運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-12-08 第9回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月八日(金曜日)     午前十一時五十七分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 島田 末信君 理事 福永 健司君    理事 稻葉  修君 理事 赤松  勇君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    佐々木秀世君       佐藤 親弘君    塚原 俊郎君       船越  弘君    石田 一松君       川崎 秀二君    青野 武一君       前田 種男君    江崎 一治君       今野 武雄君    中原 健次君  出席政府委員         警察予備隊本部         次長      江口見登留君         検     事         (法務府検務局         長)      高橋 一郎君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  石井 昭正君         労働事務次官  寺本 広作君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君         労働事務官         (職業安定局         長)      齋藤 邦吉君  委員外出席者         通商産業事務官         (資源庁鉱山保         安局長)    小野儀七郎君         労働事務官         (労政局労働組         合課長)    飼手 真吾君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 濱口金一郎君     ――――――――――――― 十二月三日  委員前田種男辞任につき、その補欠として田  中織之進君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員田中織之進君辞任につき、その補欠として  前田種男君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員島田末信君及び吉武惠市君辞任につきその  補欠とし今村長太郎君及び大野伴睦君が議長の  指名委員に選任された。 同月六日  委員今村長太郎君、大野伴睦君、船越弘君及び  江崎一治辞任につき、その補欠として島田末  信君、吉武惠市君、岡崎勝男君及び中西伊之助  君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員佐藤親弘君及び岡崎勝男辞任につき、そ  の補欠として小玉治行君及び船越弘君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員船越弘君及び中西伊之助辞任につき、そ  の補欠として門脇勝太郎君及び江崎一治君が議  長の指名委員に選任された。 同月八日  委員小玉治行君及び門脇勝太郎辞任につき、そ  の補欠として佐藤親弘君及び船越弘君が議長の  指名委員に選任された。 同日  島田末信君及び吉武惠市君が理事補欠当選し  た。     ――――――――――――― 十二月三日  国鉄第二次仲裁々定の完全実施に関する請願(  中原健次紹介)(第四一三号) 同月四日  富士工業三鷹工場争議解決に関する請願(今  野武雄紹介)(第五二四号)  日雇労働者救済に関する請願今野武雄君外一  名紹介)(第五二六号) の審査を本委員会に付託された。 同月二日  鹿児島県下の職業安定所出張所昇格に関する陳  情書(第  一四七号)  失業対策事業拡張並びに事業費全額国庫負担の  陳情書  (第一九三号) 同月五日  婦人少年局存続陳情書外一件  (第二二六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  失業対策労働関係並びに労働基準に関する件   請願  一 技能者養成費国庫補助請願中村又一君    紹介)(第二八号)  二 広島公共職業安定所管轄区域拡張等に関    する請願前田榮之助君紹介)(第七九    号)  三 失業対策事業に関する請願川野芳滿君紹    介)(第一八七号)  四 国鉄第二次仲裁々定の完全実施に関する請    願(中原健次紹介)(第四一三号)  五 富士工業三鷹工場争議解決に関する請願    (今野武雄紹介)(第五二四号)  六 日雇労働者救済に関する請願今野武雄君    外一名紹介)(第五二六号)   陳情書  一 失業対策に関する陳情書    (第二六号)  二 鹿児島県下の職業安定所出張所昇格に関す    る陳情書    (第一四七号)  三 失業対策事業拡張並びに事業費全額国庫負    担の陳情書    (第一九三号)  四 婦人少年局存続陳情書外一件    (第二二六号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより会議を開きます。  お諮りいたしますが、去る五日、理事島田末信君並びに吉武惠市君が委員辞任されましたので、ただいま理事の数が二名欠員となつております。この際理事補欠選挙を行わなければなりませんが、これは委員長において指名することにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議なしと認めます。それでは島田末信君、吉武惠市君、以上二名の方を理事指名いたします。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより本委員会に付託されております請願及び陳情書を、日程第一より順次議題に供します。  まず日程第一の請願審査に入ります。日程第一、技能者養成費国庫補助請願中村又一紹介、第二八号、紹介議員がおられませんので、かわつて島田末信君より御説明を願います。
  5. 島田末信

    島田委員 本請願要旨は、積極的な技能者養成実施して、技能水準の向上と労働能率の増進をはかり、もが国の経済自立化に寄与するため、先般技能者養成規程が設定されたが、この規定によると、一箇年間千四百七十時間のうち、ある業種は五百二十五時間、すなわち一箇年の三〇%は、社会及び関連学科等教習に割当てられ、使用者はこの時間も労働時間として賃金を支払う義務を負わされており、しかも養成期間修了者は、自由に職場移動ができる関係上、技能習得者が定着しないときは、長年の努力が水泡に帰し、使用者側負担は大である。ついては国家的見地より、技能者養成制度を保護育成するため、国庫をもつて補助されたいというのであります。
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府側に御意見があれば承ることといたします。
  7. 寺本廣作

    寺本政府委員 技能者養成制度は、労働基準法の制定以後大分時間をおいて、ごく最近養成規程が公布されて、現在実施されておるわけでございます。ねらいは、従来の徒弟制度を近代的な技能者養成制度に切りかえたいということで、規程趣旨ができておるのでございますが、請願書にございます通り関連学科の研究のために相当長時間がとられるようなことで、これを使用者がみずから行わなければならないような現在の規程なつておりますが、この点につきましては、目下規程を再検討中でございまして、公立学校への委託その他で、関連学科の研修ができるようにしたいということで、検討を加えておるところでございます。また技能教習を終りましたあとの者が、自由に職場移動ができるという点につきましては、かつて徒弟制度がありましたときは、お礼奉公ということで、技能養成を終りました者が、一年ないし二年その職場にとどまつて義務的に労働をした制度がございます。現在の法律建前では、かようなお礼奉公義務制とすることができないことになつております。この点は、長期の労働契約義務的にいたしまして、一箇所の職場に本人の意思の変化にかかわらず縛りつけることが、非常に不適当だということで、現在のような制度がつくられておるのでございますが、この点は使用者労働者関係でございますので、労務管理改善その他によつて、事実上そうした師弟の情誼に基く雇用契約が続くことを、法律としては期待しておるようなわけでございます。何分にも技能者養成規程は、施行後時日がございません。現在総司令部アメリカから技能者養成についての専門家が参つておりまして、いろいろ日本技能者養成問題を調査して、援助勧告を与えつつあるような状況でございます。またILOの主催で、目下インドでアジヤの地域におきます技能者養成訓練講習をやつておりまして、それにつきましても、労働省から技能課長外四名の者が参加して、講習を受けておるような次第でございますので、技能者養成規程の不備の点については、今後そうした実情検討の上、海外のそうした新しい知識も取入れまして、改善を加えて行きたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  8. 前田種男

    前田(種)委員 今の次官の答弁でございますが、さらに私はこれに関連して、労働省として根本的に技能者養成のことについて、積極的な案を立ててもらいたいことを希望いたします。戦前には大阪その他東京にも職工学校というものがあつてほんとう熟練工養成する学校があつたわけです。また会社、工場にも相当積極的な技能者養成機関があつたのですが、戦後はまつたく顧みられないという今日の状態でございます。もちろん知識的な面は、工業学校専門学校、あるいは大学という機関がありますが、真に熟練工養成する機関が今日ないのです。ようやく戦後五年を経て、日本経済界も安定しようとする今日、機械産業、あるいは電気産業、あるいは化学、あるいは土建、各方面にわたつてほんとう英米各国技能者に劣らないところの熟練職工養成するということは、たいへんな事業でございますが、これに成功しない限り、日本経済の復興も、あるいは日本産業再建もないと私は考えます。その意味において、所管はあるいは労働省になるか、文部省になるか、通産省になるかという点は、いろいろ議論はあろうと思いますが、私は労働省立場から、もつと精極的に熟練工養成する観点に立つて明年度予算等につきましては、積極的な案をもつて、本格的な対策にかかるという積極性を示してもらいたいと私は考えます。これは経営者立場ばかりでなくて、まじめに考えておりますところの労働組合立場から行きましても、どうしてもりつぱな熟練工養成し、りつぱな熟練工になり得るところの人物を、一人でも多く養成しない限りにおいては、日本経済というものは真に立ち直らないと考えますから、そういう積極性があるかどうかという点を、この請願に関連して政府の所見を承つておきたいと思います。
  9. 寺本廣作

    寺本政府委員 技能者養成を積極的に推進して行く必要がある、それについて労働省としてどういうふうに考えておるかというお話でございますが、労働省といたしましても、わが国経済再建をはかる上において、この熟練工を多数養成して、技能者を数多く育成して行くことが、必要であるというふうに考えて、いろいろの施策を講じております。ただ補助金の問題になると、財政政策として、補助金を全体として整理するという立場をとつております関係上、従来予算編成にあたりましては、この技能者養成補助金を請求したことが一再ならずあるのでありますが、いまだかつて予算としてまとまらないような状況なつております。従つて補助金以外の方法で、この技能者養成をはかりたいということで、いろいろの施策を講じております。ただいま御指摘東京並び大阪戦前、戦争中に、技能者養成施設があつたという御指摘でございますが、東京の分は機械工養成所がございましたが、現在ではそれが労働省で経営します中央職業補導所として復活するということになつております。また技能者養成の方策といたしましては、先ほど申し上げました通り基準法に基きまする徒弟制度改まつ技能者養成制度だけではなく、職業安定法に基きまするPWI職場における技能者養成、それを援助するという建前に基いて、PWIの推進をはかることになつておりまして、この点につきましても、間もなくアメリカからPWI専門家が参りまして、わが国技能者養成について助言勧告をしてくれるということになつております。そうした貴重な助言勧告を得まして、さらにこの技能者養成については、労働省として行政を推進して参りたいと考えております。
  10. 前田種男

    前田(種)委員 私はもちろん補助金という考え方で、積極的にやつてくれという考え方を持つていないのです。私は少くともこうした技能者養成というものを国立で、あるいは公共企業体でやらす、できれば国立というように考えております。今日補導所その他の施設等も、現地に私たちよく見ておりますが、あの程度のものではどうにもならない。おざなりで、こういうものをやつているというにすぎないのであつて、もつと根本的な、積極的な策を立ててもらいたいというのが、私の熱望する趣旨でありますから、その線に沿つて、ひとつ政府は積極的な案を立てていただけるように希望を申し上げておきます。
  11. 倉石忠雄

    倉石委員長 他に御質疑はございませんか。     —————————————
  12. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは次に日程第二の請願審査に入ります。広島公共職業安定所管轄区域拡張に関する請願前田榮之助君紹介、第七九号、紹介議員がおられませんので、かわつて前田種男君の御説明を願います。
  13. 前田種男

    前田(種)委員 この請願は、広島西条町長外六名の請願なつております。広島公共職業安定所管轄区域を拡張してもらいたいという案文でございますから、この内容説明は省略いたします。現在三原公共職業安定所管轄にありますものが、いろいろな点で便利が悪いという陳情も来ておりますし、また西条出張所を拡張してもらいたいという強い要望もございますから、この趣旨沿つて、ぜひとも当局において御配慮願いたいと考えます。よろしくお願い申し上げます。
  14. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  15. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 職業安定所昇格、すなわち新しい設置につきましては、御承知のように職業安定法に基きまして、中央に設置いたされてあります中央職業安定審議会意見を徴して、労働大臣が定めるということに相なつております。従いましてこの審議会意見を徴しまして、地方実情に即応いたしまして、善処いたしたい、かように考えている次第であります。
  16. 倉石忠雄

    倉石委員長 他に御質疑はございませんか。     —————————————
  17. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは日程第三、失業対策事業に関する請願川野芳滿紹介、第一八七号、紹介議員がお見えになりませんので、島田末信君より御説明願います。
  18. 島田末信

    島田委員 本請願要旨は、失業対策事業賃金標準においては、九州各市乙地区標準に置かれているが、これを甲地域に変更し、かつ事業費補助対象範囲を拡大されるとともに、失業対策事業効率的実施のためには、当然工事用の器材及び資材を必要とするから、この経費に対しても労力費と同様に国庫補助対象に入れられたいというのである。
  19. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府側の御意見があれば承ります。
  20. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 ただいまの請願内容は、一つ九州地方における賃金調整の問題、一つ資材費に対して国が補助をする必要があるのではないかという、二点あるのでございますが、前段の賃金調整につきましては、お話のように、多少地方的に調整を必要とするものもありますので、目下慎重に検討を加えている次第でございます。後段の資材費補助の問題でございますが、本年度予算におきましては、資材費補助はございませんけれども、目下内定いたしております明年度失業対策事業予算におきましては、資材費補助対象として補助する、かように考えている次第でございます。
  21. 倉石忠雄

    倉石委員長 他に御質疑はございませんか。     —————————————
  22. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは次に移ります。日程第四、国鉄第二次仲裁々定の完全実施に関する請願中原健次紹介、第四一三号、紹介者中原健次君の御説明を願います。
  23. 中原健次

