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1951-03-31 第10回国会 衆議院 運輸委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月三十一日(土曜日)     午前十一時三十四分開議  出席委員    委員長 前田  郁君    理事 大澤嘉平治君 理事 岡田 五郎君    理事 坪内 八郎君    尾関 義一君       片岡伊三郎君    黒澤富次郎君       小平 久雄君    佐藤 親弘君       高塩 三郎君    玉置 信一君       前田 正男君    滿尾 君亮君       山崎 岩男君    川島 金次君       山口シヅエ君    江崎 一治君       石野 久男君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 山崎  猛君  出席政府委員         運輸事務官   荒木茂久二君         (大臣官房長)         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      足羽 則之君         海上保安官         (海上保安庁海         事検査部長)  松平 直一君  委員外出席者         参議院議員   岡田 信次君         参議院議員   鈴木 恭一君         運輸事務官         (港湾局港政課         長兼倉庫課長) 四方田耕三君         参議院参事         (法制局第三部         第二課長)   杉山恵一郎君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君         参議院運輸委員         会専門員    岡本 忠雄君     ————————————— 三月三十一日  委員稻田直道君、大西禎夫君、尾崎末吉君、畠  山鶴吉君及び川島金次辞任につき、その補欠  として佐藤親弘君、高塩三郎君、尾関義一君、  小平久雄君及び田中織之進君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員田中織之進君、尾関義一君、小平久雄君、  佐藤親弘君及び高塩三郎辞任につき、その補  欠として川島金次君、尾崎末吉君、畠山鶴吉君、  稻田直道君及び大西禎夫君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 三月三十日  道路運送法案内閣提出第一三一号)  道路運送法施行法案内閣提出第一三二号)  自動車抵当法案内閣提出第一三三号)  自動車抵当法施行法案内閣提出第一三四号)  道路運送車両法案内閣提出第一三五号)  道路運送車両法施行法案内閣提出第一三六  号) 同月三十一日  港湾運送事業法案参議院提出参法第一五  号)  船舶職員法案内閣提出第一一六号)(参議院  送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  道路運送法案内閣提出第一三一号)  道路運送法施行法案内閣提出第一三二号)  自動車抵当法案内閣提出第一三三号)  自動車抵当法施行法案内閣提出第一三四号)  道路運送車両法案内閣提出第一三五号)  道路運送車両法施行法案内閣提出第一三六  号)  船舶職員法案内閣提出第一一六号)(参議院  送付)  帝都高速度交通営団法の一部を改正する法律案  (参議院提出参法第八号)  港湾運送事業法案参議院提出参法第一五  号)     —————————————
  2. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が不在でありますので、理事の私が委員長職務を行います。  暫時休憩いたします。午後は一時から開会いたします。     午前十一時三十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  3. 大澤嘉平治

  4. 山崎猛

    山崎国務大臣 ただいま上程に相なりました道路運送法案及び道路運送法施行法案提出理由を御説明申し上げます。  現行道路運送法の実雄以来、三箇年の経験にかんがみまして、その不備欠陥を是正して、道路運送事業の適正な運営と、公正な競争確保するとともに、道路運送秩序を確立して、道路運送の総合的な発達をはかる目的をもつて、両法案を提出いたしました。その骨子とするところは次の通りであります。  第一に、自動車運送事業種類を、実態に即応するように改めました。現在は運送契約形式基準とする分類をとつておりますが、貨物自動車事業につきましては、実態に適合しないうらみがありますので、路線と区域という、事業の地理的な運営形態による分類をとりました。このほかに旅客貨物とも、自動車の大きさによる分類をも併用いたしました。このため一般事業は現在四つの種類でありますが、六つの種類となるのであります。  第二に、各種免許、許可、認可等についての基準を、法律に明らかに定めました。なかんずく免許基準については、現在の運輸省告示によるものに検討を加えまして、必要不可欠のものを法律に定めて、行政民主化をはかりました。  第三には、運賃料金に関して新しい制度を取入れたことであります。すなわちまず自動車運送事業全般について、運賃料金一定額をもつて明確に定められなければならないことといたし、次に貨物自動車運送事業について、運送物品を引渡すまでに、運賃料金を収受しなければならないことといたしました。これらはともに利用者の個々に対する不当な差別的な取扱いを防止し、業者間の不当な競争を防止する見地から、ぜひとも必要なのであります。物価統制令との関係を考慮して、同令による運賃統制が廃止された後に実施することにいたしております。  第四に、従来省令規定しておりました従業員の服務、旅客禁止行為、その他の事項を、自動車運送事業公共的な運営確保するために、新たに法律事項としたことでありますが、同様の趣旨から旅客事業運転者資格等、新しい事項をつけ加えて規定いたしました。  第五に、自動車道関係制度でありますが、高速度交通に対する保安のため、検査管理等制度整備するほか、おおむね自動車運送事業に準じて改正いたしております。  第六には、国の経営する自動車運送事業につきまして、日本国有鉄道公共企業体に転移した事情等を勘案して、運賃認可、重要な事業計画変更認可等民営事業との調整をはかるため必要な事項を、新たに適用することにいたしました。  第七には、自動車運送取扱い事業に関する制度を新たに設けたことであります。これは路線貨物自動車運送事業に付随するあつせん業でありますが、路線貨物自動車運送事業発達伴つて、大都市において急速に発達しつつありますので、一般公衆の利益の保護の見地から、登録制を採用いたしました。  第八は、自家用自動車共同使用有償運送等制度所要改正を加えまして、自家用車の営業類似行為を取締り、輸送秩序の維持を期待いたしておることであります。  第九は、道路運送審議会制度でありますが、現在の組織や運営は必ずしも適正ではないので、委員定数を現在の九十七名から四十九名に減少いたし、その任命方法も、都道府県知事倍数推薦方法をとるほか、委員道路運送に関連する事業の経営に参加したり、報酬を受けたり、投資したりすることを禁止する等、所要の修正を加えております。  第十番目には、車両整備に関する事項を、別個に道路運送車両法として、本法から独立させたことであります。  以上が道路運送法案大要でありますが、この法律施行するための経過措置を、道路運送法施行法案として規定いたしました。なお現行道路運送法は、本法案が成立すれば廃止されることになつております。  以上で道路運送法案及び道路運送法施行法案提出理由説明を終りますが、道路運送の総合的な発達をはかり、もつて公共の福祉を増進いたしますのには、ぜひともこの両法案が必要でありますので、何とぞ十分なる御審議の上に、御可決をされるようお願いいたす次第であります。  次に、道路運送車両法案及び道路運送車両法施行法案提出理由について御説明申し上げます。  最近における自動車発達は、きわめて顕著なものがありまして、自動車車両は三十八万両を越え、戦前の最高車両数をはるかに凌駕いたすとともに、その行動は、ますます長距離かつ高速度化して参つておりますが、その反面、車両老朽化車両整備不完全等による車両事故が増大し、また自動車登録においても虚偽の申請が次第に増加している実情であります。  現在道路運送車両保安につきましては、道路運送法規定されてありますが、その詳細は大部分同法に基く省令によつて規定しておりますので、行政民主化を徹底いたしますために、省令規定している事項法律規定するとともに、最近の車両事情に即応するため、諸外国の例にならい、若干内容改正した上、単行法として道路運送車両法案を提出いたした次第であります。以下簡単に内容改正した要点について申し上げます。  第一に、自動車登録制度整備充実いたしまして、自動車実態把握及び盗難予防の徹底を期しますとともに、この制度を利用して自動車目的とする私法関係の安全の確保に資したことであります。  第二に、車両の構造及び装置につきまして、保安上必要な最低限度技術基準を設定いたしますとともに、車両検査制度整備充実しまして、車両保安を強化することにより、その安全性確保に資したことであります。  第三に、自動車使用者の自主的な車両整備に必要な体制の確立を期しますとともに、自動車整備事業を認証して、その健全な発達をはかることによりまして、車両検査と相まつて自動車保安の完璧を期したことであります。  なお本法案による検査登録制度を利用しまして、自動車動産抵当制度を実施するために、別に自動車抵当法案を提出いたしました。  以上が道路運送車両法案大要でありますが、この法律施行するための経過措置規定する必要がありますので、道路運送車両法施行法案を同時に提出いたした次第であります。  以上によりまして二法案提出理由につきまして御説明を終りますが、最近の車両事情にかんがみまして、この両法律制定は、緊急を要するものと考えますから、何とぞ十分御審議の上すみやかに可決されるようお願いいたします。  次に、自動車抵当法案及び自動車抵当法施行法案提出理由について御説明いたします。  自動車運送事業の健全な発達及び自動車輸送振興をはかるため、老朽車をすみやかに新車に改めて、車両保安度を向上することと、これが実現のために金融円滑化確保いたしますことは、今日の車両及び金融情勢下においてきわめて緊要であります。しかし現行金融取引におきましては、自動車担保に供するためには、所有権留保または譲渡担保形式によるよりほかなく、法律上きわめて不備であり、取引の安全を害することはなはだしいのであります。この弊を除去するためには、現在最も進歩した担保制度として自動車動産抵当が必要と考えるのであります。動産担保権目的となるためには、抵当物同一性が何らかの形で確保されなければならないとともに、さらに抵当権の存在を示す適当な公示制度が必要であります。さきに説明いたしました道路運送車両法による車両検査及び登録制度は、この動産抵当必須条件を十分に充足するものであるので、道路運送車両法と関連してここに自動車抵当法制定しようとした次第であります。  以下簡単に自動車抵当法案骨子について申上げます。  第一には、道路運送車両法による登録を受けた自動車をもつて自動車抵当権目的といたしております。  第二には、自動車抵当権物権でありますから、民法物権総則規定は別に定めるものを除いて当然に適用されますが、民法抵当権に関する規定中援用すべきものは本法に相当の規定を、置きました。また民法規定中一部のものは、自動車抵当制度運用簡素化をはかるために援用をいたしておりません。  第三に、自動車抵当法特有規定としては、前述のように道路運送車両法自動車登録原簿抵当権得喪変更登録することによつて対抗力を付与いたしたこと。  抵当権の実行についての特則等がありますが、何分新しい制度でありますから、法律関係はできるだけ簡単にいたして、本制度の円滑な運用を期しております。  以上が自動車抵当法案大要でありますが、本法施行についての経過措置並びに各種財団制度等との調整について規定する必要がありますので、自動車抵当法施行法案を同時に提案した次第であります。  以上によりまして、二法案提出理由につきまして、御説明を終りますが、金融円滑化確保し、自動車運送事業発達及び自動車輸送振興をはかりますためには、ぜひとも、この両法律制定を必要とするものと考えますから、何とぞ十分御審議の上、可決されるよう御願いいたします。     〔大澤委員長代理退席委員長着席
  5. 前田郁

    前田委員長 右各案の審議次会に譲ります。     —————————————
  6. 前田郁

    前田委員長 次に船舶職員法案議題といたします。質疑を続けます。石野久男君。
  7. 石野久男

    石野委員 船舶職員法改正に伴いまして、私どもが感じます疑点を二、三質問いたしたいと思います。改正法のうちに、昭和二十九年九月より実施の定員が、現行法とその形がまつたく相違している点について、まず第一番目にお尋ね申し上げたいのでございますが、その数がまた非常に減員になつておる点においても、改正趣旨が、よりよくでなくして、より悪くなつているというふうに思うのであります。これらの点について改正趣旨に、現行法と二十九年九月より実施される定員との間における質的、量的な面における相違点が非常に問題になると思いますけれども、政府はどういうふうに考えられるか。
  8. 松平直一

    松平政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、質的に違います点は、非常にこまかな問題になりますので、実はお手元に差し上げております職員法改正に伴う参考資料というのがございまして、これの一ページから四、五ページにわたりまして、新旧対照表というのが添えてございますので、実はこれについてごらん願いたいと思うのであります。大体今回の改正といたしましては、一般甲板部機関部職員につきましては資格を上げ、それから定員をふやした点がございます。ただ無線通信士において、ふえたところもございますが、減つたところもあるわけでございます。この無線通信士の表につきましては五ページに書かれてございます通りで、これで御了承願います。
  9. 石野久男

    石野委員 この改正法によりますと、現行のものよりも非常に質的に相違して来ておる。特に通信士に関する件につきましては、別表改正によりまして、別表第五ないし第七というふうに、通信士関係のものが従来の表とは別途な取扱いを受けることになるのでありますが、こういうような改正を必要とする理由を伺いたい。
  10. 松平直一

    松平政府委員 無線通信士の問題につきましては、大体そのもとを海上に於ける人命の安全の為の国際条約に基いております。それで大体これを受けまして、船舶安全法において国内的な規定をいたすわけなのでありますが、無線通信士に関しましては、その安全法から、さらに従来は私設無線電信法譲つておつたわけです。ところがこの私設無線電信法が、昨年電波法ができて、電波法にかわつたわけです。その電波法におきまして、無線通信施設に関する諸規定規定してございますが、その規定におきまして、従来無線電信法できめましたトン数別、あるいは航路別聴守時間を変更しております。従つてそれに基きまして、船舶職員法の方の通信士定員変更したわけであります。
  11. 石野久男

    石野委員 電波法施行によつて、それに関連する変更がこのような形で出て来ておる、こういうように当局は言うのであるが、電波法改正本法改正に伴う附表改正との間における関連性においては、非常にわれわれ疑義を持つのであります。電波法改正とこの表との間における相違点は、一方はこの電波法目的とするもの、それから本法における表は、これ自体通信士労働条件に非常に大きな影響を持つて来ておるということが、われわれにとつて重要だと思うのでございます。労働条件ということになつて参りますと、ただいま説明がありましたように、聴守時間の問題が変更なつたということをも、一応われわれは考慮されるのであります。しかしながら実際問題として、乗船中の通信士というものは自己の安全のために、職務上からいいましても、また船舶運用の保全という観点からいたしましても、これは非常に過重労働になつて来ることは明らかであります。われわれはたとえば国際的な通信協定と、申しますか、そういうものによつてわが国がその方の何らかのクラスに属して、それの聴守時間の間、通信勤務につけばよろしいというようなことは、ただ国際間の問題だけであつて乗務員のなさなければならない実際の仕事は、それとは別個に、常時勤務中の問題として賦課されておるところだと思うのでございます。従つてそういう国際間における勤務時間の問題をそのままここへ、電波法関係であるからというようなことで労働条件規定する形は、非常に不当だとわれわれは思うのであるが、当局としてはどういう考えを持つておるか、所信を伺いたい。
  12. 松平直一

    松平政府委員 先ほどの説明で、私の言葉が少し足りなかつたと思いますが、電波法船舶無線局を操作するに必要な諸規定をきめております。その中に安全に関する義務聴守時間をきめておるのでございます。職員法は、一般通信のことは実は考えておりません。安全のために必要な定員だけをきめておる関係上、義務聴守時間、義務運用時間だけを目標にしております。すなわち船が陸からの気象通報とか、あるいは海象通報、それからまた一定時間に聴取すべき各種事項を聴取し、さらにその時間の間では他船のSOSを受ける義務を負わされた時間だけを考えておりまして、たとえばその時間に、無線局といたしましては一般通信をやるわけでございます。船が何時に着くからとか、あるいは荷役の打合せとか、あるいは客船でございましたら客の電報を扱うとか、いろいろあるのでございますが、これはわれわれの方では考えておりません。結局義務聴守時間だけを目標としておりますので、こういうふうに定員がきまつておるわけでございます。本法では、非常に一般聴守の多い船におきましては、この人数で全部の通信がまかなえるとは考えておりませんが、これは職員法規定すべき問題ではないと考えております。
  13. 石野久男

    石野委員 義務聴守時間だけを職員法ではきめるのであつて一般通信に関してはこの法ではきめないのだ、こういう趣旨と私は今お聞きしたのですが、そうなりますとその一般聴守事項については、これらの人々は航海乗務自己勤務でない、全然責任外にそれを置かれるものであるかどうかということを、まず第一点にお聞きします。  それからただいまのお話は、国会の中のこの十二委員室では通るかもしれません。しかしその通信士が荒波の上で、自己責務において通信業務に従う場合に、そういう一般通信に封ずる責務はそれではどのような法的根拠によるのかということが、一つ問題になつて来るのですが、それ自体本人の生命を守る上から行きましても、あるいは船の安全を確保する上から言つても、実質上やはり通信士である以上は、そういう一般通信業務などというものは、当然知らないとほつておけない、こういうふうに思うのでございます。ただいまの御答弁によりますと、そういう一般通信に関するものは、この職員法規定外であるということをおつしやられたわけなんですが、それはどういうような任務を与えられて、またそれをだれが果すのであるかという別法があるのかどうか。
  14. 松平直一

