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1950-11-30 第9回国会 衆議院 地方行政委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月三十日(木曜日)     午前十時五十七分閣議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 龍野喜一郎君 理事 藤田 義光君    理事 門司  亮君       大泉 寛三君    門脇勝太郎君       川本 末治君    清水 逸平君       塚田十一郎君    中島 守利君      橋本登美三郎君    吉田吉太郎君       鈴木 幹雄君    床次 徳二君       山手 滿男君    立花 敏男君       大矢 省三君    木村  榮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         地方自治政務次         官       小野  哲君         総理府事務官         (地方自治庁次         長)      鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁公         務員課長)   藤井 貞夫君  出席公述人         横浜民生局勤         務       松尾 彬五君         法政大学講師  熊倉  武君         全国自治団体労         働組合協議会委         員長      占部 秀男君         日本都市交通労         働組合中央執行         委員      河野 益夫君         全国市長会事務         局長心得    達林 正吉君         東京市政調査会         理事      小倉 庫次君         東京都勞働組合         連合会執行委員         長       河野 平次君  委員外出席者         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた案件  地方公務員法案について     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより地方行政委員会公聽会を開きます。  さて本委員会におきましては、地方公務員法案が付託されて以来、本日まで審査いたして参つたのでありまするが、委員会は特に本日及び明日の二日にわたり公聽会を開きまして、地方公務員法案について公述人の方々より御意見を伺うことにいたしましたゆえんのものは、申すまでもなく本法案地方公務員のみならず、国民一般に影響するところきわめて大なるものがあり、一般国民諸君本案に対する関心も、まことに大なるものがあるのでありまするので、国民階層におきましても、賛否の意見が活発に展開されておる現状にかんがみまして、国民諸君の聲を聞き、広く世論を反映せしめ、本委員会審査を一層権威あらしめるとともに、その審査に一層遺憾なきを期するためにほかならないからであります。本委員会といたしましては、本日公述人各位の貴重なる御意見を承ることができますことは、本案審査の上に多大の参考となるものと深く期待する次第であります。私は委員会を代表いたしまして、御多忙のところわざわざ御出席くださいました公述人各位に厚くお礼を申し上げますとともに、各位の忌憚ない御意見の陳述を希望する次第であります。  これより公述人意見を承ることにいたしまするが、この際お諮りいたしたいことがあります。昨日決定いたしました公述人のうち、全国市長会長金刺不二太郎君が都合により出席しがたい旨の申出がありましたので、同君の公述人を取消しまして、そのかわり全国市長会事務局長心得達林正吉君を公述人として決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  なお公述人田中一郎君は都合出席ができない旨申出がありましたから、御了承願います。  なお公述されます順序はなるべく先着順でお願いすることにいたします。ただ熊倉君におきましては御都合があるそうでありますのでちよつと順序をかえますが、この点もあらかじめ御了承願いたいと存じます。  それではまず松尾彪五君にお願いいたします。
  4. 松尾彬五

    松尾公述人 ただいま御紹介を受けました横浜民生局勤務松尾彬五でございます。  私は今回の地方公務員法政府原案に賛成するものでございます。だが賛成はいたしますが、この案文中にある地方公共企業体、すなわち交通ガス水道、このような方面特例法を設けて、政治運動の取締りを除外するということがあるようでありますが、これはとんでもない間違いだと思うのでございます。横浜に例をとつてみますると、この公共企業体の性質に属する交通、建設またはガス水道、この方面現業に非常に重点を置いてもらいたい。それはどういうことかと申しますると、この現業方面極左あるいは極右があるのでございます。この現業方面極右は、数は少いのでございまするが、確かにおるのでございます。極左はかなり多数おるのでございます。この極左選挙などのときには必ず立候補いたす、そうして運動員がまたたくさんこれに応援する、当選はあてになるかならぬか知らぬが、要するに、極左政党の宣伝に資する傾きが多々あるのでございます。でありますから、私は公務員法特例などは設ける必要はない、設けたといたしますれば、これは地方公務員法としては骨を拔かれたもので、目的を達成することはできない、かように考えておるのでございます。もう一つは二足のわらじはくということがございますが、国家公務員地方公務員も、ともに公僕としてはかわりはない、国家公務員国民公僕であり、地方公務員地方自治体の公僕であろうと私は思うのでございます。專念職務に従事して、そうして公僕としての使命を遂行するということが、私は本領であろうと存ずるのであります。しかるに二足のわらじをはきたいばかりに、月給をとつて、あるいは日給をとつて、そうして立候補もする、選挙運動もするということになりますると、どうなります。地方の負担になるところの市町村の税金によつて給料は拂われておるにかかわらず、その給料をもらつて政治運動をする、たとえば立候補する、選挙運動をするということになるのでございますから、私は、そういう人は職務をやめて政治運動をしたらどうかと思うのでございます。二足のわらじはくということは、私はすこぶる手前がつてのことであると思う。そうしてまた、東京横浜中央に近いから、あまりそういうことはございませんが、草深き北海道あるいは九州の方面の道府県、あるいはそれ以下の市町村、こういうところは、どつちかというと草深い田舎の悲しさには、中央の目が十分届かない、ここに極右——極右は数は少いのです。おるにはおりますが、多いのは極左、これらの連中が不都合を生ずるところの一つの温床の地帶になつておるということを、議員諸君はよく御参考にしていただきたいのでございます。私が知つた範囲内において言いますると、ある極左政党道路工夫はどういうことをしますかというと、きようは局長に抗議を申し込む、明日はデモをやる、あさつては集会だ、その翌日は細胞運動だ、このようなことを申しまして一年半の間に満足な仕事は一日もしない、しかも給料はあたりまえにもらつて賞與でも少し少いとぐすぐず言うのであります。これは、私は反動ではございません。反動を打破するとともに、左翼政党不心得者を徹底的に掃滅するという穏健公正な考えのもとに発足しておるのでございます。でありますから、多く駄弁を弄しませんが、国家公務員法のあるごとく、地方の都道府県の官公吏市町村の吏員並びに従業員、清掃のような下級のものに至るまで、一律平等に地方公務員法を適用してもらいたい。特例を設け、あるいは現業方面には政治運動は手心するなどとは、とんだ認識不足もはなはだしいということを、議員諸公はまず耳を傾けてほしいのであります。私は自分が体験をしてこのことを皆様に申し上げたのでございます。机上の論をもつて推量するものではございません。でありますから、その意味において地方公務員は、特例などを設けることなく、一律平等にこの地方公務員法を適用してもらいたい。どつちかというと、市役所の本部あるいは県庁の本部などは割合におとなしいのでございますが、現業方面にこそ、どういうものか、反動左傾横浜市などのごときもかなりおるのでございます。今はレツド・パージをおそれて多少ねこをかぶつている傾きがございますが、かなりこの方面におる。極左といつても、紙一重の差で、ある党の左派などにもそれはかなりおる。といつて私は自由党じやありません。自分のことを申しまするが、今年の六月嚴正中立の立場で、神奈川県地方から立候補いたしました松尾彪五というのが私でございます。私は落選はいたしました。そこで、ただいまのような理由で、どうしても国家公務員法のあるごとく、地方にも地方公務員法政府原案には全面的に賛成するものでございます。しかしながら今申した通り現業方面でもこれを除外したで合においては、その方面にこそ反動、ことに左傾思想を持つた左派があるということをよくお考えなさつて、この法案愼重審議に当られんことを、議員諸君に、私は切々の情をもつて訴えるのでございます。はなはだ簡單でございますが、私の申し上げることはただそれだけに盡きるのでございます。終り。
  5. 前尾繁三郎

    前尾委員長 質疑はあとまわしにいたしまして、熊倉武君にお願いいたします。
  6. 熊倉武

    熊倉公述人 私ただいま御紹介いただきました熊倉でございます。本論に入ります前に、ちよつと私は意見がございます。  実はおとといの晩にここに出るように電報をいただいたのでございますが、法案もいただかなければ、参考資料になるものも一部もいただいてないわけでございます。それで実は私、公述人を命ぜられたので出ては来たのでございますが、きのう雨の中を知人から法案を借りまして、一晩で見て来たという、非常にずさんな見方をしたわけであります。それで先ほど委員長のおつしやいましたように、貴重な意見というわけに参りませんので、非常に残念に思つております。きのう一晩で仕上げました簡單な私の意見を述べさしていただきたいと思います。  まず最初に、この法案ができました目的内容との関連を、簡單に申し上げたいと思います。まずこの法案の一番最初に、この法案目的が書いてあります。その最後の方に「地方公共団体行政の民主的且つ能率的な運営を保障し、」というふうに書いてある。問題はこの地方行政の「民主的且つ能率的な運営」という意味は、もつぱらそのことによつて憲法五條の第二項にいう国民への公平な奉仕ということを実現するためにほかならないと思うのであります。もしそうだとするなら、この法案が直接地方自治法の百七十二條の四項によつて制定されるとしても、その百七十二條の四項というのも、憲法第十五條の二項にありますところの、国民への公平なる奉仕を実現させるための法案であるというふうに見ざるを得ないと私は考えるわけであります。ところが私は昨夜一晩で見たのですが、この法案を見た限りにおいては、国家公務員横すべり的模写であるということと、もう一つは、かつて昭和二十三年の七月に出ました政令二百一号の拡大版である、それを法の形式をもつてきめたものであるというふうに見られるわけであります。これについて私は、今私の前にお話になりました方とは、大分意見が違うのであります。私としましては、本来の地方行政の「民主的且つ能率的運営」というのは、もつぱら地方住民、広くは国家国民に対する奉仕なのであつて、長い日本歴史から考えまして、かつて明治政府以来の長い伝統、要するに無定量奉仕を遂行させられ、かつ天皇の官吏として、あるいは特権的な上級官僚への盲従をしいられたり、あるいは地方の有力なボスによつて左右される公務員、そういう長い伝統をこの際一掃するというのでなければ、本来の日本地方自治民主的運営やら能率の向上というようなことは、不可能ではないかと思うのでありますが、法案を見ました限りにおいては、依然として、そういう点に触れられていない。むしろ旧来伝統が、新しい法の言葉によつて温存され、あるいはさらに強化されるという点があるのではないか。言葉をかえて言いますと、依然として地方公務員がならされた動物に近いような傾向を持つという危險があるのではないかというのが私の感じであります。その例としまして、たとえばこの法案の二十八條にあります分限に関するものでありますが、これはかつて二十四年の八月に全国的な行政整理がやられましたあのときの基準、おそらくそれを法文化したものではないかというのが私の感じであります。あるいは服務に関しまする三十二條あるいは三十三條というようなものも、これをすなおに読み流せば何でもないようなことでありますが、先ほど申しましたような長い伝統がいまだ強力に残つておる日本公務員歴史のうちでは、三十二條あるいは三十三條というこの服務に関する規定というものも、もつぱら上級官僚に対する下級官僚盲従、あるいはそれにただ屈従するというだけの点に終る危險性が多分にあるのではないか。あるいはこの法案の十四條に情勢適応原則が書いてあります。この情勢適応原則というのは、一体本質的に何を意味するかということを、この際明らかにしておく必要があるのではないかと思う。もしこれが單なる情勢適応ということによつて、その前の一三條にあります平等取扱い原則が実質的に骨拔きにされるというようなことになつたのでは、十四條の情勢適応原則が逆に悪用されるという面が出て来るのではないか、ということを考えるわけであります。ことに私といたしましては、三十六條にあります政治的行為禁止、三十七條の争議行為禁止、あるいは五十三條に参りますと団結権の自主的な制限があるわけでありまして、いわゆる登録制を実施することによつて団結権が実質的に制限されるということになる。あるいは五十八條に参りますと、労働組合法あるいは労調法適用生を受けないのだという適用除外規定があるわけであります。一括しまして、このような規定——公務員といえども労働者であることにかわりはないと私は思うのであります。たまたま自治体の事務をとり、あるいは国家事務をとるという事務内容によつて労働者であるところの性格が否定されるということは、私はちよつと納得の行かないところであります。と同時に、たとえばポツダム宣言の第十項、あるいは十二項、あるいは一九四七年七月十一日に出されました極東委員会の降伏後の対日基本方策というものがありますが、あれの第一部の第二、C項にしましても、また御存じの一九四六年十二月六日に出ました極東委員会労働組合十六原則というようなものによりましても、公務員労働者でないという規定一つもないのであります。と同時に、われわれの持つております新しく改正されました憲法によりましても、このような政治活動禁止、あるいは争議行為禁止、ないしは実質的な団結権制限というようなことは、憲法の十四條の平等の原則に反する。さらに二十一條あるいは十九條、十八條がありますが、特に十八條によりましても、結局刑罰によらずして意に沿わぬ苦役に服せられ、あるいは精神的、肉体的苦役を問わず圧力を加えられるということは、私としては非常に納得の行かないことであつて、以上のような点から考えまして、先ほど申し上げましたように、古い伝統を持つ日本官僚組織というものが、むしろこの法案によつて逆に温存されるということになるのではないか。むしろ言葉をかえて言いますと、国民への奉仕ということではなくて、單にならされたる使いいい官吏に仕上げるというだけの目的ではないかという気がするわけであります。  今申し上げたような内容のほかにつけ加えたいことは、一方公務員に対して今申し上げたような制限をしながら、他方給與に関しましては、この法案にありますような職階制というようなものによつて厳重に縛られてしまう。法案の二十三條の五項、あるいは二十五條を見ましてもそうなんですが、職階制はもつぱら給與にかかり、給與職階制によつて厳重に制限される。さらに四十二條以下の、たとえば厚生福利の制度というものがあるわけでありますが、この厚生福利の施設については、法案を見ましてもただもつばら「実施しなければならない」という表現だけであつて、このことによつて実質的に地方公務員が裏づけされるという点については、何ら具体的なものが示されていないわけであります。これでは、先ほど申し上げましたように、国民のためのサービスを主とする公務員というものの福利目的には、むしろ沿わないのではないか。逆に地方公務員が、この法律によつて取締られ、あるいは盲従させられるという、かつてのような無定量奉仕主義というものの中で、労働強化をあえてしなければならないのではないかという気がするのであります。  ここで一言申させていただきたいと思いますが、公務員法が問題となりました場合には、よくアメリカの例が引かれるわけであります。たとえばアメリカ官吏法というようなものがよく例に引かれて、それの進歩的な面を取入れたというように簡單に言われるのですが、私はこれに非常に疑問があるわけであります。私の意見といたしましては、アメリカという国は、御存じのように十八世紀にイギリスの圧政をのがれて、あそこにみずからの手によつて植民地を開拓し独立をはかつた国民ですから、当然民主主義そのもの日常生活の中に具体的に現われている。われわれのような、これから民主主義というものは何だ、民主主義はどうしたらいいかというような模索をしている時代とは大分違います。と同時に、そういうような民主主義国家においては、当然政党の力が強いのであつてアメリカ官吏法は、もつばら政党の力による官吏への干渉、支配を排除するという目的からつくられておるわけであります。そういう目的のもとにつくられましたアメリカ官吏法を、たまたま法文形式あるいは文言が近代的あるいは進歩的であるというだけで、現在の日本がこれを模写したとすると、これはまつたく法というものの内容を知らない、單なる法律万能主義というようなことになりやすい危險がある。要するに社会的基盤を異にする社会国家における法を、そのまま全然違うところへ持つて行くということになりますと、まさに結果はさかさまになつてしまう危險がある、これは先ほど私が申し上げた通りであります。そういう意味から申しまして法の継受、他の国の法を模倣して制定するという場合には、常にその国の具体的な事情というものが加味されなかつたら、單なる法文だけに終つてしまつたなら、これは法の継受の最も惡い方の面が出て来るのじやないか。これはもつばらわれわれ注意しなければならない点ではないかと思うわけです。單に法律であれば何事もできる、いわゆる法を制定しさえすれば何でも可能なんだというふうな考え方がもしあるとすれば、これは法治国主義というふうな原則とは縁もゆかりもないところの法律万能主義的な思想であつて、決して現在われわれがこれから打ち立てようと努力しておる民主主義国家における法治主義というものとは、全然無関係なことだと思うのであります。そういう点からいいまして、ぜひこの法案の審議には愼重を期していただきたいという点が、私の一点の主張であります。  次に私の第二点は、このような画一的な法案というものは、要するに地方公務員法律なんですが、地方公務員を対象とする法律が、なぜこのような国家の画一的な法案をもつてつくらなければならないのかという点であります。いうまでもなく憲法九十二條から九十五條によつてみますと、憲法地方分権の徹底ということ、地方自治尊重ということをいつております。従つて旧来のような官僚的中央棄権主義というものを絶対に排除するという建前をとつておるというふうに私は考えておるわけであります。これはたとえば地方自治法、あるいは地方財政法、あるいは警察法、こういうような法律を見ましても、もつぱらそのような趣旨でつくられておる、法律だというようにわれわれは考えておる。ところがこの法案に限りまして、国家公務員法のただ横すべり的模写である。あるいはこの法律を通じて、むしろ中央集権的な再編が行われやすくなるのではないかというふうに、実は私懸念するわけであります。その例といたしまして、たとえばこの法案の十八條の一項の末端であります。二項の末端もそうでありますが、人事交流、こういうようなことを通じまして、十八條の一項の末端の「又は」の下に、「国若しくは他の地方公共団体」とありますが、「国若しくは他の地方公共団体機関との協定によりこれらの機関に委託して、競争試験又は選考を行うことができる。」あるいは第二項に書いてあります「国又は他の地方公共団体競争試験又は選考に合格した者を、その職の選考に合格した者とみなすことができる。」という規定があるわけでありますが、その規定は、むしろ私をして言わしむれば、單なる杞憂かもしれませんが、人事交流ということを通じまして、中央地方との間に、依然として中央支配が及ぶような危險があるのではないかという点を、実は私懸念するわけであります。あるいは二十三條にあります職階制というような規定も、これはもつぱら国職階制基準にして定めるというふうになつておるわけでありますが、地方的な特色、たとえば県あるいは市町村によりまして、いろいろ地方的な特色があると思うのでありますが、そういうようなものに関する顧慮というものが全然ないわけであります。さらに五十九條を見ますると、地方自治庁の助言と協力という項目があるのでありますが、これにいたしましても、地方自治庁というものが、現在の日本国家機構において持つ位地あるいは地方公務員の従来から持つております中央尊重といいますか、卑屈な心構えというようなものが、まだ日本には相当強くあると思う。そういうことを考慮しますと、五十九條というような條文は、このままでは何でもないように見えるのであるが、依然として中央から地方への支配という危險があるのではないかという点、以上の三点が、今私の申し上げましたような、依然としてこの法案によりましてかつてのような官僚的中央統制中央棄権制というものに再び持つて行かれる危險があるのではないかという点を非常に私は感じたのであります。大体私の申し上げたい点はその二つであります。  それで最後にもう一つ結びとして申し上げたいのでありますが、私はなぜこのような法案、しかも全国で約二百五十万以上に及ぶと思われます地方公務員諸君にとつては、相当重要な関係のある法案なのでありますが、これがなぜこの臨時国会というような短期間の国会に急いで出されなければいけなかつたかという点なのであります。これは私の惡意の推測であるということになるかもしれませんが、附則の一項を見ますると、これが施行につきましてはいろいろな段階を設けてあるわけであります。長いものになりますと一年六箇月から二年というのがあるわけでありますが、第一項を見ますと、「その他の規定は、この法律公布の日から起算して二月を経過した日から施行する。」というように書いてあります。そうしますと、先ほど言いました服務に関するいろいろな制限、あるいは政治活動禁止、あるいは争議権制限というふうな規定は、この法律が施行されてから二箇月後にはまるまる効力を発することになる。ところが二項を見ますと、公平委員会か何かの、もちろんその公務員救済機関として設けられます公平委員会なんですが、これは「この法律公布の日から起算して八月以内に設置しなければならない。」ということになつておるわけであります。そうしますと地方公務員の不平、あるいは不利益処分に対する救済をやる機関である公平委員会というものの設置が遅れて、しかも公務員服務によつて嚴重に縛られるような規定が、僅々二箇月後にはすでに効力を発してしまうというふうな書き方になつておるわけであります。この点は私どもとしてはどうも納得が行かないので、もしそうするなら、あわせて全部を同一の期日に効力を発生するように施行さるべきではないか。そのためには短期間の臨時国会において審議するのではなくて、かつて労働法の改正がありましたときに「全国公聽会を開いたわけでありますが、このような相当広範囲に影響を及ぼす、二百五十万以上の地方公務員諸君の権利及び義務に関することを内容にする法案は、もつと全幅的に地方の有識者あるいは実務家というものの意見を聞いて、その上で法案というものがつくられてしかるべきではないかというのが私の意見であります。大体私のざつぱくな考え方でありますが、以上でもつて終りといたします。最後にもう一言つけ加えさしていただきたいと思います。もし私をして言わしむれば、この地方公務員法が施行されますと、結局公務員諸君が苦しむだけではない。その公務員諸君によつて逆にいろいろな事務、あるいはいろいろな支配を受けます一般国民が一番最大の被害者である。この点を特にお忘れなく考慮していただきたいというのが、私の主張であります。
  7. 立花敏男

