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1950-11-30 第9回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月三十日(木曜日)     午後一時四十四分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君 理事 中村 又一君    理事 猪俣 浩三君       角田 幸吉君    鍛冶 良作君       佐瀬 昌三君    高橋 英吉君       花村 四郎君    牧野 寛索君       松木  弘君    眞鍋  勝君       山口 好一君    吉田 省三君       大西 正男君    石井 繁丸君       田万 廣文君    上村  進君       梨木作次郎君    世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         法務政務次官  高木 松吉君         法制意見長官  佐藤 達夫君         刑 政 長 官 草鹿淺之介君         検     事         (法務特別審         審査長)    吉河 光貞君         民事法務長官  田中 治彦君  委員外出席者         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月二十九日  裁判所法の一部を改正する法律案内閣提出第  一三号)  刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四号)  民事訴訟法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一五号) 同月二十八日  国民指紋法制定請願世耕弘一紹介)(第  三二号)  宇佐簡易裁判所権限乙号支部に昇格の請願(  福田喜東紹介)(第五八号)  新冠村に法務局出張所設置請願松澤兼人君  紹介)(第六一号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十九日  浦和地方法務局等を現位置に設置陳情書  (第四五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  裁判所法の一部を改正する法律案内閣提出第  一三号)  刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四号)  民事訴訟法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一五号)  神戸騒じよう事件に関する件  人権擁護に関する件  警察予備隊国内治安に関する件     ―――――――――――――
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  この際御報告いたします。去る二十七日議長に対し、国政調査承認要求をいたしましたが、二十八日付をもつて承認がありました。御了承願います。  次に日程に入りまして、裁判所法の一部を改正する法律案刑事訴訟法の一部を改正する法律案民事訴訟法等の一部を改正する法律案の三法案一括議題といたします。まず政府より提案理由説明を聽取いたします。法務総裁大橋武雄君。     —————————————
  3. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま議題となりました裁判所法の一部を改正する法律案ほか二つの法案につきましての提案理由を申し上げます。  先般連合国最高司令官覚書によりわが国裁判権に対する制限が緩和され、本年十一月一日以降わが国裁判所は、占領軍要員として指定されている者をのぞき、日本に在住する連合国人に対し、民事及び刑事裁判権を広く行使することができるようになりましたことは、御承知通りであります。このように、わが裁判権の及ぶ範囲拡張されるに至りましたのは、連合国わが国司法制度及びその運用に当る裁判所を信頼したからにほかならないと信ずるのであります。この信頼にこたえるためには、適正な制度のもとに、適正な裁判を迅速に行うことがきわめて肝要であると存ずるのでありまして、先般の覚書におきましても民事及び刑事事件審理促進について特に要請されるところがあつたのであります。政府といたしましても、つとに民事及び刑事事件審理促進のために、制度の改善の必要を認め準備を進めて参つたのでありますが、拔本的な対策を樹立するためには、制度の全般にわたつて徹底的な検討を加える必要があり、成案を得るためにはなお相当の日時を要しますので、今回は、事件迅速処理のため、さしあたり特に緊要と認めるもののみを取上げて、早急に改正案を提出するに至つた次第であります。  この裁判所法の一部を改正する法律案も、以上のような趣旨に基き、民事及び刑事事件審理促進をはかるための方策の一環として立案されたものでありまして、その改正要点は、第一は、下級裁判所裁判官職務代行する裁判官範囲拡張することであり、第二は、簡易裁判所裁判権拡張することであります。  以下改正趣旨について順次御説明いたしたいと存じます。  まず第一は、下級裁判所裁判官職務代行する裁判官範囲拡張に関する改正についてであります。現在裁判所法におきましては、下級裁判所裁判事務の取扱い上、差迫つた必要があるときは、一定の範囲内において裁判官職務代行の道が設けられており、高等裁判所の場合については、その高等裁判所が、その管轄区域内の地方裁判所または家庭裁判所判事所要職務代行を命じ、地方裁判所の場合については、その地方裁判所所在地を管轄する高等裁判所が、その管轄区域内の他の地方裁判所家庭裁判所またはその高等裁判所裁判官に、また家庭裁判所の場合については、その家庭裁判所所在地を管轄する高等裁判所がその管轄区域内の他の家庭裁判所地方裁判所またはその高等裁判所裁判官に、それぞれ職務代行を命じ、簡易裁判所の場合については、その簡易裁判所所在地を管轄する地方裁判所が、その管轄区域内の他の簡易裁判所裁判官、またはその地方裁判所判事に、所要職務代行を命ずることができるものとされているのでありまして、これにより裁判所事務実情に応じて、ある程度裁判官の配置につき臨機の措置を講じ得る道が開かれているのであります。ところが裁判所事件の徹底的な迅速処理をはかりますためには、より広い視野に立ち、より広い範囲にわたつて機動的に下級裁判所裁判官職務代行を命ずる措置を講ずる必要がありますので、従前の規定による裁判官職務代行範囲拡張いたしまして、高等裁判所地方裁判所及び家庭裁判所裁判官については全国的に、また簡易裁判所裁判官につきましては、高等裁判所管轄区域範囲内におきまして、相互に他の裁判所裁判官職務代行を命ずることができるようにしようとするのでありまして、裁判所法第十九條、第二十八條及び第三十六條の改正規定は、この趣旨から立案いたしたものでありますが、右第二十八條改正規定は、裁判所法第三十一條の五の規定により、家庭裁判所にも当然準用されることになるわけであります。  第二は、簡易裁判所裁判権拡張に関する改正についてであります。まず民事につきましては、御承知通り現在簡易裁判所訴訟物価額が五千円を越えない請求につき、裁判権を持つものとされているのでありますが、この金額の定められました昭和二十二年五月当時に比較いたしますと、わが国物価指数は数倍に高騰いたしているのでありまして、統計の示すところによりますと、簡易裁判所の取扱います民事訴訟事件数はきわめて少数であります。この点から申しますと、比較的簡易な手続によつて軽微な事件の迅速な処理をはかることを使命として設けられました簡易裁判所は、民事関係におきましては、十分にその機能を発揮することができないことに相なつているものといわざるを得ないのでありまして、簡易裁判所の取扱う民事事件が少いことは、それだけ地方裁判所負担を過重ならしめていることになるのでありますから、この際簡易裁判所民事に関する裁判権を、訴訟物の価格が三万円を越えない請求にまで拡張いたしまして、下級裁判所における事務負担の調整をはかり、もつて民事訴訟事件審理促進に資することは、まことに時宜に適した措置であると考えられた次第でございます。  次に、簡易裁判所刑事につきましては、現在罰金以下の刑に当る罪または選択刑として罰金が定められている罪にかかる訴訟のほか、窃盗罪またはその未遂罪にかかる訴訟についても裁判権を有し、かつ、窃盗罪もしくはその未遂罪にかかる事件またはこれらの罪と他の罪とにつき、いわゆる牽連犯の関係により、これらの罪の刑をもつて処断すべき事件においては、三年以下の懲役を科することができるものとされているのでありますが、窃盗罪またはその未遂罪と比較いたしまして、事案の軽重にさほどの差異もなく、また通常窃盗罪またはその未遂罪に関連して発生いたしますある種の犯罪につきましては、簡易裁判所に対して窃盗罪またはその未遂罪に関すると同様の権限を與えますことは、さきに簡易裁判所民事裁判権拡張に関して申し上げましたと同じ趣旨によりまして、きわめて適切なる措置であると信ずる次第でございます。裁判所法第三十三條の改正は以上申し上げました趣旨で立案いたした次第でございます。  以上、裁判所法の一部を改正する法律案の大要を御説明いたしました次第でございます。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。  次に刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明いたします。  この法律案提案趣旨は、裁判所法の一部を改正する法律案提案理由説明において、申し述べました連合国最高司令官覚書趣旨にかんがみ旧刑事訴訟法及び日本国憲法施行に伴う刑事訴訟法応急的措置に関する法律の適用されるいわゆる旧法事件審理促進をはかりまするため、刑事訴訟法施行法所要改正を加えようとするものでございます。改正要点は、次の二点と相なつております。  まず第一は、旧法事件処理についての裁判所規則に関する事項であります。現在の刑事訴訟法施行法も、裁判所規則に対する委任の規定を有しているのでありますが、その條文形式上、規則を制定することのできる範囲が明瞭を欠いておりますので、今回この規定形式を改め、旧法事件に関し裁判所規則をもつて審理促進のため必要な特則を定め得ることを明らかにいたしたのでございます。  第二は、最高裁判所における旧法事件処理に関する事項であります。すなわち旧法事件上告手続につきまして特則を設け、上告理由、書面審理等主要な部分について新法規定を適用することに改めた次第でありまして、これによりまして、最高裁判所負担を調整し、全体といたしまして審理促進をはかつて参ろうとするのが、おもな目標と相なつております。御承知通り最高裁判所は、憲法の解釈問題の解決、法令の解釈の統一をはかる等の重要な任務を持ち、しかも裁判官の数はわずかに十五名にすぎないのであります。しかるに同裁判所の受理いたしておりまする刑事事件の数は逐次増加の傾向にあり、未済事件の数もまたほとんど毎月増加いたしている状況でありまして、旧法事件未済だけでもすでに一千件に上つておるのであります。また現在下級審に係属いたしておりまする旧法事件のうち、上訴されて近い将来最高裁判所にかかると予想されておりますものも、相当多数に上つておるのであります。このような実情にかんがみまして、今回の改正旧法事件上告についても新法を適用し、最高裁判所負担を調整することによつて、その最も重要な使命に十分力を注ぎ得るようにしようというのが目的と相なつておるのであります。  今回の改正案は、多少被告人利益に影響するところもありますが、他面著しく正義に反するものであれば、刑の量定、事実の誤認等についても原判決を破棄することが認められる等、従来よりも被告人利益となる面もありまするので、決して被告人の重要な利益を害することはないものと存ぜられる次第であります。  以上がこの法律案提案いたした理由でございます。  最後に民事訴訟法の一部を改正する法律案提案理由を申し上げます。  この法案提案趣旨は、裁判所法の一部を改正する法律案提案理由において申し述べましたところと同様でありまして、民事訴訟事件審理促進をはかりますため、さしあたり特に緊要と思われる数点について、民事訴訟法等の一部を改正いたそうとするものであります。  第一は簡易裁判所事物管轄拡張に伴う規定整理であります。裁判所法の一部を改正する法律案提案理由において申し上げましたるごとく、民事訴訟事件の迅速な処理をはかりますため、裁判所法中の関係規定改正して、簡易裁判所事物管轄範囲を、訴訟物価額三万円を越えない請求にまで拡張しようとする次第でありますが、それに伴い、民事訴訟費用法及び民事訴訟用印紙法中の関係規定整理しようとするものであります。  第二は、準備手続拡張であります。現行法におきましては、準備手続裁判所合議体審理する場合に、例外的にこれをすることができるものとされておりますが、訴訟事件の迅速な処理をはかりますには、口頭弁論を集中して継続的に行うことが最も有効適切であり、集中審理がよく実効を收めますためには、準備手続において弁論準備が十分に行われていることが必要であると存じますので、裁判所が一人の裁判官審理する場合にも、準備手続をすることができるように改めようという趣旨であります。  第三は、準備手続を経た口頭弁論期日変更についての制限でございます。右に申し上げました通り準備手続において十分弁論準備をいたしました上で、口頭弁論を集中して行い、一挙に事件を解決することによつて訴訟迅速処理目的を達しようとするものでありますが、口頭弁論期日が容易に変更されることになりますると、とうていその目的を達することができません。そこで準備手続を経た口頭弁論期日変更は、やむを得ない事由がある場合でなければ、許すことができないものとしようとするものであります。  第四は、在廷証人等に対する日当旅費止宿料等の支給であります。右にも申し述べましたごとく、集中審理によつて証拠調べを行うようになりますと、勢い証人等は、その尋問を申し出た当事者が同行して、在廷証人等として尋問する場合が多くなるものと考えられますので、在廷する証人等取調べをなした場合にも、裁判所の呼出しに応じて出頭した証人等と同様、これに対し日当旅費止宿料等を支給することができることに改めようとするものであります。  以上が、この法律案提案いたした理由であります。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 安部俊吾

    安部委員長 以上をもつて提案理由説明が終りました。三法案に関しましては、本日はこの程度で終ることにいたします。     —————————————
  5. 安部俊吾

    安部委員長 次に神戸騒擾事件に関する件を議題といたします。今回神戸において惹起した朝鮮人騒擾事件に関しましては、本委員会としては重大な関心を持つておるのであります。本件に関し委員から発言の通告がありますので、これを通告順によつて許します。押谷富三君。
  6. 押谷富三

    押谷委員 現下すこぶる緊迫いたしておりまする国際情勢下におきまして、最も重要なる国内治安関係について、政府の御説明なり、御所見をお伺いいたしたいと存ずるのであります。それは今議題に供せられております神戸朝鮮人騒動でありまするが、この事件は一昨年の四月、わが国で初めて出されました非常事態宣言のありました朝鮮人事件に次ぐ重大な事件でありまして、この事件についての国民関心はまことに深いものがあります。この事件は過去において現われておりまする同種の事件とたいへん趣を異にいたしておる、いわゆる特殊性を持つておるのでありまして、ここに集まりました朝鮮人の数におきましてもたいへん多いのであります、その集まり方におきましても、同時に兵庫県における明石大久保姫路、相生、飾磨、福崎あるいは神戸市、尼崎市、西宮市、高砂町、こういう各方面からかり出されたものが千何十名かが集つたのであり、しかも伊丹であるとか、神戸市各所において、同時蜂起の形をとつておるのでありまして、一つの大きな指令のもとになされたごとき特異性を持つておると思います。あるいはまたかり出されておるこの暴徒の中には、学童でありますとか、あるいはもうほとんど活動力を持つておらないような老婦人などを前線に立たしめておるというような形になつておるのでありまして、かような点におきましてもたいへん違つた点がありますが、とにかくこの朝鮮人騒動はまことに大きな騒乱でありまして、国民はたいへんな関心を持つておるのでありますが、これはちようど神戸事件だけを考えますと、あたかも氷山が海面に現われた形でありまして、その水面下にはたいへん大きなものがひそんでいると考えます。私はこれからそういう方面について少し御当局意見を伺いたいのでありますが、まず最初にその表に現われた氷山、この朝鮮人事件概要を、政府が收集せられております資料によりまして、御説明をいただきたいと存じます。
  7. 大橋武夫

