運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-05-21 第10回国会 衆議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十一日(月曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 前田  郁君    理事 大澤嘉平治君 理事 岡田 五郎君    理事 坪内 八郎君       稻田 直道男    尾崎 末吉君       黒澤富次郎君    玉置 信一君       畠山 鶴吉君    前田 正男君       滿尾 君亮君    山崎 岩男君       木下  榮君    原   彪君       山口シヅエ君    石野 久男君 出席公述人         富士山自動車株         式会社社長   天野 重知君         全国自動車組合         連合会常務理事 杉野喜久治君         日本乗合自動車         協会専務理事  塚田耕一郎君         日本国有鉄道労         働組合自動車協         議会議長    内藤 東平君         東京都交通局総         務課長     人見 捨藏君         日本トラック協         会常務理事   森田  賢君         品川ダイハツ販         売株式会社取締         役会長     山成  豊君         日本興業銀行監         査役      川島 茂樹君         東京大学教授  山田  晟君         日本小型自動車         工業会専務理事 櫻井 淑雄君         日本自動車整備         協会会長   山口  昇君  委員外出席者         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた事件  道路運送法案について  道路運送法施行法案について  自動車抵当法案について  自動車抵当施行法案について  道路運送車両法案について  道路運送車両法施行法案について     —————————————
  2. 前田郁

    前田委員長 これより運輸委員会公聴会を開催いたします。  この際公述人方々にごあいさつ申し上げます。本委員会におきましては、道路運送法案道路運送法施行法案自動車抵当法案自動車抵当法施行法案道路運送車両法案及び道路運送車両法施行法案について、一昨日まで慎重な審議を続けて参つたのでありまするが、本日は特に公聴会を開きまして、道路運送法案外法案について、真に利害関係を持つておられます方々及び学識経験者方々から、広く意見を聞くことにいたしたのであります。申すまでもなく、前記六法案国民生活影響するところきわめて大なるものがありまして、現行道路運送法におきましては、実施以来三年を経過いたしておりますので、その不備欠陷が多く、道路運送法の適正な運営と公正な競争を確保するためには、改正を要することを痛感いたしております。また車両法におきましては、道路運送法規定されておりますが、その詳細は大部分法案に基く省令によつて規定されておりますので、行政民主化を徹底いたしますために、省令規定している事項法律規定し、さらに最近の車両事情に即応して改正する必要があります。また現行金融取引におきましては、自動車を担保に供するためには、法律上きわめて不備がありまして、これを動産抵当にする必要がありますので、自動車抵当法案を立案いたしたゆえんであります。以上が六法案の概要でありますが、国民各層におきまして、種々の御意見が活発に展開されております現状から、本法案審査にあたりましては、国民諸君の声を広く聞いて、その輿論を反映せしめ、審査を一層権威あるものたらしめることを期しておる次第であります。本委員会といたしましては、本日公述人各位の熱心な、かつ豊富な御意見を承ることができれば、今後の審議の上に多大の参考一になることを深く期待いたしておる次第であります。何とぞ皆様の忌憚なき御意見をお伺いいたしたいと存じます。本日は御多忙のところわざわざ貴重の時間をおさきくださいまして御出席くださいましたことを、委員一同にかわりまして厚く御礼申し上げます。  なお公述人方々発言について申し上げますが、衆議院規則の定めるところにより、公述人発言は、その意見を聞こうとする事件範囲を越えてはならない、また公述人委員に質疑をすることはできないことになつておりますので、念のためお知らせいたします。また時間の制限もございますので、各公述人におかれましては、約十五分程度にて公述をお願いいたしたいと存じます。  それではこれより各公述人より御意見の開陳を願います。天野公述人
  3. 天野重知

    天野公述人 私は自動車道事業につきまして公述いたしたいと思います。私は昭和四年から二、三の自動車道路経営しておるものであります。わが国におきましては数の少い事業でありまして、その経営につきましては多少の経験を持つておりますので、その経験を基礎といたしまして、本改正案について、重要な二、三点について申し上げたいと存ずるのであります。  第一には、自動車道事業保護についてであります。御承知のように一般自動車道は、自動車交通だけに供する道路でありまして、自動車以外のものの交通を許さないのであります。この点が普通の道路と違つておる点であります。また自動車運送事業者が、もつぱらその事業用自動車交通の用に供しております。自動車専用道とも違いまして、広く一般自動車だけの交通に供する道路であります。つまりだれの自動車でも、自動車であれば通行せしめなければならぬ道路でありまして、この点からいたしますと、一般道路同一の性格を有するもの皆あります。自動車のほかは一切交通せしめないのが普通の道路と違うところでありますが、要するに一般道路でもなく、自動車運送事業者がもつぱらその事業の用に供する自動車道と違うところに、本道路の特色があるのであります。従つて自動車に関してお考え願うにあたりましては、われわれの経営する自動車道と、普通の道路と、専用自動車道路との特質の比較を煩わす点にあるのでございます。自動車道事業者は、自己負担において道路開設し、通行する自動車から使用料を微行して、経営するわけでありますが、この施設は土地に固定しておりますので、自動車運送事業に見るように、交通の状況によつて路線を容易に変更することができないのでありまして、この構造から申しまするならば、鉄道、軌道と少しも違わないのであります。しかるに自動車道に接近並行して、普通道路開設することにつきましては、改正法は何ら言及していないのであります。もとよりわれわれといえども普通道路発達することには、毫も反対するわけではありませんが、普涌道路自動車が通行することによつて自動車道が立ち行かない場合がある。ことに自動車道が立ち行かないように普通道路開設するということが、地方公共団体においてたまたま行われておるという実情があるのであります。本法案普通道路との関係にないて何ら規定されていないことは、自動車道経営をきわめて不安定なら治めるものと存ずるのであります。ことにふしぎなのは「路線を定める自動車運送事業を国において経営したため、これと路線共通にする自動車運送事業経営する者が、その路線共通にする部分につき事業を継続して経営することができなくなつたとき、又は著しく収益を減少することとなつたときは、国は、政令で定めるところにより、その自動車運送事業者が受けた損失を補償することができる。」旨を改正案第七十七條に規定しておりますが、国が自動車運送事業や、自動車道事業経営する道を開きながら、この場合における既存自動車道事業の受ける補償について、何ら規定されていないのは、はなはだ片手落ちと存ずるのであります。自動車道と普通の道路との関係におきましても、普通道路道路法規定によつて地方開設するので、これがため自動車にいかに影響があつてもそれはかまわないという現在のやり方では、はたして正当と言えるでありましようか。昔の内務省の当時におきましては、自動車道を奨励いたしまして、私たちもそれに浩つて自動車道開設した一人でありますが、漸次普通道路がよくなるから、普通道路補完的役割は完了したと思つて自動車道路を冷眼視せられるのでは、わが国道路政策がないと言いたいくらいに遺憾にたえないのであります。要するに自動車道事業の制度を維持せられる以上は、他の類似の事業同様に、いろいろ経営できるだけの保護政策を立てられたいことを、切にお願いするものであります。  次に自動車道事業免許基準であります。自動車道事業免許基準規定されましたことは民主主義的で、はなはだけつこうなことと思うのであります。しかし免許せんとする一般自動車道にいかに影響を与えるかは、非常に大きな問題であります。この点、四十九條第三号により抽象的に規定されております。しかし自動車道はさきに申しました通り一般バス事業と異なりまして、非常に莫大な投資を要する。この投資土地設備でありますから、固定していて、転換ができないのであります。よつてこの免許基準四十九條第三号は、より具体的に明確にして、その解釈のいかんによつては、万一にも既存業者が自滅にひとしいような状態を起さないように、すなわち実質的には免許取消しと同じような結果を生まないように明快、具体的に自動車道路免許基準をお考え願いたいと思うのであります。内務省自動車道開設免許に関しまして、昔地方長官に訓令しましたところによりますと、一般道路自動車道との関係は、両者が対立して不要な経費を投下しないように、かつては指示して参つたように私は記憶しております。今回の改正案には、それらのことは全然関係がないようにうかがわれますが、免許基準には、政府自動車道対策の大綱がわかるようにしてもらいたいと思うのであります。  次は自動車道事業補助の問題であります。自動車の増加に伴いまして、交通機関が錯雑して参りまして、一般道路におきましては、自動車機能を上げることができない時代が、やがて近い将来に迫つておるように思われるのであります。自動車機能を上げるためには、自動車道が必要になつて来ることは一目瞭然でありますが、自動車道開設することによつて交通上国家または国民の利益は、地方鉄道を敷設すると少しもかわらないのでありますから、国の交通政策見地からいたしましても、この事業政府が助成せられる必要があると存ずるのであります。ことに自動車道開設につきましては、一般道路は損害を免れ、また負担を軽減される結果となるのでありますから、どうぞ政府におかれても、自動車道事業助成補助の問題についてお考えを願いたいと思うのであります。  次に主務大臣の一元化の点であります。自動車道主務大臣運輸建設大臣の共管になつておるのであります。自動車道自動車と限つたものと見れば、運輸大臣が所管なさることが至当のようであります。また一面自動車道は、道路というような点からすれば、建設大臣が所管なさることがよろしいようにも思われます。しかし実際に事業経営しております私どもからいたしますと、両大臣の所管で書面を二通出すだけのことで済むならば、その煩わしさは何でもありませんが、両者意見が対立することをおそれるのであります。私が富士山自動車道免許をもらいました当時は、道路運送法以前、自動車交通事業法制定前でありまして、山梨県から許可していただきたいという意見内務大臣に出しますと、内務大臣からよろしいという指令を出されて免許なつたものでありまして、意見の対立とかいうようなものは少しもなかつたのでありますが、私はどちらの大臣でもけつこうでありますから、主務大臣を一元化していただきたい、こういう点を特にお願いしたいのであります。今回の改正案にあたりまして、御承知自動車道は、昭和六年に交通事業法制定の中に加えられまして、爾来二十年間、一度も改正とかあるいは改正の機運が向いておらなかつたのであります。幸いにして今度自動車道改正されることになりましたことは、はなはだけつこうでありますが、自動車道は、バス事業とかトラック事業とか、そういつたものどは非常に違つた、さらに莫大なる投資をもつて施設したにもかかわらず、一度も大改正がないというような点にお考えをいたされまして、私ども事業を十分保護されるような御改正を希望いたします。  なお自動車道以外の点におきまして、二、三御判断を願いたいのでありますが、法案第六條の三に「当該路線又は事業区域における」という項がありますが、この「当該路線又は当該区域における」を「当該地区における」あるいはなるべく「当該路線又は関係区域における」と修正されんことを希望するのであります。その理由は、本條項は、自動車運送事業免許基準の三を立法化したものであると思いますが、告示の「当該地区」を「当該路線又は事業区域における」というように、正確な表現をしたことはまことにけつこうでありますが、このため、当該地区という語に含めてあつた次の事実を廃除しないかという感じがするのであります。すなわち旧免許権者競争するため、事業区域をわずかにはずれた地点から地点まで、同一目的で新たに免許を得ようとするものを、この法案では何ら統制しなくなるではないかという感じがするのであります。これは地区をあらかじめ限定してしまうことから生ずるものではないかと思うのでありますが、当該路線または事業区域というものを、もつと幅の広い言葉に願いたいと思うのであります。現行法では、公共福祉に反する結果を生ずる場合、第十二條の六で免許を禁じていたため、告示当該地区を、たとえば港湾のごとく、きわめて狭く解釈しても救済の道があつたのでありますが、改正法案では、現行法第十二條の六が削除せられておるため、この点の修正は非常に重要なものではないかと思うのであります。  それから次に、法案に削除された現行法第十二條の六を次のように改正して挿入し、法案第六條2の五とする。たとえば当該事業経営により公共福祉に反する結果を生じ、あるいは本法上の事業権者既得権を著しく害するような競争を引起すおそれがあるときは、というような趣旨のものを入れてほしいような感じがするのであります。  以上簡単でありますが、自動車道保護自動車道既存業者保護一般道路並びに新免許をされる自動車道についての既存業者保護ということに対しては、どうか十分なる御検討をされて、われわれ業者つていただきたいと思うのであります。
  4. 前田郁