    ○立花委員 提案の責任者をひとつ呼んでいただきたい。
  8. 前尾繁三郎

    前尾委員長 藤弥政府委員がおります。
  9. 立花敏男

    ○立花委員 いや、藤井政府委員では問題にならないと思う。やはり次官なり大臣を呼んでいただきたい。少くとも説明の衝にあたられておつた鈴木次長あるいは小野政務次官に、できたら岡野国務大臣に来ていただきたいと思います。
  10. 前尾繁三郎

    前尾委員長 参議院に入つてつて……。
  11. 立花敏男

    ○立花委員 三人とも入つておるわけはないので、三人とも呼んでいただきたい。今まで説明を承つてつたのは岡野国務大臣であり、小野政務次官であり、鈴木次長なんですから、その人たちを呼んでいただきたい。
  12. 前尾繁三郎

    前尾委員長 今連絡をとつております。次は占部秀男君。
  13. 占部秀男

    ○占部公述人 私は全国自治団体労働組合協議会の自治労協の委員長をしております占部と申します。われわれの組織は、今度の法案に最も直接の影響といいますか、被害といいますか、そうしたものを受ける都道府県、あるいは市町村労働組合をもつて組織しておりますし、私自身が東京都の職員でありますので、地方公共団体労働組合の職員の立場から私の意見を申し上げたいと思います。なおこの点につきましては、最初に出ました松尾さんはやはり横浜市勤務の方でありますが、この方とは意見がまつたく反対であるという点をまず明らかにしておきたいと思います。  今度のこの法案を見ますと、提案理由の説明にもありますように、民主的な、科学的な人事行政制度を確立する目的を持つておる、こういうふうになつておりますが、この点につきまして非常にわれわれは疑義があるのであります。総括的に申し上げますと同時に、最後に修正意見を申し上げたいと思うのであります。その疑義の総括的な点はいろいろございますが、三つ大きな点があると思います。  第一点は、今度の法案を見ますと、マ書簡が出ました当時の労働組合の状態と、今日の現状との違いということについて、まつたく無関心である、あるいは積極的に言うならば、その違いを全然無視してこの法案をつくつておる、これが第一の点であります。御存じのように今度の法案はマ書簡、二〇一政令、国家公務員法の改惡、こうした一連の過程から生れました、いわゆる仕上げ的な形になつておる地方公務員法案というような問題になつておるのでありますけれども、マ書簡の中にも、そのときの情勢に対処して出すのであるということが明記されておりますが、その情勢というのは、私がここで申し上げるまでもないと思います。われわれ労働組合の側か言いましても、その当時において相当破壊的な行き過ぎがあつたという点を認めておりますが、そうしたことが直接の動機になつてあのマ書簡を発せしめたというような結果になつておるのであります。その後マ書簡が出た当時から今日に至るまでここ数年間というものは、組合の中で二つの勢いが対立しておる。一つは民主化勢力であり、一つ極左コースである。しかもその後のいろいろな過程から、今日民主的な労働組合がわが国労働組合のいわば主導権を握つてつて、その方向とその組織で今日労働組合が動いておるのであります。端的に申しますと、われわれ地方公共団体の組合でも、自治労連というものと自治労協というものの二つが十月からできておる。私は自治労協の委員長をしておりますが、この自治労協というものは、民主的な労働組合の総結集としてできておるのであります。今日地方の府県庁あるいは市町村のほとんどの指導力はわれわれが握つておる現状であります。このままの姿が今日全国の官公庁の組合にもそのまま浮びまして、いわゆる官公労というものは民主的な組合として、今日政府と交渉の衝に当つておることは、皆さんも御存じのことであると私は思います。  次にこの問題は、さらに全国的な労働組合の中では、総評議会の名において結集されておるということも御存じのことであると思います。その行き方、その動きがどういうものであるかということは、皆さんも特に御存じのところであると、思います。つまりマ書簡が発せられた当時の労働組合の情勢と今日の情勢とは、事情が一変しておるわけであります。しかるにこの法案を見ますと——その個々の状態につきましてはあとで申し上げますけれども、たとえば団体交渉権を非常にぼかしておるとか、あるいは政治行動を禁止しておるとか、いろいろな主要な点におきまして、この情勢の変化にわざと目をおおうて、彈圧的に労働組合を押しつけんとするところが、はつきりと現われておるのであります。まず政府といたしましては、その当時の、マ書簡が出ましたところのその原因が、今日の組合運動の立ち直りの中で、明らかに矯正され、克服されておるという新事実を認めまして、この法案を出す前に、国家公務員法の修正をしてからこの法案を出すのが適当であると、われわれは考えておるのであります。その点が第一点であります。  第二点には組合の行動の点につきまして、同じようなこの違いに全然目をおおうて、この原案をつくつておるという点であります。今日われわれ自治労協の内部でも、つまり地方公共団体の労働組織の内部でも、大部分は法内組合として労働組合法に従つて届出をして、合法的な組合運動を続けております。しかもその労働関係を見ますならば、事実上知事あるいは市長というような理事者側と団体交渉を行いまして、覚書その他の協定もありまして、合理的に物事を解決しております。その結果が職場の方ではどういうふうに現われておるかというと、職場の秩序というものをはつきりと労働組合みずからが保つて、職場では熱心に仕事をしておるのが現状であります。先ほど松尾さんが言われましたが、松尾さんは横浜市従の方でありまして、わが自治労協には入つておりません。従つて私は情勢はわかりませんけれども、あるいは極左的な組合の中には松尾さんの言われたような心配があるところもあるかもしれませんが、今日地方自治団体の組合の指導勢力であるところのわれわれの傘下の中には、松尾さんの言われるような行き方のところは一つもないと私は信じておるのであります。その職場秩序の建設につきましても、非常に努力をいたしておるのでありまして、今日六大都市の理事者、あるいは大きな県の知事たちが、一様にやはり労働組合関係というものをはつきりさせなくちやならぬということを上申して来ておる現状によつても、その点は明らかになつておると私は考えるのであります。しかるに今度のこの法案を見ますと御存じのようにマ書簡にさえも、きわめて制限された範囲で労働運動は適用せらるべきである。これは政府職員の労働運動でありますが、また政府職員の労働運動も明確な変更し得ない制限のもとでは、これはマ書簡でも明らかに認めておる。この認めておるところをむりに認めないような形にして、マ書簡にないところの政治活動禁止までもつけ加えて出しておるようなことは、明らかに今日の組合が行動しておる、その行動の実態を無視してこういう法案をつくつたものであつて、これは非常に時代錯誤の法案であるというように、われわれは考えるわけであります。  第三の批判すべき点でありますが、この法案は先ほど熊倉講師の方からも申しましたように、この法案をこのまま施行しますと、われわれ地方自治団体の職員層においては、非常に能率も落ちれば、今の職場秩序も乱れて来る。従つて国民一般にたいへん御迷惑をかけるような結果になるということを、私はつけ加えたいと思います。と申しますのは、われわれ官公吏というものは、全体の奉仕者であるといわれております。私もまたそうであると信じております。しかしながらわれわれが全体の奉仕者であるということと、われわれの生活を維持し改善するということとは、何ら矛盾しておることではありません。逆にわれわれの生活が不安であるということは、職場秩序を乱していろいろな涜職を生み、あるいは不正行動を生むところの原因になることは、皆さんもおわかりのことであろうと私は思うのであります。しかるにわれわれの地方庁でもそうですが、いわゆる昔からの封建的な官僚制度というものは、一応形の上では清算されておりますけれども、その遺風というものは今日までも厳然として残つております。組合ができまして以後というものは、組合の手によつて開かれた意味の団体交渉その他によつて昇格、昇給あるいは服務紀律、そうしたものが理事者側と大衆との間で納得ずくで行われておりますので、非常にうまく行つていたのであります。しかるにこの法案によりますと、そうした点が形だけ與えられて実質はなくなつておる。そのために再びわれわれの組合員——組合員と申しますと、地方庁の従業員の中でありますが、その人たちは自分たちの生活を維持し、自分が昇給し昇格するためには、組合における開かれたところのそうした方法をとるよりも、まず自分の上司のところへ行つて、いわゆるお台所通いや情実人事にしてもらうことの方が早いということの気風を生みまして、非常にその改善の方法も陰險な方法になつて来るわけであります。これは口で申し上げてもわからないかもしれませんが、われわれ給料取りというものは、やはり月給が大事だし、昇給、昇格が大事である。そうなりますと、勢いとして今までのせつかく買主的に開かれた職場秩序をやろうということが、こうしたところからくずれて来ます。従いまして今後この法案がそのまま施行される上におきましては、給與の面についても陰險な点が出て来る、同時に職務の面につきましても、給與は職務の裏づけでありますから、給與をよくしてもらおうというのには上にごますらなければならぬ、ごまするのには上の人がむりなことを言つても、まあ目をふさいでおくということになります。不正であるとか、職務の秩序が乱れるとか、こういう結果にならざるを得ないと私は思うのであります。こういうような三つの大きな点からいたしまして、この法案そのものにはわれわれの立場としては絶対に反対でありますが、なお今日のこの現状でありますので、單に反対々々と言つて單なるはからいばりの反対をしようとは思いません。従いまして第二番目には修正意見を申し上げたいと思います。  修正意見はすでに熊倉さんの方から服務、あるいは紀律、あるいは憲法との関連、そうした点につきましては申し上げてありますので、そうした点と重複しない点だけを申し上げたいと思います。まずこの中でわれわれは冒頭にお願いしなければならぬことは、この法律を適用する以外の点につきましては、労働組合法、労働基準法その他の労働関係の法律を適用しなければならないということであります。この点が第一に修正されなければならないと思います。個々の点の人事委員会の問題でありますが、この人事委員会はこの法案によりますと、われわれの問題につきまして、非常に大きな権限は持つておりますけれども、いわゆる開かれた意味における労働者理事者側の問題につきましては、まつたく権限がないのでありまして、この点につきまして大きく改正をしてもらわなければならないと思います。その要点といたしますところは、この人事委員会の権限の中に、地方の公共団体の当局と職員の労働組合側との交渉のまとまらない場合においては、これを裁定するところの権能を與える、またいずれかの一方が交渉してまとまつたことについて不履行なる場合は、これを実行させるように勧告できる、こういう点をつけ加えていただきたいと思います。  さらに政治活動禁止の点でありますが、政治活動禁止につきましては、この法案は全部われわれの基本的な権利を奪つておる状態なのでありまして、この点につきましては、われわれの方としては四つの制限を付して、その制限以外は自由であるという形をとらねばならぬと存じております。  第一の制限はいかなる名目たるとを問わず勤務時間中における政党活動、これはわれわれは制限すべきであると思つております。  次には国の機関または公の機関において決定した政策の実施を妨害するような行動、これも制限すべきであると思います。  次には政治目的のために職権を利用すること、これも制限すべきであると思います。  第四には政治行為を行つたという代償で昇格したり昇給したりすること、あるいは政治行為を上が命令して行わなかつたというかどで不利益な扱いを受ける、こうしたことは制限すべであると思いますが、そのほかは制限すべきではない。特にこの原案に置かれておりますように、あるいは政治活動もしくは選挙活動において、まつたくわれわれが單に機械のように、ロボツトのように投票するだけだ、こういうような形のやり方につきましては、絶対に反対であます。  次に職員の労働組合の件でありますが、われわれは適法の目的によつて労働組合をつくるということを、この中で改正していただきたいと思います。そうしてその組合と理事者側との交渉でありますが、これは明らかに団体交渉をして、その団体交渉によつてきまつた事項については、文書をもつて協定して、両方が責任をもつてこれを遂行するという形をとらなければならないと思います。ただしこの協定は、法律をオーバーするものでないことはもちろんのことであります。  次に先ほど申しましたように、この両方の協定がうまく行かなかつた場合のととも考えなければならないと思います。そうしてこの協定がうまく行かなかつた場合には、人事委員会または公平委員会に裁定の機能を設けてこれを裁定させて、公平な意味の裁定ができて、両者が納得してそのことが解決できるようにしていただきたいと存ずる次第であります。その他二、三のこまかい点がございますが、急所の点はそういうところでございます。  さらにそのほかにこの法律の中で大きな点が二つあると思うのであります。それは單純労務をしている現場関係の職員が一応この中に包括されているという点であります。この点につきましては、皆様も御存じのように、たとえば私は自治労協の委員長であると同時に、東京都の職員組合の委員長をやつておりますけれども、この組合の中にはたとえば清掃、土木あるいは港湾というように、純然たる肉体労働者がたくさんおる。一言に申しますと、おわい屋さんといいますけれども、人家の屎尿をくんでやつておる者もあるし、道路でつるつばしを振つてつておる人もある。こういうような單純労務というものは、これは行政の衝にあずかる公務員というような形はとうてい考えられない人たちなんです。それをむりに公務員という名前において、そういう人たちもこの中で縛ろうというような形は、これは全世界的にいつても非常に笑われものになるところの地方公務員法であると私は考えるのであります。この点につきましては、明らかに單純労務をする、いわゆる肉体労働をしておるところの人々については、この中から拔いて、労働三法をはつきり適用すべきであると考えるわけであります。  もう一つは、地方公共企業体の関係であります。たとえば電車であるとか、水道であるとか、こういうような地方の私企業と同じような形がとられておるところには、当然特別立法をすべきである。こういう観点に立つておるわけであります。以上が修正点の最も急所の点であります。  なお最後に——これは真剣に皆様にお願いを申し上げるのでありますけれども、われわれ民主的な労働組合というものは、機械的にストライキをしたり、機械的にそのことに反対するということはいたしません。あくまでも平和的に物事を納得づくで解決して行きたい、こういう形で今日まで進んでおり、地方の知事あるいは市長は、りつぱにそうした形で事業あるいは労働係関を運営しておるのであります。しかしながらこうした、ものがこのまま通るようになりますと、われわれもまた考ざるを得ないのであります。いくら労働組合が民主的にりつばに運営して行つても、政治家の方でその運営をあくまでも禁止して、あくまでも封建的な、反動的な方向べ持つて行こうというならば、民主的な労働組合も、実力行使あるいはもつと騒ぐ形でひとつ考えなくちやならぬじやないかということに結局はなつて行きまして、日本の民主的な建設を阻害するような結果が出て来るということを、私は非常に憂えておりますので、どうぞわれわれの意見を十分に取入れていただくようにお願いしたいと思います。  以上簡單でありますけれども、意見の開陳をいたします。
  14. 前尾繁三郎

