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1950-12-06 第9回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月六日(水曜日)    午前十一時十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十五年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出・衆議院送  付) ○昭和二十五年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出・衆議院送  付) ○昭和二十五年度政府関係機関予算補  正(機第二号)(内閣提出・衆議院  送付)   —————————————
  2. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) それではこれから予算委員会を開会いたします。
  3. 野田卯一

    野田卯一君 補正予算歳入の部分の一部について質問いたしたいと思いますが、歳入面で非常に目を引く問題は、申告所得が非常に減つて来るという問題と、もう一つ専売収入が非常に減つて来る。それで申告所得の問題は一時預かるといたしまして、専売収益が減る。即ち専売益金が非常に減少するということであります。内容的に見ますと、本年度におきまして、当初の予算よりもたばこ専売におきまして、百十億円減収になるということであります。千三百億円のものが百十億円減るというのは、かなり大きな減収であります。恐らく専売制度始まりましてから、予算におきましてこういう大きな減収を見たことは、これが初めてではないかと思います。そういう点におきまして、画期的な問題だと思います。どうしてこんなに大きな専売收入減少が起つたかということは、財務当局としても十分検討を要する問題であります。私はこれにつきまして、本日は専売公社のかたが来ておられませんので、この減収がどういう原因で起つておるかということはつまびらかに聞くあれを持ちませんが、私の想像するところによりますれば、第一は何と申しましても、一般購買力が減退したということであると思います。併しながらその原因のほかに、この大きな減収を示しておる原因といたしましては、たばこ第一線でこれを売さばくという、その役目を担当している販売部門におきまして、財政上の要求から大きな売り抜く責任を課せられておるのでありますけれども、これが十分に活動しなかつたということがあるのではなかろうかと思うのであります。勿論専売公社が先頭になりまして、一般版売人に働きかけまして、非常に熱心な運動を継続したということは事実であります。事実でありますけれども、何となしに全体の気分が沸き立つて来ない。これは一種の商売であり、販売でありますので、その第一線に立つ人が本当に熱を入れてやらなくては、如何に専売公社が鞭撻いたしましても、成績は上らないのでありまして、最近のごとき状態におきましては、なおさらそうであります。この問題につきまして、一般業者の一番大きな希望は、販売業者が扱う場合のいわゆる収益、即ち手数料というものが非常に低いということ、これを高くするということなんであります。これはもう昨年、或いはそれ以上前から非常に盛んに主張されて、全国的な声としてやかましく起つて来ておるのでありますが、この点につきましては、私は十二分の考慮を拂う必要があると思います。現在は御承知のように、この手数料は六分、百分の六でありますが、この大分というのが如何にも低過ぎる。これを販売人販売意欲を刺戟するように高くしてもらいたいという要望でありまして、この点は私は最近のようにたばこが全く自由販売になりまして、而も国家の要請におきまして、専売公社として非常にたくさんの数量を売りさばかなければならんというようなことになりますと、何としても考えなければならんというふうに思うのであります。自由販売になつてどこでも買える、幾らでも買える、たばこ業者としてはうんとさばかれておるということになりますと、これは手数料というものを今までの配給制度、或いはたばこが非常に枯渇していた時代と同じレベルで考えることはできないのじやないかというふうに考えまして、この点についていろいろ前々から研究いたしておつたのでありますが、この前の本予算ができまするときにおきましては、この点につきましては、丁度専売裁定と並びまして手数料引上ということが実行困難であつたということは事実でありました。この点を非常に心配いたしまして、何とか手数料の点も考えて見たいと思つたのでありますが、これを引上げますと、非常に歳出面に影響が来るというわけで、専売裁定と絡んでこの問題は見送られたのであります。見送られた結果、非常に悪い結果がこの予算上に現われておるわけであります。御承知のように本年の四月一日にたばこ小売値段というものが一斉に下げられた、そのときにたばこ手数料の率の引上ということが要望されたのでありますが、それは実行できなかつた。それがために小売人収益というものは、本年の四月一日から小売人手数料減少するに至つたのでありまして、国家の政策によりまして値段が引下りますと、すぐに小売人にも同じようにその手数料が減つて来るということになります。これは非常にこういう関係者販売意欲を減退しておる。これは否むことのできない事実であります。その結果只今申上げました画期的な前古未曾有マイナスを生ずるということになつたのであります、これは補正予算におきましては、これについて深甚なる努力を拂うべきだと思うのであります。私はたくさん業者のかたに会い、又全国的な団体から陳情を受けておるのでありますが、若し手数料引上げるということができれば、千二百億ぐらいは売拔くということをかなり責任を持つてつておるかたもあるのであります。その言葉をそのまま受取つていいかどうかは問題でありますが、とにかく業者手数料の問題と収益の問題は密接不可分関係にありますので、熱望いたしておるのであります。私は百十億のマイナスを出したという問題と、全国に膨湃として起つております小売人手数料引上の問題は非常に深い関係があるということを指摘いたしまして、この点につきまして財務当局の特段の御善処かた要望いたしたいのであります。最近におきましては、御承知のように、たくさんのものを売りますために宣伝費も非常にかかりますし、非常に金額も多いのであります。又金利も嵩むというようなこともあり、又店頭装飾の問題、又その他についていろいろ経費がかかつておるのであります。その点いろいろ調べればわかるのでありますが、特にたくさんのものを持つておると、これは盗難にも会う。或いは災害に会い、非常に大きな損失をこうむるのでありまして、先だつても御承知ジェーン台風で、大阪あたりの低い海岸地方小売人の店が被害を受けたのでありますが、そのときにたくさんの商品を抱え込んでおる。或いは十万とか、二十万という商品を抱え込んでおる者がジェーン台風でやられて、非常に損失をこうむつておるという実情があります。ので、さようないろいろな意味におきまして、最近の販売第一線におけるほど責任は重大であり、危險も多いのであります。又こういう点から申しましても、又他の商品との権衡という点から申しましても、私はこの際業者のこういう要望というものに対しては、先ず耳を傾ける必要があるのじやないかというふうに考えております。歴史的に見ましても、自由販売時代には大体一割とか、九分というぐらいの手数料が拂われておつたのでありまして、戦争配給制度或いはたばこの枯渇していた時代にはもつと手数料が下つたのでありますが、昔の状態に又帰りつつあるのでありますから、この点におきましても、十分考慮を抑われたいと思います。この問題は併しながら予算を修正するということを必要としないで、実行上の問題としてできるのでありまして、私は仮にこの一月からでもたばこ小売手数料引上げを実行されるならば、この百十億の歳入欠陷はこれが三分の一減るとか、或いは申分減るとかいうことが必ず起るということをはつきり申上げ得るような感じを持つているのでありまして、これは業者ともよく御相談なさり、又専売公社とも十分御協議の上、歳入欠陥を減らすという点からいたしましても、深甚なる考慮拂つて対策を講ぜられんことを要望するものであります。
  4. 河野一之

    政府委員河野一之君) お答え申上げます。最近におきましてたばこの売れ行きが余り芳ばしくないことは事実でございます。上半期で申しますと、三百六十三億本、金額で六百九十三億円を販売しているのでありますが、本数におきましては、前年の同期に比較いたしまして一六%程度の増加をいたしているのでありますが、金額におきましては逆に七%減つている。そういうような関係で、今年度補正予算におきまして百十億円のたばこ販売收入減少を見ている次第であります。こういうような事態は先ほど野田委員が仰せられました通り、最近においてなかつた事態でありまして、この專売收入の確保については一段と努力を要すると考えておる次第であります。このように専売收入が減つて参りましたことにつきましては、いろいろ原因があると思うのでありますが、中には最近は大分事態が改善されて参りましたが、外国たばこの点もございましようし、又一般購買力関係から、高級たばこから下級たばこへ移つているというような点も大いにあると思います。父御指摘小売商人販売マージンというものが低過ぎて、販売意欲というような点についていろいろ問題となる点がある、こういうような点があると思われるのであります。先ほど数字で申上げました通り数量は殖えても販売金額の絶対額が減るというようなことは、下級たばこに需要が移つているためでありまして、過去の例を見ますと、先ほども御指摘のありました通りマージンというものは、この額は二、三年までは八分程度、又九分、一割ということもあつたのであります。従いまして高級たばこが相当の量を占めている時期におきましては、販売マージンも割合に低くても賄い得るのでありますが、これが下級たばこということになりますと、単位当り販山元マージンというものが減つて来ると、こういうことに相成るのであります。一方経費のほうは、高級たばこであろうと下級たばこであろうと、そう変るわけはございませんので、こういう点について、販売マージンについて再検討を要すべきものがあるとも思われるのであります。来年からたばこの値下げをいたす予定になつているのでありますが、こういうような点につきましても、専売公社当局とよく相談いたしまして、できるだけ合理的なものにいたすべく十分研究して見たいと思つている次第でございます。
  5. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 文部大臣が出席しておられますので……。
  6. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 文部省予算関連性を持ちまして、文部省の管掌しておられまする教育行政文部行政基本的な方針というようなことに関連いたしまして、二、三文部大臣に御答弁を願いたいと思うのでありますが、先ず第一に私が天野さんにお尋ねいたしたいことは、各大学におけるところの教授の問題でありますが、新憲法明治憲法とは基本的な精神が違うということは言うまでもないことだろうと思うのであります。即ち新憲法におきましては、いわゆる民主主義、或いは国民主権などというようなことが、自由平等というようなことが主体的な精神になつておるのでありまして、即ち新憲法のほうの前文におきましても、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民代表者がこれを行使し、」云々ということがあります。又そうしたこの人民主権精神を謳いましたあとに、「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」という文言もあるのであります。又更に後半になりまして、我らは「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去」するというような文言もありますが、こういう文言を今更ここに引用するまでもなく、新憲法精神につきましては、国氏全般、殊に文教指導者でありまするところの大野文部大臣が十分によく御理解になつておることだろうと思います。又これを試みに旧憲法を見ますというと、旧憲法法律的な條文よりも、その精神というものは憲法発布に際して明治天皇が発表になりましたところの告文或いは憲法発布勅語、或いは帝国憲法上諭というようなものの中に、更にその総合的な明治憲法指導精神というようなものが表現されておると思うのでありまして、これらの告文或いは勅語上諭のごときものは、即ち憲法の一部であると、大体において明治憲法憲法学者も言つて来たところであります。言うまでもなく告文の一節を見るというと、皇朕レ謹ミミ皇祖皇宗神靈二誥ケ白サク皇朕レ天壌無窮ノ宏誤二循ヒ惟神寳詐ヲ承繼シ旧圖ヲ保持シテ敢テ云々というような文言がありまして、勅語の中にも又これと同様な文言があり、又上諭の中には「険阻宗ノ遺烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ践ミ朕カ親愛スル所臣民ハチ朕カ租宗恵撫慈養シタマヒシ所臣民ナルヲ云々というような、そういう大体において何と言いますが、君主権主義、即ち国家統率者天皇である。そうしてその天皇が民を憐み、撫育して来たので断るが、そういうようなこの撫育的な精神から憲法を発布するものであるから、皆これに従わなければならないという、そういうような君棒主義的な、君主主権的な精神が旧憲法指導的精神でありまして、そうしてそれを一つ基本的な法律とし、又その憲法に現われて来たところの精神中心としまして、我々明治に生れました者及び大正の年代に生れました者、昭和年代に生れましたような者は、今度の戦争終つて憲法が改正せられるまで、一切の指導をそういう思想に基いてせられて来た。従つて文部省国民教育指導精神としても、又この明治憲法と符合するところの精神を以て私は指導して来たと思われるのであります。明治憲法を解釈する上におきまして、言うまでもなく天野さんもよく御存じのことだろうと思うのでありますが、伊藤博文が如何なる憲法を作るかということのために調査を命ぜられまして、二年ほどもドイツに滞在いたしまして、そうして官僚の俊秀を引連れて行きまして、いろろいと研究をいたし、向うではドイツ国法学者でありますところのシユタイン、或いはベルリン大学教授でありましたところのグナイスト等の教えを受けて、又グナイスト自分弟子であるところのアルバートモツセというのを地方制度制定、その他憲法制定のために顧問として日本自分の代りとして派遣したのであります。そうして明治時代におきまして、又最近に至りましても、大学憲法講義等におきまして、そういうことは余り学生には教えることを秘密にいたしておつたのでありますけれども、今日においては大分それが明らかになつておるのでありますが、明治憲法というものは欽定憲法であつて明治天皇の大御心に従つて作られたものであると、一般子供たちには言つて来たのでありますけれども、実はこのグナイストプロシヤ憲法中心といたしまして、そうして伊藤公その他憲法制定のために派遣せられておりましたところの人たちに対して、プロシヤ憲法の第一條はこのままでよろしい。第二條はこのように直しなさい。或いは第三條はこうしたほうがいいでしようというようなことで以て、プロシヤ憲法、当時普仏戦争に勝ちまして非常に国威が上つておりました、このドイツ統一のために非常に勢い隆々としておりましたところのプロシヤ憲法基本といたしまして、伊藤公らにそういうことを教えたのであります。で、このグナイストプロシヤ憲法基本として明治憲法をこのようにせいと教えましたところのグナイスト談話というものは、グナイスト談話として当時は秘密にせられておつたのでありますが、これはその後一部少数の人が発表いたしまして、非常な物議を醸したこともあるのであります。そういうような経過を辿りまして、全く明治憲法というものは、いろいろな神道主義的な或いは皇道主義的な文言で粉飾はいたしておりますけれども、その基本は右のような沿革からでき上つたものなのであります。だからドイツ人がよく使う言葉を以ていたしまするならば、即ち哲学的なドイツ人からいたしますると、一切はいわゆるドイツ人世界観、ウエルト・アン・シアウウンクによつて統一されているものなのでありますから、ひとり憲法のみならず、その他の法律教育、一切のものがそれと結び付いた一つドイツ人特有の思弁的な、形而上学的な、抽象的な或いは論理的なプロシヤの哲学と結び付いて来ておるのであります。日本明治以来、憲法それ自身も今のような経過を以て制定されたものでありまするが、資本主義の発達がドイツでは非常に遅れておつて、従つて自由主義的な思想の交流というものが非常に遅れて、封建的な残り、いわゆる残澤が非常にまだ深かつたという点で、最も多くの近似点明治先覚者プロシヤに求めました。憲法その他いろいろなことをプロシヤから模倣いたしまして、そうしてこれを国民に強いて来たのであります。それが又今日までの日本文部省の掌るところの教育行政中心思想であつたと私は考えるのであります。ドイツ試みに、もう古いことでありますが、参りまするというと、如何に日本ドイツを学んで来たか、ドイツの真似をするということに努力して来たか、陸軍の編制がドイツを模範にしたことは言うまでもなく、憲法が今のようなことであり、又地方制度のごときも、今地方自治法という法律になつておりますが、あの中にもまだ昔の地方制度が非常に残つておるでありますが、その地方制度というものは、山縣有朋内務大臣でありましたときに、今申しましたところのベルリン大学教授であつた公法学グナイスト弟子でありまするアルバートモツセという者を日本政府顧問にいたしまして、そのアルバートモツセがみずから筆を下ろして日本地方制度を書いたのであります。そのほか万般のことが如何にドイツ、殊にドイツ指導国家でありますところのプロシヤというものを、日本制度的にも思想的にも、又教育の上において軍事の上において模倣して来たかということは、これは明白なことじやないかと思われるのであります。ところが新憲法というものは、全くそのプロシヤ憲法精神と連つたところの考え方であります。即ち憲法制定の当時におきまして、我が日本の国におきましても、板垣退助らを中心といたしますところの自由党運動というものがありまして、今日の自由党はその伝統を継承しようとしておられるものかと思われるのでありますが、いわゆる天賦人権論ということを主張し、その天賦人権論とは、即ち今日の言葉で言いますところの基本的人権でありまして、新憲法は私がさつき読み上げましたように、国家であるとか、君主であるとかいうようなものが国家主権を持つものではない、この国家生活においては個人が即ち主権を持つものである。インデイヴイデユアリテイというものがシユープリームであつてドイツ国法学者考えるようなステート、国家というものに主権がある、或いはそれを代表するところの君主というようなものに主権があるのではないという全く対蹠的な考えに立つて曾つて自由党諸君運動せられたんでありますが、併しそれは薩長藩閥政府山縣有朋伊藤博文等中心とするところの藩閥政府の官僚的な精神によつて明治憲法制定と共に圧伏せられてしまつた。ところが終戦後天賦人権論中心とするところの人民主権憲法が作られたのでありますから、自由党諸君はその伝統に還つて、そして曾つて自由党指導者の一人でありましたところの土佐竹内綱子供であるところの現在の吉田さんを総理大臣にしたり、(笑声)又その竹内綱と共に土佐自由党指導者でありました林有造子供であるところの林讓治君を副総理にしたりして、天賦人権論であり又人民主権を主張する自由党伝統的、歴史的精神を生かそうとしていられるのではないかと私は思うのであります。ところが大体においてそういうことを前提といたしまして考えて見まするときに、然らば今日におけるところのこの憲法教授の仕方であります。私は文教基本的精神は、全面的に今申しましたような事柄の考察を要すると思うのであります。その一つの現われとしての大学におけるところの憲法教授であります。ところが私が見ますと、各大学におきまして憲法教授いたしておる、即ち今日におきましては、新憲法教授いたしておりまするところのいわゆる憲法のプロフエツサーというものが、どういうような考えでこの新憲法を教えていられるかということが問題であります。私が見まするのに、このさつき読上げましたような神道主義の神ながらの精神と、そうしてプロシヤ憲法の模倣であり、又プロシヤ憲法の背景さえあるところのドイツ観念哲学的な国家観に背景付けられた明治憲法先生、そして明治憲法国民指導精神として、又日本政治経済一切の制度基本的な法律として、即ちグルント・ゲゼツツとして、これはいいものであるという立場において、それを大学学生その他に教授して来られたところの明治憲法先生が、全く明治憲法精神を否認しているところの人民主権の、個人シユープリームであるというところの立場に立つた新憲法を平気な顔をして教授しておられるということが、果して合理的であるかということについて、文部大臣がどうお考えになつておるかということを、いろいろまだ聞きたいことがありますが、先ずそのことについて最初に御答弁が願いたいのです。或いはなぜそういうことを私は問題にするかと言いますと、新憲法制定せられて、いろいろ制度の外郭的な改革があつて、ただ民主的である、民主主義であるとやたらに言われておりますけれども、本当の基礎的な観念というものが日本人には十分に了解されていない。然らばどうしてこれから、藉すに多少の時日を以てしても変えて行かなければならないか、本当に新憲法が所期しているような日本民主化を図つて行くためには、どうしたらいいかと言うならば、やはり基本的な教育からこれを変えて行かなければならない。ところが教育改革一つとして、私は法制的な立場から申しまするならば、ほかの法律についても同様でありますけれども、この基礎法でありまするところの憲法教授という者が、本当に民主主義的な精神を体得しているところの人によつて教授されるという必要がある。或いは憲法学者は、憲法学憲法思想に対する研究とは違うというようなことを言われますが、憲法学法律の註釈的な解釈をするのが憲法学であつて、私が今言うようなこと、それは憲学学ではないというようなことを言う人がありますが、私はそういうことは許されないことであると思うのであります。さればにや旧憲法の註釈法学的な、或いは旧憲法憲法思想学的な学者代表者の一人でありました枢密院の議長をしていられた清水澄博士のごときは、新憲法ができたということによつて、今日まで明治憲法中心として来たところの講義国民の間に普及さして来たところのその精神というものが自己破滅を来たしたというところの、良心の苛責によつて私は自殺せられたものであると思うのであります。誠に私はまじめな人格に尊敬ぜざるを得ないのでありまするが、過去において明治憲法をいいものであるとして国民に教え、学生に教えていましたところの人というものは、よろしく私は清水博士と同様な良心を持つてこの問題に対して頂かたければ、本当に日本のこの民主的な学制の基本というものは確立しないと思うのであります。ところがそういうようなこの旧憲法中心とするところの一切の国民教育思想によつて指導され、教育されて来た青少年が、この戦争において敗北して、こうした結果を来たしたということで、自己が教えられて来たところの目標の中心観念を失つてまつた。彼らは今日まで自分が光明と考えて来たところのものは、実は非常に誤まりなものであつたということで、行手を失つてしまつて来ているということ、そのほか経済上の原因もありましようけれども、今日言われているところの社会の思想的な混乱の一つの大きな原因であると思うのであります。ところが文部省当局の人は、或いは修身科復活であるとか、或いは君が代の復活であるとか、いろいろな文教対策を今日国民に唱道しておいでになりまするけれども、そういう青少年の光明を失わしめて来たところのものは、実は天野さん四十年間教員生活をしていると言つて非常に御自慢のようでありまするが、そのあなたが四十年間に教えて来られたところのこういうプロシヤ主義の模倣、明治憲法中心としたところのその国家主義的な、或いは天皇崇拝的な、そういう国民精神指導方針が全く暗黒化してしまつた、光明を失つてまつたというところから、青少年の思想的な混乱を来たしているにもかかわらず、これを思想的堕落であるというようなことを、今日の青少年は非常に道義的に頽廃しているとか、堕落しているというようなことばかりを言つて、或いは君が代の復活並びに修身科復活というようなことばかり言つておられますけれども、我々からするならば、そういう青少年を思想的混乱に陥らしめるような原因を作つた、そういう誤まれる指導をして来たところの、あなたも高等学校の先生を長いことおやりになり、校長をしておいでになつたと言いますが、その今日までの職業的教育者それ自身が、今日の青少年の前に手をついて謝まるのが当り前であります。清水博士のごとく自殺するがごとき良心を持つのが当り前であります。みずからそういう自己反省をしないで以て、そうして今日の青少年の思想的混乱に訓戒的な言辞を垂れ、或いはそれを如何にも依然として自分指導するところの資格を備えるがごとき態度を以て教えられておるのが、今日私は文部省の某本方針であると思うのでありますが、君が代或いはその他の問題についてはあとから御質問いたしますが、先ず私は教育基本的な一つの方法として、明治憲法をいいものとして教えて来られた各大学におけるところの憲法学教授を私は追放すべきものである。追放というのは職業的不安があつていい言葉ではありませんが、それと同じような効果を生むようなことを文部省として先ず考えて頂きたいと思うのでありますが、それに対するところの御見解を一つ伺いたいと思います。
  7. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は各大学憲法教授を担当しておられるかたがたは、ドイツ哲学なりドイツ思想なりをただ盲信して来ておるとは思つておりません。そういう人が中にはおるかも知れませんが、皆明敏な人たちで、批判的な精神を以てこういう憲法に対して来たと思つております。現在は新憲法になりましたから、頭を改むべき点は考慮をするとか、研究に専念していると思つております。だからこういうかたがたを、すぐやめさすとか、そういうことは必要がないと考えております。
  8. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それはあなたが形式的に外面的に観察して、そうお言いになるのでありまするが、そうした明治憲法を教えて来たところの人というものが、基本的な立場においては私は思想的な転換が十分できていないと思います。丁度それは地方行政委員会において私の質問に対して、ドイツ哲学をやつておいでになつたところのあなたが、思想的な転換をしておらなかつたと同じでありますが、これは私はどうしてやらなければならんことであつて、丁度昔の憲法学者が、その基本的な思想研究するためにドイツへ留学するとか、或いはドイツの国法学のいろいろな書物を研究したと同じように、それでは現在の憲法学者であるところの人が、新憲法にふさわしいところのそうした基本的な研究を十分いたしておるかと申しますると、今具体的な例をいろいろ挙げると時間を非常に要しますので、私は省略いたしますが、必要があれば挙げまするが、十分にいたしておらぬ。それは事実であります。そして又人間というものは、実際上四十年、五十年になりますと、本当に頭の切換えというものはなかなかできるものではありませんので、以前から人民主権でなければならんというような本当の思想の把持者でなけれ、私はフアンダメソタリーにやはり新憲法精神を体得して、これを講義し、これを研究するということはできないものであると考えるのであります。それでどうしても私はこれはやはりヤング・ゼネレーシヨンで、これにふさわしいところの後代の憲法学者大学においてどんどん養成して行かなければならない。昔の先生にやらせるならば、これは一時だけの問題で、どうしてもこれは新らしい人を養成して行かなければならない問題だと思う。予算の面を見ますというと、文部省大学のほうの予算に数千万円の外国人の教授を招聘して、大学の教師を教育するというような項目があつたように私は見るのでありますが、あの項目は具体的にはどういうことをすることを目的にしていらつしやるのであるかということを、先ほどの質問に併せて一つ答弁を願いたい。
  9. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) あの費目では教育学とか、歴史学とか、油学とかその他さまざまの学問についてアメリカの学者の意見を聞こうというわけでございます。
  10. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それでは今の憲法の問題は先ずそのくらいに、非常に不満足でありますが、いたして置きまして、国歌の問題について更にお伺いいたしたいと思うのであります。たまたま地方行政委員会へ先般天野さんがおいでになりましたので、僅かの時間を得まして質問をいたして御答弁を得たのでありますが、地方財政のことを論議しておる最中でありましたので、会場が周囲の事情が不向きでありましたので、私は質問を打切つたのでありますが、引続いて御答弁を得たいのでありますが、文部大臣が最近君が代を各学校の生徒その他に歌わすことを復活し、これを奨励するところの方針をとつておいでになるのであります。先ほど申しましたように、私は君が代というものは明治憲法及び教育勅語と三位一体をなして明治以来の国民指導して来たものであると考えるのでありますが、先ずお伺いいたしたいことは、国歌の問題についてであります。国歌は天野さんは必要であるということをそのときにお言いになつて、私も全くその点は同感なのでありますが、即ちナシヨナル・ソングというものがなければならん。学校には、早稲田大学には早稲田の校歌というものがあつて、学の独立とかいろいろなことをいつて早稻田大学精神を表わす。或いは労働総同盟にもそういう意味の歌があつて一つの統一的にそうした基本的な精神を基礎にして、そうして音楽にしてこれを歌わす、私は非常にいい、なければならんものだと思う。又各国にもそういう国歌があるのでありますが、国歌がある以上は、その国のよつて立つところの国民理想、国全体としての陶民の国際間におけるナシヨナル・アイデアというものが表白されたもので私はなければならんと思うのであります。そういう意味から申しますると、私は今日の日本国民の統一されたる国民としての生活理想というものは、新憲法精神が即ちそれである。それを最もよく現わしておるものは私は日本憲法の前文、先ほどその一節を読み上げましたが、その前文が一番よく現わしておるだろうと思うのであります。即ち人民に主権がなければたらない。個人シユープリームである。これに反する詔勅であるとか、或いは勅語のようなものはこれを廃棄したければならん。自由でなければならん。平等でなければならん。そういうことこそが、即ち新憲法の統一せる、通貫せるところの精神が最もよく集約して表現せられておるところの日本憲法の前文こそが、私は国歌の内容をなすべきところの国民理想でなければならんと考えるのでありますが、それについての御見解はどうであるかということが第一点。それから第二点には、そのように考えまするというと、君が代というものは、これは不向きである。君が代は新憲法前文によつて廃棄を声明されたる、又参議院が新憲法前文の精神によつて廃棄を決議いたしましたところのあの教育勅語、一切の国民の生活に天壌無窮の皇運を扶翼するためにあるのであるという、そうした憲法にあるところの自由独立でたくして、隷従を強いて、君主というものと臣民というものとは人格的な差別があるのであるという観念の上に立つておるその明治憲法教育勅語と揆を一にするところの思想的根抵に立つておるところのものであつて、これは断じて君が代というものは、この新憲法精神に呼応した国民理想を表白したる国歌としてはふさわしからんものである。併しながらあなたもそのときにお言いになりましたように、新憲法第一條は、この国の象徴として、国民統合の象徴として天皇制の存続を認めておるのでありまするからして、天皇陛下が例えば国会においでになる。或いは何か運動会のようなところにおいでになつたときに、天皇に対するところの親愛の情の表白するために君が代の万代を謳うような歌を歌うのは、或いはこれはそのときによつては許されると思うのです。ところが国歌である以上は、今申しましたような意味において、国民の理想を表白したものが国歌でなければ、私は国歌の用をなさないと思う。明治憲法及び教育勅語と結び付いた君が代を依然としてここに国歌として復活しようというような考えは、先ほどの質問の中にも申しましたように、やはり旧憲法時代考え方を、非常に新憲法がこれを改めようとしているところの精神から、あなたのいろいろ御見解がありましたけれども、やはり昔と同じような考えで、頭の切換えがちつともできていないということを表白していらつしやるものと私は見るのでありまして、私たちの見解といたしますならば、新憲法下における民主主義に対するバチルス的な思想であると考えておるのでありますが、もう一度それについての御答弁を伺いたいと思います。
  11. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は吉川さんと、歴史というものを考えている上に根本に一つ違つたものを持つておるのであります。それは私は歴史というものは時代が変るときでも、すべて前の時代を廃棄するというのでばなく、揚棄するという思想を抱いております。吉川さんの思想はすべてを廃棄するという……哲学上の用語を引用することが許されるなら曲は、廃棄することより揚棄するという思想を私は持つております。だからして憲法第一條に、依然として天皇日本国の象徴である、ですから今にわかに国歌を作ろうと言つても作れない。これを用いても差支えないと考えております。私はすべてのものを以前に帰してしまうとか、勅語だとか、修身というものを帰すという思想は私は全然持つておりません。以前に勅語というものを読み違えたということで……、勅語というものを以て思想を圧迫するということはよくないと同じように、勅語とか、修身とか古い言葉を引出して思想を圧迫することはよくないと思います。
  12. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 あなたはそういうような御答弁をおしになりますが、私はあなたはやつぱり昔に復活さそうというところの見解でお言いになつておると思うのです。さつき青年のことを申しましたが、百年が、あなたが教育者として、職業的教育者として指導して来られたところの、思弁的な、抽象的な国家主義的観念というものに全く光明を失つて、そうして行く道を失つたのです。それをあなたは、これを以て道義頽廃であるとか言つていらつしやる。思想の混乱はそれから起つて来たのです。あなたが言われるように、これらを揚棄、アウフヘーベンし、弁証法的発展によつて新らしい一つ思想がそれより生れ、新らしい方策が生れなければならんとお考えになるならば、決して君が代のような思想、或いは教育勅語に現われたような思想復活するのではなくして、その国家主義に失望したところの青年から起つて来るところのものが、弁証法的に発展して行くところの新日本指導的精神がなければならんと思うのですが、あなたはそれを把握していないと考えるのであります。それで質問はそれぐらいにして置きますが、右に関連してもう一度お尋ねしたいことは、この間の質問で、新らしい国歌が坐れていない、国歌は入用なものである。ところが新らしい国歌というものは自然発生的に生れて来るものであるからというようなお話がありました。その点は私も或る程度まで認めるのであります。併しながら君が代というものが、我々は子供のときからあれを国歌として歌われて来たのは、ただ自然発生的に……、その始まりのときは自然発生的であつたかも知れません。私はよく知りませんが、あれはたしか高崎何とかという御歌所の歌人がその頃官僚だつたと思います。曲は林廣守だとか、作つたの明治二十二年で、こういうようにして皆に歌わさせるようになつたということでありますが、ともかく法律的な制度的な背景において、これを国民に歌わせるようにして来たのであつて、だからしてここにどうしても君が代は、先ほど申しましたような意味においての、日本国民思想をこの際現わしているものではないというところの考えが確立いたしますならば、どうしても新らしい国歌を作るところの必要ということが生まれて来なければならんと思うのでありますが、あなたはそれをお感じになつていないようなこの間のお答えのように私は感ずるのでありますが、私はどうしてもそれは是非作る必要があると思うのであります。或いはそれを作るという方法については、できるだけ自然発生的に、何か御用的に文部省がこれを作成して、そうして勅語のような形で押付けるのではなくして、国民の間から、新聞社から募集さすというような方法もございましよう。いろいろなものをたくさんできました中から選択するというようないろいろな方法がありましようが、そう前提として必要なことは、君が代というものは即ち新らしい今日の日本のナシヨナルソングとしては不適当である。新らしいものを別に作らなくちやいかん。民主主義日本思想を表白したところの国歌を作らなければならんというところの要求をあなたは本当にお持ちになつておるかどうか。若しそうお考えになりまするならば、君が代は終戦後は自然的に、自然発生的にと言われましたが、自然発生的にあれは廃止されておつた。ところが文部省が今度は政治的に、人為的にあれを奨励して歌わせるようにしたのであつて、廃棄ということについては、自然発生的に廃棄されておつたのであります。だから私は新らしい国歌を必要だと思います。だから新らしい国歌を必要であるということについての、やはり私は政府の措置が講ぜられることが必要であると思うのでありますが、君が代でいい、どうしても君が代でいい、あれで十分であるというあなたのお考えなのでありますが、その点は見解の相違であると思いますけれども、もう一度一つお尋ねして置きます。
  13. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) お考えとして承わつて置きます。
  14. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 お考えとして承わつて置くということは、甚だ不謹慎な御答弁であつて、国務大臣は議員の質問に対して答弁する義務を有せられておると思いますが、而も事は日本国民教育基本的な精神に重大なる関連牲を持つておる問題であり、又あなたの御担当になつておるところの文部省行政の基本的な私は問題に関連しておると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)もう少し具体的に、一つ新らしい国歌をどうしても自分は作らなくちやならんと思つておるのか、思つていないのか、君が代で十分いいと思つておるのか、いないのか、又新らしい国歌を作るところの必要がどうしてもあるとするならば、どういうふうに、できるだけ自然発生的な、それが起つて乗るような方法を考慮しつ、どういうようにしてそれを訂正しようと考えておるのかということについて、もつとはつきりと一つお答えが願いたいと思います。
  15. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) それは実はこの間お答えをしたから、私はそう申上げたのであります。又場所が違いますから改めてお答えいたします。私は君が代をやめるという考えを持つていないけれども、第二の国歌というものもあつてもいいという、そういう考えを持つております。君が代はあれは人が作つたのではなくして、人が作つたには違いありませんが、元の古歌の中で読み人知らずというものを拾い出して来たのでありますが、そういうようなふうにして何かここに新らしく国歌を作るということも、私は考えていいということをこの間申上げたのであります。けれども、そのために現在あるものを全然やめてしまうということは自分考えない。この通り申上げたのであります。
  16. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 君が代が国歌として歌われておるということは、思想的に考えまするならば、丁度あれは万葉集の歌だそうでありますが、海ゆかば水漬く屍、山ゆかば草むす屍、大君の辺にこそ死なめというところの思想と共通いたしておるものであります。それを国民理想の中心的な観念として、文部省国民に奨励して歌わしておる以上は、私は日本の新憲法精神というものの基本的な理解というものは、終生日本国民にはできないものだと、こういうように考えておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)もう一度それについてお答え願いたいと思います。こういうようにお考えになりますかどうかということを……。
  17. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はそうは考えません。間違つておると思います。(「独断だ」と呼ぶ者あり)
  18. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 これ以上問答いたしましたところで時間の浪費でありますから、省略いたしますが、そういう観念において日本国民教育指導されておるということは、私は少くとも精神的な意味におきましては、新憲法の違反であるというように考えるものであるということを申上げて置きたいと思います。(「重大問題だ」「同感々々」「ノーノー」と呼ぶ者あり)これは非常に大きな問題だと考えております。
  19. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 速記のほうが厚生委員会と今日は共通なんで、厚生委員会が採決に入りたいから、その間速記をこちらに廻してくれということを再々要求されております。そこで午前中の委員会はこの程度で休憩に入りたいと思います。    午後零時十一分休憩    —————・—————    午後一時四十三分開会
  20. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 休憩前に引続いて予算委員会を開きます。
  21. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 午前に引続いて文部大臣答弁を求めたいのですが、出席を一つ……。
  22. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 文部大臣に対する出席は要求してあります。もうじき来ると思いますが……。今法務府の民事法務長官が来ておられますから、法務府に対する質問を先ず始めます。
  23. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 私は国民財産を完全に保管、管理し、人権を擁護し、又政府の牧人を増すために法務局関係の登記事務、人権擁護事務、庶務事務について質問したいと思うのであります。昭和二十五年の七月に土地台帳法、家屋台帳法の一部の改正によりまして、従来税務署所管であつたところの土地台帳及び家屋台帳の登記事務が法務局及び地方法務局の管理に移管されたのであります。台帳の登記事務は正確迅速を旨とすることが必要であるが、地方税の唯一の財源である固定資産税の基本となり、又国民経済取引り対象となる土地家屋の所有、種類、容積及び権利者等を明確にするのに絶対的に必要な事務であつて、この登記事務を怠るときには国民の受けるところの損害は非常に大きいものがあるりであります。税務署から引継ぎを受けた土地及び家屋台帳、地図等を見てみますというと、その整理が非常に不完全であつて、且つ又税務署自体に未済の件数が非常に多いのであるために、法務局は非常に困つておるような現在の状況であるのであります。法律の改正によつて法務局及び地方法務局は税務署から正確であるべき台帳を不完全なるままに移管されたのみで、従来の台帳の登記事務を処理していた者は一人も移されていないのであります。そこで法務局及び地方法務局は従来の定員で仕事をしておるような次第であるのであります。こんなことでは正確迅速を旨とするところの台帳の登記事務を完全にすることができないのみならず、国民に損害を與え、地方税、取引等の円滑を欠いておるところの状態に陥つているのであります。こういうふうな状態でありますから、政府においても台帳の登記事務の現在の状況に鑑みまして、今回の補正予算にこれらの関係の僅かばかりの予算が計上されたということであるのでありますが、その予算によつて右申上げましたようなたくさんの仕事をすることができるのであるかどうか、その人件費はどのくらいであるか、こういうふうなことを先ずお尋ねしたいと思うのであります。若し不足といたしましたならば、その不足するところの人間はどのくらいのものであるか、先ずこれをお尋ねしたいと思うのであります。
  24. 田中治彦