    前田委員長 次に杉野公述人にお願いいたします。
  5. 杉野喜久治

    杉野公述人 逐條的に意見を申し述べさしていただきます。  第九條であります。「収受した運賃又は料金の割戻をしてはならない。」とございますが、現実に私どもがハイヤーなどに乗りますときに、途中パンクをして目的を達しなかつたようなときでも、この條文がありますと、運賃なり料金なりの払いもどしをしてはいかぬことになりますので、こういつた場合に適合するような條文にお直しを願いたい。  次は第百一條であります。自家用自動車有償運送を規制したものでございますが、意見といたしましては、自己事業と直接附帯関連する運送は、有償でも行つていいということに規定していただきたい。たとえば購入、販売の委託品運送あるいは官己の行う製作、加工、修理品運送といつたようなものは、直接自己事業と附帯関連するものでありまして、一般の習慣から申しましても、運送事業というものは不可分なものであります。これを有償運送することによつて自家用自動車使用範囲を逸脱したと考えることは、道路運送の発送を阻害するものであろうという理由によつて、これを追加していただく。  次に第百十條でございます。これは従来から相当問題のあつた道路運送審議会委員條項でございますが、この資格について相当に制限をいたしておるわけでございます。しかしいかにこれを制限してみましても、申諸人利害影響のある委員の行為というものは、規制することができぬ場合が往々あります。現在でもあり、将来こういつたふうに多少改正せられましても、そういつたことが予想できます。それを排除する意味において、申請人利害関係のある委員に対して、申請人否認権を認める規定を挿入していただきたい。それによつて公正なる審議会運営が遂げられるものであろう、かように考えます。  それから第百十三條の第三項でありますが、その事案について利害関係を有する委員は、議決に参加することができぬとございますけれども議決の以前の討議、審議にも参加することができぬごとくにすることが至当であろうと考えます。  それから第百二十四條であります。路線を定める自動車運送事業につき、道路管理者意見を徴しなければならないということになつておりますが、従来の実例から見ますと、道路管理者はその路線免許することに関連して、地方すなわち道路管理者との利害が相反しましたときに、意見を容易に出さないことがあつたのであります。従つてこの條文には期限を付することに改めてもらいたい。  それから第百二十五條でございます。「道路運送事業者その他の自動車又は軽車両使用する者が道路運送振興を図るため組織する団体」これは行政庁外郭機関として、組合員利害及び意見を代表するものでありますために、行政簡素化に寄与し、またその行政効果を高めるためには有用なものでありまして、現にこれが存し、また必要であることは一般に認められておるところでありますが、何ら法的の根拠がないということが、従来非常に欠陷とせられておりました。ところがここにようやく一條加えられた、多少の進歩ではありますけれども、この條文では非常に物足りない。どういう点が物足りないかと申しますと、道路運送行政上重要なものでありますがゆえに、これが濫立されるのではその効果が非常に弱められる。また未加入者が非常に多くなつたのではその効果が弱められる。また経済的に立つて行かぬようになつたのでは困るというような三つの点から見まして、これらの点を裏づけするような法律にお直しが願いたい。いま少し強力にこれを裏づけしていただきたい。少くとも車両法における整備振興会ですか、その程度くらいまで法律的な保障を与える必要があるのではなかろうか、こういうような意見を持つております。
  6. 前田郁

    前田委員長 次に塚田公述人にお願いいたします。
  7. 塚田耕一郎

    塚田公述人 私はただいま御紹介にあずかりました日本乗合自動車協会塚田耕一郎でございます。全国バス業者を代表いたしまして、改正道路運送法案について修正の希望を申し述べたいと存じます。さつそく本論に入りまして簡単に申し上げます。  第一條について申し上げますと、第一條の中から「及び公正な競争」の字句を創ることをお願いしたいと存じます。その理由といたしましては、條文の中に公正な競争を確保する旨を規定されますために、その前提として競争の確保が認められ、一般乗合自動車運送事業について、あたかも一路線複数免許基本方針が採用されたかのように解されやすいのであります。しかして業者は主として営利会社でありますために、営利目的としている以上は、競争には強烈な国民感情を伴いますことは、火を見るよりも明らかであります。従いまして一路線複数営業競争状態を出現させ、適正な運営、公正な競争、または秩序確立を求めることは、不可能なことになるものと存じます。なおまた第一條の中の「適正な運営」または「総合的な発達」の字句意味の中には、時期に応じまして、公正な競争を含むものと解釈されますので、今回特に公正な競争を法文化する必要はないと存じます。     〔委員長退席大澤委員長代理着席一般乗合自動車運送事業につきましては、法律が一路線複数営業原則を採用したかのような誤解を起させまして、往年濫願時代を再現いたしますことはもちろんであります。従いまして事業の健全な発達を妨げ、さらに加えまして業者共倒れの結果を招来するまでに至ると思われます。  大体以上申し述べました通りでありますが、なお一言つけ加えて申させていただきます。それは以上申しましたことによりまして、あるいは私たちが公正な競争を否定しているのではないかと誤解されることをおそれるのでありますが、私たちは決して否定しているのではありません。先にも申し上げましたように、一般業者本條の「競争」という字句をもつて、ただちに一路線複数営業であると解することをおそれるからであります。もう一つは「公正な競争」ということは、独禁法や事業者団体法等においてすでに規定されていることでありますから、あらためてこの法律において繰返す必要はないのであろうと存ずるのであります。以上の理由によりまして、本條から「公正な競争」の字句を創つていただきたいのでございます。  次に第六條第一項について申し述べます。第六條第一項の免許申請に対する審査事項の中に、二号を新設追加することでございます。すなわち第五号の次に第六号といたしまして「当該事業の予定する路線が主として有効幅員六メートル以下の道路であるときは、同種事業既免許路線に該当しないものであること。」第七号「当該事業の開始によつて一條規定に反するような結果を生ずるおそれのないものであること。」この二号を加えることであります。その理由といたしましては、第六号でありますが、これは昭和二十二年運輸省令第三十六号の車両規則によりますれば、特に許可を得た場合は別でございますが、自動車の幅は二・五メートルを制限とすると規定されてあります。ところで近来のバスの幅は大体二・五メートルで、最大限のところに来ておりますから、自動車相互間のすれ違い、または追い越しを行う場合に、これらの両車両の間には少くとも五メートルの道幅を必要とするわけであります。そういう次第でございますから、有効幅員六メートル以下の道路におきましては、バスすれ違い、または追い越しはどうしても不可能なわけであります。もししいてすれ違い追い越しを行うといたしますると、自動車事故を起す危険があることになるのであります。しかしそれが一事業者であります場合におきましては、そういう狭いところですれ違いを起さないような運行ダイヤを調整いたしますから、危険の生ずることはないのでありますが、もしそれが異なる事業者であります場合には、そういうわけには参らないのであります。いわゆる危険をかもすことになるものと存じます。すなわち旅客の争奪とスピードの競争に陥りまして、悲惨な自動車事故を続発いたすと思います。そのことは往年その実例が幾つもあるのであります。こういうようなことからであろうと存じますが、内務省からは、昭和十一年発出第二号自動車運輸事業路線道路及び通路の規格に関する通牒が出されたのであります。それによりますと、道路の幅は使用車両の二倍半以上でなければならぬという原則でありまして、その趣旨はもつぱら危険防止にあつたことと思われます。しかしそれはその当時からでなく、今もなおその点は考慮さるべきことであろうと存じます。従いまして今回の新規免許及び普通免許も、そうした見地から危険防止に備える必要があるものと存ずる次第でございます。  次に第七号の理由といたしましては、第一條本法根本精神規定したのでありますから、その申請が第六條第一項に掲げる免許基準に適合いたしましても、第一條規定に反するような結果、たとえば事業の適正な運営を妨げるとか、道路運送に関する秩序確立を害するとか、事業の総合的な発達を妨げ、または不当な競争を引起すとか、そういう結果を生ずるおそれのあります場合には、これを免許すべきでないことは当然であります。しかし第六條第一項に掲げられました免許基準と第一條規定とは、その規定する範囲と対象が同一ではありませんから、第六條第一項に換げられました免許基準に適合するゆえをもちまして、第一條規定に反するような結果が生じないとは断定できないものであります。なおまた第六條第一項に掲げられます免許基準と、第一條中の公正な競争の確保とを対比いたしますときは、一般乗合自動車運送事業につきましては、濫願、濫許を誘致しやすくなりますし、しかもまた申請却下の場合におきましては、訴願の対象ともなりやすいわけでありますから、第六條第一項第七号として、第一條規定に反する結果を生ずるおそれのないことを免許寸基準中に加えて、第一條趣旨を一貫させることが必要であろうと存ずるのであります。  次に補助について申し述べますと、理由といたしましては、法の第三十五條第三項に「前二項に規定するものの外、損失の補償に関し必要な事項は、運輸省令で定める。」とあります。これは立案者の方におかれましては考慮されていることと存じますが、ただ第三十四條による運送命令によるものと第七十七條による国営によるもののみを規定されて、自動車運送義務に関しましては何ら補助考えられておらないようであります。その点につきましては海上運送法第二十條は補助をいたしております。第二十條はすなわち「政府は、定期航路事業であつて当該航路の性質上経営が困難なものに対し、郵便物の運送等公益上必要な最少限度の運送を確保するため、毎年予算の範囲内で補助金を交付することができる。」とあり、御承知のごとく一般乗合自動車運送事業者も、道路運送法第二十二條規定されてありますごとく、郵便物及び新聞紙の輸送義務を課せられているのであります。最近のバス事業経営内容はきわめて不健全でございます。運賃昭和二十三年の七月に認可をいただきましてそのままとなつておりますが、最近車両、タイヤ、燃料、ボデイー、部品等の高騰は、きわめて著しいのであります。ことにはなはだしい車両のごときは、昨年一箇年中に約八回ほど値上りをして、八割上つております。タイヤのごときも昨年は三回ほど上りまして、これまた約八割の値上りを示しております。その他諸税の負担もまことに寒心にたえないところであります。そのままに放任されるとすれば、事業の壊滅を来すことはもちろんでありますけれども、この点につきまして私たちは憂慮いたしておるのでございます。しかしわれわれ事業者は、公益事業といたしまして責任の重かつ大なることを自覚いたしまして、経営の合理化をはかり、事業運営はやつておりますが、これ以上の資材の値上りに対処するためには、運賃のある程度の値上りもやむを得ないものと考えられます。しかし運賃とても一般国民経済に及ぼす影響の重大さを考えますときには、それほどの高額な運賃を頂戴するわけには参らぬのであります。しかしそれらを彼此御勘案いただきまして、公益事業なるがゆえをもちまして、海上運送法のごとく補償の條文を設けていただきたいと存ずるのであります。  次に第七十九條、国営自動車事業の適用除外について申し述べます。今回の道路運送法改正にあたりましては、国営自動車運送事業條文につきましては、現行法よりはるかに前進いたしまして民主的になつたことを、この機会にお礼を申し上げておきます。国営というのでありますから、本質的には一般民営が運営のできぬ路線経営して、一般国民の輸送需要に応ずべきが、国営のあり方であると存じます。しかるに国営は独立採算制のためか、至るところで民営事業者に脅威を感ぜしめている現状であります。せつかくこの機会に民営対国営の争いをなくするためにも、本法第四條の免許、第五條の免許申請、第六條の免許基準、第七條の運輸開始、第十八條の事業計画の変更、第二十條の運輸協定の適用除外を、本條より削除していただきたいと存ずるのであります。  次に第百六條、道路運送審議会の組織について申し述べます。審議会にはそれぞれ定員が定められ、第百七條には各都府県が一人、但し北海道のみが四人を運輸大臣が任命することになつておりますが、委員一人では、第百四條の事業免許事業の停止及び免許の取消し、基本的運賃及び料金に関する認可事項の決定を取扱わしめることは、いろいろの点より不明瞭さを醸成しなければよいがと考えられますので、あるいは予算、経費その他の理由もあろうかと存じますが、現在通り各都府県に二名ずつ任命することにお願いをいたしたいのであります。  次に第百二十三條について申し述べます。一般乗合自動車運送事業は、公益事業といたしまして、国営あるいは自治体また民営との事業経営内容こそ違いますが、事業の実体には何らかわりはないのであります。しかるに本法第七十九條において、国営自動車は、その路線が特別区の区域内または政令で定める市の区域内路線について、当該都知事及び市長の意見を徴さないで、国営自動車なれば免許なつた場合は運営ができるということは、民営自動車事業に対しまして、あたかも差別的な待遇をしたかのような感があるのであります。ゆえに本法第七十九條中の「第百二十三條」を削除していただきたいことをお願い申し上げます。  何とぞ諾先生方におかれましては、以上の諸点を御賢察くださいまして、実現方の御尽力を願いますと同時に、本法の一日もすみやかに協賛されますことを重ねてお願いいたしまして、私の公述を終ります。
  8. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 次は国鉄労組、自動車議会議長内藤東平君にお願いいたします。
  9. 内藤東平

