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1950-12-07 第9回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月七日(木曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 田嶋 好文君    理事 猪俣 浩三君       鍛冶 良作君    北川 定務君       佐瀬 昌三君    花村 四郎君       牧野 寛索君    眞鍋  勝君       山口 好一君    大西 正男君       石井 繁丸君    田万 廣文君       上村  進君    梨木作次郎君       世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         警察予備隊本部         長官      増原 恵吉君         法務政務次官  高木 松吉君         検     事         (法務法制意         見第四局長)  野木 新一君  委員外出席者         議     員 田中不破三君         最高裁判所事務         総長      五鬼上堅磐君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      内藤 頼博君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      鈴木 忠一君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      吉田  豊君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十二月七日  委員飛嶋繁君辞任につき、その補欠として北川  定務君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月七日  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第二四号)(  参議院送付)  判事補職権特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第二七号)(参議院送  付)  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第三九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四〇号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第三九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四〇号)  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第二四号)(  参議院送付)  判事補職権特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第二七号)(参議院送  付)  検察行政及びこれと関連する国内治安に関する  件   請願  一 国民指紋法制定請願世耕弘一紹介)    (第三二号)  二 宇佐簡易裁判所権限乙号支部昇格の請    願(福田喜東紹介)(第五八号)  三 新冠村に法務局出張所設置請願(松澤兼    人君紹介)(第六一号)  四 燕町に登記所設置請願松木弘紹介)    (第二〇五号)  五 鳴門市に簡易裁判所並びに区検察庁設置の    請願眞鍋勝紹介)(第二〇七号)  六 法務局職員給与改訂に関する請願(佐藤    親弘君紹介)(第二六六号)  七 福島町に簡易裁判所及び検察庁設置請願    (田中不破三君紹介)(第三六九号)  八 前橋地方裁判所桐生支部権限甲号支部に    昇格請願長谷川四郎紹介)(第三七    〇号)  九 借地法の一部改正に関する請願小林運美    君紹介)(第四三八号) 一〇 宇佐簡易裁判所権限乙号支部昇格反対の    請願西村英一紹介)(第四四一号)   陳情書  一 浦和地方法務局等を現位置に設置陳情書    (第四五    号)  二 警察官ピストル射殺事件に関する陳情書    (第一七二号)  三 夕張町に簡易裁判所並びに検察庁設置の陳    情書    (第二三〇号)  四 浜松市における不当強制執行に関する陳情    書(第    二五八号)  五 裁判所書記官及び少年調査官給与引上げに    関する陳情書外二件    (第三二一号)     ―――――――――――――
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  検察行政及びこれと関連する国内治安に関する件を議題といたします。発言の通告がありますから、順次これを許します。大西正男君。
  3. 大西正男

    大西(正)委員 私は法務総裁並びに予備隊長官に御質問したいと思います。  昨日予備隊長官は、装備に関しまして——武器の点でありますが、他の委員の方のお尋ねに対して、カービン小銃以外には持つておらないという御答弁でありました。また法務総裁の御答弁も従来その通りでありますが、これはしかとさようであるかどうか、重ねてお尋ねしたいと思います。
  4. 増原恵吉

    増原政府委員 現在持つております装備は、武器としてはカービン銃だけであります。江田島で幹部訓練というのをやつておりますが、幹部訓練をやる際に機関銃操作を教えたということはあります。しかし部隊には機関銃は持つておりません。カービン銃だけであります。
  5. 大西正男

    大西(正)委員 予備隊固有装備として、予備隊が持つておる武器小銃だけである、但し機関銃使用したことが実はあるというわけであります。そこで従来の各委員お尋ねによると、小銃以外には持つておらないという御返答でありました。しかも委員各位お尋ねは、持つておるということを非常に厳重な意味で使つておられるのではなくて、訓練はどんな状態でしておるか、またどんなものを使つておるかという意味お尋ねであつたと思うのでありますが、これに対しては、従来は機関銃ということは一向お出しにならなかつたのですが、機関銃についてはただいま使つたことがあるという御答弁でありました。そこで予備隊装備として現在持つておるものではないけれども、他から拝借をして何か他の武器訓練使用しておる、あるいはまた武器ではなくても、武器模型のごときものを使用しておるというような事例は、機関銃以外はないのでしようか。これをお尋ねいたしたい。
  6. 増原恵吉

    増原政府委員 現在までのところ、訓練をいたしました分は機関銃カービン銃であります。機関銃訓練は、申し上げましたように、幹部訓練の中の一部分の武器の係の幹部訓練をしたので、ほかの者は現在のところ訓練をいたしておりません。
  7. 大西正男

    大西(正)委員 ほかの武器、あるいはこれに類する模型のごときものも、機関銃以外は使用もしておらないとおつしやるのでありますが、それではそのほかに武器あるいはその模型のごときものを使用しなくても、あるいは書類によつて使用方法を教えるということも可能であります。その武器を想像しながら、手あるいは足の操作を教えるということも可能でありますが、そういつた武器あるいはその模型というものを使用せずに、図上あるいは教科書のようなもので、そういうものの使い方を教えておるというようなことはないのでしようか。
  8. 増原恵吉

    増原政府委員 現在のところは、その他のものの訓練をいたしておりません。図解その他においてもやつておりません。また現在のところその他のものをやろうという計画も持つておりません。
  9. 大西正男

    大西(正)委員 朝鮮の戦局においては国連軍は非常な危機に面しておる。国連軍はすでに平壌を撤退しまして、戦略的な後退をしておる現状でありますが、聞くところによると、中共軍北鮮に侵入しておる教は五十万とも言われ、六十万とも言われ、あるいはけさの新聞でありましたか、百万近い中共軍が侵入しておるということを報道しておつたのであります。これに対して国連軍は二十万くらいだととりざたされておるのであります。こういう情勢下において、一体朝鮮事態はどのように進展するものであろうかということは、日本国民にとつて今日非常な不安と関心事になつております。新聞の報ずるところによりますと、米英両巨頭がこれらの問題に関連して会談をしておるわけでありますが、朝鮮を放棄しないということに意見が一致したというふうにも報道されております。しかし新聞の見出し以外の内容を読んでみると、われわれ国民として非常に重大な関心を寄せざるを得ないような報道がなされておると思います。きのうの新聞でありましたか、ロンドン五日発のAPによると、「万一、中共の圧力によつて国連軍朝鮮から撤退を余儀なくされても、国連軍は再び朝鮮へ進撃すべきである」と、アトリー首相トルーマン大統領が会見の結果意見が一致したということが報道されております。これによりますと、朝鮮は放棄しないが、そこを一応全面的に撤退する事態が発生するかもわからないというふうなことが、新聞だけを読んでおるわれわれとしては想像されるのであります。そういうことの可能性があるということが考えられるのであります。しかもマツカーサー元帥アメリカ本国に対して、朝鮮は撤退してはならない、撤退すべきでないという意見を送つておるというふうなことも聞いているのであります。これを逆に考えますと、アメリカ本国においては、朝鮮を撤退しろという意見が相当有力にある、そういう意見があればこそマツカーサー元帥が、それはいけないと具申しているのではないかというふうにも考えらるるのであります。またわれわれとしても、アメリカの子弟が東洋の一角の朝鮮で尊い血を流すということについて、アメリカ人がどう考えておるかということもひそかに想像されるのであります。かような事態は今後日本国民に重大な影響を与えるのではないか。ひるがえつてヨーロツパ方面を見てみますと、鉄のカーテン内には百個師団が待機していると言えば非常に誤弊がありますが、存在をいたしておる。これに対して西欧側の陸軍は十一個師か十二個師しかないというふうにわれわれは聞いておるのであります。一朝不幸な事態が発生した場合に、一体ヨーロツパの運命はどうなるであろうか。さような情勢下にある今日において、イギリス並びにフランスが東洋に力を注いでくれる余裕があるかどうかというふうなことも心配されるのであります。先般他の委員の方からも発言がありましたように、トルーマン大統領は談話を発表して、現在まだ橋を渡つておらない、しかし橋を渡るべき事態が発生したならば日本人使用ということも考慮される、その際に考慮をすればよいのだということを言うておりまするが、将来日本人朝鮮の動乱その他に使用すべき事態の発生する可能性が全然ないわけではない、可能性があるのだということになりはしないかと思われるのであります。こういうふうに考えて来ますと、そういつた橋を渡るべきときが発生する可能性のある今日におきまして、この警察予備隊なるものが、国連軍ないしアメリカの要請によつて日本の国土以外で行動するというふうな事態の発生する可能性がありはしないかというふうにも考えられるのでありますが、この点一体どういうふうに考えておりますか、御答弁願います。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま御質問の点につきましては、たびたびいろいろな機会において申し上げておりまする通り政府といたしましては、警察予備隊が海外において行動をしなければならないという事態はないものと考えておるような次第であります。
  11. 大西正男

    大西(正)委員 従来の御答弁通り政府としてはそういう事態が発生することはないという御答弁であります。そういう事態が発生することはないというお考えでありまするが、客観情勢日本政府をしてそれを余儀なくせしむると思いますが、それに対してはどういうふうにお考えでありましようか、この点をお尋ねいたします。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いかなる意味においてもさようなことはないというふうに考えております。
  13. 大西正男

    大西(正)委員 この点につきましては、これ以上お尋ねいたしましてもお答えにならないと思いまするし、また困難なことであろうと思いますので、これに関する質問はこれで打切りまするが、しかし法務総裁個人としては、相当お考えになつているべきはずだと思うのであります。日本国民が今日相当重大な関心を寄せている事件について、そうして国内治安にも影響する事件について、もし総裁個人として一顧だもお与えになつていないとすれば、政府治安に対する御配慮に信頼をしてよいものかどうか、そのことについて非常な心配が生ずるといわざるを得ないのであります。こいねがわくばこれらの点について十分にお考えをいただきたいと思うのであります。  次に国内治安に関しまして……。現在におきましては警察あるいは警察予備隊がこれに当るわけでありますが、そのほかに消防隊があるわけであります。国家非常事態が発生した場合、あるいはそれに近いような情勢下においては、消防隊警察とはどういう関係にあるか。また消防隊警察の補助としてどの程度使い得るようになつておるか、お尋ねしたいと思います。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 消防警察のために使うということは、原則的にはないわけであります。しかしながら、実際暴動その他の際におきましては、治安上から考えまして、一方におきまして警察のみによつてそれの鎮圧を行いますると同時に、心配されまする火災のことを考えまして、これに対して同時に並行的に警戒の措置をとるということは考えられるわけであります。かような際におきましては、十分に相互連絡をとりまして、そうしてそれぞれの分野において使命を果すようにすべきである、こういうふうに考えておるわけであります。
  15. 大西正男

    大西(正)委員 消防組織法第二十四条を見ますと「消防及び警察は、国民の生命、身体及び財産の保護のために、相互協力をしなければならない。」とあります。そこで国家非常事態が発生した場合、または非常事態宣言等に該当しなくても、その程度に至らないでも、警察力不足のために他の応援を求めなければならない場合を予期して、こういう規定があると思うのでありますが、今日の情勢は相当警察力の不足を告げつつあると言わねばなりません。先般の朝鮮人の騒擾に際しましても、現に西下中の検事総長が、警察力の強化以外にこれらに対処する方法はないということを名古屋で語つておられるのでありますが、こういう事態に対処するために、まず警察自体を強化することが必要でありましようが、さしあたつて突発事変に対して消防隊の力を借りるということを、今日考えておかなければならぬのではないかと思いますが、これに対しまして政府は現在、この規定に基いて実際の措置をどういうふうにされておるか。この点を伺いたいと思います。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在の制度といたしましては、通常の場合におきましては、消防警察はそれぞれ別個の指揮を受けることに相なつております。従いましてこの間におきましては、一個の指揮によつて全体を統一的に行動せしむることはできないわけであります。しかしながらこの両方が相互協力をいたしまして、一体的活動を可能ならしめることは、あらゆる意味におきまして適当なことでございますので、これにつきましては政府といたしましても、国家地方警察並びに国家消防庁におきまして、かような連絡につきまして平素より十分研究をいたしておるようなわけでございます。
  17. 大西正男

    大西(正)委員 平素から研究されておる結果をひとつ公表願いたいと存じます。これは法務総裁御自身からでなくても、ほかの方から御説明願つてけつこうであります。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま政府委員が参つておりませんので、参りましたら政府委員からお答えいたさせます。
  19. 大西正男

    大西(正)委員 次に燈火管制についてであります。九州その他で一、二回そういう事例があつたというお話でありましたが、この燈火管制は法的な根拠に基いてやつておられるのかどうか。この点をお聞きします。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回関西及び九州に行われました燈火管制は、軍の命令によつて措置いたしたものでありまして、その方法といたしましては、一定の区域に供給されます電源を遮断するという方法によつて行つたわけであります。しかしながら燈火管制の問題は、今後におきましても十分に研究を進め、必要なる際における措置を迅速的確になすようにする必要があると考えまして、ただいまのところ国家地方警察におきまして、そのようなことを問題として取上げ、研究をいたしておるような次第であります。何分にもこれは軍の方に非常に密接な関係のあるところでございまして、関係筋とも十分に連絡を保ち、その指導を仰がなければならぬ次第でございますから、内容につきましてはまだここで申し上げる段階にまで参つておりません。
  21. 大西正男

    大西(正)委員 それでは次にポ政令と普通の政令との関係についてお尋ねいたします。まず第一に、ポツダム政令なるものと普通の政令との一般的な差異といいますか、相違について伺います。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法規の形式といたしましては、ただ政令でございまして、双方とも同じでありますが、しかしポツダム政令を制定いたします際におきましては、その法律的な根拠といたしまして、これはポツダム政令であるという趣旨を明らかにいたして制定されております。その内容といたしまして規定し得る事項が、普通の政令でありますというと、本来政令として規定し得る事項、すなわち法律委任により、あるいは法律を施行するために限られた範囲事項でなければ規定ができないのであります。しかしポツダム政令におきましては、法律をもつて規定し得べきすべての事柄につきまして、現行の法律規定のいかんにかかわらず、必要なる規定をいたすことができるように相なつております。
  23. 大西正男