    中原委員 この国鉄の第二次裁定完全実施のことにつきましては、いまさら議論の余地が残つておりません。あまりにも明確なことなのでありますが、さきに国会は四十九億五千万円を限度として、これに支給して、残余は支給せずという決定に相なつたのであります。ここに国鉄並びに政府当局は言うまでもなく、国会としても考えなければならないことは、この第二次裁定合理的根拠が十二分に認識されねばならず、従いましてそれに対する当然答うべき答えを完全に出さなければならないということにつきまして、もはや何人も御異論のないところだろうと思うのであります。他面政府繰返し繰返し財源さえあれば裁定を尊重して、これを完全に実施したいと言われた過去の言葉に徴しても、このことは明らかなのであります。そうであるならば、財源が予想されるかされないか、あるかないかということが、問題となつて残るのでありまして、この財源問題に関しましては、もとよりいろいろな議論もあると考えますが、私どもの承知いたします範囲内で考える財源は、これに見合うものがないということはできがたいと思います。必ずあると思います。と申しますのは、すでに現在国鉄経理実情を調べてみますと、いわゆる収入増並びに企業努力、その他諸物件の消費の節約、いろいろなものを総合いたしますと、八十数億円に及ぶ余裕が出て参つておるのであります。そうであるならば、この第二次裁定を完全に実施するための財源がないという議論は出て参りません。その余裕のつく八十数億円をあらゆる努力を傾けて、第二次裁定に対する答えたらしめようとするならば、私はなし得るものとかたく信じております。しかしいろいろな事情に支障されまして、今回の会議においてはそれがそのまま取上げられなかつたのでありますが、ことにその八十数億の余裕に対する使途の点を調べてみますと、このような意味において生じた余裕をもつて振り向けるような性質のものでない。たとえば災害の復旧費であるとか、電源の開発であるとか、その他別途の資金をもつてまかなうべき性質のものに、これが向けられようとすることは、必ずしも承服できない点であります。従いましてそれらの点を総合して考えますならば、なおそのような余裕財源というものは、決して何らの犠牲を伴わずにできたものではないのでありまして、これは言うまでもなく四十五万の国鉄従業員諸君が、ありとあらゆる努力を傾け、ありとあらゆる犠牲を忍んで、かせぎ上げた、あるいは余剰をつくり上げた、その努力の集積であることをあわせて考えなければならぬのであります。そうであるならば、その誠意にこたえるという態度をとるべものとわれわれは考えるのであります。なおそればかりではございません。現在の物価の諸事情は、いまさら私が御指摘申し上げるまでもございませんが、特に朝鮮事変勃発以来の続騰する傾向から考えますならば、生計費はおのずからぐんぐんのし上つて参るのでありまして、特に続騰を続けております物資の中で、直接必需生計費に関連するものが、その主たるものであるという傾向を見のがしてはならぬのであります。たとえば光熱費のごとき、あるいは被服費、その他日常切実に身に迫つております諸関係物価が、その続騰する中の最たるものであることを思いますならば、生計費はますますかさんで行くであろうということが予想されるのでありまして、ことにまた近く米の消費価格も引上げになることは、もはや何人もこれを見ておるわけであります。そういう諾事情から考えますならば、生計費はますますかさんで行くであろう。ことに全国の他の全産業給与状態を調べてみますると、これは東京金属の統計によりますれば、全産業が一万三千円を上まわつておるのでありまして、あるいは少々関連する中で、運輸通信の点を見ますると、一万四千円を上まわつておるのであります。これは決して高い数字ではなく、それが当然出るべき給与水準であろうと私は了解いたします。もつとも労働省の調査によりますれば、ずつと低く引下げた数字が発表せられておるのでありまするが、それにいたしましても、八千二百円をぐつと上まわりまして、九千五百幾らという数字を拝見するのであります。あるいは運輸関係におきましても、九千二百円に近いものを見るのでありまして、それらのいろいろな事情から総合して考えまするならば、この際長い間、いわば給与問題に関しては特に不利益な立場に追い込まれて参りました国鉄四十五万従業員に対しまして、何とかあらゆる手を——尽せる限りの手を尽して、この第二次裁定は完全に実施せなければならない、こういう熱意を私は全委員各位に要請いたすのであります。もちろん皆さんがあらゆる努力によつて、今回の四十九億五千万円余の裁定実施に対する予算を認められましたことにつきましては、国鉄従業員とともに喜ぶ者でありまするが、しかし御存じのように第二次裁定のその裁定書に基いて考えますれば、第一項の八千二百円ベース完全実施のためには、なおかつ十一億余の不足分を生じておるのでありまして、さらに第二項に掲げられておりまする点を見ますれば、昭和二十五年度において基準外賃金現物給与福利施設その他の給与等において、前回の裁定指摘した待遇切下げの補填について適切なる措置を講じ、実質的な賃金充実をはかるものとするという、実質的な賃金充実をはかるための第二項の実施のことにつきましては、今回の予算措置の場合にはもちろんそのままになつておるわけでありまして、この点をあわせて必ず実施することのでき得まするように、皆様の御配慮を私は心から懇請いたします。そうして第一次裁定のあの不始末な状況をあわせ考えますならば、ここに私は第一次裁定に対するいろいろな経緯も申し上げたいのでありまするが、かえつて御迷惑と考えますので、その点は省略いたしまするが、第一次裁定があのような了解のできない結果に追い込まれておるのでありまして、その上に立つたる第二次裁定、これを考えますならば、われわれは何としてもいわゆる最小限度答えといたしまして、第二次裁定は残ることなく完全実施するように、国会はあげて一層の御努力をお払いくださることを懇請するものであります。言うまでもなく政府並びに国鉄当局は、当然そうあらねばならぬと考えまするが、かかる意味から、この第二次裁定完全実施に関する請願に対しまする私の説明を申し上げた次第でございまして、どうぞ皆様の一致した御協力をお与えいただきまするように心からお願いいたします。
  24. 倉石忠雄

    倉石委員長 本件につきましては、予算上、資金上可能なりやいなやということは、国会がこれを意思決定をすることによつて行われることであることは、公労法上紹介議員のよく御承知通りであります。そうして本件は過般の国会において、四十九億あまりの支出を国会が承認をして、残余はこれを承認せずという決定に相なつたことも御承知通りであります。そこでもしこのことについて政府側に御意見がありますれば、承ります。——他に御質疑はございませんか。
  25. 江崎一治

    江崎(一)委員 先般当国会におきまして、四十九億五千万円余の裁定がきまつたのでありますが、これについての処置は、あの裁定趣旨従つて国鉄公社労働組合の間で団体交渉によつてきめるということになつておりますが、この団体交渉がどういう形に今動いておるか。それについて御説明を願いたいと思います。
  26. 飼手真吾

    飼手説明員 労働省承知いたしておりまする限りにおきましては、先般の国会における御決議をいただいてから後、ただちに両者の間において交渉を開始いたしておるように承知いたしております。しかも平和裡にその交渉が進んでおるように承知いたしております。
  27. 江崎一治

    江崎(一)委員 共産党がお伺いしますと、そのお答えはいつもきわめて簡単で、非常に不親切です。これは当委員会だけじやありません。ほかの委員会でもこういう点が見られるのでありますが、この点は十分に注意して回答を願いたいと思うのです。そこで私がお伺いしたいのは、この国鉄公社側がどういう給与の配分をしようとしておるか、それからまた労働組合側が、これに対してどういう主張をしておるかという、その特徴について御説明を願いたいと思います。
  28. 倉石忠雄

    倉石委員長 江崎君に申し上げますが、午後また一般労働事情について質疑もあることでありますし、ただいまのところは本件に直接の関係のあることだけ御質疑を願いたいと思います。
  29. 江崎一治

    江崎(一)委員 これは非常に関係があります。
  30. 倉石忠雄

    倉石委員長 国鉄公社のことについて、労働省にこれを質問されてもむりだと思いますから……。
  31. 江崎一治

    江崎(一)委員 これは当然労働省関係のあることと思う。
  32. 倉石忠雄

    倉石委員長 それならば、午後にあなたの方から、国鉄の当事者をお呼びになつて聞く方がいいのであつて、局外者の労働省にお聞きになつてもむだだと思います。
  33. 江崎一治

    江崎(一)委員 それは要求してあります。
  34. 倉石忠雄

    倉石委員長 大体午前中は請願陳情の方でありますから……。
  35. 江崎一治

    江崎(一)委員 それでは質問を留保いたします。     —————————————
  36. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは次に移ります。富士工業三鷹工場争議解決に関する請願今野武雄紹介、第五二四号、紹介議員今野武雄君の御説明を願います。
  37. 今野武雄

    今野委員 この請願は富士工業三鷹分会の労働組合の執行委員長三井君から出されたものであります。御承知のように富士工業の三鷹工場は八月以来ずつと争議になつて、非常に警官が動員されたり、いろいろなことで世間でも問題になつたわけであります。その間に会社側にどうも不法行為があつたように見られるし、それから裁判所やその他の点でも非常に不公平な取扱いがあつた。それで無期限にずつと焦土戦術というか何か知らぬけれども、会社側が自分のところの産業をだめにしてしまつてもこれをやつてのけよう、そういう態度をとつている。それからこれは社会不安の原因になる。それでこれに対して適当な調査をして対策を立てる、こういうようなことをしてもらいたい、こういう趣旨請願であります。そこでもう少し事情を申し上げますと、大体富士工業の三鷹工場というのはどういうものかといえば、これは中島飛行機の元の試作工場であります。りつぱな敷地にある工場でありますが、おもに発動機をつくつております。しかし試作用でありますから、生産の規模などはそんなに大きくなくて、八百五十人ばかりおります。そこでここでもつて小さな発動機をつくりまして、それを太田とかその他のところへ送りまして、いわゆるピジヨンというスクーターや農業用の機械などをつくつておるわけでございます。ここで働いておる労働者並びに技術者は、旧中島飛行機の数万の中から、非常に生産意欲のすぐれた者、技術のすぐれた者をすぐつて来たのでありまして、非常に優秀な人たちばかりであります。こういうところでありまするが、これがどうも平和産業をやつていたのでは、今興銀が金を出しておるのでありますが、なかなか融資がむずかしい。これを何か軍需的なものに切りかえる、PD工場に切りかえようというのが、そもそもの事柄の始まりであります。ところがそういうふうにいたしますと、技術者などがそろばんをとつてみましても、どうもそろばんがちつとも合わない。なぜかというと、生産設備がそういうものに適合していない。これはたとえば自動車などにいたしますと、日産などに見られる例であります。生産施設が適していないのに、違つた規格のものをどつと持ち込まれてそれをやろうとすると、どうしても経理が赤字になつて来る、生産能率が上らぬ。そういうことのために、労働者にとつても、資本家にとつてさえもこれは不利であります。労働者にとつては特に労働は強化されて、そして賃金は少くなる。それに対して反対しておつたわけであります。そしてたまたま七月十日、組合としてはそういう事情もありましたが、ともかく今ピジヨンなんかうまく行つている。ある程度はスクーターの需要は多くなつて来ておるわけでありまして、うまく行つているから、経理上も可能であるというので、今年の七月十日に賃金値上げの要求を会社に出したわけであります。ところが会社側ではそれに対して、労働条件を強化して、賃金を下げるという回答をよこして来たわけであります。いわば挑戦して来たわけであります。そして八月十六日とは遂に工場閉鎖をやつて仮処分を行う、こういうようなことになつて来たわけであります。しかも不法にも労働法規に反して、臨時工を若干雇い入れて組合側に対抗する、こういうような手段に出て来たわけであります。それ以来対立はだんだんはげしくなつて、九月十五日には、遂に会社側では三百名の首切りを発表する、それから仮処分を強行するために二千名の警官——これはどういうふうにしてそういう警官を動員するようになつたかということについては、私申し上げませんが、ともかく近県からまで二千名の警官を動員して仮処分を行つた。これは九月二十一日でありますが、こういうことをやりました。この仮処分については、組合側としては非常に異議を持つていたので、異議のいろいろな申立ての弁論を開けということを、八王子の裁判所の係の判事である相川判事に申し出たのでありますが、相川判事はそれを採用しないで、会社側の疏明だけによつて、急速に仮処分を行つてしまつたのであります。そのために組合側は納得しないで、遂にああいうような大事件まで超したわけであります。私この点について相川判事に会いまして、いろいろとお伺いしたのでありますが、仮処分は急速に運用するのだ、こういうことであります。だが、組合側の弁論の申出に対しては、なかなかやらない、そういうことで強行いたしました。しかしこれがなかなかうまく行かない。二十六日には暴力団なんかを雇い入れて会社はやつたのですが、それも続かなくなつて、工場閉鎖を解くということになつたのであります。これが十月二十六日で、十月三十日には今度は全員に対して、再建要員三百二十名に対して懲戒解雇というようなことをやつて、会社側は挑戦して来ている。そういうふうにして争議が進んで来た。その間組合側としては、身分保全、仮処分の取消し、閉鎖中の賃金支払い、それから懲戒解雇の身分保全、こういうような仮処分の申請を次々にやつているわけであります。ところが、この問題については裁判所側では一向に取上げず、会社側の弁論を許して、今日に至るまでまだ判決が下つていないわけであります。この十五日に判決が下るということでもありますが、しかしながらさらに今度は会社側は策謀して、これをさらに延ばそうという動きがはつきり見えて来ている、こういうようなこともあるようであります。とかくこのように、労働組合対会社側との対立の場合に、仮処分なんかを会社側が申請すると、非常に簡単に許す、それから片方、労働組合側から申請したものに対しては、なかなか決定を下さないで、ずるずると延引する。その間に労働者は生活の資源を奪われて、非常に苦しいどん底の生活に陥りつつ、しかも正しい主張を通そうとして闘つているわけなのであります。こういうようなわけです。なお会社側がこういうものに使つた金なども調べてみますと、実に莫大なものであります。それだけの金を使えば——一億円を越える金を使つているようですから、これで十分従業員の待遇改善はできるはずであります。それであるのに、何ゆえにこれほどの犠牲を払い、しかもあそこで発動機ができないために、ほかで生産ができない、優秀な技術者や労働者を遊ばしておくというようなことを、何ゆえにこれほどやつているか。ここに相当大きな問題があるわけであります。でありますから、そういう点に対してわれわれとして調査をして、そして何らかの対策をとることが必要ではないか、こういうように私考えるわけでありますが、ともかく請願趣旨と、それに対する私の考えを申し述べたわけであります。
  38. 倉石忠雄

    倉石委員長 委員長から紹介議員今野君にお尋ねいたしたいのであります。申し上げるまでもなく、この請願国会に対する請願でありますので、われわれ国会にどういうことを希望されているのですか。
  39. 今野武雄

    今野委員 その点は調査をして——われわれ国政調査権があるのですから、この問題に対して違法行為が行われているということを主張しておりますから、そういうことに対して調査をして、何らかそういうものを是正して行くような方策を立てるべきじやないか、こういうふうに考えます。
  40. 倉石忠雄

    倉石委員長 国会にそれを希望されるというわけですね。
  41. 今野武雄

    今野委員 そうです。
  42. 倉石忠雄

    倉石委員長 わかりました。     —————————————
  43. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは次に参ります。日程第六、日雇労働者救済に関する請願今野武雄君外一名紹介、第五二六号、紹介議員今野武雄君の御説明を願います。
  44. 今野武雄

