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1951-05-19 第10回国会 衆議院 運輸委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十九日(土曜日)     午後二時十六分開議  出席委員    委員長 前田  郁君    理事 大澤嘉平治君 理事 岡田 五郎君    理事 坪内 八郎君      岡村利右衞門君    尾崎 末吉君       黒澤富次郎君    前田 正男君       滿尾 君亮君    山崎 岩男君       原   彪君    山口シヅエ君       今野 武雄君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      足羽 則之君         運輸事務官自動         車局長     牛島 辰彌君         運輸事務官         (自動車局業務         部長)     中村  豊君         運 輸 技 官         (自動車局整備         部長)     佐竹 達二君  委員外出席者         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ————————————— 五月十八日  国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一七五号)(予) 同月十九日  日本国有鉄道法の一部を改正する法律案前田  郁君外四名提出衆法第五九号) 同月十八日  舞鶴港附近の機雷除去に関する請願水谷長三  郎君紹介)(第一九九三号)  宇津野、小本間鉄敷設請願小澤佐重喜君紹  介)(第一九九四号)  日向長井、三重間鉄道敷設並びに日豊線電化の  請願渕通義紹介)(第二〇三四号)  宮崎、小林間鉄道敷設請願渕通義紹介)  (第二〇三五号)  杉安湯前間鉄道敷設促進請願渕通義君紹  介)(第二〇三六号)  日ノ影、高森間鉄道敷設促進請願渕通義君  紹介)(第二〇三七号)  志布志線延長工事促進請願渕通義紹介)  (第二〇三八号)  港湾法の一部改正に関する請願宮原幸三郎君  外三名紹介)(第二〇六三号)  同(岡田五郎紹介)(第二一二〇号)  びわに対する貨物運賃割引請願岡西明貞君  紹介)(第二一二一号)  東北線電化請願青木正紹介)(第二二一  二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  道路運送法案内閣提出第一三一号)  道路運送法施行法案内閣提出第一三二号)  自動車抵当法案内閣提出第一三三号)  自動車抵当法施行法案内閣提出第一三四号)  道路運送車両法案内閣提出第一三五号)  道路運送車両法施行法案内閣提出第一三六  号)  日本国有鉄道法の一部を改正する法律案前田  郁君外四名提出衆法第五九号)     —————————————
  2. 坪内八郎

    坪内委員長代理 これより会議を開きます。  委員長不在でありますので、理事の私が委員長の職務を行います。  道路運送法案、同施行法案自動車抵当法案、同施行法案及び道路運送車両法案、同施行法案を一括して議題といたします。質疑を続けます。
  3. 滿尾君亮

    滿尾委員 私は前回運輸大臣に対する質問を二項申し上げたのでありますけれども、三、四、五の三項目はまだ御出席がございませんので、後日に保留いたしまして、事務的な若干のことにつきましてお尋ねを続けたいと思います。  第十三条でございますが、この運送条件変更した場合に告示をせよということが書いてある。しかし「あらかじめ」と書いてあるだけであつて告示期間について何らの定めがないのでありますが、この期間を置くお考えはないのであるか。「あらかじめ」というのは、その告示直前までにやればよいという意味であるか。これは他の運送業運輸事業等の例から見ましても、あるいは一週間なり二週間の期間を置くことが普通であります。自動車運送事業において十日、二週間置くということは問題でありますけれども、漠然と「あらかじめ」と書いてあつて、これだけ期間を設けないのは、法律といたしましてはいささか不備ではなかろうかと考えるのでありますが、政府委員の御見解を伺います。
  4. 中村豊

    中村(豊)政府委員 これは運賃、料金、あるいはその他の運送約款変更した場合ですが、運賃につきましては、その変更道路運送審議会に諮問しますから、その際に公聴会などにかけられますから、一般の意見というものは十分聞かれるわけであります。約款については公聴会はありませんけれども、そういう変更について現行法では「あらかじめ」という期間を置いてないのを、むしろ多少進歩した意味で「あらかじめ」と置いたわけであります。これにさらにある期間を限るというのは、あまりにそこまでの必要はなかろうというので、あらかじめ事前に知らす、こういうことだけにとどめたのでございます。
  5. 滿尾君亮

    滿尾委員 いやしくも告示義務を課した以上は、告示期間を明確にした方が公衆のために便利だ、また私は絶対必要であると思う。ただ告示期間というものが、他の重要な交通機関ほど長き期間を要しない、あるいは三日でもいい、こう思うのでありますが、「あらかじめ」というのでに即日でも入るし、せつかくこの制度をとられる以上は、この「あらかじめ」は非常に不親切だと思います。ぜひ政府委員の御再考を煩わしたい。  それから第十四条でありますが、荷物点検をいたしました場合に生じた損害を、業者が負担しなければならないことになつておる。私はこの賠償責任は少し業者に気の毒ではないか。これは賠償責任を課する必要がないように思うのであります。まずみだりに荷物を開かないようにするためには、こういうことも必要であるかもしれませんが、実際問題として始終開くような場合は少いであろうし、また事業者事業者としての立場から、重大な危険があるとの疑いを持つた場合でありましようが、これが見込み違いでありましても、この損害賠償責任業者に課する必要はないと考えます。どういうふうなお考えであるか伺いたい。
  6. 中村豊

