○
岩間正男君 私は
日本共産党を代表して、
昭和二十五
年度補正予算案に反対するものでありまする
そもそもこの
予算案は
日本政府が決めたものでないということは明らかである。池田
大蔵大臣はこの
予算案が全く
自分の
考えと一致しているかのことくふるま
つているのであるが、実はド
ツジ氏の指金に一々左右されて、遂に
政府原案を大幅に修正し、当初の吉田内閣の構想は跡方もないほど粉砕されてしま
つておるではないか。それだけではない。ド
ツジ氏との折衝に手間取り、
補正予算は
国会開会に間に合わず、ガリ版刷りで出さなければならなか
つた。こういう
状態が全くこの間の
事情を物語
つているものであります。又十五カ月
予算などという大きなことを言
つておりますが、二十六
年度予算の大綱すら十分に
国会に示すことができなか
つたのであります。これは如何に吉田内閣が
自主性を放棄し、帝国主義者の召使になり下
つておるかということを如実に示しておるものであります。これによ
つてたたでさえ人民の利益を無視した
予算案は全くひどいものに
なつておるのであります。先ず公務員の給與ベースは
労働者の要求とは遙かに遠いのみか、人事院勧告をすら無規しておるのが
実情であります。
地方公務員には何らの保障も與えず、教員の既得権はこれを剥奪し、失業対策も、ジエーン、キジア等の災害復旧費も、減税もすべて全く人民の切実な要求は踏、みにじられておるのであります。そのことは未だ層てないほど時間の制限の下に行われた本
委員会の審議における各閣僚の
答弁の中にも如実に現われております。
池田蔵相は給與ベースにつきまして、下の者より上の者に厚くするのは当り前だ、まだ足りないぐらいだと言い、又食糧の価格問題につきましては、貧乏人は麦を食え、金持は高い米を食
つたらよい、まるで徳川時代の圧政者の言うようなことを平気で放言しておる。いわゆる池田放言第三号を放
つておるのであります。(笑声)又廣川農林
大臣は、米価審議会の答申案は労貸を高く
見積り過ぎる、農村は失業者が多て
なつておるから、労賃はもつと安くしてもよいというようなことを言うております。これらはいずれもふだんから肚の中で思
つておる本音を正直に出したものであります。本年三月に、中小企業の五人や十人死んでも構わないと
言つたかの有名な第一号を放ちました(笑声)あの池田放言と全く軌を一にするものであることをこれはここで断定することができる。
このように人民の利益を臆面もなく踏みにじりながら、一方ではド
ツジ氏の強力な指示によ
つて、外国為替
特別会計へ百億の繰入れを行
なつておるではないか。(「街頭演説のようだな」と呼ぶ者あり)本
委員会、
公聴会にお旧いて各公述人は口を揃えて、このようなインヴエントリー・ファイナンスは必要でない、もつと国民生活の向上と産業復興のために金を廻せと真剣な叫びを挙げておるのであります。又本
国会においても人事、
地方行政、厚生、郵政、文部の各
委員会はことごとくこの
予算の反人民的内容に反対し、與、野党満場一致でそれぞれ修正すべきことを決議しておるのであります。
以上のように、この
予算は
日本の人民
大衆から全く浮き上
つたものであるばかりでなく、
国会からも浮いております。
一体誰のために、誰が作
つた予算であるかを明確に暴露しておると言わなければなりません。池田
大蔵大臣は口を開けば、この
予算には朝鮮動乱の影響を織り込んだということを言
つておりますが、朝鮮内戦干渉後急速に破綻が深刻化した人民の生活には何らの顧慮も拂
つていないのであります。これを各項目別に具体的に検討すれば次のようであります。
先ず第一に給與はどうか。朝鮮内戦後
労働者の実質賃金は却
つて低下し、一日十二時間以上の労働強化を強いられております。とりわけ公務員の給與は二年間六千三百七円ベースに据置かれ、
政府は屡次にわたる人事院勧告を無規して来た。公務員の政治活動は全面的に禁止され、職制の圧迫によ
つて自由に職場から便所へも行かれないというような
現状に置かれて、生活は全く崩壊しておる。これに対しまして、官公庁
労働者が九千七百円ベースと年末
手当三カ月分という要求を掲げて闘争に立ち上
つたのは、みずからの生活を防衛する極めて当然の
措置と言わなければならないのであります。吉田内閣はこの内輪極まる切実な要求に一顧も與えないのみか、八月の人事院勧告八千五十八円ベースをも蹂躪して、一方的に給與をきめてしま
つたのであります。この内容は
先ほどからしばしば繰返されましたように、上に厚く下に薄い独善的なものであるのみか、地域給を引下げておる。一方米価を初めとして、諸物価の高騰を
考えますときに、下級公務員の実質賃金はむしろぐつと低下しておると言わなければならないのであります。税務職員、教員、癩、結核療養所職員、気象台職員等のいわゆる特別号俸の既得権は又こういうような
情勢の中において剥奪されたのであります。年末
手当は
最初政府ですから一カ月分を
予定していたのに、ド
ツジ氏の指金で半月分に削減された、その
原因が天降り的なインヴエントリー・ファイナンスにあることは今日如何なる
