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1951-05-22 第10回国会 衆議院 運輸委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十二日(火曜日)     午後一時四十一分開議  出席委員    委員長 前田  郁君    理事 大澤嘉平治君 理事 岡田 五郎君    理事 坪内 八郎君       稻田 直道君    越智  茂君      岡村利右衞門君    田中 角榮君       玉置 信一君    中村 純一君       畠山 鶴吉君    藤枝 泉介君       前田 正男君    滿尾 君亮君       山崎 岩男君    木下  榮君       原   彪君    川島 金次君       山口シヅエ君    林  百郎君       石野 久男君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 山崎  猛君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 荒木茂久二君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      足羽 則之君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  石井 昭正君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       加賀山之雄君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ――――――――――――― 五月二十一日  委員今野武雄辞任につき、その補欠として苅  田アサノ君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員大西禎夫君、尾崎末吉君、片岡伊三郎君、  黒澤富次郎君及び苅田アサノ辞任につき、そ  の補欠として越智茂君、小川原政信君、藤枝泉  介君、尾関義一君及び林百郎君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員小川原政信君及び尾関義一辞任につき、  その補欠として中村純一君及び田中角榮君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国有鉄道法の一部を改正する法律案前田  郁君外四名提出衆法第五九号)     ―――――――――――――
  2. 岡田五郎

    岡田(五)委員長代理 それではこれより会議を開きます。  日本国有鉄道法の一部を改正する法律案議題といたします。提案者より発言を求めておられますので、これを許します。前田正男君。
  3. 前田正男

    前田(正)委員 昨日御質問がありまして、私からいろいろと立場を御答弁させていただいたのでありますが、実はこの機会発言を求めておきましたことは、本日の某大新聞の朝刊にも社説が出ております。その他いろいろと私たち提案趣旨に対しまして、誤つたよう説明その他宣伝が行われているように思いますので、この機会に少しく私からその間の事情を説明させていただきたいと思うのであります。  私たちが今回の国鉄法改正するにあたりましては、いろいろと非難とか、攻撃を受けておるようでありますけれども、われわれといたしましては、この国有鉄道法立法いたしました当時におきまして、現在の機構、ことに監理委員会に対しまして相当異論がございましたことは、速記録にも明らかな通りでございます。従いましていずれこれを改めなければならないというふうに考えておつたわけでありますが、この監理委員会というものを私たち考えますときに、この監理委員会が、現在ほんとうに十分な機能立法精神通りに発揮しておるということならば、われわれとしてもあえて問題はないのでありますが、われわれから見ますと、十分なる機能を発揮していないように見えるのであります。しかるところ、これに対する反対の理由を見ますと、いかにもわれわれが大臣権限拡大するとか、あるいは感情の問題にとらわれて反対しておるとか、こういうような一方的な非難をわれわれに加えられておるようでありまして、この点われわれは非常に遺憾に思うのでありまして、現在の国鉄運営というものが十分に行われておるかどうか、立法精神通り運営されておるかどうかということが、まず第一の問題であります。同時にまたこの立法の当時におきましても、できましたならば近い将来において改革いたしたいということは、各委員から述べられておる点でありまして、その点についてよく現状を御認識願いたいと思うのであります。すなわち国民を代表いたしました国会と、政府と、それから国鉄と、こういうふうにあるわけでありますが、この間におきまして国鉄国民鉄道であります。いやしくも国有鉄道は、監理委員会とか、あるいは国鉄総裁役職員のものではありません。国民全体が出資いたしました国家鉄道であります。そのために国民意見を代表した運営がなされるべきであるということは間違いないのであります。従いましてこれは当然国会承認いたしました監理委員会を通じ、国民意見が日常の業務に反映されるべきものであると私たち考えておるのでありますが、この監理委員会というものが今までどういうふうな仕事をしていたかと申しますと、もちろん立法当時の誤りもありますが、もしこれがほんとう自主性を重んずるということであるたらば、当然TVAの例にもありますように、常勤の委員会がこれをやるべきであると私は思います。しかしこれは非常勤の監理委員会でありまして、単なる総裁の諮問機関的なものであります。しかもこれは国会承認を受けて、国民意思を代表する国家機関であります。国鉄運営するにあたり、指導統制をする権限責任を持つておるものでありますから、国会意思国民意見を代表する国鉄監理委員会に、当然われわれの意見を述べて行かなければならないと思うのであります。ところが私たち不幸にいたしまして、現在まで監理委員会から何ら報告を受けたり、あるいは相談を受けたというような事実はないのであります。単なる総裁の諮問機関的な存在でありましては、この監理委員会立法精神から見まして、非常に誤つておる。また私たちが聞く範囲内におきましても、国鉄総裁自身監理委員会を重視しているようには見えません。そういうようなことから、国家機関である国鉄運営を真剣に考えて行くという立場から見まして、われわれはこの機会に不満足のものは修正して行くというのが、当然立法者としての責任であると私は考えるのであります。     〔岡田(五)委員長代理退席坪内   委員長代理着席〕 いろいろ御意見等もあつたようでありますが、私はどの意見を見ましても、何ら建設的な意見現状をさらに政善して行こうというような御意見を聞かないのは、はなはだ遺憾であります。特にわれわれが感情的にこの問題にからんいるというような、いろいろのデマ宣伝を飛ばしているようでありますけれども、私ははなはだ遺憾に思つております。と申しましますのは、もしこれを公平な立場から天下の公器である新聞とか、その他の方が論議せられるならば、われわれの賛成側意見も当然聞かれまして、そうしてお互いにその意見を相比較して論ずべきものであると思いますし、同時にまた現状をいいと思つているのか、悪いと思つているのか明らかにして、もし現状に不満があるならば、建設的に国民意見を代表して、ほんとう改善意見を述べるべきであると思います。またその改善の仕方にはいろいろの立場がありますからおのおの意見がわかれるのは、それは当然でありますけれども、私は健全なる御批判を賜わりたいと思つておる次第であります。  なおこの機会において一言つけ加えさしていただきたいと思いますが、今回の改正によりまして、いかにも命令権拡大したかのように申されますけれども、これは昨日の説明においても申しました通り立法当時におきましては、小澤国務大臣が新線に対しましても、必要な場合には公共立場から命ずることができるということを明瞭に答弁しているのでありまして、従来鉄道省におきましても、積極的に命令が出せるというような解釈を下しておるのでありまして、こういつた点においてただわれわれは範囲を明瞭にしただけのことでありまして、決して命令権拡大にはなつておりません。あるいはまた監督権限が拡張したかのように申しますけれども、私たちから見ましたならば、今回の国有鉄道というものは、このたびの改正によりまして、従来は監理委員会において全面的に業務運営について指導、統制される権限と、責任を持たれておりまして、従つて国有鉄道国会意思を代表する監理委員会によつて、全面的に指導統制されておつたわけでありますが、今回の法律改正によりまして、今後は法律に従いまして、許されたところの大臣権限及び役員任免及び予算というもの、この三つの範囲においての、ごく最小の限られた範囲だけの干渉を受けることになるのでありまして、私は国有鉄道独立性公共企業体としての自主的な運営というものは、さらに拡大されたものであると思うのであります。一般の民主的な私企業等におきましても、皆様承知通りその会社を代表する者が責任を持つておるのでありまして、現在の国有鉄道当局のような、国有鉄道を代表する者が責任を持たないというような、あいまいな経営はないのであります。私はもつと能率的に、合理的に運営され、責任を明確にするという意味からいたしましても、今回の改正は至当であると思うのであります。どうか今回の改正に際していろいろの御批判、御意見があるにいたしましても、決して感情的問題とか、あるいは一部のデマ宣伝立場に立つているのではなく、もつと公平な建設的な意見から、われわれは改正立場を支持しておる、こういうことを御了承願いまして、今後の御審議についていろいろと皆様の貴重なる御意見を賜わりまして、この法案がぜひとも皆さんの御協賛を得て、すみやかに可決されるよう切にお願いする次第であります。
  4. 石野久男

    石野委員 ちよつと議事進行について……。ただいま前田さんから本案について説明がありましたが、その内容は多分に討論意味をも含まれたようなものでありまして、提出法案趣旨説明として、非常に重大な内容を持つておるものと私は思うのであります。しかるにただいまの委員会構成状態から見ましても、私を除いてはほとんど全部与党側の方ばかりでありまして、野党側諸君はほとんどおいでになつておりません。この問題についての議事進行といたしまして、私は委員長においてもう少し委員出席を要望せられたいのであります。それでありませんと、この委員会で特に重大な発言がせられているときに、この問題について賛成委員諸君ばかりが出席しておるということは、議事進行上あまり思わしくないと存じます。私野党側の一人として、非常に重大なことであると思いますので、一言議事進行について発言いたします。
  5. 坪内八郎

    坪内委員長代理 お答えいたします。石野君のような考えもわれわれ持つておりましたので、各党にそれぞれ連絡いたしておるのでありますが、さらに出席を願うように手配をいたします。
  6. 石野久男

    石野委員 委員長の御配慮の点はよくわかるのでありますが、それまで一応本問題についての質疑を延ばしていただきたい。出席した後にいま一度、前田君の説明等もなされた方がよろしいのではないかと思いますが、いかがでしようか。
  7. 坪内八郎

    坪内委員長代理 石野君も御承知通り、この法案は第二、第五国会で取上げられたものでありまして、各党におかれても大体においてその内容は了承しておるように考えておるので、また昨日から本法案を今日議題とすることを十分に連絡いたしておりますので、その点は各党においても十分御了承くださつておることと思いますから、さしあたりわが党の関係委員から質問を続行しているうちに御参集になろうと思いますので、御了承願いたいと思います。
  8. 石野久男

    石野委員 急いで委員出席させてください。
  9. 坪内八郎

    坪内委員長代理 承知いたしました。岡田五郎君。
  10. 岡田五郎

    岡田(五)委員 提案者に御質問申し上げますが、第二十條に「総裁は、両議院同意を得て内閣任命する。」ということになつておるのでありますが、国有鉄道という公共企業体は、御承知のように政府機関でありまして、他の政府機関の例を見ますと、大体内閣総理大臣または内閣任命することになつておるのであります。国有鉄道におきまして初めて、両院同意を得て内閣任命することになつておるのであります。これは国有鉄道重大性提案者において十分お認めになりましたから、かようになつたのだと思いますが、一応この点につきまして提案者の御意見のほどを御説明願いたいと思います。
  11. 前田正男

    前田(正)委員 総裁任命につきましては、監理委員会の推薦した者について内閣任命するということになつておりまして、大体間接に国会同意を得ておつたように私は思うものでありますから、従来の法の精神を尊重いたしまして、また国有鉄道公共企業体の中におきましても特別に大きな企業体でありまして、他にその例を見ないものでありますので、御質問通り他行政機関とは多少食い違つておるように思いますけれども、特別に重大なものでありますので、今回は両院同意を得てというようにいたしたものであります。     〔坪内委員長代理退席大澤委員長代理着席
  12. 岡田五郎

    岡田(五)委員 次に二十二條につきまして提案者にお尋ね申し上げたいのでありますが、「内閣は、総裁心身故障のため職務執行ができないと認める場合又は総裁職務上の義務違反があり、その他総裁として不適当であると認める場合においては、両議院同意を得て、これを罷免することができる。」こういうふうになつております。任命のときには両院同意を得て任命し、罷免の場合には両院同意を得て罷免する、こういうふうになつておりまして、なるほど裏表同じ形でけつこうでありますが、昔天皇のお役人であつた時分に、勅任官任命されるときには勅裁を得たのでありますが、やめるときには勅裁を得なかつたという例を聞いたのでありますが、この例は実はやめるときは大体不都合なことがあつてやめる。たとえば総裁が不適当であると認められて、両院同意を得てやめる場合に、そのやめさせる理由、不適当であるという理由説明しなければならないということになると、総裁ともなられる人になりますと、相当社会的な地位もあり、身分もある人でありまして、国会の本会議の席上、不適当なる理由を堂々と述べ立てられては、その人の将来の社会生活相当影響を及ぼすというような人情的懸念を持つて見ますると、なるほど任命のときには両院同意を得たが、やめさせるときにはむしろ内閣総理大臣がやめさせるというふうにする方が、人情的でいいのではないかと思うのでありますが、この点提案者のお考えをお聞かせ願えればけつこうであります。
  13. 前田正男

    前田(正)委員 ごもつともな御質問でありますが、実はこの任免の場合におきまして、あまりに一方の意見が強く反映されて参つたようなことがある場合においては、やはり政党内閣でありますから、多少そういうようなこともあるとは思いますが、何と言つて国民の大切な機関である国鉄でありますので、国会意思を反映して総裁任命しておるのでありますから、やめるときにも両院同意を得て、あまり一方的にならないようにせられることがよいのではないかと思います。ただお話通り理由を堂々と会本議で述べられるというようなことになりましては、御当人に対してまことに御迷惑だと思いますので、従来からの例に見ましても、大体任命のときにおいても本会議であまり述べないような事柄でありますので、やはり運営委員会とかその他において適当にとりはからつて、本会議ではただ承認を与えるという程度に運営されていただけれげ幸いであると提案者考えております。
  14. 岡田五郎

    岡田(五)委員 次に理事及び副総裁任命でございますが、運輸大臣認可を得て総裁理事及び副総裁任命するということになつておりまして、任命立体性というものが総裁にあるように、私は副総裁及び理事については考えるのであります。ところが運輸大臣は、理事において心身故障のために職務執行のできない場合、あるいは理事職務上の義務に違反した場合、あるいはその理事が不適当である場合には、総裁相談なしに理事をやめさすことができる、こういうことになつておるのでありますが、できれば、理事総裁のスタツフである、しかも任命のときには総裁主体性を持ちまして、運輸大臣認可を経て任命しておるのでありますから、やめる場合も、監督官庁運輸大臣が、総裁を抜きにして、不適当だからやめさしてしまうということは――ことに私は重役陣は、総裁を中心としてチーム・ワークを最もとうとぶ必要があると考えるのでありまして、こういう條項をお入れになりましたお気持をお漏らし願いたいのであります。
  15. 前田正男

    前田(正)委員 これは提案者といたしましても、なるべくならば二十二條の三項に書いてあります通り運輸大臣認可を受けて総裁がきめる、総裁立場でやつていただきたいと思うのであります。しかしながら総裁との間にいろいろの問題が起りましたような場合においては、あるいは第四項に書いてありますような罷免を命ずるというようなことも必要になつて来るかと思いますが、しかしなるべくならばこういう規定はめつたに使わないようにしたい、こういう考えであります。
  16. 岡田五郎

    岡田(五)委員 もどりまして提案者にお尋ね申し上げたいのでありますが、このたび内閣及び運輸大臣が、国鉄総裁及び理事監事に対する任免権または認可権を持つことになつておるのでありますが、これを持たせるようにされた考え方のもとをお尋ね申し上げたいのであります。これはいわゆる国有財産であり、国営でありますが、国営の形が官営でなくて、半公営のような形になつておりますが、国が出資者である、出資者すなわち株主権者として会社最高人事権を握る、こういう意味において政府人事権を持たせるようにされたのか。それともいわゆる監督権強化という単純な意味からする人事権の把握であるか。その辺の考え方をお聞かせ願つたらば、法案審議に非常に参考になると思います。
  17. 前田正男

