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1951-05-14 第10回国会 衆議院 運輸委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十四日(月曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 前田  郁君    理事 大澤嘉平治君 理事 岡田 五郎君    理事 坪内 八郎君       稻田 直道君   岡村利右衞門君       尾崎 末吉君    片岡伊三郎君       黒澤富次郎君    滿尾 君亮君       山崎 岩男君    山口シヅエ君       飯田 義茂君  委員外出席者         参議院議員   鈴木 恭一君         運輸事務官         (港湾局港政課         長)      四方田耕三君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ――――――――――――― 五月十二日  札幌、東京間民間航空路開設に関する陳情書  (第六九四  号)  青函航路貨物運賃引下げに関する陳情書  (第六九七号)  五井、姉崎間にガスカー停車場設置に関する陳  情書  (第七三一号)  道路運送法案に関する陳情書  (第七三八号)  船川港を特定港として存続の陳情書  (第七四一  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  港湾運送事業法案参議院提出参法第一五  号)     ―――――――――――――
  2. 前田郁

    前田委員長 これより会議を開きます。  港湾運送事業法案を議題といたします。質疑を続けます。岡田五郎君。
  3. 岡田五郎

    岡田(五)委員 提案者に二、三条文につきまして御質問いたす前に、政府委員からごく簡単でけつこうでございますから、戦前及び戦時中、また戦後において、どういうふうに港湾運送事業形態がかわつたか、この経過といいますか、概要を一応御説明願いたいと思うのであります。なおあわせまして、港湾荷役状況はもちろん違つておりますが、われわれが一応理想としております先進国アメリカ及び英国におけるいわゆる港湾運送事業の実体はどういう状態であるかということを御説明願えますならば、港湾運送事業の健全なる発達と、またこの公益性の保持というようなことを念願といたしまする港湾運送事業法の審議にあたりまして、十分参考になると考えまするがゆえに、右申し上げましたような事項につきまして、ごく概略でけつこうでございますから、政府委員の御説明をまず承りたいと思います。
  4. 四方田耕三

    四方田説明員 ただいまの岡田先生の御質問にお答えいたします。  まず第一番目に港湾運送事業戦前戦時中並びに戦後の推移を御説明申し上げますと、戦前と申しますと太平洋戦争前でございますが、元来港湾運送事業はそれまでは全然自由放任状態でございまして、監督官庁もどこに所属するのかわからないという状況が続いておつたのであります。従つてその当時の企業体は幾つあつたかということも、どこの官庁にもわからなかつたのでありますが、推定いたしたところによりますと、全国港湾業者と称せられるものが二千社ほどあつたのではないか。そうしてその当時の経営形態は、いわゆる労働ボスと申しますか、親方制度によつてまかなわれて参りまして、まつたく封建的な企業形態が濫立しておつたという状態であります。それが太平洋戦争の勃発によります船舶の減少に伴つて海上輸送力増強の必要が強く叫ばれる時代になりましたために、この濫立状態における港湾運送業者をそのまま放置することは許されない、船舶不足を補うためには、港における船舶荷役を早くして、船を早く回転させなければならないという要請が強く出て参りました関係上、総動員法に基きまして港湾運送業等統制令という勅令が施行されました。それに基きまして全国のおもだつた港の港湾運送業者を原則として一港一社にまとめようという方針が確立いたしまして、ことに六大港中心といたしまして、いわゆる港運会社というものが法制に基いて設立されました。今までの群小企業港運会社なるものに統一されまして、その数は全国で大体百二十五社程度にまとまつたのであります。この港運会社中心といたしまして、戦時中の国家的な船舶不足を補うためのかなり重要な仕事を営んでおつたのでありますが、終戦に伴い総動員法廃止になりますとともに、昭和二十一年九月に港湾運送業等統制令廃止になりまして、従つて従来の一港一社の制度法律的基礎が失われまして、さらに関係方面からの指令に基きまして、昭和二十二年九月には横浜京浜運輸株式会社がまず閉鎖機関指定を受けました。さらに二十三年七月には大阪、神戸、名古屋、関門のいわゆる六大港における港運会社並びに船舶荷役会社に対して、いずれも閉鎖機関の命令が下つたわけであります。そうしてこの結果、港運会社に集約せられておりましたところのはしけ荷役機械労働者その他のものが、すべての元の出資者のところに強制的に配分せられて行つたわけであります。これを契機といたしまして、各港、ことに六大港におきまして続々と零細なる港湾運送業者が進出して参りまして、最近の数字によりますと、全国で約千五百社、従つて戦争中の十倍近い港湾運送業者というものが濫立するというような状態に立ち至つておる次第であります。こういう濫立状態の結果、資本金からいいましても、資本金三百万円以下のものが約七五%を占めるという状況であります。はしけも二千五百トン程度はしけしか持つていないものが全はしけ業者の七〇%、労働者を百人以下しか持つていないものが全業者の八八%というような、零細なる弱小企業が各港に続出したというのが、戦後における状態でございます。これはとりあえず数字的な戦前戦時中、戦後の変遷を申し上げたわけであります。  次に第二問として先ほどお触れになりましたところの諸外国の例でありますが、アメリカ制度につきましては、幸い運輸省の海運調整部長の壺井さんがアメリカへ参られまして、港湾運送業実態を調べて参られたのでありますが、英国につきましてはいろいろ各方面の資材を求めたのでございますが、詳細な資料がございませんために、御説明申し上げられないのは残念でございますが、とりあえずアメリカ港湾運送業というものがいかなる形で行われているかということを御説明いたしたいと思います。  アメリカにおきましては、日本港湾と違いまして、非常に岸壁施設が完備しておるのであります。たとえば横浜神戸におきます岸壁の数は、大型の船舶をつけ得る岸壁横浜で約百ぐらいでありまして、神戸で約六十、そのうち現在日本で使えるものは横浜で三十六、神戸で十五の埠頭しかないわけでありますが、たとえば一番大きなニユーヨークの例をとりますと、木造の棧橋も入つているようでございますけれども、二百八十五もあるわけであります。そういうように格段の相違が見られます。従つて本船が港に入りました場合に、たいてい岸壁荷役の行われているのが現状のようであります。そのため船舶荷役本船から岸に荷物を揚げますところの沿岸荷役の二種類の業種しか、港湾運送業者として認められていないようであります。その点は日本港湾と著しく事情を異にしておりまして、日本港湾におきましては、ただいま御説明申し上げましたごとく、岸壁の数は非常に少い。しかも日本工業地帯というものが、臨水地域に約八〇%が存在しております関係上、必ずしも岸壁荷物を揚げて、それからトラツクで荷物を運ぶという必要はございませんで、本船からはしけにつけまして、はしけから直接工場倉庫の河岸につけるという形が、ずいぶん古くから採用されております関係上、日本における港湾業者は、はしけ中心に発達して来ているという特殊の形をとつているのでございます。そういう意味におきまして、日本港湾運送業者というのは、最近では沿岸荷役船内荷役を含めたいわゆるターミナル・オペレーターもなきにしもあらずでございますが、やはりはしけ業者中心といたしまして、船内荷役業沿岸荷役業がこれに結びついて、港湾運送業というものの形をつくつているようでございます。しかもその取扱い数字を見ましても、まことに微々たるものでございまして、日本の六大港港湾運送業者の数は約六百七十社ございまして、その年間の取扱量は千八百四十万トンでございますが、ニユーヨークの一港で扱います貨物は一億三千五百万トンでございまして、六大港を合せましても、ニユーヨークの一港の八分の一の荷物しか扱つていない。いかに日本港湾運送業者が脆弱であり、小規模であり、また不安定なものであるか、また日本港湾施設が遅れているかということを証明しているものであると存じます。  なお法律関係でございますが、アメリカ法律制度といたしましては、陸上交通法規は非常に発達しておりますが、海上、ことに港湾運送関係法律というのは、先ほどから申しましたことく独立したものがなくて、たとえばトラック会社でありますとか、鉄道会社でありますとか、あるいは汽船会社というようなものが埠頭を経営いたしまして、そういう会社沿岸荷役労働者を供給する元請をしましたり、あるいは船内荷役労働者の元請をしたりいたしまして、その法規なども陸上運輸法規によつて律せられておるようでありますし、港湾運送自体を規律する法律というものは、アメリカには見当らないようであります。従つてこの法規日本の特別な事情によつて必要であるということを説明いたしますために、今まで相当時間を経過したわけでありますが、そういう事情でございまして、日本港湾荷役業体と申しますものは、世界に類を見ないほどの独特な、と申しますことは、はしけ中心に発達して行つている。日本工場ないしは倉庫立地条件からいたしましても、また日本港湾施設の貧弱な点からいたしましても、今後当分の間はしけ中心とする港湾運送事業体というものは継続するのではないか、かように存ずる次第であります。またこの形は必ずしも日本港湾運送業者の不経済性を示すものではなくして、むしろ日本港湾工場立地条件から言えば、ある意味においては存在理由を持つているのではないかというように考える次第でございます。以上簡単でございますが、御説明をいたしました。
  5. 岡田五郎

