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1951-01-27 第10回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月十六日若林義孝君が委員長に当選した。     ————————————— 昭和二十六年一月二十七日(土曜日)     午前十一時三十一分開議  出席委員    委員長 若林 義孝君       青柳 一郎君    池見 茂隆君       門脇勝太郎君    菊池 義郎君       小西 英雄君    佐々木秀世君       庄司 一郎君    玉置 信一君       中山 マサ君    坂口 主税君       柳原 三郎君    受田 新吉君       堤 ツルヨ君    今野 武雄君       高田 富之君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (管理局長)  倭島 英二君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君     —————————————  一月二十七日  委員竹村奈良一君辞任につき、その補欠として  今野武雄君が議長の指名で委員に選任された。 本日の会議に付した事件  理事互選  海外同胞引揚問題に関する件  国際連合総会における日独ソ連地区抑留捕虜  送還問題討議情況聽取     —————————————
  2. 若林義孝

    若林委員長 これより会議を開きます。  前回の委員会におきまして、不肖私が皆さん方の御推挙によりまして、再び委員長の職責を汚すことになつたのであります。時あたかも講和條約が具体化しようとしておるときであります。なおわれわれ国民代表とし中山マサ代議士外齋藤、倭島の両氏を加えまして、国際連合におきましてもこの引揚げ問題が重要なる議題として取上げられたときであり、また数日前ダレス顧問おいでになりまして、講和條約の具現化について今着々その歩を進められておるときであります。本委員会といたしましても、これからが真にその真価を発揮すべきときだと考えるのであります。  何とぞ委員各位の一段の御協力を賜わりますことをお願いいたしまして、委員長として選任されましたごあいさつをつつしんで申し上げる次第でございます。  この際理事互選を行いたいと思いますが、その方法についておはかりいたします。
  3. 玉置信一

    玉置(信)委員 私はこの場合次の動議提出いたします。  理事互選はその数を七名とし、投票を用いず、委員長において指名せられんことを望みます。
  4. 若林義孝

    若林委員長 ただいまの玉置信一君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 若林義孝

    若林委員長 御異議がなければ、理事はその数を七名といたしまして、    足立 篤郎君 池見 茂隆君    小西 英雄君 玉置 信一君    坂口 主税君 受田 新吉君    高田 富之君の七名を理事に指名いたします。
  6. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 本日の日程に入ります前に、緊急質問といたしまして政府にお尋ねしておきたいことがあるのであります。それは、御承知通り本日の都下各新聞は、一齊に初号活字をもつて、第一面の記事として、わが同胞の中に、戰争のために戰犯としてフイリピン国の裁判を受け、その結果死刑の宣告を受けた者が、新聞によつてその数字が違つておりますが、七十名と書いてある新聞もありますし、百七十名と書いてある新聞もありますが、それらの方々が、フィリピンの国の好意によつて、今回祖国である日本に送還されるというわれわれ国民として非常に明るい報道を受けたのであります。もちろんこれに対する国民の大きな喜びは言うまでもありませんが、御本人の留守家族人たちがその記事を見たときに、いかばかりか喜んだことであろうと考えるのであります。しかしわれわれ国会の議員といたしましても、現在のところは單なる新聞報道によつて得た喜びでございます。こういう問題は、国民代表であり、国権の最高機関でありますこの国会を通して、ことにこの海外胞引揚げに関する特別委員会を通じまして、国民にその真意を明らかにしていただきたいと思うのであります。そのことにつきまして、政府におきましてどの程度までの連絡なり、あるいは内容を御存じであるか承りたいと思います。
  7. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今の御質問にお答え申し上げますが、フイリピン関係戰犯の問題については、政府はまだ正式の通知を受取つておりません。新聞報道によつてまことにけつこうなことだと思つておるわけでありますが、今戰犯関係で、フイリピンの方からの連絡でわれわれの承知しおる数字を申し上げますと、既決が百三十三名、未決が五名、従つて百三十八名あるわけであります。全部この関係方々日本の方で服役し、その他帰つて来られることができるか、この点もその筋のいろいろな関係がありまして、正式の連絡を受けてみないとわからない状況であります。この戰犯関係の問題につきましては、いろいろ機微な点もりますので、むしろこの際今申し上げた程度のことにとどめて、想像その他の点は申し上げることを差控えたいと考えます。
  8. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 政府においては確報を得ておらないということでございますから、ことにまた戰犯関係の問題をわれわれの方面からいろいろ持ち出すということも、将来の結果を考えるならば愼重に考慮しなければならぬ点だと私も考えます。但しああいう報道が出たのでありますから、どうか政府におきましてもその真意をお確かめ願つて、決してこちらから要求するという態度でなくて、一日も早く政府責任においてその真実を国民に知らしめるということに御努力願いたいということをつけ加えまして、質問を終ります。
  9. 受田新吉

    受田委員 倭島さんがおいでであるし、政府次官おいでのようでありますから、一応ここでただいまの佐々木さんの質問と対応するような重大だと思える、朝鮮における日本婦人釜山地区における集結状況についてお伺いしておきたいと思うのであります。先般来新聞報道その他によつて朝鮮事変犠牲者なつたところのかつて日本婦人であつた人たちが、今やその夫であつた朝鮮人がとらわれ、あるいは戰死をした後において、その子とともに路頭にさまようて、寄るべなき避難民となつて釜山地区に集結しておるということであります。これらの婦人を、その籍が朝鮮にあるといえども、現にたより得る夫を失つておる立場から、これに対して帰国を希望する者に対して、日本政府としてはいかなる態度をとろうとしておるのか、この問題について重大な人道問題と思いまするので、政府意図をお聞きしたいと思います。
  10. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問ごもつともでございます。この問題につきましては、関係方面もたいへんな了解と大きな援助を與えられておると想像いたします。従つてでき得るだけ早くその苦境からのがれられて行くようにいたすことが、私どもといたしましては最も緊急なことであると存じまして、そういう方面に強い方針をとりつつありますることを御了解願つておきます。
  11. 受田新吉