    前尾委員長 午前中の公述人意見の陳述はこの程度にいたしまして、ここで松尾熊倉、占部三君に対しまして、まとめて委員各位の御質問がありますれば質疑をしていただきたいと思います。なお公述人の方々は、委員に対して質疑することはできないことになつておりますので、その点は御了承願いたいと思います。
  15. 藤田義光

    ○藤田委員 私は占部委員長に、質問ではございませんが、お願いいたしたい思います。われわれも推薦した一人といたしまして、占部委員長の御意見には非常に共感する点が多々ございました。その中で六大都市あるいは大きい県においては、非常に平穏裏に労働三法の実際に即応したような話合いを進められて、たとえば団体交渉もやつておるし、あるいは協約もやつておるというような御発言がございましたが、われわれの審議の際におきましては非常に重要な参考になると思いますので、最近の機会に、ひとつ委員会に実際の詳細なる資料の御提出をお願いしたい、これは私のお願いでございます。
  16. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ほかに御質疑ありませんか。——御質疑がなければここで休憩いたしまして、午後一時から再開いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時二十九分開議
  17. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは再開いたします。  休憩前に引続き地方公務員法案について公述人の方々より御意見を承ることにいたします。まず河野益夫君からお願いいたします。
  18. 河野益夫

    河野(益)公述人 御紹介にあずかりました日本都市交通労働組合、略称都市交通と申しますが、その河野でございます。都市交通と申しますと、六大都市を初めとしまして、北海道は札幌函館から南は九州の熊本、鹿児島に至るまでの地方公共団体の経営する交通事業に従事しておるものであります。本日は地方公務員法案の目下上程されております案について公述をお許しくださいましたことについて、厚くお礼を申し上げたいと思います。  私たちと同じように地方公共団体に勤務しておる職員の中で、五つの組合があるわけであります。ただいま申し上げましたわれわれの都市交通もその一つでありますが、先ほどここで公述されました自治労協の職員の方々、日教組の公立学校の関係の方々、それから全国水道従業員関係の方々、それに東京都労連、この五つの全国組合があるわけでありますけれども、これは今度一様に地方公務員法の対象になつておるわけであります。そこで私たちこの五つの組合では、この地方公務員法に対する基本的な問題を一つきめて来ておるわけであります。さらにその基本的な立場に立ちまして、こういうふうに修正していただきたいという点もあわせて決定しておつたわけでありますが、この点につきましては、先ほど自治労教の委員長占部氏の方から詳細御説明がありましたので、省略さしていただきたいと思います。  それで私たちといたしましては、総括的な問題を二つだけ申し上げたいと思います。一つは、私たちは地方公共団体に勤務はしておるけれども、基本的には労働者だという考え方を持つておるわけであります。そこで私たちは、この地方公務員法の中で、労働基本権をぜひとも確立しなければならないということと、もう一つの問題は、政治活動の自由を確立しなければならない、この二つの問題を、抽象的でありますが、非常に大きい問題として私たちは掲げて来たわけであります。  そこでこの労働基本権をどういうふうに確立するかという問題につきまして三つの職種に応じまして異なつた律し方が考えられたわけであります。一つ行政職員の関係であり、二番目は教職員の関係であり、三番目はこういう公企業初め公営事業に勤めておる職員の労働関係の問題であります。そこでその三つの種類の人はそれぞれ労働基本権を確立する。そして二番目の問題としての共通の問題として、政治活動の自由を獲得する、こういう点を私たちは主張し続けて来たわけであります。そこで労働権確立の問題につきまして、一般行政職員、教職員につきましては、その律し万として地方公務員法において律する。こういう立場をとつたわけでありますけれども、公営企業その他の現業職員につきましては、全然別個な法律でこれを規定すべきである、こういう立場を私たちはとつて来たわけであります。  そこで本件につきまして、それがどういうふうに法案に現われているかをわれわれ検討いたしたのでありますが、一般行政職員並びに教職員につきましては、団体交渉権は認められていない、文書による協定もできていない、こういうふうな状態におかれておる。政治活動につきましては、ほとんど全面的禁止だというふうな状態に置かれておる。こういうふうにわれわれこれを見たわけであります。そこで私は都市交通に所属いたしておるわけでありますけれども一応官公労の組織に加盟しております民主的組合の立場から申し上げますと、この二点については必ず確立をして行かなければならないのである、こういうふうに私たち考えるわけであります。二番目の問題といたしましては、公企業はこの附則の二十項によつて全然別な法律で律するということが書かれておるわけでありますが、この点につきましては、一応私たちの主張がいれられておるように考えられるわけであります。しかしこれは公企業だけに限つておるのでありまして、私たちが従来言うて参りました公企業以外の現業職員を全然含んでいないわけなのであります。この点は私たちといたしましては、これを包括して特別法規で律するべきではないか、こういう見解を持つておるわけであります。  そこでそういう全般的な問題につきましては、先ほども申し上げました通り、占部委員長が詳細御説明になりましたので、私の方としては、省略さしていただきたいと思いますが、最後の公企業を除外するという問題につきまして、冒頭に公述人松尾さんから、これは一本で律すべきだ、そうして政治活動についてはこれを禁止すべきである、こういう御意見がありましたので、特に私たちといたしましては正反対の考え方を持つておりますので、その点につきまして交通事業に例をとりつつ、私たちの主張を申し述べたいと存じます。今私たちは政令二百一号が出まして以来、労働組合法上の労働組合法上の労働組合ではあるが、ただ名ばかりの団結権が認められたのであります。団体交渉権はもちろん、今まで締結しておりました労働協約も一切無効とせられて今日に至つておるわけであります。そこで交通事業の場合を私たち考えてみますと、たとえば東京都内におきまして私鉄のバスと公営交通、つまり都営バスとか、同じ路線を同じように住民にサービスして走つておるわけであります。ところが一方は私鉄であるというだけの理由で、労働基本権は全部確立されており、労調法による制限はあるとはいいますが、罷業権を與えられておるわけであります。ところが一方の方は全然それがない。またさらに例を申し上げますと、東京の中心部を通つております地下鉄の従業員には労働基本権が確立されて、ストライキをやる権限もあるが、大阪の中心部を走つておる地下鉄には全然それが與えられていない。さらに同じ都市について考えてみますと、たとえば広島、福岡、こういつた都市に走つております電車はいずれもその従業員に労働基本権が與えられておりますが、呉、仙台、熊本、鹿児島、こういつた都市の中を走つておる電車の従業員には全然そうした権利が與えられていない。これはどこで区別されておるかと申しますと、一方は地方公共団体に使用される者だからいけないのだ、一方は私鉄であるからいいのだ、こういう理由が與えられておるわけであります。しかしわれわれといたしましては、私鉄のバスと公営交通のバスとを同じ路面に走らせる場合に、住民に対するサービスの点においては、私鉄といえども都市交通といえども全然かわりがない。その労働の実態においてわれわれは全然隔たりがないというふうに考えておるわけであります。その労働関係に何らの隔たりがないのにかかわらず、ただ單に資格の上において、身分の土において差がつけられるということに対しては、私たちとしては絶対にこれを承認することができないわけなのであります。  さらにまた交通事業について申しますと、これは地方財政法六條によりまして、特別会計として住民の地方税によつてまかなわれるのではなくして、まつたく乗車料金收入によつてまかなつて来ておる一つの独立経済体をなしておるわけであります。そこでもしこの経済体にいろいろな消長があるとするならば、この問題は必ずわれわれに直接影響して来るのでありまして、例を申し上げますと、かつて東京におきましては、あの昭和七、八年ごろ、大阪におきましても同じくそのころ赤字が出た場合に、この負担は住民税を中心とする行政費の中から補填をしてくれずして、われわれの経済の中から負担して行つたような形になつております。そしてまた利益金があがつた場合には、その利益金は行政費の中に繰入れられる、こういう状態に置かれておるわけであります。労働関係だけはまつたく私鉄、国鉄の諸君と同じ状態に置かれておりまして、あとは地方公務員という意味におきまして、ただ行政職員とまつたく平等に律せられておる、こういう点が私たち交通に従事する者といたしまして、どうしてそういうことになるのだろうということが、従来から疑問の種だつたわけであります。世界のどこを見ましても、交通労働者であつて労働組合が結成できない、団体交渉権もないというようなことはあり得ないとわれわれは考えるわけであります。そういう意味におきまして、このたびこの法案の附則二十項におきまして、一般公務員法律関係から除外して別個な法律をこしらえるというふうな案になつております点につきましては、われわれとしては一応官公労で考えておりました線が実現されたものとして、この点については、私たちは先ほどの松尾さんの意見とは正反対に、了解いたしたいと思うわけであります。そこで問題になるのは、この別な法規で取扱われる場合に、私たちの問題がやはり地方公務員地方の公共団体に使用せられておるものという関係におきまして、いろいろな制約がつけられるのではないかということが非常な問題になつて来るわけであります。  もう一つ、従来政令が出て二年あまりになりますが、この間私たちは労働基本権の確立と政治活動の自由についていろいろ関係筋にお願いをして来たわけでありますけれども、その過程におきまして、幾たびかこの地方公務員に関する法案が出たわけでありますが、今までわれわれの知つておる法案と今度の法案と比べてみますと、一ところ違う点があることを発見するのであります。これはどういうことかと申しますと、今までの法案では全然触れていなかつた地方の公企業体の組織の問題、会計経理の問題に触れて、それで何らかの法律をこしらえるということがうたわれておることであります。この点は私たち初めて知つた問題でありまして、この企業体というものをどういうふうにするかということは非常に重要な問題となつて来るわけであります。私たちは現在の行政組織の中において、行われている企業のあり方としては、それが非常に非能率であるということを十分知つておるわけであります。従つてこれに対しては十分なる改正を加え、機構的にも大きな改革をして行かなければならないと考えておるわけでありますけれども、この点につきましては、さらに別途の法律が出るときに私たちの意見を申し上げさせていただきたいと思います。  そういうふうな意味で、詳細は占部さんが申し上げましたから略しますが、基本的には団体交渉権を確立するという問題に関して、公企業を離したという点は了解がつきますけれども、なお一般現業職員が除かれていないという点、それから全面的に政治活動の自由が確立せられていないという点、こういう点をひとつ御修正方をお願いしたい。かように考える次第であります。  以上をもちまして私の公述といたしたいと思います。
  19. 前尾繁三郎

