしても業者をうしろに控えた建設省的な色合いでもつて、公営住宅の方においても中央の御意思と違つて伸びなかつた欠陥があるのではないかと思います。これは一日も早く厚生行政に移管されまして、引揚者の住宅問題も早く解決していただきたい。私かような希望を持つておりますので、もう一度御再考くださいまして善処されますよう希望申し上げておきます。
  53. 大村巳代治

    ○大村説明員 ただいまの御意見は、私ども帰りまして研究して善処いたしたいと思います。
  54. 池見茂隆

    ○池見委員長代理 それでは外務関係質問に移ります。中曽康弘君。
  55. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は主として講和条約と今度の引揚げの問題につきまして、外務政務次官お尋ねいたします。ひとつ明確な責任ある御答弁をお願いいたします。  まず第一にお尋ねいたしますが、われわれは三十六万九千余者のいまだ帰還せざる同胞をシベリヤに持つていると確信しておる次第でありますが、ソ連側はタス通信あるいはその他を通じて、特殊の戦犯を除いては、引揚げは完了していると言つている。外務省はこのソ連の非公式の報道を認めるのか認めないのか、この点からますお聞きいたしたいと思います。
  56. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 外務省はタス通信の数回にわたります発表、ことに数字の発表につきましては認めておりません。
  57. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると国際法上日本はソ連の見解を肯定しない、こういうことを確認されたわけでありますが、そこで対日講和条約の草案を見てみると、今までの講和条約に必須事項として書かれておつた捕虜条項というものが見当らない。これは先ほどの小西委員質問通りであります。しかしこの講和条約の草案を見てみると、捕慮に関することは書いてないとは言えない。どこに書いてあるかというと、第十六条に書いてある。この十六条一は、日本の捕虜として抑留中不当な苦しみをこうむつた連合軍軍人への償いをする希望の表明として、日本は中立国にあつた財産を赤十字の国際委員会に移管するということが書いてある。そうすると、かつて敵国であつた、たとえばイギリスであるとか、オランダであるとかいう国の捕虜が、日本あるいは占領地において抑留された。その人たちのためには、日本は中立国にある財産まで投げ出してめんどうを見なければならぬということは、ここにはつきり出ている。ところが同じ人道上の問題であるところの捕虜に関する条項がここに認められないということは、非常に私は差別的な、不平等な講和条約の締結方式を発見するのでありますが、外務当局ばいかなる見解をもつてこの条項に当られようとするのでありますか。
  58. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 お話のように、従来の講和条約等におきましても、捕虜の処置の問題等が取上げられることが多いことはお話の通りだと存じます。ただ日本講和条約は、いわゆる終戦後すでに六年を経ておりますので、一般的には捕虜の問題はほんとうは解決しておるはずだと存じます。ポツダム宣言におきましてもそれがはつきりうたわれ、また日本はそれを強く信じて参りましたし、全部の連合国は、日本の捕虜に対して忠実にポツダム宣言の履行をして参つたと存じております。ただソ連並びにソ連政治力圏内における国だけが、この問題を先ほど来懸案になつておりまするよう状態で残して参つておる。お話の通りに、第十六条には、日本国にありました外国の捕虜の問題を取上げておりまするし、また第十九条にはも日本人の捕虜に関しまする、また抑留軍民に関しまする問題が取上げられておりまするが、これはお話のように、日本の捕虜に対する処置の問題ではないのであります。私どもこの点につきましては、従来の平和条約の締結の時期と、そういう問題が関連した性質を多く持つて来ておる、かように一応は考える。しかし先ほど小西委員の御質問なりましたときも、お答え申し上げましたが、日本国民並びに日本政府といたしましては、なおソビエト一国でありまするが、三十六、七万の最も多数の抑留同胞が未解決のままに残つておりまする、この現実の問題につきましては、強くこれが解決されることを国際的に望んでおる次第でございます。
  59. 中曽根康弘

    中曽根委員 国際的に望んでおると言われましたけれども、奇怪にたえないのは、われわれがこの講和条約に調印して批准されると、その国と日本との関係においては、ポツダム宣言は効力を失う、こういわれておる。外務政務次官はこれを確認いたしますか。もし効力を失うならば、われわれはそれらの国に対しては国際法上の権利を失うわけであります。講和条約の草案に書いてないところを見ると、このまま調印してしまえば、われわれは少くとも米英その他の国に対して、われわれの捕虜を帰してくれという国際法上の権利を失うはずである。しかし米英その他の国々はソ連と一緒になつて、ポツダム宣言というものを宣言しておる。従つて連帯責任を負うものである。従つて講和条約草案においてそれが書かれていないということは、われわれの連帯責任を追究、あるいは要望する権利がなくなることであつて、一切の国際法上の権利を失うのかどうか、ポツダム宣言が効力を失うかどうかということについて、政務次官の御答弁を伺いたい。
  60. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 お話の通りに、私どもも批准をいたしました国に対しましては効力を失うと存じております。新しくこの講和条約によりましての方針が今後の方針となつて来ると思います。     〔池見委員長代理退席、小西(英)委員長代理着席〕 従いまして二国間あるいは日本並びに数国間の平和状態における交渉、国交というものが回復して参りますれば、この平和状態における国交の状態において、すべての問題は平等に、対等に解決し得るものと考えます。
  61. 中曽根康弘

    中曽根委員 私がお尋ねしておるのは法的根拠でありまして、米英その他との関係において、われわれは国際法上の権利としてそれが言い得るかどうかということを質問しておる。この点はいかがですか。
  62. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ポツダム宣言におきましては、捕虜は当然すみやかに帰すということになつております。従いましてこの条項に基きまして、米英その他のすべての国はすみやかに帰す処置をとり、すでに完了いたした状態であります。しかしソ連だけがこの状態を忠実に守つておらないと私どもは考えております。従つて批准いたしました国国においてはポツダム宣言が失効いたしますが、かりに今後ソ連がどういう状態になつて参りまするか、ただいま御質問の米英関係におきましてはおそらくはこの平和条約に対する批准という態度がとられて参ると存じますので、この点に対しましては、諸国間の捕虜の問題は、すでに解決いたしておりまするから問題はありませんが、ソ連に対しまする捕虜の問題についても、いわゆる国際的な協力立場に立つての問題の解決には、当然従来の関係から強く支援をしてくれると確信をいたしております。
  63. 中曽根康弘

    中曽根委員 重ねてお尋ねいたしますが、講和条約に米英その他が調印して、批准が成立して、日本が完全に独立した場合、この場合米英その他との関係においては、ポツダム宣言は効力を失う、こういうふうに解釈していいかということが第一。それからその場合といえども、ポツダム宣言というものはいまだに米、英、ソ連あるいは中華民国との関係においては有効であると考えられるのであるか。この二点を明快にお答え願います。
  64. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ただいまもお答え申し上げましたように、米英両国が平和条約の批准をいたしまして効力が発生いたしました場合におきましては、当然ポツダム宣言は、その両国には失効すると存じます。  次に批准、あるいは署名、ないしは効力を発生しない国々に対してはどうかという問題でございますが、この問題につきましては、いろいろ議論の余地はあると存じます。従来からの解釈をもつてしますると、効力が残るという解釈が強いと存じております。
  65. 中曽根康弘

    中曽根委員 私の後段の質問に答えておらないのでありまして、米英がこの講和条約に調印し、日本が有効に独立したその際といえども、米英とソ連との間においてはポツダム宣言は効力が残つているのかどうか。ポツダム宣言は連合国同士には有効なものとして残つているかどうか、こういう質問であります。     〔小西(英)委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これは連合国において捕虜を取扱う問題だと存じております。  日本立場において、日本と批准をしない国との関係はどうなるかという問題につきましては、日本並びに全体を通じての連合国の解釈ということになつて来ると存じますが、連合国同士の問題の解釈は、連合国同士の間で決定する問題だという従来からの解釈を、実は私どもとつてつております。
  67. 中曽根康弘

    中曽根委員 連合国同士の話には違いないが、今までの国際法上の解釈から、日本の外務当局はいかなる解釈を持つておるか。
  68. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これはこれまでにおきましても、学問的な解釈という立場から申し上げますと、実はいろいろ論説があるのではないかと思うのです。結局効力が続くという場合、続かないという場合、いろいろ解釈上の問題があると存じます。従つて現実の問題になりますと、結局連合国でこれを決定することが最後の問題になつて来ると存じます。
  69. 中曽根康弘

    中曽根委員 日本政府として言えないというならば、私はあえて追究いたしません。私が承りたいと思うことは、日本講和条約の調印を終つて、米英その他との関係において独立したあとといえども、米英はソ連その他との関係において、日本に対して引揚げを完了させるという義務を持つておるかどうか。要するに連帯責任というものはまだ残つておるかどうか、こういう質問をしたいのであります。
  70. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 最初から実は連合国はポツダム宣言を宣言し、従つて捕虜の問題はあの条項の中にあります方針をもつて進んで来た。そして連合国は全部その方針のもとに取扱つて来た。ソ連もその方針のもとに取扱つて来たと申します。タス通信その他によつて発表いたしまするが、その発表を、実は私どもは先ほども申し上げましたように信じない、こういう問題になつておると存じます。これはおそらく日本だけではなく、ほかの国にも起つている問題だと思います。一方には、いわゆる日本の申しまする数字は、ソ連はないという発表をいたし、こちらはあると申しておりまする点においても、問題があると存じます。従いまして、米英両国は日本の解釈を支持して、そうして国際連合総会第三委員会にこれを提訴をしたという立場をとつて来た。日本の主張に対して、米英その他の国国がこれを支持しながらやつてつたので、ソビエトがないということは、米英両国は信じておらないと存じにおります。
  71. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこで重大な問題があると思うのであります。要するに米英が支持したというのも、つまり国際連合にそれを付託するという法的根拠は、ポツダム宣言第九条という国際法上の権原があつたからだ。それがあつたから、米英はそれを根拠にして国際連合その他に訴えることができた。しかし日本が米英両国と講和条約を調印して、その国との関係において独立してしまえば、しかも講和条約の中に引揚げの問題が全然書いてないということになると、日本と米英とのたこの糸は切れてしまう。そうするとわれわれは、国際連合自体に提訴するだけの権原がなくなる。また米英に対してそれを要求することもできないという関係になつて日本は完全に国際法上の権利を断たれてしまうのではないか、こう思うのでありまするが、国際法上の法律解釈としてどういうふうになるか承りたいと思います。
  72. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 私どもは、いわゆる外務省といたしましては、そうは考えておらないのであります。問題の中心は、三十六万九千余名の捕虜が現実に未解決のままに残つておる。ソ連はないという、そうしてポツダム宣言を忠実に実行したかのごとく申しておる。そこにポツダム宣言は、日本も忠実に実行し、連合国も忠実に実行した立場において、いわゆる日本の平和条約という段階に進んで行く、しかし捕虜の問題については、そこに両方の国の意見において重大なる相違を来した。この重大なる相違を現実に調査するというのが、いわゆる三人委員会で、国際連合が取上げた問題と存じております。従いまして、かりに条約草案、条約文の中に捕虜の問題が取上げられておらぬにいたしましても、その成文になつておる、なつておらぬは別にいたしまして、国際法上当然日本は主張し得る立場を持つておると解釈いたしております。
  73. 中曽根康弘