    受田委員 その強い方法というのは、ここで示される範囲内の具体性を御説明願いたいと思うのでありまするが、いかがでございましようか。
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 具体的に申し上げますと、なるべく早い機会に内地に帰つて来られる方法をとりたいというので進めております。
  13. 受田新吉

    受田委員 政府としてその点を非常に関心をもつて努力されていることを了とするものでありますが、これらの人たちがこちらへ帰つて来た場合の受入れ態勢というものも、同時に考えておかなければならぬと思います。すでに一応朝鮮もしくは韓国の婦人としてあちらに籍を置いた人たちが大多数であろうと思うので、そういう者をこちらへ送還した場合の国籍の回復、もしくは受入れ態勢としての收容施設、こういうようなものをどう考えるかということで、この問題に対して政府としては用意をもつておられるかどうかをお聞きしたい。
  14. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この点も十分研究いたしまして、過去におきましていろいろ手抜かり等もあつたようでございますから、今後におきましては引揚げの線に乗せまして、十分でき得るだけの援護等も講じ、かつまた身寄り等も十分今から連絡をいたしまして調査をいたしておる次第でございます。さよう御承知を願います。
  15. 受田新吉

    受田委員 それと関連する問題ではありませんが、ある程度愼重考えなければならない問題として、日本に現在住んでいる朝鮮人本国送還計画があるようなことを聞いておるのでありまするが、つまり国内における秩序を撹乱するというような諸君を本国へ送還するというような問題については、政府はどういうお考えをお持ちでございますか。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在では外国人登緑令に違反しておりまする者を送還する以外には、実は方法がないのであります。従つて報道等に間々、ただいまの御質問のようなことがありまするが、まだ現在政府は確定した方法決定いたしておりませんから、さよう御承知を願います。
  17. 若林義孝

    若林委員長 では海外胞引揚げ問題に関しまして、昨年九月二十一日国際連合運営委員会決定により、日独のソ連抑留捕虜送還問題を国際連合総会議題として取上げられ、日本からは、本委員中山マサ君、YMCAの総主事齊藤惣一君及び外務省管理局長倭英二君がオブザーヴアーとして国連総会に出席され、わが同胞引揚げのために活躍せられましたことは周知のことと存じますが、本日は、多大の成果を收めて帰つて参られました三君より国連状況お話を願うこととなりますが、齊藤惣一君は御病気のようでありますので、中山、倭島のお二人よりお話を伺うことといたしたのであります。この際、わが同胞引揚げのために活躍せられました三人の方々に深く感謝の意を表したいと存じます。  それで中山マサ君よりお話を伺うことにしておつたのでありますが、二、三分で済むそうでありますので、順序をかえまして、庄司一郎君から緊急質問が出ておりますので、発言を許します。
  18. 庄司一郎

    庄司委員 この際大蔵当局に明快に御答弁を願つておきたいことがございます。それは、現内閣は昭和二十六年度において御提出予算を通して、減税を断行される、まことにけつこうでございますず、三、四日前の各新聞報道によると、未亡人に対してはある特定わく内において減税を断行するということが報道されました。これは社会保障政策一環の現われであつて、まことにけつこうなことでございまするが、ただ未亡人である、後家さんであるというだけにおいて、さような一種の恩寵的な、特権的な減税が行われるようでございます。もちろん未亡人の中には、その生活がまことにお気の毒な方々が多いのでありまするから、その御提案あるいは新聞報道も納得が行けるのであります。そこでこの際お伺いしたいのは、いわゆる未亡人という名称のもとに保障するわけには行かないけれども、その実質の生活状態未亡人と同様な、いな、もつと深刻な苦悩の生活にあえいでおる留守家族、全国三十七万人かの留守家族、その夫がいまだ帰らず、その父がいまだ帰らずというような境涯に苦悩呻吟しておるところの留守家族に対して、はたしていわゆる未亡人同様なる特定わく内における減税を断行される御意図であるかどうか。まだ大蔵省提出予算に伴うところの所得税その他の税法の御提案がないようでありまするので、その内容をとくと了承するに苦しんでおるのであります。未亡人だけが減税の恩典に浴し得るような各新聞の大々的な報道がございましたので、その反面において、留守家族方面が非常な不安焦燥にかられておるのであります。留守家族に対して、未亡人同様なる一定のわく内における所得税の軽減を断行するというような新聞報道が全然なかつたのであります。そこで各方面よりいろいろ問合せが来ておるのでございますが、この際このときにおいて大蔵当局より、留守家族に対しても、未亡人同様なる減税を、所得税法の中に成文としてこれをうたつて減税をするものであるというような御方針であるならば、本委員会を通して明らかにしてほしいと思うのであります。この一点だけをお伺いいたします。
  19. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまの庄司さんの御意見、私どもつたく同感でございまして、今回所得税法減税計画一環として、未亡人に対しまして一万五千円の特別控除を認める制度を考えておるわけでございますが、留守家族婦人に対しましても、同様な扱いをすることにいたしたいと思います。これは單に取扱いではございませんで、法律案にそのことを明らかにしまして国会提案いたしたいと考えております。法律案は昨日閣議決定を経ましたので、目下総司令部提出いたしましてアツプルーヴを得ることにいたしておりますが、近日中に提案できるものと考えております。
  20. 庄司一郎

    庄司委員 たいへんありがとうございます。そこで、すでに閣議の御決定を見ておるならば、むろんあちらさんのオーケーもとれることと思いますが、その留守家族減税の対象にするという成文は、改正所得税法の第何條の第何項にうたわれておるか、この点支障がなければお示しを願いたいと思うのであります。
  21. 平田敬一郎

    平田政府委員 今條文手元に持つて来ておりませんので、そこまで申し上げられませんが、明文として、はつきり未亡人と同様に、肩を並べまして法文化しまして提案する見込みでございますので、その点御安心願います。
  22. 庄司一郎

    庄司委員 庄司質問はこれで終ります。
  23. 堤ツルヨ

    堤委員 政務次官おいでになりますので、黄葉先生にお伺いいたしておきたいと思うのでございますが、実は二、三日前の新聞にも報じておるのでありますが、先般来問題になつておりましたところの在外公館等の借入金の問題、これはいろいろ各委員質問をいたしまして、今まで年末までの経過を承つたのでありますが、委員会においてその後の詳しい報告、なお調査をお集めになつた後の政府の処置について正式な御報告政務次官からお願いしたいと思います。
  24. 草葉隆圓