    前田(正)委員 それは先ほどの私の発言を求めました中にも、多少そのような意味を申し上げたのでありますが、今の御質問にありました通り、これは国民機関でございます。従いまして国民意思を代表しておる国会及び政府が、国民意思を代表した役員を、株主立場から任命して行くというのが、すべての企業体のあり方であると思うのであります。しかし従来は、監理委員会というものが国会意思を代表して任命されておりまして、あとはその監理委員会の下に隷属しておるというようなことになつておつたのでありますが、今回監理委員会が廃止されましたので、総裁、副総裁理事監事というのが、結局一つの運営責任機関になるのであります。法文にも書いてあります通り総裁、副総裁国鉄を代表し、理事総裁の定めるところによりまして国鉄を代表するようになつておりますので、普通の法人におきましては代表取締役みたいな形になるのでありますから、これは株主からそれが任命されて行くというふうな行き方にするのが適当ではないか、こういうふうに考えておるのでありまして、決して監督権強化であるとか、命令系統強化であるとか、そういうような意味合いでないということは御了承願いたいと思います。
  18. 岡田五郎

    岡田(五)委員 次に、本法律案で最も重要なことは、いわゆる監督権強化と称せられております命令事項の追加の問題でございますが、その意図が五十四條において現わておると考えるのでありますけれども、先日もお尋ね申し上げましたように、提案者も、公共企業体経営自主性を十分認める半面において、公益保護者公共福祉増進擁護者というか、推進者、または他の交通機関の、いわゆる交通行政所管庁としての運輸大臣監督権ということもまた考えたければならぬという御答弁もあつたようでありまして、私、提案者の御意見に満腔の賛意を表するのでありますが、五十四條第一項第一号の「法律規定により日本国有鉄道運輸大臣許可又は認可を受けるべき事項」こういうふうに非常に包括的に国有鉄道が、運輸大臣許可及び認可を受けるべき事項は、全部命令になるようになつておるのでありますが、許可認可を受けるということは、国有鉄道にその行動主体性があるのであり、またそれと逆に、その事項行動主体性運輸大臣に持つて行くということは、あまりに観念の飛躍といいますか、一足飛びにしておるように私は考えるのでありまして、もちろん許可及び認可を受ける事項は、公益増進公共福祉を推進する事項が大部分を占めておると思うのでありますが、この辺の第一項になりますか、二項になりますか、第一の條項につきまして、簡単でもけつこうでございますから、提案者の御説明を煩わしたいのであります。
  19. 前田正男

    前田(正)委員 これは今の御質問の初めにもありましたように、先般も御説明申し上げました通りでございまして、おもに私は第五十三條の認許可事項をさすものと考えられます。しかしながら認許可事項を全部また命令するというふうになつておりますが、これは公共福祉増進するため特に必要があるという場合だけでありまして、必ずしも全部に命令できるというふうに考えられないのであります。特に必要があると認めたときに限つて、これは伝家の宝刀として出されるものでありまして、みだりに私は命令を出すべきものではないと考えております。しかしながらこの法文につきましては、従来の命令権拡大になるのではないかというような点がございますけれども、実はそれはこの法律立法いたしましたときの第三国会におきましての小澤国務大臣答弁の中にも「この監督上ということは、非常に広義な意味でありまして、たとえば新線が日本経済再建のために、あるいは国力の充実のために絶対に必要であるにもかかわらず、公共企業体がかつてにやらなかつたという場合には、やはり五十四條の規定でこれを命令するような考えであります。こういうふうに明言しておられるのでありまして、立法の当時におきまして、あるいは現在においても、運輸省等が積極的に命令を出せるようなふうに見解を持つておるようでありまして、こういう点におきましては、決して従来の考え方をひとつも広めたものではない、ただ明確にしただけのものであります。しかしあくまでもこれは特に必要があるというときだけに限られておりまして、認許可事項は全部、何でもかんでもいつでも命令を出せるというものではない、特に必要があるときだけである、こういうふうに私は解釈しておるのであります。
  20. 石野久男

    石野委員 提案者に御質問いたします。まず最初に、この改正法案提案理由の中に、これは公務員の労働問題の解決を契機として急速法制化せられたがために、その内容は必ずしも整備されたものとは言い得ないのでありますということを言つておるのでありますが、もちろんそれだけのことからこの改正法案が出たものとは私も思わないのでございます。先ほど前田委員からもお話のありましたように、監理委員会に対するいろいろな疑義が、立法当時からあつたことも事実でありました。その他いろいろなことがあつたこともよくわかります。それにもかかわらず私どもが、この法案改正にあたつてなお提案者にお尋ねしなければならないのは、まず第一に、コーポレーシヨンとしての現在の国鉄機構と、それから従前の国家機関としての国鉄機構との関連性でございますが、この法案改正によつてコーポレーシヨンである現在の日本国有鉄道公社というものを、国家機関的なものに持つて行こうとする考え方があるかどうか、その点をまずお伺いいたします。
  21. 前田正男

    前田(正)委員 今のお話でございますが、必ずしも整備されたものでないということは、当時の大臣答弁においても、あるいはまた当時の各党討論においても明瞭にされておるのでありまして、私自身から申し上げなくても、今までの監理委員会が、決して立法精神通り十分に機能を果していなかつたということは、委員方たちも御了承願えると思うのであります。  次に、今の御質問の中の、これはかえつて国有当時の、国家鉄道省の時代の方に近づくのではないかというような意味の御質問でございましたけれども、私たちとしては、これは全然反対の方向に企画しておるのであります。と申しますのは、少くともわれわれは、国有鉄道公共企業体にして行くというふうに考えて、一応国家意思といたしまして国会で可決してあるのでありますので、われわれといたしましては、その根本方針の方へはぜひとも一歩前進させなければならないではないか。その中におきまして、ただいまの監理委員会のように機能を発揮していないものは、今日この機会に、立法の当時の通りに整理すべきものは整理すべきだと私は考えております。しかしわれわれといたしましては、せつかくきまりました国家意思は、一歩前進さすべきではないかと考えております。それではなぜそのようになるかといいますと、実は先ほどもちよつと御説明いたしたのでありますが、すべての企業体におきましては、企業を代表する者が責任を有するというのが、企業体の原則であると思うのでありまして、民間の普通の会社におきましても、取締役会が十分の機能を発揮して、その責任を持つておるのでありまして、私たちは、監理委員会というようなあいまいなものを置くのは、考え方としてはおもしろくないのではないか。この機会に、国鉄を代表するところの総裁、副総裁及び総裁にきめられた権限範囲において代表するところの理事は、自分でも責任を持つて運営して行くということは当然であると思うのであります。従いまして、先ほども説明した通りでありまして、従来は国会意思を代表するところの監理委員会が、すべてのことに対して統制指導する権限責任を持つてつたのでありますけれども、今回の法律改正におきましては、この法律に明記されております通り大臣権限範囲任免及び予算等の範囲においてのみ、国鉄には国会意見が代表されて行くことになるのでありまして、企業体といたしましては、従来より干渉を受けることが少くなりまして、自主独立的の運営を期待して行くことができる。また一般の企業体と同じように、代表者が責任を持つというのが、責任体制か明確になつて行くので、従つて総裁以下、長らくこの方面に従事せられておる経験者の経験と創意とくふうを生かして、十分に日常の業務運営ができると私は確信しておる次第であります。
  22. 石野久男

    石野委員 監理委員会を廃止することが、国鉄経営体、特にそれの責任者の責任感が非常に強化されるものであるというふうに、前田委員はおつしやれるわけでありますが、それを裏から言いますれば、それほどにまで、今度の改正によつて監督権限強化されて来ておるということも、また一応見られるのではないかと私は思うのであります。国鉄がコーポレーションとしての本来の使命に生きて行こうとするならば、この日本国有鉄道法改正が当初行われたときに論議されたことでありますが、予算の面、特に経理の面における自主性が確保されない限り、その自主性というものは企業体全体として出て来ない。このことは提案者である前田氏もよく御存じのはずであります。しかるに今回の改正におきましては、こうした監督権限的なものが非常に強化され、他面、経理の面における自主性を、そこでは何らかの形で認めてやるというようなものが見られないように思うのでございますけれども、この点に対しては、提案者は全然考慮されていなかつたのでございますか。
  23. 前田正男

    前田(正)委員 今の御質問、まことにごもつともなところがございますが、前の、監督権限強化されるのではないかということについては、われわれは全然見解を異にするのでありまして、先ほど申しました通り、今までの監理委員会国会任命したものであつて、それが全面的に国有鉄道指導統制する権限責任を持つてつて、しかも総裁監理委員会責任を負うという体制にありましたので、今回、総裁が民主的に民意を反映し、自主独立的にやれるということは、監督権限を減少しているものと私は考えております。  それから今のお話の会計部門の独立という問題は、これはもつともであると思います。しかも再建日本の現状におきましては、国有鉄道がいくら独立採算制であるとはいいながら、われわれが、国民意思を代表してきめた金を使わなければできない現状でございまして、ほんとうの独立採算制の企業体的な体制ではないということは、私どもも同感でございます。しかしこの問題につきましては、実はこの機会に一挙にこれも改正したらどうかというような御議論の方もあつたのでありますが、私どもといたしましては、現在のところは、国会政府国鉄との間の責任体制だけを明確にいたしまして、もつと国鉄総裁が自由に民主的に、また自主独立的にやれる体制にして、国鉄総裁が自分で責任を持つ体制になつてから、自分の考え方によつてどういうふうに直してもらいたい。またわれわれと国鉄との間の関係が直りましてから、これはどういうふうにしたらいいかというようなことをお互いに研究いたしまして、いずれ講和独立の機会においてでも、根本的に再検討すべきではないかと思うのであります。しかし現状のように中間体があつて責任体制が不明であつては、そういう根本的な改正もできないというふうに考えておるのでありまして、そういう意味におきまして、今回は責任体制の確立の範囲を主眼にした改正をさしていただきたいと思いまして、提案いたした次第であります。
  24. 石野久男

    石野委員 責任体制を明確にしなければ、今日の実情からいつて、予算的な面における不備なものに足を入れるのにはまだ早いのだという考え方については、疑義がありますが、討論にわたることでありますからやめますが、前田氏たびたび言われておりますその監督権限強化されたのではなくして、自主体制が確立されることによつて、かえつて監督権限が減少されて行く傾向にあるのだとわれわれは理解しておるというお話でありますが、私はその点については、非常に問題があると思うのです。ことに本改正法案における第二十條または第二十二條等においてなされておる役員任免権の問題等につきましては、これはコーポレーシヨンとしての総裁権限に対して、国家の力が強く出て行く形が打出されて来ておる、こういうふうに私は思つております。この点についてなお御意見を承りたいのですが、いま一つは第二十條等においては内閣がこれを任命するのでございますので、自然政党の支配ということが強く打出されて来る。これは各委員ともみな疑義を持つておることと存じます。ことに私どもが運輸委員として各地を歩きました場合に、過去において鉄道がいかに政党の支配のままに動かされて来たかということを、つぶさに見せられておるのであります。私どもはそのように政党内閣のほしいままなことによつて、個人の利益のために鉄道行政が運営されることを、警戒しなければならぬと思つております。第二十ないし第二十二條におけるところのそうした権限強化が、やがて政党の支配をそのまま、また元の鉄道の形にもどすような形が出て来ないか、ひとつ御見解を承りたいと思います。
  25. 前田正男

    前田(正)委員 国有鉄道というものは、決して総裁であるとか、監理委員会のものではないということは、先ほど申しました通りであります。これは国民のものであるということについては、各委員ともよく御承知通りなのであります。従いまして少くとも国民を代表しておりますのはもちろん国会でございまして、株主であるところの国会意見を聞いて、その運営責任を持たすべき人を任命することは、私は当然のことと思うのでありまして、その行き方の範囲においては両院同意を得、内閣任命をし、あるいは国会意思を代表して大臣がこれを任命して行くという、順序の差はございますけれども、私は国鉄監督指導統制する責任というものは、少くとも国民意思を代表したものが任命されて行くというのが当然であると思います。従来とも指導統制責任権限を与えておりました委員会は、国会同意を得ておつたということは、公共企業体は当然そういう性格を持つものであると私は考えておるのであります。  なお政党内閣になりまして、いろいろ政党色があるのではないかということでございますが、これは少くともそういうことはないというふうに考えております。それはこの法律にあります通り総裁といたしましては総裁権限をもつて仕事をするのでありまして、また国会意思というものは、あるいはまたその他の政党等の意思というものは、これは内閣とかあるいは大臣とか、そういつたものを通じて、あるいは予算の審議等において現われるのでありまして、直接国会総裁に干渉するということはできないことになつておりますから、私はそういうようなことは直接ないものと期待しておるのであります。しかしながら何といたしましても国民意思国鉄に代表するということは当然必要なことでありますので、政党がやはり国民意思を代表しておるということになりました場合には、またいろいろと影響があるということはやむを得ないと思つております。しかし、なるべく政党の色彩が及ばないことを期待しておるわけであります。
  26. 石野久男

    石野委員 鉄道国民のものであるということは私もよく承知しておるし、またわれわれはむしろコーポレーシヨンの形なるものに、かえつて反対する立場に立つて従来とも来たものでございます。従つて前田君の言われるように、国民のものであるということを強調される建前からいたしますならば、むしろコーポレーシヨンであるという形を前の国家機関的な、政府機関として鉄道を持つことの方がよりいいのではないかという議論が出て来るのであります。私はむしろそうあつてほしいと存じておるのでありますが、前田君は先ほどコーポレーシヨンの形にもつと推進させるために、この法律改正を行つたのだという御意見でございました。その間意見の食い違いがある、考え方の中に非常な矛盾があると考えております。この点前田君はどういうふうに考えますか。
  27. 前田正男

    前田(正)委員 私は公共企業体というものは、あくまで国民のものであるということにかわりはないと思いますが、その公共企業体運営のやり方というものは、少くとも企業的にやつて行くということが公共企業体であると思いますので、公共企業体の方向へ鉄道を持つて行くということをきめた以上は、なるべくならばこの法におきます責任者が、その運営指導統制をするところの代表者であるというような行き方に持つて行くべきが、ほんとうの民間の経営に近づいた企業体じやないかと思います。しかしながらこれはあくまで国家のものであるということには間違いないと考えております。
  28. 石野久男

    石野委員 この第二十條の第五項で「総裁の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために、」という條項がありますが、ここでは「両議院同意を得ないで、総裁任命を行うことができる。」となつております。衆議院の解散された場合には、まだなお参議院が存在しておるわけでございまして、重大な問題が起きたときには、政府としては一応参議院意見を聞くことが行われるべきであるというふうに存じております。「総裁は、両議院同意を得て、内閣任命する。」という二十條の建前からして、この第五項をなぜ「両議院同意を得ないで、総裁任命を行うことができる。」としたのであるか、そこのところを伺いたい。
  29. 前田正男

    前田(正)委員 これは両院同意を得てやることになつておりますので、両院の成立を待つて両院承認を得るというようになつておりますので、私たちはそういうふうにしたのであります。
  30. 石野久男

    石野委員 この法案改正によつて、政党の支配に対しての心配はそれほどではないのだ、こういうふうに先ほど言われたようであります。そしてまたいま一つには、コーポレーシヨンの方向を一層推進させる考え方を持つておるのだ、こういうふうに言われておるのであります。従つて今後この法則の改正と同時に、この国鉄の従業員である諸君に対する取扱いの問題でありますが、これは今後一層強く公務員的性格を持たせるように考えておられるのであるかどうか、この点をひとつお聞かせ願いたい。
  31. 前田正男