    政府委員(田中治彦君) お答えいたします。只今藤野委員からお尋ねのありました点でありますが、極めて地味な仕事を取扱つております法務局の仕事の所管は、主として登記、戸籍、供託、只今お話になりました土地家屋の台帳、そのほかに国の争訟の関係、それから人権擁護の関係という、極めて地味な仕事を取扱つております法務局に対しては、非常に深い御理解と御同情を頂いたお尋ねを拝聴いたしまして、私ども厚くお礼を申上げる気持でおるのであります。只今仰せになりました通り、土地家屋台帳に関する仕事というのは、非常に重要な仕事でありまして、殊に地方税の課税の基準になりますので、正確を期し、その上に更に迅速に処理をしなければならない仕事であることは御指摘通りなのであります。そこで御承知通り、本年八月一日からその事跡を税務署から移管を受けまして、所管をするに至つたのであります。この土地家庭台帳に関する仕事は、従来税務署で取扱つておつたものを、地方税法の関係で税務署からはずすと、そこでこの仕事を一体どこで所管するかということが昨年問題になつたのであります。ところがその所管をきめるのにいろいろの問題がありまして、協議をしておつたのでありますが、残念ながら本年度予算、二十五年度予算の確定しますまでの間に、まだ所管が実はきまらなかつたのであります。その後に至りまして、法務府の法務局においてこれを所管することに相成りました。従いまして二十五年度予算におきましては、この事務の移管に伴う予算が計上してなかつたのであります。そこで移管に伴いまして、勿論人、物、それらの予算の措置が必要でありまするので、その当時からその予定を立てて、補正予算でその当面の問題を処理しようということを考えて参つたのであります。従いまして本年度当初の予算によりますと、法務局の数が、この際少し煩わしいのでありますが、ついでに申上げて見たいと思います。法務局というのは全国に八カ所あります。その下に地方法務局が四十一カ所あります。その支局が二百三十二カ所あります。出張所が千七百八十九カ所、全部で二千七十カ所あるのでありますが、その機構に要しております人員は六千五百四十八人、そのほかに自作農の関係で千九百六十九人の人員を要しておるのであります。そこで自作農の関係をここで申上げて見たいのでありますが、御承知通り、自作農は昨年末までの間に非常に事務の進捗を図りまして、今年度に至りましては、相当数処理をいたしまして、八月末現在では大体七〇%以上の事務を処理いたしました。従いましてこの機構と自作農関係の人間の手が少し余つて来ることが考えられる。そこでその自作農関係の仕事がなくなりましたとしましても、非常に厖大な土地家屋台帳に関する仕事を処理するには到底足りない。そこで本年度の補正予算では五百人に相当する事務の予算を計上いたしまして、これで処理をいたしたいと思うのであります。この自作農関係で千九百六十九人の定員を持つておりまするので、来年度におきましては、この人間を土地台帳、家屋台帳の処理をする事務に引当てたいと思うのでございますが、これが必ずしもその数字通りには参りません。と申しますのは、大体登記所、一言で言いますと、法務局は元の登記所でありますが、登記所は元裁判所に属しておりまして、裁判所の独立に伴いまして、法務局として独立の官庁になつたわけであります。その分離に当りまして、庶務、会計に当るべき人員の増員がなされなかつたのであります。僅かに従来登記と戸籍を担当しておつたその人間だけが法務局に引継がれまして、庶務関係、会計関係の人間が全然なかつた。ところが独立した役所になつて見ますと、そういう庶務の関係の人員が相当数入用になつて参りました。そのほかに通常の戸籍関係の仕事が漸次多てなつて参りまして、増員を必要としたのであります。併しながら一方自作農創設のために増員がなされておりました。ところが当初は御承知通りそれほど件数が出て参りません。相当数の人が余つておりましたので、取りあえず大蔵当局ともお話合いの上で、自作農関係の人間を機構の関係に振り当てまして、そうして漸く要務を処理して参りました。昨年度におきましても、自作農の人間を相当食つて通常の仕事をしておりました。実際自作農に当つておる人間という者は、千九百人の中の千人くらいの人間が当つていたのではないかと思います。その余の者は一般機構の関係に実際は割当てられていたということであります。従いまして本年度予算で千九百六十九人、そのほかに只今お願いをしております五百人の新規の人間を加えましても、実際におきましては、一般機構に相当の人間を割当てて行かなければ人数が完全でありませんので、果してこれで土地家屋台帳の重要な仕事が迅速正確に処理できるかどうか、私どもといたしましても非常に不安に思つておるのであります。そうして一方私どもが引継ぐ前に考えておりましたところと、引継ぎ後に現実を見てみますと、相当考えが間違つていたことを発見したのであります。と申しますのは、只今藤野委員から御指摘になりました通り、簿冊の数が非常に多い上に、実際におきましては、例えば土地の台帳に伴います地図その他のものがよく整備されていなかつた。場合によると、或いは所によりますと、図面さえないというようなことが相当あることを発見いたしまして、更に初めに考えておりましたよりは、もつと人手が要るのではないか。従いまして先ほどから申上げておる通り、果してこの事務が処理できるかどうか、甚だ疑問なのでありまするが、只今の画質その他の状況の下では、相当私どもも万事に亘りまして節約し、能率を挙げる点に重点を置き、又一方自作農の事務の漸減と睨み合わせまして、一応これで出発をして見たいというふうに考えてお次第であります。
  25. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 我が国において画期的の事業の一つは、農地の改革であります。農地の改革を完了するためには、自作農創設の登記が完了しなくちやできないのであります。然るに只今の話によつて見まするというと、本年の三月末で完了せなくちやできないところのものが、更に三〇%くらい残つているということは、農地改革上誠に遺憾に堪えないのであります。残つている三〇%の未整理のものは、いつ頃までのうちに完了される見込であるか。このことが完了すると否とが、前に申しました土地台帳及び家屋台帳の整理にも、今お話の通りに重大なる関係があると考えるのであります。この点お伺いいたします。
  26. 田中治彦

    政府委員(田中治彦君) 自作農関係の登記は昨年末までではなくて、本年度末までに完了することになつております。登記の問題でございますが、先ほど申上げました通り、八月末現在で八〇%乃至七五彦を完了いたしておりますので、この速度で参りまして、本年度末までには完結するであろうという見込を持つておりますが、只今残つております自作農関係の登記は相当園難な問題があるのであります。果して三月末までに完結いたしますか、多少の不安はないではないのであります。本当にこの自作農関係の登記に手を著けましてからの事務の処理の速度を計算して見まするというと、大体三月末までには終る見込で只今折角努力している次第であります。
  27. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は土地台帳及び家屋台帳の保管、管理でありますが、別在の状況を実際に視察して見まするというと、非常に重大であるところの土地台帳及び家屋台帳の保管が完全でないのであります。さつきも申上げましたように、税務署からたくさんの書類を引継いで、その書後を整理するところの設備がないのであります。従つて各部屋の隅々に積み重ねて置かれるというような状態であります。そういうふうな状態であるから、一旦必要であつて登記をしようとしても、どこに必要な登記簿があるかということがわからずして、その登記にたくさんの時間を要し、従つて活發に経済運動をやらなくちやならないところの登記ができないというような状態であります。又登記が迅速に行われないために、国家の收入であるところの登録税の牧人も従つて少いというような状況であるのであります。こういうふうな状況であるのでありますから、私はお尋ねしたいと思うのでありますが、地方の法務局であるとか、或いは事務局であるとか、或いは出張所の現在の状況から考えて、設備を完備するのと同時に、非常に大切なところの私どもの財産を保管しているところのものなのでありまするから、火災に会つてもその災害を受けないというような完全なる設備が必要であると思うのでありますが、こういうふうな設備が現在できていないのであるが、これはいつ頃までのうちにどんな方法で整備される考えであるか、この点お伺いしたいと思うのであります。
  28. 田中治彦

    政府委員(田中治彦君) 只今御指摘になりました台帳関係の簿冊移管後の状況は、甚だ遺憾でありますが、只今御指摘なつ通りであります。実際の登記所へ行つて見ますと、格納する倉庫が狭いために廊下に置きましたり、部屋の片隅に積み重ねておるところも相当数あります。そのために事務の処理が遅れ、従つて台帳関係の当事者の皆さんに御不便をかけているのは、これは率直に認めて遺憾の意を表する以外にはないのであります。併しながら私どもこの移管を受けますときに、このことも多少考えないではなかつたのであります。併しながら法務局の営繕関係予算というものは、従来とも非常に乏しいものであります。一昨年のごときは営繕関係公共事業費は零であつた。昨年、本年と漸く僅に予算を計上いたしまして、倉庫その他の設備を順次に拡充して来ておるような次第であります。従つて不完全で、相当これは困難を伴うということを予想したのでありまするが、先ほど申上げました通り予算の大体査定も済みまして、予算が確定した後に所管がきまりましたので、本年度予算にはそのための予算を特に計上してなかつたのであります。そして移管後の状況、これを見まして、只今私どもでは法務局が頂いておりますいわゆる物品費なり或いは役務費などの費用もできるだけ節約をいたしまして、真に事務に差支えておりますところ、そういうところに重点を置いて、取りあえずの応急措置をいたしまして、例えて申しますと、柵を作り或いは倉庫の増築を図りまして、とにかく本年度内だけは応急措置をして賄つて行き、来年度に入りましてから相当の予算を頂いて、倉庫の増築その他設備万端を整えて、順次に御期待に副うようにしたいと考えておる次第であります。
  29. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 地方の法務局の出張所の庁舎の状況を見てみまするというと、この庁舎は殆んど大部分が三十年以上を経過しておるのであります。而して戰時中いろいろの改修が行われていないために、その庁舎が非常に悪いのであります。又庁舎の使用料は戦時中或いは戰前に定められたところの借用料であつて、その借用料は非常に少いのであります。この庁舎というのは、大体において市町村が設立して政府に貸しておるのでありますが、現在のような地方財政であつたならば、庁舎の改修をやつて政府に貸すというようなことも困難な事情にあります。それで各市町村では修繕ができない、借用料が安い、こういうふうなことではできないから、それらのものを政府に寄附したらどうかというような意見を持つているところも相当あるのであります。若しこれらの建物を全部政府が寄附を受けるとしたならば、その後の保管管理にも非常に困難を感ずることでありますが、又現在の状況では、使用料が余りにも少いために困つておるような状況でもあるのでありますが、土地台帳及び家屋台帳を完全に整理して、国民の財産を気合に保善するために、改修を市町村にさせ、その結果或る程度の借用料を値上げするのが適当であろうと思うのでありますが、この値上げに対する、或いは寄附を受けられるというような点について御意見を拝聽したいと思うのであります。
  30. 田中治彦

    政府委員(田中治彦君) 只今御指摘になりました通り、庁舎は二千余あるのであります。その大部分は国有でありません。明治の頃からその村、その町、その市から厚意を以てお貸し願つておる庁舎が非常に多いのであります。そしてその賃料も昔のままで非常に安い賃料でお借りしているところが非常に多いのであります。併しながら最近に至りましては、いろいろの社会情勢の変化、それに伴いましてこの不適正な賃料を適正化するために予算も相当頂きまして、各地におきまして賃料の適正化を図つてつておるのであります。併しながらまだ世間一般の賃料に比較いたしますと非常に低廉なもので、この点は非常に恐縮に存じておると同時に、ここで一段の調査、努力をいたしまして、賃料の適正化に努力を拂いたいと考えております。国有の庁舎にいたしましても、御指摘通り非常に古くて、むしろ朽廃に近いところが多いのであります。これでは非常に大切な国民の権利義務に関する薄冊をおありしておる法務局といたしましては、万一の場合非常に不定に思うのでありますから、順次新営に代えて行く方針をとりまして、本年度は御承知通り一億余りを頂きまして、重点的に庁舎の新営を図つております。而も又借上げ庁舎のところでも殆んど朽廃に近く、実際申訳ないのですが、家賃が余りに安いので大家さんに修繕を求めるということもお願いしかねるというような悲惨な状況にありますので、できるだけ国で、できればそこを新営に切換えまして庁舎を拡充いたしますと同時に、万々一そこの市町村におきまして、厚意を以て庁舎を建ててやろうというような場所もありますれば、又その場合その御厚意に従つて適当に処理したいというふうに考えておる次第でございます。
  31. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は人権擁護関係について、お尋ねしたいと思うのであります。法務局の人権擁護事務は非常に近来殖えたのであります。又自由人権思想の啓蒙宣伝にも相当の費用を要すると思うのであります。然るにこれらに関するところの人員が全く増加されないということは、人権擁護を政府に呼ばわりながら、その実を全うしないと、こう考えるのでありますが、法務局の人権擁護に関して将来どのくらいの人間を必要とするか、この点について又どうしたならば人権擁護が完全に行われるという考えであるか、お伺いしたいと思うのであります。
  32. 田中治彦

    政府委員(田中治彦君) 人権擁護の仕事は新たに出発した仕事でありまして、出発当初に当りまして、どれほどの事務量があり、どれくらいの仕事をして行くものか、本当の新らしい仕事で、或る程度の見当しか付かなかつたのであります。出発以来三年になりまして、只今現在では相当の予想、見当も付いて参りました。漸次に拡充いたしたいと思つておりますが、只今の人権擁護の関係は、大体水府におきましても局長以下給仕さんまで入れて僅か二十人の局であります。それで仕事を出発したのであります。法務局、地方法務局におきまして人権擁護に当つておる人間というのは極めて少数であります。僅かに二、三名の人間を当てて処理をしておるのでありますが、やはり事務量は漸次に増大して参りましたので、ここで来年度あたり或いは相当の増員を求めて拡充しなければならないと思うのでありますが、御承知通り昨年から人権擁護委員というものができまして、全国の各市町村に人権擁護委員を委嘱いたしまして、主として人権擁護委員のかたがたの御活躍をお願いし、法務局、地方法務局におきましては、その仕事の御相談に応じ、そうして又その事務を処理させて行くという方針をとつて参りたいと思つておりますので、普通の事務と違いまして、事務量から割出した人間そのものを必要としないと存じますが、何を申しましても相当人権擁護の思想が普及徹底いたしまして、人権侵犯事件も起り、その庁舎の必要も増加して参りましたので、何としても準かに一人、二人の人間で処理できない状況になりましたから、来年度には相当数の増員をお願いいたしまして、人権擁護に遺憾ないことを期したいと考えておる次第であります。
  33. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は訟務関係でありますが、地方法務局の訟務事務は、本年に入つて農林省所管の薪炭売却代金の回収民事訴訟を初めといたしまして、繊維貿易公団所管の輸入マニラの拂下代金、農林省所管の林野加工品の売却代金、大蔵省所管の国有財産売却代金並びに国有財産賃貸料及び使用料、建設省所管の特殊物件、これは旧軍の物資でありますが、特殊物件売却代金等の請求事件に関する民事訴訟等があつて、これらの事件については訴訟提起前に各債務者又は関係者等と交渉を重ね、訴訟の答弁書を作成しなければできない。又証拠の収集を図らなければできない。口頭弁論に出頭をしなければできない。或いは即決和解の申立の準備をしなければできない。その他申立書の作成等、事務が非常に複雑多忙であるのにかかわらず、これらの方面に対する人員の増加が全くないという状態であつて、これらの仕事の遂行に支障を来たしておると考えるのでありますが、これに対する御意見を拝聴したいと思うのであります。
  34. 田中治彦

