○門司亮君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております
地方公務員法案に対します私どもの修正の案を
提出いたしまして、その
趣旨の説明をいたさんとするものであります。最初に修正の案文を朗読いたしまして、後にその
趣旨を申し上げたいと思うのであります。
地方公務員法案の一部を次のように修正する。
(1) 第八條第一項第十一号を第十二号とし、第十号の次に次の一号を加える。
十一 協定に関する勧告についての
職員団体の
要求を審査し、及び必要な勧告をすること。
同條第二項に次の一号を加える。
三 協定に関する勧告についての
職員団体の
要求を審査し、及び必要な勧告をすること。
同條第三項中「第九号及び第十号並びに」を「第九号から第十一号まで及び」に、同條第七項中「第九号及び第十号」を「第九号から第十一号まで」に改める。
(2) 第三十六條第二項中「左に掲げる政治的行為」を「勤務時間中又は地方公共団体の庁舎若しくは施設において第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をしてはならず、また、
職員は、これらの目的をも
つて第四号に掲げる政治的行為」に改める。
(3) 第五十二條第三項中「(以下本節中」を「(この
法律において」に改める。
同條第五項に次の但書を加える。
但し、地方公共団体の長によ
つて認められ又は條例によ
つて定められた條件又は事情の下においては、第五十五條の規定により認められた行為をすることができる。
(4) 第五十五條の見出しの「(交渉)」を「(交渉及び協定に関する勧告の
要求とに改める。
同條第二項中「申合せ」を「協定」に改める。
同條に次の四項を加える。
4
職員団体は、第二項の規定により結ばれた協定を当該地方公共団体の当局が履行しないと認めたときは、人事
委員会又は公平
委員会に対して、当該地方公共団体の当局にその協定を履行すべき旨の勧告をすることを
要求することができる。
5 前項に規定する
要求があつたときは、人事
委員会又は公平
委員会は、事案について口頭審理その他の方法による審査を行い、その結果に基いて、当該地方公共団体の当局に対し、必要な勧告をしなければならない。
6 第四十八條の規定は、前二項の場合に準用する。
7 地方公共団体の当局は、正当な
理由がなくて、第一項の規定による
職員団体との交渉を拒んではならない。
(5) 第五十七條中「
職員のうち」の下に「、現業の機関(事業その他の企業を含む。但し、地方
財政法(
昭和二十三年
法律第百九号)第六條に規定する公営企業を除く。)に従事する者で、管理的又は監督的地位にある者及び機密の
事務を取扱う者以外のもの、單純な労務に雇用される者、公立学校の教
職員(学校教育法(
昭和二十二年
法律第二十六号)に規定する校長、教員及び
事務職員をいう。)その他」を加える。
(6) 第六十一條第四号を削り、同條第五号を第四号とし、第六号を第五号とする。
(7) 第六十二條中「第六号」を「第五号」に改める。
(8) 附則第一項中「第六号」を「第五号」に改める。
(9) 附則第二十項中「(
昭和二十三年
法律第百九号)」を削る。
以上が、私どもの
提案いたしました本
法案に対する修正の案文であります。
私は、今朗読いたしました各條文についての一応の修正の
意見を申し述べておきたいと思うのであります。八條中に、協定に関する勧告についての
職員団体の
要求を審査し、及び必要な勧告をする、ということを規定いたしましたのは、五十五條の修正において協定をすることができるということを決定いたしますると同時に、人事院に対しまする
労働者の
要求を提訴することのできる規定を設けて参りましたので、必然的に第八條に規定されておりまする人事
委員会の職務の
範囲をここに規定する必要ができて参りましたから、かく修正をいたしたのであります。
さらに第三項の協定に関する問題は、これは当然公平
委員会等においても
同一の
趣旨が考えられて参りまするので、この條項をさしはさんだのであります。
次に第三十六條に掲げてありまする問題は、
政府原案によりますれば、地方公務員の政治的活動というものは全面的にこれを禁止いたしておりまして、ただ投票だけが許されるというような、きわめて日本人として、ことに知識人として政治に最も関心を持
つておりまするそれらの
諸君の政治的活動を大幅に制限しようとするその行為に対しまして、われわれは公務員の中立性を考えまして、当然でありまする勤務時間中または公共団体の建物のうち等において特定の政党の運動をするということは、公務員の中立性と相関連いたしましていかがかと存じまするので、これのみを禁止するということにいたしまして、他の條項のすべては、
