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参考人(久保等君) 私のこれから申上げるのは、全官公百七十万の組合員の一応まとま
つた見解が主軸にな
つて申上げるわけでありますが、今回
国会において上程せられておりまする
ところの
給與法の
改正法律案につきまして、私
どもの
給與の問題が今回の
国会において
審議せられ、決定を見ようとしておることにつきましては、昨年以来、私
ども官公庁の
従業員組合といたしましては、
人事院の
勧告が速かになされ、且つ実施せられることを強く要望して参
つてお
つたわけでありまするが、今回漸くにして
法律の
改正案という形において
政府から提案せられました
法律案の内容を見ました場合に、極めて私
どもといたしましては不満に存じておるわけであります。特に
政府案の内容を見た場合に先ず最初の冒頭の
ところにおきまして、
人事院の
勧告を
原則的に尊重してここに
法律の
改正案を提出するものであるということがいわれておりまするけれ
ども、私
どもがこの
政府案を通覽いたして感ずることは、結果的には、全く
原則的に
人事院勧告を無視しておる。極めて
部分的に
勧告を若干参考に入れたという
程度の印象しか実は受けないのでありまして、先ず
一つの問題として、そのように考えられます点は、
政府がかねてから現在の
給與ベースの改訂につきまして八千円
ベースということを、
平均給八千円ということを口をすつぱくして申しておるのでありまするが、この八千円案なるものの実態につきましても、全く了解に苦しむのでありまして、少くとも
人事院の
勧告によりますると現在の六千三百七円
ベースの内容というものは、本法にあります地域給、それから家族
手当乃至は特勤
手当というものを含めまして六千三百七円ということを申しておりますし、そのことは
人事院の
意見書の中にも明確に謳われておるわけでありまして、
政府の八千円なんかの根拠というものは一向に明確にされておらないわけでありまして、その中には超過
勤務手当乃至は休日給、或いは又夜勤
手当その他のいろいろなものを含めて、そういうことを申しておるようでありまするけれ
ども、併しながら、それならばそうしたものも含めてなお且つ果して八千円になり得るかどうかという問題につきましても、なお疑問が残るわけでありまして、
政府は本年の六月一日現在におきまして、約六千八百四十円になるというようなことも申しておりますけれ
ども、このこと自体も、昨年の一月一日以来現在の六千三百七円にな
つておりまするこの
ベースが、果して五百数十円に亘
つて昇給しておるかどうかという問題につきましても非常に問題があるわけでありますし、同時に又
給與体系というものを考えました場合に、或る一年なら一年という間における
昇給がなされたからして、当然現在の
ベースが上
つておるという考え方、こうした考え方では
給與体系の根本的確立というものは到底期し得られないのでありまして、こうした
政府自体の
平均給八千円になるという問題自体につきましても、私
ども相当関心を持
つておる
ところの組合員の
立場から見ましても、この内容自体が極めて不明朗であり、不明確であるという点につきまして、非常に大きな不満を持
つておるわけでありますし、更に又千円引上げという問題につきましても、この千円の内容たるや先ほど来いろいろ申されておるような、いわゆる特別
号俸の
切下げ、或いは又地域給の
切下げ等によ
つて、この千円というような金の算出根拠が出ておるというような問題につきましても、全く納得が行きかねるのでありまして、少くとも
政府原案におきまして、
原則的に
人事院の
勧告を尊重すると言われる点が一向窺われないわけでありまして、私
どもとして非常に遺憾に思
つております。更に又ただ單に問題はそうした金額のみにとどまらず、特に
給與体系の問題につきましても同じことが申せるのでありまして、特にいわゆる下に薄く上に厚いという
給與体系が、今回の
政府案によ
つて示されておることにつきましては、全く私
どもとしてその真意を疑うものでありまして、
政府自体が
予算において十分な
ベース・アップができないということをよく口に申しておるようでありますが、それならばせめて
給與体系におきまして、果して
人事院の出された
ところの
勧告を誠意を持
つて実施しようとしておるのかどうかという点につきまして、私
どもが眺めた
給與体系というものは、いわゆる下に薄く上に厚いという結果が出ておるのでありまして、最低における、例えば一級一号と局長級における
ところの十四級六号、これを比較して見ました場合に、
人事院勧告におきましては七・二倍という数字が出ておるのでありますが、
政府原案によりますると八・三倍という形におきまして、いわゆる上に厚いという形がはつきり出ておるのであります。更にこれをほんの一例でございまするが、数字を挙げて申上げまするならば、特に