    前田(正)委員 この法律改正によりましては、従業員の従来の取扱い、立場等については、何ら変更はないと考えております。
  32. 石野久男

    石野委員 この法律改正するにあたつて責任主体性を明確にするのだということを打出されたその考え方と、いま一つ考えられると思われるわれわれの意見は、もつと新しい日本国有鉄道法というものをもう少し見て、後に改正するというような考え方がなかつたかどうか、これを言いかえれば、たとえば監理委員会とか何とかいうものの実際の業績というものはまだわからない、もう少し見てからの方がいいのじやないかというような、そういう考え方は全然なかつたのであるかどうか。
  33. 前田正男

    前田(正)委員 実は監理委員会の業績等は、もうすでに二年になりまして、その間に国会に当然相談あるいは報告等があるべきであります。それが何らないということで、十分に現在までの業績はわかつておると思うのでありまして、現在改正すべきときに来ておる、こういうふうに思つておる次第でございます。
  34. 石野久男

    石野委員 第五十四條におけるところの、先ほど岡田委員からも質問がありましたが、命令権の問題であります。特に経理の問題に対する考え方が非常に強く打出されているというふうに思われる面がありますが、その点については提案者はどのようにお考えでありますか。
  35. 前田正男

    前田(正)委員 五十四條につきましては、私はこれは先ほど申しました通り、特に必要があると認めた場合にのみなされるべきものでありまして、経理の面等について特にこれが推進されるというふうには感じないのであります。すなわち全部の問題に対しまして命令が出せるというふうに立法当時考えておりましたものを、ただ具体化しただけのものでありまして、何ら内容には変化はないというふうに思つております。
  36. 石野久男

    石野委員 第五十四條の第二項に規定されております立入権といいますか、そうした立入検査権というようなものが非常に強化されることによつて、将来経営の官僚的干渉が非常に強くなつて来るという危険を考えられるのでありますが、そういう点についてはどうでありますか。
  37. 前田正男

    前田(正)委員 この点につきましては、実はやはり報告を求めただけでは十分に検査はできないというような場合がありまして、ほかの公社その他公の銀行等におきましても、みなこのようになつておりますので、その不備を補つただけでございます。
  38. 石野久男

    石野委員 逆にそのことが国鉄のいかゆる創意性というものに、大きく響いて来るというようなことは予想されないでしようか。
  39. 前田正男

    前田(正)委員 私はそういうようなことはないと思う。別にしよつちゆう監督上必要があるといういうことは起ることはないと思いますので、御心配のようなことはないと思つております。
  40. 石野久男

    石野委員 最後にお聞きいたしますが、人事権におけるところの強い大臣権限が持たれますために、相当程度経営におけるところの人事的操作においての自主性が、失われて来るのじやないかという心配を一つ持ちます。その点についての御意見をお聞きして、なおこの人事権に対する大臣権限が延びて来ることと関連して、逆に財政経営上の資金等に対する配慮が全然この法案改正によつて、打出されていない、そういう点について、この法案改正と同時に、先ほどから前田君からも話があつたのでありますが、資金面におけるところの創意性というものが、もつと自由にできるようなことをこの際考えてやるのが、改正法案提出する提案者としての親心ではないかというふうに考えますけれども、そういう点についてはこの際考えられないのかどうか。
  41. 前田正男

    前田(正)委員 人事権の問題は先ほど申し述べました通り株主というものが代表して経営者を任命するということでありまして、何ら私は対立するとは思いません。ただ今のいろいろ資金等その他のことにつきまして、特別のめんどうをみるということについては、現在の第四十一條の二に交付金の制度もありまして「これによつてもできるのであります。しかし先ほど石野さんの御質問に御答弁しました通り、私といたしましては将来機会がありましたならば、これはその責任体制というものを明確にしまして、お互いの民主的な経営がさらに一歩進められた後において、お互いに話し合つて、将来根本的に改正する、また日本の経済がもう少し再建いたしまして、安定しましたときにおいて、お互いに自主的な運営ができるように直して行くべきではないかと考えております。しかしこれは提案者一同というわけではないので、私個人の意見であります。
  42. 石野久男

    石野委員 人事権の問題については、強い干渉が行われないのだというお話でありますが、できる限りそうあつてほしいのでありますけれども、私たち改正法の文案を見ますときに、それは非常に逆のように考えられる面が多いということを申し上げておきます。  なお私はこの機会改正法を提出された前田氏にお尋ねしますが、こういうような考え方に基いて、提案者である前田氏は、国鉄従業員の経営参加というような問題については、全然考慮していなかつたかどうか。もつと端的に、立法的に従業員の経営参加の道を開くという考慮をなさらなかつたかどうかということを、ひとつお聞きしたいのであります。
  43. 前田正男

    前田(正)委員 この問題は先ほど来申しました通り、私は今回は責任体制の範囲改正だけにいたしまして、もう少し自主的な立場から民生的に責任を持つてやられる措置かできましたときに、こういつた問題もあらためて考慮されたらいいのじやないかと思つております。今回はとりあえずのところ、われわれといたしまして、立法精神に反し、その通り実績の上つていないところだけを訂正するというのが、私のねらつておる趣旨であります。
  44. 川島金次

    ○川島委員 私は先ほど質問を通告いたしあする際に、運輸大臣国鉄総裁の本委員会における出席を求め、大臣総裁に対して参考的な質問を申し上げ、かつ提案者に再度の御質問を申し上げて、われわれのこの法案に対する態度を決定したい、こういうことで委員長のもとに、事務局を通じて出席方を申し入れたのですが、それはどういうことになつておりますか。
  45. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 ただいま連絡中です。
  46. 川島金次

    ○川島委員 来るのですか。
  47. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 政務次官が今参つておりますけれども、大臣はちよつと参議院の方に用があつて……。
  48. 川島金次

    ○川島委員 政務次官でなしに、運輸大臣国鉄総裁をぜひ……。
  49. 大澤嘉平治

    ○大澤委員長代理 連絡中ですから、連絡がつけばすぐ参ります。
  50. 川島金次

    ○川島委員 それでは大臣総裁が見えるまで、私ちよつと提案者である前田君にお伺いをします。私はいろいろの都合で、この委員会に常時出ておられませんので、あるいは質問に重複のきらいがある場合があるのではないかとおそれておるのですが、そういう点がありましたならば遠慮なく委員長の方から御注意を願います。  そこでまず私は提案者にお伺いたしたいのですが、日本国有鉄道法が一昨年、昭和二十四年に国会を通過しました。これは日本の国有鉄道に対する画期的な事態であつて、この画期的な設置法をつくりまして、同時にいろいろ与野党の間に意見はありました。しかしいずれにいたしましても、多数をもつて日本国有鉄道法というものを成立いたしまして、従来になかつた国有鉄道が真の企業体としての性格を強く打出されまして、その運営の積極的な発展と、真に国民のものとしての日本国有鉄道の将来を期することになつた、その制定をされましてから今日いまだにわずかに二箇年、この二箇年の間に、私の見解をもつていたしますならば、法律というものは著しい支障、弊害というものがない限りにおいては、そう簡単に朝令暮改をすべき性質のものではないと、まず根本的に思つております。ところがこの国有鉄道法が制定されましてわずか二年、突如としてここに自由党関係の前田君を中心としての改正案が出て来た。     〔大澤委員長代理退席坪内委員長代理着席〕 この改正案を出されるからには、この二年の間に国有鉄道法現状では、この国有鉄道が真に国民のものであるという理想に非常に弊害がある、非常に障害が生じた。そういう具体的な事実がさだめし提案者の胸中には描かれておるのではないか。こういうことでなしに、安易に法律というものはつくつた改正したりすべき性質のものでない。その意味提案者前田君はどうしても現在の国有鉄道法改正しなければならないという、やむにやまれない今日までの国有鉄道の実態について、ずいぶん弊害があり、あるいは重大な障害がこういう具体的な問題について何かあつたか、そういうようなことが、この法案改正にあたつての一番根本的な基礎をなすものでないかと私は思う。そういうことについて私は寡聞にしてあまり知らないのですが、もし前田君にしてそういう具体的な著しい事象、現象があつたとすれば、それをひとつ聞かしてもらいたい、こういうふうに思います。
  51. 前田正男

    前田(正)委員 ただいまの御質問通りでございまして、私たち国会といたしましては、せつかくできました法律をみだりに修正すべきではないということは、もちろん原則的に私たち賛成でございます。しかしながら、これを立法いたしました当時におきましては、監理委員会の性格については非常に疑問がありました問題で、各党ともこれについてはいろいろ従来異論のあつた点であります。またその当時の国務大臣におきましても、労働問題の関係で、この法律自身が十分に整備されてないというようなことでありました。また各党討論におきましても、いろいろと御意見もあつたことであります。従いまして、御承知通りこの前の国会においてだと思いますが、会計部門のところは修正をしているのでありまして、立法をいたしましてからさらに会計部門が修正されているのであります。しかし私たちといたしましては、立法当時から問題でありましたこの責任体制が不明確である。ことに監理委員会の問題につきましては、常にいろいろと国会意思を代表する意見株主を代表した意見が、いかに国鉄に反映されて行くかということについては、日ごろつとに国会の常任委員会その他におきましても考えておつたことであります。現在のところ、これまでいろいろとわれわれの関係した範囲におきましては、非常に監理委員会が中間的な存在であつて、不十分であるということは、皆さん御承知通り明瞭でありまして、すでに二箇年の間におきして、国民意思を代表すべきところの監理委員会が、われわれ国民の代表である国会に何の連絡、何の報告をしたかという事実をよく見ていただきましても、おわかりの通りであります。私たちといたしましては、この問題になつておりました、また異論のありましたこの監理委員会は、この際廃止いたしまして、国民の代表の意見がいかに国鉄に反映されて行くかということと、それから国鉄自身運営を明朗化して行くためにも、この際責任と代表とを同一にするというような必要が相当あるのではないかと思います。国鉄自身におきましては、いろいろと改善を遂げまして、赤字をなくしたり、いろいろとよくなつて来たところもありますけれども、この責任体制の不明確であるというような点から、いろいろとまたわれわれとしてはまだ不十分であり、また能率的に合理的に運営が期待されてない、あるいはまた相当志気も弛緩しておつて事故等も起りやすいというようなこともありますので、私は別に現在起つた問題どれこれをとらえて、この改正をしようというのではありませんが、立法当時から約二年間におきますところの株主側である国会意見といたしましては、当然従来の国鉄監理委員会機能立法精神に反しているというような、またその機能を十分に発揮していないというような結論を出しまして、この際明朗にいたした方がよいと思つて改正提案をいたした次第であります。
  52. 川島金次

    ○川島委員 さらに質問をいたす前に、ちよつと委員長にお伺いいたしますが、この法案改正案が上程されまして、昨日から質疑応答があつたそうでありますが、今提案者前田君から御指摘になりました監理委員会の問題、これもきわめて重要な事柄でありますので、現在の国有鉄道監理委員会の何人かを責任ある代表として本席に呼びまして、だれか参考の質問をされた事実があるがどうか、その点はどうなんですか。
  53. 坪内八郎

    坪内委員長代理 その点はありません。
  54. 川島金次

    ○川島委員 それでは委員長にお願いを申上げます。私は本法案改正の重点は三つばかりあると思う。その第一は、監理委員会の廃止ということが非常に大きな問題になつている。これをわれわれに審議いたすにあたりまして、現在の監理委員会の代表者のどなたかをこの審議の席上に列席を求めまして、とくとわれわれ委員質問と申し上げたい点があるのでありますが、そのことについて委員長はお諮りを願いたいと思います。
  55. 坪内八郎

    坪内委員長代理 その点のお答えをいたします。私どもはそういつた措置は必要ないと考えております。
  56. 川島金次

    ○川島委員 これは私は動議という形で出しているのではないのです。委員長審議のとりはからいとして、私は監理委員会の代表者のどなたかの列席を希望している。それでその上でお尋ねをいたしたいことがある。これは私だけではないと思う。おそらく監理委員会のどなたかが列席されますれば、私以外にも必然的にお尋ねをしなければならぬと考えられる方がおありだと思う。そういう意味で、非常に重大な改正案でありますので、委員長はできるだけ委員会委員の希望に沿うような形で、この審議を円満に進めることが最も望ましいことではないか、こういうふうに思いますので、重ねてひとつまげて委員長は、そういうようなおとりはからいをぜひ願いたいというふうに私は思います。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 関連して……、私の方も簡単に申しますが、先ほどから前田委員説明を聞きますと、大分日本国有鉄道側、ことに監理委員会側が無責任だというような言葉をしばしば聞くのであります。ところがわれわれ予算委員会において、日本国有鉄道の予算の面をいろいろ検討してみますと、とにかく独立採算制の名のもとに、従業員の人員整理を相当強行している。それから部内における予算の経費の捻出の点についても、非常な努力をしている。むしろわれわれとしては、非常に労働強化がされ、労働條件が非常に苛酷になるということで、反対するほどの努力をしているように見るのであります。われわれ実は反対するほど、労働強化が強行されているわけなんです。それからこの経理面から見ましても、昨年はほとんど一般会計からの援助も受けておらないし、ただ見返り資金から四十億の資金を受けているだけで、相当の努力をしていると思うのです。しかも無責任だといいますが、政府はいつでも日本国有鉄道に対して経理の報告を求めることもできるし、いろいろの事務に対して報告を求めることができるのだから、それを政府が一体やつたかどうかということを聞かないで、ただ一方的に監理委員会が横暴だ横暴だと言うことも、われわれは納得できないので、やはり監理委員会の人にここへ来てもらつて政府が従来どういう要求をしているか、どういう努力をしているかということを聞かないと、われわれ即決に判断がつかないわけですから、民主的に公平にこの法案審議する意味で、ぜひひとつ廃止される側に立つている監理委員の人にもここに出てもらつて、十分の説明とその人の見解を聞かしてもらいたいと思う。先ほど山崎君からお聞きしますと、自由党の政務調査会ではお聞きになつたそうでありますが、それは自由党の政務調査会でありますから、運輸委員としてもひとつ聞いてみたいと思います。
  58. 坪内八郎

    坪内委員長代理 川島君、林君にお答えいたします。運輸委員会を民主的に、公平に、しかも円満に運営することはわれわれも同感であります。しかしながらこの監理委員会委員をここに招致いたしまして、いろいろお尋ねするということにつきましては、監理委員会の性格その他をあらゆる面から検討いたしますと、いろいろ問題がありまして、私どもといたしましては、現在のところは監理委員会委員を招致して聞く必要はない、かような考え方で進んでいるのであります。従つて川島君、林君がどうしても監理委員会諸君を呼ぶということでありますならば、動議を出して、採決によつてきめていただきたい、かように考えます。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 議事進行について…。一見民主的なようですが、動議を提出しても、自由党の諸君が反対すれば消えてしまう。ですからなるべく懇談的に申し上げているわけです。委員長としては、われわれはその必要がないというのですが、委員の中には、そういう切なる希望もあります。廃止をされる側の人の言うことを一言も聞かなくて、これは無責任だ、責任体制からいつて不適当だといつて、わずか二年ほど前に――われわれの共産党は反対したが、自由党の諸君が満腔の賛意を表してつくつた法律改正案を審議することは、いささか審議が不十分であるし、不公平なきらいがあると思う。そうしてもう一つは、この委員会制度に対する根本的な前例批判にもなろうと思います。また公共企業体としての国有鉄道の性格に対しても、大きな影響を与えると思いますから、やはりこの際は、ぜひ監理委員会の人を呼んでいただく。これは話合いでそうしていただいて、自由党の諸君賛成していただいて、もし時間の制限があるならば、その時間の制限の範囲内でわれわれも協力してもよいが、ぜひ監理委員会側の人を呼んで、ただしたい点を十分たださせていただいてから結論をつけるように、もう一度再考をお願いいたします。
  60. 坪内八郎