日本国民として與えられておりまする憲法に定めた基本的の人権をここに当然認めることが正しいと考えて、かく修正をいたして参つたのであります。(
拍手)われわれは、こういう観点に立
つて次の問題を検討しなければならないと思うのであります。
次に五十二條に「(以下本節中」とありまするものを、「(この
法律において」と改めて参りましましたのは、この五十二條の規定は特に重要な規定でありますことのために、われわれはこれを單なる
法律の一節と解せずして、この
法案全体にこれを考えることが至当と考えて挿入いたして参つたのであります。
次に五項の規定に但書を加えましたのは、これは
国家公務員法と同調する意味においてこの條項を挿入して参つたのであります。
次に五十五條の見出しに対しまして「(交渉)」という文字を「(交渉及び協定に関する勧告の
要求)」と改めて参りましたものは、原案におきましては、
労働者の基本的の権利であり固有の権利でありまする
労働三法の適用を大幅に禁止いたしておりまして、
労働者が持
つておりまする当然の権利が、そこに非常に大きく制約されて参
つておるのであります。このことは、單にわれわれはこの法の建前においてこれが制約されたということのみならずして、この地方公務員法のほんとうの
政府原案のねらいの最大のものがここにあつたのではないかと考えまするがゆえに、以下少しく
意見を申し述べたいと考えておるのであります。
地方公務員に対しまして、單に選挙による者、あるいはごく少数の特定の者、いわゆる議会の議決を経て選任するというようなきわめて特定の者だけが政治活動ができて他の公務員全体が政治活動ができないということにな
つておると思いまするが、よく
諸君に考えていただきたいと思うことは、今日地方の公共団体は、中央の官庁とその趣を非常に異にいたしておりまして、住民と密接不可分な関係にあり、かつ
内容は私企業とまつたく
同一の行為を行
つているということは、
諸君も御承知の
通りであります。私企業と
同一の事業に従事しておりまする者が、一方においてはみずからの地位の向上と、さらにみずからの
生活権擁護のために
労働者に與えられた
労働三法によ
つて保護され、一方においては、ただ経営形態が異なるということだけにおいて、同じ産業に従事し、同じ事業を営みまする者が、そのみずから持
つておる固有の権利を束縛されて、みずからの地位の向上と
生活安定のために
労働者の持つ基本的の人権が十分に発揚できないということは、
労働者にと
つてきわめてへんぱな行為であるということを、はつきりと知らなければならないのであります。(
拍手)
およそ日本の国において、能率の上らないものを、われわれはお上の仕事、お役所仕事としてこれを表現いたしておつたのでございまするが、このゆえんは一体どこにあるか。すなわち産業に従事いたしておりまする者あるいは公務に従事いたしておりまする者が、公務であるという建前の上において、多くの
労働運動、
労働活動が、みずからの
生活権を擁護することが制約される、みずからの力においてみずからの
生活権を擁護することができないという、この環境に置かれておりまする日本の従来の行き方というものは、
労働階級を卑屈にして、ただ時間だけを勤めればいいというような、きわめて
労働者として無責任な観点に追いやつたということは、御承知の
通りであります。今また再びこれを制約いたして参りまして、このすべての権益をと
つて、再び昔の官業の仕事、いわゆるお役所仕事というような状態が現出されて参りますならば、その場合に、一体だれが損をするかということであります。
地方住民は、今日非常に苛酷なる
地方税の徴收によ
つて真に血の出るような思いをし、あるいは差押え、競売等によ
つて親子心中をなし、あるいは首くくりをし、あるいは夜逃げをしなければならないというようなこの社会の悲劇を現出するまでに苛酷な税の取立てが行われております。その税金の上にすべての地方公共団体の施設は行われ、事業は行われておるものであります。その行われております事業が、お役所仕事というようなことにおいて、なおざりにされるようなことにな
つて参りますならば、地方住民の税金に対しまする観念は一体どうな
つて来るか。納めた税金が最も公平に、大幅に地方住民に還元されることこそが望ましい姿でなければならない。しかるに、これがまつたく没却されて、お役所仕事を再びここに現出して参りますならば、損をする者は地方住民であると同時に、またみずからの力において制約されてみずからの権利を、
主張することのできない
労働階級と地方住民がきわめて大きな損をするということにな
つて参りまするならば、一体この法の第三十六條の條項は明らかに惡法であると申し上げても決して過言ではないでありましよう。われわれは真に
労働階級の立場を思い、輿に住民
諸君の赤裸々なる気持をここに露出いたして参りまするならば、やはり働いております地方公共団体の、これらに従事いたしております、まつたく私企業と