    大西(正)委員 そういたしますと、憲法に保障されている法律事項、こういうものについてもポツダム政令によりできる、こういう御答弁だと思うのでありますが、憲法七十三条の第六号に「この憲法及び法律規定を案施するために、政令を制定すること。」こういうことがありまして、法律事項についてはこの普通の政令によつて規定することはもちろんできないことだと考えるのでありますが、そういうように解釈してよろしゆうございますか。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 憲法七十三条は、政令を出し得る権能が内閣にあるということを明らかにいたした趣旨でございます。ポツダム政令もやはり七十三条の第六号の規定によりまして制定されるわけでありますが、しかしながらこれにつきましては特に法律委任がございますもので、法律をもつて規定し得る事柄までも規定できるこういうことに相なつております。
  25. 大西正男

    大西(正)委員 法律による委任というのはどの点でありますか。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政令というものは、今の七十五条第六号にあります通り法律を実施いたしまするために、法律によつて委任されましたる内容について、定めができることに七十三条第六号によつてつております。すなわち法律を実施するために必要な事項政令規定をいたすことになつております。そうしてポツダム政令はいかなる法律を実施するための政令であるかと申しますると、昭和二十年九月二十日の勅令第五百四十二号でありましたか、これは当時の憲法によりまして法律同等効力あるものと認められておるものであります。従いましてこのポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件、昭和二十年勅令第五百四十二号、この法規を実施いたしまするために必要がある場合においては、いかなる内容をも規定できる。こういうことに相なつております。その内容といたしましては、該勅令によりますと、「政府ハポツダム宣言ノ」受諾ニ伴ヒ連合国最高司令官ノ為ス要求係ル事項実施スル特ニ必要アル場合ニ於テハ命令以テ政要ノ定ヲ為シ及必要ナル罰則設クルコトヲ得」こうなつておるのであります。これによりましてポツダム政令によつて規定し得る内容がきまつておるわけであります。
  27. 大西正男

    大西(正)委員 従つてポツダム政令として連合国最高司令官要求に基いてポ政令として発するものは、法律事項を越えることができる。こういう御説明だと思うのでありますが、それはそれといたしまして、ポ政令でないところの普通の政令は、一体法律事項規定することができるかどうか、この点をお聞きいたしたいと思います。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一般政令日本国憲法第七十三条の第六号によりまして、日本国憲法及び法律規定を実施するために必要なる定めをするということに相なつております。従いまして法律規定を実施するための必要事項でありますから、法律を変更することができないことは、当然七十三条の第六号の解釈から出て来ることと思います。
  29. 大西正男

    大西(正)委員 法律を変更することができないのみならず、法律になくても一般国民権利義務に関する立法事項といいますか、法律事項といいますか、こういうものを政令規定することはできないと思うのでありますが、さように政府はお考えでございましようか。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 基本的権利義務制限にわたるというようなごとき事柄は、憲法法律をもつてむべきものであるというふうに解せられております。かようなる事項につきまして、政令をもつて定めをなすのは、ポツダム政令による以外にはないわけであります。
  31. 大西正男

    大西(正)委員 そこでお尋ねをいたしたいのでありますが、警察予備隊令ポツダム政令であることは明確でありますが、この警察予備隊令を施行するための警察予備隊令施行令というものは、ポツダム政令でないところの普通の政令だと解するのでありますが、その通りでありましようか。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは法律同等効力のありますところの警察予備隊令規定を実施いたしまするために必要なる規定をなしたる事例でございます。
  33. 大西正男

    大西(正)委員 普通の政令でありますか。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 普通の政令でございます。
  35. 大西正男

    大西(正)委員 そこで多少疑問が出て来るのでありますが、予備隊令施行令は、警察予備隊令三条三項及び八条四項に基いてこの政令が制定されておるのでありますが、この施行令の第十三条によりますと、第十三条の三項には、司法警察職員として職務を行う警察官のうちこれこれ云々という規定があり、そうして同じ第十三条の第二項によりますと、予備隊警察官司法警察職員として緊急逮捕ができるというふうな規定が、これに出ておるわけでありますが、一体この緊急逮捕ができるというふうなことを、普通の政令であるこの施行令委任をして、この施行令によつてさようなことを規定することができるのかどうか、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ポツダム政令は実質的に法律同等効力があるものでありますから、この予備隊令によりまして、委任をせられましたる事項につきましては、憲法七十三条第六号によりまして、必要なる委任に基いてその範囲規定を普通の政令においてなし得る。かように解釈いたしております。
  37. 大西正男

    大西(正)委員 ポツダム政令法律同等あるいはそれ以上の効力を有するからして、それが委任するところの内閣の出す普通の政令によつてこれを実施するためにあるならば、こういう規定国民権利義務に関する規定も、規定してよろしいというのでありましようか。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ポ政委任があればよろしい。こういう解釈をいたしております。
  39. 大西正男

    大西(正)委員 しからばこの十三条の第二項が、本来ならば国民権利義務に関する法律事項であるということは、お認めでありましようか。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは一応やはり立法事項解釈するのが適当であると思いますが、ただこの十三条の第二項におきましては、被疑者逮捕するという逮捕ということの法律的基礎は、刑事訴訟法において、すでに犯人または被疑者を、司法警察職員というものは逮捕できる、こういうことになつておるわけでありまして、この規定は、新しく国民権利義務制限したものにあらずして、司法警察官として逮捕できるものとして、予備隊警察官にもその権限があるのだ、こういうことを規定したわけであります。これは一般的な国民権利義務制限そのものというよりも、他の法律においてすでに制限せられておるところのその制限規定によつて、国家のいかなる機関がこれに当るかということを追加的に定め趣旨であります。これは法律上厳格に言えば新たなる制限とも見られますけれども、さような趣旨規定であると私どもは考えております。
  41. 大西正男

    大西(正)委員 ただいまの御答弁によりますと、刑事訴訟法によつて警察官なるものが国民権利義務に影響のあるところの逮捕その他の権限を持つておる、この十三条はその刑事訴訟法に基く警察官内容について、予備隊警察官もそれにあたるのだということを一応規定をし、そうしてその予備隊警察官については、一般警察官よりもその範囲制限しておるのだから、この普通の政令でこういうことを規定してもよろしい、こういう御趣旨のように拝聴したのでありますが、そうだといたしますと、この第二項を何らか将来政府が必要によつて削るというふうな場合が発生したといたしましたならば、予備隊警察官は全部普通の警察官と同じように、逮捕その他の刑事訴訟法規定するところの、種々の権限職務が法制的にはできる。実際上全部を行うか行わないかは別問題として、法制上は一応同じようにできるのだということになるのだと思いますが、さようでありましようか。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この十三条第二項は、先ほど申し上げました通り刑事訴訟法規定によつて被疑者逮捕ができることになつておる。この刑事訴訟法規定を実施するために、警察官範囲を限定するという趣旨規定でございまするから、これは個人権利義務をすでに刑事訴訟法によつて制限されておる。その制限規定の実施のための規定であつて、通常の政令でできる範囲である、こういうふうに私は考えております。従いましてこの規定を廃止いたしましたる場合におきましては、警察官はすべて刑事訴訟法規定によりまして全員がこの権能を持つものであり、この規定はその範囲を限定いたしたものである、こういうふうに考えております。
  43. 大西正男

    大西(正)委員 そういたしますと、私は非常に重大な問題になると思うのであります。いわゆる予備隊警察官なるものが、普通の警察官と同じように、司法警察官としての全面的な職務権能を持ち得るということを一個の政令によつて定めることができるといたしますならば、私はこれは非常に重大な問題になりはしないかと思うのであります。この点はもう少し御研究をしていただきたい。私はかようなことはしてはならないと思うのであります。  次にその施行令の十三条によりますと、第一項では「部内の秩序維持の職務に従事する者は、左に掲げる犯罪について司法警察職員として職務を行う」という規定がございます。部内の秩序維持の職務に従事する者は現在どのくらいの数になるでありましようか。またそれをどういう呼び方で呼んでおるのでありましようか。そしてまたそれに対してはどういう教育を行つておるのでありましようか。これらについてお尋ねいたします。
  44. 増原恵吉

    増原政府委員 予備隊の組織編成が実はまだ現在立案審議中でございまして、決定いたしておりません。大体のつもりは、部内の秩序維持にあたりまするものは約九百名程度ぐらいでいいのではあるまいかということにいたしておりまして、そのうち百名足らずのものについて一応の教育をいたしたのでありますが、その教育をいたした者につきましても、刑法、刑事訴訟法等の教育はまだいたしておらない実情でありまして、現在のところは、司法警察権を行うということは、予備隊としてはいたしておりません。一応教育を受けました者も、部内の規律維持、監察ということを今やらしておるという程度であります。将来は刑法、刑事訴訟法等を教育いたしまして、十三条に書いてある職務執行に遺憾のないようにいたしたいと考えておるわけであります。名称もまだ決定をいたしておらないのであります。監察というふうな言葉を使つたらどうかというふうな一応の案になつております。
  45. 大西正男

    大西(正)委員 そういたしますと、一般警察官予備隊職員に関する犯罪あるいは予備隊の施設の中における犯罪、こういつたものについて、もちろん今日犯罪捜査並びにその他の職務権限を有しておると思いますが、そうでありましようか。
  46. 増原恵吉

    増原政府委員 一般司法警察官が、十三条の一項に書いてありますような事柄についての司法警察権をもちろん持つております。これはそれを排除した趣旨ではございません。予備隊警察官も、司法職務を行う者はこれをやれるというだけでありまして、一般の司法警察権を排除した趣旨ではございません。
  47. 大西正男

    大西(正)委員 私がこの十三条に関して今お尋ねした点、並びにさきに法務総裁お尋ねをいたしました点などについて、これは現在は実動しておらぬわけでありますが、実際上にはこういうことを現状では実行した実例はないのでございますね。ないわけであると思うのでありますが、将来において、予備隊の部内の特殊の司法警察職員一般司法警察職員との間の権限の問題、あるいはまた十三条第二項による警察官が、予備隊員あるいは予備隊の施設に関連する犯罪以外の一般市民に関する犯罪その他の問題についてその権限を行使する際に、一般警察官との職務権限上の競合上生じますところのいろいろな問題が将来発生する可能性が多分にあると思うのであります。こういう点についてぜひともこの際十分御研究をお積みになつて、その間に権限争いを生ずるとか、あるいは司法捜査を行うについての指揮命令系統にいざこざが生ずるということのないように、ひとつ御処置を願つておきたいと思うのであります。  次に警察予備隊警察官につきましては、警察官等職務執行法というものの適用があるのでありましようか、ないでありましようか。
  48. 増原恵吉

    増原政府委員 警察官等職務執行法は、予備隊警察官にも適用があるものと解釈いたします。
  49. 大西正男

    大西(正)委員 当然にあるという御解釈でありましようか。
  50. 増原恵吉

    増原政府委員 そうであります。
  51. 大西正男

    大西(正)委員 その理由をお伺いいたします。
  52. 増原恵吉

    増原政府委員 予備隊警察官というのはいわゆる警察官でありまして、予備隊令に基きまして、特殊の定めのないものにつきましては、警察官に関する規定がやはり適用される、かように解釈をしております。
  53. 大西正男

    大西(正)委員 そういたしますと、予備隊警察官は、職務質問その他の警察官等職務執行法に規定しているすべての権限を有しておる、かようなことになるわけでありますね。
  54. 増原恵吉

    増原政府委員 その点は警察予備隊警察官というものは、平素はそうした予備隊令定めました任務が一般国家地方警察、あるいは自治体警察治安維持の力で負い切れない場合に、出動して職務を執行するということを前提としまして、平素は警察務を執行しないのが建前でありまするから、そうした平素の警察務の執行に関する規定予備隊警察官には適用はない、これは予備隊令定めまする根本の任務に従つてそういうふうになつて来ているわけであります。
  55. 大西正男

    大西(正)委員 そうすると、平素はそういう権限はないのでありますか。
  56. 増原恵吉

    増原政府委員 平素は警察予備隊警察官警察務を執行しない建前をとつております。従つてそういうことを行わないということに解釈をいたしております。
  57. 大西正男

    大西(正)委員 普通の警察官つて休みの日もあるのだし、実際に職務をいつも行つておるわけじやありません。しかしそういつた権限を常に持つておるわけであると思うのでありますが、予備隊警察官などがいろいろ法制的に一応これが適用されるとすれば、そういう権権限を発動するかしないかは別問題であつて権限自体は持つておるということになりはしないでしようか。もしそうならないとすれば、一体いつそういう権限を持つて、いつそういう権限が消滅するのでありましようか。これをお伺いいたしたい。
  58. 増原恵吉

    増原政府委員 警察予備隊警察官の任務の上から、そうしたいわゆる出動をする場合が警察官としての任務を執行する場合で、平素は訓練、教育等に専念をしておるという建前でありますので、平素の場合にはそういう規定が適用にならないというふうに私どもは解釈することが適当と思つております。
  59. 大西正男

    大西(正)委員 いつ発生をしていつ消滅するのですか。
  60. 増原恵吉

    増原政府委員 総理大臣の命によつて出動するというとき、その他はこの十三条にありまする秩序維持の職務に従事する者が、ここに限定された範囲内で仕事をやる場合というふうに御解釈を願います。
  61. 大西正男