    今野委員 本請願東京都南多摩郡町田町の東京土建一般労働組合町田分会というところから出された、いわゆる職安関係の自由労働者の生活を助けてもらいたい、こういう趣旨請願であります。これは今年ばかりでなく、昨年もあつたことでございまするが、ともかくこの冬を控えて、職を失つて飢餓線上にさまよつておる失業者というものが、実に苦しい生活をしておることはもちろんであります。しかも最近は職を求めて参りましても、なかなか職が得られない、そうしてあぶれる人も大分多くなつて来たわけであります。それからこの冬の寒さに向つてふとんもない。これはふとんがないというとおかしいようでありまするが、大体ああいう自由労働者の諸君は、冬何らかの形で暖かい着物やふとんを獲得する、夏になればそれを売り払つて生活しなければならない、こういうような状態であります。中には俵をどこからかかつぱらつて来て俵の中に入れるとか、その他いろいろな実に悲惨な生活をしている人が多いのであります。そういうような人たちが今のところこういうようなことを、政府に実現してもらいたいということを頼んで来ておるわけであります。  第一に日当を、今税込みで二百四十二円でありますが、これを三百五十円に引上げてもらいたい。二十日ぐらいしか働けないのだし、税金もとられる、いろいろなことから三百五十円に引上げてもらえないか。それから輪番制をなくして、日曜日にも働かしてもらえないか。それから公傷手当、保険対策実施してもらえないか。公傷した場合にも手当とかその他いろいろなものがないから、そういうものを実施してもらえないか。失業保険などは形式上ありまして、毎日の日当から引かれておりますが、これは実際は今まで受取つた者はほとんどないといつてもいいようであります。また受取れぬようにできております。でありますから、そういうものを改善してほしい。それから第四番目には、作業現場にテントを設けて、何か湯茶の設備などしてもらいたい。これは私も参つたこともありますが、子供をつれたおかみさんやら何やら、ことにおじいさん、いろいろな人が来ております。でありますからテントを設けてもらえないか、湯茶の準備をしてもらいたい。それから地下たびの配給を無料でしてもらいたい。それから雨具を貸与してもらいたい。雨の中をぬれたままやらされる場合が非常にあるわけなのでありまして、それを貸与してもらいたい。それから往復の交通費を何とか免除するような方法をとつてもらいたい。交通事故による遅刻を認めてもらいたい。この遅刻という問題でありますが、ことにこのごろのようにあぶれが多いと、朝早く行かなければならない。四時ごろ起きて出かける、そうして七時か七時半ごろ、働く伝票みたいなものをもらうのでありますけれども、四時ごろ起きて行かないとどうもあぶれる、こういうようなことがあるので、交通事故による遅刻などを認めてもらいたい。それから加配米は米で配給してもらいたい。これは現在粉で配給されております。そういたしますと、どうしてもパンにしたり、うどんにしたりするのに、金がかかつてしようがない。だから米で配給してもらいたい。九番目に、地方税を免除してもらいたい。それから子供の教育費なども、これは、たいてい引揚者とかいろいろな人が多いのでありますが、どうか全額を公共団体で負担してもらいたい。それから手帳取上げの廃止。手帳取上げということが始終行われますが、そういうことは将来の生活を脅かされるから、これを廃止してもらいたい。それから越冬資金約一箇月分の五千円を支給してもらいたい。それから年末、年始の有給休暇を、十二月から一月にかけて五日ないし六日ぐらいもらいたい。それから託児所を設置してもらいたい。これは子供をつれて来ておる人の要求であります。それから健康保険を適用してもらいたい等、いろいろあるわけであります。これと同趣旨のものが各職安の組合から出ております。事務上の都合でもつて、町田だけがこうやつて請願として出て来たわけでありますが、各職安から全部出ております。こういうようなお願いをいたしますと、いかにもこれはずうずうしいやつだとお考えになるかもしれませんが、しかしながら、その生活の実態や何かをつぶさに知るものとしては、ほんとうにむりのない願いだ、一般公務員の方にも越冬資金が出るし、あるいは給料値上げということも今度あるのだが、しかし二百四十円、二十日ぐらいの働き、しかも今言つたように電車賃や何かもかかるし、それから配給も米でなくて粉であるために金がかかる。子供をつれて歩けば、託児所もないので、子供たちを何とかごまかすためにお菓子も買つてやつたり、何かしなければならぬ。こういうような状態のもとでは、非常にむりがないものだと思うのであります。  なおその請願一つの中で、請願の理由というものを書いておりますが、あるいはその生活状態のことを書いておりますが、非常に心を打たれるものがあるのであります。大体こういう日雇い労働者なつておる人は、一体どういう人たちかと申しますと、たとえば戦争未亡人、あるいはまた海外引揚者として、住むに家がなく、職もない。厚生療でもつて一月わずかの金を、百円とか何百円という程度でありますが、金をもらつてつておる人、あるいは復員者として、今の世の中に生きる生活の仕方を、青年時代に学んでいない、兵隊に行つてつて、突然帰つて来て、この荒海の中に投げ出された人、それからみじめな空襲のために一家離散して、最愛の妻や子供とわかれて、あるいは社会の落伍者として現在に至つておる人、あるいは戦争後ともかくあのやみ経済の中で、やみなどやるのはいやだというので、まじめに工場で働いていたが、しかし平和産業の危機に直面して、みな職を失い、工場をおつぽり出される。しかもそのおつぼり出されるまでに、給料の遅配が半年も、あるいははなはだしいのは九箇月も続いて、ほんとうにどん底にまで、——勤めていてもどん底にまで陥つてしまい、その上におつぼり出された、こういう人が多いのであります。現在もそういう工場はたくさん私は知つております。そういうような状態のもとで失業者になつて、しかもこのごろは特に手帳取上げということがさつきありましたが、そういう中で失業者をさらに失業させる。失業者が職安で働いておるその手帳を取上げて、さらに失業させるということができておるわけであります。たとえば女などはどうもいかぬ、あるいはその他老人も困る、あるいはこういう人間はどうもトラブルを起していかぬ、そういうことで失業者の手帳を取上げて、さらに失業させる、こういうことも起つて来ておるわけであります。それでさつきも言つたような生活の実態なのでありますから、私どもとしては、何とかしてこの社会の犠牲者であり、そうしてこの人たちはほんとうに働かせるならば働ける人なのだから、何とかしてやりたい。一体この人たちは、私たちに向つて、あるいは工場で働いている労働者に向つて、何と言つておるか。今どんなに給料が安くても、とにかく勤めておる諸君は特権階級だということを案に率直に申すのです。私もそういう手紙をたくさんもらいました。勤めておればどんなに給料が安くても特権階級だとわれわれは思つておる、こういう悲惨な状態であります。でありますから、これに対して政府として何とかやつてもらいたい。特に最近あまりにも生活が悲惨なものですから、立川市、あるいは兵庫県の加古川市、その他いろいろなところで、直接接しておる職業安定所やあるいは市当局の人たちは、この人たちに対して——皆さんのところもそうだろうと思いますけれども、子供にだつてお年玉として何かやる、すぐ四、五百円のものはやるわけです。だからお年玉を五百円やろう、千円やろう、こういうような話が出ておるところもある。そうすると、そういうものに対して非常に苛酷な通牒が行つておるのであります。これは東京都の労働局長の林武一君の名前の通牒でありますが、労失対発第二百四十八号、昭和二十五年十一月三十日ということで、これはあとで質問のときに詳しく申してもいいと思つておりますが、あまり悲惨な状態をまのあたりに見ているものだから、何か対策を講じようとすると、それに対してはやつてはいかぬという、きつい指令が出ておるわけであります。こういうことはどんな理由があるにせよ、あまりにもこれはむごいのではないかと私どもは考えるのでありまして、政府側として一体どういう対策をお持ちか。私としては、この請願趣旨がなお貫徹されるように、皆さんの御協力をお願いしたいと思うのであります。
  45. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  46. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 請願の御趣旨は承りました。項目がたくさんありますが、そのうちで、日当を三百五十円に引上げるということは、現在の東京賃金の一般的傾向から申しまして、困難な問題だと存じております。その中に、越冬資金の問題、あるいは年末年始の有給休暇等ございますが、これは御承知のように、失業対策事業の運営にあたりましては、緊急失業対策法という法律で縛られてありますし、また予算との関係から申しまして、困難な事項じやないだろうか、かように考えております。輪番制の問題もありますが、これは求職者の増大の傾向に対処いたしまして、就労機会の均等化という建前から、これを今日やめるということは困難だと考えております。公傷手当の問題は、基準法の定めるところによつて処理いたされてあります。なお保険対策実施という点がありまして、東京では失業保険の適用があまりないじやないかということがありましたが、御承知のように東京では、東京都の報告によりますと、十月の一月間の平均就労日数は二十五・五ということを承つております。すなわち非常にいい就労状況でありますので、それに関連していわゆる失業保険金を受けることはない、かように考えております。なお作業現場にテントを設ける問題、あるいは託児所の設置等につきましては、東京都の報告によりますと、作業現場には簡単なテントを——もちろん全部というわけには行かぬかもしれませんけれども、多少テントを設けているという報告を受けております。それから託児所につきましては、東京都でたしか十一箇所でありましたか、移動的な託児所を設けていたしておるという報告を受けております。それから加配米は米でという点であります。これはごもつともだと思つておりますが、どうも労働省だけで参らぬ問題でありまして、主食の総合配給という点から、相当むずかしい問題じやないか、かように考えております。地方税の全免その他とありますが、これは私の方では直接どうにもならぬ問題でありまして、東京都の問題かと考えております。健康保険の問題は、御承知の厚生省の所管でございますが、私の方から十分厚生省にも御連絡申し上げるつもりでおります。
  47. 今野武雄

    今野委員 ただいまのお答えはずいぶん筋が通つているようですけれども、さつき言つたように、この生活に困つている実態、ことに先ほど東京都で託児所を設けているところがあるということでしたが、これは実にひどいもので、託児所とは言えぬくらいです。ですからそういう点もよく見て、いろいろ立案てもらいたいと思うのです。それから二月と八月はいつでもあぶれ月といわれておりまして、民間の仕事がないのです。こういう問題に対しては、何か対策をお考えになつてるでしようか。
  48. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 託児所の問題につきましては、なお東京都にもよく御趣旨の点はお伝えしておきたいと思います。それから将来のいろいろの問題でございますが、労働省といたしましては、日雇い労働者の生活実態も十分承知しておりますので、行きるだけ就労日数をふやすということによつて、なるべくひとつあぶれを少くするというこの趣旨につきましては、まつたく同感でありますが、ただ何もかもあぶれをなくするということは困難でありましようし、あるいはまた求職者が多くなれば、当然輪番制ということにもなると思いますが、就労日数を増加するという点につきましては、将来とも努力はいたすつもりでおります。
  49. 今野武雄

    今野委員 実はこれは大問題でありますから、いろいろあるのですが、請願としてはこの程度にして、あとは午後の質疑でもう少しお尋ねしたいことがあります。     —————————————
  50. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは次に陳情書審査に入ることといたします。  日程第一、失業対策に関する陳情書、第二十六号、専門員よりその趣旨説明いたさせます。
  51. 濱口金一郎

    ○濱口専門員 失業対策に関する陳情は、岡山県の労働部長曽我與二郎外四名のもので、その趣旨は、現在労働行政当面の重点は失業問題であるが、現下地方財政の現状では、失業対策事業実施は不可能であるから、日雇い失業者の生活安定と社会不安との除去をはかるため、政府はすみやかに失業対策を樹立するとともに、地方財政の窮乏打開のため、相当の国庫補助を希望しているものであります。
  52. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  53. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 失業対策事業につきましては、御承知のように労力費は国が三分の二を補助するという建前なつておりますが、地方財政も相当窮乏しておるということは十分承つておりますので、私どもといたしましては、できるだけ地方起債のわくを広げるように、大いに努力いたしたいと考えております。     —————————————
  54. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは日程第二、鹿児島県下の職業安定所出張所昇格に関する陳情書、第一四七号。
  55. 濱口金一郎

    ○濱口専門員 この陳情要旨は、鹿児島県の人口の約七%弱は失業者で、十数万の出かせぎ者は終戦により喜び農村に吸収されたため、人口は急激にふえ、農業経営は困難となり、他の産業に転職する状態にある。ついては職業安定所出張所の昇格強化は、これら農村失業者の求人開拓の面に重大な影響を与えるから、同県下宮之城、指宿、栗野の出張所の昇格を希望しているものであります。
  56. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  57. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 鹿児島県下の職業安定所の出張所を昇格するという問題でございますが、これも職業安定所法に基きまして中央職業安定審議会意見を徴して労働大臣が定めることになつておりますので、同審議会意見を徴して十分考究いたしたいと思います。     —————————————
  58. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは日程第三、失業対策事業拡張並びに事業費全額国庫負担陳情書、第一九三号。
  59. 濱口金一郎

    ○濱口専門員 この陳情書要旨は、内外の経済事情は、勤労意欲に燃えつつも職につくことのできない失業者をますます増加せしめている。政府失業対策として当面の処置を講じるとともに、失業保険制度による救済等根本的対策を樹立し、現行の緊急失業対策法第九条による国庫補助を金額国庫負担とされたい。また現在の都市中心に実施されている失業対策事業を農村にも実施することを希望しているものであります。
  60. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  61. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 失業対策事業の全額国庫負担の問題でございますが、現在の国の財政の建前から申しましても、全額国庫負担にすることはきわめて困難かと存じております。なお都市中心の失対事業を農村にもという陳情でございますが、私どもといたしましては、都市たると農村たるとを問わず、失業者がたくさん出たところに失対事業を起すという趣旨なつております。     —————————————
  62. 倉石忠雄

    倉石委員長 日程第四、婦人少年局存続陳情書外一件、第二二六号。
  63. 濱口金一郎

    ○濱口専門員 この陳情書要旨は、婦人少年局が過去三年にわたつて、働く婦人の健康、母性保護および年少労働者の保護のために努力してきた成果は多大であるが、さきの行政制度審議会における行政機構改革に関する答申によると、婦人少年局を解体し、婦人労働課を労働基準局の中に吸収し、婦人課を労働省より分離することになつている。もしこのようなことが実現されるとするならば、女子年少労働者については労働基準監督行政に限られ、その地位の向上、厚生福利など顧みられないであらうから、婦人少年局を独立した現在の機構のまま存続することを希望しているものであります。
  64. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  65. 寺本廣作

    寺本政府委員 陳情書に記載されております行政機構改革の内容は、行政制度調査審議会の所見でありまして、政府といたしましては、いまだかようなことを具体的に考えておりません。
  66. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは午後二時まで休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後一時一分休憩     午後三時二十三分開議
  67. 倉石忠雄

    倉石委員長 再開いたします。  失業対策、労資関係並びに労働基準に関する件を議題といたしまして、調査を進めることといたします。これより質疑を許します。天野公義君。
  68. 天野公義

    ○天野(公)委員 失対関係について簡単にお尋ねしますから、要領よくお答えを願いたいと思います。まず第一に東北、信越、北越地方等の冬季の失業対策は、今までの実績から見ますと十分ではないと思われるわけですが、特にほかの地方と比べると、就労状況なども非常に悪いようであります。またそれぞれ各地方団体で、相当失業対策について支出をなしておりまして、県財政に相当の影響を及ぼしているように見受けられますので、政府側としてはこれらに対してどういうお考えを持つておられるか、お聞きしたいと思います。
  69. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 東北地方その他の地域の冬季の失業対策の問題でありますが、お話通り失業者の発生の状況に即応いたしまして、失業対策事業費の予算の配分をいたしておる次第であります、具体的に地方々々の失業の状況に即応して、予算の許す範囲内において善処いたしたい、かように考えておる次第であります。なお最近におきまして地方の財政の逼迫という問題に関連いたしまして、できるだけ地方起債のわくを広げるように、目下努力をいたしておる次第でございます。
  70. 天野公義

    ○天野(公)委員 全国の平均からすると、東北、信越、これらの方は相当下まわつております。おそらく平均四、五日全国平均より下まわつているように見受けられますので、この点政府でよく事情を調査の上、適切な措置をすみやかに講じていただきたいと思うわけであります。特に比較的雪の多い地方では、鉄道の除雪というようなことに失業者を使用するというような方針をとることができないかどうか。この点に関しては、鉄道側ではあまり歓迎しないという話も聞いておるのでありますが、実情はどうか、簡単にお尋ねしたい。
  71. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 東北地方の就労日数が、多少他の府県に比べて落ちておりますことは、私どもも十分承知しておりますので、第四・四半期の予算の配分の際に、十分全国的に均衡のとれるような是正の道をとりたい、かように考えておる次第でございます。  除雪の問題でございますが、御承知のように失業対策事業は、府県なり市町村が事業主体としてやる場合に、補助をするということになつております。国鉄等がいたします場合には、これに対して補助金を交付するという道がないわけでございます。そういうことになつておりますので、除雪の必要性を十分私ども承知しておりますので、府県なり市町村と緊密な連絡をとりながら善処して参りたい、かように考えております。
  72. 天野公義