    岡田(五)委員 それでは港湾運送事業法案の条文につきまして、提案者に二、三お尋ね申し上げたいと思います。まず第一に、第二条の第三項にございますが、「この法律で「港湾」とは、関税法規定する開港であつて政令指定するものをいう。」こういうことになつておるのでありますが、関税法にいわゆる港、いわゆる港湾法による重要港湾というのと対照いたしてみますと、必ずしも一致をいたしていないのであります。港湾法は、なるほど港湾管理、修築その他の関係からいたしまして、重要港湾あるいは指定港湾その他の港湾規定せられておると考えるのでありますが、たといかような立脚点から分類をいたした重要港湾といえども、相当現実において港湾運送事業が行われておる、いわゆる港湾運送の面から見ても重要な港湾であると考えられる港湾相当あるのであります。かような港湾については、その港湾における運送事業につきまして、この法律適用されないものかどうか。されない場合に、これら重要港湾における港湾運送事業者に対する法律的規定は何によるのか。この辺のところを提案者の御説明をお願い申し上げたいと思います。
  6. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 岡田委員にお答え申し上げます。港湾法にいういわゆる重要港湾と、この港湾運送事業対象となります港湾との、必ずしも一致しない点はどういうことかということでございまして、またお話のように、いわゆる港湾法にいう重要港湾のために港湾運送事業が行われる、そこにいささか矛盾がありはしないか、あるいは監督対象として一致しておらないのはおかしいではないかというお話でございます。一応私どもごもつともと考えるのでございますが、そもそもこの港湾運送事業法は、御案内のように交易を主として考えております。施設管理という面から見まする重要港湾が、必ずしもこの交易対象といたしております港湾とは、一致しないこともあり得ると思うのでございます。実際問題としてこれを当つてみますと、あるいは宮古であるとか、小名浜、飾磨苅田、伊万里、この数港が重要港湾、いわゆる港湾法重要港湾関税法にいう開港との間に違いがあるわけでございます。提案者といたしましては、こうした二、三の港はございますけれども、これは建前からいたしまして、港湾運送事業は自由である。     〔委員長退席坪内委員長代理着席〕 但し重要な港湾相当多量交易が行われるという場合におきましては、これを取締り監督対象にしようという考え方からいたしまして、これらのものは自由の交易の場所といたしまして、何ら取締り対象にはならないわけでございます。従つて料金等におきましても、今日行われておりますマル公適用されるほかには、特別の監督をいたさないわけでございます。
  7. 岡田五郎