    大橋国務大臣 押谷君の御質問になりましたる神戸事件について、ただいままで当局において取調べましたる概要を申し上げることにいたします。  兵庫県下におきまする朝鮮人は、本年九月末現在の外国人登録国籍別調査によりますると、五万二千八百六十八名、このうち元朝連系に属すと認められます者四万五千百九十名、民団系七千六百七十八名ぐらいということに相なつておりまして、神戸市を中心とし尼崎明石姫路の各市に最も多く居住いたしておるようでございます。終戰後最も大きな騒擾事件として取上げられましたる昭和二十三年四月の朝鮮人学校問題をめぐる、いわゆる神戸事件を惹起いたし、続いて姫路尼崎等においても事件発生し、このために治安面においても相当憂慮するものがあつた次第でありますが、昨年九月朝連及び民青の解散によりまして、その間一時活発なる動きをしないようなことになつておつたのであります。しかしながら本年六月二十五日の朝鮮動乱勃発前後から、俄然活発な動きを見るようになりまして、ことに動乱勃発後におきましては、全県下にわたつて反戰、反米的な運動を展開いたし、しかも本年八月十日ごろから、朝鮮人秘密工作隊を結成いたし、神戸市内朝鮮人小学校でひそかに訓練所設置いたしまして、青年行動隊員尖鋭分子を訓練し、遂に九月九日、工作隊員の一部を勅令第三百十一号違反容疑で一斉検挙し、その後の動向については厳重に当局といたしましても注意をいたしておつたのでありますが、遂に今回の騒擾事件発生を見るに至つた次第でございます。  今回の騒擾事件発生に至るまでの経緯を申し上げますると、十一月二十日午前十時ごろ神戸長田区役所朝鮮人約三百名が押しかけて参りまして、生活保護法を適用してくれという要求を掲げて、不法行為に出ましたので、一名を公務執行妨害に、三十名を外国人登録証明書不携帯としてそれぞれ検挙いたしております。十一月二十四日午前十一時ごろには朝鮮人約一千名ぐらい、このうちには朝鮮人中学生約三百名ほど含んでおりますが、神戸長田区役所に押しかけまして、市民税を撤廃せよ、また生活保護法を徹底的に実施せよという要求をいたし、不穏な行動に出んといたしましたので、区役所側からの要請によりまして、所轄長田警察署から警察官が現場に急行いたしまして、群衆に退去を要求したのであります。しかるにかえつて警察官に対し反抗するに至りましたので、うち二十七名を公務執行妨害並びに住居侵入容疑検挙をいたしましたので、ようやく解散するに至りました。ところが同日午後八時ごろ彼らは神戸所在西神戸朝鮮人小学校に集合いたしまして、被検挙者の奪還を計画いたし、その後午後九時三十分ごろ約二百名くらいが長田警察署に押しかけ、代表者七名が署長面会を求めまして、被検挙者釈放要求したのでありますが、拒否せられて、退去いたしたのであります。同日午後十時ごろ再び西神戸学校に集まりまして、スクラムを組んで長田警察署に押しかけまして、被検挙者釈放を迫りましたが、これも拒否せられたのであります。この際におきましても、警察官に反抗いたしたという事案がございまして、首謀者と認められまする川崎製鉄所解雇者でありまする日本共産党員一名を、公務執行妨害罪検挙いたしたのであります。  なお十一月二十四日は葺合区役所灘区役所にも同様朝鮮人団体六十名ぐらいが押しかけまして、長田区役所同様の要求をいたしており、しかも時間的に見ても午前十一時ごろから午後三時ごろまでに解散をいたしたという状況なつております。  さらに十一月二十四日は兵庫姫路市内三菱電機株式会社姫路工場の被整理者の、レツド・パージ反対をめぐる不法行為者四名を検挙いたしておりますが、これら被検挙者釈放要求のため、翌二十五日午後一時ごろ、朝鮮人約百名ぐらいが姫路市警察署に押しかけまして、署長面会を強要いたし、この間群衆は署内になだれ込んで、机、ガラス等を破壊いたしましたのでうち四名を暴力行為住居侵入容疑検挙いたしております。十一月二十五日には、右のほかに神戸市役所に二十名、明石市役所に七十五名、大久保町役場に九十名くらいの朝鮮人が、日本共産党員等に引率されて、それぞれ押しかけて参りまして、越年資金生活保護法即時適用食費代等要求いたしまして、気勢をあげておりましたが、不法行為発生を見るに至らなかつたのであります。  さて十一月二十七日の日は、神戸事件発生の当日でございまするが、この日は早朝から、何らかの指令によるものと思われるのでありまするが、兵庫県下の朝鮮人が二十名ないし三十名ぐらい一団となりまして、続々神戸市内に集まり、神戸地検神戸市役所生田区役所灘区役所長田区役所兵庫税務署須磨税務署伊丹市役所長田警察署等にそれぞれ十名ないし二、三十名ぐらいが押しかけまして、市民税撤廃警察官動員反対等を陳情要求いたしますとともに、一方におきまして神戸所在西神戸朝鮮人小学校に七百名ぐらいが集合して気勢をあげていたものであります。これに対して、同日午後零時十五分ごろ神戸警察局長名をもちまして、同校の集会公案條例違反として集会禁止命令を発したのでありますが、これに応ぜずかえつて警察官に反抗し、さらにアジ演説を行い、石ころれんが等を運び、各人はこん棒割木等を所持して気勢をあげ、警察官の入場を阻止いたしまして、校内デモを行い、遂に午後三時二十分ごろ群衆長田区役所に向つて行進を始め、しかも行進アジビラを撒布いたしたので、遂に警察側検挙を開始いたした次第であります。  隊伍のうしろの方から順次検挙を開始いたしたのでありまするが、この際群衆はあらかじめ準備いたしておりましたるこん棒割木等を振りまわし、あるいは投石し、さらにポケット内に隠匿所持いたしておりましたとうがらしの粉末を投げかけまする等、乱闘となりまして、遂に選拔隊の約二百名ぐらいは強硬に長田区役所に殺到いたしてこん棒石ころなどで窓ガラス数十枚を破壊するの暴挙に出たものでありますが、警察側はこれに対しまして、遂にその百八十一名を検挙いたし、長田署及び市警警察学校に分散留置いたしたものであります。しかしながら当日の検挙に際しまして、警察官の側におきまして三十一名、朝鮮人側におきまして二十六名の負傷者を出しております。さらに翌十一月二十八日、前日の被検挙者取調べの結果と、その後の捜査の結果、本騒擾事件首謀者と認められまする者十七名が判明いたしましたので、逮捕令状を得て一齊捜索を行い同日中に十二名を検挙いたしておるのであります。従いまして今回の検挙におきまして、現行犯として逮捕いたしました者は百八十一名、後に通常手続によつて逮捕いたしました者、十二名、合計百九十三名を今日までに逮捕いたしております。この内訳は大人の男が百五十五名、大人の女が十五名、子供が二十三名ということに相なつておるのであります。この子供の中には十六歳未満の者十五名がおりますので、これは即日釈放をいたしております。また十八歳以下の者八名がおりましたが、このうち二名は即日釈放いたしております。また二十八日中には大人のうち五名だけを釈放いたしておるような次第でございます。  神戸市警察当局といたしましては、十一月二十七日午前十一時全署にわたり甲号非常召集を行いまして市内の警戒警備に当り、国警県本部におきましては同日午前十時十五分本部員並びに五地区署に対して乙号非常召集を行つて、警戒警備に当つたのであります。  取調べ状況につきましては、いまだ詳報に接しておりませんので判明いたしませんが、一応取調べは終つたような模様に聞いております。なお神戸地検からも次席検事以下三名が現地に出張し取調べに協力いたしており、また十一月二十九日午後一時から十名の判事が出張して拘留尋問を行つております。  次に本事件特異性といたしましては、第一には婦女子を動員いたしておるという点、第二にはデモ隊は初めから棒——棒と申しますのは、警察官の持つております警棒のごとく計画的にかしでつくつたものであります、その棒であるとか、割木、すなわちたきぎ等を所持し、中には白はち巻をいたします等、十分戰鬪態勢を整えて行動をいたしておつたという点、第三には検挙者の大部分は他地区の朝鮮人自由労働者であつて、地元朝鮮人はほとんどいなかつたという点、第四には日本共産党員が背後で煽動いたしておるということは、一応考えられますが、彼らは、われわれは全然この事件には関係はないといつて、逃げを打つている、これらの点が特質として見受けられておるのであります。  現在の状況と今後の見通しといたしましては、再び朝鮮人の一部におきましては、態勢を整えて反撃するという情報もありますので、厳重警戒をいたしてはおりますが、しかしすでに首謀者と認められまする者はほとんど検挙いたしておりますから、今後は大したことはないと、一応私どもとしては、かように考えておるのであります。  なお国家警察におきましては、二十八日午後四時一応警戒態勢を解除いたしたのでありますが、自治警察当局におきましては、引続き今日も警戒を続行いたしておる、かような情報を受けていることを御報告申し上げます。
  8. 押谷富三

    押谷委員 詳細な御説明を受けたのでありますが、なお当日の問題でこの騒乱に参加いたしました朝鮮人のその出発地であります。私ども承知いたしておるところでは先ほど申しましたように、明石大久保姫路、あるいは相生といつた神戸市からずつと西の方、さらに尼崎、西宮といつた東の方面からも大分加わつておるようでありますが、出発の土地それからその人員、これをひとつ御説明願いたいことと、それから検挙されました人員はわかりましたが、検挙の際集められております証拠物件はどんなものか、今お手元にあればそれも一応御報告願いたいと思います。
  9. 大橋武夫

    大橋国務大臣 当日集りましたる群衆の出発、及び各地区からどの程度の人員が出動いたしたかという点につきまして、新聞情報として私どもの手元に入つておるものは、大体ただいまお述べになつたのと同様のものを入手いたしておりますか、しかし警察当局からはつきりした情報としてはまだ受取つておりません。  それから証拠品といたしましてもいまだ報告を受けておりませんが、しかし情報を総合しますると、当日暴行に使いましたこん棒、あるいは割木とか投石した石、あるいはまた暴行の現場の写真、こういうようなものは当然証拠物件としてとりそろえておるものと想像をいたしております。
  10. 押谷富三

    押谷委員 証拠物件の中にスピーカーがついておる自動車とか、あるいはアジビラが数百枚ですか、そういうものがあるように新聞で拝見したのでありますが、それはおわかりでございませんでしたか。
  11. 大橋武夫

    大橋国務大臣 スピーカーのついております自動車という点につきましては報告を受けておりませんが、アジビラにつきましては、約五百枚ほど押收いたしたという報告を受けでおります。
  12. 押谷富三

    押谷委員 御説明によりましてほぼ明らかであります通り、当日の騒乱の原因、彼らの目的というものは、市民税の減免でありますとかあるいは警察の動員に対する反対でありますとか、生活保護法の即時実施であるとかいつた政治面の要求も相当ありまするけれども、これは表看板であつて、この実質は何としても反権力闘争であります。国際的な色彩も相当濃厚なものであると私どもも考え、国民の多くもそういうような考えをいだいておるようでありますが、この点についてどうお考えになつておりますか。
  13. 大橋武夫

    大橋国務大臣 取締当局といたしましては、背後関係その他ただいま調査中でございまするので、確たるお答えはいたしかねる次第でございまするが、しかし私どもの感じといたしましては、ただいまお述べになりました点についてまつたく同様の感想を持つておる次第であります。
  14. 押谷富三

    押谷委員 この背後関係はただいまお調べになつているようでありますから、これはお調べの後に承ることにいたしますが、この神戸事件日本共産党の追放者との関係であります。これは新聞の報道によりますれば、追放の日共幹部が地下にもぐつてこの騒動に指揮を與えているというようなことが、重大な関連を持つていると伝えられております。これはまことに重要な点でありますが、日共の追放者志田重男君であるとかそういうような人々でありましようが、こういうものとこの朝鮮人騒動との間にいかなる関係があるか、この点について政府の御所見を伺います。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日共の追放幹部がこの事件の背後にあるという風説が伝えられておりまするようでございまするが、取締当局といたしましては、いまだこの事実関係については確認をいたしておりません。
  16. 押谷富三

    押谷委員 この事件の前後におきまして、関西の各地において同種の事件が起つたのであります。大阪、京都あるいは福知山その他において起つておりますが、この点について参考のために政府の御説明を願いたいと思います。
  17. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ほとんど同種のような事件はただいまお述べになりましたような地域、なお滋賀県、それから大阪市、大阪市はこの翌日に警察の彈圧反対を標榜いたしまして運動会をやつているというのがございました。これは事前に禁止をいたしましたにもかかわらず、数百名が集まりまして相当気勢をあげましたけれども、ほどなく解散をさせられる結果になりました。名古屋市におきましては、二十七日及び二十八日に、朝鮮人連盟の事務所あるいは朝連が以前に経営しておりました学校の接收問題をめぐりまして、接收反対の気勢をあげるべく数百名が集まりましてやはり暴行に近い事件を起しております。これらにつきましても数名検挙しているのであります。その後二十八日には神戸の東神戸消費組合及び赤石の細江町無窮館にそれぞれ三十名ぐらいの朝鮮人が集合いたしまして、何事か協議をした模様でありますけれども、特異な事案はありませんでした。同日伊丹市におきましては、朝鮮人約二十名が市当局に対しまして、先ほど法務総裁から説明せられたと同様な生活扶助要求を行つたのでありますが、これは大した事件にならずに退去をいたしました。さらに二十八日に朝鮮人を含めた自由労務者が職安附近で越冬資金を要求いたしました。また同時にレッド・パージ反対のアジビラを散布いたしております。二十九日には神戸市内でさらに朝鮮人五十名が尼崎の方に向つて動いた模様でありますけれども、具体的な事案は起りませんでした。今日はさらに兵庫県の大久保町役場に約三百名が押しかけまして越年資金等の要求をするという情報が入つておりまするけれども、ただいままではまだ特異な事態にはなつておらないのであります。  大体そういうような状況であります。
  18. 押谷富三

