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岡本愛祐君
只今議題となりました
地方財政の
緊急対策に関する
決議案につきまして、
発議者たる地方行政
委員会に所属する
委員全員を代表いたしまして提案
理由の説明を申上げます。
先ず
決議案の案文を朗読いたします。
地方財政の
緊急対策に関する決議
地方財政委員会委員長は
地方財政委員会設置法第十三條の規定に基き十一月二十五日及び十二月二日附地方財源追加増額に関する
意見書を
国会に提出し、
地方財政の現況にかんがみ
昭和二十五年度において
地方財政平衡交付金八十八億一千二百万円の増加交付方を要望して来た。
さきに
政府は地方税法、
地方財政平衡交付金法等により
地方財政制度に画期的の改革を加え、
地方財政を充実強化し、民主政治の基盤たる地方自治の確立を図
つた。
然るに
政府は
昭和二十五年度補正
予算案において僅かに平衡交付金三十五億円の増額を計上するに過ぎない。
かくて
地方財政委員会委員長の
意見書に述べるが如く
地方財政の円滑な運営に重大な支障をきたし地方自治の危機を招来するものと認める。
よ
つて政府は速やかに
地方財政平衡交付金の再度の増額、地方債発行額の大幅の増加その他適当の
財政措置を講じも
つて地方財政の窮乏を救済すべきである。
右決議する。
以上であります。
地方財政を確立いたしますことは、地方自治を確立する第一の
條件であり、地方自治の確立なくしては真の意味における民主政治の完成を望み得ないことは、我々一同が確信いたしておる
ところであります。
国会におけるあらゆる審議は、ひとえに我が国における
民主主義、民主政治の完成を目標にいたしておるのであり、この意味において地方自治を推進することは
国会政治について重大な前提となるものと思うのであります。
かくて私どもは
地方財政の諸問題については特に重大な関心を寄せざるを得ないのでありますが、
昭和二十五年度補正
予算に関連いたしまして、ここに本
決議案を提出いたしまして、
政府を鞭撻し、その反省を要望するに至りましたことを誠に遺憾とするものであります。
従来地方自治と称するも地方自治の実体はなく、
地方財政と称するも実は国の
財政の附属物に過ぎなか
つたのが、我が国における明治以降の実情でありました。新らしい地方制度によりまして、この
事情は大いに改められることになりました。けれども、過去の伝統は直ちに完全にぬぐい去ることはできません。又戰時中の国家
財政中心の諸制度或いは諸候件も未だにその伝統を引いて、
地方財政に暗い影を投げかけているのが現実の姿であります。国と地方とは相互いに協力協同いたしまして、ここに初めて完全な国政を期待し得るものでありますから、この二つのものが対立抗争するような
事態は最も望ましからぬことであり、このような
事態に至ることのないように、
政府も地方公共団体も極力戒しめることが必要であります。
政府は先に新地方税法、
地方財政平衡交付金法、
昭和二十五年度における災害復旧事業費国庫負担の特例に関する
法律等を
国会に提出いたし、本年度よりその実施を見まして、着々地方自治の確立を図りつつあると言
つておるのであります。
ところが
昭和二十五年度補正
予算措置については、右
法律の本旨に反し、
地方財政の実情を顧みない態度の窺われることは誠に遺憾であります。よ
つて我々の所属いたしまする地方行政
委員会におきましては、すでに去る十月二十五日、全会一致を以ちまして
地方財政緊急対策に関する要望事項を議決し、
地方財政の緊念
財政需要の増加に対しまして、
政府が右
法律の趣旨に副い、速かに
地方財政平衡交付金、国庫補助金、起債、融資の増額、その他適当の財源
措置を講じまして、以て地方自治の確立を期すべきことを強く
政府に要望したのであります。
而して
内閣総理大臣の所轄の下にあります
地方財政委員会の
委員長は、
地方財政委員会設置法第十三條の規定に基き、十一月二十五日及び十二月二日附を以て、
内閣及び
国会に対し、地方財源追加増額に関する
意見書を提出いたしまして、
地方財政の現況に鑑み、
昭和二十五年度において
地方財政平衡交付金八十八億一千二百万円の増加交母方を要望して来たのであります。即ち、
地方財政委員会の計算によりますと、
昭和二十五年度
地方財政の需要は合計三百二十三億八千万円の追加増額を必要とすることにな
つているのでありまして、その内訳の主なものは、経常的経費として、地方公務員の給與ベース改訂による増加四十三億八百万円、年末手当支給に要する経費四十五億二千八百万円、教育
職員級別格付基準改訂による増加四億九千百万円、
政府補正
予算に伴う増加十八億八千万円、平衡交付金決定後法令の改正等による
財政需要の増加額十五億九千六百万円、右合計百二十八億三百万円、臨時的経費として、災害復旧公共事業費、災害
関係單独事業費、失業対策事業費等の増加額計百九十五億七千七百万円、総合計三百二十三億八千万円の増額を必要とするというのであります。
これらの増加額の財源
措置として、
地方財政委員会におきましては、経常的経費の