    松平政府委員 ただいまのいわゆる安全の関係以外の一般通信は、電波法でいろいろ規定されるべきものであります。それで職員法においては、もうあくまでも安全の点だけを考え、しかもその安全を確保する最小限度にとどめるということでございますので、これは他の甲板部機関部一般職員の場合と何ら差別がございません。
  15. 石野久男

    石野委員 そのようなお話でありますると、別表は明らかにここでは定員規定する形になつて来るとわれわれは理解するのです。こういうような規定の仕方は、必然的にこういう人員の規定になるから、従つて労働条件はそれらのものにすべて課せられて来るのでありまして、電波法規定されるところのそういう業務範囲というものは、それではだれが受持つことになるのでありますか。
  16. 松平直一

    松平政府委員 ただいまの御質問でございますが、船舶職員法では、最小限度しかきめていないのでございます。実際問題としまして、船によりましていろいろ通信の繁閑がございます。従つてそれはその船その船によりまして、別にきめていただくといいますか、事務量によつてきまつて来る問題でございますから、どこでそれがきまるかと申しますると、その船その船一つ一つによつてきまる、こう言わざるを得ないのであります。
  17. 石野久男

    石野委員 電波法に関連する問題は、その船その船の業務実情によつて規定されるのだということになると、なおさら問題になつて来るわけでございます。この職員法規定する別表の質的な変化というものは、政府委員も認めておるようにそれぞれデツキに働く者、機関部に働く者、それから通信関係に働く者と、三種類あるわけであります。そのうち前の二者につきましては、この改正表によつて旧表との間にそう大きな変化がないとわれわれは理解する。ところが第三のこの通信に関する限りにおいては、著しく構成が違つて来ておる。たとえば旧表と新表との間における相違点で、機関士あるいは航海士と、それから通信士との間におけるところの、トン数関係によつて来る区分は、非常に大きく違つておるのであります。なぜこのような相違を必要とするのか、新たにこういうふうに規定しなければならないのかという点を御説明願いたい。
  18. 松平直一

    松平政府委員 あとの、区分が非常に違つて来たという御質問でございますが、これは安全条約でこういうように分類をいたしたので、一般船舶と少し違つて来たわけであります。特にトン数旅客船貨物船とを非常に区別いたしまして、旅客船は非常に人命の安全について重きを置いたという点で従来の分類とかわつて来、また一般甲板部機関部職員との分類がかわつて来たわけでございます。  それで先ほどの船舶職員法職員に、全部責任がかかつて来るということでございますが、船舶職員責任をとる最小限度資格をきめたにすぎません。ここに他の船舶の一例を申し上げますと、一万トン以上の大型船でも、船長以下一等航海士、二等航海士、三等航海士しか、船舶職員法では規定してございません。しかし実際一万トンくらいの船になりますと、百名もの船員があつて、船を動かしております。実際またそれでなければ船は動かないわけでございますが、職員法ではその百人について全部規定いたしませんで、責任をとるものだけを規定したわけですから、無線につきましても、一般無線局には三人くらい乗つておられる船がありますが、職員については一人という規定があり得るわけであります。
  19. 石野久男

    石野委員 国際海上安全条約に基いて、旅客の面を非常に重要視し、貨物関係は軽視したわけじやないけれども、軽く見ておるということから、こういうような改正が行われ、しかもその改正においては、非常に最低限のものだけをここでは表示しておるのだ、こういう御説明でありました。なるほど一万トン級の船につきましては、通信士あるいは機関士航海士、それぞれ旧表と新表との間に大した相違はないのでございます。しかし今日の段階におきましては、日本船舶事情等から見ます場合、非常に量的な面において多数を占めておるところの、総トン数千トン未満のもの等におきましては、かえつて通信士の方がずつとその数を減されておる形になつて来ておると思うのでございます。こういう点については、どうも理解しにくい点があるわけでございます。総トン数が千トンとか、あるいは千数百トン以下のものであるというので、機関士あるいは航海士はそのまま従前通りに持つが、通信士だけはなぜ少くしてしまわなければならぬかということが、第一問題なのであります。しかもこれらのトン数というものが、日本船舶の現在の稼働実情から申しますと、近海の海上におきまして多いという点が重要だと思うのでございます。従つてこのようなクラスに乗務しておるところの通信士の諸君にとりましては、ここでは非常に過重労働がしいられるようなことになつて来ると思うのでありますが、そういう点はどういうようにお考えになつておりますか。
  20. 松平直一

    松平政府委員 変動のありました点は、現行法よりも、三千トン以上五千五百トン未満の旅客船以外の船舶、五百トン以上千六百トン未満の、やはり旅客船以外の船舶において、おのおの一名となつておるのでありますが、現行法においては、旅客船貨物船と一本にして、ただトン数別航路別だけによつてきめておつたのとの違いができたために生じたのでございまして、これを一名といたしました点は、安全条約においても、また電波法におきましても、義務聴守時間というものを八時間としてございますので、一名といたしたわけでございます。
  21. 石野久男

    石野委員 義務聴守時間が八時間ということになつておるから一名とした、それを最低限としたのだという説明は、もう何べんも聞いておるわけですが、この聴守時間は断続的であつて、しかもその間これらの人々は全然解放されてないというところに、これらの人々の非常に過重労働が来る理由があるのだ、こうわれわれは信じておるのでございます。その最低数をきめてあるのですから、それ以外のものをそれぞれの船主と船員との間で解決すべきだというような御意見でありました。しかし実際の現在の実情から言うと、船主と船員との間の数の規定については、実際は国会での改正が行われることを待つてきめようということに、留保された形になつておると思うのでございます。そういうことになりますと、むしろ政府当局言つておるように、船員と船主との間のそれぞれの労働条件によつて、その船その船によつてきめろということは逆なのであつて法律がこういうふうにきまつてしまえば、実際としてはそのままきまつてしまうという実情に、今それぞれの海員組合と船主側との実態は、そういう形になつておると思うのであります。それだけにわれわれとしては、今の政府の答弁は言いのがれにすぎないというように考えられるわけであります。これはあなた方が言われるように、その船その船の実態によつて規定するということはできなくなるのでありまするが、この点につきましては別に考えていないのでありますか。
  22. 松平直一

    松平政府委員 最初の職務時間が断続して、非常に過重労働になるというお話でございましたが、これは船舶乗組員としては、他の甲板部機関部と同様、船舶という特別な職域における特別な勤務状態でございまして、これはやむを得ないと思います。  それからその次の、全部の定員がこの職員法によつてきまるというお話、これは私どもの方では責任者しかきめてないから、あとの点は船主と乗組員との間できめるべきであるということは言いのがれではないか、こういう御説でございますが、先ほども申し上げました通り甲板部機関部におきましても、船舶職員法では全部の定員をきめておりません。要するに資格のある責任者の最少数を決定するにすぎないのでございまして、電波法に関連する職員につきましても、まつたく同様でございます。従つて実際の聴守が、一般職守も含めまして非常に多いから、これ以上ふやすということはあり得ると思います。またそれも一向さしつかえございませんが、ただ安全上責任を持ち、資格を持つている者はこれだけというふうにきめてあるわけでございます。
  23. 石野久男

    石野委員 たとえば航海士とかあるいは機関士と同様に、その労働の条件か同じように賦課されるのであるからやむを得ないのだ、断続する時間が過重になるということは、そんなことにはならないのだという話であるが、それはそうじやないと私は思う。機関士とかあるいは航海士の場合は、それぞれ旧法に規定されたと同じように、あるいは二名ないし三名ずつ、小さいものでも二名はたいていおるわけです。通信士の場合は一人だけでこれを規定されるということになりますると、四六時中その任務につかなければならないということは当然であります。海上における陸上とのいろいろな通信業務というものは、この通信士の手を経てなされなければならないということになりますがゆえに、船の命脈を制する一つの大元をなしております。それだけにこの責任は非常に大きいので、国際安全条約により、あるいは義務的な聴守時間がわずかに八時間、それが二時間ずつの断続であるというようなことだけで、その任務が終るものじやないということは、すでに実際の実務についている者はよくわかつているわけです。従つて従来この通信士は二交代制から三交代制を主張していることは、おそらく政府当局の諸君もわかつているはずです。それを今ここで国際安全条約に基いて、日本現行法律を改正して行く場合に、われわれから見ますと、むしろこういう形のために労働者の労働条件が非常に強化されて行く。むしろこの規定は従来の規定より悪化して行く形になつて行くのだと私は思つております。従つて海上安全条約というものの趣旨は、より一層よくして行こうというのが本来の趣旨である。それが逆に低下して行くような形では、私はとてもこれを受けることはできないのでございます。従つてただいま政府当局の言いましたように、それはしかたがないのだというようなことでは、ここに勤務している諸君はとても治まるものではないと思います。なぜしかたがないのでありましようか、もう一度御説明願いたい。
  24. 松平直一

    松平政府委員 海上における労働の問題に入りますと、あまり私どもの専門でございませんので、詳しい御説明はできないのでございますが、たとえば甲板部職員につきまして三直制をとりましても、一日八時間の労働でございますが、四時間やりまして四時間休んでまた四時間やる。従つてそういうふうに断続しておるわけです。聴守時間も同様に断続しておる。八時間の場合、十六時間の場合——二十四時間聴守は年中でございますが、それにしても三直制をとります場合に、どの時間とどの時間をどう勤務するかということは、それぞれ各船において大体標準をきめておるわけでございまして、この断続になる点は、先ほども申し上げました通り海上における職域の特殊な点において、これは陸上のようなわけに行かない、こういうふうに申し上げたいと思います。
  25. 石野久男

    石野委員 海上におけるところの労働条件は、陸上のそれとは明らかに違うのであつて、むしろ私は通信士という一つの役柄が、海上で、工場労働者として八時間勤務して、家に帰つてつて家族と一緒に、業務から離れた生活をするようなわけに行かないわけである。従つてこれらの人々は、八時間労働ということは、むしろ二十四時間労働にさえなつて行く性質を持つておるものだと思うのであります。しかも一たび海が荒れ、あるいは風が吹きまくるというような場合になれば、ただ一つたよるものは、こういう通信士の働きのいかんにかかつて来るのじやないかとさえわれわれは思う。それだけに、この通信士業務というものは非常に重要である。従つて他の航海士あるいは機関士等の場合に、特に航海士の場合のごときは新たに二千トンのランクを設けて、その労務を非常に軽くしようとするまでになされておるときに、通信士の場合においては一層それを集約して、ごく少数の人々に仕事を過重に与えて行くというような方法は、とても改正ではないのであつて、むしろ改悪だ、こういうふうに私どもは思うわけであります。政府はそういうことについては、どのような御見解を持つておられますか。
  26. 松平直一

    松平政府委員 通常の航海におきましては、たとえば無線通信士を例にとりますれば、八時間の聴守以外のときは休めるわけであります。しかし船そのものは二十四時間走つておりますので、甲板部機関部の者は交代はいたしましようが、二十四時間をかわつて勤務しております。ただたとえばしけて来た、あるいはイマージエンシーの場合、これは特別の場合と申しましようか、起り得る可能性があるわけでございますが、この場合には通信士だけが活動をいたすわけではございません。甲板部機関部も、全船こぞつて、休んでおる最中でもあるいは起き出して行つて、適当な措置を講じなければならないかと思うのであります。これは先ほどからたびたび申します通り船舶という特別職域における特殊性でございます。この点は、いろいろの点について船員法において船員保護の措置を講じ、それぞれ適当な考慮が払われておる理由だと考えております。
  27. 石野久男

    石野委員 問題の取上げ方が非常に違つておるように思います。デツキで働く者も、あるいは機関部で働く者も、通信勤務をする者も、船に乗つておる以上は、何か事があつたときには、同じようにみなその労苦を共にするのだということはごもつともであります。ただ問題になるのは、通信士と違うデッキ作業あるいは機関作業をする諸君は、従来それぞれ通信関係と同じように分担を持つ人々を持つておつたわけであります。共助者があつたわけであります。ところが通信関係では、特に総トン数千数百トン以下のものになりますと、従来よりもその通信士の数が減つてしまうところを、私たちは問題にするわけであります。しかもこれらのトン数、クラスというものが、日本におけるところの船舶において非常に多量を占めておる。こういう船舶に従事しておる諸君は、何か事があつたとき、デッキで作業する航海士も確かに努力されますが、相談相手がある。しかし通信士の限りは、自分一人でそれを処置して行かなければならぬ。おそらくこういうところから、過重労働によつて、船が難破して来ることも起きて来ると思う。それは特殊の場合でありますから、私はあえて申し上げません。しかしふだんの作業において、常にそれに似通つたところの過重労働がしいられて来るわけであります。私どもは法を改正する場合には、従来の法よりもよりよくなつて行くことを望むのでありまして、一般労働者諸君に対してよりも過重な労働がしいられるものであれば、これは拒否しなければならぬ、こう考えておるわけであります。今ここになされておるところの法案改正につきましては、われわれはわれわれなりにいろいろこれを考えております。この法案の原案を作成される時期においては、船舶は非常に過剰になつておりました。乗組員も非常に多過ぎたのであります。ところが最近になりますと、日本の諸情勢の変化に伴いまして、日本におけるところの船舶乗組員は非常に過少になつておる。最近では特にその乗組員の不足をわれわれは痛感するのであります。従つてこの法案の適用される真の目的は、このような諸情勢の変化伴つて通信士を、あるときは過剰であるから減少せしめようとし、今日においては過少であるから、それを各般に散らばらそうとする意図があるようにわれわれは見受けられるのであります。しかもまたそういう結果が出て来ておると思う。これではとてもたまつたものではない。そういう意味で私は、特に今日問題になります手数百トン以下の通信士諸君で、しかもそれが量的に非常に多い人々が過重労働になつて来る点をお尋ねしておるわけでありまして、一万トン級とかそれ以上のもの——日本においては外航適格船というものは非常に少いのでありますから、そういう人々は、実際の問題としてはこの法によつて受ける被害というものはあまりない。最も大きな被害を受ける諸君の立場に立つて、そういうクラスの立場からどういうふうに見られるかということを、私はお聞きしておるわけであります。
  28. 松平直一

    松平政府委員 最初の共助者の問題でございますが、共助者は当然場合によりましては、通信士といえども必要であろうと思います。普通船員というものを共助者とみなすならば、甲板部機関部にもそれぞれ共助者がおるわけであります。そういう共助者のことは、船舶職員法ではうたいません。それからただいまの通信士の需給関係が、この法律をきめる上に相当響いているのではないか。こういうお話でございますが、この点は絶対にございません。私の方では、先ほど来説明をしております通り安全条約に基礎を置き、さらにそれによつて特に電波法を根拠といたしまして、合理的に定員をきめたつもりでございまして、ただいまの労働需給関係は全然考慮しておりません。
  29. 石野久男

    石野委員 通信士における労働の需給関係は全然考慮してないという趣旨は、政府がそう言われるのでありますが、具体的にはそういう結果になつて来ているように私は思うので、その点は政府の御答弁はありますけれども、なかなか納得しないものがあるわけであります。それはなぜそうかというと、その結果としてここに出て来る別表改正が、将来の乗組通信業務としては、非常に不備を来すであろうということを私は憂えるからであります。おそらくこういうような規定の仕方をする限りにおいては、ここに従事する通信士の諸君は、非常に過重労働をしいられる結果として、非常なあやまちを犯す結果となると思うのであります。なぜ航海士及び機関士と同じように、数の取扱いを旧法で規定されておる以上に改正しないで、通信士を以下に持つて行くかという点が、どうしても理解できないわけであります。電波法によるのだということだけでは、どうしても理解できない。事実上乗組通信士としての業務は、ただ電波法だけで規定されるのであるかどうか、この点はもう一度お聞かせ願いたい。
  30. 松平直一