    ○天野(公)委員 その点につきましても、ぜひ努力を願いたいのでありますが、さらに東北、信越方面の職業安定課及び職業安定所においては、県外の求人開拓に努力をしなければならないような実情にあるわけですが、こういうような努力をするためには、相当の費用と労力をさかなければならないと思うわけです。こういう点について、中央でどういうようなお考えを持つているか。予算的な措置その他について簡単にお伺いしたい。
  73. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 公共職業安定所の求人開拓その他の経費の問題でございますが、こうした安定所の経費の配分につきましては、現在の各安定所ごとの業務量を中心とし、さらに将来三箇月間の二期ごとの業務量の推移の動向を検討いたしまして今日まで経費を配分している、こういうような実情に相なつております。
  74. 天野公義

    ○天野(公)委員 今日までそういうふうにやつて来たというわけですが、今日までのやり方が非常に適切でないように見受けられるので、この点よく実情をごらんになつて、実情に即した適切な措置をお願いしたいわけです。次に一地方の問題でございますが、秋田県の男鹿郡、すなわち男鹿半島一帯は、今まで出かせぎでみな生計を立てていたのでございますが、戦後出かせぎ地区が縮小いたしまして、これによつて収入が非常に少くなり、住民が非常に困窮いたしているのであります。先般調査に参りましたときも、非常に痛烈な陳情要望があつたのでございますが、この男鹿半島に対しまして政府といたしましては、ここに失対事業を興すとか、そこにわくを与えるとか、何らかの処置をぜひとも講じていただきたいと思いますが、その点についてお伺いしたい。
  75. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 予算の配分の問題につきましては、将来とも具体的な実情を調査いたしまして、公平を期して参りたいと考えます。  次に秋田の男鹿半島の問題でございますが、秋田におきましてはただいまお話のように、出かせぎがほとんどなくなつておるという情勢にありましたが、ただいま資料を持ち合わせておりませんが、第三・四半期から一部男鹿半島にもある町村において失業対策事業を開始いたしております。また第四・四半期におきましても、その対策事業の拡充の要求も出ておりますので、具体的な事情を調査いたしまして、善処して参りたい、かように考える次第でございます。
  76. 天野公義

    ○天野(公)委員 さらに東北、信越地方の安定所に、労働者の寄り場の設備がほとんどないように見受けられたわけであります。雨天または降雪日には、事務所は待合室となるので、執務にも非常に支障があるようでありますが、この地方は現在においては屋外では待つということができないような事情にあるわけであります。特にことしは非常に雪も早いと聞いております。この現下一番問題になつておりますこれらの寄り場の設備というようなことについて、どういうお考えを持つておられるか、どういう対策をとられるか、お伺いします。
  77. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 寄り場の設置の問題は、全国的な問題でありまして大都市におきましては従来とも、日雇い労働紹介が盛んに行われておりましたが、最近におきましては失業対策事業を急に広げて実施するというような場合には、大体寄り場がないという実情なつておるようであります。しかしながら私どもといたしましては、何とか寄り場を増設するということは、非常に必要な問題であると考えておるのでありますので、本年度予算におきましては実施することはできませんけれども、内定いたしております予算におきましては、ある程度の寄り場の設置というものも認められておりますので、それが実現方に努力をいたしたい。かように考えております。
  78. 天野公義

    ○天野(公)委員 実際予算ではできないといつても、東北、信越はこれから雪になつて、零下何度という日が毎日続くわけでありますから、こういう点には何らかの措置をぜひ講じていただきたいと思うわけであります。  それから職業補導所の設備があまりよくないようでございます。設備もそうでございますが、中の施設というようなものも、あまり感心できないような状況に見受けられたのでございますが、この点について今後どういうお考えを持つておられるのか。
  79. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 職業補導所の特に設備の問題でございますが、今年度におきましては、大体予算範囲でできるだけのことをいたして参つたのでございますけれども、十分ではなかつたので、明年度予算におきましては、できるだけ設備、施設補助費の増額というものを期しておるような次第でございまして、内定いたしております予算におきましても、多少の増額を見込まれておりますので、明年度におきましては集中的に重要な職業補導所の設備、施設充実をはかりたい、かように考えておるような次第でございます。
  80. 天野公義

    ○天野(公)委員 最後に失対関係といたしまして、朝鮮事変が起りましてから、相当各地の状況がかわつておる。それにもかかわらず当初組まれた予算のわくを各府県にやつて、それによつて失対事業をやつておるというようなのが、どうも実情のようでございます。そこで労働省といたしましては、ぜひとも各地の実情に応じて、予算の配分を機動的にやつていただきたいと思われるわけでございます。この点について、相当安本側の制肘を受けるというような話も聞いておりますが、機動的に実情に即して公平に予算の配分をやつていただきたいとお願いしたわけでありますが、この点についてどういうお考えを持つておられるか。
  81. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 ただいまお話にありましたように朝鮮動乱勃発以来、常用労働者、日雇い労働者ともに求人が増大して参つておりますが、この特需関係並びに進駐軍関係の労務者の要求は、地域的に限られておる問題でありますので、そうした労務需要の増加しております地方においては、当然失対事業もわくはある程度減少してしかるべきではないだろうかというふうなことから、大体本年度の第三・四半期から多少進駐軍関係、特需関係の労務要員によつて、民間の日雇い求人の増加いたしました土地におきましては、失対事業予算を一部節約せしめまして、第四・四半期においてこれを使うようにといつたふうなことをいたしております。将来とも失対事業は、民間雇用その他の雇用と関連して、機動的に配分するということが本旨であるかと考えておりますので、将来におきましても、そうした方針で努力して参りたい、かように考えておる次第であります。
  82. 天野公義

    ○天野(公)委員 それでは基準関係あるいは労政関係は保留いたしまして、一応この程度でとどめておきます。
  83. 今野武雄

    今野委員 先ほど斎藤君がお答えなつた中に、適当に平均するようにするということがありました。つまり今までは少い、確かに北陸、東北方面は少い。それで第四・四半期になつてから、それをならすようにして行く、こういうお答えがありましたが、具体的にどういうようにするのですか。たとえば東京とか大阪、そういうようなところを減らして、そつちへやると、こういうようなことですか。
  84. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 東北、信越その他就労日数の少い土地に多くするために、東京あたりを削るのかといつたふうなお尋ねかと思つております。現在のところでは、東京のわくを削る余地はございません。問題は今もちよつと申し上げましたように、特需関係等で影響を受けております地域がありますので、そうしたものとにらみ合せて、全国的な就労日数を平均化するというふうな措置を講じて行く、こういうふうに考えておる次第でございます。
  85. 今野武雄

    今野委員 そうすると特需関係が多いところは、普通のものは減らしてしまうというわけですか。
  86. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 特需関係の影響を受けまして、日雇い労働者の就労日数が、非常に多くなる地域を削つて行く、こういうことは当然だと思います。
  87. 今野武雄

    今野委員 そうすると、つまりそこの地域労働者が特需関係へ行くと、これはあとで基準関係の質問のときに、いろいろ具体的な例も出したいと思いますけれども、労働基準法も何も無視されて、国内法を全然無視された取扱いを受けておるわけであります。そういうところへ行くのはいやだけれども、しかし行かざるを得ない、こういう状態になるわけなんです。普通のものは減らしてしまつて、そういう軍関係の飛行場建設とか、そういうふうなところへ行かざるを得ないように結局されるということになりますけれども、その点どうでしよう。
  88. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 日雇い労働紹介にあたりましては、失対事業のみを対象として考えておるのではありませんで、本年度の下半期におきましては、公共事業の方面で吸収する労働者も多くなることを期待いたしております。特需関係の方におきましても、ある程度現在よりはふえるかとも考えておりますが、そういつたふうな特需関係、それから公共事業、そのほか一般の民間事業、そういうものに就労をあつせんして、しかる後に救済することのできない人に、失対事業に向つて働いていただく、こういう建前なつております。従つて公共事業の方が多くなり、あるいはまた特需関係が多くなるということでありますならば、失対事業のわくというものは減つて行くということは、当然だろうと考えております。
  89. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際、通産省の鉱山保安局長が見えておりますから、順位を狂わせまして、前田君の質疑をやりたいと思います。それでは前田種男君。
  90. 前田種男

    前田(種)委員 特に通産省に本委員会に御出席を要求した理由は、最近におけるところの炭鉱、鉱山関係労働災害が、二十二年より二十三年、二十三年より二十四年、さらに二十五年の数字は出ておりませんが、だんだん災害の件数がふえておるという今日の現状でございます。これに対するところの原因を、通産省としてどういうように把握しておられるか、あるいはそれの対策をどういうようにお立てになつておられるかという点等につきまして私質問を簡潔にいたしますが、通産省としてのそうした点に対する対策を明確にお話願いたいと思います。
  91. 小野儀七郎

    ○小野説明員 お答え申します。御承知のように鉱山保安法が昨年にできまして、災害の撲滅に私ども邁進しておるわけでございます。ことに最近十月末には小野田におきまして前例を見ないような出水の事故がございました。また本日の新聞紙等で御承知のことと思いますが、九州の鹿町炭鉱におきまして、ガスの燃焼によりまして、これまた保安法施行以来のかなりの犠牲者を出した事故の発生を見たのであります。私ども当局といたしまして、はなはだ申訳なく、遺憾に存じておる次第でございます。ただいま御質問にもございましたように、二十二年、三年、四年と、逐年災害が非常に増大して参つております。これは全鉱山の、金属山等合せた数でございますが、二十二年には約十万人、二十三年にはそれが十五万六千というような数字なつており、また二十四年には十八万七千かの多量の罹災者を見ております。ところが実は法律の施行等もございまして、昨年の暮れごろからそのアツプ・カーブが、多少ストツプになつて参つております。これを炭鉱の罹災者数によりますと、二十四年の月平均一万四千何がしかの数字だつたのでございますが、二十五年に入りまして、それが一万三千余の数字に下つてつております。戦後いろいろな事情もございまして、相当急激に災害がふえて参つておるのでございますが、昨年十月等を頂点といたしまして、ようやくアツプ・カーブがストツプの状態にある、あるいはまた多少とも減少を見つつあるというような状況に相なつて参つております。ただ先ほども申しましたように、最近に至りまして、大きな私どもの黒星と思いますが、小野田の出水事故、また最近のガスの問題等もございますので、大いに恐縮いたしておる次第でございます。これらの原因、対策でございますが、原因と申しますれば、結局戦争中の生産第一主義と申しますか、つまり保安を顧みずに、生産遂行、増産を強行したといつたような事情か、根本の原因をなしておると思われるのでございます。またことに最近の事情を申しますと、一面就業の用員が不なれである、未熟練の者がかなり山に入つておるわけでございますので、いろいろな点で熟練を経ておらないという点が、かなりこの災害の原因をなしておるように思われます。また御承知のように資材関係等でございますが、たとえば坑木の問題等、きわめて最近にいろいろ人絹関係、パルプ関係の需要等ともからみ合いまして、かなりきゆうくつな状況に相なつて来ております。また電力の問題でありますが、これもかなり節約をしなければならぬというような様子でございまして、今度の九州の災害の直接の原因であつたかどうかはわかりませんが、一部やはり扇風器等をとめなければならぬというような事情があるわけでございまして、そのためにガスが滞留をするというような事情もあるように聞いております。これらの対策と申しますか、最近いろいろな意味で金融の打開といつたような点にも、通産省といたしまして、かなり意を注いで参つておるのでございますが、何分にも要求通り資金等の獲得ができないのでございまして、はなはだ遺憾ながらまだ施設の完備を見るに至つていないのであります。私どもといたしましては、なお金融等の疏通によりまして施設の整備、改善に努めるほか、保安思想の普及、また技術の向上、労働者の教育の問題、いろいろな意味合いにおきまして、諸施設を進めて参りたい、かように存じておる次第であります。
  92. 前田種男

    前田(種)委員 今一応の御答弁を願つたのでありますが、私も安全対策に対しては、根本的には戦争中あるいは戦後の荒廃したところの事業場、それの手当が十分できてない、あるいは資金資材等の不足のために思うようになつていないということは、常識的に認めているわけです。しかし何といつてもこうした重要産業における対策というものは、万全を期する方法が考えられなくてはならぬと思います。私の持つておる数字によりますと、三百人以上の従業員を使つておる炭鉱、鉱山、金属、石油等の二百十四事業場のうちの、三十五万一千二百二十三名の労働者数で、傷害事故が十六万七百七十七件になつております。三十五万のうちに十六万件の傷害事故を出すということは、いかに傷害事故が多いかということを物語つておるわけです。少くとも労災の関係から申しますと、今炭鉱関係が一番多いのです。そうして普通の電気機械その他の事業場は割合少い。全国の労働者から集めた労災の掛金が、炭鉱にまつたく注ぎ込まれてしまうという関係で、かりにけがした場合に、労災の手当がもらえない。もらえても半箇年もたたなければもらえない。私数字を持つておりませんが、労災はおそらく十億以上の赤字になつておるのじやないかと私は見ておるのであります。その大部分が炭鉱関係の労災に使われるというような関係なつておるという点を考えますと、全体の産業が炭鉱関係に相当大きな犠牲を払つておるということになりますと、労災保険の根本的な建直しを考えなくてはならぬという問題もぶつかるわけです。しかしこうした問題は容易でない問題でございますが、一にかかつてこの災害の防止は、安全装置を完全にやるということに、当局が懸命に努力されなくてはならぬと思います。今答弁の中に、しろうと工をたくさん使うために、案外けが人が多いということは、私自身労働者でありますから、しろうと工をよけい使えば使うほど、不なれのために多くの災害が起きることはよく知つておる。熟練工になればなるほど、能率は上つてけがも少くなるということは当然のことでありますから、こういう点から考えますと、なおさら熟練工を多く使う、あるいは不熟練工を一日も早く熟練工にする、そして能率の高い労働者にせなければならぬということは論をまちません。そのためには、やはり労働対策全体の問題に関連して来ると思います。待遇の問題その他の問題等に関連して来ようと考えます。さらにまた私は通産省がそれぞれの事業場に対して、監督が不十分だとはここに言いたくありません。しかし戦後における今日の事情というものは、その面においてもつと監督をし、あるいは安全装置その他については十分な注意なり監督をしなければならぬ事業場がたくさんあるのじやないか。これを資金関係あるいは資材関係で言訳をされると、もうそれで事足れりということでなくして少くとも人命に関するような不安全な施設等に対しては、相当強い勧告なり注意をしなければならぬと思いますが、全体の災害を防止する強い安全装置その他の点につき、さらに今後の対策について、局長意見を求めておきたいと考えます。
  93. 小野儀七郎

