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1950-11-30 第9回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月三十日(木曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 小坂善太郎君    理事 有田 二郎君 理事 橘  直治君    理事 西村 久之君 理事 橋本 龍伍君    理事 川崎 秀二君 理事 稻村 順三君    理事 風早八十二君       青木 孝義君    麻生太賀吉君       天野 公義君    井手 光治君       江花  靜君    奧村又十郎君       尾崎 末吉君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       北澤 直吉君    久野 忠治君       坂田 道太君    塩田賀四郎君       島村 一郎君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    田中 啓一君       玉置  實君    塚田十一郎君       苫米地英俊君    永井 英修君       中村  清君    中村 幸八君       松浦 東介君    南  好雄君       井出一太郎君    今井  耕君       北村徳太郎君    中曽根康弘君       早川  崇君    平川 篤雄君       勝間田清一君    鈴木茂三郎君       戸叶 里子君    西村 榮一君       水谷長三郎君    林  百郎君       横田甚太郎君    小平  忠君       黒田 寿男君    小林  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         法 務 総 裁 大橋 武夫君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣  横尾  龍君         労 働 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君         農林政務次官  島村 軍次君         経済安定政務次         官       小峯 柳多君         経済安定事務官         (物価庁次長) 熊田 克郎君  委員外出席者         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         通商産業事務官         (大臣官房長) 永山 時雄君         通商産業事務官         (通商局通商政         策課長)    小室 恒夫君         通商産業事務官         (通商企業局         長)      石原 武夫君         経済安定事務官         (総裁官房経済         計画室長)   佐々木義武君         経済安定事務官         (財政金融局         長)      内田 常雄君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十五年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十五年度政府関係機関予算補正(機第2  号)     —————————————
  2. 小坂善太郎

    小坂委員長 これより会議を開きます。  前日に引続きまして質疑の続行をいたします。
  3. 勝間田清一

    勝間田委員 議事進行についてお願いを申したいと思うのでありますが、この本予算の二十五年度補正予算並びに二十六年度予算成立過程におきましては、関係方向、なかんずくドツジ公使との折衝が長く続けられたのであります。従つて予算を審議する上においてきわめて重要であると私は考えますのは、ドツジ公使政府から提出いたしました参考資料、あるいは日銀の提出した参考資料、かかるものを一切本委員会に提出せられんことを私は希望いたします。
  4. 小坂善太郎

    小坂委員長 勝間田君の御動議に対しまして、委員長といたしましても御趣旨ごもつともと考えます。折衝過程におけるいろいろないきさつ等につきましては、あるいはあまりに繁雑にわたることもあるかもしれませんが、提出いたしました資料につきましては、大蔵大臣より本委員会に提出させるように委員長として交渉いたします。  中曽根康弘君。
  5. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は内閣総理大臣に対しまして、国民民主党を代表して御質問申し上げます。最初に簡單な事務的なことを御質問いたしたいと思います。簡單明瞭お答えをお願いいたします。  まず第一は、今年の夏、われわれ国会議員の一部がMPAに招待されましてスイスへ行き、それから世界各国をまわつたのでありますが、このMPAという道徳運動に対して、世界各国政府が非常な応援をしておるのをわれわれは見て参りました。たとえばスイスの大会において、イタリアの小麦を、あるいはアメリカは余剰の食糧を、あるいはデンマークは十万箇の卵を、あるいはカナダは同じく小麦を、エジプトは綿を、こういうふうに、このような一種の道徳運動に対して政府応援しておるのでありますが、日本政府といたしましても、このような国際親善的な運動に対して応援をすることは、非常に好ましいと思うのでございますが、総理大臣の御所見はいかがでございますか。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。むろんけつこうなことと思いますけれども、日本として今日アメリカ援助資金をもらつて、そうして経済財政をやつて行くというような状態でありますから、あまり大ぴらに、かつ豊富に援助するということはできにくいと思いますが、もし要求があつた場合には喜んで考慮いたしたいと思います。ただその他の国みたいに豊富にはできないだろうと思います。
  7. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に、総理大臣はかつてタバコ專売をやめて民営に移すということを言われまして、それがそのままうやむやになつておりました。ところがまた最近新聞に出たのでありますが、一体内閣方針としてこのタバコ專売ということは廃止するのか、しないのか。全国のタバコ業者、あるいは耕作農民が非常に不安を持つておるのでありますが、内閣政策はいかがでございますか。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは方針としては民営に移したいと思います。ただにタバコのみならず、なるべく官業は民営に移したい。そして能率的に経済的にやる方がいいと考えております。タバコ民営問題については調査委員会ができて、その答申を待つているような現状であります。
  9. 中曽根康弘

    中曽根委員 最近の新聞によりますと、廣川行政管理庁長官行政整理機構改革をある程度やるということを言明しておるのでありますが、内閣政策といたしまして、昭和二十六年度あるいは昭和二十五年度において人員整理をもとにする行政整理あるいは機構簡素化というものを実行する御意思がありますか、ありませんか、お尋ねいたします。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 行政簡素化剰員淘汰ということは、これは歳出節約をいたすべき今日でもあり、必要なことと思いますから、ますますいたしたいと思つて、その案を研究しております。
  11. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に、追放解除の問題について伺いますが、先般総理大臣その他の努力によりまして、一万人の解除があつたことは御同慶にたえないところであります。しかしいまだ二万数千人という人が追放解除になつておらないのでありますが、それにはやや公平を失して、解除になつておらない向きが多分にあると思うのであります。先般総理大臣は本会議におきまして、追放解除を努力いたしたいと言われておるのでありますが、審査委員会はすでに廃止されております。総理大臣関係方面の了解を得れば、総理大臣の権限においてこれ以上解除ができるのかどうか、どういう手続をもつて今後追放解除を実施いたす所存でありますか、お尋ねいたします。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 二万余りというのは審査申請した数であつて、全体から申すと、二十万人のうち一万幾らが解除なつたのですから、少くとも十八万以上はまだ追放されておるのであります。でありますから、なるべく適当な時期を見はからつて——というのは客観情勢などもあります。適当な時期をはかつて追放解除の交渉をいたしたいと思います。その方法はということになりますと、客観情勢によることであり、時期等についてはいまだここでお約束のできるほどの確信を持つておりませんが、なるべく機会をとらえては追放解除者をよけいにしたいと思つております。
  13. 中曽根康弘

    中曽根委員 十八万余に上る申請を出さない人々に対しても、今後申請を出す機会を與え、あるいはまた審査委員会を再び設置する等の行為によつて追放解除に努力するという意味でございまするか、その点お尋ねいたします。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 解除方法については、少くともこれまでの審査委員会はすでに解散いたしました。将来どうするかについてはいまだ考えがきまつておりませんが、何らかの方法によつて解決したいと思います。
  15. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に新聞を騒がせておりました超党派外交について質問をいたします。先般幣原議長国会開会を前にいたしまして、各党を歴訪いたしまして、超党派外交の懇請といいますか、要請に参つたのでありますが、どうもわれわれ野党陣営から見ますと、大みそかが急に迫つたので、差押えがおつかないから、あわてて借金を返すと言つてまわつたような印象を禁じ得ないのであります。しかし一国の総理大臣が一国の議長使つて、正使としてよこしたのでありますから、私たちは総理大臣誠意を信じて、この幣原議長の申入れを喜んで受取つたのでございます。しかし今まで巷間伝えるところによりますと、総理大臣は時期がまだ早いということを言われておりました。あるいはまた社会党が乗気にならぬからだめだと言われておりました。一体この超党派外交というものに関して総理大臣信念が那辺にあるのか、国民は疑問を持つておるのでありますが、この際明確にしていただきたいと思うのであります。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 私としては別段大みそかを前にしてとか、あるいは拂えないような借金はないのでありますから、従つてただいまの御質問は少し当を得ないと思いますが、しかし超党派外交けつこうなこととしばしば申しておるのであります。また幣原議長が行かれた方が、議会としても私が野党陣営参つて総攻撃を受けるよりは、幣原議長はかつて民主党におられたものだから、風当りがよかろうと思つて議長にお願いしたわけであります。しかしまだ早いとかいうようなことは言つたことはありません。いつでもできればけつこうなことであるからと考えております。ただ社会党なりその他が応ずるか応じないか、これは私は責任をもつてお答えができないから、相手によるものである。相手が同意すればけつこうな話であるからと申しておるのであります。
  17. 中曽根康弘

    中曽根委員 総理大臣はどういう御信念でどういう目的を持つてその超党派外交をおやりになつて行くか、総理大臣考えていらつしやる超党派外交という意味をひとつお知らせ願いたいと思います。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはむしろ民主党に伺いたいくらいで、幣原議長苫米地委員長に会われたときに、超党派外交ということを言われて、けつこうな話だと申しましたので、発案はあなたの方でありますから、どうぞ委員長にお聞き願いたいと思います。その真意がわからないのであります。
  19. 中曽根康弘

    中曽根委員 これはとんでもないことを私はお聞きすると思うのであります。少くとも一国の外交権といいますか、現在では渉外能力というものは外務大臣が掌握しておるのでありまして、いずれの国においても超党派外交というものは政府が指導してやるものなのであります。野党が指導してやるべき筋のものではないのであります。それを野党の方からやれというのははなはだ私は心外にたえないのであります。しかし総理大臣が、しいて苫米地委員長に聞いてごらんなさいというのでございますから、私は私の超党派外交総理大臣にひとつ申し上げて、総理大臣が御賛成するかいないかここでお聞きしたいのであります。  私は、総理大臣がかつて時期がどうかということを新聞で拜見いたしましたときに、総理大臣考えている超党派外交とわれわれのとは違うということを応じました。総理大臣のお考えになつているのは、要するに講和條約のときに、この講和会議をうまく、すべらかにやるために、各党吉田総理大臣の号令で礼と頭を下げて、列国の條約案をそのまま受入れる。頭を下げるための超党派外交である。だから條約案ができてからでよろしいというのが総理大臣のお考えではないか。しかしわれわれの考えはそうじやない。條約案ができる準備段階に、日本国民要望をいれてもらわなくちやならない。だから各党共同目標を設定しよう。千島をわれわれに返してもらおう、小笠原をわれわれに返してもらおう、沖繩日本主権下に置いてもらいたい。そういう共同目標各党が設定して、その共同目標を実現するために、各党が愛国的に提携するというのがわれわれの超党派外交である。従つて條約草案を練つている現在やらなければ時期が間に合わない。われわれの超党派外交はこういう意味でやりたいと思うのでありますが、総理大臣はこの考えに対していかにお考えになりますか。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はしばしば申し上げているように、各党講和に関する意見は自由に発表したがいい。またそれを政府として抑圧する考えはないのでありますから、超党派外交によつて国論が帰一すれば、まことにけつこうなことであります。これを決して妨げるわけではないのであります。しかしながら今お話のように、講和條成立に利用しようというような考えはないのであります。国論の統一、帰一するところがわかればけつこうである。超党派外交はあなたの御趣旨と同じようなことと思いますが、国論の帰一ができればけつこうなのであります。決してこれに対して拒む考えはない。
  21. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいまの総理大臣のお言葉を聞きまして、総理大臣の一層の御奮励をお願いいたす次第でありますか、私はこの問題は、一にかかつて総理大臣誠意にあると思うのであります。総理大臣がこの問題についてほんとうに誠意を示せば、社会党といえども、私はわからない人ではないと思う。私は、この問題は一にかかつて総理大臣社会党左派の勝負だと思う。しかし総理大臣社会党本部に三回行つて、頭を下げてお願いいたしますと言つて、しかも社会党は言うことを聞かないということになれば、国民社会党を笑います。私は国民がそういう冷静なる審判をすると思うのであります。総理大臣がその程度の誠意社会党に示し、国民の前に見せられるということを、私はここで重ねて総理大臣にお願いいたしたいのでありまするが、総理大臣はいかがでございますか。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはしばしば申した通り、私の誠意とか熱意とかいう問題ではなくて、社会党としてそれが国際のためにいいか悪いか判断してさるべきものであつて、私が頭を下げたから社会党といえども聞くということは少々おかしいじやないかと思います。
  23. 中曽根康弘

    中曽根委員 総理大臣は日ごろにもなく非常に遠慮してれられますが、ワン・マンの頭はそれくらいの値段があるということを私はここで申し上げたのであります。しかしこの問題についてはこれ以上申し上げません。  時間の関係で、次に講和問題について御質問を申し上げます。講和條約が近いかあるいは将来に延びるかということは、日本産業態勢その他の問題に重大な関係を持つのでありますが、最近のグレイ報告その他によりましても、援助資金の打切りというようなことが、巷間伝えられております。私最近アメリカから帰つて参りまして、向うの印象考えますと、非常に近いという感覚がするのでありますが、一体講和は近いのか遠いのか、少くとも来年の上半期ぐらいには見込みがありそうなのか、総理大臣のお見通しをこの際お聞かせ願いたいと思います。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 よく見通し見通しと言われますが、外交は占いではないのでありますからして、私がここで発表してみたところでいたしかたない。実現ができなければそれだけのことであります。そこで客観情勢は始終かわつて行きますから、なるべく早いことをむろん希望しますけれども、さていつごろになるのであろうかということは、私も断言ができません。
  25. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に、しからば講和條約の内容の問題でありますが、講和條約と日本経済の問題であります。講和條約がどういう内容を持つかということになりまして、日本産業構造というものが非常な打撃をこうむるという重大な問題が、私はあると思うのであります。たとえば鉄鋼産業というものを考えてみますと、御存じのように日本鉄鋼業というものは、一貫メーカーと、それから平炉メーカーと二本建になつております。一貫メーカーはどうしても鉄鉱石がほしい。平炉メーカーは銑鉄がほしい。もしこの講和條約というものが完全に経済的にも向米一辺倒と申しますか、アメリカ経済だけに結びつくということになりますと、一貫メーカー鉄鉱石の供給ということに非常に支障を来すと思います。こういう関係から私の考えでは、政治政治経済経済、つまりわれわれの講和條約の内容というものは政治的にはいかにあろうとも、経済的には米国とも中国とも東南アジアとも、いかなるところとも友好関係成立するような内容講和條約を、ぜひつくつていただきたい。これが日本自立を確保するキー・ポイントであると思うのでありますが、総理大臣はこの点についていかにお考えになりますか。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところは、御承知のようにアメリカが主になつて連合国に対して講和会議を開催したいという希望を持つて話を進めて、回答を待ちつつある時期で、講和会議の開催を慫慂しておる時代といいますか、段階にあると思います。そこで講和会議内容についてはまだ示されていない。講和会議成立して、そこでアメリカとしては講和條約の内容になる原案を出すであろうと、私は想像しておるのであります。そこで内容ということになりますが、日本経済的独立のできないような、あるいは他の国と友好関係を確立できないような内容を持つた條約は、アメリカ側としても提案しないだろうと想像します。何となれば、今日まで日本自立とか日本独立等について非常な関心を持つたアメリカであり、今日においてもますますその関心の深まつておることは、アメリカに行かれて看取されたことだろうと思いますが、その空気から考えてみれば、あまりに日本の利益に反するような内容のある條約案を提案することは、ないであろうと想像もし、また希望もしております。
  27. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に講和條約締結の際に、最終的にその場できめられるということは、日本人として非常に不安を持つているのであります。日本人全体の希望としては、少くとも最終的に決定する前に内示案といいますか、非公式でもよろしいから、日本人を呼んでいただいて、多少は日本人希望なり意見を聞いてもらうというチヤンスをぜひわれわれは得させていただきたいと思うのでありますか、総理大臣はそういう機会を與えてもらうことを希望いたしますか、希望いたしませんか。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 まことにけつこうなことだと思います。
  29. 中曽根康弘

    中曽根委員 最近アジア外交政策を見てみますと、非常に顕著な問題は、ネール首相外交政策であります。ネール首相は一方においては、中共に対してもかなり友好政策をとつておりますし、また同じアジア民族であるわれわれ日本に対しても、非常な友好政策をとつておりまして、日本としても非常に感謝にたえないところであります。われわれ日本人といたしましては、どうしても近隣諸国に対して善隣友好政策というものをとらなければならないと思うのであります。少くともわが民主党ネール首相外交政策に対して非常な敬意と感謝を禁じ得ないのでありますが、総理大臣のお考えはいかがでございますか。
  30. 吉田茂

    吉田国務大臣 私としても同感であります。
  31. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に領土の問題について質問をいたします。領土の問題はやはり国民の非常な関心の問題であります。かつて私が総理大臣ヤルタ協定の問題を御質問申し上げました。そのときに、総理大臣は私にこのように答弁されました。いつでありましたか、アメリカ側見解としては、日本がそれをたてにして権利として主張することはできない、しかしアメリカ自分がやつたことは義務を守ります、自分アメリカ側のこの見解に従います、こういうことを私に御答弁になりました。私はそれをはつきり記憶しております。しかしそれはヤルタ協定日本がどういうふうに取扱うかという首相の明確な意思は現われておりません。少くとも国際法上からすると、ヤルタ協定には日本は何ら拘束されない。われわれはポツダム宣言カイロ宣言等に拘束されているのであつて、それに現われていないいかなる協定にも拘束されないと思うのであります。連合国立場はいざ知らず、日本国立場として、われわれはヤルタ協定に拘束されないという考えに対しては、総理大臣はいかにお考えになりますか。
  32. 吉田茂

    吉田国務大臣 領土問題は、講和條約の内容として最も微妙なところでありますから、私としては責任のある地位におつて、明確なお答えはできませんが、しかし日本国民要望するところ、希望するところは、私は必ずアメリカその他連合国も取上げるであろうと思いますから、この領土問題についての国民希望なり要望なりは、はつきり事前において言い表わす方がいいと思います。
  33. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は総理大臣ヤルタ協定に関する御見解質問しているのであります。この問題に関して総理大臣はいかにお考えになりますか、いま一回お願いいたします。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは私としては責任をもつてお答えできません。
  35. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば次の問題に移ります。カイロ宣言あるいは大西洋憲章、その他によりますと、連合国は侵略の意思は毛頭ない、帝国主義的な意思も毛頭ないということを鮮明にしているのであります。そういう原則からすると、領土帰属というものは、その地帯の住民意思というものが尊重されなければならない。こういうことが私は第一に抽出されると思うのであります。つまり民族自決といいますか、領土帰属については住民意思を十分尊重するという問題であります。こういう観点から、もしかりに日本の周辺の小さな島々、あるいは台湾—台湾ももし領土帰属が最終的にきまるという場合には、私は住民意思を尊重して、その投票やその他によつて決定するということを、日本国民として連合国に懇請したいと思うのでありますが、総理大臣はこの点についていかにお考えになりますか。
  36. 吉田茂

    吉田国務大臣 それはただいま申した通り責任のあるわれわれとしては、これに対してお答えができません。しかしながら国民意思による自由なる発言については、私としては歓迎いたします。
  37. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に、講和條約の内容で重大な問題は、政治條項国内政治の問題であるのであります。総理大臣御存じのように、国際法上には、国内事項については内政不干渉という原則が確立されております。従つてわれわれがもし講和條約によつて独立を認められるならば、少くとも内政についても完全なる自主性というものが回復されなければならない。これが国際法上の一つの原則であろうと思うのであります。われわれとしては講和内容に関して、内政の問題については、この国際法原則をそのまま適用して、国内事項については内政不干渉原則をぜひとも確立してもらいたいと思うのでありますが、総理大臣はこの点についていかにお考えになりますか。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 国際法に違反するような内容を持つた條約を、連合国日本に対して強制するようなことはないと思います。
  39. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に日本の安全保障に関して御質問を申し上げます。総理大臣はすでにお読みになつたと思いますが、朝日新聞講和日本再武装という輿論調査をやつております。この輿論調査によりますと、再武装せよという論が圧倒的に強くなつておる。ここに数字を示してもよいと思いますが、五三・八%が賛成ということになつております。またアメリカの輿論を見てみますと、アメリカのギヤラツプの輿論調査によりますと、やはり日本に対しては約七割が再軍備賛成という輿論が出ております。これは一般大衆の率直な輿論の表明だと私は思うのであります。しかし総理大臣以下日本政治家はやはり大局を見ておりまして、特にフイリピンや濠洲や、日本が罪を働いた諸国に対する遠慮から、自重しておられると思うのでありますが、私はこのような自重がはたして列国の信用を回復するゆえんであるかどうか疑問に思うのであります。というのは、まず第一にきのう、きようの新聞を見てもわかりますように、朝鮮半島の事態というものはかなり重大になつて来ておる。しかも世界は民主主義秩序を守るか守らないかという二つの線上にまさにわかれようとしておる。国際連合自体内部がわかれようとしておる。それは正義を確立するかしないかという争いであります。  つまり道徳の世界には中立というものはあり得ない、そういう世界に今入り込んでいるときに、日本が列国の安全保障にのみたよつて日本を防衛するのに外国人が血を流しておるのをわれわれが漫然と見ておるということが、はたして道徳的に許されるかどうか、私は何も日本の自衛力を増大するとかなんとかという問題以上に、日本もあの憲法の前文で書いたように、世界の新しい正義と秩序の維持と確立には、重大な積極的な関心を持つていなければならない。そういう積極的な道徳的信念というか勇気という観点からして、われわれはこの国民の率直な輿論の表明に対しては耳を傾けなければならないと思うのであります。しからば具体的にいかなる方法でやるかという問題を考えてみますと、現在の環境からすれば、私は日本が單独で武装するなどということは、国の内外から見てまずいと思う。やはり国際連合というものの統制を受けた一つのブランチとして、国際警察隊の一つの支隊、あるいはそのようなものによつて、われわれの世界秩序、積極的な道徳的世界を確立するための一翼をになう、こういう底のものをつくり上げるということは、私は国際的にも妥当であるし、国民もまたそれを要望するのではないかと思うのであります。それがしかし客観的に見て、軍隊と呼ばれるかあるいは警察隊と呼ばれるか、これは法の解釈上の問題でありますが、現在の段階といたしましては、警察隊という構想をもつて進みまして、少くともそのようなものに役立つだけの力を備える警察隊を備え、しかも国際連合の統制下にこれを運用するという底のものをつくり上げるということは、日本国際社会へ復帰し、国際連合へ復帰する場合の当然の義務として日本国民考えなければならないと思うのでございますが、総理大臣はこの点についていかにお考えになりますか
  40. 吉田茂

    吉田国務大臣 私としてあるいは政府として、国民の意のあるところ、あるいは列国の日本に対する意のあるところはむろん尊重いたしますが、現在憲法において軍備を撤去する、戰争を放棄するということの明文がある以上は、政府としてはその憲法を守るということを第一に考えなければならぬと思います。ある政策によつて客観情勢を見定めずに再軍備をするというようなことは、私はいたしたくないと思います。私は再軍備はなるべく避ける——避けるというよりはいたさない考えであります。
  41. 中曽根康弘

    中曽根委員 最後に吉田内閣の施政の全般的な問題について御質問いたしたいと思います。最近私は吉田内閣の施政の一般を拜見しますというと、吉田首相はすでに疲れたという感じがするのであります。つまり吉田首相政策全般というものはきわめて萎縮しております。日本の現在の段階からすれば、われわれは今や独立への準備期にある。従つて内政に関しては着々と自主権を回復して、日本人政治を確立するという方向へわれわれは進んで行かなければならない。また経済問題については、われわれは経済自立への計画を確立して、着々とその方向へ推進して行かなければならない。そういうような段階にあるにかかわらず、内閣がやつておることは何であるかといえば、依然として文教刷新であり経済自立というお題目であります。また具体的に何を政策として取上げておるかといえば、公共事業費の山わけであり、競輪問題で右往左往したり、あるいはさらに学生騒動に呆然としておる。これが現在の内閣のやり方である。一番大事なことは、国民に対してこれからどうなる、来年はどうなる、政治経済にこうなる、だからこれだけ努力をしなさいと、そういう努力の焦点を教えて、そうしで国民内閣が一体となつて前進するという政策を今やとらなければならないと思うのでございます。しかるに吉田内閣政策は、以下これから申し上げるように、たとえばあのポ政令の問題にしても、あるいはまた警察予備隊の問題にしても、あるいはまた綱紀粛正の問題にしても、あるいはアメリカからの援助資金の活用の問題にしても、あるいは外貨予算の活用の方法の問題にしても、あらゆる点において萎靡沈滯きわまれりというのが現在の状態であると思うのであります。こういうような内閣によつては、私はこの重大な危機は乗り切れない。いわんや講和條約をこのようなへたへたとなつ内閣では乗り切れないと考えるのでありますが、総理大臣はいかようにお考えになりますか。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の健康、疲労困憊と申したら御満足になるかもしれまけんが、まだお念仏をとなえるだけの時期に達しておりませんから、(笑声)この事態においてはまだ内閣はほうり出さない、さよう御承知を願いたいと願います。
  43. 中曽根康弘

    中曽根委員 たとえば電力ポ政令にいたしましても、総理大臣はマツカーサー元帥からの書簡を議会に公表いたさないと言つております。しかしこれは自由党といわず、民主党といわず、社会党といわず、国会開会中に国会を無視されたポ政令が出るということは、議会にどろを塗られたということになるのであります。これは自由党を含めてわれわれは悲しまなければならない。こういうようなポ政令が現在出るというときには、少くとも証拠書類を議会に持つて来て示して、この通りでございますからまことにやむを得ない、そういう証憑書類をそろえて了解を得るのが、民主主義の常道であると思うのであります。しかるに証拠書類を公表しないで、何とかこれをうやむやに葬つておるということは非民主的であり、日本の議会史に汚点を残すことになると思うのでありますが、総理大臣は何ゆえにこれを公表されないか、それをもつて民主主義的であると言えるのか、総理大臣の御所信を伺いたいと思います。
  44. 吉田茂

    吉田国務大臣 一体よその人からもらつた書信を公表しなければならぬということはないはずであると私は思うのであります。     〔「政治上の問題だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  45. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。
  46. 吉田茂

    吉田国務大臣 政治上の問題でもそうです。少くとも外交上においては往復文書は公表しないことになつております。相手方が同意すれば別でありますが、これは外交の慣例でありますから、この慣例を守つて公表いたしませんが、これが民主主義に反するということは、私は必ずしも言えないと思う。何となれば、議会開会中といえども、ポツダム政令は出すことができることになつておるのでありますから、このゆえにただちにこれをもつて現に民主主義に反するとか反しないということは断定できないと思う。またポツダム政令を出したゆえんについては、運営委員会等においても詳しく説明いたしておりますから、お聞きになつたろうと思います。
  47. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の総理大臣の御回答をもつてしては、この電力問題というものによつて九分割が出て来るというと、これは自由党の中からうみがたらたらと出るから、やむを得ずあのポ政令で絆創膏を張つた、その釈明以外の何ものでもないと私は考えるのであります。この問題はこの程度にいたしまして、しからば次に綱紀粛正の問題を伺います。この前の議会が終つてから、新聞紙上をにぎわしました代議士のいろいろな事件を調べてみると、たとえば日発の事件、小滝炭鉱の事件、あるいははなはだしきに至つては、あの国会議員たる者が政敵の殺人容疑をもつて逮捕されるというような不祥事件が相次いで起つております。そういうような中にあつて吉田内閣はあの日発問題を封鎖せんとして、たとえば考査委員会を廃止するとかなんとか隠蔽的な態度をとつておるのは、はなはだ私は不可解にたえないのであります。吉田内閣の掲げた一つの問題は綱紀粛正という点にあるのでありますが、自分の足元からこういうような不祥事件がいろいろ起つておるのに対して、総理大臣はいかに御処置をなさるおつもりでありますか。
  48. 吉田茂

    吉田国務大臣 不祥事件が起つた場合に、これはお話の通り、膏薬を張るとか、あるいは等閑に付しておつたら、それこそ問題でありましようが、裁判所もあれば、何とか委員会もあれば……(発言する者あり)委員の監視が十分にあり、また政府あるいは党としても、それぞれ処置をいたしておる。処分についてに等閑に付すればとにかく、等閑に付していない以上は、われわれとしてはいたすことだけはいたしたのであります。しかしながら不祥事件が起つた、それがことごとく内閣責任となるのであるか、たとえば人殺しがあつた、どろぼうをした、これがことごとく現内閣責任とは言えないはすだと思います。ただ問題が起つたときに、公平な公正なる処置をするということが大事であつて、公正な処置をするということについては怠つておりません。
  49. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は絶対多数を誇る自由党及び現内閣の周辺が、そのような疑惑に包まれておるから、それが社会一般に伸びて来て、現代の病弊というものが、たとえば青年のダンス、中年のストリツプ、官庁の宴会あるいは官吏のマージヤン、あるいはさらに言えば総理大臣の別莊行き、ポツダム政令、こういうものが私は世の中を非常に毒しておると思うのであります。こういうものが社会の風潮になつておる。一つの具体的な例を示しますれば、官吏の宴会であります。私が調べました資料によりますと、たとえばある公共事業費を獲得するために、地方ではどれくらい金を使つておるか。たとえば経済安定本部の公共事業費を獲得するために、ある府県のごときは、一つの公共事業費を獲得するために、十四回東京に往復しておる、九十七人の人間が上京しております。そうして総額において、五十七万円の金額というものを使つておる。あるいはさらにある県の例によりますと、昭和二十四年一年間において、本省との事務連絡のためにやつた宴会費、旅費が驚くなかれ二千五百万円であります。あるいはさらに本省から地方に出張したために、その官吏の接待に要した費用が二千六百八十六万円、本省から指示してこれからブロツク会議をやるというので使用したものが千七百五十六万円であります。県庁のすべての出張旅費や食糧費の中の三四%のものが、これらの中央官庁との接待や予算獲得の費用に使われておるのであります。これはひいては地方税の増徴の原因にもなつておる。こういう具体的な例に対して、総理大臣はいかに綱紀の粛正をやりますか、総理大臣の御所信を承りたいと思うのであります。
  50. 小坂善太郎