    押谷委員 これも参考のためにお伺いしたいのでありますが、今日本におります朝鮮人の数でありますが、これは六十万とか七十万とか言われているようでありますが、それの分布状況、特にその朝鮮人の出生地のいかんによりまして、あるいは北鮮の人たち、南鮮の人、こういうようなことによつて思想的な大きな関係があります。在日朝鮮人の所属団体の関係においても思想的に大きな測定もできるわけでありますこういう人の日本における分布状況をひとつ御説明願いたいと思います。
  19. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 総裁にかわりまして御説明申し上げます。現在日本に在住する朝鮮人の大体の府県別の数字でありますが、大体普通一般に朝鮮人と称せられる方と国籍を韓国とする者にわけて、それぞれの府県についてこまかく申し上げたいと思います。北海道、朝鮮人七千九百四十二名、国籍を韓国とする者三百九十七名。青森、朝鮮人千七百九十三名、国籍を韓国とする者百九十九名。秋田、朝鮮人千六百二十九名、国籍を韓国とする者五百大十九名。岩手、朝鮮人三千四名、国籍を韓国とする者百九十九名。山形、朝鮮人千四百三名、国籍を韓国とする者七十六名。宮城、朝鮮人五千三百四十名、国籍を韓国とする者八百名。福島、朝鮮人五千四十九名、国籍を韓国とする者五十二。東京朝鮮人三万五千五百九十七名、国籍を韓国とする者五千八百四十九名。千葉、朝鮮人七千百六十九名、国籍を韓国とする者二千三百五十一名。神奈川、朝鮮人一万五千九百五十三名、国籍を韓国とする者千七百二十七名。栃木、朝鮮人二千四百九十九名、国籍を韓国とする者三百四十七名、群馬、朝鮮人三千三百四十四名国籍を韓国とする者七十七名。茨城、朝鮮人五千二百六十三名、国籍を韓国とする者四百七十名。埼玉、朝鮮人三千二百九十三名、国籍を韓国とする者六百八十六名。山梨、朝鮮人二千九百八十九名、国籍を韓国とする者三百六十七名。新潟、朝鮮人二千七百二名、国籍を韓国とする者千二十一名。長野、朝鮮人六千八十二名、国籍を韓国とする者八百五名。富山、朝鮮人二千四百七十五名、国籍を韓国とする者なし。石川、朝鮮人三千四百九十六名、国籍を韓国とする者四百六名。静岡、朝鮮人六千六百三十九名、国籍を韓国とする者九百四十五名。愛知、朝鮮人三万三百七十九名、国籍を韓国とする者四千三百六十九名。岐阜朝鮮人九千二百三十九名、国籍を韓国とする者六百八十五名。福井、朝鮮人六千四十三名、国籍を韓国とする者六百三十一名。三重、朝鮮人七千五百六十九名、国籍を韓国とする者八口四十四名。滋賀、朝鮮人七千九百三十一名、国籍を韓国とする者八百二十一名。京都、朝鮮人三万四百九十五名、国籍を韓国とする者五千五百二名。大阪、朝鮮人七万九千八百八十一名、国籍を韓国とする者二万九百五十七名。兵庫朝鮮人四万五千三百七十二名、国籍を韓国とする者七千六百一名。奈良、朝鮮人三千九百九名、国籍を韓国とする者九百二十四名。和歌山、朝鮮人四千九百六名、国籍を韓国とする者二百九十五名。鳥取、朝鮮人二千五百九十九名、国籍を韓国とする者四百二十三名。岡山、朝鮮人一万三千二百九十二名、国籍を韓国とする者千二十五名。島根、朝鮮人五千五百二十七名、国籍を韓国としする者二百八十一名。廣島、朝鮮人一万三千八十三名、国籍を韓国とする者二千九百九十四名。山口、朝鮮人二万五千七百五十名、国籍を韓国とする者九百八十六名。香川、朝鮮人千七百五十六名、国籍を韓国とする者十八名。徳島、朝鮮人七百六十六名、国籍を韓国とする者二名。高知、朝鮮人千三百五十一名、国籍を韓国とする者四名。愛媛、朝鮮人二千九百七十五名、国籍を韓国とする者六名。福岡、朝鮮人二万九千二十六名、国籍を韓国とする者二千四百五名。大分、朝鮮人七千五百六十九名、国籍を韓国とする者百九十七名。佐賀、朝鮮人三千四百九十名、国籍を韓国とする者八十七名。長崎、朝鮮人七千八百九十七名、国籍を韓国とする者六百九十九名。熊本、朝鮮人三千七百四十一名、国籍を韓国とする者五百二十二名。宮崎、朝鮮人二千二百四十九名、国籍を韓国とする者百九十八名。鹿児島、朝鮮人千三百九十一名、国籍を韓国とする者三十六名。以上を通計いたしますと、朝鮮人と称する者四十七万一千七百四十八名、国籍を韓国とする者六万九千八百五十五名、これはことしの八月末現在の調べでありますが、総計五十四万一千六百三名というような計数になつております。
  20. 安部俊吾

    安部委員長 ただいま吉河特審局長より読み上げられました数字は、これを表にいたしまして各委員に配付されんことを希望いたします。
  21. 押谷富三

    押谷委員 ちよつと伺いますが、韓国の国籍を有する朝鮮人と称するというのはどういう意味なのですか。
  22. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 今年の一月に外人登録が切りかえになりまして、そのときに韓國人として登録を見ておりまして、これに登録されたものがそれであります。
  23. 押谷富三

    押谷委員 登録されておらぬのが朝鮮人ですか。
  24. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 そうです。
  25. 押谷富三

    押谷委員 わかりました。この名古屋事件についての政府の対策等等につきましては、いろいろ今後の事態をも考えられまして万全を期せられると存じますが、まずこの種の事件に対する政府の対策を総合的にお伺いしたいことと、いま一つは特にこの在日朝鮮人でありますが、将来は善隣関係に立たなければならぬこれらの人に対しての対策というものは政治的に相当大きな問題だと思いますから、政府のこの点に対する所見を最後にお伺いしたいと思います。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この種の事件によりまして、地方の治安上の問題を生じますことは、きわめて遺憾なことでございます。しかし現在の事実でございまするので、政府といたしましては、ことにこれらの事件をでき得る限り早期に予測いたしまして、治安上の重大なる障害に発展しないように、未然に防遏いたすように心がけている次第でございます。すなわち国警並びに自治警察を通じまして、相互の間に緊密なる連絡を保ちましてかような事案に対しましては、急速に警備態勢をとり得るように平素から準備をいたすように心がけております。なお背後関係その他の関係におきましても、これから各地に発生いたしまするこの種の事件は、一連の関連したものと考えられる節もございまするので、この辺につきましては、絶えず情報を注意いたしまして、あらかじめこれに対應する措置準備するというふうにいたして参つておる次第でございます。政府といたしましては、起りましたるこれらの事件につきましては、急速に警察力の発動を待ち、また発生いたしましたる不法行為に対しましては、それぞれを厳重に処断しなければならぬ、かような方針をもつて臨んでおるのであります。しかし何分にもこれらの朝鮮人は、ただいま押谷君からもお話のございましたる通り、従来運命を共にしておつた善隣の国でございまするのに、これらの取扱いにつきましては、将来の両民族の関係等にも十分に注意をいたして参りたい、かように考えます。
  27. 安部俊吾

    安部委員長 田嶋好文君。
  28. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それでは私から押谷代議士の質問に関連いたしまして、なおまた新しい立場から法務総裁並びに責任当局に一言ただしてみたいと思うのであります。先ほど法務総裁は押谷代議士の質問に対しまして、神戸の騒憂事件はこの程度で終了するのではないか、今後に対する心配はなくなつたというような御説明でございましたが、実は先ほど国警長官の押谷君に対する報告の中の一部にも含まれておりましたように、神戸事件にまさるとも劣らないような組織的に訓練された事件が名古屋の地区に起つておるのであります。この名古屋地区の事件というのは、国警長官は至つて簡單に報告をされたのでありますが、私の調査したところによりますと、神戸におきましては大人がまざり、子供もまざつておる、こういうような状況でございましたが、名古屋地区におきましては、神戸よりも人数は少いのでありますが、二百名、三百名という人間が、すべて十四歳未満の少年をもつて組織されておる、しかも大人は一人も加わつていない、こういうようなまことにゆゆしい状況下にあるのであります。しかもこの少年どもは、警察官に会うやスクラムを組むと同時に、インタナショナルの歌を高唱しながら気勢を示す。また警察官解散命令に対しましては、青筒をもちまして、その中に砂ととうからしを混合した目つぶし材料を使用いたしまして、警察官にそれを投げた。しかも相手が犯罪能力を認定することのできない少年でございますから、これに対して警察官は手の施しようがない。手を施すとすれば、一人の少年を一人の警察官が抱きかかえて解散さすという手以外に方法がとられないのであります。こうした集団的でしかも非常に組織的な訓練的な事件が名古屋に起つております。一日ならず、二十七、二十八の両目にわたつてこれが行われておる。今後なおかつこの不穏形勢は続行されるというような形でありまして、名古屋地区の警備は神重をきわめておるのが実情なのであります。こうして名古屋地区の事件神戸事件を照らし合せてみますと、決してこれは切り離して行われたところの一つのものではなくして、関連性を持つた組織的なしかも通謀のもとに行われた日本全国の組織網の一部がここに現われたのだ、こういうように私たちは考えられるのであります。この点を法務総裁はいかようにお考えになつておるか、この関連性をまずただしたい。そうして今申し上げましたように、神戸事件でも非常に訓練がされておるということを法務総裁がお答えに知りましたが、名古屋の事件でも同様に訓練がされていると見るべきである。訓練がされておると見るべきであるといたしましたならば、この訓練は朝鮮人の集団が極祕裡に、しかも将来の集団的暴動を目ざして行われておるものと認定するのが常識的な認定だと考えます。少くとも名古屋の事件で集団的にインターを歌い、十三、四歳未満の者がスクラムを組んで、しかも青筒にそうした目つぶしまで用意するということは、一日にとられたものとは見ることができない。長日月にわたつて訓練のもとに行われたといたしますれば、この点に対していかような国家としての調査ができておるか。これらは言いかえれば暴動に対する予備的行為であるから、当然に国家がこの対策を講じ、今までとつていなければならない問題であると思います。この集団的な全国的訓練をいかに調査し、これに対し今後いかようなる対策を講ぜんとするか、この点を国民の立場から政府にはつきりと御答弁が願いたいと思います。  第三の点でございますが、私たちの考えといたしましては、本件はどうしても今回の北鮮における北鮮共産軍の攻勢と一連の関連性を持つものと考えなければならぬところの節が多分にあるのであります。この点に対して法務総裁、政府の立場からお答えがむずかしい点心あろうかと思いますが、答えられる範囲におきまして、こうした朝鮮——東亜における共産勢力、日本の共産党、そして共産党につながるところの日本在住の朝鮮人の関連性等を第三に承りたいと思います。以上三つの点につきまして明確な御答弁をお願いいたします。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 昨年の九月八日に団体等規正令によりまして、在日朝鮮人連盟のいわゆる朝連及び在日本朝鮮民主青年同盟いわゆる民青が、反占領軍的暴力主義団体として解散指定せられたのでございますが、当時両団体の構成員は在日朝鮮人中の約半数を占めておりました全国的な組織であつたのでございます。その後方団体の解散後におきまして、合法的な組織といたしまして、在日本朝鮮解放救援会、在日本朝鮮民主女性同盟、在日本朝鮮学生同盟、これらの三つの団体が、在日本大韓民国居留民団、在日建国促進青年同盟、この二つの比較的右翼的な組織を持つた団体と対抗いたしまして統一的に行動して参つたのであります。しかるに本年三月、朝鮮人の大量送還問題、解放救援会、また女性同盟解散指定問題等がデマとして赤間に流布されますと、旧朝連系の人たちは、これをとらえまして、全朝鮮人を煽動して、闘争にかり立てようとして、全国的に人民大会を開催いたし、この闘争の基盤として、左翼朝鮮人団体を統合するべく、解放救援会あるいは女性同盟にかわります朝鮮人団体協議会の結成を指令いたし、ここに朝連、民青解散後の合法闘争から、地下秘密的な直接行動に対する戰術転換をはかりまして、そして青年行動隊あるいは工作隊というものの結成に着手した模様があるわけであります。今回発生いたしました神戸事件も、やはりこの一連の働きの一つの現われであるというふうに私どもは考えておるのであります。しかして神戸事件としては私どもはさしあたりこの程度で、この後大なる発展はなかろうというお答えを申し上げました次第は、神戸地区の首謀者のおもなるものはすでに逮捕せられておりますので、神戸地区としてはこの程度で治まり得るであろうという予想を述べた次第でありますが、これと相互関連を持ちます一連の動きが、他の地方において発生するであろうということにつきましては、やはり田嶋君と同様の見通しを持つておるものであります。すなわちただいまお述べになりました、名古屋市におきます朝鮮人児童を利用いたしました、にくむべき不法行為あるいは明らかにこの神戸事件と東西相呼応して関連性を持つて発生したもの、かように私どもとしては考えておる次第でございまして、要するに今回の神戸事件あるいは名古屋事件は、地方税反対あるいは生活保護法の即時適用という旗じるしのもとに、これらの朝鮮人の一連の運動が、ここに突破口を求めまして、そして一つの暴力化の傾向を示しておる顕著な実例である、かように私どもは考えておるのであります。従いまして、同様の機運はひとり神戸及び名古屋にとどまるものではなく、関東地方におきましても、同様な機運が醸成せられつつあるように見受けられるものでありまして、彼らはいついかなる場所において一斉に行動を開始するやはり知れないという公算も必ずしもなきにしもあらず、かように考えておるのであります。すでにこれらの人たちはテスト・ケースの時代から、一躍いたしまして、本国の情勢と関連を持ちつつ、暴力革命化の一途をたどるのではないかというふうにも観測いたしております。政府といたしましては、これらの点につきましても、ある程度の想定をいたしまして、万全の態勢をもちまして、これらの情勢を監視いたしますと同時に、警備上におきましても、機宜の処置を誤らないよう万全の注意をいたしておる次第なのでございます。
  30. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 非常に詳細にわたりまして、懇切な御説明で感謝いたします。今私のお尋ねいたしました中に、確かに全国的に学童並びに朝鮮人が暴動のために組織化されておる、こういう点法務総裁としてお認めになつているでしようか。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは傾向として、また一部に現われたる事実として、さような推測を可能ならしめるような兆候として見受けているものはございますが、確信を持つてこれが全国的な組織として、現在存在するかどうかという点については、この際申し上げることができません。
  32. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 全国的な組織の点は、よろしく今後御調査、御対策を願うことにいたしまして、十四歳未満の学童が、今回のような暴動——訓練された行動に出ているという点から、私が先ほど申し上げたそうした暴動のために訓練化されつつあるという、この状況をいかにお認めになつていらつしやいますか。
  33. 大橋武夫