    ○小野説明員 ただいまいろいろ適切な御指摘がございましたので、私どもといたしましても、日ごろなるべく諸施設の完全、完璧を期しておるわけでございますが、今後とも監督の不十分な点あるいは熟練度の高揚といつた点につきまして、さらに一般と諸施設を進めたい、かように存じます。熟練度の向上につきましては、ささやかな講習所等の施設も設けておりますので、十分とはいわれませんが、各山から選ばれた者を集めまして、かなりの期間、実習あるいは講習等を加えて参つております。また監督の点でございますが、これも実は従来何と申しましても、これも人を得る点にあるわけでございますので、監督官につきましても、いろいろな研修の計画を進めるというようなこともいたしておりますので、従来あるいは監督官の巡回等が平凡にわたるといつたようなことがあつたかもわかりませんが、法律施行後、法律の普及と新制度の徹底といつたような方面に意を注いで参つておりますので、総合的な対策、たとえば資金がどうなつておるかといつたような点に着意ができなかつたような点があるかとも思われますので、今後は監督官等の具体的な監督にあたりまして、そういつた点も十分意を用いるよういたしたい、かように存じます。
  94. 前田種男

    前田(種)委員 私はこれ以上は質問を省略いたします。通産省に希望を申し上げておきますが、次の議会で、本委員会にこの問題をもつと詳しく論議もしたいと思いますし、あるいは通産省自身積極的な資料をお出し願つて、一体今後どういう対策をやろうとしておられるかという全貌を明らかにしていただきたいと思います。これは大事な問題でございますから、通産省全体の会議の上で、次の議会には必ず本委員会にそういう資料を出していただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終つておきます。
  95. 今野武雄

    今野委員 先ほどのお話を聞いてずいぶんおかしいと思つたのですが、監督局というものがあつて、平たい言葉でいえば、国民の税金を相当これにつぎ込んで役人を養つておるはずなのです。それでいて災害は年々ふえて行く傾向にある、こういうことを聞くとみな疑惑を持つわけです。そういう役所があつたら、一体どれだけの努力をしてこうなつたかということをもう少しはつきりさせていただきたい。  それからもう一つは、ちやんと法律には労災や何かのことがある、災害が多くなると、少し軽微なものはどんどん削られて行つてしまう。そうすると、政府みずから自分でつくつた法律に違反することになる。その点について監督局のお役人はどういうようなことを政府に進言するか、あるいはどういうふうにやつておるか、その点をはつきり聞きたい。  それからもう一つ、災害防止の思想の普及に努めるというのですけれども、私は前に文部関係をやつていて教科書を見た、国定教科書に、炭鉱というと危いところのように考えられるが、現在の炭鉱はまつたくそういうことはない、非常に快適に仕事ができるところだ、こういうふうに書いてある、現にこういうことを見ると、まるで逆のことを普及させて行くように考えられる。その点普及についてどういうふうに努力しておるのか、これは職場の中だけでなくて、国民に向つてどういうふうにやつておるのか、この三点を伺いたい。
  96. 小野儀七郎

    ○小野説明員 先ほど私の説明の中にも、ちよつとふれてございますが、実は保安局というものが新しく開設されまして、半年ほど経過した後は、昨年十月を頂点といたしまして、災害の実数というものが減つてつております。こまかい件数は持つておりませんですが、いずれまたそれを整備してお見せする機会があろうと思います。  また思想の普及の問題でございますが、私どももいろいろ安全週間を設けるとか、種々のポスター、あるいはアメリカ等でもやつておりますように、スライドと申しますか、幻燈等も持ち出しまして、災害の現実をなるべく頭にしみ込ませるといつたような方法等も考えて参つております。
  97. 今野武雄

    今野委員 予算上できないというのは、違法行為をせざるを得ないということに対して、どういうふうに考えておられるか。
  98. 小野儀七郎

    ○小野説明員 災害と労災関係の御質疑があつたかと思うのでありますが、詳しくは不案内のために、できましたら労働省の方からお答え願いたいと思います。
  99. 今野武雄

    今野委員 その第三の点は、大きい災害がたくさんできる。そうすると労災の予算のわくや何か小さ過ぎて、そしてそれに当てはまるべきものは除外せざるを得なくなる。そうするとどうしてもこれは政府自身が違法行為を犯すことになるわけです。相当赤字もでていることですから、現場で聞いてみますと、当然労災にかかるものが、かけられないという事実が多数発生しておるようであります。これは前田君も言つておりましたけれども、そういうことを改善するために、どういうような処置をとつているか、監督局としては何も関係ないのかどうか、その点お伺いしたいのです。
  100. 寺本廣作

    寺本政府委員 炭鉱関係の災害についての御質問でございますが、労働省の所管であります労災保険で跡始末をいたしております関係がございますので、私の方からお答えさしていただきたいと思います。  ただいま御指摘通り、炭鉱といわずその他の関係もそうでありますが、従来予定いたしておりました災害率よりも、より多くの災害が昨年以来発生して、災害率が上昇しつつありますために、労災保険として相当の赤字を出しておることは事実であります。しかしこれにつきましては、本年の四月以来保険料率の改訂をしていただきまして、相当多額の保険料を頂戴いたしておりますので、保険経済は漸次改善されつつあるわけでございます。本年の当初におきましては、計数の上から申しますと、約二十五億でありますが——もつともこれは決算の帳簿の上での赤字でありまするが、二十五億ほどの赤字が出ましたものが、四月から保険経済は保険料の値上げによりまして幾分改善せられまして、九月末現在では未払いは十二億になつておりました。それでそういう未支払いがありますために、当然労働者災害補償として請求し得るものが、査定されておりはしないかというお尋ねでございますが、この点は保険経済のいかんによつて、請求権のあるものを査定するということはいたしておりません。自然支払いが遅れて参るわけでございますが、支払いが遅れるということも、負傷しました労働者にとつては、やはり非常に大きな損害を与えることになりますので、現在応急の策といたしましては、本年の四月に、一般会計の国庫予備金の繰りかえを大蔵省から五億だけ借りまして、それから七月に十億ほど大蔵省から借りまして、とりあえずの措置をいたしております。四月から保険料率を上げておりますので、漸次収支の収入の改善がついて、労働者の権利の保護には遺憾のないようになりつつあると考えております。
  101. 中原健次

    中原委員 ちよつと関連して……。ただいまの災害の問題ですが、災害が何のために非常にふえて来たかということは、いろいろあると思いますが、非常に重要な問題は、特に朝鮮事変以来の出炭率の成績向上の反面に、極端な労働強化がなされておるということ、これなのです。そこで監督局としても消化の立場からいえば、なるほど出炭能率がぐんぐん上るということは、慶賀すべきだというふうになるかもしれませんが、また一面考えなければならぬことは、その上昇する出炭能率のために、非常に極端なというほどの災害が積み重なつて来ておる。こういう問題との関連を考えて対策を立て、監督方針を持たなければならぬのではないかということを私は思うのでありまして、従つて監督局自身としてこの問題についてはどういうふうにお考えになるか。ただひたすらに出炭能率が向上すればそれでよろしいというふうにお考えになるのか。さらに労働当局としてもこの問題については、ただいま次官の御発言もありましたが、単に労災保険問題だけをもつてこの問題に対する対策が立つのではないのであつて、そういうような現状に対してどう対処すべきか、このことについて労働次官の御見解もあわせて伺いたいのであります。
  102. 小野儀七郎

    ○小野説明員 ただいま出炭の増加と、ことにこの労働強化の点でございますが、終戦後逐時出炭が上つてつております。ただ私どもといたしましては、単にこの労働面、あるいは時間とか働きを強化するという点に重点をおいて、それだけにたよつて来ておるわけではございませんので、なるべく近代的な設備に改善するといつたような方向によりまして、ことに御承知のように、これが審議会等の結論も出ておりますので、諸施設の合理化といつたような点に重点をおきまして、その結果として出炭増というようなものが生れるといつたような方向に持つて行きたい、かように存じておる次第であります。
  103. 寺本廣作

    寺本政府委員 朝鮮事変が始まりまして以来の、労働強化に伴う災害率の状況はどうなつているか、それに対してどういう対策をとつておるかということでございますが、災害統計が大分ずれて遅れて参りました関係で、朝鮮事変が起つて以来のあらゆる事業場についての災害について、まだ結論をつけるところまでは参つておりません。ただしかし一、二の特需関係の仕事をしております事業場で、相当災害の絶対件数がふえておるというところが指摘されておりますので、そういう特殊の事業場につきましては調査を行つたことがございます。それによりますと、なるほど災害の絶対件数は相当ふえておるというのが目立つのでありますが、その場合労働者数が相当にふえたとか、または労働時間が相当に延びておる、つまり残業が相当にふえておるわけであります。従いまして、労働者の働きまする時間をかけ合せて延時間数を出して、それで災害の発生件数を割りまして百万倍します。災害度数率というものをとつて比較いたしてみまする場合には、さほど大きな変化がないというような事例を、問題になりました事業場については見出しておるのでございます。しかしながら残業その他労働時間か延びます場合には、災害がふえるのが普通の事例でございます。今までのところ、問題になりました事業場について調査いたしましたところではさような状況でございまして、特に労働省として、この朝鮮事変以来災害がふえたから、その事業場について手を打つということは、目下のところまではいたしておりません。ただしかし全般といたしましては、初めに申し上げました通り、昨年以来災害が相当にふえておりますので、労働省といたしましては、災害が特に目立つてふえておる事業場を選んで、安全についての指導を加え、安全管理についての講習をやつたり、安全施設についての監督を強化したり、あらゆる重天災害が起つた場合の事例を調査いたしまして、その原因を突き詰めて、それを報告書にして出し、印刷して配つたり、その他そういう災害予防についての措置を継続して現在とつておるわけでございます。
  104. 中原健次

    中原委員 労働災害の問題で、労働次官のお話によりますと、労働者の員数に比してはそれほど大した災害がふえておるわけではない、こういうさも災害は実際ふえていないのだというふうな御答弁のようでありましたが、私はここに一点お尋ねしたいのは、特に最近いろいろな産業の中で、臨時工が著しくふえております。そういう関係から、この臨時工の極端な劣悪労働条件のために、この人たちが月のうちで残業時間が相当延びておる。たとえば日産自動車なんかに行つてみますると、月三十六時間くらいの残業時間になつておるようであります。そういうような極端な残業時間が認められておる関係から、それに関連してやはり逆に働く人たちに非常な災害がふえておるというような状態があるわけであります。従つてそういうような状態が炭鉱にも、その他のあらゆる事業場、工、場に連続しておるわけなのであります。こういう問題について、当局はどういうふうにお考えになりますか。さらに労働人口、就業員数がどれだけふえておるか、その数の問題、あるいは災害の件数がそれならどういうふうになつておるか、その点についてもう少し明らかにしていただきたい。
  105. 寺本廣作

    寺本政府委員 説明が不十分でありましたために、誤解を招いたと思うのでございますが、初めにお断り申し上げました通り、朝鮮動乱以後の災害統計がまだ時期が新しいのでございまして、全般的な問題については申し上げる段階に至つていないということをお断り申し上げたつもりでございます。ただ一、二顕著に災害がふえたということが指摘されました事業場について調査したところ、先ほど申し上げます通り度数率からいえば、ふえていないという結果を発見した事例があるということを申し上げたのでございます。御指摘通り残業がふえれば災害がふえるというのは、一般的な傾向としては私どももそれを認めておるわけであります。
  106. 青野武一

    ○青野委員 運輸省の関係の方が非常に急いでいるというお話でありますので、警察予備隊の質問と、それからレツド・パージの問題を質問したいと思いましたけれども、あとまわしにいたしまして、私は一、二点運輸省関係で質問したいと思います。  この間の国会で衆議院を多数をもつて通過いたしました国鉄第二次裁定、すなわち四十九億五千百八十一万三千一円が支出可能になつたのでありますが、第一次裁定のときは御承知のように、仲裁委員会で四十五億が決定した。そのうち国会関係は十五億五百万円を支出いたしまして、残りの二十九億九千五百万円というものは法廷闘争に持ち込まれて、第一審が勝訴、第二審が敗訴になつて、今最高裁判所に提訴されておるのであります。最後の判決はどうなるかわかりませんが、私がお尋ねしたいと思いますことは、国鉄第二次裁定の四十九億五千百八十一万三千円を、六十億から差引きました残りの約十億五千万円弱の金が、国鉄公社国鉄労働組合の当事者の間で、事業の繰延べあるいはいろいろな費用の節約をいたしまして、もしそういう金の余裕が生じた場合には、いかに国会残余の額は承認しないと決定しておりましても、その点についてもし可能性がある場合には、運輸省はどうお考えになりますか。もちろんこれは第二次裁定も、第一次裁定と同じく裁判に提訴せられると想像しますが、この点についての解釈をひとつこの機会に承つておきたい。
  107. 石井昭正

    ○石井政府委員 先般両院で議決をいただきました国鉄第二次裁定は、四十九億五千百八十万円余に限り承認する、残余は承認しないという趣旨の議決をいただいたのでありまするが、この議決によりまして、裁定はいかなる効力を持つかということにつきましては、公労法の解釈でございます。公労法の解釈につきましてはいろいろ御異論もあるようでありまして、当委員会におきましても、いろいろの御議論があつたように拝聴いたしております。ただ政府といたしましては、この解釈は、主管は労働省でございまするが、もちろん私どもと労働省も同意見と思うのであります。詳しくは労働省にお聞き願つても同じことではないかと思います。裁定に関しましては、私どもは両院の議決をもつて終了いたした、かように考えておる次第でございます。お尋ねの点はそういうことではなくして、それと別問題の、当事者間において予算上の余裕が生じた場合はどうなるか、こういう御質問であるかとも存じまするが、その点につきましては、私どもは裁定の履行という問題と別個に、予算上の余裕があつた場合にこれを給与にまわすか、あるいはその他の費用にまわすかということについては、そのときの具体的な国鉄経済情勢その他に応じて、経営上の観点からも検討せらるべきであろうと存じますが、これを国鉄当局と組合の話合いだけで実施できないことは、予算総則に人件費に支出すべき給与の総額がきまつておりますので、その場合にはやはり国会の御承認によつて予算総則を修正いたしまして、予算上支出可能という形によらなければ、そういう支出はできないものと、かように考えておる次第でございます。
  108. 青野武一

    ○青野委員 私はまだ重ねて二、三お尋ねしたいと思いますが、法務府の高橋検務局長がお見えになつておりまして、同僚議員から関連質問があるそうでありますから、レツド・パージの問題と警察予備隊の解雇問題は、その関連質問が済みましてすぐやらしていただくことにいたしまして、一応質問を保留しておきます。
  109. 江崎一治

    江崎(一)委員 関連して……。午前中に御質問いたしたのですが、四十九億五千万円余の裁定の配分は、第二次国鉄裁定の指示に従いましてこれは労働組合国鉄公社側団体交渉の上、この分配の方法をきめるということになつております。私きのう運輸委員会から、国鉄公社側の配分に関する具体案の資料をいただいたのですが、現在この団体交渉がなごやかに行われているということですが、この労働組合側の主張はどうなつておりますか。それについてお聞かせ願いたいと思います。
  110. 石井昭正