    草葉政府委員 手元数字等は持ちませんけれども、大体の今行つております方向並びに見当をひとつ申し上げて、御了承を願いたいと思います。  第一回の確認証は昨年末二万数千発送済みでございます。第二回の確認証も今相当馬力をかけて進んでおりますから、なるべく年度内に、近い機会に発送いたしたいという予定でございます。これに対する支拂い法律案というのが具体的の問題になつて参ります。確認証だけは出しましても、支拂いはまた別に、いわゆる国会において法律案としての承認を経て、初めてこれを成立しながら進んで来なければ支拂いができない。この問題は、支拂いは二十六年度中に支拂うという方針のもとに、できますならばこの国会にひとつ出したいというので準備を急いでおりますから、この点、多分そういう方向に進んで行くと存じます。どうぞさよう御了承願います。     —————————————
  25. 若林義孝

    若林委員長 では甲山マサ君から御報告を願います。
  26. 中山マサ

    中山委員 昨年五月二日、国会最後の日、総司令部の方の御了承を得まして、国会におきまして、未引揚者の問題に関して、これを国連へ提訴するという決議案を上程になりましたことは、皆様も御記憶のことと思います。その後秋に国連が再開されたならば、その決議によりまして、私どもの言うところの三十七万が是か、あるいはタス通信が発表しておりますところの、もはや少数の病人と少数戰犯以外には帰すべきものは帰したということが是か、この二つの問題の白黒をつけてもらうために、コミツシヨンが来ることを要請をいたしました。それがいかに取扱われるかということを非常な興味を持ちまして私は待つておりました。ところが、はからずもマツカーサー元帥の御好意により、アメリカ大統領の同じく御好意により、私ども三人が、アンオフイシアルオヴザーヴアーとはいえ、待望の国連へ第二歩を印する日が来たということは、しかもその問題が引揚げの問題であつたということは、まことに感謝すべきことであり、私ども国民敗戰の歴史にもまた銘記すべきことであつたろうと考えております。私どもは取るものもとりあえず急いでかの地に参りました。その他ドイツからも国会から二人、外務省から一人、通訳一人という四人のお方がこれまた急ぎニユーヨークヘ参りました。敗戰後私ども日本代表ドイツ国民が相会して、このわれわれ国民悲願である問題を、ここにお互いに相談して、いかにこれを好転させるかという場面が展開したことも、また一つの歴史的なものであつたろうと私は考えております。アメリカに参りましても、戰後多くの日本人が来た、しかし国民代表して来たのはあなた方であると言われたときには、この問題の責任を深く三人の者が痛感したのであります。かくしてこの問題が国連において取り上げられる日を私どもは待つてつたのでありますが、なかなかこれが取り上げられません。六十二題という多くの議題がございました中で、待てど暮せどその日が来ないのであります。どういう事情でこういうふうな遅延を見たか、私どもは一箇月の予定をもつて参りましたのに、一月がたつてもなかなかその日が来そうにない見込みでございました。その理由はと調べてみますと、ルクセンブルグ、フランス、オランダ、この三箇国は、自分たち引揚げの問題を何とかして相手国と個別的に折衝して善処しようという考えから、私どもが参りましたことを喜ばなかつたのであります。アラビアブロツクも、これは政治的な意図を持つて来たものであるという考えのもとに、これをここで取り上げたならば、今でさへも冷たい戰争でやきもきしておるところの世界が、発火点に達しはしないか。より以上朝鮮動乱もまた第三次世界大戦の糸口となりやしないかということをおそれまして、この問題の取り上げをじやまをしたというと行き過ぎかもしれませんけれども、ある点までそういう気風が見えて来たのであります。  十一月十六日であつたと記憶いたしますが、いわゆる報道の自由という議題が敗け上げられました。そのときに英国の代表が、この報道の自由という問題が済んだならば、引揚げの問題を取り上げようという提案をいたしたのでありますけれども、なかなか論が盡きないのであります。遂に採決によりましてこれを決定いたしましたところが、十箇国賛成、十三箇国反対、二十三箇国棄権という実に憂慮すべき経過となつて参りました。私ども衆議院におきましては、好ましからざる問題は審議未了という形においてこれを次の機会まで延ばす手を心得ておりますので、ここでもまたこの手を食わされるのじやないかということを非常に心配をいたしたのであります。同時に御案内の通りに、安全保障理事会中共代表伍修權氏の率いる数人と、南鮮代表が到着をいたしました。朝鮮問題におきましてアメリカ側から中共の侵略に関して提訴いたしましたときには、これは招聘されても拒否したのでありますが、アメリカ東支那海に第七艦隊を入れたということは、ヤルタ会談によつて当然台湾は中国の地域となるべきはずであるのに、ここにアメリカがあの大陸より朝鮮事変が済まないうちに台湾に攻撃を加えられてはよけい問題がうるさくなるという見込みのためにここに入れましたことを、中共側は、アメリカこそ国連の面をかぶつて侵略しているところの国であるということを申し出まして、ここにこの二つの国の代表が参つた次第であります。私どもの問題がなかなか取上げられないものでありますから、こういう委員会にせつせと通いまして、世界の動きを見ていたのでありますが、ここではまことに憂慮すべき事態が起りました。アメリカ自分の方が先に発言すべきであるということをオースチン代表が申したのでありますが、マリツク氏は議事のポイントにつきまして問題を起しまして、二時間半もここで粘りました。中共こそこの問題の提訴者であるがゆえに、中共が第一に発言すべきであるということを粘つたのであります、遂にどこの国でありましたか、だれが先に発言すべきであるかということで議論が沸騰して、どこの国も発言しないという奇妙な状態陷つたじやないかということになりまして、遂に採決になり、アメリカ国連に属している国が最初の発言者であるべしという提案通りまして、ここに発言を見ました。それにつきまして伍代表の三時間に余るところの発言がありまして、中共は四億の民衆を率いてアメリカ朝鮮よりのかして海にたたき込んでやるという脅迫がましい論戰がここに展開されました。これによりまして暗雲はたちまちにこの安保理事会から国連全体をおおい、ニユーヨーク全体に広がり、新聞もまたやかましくこの問題を取上げておりました。こういう事態になつて参りまして、すべての人の関心がこの問題にかかつて参りますと、私どもが持つて参りました三十七万の悲願というような第二次世界大戰の跡始末なんぞはもう影をひそめてしまつていよいよどうにもならない問題になるのではなかろうかといつて、私ども頭痛鉢巻でおつたのであります。