    中村(豊)政府委員 これは御説のようなことも考えられるのでありますけれども内容点検することをむやみやたらにやられて、しかもそれが荷主の明告したところと違わないのに、その費用荷主に持たすということは、これまた荷主にとつては耐えられないことであらうと思います。自分で正しい内容を明告したのに、疑いを持たれて開かれた。中は自分言つた通りであるというのに、その費用を持たされたのでは、これは耐えられないと思う。やはり権利濫用を防ぐ意味で、はたして荷主言つた通りであるならば、開いた側の運送業者が持たなければいけない、かように思うわけであります。但し運送業者内容を明告してくれと言つたのに、荷主が明告しなかつたり、あるいは点検するのに同意を与えなかつたというような場合、そういうときでもどうしても運送引受けなければいけないかというと、それは次の第十五条の第二号によりまして、そういう場合には運送を拒絶してもいいかということにしてありまして、それぞれ相まつてこの辺のところで妥当な線を見出したわけであります。
  7. 滿尾君亮

    滿尾委員 御説明でございますけれども、こういうことは実際の問題としてはあまりそうしよつちゆう起ることではないし、託送者運送業者に対していろいろ説明をすればお互いに了解がつく。第三号のような場合は、これはきわめて例外的な事象である。品物は何であるかと聞かれて、そううそを言うことはないし、そうお互いにその間に意思の扞格の起るチャンスは非常に少い。これはこういう性格の事業経営いたします運送業者としての、当然の権利だと思う。従つてその当然の権利を行使した結果、実際としては間違いなかつたかもしれません。見込み違いであけたのかもしれませんけれども、その場合の損害賠償業者に負担せしめるのは、私は少し行き過ぎだと思う。この値の仕事は、事実問題としてはあまり大して問題はないのでありますが、いやしくも法律にこのことを特に取上げて、こういうぐあいな判決を与えておるところに問題がある。私はこれは少し法律行き過ぎではなかろうかと考えるのであります。この程度においては私は業者業務遂行上の当然の権利として、これを認めてもいいのではないか、かように考える次第であります。
  8. 大澤嘉平治

    大澤委員 実は十四条の二項で「貨物の種類及び性質につき申込者が告げたことに疑があるときは、申込者同意を得て、その立会の上で、これを点検することができる。」となつておりまして、申込者同意を得て点検した場合、もしそれに対して損害をこうむつた場合は、運送業者損害賠償をするというようなことになつておるようでありますが、申込者同意が得られなかつた場合は、どういうことになりますか。これは調べることはできないことになると思うのでありますが、「申込者同意を得て」という文字があるので、同意の得られない場合に対してはいかなるものを持ち込まれても、貨物運送業者引受けなければならないと思うのですが、この辺の見解はつきりしないので伺います。
  9. 中村豊

    中村(豊)政府委員 さような場合には運送業者としては非常に困りますので、第十五条の二号で、荷主点検同意を与えないときには、運送引受けを拒絶してもいいということになるわけでございまして、そういう場合にはお断りいたしますということで、その運送人責任を緩和したわけであります。
  10. 大澤嘉平治

    大澤委員 それについて、同意を得られない場合に、もうすでに荷物を運搬した場合にはどういうことになるか。かりに統制物資や何かで輸送してはならないというものを輸送した場合に、途中でなりあるいは着荷した場所で、初めて荷が危険だということがわかつたので、それを調べる場合に、申込者同意をしない場合には、それを運搬することもあるいは片づけることも実際問題としてできないと思うのですが、その場合、どういう結果になりますか。
  11. 中村豊

    中村(豊)政府委員 第十四条の規定は、今お話のありましたような、送つてしまつてからの場合はないのでありまして、「貨物運送申込があつたときは」というので、最初の申込み引受けるまでの場合だけをさしておるのであります。それで点検同意が得られなかつたならば、十五条で引受けを断ることができることとなつておりますが、御質問のような、運送の途中なり着いてからそういう疑心を起した場合の問題でありますが、その場合には引受けるときにその事実がわからなかつたのだし、運送途中でもそれについて故意または過失がなかつた場合には、運送人としてはかりに統制物資違反のものを運んでも、何ら責任はないわけであります。そういうことは他の法令規定によつて律せられることであろうと思います。  なお滿尾委員の先ほどの御質問につけ加えて申し上げますと、内容荷主の明告したところと異ならないときは、運送業者がその損害賠償しなければならないのは苛酷ではないかということでございますが、その辺のところで権利濫用を防がなければいけないという意味で、こういう規定がされたことは申し上げた通りでありますが、同じような条文通運事業法及び鉄道営業法にもあるわけでございまして、大体同じような思想で運送関係は流れておるわけであります。     〔坪内委員長代理退席委員長着席
  12. 滿尾君亮