性質を有する部分合計百二十八億三百万円につきましては、既定経費の節約により約四十億円を捻出すると共に、平衡交付金の増額八十八億円の増加交付方を要望しているのであります。尚、臨時的経費の増加分百九十五億円につきましては、地方債の発行額の増加により
措置することを適当とする旨の
意見を提出しております。然るに御
承知の
通り政府が補正
予算案に計上いたしました
地方財政平衡交付金は僅かに三十五億円に過ぎないのであります。
政府の見解では、その残りは地方公共団体側の冗費の節約と雑収入等、既定の歳入増で処理することができる、又処理ができなければ事業の繰延べをせよというにあるようであります。
政府が
地方財政に余裕があるという根拠の第一は、国庫の歳出は最近毎年度減少しているのに引替え、
地方財政は膨脹している、これは地方の
財政のやり方が悪いからであるというのでありますが、これは誤解であります。国庫
予算の減少しているのは、債務償還費とか、価格調整費とか、一般の行政に
関係のない経費で、インフレ時代の特異の経費が経済の安定するに伴い減少するのによるもので、それを除外した国の歳出、一般行政費は却
つて増加しているのであります。又国の
予算に対する地方
予算の比率が最近のように大きくなるのは適当ではないという
政府側の見解でありますが、戰前において、軍事費を除いた国の
予算に対し、地方の
予算は同額以上であ
つたのであります。而も地方自治が強化され、新たに六・三制とか、自治体警察、自治体消防等の費用が地方に増加することでありますから、当然比率は地方費のほうが国費よりも多くな
つて然るべきであります。
第二、
政府の見解では、地方団体の経費には無駄即ち冗費が多い、即ち
職員数が多く、給與が高く、宴会が多くて接待費が濫費され、地方吏員や議員の陳情旅行が多くて、旅費の支出に無駄があるというのであります。この点につきましては我々地方行政
委員会におきまして大いに検討いたしました。確かに
政府の指摘するがごとき事例も若干はあるのでありまして、かかる冗費は勿論それが少額であ
つても是認されないのであります。地方公共団体は深く自粛いたしました、節約の余地のある限り支出を緊縮すべきであります。而してこの点につきまして、地方側は
緊急対策として、二十五年度において約四十億円の経費節約を予定しているのであります。旅費、接待費の激増は、速かに地方側の自粛に待たなければならないのはもとよりでありますが、実は主として中央官庁の
許可、認可、補助金交付、物資、資金の割当等の
事務が増加したために、中央官庁への交渉陳情の必要上地方側の上京が増加し、又中央官庁
職員の地方視察調査が激増し、饗応を要したことに原因する
ところが多いのであります。又地方
職員の数が多きに過ぎるとの非難、高給であるとする
政府側の見解は、盾の一画、例外的なものを見たのでありまして、全体といたしましては誤まりであります。地方自治体は、法令その他中央官庁の指示に基く義務的或いは半強制的な
職員の増加に悩んでいるのが実情であります。又給與は国の
職員に比して概して低く、若干上廻る例外的の場合はそれ
相当の
理由があるのであります。要するに
地方財政にそれ程大きな冗費があるものではありません。又地方税法の成立が遅れたこと、税額が急に上げられたこと等も、
地方財政を窮乏に陷れた原因にな
つております。尚、
政府側の見解によりますと、平衡交付金を増加することは
地方財政の国庫への依存性を高めるものであるから、地方はみずからこれを賄うべきであるとする見解があります。併し平衡交付金は單に国庫が恩惠的に地方団体に交付するものではありません。元来地方税と並んで地方独自の財源であ
つて、ただ地方みずから徴收する代りに国の手で徴收して、地方公共団体の間のでこぼこを調整するものであります。
以上私共は、所属する地方行政
委員会におきまして、
地方財政委員会、地方自治片側は勿論、
池田大蔵大臣、
大蔵省の主計局長等の出席をも求め質疑いたしました。又
大蔵省及び
地方財政委員会双方から幾多の資料の提出を求めまして検討したのでありますが、
地方財政の緊急
財政需要約三百二十四億円に対し、平衡交付金の増加は僅かに三十五億円で、
地方財政の冗費の節約と雑收入の増加とで以て
措置することは到底不可能であるとの結論に到達いたしたのでございます。
かくのごとくであれば、
地方財政委員会委員長の
意見書に述ぶるがごとく、
地方財政の円滑なる運営に重大なる支障を来たし、地方自治の危機を招来するものと認めます。
地方財政委員会の
意見書は、それはそのまま地方自治体の血の叫びであると
考えてよいと存じます。恐らく皆様方のお手許にもいろいろな方面から地方自治体の悲痛な訴えが通じられていることと存じます。私共の所属する地方行政
委員会には、その陳情書が積んで山をなしているのでございます。この故に、
政府が速かに
地方財政平衡交付金の再度の増額、地方債発行額の大幅の増加、その他適当の
財政措置を講じ、以て
地方財政の窮乏を救済すべきことをここに強く要望するものであります。
以上本
決議案の提案の
理由を申述べ、本決議に対し各位の御賛同をお願い申上げる次第であります。(
拍手)