    松平政府委員 私の方では、電波法にきめました義務聴守時間を基準にしております。どうも私の説明がはなはだまずくて御理解願えないかと思いますが、電波法一般通信をも含めた船舶無線局としての問題を取上げておるだけであります。私どもでは、安全の点だけをその中から引出して考えておるのであります。しかもそれが船長のもとに甲板部機関部、他の諸君と一致協力して、航行の安全を確保する職員としての取扱いということだけで考えておりますので、電波法の考え方と船舶職員法の考え方とは、全然その目標を違えておるわけであります。この点を御了解願いたいと思います。
  31. 石野久男

    石野委員 電波法による義務聴守時間だけが、この職員法別表規定に対して取上げられておる問題である、こういうような説明ですが、これはどうも私理解できない。日本におきましては、この電波法義務的な執務時間というのは、何度も繰返しますけれども、断続する聴守時間のことであります。ところが船は不断の航行をしているのであつて通信士は不断の通信業務をしなければ、その艇の安全を期することができないことは言うまでもないところでありますが、通信業務責任を、この職員法によつて規定される通信士は持たなくてもよろしいかどうかということをお尋ねいたします。電波法に関する断続する通信時間以外の通信業務については、この人々は何ら責任は持たないのかどうか。
  32. 松平直一

    松平政府委員 一応そうお考えいただいてさしつかえないと思います。ただその船に危急の場合が起つた場合は、先ほども申し上げた通り、寝た者も起していろいろ処置をし、船長も船長室から飛び出して来て指揮に当るわけでありまして、危急の場合はこの限りではありませんが、普通の場合は、この義務聴守時間以外は、一応責任はないということを申し上げておきます。
  33. 石野久男

    石野委員 ただいまの答弁は、私は非常に理解できないし、また聞きのがすこともできない問題です。一応責任がないというようなことで通信士を乗務させているのでは、船の安全は絶対に確保できないと思う。ただ異常な危機があるときだけであるということでは、私は理解できない。私は乗り組ましている通信士は、海上安全条約で、あるいはまた電波法規定されるような任務だけのものでないというふうに考えているわけであります。この点はどうも考え方の相違があるようであります。政府の考え方については私は非常に失望したわけであります。これ以上は尋ねません。  そこで次の問題をひとつお聞きしておきたいのであります。それはこの法案改正伴つて、免状の五箇年制ということが規定されているわけであります。この法案の第八条にそういうような免状の有効期間が規定されているわけでありますが、この五箇年制の規定をするにあたつて説明はいろいろと、日進月歩の今日の技術界におきましては、その必要があるように言われているのでありますけれども、しかしこれは非常に不当なもののように、私は考えるわけなのであります。この免状というものは、その人個人につきましての、自分の財産権のようなものになつているのではないかというように私は考えるわけなんであります。それを新たに五年たつてしまうと、その免状が全然なくなつてしまうというようなことについては、非常に理解ができないし、ことにそのときまで現にその仕事に従つている者が、なぜ五年たつたときにそれを失わなければならぬかということについて、政府当局はどのような理由をお持ちになつているか、一応お聞かせ願いたいと思います。
  34. 松平直一

    松平政府委員 この免状を失うという意味は、船に乗れなくなるというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  35. 石野久男

    石野委員 船に乗れなくなるようにということですか。
  36. 松平直一

    松平政府委員 いや、免状がなくなるということは、どういう意味を言つておられるのですか。
  37. 石野久男

    石野委員 私は免状を持たなければ、当然この職員法によるそれぞれの通信士としての仕事ができなくなるのではないかというように理解しているのですが、そうではないのでございますか。
  38. 松平直一

    松平政府委員 免許の期間が過ぎましたら、一応船に乗れないということになるわけでありますが、ちよつと補足して申し上げたいのは、省令に譲ることになつておりますが、引続いて乗つている者は五年たちましても、ただ更新はそのままでいたすわけであります。まるまる五年というのは、全然船に乗つていなかつた者に対して、五年目には更新のための試験を行うということで、現在乗つている人をおろすということは絶対ありません。
  39. 石野久男

    石野委員 そうしますと、この点については私もまだ理解が非常に足りないのかもしれませんが、五年間たつた者でずつと引続いて乗務している者については、そのまま免状の更新をしてくれるわけですか。新たにまた試験か何かやる意味ではないのですか、どつちですか。
  40. 松平直一

    松平政府委員 口述試験とか学術試験はいたしません。体格検査だけは五年目ごとにいたすことになつております。
  41. 石野久男

    石野委員 体格検査だけはやるけれども、その他のものはやらないのだということになると、ただいまの免許の有効期限の問題について、ある程度私は理解ができるのでございます。しかしただいまの説明によりますと、免許は持つておるけれども、ある期間その仕事についていない者については、その有効期限をはつきり適用するのだということになると思うのでございます。その場合においても、私はその人に全然能力がなくて、進歩された通信技術を自分のものにようしないという場合は別といたしまして、必ずしもそういうことはないだろうと思います。一応の免許をとる以上は、それ相当の資格を持つのでありますから、たとえばある人々が学校を出て一つの学士の称号をとるとか、あるいはまたある一つの博士号をとるとかいう場合に、その技術についてのその部門におけるエキスパートであるということは、かわりはないと思うのであります。免状はおそらくそういう性質のものであろうと考えている。そういうようなことを承知しながら、あえてこのように有効期限を規定することについては、何か特別の理由があるのでございますか。その点本質的な問題につきましてお聞かせ願いたいと思います。
  42. 松平直一

    松平政府委員 本質的な問題につきましては、結局これは安全性確保する点につながるわけでございます。実際に従来の例を見ますと、非常に昔の古い免状を持つていて、身体も適当でない、非常に古い教育を受けた方でも船舶の運航に関しましては、技術的にも、法規的にも、その他関連した施設において相当度の進歩発達を日々遂げている、その状態に適合しない者でも、一応乗り得るということに従来はなつておつたわけです。それを今度の場合は、特定の人に船舶職員となることを免許するという意味において、その能力をいつも有効にして置くということが、第一の根本的理由でございます。そのほかにも理由はございます。これは附帯的な理由でありますが、こういうふうにして一ぺん免状を持つたら、どんなに年をとろうと、かたわになろうと、船に乗れるのだということになつております関係上、実際死んだ人でなければ整理ができないわけであります。現在登録を受けておる者は二十万ほどおりますが、実際の数はその半数だろうと思います。そういうものが五年制によりまして、非常にアツプ・ツー・デートに整理され、現在どのくらい船舶職員に適する免許を受ける人がおるかという現状を把握するのに、非常に有効であるということも、附帯的な理由としてあがつて来ると思います。
  43. 石野久男

    石野委員 現状を把握する上にこのように規定することが、非常に有効だという理由のようであります。この点については、せつかく何年か前にそういう免許とつた者が、それらの技術に対する特殊的な技能について、第三者の抗弁に対しても主張し得るような資格をこの法律によつて喪失することは、私ども非常に遺憾のように思うのであります。これはなおわれわれとしては十分検討しなければならぬように思います。  次にもう一つお尋ねしたいのですが、別表をずつと見て参りますと、どのデツキ作業についても、機関場作業につきましても、それぞれにみな機関長あるいは船長というような長というものがあるわけであります。ところが通信士の場合には、その長というものは別にないが、これは従来こうなつておるからであろうか、なぜこれには長というものがないのであろうか、当局の御説明を承りたいと思います。
  44. 松平直一

    松平政府委員 従来なかつたというのが、一番簡単な理由かとも思いますが、機関長とか船長とかいうものについては、実際別の方面から見ますると——話が少しそれるかもしれませんが、船長とか機関長とか、一等航海士とか二等航海士という職務内容を、実は法律できめるべきではないかというわけなのでありますが、これは非常に複雑で困難なので、従来そういうふうに言いならわして来ておりまして、明治二十九年以来船長、機関長、一等航海士、二等航海士ということで、十分社会通念としても通用するという点から、職務内容というものは特に規定しなかつたわけでございますが、商法とか、その他安全条約とか、あるいは労働関係の条約には、一応船長とか機関長とはどんなものかということが、大ざつぱにつかめるようになつております。それで船長、機関長というものは、それだけの理由ではございませんが、出してあるわけであります。その他のものは普通の航海士なり、機関士なり、通信士、こういうふうになつておるわけであります。
  45. 石野久男

    石野委員 従来そういうふうに言いならわされて来ておるからというのですが。今度の法の改正伴つて、特に別表改正については、電波法の意向が多分に盛られておるということを、しばしば御説明を承つておるわけであります。電波法によりますと、通信長というものが規定の中に載せられておるわけであります。せつかく電波法を適用なさるならば、こういう点も別表の中にくみ入れられたらいかがかと思いますが、その点政府はどのようにお考えになりますか。
  46. 松平直一

    松平政府委員 先ほど定員の際にたびたび申し上げた通り電波法船舶無線局に対する見方と、われわれの方の船舶通信機関としての一つの見方と、全然違う立場で見ておるということを申し上げたわけですが、同様な見方を通信長の場合にもとつておるわけであります。それで一応われわれの方としては、電波法通信長というのは、電波法から考えた必要上きめたものである。しかし船舶職員として船舶通信士を考えます場合には、これは船長のもとに一定の技術をもつて、船内で従事する一般乗組員としての見方をいたしておるわけであります。この場合電波法通信長をきめたから、職員法でも必ずそれを受入れなければならぬというふうには考えておりません。船舶職員法としては、この問題を一応別個に考えてもよい、こう思つております。
  47. 石野久男

    石野委員 ただいまの御説明によりますと、電波法職員法との間には、別途の考え方があるというわけですが、ここでもう一つ問題になりますのは、定員であります。断続せる聴守時間ということが、通信士定員に影響しておるわけであります。しかしながら従来の表の規定するところによりますと、そういう断続する聴守時間などというものは問題でなく他の甲板あるいは機関部に働く諸君と同じように、常時航海の業務についておるというような規定が、私は通信士規定の中にあつたと思うのであります。不文律の中にそういうものがあつたと思われるわけであります。しかるにこの別表規定するにあたつて電波法の断続する聴守時間というものが出て参つて、そのために人員の縮減が行われる。ことに通信長というような問題については、それぞれ通信業務に従う諸君は、常に長の制度を確立してくれということを要望しておるという、従来の長い歴史があると見られるのであります。ただいまの御説明によりますと、通信業務が、船長のもとにおける一船員だというふうに見るようですが、その見方については非常に問題があるように思う。むしろこれは機関長がそれぞれ独自の立場をとつておると同じように、通信業務についてもやはり一つの立場を持つておるのではないかと考えますが、そういう観点からして、電波法で使つておる長を、船舶乗務員としての通信士にも使つたらどうかというふうに考えるのでございますけれども、これについての御意見をもう一度承りたいと思います。
  48. 松平直一

    松平政府委員 先ほどいわゆる義務聴取時間以外の責任はないということを申し上げましたことに関連して来ることかと存じますが、それは安全のために二十四時間聴守をしていれば、これに越したことはないと思います。しかし小型の船、あるいは近海を走る船、あるいは旅客船貨物船の区別、そういうことによつて一応段階をつけたというふうに、私どもの方では考えられるわけであります。なるほど二十四時間ならばよいにきまつておると思いますが、しかし最小限度安全性確保するという意味から申しまして、二十四時間聴守と、十六時間と、八時間と、それぞれわかれたのではないかと思つております。それでたとえば断続せる通信時間の間に、他の通信はないかということも考えられますが、当然あることは起り得ると思います。しかしこれは、われわれの方ではイマージエンシーの場合しか考えず、一般商業通信の場合は全然考えておりません。従つてその通信士義務聴守時間は、八時間でも十六時間の運用を必要とするという場合も起り得ると思います。しかしその場合は、私の方では、一人でやりなさいというのではございませんので、何べんも申し上げますように、私はその点をぜひ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  49. 前田郁

    前田委員長 坪内君。
  50. 坪内八郎

    ○坪内委員  一、二お尋ねしてみたいと思います。現行職員法が明治二十九年に制定されたというふうな古い法律であるから、この際船舶航行の安全を確保するという意味で、現行職員法を全面的に改正し、新法で行くということは、私も結論において賛成であります。ただこの前の委員会でもちよつとお尋ねいたしましたが、この改正法律案の中で、国家試験制度をもつて、今までのいわゆる認定学校の卒業者に対しても、何も恩典を認めないということは、非常に問題になる点ではないかと思うのであります。従つて現在の法律施行される当時に、こういつた商船教育機関に在学中の者は、新たに卒業したあかつきに、初めて試験を受けるときは、学術試験を免除するということが、何か別表に記載されておるようでありますが、なぜ特定のこういつた認定学校卒業者に、学術試験免除の措置を廃止することになつたのかということにつきましては、この前の委員会でも御答弁がありましたので、大体了承はいたしましたけれども、現実の問題として、こういつた特定の学校に入る者は、その学校の特典というか、卒業したあかつきにはそういつた免許が無試験でもらえるというような魅力があるために学校に入るのであつて、ただでさえ板子一枚下は地獄というような困難な環境に置かれる船員に対しまして、ことさらにこういう困難な国家試験を行うということは、船員に対しても重荷ではないかということを考えるわけでありまして、優秀な子弟などがこういう学校に入学を希望しないようになるのではないかということを考えられるわけであります。そこでこういう制度によつて、こういういわゆる認定学校の志願者が減退したならば、法律のねらいとするところの船舶運航の安全をはかるということに対して、むしろ逆効果を来すのではないかというようなことを考えられるのであります。そういう点から勘案して、この試験を断行したあかつきに、そういう商船教育機関などの志願者が減つて行くということになると、これは当然当事者の責任ではないかと思うのでありますが、その点の見解を伺つてみたいと思います。
  51. 松平直一

    松平政府委員 特定学校の卒業者の試験免除を廃止した大きな理由としては、いわゆる国家試験であるから、実地からの出身者でも、学校出でも、当然平等の立場で受けるべきであるということできめたという点は、先日御答弁申し上げた通りであります。これは非常に問題となる点でございますが、最近の一般の要望として強く要望されておつたのでございますし、また理論的にもそれが合理的であるというふうに考えて、こういうふうにしたわけであります。御心配の点は、優秀な者が学校へ入らなくなる。あるいは卒業した者が試験に落ちるようなケースが出て来るというようなお考えのようでございますが、しかし学校というものの特徴は大体生かしておるわけであります。たとえば商船大学、商船高等学校、あるいは水産大学、水産高等学校等によつて、乗船履歴をいろいろと調整いたしております。非常に短期間に縮め、学校におけるいわゆる実修と、それからたまには卒業後船に乗りますが、その実習期間、この二つを合せまして、一般の実地出身者の履歴とは相当の差が設けられております。この点が学校に行く者には非常に有利だろうと思います。  それから試験のやり方でございますが、たとえば甲種二等航海士の試験を受けまして、それから船に乗つて一定の履歴がついて、それから甲種一等航海士になります。それからまた船に乗つて一定の履歴をつけて、甲種船長の免状をとるというような段階を設けてあるわけでありますが、甲種二等航海士の試験を受けてその免許をとつて、最後の甲種船長の免状をとるまでには、実際に相当の期間かかります。そうしてそのたびに試験を受けるということになつているわけでございますが、これは実際船に乗つておる者にとつては、相当の労働であります。特にだんだん上の方になるほど、学術試験がむずかしくなるというようなことでは、だんだん年をとつて頭がかたくなり、しかも毎日の実務に追われている者にとつては、はなはだむずかしい試験になるばかりだということになるのでございます。そこでわれわれの方ではそういうふうな、甲種ならば甲種、乙種ならば乙種という免状の試験を受けますのに、たとえば甲種二等航海士の試験を受けるときに、甲種船長になるまでの学術試験を、一度にというか、一気に受けてしまうというような方法を考えているわけであります。これによつて、実際に乗組員のそういう非常な過重が十分緩和されるのではないかと考えております。
  52. 坪内八郎

    ○坪内委員 私がお尋ねしたのはその点でもありましたけれども、私がお尋ねした主要なる目的は、大体そういう学校卒業者でも、そういう運用面において、あるいは実施面において、相当手心を加えているのだということはよくわかるけれども、ともかく学校卒業者でもやはり国家試験を受けなければならぬということになると、いわゆる優秀な子弟が海員を志望しないということになり、こういう商船教育機関というものがだんだん衰頽して行くのではないか。そういうことについての責任は皆様方、こういう法律制定された方にあると思うが、そういうことになるときの責任、これをお尋ねしたわけであります。  さらにもう一点は、最近の国家試験に基いて、こういうような制度でやるのだというお話でありましたが、こういう特定な認定学校には、むしろ特典を認めることがいいのではないかという考え方もあるわけでございますけれども、その点をもう一度お尋ねしてみたいと思います。
  53. 松平直一