    前尾委員長 質疑は一括してあとにいたしまして、次に達林正吉君にお願いいたします。
  20. 達林正吉

    達林公述人 達林であります。地方自治の確立が最も緊切とせられておるときに、地方公務員についての規定が今日に至るも確立せられない。すでに地方自治法が制定せられました際に予定せられました期限を過ぎても、いまだ確立せられないということを非常に遺憾に思つてつたのでありますが、このたび御提案になりましたことにつきましては、地方自治体に関係するものとしてまことにけつこうなことと思います。結論から申しますと、大体において原案に私どもといたしましては賛意を表する次第であります。ただ地方公務員法を制定し、これによりまして地方公務員の全体の奉仕者として職務の遂行に全力をあげて專念せしめ、またこれに関連してその身分その他全体の奉仕者としての制約を受けることは、ある点においてやむを得ないと思うのでありますが、反面にこれに対して第二十四條に規定する給與その他の面につきましても、適正を得なければならぬという趣旨の規定が掲げられておりますが、これまた当然なこととして賛意を表する次第であります。ただこの点につきまして、法文はこのようにうたつておりますが、はたして現実の国の施策はこれと一致するであろうかどうかという点については、私どもは懐疑に陷らざるを得ない。御承知のように本年度年末手当を国家公務員に支給する、さらに明年度一月以降から給與ベースを引上げるというような施策が決定されておるかに聞きますが、これに準じて地方公務員また同じような恵沢に浴することは当然と思うのでありますが、はなはだ潰憾ながら地方公共団体におきましては、これを支弁すべき財源が現実にないにもかかわらず、そしてまた都市の公務員におきましては、私ども現実に取扱つております資料の面には表われて来ない、平均しまして年額十一万余円の給與を受けておるから、引上げる必要がないということを暗示するような新聞発表をしまして、実情をるる開陳して国の考慮を要求しておるにかかわらず、結局これを振り切つて地方公共団体をして涙ながらに給與の改善を断念するか、あるいはまた財政の破壊を予見しつつ給與の改善を行うかというようなはめに追い込んでおりますことは、はたしてこの地方公務員法の制定の前提の條件として妥当であるかどうかという点について、御考慮をいただきたいと思うのであります。この点につきましては、新聞紙の伝えるところによりますと、本委員会におきましては格別の御理解を願いまして、これについての政府の考慮を要望するような御決議を願つておるという点につきましては、深く敬意と感謝を表する次第でありますが、何とぞ私どもの希望が達成せられ、地方公務員の安堵がなりますように、この上とも御盡力をお願いいたしたいと思うのであります。  それから問題になりました地方公務員に対する政治活動制限でありますが、この点は全体の奉仕者であるというふうな観点からながめまして、ただいま法文規定せられております程度の制限はあるいはやむを得ないではなかろうか。また一面国家公務員の例に引比べますと、重要な点だけにとどめまして、他は地方の自主性にゆだね、ある意味におきましては国家公務員に比べてかなり程度を軽くしておるというふうな意図が見受けられまして、一面国家公務員に対して罰則の規定のあるのに反して、地方公務員に対してはこれを除外しておるというような点ともにらみ合せまして、まず適当ではなかろうか。こういうふうに考えております。  それからすでに御承知のことだと思いますが、国家警察の確立、あるいは地方自治警察の創設というふうなことを通じまして、警察制度はきわめて民主化せられまして、これによつて民主警察の確立を見ましたことは喜ぶべきことだと思うのでありますが、反面に従来の警察組織と異なりまして、かなりこまかく分断せられました結果、各警察隊内における人事の沈滞ということがよくいわれるのであります。地方公務員法の問題につきましても、人事の沈滞ということが今後の問題として予想せられないことではないと思うのであります。これを救う道としての人事の交流は、先ほどこれを通じて地方公務員中央統制に陥る危險がありはせぬかというふうな懐疑的な御意見もありました。そういう余弊も絶無とはいえないかもしれませんが、それ以上に人事の沈滞を防止するという面から、人事の各団体間における交流という点について、考慮をして行かなければならぬかと思うのでありますが、この点からながめまして、第十七條では、採用は競争試験原則とする。また第十八條では、国または他の地方公共団体の試験合格者をその団体の合格者とみなすのは、任用候補者名簿のない場合に局限することになつておること等とあわせ解釈いたしますと、結局人事の交流は、この競争試験制度の原則によつて著しくはばまれるのではなかろうかと考えられまして、こういう意味において、人事の交流をある程度奨励し、助長するという観点からいたしまして、競争試験制度に対する緩和というふうな措置を講じていただいた方がいいのではなかろうかと考えられます。  それから、前の方々の御意見に関連いたしますが、公企業職員につきましては、附則の第二十項の規定によりまして、別に法律が定められることになつておりますが、ただいま公述のありましたように、公企業職員につきましては、一般行政職員と取扱いを異にするということは、しごく当然のことと存じます。これについての特例を別に法律で定めるのは必要なことであり、妥当のことであると考え、また公企業の運営の合理化、能率化という面から、経費その他につきまして、附則は適当な規定を定めるというふうなことを費えておりますが、この点に関して、全体の地方団体の行つております公企業を地方団体から引離して、別途の経営形態にする、あるいは公団、あるいは公社というふうな形式にするというお考えでももしあつたといたしますならば、地方公共団体の性格が、また使命が、主として住民に対るサービス行政にある点にかんがみまして、これを別途の経営体、組織体として分離いたしますことは、サービス団体であります地方公共団体の全体としての機能の一体性を害するというように考えまして、このようなことにつきましては、私どもとして必ずしも適当とは考えておりません。  それからこまかい点になりまして、あるいは字句の末にこだわるようでありますが、人事委員または公平委員は、第九條によりますと、議会の同意を得て、地方公共団体の長が選任するということになつておりますが、第五十條で見ますと、任命権者が行つた処分が適当でないという場合におきましては、これを取消し、あるいは適当な是正の方途について指示をするという規定がありますが、地方団体の長もまた任命権者として、自分で選任した人事委員あるいは公平委員から、逆に指示を受けるというふうな言葉の使い方は、どうもちよつと変じやなかろうか。実質的な規定内容については、当然のことだと思いますが、その目的を達するためには勧告をする。勧告を受けた任命権者は、その勧告の趣旨に従つて措置をしなければならぬというふうな規定を設ければ、実質的な効果は收め得ると思うのであります。こまかい字句の末にこだわるようでありますが、どうも文字の書き万としては、多少当を欠くのではないか。ひいて国の人事院と政府の関係におきましても、ときには不必要な摩擦も起るのでありますが、こういうわずかな言葉使いから、そういつた好ましからざる事態に陥るということも考えられまして、御注意を喚起しておきたいと思います。  それから、最初公務員法の施行に関連いたしまして、給與の考慮という点についてお願いを申し上げたのでありますが、これに関連いたしまして、現在教員の給與につきましては、御承知のように市町村立学校職員給與負担法によりまして、府県で費用を負担することになつておりますが、この給與負担法の第篠に、いろいろな給與すべき給與内容を掲げてあります中に、公務災害の場合の給與補償ということが條文にうたつてありませんばかりに、これがはたして府県の負担であるか、市町村の負担であるかということが解釈上また公権的にきまつたものがありませんので、この問題をめぐつて地方団体の間の経理に非常な支障を来し、法律の明文がないので、これは市町村の負担であるというような取扱いをされる場合があります。この場合において、財政力の弱い市町村におきましては、この補償の財源に窮するというような事態で、十分な補償が行えないというような例もあるのでありますが、このような制度によつて教職員各位の間にはかなりの不安を與えておるのであります。これは最初に申しました事柄と同じ趣旨におきまして、この機会に適当に是正をしていただくようにお願いいたしたいと思うのでございます。はなはだ粗雑でありましたが、以上をもつて公述を終ります。
  21. 前尾繁三郎

    前尾委員長 小倉庫次君。
  22. 小倉庫次

    ○小倉公述人 小倉でございます。法案内容について数点意見を申し述べます。  第一は適用の範囲でありますが、この法律は一般職に属する地方公務員に適用されることになつておりまして、特別の定めのない限り特別職には適用されないという建前になつております。これはこう二つにわける以上、こういう考え方も一応わかるのでありますけれども、一般職あるいは特別職を問いませず、地方住民全体に奉仕する公務員という地位にはかわりはないのでありますから、地方公務員としてのあり方の基本をきめたようなことにつきましては、特別職にも適用するのがいいのではないだろうかというふうに考えられます。その一例を申し上げますと、第三十條に「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに專念しなければならない。」こういう原則は何も一般職だけに限る必要はないと思うのであります。それから第三十一條に「職員は、條例の定めるところ、」より、服務の宣誓をしなければならない。」という規定がございます。この宣誓というふうなことはどういう宣誓をするのか、それは條例できまるわけでありますが、單なる一片の形式に終らせないためには、むしろ団体の長、あるいは議員というような重要な職責を持つた者こそ率先して全住民の前に誓うべきではないかというふうに感ぜられるのであります。そういう地方公務員としての基本的なあり方、基本的な権利というようなものにつきましては、なるべく特別職にも適用するというふうな考え方に進んで行きたいと思うのであります。  第二点は人事機関についてであります。これは法案規定によりますると、人事委員及び公平委員政党に属する者がなることを予見しておる規定がございますが、こういう人事機関の機能並びに責任というようなことにかんがみまして、委員は絶対に公平無私でなければならないと思うのであります。そうしなければこの制度を立てました妙味というものは決して発揮されないと思うのであります。そういう意味におきまして、むしろ政党に属する人は、こういう委員からは除外した方がいいのじやないか、少くともこういう委員におる間は政党を離脱して、まつたく公平無私な立場に立つて行動する、こういうふうな行き万にするのが、せつかくつくるこの機関を生かす道ではないかというふうに考えられるのであります。  第三点は職階制についてであります。行政事務は次第に分化し、こまかくなり、專門化して行くということは疑いもない傾向でありまするし、またこれに即応して行政の科学的運営をはかつて行くというためには、職階制というものは重要な役割りを果すものであることは異論はないのでありますが、現在のわが国の地方行政の段階におきまして、職階制を非常にこまかくわけて参つたならば——エキスパートというようなものはまことにけつこうでありますけれども、非常に狭いエキスパートをつくることになりますと、融通のきかない片寄つた知能の公務員ができるおそれがあるのではないだろうか。私どもは公務員は——地方公務員も同じでありますが、まず何といつても、ゆたかな、常識ある、あたたかい心を持つている人間でなければならぬというのが第一番の前提だと思うのであります。ただ職階制というような新しいやり方によつて、非常な專門的な、目隠しをした馬車馬のような地方公務員をつくることは決して望まないのでありまして——これは希望でありますけれども、職階制をつくります場合には、相当ゆとりのある、幅のあるものにつくつていただきたいというのが私の考えであります。職階制そのものに反対ではありませんけれども、十分幅を持たしていただきたいというのが希望であります。  それから第四は、退職年金の問題であります。この法律の制定によりまして、地方公務員の地位というものは安定化し、また化さなければならないのであります。従いまして退職年金というものの性質は大分養老保險的な性格を持つたものになると思うのでありますが、保險の性質でございますれば、なるべく広い範囲にしてやつた方が経営がやりいいことは、私どもしろうとが申し上げるまでもないのであります。そういう意味におきまして、地方公務員の退職年金というようなものは全国一本にまとめ上げて、その資金を確立することによりまして、地方公務員の年金制度の確立または向上をはかり、一方その資金を運用してなお制度の改善をはかつて行くというような道も開けて来ると思うのであります。また地方公務員は一応各地方々々の公務員であるとともに、公務に従事するということを通じまして、国家全体、国民全体に奉仕しているものでもありますので、そこにひとつの共通のつながりを持たす、そうしてその年金を、各自の掛金、地方団体の掛金あるいはこれに国家の掛金というような三者が一体となつて、ひとつ地方公務員年金基金というような制度を開くということがいいのではないかと考えられます。もちろん地方々々の自治を尊重するというこの法案の行き方自体はよろしいのでありますが、なんでもかんでも地方一手にやらせればいいという考えばかりもとれないと思いますので、こういう保險的な性格のものは、全国的規模においてやつてほしいというのが私の考えであります。  それから最後にこの法案に欠けておると思う点は、しばしば指摘されましたけれども、地方公務員人事交流といいますか、力を伸ばして行こうという者をどんどん伸ばさせるという考慮において十分に行われていない、その点に非常に遺憾があるのではないかと思います。この地方公務員法というものは、要するに地方公務員の地位を安定にし、それから生活を保障し、かつすぐれた人材を地方公務員に引きつけるというふうな制度でなければならないと思うのであります。それには力を伸ばそうとする者はどこまでも伸びて行けるという道を十分に開いておいてやる必要がある。自分の郷里の地方団体のために生涯をささげる、こういう地方公務員の気持、これはまことにとうとい気持でありますし、尊重しなければなりません。しかし若い地方公務員で、あるいは自分の郷里の村役場から市役所、市役所からさらに大きな県庁、あるいは中央へというふうに伸びて行こうという者があるならば、十分伸ばして行く道は開いておく必要があると思います。一旦地方公務員になつてしまつた以上、どうしてもその小天地に終生跼蹐しなければならないというふうな考え方にしてしまうのは、ほんとうに若い人たちを激励する道ではないというふうに考えられます。そういう意味におきまして、そんならお前はどういう制度を考えるのかと申しますれば、まあちよつと考えましても、勤務年数を通算する、あるいは先ほど申しました退職年金の制度をつくる、あるいは待遇についての特別な考慮をするということが、まず考えられるのであります。なほ私は若い人たちを激励すると申しましたが、必ずしも若い人たちだけではありません。Aの都市で非常に特殊な——たとえば公園の行政、あるいは特殊なレクリエーシヨンの行政というものに非常に腕を振つた人は、今度はBの都市、あるいはCの都市でも、そういう人を迎えるという場合に、勤務年限が通算されるという便宜がありますれば、すぐすらすらと行ける、そういうような道を開いておくことが必要ではないか。こういう点についてこの法案は十分親切な道が開かれていないというふうに考えられるのであります。  大体以上の五つの点がこの法案についての私の意見であります。
  23. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは河野平次君にお願いします。
  24. 河野平次