    ○内藤公述人 私、国鉄労組におきまして自動車を専門に担当しておりますので、主として第四章関係について公述申し上げたいと思いますが、一応逐條的に申し上げます。  第二十四條の事業区域外の運送ということがございますが、これは従来のような主たる事業区域という考え方に立つておらないとすれば、はなはだ不便なものができるのでございまして、特にハイヤーあるいはバス、トラツクというようなものに事業区域が適用せられまして、乗客の要請に応じられないというような事態が招来するかと考えますので、この点私ども従来通りの  「主たる事業区域」というように御訂正を願いたいと存じております。  次に二十六條に従業員の規定をしたことでありますが、第一項に「前項に規定するものの外、同項の従業員の服務規律は、運輸省令で定める。」というふうにしてございます。しかしながら御承知通り自動車の運転手は、特に交通取締法その他諸規則によつていろいろな拘束を受けておりまして、ここにあらためて二重の監督をする必要はないのではないかと考えております。  次に「運転者」といたしまして二十七條に「年齢、運転の経歴その他政令で定める一定の要件を備える者」とございますが、これまた先ほど申し上げましたと同じように、われわれとしてはまつたく納得の行きかねる問題でございまして、基準法もございますし、交通諸法規もございますし、それによつてわれわれは十分に監督を受けておるのでございまして、この点はぜひとも御削除を願いたいと考えております。  次に第四章関係唇ございますが、大体この法の立法の精神は、国有鉄道経営する自動車事業については、国有鉄道公共企業体に移行するとともに、その性格も企業的に改められて来た。従つて従来除外しておつたものを、事業計画あるいは運賃料金に関する規定を新たに適用して、民営事業との調整をはかるというのが、この法の精神であるというふうに私は考えておるのであります。  まず事業計画について申し上げますと、従来国有財産法であるとか、あるいは会計法等々によつて、十分規制を受けております。これが昭和二十四年の十二月に日本国有鉄道法に関し改正がございましたが、やはりその精神はその中に盛り込まれておりまして、各費目の流用等は当然できませんので、事業計画に対するものは、予算上の制約を十分に受けておるのでございます。また事業の監督にいたしましても、国有鉄道法によつてなされておりまして、ことさらにこの法案で二重の監督をする必要はないのではないかとわれわれは考えております。運輸大臣は、必要であるならば日本国有鉄道法第五十四條の規定によつて、いつ何時でも命令することができるし、また報告を徴することができるということが規定されておるわけでございます。しかも国有鉄道自動車事業は、御承知通りにその事業規模は全国的のものでございまして、その責任は地方組織にはございません。従つて陸運局とか、あるいは陸運事務所がその現場を監督するということは、かなりな矛盾がございますし、同時にはなはだ不合理であるというふうにわれわれは考えておる者でございます。  次に運賃料金に関する監督の規定でございますが、これは適切な運賃を定め、不当な運賃の抑止をするという建前に立つて立案されていることと考えておりますが、国有鉄道は、鉄道営業法であるとふあるいは諸種の規定によつて、営業上の制約をこれまた受けておるのでございまして、この法案規定をしなくても、われわれは十分に監督を受けておるわけでございまして、万一不当な料金の適用をしたといたしましても、先ほど申し上げました日鉄法によつて十分な監督措置ができるのであります。  なお民営事業との調整云々ということがございますが、これは後ほど條文の方で具体的に申し上げることといたしまして、そもそも日本国有鉄道法が施行せられた主たる目的の一は、能率的な運営ということであつたわけでありますが、ただいま申し上げましたように、この二重の監督の結果は、おそらくその精神とまつたく相反しまして、ただ非能率に役立つだけであるというふうに私ども考えております。従つて次に申し上げる條項については、ぜひとも修正をお願いしたいというふうに考えます。  まず第七十六條の適用除外をぜひともお願いいたしたいと思います。理由は第四條第二項から第四項まで及び第五條の規定は、運輸大臣の承認を受けなければならないと規定されておりますが、第七十九條では第六條の規定を除外しております。すなわち一方に免許あるいは免許申請についての規定を適用しておりまして、一方に免許基準については何ら明記されておらない、適用が除外されていることとなりますが、国鉄からかりに自動車新線開始についての承認書を受理した場合、いかなる基準によつて審査をし、いかなる基準によつて許可をするのが不明であります。これはまつたく非民主的ではないかと考えておるわけであります。  次に第七十七條の補償関係でありますが、この規定そのものにはわれわれは問題はないというように考えておりますが、実際これを事務的に取扱います場合、補償金額の計算と決定は、まず当事者間の合意にまかせられなければならないというふうに考えております。一定の條件と期間内にもし当事者間に協議がととのわないという場合には、運輸大臣の裁定にまかせることもまたやむを得ないと存じますが、これは過去の実情を見ましても、運輸省の取扱者の個人的な感情によつて、あるいは不當と思われるような補償金額が決定されるおそれが、十分にあるであろうというふうにわれわれは考えておるのでございます。  次に第七十九條の適用除外の規定について申し上げますと、「第十八條(重要な事項に係る事業計画の変更であつて運輸省令で定めるものを除く。)というふうにしてございますが、この括弧内はぜひとも御削除を願いたい。その理由はどういう事項運輸省令で定めるつもりかは不明でありますが、民営事業と並行関係にある路線に対しての運転系統、あるいは運転回数の変更の場合について、認可事項とするという考え方が一応推察できるのでありますが、国鉄自動車では、民営事業との調整には特に努力をして参つております。自主的に業者と折衝し、円満に協定を成立せしめ、不当な挑発あるいは圧迫というような実例は、今日までにありません。むしろそれのみでなく、相手業者の育成助長を行う能力と襟度とを、十分に持つておるものでありまして、先ほども申し上げました調整ということにもかかわりがありますので、一応ここにその一つの実例を申し上げますと、御承知通り国鉄バスに諏訪線というのがあります。これは長野県の岡谷と上諏訪間で、諏訪乗合自動車株式会社というのと同じ路線を並行して走つております。これは昭和二十三年当時、国鉄自動車を払い下げろというような論議が盛んになされたころ、国鉄バスに対する非常な挑発行為が行われておつたのであります。むしろわれわれは、これが従業員間の感情問題にまで発展しはせぬかといつて憂えていたのでありますが、昨年六月同社もやつと納得しまして、運転回数あるいは時間等の協定の締結に同意をいたしました結果、円満に妥結を見ておりまして、この結果最近では、この諏訪自動車の営業成績は、特にこの区間に関しては好転しておるといつて、この会社も喜んでおるというような情報を私どもは得ております。そのほか青森におきましても、私どもの青森営業所、それからあそこには青森市営のバスがありますが、それといま一つ民営バスがありまして、三つの事業団体が並行して走つておるのでございますが、これらも十分な協定を結びまして、まことに円満に行つておるのであります。このようにわれわれは自主的に十分調整はやり得るものだという考え方を持つております。  次に第二章にさかのぼりますが、第八條の運賃料金の設定と変更の認可に関する規定のうち、第二項一号に「適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むもの」とありますが、この立法の趣旨はいたずらなる競合を避ける意味であろうとは思われますが、解釈によつては、国鉄自動車のごとく公共性が強く、しかも業者の方が手を出さないような山間僻地に事業を持つておるものにとつては、その事業継続に重大なる影響を与えはせぬかというふうに私ども考えております。従つてこれら山間僻地の人々の問題も、いわゆる適正な原価云々というようなことによりまして料金を適用する結果は、山間僻地の人々の負担も増大いたしましようし、文化均霑という重大な問題にも支障を生ずるおそれが十分にあると存じますので、この條文の御修正を願うなり、あるいは国鉄自動車につきましては適用を除外していただきたいというふうに考えておるものであります。次に第三項に、運賃料金は定額をもつて明確に定めるとありますが、この定額とはどういう意味なのか、おそらく最高運賃または最低運賃の思想に対しまして、一定不変の運賃料金意味しておると思うのでありますが、もしそれであるならば、バス運賃について考えてみますと、事業者ごと、あるいはまた路線ごとにキロ当り二円二十五銭とか、あるいは三円とか一括認可の方法をとるのか、または三角表を提出せしめて区間ことの運賃を確定するのか、不明なのでございます。具体的に三角表の運賃によつて認可をする方法であるならば、これは私どもは絶対に反対を申し上げたいと思います。その理由としましては、国鉄たると民営たるとを問わず、経済情勢とかあるいは社会の事情に即応し、適切妥当な運賃を設定し得る能力を有しております。経済情勢の変転しやすい今日の時期において、許可申請後の慎重審議の結果、認可がおりたころには、すでにもう適正を欠いてしまつたというような場合の生ずることを、われわれはおそれておるものでございます。従つて具体的な運賃の決定は、事業者にまかせて一向さしつかえないというふうに考えておるわけでございます。  次に、第百八條の道路運送審議会委員の欠格事由でございますが、この中で、地方公共団体の議会の議員もまたこの欠格條項の中に入つておりますが、地方自治の建前から言つても、私どもはむしろこういう方々の兼職は、認めてしかるべきではないかというふうに考えております。  また、第百十條中の事業からの隔離でございますか、隔離の規定の中に、但し、当該委員の属する道路運送審議会が置かれる陸運局管轄区域内において業務を行わない場合には、これらの事業からの報酬あるいは投資を妨げないというふうにございますが、私どもはこれを削除していただいて、完全に隔離した人によつて運営されることを希望しておるものでございます。  次に、第百十五條でございますが、第三項に「公聴会において取り扱われた事項は、できるだけ速記の方法により」云々としてございますが、私どもは今までの過去のいろいろの体験からいたしまして、事業状態の事実の公述なり、審議状態事業の歪曲を防ぐためには、この「できるだけ」を削除いたしまして、絶対に明確なる速記の方法によることをぜひお願いしたいというふうに考えております。  次に、第百二十六條の報告及び検査に関する規定でございますが、これは国鉄自動車についてはやはり適用を除外していただきたいのであります。その理由は、国鉄自動車は国鉄法によつて監督されておりまするし、先ほど申し上げましたように、運輸大臣は必要によつて五十四條の規定によつていつでも監督上の命令もできるし、報告も徴することができるのでございますから、不必要な重複を避けていただきたいということでございます。先ほども申し上げましたように経営規模が全国的であり、かつ地方組織に責任がなく、どう考えましても陸運局あるいは陸運事務所が現場を監督するということは、不当だというように考えております。  以上申し述べましたように、この法案改正では国鉄自動車に関する限り、明らかに二重監督に相なります。公共企業体に移行したときの精神に相反するような考え方に立つたこの二重監督を受ける結果は、非常に非能率的にもなりまするし、これによつて何ら利益はないと考えております。以上申し述べました私ども意見は、決して特権を主張するものではございませんし、従つて優位に立とうというような考えは毛頭ございません。ただこの二重監督のもとに、事務の煩雑化、あるいは諸種の障害を生じ、その結果がわれわれの労働の過重にもなるでありましようし、そういうことをわれわれは憂えておりますので、ぜひともこの点御賢察を願いまして、私ども意見を採用あらんことをお願い申し上げまして公述を終ります。
  10. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 次に東京都交通局総務課長人見捨蔵君にお願いいたします。
  11. 人見捨藏

    ○人見公述人 ただいま御紹介いただきました人見捨蔵であります。私は道路運送法案の第百二十三條に対しまして、原案通り決定されるように、東京横浜、名古屋、京都、大阪及び神戸の六大都市を代表いたしまして、ここに賛成意見を述べたいと存じます。  現行道路運送法第二十九條によりますと、大都市では市域内に起終点を有するバス事業免許事業計画の変更その他の処分については、都知事または市長の意見が徴せられることになつておりますが、起終点のいずれかが都の区の存する区域外または市域外にある場合、さらに路線の一部が都の特別区の存する区域外または市域外で、大部分が都の区の存する区域内または市域内にあるような場合でも、これに対して主務大臣は何ら都知事または市長の意見を徴することなく、処分ができることになつておるのであります。これは起終点のある地点の相違のために、その取扱いが異なるということはきわめて不合理でありまして、常に遺憾に存じておつたのでございます。都知事または市長というものは、都市行政の担当者でございまして、都市の行政は幾多の部分にわかれておるのでございますが、それぞれお互いに密接なる関係を持つておりまして、都市のバス事業についてみましても、他の行政部門ときわめて密接不可離の関連性を有するのであります。たとえばバスの走る道路の大部分は、都市の築造したものでございます。その維持補修は都市が実行しておるのでございます。これは国道であろうと、府県道であろうと、道路管理は大都市の場合、都知事または市長に責任がございまして、またバス交通の安全を守る交通警察は、都知事または市長の管轄下にあるのでございます。従いまして改正案のごとく、都内または市域内のバス事業免許その他の処分に際しては、すべて都知事または市長の意見が徴せられることになりますれば、都知事または市長は、これらの方面につきましても慎重に考慮を払うことができるのでございます。私はすべての都市内の道路上の交通機関に対する処分については、本法案のごとく都知事または市長の意見を十分徴せられてしかるべきだと考えておるのでございます。元来現行道路運送法第二十九條は、行政民主化の思想に基いて、地方公共団体の意思尊重のために制定されたものでございまして、都市交通政策上きわめて有意義なものと存ずるのでございます。しかるに前述のごとき不合理が生じますのは、法の不備に起因するものでございまして、これがために従来から六大都市はそれぞれの都会あるいは市会の決議を経まして、しばしばこの修正方を陳情して参つたのでございます。本改正案によりましてこの不合理が除去されることになりましたことは、まことに当を得たものと存じまして、立案御当局に対して深く感謝するものでございます。ここに満腔の賛意を表したいと存じます。  ところが一部の方面におきましてはこの改正を反対し、さらには全文の削除まで主張しておるように仄聞いたしておりますので、この点につきまして、念のために一言させていただきたいと思うのでございます。その反対します主張の理由としますところを要約してみますると、道路運送審議会があるから、都あるいは市の首長の意見を聞く必要がない、あるいは都や市ではみずからバス事業経営しておるから、都知事または市長の意見は不公正で弊害を伴いやすいとか、または手続が複雑になるからいけない、または一部にはこれを修正して、意見を徴さなければならないというのではなくて、意見を徴することができるというように改正しろ、こういうようなことが伝えられているのでございます。御承知通り都知事及び市長は公選でございまして、直接市民から選ばれた市民の代表でございまして、市民の福祉のための公僕でございます。また都知事、市長は、市民生活の実情を最もよく知つているものでございまして、その意見は市民生活にとつて最も公正、適切であり得るのでございます。また都市にはさらに都議会または市会がございます。都市の意見は都の議会または市会によつて決定されるのでございます。都知事または市長の判断にかりに誤りがあつたとしましたならば、都議会または市会はこれを容認するはずがないのでございます。都議会または市会は、何が市民の利益になるかということを常に念頭に置きまして、都知事または市長を鞭撻しているのでございまして、これによつて都市政の円満なる運営を期しているのでございます。でありますからその意見は、道路審議会運輸審議会運輸大臣にとつても、その広汎なる観察に基いて公正、的確なる判断を下す上におきまして、最も的確なる資料となるのでございまして、その意見を徴することは、地方自治の精神から考えましても、きわめて重要で必要不可欠のものであります。従いましてその手続において、多少手数がかかるというようなことがございましても、公共福祉をはかり、その処分の慎重期するためには、やむを得ないことと存ずるのでございます。なお意見を徴することができるという修正意見でございますが、これはすなわち意見を徴しなくてもよいということになるのでございまして、これでは仏つくつて魂入れずというわけで、こういう意見については断じて賛成できないのでございます。また都市ではバス事業経営しておるから、その意見は公正でないということでありまするが、それは大きな間違いでございます。大都市には広汎なる都市計画がございまして、またその都市計画の根幹をなすところの一貫した交通政策があるのでございます。今日大都市みずからが交通事業経営いたしておりますのは、この交通政策に基くのでありまして、都市の発展と市民の便益増進を第一義といたしておるのでございます。いわゆる公益主義に基いて経営しておるのでありまして、一般営利会社事業とは本質的な差異があるのであります。従いまして都または市域内に民営バス申請がありました場合にも、都知事または市長は、市民の利便増進という見地から、他の行政部門との関連において、全市民に及ぼす影響等を考慮いたしまして、前述の都市の交通政策の一環として判断するのでございまして、都知事または市長の意見が不公正であるというのは当らないのであります。しかも本條文は、その示すごとく都知事、市長が最後の決定権を持つものではないのであります以上、その意見を徴することによつて、何ら弊害を生ずるものではないと考えるのでございます。  以上のような次第でございまして、私どもは本改正法案が決定しましたあかつきは、改正の精神をよく生かしまして、都市政並びに都市交通政策のより円満なる運営に努力いたしたいと存ずると同時に、御当局におかれましても、当該都知事または市長より徴しました意見を十分に取上げられまして、都市交通の発展と公共福祉の増進をはかられんことを念願する次第でございます。  なお第七十九條におきます国の経営するバスにつきまして、第百二十三條の適用除外の細目は、先ほど来だんだん申し述べました理由によりまして、反対いたすものでございます。  以上簡単でございますが、これで私の陳述を終りたいと存じます。
  12. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 次に日本トラック協会常務理事森田賢君にお願いいたします。
  13. 森田賢