    大西(正)委員 この警察官等職務執行法というものは、予備隊が特殊の任務を持つて出動する場合にはふさわしいのでありましようか、これで十分でありましようか、不十分でありましようか、どうでありましようか。
  62. 増原恵吉

    増原政府委員 予備隊法規関係はまだほんの必要なる基本的なものができておる状態でありまして、全面的に法規関係は今いろいろ研究、立案、審議中であります。予備隊警察官の任務が普通の警察官とは違いまして、非常に特殊のものであります以上、現在までの職務執行法がそのまま全面的に事実上適用にならない部面があるわけであります。現在のものが必要で十分という建前のものではございません。そういうものについては、なおわれわれの方で研究をいたしまして、適当な形のものを、必要であればまとめたいと考えております。
  63. 大西正男

    大西(正)委員 予備隊は総理大臣の命令によつて、明日にでも出動すべき事態が発生した場合に、その任務を遂行することが現にできるのですか。
  64. 増原恵吉

    増原政府委員 事実問題で非常に微妙な点でありますが、現在まだ予備隊は組織編成を完全に終つた段階ではございません。従いまして、適切な形において出動できる態勢にはまだなつておらないと申し上げる方がいいと考えます。全然出動できないという態勢ではございません。
  65. 大西正男

    大西(正)委員 今日の状態は、冒頭に法務総裁お尋ねいたしましたように、われわれ国民としては相当重大な時局であると考えております。また予備隊ができましたにつきましては、先日猪俣委員からお尋ねがありましたように、ポ政令でこれを制定しなければならないような、非常に急な事態であつたという政府説明であつたのであります。そこで明日にでもあるいは出動しなければならない。もちろんこれは訓練を要するのでありますから、訓練期間がある以上、訓練の途上において十分なことはできないにしましても、しかし不十分ながらも、その持つておる警察力によつて事態を鎮圧するために、出動しなければならないかもわからないのであります。ところが出動はしたのだが、これに対応する法制がなくて、何ら権限がないのにかかわらず、国民権利義務を侵害するような事態が発生いたしましたならば、予備隊の出動を要求した事態以上に不祥事が発生をすると思うのであります。そういう意味におきまして、法制上の整備というものが、非常に急を要する問題だと私は考えるのでありますが、これは早急にやつていただかなければならない問題だと思うのであります。この点はどういうふうに考えておられますか。
  66. 増原恵吉

    増原政府委員 現在出動に関する基本的な、ことに国民権利義務に関する基本的な問題についての法制は、ごく基本的なものは一応できておると考えております。従つて出動はもちろん可能なわけでありますが、昨日の猪俣委員の御質問にもありましたように、出動した際の指揮権の問題であるとか、国警、自警、予備隊と三者の関連、調整の問題等は、なお研究中に属するわけでありまして、関係法規を急ぎ整備する必要のあることは、御意見通りでありまして、われわれの方でもその準備を目下鋭意進めておるわけであります。そうしたものは早く成案を得たい、かように考えておるわけであります。
  67. 大西正男

    大西(正)委員 先ほど法務総裁もお話の、施行令によつて、十三条第二項以下に規定しているようなことをはたして規定ができるかどうか、私は多大の疑問を持つております。また警察官等職務執行法が、予備隊警察官にそのままいきなり適用ができるかどうかということも疑問を持つております。これらの点につきましては、なお質問を留保いたしたいと思うのであります。  もう一点だけお伺いいたします。予備隊令の第三条の「治安維持のため特別の必要がある場合において、内閣総理大臣の命を受けて行動するものとする」とありますが、昨日の長官のこの御説明によりますと、大体予備隊の方の御構想としては、国家公安委員会とか、あるいは各地区の公安委員会、そういうものの要請などによつて出動する場合と、そうでなくて、内閣総理大臣独自が命令をして行動する場合があるように承つたのでありますが、国家公安委員会その他の要請に基いて、総理大臣が命令をするのではなくて、総理大臣自体が独自の立場から、独自の見解で予備隊の行動を起さしめるという場合の具体的な例と必要をお話願いたいと思います。
  68. 増原恵吉

    増原政府委員 昨日の私のお答えで申し上げましたように、私の一応の構想とお断りして申し上げたのでありますが、これにつきましては、まだ関係者の研究、話合いが一致をいたしておりませんので、はつきりいたしました上でお答えを申し上げることが適当だと思います。私の構想としては、請求のあつた場合とない場合でも出得るという形にすることが必要ではあるまいか。具体的にいかなる場合ということは、今まだなかなか申し上げにくい状態であります。  なおつけ加えまして、先ほど任務執行についての法令解釈について御質問がありました。これは恐縮でありまするが、われわれの方でさらにいろいろ関係者と話合いをし、研究する必要も十分認めておりますので、研究の後お答えをするということに御了承を願いたいと思います。
  69. 大西正男

    大西(正)委員 一応これで打切ります。
  70. 押谷富三

    ○押谷委員 関連して……。増原長官お尋ねをしたいのですが、警察予備隊の京阪神、近畿地方における駐屯の場所、人数がおわかりになりましたらお聞かせ願いたい。
  71. 増原恵吉

    増原政府委員 警察予備隊の現在おります営舎は、予備隊設置を取急ぎまして、関係方面でもその意向で、設置を急ぐことを非常に強く慫慂をされました関係上、しかも経費等の関係もありまして、現存する建物、それも主として国有の建物で、その営舎を利用することについて経費を要しない——修繕費、模様がえ費等は一応いりまするが、建物の取得について、経費を要しないというものを目標に物色いたしたのであります。また相当部分は連合国軍の使用しておりましたもの、あるいはその使用権を確保しておるというふうなものを利用さしてもらつたというものも、非常にたくさんあるわけであります。従いまして私どもが予備隊の目的である警備の観点から考えまして、配置をあんばいするというふうなことが、ほとんどできなかつたという事情がありまして、また一部は関係連合国軍の使用確保しておりましたものへ入つておりましたもので、またこれを返還をして他へ営舎を見つけるという必要も生じておりまして、現在一部移動を行つておるということに相なつておるのであります。現在近畿方面では、舞鶴、福知山くらいが最近の移動後においては残る営舎になります。私どもも近畿方面には適当な営舎を見つけまして、駐屯させたいと考えておりまして、今いろいろその点について物色中であります。どうしても従来の方針で適当なものがないときは、建物を買い上げるなり、あるいは新設をすることも、またやむを得ないのではないかということで、今その実施についての考慮を重ねつつあるという実情であります。
  72. 押谷富三

    ○押谷委員 御承知のように、最近兵庫県下あるいは大阪、京都、滋賀県などにおいて、朝鮮人騒動が続発いたしておりますが、これらの事態にかんがみまして、今内地におります朝鮮人の分布状況は、御承知のように登録鮮人のほとんど三分の一以上の者が京阪神におりまして、しかもその京阪神の鮮人の大部分は、いわゆる北鮮系に属する。かようなことから、思想的にも日共とのつながりを持つておるようでもありますし、また朝鮮の戦況にも一つの関連を持つておりまして、最近御承知のような騒動が続発いたしておる事情でありますが、こういう事態にかんがみ、朝鮮人の分布状況からいたしまして、京阪神の治安維持のために、また警察予備隊のかような場合における使命を達成するために、その駐屯営舎といいますか、そういうようなものについて、京阪神に格段の御配慮をいただくのがいいのではないかと考えております。最近神戸キヤンプ等の計画があると承つておるのでありますが、その点についてお尋ねいたしたいと思います。
  73. 増原恵吉

    増原政府委員 現在具体的に考えておりますところは、近畿方面ではまだ実はないのであります。一応目星をつけて相談をしておりますのは、姫路と阪神間に営舎を置くことについて、今研究をいたしております。
  74. 押谷富三

    ○押谷委員 御配慮をいただいておるようでありますが、事態は相当緊迫し、京阪神住民が非常に関心を深くしている事態にありますから、どうかこの方面につきましての治安維持のために、配備状況について格別の御配慮をお願いいたしまして、私の質問を打切ります。
  75. 梨木作次郎

    ○梨木委員 過般来大橋法務総裁質問いたしまして、その答弁を得たのでありますが、その間まだ政府側における御答弁に食い違いがあるようでありますし、それから明確を欠いている点がありますので、お伺いしたいのであります。それは過般免職処分を受けたといわれる警察予備隊の隊員の問題であります。これは最初大橋法務総裁は千名弱、こういうことを答えたのであります。ところがその後になりまして、その後調査してみたところが五百名以内になつたということであります。ところが増原長官は、参議院におきましては、百七十七名だ、こういう御答弁をなさつたということでありますが、この点についてもう少しはつきりとその辺をお答え願いたいと思います。
  76. 増原恵吉

    増原政府委員 答弁がいろいろになりました点は、非常に恐縮でありますが、初め総裁から千名以内、千名弱というふうに申し上げましたのは、私どもの資料で、これは各営舎でだんだんに行つておりまして、実は一齊にぱたつとやつておらないので、初めに出ました営舎の比率を一応全体にかけて、まあ千名にはならないだろう、千名以内にはとどまるだろうという推測を立てましたのを、総裁から最初お答えいたしたのであります。それが最初出ました営舎の比率が非常に他に比べて高かつたのでありまして、私が参議院の方でお答えしましたのは、十二月一日現在で百七十七名と申し上げたのであります。総裁がさらに五百名以内と申し上げましたのも、これもまた推算でありまして、大体五百名を越えることはあるまいという現在の推定でありますが、明確な数はまだしめ上げが終つておりませんし、検診の結果もだんだんに判明して来るという段階になつておるのであります。さような実情であることを御了承願います。
  77. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうすると、あなたが参議院で答弁せられた百七十七名も、推測だとおつしやるのですか。
  78. 増原恵吉

    増原政府委員 十二月一日現在の百七十七名は、確定数でございます。
  79. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうしますと、大橋法務総裁答弁された五百名というのは推測だ、こうあなたはおつしやるのですか。
  80. 増原恵吉

    増原政府委員 これは推測の数を、総裁にわれわれの方から報告いたしまして、総裁から答弁を願つたわけであります。
  81. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そういたしますと、確定した百七十七名、これは一旦免職通告をしたが、その免職を取消したというように承つてよろしいのでありますか、どうですか。
  82. 増原恵吉

    増原政府委員 取消しをすることにいたしたとせんだつてはお答えをしたのであります。措置は本日中ぐらいには各営舎の指揮官の方へ流せるようになると思いますが、今その段階でありまして、復職せしめて治療をする、めんどうを見るという措置をとるということにいたしたわけであります。
  83. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そういたしますと、復職するのでありますから、定められておる給料も支給されるし、それからそのほかに治療費というものも支給されるというように承知してよろしいですか。
  84. 増原恵吉

    増原政府委員 俸給を支給し、そのほかは共済組合法に基きまして、医療費を支給する。支給の仕方は共済組合法に定めであるような措置によつて医療費を支給する、こういうわけであります。
  85. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そこで国家公務員の共済組合、これは警察予備隊でもうできておりますか。それをちよつとお答え願いたい。
  86. 増原恵吉

    増原政府委員 共済組合は予備隊につきましては七万五千百の、この百の私服については共済組合ができております。七万五千につきましては、共済組合はつくらないで、しかしその措置は共済組合法に準じて行う。その一つの相違は、共済組合は掛金をいたすわけでありますが、七万五千の予備隊警察官につきましては、掛金を出させないでめんどうは見てやるというふうな措置に相なつておるわけでありまして、何と申しますか、掛金はかけないで、受ける方は共済組合法に準じて受ける、こういうふうな建前になつておるわけであります。
  87. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この間大橋法務総裁は、六箇月ないし八箇月治療をして、その間でなおらないものはその後に措置するということでありますが、これから治療をいたしまして、その後はどういうような方針でおられますか。そこを伺いたいのであります。
  88. 増原恵吉

    増原政府委員 ちよつとよく聞き取れなかつたのですが……。
  89. 梨木作次郎

    ○梨木委員 六箇月ないし八箇月治療をする。その間治療をしてなおらないものについては、その後どういうような措置をされるのか、伺いたいと思います。
  90. 増原恵吉

    増原政府委員 現在考えております措置として、退職者を再び復職せしめるというのは、俸給を支給するなり、あるいは共済組合法に準ずる医療費をやるために復職させるということでありまして勤務にはつかせないわけであります。専心療養をし得る状態にするために復職させるわけであります。大体八箇月間専心療養してもらう。その間医療についての便宜をわれわれの方で与え、いろいろ相談にも乗る。自覚症状もない、普通の状態で、一向病人とも思えない程度の人たちでありますから、その間に回復をはかるために、予備隊として八箇月間そういうめんどうを見ることにしておりますが、それ以上のめんどうを見ることは困難であるというつもりであります。
  91. 梨木作次郎

    ○梨木委員 警察予備隊で募集しましてから、その後自発的にやめたものや、それから脱走したものが六百名以上あるというふうに参議院でお答えになつたと聞いておりますが、その通りでありますか。それで六百名といたしまして、その自発的にやめたものと脱走したものとの内訳はどういうことになつておりますか。その点伺いたいのであります。
  92. 増原恵吉

    増原政府委員 六百余名は退職者であります。いわゆる自発的にやめたものの数であります。脱走者は、現在私どものところでは正確な数字はとれておりません。退職せしめたものが十二月一日で百二十名ばかりありますが、この中には黙つて営舎を離れて、帰つて来ないのでやめさしたというものが入つておるわけであります。六百余名は自発的退職であります。
  93. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうすると、六百余名が自発的にやめたもの、それから強制的にやめさせたものが百二十名、この中には脱走者も含む、こういうことになると七百二十名でありますが、十二月一日現在までにやめたものは千百名になつておるということでありますから、百二十名だとすれば、まだ約四百名ばかりやめたものがあることになりますが、これはどういう人たちでありましようか。どういう原因でやめたことになつておりますか。
  94. 増原恵吉