    小坂委員長 中曽根君に申し上げます。あなたの今の御議論の中に、綱紀の粛正あるいは道義の頽廃に関連いたしまして、総理大臣の別莊行きというお話がありましたが、それはいかがでございましよう。(「うそじやない」と呼ぶ者あり)一緒の範疇にお入れになるのは、賢明なる中曽根君にしては、少し違うのじやないか。これはお取消しなさいとは申しませんが、委員長がそういう意見を持つということを御承知願いたいと思います。     〔発言する者あり〕
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えを申し上げます。とにかく今のお話のような事態があるのを、政府としては憂慮いたしまして、陳情はすべて書面で持つて来い。書面で受付けると言つて、今御指摘のような弊害をなるべく薄くしたいと考えております。
  52. 中曽根康弘

    中曽根委員 書面でやれということは、閣議決定であつて、地方庁に通達しておるようですが、一片の書面でかようなことが閉塞されるはずはありません。この問題は総理大臣以下閣僚、與党、政府一体になつてみずからの綱紀を粛正する以外にはないのであります。私はそういうことを、ここで忠告申し上げるのであります。  その次に伺いたいことは、日本は今回の朝鮮事変その他により、米国その他の非常な好意によりまして、幸い四億一千万ドルくらいのアメリカのドルを保有することになりました。これは国民として非常に喜びにたえないところであります。しかるに奇怪なことには、この四億一千万ドルという外貨は、ナシヨナル・シテイ・バンクに預けられているということであります。しかもこの預金というものは、利子をとつていないということである。われわれは三億数千万ドルのエイドをアメリカから受けておりますが、この援助はありがたいとして、われわれは感謝しなければならない。しかしわれわれが売つた代金に対する利子は、これは商売上の問題であつて、当然とらなければならぬものであります。こういう点にまでわれわれは何ゆえに卑屈になつて、もらうべき利子ももらわないのであるか。総理大臣の御所見を承りたい。いかにこれを改革されますか。
  53. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外貨の額は今公表するわけに参りませんが、従来日本の銀行は外国に支店を持つていない関係上、ある程度の外貨を外国銀行に預けまして、そうして為替取引の元にしております。
  54. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は総理大臣に、この四億ドルの元本に対する利子をなぜとらないかということを聞いておる。これは国民や輸出業者が汗水をしぼつて輸出したその代金の利子です。われわれがガリオアやその他で受けておるものに対しては、われわれは非常に謙虚な気持で感謝しておる。その問題とわれわれが売つたものに対する利子をもらうことは別の問題だ。その商業上の当然とるべき利子をなぜとらないか。そこまでなぜ遠慮しておるのか。私はこの問題を申し上げておるのであります。なぜとらないのですか。
  55. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外貨は、無利子のときには、相当少い金額でございまして、利子をとらない方が適当であると考えたからであります。
  56. 中曽根康弘

    中曽根委員 なぜ利子をとらないのか適当ですか。商業上で売つたものに対して、その金を預けておるときには、必ずとるのが商業上の原則じやありませんか。何か遠慮することでもあるのですか。聞くところによると、木内外国為替管理委員長は、渡米したときに非常に歓待されたそうでありまするが、そんなことが原因になつておるとは私は考えません。(笑声)しかし日本政府日本国民の権威にかけて、商売上の原則は商売上の原則でこれを片づけべき問題であります。何故におとりにならないか。原因がはつきりしておりません。
  57. 池田勇人

    ○池田国務大臣 商売上の原則によりまして、利子をとらないことにしております。御承知の通り、外国におきまする当座預金は、無利子を商売上の原則としておるのであります。
  58. 中曽根康弘

    中曽根委員 外国における預金を無利子にしておるということを、私は寡聞にして今まで聞いたことはない。それが商売上の原則であるなどということは、私は生れて初めて聞いた。そんなばかなことはありませんよ。自分の金を預けておいて、しかも利子がとれないなんということは国際私法上もない。私は池田大蔵大臣の答弁に満足しません。この問題は私はあとで追つて究明いたします。  最後に私は総理大臣質問いたします。最近朝日新聞の報ずるところによりますと、ドイツにおきましては、米英仏の高等弁務官が、十一月九日の会議で西ドイツ占領法規の修正をやるということが報ぜられております。それによりますと、たとえば西ドイツ国会の権限というものは非常に拡大されております。西ドイツ議会の立法措置に関する高等弁務官の拒否権を放棄するという一項があります。その他一連のドイツ政府及びドイツ国会の権限拡大の措置が報ぜられておりまするが、同じ被占領の地位にある日本として、われわれは非常にこれをうらやむものであります。われわれは先ほど申し上げましたように、今や独立準備の時代である。少くとも着々と国内に関するわれわれの統治権、行政権というものを回復して、日本人政治を確立すべき段階であると思うのでありますが、ドイツのアデナウワーのごとく、吉田総理大臣連合国に対して、日本に対する国内統治権の回復といいますか、そういう措置を要請する御決心はありませんか。われわれはこれを強く要望するのでありますが、総理大臣の御信念を承りたいと思うのであります。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本の統治権を回復いたしたいと思つて、早期講和考えて一生懸命に努力いたしております。講和成立するとともに、御要望通り統治権は完全に回復せられますから、御期待を願います。
  60. 中曽根康弘

    中曽根委員 講和成立してからではおそいのです。今の吉田内閣のようによちよちやつていたのでは、そのときに與えられてもろくなことはできない。今から準備しなければだめです。今から準備して一本立ちになるだけの力をたくわえなければだめであります。私は総理大臣にその意思がないということを見てはなはだ遺憾に思うのであります。これをもつて私の質問を一応終ります。
  61. 小坂善太郎

  62. 勝間田清一

    勝間田委員 吉田総理兼外務大臣にお尋ねを申したいと考えておりますが、まずいろいろ事務的な問題からひとつお尋ね申したいと考えるのであります。私たちが今一番遺憾に実は考えております問題は、講和條約の締結がきわめて近いという問題も聞きます。し、同時に日本政治経済全般に対する自主性の問題も強く要望されておるわけでありまして、その間において、なかんずく重要に私の考えますのは、経済自主性の問題であります。いろいろ従来経済の問題について、あるいはドツジ氏がいらつしやつたり、あるいはシヤウプ氏がいらつしやつたりして、いろいろの勧告をされることは私もけつこうな話だと考えておりますけれども、それがとかくいたしますと、日本の実情を短期間のために十分キヤツチできない、あるいは日本国民感情というものを十分把握することができないということのために、かなり経済政策の運営というものが遅滞する傾向も見のがすわけには参らぬと私は思う。従つて一面においては感謝すると同時に、他面においてはこれの行き過ぎというものを私はやはり是正していただかなければならぬと考えておるものでありますが、今後あるいはこういつたドツジ氏の再来なり、あるいはいろいろの別の形における勧告というものがなされる可能性があるかないのか、この点についての見通しをひとつお尋ね申したい。
  63. 吉田茂

    吉田国務大臣 ドツジ氏もしくはシヤウプ氏の勧告については、行き過ぎたこともありましよう。またお話のように事情をつまびらかにしなかつたがための誤解というようなこともありましようが、しかし両氏とも日本経済の回復なり、日本財政の確立のために非常に熱心に各種の材料を集め、いろいろな人に会つて、そうして研究をしておられる。シヤウプ氏のごときはたしか山形県のどつか、あの地方まで自分で出かけて行つて研究して立案しておられるので、決して無準備にいたしておられることではないのみならず、どうかして日本経済財政の確立ということを念願して、親切にやつておられるのであります。この点その考え方については、いろいろ議論もありましようけれども、大体私は日本のために、はかつてよかれかしと願つての勧告であつて、あまり不当なことは立てなかつたと思います。将来はどうか、これは将来のことでありますから、何とも断言はできませんが、一つは講和條約がいつできるかということに関係するだろうと思いますし、またアメリカ日本に対する対日援助その他のことがある限りは、アメリカとしては日本経済財政について無関心なわけには行かぬから、あるいは手が加わることもあるでありましよう。これは一に講和條約がいつできるか、早期講和が早くできればできるだけそれだけそういうことはないだろうと思いますが、これは一に講和成立の時期によると思います。
  64. 勝間田清一

    勝間田委員 なおたとえば見返り資金の運用状態を見ておりましても、また預金部資金の運用状態を見て、いろいろのそういつた重要施策、しかも非常に機敏を要する重大な経済施策というものが、手続あるいは折衝等に非常に手間取りまして、日本経済に非常なひずみを生じているということを痛感せざるを得ないのであります。これらの経済施策についての自主性を懇請する政府の態度が今までどの程度のものであつたか、今後についてこれに対する見通しをひとつ具体的にできればお漏らしを願いたいと思います。
  65. 吉田茂

    吉田国務大臣 ドツジ氏にしてもシヤウプ氏にしても、日本経済自主性を無視してかつてに勧告しているわけではないのであります。十分日本立場考えて、そうして自主性といいますか、経済独立自主、自立ということに考えをいたしておるので、決して無視してというようなことはないはずであります。しからばこういう問題について、どういう交渉をしたかとか、あるいはどういう要求をしたかということはこれは立法の内容関係するものと思いますから公表することはできません。
  66. 勝間田清一

    勝間田委員 しかし貿易の問題にいたしましても、それから外貨予算の問題にいたしましても、それから今中しました見返り資金、預金部資金の問題にいたしましても、これを個々の主管大臣の折衝にまかしておくべき段階でないと思う。これは一国の総理なりあるいは外務大臣といたしまして、この面についてはこの程度の自主性をほしい、この面についてはこの程度の自主性をほしい、それは日本経済の運用の上に絶対的必要な條件であるということを、現吉田内閣責任をもつてやるべきであると考えるのであります。この点についての所見を承りたい。
  67. 吉田茂

    吉田国務大臣 今日のところ、大蔵大臣が全力をあげて努力しておらるるので、その努力の仕方においてもし不満なことがあれば、むろん政府としてもまた私としても交渉といいますか、ドツジ氏との話合いもしますが、今日においてはその必要を認めないから、一に大蔵大臣の交渉にまつているのであります。その結果どうであるかということについては、私ははなはだ満足いたしております。
  68. 勝間田清一

    勝間田委員 非常に満足されているという状態では、まことに現状についての開きが大き過ぎると実は考えております。これはどうか非常に早期講和を主張せられる吉田総理といたしましては、私はこの経済自主性の問題については、講和以前においても十分な御努力を拂われたいとお願いするものであります。  なお吉田総理は従来まで外資導入の点を強く主張せられて参つたのでありますけれども、しかしこの外資導入が依然として進んでおらない。これは何と申しましても、アジアのこういう状態あるいは日本のこういう外交的なあるいは戰争の危機というようなことが叫ばれている状態におきましては、長期の、しかもおちついた外資の導入ということは非常に私は不可能だと考える、またそういうことが当然だと私は考えるのであります。そういう場合におきましては、当然私は政府外資と申しますか、こういつた性格のものが、日本に導入せられなければならないと考えるのであります。吉田総理は外資導入についていかなる考えをもつて進まれておるか、この点についてお尋ね申したいと思います。
  69. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府外資ですか、今のお尋ねは……。アメリカ政府日本に対して金を貸してくれる、こういうような意味ですか。
  70. 勝間田清一

    勝間田委員 いろいろ国際問題もありますが、国際通貨基金問題もあります。
  71. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは国際通貨基金、ワールド・バンク等への加入については、今着々話合いを進めております。こういう加入ができてから後、初めて日本アメリカの資本を投資する資格を公に認められることと思いますから、ワールド・バンクの加入については、目下しきりに話を進めております。これができてから自然に公もしくは私の資本が入つて来る道が開かれると思つて、この問題に力を入れております。
  72. 勝間田清一

    勝間田委員 そうしますと、たとえば国際開発銀行であるとかいうような国際経済機構の中に、いわゆる講和会議以前において参加する見通しがあると考えていらつしやいますか、その点をお尋ねいたします。
  73. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは今お話のような客観情勢もありますから、必ず入るとは考えられませんけれども、アメリカ日本経済状態その他を考えてみて、そうしてワールド・バンクへの加入を許すということになれば、自然公私ともに外資の導入になるであろうと思いますから、まずワールド・バンクへの加入に努力いたしております。
  74. 勝間田清一

    勝間田委員 同時に、従来しばしば論議されて、不首尾に終つておるところの国際小麦協定への参加の問題、この問題についてはいかようにお考えになつていらつしやいますか。
  75. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話の国際通貨基金への加入の問題あるいは小麦協定参加の問題、これは先般非常に論議されておるのであります。実質的に日本国際通貨基金あるいは小麦協定に加入するだけの資格は持つております。これは敗戰国のドイツとか、オーストリア、ルーマニア、ブルガリアの外債がまだアメリカの市場には上場されていないにかかわらず、日本の外債が上場されて、相当今までのやみ価格より上つている、これでもできることなのであります。ただ国際通貨基金に加入いたしますために、代表権をだれが持つかという問題があるのであります。今占領されておる関係上、政府の代表者が行くわけには参りません。こういう外交上の問題がありまして、その点を話をしておるのでありまするが、実質的には、もし入つた場合においては、日本がどのくらいの割前を持つだろうとか、あるいは加入国のうちの何番目、理事国くらいになるだろうというふうなことは、もう向うで話をされておるのであります。ただ外交上の問題だけであります。  それから小麦協定への参加問題は、スターリング地域の小麦をどの程度買うかということが問題になるのであります。ドイツのように條件付で入るということがいいか悪いかという問題を、今研究しておるのであります。何分にも昨日の日英協定におきましておわかりのように、スターリング地域からの主食の買い方が、小麦協定に入る非常な問題になるのであります。日本がスターリング地域からあまり小麦を買わなくてもいいという條件で行くならば、私は外交問題がなければ実質的にすぐ入れると思う。いずれにいたしましても、国際協定でありますので、占領されておるときは、そういう実質的以外のネツクがあるということを御承知を願いたいと思います。
  76. 勝間田清一

    勝間田委員 御案内の通り国際通貨基金、例の開発銀行も、百億ドルの資金を持ち、しかもまだ九十一億ドルの参加で、あと九億ドル程度の、いわゆる余裕の見られておる状態でございます。こういつた問題については、ひとつ政府としても最善の努力をお拙い願いたいと考えるのであります。  なお最近の諸外国の食糧事情、なかんずく小麦、特に最近の朝鮮事変以後における食糧事情の変化というものを考えてみますと、従来考えておつた国際小麦協定参加への希望というものと、今後へのわれわれの希望というものとは、若干そこに見解を異にしなければならぬ状態になつております。国際小麦協定への参加についての必要性は非常に強くなつて来た、特にスターリング地域からの小麦の輸入問題についても、もつと広範囲に考えなければならぬと考えるのでありまして、その意味において、政府はさらに努力されんことを希望するわけであります。  それから、昨日も日英の貿易が実はできたのでありますが、最近の貿易の変化というものはきわめてきびしいものだと私は考えるのであります。それは申すまでもなく、一面においてはドルの価値がむしろ下つて参り、あるいはポンドの値段というものがむしろ逆に上つて参るという状態にもなり、またローガン構想もすでにその点はもうくずれてしまつて、逆な状態になつて来ている。それから最近の状態から見ますならば、アメリカのいわゆる輸出統制というものも非常に強くなつて参り、その他濠州、南阿、あるいはその他の地域のいわゆる輸出禁止制度なり、あるいは統制の制度というものもできて来ている。いわゆる諸外国の貿易状態、特に日本の輸入に関する問題というものは、非常に重大な問題になつて来ていると実は思うのであります。そこで従来政府が、いわゆる協定貿易主義によつてつて来たいろいろの行き方というものは、ここで根本的にかえて行かなければならない、同時にそれに対する日本経済施策というものもかえて行かなければならない、私はさように考えるのであります。これは一通産大臣の問題ではなくして、外務大臣としても、いわゆる貿易を通じての一つの政策の転換というものを十分考えるべき段階に達しておると私は考えるのであります。それを考えずして、いたずらにインベントリー・フアイナンスというようなものをつくつても、それは意味のないことであるというように考えておりますので、総理は従来のこういつた貿易政策を、ここで転換する意思がないかどうか、あるとすればどうするのか、この問題をひとつお答え願いたい。
  77. 吉田茂

    吉田国務大臣 今ただちにこういうふうに転換するとか、ああいうふうに転換するとか申しても、これは相手国のある話であつて日本だけが転換するとしたところが、実績が上るかどうかという問題がありますが、今日の現況において、御承知の通り日本の貿易がだんだん改善せられておるのみならず、急激に増加しておる向きもありますから、よく自主性考えてなお研究いたします。
  78. 勝間田清一

    勝間田委員 はなはだ不満足でありますけれども、なお後ほど通産大臣等についていろいろお尋ね申す機会を保留して、その問題はその程度にさせていただきたいと思います。  それから例の講和問題について私は若干の問題をお尋ねしたいと思うのでありますけれども、吉田内閣外交政策をおやりになつておられるのを、私はずつと野党としてながめさせていただいておりまして、その中で一番危險なものを感じたのは、例の外交白書「朝鮮動乱とわれらの立場」の問題であります。これは内容はさらにいろいろ問題がございますけれども、私はこういつた問題を、そもそも外務省というようなもの、しかも一官僚が、こういつた政治性を持つている一つのプロパガンダをするということは、私はきわめて悪い傾向であると考えるのであります。これはちようど、戰争前における陸軍、海軍の報道部がやつた仕事でありまして、現在民主主義下における官僚のやるべきものでは絶対にないと考えるのであります。しかも中は、きわめて日本の将来に関する重大な問題であり、しかもそれは煽動的である。これはきわめて残念に私は考えておるのであります。もしわれわれが現在の官庁においてこれを希望するとすれば、現在を克明に知らしめるという限度内においての態度を官吏がとるべきだと考えるのであります。従来の経済白書にいたしましても、あらゆる問題にいたしましても、現状を国民に知らせるというリアルな形がそこにあるべきであつて政治的意図があるべきものではないと私は考えるのであります。その意味におきまして、今度のいわゆる外交官僚の煽動的な文章で書かれたこの外交白書、こういう形で今後外交を進めて行かれるつもりであるか、私はこの点についてはつきりとひとつ総理の反省を求めたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  79. 吉田茂

    吉田国務大臣 外交白書なるものは、宣伝の意味をもつて書いておるものではないのであります。事実を事実として、外務省として見たところを種々の材料を研究して、そうして客観情勢と申すか、外交上の知識を国民に知らしめるために出しておるのであつて、宣伝のために出しておるのではないのであります。
  80. 勝間田清一

    勝間田委員 それならば非常に大事な問題がたくさんあると存じます。これは決して單なる誹謗ではなくて、日本政治を正常にもどす意味において総理もひとつ十分に御検討願いたいと思うのであります。たとえば国際情勢の分析についてこういう態度をとつていらつしやる。すなわち、この際に二つの世界が話合いができるなどと考えることはばかげたことであるという文章を私は覚えております。また話合いができたとしても、それは長続きするものではない。これが外交白書を流れるところの前提の條件になつております。吉田総理は一体こういう前提に立つて、そしてその上に国民に二者択一を迫るのでございましようか、この点をはつきりとお尋ねしたいのであります。
  81. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは昨日も議場で申したのでありますが、現在二つの勢力が対立しておることは事実であり、その間に話合いができないからこそ朝鮮事件が起つておるのであつて、事実を事実なりとして書いただけの話であります。
  82. 勝間田清一

    勝間田委員 それは非常に重大な問題でありまして、いわゆる朝鮮事変というものは一つの事変として扱われ、警察的行為として扱われておるのであります。これがいわゆる共産党陣営対ある一連の陣営の世界の二つの対立として話合いがつかない、あるいは話合いをしてもそれは愚かなことであるという観点に立つて考えられておるのではないかと思う。これは朝鮮事変というものの内容に対して、国連の警察的な行為であつて、これを世界の二つ話合いのできない対立として考えて行くということは、内容は同じでも、事実は本質的に異なるものであると思う。この点をはつきりとお尋ねしたいのであります。
  83. 吉田茂

    吉田国務大臣 話合いをつけるために国連が努力しておりますが、その結果についてしばらく待つよりしかたがないと思います。
  84. 勝間田清一

    勝間田委員 しからば話合がつかないとか、話合いがつくと考えることはばかげたことであるとかいう考えに立つて吉田総理は今後の外交あるいは国連というものを見て参りますか、その点をひとつお尋ねしたいと思います。
  85. 吉田茂

    吉田国務大臣 ばかげたことと書いてあるかどうか知りませんが、しかしながら私はばかげておるとは考えておらない。けれども国連が話合いをつけることができるかどうか、非常にむずかしいことであると考えております。
  86. 勝間田清一

    勝間田委員 それならば文章を御訂正なさるのが外務大臣として正しいと私は思う。ここに文章は持つて参つておりませんけれども、再三再四読んで記憶しておるところであるから、どうか御訂正なさるのが正しいと私は思う。しかし国連の方のいわゆる安全保障を求めるという点については、吉田総理のお考え方も、われわれ社会党考え方も、一致しておるかに外見は見えます。しかしながらその本質を考えてみますると、吉田総理のお考えというものは今お話になつ通りにばかげたことであり、話合いのつかないことであるという観点に立つて考えて参りまするならば、国連というものは話合いのつかない一方的なものではないのであります。国連というものは法と秩序を確立して、世界の平和をその中に解決して行こうとする国連なのである。それなるがゆえに、全世界がこうした紛糾を避け、平和を守り、秩序を守ろうとしていることは、申すまでもないことだと私は思う。この国連を強化し、この国連を支持して行く立場こそが正しいのであつて、今言つたような一辺倒の考え方を持つた国連を強化するという考え方は、修正を要すべきものだと考える。この点については吉田総理はいかにお考えになつていらつしやいますか。
  87. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私が始終申しておる通り、国連に協力すると申しておるのであつて、これを強化することについては異存はありません。けれども申しておきますが、もしも外交白書にばかげたというようなことが書いてあれば、これは訂正させます。
  88. 勝間田清一

    勝間田委員 それから先ほど来お話がありました通りに、あれは情報の單なる提供である、あるいは分析であるというような御答弁があつたのでありますけれども、ところがやはり同じこの白書の朝鮮事変に対するわれわれの態度の中に、かかる際において不介入であるとか中立の堅持をするということは、実戰の前における敵前逃亡にひとしいと書いてあります。この敵前逃亡にひとしいという考え方は、これは私は單なる情勢分析ではないと思う。しかるがゆえにわれわれはどうしなければならぬということが暗示されておるのであつて、不介入とか中立ということではなくて、一辺倒に協力してつつ込めということであると思う。こういう意思に基いた白書というものは、これは私は宣伝以外の何ものでもないと思う、これは前の陸軍、海軍の報道部のやつた仕事であると私は思う。今日日本の占領治下において、かかる不謹愼な、しかも危険な、しかも戰争へ巻き込もうとするような言辞を吐く外務省の白書というものについては、私はこれもまた御訂正を願いたいと思うのでありますが、いかがでございましようか。
  89. 吉田茂

    吉田国務大臣 調査した上でお答えいたします。改むべきものは喜んで改めます。
  90. 勝間田清一

    勝間田委員 改めるといたしましたならば、今の私の考え方に御賛成されたということに解釈してよろしいのでありますか。
  91. 吉田茂

    吉田国務大臣 いわゆる外交白書なるものについて研究した上でお答えいたします。
  92. 勝間田清一

    勝間田委員 外務大臣が外務省の、しかも重要な文書をまだお読みになつていらつしやらないということでありますが、これはきわめて重大な問題だと考えます。しかしそういつたあげ足取りをしようとは思いません。吉田内閣の本質を流れておる、また外交の本質を流れておる考え方というものが、私はきわめて危險だと考えるのであります。もし総理がそうでないとするならば、あなたの部下はきわめて危険だと考えるのであります。この点をどうか今後とも大いに注意を願いたいのであります。  それから従来全面講和、單独講和の問題を與野党をあげて論議をして参つたのでありますけれども、しかし私はその問題の善悪についてここで水かけ論をやろうとは考えておりません。これは吉田総理は吉田総理のお考えがあるでありましよう。われわれはそれが正しくないと思うがゆえに、これに対して反駁もいたしております。しかしこれに対する水かけ論はしたくはございませんが、私が一つ考えますことは、いわゆる十三箇国と講和を結ばねばならないという国民の切なる要求があると思う。それに対して従来ある特定の国が参加しないからだめだとか、そういう場合にはやむを得ぬとかいうようなことで、事実がごまかされております。しかし私は何もソビエトの政策を絶対支持するものでも何でもありませんが、ソビエトがまだ予備交渉に参加するかしないかもわからないうちに、あるいはインドやその他の国がどういう態度をとるかわからぬうちに、あるいはフイリピン、濠州などが複雑な感情を日本に持つておるときに、日本の方がその全面講和を妨げるような、しかも政府責任ある発表をして行くという單独講和論というものは、私は百害あつて一利なしと考えるのであります。これは今日における自由党が特にそうであろうと私は考えるのでありまして、日本の国政をそれだけ実は狭めるものだと考えるのであります。その意味におきまして、私どもはこの單独講和というものをまだ予備交渉もしない前からとなえておつたということは、これは重大な責任ではなかつたかと考えるのでありますが、いかにお考えでありましようか。
  93. 吉田茂

    吉田国務大臣 われわれは絶えず申しておる通り、全面講和ができればまことにけつこうであるが、できないときにはしかたがない。これは相手国のある話で相手国が協力しない、あるいは承諾しない講和をむりにしいるわけには行かないのであるから、できるだけ多数の国と講和はして行きたいが、全面講和が悪いとは決して申しておらないのであります。けつこうな話だと申しておる。
  94. 勝間田清一

    勝間田委員 けつこうならば、まだ最初の予備交渉も開始されない前から、それをはつきり言うべきではなかつたのではないでしようか。
  95. 吉田茂

    吉田国務大臣 はつきり申しておるのであります。全面講和けつこうである。しかしながら客観情勢がこれを許さない場合にはしかたがないと申しておるのであります。(「しかしながらがいけない」と呼ぶ者あり)しかしながらと言わざるを得ない。
  96. 勝間田清一

    勝間田委員 しかしながらと言わざるを得ないというところに吉田内閣の本質があると私は思う。しかしこの問題はこれ以上つつ込もうとは考えておりません。  それからこれもずいぶんわれわれは従来議論をして来た問題でありますけれども、吉田総理がこの前の国会の参議院だと思いますが、軍事基地設定を希望せずと御答弁になつたことについては、現在でもおわかりございませんか。
  97. 吉田茂

    吉田国務大臣 現在においても希望いたしません。
  98. 勝間田清一

    勝間田委員 これはしかしながらはつきりしませんか。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 しかしながらとは申しておりません。
  100. 勝間田清一

    勝間田委員 それならば軍事基地設定は希望せず、それには單独講和のようなしかしながらはつかない。これでひとつ決意を持つて進んでいただきたいと思うのでありますが、従来自由党の諸君が軍事基地設定はやむなしと言つて来たことに対しては、党議で反省していただきたいと思うのであります。それから私どもは従来中立の問題について、とかくわれわれがスイスの永世中立を主張しておるかのごとくに言われておりました。もちろんわれわれは永世中立思想というものの大きな意味というものを、そこに見出さざるを得ない。しかしながら現在の日本の進むべき道というものは、偏狭なる民族主義に陥つてみたり、あるいは経済基礎を持たない永世中立論に陥つてみたりすることは間違いであつて、やはりわれわれとしては世界との友好関係の中に立つての中立堅持という問題が、今後日本の進むべき道であると考えておるのであります。そこで実際上の問題になつて来ますのは、政府の方も国連における安全保障ということを求め、国連加入を要求されておるのでありますが、国連加入におけるところのいわゆる戰争参加、武力行使の義務規定というものと、日本憲法の九條の思想というものとどうお考えになつておるか。われわれはこの際における義務規定を免除し、憲法九條にのつとつた国連加入というものを希望するのであるけれども、吉田総理はいかにお考えになつておるか。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 国連加入の問題、また條件等については、現在現実の問題となつておりませんから、お答えいたしません。
  102. 勝間田清一

