○猪俣
委員 私は今の点は切にお願いしたいのでありまして、これが軍隊に転化するものならそれでいいのであります。しかるにあらずして、ほんとうの
警察隊として
国内の
治安に当るという建前であるといたしまするならば、
警察に二つの系統があるということが、実は有機的活動に非常に困るのじやないか。私どもの希望としては、警警法にこういう特別
警察の項目を入れて、一本の
警察法というものに統制した方がいいじやないかという
意見を持
つておるのでありますが、
予備隊については
政令が出されておるので、これをいかに調和するかということが、これからの問題だと思うのです。現実の問題といたしまして、必ずこの
予備隊と普通
警察とのトラブルが起
つて来ます。役人のいわゆるなわ張り根性というようなものは、
大橋法務総裁も長い間役人をなさ
つてお
つて、私も役人の親戚もおれば周囲にも多いのでありますが、相当伝統的なものである。これがまつたく別々なところにおいて、別々の教育をされて参りましたならば、現場におきまして事に当る場合に、必ずトラブルが起ることは私は予言できると思う。これを避けるにはやはり全部と申しませんが、
幹部の人たちだけでも一つなべの飯を食わせて教育をするということが、将来国家百年の
警察予備隊のために、実にこれは基本的なあり方であらねばならぬし、この両系統の
警察が将来有機的に密着して行う場合においては、責任者がまず
考えなければならぬ根本問題だと私は思う。かような見地から、ぜひとも今の
警察大学校の設備が足らないならば、これを拡張いたされまして、この大学校において一定の期間一つかまの飯を食わせて
訓練をするという方向をおとりくだされんことを強く要望いたします。
それから
警察予備隊の教育でありまするが、これは
予備隊令の示す目的に向
つて、普通
警察と違う特別の
訓練がいると思うのでありますけれども、これは軍隊とそつくりの
訓練をしてしまつたら失敗だと思います。どうもわれわれのところへ達しまする報告によりますと、ほとんど軍隊のような
訓練をしておる。それも
アメリカの軍隊のような
訓練をしておるというように承るのでありますが、それはまあ今早急の際でいたし方ない点もあるかと存じまするけれども、
国内の
治安を維持するのには、軍隊的な
訓練、軍隊的な思想ではかえ
つてよろしくないということが
アメリカ自体において、これは識者の
一般に認めるところである。たとえば軍人上りでありまして十五箇年間もぺンシルバニアの州
警察の
長官をや
つておりましたグルム大佐が、
警察と軍隊との
訓練及び第一次的任務の相違を強調いたしまして、この中にも自己防衛をなす前に、れんがを何箇投げられるのを忍ぶか、何発たまを発射すべきか、及び行動を起す前にどれほどの悪口雑言を堪忍するか、こういう心得を教えるのが
警察である。軍隊にはこれができない。であるから
小銃を肩にした軍隊よりも
訓練したこの民主
警察の方が有効適切であるということを、軍人上りで十五箇年ペンシルバ二アの州
警察の
長官をや
つておつたグルム大佐が、
アメリカで国会に対してそういう報告をしておる。またマサチユーセツツ州
委員会の報告によりますと、兵隊の
武器は群衆の闘争本能を刺激する。
小銃を持
つておれば有効な
逮捕ができない。ところがこれを捨てれば兵隊というものは一個々々になると群衆に負けてしまう。兵隊はその
訓練及び
装備のゆえに過大または過小の力を行使する。
国内治安においては兵隊的
訓練及び兵隊的
装備及び行動というものは適切じやないということが
アメリカにおいても立証されておる。かような次第でありましていわんや
予備隊は軍隊じやないのかということが内外の疑惑にな
つておる際といたしまするならば、どこまでも精神教育におきましても、グルム大佐が言うたような精神及びその
装備におきましても、適切なる考慮を払いまして、これが昔の軍隊のような組織活動にばかり熱中されますると、かえ
つて国内治安の鎮圧ということについては不適当なものができ上
つて、そうして内外に対して
日本の再軍備の疑いを持たせる重大なことに相なるかと存じます。教育目的及び実際の教育の
方法を御考慮する際に、私はぜひこういう精神を取入れて御考慮願いたい。今まで私どもの聞きました
範囲におきましては、どうも軍隊教育のような方向に熱中なされておるのじやないか。その応募者の中にも相当いわゆる特攻隊上りの連中も入
つておる。いわゆる軍隊精神というものをたたき込まれて、
日本の軍国主義の一つの体験を経て来た人たちも多少ある。そういう人たちの感化、影響ということもありましようし、
警察予備隊の指導者たちが一歩誤りますと、
警察予備隊はゆゆしき存在に転化して、
日本のいわゆる平和国家の性格さえ一変するような重大な危機をはらんでおる。この
意味におきまして、私は強く当局のその点に対する御留意を願いたいと思いますが、これに対しまして
法務総裁なり
長官なり御
意見がございましたら承りたいと思うのであります。