○
今野委員 本
請願は
東京都南多摩郡町田町の
東京土建一般
労働組合町田分会というところから出された、いわゆる職安
関係の自由
労働者の生活を助けてもらいたい、こういう
趣旨の
請願であります。これは今年ばかりでなく、昨年もあつたことでございまするが、ともかくこの冬を控えて、職を失
つて飢餓線上にさまよ
つておる失業者というものが、実に苦しい生活をしておることはもちろんであります。しかも最近は職を求めて参りましても、なかなか職が得られない、そうしてあぶれる人も大分多く
なつて来たわけであります。それからこの冬の寒さに向
つてふとんもない。これはふとんがないというとおかしいようでありまするが、大体ああいう自由
労働者の諸君は、冬何らかの形で暖かい着物やふとんを獲得する、夏になればそれを売り払
つて生活しなければならない、こういうような
状態であります。中には俵をどこからかかつぱら
つて来て俵の中に入れるとか、その他いろいろな実に悲惨な生活をしている人が多いのであります。そういうような人たちが今のところこういうようなことを、
政府に実現してもらいたいということを頼んで来ておるわけであります。
第一に日当を、今税込みで二百四十二円でありますが、これを三百五十円に引上げてもらいたい。二十日ぐらいしか働けないのだし、税金もとられる、いろいろなことから三百五十円に引上げてもらえないか。それから輪番制をなくして、日曜日にも働かしてもらえないか。それから公傷手当、保険
対策を
実施してもらえないか。公傷した場合にも手当とかその他いろいろなものがないから、そういうものを
実施してもらえないか。失業保険などは形式上ありまして、毎日の日当から引かれておりますが、これは実際は今まで受取つた者はほとんどないとい
つてもいいようであります。また受取れぬようにできております。でありますから、そういうものを
改善してほしい。それから第四番目には、作業現場にテントを設けて、何か湯茶の設備などしてもらいたい。これは私も参つたこともありますが、子供をつれたおかみさんやら何やら、ことにおじいさん、いろいろな人が来ております。でありますからテントを設けてもらえないか、湯茶の準備をしてもらいたい。それから地下たびの配給を無料でしてもらいたい。それから雨具を貸与してもらいたい。雨の中をぬれたままやらされる場合が非常にあるわけなのでありまして、それを貸与してもらいたい。それから往復の交通費を何とか免除するような方法をと
つてもらいたい。交通事故による遅刻を認めてもらいたい。この遅刻という問題でありますが、ことにこのごろのようにあぶれが多いと、朝早く行かなければならない。四時ごろ起きて出かける、そうして七時か七時半ごろ、働く伝票みたいなものをもらうのでありますけれども、四時ごろ起きて行かないとどうもあぶれる、こういうようなことがあるので、交通事故による遅刻などを認めてもらいたい。それから加配米は米で配給してもらいたい。これは現在粉で配給されております。そういたしますと、どうしてもパンにしたり、うどんにしたりするのに、金がかか
つてしようがない。だから米で配給してもらいたい。九番目に、
地方税を免除してもらいたい。それから子供の教育費なども、これは、たいてい引揚者とかいろいろな人が多いのでありますが、どうか全額を公共団体で
負担してもらいたい。それから手帳取上げの廃止。手帳取上げということが始終行われますが、そういうことは将来の生活を脅かされるから、これを廃止してもらいたい。それから越冬
資金約一箇月分の五千円を支給してもらいたい。それから年末、年始の有給休暇を、十二月から一月にかけて五日ないし六日ぐらいもらいたい。それから託児所を設置してもらいたい。これは子供をつれて来ておる人の要求であります。それから健康保険を適用してもらいたい等、いろいろあるわけであります。これと同
趣旨のものが各職安の組合から出ております。事務上の都合でも
つて、町田だけがこうや
つて請願として出て来たわけでありますが、各職安から全部出ております。こういうようなお願いをいたしますと、いかにもこれはずうずうしいやつだとお考えになるかもしれませんが、しかしながら、その生活の実態や何かをつぶさに知るものとしては、
ほんとうにむりのない願いだ、一般公務員の方にも越冬