    岡田(五)委員 この港湾運送法は、大体交易——通商貿易だろうと思うのですが、交易を主とする港湾、すなわち関税法に定める港、こういう御説明で、先ほど重要港溝関税法による港湾とで一致しない港は、飾磨苅田、こういうように例示されました。なるほどその他大分あると思いますが、飾磨の例をとつてみましても、御承知のように広畑製鉄所がありまして、相当の原材料あるいはその他の販売品飾磨港中心にして出入りしておるわけであります。従いましてこれに関連いたしまして、相当事業量を持つた港運業者もできておると私は考えるのであります。また苅田港にいたしましても、主として石炭を扱う港であると考えるのであります。苅田港九州炭移出港として使命がある、かようにも考えます。要するに国が重要な港湾といたしまして、港湾施設増強その他につきまして、相当高率の補助金も出してやつておる。この重要な港湾、要するに重要なる商港としてこれを発達させ、整備するという意味合いにおきまして、港湾法による重要港湾があり、かような重要港湾は今後とも商港として、交易物資相当多量にあることを予想して、これがきめられたものと考えられるのでありまして、観念的に立法根拠法規が多少違うとはいいながら、実質的に私は同じではないかと考えるのでありまして、むしろ私といたしましては関税法に定める港と限定をされないで、物資相当多量移出入——出入りする港における港湾運送事業につきまして、全般的にこの港湾運送事業法適用せられることが、経済的に、また実際的に適合するのではないかと考えるのでありますが、この点につきましての提案者の御説明をもう一度承りたいのであります。
  8. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 岡田委員の御質問に対しましては、われわれとしてもよくわかるのでございます。実は本法をつくります際におきましても、その問題は当然問題になつて参りまして、この港湾関税法港湾にするか、それとも一般的な港湾として港湾法のものを採用すべきかということは、確かに問題であつたのでございます。しかし関係方面ともいろいろ折衝いたしました結果、ともかく日本港湾外国貿易を行う点をつかまえることが、この法案の目的から申しまして一番この際妥当ではないかという結論におちついたのでございます。もちろんただいまの飾磨あるいは苅田港等、鉄、石炭というふうになつておりますが、飾磨のごときは、あるいは開港場として今後関税法港湾指定されるときもあろうかと思います。そういう際には当然本法適用範囲に入つて来るわけでございます。従来の本法をつくりました経過等を申し述べまして、御了解を得たいと存じます。
  9. 岡田五郎

    岡田(五)委員 それでは、たとえば苅田港におきまする石炭荷扱い料金その他につきましては、全然この法律適用されないというような結果からいたしまして、今までのように、いわゆる自由企業といたしまして、料金にいたしましてもその他にいたしましても、かつて港湾運送業者が荷主と協定して運賃の割引も思う存分できる、また値上げも届出する必要ない、かように当然解釈できると考えるのでありますが、さように解釈してしかるべきやいなや、提案者の御意見を承りたいと思います。
  10. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 考え方としてはまさにただいま岡田委員の申された通りでございますが、御承知通り港湾運送事業に対しましてはマル公が今日ございますので、マル公の制限は当然受けるわけでございます。
  11. 岡田五郎

    岡田(五)委員 今提案者の御説明によりますと、港湾運送業者に対する運賃料金につきましては、現在マル公がある、こういうお詰でございますが、私はこの法律案が通過いたしますれば、多分この法律によりまして届出制にいたしまして、港湾運送料金または運賃に対するマル公が当然廃止せられることと考えますし、また最近聞くところによりますと、倉庫料金その他につきましてもマル公廃止される、こういう傾向を新聞で承知しておるのでありますが、さような面で、マル公廃止せられれば当然、私が先ほど御質問申し上げましたような重要港湾におきましては、自由に運賃料金業者の認定によつてきめられる、かように解釈してよろしいのでしようかどうか。
  12. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 お説の通りでございます。
  13. 岡田五郎

    岡田(五)委員 今提案者の御説明を聞きますと、港によつて運賃料金がまつたく自由である、ある港、すなわち関税法に示された港におきましては、運賃料金定額制でやられる、こういうことになりまして、この港の整理が行われない以上は、片一方のある港は法律適用は受けない、ある港は非常に厳格な法律適用を受ける、同じような形態の港でありながら、いわゆる関税法に定められてないから、あるいは港湾法にきめられておるからというようなことで、経済実態取引実態違つた形態を各所において現出するのではないか、かようなことは私は法律の公平な、均等な適用という観念からいたしまして、はなはだ喜ばしくない傾向ではないかと考えるのであります。もし関税法にきめられた港、こういうように制限しなければならないのならば、かような法律の公平な均等な適用、こういう面を現わす意味におきまして、ぜひ港湾法にきめられた重要港湾にして、しかも相当物資移出入の盛んな港につきましては、ぜひ関税法の港ということに一括といいますか、関税法の港に編入せられまして、法律の公平な、均等な適用の行われるようにしてくだされんことを希望いたす次第であります。これについての提案者、または政府委員の方でもけつこうですから御答弁を願いたいと思います。
  14. 四方田耕三