    河野(平)公述人 私は今御紹介をいただきました河野でありますが、私の所属する団体を先に御紹介申し上げたいと思います。東京労働組合連合会、略称都労連と申しますが、この組織構成は、東京都における警察官、消防を除いた一切の都の職員をもつて構成しております。従いましてこの中には交通水道といういわゆる公企業体に属する職員と、それから公立学校の教職員全部、さらに一般行政事務に従事するところの職員と、その他の單純労務と申しますか、清掃、土木、港湾等々に従事する職員、これらを包容した七万五千円ほどの連合体であります。そういう立場から申しますと、今まで交通関係の公述は河野さんが先ほど行われました。また交通水道、教員関係を除いた一般を代表して、占部さんが公述されました。なお明日は水道関係を代表して小田原さんが公述される予定であり、さらにまた教員組合関係を代表して、辻原さんが公述されるという予定になつております。従いましてその構成内容から申し上げますると、私どもは四つの産業別と申しますか、あるいは業種別と申しますか、そういうそれぞれの全国組織の下部組織としての東京都における労組、この四つの団体が連合して組織されておるのでありますから、この四つの部門の代表の方々の公述があれば、そこで大体述べようとするところが盡きるわけでありますが、ただ組合の関係等におきましても、東京都は何といつても政治経済の中心地であり、また労働運動においても、いやが上にも中心的な立場にならざるを得ないという関係で、わが国における労働運動のすべての全国的組織の中に——今申し上げたような特殊な連合的な団体ではありますけれども、すべての労働運動のつながりの中において、全国組織としての取扱いを受けているというのが実情でございます。こういう関係から、本日も公述人に御指名いただいたものと了解しているのですが、そういうことから、その專門的な立場からの主張を総合すると申しますか、そういう形において若干意見を申し述べさせていただきたいと思うのであります。  先ほど占部さんが申されましたように、昭和二十三年の七月二十二日、マ書簡が発せられてから、ただちに政令二百一号の制定となり、さらにまた国家公務員法の改正となつたことは、御承知の通りであります。しかしその情勢においては、あるいはその必要があつた。もとより立場によつて見解が異なりますけれども、私たちの立場といたしましては、その当時においてすら国家公務員法の改正、私たちの言葉でいうと改惡、これに対しては徹底的に反対であるという主張を続けて参つたのであります。しかし不幸にして遂にこの改惡案というものが議会を通つてしまつた。そういう立場から申しまして、国家公務員法それ自体に反対であり、さらにまた改惡に反対であるという立場から申しますと、この地方公務員法の制定というものに対しましても、私どもの基本的な態度は、あくまで制定反対であります。しかし制定反対と申しましても、今の現実の情勢の上に立つてこれを考えますときに、單に反対一本では押し通せないという遺憾な実情にあることも見のがせない。そういうことから、改善の策として、どうしても地方公務員法というものが制定される場合においては、最小限度かくあらなければならない、こういう意味において申し上げたいと思うのです。そういう観点から申しまして、一口にいつて、今度の地方公務員法案というものに対しては、非常に遺憾な点が多い。これを特に大きな問題として摘出いたしますならば、先ほど河野さんもおつしやられたように、何といつて団結権、団体交渉権、それから団体協約の締結権、罷業権というものが確立されていないということ、それから政治活動が全面的な禁止に近いほど、その自由が奪われているという二点に集約することができようかと思うのであります。私どもの今申しました都労連という組織は、昭和二十一年の六月に結成されました。しかしながらこの構成員の中には、戰前かつて二十年もあの軍閥官僚の彈圧のあらしの中に立つてつて来た組合員も、多く包容しているのであります。従いまして労働運動というものがどうあらなければならないかということくらいについては、すいも甘いも承知しているつもりであります。そのことは、昭和二十年の秋にいち早くも私どもは組合を結成いたしました。その結成した組合が、翌年に至つて連合体を組織したということになるのでありますが、それ以来御承知のように、マツカーサー元帥の書簡が出るの余儀なき状態にまで日本の労働運動を進めてしまつた。これがいいか惡いか、その責任がいずこにあるかというようなことについては、あえてここで申し上げる気持はございませんけれども、しかしあのようにいわゆる労働攻勢の熾烈な、しかも多少むりでも要求して囲えば実に勝たざるはなしという、労働階級のほんとうにはなやかだつた時代、その当時におきましても、私どもは決して当事者に対してむりな要求をし、あるいはむりな争議行為を行つた事実はありません。日本の再建は、何といつてもこの組織労働者大衆が中堅になつて経済を復興し、日本の民主化の礎とならなければ、真に文化的な、かつ民主的な平和国家というものが建設されるものではない、こういう自覚の上に立つて、ひたすら建設面を中心に考えて活動して参つたのであります。そういうまじめな組合運動が相当数多くあるにもかかわらず、一部矯激なる破壊的行動をとる組合ができたことのために不幸にしていいものも惡いものも十ぱ一からげにして、われわれの反対する、あの国家公務員法、あるいは政令二百一号が現われ、その延長として今日この案が法律化されんとしているのであります。私どもの立場から申し上げまするならば、われわれは人様に言われぬでも、日本における善良なる国民の一員である。また東京都民の忠実なる公僕であるということを、常に念頭から離しておりません。従つてわれわれ都における公務員というものは、どういう態度で行かなければならないかということについても、十二分にわきまえて行動しているつもりであります。そういうふうな自覚の上に立つて日常運動をし、活動を続けているものにとつては、このような法案によつて自分たちの行動を不必要な程度にまで拘束されるということについては、これは非常に精神的な面から行きましても不愉快であります。自尊心を傷つけられること、これ以上のものはありません。そういう点から申しまして、幸いにして日本の労働運動全体がわれわれと同じような見解をもつて運動に当りますならば、このような法律は全然いらないと確信して疑わないのです。占部さんも先ほど来申されたように、われわれのまじめな運動というものが最近結実いたしまして、それを結集したところの総評議会となつて現われ、かつて矯激な労働運動を指導したところの全労連、産別会議というものは、いよいよ凋落いたしまして、その影を没するのではなかろうかという状態にまでなつています。こういうふうに日本の労働運動というものが非常に健全な、しかも剛健な姿で伸びようとしているときに、それに一つのわくをはめて行動を制約するということは、別な言葉でございまするならば、角をためて牛を殺すの弊に陥りはしないかということを心から憂えるのであります。もとより地方公務員は、社会公共の福祉のために公僕として働かなければならない。前の公述人もおつしやつたように、三十條、三十一條というようなものについては、われわれ自身も考えているし、全部そうでなくてはなりません。このような一般的な公僕としての守るべき義務というものは、これはそれぞれの地方庁の中において、あるいは就業規則の形において、あるいは服務規定の形において、それぞれこういう規定のもとに日常の仕事に專念しているのであります。あえてここに画一的な法律を制定して全部この法律によつて律しなければならないという必要性は、この観点から見ただけでは感じられないのであります。そういう点から申しまして、私どもといたしましては、この今の法案の中において意見を申し上げまする場合、地方公務員につきましても、先ほど申されたように、公企業関係は特別立法によつてこれを律するということになつておるようでありまして、この提案された法案は、それを除く職員ということになるわけでありますが、これについてもるる皆さんによつて公述されましたように、教員関係があり、單純労務、そういう関係のものも相当あるわけなのであります。その種々のものをしばらくおくといたしましても、一般の行政事務に携わるものについてだけ申し上げましても、これは労働組合法上にいうところの団結権、団体交渉権、それから団体協約締結権というものが当然認められてしかるべきものであろうと確信するのです。それは東京都の場合について申し上げますと、政令二百一号の出るまでは、東京都との間にりつぱに団体協約を締結し、そして業務協議会という常設機関を持つて許された両者で協議の整つた範囲における一切の問題について、きわめて円満裡に問題の解決処理をはかつて来ているのであります。ところが二百一号の政令が出るや、ただちに当局側は二百一号の趣旨に基いて、従来の業務協議会、それから団体協約、これは自然消滅になつたものと了解されたい、こういう申出があつた。しかしながら現実において、法律上の問題は別としまして、実質的にはそういう形を通じて都政を運営することが、ほんとうに筋金の入つた、中身のある運営ができるということを理事者自身もはつきりとこれを確認いたしまして、今日といえども、そういうことが法律上許されていない現状のもとにおきましても、事実上においては完全に団体交渉も行い、かつ団体協約という公式の文書ではありませんけれども、一つの覚書なり、あるいは協定書というような形において協議決定したものは忠実にそれが両者の責任において行われつつあるのが今日の現状であります。そういう実態の上から考えてみましても、私どもが今主張していること、すなわち労働組合法にいうところの団結権を認めろ、それから団体交渉権、団体協約権を認めてくれということも、決して理事者が反対すべき議論でもなければ、また現実に沿わない架空の議論を主張しているのでもありません。繰返して申しますけれども、政令によつてそういうことができなくなつた現状においても、なおかつ事実上の問題としてはやつておるという現実から推しまして、円満なる行政運営のために、あるいは事業の運営のためには、いかにそういう機関が必要であるかということを事実をもつて立証するものとして、十分注視すべきものと思うのであります。  政治活動の問題につきましてもまた同様と言えるのであります。かつて封建的な時代におきましては、日本におきましては、一部の特権階級によつて一切の政治を壟断され、そのためにいろいろな運動の起つたことは、今ここで多く申し上げますまでもありません。幸いにしてこの正しき主張というものが認められ、昭和二年の普選を初めとして、一般国民にも政治に参加する自由が與えられた。いわんや今日ポツダム宣言によつて日本の民主化が推進されなければならぬ大きな義務が日本国民全体の上に與えられている、その民主化時代において、戰前におけるよりももつと政治的な自由を制限された、あるいは禁止されたような形の法案を制定実施されることは、これも日本の今進まなければならない立場とおよそ逆行する反動的なものとして、われわれは断じて了承することができないのであります。われわれ地方庁におけるものといたしましても、あるいは中央政界においても、われわれ地方公務員選挙に出るというようなことに対して巷間いろいろ説をなされております。これも先ほどの公僕としての使命が果し得るかどうかという問題と多くの関連を持つのでありますが、これもまたそれぞれの地位、あるいは職権というものを惡い方に用いて、そして自分たちの政治目的を実現しようとするがごとき惡い行為のあつた者に対しては、嚴にこれを戒めるというか、これをたたく措置を講ずればいいのであつて、たとえば、学校の先生が教壇に立つて特定の政党のために講義をしたとか、あるいは選挙のために講義をしたとかいうようなことがある場合には、その面についてそういうことのないような措置を厳重にとらるべきであり、また一般行政職員も、その地位を利用して住民との間に芳ばしからざる行為のあるがごとき事柄に対しては、嚴にそれを愼ませることは当然であり、そういうことをやらないような方途を事前に講ぜられておけばいいのであつて、そういう弊害を除けば、日本国民として憲法で保障されたこの政治的な自由というものを、一国民としてりつぱに行使することが何のふしぎがあり、どこにいけない点があろうかと私は言いたいのであります。そういう立場から申しまして、この政治活動禁止に近いほどの強い制限は、はなはだもつてわれわれの了解に苦しむところであり、かつ断じて賛成のできないところでありまして、こういう点につきましては、公務執行上に弊害の及ぼすことを是正しつつ、憲法で與えられた政治的の自由というものを全面的に許すという態度で行つてもらわなければならぬと思うのであります。  なおこの適用の範囲と申しますか、この関連において若干申し上げたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、われわれ地方公務員の中には種々雑多な職種が入つている。この点占部さんも特に指摘されましたけれども、とても地方公務員なんというりつぱな名前を頂戴して恐縮するような仕事に従事している者が、実に東京都すなわち警察吏員、消防、交通、自動車、教員、そういうものを除いたその他の職員約三万五千名であります。この三万五千名のうち三五%はそういう種類の従業員であります。またそれに対応するところの職員があります。それを考えると、約四〇%の職員というものがそういう現業と申しますか、單純労務と申しますか、そういう関係の従事員であるわけであります。これらの諸君を、全然特別立法措置も何もなく、この地方公務員法の中から適用を除外して、純然たる労働三法の適用者として離してもよし、あるいはそれが適当でないというのであれば、特別立法措置によつていろいろな面が緩和された、この制限を除いた立法措置によつて処理さるべきものである、こう考えるのであります。教員の問題についてもまたしかりでありまして、これは教職員という特殊な立場があるわけでありますが、これにはこれに対応する適切な立法措置が講ぜらるべきであると考えるのであります。これにつきましても、巷間伝うるところによると、教職員の特殊性にかんがみて特別の立法措置を行うことはいいけれども、この立法措置の内容というものが、まごまごしていると今出されている地方公務員法内容よりもむしろ惡いものを特別立法にして出すのではないかというような懸念も持たれているようでありますが、そういうことであつたのでは、これはもう全然私どもと見解が違う。これも特殊的な伸縮はありますけれども、一般的には相当緩和されたものでなければならないということを、付言しておきたいと思うのであります。  最後に附則の第二十項ですが、それと本文の第五十七條の関係において、ちよとつけ加えたいと思うのであります。附則第二十項においては、地方財政法の第六條に規定する公営企業に従事する職員の身分取扱いについては、別途措置を講ずるということであり、五十七條においては、「職員のうちその職務と責任の特殊性に基いてこの法律に対する特例を必要とするものについては、別に法律で定める。但し、その特例は、第一條の精神に反するものであつてはならない。」ということになつております。「その職務と責任の特殊性に基いて」という内容解釈の問題でありますが、これが明確でない。それから二十項の特別の立法措置を講ずるというがごとき、これについては、いつこれに必要なる立法措置を講ずるのであるかという点についての時期が明確でない。これは両方とも立法技術の上からいつて、あるいはそういうことが入れられないのかもしらんと思うのですが、もしそうであるとすれば、百歩讓つてそれを了解するといたしましても、その内容だけは明確に今度の国会で打出していただきたい。と申しまするのは、先ほど来どなたか公述されましたように、二十三年の七月三十一日ですか、政令が出てから、地方公務員法の早急なる制定が一部に叫ばれておつた。これは私どもは反対なんですが、一部に叫ばれておつた。しかるに二年有余の今日ようやく法案となつて出て来たという事実にかんがみまして、この二十項のごとき問題につきましても、別にこれを規定する、それまでの間は従前通りの例によるということであつて、今のような形がいつまで続くか、ちよつとその見当がつかないということで、相当懸念が持たれているわけでありまして、その点を明確にされるようにお願いしたい。それとこの五十七條の範囲というものについて、われわれだけの解釈をもつていたしまするならば、これは先ほど来私どもが強調いたしておりまするように、企業関係職員を除いた現業関係及び教職員の人たちが、この対象になるのではなかろうかと想像するのであります。またぜひともそうでなければならぬと考えているのですが、そうあらしむるための努力も含めて、これを明確にしていただきたいということをお願いいたしまして、はなはだ順序が整つておりませんでしたけれども、これをもつて私の公述といたします。
  25. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それではここで河野盈夫君、達林正吉君、小倉庫次君、河野平次君、占部秀男君に対して、委員各位よりの御質疑がありますれば、質疑をしていただきたいと思います。
  26. 門司亮