    勝間田委員 しかしこの点は日本国憲法が決定されておる問題でありまして、あなたが先ほど再武装については憲法を守るべきであるとお考えになつていらつしやる精神から見て、それならば憲法改正をしてもよろしいという考え方があると解釈してよろしゆうございますか。その点をひとつお尋ね申したいと思う。
  103. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は憲法はかえないと申しておるのであつて、国連の問題がどうなるか。将来は別としまして、今日のところは私は憲法はかえたくない。現在の憲法を守つて行くのが政府立場である。こう考えております。
  104. 勝間田清一

    勝間田委員 それなら現在の憲法を守つて、国連加入の問題についても日本立場をきめて参りたい、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  105. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいままだ国連加入ということは現実の問題となつていない。また国連加入についてはいかなる條件があるかということは、もし加入を許されるときに初めて問題になるのであつて、そのときに考えるべきであつて、今日は過程の問題についてはお答えしません。     〔「しかしながらは仮定じやないか」と呼ぶ者あり〕
  106. 勝間田清一

    勝間田委員 それでは再軍備の問題については民主党の諸君とは若干意見が異なつて、むしろ吉田総理が再軍備に反対されて行く考え方については私は同感でありますので、この点については途中でしかしながらを言わないように希望をいたしたいと思います。  なお内政問題もいろいろございますけれども、時間も何でありますから、一つ自分で納得の行かぬ点だけ伺います。それは小さな問題でありますが、私は思想的な対立という問題については、これは大いに対立をして行くべきであり、お互いに他党に対する違いもまた主張して行くべきであります。なかんずく日本の共産党の問題については同様に考えておりますけれども、しかし私はレツド・パージをされて参ります者——教職員の問題についてもいろいろ問題はございますけれども、一体このレツド・パージのレツテルを張られた人はどこでどう生活をされるとお考えになつていらつしやいましようか。私は、これをどこかの掃きだめのように日本のどこかへ追い込んでしまつてそれでいいというものではないと思う。ここは私は非常に重大な問題を含んでいると実は考えているのであります、一人々々にレツテルを張つて国内のどこかへこれを追い出してしまつて、もう一ぺん就職しようとしても実際上就職ができない。こういう首を切られる特殊な人たちに対する立場を一体どう見通されて、これらがどう生きると考えてあなたはやつていらつしやいますか。これがもしできないとするならば、私は非常な重大な結果をも招くことになると思う。最後に追い詰められたこの人たちがどうなると考えていらつしやいますか。これに対する政府の対策をどう考えていらつしやるか。私は日本の憲法その他から考えてみて、職を與えるべき義務を持つていると思う。これは思想とは別であります。今何万という人たちがレツド・パージで首を切られておりますけれども、この人たちに対する将来の生活の問題をどう見通されていらつしやるか、どういう対策を政府はとろうとするか、私はこの点を総理にお尋ねしたい。
  107. 吉田茂

    吉田国務大臣 レツド・パージの問題は、御承知であろうと思いますが、政府としてはなるべくその数を少くしたい。また少くすることに努力しているのでありますが、その少数のレツド・パージといえども……(勝間田委員「少数じやない」と呼ぶ。)八千万からいえば少数である。しかしながらこの少数の人間といえども、その生活については保障いたしたいと考えているのでありますが、今日においてはまず経済の安定、政治の安定を期して講和態勢に持つて行くためには、少数の人の犠牲においてもいたしかたがないのであります。もしその少数の犠牲者が生活に困る場合には、これも日本人でありますから、政府としてはめんどうを見るつもりであります。
  108. 小坂善太郎

    小坂委員長 先ほどの勝間田君のお話に対しまして官房長官から発言を求められておりますから、この際これを許します。岡崎官房長官。
  109. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 ただいま八月十九日、九月七日に出ました「朝鮮の動乱とわれらの立場」というパンフレツトを両方調べてみましたが、勝間田君のお話のようなばかげたことというような言葉は一つも書いてありません。一方には「尋常の手段ではとうてい話合いが成立せず。」とあり、一方には「なかなか話合などできない。」と書いてあります。ばかげたことということは書いてありません。
  110. 勝間田清一

    勝間田委員 ちよつと見せてください。(「敵前逃亡は書いてあるよ」、「意味は同じだ」と呼ぶ者あり)あるいはばかげたことという言葉がないかもしれませんが、それとまつたく同じ意味のことが書いてあることは事実であります。     〔「取消せ」「懲罰々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  111. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。勝間田君、お続けを願います。
  112. 勝間田清一

    勝間田委員 これは「尋常の手段ではとうてい話合いが成立せず、かりに話合いができたとしても決して長続きはしないのである。」こういうことでありますが、私は意味がまつたく同じであると考えます。(「その通り」と呼ぶ者あり)ただばかげたという言葉はなかつたかもしれません。     〔「取消せ」と呼ぶ者あり〕
  113. 小坂善太郎

    小坂委員長 お取消しになりましたね。——勝間田君は自発的にそういう言葉はなかつたかもしれないと言つておられます。
  114. 勝間田清一

    勝間田委員 しかし尋常の手段ではとうてい話合いはできないということがあつたことは御了承を願いたいと思います。  なお今度のポ政令の問題でありますが、どうしてこういうポ政令が出なければならなかつたかということを、私は実は非常に疑問に考えておつたのであります。もちろん今までの審議の経過から考えてみまして、いわゆる電力の再編成の法案というものが成立しない。あるいは最近における大阪方面の電源に関する問題の反対がいろいろあるというような事柄からして、非常な混乱が予想されたことは事実だと思う。しかしこの問題については書簡が出たからこういうポ政令で出したのだというのでは、政府自分責任を回避していると私は考えるのであります。この書簡が出なければならなかつた根拠というものは、政府責任があると考えます。そうして今日までその責任について何らの反省することなしという状態が、今日の国会の混乱を起したもとだと考えるのでありますが、むしろこれをもつと端的に言うならば、吉田内閣政策の貧困、あるいはそれを解決する政治力の貧困というものに帰着すると実は考えます。だから書簡が出たからやつたという言い訳ではなくして、政令を出さざるを得ない状態に引入れた吉田内閣責任というものこそが、痛烈に問わるべきものであると考えるのでありますが、吉田総理はいかに考えておられますか。
  115. 吉田茂

    吉田国務大臣 その必要は、この間議院運営委員会において申しておいた通り、もし今日において見返り資金が出ない場合においては、これまで日発会社において水力電気の工事を進めて来たその工事が頽廃する。またやめようとしたところが十五億の金がいるという窮境に追つて来た。そういう財政状態であり、また水力電気の開発というものは一日もゆるうすることができない今日でありますから、なるべく早く日発の電力源の工事の完成、さらに一層進んで他の水力電源についても開発する必要があるのであつて、その必要からしてポ政令を出したのであります。吉田内閣政治力の貧困もしくは政策の貧困ということについての御批評は自由でありますが、政府としてはそう考えておりません。
  116. 勝間田清一

    勝間田委員 終ります。
  117. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早八十二君。
  118. 西村榮一

    西村(榮)委員 今の質問に関連して……。
  119. 小坂善太郎

    小坂委員長 西村榮一君。関連質問ですから、自席から簡單にお願いします。風早君どうぞ席についてください。
  120. 西村榮一

    西村(榮)委員 総理大臣にお伺いしたいのであります。ただいまの電力問題に対するポ政令の問題でありますが、これは内閣から要請せられて発せられたものでありますか、あるいは自発的に総司令部から発せられたのでありますか、その点お伺いいたします。
  121. 小坂善太郎

    小坂委員長 西村君に申し上げますが、先ほどその問題に関連しまして、中曽根君からもそのお話があつたようでありますが、(「やつていない」と呼ぶ者あり)なお政府としての……。
  122. 吉田茂

    吉田国務大臣 はつきり申しますが、政府から要請したのではないのであります。GHQから自発的にと申すか、GHQの指令に基いて政府はポ政令を出したのであります。
  123. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからばなぜ参議院その他においてしばしば公表を追られておるにもかかわらず、その全文を出さぬのか。現内閣は従来警察予備隊その他の指令はすべて発表されておるのでありますが、なぜそれを発表されないのでありますか。     〔「それは終つたじやないか」「終つてない」「総理大臣答弁しなさい」と呼び、その他発言する者多し〕
  124. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。
  125. 西村榮一

    西村(榮)委員 なぜ発表しなかつたか、簡單に御答弁願います。
  126. 吉田茂

    吉田国務大臣 その質問に対しては先ほど御答弁いたしました。
  127. 西村榮一

    西村(榮)委員 最後にお尋ねいたしますが、私は総理大臣のただいまの御答弁を信頼するわけには参りません。なぜならば、二十八日の毎日新聞の記事によりますと、マツカーサー元帥の書簡の大要といたしまして、「去る二十日の会見で貴下から私の助見を求められた。その後総司令部で検討したが」云々ということになつておるのでありまして、この新聞の報道するところによりますれば、電力問題に対するポ政令の問題は、明らかに吉田総理大臣がマツカーサー元帥に対して助言を求められ、検討した結果一つの指令が出た。こういうふうに経緯が解釈できるのであります。私はこれに対して関連した質問でありますから、あえて追究をいたしません。日を改めますが、この新聞記事を吉田総理は承認されますか。同時にこの記事にありますように、二十日において電力再編成の問題についてマツカーサー元帥に助言を求められた事実があるか。これを簡單にお答え願います。
  128. 吉田茂

    吉田国務大臣 新聞の記事については責任を負いません。
  129. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早八十二君。
  130. 西村榮一

    西村(榮)委員 関連してもう一点……。
  131. 小坂善太郎

    小坂委員長 西村君、先ほど最後とおつしやいましたから、風早君に許しました。
  132. 西村榮一

    西村(榮)委員 もうこれで最後にいたします。そこで従来政府は指令を公表されておるにもかかわらず、この電力の問題だけが公表されないというのは、世人に多くの疑惑を投げております。その疑惑の根拠はどこにあるかといえば、私どもが巷間にうわさされておることを聞いてみますと、マツカーサー元帥のこの書簡の中には、前段に政府の無能、無策を指摘している。政府の無能、無策がこの電力の問題を遂に紛糾に至らしめたことはまことに遺憾であるが、しかし事態は緊急を告げるから、あらゆる手段に訴えて解決する権能を與えるということが明記されておるということを承つておるのでありますが、この巷間のうわさがかりに偽りであるとすれば、現内閣はすみやかに世人の疑惑を解くために、マツカーサー元帥の書簡を公表せられてしかるべきであつて、官房長官がその後現内閣責任を追究される書簡を公表することは、内閣にとつて政治責任をとらなければならないという見地から、書き直しを要請せられておるということも伝えられておるのでありますが、私は現内閣の名誉のために、世人の疑惑を一掃するために、こいねがわくばすみやかなる機会において、マツカーサー元帥の書簡の全文を公表せられて、世人の疑惑を一掃せられんことを要望いたしまして質問を打切ります。
  133. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早八十二君。
  134. 風早八十二

    ○風早委員 講和問題に関連して吉田総理に御質問申し上げます。  先ほど勝間田委員の質疑の中に、外交白書の中で二つの世界が対立しておつて、これが融和するということを考えるということはばかげたことだという、そういう文句はないということでありましたが、しかしこれはただ文句の末だけの問題でありまして、実際にあの外交白書はどういう本質を持つておるかということは別問題であります。私は外交白書が明らかに單独講和の一貫した主張によつて書かれたものである、少くもそういう印象を與えるものであるということについては間違いないと思うのでありますが、吉田総理大臣はこれについてどういうお考えでありますか、お伺いいたしたい。
  135. 吉田茂

    吉田国務大臣 先ほど申した通り、事実を事実として公表して、国民講和に関する知識を広めるために書いたのであつて、その他の理由はないのです。
  136. 風早八十二

    ○風早委員 これはわれわれ知る限りの日本国民があれを読んで、明らかに單独講和の宣伝であると考えておりますが、同時に外国筋においてこのことがしばしば問題になつたことは皆さん御承知と思います。あれが出たのがたしか五月の終りでありましたか、六月の一日にUPのホープライト支局長がこの外務省情報部から出た外交白書に関して、本国に長文の電報を送つておる。その中で、今回日本政府とつ立場は、諸外国に対し單独講和会議を開始するよう招待したものにもひとしいものだ、こう言つております。この外交白書はまさにあの朝鮮の問題が始まります前、ダレス氏一行が参りますに先だつて出されたというところに非常な意味があると思うのでありますが、それはとにかくとして、ニユーヨーク・タイムスの同じ六月三日付の社説は、さつそくこの白書を論じまして、この文書は日本が單独講和締結に進む用意のあることを公式に表明したものだと書いております。しかし一体吉田内閣がだれに断つてこういう印象を與えるようなものをかつてに発表したか、これはわれわれ国会議員としてもはなはだ問題にせざるを得ないわけであります。これは要するに吉田内閣が従来小刻みに切売りして来たところの日本の国土、人民、こういうものを今度は外交白書という正札付で売渡そうとする意図を暴露したものじやないかとわれわれは考えるのであります。なおこの文書の中で対日講和を遅らせて来たのはソ連であつて、他の旧敵国ではないということが意思表示されておりますけれども、これは事実をしいるもはなはだしい。先ほど吉田総理は事実を事実として書いたと言われたが、どういう証拠に基いてこういう誹謗をされるか、ソ連は最初から一貫して、ポツダム宣言に基いて全面講和の早期締結を主張しております。特に中ソ同盟條約においても、はつきりと公式に表明しております。現在の国際情勢の中での実際のソ連の動きを見ても、このことははつきり裏書きされておる。こういう事実を事実として言つたというその点をとりましても、これははなはだしく事実をしい、占領国軍の一国を誹謗しておるということは明らかであるとわれわれは考えておる。さらに六月三日にフィリピンのロムロ外相は、外相就任後初めて対日講和の問題に言及いたしまして、單独講和から起る混乱及び危険の可能性を過小評価してはならない、すなわち單独講和はソ連とともに赤色中国を除外することになる、アメリカ及び他の友好諸国に何か讓歩を行うとすれば、それはソ連と赤色中国の犠牲において行われる、もしこれが條約という拘束力を持ち、義務を伴う形をとれば、このような讓歩ないし協定は、必要とあれば軍隊をもつて支持するという性質を含むものだ。フィリピンの輿論もこのロムロ外相の見解と軌を一にしておるのでありまして、マニラ・タイムス六月三日付の社説にも、日本の提案は米国とソ連の間に摩擦を惹起するおそれがある、これは全連合国のみが決定し得る問題である。さらに最後に、これらの論調を裏書きするごとくに、六月六日にキリノ大統領も、対日單独講和を承認上ないと公式に言明していることは、当時の新聞紙によつても明らかであります。こういう次第で、先ほどのような、ただその文字の末の問題ではなく、あの外交白書が全体としてこういう印象を與えているということは、これは疑うことのない事実であります。そういう意味で、われわれはこの点に関してあらためて、あれがこの印象を與えるということに対して、いかなる責任考えておられるか、吉田総理にお伺いしたいのであります。
  137. 吉田茂

    吉田国務大臣 外交白書は、ただいま申した通り、事実を事実として報道した考えで出しているので、それがいかなる影響を及ぼしたか、ある一、二の新聞が何と書いたか、あるいは一、二の政治家が何と言われたかについては、一々答弁もしくは責任をとりません。
  138. 風早八十二

    ○風早委員 それではお尋ねしておきますが、われわれが事実を事実として書いたならば、それについては責任を負う必要はないのですか。われわれが国際情勢の問題、いろいろの問題、事実はたくさん持つております。こういう事実をそのまま出して、これは事実であるからといつて内外に対して責任を負うことはありませんか。そういうばかなことはないと思います。やはり事実によつて生ずる結果に対しては、その事案を発表した者が責任を負わなければならぬ。これはあたりまえの話である。
  139. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は外交白書について申しておるので、あなたの言論からいかなることが起きようが、私は責任を負いません。
  140. 風早八十二

    ○風早委員 外交白書については責任を負わないと言われることは驚くべき暴言でありまして、外交白書について、その影響に対して、責任考えておらないということは明らかになつたと思います。私は吉田総理にお尋ねしたいのでありますが、吉田総理は全面講和はもとより望ましい、こういうような見解に最近では到達されておるようであります。最初は決してそういうことは言つておられなかつた。最初は全面講和という言葉も出しておられない。しかしながらその後に至つて全面講和はもとより望ましいということを、しばしばわれわれは首相の口から聞くのであります。しかしながらむろんいろいろにその講話論議というものがかわつて来ることは、情勢の変化によつてこれは当然でありまして、私は首相講和論というものが、化石のようにいつまでも固定しているものでないということを知つただけでありまして、これは何ら問題ないと思います。問題はこの全面講和はもとより望ましい言われる、それがほんとうに望ましいと信じておられるのか。もし信じておられるならば、ほんとうに真剣にその全面講和の可能性についてどう考えられたか。またその実現に役立つために可能なことをどのようにせられたか。この点について首相の所信をただしたいと思うのであります。
  141. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は初めから全面講和ができれば望ましいということを申しておるので、本人の言明をお信じ願いたいと思います。そうして全面講和を望むとして——何と言われたのですか、熱意を示すと言われたのですか。
  142. 風早八十二

    ○風早委員 それではもう一度補足しましよう。全面講和を望むと言われるが、望むのならば、ほんとうにその全面講和の可能性について、どのように真剣に検討せられたか。またその実現のために、具体的にどのように可能な限り努力せられたか。これが根本の質問であります。
  143. 吉田茂

    吉田国務大臣 全面講和を望む以上は、真劍にこれを要望するのであります。しからばどう研究したか、どういう努力をしたか。一々こういう努力をしたとか、ああいう努力をしたとかいうような、外交上の交渉に関することは言明いたしません。
  144. 風早八十二

    ○風早委員 必ずしも外交上の交渉関係をここでただしておるわけではないのであります。吉田首相は過般のこの委員会におきましても、結局講和の問題は、日々われわれのやつておることの結果が出て来る問題であるというお話でありまして、まさにその通りなのであります。どういう政治を今やつておるかということが根本問題であります。口の先でいくら全面講和が望ましいと言つても、実際の行動で片つぱしから單独講和の地ならしばかりやつているとしたならば、そうして全面講和をぶちこわすようなことをしているとしたならば、これはまさに欺瞞じやないかとわれわれは考える。欺瞞でないとしたら、これは結局総理として怠慢のそしりを免れないものである。吉田首相が実際に單独講和の地ならしをやられたという一例として、私は先ほど外交白書をあげたのであります。これは吉田首相があらゆる政治のすみずみにまで、單独講和の地ならし、全面講和のぶちこわしをやつておられるものと考えるのでありますが、この点について、吉田首相の所見を伺いたい。  たとえば全面講和希望すると言いながら、ポツダム宣言に基いてなされる全面講和の根本條件である日本の民主化、軍備撤廃、憲法に認められるに至つたこういう條項を片つぱしから破つて来ておる。まつこうから露骨にフアシヨ政治を強行しておる。こういう事実をいくらでもあげることができる。まず第一に国会を無視して、都合が悪くなるとポツダム政令を出す。公務員の政治活動の禁止というようなものも人事院規則で出す。食確法にしても同様であります。また今回の警察予備隊の編成、これも国会を無視してかつてにやる。国債償還費の流用もかつてにやる。さらに今度の国会におきましても、電力分断の強行を国会を無視してかつてにやる。こういうことは、今までいくらでも日常なされておる。  第二に、帝国主義的な意識のもとに、いろいろ第三国人、特に朝鮮人に対する非常な彈圧が行われておる。外交の首脳者である吉田総理において、一体これがどういうふうに全面講和考えと結びつくものであるか。これはぜひ答弁をいただきたいと思うのです。最近神戸におきまして、朝鮮人の大騒擾事件が起つたということは、新聞にも報道されております。われわれも今調査団を派遣して、その実情を調べておりますが、新聞の寫真を見ましても、手錠をはめたままで、こん棒でああいうひどい暴力を路上で振つておる。こういうふうなことを朝鮮人や外国人が見ると、一体これでどういう結果が生ずるか。われわれはこういう問題について、首相の明確な御答弁を求めたいのであります。  さらに好戰的な宣伝を政府みずからがやつておるということは、これもまた周知の事実であります。いわゆる国連協力の名のもとに、朝鮮事変が始まりますと、朝鮮率変に対する外国の干渉に対して協力することによつて、結局朝鮮事変に直接間接介入をしておられる。こういうふうな事実は、枚挙にいとまがないわけです。こういう事実を一々申し上げることは、時間の関係上省略しますが、こういうことをやつておいて、それで全面講和を望むというようなことは、欺瞞でなくて何であるか。外交上のいろいろな交渉のことを聞いておるのではないのであります。実際の政策が一つとして全面講和を促進させる方向には行つておらない。全面講和を望むと言われれば、促進されるのがあたりまえであるが、その方向に努力が見られない。反対に單独講和の地ならしをやつておる。これは明らかな事実ではないか。この点について所見を伺いたい。
  145. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の、あるいは政府政策に対する批評、あるいは独断は御自由であります。しかしながらこれに対して私か一々反駁したら時間が許しませんから、あえてあなた方の攻撃に対して一々お答えいたしません。
  146. 風早八十二

    ○風早委員 第三に、全面講和と單独講和と、この両方のいずれが日本国民に対して利益となるか、この問題について首相の所見をただしたいのであります。しかしこの問題はただ抽象的の論議の段階ではない、今日は具体的に、われわれが貿易一つとつても、実際中国やソ同盟、こういうアジア近隣諸国とほんとうに友好関係に入り、これと自由の貿易ができるような講和であるか、あるいはこれらの国々と敵対関係に入る講和であるか、この二つのいずれがわれわれに実際に利益を與えるのであるか、このことが真剣に具体的に一つ一つの経営についても、メーカーの中でも問題になつておる。そういう段階でありますから、そういう点については、ただ單なる仮定の問題というものではないのであります。そのつもりでお答え願いたいと思います。  今年初頭に講和論議が再燃しましたときに、二月十三日の東京新聞によりますと、講和経済界の要望と題して財界人の意見を載せております。われわれはその都度国会においてこれらの見解は出しておりますから、今この際は重複して申し上げませんが、ただ思い起してもらうために帝銀の社長佐藤喜一郎氏、野村証券の社長奥村綱雄氏、さらに……(「みな資本家じやないか」と呼ぶ者あり)みな資本家でありまして、皆様方のお好きな資本家なのであります。その資本家がみな異口同音に中共あるいはソ同盟を抜きにしたような講和はナンセンスだと言つておる。その人たちは何とか早く講和が望ましいということを言つておる。ただこういう人たちはみずから犠牲を拂つて、みずから先頭に立つて講和の実現のために努力しようとしないが、みな望んでおる。またこういう古い資料でなくとも、ごく最近のアメリカの下院の歳出委員会におきましても、ゲーリー氏の質問に答えて、フアイン博士が証言しておりますが、そういうものを見ましても、実際アメリカ日本との取引は限られておる。やはり日本は、近隣アジア諸国との関係がほんとうに重要で決定的なんだと、いうことを、一々品物まであげましてよく証言しておる。実際こういうような事実を見ましても、内外ともに日本が客観的に見ても、どこと実際利害関係が深いかということは、十分に証明せられておると思うのであります。この段階におきまして、われわれは、たとえば今度の朝鮮の問題が始まつて後、いわゆる特需景気というものが起つたわけでありますが、この特需景気の段階になりまして、いよいよこの問題がほんとうに各メーカーに浸透して来た。私どもはたとえば大阪あるいは神戸あたりへ参つて、いろいろな実業家の諸君にも会つておる。そこで懇談会をやつて、いろいろ聞いてみますと、これはもう実際みな困つておる。特需景気といいますけれども、実際その注文を受けて困つておる。値段についてもいろいろな制限があるし、また納期にきわめて制限があるし、納期をはずれれば罰金だ、こういうことで、さらに原材料が暴騰しておるというようなことから、実際にこれはやつて行かれない。これが戰争とからみ合つて来ておるという段階になりますと、いよいよ今の貿易の態勢ではやつて行かれないということがはつきり出て来ておる。こういうことは、具体的には池田大蔵大臣や周東安本長官にあとで関連してお尋ねしたいと思います。が、首相に対して私はこの際日本国民が実際今どういう岐路に立たされておるかということをひとつ考えてもらいたい。今吉田首相がやつておられることは、一つ一つこれは單独講和の地ならしをやつておられますが、このことは同時に実業家をも含めて——もちろん労働者は言うまでもありません。農民もそうです。中小商工業者に至つては言うまでもない。しかし実業家、大メーカーでも非常に困つている。タンクの注文がある。タンクの注文があつて、これでしかし実際合わない、ところがその同じメーカーに対して、たとえば農業用のトラクターが中国からどんどん注文がある、これを引受けたならば必ずもうかる、こういうふうな場合に実際そろばん関係からいいましても、どちらと友好関係を結んだ方が得であるかということはわかる。この問題がやはり私は今日政府当局の責任としても十分に考えられなければならない根本の問題であると考えるのです。全面講和、單独講和ということを、ただ抽象論議だ、あるいは東大の南原総長のあの全面講和論に対して、吉田首相があれは曲学阿世だというふうなことを言われたということが伝えられておるけれども、そういう抽象論議ではない、実際今国民がどつちに行くことが、将来の日本の利害関係を決定するかという重大な関頭に立つておるということを知つておられるのか、どつちが実際日本に利益を與えると考えておられるか、こういう点についてひとつ首相の所見を伺いたいのでありますが、なおその際に……。
  147. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早君に御注意しますが、あなたの御質問の要点を明確にしていただきまして、意見の開陳はなるたけ簡單に願います。
  148. 風早八十二

    ○風早委員 問題は抽象議論ではないという意味で、私は問題の所在を明らかにするために言つておるわけなのです。今日この問題を判断する前提として中国が今どういうことになつて来ておるか、そういうふうなことを一体どの程度まで認識しておられるのか、これはわれわれから見て実際疑わしい。どうしてこういう政策が出て来るかということは疑わしい。そういう点もあわせてひとつ首相の御答弁を願いたいと思います。
  149. 吉田茂

    吉田国務大臣 しばしば繰返して申しますが、全面講和はできるならばけつこうなことである、中立その他も全面講和のうちに入つて来ればまことにけつこうだと思つておるということを、真劍に考えておることをお答えいたします。
  150. 風早八十二

    ○風早委員 さらに今の日本経済自立の問題に関しまして御質問いたします。(発言する者あり)今私の発言に対していろいろ妨害的なあれがありますが、今われわれの問題として講和問題がどれだけ重要な問題になつておるかということは、もう一つまだぴんと来ておらないというところにあると思う。グレイ報告というようなものによりましても、またそれらをめぐるいろいろな批判を見ましても、実際日本が今非常に押し詰められて、どつちへ行くかということは、非常に重大な問題であります。すでに今イギリスあたりでも最近の世界情勢を通じてアメリカとの間にいろいろ利害の対立関係を生じておりますが、これで再びイギリスがまたアメリカと同じようなテンポの軍拡に入るというようなことになればこれはせつかく今イギリスの地位が向上しようとしておるのが、また元のもくあみになつてしまう。同じような問題がやはり日本にも起つておる。日本におきましても、せつかく今日まで国民が待望した講和というものが、またまたいわゆる單独講和なるものによつて、完全に一国に隷属してしまうというような段階になりますと、もう日本は滅亡せざるを得ないとわれわれは非常に憂うるものでありまして、そういう点で今日の吉田首相のやられていることは、ことごとくに労働者や農民のみならず、日本の産業界を背負つておる連中に至るまでも、非常に反対していることは明らかであるということを、私は断言したいのであります。こういうことを知つておりながら、なおかつやられるということであれば……。
  151. 小坂善太郎

    小坂委員長 風早君討論でありませんから、質問をしていただきます。
  152. 風早八十二

    ○風早委員 この吉田首相の今までの政治というものは、完全にこれは国民を売るものであるということを私は結論せざるを得ないのであります。これをもつて一応私の質問を終ります。
  153. 小坂善太郎

    小坂委員長 林百郎君。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどのポ政令の問題で、これは非常に重要な問題ですから……。
  155. 小坂善太郎