一月はたつてしまいました。そうして私どもの問題の前に、ソビエト・ブロックの手が伸びて参りました国の人が、もはや共産主義の国にはいたくないといつて出て行つた人たち、いわゆる避難民という名前になつておりますが、この人たちをいかに処理すべきかということが問題になつて参りました。この中で私の興味を非常に引きましたことは、ギリシャの二十八万の学童が団体的にソビエト・ブロツクによりまして学校から拉致されたという問題があるのであります。ギリシヤの代表が立ちまして、ぜひわれわれの学童を返してもらわなければならないということを力説しておりました。これに同情を寄せましたのがベルギー代表でありました。ギリシャは古来文化ゆたかなる国である。世界文化史上にさんたる跡を残している。この国民ギリシャ国民である本質を失つてベルギー代表使つた言葉をそのまま用いますならば、赤い動物になつてから、しかもアテネの政権が転覆されてから返されるのであろうということを申しまして、ギリシャに対して援護射撃をやつたのであります。私はこの問題はなるほど避難民の問題ではございましようけれども、ある意味におきましては引揚げの問題であると思いましたので、この結果いかんによつては私どもの問題もまたいかになるかということもわかるであろう、こう考えまして、非常な興味を持つて傍聽いたしておりましたところが、遂に二十八万のギリシャ学童はその親元に返還せしめらるべしというところの提案が通過いたしましたときには、今まで憂いにとざされましたところの私どもは、ほのぼのとわが問題に対する明るさを感覚したのであります。遂に私どもの日がまわつて参りました。しかも議題最後の日でありました。安保理事会そのほかの委員会には、大体男子の代表のみのように私は思いましたが、この人道委員会事人道に関する問題であるからかも存じませんが、非常に婦人代表が多うございました。まずアメリカを取上げますならば、第一代表ルーズベルト夫人、第二代表サンプソン夫人、インドはマノン、これも御婦人でありますが、イラクはアフノンという人でありました。オランダ婦人代表を出し、もう一箇国どこか婦人代表を出しておりました。こういうある意味においてなごやかな空気のもとにこの場面が展開したのでありますが、委員長の後には、レポーターと申しまして報道する人やいろいろな事務関係の人がそこにすわつております。前にはずつて馬蹄型になりました机がございまして、第一代表がすわり、第二代表もその後にすわつていることもありますし、その後にはいわゆるコンソラーと申しまして相談役がすわつております。片方にはテレビジヨンの機械が置いてありまして、アメリカの家庭におきましてはテレビを持つているところがたくさんあるものでございますから、居ながらその場の光景が見られる設備もしてあります。片方には五つのガラスの部屋があります。そこには二人ずつ通訳官がおりまして、ここで使われる言葉ロシヤ語英語、フランス語、スペイン語、支那語の五箇国語になつております。どの言葉で話されましても、そこにおりますところの通訳官がただちにその言葉を他の四箇国の言葉通訳いたしますと、私どもが着席しておりますいすにはイヤホーンがついておりまして、そこにはまたダイヤルがあります。そのダイヤルの第二番目に調節をいたしますと、英語が聞えて来る。そういうわけで自分の希望する言葉に調節いたしまして聞くことができるわけでございます。すわつております人のその前には長い白い板がついておりまして、おのおのの国の名前がそこに書いてございます。でございますから、発言の場合にはその自分の国の名前の書いたものをもたげますと、委員長の指名によりまして、ここで発言ができるという仕組みになつております。  傍聽者も非常に多うございます。私どももおかげさまでパスをいただきまして、ここで傍聽をしておつたのでございます。オフイシヤル・オブザーバーと申しますれば、もちろん委員会発言する資格はございません。それならば私どもは何をしたかということになつて参りますが、まず第一に私どもがいたしましたことは資料の提供であります。向うの人は、この問題を十分に熟知しておられると思つておりましたけれども、なかなかそうではございません。たとえばあの有名なルーズベルト夫人、あの高い知性の人すらも、この問題はいわゆるポツダム宣言にございますところのPOW、プリズナース・オブ・ウオー、これだけのお考えだということでありました。しかし私どもが主張しようとしたことは、ただプリズナース・オブ・ウオー、いわゆるこの戰争関係の捕虜だけではなしに、一般邦人もまたこの中に多数入つているということを強調するのが、私どもの第一の務めでございました。こういうわけで、こちらから持つて参りましたいわゆるいまだ帰らざる人たちから来ました手紙、また私どもがかの他に参りましてから家族より寄せられました手紙を英訳いたしまして、これを提供するというようなことについて国務省のお方々と、あるいは個人的にいろいろとそこで折衝がされたのでございます。倭島先生は外務省関係のいろいろな方をたどりまして方々で御活躍になりますし、齋藤先生はWMCA、またその範囲内に入ります私もまたいささか御援助をさせていただいたわけでございます。ことにこの問題で一般邦人も入つておるのだということに最も有力な証拠となりましたのは、千葉県の金田という御婦人からいただいたお手紙でありました。そのお手紙には、自分たちは満洲におつて満鉄に夫が勤めておつた。ある日ソ連兵によつて夫が拉致されて、今日まで行方不明である。自分はこじき同然の姿になつて千葉県に引揚げて、里に世話になつている。何とか夫のありかを探してくれというお手紙でございました。中共地区から来ました手紙は、高山の助役さんの娘でありますが、これは終戰当時に中共軍に連れて行かれまして、看護婦にさせられまして、国には帰されず、中共軍に従つて雷州島までも行つたという手紙であります。私は子供のときから丈夫でした。しかしこの小さい足が満洲を歩き、支那を歩き、遂に雷州島まで中共軍について、これだけの道を歩かれようとは思いませんでした。しかしこういう私のような運命のもとにあつた者でなければこれだけの里程を歩くことはできませんでしたでしよう。しかし今は自分の運命にさからわず、いずれは帰る日があることを希望しております。雷州島に来てお手紙を出す機会がありましたので、お手紙を出したということでありました。こうして私ども国民救出運動におきまして、われわれの捕虜を戰線へかり立てること絶対反対というスローガンを出しましたが、事実かかることがやられておつたということも申し述べて参つたような次第でございます。  まず第一に、この問題は三国の共同提案ということになつております。