    ○門司委員 議事の進行で、ちよつとお聞きしておきたいと思いますのは、質問の内容は公述された内容に限られておるのか、あるいは法案全体に及ぶかということをきめておいていただきたい。
  27. 前尾繁三郎

    前尾委員長 規則では公述の範囲を越してはいかぬことになつております。木村榮君。
  28. 木村榮

    ○木村(榮)委員 最初にお伺いしたいのは、お二人の河野さんと占部さん、そのうちのどなたからでもけつこうですから、御答弁願いたい。  まず第一点は、今皆様方が問題になさつております、この地方公務員法をこの臨時国会の審議にかけている政府の性格の問題です。と申しますのは、御承知のように各市町村の役場職員の方、その他一般地方公務員の方たちが私どもの手元へ毎日のように送つて来るたくさんの陳情、請願、あるいは電報、はがきといつたようなものを通して現われていますように、年末賞與の問題、ベース・アツプの問題というのは非常に大きな深刻な要求となつて現われておる。そこで私たちが考えますのには、この問題は一般公務員諸君のいわば生命の問題とつながるような重大な問題である。これは單に公務員の方だけでなく、家族を含めての非常に大きな生活問題だと思う。そういつた問題を、この臨時国会においては短期間でございますから、私たちが審議をいたしまして、そういつた御要望に、満足なことはできませんでも、まあでき得る限りおこたえするということが、少くとも現在の状況下においては最も大切なことだと考えております。ところが御承知のように、そういつた問題はほとんど問題にされなくて、突如として私どもの手元にはこの重要な法案が——憲法上から見ましても、その他一般的な解釈から見ましても、きわめて愼重審議をしなければならないような重要法案が提出され、短期間にこれを可決するように迫られているということ自体、私たちの観点からすれば、吉田内閣の性格そのものがきわめてフアシヨ的、反動的なものだ、その一つの現われとして、このような重大法案が今のような方法で審議が進められようとしておる。こういうように見ておりますが、その点については別に意見を承る必要はございませんが、今私が申し上げました範囲内においては、私たちの見解に大体御賛成いただけますかどうかという点を、承つておきたいと思うのであります。
  29. 前尾繁三郎

    前尾委員長 どなたか御指定してください。
  30. 木村榮

    ○木村(榮)委員 占部さんに……。
  31. 占部秀男

    ○占部公述人 組合側の立場といたしますと、実はお説の通りで、この臨時国会では年末賞與その他ベース・アツプの問題をやつていただきたい、こういうように思つているのです。特にこの地方公務員法案というのは、憲法上の問題もありますけれども、日本の組合運動の将来に大きな影響のある問題で、これはじつくりと通常国会でやつてもらうのが適当ではないか、こういうように考えておるわけであります。しかしこういうような結果になつたので、われわれもこれに対する運動をしておる、こういう実情であります。
  32. 木村榮

    ○木村(榮)委員 そこで今と同じ問題なんですが、私が最後簡單に申し上げましたように、私たちの見解では、この政治的な行き方は少くともフアシヨ的な、またきわめて反動的な性格のものであるというふうに解釈しておりすまが、その点で最後に公述なさつた河野さんはどのような御意見でございますか。簡單にどうぞ。それに御賛成か、あるいは反対かということを言つていただけばけつこうだと思います。
  33. 河野平次

    河野(平)公述人 私たちは、今占部さんがお答えになつ内容だけでも足りないほど熾烈な要求というか、要望でおるわけであります。それは先ほど公述なさつた中に、地方財政に対する平衡交付金の問題等に言及されましたが、その種の問題につきましても、私どもは岡野国務大臣を初め、関係方面に対しても強く要請を申し上げているような次第であります。今度の臨時国会で、特にこの地方行政委員会の方々にお願いしなければならない大きな問題がたくさんあるわけでありまして、ここでは限られた問題に対して希望を申し上げたということであつて、今の御質問に対しましては、まつたくその通りであるということを申し上げます。
  34. 木村榮

    ○木村(榮)委員 そこで今私が言いました中でお聞きしたいことは、河野さんのお説の中でも、私非常に賛成の点が多いのでありますが、ただ幾分不明確に感じました点を二、三点伺つてみたいと思うのであります。と申しますのは、たとえば国家公務員法の制定をしなければならないようになつたのは、特にマ書簡に基くことである、これはその通り表面的にはなつております。そこで、この間における日本労働組合運動において、行き過ぎというか、極左的というか、矯激な面があつた、これはむろん私どもといたしましても、部分的にそういう面が必ずしもなかつたものとは思いません。しかし、全般的に労働組合運動というものを見た場合においては、これが全般的に矯激であつた、あるいは間違つておつたという断定はつかないと思う。その場合に、ただ労働運動の行き過ぎとか、間違いというか、そういう労働組合運動の内部的な諸問題を重点的に取上げられて、そこからいわゆる公務員法の改惡とか、その他労働三法の改惡というふうな問題が発生したというお説のように承つたのですが、私たちの見るところでは、そういう点は言葉の上で表現しておく程度のものであつて、本質的なものではない。根本的には、私たちの見ますところでは、日本の政治そのものが戰後の情勢からだんだんとかわつて来まして、労働者に対して逆に反動攻勢をかけなければならないような、国際的、あるいは国内的のいろいろな諸條件が加わつた結果、こういうふうな法律もこしらえなければならないような方向にかわつたのが重点であると、こう見ておりますが、その点についてはどのような御見解をとつておりますか。
  35. 河野平次

    河野(平)公述人 先ほど申し上げましたように、マ書簡の出る以前における、なかんずく二・一闘争以来のわが国における労働運動の情勢につきまして、私は日本の保守反動勢力——ここで叱られるかもしれませんが、つまり保守反動勢力と呼ばれる便乗的な労働攻勢というものと、共産党を主体とする——これも木村さんにお叱りを受けるかもしれませんけれども、大体そういう趣旨に基く運動、マ書簡を出さしむるに至つた原因がそのいずれにウエイトを大きく置かるべきかということについては、一概に、ここで申し上げることは適当ではないと思うのです。私はそれを正確にはかる機械も持つていないし、適当な尺度がありませんので、いずれがウエイトが大きいかということについてはお答えができませんけれども、しかしいずれにも、感じで申し上げれば対等くらいにはあるだろうということが言えると思います。と申しますのは、あの前の年に行われた国鉄の争議以来、東京地方における一連の労働運動の動向を目のあたり見ておつたわれわれとしては、ときに同じ労働陣営の中であるにもかかわらず、顰蹙せざるを得ないような状態が幾たびあつたことかという、この事実に徴しましても、これはわれわれの立場から見てすらかような状態なんだから、立場の違う者から見れば、さもありなんと考えるのは当然であろうと思うのです。また一方において、敗戰の悲劇からだんだん立ち上りを示して来た反動勢力が、それをいいこと幸いに便乗して闘おうとする傾向のあつたことも、何といつても見のがすことのできない厳然たる事実だと思うのです。そういう意味でひとつ御了承願いたい。私はそういうふうに考えているのです。
  36. 木村榮

    ○木村(榮)委員 議論をする必要はございませんから、私はそのことに対しては申し上げませんが、申すまでもなく、いわゆる金融独占資本が最も凶暴な支配形態をとるようになつて来ますと、いわゆるフアシズムというものが大きな力となり、それが最近においては民主主義という美名のもとに、一般行政機構そのものまでもフアシヨ化せしめて来るというのが、いわば一つの定説になつている。そういうふうな段階におきまして、今皆さんがお述べになつたようなことは、その趣旨には大体私ども賛成ではありますが、ただ過去はこうであつたからという前提の上に立つてのみ現在を見ますと、そこにまた幾分お互いに了解しにくい点もあるかと思います。そこで、過去においてはいろいろ問題もある。しかし現在の段階におきましては、少くとも過去云々ということよりも、いわゆる国際的金融独占資本そのものが、もはや完全なフアシズムの体制に移行しつつあつて、その一つの発端として、今度の国会に見られますように、この重大な法案をごく短期間に審議させようとしている。これは通常国会においてもどうかと思われるようなものです。御承知のように、昨年の定員法にいたしましても、私も当時内閣委員でございましたから、この問題については真剣に同つて参りましたが、定員法といえば、簡單に言いますと職員の定員をきめる、いわば首切り法ですね。だから反対か賛成かという程度のことに論議が集中するくらいなものであるが、それでも御承知のように相当長期間をかけて、各行政機構に至るまで報告書を出していただき、そしてこの結果どういうような支障が起るかというところまで連合審査を何回もやり、しかも公聽会もやり、長期間にわたつて十分検討いたしました。この問題は当時の定員法以上に当面の重大な問題であるにもかかわらず、この臨時国会に出してしまつて、しかも年末押し追つて公務員の中からはさつき私が申し上げましたような、血の出るような御要求が毎日のように来ておるのに、この問題はほとんど問題にしない。平衡交付金の増加にいたしましても、地方財政委員会の方の要求額八十三億円というものを完全に無視して、御承知のようにわずか三十五億円しか出さない。しかも地財委を創設するときには、地方財政委員会設置法というものによつて、将来は地方財政が健全化されるのだ、これが最もいい機関だという御説明のもとにできた。ところが、実際運用の面になつて来ると、ごらんの通りである。と同様に、この法律が一面的には職員の保健衛生の点をどうこうということも書いておられます。しかし全般を貫くものは何であるかというならば、さつき私が申し上げましたいわゆる現在の政府の性格そのものを端的に現わしている。そうしてこの反動的な攻勢の大きな道具に利用される危險性は最初からあると同時に、将来いよいよ強まり、これによつていい面はほとんど押えられ、惡い面のみが強調されるということは、今までの過去何年間かにわたる情勢が的確に証明しておる。こういう観点から見ますと、ぜひ私がこの際お願いしたいのは、過去の労働運動が云々ということも、これはお互いに批判する必要は十分ございますからけつこうでありますが、そこに重点を置いてこの問題が討論されるのではなくて、やはり吉田内閣の性格の問題、日本の将来の問題として、お互いにこういつた不法をやめさすという方向にぜひお進み願うように、私はこの席上からお願いをいたしまして、以上質問を打切りたいと存じます。
  37. 門司亮

    ○門司委員 ちよつと達林さんにお聞きしておきたいと思いますが、達林さんは、全体のものとして一応この法律案をお認めになつたように私は感じたのでありますが、それを前提としてちよつとお聞きを願いたいと思いますことは、この公企業の問題でございますが、公企業の問題について、一応こうした制限を加えられることもいいのではないかというようなお話を承つたのでございます。達林さんの地位と申しますか、職掌柄と申しますか、これは理事者の側に立たれた人であると私は考えておるのであります。また理事者である全国市長会議の議長の金刺君の代理でおいでになつているということになりますと、必然的にそうだと一応私は考えまして、そうしてその意味で述べられたこの公企業の問題でございますが、公企業は、たとえば財政法六條の規定によりまする公企業といいましても、これは日本全国の都市におきましては、先ほど都市交の河野君が申し上げましたように、実は公営事業で公共団体みずから行つておりますものと、私企業で行つておりますものとの二つの種類があるわけであります。その場合に公企業で行つておりまするもののみに、たとえばストライキをやつてはいけないといつて禁止せられる、さらに政治的の活動もある程度制約を受けるというものがあるといたしますならば、私の杞憂いたしますのは、同じ都市において、ただ経営の形態が違うというだけで、そこに働いておりまする従業員の取扱いが法律的に差別されるというようなことが、都市行政運営の上から一体正しい行き方であるかどうか、この点をひとつお聞きしたいと思います。
  38. 達林正吉

    達林公述人 初めに、私お話のような立場で参りましたので、理事者側の立場を一面考えつつ、また自分の立場で申し上げたのであります。あるいはお聞き取り違いかと思いますが、公企業につきましては、別に法律上の制限というふうな規定を是認したわけでなく、公企業については、一般職と同じ取扱いをすることは必ずしも適当ではない、これを別途の取扱いにすることが妥当であろう、但し公企業自体を公共団体かう引離して、別途の経営体にするという点については、サービス行政を中心使命とする公共団体のその性格の統一性を害するという点において適当でない、こういうふうに申し上げたのであります。
  39. 門司亮

    ○門司委員 私もその通りに承つておりますが、それに関連しての私の尋ねでありまして、本法律案の一番最後の末項に書いてありまする団体を除くということになつておりますが、この除かれますものも、新しい、何と名前をつけますか、今までの名前ならば公共企業体労働組合法といいますか、そういう名前でもつけて、おそらく次の国会、あるいはその次の国会に出されるかもしれませんが、そういうものがかりに出るといたしましても、その内容は、今のたとえば專売公社、あるいは国鉄公社というものの内容とほとんど似たような内容が必ず出て来ると私は考えます。そうすると、これも私企業とまつたく同一の立場において扱おうとするものではないと考える。労働組合としての、一般私企業と同じような権限は與えられておらない、必ず制約される、そう考えますから、実は私は今のようなお尋ねをしたわけでありまして、この二十項をこのまま、法律を見ないで通さなければならない立場であります私どもからいわせますると、この法律は、この法律自体はあるいは完成しているといえるかもしれませんが、地方公務員全体に適用される法律といたしましては、その一環であつて、このほかに五十七條に規定いたしておりますものの法律が一本出て来なければならないということ、さらに先ほど申し上げました末項の二十項の規定によつて新しい法律一つ出て来て、それによつて拘束を受ける部門と、この三つの法律がそろわなければ地方公務員法というものは片輪であります。従つてわれわれはこれを完成した、完全なる地方公務員法とは実は考えていないのであります。未完成だと——少し極端でありますが、未完成なものであるというふうに私どもは考えておる。こういう立場から私どもが考えて行きますときに、現在の法律では除外されておりますが、将来二十項でいずれ規定されます法律には、先ほど申し上げましたように、必ず私企業と同じような労働條件で労働三法の適用を必ず受けるということでなく、野放しには決してならない、これには必ず大きな制約が行われると思う。そういう場合に理事者側として、企業の形態が違うからといつて労働者の取扱いが別であるということは——そこに住んでおる住民に及ぼす影響は同じであります、私企業であるから、ストライキをやつた場合に住民に影響がなかつたとはいえない、公企業であるからストライキをやつた場合に、特に迷惑したとは、これはいえないと思います。従つて住民に及ぼす影響というものはいずれも同じだ。こう考えて参りますならば、やはり住民の立場から考えましても、住民に影響を與える同じ仕事をしておるものが、二つの異なつた立場に立たされるということは、私は市の運営の上から行きますると、非常にお困りになる点が出て来はしないかと実は考えるのであります。従つて行政面から見てそういう取扱いが妥当であるかということです。
  40. 達林正吉

    達林公述人 従事する業務自体、それによつて受ける住民の便益、影響というふうな点は、お話のように大体同じだと思うのでございますが、たとえば市の場合に、市民からながめた私企業の従業員と公企業の従業員、市の職員、そういうふうな点に多少違つた感じがありはしないだろうかどうだろうかという点をちよつと思われますけれども、この点はよく考えてみたいと思います。
  41. 門司亮