    増原政府委員 これは結核でやめさせたという措置でありましたが、そのものがあります。その他の医学的理由でやめたものもあるわけであります。正確な数は退職者は六百二十名ばかりになつております。そのほかは結核、医学的理由、それからいろいろな事由でやめさしたもので、あとの数が全部であります
  95. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今の御説明ではちよつとよくわからないのでありますが、そういたしますと六百二十名が自発的にやめた、それからあと退職さしたものが百二十名、その他のものは結核その他の医学的理由だ。そうするとこれが、今度の例の検診をいたしまして結核なりと診定したものになるのじやないかと、われわれ外部の者には思われるのですそうすると百七十七名はこれは確定したものですが、やはり五百名ばかりになるのじやありませんか。その点私は了解できないのでありますが……。
  96. 増原恵吉

    増原政府委員 医学的理由という中には多少結核が含まれておる見込みであります。十二月一日の百七十七名というのは一齊検診を始めてからの数でありまして、多少この統計のとり方が統一をとつておりませんので不正確でありますが、医学的理由の中には結核もある見込みであります。しかしどれだけあるかということは今調べておりまして、十二月一日の百七十七名という数は当然ふえておるので、推算としては五百名以内とは思いますが、百七十七名や二百名では済まないというふうに考えております。
  97. 梨木作次郎

    ○梨木委員 どうも私は頭が悪いのでつかめないのでありますが、そうするとこの六百名と百二十名を除いた中でやめたもの、これは結核と医学的理由だ、この分は今度の一齊検診以前にそういう理由があつてやめたものと、こういうぐあいに承つてよろしいわけなのでありますか。それともこの中には、今度の一齊検診でやめさせられるものも含んでおるのかどうか。そこを聞きたいのです。
  98. 増原恵吉

    増原政府委員 十二月一日現在、結核百七十七名とあげてありますのは一齊検診後の数字であります。ですからその前の医学的理由の中に結核でやめたものもあり得る。そういう人々も、結核に関する限りはこの際同様な措置をする。そうしてその数を今正確に当つておるのであります。
  99. 梨木作次郎

    ○梨木委員 わかりました。そうすると百七十七名はわかりましたが、その前にやめさせられたものでも、結核その他の医学的な理由でやめたものについては、これを復職させて、そうして警察予備隊でめんどうを見る、こういう方針であるということに承知してよろしいわけでありますか。
  100. 増原恵吉

    増原政府委員 この際の措置は特別の措置として、予備隊自体の問題よりも、広く結核対策という点を考慮した措置でありまして、結核で今までやめたり、やめさしたりしたものを復職させてめんどうを見る、その他の医学的理由によつてやめたもののめんどうを見るということは、今度の趣旨には入つておりません。
  101. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今度の一齊検診の結果やめさせる手続を一旦はとられたのでありますが、このやり方につきましては、長官といたしましては、われわれの聞いているところでは、ほとんど関うされておらないように聞いておるのでありますが、その点はどうなんですか。こういう理由でやめさせるということについて、長官は一々承知しておつたのですかどうですか。
  102. 増原恵吉

    増原政府委員 事務的に多少行き違いはありましたが、結核の検診は、最初の採用の際には大勢の人を急いでとらざるを得ないという理由のために、厳密な結核検診ができなかつたので、なるべく早い時期にできるようになれば結核検診をやるということについて私どもみな考えておつたのであります。その手続その他について多少遺憾の点がありましたが、一旦退職をさせるというようなことになりましたが、これを復職させてめんどうを見て、専心療養をし、早くなおつてまた隊務についてもらうという措置をやつたわけであります。
  103. 安部俊吾

    安部委員長 梨木君にお諮りいたしますが、御質疑は午後に続行することにいたしまして、この辺で休憩したいと思いますが、よろしゆうございますか。——これにて午後一時半まで休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  104. 安部俊吾

    安部委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  検察行政及びこれと関連する国内治安に関する件を議題として質疑を続行いたします。猪俣浩三君。
  105. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実は法務総裁増原長官御列席の上でお尋ねしたいと思いましたが、中座してしまいました。大体済んだことはむし返さぬことにして質問を続行いたします。先般警察予備隊の教育の問題につきまして質問したのであります。それは警察法の第十四条によつて警察大学校というものがある。この警察大学校においての教育の諸目的は、いわゆる民衆の警察であるという精神教育にあつて、そのほか警察官としてのいろいろの訓練をするという国警長官答弁があつた。そこでこの予備隊員を、こういう施設があるのであるから、その大学校へ入れて訓育をしてはどうかこういう質問をいたしまする趣旨は、たとえば司法関係におきましては、司法研修所へ一応試験を通つたものを入れて一定の教育をして、その中から弁護士になる者、或は裁判官になる者、検事になる者が出ておる。これが法曹一元の一つの礎になるということに多大の効果を及ぼしておると思うのであります。そこで警察に二つなく、この国家地方警察、あるいは自治体警察、あるいは予備隊というものが、三者一体となつて活動しなければならぬのでありまするが、かような意味においては、一定の期間この三者を、この大学校あたりで共同の教育を施すことが将来のためにいいのじやないか。そうしないというと、国家警察、自治体警察警察予備隊というものがますます離れてしまつて、そこにいろいろのトラブルを将来起す憂いがあると思うのであります。予備隊が純然たる軍隊であるならば、昔のようにあらゆる指揮命令系統が違つておるし、あらゆる組織行動が違つておるのでありますから、これはまたそれでいいのでありますが、同じ警察として、一つの地域に統合されて運営しなければならない運命にあるものであるならば、これが相反目することのないように訓育しておくことが必要じやないかという意味におきまして、この警察大学校におきまして予備隊も一定期間訓練する。但し予備隊には予備隊の使命がありますから、それの特殊の訓練につきましては別にまた訓練をすることはもちろんのことであるが、共通の、警察の根本精神なんかについては、ここで一元的に訓育した方がいいじやないかという質問を先般申したのでありますが、これに対しまして法務総裁の御意見を承りたいと存ずるのであります。
  106. 大橋武夫

    大橋国務大臣 猪俣委員の述べられましたる、警察大学におきまして警察予備隊の隊員を教育するように考えてはどうかという問題であります。警察予備隊は、お話のうちにもありました通り、従来の警察、いわゆる一般警察とは異なつた使命及び性格を持つておりますので、ひとしく警察幹部の教育と申しましても、国家警察自治体警察幹部と、予備隊幹部とは、教育もその性質の違いに応じて違いを生ずるのは、これは当然であると思うのであります。しかしながらただいまお述べになりましたるごとく、この両者をある期間共通して警察大学で教育する、これによつて警察の根本精神、あるいはまた相互の理解を深める、こういうことはまことにごもつともなことでございますし、またそう言われまする目的自体は、私といたしましても賛成をいたすわけであります。しかし実際問題となりますというと、この大学に警察予備隊幹部を全部収容して一定期間教育するということになれば、今度は警察大学の警察幹部養成の面からいたしまして、現在の施設をもつていたしましては不十分であります。かたがた警察予備隊幹部のために別個の施設をつくるということになりますると、これは警察予備隊のために独自の教育機関を持つということが、かえつて実際上は便宜であろうと考えられるのであります。現在任用しあるいは任用せんといたしておりまする警察予備隊幹部の一部には、警察官の前歴者もあるわけであります。これらの者はすでに警察大学において、自治体警察あるいは国家地方警察に残つております他の幹部と一緒の教育を受けた体験を持つておるのであります。そういう面から、将来これらのもの相互協力というものは、ある程度期待してよろしいのではないかと存じます。今後の問題といたしましては、警察予備隊警察とまつたく縁なき存在であるというわけではないのでございまして、同じ警察の一翼を担当いたしますものでございますから、警察大学において全員を教育するということは、これはとうてい不可能でありますが、しかし警察予備隊幹部要員のうち、若干の者をある期間警察大学に派遣して、そこで他の警察幹部と共通した教育をするというような方法は、今後十分に研究をいたして参りたい、かように存ずる次第でございます。
  107. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は今の点は切にお願いしたいのでありまして、これが軍隊に転化するものならそれでいいのであります。しかるにあらずして、ほんとうの警察隊として国内治安に当るという建前であるといたしまするならば、警察に二つの系統があるということが、実は有機的活動に非常に困るのじやないか。私どもの希望としては、警警法にこういう特別警察の項目を入れて、一本の警察法というものに統制した方がいいじやないかという意見を持つておるのでありますが、予備隊については政令が出されておるので、これをいかに調和するかということが、これからの問題だと思うのです。現実の問題といたしまして、必ずこの予備隊と普通警察とのトラブルが起つて来ます。役人のいわゆるなわ張り根性というようなものは、大橋法務総裁も長い間役人をなさつてつて、私も役人の親戚もおれば周囲にも多いのでありますが、相当伝統的なものである。これがまつたく別々なところにおいて、別々の教育をされて参りましたならば、現場におきまして事に当る場合に、必ずトラブルが起ることは私は予言できると思う。これを避けるにはやはり全部と申しませんが、幹部の人たちだけでも一つなべの飯を食わせて教育をするということが、将来国家百年の警察予備隊のために、実にこれは基本的なあり方であらねばならぬし、この両系統の警察が将来有機的に密着して行う場合においては、責任者がまず考えなければならぬ根本問題だと私は思う。かような見地から、ぜひとも今の警察大学校の設備が足らないならば、これを拡張いたされまして、この大学校において一定の期間一つかまの飯を食わせて訓練をするという方向をおとりくだされんことを強く要望いたします。  それから警察予備隊の教育でありまするが、これは予備隊令の示す目的に向つて、普通警察と違う特別の訓練がいると思うのでありますけれども、これは軍隊とそつくりの訓練をしてしまつたら失敗だと思います。どうもわれわれのところへ達しまする報告によりますと、ほとんど軍隊のような訓練をしておる。それもアメリカの軍隊のような訓練をしておるというように承るのでありますが、それはまあ今早急の際でいたし方ない点もあるかと存じまするけれども、国内治安を維持するのには、軍隊的な訓練、軍隊的な思想ではかえつてよろしくないということがアメリカ自体において、これは識者の一般に認めるところである。たとえば軍人上りでありまして十五箇年間もぺンシルバニアの州警察長官をやつておりましたグルム大佐が、警察と軍隊との訓練及び第一次的任務の相違を強調いたしまして、この中にも自己防衛をなす前に、れんがを何箇投げられるのを忍ぶか、何発たまを発射すべきか、及び行動を起す前にどれほどの悪口雑言を堪忍するか、こういう心得を教えるのが警察である。軍隊にはこれができない。であるから小銃を肩にした軍隊よりも訓練したこの民主警察の方が有効適切であるということを、軍人上りで十五箇年ペンシルバ二アの州警察長官をやつておつたグルム大佐が、アメリカで国会に対してそういう報告をしておる。またマサチユーセツツ州委員会の報告によりますと、兵隊の武器は群衆の闘争本能を刺激する。小銃を持つておれば有効な逮捕ができない。ところがこれを捨てれば兵隊というものは一個々々になると群衆に負けてしまう。兵隊はその訓練及び装備のゆえに過大または過小の力を行使する。国内治安においては兵隊的訓練及び兵隊的装備及び行動というものは適切じやないということがアメリカにおいても立証されておる。かような次第でありましていわんや予備隊は軍隊じやないのかということが内外の疑惑になつておる際といたしまするならば、どこまでも精神教育におきましても、グルム大佐が言うたような精神及びその装備におきましても、適切なる考慮を払いまして、これが昔の軍隊のような組織活動にばかり熱中されますると、かえつて国内治安の鎮圧ということについては不適当なものができ上つて、そうして内外に対して日本の再軍備の疑いを持たせる重大なことに相なるかと存じます。教育目的及び実際の教育の方法を御考慮する際に、私はぜひこういう精神を取入れて御考慮願いたい。今まで私どもの聞きました範囲におきましては、どうも軍隊教育のような方向に熱中なされておるのじやないか。その応募者の中にも相当いわゆる特攻隊上りの連中も入つておる。いわゆる軍隊精神というものをたたき込まれて、日本の軍国主義の一つの体験を経て来た人たちも多少ある。そういう人たちの感化、影響ということもありましようし、警察予備隊の指導者たちが一歩誤りますと、警察予備隊はゆゆしき存在に転化して、日本のいわゆる平和国家の性格さえ一変するような重大な危機をはらんでおる。この意味におきまして、私は強く当局のその点に対する御留意を願いたいと思いますが、これに対しまして法務総裁なり長官なり御意見がございましたら承りたいと思うのであります。
  108. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまは猪俣委員から予備隊の教育、特に警察の一翼といたしましての警察予備隊の将来の教育の問題につきまして、きわめて示唆に富んだお示しをいただいたのであります。御趣旨につきましては私どももおおむね同感に存ずるところでございます。つきましては今後さような点に十分に注意いたしまして、警察予備隊が真に国内治安のために働くべき警察である。決して軍隊ではないというゆえんを精神指導の面においても明らかにいたしたい、かように考える次第であります。
  109. 安部俊吾

    安部委員長 猪俣委員にお諮りいたしますが、緊急質問に対する答弁のため、法務総裁は本会議に出席されます増原本部長官がお見えになつておりますから……。
  110. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それでは増原さんに——今法務総裁から私の趣旨に賛成の答弁をいただきましたので、この問題につきましてはこれで打切ります。  次に今度はこまかい問題になりますが、予備隊本部長官は国家公務員法との関係はどういうことになりますか。あるいは予備隊本部長官以外の幹部あるいは予備隊員自身というものと国家公務員法あるいは人事院との関係はどういうことに相なりますか。予備隊とそれから予備隊の中には、長官のようないわゆる事務系統と申しますか、警察官にあらざる者と、警察官と、こう二つあると思うのでありますが、この両者に対しまして国家公務員法はどういうふうな適用になりますか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  111. 増原恵吉