    中曽根委員 それはへんな話だと思う。ポツダム宣言というものが有効に働いているからこそ、あの九条に基いて国際連合に提訴する権原もあるわけです。しかし米英との関係において、もし新しい条約にそういうような内容が盛つてなければ、これはたこの糸が切れてしまつたようなものであつて、われわれは関連がなくなつてしまうのである。少くとも向うの道徳心であるとか、あるいは向うの慈恵政策から、そういう恩沢を受けることは可能であるかもしれぬが、日本が権利としてこれを主張することはできない。私はそのように法律解釈をするのですが、われわれは国際法上の権利ありと主張して国際連合に訴えることができますか、あるいは米英に訴えることができますか、明確な答弁をお願いいたします。
  74. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 日本がポツダム宣言を忠実に実行いたしますと同様に、連合国もこれを実行するためにあの宣言をしたのであります。従いましてその捕虜の問題につきましては、これを忠実に実行したという立場において進んで参つておるのでありまするが、忠実に実行したという一方と、忠実に実行していないというところに問題があると存じます。従いまして、米英は忠実に実行したから問題は全然ない。ソ連は忠実に実行して、残つておるものはこれこれの少数だということだけは発表いたしておりまするが、その他は全部一人も残つておらないと言うておりまするけれども、日本立場から考えますると、現にそれだけおるのであります。これはポツダム宣言が失効いたしまして、平和条約の条文が効力を発生いたしまして進んで参りましても、何らこの主張はかわつて来ない問題だと存じます。
  75. 中曽根康弘

    中曽根委員 私が質問しているのは、この講和条約の問題にからんで、非常に困難な法律問題が今後出て来る。だからこそ法律紛争の解決についてはわざわざ一項を入れて、国際常設司法裁判所に提訴するという言葉がある。これは講和条約の調印された中にその捕虜の問題があれば、いろいろ紛争が起きたときには、国際裁判所なりあるいは国際連合に提訴することが可能だ。しかしそれが書いてなければ、その法的根拠は失われる。私はそういう見解を持つておる。しかし今の御答弁によると、すでに国際連合で取上げられているから、それで権利があるのがということを言われている。しかしその根元であるとこるのポツダム宣言というものが効力がなくなれば、米英との関係においてわれわれはこれを権利として主張することはできない。これは常識で考えたわれわれの解釈論であり、またこれは通説であります。しかし外務省は、国際法上の権利として主張するというなら、いかなる条文に基いて権利として主張するのか、条文をお示し願いたい。
  76. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 実はポツダム宣言が失効するということは、平和的条約が成立する前提としてのポツダム宣言が忠実に実行された場合においてのみ、初めて次の講和という段階に来ることは、連合国がすでに宣言しておる通りである。従つてポツダム宣言にも、占領政策自身におきましても、日本がポツダム宣言を忠実に実行した場合には、すみやかに占領軍隊を引揚げるという観点から、今度の平和条約におきましても、日本は忠実にポツダム宣言を実行し、その成果が上つておるというこの観念のもとに、平和条約の締結ということに相なつて来たと確信いたしております。そうしてポツダム宣言の私どもの一つの重要な問題、いわゆる捕虜の問題、抑留者の解放の問題は、当然あの条文にありまするように実行されることを期待し、また実行さるべきものだと確信して参つたのであります。全部実行した中で、ソ連は実行したと言いながらも、日本立場から言うと実行していない数字が残つておる。この両方の解釈の問題、従つて一般的にはポツダム宣言の実行ということはなされておるが、ソビエトはこの抑留者の問題について、なお私どもが解釈し得ないことを発表しながら、この抑留者、捕虜の問題が解決されておると言いながらも、日本は承服し得ない状態になつて来ておるのが現実だと存じます。従いまして、ポツダム宣言のこの精神は失効はいたしまするけれども、その精神が全然違つた状態において次の平和条約が成立するとは考えておりません。
  77. 中曽根康弘

    中曽根委員 外務次官に注意していただきたいのですが、私は長い答弁を要求しないのです。もうピシツピシツと核心に触れた答弁だけぜひお願いしたい。あとから相当質同者もおりますから、このことをぜひ御注意願いたい。私が質問をいたしましたのは、国際法上の権利がいかなる条文によつてつておるかということを質問した。それに対して、ポツダム宣言は失効すると言われた。しかし精神が残つておるから、その精神によつて新しい平和条約の基礎ができるということを言われている。これはもう精神論であつて法律論ではない。法律上の権利はどこにあるのかや条文を示していただきたい。もう一回お願いいたします。もし条文を示すことができなければ、これは国際法上の権利として残らないのだということを——これは別に面子が悪いとか、そんなことを言う必要はありません。こういうことを国会において明らかにしておくことは、国民の責任であります。
  78. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 捕虜の引揚げの問題は、ポツダム宣言による法的根拠を持つたものと存じます。
  79. 中曽根康弘

    中曽根委員 講和条約が成立して米英との関係に正常な状態が復活した場合にも、米英との関係においては、ポツダム宣言によつてわれわれは法律上の権利があるという御答弁でありますか。
  80. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 米英との関係におきましては、先ほど申し上げたように、ポツダム宣言が次の平和条約に切りかえられて、いわゆるそういう意味の法的効力というものは消滅するものと考えます。
  81. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすれば、米英との関係においては、国際法上の権利がなくなるという結論でありますか。一体なくなるのですか、なくならないのですか。
  82. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ポツダム宣言自身は、米英との関係においてはなくなると思います。
  83. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば九条に基く未引揚げの捕虜を返せという権利も、米英との関係においてはなくなると解釈せざるを得ませんが、その通りですか。
  84. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 第九条の問題は、米英との関係においてはすでに問題になつておらないのであります。ただソ連についてだけの問題だと思います。
  85. 中曽根康弘

    中曽根委員 ポツダム宣言というものは連合国が共同連帯して発した宣言であつて、アメリカとイギリスが発した宣言ではない、ソ連も入つておる。あれは連合国全体の責任である。従つて当然連帯責任たる米英の地位というものは、たといわれわれがこの条約を締結しても、彼ら相互の間においては私は消えないと思う。従つて講和条約の中に、まだ連帯責任であなたの債務は残つておるのだ、これをここに残しておいてもらいたいという権利は当然あるべきであり、またそれだからこそ、今まで各国においてこれらの捕虜条項というものがあつたわけであります。私はこれ以上追究いたしませんが、今までの外務次官の御答弁によると、あるいは国際法上の権利があるようにも言い、あるいはないようにも言つておる。しかし私が判決を下せば、あなたはないんだということを言いたいけれども、前にああいうようなことを言つたからしようがないと面子上逃げておる、そう判断せざるを得ない。これは私のみならず、聞いておる人がみんなそう言うだろうと思うが、これ以上追究いたしません、  そこで米英との関係において、国際法上の権利を持つて主張することができなくなる、そういうことになつた場合に、一体この問題はどういうふうに解決するか。単なる政治的な、あるいは向うの恩恵政策によつて解決するほかに道がないのか。私の言うのは法律的な根拠です。そこが中心問題になるわけです。そこで私は、まさか吉田さんやあるいは外務省の首脳部が、国際法上の権利が残るから、この講和条約の草案に載せる必要はない、そういう安易な気持があつてこれに載せることをやめたのではないか、まさかそんなことはあるまい、こう考えるのですが、今までのあなたの御答弁によると、いや権利が残る、だからここに載せなくてもよいのだと邪推せざるを得ないよう答弁をしておりますが、一体どういう根拠でここへ載せなかつたかという理由を御説明願いたい。
  86. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 載せなかつたというのは、一方的に載せなかつたというよう意味ではないのであります。実は先ほども私申し上げたのですが、解決する最も端的な方法があるならば——捕虜の問題は先ほどお話になりましたように、平和条約には通例として載つておる。日本終戦以来すでにこの問題は全般的な問題として、国際的な立場からはポツダム宣言の忠実なる実行をしているという立場をとられて来ているから、多分そういう意味において載らぬだろう。しかしソ連においては否定しているけれども、現実にはこういう状態である、こういうことを申し上げたのでありまして、私どもも願わくば、実は未解決の問題であればこそ、この一項に載せてくれたら最も明朗な解決をし得たのではないかと存じております。
  87. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は吉田さんとダレスさんがどういう話をしたか、ある筋を通じて知つておりますが、日本全国の未帰還者の家族が心配し、また憂慮にたえないところは、吉田さんが非常に軟弱な外交をやつて、少しはお義理で持ち出したけれども、途中でひつ込めて、米英の意を受けるのに汲々としたではないか。だからこそ国際法上の権利として、当然条約にも載つているこの捕虜の問題が、戦勝国の捕虜に対しては、われわれ中立国にある財産までやるというような大譲歩を認めておきながら、同じ人道上の問題であるわれわれの捕虜について、何ら規定しないではないか、こういう心配をしている。そこでダレスさんは、昨年の六月と今年の一月と四月に日本にやつて参りましたが、どういう経過をたどつてダレスさんにお話をいたしましたか。これは決して秘密にすべき問題ではございません。第一回の会談以来どういう経過で折衝をしたか、こちらはどういう根拠をもつて言つたか、向うはどういうふうな見解を示したか、明瞭にひとつお示し願いたい。これは全国民の大きな不安と危惧を解くために、政府当局として当然なすべき措置であろうと思うのであります。
  88. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 実はこの問題につきまして日本政府がとりましたことは、その都度大小御発表申し上げ、あるいはお答えを申し上げたと存じております。またあるいは対日理事会の議題等におきまして、明確に発表されている通りであります。従いまして日本政府は、あるいは直接ダレス特使、あるいは連合国最高司令部その他にいろいろ具体的な方法をもちまして、日本のこの抑留帰還の問題につきましては、事こまかに訴えて、国民の熱情とともに伝えて参つた次第であります。
  89. 中曽根康弘