    松平政府委員 なるほど御説の通りで、学校におる者から考えますと、確かにそうなるのでございますが、一方実地出身者から申しますと、学校卒業者にそういう特典を認めることはけしからぬという強い要望があることは事実であります。従来の日本は、学校出を特別扱いいたしておつたのでありますが、諸外国の例にもならいまして、また今申し上げた片一方の方の強い要望もあり、こういう制度にいたしました。ただ問題の、いい者が入るか入らないかという問題は、御説ではございますが、これは私の方では、安全ということだけを考えている立場からは、実はあまり深く触れられない問題だと思います。これはむしろ日本の海運の非常に重要な点、あるいは海運発展の重要性を浸透させ、さらにその方面において日本が立つて行かなければならぬというような点を国民一般にも十分知らせまして、優秀な者が船員になるように、養成機関なり、あるいは待遇なり、また別の方面で十分考えられる事柄じやないかと思います。これは、そう申しては、いけないかもしれませんが、本省船員局の大きな仕事になりはしないかと考えております。
  54. 坪内八郎

    ○坪内委員 大分了承いたしましたが、そこで私がお尋ねしたいのは、こういう商船教育機関に優秀な子弟が志願しないようになると、こういう教育機関がだんだん衰頽して行く、そういう場合に皆さんといたしましては、どういうようなお考えで、将来そういう面を啓蒙して行こうとなさるのか。そういうお考えがあるのかないのか、その点をもう一ぺんお尋ねいたします。
  55. 松平直一

    松平政府委員 ただいまのお尋ねは、そういう優秀な若い者を、いかにして船員になるように啓蒙して行くかというお話でございますが、決して責任をのがれるわけではございませんけれども、実は私の方でも深い関連はございますが、担当の職務ではないものでございますから、むしろ私の方は、より安全な航行を期するには、いかなる船員を要求した方がいいかという、要求の方ばかりを考えておつたわけであります。もちろんそれの要求を満たすようにする方面もあわせ考えて、そうでたらめなむずかしい要求はできないわけでございますが、実際の面を調整して、一〇〇%安全を期すべきであつても、その実情に応じては八〇%程度でがまんするというようなところで、現業職員法をきめておるわけであります。
  56. 坪内八郎

    ○坪内委員 質問をこれで終りますが、ただいま私がお尋ねいたしました諸点につきましては、将来いろいろ問題も起るような点がありますので、十分そういう点は慎重に御研究なさつて、万全を期していただくように強く要望いたしておきます。
  57. 前田郁

    前田委員長 この際暫時休憩いたします。     午後三時一分休憩      ————◇—————     午後四時九分開議
  58. 前田郁

    前田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  帝都高速度交通営団法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑を続けます。前田正男君。
  59. 前田正男

    前田(正)委員 本法案に対しましては、われわれも十分質疑応答いたしたのでありますが、過般の質問のときにもお話いたしました通り、われわれといたしましては、これに対して修正を加えたいと思つておるのであります。大体修正の案文といたしましては、今回新たに設けることになつております管理委員会を廃止いたしまして、その管理委員会の議決を経ることになつておりましたところの収支予算、事業計画、資金計画及び収支決算は主務大臣の認可を受ける、こういうふうな案をつくりまして、現在折衝中であります。しかしながら休会に入りますところの時間の予定その他の関係もありまして、今回はこれをしばらく留保することにいたしまして、しかるべき早い機会におきまして本修正を行うとともに、講和後におきましては、この高速度交通営団自体の経営そのものについても、営団というものを残すかどうか、こういうことにつきましても再検討いたしまして、根本的な修正をしなければならないと考えております。  次にこれに関連いたしまして、過日私から政府委員お話したのでありますけれども、かくのごとき法案につきましては、当然いろいろ折衝の過程もあると思いますが、十分に国会の意向をくんで、国会の審議権を無視しないようにやるべきものであると私は考えるのであります。ことにこういうふうな急ぐものにつきましては、十分に事前に連絡をとつて、国会の意向、各党の意向を参酌しまして、折衝すべきものであると考えるものであります。私の関係しておりますところのいろいろの部門におきましては、大体従来からやつておりますのを見ますると、法案をつくります場合には要綱をまずつくります。その要綱をもとにいたしまして、折衝に入る前に、大体国会の常任委員会あるいは各党の意向を参酌して、そうしてその要綱を訂正しまして、それからいろいろと折衝に入る。折衝の過程におきましてまたいろいろ問題が起つた場合においては、国会及び各党と連絡をしてやつて行くのが、従来の行き方でありました。私もその方法によりまして、いろいろと法案関係した経験を持つております。またわれわれの意向をくんで折衝の結果、いろいろの点においてわれわれの意思が十分に反映された例もたくさんあるのであります。御承知の通り民主主義におきましては、議会中心主義の政治であります。従いまして議会の意向を十分にくんで行くべきものと思います。特にこういうふうに急ぐものは、十分に事前に国会等に連絡されるのが、当然であると思うのであります。特に今後運輸省関係のものは、まず第一に法案の形にならない前に、要綱の段階において国会の意向をくんで、いろいろと相談していただきたい、こういうことを特にこの機会に要望いたしたいと思うのであります。日本が講和独立した場合においては、国会は最終決定機関でありますので、そのときには特に必要であります。御承知の通り幸いにいたしまして、われわれの講和独立の機会も近いようであります。国会の審議権というものを十分に尊重する立場から、政府は今後その点につきましては態度を改められまして、提案の前において、要綱の形においてまず第一に国会に御連絡あつて、各位、各党の意向を聞くようにしていただきたいと思います。これに対しまする政府委員の御答弁を得られれば幸いであると存じます。
  60. 足羽則之

    ○足羽政府委員 ただいまの前田委員の御要望に対して、御返答申し上げたいと思います。今回の営団法の改正につきまして、事前の十分なる連絡をして、国会の意向あるいは各党の意向を十分にしんしやくして法案を決定し、それに対する審議を盡し得るような措置をしろ、こういうお話でございますが、実は今回の提案にあたつて審議を願いますについて、そうした点に不備でございまして、お手数をおかけいたしましたことを、たいへん恐縮に考えておる次第でございます。今回の提案についてはそういう次第でございますが、今後法案の提出に際しましては、今お話のような御要望の点を考慮して、事前に十分に御意見を承り、成案を得るまでに、今の御希望のような形で進めて参るようにいたしたいと思います。いろいろお手数をおかけいたしましたことを恐縮に存ずる次第でありますが、本法案については慎重に御審議、御決定をいただきますように、この際あらためてお願いしたいと考える次第であります。
  61. 岡田信次

    岡田参議院議員 私、この法案の提案者に相なつたのでございますが、はなはだふなれのために、いろいろ手違いを生じ、皆様方に御迷惑をかけたことを、この機会におわび申し上げます。と同時に、今後皆様方の御鞭撻によりまして一層勉強して、今後そういうことのないようにいたしますから、よろしく御了承を願います。
  62. 前田郁

    前田委員長 他に御質問はございませんか。——これにて質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告があります。これを許します。山口シヅエ君。
  63. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 社会党といたしましては、本改正案そのものにつきましては若干の意見もございますが、本質的に反対するものではございません。本法案は別途新設路線計画実施と、表裏一体をなすものでございます。しかるにこの別途計画では、地下鉄本来の地下軌道を脱して、一部は地上路線の計画でございます。帝都高速度交通営団は、あくまでもその設立の趣旨に照しましても、地下軌道を本来の事業とするものでございます。またこの計画によりまして、文京区区民は非常な迷惑をこうむるものでございまして、区民一同は絶対反対を唱えておるものでございます。よつて社会党といたしましては、本改正案に反対いたすものでございます。
  64. 前田郁

  65. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 私は帝都高速度交通営団法の一部を改正する法律案について、自由党を代表して賛成の意を表明するものであります。  昭和十六年、特別法に基いて帝都高速度交通営団が設立せられ、東京都における交通機関の整備拡充をはかろうとしたのでありますが、営団設立後間もなく勃発した戦争によつて、この事業も甚大な影響をこうむり、当初計画した路線の建設はまつたく頓挫したのであります。終戦後四年間、荒廃した施設の補修、輸送力の増強に力を盡し、地下高速度鉄道としての使命を果し得るまでに復旧したのでありますが、一方都内における交通状況を見るに、殺人的混雑は最近に至りようやく緩和されたとは申しますが、現存する交通機関はすでに飽和状態に達し、円滑なる輸送はとうてい期待し得ない状態なのであります。交通営団はこの情勢に対処し、混雑の最もはなはだしい国鉄山手線池袋から、神田、東京、赤坂見附を経て新宿に至る第四号線の一部、池袋、神田間の地下鉄道建設に着手するため、諸般の手続を進めているのであります。しかしながら地下鉄道の建設には巨額の資金を必要とするのでありまして、これを民間に求めることは、これらの資金が長期固定的であり、事業が高収益でないという点から、非常に困難なのであります。よつて所要資金の大部分を米国対日援助見返り資金並びに資金運用部資金等の政府資金に依存しようとするのでありますが、事業公共的性格の強いものであり、かつ工事を可及的すみやかに行う必要があるという点から見て、妥当であると考えるのであります。しかしてこれが受入れ態勢を整えるとともに、公益的運営確保するため、営団法の一部を改正しようというのが本法律案趣旨でありまして、改正すべき各条項については、おおむね適切と認め、これに賛成するものでありますが、新たに設置せらるべき管理委員会につきましては、その権限並びに構成等より見て、はたして所期の目的を達し得るかどうか、若干の懸念があるのであります。この点につきましては委員の人選及び委員会運営につき、遺憾なきを期せられたいという希望条件を付しまして、しばらくその成果を監視したいと存ずるのであります。  次に、今回営団が工事に着手せんとする路線と沿線住民の利害関係であります。この点につきましては、政府は営団が目下計画中の路線については、沿線住民の利害を十分に考慮して、その設計に再検討を加え、沿線住民に及ぼすことあるべき損害を最小限度にとめるとともに、もし損害を生じた場合においては、これに対し十分な補償を行うこと、その他騒音の防止、都市の美観の保持等につき、万全の措置を講ずるよう、営団に対し指示せられんことを望むという希望条件を付したいと存ずるのであります。  以上二つの希望条件を付しまして、私は自由党を代表して、本法律案に賛成するものであります。
  66. 前田郁

    前田委員長 次に江崎一治君。
  67. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 私は日本共産党を代表いたしまして、この法案に対して根本的に反対するものであります。共産党は東京都に地下鉄ができて便利になるということについては、決して反対をいたしません。双手をあげて賛成する。ところがこの法案に盛られておる内容に対しては、根本的に反対しなければならぬ理由があるのであります。以下これを具体的に分析してみましよう。  もともと帝都高速度交通営団の資本命の過半額は、国鉄の出資であつたのであります。今度の改正法によりますと、国鉄関係の出資以外の資本は、逐次排除するという規定になつておるし、特にこの管理委員会の性格から見ましても、本法律案はまつたく帝都高速度交通営団の国鉄化法案であると言つてもさしつかえないのであります。しからば何ゆえに明確にこの帝都高速度交通営団を国鉄に編入しないか、なぜかくのごとききわめて不自然な形で、こういう法律案をつくつたか。また資金運用部資金特別会計が今国会を通過しない前に、この建設資金としてその中から多額の財源を見込んでおる。この資金運用部資金特別会計というのは、全国民の福祉のために使用しなければならない財源であります。これを独占的に他をまつたく顧みないで壟断するということは、きわめてけしからぬ考えであると考えるのであります。従つてこの法案はブルジヨア支配階級の一連のグループが、一攫千金を夢見て起した一つの陰謀だと思うのであります。  次にこの池袋、神田間の地下鉄建設計画は、二キロ余りも地上に出るのであります。この露出する箇所の東京都文京区におきましては、この予定線にかかつておりますところの都民は、土地収用法の適用によりまして、わずかな立ちのき料を支払われて、追い払われるという結果になるのであります。このように居住権が強権をもつて剥奪される場合に、現吉田内閣は申すに及ばず、現在までのいかなるブルジヨア独裁内閣は、いまだかつてこのような犠牲者に対して、十分な満足すべき代償を考えたことはなかつたのであります。  次に、この帝都高速度交通営団の建設予算中に、ほんのすずめの涙ばかりの見返り資金を使用し、この見返り資金に対して特別の優先性を与えておるのであります。これはまつたくかつての満洲における日本帝国主義のもとに、南満洲鉄道の果した政治的役割を顧みますときに、今や立場をかえて慄然たるものがあるのであります。  こういう観点において、日本共産党は徹底的に人民のために反対する。
  68. 前田郁

    前田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  69. 前田郁

    前田委員長 起立多数。よつて原案通り可決いたしました。  本案に対する委員長報告については、委員長に御一任願いたいと存じます。  この際暫時休憩いたします。     午後四時二十六分休憩      ————◇—————     午後四時二十七分開議
  70. 前田郁

    前田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  港湾輸送事業法案議題といたします。これより質疑に入ります。滿尾委員
  71. 滿尾君亮

    滿尾委員 この法案は、提案者がたいへん急いでおられるようでありますから、急いで要点だけをお尋ね申し上げたいのであります。  第一は、この港湾運送事業に対しまして登録制をおとりになつたようでありますが、なぜこれを免許制にしなかつたのか。港湾運送事業の公益性から考え、また陸上の道路運送事業とのバランスから考えまして、私は当然登録制では不十分である、これは免許制にすべきものでなかつたかと思うのでありますが、この点についてお伺いいたします。
  72. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 お答えいたします。御趣旨の点はよくわれわれにもわかるのでございます。しかしながらなぜこれを登録制にしたかと申しますと、御承知のように戦争中は総動員法に基きまして、港湾運送事業等統制令によつて統制されておりました。現在はそれが廃止されまして、百二十幾つかありました業体も、今日は千五百というふうな形になつております。それに何とかして秩序を与えたいというのが、この法律の最も大きな目的の一つとなつておるのでありますが、従来海運事業並びにその港湾の仕事というものは、大体が自由的の色彩が非常に強い。外国船舶等も参りますし、そういうふうな色彩も強いのでありまして、これを一つの形において免許するよりも、登録制という制度を置きまして——実質は免許あるいは許可と結果は同じになるわけでございますが、営業自由の原則に立ちまして、一定の要件をここに与えまして、その要件を備えておるものは登録する。     〔委員長退席、坪内委員長代理着席〕 しかしその要件は、この第七条にございます通り、この法律または職業安定法の第四十四条の規定に違反しておる者、あるいは当該港湾運送事業に必要な労働者及び施設を有しないために、全部下請になるようなことがあつてはならないので、そういうふうな条件を与えまして、その条件に備わつた者を登録するというので、実質は許可制度と大体効果を同じように持たせようとしております。
  73. 滿尾君亮