    坪内委員長代理 林君にお答えいたします。お話はよくわかりましたが、実際問題として、ただいまから突如として監理委員会を呼べと言つても、連絡その他の都合もありますし、ただちにおいでを願うということにつきましては、監理委員会側もいろいろ事情があつて、すぐさまことにおいでになることも不可能かと思いますので、現在はとりあえずこのままで質疑を続行いたしまして、そうしてあとでわれわれ理事の間ででも御相談申し上げるという趣旨のもとに、ひとつ当委員会運営して行きたいと思いますので、このまま質疑を続行いたしたいと思います。
  61. 川島金次

    ○川島委員 続いて質疑に入ります前に、まことにくどいようですが、委員長は、林君のお話に対して若干折れた形でありますからこれ以上は強く申し上げませんが、私の希望に対して、それをたつて希望するならば動議でも出せというやり方は、どこの委員会でもあまりないことです。どうも自由党は、ややもすれば多数を頼んで、時と場合により少数の希望や意見を抑圧す」る。何も重要法案を一週間も十日もやつて、なおかつ最後に行つて突如として出したのではない。きのうから始まつたことだ。しかもこの法案提案者は自由党なんだ。従つて自由党の方たちは、それくらいのことは提案者としての責任において、いろいろと調査もし研究もされたと思う。その上でのお話でありますから、自由党の諸君はあるいは必要ないかもしれない。しかし提案者以外のわれわれは必要だというので、私はいんぎんな態度で委員長にお願いをしている。そういうお願いに対して、それでは君動議を出せ、そういうような扱いをもしするとするならば、私も今から覚悟がある。いつも数でやるのだというならば、その覚悟をわれわれは持ちます。それではやはり委員長としてもお困りの場合が相当あると思う。朝から晩まで定数をそろえてどんなことでもやるということは、議会生活をお互いにやつている者の経験からいえば、実際にできるものではない。だからそういうことはあまり簡単に口に出さぬことにして、できるだけわれわれ野党側の希望や要求に対しても、ひとつ懇切に扱つて、円満にやつて行くというのが一番よいのではないか。数で行けば今君たちがきめようとすれば今でもきまる。きめようとすれば質問応答一つもしないできまる。しかしそれではやはりお互いに法案審議はまつたくできない。そういうことを念頭に置いていただいて、できるだけひとつわれわれの希望も、できない希望ではいかぬが、できることならいれてやつていただくということにお願いしたいと思います。  そこで提案者にお尋ねします。これはおそらく提案者の方にも参つていると思いますが、この鉄道法の改正について、当面の労働組合が先般執行委員会を開いて、労働組合本部としては全面的に反対だという意思を決定した。そうして自由党の方にもおそらくその要望書が出たろうと思います。いかに法律の上で完全なものをつくり上げましても、実際は企業体ですから、監督する立場の者も、指導する立場の者も、その下に立つ現場の仕事を預かる多数の者も、納得ずくで行かないと、せつかく法律の形の上だけで完全なものをつくろうという意思がありましても、仏つくつて魂を入れないという俗言もありますが、そういう形になる場合もないとは限らない。ことに今申しましたように国鉄労組では、この改正案に反対だという意思表示をしているわけです。そういうことを勘案いたしました場合に、提案者の前用君は、この国鉄五十万の現場の諸君が、反対の意思表示をしておるにもかかわらず、こういう法律をしいて改正されようとするが、それによつて国鉄労組の現場の人たちに与える心理的影響等を考える場合に、そういうことであつてもこの法案を是が非でも改めなければならぬという、具体的な問題についての了解が私どもにはつきにくいことがたくさんある。そういうことについては、一体提案者は何か考えたことがあるか、その点についての所感をお聞かせおきを願いたいと思います。
  62. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 ちよつと一言……。実は本法案に対しましては、私たちはすでに審議すること数回に及んでおるし、しかも先ほど川島君並びに林君から、監理委員会諸君を呼んで聞いてみなければわからぬということを言われましたが、いずれにいたしましても私たちはこの運輸委員会において、毎日この国有鉄道法の問題に対しては研究をいたしておりますので、ここへ呼ばなければわからぬというようなことは、すでに研究いたした結果、この法案提案したことと私は信じますので、そういう点からいたしまして、林君にいたしましても、川島君にいたしましても、先ほどたまにしか出て来られないというようなお話がありましたが、たまにしか出て来られない人とすれば一応聞かなければわからぬだろうが、われわれとしては毎日この運輸委員会出席いたしまして、日夜それらの点は十分研究いたした上でこの審議を進めておりますので、私の考え方からすれば、もうそうする必要はないと考えられますので、一言皆様方にこの点をお諮りいたしたいと思います。
  63. 前田正男

    前田(正)委員 今の労働関係の問題につきましては、委員長のところに何か反対陳情があつたように聞いておりますが、私はよく内容は存じておりません。しかし国鉄労働者の方々全部が、この法案に反対したというふうには私どもは聞いておらないのであります。しかし私の希望しますところは――実はいろいろと反対意見等もきよう新聞に載つておりましたが、もう少し私どもが提案したところの立場における意見を聞いていただきまして、また今後の国会審議を通じてやつていただきますならば、他の方には賛成願えるようになるのではないかと考えます。私は国鉄というものの機構を、民主的にさらに前進させるという点については、何ら反対はないと考えておるのでありますが、その点につきましてはお互いによく話し合つたわけでもございませんので、御承知ない方もあるかと存じますが、私はまずよく話し合うとか、国会審議で質疑応答を続けて行けば、皆さん御賛成いただけるのじやないか、こういうふうに実は期待しておる次第でございます。     〔坪内委員長代理退席委員長着席〕
  64. 坪内八郎

    坪内委員 議事進行について……。前田委員長が参られまして、私委員長代理を交代いたしたのでありますが、先ほど私が委員長代理として議事を進めたときの私の議事の進め方につきまして、誤解をしておるようでありますから、一言申し上げて御了承いただき、かつまた私の要望を申し上げたいと思うのであります。先ほど監理委員会委員諸君を呼ぶことにつきまして、川島君から要求がございまして、その話は十分わかつたのでございますが、私がそれでは動議を出して採決したらいいだろうと言つたことは、自由党の多数を頼み、数において押し切るというような、とりようによつては非常にはげしいお言葉があつたのでありますが、私が言うのは、突如として監理委員会委員を当委員会に呼ぶということは、実際問題として連絡その他においても不可能であるから、無理にそれを申されるならば、動議でも出して採決しなければいけないのじやないかということを結論的に申したのであつて、時間がございますれば私は詳細に話をするはずだつたのですけれども、結論だけを申し上げたのであります。従つて私どもは当委員会運営をそういつた非民主的な、あなたが考えておつたようなことについて運営をして行こうということは、毛頭考えてないのでございまして、その点は誤解がないように願いたい、かように考えます。  それからこの法案審議につきましては、そういつたいろいろな意見もございますし、間もなく大臣並びに総裁もお見えになるというような連絡もありますから、すみやかに質疑応答を続行せられまして審議を進められるよう、これは委員長に強く要望いたしておきます。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 議事進行につきまして、私たち立場も誤解されているのじやないかと思います。私たちは別に審議進行を阻害しようとか、これを妨害しようという意味で、今言つた監理委員会側の代表に出席していただこうということを言つておるのではないのでして、われわれとしては法案改正にあたつて、廃止される側に立つた監理委員会側の者から本委員会として正式に何らの弁明も聞くことなくして、この改正案についての結論を出したということになれば、やはり審議に欠けた点があるという非難を受けてもやむを得ないことになると思います。要するにこの委員会の権威のためにも、やはり廃止される側に立つておる監理委員会側の委員も出て来てもらつて、聞くということが必要じやないか。これがもし国会運営上期限があるなら、その期限も理事会で打合せて、その時間の範囲議事を運んでもらえばいい、これが一つ。それから先ほど、私や川島君がときどきしか顔を出さないのに何を言うのだというお話があつた。しかし私は前にも運輸委員をやつたこともあるし、また予算委員会では、特に政区機関としての国鉄に対する予算関係について、十分審議しておるわけです。この改正案を見ますと、人事の面では政府と強く結びつけて、政府の指揮系統のもとに人事関係を組み入れるということは見えます。しかしそれは予算の面で独立採算制という名のもとに、あくまで予算的に犠牲を払わした国鉄に対して、政府がどれだけの援助をするつもりか、また従来独立採算制の名のもとに、公共企業体の予算の面でどんなくふうをして来たかということを聞かなければ、われわれは公平な審理にならないと思います。そういう点も監理委員会諸君に聞きたいと思うわけです。仰せの通りに、公労法によつて幾たびか調停が出ても、政府は従来これに対して一文も補助金を出すような誠意を示さなかつた。企業の中から捻出しろしろと言つて、経理の面から見ると、まつたく大きな戦後の国鉄の破壊を来たすような捻出を、独立採算制あるいは公共企業体の名のもとに、国鉄の中からさしておきながら、人事の面だけは政府の厳重な統制に服しろというような形をもしとるとすれば、これは国鉄側としては国鉄側としての言い分が一応あると思うのです。そういうこともわれわれは聞きたいと思つておるわけで、決してこの法案に対して妨害しようとか何とか、そういう狭い気持で言つておるのではないのです。そういう点は十分理解していただいて、監理委員会側の人にも出席してもらつて、この審議を十分尽したいという真意ですから、ひとつ御了承願いたいと思います。
  66. 滿尾君亮

    滿尾委員 提案者にお伺いいたします。先ほどから今回の提案の御趣旨を伺つておりますと、国有鉄道公共企業体であるけれども、実体において国有であり、株主権の発動としての大臣権限のもとにあると考えておるというようなお話がありましたが、まことにその比喩は巧妙であり、よくわかるのでありますけれども、この法律案審議いたします際の御説明としては、今の御説明はたての一面でございまして、その角度からだけ当運輸委員会が今後この問題を取上げまして、今回の改正を行うということになりますと、多少の意見がここに出て来る。私はこの問題の本質としては、主務大臣たる運輸大臣が、公共の利益の擁護者として行政監督をせられておるというところに、その本質があるのだと思います。提案者の御説明に、この面からするお言葉が非常に乏しかつたように思いますので、特に私はこの点について提案者の御意見を一応伺つておきたい。もしかような角度、株主権の発動としての見方、これはたての両面と言えるのでありますけれども――通俗的に言えばそういうことになりますが、建前から言いまして、やはり行政監督としてこれは取上げて行くべきものである。さようになりました際に、私が提案者にさらにお伺いいたしたいのは、国鉄の実態を見ました場合に、現在持つております鉄道網を日夜動かしまして、人と物とを運んでおりますこの日常の運営部面については、世にいわゆる政治色というものが割合にないものだと思うのであります。そこでこの面におきましては、運営技術の独自性を提案者は十分御認識になつて、今回の御提案があつたものと考えるのでありますが、先ほどの国鉄株主権の発動というような角度からの御説明を少し強くとりますと、経営当事者の運営技術の独自性をほとんど認めない――と言つては言葉が強過ぎますが、あらゆる経営面に対して、一応の見解をさしはさむというふうにもとられるおそれがあつたように思いますが、提案者のお考えの中には、通常の鉄道運営においては、独立の経営、技術の独自性を十分御認識になつておられるかどうか、このことを第二番目にお伺いいたしたい。  第三番目に、かように考えてみました場合に、この五十四條の運用の問題でありますが、提案者の御説明にありました通り、これは伝家の宝刀であつて、みだりに発動するものでないということでありましたから、私も十分安心はいたしておりますけれども、この法文規定の体裁は、今日までありますところの行政監督の各種の法文に照しまして、この形は少しきつ過ぎるように思われる。この第五十四條の解釈につきまして、国鉄法が初めて提案せられました当時の運輸大臣説明等を御引用になりまして、当時からそういう思想であつたというふうな御説明でありましたが、これは見解の相違かもしれませんけれども、その当時の大臣はそれを誤解しておられた、あるいはその後運輸省において、かような積極命令ができるというような解釈をとつたということは、これは当局の間違いである。通常の法律上の解釈に従いますれば、それは少しきつ過ぎたと思います。しかしながら今回は別な立法論的な角度から、こういうぐあいに規定したいという御提案でありますから、それにあながち反対はいたさないのでありますけれども、ただいまの二点について、お伺いいたしましたことと同様に、特に五十四條の運用については、将来伝家の宝刀として十分自省していただくという建前で御立案になつたものだということを、重ねて御言明をいただきたいと考えるのであります。これが第三点であります。  第四点にお伺いいたしますことは、この五十四條の一項の裏づけとして、どうしても財政的な裏づけの規定が必要のように思いますが、ただいまの国鉄法の四十一條の二に、交付金という欄があるのであります。この交付金をそのまま適用になる考えでおられるのか、あるいは四十一條の二の交付金のほかに、さらに五十四條の第一項を受けての條文を創設するという用意を、将来に持つておられるのであるかどうか、このことを伺いたい。  第五番目に、附則の中の第九條の三に「運輸大臣は、公共福祉増進するため特に必要があると認めるときは、」とありますが、この公共福祉というのは、将来経済界の変動した場合、つまり物価が非常に上つたとか下つた――この場合は特に下つた場合をさすのでありますが、その経済界の変動という要素も、公共福祉の中に入れておられるかどうか、これだけをお伺いしておきたいと思います。
  67. 前田正男

    前田(正)委員 まず第一点でございますが、なるべく自主性を尊重するという意味から、今回は株主の代表の役員任命するというかわりに、公共福祉の確保という点において、運輸大臣自主性の尊重の範囲監督するということは、これは当然のことでございます。実は提案理由の中に説明してあるのでありますが、他の運輸機関との総合調整ということも必要になつて参りますので、監理委員会の廃止に伴つて、必要最小限度においては若干の許可認可事項を追加し、また命令権内容を明らかにいたしたような次第でありまして、これは運輸大臣の職責から見ても当然なことと思つております。  第二点は、公共企業体自主性を尊重するということだつたと思うのでありますが、これは私は、もちろん今度の改正におきましては、ぜひともその方向へ向つて一歩歩み出さなければならぬという観点から、一般の企業体の体制に近づいて、先ほど申しました通り、代表者が責任者になるというような企業体の体制に近づいて行くのだろうと考えております。  第三は、命令権のことだつたろうと思いますが、命令のことにつきましては、これはたびたび申し上げます通り特に必要あるときにやるべきことでありまして、私はなるべくこれは行われないことを期待するのでありますが、その内容につきましてはいろいろと御意見があつたようであります。それはいろいろとまた意見のわかれておるところでありますが、今まで公にされましたところの意見というものには、私が先ほども申します通り立法当時の大臣答弁とか、また運輸当局の答弁等があつたのであります。しかしそれに対していろいろの御意見があるということは、私も了承するところであります。私たちといたしましては、何ら従来の範囲がふえても変更されてもおらないと思うのでありまして、ただ従来のものを明確にしたというだけだと御承知おきを願いたいのであります。  第四点は、交付金のことだつたと思いますが、交付金の問題につきましては、私たちといたしましても、現在の四十一條の二で十分と思いませんけれども、この規定を準用し、現在の立法範囲において、必要があつた場合には、できるだけ援助して行くということは当然だと思います。これは国家機関でありますから、できるだけ国家が援助して行くのが建前じやないかと考えております。  運賃の問題につきまして、「公共福祉増進するため特に必要があると認めるときは、」というのは、必要があると認めるときは、あるいは経済変動ということも中に入るかもしれませんけれども、それはそのときの大臣の判断によると思いますので、公共福祉増進するために特に必要があるということは、めつたに起らないと思いますけれども、必要があつた場合にはやらなければならないと思います。そのときに大臣が、非常にひどい経済変動がありまして、これは公共福祉増進するために必要であると考えた場合には、これは実行されることになるのじやないかと私は思つております。それはこの法文で命じました通り大臣権限に属することでありますので、大臣権限によつて私はやることはあり得るかもしれないと思います。しかしそういうような事態はあまりなくて、自然にその前に総裁自身の方におきましてみずから変更されて行くのじやないか、大臣からの命令をもらわなければ変更されないというほど、常識のない総裁はまずない、私はこういう考えでおりますので、現実の事態としては起らないと思つております。
  68. 川島金次