    ○森田公述人 トラック業者側の意見を開陳いたします。結論から申し上げまして、本道路運送法案には賛成であります。賛成のおもだつた要点を申し上げます。  第一は、トラック事業の実態に即した事業種類が規定されておること。この改正法案によりますと事業の分類は、現行道路運送法一般貸切自動車事業は区域事業となつておりまして、その区域について現行の都道府県という行政区域を対象とした考え方から、自動車の持つ機動力、すなわち同一経済圏を考慮した区域に改められておることであります。この区域の範囲につきましては、法案第二十四條に規定されております区域外輸送についての許可制から見まして、その範囲は大体うなずけるところでありまして、ドラック事業の実態に即したものとして賛成であります。たとえば現行法によりますと、神奈川県の川崎市にあるトラック会社は、実際は東京都を含めた京浜地帯一体がその事業区域であるにかかわりませず、その免許された主たる営業区域は、神奈川県一円となつております。従つて実際上の輸送要請にこたえる公共事業としての責務を果す上に、非常に不便がありまして、当然これを改正されるべきでありまして、私たちはつとにこの点を関係方面にも陳情して参つたのでありますが、現在までとかく紛糾を見ておりましたこの問題に明確な解決が与えられたことは、この改正法案に賛成する第一の理由であります。次に事業の種類が、運送契約の形式から運営実態の形式をも加味された、すなわち大型自動車と小型自動車という自動車の大きさからもこれを分類されたことは、現行法における不備欠陷を補つたものと思います。すなわちトラック事業において免許を受ける場合、初めに小型自動車のみをもつて運営するという免許を受けます。それは現行法では一般貸切貨物自動車運送事業、但し小型という免許でありますが、この小型自動車会社が大型トラックを使用して営業しようとする場合には、当然新規免許の方式をとらなければならぬのでありますけれども現行法では単に事業計画の変更の認可によつて、小型の條件が削除され、そうして大型トラックに変更される。こういつたものがはつきり明記されておることは、現行法のいい点だと思います。  第二は、免許基準本法中に規定されたこと。現行法では、事業の内容、條件等、その本質的なあり方を法律規定しておきながら、基本的な権利得喪の規範となるべき免許基準の制度を運輸大臣告示にゆだねておつた。改正法案にはこれが織り込まれまして、さらに許可、認可等に際しても一定の基準が置かれたことは、行政民主化とともに、明朗な輸送運営確立が期待されるものと思います。  第三は、国において経営する自動車運送事業、すなわち国営トラックの問題でありますが、これらの企業体の行う事業で、民営事業と競合しやすいものにつきまして、民営事業と同様の法的規制を加えられたということ。これは今までトラックにおいても、バスにおいてもいろいろ問題を惹起しておりますが、これらの問題がまた本法改正案の第一條にあります公正な競争の確保という意味におきましても、当然法的規制が加えらるべきものであると思います。  第四は、自動車運送取扱事業の規制。新たに自動車運送取扱事業、私どもはいわゆる水屋と呼んでおりますが、水屋に関する登録制度と、これに必要な手続規定法律規定されたことは、当を得たものと思います。積合せ混載のトラック運送業者が、その区間内においてそれぞれ集貨配達の営業所または荷扱所を設置しておりますが、その間隙を縫つて存在するのがこの自動車運送取扱業者、すなわち水屋であります。従つてこれら運送取扱業者は、自分の手で目的地に運送するのではなく、輸送業務はトラック業者に依頼して行うのであります。従つて荷送人の手から荷受人に引継がれるまでの間における責任の所在、あるいは運賃料金の収受の問題等で、荷主との間に従来いろいろと紛糾が惹起し、企業体の不安定な水屋さんの場合に、その取扱つたもので最後の実質的責任、すなわち弁済の問題をさすのでありますが、この実質的責任をトラック事業者が負わされておつた場合がしばしばあつたのであります。これらの輸送責任を負荷し得ないような運送取扱業者に、一定の法的規制が加えられましたことは、まことにけつこうだと思うのであります。  第五は、運賃料金の制度についてでありますが、現在トラックの運賃料金は物価統制令による認可運賃の制度がとられております。運賃料金は申すまでもなく、トラック企業経営の本質的な要素でありまして、事業計画構成の基礎であります。しかも運賃認可に際しましては、その原価計算は企業保持に必要欠くべからざる最小限度のものに圧縮されたものであります。改正法案によりまして、運賃料金の定額現払い制の原則がとられましたことは、自動車運送業が国の免許事業であり、本法によつて事業の基準あるいは事業者に対する責任の負荷、第十九條の事業計画に定める業務の確保及び第三十二條規定されております「公衆の利便を阻害する行為」の禁止等を法律規定し“また第十五條において「運送引受義務」、第十六條において「運送の順序」等も規定をいたしておりまするごとく、荷主に対して差別的な待遇をしてはならないことの規定であり、公共事業としての性格が明確にされたものと思います。定額現払い制は現に旅客事業において行われておりますが、改正法律案にトラック運賃料金の定額現払い制が織り込まれておることは、まことに妥当な施策であると考えます。  第六は、自家用自動車に関する規定であります。本改正法によりますと、自家用と営業用の区別が判然として、一応従来の諸問題は解決するものと思われます。さらに自家用車の使用制限規定が、現行法のたとえば対価の解釈等で不明確な点もありましたが、改正法によりますと、かような場合は使用制限する、また災害のため、あるいは公共福祉を確保するに必要な場合は、運輸大臣の認可を得て、その限りでないというふうに、とかく問題を起しておりました輸送分野の問題が明確にされたことは、営業用、自家用ともに歓迎すべきことと思われます。事業用の自動車と目家用の自動車の分野は、あくまでも明確に規整され、法規上はもちろんでありまするし、行政運用の面におきましても十分御留意をい、ただき、真に明確なる輸送分野が確立されることを期待しておるのであります。従つて先刻他の公述人から開陳がありました自家用自動車自己の生産、加工、販売にかかる貨物を、有償運送することの規定を追加することには反対であります。自家用運送の規範に有償運送行為を認めることは、対価の収受を偶発的なものはさしつかえないという解釈から、一部に運送事業の類似行為がふえたというような事例もあり、営業用と自家用の区別を根本的に混同する結果が招来すると思われます。以上が賛成の要点であります。  最後に、第百七條に規定されております道路運送審議会の各都道府県における委員の数でありますが、これについては第八国会において陳情書も提出し、請願をしたのでありますが、でき得れば現行法通り各都道府県二名とされたい。どうしてもやむを得ないときは、せめて各陸運局所在地並びに横浜、京都、神戸等の大都市の所在する府県においては二名とされたい。この理由は先刻来いろいろ公述がありましたが、さらにそれらに加えまして、各陸運局所在地より任命された委員は、諸般の情勢から、大体互選で審議会委員長に選任される結果になります。従つて委員長に任命された府県は、委員としての発言がどうしても稀薄になります。そこでその委員長に任命された府県—大体陸運局の所在地、その他大都市を有する府県でありますが、当該府県から委員長とは別に委員を一名置くことが最も妥当であると思います。また大都市所在地は、交通機関も他の県に比較して多く、案件の内容についても特異性がありますので、この意味においても委員を一名増加することが妥当であると思われますので、この点について特段の御高配方をお願いするものであります。  簡単でありますが、以上賛成の意見公述いたします。
  14. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 次に品川ダイハツ販売株式会社取締役会長山成豊君にお願いします。
  15. 山成豊

