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説明員(
徳永久次君) この鉱害賠償について金銭賠償を原則にいたしまして、原状回復を原則にいたしていないという点につきましての
考え方を申上げたいと存じます。
鉱業をやりました際に、農地その他にいろいろな土地の陥落その他の迷惑を及ぼすということは、これは
お話のごとく当然日本の
ように特に平地の下を掘
つております
ような場合には非常に多いわけであります。
鉱業法ではその際に
鉱業権者にどこまでの
責任を負わすべきであるかということをこの法案作成に当りまして検討したのであります。その
考え方はそれによりまして農民が受けました損失をカバーすると申しますが、農民の受けました経済的な損失は、これは
鉱業権者が
仕事をいたしましてそれによりまして或る利益を受けておらず、それに與えた損害をカバーし得ない
ような
事業であれば、これは国全体として見た場合に、
事業としてまあ不適当な
仕事だという
ような見方もできるかと思いますが、
鉱業によりまして成る
程度利益を受けているわけでありまして、その
程度は当然にまあ計算に入れてそれはや
つて貰わなければならんという
ような
考え方で、まあできているわけであります。そこでその損失はこの
法律によりましても農民の受けました経済的な損失はこれによりまして十分に回復可能なことに相成るかとも思われるわけであります。ただ飜
つて考えまして、農民が受けました経済的な損失というものはそれによ
つてカバーされ、
従つて農民としてはそれが農業の面でこうむ
つた損失は
鉱業権者から貰
つたということにはなるわけでございますが、併しながら広く飜
つて考えますると、農民が今まで
仕事をしておりました農地、その農地の生産力というものが低下した損失というものは国として残
つておるわけでありまして、その生産力の低下した分に応じまして農民は経済的にはカバーされたけれども、土地は陥落し放しという形になりまして、今まで米が沢山取れてお
つた場所が、美田が、米ができなくな
つてしま
つたという
ような損失というものは別途起
つて来るわけであります。そこでこの法案は、ではそれを原状回復にいたしますならば農民も経済的な損失を受けることなしに農地を元
通りにして貰うわけでありますから、それによ
つて生産力も落ちない。
従つて国全体として見た場合に生産力も落ちなくて済むし、又農民自身も昔
通りの生産なり、農業による利益を受け得るということになるのでいいじやないかということに相成るかと思うわけでありますが、ところがそうなりますると実際問題といたしまして、農地につきまして原状回復をいたしますことの負担と申しますものは、先程の農地の生産力の低下した分の農民の受けました経済的な損失をカバーする限度は
鉱業権者としてや
つても
鉱業とまあ両立して成立つといたしましても、原状回復を原則とすることにいたしました場合には、それは遥かに
鉱業権者の負担が前の場合よりも非常に大きなものになりまして、その結果延いては
鉱業自身が成立たなくな
つて、みすみす大事な地不
資源というものを掘り出せないということに相成るのではなかろうか。さ
ような
考え方の下に、
鉱業権者は
鉱業によ
つて人に迷惑をかけたわけでありますから、迷惑をかけた限度は必ず何とか始末をしなさい。被害者としては迷惑を受けた限度それを金銭で見積りますと幾らになりますか、その限度は
鉱業権者へ請求する
権利があるのだとしう
建前の下に法案を作
つてあるわけであります。それによりまして
鉱業も成立ち、農民も一応受けました損失はカバーし得るということに相成るかと思うわけであります。ただ
残ります問題は、そういうことによ
つて農地を持
つている農民はそれで経済的な損失はカバーされるわけでありますが、
国会体として生産力が低下した分は、国家的に見た場合に美田であ
つたところが駄目にな
つてしま
つたという
よう状況が残るということに相成るわけであります。この点につきましてはその
鉱業法の体系全体から見まして、
鉱業権者の賠償
責任の
範囲を決めるより以上の問題に相成りまするし、又それを国として農地が潰れましたものをどうするかという
ような問題は、潰れたものを全部元に戻すというのも理想でありまし
ようが、そう行き得るものでなし、
場所によりましては、そこは放置してもよろしいという
ような
場所もなきにしもあらず、それは別途
考え方としましては国土の総合的な開発利用というものと、生産力なり利用度の向上という
ような見地、或いは財政なりの関連も
考えらるべき問題で、恒久法でありまする法文にそれを切り盛りするのは、聊か不適当な事項ではないかという
ような考の下に、その
ようにいたして行きたいという
考え方であります。