    増原政府委員 政令にうたつておりまするように、警察予備隊の職員は第八条にございますが、特別職に相なつております。全部が特別職でありまして、国家公務員法上は例外的な扱いをみな受けるようになつております。予備隊の定員は七万五千百人で、そのうち百人がいわゆる制服を着ないセビロの者でありまして、これが予備隊本部の構成をいたします。これも予備隊職員ではありますが、これは警察官ではない。七万五千人が警察官、しかし特別職の扱いは一体としての機構を構成する都合上百人を含めまして、特別職の扱いに相なるわけでございます。
  112. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、ここに長官の地位というものがある場合において安定性を欠くという憂いが出て来るのであります。内閣総理大臣の任免黜陟によつてできておるしかも人事院の保護に服しておらない。そうなると内閣がかわるたびに予備隊長官がかわるというようなことも想定されなければならぬと思うのであります。こういうことに対してはどういうふうにお考えになりますか。
  113. 増原恵吉

    増原政府委員 予備隊の職員が不当な措置を受けたという場合には、これは現在立案中でございますが、不当な待遇を受けたことについての審査を要求する機関をつくる予定に相なつております。しかし人事院関係の身分保障というものは一応ないことに相なつておるわけであります。長官の職はそういう意味では地位上の保障がないわけでありますから、長官の更迭というようなことは起り得る問題であるというふうに考えております。
  114. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 不当の待遇を受けた者に対しては救済機関を設けると言われたのでありますが、ただいまのところどういう構想の機関をお設けになる予定でありますか、そしてそれはおもにどういう仕事をすることに相なるのであるか。それをお聞かせ願いたい。
  115. 増原恵吉

    増原政府委員 最終のものではありませんが、仮称公正委員会というようなもので、委員組織で、この委員に不当な待遇を受けたと思う職員が提訴する。これに対しまして大体の構想はこれを弁護、擁護するものを設けまして、その申立てを聞いて公正委員会で裁定をする。長官はその裁定に従う。たとえば退職をさせたその理由が不当であるというような公正委員会の採決があれば、その退職を取消して現状回復をする責務を長官が負うというふうな大体の構想であります。
  116. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからなお一点お聞きいたしますが、これもあなたとしてはちよつと答弁ができにくいかと思いますが、しかしそういうことはやはり関係の人たちと構想を練らなければならぬと思うのであります。消防組織法の二十四条によりますと、国家非常事態宣言のあつた場合には消防隊なるものの、およそ二百万人の人間が警察協力するような規定がある。そこでこれは警察法の警察との連関は明らかになつておりますが、予備隊との関係がない。そこで消防組織法二十四条における、この消防隊の活動する場合において予備隊とどういう関係に立つか。御承知の通り警察法によれば、消防隊は市町村長の指揮下に入る。それで国家警察、自治体警察協力者に相なるのであるが、予備隊が出動した場合に、この予備隊消防隊を何人が、運営するのであるか。さようなことについて御構想がありましたら、お漏らし願いたいと思います。
  117. 増原恵吉

    増原政府委員 消防との関係は昨日猪俣委員の御質問になりました予備隊の出動する際の国家地方警察、自治体警察等との連繋の問題とあわせて考究すべき問題でございます。まだ成案を得ておりませんが、現在のところは国警長官消防長官との申合せによりまして、両者が協同の動作をとり、指揮は国警側でとるようになつておると承つております。そうした点とにらみ合わせまして、国警、自治警との連繋を考えます際に、指揮の問題その他を解決したい。かように考えております。
  118. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに御質疑ありませんか。——なければ本件については本日はこの程度にいたします。     —————————————
  119. 安部俊吾

    安部委員長 この際お知らせをいたします。当委員会において予備審査中の訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案が今日参議院から送付されました。しかして本付託となりました。それで訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  なおこの際お諮りいたしておきますが、本日議題の法律案に関して最高裁判所より出席説明要求があります場合には、国会法第七十二条第二項の規定によりこれを随時許すことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければ、さようとりはからうことにいたします。  両案について質疑に入ります。質疑の通告があります。これを許します。田万廣文君。
  121. 田万廣文

    ○田万委員 判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対して政府委員に二、三の点を質疑いたしたいと思います。裁判所は一面において判事の報酬ということにつきましては、非常に高い評価をいたして強くこれを主張いたしておるのでありますが、他面におきましては、判事補の勤務年限、すなわち十年という法定年数を通算することにあたりましては、きわめて低い見解を持つておると思うのであります。これは人事行政の上からいつてきわめて矛盾した見解だと思うのでありますが、まずこの点を政府委員から承りたいと思います。
  122. 野木新一

    ○野木政府委員 裁判官の一番典型的なものと申しましようかいわゆる判事につきましては判事補を十年やらねば一人前の判事として職権の行使はできないということになつておりますが、この判事補職権特例等に関する法律におきまして、五年判事補その他法律定める職にあつた場合には当分の間暫定的に判事と同じような職務をとれるということになつておるわけでありますが、それは経過的措置でありまして、何分判事の資格に該当するような人を、今ただちに全部充員することはできませんので、判事補として五年たつた者等につきましては、やむを得ず判事としての職務をとらせようということでありまして、これはいわば経過的のやむを得ない措置としてこういう手段を講じておる次第でございます。
  123. 田万廣文

    ○田万委員 私がここで聞きたいのはそういう点ではなくして、むしろ裁判官の任用を考慮するにあたつては、本質的に考慮せなければいけない問題が相当少くないと思うのです。この点について年限の点もさることながら、結局電波監理委員会の審理官、あるいは特許庁の審判官というような人は、いわゆる民事訴訟法あるいは刑事訴訟法というふうな、専門的な手続法においての運用に当つてはずぶのしろうとだと私は言わざるを得ない。本案は事件の促進化という点からも提案されておると思うのでありますけれども、もちろんそういう点から考えたならば事件の促進でなくして、事件に経験のない、能力のない人間が事件を担当する場合には、逆に事件を渋滞せしめる結果になる。また本質的にいつて裁判官としての十分な素質のない人間が、ただ年限だけしかるべきところで、しかも実際上の面に担当しておらない人たちが裁判官になるということになつて来たならば、迷惑するのは非常に大きなものがあろうと思う。その他本質的にいつても、この案については私どもは多分に疑念を持つておる。そういう点について、政府委員の方においては実際問題としてこれは適切であるかどうかということについての見解を聞きたい。
  124. 野木新一

    ○野木政府委員 この法案につきまして、年限通算がされますのは、その前提といたしまして、旧裁判所構成法による判事または検事たるの資格を有した者、または司法修習生の修習を終えた者、こういう前提がありまして、こういう資格を持つた者が、ただいま御質問のような職務についた場合には、その年限を通算するというのがまず第一の考えであります。  しからば御指摘の特許庁の審判官等はどうだろうという点でございますが、この点は実は旧裁判所構成法と申しましようか、すでに現在におきまして、この判事補職権特例等に関する法律それ自体におきまして、これと同じ内容のものがすでに年限を通算されておるわけであります。すなわちそれは「特許局若しくは特許標準局の抗告審判官若しくは審判官たる特許局事務官」云々という名称のもとにおいて、すでに通算されておるわけでありまして、これが官庁の機構改革によりまして名称がかわりましたので、今度は新しい名称の分をここに挿入したものでございます。しこうして特許庁の審判官等には、従前も裁判官たる資格を有する者、ある程度裁判事務に携わらた者が行つて、これらの事件に関する審判事務を取扱つた実例もあり、また現在お手元に差上げてありまする資料にありますように、審判部定員三十名、現在二十二名中一名だけ今度の法案に該当するものがある次第であります。この点は現在の判事補職権特例等に関する法律のわく内で考えますならば、いろいろ権衡上単に法文の整理という程度に、あるいはとどまるのではないかと存ぜられる次第であります。  次に実際的に新しいのは電波監理委員会の審理官でございますが、これは今度新しく挿入したものでございます。この電波監理委員会の審理官というものの職務を申し上げますと、この審理官は電波監理委員会の処分に関する異議の申立てを、第一審裁判所に準ずるような手続において審理しまして、審理の結果意見書を電波管理委員会に提出されるのであります。電波監理委員会は異議の申立てに対する決定を有しておるのでありますが、その決定は審理官の審理の調書及び審理官の意見書に基いて行うというふうになつております。しこうして電波監理委員会のこの処分に対する訴えは東京高等裁判所の専属管轄とされており、その事実認定については、ある程度裁判所を拘束すると申しましようか、ある程度裁判所の認定をも強い影響を与える、そういうような構成になつておるわけであります。しこうしてこの電波監理委員会の審理官の制度は、アメリカに発達しておりまする制度を模範にしてつくられたもののようでありまして、アメリカの方は、法におきましてはこの審理官は、ほとんどやはりローヤーの資格のある者が審理官に当つておりまして、その手続なども裁判官の訴訟手続と同じようにやつておる。ところがわが国におきましては、一応それを模範としたものの、まだそこまで行つておりませんで、審理官は司法修習生の修習を終えたものでなければならない、弁護士の資格を有する者でなければならないという規定はございませんが、理想としてはなるべくそういう人をもつて当てるのが適切である。そういうような職務になつておるわけであります。従いましてこの審理官というものは、現在判事補職権特例等に関する法律で認められております他の職と比べてみまして、決して裁判官の任用資格、年限を通算するについて、より劣つておる。むしろそれ以上であるといつてもいいくらいではないかと存ずる次第であります。
  125. 田万廣文

    ○田万委員 いろいろ詳しいお話を承つたのでありますが、私どもは今申し上げましたように、納得行かぬ点がある。たとえば今お話のございました電波監理の審理官、この方が異議の申立てを受けた場合に、これを審理していろいろな手続をなさるそうでありますが、その手続においてはよく似ておるかもしれませんが、実質的に刑事訴訟法、あるいは民事訴訟法というようなむずかしい手続を適用して、人権に重大なる関係を持つておる、その裁判をする人間の適格性は、必ずしも手続上においてよく似た組織をやつておるから、ただちにもつて裁判官としての、あるいは判事補としての適格性があるというふうな答えは出て来ないと思う。アメリカの話もございましたが、私はアメリカのことは知りません。アメリカにおいてこういうような問題がやはり取扱われておると聞きますが、実質的に見て、アメリカの制度をすべて現在の日本の状態に持つて来て適用するということは、大きな誤りがたくさん出て来ておる。何でもかでもアメリカのやつておる通り日本がやれば成功するというような簡単なものではないのであつて、現在の日本の能力的な立場から考えた場合に、これは時期尚早だといわざるを得ないと思う。ただ年限を通算するという簡単な問題でなくして、ほんとうに裁判官たるに適した修習を終えた期間と、あるいは技術家の特別な知識経験というものを生かした二年の経験というものは、同じ二年といつても本質的に違う。私どもはこの点からいつて、あなたの御説明ではとうてい納得が行かぬ。私だけでなくして、相当他の委員の方においても御疑念があろうと思うのであります。もつとわかりやすいように説明できますか。また電波監理委員会の審理官あるいは特許庁の審判官というような特殊な人をここへ持つて来たということについては、本案の構成について、何か裏面において特殊な事情があるのですか。
  126. 野木新一

    ○野木政府委員 たとえば電波監理委員会で無線局の免許の取消しというような処分をしようとするときには、聴聞手続をするわけであります。そのときには取消される者の権利も非常に重大な関係ございまして、しかもその手続はこの電波監理委員会の規則で定められることになつておるわけでありますが、これが訴訟手続に準ずる手続でもつてやられる。しかも審理官はその職務を行うにつきましては一種独立の立場で行うわけでありまして、司法修習生の修習を終えた者あるいは裁判官であつた資格のある者がこの職につきます場合には、現在そういう者がたとえば法務府事務官その他の職についておる場合と比べてみまして、通算しても権衡を失するものでない、そういうふうに考えた次第であります。  なお電波監理委員会の審理官を特に加えました理由は、電波監理委員会がわが国では比較的新しい制度である審理官の制度を設けまして、しかもここでやつた処分は一審が省略された形になりまして、東京高等裁判所に行くわけでありますから、この審理官の仕事というものは非常に大事な仕事になるわけであります。こういう者には今法律の制度としてははつきりと確立しておりませんが、できるならば弁護士の資格を有するような人が当れれば、国民権利義務の保障というような点から見ても一番適正ではないかと存ずる次第であります。そうして弁護士の資格を有するためには、今後司法修習生の修習を終えた者という資格が必要でありますから、そういう資格を得た者からもここに迎え得るように、そのためには少くともまず資格について年限の通算でもしておいた方がそういう人を迎えるためにもよいのではないか、しかも迎えてこの職についた以上、他の年限を通算される職と比べて、この職が年限通算について一層不適正だというようには考えられない。そういうようなことでこれを入れた次第であります。
  127. 田万廣文

    ○田万委員 これはいくらやかましく言つても見解の相違で、私どもはそういう御説明では納得行かない。この点をお尋ねいたしておきますが、特にこの臨時国会で急いで審理をしなければならないという理由がどこにあるのかという点、もう一つは通常国会に審理を継続して行くということについてはどういう御意見でありますか。
  128. 野木新一

    ○野木政府委員 実は電波監理委員会が発足してさつそく審理官の制度ができまして、その人が従事しなければならないという関係にありまして、電波監理委員会の審理官はただいま申し上げたようなものであるから、この年限通算のところに一項を加えてもらいたいというような要望がございましたので、実はこの法案はこの前の国会に提案したいということで準備したわけでありましたが、当時今期の関係等で提案ができませんで、今度はすつかり準備ができておりましたので提案したわけでございます。
  129. 田万廣文

