○政府委員(根道廣吉君) 私
只今御紹介にあずかりました
特別調達庁長官の根道でございます。本日は皆様の貴重なるお時間を拜借いたしまして、
特別調達庁の業務につきまして御
説明申上げる機会を得まして誠に幸いと存ずる次第であります。
さて
特別調達庁は、占領軍が日本政府に要求する調達業務一切を担当することを主な任務としまする機関でありまして、それらの調達業務は、御
承知のごとく、年々一千億円以上に上る終戰処理費を以て行われております。なお本
年度からは、それまで
大蔵大臣所管でありました終戰処理費及び解除物件処理費並びに特別收入でありまする終戰処理收入、及び解除物件処理收入が内閣総理
大臣所管となりましたことにつきまして、当庁はそれらの所管
大臣としての業務、即ち
予算管理事務をも行な
つております。御参考のために、終戰処理費及び解除物件処理費の本
年度予算額をお示しいたしますならば、お手許にお配り申上げました第一表の
通りであります。
次に、占領軍の調達要求の根拠について述べまするならば、調達業務は
昭和二十年九月二日降伏文書調印と同時に、連合国軍総司令官から日本政府宛発出されました指令第二号に基きまして、日本政府の義務とな
つておりますことは、皆様も御
承知の
通りでございます。それに関しましては、更に連合国軍最高司令官から詳細な指令が
昭和二十三年の三月二十一日附スキヤツピン一八七二号として発出されました。その後再度に亘る改正が行われ、現在では極く最近、本年十一月二日附のスキヤツピン、二千百二十九号で施行されております。これらはいわば調達業務の憲法ともいうべきものなのであります。
次に
特別調達庁は如何なる内部組織を持
つておりまするかについて御
説明申上げます。先ず中央には本庁として一官房、四部、並びに附属機関として三つの審議会を持
つておりまして、本庁は終戰処理費、解除物件費及び特別收入の所管
大臣としての事務を処理すると同時に調達業務に関する方針、手続規定などを定めて地方機関を指揮監督しておるのであります。地方機関といたしましては、在日兵站
司令部調達部の支部と相対応いたしまして、東京、札幌、仙台、横浜、名古屋、京都、
大阪、呉、福岡の九ケ所に特別調達局が設けられ、更にこの九事務局の下に占領軍部隊と直接に接触を保ちますための監督官事務所が全国六十七ケ所に設置されておりまして、調達の現業を担当しておるのでございます。なお労務提供並びに旧日本軍の爆薬、兵器類の処理につきましては、その現業を都道府県庁に委任いたしております。
次に調達業務の内容について少しく詳しく御
説明いたします。先ず占領軍の調達要求はすべて
一定の形式の文書を以てなされます。それには三つの種類がございまして、調達要求書、英語ではプロキユアメント・デマンド、略してP・Dと称しております。それから労務要求書、これはレーバー・レキジシヨン、略してこれはL・Rと称します。及び通信命令、これはコンミユニケーシヨン・オーダー、略して、C・〇、その三種類がございます。先ずP・Dに基く調達要求について述べまするならば、不動産の提供、
建設工事の施行、役務の提供、需品の供給及び国鉄による輸送の五つに分類されるのでありまして、それぞれP・Dの記号によ
つて区分されております。第一の不動産の提供は、
土地及び住宅その他の建造物を接收して連合国軍に使用させることであります。第二の
建設工事は兵舎、宿舎、飛行場等の
建設或いは改造であります。次に第三の役務の提供でありますが、この内容は多種多様でございまして、電気、ガス、水の供給は勿論、家具、機械、器具、車輛、衣料品の修理又は洗濯、染色、或いは物の運搬、芸能の提供、ホテルの運営、ラジオ放送など、極めて多くの種類がございます。契約
金額も年額一件一万円くらいの小額のものから二十億円に上るものまであります。次に第四の需品でありまするが、これは主食、軍人軍属の被服等を除くあらゆる種類の物品の供給であります。非常に多数の
項目に
亘つております。以上四つの種類のP・Dはすべて在日兵站
司令部から発行されまして、
特別調達庁が軍調達部との密接な連絡の下に処理しておるものでありまして、本
年度におきましては、お手許に配付いたしました
資料の第二表の
通りの
予算額とな
つております。これらの四つの種類の調達業務の細部について一々御
説明申上げることは省略いたしますが、不動産賃貸料の値上げにつきまして一言申述べたいと思います。これは本年八月地方税法の改正によりまして、固定資産税が課せられますことと