    四方田説明員 ただいまの岡田先生の御希望は、政府といたしましても当然考えているところでありまして、今なるべく関税法適用範囲を拡張していただくように、大蔵省にも交渉いたすつもりであります。輸出入貨物多量に入れば、当然関税法指定は受けることになつておりますので、この点は苅田港にしろ、飾磨港にしろ、今後の発展によつて必然的に編入されて行くのではないかと存じます。ただそれまでのさしあたりの措置といたしましても、料金制度適用する場合にも、現在のマル公におきましても、また今後マル公廃止なつたあとでも、いわゆる六大港中心とする料金制度というものが一応でき上りますと、その近辺の港は現実には、大体それに従つた料金というものが採用されて行くのが現状でありますので、さしあたつて近辺の港がこの法律適用があるから、ないからということのために、でこぼこが起る心配はないのじやないかと思います。そこで当然この法律適用を受ける重要港湾料金制度に、その他の港も大体従つて行くのではないか、従つて実際の取引上はさしつかえないのじやないかというふうに考えております。
  15. 岡田五郎

    岡田(五)委員 ちよつと変な質問になるかもしれませんが、提案者または政府委員の方の御答弁移出入という言葉の移の字でありますが、私はつきりいたさないのであります。どうも関税法の港ということになりますと、外国との貿易についてのいわゆる輸出入物資について、主として港湾運送事業法適用するというふうにも聞けると思いますが、私の言う、輸と移と多少違いますが、移出入といいますか、たとえば移を除いた方がよいかもしれませんが、出入りする物資の多い港についての、たとい国内航路によつて輸送されたものであろうと、少くとも港に出入りする荷物取扱い業者についてのその料金及び運賃、あるいは取扱い業者制度確立というようなことを、港湾運送事業法できめておる、かように私は考えておるのでありますが、政府なり、また提案者の御説明を聞くと、どうも外国貿易関係する港湾運送事業についての規定のようにも考えられるのでありますが、変な質問かもしれませんが、その辺はつきりひとつ答弁を願いたいのであります。
  16. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 本法は、この第二条にも申しております通り関税法適用を受ける港で、政令指定するものということになつております以上は、開港場であります。開港場と申しますれば、当然外国との貿易をいたすということに相なるわけでありまして、われわれが移出と申しますのは輸出でありまして、対外貿易をいたす港——元来本法が従来自由に放任されておりまして、今日いろいろ港湾運送というものが無秩序の状態にあることは御存じの通りでありまして、何とかこれを統制して秩序あるものにしたいというのが、政府並びにわれわれとしての考えでありますが、それをどの点で押えて行くか。元来海運事業は、自由企業を根本としておりますにもかかわりませず、日本現状から申しまして、どうしてもそれに秩序を与え、そして不正な競争というものをなくし、事業確立をはかろうといたします場合には、どこを押えたらよろしいかというところが問題になつて参りますので、とりあえず対外貿易の上におきまして最も重要と認められる港湾、こういうことに規定いたしたのであります。もちろんこれを抽象的に申しますれば、お説のように港湾法上の重要港湾について考慮を払うべきであるということもよくわかるのでありますが、政府といたしましてもこの程度のところで一応出発しようというのが、私どもの考え方であります。
  17. 岡田五郎

    岡田(五)委員 では次に第九条に移りたいと思います。第九条は港湾運送事業者運賃料金というものにつきまして、いろいろと規定してあるようであります。まずこの規定の第二項で御質問申し上げたいと思うのでありますが、利害関係者は、港湾運送業者が告示いたしました運賃料金に対しまして、三十日前に異議を申し立てろ、こういうことになつているのであります。この異議申立てが、三十日ぎりぎり一ぱいに申し立てても、その意義が有効であるように考えられるのであります。そういたしますと第九条の五項でありますが、この港湾運送業者が告示いたしました運賃料金が三十日を経過した場合は、その三十日以後三十一日目にその効果を発する。それから利害関係者異議を申し立てて、そして公聴会を開いて運輸大臣決定をした場合は、決定の日からその効果を発する。こういうように五項はなつているのでありますが、もし告示をいたしました翌日に利害関係者異議を申し立てて、そして運輸大臣がその港湾公聴会を開いて、二十日目に運輸大臣決定をした場合に、この三十日を経過しないで、その二十日目にすでにその運賃料金効果を発するのか、第九条の五項によりますと「三十日を経過したとき、又は前項の規定による運輸大臣決定があつたとき」こういうようになつておりまして、三十日の経過期間と、「又は」以降のものが大体同じような効力を発するように考えられますので、先ほど御質問いたしましたように、二十日目に運輸大臣決定をした場合に、三十日を経過しなくても二十日目にその運賃料金効果を発するのかどうか。ここに私多少疑問を持つているのでありますが、その点について御説明を聞きたいのであります。
  18. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 異議申立てをいたしまして、二十日に運輸大臣公聴会を開いて決定をする、そうしました場合には、その二十日から有効な料金として実施されるわけでございます。
  19. 岡田五郎

    岡田(五)委員 もう一つ御質問申し上げたいのでありますが、それでは三十日目に利害関係者異議を申し立てまして、そうして運輸大臣公聴会を開いて決定するのに二十日間かかつた。そうすると大体五十日目に運輸大臣決定が出た。こういう場合に三十日と五十日目とはどういう関係になるのですか。
  20. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 この二項にもございます通り、利害関係人は、同項の第一項の期間内でございますが、その期間内に運賃及び料金の変更を港湾運送業者に命ずべきことを請求することができる。従つてこれはこの三十日間を本法においてはその最後の期間といたしまして、到達主義をとつております。と申しますのは、要するに事業の安定を早く求めるという意味におきまして、その後ずるずるその三十日に発送すればどうなろうというふうな考え方をとつておりません。もちろんいろいろの取扱上の事故、その他の事故によりまして遅れた場合は、当然有効な請求として取上げられるのでありますが、原則としては三十日以内に運輸大臣に到達するか、あるいは出先の官庁に到達するかということを、本法では考えておるのでございまして、かりに三十日目に出しまして、それが五日なり六日なり経過いたしました場合には、その請求は無効と私どもは考えておるのであります。従つてその経過後に届きましたものに対しましては、運輸大臣は何らそれに対して処理をしない。従つてお説のように五十日目に決定されたというふうなことは、あり得ないと一応考えております。
  21. 岡田五郎