    ○川島委員 総裁が見えましたので、この機会に若干お尋ねをしたいと思います。お断り申し上げますが、御承知通りこの国有鉄道法の一部改正案が自由党側から提案をされて、目下審議をしておるのでありますが、国有鉄道にとつては非常に重大な関連を持ち、しかも根本的な改正とも言える事柄であります。当面の責任者であります総裁が、この問題に対してどのような御見解を持たれておるかということは、われわれのこの法案改正に対しまする最後的な是非を決定いたす上に、重大な事柄でありますことはもちろん、またこの法案のよつて及ぼします今後のいろいろな事柄等も、これまた重要なことでありますので、総裁というお立場にだけ拘泥されずに、一切の毀誉褒貶等を抜きにされまして、最も冷静な立場総裁の所見を伺わせてもらいたい、こういうふうに思うのです。  まず第一には、この法の改正案によりますと、従来設置されておりました監理委員会を廃止しようという、しかもその理由監理委員会がありますために、ややもすれば国有鉄道責任の所在が不明確になるおそれがある。もう一つは監理委員会が名目だけの存在であつて監理委員会本来の仕事も責仕も果して来なかつたという点が多い。こういうものは無用な存在であるのみならず、むしろ責任の紛淆を来すような機構である。こういうのが提案者の簡単な理由であります。このことについて総裁は、国有鉄道に設置されております監理委員会の存在というものに対して、二箇年の間にその体験の上からどのような感じを持たれておるか。そしてまた監理委員会というものが、はたしてそれほど無力、無用な存在であつたか。そういうことについて最も身近におられます総裁の率直な見解を承らせていただきたいと思う次第であります。
  69. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 ただいまのお問いに対しまして、私の見解を述べさせていただきたいと思います。監理委員会があるために、かえつて責任の所在を紛淆させるおそれがあると考えるがどうかということでありますが、法文上は、総裁監理委員会に対して責任を負うということに相なつておるのでありまして、その面から申しますと、非常にはつきりしておるようにも思うのでありますが、私自身総裁としてどういうふうに考えて来たかということについて申し上げたいと存じます。監理委員会は、国民の代表であられる国会承認を得て、その任についておられる機関でありまして、これはもとより国有鉄道の内部機関として、総裁の仕事に対して指導統制をする権限を持つておられるということでありますので、私どもといたしましては当然に運営の全責任総裁がこれを負つて、そして監理委員会というのは、国民の代表として内部機関としてあられるわけでありますから、結局の責任監理委員会にあろうと、政府にあろうと、国会にあろうと、終局の関係は国民につながつておるという関係をもつて、実際の運営にあたりましては、あくまでも十分責任を持つてつてつたつもりでございますので、その点について疑惑を持つたことはございませんでした。ただそれが法文上の問題としてどうなるかということにつきましては、私どはただその法の條項並びに精神に忠実に従いまして、誠実をもつて運営の衝に当るということがありますので、法律の問題につきましては、これを国会において御論議をいただいて、われわれはもつぱらその精神に基いて行動するのみ、かように考えておる次第であります。  また監理委員会が名目だけのものであつたのではないかというお尋ねでございますが、私どもといたしましてはさようには考えておりません。御承知のように監理委員会は、金融、商工、交通というふうな、国有鉄道運営に最も密接不可分の関係にある各部門のエキスパートが、国会によつて承認されて選任されておるのでありまして、たまたま私の立場として考えますならば、私は国有鉄道の出身でありまして、国有鉄道のことは十分に心得ておるつもりでございますが、金融、商工、他の交通全般のことについて、私どもはその関連の深いことに十分深い造詣を持つということはとうてい言えないことなのでありまして、私どもが運営責任を負い、実施の方策を定める場合に、監理委員会がありまして、そこに諮つて、その御承認を得て重大な問題を処理して行くということにつきましては、運営上非常な自信がつくと申しますか、つまり独善的にならないという意味において、非常に自信を持ち得るという、非常にけつこうな点があるというふうに私どもは感じていた次第であります。監理委員会も現に定例的に毎週一回は必ず開いていだいておりますし、また必要あつて臨時にお集まり願つたこともしぱしばございます。そうして内部的ではございますが、重要な案件、つまり事業計画、予算の原案編成等につきまして、重要な項目はすべて監理委員会にまず諮つて、その御決議をまつてわれわれは実行に移します。またその他の、次に重要になる事柄は、報告の事項をきめておきまして、必ず監理委員会の席上で御報告するという内部規定を定めておりまして、そういう面から見ましても、単にこれが名目だけで、無用の存在であるというふうに考えたことは、いまだかつてないということだけをこの席上で申し上げておきたいと思います。
  70. 川島金次

    ○川島委員 大体わかりました。そこであわせてお伺いするのですが、それでは監理委員会国有鉄道総裁に対して不当な干渉をしたとか、あるいは無用な干渉がましいことをしたとか、そういう積極的な弊害の面が、今までに何か具体的にあつたことがありましようか。それをひとつお伺いします。
  71. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 先ほど申し上げましたように、重要な案件につきましては、前もつて御意向をただしてわれわれの原案をつくり、そうしてその原案に基いて御決議を願うというような方式をとつて参りましたので、その点について、特に国有鉄道の活発な運営について、監理委員会からチェックを受けたということは今日までございません。ただ、われわれが原案をお諮りする以外に、監理委員会の側から自主的にこういうことをやつたらどうかというようなことをしばしば示唆を受けて、それを施策の根本としてやつてつたということはございます。たとえば、これはごく最近の例でございますが、私どもの方で事故防止に関して委員会を組織して、全国的に活動をいたしておりましたが、監理委員会の方から、さらに大きな見地から安全委員会というようなものにこれを改編して、安全確保について、特に優秀な人が集まつて専門にこれをやるべきであろうというような指示を受けまして、さつそくこれを施策にいたしたというようなぐあいで、そういうようなことも従来一、二にとどまらずあつたわけであります。
  72. 川島金次

    ○川島委員 監理委員会の問題について、提案者に言わせると、まことに値打のないものであつて、むしろ無用の長物だ、しかもその上責任の所在の紛淆を来す存在であるという意見である。今当面の総裁からお尋ねすれば、それとは全然異つた意見で、しかも日常の身近に感じております総裁みずからのお言葉によれば、監理委員会委員につきましても、運営につきましても、また積極面、消極面両面においても、別にこれと取立てて非難すべき状態でないということがはつきりいたしたわけであります。  そこで第二にお尋ねいたしたいのですが、国有鉄道は非常に独立採算性ということをやかましく言われておりまするために、財政経理の面においては、引続きいろいろの点において苦労と困難をなめて来た、そこにかてて加えて、今度の改正によりますと、運輸大臣の指揮監督権が大幅に強化される結果になる。具体的に申しますれば、改正案の第五十四條の第一項では、「日本国有鉄道運輸大臣許可又は認可を受けるべき事項」についても、運輸大臣公共福祉増進のために必要があるときには命令ができる。第二項では、地方鉄道業者または軌道経営者に対する命令許可認可、さらにはなはだしきに至りましては第三項において、「その他監督上必要な事項、」こういう一項、二項では具体的に命令事項があげられております。第三項において「その他監督上必要な事項、」これを簡単に申し上げますと、運輸大臣が一切合財監督上必要と認めたことについては、強力な命令権を発動せられる、こういう形になることなのであります。山崎さんのような非常に公正な、熟達、熟練の大臣の場合であれば、あまりそういう心配もないと思うけれども、大臣の人柄あるいは考え方いかんによつては、もう総裁などというものはほとんど隷属機関で、一切合財が大臣が必要と認めたものには命令をしてしまうことになる。まことに恐るべき幅広い権限大臣に与えられ、裏を申せば、総裁のそれだけの権限というものが、ほとんど剥奪されてしまう。そういうような法律のもとにおいて、はたして総裁がよくこの大きな企業体であるところの国有鉄道の事業の円満な、積極的な運営に当る責任が持てるかどうか、こういう事柄をわれわれは非常に懸念をするものでございます。その意味におきまして、総裁は従来の御経験によりまして、このような大幅な権限大臣に所属し、そしてその下で総裁は実際やつて行かなければならぬことになつて、はたして総裁として国鉄運営の上に遺憾なきを期することができるかということについて、これまた総裁に、ひとつ勇気のある率直な御見解を示してもらいたい。
  73. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 先ほども申し上げましたように、私どものやりますことは法律精神に基いて、その通り誠実に経営を進めるということでございまして、この内容に関しますることにつきまして、私がここでとかくの意見を申し上げることは差控えるべきであると考えております。ただ公共企業体というものができまして、まだようやく二年足らず、間もなく二年に相なるのでございまして、この制度がわが国において初めての制度でございますために、いろいろの面において、なれないことから来るいろいろの不便、またとつつきにくいような点があるということはわれわれも感じておりますし、いわんや経営の外側においでになる方々の一般的な御観察ではなかろうか、非常にわかりにくいような感を受けるような気がいたします。もともとこの公共企業体は、ここで申し上げるまでもなく労働関係から出発して、この考えが出て参つたのでございますけれども、その趣旨は、結局この比類のない実践的な公益性の強い事業である。従つてこれは従来のように政府みずからの経営をやるか、あるいはもつとさらに自由な民営の形をとるかということが、一般に経営形態として非常に問題になるところであろうと考えるのでありますが、そのいわゆる公益性の追求と企業性の追求と、両方あわせ行えるような経営形態ができるならば非常にいいということで、あるいはこの公共企業体というものが考えられたのではなかろうかというふうに考え、また当時の国務大臣であられました小澤佐重喜氏の提案理由の御説明の中にも、十分そういう趣旨がわれわれにはうかがえる。また当時この委員会並びに参議院の運輸委員会におきましても重ねられた御論議は、まつたくそこにあつたようでございまして、もつと独立採算制をこれでとれるのかどうか、これで企業の自立性が貫けるのであるかどうかという問いただしを、われわれも当時政府委員といたしまして追究を受けておるのでありますが、当時の説明からいたしますと、とりあえずこれは急いでつくる必要があるから、この程度でやるのであつて、そういつた企業の自主性については、なお後になつて十分整備するのである。特にその財政、会計方面における自主性についてはそういうふうに論議が重ねられておるのであります。従いましてわれわれといたしましては、もつぱらこの二年の間、法規的にはきわめて制約を受けた形ではございましたが、つとめて自主的に企業の合理化と能率化をはかつて、いわゆる赤字克服に邁進して参りましたのが私どもの考えでございまして、もちろん力足りずして、今日に至るもまだこの公共企業体の非常にりつぱな運営というものは、われわれの力でとうていできておらないというように私どもは恥じておりますけれども、考え方といたしましては、そういう考えで今日まで来たということを御報告申し上げておきたいと思います。
  74. 川島金次

    ○川島委員 総裁は、どうもこういう問題であまり積極的な見解を述べるのは差控えたいという言葉ですが、そうでなしに、私どもの希望するのは、何といたしましても当面の総裁自身にかかわる鉄道法の改正案、しかもその改正案が、当面の改正としては一応抜本的な改正なのです。その抜本的なまでの改正案に対して、総裁の見解というものはわれわれの賛否を決します上においても、きわめて重要な資料になるものである。その意味において、私はできるだけ総裁の率直な見解を希望いたしまして、出席をお願いしたわけです。それに対しましてあまり具体的な見解は差控えたいというようなお話なつてしまうと、私はたいへん心外なんです。さらにこれ以上聞いて、総裁から率直具体的な見解が示されるならいいですが、示されないと、またさらにこちらは失望を感ずるだけです。しかしもう一つついでですからお尋ねしたい。今までに私がお尋ねいたしましたように、監理委員会はなくなり、そして第二の問題としては、政府監督指導権限が大幅に強化される。そういう形であつて、しかも任命権などもかわつて参ります。この一違の改正の流れをかいつまんで申し上げますと、日本国有鉄道が本来の企業体としての自主性を確立するということが、国有鉄道法設置の本来の理由であつた。しかしこの改正案を実施いたしますと、日本国有鉄道自主性を確立するというねらいよりは逆転いたしまして、日本国鉄道関する限りにおいては、政治的な、行政的な、さらに従来問題になつておりまする財政の自主性、こういつたものことごとくが根底からくつがえされて行くような形、ことにこの改正によれば、従来の辛うじてあつた行政的な政治的な若干の自主性をも、まつたく剥奪される、こういう形になる。こういう二本の足、三本の足をことごとく剥奪されて行くような形の法律のもとにおいて、はたして今後国有鉄道は積極的な活発な創意とくふうとによりまして、国民の足であるというサービスの万全を期し得られるかどうか。およそ人間には、権限があつて一面責任がある。権限責任と相まつて、初めてその機関の長たるもの、あるいはその機関全体の職員に至るまでが、希望を持つて責任を感じ、そしてそこにおのずから創意とくふうとが沸き上つて来まして、その事業自体が本来の使命をよりよく果して行くという形が生れて来るのが、普通の姿であります。にもかかわらず、それとおよそ逆な改正がここに行われようといたしておる。こういう形において、あなたは鉄道のはえぬきの方で、しかも今日は国有鉄道の最高責任者として、いろいろ苦労されておる貴重な、またコーポレーシヨンなつて以来の貴重な体験をされておる総裁として、こういう改正の及ぼす国有鉄道の影響について、心ひそかに痛感しておる点があるのではないかと私は想像いたす。その意味において、こういつた形にきめられようとしておりますやさきにおいて、総裁の従来の経験に基いて、はたしてこれで公共企業体としての本来の使命を果すことに、遺憾ない姿になるものかどうかということについて、まことにくどいですが、できるだけ卒直に見解を披瀝してもらいたいと思います。
  75. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 ただいま総裁をいたしております私にお問いになれば、これはだれしもいろいろ方々で制約して、手取り足取りすることであつては、自分としても働きにくいと感ずることは、当然のことであろうと考えるのであります。従つて私がここで申し上げることを、総裁として言えというお話でございましたが、そういう立場から申し上げたのでは、私はかえつてこの問題の根本的解決にじやまになるとすら考えておるのでございまして、問題は先ほども申し上げましたように、日本で比類のない大きな企業組織であり、しかも国民の福利、国民の経済産業、国民の生活にかくまでも強い、深い関係を持つております国有鉄道経営というものを、一体いかなる形でやるのが、一番国民のためになるのかということで、これは国会において十分御審議をされて、そういつたいろいろの御意見もよくお耳にお入れいただいておきめを願いたい。ことにこの二年たつたばかりの今日の公共企業体の、その中のいわゆる一こまをとつて、そこでただちに判断を下されて、こういう点かいかぬということでなくして、私はその行末として、一体どつちがいいのか、また国民性とかそういつたものから考えて、どつちがいいのかという広い見地で、実は国会において十分御審議を煩わしたい、かように私は念願をいたしておるものであります。
  76. 川島金次