なつたことに伴う賃貸料の改正のことでありまして、当庁といたしましては早くから改正案を作成して
関係方面との折衝を開始したのでありますが、
関係方面において愼重な審議が行われておるために未だ
決定に至
つておりません。
従つて目下のところ、値上げの割合なども
数字を申上げる段階にな
つておらん
状況であります。併し料率はいずれ近く
決定される予定でありまして、
決定の上はこれを八月に遡
つて適用する所存であります。P・Dの種類の第五番目は、P・M・R・Sという記号を以て、米軍の輸送
司令部より発行されておるものでありまして、国鉄及びそれと連帶する私鉄による占領軍の人員、貨物の輸送を要求するものであります。申すまでもなくその実際の業務は日本国有鉄道が担当し、当庁としましては国鉄に対する
資金の繰入れを行な
つております。
次に労務要求書は、日本人労務者を占領軍に使用させるためのものでありまして、これに関する業務はP・Dにおいて、調達業務と異なりまして、
特別調達庁本庁の直轄の下に全国各都道府県が労務管理の実務を取扱
つております。
特別調達庁本庁はその処理方針、給與、その他の基準手続規定等を定めまして、各都道府県の業務実施を監督すると共に経費の
予算管理を行な
つております。
次に通信命令は、電気通信省による電信、電話等のサービスを要求するものであります。軍通信部隊により発行され、電気通信省が業務を担当しております。当庁は電気通信
事業特別会計に対する
資金の繰入及び航空保安庁に対する
予算配付を行な
つておるのであります。
以上が調達面の業務でありますが、その他にも当庁の実施しておる業務がありますので、それについて申述べます。先ず使用解除財産の処理業務があります。これは調達要求書に基く不動産提供に附帶する業務でありまして、提供した不動産が占領軍によ
つてその使用を解除された場合に、これを原所有者に返還すると共に、終戰処理費によ
つて改造された
部分に対しまして接收前よりも価値が減少した場合には所有者の受けた損害を補償し、或いは接收前よりも価値の増した場合には、所有者の利得を評価してそれに相当する
金額を国庫に納入させるものであります。これについての基本方針は
昭和二十四年十二月二十七日附の閣議
決定と思いますが、使用解除財産処理要綱によ
つて定められておりますが、これを要約いたしますと、不動産接收のときにおける価格と、使用解除のときの価格とを、
特別調達庁の附属機関として設置されております調達不動産審議会に諮
つて決定しまして、その額を所有者と協議の上損失として補償する、或いは利得として徴收する。こういうことにな
つておるのであります。その場合、当初の使用目的に合わないような改造が行われておるときは、当初の目的に供するために必要な改造の
費用は損失補償額として計上することにな
つておりまして、補償金支拂の順位を定めて補償事務の適正なる実施を図
つておるのであります。当庁は前述の線に沿
つて補償業務の迅速な処理に最大限の努力を拂
つておるのでありまして、
昭和二十四
年度におきましては約一億三千万円の補償を行いました。本
年度は約二億五千万円の
予算を以て処理に当
つております。第二に、解除物件の処理業務であります。これは連合国軍の要求に基いて、日本政府が調達した物件が調達解除されまして、日本政府の処分に委ねられたものを処分する業務であります。解除物件は大別して二種類になるのであります。その
一つは、日本政府が連合国軍の住宅の
建設、維持、管理のため、連合国軍の指令に基いて調達し、保管していたものを、日本政府が自由に処分し得るように解除されたものであります。その他の
一つは、調達要求書に基いて占領軍に納入してしま
つたものが不要とな
つて調達解除されて、日本政府に返還されて来たものであります。解除物件の急速な処理につきましては、当庁といたしましても最大限の努力を拂
つて来ておりますが、会計法規の制約、その他の
関係で一時は可なりの滯貨を生じたのであります。その後法規の特例が政令を以て定められましたので、本年二月二十四日閣議
決定の解除物件緊急処分要綱に
従つて処分した結果、現在は滯貨と称すべきものはありません。現在までに解除された物件総数は八十四万五千五百トンに上ります。そのうち処分済のものは八十万六千トン、処分の価格は二十二億であります。従いまして現在約三万九千五百トンの在庫物件がありますが、これは主として本年八月以降に解除された分でありまして、これも二、三ケ月の間には処分を終る予定であります。なお今後も毎月約一トンぐらいの物件が解除される