    滿尾委員 ただいまの御説明では、私はまつたく納得が行かないのであります。大体この港湾運送事業というものは、他人の荷物を一時的にも、これを保管し、またこれを処理するのでありますから、その公益的見地からいたしましても、これは絶対に今のような登録制では不十分である。この第七条を拝見いたしますると、何らその数を制限するような字句はうかがわれない。一定の条件を備えた者が届け出れば、これは無制限に大臣は登録しなければならない、さように私はこの法律を解釈するのでありますが、それは間違つておるかどうか。もし一定の規格、条件を備えた者はだれでも、何百人でも、何万人でも、たとえば横浜港なら横浜港について登録ができる、こういう建前で法律がこの面の仕事に出ますことは、きわめて乱暴である。さらにこれが登録制でバランスを失していることは、ずつと先の方におきまして、今度は港湾運送事業財団を設定して、これの抵当権を設定しておる。ところが申請人は法人であることをちつとも必要としない。個人であつても一向さしつかえないことになつておる。これらの点から見ましても、私はこれは非常にアンバランスであると思う。およそ運輸の世界のこの種の事業に対して、このようにでこぼこな御計画ということは、実に私は了解しがたいところである。同じ国務大臣の所管している仕事で、かような、ルーズと申しては失礼でありますが、何といいますか、野放しに、ほうりつぱなしにしてあるのはおかしい。たとえば陸上で申せば、タクシー、ハイヤーの事業まで免許事業になつておる。そうして厳重なる監督を運輸大臣はせられておる。ところがタクシーがお客さんを乗せて走ることと、この港湾運送事業者がわが国の貨物を港湾において取扱いをしますことと、いずれが公益性が高いかと申しますと、申すまでもなく、比較にならぬほど私は港湾運送事業者の方が程度が高いと考える。非常にアンバランスなことが現われておる。さらに驚くべきことには、運賃の問題であります。運賃は業者がかつてに届け出ればいい。そうしてその間に異議の申立ての期間がある。異議の申立てがあつた場合に、運輸大臣は、その料金基準に適するかどうかということを御審査になつて、あるいは変更を命ずることができることになつておる。これはまた実に驚くべき規定だと思う。私は運輸大臣は、料金の届出があつて、それが能率的な経営のもとに、適正な原価を償い、かつ適正な利潤を含むものである、差別待遇をしない、こういう基準従つて、よろしいといつて御許可になられるのかと思うと、そうではない。もし異議の申立てがなければ、その料金がいかなるものであろうとも、そのまま免許になつてしまう。異議の申立てがあつたときに初めて大臣が、その料金の適正なりやいなやを審査するというに至つては、何のための監督官庁か。まるで運輸大臣はその職務を放棄しておるものである。これは驚くべき規定である。これと同じことがまた先のところにあるが、まずこの点について提案者の御意向を伺つて、さらにまたお伺いしたい。
  74. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 御説のように、これを免許あるいは許可主義にすべきであるというお気持は、私どもにもよくわかるのであります。しかしながら鉄道と陸上の運送との関係と違いまして、やはり海運の自由な業界におきまする補助的な仕事をしている者も、同様に自由な措置にするというのは、今日までの考え方であることは事実でございます。また諸外国におきましても、港湾運送事業に対しましては、大体自由にしておるのが原則のようでございます。しかしながら日本のごとく、ことにただいま申し上げましたように、終戦後のこの混乱いたしております業界に対しましては、何とか統制、秩序を与えなければならないというのが、この法律を出している主張の一つでございます。これを別な方面から申しますと、海運の一つの沿革とでも申しましようか、従来陸上運送に対しましては、日本通運というような大きな一つの体系のもとに動いておりますまた大きな運送は、鉄道によつてそれが結ばれておるのでありますが、海運におきましては、外国の船も参りますし、また日本の船もたくさん入つて参りますので、今日この登録制をやりましたからといつて、そう今混乱するわけではないと私ども考えております。従つて大きな線から申しますと、港湾運送というものは元来が自由であり、また現に諸外国においては自由なのを、何とか最小限度統制を与えたいというのが、私どもの気持でございます。  なお料金の問題でございますが、御説のように料金を一つの認可といたしまして、それによつて一つの標準を与えることも一つの行き方ではございます。しかしながらその料金も、やはりその土地、その港湾によつて、おのずからいろいろの事情も違うのでありまして、利害関係人がこれに対して意見を申し述べる機会を与え、また自分もこの料金をつくつたのはこういう理由であるということの証明がつきまして、お互いが納得ずくできめて行こうというのが、この精神でございます。なお運輸大臣は、不当な料金をとるような場合におきましては、いつでもこれを変更し得るようなことになつておるのでありまして、これもまつたくの野放しにしておくという意味ではございません。
  75. 滿尾君亮

    滿尾委員 この免許制にしなかつたという理由につきましては、提案者の御説明では、私は論旨不十分だと思う。それはなるほど港湾の仕事には、自由主義的な色彩が多かつた、外国の例がそうであつたというお話がありますが、あるいはそれはそうかもしれませんけれども、われわれは先般の戦争のときに一番困つたのは、わが国の運輸の仕事のネツクが、港湾運送事業であつたことである。それは平生勉強が足らぬから、態勢ができていなかつた。それをまた終戦後になつて元のもくあみに返して、大勢の人間にやらして濫立しておるということは、運輸省の政策の欠如のいたすところで、こういうだらしのない話はない。だからこれはどうしても免許制にすべきものだと私は思う。大体事業の性格からして、公益的性格をあなた方認めるならば、私は当然免許制にすべきだと思う。どうしても登録制度では、本質的に間違つておるという意見を持つておる。今申し上げた通り一定基準を備えたら、何万人でも許すのだという建前になると、建前として少し無理じやないか、さらに考えてみますと、やめるときには届出さえすればかつてにやめることができる。第二十条には、三十日以内にその旨を届ければいつでもよいといつている。それではたいへんなことになります。運送業者に荷物を託しておつて、事実引渡して、仕事を頼んだ人、利用者の利益を一体いかにして保護するか。これについて何らの責任を感じておらぬ。これは実に驚くべき規定と言わなければならぬ。  さらに差別待遇の禁止が十五条にある。不当な差別待遇をしてはならないと書いてありますが、不当なという形容詞をおつけになつたのは、単なる差別待遇ではなくして、何か意味があるか、どうかお伺いしたい。
  76. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 お答えいたします。最初の御意見、実は御意見として承りたいと思うのでございますが、私どもの考え方は、前に私が申しました程度で御了承願いたいと思うのでございます。  十五条の差別待遇の不当とはどういうことかというのでございますが、これは通常社会通念としてはなはだしいものを、われわれは不当と考えておるのであります。これは実は罰則はないのであります。要するに公平な取扱いをするということは当然な考え方でございまして、規定とすれば一つの訓示規定ということにもなるかと思います。
  77. 滿尾君亮

    滿尾委員 私の伺いましたのは、不当なという字を書かなかつた場合との差を伺つたわけで、つまり一切の差別待遇はいかぬ、差別待遇を厳格にいかぬという意味か、ある程度以上のものはいかぬといつて逃げられるつもりか。私はこの事業の性格から見まして、差別待遇は一切いかぬというのが建前だと思う。それを自分との関係の親疎によつて差別するならば、こういう仕事をさせてはいかぬ、公平の原則がなくちやいかぬ、その毎度から言いますと、引受けの義務をきめなければならぬ。ある利用者が荷物を持ち込んで、あなたの荷物はいやですとそつぽを向くような業者があつては私はいかぬと思う。これは運送取扱い事業としての本質的要求であります。ところがそういうことが書いてない。もちろん何も独占させる必要はないのでありますから、一つの港湾に数人なり数十人なり、量によつてきめるのはよいが、しかし一定の目途がなくちやいかぬと思う。むやみと、観念上大臣は標準さえ持つておれば拒否することはできないという建前で、法律を出すことは非常に危険だ。これはやはりほんとうに業界の秩序というものを考えて、大臣はその点もつと責任を負わなければいけない。従つて形の上では、出て来さえすれば、一定の欠格条件さえなければみな港湾運送取扱人だというような、底のないひしやくで水をくむような感じがするのでありますが、これはとんでもないことである。  それから先ほどから申し上げましたように、運賃の問題と十一条の運送約款と、両箇条において、しりぬぐいの段階になつて初めて大臣は公平の原則とか、正当な処理とか、りつぱな基準によつて審査する。それ以前には審査しないという建前が、どう考えてみても奇怪しごくなる規定ではないか。大臣は料金なり運送約款の届出があれば、当然それが正当の基準に立つておるかどうかを審査してこれを許可するという建前で、またそれについて異議があつたら、大いに公聴会を開くなり、人民の意向を聞かれるのはけつこうだが、人民側のたれかが文句をつけない限り、内容を審査しないでよろしい。文句をつけて初めてそれが正当の立場に立つておるかどうか審査して、あるいは是正することあるべしというがごときに至つては、どう考えても了解しがたい。もし文句が出なかつたときには、何でもうのみにして、その料金を有効なものとして、三十日経つたら文句をつけられないという規定が書いてある。それをおやりになるというお考えであるかどうか伺いたい。
  78. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 港湾運輸の仕事は、取扱いを公平にするということが大原則であることはお説の通り、私もそう考えておるのでございます。ただいろいろ事情がございまして、厳格な差別待遇をしてはいけないということになりますと、非常に問題がむずかしくなるのでありまして、私どもは商取引上の習慣として考えられておる許されるような差別ということは、これは事業を営むもののやむを得ない措置と考えておるのでございます。それを越えて不当に差別待遇をするようなことを、ここではさしておるのであります。  なお話は最初にもどりまして、要件を具備したものは、何でもここに許すということはいけないのだ、こういうお説でございますが、その点は前にも申しました通り、この登録制度というものは、一定の事件を具備したものに仕事を認めるということでございまして、言葉をかえて申しますれば、いわゆる行政権というものによつて、その業務を左右させることを極力避けて、いわゆる法定されました条件というものを、行政官庁としては遵守して行くというような考え方でございます。  なお料金につきまして、大臣が全然介入しないではないかということでございますが、これは条文の中にございます通り、大臣はみずから不当と認めた場合には、これの変更を命ずることができるようになつております。
  79. 滿尾君亮

    滿尾委員 私今日初めて読んだものですから、あるいは誤解があるかもしれませんが、第九条の規定によりますというと、利害関係人が異議を申し立てない場合に、大臣が最初の届出のあつた料金に対して、積極的に変更を命ずることができないと読んでいるのです。第三項には「前項の請求のあつたとき、」と書いてある。従つて業者が届出をして来て、その料金に対して大臣は、その場でただちにこれに対して変更をすることができない。何人か利害関係者が異議の申請をして、そしてその請求が来たときに、初めて大臣はこれに対して干渉ができるのであつて、だれも言わなくて三十日たつてしまつたならば、その料金はそのまま適法になる、そう法律を読んだわけですが、どこか間違つておりましようか。
  80. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 第九条の第三項には「運輸大臣は、前項の請求があつたとき、又は自ら第一項の規定により」となつております。
  81. 滿尾君亮

    滿尾委員 わかりました。その点は私の誤解でありました。「又は」とありましだ。しかしこの法律の建前は、請求のあつたときに干渉することを原則として、大臣が自発的に発動するのは、第二段に書いてありますから、これは例外的な立場だと考える。そのこと自体がすでにおかしい、賛成いたしがたいと考えるのであります。第二十条の業者がやめるのに対して、利用者の保護をなぜお考えにならないか、その点を伺いたい。
  82. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 業者がやめます場合に、この法律の体系といたしまして、登録をいたしておるのであります。届出によりまして、その仕事を廃止することができるのでありますが、いろいろの関係は、他の民法、商法その他の法規によつて当然そのあとの結果は、始末をしなければならないことは当然と心得ております。
  83. 滿尾君亮

    滿尾委員 業者が事業を廃止した場合における善後の救済は、おのずから司法上の処理によつて救済されるのだという建前は、この制度をつくつた大臣としては不親切だと想う。大臣が、国家の承認した登録運送業者であると看板を掲げて、その看板を信用してこそ利用者は利用した。その業者が事情によつてやめてしまつて、三十日たつたらその廃止が有効適切なものとなつて、そのあとのいろいろな司法上の係争については、お前ら当事者がかつてにやつたらいいじやないか、お前が裁判所に持ち出したらいいじやないかという行き方は、この制度をつくつた精神からいつて一般公衆に対して不親切だと思う。御意見を伺いたいと思います。
  84. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 お答えいたします。お話のように親切でない。親切であるということは御意見でありまして、この法律だけでそうした仕事を取締ることは、実はこの法律は期待しておらないのでありまして、他の業界におきましても、こういう例はたくさんあることと私は存じております。
  85. 滿尾君亮

    滿尾委員 第五条において、この資格の中に法人格を条件とせられず、私の人でもよろしいとせられたことを第一点として伺いたい。それと最後の事業財団の設定でありますが、この事業財団は、個人の財団でも事業財団を設定することは、法律上の制限はないかもしれませんが、これは適切であるというふうにお考えになつていることについてお伺いしたい。
  86. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 御質問の御趣旨は、私もよくわかるのでありますけれども、この事業、ことに港湾運送事業の現状をよく御存じのことと思うのであります。個人あるいは法人、いろいろやつていることは事案であります。また個人におきましても十分やり得るのでありまして、われわれといたしましては、法人であろうと個人であろうと、この仕事をやつております。実態にかんがみまして、こういうようにいたしているのであります。従つて事業財団が、そうした業者を認めております以上、当然その事業に対する保護をいたすことは、ただいま申し上げたような意味におきましては、当然だろうと考えております。
  87. 滿尾君亮

    滿尾委員 今の財団は、私人でもさしつかえない、バランスがとれるというふうにお考えになつておるかのようなお口ぶりのように伺つたのでありますが、どうもそれが納得しがたい。  さらにもう一つ伺いたいことは、この第五条で私人を認めた場合であります。利用者との間にいろいろ損害賠償の問題が起るような場合が想像されねばならない。これらの場合を予想いたしました場合に、やはり第五条においては法人格を要件にすべきではなかつたかと私は思うのです。現在までの事業者は、あるいは個人でやつているのもあるかもしれない。しかしそれは法人格の組織をとらせればいいのですから、何も第五条を私の個人でもこの事業を認めるというふうにする必要はなかつた。つまり港湾運送事業の基礎を確かなものにして、天下の信用をかたいものにして、りつぱなものに育てて行くことが私は念願だと思う、そういう角度から見れば、この際は法律で個人の事業としても認めるということは、少し無理である。やはり公益的な仕事、他人の荷物を一時的にも自分の専有に移す仕事でありますから、この事業経営の内容も明らかにする方がよろしい。またその損害賠償の担保力につきましても、程度の高いものにするのがほんとうだと思う。ところが今回の御提案は、現状にあまりに妥協するに急にして、何らの理想が入つておらぬように感ずるのでありますが、その点についての御見解を伺いたい。
  88. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 滿尾委員と意見を異にすることを遺憾といたすのでありますが、私は、個人であろうと法人であろうと、その内容の堅実さという点におきましては、いささかもかわるところはないと思います。要するにその内容が問題でありまして、その形式を問わない方が、むしろ私は実際に適した措置ではないかと考えております。この点は意見が違つていることを遺憾といたしますが、私はさように考えます。
  89. 滿尾君亮

    滿尾委員 まだお伺いしたいことが多々あるのでありますが、ほんのかけ足で、はなはだ不勉強で申訳ないのでありますけれども、今の個人の議論をもう一ぺん繰返します。なるほど三井、三菱というような、個人の信用の程度の非常に高いものもあるのでありますが、しかし実際問題として、千人も千五百人も運送事業者がおる場合に、個人のものは概括的に申して信用の程度が低いと思う。個人の事業となりますと、事業運営上の内容が明らかに公表されません。法人であれば最小限度の決算報告書が出るので、その点でやはり信用力が大きいと思います。これらの事業については、荷主、公衆の立場から申しますと、やれ物がなくなつたとか、毀損したとかいうような、取引上の損害賠償という問題が、非常に大きな問題だと思う。こういう業態を国が監査し、監督する根本の一つの理由は、そのような一般大衆の利益を擁護する角度からするのであります。ところが今回のこの法律を拝見してみますと、その公衆の万一の場合の損害を補償するに足る条文が、どこにも見当らないように思いますが、私の読み方が悪いのか、その点についてお考えを伺つておきたい。
  90. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 個人と法人の問題が出て参つたのでございますが、個人、法人に対する私の考え方は、前に述べた通りでございます。なおお手元に調書もお配りしたと思うのでございますが、実際今港湾運送業者は非常に個人が多いのでありまして、もしこの個人をして、法人でなければならないということになりますと、非常な混乱の生ずることは事実でございます。こういう点だけを考慮して、個人を認めたということでは決してないのでありますが、案は今度この登録制をしきますと、おそらくブローカー的なものはこれを禁止しておりますので、実際問題といたしましては、各港湾におきまして、小さな業者は組合をつくり、あるいは会社となるような形に行くのではないかと思います。と申しますのは、この事業財団をつくりまして、金融の措置も非常に円滑に行くようになると、やはり勢いそういうような方向に向つて行くのではないかとわれわれとしては考えております。  なお損害賠償の点について、一つも相手方の保護をしておらないのではないかというお説でございますが、この法案といたしましてはそういうことは考えておりません。これも先ほど申しましたように、この法律だけで港湾運送事業全体が取締れるものではないのでありまして、他の法規によつてその方面は救済されるということに相なると思います。
  91. 滿尾君亮