    政府委員(田中治彦君) 訟務関係も法務局に與えられました新らしい仕事でありまして、国の訴訟事跡を担当いたしますのは、最初は本府におきまする民事、行政、税務、三局の所管にいたしまして、大体が本府の所管において処理をしておつたのであります。ところが御承知通り最近に至りまして、その件数を見ておりますと、民事訴訟は国を当事者とするもの、或いは国を参加入とするもの、この民事訴訟の増加が、正確な数字を今記憶しておりませんが、大体四百件近くなつて参りました。行政訴訟件数は三千件乃至三千二、三百件を上下しておる状況であります。一方税務に関する訴訟は、これは最初もう少し多く数字が出ると思つてつたのでありますが、案外に少うございまして、現在処理いたしております件数は大体二百件乃至二百五十件かと記憶しております。かように非常に大きな数字になりまして、訟務局は又非常に人員が少いから処理ができなくなつて参りました。ところがそれでは法務局にその仕事を渡して、果して法務局で重大な訴訟事務々処理する能力があるかどうか、これを過去一年、二年時日をかして見て参つたのであります。その間訟務局におきましては、法務局の職員の講習をいたしまして、簡單な訴訟事務を取扱わす、さようにいたしまして、訴訟の事務の勉強をさせ、更に訴訟事務に慣れさせ、只今藤野委員のお話にありましたように、本年度に入りましてから、主として公団関係の債務、債権の整理、跡始末の仕事を担当させたのであります。例えば、薪炭公団の債権の取立、本年の四月に着手いたしまして、大体十五億円の債権を持つていたと記憶しておるのでありますが、現在におきましては、十億乃至十二、三億の回収を見ておるような次第であります。そこで非常に法務局の訟務関係の担当者が多忙を極めておるのでありまして、このままで参りますと、先ほどお話の各公団の債権債務整理関係、その土地における訴訟、それを担当するのは到底煙りないのであります。従いまして、来年度におきましては相当数の増員を認めまして、これ又事務の処理に遺憾なきを期したいと考えておる次第であります。
  35. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 午前中に文部大臣に対する質疑が中絶いたしておりますので、吉川君。
  36. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 午前中に文部大臣に対しまして、憲法教授の問題並びに国歌の問題について質問をいたしまして、いろいろ御答弁を得たのであります。大体におきまして、文部大臣考えも漠然と了解は私にはできておるのでありますが、ともかくも文部大臣のお考えと私の考えとは、基本的に違う考えでありますから、非常に申したいことはたくさんあるのでありますが、少し焦点がはつきりしなかつたような感を自分からも持ちますので、この際午前の質問、それに対する大臣の御答弁を集約して結論を得るというような意味におきまして、箇條的に簡單にもう一度お尋ねいたしたいと思いますので、はつきり御答弁を得たいと思うのであります。第一お尋ねいたしたいことは、国歌というものは、即ちナシヨナル・ソング、国歌というものは全的に国民の理想を表白することの必要が私はあるものでないか、午前中大体お話したことでありますが、国歌は全的に国民の理想を表白するところの歌でなければならんと思うのでありますが、文部大臣はどのようにお考えになつておるかどうかということを一つ答弁が願いたい。
  37. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 国歌は国民の理想を全的に現わすことが理想的だと考えております。
  38. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それでは引続いて御答弁を得たいと思いますが、日本国民の理想というものは、私は新憲法、殊に新憲法の前文が全的に右の日本国民国民理想を私は十分に現わしておるものであると考えるのでありますが、それに対する天野大臣の御見解を承わりたい。
  39. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 新憲法の前文もそうでありますし、或いは教育基本法の前文でも或いは新憲法でも、すべて日本国民の理想を現わしておるものと考えます。
  40. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 御答弁を得ましたが、新憲法の前文は、国家が表白すべき国民理想を現わしておるという御答弁であると解釈してよろしうございますね。そうすると、その考えからいたしまするというと、あなたが復活してこれを日本国民に歌わすことを奨励しようとしていらつしやるところの、旧憲法時代の、午前申上げました君が代であります。君が代は千代に八千代にさざれ石の巖となりてこけのむすまで長く続いて欲しいというあの君が代は、私は右の意味においては、新憲法が前文において、或いは憲法全文において表白いたしておりまするところの、国民の理想を表白しなければならんという立場から、君が代の歌というものは新憲法の前文の思想に反しておるものである。このように私は考えるのでありますが、それに対する一つ御見解を承わりたい。
  41. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は日本国は、午前も申しましたように天皇が象徴として規定されておるのでありますから、君が代は新憲法精神に反しないと考えております。
  42. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 この点になりますると、これは見解の相違ということになるのでありますが、私は新憲法国民の理想を現わしておるものであるというように考えまするというと、それは前文に最も集約的に私は現われておると思うのであります。あの全章を通じましての思想というものは、天野さんが言つて、るような意味においては、私は新憲法精神は現われておるとは考えておらぬのであります。成るほど憲法第一條には、天皇に関するところの規定がありますが、それは全的に新憲法を代表しておるところの考えではありません。新憲法を全的に現わしておる根幹的憲法精神は、飽くまでも前文に現われておるところの人民主権考え個人シユープリームで、君主や元首がシユープリームでないというところの思想、自由でなければならん、平等でなければならんというところの考えが、私は新憲法基本的精神であると考えるのでありまして、ただひとり第一條であるところの、天皇は国の象徴であるというようなことは、新憲法を全的に表白しておるところの精神ではないと私は考えておるものでありますが、もう一度改めて申上げて置きたいと思いますが、これ以上の御答弁は要求いたしません。第四番目に、私は大野文部大臣に御答弁を要求したいと思いますことは、これ又午前中に多少申したのでありますが、大野文部大臣は私の、考え方、それは非常に過去を廃棄するところの考えであつて、歴史的に発展して行くところの考えでなければならん。即ち私は哲学のことはよく知りませんが、天野さんのお言葉によるというと、即ちアウフヘーベンされて行くように発展して行くところの考えでなければならんというようなお答えであつたのであります。仮に天野さんがおつしやるような考え方に従つて考えて行きますときに、私は午前申しましたような考え方によりまして、文部省が所管していらつしやるところの日本国民教育基準といたしましては、即ち我々がこれを廃棄いたしましたところの明治憲法、それから憲法の前文に廃棄を声明いたしておりまするところの教育勅語、又我が参議院は同一の精神に基きまして、教育勅語廃棄の決議案というものを満場一致を以てこれを通過せしめているのでありますが、そういうような考え、私はその中へ連関性あるものとして、やはり君が代の国歌をも入れて考えるのでありますが、そういうような私の午前申しげましたごとく、それは日本の神道の考えと、そうして明治憲法の模倣の基本をなしたところのプロシヤ考え方、即ちビスマルク、モルトケの時代ドイツ国家正義の政治的考え、それを背景とをするところの一切のドイツ人世界観、哲学、そういうようなものによつて明治以来日本国民が学校教育その他を通じて指導されて来た。その結果がドイツの第一次大戦及び第二次大戦におけるところの敗北となり、又プロシヤを模倣して、ドイツを手本として今日まで進んで来たところの日本の今次大戦におけるところの惨憺たる敗北の原因であつたと考えるのであります。それは思想的な意味においては最大の私は原因であつたと思うのであります。これが私はどうしても拂拭されない限りは、文部省がそのことをやらない以上は、むしろ国民教育的に惡導するところの行政機関である。このように私は考えているのであります。これは第一次欧州大戦におきまして、そういうプロシヤ人の国家観プロシヤ人の帝主観、プロシヤ人のそういう考え方というものは、連合国側から忌憚なく、殆んど深刻なるところの批判を受けたのであります。同様に日本プロシヤと同様な見解の上に立つて教育その他のことをやつているものでありますから、日本は連合国側に立つているけれども、第二のプロシヤであるといつて非常に非難を受けたのであります。その非難のあつたときに、日本が内省の実を示して、あの専制的な明治憲法を、今日のような民主的な憲法に変えるようなことをいたしておりましたならば、こういうばかげた戦敗をも喫せずに済んだのではなかつたかと思うのであります。当時イギリスの政治学者でありますホツブハウスという人は、自分子供は第一次欧洲大戰におきまして戦死した。自分を死なしたところのものは、このプロシヤの誤まれるこの国家哲学である。このプロシヤ国家哲学をば理論的に批判して、そうしてこれを廃棄するということこそが、一月分の息子の仇殆を討つところの親としての道であるとまで決意いたしまして、それに関するいろいろな国家或いは政治に関する書物を書いているのであります。そうしてイギリスのそうしたあなたと同じようなドイツのヘーゲル哲学を自分の論拠として、そうして国家観を立てておりましたイギリスの政治学者でありましたボザシケのへーゲル的な、ドイツ哲学的な、形而上学的な、国家を神様にしまして、そうしてそれに国王の権力を結び付けているところの国家哲学に対して、痛烈な批判をいたしているのであります。そういう思想的な体系が全的にここに改革され、そうした誤まれるプロシヤ的な政治哲学、国家哲学の見解というものがここに打倒されない限りは、断じて日本民主化というものは行われない。そのような意味におきまして、午前中もあなたと見解を異にいたしたのでありますけれども、明治憲法をいいものとして学生に教えて来たところの憲法先生は、良心あるならば清水澄博士のことく自殺すべきであるが、それをしない人は、これは放逐すべきである。少くとも頭を根本的に改革さすところの文部省教育方針を以てそれに臨む必要があると申上げたのでありますが、不幸にしてあなたとは私は見解の一致を児なかつたのであります。そこであなたは、殊に先般地方行政委員会で行なつたところの国歌に関する御答弁というのは、朝日新聞にも載つておりますが、君が代も奨励すべきである。そうして現在の青少年は非常に道義が頽廃しておるということを非常に言つて、今度は何か昔の教育勅語に代るようなものを作ろうというようなことを御答弁になつておりますが、あなたの先ほどの説明には、歴史的に発展して行かなければならないというところの見解に従つて私は申上げるのでありますが、新らしい青少年に、ここに国民的な個人的なモラルを打ち立てようとしますれば……打ち立てなければならん。我々は、再少年がこの混沌たるところの、光明を失つたところの青年層が、又新らしい光明を見出して欣喜雀躍するような、勇気が湧き起るような思想を持つことを私たちは望むのであります。そのためにはあなたのような、この弁証法的発展によつてこれが行われなければならんという考えからすれば、あなたのような四十年の間官立学校の先生をして、溝少年に今言うところの誤まれるところのドイツ国家哲学、国家観君主観を教え、そうして教育勅語によつて明治憲法によつて、君が代を斉唱さすことによつて、又戦争においては君が代と同一思想に立つところの海行かばみずく屍、山行かば草むす屍、大君の辺にこそ死なめというようなことを歌わして、鼓舞激励さして、そうして光明なく、このデカダン的な心理にまで青年を陥れたものは職業的な教育家である。これはあなた一人じやない。私も又罪を負わなければならんと思いますが、そうした過去の教育に携わつた人たちが、その青年に大地に手をついて、俺たちは間違つたことをしたのだ、俺たちはこの誤まれるところのドイツ哲学を日本人に吹込むことによつて、お前たちをこんなひどい目にしたのだ、日本をこんなにしたのだと、手をついて青少年に謝まるというところの心持、謝まるというところの行為が、それがあつて、その後に新らしい青少年への光明のあるモラルが私は弁証法的に打ち立てられ、発展して行くべきものであると考えるのでありますが、私はこの光明を失なつた、あなたたちのような、このかたによつて、即ち……。
  43. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 吉川さんにちよつと御注意いたしますが、質問をして下さい。
  44. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 いや、もう少しです。即ち教育勅語と、そうしたことによつて誤まられて、光明を失なつたこの青少年の前に手をついて謝まらなければならんという気持をお持ちになつておるかどうかということを一つ答弁願いたいと思います。
  45. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 自分らの世代の者が、今の若い者に対して誠に相済まないという気持は持つております。私は併しこの戦争には初めから反対して来たのであります。若しほかの教育諸君が私と同じ考えを持つていたら、この戦争は或いは起らなかつたと考えております。併しその場合に、こういうことが我々の世代において起つたということは、誠に青少年に対して相済まないと考えております。
  46. 中川以良

    ○中川以良君 議事進行に関して、私は……。
  47. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 質問ですか、それとも今のに関連してですか。
  48. 中川以良

    ○中川以良君 議事進行についてです。私は取消しを願いたいと思います。吉川委員のお説のうちに、大学の今日の教授をつかまえて、自殺すべきである、然らずんば放逐すべきであるということをはつきりおつしやいました。いやしくも今日国会において大学教授に自殺すべきであるというようなことは御放言であろうと存じますので、この点は一つお取消しを願いたい。なお討論ではございませんから、私は今日ここではこれ以上申上げません。
  49. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 私は特に取消す必要は感じておりませんが、私の申したところは、そうした具体的な事実にあるのではないのでありまして、そういう気持を持つべきものである。そういう過程を踏むべきものである。必らずしも……あなたの申したところと違うのでありまして、中川君お聞取り願わなかつたと思うのでありますが、追放するというようなことは、これは軽々しくすべきでないと考える。少くとも頭の切換えを要求するような、何らかの文部省中心としての教育行政大学教授に対してとらるべきであるということが、私の趣旨なのでありますから、どうぞそのようにおとり願いたいと思います。
  50. 羽生三七

    ○羽生三七君 吉川さんの先ほど来の御質問に関して……只今中川さんからも御意見がありましたが、確かに質問としては非常に抽象的な点が多かつたと思いますけれども、私は答弁も非常に不親切だと思うのであります。先ほど吉川氏の指摘しておる点は、過去の教育から新らしい憲法へ移り変るについでの過渡的な経過を明らかにさせようとする点が非常に濃厚なのであります。それに対して文部大臣は、過去のすべてを廃棄するものではない、アウフへーベンするのである。どういうわけでアウフへーベンされておるか、或いは過去の明治憲法から移り変つて憲法なつた、君が代を歌うということが、どういうふうな形でアウフヘーベンされておるのか。従つて質問はああいう形をとらざるを得ないことになるのであります。私は国会の質問は具体的な質問でなければならんということはよく了解しておりますが、今吉川氏が指摘したことは、非常に本質的な点であります。そういう問題が軽々に、本当に簡單に三十秒や一分の答弁で片付けられてしまうのなら、なおこれを追及しようという考えつて来るのは、これはどうも無理のない話でありますが、私は今後御答弁の場合には、納得の行くような御答弁を希望いたします。
  51. 岩間正男

    ○岩間正男君 私も天野文相に教育財政の問題を中心としまして、なおそれに附随した問題について質問を述べようと思うものでありますが、先ず第一に、只今吉川委員の質問との連関におきまして、過去において文部省が出しました国歌並びに国旗掲揚の訓令でありますか、こういうものに対しましては、どれだけの一体拘束力というものを持つのであるか。いつでも文部省の従来のやりかたを見ますと、法的には命令じやないが、実質的にはその訓令というものが現在の職場において、学校におきましては半ば命令的な強制的な力で以て、上からの圧力で、校長とか或いは又視学とか、そういうところで実施されているのが実情だと思うのでありまして、非情に重大な関連を持つと思いますので、その点を明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  52. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 世間には国歌を現に歌つているところがたくさんあります。東京の自由学園とか或いはカソリック関係の学校とか、その他の宗教学校なんかたくさん歌つております。又歌いたいと思う人もたくさんあります。そういう場合はどうか遠慮なく歌つてもらいたい。どこにも遠慮することはないのだ、こういうことを言うのが私の趣意であります。なお私はいろいろな理由からして、これを歌うことのほうが望ましいということを言つたのであつて、それをしないからどうするというような、束縛するとかいうような考えは毛頭持つておりません。
  53. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは文部省の飽くまでも希望であつた、こういうふうに言われるわけでありますか、従つて当然何らの拘束力もない。これを学校におきまして、やるやらないは飽くまで自由である。その点は先ず了承したいと思うのですか、文相の只今の御答弁は、少くとも現在における十分にまだ民主化されていないところの学校、殊に最近におきますところの反動的な一つの情勢の中にある学校の状態をつかんでいないのではないか。文部省が単に希望だと言つても、それが半ば拘束力を持つたような形で行われているのが実情であります。又先ほど来の論議を通して見ましても、現状におきまして、果して国歌や国旗というようなものを奨励するのがどういうような役割を持つか、この点が私は非常に重要だと思うのです。文相はこれに対していろいろ説明されておる。私も文部委員会において、過般この点について質問したのでありますが、文相はこれに対して主観的な判断をされておると思うのです。つまり国旗や国歌につきましては、これは過去おいて非常に軍国主義的なものに利用されて汚れている部面もあるけれども、併し今日においては、我々はそれを再び繰返さないための一つのそれらの形として、いわば反省的な気持でこれを掲げる。こういうことを言われた。併し私が問題にしたいのは、天野文相一個の主観的な考え方がどうあろうということではない。現実の国際情勢の中におきまして、これが如何ように利用され、そうして我我が最も懸念しなければならないのは、再び過去の日本の侵略戦争時代にとられましたところの、あの精神総動員的なものに利用される危險があるのではないか。こういう点を非常に大きく考えているのでありますが、これが若し文相はないとするならば、どのようにしてその保障を一体持つておられるのか。その点が非常に重要だと思いますので、その点先ずお伺いいたします。
  54. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は先ほども申しましたように、歌を歌いたいとか、或いは旗を立てたいとか思つている者が世間に実に多いと思う。そういう人たちに、何の遠慮も要りません、どうかこれは立てたい人は立てなさい、歌いたい人は歌いなさい。なお私はこの旗を立て、歌を歌うことが望ましいと言つているので、ただ何も言わないで、立てても差支えないというようなことを言うことはできない。何らかの形において言うより仕方がない。だから私はそれを希望するという形で言つたのであります。その影響については、人々の見るところが違つてつて、或る人は岩間さんの言うように見るでしよう。けれども日本の大多数の人は、これが日本の青少年の教育に重要で、非常にいい効果を持つと考えるものだと自分は信じております。
  55. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは大多数と言われましたけれども、これは少くとも世論調査とか、科学的な方法がとられたように考えますが、この点は如何ですか。
  56. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 第一ですね、国民全部に投票させて見て、そうしてこれだけの数がある、あれだけの数があるというわけには行かないと思います。国民の総意というのは、ルソーが早くから言つているように、全体意見というものと一般的意思というものの区別があつて、この一般的意思というのは、政治に携わる者の洞察によるほかはない。そういうものを洞察して、一般の資料から、自分の範囲において調べたものから、一般のものからそういうことを洞察してやるより仕方がない。国民全部に投票させて初めて大多数と私が考えたわけではありません。
  57. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは大体文相の推測であつて、それは具体的な調査によつたものではないと確認したいと思います。それからその次に問題になりますのは、希望している人がある、多くそういう人がある。成るほど文相の周囲の人にはそういう人があるのかも知れませんが、その希望は果して助長していいのかどうか、これは先ほどの吉川委員の質問に連関して非常に重要だと思います。或るものにはこれを助長しなければならないでしようが、これは新憲法の建前において、果して過去の国歌や国旗というものは奨励助長していいかどうかということは、恐らく午前、午後の吉川さんの質問戦を通じて私は結論を得たような気持がするのです。こういう点から現状においてそういうものがあるんだから、それに対してただそれを奨励するというのは成り立つかどうか、この点を改めて伺いたい。
  58. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) そういうものがあるから、それだけでやろうというのではなくして、これを、やることが国家のためによいと信ずるから私がやるわけです。
  59. 岩間正男

    ○岩間正男君 その点が天野さんの独断に終るのではないかと我々は考える。そういう主観的な意図によつて、而もいろいろな世界的な疑惑さえ捲き起しかねない問題を軽々と、やつていいのかどうか。而も私のこれから実は進める問題と非常にこの問題は連関して参ります。こういうような国旗、それから国歌、それから修身科復活教育勅語に代るもの、こういうものに二、三カ月文部省が狂奔されておる間に、足下では何が起つておるか、一体文相の任務は何であるか、この点は非常に重要な点であります。この文部省予算、この問題が非常に大きな問題である。果して文相は一体行政官としまして、こういうような予算を獲得する仕事が重要な仕事であるか、或いはこういうふうな国旗、国歌論を戰わしているほうが重要な任務であるかということは、これは答弁の中から伺いたいと思うのでありますが、先ず第一に私の教育財政の面で伺いたいと思いまするのは、大体御承知のようにドツジ・ラインによりまして、非常にこれは性格が変更いたしまして、そうして従来とられておりましたところの義務教育半額国庫負担法、こういうものが殆んどこれは平衡交付金の形で出され、更に最近におきましては、これと連関して第二回のアメリカの教育使節団がやつて参りまして、教育税、そうして地方税的な色彩を持つところの教育税を、新設するというような方向にさへ行つておる。つまり教育財政の傾向としては、ドツジ・ラインによるところの大きなその後の変更があつた。つまり従来も国庫負担的の、半額国庫負担でありましたが、そういうような方向から逆の、これは地方財政負担の方向に性格を大きく転換しておるという点が大きいのであります。こういうところにおきまして、現在平衡交付金の問題とも連関し、更に平衡交付金の支拂い状況の中で還付の問題とか、更に最近の税が非常に徴収しにくい、地方税でありますが……。こういうような問題とか、こういうのに連関しまして、こういう地方財政の欠陥というものか、非常にこれは教員のような、いわば社会的地位が割合に確立されていない弱い部分にしわ寄せされて来るというのが実情だと思うのであります。従つてこれは單に教員の生活費だけの問題じやなくて、この影響するところは教育費全般の問題である。こういうところにあつて、如何ようにして今後教育財政を確立するというような意向、抱負を持つておられるか。この点お伺いしたいと思うのであります。
  60. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) これはこの平衡交付金制度に対しまして、教育費は当然義務教育費の確保の法律案というのが前文相によつて計画されておりまするが、そういうものを是非やりたい。それでなければ、若しそれができないならば、第二次教育使節団の報告にありますような学区の制度、そういうものを研究するとか、或いは場合によつて若しできるならば、従来のような教育費の国庫負担というようにするか、そういう点については相当苦労をいたしておると考えるのであります。今事務当局と協力してそういうことを考究いたしております。
  61. 岩間正男

    ○岩間正男君 標準義務教育費法案の見通しは如何ですか。
  62. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 非常に困難だと思つております。
  63. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、殆んどこれは前々国会から問題になつてつたのでありますが、單にこれは課題として浮び上つただけのものであり、而もそれを仮にとつたとしても、低い線で標準付けたのでは何の意味も持たないのであります。現在の教育財政の要請については多くを言う必要はないのでありますけれども、そういう中でもつと全体の国家財政の中において、どうしてもこの教育費の占める部分というものは、殊にまあ単に教育を従来のように消費だというよう面から見て置けば、従来のようなまる盲腸と言いますが、さしみのつまのような教育財政でも間に合うと思うのでありまするけれども、少くとも使節団も勧告しておりますが、教育一つの投資である、国家的な投資であるということも言つておるし、更にこれ以上もつと生産的に発展させ、日本の現在の情勢から、国情から考えましたならば、生産を大きく復興し、而もその面におけるところの労働力の再生産という面において非常に大きな意味を持つておると思うのでありますが、そういう点から考えるときに、全額国庫負担の要求、而もそれがアメリカのような国情の違う、日本の財政状況というものとはまるで違う、こういうような立場から考えて、アメリカ式の地方負担、或いはこれを個人負担の面を強化するというようなやりかたでは、全然教育の崩壊であるというふうに考えますが、この点もつと基本的に国家財政の中に教育予算というものを打ち込む、そういうような、而もそれを生産と結付けるという面において確立する、こういう点についてはどういうふうに考えておられるか、この点お伺いしたい。
  64. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は只今申しましたように、教育費というものを確保するということにつきましては、今申したような三つの点を目下事務当局において研究してもらつております。
  65. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常に私の質問しておる点については、全く答えになつていないのじやないかと思うのであります。我々はそういう地方の状況がアメリカとは全然違う、然るにアメリカ式な方向で以て教育財政を確立するという方向をとつたならば、日本教育は崩壊しなければならんという点を非常に憂うるものであります。これは全額国庫負担の面で以て、国家財政によるところの強力な支出をする以外には、日本教育を本当に再建をすることはできないと、こういうふうに考えるのであります。もうつ伺つて置きたいのは、さつきの連関で教育税、この教育税というものは、現状におきまして二軍負担、三重負担になりはしないかということであります。地方財政が御承知のように非常に窮乏に瀕しておる。そうして国家から委譲されましたところの仕事が非常に多い。そこへ持つて来て税収が十分でない、平衡交付金も要求額通り出ていない、こういう形で地方財政は諸般の事業、この事業のために追い廻されておるというような形になります。そういうところに持つてつて教育税をかけるという、こういうことになりますと、この教育税は恐らく従来PTAの寄附とか、或いはいろいろの形で出されておつた、それよりももつと私は多くなるのではないか。つまり教育税そのものは、新たなこの財源として二重負担の性格を持つて、大衆のこれは経済状態を非常に大きく締めて来るという面があると思いますが、これは文相はどういうふうな考えを持つておられますか。
  66. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はアメリカの第二次教育使節団の勧告にある学区の制度というものを研究しようと言つておるのです。これを初めからアメリカの言うことだから駄目だということじやなしに、やはり周到に研究して見るということが必要だと思います。私は教育税ということを言いません。そうではなく、現にある税を教育に当てるなり、何なりすることもできると思う。アメリカの学区の制度をやはり直ちに、今質問のかたが教育税を新設するということは即断だと思います。私どもはもつと研究して見ようという考えであります。全額国庫負担ということにつきましては、これは全的によいように申されますけれども、併しこれにも難点がある。第一全額国庫負担ということが、日本の財政上うまく行くかどうかということが一つの点であります。第二の点は、国家で全部を賄つてしまうということは、地方が教育に対して関心が薄くなるという点、日本教育県と言われます最も教育の盛んな長野県では、曾つて全額国庫負担の説があつたときには、自分の県は半額がいいということを主張した。本当にまじめに教育を推進しておる人たちはそういう考えを持つてつたのであります。
  67. 岩間正男