    ○石井政府委員 四十九億のうち、これは同じ裁定の履行でございますが、この裁定の履行につきましても、二つの部分にわかれると思うのでありまして、一つは今年度におきます将来の分、つまり一月以降のべース改訂の分、それからそれ以外が十二月以前にさかのぼるべき性質のものだと思うのであります。このさかのぼるべき性質のものは、約三十五億一千六百万円かと思うのでありますが、これに該当します分の配分方法につきましては、一昨日でございましたか昨日でございましたか、すでに団体交渉も終了いたしまして、両者とも意見の一致を見て近く支払いの手続に移ることと存じております。それからさらに一月以降の分につきましての配分方法につきましては、まだ団体交渉も具体的な問題に入らぬ、まず最初に地域的な割増しをいかにすべきかという点で、両者まだ意見がまとまりかねているというふうに聞いておるのでありますが、御承知のようにこれは純然たる団体交渉事項でございまして裁定趣旨沿つておる限りにおきましては、これは当事者間の双方の合意にまつというのが当然でございまして、私どももただいまの段階では、微細な点にまでタツチして聞知しておりません。御質問に詳細にお答えできないことを、まことに遺憾に存ずる次第でございます。
  111. 江崎一治

    江崎(一)委員 公社側の案によりますと、今度は扶養家族手当が三人を限度として切られるということであり、また勤務地手当が三段階になりまして最高二割というように非常に悪くなつておる。こういうようないわゆる生活給の傾向から、能力給の方へ非常に強く移行しておるということについて、一体国鉄労働者がこれで食つて行けるかどうかという、そういう点についてどう考えられますか。この国鉄公社の案について監督庁はどういうように考えておられるか、そういう点をお聞かせ願いたいと考えます。
  112. 石井昭正

    ○石井政府委員 給与の体系はいろいろございますが、公社側が持つております案は、江崎委員が御承知の案は、これは公社側の一部局においていわば理論的につくつている案だと思うのであります。ただもちろん扶養手当の問題、地域給の問題が、どういう考え方によるべきかという点については、いろいろの見解もあろうと思います。たとえば地域手当の問題でありまするが、国鉄のごとく全国津々浦々に職場を持つておりますところで、しかもその戦場が隣合せになつているというところにおきましては、地域給の問題なども、官庁が分散しておりますようなところと違つて、非常にむずかしい問題があるようでございます。一方には地域給の差をつけろという要求も非常に強ければ、逆に地域給はむしろ低くすべきであるという要求も、組合の中においてすらあるように聞いているのであります。従いましてこれらの点に関しまして私はこの仲裁委員会裁定の、平均八千二百円に到達せしめるという趣旨をそこなうということに相なりますれば、これは御指摘のように、労働者の生活権というものに対する侵害とかいうようなことに相なるかと思うのでありますが、もし組合側と円満に協定いたしまして、ある場合には地域給あるいは家族手当というようなものを、むしろ本給に繰入れた方がいいという、当事者双方の意見の一致を見るというような場合には、それも国鉄という事業体の性質、あるいは労働者地域的な配分、年齢構成その他から見て妥当であるならば、それもさしつかえないじやないか、かように考える次第でございます。
  113. 江崎一治

    江崎(一)委員 公務員の給与ベースの改訂と同じ政治的な意図によりまして、国鉄部内におきましても、上に厚く下に薄いという配分の仕方をする危険が十分にあると思う。これが過度な状態に達した場合に、監督官庁としてはこれに対して注意するか、どうかその点をお伺いします。
  114. 石井昭正

    ○石井政府委員 御承知のように団体交渉でこれは話がきまるのでありまして団体交渉で話がきまらない場合は、仲裁委員会の指示によつて決定するように、仲裁裁定書なつていると思うのであります。従いまして、おそらく御指摘のような労働者側として納得できないような案を、公社側が固執いたしますならば、私は当然仲裁委員会の指示に待つということに相なるかと思うのであります。そうなりますと、公正なる第三者としての判定を下す仲裁委員会の指示によつて行われることに相なるので、特に監督官庁というものが、そこに口を出すという必要に至らないのじやないかと存じております。
  115. 江崎一治

    江崎(一)委員 これは国鉄部内の実情でありますけれども、超過勤務手当が大体五〇%しか払われておらぬという事実がありますが、これに対して運輸省はどう考えておられますか。
  116. 石井昭正

    ○石井政府委員 運輸省と国鉄と同じ庁舎の中に住んでおりますが、運輸省においては非常に超過勤務が予算上苦しい。しかし国鉄の方はその点が非常に潤沢であるという話は聞いておりますが、御指摘のようなお話は私は耳にしておりませんが、さつそく調査いたしてみたいと存じます。
  117. 江崎一治

    江崎(一)委員 御存じないということは、はなはだもつてこれは意外だと思うのです。品川検車区では大体五三%ぐらいしか払われておりません。しからば各職場において超過勤務を命ぜられたときに、当然これは超過勤務が支払われなければやりませんと言つていいと思う。ところが、こう言うと首が切られる。首切りの対象になるということで、非常にこれは大問題になつている。こういう点を監督官庁であるところの運輸省は、そういつたような現場の状態に対して、十分監督の任を果すべきが至当だと思いますが、そういう点についてどう考えられますか。
  118. 石井昭正

    ○石井政府委員 先ほどは失礼いたしまして、本省のことを申し上げましたが、現場職員の給与の点につきましては、私は不払いということはほとんどあり得ないと考えておるのでございまするが、あるいは何やら会計事務の手続、つまり計算上の手続等が遅れて、思うような時期に職員の手に渡らないというようなことで、御不満があるかとも存じます。さつそく調査いたしまして、もしそういう手続上遅れるというようなことがございますならば、なるべく督励いたしまして早く支払わせるようにいたしたいと考えております。
  119. 倉石忠雄

    倉石委員長 青野君は先ほどの質疑を継続されるわけですね。それでは青野君。
  120. 青野武一

    ○青野委員 警察予備隊の責任者と、法務府から検務局長がおいでになつておりますが、どちらにも御質問したいと思います。十一月三十日に、警察予備隊員約一千名ほどが、突如として解雇せられました。私どもはその人々の代表者に面会することができたのであります。一項目ずつお尋ねいたしますると、ほかの委員諸君の質問時間にも多少影響いたしますので、あわせて御質問したいと思いまするから、その点は率直に、しかも簡潔に御答弁願いたいということを希望いたしておきます。この代表者のうちで、愛媛県、広島県、山口県の方の意見をそのまま出しますと、警察予備隊隊員を募集した際に、二回にわたつて厳重な身体検査が行われた。それと二箇月間に非常に厳格な基礎訓練が行われたと言つておりますが、この二点は事実でありますか。まずこれからお尋ねしたいと思います。
  121. 江口見登留

    ○江口政府委員 募集の際に二回にわたつて体格検査をしたことは事実でございます。しかし七万五千の充員を非常に急ぐあまりに、科学的なレントゲン検査といつたような検査はいたしておりません。従いまして入隊後そういう疾病を持つておるということが判明した者がかなりございます。それから二箇月の間訓練を行つて来たことも事案でございます。
  122. 青野武一

    ○青野委員 それで今回広島地区で申しますと、三十二名ほどやられた。もちろん胸の病気で非常にひどい人もあるが、問題にならないほど軽い人も含めて大量的に、全国で約一千名と聞いておりますが、採用してわずか二箇月後に千名も解雇した。これらの人に精神的に大きな打撃を与える病名をつけて、解雇を申し渡した。それが聞くところによりますと、われわれの同胞であるたとえば日本人の教官が、訓練の途上にそういう人選をしたかというと、決してそうではないということを聞いておる。これは御承知のように、費用の一千二百八十五億円というものは、債務償還の形で国会において決定した金のうちから、政令で五百億をとつて来てこれに充てた金である。明らかに国民の負担によつて七万五千の警察予備隊の費用に充てておることは事実である。ところがどういう理由で、これだけの大量の人を馘首しなければならなかつたか。しかも代表者の言によりますと、レントゲンをとつて——私はいろいろ医学上の資料を握つて質問しておるのでありませんで、そういう人たちの意見を参考にして御質問するわけでありますが、ほとんど軽微な者も含まれておる、あるいはそうでない者も含まれておる。うまく動かない者、敏速な行動をとらない者、そういつた者が感情的にその中に含まれておるというのもあるらしい。進駐軍要員が一銭の解雇手当ももらえずに大量に解雇せられ、この労働委員会で問題になつたことがある。日本人として真剣に労働委員会で討議したことがあるのでありますが、この年末を控えて解雇手当ももらえずに、精神的に大きな打撃を受けながら、二箇月間の厳重な訓練を通して、突如として首を切られた諸君には、われわれは日本人として心から同情しなければならない。こういう人たちは、たとえば学校の先生であるとか、あるいは会社員、労働者、農民の諸君、あるいは引揚者の方であるとか、あるいは現実に失業しておつた人もありましようが、大体二箇年間勤続すれば、いわゆる六万円の退職手当がもらえる。それにつられて行つた者も多少ございましようが、とにかく相当の期待と希望を持つて入つたことは事実である。それをこれだけの大量な人が、解雇手当をもらえずにやめなければならぬ。そうして前の職業に復帰することもできない。二年間勤続して六万円もらう夢も破れておる。こういう点に対して、この代表者の諸君が大橋法務総裁に面会して、その理由の説明を求め陳情しました際に、個人的には一、二箇月分ぐらいの解雇手当を出したいとは思うけれども、私自身の力ではどうすることもできない。それから先は速記の関係がありますから私は申しませんが、とにかくこういうことは、われわれとして見のがすことのできない一つの非常に悲惨なできごとである。これに対して警察予備隊当局、法務府の責任者は、この千名の諸君に対して原則としては復職せしむべきであるけれども、非常に病気が高進しておる人が隊員の中に入つておることは、これまた非常に危険性もある。しかし大体短期の療養ができる者は、こういう残酷な処置をとらないでもいい方法があるのではないか。この点をひとつお尋ねして法務総裁が言つておるような方法で、関係方面との折衝がなされておるかどうか、この点をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  123. 江口見登留

    ○江口政府委員 最近に一千名に上る大量解雇をされたというお話でありましたが、予備隊が創設されまして、今日までにやめた者が約千百人でございます。そのうち任意退職者が六百名おります。それから不都合な所為があつたりなどいたしましてやめさせられた者が三百名ございます。それから医学的な理由によつて、その中にはただいまのお話の結核も入つておりますが、やめた者が約三百名おります、検診の結果一千名の結核患者を解雇したということはございません。二、三日前の統計によりますと、最近のレントゲン検査によりまして解雇された結核患者は百七十七名になつております。しかしこれは一斉に解雇したために、そういつた問題が生じたのでありまして、そういう人に対しては非常に同情いたしております。お話通りあとの療養とか、生活とかいうものにつきましては、相当のめんどうを見てあげなければならぬと考えております。それでただいま私どもの考えておるところでは、大部分の者を復職させまして、そうしてそれに八箇月ぐらいな療養費と給与とを支給して行くように目下折衝中でございます。従いまして、今除隊して帰つております者に対しましても、ここ数日中にはそういう救済手段のとられるということを通知いたしてあげる段取りになつております。
  124. 青野武一

    ○青野委員 これは労資間の闘争とは違いまして、やはりいろいろ複雑な関係が含まれておりますので、全員を復職させろということは現実的に不可能なことでありますが、そういう措置がとられておるということは、非常にわれわれにとつては喜ばしいことでありますが、将来かりに朝鮮動乱がわれわれの希望いたします通りに終息いたしましても、やはりこういう問題が生れて来る。対外的な関係日本人にはどうすることもできぬ。抗議を申し込むこともできない。いたずらに何万、何十万というわれわれの同胞が、非常に気の毒な立場に追いやられぬとも限りません。でありますから、こういう際は同じ日本人の血が流れておるという、ほんとうに同胞愛の立場に立つて関係方面と十分な折衝をしておく必要がある。この前にもそういう例があつた。だからこういうことはあたりまえである。日本人は何も言い切れぬ。こういう考え方を持たれることは、私院どもは非常に不利である。でありますから、これは余談でありますが、講和会議に際しましても、吉田総理が各所で答弁しておりますように、する、せぬは向うのかつてである。われわれは講和会議内容にこういうことを入れてもらいたい。ほんとう意味の独立国家をわれわれは要求したい、形だけではだめだ。こういうことを言うのは自由であります。でありますから、こういうような問題が将来も起ります。七万五千人の人を扱つておりますると、おそらく私の聞く範囲では、医務局長も、医務に関係するお医者さんも雇うていない。事務の方の整備もできていない。少くとも七万五千の人を集めて、病気したときにはどうするか、もし不幸にして、死亡したときにどうするか、けがをしたときにどうするか、やめる人にはどういう手当を出すか、不都合があつてやめさせても、それに相当するだけの規則がもうできておつてもさしつかえないと思う。こういう点について、もしこれがあなたたちの処置に誤りがあると、残つておりますたとえば七万数千の諸君の志気に影響する。これは私どもは特高警察化したり、昔の憲兵のような行き方をしたり、政府首脳部の命令で軍隊化することは反対ですが、無断に日本法律を破つて外国から侵入して来る。あるいは日本におる人が国外に脱出をする。いろいろな密貿易をやる。国内の治安を維持する。こういうような場合に必要な行動をすることは、社会党として私どもは賛成しておる。ただこれをいろいろな方面にとにかく利用して行くという行き方、昔の軍隊化に反対しておるのであつて、中におる諸君がこういうような問題の起つたときには、それとは別個に取扱うべきである。この点については労働委員会で相当強く論議が行われ、発言した者もせぬ者も、非常に大きな関心を持つておるということを、関係方面に大きく影響力を持つて交渉してもらいたい。また押し迫つております年末を控えて、東京の自由労働者も一般の労働者もそうでありますが、どうにもならない。職場を離れて大きな希望を持つて入つた人がやめたのですから、元にもどることもできない。目の前に正月が控えて、につちもさつちもつかない。もち代どころの騒ぎでない。こういう人たちに対しても、適切なる方法が講じられていいと思うのです。その点について具体的にどういうことをやろうとなさつているか、お尋ねいたします。
  125. 江口見登留

    ○江口政府委員 ただいま申し上げましたように、ここ数日中には先ほどの案も具体化することと存じまするので、もうやめて一月、あるいは二月たつている人は、その一月あるいは二月の月給と、療養をしておればそれに要した療養費を支給するということを通知できると思いますので、もう一文ももらえないで退職させられたと、あるいは考えておるかもしれませんが、そういう人たちもその通知をもらつた際には、蘇生の思いがするであろうと考えております。  それから今後の疾病対策につきましては、七万五千を急速に補充するというようなやり方でなくして、欠員を数十名ずつ補充して行くというかつこうで採用いたしたいと考えますので、科学的な検査も十分綿密に行いまして、そういう疑いのある者は、初めから入れないで行くという方法がとられると思いますので、今後はこういう問題は生ずることはないと考えます。医療組織の問題につきましても、御承知通りはなはだ急速に整えましたために、御指摘通り医者なども入つておりませんが、最近医務の最高幹部がきまりまして、本日もすでに数人衛生技術官を採用することができたような次第でありまして、そのうちには衛生将校と申しますか、——将校という言葉はおもしろくありませんが、その方面の幹部も相当採用されることになろうかと思います。それが完備するまでの間は、地方国立病院などと契約いたしまして、病気の治療、あるいは負傷の治療などについては、万遺憾ない程度に措置いたしておるつもりでございます。
  126. 青野武一