    滿尾委員 私はこの法案の根本の最終目標は、結局この港湾運送事業というもりの内容を高めて、信用の程度の高いものにして、りつぱな仕事をしてもらつて、業者自身も健全な発達をしてもらうと同時に、これを利用する公衆が安心して利用ができるような形態にするのがねらいだと思う。ところがその角度から見ますと、今回のこの法律が実に私は不十分だと考える。まことに不満の意を表さざるを得ないのである。それでどうしても信用度を高めるべく、一歩前進したお考えが必要じやないか。それはいろいろ港湾の因習があります。それを革命的に変更させるのは困難かもしれない。しかしそれは二通り事業者をおつくりになればいい。たとえば大阪商船なら大阪商船専属の運送業者、その他一般公衆どこにでも公平にやるという業者、二段構えにおつくりになる。専属のものについてはいろいろな条件を少し軽くしてやる。それから広く解放したものにつきましては、きちんとしたもりをおつくりになるということも、一つの方法でなかつたかと思います。それらの点についての考慮がやはり足りなかつた、これは非常に残念に思います。一番最後の附則の中に、自動車抵当法施行法云々ということが出ておりますけれども、自動車交通事業団の方はまだ出ておりませんから、この点この法律は現段階におきましては、一部御修正される必要があると考えます。
  92. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 御説のようにこの業者の信用を高め、健全なものにするというお考えにつきましては、まつたく私も同感でございます。ただ現在の港湾運送事業が、まだその点に至つておらない日本の現状に対しましては、われわれとしてははなはだ遺憾であるのでありますが、これは日本の今日の国情がそうさせておるのでございまして、特にこれにある統制を加え、そして強固なものにするということが、また行政全般の問題の方針にもなつて参りますので、われわれといたしましては、登録という制度によりまして、非常に弱体な、またときにブローカー的な港湾の運送を阻害するようなものを排除して行きたい。これを最小限度に考えておるわけでございます。繰返して申しまするが、営業自由の原則に基きまして、一定の要件を備えたものにこの港湾の運送をやつてもらう。御説のように大きな会社の専属にして、二つの系統にした考え方ということも、一つの御説であろうと思うのでございますが、ただいまの私としては、御意見として拝聴いたしたいと存じます。なお附則の問題につきましては、法制局の方から御答弁申し上げます。
  93. 杉山恵一郎

    ○杉山参議院法制局参事 附則の問題につきましてお答えいたしますが、この港湾運送事業法案を提案する準備をいたしておりまする際には、実は自動車抵当法施行法の方が先に出るような運びになつておりましたので、それを改正する必要がありまして、附則に入れたのでございますが、いろいろの事情で向うの方の提案が遅れました関係で、今のような問題が起つております。港湾運送事業法と自動車抵当法施行法と同時に公布になりますれば、普通の改正と同じような形で問題はないのでございます。もし港湾運送事業法の方が先に施行になりまして、あとで自動車抵当法施行法が出るということになりますと、規定といたしましては、全然効力を持たないものが中に入つておるという形になりまして、形としては適当ではございませんが、これによつて実害を生ずるというふうなことはないと考えております。
  94. 滿尾君亮

    滿尾委員 私はもう前後のいきさつのことはよくわかつております。実害はもちろんないのでありますが、ただ法律形式的効果として、その効力に影響はございませんか。その点は私は法律技術的な見解をお尋ね申し上げたい。
  95. 杉山恵一郎

    ○杉山参議院法制局参事 これは形式といたしましては、ない方が非常にはつきりしてきれいでございますけれども、あつたからといつて別にどうということはないと思います。
  96. 滿尾君亮

    滿尾委員 もう一言提案者にお伺いいたします。三十三条を見ますと、「この法律施行確保するため必要があると認めるときは、港湾運送事業者に、はしけの使用その他事業に関し報告をさせることができる。」これが雑則の中に入つておる。私は運輸大臣の業者に対する監督というのは、もつとしつかりしたところに書いてもらいたい。どこかに改善命令を出すことができる、当然いろいろな指導監督ができるような条項を置くべきでなかつたか。雑則の中でいかにもつけたりで、「必要があると認めるときは、」というのではおかしいので、本来ならば省令をおつくりになつて、それによつて定期的に業務上の諸報告を徴せらるべく監督するのが本筋ではないか、それらの点について運輸大臣の態度はどうも少しへつぴり腰ではないかと思う。
  97. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 雑則ということでお気に触れたようでございますが、この法案の一つの形としてここに入れたのでございますが、三十三条だけのことでは足りないのではないかというお話でありますが、われわれといたしましては、この程度の報告徴収等で仕事をやつて行くのを適当と考えておる次第であります。
  98. 滿尾君亮

    滿尾委員 私は運輸大臣の監督が、三十三条によつておる程度では非常に不十分だと考えるが、提案者がこれで十分だとお考えになる、これは見解の相違ですから、いたし方がない。  私は以上におきまして、大体具体的な事項の御質問を一応終りますが、もしこの法案が本日大体質問が終るということでございますれば、ぜひ運輸大臣を呼んでいただきたい。私は提案者にお伺いするのはこの程度で終りまして、ぜひ大臣にお伺いいたしたいことがあります、それを保留いたしておきます。
  99. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 この雑則の二十九条の「訴願することができる。」ということでありますが、これは民法上に基く訴願でありますか、訴願すべき相手方はどの機関に属するものでありますか。
  100. 杉山恵一郎

    ○杉山参議院法制局参事 二十九条の訴願は、訴願法に規定する訴願と同じでありまして、行政処分に対する上級官庁への異議の申立てとか、そういつたような訴願でございます。
  101. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 行政官庁に訴願するものと、民法上の訴願とは分離して考えているわけでございますか。
  102. 杉山恵一郎

    ○杉山参議院法制局参事 民法上のということはよく趣旨がわからないのですが、港湾運送事業者と契約関係にある荷主その他の者との間に起つた民法上の問題、たとえば債務不履行であるとか、あるいは不法行為であるとかいつたような問題については、当然民法の問題として、裁判所に訴えて請求することができることは当然と考えます。これとはまた別な関係であります。
  103. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 第二条の「この法律で「港湾運送業」とは、営利を目的とするとしないとを問わず港湾運送を行う事業をいう。」とありますが、営利を目的としない部類の事業ということになりますと、どれをさしておるのでありますか、それをお伺いしたい。
  104. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 この書き方は、他の通運事業法にもある規定であります。そこで、もしかりにある公共団体がこの事業をいたしますような場合には、特に営利を目的としないということの考慮もされるのでありますが、実は私今具体的には存じておらないのであります。そういう場合も、港湾の秩序を維持する上においては、ひとしくこの法律を適用する、こういう考えであります。
  105. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 ただいま提案者の御答弁では、詳しく存じないということでありますから、あまり深く立ち入つてお伺いいたしませんが、かりに、公共事業団体等が行うような場合には、どういうことが想像されましようか、その点をお伺いいたします。
  106. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 その場合におきまして、もし業態がかわるというのであれば、有償であるか無償であるかというようなことが関係して来るのでありまして、その他の実際の動きは全然同じような形で現われて来ると思います。
  107. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 この法案は本日卒然として委員会に付託されたのでありますが、私も遅れて参りまして説明内容を詳しくは存じておりませんが、しかし先ほどの御説明を聞くところによりますと、きよう中にでも通してもらいたいような御意向があつたように拝承いたします。またそのように法案の通過を急ぐ理由の一つとして、一、二こうした業者に見返り資金融資の点について考慮されるものがあるからだというように聞いたのでありますが、それはその通りでありますか。
  108. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 実はこの法案は、運輸省におきましても、終戦後非常に混乱いたしております事態にかんがみまして、二年ぐらいもんでおつた法案でありまして、一日も早くこの法案が成立することは、単に行政庁として考えておるだけでなく、業界としても、またこれに関係いたしております労働者におきましても、期待いたしておるのであります。一日も早く成立されたいと考えておつたのでありますが、なかなかこの港湾運送の業態というものがつかみにくい。特に関係方面との折衝では、日本の現状をつかむに相当の時間がかかつたこともありまして、今日に及んでしまつたのであります。現にこの法案も、本国会差迫つてから向うからオーケーが参つた点等がありまして、御審議の上には非常に御無理をお願いいたしておるのでございますが、特にこの事業財団をつくりますことによつて、業界は非常にその金融的な措置が講ぜられますので、一日千秋の思いで待つているような始末でございます。ただいま申されました意味においての見返り資金の問題もあることは事実でございます。実は私どもといたしましては、この見返り資金を得ることによりまして、単に一つの業者というようなことを考えるよりも、たとえば横浜であるとか、あるいは神戸であるとか、その港湾の荷役能力を一日も早く解決してやりたいということを考えておるのであります。現に横浜あたりでも、最近五千トン級のリバテイを十五日も荷役に費しているというような始末でございます。そういうことは、単に一業者と申しますよりも、その業者の活躍することによつて非常な利益を得るわけでございます。それで本年度計画されているところのそういう資金がとまることは、これに関係している者としては何としても残念に考えているようでございます。この程度のことを申し上げて御了解が得られるかどうかわかりませんが、そういう事実を申し上げておきます。
  109. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 こういうことを委員会で申し上げていいか悪いかは存じませんが、実は私今日まで法案審議を担当して来ましたうちの一つの例として、港湾特例法というものを本国会において通したものでありまするが、この法案審議にあたりましては、実は第八国会以来連続的にやりまして、最近ようやく法案が通るというようなことになつた過程におきまして、参議院委員会等にも連絡いたしまして、事前に審議をしやすいように相当の期間を置いてあつたわけであります。最後のオーケーが来て通過を見る場合におきましても、私提案者の一人として参議院に行つて提案の説明をした一人でありますが、その提案説明の後におきましても、たしか三日か四日の日にちを置いて、参議院委員各位が十分審議し得るような時間的余裕を持つてもらつて審議をいたした経過があるわけであります。ところが伺いますと、これは相当前から、運輸省においてもこの措置をとるべきことを寄り寄り協議され、さらにまた関係筋にも折衝されたということであればあるだけに、今日卒然として出すというような措置に出でずして、関係方面と折衝する過程において、衆議院側の委員各位に対して、個人的にでもよろしいが連絡いたして、十分この法律内容を検討せしめる機会をなぜ与えなかつたか。この点私はなはだ遺憾に思うのでありますが、これに対していかなる経緯によつてこの結果を見たものであるかを、一応提案者にお伺いいたします。
  110. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 玉置委員よりのお話のように、まつたく私の不行届の点を今痛感いたしておるのであります。これは率直に申しますが、実はこの法案の提案者になりましたのは、今から三週間ばかり前でありました。政府の方で立案いたしまして、こちらに依頼されたわけであります。もちろんこれは自由党の政調会には御説明申し上げた機会もあつたのでございますが、当委員会の各位に対し事前の御説明もいたさず、しかも今日になりまして急遽御審議を願うことの失礼なことに対しまして、重々私も承知いたしております。しかしただいま申し上げましたような実情にあるのでございまして、私の不行届はおわびいたすといたしましても、実情だけはひとつ御了承願いたい。はなはだ相済みませんでした。
  111. 岡田五郎

    岡田(五)委員 私は自由党の政調会の方に、海運関係として関係しております関係上、この法案の草案時代に実はいろいろ御相談も受けましたし、また公報でいろいろ公示いたしまして、皆さんのお集りを願う機会をつくつたのであります。そのときに滿尾委員からもいろいろお話があつたように、登録制と許可制の問題、あるいは財団の問題等、いろいろ意見を述べたのでありますが、その後いろいろと関係方面との折衝の経過もあつて、かような法案なつたかのように、自由党の政調会の関係者として聞き及んでおるのでありますが、一応自由党の政調会の人間といたしまして、最善の努力をいたしましたという経過だけを——提案者からいろいろおわびの言葉のような、また弁明的なお言葉がありましたので、関連的に玉置委員の御質問に対してお答えを申し上げます。
  112. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 先ほど提案者の御説明の中に、横浜でしたか、例をとりまして、労働者も困つておるし、荷役の点においても非常に進捗しないというお話を承りまして、ごもつともと存じておりますが、荷役の能率の点におきましては、資金に関連して施設が十分できないことに基因するとも想像されますが、労働者の点においてお困りになるということは、具体的に申すとどういうことでありましようか。
  113. 鈴木恭一

    ○鈴木参議院議員 いかなる労働者にいたしましても、やはりその事業が健全なものであることは、私申し上げるまでもないと思うのであります。現に非常にこの事業が零細化いたしておりまして、港湾運送能力がその港において適正な規模を持つているというものは、今日いろいろ統計等を見ますと、たとえば会社といたしましても、三百万円程度の会社というものは、そう大きな会社ではございません。それ以下が七五%もある。それから大体はしけその他ひき船等におきましても、六大港あたりでは二千五百トンくらい持たないと仕事ができない。そういう二千五百トンを持たない程度のものが七〇%、従業員百人以下のものが八八%、なおはしけその他の現状を見ますと、大体はしけというものは十五年くらいが命数と見られますが、五年以下のものが二三%、十年以下のものが二四%、十五年以下は三三%、十六年以上が三〇%というわけであります。十五年以上となりますと、実に五四%も命数が来ているというわけでございます。従つて荷役能力等も、非常な労働過重になつて参ります。そういうように機械が減つて参りますに従つて、そういう状態がまた労働力にかかつて来る。そこで御承知のように各方面で、ときによるとダンピングをやつて、この急場を切り抜けようというような事態も最近出て来る、こういうことでは、実際それに従事しております労働者も、不安でたまらないと思うのであります。結局業態がしつかりして参りますれば、ときに団体交渉をいたしますにしても、自分たちの要求の裏づけができるわけであります。そういうような意味合いにおいて、組合もこの仕事を早く法案をつくつて確実な、健全なものにしたい、こういう念願でおるわけであります。
  114. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 この法案については質疑をこのくらいにして、暫時休憩いたします。     午後五時二十八分休憩      ————◇—————     午後八時三十三分開議
  115. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  船舶職員法案に対する質疑を続けます。参議院において政府案を修正しておりますので、参議院側よりその修正部分の説明を求めます。岡本参議院専門員。
  116. 岡本忠雄