    滿尾委員 十八条についてお尋ねしたいと思います。この二項の第一号に、「公衆利便を害することとなるおそれがないもの」という一項があるのでありますが、この「公衆利便を害することとなるおそれがない」という字句は、非常にあいまい模糊としておるが、この字句の表明するところは、あらかじめ特定の業者社会に約束しているサービス低下という意味であるかどうか。たとえば十回運行するという約束をしておつたところを五回にするということが、公衆利便を害することになるのであるかどうか。積極的に公衆利便を害する行為運送業者がやるということは、常識上考えられない。従つてこの字句は、あらかじめ約束したサービスを履行できない、サービス低下というふうに私は解釈するものでありますが、そういう意味でございますかどうかお伺いしたい。
  13. 中村豊

    中村(豊)政府委員 大体御説のような場合が多いのでありまして、サービス低下すれば公衆利便を害するおそれが相当生ずる、従いまして事業計画に定められた回数なんかを減らすというような場合には、認可をしないのが大部分の場合でございます。ただ例外としては、事業計画を拡張するようなことでも、あるいは公衆利便を害するようなことがありましたならば、やはりこの規定にひつかかるわけでございます。
  14. 滿尾君亮

    滿尾委員 第二十条について伺います。「連絡運輸又は共同経営に関する契約その他運輸に関する協定をしようとする」とありますが、この「その他運輸に関する協定」というのは、なかなかむずかしい協定だと思うのであります。一体どういうふうな内容協定を予想しておられるか伺いたい。
  15. 中村豊

    中村(豊)政府委員 設備共同使用連絡運輸または共同経営というのが例に並べてありまして、その他の運輸に関する協定ということになるわけでございますが、この場合にはたとえば事業計画としての運転回数運転系統というようなものを両者協定して、適正な回数系統にするとか、あるいは営業所その他の事業設備の位置なんかを相談するというようなことが入るわけであります。
  16. 滿尾君亮

    滿尾委員 私がお尋ねしました真の気持は、二十条で「その他運輸に関する協定」とあいまいに並べておいて、二十一条の私的独占禁止法除外例が、全面的にこの字句で除外されるという意味であるかどうかということをお聞きしたいのです。
  17. 中村豊

    中村(豊)政府委員 その通りでございます。二十一条で、二十条の規定は全面的に独禁法から適用除外されるわけでございます。
  18. 滿尾君亮

    滿尾委員 そういたしますと、たとえば運賃協定その他私的独占禁止法の禁止しております行為も、この二十条プラス二十一条の解釈で、大体運輸事業に関する限り、適用がないというふうに解釈してよろしいのでありますか。
  19. 中村豊

    中村(豊)政府委員 運賃協定の問題は非常にデリケートな問題で、ございまして、この点は運輸に関する協定に含ませていいかどうかは、解釈上非常に異論のあるところでございます。その点は関係官庁とも十分打合せて、はつきりさせたいと考えます。
  20. 滿尾君亮

    滿尾委員 実は二十条の「その他運輸に関する協定」というのが非常にあいまいでありまして、ひとり運賃のみならず、いろいろな公衆の利益を害するような、カルテルあるいはトラストというような方向に、これを発展して行く可能性をこの中に含んでおります。そこで私はそのことを心配して、二十条、二十一条のことをお尋ねしたのであります。ただいまの御答弁では、私が知らんと欲するところはぼやけておりまして、真意を捕捉しがたいのでありますが、この法律を制定されるときに、このことが明確になつておらぬと非常に困るのでありますから、明日でも明後日でもあらためてこの点について御答弁をいただきたいと思います。  次に二十四条の区域外運送についてお尋ねしますが、事業区域を定める事業のうちで、区域とり方を一体どういうふうに考えておられるかという問題、これは一つ行政区域として県一円というようなわけ方をされますか、また県のうちで何市と何郡というような区切り方をされるつもりであるか、もちろんその専業者経営規模がベースになるとは思いますけれども、大体のひな型につきましては、区域とり方はどういうふうに考えておられるか。ことに問題になるのは東京横浜地方、あるいは大阪、神戸、京都というようなところで、行政区域こそわかれておりましても、経済的には何らわかれておらぬ、密接不可分な関係にありますような地域における事業区域の定め方は、一体どういうふうに今後やつて行かれる御方針であるか伺いたい。
  21. 中村豊

    中村(豊)政府委員 事業区域現行法では非常に狭く解釈されまして、たいていの場合に、東京都一円であるとか、〇〇県一円というふうに、県単位になつておるわけでございます。しかしこれがいかに自動車の行動や自動車運送事業の実態に合わないかは明らかなことでありまして、そのためにやむを得ず現行法では、県単位区域を主たる事業区域と称しまして、当然それに付随して、従たる事業区域が観念されて、一つの県から外へ出ることも事業区域の中であるというふうに考えられておるわけであります。しかしこれでは非常に不明確でありまして、従たる事業区域として、極端に言えば、日本国中どこへ行つてもその免許範囲であるということに往々考えられがちであります。それでは秩序が保てないということで、今度の法律では、主たる事業区域と従たる事業区域の観念はまつたく一擲いたしまして、事業区域一本で行く。そのかわりその事業区域は、従来のような狭い範囲考えずに、交通経済に何ら関係のない行政区画を無視しまして、まつたく新しい見地から、交通区域を扱う、こういうことになるわけでございます。従いまして東京付近においては、東京都のみならず、数府県にまたがりますし、どこの地方行つても一県でとどまるということはあり得ない、必ず数府県に及ぶものである、そういうふうに考えて行くべきだと思います。交通区域府県単位とは何ら関係ない、府県単位交通区域には全然無関係な、ナンセンスな事柄だと私は考えております。そうしてこれを表現する方法でありますが、この場合に地図の上で、ただコンパスで図面を描くということでは、客観的に明示することが困難でありますから、その場合には、あるいは便宜上行政区画の名前をお借りして、何県の何郡ということになるかもわかりませんけれども、それにしてもその郡は数府県にまたがる、あるいは一つの県の中でも入らない面も出て来る、こういうことになろうかと思うわけであります。
  22. 滿尾君亮