資金が出るし、あるいは給料値上げということも今度あるのだが、しかし二百四十円、二十日ぐらいの働き、しかも今言つたように電車賃や何かもかかるし、それから配給も米でなくて粉であるために金がかかる。子供をつれて歩けば、託児所もないので、子供たちを何とかごまかすためにお菓子も買
つてやつたり、何かしなければならぬ。こういうような
状態のもとでは、非常にむりがないものだと思うのであります。
なおその
請願の
一つの中で、
請願の理由というものを書いておりますが、あるいはその生活
状態のことを書いておりますが、非常に心を打たれるものがあるのであります。大体こういう日雇い
労働者に
なつておる人は、一体どういう人たちかと申しますと、たとえば戦争未亡人、あるいはまた海外引揚者として、住むに家がなく、職もない。厚生療でも
つて一月わずかの金を、百円とか何百円という程度でありますが、金をもら
つてや
つておる人、あるいは復員者として、今の世の中に生きる生活の仕方を、青年時代に学んでいない、兵隊に行
つてお
つて、突然帰
つて来て、この荒海の中に投げ出された人、それからみじめな空襲のために一家離散して、最愛の妻や子供とわかれて、あるいは社会の落伍者として現在に至
つておる人、あるいは戦争後ともかくあのやみ
経済の中で、やみなどやるのはいやだというので、まじめに
工場で働いていたが、しかし平和
産業の危機に直面して、みな職を失い、
工場をおつぽり出される。しかもそのおつぼり出されるまでに、給料の遅配が半年も、あるいははなはだしいのは九箇月も続いて、
ほんとうにどん底にまで、——勤めていてもどん底にまで陥
つてしまい、その上におつぼり出された、こういう人が多いのであります。現在もそういう
工場はたくさん私は知
つております。そういうような
状態のもとで失業者に
なつて、しかもこのごろは特に手帳取上げということがさつきありましたが、そういう中で失業者をさらに失業させる。失業者が職安で働いておるその手帳を取上げて、さらに失業させるということができておるわけであります。たとえば女などはどうもいかぬ、あるいはその他老人も困る、あるいはこういう人間はどうもトラブルを起していかぬ、そういうことで失業者の手帳を取上げて、さらに失業させる、こういうことも起
つて来ておるわけであります。それでさつきも言つたような生活の実態なのでありますから、私どもとしては、何とかしてこの社会の
犠牲者であり、そうしてこの人たちは
ほんとうに働かせるならば働ける人なのだから、何とかしてやりたい。一体この人たちは、私たちに向
つて、あるいは
工場で働いている
労働者に向
つて、何と言
つておるか。今どんなに給料が安くても、とにかく勤めておる諸君は特権階級だということを案に率直に申すのです。私もそういう手紙をたくさんもらいました。勤めておればどんなに給料が安くても特権階級だとわれわれは思
つておる、こういう悲惨な
状態であります。でありますから、これに対して
政府として何とかや
つてもらいたい。特に最近あまりにも生活が悲惨なものですから、立川市、あるいは兵庫県の加古川市、その他いろいろなところで、直接接しておる
職業安定所やあるいは市
当局の人たちは、この人たちに対して——皆さんのところもそうだろうと思いますけれども、子供にだ
つてお年玉として何かやる、すぐ四、五百円のものはやるわけです。だからお年玉を五百円やろう、千円やろう、こういうような話が出ておるところもある。そうすると、そういうものに対して非常に苛酷な通牒が行
つておるのであります。これは
東京都の
労働局長の林武一君の名前の通牒でありますが、労失対発第二百四十八号、
昭和二十五年十一月三十日ということで、これはあとで質問のときに詳しく申してもいいと思
つておりますが、あまり悲惨な
状態をまのあたりに見ているものだから、何か
対策を講じようとすると、それに対してはや
つてはいかぬという、きつい指令が出ておるわけであります。こういうことはどんな理由があるにせよ、あまりにもこれはむごいのではないかと私どもは考えるのでありまして、
政府側として一体どういう
対策をお持ちか。私としては、この
請願の
趣旨がなお貫徹されるように、皆さんの御協力をお願いしたいと思うのであります。