    ○岩間正男君 教育税については目下研究中と言われますから、もつと研究になつてから質問することにいたしまして、全額国庫負担について、これは文相はいつ頃、例えば長野県の例を挙げられましたが、いつ頃の日本経済状況について話されておるのか私はわからないのです。そういうようなことを言つておる余裕があつた時代もあつた。併し現在の日本はどうでありましよう。全額国庫負担の要求というものは、これなしには殆んど教育は崩壊してしまうのです余裕があるときだつたならば、自分たちも幾分そういうものを見て行きたいという考えを持つかも知れませんが、これは六三制の実施によつて明らかに欠点として現われたものは何であるか。六三制が狙つておるところの教育の機会均等、教育の平等を確立するという理想であつたにかかわらず、これが予算価において非常に根本的に発足の当時から欠陥があつたがために、教育の平等というものは完全に崩壊した。全然破れておる。殊に最近におきましては、これはいろいろな予算の不足からしまして大衆負担が強化されております。PTAの寄附というものが莫大なものになつておる。これはいろいろな例がありますけれども大変なことになつております。PTAの一カ月の小学校の父兄の負担、ここに例がございますが、ほかの資料ではありません、夕刊毎日の十月四日の資料によりますと、大体これはいろいろなPTAの寄附とか、学級費、給食費、教育会費、肝油代、旅行積立金、食器積立費、こういうものを合しますというと、大体一カ月で四百九十七円ということになります。これを推計しますと、四百億、五百億というような莫大な負担になつて来ます。これは最近の大衆生活の崩壊においてはこれを拂い得ない。抑い得ないから最近は非常に子供たちか長期欠席をやつている。或いは学校に行かない者が新制中学においては非常に起つている。この事実を文相に知つておられるか。こういう段階におきまして、これを大衆負担において、そうしてこの教育をやつて行くという方向が、日本教育の現状に合つていると考えられるとするならば、これは甚だしい認識不足だと私は思わざるを得ない。最初の目的通り教育の機会均等を確立するために、真にこれは国家の手によつて少くとも中学校くらいまで教育をやつて行く、完全にやつて行く、こういう立場であつたら、これは絶対に全額国庫負担を要請ぜざるを得ないのですが、文相自身が先に立つてこれを言つておられるのは、甚だ情ないと思うのですが、文相は果して現実を見ておられるか。現在の長野県のそういうような姿を見ておられますか。農村におけるところの不況がどういうようなところまで落ちているか。最近の農村窮乏は昭和恐慌期にも匹敵するような農村の恐慌が始まつておる。こういうさなかにおいて長野県人が、長野県の大衆が、多くの人がそれを要求しているということをお考えになつていられますか、この点伺いたい。
  68. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は全額国庫負担というのにもやはりそういう欠点もあるし、又現在の日本経済事情にそれが適当であるかどうか、そういうこともよく研究しなければならんと言つたのであります。私の考えでは、全額国庫負担と言えば国民の出さない金であり、地方が半額負担と言えば、それは国民の出す命であるというようなふうに私にはとれますが、すべてこれ国民の膏血であつて、それをどうして使うかということが問題なんだろうと思つております。
  69. 岩間正男

    ○岩間正男君 一般の俗論なら、それはその通り通ると思うのですが、今の国家財政のいろいろな機構、そういうような面を眺めて行けば、果して教育に出すところの面がないのかどうか。これは現在吉田内閣の政策全般の問題にかかつて来るのですが、その中において教育財政をどれだけ出すか。而も文相が教育は非常に尊重する、二大政策だなどと……、これは首相でありますが、吉田首相が言つている。言つていながら、その裏付はどうか。これは後ほど池田蔵相に伺いますが、画期的な予算を組むとしらじらしく言つていますが、こういう実態が出て出来ればはつきりする。私はこの点に論争しておるだけの時間を持ちませんので次に進みますか、具体的な問題として、七億二千七百万円の義務教育費の過年度分負担、この問題はこれは果してどうなりましたか、衆議院の修正においてもはつきりこの措置がされないで、あのような形で通つて来たということを聞いておるのですが、これはどういうふうに措置される考えか、お伺いします。
  70. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) これはよく大蔵大臣と御相談いたしましたところが、大蔵大臣と地方財政委員会というものと両方でよく相談をされて、適当に処理をして下さるということであります。
  71. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも主管大臣の御答弁としては情なく感ずるのであります。少くとも責任で、こうきめる、こうするのだということをはつきり申して頂きたいのですが、これでは大蔵大臣におんぶしているような答弁で、そこに大蔵大臣見えておりますから、一つ大蔵大臣どういうふうにきまつたか伺います。
  72. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨年末の義務教育関係職員の三千円の年末手当につきまして、私の知る範囲におきましては、法律上これを出さなければならん義務はないと考えております。併し実際面におきましては、それだけ支拂われたのでありますから、今年度の補正予算に平衡交付金より別個に出す考え予算を内定いたしました。然るところ関係方面ではもうこれはすでに済んだ、地方はこれで賄いを付けているというのだから、これは出すべきにあらずという意見があつたのであります。従いまして只今これが処置につきましては、如何にして地方の財源を見ようかというので検討を加えておるのであります。
  73. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはそうすると何ですか、衆議院のほうでこの問題が解決しないで、こちらに回付されたわけなんですか。この問題は少くとも法的にはつきり義務教育費国庫負担法に準じて、或いはそれの精神によつてこれは出されたものだと我々も了承しておりますが、これは当然出すものだと、こういうふうに考えるのでありますが、而もそれをその措置をされないで、衆議院を上げてこつちに回付されたものですか、これは如何ですか。まだ研究中では困る。
  74. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 七億二千七百万円を出さなければならん法律上の義務は私はないと考えております。併し実際においてそれだけ地方の負担になつたのでありますから、できるだけ出すべく努力をいたしたのでありますが、併し結果はそういうふうになりました。従いまして衆議院の予算の議決におきましては出すようになつておりません。
  75. 岩間正男

    ○岩間正男君 法的の点についてはこれは政府側の見解で、我々は必ずしも同調しかねるのでありますが、この点はおくとしまして、政府は昨年の今頃一体どういう約束をされたんですか。地方とどういう約束をして七億二千七百万円を出されたか、今の答弁だというと、非常にこれは責任逃れということになると思うのでありますが、その政治的責任をどうされますか、これを伺いたいと思います。
  76. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 政治的責任とおつしやいますが、大蔵大臣はどういう約束をしたとおつしやるのでありますか。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは政府の責任において、そうして見る、こういうような約束によつて出されたのでしよう。
  78. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 政府の責任においで出しますとは、約束は大蔵大臣いたしておりません。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではどういうこれは了解があつて、約束もしないものを当初の予算の説明、十月の説明を聞きますと、なぜ組まれたか……。
  80. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほど来申しておりますように、出す約束はしておりませんが、地方で出された金でございまするから、予算を一応内定いたしまして、関係方面と折衝したのであります。而して昨年のときにおきましては、政府はできるだけ考慮しよう、出すべく考慮しようと、こういうことは申上げた。それに従いましてできるだけの努力はいたしたのであります。而して今議決を得ました衆議院の補正予算の中には載つておりません。従つて今後どうしようかということは、只今文部大臣のお答えになつたように検討を加えておるのであります。
  81. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも只今のそういう説明では実情に合つていないことは事実です。これははつきり地方の何ですね、責任者が聞いたら、地方財政の責任者、知事とか、市町村長が聞いたら非常に怒るんじやないですか。これはたぶらかしているんじやないか。それは表面に文書になつておるかどうか、私は今この資料を持つておりませんが、併しながらそういう含みで以てこれを遂行されておるところのもの、而も少くとも政府の原案におきまして、予算の第九項目にはつきりこれは組んでおる。それくらいのなまやさしい問題であるならば、政府が原案にそれを組むだけの必要があるかどうか。実はそうしたら日本の大体財政措置というものは非常に気紛れだと、こう私は言わざるを得ない。政府はその必要を認めて、実際は出さざるを得ないということでこれは最初原案に組まれたと、これを了解せざるを得ない。然るにその折衝の過程にいざこざが起きて駄目になつた、駄目になつたので今日においてはその後の巧言をいろいろ用意されて、そうして蔵相の答弁がいろいろ変つておるに過ぎない、嚴とした事実じやありませんか。最初組まれたそのことを甚だ我々は了解に苦しむのでありますが、果してこういうような説明で以て地方の人たちが満足されていると考えておりますか、どうですか。
  82. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今お答えした通りでございまして、一応我々としては出したいと思つてつたのであります。併しそれが出せないことになりましたので、今後どういうふうにして地方の皆さんがたの御希望に副つたらいいかということを検討いたしておるのであります。
  83. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは予算の審議の問題になつたのでありますが、その審議の過程のうちにおいて、そういう政府の措置をはつきり表示することができるかどうか、この点重要でありますから、伺いたいと思います。
  84. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 予算審議の過程におきまして、はつきり申上げ得ることのできるようにいたしたいと考えております。
  85. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題におきましては、文部委員会からこれに対する全会一致の申合せがこの当予算委員会並びに本院議長宛に送付されておる問題であり、更に本委員会におきましても、これはこの意向を委員長から政府に通達された問題だと思いますので、これは我々はあと何時間かに迫りました審議の過程で、是非これは具体的な方法で以て出されることを要求します。そうしてこれが今の蔵相の答弁によりまして、出されなければ、予算審議上非常に差支えがあるという点を我々確認したいと思うのですが、委員長もこの点御確認頂きたい。如何ですか、これは重要なんです。当然これはそうなると思います。
  86. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 文部委員会からこの点について申入があつたことは、この前の委員会で申上げました通りであります。又文部委員長の説明もあつたのです。そこで当委員会としましては、この問題を審議の進行中に十分考慮して審議するということを申合せております。これはその点は確認して置きます。
  87. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の蔵相の答弁で、委員会の審議中にそういうような政府案を示すと、こういうことを言われたのですが、この点是非確認頂きたいと思います。
  88. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 御審議中に示しますとは約束はできませんが、示すことができるように努力をいたしておるのであります。見通しとしては多分できると思います。
  89. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ多分できるという御答弁を我々が確認して行かなくちやならないのですが、多分とか、できるだろうとか、日本語としてはなかなか不便な言葉になつておりますから、確実にできるとおつしやらなければ意味はないと思うのです。如何ですか。
  90. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お約束はできません。
  91. 岩間正男

    ○岩間正男君 だんだん逃げて行つたような恰好になつているのですが、我我は併しこれに対しましては要求します。次に伺いたいのでありますが、級別推定表によるところの措置、四億九千万円、これか地方財政委員会から平衡交付金の中に追加すべきものである。八十三億の要求が八十八億になつたことは聞いておるのでありますけれども、蔵相はこの問題につきまして、当然この主管大臣として責任を持つておられると思うのでありますが、どのように具体的にお果しになりますか、伺います。
  92. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話の通りに八十三億円が八十八億円程度に追加されて来たことは存じております。併しこの義務教育の職員の特別増俸ということにつきましては、よほど愼重に考えなければならん問題だと思います。地方で増俸をきめられたならば、それがすぐその額を国から出さなければならんというわけのものでもないのではないかという気持を持つておるのです。併し結論におきましては、研究いたしたいと思います。
  93. 岩間正男

    ○岩間正男君 これも甚だ頼りない言葉と思うのでありますが、これは地方でそういう要望を出したらすぐにやるというような問題じやなくて、実は何年越し、恐らく三年越しぐらいの問題になつている課題なんです。そうしてこれは文部省と、それから日教組の間におきまして、この問題が殆んど決定せんとなりまして、こういう措置になつた。そうしてこれに対しましては、人事院からもそういう勧告があり、そうしてそれによつてこれは進められている問題なのでありまして、まあ具体的にお伺いしますと、平衡交付金八十八億円と運命を共にすると、こういうことになるのですか、これは如何ですか。
  94. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 八十三億円、八十八億円の問題と運命を共にするかという問題でございますか、これは運命を共にするとか何とかいう問題ではなくて、新たなる数字を設けようとするものでありますから、別個に検討しなければならんと思います。人事院の勧告におきましても、予算の範囲内で私はついておつたと思うのであります。この点御了承願います。又他の識別の給與問題も、これから御審議願うと思いまするが、だんだん差を減らして行こうというのが我々の考え方であるのであります。
  95. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ平衡交付金等が八十八億が仮にこれは駄目になつた場合においても、この問題は別に取上げて考えるという点から確認したいと思うのであります。次に、この教員の給與の問題でありますが、今度の改訂措置を見ますと、教員の場合、四級から九級の場合、二号俸切り下げと、こういうような数字が出ております。単にこれは教員だけでなく、その他病院に勤務しておる、例えば結核病院とか、癩病院とか、そういう所に勤務しておるこの人たちの問題もあるのでありますけれども、これは非常に既得権が剥奪されると、こういう形になると思うのであります。只今の御説明によると、成るだけこの差を減らして行く、そういうような説明でありますけれども、これは教育の特殊性、これについてはすでに中央労働委員会の会長からも政府に対しまして、教員のいろいろな研究或いは生活状況、そういうような面からして、特に教員についてはそういうような別途的な待遇が必要であるということが、これが今日明らかにされておる問題だと思うのでありますが、どうしてこういうように具体的にいろいろ変つておる職種について、政府は統一した同じようなこの賃金の体系をとろうとするのであるか、この点をお伺いしたいと思います。
  96. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 義務教育関係の職員の特別号俸につきましては、検討すると申上げておるのであります。而してその検討の際に、他の公務員につきまして、今の加算の特別号俸を減らすような方向で行つておることを御参考にお考え願いたいということを申上げたのであります。而して我々はこの俸給は、勤務の状況によりまして考えなければならん、こういう考えの下に勤務状況を精査いたしまして、必要に応じて特に加算する必要のない場合におきましては、徐々に減らして行こうという考えで進んでおるのであります。
  97. 岩間正男

    ○岩間正男君 具体的に教員のそういうような特殊的な勤務というもの、そういうものを認められるかどうか、それから既得権についてはこれを尊重する意向があるかどうか、この点をお伺いします。
  98. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほど申上げましたように、小学校義務教育関係職員の特別号俸の問題、特別加算の問題につきましては、検討をしようとしておるのであります。その他の問題につきましては、先ほど申上げた通りであります。
  99. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のこの級別推定表並びにこの二月体切り下げの問題について、文相の意見を質して置きたいと思います。どういう考えを持つていられるか。
  100. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は教員が特別な待遇を受けるということは、これに当然の話たと思つております。殊に今回の聾盲唖の関係、或いはその他看護婦とか、そういう人たちの俸給が常に少なくなつたということは非常に遺憾なことだと思つておりますけれども、併し他のほうも他日そうなつておるのでありますから、文部関係だけの問題じや、ございませんが、自分としては非常に遺憾に思つております。    〔委員長退席、理事羽生三七君委員長席に着く〕
  101. 岩間正男

    ○岩間正男君 級別推定表の四億九千万円についでは、どういうような態度をおとりになりますか。
  102. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 検討中でございます。
  103. 岩間正男

    ○岩間正男君 次に当然起つて来る問題でありますが、地方公務員のベス・アップ並びに年末手当の財源の問題でありますが、これが今日におきましては、百三十万を占めるところの地方公務員と言われる人たちの非常に大きな生活上の問題になつておると思うのであります。どういうふうにしてこれは財源措置をされるお考えであるか、教員に関する限りは文相から御答弁願いたい。なお蔵相にも御答弁願いたい。
  104. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 年末手当の問題につきましては、昨年も半月近く出されておるのであります。特に今年特別に措置しなきやならん問題はないと思います。なお地方の財政め状況につきましては、我々は従来から非常に関心を持つておるのであります。従いまして地方におかれましては、できるだけ歳出を節約して頂くと同時に、できるだけ早い機会に租税収入を確保するように御努力願いたい。こういう考えを持つております。
  105. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はその点については、先ほど申しましたようなベース・アップの九億ですね、それから年末手当もどういうところから出るということを私ははつきりすることはできませんけれども、必ず出るものと信じております。先ほど岩間さんから、蔵相におんぶすると言われましたが、財政のことについては蔵相に御依頼をするよりほかないのであります。
  106. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はおんぶしているというのは、そういう意味で言つたのではないのであります。文部省の中で当然これはどうするか、というのは、これは文部大臣、主管大臣の責任に属することなんです。蔵相の答弁を借りて、そこに任せるというようなそういうおんぶ……、答弁というものはない。こういうことを申したのでありますから、その点誤解のないように願います。それからべース・アップと年末手当ですが、必ず出ると考えている、確信でありますか、これは信念でありますか、どうもさつきのこれは国旗事件と同じですが、信念じや困ります。具体的に一つ……。
  107. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私の見通しでございます。
  108. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は文相に聞えておる。文相は必ず出ると……。
  109. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) それはたびたびそういうことを申して来ますけれども、ただ信念とか言われては困るのです。こういうやはり一種の見通しを以て、そういうことを期待しておるわけであります。
  110. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこれは、年末はもう何日ありますか、銀杏の葉が落ちてからもう半月になりまして、御承知のようにもうひどい酷寒になつておる。こういうときにまだ期待しているという、これは随分悠長なことになるのでありますが、どうなんですか、一体これは文相、蔵相も説明されましたが、節約とか、それから地方税の増徴に待つてこれを処置したい。そういうふうに大蔵省では地方財政に対して見ている。これが結局三十五億しか出していられないで、八十八億の要求を今日まで頑固に拒絶している理由だと思います。これはできるのですか。殊にこの最近の地方税の徴収状況、これは詳しくはこの平衡交付金の問題で、我々はこの質問を後刻十分にやりますけれども、一体できる見通しがあるんですか。節約の問題についても、これは十分に大きな問題になつていると思うのです。こういうのによりてですね、百三十万のこの地方公務員が一体国家公務員なみの年末手当並びにベース・アップの財源を安心してこれを信じていることができると、こうお考えになるか、如何ですか。
  111. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほどお答えした通りでございまして、ベース・アップの問題につきましては、新しいことでございますので、私は昔からの慣例等を考慮に入れまして、義務教育関係職員の分は、ベース・アップは半額程度は負担してはどうかというので実は組んだのでありますが、特にこれを出さなきやならん政府に義務があるわけでもございませんので、一応三十五億円の増加をしたのであります。而して地方団体におかれまして、先ほど申上げたような方法、即ちできるだけの節約をし、できるだけ早く税金をとるように、財政收入を早期に確保しで、足りないところは地方借入金等によつてつて行けばできるのではないかと考えておるのであります。見通しとしてはできると思います。
  112. 岩間正男

    ○岩間正男君 只今の九億の問題でありますが、これも大分本会縫における蔵相の答弁と変つて参りましたな。本会議においてはベース・アップ並びにこの過年度負担分は、これを三十五億の平衡交付金に入れておるつもりである。こういうようなことを答弁されたと思いますが、今日の答弁では入れたいと思うけれども、これはどうなるかわからない。これは重大です。これはどうしてそういうような変化が起つたんですか、伺います。
  113. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 当初予算を組みますときには、成るべく地方のほうに財政の許す限り上げたいというので進んでおつたのであります。併し九億円とか、七億円では足りませんので、そうして三十五億にいたしたのであります。我々は地方の歳出増にできるだけマッチするような考えで、アイデアといたしましては、これは義務教育費の関係は、昔から或る程度こちらは負担しておつたのであります。そういうものも含めるつもりで言つておるのであります。
  114. 岩間正男

    ○岩間正男君 九億で足りないから三十五億というと、三十五億全部これは教育費にもらえるというわけでございますか。
  115. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 平衡交付金というものは、私が何に使えということの指示ができないととは御存じの通りであります。従つて地方におかれましては、適当にこれをお使いになるでありましようが、我々としては義務教育関係職員の給與が半月分出ること、又ベース・アップもせられることを期待しておるのであります。
  116. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう答弁で、一体今急場に追い込まれておる教員並びに地方公務員が満足されるとお考えになりますか。大体厚生省、農林省関係の今度の平衡交付金の中で要る額が一体どれくらい要ると蔵相はお考えであるのか、紙屑籠じやあるまいし、何でもかんでも入れて、過年度負担もそれに入つておるはずだ、成るほど全体の額は三十五億ですから説明には都合がよい。今はベース・アップの九億も入つておるはずだ、これは実際どういうことになりますか、そういう要求を分けて見れば……、今の説明は本会議でされたわけです。併し今日では全部これは変つておるですな、それから平衡交付金の性格も、そうだということは本会議では言わないし、そうして平衡交付金三十五億のうちに入つておるはずだ、これは欺瞞することだ、人を……。いろいろの要求をそこで説明しておつて、それ方でまるでこの借金取りに対して言訳をするような形になつておりますけれども、私は蔵相のあの答弁は欺瞞であるか、実はその後岡野国務相の出席を願いまして、この問題について文部委員会において再三質問したのでありますけれども、それによれば、この平衡交付金というものは紐付きじやないから、あれは入つていない、地財委の委員長もそういうことを言つております。そういうふうになりますと、最初から蔵相はそういう事態をいろいろと考えながら、なお且つ紙を付けることのできないどころの七億とか或いは九億をその中に入れておるのだ、いわゆる二重答弁をやつておることになるのでありますが、意図はどうか知らぬが、欺瞞する気持があつたかどうか知らぬが、結果においてはそう思われますが、どうでありますか。
  117. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 財政演説或いは本会議での答弁、又ここでの答弁を総合してお考え願いたいと思うのであります。私は何も欺瞞はいたしておりません。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 閣内の意見が非常に不統一あるということは事実で、しばしば我々の指摘した通り、国務大臣としての岡野国務大臣の答弁と、国務大臣としての池田大蔵大臣の答弁が食違つておる。平衡交付金については、この平衡交付金三千五億の中には今言つたようなものが入つておると考える。一方は入つていないのだという見解をはつきり出しておる。この点の調整ほ我々はこれを早急にすべきである、こういうことを要請したのでありますが、これはどういうふうになつておるのですか、まだ食違い遅いがそのまま残されておると思うのですが、どうですか、どつちを信ずればよいのか。
  119. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 食違つていないと思います。法律上は入つていない。で我々の気持としては入れたいので努力した、こういうことであるのであります。財政演説につきましても、地方公務員の問題につきましては、その一部にも当てられるだろうということを言ておるのであります。
  120. 岩間正男

    ○岩間正男君 気持だけでは政治はできません。気持の裏付けの具体的な措置を我々は欲している。そういう点をはつきり総合して判断すると言うが、これは大衆が判断するでしよう。はつきり結論が出ている問題であります。とにかくこれについては文相に伺いますけれども、これは年の瀬を控えているのでありまして、悠長なことは言つていられないのでありますが、もつと具体的にどういうふうな措置をとられるのか、この点をもう一遍伺いたいのであります。
  121. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 初めから大蔵大臣がこの中に自分は入れた、入つているつもりだ、こういうふうにおつしやつておるのです。又元の予算にはそれがはつきり出ているのです。大蔵大臣はできるだけどういう処置かにおいて、このことが成立するようにいろいろ御計画になつていると思うのです。もう私は大蔵大臣が、先ほども自分らがそれがはつきり答弁できるようにする考えだと言うのでありますから、そういうように努めると言うのでありますから、それでいいと思います。自分は大蔵大臣を信頼しております。
  122. 岩間正男

    ○岩間正男君 蔵相に伺いますが、これはやつぱり平衡交付金は、殊に七億二千七百万円の場合は性格が非常に違うものだと思うのですが、別建でこれを処理されるというような考えは持つておられますか。平衡交付金の中にやはり入れてしまつている。そういうふうな説明だけで逃げようと考えておられるのか、ちよつと承わりたい。
  123. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 過年度分のものを平衡交付金に入れるという考え方はございません。従いまして内定した場合におきましても、七億二千七百万円は別個に計上いたしておつたのであります。
  124. 岩間正男