    滿尾委員 事業区域のきめ方は、府県行政区画にかかわらずという考え方は、従来より一段の進歩でありまして私も非常に賛成するところでありますが、しかるにこの自動車行政末端機構府県区域になつておりますところにおきましては、今のお話と相当矛盾する点があると思います。しかし大体のお考えは非常にけつこうだと思います。  二十五条の場合に、何か重大な責任事故を起した業者に対して、戒飭するというような考え方を持つておられるかどうか、私にはちよつと気がつかないのでありますが、もしそういうようなお考えがあるとするならば、関係条文はどれでありましようか。     〔委員長退席坪内委員長代理着席
  23. 牛島辰彌

    牛島政府委員 第二十五条の、重大な事故が発生いたしました場合の経営者責任追究の問題でありますが、この法令においては今からその点は考慮いたしておらぬのであります。ただ問題といたしましては、今後二度とそういう事故を起さないように、改善命令は出し得る建前になつております。
  24. 滿尾君亮

    滿尾委員 この法律が一面におきまして、これらの道路運送事業というものを国家の免許事業といたしまして、非常に手厚く保護している。しかるに多数の死傷事故を起した場合に対しまして、業務上の改善命令以外に監督官庁に打つ手がないということは、非常に遺憾なことである。これはやはり一応特別の権利義務関係に立つのでありますから、単なる民間事業ならば文句をつけるものではありませんけれども、特別の監督関係に立つのでありますから、ある程度これは事故の軽重に従つて、その業者に対して戒飭する手続をとらるべきではないか。改善命令を出すからそれでいいということでは、私は運送事業に対する行政監督官庁として、非常に不十分であり、手落ちであるように考えますが、政府はさようにお考えになるかどうか。
  25. 牛島辰彌

    牛島政府委員 道路運送法建前から、この立案に際しまして、法令事項としては経営者責任を追究するようにはなつておらぬのであります。しかしながら私どもといたしましては、重大なる運転事故を起し、その原因が運転者操縦の誤り、あるいは車輌の整備不良に基くことでございますならば、これは運送法上の問題といたしまして十分に考えなければならぬ問題だと思つております。ことに運転者操縦によるところの事故といたしましては、運転者刑事上の個人責任を追究されるわけであります。しかしながら経営者といたしましてこれを見ました場合には、社会的にも道義的にもその責任というものは十分に考えなければならぬ問題だと考えております。私どもといたしましては自動車、ことに乗合自動車によるところの相当大きな事故が、運転者責任によつてつておる事情にかんがみまして、経営者に対しまして管理を十分厳正にし、運転者の選択なり、訓練なり、服務を厳正にして、十分なる責任を痛感するまうに、次官通牒を各事業者に対し直接出しまして、経営者の注意を喚起いたしております。各経営者といたしましても、その点を非常に理解し協力いたしまして、運転事故の防止、交通の安全ということについてはおのおの対策を立てて、また乗合自動車協会等におきましても、特に保安委員会のごときものを設定いたしまして、両者相とも運転事故の絶滅に協力いたしておるような次第でございます。
  26. 滿尾君亮

    滿尾委員 私は政府委員の御答弁にはなはだ不満の意を覚えるのであります。どうしてもこれは監督上の責任で追究すべきものは、やはり監督官庁は追究すべきである。事故を起した人の刑事上の責任は、これはもちろんでありますから、ここで論議をする余地はない。酒を飲んで事故を起し、数十人を殺した場合、その個人について刑法上の責任を追究することはもちろんでありますが、しかし酒を飲んでいる運転手車輌運転に当るような監督をしている経営者責任というものは、やはり追究されなければならぬと思う。近来事故激増の趨勢にかんがみ、また人命を尊重すべしという今日の社会通念にかんがみまして、道路運送法一つの盲点があると思う。これはどうしてもある程度の権限を運輸大臣は握つて事故を二度、三度繰返すようなものは、その会社の経営をとめる必要はありませんけれども、不適正な監督しかできないような経営者は、大臣監督権の発動によりまして、更迭を要求するくらいの監督権はぜひ必要だと思うのでありますが、そのようなことをいたそうと思うならば、現行法のどの条項によつて可能なのでしようか、それとも絶対見込みはないのでございましようか。
  27. 牛島辰彌