    ○山成公述人 ただいま御紹介にあずかりました山成豊であります。劈頭に申し上げたいことは私の身分につきまして、今品川ダイハツ会社の会長という御紹介がありましたが、実は本件につきましては、先般申入書の中へ資格を書くことをつい落しましたので、電話で御紹介がありまして、私の家族がうかつにそういう返事をいたしましたが、その会社はまだ登記も済んでおりませんし、営業もはつきりいたしておりませんので、取消していただきまして、私の身分は参議院に出しておりまするが、日本小型自動車工業組合の顧問、東京小型自動車運送事業協同組合の顧問、これが本日公述いたしまする件についての私の関係団体でありまするから、さよう御承知願いたいと存じます。  さて私は、最近東京におきまする小型運送業界が非常に困惑し、かつ憎みに逢着いたしておりました際に、この御計画が発表されて非常に喜んだ次第でございます。私は今回の改正にあたりまして、次の二点を織り込んでいただきたいと考えるのであります。その一つは、小型運送免許申請書を大幅に簡易化していただきたい。第二は、免許基準につきまして、どうか基準車両数をはつきりと表わしていただきたい。その基準数は、大都市においては最低五両、地方におきましては三両、こういう免許基準をはつきりと表わしていただきたいということが、私の今日お願いする趣旨でございます。  さて、これにつきまして事情を申し上げますればまず免許申請書が、現在においては非常に複雑でありまして、ここに私は見本を持つておりまするが、約十四、五ページもかかるような申請を出さなければならぬ。この申請の内容につきましてはいろいろな條項がありまして、たとえば興業費概算書とか、あるいは運輸收入概算書とかいうような、将来経営いたしまする上におけるいろいろの事業の内容を示さなければならぬという規則になつておりまして、この改正法案の第五條第三項の、運輸省令で定める事業計画という規定に基いて書かなければなりませんが、私はこれをきわめて簡易化していただきまして、この免許申請をいたします場合には、事業計画の中では事業の場所と使用車両数ぐらいを書いて、一ページか二ページぐらいの申請書で済むようにしていただきたい。と申しますのは、何も紙が惜しいのでも書くのが困るのでもないのでありますが、この運輸計画とかあるいはその他の計画については、どちらかというと、一つの計画と想像でありますので、これが審議会といいますか、道路運送委員会で開かれる公聴会におきまして、道路運送審議委員各位からいろいろと質問されまして、事業者が非常に困るというような事態を起しまして、この公聴会におきまして、俗に言えばこづきまわされるというようなことがしばく見受けられますので、どうかひとつあまり心配しないように、簡易な免許申請にしていただきたい、こう考えまして、ぜひこの免許申請書の簡易化をお願いする次第であります。  次に第二の免許基準でありますが、こちらに運輸省の御当局の方も大分見えておられますが、これにつきましてはたびたび運輸省にいろいろとお願いもいたしておりますが、率直に東京の実情を申しますことが一番私の説明に当ると存じますので、簡単に実情を説明いたしますと、戦争前には東京には約五千の小型運送業者がありましたが、戦争中に企業合同ですか、一種の強制合同にあいまして、小型、大型を一つの会社にまとめられた結果、小型自動車は戦時輸送に適しないということを理由にされまして、この小型運送車は全滅いたしました。約五千両の車が全部破棄されまして、戦争直後にはわずかに八十両ほどのものが残つた。登録面では百両ぐらい残つておりましたが、実際に客の求めに応じ得るものは、約八十両くらいしがなかつたというような実情であります。そこで私はこの小型自動車がそういうふうなことでは困るというので、運輸省にいろいろとお願いいたしまして、御協議申し上げた結果、運輸省においてももつともなりとされまして、昭和二十二年十二月でしたか、五百両、二十四の会社の設立を許されたのであります。おかげをもちまして、その後非常に繁栄におもむきましたが、私どもが一番心配いたしましたことは、この五百両の車がどういう状態にあつたかと申しますと、つまり一方において既存運送会社は廃棄して参りましたが、一方荷主側では、小型運送を非常に要望しておりましたので、戦争の末期から戦後にかけまして、いわゆる自家用自動車の無免許業者といいますか、これが非常にふえまして、当時許可を得た五百台もまさにそのもぐり運送であつたのであります。それらはたいてい一人の人が一合ないし二台、せいぜい三台くらいを持つてつておりまして、それらはすでに店舗も持ち、格納場所も持つておるというふうに、いわゆる小なりといえども一城のあるじというような人であつたのでありまして、これらが自分で独立して商売をした戦争前は、一台でも二台でも許されておりましたので、どうか戦争前同様に自分の事業とし、また事業を子孫にも譲れる。そして働く者に幸福感を与え、自分の仕事としてやりたいという強い要望でありましたので、その趣を運輸省御当局にたびたび申し上げ、嘆願したのでありますが、どうしても運輸省の御方針は、そういう個人は対象とすることができないというので、結局一区一社という既存のいわゆる地場運送と申しましようか、戦争中合同された運送会社のように地域的にわけまして、一区一社で許すというので、繁華な土地で、たとえば中央区、千代田区というようなところには二社、また免許基準も繁華地区は三十台、それから中野、杉並というようないなかでは十台ベースということで許可されまして、事業を開始いたしました。ところが私どもの心配いたしました通り、この会社はいわゆる烏合の衆とでも申しましようか、きのうまでは知らなかつた人が寄り集まつたのでありますから、なかなかほんとうの会社形態には行きかねるというようなことで、つまり率直に言えば会社経費を割勘で出しまして、そうして働いたうちのしかるべきものを自分の手に入れるというような、いわゆる変態性の会社にどうしても流れますので、これは運送経験のある方は御存じでしようが、戦争中に強制統合いたしました、いわゆる統合会社もこういう傾向が多分にありまして、これを運輸省あるいは業界ではどんぶり勘定と申しまして、始終話題に上つたものであります。この変態経営は、もちろん商法にも違反し、また免許業者としての責任の所在というようなことにつきましても、免許の対象となつておる法人組織から見まして大きな違反行為でありますので、運輸省御当局からもしばしば厳重な戒告を受け、また一種の脱税の原因にもなりますので、税務当局からも相当にとがめられまして、実は非常な困惑をいたしましたが、どうしてもこれは個人に開放されないので、こういうような形で実は三年間やつてつたのであります。ところがその後小型運送は、幸いにして非常に大きな利用家の方面にその利便が知られまして、五百台でありましたものが、最近では約二千五百台、約三千台までに近いという五、六倍の大きな膨脹をいたしまして、各会社も増車あるいはその他で膨脹いたしまして、三十台で始めました会社が、百台を越すというような成長におもむきました。またそれらの社員も—社員というのは株主でございますが、つまり車を一台、二台出資いたします株主も非常にふえました。最近の統計によりますと、約二千五百両の車、会社数にいたしまして四十六社ございます。そうしてこの四十六社のうちの出資社員の数は約一千名でありまして、これらの社員が寄つて、四十六社を形成しておるのでありますが、これらの社員の出資いたしております車の数を申しますと、五両以下を持つております社員が九〇%でありまして、あとの一〇%ほどが約七、八両から十両ほどを持つておる社員であります。最近の税金攻勢や、あるいは会社内にそういうことに無知の人が次々と大勢集まりましたために、何分にもなれませんので、会社の首脳者も困りまして、いつそのこと解体して、三年以前にお願いしたように独立の企業に開放していただこうというので、いろいろと運輸省当局にお願いいたしましたが、やはり運輸省におかれましては、どうしても免許の対象上、十両以下は困るというお説で、結局最低十両で再編成することを許そうということになりまして、現在ではやむを得ず十両ペースに従いまして、再編成をいたしておるような次第でございますが、この十両ペースにつきましても、法人組織もこの條件になつておりますので、いわゆる会社をつくります、この会社をつくりますと、事務員とかすべてにおきまして、どうしても一箇月の経費が十万円を下りません。この十万円をかりに十台であるといたしますと、一台について一万円の経費がかかるというような、非常な負担の増加になりますし、また今度の再編成からは、いわゆるどんぶり勘定を禁止するという意味で、車庫をぜひ建てろ、車庫の設備をしろということを強く要求されておりますので、従来は比較的寛大に取扱われました車庫も、今度はぜひつくらなければならぬ、これにもまことに大きな経費がかかるというので、これらの点につきましても、業者の大きな悩みになつております。ただ七、八両なり十両持つておりますごく少数な車両主だけはほとんど独立できたので、これらは非常な大きな幸福を得たわけでありますからけつこうでありますが、いわゆる五両以下—ほとんど約半数の五百名くらいは、一両ないし二両持ちでありますが、この九〇%の業者たちは、まことに当惑している次第なのであります。これらの事情に基きまして、今度の改正におきましてはせめて重要都市では五両、地方では三両というようにおきめを願えば、たいへんありがたいことに存ずるのであります。なおまた私どもが三年以前に運輸省にお願いしたときに、運輸省が三両、四両、五両ではいけないとおつしやる理由が、つまり少数では信用がない、事故を起した場合の賠償にさしつかえる、また個人では不正のことなどして、道路運送事業法第一條の精神に反して、輸送の秩序とか、あるいは公共福祉に反するようなことが起りやすいからいけないという御説でありますが、この御説は、この三年間の私ども経験によりましてはつきりいたしました。小企業でも決してそういう御心配はない。この三年間にこれだけの小型運送をやつておりまして、私も実は小型トラック協会会長といたしまして、三年間親しくこの事業を見守つて参りましたが、さようなことは一件もありませんでした。つまり荷主の物をどろぼうするとか、あるいは横領するとか、あるいはまた賠償ができなくて非常に紛糾して、裁判沙汰になつたというようなことは、ただの一ぺんも実はありませんでした。もつともこの三年間にわれわれがやりましたのは、表面は会社でありますが、その実は今申しましたような個人経営でありまして、事故を起しましても、ほとんどその人が責任を負うということが、今一般の習慣になつておりまして、こういうことを公の席で言うのもどうかと思いますが、実際は個人経営同様であります。その二台、三台あるいは一台を持つている人たちが、そういう荷主とか公共に対して絶対に迷惑を及ぼしておらない。つまり運輸省で言われましたことはまつたく杞憂であつて、実際に当らなかつたということが言えますので、今日におきましては、ぜひその小企業をお許し願つてよろしいと考えるのでありまして、本法改正にあたり、あるいはこれを條文にお入れになることは困難でありましたならば、実際の運営において、私の言うことをお取上げ願いまして、せめて重要都市五両、地方三両というふうになさいましたら、業者の非常なる幸福であり、また小型連送の大きな発展であろうと存ずるのであります。東京は幸いにして、三年前にそういつたことから、今日約二千五百両から三千両近くに小型運送が回復いたしましたが、地方におきましては、いかんせん、道路運送委員考えというか、当局の考えというか、これがほとんど解決を見ておりません。ゆえにこれらの地方では……。
  16. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 山成さん、時間の都合がありますから、結論に入つてください。
  17. 山成豊

    ○山成公述人 はい。地方の方では全然回復いたしておりませんので、これらも、過去半生を傾けて小型自動車発達、普及に微力を注いでおる私にとりましてはは、非常に遺憾な点でありますので、どうかそれらを御参酌願いまして、改正にあたりまして、免許基準法律ではつきり明示していただくことをお願いいたしまして、私の公述を終りたいと思います。
  18. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 暫時休憩いたします。午後は一時半より再開いたします。     午後零時二十六分休憩 L     午後一時四十一分開議
  19. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  日本興業銀行監査役川島茂樹君にお願いいたします。
  20. 川島茂樹

    ○川島公述人 私は日本興業銀行の川島でございます。金融事業に携わる者といたしまして、自動車抵当法案につきまして、意見を申し述べさせていただきます。結論から申しますと、私はこの法案趣旨に全面的に賛成でございます。以下簡単にその理由を申し上げます。  自動車金融につきまして、私ども金融に携わります者が常々最も不便に感じておりますのは、自動車担保の金融取引に適切な担保物件の設定が、わが法制上認められていないことでございます。言葉をかえて申しますと、抵当権の設定を認めていないことでございます。抵当権の設定を認めておられないために、通常いわゆる譲渡担保の方法がとられているのでございますが、これはいわゆる法律上の私生児でありまして、実務上いろいろの不利、不便が伴つているのでございます。すなわちまず資金の借入人の側から申しますと、担保の目的のために、担保物でございます自動車の所有権を、貸主たる金融機関に移転することは、経済上の目的をはるかに越えました権利を金融機関に与えることになります。借主は金融機関を信用いたしまして、担保自動車の所有権を金融機関に移転し、金融機関はその移転を受けるのでございますが、金融機関といたしましても公示方法の完備した担保物件、すなわち抵当権を取得できるのでございますならば、それで満足すべき筋合いでございまして、それ以上にあえて担保物の所有権まで取得する必要はないのでございます。しかし担保自動車につきまして、抵当権の設定が認めておられませんために、やむを得ず譲渡担保の方法がとられているのでございます。ところで一般には譲渡担保権者の地位は、抵当権者のそれよりもはるかに安全強固なはずでございますから、この場合に金融機関の権利も一応安全強固なもののように思われるのでございますが、実際は取引先の負担考えまして、担保自動車の名義の変更の手続をとりませんし、また事実抵当権のように登記によりまして、担保権の所在を公示する方法もございませんので、抵当権者の地位よりもはるかに弱い立場に置かれるのでございます。また業者の方から見ましても、一旦譲渡担保に供しましたものを、さらに再担保に供しようといたします場合には、抵当権の場合のごとく簡単に、今の抵当権を設定することができないという不便もございます。また譲渡担保に関する権利関係につきましては、判例、学説によりまして漸次明確になつておりますが、なお明らかにされていない問題も多々ございますので、取引上疑義を生ずることが少くないのでございます。かように讓渡担保につきましては、実務上いろいろの不利、不便がございますので、私どもといたしましては現在のような便宜扱いは、あくまでも合法的な自動車担保制度が認められますまでの、過渡的な扱いと考えておるのであります。自動車金融が円滑かつ能率的に行われますためには、抵当権の設定を認める以外に良案はないと断言してさしつかえがないと思います。もちろん抵当権の設定につきましては、動産抵当一般の問題としまして、いろいろと法律技術的に検討すべき点はございますが、これらの点につきましては、今回の道路運送車両法におきましてほぼ解決されているように考えますので、抵当権の設定を認めましても、自動車取引の安全を害するおそれはまずないと考えられます。要するにこの法案は、現在の自動車金融の障害となつておる担保制度の不備を補いまして、金融の円滑化を促進するきわめて適切な法案考えられますので、私はこの法案趣旨に全面的に賛成いたすものでございます。  次にこの法案に関しまして若干希望を述べさせていただきます。第一は、この法案が成立の上は、本法と密接な関係がございます道路運送車両法趣旨の周知徹底化と、その円滑なる運用をはかつていただきたいことでございます。第二点は、自動車に対する強制執行につきましては、自動車の移動性を考慮した適切な規定を設けていただきたいことであります。第三点は、大規模な自動車運輸業者が、その事業設備を一括して担保に入れますためには、現在の自動車交通事業財団のような財団制度を認めることが絶対必要と考えられますので、引続きその実現をはかつていただきたいことでございます。以上三つの希望事項につきましてとくと御考慮をいただきますようお願いいたしまして、私の公述を終りたいと思います。
  21. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 次に東京大学教授山田晟君にお願いいたします。
  22. 山田晟