    ○門司委員 それならばもう一つお聞きしますが、今の公述の中に、公企業がサービス団たる機能の一体性を害するというような、こういう言葉が実はあるのでありますが、この機能の一体性の問題であります。サービス団体としての機能の一体性というものを考えて参りますると、これはすべて地方の自治団体というものは、一つのサービス・センターとしてのものの考え方から、ある範囲の、全部とは申し上げませんが、ある範囲のものはひとつ公企業を一体性にする、いわゆる一つの公の機関にこれを吸收することがいいというお考えで、この言葉をお述べになつたのかどうか、これは非常に重要な問題と私は思います。先ほど申し上げましたように、ある自治体では私企業でやつておる、ある自治体では公共事業でやつておる、これをサービス団体としての機能を発揮するためには一体にした方がいい、公共企業化することの方がいいのだというような御趣旨であつたかどうかということであります。
  42. 達林正吉

    達林公述人 公共企業につきましては、私企業を積極的に公企業に吸收したらいいかどうかということには、私は触れておりません。少くとも現在やつておるものにつきましては、私営事業については、單に営利を目的とするのでなくて、むしろ積極的に市民へのサービスの供給、便益の供給というふうな面に重心を置いて、そのためには、たとえば交通事業においても、非営業線についても、同地域の住民のために自動車をまわすというような犠牲を拂つて行かなければなりませんから、そういうような面から見まして、市全体のサービスの一環としてやつて行つた方が、現在やつているものについてはその方がいい。これを常にやつておるものについて、全然切り離した別の組織体にするということは、市民の便益、利益という点から考えても適当ではないのじやないか。そういつた意味において一体性という言葉を使つております。
  43. 門司亮

    ○門司委員 そういたしますと、これはこう解釈すればよろしいのでございますか。これは現在やつておるものに限つて別の法律をこしらえて、それで現在公営がやつておるものまでも公営から切り離すような制度はよくない、こういうお考えでございますか。
  44. 達林正吉

    達林公述人 別な法律をつくる場合において、現在市でやつております公営事業について、これを市から全然切り離して別な経営体、特殊な経営体にするということについては適当でない、こういう意味であります。
  45. 門司亮

    ○門司委員 そうしますと、その意味は、末項に掲げておりますものを否定される意味であるのか、あるいはこれを肯定されておる意味であるのかということで、私どもちよつと解釈に苦しむのであります。法律の一番最後の項に書いてありまする財政法六條の適用を受けるものは、いわゆる別に法律で定める、こういうことであります。これがさつき申し上げましたような水道であるとか、あるいはガスであるとか、電気であるとか、交通であるとかいうような独立採算制をもつて行うものは別にする、こういう法律に実はなつておるわけであります。従つてこれらのものを別の法律をつくるということは、企業体を切り離してこれが行われるということには賛成しない、こういう意味でございますか。少しわかりにくいかもしれませんが、具体的に言いますと、現在の国鉄公社のような形でこれが企業体から切り離されるということは不賛成であるという意味でありますか。
  46. 達林正吉

    達林公述人 そういう意味です。
  47. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ聞いておきたいと思いますことは、触れられなかつたから聞くのでありますが、これも非常に重大な問題でありまして、選挙活動よりもむしろ重大であると考えなければならないほどの問題であつて、この法律案の中の二つの大きな問題の一つでありますが、労働運動の取締りといいまするか、これが団体協約権も完全でない、それから罷業権はむろん認められておりません。わずかに保護は、労働基準法がこの法律に抵触しない限りにおいては、あるいはこれを認める、あるいは市の條例に抵触しない限りにおいてこれを認めるというようなことで、これも基準法が全面的に適用されるとはわれわれは考えてない。おのおのの市でどういう條例ができるかわかりませんので、その條例に抵触しない範囲で適用することになりますから、何ら全面的に保護規定が適用されるとは考えられない。こういうことで、この問題は働いております公務員は非常に大きな感情というか、気持の上に暗い関係を持つて来るのじやないかと思います。御承知のように地方公共団体のやつておりまする仕事はまつたく私企業と同じ仕事があります。たとえば同一の市内でも、同一の仕事であつて、糞尿のくみとりのごときは、一方においては公営を行つておる、ある部分は私営を行つております。そういたしますと、この事業はまつたく同一の事業であつて、同一の公共団体の中で行われて、しかも事業の経営形態というものは二つにわかれておる。その場合に私企業の方は労働三法が適用されておる。従つて待遇改善等にも、ストライキもできれば、団体協約権もある。あるいは基準法の全面的の保護を受ける。これがたまたま公企業であるからといつて、そこに従事いたしておりまする者が、これらの適用を受けないということになつて参りますると、働いております者の気持といたしましては、非常に大きな格段の相違ができて来る。この相違が今までの日本の役所の最も大きな欠陥でありました。すべての事業に対してお役所仕事という言葉のあることは御存じ通りであります。これはなぜかというと、だらだらしておつて能率が上らぬことを大体お役所仕事のようだといつておる。この法律が適用されて参りますと、それがよけいに出て来はしないか、片方は自分たちの要求を活発に請求することができる。そうして闘い取つたものは団体協約として片方に義務づけて、これを実行させることが可能である。片方はそれらの権利が全部伏せられておる。そうして人事院と政府との実例を申し上げましても、人事院が勧告いたしましても、政府はこれを一向に履行しないと同様に、地方の人事委員会が契約その他に対して市の理事者に勧告をいたしましても、予算がない、財源がない財源がないということで、それを実行しなかつた場合には、これらの給與その他に格段の開きが出て来る。これらの何らの権能を持つておらない人々——肥料のくみとりなどをやつておる人たちは、行政権を持つておるとは私どもは考えない。これを公務員だと考えることは間違いだと思います。地方自治法規定いたしております市長の補助機関、あるいは都道府県の知事の補助機関とは、私どもはどうしても考えられない。やはり労働者に間違いない。その場合に、同じ労働者であつて、同じ公共体の中で仕事をしておつて、ただ経営の形が違うというだけでそういう格段の差のある待遇を受けなければならないということになつて参りますと、お役所仕事のいうものはますますお役所仕事になつて能率は上らなくなつて来る。能率が上らなくなつて来れば、だれが損をするかといえば、市の住民が損をするということになります。租税によつてこれをまかなつております納税者の立場にある住民が損をすることになる。そしてその上に働いております従業員も非常に安い給與で追い使われて損をする。みんなが損をすることをこの法律ではしいておるのであります。こういう面をお触れにならなかつたのでありますが、理事者としての立場から、そういう面が起つた場合にどういうふうにお感じになるかということを、一言だけひとつお聞かせ願いたい。
  48. 達林正吉

    達林公述人 ただいまの役所仕事のだらだらすること、それの原因については、今お話のありましたようなことも大きな原因だと思います。それ以外にもいろいろ運営の面について、私も長いことやつて参りまして、考える点は多々あると思います。ただいまの問題は、主として給與の面から申しますと、給與制度、これによつてたとえば昇給その他の立て方、こういう面によつてもよほど影響されるのではなかろうか。そういう点については、お話のように国家公務員に対する人事院と政府との関係のような、どうかしてほとんど実行されないということになりましては議論のほかになると思いますけれども、結局その間の運用の問題じやなかろうか、こう思いまして、この点に対しては、よほど理事者側としても真剣に考えなければいかぬ、こう思うのでございます。
  49. 門司亮

    ○門司委員 理事者としての立場からはそれ以上のお答えは困難かと思いますが、もう一つ私は突つ込んでお聞きをしておきたいと思いますことは、そういう抽象的のことでなくて、法律がそういうふうにできておりますので、従つて私どもはその面をぜひ是正しなければ、労働者のためにもならなければ、住民のためにもならない。住民のためにもならなければ、働いております者のためにもならないような法律を、私どもは立法機関としてここでこしらえるわけには実は参らぬのでございます。従つてこれを運用されるあなた方がこの法律のままで、これが是認される立場であるかどうかということ。私どもはこの機会にそれらの人たちは、いわゆる單純労務といつておりますが、これをぜひ除いて、なるほどこの法律には、五十七條にちよつと特殊な性格を持つものについては、別に法律で定めるという規定が一條あるだけであります。そしてこういうものを除きたいという具体的の事項が実は掲げられていないのであります。そこで私どもといたしましては、一面事業主としての上から危惧を持つのであります。と同時に政府当局に聞きましても、その法律はいつ出すのだということがなかなか実は言明ができないのであります。そこでその法律の出て来ないまではこのままの法律で取締つて行くということになりますと、先ほど申しましたような事態が浮かんで参りますので、私はこの法律を審議いたします一つの資料としてはつきり具体的に申し上げますが、そういう單純労務から労働三法を全面的に適用しないような法律ができた場合に、理事者側として運営が円滑に行く、十分所期の目的が達せられて、市民からも非難のないように、あるいは労働者からも文句の出ないように十分やつて行けるというような——これは少し言い過ぎかもしれませんが、この法律をごらんになつて考えがお浮びになるかどうかということであります。
  50. 達林正吉

    達林公述人 ただいま突つ込んでのお話なので、私ここではつきりと結論的に申し上げるのは、もう少し考えてからにしたいと思います。お話の点はよくわかります。私の申し上げておりますことも、いわゆる理事者あるいは雇用主、こういうふうな立場でもつて考えて申し上げていないつもりであります。お話のように、單統労務者なりあるいは公企業従事者なり、これに対する法律がなるべくすみやかにできることを私強く希望いたします。その場合においても、ただいまお話のような意味の両者のギヤツプというものはなるべくない方が好ましいという気持がいたします。ただちよつとさつきも申し上げました、私の頭にちよつとかかりますのは、従業員自体から見ますと、お話のように私企業も公企業と同じでありますけれども、住民から見ました場合に、かりにここで今許されませんけれども、ストライキがあつた、私企業のストライキがあつた、公企業のストライキがあつた、こういつた場合に、住民の気持はどうなのか、この場合にはちよつと違うのではないか。その面において公務員法の取扱い、こういう取扱いが考えられて来るのではなかろうか、こんなふうな感じがいたしますけれども……。
  51. 門司亮

    ○門司委員 それ以上は意見にわたる点が多くなりますので避けますが、私どもの考え方といたしましては、市民に與える影響というようなものがやはり問題になるのであります。そこで問題にならないようにするには、やはり十分の待遇をするということと、それからもう一つは、私はこれは十分お考えを願いたいと思つておりますことは、こういう点をひとつお聞かせを願えればけつこうだと思いますが、現在の情勢で地方の公共団体といいましても、たとえば東京のような、あるいは横浜のような大きなのもあります。それから非常に小さな市町村もあります。この市町村の小さい市といたしましては、わずかに三万ぐらいの市がある、あるいは五万の市もある、これがそれぞれの公務員を都市として使つておりまするが、その事業の形態の中に院もいろいろな形を持つております。そこでこれを全部一括した法律で律するということがはたして地方の実情に沿うかどうかということであります。東京のような大きなところを一つの目標としてやります場合には、これは公企業といいましてもまつたく官業と同じような形をとつておりまして、割合にいろいろの面で役所としての権能といいますか、そういうものの発揮が容易にできると思う。しかし三万かそこらの市になつて参りますと、なかなか役所としての、役人としての権限を振おうと思つても、これはなかなか困難だ。そこでそこにはおのずから違つた行政の行き方が実際上行われてしかるべきではないかと考えております。これについてひとつお聞かせ願えればけつこうだと思います。それから立つたついででありますから、もう一点聞いておきたいと思います。選挙の面に触れられましたので、小倉さんにお聞きをしておきたいと思いますが、小倉さんの御意見では、むしろこれらの禁止というものが、特別職というようなものをなくして、取締るならば全部一体にこれを適用すべきだというような御意見であつたように実は拝聽したのであります。そこでこの法律の中で非常に矛盾を来しているものは、いわゆる政治活動の中でありますが、政治活動の中の寄付金の行為を行つたものに対しては、実は六十一條に、体刑と罰金に処するということが書いてあるのでございます。そうするとこれは非常に重大な問題でありまするが、この一般公務員政治活動の面で寄付金を募集したということで、罰金体刑に処せられる。特別職であります市長あるいは助役であるとかいう上層の諸君は、これが見のがされるということになつて参りますると、政治的の行動の上に非常に大きな片手落ちの処断だと考えております。これは政治的に動きまする場合に、労働者がきわめて乏しい財源の中から、一つ政治運動のために献金をする、あるいは集めることもいけない。しかもそれを行つたものは懲役あるいは罰金に処するという法律をこしらえておいて、しかも上層の方、どこからも自由に政治資金をもらえるような立場にある人の方をそのまま何もやつてもかまわないということは、実は非常に法律の矛盾じやないかと考えておるのであります。従つてその点に対して、小倉さんからもし御意見でもございまするならば、お伺いをしておきたいと思います。
  52. 小倉庫次

    ○小倉公述人 私の申し上げた言葉が足りませんので、誤解をされたかとも思いますが、私は一般職も特別職も撤廃してしまつて、一本にしてしまつた方がいいということを申したつもりはなかつたのであります。もちろん一般職、特別職というものはいろいろな面から違つた性格、違つたフアンクシヨンを持つていると存ずるのでありまして、この区別は当然あつてしかるべきであろう。ただ全面的に特別職に適用しないということにしないで、公務員として、全住民に仕える公僕としては同じ方向に向いているのであるから、長であろうが議員であろうが、同じ方向を向いておるのであるから、そういう共通の大筋の立場に属するような規定は、ひとしく受けるようにした方がいいということを申し上げたのでありまして、個々の具体的な事項につきまして、その立場々々で適用を受けたり受けなかつたりすることがあるということは当然でありまするし、ただいま御指摘の事柄が差別を設けられておりますることは、私は詳しく存じておりませんが、それは相当の理由があつて設けられたであろうと思いますが、私自身は見てもおりませんし、起案者でもありませんので、意見を述べる力がございません。
  53. 大泉寛三

    ○大泉委員 多数の公述人からわれわれ議員にずいぶん同じことを繰返し繰返し申されたことを、重ねてどうも聞いたような観で、その中に小倉さんから申されたことは、きわめて尊重すべき御意見であると存じますので、小倉さんにお尋ねいたします。特別職にもいわゆる一般職と同じように適用すべしという御意見でありました。この特別職の、特に公選による公職者は、いわゆる住民の意思を代表せられて出て来られるものでありまして、いわば選挙によつて特に出て来たものは団体の意思と通じておるものであつて、いわゆる住民の代表であり、また団体の代表である。その団体たるや、政党の団体でありますと、やはり政府を代表しておる。この人格をもつて出たものが、やはり何らの色彩を持たずに、いわゆる所属なしの人として一般職と同じような立場に立たれるということは、この人格の変更になるのではないか。今日いかなる自治体の代表にしても、ある団体はみな政党に所属しておる。いわゆる政党の背影によつておるものである。そうすると政党の代表者であるがゆえに、その政治を行わんとすることはたいてい発表し、また公約もして出て来られるものであるから、そういう立場から党籍を離脱するというようなことは、かえつて不明朗な立場になるのではなかろうかと思うのでありますが、この点どうお考えになりますか。
  54. 小倉庫次