    牛島政府委員 経営者更迭と申しますか、解任を要求すべき条章は、この道路運送法にはございません。
  28. 滿尾君亮

    滿尾委員 二十五条の問題は現行法にはないということでありますが、これはあらためて考えていただきたいと思うわけであります。  次に第二十八条に移りまして、「六歳未満小児については、旅客一人につき少くとも一人まで無賃運送しなければならない。」と書いてありますが、これは妙な規定の仕方であります。「少くとも」というような、ミニマムをきめて、それ以後のことがあいまいになつていることは、この六歳未満小児無賃という原則を実行する上において、将来非常に疑義を生ずる。従つて明確に書かれたらどうか。「少くとも」と書いてありますから、その経営者がかつてにできる。しかし小児無賃原則を立てる以上は、この範囲を明確にせられる必要があると思いますが、いかがでございましようか。
  29. 中村豊

    中村(豊)政府委員 これは小児無賃輸送原則をうたつたわけでありまして、ただその場合に、何人でもみんな無賃で輸送しなければいかぬというのでは、これは無理なことでありますので、一人だけは絶対に無賃で行けるということであります。それ以上無賃を許されることは、事業者がその意思ならば非常にけつこうなことでありますから、その意味で「少くとも」としたわけであります。
  30. 滿尾君亮

    滿尾委員 政府委員は私の見解に御賛成がないようでありますが、こういうあいまいな、最低限度をきめる、ことに賃金をとるかとらぬかというような重要な問題につきまして、非常に幅のある規定の仕方は、誤解があつていかぬ。これは明確に御規定になる御意思はないかどうか。  第二十九条へ行きまして、いろいろな旅客に対する制限でありますが、この中で、非常によごれた服装をしておつて、隣の人に迷惑をかけるというものも当然禁止すべきものだと考えますが、御意見はいかがでございましようか。  さらに時間節約のために続けますが、第三十条におきまして、この事業者が遵守すべき事項を運輸省令できめると書いてあります。この中で、旅客の便利の確保のために遵守すべきことは書いてあるが、安全性を確保するためのことはここにうたつてないのでありますが、これは別な法律に譲るという意味で書かれたのであるか。私はやはり事業者に対する法律として、この条項に併記すべきものではなかつたかと考えるのでありますが、私の気のつかぬところにおきめになつておるかどうかをお伺いしたい。
  31. 中村豊

    中村(豊)政府委員 二十九条で、たとえば旅客がどろくつをはいていてきたない場合には、そういうのは乗車を禁止すべきだというお説でございますが、あまりどろくつというようなことは……。
  32. 滿尾君亮

    滿尾委員 いや、どろくつじやない。非常にきたない服装をしておるわけです。
  33. 中村豊

    中村(豊)政府委員 それは公衆交通機関ですから、そこまで法律はつきり禁止してしまうということもいかがかと思われるので、この二十九条に書いた程度のことだけにしておいて、あとは健全な良識にまちたいと思います。まだ現在の情勢ではそうまで禁止してしまうのもいささか無理ではないかと思われます。  それから三十条の省令への委任に、安全の問題が入つていないというお話でございますが、安全保安については、車輌に関する限りは、道路運送車輌法に詳しく規定がされておるわけで、そちらで全部おおつておるわけでありますが、運行の安全の問題につきましては、二十五条とか、二十六条、二十七条というような条文がそれの点に触れておるわけであります。
  34. 大澤嘉平治

    大澤委員 第二十二条に「一般乗合旅客自動車運送事業者は、旅客運送に附随して、少量の郵便物、新聞紙その他の貨物運送することができる。」となつておりますが、例の海上運送法によりますと、郵便物その他を運送するために、政府の補助金を出しておるのであります。運送事業が海上であると陸上であるとを問わず、いずれにいたしましても同じ国家の重要なる事業であると思いますが、海上運送に対して国の予算をもつて、すでに昨年度は三千万円、本年度は三千三百万円という補助金を出しており、陸上運送が同じ仕事をしておるにもかかわらず、補助金を交付する何らの規定がないのでありますので、政府は、海上運送と陸上運送に対してどういう考え方をもつて、この法律を想定されたかということについて、お伺いしておきたいと思います。
  35. 中村豊

    中村(豊)政府委員 海上運送法の主管ではありませんが、海上運送法の方では、当該航路の性質上、経営が困難なものに対して補助をするというわけでございまして、経営困難であるが、ほかに交通機関がないから、郵便物の運送その他公益上の必要のために、どうしてもやれという場合に、その損失補償の意味で補助金をやる、こういうことだと思うのでありますが、陸運の方では、郵便物の運送は大部分、幹線については国有鉄道がありますし、その他の地方の枝葉については、乗合バスがその役目を負うわけであります。だからその点で、多少海上と陸上とは違つて、海上ではほかの交通機関もなく、それを無理にやらすことに事業者に相当の負担がかかる場合が予想されるので、こういう補助制度をつくつたわけでございますから、その点、多少性質が違うものだと思います。
  36. 大澤嘉平治