    大橋国務大臣 名古屋事件におきましては、確かに学童が訓練せられたのではないかということを疑うべき十分なる理由がありまして、ただいまその訓練の衝に当つた容疑者といたしまして、関係学校の教員三名を検挙いたしておるような事実がございます。
  34. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 こうした訓練中を発見いたしまして、これに対して何らかの措置をとつたという例がありましようか。
  35. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さような例はただいまのところございません。
  36. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 ないといたしまして、今回のような行動がとられたといたしますと、これらの点に対する政府の現在までの見方があまり甘過ぎるものである。これに対する対策を怠つておつたと言われてもしかたがないと思うのでありますが、今後これらに対して、政府は反省しながら、いかような具体的な手を打とうとしているか、この点を、お答えのできる範囲において詳細にお答えを願いたい。
  37. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ただいま例として述べられました名古屋の児童約百五十名を、元民生委員が連れて参りまして、そしてああいつたような事件を起したのでありますが、これらの事態をよく考えてみますると、学校の教員が、こういうものを持つて、そうしてこういうようにしてやれということを申しますると、そう非常な、何といいますか、特別訓練というようなことをしなくてもあの程度のことはできると思うのであります。われわれ警察といたしましては、絶えず特にこれらの方面に注意を加えまして、日常できるだけ、あらゆる情報を手に入れる。またできるだけ目の届くように注意をいたしつつあるのでありますけれども、今日までのところでは暴力行為をやるための集団的な団体訓練という大がかりのものはまだ発見しておらぬのであります。先ほど法務総裁からお述べになりましたように、神戸におきましては、いわゆる青年行動隊というような名前をつけまして、すでに四回目の訓練をやりましたときにこれを探知いたしました。ちようどその訓練と合せまして、政令違反の文書を散布いたしましたので、この実情もよく把握できたのでありますが、その第四回目の訓練生一これを訓練をいたしておりました人間を検挙いたしたのであります。その前三回訓練をせられました青年は、これは逮捕することができなかつたのであります。この当時の訓練と申しまするのは、諜報活動でありまするとか、あるいは宣伝工作の訓練というようなものに重きを置いてやつておつた模様であります。このような事例はなお全国に他にもあるのではないかというので、今十分調査をいたしつつあるのであります。そういうぐあいでありまして、一般の、何といいますか諜報活動とかあるいは宣伝工作というような、われわれの見方から申しますると、そういう名前がつけられるのでありまするけれども、しかしこれがただちに今日の何らかの法令に触れるかと申しますると、それ自身ではなかなか困難だというような情勢のもとにおける訓練をやつておるというような状況であります。しかしこれが実際不法行動の場合にどういうように活用されるかという点は、われわれとして最も留意をしなければならぬ点でありまするが、ただいま御鞭撻のお話もございますので、今後一層留意をいたしたいと考えております。
  38. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 今の国警長官の説明は多少不満足な点があるのでありますが、名古屋の一事項をとつて、こういうような行動に出よという指示に従つて、そういうような行動に出ることは、いとやさしいのであつて、それは訓練の必要がない、訓練しなくてもできるのだ、こういうようなお答えであつたと思うのです。しかし私は具体的に事実を見まして、具体的に調査をして来たのでありますが、こういうような行動をとれというような單純な意味でとられた行動とは思いません。十四歳未満の子供が、しかも百名以上集まつた子供が、実におとなにもまさる声をはりあげてインタナショナルを高唱して、しかもおとなのスクラム以上にがつちりしたスクラムを組んで、そうして警察官に対抗した。しかも最後に行けば、石をもつてガラスを割る。投石しておる。そうしてもうせつぱ詰まれば目つぶしを食わせる。これらは明らかに訓練のもとに行われなければできない行動である。私はそうしたところに政府の多大の関心を引起してもらいたいと思う。従いまして、これが暴動と連なるものといたしますれば、明らかに集団行動——暴動の前提といたしまして刑法の責任問題が起ると思います。何も遠慮してこれらの問題を、今のせつぱ詰まつた日本の現状下におきまして、法律の何條に照してどうだというような心配をする必要はないと思う。明らかに争議を起す前提としての関心を私たちは持つておる。政府はいま少しく重大な処置に出られんことをここに希望いたしてやまないのであります。よろしく政府の蹶起をここにお願いいたします。  次に私は名古屋地区と共産党の関係につきまして、少し法務総裁にお尋ねいたしてみたいと思うのでありますが、名古屋の地区というのは従来保守的な地区でございまして、特に従来の共産党活動からいたしましても、消極的な地区だつたように思います。その行動関係におきましてもあまり活発でなかつたように思うのでありますが、最近名古屋におきましては共産党の追放幹部であるところの春日正一君がこの地区で逮捕された。そしてなお共産党の名古屋地区の活動というものが相当に関心を持たれるようになつて参りままた。私は名古屋に従来居住いたしております。今度の共産党の名古屋地区の活動と春日君の逮捕の状況を照してみまして、要するに人品が割合多くて、しかも労働者の割合が率にして日本の各地区に比べまして多い名古屋の地区が、従来こうした運動に不活発であつたというこの穴をねらい、しかも不活発であるがために、政府もこれに対してあまり重大な関心をよその地区ほど持たないというような穴もまた考えられるわけです。この穴をねらつて、名古屋地区に対して共産党が何らかの組織的行動に出ていると思われる節々がわれわれにはたくさん感ぜられるのでありますが、名古屋地区と共産党、特に春日君逮捕によつて現われましたこの名古屋地区の共産活動について、法務総裁に上つて、お答えできる範囲においてお答えが願えますれば……。
  39. 大橋武夫

    大橋国務大臣 名古屋におきまする先般の朝鮮人児童に関連いたしました問題につきましては、先ほど申し上げましたる通り、すでに関係者』して三名は逮捕いたしており映す。これらの関係者はただいま取調べ中でございまするので、ただいま田嶋君のお述べになりましたような趣旨をもちまして十分に調査をいたしまして、これによつてこの児童に対する訓練がいかなる程度において、またいかなる方法、いかなる動機によつて行われたかということを十分明らかにいたしまして、将来参考にいたすように心がけたいと存じます。  次に従来名古屋地方においては、共産党に対する政府の警戒が比較的手薄であつたように思う、こういう御質問でございますが、なるほど従来におきましては、あるいは過去の実績からいたしまして、この方面の警戒が他の方面ほど十分手の届かなかつたということもあつたかと存じますが、しかし現在といたしましては特に特審局の支局を拡充いたしておりまするし、また警察当局とも十分な連携を保ちまして、この地方におきまするこの種の情報の收拾並びにこれが対策につきましては、政府といたしましては相当に力を入れておる次第でございます。しかし今後におきまして一層努力をいたしたい、かように存ずる次第でございます。
  40. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私は最後に一番今関心を持つております、また共産党諸君が一番心配しているでありましよう点をお尋ねいたしたいのでありますが、それは日本共産党の合法的政党としての存在をなくすという点であります。しかも今まで共産党の非合法的な活動、そうして暴力的行動というものは具体的に、地区々々ではありますが現われておりました。特に今回のこの神戸周辺、そうして東西相呼応して起りました名古屋の事件。寝た今後そうしたことが予想せられると言われまするこれらの共産党係朝鮮人の暴動行為でありますが、これは共産党系朝鮮人ということのみをもちまして、私は日本共産党の責任というものは当然に追究せられ、その責任は当然日本共産党に課せられなければならぬと思うのであります。その責任が日本共産党に当然課せられるといたしますれば、もはや争いもなく日本共産党は暴力革命を目途とするところの団体と認定することができ、なおこれは今回の神戸の事例が政令を適用してその行動者を検挙したという事実をもつていたしましても、これは反占領軍的行動だと当然に認定をせられるのであります。     〔発言する者多し〕
  41. 安部俊吾

    安部委員長 私語を禁じます。
  42. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私は明らかになつたこの二つの事実によりまして、日本共産党はここに合法政党としての存在を許されず、すみやかに解散すべきもの泥と考えるのであります。私は大橋法務総裁にこれに対する政府の御所見を伺いたいのであります。
  43. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本共産党の非合法化という点につきましては、政府といたしましてただいまの段階におきましてはその時期ではない、かように考えております。しかしてそれでは共産党に対しては無條件でほつてあるかというとそういうわけではございませんので、国際的な共産勢力との関連におきまして、日本共産党の現在の動向というものを厳重に監視をいたしておる次第でございます。特にここに問題になりましたる朝鮮人に対する日本共産党の働きかけというような点につきましても、目下嚴重に監視をいたしておる次第であるということを申し上げておきます。
  44. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 法務総裁は今の段階において解散をさせる意思はない、こうお答えになりましたが、これはまだ日本共産党が暴力的手段を持ち得るところの団体でない、反占領軍的行動をとる団体でない、こういうようにお認めになつているわけでしようか。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本共産党の非合法化という問題は、一つの單純なる法律適用だけの問題ではなく、これは一つの大きな政治問題でもありまするし、また国際情勢との関連のある問題でもございまするので、今日のところのお答えといたしましては、先ほど申し上げました程度でお許しを願いたいと思います。
  46. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 十分な監視のもとに日本の共産党がまじめな政党として、国民に愛される政党として今後進んで行かれますよう、政府の御指導をお願いいたしまして私の質問を終ります。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はほんとうは警察予備隊の話を御質問申し上げたいのですが、今この朝鮮人神戸事件に関連した質問のようでありますから、その点についてひとつお尋ねいたしたいと思います。  今法務総裁その他からの御答弁によりまして、具体的な、現象的な問題はほぼ了解できたのでありますが、法務委員会関心を持つている問題につきましてはいま少しくはつきりしない点がある。それは今回の神戸の暴動事件日本共産党と何らかの関係あるものなりやいなやということであります。ただこの暴動に参加し、あるいは指揮した人間の中に共産党員があつたということだけでは、日本共産党が活動したものと断定するのはいけないだろうと思います。党としての組織人が、その指揮命令系統によつて神戸の暴動に参加したということでなければ、たまたま二、三人が共産党員でありたがゆえに、共産党がこれに関係ありと断定せられるということは、これはどうも行き過ぎじやないかと思われるのでありますが、本日の法務総裁の御答弁の中にも共産党が背後にあると推測せられるような御答弁がありましたし、また新聞の報ずるところによれば、現地の取締り官憲も、この背後には共産党が動いているのだというような意見の発表もあるようであります。そこでさような推測をなさるについての根拠と申しますか材料と申しますか、かような事象があるがゆえに日本共産党は関連ありと思われるのだということの御説明を願いたいと思うのであります。これが第一点であります。  第二点は、はたして日本共産党がこれに関係ありとしました際に、その背後に隠れておりました人たちに対しましては、いかなる御処分をなさるのであろうか。公務執行妨害罪検挙なさつておるようでありますが、それとの関連においてどういうふうな御処分をなさるつもりであるか、これが第二点。  第三点は第七国会でありましたか、当法務委員会におきまして当時の政府委員の方に私が質問をいたしました際に、神戸地区なら神戸地区の共産党が、ある暴動の指揮をした、しかし日本共産党の本部は全然それを知らなかつた。ところが地区々々——神戸あるいは名古屋あるいは福岡というような各地区における共産党の責任者が、地区の活動としてそういういろいろの騒擾事件を指揮しておつた、しかし共産党本部においてはそういう指揮命令を出したこともないし、まつたく知らなかつたというような場合においても、本部それ自体の責任を追究する意思があるかないのかという質問をしました際に、どなたであつたか忘れましたが、たとえ中央本部がそういう指揮命令を出さず、また中央本部は知らぬにしても、各地区々々の共産党が各地において暴動あるいは騒擾に関係あるようなことになるならば、本部それ自体の責任も考えて、場合によつてはこれを解散しなければならぬこともあり得るような答弁をなさつたと思うのでありますが、こういう地区あるいは細胞の共産党の指揮命令によつて動いた場合における共産党本部の責任について明らかにしていただきたいと思うのであります。これは田嶋君の質問とも関連があると思われるのであります。この点について御答弁をいただきたい。
  48. 大橋武夫