いわゆるソビエト地区に在住するところの者が私どもの方では三十七万、ドイツは軍人だけにいたしますれば五十万、一般邦人を加えますと百万以上になるということを申されておりましたが、この中で英国のマクドナルド卿は、かつての敵国であつたドイツの問題を取上げて、ぜひこれを返してもらわなければならぬということを力説してくださいました。次には濠州のマツキンタイアという方でございましたが、私どもの問題を取上げてくださいました。ここでいわゆる軍人と一般邦人とが区別のできないような状態になつている。たとえば軍人といわれておる中に、数が足りないと一般邦人を放り込んで連れて行つてしまつた形跡があるということを力説してくださいました。第三がアメリカのサンプソン夫人でありますが、この人はただつまらない家庭に生れた黒人でありますが、立志伝中の人とでも申しましようか、夜学校に通うて弁護士の資格をとり、シカゴにおいて堂々と弁護士事務所を開設して、まことに人道的な立場から、この法律の問題に携わつている人であります。この人がいかに人道的な人であるかということは、アメリカでよく離婚訴訟を持つて来る人がある。そのときには自分が持つている案によつて三箇月間共同生活を続けてください。それでも離婚をしたいと思うならば、しかたがないから自分が離婚を提起して差上げましようと言つた。しかし三箇月たつてまあ帰つて来る人はほとんどない。こうして自分は始終金もうけをしそこなつておりますよとおつしやいまして、金をもうけるよりも、愛情を一生持つている方が人間として楽しいというようなことを言うくらいに、実に人類愛に燃えておるところの人であります。しかも弁護士でございまして、この捕虜の問題の法的見地もよく承知しているということをおつしやつてくださいまして、しかも自分は黒人であるがゆえに、自分の視先がアメリカにおいて奴隷生活をして、その奴隷生活の苦悩というものを十分に承知している。だから外地にあつて抑留生活をしている人は、奴隷的存在になつておるように見受ける。ちようど幸いなことにはアメリカの大衆雑誌——日本にも来ておりますが、「ライフ」すなわち人生という雑誌がございますが、日本の画家が書きましたところの抑留生活の種々相という絵がこの大きな雑誌の両面に出ておりまして、まことに時宜を得たものだと思いました。こういうわけでございまして、こういう見地からもう一つ申し上げますと、ほかの代表発言をしていらつしやるときに、自分はメモをとつてつたのでありますが、サンプソン夫人は自分の番になりましたら、私のところに参りまして、どうぞ中山さんノートすることをやめてくれ、そうして人間の力で行き詰まつた問題は——非常な信仰家でありますから、神の力によつて解決をしなければならない。それで自分発言がどうか諸外国の心のとびらを開くことができるように、あなたの信ずる神に祈つてくれということを私におつしやつたのであります。実にこういう気分でこの問題を取扱つていただくことは感謝すべきことであると私は考えて、御希望通りにいたしたのでありますが、サンプソン夫人は日本の捕虜の問題を取上げてくださいました。  次がソヴイエト代表のアルチユニアンという人でありましたが、この人は、国連憲章の百七條、いわゆる第二次戰争のあとに起つた問題は国連において取上げないというところの一條があるのであります。この問題を持ち出しまして、ソヴイエトはこの問題に関しては一切関係しないということを申し出たのでありました。これは私どもも予期しておつたことでありまして、別に驚くには値しませんでした。しかしそのあとが実におもしろい発言をなすつたのであります。南方において行方不明になつたという五十万の中に、私どもが問題にしておるところの三十七万があるのだ、アメリカはこういう人たちを、ハワイに沖縄に強制労働をさせておる、フランスにもおる、英国にもおる、ベルギーの炭鉱にもこういう人たちが強制労働をさせられておるじやないかという思いもよらないような発言があつたのでございます。さすがはサンプソン夫人は弁護士でありまして、法廷において鍛えあげたところの腕をもつておる人でありますが、それならばまことにけつこうであります。私ども三国とともに——ソヴイエトもこの共同提案者となつて、ぜひわれわれが要求するところのアドホツク・コミテイー、これはラテン語でございますが、直訳はこのことのみに関する委員会という意味を持つております。私どもはこれを国連引揚げに関する特別委員会と訳しておるのでございますが、この委員会をつくつて、さつそくこの問題を根本的に掘りさげて研究してもらいましようということをおつしやつたのであります。しかしソヴイエト・ブロツクはこれに反対をいたしました。こういう提案があつたのでありますが、御案内の地中海の東に位するところのレバノン、シリアという二つの国がこうして出されました提案を骨拔きにしようとしたのであります。国連のこの委員会に、今捕虜がいるという国々の人が報告をすればいいじやないかということを言つたのであります。しかし皆様も御存じの通りに、私ども五年の間待ちに待ちましたけれども、ソヴイエト・ブロツクからは死んだ人については一人もあるという報道を得ておりません。こういうことでは、私どもがわざわざ国連まで出かけて行つた意義はないと私ども考えておりました。  その次にはインドの人が、米英濠の話を聞いていると、多数の未引揚者があるということであるが、ソヴイエトの話を聞くと一人もいないと言つている。それならば、おるかおらないかわからないような問題をここで討論する必要はないじやないか、これはやめましようというようなことを言い出したのであります。しかし委員長は、これは議題に上つた以上、どうなるか最後採決まで行かなければ自分責任は果されないと言つてこれをけつたのであります。  次にフランスの修正案が出て参りました。おるかおらないかわからないとは言いながら、とにかく自分の国にそういう人があるかないか、ひとつ調査をするだけでもいいじやないか、それだけでもしましようということを言いましたが、これもソヴイエトによりまして嚴然とけられたのであります。こうしていろいろと修正案が出て参りました。ある国は、このドイツあるいは日本において騒がれておる問題が今世界の面前に持ち出されたのであるから、それだけでもいいじやないかというようなことすら言い出したのでありますが、遂に論議が沸騰いたしまして、英国の代表はさすがに会議の技術になれていらつしやいまして、いろいろなる修正案を巧みに取入れて、遂に最後のものができ上りました。そうして国連特別委員会三人、しかも絶対に政治色のない人——ポーランドあたりはこの問題について政治色がないというようなことは言えないということを言つてがんばつたのでありますが、絶対に政治色のない人を三人世界赤十字社に選んでもらうということで、同時に赤十字社の方に向けて、引受けてくれるかどうかということを電報を打ちましたところ、各国が門戸を開放して調べさせるならば、引受けましようということでしたが、ソヴイエトは門戸を開放しないということを言つておりました。