    小坂委員長 林君一問に限られておりますから、どうぞ。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 吉田総理と岡崎官房長官と二人の言が食い違つているのであります。これは参議院においては、吉田総理はこう言つておるのであります。すべての方法をもつて、なるべく早く通過させるようにというのでポ政令を出した。すなわち必ずしもポ政令でなければならぬというのではない、ポ政令その他あらゆる措置によつて適当な方法ですみやかに通過させろというのが書簡の趣意であるということを、あなたは参議院で言われた。ところが岡崎官房長官は、衆議院においてはポ政令以外の選択的な余地はないのだ、これはポ政令で出すよりほかに道がないのだという点で食い違つておる。そこで岡崎官房長官に、私の方は、吉田総理の言と違うではないか、当の書簡をもらつた吉田総理は、必ずしもポ政令に限るということではないのだ、その他あらゆる方法によつてとにかくすみやかに通過させればいいのだと言つているじやないかと聞くと、岡崎官房長官は、私が衆議院で言つたのが正しい。吉田総理が参議院でそう言つておれば、それは取消すようにしますということで、二人の言葉が違つておるわけです。書簡の真意はどこにあるのか。あらゆる方法でいいというならば、十五日までに施行すればいいという期限があるのだから、この国会は八日までの会期があるのだから、当然国会にかけるべきだ。この点岡崎官房長官と総理の言葉は食い違つておる。これは非常に重要な問題であります。われわれの解釈するところによれば、政府はマ書簡のそでに隠れて、当然国会にかけるべきものを国会にかけずしてポ政令で出した。しかもその書簡は全然隠しておる。まるでやみ討ちにひとしい処置をしておる。この点二人の答弁の食い違いを、政府はどう責任をとるか明らかにしてもらいたい。
  157. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は官房長官の説明は食い違つておりません。現にあなたもおられたようだつたが、衆議院の運営委員会において、具体的に申せばポツダム政令を出せということだつたということをはつきり申しております。
  158. 小坂善太郎

    小坂委員長 午後は一時半より開会、質疑に入ることといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十七分開議
  159. 小坂善太郎

    小坂委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。
  160. 勝間田清一

    勝間田委員 議事進行について……。この前私は議事進行で、昭和二十六年度予算の大綱を至急提出して、十五箇月予算で審議することをお願いしておつた、委員長もこれを承認いたしておつたのでありますが、現在なおかつまだ出て参りません。しかも政府は四日ごろまでに上げたいという点で非常にお急ぎのようでありますが、この十箇月予算の大綱がわからないのでは、審議を続行することは実は不可能だと考えるのであります。(「ヒヤヒヤ」)一体いつごろ出るのか、それをお示し願いたい。先ほど来伺つたように、非常に審議を急いでおる関係上、いわゆるドツジ氏に提出した資料がいつ出るのか、その点をはつきり委員長の御答弁をいただきたい。
  161. 小坂善太郎

    小坂委員長 お答え申し上げます。先般あなたの議事進行に関する動議に関しましては、委員長も同感の意を表しまして、その後大蔵大臣にもこの点強く申し込んでおります。大蔵大臣から直接お答えいただく方がさらに明確であると思いますから、この際大蔵大臣の答弁を求めます。池田大蔵大臣
  162. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話の通りに、来年度予算と一体的に考えまして編成いたしたのでありますが、来年度予算につきまして、まだ折衝の余地が残つておりますので、発表の段階にはまだ至りません。しこうしてドツジ氏と私との資料のとりやり、話合いは国会へ出すことはごめんこうむりたいと考えます。
  163. 勝間田清一

    勝間田委員 まだ折衝過程であるから発表できないということでありますが、問題は問題として残したままの形で、現在当つているだけのできるだけの資料は、大綱だけは示せるものだと実は考えます。もう一度その点をお願いしたいと思います。
  164. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話申し上げてよい程度のものは財政演説で申し上げております。なおまたお話できる段階に至つたものにつきましては、時々お話申し上げたいと思います。
  165. 勝間田清一

    勝間田委員 予算の審議に重要なドツジ氏に提出した資料が、国会の予算の審議に提出ができないというのは、私は理解しかねるのであります。安本でもあるいは大蔵省でもあるいは日銀でも、それぞれ資料を提供して今まで折衝して来たわけであります。われわれはこの予算成立過程から見て、その資料は全面的に要求してしかるべきだと考えるのであります。それがここに資料が出ないということでありますならば、重大問題であると考えるのであります。国会軽視の傾向になるのではなかろうか。私はごく機密な面までも要求するつもりではありませんけれども、当然出していただけるものと考えます。
  166. 小坂善太郎

    小坂委員長 ちよつと誤解があるようでございますから、委員長から申し上げます。池田大蔵大臣はドツジ氏との折衝過程におけるその全部というふうに考え違いしているようでありますが、それについてお答えしたのだと思います。しかし委員長といたしまして要求してあるものは、この委員会に申し上げた通りの範囲で言つておりまして、それについては近々に出て来ると考えます。中曽根康弘君。
  167. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は主して財政経済にわたる問題につきまして、安本長官その他関係閣僚に御質問を申し上げます。  まず安本長官にお伺いいたしますが、午前中申し上げました通り日本は今政治的にも経済的にも重大な段階に至つております。つまりこれを経済的な観点からすると、今や世界経済はことしの四月から比べて非常な変化を来しておる。また日本国内を見ても、国際收支は著しく改善されておる、保有外貨はふえておる、特需も増大しておる。ところが一方においては、グレイ報告によつてもわかる通り講和は近いし、あるいはまたそれによつて援助資金の打切りというようなことすら伝えられておる。向うから言われる前に、このことは日本自体が考えて、着々整備しなければならない問題であります。しかるに一方国内においては、この間の米価によつてもわかるように、農業のパリテイーそのものは完全にくずれておる。また輸出入を見てみると、ローガン構想なるものはくずれてしまつて、世界はまつたく売手市場に転換しておる。協定貿易もまた行き詰まつておる。こういうように国の内外の形勢が、日本自立ということを中心に激変しつつあります。このときにあたつて、本年度補正予算を中心とする安本長官及び大蔵大臣見解を見るに、私はこれらの変化に対して大きな対策というものを認めることができない。ドツジ・ライン以後の新しい構想というものが、今や日本国民には示されなければならない段階であろうと思うのであります。これがほんとうの日本民族独立への着実な一歩であります。この点に関して、安本長官はいかなる方策で、いかなる方向に日本を持つて行くか、安本長官の政策をまず示していただきたいと思います。
  168. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えを申します。今お話のように、日本独立ということの要求の裏には、経済的の自立を要するということは同感であります。しかもこの自立に対しまして、従来得ておつたところの対日援助貸金なるものは、普通の形に行けば来々年これがはずされるやに聞いておりますので、政府としてはあらかじめその場に備えつつ、一応自立し得るように、二十八年を目途として、自立経済審議会等において計画を検討中であります。しかしお話のように急速にやれとおつしやつても、七十年来積み上げた資本が数年の戰争によつて根底から破壊消滅したので、なかなか困難であるということは中曽根君もお認めだと思います。ただ私どもとしては、二十八年を目標とし、その場合における日本の生活水準というものを適当な水準を維持しつつ、国際收支を来々年ごろにバランスを得さしめたい。それを中心といたしまして、各生産工業なりそれに必要なるところの設備の充実等を考えております。これにつきましてもいろいろ実情を見て、あるいは金融等の関係においてなかなか困難な事情でありますが、まだ検討中でありまして、ある程度目鼻がつきますれば、次の機会にでもお話ができる、こういうふうに考えております。大体において来年度の予算等にも一部を盛りつつ、できるものから着手して行きたいと考えております。
  169. 中曽根康弘

    中曽根委員 安本長官の答弁は、あほだら経みたいなことを言つているだけであつて、私は納得することはできないのであります。私が具体的にここで示しましたように、世界経済、客観的な情勢が変化しておる、あるいはローガン構想が国内でくずれておる、農業のパリテイーがすでにくずれていることは、この間あなた方がつくつた米価によつてもわかつておる。特需やあるいは内需や輸出というものか国内でかち合つておる。こういう中にあつて、輸出についてはどういう原則を今度新しく持つて来るか、あるいは国内の経済再建、拡大再生産にはどういう原則でやつて行くか、こういうあなたの具体的政策を聞いておるのです。私はそれらの点について伺いたいと思つておるのであります。
  170. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えしますが、わが国の経済自立に関する一つの根幹といたしましては、やはり貿易の振興であろうと思います。他の一つの根幹となるべきものは国内資源の総合開発であり、その中心をなすものは、貿易振興との関連において生産工業の復興拡充という面から行きまして、電源開発が一つの大きな柱になると考えます。しかして食糧の問題については、でき得る限り自給度を高める線に向つて、一つの案を盛つて行きたいと考えております。貿易の関係においては、なるほど前にローガン構想がありました当時の事情と今とはかわつていることは御指摘の通りであります。かつては輸入が超過して輸出がこれに伴わず、常にその差額というものは援助資金によつて埋められておつた。その形をいかにするかということが、経済自立に関する一つの目標でありましたが、朝鮮事変等の影響によつて、世界の経済かある程度変革してれるこの際において、日本にも影響がないわけではないのでありまして、御指摘のように今日はむしろ輸出が非常に増大し、特需と合せて非常にこの面が進んで、輸入が伴わないかつこうになつております。このままに推移すれば、結局ある程度において国内の商品等がだんだんなくなるということになつて、大きな問題であります。もつぱら今日においては、輸入というものを輸出に合せるべき各種の施策を講じつつ、輸出入のバランスを将来に向つてとりたい。しかし幸いにして今年の輸入も四月がピークでありましたが、八、九月以後は輸入がまただんだんと上昇しておりますので、常に輸出のうらはらになる原材料の輸入、原料の確保、この両面を合せて国際貸借の均衡を得せしむるように計画を立てることが一つの行き方であります。  もう一つは、今申しましたように、電源の開発がすべての生産工場の拡充に関してネツクである。現在の電力の供給量を相当量増すことについては、今計画しておりますが、これに対して三箇年にやろうとすれば、年々かなり大きな資金がいります。また鉄鋼業、石炭鉱業、繊維工業、食糧の問題において、それぞれ計画は一応進めております。これを最後につじつまを合すべき問題は金融に帰するものと考えますが、それらの点において最終的にまだきまつておりません。大体この間経済安定委員会において一応の構想は話しましたが、まだ結論に至つておりませんから、もう少し時期をおかし願いたいと思います。
  171. 中曽根康弘

    中曽根委員 安本長官はいろいろな問題に触れて答えられましたが、明確な自分政策というものをはつきり表わしておらない。今お答えなつたことは、どんな新聞でも常識的に書いてあることなんです。国民が知りたいことは、たとえば国内の問題にしても、輸出の問題とかあるいは特需の問題とか内需の問題をどういうふうに調整して行くか、たとえば資金的な措置の問題にしても、輸出入資金はどういうふうにバランスをとつて行くか、国内の設備拡張資金あるいは輸出入の運転資金、こういうものをいかにバランスをとつて行くか、そういう具体的な政策国民は知りたがつておる。そういう具体的な問題について要望したにもかかわらず、返事がありません。しからば私は今度は具体的に聞いて行きます。なるほど三箇年計画をやるということをお答えになつておりますが、しかし今度出て来た補正予算を見ても、政府は私が要望するような性格を持つ予算を盛られておるか。私に言わせれば、この予算は非常に事務的な無性格な予算だ。池田大蔵大臣新聞記者に、この予算の名前は生れてからつけるということを言つたそうですが、要する事務的に計数を合せたにすぎない。積極的にこういうことをやろうという抱負経綸を持つてつくつた予算ではない。おそらく昭和二十六年度予算もそうだろうと思う。たとえば現在の日本経済を見てすらも、御存じのようになるほど国際收支は改善して来ている。ドルはふえている。しかしドイツやあるいはイギリスあるいはフランスの場合と違つて日本国民経済の彈力性というものは非常に小さいのです。従つて需要が多くなつたり生産を増大させようとすれば、すぐ頭にぶつかつてしまう。資金が片一方で梗塞する、あるいは生産力に限界が来て、必ず頭打ちが来る。それを自由放任でやつて行くということになれば、国民経済が分断してしまつて、たとえば北九州は景気が非常によろしい、しかし東北の寒村では農民が飢え苦しんでいるということが出て来る。特需景気で綿布業者やあるいは裁縫業者というものが非常に喜んでおる、しかし一般の中小商工業者は滞納の差押えで困つておるということが出て来ておる。こういうような国民経済の分断、分裂というものが、すでにもう出て来ておるのであります。こういうような問題についてすら、私は吉田内閣政策というものを発見することはできない。たとえばこの問題について、一体どういう政策をもつて調整されるのか、安本長官に聞きたいと思うのである。
  172. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えします。中曽根君はすべての施策が予算のみに限られているような御質問をされるが、今度の予算の中におきましても、たとえば自立経済を推進するための貿易振興に役立つために、輸出銀行設置に関する法案と予算を盛ろうとしております。また輸出工葉のみならず、一般産業についても重要な役割を占めますが、中小企業に関する施策として見返り資金の一・四半期ごとに出す額を三億から九億にふやす。さらに法案について、信用保険制度を確立して、これらの生産増強等に努め、また輸出に資するために、保險融資に対する国家保険の制度を立てようとするのも一つの現われであります。また輸入の増加等に関しまして、すでに御承知の通りユーザンス問題もある程度、輸入の物品についてビルの到着後四箇月期限の手形を出し、今までの八分の金利を五分でやるような措置をとつたこともその一つであります。予算だけをごらんにならずに、資金あるいは輸入の手続問題についてもお目をとめていただきたい。すなわちかつてからネツクになつておつた、輸入を妨げておつたところの管理貿易の典型的な姿、——どこから何を幾らということまで一々許可をとつておるような姿を今度かえまして、これに対してはある程度の自動制をとつて、長期の先物契約をして、必要とするものを先に買いつないで行くというようなことなどは、当面の施策として自立経済達成の一歩々々の前進でありまして、あなたはすべての関係を一ぺんにやれと言うけれども、それは日本経済状態をよくお勉強の上御承知のことでありますから、これは考慮を願わなければなりません。
  173. 中曽根康弘

    中曽根委員 輸出銀行をつくるとか、ユーザンスをやるとかいう個々の点については、多少の実績は私も認めるにやぶさかではない。しかし、根本は国策がないということなんです。こま切れのことを少しずつやつて行つて、はたしてそれで国民が納得するか。われわれは独立に向つて前進しなくちやならない。そのときに、内閣はもつと大きな——三箇年計画、二箇年計画、あるいは今年の年次計画、そういう大きな国策を示して国民に努力の焦点を教えなければならぬ、そういうことを言つておる。それは安本長官の責任だ。たとえば一つの問題をあげれば電力九分割の問題がそうだ。横尾通産大臣がいるから、ここでお聞きいたしますが、あの電力九分割がほんとうに日本国民経済自立や拡大付生産に役立つ法案でありますか、いかがでありますか。
  174. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。私は役立つ法案と考えております。
  175. 中曽根康弘

    中曽根委員 役立つ法案だとおつしやいましたけれども、九つに分割されて地域差、料金の差がますます出て來る、あるいはカーレントの差とかで、持つているものから閉め出されるということが出て来る。こういうような現象が着々出て来ます。それで、はたして今後の拡大再生産ということに役立ちますか。
  176. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 分割のことは、これは再編成をせよと命ぜられておりますからいたしかたないのであります。また小さく九分割したからといつて、能率がしかるべく低下するものとは考えません。また流れその他に関しましても、今後の施策のいかんによつては、私は九分割案をそのまま実施しても、決して財界、産業界に迷惑にならぬように推進し得るもとと考えます。
  177. 中曽根康弘

    中曽根委員 たとえば九州地帶を考えてみれば、大牟田には電気化学工業がある、延岡には肥料工場がある。九分割されれば、必ず九州の電力料金は上る。それはあなたも認めるでしよう。上つた場合に、はたして増産が阻害されないか、この問題はどうです。
  178. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 九州のことでお話であります。私も九州の者でありますからよく存じております。地域差はある間は現状のままに置くことにいたしております。御存じ通り九州は日向、阿蘇地帶が一番水力電源が多いのであります。北部にはほとんど水力電源はないと言つてもさしつかえないのでありますが、中部から北九州にまで持つて行きまする送電線路というものも、大した距離ではないのでありまして、電気のライン・ドロツプも大した差はないと考えます。だからして御心配のようなことは、現在においてはないと思います。
  179. 中曽根康弘

    中曽根委員 電気料金その他の問題は公益事業委員会できめることになつておりまするが、私の観測では必ず電気料金は上ると見ておる。あなたはどうですか。
  180. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 私は、水力電気をもう少し開発いたしますならば、さほど上らぬでもよかろうと思います。
  181. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は開発してからの話を言つているのじやない。分割した直後の話を言つている。どうです。
  182. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 分割した直後は、ある一定期間は電気料金は上げないことになつております。
  183. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからばどのくらいの期間電気料金を上げないことにきめてあるのですか。
  184. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 私は五箇年と覚えております。
  185. 中曽根康弘

    中曽根委員 五箇年に間違いありませんか。
  186. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 私は間違いないと思います。
  187. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば五箇年間に、今の地域差でほかの方の価格の上るのをカバーする程度に九州地帶においては電源の開発が低廉にできますか。
  188. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 現在の状態ではできると思います。
  189. 中曽根康弘

    中曽根委員 とんでもない話だ。九州地帶というのは、あなたが御存じのように電力の開発代金が非常に高い。中部その他に比べて電力開発の費用が高いのです。火力も高い上に、さらに開発代金が高いから、今までの方法をもつてやつたら、なお高くなります。どうして安くなりますか。
  190. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 地域差は水力あるいは火力からとりまする金額を按分しておりますので、現在の電気料金は地域差はかわらないで行けると思います。
  191. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の横尾さんの答弁は、どうもあいまいではつきりしないのですが、前からの開発その他の問題を、もう少し統一してはつきりわかるように言つていただきたい。
  192. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 現在の仕組みにおきましては、水力発電の出力一キロワツトに対して二千五百円だと思いますが、これを集めまして、地域差の生ずるものをこれによつて調整することになつておりますので、地域差は五年間はかわらぬと思います。
  193. 中曽根康弘

    中曽根委員 それでは五年間それでずつと調整して行くという御方針ですか。
  194. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 あとは公益事業委員会できめるのでありますが、現在の段階においては、まずそのままで行けると思います。
  195. 中曽根康弘

    中曽根委員 今答えておられるその現在の段階というのは、いつまでかというのは、いつまでかということを聞いているのです。そういう問題がはつきりしなければ、九州の者だつて、北海道の者だつて何もできやしない。——私は大臣の答弁を要求しております。政府委員の答弁を要求しておるのではありません。
  196. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 五箇年間はそれで行くことになつております。
  197. 中曽根康弘

    中曽根委員 その点はこれくらいでやめておきます。しからば当面の問題として、御存じのように、日本産業構造というものは、昭和十二年以来時体制に入つて、工業立地というものを考えないで方々に工場ができた。ところが今度九分割がやられるということになると、産業立地、工業立地、価格の点が出て来ます。ところが電力を持つている地帯では、自分のところに多く供給しよう、こういうことをまず考えるに違いない。従つてかりにいろいろな経済的な協定をやるにしても緊急停電をやるということになれば、九州はとめてしまつて、おれの方を確保しようというのが地元の人情だ。そういうことがひんぴんとして出て来る。そういうことがこれから出て来た場合に、はたして九州の方で、ロスやコスト高が出て来やしないか。全国的にこういう現象が起きて来やしませんか。
  198. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 そのことは公益事業委員会で嚴粛に、公平に実施するものと思います。
  199. 中曽根康弘

    中曽根委員 それが公益事業委員会にまかせられるかという問題です。実際の運用なんです。法律なんかはただ見ばえのよいものをつくるにきまつている。しかし貨車まわしの問題だつてそうじやありませんか。コミツシヨンがなければ入つて来ない。いわんや電力の供給という問題になれば、あらゆる問題が起るだろう。そうすれば当然自分の地元に確保するということが起きて来て、ほかの地帶に対しては薄くなる。この重要なる九州地帯が、緊急停電なんかで相当そこにロスが起つて来る。これは北海道にも起つて来る。あらゆる面でこのロスというものは、日本の産業経済の復興を非常に妨げます。当面の問題としてこのことはどうでしようか。
  200. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 現在日発が管理しておりましても、現在の状態においてやつておりますから、現在より悪くなることはないと私は考えております。
  201. 中曽根康弘

    中曽根委員 日発は全的を一元的に一応統制的にやることになつていてさえこれです。いわんや、九つにわけるということになると、どういうことになるのだ。話が逆だ。
  202. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 それゆえに公益専業委員会を設けて、現在日発がやつておることと同じようなことをやらせるつもりであります。
  203. 中曽根康弘

    中曽根委員 その公益事業委員会が問題なんだ。さつきも言う通り、問題はその運用なんだ。だから九つにわけるよりも、五つにわけた方がいいし、あるいは一つにしたらもつといい。問題はそこにある。横尾さんに私がお伺いしているのは、日本が拡大再生産で出て行くのに、九つにわけるのがよろしいか、五つにわけるのがよろしいか。どうですか、あなたは商売人だから、その辺はよく知つておるでしよう。
  204. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 九つにわけても、五つにわけても先刻お言いになりましたような、公益事業委員会でできるかできないかということは、同じケースだと思います。私は九つにわけることがいいと思つておるわけであります。
  205. 中曽根康弘

    中曽根委員 九つと五つにわけるのは、程度の問題だけれども、ともかく九つにわけた場合は、より弊害が大きいでしよう。のみならず、ポツダム政令によれば、復元の問題はどうなつておるか。復元の問題は触れていないようですが……。
  206. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 復元の問題は、書簡に付せられた法令の中に書いてあります。復元はせぬことになつております。
  207. 中曽根康弘

    中曽根委員 それから問題はまだある。公共団体の経営を認めるか認めないかという問題、この点はどうですか。
  208. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 これも認められておりません。
  209. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一つ大きな問題は、資産の承継の問題です。九つにわけられた場合には、必ず財産争いが出て来る。この問題は公益事業委員会がやることになつておるけれども、公益事業委員会だけにはたしてまかしてよろしい問題でしようか。これはどう思いますか。
  210. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 公益事業委員には、相当な、信頼すべき方々をお願いすることにしております。
  211. 中曽根康弘

    中曽根委員 松永機関が信頼できますか。
  212. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 私は松永機関を信頼すると申しておりません。公益事業委員会がやつてさしつかえないものと思つております。
  213. 中曽根康弘

    中曽根委員 この問題にかかつていると時間がありませんから、大きな問題に入りまして、横尾さんにはあとでまたゆつくりお尋ねいたします。  さてそこで国民経済の拡大発展のための計画経済でありますが、先ほど周東安本長官は、三箇年計画をつくつて推進すると言つておりますが、それはまだ試案の程度じやないかと思うのです。一体政府ははたして三箇年計画なら三箇年計画、二箇年計画なら二箇年計画というものをいつまでにつくつて、そうしていつからそれを実行して行くのですか。たとえばスターリンがやつた五箇年計画であるとか、フランスがやつたモネー・プラン、そういう具体的な計画目標をつくつて着々実施して行くことがぜひ必要です。一体いつからつくつていつから出発しますか。その計画の構想は一体どういうものですか。何年後には国民生活の水準がどのくらいになる、生産はどういうことになる、国民所得はどれくらいになる。そのためには資金がどれくらいになるか、具体的な構想を承りたいと思います。
  214. 周東英雄

    ○周東国務大臣 まだ最終の決定には至つておりません。その点ははつきり申し上げます。これは各般の事情がかわつて参りましたので、決定に至つておりませんが、さきほど申し上げましたように、一応二十六、二十七、二十八の三箇年を目標として、輸出入関係を、価格の変動がありますからこれはかわると思いますが、九月ごろの価格を基準として考えた場合に、二十八年ごろに十五、六億の国際貿易関係考え、そこに貿易外收入を一億くらい考えて、その国際收支のバランスをとるということにして行つて、一つの自立態勢かとれるのじやないか、これも一つの目標であります。この際の考え方としては、二十八年において大体昭和七—十一年を基本として、国民生活の水準を九〇%、人口を大体八千八百万という計画で考えたのでありますが、これはもちろん今まで伝えられておるような援助資金等は、まだ二箇年あるものと前提しての問題であります。従いまして余談でありますが、あなたが最初お尋ねになりましたグレイの報告なんかについては、まだ公式の内容もはつきりわかりませんし、アメリカでそれをいかに取扱うかということもきまつておりませんのですが、新聞に現われているところを見ましても、朝鮮事変等による日本の好景気が続いて、非常に景気がいいから、来年くらいからは、おそらく戰前のわずか低いところで国民生活水準が維持できるであろうということが書いてありまして、それによつて援助はよほど愼重にということがありましたが、同時にそのことは日本の輸出市場の確保、輸出に必要な原材料の輸入の確保が日本にできて、輸出生産工場の生産が上るということを前提としなければならぬので、もし何らかの事情によつてこれが達成せられないとするならば、そのままでは自立は困難であろうということも書いてありますので、一応私どもは来々年を目標として考えております。ところが最近におけるいろいろな事情のもとにおきまして、今言うような目標のもとに審議会で検討しておりますが、一例をあげれば、電源についても、たとえば現在水力が六百万キロワツト・アワー、火力が百八十万キロワツト・アワー、これを大体二、三年後において水力、火力合せて二百六十万キロを増加するといたしましても——多少ほかにまだあるようでありますが、かなり大きな資金を必要とする状況であります。年々五百億ないし六百億は必要な状況になつておる。また鉄の問題にしても、そのときの国民経済に対する処置といたしまして、あるいは四百万トン計画、三百六十万トン計画とありますが、大体において三百六十万トンないし四百万トンを基準にいたしたところで、やはり鉄鉱石の問題、石炭の関係があつて、これもかなり大きな問題が伏在しておるようです。しかしてまた食糧の自給度の向上に関しての目標、千二百万石増收計画に対しましても、土地改良その他について年年千八百億を必要とするという状態において、一応計画を立てつつ、しかもそれに対する必要な資金、原材料というものを考えつつ、場合によつてはなおその期間を延ばさなければならぬということを考えております。これはいかに机上のつじつまが合いましても、現実に成立たぬことは成立つとは思つていません。各般の状態を考えつつ、適当な時期及び方法考えたいと思いまして、ただいま審議会の部会において愼重に研究を進めております。それができ上りますれば、次の国会までには十分御説明できるかと考えております。
  215. 中曽根康弘

    中曽根委員 安本長官は非常に楽観的なことを言つておりますが、私は客観状態というものはそんなに楽観できない状態にあるだろうと思うのであります。たとえば、グレイの問題は單なる勧告であるけれども、しかし勧告以上に、日本人自体としてはこれを重要視しなければならない。従つてあの勧告を見た瞬間に、日本人自体としてはこれに即応するような国内態勢なり計画を漸次しなければならぬと思うのです。たとえば安本長官にお尋ねいたしますが、来年六月あるいは来年一ぱいくらいまでの間に援助資金が打切られたら、その後の日本の資本蓄積、それは一体どういうふうにしてやつて行きますか、そういうことに対する自分の構想なりあるいは計画なりというものは進めておりますか。
  216. 周東英雄