    ○田万委員 今のお話によるとこの前の国会で準備しておつたが、何らかの都合で提案できなかつたというようなお話でありますが、それほど念を入れた法案であるならば、なぜ今期末四日前くらいのこの臨時国会に突如としてこういう法案を出したのでありますか、むしろ私ども委員の立場から考えたならば、法務委員会というような委員会の審議権をあまり軽く見ておるのではないか、こう思うのですが、どういうふうに御答弁になりますか。
  130. 野木新一

    ○野木政府委員 この法案は参議院先議になりまして、その関係上こちらにまわるのがあるいは今日になつたのかとも存じますが、内容といたしましては今までの判事補職権の特例というわく内で考えますならば、必ずしも非常に大きな問題を含んでおるものとも考えられませんので、今度の臨時国会にお願いしたわけでございます。
  131. 田万廣文

    ○田万委員 本委員会におきましては、特殊の法案を除いては、こんな短かい期間に提出せられた前例はないと聞いております。本案の内容についてはいろいろ問題があるのみならず、今後において法案提出については相当審議の期間が十分にある程度内において提出せられんことを望みます。
  132. 野木新一

    ○野木政府委員 ただいまの御意見の点はよく了承いたしました。
  133. 田万廣文

    ○田万委員 私の質問はこれで終ります。
  134. 安部俊吾

    安部委員長 上村進君。
  135. 上村進

    ○上村委員 梨木君のかわりをやるわけですが、簡単です。今提案なされた法律によりまして、さしむき対象となつておる員数、つまり第二条の「技術院参技官」、これがどのくらいあるわけですか。それから第三条の各種審判長、参技官、委員、監理委員というようなものが一体総計何名くらいあるか、これをひとつお知らせ願いたい。
  136. 野木新一

    ○野木政府委員 たとえば特許庁審判官の定員はその表にございませんが、定員三十名で現在員は二十二名でございます。そのうちこの判事補職権特例等に関する法律で年限を通算し、資格を有する者、すなわち裁判所構成法による判事または検事たる資格を有する者は、現在一名おるわけでございます。審判官の定員三十名を全部裁判官の資格ある者で埋めようという考えは、特許庁も持つていないものと思うわけであります。
  137. 上村進

    ○上村委員 ほかの方のことも知りたいのですが、何か資料を出してもらえませんか。
  138. 安部俊吾

    安部委員長 それではこの程度で暫時休憩いたします。     午後三時十六分休憩      ————◇—————     午後四時四分開議
  139. 安部俊吾

    安部委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本日裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案が付託となりましたので、日程を追加し、両案を一括議題といたしまして、政府から提案理由を聴取するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  では政府から提案理由の説明を聴取いたします。法務総裁大橋武夫君。     —————————————   裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案    裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律  裁判官報酬等に関する法律昭和二十三年法律第七十五号)の一部を次のように改正する。  第十五条中「二万円」を「三万千円」に改める。  別表を次のように改める。別表    区    分   報酬月額最高裁判所長官    六〇、〇〇〇円最高裁判所判事    四八、〇〇〇円東京高等裁判所長官  四五、〇〇〇円その他の高等裁判所長官四三、〇〇〇円        一号  三七、〇〇〇円        二号  三四、〇〇〇円判   事  三号  三一、〇〇〇円        四号  二八、〇〇〇円        五号  二五、〇〇〇円        一号  二〇、〇〇〇円        二号  一八、〇〇〇円        三号  一五、〇〇〇円判 事 補  四号  一三、〇〇〇円        五号  一〇、〇〇〇円        六号   九、〇〇〇円        一号  二八、〇〇〇円        二号  二五、〇〇〇円        三号  二〇、〇〇〇円        四号  一八、〇〇〇円簡易裁判所判事五号  一五、〇〇〇円        六号  一三、〇〇〇円        七号  一〇、〇〇〇円        八号   九、〇〇〇円   附 則この法律昭和二十六年一月一日から施行する。     —————————————   検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案    検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律  検察官俸給等に関する法律昭和二十三年法律第七十六号)の一部を次のように改正する。  第九条中「二万四千円」を「三万七千円」に、「一万五千三十七円」を二万千円」に改める。  別表を次のように改める。別表    区    分   俸給月額検事総長       四八、〇〇〇円次長検事       四〇、〇〇〇円東京高等検察庁検事長 四三、〇〇〇円その他の検事長    四〇、〇〇〇円        一号  三四、〇〇〇円        二号  三一、〇〇〇円        三号  二八、〇〇〇円        四号  二五、〇〇〇円        五号  二一、〇〇〇円        六号  二〇、〇〇〇円検   事  七号  一八、〇〇〇円        八号  一五、〇〇〇円        九号  一三、〇〇〇円        十号  一一、〇〇〇円        十一号 一〇、〇〇〇円        十二号  九、〇〇〇円        一号  二〇、〇〇〇円        二号  一八、〇〇〇円        三号  一五、〇〇〇円        四号  一三、〇〇〇円副 検 事  五号  一一、〇〇〇円        六号  一〇、〇〇〇円        七号   九、〇〇〇円        八号   八、〇〇〇円   附則この法律昭和二十六年一月一日から施行する。
  141. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま議題と相なりました裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を便宜一括して御説明申し上げます。  最近におきまする生計費、また民間の賃金その他の事情の変動にかんがみまして、政府一般職の国家公務員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出し、現に御審議を仰いでおりますることは御承知の通りであります。そこで裁判官及び検察官につきましても、一般の国家公務員の例にならいその給与を改善する必要がありますので、この両法律案を提出いたした次第でございます。  この両法律案は、右の趣旨に従いそれぞれ各法律の別表を改正いたしますとともに、裁判官報酬等に関する法律第十五条及び検察官俸給等に関する法律第九条に定めまする報酬または俸給の月額を改正しようとするものでありまして、この両案による改正後の別表及び右各条に定める報酬または俸給の各月額を現行の別表及び右各条に定める報酬または俸給の各月額と比較いたしますと、その増加比率は、おおむね一般の国家公務員のこれに対応する俸給月額の増加比率と同様と相なつておるのでございます。  以上簡単でありますが、この両法律案について提案の理由を御説明申し上げました。何とぞ御審議をお願いいたします。
  142. 安部俊吾

    安部委員長 これにて提案理由の説明は終りました。ただちに両案について質疑に入ります。質疑は通告順によつて許します。田嶋好文君。
  143. 田嶋好文

    ○田嶋委員 私は政府と申し上げますよりも、むしろ裁判所から出席されております事務局の方にお尋ねいたしたいと思います。  今回裁判官の報酬が一般公務員と同じようにスライドされまして上つたのでありますが、これは私たち法務委員会の審議に当るものといたしましても、非常に適切なものでありまして、政府の処置に対して今日その時宜を得たものであると考えておるのであります。最近裁判所の予算面に対しましていろいろとうわさをするものがあります。裁判所は行政府並びに立法府から独立した司法権の立場から、その予算の運営というものが政府の干渉を受けないというようになつておりますところの立場から、とかく裁判所の予算の要求額がどうも乱雑になり、またこの予算の執行方法がとかく日本の国情に沿わないような行き方をしておるのじやないかというように言われておるのであります。この点は裁判所もおそらくお耳に入つておることでありましようし、私たち委員会といたしましても、これは相当な関心を持つておるものでありますが、そうした問題に対して裁判所はいかようなお考えを持つておられるか。そしてもしそうした面でとかく批評せられておるといたしますれば、火のないところに煙というようなことは、言い過ぎかもしれませんが、そうした言葉をもつても、世間で言われるとすれば、私たち考えなくちやならないと思いますが、その点に対しまして、裁判所側の御答弁を、この法案を通すに先だちましてお伺いをいたしたいと思います。
  144. 吉田豊

    ○吉田最高裁判所説明員 便宜私からお答えいたしますが、裁判所の予算の計上及び実行について、ことに行政官庁よりもずさんではないかというような御趣旨のようでございますが、予算の計上につきましては、特に裁判所が行政官庁よりも異つた取扱いを受けていることはございません。ことに大蔵省の予算当局といたしましては、各省とのバランスということも非常に尊重しておりまして、常に各省と不権衡にならないか、そういうことを始終注意しながら予算を組んでおりますので、そういう点は予算の計上につきまして、特に裁判所が甘いような点があるようなこともまたないと私は思つております。  それから予算の実行につきましても、これは全部大蔵大臣の管轄を受けまして、すべて財政法、会計法、その下にある政令規定に従つて予算の実行をいたさなければなりません。それについてもすべて国務大臣のいろいろな制約を受けてやつておるわけでございます。ことに会計検査院からは、実行については特に会計法の立場から厳重な検査を受けてやつておりますので、私の方といたしましては、特に実行の面において、ずさんというようなこともないと固く信じておるわけでございます。
  145. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 実は私今お尋ねをいたしました点は、これは裁判所の側としてはむりのない措置でございましようが、今の国家の現状から申すのであります。今の国家といたしましては、申すまでもなくわれわれはある程度以上の耐乏をしなければならぬ。裁判所は新憲法になつて、まつたく行政府、立法府から独立した関係になり、その裁判所の独立的な立場から威信を保つというような意味で、いろいろな行政府から考えると不当ではないかとまでいわれるところの設備費等が出ておる。これらの点に対しましては、やはり裁判所の独立した、司法権の独立という立場から威信を保つて行くというその気持、そしてそれが過渡期にあるというこの立場、これは私たちよくのみ込めるのでありますが、やはり裁判所も国家を離れての裁判所ではないのでありますから、それらの点に対しまして、十分なる自粛と十分なる方法、処置とを誤らないように、これだけ私は要望をいたしておくのであります。  次にもう一点御質問いたしますが、今度の俸給増俸、これは先ほど申し上げましたように、私たちは喜ばしいものと思つておるものでございます。しかしこれを運営するに当りましては、これは相当に考えなければならぬと思います。とにかくこの予算面を中心にいたしまして、優遇ということを考える。その優遇に基くところの給料の支給に当りましては、裁判所内部でそれが運営できるのでありますから、たとえば従来の判事の一級でございますが、判事の一級に対して他の俸給を一級にしわ寄せするならば、そこに非常な予算の運営いかんによつては優遇法案が生れるのであります。しかしそうすることは、これは裁判所内部はいいのでございますが、国家全般の財政から考えますと、非常にふつり合いが生れるということでございます。この点は相当警戒しなければならぬ点でございまして、従来から非難をせられたのでございますが、この点に対して、今度の改正規定が実施せられた後、裁判所はどういうように御対処せられるおつもりでありますか。
  146. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 今度の法律案が通過、成立いたしますと、その対等の方法でスライドをするのであります。これは俸給がスライドをするときには、もちろん下にスライドさせるということはできませんから、これは動かしがたいところであります。しかしその後にさらに従来の方針を無視して、あるいは他の行政官庁の俸給の上昇というようなこととあまり懸隔を置いて、裁判所がひとりで、お手盛りで昇進をさせるというのは、従来ももちろん控えておりましたところでありましたが、今度はそういうようなことはもちろんいたさないつもりであります。大体ただいま裁判所の職員の昇級、ことに裁判官の昇級が、一般の行政官に比して早過ぎるというような御議論もございますけれども、それはたとえば非常に成績の優秀な者をある場合に抜擢をいたすというような特別な例を、他の行政官、ことに学校を出まして、同じ年限を経たものと比べれば多少の非難も受けるような特異な例外はありますけれども、御承知のように裁判官の在職年数というものは、平均率がことに判事の場合には非常に多いのであります。三号、二号、一号等を給しておる者は、少くとも二十年、あるいは多い者になれば四十年近くの者が、それらの号俸の間にはさまれておるのでありまして、そういう点もごしんしやくしてお考えくだされば、裁判所のみが特に早く昇進をしておるというようなことは全体的にお考えくださつたならば言えないと思います。もちろんこの改正法案が通過いたしました場合に、裁判所はそういう一部の非難があることは、もちろん常に念頭において、この法律を実施したいと思つております。
  147. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私の質問はこれで終ります。
  148. 安部俊吾

    安部委員長 石井繁丸君。
  149. 石井繁丸

    ○石井委員 せつかくの努力で法案が大体われわれの期待通りにできた関係で、ごく簡単に一、二の点をただしておきたいと思います。  第一点は法務総裁に御質問並びに御警告というような形になるのでありますが、この裁判官報酬等に関する法律ができましてから、一般の賃金ベースが改訂になるときにおきましては、いつも裁判所側並びに内閣が特に大蔵省側とトラブルが起りまして、法務委員会あるいは各方面等といろいろと折衝して最後にまとめあげるというような形が現われるのであります。今後におきましてはこの検察官に対しましても、裁判官の報酬をスライド・アップするときにおきましては、一応の基本の法律ができておるのでありますから、よく法務総裁が裁判所と連絡をとりまして、今回のことのないように、事前において円滑に法案が仕上るようにいたしてもらいたいと思うのでありますが、これらについて法務総裁はいかなる御所見を持つておるか、お尋ねいたしたいと思うのであります。
  150. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、裁判官報酬等に関する法律の第十条の趣旨によりまして、常に一般給与ベースの改正の際におきましては、これと均衡を得たる額ないし比率をもつて裁判官についても報酬を引上げるという方針をとつておるわけであります。今回の改正にあたりましても、提案が非常に遅れまして、御審議にはなはだ御迷惑をおかけしたのでありますが、この立案の過程におきましては、いかにしてこの精神に従つて法案を立案することができるか、という点を中心にして検討して参つた次第であります。今後におきましても本改正案の提案にあたりとられたごとき方針によつて、今後とも審議いたしたい、そのように考えておるわけであります。
  151. 石井繁丸