同一の事業形態にありますものにつきましては、これを一般
労働者と同じような取扱いにすることが正しい理論であり、またそうでなければならないと確信いたしておるものであります。(
拍手)
さらにつけ加えて申し上げておきまするが、
諸君は、今日地方の公共団体が行
つておりまする、あのくみとりの作業に従事いたしておる者、あるいは道の清掃に従事いたしておる者、あるいは農耕に従事いたしておる者、あるいは川の渡船に従事いたしておりまする者が、地方自治法に定めておりまする都道府県知事並びに市町村長の代理的行為をなすということが、どこに一体発見できるか。これらの
諸君には、明らかに一個の労務者として、
労働者として
労働三法の適用をすることこそが、私は法の建前においては正しい理論であると申し上げなければならないのであります。(
拍手)われわれは、かくのごとき意味において、ここに規定いたしておりまするものを挿入いたして参つたのであります。
こういう状態下にありまする
労働運動に対して、これを大幅に制約いたしておりますることのために、この五十二條の規定の中に、
職員団体が交渉することができるという規定はございまするが、これは一方づいた交渉であ
つて、その理事者側に何らの義務づけをしたものはない。また交渉した者が申合せをするということの規定はございまするが、日本人の観念から申し上げまするならば、協定と申合せには非常に大きな隔たりがあるということであります。関係方南のサゼスチョンによりましても、協定あるいは申合せはいずれにも解釈できるような字句に相な
つておるということは御存じの
通りであります。従いましてわれわれは、少くともこの項におきましては、働いておりまする地方公務員の立場を考慮いたしまして、これに有利なように、当然これを協定と改めることが親切な行き方であり、また妥当でなければならないと考えておるものであります。(
拍手)これをことさらに中台せとして、日本人の通念からする、きわめて弱い話合いの形に追い込むというところにごの
法律を作成いたしました者の反動性が現われておるということを、はつきりと知らなければならないのであります。
われわれは、この協定を実行いたしますることのために、おのおのが申し合せをいたしましたその事項に対してはこれを忠実に履行するためにも、ぜひこれを協定と改め、そうしてその協定に対しまして、もし不履行の場合におきましては、人事
委員会に
職員組合はこれを提訴し、それの審査
要求をなし、さらに人事
委員会は、その審査に基いてその事項を当局者に勧告するという規定を定めなければ、一方づいてほとんどその申合せというような事項は履行されないであろうということを私は深く憂えるものであります。従いまして、われわれはその條項をここに挿入いたして参つたのであります。さらにこの條項に挿入いたしたものにつきましては、往々にいたしまして地方公共団体の理事者等がいろいろな難くせをつけて、
職員団体の
要求に応じない、交渉に応じない場合等がございますることを憂慮いたしまして、ここにわれわれは、その正当な
理由なくしてはそうしたことのできないような規定を設ける、同じ立場に立ちまする理事者と
職員組合との間の均衡を保つ上に、ぜひこういう條項を挿入しなければならないと考えておるものであります。
次に五十七條の規定でありまするが、五十七條の規定は、前に申しましたような現業に従事する者、私企業とまつたく同じような行為をいたしておりまする者に対しましては、特別の
法律をぜひ必要としなければならない。従いまして、本法にありまする、ただ單に特殊的事情のもとに働いておる者を別にするというような、あいまいな規定にあらずして、ここで現業並びに単純労務に服する者、さらに公立学校に奉職しておる教
職員に対しては別の
法律をも
つてこれを定めるという明確な線をぜひここに出しておかなければ、次の
法律制定の際に、それらのものがもし脱落するようなことがありまするならば、きわめてここに危険性を伴
つて参りますので、その規定を挿入いたして参つたのであります。
次に六十一條の四号であります。これは先ほどの
委員長の説明によりますると、公務員に対しましては罰則はないと申されておりますが、実は六十一條の四号の規定におきましては、寄附金その他金品の募集に関する罪にあ
つては三年以下の懲役または十万円以下の罰金に処するということが明記されております。従いまして、これは
政府も申されておりますように、もしこの
法案において公務員に対して罰則を設けないとするならば、この規定はぜひ削除しなければならないといたしまして、われわれはここに削除いたしているのであります。
以下附則その他につきましては條文の整理をしたにすぎないのでありますから、さよう御了承を願いたいと思うのであります。