    ○周東国務大臣 中曽根君は非常に私が楽観しているというお話ですが、私は今の答弁においては、各般の事情は、いろいろな事実において、二、三年の間になかなか自立に持つて行くことは困難な見通しであるということを申し上げた。従つてあなたはグレイ勧告について、あるいは来年打切られるかもしれない、その場合に立てるべきだというお話ですが、これは来年打切られたら、すぐに自給自立がなし得るとは私は考えない。それについてはいかにするかという問題が当然起ると私どもは考えて、そういう場合においては、今までの援助資金の形でなくて、外資の導入をする、あるいはクレジツト設定を、願わなければならぬと思います。同時に、これはその際にあなたはおそらくお尋ねがあると思うが、そういう場合において、なおかつ戰前の九〇%の生活水準が維持できるかどうかということをわれわれは研究しなければならない。私どもはおそらくそういう場合において、いやおうなしにグレイの関係援助資金が打切られるとするならば、生活水準の目標は下げなければならぬ。そうしたときに、あなた方からは、それはけしからぬ、もつと上げてやれということの質問が出ると思う。私は今日の問題は、ほんとうに心を割つて、こういう條件ができなければ、どうするかということを御相談したい。御批判だけでは問題は解決しない。私どもはそういう場合における資本の累積の問題については、国内において各種の貯金がふえ、預金がふえて行かなければならぬ、また国家の経済においても、国家の財政における資本の蓄積を考えるか、個人企業において蓄積を考えるか、いずれにしても、ある程度われわれは耐乏しつつ、失われた資本の蓄積に、自己資本の充実に努めて行くことが一つの行き方だと思いさす。これは一つの仮説であります。そういう場合に対して、私ども資本の蓄積方法なり生産の問題をいかにすべきかということは考えておりますけれども、今いいかげんのお話を申し上げたくないから申し上げません。
  217. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は何も党利党略で言つているのじやない。安本の方でそういう計画なり作業を進めていない。それをわれわれの目の前に見せていない。だからわれわれはそれを心配して、忠告している。そういうことを言うなら、自分たちはこういう計画を持つている、これを批判してください、そういう態度に先に出るべきじやないか。そういう種を出さないで、ただやつているやつていると言つたつて、こつちは安心なんかできやしない。この問題はこの程度にいたしまして、先ほど申し上げましたように、日本国民経済というものは、独立へ向つて大きな礎石を打ち込まなくちやならぬという段階です。そこで今どうしても必要なことは、いわゆる池田、ドツジ・ラインというものをたたきこわす以外にはない。池田、ドツジ・ラインと言うと、池田さんをほめたようだが、池田的ドツジ・ラインであります。現在の段階になれば、何といつても鶏に卵を産ませるには、えさをやらなければ産みやしない。池田さんのやり方は、えさをやらないで卵を産め、卵を産めというやり方だ、それでは卵は産まない。現在いかなる政策の修正が行われなければならないかといえば、私の考えでは、超均衡予算の修正が第一点であります。第二点は、政府の余裕金の放出であります。見返り資金を中心にする放出であります。第三番目は、通貨量を機械的に抑制しないで、産業活動に応じて伸ばしてやるということであります。第四番目は、資本市場を育成して、資本蓄積を最も急務としてはかるということであります。その次には輸出入に関する特段の措置、特に輸入に関する特段の措置を政府がやらなければならないということであります。それから最後に、企業の合理化、近代化、これに政府が全力を振つて邁進しなければならないということであります。こういうような修正が現在の政府政策に加えられなければならないと思うのでありまするが、私が拜見するところによれば、今度の補正予算においても、あるいは来年度の予算においても、あるいは政府財政政策の中においても、われわれは発見することができないのであります。たとえば依然としてインベントリー・フアイナンスをやる、あるいは債務償還をことしもやると池田大蔵大臣言つておる。デイスインフレ政策ということをおやりになると言つておられますが、デイスインフレということを言うためには、インフレ的要因というものが出て来るのを消すのがデイスインフレですが、しからばインフレ的要因というものが、国内的事情から日本に今発生しているかといえば、日本の国内的事情から発生していないでしよう。池田大蔵大臣は本会議の演説でも、物価の値上りは国外の事情からの値上りである、こういうことをはつきり言われておる。こういう点からすれば、私は輸入を増進すれば、インフレの防止ということはできる。にもかかわらずインベントリー・フアイナンスを多額にやるとか、国債償還を依然としてやるということは、依然としてえさをやらないで卵を産めという政策を継続しているにほかならないのであります。こういう点について、産業自体を心配している安本長官は、いかにお考えになりますか。
  218. 周東英雄

    ○周東国務大臣 中曽根君の御心配には、まことに敬意を表しますが、私ども考えておるところにおきましては、決して産業の振興を妨げるような予算の編成方針ではないと考えます。私どもの考えなければならぬことは、朝鮮事変による好景気ということは、確かに日本の産業の回復に対してはよい薬であつた。よい結果は一面にもたらしていると思います。しかしこの結果がいつまで続くかということは、お互いに政治家として考えなければならないことでありまして、今景気がいい、これによつてドルの内地における保有量が高まるということでこれは大きくいろいろな方面に計画なさることは、資金を散布されることは考えなければならぬのでありまして、この好景気の成果をじつと保有しつつ、将来に備えるために、このときにこそ産業の合理化にしかるべくやらなければならぬ。これはあなたの御指摘の通りであります。従つて政府といたしましては見返り資金等について今大蔵大臣が非常に苦心しておられるのでありますが、合理化資金というものを相当に出す。しこうして日本の老朽化した、戰争中にこわれた機械設備の更新、能率化ということに対して、金を出したいということを考えております。また証券市場育成等の問題につきましては、資本蓄積の問題についてこれは十分に考えなければならぬ点でありまして、一面におきまして、私ども研究しておりますものは、一つの投資といたしましてやはり外資導入に関連いたしまして、もとからある、新規増発株券にあらずして既発の株券等に対しても、もう少し外資を導入し得るような道を開くとは、証券価格維持のために必要でありましようし、またいろいろの従来までの関係で証券市場というものは、清算取引が認められておらない、実物市場だけで、しかもそれが非常に制限された範囲内で行われておる点について、何とかして形を直したいと思つております。しかしこれはいろいろとインフレの要因になるということでありまして研究中であります。何とかして車の両輪のように株式市場、清算市場を建て直させることによつて、発券市場並びに流通市場に対する改革ができるのではないかということも考えております。これはあなたの御指摘の通りに、証券投資によつて資本の蓄積をするということに対してのその方法ではないかと考えております。しこうして輸入に関して主として力を注げとおつしやいますが、これは輸入に関してその点は先ほどちよつと一部触れましたあらゆる点において処置をつけております。どんどんと輸入が増進して参ることによつて大蔵大臣も同意見でありますが、輸出入がバランスすることによつて、国内のものを備えることによつて、インフレを防ぎたいということはあなたと同感であつて、その処置をつけております。しこうして輸出の銀行ができるということになつて、輸出のバランスシートというものについては研究するなり、その輸出をするに必要な原材料を入れるということは、おのずから関連的に金融ができるもりと考えます。こういうものを総合してごらん願いたいと思います。
  219. 中曽根康弘

    中曽根委員 私が今申し上げましたことに関して大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
  220. 池田勇人

    ○池田国務大臣 えさをやらずに卵を産め、これが池田財政だと言われましたが、決してそうではございません。敗戰後三年間、インフレをやつて来たあとを受けて、それはなかなかの苦労をしたのでありますが、最近のわが国の財政経済事情をごらんになりましたならば、えさもやり、卵も産ましておる、こうお考えになると思うのであります。先ほどの中曽根君のおつしやいました項目は、私が財政演説で言つたのと同じでございます。ただ違うのは債務償還を今年度やる、これは皆様の御審議を得て、本年度債務償還をやることに国会の決議によつてつておるのでありますから、なまじつかに大蔵大臣はかえません。国会尊重の精神のはつきりした点であります。
  221. 中曽根康弘

    中曽根委員 大蔵大臣はインフレ的要因、物価の上昇というものは外国的な影響から来ておるので、従つて輸入を増進することはインフレにはならない、こういうような構想を本会議で述べられた。私はこれにまつたく同感なのです。しからば国内的に依然としてインベントリー・フアイナンスをやるとか、国債償還をそのままやるというのはどういうことですか。この際は輸入増進を一本やりにやつて、国内的の問題についてはそう戰々きようきようとして恐れる必要のない状態になつておる。一体どこにインフレ的要因がありますか。今までのインフレ的要因は、たとえば給料が上るとか、補給金を撤廃するとか、財政支出が超過になるとか、そういう復金的存在があつたということが一番大きな問題である。今はそういうものは一つもありません。むしろ輸出を増進して国民経済はあなたの多少の努力によつて着々と収まりつつある。そういうときにどこにインフレ的要因がありますか。あなたの指摘をお願いいたしたいと思います。
  222. 池田勇人

    ○池田国務大臣 物事は全般のことを頭に入れて考えなければなりません。今問題は、日本の物価騰貴は輸入を促進すればしない。こう考えるのは一部であります。日本経済は世界の経済につながつておるのでありまして、昔の時代とは違います。従いまして国際物価の値上りによりまする物価の値上りもありましよう、また輸入原材料の不足によりまする値上りもありましよう。われわれは輸入原材料の不足によりまする値上りは、これはこわいから、早く輸入してそれをなくそう。しかし国際物価の値上りによる分は、これは私の力ではなかなかむずかしい。そこで国際物価の値上りのところまで行かせずに、できるだけ下で押えよう。それは一つの要因である輸入を促進して、輸入の不足から来る値上りを押える財政経済政策によつて、通貨の増発をできるだけ防ぎ、インフレの要因をとめつつ徐々に自立に持つて行こうというのが私の考え方であります。あなたはインベントリー・フアイナンスについてどうこう言われますが、これをやらなかつたならばそれだけインフレの要因になるとわれわれは考えております。減税は一つのインフレ要因とも言い得るのであります。われわれがインフレ要因であるところの減税をあえてやる場合において、片一方のインベントリー・フアイナンスのために、一般会計から繰入れましてインフレ要因を押えるということは、当然のやり方であると思うのであります。
  223. 中曽根康弘

    中曽根委員 なるほど減税ということは多少インフレ的要因になるでしよう。それによつて総牧人が向上することが出て来る。しかしそれ以上に生産が増大している。生産の増大量はあなたの減税をカバーして余りあるものであります。
  224. 池田勇人

    ○池田国務大臣 生産の増強があります。また国民生活の安定も必要でありますので、片一方では減税をしながら蓄積資本をふやし、片一方では国民生活の現状を見まして、なるべく負担を安くし、相まつて一日も早く正常なる経済に持つて行こうとしているのであります。
  225. 中曽根康弘

    中曽根委員 私が言うのは生産も増大しておるし、物資もふえておりますから、昔のようなインフレ的要因はもうないじやないか。そういうことを言つておるのであります。あなたの答弁を聞くと、依然としてドツジ氏の稚兒さんのようなことを言つておられる。私はあなたのような見解については同感の意を表することはできません。しかしこの問題は時間がありませんからこの程度にいたします。  もう一つ問題なのは、日本の価格水準というものをどこへ安定させるかという問題であります。今度の予算を見てみると、依然として安定九割、復興一割、こういう萎縮予算であります。濱口内閣以上の緊縮予算である。こういうような萎縮予算をやつている反面、また米価については国際水準にさや寄せすると言つて五千五百円に上げると言つている。一方においては一般物資の値段は公認価格であるとか、あるいは自粛価格であるとか、あるいは勧告価格であるとかいろいろ雑多な価格が出て来ている。あるいは人絹については物価庁のやつたマル公的思想で統制が行われようとしている。一体日本の価格水準というものを国際的にも国内的にもどの水準に安定しようとしているか。これが私は現在経済界が非常に不安を感じている大きな問題であると思う。たとえば米価を国際水準に上げて行くというならば、労賃も国際的水準に上げて行くのか、こういう問題がすぐ出て来る。安本長官はどこへ一体日本の価格水準を安定させようとするのであるか。
  226. 周東英雄

    ○周東国務大臣 将来の価格水準をどこへ持つて行くかというお尋ねのようでありますが、この点につきましてはいろいろな要因が私はあると思う。大体価格につきましては、御承知のように昨年来とり来つた政府の施策が効を奏して、大体ことしの五、六月ころまでは下降一本調子であります。しこうして大体において七、八月のときの何倍ですか、数字は忘れましたが、大体において安定の形をとつて来ております。そこで朝鮮事変が起きたので、やや国際的な影響を受けましたから、少し上りぎみでありますが、それは大体にこの十月現在において生産財において一三%、消費財において約五六%くらいの値上であります。将来に向つてある程度原材料の外国に依存しておるものにつきましては、やはり国際価格によつてある程度影響を受けることはあります。その関係においてある程価格というものを正常な形に直す面において、麦と米との関係においては全体の米麦の比率というものがあるわけであります。これがあまりにも麦が生活に最も必要な米の価格に近づいて、九〇ないし九五に今日なつているような関係にあるのであります。こういう面において米の価格というものをある程度上げつつ、麦は下げるということが一つ出て来ております。しかしその際に——あなたが国際価格にさや寄せするのではないかと言われるのは、今補給金の関係におきましては、ある程度日本の米の価格を比率をとつて近寄せたということはありますけれども、よつてつて米の価格が国際価格にただちにさや寄せしつつあるということはお考え直し願いたいと思います。
  227. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば本年度あるいは来年度の予算の編成において、日本の価格水準というものを、どの水準に安定させようという意図で編成しておりますか。
  228. 周東英雄

    ○周東国務大臣 物価の水準をどの水準に置くかということにつきましては、私もまだはつきりとどの水準ということを申し上げる時期でないと思う。しかし大体予算の編成は九月ごろの価格を中心として考えてあると思います。
  229. 中曽根康弘

    中曽根委員 九月ごろの基準を中心にして、昭和二十六年度はことしに対してどういう見当になりますか。
  230. 周東英雄

    ○周東国務大臣 大体九月ごろの米価にいたしますと、価格の平均から見ますと、ことしの予算に組んだものは百八十五億、来年の関係におきまして買入れ価格は百九十五億くらいになるかと思いますが、その間における開きを見つつ予算は組んで参ります。
  231. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は米の問題ばかりを言つておるのではない。来年度の価格水準がどれくらいになるかということを言つておるのです。
  232. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これは大体現在のような国際情勢でありますので、来年度はどのくらいになるかということは、ただいま申し上げるのは避けたいと思います。
  233. 中曽根康弘

    中曽根委員 それがわからぬでどうして予算編成ができますか。予算編成をやるときには必ず基準というものがなければならぬ。
  234. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これは私が先ほどちよつと触れておいたのですが、しかし来年一ぱいにおいて価格がどう変化するかということがまだ残つておると思います。大体生産財において一三%くらい、消費財において約五%ないし六%くらいであります。
  235. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからばその水準で来年度の予算を編成するとして、今度は来年度の財政の規模というものを私は知りたいと思うのでありますが、先ほど勝間田君からもちよつと話があつたように、補正予算を審議する上に重大な関連を持つておる問題であります。来年度、昭和二十六年度の予算の規模は一体どれくらいになるか。その中で終戦処理費の大きき、公共事業費の大きさ、社会保障費の大きさ、価格調整費の大きさ、平衡交付金の大きさあるいは債務償還をやるならばその大きさ、これらは大体見当でどのくらいの大きさになるか、大蔵大臣でも安本長官でもけつこうですから、大体の輪郭をわれわれに示していただきたい。
  236. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいまお話になつた問題は今検討中でございまして、はつきり申し上げられませんが、このうちで一番はつきり申し上げられることは、来年度は一般会計から債務償還はしないということであります。
  237. 中曽根康弘

    中曽根委員 債務償還をしないということは、私は大蔵大臣から二、三回聞いておりますので、それはよく知つております。そのほかに聞きたいのは、終戦処理費あるいは公共事業費あるいは価格調整費あるいは平衡交付金、こういうものの大体のアウト・ラインを知りたいのです。私は何十何億円ということは言いません。大体の来年度の骨格を知りたい、大蔵大臣の御答弁を私はお願いいたします。
  238. 池田勇人

    ○池田国務大臣 終戦処理費につきましては、今年度千九十一億円ですか、これが少し減つて来ることを期待いたしまして、今話をいたしております。次に価格調整費は、御承知の通り財政演説で申し上げましたように、国内物資の調整金は出しません。主食の輸入だけでございます。従いまして、補正予算によりまして六百四十億になつたのが、半分以下になりまして三百億円以下になるという見込みで計算をいたしております。それから平衡交付金につきましては、御審議願つております千八十億円よりふやしたいというので、今努力しております。公共事業費も、これまた折衝中でございまして、それは千幾らというところで御了承願いたいと思います。
  239. 中曽根康弘

    中曽根委員 公共事業費の大きさと社会保障費の大きさというものは、これは大きな問題なので、もう少し明確に御答弁願いたいと思います。
  240. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この公共事業費の問題は、見返り資金からの公共事業費の問題がございまして、全体を頭に入れて今交渉をしておりますが、数字は申し上げられません。千億円は越えますけれども、それ以上の分は申し上げられないのであります。社会保障費の問題と申しますと、社会保障費の分は各省予算に盛つてあるのでありますが、主として厚生省における予算は、本年度の予算よりも大体百億円程度ふえることになると思つております。これも数字は異動がありますが、厚生省予算は社会保障的の考え方を織り込みますために、百億円程度の増額になります。また文教費の問題も、ほかの省よりもよほど文教予算もふえるように、この二つに私は力を入れておる次第であります。
  241. 中曽根康弘

    中曽根委員 それで大体規模がわかりましたが、そうすると、ことしよりも財政の規模は縮小するというふうに考えてさしつかえないか。どの程度財政の規模が縮小するのですか。
  242. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そこが問題でございまして、補正予算後におきます今年度の六千六百四十五億円でありましたか、これよりもふやすまい。経済の規模は拡大いたします。日本の經済は規模が拡大いたしますが、財政の規模、一般会計の規模は拡大させないというのが私の信條でございます。ことしの補正予算後の六千六百四十何億円よりも下まわるようにというので今やつております。片一方では公共事業費その他の歳出をふやしながら、片一方では財政規模をふやさないというのが私の信條であります。
  243. 中曽根康弘

    中曽根委員 どの程度縮小するか、大体の見通しを伺いたい。
  244. 池田勇人

    ○池田国務大臣 規模を縮小しようとして努力しておるのでありますから、この辺で御想像願います。
  245. 中曽根康弘

    中曽根委員 私がそれを聞きたいのは、来年度の資本蓄積に関係するからであります。従つてどの程度縮小するかを、ぜひアウト・ラインでいいのでありますから示していただきたいと思います。
  246. 池田勇人

    ○池田国務大臣 いろいろなアンノウン・フアクターがございますので、今ここで申し上げられません。
  247. 中曽根康弘

    中曽根委員 まあ話せないというのですからやむを得ない、私は追究しません。しからば当面の問題として問題になるのは、年末金融の問題であります。先ほども申し上げましたように、日本銀行券の発行というものを抑圧するなということを申し上げる。大蔵大臣は大体四千百億程度まではやむを得ないだろうということをおつしやつておつた。ところが伝えるところによると、通貨発行審議会その他のところにおいては三千九百億円という話があるのであるが、一体正確にどの程度に年末を押えるつもりでありますか。
  248. 池田勇人

    ○池田国務大臣 あなたのお説の通りに通貨をむりに押えるという気持はございません。従いまして四千百億円ぐらいはやむを得ないだろう、ただ通貨発行限度は三千九百億円ぐらいが適当であろうというので、発行審議会できまつたのであります。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕  私は今の状況を見ますと、三千九百億円を突破いたしまして、四千百億円あるいは四千百五十億円ぐらいに行くのではないか、しかしこれは収縮の状況を考えなければいけませんが、その程度行つても何ら心配はいらない、今のところは発行高が三千四百九十三億、昨年末が三千五百五十三億、まあ三千五百億近くまで行つておるわけであります。今から一箇月間には私は五、六百億の分はふえると思います。しかしそれにいたしましても、政府の支拂いの状況、それから租税の収入の状況その他によつて、よほどかわつて参りますから御了承願います。
  249. 中曽根康弘

    中曽根委員 われわれが計算したところによると、これは十月を基準にして計算したのでありますが、外為資金からの放出二百八十億、こういうものを加えると少くとも四千三百億以上に伸びる、こういうことになる。ところが三千九百億という発行審議会の決定があると、どうしてもこれに牽制される。従つて伸びが押えられるということになる危險性があると思うのであります。そうなると結局これは貸出しが締められる、それは結局中小企業に響いて行くことになるだろうと思う。中小企業の年末金融に関して、新聞に商工中金の資金を検討してみるとかなんとかいうことが出ておりますけれども、結局最後に年末に行くと、いつもしりがやつて来るのは中小企業です。この中小企業の年末の資金についてはどういう手当を講ずるか、大蔵大臣方針を承りたい。
  250. 池田勇人

    ○池田国務大臣 通貨発行限度三千九百億円ときめましたからといつて、それ以上は押えるという気は毛頭ありません。私からそれ以上に、二百五十億ぐらいは出るかもわからないと言つておりますから、これは発行を押えるためのあれではないのであります。年末金融につきましては、日本銀行の政策委員会で特段の措置をとつておるようであります。しかもまたわれわれは今御審議を願つております中小企業に対する保険制度を早く決定願いまして、年末金融にも充てたい、その他情勢によりまして万般の措置をとる考えであります。
  251. 中曽根康弘

    中曽根委員 預金部資金の引揚げや政府預託金の引揚げは今年もやりますか、やりませんか。
  252. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知の通り政府資金を百五十億ですか、預金部資金を百億出しておりますが、これは政府の他の金融施策とうらはらになることとして考えなければいかぬと考えております。昨年の暮に預金部から百億円出したのでありますが、これは引揚げよう、引揚げようと思つておりましたが、今まで第一・四半期、第二・四半期は、相当引揚げ超過で、五百九十億の引揚げ超過になつておりますから、今までは引揚げられなかつた。しかし第三・四半期におきまして、相当散布超過になります。しかし今の状態ではまだ引揚げるまでには至つておりません。そこで預金部資金、見返り資金等の運用等を考え合せまして、適当な時期に適当な金額を引揚げるつもりであります。年内としては私はただいまのところ引揚げる気持はありません。
  253. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に資本蓄積の問題についてお伺いいたしますが、この問題は先ほど申し上げましたように、一番大きな問題だと思うのであります。そこでその前の話といたしまして、一体今年の政府の資金計画というものは順調に行つているかどうか、われわれが調べたところによると、預金の伸びが思つたより悪い。資本事情も非常に不良である。しかも輸出入資金が非常に厖大に必要になつておる。従つて政府が当初つくつた資金計画というものが厖大にひびが入つて来て、修正を要すると思うのでありますが、一体現在いかなる状態になつておりますか、質問いたします。
  254. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知の通り予算編成のときにつくりました資金計画というものは、これは中曽根君御存じ通りに狂うものであります。しかし狂いましても、金融全体の基調にさしつかえがなければ、これはそう大して、配はいりません。今の状態で長期資金等に困つておる問題もあります。いろいろな問題もありますが、大体まあ計画とは狂つて参りましたが、実際的には適当なところに行つていると思つております。財政資金の量がおそい部分は日銀の貸出し増になり、あるいは政府財政資金がどんどん出るようになると日銀の貸出しが減つて来る。通貨はふえる原因があつて適当にふえる。私は何も早くつくつた資金計画がその通り行かなかつたからといつて財政金融が悪くなつたという気持は毛頭持つておりません。
  255. 中曽根康弘

    中曽根委員 問題は資本蓄積がどういう形でどう行われて、今後どうなるかという点で、それが問題なのであります。安本長官に伺いますが、最近の資料で一体政府資金、財政資金その他民間の資金の需給関係がいかなる変化をたどつておるか、つじつま、帳じりをひとつ示していただきたいと思います。
  256. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点ですが、昭和三十五年度上半期の産業資金の実績について申しますと、四月ないし九月の実績は、金融機関の貸出し、株式及び社債の発行並びに見百返り資金からいたします投資によつて産業設備資金に四百六十二億、運転資金として千四百九十五億、計千九百五十七億円の資金が供給されておるようであります。この末年度上半期の産業資金は、市中金融機関からの貸出しによつて大体千五百七十二億、見返り資金の私企業投資によつて三十九億、社債の発行によつて三百億円、株式の発行によつて百四十六億円でありますが、この株式の発行の中には見返り資金から出て来るものが五十二億入つております。これだけが大体供給されておるのであります。
  257. 中曽根康弘

    中曽根委員 安本長官に伺いますが、今後の見通しを入れて昭和二士五年度の政府資金、民間資金全部トータルして需給関係はどうなりますか。
  258. 周東英雄

    ○周東国務大臣 昭和二十五年度の産業資金の見込でありますが、これは大体以下申し上げました上半期の実績をもとにして下半期の一応の見込みを加えてお答えいたしたのでありますが、多少変化するかもしれません。大体設備資金については合せて千二百三十億円、それから運転資金については三千三百八十億円、計四千六一百十億円の資金が供給される見込みでありますが、このほかに大体企業の支拂い留保で九百六十億円くらいの産業資金がまかなえるのではないかと考えております。
  259. 中曽根康弘

    中曽根委員 われわれが得た資料によりますと、昭和二十五年全体で約六百億ぐらいの赤が出るという計算になつておりますが、はたしてそうでありますか。  つまりそれだけ日本銀行券が出るかどうかという問題になりますが、安本長官の考えはどうですか。
  260. 周東英雄

    ○周東国務大臣 今のお話は年度末におけるお話だと思いますが、大体私はとんとんにまかなえるのではないかと思います。あるいは一時的な形において日本銀行券がよけい出るということはあるかと思います。
  261. 中曽根康弘

    中曽根委員 政府関係の収支は大体二十五億程度の赤で見合つておるけれども、民間関係のものは、非常に銀行の貸出しが多くなつておる。預金の伸びか非常に悪い。起債市場も悪い。その結果六百億程度の赤になるというのが最近の数字でありますが、安定本部長官はそういう明確な数字を御研究になつておりませんか。
  262. 周東英雄

    ○周東国務大臣 確実な数字は今持つておりません。しかし下半期におきましては、ある程度、供米資金等に関する政府資金の散布が、どういう形で民間にどれだけ残るかということが問題であります。農業協同組合、信用組合等においては、少くともその半分くらいは残つておると思います。お話のような点については、多少異論もありますが、正確な数字をただいま持つておりません。
  263. 中曽根康弘

    中曽根委員 そういう正確な数字を持たないで、資本蓄積をやろうとか、あるいは面接投資をふやそうなどということが第一むりだ。一体、政府の金がどう動いておるかというバランスをよく見ておつて、それじやこういう手を打とう、こうしようという具体的な政策が、この内閣に欠けておる。一番大事な、具体的な数字をもつて現実的な手を打つことがない。一番大事な資金計画がすでにそうだ。六百億の赤というものは、大きな問題だ。今年だけの問題じやない。来年度の資本蓄積がどうなるということにも響いて来る。こういう問題をそんな無責任な答弁をしておいていいのですか。
  264. 周東英雄

    ○周東国務大臣 中曽根さんは御自分の御意見を断定的に押しつけられますが、私らの見ておるところではそうはならぬと思つておるから答えておりますが、御議論は尊重しておる。そういう御議論も立とうが、供米金の散布の金がある程度滞留するということもあるから、大体の見込みはそう赤が出ぬだろうということを申し上げておるのであります。
  265. 中曽根康弘

    中曽根委員 ここに通貨発行審議会の事務局が二十一日につくつた表があります。通貨発行審議会がつくつたのだから、あなたの方にも行つておるでしよう。これは権威のある数字です。しかも最近の二十一日の数字だ。この現実の数字が六百億の赤字になつておる。これをあなたは疑うのですか。あるいは経済安定本部にこれに対抗するような、もつと楽観的な数字でもあるというのですか。
  266. 池田勇人

    ○池田国務大臣 資金の計画には私が関係しておりますから私からお答え申し上げます。中曽根君の言われる赤字というのは……。
  267. 中曽根康弘

    中曽根委員 日本銀行券の増です。
  268. 池田勇人

    ○池田国務大臣 それならば話がわかる。資金計画で赤字というのは、必ずしも日本銀行券の発行ということにとれません。従つてその六百億という数字は、昨年年末が三千五百五十億で、今年の年末には四千百五十億ということになれば、数字をあわしておることになる。政府は答えておることになるのです。一—三月には相当の収縮がありまして、昨年末の三千五百五十億が三月には三千億を割つたことを考えますと、四千百億円が五百億円減つてきますと、四千百億円が五百億円減つて来ますと三千六百億くらいの通貨の増発になる。こういうことは先ほど私が答えたのでおわかりだと思います。
  269. 中曽根康弘

    中曽根委員 大蔵大臣はとんでもない甘いことを言う。大体来年一—三月になれば、輸入は引取り資金だけでも九百億以上いる。もつと伸びるだろう。さらにあなたのことだから、また見返り資金を七〇%も六四%も放出するでしよう。そういういろいろな関係があつて、ともかく大蔵大臣の言うようにぐつと収縮するわけに行かない。収縮することになれば、ますますデフレになつて、えらいことになる。吉田内閣は怨嗟の的になります。ともかく問題は吉田内閣が資金のバランス、通化の発行状態、あるいは投資の状況、これを現実的に把握しておいて、これに対応するような投資計画なり、あるいは貯金の増強対策というものを立てて行かなければならないのに、そういう対策がないじやないかということを言つておるのです。しからば安本長官はどういう対策を立てておられるか。どういう帳じりを見てどういう対策を立てていますか。
  270. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予算関係しますし、通貨に関係しますから、私から申し上げます。あなたは輸入が一—三月にふえるので非常なデフレになるのじやないかというお話でありますが、私は輸出入とも今年におきましては十一億四千万ドルと踏んでおります。しかして一—三には特に輸入が超過すると見て、外為へも百億を入れておるのであります。そういうことは全部頭に入れてやつておるのであります。しかも例年の通り一—三月には政府は引揚げ超過になるのでありまして、通例に行つたならば、六百億ぐらい一—三月で収縮する、こう言つておるのであります。決してデフレ政策なんかとつておりません。
  271. 中曽根康弘

    中曽根委員 デフレ政策をとつていないと言うけれども、それは今後金を出すか出さぬかにかかつて偽る。今後を見なければわからぬ。私は安本長官に聞いておる。安本長官として一番大事なことは、ただいま申し上げましたように、日本のお金の帳じりをよく見ておつて、それに有効適切な手を打つて行くことである。そういうことを内閣はやつていないじやないか。通貨発行審議会のような権威のある数字に対して、これと違う数字が安本にあると言うのですか。最近の資料でどういう帳じりを持つておりますか。
  272. 周東英雄