    岡田(五)委員 私はこの告示をいたしまして三十日の期間を置いたということは、利害関係者の利益の保護であり、また港湾運送業者の利益の保護の期間であると考えるのでありますが、先ほど第一問でお尋ねしましたように、三十日に満たない二十日目に運輸大臣決定した場合には、その二十日目から効力が廃生する、こういうように二十日に到達しないうちにこの運賃料金運輸大臣決定したら効力を発生する、こう言つておられながら、一面において利害関係者が三十日目に異議を申し立てて、そうして運輸大臣決定が二十日も遅れた、その延びた二十日間は、港湾運送業者のために三十日目で切つてしまつて効力を発生する、ころいう法律適用であると、いかにも港湾運送業者の利益の保護に偏し過ぎておるのではないか、むしろ利害関係者が利害重大なりとして善意をもつて、とにかく三十日目に異議を申し立てたならば、運輸大臣決定あるまでこの利益を保護し、この主張を擁護してやることが当然ではないか、かように考えるのでありまして、どうも第一問に対する御答弁と第二問の御答弁を突き合せてみますと、先ほど申し上げましたように港湾運送業者の権利保護にあまりに急なるごとく私は感ずるのでございますが、その点いかがでございますか。
  22. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 要するに運賃料金というものを業者がきめまして、それが公正なものでありますれば、当然それによつて事業が経営されるというのが本来の建前でございます。しかしながらそれでは港湾の秩序の上から見ましても、また荷主の立場も考慮されなければならないという点から、そこに料金決定し、未決定状態、すなわち実施の猶予期間を置いて、利害関係人の異議申立ての期間をそこに置いたわけであります。従つて異議申立てがありまして、それによつて運輸大臣公聴会を開いてこれを決定すれば、それが早ければ早いほどいいのでございまして、その決定の日から法定の期間内で決定されますことによつて効力を持たせる。従つてどこまでも業者の保護になるのではないかというようなお話でございますが、これは見方でございまして、業者の保護と言いますよりも、従来業者には、それで決定さるべきものを、利害関係人の異議申立ての猶予期間を置いておいたのだというふうに解釈いたしますれば、おのずから別な見方も出て来るのじやないか、かように考える次第でございます。
  23. 岡田五郎

    岡田(五)委員 私はまだ提案者の御説明では納得できないのでございます。第二項に、三十日間は利害関係者異議を申し立てられる権利を持つております。しかもことに石炭業者にいたしましても、木材業者にいたしましても、ほとんど日本国内のあらゆる港湾石炭荷役せられておるのであります。この港々で告示されたこの運賃料金石炭業者が知悉するには、相当の期間を要するのであります。かような意味から、私先ほど申し上げました利害関係者が、ほんとうに善意を持つてこれに対処いたしましても、三十日間の利害関係者異議申立ての期間は決して長きにあらず、かように考えるのであります。しかもこの利害関係者異議申立てにつきましては、運輸大臣は慎重に当該港湾において公聴会を開いて、あらゆる事情を勘案して、運輸大臣利害関係者の利害の保護のためにいろいろな制度を設けておられまして、この運賃料金の変更につきまして、変更するやいなやを決定せられるのであります。かような意味から申しまして、私は利害関係者異議申立ての期間三十日は十分擁護すべきである、かように考えるのであります。従いまして三十日目に申し出て——もちろん運輸大臣は善意をもつて急速に公聴会を開き、またいろいろ調査を始められて、急速にこの運賃料金の是非を決定せられるのでありますが、少くともこの期間は、利害関係者異議申立ての権利を保護する意味において、私はこの運賃料金決定運輸大臣決定の日まで、要するに三十日経過後においても、運輸大臣決定の日まで当然延ばすべきではないか、かように考えるのでありますが、この点重ねて提案者の御答弁をお願い申し上げます。
  24. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 立法論としての御説ですと、私にもよくわかるのでございますが、本法といたしましては三十日の期間を置きまして、あとの三十日で決定いたすのでございます。そこでちよつと誤解があるのではないかと思うのでありますが、三十日目にその異議申立てをいたしまして、それが五十日目、あとの三十日の二十日間の間で決定されるということは、当然有効な措置でございまして、結局六十日間あるわけでございます。しかし異議申立て期間は三十日ということにここではいたしておるのであります。従つて説明のように六十日がよろしいのではないかということになりますと、あとの一月、また九十日はどうだということになりますので、その点は御意見としてはよくわかるのでございますけれども、本法といたしましては三十日を異議申立ての期間、その次の三十日を処理の期間といたしまして、六十日間というものが最初に運賃決定いたします場合または変更いたします場合に、不安定な状態になつておるというわけでございます。そこで最初にもどりまして、結局この運賃料金をどの程度の期間に決定することが、商取引の上におきましても妥当であるかということに相なるわけでございまして、本法といたしましては六十日間を一応不安定なとき、こう考えましてこの間で決定して行く、おそくとも六十日間の余裕を届きまして料金決定して行かないことには、業界が不安定で困るのではないか、こういうところから出発いたしておるのでございます。
  25. 岡田五郎