    ○川島委員 もとより私も国有鉄道のあり方について、根本的な問題については別に意見を持つている一人であります。しかしただいまわれわれの当面いたしておりまするのは、この鉄道法の一部改正案であります。これに対してもはや時間的にも賛否を決して行かなければならない事態になつておりますので、当面の事柄について、長い間のきわめて貴重な体験を持つておりまする総裁――総裁立場を離れてもけつこうでございます。これは総裁なりあるいは個人としての立場、いずれでもよろしゆうございますが、実は所見を聞きたいでのあります。しかしながらそれについては本質の問題がより重大なことであつて、当面の改正案よりはもつと大事なことがあるのではないか、こういうような意味総裁のお言葉は、私も同感です。同感ですが、当面は今のこの改正案である。これに対して処置をしなければならぬ。場合によればきよう中にでも、処置をつけなければならぬ雲行きであるらしい。そこで私はお尋ねをしておるのでありますが、そのことに対してこれ以上に執拗に追究することは、立場もございますることを了承しましてとりやめます。  最後に、これならば言明ができると思うのですが、この改正案の事柄について、私の聞いたところによりますと、国鉄労組本部の中鬪委員会が、その態度を論議をいたしました結果、この一部改正に対しては根本的に反対、こういう意思を決定いたしておるようであります。従つておそらくその旨が総裁の方にも、参考のために進言されているのではないか、こういうふうに私に想像いたしておるのありますが、そういう事実が総裁の手元にありますか。そうしてまた国鉄労組が反対いたりしておまするその理由とか、根拠というようなことについて承知でありましたならば、この機会に聞かしてもらいたい、こういうふうに思います。
  77. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 ただいままでのところ、労働組合の方から正式に、この改正法律案に反対の意思表示をして参りましたことについては、私はまだ聞いておらないのでございます。ただこの改正法律案がいろいろ新聞に出ましたり、またいろいろのところから耳に入りますにつれて、私どもこの内容につきまして、きわめて最近拝見をいたしたような次第でございまして、非常に深く前からというわけではございません。労働組合におきましても同じような事情があつたろうと思うのでございまして、前からこの法案内容を多少知つて、その点について労働組合としては、この法律案には賛成できないという旨を、個人を通じて私は聞いておるということでございまして、正式に書面等をもつて申入れを受けたということは、私はまだ耳にいたしておりません。
  78. 川島金次

    ○川島委員 大臣が見えておりますので、この際一言お尋ねしておきたい。先ほど私が国有鉄道総裁にお尋ねしたことと同じことについてですが、今度の改正案によりますと、従来存置されておりまする監理委員会が廃止されるということが、まず大きなねらいなんです。この監理委員会の廃止の根拠といたしましては、大ざつぱに申し上げますと、一つは監理委員会があまり活発な、積極的な働きをしておらないということと、監理委員会という機構がありますために、ややもすれば日本国有鉄道責任の所在が明確を欠いて行くおそれがある、こういうことが理由なつておる。そこでお尋ねするのですが、大臣が就任されて以来、国有鉄道の現在の機構のもとにおいて、監理委員会の存在が無力なものであつたというように感じられたか。また監理委員会という機構があるために、国鉄責任の所在が不明確になつて来ておる、こういう提案者説明ですが、監理委員会の存在のために、国鉄のいろいろの面においての責任が不明確になつておるというような、具体的な事態に突き当られたことが大臣にはおありか。この点大臣の率直な御意見を承りたい。
  79. 前田正男

    前田(正)委員 ちよつと関連して申し上げます。私の述べました提案理由のことについて、ただいま御質問があつたのでありますが、先ほど来のお話を聞いておりまして、私の述べました理由と多少食い違つておるように思うのであります。先ほど来総裁が、諮問機関的には相談したりあるいはいろいろと指示は受けたが、チエツクを受けたことはないと申しておりますのは、法文監理委員会は、業務運営指導統制する権限責任を有する、また総裁監理委員会に対し責任を負わなければならないというこが明記してあります。これは川島委員からお話がありました通り、創意、くふうを尊重して行くためには、権限のあるところには責任がなければならぬと思うのでありますが、この法文におきましては、権限のあるところに責任がないのであります。国鉄総裁国鉄を代表するけれども、責任監理委員会が持つということになつておりますが、現実は立法精神通り行われていないから、この際修正すべきだということであります。
  80. 山崎猛

    山崎国務大臣 お答えいたします。監理委員会の存在は、コーポレーシヨンの内部のことでありまして、総裁監理委員会の間に責任関係等があるのでありまして、その一々のあつた事柄を運輸大臣が報告を受ける性質のものでもなし、受けてもおりませんので、それは運輸大臣としてはわかりません。
  81. 原彪

    ○原(彪)委員 この改正法律案が出たという根本は、公共企業体経営形態があいまいであつたために、かような法律ができて来たのだろうと思つております。公共企業体は、アメリカのTVAの例をその当時盛んに引かれておりましたが、なお反省してみますれば、TVAはテネシー・ヴアレーの一地区に関する公共企業体であつて国有鉄道のような日本全国に対する公共企業体とは、わけが違うのであります。国有鉄道は全財産が国民のものである。それに対して、国民の代表である国会が全然発言権がない。国会を通じて、大臣権限によつて国有鉄道監督するといつておきながら、第五十四條によつてあいまいな監督規定があるために、こういう改正案が出るようになつたのだろうと私は思うのであります。私も一個人としてはこの改正案に賛成でありまして、党内に賛成を得べく努力したのでりありますが、わが党の立場としては、遺憾ながら反対の立場をとらざるを得なくなつたのでございます。なぜかと申しますると、わが党内の一般の空気は、大臣権限が非常に強くなる場合に、党略人事が行われはしないかということを、非常に懸念いたしております。第二十條によりますれば、総裁においても、理事においても、監事においても、ほとんどこの権限内閣及び運輸大臣が握る形になりますると、現在でございますると、自由党及び自由党内閣に好意を持たざる人物の人事はやりにくい、自由党にあらずんば人にあらずというようなかつこうになつて行くおそれが多い。さらに極言すれば、国有鉄道が自由党コンツエルンの形になりはせぬかという心配を非常にしておるのであります。こういう点につきまして、わが党において心配する空気が非常に多いために、私は情理を尽して説得したのでありまするが、遺憾ながらそういう点において反対の結論に達しました。それでもしこの法案があと数分後に通つた場合に、今後運輸大臣として、これだけの権限を持たれて運輸行政をやつて行かれる場合について、こういう人事に対する公平な御覚悟を承りたいと存じます。
  82. 山崎猛

    山崎国務大臣 原委員は、大体原案に対して、個人的には御賛成であるという場からのお尋ねでありますが、さてこれが実現した後における人事関係に対して、公正な立場でやるかということについては、これはもちろんお言葉までもなく、公正無私に国有鉄道をして、公共福祉のため、また独立採算制のため、設けられた趣意に沿うような人事を行うつもりで、運輸大臣としているということをはつきりお答え申し上げておきます。
  83. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 先ほどの川島委員の御質問に関連いたしまして、第一点、監理委員会の第十條の法文の解釈について、第二点は、国鉄運営の面について加賀山総裁にお尋ねをし、所見をお伺いいたしたいと思います。なお第十條の法文の解釈につきましては、提案者である前田委員から先ほど御説明がありましたけれども、なお重ねて御説明を仰ぎたいと思います。  そこで第十條は、「監理委員会は、第一條に掲げる目的を達成するため、日本国有鉄道業務運営指導統制する権限責任を有する。」と明記してあるのであります。これは先ほど来いろいろと論議されました責任の帰趨の問題でありまして、この例を海上保安庁に私はとつてみたいと思うのであります。なおこの質疑を進めるにあたりまして、誤解を生じてはならぬので、あらかじめ総裁に了解を得ておきたいことは、私の次に申し上げることは、総裁責任を云々するわけではないので、法文解釈、運営の限度にとどめて、御質問申し上げるのでありますから、この点あらかじめ御承知の上、御答弁いただきたいと思うのであります。海上保安庁におけるところの、いわゆる責任の点で、法文の上にはそういう監理委員会というものはないから、かような責任を明記すべき法文上の規定はないと思うのであります、しかるところ新聞等で御承知のように、最近海上保安庁の出先の方々がいろいろな問題を起しまして、これがために俄然海上保安庁長官は責任を痛感して、その職を去るということが伝えられておるのであります、もしこれを国鉄の例にとつてみましたときに、せんだつてのあの桜木町の電車事故のごとき重大な問題が起つた場合におきましては、もしこの法文上のことを法文通りに解釈しなくて、運営責任は一切加賀山総裁にあるのだというお考えに立つならば、私はこの責任論は当然海上保安庁の問題以上に関連を持つ。そこまで問題が発展して行くのではないかと考えるのであります。しかしながらこの監理委員会の第十條の法文規定から申しますると、明らかに指導統制をする権限は、監理委員会にあるのでありまして、従いまして私は監理委員会が、ちようど海上保安庁の長官のような立場に立つところの責任があると考えるわけであります。先ほどの総裁の川島委員に対する御答弁の中に、監理委員会の決議によつて、その範囲において仕事をする。従つて自信を持つて仕事ができる。まことに当然のことと思うのでありますが、これは法文上のことでなくして、運営上の問題であると思うのであります。従つて法文の解釈から行きますと、あくまでも指導統制ということは、監理委員会責任であると存ずるのであります。あたかも海上保安庁長官の立場と、監理委員会立場と、同一に法文解釈をすべきであるということを深く信じておる次第でございます。これに対しまして、総裁はどういうように第十條の法律を解しておられるか承りたいのであります。  第二点は、運営上の問題でありますが、運営の万全を期する意味におきまして総裁監理委員会がなかつたならば、運営上の万全を期し得ないと考えておられるかどうか。民間企業の面におきまして、相当大きな企業体経営状態を見まするに、これはいずれも取締役会において一切の責任を持ち、もしその運営の面において知識が足らず、あるいは技術が足りないときには、それぞれの手を用いて、社会のいろいろな事情を聴取して、運営の万全を期しておるのが、今日の民間企業のあり方であります。かような点から考えまして、監理委員会がないよりある方がいいということは、先ほど総裁の御答弁にもあつた非常に自信を得る点においては、そうであろうとは存ずるのでありますが、しかし将来もしこれが純然たる民間企業になる場合におきましては、やはり重役会の機関において、運営の万全を期することになると思うのでありますが、総裁はあくまでも監理委員会がなければ、万全を期するための運営ができないと解釈しておられるかどうか、この二点をお尋ねいたします。  なお重ねて前田委員の第十條の法文解釈を、はつきりと御説明願いたいと思うのであります。
  84. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 ただいま法文上の解釈についてお尋ねがございましたが、日本国有鉄道法第十條の解釈につきましては、私は実は法律の解釈をする立場ではございませんで、これはほかに法律解釈をする権威にお尋ね願わなければならぬと思うのでありますが、私どもの考え方だけを申し上げますならば、第十條と第三章役員及び職員のところの第十九條におきまして、「総裁は、日本国有鉄道を代表し、その業務を総理する。総裁は、監理委員会に対し責任を負う。」こういうことに相なつておりますが、この二箇條をあわせお読みいただいて御解釈を願わないと、なかなかむずかしいのではないかと思うのでございます。私どもの考え方といたしましては、先ほど申し上げました通りに、監理委員会はまつたく内部機関でありますので、直接監理委員会に対して、具体的に例をあげてお示しになりましたような事柄につきましては、もちろん責任を負うわけでございますが、しかし日本国有鉄道を代表し、その業務を総理する立場からいたしまして、私ども実際上の気持といたしましては、はつきりと、つまり国民に対して、監理委員会が間にございましようとございませんでしようと、同じに責任を負うということは、当然のことではあるまいかと考えておるのであります。なお民営移管にした場合という仮定を置かれてのことでございますが、もともとこの監理委員会のある公共企業体というものは、独特なもののように私ども考えておるのでございまして、もちろん純然たる民営の形にしました場合、この監理委員会の制度が適当であるか不適当であるかということは、おのずから別問題になつて来よう、かように考えておる次第でございます。
  85. 前田正男

    前田(正)委員 御質問がありましたので、この法文の解釈につきましては、私から私の考えているところを述べたいと思いますが、もちろん法的には、これは最高裁判所その他の解釈に従わなければならぬと考えますけれども、私は公共企業体のあり方から見まして、先ほども委員の方からお話がありました通り、これはTVA等をまねてつくられたものと考えます。TVAにおきましては、御承知通り理事が最高責任を持つておりまして、それは常勤でありまして、兼職を禁止しておるのであります。大体国民意思を代表するところの監理委員会という一つの委員会がありまして、それが最高機関であり、これを運営するというのが公共企業体のあり方であるというふうに、当時は考えたようでありますが、しかしながら日本の実情から見ますと、それでは兼職を禁止した常勤の監理委員会を設けて、そうして業務運営指導統制する権限責任を有するというようなことを求めることができるかというと、実際問題としてはなかなか不可能のようでありまして、従いまして御承知通り、日本にもう一つ公共企業体がございますが、その日本専売公社の場合におきましては、皆さん御承知通り、こういう監理委員会というものがないのでございます。私はどうしてもこういうようなことは、実際問頭として困難ではないかと思います。それは第十九條を見てもおわかりの通りでありまして、総裁はなるほど国有鉄道を代表いたしますけれども、監理委員会に対して責任を負うというようになつております。しかも総裁監理委員会の特別委員であるというようになてつおりまして、一つの企業体から見ますならば、その監理委員会がいわゆる重役会になるのであつて、最高の機関である、指導統制する権限責任を有するというように、この法文は解釈できるし、第十九條をあわせて見ましても、総裁監理委員会の特別委員にすぎないで、監理委員会に対して責任を負うということでありますから、重役会みたいなこの委員会の下におる事務重役みたいなものに、私たちとしては考えられるのであります。しかし公共企業体としてこういう委員会を設ける以上は、当然国民意思を代表する委員会を設けてやつて行こうというのは、TVAの例を見て考えられて、理事会というような立場からやつたものだと私は思います。しかし実情としてはそういうふうに行われていないし、また実際にはそういうものを設けることははなはだ困難であるということで、専売公社の例においては、こういう委員会を設けていない。これは私は当然のことと思うのであります。
  86. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 重ねて総裁にお伺いいたしますが、先ほどの御答弁によりますと、法律の解釈と運営上の責任をごつちやにして、御答弁なつておるように解したのでありまして、総裁という立場において、きわめて道義的な、責任感の強い加賀山総裁としての御答弁は、まことに当を得たことである、さもあろうと私ども想像し、私がかりに総裁立場なつたならば、そうした考え方を持つであろうことも考えられるのでありますが、法律は依然として法律でありまして、法律が存在する以上、法律の明文をすなおに解釈しなければいかぬと思いますので、第十條の指導統制というこの解釈は、ただちに総裁責任に帰すべき指導統制なりとの解釈を持つておられますが、監理委員会責任を明記したものであるかとも思うのでありまして、重ねてこの点をお伺いいたしたいのであります。
  87. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 法律家でございませんので、ただいまのお尋ねに対してはつきりお答えになりますかどうか、非常に懸念いたしますが、私どもといたしましては、この法律條項は、監理委員会はもちろん総裁命令もでき、指導統制ということは、指導もできるし、統制という字句からして、総裁に対してこういうことをすべしということも言える、また総裁考えたことについて、それはいかぬということを警告もできる、それは当然のことであろうと思います。従いましてそこでまた監理委員会総裁との関係もできるわけでございますが、監理委員会命令に従つて総裁がそれを実施いたしました場合に、非常なしくじりをした、こういうようなことを仮定として考えます場合に、それではどつちが責任を負うべきか。これは運営業務を総理し、国有鉄道を代表してその衝に当る総裁が、あくまでも国有鉄道を代表して責任を負うべきものであるというように考えておる次第であります。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと議事進行ですが、先ほどからわれわれの側から、ぜひ監理委員会を呼んでもらいたいという希望があるのですが、何か自由党の諸君は、それを議事の遷延策にでもとつたような誤解もあるかとも思いますが、実は本日これを上げたところで、本会議はもうない。本会議は明日です。ですから、明日の午前にでもぜひ監理委員会を呼んで、監理委員会意見も十分聞いた上で結論を出したいと思いますが、それについて委員長はどういうふうにお考えになりますか。
  89. 前田郁