電通省の場合におきましては、三級一号は、新制高校卒業生が初めて役所に入
つた場合の
初任給でございますが、三級一号における
ところの今回の
人事院勧告によ
つて切替えた場合と、更に
政府の考える
ところの考え方によ
つて切替えた場合と比較して考えまするに、いわゆる
政府は、電通の場合におきましては一
号俸切下げということを考えておるわけでありまして、一
号俸切下げて切替えたといたしますと、その間僅かに四百九十円と三十銭しか実は
ベース・アップにならないという結果になるわけでありますし、
人事院の
勧告によりますと、九百七十七円八十銭という数字が出ておるわけであります。従
つて三級の一
号俸におきましては、
人事院勧告によります九百七十七円八十銭の僅か
半額程度の四百九十円三十銭という金額しか実は三級一号の場合には
ベース・アップにならないという結果が出ております。一方十四級六号の局長級を例にと
つて考えて見ますると、
人事院勧告によ
つて切替えた場合におきましては六千八百六十五円八十銭という数字が出て参るのでありまして、更に
政府案によりますると、これを上廻る二千五百円、この二千五百円がプラスされまして九千三百六十五円八十銭、九千三百六十五円八十銭が
政府から提案せられておりまする案になるわけでありまして、今この二つを比較対照して見ました場合におきましては、三級一号の場合におきましては、
人事院勧告の九百七十七円の
半額程度の四百九十円と三十銭であるし、一方の場合におきましては、
人事院勧告をオーバーすること二千五百円の九千三百六十五円八十銭という形になるわけでありまして、この場合において比較して考えられますことは、
人事院勧告におきましては、この
ベース・アップの比率は約七倍
程度の金額になるわけでありますけれ
ども、
政府案によりますと約十倍という形が出て来ておるわけであります。少くとも
予算の面において非常に制限せられておるということが言われつつ、一方においては貧しい
予算のうちであるならばあるだけに、少くともこの全
従業員の均衡という問題を十分に考えなければならないわけでありまするが、特に電通の場合を例にと
つて考えましても、九〇%になんなんとする
ところの人たちの犠牲において、約一〇%
程度の人たちが
人事院勧告以上によく見ておるということにな
つておるわけであります。勿論私
どもといたしましては、いわゆる十級、或いはそれ以上の人々が勿論現在より以上に優遇されることについて決してやぶさかではありませんし、勿論そうなければならないとは思いますけれ
ども、少くとも三級一
号俸においては僅かに四百九十円しか上げられないし、又このことによ
つて最低
生活が確保されるとは到底考えられ得ない段階におきまして、こうした
給與体系が実施されるということにつきましては、事業の運営等を考えました場合におきましても、将来非常に不利な問題を今後に残すのではないかということを強く危惧いたす次第であります。こうした今回の
ベース・アップの問題につきましての金額並びに
給與体系、両者いずれを比較勘案いたしましても、
政府の言われる
ところの
人事院勧告の尊重という点が微塵も窺えないことにつきまして、非常に私
どもその真意のほどを理解するのに非常に苦しんでおるという実情でございます。
特に私
どもの更に次に強調したいのは、先ほど来いろいろ言われておりますが、やはり
調整号俸の
切下げの問題でございまするが、この点につきましては勿論大きな
理由として、この
切下げがなされる
理由といたしましては、
勤務時間の問題が非常に大きな
理由として挙げられております。けれ
ども、少くとも
給與の問題につきまして、これまで如何なる形において実施するかという場合に、最も考えなければならないフアクターと申しますものは、やはりただ單に
勤務時間という問題にとどまらず、少くとも
職務の複雑性、困難性、或いは
労働の強度の問題、或いは又作業環境等の問題、種々なる問題を十分に考慮せられた上に決定せなければならないことは、本年の四月三日に
給與法が
改正実施せられておりまするが、この第四條におきましても、明確に謳
つておるわけでありまして、更に又本年の五月に制定を見ました
ところの職階法の中にも、第二條において、そのことがやはり明確に語われておるわけであります。従
つて少くとも
俸給を決定する場合におきましては、そうした種々の
事情が十分に考慮せられ決定せられなければならないにもかかわらず、今回の
号俸調整の
切下げの問題につきましては、そうした問題を一切御破算にいたしまして、
勤務時間が單に四十四時間にな
つたからということで以て決定を見たけれ
ども、又その間における経緯につきましては、先ほ
ども言われておりましたように、極めて二、三の人々によ
