○高田なほ子君 あなたのおつしやることはもうよくわかるのですが、これを取入れるか取入れないかということが非常に私は大きな問題であろうと思うのです。そして今ここで決議であるとかないということで壁に当
つておるような形にな
つておるのでございまして、私の伺いたいことは、結局
法律というものが国民を拘束するものではなくて、飽くまで
法律というものは国民を保護するものである。公共の福祉の増進のために福利を保護するものである、こういうふうに考えておるわけでありますけれ
ども、御承知のように本
法案は各
委員から幾多の矛盾がすでに指摘されておる。私が特にここに申上げたいことは、近代の
法律の中で公共の福祉とか或いは治安の維持とかいうような美名に隠れてどのように我々国民の人権を無視して来たかという近代の日本の歴史を考えるときに、やはりこれは法の精神というものをはつきりもう解明しなければならない段階に来ておるのではないかと思うのです。思いまするに治安維持法は、国家の治安の維持のために、国民の福祉を守るために治安維持法が制定されたのでありますが、治安維持の名において無事の国民の言論の自由を彈圧して、畏怖と恐怖のどん底に国民を陥れたというあの
法律の施行された日本の姿から考えるとき、私は公共の福祉という美名に隠れて幾多の矛盾点をそのままにこれを進めようとするような考え方に対してはどうしても納得が行かないわけなのでございます。そこで私は
質問の時間が許されておりませんで、誠に残念でございますので、せめて基本的な問題の一、二を
労働大臣に
お尋ねしたいのですけれ
ども、公共の福祉と基本的な人権ということをどういう一体繋りにおいて調節して行くか、これが非常に問題だろうと思うのです。社会の公共の福祉ということは、これは社会というものと切離してあるものでないということは今更申上げるまでもないので、社会機構の個人の
権利をどのように活用して行くか、個人の
権利を守り、そうしてその
権利を更に増進させるためにこそ公共の福祉ということが考えられなければならないのに、本
法案はそういうような点を全く主客顛倒いたしまして、基本的な人権を侵害している部面が各所に現われているのでございますが、特に本
法案の重要点である政治活動の禁止の面などはその最たるものではないかと思うのです。公共の福祉が保たれるために政治活動を禁止し、自分を保障するために政治活動を禁止し、言論の自由を抑えようとするならば、先頃の公聽会にも公述人から言われたように、そういうようなことが公共の福祉を増進するというならば、今日監獄に繋がれているあの囚人は言論の自由、思想の自由、行動の自由というものをこれは全く失われておる。あの囚人の生活が最上の公務員としての生活環境にあるというな極論すらもせざるを得ないことになろうと思うのであります。然るにイギリスとかアメリカとかこういうような民主的な先進国家において、公共の福祉と個人の
権利ということの調節がかなり高度に行われているのでありますが、このことは文化の水準を測る
一つのバロメーターのように私は考えられるのです。更にこのような基本的な政治活動を彈圧することによ
つて、果してこの多くの
地方公務員各位が本当に忠実にその業務に服し、忠実に人間としての
責任を果して行くことができるかというと、過去の歴史は決してそういうことを証明していない。極端に言うならば、非常に尖鋭化するものと非常に隷属的な地位に陥れられるものとまあ二つに分れて、結局そういう社会の情勢というものは日本の曾
つての軍国主義戰争に追込んだフアシズムの擡頭の素地になるようなことになるのではないかということを私は非常に懸念するものでございます。更に私はこの問題について先頃五日、六日の公聽会に
国家公務員であられます東大の教授の富原誠一さん、辻清明さんの御両氏がこの本決案に対する公述人として御
出席の御予定でありまして、少くとも私はこの近代の、本
法案に対する最も進歩的な御
意見を承わるために、非常な期待をしていたにかかわらず、病気とかその他の、これは個人の自由な御
意思で欠席なされたと思うのでありまするけれ
ども、仄聞するところによれば、御両氏共にこれは日頃から
政府の反動的な御
意見というものに対しては終始反対の
意思を表明しておられるので、御自分のお立場もお考えになられて御
出席がなされなかつたのではないだろうか、こういうようなことを仄聞いたし、想像いたしますときに、今の日本の民主革命の段階において、誠に言論の自由、思想の自由を飽くまでも拘束をするといういわゆる基本的人権を縛り上げるという方向は、決して広汎な
意味における公共の福祉増進ということにはならない、こういうふうに考えるのでありますが、こういうような点の矛盾をどういうふうにしてコントーロールして行かれるであろうか。私は
国務大臣並びに
労働大臣の率直な御
見解を伺いたいのでございます。