    ○石井委員 大体におきまして、今後の努力を待ちたいと思います。特にこの法律のスライド・アツプの点、裁判官の報酬の点あるいは検察官の俸給の点は、本法案をつくるときから大蔵省側におきましては、相当に反対の意向があつたのであります。今後におきましてもなるべくこの点については大蔵省は何らかの形においてけちをつけたい、こういうふうな意向が現われようと存ずるのでありますが、法務総裁といたしましてもよく御注意をしていただきたいと思うのであります。  それから一点お尋ねいたしますが、今度の補正予算におきましては、この増額によりまして、原案からみますと、この前に現われたところの大蔵省側の原案というような立場と今後のを比べましても、補正予算がある意味において増加しなければならないのに、補正予算は少しも動かないでおる、こういう形になつておるのであります。そこで補正予算のわく内においてこの増額がまがなわれるというふうな形になると、何か補正予算においてあるいはこの俸給あるいは報酬の支払い等においていろいろとむりが行くのではなかろうかと思うのでありますが、その間の処置あるいは取扱いは、法務庁とし、あるいは最高裁判所としてはどう処置される意向であるか、承つておきたいと思うのであります。
  152. 大橋武夫

    大橋国務大臣 補正予算提出の際におきましては、裁判官及び検察官の報酬または俸給をどの程度増額するかということについて具体的検討をいたす前に、これを決定いたしました関係上、あるいは今回の改正案を実施するにあたりましては多少予算上きゆうくつがあることと想像いたします。しかしながら計算をいたしてみますると、多少運用にくふうをいたしますならば、十分に経理し、得るということが明らかになりましたので、この法案を急遽提出することに相なつたのであります。     〔委員長退席、田嶋(好)委員長代   理着席〕
  153. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 裁判所の方もただいま法務総裁答弁と同様に、従来の予算によつて、たとえば欠員の人件費というようなものをこれに充ててまかなうことができると考えております。
  154. 石井繁丸

    ○石井委員 最後に一点、今度こういうふうにして何とかそれがやり繰りできるのであつては……。
  155. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員長代理 石井さん、時間がありませんから……。
  156. 石井繁丸

    ○石井委員 二十六年度の予算においても何とかなるのではないか、こう言つて、今度の賃金のアップをした線に沿わないで二十六年度の予算が組まれるというようなことになりますと、三箇月であるから何とかむりができると思いまするが、今後十二箇月予算においてはさようなことはできまいと思うのであります。これらについて、二十六年度予算においてむりが行かないように、法務総裁においてもあるいは事務当局においても最高裁判所においても、手続に最善の努力を尽してもらわなければいかぬと思うのであります。それらの点について手抜かりなくやつていただけるように大蔵省と折衝がしてあるかどうか、最後に一点承つて質問を終りたいと思うのであります。
  157. 大橋武夫

    大橋国務大臣 便宜私からお答え申し上げまするが、検察庁並びに最高裁判所の予算を検討いたしますると、来年度のただいま大体考えておりまする予算額をもちまして経理できる見込みでございます。
  158. 押谷富三

    ○押谷委員 この際動議を提出いたします。裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、質疑をこの程度で終局し、討論省略の上ただちに採決に入れられんことを望みます。
  159. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員長代理 ただいま押谷君から動議が出ましたが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員長代理 御異議ないものと認めます。では両法案を一括いたしまして採決に入ります。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を原案の通り決するに賛成の諸君の起立をお願いいたします。     〔総員起立〕
  161. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員長代理 起立総員。よつて両案は原案の通り可決いたしました。  この際お諮りいたします。可決されました両案について、委員会の作成については委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員長代理 異議なしと認めます。  では暫時休憩いたします。     午後四時二十七分休憩      ————◇—————     午後五時一分開議
  163. 安部俊吾

    安部委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  次に請願の審査をいたします。請願の審査は、紹介議員のお見えになつている請願については、その紹介説明を聴取し、お見えになつていない請願につきましては、かわつて事務当局の方で文書表を朗読いたします。なお審査にあたつて趣旨のものについてはこれを一括議題といたします。議題となりました請願については、その都度関係当局より意見を聴取することにいたします。各請願に対する委員会の態度の決定については、一応請願全部の審査を終了した後にこれを行いたいと存じますから、さよう御了承願います。  では日程第一を議題といたします。日程第一、国民指紋法制定請願、第三一号。説明を求めます。     〔調査員朗読〕  国民指紋法制定請願   請願者  和歌山県新宮市新宮三十一番地早川 憙次郎   紹介議員 世耕弘一君。本請願の要旨は、人の指紋は、終世不変であり、万人相同じからずという科学的根拠を、指紋による個人識別法は、操作簡易、処理迅速、結果正確、経費また低廉であり、指紋は有力なる証拠となり、刑事上、民事においても裁判の結果に公正を保ち、増加せる諸種の犯罪に対し、すみやかなる検挙に役立つのみならず、指紋法を応用し、確実に犯罪捜査の根拠を科学的に立証し得ることは、一般防犯、特に青少年の防犯に精神的予防の実をあげせしめるものである。かかる理由により、全国民の指紋を強制的に採取し、これを保有して随時活用せしめるため、国民指紋法を制定されるとともに、その施行方法としては、就学期に達した児童の小学校入学時に施行し、全国民への施行はまず全学生より始められたいというのである。
  164. 安部俊吾

    安部委員長 関係当局の御意見を聴取いたします。
  165. 高木松吉

    ○高木政府委員 この請願趣旨はまことにもつともであると考えられまするが、指紋を個人識別法として取上げ、従来のように刑事政策的な面ばかりでなく、その他のすべての場合にもあわせて活用できるようにするために、広く一般国民を対象とするためには、戸籍などと同じように取扱う必要もあると考えられ、その実施の方法等については、さらに慎重に研究し、その上で関係の各方面とも協議し、将来における立法上の措置等、趣旨のあるところは十分尊重して行きたいと思いまするから、さよう御了承願います。     —————————————
  166. 安部俊吾

    安部委員長 次に日程第五、鳴門市に簡易裁判所並びに区検察庁設置請願、日程第七、福島町に簡易裁判所及び検察庁設置請願を一括議題といたしまして、紹介議員の趣旨説明を求めます。田中不破三君。
  167. 田中不破三

    田中不破三君 本請願は宮崎県南那珂郡福島町町議会議長鎌田勇三君の提出にかかるものでありまして、その趣旨は宮崎県南那珂郡福島町に簡易裁判所並びに検察庁の設置請願いたしているものでございます。その理由といたしまするところは、簡易裁判所並びに検察庁設置方については、昨年四月郡南部五箇町村長議長名をもつて詳細なるいろいろの資料をそろえまして、各関係向きに陳情いたしましたところ、直接の関係当局者によつて数次にわたる綿密なる実地調査が遂げられ、地理的には申すまでもなく、その他の実情に加うるに特に地元の協力的熱意等と相まちまして、設置候補地として最も条件に適するものと結論づけられたやに仄聞いたしておるのであります。右のような次第を御賢察賜わりまして、簡易裁判所並びに検察庁設置につき、特別の御高配を賜わりたく、住民の総意を体して右町議会満場一致の決議をもつて請願をいたすという趣旨でございます。何とぞよろしく御採択のほどをお願いいたします。     —————————————
  168. 安部俊吾

    安部委員長 日程第五に関しましては、調査員より説明を求めます。     〔調査員朗読〕 鳴門市に簡易裁判所及び区検察庁設置請願   請願者  鳴門市議会議長 田淵        清一郎外一名   紹介議員 眞鍋勝君本請願の要旨は、鳴門市は観光、産業都市として整備され、四国の東門としてその発展を期待され、市内には官公庁、学校等多く集つている。現在徳島市にある徳島簡易裁判所は、徳島市、鳴門市、板野郡、勝浦郡、名東郡、名西郡の二市四郡総人口三十九万を管轄し、取扱い事件数も徳島地方裁判所管内の他の簡易裁判所のそれをはるかに突破し、四倍ないし十倍に達し、事件は副湊し、一日の開廷事件を多とし、開廷時間を長時間必要とし、遠方の者に時間と冗費を負担させている。明治三十五年から大正二年までは撫養区裁判所が開設されていたこともあるから、元撫養区裁判所現在徳島地方法務局鳴門出張所に、鳴門簡易裁判所並びに区検察庁を設置されたいというのである。
  169. 安部俊吾

    安部委員長 政府側の意見を聴取いたします。
  170. 高木松吉

    ○高木政府委員 ただ今お申し述べになりました宮崎県南那珂郡福島町に簡易裁判所及び区検察庁設置請願の御趣旨は十分了解いたしました。  簡易裁判所及び区検察庁は、現在全国に五百六十五箇所がそれぞれ設置されておるのでありますが、この裁判所及び検察庁は直接社会の秩序維持に当る第一線の機関でありまして、国民の利害に関係するところが非常に多いのにかかわらず、その数が十分でありませんので、全国各地からその増設方につき陳情または請願のありましたものは数十箇所に及んでいるのでありまして、財政上の関係等からその設置は思うにまかせない現状にあるのであります。今回御請願になりました福島町に簡易裁判所及び検察庁設置の件は、調査の結果相当設置の必要性を認められるのでありますが、国家の財政事情や他地方との均衡の問題もありますので、なお十分考慮してなるべく御希望に沿うように努力いたしたいと存ずる次第でございます。  なおただいまお申し述べになりました鳴門市に簡易裁判所及び区検察庁設置請願の御趣旨は十分了解いたしました。簡易裁判所及び区検察庁は直接社会の秩序維持に任ずる第一線の裁判所と検察庁でありまして、国民の利害に関係するところが非常に多いので、政府といたしましてはできるだけ多くの土地にこれを設置いたすべく努力いたしておるのでありますが、財政の関係からその実現は思うにまかせない状態にあるのであります。鳴門市に簡易裁判所及び区検察庁設置方の請願書は前国会にも提出がありその後調査の結果土地の状況も判明いたしましたので、最高裁判所とも協議いたしまして、事情が許す限り御希望に沿うよう努力いたしたいと存じますから、さように御承知をお願いいたす次第でございます。
  171. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所説明員 最高裁判所におきましても、ただいま政府委員から申し上げましたと同様御請願趣旨は十分了承いたしました。政府委員の申し述べましたと同様、最高裁判所におきましてもその設置に努力いたしたいと考えております。     —————————————
  172. 安部俊吾

    安部委員長 日程第二、宇佐簡易裁判所権限乙号支部昇格請願、及びそれと反対趣旨の日程第一〇、宇佐簡易裁判所権限乙号支部昇格反対請願を一括議題といたします。説明を願います。     〔調査員朗読〕 宇佐簡易裁判所権限乙号支部昇格請願   請願者  大分県宇佐郡四日市町        長 池田徳之助外三十        四名   紹介議員 福田喜東君本請願の要旨は、宇佐簡易裁判所は、昭和二十二年五月、新憲法施行に伴い大分県宇佐郡全部を管轄区域として、当郡四日市町に設置開庁されたのであるが、同庁が簡易裁判所であり、司法関係用務の大部分ことに最近増加しつつある家庭裁判事件は、大分地方裁判所中津支部並びに大分家庭裁判所中津支部(ともに甲号)の管轄内にあるため、大なる不便を感じている。ついては、該裁判所の歴史的沿革及び地理的見地等より同庁を権限乙号の大分地方裁判所宇佐支部並びに大分家庭裁判所宇佐支部に昇格せしめ、司法的利益享受の機会を容易ならしめられたいというのである。     ————————————— 宇佐簡易裁判所権限乙号支部昇格反対請願   請願者  大分県中津市長 淺沼        義男外三名   紹介議員 西村英一君本請願の要旨は、大分県宇佐簡易裁判所を、地方裁判所乙号支部に昇格しようとして、宇佐地元民が陳情し、かならずしも実現不可能でないということを聞いて、大分地方裁判所中津支部では驚き、かつ反対している。すなわち、中津支部は、中津、下毛、宇佐の一市二郡を事実上管轄区域としていて、現在甲号支部であるが、宇佐簡易裁判所が中津支部から宇佐郡を切り離して、乙号支部に昇格するならば、中津支部の取扱件数はその過半数を失い、甲号支部としての存在価値を喪失し、ひいては乙号支部に転落する危険がある。六十余年の歴史と伝統をもつ大分地方裁判所中津支部のために、中津市及び市民は宇佐簡易裁判所の乙号支部昇格に反対するというのである。
  173. 安部俊吾

    安部委員長 日程第二、及び日程第一〇に関しまして、御質疑はございませんか。——政府側の意見を聴取いたします。
  174. 高木松吉

    ○高木政府委員 ただいまお申し述べになりました宇佐簡易裁判所に、大分地方裁判所乙号支部併置方請願の御趣旨は十分了解いたしました。政府といたしましては、本件は最初の請願でありますので諸般の状況調査中でありますが、裁判所支部に関する事項は最高裁判所の権限に属しておりますので、本請願の御趣旨を最高裁判所に伝達いたしまして、十分の考慮を願うことにいたしたいと存じますから、さように御承知をお願いいたします。  なおただいまお申し述べになりました宇佐簡易裁判所に地方裁判所乙号支部併置反対請願の御趣旨は十分了解いたしました。今国会に提出されました宇佐簡易裁判所に地方裁判所乙号支部併置方の件は、最初の請願でもありますので諸般の状況を調査中のものでありますが、裁判所支部の設置に関する事項は最高裁判所の権限に属しておりますので、本請願趣旨はさらに最高裁判所に伝達いたしまして十分研究することにいたしたいと存じますから、さように御承知をお願いいたします。
  175. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所説明員 ただいま御請願の支部設置のことにつきましては、最高裁判所におきまして十分に研究いたしまして結論を得たいと存じております。     —————————————
  176. 安部俊吾