    大橋国務大臣 神戸事件につきましては、騒擾罪、公務執行妨害罪等が成立するという見解のもとに目下調査をいたしておる次第でございます。従いまして、これについての背後の関係等は一切調査中でございますので、神戸事件が具体的に共産党といかなる関係にありやということは、ただいま申し上げる程度に相なつておりません。  それから背後者の処分はどうするか、この問題も同様にただいま捜査中でございますので、まだ結論を得るに至つておりません。  それから地区におけるこの種の事件について、共産党に関係ある、共産党の地区委員会がこの問題について責任を負うというようなことがかりにあると仮定をいたしましたる場合において、そのために共産党本部がそれについて、法律上の責任を負うかという点でございまするが、この事件と共産党の関係は、ただいま申し上げましたる通り捜査中の問題でございまして、まだ確実な証拠をもつて申し上げる段階に達しておりませんので、これについても具体的なお答えは申し上げかねる次第でございます。ただ抽象的に、かりにある政党の地方支部が騒擾その他の事件について責任があり、そうして各地においても同様にその政党の支部が同種の事件について責任があるということが明らかにされた、しかしこれに対して政党本部が指揮したというような事実はないという場合に、この政党本部の責任を問い得るかどうか。一つの抽象的な問題としては考え得るところでありまするが、これはそのときどきのいろいろな状況も総合いたしまして断定する以外には道はなかろうと思います。具体的に決定すべきで、抽象的に議論をすると、かえつておもしろくないというふうな感じを私としてはただいまのところ持つておる次第でございます。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうしますと、先ほど法務総裁の御答弁にあつた共産党がこれに関係しておるという御推察は、その根拠がまだ捜査中ではつきりしておらぬというふうに受取れるのであります。そうすると、法務総裁もまだはつきりしておらぬ、しかるに推察だけはなさつておる。また地方の取締官憲も共産党が背景に必ずあるというような意見を発表されておる。私は共産党を代弁するわけではありませんけれども、どうも少し軽率な発表じやないかと思われるのであります。共産党と申しましても、ただいまは合法政党として立つておるのでありまして、お互い同じ政党人であります上におきましては、要路の人たちがかような推測を簡單になされるということは、はなはだ遺憾であります。騒擾事件があればすぐ共産党と連想するようになつたのは、これはぼくは共産党の責任もあると思うのであるが、但しこの発表は用意周到にやつていただきたい、これは要望しておきます。  それから地区の共産党の行動についての中央本部の責任については、その具体的の事実がある場合に総合的に判断をするという御答弁であります。法務総裁としてはやむを得ない御答弁かと思うのでありますが、この前の法務委員会政府委員は、私と押問答の末はつきりと答弁なさつておる。私はその速記録を今持つておりませんからわかりませんが、刑法の大原則から見て、全然知らざることについて中央本部が責任を負う点はおかしいと思うが、という質問に対しまして、いや各地にそういうことが起るならば、中央本部自体に対しても、解散を考えるというようなはつきりした答弁があつたのでありまして、私はそのとき異様な感を抱いた。これは容易ならざることだと思うが、あまりお立会いの方々は深く感じられなかつたのであります。そして私は容易ならざることだと今日まで思つてつたのでありますが、そうすると大橋法務総裁が就任せられたことによつて、さような方針は変更されたと解釈してよろしゆうございますか。
  50. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほどの私の答弁に対しまして、今回の事件の背後に共産党があるのではないかという推測をいたしたという点について、私どもといたしましては、具体的に確実なる証拠ということになりますと、これはただいま捜査中でありまするので、今後の捜査の結果を待つて申し上げたい、こう申した次第であります。しかしながら、一応の推測といたしましては、必ずしも根拠がないというわけではないのでありまして、それはこのたびの神戸事件におきまして押收いたしましたる約五百枚のアジビラの中に、日本共産党兵庫県西部群委員会という名をもつてその宣伝ビラが刷られておる。そうしてこれらの連中がそれを持つて散布いたしておるのであります。かような点からして、必ずしも共産党と全然無関係なりとは考えられず、むしろ共産党と関係があるのではないかという推測をいたす方が当然であろう、こういう意味で申し上げた次第なのでございます。しかしながら、これがはたして事実日本共産党兵庫県西部群委員会のビラであつたかどうかという点は、今後の取調べの結果を待たなければならぬことは申すまでもございません。  それから第二の御質問の点でございまするが、ある党の支部において騒擾その他の不法行為がしばしば画策せられて実行に移されている、その場合において、本部の責任者は全然その計画について事前に関知しなかつたという場合において、国体の本部にいかなる責任ありやという問題でございます。これは、抽象論としては、私先ほどいろいろな実情によつて具体的に責任のありやなしやを決定すべきものであろう、こういうお答えをいたしたのでありまするが、しかし前に政府委員より、その場合において本部の責任を認定しなければならぬ場合もあるというお答えをいたしましたとするならば、それはそういう場合もあり得るわけでありまして、すなわち団体等規正令によりまする解散は、団体というものの一つの社会的存在に着眼をいたし、そうしてこの団体の社会的な結合、社会的な一つの働きを考えまして、そうしてこれが国家社会にとり有害なりやいなやという点を認定して、この団体に対して解散をさせるかどうかという処置を決定すべきものであろうと思うのであります。たとい幹部が現実にはこれらのもろもろの計画を知らなかつた場合におきましても、同一の不法行為が各地区の委員会、あるいは各地区の支部によりまして計画的に繰返された場合におきましては、一般社会といたしましては、これらの騒擾罪についてはこの団体に責任がある、こういうふうに認定しなければならない場合もあり得るわけでございます。その場合におきましては、現実には幹部が知らなかつたからといつて、その団体の社会的責任あるいは政治的の責任をまぬがれることはできない、こう思うのであります。従いましてこの場合において必要があれば、その団体の本部に対する解散措置ということもあり得るわけであります。この点は私は団体等規正令の適用というものは、必ずしも一般の刑法のごとく知らざる春に責任はないんだというような建前ばかりとるわけにはいかない。そこに一つの行政上の取締り法規といたしましての団体等規正令には、刑法の刑事責任の議論だけでその団体の責任を決し得ないという点があるわけである、かように考えるわけでございます。従いまして従来の政府委員の答弁を取消すという意味ではないということを御了承願いたいのであります。
  51. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今の法務総裁の中央及び地区の活動の責任関係の点については、私は議論申し上げたいことが実はたくさんあるのです。しかし私は質問の通告もせずして突如としてこの質問を出したのでありまして法務府におかれましてもよく御研究願いたい。これにはなかなか簡單に言い切れない大きな問題がひそんでおると思いますから、妙な答弁になりますると、法体系、法治国家それ自体をゆるがすような答弁にまた発展せぬとも限らぬから、これをよく御研究願いたい。私どもも研究します。ただ先ほど田嶋委員の質問及び法務総裁の答弁によりまして、共産党に対する監視を厳重にするとか取締るとかいう言葉があつたが、これは言葉のあげ足をとるようなことになりまするけれども、日本共産党は現在合法政党として活動しておるものであります。この共産党を取締る、あるいは嚴重監視するということは少し不穏当だと思います。共産党の不合法活動、あるいは非合法活動を監視するということなら意味がわかるのでありますが、共産党を嚴重監視するということになると、少し穏やかじやないと私に思う。これは田嶋君の質問にもそういうきらいがどうも多分にあるので、それを受けて立たれて、つい法務総裁は引込まれたのじやないかと思いまするが、これは大いに異議がある。たとえば自由党を厳重監視する、あるいは社会党を嚴重監視するということになりますれば、われわれもひつ込んでおりません。しかし不合法活動を監視することはもちろんのことでありまするから、あなたの答弁をさような意味に解釈してよろしゆうございますか。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 猪俣君から御懇切なる御注意をいただきまして、まことに恐縮に存ずるのであります。ただいまお述べになりました趣旨で述べたつもりでありましたが、用語の不足のために誤解を招きましたことは非常に遺憾でございます。どうぞさような意味で御了承を願います。
  53. 安部俊吾

    安部委員長 田万廣文君。
  54. 田万廣文

    ○田万委員 私は少し方面をかえまして法律的な点を国警長官並びに草鹿刑政長官にお尋ねをしたいと思うのであります。先ほど田嶋好文君から御発言がございまして、そのうちで、現在のせつぱ詰つた日本の世相においてこういういろいろな騒擾事件を取締るについては、法律第何條とかいう問題を論議すべきでないという御発言があつたのでありますが、こういうことはまことに恐しい暴言でございまして、法治国家のわれわれとしては、新憲法に照された明らかな法によつてわれわれが規律を受けることは当然でありまするけれども、法によらないで規律を受けるという生活は、現在の日本においてはあり得ないと思う。その点におきまして私は御質問をいたすのであります。最近神垣の騒擾事件、あるいは千葉県の津田沼の京成電車事件、それから川崎の競輪事件というふうに、幾多の不祥な事件が続発いたしておるのでありますが、そういう場合において、自治体警察が隣接警察に応援する、さような場合が幾多今後においても予想されるのでありまするが、そういう応援をし場合において、その警察官については、いわゆる公務執行という立場になつて、これに妨害を加えた者には公務執行妨害罪という問題が起り得ると思うのでありまするが、現在の状態においては、あら一部においては公務執行妨害罪にならない、あるいは一部においては公務執行妨害罪になるという異説が二つあるのであります。で二十九日に最高検察庁におきましては、公務執行妨害罪が明らかに成立するんだという断案を下しておるようでありまするが、しからば管轄区域でないところにおいていかにして適法なる警察権の行使というものがあり得るかという問題が起つて来るのでございまして、この点は今後いろいろ発生を予想さるべき事件において重大な問題であろうと思いますので、明らかなる御見解を国警長官並びに草鹿刑政長官にお尋ねをしたい、こう考えるのであります。
  55. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 お答えいたします。ただいま仰せられた津田沼事件の最高検察庁の見解として新聞に出ましたのは、おそらく津田沼事件に関する取扱い方を示したものだと思います。従いまして一般的にそういうことが言えるかどうかということは、これはまた別問題であろうと思います。そこで自治体警察は他の自治体警察、あるいは国家地方警察からの応援の要請を受けまして、これら他の警察の管内に出て職権を行使することができ、従つてこれを威力をもつ妨害する場合に公務執行妨害罪を構成するかどうか、こういう点につきましては、御承知通り警察法の解釈上、必ずしも一致した見解は今日までないのでございます。しかしながら警察法の五十四條及び五十五條の解釈としまして、これを実際の検察の運営上におきましては、積極に解釈して検察上取扱うことが妥当であるんじやないか、大体こういう考えになつておりますので今後この見解のもとに実務を扱つて行きたい、こういう考えであります。
  56. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ただいま刑政局長の方からお答えになりましたが、警察側といたしましても同様に解釈いたしたいと思つておるわけであります。警察法上ははつきりその点は明らかにいたしておりませんが、いやしくも自治体警察が他の自治体警察から、あるいは国警から応援を要請され、そして受諾をして出かけて行くという場合に、その警察官はかつてに他の管轄区域に参つてそこで何かをやつた職務を執行しようとしたというのではなくて、その応援を要請した自治体警察に参りましてその自治体警察の公安委員なりあるいは警察長の指揮に入つて、そうして仕事をするわけでありますから、その仕事はそこの自治体の公安委員会の当然の仕事をやつたわけであります。従いましてその仕事をいたします際に妨害を加えられました場合には、公務執行妨害罪は成立するもの、かように解釈をいたしたいと思つております。
  57. 田万廣文

    ○田万委員 法務総裁にお尋ねしたいと思います。先ほどからいろいろ御答弁を聞いておりますると、同僚の猪俣浩三君からもお説がありましたが、最近勃発しておりまするいろいろな不詳事件については、共産党の諸君がというような、非常ににおいを感ぜさせるような御答弁があつたのでございまするが、この原因として法務総裁が述べられたところのものは、地方税あるいは生活保護法の問題について徹底的な糾明をしなくちやいけないというところに、今度の騒擾事件の一つのスローガンがあつたというふうに承つたのでありまするが、この点について政府としてはいかなる御見解を持つておいでになるか。法務総裁に聞くことは少し筋違いのように考えられますけれども、地方税の問題並びに生活保護法の問題というものについて、こういう騒擾事件が起きる一半の責任は、政府にもあるのではないかという点について、お尋ねをいたしたいのであります。
  58. 大橋武夫

    大橋国務大臣 地方税に対しましてこれが撤廃を要求するとか、あるいは生活保護法の実施を要請するというその行為自体は、これは合法的に行われまするならば、別にどうこうということではございません。しかしいかにその名目が正しくとも、これに伴いまして公務執行妨害とかあるいは騒擾というような事柄が起きました場合におきましては、断固たる措置をとらねばならないということは申すまでもないわけであります。もとよりかような非合法的な運動が行われるその原因につきましては、政府の施策に対するいろいろな批判もございましよう。しかしな別ら今私どもが神戸騒擾事件というものを取上げて考えた場合におきましては、これらの運動は一つの名目に使われたにすぎないのではないか、むしろかような運動が一つの不法行為をやるところの口実になつたのではないかというような観測をむしろいたすわけであります。またそれが日本共産党と関係ありという推測をいたしましたる理由としては猪俣委員の御質問にもお答え申し上げましたる通り日本共産党の名義のビラを五百枚ばかり警察が証拠物件として押收いたしております。それで一応さような推測を下しておるわけであります。しかしもとよりこれが眞実に共産党の手から出たビラであるかどうかということは、今後の捜査をまつて明らかにいたさなければならぬと考えております。
  59. 田万廣文

    ○田万委員 もう一点だけ、うるさいようでありますがお尋ねいたします。ただいまの御答弁納得できる点もあります。地方税あるいは生活保護法というものを名目に掲げて、非合法的なああいうことをやつたということはよろしくない、これはよくわかるのでありますが、私お尋ねいたしたいのは、そういう名目に使われるような地方税並びに生活保護法の不徹底というようなことに対して、現在の政府は責任を感じておるかどうかという点なのです。その点に対してお答えがなかつたように思うのです。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点に関しましては、国会の議決を経ましたる地方税法におきまして、各地方団体が自主的に課税をいたしておるわけであります。これは適法に行われていると私は考えます。
  61. 田万廣文