つて不明朗な形においてこれが提案され、更に党の責任者自体も十分にそうしたことに気が付かずにこのことが決定せられ、
政府案として提出せられたというようなことを聞くにつけましても、私
どもといたしましては、全くこの
給與の問題につきまて、どの
程度政府自体が真剣に且つ誠意を持
つて対処しておるのか、疑問に思わざるを得ないわけであります。更に又果して然らば
勤務時間の問題にいたしましても、全部四十四時間にな
つたかという、又現在な
つておるかという問題につきましては、やはりそれぞれの
事情によ
つて相違があるわけでありまして、特に旧
逓信省関係、現在の電通、郵政にいたしましても、未だ特定局等におきましては、現に四十八時間
勤務或いは、それより以上の
勤務をしている
諸君が多いわけであります。こうした
勤務時間の問題にいたしましても、十分にそうした現在の実情を把握することなくして、全く闇打的な形において
号俸調整が
切下げられるという点につきましては、非常に遺憾に存ずるわけでありまして、更に又現業官庁であります現在の電通或いは郵政等におきましても、特に
勤務は、ただ單に非現業的な
勤務ではありませず、特に交代制
勤務という形におきまして、深夜
勤務或いは又早朝出勤
勤務或いは又夜半の十二時頃に帰宅するというような
勤務が循環的になされておる特殊な現業官庁等におきましては、ただ單に
勤務時間によ
つて、こうした問題が決定され得ないということは当然であるわけであります。特に又この
給與問題につきましては、私
ども少くとも現業官庁の
従業員に対しましては、現在の
一般号俸表の
適用自体が非常に無理である。又このこと自体が根本的に不当であるというふうに存じておるわけでありまして、特に電通、郵政の場合を例にと
つて申上げましても、現在の
号俸表というものは、或る一定のポストにつかなければ給料が上らないという仕組にな
つておるわけでありまして、このことは必然的に現在の
一般号俸表における
ところの頭打が非常に多くな
つて来ておる。幾ら何年たちましても一定の
号俸以上に上り得ないという、現在非常に本質的な欠陥を露呈いたしておるわけでありまして、このことが少くとも二十年或いは三十年という長い勤続によりまして、経験が事業の内部におきまして非常に尊重せられ、又このことが事業の非常に大きなフアクターにな
つておりまするこうした現業官庁におきまして、
号俸の頭打という問題につきましては、根本的に
解決をしなければならない重大な問題でありまして、私
どもといたしましては、是非こうした面における
号俸表は、特別
号俸表の形におきまして
一般号俸表から是非切離されなければならない、というふうに考えておるわけであります。
更に今回の
政府案の内容の中には、
現物給與の問題につきまして、
給與からこれを差引くというようなことが語われておるわけでありまするが、この点につきましても、全面的に反対するわけであります。なぜかならば、特に現業官庁に従事する、事業官庁に従事する
従業員の
勤務というものは、卑近な例をと
つて申上げまするならば、或いは電信、電話の保守、建設に任ずる
諸君、或いは又遠くの山間僻地まで郵便の配達等に参る、こうした人々を考えて見ました場合に、これらに使用する
ところの被服、こうい
つたものは当然、少くとも特殊な形の被服でなければなりませんし、又こうした被服は日常私
どもの着服する被服とはおのずから形も
違つております。例えばゲートル、或いは地下足袋、或いは又特殊な手袋、こうい
つたものは、少くとも特殊な
勤務に必要とする被服でありまして、こうした被服が現物によ
つて支給せられるということからして、
給與の中からこうしたものを差引くということは、如何にしても不合理でありまするし、このことが若し実施されるといたしまするならば、
生活自体が基本的に脅威されるという結果にもなるわけでありまして、少くとも
現物給與という問題が、
給與の中から差引かれるということにつきましては、非常に重大なる問題を孕んでいるのでありまして、
給與が未だ安定しないという形におきまして、こうした問題が出されるということにつきましては、私
どもやはり事業の実態を把握しない現在の
給與の立て方につきまして、全面的に不満を表明いたすものであります。
更に次に移りまして、
勤務地
手当の問題についてでありますが、
勤務地
手当の問題につきましては、今回の
政府原案によりますると五分づつ
切下げまして従来の三〇%を二五%にし、又二〇%を一五%にし、更に一〇%を五彩にするということにつきましても、この問題は非常に全国的には問題のある点でありまするし、今回の
政府原案がこうした形に出される以前におきまして、非常に全国の
従業員は、このことによ
つて不安動揺を来たしておるわけでありまして、各
