○小林(信)
委員 私はこの
留守家族その他戦争のための犠牲者という
方たちの
援護の問題を、
一般生活困窮者と一緒に
考えるか、それとも
国民感情というふうなものを相当考慮して、別個に取扱うかというふうな基本的な問題をお聞きして、しかる後に文部省
当局で
留守家族あるいは遺家族の
方たちの子弟の教育に対して、どういうふうに特別に考慮されるかということをお伺いしたいのですが、そういう根本的な問題はまたいずれあとにしまして、この際稲田局長に、私たちが
地方をまわりまして
幾多目撃した問題からしてぜひともお伺いしなければならぬ点を申し上げるのでございます。
私たちがたまたま視察の途中、車中で目撃したのでございますが、私たちの参りましたのは北陸
地方あるいは東北
地方でありまして、米の産地であります。従いまして米をわずかずつ持
つて運ぶ
方たちがあ
つたのでありますが、もちろんそれによ
つて生活を維持しておる
ような
方たち外れしかも御婦人でありました。それで同行の議員の
方たちが、これに対していろいろ
質問を試みて、結局その
方たちは
留守家族の
方たちであり、あるいは遺族の
方たちであ
つて、それで夫をなくされ、あるいは夫を
抑留されておるために、自分の
生活を維持するというよりも、夫のいない、あるいは夫のない婦人としての責任から、せめて子供には、両親のある子供と同じ
ような教育をさせて自分の責任を果し、いない夫に対して、あるいはなく
なつた夫のために自分が責任を果すという
ような、そういう非常に私たちが涙をも
つて聞かなければならぬ
ようなお話を聞いたのでございます。ほかに職業を見つけ
ようとしても見つけることができない。法的にはこれは違反しておることかもしれぬけれども、こうしなければ、子供のことを
考えるときにやむを得ないものがあるのだという
ようなことで、子供の教育に対する切々たるものを私たちは伺
つたのでございます。その結果同行議員の中には、奥さんこれは非常にわずかでございますが、帰りにキヤラメル
なり買
つて帰
つてくださいと言うところまで私たちは動かされるものを持
つたのでございますが、ここで具体的に、局長は非常にお忙しい
ようですから、私二、三項目を申し上げて御
意見を承りたいと思います。
今年度わずかでございますが、教科書の無償配給がなされました。しかし
一般的な状況から
考えますと、
一般父兄はこれによ
つて義務教育の負担が軽減されたという
ような感じを持たないし、実際におきましてもそういう効果がない
ようでございます。私はこの際、もしああいう財源が今後捻出できるならば、
留守家族の
方たちで、しかもそういう
ような
生活の困窮と闘いながら、子供たちの将来のために、その責任から十分な教育を与えてやろうという
人たちのために、教科書の無償配給という
ようなことがこの際文部省として
考えられるならば、これは非常にその
方たちの御心配も軽減されることであるし、またわれわれ
一般国民といたしましても、わずかではございますが、感情的にも非常にうれしいものが出て来るのでございます。
それからなおその
方たちのお話の中に、こういう問題があ
つたのであります。最近どこの学校でも修学旅行が必ず行われる。ところがその修学旅行の際、一番親として忍びがたいものは、ほかの子供たちが喜んで修学旅行に参加するけれども、私たちの子供は参加することができない。ただ参加することができないというだけでなく、ほかの子供が歓喜に浸るのに対して、私たちの子供はかえ
つて逆にさびしいものを抱かなければならない。私はせめてこういう気持だけは与えたくないのだけれども、今の私たちとしてはするすべがないというところまで承
つたのですが、こういう具体的な問題に対して、文部省
当局も運輸省あたりとも交渉なされまして、全額国庫で負担して修学旅行をともにさせるという
ようなことは不可能であ
つても、その際の汽車賃という
ようなものは、国有鉄道と御相談にな
つて、無賃乗車という
ようなことができるならば、これも非常にわずかでございますが、ありがたいことだと思うし、またその御婦
人たちが子供に対する責任を果して行くにも大きな励みとなるのではないかと
考えておるのでございますが、この際文部省といたしまして、育英
資金制度あるいは教科書の無償配給、あるいは修学旅行の際の無賃乗車、あるいは汽車で通学をしなければならぬ
ようなところを東北
地方ではたまたま見たのでりますが、もしそういう点につきましても御考慮を願えると、非常にその
人たちが救われるのではないかと思うのでございます。以上の
ような点につきまして、文部省としてお
考えにな
つておられる点、あるいはすでに実施されておられる
ような点につきまして、お伺いできれば
けつこうだと思います。