    ○周東国務大臣 先ほど私はお答えをしておいたのですが、あなたは議論として、今お話のようにお話なさるし、六百億云々に対して今大蔵大臣が答弁した通り、私も通貨発行審議会に出ておりまして、必要な場合においては、それは日本銀行の通貨を出してまかなうことができる案を立てております。だから、ある程度三千九百億の通貨限度をきめて、年末からある時期にかけて少くとも半月くらいは四千百億程度になるかもしれない。しかしそれが自然的に、例年の現象形態は、あとは漸減方式になりまして、年度末にある程度減りますから、そこで三千九百億以下になりますので、大体この目標のもとに立てておりますが、今年は年度末においては三千八百億前後で落ちつくであろうという見通しであります。もしそういう場合に必要があれば、見返り資金、預金部資金の計画にあわせて日本銀行券の発行も考えて対処することは資金計画の上に考えております。
  273. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば具体的な政策に対しましてお尋ねいたします。今後資本蓄積については、一体どういう方策を重点にやつて行くか。つまり局間資本の蓄積を重点にするか、あるいは国家が介入してやつて行くのか、税金の関係その他から見て、今年から来年にかけてどういう方策で資本蓄積をやつて行くのか、大蔵大臣にお尋ねいたしたい。
  274. 池田勇人

    ○池田国務大臣 資本蓄積は民間、政府ともにやつて行かなければならぬ重大問題であります。民間ばかりではない、政府においても資本蓄積は考えております。具体的方法といたしましては、法人関係につきまして再評価をしたり、超過所得税をやめたりしまして、相当蓄積ができることを期待しております。実際問題として相当蓄積が本年になつてできました、また政府といたしましても、定期預金金利の引上げを勧興したりあるいは証券金融の融通につきまして格段の措置をとり、あらゆる手を講じて行きたいと考えておるのであります。何と申しましても、資本蓄積の根本はインフレをやらない、経済を安定さすということが根本であるので、これに向つて進んで参り、しかしてまた政府におきましても、片方に減税して国民生活を楽にしなければならぬということ、片方には政府借金政策をやつて行くことはよくないから、ある程度は運転資金の増加も一般銀行でまかなう、こういう建前で資本蓄積の一助にもしておるのであります。
  275. 中曽根康弘

    中曽根委員 具体的に聞きますが、伝えるところによりますと、預金部の運用を改正して法制化するとのことでありますが、どういうふうに法制化するのかお伺いしたい。預金部運用法というものをつくるとかいうことであるが、その点どうですか。
  276. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいま検討いたしておりますが、今預金部の金は郵便貯金あるいはまた簡易保険、厚生年金等を主体といたしまして、政府関係機関の預金、あるいは公団の預金等が入つておるのであります。郵便貯金あるいは簡易保險、厚生年金は零細な資金でございましてぜひとも政府はこれの支拂いについて十分なる保証を設けなければならない、こういう考えのもとに郵便貯金につきましては特別会計を設けることにしまして、厚生年金、簡易保険は今できておりますから、大蔵省の運用部から預かりました金に対して債務補償を出して、そうして預金部におきましては、その金を国債、地方債に一応優先的にまわしまするが、産業資金の一助にも、ことに農林水産あるいは中小企業の方に重点的に出るように金融債を引受けよう、こういう考えでおるのであります。なおまた特別会計からの預かり金、あるいは公団からの預かり金につきましては、これは長期のものもありますが、短期のものもありますので、これを勘案しまして、たとえば短期のものにつきましては、もちろん預金として日本銀行の当座預金にしておきまするが、少しくらい長期のものならば、金融債を引受けるとか、あるいは府県の短期融資の方にそれを使うとか、今までのやり方をもう少し一般事業界、産業界の方に出して行くような方法で行きたいと思います。しかし一方では政府として債務補償を出して、零細な預金者あるいは保険加入者の権利を保護しようという考えで進んでおります。
  277. 中曽根康弘

    中曽根委員 一般定期預金の利子の引上げの関係はどうですか。
  278. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは大蔵省では、とにかく貯蓄増強の趣旨から申しまして、今で期預金の利子は三月あるいは半年、一年、これでかわつておりますが、一年定期が四分七厘ですが、これを五分程度に引上げたらどうかということを日銀政策委員会の方に勧獎しまして、そうしてまた、各銀行も、議論はあつたようでありますが、大体それについて来るようであります。六箇月の分につきましては、正確な数字を覚えませんが、一年の分の四分七厘を五分にする程度で引上げて行けるのじやないかと思います。
  279. 中曽根康弘

    中曽根委員 信用組合法を改正して、信用金庫法という法律をつくつて、預金部資金運用の改正に即応するように、預金者保護その他をやるという話でありますが、この点と、それから無盡を改正して、相互銀行法という新しい法制化を企てられているということでありますが、この点はいかがですか。
  280. 池田勇人

    ○池田国務大臣 銀行法全般につきまして、改正の意見がございます。私はこの改正をするかしないかということにつきまして、まだ結論を下しておりません。この臨時国会には出せませんので、ひとつ臨時国会が済みまして。補正予算通りましたらゆつくり検討したい。それに関連して、無盡を相互銀行にするとか、あるいは信用組合を昔の市街地信用組合のように、主として金融業務を取扱うようなものにしよう、すなわち昔に返そうという考え方は、民間から有力な意見として出ておるのです。銀行法の改正と関連しまして今検討中でございますが、私は銀行法の改正ということと切り離しても、相互銀行とか、あるいは信用協同組合を昔の金融業務を主体とした組合にすることにつきましては、積極的にやりたいという気持で検討しておりまするが、まだ結論は出ません。
  281. 中曽根康弘

    中曽根委員 話は別ですが、公益質屋を増設して、これが運用を改害するという話があります。その点はどうですか。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  282. 池田勇人

    ○池田国務大臣 公益質屋の問題は、予算査定のときに削られておつたのを私が復活さした覚えがありますから、来年度の予算では多分出るんじやないかと思いますが、はつきり覚えません。
  283. 中曽根康弘

    中曽根委員 どういうふうに改正されるのですか。
  284. 池田勇人

    ○池田国務大臣 こまかい問題は存じておりませんから、政府委員から答弁させます。
  285. 河野一之

    ○河野政府委員 公益質屋につきましては、昭和十二年からそういう制度ができたのでありますが、その後運営の状況があまり芳ばしくなかつたのであります。最近に至りましてこの活動が非常に活発になりましたので、明年度の予算におきまして、この増設を企図することにある程度の予算を計上するつもりであります。主として建設費の補助金と考えております。
  286. 中曽根康弘

    中曽根委員 将来の俸給を担保にして、それを質ぐさにして金を貸し出すというふうに改正されるという話で、われわれにとつては非常に朗報ですが、そういう改正は行われますか。
  287. 河野一之

    ○河野政府委員 従来の恩給金庫のようなものではないのでありまして、主としてサラリーマンあるいは日雇い労務者等、非常に零細な階級に対する、無担保あるいは有担保の貸付けをしようというのでございます。
  288. 中曽根康弘

    中曽根委員 大蔵大臣に伺いますが、資本蓄積のために無記名投資信託制度をやらないかという議論が大分ありますが、この点はどうですか。
  289. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知の通り、これは昭和十一年から源泉選択の課税の方法で、また戰争前に投資信託の方法ができて、大分国民になれておつたのでありますが、課税の公平を期するという意味から、いわゆる所得把握のために、源泉選択も今年度からやめたことになつておるのであります。資本蓄積のために、そういう議論が銀行家の間、また産業人の間に出て参つておるのでありますが、私はこれは負担の公平ということと資本の蓄積ということと、二つの大きなものがありますので、今検討を加えておる次第であります。
  290. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこに問題があるのであつて、資本蓄積ということが日本国民経済に一番重大な問題であるということが考えられるならば、これは課税とかあるいは税法上の合理性を多少無視しても、資本蓄積の方へ重点が注がれなければならない。ここに重点がある。私はそういう観点から、横尾通産大臣は一体今の池田大蔵大臣の答弁に賛成するかどうか聞きたい。
  291. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの点については、研究いたして、賛成すべきものは賛成するつもりであります。
  292. 中曽根康弘

    中曽根委員 横尾さんにはまたあとでお尋ねいたしますが、そのほかに、今度は社内蓄積の改善の問題であります。これも大きな問題で、最近はやはり課税その他の関係、あるいはまた資産再評価が十分に行われなかつた、こういう点から特段の措置を必要とすると思うのでありますが、大蔵大臣としてはどういう政策で臨まれますか、具体的な政策をお示し願いたい。
  293. 池田勇人

    ○池田国務大臣 社内蓄積の問題は、大蔵大臣の問題としては、資産再評価につきまして、ああいう特例を設けました。しかし残つている問題は、償却年限の問題だと思います。この問題につきましては、内部留保を多くするという方向に進もう、すなわち償却年数をできるだけ、短かくしようという方向で、ただいま年数その他を検討しております。  もう一つの問題は、社内留保の場合の積立金に二%の課税ということが問題になるようでありますが、この点は大した問題でないのでございまして、配当所得の関係とにらみ合せまして、この程度の積立金の課税はやむを得ないのじやないかと思います。社内留保は今度は配当の問題でありまするが、最近の景気によりまして、増配が相当行われておるようであります。しかし増配ももちろん株価の維持のためにぜひ必要でございましようが、当局者としましては、将来を見通して、増配の場合にも見通しをつけてやるようにということは、機会あるごとに言つておるのであります。社内留保の問題につきましてはただいま思いついたところはその程度でございまして、足りなければまた追つてお答えいたします。
  294. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一つの点は、証券金融の問題であります。証券金融の問題と輸入金融の問題、これが池田財政の盲点であると私は考えるのでありますが、証券金融の問題についてどういう対策をとられるか。ともかく資本蓄積という問題がこれから日本経済の一番大きな問題です。あらゆる点からこの問題を改善して行かなければならないと私は思うのでありますが、池田大蔵大臣の抱負をここでお示し願いたいと思う。
  295. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは財政演説にも申しておりますように、証券民主化、あるいは証券対策につきましては、万般の処置をとると言つておるのでありますが、証券金融ということにつきましては、いろいろな問題があるのであります。えてして証券金融につきましては、株式担保の貸出しを十分にしろとに、あるいは金融会社を置いて、そこをダムにして、値下がりしたときには買い集めるとかいうことがいわれておるのでありますが、証券金融にはその二つがあると思います。すなわち増資の場合におきまする株式の消化という問題と、発効された株式でどういうふうに融通つけるかという問題があると思います。私は主としてまず考えなければならないのは、発効の場合におけるいわゆる株の売りさばきの問題を主として考えたいというので言つております。すなわちアンダー・ライター、元引受会社の育成ということにつきまして、先般来検討を続けておるのであります。また発行されてから後の株の問題につきましては、これは金融の原則によりまして、銀行に株の担保で金を貸し出せといつたつて、株価が非常に動いておるときには困難だ。それからまた金融会社をつくつて、そこをダムにして買い上げたつて、やはりそれは重荷になりまして、株価対策にはなりません。結局は資本の蓄積をはかり、経済の安定を高度化して行けば、おのずから証券金融はほどけて来るのだという考えでおります。おのずからほどけるからというので、ほうつておくわけではありませんが、ただいま申し上げましたようなことで検討を続けておる次第であります。
  296. 中曽根康弘

    中曽根委員 時間がありませんから、それらの資本蓄積の問題については、自分考えがありますが、ここで自分考え方を申し述べることは省略いたします。特にこれは池田大蔵大臣、安本長官に申し上げますが、資本蓄積の問題と、あとで申し上げる企業合理化の問題だけは、今後いかなる内閣が政権をとつても、最も重大な問題として取上げなければならぬ問題であるであろうと私は思うのでありますが、今まで関係閣僚から聞いたところでは、はなはだ不十分であります。今までのものを並べているにすぎない。新しい段階に立つて、新しい政策をもつて臨むという内容は全然ありませんので、非常に不満である。もつといい、もつと斬新な、もつと国民経済の拡大発展に役に立つような政策を研究して、今度出直されんことを私は希望いたします。  次に私は横尾通産大臣にお尋ねいたしたいと思います。それは企業合理化の問題であります。企業の合理化ということが一番大きな問題だといわれておりますが、横尾さんは企業の合理化を何を基準にしてやろうと思つておられますか。
  297. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お話の通りに、企業の合理化というものは、ただ、單に議論のみではいけないと私は思います。実際においてこれを実行する熱意がなければいかぬと思います。従つて企業の合理化は、まず現在の日本における機械設備が世界水準より非常に遅れていることと、日本の工業の技術水準が非常に遅れておりますので、これらをぜひ世界水準まで持ち上げなければならぬというふうに私は考えております。
  298. 中曽根康弘

    中曽根委員 この世界水準という言葉が非常にあいまいな言葉ですが、それは世界の販売価格水準ですか、原価水準ですか。一体どういう水準を意味しておるのですか。
  299. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 合理化と仰せられるから、私は設備その他の合理化だと考えております。そういうふうに解釈してお答えいたしました。価格のことでおつしやるならば、価格におきましても、世界の価格水準まで日本の価格を下げ得るようにすることが必要だと考えております。
  300. 中曽根康弘

    中曽根委員 販売価格水準のようなことを言つておりますが、販売価格水準を言うのですか。
  301. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 販売価格は結局製油原価とパラレルのものだと考えております。あるいはまつたくパラレルでなくても、それに比準して行くものだと考えておりますので、どういうようにとつていただいてもけつこうであります。
  302. 中曽根康弘

    中曽根委員 横尾通産大臣、はつきり自分考えをきめなければいかぬと思う。これは当然国際生産費というか、その原価水準に持つて行かなければならぬと思う。それを目標にして日本のあらゆる産業を近代化して行こうという考えをはつきり持たなければいけないと思う。それを目標にして、しからば二十五年度の近代化の実績は、一体どういう状態になつておりますか。本年度の実績はどの程度に近代化されておりますか。
  303. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 まだなかなか近代化ができていないと私は考えております。
  304. 中曽根康弘

    中曽根委員 できてないという答弁は、答弁になつていない。問題は、たとえば日本の鉄鋼を見てみまして、どの程度老朽化しておるか、そしてそれをいつ更新して行かなければならないか、それが二十五年度にどの程度できたか、そういうことをお聞きしておる。需用産業の老朽化の程度がどの程度になつておるか。それに対応する更新かどの程度になつているか。更新というのは現状の補修じやない。要するに近代化がどれくらいになつているか、それを数字でもつて聞いている。
  305. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまのお話でありますが、日本の設備はすべて戰前の設備を酷使しておりまするから、設備は相当に老朽化しております。そうして二十五年度の設備の更新がどれくらいになつているかということは、私はまだはつきりは存じません。
  306. 中曽根康弘

    中曽根委員 企業の合理化を担当している通産大臣が、今私の聞いている一番大事な鉄鋼の設備がどれくらい老朽化しているか、その近代化がどれだけなされているか、それが答えられないで大臣が勤まりますか。
  307. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 あなたのただいま仰せられることは、機械設備のどれくらいが老朽化しているかということでありますが、これはなかなかそう簡單にわれわれ技術屋も判断できないものでございます。それだからただおよそこれくらいであるというならば、約四〇%くらいしかないだろうと考えます。
  308. 中曽根康弘

    中曽根委員 その四〇%というのは何が四〇%ですか。それは性能度がどれくらいだというのですか。
  309. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 約四〇%くらい老朽していると思います。
  310. 中曽根康弘

    中曽根委員 老朽化というのは、全然役に立たぬという意味か、あるいは三〇%くらいまだ使えるかという問題がある。これは相当重大な問題だ。それに対して今年はどれくらい近代化しているか、これを聞いておる。
  311. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 今のお話は、二十五年度にどれくらい近代化したかというお話でありますか。
  312. 中曽根康弘

    中曽根委員 四〇%というのはどの程度の老朽化という意味なのか。
  313. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 機械その他の老朽化というものは、使えぬというものはまずないのであります。ある程度補修し補修して使いますけれども、近代的施設でないということを申しているのであります。
  314. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はそんななまぬるい答弁を聞いておるのではない。私は一つの例を聞いてみたのです。あなたがどれくらい通産行政を熱心にやつておるかということを聞いてみた。鉄鋼業の老朽化はどれくらいで、これはいつかえなければならぬということを通産大臣が知つてなくて、閣議でがんばれますか。けさ新聞記者に聞いたところによると、あなたは、閣議で銑鉄の補給金が撤廃になるときに、池田さんに言いまくられてうつかり賛成したという話じやないか。そういう考えであなたは鉄鋼行政を扱つておる。それだから日本鉄鋼業者は泣いておる。だから今どれくらい老朽しておるから、どれくらいかえなければならぬということを頭に入れておかなければならぬ。どれくらいですか。     〔「政府委員でいい」と呼ぶ者あり〕
  315. 石原武夫

    石原(武)説明員 ただいまお尋ねになりました鉄鋼につきましては、圧延設備の四〇%程度のものが一九三〇年以前のものでございます。それから各精度がどの程度かということは、先ほど大臣からお話のありましたように、これの判定は非常に困難でございますが、たとえば自動車工業につきまして、精度がその設置の当時通りの能力をほぼ有しておるというものは一——二%という程度かと存じます。なお精度が二—三%落ちておるというものが七五%、その他のものはそれ以下であります。そのような程度でございます。
  316. 中曽根康弘

    中曽根委員 それで大体わかりました。一九三〇年というと満洲事変のころであります。それからできたものは、おそらく太平洋戰争に入つてか、あるいは昭和十二年の支那事変に入つてからであつて、ことに太平洋戦争に入つてからできたものが非常に多い。これはたいてい粗製濫造品です。そうすると、使いものにならないというか、精度が三〇%以下に落ちておるというものが、おそらく日本の鉄鋼施設の六〇%くらいに及んでおるのではないか。これはゆゆしいことです。そこでこれは鉄鋼のみならず、あらゆる産業について適用されなければならない。そこでどうしても近代化資金というものがいるが、三十五年に一体どれくらい要求して、どれくらい投下されておりますか、具体的にお聞きしたい。——私は大臣に聞いておる。
  317. 小坂善太郎

    小坂委員長 中曽根さんに申し上げますが、御承知の通り、国会法六十九條におきましては、大臣を補佐するために政府委員を置くことを議長の承認を得て許可されております。その意味におきまして、ただいまの問題について、大臣が局長をして答弁せしめたいというのでありますから、一応企業局長の御答弁を聞かれまして、しかる後にあなたの御意見を述べていただきたいと思います。
  318. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は大臣に質問しておるのであつて政府委員をして答弁せしめるときには、私の了解を得なければならぬ。私の了解を得てからやつてもらいたい。
  319. 小坂善太郎

    小坂委員長 中曽根君に申し上げますが、あなたが大臣に要求せられた答弁について、大臣は企業局長をして答弁せしめたいという意向でありますから、委員長は企業局長をして答弁せしめます。
  320. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は大臣に要求しておる。
  321. 小坂善太郎

    小坂委員長 あなたは、企業局長の答弁を聞かれた後にあなたの意見を述べられ、それを委員長に採択させたらいかがでしようか。
  322. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は権威ある大臣の答弁を聞いておるので、一企業局長の答弁を聞いておるのではない。国会に対して責任を持つておるのは大臣であつて、企業局長ではありません。     〔「その通り」と呼ぶ者あり〕
  323. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えいたします。約四百億出ておりますけれども、これは近代化の設備にほとんど使われておるようであります。詳しいことは局長をして答弁せしめます。
  324. 川崎秀二

    ○川崎委員 議事進行について。先ほどより中曽根委員と大臣との質疑応答を聞いておりますと、通産大臣は中曽根君の質問に対して十分に答えられない。ことに具体的な資料を要求しておるにもかかわらず、それに対する核心に觸れたる答弁がない。かかる質疑応答が続けられて行く上においては、予算委員会そのものの権威が私は失墜するものと思う。従つてこの際暫時休憩せられんことを望みます。(拍手、「ノーノー」)
  325. 小坂善太郎

    小坂委員長 お聞き及びの通り、川崎委員から一時休憩すべしとの動議が出ております。これについて採決いたします。川崎君の動議に賛成の方の起立を望みます。     〔賛成者起立〕
  326. 小坂善太郎

    小坂委員長 起立少数。続行いたします。(拍手)     〔「答弁してないじやないか」「答弁してるよ」「答弁してもなつてないじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  327. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。
  328. 中曽根康弘

    中曽根委員 横尾通産大臣にお尋ねいたしますが、今政府は十五箇月予算をお組みになつておる。先ほどから私がるる申し上げておるように、今後十五箇月というものは日本経済にとつては実に重大なときである。このときこそ近代化の礎石を打ち込まなければならないが、この十五箇月予算の中で一体近代化のためにいかなる要素を織り込んでおるか、そのための資金はどれくらいいるか。この点をお答え願います。
  329. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 合理化のために業界からこれだけいるだろうといわれているのは約千八百億くらいだと思います。それに対しまして見返り資金の要望が電力を加えまして約六百四、五十億ではなかろうかと思います。
  330. 中曽根康弘

    中曽根委員 業界から千八百億の合理化の要求がありますが、それに対して十五箇月予算でいかなる手当をしているか。という意味は、今見返り資金の配合計画を立てておりますが、その見返り資金の中から何ぼ近代化のために割当ててもらう、あるいは一般会計予算でいかなる項目の手当をやつているか、通産大臣にお聞きしたい。——大蔵大臣じやない。
  331. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予算関係いたしますから、私がお答えいたします。先ほど閣議の鉄鋼補給金の問題がございましたが、鉄鋼補給金の問題は、横尾通産大臣が閣議でそんな発言をなさつたのではございません。(中曽根委員「銑鉄補給金だ」と呼ぶ)銑鉄補給金につきましては、横尾通産大臣が、これつぱかしのものはいらぬ、こういう発言であります。とやこう言つたわけではございません。  次に鉄鋼の合理化資金につきましては……(中曽根委員「鉄鋼じやない、見返り資金の中でどれくらい出すのか」と呼ぶ)見返り資金から出ることを予定いたしております合理化資金と申しますか、産業復興資金と申しますか、この分は前同様私企業、電力、造船以外のものが四十三億円でありましたものを、六十億円にいたしました。それから見返り資金から出すのは、合理化を主とし造船資金を加えているのであります。しかして鉄鋼の方には四十三億円の中から八、九億円出ていると思います。しかして来年度予算で、先ほど申し述べたような電力、造船を入れました合理化資金を財政面から全部見るというわけには行きませんが、私としては、公共事業費もさることながら、やはり財政面である程度産業合理化資金を出そうというので、今検討いたしておるのであります。造船あるいは電気を除きましても、できるだけたくさんの金をその方に向けたいというので、先ほど申したように、今検討を加えておるのであります。合理理化資金の中には鉄鋼もございましよう、あるいは石炭もございましよう、またほかの産業もございますが、鉄鋼、石炭がまあ重点的に向けられるのではないかと考えております。
  332. 中曽根康弘

    中曽根委員 来年度の見返り資金が幾らになるか、いろいろいわれておりますが、今までは大体千六百億とか千五百億とかいわれておる。その中で横尾さんは一体合理化資金に幾ら要求するつもりですか。
  333. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 先刻お話いたしましたように、電力を加えて約六百五十億くらいほしいと思つております。
  334. 中曽根康弘

    中曽根委員 電力を除いてですか。
  335. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 電力を加えて……。それから先刻の私がそれくらいのものならいらぬという銑鉄補給金の問題でありますが、これは二十一億にすると、三百万トンの銑鉄にいたしますと、一トン当り七百円であります。製鋼の混銑率を五十、五十としますと、鋼材トン当り三百五十円であります。鋼材に影響するのが……。鋼材の値段はその当時二万五千円か、二万七千円の問題であつたのであります。だからそのうちの三百五十円でありますと、一%幾らくらいだと考えます。それで日本経済のためにこれくらいのものをむりにもらわなくても、それくらいは製造の合理化によつて、私はカバーし得ると思つたから、これを引込めたのであります。
  336. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の答弁を聞いて私は非常に驚いたのですが、一%くらいしか入つてないから、そんなものはいらぬという答弁をしておる。横尾さんは船をつくつておるのだからよく御存じでしようが、日本の造船代金が上つて来て、国際競争にたえられないということになつておる。銑鉄の補給金を打切られれば、結局鉄屋はもうからないかもしれませんが、しかし何もそういうものを鉄屋にやつているのではない。問題は日本の産業全体のコストを下げることが大事じやないか。あなた方がつくつておる船自体の値段を下げて、国際競争に対抗させる。そのためには一%というものは大きな数字ですぞ。それもいらぬという。そういうところに横尾行政の無責任さがある。なぜそれを小さな問題として軽視するのですか。
  337. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 一%と申しましたが、船価から見ますとまだまだ一%の何分の一でございます。それでございますから、それくらいのものは、船で申しますと設計の合理化であるとか、資材の使いようであるとかによつてカバーし得ないことはないのでございます。その他のものにいたしましても、一%から二%のものならば、補助によらなくて製造業者の合理化、また能率増進によつてつて行くことが、今後の自立経済の上において最もいいのではなかろうかと思つたので、私はやつたのであります。
  338. 中曽根康弘

    中曽根委員 通産省では、聞くところによると、近代化のために特に金を出して産業機械近代化法とかなんとかう法律をつくつて、金を出して買上げて貸すとかいうことをおやりになるということですが、そういうことを実際おやりになるおつもりなんですか。
  339. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまのお話は目下研究中でございます。
  340. 中曽根康弘

    中曽根委員 目下研究中だというのは、一体どういう意味ですか。やる意思があるのかないのか。あなたは産業合理化ということはぜひやらなければならぬということを言つておるじやないか。通産大臣ともなれば当然そういうことをやらなければならぬ。あるいは鉄鋼補給金を打切つていらないというのと同じ思想だ。そんなものはいらない、通産行政の金はいらない。池田さんに頭を下げていらない。それと同じことじやないか。やるのですか、やらないのですか、いらないのですか。
  341. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 私はなるたけ業者が自分自分の資力によつて買うことが必要であつて、国家が貸し與えるということは、ほんとうは私はいけないのだと思います。
  342. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の日本産業構造その他において、業者が自分でそれだけの金を出して、それだけの機械を買つて来てやるという能力がありますか。紡績を除いて……。
  343. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 だから合理化の方になるたけ多くの資金を貸し與えるようにしたいと考えております。
  344. 中曽根康弘

    中曽根委員 今のは答弁になつていない。合理化のために資金を貸し與えると言つておるけれども、問題は、そういうような機械をどんどん買い入れる。あなたはそれを金融でやるというのですか。国家がそういうようなものを貸し與えるようなことはやらないとさつき言つたばかりじやないですか。一体どういうことをやるのですか。しからば金で貸してやつて機械を買わせるという方策をやるのか、現物で貸し與えるのか。そういう点をはつきり明確にしてもらいたい。
  345. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 現金を貸して、そうして機械は業者として買う、そういうことが最もよいことであります。しかしこのことに関しては目下研究中であります。
  346. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば、そういう近代化のための機械購入費として、今年から来年にかけて、一体あなたはどれくらいの金を業者にお貸しする御予定でありますか。
  347. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 それが先刻申し上げました電力を加えて約六百五十億のうちでやらして行きたいと考えております。
  348. 中曽根康弘

    中曽根委員 それは機械購入費だけではない。それはあらゆる問題についての合理化資金である。米国その他から近代的な機械を買うために、どれくらいの金を使うか。
  349. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予算関係いたしておりまするから、私からお答え申し上げます。実はお話のような、政府から機械をある業者に貸して、それで採算がとれるようになつたら、それを増産するような制度を考えたのであります。しこうして私はそれに要する経費を予算案内定では六億円と見込んでおつたのであります。しかしその後合理化のための必要その他外国の機械器具を入れたり、いろいろな問題が非常に強く要請されますので、今見返り資金等からこの金をできるだけ出そうとして努力いたしておるのであります。この点はまだ通産大臣にも、予算折衝中でございまするから、話しておりません。だから通産大臣との話合いで六億円は認めておつたのでございまするが、これはなくするようになると思うが、そのかわりほかの方でまかなおうとしておるのであります。
  350. 中曽根康弘

    中曽根委員 ほかの方というのはどういう方法ですか。
  351. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 先ほど申し上げましたように、見返り資金の運用であります。
  352. 中曽根康弘