    ○岩間正男君 本会議の答弁と食違いありと考えざるを得ません。これに入つている、これは速記録を御覧になつてお調べになつて欲しいと思います。まあその点は言葉尻みたいになりますからやめますが、要するに今の問題は、平衡交付金の地財委からの要求がどうなるかという問題と大きく関連せざるを得ない。大蔵省の説明の節約とか、税の徴収とかいうようなことは、これは現実には望み得ない。現実に望み得ないことを以てこれを処理するというような方法では、いま年末を控えている公務員には役に立たない、こういうふうに我々は考えておるのであります。それからもう一つ伺いたいのですが、認定講習の旅費ですが、これについて三分の一くらいの措置をされたのですが、これは現在はどのくらいの措置で間に合うというふうにお考えですか。
  125. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 多うければ多いほど結構だとは思いますけれども、やはり今の日本の財政事情では、私は三分の一も止むを得ないのではないかと考えております。
  126. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは少くとも認定講習の中で、これで問題を起した教員の要求を充たすことはできない実情にあろうと思います。その次なおこれは伺つて置きたいのでありますが、非常に重要な関連を持つ問題としまして、災害復旧費と公共事業費の問題でありますが、これは最初に立てた文部省の案が全く問題にならない、情ない姿にこれは切捨てられたと思うのでありますが、これはどのようにして最初の要求を確保実現するために処置されますか、文相に伺いたいのであります。
  127. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 岩間さんのように、また今度通常国会に出るものですから、それを今やりかたなり、何なりを全部ここで言え、そう言わなくても、私もこの予算については責任を感じておるものなんです。だからして必ずそういうことができるように、今いろいろな計画をいたしておるわけであります。
  128. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはまあその点については我々もわかつておるのでありますけれども、非常に今までの文相の説明と食違いがあるから、そのことを我我は指摘しておるのであります。例えば公共事業費の問題でありますが、これはその前に来年度の公共事業費の中においても六三制の建築の予算の問題も、これは大体昨日の蔵相の説明によりますと、文部省の原案通り大体これは内定しておるというお話でありましたが、この点おわかりだろうと思いますが、どの程度であるか、これを先ず承わりたい。
  129. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 来年度の公共事業費の金額は申上げておりません。而してこれをどういうふうに分けるかは今後の問題でございます。分けかたにつきましては、関係各省と相談してきめなければならんのであります。六三制のほうに四十五億出すか出さないかはわかりませんが、私としては成るべく四十五億の六三制は確保したいという気持で進んでおります。何分この分けかたにつきましては、安定本部、農林省或いは建設省その他の関係各省と協議の上きめるべき問題だと思うのであります。
  130. 岩間正男

    ○岩間正男君 全体の枠がきめられて、それとの連関で、我々が関和したところによりますと、公共事業費の六三制は三十五億の枠だということを聞いておるのであります。そういうことになりますと、文相が先ほど説明されたのでありますけれども、少くとも現状においては、これは来年、それから今年の補正、これを通じて六十三億ぐらい必要でおる。而も来年度は最初の予算折衝に当つて四十五億出そう、従つて補正においては十八億とりたい。ところがそれに対しまして災害が起つたのも、そこで一応六三制の補正についてはこれを今年の補正においては諦め、そして災害復旧のために全力を盡したい。こういうふうに文部委員会において説明されたと思う。然るに今の災害復旧費が誠に情ない姿となり、そして最初文部省考えておつた六三制の補正の十八億は全部駄目になり、そして来年度の四十五億が三十五億という形にたるならば、とても最初立てられた計画、そして現実的な要求を充すことができない。こういうふうに考えるのでありますが、この点如何ですか。
  131. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 六三制の三十六億というのはどこから出たのかわかりませんが、我々はそういうことを一度も考えたことがございません。こういう問題をここに持つて来られて議論しても……、これは来年度の予算がまだきまつていなく、予算の枠がきまつてから後に使途を考えるべきで、今ここで議論しても駄目だと思いますが、我々の気持は、六三制の四十五億は是非とも確保したいというので進んでおります。而して今年度の災害復旧の分が落ちておるということは御承知通りであります。私はこれまで本会議その他で申上げましたように、文教予算につきましては、できるだけのことはやろうとしております。従いまして我が党で考えておりました私立学校に対する教育金庫は、金庫は作りませんが、十億程度のものを一般会計から特別に来年度の文部予算に附けようといたしておるのであります。  こうやつて参りますと、補正予算で落ちました災害復旧の四千万円程度は、来年度の文部省予算め切盛りをするときに十分考えられると思うのであります。今懸案になつております私立学校に対しまする教育金庫、金庫は作りませんが、実質的に十億ぐらいはそのほうにやりたいと今予算を編成中であるのであります。
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は来年度の予算を今年度のやはり補正との連関で伺つておるのであります。三十五億につきましては、これはそういう事実がないと言われておるのでありますが、我々はそういうことについて聞いたのであります。今まで関知した範囲内で申しておるのであります。そこで私伺いたいのでありますが、過般の蔵相の参議院の本会議の答弁によりまするというと、教育費については来年度は画期的な組みふたをすると、こう答弁されたのでありますけれども、これは少くとも根拠があつて答弁されたと思います。画期的にということは、日本語では相当重要な言葉になつておる。どれだけ画期的なんだか、これは大体アウト・ラインでも示してもらいたいと思います。
  133. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今暫くお待ちを願います。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは検討して見れば明らかなのでありますが、大体どれくらい……、それならパーセンテージにして五倍くらい多くなるのですか。画期的というのですから、我々はそういうふうに考えるのですが。どのくらい多くなるのですか。
  135. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) パーセンテージの問題ではございません、考え方の問題で画期的と言つておるのであります。
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 蔵相もいつの間にか観念的になつて来たということを私は今確めた次第であります。考え方の問題じやございません。そうじやない、日本の現実が考え方によつて変るならばこんな苦労はしておりません。問題はそうじやない。予算がとれない。教育の崩壊のいろいろの事情もこれは全部やはり予算にある。組織の問題、物の問題、それだけとは言いませんけれども、その面が非常に大きい。教員の給與の問題、六三制の校舎を十分建てる問題、教育内容をよくする問題、研究費を十分に多くする問題、又アルバイト学生を救済する問題、これは全部予算にかかつておる。この問題を解決したいで考え方の問題だという、だから日の丸を立てる。だから教育勅語みたいなものを作ればいい、こういうことに落ちたならば、これは先程の吉川委員の質問ではございませんけれども、全く観念的なこれは文部省の行政と言わなければならない。この観念的な考えこそが日本教育を今日まで駄目にして来たのであります。無気力にして来たのでありますりこう考えるわけです。だから教育を本当に再建するならば、少くとも教育行政にタッチしておる政治、教育を政治として考えるならば、予算を確立するというところに大きな仕事、行政官のこれは殆んど全部の仕事の重点がそこにかけられなくちやならんと私は言わなければならないと思います。只今の蔵相の説明によりますると、何。パーセントの問題じやない。少くとも日本言葉で一応画期的という言葉は、二倍か、三倍か、五倍、このくらいに変つてこそ初めて画期的と言うことができる。然るに我々の探知した範囲内におきましては問題にならない。だからパーセンテージの問題じやない、考え方の問題である。こういうことは許されません。こういうことは欺瞞である、こういうことじや駄目。我々はもつと具体的な政治をやつてもらいたいと思うのであります。それで天野文相にお尋ねしたいのでありますが、どうも蔵相の今のお考えがどつちから、天野文相から蔵相に移つたのか、蔵相から天野文相に移つたのかわからないのでありますけれども、そういう形にたつておる。大体今申上げましたところのこの一つ一つの問題であります。去年の尻拭いさえもできていないという状況であります。そうしてあらゆる予算におきまして、最初文部省が掲げた予算というものは殆んどとれていない。こういう重大な面をやることこそが文部省の任務であるというふうに考えまして、而も従来の文部省の性格、いわゆるあの太平洋戦争時代におきまして、国民精神総動員総司令部という性格を持つておりましたところの文部省の性格は、少くとも昨年度文部省設置法案が国会を通過したとたんにおきまして、性格は大きく変更せられておるわけなんです。つまりこういう観念的な精神指導をしちやいかん。逆にこの予算面とか、いろいろな質の面とか、教員の待遇改善の面とか、こういうふうな面において調査をし、これに対して適切なる助言をしたり、そういうことをするのが、行政府としての文部省の任務ということがはつきり規定せられておるのであります。然るに今の重要な予算の獲得の場合におきましては、全くこれは何にもなされていない、何にもなされていないと言つては失礼であるかも知れません。成るほどこれは天野文相の今まで苦労されたことはわかるのであります。それが独自の堂々たる文教財政を確立するという一つの信念によつてそれを貫いて行くならばいざ知らず、すべては私は財政のことはわからない、大蔵大臣に任せるのだというようなおんぶした行き方でこれは進めておられる。而も何に熱中されておるかというと、国旗、国歌の問題であります。この国旗、御歌の問題は非常に先ほどから問題にたつておる。こういうことでは私は日本教育政策というのは全然これは変つていない、こういうことを言わざるを得ないのでありますけれども、文相はこういうような精神総動員まがいの、そうして世界からもこの体制については疑われかねないところの仕事をやめて、はつきりむしろこの予算確立のために努力すべきであると考えますが、この点文相如何ですか。
  137. 羽生三七

    ○理事(羽生三七君) 岩間君にちよつとお諮りしますが、この文相の答弁のあとで、衆議院の文部委員会で文相の要求があるのでありますが、この答弁が済んだ後は、文部関係は衆議院に行つていいですか
  138. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう少し伺いたいのですが……。(「もういいだろう、飽きたよ」と呼ぶ者あり)
  139. 羽生三七

    ○理事(羽生三七君) あとに継続して頂いても結構なんですが……(「進行」「もう飽きた」と呼ぶ者あり)
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちよつと飽きたという言葉が今與党関係からあつたのですが、これはどういうことになるのですか。飽きたというのは……。(「いや、それはいいよ」「あなた個人の問題で」と呼ぶ者あり)
  141. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は決して予算というものを粗末にしているわけではなくして、自分としては予算のためには相当な骨を折つておるつもりでございます。
  142. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 岩間君の御議論は昭和二十六年度の教育費のようでございますが、これはいずれ御審議を願うことになつておりまするから、そのときに一つ私、或いは文部大臣か、殊に文部大臣が如何に予算獲得について努力されたかということははつきりわかると思います。今暫らくお待ちを願います、
  143. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは二十六年度にもつともつとこれは細かに聞かなくちやならないのでありますが、努力されたことは、これは蔵相はわかつておるのですが、それを我々に具体的に出されつあるかという問題であります。それとも又それをどんなに努力されても、それをはね返しているのじや問題にならないと思います。大蔵大臣、これは二十六年度を見ればわかりますよ、はつきり……。隠すことはできない。いずくんぞ隠されんやですから、これははつきりしますよ、そんなことはですね。我々は大体画期的というようなことにはたらんということを考えています。
  144. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 二十六年度の予算審議のときにお譲り願いたいと思います。(「名答弁」と呼ぶ者あり)
  145. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは無論そういうわけなんだが、連関しておる面について私は言つているのであります。(「下らん下らん」と呼ぶ者あり)そこで私は(「提灯持ちはよせよ」「何が提灯持ちだい」と呼ぶ者あり)私は文相にお尋ねいたしたいことは……。(「ばか野郎」「どつちだ」「ばか野郎とは何だ」「提灯持ちとは誰が提灯持つたか」と呼ぶ者あり)委員長、静粛に願います。(「提灯持ちとは何だい」「提灯持ちじやないか」「そういうお前は何だ」「国会議員だ」「ばか野郎」「議場だよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔理事羽生三七君退席、委員長着席〕
  146. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 御静粛に願います。(「権威を持てよ」「提灯持ちはお前だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  147. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 御静粛に願います。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 そこで私の質問を続ける次第でありますが、この精神総動員的な性格、この面は切り捨てなくちやならない、こういうように考えるのでありますが、例えば国旗とか、国歌の問題、こういうものに対して、希望にもせよですよ、それが実際は半強制力を持つようなものを出すということが、一体文部省の設置法の精神から考えて一体正しいとお考えになつておるかどうか、この点文相の御答弁を願つて置きます。
  149. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は速記録を今調べることができないが、過日文部委員会で以て、岩間さんからしつかりした精神を以て指導せにやいかんということを深く承わつたように存じております。いずれにしても自分にやはりしつかりした考えを以て行かにやならないと岩間さんからはそういうお考えになるのかも知れませんが、私はこれをよいと信じてやつているわけでございます。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 無論それはしつかりした信念を以て行がにやならないのでありますが、その信念というのが今言つた観念的なことを指しているのじやなくて、むしろ行政官としては、それを今言いました予算を確立するというような、そういう組織を確立するとか、そういう面において大いに努力すべきである。少くとも政治家のかけらであるならば、それをやるべきじやないかと我々は考えている。そういう点について申上げたのです。それをですよ。現実から離れた、一つの相対的と申しますかね、……から見た日本の現状において、而も疑義を持たれるような点についてのどういうような努力が一体今の文部省にふさわしいか、どうかということを私は伺つているのであります。
  151. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) それでは、ちよつとお諮りいたしますが、文部大臣に対する質問はまだ残つておりますけれども、衆議院の文部委員会のほうから、先ほどから再三是非出席してもらいたいという御要求でございますから、暫らく文部大臣に衆議院のほうへ行つてもらうことにいたしまして、大蔵大臣に対する御質問をお願いすることにいたします。
  152. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 大蔵大臣に二、三お尋ねいたしたいと思いまするが、昨日非常に会期が短いのに午前中理事会を開くことになりまして、午前中半日休んだのでありますけれども、これは二十六年度の予算の大綱を示してもらいたいという木村委員の要求に対して、大蔵大臣が答弁を拒否なさつたために、こういうことになつたのでありますか、然るに大蔵大臣は午後になりますと、午後のこの委員会の壁頭に原稿もなしにすらすらと梗概を述べられたのでありますから、私は午前中にやつて頂ければ、午前の会議が続けられたと思うのであります。従いまして私は昨日の午前の空白はこれは大蔵大臣の責任とすべきものであつて、我々委員の責任ではないと考えておるのでございます。で、私は会期も短いことでありますので、昨日も非常に時間をとらぬように注意してやつたのでありますが、今日も又そのつもりでいたします。先ず第一にお尋ねいたしたいのは、この補正予算が十五カ月予算だということを銘打つておられますから、私はこの席で改めてお尋ねするまでもないと思いますけれども、このあと補正予算は我々は出なしのだろうと思つておりますが、年度内に奥に補正予算をお出しになるようなひとがあるかどうかという点を一点、先ず大蔵大臣にお尋ねいたします。
  153. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 年度内におきましては、補正予算は出さない考えで進んでおります。
  154. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私は昨日来安本長官或いは通産大臣に基礎物資の関係とか、或いは輸入の関係をお尋ねしたのでありますけれども、それというのは、朝鮮事件以来の日本経済の変動が、実際に衣料にしましても、その他のものにしましても、急激な値上りがあつて、大衆の生活を非常に圧迫しておるということからして、私は勤労大衆の生活に対する影響を考えますので、いろいろ御質問したのでありますが、ついては私は大蔵大臣に一つお尋ねしたいのは、酒が十二月一日から安くなるので、一般は非常に期待しておつたわけでありますが、然るに米だ安い酒が買えない状況にあるように思うのでありますが、これは物価庁の告示が出ないためだと聞いておりますけれども、これはどういう関係から来でおるか御説明願いたいと思います。
  155. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 十月一日から税金は下げておるのであります。何分にも今の小売業者のところには、前の高い税金の分があると考えておるのであります。従いまして、そこの調整は暫らくの間は前の価格でやつておるということにしたのではないかと思つておりますが、ちよつと資料がございませんので、主税局長を呼びましてお答えいたしたいと思います。
  156. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 只今の御質問に対する答弁はあとから主税局長がいたすことにいたします。
  157. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 ではこの問題を少しあとに廻しまして、それでは只今問題になつておりますところの、給與ベースについてでありますが、十二月末現在の一般公務員の給與ベースは、総人員が何人で正確なことは勿論わかりますまいと思いますが、推定幾らになるか、先ずお尋ねしたいと思います。
  158. 河野一之

    政府委員河野一之君) 只今書類を持つて参りませんでしたので、後ほど持つて参りまして、詳しく申上げますが、大体政府職員の総数は百七十万人程度でございます。それから十二月末における平均の給與水準は六千八百八十円ぐらいでございます。
  159. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 それでは一月以降はどういうふうになりますか。
  160. 河野一之

    政府委員河野一之君) 一月以降は平均七千九百八十円程度になると思います。
  161. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 それでは次にお尋ねしますが、日本専売公社或いは日本鉄道公社、復興金融公庫、国民金融公庫、住宅金融公庫、それから商船管理委員会の陸員と船員と一つ委員会があるようですが……。それから持株整理委員会、閉鎖機関の整理委員会、証券処理調整協議会、こういう何がありますか、これの職員の数と、給與ベースの十二月、それから一月以降と、こういうふうに分けてお答え願いたい。
  162. 河野一之

    政府委員河野一之君) 国鉄の職員は全体で十二月末で四十九万八千、約五十万であります。それから専売は約三万八千人程度であります。その他の公社公団関係を入れまして、約九万人でございます。給與の水準は、これはいろいろ違いまして、大体鉄道職員につきましては、八千二百円程度に一月からなります。それから専売職員につきましては、これより多少低く、大体七千九百円程度、それからいろいろ各種の閉鎖機関とか、或いは持株とか、こういうところは、現在一万五千円程度の平均給與ベースになつております。
  163. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 只今のところはわかりましたが、一打以降になりましたら、これらの公団関係、つまり委員会のほうはどういうふうになりますか。
  164. 河野一之

    政府委員河野一之君) 公団は御承知通り大体現在の給與水準で一万円少し欠けていると思いますが、これに対して公団手当というのが二割現在付いているわけです。明年一月以降多少増給いたす予定でありますが、それに伴いまして、従来一般公務員との間に相当の差がございますので、公団手当一割を一割に減じたい。併し絶対額は殖えると存じます。閉鎖機関その他の分につきましては、これは先ほども申しましたように、一般職員よりも相当高い給與水準でありまするので、これを一般公務員並みに上げる必要があるかどうかという点につきましては、相当検討を要すると考えております。目下研究中でございます。
  165. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 この委員会に出ました淺井人事院総裁は、高いところには高いところ並みの、それぞれの歴史的な理由や勤務上の條件もあるので、高いからそのまま上げないというような考え方は間違つているということを言つておられたのでありますが、大蔵大臣はこれに対して人事院総裁と同じようなお考えをお持ちですか。又別個なお考えをお持ちですか、ちよつとお伺いします。
  166. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 人事院の総裁のお言葉は、はつきり私はわかりませんが、私の気持としては、今の公団の関係一般職員よりも相当高くしておつたのであります。その割合でずつと又高くして行つたら如何なものかという気持でおるのであります。
  167. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そうしますと、閉鎖機関関係は今御考慮中だというふうに主計局長お答えになつたように思いますが、その通りでございますか。閉鎖機関関係の昇給はどうなつて行くかということをお伺いしているのです。
  168. 河野一之

    政府委員河野一之君) よく御存じのように、閉鎖機関とか、或いは持株整理委員会とか、こういうようなところは一般の公務員とは多少違つております。勿論一般職ではございませんし、それから特別職でもないわけでございます。公務員法の適用を受けないものであります。従つて一般政府の公務員とは違う。併し性質では非常に似通つております。又これに関する予算も、政府の関係機関として予算を提出しておる非常に中間的な色彩を持つておるのでありますが、これの給與につきましては、閉鎖機関の中から当該委員会の委員長がいろいろな内部規定として定めておるわけであります。従いまして、一般の政府職員の昇給の基準等とは相当変つておるものと考えております。
  169. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 変つておることはわかりますが、今度一般公務員が昇給しますときに、これらの職員は昇給があるのか、ないのかということを端的にお伺いします。時間がありませんから……。
  170. 河野一之

    政府委員河野一之君) 昇給と申される意味は、給與の改訂であろうと思いますが、この点につきましては、御承知のように今回の政府関係機関の予算に給與改訂の予算を出しておりません。これを一般の政府職員並みに扱つて給與改訂をいたすのかどうかということにつきましては、先ほど申上げましたように、相当給與水準が商いのでありまして、十分に検討の余地があるものと考えております。
  171. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 検討の余地があると言つておられますが、そうして又一般公務員と性質が通うということもわかりますけれども、政府の予算のほうから賃金が支拂われることにおいては変りないと思うのでありますが、どうも主計局長の今のお話ですと、私はベース・アップの意思がないのじやないかというふうに聞き取れるのですけれども、その点はどうですか。
  172. 河野一之

    政府委員河野一之君) 率直に申上げますと、只今のところそういうことを考えておりません。
  173. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 それでは正確に申しまして、今回のベース・アップに公団関係その他でベース・アップをする意思を持たず、且つ予算に政府が盛り込んでおらないのは、どの機関とどの機関だということをお示し願いたいと思います。
  174. 河野一之

    政府委員河野一之君) 持株整理委員会、証券取引調整委員会、閉鎖機関整理委員会、こういうようなところ、或いは公庫、金融金庫等、そういうような、むしろ民間団体に非常に近いというようなものにつきましては、こういうような機関については、相当給與水準が高いのであります。尺今のところ、まあ一般の政府職員が民間に鞘寄せをするという意味の調整は、只今のところ考えておらないのであります。
  175. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 公団関係はどういうことになつておりますか。
  176. 河野一之

    政府委員河野一之君) 公団につきましては、これは一般の政府職員のように同じく上げるわけには参らないのでありますが、特殊の公団手当……、先ほど申上げました公団手当が付いておりますので、一方或る程度まで俸給改訂もありますが、公団手当を二割を一割にするということで、多少の調整はいたすつもりであります。
  177. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そうしますと、この公団関係については、補正予算については同じように在来の予算の中でやり繰りすると、こういうことになるのですか。
  178. 河野一之

    政府委員河野一之君) これは御承知のように公団は今年末を以ちまして、大体終了閉鎖するわけでありまして、人件費の関係、人の整理がございまして、人件費の相当余裕がございますので、それを使用すればいいわけでありますが、あえて追加予算を出さなくても処理できると、こう考えております。
  179. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そうしますと、公団廃止の時期というのは、大体どのくらいのところにお見込みでございますか。
  180. 河野一之