    ○岡本参議院運輸専門員 要点を御説明申し上げます。  第一に免許につきまして、原案第五条第二項の規定によりますと、船舶の機関の種類につきまして免許を限定する必要がある場合に、国家試験に合格した者に対しまして、その免許の効力を行政処分によつて一方的に制限し得ることとなつておりますので、これは適当でないと考えられます。かような場合に、限定せられた資格につきまして試験を行いて、それ相当の免許をなすべきであるという見解から、これを明らかにするために、試験の実施に関する第十二条及び受験資格に関する第十四条を、お手元に御配付になつておることと思いますが、修正いたします。  第二には、免許の取消し等、船員に対する行政処分につきまして、原案第十条は単に行政官庁のみの判断によつて行われることになつておりますが、行政処分はできるだけ慎重な手続によるべきである。ことに海上保安審議会の制度がございまするので、その意見を聞き、その意見を尊重してなすべきものであると考えまして、その旨同条に第二項を加えることにいたした次第でございます。  第三に、試験及び受験資格基準等は、法律に明定すべき性質のものであるという見解に立ちまして、いろいろこの関係法文を研究いたしたのでありますが、試験制度につきましては、そのきめ方ははなはだ複雑でございますから、法文に盛ることはきわめて困難であります。しかしながら少くともこれを省令で定めまする場合に、試験の実施に関する重要なる資格につきましては、海上保安審議会の意見を聞くのが妥当であるという結論になりまして、原案第十二条以下はこの点に関し明文を欠いておりまするので、十四条の次にこれに関する一条項を第十五条として加えることにいたしたのでございます。  第四に、船舶職員として船舶に乗り組ますべき者の資格につきまして、原案第十七条、船舶職員業務を行い得る者を規定する原案第二十条、この両条はいずれも船舶の機関の種類に限定した場合の規定を欠いておりまするので、それぞれ第二項といたしまして追加し、明らかに規定する必要があるものと考えまして、これを修正したわけでございます。またこれに関連しまして、罰則におきまして、原案第三十条に関係を持ちまするので、所要改正を加えたわけでございます。  第五に、原案二十三条でございまするが、船舶所有者に対しまして、船内に船舶職員名簿の掲示を命じまして、その違反者に対しては処罰をすることとし、これを第三十二条に規定しております。しかし船員法におきまして、船長に対しまして船員名簿の備えつけを命じておりまするから、さらに同じような種類の名簿の備えつけは不必要であると考えられまするので、第二十三条は削除すべきものという結論を得まして、ここに削除することにいたした次第でございます。  第六に、本法適用の特例につきまして、原案の附則第二項でございまするが、これは本法制定の要点の一つとなつておりまする新しい資格定員制度の実施まで、約三年の準備期間を規定しておるのでありますが、準備期間の措置はあくまで経過的措置の性質を持つものであるという見解からいたしまして、普通の立法の例のごとく修正する方が適当であるという結論になりまして、本項及び関係する別表の修正をすることにいたした次第でございます。  第七に、以上六点の修正に関連しまして、罰則の整理、字句の整理、条文の整理を要するとともに、附則第六項水先法の改正中、ただいままで申し上げました修正に関連する事項について修正をいたしたのでございます。  第八に、附則のうちで経過規定がございまするが、そのうちで修正しました第一は、原案は小型船舶に対する船舶職員制度の採用につきまして、総トン数二十トン未満の帆船、漁船等についても適用することとなつておりまして、これに国家試験を課することになつておりますが、船員の素質を向上するための計画はまことに適切なことでありますけれども、資格試験について全面的に適用することは、必ずしも現状に即しないうらみがあるものと考えられます。知識の点から言いましても、生活面から言いましても、かように考えられるのであります。すなわちこの制度を適用するためには、なお相当の準備期間を要するものと結論を得まして、この点に関し参議院における水産委員会からの決議としての御要望もあつたのでありますが、その申入れをも尊重いたしまして、一定の条件のもとに試験を免除する特例を設ける必要があるものと考えまして、かように町村長の証明をもつてこれにかえるというように修正いたした次第でございます。経過規定の中の第二の点は、原案第十項によりますと、海事関係の学校の卒業者の試験につきまして、学術試験を免除する場合が狭きに失するものと考えられますので、この際わが国の現状に即しまして、船員の需給状況等をも考慮いたしまして、現状に即応するごとく原案を修正いたした次第でございます。  以上修正の大綱について御説明申し上げました次第でありますが、なお詳細につきまして、御質問がございますればお答え申し上げます。
  117. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 ただいまの御説明に御質疑がございますれば、これを許します。江崎一治君。
  118. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 今度の船舶職員法案参議院修正案は、小型船舶に適用する船舶職員の国家試験について、町村長が認定する場合には、その国家試験を免除することができるというような説明があつたのでありますが、町村長はどういう点を基準としてこの国家試験免除の資格を与えるのか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  119. 岡本忠雄

    ○岡本参議院運輸専門員 これは実際問題といたしまして、履歴書の送付程度で判定をするということにせざるを得ないだろうと考えます。
  120. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 こういう委員会で、この法案に対してのみ審議しますときには、大体今の御説明で通るのですが、実情になりますと、これになかなかいろいろな事柄が加わつて来るわけであります。特に今の船舶の労働者の生活が非常に困窮しております。そのために全国をずつと見渡しますと、自然発生的にも革命的要素が多分にあるのであります。自分たちの生活を守るために、労働者としての基本的な人権を守るために、労働争議をやるという場合が出て来ると思います。そういう争議の首謀者と目されるような人たちが、この認定をしてもらいたいというわけで町村長に申請をしても、いや、お前はちよつとぐあいが悪いというようなことを言われるのじやないか。そういう情実がこれに含まれる危険が多分にあると思うが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  121. 岡本忠雄

    ○岡本参議院運輸専門員 そういう点はたまにはあることも予想して、いろいろ審議を重ねたのでございますけれども、漁業界全般の現在の実態から考えまして、全面的にこの原案を施行いたしまして、きびしい試験をやることから基因するところの、それらに及ぼす経済的な圧迫、さらにまた実際試験をするという通告をしましても、漁期が来ればすぐそのまま出て行くような実態からいたしまして、不可能である。その方の害が比較にならないくらいのものであるという判定に基きまして、実は大局的な見地から、かような修正をしたわけでございます。
  122. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 私は別に何でもかんでも試験を全部やらなければ承知せぬと言つておるのではありません。試験は全然やる必要がない。五年間に切つて免許講習もやる必要はないと思います。試験制度でも、この労働者は好ましからざる労働者というふうに考えておるときには、この試験制度で落すこともできるわけです。特にそういう弊害が、町村長の認定ということになると、ますますはなはだしくなる。この免状というものは、船員にとりましては死活問題である。そのためにこの法律は非常に形だけは合理的であり、そうして科学的であるように見せかけておるけれども、実は労働者の弾圧の道具になりはせぬか。その点について大きな危険を感ずるわけです。そういう点についてはどう考ええられるか。
  123. 岡本忠雄

    ○岡本参議院運輸専門員 ただいまの御質問によりますと、町村長の認定というような御解釈をいただいておるように思いますが、この修正におきましては、履歴書を出すくらいの程度の町村長の証明書をつけるということになるのでございまして、認定はあくまでこれに免状を与える管海官庁がやるわけであります。そのほか実態につきましての御不審につきましては、政府からも出席しておられるようでございますから、その方から御答弁願えれば、はつきりおわかりになることと存じます。
  124. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 今の点について政府当局の御見解を承りたいと考えます。
  125. 松平直一

    松平政府委員 実際試験の執行に当りましては、この試験そのものが航海のために必要な知識と技能を試験する、こういうことになつておりますので、体格検査もするわけであります。それ以外のことについては触れておりません。従つて御心配の点は、われわれの方では実際には何の試験もいたすわけではございませんから、その点は御心配ないものと思います。
  126. 川島金次

    川島委員 ただいま参議院側における各般の修正案を承つたのでありますが、その修正について一応われわれも了解できるのですが、この各般の大幅の修正をするにあたりまして、一つ重大な点を除いていることについて、私どもちよつと理解しかねる点があるのであります。と申しますのは、船舶通信士定員の問題であります。これはすでに他の委員諸君からも、あるいは議論があつた点ではなかろうかと思います。たとえば船舶通信士定員について近海航路の五百トン以上一千トンは、従来通信士は二名であつたものが一名、一千トン以上千六百トンまでは二名であつたものが、これまた一名に減員をされました。遠洋航海における船舶につきましても、従来三名のものが一挙に一名になつた、あるいは五名のものが二名に減員せられた。こういうことは船舶の安全の上において非常な影響のあることはもちろん、船舶に乗り組みますこれら通信士の不当な労働強化にもなるという事柄であるのであります。こういう問題につきましても、相当議論の焦点になつたものではないかと私どもは推察をいたすのでありますが、こういうことについての修正をいたそうという顧慮が払われておらない。どんな事情によつて、何らの修正を加えることなくして今日に至つておるのか。せつかく大幅の修正を加えておるのでありますから、こういう重大な問題についても、修正されてしかるべき事柄ではなかつたかと私どもは信ずるのでありますが、それがなされておらないということについての、何か特殊の事情でもおありであつたならば、それについて御説明を願えればたいへんけつこうだと思います。
  127. 岡本忠雄

    ○岡本参議院運輸専門員 今御質問の点につきましては、もとよりあらゆる角度から検討を遂げた次第でございます。ところがこの原案そのものの定員の算出につきましては、大体国際法上のいろいろな基準を基礎といたしておりますことと、この点につきまして海上保安庁に審議会がございますが、この審議会におきまして長い間専門的にこれを練つて参りまして、おそらく多数決だつたと思いますけれども、ようやく結論を得たのが、この船舶職員法定員制度になつているということも十分に了解いたしまして、その結果これに定めるところの定員最低限度を定めたのであります。実際問題といたしましては、船、主側と船員との力の強弱の問題もあるかもしれませんけれども、実状に応じましていろいろの折衝を遂げられて、足りないところは補充されるであろうというようなことも考えまして、特に今までの委員会の経過をきわめて尊重いたしまして、一応画期的な法律制定にあたりましては、これに修正を加えない方がよいという意見に多数の者が一致せられまして、手をつけないことになつた次第でございます。  なおこの点につきましては、原案の作成者であります政府側に詳細ないきさつを御聴取くださるならば、よく判明することと考えます。
  128. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 この際運輸大臣が御出席ですから、運輸大臣に対する質疑を許します。江崎一治君。
  129. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 運輸大臣が見えておりますので、一言お伺いしたいと考えております。ここにおられる自由党の同僚議員にはまことに申訳ないことかもしれませんが、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━山崎運輸大臣は非常に誠実な人だと考えるのであります。そこでその誠実な方に信頼いたしまして、ひとつ率直にお伺いしておきたいと思います。  この前の電波法制定されたときもそうであります。船主側の設備をすることに対しては非常に寛大である。しかも労働者側に対しては非常に過酷な条件をつけて運用して行くというのは、大体今までの電波法の例においてもそうでありましたが、この船舶職員法においても、そういう点がきわめて明確に出ております。特に目立つて出ておりますのは、先ほど川島委員も指摘されたのでありますが、この通信士に対する定員の削減であります。日本は御承知の通りボロ船の、船齢が三十年以上というような船もあり、戦時標準船の一枚板のドラム・カンのような船を使つておる。それで日本の船員に対しては、通信ということが非常に大きな要素になつております。この通信士定員を削減して、たとえば夜の十二時から夜明けの六時ごろまで無線局を閉局しておつたためにまざまざ海難を見のがしてしまつたという実例があるのであります。登美丸の遭難事件がまさにこの事例であります。こういうような事例をわれわれは知りながら、この船舶職員法において、どうして通信士定員を減そうとしておられるのか。この結果たつた一名しかおらぬ、あるいはたつた二名しかおらぬ船舶通信士は、からだを張つて十二時間勤務、あるいはそれ以上の勤務をやつておりまして、まつたくからだがへとへとになるまでやつておる。こういうような無理な勤務条件をこの法律制定するということについて、矛盾を感じられないだろうかどうか。その点ひとつ大臣の所信を承りたいと考えます。
  130. 山崎猛

    山崎国務大臣 お答えいたします。大体政府として提案をいたす以上は、運輸大臣はそれを正しいと信じ、かつこれに対する責任をとつて提出いたしておるのであります。しかし私はそういうことについての専門的、技術的のくろうとではないのであります、この法案ができるまでには、事務当局が多年の経験と現実に即して、それから割り出して、これでよろしいという形の上にこれが出て来るのであります。運輸大臣としてはそれに対して、全責任をもつてその正しいことを信じて、法案として提出する次第であります。でありますから、私はこの法律を正しいと信じて国会の議に付しておる次第であります。
  131. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 議事進行について……。先ほど江崎議員の発言された前提の言葉は、すこぶるわれわれ議員を侮辱している点があると思つております。私、日ごろ江崎議員は、無産党の議員としてはまれに見る穏健な人だと思つておつき合いを実はしております。昨年も何箇月かずつと旅行を一緒にいたしましても、その感を深くした、のであります。しかるにかかわらず、妙なことを申されたことは、江崎氏のためにも惜しむべきだと思いますから、円満に議事を進行するために、このことだけはひとつお取消しを願つた方がよいだろうと思います。
  132. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 ただいまの玉置君の発言まことに私も同感であります。江崎君、さようとりはからつてよろしゆうございますか。
  133. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 私の今申し上げたことは本意ではありませんから、玉置委員のおつしやつた通り、前段の発言は取消しましよう。
  134. 川島金次

    川島委員 ただいま江崎君からも質問があつたのですが、この法案の中の問題点の一つは、船舶通信士定員の削減であります。大臣の言葉によると、この法案がここまで来るのには、各般の専門的な人の慎重審議を重ねて来た。従つて大臣はこういうことについてはまつたくのしろうとであるけれども、経験者の審議に信頼をして、間違いないものという確信をもつて、これを提案しているのだというお言葉なのでありますが、現実において、私大臣の来る前にも他の方にお尋ねしたのですが、遠洋航海の船舶通信士について、著しい定員の削減になることは事実です。中には従来三人の通信士を最低置くべきところが一人ということは、その定員を実施すれば仕事が三倍になる。それだけ労働が強化される結果になることは、自明の理なんであります。こういう事柄が、先ほどの説明では国際協定の問題もあるし、いろいろ審議の結果、こういうことになつたということですが、国際協定の問題等は別として、日本における船の状態、あるいは労働者の人たちの生活の状態、あるいは給与の状態、これが国際的に非常に異なることは、もう言うまでもない事柄であるのであります。にもかかわらずこの機会に、他の職種の船員については何らの削減が行われていないのです。この通信士に関する限り、今申し上げましたような著しい定員削減が行われる。しかも先ほどの説明によると、力と力の関係で、労働組合と船主の間に団体交渉か何かでやれる余地もあるのだという意味のお話があつたのですけれども、そういうことであつてはならない。できるだけ今日の労働者諸君の生活の実情ともにらみ合せて、不当な労働強化になることは、基本的な人権の上から言つても、大いに考えてやるべき事柄であろうと思う。にもかかわらず結果においては、この法案が成立いたしますと、通信士の問題については非常な労働強化になるのであります。そういうことは専門家の意見を煩わすまでもなく、きわめて明瞭に推察できる事柄でありまして、こういうことでも運輸大臣におかれては、専門家のせつかく審議したことであるから、きわめて妥当なものだと信頼されておるわけですか。これは非常に明瞭な事柄でありますので、まことにしつこいようでありますが、この事柄についての運輸大臣の所見を承つておきたいと思います。
  135. 山崎猛

    山崎国務大臣 今川島君のあげられた数字及び事情等につきましては、政府当局の方においては、それであると断定のできない反対の理由もあるのであります。事実と違つた点もあるようでありますから、一応政府委員をして答えしめて、その上で私の意見を述べたいと考えます。
  136. 松平直一

    松平政府委員 ただいま大臣からこまかい数字について説明せよということでございますから説明いたしますが、ただいまのお話の中で、ふえた点もございますし、減つた点もあるわけであります。減りました点を数学的に申し上げれば、三千トン以上五千五百トン未満の旅客船以外の船舶及び五百トン以上千六百トン未満の旅客船以外の船舶において、おのおの一名となつたわけであります。これだけが減少いたしまして、あとは現状の通り、あるいはそれ以上というふうに定員を決定いたした次第であります。
  137. 川島金次

    川島委員 今何か説明によりますと、増員されたものもあるということですが、それもわかつておるのです。しかし私の今減員になるであろうと申し上げましたのは、それ以外の近海の船舶についてのもの、五百トン以上千トン未満、これが二名が一名になつて一名減、一千トンから一千六百トン未満のもの、これが二名の者が一名、一名減、三千トンから五千五百トン未満のものが三名が二名になつて一名減、それから遠洋の部において、五百トン以上一千トン未満のものが三名が一名になります。次に一千トンから一千六百トン未満のものはまた三名が一名になつて二名減、一千六百トンから三千トン未満の三名が二名になるから一名減、そういうことにわれわれは聞いておるのです。そうすると、私どもの聞いておるのは違うのですか。
  138. 松平直一

    松平政府委員 この請願に出ております数字は、おそらく誤植だと存じます。四ページにございます遠洋のところの、一番上段が現行になつております。その現行の数字を右から申し上げますと、全部三になつております、これは三、二、二、二、三が正当でございます。従いまして一番下段が右から一名減、一名減、一名減、なし、一名減、これが正しいのであります。
  139. 川島金次

    川島委員 そうするといずれにいたしましても、定員の削減が現実に行われるということであります。と申しますることは、必然的に通信士の労働強化が強要されるということになります。その結果は、ひいて船舶海上の全体的な安全の維持の上にも影響があるものと私どもには考えられますが、その点は専門家の立場でどういうことになりますか。
  140. 松平直一

    松平政府委員 労働強化という点をおつしやられたのでありますが、私どもの方では義務聴守時間、あるいは義務運用瞬間を基準にいたしまして、安全に関する面だけの定員をきめております。従つて一般船客が安全以外の普通通信をやる点は、職員法では何ら関知いたさないわけであります。つまり航行の安全を期する。むしろ他船のいろいろな救難信号を受けるために、どうしても聞いていなければならぬ時間、これがきめられておりまして、それを聴守するに必要な人間だけをきめておるわけであります。船がどこに何時に着くとか、荷物がどうしたとか、そういう一般商業上の通信は、船舶職員法では全然考えておりませんから、この点に必要な人員については、また別にきめられるべきだと思います。私の方では全然考える必要がないわけでございます。
  141. 川島金次