    ○小倉公述人 ただいまのお話は、人事機関の構成員のことかと考えますが、私は政党員であるから、公正無私の指導ができないというふうな断定はいたしませんけれども、客観的に見まして不偏不党、公平無私な活動をするというのは、人事委員会なり、公平委員の急所でありますから、この眼目を達成するというためには、それくらいの覚悟をもつて職責に当られるということが望ましいのじやないかというふうに考えたので、こういう機関政党人がなる場合には、むしろ党籍を離脱して、客観的にも不偏不党であるという姿で臨まれるのがいい、こういう意味で申し上げたのであります。
  55. 大泉寛三

    ○大泉委員 わかりました。次に公平委員もしくは人事委員に対してもやはり無所属の、いわゆる政党色彩のない人を選び、また政党に所属しておつたならば離脱すべきだ、こういう御意見でありますが、これもやはり人選をするには色彩が明確になつてつて、しかもその同一の人格でない人々が二人もしくは三人のうちにおいて、別々な立場においてこれを総合して一つの人格に築き上げたならば、きわめて公平な一つ意見がそこに成立つ。また三人の意見の違つた人を——同じじやいけないけれども、とにかく別々の立場におつたならば、きわめて完全な一つの人格ができ上るのではないか、こう思うのでありますが、そういう立場においてやはり政党を離脱する、あるいは色彩のないということは、かえつてこれも不明朗な立場に立ち至ると思うのでありますが、この点は、やはりこの法案内容がきわめて妥当じやないかと思いますが、これに対する御意見はいかがでございますか。
  56. 小倉庫次

    ○小倉公述人 少しよけいなことを申しまして恐縮でありますが、私も、人事委員会委員政党員でなければならない、そういうふうにしている事例もあるということを聞いております。今お話になりましたように、かえつて色をはつきりしてやつておつた方がよろしい、こういうふうな考え方と、もう一つには、どうせそういう政党人が入つておるならば、むしろ政党人でやつた方がいいということで、そういうことをやつている事例もあるということも聞いております。しかしその結果はよかつたか、惡かつたかといいますと、ものの本によりますと、結果は必ずしもよくありません、外国の事例などで申し上げて恐縮ですが、結局各政党が妥協をしてしまつた人事が行われたというふうな事例がございますので、むしろそういう事例があれば——色がつくか、つかないかという二つになるわけですが、どつちをとるかといえば、かえつて透き通つた色のないもので構成して行くということが、この機関の職責というか、責任上——これは私の意見で恐縮でございますが、私はそう思うということを申し上げたのであります。
  57. 大矢省三

    ○大矢委員 私は理事者側に立つておられる達林さんにお尋ねしたいと思う点は、今度の公務員法のおもなるねらいは、何といつても一般職に対する政治活動禁止であります。さらに各種法令、條例で定められたたくさんの委員があられることは、御承知の通りでありますが、その委員は自由に政治活動ができることになつております。そこで私の聞きたいことは、これは実際面として、一般住民に対してしかも全般の奉仕者として公平でなければならぬ人たち——これは公選によつて選ばれたものは別でありますが、その場合でも、任免権者は自分だけは自由に政治活動をやつて、お前らはできぬというのは、はなはだ不公平だと思いますが、もしこの法が成立してこれを権威あらしめるためには、自分もやらぬかわりに、お前らも公平にやれ——地方の自治体に四十幾つ委員会があるのでありますが、その四十に余る委員会委員その他ずいぶん多くの特別職がありますが、これは自由にやれる。そのときに一般職員は、なぜわれわれだけこういうような取扱いをするのかといろ不平不満、割り切れないものがあるのじやないかと思う。それが一体一般業務の上にどう影響して来るかということが私は心配なんです。先ほどどなたか言われましたが、断じて野放しにしてくれというのじやない。職権を濫用したり、あるいは時間中であつたり、職場内における政治活動制限というものは、われわれの性質上やむを得ません。こう言つておるので、それ以上、うちに帰つてまでもいかぬ。しかも道路掃除をしたり、あるいは草とりをしたりする者、あるいは渡しの船頭さんまでいかぬというのであるから、実にわれわれは常識で判断できぬのですが、そういうものも禁止しなければならぬ。しかも非常に影響の大きい、利害関係の深い各種委員、その他の特別職をたくさんこしらえて、これは露骨に申しますと、政党が地盤を築くために推薦して出しているその人たちを禁止すれば、自分たちに不都合だから、これはよい、一般はいかぬ、そういう禁止の仕方は、私は全面的に反対でありますが、もしこれを強行した後において、実際の職員の日常業務の上に不平が起るか。いや、それはもつともです。あの人たちは特別職だし、私たちは一般職だから、やむを得ませんと言つて、何ら不平なくやられるか。これは経験のあられる、しかも関係の深い全国市長会の理事者側に当られるあなたが一番気持がわかつておられると思うから、その点心配ないといわれるか、その点があるかもしれないといわれるか、その点をお聞きしたい。
  58. 達林正吉

    達林公述人 お気持はよくわかりますが、例を国にとつて考えてみました場合に、お話のように両方一律に行つて行く、制限をするなら、同じように制限するということになりますと、内閣の組織でも同じようなことになる。民主政治、言いかえれば政党政治ということになるかもしれませんが、それを建前とする以上は、そういう結果になるのではなかろうか。公務員は、いわば行政事務の補助機関として、全体的に奉仕して行くという立場上、行政の中立性を保つて行くことが必要であれば、いろいろ御意見は出ると思いますけれども、ある程度の制限は必要なのではなかろうかと思います。
  59. 大矢省三

    ○大矢委員 私は公選になつた者をそうしろと言うのではない。従つて国家公務員の場合も地方公務員の場合も、私は制限してはならぬと考える。それは幾らやつてもよい。ただ一方だけして、しかも公選の方はやむを得ぬとしても、各地方法律條例に基いて任免する各種委員がたくさんある。それは一切特別職としてやられる。これは住民と深い関係があるが、私は何も政党がいかぬと言つたり、あるいは公選で行われた人にやつてはならぬと言うのではない。私はもともと国家公務員なり地方公務員に、これだけの嚴重な禁止にひとしいような大幅の制限をすることは反対である。やらぬ方がいいが、やるとしても、一体こういうことについて不便を感じないかということを聞いたのです。その点多少お聞き違いがあるようですが、それはそれでけつこうです。  その次に、きようは理事者といいますか、労働者、職員の関係からの両方の公述があつたのですが、中に特にどつちにも関係のない、いわゆる公平な立場の市政調査会の小倉さんからいろいろ実にいい意見を聞いたのですが、この法案の一番重要な点は、地方公務員に対して身分を保障し、しかも安心して職務に服せるように保護する法律である、いわゆる保護法だ、そのかわりに争議をやつてはならぬ、争議行為あるいは組合運動も相当に制限し、先ほど来申しますように、ずいぶん厳重な罰則もあるようであります。争議行為も全面的に三年以下の懲役、十万円以下の罰金に処するのだから、ずいぶんむちやなことをするものですが、それを押えたかわりに、公平委員会、人事委員会においてお前らの身分を預かるのだ、安心しろ、こういうのが言い分であり、説明でありますが、そこでこの法律の中で一番大事なのは、人事委員会の構成であり、運営であります。ところがこれを見ますると、国家公務員の場合と違つて、第一非常勤であります。人事委員会は三人おつて、それは常動じやなくてよろしい。その予算が国の場合には政府に要求し、政府がこれを削減した場合には、両方国会に出さなければならぬというので、それはなかなか経済的裏つけある権限を持つておる。これにはただ意見を付して理事者に提出するとか、勧告するとか、何らか処置をとるとか、処置をとりつぱなしで、それに対して守るとか守らぬとか、両方に対しても何らこれに対する拘束力を持たない、ちようど国で最も重要視した人事院、国家公務員の一番番頭、大目付の役である人事院でやる決定、さらに国鉄の裁定、そういうようなもので争議を抑圧し、禁止すると同時に、それにかわるべき仲裁裁判の裁定、人事院の勧告、これを二回三回やつても知らぬ顏をしておる、裁定になつても裁定を実施しておらない。こういう重要な国家のそうした裁判にひとしいような裁定、それがいまだに効力があるとかないとかいつて実施しない。いわんや賃金ベースのごときも、数回勧告しておるけれども、何ら実施しない。この地方の三人の非常勤の人事委員会公平委員会二つありますが、いずれにしてもどんな処置をとつていいのか、どんな勧告をしていいのか、それに対して義務づけられた拘束力というものはひとつも持つておらない。これでほんとうのいわゆる安心して君らが服せるという裏づけの委員会の権限の構成は、それらのいろいろなものについて至つて薄弱であるし、これでは安心ならぬというのがこれについての一番の心配なのであります。それを私公平な立場に立つて、この委員会を十分運用させなければだめだ——先ほどあなたの意見のように、公平にやるためには、人事委員は各政党に属してはならない、白紙に返れ、それはごもつともであると思う、そうでなければならぬ。それだけでなく、この法案に現われた意見を付して提出しろというようなことに対して、それに対しても、してもしなくてもいいということは道義上の問題であるかと思いますが、理事者の古い者はほつておく者もあるかもしれないが、これをもつと強制力を持つた勧告とする、勧告をなさない場合は、それに対して理事者を罰するような、何かいわゆる拘束力を持たなければ、これは私はほんとうの有名無実になると思いますが、その点は忌憚なく遠慮なしに御意見をお聞かせ願いたい。
  60. 小倉庫次

    ○小倉公述人 ただいまのお話の第一点、人事委員法文では常動または非常勤とございまして、むろん常勤のものを置こうと思えば置けますし、また三人のうち必要があれば一人常勤、二人非常勤ということは、実際運用の面で解決できると思つております。  第二点の人事委員会の権限が少いではないかという御意見、これは私もまつたく同感であります。ただこの制度が新しく発足し始めるわけでありますので、このくらいの権限を持たせてまず発足させて、この人事機関がほんとうに健全によく発達して行けば、私はお話のようにもつと権限を持たすべきだと思います。これは外国の事例を申し上げて恐縮ですが、アメリカの制度あたりをとられたのであるし、アメリカに発達した制度でございますが、アメリカあたりでも、人事委員会にはもつと権限を持たしてあるものがあるように聞いております。たとえば職員の給與表というものは人事委員会が作成するとありますから、人事委員会で作成したらそれによつて給與を出さなければならない。こういうようなことになつております。今はそこまで参つておりませんが、私はまずこの程度で発足して、その勧告を、今お話のように非常に軽々しくしておるということは、国の人事院の勧告についても私どもは遺憾に思つておりますが、これを尊重するというような政治道徳というか、政治慣習というものを皆様でおつくりにならなければいけないのではないかと思つております。ただこういう法律の上でやかましく書いてみたところで、それを守つて行く政治常識というものがなければほんとうに法律條文は生きて参りません。これは皆様議会人の方々がこういう政治慣習、道徳というものについてはこれからいいものを打立つて行く、地方に対しては中央は範を示すというふうにやつてほしい。これは私のよけいな希望でありますが、そういうふうに感じております。まず発足はこの程度でよろしかろうと思います。
  61. 大矢省三

    ○大矢委員 もちろん人事委員会は常勤でもよければ、非常勤でもよいのでありますが、国家公務員の場合でも、常任でなければならないと書いてある。これは常任でなくとも、非常勤であつてもよい。この点は非常に軽く見られておる。これが一つ。もう一つは私どもはうまく行つてほしい、行くであろう。これは人間が実際にこれを行使するのであるから、その道徳が高まり、責任感が高まらなければならぬということは、これは御意見通りであります。私は仮定に立つてものを言つておるのではなく、すでに二年間実行して来た国家公務員の人事院の勧告、その他国鉄裁定のいわゆる実施、そういう事実に徴して、こういうものをつくつてつても政府すらやれない。いわんや地方の自治体においてこういうものをつくつてもやれるはずはない。一方では政治活動、争議も一切禁止にひとしいことをやるというのは片手落ちで、これはできない方がいいのだが、できるとしても、こういう権限のない人事委員会というものはむだだと考えます。これから先は運営の方で、あなたの希望するようなことになればけつこうですけれども、どうも私は今までの実情から見て、安心ならぬのでお尋ねしたのですが、大体にあなたも、もつと強いものにした方がいい、またそうすべきだというふうにお考えのようでありますから、お答えは別として、これは今後実際問題として非常に困難な問題ではないか、かように考えております。
  62. 山手滿男

    ○山手委員 国民民主党の方でも、できるだけ地方公務員諸君の立場も考えて修正案をつくりたいと思つて、党の役員会なんかをやつて、全部よく聞きませんでしたものですから残念でありますが、私ちよつと聞いただけのことで、一点だけ東京都労連の河野平次さんにお聞きしたいと思うのであります。最初にお話があつたと思いますが、地方公務員法を出すこと自体については、出さなければならぬような必要性もいろいろあると思うというお話があつたように思います。そのあとで、政治活動制限などについてるるお話があつたのでございまするが、初めに一方において地方公務員法を制定する必要があるという見解を一言述べられたことは、これは聞いておかなければいかぬことである。この地方公務員法を通す上において、内容的に相当建設的なもので、あるから、地方公務員の立場からもこれを通す必要があるという御発言は、どういう意味であるか、もう少し内容をお話願いたいと思います。
  63. 河野平次

    河野(平)公述人 速記の方はどういうふうになつているかまだわかりませんが、私の発言したつもりはそういうことでないのです。不幸にして昭和二十三年の七月二十二日のマ元帥の書簡がある。それの関連において、国家公務員法の改惡なり、あるいは政令二〇一号の制定となつた。そのときは、ああいう情勢の中で、われわれとしては不満で反対であつたけれども、現実の問題としてはそういうことになつた、しかし今日の日本の労働運動の事情は非常に現実性を帯びて来ている。この期に及んで今までなかつた地方公務員法というようなものを制定する必要はないのじやないか。従つて地方公務員法の制定に対しては、基本的には絶対反対であるということを明確に申し上げたつもりです。基本的には絶対反対なんですが、絶対反対、絶対反対と言つておつたところで、外部から犬の遠ぼえのように騒いでおつたのでは、非常に内容の惡い法律がそのまま議会を通つてしまつて、われわれの絶対反対にもかかわらず、現実にはそれをそのまま強行される危險性が多分にある。そこおいてわれわれは、非常に遺憾なことであるけれども、事態はそういう情勢にあるので、次善の策としてその内容を最小限度こういうふうに修正していただきたいということを申し上げたので、何か私の言い足りないところがあつたかもしれませんが、そういう意味であります。
  64. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これをもつて本日の公述人の方々の陳述は全部終了いたしました。この際公述人の方々にごあいさつを申し上げます。  本日は地方公務員法案につきまして、あらゆる角度から貴重な御意見を承ることができまして、本委員会における今後の法案審査に多大の参考と相なりましたことを、ここに委員会を代表いたしまして厚く御札を申し上げます。  それではこの際委員の方々に申し上げますが、明日も公聽会でありまするので、なるべく定刻に御出席をお願いいたしたいと思います。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時五十六分散会