そういうわけでございますので、赤十字社のこの力は、ここでは頼りにならないというので、第二段の構えにたりまして、もし赤十字社がこれをやらないならば、リー事務総長によつてこの三人が指名される。四月末までに各国はごの国連引揚げ特別委員会調査書を提出する。そうして四月後の最も早い時期においてこの三人の委員会が相会しまして、この調査書を調べる。そうしてそれで満足の行かないものは、その国に行つてでもこれを徹底的に調査してやろうという、この情ある案となつたのであります。その次に大した問題ではありませんが、私どもが持つて参りました日本引揚げの問題に関する書類がイタリアからも参つておりましたし、ドイツからも来ておりましたが、これを各委員に配布しようという問題を、委員長提出されましたところが、ソヴイエトは国連に属していないところの国の書類をここで配布されることは違法であるということを言い出したのであります。ところが私が苦笑を禁じ得なかつたのは、チリーの代表でありましたが、これはふしぎなことを承る。ついこの間何日も何日もこの委員会において報道の自由ということを論議したじやありませんか、しかもそのとき最も強くこれを支持したのはソヴイエトの代表ではありませんでしたか。われわれはこの問題についての知識が十分でないから今こそこの提案されたところの書類を配布してもらつて、そうしてこれに対するわれわれの知識を十分にさせた上で採決に入るのが当然であろうということを申し出られましたので、ここではソヴイエトの代表もこれに次ぐ言葉はありませんでした。そうして委員長もまた、これは国連の書類ではないという申出であるが、しかしこれは国連の書類である。なぜならば国連に属しておるところの国がリー事務総長にこれを提出して、リー事務総長の手を経て私に来たのであるから、私の立場からいえばこれはりつぱな国連の書類であるということを力説されまして、遂に採決に入つたのであります。  いかになり行くか、ここでわれわれ同胞の悲願の悩みが解決されるか、私どもこれまでよく陳情団に委員長時代に会いまして、親の立場、妻の立場というものは十分に私も承知しておりました。しかし羽田を出ますときに、まことにいたいけな子供たちが来まして、私どもに、ぜひお父さんを連れて帰つてくださいということを頼んだのであります。多分皆さんもニユースでごらんになつたことと思いますが、私もここでしみじみと思いました。そしてこの出征前後に生れたかわいそうな子供たちの願いがどうなるかということが、私どもの非常な関心でありました。しかもまたあちらに行つております間に、親たちから、過去五年間は、むすこがどこの零下何十度という地で寒さにふるえておるかと思つて心凍る思いで来た、そしてこの冬は六年目であるけれども、三人の代表国連に行つていらつしやるので、きつとこの問題を解決してくださるという思いで、心があたたまる思いを持つているというお手紙をいただきました。こういうものをじやんじやんいただいておりますところの私どもの気持というものは、緊張し切つてつたのであります。遂に採決に入りましたところが、四十三票賛成、五箇国反対、八箇国棄権ということになつたのであります。その棄権の中にインドも入つております。イラクも入つております。私どもはこういふ方々にも個人的に折衝をいたしました。惡い言葉で言えば廊下とんびとでも申しましようか、機会あるごとにこういう人たちに折衝してこの問題を吹き込んでおりましたのが、私ども三人でございました。いわゆる資料の提供とか、国連代表に対して、こういうふうに個人的な折衝によつて三人の者が一生懸命にこの問題の御理解を願つておりましたが、ここにインドの代表——しかもイラクの代表は私に対して、必ず入れますと約束をしておきながら棄権をしたということは、実に案外でございました。しかしよく考えてみましたならば、今のようなあぶなかしい世相の状態においては、これもまた同情すべきことであろうかと思います。御案内の通りシリア、レバノン、イラン、イラクというものはあまりにもソヴイエトに近いのであります。みずからを保護するというのが動物の本心でございましようから、これもまたやむを得ないと思つて私は見ておつたのであります。しかしこの委員会において、圧倒的にかかる多数の賛成の票が入つたということは、ほとんどないということを聞きました。この動乱の中にあつて、しかもこの人道委員会の属する国連の軍隊は今朝鮮にあつて、みずからの子供たちもまた行方不明になつている人たちもあろうし、またはとらわれ人になつている人もあります。こういう状態にあつて、その同情が深かつたということはうなづかれる点もあろうかと思うのでありますが、かくして世界の人道愛というものが微動だもしていないという証拠を見せられまして、私どもの感激はやむところを知らなかつたのであります。新聞でもごらんになつたでしようが、私ども新聞社の方々に感想を聞かれて、ただ涙をもつて喜びを表明するよりほかはございませんでした。これはひたすらに、この国会の皆様方が昨年の五月二日にああしてあの案を通してくださいました御熱意と留守家族の御熱意と、世界の人道愛との、この三つともえの合作によつてかかる快報がもたらされたものであろうと信じまして、私はまことに心も軽く日本の空へ飛んで帰つたような次第であります。しかしただ一つ私はここに残念なことを御報告申し上げなければなりません。国連には小さい本屋がございますが、そこにブレテインと申しまして国連公報がございまして、国連に関する書類一式がございます。ある朝ふとそこに出ておりましたブレテインで、日本にございますところの三団体から、国連においてこの問題を取上げてくれるなという要請が行つてつたということがわかつたのでございます。日ソ親善友好協会、日本復員者連盟、それから民主主義擁護連盟でございますか、この三つでございました。もし日ソ親善友好協会が真にその意義を持つならば、なぜその親善をもつてわが引揚げの問題を解決してくださらないかと思つたのであります。日本復員者連盟の方も、もしいまだに自分が帰らないときに、ほかの人がこういうことを要請したならばどんな気がするだろうかと私はその方々にお尋ねをしたいのであります。また民主主義擁護連盟というのでございますならば、ポツダム宣言において世界の各国がわれわれに與えた、その民主主義的解決においてこの問題を解決されることをこそ願つていただくのが真の民主主義であろうと思うのでございます。齋藤先生がごらんになつたのでありますが、私はそれを聞かされましたときに、まことに残念に思つたのでございます。最後に私はこの三団体に対するところの調査の要求書を委員長にお出しいたしまして、私の御報告を終らしていただきたいと思います。(拍手)
  27. 若林義孝