    川島委員 そうすると、今の別途に考えらるべきであるというのは、具体的にいうとどういう意味でありますか。
  142. 松平直一

    松平政府委員 義務運用時間というものは、要するにその時間に信号が来たならば、いつでも聴守できる立場に置いておくだけでございますが、必ずしもそう時間中に通信があるかどうかわかりません。たとえば机の前に無線機の前にすわつて、信号が来たらいつでも聞けるようになつていたならばいいので、必ずしも通信がその時間中に来ておるとは言えないわけであります。
  143. 川島金次

    川島委員 それはわかるのですが、通信を受けたり発信をしたりする場合に、従来三人の人がやつておつたことを、二人とかあるいは一人をいうことになれば、その係の通信士の精神的な苦痛というか、あるいは束縛というか、そういうものが必然的に増大することになるということは、きわめて明白ではないかと私は思うのですが、そういうことにはならないのですか。
  144. 松平直一

    松平政府委員 なりません。今申し上げた義務聴守時間が、二十四時間の場合は三人、それから十六時間の場合は二人、八時間の場合は一人というようにきめてあるわけでありますから、一向御心配の点はないと思います。
  145. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 今の御説明を聞いていると、非常に奇異に感ずるのです。暴風雨のある場合などは船員は、特に通信士は、海上における生命及び財産を守る重大な責任が双肩にかかつておる。従いまして通信士が一人の場合、あるいは二人の場合でも、これはフル・ウオツチをやるわけです。そういう場合にあなたの言われるような、委員会説明されるようなことでは、現場では決して問題は解決しないのであります。その問題をどう考えられますか。答弁のための答弁では何にもならぬのです。船員の身になつて考えていただきたい。
  146. 松平直一

    松平政府委員 ただいまの問題につきましては本日午後、この委員会石野委員から相当詳しい御質問がありました。私の方もそれに対しましては、私の方で考えた点をるる申し上げたわけでございますから、ここで重ねて繰返すこともないと思うのでございますが、ただ私の申し上げたい点は、そのときも申し上げましたが、船が危殆に瀕した場合は、時間外であろうと何であろうと、また甲板部機関部の区別なく全員が、寝ておつてもそのときは起きて働かなければならぬということです。しかしこれは船舶という一つの特別な職域における労働の常態であり、やむを得ない、当然なことだと思います。
  147. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 御承知の通り日本の近海は、第三モンスーン地帯であり、秋になるとしよつちゆう暴風が荒れ狂つておる。こういう地域に日本船舶はいつも出入しなければならぬ。しかも先ほど言いましたように、日本船舶は非常におそまつである。そういう客観条件を考慮しますと、海上における生命、財産の安全を保障するために、一人や二人でフル・ウオツチをさせるということは、実に苛酷なことになり、しけが起つたらみなでやるのだ。だからこれはこれでいいのだという理論は成り立たぬと思うのですが、どうですか。
  148. 松平直一

    松平政府委員 船舶安全法におきましては、実は船の性能に応じて航行区域をきめておりまして、遠洋に行けるものは、普通あり得る海洋の状態に対しては安全に航行ができるということを、検査をした上で証明しております。  それからお尋ねのボロ船のごとき場合は、おのおの航行区域を選定して決定しております。従つて普通起り得る状態においては、その船は航行し得ると考えております。しかし海上のことでございますから、不測のしけが参ることはあります。しかしそれはしよつちゆうではございませんし、またそういうものが発生し得るおそれのある場合は、船長は適当な処置を講じまして、出港を見合せるとか、あるいは台風が近づく場合は避難をするとか、そういう処置を当然講ずべきものでございます。ですから普通あり得る海洋状態において、船舶が航行できなかつたならば、それは役に立たないしろものだと思います。
  149. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 江崎君、なるべく簡単に願います。
  150. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 実際に船舶通信士がどういう仕事をしておるかという具体的な問題について、よく御承知がないのではないかという感じがするのであります。通信士通信するだけではありませんよ。暴風雨の場合などは特別でありますが、それ以外においても、キヤツチしたニユース、その他いろいろの通信を、あとでカーボンでコツピーする。それだけではない、通信したあとまた電池の充電状態を調べるために、電池室に入つて硫酸の比重を測定し、充電のためにスイッチの切りかえをやる、そういう仕事をやらなければならぬ。そうすると二名ぐらいでは、ほとんど十分に休むひまもないのが実情であります。そういうことを考慮しておられるのかどうか、はなはだ疑問に感ずるのでありますが、どうですか。
  151. 松平直一

    松平政府委員 ただいまの御質問につきましては、前会にも江崎先生の御質問にお答えしておいたわけでございますが、船舶職員は、最小限度資格を持つた責任者をきめておるわけでございます。御承知の通り甲板部機関部ともに普通船員というものがありまして、大きな船舶ならばかれこれ百人近いものを持つているのでございますが、船舶職員で百人の定員をきめたことは一ぺんもございません。すなわち責任を負うだけの資格がある者の最小限度の数をきめるだけで、御説のごとき仕事は当然あり得ると思います。従つてこれには適当なアシスタントがつく場合もございましようし、つかぬ場合もございましようが、必要ならばつければいい。これは職員法ではうたわない、こういうことになつております。
  152. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 この前の御回答も、やはり今と同じ種類の御回答ではなかつたかと思う。これは言いのがれだ。なぜかというと、船主はこの法案できめられたことで十分であるというふうに査定する。決して余分の船員は乗せません。これが今までの実績であります。そういう点を考えると、軽率にこういう定員をきめられるということについて、非常に不安を持つのであります。
  153. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 ほかに質疑はないようでありますから、これで質疑を終了いたします。  これより討論に入ります。討論の通告があります。これを許します。川島金次君。
  154. 川島金次

    川島委員 私は日本社会党を代表いたしまして、原案に対して遺憾ながら反対の意思を表明するものであります。  せつかく各般にわたつて原案の修正が行われまして、私どもの懸念いたしておりました点がかなり修正をされましたことは、まことに満足な点もある。しかし私どもは、どうも残る問題といたしまして、論議いたして参りました定員の削減について、ただいまの当局説明ではいかんとも納得が行きかねるのであります。この船舶職員のうちの特に通信士の問題について、われわれの常識からいたしますならば、この定員の削減は、不当なる労働の強化以外の何ものもないと私どもは信ぜられるのでございます。従つて他にも若干の意見がございますが、重点はこの問題にありまして、他の修正された部分につきましては、私ども別に異議はございません。せめてこの問題までも若干の考慮も払われまして修正がされ、通信士の待遇の問題について親切なる配慮が加わつたことでありますならば、われわれもこの法案にあえて反対いたそうとは思つておらなかつたのでありますが、残念ながらその点が何ら顧慮されておりませんので、遺憾ながらわが党はこの原案に対しまして反対をいたすものであります。
  155. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 次に江崎一治君。
  156. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 私は日本共産党を代表いたしまして、この船舶職員法案に対しまして反対するものであります。  これは合理的な科学的な擬装を持つたところの、労働者弾圧法であると考えるのでありまして、その点いささか具体的にこれを分析してみようと考える次第であります。  この法案は、吉田内閣の独裁機構の最も強力な網の目の一つであると考えられるところの海上保安庁で、過去二箇年間にわたつて慎重に計画されたところの船舶職員法の改悪法でありまして、その結果でき上つたのがこの法案である。この本質的なねらいは何かというと、次のように要約することができると考えるのであります。  まず第一点は、これはいかにすれば船舶労働者の基本的な人権を主張しようとする運動を封殺することができるか。第二点は、いかにすれば船舶の労働者を奴隷的な低賃金で使いこなし得るか。この二点について、この課題を解決するために本法律案が提案されたものだと解釈するものであります。  先ほども言いましたように、一見科学的であり、合理的であるような擬装に飾られ、その船舶職員の生命ともいうべき海技職員の免状の有効期間を五箇年間に制限し、また航海の安全を保障する船舶通信士現行定員を削減いたしておるものであります。すなわち現行五百トン以上三千トン未満二名、三千トン以上三名の通信士定員が、改訂法によりますと、旅客船、非旅客船の区別を設け、旅客船では千六百トン未満一名、三千トン未満は二名、三千トン以上三名、非旅客船では千六百トン未満一名、五千五百トン未満二名というように改悪されております。そのほか二級通信士の就業制限や、われわれが年来主張して来ましたところの通信長の制度、これを無視しておるのであります。また一方二十トン以下の小型船舶に対しても本法案を適用して、船主に対しては莫大な利潤を保障し、船舶労働者がその苦しい生活条件に耐えきれなくなつて、どしどし自然発生的にも革命化して来る現状をおそれるあまり、支配階級は本法案を出したのであります。一言にして言いますと、すなわち船舶労働者は船主のあてがい扶持に文句を言わなければそれでよろしい。文句を言うなら、海技免状の国家試験は通さぬぞと言わんばかりに脅迫しているのが、この法案であると考えるわけです。そういうわけで、われわれ日本共産党はこういうような擬装された労働者弾圧法案というものは、徹底的に弾劾しなければならぬ。
  157. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  これより船舶職員法案について採決いたします。本法案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  158. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 起立多数。よつて原案の通り可決いたしました。  本案に対する委員長報告については、委員長に御一任願います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 さよう決します。     —————————————
  160. 川島金次

    川島委員 議案は採決を終つたのですが、運輸大臣が見えておりますので、たいへん恐縮ですが、一言だけこの機会にお尋ねをしておきたい事柄がございますので、運輸大臣の意向を明らかにしてもらいたいと思います。と申しますのは、先日来この委員会でも問題になつて参りました国鉄職員の地方議会議員の兼職の問題でございます。大臣も御承知の通り、本委員会及び衆議院におきましては、国鉄職員の地方議会議員の兼職につきましては、町村会議員に限つてこれを認めるという決定をいたしました。しかるに参議院側におきましては、市町村会議員までの兼職を認めるということに決定をいたしまして、両院の意見が異なりましたので、目下両院協議会が行われておるのであります。ところが私の承知しておる範囲によりますと、この両院協議会で両院の意見が一致することは、きわめて困難のような状態にあるのであります。従つてこのままで行きますと、目下の状態から申しますと、両院の意見が一致せずしてものわかれとなり、両院の決定はそれぞれ異なつた決定をなしたまま、この国会の審議が一時中止され、来るべき五月の再開議会に持ち越されるという可能性が、きわめて明瞭になつて参つたのであります。その場合を考えますと、この委員会及び衆議院に最初出されました改正案も廃棄されまして、元の整備されないところの法律が残つて来るという形になるのではないかと推察されるのであります。この場合になりますと。法制局におきましても、また選挙管理委員会におきましても問題が残るであろうということを、われわれは聞かされておるのであります、それと相呼応いましたして、もしそういうことになりますと、国鉄の現場における職員諸君は、問題が残つてそのままになつておりますために、来る三日の告示以後において、それぞれの全国の都道府県会議員あるいは市町村会議員の選挙に立候補を強行するであろうということは、これまた情勢上きわめて想像にかたくない形になつておるのであります。こういう情勢にもしなつたといたしまして——国鉄当局は、きよう私出席を求めておいたのですが、お見えになりませんので残念でありますが、そういう場合に国鉄当局がとるべき態度はどういう形になるか。また国鉄を監督する立場にありまする運輸大臣は、そういう現実の問題が起きた場合に、いかなる態度をとられることになるのか。その点について、きわめて重大な事柄でありますので、この機会に大臣としての明快な御見解をひとつ御表示願つておきたい、こういうふうに思うのであります。
  161. 山崎猛

    山崎国務大臣 私は立法府の委員会において、ただいまの川島君のようなお尋ねがあることを、はなはだ不可解に考えるのであります。今日の日本の政治は、新しい憲法に明示してあります通りに。議会中心の政治であります。法律は、政治の最高機関であるこの国会において、ことごとく制定されるのであります。行政府は、国会において定められたる法律によつて動くのであります。国民ももちろんその通りであります。今日のごとく法案にまだならずに、提出されずに、政治的に動く余地のある間は、もちろん私は、大臣としても、一個の政治家としても動いたのであります。しかしながら一つの法案として、政府提出であれ、議員提出であれ、院議によつてすでに決定したる以上は、衆議院といわず、参議院といわず、これに対しては行政府としても、政治家としても、院議尊重であります。しかるに衆議院と参議院の間に、議院の決定についてそこに行違いがあるので、これは両院協議会にかけられたのであります。ただいま両院協議会は進行中であります。川島君のおつしやる通りに、あるいは不成立になるかもしれないのでありますが、しかしまた成立になるかもしれないのであります。協議会は討論会ではないのであります。互譲妥協によつて、そこに一つの道を開こうというところに、両院協議という文字の意味もはつきり現われておるのであります。せつかく両院協議会を進行中でありますから、それから先のことまでもいろいろ想像判断をして、そのときにはどうするというようなことを申し上げることは、早きに失すると思うのであります。一言にして申し上げれば、われわれは行政府の一員といたしましても、国有鉄道の監督省の一員といたしましても、どこまでも国会においてきめられた法律に沿うて行動する、これ以外に出ることはできないのであります。
  162. 川島金次

    川島委員 大臣の形式論はその通りであります。私は差迫つた問題について、形式論を大臣から承ろうとは思つておりません。と申しますのは、三者会談が今から三時間前に行われたのであります。それは自由党の益谷総務会長、佐藤幹事長、議院運営委員の石田君、民主党から竹山君と椎熊君、社会党からは三宅国会対策委員長に不肖私が列席した。そうしてこの両院協議会の問題について、いろいろと相談をし合つたのであります。お互いに譲れるものなら譲り、譲れないものは譲れないとして話し合つて、円満に両院協議会でまとまるような形にしたいために、お互いに寄り合つた。ところが一例でありますが、国鉄の問題を取上げて見ても、両者がまとまらないのであります。というのは、自由党の方は町村会議員の兼職以上に認める意思はまつたくないということが、明確になつたのであります。そうしてわれわれは、御承知の通り会議員までも兼職を認めるという、その筋からのオーケーをもらつて来たのでありますが、一歩退きまして、市会議員を認めてくれるならば、その問題については譲歩をいたそう、こういうことでわれわれは譲歩の精神を明らかにいたしたのであります。ところがその譲歩の事柄についても、自由党の諸君にはいれられないところとなつて、この両院協議会はそのまま持ち越されて、今日の事態に入つてしまつたのであります。従つて形式論は別でありますが、実体論としては、この問題はすでに決裂するということがきわめて必至の情勢になつております。ということになりますと、せつかく大臣が今日心配され、われわれも心配し、また与党の諸君といえども心配し来たのであります。ところが結果においては、今のところでは、実際問題としては元の改正案以前の整備されない法律が残るという形になるということが必至になつて来ておる。そうなると今私が大臣にお尋ねいたしましたような情勢というものが、これまた必然的に起つて来るのであります。そうなると国鉄当局も重大であろうし、労働組合の諸君も重大な段階になります。それを監督する運輸大臣の立場においても、重大な情勢になつて来るということは、必然的事柄なのであります。私は形式論を言つておるのではないのです。そういう問題になつたときに、監督の立場にある運輸大臣はいかなる態度でこれに臨むか。私はこれは非常に重大な問題であると思う。おそらく私の想像いたすところによれば、これが廃案の形になりますれば、反撥的に労働組合の諸君は、一千名以上の、都道府県会議員を初めとして、市町村会議員に至るまでの立候補を見るであろうということも、これまた必至の情勢にあるのであります。そういう情勢になつて——これは明日、明後日に迫つた問題であるのです。一箇月も三箇月も先の問題ではないのです。それを私は重大なる事柄として、非常に関心を深く持つておりますので、これは何とか大臣においてそういう問題を考えていただき、あるいはまたそういう問題が起つたときに、どういう態度をとられるかということも、これまた非常に大きな影響力のあることだと思いますので、実はお聞きをいたしたわけです。まことに恐縮ですが、そういう具体的な問題が起つて来るのですから、お願いしたいと思います。
  163. 坪内八郎

    ○坪内委員長代理 ただいまの川島金次君の御質問は、川島君にとつてはまことに重大な問題でございましようけれども、先ほどの運輸大臣の答弁によつて、その質問内容は完全に盡きていると思います。しかも両院協議会においてまだ結論が出ないで、進行中でありますので、別に大臣の答弁は必要ないと思います。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後九時四十一分散会