    政府委員河野一之君) 只今のところ、今年度末を以て全公団は解散をいたしまして、明年度は清算に入ると……、勿論すでに鉱工品公団、貿易公団或いは肥料公団等、すでに清算の過程に入つておるものもございますが、幾つておる公団におきましても、今年度末を以て一応業務を終了することにいたしております。
  181. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 下條君、ちよつとお諮りいたしますが、先程の酒の税の引下げの問題につきまして、主税局長が答弁したいと申しますが……。
  182. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私、この問題はこれで結構です。
  183. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 酒の価格につきましては、酒税の引下げに関連いたしまして、物価庁で新らしい公定価格をもう作りまして、目下関係方面、と折衝中で、近くこれは出ると思いますが、それまでにおきましても、政府といたしましては、すでに減税の適用を受けました種類のものについては、税額は相当低いものといたしまして、現に実行されておるわけでございます。減税の措置を受けないものにつきましては、若干余裕期間を付けまして、手持ちのものを捌く必要がありまして、そのほうは最初から暫らく余裕期場間を設けるつもりで、ございましたが、公定価格が少し遅れましたので……、そのようになつております。
  184. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 只今の主税局長のお話でわかつたのでありますが、一体先ほどから申しますように、一般大衆は油の値の安くなるものを非常に待望しておつたのに、未だに下つて来ないという現状でありますが、一体物価庁の告示というのは、只今折衝中だということでございましたが、私は殊に税制改革のときに、すでにこれは関係方面の折衝というものは済んでおるだろうというふうに解釈するのですが、一体どういうふうになつておるのですか。少し間があり過ぎるように思いますが。
  185. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 大体におきまして、この税を高くしただけ下げるということにつきましては、問題はないのでございますが、若干のマージン等の端数につきまして、少し端数程度の問題でございますが、問題がありましてそのほうの話を付けるのが少し遅れましたために、今申しましたようなことになつておるのでございます。これはもう大体きまりまして、近く告示ができることになつております。
  186. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私は税のことは余り詳しくないのでありますけれども、お尋ねしたいのは、今まで大体酒の税金というのはどこで納めておるのですか。最終は消費者の負担でありますが、今まで納めておつたのはどこであつたのか。そうしてどういう方法で徴税しておつたか、御説明を願います。
  187. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 酒の税には、今の税率は、基本税と加算税と両建で徴收いたしておりますが、大部分は基本税でありますが、加算税では指定販売所のほうで出すときに加算する税を設けております。基本税は酒の製造業者が酒の庫出しの際に納税するわけであります。加算税のほうは、各指定卸売業者というものがありまして、指定卸売業者自分販売所から庫出しする際に税金を納めると、このようになつております。
  188. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そうしますと、すでに税金を納めたもので、そうして今後新らしい物価庁の告示がありまして、安く売るものに対しましては、税金の戻しが行われるだろうと思うのでありますが、そういう措置はどういうふうになるのか、お伺いいたします。
  189. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 製造場にあるものにつきましては、まだ課税しておりませんので、税法施行後に出るものにつきましては、新税法でそれぞれ税額を引下げて行く、それから指定卸売業者の倉庫にございますものも、加算税はまだ納めておりませんので、これはその後に出るものにつきましては、新税率でそれぞれ徴收されて行く、こういうことになります。恐らく戻税の問題かと思いますが、この点につきましては、このような方法にいたしております。一般の小売業者或いは普通の卸売業者或いは料理店、飲食店等が手持ちしておりまするものにつきまして、直接そういう手持ちしている人に対して、税金が下つたというように、交付金等を寄越して、税金相当額を交付するというような方法は今回はとつておりません。従いまして政府としましては、先ほども申上げましたように、公定価格の改訂におきましては、小売業者の手持するもの等につきましては、一定期間余裕期間を置きまして、その間は損しない価格で売捌くことを認めるのでありますが、それにもかかわらず処理できないものにつきましては、これは元の製造場なり、或いはさつき申しました指定卸売業者の指定販売所、ここに戻入れしました場合におきましては、その戻入れしました酒に対する税額、前に納めた税額を今後新らしく庫出しする場合の税額から差引いて納めることができる、まあこういう方法を講ずることにいたしたのでございます。これは酒だけじやございません。物品税につきましても、同様な規定があるわけでございますが、そのような方法によりまして、その間の調整を図ろうというようなことにいたしておるのでございます。小売業者、小売店等の手持品を調べまして、直接還付するというようなことは、これはなかなか技術的にもむずかしい問題がございますので、かような方法はとらないことにいた次第であります。
  190. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 大変小売業者や、それから卸業者が迷惑しないように、この税の引下げのために損しないように、周到な御配慮をなさることは結構でありますが、一面又私はさつきから指摘しますように、この期間、大衆は十二月一日から安い酒が買えると思つてつたのが、買えなかつたという点が生じておることを指摘したいと思うのであります。次に私は一つお尋ねしたいのですが、これはもう大蔵大臣たびたび衆議院でも参議院でも、大蔵委員会等で問題になつたそうでありますから、又請願も出ているのでありますから、御承知と思うのでありますが、絹、人絹の税金の問題が丁度この酒の問題の扱い方と全く揆を一にしておると思います。私は一々ここで当時の事情の説明なんかしなくても、主計局長も大蔵大臣もよく御承知だろうと思うので、私は時間の関係から、そういう説明は御承知の問題と考えますので、一切省略いたしますが、どうして一体絹、人絹の場合は、こういう今酒に対しておとりになるような親切な措置をおとり下さらなかつたかということをお尋ねしたいのであります。でこの問題については、聞くところによりますと、通産当局としましては、やはり大蔵省に対して、今回の酒に対しておとりになつておられるような措置を要求しておつたということも聞いておるのでございますが、それはとにかくとしまして、とにかくこのために全国のこういう繊維製品の小売業者や小さな問屋等が非常に損害をこうむつておると思うのでございますが、この問題についてなぜ後に現われた酒の問題と全く同一の措置をこの絹、人絹関係に対しておとりにならなかつたか、当時の事情を一つ大蔵大臣に伺いたいと思います。
  191. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨年シヤウプ勧告によりまして、織物消費税の減税が勧告されたのであります。御承知通り四割かかつておるものもありますし、一割かかつておるものもあるのであります。で、物品税或いは織物消費税を課税いたします場合、即ち増税の場合に、手持ち課税をしておる関係上、減税の場合にもやりたいと思つて研究をいたしたのでありますが、なかなか実際問題として困難であるのであります。酒等は製造者、そうして指定卸売商、こういうものになつておりますが、織物につきましては、小売業者のところにあるのを一一確認するわけにも行きません。又既製服につきまして、これを又免税するということも大変確認に困難でございます。又既製服にしましても、製造のところにあるもの、その他万般のことを考えまして、なかなか困難で、殆んど不可能だという結論に達しまして、減税の措置をとらなかつたのであります。ただでき得る限りにおいて織物消費税を課税いたします場合の便利な措置は、法律上、できるだけの手は当時盡さすように指令いたしたと記憶いたしております。
  192. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 只今実際の調査はなかなか困難だというふうにおつしやられたのでありまして、確かに商品の種類も多岐に亘りますから、困難は確かに困難だろうと思いますけれども、何しろ税金をとるほうは、隅から隅まで調べ上げて取上げる徴税組織を持つておられる大蔵省で、これくらいのものを全国で業者が一体何軒あるのか私は存じませんが、それにしましても、大変だからやめたという考え方は、而もそれは小さな小売業者や、小さい中継ぎのような問屋のようなところが損害をこうむるという点から言いまして、そういう問題を、大変だからやめたというお考えは私はどうかと思うのですが、これはどうも甚だ只今の御答弁は私は遺憾に思うのでございますが、一体どういう手とどういう手をお打ちになつたか、具体的に伺いたいのでありますけれども、私の聞くところによりますと、山形県の米沢の税務署等は、実際の在庫はどういうふうにあるかということの調査をやつてくれておる例もあると聞いておりますが、全国そういうことができなかつたというふうには私考えられないのでありますけれども、この点大蔵大臣どうお考えですか、伺います。
  193. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 織物消費税を廃止しました際に、手持ち商品が値下りした、その値下りを補償してくれ、まあこういう問題だと私は思うのでございますが、この問題につきましては、大部当時から要望も、ございましたので、私どもといたしましても、事務的にいろいろ検討いたして見たわけであります。で、一番難点のところは、その当時といたしましては、織物につきましては、公定価格が大部外れておりました。幾らに売るかは、いわば業者の自由でございます。ただ消費税が外れるというので値下りの傾向にありましたことは、これは事実でございまして、私ども相当下るだろうとは見ておりましたが、ただ併しながら公定価格でびつしりと抑えまして、一定期間後は引下げるというのと違いまして、或る程度業者自己の危險において適当に措置する余地がある。全廃するということも、すでに大部前から実は政府におきましても、シヤウプ勧告にある通りでありまして、そういうことは業界としても相当わかつておることになつておりますし、相場の動きに対しまして、これは理屈を申上げますと、第一次的な責任かあるのは当業者じやなかろうか、公定価格でがつちり抑える場合になりますと、これはなかなかそう参らぬと思うのでありますが、自由販売制でございまして、その危險はすべて業者自己責任と判断によつて行うと、こういうことになつておりますので、よくその後調べて見ましても、そうですか、相当損をしたかたと、或いはうまく措置をとられまして、余り損をしておらないかたと、まあいろいろ実際問題としてもあるようでございます。そういう問題か一つございましたのと、それからもう一つは、今大臣からもお話がございましたように、実際問題としまして、なかなか手持品の確認というのがむずかしい、酒の場合は今申上げましたように、一定期間は公定価格の間におきまして調節を認めまして、手持ちの売捌きを認め、どうにも行かなかつたものを倉に戻入れして来ると、その場合にははつきりさせるということでございますが、この織物等の場合におきましては、なかなかそういう措置がとりにくいんじやないか、元の製造場に全般的に戻入れましてやるということは、誠に既製服或いは全国の小売商の手持しておりますような品物、私ども、卸商の持つておりますものにつきましては、どうにかできるのではないかと当時から考えていたのでございますが、それだけ限定するのもどうか。そうなりますと、相当広汎に亘りまして確認しなければならない。そういうことになりますと、これはなかなか面倒な問題ではない。それに当時やはり一種の税金がかからない品物がやはり或る程度出ておりまして、この品物は果していつどこで税金を納めたのであるかどうか。まあこういう問題も厳密に言いますと、調べなければいけない、そういうことになつて参りますので、なかなかこれは難問題ではあるまいか。勿論消費税が廃止になりましたことによりまして、大体値段は下るというのは常識だろうと思いまするが、果して最終的にそのことによつて織物業者が幾ら損するかということになつて来ますと、なかなか問題が多いというので、結局結論といたしましては、なかなか困難であるということで、私どもとしましては、この問題を処理することに今までいたして来たわけでございます。今度も重ねて申上げますが、酒につきましても、例えば料理店が若干のものを手持ちしている。こういうものも一々救済をすることはできませんが、そういうものは一定の期間内にできるだけ売捌いて貰う。小売業者の場合にも若干そういうものはあろうかと思いますが、一々織物、殊に多種多様に亘つております。織物につきまして、そういうようなことをやりますのは、ちよつとこれは甚だむずかしいのじやないか、こういうところが率直に申上げまして、今の問題に関しまする私どもの極く最近までの研究の結果、勉強の結果でございますが、御了承願いたいと思います。
  194. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 今の主税局長の御説明を聞いておりますと、結局調べ上げることは困難だから、理屈から言えば、当然税を戻さなければならんのだけれども、調べることは困難だからまあやめた。こういうふうに受取れるわけでありますが、その問題はちよつと保留しまして、大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、供出報奨物資の損失補填としまして、五億六千四百万円ほどを計上しておりますが、この損失の算定の方法は具体的にはどういう方法をおとりになつておりますか、お伺いしたいと思います。
  195. 河野一之

    政府委員河野一之君) これはたしか二月末でありましたか、農林省が各農業協同組合に照会を出しまして、そのときにおける在庫を見まして、それの値下りを計算いたしまして、算定いたしました数字であります。
  196. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 その報告というのは農協側が出したのか、或いは農林省、かじかに調査されたのですか、どちらですか。
  197. 河野一之

    政府委員河野一之君) 農林省が農業協同組合につきまして調べられました数字であります。
  198. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 一々それは役人が自分で調査したものでございますか。或いはその資料をとつて調査したものでございますか、どちらでございますか、
  199. 河野一之

    政府委員河野一之君) 各団体に一一行つて調べたかどうかは存じませんが、府県を使つて調査いたしました数字でございます。
  200. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 大蔵大臣にお尋ねいたしますか、今いろいろ主税局長から、苦心して絹、人絹の税の問題について御説明下すつたようでございますけれども、少くとも主税局長にしましても、大蔵大臣にしましても、この取扱い方が正しいとは私お考えにならぬだろうと思うのであります。思つておられないだろうと思うのでありますが、これは今の答弁を通じてもはつきりそう私は感じとれるのでありますが、そうしてこの農協の損失というのは、これは実に莫大なもので、このために農協が危殆に瀕しておつたのでありますけれども、これに対してこういう補填金を出して下さることになりまして、これは額からいえばもつと農協としては余計欲しいところでございますが、それにしましても、苦しい中からこれだけをおやり下すつたことを私は感謝するものでありますが、これは大体協同組合からの自主申告を基礎にされたように主計局長の御答弁からすると、とれるのでございます。そこへ行くと絹、人絹のほうもそれぞれ組合があつたりしまして、組合からもいろいろ事前にもそれらの数字に対して、大蔵省に対してもお願いがあつたはずであります。そういう点も勘案しまして、この供出報奨物資の損失の補填のような方法をおとりになることができるかどうか、やる御意思がありますかどうか。すでに今補助正予算は再び今年度お出しにならぬということでございますから、これは止むを得ないとしましても、新年度の予算で、やるか、本年度内に何かの方法で政治的にこの報奨物資の損失補填のようなことをおやり下さるか。何かの方法がありそうに思いますが、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  201. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨年の十月乃至十一月、或いは十二月にかけましても、たびたび業者のかたとお会いいたしまして、方法を検討したのでありまするが、いいやりかたが見付からなかつたのであります。従いまして私は止むを得ないという気持で業者のかたの御了承を得たと考えておつたのであります。併しできるだけ業者の……まあ金融その他の問題もあります。例えば十一月とか、十二月に製油業者が作られた、併し一月から安くなるというのでこれか売れない、こういう金融問題もありまして、そういう場合につきましては、価格をうんと下げ、査定を安くして金融の途を付けようとか、こういう問題につきまして、業者とたびたび懇談をいたしたのであります。そういうことよりほかにはあの当時としては手が考えられなかつた、止むを得ないと思つておる次第であります。然らば今後五十三億円とか、三十七億円とかいう数字が出ておるようでございますが、私は一応それは業者のほうで調査されたにいたしましても、小売業者の場合或いは卸売業者の場合或いは製造業者の場合等を考えて、今後この命を一般会計から補填するというような考え方は持つておりません。
  202. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私どもは別にお情けに縋るというようなことを考えるわけではありませんし、私どももこの考え方が酒の場合は懇切に扱つておられる。而も酒は大衆が一日の疲れを……安い酒を呑めぬ形においても、それに損失がかからぬような御配慮を、やつておりまして、そして一方には米沢の税務署のようなやりかたも、やればやれるような実例もありますのに、そういうふうにおつしやるのは非常に変だと思いますし、又主税局長の御答弁の中には、値下りによる業者損失ということを言いますけれども、私は値が下つて、そのために損失をこうむる者があつたつて、これは経営上の思惑の問題で、政府が責任を負う必要はないと思うのでありますけれども、一遍納めた最終消費者が負担すべき税金を一時立替拂いをしていた結果、併しその税を手数がかかるから、簡單にやるよい方法がないからと言つて投げやりになさるのは甚だ遺憾だと思います。でありますからどうか……。そこでもう一遍私はお尋ねいたしますが、それは農協の供出の損失補填の五億六千四百万円というのは、これは調書に現われた全額なんでございますか。それとも全国から集計しました総額というのは、これより多いのであるか、少いのであるか、この点を一つお伺いいたします。
  203. 河野一之

    政府委員河野一之君) 二月末の在庫を調べます場合に、いろいろ困難をいたしまして、中にはすでに販売せられたものもございます。或いは持つておるものもある。そういつた点を考慮いたしまして一応各協同組合から出しました数字について合理的なものを算定いたしまして、できた数字であります。従いまして各組合ごとに、そのままにそれをとつたという意味では必らずしもございません。
  204. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私が実はお尋ねするのつはそこなんでありますが、大蔵大臣はこの絹、人絹関係だけの申出が三十何億だから、とても手に負えないのでやめてしまうというふりにおつしやるのでございますけれども、これは申出は申出、又大蔵省としましては、税務署の指示その他で以てどの辺が妥当であるかという推定は、恐らくお付けになるものたど考えられるのであります。でありますから、この点でもう一段一つ研究と御盡力を私はお願いしまして、この問題に関しては、私はこれを以て打切ることにいたします。
  205. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 下條さんちよつとお諮りしますが、先ほどから人事委員長が来ておられまして、人事委員会の申合せをこの委員会に持つて来られまして、発言を求めておられますが、よろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  206. 木下源吾

    ○委員外議員(木下源吾君) 機会を與えて頂いて感謝いたします。人事委員会におきまして、現に政府の提案によります一般上職に関する給與法の一部を改正する法律案を審議中でありまして、この審議の過程におきまして、本日人事委員会の與野党の委員が満場一致を以て次の点を予算委員会に申入れをして、そうして予算措置を御配慮を願いたいということの申合せで決定いたしましたので、一言説明さして頂きたいと思います。  一点は政府職員に対する年末給與の問題でありますが、これを政府案がいわゆる〇・五、半カ月分というのを一カ月分支給したいという点であります。もう一点は、今回の法律の一部改正で特別な給與を受けておる者の俸給表を切替するに当つて号俸調整をして、そうして従来特別に支給されておる既得権が切捨てられるという結果になり、全国七十万の主として現業に属する、非現業もありますが、この職員の号俸調整をしないでもらいたい。この二点であります。いずれもが予算の修正を伴わなければ、この点の実現が不可能なので、我々人事委員会におきまして、予算委員会にお願いする、こういう趣旨であります。第一点の年末給與でございますが、年末給與に関しましては、すでに御承知通り、政府におつきましても、当初一カ月分を支給する意図であつたよりに我々は仄聞しさおるのであります。勿論この原因は朝鮮の事変以来、物価の値上りが相当以上になつてつて、生計費に及ぼす影響が甚大であるという点、又現行の六三のベースはすでに二カ年になんなんとしそおるのであつて、過去において、人事院からはこれがベースの改訂に関して政府並びに出会に対して一回の勧告を行なつておるが、これか実現ができておらない。又最近の問題でありますが、今回地方税法改正に当りまして、御案内の通り九月、十月十一月、この地方税の支拂いに対する負担が非常に大きいでで、公務員の生活が極端に、極度に行詰つておる実情であるという点、更に又最近国会において、衆議院において実現せられるやに聞いておりますところの国鉄の裁定一部実施に対しまして、国鉄においてはその一カ月分に相当する額をこの年末において受けるという実情であります。かれこれ事情を見まするというと、公務員のこの年末における経済は最小限度、曾つてこの八月九日に人事院が勧告いたしました意見書を以て我々に述べられている一カ月分の年末給與を出すということは、最も妥当であるという見解に一致しているのであります。この一カ月分の年末給與をいたしまするのには、政府の予算の原案によりまするというと、十六億それがしの〇・五という予算が出ております。更にこれに附加えで、只今申上げる一カ月分にいたしますると、二十九億数千万円が必要りだとい方ことが考えられるのでありまして、この点の予算に対する御配慮を願いたいのであります。  次の号俸調整による問題でありますが、これは二千九百二十円ベース切替の際において、それ以来いろいろの事情があつたということを申上げるのでありますが、主としてこの特別な給與を受けている職員は、職務の内容においてこれを受けることが妥当である。又責任の度合においてもこれを受けることが妥当であり、又職務のいろいろな危險を伴うというそういう点においても妥当であるという、理由によつて、海員の五割五号俸、これを最高といたしまして、その他の職員に対して、それぞれ適当なる号俸を引上げておつたのであります。然るに今回政府の原案によりまするというと、これが半減或いはそれ以上に切下げられる面が出て来ておりまするので、この政府案によつて実現せられる曉においては、いわゆる政府の千円べース・アツプがその実質においては半額も増額しないという結果に相成るところがございます。そこでこの号俸切替ということは断じていけないということが我が人事委員会の結論でございます。この点に関しましては、参議院の厚生委員会、これは癩病に関するそういうところに勤務しておる医師、看護婦、職員等の関係から、厚生委員会から決議を以てこの切下げはいけないという申入を我が人事委員会が、受けております。更に電気通信委員会も決議を以て、この号俸切下は不当であるということを私ども人事委員会に申入がなされております。郵政常任委員会においても、同様にこの政府の措置はいけない、不当であるということを決議を以て人事委員会に申入れておるのであります。かかる状態はすでに諸君も御承知つでありまするので、くどくどしくここで御説明は申上げませんが、この号俸切下は如何なることがあつても断じていけないという意見に一致いたしましたので、予算委員会において一つ深甚の御配慮を願いたいと考える次第であります。而してこれが財源は今回の補正予算に関する分で約五億八千万円という金額であります。  以上は人事委員会の決定によりましてお願いするのでありますが、更に私はこの機会に私の多少の見解を述べさして頂くことを許されるならば、今回の給與法一部改正の政府の法律案は内容においで人事院の勧告を尊重しておるということを謳つておりまするが、全然人事院の勧告を無視しておる結果が現われておるということであります。先ず詳しい数字は申上げませんけれども、非常にこの上下の差が上に厚く、下に薄いという点、下のほうのものには全く少く上のほうがぐつと引上げられておる。而もその下のほうというのは八級以下でありまして、全職員の九〇%を占めるもの、その犠牲において全公務員の約一割が今回の恩典に浴するという甚が好ましからさるところの現象であります。これが人事院の勧告を尊重しておらない一点であります。更に政府のもつと著しく人事院の勧告を無視しておる点は、給與に関する実施は諸君御案内の通り人事院にあるのであります。然るに政府の提案せられた法案の附則の第八項によりますると、この給與の実施権を無視しておるこの條文であります。私ども詳しく言えばこの法案については各所においてかかる現象がございまするが、この二点申上げましても、すでに現政府は給與を近代的にし、民主的に改革しよりとする意図を以て作られた人事院を骨抜きにして、我が国の給與制度を古い封建的給與体系に逆転させようとする意図は明瞭であります。私どもはかかる今回の給與法一部改正法律に際しまして、人事委員会は愼重なる検討を行なつておるのでありますが、これらのことについては別の機会に諸君に篤と御検討をお願いしたいと思います。  只今前段に申上げました人事委員会が與野党を通じて満場一致を以て決定いたしましたところの年末給與の一カ月分の支給、又号俸調整による被害を救つて頂くという点において予算委員会において何とぞ深甚の御配慮を賜わらんことをお願いする次第であります。そして私ども人事委員会におきましては、これらの問題について、決定に当り、法案を揃えまして関係方面に持つて参りましたところが、その法案は政府案より極めて優秀であるということを昨日承わつたのであります。そして予算を伴う点については、それぞれその関係方面に対してでなければ実現が不可能だと考えられる、こういつうふうに申されたので、私どもは国会の運営を通じて、是非ともこの優秀なる給與法に改めることを諸君の力によつて完成しないと念願しておる次第であります。何とぞよろしく御配慮を賜わりない次第であります。
  207. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大蔵大臣に聞きたいのですが……。
  208. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 大蔵大臣は衆議院の本会議から呼ばれて、そのほうへ行かれました。  只今人事委員長からの中出の件は予算委員会において慎重に考慮して審議を進めもということで御異存ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  209. 岩間正男