    岡田(五)委員 もう一つ、この問題につきまして、あるいは反対的な意見になるかもしれませんが、申し上げたいのであります。この港湾運送業者運賃料金届出制になつておりまして、港湾運送業者が適当な減価償却と適正な利潤を得る程度で、運賃料金を一方的にきめて、運輸大臣に届出をするわけであります。運輸大臣は、異議申立てがなければ、この届出をそのままのみ込まなければならないような制度に、この法律はなつておると私は思うのであります。かような意味から行きまして、荷主すなわち利害関係者の利益を保護して、この異議申立てについては十分尊重する意味におきまして、少くともこの期間内において、一方的にきめられた運賃料金に対して利害関係者異議を申し立てるならば、運輸大臣は十分これを誠意をもつて受入れて、これに対処すべきである、かように私は考えるのであります。これがもし運賃料金決定するにあたつて利害関係者を含めての公聴会を開く、あるいは運輸大臣が行政的な公平な観念からいたしまして、この運賃料金を認可する制度になつておりますならば、私はある程度の期間については、説明者の言われるような方向になつてもいいと思うのでありますが、この運賃料金届出制になつておる点から行きまして、ややもすると港湾運送業者の一方的保護に陥る傾向のあることを考えまして、この利害関係者の利益保護の意味におきまして、先ほど私が御質問申し上げたような方向に、この法律の解釈を持つて行くべきではないか、かように考えるのでありますが、提案者のお気持を重ねて承りたいと思うのであります。
  26. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 まさにお説のようにこれは認可制ではないのでございまして、要するに建前といたしましては、荷主と業者の間の話合いで運賃料金がきまるという形をとつております。従つてこの制度がより民主的であるか、行政官庁の認可がより公正な運賃がきめられるかということに対しましては、意見が相当あると思います。本法におきましてはどこまでも利害関係人、荷主あるいは同業者その他と話し合いまして、妥当な運賃がきめられた場合に、初めて運輸大臣はこれに対して決定をいたすのでございます。しかしもちろん運輸大臣が全然それにまかしておるかと申しますと、そうではございませんので、能率的な経営のもとにおける適正な原価を償い、かつ適正な利潤を含むものであること、特定の利用者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと、この条件に違反しておるということを運輸大臣が見ますならば、自分みずからにおいてもこの料金決定に対して停止命令を出し、新たに決定する権限も保留いたしておるのであります。そういうふうな意味におきまして、業者が自分できめて出すから、一方的にこの料金がきめられるということには、必ずしもならないと私どもは考えております。従つて認可主義よりもさらに一層民主的な方法によつて料金をきめて行くというふうにわれわれは考えるのであります。しかしながらお説のように、どこまでも利害関係人、すなわち荷主等につきましての配慮というものが、運輸大臣として当然なされなければならないことは、提案者の一人といたしましてもそう考えておるのでございます。政府は慎重にこの料金決定に対して利害関係人の意見を聞き、誠意をもつてこれに対処するということは、まつたく御同感であります。
  27. 岡田五郎