    中曽根委員 横尾通産大臣は六百五十億円を要望しているのです。しからばそのうちどれくらい横尾通産大臣の方にまわしますか。
  353. 池田勇人

    ○池田国務大臣 産業資金全部を財政資金でまかなうわけには行きません。これは鉄鋼あるいは石炭——石炭だけにつきましても、産業資金として三百六十億円を要求せられております。しかしそれを財政資金でまかなうわけに行かぬ。財政資金でできるだけはまかないますが、その他何と申しましても、民間資本の蓄積でまかなうよりほかにはない。しかもそれだけの金額は、あなたも御承知と思いまするが、六百億円ただちにいるというわけではない。だから資本の蓄積を、民間といわず政府といわず、極力やろうというのが今までの私の答えであります。
  354. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の大蔵大臣の答弁は、私は満足することができない。通産大臣は十五箇月予算の中において年間六百五十億円ほしいと言つている。それに体して一体どれくらいのわくを與えるかということを私は大蔵大臣に聞いている。だが大蔵大臣は、これは財政資金だけではできない、民間資本蓄積もいる。そういうあいまいなことでごまかしている。しかし一番大事な問題は、今や近代化の問題である。従つて今後の見返り資金の配分の中におきまして、近代化の資金というものは相当優先順位を持たなくちやならぬ。私は見返り資金の大きさというものは今まだわかりませんから言いませんが、しからば大体何パーセント近代化のためにあなたはお使いになるつもりですか。
  355. 池田勇人

    ○池田国務大臣 見返り資金からは公企業の方にも出しますし、民間私企業の方にも出さなければいけない、あるいはまた経済復興の資金としても出さなければいかぬのであります。先ほど来るる申し上げましたように、今検討中でありまして、申し上げる段階に至つておりません。
  356. 中曽根康弘

    中曽根委員 全然この答弁はなつておりません。私はそういう不誠意な答弁を非常に遺憾に思います。池田大蔵大臣は見返り資金の運用について非常に粗漏というか、日本の産業のために遺憾な政策をやつて来たのであります。たとえば今まで、昨年のごときは見返り資金の中で六五%というものを、第三・四半期に一挙に放出するようなことをやつておる。これは非常なマイナスであります。私がこの間調べたところによりますと、フランスでは大体十四億ドルの見返り資金を持つておる。これは解除承認されておる、ドイツは三億八千万ドル、イタリーでは解除承認されたのは約一億ドルです。これらの見返り資金の解除されたものの六五%ぐらいが、大体近代化に使われておる。ところが日本の場合は、近代化に使われている数量というのは明確でない。のみならず、大体考えてみても、今までの見返り資金というものは、今までの維持補修程度である、あるいは今までの工程の中の隘路を打開する程度である。新しい機械や技術を購入して近代化というところまでは、日本の見返り資金というものは使われていない。ところがフランスのモネー・プランにしても、ドイツにしても着々として近代化をやつておる。日本はやつていない。問題はそこなんだ。われわれは今後国際経済に立向つて行かなければならぬ。フランスやドイツやイタリーに負けてはならぬ。しかしこれらの国々は着々として産業の近代化ということをやつておる。一番大事な見返り資金を六五%も近代化のために使つておる。日本はやつてない。これが大きな問題だということを言つておる。私はこの問題についてもつとあなたに聞きたいことがあるけれども、時間がないから、きようはこれでやめます。  廣川さんがいますから、私はこれから農業問題を聞きます。
  357. 池田勇人

    ○池田国務大臣 各国の見返り資金の運用につきまして中曽根君は言われたようでございますが、日本におきまする見返り資金の運用につきましては、各国の例に負けておりません。イギリスはほとんど債務償還に使つております。フランスは六割五分を全部産業合理化資金に使つているとは思いません。これはいずれ資料を持ち合せて議論をしたいと思つております。
  358. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は現に向うへ行つて、向うの人から聞いて来て調べている。あなたはアメリカだけ行つたから、ヨーロッパは知らないだろう。私は現に見て来ている。六五%をモネー・プランでは使つておる。のみならずドイツ、フランス、イタリーでは債務償還をやつていない。一銭もやつていません。なるほどイギリスはやつています。しかしドイツ、フランスはやつていません。イタリーもやつていません。これはちやんとあとで調べればわかる。
  359. 池田勇人

    ○池田国務大臣 マーシャル・プランからの報告が来ておりますから、私はとフランスヘは行つておりませんが、決して日本の運用につきましては人後に落ちていないという確信を持つております。
  360. 中曽根康弘

    中曽根委員 農林大臣にお尋ねいたします。  先ほどからいろいろお尋ねしております自立経済の中で、一番重要な問題はやはり農業の問題だと思います。今までのエイドの大部分は食糧輸入代金に使われております。そこであなたが一割増産ということを非常に宣伝していることは当を得ておることです。そこでお尋ねしたいのですが、今後の自立計画において、農業にいかなる役割を果させるつもりか。それから目標年次の食糧輸入量をどの程度に押えたいのか。それからそれまでの増産量、それに要する資金をどの程度確保しなければならないか。こういう具体的な数字をお聞きしたい。
  361. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 経済自立化の一環として農業の役割についてのお尋ねでありますが、農業につきましては、あくまでやはり自給度を高めることに努めなければならぬと思つております。その一環として一割増産を提唱いたしておるのでありますが、これに要しまする予算の裏づけは、本予算等にも多少載つておりますが、来年度予算等においては相当載せてあると考えておるのであります。また資金につきましても、これをわれわれは最初金融公庫という一つの構想で進んで参つておりますが、交渉の過程におきまして形式はかわるかしれませんが、大体最初われわれの計画いたしたのでは、百五十億の長期融資を見ておりますが、この実現方について努力中でございます。また輸入につきましては、どうしてもわれわれといたしましては少くしなければなりませんので、国内の各種の増強をはからなければならないわけであります。国内の自給度を高めると同時に、食生活においても大きな変化を與えなければならぬと思うのでありまして、一例を申し上げるならば、雑草の食糧化とでも申しましようか、畜類に食糧を與えるというような場合までこれを高めて行かなければならぬと思います。この間も有名な酪農家の黒澤氏に話を聞いたのでありますが、三百万頭の乳牛を入れることは決して困難ではない。そういたしますると非常に食生活に改善が加わるということを言われておるのでありますが、その根拠は役牛を半分乳牛にすることであるという、非常に参考になる言葉を聞いたのであります。さようにいたしまして、食生活と合せて食糧の自給度を高めて参りたいと思うのであります。その他輸入の目標は、本年度におきましては、大体当初予算におきましては三百四十万トンの目標でやつたのでありますが、変更いたしまして三百二十万トン程度にとどめたい、こう思つておるのでありますが、これを漸減するように、国内の自給度を高めて行きたい、こう考えております。
  362. 中曽根康弘

    中曽根委員 私ども今まで大臣にいろいろお尋ねしたのですが、ピントがはずれた答弁が非常に多い。今の廣川さんの御答弁も、非常に丁寧で感謝しておるのですが、何だかお経を読んでいるみたいです。そこでそういう答弁は時間に入れないでもらいたい。こつちの要点を得ておりません。  私は農林大臣に具体的にお尋ねいたしますが、あなたの方で三箇年計画と言つておる、昭和二十八年に千二百万石でありましたか、三百二十万トン、それだけ輸入を計画しておる。そういうところに至る過程に、今年は幾ら、来年は幾ら、再来年は幾ら輸入量を減らして行くか、国内の増産をどれだけふやして行くか、そのためには資金がどれくらいいるか、それをここでお示し願いたいと思います。
  363. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 こまかい数字は私記憶いたしておりませんが、三百二十万トンより漸減いたすように、国内の自給度を高めるように努力する以外にないのでありまして、それに必要な経費は毎年これにつぎ込んで行きたいと思つております。
  364. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は廣川農林大臣は、自由党の大幹事長として農林大臣になつてもらつて全国の農民をほんとうに守つてくれるためにお入りになつたと思つて期待しておつた。しかし今の御答弁を聞くと、まつたくまたお経以外の何ものでもない。これでは絶対に全国の農民は安心しません。全国の農民は草案の陰であなたを恨んでいますぞ。これは廣川さんにはごむりだと思いますから、次の問題をお尋ねしますが、今全国の農民が一番問題にしている問題は、主要食糧の統制方式の問題であります。そこで来年から麦を統制撤廃するといわれておりますが、麦の統制撤廃をやるためにはどうしても政府がストックを持つていなければならない。そこで国家が買出動に要するストツクをどれだけ持つてるとあなたは確信できるか。保有ストックの量、確保の見込みです。その場合の麦の価格をどの程度にすえ置くか、その問題をお尋ねいたしたい。
  365. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 ストックは大体千八百万石程度に押えたいと考えております。それから麦をはずしますが、これをはすしましても農民の希望によつて八百八十万石ぐらい買う予定でおるのでありまして、まだもう少し買つてもよろしいのであります。さようにいたしまして需給の方法考えて行きたいと思うのであります。それから価格は大体現在の対米比はちよつと今忘れましたが、六四ですか、これによつて基準年度のように米と多少差をつけて参りたいと考えております。
  366. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は麦の対米比をそこにすえ置いたというところに大きな問題があると思う。たとえばわれわれ群馬県は麦作県であります。こういう麦作県は米はあまりできません。麦がそのまますえ置かれて、米は来年の予算軍側において六千何百円に上ります。諸物価は上つて来ますから、麦をそのままにすえ置かれると、かりにあなた方が千八百万石のストックを持つて買出動に出て、上ればたたく。麦の値段いうものは最低価格にいつもたたかれるにきまつている。諸物価は上る。その間のシェーレに対して麦作県の農民の苦しみをあなたはいかにして救済して行かれますか。
  367. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 われわれといたしましてはその当時の最低価格で買うのでありまして、政府の買出動によつて必ず市場は上つて行くものと思いますから、その心配はないと思います。
  368. 中曽根康弘

    中曽根委員 心配はないと言われるけれども、政府がストックを持つて買出動に出るというからには、上れば出るにきまつている。そうするとあなたが今失言かどうかしらぬが、最低価格で買うと言う。必ず最低価格にたたかれるにきまつている。しかも麦は上げないという。対米比価を六四に下げたことによつても上げないということはわかる。このままやられたら麦作県の農民は成仏できませんよ。これをどうやつてあなたは救つて行くかというのであります。
  369. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これは市場の操作のことでありますが、上れば売り、それから下れば買うのでありまして、必ず一定の価格は保持されるということは私は信じております。
  370. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこでその一定の価格というものは、農民の町生産を保障するような価格を保持するようにやつてくれるのか、これをどういうふうにして保障してくれますか。
  371. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 先ほど申し上げたように、対米比価はあなたのさつきおつしやつた通りでありますが、それによつて私は再生産できると信じております。
  372. 中曽根康弘

    中曽根委員 再生産ができると信じても実際はできない。問題は対米比価はすえ置かれた、米の方は上つた、諸物価は上つて来る。そのときに谷間に落ちた農民の生活をどうしてやるか、麦作県の農民をどうしてやるか、これが問題なのだ。あなたはそう信ずると言つても現実は動きはしません。一体その価格というものをどういうふうに政府は保障してやるかということを聞いておる。
  373. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 先ほど申し上げましたような対米比価は、基準年度当時の比率と大体同じくらいするのでありまして、米においてもさようでありますが、米と麦との差を多少つけることが、今までの統制前の慣習であります。それに近寄らせて参ろうという考えでありまして、そうしてあまり安くなつたら買いつける、また高くなつたら売る、こういうことでありまして、決して御心配はないと思います。
  374. 中曽根康弘

    中曽根委員 基準年度に返るということは、そうすると米をつくつている農民は今まで通りだつたが、麦をつくつておる農民は今までもうけておつたから、昔通りもどしてやるのだ、こういう思想ですか。今までもうけ過ぎていたから今までのところにもどしてやれ、こういうことですか。
  375. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 麦作地と米作地との比較をもう少しお考えになればわかるのでありますが、麦作地は裏作にもう一つの作物があるのであります。ところが米作地は單作地が非常に多いのでありまして、また国民の嗜好性から行きましても、米と麦との差をつけるのが私は当然だと考えております。
  376. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の答弁で満足できません。ともかく麦というものは陸作です。大体われわれの方など特にそうです。そうして麦だけしかつくつていないところもある。そういうところは米は上る、麦は落ちる。落ちるという意味は昔より落ちる。諸物価も上つて来る。こういう場合には必ず政府の方で価格のめんどうを見てやらなければならない。政府が買出動するときは再生産を保障する何かの方式をつくつて、価格支持制度か何かの制度で再生産を保障してやらなければ、絶対国家として買出動をやつてはいけない。何かの保障をやる意思がありますか。
  377. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 あなたのおつしやるように買出動に出なかつた場合には、自然に下つて、どうにもなりませんので、われわれの方ではある一定の限度をもつて最低価格を割るような場合には買う、こうして価格を維持する。こういうように考えております。
  378. 中曽根康弘

    中曽根委員 廣川農林大臣は上げるために買出動に出ると今お話でありましたけれども、現実はそうじやない。現実は下げるために、どうせうつておけば上るから、上るのを防止するために、政府の持つている麦を放出して下げるという思想でしよう。どうしてもたたかれ、下る以外にない。今までの廣川農林大臣の答弁によれば、農民の麦の値段を保障する意思がない。政府は麦作地帶の農民をそのままほうつたらかして、昔通りの生活に追い込む政策だ。こういうように私は解釈するがいいですか。  その次の質問に移りますが、それで問題になるのは、麦の統制撤廃をやると麦の代金は今度は協同組合に来ない。協同組合が倒れます。現在ですらも協同組合はぶつ倒れそうだ。おとといも大会をやつて全国の人が騒いでいる。いわんや供麦代金が協同組合に入つて来ないと協同組合は倒れる以外にはない。協同組合は農民の支柱になつている。これがさらに圧迫を受けて倒れるようになつたなら、一体農民はどこに行きます。この問題に対して農林大臣はいかなる対策をもつて臨まれますか。
  379. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 協同組合につきましては、この更生についてわれわれも心配いたしておるのであります。これは何と申しましても農村の中核体でありますので、更生しなければならないのであります。特に農業会等から引継いだ財産の固定化等によつて苦しんでおることは御承知の通りであります。そこで来国会におきましては、この協同組合の更生に関する法律案等をわれわれは出しまして、そうして政府から利子補給ができるような法的根拠をつくりたい。こう考えておるようなわけであります。
  380. 中曽根康弘

    中曽根委員 そのい同組合更生法案というものの内容をもう少し示していただきたい。これは重大な問題です。利子補給は何に対する利子補給をやるのか。ともかく私の質問しておる要点は自由経済になつて米屋その他が農村に入り込んで来て、協同組合がのけものになつて来れば、協同組合はつぶれるよりほかしようがない。その協同組合を政府はどういうふうにしてささえるか、その総合政策を開いている。あらゆる面から政府の対策を質問している。
  381. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 協同組合は單に麦がはずれたから、それのみによつて倒れるとは私は考えておりません。さように脆弱なものとは考えていないのであります。また協同組合更生に関する法律案の内容ということでありますが、その内容はいまだお示しするまでに至つておりませんが、これはりつぱなものをつくり上げてお目にかけるつもりである。
  382. 中曽根康弘

    中曽根委員 農林大臣の御答弁は私はまつたく何と言つていいかわからぬ。ともかく一番大きな問題は、この供出の問題であるとか、あるいは協同組合の問題に集約している。私は全国の農民、私を選挙してくれた数万の農民を代表してあなたに真剣に質問をしている。農林大臣も真剣にお答え願いたい。抽象的なあほだら経を述べても私は満足しない。ともかく具体的に述べてもらいたい。私が質問していることは、先ほどは麦の価格をどうするかという具体的な政策でしよう。法律をつくつて支持するのか、あるいはパリティー方式でもつくつてやるのかという具体的な政策を聞いているのに、あなたは何にも答えない。農業協同組合更生に関する法律案をつくるということは聞いた。しからばその中で一体具体的にどういう援助をやるのか。とにかく廣川農林大臣の朗報でもいい。(笑声)朗報でもいいから内容を示してもらいたい。
  383. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 私も農民のために真剣に行政をあずかつておるのであります。また真剣に答えているのであります。真剣に協同組合の更生について目下案を練つている最中であります。
  384. 中曽根康弘

    中曽根委員 委員長が今お聞きの通り、農林大臣の御答弁は、私の質問に対して正確なお答えになつていない。これは実際むだな時間を使つておるのです。こういうようなことで私の時間としてとられるのははなはだ残念ですから、これはぜひ除外してもらいたい。こんな答弁でちやらちやらやられておつてはかなわぬ。そこが私は農林大臣がはつきり答弁をするまでここでがんばります。ともかく農業協同組合を助けるということだけははつきりおつしやつた。これは大賛成です。だから具体的にどういうふうに助けるのか、たとえばいろいろ協同組合で倒れそうなやつかある。倒れそうなやつについては、これはもうしようがないから倒れさせろ、これは何とか資金をめんどう見てやれ、これはいいからほつておけ、そういう段階にわけて処置をするのか、あるいはそのほかいろいろな系統関係の資金のめんどうを見てやるのか、そういう具体的な政策をぜひ話していただきたい。私はもう抽象的なことは十分です。どうか具体的な政策を示していただきたい。
  385. 小坂善太郎

    小坂委員長 中曽根君に申し上げますが、委員長廣川大臣の答弁が非常にあなたのおつしやるような趣旨のものとも心得ません。あなたは具体的にとおつしやいますけれども、いかなることをいかに具体的にという質問に対しても、あるいは廣川大臣か納得し得ない点もあるのではないかと委員長は心得えるのでありますから、あなたの一方的な考えをもつて他人にこれを押しつけられることは不適当だと考えます。
  386. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 具体的にということでありますが、協同組合の内容をあなたはよく御存じのはずであります。でありますから、先ほども申し上げましたように、農業会等から引受けた悪い財産、資金の固定化、こういうものに対しての利子補給なりあるいはその他金融をつけるなり、そういつたようなことをよく調査するために、本年度の予算におきましても八百万円の調査費が上つておるはずであります。さようにいたしましてこれをわれわれは具体的に調査いたしまして、また系統組合の方から金を出すようにでき得るような、また利子が補給できるような一つの法律をつくつて、そして具体的に助けるものは助け、また合併させるものは合併させる、こういうふうにしたいということを述べておるのであります。
  387. 中曽根康弘

    中曽根委員 大臣にお尋ねいたしますが、しからば全国の農業協同組合が今背負つておる借金は全部で幾らになりますか。
  388. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 あまり正確ではないかもしれませんが、これは私の聞いたところでは百六十億程度のことと聞いております。
  389. 中曽根康弘

    中曽根委員 その百六十億の借金に対してどういうふうに処置をなさいますか。
  390. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 その利子補給をどうするか、こうするかというようなことを法律によつてきめて行きたいということで、目下検討中であると申し上げたのであります。
  391. 中曽根康弘

    中曽根委員 借金についてはわかりましたが、特に私が先ほど申し上げました麦の統制撤廃が行われることによつて協同組合を経由しない、こういうことによつて協同組合がだんだん弱体化して行く。こういう面からする補強策はどうするか。今の対策は今までに対する対策、これからは今後出て来る問題に対する対策、これをお聞きしたい。
  392. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 麦が協同組合を通らなくなつた場合の対策は、これからひとつ考えて行きたいと思います。
  393. 中曽根康弘

    中曽根委員 対策はないものと了解いたしまして、しからば次の問題に移ります。  その次の問題は蚕糸価格の安定の問題であります。御存じ通りこの間国際繭業大会がありまして、蚕糸価格の安定の問題は大会の決議にもなつております。そうして森農林大臣のときでも蚕糸公社案なる構想が練られて、関係方面折衝した。しかしこの問題は内外の要請するところであり、この蚕糸価格の安定という問題について廣川農林大臣はいかなる構想を持つて、いかなる折衝をしておりますか。
  394. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 蚕糸の安定の問題は、わが国の農村にとつて重大な問題であります。この間もアメリカにおける全国蚕糸業者の大会の反響を実をつぶさに私見守つておるのでありますが、それはいかようにいたしましても蚕糸の安定をしなければならぬのであります。第一外国の需要家が、現在のように乱調子ではこれを買う場合においても非常に不便なのでありまして、日本一の生糸の糸価が安定することによつて、非常に需要が増すということはだれしもわかつておることなんです。これについて今案を練つておりますが、向うの輿論の反響を見まして、それに応じた案をつくろうと思つて目下検討中であります。
  395. 中曽根康弘

    中曽根委員 案を検討中という言葉が多くてはなはだ当惑の至りでありますが、新聞の伝うるところによりますと、たとえば補償会社法案——補償会社をつくるという考えもあるやに聞いておる。また金融会社をつくるという案もありましたが、一体どういう内容の案を御検討中でありますか。
  396. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 金融をつける案も、あるいはまた補償的な案も、いずれもやはり糸価を安定する案であるのでありまして、その詳細については今のところはつきり申し上げられませんが、両方とも案をつくつておることは事実であります。
  397. 中曽根康弘

    中曽根委員 こういう問題はもう聞いても、返事が要領を得ないものとしてやむを得ずこれは飛ばします。  話は別ですが、新聞の伝うるところによると、廣川農林大臣は行政管理庁長官でありますが、長官として行政機構の改革をやる。農林省と建設省の一部を統合して天然資源省をつくる、あるいは大蔵省の予算編成権を内閣へ持つて行く、こういう構想を今着々推進している、われわれこれは賛成ですが、はたしてそういう御計画で推進しているか、この点はいかがですか。
  398. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 行政管理庁においては、いろいろな方面から資料を集めて案を練つておることは事実であります。また案も、ただいまの御指摘のような大蔵省に関する問題あるいは農林省に関する問題等も一部あることも事実であります。しかしまだ発表する程度に至つておりません。
  399. 中曽根康弘

    中曽根委員 廣川農林大臣の政策としては、天然資源省をつくる方がいいと思いますか。
  400. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 それも一つの案として検討しております。
  401. 小坂善太郎

    小坂委員長 中曽根君に申し上げますが、先般の理事会におきまして決定いたしました時間の配分において、四時三十八分で民主党の持時間が切れることになつておりますが、委員長はあなたの質疑は非常に御熱心な質疑だと思いますから、できるだけ御便宜をはからいたいと思つておりますが、そのおつもりでひとつ質問していただきたいと思います。
  402. 中曽根康弘

    中曽根委員 答弁がなつていないから……。それでは急ぎまして、私はもう二、三点だけ農林大臣にお伺いいたします。それは農業の長期資金の確保の問題であります。廣川農林大臣は一側増産ということを、声高らかに言われまして、閣議決定もしているはずである。ところがこれがいつの間にか消えてしまつている。おそらくこれは廣川農林大臣の予算獲得戦術だろう、こういうのが一般の定評である。それははなはだけしからぬ話である。一割増産を完遂するためには資金的なめんどうを見なくちやならない。ところが農業方面に対する資金の裏づけというものは実に悪い。たとえば昨年を見ても見返り資金は七千万円しか出ていない。ことしはわずか二億です。こういう状態では絶対に土地改良でもあるいはあらゆる農業の改善策というものはできません。一体長期資金は幾らくらいいつて、それに対する裏づけはどういうふうにしておいでになりますか。
  403. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農林省の予算があまり厚遇されていないことはお話の通りであります。この点を改善いたそうと思つて長期資金というものをわれわれが考え出しておるのであります。この長期資金を使う方途ですか。
  404. 中曽根康弘

    中曽根委員 どれくらい確保しているかということです。
  405. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これはわれわれといたしましては百五十億予定いたしております。今もなお百五十億を獲得するために努力中であります。
  406. 中曽根康弘

    中曽根委員 百五十億というのは政府予算の中で確保するという意味ですか。それとも一般の金融で確保するという意味ですかどつちですか。
  407. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 本会計並びに金融を合せてさようにいたしたい。本会計からの繰入れ、また金融と両方合せて確保したい、こういうふうに思つております。
  408. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば予算で幾らで、金融で幾らになりますか。
  409. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 交渉過程中でございます。
  410. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はまた米価の問題であるとか、あるいは肥料の、問題であるとか、いろいろな問題を質問しようと思いましたが、ただいまの農林大臣の御答弁を承りますと、まつたく答弁がなつておりません。これは酒を飲んで出て来ているのじやないかと私は思うのであります。驚き入つたる内容です。こういうような答弁を継続されるのでは、私のまじめな質問をやることはできない。私は農林大臣のもう少しまじめな答弁を要求します。もう少しまじめな答弁をしてもらうまでは質問を中止します。     〔発言する者多し〕
  411. 小坂善太郎

    小坂委員長 静粛に願います。
  412. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 一身上の弁明をいたします。私は酒を飲んでおりません。ただきようは三十八度近い熱があつて、熱を押して登院していることを御承知願いたいと思います。
  413. 小坂善太郎

    小坂委員長 中曽根君に申し上げます。御承知のように国会法百十九條におきまして、院内における発言については注意をすべき意味のことが書いてあるのであります(中曽根委員「答弁がなつていないじやないか」と呼ぶ)ただいま廣川農林大臣の弁明にもあつた通り、大臣は昨日以来発熱をしておられます。しかしながらあなたに敬意を表される意味においてむりをしてここへ出ておられるのでありますから、あなたのそういう個人的な点にわたつての御発言は、私は御熱心のあまりとは思いますけれども、これはお愼みになつていただきたいと思います。
  414. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はこのような不得要領な答弁については質問することを中止いたします。
  415. 小坂善太郎

    小坂委員長 勝間田清一君。     〔「稻村君が議事進行で発言を求めていたじやないか」と呼ぶ者あり〕
  416. 小坂善太郎

    小坂委員長 稻村順三君。
  417. 稻村順三

    ○稻村委員 本日の地方行政委員会におきまして交付金の問題に関しまして決議案が出ておるはずでありますが、その点予算員会委員長の方にも、その決議案が地方行政委員会から送付されておると思うのでありますけれども、それはどういうふうになつておるか、この取扱いに関しまして予算委員長質問いたすとともに、これは與党、野党全部合せた満場一致の決定になつておりますが、この決議案に対しまして、大蔵大臣並びに地方自治庁長官である岡野国務大臣はどういうふうな見解をお持ちになつておるか、また院議によつてこういうものが決議された場合におきましては、補正予算を新たに編成しなければならないという立場に立つのでありますが、この点に関する御答弁を願いたいと思います。
  418. 小坂善太郎

    小坂委員長 議事進行に関する発言でありますから、政府からお答えになるよりも、委員長からお答えする方が適当と考えます。この問題に関しましては、本委員会各党から理事の諸君が選出せられておるのでありまするから、後刻本委員会終了後におきまして理事会を開きまして、その取扱い等について御協議を申し上げたい、かように考えております。——勝間田清一君。     〔「緊急の問題だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  419. 小坂善太郎

    小坂委員長 御不満のようでありまするから、もう一度御答弁申し上げます。私に対しまして、地方行政委員会より御趣旨のようなものはまだ正式に受取つておりません、でありまするから、私はそれゆえに理事会を開きまして、いかにすべきかということを御協議申し上げたい、かように申しておるのであります、——勝間田清一君。     〔「すぐ理事会を開け」「稻村君はそれに関連して発言を求めておるのだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  420. 小坂善太郎

    小坂委員長 稻村順三君。
  421. 稻村順三

    ○稻村委員 今委員長の答弁によりますと、理事会を開いてこれを諮るということでありますが、しかし本予算案の審議の過程におきまして、議会の常任委員会の人たちがこういうふうな決議をしたということは、非常に本予算案の審議の進行に関してきわめて重要な問題であります。従いましてこの問題を無視して、そしてただこの問題を除外したままに委員会を続行するということは、むしろ十分に予算委員会の本質に徹するものでないと、かように考えますので、ただちに理事会を開いて地方行政委員会における決議をどう処理するかを審議せられんことを動議として提出いたします。
  422. 小坂善太郎

    小坂委員長 お諮りいたします。稲村君よりお聞きの通り動議が提出せられました。これを採決いたします。稻村君の動議に賛成の方の御起立を願います。     〔「採決なんて早い」「理事会を開くのに採決することがあるか」「討論だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  423. 小坂善太郎

    小坂委員長 もう一度申し上げます。稻村君よりただちに理事会を開いてこの扱いを協議すべしという動議が提出せられたのであります、この扱いに関しまして本委員会を中断することになりまするから、中断してよろしいという意見に賛成の方の起立を願います。     〔起立者なし〕
  424. 小坂善太郎

    小坂委員長 御起立がないようでありますから、委員会を続行いたします。——勝間田清一君、御発言を願います。——各大臣お待ちしておりますからどうぞ。
  425. 勝間田清一