    前田委員長 委員長といたしましては、皆さんが呼んだ方がいいという御意見であれば呼びますし、その必要がないということであれば呼ぶことができないものと考えます。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 皆さんというと、自由党の諸君がほとんど皆さんですからね。しかし少数の野党の意見でも、やはりこういう重要な法案の改変でありますし、ことに監理委員会を廃止するということについては、国有鉄道公共企業体としての根本的な性格に影響して来ると思うのですが、そういう場合に、廃止される側の監理委員会意見も聞かなくて、しかも本会議に上せるにしても十分余裕があるのに、そういう手続を省いて上げてしまうということは、民主的でないと思いますから、ひとつ委員長としての、超党派的な立場に立つてのお考えをお聞きしたいと思うのです。ですからそれは自由党の諸君意見も聞いた上で――どうせ本会議はあしたになりますから、そういうふうに諮つてもらいたい。
  91. 前田郁

    前田委員長 実は昨日も委員長会議がございまして、どうも法案が上つて来ないので、きようも本会議が開かれないで、あしたになつたというようなことでございまして、各委員会とも非常に上りが悪いそうであります。それで私の方でもなるべく早く上げてやりたいというわけで、皆様にお忙しいところをお願いしてやつていただいておるわけでございます。しかし各委員の御意見が、この際呼んだ方がいいということであればそういたしますし、別段呼ぶ必要がないというお話であれば、この法案を上げたい、こう考えておるわけです。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど総裁答弁の中にも、総裁も実はこの法案はつい最近目を通したと、総裁ですら言われておる。国鉄の当事者自体がつい最近この法案を見たばかりということですから、ましてやわれわれ野党の側でも、つい昨日見たばかりです。また監理委員会の問題についてもぜひ意見を聞きたいと思いますし、一方的な意見だけで審議を尽すわけに行かないと思います。それから本会議法案が上つて来ないからぜひきよう上げてもらいたい、これは本末転倒です。やはり国会としては審議すべきは十分審議をやりたいし、またきようここで上げたところで、きようは本会議はもうないわけですから、委員長の言うことを聞いても、明日の午前は監理委員会の者を呼んで、ここで審議を尽して明日の本会議に出せば、委員長立場も十分に立つと思いますから、決してわれわれ無理を言つておるわけではない。それをひとつきめていただいて、そのかげんで私の質問も、もし明日開かれるならば明日に繰越すことにいたします。その点を議事進行で最初きめていただけませんか。
  93. 前田郁

    前田委員長 それは私個人といたしましては、なるべく十分に各方面の御意見もお聞きしたいと思いますが、ただいま申し上げましたような事情で、非常に会期も切迫しておる事情であります。それで参考人を呼ぶには、やはり決議をしてやらなくちやならぬわけでありますが、ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  94. 前田郁

    前田委員長 速記を始めて。それではただいま御懇談願つたわけですが、賛成もあり、反対もあるようでありますから、私から正式に委員会にお諮りいたします。ただいま監理委員会委員をこの委員会に呼んで、一応の質問をしていただこうという御議論が出たわけですが、これに対して賛成の方の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  95. 前田郁

    前田委員長 それでは起立少数であります。ただいまの林君の監理委員会を呼ぶということは、起立少数でございまして、呼ばないことに決定いたします。――林君、質問ありますか。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 どうもこの審議の経過等を見ても、われわれ非常に公平を欠くような印象を受ける。この点非常に遺憾だと思います。できるなら監理委員会を呼んで聞きたいと思いますが、自由党の諸君の横暴によつて、その希望が拒否されましたから、あと各委員質問で残つた点をまとめて、二、三お聞きしたいと思います。  そこで提案者委員の方にお聞きしたいのですが、先ほどから責任の所在、責任の所在と言いますが、明らかに監理委員会もまたこれは国会任命しておるのであつて、この点については国会と何ら関係のないものじやない。それから問題は責任の所在というような抽象的な理由で、国有鉄道法改正あるいは改変が行われるということがわれわれにはわからないので、こういう責任の所在が不明確であつたために、たとえば国有鉄道の経理の面、会計の面でこういう遺憾な点が出て来た、あるいは業務運営の面でこういう遺憾な点が出て来た、これは何としても看過するわけには行かないというような、具体的な理由が出て来ませんと、非常に高邁な責任論だけでは、われわれちよつと納得できないわけです。もし前田委員が、現行法によつて責任の所在が不明確であり、あるいは国家に対する責任が十分でないと言うならば、具体的に国有鉄道運営の面で、どういうものが現われて来たかということをまずお聞きしたいと思います。
  97. 前田正男

    前田(正)委員 今のお話でございますが、私たちといたしましては、監理委員会国会同意を得て任命されたものでありまして、もちろん国民国有鉄道でありますから、国民代表の意見は、これを運営指導する責任者に反映することは当然であると思つております。また私たち承認を得て任命しておると思うのであります。しかしながら今まで林さんも、先ほどからたびたび委員会その他予算委員会等においても、国鉄のことについてはよくお知りであるということでございますが、今まで私たち、この国会意思を代表しております運輸委員会において、いろいろと国鉄の問題についても論議いたしましたけれども、この法文に書いてありますように、監理委員会から何らの報告も、また相談もないのでありまして、この一つの事実を見てもよくおわかりであると思うのであります。私はこの今までの国会国鉄政府との間の運営というものは、非常に円満に、また能率的に行つておるとは思いません。川島委員お話もある通り、私は責任権限について、一緒になつて初めてその人の経験を生かして、創意、くふうというものが尊重されて、自主的に運営されて行くのであると考えておるのでありまして、そういう点において、立法の当時から疑問のありました点は、この際二箇年もたちまして明瞭になつておるのでありますから、私たちは修正すべきである、こういうふうに感じておるのであります。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 これは前田君が非常に詳しいと思つておりますが、日本国有鉄道法の十二條によつても、監理委員会委員は、両議院同意を得て、内閣任命しておるのであります。従つてわれわれは、その任命に対しまして国会責任を持つ以上、報告がなければ、監理委員会諸君をいつでも国会に呼んで、われわれのただしたい点をただす権限があるわけです。しかも本日、現に監理委員会を呼ぼうというのに、自由党の諸君はみずから持つておる権限を放棄しておる。それが一つ。もう一つは国会に報告がないから、総裁みずから言つておる通り総裁職務の遂行上むしろやりいい点があるというようなことを内部の者が言つているのは、国会に報告がないという点が不十分だから修正をしようということだけでは、われわれはこの監理委員会を廃止する十分な理由として納得できないわけです。国会に報告がなかつた結果、あるいは国会に対する十分な責任を明らかにする道がなかつた結果、日本国有鉄道運営の面で、たとえば会計の面で、独立採算の面で、あるいは労務者の労務の遂行の面で、こういうことがあつたということがなければ、われわれはつい二年前にこの法案国会で――もちろんわが党は反対いたしましたけれども、国会全般的な立場からいつても、二年前にわれわれがそういうことも了承の上で通過させたものが、国会に報告がないという理由だけで、監理委員会を廃止するということは納得できない。もう少し具体的な、そのためにどういう結果が具体的に出ているかということを、前田委員から説明願いたいと思います。
  99. 前田正男

    前田(正)委員 私が先ほど申しましたのは、お聞違いがあつたと思いますけれども、国会に報告しないという一つの具体的な例にすぎないのでありまして、それだけが理由ではありません。私が先ほど申しました通り、もちろん国有鉄道を代表しているものは総裁であります。従いまして私たちは、たとえば桜木町事件の問題が起つたというようなときには、総裁を喚問して意見を求めております。その他いろいろ予算その他におきましても、総裁を喚問して意見を求めるのでありまして、これは法文に明記してあるのであります。従いまして私は、その間代表している者と責任者との間に食い違いがあるということが、法文上おもしろくないと思つている。先ほど申しましたのは一つの理由でありまして、現在までのところ、先ほど総裁も話しました通り、人を統制する権限責任を有する監理委員会は、単なる諮問機関的な存在であつたということは、私はこの法文が誤まつているのではないかと思うのであります。従いましてそういうことならば、この点につきましては立法当時から、監理委員会の性格については非常に疑問のあつた点でありましたので、この際そういう疑問の多い監理委員会を廃止いたしまして、さらに代表する者と責任者とを同一にいたしまして、もつと民主的に企業体らしく運営させることが、私たちほんとうの希望でありまして、この機会にそういうものを改めて行きたい。従来のこういうこととどういうことが具体的にあつたからどうということではなくて、従来通り不明朗でやつて来ているから、この機会に明朗にして法文を改めて行くことが、立法府の責任じやないかということであります。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 私はその点についてはまだ納得できません。そんな理由では、この大きな監理委員会制度を廃止することを納得させる理由にならぬと思います。何か他に意図があるならあるで、はつきり言つてもらいたい。そんなことは重要ら公共企業体としての国鉄の性格を、根本的にかえるような改正理由にならぬと思う。その点はいつまであなたと問答しても限りがありませんから、その点について政府山崎運輸大臣にお聞きしたいのです。運輸大臣としては、従来の日本国有鉄道の監視、監督上、この委員会制度が、現在のような制度があるために何か非常に迷惑を感じ、あるいは根本的に制度を改善しなければならない必要を感じていたかどうか、また本改正法案政府みずから出す意思があつたのかたかつたのか、その辺のことについて政府立場をお聞きしたいと思います。
  101. 山崎猛

    山崎国務大臣 政府みずからは出す意思はなかつたのでありますが、議員から提出されて、今日上程されているのであります。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 私はこの日本国有鉄法の五十二條あるいはその他の條文からいつて運輸大臣日本国有鉄道監督する権限は、十分にあると考えております。運輸大臣国有鉄道監督する立場からいつて、とのたびのような法案提出を必要としたかどうか、またこういう改正をしなかつたならば、運輸大臣としてはこの国有鉄道法規定されている日本国有鉄道監督責任を果せないと考えられたかどうか、その点をお聞きしたい。
  103. 山崎猛

    山崎国務大臣 立法府において議員提出法案として上程されいる案件に対して、行政府運輸大臣としてそれに批判意見を申し述べることは、議会政治尊重を建前としている私の平生の議論からして、差控えたいと思います。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 われわれが国会法案を十分審議するには、参考としてあらゆる方面の率直な意見を聞くのが、議会政治の本来の立場だと思います。山崎運輸大臣は、遠慮をしてものを言つておられるようであります。特に自分の属する自由党から出されたということで、非常に消極的にものを言われているよりでありますが、運輸大臣答弁をお聞きしても、監督者としての運輸大臣立場から、何らこれを改正しなければならないという必要性を、われわれに訴えるものがないような気がするわけであつて法文の体裁上だとかいうような点だけでこの改正をするということは、私はどうしても納得ができない。そこでもう少し根本的な立場からいつて総裁にお聞きしたいのですが、こういうように五十三條、五十四條というような権限強化されまして、人為的な監督の面、そのほかの所管事項の面から、運輸大臣権限が非常に強化されて来る。それから最終的には国会責任を負うにしても、一日監理委員会委員国会任命されれば、四年間自由に自分の所見に基いて国有鉄道指導、統制する。またそのもとに総裁公共企業体としての国鉄運営をするという、いわゆる公共企業体の性格が、こうしたこのたびの改正案のような形で行くとすれば、やはり従来の政府事業としての性格にまたもどるよすな印象をわれわれは受けるのでありますが、この点、みずから総裁として日夜国有鉄道業務に携わつておられる総裁立場からは、どういうふうに考えられますか、お聞きしたいと思います。
  105. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 ただいまのような御疑念がありますから、私は国有鉄道の性格について、一体政府事業と同じようにやるのがよいのか、あるいはもつと民間企業風に持つて行くのがよいのか、そういう根本の理念をはつきりしていただかないといかぬと思います。これが根本ではなかろうかと申し上げたのでありまして、総裁としてどういうつもりであるかということでありますならば、この国会において審議をせられてきめられました法律に基いてやつて行くよりほかしかたがない、そういうふうに申し上げる以外には、私ほ申し上げる言葉もないのであります。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 それはよくわかつております。総裁の言われる国会意思を決定する参考として、総裁国有鉄導の業務を最高責任者として遂行される上において、一つの採算を目標とする公共企業体としての性格をもつて国有鉄道運営するということの立場を貫くならば、このたびのような五十三條あるいは五十四條というようなこの改正、あるいは総裁任命権について直接運輸大臣がこれを掌握するというような形で行つたならば、公共企業体の性格が従来の政府事業の性格にもどるのだ、逆もどりして行くという方向に行くのではないかとわれわれは考えるので、それを国有鉄道業務に直接日夜携わつておる総裁は、従来の経験と体験とからいつて、どう考えられるかとういことをお聞きしておるわけです。もう一度答弁の気持がありますならばお聞きしておいて、また非常に立場がデリケートでありますから、あとは察してくれというなら、われわれも無理に求めはいたしません。
  107. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 これは御参考になるかどうかは、私非常に疑念がありますが、この企業性というものを非常に強く持たせるということに重点を置かれます場合は、できるだけ自主的活動の範囲を広めるということがよろしいと思います。しかしながら先ほども申しましたように、一面国有鉄道のような、国民の経済生活に非常に根強い関連を持ちます事業でありますがゆえに、これを一般の私企業のように自由奔放にするということにも、非常に問題があろうと思う。従つてそれをどういうふうにチエツクとバランスをとるかという点に、はその経営形態をつくる非常に重点があるように考えますので、そこらの点について国会において十分御検討を遂げて、国有鉄道の方向を誤らないようにお示しをいただきたいというのが、私どものお願いなのであります。
  108. 石野久男

    石野委員 ただいまの点につきまして、関連することですが総裁はこの改正法によりまして、第五十四條の規定がなされます場合には、従来の――従来と言いましても今まで二年間になされたことと比較して、運輸大臣監督権限というものが、従来よりも一層強く企業の中に入つて来るとお思いになりましようかどうかということをお尋ねいたします。と同時にこの五十四條の規定は、従来のものよりも一層強く、公共企業体である国鉄に対して、運輸大臣としての監督権というものが伸びて行くものであるということを御存じであるかどうか。この点を條文の審議の参考としてお聞かせ願いたい。
  109. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 ただいまのことに対してお答え申し上げます。当然今度の法律改正の御趣旨はそこにあろうと考えるのでございまして、政府監督権限範囲が、国有鉄道運営に対して広くなるというふうに私どもは解釈いたしております。
  110. 山崎猛