    大澤委員 次に三十四条におきまして、運送事業者が「災害の救助その他公共の福祉を維持するため必要であり、且つ、当該運送を行う者がない場合又は著しく不足する場合に限り、自動車運送事業者に対し、運送すべき旅客若しくは貨物運送すべき区間、これに使用する自動車及び運送条件を指定して運送を命じ、又は旅客若しくは貨物運送の順序を定めて、これによるべきことを命ずることができる。」のでありますが、先ほどの御答弁によりますと、命令を発して運送を命じて、事業者に損失をこうむらした場合に対して、その二項の規定で、損失補償に対しては、「補償金の総額が国会の議決を経た予算の金額をこえない範囲内でこれをしなければならない。」ということになつておりますが、この「補償金の総額が国会の議決を経た予算の金額」というのは、どういう予算がありますか、またどの程度の金額であるか、承りたいと思います。  次に、お伺いいたしたいことは、三十六条の「自動車運送事業者は、その名義を他人に自動車運送事業のため利用させてはならない。」ということになつておりますが、三十七条において、運輸大臣の許可を受けなければこれができるというふうになつておるようであります。運輸大臣の許可が、すなわちかりにタクシー業者なりあるいはハイヤー業者が、自分自動車運転手なり何なりにこれを貸し与えて、それによつて貸し与えた賃金をその事業者が受取るということで、公共の利便を害しないのであるならば、運輸大臣はこれを許可しなければならないというようになつておるようでありますので、この第三十六条は、第三十七条の運輸大臣の許可を受ければさしつかえないということになると解釈してさしつかえないかどうか。
  37. 中村豊

    中村(豊)政府委員 三十七条は自動車そのものの貸渡しでございますが、三十六条は名義の利用とか事業全体の貸渡しとかいうわけで、範囲が違うわけでございます。もう少し詳しく申し上げれば、三十七条は動産としての自動車を貸し渡すわけでありますから、事業者が車を貸したことによつて、ほかの事業者設備がそう弱体化しない、あるいは貸すことによつて大してその他の実害が起らない場合には、これはよろしい。しかしそれを自由放慢にやられては、事業の基礎が不安定になりますから、許可制度にかからしめる、こういうわけで、あくまでも自動車という動産そのものの話でございます。ところが第三十六条の方の第一項は、いわゆる名義貸しの問題でございまして、免許を受けたその権利そのものを他人に貸し渡すということでありますから、名義を借りて実際やるものは、無免許営業になつて処罰されるわけであります。また第二項の「事業の貸渡」というのは、従業員、事業施設など一切を含めて他人に、その他人の名前で経営をさせるということであります。借り受けました者が、同じく無免許営業になるわけでございます。いずれにしても三十六条は、その事業全体を一括して貸したりする場合をいうのであります。
  38. 大澤嘉平治

    大澤委員 そうしますと実際問題として、東京都内のタクシー業者が会社の車—動産を運転手に貸し与えて、この運転手がどういうことをするか、それは別として、貸付手数料を月に五万なり十万なり会社が貸賃をとるということに対して、これが公共の利便を害さないということになれば、運輸大臣は許可しなければならないことになつておりますので、タクシー業者とすれば、ただ単に自動車を持つていたのでは何らの営業行為にならないので、たとい月に五万でも十万でもの貸賃をとることを目的で、その事業を営んでいる場合がありますが、自動車運転手に対して月何ぼという契約で貸し与えていることはさしつかえないかどうか、この点承りたい。
  39. 中村豊

    中村(豊)政府委員 今のような場合は、その車を借りた運転手が、自分の名前で営業をやつて運賃を収受したり、お客を勧誘したりするという事業をやりますれば、それは三十六条第二項にいう、事業の貸渡しを受けたことになります。従つてその運転手は無免許営業で、法律違反になるわけであります。また運転手自分の名前ではなしに、借りた会社の、何とかタクシーという会社の名前で営業して、運賃自分の収入にするという場合には、会社の免許の名義を借りたということで、名義借りの無免許営業になるわけであります。またそれを貸したタクシー会社は、名義貸しの違反になるわけであります。すなわち三十六条第一項になるわけであります。それでお話のような点は、いずれから見ましても三十六条の違反になるわけでありまして、三十七条はそういうのではなしに、営業とは全然関係なしに、人の車、事業用の車を借りるとか、あるいは免許権を持つておる者が足りない車を補うために、他の事業者から事業用の車を借りるという場合で、借主の方にその車を使う正当な権限があるか、あるいは車を使つても営業をやらないという場合をさすわけであります。
  40. 大澤嘉平治

    大澤委員 そうしますと三十七条の方で免許を受けた運送事業者が、営業をやるかやらないかはもちろん知れるはずはないのでありまして、要するに一箇月五万円とか十万円とか、あるいは一日千円とか二千円とかいうような、金額の点はいずれにいたしましても、契約のもとに貸すということは、今のお話で行くとできないことになりますが、結局免許を受けた事業者とすれば、その車を一日幾らなり、月幾らで貸すことが、営業の目的ではないかと思います。またこれを貸す場合でも、当然ただいまのお話で参りますと、かりに一目貸す場合に、千円で他のお客様に貸すとか、あるいはだれに貸すとかいうことになる場合にも、運輸大臣の認可を受けなければ、一日幾ら、あるいは月幾らで貸すととができないということになると、運輸事業の目的を遂行することは非常にむずかしくなる。これはどういう関係になるか、この点はむしろ解釈に苦しむわけでありますので、この辺のところをもう少し掘り下げて御説明願いたい。
  41. 中村豊