    岡田(五)委員 私はどうもまだしつくり納得できないのでありまして、はなはだ申訳ありませんが、さらに反省を求める意味において、つけ加えたいのであります。この港湾運送事業者は、運賃料金届出制にされたり、港湾運送事業者を登録制にされたり、この制度から見まして、港湾運送事業者相当公益的な性質を持つておるのであります。反面におきまして、港における作業につきまして、独占的な性質を持つておるのであります。港において、港湾運送事業者を使わないでは、荷物が陸に揚らないのであります。またこれを使わなければ、船に荷物が積めないのであります。独占的と言つては言葉が強いのでありますが、そういう港における一つの事業者であります。この事業者が一方的に——なるほど言葉は非常にりつぱなのであります。この言葉通り理想的に現実適用されれば、非常にけつこうでございます。「能率的な経営のもとにおける適正な原価を償い、」しかもこれは非常に意味のある文字でありますが、「適正な利潤を含む」、こういうことで運賃料金をきめるということになると、ややもすると港湾運送事業者が、港湾における独占的な地位と、それから自分の経営の健全化といいますか、事業の繁栄化を祈るがために、このりつぱな言葉を運用されまして、運賃料金を荷主その他の利害関係人に不利な、また言葉が悪いのでありますが、高い率できめられる実際的なおそれがあることを、私はおもんばかるのであります。かような意味におきまして、かような傾向をもつてきめられる運賃料金ならば、これに関係ある利害関係者異議申立て権利を十分保護すべきではないか。しかも利害関係者のわがままな主張は、また港湾運送業者のわがままな主張は、公正に判断できる公聴会という制度がありますので、この判断に基いて、運輸大臣が適正に裁断を下される。かように法律適用を持つて行きたい。かような意味におきまして、先ほど期間の問題に触れましたが、十分利害関係者の権利の保護に、さらに特段の意を注いでいただいて、この「又は前項の規定による運輸大臣決定があつたときは、」これをむしろ三十日経過しても、運輸大臣決定の日まで三十日の期間は延びるのだ、こういうふうに政府で解釈してもできるのではないか。かように私は考えますので、ぜひかような解釈をもつてこの法律を施行し、また適用せられることを切に希望するわけでありますが、なお提案者は相かわらずこの三十日をもつて最終日であるとお考えになりますか、または政府としても、さような態度をもつて今後法律適用をして行きたい、かような信念にさらにおかわりはないか、確認する意味においてさらにお尋ね申し上げる次第であります。
  28. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 法律の実際の適用に関する問題につきましては、後ほど政府の方の解釈もあるかと思うのであります。重ねての御意見拝聴いたしたいのでありますが、われわれといたしましては、三十日の異議申立て期間、そしてその次の三十日で審査決定をいたすという点を、今ただちに変更しようとする意思は持つておりません。ただお話のように港湾運送事業が、ある港湾において独占だと言われる点については、私と岡田委員との問には多少相違があるのでありまして、むしろ今日の港湾運送というものはまつたく自由でありまして、その自由な港湾運送事業の結果が、今日無秩序な港湾運送となつておるのでございます。最近はようやくその点の問題も少くなつたのでございますが、料金等におきましても、非常なダンピングをやつておるがために、実は最近も労働運動が起りまして、大阪、神戸方面相当の問題を惹起いたしておるような始末であります。私は将来とも、港湾運送そのものが独占性を帯びて来るとは考えておりません。もちろんこの法律ができますことによつて、先ほどお話がございましたように、今日千五百幾つかというふうな港湾運送事業者が濫立いたしておりまする状況は、多少緩和されるにいたしましても、どれだけ港湾運送事業が独占性を帯びて来るかということに対しては、私はまつたくそうした考えを持つておらないのでございます。いわんや今日の港湾運送業者というものは、荷主の方が強いのでございます。強いためにダンピングというふうなものも行われるのでありまして、この法律によりましていわゆる金融等もうまく行きますれば、港湾事業者も相当強い地位を獲得するかもしれません。それとても今日の荷主に対抗して自分たちの料金を独占的に高くして行くということは、とうてい望み得ないのではないかと考えております。これは考え方の相違でございまするが、御案内のように今日独占禁止法もございまするし、また事業者団体法等もございまして、とうていこの港湾における業者が優位な地位を占めるというふうなことは、今日労働問題を解決するにあたつても、きわめて困難な事情にある港湾運送業者の立場をごらんになればおわかりになると思います。しかしどこまでもそれは公正妥当な料金であり荷主におきましても運送業者におきましても、不正をどこまでも排除をして行くという御説に対しては、まつたく同感でございます。  なおこの二つの条件というものは、実は港湾運送事業法だけにあるのではないのでございまして、通運事業法等におきましても、運輸大臣の認可決定の標準といたしましては、この二つの条件を法律でも定めているわけでございまして、これだけに限つたことではないということは御存じでございましようが、一応つけ加えて御説明しておきます。
  29. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 岡田委員から御質問が私の来ない前にあつたかと思いますが、第九条の運賃料金というものを届出制にした根本の理由はどこにあるのでしようか。これをまずお聞かせ願います。
  30. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 結局運賃料金の、この事業に対しての見方でございます。要するに港湾運送業というものをどこまでも官の統制で——官の統制というと語弊がございますが、行政官庁の力を加えまして決定して行くか、それとも業者と利害関係人との間で話合いできめて行くかということが、この法律の大きなわかれ道になるわけでございます。今日自由営業に対して秩序を与えるのには、本人に一応料金をきめさせまして、それに対して異議申立ての期間を与えて、両者の間で納得の行く料金というものをきめることが、最も民主的ではないか。由来海運事業というものは、きわめて自由企業でございます。これは諸外国の船がどんどん入つて参りますと、行政官庁の統制というものでやつて行くことにふさわしくない事業であることは、過去においてもそれが証明されて来た。事実そうやつておるのでございますが、そういうような意味におきまして、どこまでも行政官庁としては、一応自分の行政官庁の自由裁量ではやらないという建前をとつたわけでございます。
  31. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そうしますと、岡田委員から繰返して御質問なつたいわゆる荷主の方に対する保護というか、利益というか、その逆の面を考えて、そうして今の質問をいたすおけでありますが、結局一つの港湾に対して二つ以上の業者があつた場合、それらの業者はおのおの荷主と話し合つて、自分の欲する料金及び運賃をきめることができますかどうか、その点をお聞きいたします。
  32. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 港湾運送業者がきめます。一応きめて、それを運輸大臣に届け出でます。そうすると三十日間というものは利害関係人、荷主等は、この料金では困るという異議申立てをいたします。異議申立てをいたしまして、あと三十日の期間で公聴会を開いたりして決定いたします。結局自分が決定いたしましたら、六十日目にほんとうに有効な料金として成り立つわけでございます。そうしますと、その定額で運賃というものがきまつて行くわけでございます。しかしその運賃料金のきめ方でございますが、やはり相当幅を持ちまして、普通の商取引において今日行われておりますような形においてこれがきまるのでありまして、それで実行されるわけでございます。従つていわゆる荷主と運送人との間に、個々の契約によつて個々の料金というものができるというわけではございません。
  33. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 今の御説明の点はわかりましたが、半分違つた意味の御質問を申し上げたつもりでございます。それは結局港湾における業者というものは、一つの会社なり一つの業者があつた場合は、御説明の点は、よくわかるのでありますが、二つ以上三つ、四つ違つた業者があつた場合、今の届出というものは組合を対象としてやるのか、一つ一つの違つた業者料金なり運賃をきめることができるのかどうか、この点を伺います。
  34. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 個々にきめて行くわけでございます。
  35. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そうしますと私どもの経験から考えますと、よく小さな船会社等が非常に競争をやる。相手の業者を倒すまで、一年でも一年半でも安い料金で競争して、相手を倒した以後、自分でうまいぐあいにやろうというようなことを、私ども再三経験があるのであります。そういうように個々にきめることができるのだとすると、今言つたように非常に力の強いものができて来て、あまり力の強くないものを倒すために、安い料金で競争する。相手をつぶしてから自分の独占で立つ、こういうような大きな弊害が出て来ることが予想されるのですが、それらに対しては何らかの構想があるのでありますか、これを伺いたい。
  36. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 港湾運送業者はたくさんあるわけでございます。荷主は運送業者を自由に選択できるわけでございます。その港湾運送業者が自分の個々の運賃を、さつき申し上げましたような形式をふみまして決定されるわけでございます。そうした標準は一定しておりまするから、ただいま申されるようなことは起らないと思うのでございます。
  37. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 こういうことです。結局ここに三つの運送業者があります。三つあつた場合に、三つのものが組合でもつくつて、一つの組合というものが対象となつて今の運賃料金をきめるならいいが、三つのおのおの違つた運賃料金をきめて競争する。二つのものをつぶしてしまつてから、一番力の強い一つのものが独占的な立場に立つ、こういうようなことが予想されるのですが、そういう際においてはどういうようなはからいをされるか、こういう質問であります。
  38. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 それは第九条の四項、さきに岡田委員のときにお話が出ましたが、「能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものであること。」ということが料金をきめる標準になつております。従つて平均的な能率ということが一応きめられますので、それによつて適正な原価を償つておらないというふうな場合には、運輸大臣は当然これに対して変更命令を出すことも考えられるわけでございます。
  39. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 その適正な原価の計算の立て方でありますが、かりに五人の労務者を使つておる会社と、百人の労務者を使つている会社とは、原価におのずから違いがある。そういうのを理由にして、今の長い期間でなくて、一時的に安い料金運賃というもので競争して行く、こういう弊害が起つて来ることは当然予想される。そこでさつき岡田委員質問された三十日という異議申立て期間が過ぎたあとで、運輸大臣決定をするまでの期間三十日間か六十日間か知らないが、その期間というものが、今私が質問したことに関連する。だから適正な原価というものは、どこから計算を立てて行くかわからないが、あるいは米の値段等をきめるような計算でやつて行くのかどうかわからないけれども、適正な原価を立てる方法がうまく行くかどうか。今言つたような組織、機材、労務者の数、そういうものの上から考えてみて、原価というものの高い低いがおのずからおかれて来る。ですから今言つたような非常な不安を感じて来るのであるが、そういう点に対しては何分の用意があるのかどうか。
  40. 四方田耕三