労働者といえどもこれを了解しておるのであります。併しこれらのベース・アップ及び年末
手当の百三十六億のうちその四分の一の三十三億円は勤労
所得税としてこれははね返
つて逆に収奪される形に
なつておるのであります。
第二に、
地方公務員と
地方財政について述べたいと思うのでありますが、これはどう
なつておるか。
地方公務員には何らの
財政的保証もない。そこべも
つて参りまして政治活動の禁止、基本的人権を剥奪するところの
地方公務員法のみが與えられようとしておるのであります。これはパンを與えずこき使われるところの奴隷に等しい
状態に追込んでおるのであります。地財委は八十八億の
平衡交付金を要求し、又衆参両院の
地方行政、
委員会は満場一致でこれを支持し、特に
参議院は院議で以てこれを決定したにもかかわらず、これが完全に蹂躙されて、岡野国務相のごときはみずからの責任を回遊し、
池田蔵相と地財委のメツセンジヤー・ボーイという形に落ぶれておる
状態であります。これは
地方財政法第二條の違反であると言わなければならない。これによ
つて地方財政の危機はいよいよ激化し、
地方税の收奪はますますひどく
なつておるのであります。又
義務教育行政面では
義務教育国庫負担法の既得権は全く廃絶され、天野文相の君が代と日の丸が復活の徴候を兆しております。
第三に失業、生活保護対策についてはどうか。特需景気の声をよそにして失業者はますます最近増加しており、本年八月の
政府統計によ
つても完全失業者は五十五万人に達しております。この
予算では十五万人しか救済できないような内容に
なつておる。而もこれすら朝鮮内戦によりまして肉弾としてかりたてられるというような、そういう意図を持
つていないということを誰が保証することができるか。生活困窮者はますます増大し、
政府統計によ
つても本年八月には生活保護法の適用対象者は二百万人に達し、更に昨年に比べまして平均百六十万人を遥かに上廻
つておるのであります。この
予算では主食の値上りに対応する経費が増額されておるだけでありまして、実質的には何ら救済に
なつていないのであります。
第四に、農業の方面においてはどうか、興農
国会の看板はどこへ行
つたのか、いわゆる廣川朗報によるところの食糧増産費、
公共事業費、農林漁業金融公庫、その他主食の一句増配、こういうようなその場限りの公約は
一体どこに飛んでしま
つたのであるか。この
予算のどこを探して見ても興農のコの字もないというのが
実情でございます。米価は農村には失業者が多く労賃が安いからという理由で、お手盛りの米価審議会の五千八百円案をすら無税しまして五千五百二十九円、これを押し付けようとしておるのであります。資材、肥料の値上り、
地方税の増額によりまして農民の手取りは物凄く減少しつつあるのであります。麦の増産費は農林省要求の五億に対し僅か一億四千万円に削られておるのであります。又歳入を捻出するために食糧輸入補給金百三十四億円を削減して、輸入関税を免除し、農村を外国食糧の押し付け輸入のプールと化してしまうことは明らかであります。一割増産の名の下に農民の植民地労働を強化し、輸入食糧と相待
つて戰時備蓄を行い、これらの負担を消費者
大衆に転嫁せしめんとしておるのであります。農民にや
つたことと言えば、農協、農業共済組合の赤字十四億円を穴埋めしたことだけである。
政府は4H運動とか運動とか3C運動とかい
つてアメリカ的生活様式を押し付け、次三男対策の名の下にこれを集団訓練して
日本軍隊再建の基礎を作らうとたくらんでおります。
第五に、中小企業はどうか。軍需産業によ
つて独占資本は二十割、三十割はおろか二百七十割というようなべらぼうな利潤を挙げておるのに対しまして、中小企業の零落破産はいよいよ深刻化しておるのであります。特に中小企業の金融難は深刻の度をますます深めておる、例えば繊維
関係においては業者手持の商業手形の五〇%が銀行で割引いてもろうことができない、景気がいいといわれている福井の機業においてさえも貿易手形が割引いてもらえないで
輸出向き繊維製糸を闇に流しておる
状態であります。これに反し十月十一日で七百億円程度の
政府資金撒布超過があり、この莫大な金は軍需生産をや
つている独占企業に全く集中しておるのであります。又製品安、原料高の傾向はいよいよ深まり、金詰り、重税と相待
つて中小企業の経営は全く破綻しておるのであります。これに対し中小企業信用保険五億は焼石に蚊の涙を落すに等しいようなものであります。そればかりではなく、これは銀行資本の救済であり、中小企業を軍需産業の下請化せんとするものであることは明らかであります。
第六に、税金はどうか。現在一千億に上る滞納があるが、これはすべて
政府の売国
政策の結果である。国税庁の調査によ
つても申告
所得税の滞納の
原因の九〇%は全く金詰りと不公平な課税によるものであることは明らかであります。これに対し差押えは十月末まで百十万七千件、三百四十八億円に達している。年末から来年にかけて
地方税を合せて四千億円の徴税が行われることは明らかであります。