    中曽根委員 事こまかに訴えたといいますが、私はある筋を通じて、どういうふうな処置がなされたか知つております。一月の会談あるいは二月の会談においてそういう懇請なり、文書なりを出しましたか。あるいは四月の会談でやつたか。やつたとすれば、一月あるいは二月の何日ごろおやりになつたか、私は正確なる答弁をお願いいたしたいと思います。
  90. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 このいわゆる抑留者帰還の問題につきましては、実は今一々具体的に日時等をお尋ねなりましたが、その全体は、多分日本政府はこの講和の問題、あるいはその他の問題の場合において、抑留者の問題を強く連合国あるいは取高司令部等に伝えているのかどうかということが中心だろうと存じます。
  91. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は政府の施政を信じないから、具体的に説明しろと言つているのです。
  92. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 具体的問題といいましても、最も近い機会に御発表いたしたいとも存じておりますが、実は抑留者の問題につきましては、日本政府はあらゆる機会に、御承知であろうと存じまするよう方法をもつて、その内容を強く推進して参つたのであります。講和問題等につきましても同様であります。
  93. 中曽根康弘

    中曽根委員 ダレス氏が第一回会談で来たのは一月の二十六日であつて、それから二月の十一日にフイリピンへ立つて行きました。その間に、しからば日本政府は正式にダレス氏に話をしたか。していない。日本政府がはたしてこの問題をダレス氏に提議したか。四月のあの選挙の第三回の会談のときにやつている。あなたはこれを否定しますか。一月の、あるいは二月の会談においてはしていない。四月になつて初めて話した。ところがダレス氏は、講和の草案は一月、二月の会談でやつている。四月は最後的な仕上げの意味で、またマッカーサー解任の日本への影響をおそれて来ているにすぎない。骨格というものは一月、二月の会談できまつている。そのときに日本政府がこの問題をダレス氏に対して持ち出していないのは失策であると思います。あなたはこれに対して反駁の答弁をすることができますか、はつきり答弁を願いたいと思います。
  94. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これは先刻も申し上げましたように、日本抑留者の未帰還の問題につきましては、資料その他詳細なるもので常に連絡をいたしまして、進んで参つたのであります。従いまして、連合国関係者はよく日本実情を了承してくれていると存じます。
  95. 中曽根康弘

    中曽根委員 引揚げの問題については、日本政府よりもはるかに民間団体、全協その他がやつておるのであつて、それは文書や何かは事務的に、あるいは前に、あるいはあとに出したかもしれない。しかしダレスと直接、面と向つて政府当局なり要路者が懇請したという事実は、一月、二月の会談ではないのです。私はそれが今度の講和条約の中に相当影響しておると思うのです。しかしここで私は政府の責任なんか問いません。ともかくこれが載るようになれはよい。過失は過失として認めて、どうか載るように、今度の八月十三日に最終草案がきまるのだから、それまでにまだ時間があります。十数日あります。その間でもいいから、最後の努力をして誠意を示していただきたい。私はこれをあなたにお願いいたしたい。あなたはダレスとの会談、あるいはその他の問題は、ワンマン一人でふところへ入れているから知らぬかもしれないが、私が関係方面その他を通じて情報を得たところでは、私が言つたことは正確です。ただ、この最後の十数日を通じて具体的にどういう誠意を示して、小西君がさつきあなたに要望したように、載せてもらえるか、その努力をあなたがどういうふうに示されるかを、具体的に私は聞かしていただきたい。
  96. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 御意見の点は十分了承いたしまして、進んで参りたいと存じます。
  97. 中曽根康弘

    中曽根委員 私が聞いているのは、具体的にどういう方法を示すか、その具体性を聞いているのです。何も努力いたしますとか、調査いたしますなんていうことは、これは大臣が答える答弁であつて、しかもいいかげんな問題について大臣が答える答弁であつて、こういう三十六万人もいる人間の生命に関する問題について、大臣政務次官が答える答弁ではありません。電報を打つなり、あるいはその他の方法を講ずるなりしてあるいは特使を出してもいいではないか。ワシントンへ急いであなたが行つてもいいじやないか。ともかく何らかの方法によつて騒がなければ、今までの流れて来た情勢からいえば、とうてい載らないのです。しかし載せないでいい問題か、国際法上も黙つていていい問題かといえば、そんな問題じやない。われわれが世界に訪える当然の権利がある問題です。また連合国も載せなければならない問題なんです。この条文を読んでごらんなさい。講和条約の条文を読んでみれば、こう書いでてある。「日本の間の戦争状態存在の結果としてなお相互間に残る未決定の諸問題を解決し、」と書いてある。今あなたのおつしやつたように、未決定の諸問題の中に入つているのじやないか、それを解決するためにこの講和条約の草案ができているのじやないか、その中へ載せないということは、未決定の問題が解決していないのじやないか、こういうことすら言えるのです。そこで日本政府としてはもう一度最後の努力をどういうふうにするか、私は具体的な対策を示していただきたいと思うのです。
  98. 若林義孝

    若林委員長 ちよつとお諮りいたしますが、大体あなたも各委員も、この質問に対してどういう答弁が出るだろうかは想像つくと思うのです。後ほど官房長官が見えると思いますから、官房長官に質問せられたらよいと思いますが……。
  99. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は質問粁としまして、一番の責任者は外務大臣であつて、官房長官なんか何にも知りはしない、それは意味がない。出すのなら官房長官でなくて総理大臣を出さなければならぬ、外務大臣を出さなくてはいかぬ。
  100. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 御熱心な御質問の点はよく了承いたします。しかし私がここでこういう具体的な方法、こういう問題というようなことは、これはおそらく同じ立場でおありになる場合におきましても、なかなか困難なことだと思います。
  101. 中曽根康弘

    中曽根委員 いや、私ならやります。
  102. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 私どもは従来の熱情を込めた三十六万九千三百八十二名のこの未帰還の問題につきましては、全力をあげて、あらゆる具体的な方策を立てて進んで来なければならないと強く熱望しながら進んでおります。そして講和の問題は、その意味においての一つの大きなポイントであろうと考えておりまするから、この上は全力をあげて政府はいたします。と同時に、また国民におきましても、どうぞ十分了解されまして、国民の輿論によつて動いて参るようにお願いを申し上げたいと存じております。
  103. 中曽根康弘

    中曽根委員 具体的な返事をしないということは、策がないのだと私は解するよりしかたがない。しかしほかの質問者もありますから、私はこれ以上追究しません。ともかくあなたがそうおつしやつた以上は、必ずやると信じて、善意をもつて今の答弁を聞きます。  もう一つ大事な問題は第二十六条である。第二十六条を読んでみると「日本は一九四二年一月一日の国際連合憲章に調印または参加している国で、かつ日本と戦争状態にあり、この条約の調印国でないいかなる国とも本条約に規定されていると全く同じか、もしくは実質的に同じ条件で、二国間の講和条約を締結する準備をもたねばならない。」こういう文句があります。そうすると、中共あるいはソ連との問題が出て来た場合に、今これが講和条約に調印をしなかつたとする。そうすると三年以内に向うの連中が調印しようと言つた場合に、必ずこういう問題が出て来る。また出なければ解決できない。そうなると、同じ条約でなくちやならぬということがここに書いてある。そうすると捕虜の問題が書いてない。同じ条約ということになると、それらの関係においても、これはボイコツトされるおそれがある。アメリカやイギリスの関係においては、捕虜を返してしまつたからこれはいいですよ。しかしソ連との関係においては、日本政府は最初に私が質問したように、タス通信やソ連の見解を否定しておるのですから、どうしたつてソ連に対して主張する権利がある、またなくちやならぬ。それをこの条項によつてソ連は、いや、おれはもう全部終つたのだと言つておるじやないか。だから、これと同じ条約でいいのだ。また条約自体にも同じ条約でなければならぬと書いてあるから、それらの条項は載せられないのだということになります。これをどういうふうにあなたはさばきますか。一体二十六条はどういう見解でおつくりになつたか承りたい。
  104. 草葉隆圓

    ○草葉説明員  二十六条は、実は特に二十一条関係におきましての、これは朝鮮は別でございますが、中国の関係一般的問題の解決のために道を開いた条項だと私どもは考えております。従いまして、そういう意味においての、いわゆるこの条約に参加しなかつた国で、今後三年以内に参加する場合の条約を締結する場合の条約文は、これの条約と同じか、この精神をくんだものであるかということは、一般的な条約の精神、こまかく申しますると、今の捕虜の問題等もないとはいえませんが、むしろそういう問題以外の問題を取扱つて来た問題だと従来考えております。いわゆる一つの道を開いて、多くの戦争状態にあつた国の、今国解決ができない国に対する道を開いた条文が二十六条だと心得ております。
  105. 小西英雄