    勝間田委員 それじや質問させていただきます。  私は、今度の補正予算というものの中心は、一つは、朝鮮事変の後における日本経済の変化並びにそれを契機として起つた諸外国の経済情勢の変化に対して、日本経済の安定なり復興なりというものをいかにアダプトして行くかということであると思うのであります。インベントリー・フアイナンスのような、一つのインフレ収束の要素を持つて本案が提案されておるようでありますが、これがやはり大きな問題であると思うのであります。同時にもう一つの大きな問題は、長い間池田財政によつて痛めつけられて来た日本の勤労階級の生活というものが、この際にはつきりと安定に向つて行かなければならぬのにかかわらず、この面で非常に重大な社会問題を起し、また国民生活に不安を起しておるのであります。この問題に対して、提案されておるところのいわゆる給與ベースの改訂という問題が第三の重大な問題だと思うのであります。同時に第三の大きな問題は、いわゆる国家財政と地方財政とをいかに調節するか、そこに総合的な一つの日本経済の仕組みをいかにつくり出して行くかということが、刻下の最大の急務であると考えるのでありまして、その問題に対する提案としてはわずか三十五億の平衡交付金という形で現われておるのであります。従つてこの三つの問題を中心として、日本の十五箇月予算の一環として、今度の補正予算がいかに考えられているかというような質問の仕方をさしていただきたいと思うのであります。その前に伺つておかなければならぬと考えまするのは、一つは、今度の予算はきわめて遅延をいたしたわけでありまして、このきわめて遅延した結果、この前の本会議における池田大蔵大臣の答弁にも明らかであります通りに、いわゆるドツジ氏との交渉原案というものは、事変後の事実というものを取いれた原案で折衝せずして、それ以前の原案で折衝したということが、国会再開の遅延の重大な原因ではなかつたかと思うのであります。これに対する池田さんの御答弁をお聞きしたいと思います。
  426. 池田勇人

    ○池田国務大臣 関係方面との折衝につきまして、朝鮮事変の影響を入れずに折衝したということは、これは勝間田さんの独断と申しますと言葉が悪いのでありますが、独断だと私は思うのであります。折衝中に刻々わかります朝鮮事変の影響を入れながらいたしたのであります。
  427. 勝間田清一

    勝間田委員 しかしあなたのいわゆる補正予算、十月二日決定による原案というものは、いわゆるドレジ氏との折衝の案であるということは周知の事実ではございませんでしようか。
  428. 池田勇人

    ○池田国務大臣 十月二日の閣議決定の案は、朝鮮事変の影響を織り込んでいない案でございます。折衝につきましては、それをもとといたしまして、朝鮮事変の影響を織り込んで折衝しておつたのでございます。
  429. 勝間田清一

    勝間田委員 だから十月二日の閣議決定の案というものは、朝鮮事変の影響を織り込んでいない案だと私は思う。従つてそれをもとにして折衝されたのであります。そうして朝鮮事変の紛争等が加わつて今度の案になつたと思う。しかし私は、十月二日の閣議決定までの間には、六月二十六日以来の経済情勢というものはとうにわかつておつたはずだと思うのであります。これを、わかつておつたにかかわらず、十月二日の閣議決定には、朝鮮事変の影響を考慮せずしてやつて、これをもつて対外的折衝の一つの材料にされた、ここに一つの大きな責任があると考えるのであります。
  430. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知の通りに、予算編成方針は七月上旬に決定いたしました。この予算編成方針によりまして、各省が大蔵省に要求を出して来たのであります。この影響は各省とも載つていないのであります。そこでそれをやりますことは非常に手数がかかりますので、一応それをもとといたしまして、その後の朝鮮事変の影響をこれに加えて折衝いたしたのであります。
  431. 勝間田清一

    勝間田委員 結局私どもの見るところをもつてしまするならば、池田さんがこの前アメリカから帰つていわゆる公約というものを京都などで出されて、そうしてそれを実行するという政治的なゼスチユアを十月二日のあれに使われて関係方面折衝して結論を出そうとされたではないでしようか。
  432. 池田勇人

    ○池田国務大臣 六月の初めに出しましたわが党の新財政経済政策は、本予算並びに来年度予算にほとんど全部入れております。私はこれを党人といたしまして非常に喜んでおるのであります。二十六年度予算をごらんになりますとほとんど全部入つておると確信いたしております。
  433. 勝間田清一

    勝間田委員 二十六年予算の問題は先ほど中曽根君の質問でほぼわかつて参つたのでありますけれども、まだ一つかんじんな点が拔けていると思うのであります。それは、いわゆる債務償還は一般会計で見ないということは明らかになつているようでありますが、これは見返り資金で見て行こうとされるのでありますか、この点をひとつお伺いいたします。また金額はどの程度でありますか。
  434. 池田勇人

    ○池田国務大臣 一般会計の予算並びにこれに面接付属いたしまする特別会計の予算につきましては、一、二の点を除きまして大体終つているのでありまするが、見返り資金の関係、並びに直接ただいまのところ予算案とは関係ございませんが、預金部資金の使い方につきましては、まだ一度も——一度もと申しますと何でございまするが、最後的な折衝に入つておりません。従いまして、一般会計の予算と見返り資金との関係は、今後従来よりも増して来ることになつております。二十六年度の予算はいましばらくお待ちを願いたいと言つておるのであります。従いまして、御質問の見返り資金におきまする公企業への使用、あるいは私企業への使用、その他予備等につきましては、まだお答えする段階に至つていないのであります。
  435. 勝間田清一

    勝間田委員 一般会計及びこれに関連する政府関係予算といわゆる政府資金との関係についてはまだ調整が、できておらないということであります。そうすると、一般会計の範囲内においてはインベントリー・フアイナンスは翌年も続行するつもりでありますか。また金額は……。
  436. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は十五箇月予算をつくりまして、しかも御審議願つておりまする補正予算はインベントリー・フアイナンス百億円を計上いたしております。従いまして、来年度予算にもこの種の経費を計上する見込みでおります。金額につきましては申し上げられません。
  437. 勝間田清一

    勝間田委員 まず第一にお尋ねを申したいと考えております問題は、いわゆるインベントリー・フアイナンスというものをとつてみて、政府がインフレの対策としてそこに効果を持たして行こうというような性格の超均衡予算か依然として踏襲されているわけであります。同時に非常に予備的なものが多い。池田さんの財政というものを見ておりますと、至るところのポケットの中に金が入つている、インベントリー・フアイナンスもそれでありましよう。それから見返り資金というものもなかなかお使いにならない、これは後ほどお尋ね申したいと思うのでありますが、お使いにならない、預金部資金もいわゆる長期資金的なものは非常に遊んでおるという状態である、また債務償還というような形においてやはり同様の処置がとられておる。資本蓄積ということは非常に大事なことに違いないけれども、その資本蓄積された資本というものは少しも生産化しておらない。これが日本の今の最大の欠陷ではないかと私は考えるのであります。依然として超均衡予算をとつて行かなければならないというようなそういう政策というものは、この際に転換をすることなしには、日本経済の拡大された形における安定というものなり発展というものは、あり得ないということが世間一般の通論になつて来たのではないだろうか。そういう考えから申しますと、この超均衡予算というものを依然として踏襲せざるを得なかつた理由というものは、これがもつと掘り下げられて考えて行かなければならぬと私は考えるのであります。その事実がやはり国民にはつきり知らされて行かなければ、依然としてマンネリズムに陷つて、いわゆる従来の過去約二箇年間の財政政策というものを取返すあるいは変革する好機を失うものだと私は実は考えるのであります。従つて池田さんが先ほど来インフレの要素はいろいろの方面にある、こういうことを言われておりますけれども、その問題をもう一ぺんはつきりとひとつ考えを願つて、あなたが今度の超均衡予算をとらざるを得ないと考える理由を、ここに明らかにしていただきたいと思うのであります。
  438. 池田勇人

    ○池田国務大臣 超均衡予算という言葉があるのでありまするが、これは程度問題だと思います。昭和二十四年度の予算のように債務償還もし、インベントリー・フアイナンスもやるという予算は超均衡予算と言い得るかもわかりません。また今年度の予算のようにインベントリー・フアイナンスは二、三の会計にとどめまして、債務償還を主としてやつて行くというのも超均衡予算と言い得るかと思います。一昨年昭和三十四年度の債務償還並びにインベントリー・フアイナンスが千五百億円程度に上つておつたと思います。しこうして今年度の予算はインベントリー・フアイナンス並びに債務償還が昨年よりも減りまして、千億円程度になるのではないかと思います。この超均衡予算につきましての是非の議論はございましようが、これは国民の耐乏によりましてあのインフレをとめる唯一の最も力ある施策であつたのであります。しこうして私は六月に向うから帰りまして、今の日本経済では一般会計からの債務償還はしない。インベントリー・フアイナンスにつきまして当初予算、朝鮮事変を入れない場合におきましては、御承知の通り貴金属特別会計等の繰入れの問題も一応やめました。しかしその後の情勢によりまして、やはりこの際相当の減税をするとすれば、片一方におきまして通貨の増発の原因となるものに対しまして、政府としてもある程度の手を打つておかなければならぬと考えまして、インベントリー・フアイナンスを今計画いたしておるのであります。しこうして来年度におきましては債務償還並びにインベントリー・フアイナンスがどれくらいになるかという問題が問題になりますが、それは一昨年二十四年度の千五百億円、今年度大体千億円、こういう点からお考えくだされば、私がインフレの要因を押えて、しかもまた減税をして行つて自立経済の達成に邁進しているということがおわかりになると思うのであります。
  439. 勝間田清一

    勝間田委員 しかも経済が一定に安定するという、安定したという根拠の上に立つて、安定から復興へ行くということがあなたのこの前の演説の中心ではなかつたかと思う。またそれがあなたのお考えではなかつたかと私は思うのであります。それで一面においてはインフレの懸念を押えながら復興に行くというお考えのようでありますが、ところが一つは私どもの考えねばならぬ事柄は、このインベントリー・フアイナンスというものを單なる一つの外為の運転資金というように考えてはならぬような感じかいたすのであります。そこにはまたもう一度、早く言えば、予備的な性格を持たして行こうということがあるのじやないかと私は考えるのであります。しかしながら今日において真に安定したということでありますならば、こういう予備的な予算というものは、とるべきでなくして、むしろやはり正常な予算に組み入れ得るもののみがそこに計上さるべきであると考えるのであります。今度の百億の問題についてはいわゆる予備的な性格を持つていると考えるのでありますが、いかかでありますか。
  440. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予備的な金をとつておくというつもりでやつているのではございません。予算の説明に書いてあります通りに、大体私の見込みは十一億四千万ドル程度の外貨の収支を見込みまして、来年の三月末におきます外為会計への資金不足を一般会計から補おうといたしているのであります。しかして来年度の予算におきましても、予備的という考え方は私は持ちたくない。もしそうだとすれば、それはほかの方で予備金として計上すべきものであつて原則といたしましては大体貿易の見通しをつけて考えて行くべきだと思つております。
  441. 勝間田清一

    勝間田委員 しかし今までもしインフレの懸念がありとすれば、それは国家財政の上における赤字公債とかいつたような形におけるインフレの懸念というものが重大なものであつたと私は思うのであります。しかし今日やはり当面している問題といえば、御案内の通りに輸出入の関係から出て来る、いわゆる資金的な面から起るインフレの懸念というものがあろうと思う。結局資金的な面から来るインフレの懸念というものは三面においては貿易政策と関連をし、他面においては経済政策一般、特に生産政策というものから関連を持つていると私は思う。従つて財政的な考え方なりあるいは通貨の面の考え方というよりも、私は産業政策自体がほんとうに健全であれば、あるいは貿易政策がそれに裏づけされれば、ほんとうの意味でインベントリー・フアイナンスが必要であるかもしれぬ。しかしながら今日における貿易、特に輸出貿易に対する政府政策というもの、あるいは先ほど聞いておりますると、通産省を中心とする日本産業の建設計画なり、あるいは自立態勢の確立なり、いろいろの問題について私は非常に脆弱な面が現われていると思う。この面に最大の努力を拂うのが中心なのであつて、私はその面がいたずらに、早く申しますれば、軽視されて、依然として財政だけでインフレを押えて行こうという形のものが、これが今後の非常に大きな誤りをなすのであろうと私は考えるのであります。その意味におきまして、現吉田内閣の全財政政策というものを見ますと、私はそこに統一ある施策というものがないような感じがいたすのでありますが、この点から今度の百億円のインベントリー・フアイナンスというものを計上せざるを得ないところに追い込まれているのではないかと考えるのでありますが、池田大蔵大臣はいかにお考えになりますか。
  442. 池田勇人

    ○池田国務大臣 インフレの要因を排除することは、政府はもちろんのこと、民間におきましてもお考えを願わなければならぬ問題であるのであります。しかして今回百億円の外為運転資金の増加をいたしたのは、計画上いかに輸入の促進をはかりましても、なおかつこういうふうに相なるのであります。大体四月並びに九月の輸入は、外貨の支拂いが一億七千万ドル程度であつたのであります。しかして輸出の方は四億五、六千万ドルに相なつております。その差額をわれわれはできるだけこの年度内において調整をはかろうといたし、——三月は輸入をうんと多く計画いたしましてなおこういう状況であるのであります。御承知の通りに、世界の物価高騰その他いろいろな気構えから、世界市場は一時バイヤーズ・マーケットであつたのが、徐々にセラーズ・マーケットになりつつあるのであります。ことにドルとボンドのコンヴアートも十分でない場合におきまして、なかなか輸入の促進も思うにまかせぬ場合が多い。そこで私は来年度におきましてはある程度のいわゆる輸出増進によりまする運転資金が必要であるということを考えておるのであります。
  443. 勝間田清一

    勝間田委員 そこでひとつ横尾通産大臣に、今の池田大蔵大臣のお考えの裏づけとして、私は貿易政策をお尋ね申したいと思う。今各四半期別の輸入計画というものがそれぞれ公示されておるわけでありますが、これが実際上どの程度の現物輸入になつておるか、その率をお示し願いたいと思います。
  444. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 データでありますから、政府委員をして間違いなく答弁いたさせます。
  445. 小室恒夫

    ○小室説明員 御承知の通り四半期別の外貨の輸入の予算は、これを基礎といたしまして輸入の公表を行います。この輸入の公表を基礎といたしまして外貨割合をなす物資、あるいは最近のように自動承認制でもつて自由に輸入を認める物資等々がきまつて参るわけでございます。そこで一月ないし三月の予算につきましては、これは現実の輸入の計画でございますが、七千四百八十万ドルを公表いたしました。予算といたしましては一億一千七百万ドルを計上したわけでございます。その間に四十三百万ドルの差額がございまするが、これは今年一月から貿易が民間輸入を許されまして、第一回目の外貨予算でありました関係上、当初見積りましたスターリング貨の収入の見積りが思うようにまかせなかつたということのために、やむを得ず残額が相当額出たわけでございます。また四月ないし六月の期間につきましては、当初の予算は一億三千五百万ドルでございましたが、さらに追加予算をいたしまして、合計におきまして一億七千七百万ドル最終の予算を編成しております。それに対しまして、ほぼ九割方の一億五千九百万ドルというものを輸入公表いたしております。残額はわずかに一千八百万ドルでございます。またさらに朝鮮事件後の輸入促進の重要性の認められました七月ないし九月の外貨予算におきましては、当初の予算は二億二千二百万ドルでございましたが、数次の追加予算によりまして、最終的には四億四百万ドルというものか外貨予算として計上せられました。このほかに別途に長期の契約を許すための外貨予算が一億二千万ドルほど計上せられております。この四億四百万ドルに対しまして、三億九千八百万ドルの輸入公表が行われたのでございます。ほとんど全額の輸入が現実の輸入計画として含まれ、それに基いて外貨割当やら輸入の承認が行われているわけでございます。さらに十月ないし十二月の最近の期間につきましては、三億六千八百万ドルの原予算に対しまして、追加予算が若干計上せられまして、十一月二十日現在におきまして三億九千三百万ドルの最終予算になつております。それに対して三億四百万ドルが公表せられまして、十一月二十日以後において若干の公表の追加がございます。数字についての御説明はこれで終ります。
  446. 勝間田清一

    勝間田委員 来年の一—三月はどのくらいになりますか。
  447. 小室恒夫

    ○小室説明員 来年の一—三月は目下予算を編成中でございます。数字はただいま申し上げられません。
  448. 勝間田清一

    勝間田委員 そこで通産大臣にお尋ねを申したいと思うのでありますが、最近の諸外国の事情というものは非常な違いを来しております。特にアメリカなりあるいはその他の国々、先ほど私が総理大臣に申した通りに、いろいろの国々でいろいろの輸出制限というものを開始されました。これの日本経済に及ぼす影響というものも私は軽視できないと思う。一体これに対する対策を日本では考えられることができるかどうか。これをひとつお聞かせ願いたい。
  449. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまのお話はごもつともなことでございます。実は御存じ通りに、原料資源が非常に少いのでございまして、この原料資源の、ことに軍需用になるようなものは輸入がなかなか困難なことはお説の通りでございます。それでありますから極力自動承認制などを利用いたしまして、民間業者に対してこれの買付を極力願つておるのであります。今のところはそのようなことでありまして、最近に通商官を三名アメリカから濠州までまわらせまして、向うの状況をよく調査し、こちらの希望も向うへ申し述べるようにしたいと考えております。
  450. 勝間田清一

    勝間田委員 通商官を置かれるということでありますが、そういう問題ももちろん重要な問題に違いありませんけれども、現在やはり心配しているものは、私は、通産省にあろうかと思う。こういうものか今度は輸入がとまるものがあろうかと思います。たとえば綿花の問題も第二次修正等で若干の修正は行われたようでありますけれども、こういう綿花を一体どうするか。また日本の鉄の生産に対する需要というものがあろうと思う。その場合において一番重要な問題はスクラツプの問題である。最近フィリピンその他は輸出禁止まで行つた。そのスクラップを確保して日本の鉄の生産額を維持して行く上においてどうしたらいいか、市場をかえて行くなり、あるいは国内態勢がそういう問題を解決して行くという問題もあるでありましよう。またその他米などもそうかもしれません。いろいろ問題がここに考えられる。個々の日本の産業の自立再建の上に必要な物資もありましようし、民生安定のための資料もありましよう。早く言えばこの小さな島国に取残された日本は、これらの事実に処して考え方というものを確立して行かなければ、私は前途は非常に不安であると思う。しかも最近の世界情勢などを考えてみましても、あながち楽観を許さぬものがある。これらの輸入確保に対して施策があつてしかるべしと考えるのでありますが、これについての通産大臣の経綸を伺いたいと思うのであります。
  451. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 ただいまの資源の買付、ことにスクラップの問題が出ましたが、スクラップは実を申しますと、来年度中は辛うじて在庫品等で間に合うのでございますけれども、その次に対しては非常に不安でありますので、私は琉球近辺その他のところに沈船がたくさんありますから、こういうものの引揚げ解体というようなことももくろんで、その筋に交渉したいと思つております。そうしてまた国内の戰災を受けたような工場のスクラップの回収も必要かと思います。それから鉄鉱石その他に関しましては、在来買つておりましたフイリピン等の原産地を拡大いたしまして、あるいは南阿であるとか、最近にはマレーがよく入つております。その他粘結炭にいたしまして、も、お話のように非常な不足であります。しかし製鉄業の改良に対して酸素製鋼をやるか、あるいは重油を使うとか、そういうようなことで粘結炭の多少の節約をして、できるだけそういう不足材の代換をして行きたいという考えで目下検討中であります。また買付のむずかしいものに対しましては、実は先般来省内におきましてこれが対策委員会をつくりまして、極力その方に力を盡すようにやりつつあるのでございます。しかしこれははなはだむずかしい問題でありますので、ぜひこの目的を達するように努力をしたいと考えておりますから、さよう御了承を願いたいと思います。
  452. 勝間田清一

    勝間田委員 安本長官にお尋ねしたいのであります。こういつた一つの輸入計画、特に最近の事態に即する輸入計画、これをさらにもう少しつつ込んでお話願いたいと思います。その安心感がやはり日本のインフレに重大な関係を持つておるのでありますから、ひとつ御発表を願いたいと思います。
  453. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えします。ごもつともでありますが、政府におきましては七—九の外貨予算を組む当時から今日あるを予想しまして、国民生活に必要なる原綿の確保とか、あるいは産業復興に必要な鉄鉱石、粘結炭というようなものの確保に対しまして、早期繰上げ輸入と申しますか、できる限りこれを早く輸入するような手続をとりまして、特にそれがための外貨予算を増加して対処したのであります。大体今のところ、お話のように世界的な情勢からいたしまして、鉄鉱石あるいは粘結炭等に対して、御懸念の向きもあるようですけれども、今日までのところは、だんだんと契約をしておるものが入りかけております。ことに今ヅングンの鉄とかいろいろありましようが、今度御承知のように新聞に発表しましたように、ようやくにしてポンド地域における協定成立いたしまして、これは従来は五千万ポンドでありますが、どうしても南方地域における関係において、わが国が貿易輸入の関係を決済すべきものが多々あるのであります。そういう面につきまして今度懇請したのでありますが、幸いにして八五%増額して御承知のような数字が出て参り、約九千四、五百万ポンドになりますが、この手続ができますと、私どもの方においては非常に便利になると考えます。また重要な農業原料である燐鉱石だとかカリ肥料につきましても、今まで自動許可制になつておりませんで、アメリカ本国におけるフロリダの燐鉱石を早く入れなければ困るのでありますが、幸いにして硫安の生産量は非常に高まつておりまして、問題は過燐酸であります。幸いにしてアメリカ自体における自動許可制もできました。従つてフロリダの燐鉱石は自動許可制で契約を進めて行けば入るような形になつております。またカリの問題につきましては、御承知のように西独、スペインが問題ですが、多い方面は東ドイツにある。協定貿易で非常におかしな地域でありますが、自由なドルで買うことをある程度認めてくれるようであります。これは一、二の例でありますが、とにかくお話のごとき点が一番心配でありまして、私どもはできる限り早く、いろいろな関係でとざされないうちに早く繰上げて輸入させよう、それについては必要なものについて品目をきめてそれぞれ手配はいたしておるのでありますが、なお今後もこの点は努めて行きたいと思います。
  454. 勝間田清一

    勝間田委員 輸出を非常に振興するということはもちろん必要であるし、また十数億ドルまで持つて行かなければ、日本自立態勢はできないということもわれわれはよく承知しておるのであります。しかしながら私は同時に現在のような輸入の非常に困難な時代におきましては、輸入ができないからというので、国内の生産なりあるいは産業なりを犠牲にしてまでも輸出する必要があるかどうか。あるいは諸外国が現在のように買付競争を行つておる時代におきましては、ある物については輸出統制ということさえ必要になつて来るのではないか。このいわゆる輸出統制というような面についての安本長官のお考えを聞きたいと思います。
  455. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいまのところ御心配のような点について、すべてに輸出統制をするという段階に至つておりません。幸いにして今までの輸出が非常に伸びて、今後このままで輸入が入らなければ非常な心配があると思いますけれども、一番問題は非鉄金属なり鋼鉄なりの点がきゆうくつであります。あるいは非鉄金属等にいたしますと、場合によつては輸出制限などの問題を考えなければならぬと思つておりますが、ただいまのところは全面的にはまだその必要はないと思つております。お話のように私どももできるだけ力を入れて需給についてバランスをとることにいたしまして、一致してやつております。これは先ほど通産大臣にお話がありましたが、予算関係におきましては、外貨資金の一月から十二月までの総計九億何千万ドル、その他多少ガリオアが入つておりますけれども、九月末現在で六億三千万ドル入つておりまして、かなりいい成績であります。しかしこれからは商業資金でありますから、今後どうなるということが問題でございますが、九月末現在でそうでありますから、十、十一、十二月となると非常に苦しい事態であります。外国がだんだん出し澁るということはありますけれども、品物によつては、かなり私は入ると思う。従つてもう少し輸入の状況を見、市場の状況を見、かつまた品目によつては民需物資をどういうふうに圧迫するかということをいろいろ考えて制限すべきであつて、わが国は外からほしいときでありますから、日本がそれに対してあわててつまらぬことをやつて、入れてもらえぬことになつても困ると考えております。
  456. 勝間田清一

    勝間田委員 かなり輸入を楽観視されておるようでありますが、楽観視するということになりますと、かえつて予算の面ではインベントリー・フアイナンスその他のものは必要がなくなるということになるかもしれません。この点は、重要な問題を含んでおると思いますけれども、しかし羊毛などを考えてみましても、羊毛というような面では、たとえば三十二万俵の輸入計画を持つてつて、今度のこの期に大体十二万俵ですか、輸入計画というものを持つていらつしやる。しかし最近のアルゼンチンとか、ニユージーランドとかあるいは濠州とかの一つの動向というものを見ますと、必ずしも楽観は許せない、そういうことになつて参りますと、やはり国内における態勢をととのえると同時に、輸入促進をはかる両面の問題を私はやつて行かなければならぬと思うのであります。ところが最近の政府のやり方というものを見ると、何でも統制を撤廃すればいいのだ、あるいは自由主義にすればいいのだ、民営にすればいいのだ、そういう考えだけにこだわつておると私は思う。ことに現実の事実というもの、特に世界の大きな動きというものに対して、私は現在の自由党内閣の持つておられる思想というものは、あまりにイデオロギー的であると考える。むしろ現実に即して統制するものは統則するという形で、そうして国内の生活を守るなり、あるいは復興用の資材を守るなりという道をとるべきだと思う、この点について、羊毛の問題については通産大臣に、それからもう一ぺんそのお考えについては安本長官にお伺いしたいと思う。
  457. 周東英雄

    ○周東国務大臣 なるほどお話のように羊毛についてはかなり輸入に対してきゆうくつな状態にあります。しかし羊毛というものの持つ性格といいますか、国民に対する需要面というものは、十分考えて対処したいと思つております。今速急にお話のような点に行く必要はないと私は思つております。決して輸入を楽観はしておりません。ただ、今から悲観をするには当らないということは、最近において、ようやく外貨資金が七月以降大体において十二月まで急激にふえ、各種の手続も終つた、この行き方は見てやらなければならぬと思う、大体七から十二までにおいて約八億ドル、それから先物契約を合せて九億ドル強の外貨資金が来ておる。しかもそれに対しては必ずしも楽観しておりません。しかし先ほど中曽根さんの質問に対しても御答弁いたしましたように、今までのように一・四半期ごとに受取る金額に相応して、輸入を許可するというような行き方、あるいはまたどの国から何をどのくらいの金額までという一つ一つの制限を受けて、許可しておつたという形はすつかりなくなつた、そこでどんどんと早く先物契約もやつてもらうというところに、ある程度戰前の輸出、輸入の関係における自由闊達な迅速な処置ができることになつておるということは見ていただきたい。しかし一面国際情勢がありますから、全般的に何もかも十分とは思いませんが、それはそれといたしまして、万一の場合を考えつつ、対処はいたしておるということは申し上げられます。また今お話のように、何でもかでもはずすという気持は持つておりません。自由党といたしましても、政府といたしましても、すべては主義の問題において仕事はいたしません。日本の現在置かれている環境と、経済の実態に即して、手を打つことはいたします。従つて綿におきましても、大体は需給関係がよければ、ことしの六、七月ころにははずすはずであつたのであります。しかしいろいろな国際状況から見まして、綿におきましては統制は残してあります。こういうようにとにかく弾力性は持ちつつ、原則的には自由経済に復帰したいと思つております。しかし何もかもその当時の情勢を考えずに、処置はいたしませんということを申し上げておきます。
  458. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 お答えします。羊毛については非常に心配がされるのでございます。現在クリスマス前に買いつけなければならぬのが二十七万俵ありますのに、現在買いつけておりますのが十九万俵ばかりであります。あと七、八万俵ばかりが今度の日英通商協定などがありましたので、あれで幾らか買いつけられはせぬかと希望いたしております。かつまたある程度のスフのまぜる率を上げて対処して行くことも考えなければならぬというふうに考えております。
  459. 勝間田清一

    勝間田委員 どうも現在の操業度を維持するにさえ困難な状態のもとにおいて、やはり羊毛の輸入などについては、もつとほんとうにはつきりしていただきたいと私は思うのであります。なおいろいろお尋ねしたいことも山ほどこれからあるわけでありますけれども、時間もございませんから、一応これで打ち切らせていただきまして、明後日から続行させていただくことにいたします。
  460. 小坂善太郎

    小坂委員長 この際、御報告申し上げることがあります。明十二月一日は、補正予算に関しまして、参考人より意見を聽取することになつておりますが、さきに参考人の選定につきましては、御一任を願つておりましたので、各界に連絡いたしましたところ、次の通り御出席をいただくことになりましたから、ここに御披露申し上げます。学識経験者として一橋大学教授山田雄三君、金融界より復金理事長工藤昭四郎君、税制問題については勧銀取締役会長山田義見君、産業界から都商事株式会社社長寺尾一郎君、地方団体代表として茨城県知事友末洋治君、なお農業関係より全国農業連盟委員長小林慧文君、労組代表として日教組委員長岡三郎君、以上七名を参考人として選定いたしましたから、御了承を願います。  本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より開会いたし、まず参考人の意見を聽取し、その後に質疑を続行いたします。これにて散会いたします。     午後五時十八分散会