関係方面に対しまして連日大勢のかたがたが地方から出て来て、この点の陳情或いは又懇請をいたしている経緯等から考えましても、地域給の決定の問題につきましては、よほどこのことが愼重になされなければならないわけでありまするが、更に又今回のごとくこれが引下げられるということにつきましては、
給與ベースの問題自体が、先ほど来縷々申上げておりますように、極めて不健全であると同時に、又極めて若干の金額にしかとどまらない現段階におきまして、これを
切下げるということにつきましては全面的に反対をいたすものでありまして、少くともこの地域給の制定の問題につきましては、私
ども将来の問題といたしましては、十分に各地域から、それぞれの組織におきましては組織の代表者等を以て構成する
ところの地域給
審議会的なものを設置して、ここにおいて十分なる資料と十分なる
意見を鬪わした
結論によ
つて、地域給の問題は決定せられるべきであるというふうに考えておるわけでありまして、当面特に
人事院の
勧告に則りまして、
政府自体がいわゆるただ金を浮かせるために、原資を見付けるための名目的な意味で引下げられる現在の
政府の原案に対しましては、やはり遺憾ながら私
どもとしては絶対賛意を表明できないというように考えているわけであります。
更に又次に、
勤務時間の問題についてでありまするが、
勤務時間の問題につきましては、各庁の長官におきまして適当にこれを決定できるということにな
つておるのでありまするが、このことにつきましても、勿論賛成し難いのでありまして、少くとも
勤務時間の問題につきましては、
一般に四十四時間ということが言われておりまするけれ
ども、現在未だに四十八時間乃至はそれ以上のものがきめられており、而もそれによ
つて現在特に現業官庁等においては、これが施行されているということにつきまして、特に旧全逓時代におきましても、
逓信省の
従業員から非常に
勤務時間の問題、特に特定局の
勤務時間の問題については、強力な反対を続けて参
つておるわけでありまするが、未だにこのことが
解決できないということにつきましては、私
どもとしてこの際法的な根拠において明確に、少くとも如何なる
事情がありましても最高は四十八時間ということで、四十八時間以内ということに
勤務時間を是非制定して頂きたいというふうに考えておるわけであります。
更にもう
一つは、年末
給與の問題についてでありますが、この点につきましても、先ほど来いろいろ御
意見が出て、いろいろ申されてお
つたようでありまするが、少くとも
政府の現在提案せられておりまする案によりますると、年末
給與の問題については全然触れておらないようでありまするが、
人事院の
勧告に基きましても年々、過去における
ところの物価指数、或いは又生計指数等からはじき出された根拠に基く
ところの
政府の年末
給與一カ月分の問題につきまして、私
どもといたしまして、少くとも最低一カ月につきましては、これを
支給しなければならないと、即ち最低一カ月はこれを
支給するという形のものを、今回の
給與法の
改正法律案の中に是非制定して頂きたい、かように考えておるわけであります。
極めて概括的なことを申上げたわけでありまするが、要するに以上申上げました点は、私
どもといたしまして、少くとも
国家公務員法に基きまして設定せられた
人事院が、更に又
国家公務員法の命ずる
ところに従
つて出された
人事院の
勧告自体が、極めて便宜的に扱われ、而も表面にはこれは尊重すると言われながら、
実質的には殆んど骨拔きにな
つてしま
つておるという点につきましては、少くとも
立場の如何にかかわらず法を守る、少くとも民主主義の
原則であり又法治国家における当然の理念といたしまして、少くとも
人事院勧告は、これを十分に尊重し、実施されなければならない、かように考えておるわけであります。少くとも特にこの民主主義国家における
ところの政治を遂行する
ところの責任者である
政府職員に対する
給與自体が、実は欺瞞的な政策によ
つて決定するということでは、到底日本国家内における
ところの、民主国家としての法の運用乃至は又政治の運行自体に大きな危惧を感ぜざるを得ないのであります。少くとも
給與の問題については、もう少しまじめな形において、少くとも誠意を持
つた形において是非
人事院勧告は最低限として実施して頂きたい、かように考えるわけであります。少くとも私
ども今回の
政府原案を見て考えられることは、極めて冷い、極めて冷淡な実は
法案であるという印象を強く受けるわけでありまして、同じ
予算に仮に縛られるにいたしましても、少くとも先ほど申上げましたような大勢の
従業員のうちの、いわゆる薄給者を犠牲にした形におきまして、一部の人たちが
給與の改善がなされるという形の考え方、こうした考え方につきましては、根本的に反省を私
ども要望いたしたいと思
つておるわけであります。
以上申上げた点を十分に、今回の
法案の内容におきまして
修正せられることを強く期待申上げまして、私の概括的な公述を終りたいと思います。