    ○山田公述人 自動車抵当法の非常に必要だということにつきましては、ただいま川島公述人からお話がありましたので、私は主として法律技術上の点につきまして、自動車抵当法案を採用すべきかどうかという点について、意見を述べさせていただきたいと思います。ささいな点は省略いたしまして、根本的な点について申しますと、重要な点が二つあると思います。一つは現在自動車行政目的から登録されておるわけでありますが、抵当法案では、同時に私権であります抵当権も登録によつて公示するという建前をとつておるわけで、それは適当であるとは思いますが、司法上の目的行政上の目的を、同一の登録簿でどういふうに調整するかという点が、一つの重要な問題であります。それからもう一つの根本的な問題といたしましては、抵当権者のために自動車をどういうふうにして押えておくかという点でございまして、この点につきましてはただいま川島公述人からも御希望の意見があつた次第でございます。  まず第一の行政目的と司法目的との調和については、たとえば自動車を解体したというような場合におきましては、自動車を取締つて実態を把握するという行政目的から申しますと、どうしても抹消しなければならぬ。抹消しますと、抵当権まで抹消されてしまうというような問題が生ずるわけであります。この点につきましては、道路運送車両法案におきましては抹消はできるが、しかしその抹消を陸運局長から抵当権者に通知しまして、ただちに抵当権の実行ができるということにして解決しております。ただその通知を受けるまでの間に、自動車の所有者が自動車を処分してしまうというような問題も生じ得るわけでありますが、こういう点の不都合は、自動車そのものが非常に解体に便利であり、移動性もあるというようなことから生ずるわけでありまして、これはある程度やむを得ない結果であろうと存じます。  もう一つの根本的な問題としまして、自動車をどうやつて抵当権者のために押えておくか、この問題につきましては、実は抵当法案規定はあまり満足すべきものではないわけでございまして、たとえば自動車の所在の場所を、東京から大阪に移すというような場合におきまして、いわゆる登録がえをいたしますが、その場合に抵当権者が、自分の抵当権の目的である自動車が、東京以外の大阪に移つたということを知らせる方法が規定されておりません。しかしこういうことは政令であるいは適当な規定を定めることができるかと思いますが、この登録に関する政令がその点で相当重要なものであるということを申し上げたいと存じます。  それから自動車の所在地を変更することにつきましても、これは所有者の自由でありまして、別に抵当権者の同意が必要とされておりません。それから電動機を所有者がとりかえるとか、あるいは自動車を、たとえば車をとつて住居用に使うというような場合におきましても、別に抵当権者の同意がいるというような方法は講ぜられておらないわけであります。そういう点から見まして、一見抵当法案が不完全であるというような印象を与えるわけでありますが、ただ不完全ではありますけれども、大局的に見ますとこの際やはり自動車抵当法案というものを採択することが非常に必要ではないかと考え、それを強く希望いたすわけであります。その理由と申しますのは、第一にこの法案そのものが不備ではありますけれども、実際の運用においては必ずしもそれほど不備ではなかろう。と申しますのは、大体自動車を抵当に入れたり抵当にとつたりするのは、いわば会社であるとか商人、そのほか法律に通じておりまして、やはり目分に都合のよいような約款を入れる、そういう例は現に自動車を担保にする際にもあるわけでございまして、たとえば自動車が滅失した場合のごときをおもんばかりまして、自動車を損害保険に入れさして、その保険証券を質にとつておくというようなことをいたしております。ですからもし自動車を抵当権者が押えるという点につきましても、必要があれば抵当権者の同意がいる。そして同意を得なければただちに抵当権の実行ができる、あるいは損害賠償をしなければならぬ、こういうような約款を入れることが考えられますから、実際の運用ではそれほど不備ではない、かえつてその運用にまかせるという点にも妙味があるのではないかとも考えられるわけであります。  それから第二に、この自動車抵当法案は一見不備でありますので、修正ということを当然だれしも希望するわけでありますが、しかしこの抵当法案の欠点と申しますのは、実は自動車の性質そのものに基く部分が非常に多いわけで、自動車は先ほど申しましたように解体も容易でありますし、移動が容易であるということから、これを完全に押えるということはなかなか困難なのであります。およそこの法律を採択するかどうかという問題につきまして、法律が技術的、論理的に非常に整備しておるかどうかという点から見るのは間違つておるわけで、論理的に整備しておりましても、実際の役に立たなければ何にもならぬ。その反対に論理的、技術的には欠陥がありましても、実際において非常に役立つならばそれは採択の価値がある、こういうことになろうかと思うわけでありまして、現に自動車抵当法案というようなものがもし採択になれば、従来自動車を担保にとる方でもあるいはとられる方でも、困つておつた問題が解決するわけであります。つまり自動車を担保にとる方におきましては、先ほど川島公述べの御説明の中にもありました通り、所有権の移転を受けるのであると思いますけれども、しかし占有及び登録の名簿は担保を入れた方の者にあるわけで、従つてその担保を入れた者は自動車をほかに譲渡した場合には、担保にとつた者は事実上も法律上も担保を実行できない。占有の公信力で善意取得をいたしますから、担保をとつた者は所有権を失うことになりまして、非常に不安なのであります。ところが自動車抵当法案というものができますれば、抵当権は所有権の移転にもかかわらず、どこまでもついて行くわけでありまして、この点におきましては自動車を担保にとる者の側にとつて便宜でありますし、担保に入れる側にとりましても、それがためによけいに金を借りられる、あるいは分割払いで自動車を買うというような場合には、頭金が安くても済むということになりまして、現在相当金融に困つております自動車の買受人にとつても、非常に便宜なことになろうかと思うのであります。自動車が解体や移動が容易であるということは、これは別に抵当法ができてから容易になるわけではありませんのですでに移動が非常に容易なのでありまして、抵当法ができることによつて従来以上の欠点が生ずるということは考えられないわけであります。このように自動車抵当法というものが業界から非常に要望されておつて、これが実際の役に立つならば、それで採択の価値はあるのではないかというふうに考えられるわけであります。  第三に、自動車の所在地を移動したりする場合には、抵当権者の同意を必要とするということは、前に私が立案の際に主張したこともございまして、一時はそれが取入れられましたが、その後の経過で削られたわけでありますけれども、それをまたここで主張いたしますと、また自動車抵当法案が元にもどつてやり直すということになるわけで、そういうことは私といたしましても希望いたさないわけであります。なぜかと申しますと、自動車抵当法は現在も必要なんであります。これを急いで施行しましても、いろいろ準備がございますので、抵当法案にもございますように、昭和二十七年の四月一日から施行するということになりまして、急いでも来年施行ということになりますが、実は完全な抵当法はかりにできるとしましても、それが将来のことであるといたしますと現実の需要には応じないわけであります。そういうりつぱな法案がたといできましても、時期を失しますればこれは実際の役には立たないわけで、そういう意味からいたしまして私としては、自動車抵当法案道路運送車両法案の第二章の登録の規定がこれに関連いたしておりますが、それについてはなるべく御採択にならんことを切望するわけであります。大体の要点といたしましてはこの程度でございます。  なお登録に関する事項が政令にゆだねられておりますが、この政令の規定が、自動車抵当の運用を全うする上においては重要性を持つておるということを一言申し述べまして、私の公述を終りたいと思います。
  23. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 次に日本小型自動車工業会専務理事、日本自動車会議所常務理事櫻井淑雄君にお願いいたします。
  24. 櫻井淑雄

    ○櫻井公述人 私はただいま御紹介にあずかりました日本小型自動車工業会専務理事櫻井淑雄でございます。私の公述する範囲は、道路運送車両法案に関する問題でございまして、私は生産者の立場として、この法案に対する意見を述べさせていただきたいと存じます。結論的に申し上げまして、道路運送車両法案に対する生産者としての私の意見は、これに関して全画的に賛成でございますが、ただこの問題に関する若干の意見を、この機会に述べさせていただきたいと思うわけであります。もちろんその賛成である理由については、法案趣旨から行きまして、最近の自動車が戦前の両数に比べてかなり増大をし、四十万台の流通状態を来しておるという状況と同時に、交通事故がかなり多い現象を来しておるのでありまして、これらの問題につきまして、あたかも先般起きました櫻木町の事件によりましても、これらを事前に防ごうという当局のお考え方で、道路運送車両に関し、保安上の問題をここに規定されることはきわめて時宜を得たわけでありまして、さらにもう一つの理由といたしましては、従来は道路運送法の中にわずかに三箇條をもつて規定されておりましたのを、その他につきましては省令あるいはその通牒によりまして、運輸大臣が生産者の生殺与奪の権限を持つておられたのが、それをさらに法律事項によつて民主化して行こうというお考え方に一歩前進をされたことについて、生産者の立場として賛意を表するのであります。私たちはこの手続中におきまして、運輸大臣に対しましていろいろと修正意見を述べたのでございますが、当然生産者の立場といたしましては、自分たちのつくりました車が円滑に流通されて、公共のために使われるということがわれわれの究極のねらいでございます。従つてそういう面では、ある程度公共上のねらいから制約されることは当然でございますけれども、その公共性をあまりにも理想に走り過ぎて、生産者の自主性、独創性を失つてしまうということは、われわれがせつかく国際水準に躍進をして日本の自動車工業の技術を上げようという段階において、かなわの支障を来すおそれがありますので、この点については立案中におきまして、再三当局に対して意見を述べて、特にこの問題については、まず車両の構造装置に関する保安基準の問題並びにこの保安基準をきめる原則の問題が、われわれの一番大きな関心であつたのであります。この最初の手続におきましては、この車両の構造装置については、単に技術上の基準という点しかうたわれておらなかつたのであります。従つて四十六條の基準の原則についても、生産者に不当な制限を加えないという條項も盛られておらなかつたのおります。従つてわれわれとしましては、運輸大臣がかつてに技術上の各構造装置の細部にわたりまして干渉することによつて、生産者に不当の制限を加えるおそれが多分にある。従つてそれは先ほど申し上げました通り、メーカーの自主性が失われてしまうという点から、せつかく自動車工業が進歩して参りました現段階において、ある程度の制約はわれわれとして忍び得るのでありますけれども、その限界を逸脱することによつて自動車工業が沈滞してしまうという理由で、この点について改訂方を折衝いたしまして、この提出されております法案の内容におきましては、保安上、技術上の基準並びに基準の原則におきましては、生産者に対しても不当な制限を課さないという條項が盛られておりますので、われわれといたしましては一応この法律上の構成から行きまして、納得の行ける状況になつたのであります。ただ私たちはさらにこの技術上の原則について意見を述べさせていただくならば、この原則につきましては、必要最小限度であるということを、四十六條の原則の中にうたつてもらいたいということと、保安上の基準をきめる場合には、民間各位の意見を十分尊重して、運輸大臣がきめてもらう。言いかえればこの基準の原則をきめる場合には、委員会制度によつて広く利害関係人の意見を徴してもらうというふうに織り込んでもらえれば、なお画龍点睛の感があるのではないか、かように考えるのであります。  第二の問題は、整備事業者の認証制度がこの法案にうたわれております。現在整備事業者、特に小型自動車につきましては、きわめてレベルが低いのであります。と申しますのは、小型自動車はその利用される面が、魚屋さんとか八百屋さんとかいうように一般の大衆でありまして、その技術的な観点におきましても、必ずしも普通自動車の利用者とはかなり質的に異にしておるのであります。従つて整備事業者につきましても同じようなことが言えるのでありまして、小型自動車の整備は、現在毛細管的な組織をもつて全国的に行われておるのでありますが、この法案によりますと、整備事業者の認証制度の一連の規定によりまして、検査主任者を置かなくてはならないとか、あるいは検査主任者の任免権が陸運局長にゆだねられておるとか、いわゆる生殺与奪の権限が陸運局長にゆだねられておるのでありますので、小型自動車の現在の整備の段階では、現実はこの法の理想に対してあまりにも離れたような感を抱くのであります。従つてこの法自体の理想につきましては、私たちは賛意を表するのでありますが、実際の運営面におきまて七、小型自動車の整備実態と法の理想が調整されるように、当局の配慮を煩わすのであります。特に分解整備の限界の問題、これは省令によつて規定される予定でございますし、また認証基準の問題につきましても省令にゆだねられておるのでありますので、これらの問題をきめる場合には、民間関係者の意見を十分尊重してきめていただきたい。同時に、この整備の問題につきましては、自動車整備振興会というものを法律的に認めておるのでありまして、この団体がおそらく整備技術の振興その他について、法の理想の問題をいろいろと研究して、業界の進展に寄与するように考えられておるのでありまして、この整備振興会の性格につきましては、具体的にうかがうことができないのでありますが、少くとも自動車の整備の実態は、普通自動車と小型自動車、いろいろとわかれておるのでございまして、その実態に即応した形において法の理想が達成されるように、この振興会の性格なり運営面においても、十分お考えをいただくようにお願いしたいのであります。  以上二つの点について申し上げたのでありますが、結論的には私は生産者の立場において、この法案について賛意を表するのでありまして、運営面において今まで申し上げました点について、十分御配慮になるようにお願いをして、公述を終りたいと思います。
  25. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 次に日本自動車整備協会会長山口昇君にお願いいたします。
  26. 山口昇

    山口公述人 私はトヨタ自動車販売店協会理事長を兼ねておりますので、本日の公述は整備事業者並びにカーデイーラーの立場から申し上げたいと存じます。もちろん本法案につきましては全面的に賛成申し上げるとともに、あわせて一部の希望を申し述べさせていただきたいと思います。  終戦後わが国自動車数は、年々ものすごい増加をしておりまして、現在では四十万台に達して戦前の最高保有数をはるかに上まわつているように聞き及んでございますが、同時に一方では、整備の欠陷による車両事故数も非常に増加しておる事実に対しましては、まことに寒心にたえない次第でありまして、さような整備不良に原因する事故は、決して不可抗力でないだけに、極力防止万を痛感する次第であります。その欠陷を改善して、幾ばくでも事故を防止しなければならぬことは、ただに稼動率を増す効果のみでなくて、まことに保安上または国家経済上からしても、看過することのできない緊要なことであるとかたく信ずるものであります。かような整備の欠陷の原因は、第一に車両所有者側の整備に対する認識の欠如でありまして、これには所有者の整備観念を自覚していただくよう、絶えず普及、宣伝、指導することが肝要と思うのであります。  第二は、整備事業者側の責めでありまして、整備設備並びに整備用具の不備、不良や、整備技術の未熟、あるいは企業の不健全性から生ずる弊害であります。この企業の不健全性から生ずる弊害と申しますのは、整備を業とする企業が自由であるのと、技術上の責任もなく、比較的容易に何人でも開業可能であるので、整備事業を営業とする者が終戦後急激に増加して、遂に需要度をはるかに凌駕するようになつて、自然競争の結果、経営難から好ましからぬ副業を兼ねる者や、はなはだしいのは故意に整備営業を悪用するものさえあつて、この種においてはまうたく良心的整備はおぼつかないどころか、多くの弊害さえ伴つておるのであります。かような情勢に至りますと、業者の自主的調整あるいは改革することはとうてい不可能であります。要するにこれら整備業者側の欠陷を改善して、整備の向上をはかるには、設備並びに技能について一定の資格の最低限度をきめるとともに、その整備企業体の組織を育成する積極的な政府の措置をとつてもらう以外に、方法はないものと思料するものであります。  そこで今度の法案は、保安基準、整備、検査等の車両保安上緊要性な事項と整備管理者制度、整備士の技能検定制度、優良整備事業者認定制度、なかんずく整備事業の資格について一定の最低基準制をとる、いわゆる自動車分解整備事業認証制度と、それから企業の団体組織によつて整備一般の向上、発達をはかる目的でつくられた自動車整備振興会規定等は、まさしく現下のまとまりのない整備を改善するための法的指針をはつきり明示するもので、一般自動車整備界から待望する緊急かつ適切な事項であるとかたく信ずるものでありますから、すみやかに本法案の施行をわれわれは切望念願する次第であります。  なお終りに一言立案若御当局に希望を申し述べたいことは、前に述べました整備事業の認証基準に関する運用上のものさしをおさめになることに対しまして、とかく一部の反対に対する気がねからか、認証基準の線をきわめて低いところに置いておられるように聞いておりますが、かくては本案の立法の趣旨に反するもので、あたかも仏つくつて魂入れずのたとえで、有名無実の結果に陷りやすいことをおそれるもので、いやしくも自動車事業の重要性にかんがみまして、いま少し高度の位置、すなわちあくまでも正当な整備能力を減殺しない線に、認証基準を置いていただきたいことの希望を申し上げて、私の本案賛成の公述を終ります。
  27. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 これにて公述人よりの意見聴取を終りました……。
  28. 山成豊