    ○田万委員 質問を打切ります。
  62. 安部俊吾

  63. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今法務総裁の御答弁の中においても、たとえば神戸事件においては地方税の撤廃とか、あるいは生活保護法の適用を要求するという、そういうことは單に名目に使われたにすぎないのであつて要するに不法行為をやるための口実であつたというような答弁がございましたが、これは実に現実を無視するも、はなはだしい見方であると思うのであつて現に今日本においては、多数の職のない労働者——これは、ほとんど六百万を数えておる。東京都下におきましても、たとえばこの間の本会議においても労働大臣は、公共職業安定所においては三十日のうち十九日職がある、こういう状態で、これでようやく少しずつよくなつて來たと、こう言つておるのであります。しかしながら公共職業安定所に行つている自由労働者諸君は一日に二百四十二円もらつている。この二百四十二円もらつている労働者が一日あぶれれば、その人の生活がどうなるかということは、これはあまりにも明白な現実です。そこに問題があるんです。そこでこの自由労働者の諸君が公共職業安定所に参りまして、きようもあぶれが出たということになると、その人たちは自分たちの生活の現実から出発して、どうしてももう少しあぶれを少くしてもらいたいという、これは生活を守るための、ほんとうに本能的な欲求として出て来るわけであります。そこでこれが職安へ対していろいろな団体交渉となり、あるいは陳情となつて現われるのであります。ところが、そういう要求なつて現われたときに、職安当局はどういうことをやつているかと申しますると、てんでこの団体交渉にも応じないし、個人の交渉にも応じようとしない。そして少しでも多く自由労働者が集まつて陳情をやりますと、たちまち大部隊の警察官がやつて来て、どういうことをやるかというと、もうすぐこん棒とピストルで彈圧し始める。現実にどういうことをやつているかと申しますと、警察官もやつぱり働いて食つている人たちです。従つてこの人たちは上の者がすぐとつかかれという命令を下しますと、いくら何でも、何もしない労働者を追い散らすわけには行かない。だからどういうことをやつておるかといいますと、目をつぶつて群衆の中へ飛び込んで行くのだ、そういう恐しい現実が行われている。「でたらめ言うな」と呼ぶ者あり)これは現実だ。諸君は一ぺん朝あの職安のところへ行つてみなさい。こういうことをやつている。そこに諸君の現実の認識の相違がある。そういう事態が起つている。今日憲法において文化的健康な最低生活が保障されているといわれている。しかも労働費に対しましては団体行動をする権利が認められている。しかるに、こういう場合に情理を盡して交渉しても、そこへ来るものは警察のこん棒とピストルということになれば、一体この人たちはどうして自分たちの生活を守つたらよろしいのです。ここに問題があるのです。これに対しまして、政府の方は、これらの人たちの生活を安定するための努力ということをやつておらない。それをやらないでおいて、ただ彈圧々々だけというようなやり方をやつて行きますならば、これは東條軍閥時代の警察国家が復活することじやありませんか。このことに対する政府の責任をどう考えているかということです。現にそのほかにもこういう問題が起つている。この間私は本会議におきまして、新宿職安におけるころの警察官の発砲事件を質問しましたところが、驚いたことには、法務総裁はそういうことはデマであるというように答えられた。これはあまりにも現実を無視した、あつた事実を全然否定するような、恥知らずといいますか、何といいますか、表現の言葉もないくらいだ。これは現にわれわれは告訴しておる。現に被害者が出ておる。これを法務総裁はどう考えられるのです。もしこれが現実になかつたことだということになりましたならば、これはもう日本政府当局に対して人民はどう信頼を持ちますか。現に起つたことまでも事案を否定し抹殺しようというようなやり方、これでは労働者諸君はどうしたら自分の生命を守つて行くことができるか。刑法においては個人に対して急迫、不正の侵害に対しては、正当防衛の権利を認めている。緊急の危難に対しても緊急避難という、個人の責任を免除する規定がある。従つて個人々々が、その生活を守るために、政府は何らめんどうを見てくれない、こうなれば、団体的な行動憲法で認められているのだから、これが政府なりあるいは所轄の官廳、税務署区役所等に陳情に行くのかなぜ惡い。この陳情が憲法において禁止しているわけじやないでしよう。(「暴動だ」と呼ぶ者あり)このことを諸君は暴動という。しかしながら人が軍に大勢集まつたところで暴動になりますか人間が大勢集まれば暴動だという、そういうばかげた感情をもつて群衆を彈圧することになりますならば、これは人民すべてを敵にまわすということになるじやありませんか。こういうばかげた政策に上つて諸君は今後の警察行政をやつて行こうとしているのか。この点について私は国警長官の見解を承りたい。つまり何もしない労働者に対して発砲してみたり、こん棒とピストルによつてこれを強圧するというようなやり方、(「そんなことがあるか」と呼ぶ者あり)実例を申します。現に十月二十七日の新聞にも出たが、電業社という会社におきまして、いわゆる赤追放ということで追放した、ところが現実にどういうことをやつているかと申しますと、追放した直後において、もう会社へは入つてはいかぬ、入つて来たら住居侵入だということで、おつぽり出そうとしている。しかしながら考えてごらんなさい。不当な首切りをやられたことに対して——労働者に対してはこの不当首切りに対して反対する権利は当然認められなければならない。これには組合の団体行動によつてこの不当首切りに反対し、これを撤回することを求めることもできるでしよう、あるいは裁判所に提訴してその救済を求めることもできるでありましよう。いろいろま方法が認められているはずだ。これが認められないとするならば、首切りは切捨てごめんになるじやありませんか。従つてこれは当然認められている。そのことが確定的に決定しない限りは、会社へ入ることは何ら住居侵入にもならない。にもかかわらずこれを住居侵入なりとの想定のもとに警官を動員して来ている。こういうことをやつている。しかも電業社におけるところの発砲事件のごときは、私は現地を見て来たのでございますがこれは一層ひどい。わずか四名の労働者が裏口におつた。その裏口におつた労働者に対して、その物置をぶち破つて、警官が六名入つて来た。その先頭に立つておつた指揮官が、撃てと言うて、室へ向けて二発撃つた。その直後におきまして続いて来た警官が四名の何もしない労働者にすぐ発砲した。現にそこには水平にピストルを撃つたあとが三十数発あります。私は現に見て来ておる。こういうことをやつている。こういうむちやなことをやるから労働者がその発砲に対して自己防衛のために、何かそこにあつた鉄くずを投げた。こういうだけなんだ。ところがそれがあとになつて、どういうぐあいになつて来たかと申しますと、それから何時間かたつたあと警察の方から来まして、これもそうだ、これもそうだといつて、その辺の鉄くずを集めて、これを証拠物件だというわけで、結局初め労働者の方が鉄くずや石ころを投げた証拠だといつて、時間がたつたあとから来て、これを持つてつておる。しかもこれが労働者が抵抗したのだ、反抗したのだということで、労働者を公務執行妨害でやろうとしている。こういうようなことが行われている。こんなことをやつて来ているから、一体労働者はどうして自分の生活を守るかという問題が出て来ている。こういうような現実においての労働争議の武力による彈圧をやつて来ておるこの事態が、労働者自身がどうしてその生活を守ればいいかという問題に発展して、これが起つて来ていることを考えなければならぬと思う。特に朝連事件においては、どういうことをやつておるか昨年九月八日の団体等規正令に伴う朝連の解散政府はどんなことをやつたかと申しますと、朝鮮人諸君の財産、長い間かかつてつくつた財産を、朝連の財産だとかつてに認定して、これを全部取上げてしまつた。そこには個人の財産もたくさんあつた。ところがその財産に対しまして、この財産は個人のものであるということで、この財産接收に対して、日本裁判所に対してその権利の保護を求めた。ところが日本裁判所はどうやりましたか。これは裁判権がないということで却下してしまつている。一体日本において生活している朝鮮人の諸君に対して、個人の私有財産をかつてに蹂躙しておいてこれは蹂躙でございますといつて裁判所に提訴しても、裁判所はこれを裁判権がないということで却下する、こういうやり方をやつておつた場合に、一体朝鮮人諸君は日本でどうして自分の生活を守ることができましようか。ここに私は朝鮮人諸君の生活安定や、あるいは地方税撤廃の切実な要求が出て来るところの根本的な理由があると思うのであります。こういう問題について一体政府はどのような考えを持つておるのか。この点を伺いたいのであります。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま梨木君から梨木君が先般本会議におきまして、新宿職安の発砲事件を取上げて私に御質問になり、それに対して、私、これは全く一部の人々のためにするデマであるという真実をお答えいたしたのでありますが、それに対しまして、その答えがまつたくあつたことをなかつたごとく偽つた答えである、こういう独断のもとに、御質問があつたのであります。新宿職安におきまして、いわゆる職安騒ぎに際して警察官が発砲したという事実は断じてございません。私が本会議において、あれだけはつきりお答え申し上げました以上は、梨木君が真に政治家の責任をお考えになりまするならば、いやしくもここに来てそうおつしやる前に、なぜみずから新宿へ行つてその事実をお取調べにならなかつたのでありましようか。もし梨木君が新宿へ行つてお調べになつたならば私の申し上げたことが正しいか、あなたの言われたことが正しいか、あなたにはつきりおわかりになつたと思うのであります。しかるにただいまそのなかつたところの事件をいかにもあつたかのごとき予断のもとに長広舌を振われるということは、これは代議士の特権たる言論の自由を利用されまして国民一般に対して虚構の事実を流布しこれによつて共産党の梨木君が党利党略のために国民を誤らせんとするものであると言われても、おそらく一言も弁明する言葉は発し得ないであろうと思います。私はこれ以上梨木君のこの問題についてお答えする必要はないと思います。事実ははつきりあなたがお調べになればわかります。
  65. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 労働争議等につきまして警察がこれを彈圧するというような考え方は、たびたび申し上げております通り絶対にいたしておりません。警察といたしましては不法事態が発生いたしましたならば、これは断固として取締りはいたしますけれども、不法事犯がございません限りは、さようなことは一切いたさないように特に愼重にいたすようにいたしておるのであります。  電業社の問題につきましては、私が聞いておりますのと、ただいま梨木委員の申されたことの間には相当の開きがあるようでございます。問題は検察庁においても愼重に調査をしておられるのでありますが、そのうちはつきりいたすと考えております。
  66. 安部俊吾

    安部委員長 梨木君にちよつとお諮りいたします。議題神戸騒擾事件なつておりましてこの範囲内において御発言あらんことを望みます。
  67. 梨木作次郎

    ○梨木委員 大体そうであります。(笑声)今国警長官の方から御答弁がありましたが、私の言うところとそれから当局の調べている調査とでは大分違うところがあるということでありましたが、一体それではあなたの方へ来ている報告はどういう事態のもとで発砲したというようになつているのでありますか。私の調べたところでは四名しかおらぬ労働者のところへ、そこへ六名の警察官が来た、そしてまつ先に指揮官が上に向つて実彈を打つたらしい、それに引続いて労働者に発砲しているのですよ。こういうのが私の調査で、私は現に見て来たのであります。この点あなたの方へどういう報告が行つているのか。
  68. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 われわれの方で報告を受けておりますのは、二百名以上の不法な集団行動があつたように聞いておるのであります。そして警察官は発砲をするにあらざれば、石塊その他を投げつけられて非常に身体に危險を感じたような状況であつた、かように聞いておるのであります。
  69. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そういう報告を真に受けられるから問題がちつとも真実を持たないのです。これは二百名というのは正門の方には、そこで報告を聞いている労働者が二百名か三百名かおつたでしよう、裏門には四名しかおらぬ。その裏門から来たのですよ。あなた方はそういうような二百名が抵抗したとかそういう報告を基礎にして、そうしてこの発砲を合理化しようとする。ここに私は非常に問題があると思う。だから私の方も事実をどんどん出しますが、そういう報告は事実を歪曲しております。そういうことで発砲を合理化しようとしているのです。とにかく当局が武力でこういう彈圧をする、それではわれわれも自衛的にこれに対抗しなければならぬじやないかということになつて来る。ここにいろいろな集団的な行動というものが、非常に危險なところに発展して行く問題の契機があると思うのでありますから、この点は厳重に、こういう不当な武器の使用というものを取締つてもらいたいことを要望します。
  70. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 電業社の発砲事件につきまして一人の負傷者が出ておりますので、これは現地認知としまして検察庁では物件捜査中であります。
  71. 安部俊吾

    安部委員長 なお本件に関連いたしまして、大西正男君から発言を求められております。これを許します。大西正男君。
  72. 大西正男

    ○大西(正)委員 私は本日は人権蹂躙に関する質問を御当局に対して試みたいと思うのでありますが、発言を許されましたから、この神戸事件に関連をいたしまして二、三お尋ねをいたしたいと存じます。  一つは先ほど特審局長の御発表になりました在日朝鮮人の数でありますがこの数字によりますと、国籍を韓国とする者は六万九千幾ら、約七万であります。これに対して、そうでない者が四十七万幾らでありまして、国籍の届出のできておりますものが、できていないものに対してその約一割強という程度になつているものであります。先ほど刑政長官の申されましたように、外国人登録令によつて外国人は登録をすることになつております。また登録をしなかつた場合において、これに対し制裁が規定をされているのでありますが、わずかに一割程度のものが登緑を終つて、あとの大部分がいまだにその登録を完了しておらないというのはどういう事態から発生しているのでありますか。それを伺いたいと思います。
  73. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 先ほど私が御説明申し上げましたことをあるいは誤解されているかもしれませんが、これは最初朝鮮人として、全部登録をしております。その後、外国人登録令がかわりましたときに、韓国人として登録を受付けまして、そのときにやつた数が先ほどの数であります。従つてこれは朝鮮人としての登録の中には、あるいはいわゆる南鮮といいますか韓国の方の人があるかもしれませんが、この人たちは朝鮮人としての登録をしたままで、韓国人としての登録をしていないわけです。
  74. 大西正男

    ○大西(正)委員 そういたしますと、いわゆる従来の北鮮に属する人々は、これはどういう取扱いになるのでしようか。
  75. 草鹿淺之介

    ○草鹿政府委員 全部これは朝鮮人の登録としております。
  76. 大西正男

    ○大西(正)委員 その点は了承いたしましたが、先ほど法務総裁の御報告によりますと、事件特異性として、今回の神戸騒擾事件に参加をいたしました朝鮮人の中で、地元の朝鮮人は参加しておらないという一葉があつたように承りました。地元の朝鮮人というのはどういうものでありましようか。新聞によりますと、神戸市の騒擾に参加した者が二百名、そのほか明石以下何か八市町村でありますかの人々がここに集つているようでありますが、その地元というのは神戸の騒擾のあつた区域内の朝鮮人をさすものでありましようか。
  77. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私の御報告申し上げました趣旨は、比較的兵庫県下の他の地区から来た朝鮮人が多くて、神戸市内の在住者は比較的少なかつたという趣旨を申し上げた次第であります。特に検挙せられました者の中には、神戸市内の在住者はほとんどないようでありますから、やじうま的に参加した者はあるといたしましても、積極的に不法行為を働いた人たちは、多く他の地区からやつて来た者であつた、こういう意味におとりを願います。
  78. 大西正男