補正予算の減税は当初七十億と言われたのに六十三億に減り、
自然増は二十五億から六十八億に殖え、全く欺瞞的なものであります。併し購買力は減
つていることは煙草益金が八十億の減税を見ているのを見ても明らかである。
池田蔵相は米価が上
つても減税で差引き一%の生計費減となると言
つておるが、僅か一%でなんで減税と言えるか。而も朝鮮内乱後諸物価は三割から二倍も騰貴している。こういうような負担は却
つて増加するのであります。勤労
所得税は
自然増二百五十六億、改正税法上の減税五十六億、差引二百億円の却て増税と
なつております。農民、中小企業はそれぞれ一八%、二五%の水増増税が押し付けられるのに反し、一方特需で儲ける法人には昨年同様の自然地百八十六億しか見込んでいない。ド
ツジ声明が
資本蓄積にならぬ減税はするなと言
つておるが、これは今回の吉田内閣のいわゆる減税
政策を一貫しておるところの方針と言わなければならない。
第七に、災害はどう
なつておるか。国土は挙げて――――され、―――――――――と
なつているため国土は荒廃し、災害はいよいよ増加した。ジエーン、キジア両台風の被害に対する復旧工事費は
政府説明によ
つても一千三十八億円に上
つております。
原案では五十二億円の災害復旧費を計上したが、これすら四十七億に削られ、そのうち災害復旧費は二十六億円しかない。
以上のように、吉田内閣はすべて人民の要望を蹂躙し、その理由として
財源がないと言
つておる。併しその乏しい
財源をはたいて外国為替
特別会計へ百億円も繰入れているのは何故であるか、誰の命令でこれをや
つておるか。
池田蔵相はインフレの防止とか、ドルが殖えて
円資金が不足するからと言
つておるが、
公聴会の公述人はみんなこのようないわゆるインヴエトリー・ファイナンスは現下の
日本の
財政にと
つて全く
実情にそぐわないものであると言
つている。第一
池田蔵相は
日本人の血と汗の結晶である
外貨が幾らあるのか、どう使われるのかさえ答えることができぬではないか。インヴエントリー・ファイナンスはこれは要するに予備費であり、一旦緊急の際に支出できるところの帝国主義者のポケツト・マネーであるということができ得るのであります。又
朝鮮水域の
掃海業務に――――を動員し、その費用を――――から支出している。
一体これは―――――に対する
義務なのであるかどうか。第三次大戦の協力費なのであるかどうか。而も外電によればこの作戦によ
つて―――の多数が死亡したことが伝えられているのであります。又
アメリカ陸海軍の戦時演習によ
つて全国十五カ所の漁場が損害を受け、漁民は生活の糧を失
つているのであります。地元では被害補償十五億円を要求しております。これは当然軍当局からドルで支払わるべきところのものであると
考えられるにかかわらず、
日本人民の税金から一億二千万円支出されているのであります。このように外国の軍隊が当然支払わるべき経費を
日本人民の負担にしていることは驚くべき――――――――――――であると言わざるを得ないのであります。併し以上のことは
補正予算書の数字に現れたものに過ぎないので、これは氷山の一角であろということができます。舞台裏では恐るべき崩壊が進行しております。陰謀が企まれているのであります。即ち
日本経済の唯一の活路である中共貿易は、このたびの通産省令のいわゆる国連協力
措置によ
つて外国帝国主義者の戰争目的のために殆んど全面的に禁止され、
日本の製鉄業に必要な粘結炭も鉄鉱石も入らず、四百万トン計画などと大きなことを言
つても、その基底からこの計画は崩れようとしているのであります。これが他の産業に波及し、
日本経済が全く破滅することは明らかなことであります。すでに
政府は自由経済の看板を下して、鉄鋼を中心とする再統制をやらざるを得ない
実情に追い込まれているのであります。吉田内閣は
輸出銀行によ
つて活路を開こうとしておりますが、これは外国帝国者のために重要な戦略物資を買い叩かれ、アジア諸民族弾圧のための軍需資材
輸出に奉仕するものであります。これは我か
日本が新たに――戦争にみずから進んでお先棒を担ぐような結果になることは明らかであります。一方肝賢の輸入は少しも進まず、
政府は生産計画の大棚な
変更を余儀なくされております。更に
政府の手許には見返
資金、預金部
資金、
復金回収金等一千億円以上が残されており、
債務償還費は
一般、特別両会計合わせまして七百五十億円の未支出を残しているのであります。これらは
日本人民の
所得から積立てられた備蓄であるにもかかわらず、
日本政府の自由に使えない金に
なつている。
米国下院の
歳出委員会における
ヴオルヒーズ前
陸軍次官の
証言によれば、これは
アメリカの目的に合致するように利用されることに
なつているのであります。事実
電力は再
編成が済まなければびた一文も出ず、遂にポツダム政令によ
つて分断が強行されることにな
つたことは明らかであります。見返
資金の十月末余裕金は五百八十億円に達し、その運用は少しも進まない、最も順調に出ているのは連合軍軍人の住宅建設であり、……