    ○小西(英)委員 議事進行について……。先ほど来の中曽根委員質問は、われわれとして、また国民としてきわめて重大なので、外務大臣か、あるいは細部については法律的な問題なので条約局長か何か呼んで、日にちもないことですから、何かの方法をとられたいと思います。
  106. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は承服しない。私は質問者ですから、この問題に関して私に権利があります。外務政務次官というのは、条約局長の上におる人であつて、総理大臣あるいは外務大臣を補佐する人です。外務省の条約局長のやつていることはみな知つといなければならぬ。一番大事な問題は対日講和条約の問題である。政務次官として一番重要な問題は、国会関係であれば条約問題以外にはない。従つて条約のすみずみまで当然知つていなければならぬ。またあなたが知つている入だからこそ、政務次官に抜擢されたのじやないか、何も条約局長を呼ぶ必要はない。私は責任をもつて答弁をしていただきたい。要するにこの条文を読んでみると、まつたく同じか、または実質的に同じ条件で講和条約を締結するということが書いてある。そうしてさらにこれに附加するような形で、捕虜条項を対ソ関係に入れるかどうかという問題がもう一つの重要な問題である。この問題をまず承りたい。ほかの問題はあとで承ります。
  107. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 私はこの条約は、ソ連関係というのは別だと考えております。ソ連関係は、この全体の条項についてすでに招請状を発しております。従つてその参加するとせぬとは別でございまするが、この条項は今回招請状を発しない国々に対する問題だと心得ております。
  108. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからばもし調印しないで、しかもここに書いてあるような、国連憲章に調印または参加し、かつ日本と戦争状態にあつた国、この中にはソ連もおるわけです。そのソ連との関係においては、条約の内容全体はこれとかわつたものになり得るのですか。日本に有利なものになつたり、あるいは日本にさらに不利なものになつたりしてもよろしいのか。ソ連との関係においては、さらに捕虜の問題もつけ加えて条約の中に入れることができるのか。この条約の問題から御答弁願いたい。
  109. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 私が御説明申し上げましたのはちよつと不十分であつたかも存じません。これは現在の段階ではそうでありますけれども、将来の段階においては、条約に参加しない国はこの条約のこの一項によつて、三年以内に参加する方法がとられるというのでございますから、招請をいたしました国におきましても、これによつて将来締結の方法が残されて来ておると存じます。
  110. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば招請されたけれども調印しない国には、必ずソ連が残るということを予想しなければならない。ソ連との関係においても、そういう場合にはこの条項が日米あるいは日英の関係においても適用されなければならぬのかお伺いいたします。
  111. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ここのねらつておりま根本は、むしろいわゆる両国間の特定な最恵的な取扱い関係ということがこのねらいの根本だと存じております。またそういう方法でこれを進めて来ております。従つて今後締結をする特定国と最も有利な条約を結ぶという行き方も一つ方法と考慮し、さような場合には、すでに締結した国々に対してもこれを結んで行けるという条項にこれを持つて来たと存じます。
  112. 中曽根康弘

    中曽根委員 答弁が非常にあいまいで、私のような頭の悪い者にはわからぬのですが、要するにソ連との関係において、われわれは米英とこれを約束するわけですが、これ以上有利なものあるいは不利なもの、かわつたものをつくることができるのか、これが質問の第一点。その際に捕虜の問題は、ソ連との関係においては当然附加して規定さるべきものであると思うが、その問題はどういうふうになるか、これが第二。簡単でいいのですから明確にお答え願いたい。
  113. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 さような問題は多分予想の御質問だと思いますが、予想いたしました場合にも、できないとは存じません。但しその場合においては、この条項で規定されたよりも大きな利益をその国に与えるような平和解決、または戦争請求権云々とありますように、そういう場合におきましては、これと同一の利益がこの条約の当事国にも及ぼされなければならない。従つて与えることはできぬものではなしに、与えた場合にはそれと同じ利益を今まで結んだ国々にも及ぼさなければならない、こういう意味がこの二十六条だと思います。
  114. 中曽根康弘

    中曽根委員 第二点の捕虜の関係はどうなりますか。
  115. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 実はこの問題につきましては、さきに私が申し上げましたように、二十六条は、この全体の精神といたしましては、今回招請をいたさなんだ国に対しての処置として二十六条を取上げて来たものと思います。従いまして招請を発しました国々の問題につきましては、この条文によつて考えて来る問題と存じます。
  116. 中曽根康弘

    中曽根委員 この条文によつて考えるというのですが、私が質問しておりますことは、ソ連が招請されても参加しなかつた、あるいは調印しなかつた、その場合でもこの条文によつてやらなくちやならぬということになるのですか。われわれはソ連とまたいずれかの事態において講和をやるという際においては、捕虜条項はソ連との関係においては挿入できるのか。それは米英との約束違反にならぬのか、そういう質問をしているのです。
  117. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 私どもはむしろそれよりも、この平和条約の二十六条はソ連をも含めた意味の条約だと考えております。そうしてこの二十六条は、正当に招請をしなんだ国に対する一項目、こういう解釈を下しております。しかし今後の国際情勢の動きによりまして、今のような現実があるいは起つて来ないということは考えられませんが、それは今後の情勢による問題だと存じております。しかしこれによる締結がありましても、いわゆる御質問のソ連の参加の条約の締結がありましても、この中には捕虜の条項が入つて去らないじやないか、こういう問題にたつて来ると存じます。この点につき言しては先ほど来お答え申し上げた通りであります。
  118. 中曽根康弘

    中曽根委員 お答え申し上げたという結論が私にまだわからない。もう一回明確に説明してもらいたいのです。要するに私が一番心配しておるのは、この講和条約の草案にはあらゆるケースが含まれておる。ソ連が参加した場合、ソ連が参加しない場合、あるいは朝鮮のよう日本の領土の一部でありながら、しかもあとになつて独立したという場合、いろいろな国があります。そのあらゆる国を網羅してこれはもちろんできておるわけであります。二十六条というのは、あるいは朝鮮のような事態を考えておるかもしれません。しかしこの中には、法律解釈からすれば、当然ソ連というものも入り得る。それが調印しなかつた場合、参加しなかつた場合が出て来る。そのあり得るソ連が参加しなかつた場合に、そのソ連とわれわれが今後講和条約を調印する場合、捕虜条項というものは当然附加して締結すべきものだと思うがどうか、こういう質問であります。
  119. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 両当事国の話合いによりまして、当然附加し得べき場合はあり得ると存じます。
  120. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこで質問を進めますが、二月の会談では、吉田さんはこの捕虜の問題をダレスに懇請をしない。外務省はしていない。四月二十日にダレスが最後に来たときに、あわててこれをしておる。ところが出した様子を見ると、非常に弱腰で出しておる。一体ダレスはどういう意味外務省が持ちかけたのに断つたのか。これに載せないのか。向う側の言い分をお示し願いたい。
  121. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これは私がお答え申し上げる筋じやないと思います。
  122. 中曽根康弘

    中曽根委員 あなたは話さなかつたから答える筋合いでないと言われるかもしれませんが、これは日本政府が一体になつてつておる問題です。しかもあなたはその専管の省の、外務省政務次官こして、アメリカ側の見解を漏らすことは決して不当じやない。また知つていなくちやならない。あなたは知つておるはずです。ちやんと新聞にも書いてある。朝日新聞の論説を読んでごらんなさい。あの論説を読んでみると、これ以上法律的義務を附加することは実益がないと言つておる。われわれが聞いておる範囲でも、ダレスはそういう答弁をしておる。あの朝日新聞の記事が正確であると思うが、草葉さんはいかにお考えなりますか。
  123. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これはダレスさんのほかの文書等によりましても、ただいまお話になりましたようなことは表われております。あるいは、たしかどなたかの要請文に対しまするダレスの回答等にも出ておつたかとも存じます。しかしこれは今のお話の通り立場においての解釈であつたろうと存じます。ただこの問題が条文に出ておる、出ておらないということについて、一体ダレスはどう考えて条文に載せなんだかという点については、私がお答え申し上げる筋合いでありませんと申し上げた次第であります。
  124. 中曽根康弘

    中曽根委員 それを聞くためにきよう委員会が開かれておる。この何十万という全国同胞の家族の代表が、群馬県からも北海道からも来ておる。どういう理由で来ておるかというと、それを聞きにい。今度の問題は講和条約を中心に行われた。きのうの決議、宣言文のうしろに、何と書いてあるか。捕虜条項なき今度の講和条約は絶対反対だと書いてある。絶対反対するということは、非常な衝動を外国に与えるかもしらぬ。しかしそれだけの決心をきのう集まつた人はしておる。なぜしておるかといえば、そういうことが明確でないからです。あなたは日本政府立場をよく話をし、向うの見解もよく聞き、そうしてお触れになれば、あの宣言決議はあるいは取消されるかもしれない。そういう努力政府はしなければならぬ。それをしなくて、自分の首がこわいから、あるいはワンマンに恐られるから言わないというのは卑怯だ。それは政府のためにとらぬところだ。私は何も与党、野党という関係をもつてつておるのではない。こういう大きな運動が起つておるから、国家のためにそれを明確にしていただきたい。どうか私の衷情をくんでいただきたい。
  125. 若林義孝

    若林委員長 ちよつと傍聴の諸君に御注意いたしますが、規則によりまして、お心持ちはよくわかつておりますが、拍手その他はなさらないようにしていただきたいと思います。
  126. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これは御質問の要点に、条文に捕虜の条項が載つておらない、この載つておらないのはどういうわけか、ダレスさんはどういうよう考えでというようなことを言われましたので、私は先ほど申し上げたようなことを申し上げたのであります。いわゆる抑留者の問題の解決には、日本政府はあらゆる努力を進めて来ておつたことは万々御承知だろうと思いますが、また私もお答え申し上げた通りであります。しかしこの平和条約草案の中に、この俘虜の処置の問題が出てもりません。これはお話の通りであります。そこで一方におきましては、この条約草案に俘虜の問題が載つていないことにおいて、今後この問題が法的にやれないのではないか、そういう意味において、ただいまお話になつように、この条約に絶対反対というようなお考えが起つて来るのではないかと存じますが、私どもの考えは決してそうは考えておりません。もちろんこの条約にはつきりと処置が載つて来ることは、これは望ましいと存じます。しかし現在におきまして、七章二十七条の条文一々には、具体的な問題としては載つておらないのでありますから、載つておらないから、捕虜の問題はこれで全部が終結したものという意味には、全然私どもは考えておらないのであります。もしやこの条約によつて関係国の中にソ連が加盟して参りましたら、ソ連と日本とは、もつと友好的な状態においての国際間の平常なる平和状態において解決し得ると考えております。従いまして、一方現在は、ソ連は捕虜はおらないと申しておるのでありますが、私どもはおると申しておる、この二つの食い違いがありまするので、幸いにソ連がこの条約に参加し、批准をし、効力を発生する状態になつて参りましたら、ソ連と日本とは最も平等なる、そうして平和なる状態において平常の国交においての解決が当然でき得るものと期待をいたして参つております。
  127. 中曽根康弘