    ○青野委員 よくわかりましたので、最後に希望を申し上げておきますが、なるべくこういう問題が二回、三回と起らないように、いろいろ関係者が話合いまして、相当強い決意のもとに、こういう人たちの生活を保障して行く。自分たちの使つておる何万という人は、とにかく自分たちの責任で動かすかわりに、生活もまた保障する。どういうことがあつても、その人たちがかりにやめるようなことがあつた場合には、できるだけそれを食いとめてやるといつたような行き方をしてもらいたいということを希望しておきます。  今度は法務府に関係もありますが、私の考えといたしましては、非常に重大問題であると思いますのは、今回全国で——資料ははつきりしておりませんが、一説には一万七十五名といわれておりますが、数字ははつきりいたしません。一万人を越したことは事実ですが、今回強い指示のもとに行われましたレツド・パージで職を離れた諸君を、一体労働省なり法務府は、どういう考えでお扱いになるか。私どもがきようもその問題で行つたのでありますが、労働省が全国に通牒を出してあるいは新聞紙上で発表しておるものを見ますると、レツド・パージに対して便乗解雇はまかりならぬ、そういう行き方をすれば、いたずらに労資の紛争を来すという建前から、そういう意思を表明なされたことを知つておるのでありますが、私どもに入つて来る情報、資料の中には、ほとんどレツド・パージではない、それをきつかけにいたしまして、会社や工場でまじめにやつておる人たちすらも、解雇しておるという実情がある。私が今聞きたいと思いますることは、そういう問題の起つておりまするときに、今までの組合に対して、会社側は、会社側の言うことを聞く第二組合を計画的につくる。そうしてその第二組合に入らない者——労働組合の指導者であつて、相当高い地位を持つて大衆的に動ける人を、とにかく第二組合に入らないからというので、レツド・パージと一緒に首を切つた。こういう行き方がたくさんあるのであります。全国には相当の数に上つておる。私はきようも日本セメント会社の井上という社長に会つて来ました。ここにも第一、第二の組合がある。私は医務室の事務員である。けがをした、病気をした従業員を何千人と手当するためには、両方の組合に入るというわけに行きません。こういう立場で会社の言うことを聞かないで首を切られた。これは事実なんです。認めている。私は休憩中に復職させろと言つて来た。話してわかる会社の首脳部は、何十人私どもの要求によつて復職をしておる。こういうように明らかにわかつているのは労働省あたりで、それはレツド・パージとは全然違うんだ、便乗解雇だ、それを元にもどせ、解雇を取消せというくらいに、労働省労働者のサービス省でありますから、そういうことの情報、資料が入りました節には、はつきりした態度をとつてもらいたい。     〔委員長退席、島田委員長代理着席〕  もう一つそれにあわせてお尋ねいたしたいのが、私の質問の眼目でありますが、今度レツド・パージでやられた諸君は、赤追放と申しまして共産党関係者、あるいは支持者というように目されておりますが、吉田総理大臣もだれかの質問で、共産党を解散させたらどうかという質問があつたときに、共産党員といえども日本人である、だから今党を解散させるという意思は持つておりませんということを、たしか外務委員会でやられておるのを、私は二、三日前のラジオで聞いたことがあります。でありますならば、吉田内閣の総理がそういう考え方を持つておるなら、大体の輪郭はわかりますが、労働省あたり、あるいは法務府あたりは、この点についてレツド・パージでやられて職場を離れた諸君が、あれは共産党員である。共産党の支持者であるというので、レツド・パージにかかつた諸君は、とにかく日本全体の工場も会社も、小さいところも大きいところも、これを雇わないということに陰で申合せをするならば、結局生きるためには悪いことをするか、腕を組んで餓死するより行く道はありません。大正三年ごろから大正十四、五年にかけて、九州ではこういうことが現実にあつた。みんな話し合つて、商売をすれば倒す。働きに行けば特高警察がやつて来て、すぐに工場閉鎖をするか、首を切るか、飛車か王手か、こういう調子にやつて来られて、われわれの同志は大きい工場を首切られて、五年、十年と路頭に迷つて、心にもなく敵の軍門に降伏したり、農村に帰つて行つた人が多い。共産党員であるからレツド・パージにかけたというので、あくまでもその人々を圧迫して行けば、その人々は餓死するより行く道はありません。日本人であるという立場に立つて、一応その職は離れたが、適当な職場で働くことになつたら、そこまでつついて就職の妨害をすることは、死んで行けということなのです。日本にそんな労働政策というものはありません。どこから命令がでても、われわれはそれを食いとめて、適当な職場で働くことにむしろあつせんして行く態度をとつてもらいたい。これが日本人同志であると私は思う。今はレツド・パージ後における不安な状態にあります。民間重要産業では、まだ整理が来ると私は考えておる。みな不安な状態にあるときです。そういうときに衆議院の労働委員会で、レツド・パージ後における就職の妨害に絶対にしない、何らかの形で適当なところで、それぞれ生活のために仕事にありつけるように、間接に直接にわれわれが努力しないでも、妨害しないという方針を確立する必要があると思う。これは外国でも私はそうなさるべきであると思う。この点について労働省と法務府の御見解を承つておきたい。
  127. 寺本廣作

    寺本政府委員 今年の夏以来行われましたいわゆるレツド・パージの対象なつて退職された人々に対して、政府としてはどういう考えを持つておるかということが、お尋ねの第一点だつたと思います。レツド・パージの対象なつた人は、先ほども御指摘通り一万を少し出る数に達しておるのでございます。そういう方々は、第一にはわれわれの方の調査によりますれば、退職金として平均六万見当をとつておられるだろうという見当をつけております。目下のところは、その退職金びに失業保険金の給付によつて、生活を支えておられるのであろうというふうに考えております。この人たちが新たに職を求めて就職活動をされる場合に、政府としては一般の場合と同じく、この就職の申込みにつきましては何らの差別なく、その申入れを受付けておるわけでございます。そういたしまして、新たな求人口があります場合に、そこへまわしまして就職のあつ、せんをするわけでありまするが、就職のあつせんにつきましては、御承知通り職業安定法で適格条件がきまつておりますので、その適格条件に該当いたします限り、できるだけ就職のあつせんをするということに相なるわけでございます。ただしかしこういう方々が、従来経営者の判断によつて、企業防衛上支障ありということで解雇されておりますので、そういう事由がやはりその人についてまわつております場合には、就職が困難な場合が多かろうと思うのでございます。従いまして私どもといたしましては、こういう方々が新しい産業人としての自覚に立たれ、企業防衛の立場から少しも危険性はないというような自覚に立たれて、新たな就職運動をされる場合には、職業安定所から紹介しました先においての就職が、円滑に行くのではなかろうかと考えるわけでございます。  なお便乗解雇をやられた者についての対策はどうするかというお話でございました。この点につきましては、労働省といたしましては、こういうレツド・パージというような一大風潮が起つて参りましたので、それが行き過ぎにならないようにということで通牒を出しまして、そういう企業防衛に名をかりて、企業防衛に必要のない者まで解雇することのないように、相戒めるように注意はいたしたのでありまするが、数多くの中には、そういう必要のない者まで、企業防衛に名をかりて解雇したという事例が、絶無ではないと考えるのでございます。労働省としてそういう事例を承知いたしました場合には、経営者並びに労働者双方の話を承りまして、労働省として一応復職させられたらいかがなものであろうかという勧告はいたしております。ただしかしこの問題は、労働省勧告するということだけでは、話が解決しない場合もございますので、そういう場合には地労委に提訴するなり、あるいは裁判所に出訴するなり、それぞれ法規の定めるところに従つて保護を求められるように、処置いたしておるわけでございます。  なお最後に御指摘になりました今度のレツド・パージの対象なつた者について経営者がいわゆるブラック・リストをまわす。その人間がレツド・パージで切られた者であるということで回状をまわして一生その人間の就職を不可能にするというような事例がございますれば、信条ないしは組合運動をやつたというようなことで、就職を妨げる目的をもつて、ブラック・リストをまわすということは、法律の禁止するところでもありますので、さような事例がありますれば、法律の定めるところに従つて処置したいと考えております。
  128. 青野武一

    ○青野委員 もう一つ最後にお尋ねしたいと思います。労働省側の見解はよくわかりましたが、こういう点については、単に警告を発するだけでは、切つたあとどうすることもできない。労働省はもつと強くそういう点について、干渉というと行き過ぎになりますけれども、労働省の政策の面からいつてみて、そういうことを平気でやる悪質の会社、工場も全国に相当ある。そういう事例は炭鉱方面にもある。ここに麻生さんがいらつしやいますが、筑豊ではなく、ちよつと離れておりますが、とにかくそれをやつて、そうしてぐずぐず言うと、結局退職手当を少しよけいやるからと言うて頭をなでて、やめたくない者を自発的にやめさせるというような行き方が、この方面にたびたびある。それが文書によつて、たくさん私のところに来ておる。一つ一つ言いますることは、時間がありませんから申しませんが、そういう点については、労働省はただ一片の通牒によつて、便乗解雇まかりならぬと言うだけでは、文句を言うな、おれは解雇するんだという行き方をすれば、それきりになつてしまいます。それでは労働者の生活を保障することはできない。こういう点については、労働省はやはり相当しつかりした考え方立場を守つて労働者の生活をあくまで労働省が保障するといつたような気構えで、再出発をしてもらいたい。これは希望であります。  それからこれは文部関係でございますので、実は文部省の関係者に来てもらうようにお願いしておつたのでありますが、今私どものおりまする福岡県で問題になつておりますのは、学校の教職員の超過勤務手当が、一銭も事実上もらえない。こんなに暗くなるまで、翌日の授業の関係やあるいは学校運営のために、三時間も五時間も毎晩残つて学校事務に携わつておるが、—銭ももらえない。こういうように実際現実に何時間も超過勤務をやつてつて、勤務手当をもらえないということは、これは裏返しにすると、労働基準法の違反です。これは福岡県と日教組の問題でありますが、そういう点についても、全国的に労働省がはつきりした見解を持たれることが私は至当であると思う。予算関係が伴うことであり、地方財政に直接の関係がありまするが、労働省としてその点についてどういうお考えを持つておるか、はつきりした線をひとつお聞かせ願いたい。  それから問題は少しこまかくなつて参りましたが、箇条書きで簡単に最後の御質問を申し上げたいと思います。これはいろいろな資料から見ましても、東京の生活必需物資と、北九州の生活必需物資というものは、あまりかわりありません。それにもかかわらず、日雇い労務者の一日の賃金というものが、大体北九州方面は百七十六円、こちらの方は自由労働者の諸君が、三百円にしろ、あるいは三百五十円出せ、少くとも手取りは三百円程度やれ、一箇月のうちに二十日も働けないのだからと言つて、自分たちが苦しい生活をみずから守るために、いろいろな要求をされておりますが、物価は同じようにそういう苦しい立場に立つている北九州福岡県の、特に炭田方面の諸君は百七十六円、実際にその差額が七十四円開いている。こういう点は関門をひとつ渡りますと、下関との開きでも四、五十円ある。下関の物価が北九州と比べて特に高いとは申されません。いろいろな資料を集めておりますが、むしろ同じである。それが自由労働者が一たび働いてもらう給料は、四十円から五十円開いておる。日本で一番最高といわれておる東京が手取り二百四十二円、こういう状態の不公立が、非常な不満を与えておるのでありまするし、そういつたところから地域給が筑豊炭田では二割、それを今度五分引きした。北九州では三割、東京でも三割、それを全部五分引きしておる。同じ立場に立ち、同じ苦しい生活をしておる者が、地域によつて大きな差額を設けられておる。こういう点について自由労働者諸君が理事者と相談をいたしまして、私の方に——各党にもそれぞれ陳情が来ておるのでありまするが、こういう点について、もう少しその差額を縮めるか、平均にする必要があると思いまするが、これもあわせてお尋ねをしておく次第であります。  それからこれは今野君からの請願書内容についての御質問の中にあつたかとも思いまするが、ついででありまするからお尋ねをしておきますが、日雇い労働者に対して健康保険制度の新設を、労働省は計画なさつてはどうか。またこれについて歯科とか、産婦人科とか、あるいは内科、外科、あるいは耳鼻咽喉科といつたようなものを、ほとんど医務関係は網羅いたしまして、日雇い労務者の諸君にもし疾病あるいは負傷のあつた場合に、これに適切なる治療あるいは養生をさせるといつたようなことは、これは社会保障制度の上からいつてみても、その保障制度の一環としても、もう実施すべき段階に来ておるように思いまするが、この点についての当局のお考え、それからこれは厚生省にも直接関係がありまするが、主務官庁としての労働省当局の御意見を承りたいと思います。  それからもう一つは、失業救済事業を、漸次公共事業に切りかえて、半恒久的に仕事にありつけるようにしてもらいたい。これが全国的に日雇い労働者の非常に強い熱望であります。今の状態では九州方面では十六日、東京では先ほど齋藤局長の御意見であつたが、二十五・五と言つておりますけれども、東京の三万五千の自由労働者の諸君が、おしなべて二十五・五日働く人はおそらくおりません。これは最高に行つてみても三十日である。平均をとれば十五、六日、それでわずかに二百四十二円の金、御婦人の方はずつと下つておる。こういう点について、それを漸次公共事業に従事して仕事のできるように、半恒久的な事業にありつけるように、ひとつ東京都あたりとよく話し合つてそういう線に持ち込んでいただきたいと思いますが、それに対してどういう考えを持つておるか。  それから最後に、失業救済人員のわくを広げてもらいたい。これは全国的でありまするが、特に東京は何と申しましてもおひざ元でありまするから、問題も大きいが、それがすぐに実施するような形もときどき見受けられるのでありまするが、大きな会社を控えておるところ、たとえば九州の戸畑をとりますと、日本水産が七百五十名足元で切つた。日立が約五六百名切つた。東洋製罐か三百名切つた。合計一晩のうちに二千何百人かの者が、ぽつと失業の街頭に投げ出された。ところがわずかに百四、五十人のわくしかない戸畑の市役所では、何としてもただちに失業救済事業に動員することはできません。会社と結んで首はどんどん切るが、あとのしり始末は、地方財政の非常に困窮なる立場に追い込まれておる諸君が、みなこれをまかなわなければなりません。関西で大きな工場、会社を持つておるところが特にひどい。こういう点についても、やはり労働省はその失業救済事業の人員のわくを広げるように努力し、無謀な会社の首切りに対しては、会社側に対して相当厳重な警告を発して、その善後処置をとるべきであると思いまするが、以上の諸点について簡単でいいですが、ひとつ御答弁をお願いしておきます。
  129. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 私からただいま質問のありました点につきまして申し上げたいと思います。九州地方賃金の問題でございますが、下関、福岡並びに九州が、そのほかの地域と多少調整のとれていない点がありますことは十分承知いたしておりますので、地域間の賃金調整をとるべく目下検討を加えておりまして、できるだけすみやかに実施いたしたいと考えておる次第でございます。  次に日雇い労働者の健康保険の問題でありますが、これは先ほどの請願にもありましたが、御承知のように厚生省所管の事項でございまして、目下厚生省においても検討を加えていることは承知いたしておりますが、今ただちに実施することは、非常に困難であるということも承つております。なお厚生省にも十分連絡はいたしたいと思つております。なお疾病、傷害に関する問題でありますが、日雇い労働者が失対事業に従事しております際に、業務上受けたというような場合におきましては、その傷害は労働基準法によつて処理されていることは、御承知通りかと存じます。  次に、失対事業事業を半恒久的に実施したらどうかというお尋ねでありますが、御承知のように公共事業は、さような面があろうかと思いますが、失業対策事業は緊急失業対策法によりまして、失業者数の変更に応じまして、機動的に実施すべきものでありますので、半恒久的に実施することはきわめて困難かと考えております。しかしながらいやしくも相当莫大な金額を失業対策事業に使つております現在におきましては、この失業対策事業があくまでも経済復興に役立つような、りつぱな事業であるということが一番望ましいことは当然でありますので、労働省といたしましては、単なる草むしり、どぶ掃除といつた範囲ではなしに、あくまでも経済の復興に役立つようなりつぱな仕事を選ぶということにつきましては、同意見でございます。  最後に、失業対策事業の人員のわくの問題でありますが、この問題につきましては、本年度におきましても、労働省においては多少ではありましようけれども、毎期とも増加して参つているのでありまして、すなわち本年の第一・四半期におきましては十億を使い、第二・四半期には一三億、第三・四半期には十四億といつたようなぐあいに毎期人員のわくの拡大には努力いたしております。もちろんこれは失業者の増加の傾向に相照応するような意味においての拡大でありまして将来とも失業者の情勢がそういうふうな増高の傾向をたどるならば、当然労働省としても人員のわくを拡大するように努力いたしたい、かように考えておる次第であります。
  130. 青野武一

