○北澤
委員 私は貿易の問題を中心としましてまず
周東長官の御所見を伺いたいと思うのであります。
今日、日本が当面しておりまする最も大きな問題は、何と申しましても、講和條約の締結と日本の経済自立の達成であろうと思うのであります。いかに講和條約を結びましても、日本の
政治上の独立と日本の安全保障を確保しましても、経済の自立がなければ、日本の完全な独立を確保し得ないのであります。現在アメリカは西ヨーロツパの国に対しまして、いわゆるマーシャル案によりまして経済上の援助を與えておりまする結果、西欧各国の経済については、アメリカはいろいろの点において指示権を持
つておるわけであります。どうしても日本が経済上の自立を達成しなければ、講和條約を結びましても、日本がいろいろな点で外国から制約を受けるということはやむを得ないのであります。そういうわけで、私は講和條約の締結と経済自立の達成は、これは一つのものであるというふうに考えておるわけであります。この間の総理
大臣の施政方針演説並びに大蔵
大臣の財政演説の中におきましても、日本の経済の自立の点につきまして強調せられておりますことは、私はまことに同感であります。そこで日本の経済の自立の問題でありますが、日本は御
承知のように、終戰以来、今日まで米国から約二十億ドルの経済の援助を受けておるわけであります。いわゆるガリオア資金とか、あるいはエロア資金というような形におきまして、この五年間に約二十億ドルの経済上の援助を受けておる。これによ
つて今日の日本の復興がもたらされるわけであります。ところがアメリカにおきましては、本年七月から来年の六月に至りますところの一九五二年の会計年度におきまして、アメリカの歳出は約七百億ドル、そのうち国防費が五割でありまするが、この多額の歳出をまかなう
ために、米国は五十億ドルの増税を断行しようとしておりますが、それでもなおかつ百五十億ドル以上の赤字が残
つております。そういう点から申しましても、アメリカにおきましても、海外に対する経済援助をだんだん減らして行こうというふうな空気に
なつておりまするところへ、過般のアメリカの中間選挙におきまして、共和党が大勝したという結果、この対外援助を再検討すべしという議論は、アメリカにおきましては、ますます強く
なつておるようにわれわれは見ておるわけであります。もちろんアメリカは、外国に対しまする経済上の援助はだんだん減らしましても、一面におきましては軍事上の援助、これはますますふやそうというふうに考えておるように思われます。特に大西洋條約参加国の軍備を拡張する
ためには、どうしてもアメリカが軍事的性質を持つた経済援助をしなければいかぬということで、アメリカの援助のもとに、西欧各国の軍備拡張が大々的に行われる趨勢に
なつておるわけでありますので、結局私は、アメリカの諸外国に対する経済上の援助というものは、量的にも質的にも、経済援助は今度軍事援助にかわる、こういうふうに量的にも質的にもだんだんかわ
つて来つつある状況にあると思うのであります。そういうわけでありますので、日本はいつまでもアメリカの経済援助に期待をかけておることはできないわけであります。どうしても日本経済の自立をなるべく早くはからなければならぬということは、いまさら申し上げるまでもないのであります。ところが過般の
朝鮮動乱を契機としまして、世界の経済に大きな変化が来ました。特に世界全体におきまして、先ほど申しました軍備拡張の空気が非常に高ま
つて参りました結果、従来の買手市場というものが、今度は売手市場になりまして、従来日本が非常に心配しておりました日本の輸出増進という点も、今度は日本の輸出が非常に増進されるというふうな空気に
なつたわけであります。従いまして、
朝鮮事変以来の特需の状況あるいは一般の輸出の増強というのが、日本の経済の自立をはかるのに非常に都合よく
なつたわけであります。従いましてわれわれは、遠からずして日本の国際收支、国際貸借というものはバランスをとるようになりまして、ここに日本経済の自立が達成されると思うのであります。そこで一つ問題なのは、過般アメリカのグレイ
委員会がレポートを出しまして、特に
朝鮮動乱以来の日本の経済が非常によく
なつて、そして今の
状態では明年の中ごろには、日本の国際收支はバランスがとれるようになる。従
つて日本に対するアメリカの経済援助というものにつきましても、愼重に考え直さなければならぬというふうなことが、このグレイ
委員会のレポートにも出ておるようであります。そこで問題は、こういうふうに日本の経済自立の問題につきまして、グレイ
委員会のように楽観していていいかどうかという問題であります。どうも私どもの見るところでは、このグレイ
委員会の報告のように、楽観はできないのではないかと見るわけであります。この間ドツジさんが日本に到着しましたときに出しました、あの声明書によりましても、この
朝鮮動乱による日本の景気というもの、特に特需の景気というものは、これは一時的な現象であ
つて、決して楽観してはいかぬというふうに書いてあります。それからまた二、三日前のニユーヨーク・タイムズの社説を見ましても、グレイ
委員会の報告は楽観に過ぎるというようなことが出ておるわけでありまして、私どもの考えでは、来年の半ばにおきましては、日本の国際貸借のバランスがとれて、そうしてアメリカの援助もなくてよろしいというふうな
状態になるとは考えられないのであります。これに対しまして、安定本部の
周東長官はいかにお考えに
なつておりますか、この点を伺いたいと思います。