    ○大西(正)委員 それでは神戸地区の朝鮮人が比較的参加しておらないということを特異性にあげられておるのでありますが、これはどういう意味においてでしようか。つまり検挙とか、鎮圧を予想して、地元のものは警官その他附近の人に顔を知られておるなどということで、そういうものが参加をせずに、他の町村のものがやつて来て騒擾を起したという意味でありましようか、何かそこに特異性としてあげられますについては、どういう意味から特異性ということを言つておられるのかお伺いいたします。
  79. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私がこの点を特異性としてあげました考え方といたしましては、通常この種の騒擾におきましては、地元の人たちの痛切なる要求として、自然発生的に群衆行為が行われるというのが、かような犯罪の通性であります。これに対し点々たる各地区から動員されました地元外の人たちがやつておるという点は、かような従来の暴動のような自然発生的なものに比べますと、ここに何らか計画的なものがありはしないかと推測すべき理由がある、かように思料いたしまして、この点をあげた次第であります。
  80. 大西正男

    ○大西(正)委員 ただいまの点よくわかりました。  次に読賣新聞の報道によりますと、今度の騒擾事件は、日鮮人の騒擾だと書いてありました。その鮮人はわかりますが、日本人については、先ほど総裁の御報告中にございましたところの、いわゆる検挙された共産党員をさすものでありましようか。そのほかに群衆として日本人が参加したのでありましようか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  81. 大橋武夫

    大橋国務大臣 新聞には日鮮人とあつたかもしれませんが、私どもの承知いたしております範囲におきましては、大体朝鮮人が大部分であつて、当日の暴動においては、ほとんど日本人はおらなかつたようであります。ただ検挙者として日本人があつたということを申し上げましたのは、当日の検挙ではなく、それより二日ほど前の朝鮮人数十名が行動いたしました際に、首謀者として検挙いたしましたものが日本共産党員であつた、こういうことであります。
  82. 大西正男

    ○大西(正)委員 もう一点だけお伺いしておきます。先ほど猪俣委員からお尋ねになりました点でありますが、あげ足をとるわけではありませんが、新聞の報道を見ますと、神戸の市警察局長が今度の事件は明らかに日共の指導による計画的な行動であるという新聞報道があるのであります。また先ほど総務総裁が特異性の一つとしてあげられました点について、日本共産党員が煽動しておるということが明らかであるにかかわらず、自分たちはこれに関係しておらぬという逃げを打つておるという報告があつたわけであります。ところでこの明らかであるかどうかという点につきましては、ただいまの猪俣委員との質問応答によりまして、その内容は明らかになつたのでありますが、本日の新聞報道によりますと、例の追放になりました旧日共幹部の志田重男氏そのほか長谷川浩氏などがこの地区に潜入して、この事件を指導したことが確実と見られるに至つたというふうな報道がされておるのでありますが、これらの点につきましては、ただいま法務総裁のお手元においては、どの程度の資料と報告を持つておられるか、それを伺いたいと思います。
  83. 大橋武夫

    大橋国務大臣 志田あるいは長谷川とこの事件関係につきましては、当局といたしましては何らの資料を持つておりません。
  84. 大西正男

    ○大西(正)委員 最後にお願いいたしたいのであります。本件は先ほども申し上げましたように、日本共産党の中の過激分子とでも申しましようか、これらの人が背後にあつて、今回の騒擾事件を指導したのだという疑いが多分にあるという、その点が明白ではないにしても、多分に疑いがあるのだという御当局の御観察のようでありました。ところが日共の追放幹部につきましては、過去相当長い期間にわたりまして、わずかに春日氏一名が逮捕を見ているにすぎません。かような状況下におきまして、先ほど法務総裁が、神戸騒擾事件は、首謀者検挙によつて、これで今後心則することはあるまいとの御答弁でありましたけれども、しかしながらその背後にひそむものが何者であるか、その背後関係が明瞭にされ、そしてこれに対して法的措置がとられない限りにおまましては、将来においても各所にかような事件発生するということは、これまた想像にかたくないのであります。しかるに政府の治安維持並びに検挙、捜査の諸機関においては、例の日共幹部の逮捕におきましても、長い間努力されておるにもかかわらず、この努力に対しては、私ども満腔の敬意を表するのでありますけれども、しかし一向に、表面上においては、少くとも何らの効果が上つておらないように見えるのであります。かような政府の警察力あるいは捜査力をもつてして、はたしてこの神戸騒擾事件の背後関係を突くことができるかどうかということは、多分に心配される点があると思います。今回の神戸騒擾事件については、法務委員会においては、独自の立場でもつて今後捜査を進めることと存じますが、政府当局におき逃してもかような事件が今後起らないように、そしてその表面だけを押えて、糊塗しないようにその核心をついて、拔本的にかような事件の起らないような措置を十分にとつていただきたいと思います。この点を希望いたしまして、私の質問を終ります。     —————————————
  85. 安部俊吾

    安部委員長 これをもつて日程を終りましたが、この際日程追加の件をお諮りいたします。  警察予備隊の人権問題及び予備隊と国内治安の問題について、委員から発言の通告があります。日程を追加し、これを許すことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 安部俊吾

    安部委員長 御異議がないようでありますから、日程を追加し、質疑を許します。(「簡單にしてくれ」と呼ぶ者あり)なお簡單にという委員の要望もありますから、その点御考慮を願います。上村進君
  87. 上村進

    安部委員長 御異議がないようでありますから、日程を追加し、質疑を許します。(「簡單にしてくれ」と呼ぶ者あり)なお簡單にという委員の要望もありますから、その点御考慮を願います。上村進。君
  88. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊は、一般警察力の補充といたしまして設けられた警察隊でありまして、その任務といたしますところは、わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障することでありまして、具体的に申し上げますならば、一般警察が対応し得ないような事態において出動するものであり、その活動も警察の任務の範囲内にきびしく限定されておることは、マッカーサー元帥の書簡並びに警察予備隊令により御承知通りでございます。従いまして警察予備隊と軍隊とは明確に異なつておる。すなわち軍隊は外敵と戰うことを第一の任務といたしておるものであり、かつてありました地方長官の出兵請求に基いて国内においても出動ずるという場合も山あるわけではありまするが、しかしそれはどちらかというと、第二義的な任務であり、おもなる任務はあくまでも外戰ということにあるわけであります。これに反しまして警察予備隊は、国内の治安維持ということにその任務を局限せられて、外国との抗戰あるいは外国に出動するというようなことは行い得ないものであります。この点からして根本的にその性格が違つておる、かように私どもは理解をいたしておる次第でございます。
  89. 上村進

    ○上村委員 外国に向けるだけが軍隊じやなくて、内国の方に向けても軍隊は軍隊だと思うのですが、そうすると普通の警察と警察予備隊との違うところは、一体どこにあるわけでしようか。
  90. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察は警察法によりまして、国家地方警察及び自治警察と相なつておるのでありまするが、これは日常社会に発生いたしまする各種の犯罪の捜査、あるいは逮捕状の執行というような通常の使命、また治安上におきましても通常のできごととして予想されまするような社会上の治安問題について出動ずるということがその任務となつておるわけであります。これに反しまして、警察予備隊は通常の警察力をもつてしては処理することのできないような大規模な、集団的な破壊的行動というものに対応するというのがそのおもなる任務である、かように考えております。
  91. 上村進

    ○上村委員 そうしますと、治安を乱す程度もしくは種類によつて、普通の警察ではどうにもできないような非常に大きなものを防適することが目的だ、こういうわけでありますね。
  92. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さように考えております。
  93. 上村進

    ○上村委員 そうしてその防遏の手段について武器をもつて主として防遏するということになれば、それは軍隊の性格、軍隊としての行動になると思うのですが、それをなお警察だというのでございましようか。
  94. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在の警察にいたしましても、武器は持つておるわけでありまして、たとえばこん棒であるとか警棒であるとか、あるいはピストルであるとか、こうした武器を持つておるわけであります。この警察予備隊におきましては、その使命から考えまして、通常の警察が持つておりまするかようなる武器よりも多少高度の武器を持つということになりまして、武器としては多少程度が違う場合もあると存じまするが、しかしこの軍隊なりや警察なりやということは、その持つておるところの武器においても違いがありましようが、それと同時にむしろこれがいかなる目的のために準備されるものであるかという点にあろうと存じます。私どもは警察予備隊というものは、武器の点においても今日の各国の軍隊のような、外国と戰争をなし得る程度の武器を準備する必要はないと考えまするし、またその使命といたしましても、外国との戰争に従事せしむるというようなことを使命とするのではなく、あくまでも国内における治安維持を使命とする、この二点において明らかに軍隊とは違つた性格のものである、かように観念いたす次第であります。
  95. 上村進

    ○上村委員 その点意見の相違ですからそのくらいにしておきます。  次に警察予備隊の人たちが、最近大分解雇されておつて、その一部の人が今国内に陳情に来ておるわけ下すが、一体どのくらい解雇されておりましようか、最近において。
  96. 大橋武夫

    大橋国務大臣 上村君の御質問になりましたいわゆる解雇されておるというのは、先般警察予備隊におきまして、結核患者の検診を行いまして、その結核患者の取扱いに際して一応解雇するというような措置が行われた。それをさして言われておるのではないかと存ずるのでありまするが、この理由によりまして解雇の措置をとられたというものは、約千名弱ということに報告を開いております。
  97. 上村進

    ○上村委員 その千名というのはみな結核患者ということで解雇されたのでございましようか。
  98. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは厳密に申し上げますと、結核患者という言葉がはたして適当であるかどうかはわかりませんので、この言葉は、一応そういう意味で解雇されたと申し上げましたが、厳密には結核患者というわけでなく、レントゲンによる検診をいたしましたる結果、胸部疾患の疑いありと——現実には全然発病しておらず、自分でも健康であると考えておられる方がたくさんありまするし、またおそらく通常の生活においては発病の懸念はないと認むべき人が大部分でありますが、しかしレントゲンによる医学的検査の結果、胸部に異常がある、こういう趣旨で、今後警察予備隊の訓練をこのまま続けます場合におきましては、あるいは不幸にして発病のおそれなきにしもあらず、かように認めて一応解雇措置をとられた次第であります。
  99. 上村進

    ○上村委員 警察予備隊の新設はそう遠い話ではない、近い採用なんですが、そしてしかも厳重な身体検査を二度もやつて採用したものが、そのときに合格してわずか三箇月かそこらで結核患者がそんなにたくさん出るというのはおかしいと思うのですが、何か解雇するにはほかの理由が加わつたのじやないかと思うのです。その点はどうでございましよう。
  100. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実は今日から考えますると、これは私ども担当の重大なる手落ちであつたと存ずるのでありまするが、非常に短期間のうちに募集をいたしましたため、当時その結核の問題につきましての注意が十分に行き届かず、従いましてレントゲン写真による医学的研査を省略いたしておつたのであります。しかしながらかようなる部隊におきましては、結核問題は非常に重大な問題でありますので、今回一齊に身体検査を特にこの点に限つていたしまして、これに対する今後の適切なる措置を立てたい、こういう趣旨をもつてこのたびレントゲン検査を全員に対して実行するに至つたわけであります。
  101. 上村進

    ○上村委員 一般検査をやつたところが鮮明なものが出た。そうすると、それでこの後には出ないという大体の見通しがついているわけですか。
  102. 大橋武夫

    大橋国務大臣 何しろ生身の人間の扱いをいたしておりますので、将来絶対に病気が出ないという見通しはできないわけでありますが、現在検診をいたしました結果としては、他の人々についてはさしあたり危險はあるまいという見通しは立ち得るわけであります。
  103. 上村進

    ○上村委員 解雇された陳情者の言によると、まるでまる裸のようにしてたたき出されておる。そしてせつかく当時の自分の職場を捨てて行つて、わずか三箇月くらいで解雇されて、まるきりまる裸でたたき出されておるという現状だというのですが、それはその通りでございますか。
  104. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この問題につきましては、中央の部隊の責任者と、現場の部隊との間の連絡が非常に不十分でありました結果、今お話のようにまる裸で追い出すといつたような形で解雇された者があつたということは、私承知しております。しかしながら、実はこれは手続き上に手落ちがありました丸めに、そのような遺憾な結果を見た次第でありまして、私どもはこの解雇せられました人々の中で、あるいは一方的な診察の誤りであつて、事実は健康で今後の実務に支障がないというものもあろうと存じます。これらの人々に対しましては、二名以上の医者からさような診察が與えられました場合には、ただちに復職せしめるという方針をとるに至つたわけであります。なおま事実多少発病に近いような状態にあり、ただちに復職することが困難であるというものも、今後どういうふうに待遇するか。これは警察予備隊で採用されなければ、かりに従来の職場において発病した場合におきましては、引続き従来の雇主から相当な待遇を受けて療養をなし得べかりしものが、たまたま警察予備隊に入つたために、今後は自力で療養しなければならぬという状態に押し詰められておるわけでありますから、これに対しましては、警察予備隊とい大しましても、十分に責任を感じておる次第であります。すなわち今後これが療養につきましては、でき得る限り予備隊としてお世話いたしたいという考えをもちまして、ただいまその具体的な実行方法につきまして調査研究をいたしておる次第でありますから、この点はさように了承をお願いいたします。
  105. 上村進

    ○上村委員 実際病筆で療養しなければならぬものは、法務総裁のおつしやるような措置がとられるべきだと思うのですが、全然自己症状を感じていないようなものもあるわけです。そういうものは、やはり療養所に行くわけにも行かないで、首を切られつぱなしになつておるというものが相当あろうと思う。こういうものに対して保險制度というものをお考えになつておりますか、どうですか。
  106. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私がただいま予備隊として責任をもつてお世話をしなければならないと申し上げた範囲には、現実に病気を自覚しておられる方ばかりで、なく御本人は達者である、また事実普通の勤務ならば達者で続くであろうが、予備隊の性格上しばらく勤務から離れてもらわなければならぬという方々をも含めまして、研究をいたしておるところでございます。
  107. 上村進