    ○岩間正男君 暫らく休憩の動議を出します。
  210. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 暫らく休憩いたします。    午後四時四十八分休憩    —————・—————    午後六時二十三分開会
  211. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 休憩前に引続いて予算委員会を再開いたします。先程の理事会の申合せによりまして、今晩は午後八時まで審議を続けることになりました。
  212. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 大蔵大臣にお尋ねいたします。昨日銀行局長の説明によりますと、それから安本長官からも年末の通貨の発行高とか、或いは年度末の通貨の発行高ということを伺つたのでありますして、なお預金の増勢が昨年と津つて非常に悪いということも御説明を伺つたのでございますが、そうして銀行局長は、年末の金融については、そう心配がないというような御説明もあつたので、まあその通りに推移してくれれば大変結構と思うのでありますけれども、私は特需景気とか言いましても、その分量は数字的に言つても大した問題ではないし、中小企業などは相当金詰りで苦しんでおる現状と、それに地方税が九月から徴收されました関係からいたしまして、却つて昨年よりも苦しい向きが相当多いように思うのであります。銀行局長もそういうことを認めまして、それでまあ中小企業の財政面の金融などはいろいろやるようにおつしやつておりましたけれども、昨年のように、預金全部資金の市中銀行預託というものは割合短期間に回転いたしますが、商工中金に出すとか、或いは見返資金の貸付けというようなものが、これから年末の資金手当に中小企業なんかに急の間に合うかどうかということに私は疑問を持つておりますので、この点に対する大蔵大臣の御見解を承わります。
  213. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 年末の金融につきまして、我々もいろいろいろな手を考えておるのであります。見返資金の使い方につきましても、これは中小企業のほうは一・三億円になつておりますが、成るべく十二月にたくさん出るように措置いたしたい。又私企業への投資の六十億円もできるだけ早く出したいということに努力いたしております。なお中小企業に対しまする保險制度も、原案は来年一月一日と、こうなつておりましたが、私は今月の十五日から始めるように、案を直すように交渉しております。まああの手この手でやつて行きたいと思います。ただ預金部資金の分は、前から引上げたらいいじやないかという議論があるのでありますが、私は年内には引上げない、年度内には引上げる、来年の三月までには引上げますが、引上げる場合におきましては、他の方法によつて金融の緩和の方法を講じて行きたいと考えております。
  214. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 まあ中小企業の信用保險制度などは、これは私は年末、たとえ大蔵大臣が言われるように十二月の十五日に業務開始ができるようになつても、私はなか年末金融の、而も中小企業を救つてやるという、今の役に立たないかと思います。例えば見返資金の中小企業投資も私が指摘するまでもなく、最初の一、二カ月は非常に借入が少いということは、結局中小企業などは、そういう新らしい制度に対する認識が少なかつたために、新らしい制度の運用ということに対しては、どうも大企業などに比べると時間的に何かかかると思うのです。これは見返資金の放出の例でよくれかると思うのでありますが、そういう意味におきまして、私は今おつしやるような御説明のようなやりかたで、果してうまく行くかどうか。私も昨日も指摘したのでありますが、中小企業が倒れた場合には、これは生産高から言つても、それから従業員数から言つても、工場の数から言つても、相当の数があるのでありまして、これが打撃を受けるということは、結局ここに働く労働者諸君が実際の苦痛を全部転嫁される傾きになりますので、特に心配しておりますが、特段の御配慮を一つお願いしたいと思うのであります。それから最近これも私は中小企業関係としてお願いしたいのでありますが、見返資金の利子が現在七分五厘かと思うのでありますけれども、中小企業のような方面に放出されることになりますと、この金利では私はなかなか骨が折れるのではないかと思いますので、見返資金の金利引下に対する御計画がおるかどうか、この点を一つお尋ねいたしたいと思います。
  215. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今の金利水準から申しまして、七分五厘ということは私は止むを得ないのじやないかと思います。それは全般的に金利水準を下げたいということは私の念願でございまするが、他の一般金利が一割とか一割一、二分という状態でありますので、見返資金の七分五厘を今早急に下げなければ、どうしてもいかぬという程度のものではないかと思います。併しいずれにいたしましても、方針としては見返資金のみならず、ほかのほうの金利も下げたいという考えで施策を講じておるのであります。
  216. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 まあ金利全体の引下を御考慮さることは大変結構なことだと思いますが、それじや近い将来に見返資金の金利の引下ということに対する予想は全然ないわけですか。
  217. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 努力はいたしておりますが、見通しはまだ付きません。
  218. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 金利の問題に関連しまして私一つお尋ねしたいと思うのでありますが、先だつてこの委員会に一万田日銀総裁が見えましたときに、市中銀行に対しての貸付は非常に安い金利で出しておるという御説明がありまして、而もこの安くして置く理由というのが、何か市中銀行に対して、まあ同情的に経営を楽にしてやる気持があるかのごとき説明の仕方をしておられたのでありますが、預金の増勢が非常に鈍つて参つたという点には勿論いろいろな、原因があると思うのでありますけれども、一つ原因といたしまして、市中銀行ば日銀から金を借りて、これを運転しているほうが、運営からいつても非常に楽で、人件費なんかからいつても、少くて楽な経営ができるというような安易な気持が預金の増加に対する努力を比較的薄くしているのではないかというような感じがするのですけれども、その点に対して大蔵大臣はどういうようにお考えですか。
  219. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 御承知通りに、中央銀行の貸付金利は一般の市中金利よりも同額か、或いは高いのを通例とするのであります。而して日本の現状は敗戰後普通の金融状態に相成つておりません。まあ貸付の種類によつて違いますが、最低一銭四厘の貸付利率になつておりますから、これを借りまして、二銭二厘とか、或いは二銭五厘、四厘と、こうなりますと、相当な利益が上るのであります。私は日銀の問題といたしまして、この一般の一銭四厘の貸付というものに検討を加えるべきではないかという考え方を持つております。最近高率適用につきましては、従来よりも少し嚴格にやるようにいたして、おるのであります。何分にも金利水準というものは産業界に及ぼす影響が非常に大きいものがありますから、愼重に考えて行かなければならん問題だと考えております。
  220. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 先ほど本会議で永井君は、米価についても大蔵大臣は国際価格に鞘寄せのようなお考えを持つておられるということを指摘しておつたのでございますが、金利についてアメリカの金利と日本の金利とどれくらい開いておりますか、又これに対して鞘寄せの方向に持つて行こうという御努力をおやりになる御意思かどうかということを伺いたいと思います。
  221. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 日本の金利は一般に外国の金利より昔から高かつたのであります。殊にアメリカなんかは国債の利子なんかが一分八厘五毛ぐらいの程度であります。又ものによつては二分ぐらいのものがありますが、大体そういうようで、こちらとは相当違つております。これは戰前からです。主食その他を国際価格に鞘寄せする問題と、金利を同額にするという問題と、これは事柄が大分違います。我々は鞘寄せということよりも、金利自体を全体的に下げたいと、こういうのであります。何分にも非常に資本が少いのでございます。そういう点から言つたら、今の金利も止むを得ないかと思いまするが、私が大蔵大臣に就任いたしましてから、今までにおきまして二回か三回か下げました。前から見ればよほど下つて来たと思います。
  222. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私は金利の問題が他の商品の国際価格の場合と違うことは、私もその通りだと思うのでございますが、それで、昨日銀行局長にお尋ねしましたところ、年間三千五百億の貯蓄目標に対して、預金の増加の成績が非常に悪いということを言つておられましたが、この年間目標に達しなかつた場合におけるギャップをどういうふうに処置なさろうというお考えですか、伺います。
  223. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 貯蓄目標につきましては、かなり動くのであります。昨年は二千億くらいの貯蓄だろう、こういう説がありましたが、私は二千五百億円の貯蓄ができる、こういうので、本議場でも議論したのであります、結果において三千億円ばかり、三千億円を超えた、こういう状況であるのであります。一応の資金計画はできますが、なかなかその通りに参りません。それで二千億円というところで、三千一、三百億円できて金廻りが緩和するかというと、そういうものでもない。やはり去年も非常な金詰りであつたのであります。そうすると、予定通り行くと非常に金詰りになるかということになりまするか、何もそういう額面以上に出るわけじやございません。いろいろな技術を金融政策その他でやつて行けると考えておるのであります。何分にも第一四半期、第二四半期におきましては、政府の引上超過が強かつた、第二西中期にはかなり撒布超過になつております。今後も財政資金をできるだけ出して貯蓄の増強に向けたいと考えておるのであります。足らざるところは産業資金を少し切る、圧縮するとか、或いは又政府の資金の放出を早目にするとか、いろいろな方法があると思うのであります。
  224. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 いま一つ伺いたいのでありますが、仮に産業資金を圧縮するということになると、たださえ不足の産業資金が更に更に窮屈になつて、そのために今政府が意図しておられるような生産計画などに支障を来たすような慮れはないかどうかということが心配されるのでありますが、その点はどうですか。
  225. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そういうふうなことのないように資金の放出を考えるということを附加えて申上げておつたのであります。
  226. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 それじや最後に一つ大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますが、先ほど持株整理委員会その他の職員の諸君の俸給は、ベース改訂はおやりにならぬ。こういうことをはつきり主計局長から御説明があつたのでありますが、公団その他にとかくいろいろな疑獄事件が起きたりなんかしたことは、大臣特に御承知と思うのでありますが、そこで私は心配しますのは、一般政府職員なら全部ベースの改訂があつて何がしかの收入の増加があるというときに、こういう一部の政府職員だけに据置きにして置きまして、実際の運営の上に弊害が起きたり、或いは事務能率の低下が起きるというような虞れがないとお考えですか。又そういうことが起きるような心配がないというふうにお考えかどうか。そういう点を一つお尋ねしたいと思います
  227. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今回の公務員の給與の引上にりきましては、民間給與と対比いたしまして非常にお気の毒だというところから出発しておるのであります。公団の職員につきましては、一般公務員より相当高くいたしておるのであります。従いましては私は只今のところこれでやつてつて支障はないのではないか、こう考えております。
  228. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 給與ベースの問題ですが、いろいろ大臣或いは政府委員のかたがたの御意見を聞いたんですが、一千円べース・アツプされたまあ一応の根拠は簡單にお聞きしたんですが、一体一千円上げなければならんということをお考え始めになつたのは、いつ頃からのことですか。
  229. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 上げなければならんと考えたのは六、七月頃からでございます。できるだけたくさん上げたいと考えまして、常にその財源を、見込んでおつたのでありますが、予算編成をいたしまするときに、大体平均千円ぐらいの引上げはできると私は見込んだのであります。
  230. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、大体一千円アップの場合、所要の経費が出て来るのですが、この点について我々の見解では、人事院はベースを六十三百七円から八千五十八円に上げると、上げるべしという見解であると思いますので、そうしますと、その差額が千七百五十一円になると思うのですが、この千七百五十一円のベース・アップ、人事院の見解通りにすれば、一人幾ら経営が要るというふうなおつもりになりますか。
  231. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 人事院の八千五十八円というのは、昨年九月の基準で行つておられたと私は想像してれるのであります。それを最近の状況に合せますると、八千五十八円が八十四百幾らになると思います。我々のはうでは六千三百七円ベースは、現在の実際の支給は六千九百円程度に相成つておるかと考えております。従いまして、これによつて平均千円給與の引上げ、べースの引上げということは、正確に申しまするとちよつと合わないのでございます。給與の引上げをいたしますと、大体七千九百円程度に相成ると思います。而して人事院の言う通りにした場合にどうなるかという問題でありますが、これは一人当り五百円の差を一般会計、特別会計或いは政府関係諸機関を合しまするならば百七十万であります。百七十万でありますから、どのぐらいになりますか、月に八億ばかりになります。一年にいたしますと、八十億円……九十億余りになると十思います
  232. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 正確に言つてベースを上げると、千七百五十一円のベースを上げるという数字で正確に御算定になつて、そうしてそれだけの所要の経費を見積りながら、予算編成のときには御検討になつたのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  233. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほど申上げた通り、一千円で幾ら、八百円で幾ら、千一百円で幾ら、こういうふうな計算は勿論私としてはいたしております。
  234. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもその点がはつきりしないのですが、今大体目の子でおつしやつたように見受けるのですが、これは事務当局のほうでは正確に千七百五十一円ベースでやつた場合に幾らになるというふうな数字がおありでしようか、それをお示し願いたいと思います。
  235. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 事務当局も私も違いはないのでございます。今の七千九百円と八千四百円の差額の五百円でございますが、政府関係の職員につきましては、月五百円を百七十万人にかけて行くと、年にしたならば九十億円余りになるということは、これは算盤から出て来ると思います。
  236. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 すると九十億円のうちに一般会計だけでどれだけの増になるかということをお見込みになるのですか。
  237. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 百七十万人のうちで一般会計は四十七、八方、五十万近くだつたと思います。国鉄は五十万、それから電気通信並びに郵政が三十数万と思つております。それからほかに特別会計或いは公団等あるのです。大体百七十万人とお考え下さればよいと思います。各会計によりまして計算すれば出ますので、後刻政府委員からお聞取りを願います。
  238. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私が特にお聞きしたいのは、一般会計だけで一体人事院のベース通りに、人事院の勧告通りに正確にやれば、一般会計だけで幾らの増額を必要とするのか、その増額が一体財源の問題その他から不可能な金額なのかどうかという点を特にお聞きしたい。
  239. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 正確な数字は計算してお答えいたしますが、一般会計で五十万人とすれば、月五百円ならば年三十億円と相成るわけであります。御承知通りに給與の引上につきましては、一般会計は一般会計で賄いますが、特別会計で賄ないところもあります。例えば郵政の方は賄えない。給與の引上げにしましても、或いは半月分の手当にいたしましても、一般会計から補給するということになつておるのでありまして一般会計だけ御覧頂いても困るのであります。又国鉄につきましても、五十万の人で五百円上げますと、これは三十億円ばかりになるのです。全体を考えて見ないと、一般会計でできたからすぐ財政の切盛りができるものでなついと私は考えます。
  240. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 御説明の通りに、問題は一般会計だけでなつて、特別会計、政府機関等々の問題もありますし、そういう問題の検討の必要のあることもよくわかりましたが、問題はそういうものを考えるとしても、例えば今のやりかたでおやりになれば、特別会計或いは政府機関の大部分のものはそれ自体の会計で賄える。ただ問題になるのは、今もお挙げになつた郵政特別会計だけは赤字になつているので、これは一般会計から見てやらなければならんというような状況になつていると思うのですが、従つてそれを見込めば大体いいのではないかと思うのですが、そういう形において一般会計で一体どのくらい負担しなければならんことになるのか、従つて又その金額はどういう意味で、とても今の財政状態から引受けられないとおつしやるのかという点です。
  241. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 一般会計で三十億円程度に相成ると思います。それから郵政のほうでも十億程度に相成ると思います。そうして又特別会計におきましても、鉄道はそれで賄えるかという問題になりますが、私は鉄道はなかなか賄いにくい。今私が一番苦慮している問題は、鉄道のほうも一般会計から来年度も出さなければいかんのではないか、出すべきだという有力な意見があるのです。こういうことを考え合せますと、料金を引上げるということのほかに方法はないということになりまして鉄道運賃、或いは旅客運賃なんかを上げるということは、私はこれはなかなかむずかしいので、一応懸案ということにいたしたのであります。
  242. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それらの正確に人事院の勧告通りに、ベースを文字通りに上げる所要経費が幾らあるかということについては、この間から大蔵省のほうに資料をお出し願うように申上げておるのですが、まだ出て来ておりませんし、今の大臣のお話その他を聞いておりますと、ただ目の子で器用に御計算になつて答弁になつておるというような感じしかいたしませんので、私の率直な感じを申上げることを許されるならば、大蔵省ではそういうものは初めからてんで問題にしておられないし、少しも考慮されなかつたのじやないかというようなことを感ずるのですが、その点は如何ですか。
  243. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それは佐多君の酷評でございまして、私はアメリカにおりましなときも、夜の一時、二時までかかつてそうして五百円上げる場合の経費、これによつてはね返るところの所得税まで計算していたのであります。今回も後刻申上げますが、一カ月の給與もむずかしいことになりまして、私は千円上げろ、千五百円だけ上げろと強硬に話したのであります。併しそれは聞かれませんでした。我々としては殊に主計局につきまして、これは主計局全員が一カ月を主張し、これができなければ千五百円の引上げをやる、いろいろな計算をやつた上のことであるので、この交渉の経過につきまして、とやかく申上げることはどうかと思いまするが、千二百円上げる、数回それは交渉いたして見たのでございます。こういうことから考えて大蔵省は人事院の勧告を一つ研究していないというようなことは、これは酷評じやないかと思うのです。これはもう事実の問題として私自身も計算しております。大蔵省の主計局では十分検討を加えた上のことであります。
  244. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私がそういうふうに非常に邪推をいたしますゆえんは、先程一千円の引上げをいお考えつになつたかということをお尋ねした場合に、七月頃すでに考えていたというようなお話であつたので、この一千円というのは、我々が新聞その他によつて知り得るところではもつと早くからいろいろ案としてお考えになつていたように感じておるのです。従つてそういう経緯を考えれば、それは一、二の考えはおとりになつたかも知れないか、正確に先ほど申しましたように、人事院のべースのアップをば御計算になつてこの下でおやりになつたのかどうか、若し正確に計算をしていらつしやるのならば、少くともそれを資料として御提示を願いたいというふうにお願いするわけであります。
  245. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 千円の引上げを七月頃一から考えたとは申上げておりません。私は六月の切めに給與の引上げにつきましては大体五百円乃至六百円から出発したのであります。で、当時それが新聞に出たこともありまするが、だんだんやつて行きまして、価格補給金なんかも減つて来る、そして来年度の予算の大体見通しも付いたというところから千円出し得るし、又一カ月賞與も出し得るということに結論が出て予算は安定したのであります。その後のことにつきましては、先ほど申上げた通りでありまして、勿論人事院の枠によつてやるとどうなる、或いは千円ならどうなるという計算は大蔵省としては十分いたしておるのであります。
  246. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 くどいようですが、先ほどからお聞きをいたしております正確に人事院ベースで引上げた場合にどうなるかという詳しい計算を一つお示し願いたい。その計算を見た上で更にその問題はもう一遍質疑をいたしたいと思います。次に、同じ問題ですから、もう一つお尋ねいたしたいのですが、先ほどから大蔵大臣の御説明によりますと、大体現在の給與が六千八百円か六千七百円、年末には大体において七千円になる推定がなされるので、従つてこれから一千円をアップすれば、大体人事院の八千五十八円にしろという勧告を承認したことになるというふうなお話だつたと思いますが、そういう計算になるかどうかという点については、私いろいろ異論がありますけれども、その問題は一応別にいたしましても、若し仮にそういうふうにベース・アップする考え方をおとりになるのならば、なぜ五十八円程度のものをちよん切つて一千円ということにされたのか、正確に八千五十八円に到達するようなことくらいは少くともお考えなつたほうが政治的にはいいじやないか。我々の率直な言葉をもう一遍言うことを許されますならば、十円というのが初めからきまつてしまつていてその千円をあとからいろいろ御説明になり、いろいろ言訳をされるのにだけ使つていらつしやるに過ぎりないのじやないか、こういう感じがするわけなんであります。
  247. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 誤解があつてはいけませんので、先ほど申上げたのでありまするが、人事院の八千五十八円というのは、昨年の九月の現員現給によつてつておるわけであります。従いまして只今の状態でありますと、先程申上げましたように八千四百七円になるのであります。而して我々の計画しているものは、一般会計と特別会計によつて違います。各会計によつて違いまするが、大体八千円程度になる。そうすると、まあ五百円違うのでこういうことになつた、こう申上げておるのであります。八千五十八円と政府のほうの八千円と五十八円しか違わないのじやないか。それだから人事院の言うことを聞いたらいいじやないかという御議論は実際に通じません。数字の根拠がございません。人事院のあれは我々のほうとは四百数十円の違いがあるのであります。併し我々といたしましては、八千四百七円になるところを大体八千円に持つて行く、人事院の考え方に副うように持つてつたのであります。
  248. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 人事院はお話の通りに、成るほどその基準は今年の五月一日あたりを基準にして八千五十八円という数字を出したことば大臣の御説明の通りでございます。従つてその後のいろいろな物価その他の推移を考えれば、今大臣がおつしやつたような程度に現給としてはなるだろうと思いますが、一応人事院は八千五十八円に引上げろ、そうして時期その他については明示していないのでありますから、若し大臣が本当に人事院の考え方を少しでも取入れようと言われるのならば、文字通りにやはりこの勧告した時期、その後の推移をば考える等々のことは一応別問題として、少くとも八千五十八円と併せて一応の説明を付けて政治的な考慮をされるというくらいの努力はしてもよかつたんじやないか。それをやられないのは、繰返して申上げるように、一千円というのが先天的に與えられていてすべてが動かないものとして、これだけがいじられていたのじやないか、こういうふうな感じを持つのです。
  249. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 数字はごまかすわけに行きませんので、あなたが八千円近くになるのならば八千五十八円になるのだ、こういうことを言つたほうが政治的でいいのじやないか、こういう御意見でありますが、私はそうは思いません。
  250. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私はまだそれを政治的に考えなければならないというゆえんのものは、少しでも人事院の言う通りになる限り、五十八円程度の差ならば、そういうことを完全に実施するという考え方でお考えなつたほうがいいのじやないかということを言つておるので、ごまかすという意味での政治的な裁量ではないので、ごまかすという政治的な裁量の点から言えば、もつと大きなごまかしを大蔵大臣のほうがやつておられるのじやないか。これは先ほどから申上げる通りでありますが、この点は先ほどの資料と関連する問題でありまするから、なお後刻その資料に突き合せながらもう一遍質疑したいと思います。  それからもう一つお尋ねいたしたいのは、年末手当の問題でありますが、政府は年末手当を半カ月分見込んでおられると思うのですが、その場合の平カ月分というその基準になつた一人当りの一カ月の給與は幾らと考えていらつしやるか。
  251. 河野一之

    政府委員河野一之君) 七千九百八十一円であります。
  252. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、この予算説明によりますと、六千三百七円ベースとして、半カ月分を見ているというふうな御説明になつておると思いますが、ベースは六千三一百七円であるけれども、現給が七千九百八十一円であるから、それだけとして見ているということでしようか。
  253. 河野一之

    政府委員河野一之君) 私ちよつと間違いましたが、六十九百七十三円であります、それをですね、一千八円全体としては上るわけでありまして、七千九百八十一円ベースになるというのが、一月からでありまして先ほどの訂正をして置きます。佐多さんはベースベースということを言われるけれども、六千三百円ベース、八千五十八円べースと言うが、それは俸給表の符牒みたいなものでありまして、それで以て政府職員の給與を縛られるというわけではないのでありまして、六千三百円ベースの当時の現員現給で行くとその通りでありますが、その後におきまして非常に変つて来ております。昇給がありましたし、或いはやめた人もありますし、殊に昨年の九月におきまして行政整理をやりまして大分人の構成が変つて来ております。今年の六月で行きますと六千七百四十円程度、それから九月に昇給をやりまして、十二月に昇給がある、今年末においては六千九百七十三円ということが予想される。これはやつて見なければわかりませんのでございます。従つて六千三百七円というのは、俸給表はそのまま適用した場合にそうなるということ、その点に誤解のないようにお願いしたいと存じます。
  254. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は誤解してないつもりですから、更に進みますが、そうしますと、六千九百七十三円というのは、予算を組まれるときに、推計された年末の現給ということに了解していいでしようか。
  255. 河野一之

    政府委員河野一之君) その通でございます。
  256. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、大体大ざつばに申しまして七千円、一ケ月分だと七千円、平均七千円、これを半月分出す、即ち三千五百、平均すると三千三百円という程度で出すのだというふうに了解してよろしうございますか。
  257. 河野一之