    四方田説明員 ただいまの点、現在のマル公料金制度は、実は六大港の各港におきます大部分の業者の原価計算をいたしまして、それの平均原価、各港におけるあるべき形の適正な原価というものをすべてのデータから算出いたしまして、また労務者の数の多過ぎるものあるいは少な過ぎるもの、施設の多過ぎるものあるいは少な過ぎるもの、こういうものを平均いたしまして、各港におけるあるべき原価というものが出て来ておるわけであります。それを今後も踏襲いたしまして、大体そういう標準を、できれば荷主さんの方にも、業界の方にも示しまして、大体平均してあまり凹凸のないように各届出が出て来るように、またそれが適正なものであるように、公聴会あるいは利害関係人の意見を十分参酌しながらきめて行くという方針を今までもとつて来ましたし、今後もとつて行く方針であります。
  41. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そうしますと、話が元にもどつて岡田委員質問したように、異議を申し出たものがある場合の決定期間というものは、そこに余裕を置いて行かなければ、たいへんな弊害が出来ると思いますから、ここで一応質問をおきますが、なおひとつ提案者の方でもう少しお考えになり、私の方でもこの点をもう少し考えてみたいと思います。
  42. 岡田五郎

    岡田(五)委員 次にお尋ねいたしたいのでありますが、この運賃料金といろものは、大体そのときの物価事情あるいは賃金事情、その他を基礎といたしまして計算されると思うのでございます。しかもこのたびの運賃料金は厳格な定額制をおとりになつておるようでありまして、特定の利用者に対して数量の多寡だとか、あるいはその他の理由によつて割引をしてはいかぬ。また一ぺん受取つた運賃料金から拡いもどししてはいかぬというような定額制をおとりになつておるようでありますが、先ほど申し上げますような物価及び賃金、いわゆる運賃及び料金の基礎になる物価及び賃金は、そのときの経済情勢によつて始終異動するものである、かように考えるのであります。その異動に処して港湾運送業者が積極的にこの運賃料金を変更しなければ、利害関係者異議申立てをすることも、現在の法律では許されてはいない。しかも運輸大臣はこの変更を命令することもできない、こういうことになりますと、上る場合は、港湾運送業者は自分に利害関係がありますから、さつそく運賃料金を変更する届を出しましよう。ところが下る場合、ことに荷主側に非常に不利な場合は、港湾運送業者はできるだけ時間をずらしまして、その間に——稼ぐと言つては言葉が悪いのでありますが、稼ぐ方法を講じはしないか。このしよつちゆう異動する物価及び賃金の情勢の変化に応ずる運賃料金の変更ということにつきまして、立案者なり政府当局はどういうように考えておられるか、この点御説明願いたいと思うのであります。
  43. 鈴木恭一

    鈴木参議院議員 お話のように一旦きめました運賃料金が、その後の社会事情経済事情あるいは賃金の事情等によりまして変更するについで、荷主側からの異議申立てができない、その点は不当に業者を擁護するのではないかという話でございます。法規の上におきましてはそういうふうになつておるのでございますが、この法案考え方としましては、これは運賃は認可制度ではございませんが、やはり通運事業法と同じ形をとつておるわけでございます。大臣はその後の情勢に対して、業者に口を入れるというふうなことはいたしておりません。もちろん状況がかわりまして、どこまでも高い料金でやるであろうという一つの考え方をしてはございまするが、港湾運送事業現状から見まして、また他の実際に徴しまして、その事業の客観的な情勢というものがかわつて参りますれば、当然料金の改訂ということは業者の間において行われるのが常でございます。むしろダンピングを行うというふうな現状でございまするので、これを自由競争の範疇に入れたのでございます。もちろんこの料金に対して異議申立てを利害関係人において行いますことは、結局業界、すなわち運賃というものは、常に不安な状態にさらされるということは申し上げるまでもないのでございます。なるべく一旦きめました以上は、その後は自由競争によつて適当なところにおちつくであろう、こういうふうな見方をいたしておるわけでございます。
  44. 坪内八郎

    坪内委員長代理 本日はこれをもつて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時十九分散会