    若林委員長 ただいまの懇切なる御報告によりましてわれわれ非常に感銘をし、その労に対して深甚なる敬意を表する次第なのでありますが——ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  28. 若林義孝

    若林委員長 速記を始めてください。  次は倭島英二君に御報告を願います。
  29. 倭島英二

    ○倭島政府委員 ただいま中山さんからきわめて詳細な、かつ雄弁な御報告がございましたので、私から蛇足を加えることもないと思いますが、何かまた本件につきまして、お供をして参りました関係上、こういう点はどうだというような御質問がございますれば、蛇足をつけ加えてもいいかと思いますけれども、別に私から特に今御報告がありました以外に申し上げることはあまりないかと存じますので、これで失礼させていただきます。     —————————————
  30. 高田富之

    高田(富)委員 ただいまの中山氏の報告最後に、日本からの三団体云々という、今委員長の所へ調査要求書を出されたということでありましたが、中山さんのお話を聞いただけではこの三団体がどういう内容を出したかということを発表されておりませんが、すこぶる何か遺憾なことがあつたかのごとき一方的な報告でありまして、そういうことがこの記録に残りますことも非常に重大な問題でありまして、少くともこれらの三団体の性格から言いましても、実際に平和を念願し、日本の氏族の将来を考えての行動であることだけは明らかでありますから、そういう一方的な報告をそのままそこへ記録に残さるることは問題でありますし、今後の調査方法についても、もしこの調査の要求書を取上げることになりますと——相当これは愼重を要するのでありまして、この際私は三団体に対する誹謗的な言葉があつた部分はお取消しを願いたいと思います。  第二にこの調査をやるということでありますが、その前に、こういう重大な問題で、ここでその三団体の名前が出された以上は、三団体の代表者を呼びまして、その間の事情をもあわせて本委員会は聽取する必要があると考えますので、これを緊急動議として提案いたします。
  31. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 共産党から妙なことを承るものだ。中山議員は引揚げ並びに国を代表して行かれた方で、その反対のことを国連に出されたという三団体の行為に嚴然とした事実として認められての御報告であるとぼくは思います。中山委員が一方的にこれを報告したというようなことは——もつともこれは共産党独自のものの考え方であつて、われわれはいかなる団体か知りません。今高田君のお話を聞くと、その三団体がいかにも民主的なやり方であり、平和の愛好者のごとく言われておりますが、しからばそれだけ言う共産党の高田君自体が三団体の性格をよくお知りのことと思うのです。しからばあなたがそれだけのことをおつしやるならば、その団体の性格をあなた御自身がわれわれに納得行くように御説明願うことが当然であつて中山委員からの報告報告としてわれわれ承り、しかも国連に対してそれこそ一方的な行動をやつたところの三団体に対して十分なる調査を要することは、われわれ委員として当然ではありませんか。しかも引揚げ問題に対しては国民全体がその成行きを津目しておる今日、それを取消すなどというとんでもない動議に対しては、私はまつこうから反対すると同時に、もし高田君自体が三団体の内容についてお知りであるならば、ここでわれわれに十分納得の行くような御説明を願いたい、こういうことを私は提案いたします。
  32. 池見茂隆

    池見委員 私は第一にただいまの高田君の動議には反対であります。その理由は、佐々木君も今言われたように、今日のこの正式の委員会において、しかもいわゆる国民代表として行かれた三名の方がこの委員会において発表せられるものが決して一方的な報告でないということを確認しておる。それがために、ただいま高田君が言われたそれらの三団体に対するところの、中山氏から提出された調査要求書は、当然その調査をしていただくことを私は要望するとともに、国連においてもこういつた三団体から明確にそれらの要望が出ておるということを認めておられることは、三人すなわち中山委員外二名の人が確認せられておりますがゆえに、私はむしろこの問題を調査する上におきまして、三団体の責任者にこの委員会に出てもらつて、そうして明らかにその要求理由を説明すべきであるという意味合いにおきまして、高田君の要望の緊念動議によつてそういつた事柄を削除すべきでないということを申し上げます。
  33. 玉置信一

    玉置(信)委員 私も佐々木委員の申されたことをこの席で発言しようと思つてつたのですが、幸いに佐々木委員の申されたことと私の考えたことと一致しております。同時に高田君の動議に対して反対である旨も、反対動議として提出しようと思つておりましたところ、これまた難いに池見委員によつて先ほど発言されました。従つて私は池見委員の、高田委員動議に反対であるという動議に対して賛成いたします。その採決をお願いいたします。
  34. 今野武雄

    今野委員 ただいまの御報告を聞いておりまして、私非常に遺憾に存じたことがあるのであります。それは、やはりこれは公の報告であろうと思うのでありますが、その中にたとえばインドとか、それからイラクということに言及された際、動物の本能云々の言葉がはさまれておりました。そういうことは私は非常に侮辱しておると思う。
  35. 若林義孝