見込であります。最後に解除物件の売却
方法について述べますならば、それは
一般競争入札を
原則といたしておりますることは、
一般の国有物品の場合と同様でありますが、なお前に述べましたように、売却促進のため会計法上種々の考慮が拂われております。第三に、連合国軍人等住宅公社の業務について申上げます。これは御
承知の
通り特別調達庁の本来の業務ではありませんが、業務の委託と役職員の兼任とによ
つて、実質的にはその大
部分は当庁の業務として扱
つておるのであります。この公社は御
承知の
通り本年一月連合国軍総司令官からの指令に基きまして、米国の対日援助見返
資金からの借入金を以て連合国軍人等の宿舎を全国に新設いたしますると共に、居住者との間の賃貸業務契約を取扱
つております。現在までに連合国軍から
建設を指令された住宅の数は二千三戸でございまして、現在その殆んどすべてが竣工又は竣工に近い状態にな
つております。その
建設状況及び居住
状況につきましては、お手許の
資料の第四表の
通りにな
つておるわけでございます。右の
建設に要しまする
費用は約七十二億円でありまして、居住者から徴收いたしまする賃貸料を以て逐次借入金を返済して行きまして、現在のところ約十八年を以て返済を終る予定であります。尚賃貸契約は公社が連合国軍人、軍属個人と締結するものでありまして、賃貸料は住宅の大きさに
関係せず、居住者の階級に応じて定められております。参考のために各階級に対する賃貸料をお示し申しますならば、お手許の
資料の第三表に載
つております。第四として、次に当庁が担当しております特殊な業務の
一つとして、旧日本軍の爆薬、兵器類の処理に関する業務があります。これは総
司令部覚書を以て日本政府に指令された業務でありまして、当庁は都道府県を指揮監督して陸上のものを処理し、海上保安庁が海上のものの処理に当
つておるわけであります。
以上申述べました外、当庁は終戰処理費、解除物件処理費及び特別收入の
予算管理をも担当しておるのでありまして、終戰処理費につきましては
大蔵省、厚生省、水産庁、海上保安庁等の他省庁が業務処理の責任を有しておるものに対しましては、
予算配付をいたしておるわけであります。
以上が
特別調達庁の所掌いたします業務の概要でございます。
次に業務の運営の基本方針について一言申述べさせて頂きます。
第一に、業務は門戸開放であります。いやしくも当庁との契約を希望する業者は、すべてその業態を調査して、適格と認められますものに対しましては、最大限に契約の機会を與えまして、取扱の公正を期しております。
第二に挙げられますのは、調達の迅速と的確でありまして、これは連合国軍が占領目的遂行のために最も強く要望するところでありまして、我々もこの点につきましては最大限の努力を拂
つて参
つたのであります。そのためには国内会計諸法規との調整上少からぬ苦心を要する場合が非常にしばしばございます。
第三に重要なことは国費の節減であります。これは占領軍
当局の要求を迅速に処理いたすという至上命令の下にあ
つては、ときによ
つては非常に困難な場面に遭遇するということもありますが、当庁としてはあらゆる手段を盡しまして努力しておられるわけであります。又当庁は経費の節減の
方法として入札の励行につきまして最大限の努力を拂
つておるつもりであります。そのために
工事需品はもとより、従来入札不可能とされておりましたようなものにつきましても、特別の工夫によ
つて入札を実施しておるような
状況であります。
最後に当岸は前述のごとく年々莫大な国費の経理に当
つておりますので、会計事務の適正、特に非違行為の防止のために特別の努力を拂わなければならないことは当然のことでありまして、そのためには組織上におきましてもいわゆる横割方式が採用されておりまして、
一つの契約に当りましても一部局のみに
決定を任さないで、各部のいわゆるチエツク・アンド・バランスの形において行われるようにな
つておるのであります。又本年四月一日からは本庁が現業部面から全く離れまして、各部間の監査に専念しておる次第でございます。
以上ながなが申上げましたが、私どもといたしましては当庁の業務の重大性に鑑みまして、いよいよ業務の改善に盡しまして、皆様方の御期待に副いたく存ずる次第でございます。ここに今後とも一層御叱正を賜りたく、又御鞭撻を頂き、満足に
仕事ができますように御援助願いたいと存じておる次第であります。