    中曽根委員 講和条約というものは、そういうときの解決困難の問題を、あらかじめ法律で規定しておくのが講和条約の問題なんだ。従つてソ連が入るということを期待して、この条約がつくられるその手続で准喜しておるならば、必ずソ連との問題においてわれわれが主張しておる権利であり、あなたがおつしやつたように、タス通信は否定しておるのであるから、条約の中に載つておらぬと、たといソ連との間に正常な国交を回復し得ても権利がないじやないか。ソ連は帰してしまつたと言つておる、帰してしまつたと言つておるのを、講和条約の中に書いてなくてどうして帰してもらえるか。帰してしまつたと言われたらおしまいじやないか。書いてあれば、この通り書いてあるじやないか、世界も認めておるじやないか言えるが、これがないともうおしまいじやないか。どういうふうにあなたやるおつもりか。
  128. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これはお話の通り、私どもの立場といたしますると、質問者と同じ立場考えております。しかし再三繰返して申し上げましたように、一方はないと申しております、こちらはあると申しておる、この相違の問題でありますから、従つてこの一つの現実の問題をどう取扱うかという場合においては、多く講和条約草案にはこれは当然載つて来る問題でありまするけれども、一方は全然それを否定している問題で、そこにむずかしさがあると思う。しかしむずかしさがあつても、これは当然また正当なるあらゆる方法をもつて日本政府は主張して参らぬばならないという考え立場をとつて来ているのであります。
  129. 中曽根康弘

    中曽根委員 日本政府は主張しなければならぬという考え立場を持つているというのならば、なぜ載せないか。それが載つていなければ、その考え立場を実現する根拠がない。二階に上ろうとしても、はしご段がなければ上ればしない。それと同じことで、どうしてあなたはこれに対して権利として主張する方法をとるのだ。
  130. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これは講和条約草案におきましては、ただいま申し上げましたよう意味において、ソ連はないと言うし、日本はあるという、そういう意味においての問題で、そうしてそれよりも他のまた適当な解決の方法をちやんととられて、今までできた最後草案というものが決定されたことと了承いたすのでありますが、しかしかりに講和条約草案に、この捕虜の問題が出て参りませんといたしましても、決してお話のように全然根拠がないために、日本は主張し得る立場でないとは私ども考えておりません。十分あると存じておる。
  131. 中曽根康弘

    中曽根委員 草葉さんは外務政務次官ですから、法律を御存じだと思うのです。一体どういう根拠で、どういう条文で権利があるか。法律的根拠を示していただきたいと私は言つておる。単に三人委員会ができておるから、あるいは世界の道徳心にすがるとか、あるいは世界の特別の慈恵政策にたよるとかいうことは、法律的根拠にはならぬ、いやになつたら、国際情勢が変化すればおしまいであります。法律の条文に残つておれば永久に言い得る。子孫に残すことができます。これで二十年、三十年たつてごらんなさい。条文が残つていなければこのまま埋もれてしまう問題だ。だからこそ講和条約という証拠に残して行こうという問題である。一体どういう法律的根拠でしからば主張するか。あなたはもつとあつさりと所信を表明された方が私はいいと思います。それは、法律的根拠は残念ながらなければないと言えばいい、私は追究しやしない。——追究するが、しかしもつと建設的のことに話を進めて行きます。何もそうやせがまんをしないで、どうか虚心坦懐に話してもらいたい。
  132. 堤ツルヨ

    堤委員 議事進行についてちよつと。  ただいま中曽根委員が御質問になつておることは、おそらくここにおられる委員が全部きよう質問したい問題であつて、しかも明快な回答を得たいポイントであると思います。具体的にこれをどう条約の中に解決して行くかという政府の所信が明らかにならなければ、たといこの委員会は立ち往生いたしましても、散会することもできないし、われわれは引下つて行くことはできないと思うのであります。でありますから中曽根委員が、ただいまの質問から他の質問に移動されるようなことがありまする場合に、政務次官の明快な回答が出ない場合は、ほかの問題に移動してもらわないように私は申し上げておきます。
  133. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は絶対に移動せぬ。
  134. 堤ツルヨ

    堤委員 それならばよろしい。
  135. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これは何回も繰返してお話申し上げましたように、これの根拠は全部ポツダム宣言によつたことは、先ほど来中曽根君の御質問にあつた通りであります。しかしポツダム宣言は、今度の条約の調印国並びに効力の発生をしたときにおいては、今後失効するのである、もちろんそう考える。しかし失効しました平和状態なつた場合において、こういう問題があるという主張とないという主張とございます。もしやそこに平和状態になつてソ連が参りました場合には、それは当然平和状態においての国交が回復いたしまするから、すべての問題について、当然私はその内容があからさまになつて来ると確信いたしております。かりにソ連が参加いたしません状態にありまする場合には、ソ連におきましてはおそらくさきに申し上げました、学者の説によつては違いますけれども、ポツダム宣言は、効力を発生すると考えておると存じますし、私どももさよう考え、解釈を持ち得ると一方には考える。しかしこれは国際連合その他の解釈によつてつて参りまするから、当然九項でございましたか、捕虜の問題についての問題は、当然法的根拠をはつきりつておると存じております。
  136. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の御答弁によりますと、正常なる国交がソ連との間に回復すれば、それはあるかないかという問題だから、話をすればわかる、返してもらえるだろう、だからそんなものはここに盛らなくてもいいのだ、そういう解釈ですが、そういう意味でここに載せるのをやめたのですか。
  137. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 実はその問題は必ずしも直接の問題ではありません。しかし現在の姿におきましては、載つておらない姿で現われておる。載つておらない姿で現われて参つておりまするが、載つておらないからといつて、解決のできない問題ではないと考えております。
  138. 中曽根康弘

    中曽根委員 講和条約という問題は法律問題である。これは事実問題でもなければ、お情をもらう問題でもない、権利義務の問題である。捕虜の問題も権利義務の問題である。肉身が権利義務で、それを子孫に残すという問題だ。それが載つていなくてどういうふうにして解決ができるか。あなたは国交が回復して正常の状態になれば、お互いににこやかに話ができるとか、あるいはまた間接的に判断すれば世界のお情にすがれるじやないか、国際連合というものがあるではないかとか、そういう環境ばかり言う。しかし日本が主体的に、これだからという大きな法律的なかぎがないではないか。それがなくてわれわれがこれ子を子孫に引渡す講和条約として残せるか。その法律的なかぎを示してもらいたい。ポツダム宣言が米英との関係において失効すれば、第九項はなくなる。第九項がなくなれば法律的なかぎがなくなる。これに載つていなければ少くともなくなる。これが常識判断であり、日本人の判断であり、世界の人の判断であります。日本政府のあなただけが、あるいはワン・マンだけが、ごく一部の人だけが、そういう根拠があるということを言つておるにすぎなくなる。そういうことは世界に通用しません。明確な法律的なかぎを示してもらいたい。
  139. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ただいま申し上げましたように、ソ連がこの条約に参加し、批准をし、効力が発生いたしますると、これは当然国際法的な、平常の状態においてすべての問題の解決が対等にできる状態になつて参ると思います。従いまして、一万におきましてはないといい、一方におきましてはあるという問題につきましては、明瞭の度は法的にも国際関係においてもつとはつきりして来ると存じております。かりにソ連が入つて参りませんで、お話の二十六條による問題に将来残された場合におきましては、ソ連との関係におきましては、ポツダム宣言の効力という問題が残つて来ると思つております。従いまして、決してわれわれはこの平和條約が、ソ連が参加いたしましてもいたしませんでも、この條約の草案の中に一項ないからといつて、現実にありまする問題は決して解消する問題でないと考えております。これは法律的にもそうなると考えております。
  140. 小西英雄

    ○小西(英)委員 今の問題に関連したことですが、草葉政務次官は、先ほど来同じところをまわつておるようで、私から申し上げまするならば、今度の草案の中に入れた方がいいということも肯定しておりますので、私たちが特にお尋ねしたいのは、入れていいということがわかつている以上は、入れることが可能かどうか、現在何らかの方法によつて日本政府が懇請して、日本のために、われわれの子孫に対していろいろ法的根拠をつくるという面から見ましても、私も先ほど質問いたしたのですが、いいということがわかつてつて、それを入れる方法があるかないか、その努力が、どういうふうにした場合にも全然見込みがないかどうかということについて、ひとつ明快な答弁をお願いしたい。
  141. 中曽根康弘

    中曽根委員 私のお尋ねしているのは法的根拠の問題なんで、入れたいとか入れたくないとかいうのは第二の問題です。国際法上の法的根拠が、実は残念ながらなかつたならばない、しかし国民運動とか、あるいは世界の良心にすがつてやるのだというのであれば、話はわかるのです。しかしあなたは、法的根拠があるなら国際法上の条文を示しなさいと言つても示さない。しからば世界の良心にすがつてやるのかというと、そうでもない。正常な国交が回復して来れば、両国の話合いでできるという。一体どれが根拠なんですか。こういうあいまいなことを聞いておつたのでは、議論がぐるぐるまわりするだけです。明確なる根拠があるならある、ないならない、時間を節約する意味でもはつきり答えてもらいたい。そういうことをはつきりすれば進むのです。
  142. 小西英雄

    ○小西(英)委員 その答弁は、はつきり草葉政務次官から、米英との間にはなくなるのだということを私たちは承つておるのですから、それでどうですか。
  143. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ただいま中曽根君の御質問の点は、法律的根拠はどうかというのが根本問題だと存じます。しかし法律的根拠は、先ほど来るる申し上げまするように、ポツダム宣言によつて捕虜は完全にすみやかに返されるという法的根拠をもつて現在まで取扱つて来た。そしてまたそれが平和条約にかわつて来た場合に、ソ連が入つて参りましたら、当然これは従来の関係の国際法的な立場からも問題の解決は——あるとかないとかいう問題は、両国間において平常状態の対等の立場で解決し得る問題だと存じております。もしやソ連が入つて参りませんために、二十六条によつて将来入つて来る状態になつて参りません場合におきましては、なおその間ポツダム宣言の効力というものの持続は考えられております。但し全体を考えまして、先ほど申し上げましたように、この平和条約の一項に入れなくても、他の方法によつて講和会議等においてなし得る最大の方法をとり得る、またとらねばならない道も残されておるのであるという点は、先ほど私が申し上げた通りでありまして、そういう点について、日本政府は最大の努力をいたして参りたいと考えております。
  144. 中曽根康弘