    政府委員河野一之君) 大体さようでございます。
  258. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、この間お聞きしたところによりますと、昨年大体政府は平均五千円程度の年末手当か出ておることになるというお話がありましたが、今年三千五百円だとすると、去年よりか手当が一千五百円下つりておるというふうなことになるのですが、政府が予算書の予算説明の中で謳われておる点は、現在経済も安定して来たし、給與水準を上げる必要もあるのみならず、上げ得る可能性が出て来たのだ、そこでこういう引上げをやるのだというお話でございますが、そういう意味からば非常に、少くとも情勢に若干のゆとりが出て来ておるということは、政府自身がよくお認めのことだと思います。然るに去年はそういう点では更に悪かつたのだと思いますが、その悪かつた時代にもなお且つ五千円程度のものはお出しになつておる。ところが今年になつては出さなければならない必要性は、皆さん、大臣或いは事務当局のかたがた自身が身を以てよく御存じのように、出さなければならない必要性は去年にも増して遥かに大きくなつているということは、これは誰も否めない事実じやないか。殊に昨今いろいろな組合その他で問題にしております状態、その他世間一般のいろいろな実情を聞けば、今年の九月以降の地方税が非常に重くかかつておる。従つてこれらの地方税をなかなか抑えないで、大概の人たちは地方税の前借りをして今までに支拂つておるので、年末にはそれを返さなければならなないような非常な苦しい状態に立至つておる。更には又朝鮮動乱を契機にして、その後非常な物価騰貴、特に衣料品その他は非常に騰貴しているので、それらの物資の調達の面の必要から言えば、去年にも増して非常な必要に迫られておるのが昨今の国民の、特に公務員諸君の実情であると思います。必要はそういうふうに非常に増して来ておる。他方予算の実情から言えば、出し得る可能性は昨年にも増して出て来ておる。そういう状態にあるときに、なぜ去年程度のものすら確保してやれないで、僅かに三千五百円程度のものまで切つてしまはなければならないのか、この点をお伺いしたい。
  259. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 佐多君は御存じであろうと思いまするが、昨年は平均三千円を出しておるのであります。而も出しかたは一人当り七百円を基準にしまして七百円出しております。而して俸給の三分の一とこれで行つておるのであります。或る会計によりましては二千四、五百円しかもらわないところもあります。又国鉄は三千一円になつたと思います。これで行つておる。而して五千円を超ゆるものにつきましては、五千円でとめておる。今回は只今主計局長の申しましたように、平均で三千五百円になるのであります。多い人につきましては、五千円でちよん切るということなのであります。だからこういう事実をはつきりつかまえて御議論願いたいと思います。なお又公務員の生活が困窮しておるということは私も十分知つております。併しお話のように困るばかりではないのでございまして消費者物価指数を昨年の十一月或いは十月と今年十一月はまだわかりませんが、十月に比べて見ましたならば、消費者物価指数は下つておるのであります。
  260. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私が去年の年末手当の実際をよく知らないで間違つたことを言つておるというお話でありますので、それは資料を持ちませんので、何とも申されませんが、その点も一つ資料としてお見せ願いたいと思います。ただ私がそういうふうに立論をいたしましたのは、この間の委員会で、政府委員のほうから大体平均五千円を出したというような御答弁でありましたので、それを基礎にして申上げておるのであります。更にその点は資料について検討することにしたいと思います。もう一点生計費指数の問題のほうも、更によく調べましてもう一遍お伺いしたいと思います。関連質問はこれで打切つて置きます。
  261. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 下條君、大蔵大臣に対する質問は終りましたですか。
  262. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 大蔵大臣に、住宅金融公庫の融資によりまして、住宅ができつつあるはずでございますが、今日までの公庫の開業以来、今日までの実績について御説明を願います。
  263. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 二十五年度融資住宅の進捗状況につきましては十一月三十日現在、設計審査の合格いたしましたものは四万二千四百五十件、これに対して貸付承認いたしましたものが二万九千四百五十四件、この金額が六十億一千三百余万円でございます。それで建前が完了いたしました戸数が一万八千二百八十一戸、完成いたしました戸数が一千三百三戸でございます。
  264. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 これは審査の終了したものは相当の額になつておるようでありますが、これに対して貸付の完了したのはどれくらいございますか。
  265. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 貸付金額は十一億三千万円であります。
  266. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 これは当初の計画に比べてどの程度の成績に進んでおるのか、その点……。
  267. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 御承知通り本年度の建設予定戸数は八万一千戸、この資金といたしまして百五十億円を予定しておるのであります。これに対しまして公庫の開業が遅れましたのと、その他手続の上から時間のズレがございますので、現在のところは只今申上げましたような貸付戸数になつております。
  268. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そこで私お尋ねいたしたいのでありますが、計画に対して非常に完成は微々たるもので、従つてまだ今日住宅金融公庫を作りましたことによつての住宅緩和に対する実効は何ら拳つていないと思うのでございますが、これだけ予定よりり遅れたのは、開業の遅れたためのほかに何か理由があるのではないかと思いますが、その点について……。
  269. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 開業が遅れましたことのほかに、なお家屋建設希望者において、土地の購入について恰好な土地がないというような点もございましたし、と申しますのは、これは大体融資の対象といたします土地を六十坪に制限をしておる。このくらいの土地の出合がなかなかないというようなこともございました。これに対しましては、早速取扱手続の基準を変えたのであります。そのほか公庫の開業早早のことでありますので、借手のほうも公庫のほうも事務手続に習熟していないといつたようなことが大きな原因であるように見受けております。
  270. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 土地の問題について今適当な土地を得られないために申込者側のほうの準備が停滞するというお話があつたのでございますが、それについて條件の緩和ということでございますけれども、どのように緩和されたのでありますか、お尋ねいたします。
  271. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 只今の土地の点は六十坪の分しか融資しなかつたのでありますが、それを百坪まで引上げたのであります。そのほかこの標準価格と申しますか、建物につきましては、一坪幾らと限つて融資するというような規定もあつたのであります。これが比較的低かつたのでありますが、現在では例えば東京では二万一千円まで融資するというふうに、この標準価格も引上げたのであります。その他事務手続上の不便な点はそれぞれ改正いたしました。
  272. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 二万一千円と言いますと、これは百坪で二万一千円というと、すばらしく安い土地になつてしまいますし、一坪二万一千円だと非常に高いように思いますが。
  273. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) それは坪当り二万一千円まで貸し得ることにしたのであります。(「違うよ」と呼ぶものあり)それは東京地区においてであります。これは建設費であります。それについての建設費というものも段階を設けております。
  274. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 土地についてはどういうふうになつておりますか、建物としましては、建設費なら預けるのでありますか。
  275. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 土地につきましては、賃貸住宅というのがございます。これはアパートを建てる土地でございますが、これにつきましては初めやはり相当に低いところで押えておりましたけれども、それでは土地購入に不便があるというので、全国一律に四千円に引上げたのであります。従来は市政施行地域におきましてば二千五百円、市政施行地域以外の地域につきましては千五百円というような標準を、一律に四千円に引上げたというようなことにいたしております。
  276. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 これは坪四千円あたりの貸付だろうと思いますが、それで先ほど建築費のお話が出ましたので伺いますが、朝鮮事変が起きましてから、釘とが、亜鉛引き鉄板というものが非常に値が上りまして今この坪あたり二万一千円というような価格ではなかなかできにくくなつていると思いますが、これに特に住宅金融公庫については、勤労者全体が非常に住宅難に悩んでいる際に非常な期待をかけているのでありますが、この建築費が二万一千円では足りないが、土地の問題等などからして、このような目標に対して非常に成績が悪いと思うのでありますが、こういう点に対してどういうふうにお考えですか。
  277. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 建設費につきまして制限を設けることは、余り賛沢な建物を建てることは、この公庫の融資の対象物にはふさわしくないという制限を或る程度のところで押えております。
  278. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 その趣旨は十分私はわかるのでありますが、実際問題としましてだんだん建築費が、木材も上り、今言つたような鉄製品等の値段も上つて来るというようなことで、現在殆んど二万一千円或いはそれ以下の土地も勿論あると思いますが、そういう制限の範囲ではできないために、実際に借りても住宅が立たぬというような実情にあると考えますので、その点に対するお考えなり、対策なりがあつたらお聞かせ願いたい、こういう意味でございます。
  279. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 朝鮮動乱その他の影響を受けまして建設費も若干高騰いたしましたので、補正の措置をとつたのであります。これまでのところはこの程度で押えるのが適当かと考えておりますが、将来なお更に値上りするということがあれば、これは実情に合わして直して行くことにやぶさかではありません。
  280. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そうしますと、こういうふうに貸付けの額を増加いたしまして、そうすると、これは予算上の措置はどういうふうになつておりますか。
  281. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) それは公庫の持つております資金の範囲内で、或いは建設戸数が不足するかも知れませんが、これはこの年度の予算といたしましては融通が付くわけであります。
  282. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そうしますと、八万一千戸数の目標が、何割か上りますと、それだけ戸数のほうも減つて来る、こういうことであると思うのでありますが、今後とも、そうすれば只今の御説明のように建設費がそれだけ上るということになつて来て、戸数のほうがどんどん減つて来ると思うのでありますが、そうすると、折角の本来の意義を失うと思うのでありますが、二十六年度の予算のほうには大体どういうふうに公庫関係のほうをお手配になつておるかどうか。
  283. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 二十六年度の予算につきましては、明年度の予算が提案されましたときに御審議願いたいと思いますが、只今のお話、この標準建設費か非常に上りますと、建てる戸数が減るわけでありますが、ほどほどのところでこの制限を加えて行かなければならない、こういう筋合でございます。
  284. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 その点私はお尋ねしたいと思うのでありますが、実は私は非常に心配しておるのは土地の問題でございます。土地になかなか六十坪にしましても、百坪にしましても、こういうふりに今年も八万一千戸の計画があり、来年も又何万戸か計画があるとすれば、特に大都市におきましては、住宅敷地が非常に不足しておると思うのでありますが、それについて政府のほうでは、何か政府の手によつてこういう勤労者住宅に対して、宅地を提供するような方法についてお考えがあるかどうか伺いたいのであります。
  285. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 公共団体のほうで大量的な住宅を建設いたしますためには、公共事業費による公営住宅、こちらのほうに力を入れるわけであります。一般の土地の取得につきましては、公庫が建設希望者の間に立ちまして斡旋をいたします。
  286. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 現在私どもの聞いておる範囲におきまして、設計その他では規格もあることでありますから、それに合うように設計をすれば、だんだん恐らくパスすると思いますが、土地がないために申込みができないという例をたくさん見ておるのであります。そうしますと、折角のこの趣旨も、それから現在住宅難が最も日本の大きい問題として、又期間も非常に長い期間かかることと思うのでありまして、私は少くも都市の勤労者住宅というのは、不燃性の高層建築が本筋だと思うのでありますけれども、こういう応急的な、暫定的な措置も勿論必要だと思います。こうしてどんどん行くと、必ず私は土地の値段がどんどん騰貴しまして、借りるにしても、買うにしても、なかなか大変な問題になつて、実情は今年或いは来年にも大都市の住宅問題、都市問題というのは行詰つて来るだろうと思うのであります。そこでこれは私どもは是非一つ国有地やその他の土地を建設省のほうで、勤労者住宅敷地として施設をやつて、貸すなり或いは分譲するなりの方法をとつてもらいたいと考えておるのでございますが、建設省のかた或いは大蔵省のかたで結構でございますが、その点について御計画があるかどうか、伺いたいと思います
  287. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 別途国有地或いは公有地等の開放につきましては、そちらのほうの処分を急いでおるわけでありまして、これに対しましては委託制度を設けまして、信託会社、土地会社等をも動員しておるわけであります。たまたまこちらで建設資金の供給をいたすことになつておりますので、この信託会社或いは不動産会社がその間に立ちまして斡旋の実を挙げておるわけであります。この国有地、公有地のような集団的なものは、それぞれ公営住宅を建てる候補地になるような機会が多いのであります。その他比較的狭い地域の土地はそういうふうな不動産会社等の斡旋等によつて分讓しておるのであります。現実にこれが行われておるわけであります。
  288. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私は只今のような、そういう土地会社や信託会社を使つて間接にやるというようなことでは、なかなか不徹底だと思いますので、是非これは政府の手によつて、私がさつき申上げますような、理想的勤労者住宅街が建設できるように希望するのでありますが、建設省ではそういうことに対して御計画を持つているかどうか伺います。
  289. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 将来の問題といたしましては、土地を区画割して、これを分譲するところの仕事も或いは公庫にやらせることも一つ考え方ではないかと思いますが、これに対してはいろいろの問題もございますので、研究中でございます。
  290. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 それではその御研究は来年度の予算に間に合うようなふうにお進みになつておるのでありますか、それともいつかわからないが、一応の参考案ぐらいにして御研究になつておるという意味でありますか、この点を伺いたいと思うのであります。なぜそれを私が申しますかと言えば、我々実は頻々として、住宅のない人が、どうも土地がないために折角の住宅金融公庫を利用することができないという現状にあるものですから、真剣にこのことを伺うものでありますが、その点どうでありますか。
  291. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) まだ結論が出ておりませんから、いつそれをやるか、或いはやらないことになるかわかりませんのですが、(笑声)やることになりますれば、できるだけ早くいたしたいと思います。
  292. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 大蔵大臣に伺いたいのでございますが、住宅問題が如に深刻な問題であるかということは、大蔵大臣御自身も或いは御経験になつておるのじやないか。(笑声)そういう意味において、私は今の銀行局長の御説明のような生ぬるいことでなしに、大臣から、来年度からおやりになるのか、或いはならないのか、こういう方法を考究中だということを、この機会に御表明願いたいのであります。
  293. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この問題はなかなか困難な問題でありまして、これを役人が便乗して、そうして買手を集めるというようなことは言うべくしてなかなか行われません。で、財産税その他で入つて参りました土地にいたしましても、私はやはり信託会社とか或いは不動産専門の会社等に委嘱いたしまして、そうして相手を見付けるのが適当な方法かと考えておるのでございます。で、今国有財産で都内でそう遊んでいる、たくさんの土地が遊んでいるというふうなところも余りないのじやないかと思うのであります。然らば戰災地の私有地の分を政府がどうこうということは今考えておりません。ただ住宅公庫ができましたので、住宅公庫において、予算の範囲内で斡旋なさることは適当なことだと思います。併しこれは別に予算的措置を講じなくても、住宅公庫の中で相当の斡旋ができると私は考えておるのでございます。
  294. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私は個人として宅地問題について意見もありますけれども、時間もないことでございますし、その程度にいたしますが、そこで私は心配なのは、新聞によりますと、来年度は見返資金からその方面に廻すことはできない。本年はたしか百億の見返資金かと思うのでありますが、来年度は見返資金からは出ないというふうに新聞は伝えておるように思うのでございますが、この点に対する資金の手当について大蔵大臣からお伺いいたします。
  295. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 来年度からは見返資金からは出ないことになりそうであります。従いまして、どちらから出そうかというので苦慮しているところであります。
  296. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それに関連しまして、九月二十日に閣議できまりました二十六年度予算ですね、あれを見ますと、一般会計から五十億出すことになつておりますが、そちらのほうはどうなんでしようか。
  297. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 一般会計からの五十億は確保したいと思つております。
  298. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 いま一つだけ……。一般会社からの五十億は確保するつもりと言われますが、今年百五十億だつたのが、来年になりますと、非常に減つて来る虞れがあるのではないかと心配されるのですが、その点はどうですか。
  299. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 非常に減つて来る情勢でありますので、余り減らないように今努力しておるのであります。(笑声)
  300. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 質問を打切ろうと思つたが、どうも大蔵大臣が非常に禪問答のような答弁をされるので、又立つような結果になるのですが、これも噂に聞きますと、預金部の資金を廻すというようなふうにも聞いておるのでありますが、その点どうでございましようか。それからとにかく私は一番切実な、あらゆる犯罪の原因は住宅問題から来ておるといつても過言でない。こんな状況の下に、この勤労者向きの住宅対策に対して政府のほうが熱意がないように思いまして、私非常に遺憾に思うのでございますが、その意味において、せめて二十六年度の予算には……二十六年度の予算は出てから審議しろということなら、その点はその通りでも結構なのですが、昨日、大臣は二十六年度予算の概要を御説明になつたのですが、この問題は皆心配しておるので、恐らく住宅難に喘いでおるところの勤労者諸君が、こういう問題に対して関心を持たないはずはないのでありますので、一日も早く来年度はこのくらい出るというように予想を立て目度を付けつつやることが、私どもは親切な当局の役目だと思いますので、この点お尋ねいたします。
  301. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) まだ今年の百五十億の分も殆んど建つていないのであります。而も八万一千戸のうち四万戸幾らにあれが出ておる。来年のことも知りたい、再来年のことも知りたいのは、これは人情でございますが、私は只今どこから幾らということをはつきり申上げる段階に至つておりません。先ほど申上げげるように、できるだけこの住宅のほうに金を注ぎ込むように考えております。
  302. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 私が今申上げるのは大蔵大臣とさつきの銀行局長の説明とは少し違うように思いますけれども、変な揚げ足とりをすると、野党の時間稼ぎのように思われて心外でありますから、私ば余りやかましく申しませんけれども、今年のが余つておるから、来年の分はどうでもいいというお考えなら、私は間違いないだろうと思います。なぜかと言いますと、今年は遅れたのでありますから、成るたけ公庫のほうとしても努力して、土地のほうの斡旋をして早く建てさせることが大事だと思うのです。然るにこのほうが遅れて間に合わないで、来年度になつてしまうということは、住宅の問題は大蔵大臣は余り念頭に置いておらないのではないかと、私は考えざるを得ないのであります。そういう意味におきまして、私はこれで質問を打切りますが、もう少し親切に私はやつて頂きたいと思うのであります。
  303. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 給與改訂の問題について、実は先ほどこれに関連しないと思つておつた、関連質問で、佐多さんのほうからいろいろ質問がつあつたのですが、それで大要は質問によつて大蔵当局の考えも知つたのでありますが、ただその際に人事院の勧告の線を政府のほうに直して見るというと、大体八千四百円になるというふうなことを聞いたのでありますが、それに間違いありませんか、ちよつとお伺いいたします。
  304. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 間違いございません。
  305. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それでそれに近付けるために大体八千円と見た。こういうふうな御答弁であつたようでありますが、そこで人事院が八千四百円の程度が必要であると考えたのに対して政府が八千円程度でよろしいと、こう決定する根拠を聞きたいのであります。
  306. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 人事院の勧告通りに政府がやらなければならないのではないのであります。やはり財政経済の状況を見ましてできるだけ人事院の線に沿うようには努力いたしたのでありまするが、先ほど来申上げましたように、千円程度引上げで止むを得ないということに決定をいたしたのであります。
  307. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうしますというと、我々は人事院の立場というふうなものは、公務員のいわゆる生活の実情から考えてその生活水準を引上げるというふうな根柢に立つて、本当に公務員の生活という立場考えて勧告しておるものと考えるのであります。それに対しまして政府は財源の措置とか、そういうふうな予算の措置とかいうふうな方面からのみ見ましてそこに四百円の差を付けてつ、こういうふうに決定するというようなふうに考えて差出支えないのですか。
  308. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 人事院の勧告でございまして、これは政府を拘束するものではございません。従いまして皆様がたに御審議を願つておるのであります。
  309. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 今の答弁は甚だどうも私は遺憾に思うのでありますが、実際において政府が公務員の生活という立場から考えたならば今のような答弁がなされるはずがないと思うのであります。そういうところに非常に政府のいわゆる公務員の生活というものを無視した、ただ單に財政的な、或いは予算的な措置というふうなことを考え立場があるのじやなかろうか、非常にこれは私は公務員の生活から考えまして、この政府の方針に対しましては、不満の意を表するものであります。そこでその次の問題に移つて伺いたいと思うのでありますが、先般私はこの席で人事院総裁に質問した際に、今度の政府の給與案に対しては非常に不満である。これをこの席上で表明したのであります。その表明したところの不満であるということの内容につきましては、詳しい説明を今私は数字的に申上げることはできませんけれども、大体俸給表の格付基準が政府のは低いと、これは確かに人事院に言い分があると思うのでありますが、先ほどの考え方からいたしましても、片つ方の方面は本当に公務員の生活の上に立つておるし、片つ方は財政的の措置というような方面に立つておるから、この間に食違いがあるのだろうと思うのでありますが、その点は如何ように考えますか。
  310. 河野一之

    政府委員河野一之君) 格付基準がどういうふうになつておるか、格付基準とおつしやる意味が解しかねますが、私どもといたしましては、人事院の勧告をできるだけ尊重いたしまして人事院の勧告にある各公務員の生計費基準等につきましては、このまま採用いたしまして、頭割千円の範囲内で合理的な基準を作るものであります。
  311. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それではその点については資料に基いて研究の結果質問することにして留保いたします。次に不満の意を表した点は、非常に上に厚く下に薄いというような点を政府においては強く出しておる。その点でありますが、なぜ人事院で勧告しておるところのものに対しまして、そういうふうな非常に段違いの、いわゆる上に厚く下に薄いというような決定をしなければならなかつたのか、その理由についてお伺いしたいと思います。
  312. 河野一之

    政府委員河野一之君) 現在の六三べースで申しますと、上下の一番、一級一号で二千四百円、局長の最高級でありますと、二万四千円程度でありますが、それは約六倍程度になつておるのじやないかと思います。三千九百二十円ベース及び三千七百九十一円、ベースのときには十倍程度であります。その前、戰前におきましては三十倍程度であります。だんだんと能率給の思想を入れるというような考え方をとりますると、これは或る程度その幅を開いたほうがいいのじやないか、職務の性質等から、その考えた方がいいのじやないか。なお人事院の案におきましても、七・二倍になつておるわけであります。今回の政府の案におきましては、八・三倍でありまして、なお二千九百二十円ベースのときよりも低いのでありまして、いきなりそこへ持つて行くのも如何かと思いまして、中間的なものにいたしたわけでありますが、方向としつては、できるだけその間差を大きくして行くというのが考え方じやないかと思いまして、さようにいたした次第であります。
  313. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 現在の国民生活の立場から見ますと、とにかく上の者も下の者も一様に、如何にして一体衣食住を保つて行くかというふうな、そういう現状ではないか、それを十分考慮して人事院が勧告しているのに対して、そこに非常な上の者にだけ厚くするというふうな形をとるということに対しては、私はどうも解せないところがあるのであります。そういうふうなことから、現在の国民生活というふうな立場から考えまして、職場において非常な面白からざるところの事柄が起つて来ているのじやなかろうか。こう私は考えるのでありますが、その職場における影響について政府はどういうふうに考えておられるか、大蔵大臣に伺いたいと思います。
  314. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 最低のものの倍数につきましては、只今主計局長からお答えした通りでありまするが、民間の給與の状況を見ますと、私は人事院の七二倍よりも八三倍のほうが民間の給與の実際の受給状況に合致している、こういう考え方でやつているのであります。而も又今の実際の状況を見ますというと、下のほうもかなり苦しいのでありますが、局長とか、課長、主任級の子供などがたくさんいるところがかなり苦しい状態にあるのであります。こういうものはやはり実際に即したほうがいい。私は勿論戰前のように下の人の二十倍とか、三十倍ということは勿論いたしません。先ほど申上げましたように、二千九百円、三千七百円ベースのときの十倍にも持つて行きませんが、今の実情は民間と比較いたしましても、又公務員自体の状況から申しましても、上のほうがあまりにも苦しいというのでいたしたのであります。
  315. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 上のほうが非常に下の者よりも苦しいということの根拠は何か具体的なものについて御調査の上でなさつたのですか、この点について……。
  316. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは私が役人を長くしたり、又最近も役人についての状況を聞いているのであります。これは税の問題とも関連しなければなりませんし、あらゆる方法で検討をいたしたのであります。私が初めに聞いたのはもつと開いておるようでございましたが、再三再四調査をいたしまして、この程度が適当だという結論に達したのであります。
  317. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 その点につきまして、今大蔵大臣の御答弁によつて、大蔵大臣はそういうふうに考えられておるのでありまするが、現状におきましては、必ずしも私はそうは行かないだろうと思うのであります。そういうことから、この職場におけるところのいわゆる職階制的な形がここに出て来まして、非常ないわゆる職場の民主化というふうなものについて私は禍いをなすものでなかろうか、こういうふうに考えるのでありますが、この点についてどうお考えになりますか。
  318. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 給與の点はできるだけ合理的にしなければいかんと考えておるのであります。政策的にどうこうということよりも、先ず民間との比較、或いは現状を見まして合理的にやるのが一番いいと私は考えておるのであります。
  319. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 まあそういうふうになりますというと、少しく私とは見解が違うわけでありますが、その点はその程度にいたしまして、次に号俸調整の問題について伺いたいと思うのです。今回の給與規定におきまして、現業に関する方面になるのでありますが、この号俸を一号乃至二号、こういうふうに切つておる、下げておるのであります。一方において千円をアップさせると言いながら、一方において号俸において切下げをやつておる。こういうことに頗る私は不合理性を認めるわけであります。何故にこれらのいわゆる給與を受けるものについては、二九ベースの場合に職務の内容とか責任とか、或いは危險というものを考えてやつたのを、今回は切下げしなければならないような実情になつたのか、その理由です。
  320. 河野一之

    政府委員河野一之君) 六千三百七円ベースが施行せられました当時におきまして、これが考えられました当初におきましては、一般の公務員は一週三六・五時間であつたわけであります。当時現業関係の職員につきまして、この手当等におきましには四十四時間、鉄道においては五十時間であります。ところが現実に施行せられました二十四年の一月からは、一般の公務員は四十四時間に、拘束四十四時間になつたわけであります。従いまして、三六・五時間と四十四時間乃至五十時間との間における、そういう勤務時間を前提としての号級というものは、その後において勤務時間が変つたということにおいて調整を要する事態がここに立至つたのでございます。それから職務関係におきましても、当時における治安の状況その他から、現在においてはそういう程度の号俸の幅を置くことがいいかどうかということの考え方の点もございます。併しながらこれをそのまま、既得権をこのまま置くというのも如何かと思いますけれども、全部とつてしまうのも如何かというようなことで、これを半減いたすことにいたしたわけであります。併しこれに全体として一千円程度のベース・アップでありますから、この財源というものは、職員全体に均霑しておるのでありまして、特に調整号俸の切下げを受けた職員が非常に不利な、不均衡な削減を受けておるというようには私どもは考えておらないのであります。
  321. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 この点につきましては、先ほど来人事委員長予算委員会に申入れをいたしまして、これはその際のお話では、人事委員会に、或いは厚生委員会、郵政、電気、そういうふうな方、山から全く鋒先を揃えて申入れをしておる。いわゆる現業にあるところの割合に給與の低いものに対して、特に号俸を切下げるというようなことには、それはそういうふうな申入れから考えまして、今回の政府の給與案は非常に無理なものかあるようなことを私は十分考えるのであります。この点十分一つ政府におかれても考慮を要することであると考える次第であります。次に政府の一般職員の給與が特に改訂されるということになれば、必然的にここに地方公務員の俸給もこれにならうという形になつて来るのでありますが、その予算の措置につきまして、先般来この地方財政委員会の委員長からの申入れ、或いは全国の知事の陳情、こういうふうなものがありまして、平衡交付金についてこの財源は一つ十分政府としては考えてもらいたい。こういうふうな勧告が出ておるのでありますが、これについて政府の御所見を伺いたいと思います。
  322. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今回の平衡交付金につきまして、地方公務員のかたがたの千円引上げの分につきましては、全部見るということはいたしておりません。
  323. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そういたしますと、この地方財政委員長からの勧告に対しては全然これを顧みないということになりますか。
  324. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 地方公務員の百三十万について、このたびのペースアップにつきましては、予算上は考慮していないのであります。何分にも本年度の地方の財政状況につきまして、私はなお検討を要しなければならないのであります。将来に向つて、将来ベース・アップによつてどうなるかということは、地方の財政收入がどうなるかということと先ず第一に睨み合せなければならん問題だと考えております。
  325. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 今の大蔵大臣の答弁は誠に私は重大であると思うのであります。殆んど今の答弁において考えられる点は、地方財政に対して何ら政府としてはこれを考慮もしないし、心配もしない、突つ放したようなことになるのでありますが、政府としてそれで差支えないのでありますか。
  326. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) できるだけの考慮は拂いまして、補正予算で三十五億円殖やしておるのであります。
  327. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 できるだけの考慮を拂つて平衡交付金において三十五億を組んでおると、こうおつしやるのでありますけれども、その三十五億というふうなものの計数を調べて見るというと、殆んど平衡交付金及び起債額決定後の法令の改正等による増加額、こういうふうないわゆる経営或いは臨時、これを合せまして、そういう方面でなくなるようになつておるんじやないか、その点どういうふうになつておりますか。
  328. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 地方の本年度の財政牧人がどれだけあるかということを考えなければなりません。今まで私のところへ来ておるのは、これだけ殖えるんだ、これだけ殖えるんだ、こういうふうなことが多いのであります。これだけの歳入が今度はあるんだというふうなことは聞かないのであります。政府といたしましては、国におきましては既定経費を節約する等、あらゆる方法を講じてやつたのであります。従つて私は地方におきましても、あらゆる工夫をこらして、そうしてできるだけ出して頂きたいということを期待しておるのであります。
  329. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 この点におきましては、地方財政委員会の委員長からの勧告は確か八十八億だと思うのでありますが、余りに大きな開きがあると私は思うのであります。但しこの問題はそういう方面からも私は全国的に大きな問題になつて来るだろうと思います。これについてはこの程度にいたして置きたいと思います。以上であります。
  330. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 池田大蔵大臣にお尋ねいたします。この前に私一般質問のときに、一つ兒童福祉法の施設に收容されておりますところのみなし兒であるとか、浮浪見でありますとか、いろいろな子供たち三十万人の生活の保護費につきましてのことで、それが平衡交付金の中に入れられておりますることにつきまして、この四月以来、それが地方におきましてはほかのほうに流された形でそこに行つていない。地方におきまして非常にたくさんの施設で子供の生活が脅かされておることにつきまして、一般質問を申しましたときに、平衡交付金から、丁度児童の保護費はほかの生活保護費と同じ性質のものであるから、平衡交付金の枠からはずして、生活保護費のような立場において確実に子供の生活を守るというほうに考えられないだろうかということをお尋ねいたしましたときに、大臣は、地方も今は切替えで慣れないから、いずれだんだんと慣れて来るだろう、それで待つようにというような……、待つようにという言葉はなかつたようでありますけれども、そんな意味の言葉がございましたのですが、もう少しそれだから待つておれとおつしやるのか、それとも成るほど子供の生活のことで待たされないから、何とかしようというところまでおつしやられなかつたのですか。その辺のところをもう一度伺つて置かないと、何分にも地方の三十万人の子供たちの生活を脅かされておりますことが気にかかりますので、改めてもう一度そのことにつきまして、お伺いいたしたいと思うのでございます。
  331. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この問題は收容児童の問題ばかりでなしに、今朝ほど来義務教育費の問題につきましても、こういう考え方があつたのであります。御承知通りシヤウプ博士が第一次勧告で千二百億の平衡交付金、こういうのでそれによつてつて行くつもりであつたのでありまするが、生活保護費の百五十億と切離しまして、そうして厚生省でやるようになつたのでおります。そのときに牧答児童保護費につきましても、私は問題になつたと思います。それが生活保護費だけというので、兒童保護費のほうは平衡交付金の千五十価に入る。然るところ平衡交付金になつて参りますると、これは私のほうの所管から離れまして、今では地方財政委員会でやられるのでありまするが、えてしてこういうものはおろそかにされ易いと言つては語弊があるかも知れませんが、なかなか厄介な仕事でありますし、慣れないところで少し配分その他が出遅れたのではないか、こう私は想像するのであります。従いまして地方財政委員会のほうで各府県その他を御監督なさつて、これを十分我々が期待しておるようにお使い下さることをこつちからは要望したいと思うのです。然らば要望だけで足りないところはどうするかということになりますと、平衡交付金の関係につきまして、それをはずして厚生省に持つて行くか、或いは義務教育費につきましても、平衡交付金からはずして文部省に持つて来るという点もなきにしもあらず、持つて来られない場合においては標準教育費というものを公定して、そうして義務教育費に幾ら幾らとり、これをどういうふうに流すというようなことをきめなければならん。こういう議論が今でも言われておるような状態であるのであります。従いまして私としてはそれを盛込んで平衡交付金へ入れてあるのでありますから、地方財政委員会のほうで適当に我々の所期しているようにお使い願うことにいたしたいと考えておるのであります。
  332. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 河崎君に申上げますが、理事会の申合せによりまして、本日は八時で散会することになつております。御質問途中でございますけれども、明日に延期して頂きたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。なお明日は午前十時から開きまして、大蔵大臣、自治庁長官、厚生大臣、文部大臣、農林大臣、労働大臣に対する質問を続行いたします。    午後七時五十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     波多野 鼎君    理事            石坂 豊一君            野田 卯一君            羽生 三七君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            泉山 三六君            小野 義夫君            工藤 鐵男君            中川 以良君            長谷山行毅君            一松 政二君            平井 太郎君            深水 六郎君            安井  謙君            山本 米治君            岩崎正三郎君            内村 清次君            河崎 ナツ君            佐多 忠隆君            下條 恭兵君            山田 節男君            吉川末次郎君            原  虎一君            若木 勝藏君            楠見 義男君            高橋龍太郎君            菊田 七平君            中井 光次君            一松 定吉君            堀木 鎌三君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 天野 貞祐君    厚 生 大 臣 黒川 武雄君    電気通信大臣  田村 文吉君    労 働 大 臣 保利  茂君    国 務 大 臣 岡野 清豪君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    地方財政委員会    事務局長    荻田  保君    地方自治政務次    官       小野  哲君    法務府民事法務    長官      田中 治彦君    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       東條 猛猪君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    大蔵省主計局給    與課長     磯田 好祐君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省主税局調    査課長     忠  佐市君    大蔵省銀行局長 舟山 正吉君    厚生省医務局長 東 龍太郎君    厚生省薬務局長 慶松 一郎君    厚生省社会局長 木村忠二郎君    厚生省保險局長 安田  巖君    労働事務次官  寺本 広作君    労働省労政局長 賀來才二郎君    経済安定本部産    業局長     増岡 尚士君    経済調査庁監査    部長      木村  武君