    中村(豊)政府委員 免許を受けた事業者は、免許の際に事業計画を立てて、これこれの車でこれこれの事業をやるという内容を約束してあるわけでございますので、その通り実行する義務がありますが、その義務を履行するにさしつかえない場合に車を人に貸すのは、この三十七条の二項で許可になるわけであります。たとえば自分設備が余つていて、事業計画を履行するにはなお余りがあるようなとき車を人に貸す場合には、三十七条で手続をすればいいのでありますが、全然自分自身で事業経営せずに、ただまつたく車を他に貸すという車貸業をやるだけの目的で、事業免許を受けることは違法であります。車貸業は自動車運送事業ではないにかかわらず、自動車運送事業免許を受けておいて、車貸業に専念することは違法であります。
  42. 大澤嘉平治

    大澤委員 ただいまの御説明によりますと、運送事業者が全部他に自動車を貸すというような場合には、もちろんそういうことに解釈されることも当然でありますが、その一部を、かりに百台のものならば、そのうち十台なりあるいは二十台なりを貸し与えるという場合に、かりに一日貸す場合でも運輸大臣の許可を得るか、また許可を得なければならないかということになるわけでありますが、貸す場合としても、大会社が事業者に対して、一箇月間車輌を貸せ、あるいは半月間貸せとかいうようなことは当然あることだと思います。それがかりに造船会社なりあるいは大きな貿易会社なりが、百台ある自動車会社に対して、百台全部貸してくれと言つた場合、どのお客様に事業者が貸すのも、一つの営業である以上何ら拒むこともできないし、また採算が合えば貸すことも当然さしつかえないと思います。そういう場合に、今のお話で行くとできないように聞えるのでありますが、こういう点に対して、実際問題といたしますれば一日貸してくれということに対して、すぐ運輸大臣の許可を得るということも、はなはだ事務が煩雑でむだなことであるようにも考えられますので、どういうふうに扱うか、その点を御説明願います。
  43. 中村豊

    中村(豊)政府委員 御指摘のような問題は、専属配車という名前でやつておりますが、一日幾らという運賃を認可しましてそれで許している。従つて三日なり一週間なり一月、そういう契約を継続してやれば、一月の専属配車ということになるわけでありまして、それは車を貸すという考え方ではなくて、運送事業者が自分責任で、自分運転手自分の燃料、資材で車を動かして営業をやる、ただその場合に、あるところに専属に車を出して、荷主さんなりお客さんを専門に運ぶという契約になるのでありまして、それは三十七条の問題ではなくて、運送契約の一つの形であります。そういうものはもちろん是認しておりまして、現に方々で行われているわけであります。ただその場合はあくまでも運送事業者にすべての責任義務があるが、そういう場合はよいわけであります。
  44. 大澤嘉平治

    大澤委員 そうしますと、ただいまお伺いしましたような場合は、運輸大臣の許可は受けなくてもいいということになるわけでありますから、もちろん一月貸そうが半月貸そうが、大臣の許可はいらないということに了承してさしつかえないですか。
  45. 中村豊

    中村(豊)政府委員 はい。
  46. 大澤嘉平治

    大澤委員 次に、かりに百台ある者が、動産でありますから、十台の自動車を貸し与える場合に、運輸大臣の認可を求めれば、車だけを貸すことで認可するのか、あるいはそれに運転手なり何なりを全部つけて貸さなければ、設可しないかということをお聞きしたい。つまり運転手なり燃料なりをつけないで、ただ車だけを貸す場合に、運輸大臣は認可するかどうかということであります。
  47. 中村豊

    中村(豊)政府委員 誤解があるといけませんので、もう一度先ほどの御質問に対して念のために御答弁いたします。一日なり一週間なり一月専属で他の者に貸すのは、三十七条の運輸大臣の許可はいらないのかというお話ですが、専属配車と称して、運送責任荷主運転手や燃料、資材、全部運送事業者が持つて専属させるというのは、運輸大臣の許可がいらなくて、運送契約の一つの態様として認められるわけでありまして、それでさしつかえないわけであります。それから車を貸すのは、運転手その他の資材をつけるのかというお話でありますが、これは車だけを貸す場合を考えております。
  48. 大澤嘉平治

    大澤委員 先ほどのお話では、車を貸す場合、百台あるものを百台貸したのでは目的に反するということでありますから、今御質問いたしましたように、百台の中で十台なり三十台なり、油も運転手もつけずに、車だけを貸し与える場合に、運輸大臣は許可をするかどうかということです。許可しなければならないというのでありますから、これはただ行政官庁として、公衆利便を害するかどうかということの判定だと思いますので、どういうふうに判定を下されるか、どの程度までを認めるかということをお聞きしたい。
  49. 中村豊