    中曽根委員 講和会議のときのことはあとで質問します。そこでその前の話をもう少し続けたい。今のお話によりますと、ソ連が入つて来るときには、あるかないかの問題だから、正常な国交が回復するから、それで話がつくのだ、こういうお話です。そうすると、あるかないかという問題は事実の認定の問題であつて、おれはないのだと言えばおしまいです。こつちはあると言つても、向うがないと言えばおしまいです。おそらくソ連は、公式通信で発表しておるのだから、ないと言うに違いない。おそらくそうでしよう。そういう場合に、何を根拠にしてわれわれがソ連に訴えることができるか——いや国連やあるいは国際司法裁判所に訴えることができるか。この条文によれば、そういう紛争はすべて国際司法裁判所に訴えることになつておる。あるいは国際連合に訴えることも、日本が国連に入れば可能です。そういう条文が入つていなければ、事実問題で柳に風になつてしまう。それを規定しておかないで、日本の権利が確保できるか。われわれはこれは権利として持つおるのですよ。われわれが権利として持つておらないものならばよいのです。権利として持つておるものを放棄することになる。それでわれわれはわれわれの立場が守れるかということを質問しておるのです。
  145. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 この条文はイタリアの場合に比べまして、ずいぶん簡単明瞭になつておる、従いまして、これは七章二十七条のすべてに包含されている問題であります。ことにもつとも現在話題になつている大きい問題、捕虜抑留問題等もその一つになつて参りますが、こういう問題等につきましても、条文に現われておらずに起つて来ておる未解決の問題だと存じます。従いましてかような問題につきましては、当然日本は、それぞれの条文にありまする方法によつて解決し得る道として、入つて来ない場合もあります。同時にまたポツダム宣言も、入つて来ない場合におきましては、あの条文の正当なる動きが行われている。但しその場合においても、今御質問のありますように、ないというのとあるということは、どこで根拠を出すかということになつて参ります。従いまして日本政府は、府県はまた国民の皆さんの協力を得て、三十数万の現実の個票を集めて、そうして現実にこうだということをはつきりした数字をもつて示して参つておりまするし、また参る予定をしております。現実の問題でこれを表わして行く方法をとつて参りたいと存じております。
  146. 中曽根康弘

    中曽根委員 先ほどから議論が全然進展していない。あなたは事実問題を言つておるので、法律問題を言つておるのではない。あなた自身それは意識しているでしよう。もつと法律問題を掘り下げて説明していただきたいのです。それは事実問題として日本政府が証拠を出しても、向うはそんな証拠を認めないと言えば、事実問題なら終りなんです。かりにソ連が入らない場合、ソ連と交渉するという問題が出て来る。しかしソ連は、おれはやらない、おれは終つたんだ、こう言う。現に米英とやつた条約にも書いてないじやないか。もし書いているなら、ポツダム宣言があつて共同連帯責任があるんだから、米英としてもこの問題は自分の方も責任を果すけれども、同じ盟邦であるソ連にもやはり責任があるということを書くべきだ、それが書いてないではないかともし言われれば、それでおしまいじやないか。ところがこれに書いてあれば、われわれは米英を通して国際連合なり国際司法裁判所に訴えることができる。書いてなければ、それがボイとやられる危険性が十分ある。そういう点が大事なんです。米英との関係においては、それはもちろんみな義務を果している。しかし向うとの関係はないのです。しかし日本世界に訴える応援団として、われわれが法律的に米英に注文することができなくなれば、それはおしまいになる。そういう点において、米英との関係においても大事であるし、ソ連が入らなくて、あとで日本がソ連と話をつけるときにも、これは大事な問題になつて来る。その大事な問題、この法律根拠をなぜここに残さなかつたか、あるならば法律根拠を示せ、これが私の今までの質問であります。どうか明確にお答え願いたい。数がどうとか、事実がどうとか、国交がどうとか、将来の予測や、そういう環境を予測した問題は私は受けつけない。
  147. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 その条約草案に出て来た、出て来ないの問題につきましては、先ほど来何べんも申し上げた通りであります。従つて今後これを問題にいたしまする場合の法律的な根拠、これは国際連合憲章にももちろん基いてやり得ると存じます。またそれによつて現在の国際連合は取上げて参つております。それでこの条文にないから、今後この問題は法的根拠は全然ないということは、決して断言できないのであつて、むしろ私どもは、この抑留者の問題は法文に出て来ても出て来ぬでも——もちろん法文に出て参りました場合には、一層明瞭になつて来ることは事実であります。事実でありまするが、それがないから全然この問題は今後法的根拠がないということは、全然ないと存じております。
  148. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の外務政務次官のお答えは、結局講和条約全般及び今後出て来る駐兵協定全般をめぐる態度だろうと思うのです。要するに相手の愛情にすがる、相手の恩恵にすがる、その良心を当てにしておつて日本人としての権利を明確に文書に残しておくという精神がない。それじや講和条約意味をなさぬ。講和条約というものは法律的な一つの規範です。その法律的規範を残すために講和条約というものは行われておる。愛情や向うの恩恵にすがるというのは、これは政治問題であつて、法律的な条約という問題をとる必要はない。ところが内閣は、そういうような駐兵問題にしても、あるいはこの問題にしてもそうですが、相手の良心にたよろう、それにすがつておればいい、そういう漠然とした期待を腹に持つているから、こういうあいまいな、日本の権利まで放棄したと思われるような条約文が出て来るのです。あなたは私のこの質問趣旨がよくわかりますか。私が言いたいと思つておることはそういう問題なのです。そういう相手の良心とか、愛情にすがつておると国家の権利は確保されない。独立国の面目もなくなる。権利義務だけは明確に子孫に残さなければ、法律的の条約とはいえないの召す。どうしてこの条文に法律的根拠として残さなかつたということを、はつきりここへ来ておる人たちに知らしてもらいたい。そうして安心できるようにしてもらいたい。しかしあなたは、なるほど私が言つたよう意味において、法的な根拠は遺憾ながら載せられなかつた。しかしそのほかの方法によつて、これから質問いたしますが、同じような効果が得られるというお話ならば、私はそれで承服いたします。しかしあなたがあくまで法律的根拠があつて心配ないのだ、こう言い張るならば、私は九時になつても十時になつても、この質問をひつ込めません。どうか皆様を納得させるように答えていただきたい。
  149. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 先ほど来申し上げました通りに、最も明白に条文にこれを記載することが、一番明瞭な方法だと思います。しかし今回の今までの草案におきましては、御指摘のようにこれが載つておりません。この点におきましては、この抑留者引揚げ問題につきましては、まことに私どもも残念に存じております。しかし他の方法によつて、より以上、また同等な効果をあげ得る方法もあろうと存じます。載つておらない点については、先ほど来るる申し上げた通りであります。必ずしも載ることを、多くの連台国がそこまで行く必要はないと認めたのであろうとは存じまするが、またその他の方法による方がより以上効果的であると存じて、そういう方法をとられたかとも存じまするが、他の方法によつて国際法的に効果の上る方法をとり得るならば、その方法がより一層賢明であるという方法も、あり得ると存じております。
  150. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はまだ納得できません。しからばその他の方法によつて法律的に、あるいはその他の方法によつて同じ効果を得られるようにするというのは、一体どういう方法ですか。
  151. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これもいろいろな方法があろうと存じますが、その一つは、国際連合の正常なる機関に載せて、国際連台の立場から日本の主張の正当なる方法を認めてもらうという点であろうと存じます。またこの問題につきましては、すでに米英が十分了解してくれておると私どもは存じております。提案者の一名にもなつたくらいでありまして、十分了解してくれておりますから、講和条約等におきまする外交折衝等におきまして、日本立場並びにアメリカ、イギリス等の立場等において、この問題をはつきりした立場において取扱う方法も、具体的になし得る場合もあろうかと感じます。
  152. 中曽根康弘

    中曽根委員 じや国際連合に頼んでこれを問題にしてもらう、米英に問題にしてもらう、そういうときに日本は、こういう条文に基いてやつてもらいたいのだ、こういう根拠がなくして、向うの好意的な、あるいは向うの良心にすがる、これ以外にはその根拠がないと思うのですが、一体向うがいやだと言つたらそのままになりますか、まだこれは必要がないと言つたらそのままになりますか、講和条約の草案にでも入れなかつたから、ちよつとその時期がまずいと言われたら、そのままになりますか、すべてあなたまかせでこういうものを放つておいていいのですか。
  153. 池見茂隆

    ○池見委員 中曽根委員政務次官の話は大分長いようですが、これはわれわれ委員としても同一に聞きたい問題であるということを明確に申し上げておきます。今草葉政務次官は、条約草案の中に捕虜の問題が出ない場合においては、いわゆる将来この問題は消滅して、われわれの持つ権利を放棄しなければならないではないか、その点において、それは国際法上においてもその権利は存するということを申しておるように私は心得ておる。したならば、その存する権利とは何ぞや、いわゆるその法的根拠を明白に話してもらいたい、こういうふうな点がいわゆる中曽根君の主張のごとく私は心得ておる。そこで私は国際憲章の第二条に、いわゆる世界の人類の個人的基本人権を認める、擁護するということが明記してあると思うが、この点において今回のこの講和草案の第三章の安全という中のB項に、連合国は日本国との関係において国際連合憲章第二条の原則に従うべきことを確認すると書いてあります。したならば、今の講和草案になくとも、このいわゆる国際憲章の第二条によるところの法的根拠をもつて、この問題の処理はでき得るものであるという見解を私は持つものである。ここにおいて草葉政務次官も、おそらくそういうことによつて国際法上の権利は残るものであるというお気持のもとに御説明をしておられるということを考えた場合に、私どもは、今日ここにお集りの全国留守家族代表者の方々が、終始一貫ここにおいて一言一句のがすことなく聞かれておるところのこの委員会の席上におきまして、先ほど中曽根君は政党政派の具にあらずして、あくまでも日本留守家族のためにというお話をされたが、その点において吉田ワン・マンあるいは総理は、これはわれわれの総裁であり、われわれの総理大臣であるがゆえに、私は決して棒かつぎはしない、あくまでもこの委員会は終始一貫、共産党を除くいわゆる超党派的の考えのもとに今日まで進んで参つておるのだ。したならばその問題が四月十八日に論議されたであろうと、二月に論議されたであろうと、少くとも今回の講和においては、この問題はわれわれが考えておる以上に、国民の一人までも帰さなければならぬという総理の意思表示は、昨年の七月十八日に日本留守家族大会が休止を命ぜられた場合において、総理官邸で私どもともども代表者と聞いた言であるのであります。その意味合いから、今回この講和条約を締結するにあたつて、今の三十六万数千の人が帰らざることに対して、私は総理その他所管省の役人並びに国民がどうして冷淡になりますかということが言い得られるのである。ここにおいて私は、いささか今の条文に対して付言をいたしましたけれども、この講和草案に載せ得ることができればこの上もないことである。しかし今回の講和草案は、示されたことく二十七箇条によつてほとんど決定づけられたものであると私は心得ておる。来月の十三日にいよいよ最後の決定案が発表されると思いますが、先ほど次官も、そういつたわれわれ委員、また留守家族方々の決議、その他の心境を考えて、できるだけの努力をするということを言われた。そのでき得るだけの努力ということは、少くとも沈黙の中あるあなたの腹でもつて努力していただきたいということを要望するのである。さらに前後に返つて、草葉政務次官のいわゆる国際法上の権利が存するという言葉は、私はこの国際憲章の第二条と、この講和草案のいわゆる第三章の安全の中の一項に関連したものであるがゆえに、条約草案の中にはなくとも、こういつた問題によつて引揚げ問題の促進、あるいは抑留者帰還についての問題は打切らるべき問題でないということをここにおいて表明しておきたいが、この点について草葉政務次官はいかなる所見を持つておられるか伺いたい。
  154. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 ただいまの御説明の中にありました御所見、まつたく同様に考えております。ことに国際連合憲章の根本目的並びに精神、及び世界人権宣言、これをすべて根拠といたしました。この線の上に立つた平和条約草案でありますから、この平和条約草案の中にも、この目的並びに精神を十分日本の平和条約は取上げて行く前提のもとに立つておるのであります。ここに国際法的な根拠を持ち得るとかたく信じております。ただいまお話になりましたように、この三十六万九千三百八十二名の未帰還同胞の問題は、ほんとうに政府が心血を注いで最もすみやかに解決すべき問題と心得ております。従いまして、今後におきましても講和条約の機会等におきまして、十分誠心誠意、あらゆる力を住いで関係国間の力を総合しながら、解決するように進めて参りたいと存じております。
  155. 中曽根康弘

