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井上なつゑ君
只今藤森議員から御
発言のございました
社会保障制度に関連してお尋ね申すのでございますが、実は今朝ほどの本
会議で
柏木議員から
身体障害者と申しましようか、
傷痍軍人のかたの
処置について
緊急質問がございましたときに、
厚生大臣は
身体障害者福祉法によ
つて適当な
処置を講じたいというような御
答弁がございましたので、これにつきましてもう少し具体的に私は伺
つて見たいことがございますので、御
答弁をお願いいたしとうございます。
実は私共
厚生委員会は十二月二日の土曜日の午前から午後にかけまして
東京都内の
厚生施設を見て歩きましたのでございますが、そのうちの
一つに
身体障害者の
福祉法を適用されております
戸山寮の
傷痍厚生館というのを見たのでございます。この
厚生館というのは
厚生という文字は名のみでございまして、これは私がよく
承知いたしておりますが、戦時中は馬が入れてございましたところの
建物でございます。その
建物を改造いたしまして、そうして
只今の
身体障害者の
人々を入れて
職業補導をするのでございます。その寮に参りましたときはそこには四十数名の
身体障害者の人がお
仕事をしておられました。その
仕事の
種類を申しますと錠剤の
製造をや
つておられました。大変奇妙に感じましたがお薬を作
つておられました。一カ所では
メツキ職、一カ所ではラジオなんかの修理のお
仕事をしておられた。それからその他のところでは
印鑑の彫刻と申しますか、いろいろの
印鑑製造のお
仕事をしておられました。そして伺
つてみたところによりますとそれらの
人々の月収は一番最上で月に二千九百円から三千円未満でございます。とてもそれくらいの
収入では
生活ができないのです。でいろいろ
お話を承わ
つておりますと、そのなかの大多数の人が今朝ほ
どもお尋ねがございました
傷痍軍人なのでございます。でその
かたがたは
傷痍恩給を受けておられるのでございます。その
傷痍恩給のあるものは終戦後の
ポツダム政令で出されておりますので、その当時
傷痍軍人の人が
最低生活を営むようにというだけの額を頂いておられるのでございますが、
只今の
社会情勢、
経済状態におきましてはその
傷痍恩給ではとてもとても
生活ができない、一人のかたをとらえて私は
質問をいたしましたが、そのかたは四項症でございまして、一年に二千二百円の
傷痍恩給を受けておられるのです。それは月百九十円にも足りないのですが、但しそこで、二千九百円から三千円近くもらわれますので、一緒にしてどうやらその寮に入れて頂いて
生活もできておられるのだそうでございます。でそこのところではそこの
かたがたの
働きを見ておりますと大変働いておられることに喜んで帰
つて来たのでございますが、こうした
厚生館とか
職業補導所に入れられる
人々は、その
傷痍軍人いわゆる
身体障害者の
人たちのピラミツドの頭の人だけでありまして、その背後には数千といいますか、数十万の
身体障害者がいることを私
たちは
承知しなければならないのであります。特に私が今日申
上げたいのは
身体障害者の中でも非常に立派な
職業を持
つておられる人、例えて申しますと盲の
人たちで按摩さんなんかをしておられる人はとても大した
収入をと
つておいでになるかたもございますが、
身体障害者の中で最も高度な
身体障害者とも言わるべき
脊髄損傷の
かたがたのことを
考えて見たのでございますが、そのことにつきましても又
厚生大臣にもお伺い申
上げたいと思うのでございますが、手が一本
なかつたり、足が一本
なかつたりというような
人たちはこうした
厚生館で
仕事ができるのでございますが、
脊髄損傷の人は
日本国中にそう沢山ではございません、伺つたところによると二千数百名おられるのでございますが、その
人たちは殆んど
身動きができない、
身動きができないのでそうした
厚生館などに入
つて補導を受けて
職業に従事されることはできないのみならず、ほんとうに家の
人たちの手を一生とるのでございます。さようでございますが、その
人たちの一番高度の
脊髄損傷の人の
傷痍恩給は如何かと申しますと月に四百円
足らずでございます。
只今の
社会情勢下で四百円
足らずの
恩給を受けてそして家の人の手をと
つて行くことは、結局その家庭全体が
貧困に陥入り、
生活困難になることはこれは申すまでもないことでございます。そういうふうに困
つております
人たちが本当に
最低生活をするようにと
言つてそれだけのお手当を受けておるのでございますが、私共はその
人たちの
生活は
最低の
生活だとは思いません、少くとも私は
最低生活だとは思えないのであります。
最低の
生活の何階か下にあると私は信じておりますのでございます。でございますので、この際
只今又本日の本
会議で決議されました未
復員者の
給与法も、それらの
人々のことも
あとの
賛成演説で言われましたのでございますが、実際において未
復員者給与法もそれらの
人々には適用いたさないのでございます。そうかとい
つて身体障害者福祉法によりましてそれらの人がどれだけ恩恵を受けているかということは非常に疑問であります。その他の
方法で何らかそれらの本当の
最低生活の何階か下にございます
人たちを、何とか
厚生省でお救いになることができないのか、そういう
人たちのための何か手をお打ちになるおつもりがあるのではないかということを、この際
厚生大臣にお尋ね申
上げたいのでございます。御
承知のように聞くところによりますと、
大変疑いが晴れて
公職の
追放の解けたかたなんかは、その
公職追放に
なつたときから起算いたしまして
恩給を受けられたという
お話も聞いておりますのでございますが、
政府においてはこういうような
身体傷害者たちのことをあまり取
上げることは遠慮していられるのではないかと思いまするけれ
ども、この際何とか
厚生省でこういう
人たちのことをもう一度繰返して一応再
検討を願いたいと思います。そのことを
一つ承わりたいと思います。
それからもう
一つ私のお尋ね申
上げたいことは
戸山寮のことでございます。ここは非常に
施設が悪うございまして、これは特に他の
議員からも御
発言があると思いますが、ああした
施設の悪い所に入れておりまして私は
職業補導をさせるということは、これらの
人々には
身体苦がございまして、
精神苦がございまして、
貧困苦がございまして、そうした三重苦の
人々を入れて
職業補導をし、
生活を本当に安定せしめるためには、不完全幼稚極まるものだと思います。先程も申
上げましたように馬を入れておりましたその中へ代りに人間が入れられておるのであります。それと反対に
淀橋寮と申しまして、
浮浪者の寮を同時に見せて頂いたのでありますが、そこには十九才から四十才までの
血気盛りの
働き盛りの男の人が五〇%入
つております。そういう
浮浪者の人の寮の方が遙かに立派なものでございますので、これはいろいろな政策がありましようと思いますが、そういう
意味におきましてこうした
厚生館の
施設ということについて、もう少し
政府の方ではおやりになるお
考えがございませんか。この二点についてお伺いいたします。