    ○山成公述人 私は車両法案についても公述を申し込んであるのですが、何かお間違いじやないですか。
  29. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 実はさつき一緒にやつていただく予定になつてつたのです。それでは時間の関係がありますから簡単に……。
  30. 山成豊

    ○山成公述人 簡単に申し上げたいと存じます。車両法案に対しましては、全面的に私は賛意を表するものであります。  まず私の言わんとするところは、先ほど櫻井専務理事が詳細を尽しましたので、あらためて申し上げることもありませんが、最近にちよつと気のついた問題で、当局に申し上げておきたいと存じまするのは、法案中にいろいろと事故防止に関しまして、特に保安装置につきましていろいろと御苦心のあることを拝見いたしましたが、そういつた装置につきまして、これを運用いたしまする従業員、現場員を十分御訓練にならないと、せつかくのいい法案がその趣旨を貫徹できないのじやないか。と思いまするのは、私は先般群馬県に旋行いたしまして、あるバスに乗りましたところが、たまたま私のそばがちようど非常脱出品というとびらになつておりました。これは乗客が一見して、ほとんどわからないような設備になつておりまするが、この設備はかつて横須賀におけるガソリン爆発事件という大惨事から、急に運輸省の方でも大きな関心を持たれて、各バス会社に御注意になつてできた脱出口であります。その私のそばの脱出品を操作いたしまするやり方が、どうにも私にはわからない。見ましても、とびらを開くかぎがないので、運転手を呼びまして、どうしてこれをあげるのかと聞きましたところが、それはハンドルを運転手台に預かつておりますから、非常の場合にはおつしやつていただけばあけます。こういう返事でありますが、ガソリンが爆発したりして、そういうところを使用する場合には、一瞬を惜しむ時間なので、とても運転手がそこをあけに来るということは及びもつかぬことでありまして、何かバス会社め間違いではないかと考えます。要は従業員を十分御訓練になつて、有事の際に間に合うようにしなければ、せつかくの設備も役に立たぬ。  もう一つは、先般私はある都バスに乗りまして、やはりこの装置について、どうしてもあけ万がわからないので、車掌を呼んで聞いてみましたが、車掌は首をひねるだけであります。これもあけるハンドルの場所を、鉄板の小さな箱のようなものでカバーしてあつて、そのカバーをどうさわつてみてもわからない。車掌も知らないようなことで、せつかくああいういい設備をなさつても、従業員すらそのやり方を知らないようでは、とつさの場合に一般乗客がこれを利用することは、全然おぼつかないことではないかと思いますので、どうか法律に従いましてできたいろいろの構造を、その関係従業員その他が十分会得して、乗客にもふだん指導して事故に対処するように御訓練になることをお願いいたしまして、私の公述を終ります。
  31. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 これにて公述人よりの意見聴取は終りました。各公述人に対し御質疑のある方は質疑を許します。
  32. 坪内八郎

    ○坪内委員 関係法案のそれぞれの人にお尋ねいたしたいと思いますので、その順序によつて一括して答弁していただきたい。委員長においてよろしくおとりはからいが願いたいと思います。  道路運送案についての公述につきまして、天野公述人杉野公述人に対してお尋ねいたしたいと思います。この二人の方は、本法案について結論的には賛成であるのか反対であるのか、この点を御説明願いたい。  それから次に塚田耕一郎君にお尋ねいたしますが、第一條の公正な競争の削除方についてよく話はわかりました。さらに第六條の追加修正の点につきましても十分話はわかりました。法案の第三十四條におきまして、運輸大臣は、当該運送が災害の救助その他公共福祉を維持するために必要な命令を出しまして、運送業者運送を命じ、あるいはいろいろな救済の関係ができるように相なつておりまするが、この命令によつて業者の受ける損失は法律で補償することに相なつておりますけれども、第三十四條の規定によりますと、その補償額が国会の議決を経た予算の金額を越えない範囲内において補償するという規則に相なつておりますので、塚田さんなり山田さんは、この点についてどういうお考えを持つておるか。国会で議決した予算の範囲内を越えた事態を惹起した場合も、これを補償するのか、その辺がどうも伺い得なかつたところでありますので、意見を申し述べていただきたいと考えます。  それから内藤東平君にお尋ねいたしまするが、この法案では、従業員が二重の拘束を受けるのでどうも困るというお話でありましたが、具体的にはどういうように拘束を受けるのか。また先般の櫻木町の事故におきましても、その他国鉄あるいは省営バスの事故におきましても、いろいろの原因によつて事故が生じ七おりますけれども、一面従業員の執務ぶりの精神状態の弛緩も、そういう事故の原因になるのではないかとも考えております。従業員に対しまして、国鉄総裁なり、あるいはそれぞれの責任者が、どういう形で実際の指導に当つておるかということについては、国会の当委員会においても非常に重要な質問点になつておりますので、そういつた事故防止については、実際の問題といたしまして、関係責任者、最高責任者からどういう形でこれが徹底周知されておるかということについてお尋ねしたいと思います。  それから東京都の交通局総務課長の人見さんにお尋ねいたしまするが、百二十三條の規定については全面的に賛成だというお話でありまして、よくお話の趣旨はわかりました。そこで都知事あるいは市長の意見が、道路運送審議会なりあるいは運輸大臣に十分反映したか。その反映した事実についてあるならば、こういう点はわれわれの意見が反映したのだというような、具体的なことをお話願いたいと考えており「ます。  それから次に山成さんにお尋ねいたしますが、小型運送関係の業態が終戦後は非常に大きくふえて来た、そこでその事業上の採算面は実際とれているのかどうか、とれているならばどういう面でとれているか、あるいは事業を実際行うにあたりまして、どんな面に障害があるのかということについて、御意見を伺いたいと考えております。  それから自動車抵当法案につきまして、川島さんにお尋ねいたしまするが、この法案に全面的に賛成であるけれども、その抵当物件たる自動車の移動性を認めてくれというようなお話でありましたが、どのように移動性を認めて、具体的に処置をしたらいいのかということにつきまして、山田公述人でもけつこうでありますから、御意見を伺いたいと考えております。  それから車両法案につきまして、山口さんにお尋ねいたしますが、最近の事故はいろいろ整備上について欠陷がある、用具の不備、不良に基いて大きな事故を生じているという御意見でございましたが、そういつた意見を当局に皆様方が具申せられまして、実際問題としてどういうふうにこういう面が取上げられておりますか、あるいは自動車のブレーキを改善するにあたりまして、そういつた整備上の問題を皆さんで政府当局に上申いたしまして取上げられているのかどうか、等閑に付せられているのかどうか、そういう点で具体的な意見をひとつお話願いたい。  それからこれはいずれの方でもけつこうでありますが、特に乗合自動車関係の塚田さんなり、あるいは森田さんでけつこうでありますが、罰則関係につきましては何ら御意見はないのかどうか、これらの規定で皆さん十分承知いたしているのかどうか、この点もあわせて御意見を伺いたいと考えております。
  33. 天野重知

    天野公述人 ただいま坪内さんから、本改正案に賛成か反対かというような御質問がございました。私といたしましては今度の改正案は、以前の道路運送法よりさらに前進したものと思いまして、全体といたしましては一応賛成であります。但し先ほども申し上げました通り自動車道路の問題に対しましてははなはだ遺憾でありますが、自動車道業者保護規定を設けないということは、この法案の一番ミスではないかと思うのであります。
  34. 杉野喜久治

    杉野公述人 今度の道路運送法案は、原則的には私は賛成をするものでございます。ただ先刻申し上げましたように、三、四の新しくつくられた点、また修正せられた部分について、なお修正意見があることを申し上げて賛成をするものでございます。
  35. 塚田耕一郎

    塚田公述人 坪内先生の御質問に対してお答え申し上げます。私の申しましたことは、三十五條の第二項に損失補償のことだけしか規定していないので、そういう観点から考えますと、海上運送法の二十條にはりつぱに「政府は、定期航路事業であつて当該航路の性質上経営が困難なものに対し、郵便物の運送等公益上必要な最少限度の運送を確保するため、毎年予算の範囲内で補助金を交付することができる。」という明文があります。従いまして私は、この三十五條三項のうちには運輸省令で定めるとありますので、多分このうちに立案者は考えておつてくれるのではないかというふうな疑問を持つたのであります。従いまして海上運送といい、陸上運送といい、いずれに対しましても、電気、ガス、地方鉄道バスというものが、今学会でも問題になつておりますごとく、公益事業として浮び上つているのであります。そういう観点から考えましても、この補償は当然損失補償でなくて、要するに経営困難なものに対しましても補償をしてくださることが当然ではないかと考えるのであります。従いまして御質問のうちで、三十四條の「補償金の総額が国会の議決を経た予算の金額をこえない範囲」とありますので、私は実はこれについて非常に疑問を持つたのでありますが、おそらくこの問題につきましては諸先生方がわれわれ業者に対し、非常なお考えをお持ちくださるならば、公益事業としてのわれわれの責任を果す上から考えましても、当然予算が国会を通過したものの範囲内でなくても、場合によつては臨時予算の追加ぐらいまでしていただいて、補償してもらうのが当然ではないかと私は思います。承るところによりますと、海上運送は今回は三千三百万円も補償金をもらつて、全額を海上運送の方に充てたということにつきましては、私たち陸上運送業者といたしまして、バスといわずトラックといわず、一面から非常な不愉快さを感じている次第であります。  最後に、事故の問題でありますが、私には別して罰則についての意見を申し述べることはないのであります。
  36. 坪内八郎

    ○坪内委員 塚田公述人にさらにお尋ねいたしますが、第三十五條の第二項の、海上輸送との関係に照し合せて、陸上運送の補償の助成の点も考えてほしいという点はよくわかるのでありますが、私のお尋ねは、第三十四條によつて、予想だにしなかつたような大災害が起きた場合に、運輸大臣はその権限によつて皆さんを動かして、それの輸送をはかることができる規定になつているのでありますが、これについて、国会できめた額を越えない範囲内でやるのだ、弁償をやるのだ、こういうことになつているが、この点について皆さんが今お話になつたような要望程度のものであるか、または何らかの修正案を皆さん方は考えているのかという点をお尋ねいたした次第であります。
  37. 塚田耕一郎

    塚田公述人 ただいま坪内先生の御質問のごとく、予想だにしなかつたというような事故を起した場合におきましては、もちろん追加予算その他の方法によつて補償をしていただきたいと考えております。
  38. 森田賢

    ○森田公述人 お答え申し上げます。ただいま坪内先生から塚田さんと私に御質問をいただきまして、今塚田さんが述べられた通りでありますが、私が賛成理由の第七にあげました最後に、事業者関係方々が述べられた御意見をおくみとりいただきたいという中に、この損失補償の問題を一緒に言うたものとして、坪内先生がおくみとりいただいたものだと思つております。塚田さんがお述べになつたのと同じ趣旨のものでありまして、第三十四條と第三十五條にある「運輸大臣は、当該運送が災害の救助その他公共福祉を維持するため必要」な損失補償ではなくて、国家が、公共事業として、諸資材の高騰等のため事業運営困難という面についても、補助金を制定されることを希望しております。その意味で第七の要望事項に掲げたのでございます。  それから罰則の点は承知かという点に対しましては、やむを得ないものかと考えております。
  39. 内藤東平

    ○内藤公述人 お尋ねの点は二十六條と二十七條だと考えます。服務規律と運転者の一定要件云々でございますが、私どもといたしましては、交通取締法で一応規制されておりまして、われわれのところの運転手諸君は、全部国家試験を通つて免状をいただいておる者で、これにさらに何らかの規制を加える必要はないであろうと考えておるし、それから二十七條の場合、特に申し上げたいのですが、運輸省の草案中の草案かもしれませんが、業界新聞の中に出ておりましたものの内容を見ますと、拘束時間なども規定するというふうにいわれておりますし、あるいはまた年齢の制限、二十歳あるいは十九歳から最高四十五歳で押えるというようなこともいわれておりまして、おそらくあの草案は廃案になつたと考えますが、最高年齢を四十五歳で押えるというようなばかげたことが考えられておるのであります。実際に運転手が最高年齢を四十五歳に切りかえられた場合には、四十五歳以後の保障はどうなるのかということを、われわれも関心を深めておりますし、そういつた点から交通法規で事足りるのであつて、必ずしもこういうものは必要がないという考え方を持つておるわけでございます。従つて道路運送法自体がもし必要があるならば、交通取締法その他によつて規定された方がしかるべきではないだろうか、こういうふうに考えておつたわけでございます。  それからいま一つ、事故などがあつた場合、従業員に対してどういう取扱い方になつておるかというようなお尋ねでありましたが、私どもの方では、すでに国鉄として服務規律がございまして、仕業検査あるいは終業後の検査等は、全部一つの規律としてやつております。従つてそういうものを個々の会社がおやりになられても一向さしつかえないと思います。なお事故についても、私どもの大栃線で大きな事故を起しまして、まことに申訳ないと思つておりますが、事故に対しましては、それが全国のどこに起りましても、細大漏らさずこれを全部、従業員にその原因あるいは結果等を周知せしめて、その反省の資料にいたしております。なお最近では、戦時中にできました運転手諸君に対しては、特に適性検査を行いまして、その適性、不適性を判断しておりますが、概してその結果も良好のようでございまして、そういつたようなことから、おそらく今後の事故についても相当防いで行けると思います。なお適性検査は、警視庁あるいはその他の試験を受ける場合にもやつておりますけれども、なおそういうものが厳密に交通取締法親等で出されるならば、道路運送法でそういう取締方法を考えなくてもよいのではないかというように考えております。
  40. 坪内八郎