    中曽根委員 草葉外務次官にお尋ねいたしますが、国際法上の権利というのは、国連憲章第二条による人権擁護という意味における権利だけでありますか、ほかに何かそういう権利はありますか。
  156. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 その他国際連合憲章の中にも、いろいろな条項で現われて参つておると存じます。またこの講和条約草案の中にも、ただいまお示しになつような点を具体的に述べておると存じております。
  157. 中曽根康弘

    中曽根委員 国連憲章の内容は、すでにわれわれも勉強しておりますから、私はさらに触れませんが、この講和条約の草案の中においても、国際法上の権利として、この捕虜の問題をわれわれが強く主張する軸になるものがない。今言つた抽象的な、国連憲章第二条の権利義務に日本も連合国も従うという制約はあります。それだけだ。捕虜の問題を中心にしてはいない。しかも国連憲章第二条による人権擁護ということはどういうことを具体的にいうかといえば、それは児童を虐待するなとか、婦女子を売春に使うなとか、労働条件を悪くして酷使するなとか、そういう一般的な問題であつて、他国におる俘虜までこれは予想してつくつたものでない。もつと個人として存在する人間の尊厳を意味する。それを意味しておるのであつて、国家と国家の行為によつて、集団的に強制的に異境の地に抑留されておる人たち対象にしたものではない。あなたはこの日本の捕虜の問題を、普通の児童を虐待するな、あるいは労働条件をよくしようとか、婦女子を売春に使うなとか、その程度のことと思つておりますか。その程度のものと一緒くたにして、これで日本の権利は救われると思つておるのですか。そんなことを考えたら大間違いだ。そういうよう考えをもつてこの問題をダレスと話し合つたから、いいかげんなところでお茶を濁してやめておるじやないか。もし日本政府が最後までダレスに食いついてやれば、これは当然載せた。載せたつて別にアメリカは損するわけではない。載せたつて金がかかるものじやない。ただなるたけ簡単にしよう、なるたけ簡略な条約にしようというダレスの意思、それだ。それでこう短かくなつただけの話。金がかかるわけではない。アメリカに迷惑がかかるわけでもない。結局日本の権利がそこなわれるこんな重大な問題を、婦女子の問題あるいは労働条件の問題と一緒に考えるところに間違いがある。この考え方を、どうあなたは御反駁なさいますか。
  158. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 お話の通り抑留者の問題は、一般的な人権の擁護の問題とは本質的に異なつておると存じております。その点は御質問者と同様であります。従いましてもつと戦争の直接の原因として起つて来た問題、もつと深刻な問題、もつとすみやかに解決しなければならない問題と十分了承したして参つておるのであります。
  159. 中曽根康弘

    中曽根委員 それだけの考えがあるならば、なぜ講和条件に載せなかつた——また最初にもどります。今から三時間前に始めたのと同じことになる。政府答弁しないから悪い。まだほかに質問者がありますから私はこの程度で打切りますが、この問題は、ともかく私はこういうふうに判断をする。国際法上の権利は正当に残らない。ただ連合各国の恩恵にすがるのみである。要するに日本の権利は残らない、政府努力はしたかもしれないけれども、今までの答弁に関する限り、最後の国連憲章第二条を引出すよう状態に至つては、私は誠意すらも疑わざるを得ない。そこであなたが先ほど漏らしました、一体講和会議のときにどうするか。この問題について質問いたします。  講和会議のときに、可能な日本の捕虜を救出する方法としてはどういう方法が具体的にありますか。またこの問題について、ダレスと何か約束までしておいてくださいましたか、いかがでございましようか。
  160. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 講和会議の場合におきましては、御承知ようにそれぞれの参加各国からも参加をいたします。日本も当然これに参加する態勢になつて参ると存じます。従いまして戦争後まだ未解決に残されております問題で、条文に載つておらない問題の中で、最も大きい問題は、ただいまお話になつております未復員者、未帰還者、抑留者の救出の問題だと存じますので、これらの問題につきましては、関係各国に日本も援助を十分訴えながら、解決のために諸国の力を総合し得る状態に持つて来るよう努力して参る、こう考えております。
  161. 中曽根康弘

    中曽根委員 一体どういうふうな腹案を持つておられるか、それをお聞きしたいのです。要するに連合各国をして共同宣言を発してもらう。宣言を発してもらえば、これは共同宣言であるならば、国際法上にも痕跡は残ります。あるいは声明を出す、あるいはその他の方法によつて決議してもらうということも可能でしよう。ともかく、しからばまず第一にわれわれがあなたに要望したいことは、講和会議のときに日本の主張を明確に述べてもらつて、権利としてこれを確認させるということがまず第一である。そうして講和条約の草案にこれを挿入してもらうという努力が第一。講和条約のときは判を押して帰るだけだというなら、何も全権を出す必要はない。吉田さんが行く必要はない。普通の人が行つて、判だけ預けて来ればよい。そうでなく、吉田総理大臣が出かけて行く限りは、ともかく日本人の誠意を示して、講和条約の草案の中につけ加えてもらう最後の努力をする。これが第一である。  第二の問題は、もしそれができない場合には、行政的な宣言なり、その他の方法によつて対策がとられるのもあるいはやむを得ない。そういう行政的な宣言なり、あるいはその他の方法について、政府はどういう腹案を持つておるか。当然そういう腹案はなければならぬ。これができなければこれをやる、それができなければこれをやると、それだけの研究をしておいて、初めて留守家族に対して誠意を示したことになるのです。私は私の考え一つを示しましたが、一体外務省はどれだけの対策を練られておるか、スケジユールを示していただきたい。
  162. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 まことに御質問の御説ごもつともと存じます。実はそういう点につきましては、いろいろと研究もいたして参つております。第一に全権を確定いたしました上に、その全権によつていろいろと構想が練られて来ると存じますので、ただいまお説にありましたあるいは声明、あるいは宣言、いろいろな方法もその一つかと存じます。御意見の点は十分了承いたしまして、今後の全権等の派遣につきましては進めて参りたいと思つております。
  163. 中曽根康弘

    中曽根委員 あなたが答弁したのは、私が言つたのをおおむ返しに言つただけです。外務省の腹案を示せというのです。御義理でもよいからもう二つ、三つ言つてもらいたい。研究してあるなら言えるはずです。
  164. 草葉隆圓

    ○草葉説明員 これは今申し上げましたように、これから全権の決定並びにその方法等を講ずる、従つて真剣に講和会議に臨む態勢が、あらゆる角度から検討されるわけであります。従いまして、お説にありましたような点はもちろん重々了承いたして進めて参るべきものと、そういう考えのもとに進んでおる次第であります。
  165. 中曽根康弘

    中曽根委員 委員長、あなたは今の御答弁をどうお考えなりますか。研究しておるなら、委員からの質問に対して御義理にも二、三言えるはずです。(「ソ連の頭を直せばよいじやないか」と呼ぶ者あり)ソ連の問題じやない、日本だけです。
  166. 若林義孝

    若林委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  167. 若林義孝

    若林委員長 速記を始めてください。
  168. 堤ツルヨ

    堤委員 先ほどから中曽根委員が御質問なりまして、われわれは御遠慮申し上げておりました。おそらくきよう委員は、どの委員もあの点に質問を集中されたろうと思います。従つて吉田総理大臣、吉田外務大臣を除く最高の責任を持たされるところの草葉隆円先生がお出ましになつて、この大切な質問に対して御答弁なりましたが、まるで堂のまわわを堂々めぐりをしておるようでございまして、常日ごろ頭のよい政務次官が、きようは何だかわざととぼけていらつしやいますのか、ピントをはずしていらつしやいますのか、私に言わせれば実に不都合な答弁をしていらつしやる。四時間何だかきつねにつままれたよう委員会であつたと思うのであります。局所を突いておりません。これをもつてはつきりしたとか、ソ連の頭を切りかえなければならぬというようなことでもつて片がつくならば、私はこの委員会の権威にもかかわると思うのであります。でありますからここにおいて、この委員会はまつたく立ち往生をしたと私は存じます。今理事会でどういうお申合せになつたかは知りませんが、私は一委員としてかくなりました上は、かく三十幾万の未復員を待ちます留守家族百何十万のこの輿論を結集されましてのあの大会に、私たち国会委員といたしましてこたえます上においても、吉田総理大臣は箱根においでになりますか、伊豆においでになりますか、山荘の奥深くお休みのようでありますが、この暑い中を一まずこの委員会に出ていただいて、そうして外務大臣としての答弁を願うより策はないかと私は存ずるのでございます。でありまするから、これを与党といわず野党といわず、私たちの認識を結集いたしまして外務大臣出席を求めて、委員会をあすなり、あさつてなり持たれるよう委員長努力されますように、私は緊急動議を出します。
  169. 受田新吉