    ○上村委員 そうすると、これらの成案というものは今できてはおりませんですか。ただ抽象的なそういう方針たというだけですか。
  108. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さような方針をもちまして、ただいま具体的な方法について研究を進めておりますが、しかしこの問題は長く放置すべきものではございませんので、取急ぎ実施するようにいたしたいと存じます。
  109. 上村進

    ○上村委員 そうすると、どういう措置がとられるのですか。首を切られておるのは現実なんです。そしてまつたく生活に困つておる人もあるわけですから、それの当面の緊急措置としては、どういうことが考えられておりましようか。
  110. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一番初めに申し上げました通り、現在一応解雇の措置をとつておりまが、これは手続き上の手違いでありまして、従つてこれらの人々は一応解雇取消しというふうなことになりまして、その中で医者の診断が適切でなかつた人々については、今後二人以上の医者の診察によつて今後の勤務にさしつかえがないというものは、従来の勤務場所に復職せしめる。そして復職が困難であると認められる人々につきましては、一応療養の方法を講じさせる。こういうことにする方針でございます。ただ具体案につき許してはなお調査をしております。
  111. 梨木作次郎

    ○梨木委員 ちよつと関連して。先ほど大橋法務総裁は、警察予備隊というのは国内治安のための警察の補助的なものである、従つて大体それに相応した設備と機構を持つておるのだという趣旨の御答弁がありましたが、伝えられるところによりますと、現在の警察予備隊では、たとえば戰車部隊、あるいは航空部隊、あるいは重機関銃部隊というものがあるやに伝えられておりますが、さようなものは実際あるのかどうか。これをお伺いいたしたいのであります。
  112. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在予備隊として持つております装備は小型の小銃でありまして、これはアメリカのカービンと申します銃でございます。これは従来の日本の歩兵銃に比較いたしますると銃というよりはむしろピストルに近い程度のものでありまして、おそらく数百メートル程度の有効射撃距離しか持つていないだろう、かように思います。
  113. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それから一例を申しますと、広島県海田市町にある海田市キャンプ、ここの警察予備隊の最高の指揮をしておるのは、ミラー少佐というのがキャンプ指揮官ということになつておるそうでありますが、そうしてそのもとにアメリカの軍人の教官が三、四人おるというように聞いておるのであります。そうしてそこでは訓練にあたりましては、戰鬪だとか斥候だとか、軍事情報だとか、そういう言葉を使つて訓練がされておるそうでありますが、こうなつて来ると、われわれはやはりこれはどうも、單に国内治安のための警察の補助的な機関だという御説明と事実が非情に相違しておるように思われるのであります。そこで私は伺いたいのでありますが、現実にこういう事態があるのかどうかということが一つと、ここのキャンプの指揮官がああいうミラー少佐という人であるならば、この警察予備隊が朝鮮へ出動させられるような命令が出た場合に、一体これを断ることができるのかどうか、こういう点についての見解を承りたいと思うのでございます。
  114. 大橋武夫

    大橋国務大臣 海田市におきまする訓練において、用語その他で適切なものでないものもあるやに聞いております。これらは漸次適切な用語に変更すべきものだろう、こう考えております。それからこの警察予備隊が将来外国に出動の要求があるというようなことは、私は考えておりません。
  115. 安部俊吾

    安部委員長 梨木君に申し上げますが、ほかに発言者もありますから、きわめて簡單にお願いいたします。
  116. 梨木作次郎

    ○梨木委員 もう一点だけ……。今度千名の解雇者が出た、この人たちの経験によりますと、本部の増原さんに会つてみても、療養費の問題だとか、あるいは旅費の問題だとか、今後の生活保障の問題、いろいろな問題で会つて、いろいろな要求をした、すると経理関係については一切われわれは扱うことができないのだ、扱えないのだというように言われたそうであります。そうなつて来ると経理も日本の人たちによつてどうにも自由にならないような印象を受けるのでありますが、その通りであるかどうか伺いたいのであります。
  117. 大橋武夫

    大橋国務大臣 経理につきましては、日本の会計法に使いまして、日本の官吏が経理をいたしておるのでありまして、別にそのほかの経理のやり方というものは許されておらないのであります。
  118. 安部俊吾

    安部委員長 猪俣浩三君。
  119. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は警察予備隊の性格その他の問題につきまして、実は第八国会に法務総裁に相当質問したのでありますが、まだ構想中で発表できないような御答弁で終始されたのであります。国会が済みましてから、予備隊令が出まして相当具体的になつたので、これにつきまして警察法と警察予備隊令との関係等につきまして相当こまかに質問心して、研究したいと思つておるのでありますが、なおまた大きな問題といたしましては、警察予備隊の性格というものは、この日本の再軍備論とともに内外に相当な疑惑があるのでありまして、これに対しましては最高の命令官でありまする内閣総理大臣からはつきりした答弁をいただきたいと思うのであります。そのようなことで時間も非常に迫つておりまするので、私はこの質問を次の機会に讓つていただいて、それには相当こまかいことまでお尋ねするようなことになつているので、大分委員の方も疲れておるようでありますし、この次に保留させていただきたと思います。
  120. 安部俊吾

    安部委員長 了承いたしました。世耕弘一君。
  121. 世耕弘一

    世耕委員 大分時間がたつているようでありますから、私も次の機会に発言をお許し願えるならば留保してこの際終りたいと思いますが、それでもお許しくだされば十五分くらいで片づけます。
  122. 安部俊吾

    安部委員長 それでは留保ということにいたします。     —————————————
  123. 安部俊吾

    安部委員長 なお人権擁護の問題について大西正男君から発言を求められておりますが、日程を追加してこれを認めるに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 安部俊吾

    安部委員長 御異議なければ発言を許します。大西正男君。
  125. 大西正男

    ○大西(正)委員 時間も迫つておりますので簡單に御質問をいたします。実は昨日の夕刊に「日共幹部と間違えられて法務総裁相手に人権の訴え」という記事が出ております。内容は、地下にもぐつた日共八幹部の一人、長谷川浩氏と間違えられて逮捕され人権を蹂躙されたというので、元大原労働研究所員で現在農業経営研究所長をしております吉岡金市という人が、法務総裁を相手として損害賠償並びに新聞紙上に謝罪広告を掲載の訴えを地裁民事部に提起したという報道があつたのでありますが、この事件につきまして法務総裁は報告を受けておるでありましようか、受けておれば内容をお聞かせ願いたいと思います。
  126. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この件につきましてまだ詳しい報告を受けておりません。
  127. 大西正男

    ○大西(正)委員 それではこれに関連をいたしまして日共の地下に潜行された人々に対しまして、捜査の段階におきまして——前国会の際の古島議員の御質問であつたと思いますが、それらの人々を逮捕するについて現行犯またはこれに準ずるものとして取扱いをするかどうかという御質問に対しては、そういう取扱いをしないという特審局長の御答弁であつたように記憶いたしております。そのほかに、今追放になつて地下に潜行している日共の幹部の人々を逮捕するについて、逮捕状によらないで逮捕するというふうな場合があるのでありましようか、ないでありましようか、これをお尋ねしたいと思います。
  128. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いわゆる日共追放幹部の逮捕にあたりましては現実には逮捕状により逮捕するという方針をとつております。
  129. 大西正男

    ○大西(正)委員 そういたしますと、逮捕状によらないで日共幹部の逮捕ということは政府の方針としてはないわけでありますか。
  130. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは御承知通り逮捕状はすでに出ているわけであります。残りの八名すべてに対して逮捕状が出ておるのであります。その逮捕状が出ておるということを告げて本人を逮捕をすることは、警察として当然なことであるのであります。
  131. 大西正男

    ○大西(正)委員 それでは逮捕する場合におきまして、その逮捕の対象となる人が、はたして逮捕状を出されておるところの日共の幹部であるかどうかその対象費の同一性を決定するにはどういうふうにしておやりになるのでありましようか。
  132. 大橋武夫

    大橋国務大臣 写真及び指紋によつてやるようにいたしております。
  133. 大西正男

    ○大西(正)委員 この新聞に出ました事件の内容は、去る九月二十五日、国警の島根県鹿足地区の警察署所属の警官が、同郡の津和野町国鉄津和野駅構内で、先ほど申し上げました吉岡氏を日共の追放幹部の長谷川浩氏であると、何らの合理的根拠がないにもかかわらず、一方的に認定し、逮捕状もなく、多数乗客の目前で暴力を振つて逮捕、同地区署に連行、さらに同県太田地区署に連行、太田町にある警察御用宿として特殊の構造を持つた旅館の一室に監禁したというような報道になつておるのでありますが、その際に、ただいまおつしやいました指紋とか、あるいはまた写真などによつて一体そういつた照合をされたのであるかどうかこういう点のお調べを願いたいと思います。  それから国警長官にお尋ねいたしたいのでありますが、警察御用宿というのは、一体どういうものでありましようか。
  134. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 警察御用宿というのは私は聞いておりませんので存じませんが、おそらく警察が客が寝た場合にときどきあつせんをしたりするのを、ほかの者がそう言うておるのではないかと私は考えます。ただいまの事件は、写真で見たのと非常に人相が似ている、その行動にも日共幹部らしい行動があつたというようなことから、追放幹部の一人ではなかろうかというので、職務質問をいたしまして、警察まで同行してもらいたいということで同行した模様であります。従つてこれは逮捕したのではないのであります。そこで本人の話を聞いてみますと、どうもそうでないような節もある。指紋をとればはつきりするから、指紋のとれるところまで果てもらいたいということで、隊本部まで行つてもらうのが、そのときの交通状況では一番よかつたそうでありますけれども、本人の翌日の活動の日程もあつたようでありますから、次の地区署まで行つてもらつて、県の本部から監識課員が来て、そこで指紋をとつて照合してみたところが、そうでないということが、はつきりわかつた。その晩は警察のあつせんによつて宿屋にとまつてつてもらつた、こういうような報告を受けております。
  135. 大西正男

    ○大西(正)委員 警察御用宿という特殊のものはないという御答弁でありますが、この新町報道によりますと、警察御用宿として、しかも特殊の構造を持つた旅館、こういうようなことが書いてあります。これが真偽のほどは、もちろんわれわれにはわからないのでありますが、そういうものがあるかどうか、これをひとつお調べを願いたいと思います。  さらにけさの新聞でありましたか、私ざつと見ただけで、十分に記憶しておりませんが、つまりその旅館にとめられて、その日か、その日か、翌々日かに釈放された、こういうふうな報道であつたと思います。しかし国警長官の今の御答弁によりますと、つまり宿屋をあつせんして、そこにとまつてもらつたというふうに聞き取れるのでありますが、しかしながら、この事件民事裁判所民事事件として提訴されておるようでありまして、従つてその訴状の内容を見ればその点も明白になると思うのでありますが、おそらく本人の考えとしては、あつせんをしてもらつて、帰れないためにとまつたのではなくて、監禁をされたという考えを持つておるのではないかと思われるのであります。これらの点について、今日この席においてもし十分なる資料をお持ちになつておりませんでしたならば、近い機会において、それらの資料をお集め願いまして、もう一度御報告を願いたいと思います。
  136. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ただいまの御質問の点は十分取調べまして、適当な機会に御報告申し上げたいと思います。今まで一応出ております報告によりますと、私がただいま申し上げた通りであります。
  137. 梨木作次郎

    ○梨木委員 関連して——私はこの吉岡金市君本人に会いまして、当時の実情をつぶさに聞きましたが、今の国警長官の答弁とは非常に相違しておるのであります。これは島根県の鹿足郡津和野駅ホームにおきまして、西川という警部補指揮のもとに五人の私服が逮捕状も何も示さないので、お前さんは長谷川浩に似ておる、だからちよつと来てくれ。いや私は長谷川浩ではないこう言つて弁明しますと、いや長谷川浩と認定する、こういうわけです。そういう認定はむちやな認定だから、それじや私は長谷川浩でないという証明をしますといつてカバンの中から名刺も出すし、それから吉岡金市というのは有名な農業の学者でありまして、その地方においても著名な人であります。なほ当日は、島根県鹿足郡木部村の村長木村荘重という人の招待で実は農業に関する講演に行くことになつておつたのでありまして、その講演の材料も示し、それから吉岡金市氏の著書も示し私はこういうものであるということを言つてこれは長谷川浩でないという証明が、警察官としての感覚を持つておれば明らかにわかる程度のものを示しているのに、いや長谷川浩と認定するということでむりやりに交番まで連行してそうしてここでジープを呼んで国警の津和野署へ連れて行つて、ここで写真をとつて、しかも指紋をとつてしまつている。本人の言うところによると本人は指紋をとられることさえ人権蹂躙だと言つて断つたそうであります。しかしとにかく向うで指紋をとらして対照することによつてはつきりするだろうと思つて一応譲歩して、とにかく講演の時間も辿つておるので、指紋をとらしたというのであります。それで帰してもらえるものと思うと、今度はもう一ぺん汽車に乗せてそうして国警の太田警察署へ護送した。こういうことが事実なんであります。そうして太田へ下車するや、とにかく宿をせわしたとか何とかいうのでありますが、これは警察の御用宿でありまして、しかもこれは監視がついておるのであります。こういうことが事実なんでありまして、このためにこのホームにおきましては多数環視の中で私服五名によつて逮捕されておる、これは非常な人権蹂躙です。明らかに本人でないということの客観的な信用し得る証拠を出しておるのに、それでもお前は長谷川浩だと認定するというわけです。しかも逮捕状も何も持たないで、やるということは、明らかにこれは人権蹂躙です。こんなことがしばしば行われることになりますならば、警察官によつてお前さんはこれこれの犯人に似ているという認定によつて、びしびしこれが逮捕されて行くというような、こういう恐るべき暗黒恐怖の警察政治が出て来ると思うのでありまして、この点は十分今後そういうことについて注意をしていただきたいということを、要望しておく次第です。
  138. 安部俊吾

    安部委員長 それでは本日はこの程度で終り、次会は明日午後一時開会することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時一分散会