    中村(豊)政府委員 三十七条第二項によつて、その貸渡しによつて公衆利便を害することとなるおそれがある場合以外は、許可をしなければいかぬというわけですから、百台のうち二十台がよいか十台がよいか五台がよいかは、その都度々々考えなければいけませんが、免許を受けて事業計画を約束してあるのですから、それだけを履行する義務があるのに、その事業計画をやるだけの能力がなくなつてしまうような場合には、公衆利便を害することになるわけであります。つまりどの程度ということは、実際に当つてみなければわからないので、自分のところに残している車で、十分に事業計画通りの仕事ができるか、需要を満たし得るかどうかによつてきまるわけであります。
  50. 坪内八郎

    坪内委員長代理 本案に対する審議は、今日はこの程度といたします。     —————————————
  51. 坪内八郎

    坪内委員長代理 次に、ただいま日本国有鉄道法の一部を改正する法律案前田郁君外四名提出衆法第五九号が付託になりましたので、本案を議題といたします。まず提案者より提案理由の説明を求めます。前田正男君。
  52. 前田正男

    前田(正)委員 ただいま議題となりました日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につき、提案者を代表いたしまして、提案の理由並びに要旨を御説明申し上げます。  日本国有鉄道法は、第三回国会において可決を見、昭和二十四年六月一日から施行せられたのでありますが、この法律は公務員の労働問題解決を契機として、急遽法制化せられたため、その内容は必ずしも整備されたものとは言い得ないのであります。今第三回国会において本法審議の際詮議せられました。最も重要な事項をあげますと、従業員に関する事項を除いては、監理委員会の性格及び総裁との関係、役員に関する事項、運輸大臣監督権等でありまして、そのうち財務に関しては第四回国会において改正せられたのであります。  公共企業体としての日本国有鉄道は、発足以来約二箇年を経過いたしたのでありますが、その間における実情に徴しまして、国鉄運営上並びに運輸行政の総合性を期する上にも、適切でないと認められるものがあるのであります。まず監理委員会であります。本委員会は国鉄の最高機関として「国鉄の業務運営を指導統制する権限と責任を有する」と定められているのでありますが、必ずしも所期の目的を達しているものとは考えられないのでありまして、むしろ総裁の諮問機関的あるいは監査機関的存在と見るを至当とするようであります。しかも「総裁は監理委員会に対し責任を負う」と定められているため、国鉄運営の責任の所在は明確ではないのであります。ついてはこの際これを廃止して、国鉄運営の責任体制を確立し、総裁以下役員をして、全責任をもつてその創意、くふうによつて運営に当らしめることが、国鉄経営の能率化と健全なる発展を期するゆえんであると思料するのであります。  次に運輸大臣監督権についてであります。日本国有鉄道の公共企業体たる本質にかんがみ、これが自主性はでき得る限り尊重し、これに対する監督を最小限度にとどめなければならないことはもとよりでありますが、国鉄は国の事業経営、監理しているもので、監督上の最高責任は申すまでもなく運輸大臣にあるのであります。従つて公共の福祉の確保、他の運輸機関との総合調整をはかるため、監理委員会廃止に伴つて、必要の最小限度において、若干の許認可事項を追加するとともに、命令権の内容を明確にすべきであると考えるのであります。  以上のような趣旨に基いて立案いたしましたのが、本改正案でありまして、その要点は次の通りであります。まず第一に、監理委員会を廃止したことで、これが本改正案の主眼であります。第二に、役員に関しましては、監理委員会の廃止に伴い、新たに監事を置き、総裁、副総裁、理事並びに監事の員数、任免方法、任期等を規定または改正した点であります。第三には、運輸大臣の許認可事項といたしまして、運輸事業の貸渡しまたは借受け及び運輸事業経営の委託または受託、並びに国鉄の基本的な業務運営組織の変更の二項を追加し、また運輸大臣の国鉄に対する命令権の内容を明らかにいたしまして、国鉄が運輸大臣の許認可を受ける事項並びに地方鉄道法または軌道法の規定により地方鉄道業者または軌道経営者に対し命令、許認可した事項であつて、国鉄と関連のある事項を例示したほか、運賃法の規定により総裁の定めることができる運賃料金の変更を命ずることができるようにいたしましたが、命令権はいわゆる伝家の宝刀で、みだりに発動すべきものでないのでありまして、公共の福祉を増進するため、特に必要と認められる場合に限られるのであります。  なお運輸大臣に立入り検査権を認め、国鉄から報告を徴するほか、いつにても独自の立場において立入り検査をなし得ることとし、また、監事に対し国鉄の事業経営成績及び財政状態に関し意見を求めることができることといたしまして、双方相まつて監督者として国鉄の実情を把握するに遺憾のないようにいたしたのであります。  その他本法施行に伴い、必要な役員の任期の経過規定並びに運輸審議会付議事項の追加等、所要の改正をいたしました。  以上日本国有鉄道法の一部を改正する法律案の提案理由並びに要旨について申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  53. 坪内八郎

    坪内委員長代理 これより質疑に入ります。質疑はございませんか。—質疑がないようでありますので、今日はこの程度とし、次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十七分散会