    山崎国務大臣 法文に明示されてあります通りに、具体的に伸びて行くように考えます。
  111. 石野久男

    石野委員 総裁にお尋ねいたしますが、ただいまのお話で、いずれの立場からいたしましても、運輸大臣権限が従来の企業に対する関係から、いたしまして、伸びて行くことが明らかになるわけでありますが、その場合に企業としての自生性が、相当程度に制約される面が出て来るようになることはないかということを、従来の経験にかんがみて御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  112. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 法律の御審議過程中で、将来を予見するようなことを申し上げるのもどうかと思いますけれども、私どもの承知しております範囲では、法律というものはやはり解釈と運用が非常に大切なものだろうと考えるのでございまして、もつぱらその関係において今仰せられましたようなことは、将来においてはつきりして参ると思います。
  113. 石野久男

    石野委員 今の御答弁ちよつとわからなかつたのですが、将来においてその点がはつきりして来ると言われることは、相当程度自主性が阻まれて行く形が出て来るというふうに理解してよろしいのでありましようか。
  114. 加賀山之雄

    ○加賀山説明員 必ずしもそういう意味で申し上げたのではございません。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 従来国有鉄道公共企業体として非常な制約を受けていたのは、やはり会計の面で独立採算制という名のもとに、企業の独立性を非常に強調され、このために政府の援助の方もなかなか澁つてつて企業体の中で余裕を生み出し、あるいは赤字を克服することに非常に苦労して来たと思う。そのために労働者の人員の整理、あるいは労働條件ということで非常に大きな犠牲が国鉄の従業員の諸君に課せられて来たと思うのです。そこでこれは提案者大臣総裁の三人にお聞きしたいのですが、こういう形で大臣権限が非常に強化されて来る。たとえば五十三條の基本的な業務運営組織の変更も許可事項なつている。五十四條では、先ほど石野君の言われたように、総裁任免権運輸大臣が握るということになりますと、これは公共企業体というものの性格が相当修正されるようになる。もし公共企業体としての性格を修正なさるならば、運輸大臣権限拡大されただけの予算的な措置の面で、政府は従来よりも十分保護助成する意思があるかどうか、そういう点をお聞きしたいのですが、まず提案者にお聞きしたいことは、従来の公共企業体という名のもとではあつたけれども、独立採算制ということではありましたけれども、実際は、経理の面で政府監督が非常に強くて、採算の面では独立採算にしろということで、非常に苦しんで来たわけです。ところが今度は業務内容事項あるいは人事の任命権、こういうものを政府が掌握する力が非常に強くなつたのでありますが、これに対して経理、予算的な面で、将来政府においては日本国有鉄道に対して十分保護助成させるような方法を同時に考えているかどうか。この点をまず提案者前田委員からお聞きしておきたい。
  116. 前田正男

    前田(正)委員 まず最初に、今のお話権限拡大されたということでありますが、私は先ほども申しました通り、今回の提案によりますと、私の考え方で行きますならば、これは権限拡大されてない。さらに一歩民主的な民間企業の経営体制に近づいたというふうに考えておるのでありまして、その点根本的に御質問立場が違うようでありますから、その後の質問に対するお答えも違うのでありますが、先ほども私の申します通り監理委員会というものは、国会を代表する委員がおりまして、それが業務に対して統制指導する権限責任を持つというように、常に国有鉄道に対しては干渉できる立場にあつたものが、今回は法律で与えられましたところの大臣権限及び任罷権並びに予算の範囲だけにおいて干渉することができるのでありまして、これは権限が非常に少くて、企業体としては民主的な経営に近づいた。代表するものは責任者であるという、民間の株式会社経営体制にある程度近りいて来た。但しその株主総代は国会でありますから、国会意思がそこに入つて来たというだけの違いでありまして、これは何ら権限の拡張であるとは思つておりません。株式会社におきまして、株主が重役その他を任命するのは当然でありまして、私は何ら拡大とは思つておりません。しかしながら今の会計の問題につきましては、第四国会においてだと思いますけれども、この国有鉄道法の成立後、さらに財政面の不備につきましては修正されておりますので、私はなるべくその修正の意思を尊重されて、現行法に基いてできるだけの援助または保護をやつて行くべきであるということは、当然私たちは予算を審議するし、その他いろいろ財政的な援助もしておることでありますし、もちろん国民の所有する国有鉄道でありますから、当然のことと思います。しかしその間の内容につきましては、石野さんの御質問にありました通り、それではもつと根本的に修正したらどうかという御意見もあつて、私もそういうふうに感ずるところがありますけれども、今回のところはとにかく責任体制を明らかにする範囲によつて、もつと民主的に責任を持つて運営できるような総裁なつて、その総裁と、またそういう体制になつたときのわれわれ国会政府立場とは、また講和独立後に再検討されるのが適当ではないか、こういうふうに私自身考えております。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 運輸大臣はこの点はいかがですか。
  118. 山崎猛

    山崎国務大臣 予算の面において、将来国鉄を保護助成するような考えがあるかというお尋ねのようでありますが、将来の国情あるいは経済情勢等の関係から、そういう必要があれば案を具して国会提出いたしますから、御協賛を願いたいと思います。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 具体的に伺います。公共企業体労働関係法の第十六條についてですが、従来公労法の調停に基いて十六條の裁定がなされた場合には、これに対して政府みずからが資金を提供してやるということがほとんど許されておりません。いわゆる公共体の独立採算制という名のもとに、公労法十六條に基く裁定の結果が、ほとんど実を結んでおらないというのが、従来の実情であります。そこで前田委員の話によると、何も政府権限強化されたのではないということを言つておりますが、少くとも改正法案から受けるわれわれの常識的な理解によれば、どうしてもこれは運輸大臣権限が相当強化されておるというふうに解釈せざるを得ないわけです。そこで政府日本国有鉄道に関する権限強化されるならば、少くともそうした意味で独立採算制としての公共企業体の性格が、政府事業的な立場にまたもどる。あるいは性格がある程度修正されるということになりますならば、財政的な、あるいは予算的な会計の面からも、政府が相当の好意をもつて保護助成するのが当然だと私は思うのです。そういう意味で、将来公労法の十六條に基く裁定というようなものがなされた場合も、政府はできるだけの好意をもつてこの財源なり、あるいは予算的な措置を考慮する意思があるかどうか。もちろん決定権は国会が持つておりますが、政府が予算的な措置の面で、日本国有鉄道のことに職員、労働者の労働條件の改善というような面で、十分予算的な保護助成をする意思があるかどうか、この際聞いておきたいと思います。
  120. 山崎猛

    山崎国務大臣 政府は従来もできるだけの手を尽してやつてつたのであり、将来もまた同様であります。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 どうも従来あまり親切でなかつたようにわれわれは印象を受けておるわけですが、そこでもう一つお聞きしたいことは、公共企業体としての国有鉄道であつたために、労働者の持つておるいろいろな権利についても、公務員とは相当差異のあることは御存じだと思うのですが、こういうように国有鉄道法が修正されまして、政府国有鉄道に及ぼす力が強いということになりますと、将来日本国有鉄道の労働者諸君に対しての労働條件、あるいは労働者としての団体交渉権、あるいは労働條件改善のためのいろいろな権利、こういうものに対して、将来何らか再考慮する意思があるのかないのか。この点について、運輸大臣の見解をお尋ねしておきたいと思います。
  122. 山崎猛

    山崎国務大臣 政府の手が国有鉄道の方に入れば入るほど、労働組合の方にはできるだけ手を尽して、條件をよくしてやりたいと考えております。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 どうもわれわれとピントが合わないのですが、われわれとしては、政府権限が強くなつて、国有鉄道政府事業としての性格を強めて行き、鉄道従業員が再び公務員としての性格が強まれば強まるほど、労働者として持つておる当然の諸権利が、非常に制約されて来るということが考えられる。それで質問しておるわけですが、運輸大臣は、鉄道従業員が公務員としての性格を強めれば、かえつて保護助成され、権利が拡張されるというふうに言われておるので、この点われわれとまつたく見解を異にしておるのであります。そうすると運輸大臣としては、とりあえずこういう国有鉄道法の一部改正はやつても、鉄道の労務者に対して、労働者としての諸権利を制約するとかいうことは、今のところ考えておらないというように解釈してよいのかどうか、この点を最後にお尋ねしておきたい。
  124. 山崎猛

    山崎国務大臣 労働問題については、それぞれ労働法規があつて政府は労働法規に基いて全部を取扱つて行くのであり、それを運用解釈して行く上においては、できるだけ労働者をしてよからしめるように尽力して行きたい、こういう気持であるということを重ねてお答え申し上げます。
  125. 前田郁

    前田委員長 これにて質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告があります。これを許します。林百郎君。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方の党といたしましては、次のような理由でこの法案に反対いたします。  一つは、会計だとか、あるいは経理だとか、あるいは採算だとか、こういう経理の面では独立採算制を強調して、まつた政府の保護からこれをつつぱなして、人員は整理をする、賃金は低下させる、労働は強化する、こういう形で、企業の面では非常に独立採算制を強調する。ことに鉄道従業員の労働條件の面に及ぼして来る場合は、独立採算制、公共企業性を強調して、まつた政府の保護から見放している。ところが実際の鉄道の実権を握るという面から行けば、ますます政府政府の掌握権を強めて行く。たとえば国民のものである鉄道を、時の政府が実権を握つて、党利党略の具に供する道を開くような危険が、本法律改正によつて生ずることを非常に危惧するのであります。そういう点について第一に反対したいと思います。  それから第二は、やはり労働者の労働條件の点でありますが、こうして政府の影響力が強くなり、政府の実権が強くなるに従つて、労働者の労働條件の点についても、公務員が労働條件について非常に制約されると同じ形で、やはり将来すぐ国有鉄道の従業員に大きな影響を及ぼし、労働者の持つているところの当然の権利であるこの労働條件、あるいは労働條件に関する諸権利が制約されて来る。こういう危惧を十分感ずるのであります。この点が反対の第二の点であります。  それから第三の点は、これは私たち考えでありますが、国有鉄道は実際日本の国民のものであるにもかかわらず、そのときの政府の政策によつて非常に左右される。国民のための鉄道というのではなくして、そのときの政府の政策によつて非常に左右されるということを、われわれは感じておるのであります。第一に、日本国有鉄道公共企業体に切りかえた場合には、われわれの解釈ではこれを公共企業体にして採算の度合いを高めて――非常に政治的なひものついている対日援助見返り資金を国鉄へ導入するについては、採算制を高めなければならないということで、非常な労働者の犠牲のもとに公共企業体にし、これに見返り資金を導入し、これに大きな政治的條件がついていることは、十分御存じだと思います。ところが情勢がかわつて来て、自由党内閣が非常に戦争協力的な性格を持たざるを得なくなつて来ており、日米経済協力ということ、あるいは日米の安全保障というような問題から、ここに再び戦時的な政策を準備しなければならないというような立場になると、公共企業体としての鉄道政府が完全に掌握して、将来どういう事態が日本に起きても、運輸大臣あるいは政府考えに協力させるような形にこれを掌握して行こう。要するに吉田内閣の戦争政策の一環として、公共企業体として手放した、採算を中心として政府から手放したものをまた自分が握つて行く、こういう意図から修正がなされているとわれわれは考えているのであります。こういう意味から言つて、口では條文の民主化だとか、あるいは何だかんだと言つているけれども、実際は政府が、かつては採算性を強調して政府の手から放して公共企業体にしたものを、また都合が悪くなつて、吉田内閣の政策から言つて、日本にどういう事態が起るかわからない、日本が今後戦場になるかしれないという場合に、鉄道をこの政策に動員するということで、これをまた握つて来る。しかも事業の面だとか人事の面では、政府は強い実権を握つていながら、経理だの予算だの労働者の労働條件という面では、全然振りかえつて見ない。こういう鉄道を食いものにするようなこの法案改正については、わが党は断固反対するものであります。
  127. 前田郁

  128. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 この改正におきましては、財政上においては独立採算性を強行せしめ、人事や業務監督命令につきましては、運輸大臣権限を拡張しようとするものであります。国鉄公共企業体としての体裁が残つているにいたしましても、その人事や運営の実態は、政府直営事業に近い状態にもどるわけであります。企業性と公共性を保障し、経営の合理化と自主化を可能ならしめる目的のために、公共企業体に移行させたものでありますから、この改正案によりまして、この趣旨にもとるものであるとわが党は考える次第でございます。むしろわが党は、現今の状態といたしましては、国鉄自主性、独創性を大幅に持つように改正し、公共性を監理委員会を通して、総裁権限を強力にすべきであると考えるものでございます。よつてわが党といたしましては、国有鉄道法の一部を改正する法律案に対し、反対をするものでございます。
  129. 前田郁

    前田委員長 石野久男君。
  130. 石野久男

    石野委員 わが党はこの改正法案に対して、反対をいたします。  もともと国有鉄道法改正にあたりまして、前にわれわれは公共企業体それ自体に反対したものでございます。今回の改正によりますと、国鉄の持つ公共性とその企業性の両面に対して、非常に国鉄をまま子扱いにするような傾向が出るのではないかと考えるものでありまして、むしろ国鉄の内部におけるところの自主性強化するとか何とか言うのは、口の先ではそう言つても、事実上経営体にある国鉄としては、むしろかえつて今後非常に困難な事態になつて来、その企業性、独立性が危ぶまれるような形になるのではないかという危惧さへ持たれるのであります。特に第二十條、二十二條改正によりまして任免権内閣に持たれること、それから五十三條の事業計画に対するいわゆる運輸大臣権限拡大、五十四條の同じく運輸大臣権限拡大という問題は、提案者理由説明によりますと、そういうことはないと言つておりますけれども、事実上は先ほどの総裁の私に対する策弁によりましては、運輸大臣の見解によつても、具体的にはもつと大幅にその権限拡大されて行くことは事実であります。こういう中から、私どもは少くとも監理委員会の廃止によつて、その当時の内閣権限が非常に国鉄経営に大幅に浸透して行くことになつた、かつて国有鉄道の時代に持たれておつたような弊害を、一層強めるような危険さえもあるのではないかと思います。また許可認可ないしは監督権強化によつて、極度の制限がもたらされることによつて公共企業体としてのその本来の目的である自生性が、逆に否認されて行くような形が出て来る。立入権、検査権等の拡大によつて経営の官僚的干渉というものが増大して行く、このように私どもは考えまして、むしろ公共企業体としての国有鉄道が、経営の独創性をこれらのことによつて一層狭められて行くことを憂えるのであります。もとより私どもは国鉄国家機関にもどることを望むのでありますが、しかし改正法案提案者趣旨と、今日この改正法案内容に含まれるものとの矛盾性を、ここにはつきり見ることができるのでありまして、それは提案理由にありましたような、決してこの法案国鉄内部の独創性あるいは自主性拡大するものではない、このように考えます。従つて提案理由それ自体における矛盾性は、各面において暴露されているものであると考えますし、もとより私どもの考え方国鉄国家機関としての考え方にも相反するものでございますので、わが党としてはこの改正法案に対して、全面的に反対するのでございます。
  131. 前田郁

    前田委員長 以上をもつて討論は終局いたしました。  これより日本国有鉄道法の一部を改正する法律案について採決いたします。賛成諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  132. 前田郁

    前田委員長 起立多数。よつて本案は原案通り可決いたしました。  なおお諮りいたします。本案に対する委員長報告については、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 前田郁

    前田委員長 異議なしと認め、さようはからいます。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時八分散会