    ○青野委員 教職員の超過勤務手当のことについて。
  131. 寺本廣作

    寺本政府委員 学校教職員の超過勤務について、超過勤務手当を支給しない事例があるが、どう考えるかという趣旨の御質問でございますが、御承知通り学校教職員の勤務時間は、労働基準法の上で申しまして労働時間、いわゆる労働時間というものとかみ合せてみます場合に、非常に計算が困難な点があるのでございます。その点からいろいろ争いが起つておると思います。法律の解釈といたしましては、学校教職員でありましても、実働四十八時間を超える残業を命ぜられた者は、超過勤務手当を払うべきものという解釈を労働省としてはとつております。ただその法律の適用になる労働時間が、学校教職員については非常に計算が困難であるという点から、争いが起つております。なおこの実働時間の計算その他の争いが、現在一、二の地方で裁判に提訴されまして、裁判上それが実働時間であるか拘束時間であるかの問題が、争われつつあることは御承知のことだと考えます。
  132. 天野公義

    ○天野(公)委員 レツド・パージに関連して、二、三点お聞きしたいと思います。今まで一万余者レツド・パージされたわけでありますが、今後労働省の見通しとしては、さらにレツド・パージが行われるかどうか、お聞きいたしたいと思います。
  133. 寺本廣作

    寺本政府委員 レツド・パージが今後も行われるか、見通しについてどうかというお話でございますが、御承知通りレツド・パージは、今年の八月以降十一月までの間、ずつと行われて参つたのでありまするが、当面の問題といたしましては、これで重要産業におきまする企業防衛の上から危険がありと判断された人々は、一応企業から排除されたのではなかろうかと考えております。ただ将来の問題といたしまして、かような事態が再び起らないように、労務管理が適切に行われることを、労働省といたしましては期待しておるような状況でございます。
  134. 天野公義

    ○天野(公)委員 レツド・パージされた人が一万余者いるわけですが、それらの人は現在の情勢ですと、なかなか就職するにも困難だろうと思われます。そうすると、どうしても職業安定所の方に行かざるを得ないことになろと思うわけです。共産党の方でこれらの人の生活のめんどうを見ればまた話は別でございますが、そういうこともあまり考えられませんので、共産党の最近の情報によりますると、職安に細当力を向けて、職安闘争を全国的に展開しようというような話も聞いておるわけであります。これらレツド・パージで失職した人々が、共産党の闘争方針と合体して、また党員として職安闘争に相当これから力を注いで行くのではないかと思うのですが、そういう兆候が現在あるかどうか。またそういうような場合があるときには、職安といたしましてはどういう対策で進むか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  135. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、先ほど労働次官からもお話がありましたように、企業防衛のためといつたふうな理由で馘首せられました方々は、そうした性格を持続する限りは、就職もあるいは相当困難かと考えておる次第でございます。しかしながら公共職業安定所におきましては、そうした方々が失業中は、もちろん失業保険の支給を受けることは当然できるわけでございます。それと同時いに安定所におきましても、求職の申込みには差別待遇をいたさないつもりで、求職の申込みは十分受ける考えでおります。しかしながら現実問題として、就職するかどうかという問題になりますれば、先ほど次官から御答弁がありました通り、就職あつせんする場合におきましては、選抜紹介ということを安定所では当然実施いたしておりますので、産業防衛のおそれというものがなくなりますれば、当然就職はあるいは楽になるかと思いますが、そうしたことがない限り、事業主の側で就職させないということは、あるいはあろうかと思つております。私どもといたしましては、そうした危険性を一擲いたしまして行くならば、就職は容易になるのではないか、かように考えておる次第であります。
  136. 天野公義

    ○天野(公)委員 先ほどお尋ねした第二点の、いわゆる共産党の指導というか、しり押しによるところの職安闘争と呼ばれるものが、現在どの程度に起つているか、またそれらの展開されるおそれがあるかどうか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  137. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 以前におきましては、一部扇動的なそうした動きによりまして、いわゆる職安闘争と申しますか、そういうものも相当あつた報告を受けております。ごく最近におきましては、あまり報告は受けておりません。将来どうなるかという問題につきましては、私どもにはちよつとわかりかねるのであります。
  138. 天野公義

    ○天野(公)委員 大体私のお伺いしたい点は終つたのでございますが、レツド・パージされた方々にも、いわゆる職安闘争というような、扇動されて不当の行為のない限り、厳正公平に、あたたかい気持で受入れられるように、ぜひこの際お願いを申し上げる次第でございます。
  139. 江崎一治

    江崎(一)委員 全国的に見て失業者の問題は、非常に大きな問題でありますが、一々論じておりますと、これはちよつと時間が間に合わないので、きようは東京都内だけに限定して考えたいと考えるのですが、大体東京都内だけで、この自由労働者の月の就労率並びに一箇月の平均収入はどれくらいになつておりますか。
  140. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 東京都からの報告によりますと、これは十月の統計でございますが、東京では就労日数は二五・五という就労日数になつております。もちろんこれは失業対策事業のみならず、公共事業あるいは一般民間産業といつたふうな、全日雇い労働の需要に対して二五・五というのが、平均就労日数になつております。さようなことを東京都の方からは報告を受けておる次第でございます。  御承知のように失業対策事業は、東京におきましては二百四十五円でございまして民間産業に就労いたしました場合には、それよりは多いはずでございます。公共事業も民間事業賃金も多いはずでございます。従つて平均といたしまするならば、二百四十五円に二五・五をかけた、いわゆる五千九百二十五円が最低のはずになるというのが、東京都から示されました報告でございます。
  141. 江崎一治

    江崎(一)委員 ただいまの御報告ですと、非常に収入が多いように言われますけれども、実際はもつと少いのです。実際人として生きるための最低の限界をはるかに下まわつた収入にしかならないのであります。そこで憲法にもこう書いてある。憲法第二十五条の生存権、国の社会的使命という項の一番に、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」第二項は、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という項目があります。このように憲法で——日本共産党はこの憲法は十分だと思つておりませんが、今の憲法ですらこのように生活の保障をしている。ところが、実に驚くべき状態が近ごろ発見された。これをまず同僚の議員にも御紹介しましよう。これは東京労働局長の林武一という男が出した指令であります。これは発令番号は労失対発第二四八号という番号でありまして、昭和二十五年十一月三十日に出している。これは全部読み上げますと時間がかかりますので、一番重要な点を読んでみましよう。「一部事業主体において就労労務者から要求に応じてこれら運営規程に反した取扱いをする場合には、都内失業対策事業の運営にはなはだ困難を来すとともに、他の事業主体者に対する特殊な取扱いは失業対策事業費による場合はもちろん、事業主体単独の予算といえども、特に指示のない場合は厳に慎まれたい」     〔島田委員長代理退席、委員長着席〕  こういうような趣旨の指令を出しておるのであります。これは東京都の指令でありますけれども、これは全国的に各都道府県において、これと類似の指令が行われておるのであります。今や失業自由労働者は、まつたく人間らしい生活をしておらぬ。こういうような状態にあるにもかかわらず、この林武一という男は、憲法の規定にさえ違反して、こういつたような指令を流しておるのであります。これについて労働省当局の御見解を伺いたいと考えます。
  142. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 ただいまお読みになりました労働局長の通牒は、はつきり聞き取れない点もありましたが、国の失業対策事業予算、これは国会の御審議を受けて成立しておるものでありまして、これは失業救済の予算でございます。従つてそのことを言われたんじやないかと私は考えております。
  143. 江崎一治

    江崎(一)委員 基本的な人権と相関連して、これは考えてもらいたい。言葉の上だけで生活はできませんからね。どう考えますか。生きるか死ぬかの問題だ。あなたは給料をもらつてのうのうと生きておるかもしらぬけれども、失業者はどうする。そのつもりになつて回答してもらいたいのです。そういう回答ははなはだ不満足です。
  144. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 賃金の問題があるのじやないかと思いますが、御承知のように失業対策事業賃金は、その地方において行われておりまするいわゆる実際賃金の八〇%ないし九〇%であるといつたふうなことが、緊急失業対策法できめられておるはずであります。これは御承知かと思つております。そういたしまして、御承知のようにこれは厚生省の生活保護法といつたふうなものとは違う。従つて当然貸金ということを考えます。そこで東京におきましてはどうなつておるかと申しますと、重労働標準賃金をとつておるわけであります。すなわち重労働の百九十五円から二百九十五円の中間、二百四十五円をとつておりまして、いわゆる実際賃金との比較から申しますと、私は上の方だと考えております。
  145. 江崎一治

    江崎(一)委員 統計上ではそういつたいい数字が出ておるかもしらぬけれども、この実態を御存じないようです。この案例をひとつ御紹介しましよう。各職業安定所には、こういう不正の問題がたくさんある。そのうちの一つの問題について、わが日本共産党に何とかしてくれと頼み込んで来ている陳情の一部を読んでみましよう。これは東京都の池袋の職安の問題です。読んでみますと、当池袋職安におきましては他の職安においても見られるところですが、特に暴力団及び不正班長と、職安事業体とのなれ合いはなはだしく、その事業開始以来今日まで、一般労務者をあらゆる方法にて搾取し、特に幽霊手帳発行使用による高額の金銭の横領のみならず、そのことで仲間をあぶれさせるなど、人道を無視した行為が平然と行われておる。この事実につきまして一般労務者はたれ一人知らぬ者はないのでありますが、暴力の復讐を恐れて口をつぐみ、陰にて仲間同士話し合つておるような状態であります。組合におきましても、昨年委員長が一度この不正の事実をつかみ、摘発したことがありましたが、そのとき大泉現場にて集団的暴行を受け、大けがをいたしました。しかしこの暴行事件は突発的なものでなく、当時職安労働課出席の進駐軍組合の会議にて、加害者暴力団に対し、金銭の補償による指示によつて行われたものであります。また本年五月全都職安におきましては、ほとんどあぶれはない状態であつたにもかかわらず、当地池袋職安は、四月中旬より十数名のあぶれが出始め、逐次その数を増し、五月に入りましては百名から二百名を越えるあぶれを出したことがあります。そのとき組合は、このあぶれの大半は幽霊手帳によるあぶれだと、具体的事案をあげて職安高山所長に対し、その取締り方を要望したにもかかわらず、高山所長は、一応立会い取調べを快諾し、時間を延ばし、その間に警察官を呼び、職安が指召した立会人を住居不法侵入のかどで逮捕させるというような暴行をあえてしたのであります。そのときにこの幽霊手帳の三枚、これを証拠隠滅をしてしまつたという事案があるのであります。泉係長は当月十一日には、暴力団の頭株インデの光という男を呼び、十条北区王子の暴力団をかき集めさせ、当日職安と団体交渉をしていた代表を、鉄棒及びれんがでなぐる、けるの暴力ざたを労働者に加えたのであります。こういうことを言つております。この幽霊手帳の件につきましては、われわれの調査によりますと、この池袋の職安でさえ、今日まで大体四千万円程度に上つておるということがわかつております。この実例といたしまして、どのくらいの実例があるかといいますと、このインデの光という暴力団の親方が使つておつたのが、今わかつておるだけでこれくらいあります。これは二月十五日から七月の中旬までには、大体七枚ぐらい使つておる。その手帳番号を言いますと、百九十七番、それから千八百六十二番、これはインデの光の妻であるところの八木榮子という人の名前になつております。それから二千五百七十五番、一千八百九十三番、七百五十六番、八千六百十三番、それから二千三百四十七番、こういつたような幽霊手帳をつくりまして、そうして彼らが職安の職員あるいは所長と結託してこういう不主を働いておつた。従つてあぶれがどんどん出る。なるほどあなたの集計では、一人当り相当な金額が一箇月に支払われたことになつておるかもしれませんけれども、実情はこういうような横の不正があるのです。こういうことについて労働省の監督がまつたく不行届で、お話にならぬと思うのだが、その点労働省が今後こういつた事態にどうするか、またこの失業者の、日雇い労働者の生活保障については、どういうような方針をとるか、これについてお聞かせを願いたいと思います。
  146. 齋藤邦吉

    齋藤政府委員 安定所の職員の綱紀粛正につきましては、私どもふだんから非常に注意をしておる問題であります。東京都ばかりではなく、その他の府県に対しましても、必要な都度常時厳重な通牒を発しまして、綱紀粛正に努めて参つておるのであります。しかしながら多人数のことでもありますので、中にそういう例も一、二見受けられております。東京都にいたしましても、一、二ただいまお話のような事件は、大分大きいようでございますが、それほどでないといたしましても、一、二ありましたそういう例にありましては、あくまでも安定所の職員もやめるなり、あるいは懲戒免官なり、あるいはその他必要な措置を講じて参つて来ております。私どもといたしましては、綱紀粛正が非常に大事である、これはまつたく私もそう考えております。  ただいまの池袋の事案でございますが、これは私の手元にはまだ報告は受けておりません。十分調査はいたしますが、手元には受けておりません。私どもといたしましては、綱紀粛正はきわめて重要な問題でありますので、東京都の労働局を通じまして、厳重に監督も今日までしておるつもりでございますが、将来とも監督する所存でございます。
  147. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十二分散会