    若林委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  36. 若林義孝

    若林委員長 速記を始めてください。
  37. 中山マサ

    中山委員 高田さんは誤解していらつしやる。私がその調査書を出した理由は、こういうものがあつたから、これがいかなる意思によつて出されたか、いかなる心構えによつて出されたか、いかなる根拠があつてこの問題を取上げてほしくないということを出されたか、それを調査してくれと言うているのであつて、初めからこれをたたきつぶすなんとは言つていない。これは調査です。いわゆる実地調査ですから……。裁判所でもそうでしよう。実地検証といつて調査に行きますよ。その調査によつて判決が下されるのですから、早合点をしないように。これは調査なんですから、何もお騒ぎになることはない。
  38. 若林義孝

    若林委員長 ただいま問題になつております調査要求書の内容を一読いたしまして、皆様方の御了承を得て、理事にこれをはかりまして、進めて行きたいと存じます。  一応ただいまの要求書を朗読いたします。   調査要求書一、本員は過般国連に使して海外同胞引揚問題解決の為聊か微力を致しました。然る処国連各国代表等に対し在日団体にして引揚促進の目的を阻害する行為をなしつつある者の存在する事を国連会報により初めて発見する事を得ました。如斯行動がポツダム宣言第九條に「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」の規定を無視した非人道的非国民的行動であるばかりでなく「父を」「夫を」「子を」待ちあぐんで居る各家族に対する裏切行為に非ずして何ぞやと言いたくなるのである。一、依つて委員会は斯かる団体の実在するや否や、若し実在すとせば何故に此の種唾棄す可き処置を為すや、尚其の団体数、加入会員の住所、姓名、更に其の動機、理由、経路、背後関係等徹底的に調査研究する必要あり、而して其の審査の結果を国連及び在日家族等に知悉せしむる事は本引揚運動達成を迅速ならしむるのみならず国連の信頼を高め家族の不安を一掃するものなりと信じます。之れ本調査を要求する所以である。  昭和二十六年一月二十七日    海外同胞引揚に関する    特別委員会委員         中山 マサ   若林委員長殿   引揚促進を妨害する如き書簡を国連に送つたと推定される団体一、日ソ親善友好協会議長 菅道一、日本復員者連盟議長オザワツネジロウ(小川常次郎の誤)一、民主主義擁護連盟事務局長ツダトシアキ(和田敏明の誤)以上三団体は何れも東京に本部を有するものなる由、特審局近畿支局中村調査係長言明この調査要求書が出ておりますので、委員各位の御意向も先ほど来の発言で察知せられますので、理事会にこれをかけまして善処せらるるようとりはからうことにいたします。  この中山マサ君の提示せられました調査要求書については、重大な問題でありますので、愼重にこれを取扱つて行かねばなりませんので、理事会において協議いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼び、その他発言する者あり〕
  39. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 これは重大な問題でありますから、共産党から強い反対の意見も出ております。また中山委員個人の考え方、それからいろいろな文書がありますが、それは別といたしまして、その団体が国連に対してそういう書簡なり要望なりをしたということが事実でありますから、これをはつきりと委員会において採決をして、そうして理事会においてそれをどうするかということに持つてつた方が一番はつきりするのではないかと考えますから、私は採決をお願いいたしたい。ことにまた私個人の考え方から申し上げましても、ただかりにそういう団体があるかないかというような御疑念もあるでしようけれども、小沢常次郎という名前を私たまたま承りまして、この小沢常次郎という人がかつて引揚げ問題に対して、いわゆる徳田要請なるものが出たときに、考査委員会においてもやはりこの引揚げ問題に対しては相当反対の意見を出した一人であることの記憶を私新たにしております。そういう人が存在することもはつきりしておるものでありますから、この際はつきりと採決によつてきめていただきたいということを申し上げます。
  40. 高田富之

    高田(富)委員 それだから私はさつき中山氏に取消しを要求したわけであります。というのは、中山氏がああいう要求をすれば、この三団体がその趣旨弁明をやるのが妥当であり、またわれわれ委員会としても聽取するのが当然です。しかし今のはただ聽取をするのではない。あたかも犯罪人を検事が取調べるというふうな態度で、そういう一方的な、まるで考査委員会と同じようなことを大委員会がやるべきではない。中山氏が堂々と述べられたのだから、これに対してあの三団体の代表者が来て、そうしてその趣旨弁明を聞くのでなければならぬ。それを一々ひつぱり出して調べたり……。     〔私語する者多し〕
  41. 若林義孝

    若林委員長 私語を禁じます。
  42. 高田富之

    高田(富)委員 そういうふうなことでなく、二つの立場から、ことにこの三団体もこの事件に対しては誠心誠意日本民族の立場に立つてつたことでありますから、これに対してわれわれはこれも聞くというのでなければならぬ。(発言する者あり)ですからその文面については大問題ですから、委員会としてはその要求書にとらわれないで、たまたま中山氏から意見を聞いた中に三団体の問題が出たので、三団体から意見を聽取するということを委員会として決議する。この要求書は、この委員会としては取上げるべき筋合いのものでない、こういう動議提出いたします。
  43. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 高田君の意見は意見として、取上げるものでないという反対の意見でありますが、私は何も反駁するものではありません。これは委員長採決できめればいいのです。あなたはあなたの個人的な考えでこれは取上げるべきでないと考える。われわれはこれを取上げるべきであると考える。それでこのままの委員の構成においてただちに採決せられんことを望みます。
  44. 受田新吉

    受田委員 この問題について双方の考えておるところは、中山さんの御提案は、中山さん一行が国民代表として国連へ行かれたときに、国連でこういう事実を聞いたということでここへ報告された。高田さんのお説は、その調べ方がいささか実地検証というような、裁判上の手続のように見えるから、そこを緩和してくれという意味の御発言だと思うのですが、結局三人の代表者をここへお招きして意見を聞くということは一致するのだから、われわれ委員会としてはその報告書は取上げたつて、決して高田さんの言われる線と矛盾するものではないと思うのです。その点は三人の意見を聞くことになるのだから、結果からいつたら同じことになると思います。
  45. 若林義孝

    若林委員長 これは先ほど私申し上げましたように、その取扱いを理事会においてはかる、こういうことでございますから、高田君の御意思には沿うておることだと存じます。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 若林義孝

    若林委員長 御異議ないものと認めまして、さようとりはからいます。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十三分散会