    安部委員長 日程第三、新冠村に法務局出張所設置請願、文書表第六一号を議題といたします。説明を願います。     〔調査員朗読〕 新冠村に法務局出張所設置請願   請願者  北海道新冠郡新冠村長        十倉十六美   紹介議員 松沢 兼人君本請願の要旨は、北海道新冠郡新冠村は、四十四方里の面積を有し、大半は国有林と旧御料地であつて、民有地はわずかに一千八百町であつたが、終戦後御料地の開放に伴い、開拓者として入殖したもの六百戸、将来の予定は一千戸を計画している。農地調整法、家屋、土地台帳法の改正に伴い、登記を要するもの急増し、奥地十余里の部落から往復数日を費して登記を終了した状況で、貧困な御料牧場の人夫及び開拓者等には経済的負担も容易ならぬものがある。ついては、新冠村役場所在地に法務局出張所を設置されたいというのである。
  177. 安部俊吾

    安部委員長 日程第三の請願について御質疑はございませんか。——政府側の意見を聴取いたします。
  178. 高木松吉

    ○高木政府委員 法務局出張所を新設するかいなかはまずその地の人口、交通、面積の実態のみならず、その地において処理する事件数を十分考慮してきめなければならなことはもちろんでありますが、請願のあつた新冠村を管轄する静内出張所における過去の総処理事件数を見ますに、昭和二十二年三百六十四件、昭和二十三年四百二十件、昭和二十四年六百五件で、以上の平均が四百六十三件であります。このような実情の下におきまして、事件を分担させるために新たに出張所を設け職員を常置するということは、これによりまして受ける当該村民の利益に比し国庫の負担がいささか多きに過ぎる感があり、現在の我が国の現状から見てただちにこれを実現することは困難であります。しかしながら、新冠は請願にもあるように面積も広く、この地を管轄する札幌法務局静内出張所までは相当な距離であり、村民の不便はさこそと思われるのみならず、近来産業上同村の発展は著しく、急激に人口の増加も予想されるので、政府としては将来において十分考慮いたしたいと存ずる次第であります。     —————————————
  179. 安部俊吾

    安部委員長 日程第四、燕町に登記所設置請願、文書表番号第二〇五号を議題といたします。説明を聴取いたします。     〔調査員朗読〕 燕町に登記所設置請願(第二〇五号)   請願者  新潟県西蒲原郡燕町長        中沢仙治郎外十一名   紹介議員 松木 弘君本請願の要旨は、新潟県西蒲原郡燕町は、人口二万八百五十人の工業都市で、中の口川の流域に恵まれて農業もまた盛んである。同町は、上越線東三条駅をはさみ、燕県庁前電鉄線が、中の口川の沿線を走り、交通の便利きわめてよく、隣村民は、一年を通じて集まる一大中心地となつている。しかし同町は、不動産の所有権の保存及び移転分筆、地目変換の数が多く、隣村の大部分が農業を営むため、農地改革による登記手続をする場合、幾里も離れ道を徒歩で、電鉄線や国有鉄道に乗りかえて、登記所に向うことは容易でない。このまま放置すれば、農地改革に伴う登記事務の終了を望むことは期しがたいから、燕町に登記所を設置されたいというのである。
  180. 安部俊吾

    安部委員長 政府側の意見を聴取いたします。
  181. 高木松吉

    ○高木政府委員 登記所を設置するかいなかは、その地方の人口、交通、産業、面積、登記件数及び隣接登記所の事務量等を勘案して設置すべきであります。  本請願を調査いたしてみまするに、御不便は十分考えられますが、遺憾ながら今ただちにこれを実現することは、経費等の関係から困難な事情にありますので、将来において十分考慮いたしたいと存ずる次第であります。     —————————————
  182. 安部俊吾

    安部委員長 次に日程第六、法務職員の給与改訂に関する請願、文書表番号第二六六号を議題といたします。説明を求めます。     〔調査員朗読〕 法務局職員給与改訂に関する請願(第二六六号)   請願者  宇都宮地方法務局 大森鼎外百五十六名   紹介議員 佐藤 親弘君本請願の要旨は、新憲法実施以来、三権分立の原則が確立されて、裁判及び検察の事務を除く法務は、すべて行政官庁である法務府の所管となり、中央では、法務府民事局、人権擁護局、民事訴訟局、行政訟務局等の各局、地方では法務府の下部組織である法務局、地方法務局及びその支局、出張所がこれを担当している。宇都宮地方法務局でも人権擁護、訟務、登記、土地家屋台帳、戸籍、供託等を取扱つているが、法務局に職を奉ずるようになつた者は、裁判所、検察庁関係職員が個々の事件の処理にあたつて一々判、検事の指揮監督を受けるのと異なり、上長にかわつて、おのおのの法律的判断で、重要な担当事務を処理する責任を有する反面、その給与は裁判所、検察庁職員の方がはるかに高い水準にある。ついては、法務局の職員の給与を裁判所検察庁の職員の給与と同等に引上げるように、官吏給与法を改正されたいというのである。
  183. 安部俊吾

    安部委員長 政府意見を聴取いたします。
  184. 高木松吉

    ○高木政府委員 法務局の職員は、平素不動産登記その他各種の商業登記、戸籍、供託、人権擁護、法務事務は高度の法律知識と技術を要し、その上多忙をきわめ、さらに本年八月一日からは土地家屋台帳事務等の重要事務に忙殺されているので、給与の面において何とか優遇の道を講ずる必要のあることは申すまでもないことでありますが、裁判所書記官または検察事務官のように、特別の任用資格または職務上特別の危険性を伴うことがなく、一般の行政事務との区別を明らかにすることが困難であるために、給与法上特別の俸給を支給するまでに至つていないのであります。職階制の実施に伴う格付の際に、給与の面において有利な取扱いを受けられるよう努力したい考えであります。     —————————————
  185. 安部俊吾

    安部委員長 次に日程第八、前橋地方裁判所桐生支部権限甲号支部昇格請願、文書表番号第三七〇号を議題といたします。説明を求めます。     〔調査員朗読〕 前橋地方裁判所桐生支部権限甲号支部昇格請願(第三七〇号)   請願者 群馬県桐生市長 前原       一治外九名   紹介議員 長谷川四郎君本請願の要旨は、桐生市に裁判所支部設置請願は、昨年十月、甲号支部の希望に対して、一応乙号の設置が許可されたが、まだ重要民刑事件少年事件は、前橋地方裁判所所管に属し、ことに少年事件の多い東毛地区(桐生、大田両市及び新田、山田、邑楽三郡)では、指定の召喚日に出頭する者は少く、事件処理に支障を来している。ついては、桐生支部を甲号支部に昇格し、東毛地区を管轄区域とされ、同地方の治安を確立されたいというのである。
  186. 安部俊吾

    安部委員長 政府意見を聴取いたします。
  187. 高木松吉

    ○高木政府委員 ただいまお申し述べになりました前橋地方裁判所桐生支部を甲号支部に昇格請願の御趣旨は、十分了解いたしました。政府といたしましても、御不便の事情はよく承知し、ておるのでありますが、裁判所支部に関する事項は最高裁判所の権限に属しておりますので、本請願趣旨を最高裁判所へ伝達し、十分の考慮を願うことにいたしたいと存じますから、さよう御承知をお願いいたします。
  188. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所説明員 御請願の御趣旨は十分了承いたしました。十分に調査を進めまして御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。     —————————————
  189. 安部俊吾

    安部委員長 次に日程第九、借地法の一部改正に関する請願、文書表番号第四三八号を議題といたします。説明を求めます。     〔調査員朗読〕 借地法の一部改正に関する請願(第四三八号)   請願者  東京都中央区木挽町一        丁目九番地 松下長平        外七名   紹介議員 小林 運美君本請願の要旨は、太平洋戦争の際、強制疎開で永住の土地を追われた者は、平和になつて、旧借地に帰住したいと思つても現行借地法では許されない。戦争の犠牲者という点では、戦災者も強制疎開者も同じであるのに、戦災者だけが、旧借地に帰住が許され、強制疎開者は献身的に消火に努めた者でも、このような処置を受けることは不合理である。政府は、借地法を改正して、強制疎開者も戦災者同様に、旧借地へ復帰できるようにされたいというのである。
  190. 安部俊吾

    安部委員長 政府の所見を聴取いたします。
  191. 高木松吉

    ○高木政府委員 太平洋戦争に際し、防空上の必要により疎開建物が除却された当時におけるその建物の所有者または借主は、罹災都市借地借家臨時処理法(昭和二十一年法律第十三号)第九条の規定により、空襲による災害のため滅失した罹災建物の借主と同様、同法第二条または第三条の規定により、同法施行の日である昭和二十一年九月十五日から二箇年以内に、その土地の所有者まはは借地権者に対し、建物所有の目的で賃借の申出をするか、または借地権譲渡の申出をすることによつて、優先的に借地権を取得する道が開かれていたのであります。従つて請願趣旨とされるような罹災者と建物疎開者との間に異なる取扱いをしていなかつたのでありますから、御了承を願います。
  192. 安部俊吾

    安部委員長 以上をもつて請願の審査は一応終りました。  これより各請願に対する委員会の態度を決定いたします。日程第一及び第九は、これを採択すべきものと決定し、日程第三ないし第八はこれをいずれも採択し、採択の上は内閣に送付すべきものと決定することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 安部俊吾

    安部委員長 御異議ないようでありますから、さよう決します。  なお日程第二及び第一〇につきましては、さらに検討を要することと思われますので、これらに対する委員会の態度の決定は、本日は留保いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  194. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければ、さよう決します。     —————————————
  195. 安部俊吾

    安部委員長 次に陳情書について審査を行います。まず各陳情書について順次その説明を求めます。     〔調査員朗読〕 浦和地方法務局等を現位置に設置陳情、第四五号、陳情者は東京都千代田区霞ケ関一丁目一番地、日本弁護士連合会会長、有馬忠三郎。今般浦和地方法務局及び浦和地方並びに同区検察庁を、北浦和に新築移転する由であるが、右敷地は、市北隅の工場地帯に位し、官庁敷地として不適地であり、関係諸官庁と遠く離れ、事務取扱い上等不便が多いから、同局を現位置である、浦和地方裁判所地内に新築せられたい。     ————————————— 警察官ピストル射殺事件に関する陳情、第一七二号、陳情者、山形地方裁判所内、山形県弁護士会会長、小林正一。昭和二十五年五月十日午後四時三十分ごろ、山形県東田川郡黄金村大字民田字代家田、阿部厳方居宅前道路上にて、詐欺被疑者として逮捕状により阿部厳を逮捕しようとした国警鶴岡地区警察署勤務司法巡査柿崎実が、拳銃により同人を射ち、死に至らしめた事件に対し、山形地方検察庁検事正小幡倹介は、誤想防衛であり、かつその誤想については過失でないと判断し、同年五月二十七日不起訴処分にした。この処分ははなはだ不当であるから、当局はすみやかに十分な調査をされたい。     ————————————— 名張町に簡易裁判所並びに検察庁設置陳情、第二三〇号、陳情者、三重県名賀郡名張町長 北田藤太郎外一名。三重県名賀郡名張町は、人口およそ一万五千、伊賀二郡中、上野市に次ぐ小都であつて、名賀郡の政治、文化及び物資集散の中心地である。しかし、所轄裁判所の所在地である上野市とは二十一キロの距離があつて、訴訟関係人の出頭、被疑者被告人の護送、令状請求等時間的に著しい不便と困難とをこうむつている。ついては、さきに全国におよそ千百三十六箇所の簡易裁判所が開設されたほどでもあるから、同県名賀郡を管轄とする名張簡易裁判所並びに同検察庁を新設せられたい。     ————————————— 浜松市における不当強制執行に関する陳情。第二五八号。陳情者、浜松市旭町五十二番地、荒熊隆司。荒熊隆司は、終戦後カメラ材料店を浜松市に営んでいたが、同借地を含めた二百坪を本年三月、三和銀行浜松支店に買収された。同人はただちに提訴したが、双方の弁護人立会いの上に和解が成立した。その条件は、同人は六月中に渥美氏宅に移転のこと、銀行側は渥美氏のために新しく二階家を建築すること等であつたが、不可解にも和解調書には、銀行側が渥美氏の住宅を建築することの記入がないので、引越しすることもできず、異議申請や延期申請をしていた。しかるに、本年八月二十六日全然通告もなく、同人の上京留守中に、執達吏によつて強制立退きを執行されて、同家の商品、日用品等が街路に運び出された。これは法を知らざる者への不当な強制執行と思われるから、人権擁護の上から十分調査し善処されたい。     ————————————— 裁判所書記官及び少年調査官の給与引上げに関する陳情、第三一一号、陳情者、山形地方家庭裁判所所長 阿部勇外五十八名。民、刑事両訴訟法等の改正によつて、訴訟手続については、公判中心主義が徹底強化され、その結果、裁判所書記官及び少年調査官の職責は、従前に比し一段と重要性を加えてきた。同事務は質的に複雑困難であり、相当高度の法律智識と、社会常識及び科学的専門智識を必要とし、特段の技術と教養とを要するのであるが、しかるに他官庁並の待遇にとどまつている現状である。ついては、以上に対する俸給には、「一般職の職員の給与に関する法律」別表の税務職員および経済調査官級別俸給表を適用されたい。
  196. 安部俊吾

    安部委員長 以上をもつて陳情書説明は一応終りました。  これより委員会の態度を決定いたします。陳情書は調査または審査の参考に資することにし、いずれもこれを了承することにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なきものと認めまして、さよう決します。  本日はこの程度にて散会いたします。次会は明日午前十時三十分から開会いたします。これにて散会いたします。     午後五時三十六分散会