    ○坪内委員 大体了承できましたが、さらにお尋ねいたしますが、私がお尋ねする点は、最近の櫻木町駅の事故におきましても、あるいは四国における大栃線の事故におきましても、昨年八月の国鉄の画期的な機構の改革後、最高首脳部の指揮命令、監督あるいは指導といつたものの啓蒙というものは、実際問題としてはそういう内規がありましようけれども、どういうふうに皆さんに徹底されておられるかということ、あるいはそういう命令の徹底しない、あるいは監督指導が徹底しないというようなところに、大きな事故発生の原因があつたのではなかろうかというようなことで、当委員会におきましても、慎重にそういう点を検討いたしておるわけでありますが、あなたがそういう立場におかれまして、最高首脳部の意見が、そういつた事故の発生後あるいはその以前に、たとえば月に何回ぐらい、定期的に、非番を利用してやるとかいうような実際問題があろうかと思いますが、そういう点を参考のためにお伺いしたいと考えた次第でありますが、その事実について、参考までに一つでもいいから御発表願いたいと思います。
  41. 内藤東平

    ○内藤公述人 そういうものは月に一ぺんとか週に一ぺんとかいうことでなく、その都度、朝の点呼時に従業員諸君を集めまして、これらについては注意等を与えておるわけであります。
  42. 人見捨藏

    ○人見公述人 従来都知事の意見が認められておるかどうかという御質問でございますが、今までのところ、都知事の意見が無規された例はありません。従来は意見を徴する場合の範囲が狭いのが、今回これが広がるわけでございますので、その実施の上は、広い範囲において知事の意見を尊重してくださるようにお願いいたしております。
  43. 坪内八郎

    ○坪内委員 私がお尋ねした点のうちで、過去において皆さんが、こういつた点は取上げてもらわなくてはならぬというようなことを上申されて、その意見が徴せられた具体的事実があるか、お尋ねしております。
  44. 人見捨藏

    ○人見公述人 いつの場合でも徴せられております。
  45. 川島茂樹

    ○川島公述人 お答え申し上げます。自動車の強制執行につきまして、自動車の移動性を考慮した適切な規定を設けていただきたいと申し上げましたのは、御案内の通り船舶の強制執行につきましては、停泊地の裁判所へ手続をしなければならぬことに相なつておりまして、そのために実際上、船が動くために強制執行ができないというふうに聞いておりますので、自動車につきましても、東京に籍のある自動車で、東京で手続をいたしますときに、それがたまたま動きまわつているために、実際上の手続ができない、そういうことのありませんような適切な規定をきめていただきたい、こういうことでございます。
  46. 山田晟

    ○山田公述人 お尋ねの強制執行の際に、自動車に逃げられてしまうという懸念が、自動車抵当法の一番めんどうな問題でありまして、その点が実は非常に困るのであります。ただ現在のところそれを妨ぐ方法が全然ないかと申しますと、使用の本拠の位置を登録させておきまして、つまり自動車の所在地はどこかというところを登録させておきまして、その登録させた所在地以外で自動車をかつて使用する、つまり本拠の位置を登録しないでかえますと、三万円以下の罰金ということになつておりまして、不完全ではありますが、ある程度それで防げるのではないかというふうに思われます。ただ先ほど申しましたように、使用の本拠の位置の仮登録について、抵当権者の同意が必要だということになつておりませんので、抵当権者が知らないうちに本拠の位置をかえられるということも起り得るわけでありますが、それは政令の規定か何かで適当な規定を入れていただければ、これもある程度は防げると存じます。ただそういうふうに自動車が逃げることは、現在すでにそうなんでありまして、抵当法ができたから逃げるということにもなるまいかというふうに思つております。
  47. 坪内八郎

    ○坪内委員 山田さんのお話は大分わかります。抵当権者が強制執行する場合、相手は烏のように動いている、そういう場合に、登録所在地関係のお話もよくわかりますが、罰則規定におきましても、これはただちに司法処分において罰金だということになつている。罰金は私が申すまでもなく、それぞれ司法関係の正式な判決によつて行われることになりますので、その以前に何らかの行政的な処置が必要であると私は考えているのでありますが、法文にそういつた行政的な処置をするとうたつてないのに、そういうふうにいわゆる罰則の司法処分があるから、ただちにそれをつかまえることができるかということになると、実際問題になるとできないと思いますが、あなたの学者としての立場はどうですか。
  48. 山田晟

    ○山田公述人 実際上逃げる場合はかなり出て参ると思います。ただそれがために厳重な罰則をきめておくことにいたしましても、ちよつと行政目的の罰則ならば理解できますが、たとえば登録をしないで本拠の位置を移すということは、行政罰としては三万円以下の罰金に処せられるわけであります。ただ抵当権者の同意を得ないで、強制執行を逃げたということだけで罰則を付することになりますと、いろいろ異論もありまして、ある程度はそういう罰則をきめてもいいのではないかと思いますけれども、なかなか實現が困難じやないかというように思います。
  49. 坪内八郎

    ○坪内委員 そこで実際問題としてはそういう司法処分をしないで、その司法処分をする前に行政的な処置が必要でありますから、司法処分の規定を設けるよりも行政的な処置をする、行政処分的な処置をうたうことが当然ではないかということを実際問題から考えるのでありますが、その点あなたはそういう行政処分を必要でないと思いますか。それともやはりこのままの司法規定で、司法処分の処罰規定によつてこれが防止されるとお考えになるのかということを参考までに伺いたい。
  50. 山田晟

    ○山田公述人 抵当権の執行ということになりますと、私権の実現でございますから、これを行政官庁は抵当権者の便宜をはかつて、直接に自動車を押えることになりますと、この現在の法律規定全体の体系から申しまして、相当疑問があると思います。
  51. 山成豊

    ○山成公述人 大体私に対するお尋ねは、小型運送業者の採算はどうか、それから第二は、どういうことをどういう形でやりたいということを希望しているのか、こういう御質問のように伺いました。  それで第一の採算につきましては、実は私は協会会長をいたしておりましたが、商売をいたしておりませんから、ごく詳しいことはちよつと申し上げかねますが、大体を申し上げますと、先ほども申したように、要するに相当に採算がとれて繁昌いたしまして、三年間に五百台の車が二千五百台、約三千台にも伸びたということで、内容は相当よろしいと考えます。大略を申し上げますと、一台の車の一箇月の稼ぎ高—これを水揚げと申しますが、一箇月の水揚げが少い車で大体が二万五千円ないし三万円、それから場所がよくてお得意を持ち、よく働く車は、一台で六、七万円を上げているということが定評になつております。平均いたしましても約三万五千円ないし四万円くらいの水揚げを持つておりまして、先ほども申し上げましたように約二千五百両、その出資社員が一千名でありますが、これの六〇%は一両ないし二両を持つた業者でありまして、この一両、二両の業者がみな相当に家族も養い、生計を立てておりますから、一台でも家族を養うような採算がとれると見てよろしいかと存じます。  それから第二の、改善をどうしたらいいかという私どもの希望をもう一度繰返しますと、要は今の一両、二両、あるいは三両、四両持つた人間が、運輸省の最近の御方針の十両の基準のペースを置かれますと、二人、三人あるいはまた一両持は十人寄らなければ、その会社ができないということで、つまり何人かの人が寄合い世帯にならないと、この事業が行えない。それからもう一つは、事業を行いますのに法人会社という御注文なので、この法人会社にいたしますと、いわゆる帳簿組織その他についても、相当いろいろなめんどうがありまして、朝から晩までしるしばんてんに地下たびをはいて運転しているような連中には、とうていそういつた会社帳簿組織というようなことはできませんので、いろいろと従業員を雇い入れたり、そういうことで費用が、先ほど申したように一台一万円近くもかかるということで、非常に大きなむだがありますことと、それからさつき申しましたように、この一両あるいは二両持つた車両主は、店舗も、それからお得意というのれんも、格納場所も、みな持つている連中なのでありまして、自分ののれんや格納場所、いわゆる店舗の施設を利用して商売をして行きたい、また自分の思うような商売をしたいということが熱望なのでありますが、運輸省の御方針の十両ペースというふうにきめられますと、さつき言つたようにみんなが寄合い世帯をつくり、そうしてまたむだに車庫もつくらなければならぬというような大きな支出、むだもありますので、それに非常に困つているのであります。今回の改正法案の、あなたの質問を越えるかもしれませんが……。
  52. 坪内八郎

    ○坪内委員 お話の要点はわかりましたが、今お話のように小型のそういつた営業を行う場合に、政府の十両基準ではとてもうまく行かないから、主要都市を五両程度にして、小都市を三両か二両程度にしてくれというのがあなたの御要望ですね。そういう話はわかつております。私も商売のことはわからないが、われわれの感覚から申しますと、やはりそういう小さいものが寄つておると、社会的な信用の程度も低いだろうし、またそういう資金面の点におきましても、強力なものが固まつている方が、対外的の折衝、交渉においても便がよい点があるのではないかと考えられますが、あなたの今申されるいろいろな欠陥を補うには、むしろそういつた強力なかたまりであつた方が、対外的にもあるいは金融的な面においても、あるいはあらゆる障害を打破する上においても、非常に好都合のように思われますが、その点はどういうふうなお考えでありますか。
  53. 山成豊

    ○山成公述人 あなたの仰せられることは、理論的にいえばもつともでありますけれども、実情は全然それに沿わないのです。さつき申しましたように、今度東京において非常に膨脹して、一社が百両以上越しましたが、その組織の根本が大勢の寄り集まりでありますから、内紛が絶えない。その内紛に悩みまして、業者みずから解体させてくれということを訴え出たことが動機になりまして、今東京では再編成という言葉を使いまして、十両ペース場ということでやつておるのですけれども、十両ペースを希望したのではなしに、いつそのことわれわれの年来の希望である個人企業、戦争前同様の二両でも三両でも個人がやれるということを熱望しておるのでありますが、十両ベースになりますと、また寄合い世帯となり、再びそういう内紛が起きたり、紛争したりしなければならぬということが、非常に懸念されておるのであります。
  54. 岡田五郎

    ○岡田(五)委員 日本トラック協会の森田さんにお尋ねするに適当な問題かとも考えますが、このたびの道路運送法案によりますと、貨物自動車による貨物の輸送につきましては、原則として現払いをしなければならないということになつておりまして、特に経理上の手続の関係その他やむを得ぜる事由がなければ、一定の猶予期間外は、先ほど申しました現払いでなければならないことが、法律で明記されておるのであります。これは一面非常に貨物の運送業者保護する規定である反面におきまして、荷主側の非常に不利、不便とする面でございます。また従来の貨物輸送の商慣習上から行きまして、非常に異例に属する立法であると私は考えております。先ほど申し上げましたように、貨物運送業者に対する非常な保護規定のようでありますが、反面におきまして経理上の手続その他万やむを得ざる以外は、現金払いといいますか、現払いで運賃料金を収受しなければならないという拘束があるのでありますが、かような規定のもとにおいて、自動車貨物運送業者が円滑に事業の遂行ができるか、また反面に貨物運送協会として他の荷主側のこの規定に対する意見、要望また考え方をお聞き及びになつていると考えるのでありますが、本日不幸にして荷主側の代表者がどなたもおいでになつておりませんので、これに対するこの方面の声を不幸にして聞くことができないのでありますが、もし森田さんにして荷主側の声をお聞きになつておれば、これをお聞かせ願いたい。また自動車貨物輸送業者側における事業運営がこの規定に基いて便利になるか不便になるのか、その辺の所見をお聞かせ願いたいのであります。
  55. 森田賢

    ○森田公述人 お答えいたします。貨物自動車運賃料金の定額現払い制について御質問を受けましたが、これは貨物自動車業者といたしましては、絶対に制定していただきたいと懇請するものであります。理由につきましては先刻公述いたしましたので、その影響について申し上げます。昨年の十二月に全国の主要都市の統計などの非常に整備した四十六社について調査をいたしましたところ、現払いが全運賃の一六%でありまして、一箇月以内に運賃收入のできているものが六五%、一箇月以上に延びるものが一九%であります。このパーセントから見ましても、荷主には定額現払い制は、そう危惧に値しないと思われます。ただ一部、非常に悪い言葉でありますが、運賃は利益が出てから払えばよいではないか、運賃はあとまわしだというような感心しない荷主さんがありまして、どうしても回収困難なものもあります。それを規制いたしますのには、どうしても現払い制という建前で—聞くところによると、この現払いは手形その他有価証券で、一箇月以内のものならよいではないかというふうにも聞いておりますし、善良な荷主さんには影響がないと確信しております。ただ悪質な荷主さんのために、取引事業が衰微し完全な車両も整備できず、公共事業体としての條件を欠いているような場合は、その一九%の全部が悪質とは言えないが、そのために大半の大多数の善良な荷主さんが、御迷惑になる結果になるのではないかと考えられます。荷主さんへの影響についても、いろいろ直接会社から打診はいたしておりますが、そう大して影響はなさそうであります。
  56. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 他に質問はありませんか。質問がなければこれにて公聴会を散会いたします。公述人の皆様におかれましては長い間ありがとうございました。     午後三時九分散会