われわれがかくのごとき修正案を
提出しなければならなかつたその
理由をさらに申し上げたいと思いきすことは、この
法案が保護法であるといわれておりながら、地方公務員に対します保護の規定はきわめてわずかであ
つて、その大部分が大体取締り規定であり、いわゆる
労働運動の高圧的抑制と、さらに政治的な大幅の制限以外の
何ものでもないということであります。(
拍手)
従つてわれわれは、どの点に対してはきわめて不満なので、もし
政府がほんとうに保護法であるという基底の上に立たれるとするならば、何ゆえに地方
財政の充実をはからないか。
現在、地方
財政委員会が
要求いたしておりまする――きわめて謙虚な立場に立
つて、みずから節約するものは節約するとして
政府に
要求いたしておるものは何であるか。
諸君も御承知のように、わずかに七百九十億の雑費の中から、地方公共団体は百分の五の節約をしておる。四十億をみずから節約して、なおかつ
負担することのできない、
政府の当然行わなければならない義務である――これは淺井人事院総裁が
予算委員会においてはつきり言
つておる。すなわち、
政府のべースが上るならば、この
政府の施策に応じて地方公共団体の公務員の
給與も上げることが正しいということを淺井人事院総裁は言
つておるではないか。
政府のこの施策において当然上げられて参りまするのが千円といたしましても、このべース・アツプによ
つて当然必要にな
つて参りまする四十三億円の財源と、さらに、たといこれが半月分に規定発しましても四十五億の手当の財源と、さらに
法律改正後において当然
負担いたしまする十六億と、さらに
補正予算に伴いまする当然の地方
負担である十九億と、合せて百二十三億の中で四十億を節約し、残りの八十三億だけはぜひ出してもらわなければ、地方の公共団体のこれらの
諸君の、地方公務員の越年資金ざらに
賃金の昇給ができないという、この切実なる願いを何ゆえに三十五億と限定して、八十三億を
政府はけつたのか。もしこの
法案において保護法というならば、
労働階級のこの切実なる願い、いわゆる
生活を擁護する
賃金、越年資金に対して一大斧鉞を加えた
政府は、明らかにこの
法案が保護法と言えた義理ではないということをはつきりと認識してもらいたい。(
拍手) 私は時間を制約されておりますので、さらに十分
意見を申し述べることはできませんが、
最後に申し上げたいと思いますることは、本
法案施行の筋目であります。本
法案施行の期日において、
政府の言
つておりまする保護法であるとするならば、その保護法であるべき人事委員の設定あるいはその他の規定をまず設けなければならないはずでありまするが、人事委員の決定、人事委員の研修等におきましては、これを八箇月後に譲り、さらにそれの実施は、地方においては一年六箇月あるいは二年後において実施するという規定を設けて、
労働三法の適用に対しまするところの抑圧と、さらに政治活動の禁止にのみ何ゆえに二箇月の期間をつけたかということであります。
政府はほんとうにこれが保護法であると言うならば、この規定は逆でなければならない。一方において保護法の制定をしないで、そういう設備をしないでおいて、ただ取締り規定だけを、しかも最小限度八箇月と規定してあるものが、その面だけを二箇月に規定したということは、そもそもその本心はどこにあるかということである。これを私は遺憾なく暴露するならば、おそらく
自由党の
諸君は、明年の春行われまする地方選挙に備えて、百三十万の地方公務員の政治活動を禁ずることがその目的であろうことを、はつきりと私は申し上げる。(
拍手)おそらく私の推察は……(発言する者あり)
諸君がやじるところによれば的中しておるものであるということを、ここに私ははつきり申し上げる。従いまして
本案は、
労働階級の
生活権を擁護するものにあらずして、
労働階級の地位の向上と、與えられた基本の権利と、雇用の権利を明らかに束縛し、剥奪し、さらに政治的権力を大幅に禁止いたしまして、
自由党の持つ反動性と、次の選挙を有利に闘う陰謀以外の
何ものでもないということを、私はここにはつきりと申し上げるのであります。(
拍手)
私どもがここに本
法案に対して修正の
意見を出して参りましたものは、ます根底から申しますならばいろいろな徹底した修正案を出すべきでありますが、現下の日本の情勢において、諸般の事情がそれを許さないとするならば、われわれのこの修正案は、われわれにと
つては最も消極的であり最小限度のものであるのであります。従いまして、真に
諸君が、
労働者の、地方公務員の地位の擁護と
生活権の擁護、さらに本
法案の
趣旨にありますようにこれが保護法であるとするならば、少くとも
諸君はこの修正案に
賛成すべき義務と責任があるということをはつきり申し上げまして、私の
提案理由の説明を終りたいと思うのであります。(
拍手)