    受田委員 中曽根さんからの一時間半にわたる質問と草葉次官の御答弁で、この委員会が結論を得ないということは非常に残念であります。同時にこの問題の解決を待つておられる留守家族方々にもまことに相済まぬことでありますが、私がこの際今堤さんからの発言に関連してここで申し上げたいことは、この委員会の特殊の性格から、当然この委員会外務省所管の最も重要な委員会である。従つて外務大臣である吉田さんは、誠意を持つてこの委員会出席をして、事の真相を十分説明していたたかなければならぬと思う。この引揚特別委員会が発足したのは昭和二十二年八月一日で、第一国会の決議によつて初めて出発したのです。私は満四年間の間ずつと委員を続けておる最古参である立場から申し上げれば、芦田外務大臣はこの問題について平気で、率直に委員会に出てくれた。吉田さんになつて三年になりますが、一回もこの委員会に出て来ない。まことに遺憾です。国会法第七十一条には「委員会は、議長を経由して国務大臣及び政府委員出席を求めることができる。」という規定がある。われわれには要求権がある。この国会の要求に対して、この権利を無視して出席なさらぬという吉田さんに対してはまことに遺憾である。同時にこれは与党、野党を通じて遺憾の意を表しております。今草葉さんが政務次官として、苦しい立場に立たれておることを同情しますけれども、吉田さんか出られない場合には、草葉さんは政務次官として大臣を補佐する最高責任者であるから、あらゆる角度からの検討をして立たれて、吉田おらざるといえども十分用を足されるところの御勉強が必要である、こう思いますし、また吉田さんもこの間の参議院の加藤シヅエ議員の質問に対して、この引揚げの問題はダレスさんに十分伝えてある、今度の講和草案を見てくれ、はつきり出るからと言われたが、その言がかわかぬ間に、これは出ておらぬじやないか。そうしてまた去る第十国会の途中で、鈴木前司法大臣がマ元帥に対して十分真意をくむ交渉をしていないじやないかという質問を吉田さんにしたら、吉田さんは、マツカーサ一元帥の顔も見ぬような者がかれこれ言うな、マツカーサーにおれは会うておるからよくその心持はわかるのだ、お前たち文句言うなという答弁をされた。私は吉田さんのその努力を期待しておつた。そうして閣議でも私にまかせ、ワン・マンにまかせと大みえを切つている。この吉田さんが最後の努力をしてくれるものと期待しておつた。在外資産の打切りもやらぬと言つてつたのに、この条約草案には出ておりません。この点吉田さんにまかせきるというわれわれの深い心理が、最後の段階で今中曽根さんから言われた苦衷となつて現われた。委員会の総員はこの苦衷を中曽根氏に今代弁してもらつたわけであります。草葉さんは今最も大事な立場に立つた政務次官で、この点答弁に非常に古労されると思いますが、まだ間があるのでありまして、今の中曽根氏の要求は必ず実現できる可能性があるのでありますから、委員会はあげてこの政府の過去の怠慢を今責めるよりは、これから叱咤激励して、政府の志を入れかえ、性根を入れかえさせて、さか立ちをしてでも国民の要望にこたえるという執行部の責任をとつてもらいたいものだと思います。従つてこの委員会は、党派をあげてと池見さんの言われた通り、重要な委員会でありますから、ここで打切るなどということは非常に遺憾です。遺憾であるが、これ以上続行して草葉さんに苦しい立場を要求することも、これまたかえつて遺憾であると思います。なお研究していただいて、またあさつて委員会があるのでありますから、政府として十分具体策をとつていただいて、明後日の委員会に、今まで国会の要求権を無視された吉田さんに、ひとつまげて出てもらつて引揚げ問題は総理としても外務大臣としてもこれほど熱心に考えて来たということを、祖国をあげての重大段階に、せめてこの委員会に出て来て、世紀の外務大臣としての発言をぜひ待望したいものであります。この点委員長には非常に御苦労でありますけれども、党派を越えた立場から、外務大臣としての責任ある答弁をこの委員会において発言していただくべく御苦力いただくとともに、われわれはここで党派を越えて委員会としての特殊の決議をして、留守家族におこたえする必要があると思いますので、この点を何らかの形で表わしていただきたいということを提議するものであります。
  170. 中曽根康弘

    中曽根委員 今までの外務政務次官答弁はまことに遺憾であります。しかし私はあなたを追究しようとか、あなたをいじめてやろうなどという、そういうけちな考え方で申し上げておるのではない。もし私の言葉に不穏当なことがあれば、私はあなたにあやまります。しかしこれだけ日本全国の人が集まつて、しかも新聞に論説まで書かして皆心配しておる問題に対して、今までの政府がとつて来た政策や考え方については、私は国民の一人として納得できない。私は今までのよう答弁を繰返す限り絶対引きません。釈然といたしません。また全国から集まつておる諸君も、今までの答弁である限り、きのう掲げた捕虜条項なき講和条約草案は絶対反対というあの札は、絶対おろさぬと私は確信しております。政府はきのう掲げたあの大きな総会の決議を引きおろしてもらうよう努力しなければならぬ、また納得させなければなぬ、私は政府努力を期待いたします。しかし今までに関する限りは、私は絶対に引きません。政府の責任をあくまで追究する。これ以上政府の措置が何かの面において出なければ、またわれわれが希望するような行動に、今後十三日の最終草案決定までに、あるいは九月三日、四日以後の講和条約会議において出なければ、われわれは現内閣に対してはどんなことがあつても許さぬ。それだけの決意を私はここで厳粛に表明しておきます。しかしお互いにものは建設的にやらなくちやならぬ。何も政府を恐るのが国民の喜ぶところではありません。私はきよう政府答弁には失望をして遺憾の意を表わすと、同時に、このよう答弁が当分続くという予想を私は持つので質問を打切ります。きようはこれで委員会を散会してもらいたい。そうしてあしたなり、あさつてなり、ともかく総理大臣外務大臣以下全部ここへそろつて、案を練つて国民に報いるというものを示してもらいたい。それを約束してくれますならば、私は質問をこれでやめます。委員長において善処をされんことを求めます。
  171. 庄司一郎

    庄司委員 講和条約の草案の中に、わが国の不幸な状態に呻吟しておる在外同胞をすみやかに帰還さすべし、かような条項を織り込んでもらう、こういうことを八千四百万国民の総意念願によつて、ただいま本会議はございませんけれども、少くとも当委員会において幸いにも委員長のおとりはからいのもとに、各派から出ておる理事諸君と、御懇談をなされ、そうして各党において御賛成をもらえるならば、これは燃え上る国民の総意として本委員会において適当な文字をもつてある成案を作成して、これを決定の上委員長の名において議長の了解を得、国連あるいは英米等の当局にこれを提出する、そしてわれわれの熱意にこたえてもらつて、さらに草案のうち適当な条項に、あるいはせめて附帯決議としてでも挿入してもらえるような措置を委員長において善処してもらいたい。これは何党かに党の問題ではござりません。あげてわれわれ総員のおそらく総意である。ひとり中曽根君の熱意だけでは決してない。われわれ政府の与党としても、きわめて政府態度の微温的なることを率直に認めるのであります。日露戦争当時におけるわれわれの祖父は、戦争に勝つていろいろなものを、あるいは領土を、あるいは大連をとつたけれども、なおかつ不満として日比谷の焼討ち、その他の大問題を爆発したことをわれわれは少年ながら記憶をしておる。敗戦国なるがゆえに思う存分のことは言い得ないでしよう。けれども、全権団がそろつて、そうして民主主義の国々の御了解を得て、捕虜はすみやかにポツダム宣言の条項にのつとつて返せということは、正しい社会正義であり、国民の当然の信念である。これは当委員会においてせつかく二日間委員長が善処されて招集された以上は、おまとめを願つて、明後日の委員会等において適当に処置されんことを要望してやまないのであります。議事進行として申し上げます。
  172. 若林義孝

    若林委員長 お諮りいたします。本日は午前中より三十九万の留守家族方たちの気持を背中に負いつつ、政府当局に対して種々真剣なる質疑を試みられたのであります。ただ政府当局としても、現段階における限界において、種々その間の事情を不十分ではありますが明らかにしたのであります。われわれもより以上の、いま一歩二歩というところの要求したい気持があることは、委員各位の胸にきざされておるのであります。今日はこの程度で散会をいたし、その間あるいはまた留守家族方たちとひざを交えての懇談をする機会を持つことも明日できますが、明後日の委員会等において政府当局のいま一段の決意をただしまして、当委員会として委員各位がお述べになりました、また胸に持つておられますことを具体的に表明し、必ず講和条項にこの捕虜問題、引揚げ問題を挿入さすべく本委員会としての最善の努力を払うということにいたしまして、今日はこの程度で散会いたしたいと存じます。
  173. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は委員長のただいまの提議に従います。しかし私は条件があります。それは今日のような事態をまたここで繰返すのでは意味がない。それでは今来ていらつしやる方々に対してもわれわれは顔向けができない。きようのこの応酬というものは、引揚委員会及び日本政府日本国会の屈辱です。恥辱です。それくらい真剣に考えにやならぬ問題で、従つてこういうような事態がまた再び出るなら、もう委員会なんかやめた方がいい、そう思います。従つてもつと政府誠意ある、しかも内容を示す態度でやつてくれるならば、私は明後日やることに異議ありません。委員長は責任を持つてつてもらいたい。
  174. 庄司一郎

    庄司委員 委員長のメモの中には、外務当局に対する本員の質問が書いてあるはずであります。最後に一点だけごく簡単です。外務省は明日抑留されておる気毒な同胞の数を、政府の責任において公に発表される甘の情報を本員は承知しております。もしそれがほんとうであるならば、国会を通して発表してください。政務次官のメモの中にその正確なる数があるならば、明日発表というのでございますから、あるいは今夕あたり各新聞社等に御発表に成るかもしれない。幸いに国会を構成しているわが引揚委員会がただいま開会中でありますから、明日の発表を本日この席において御発表くださることが望ましいと思いますが、いかがでございますか。
  175. 若林義孝

    若林委員長 今その資料を持つておられぬそうですが、明日は発表になるそうです。  次回は明後日公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十六分散会