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1950-12-05 第9回国会 衆議院 地方行政委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月五日(火曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 龍野喜一郎君 理事 藤田 義光君    理事 門司  亮君       生田 和平君    池見 茂隆君       大泉 寛三君    門脇勝太郎君       川本 末治君    小西 英雄君       清水 逸平君    高塩 三郎君       圓谷 光衞君    中島 守利君      橋本登美三郎君    吉田吉太郎君       鈴木 幹雄君    床次 徳二君       山手 滿男君    久保田鶴松君       松澤 兼人君    木村  榮君       立花 敏男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         地方自治政務次         官       小野  哲君         総理府事務官         (地方自治庁次         長)      鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁公         務員課長)   藤井 貞夫君  委員外出席者         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君 十二月五日  委員小西英雄君辞任につき、その補欠として圓  谷光衞君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月四日  特殊喫茶店街設置に関する性的措置確立請願  (圖司安正紹介)(第四三六号)  地方公務員給與改訂に伴う平衡交付金補正の  請願加藤充紹介)(第四八七号)  地方公務員給與改訂並びに年末手当支給の請  願(松本善壽紹介)(第四八九号)  地方公務員法制定反対に関する請願松澤兼人  君紹介)(第五一七号)  同(福田昌子紹介)(第五一八号)  同(松本七郎君外一名紹介)(第五三〇号)  同外三件(堤ツルヨ紹介)(第五二二号)  平衡交付金配分率是正に関する請願(平野三  郎君紹介)(第五二五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  地方公務員法案内閣提出第一号)     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  前回に引続き地方公務員法案を議題として質疑を続行いたします。本案に対する質疑は第一章総則、第二章人事機関に対する質疑は、まだ若干残つておるようでありますが、これらを含めて本日第三章以下の全部にわたる質疑を行います。それでは橋本登美三郎君。
  3. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 次の質問者が参るまで、ゆつくり質問いたします。  小野政務次官にお尋ねいたしますが、大体この公務員法案について当局考えられるところは、原則にとどめて詳細の規定の点は、地方自治法によつて條例に主かせるという点にあることは、まことにけつこうと思うのであります。ただこの場合、従来政治活動制限せれなかつた部面が、相当部面において制限せられるのでありますけれども公務員建前上、政治活動がある程度制限せられることもやむを得ないと思うのであります。ただ実際上の問題として、大都市のような場合においては、たとえば上下水道の従業員、あるいは電車軌道従業員のごときは、公共企業体労働関係法に準ずる法律をつくつて、それによつて政治活動部面も認められることにたるのでありますが、小都市においては、單純労務者、あるいはこれを別な言葉で言いますれば、一種の自由労働に従事する公務員も、今回の公務員法によると、制限を受けることになつております。この点についてはいろいろ規定上においては困難があろうと思うのでありまするが、将来こうしたものをできるだけ政治活動制限から除く、こういうような意味合において、何らかの方法で将来これらの救済規定を設ける意図があるかどうか、この点についての御見解をお伺いしたいと思うのであります
  4. 小野哲

    小野政府委員 お答えいたします。ただいま御指摘になりましたように、この法律案はできるだけ根本的な基準を定めることにとどめまして、余はできるだけ地方公共団体條例にゆだねる、こういう建前をとつていることは仰せ通りであります。そのうちでただいまお話がござましたように、いわゆる単純労務者取扱い方でありますが、この点につきましては、單純労務者のごときは、その職務なり、あるいは責任等につきまして一般行政に携つておる職員とは、おのずから異なつているところがあるというふうに、私ども考えておるわけでございます。ただ問題は国家公務員法取扱い方と並行いたしまして、これを考えて行かなければならないと思つておりますので、この点につきましては、どういうふうな点について特例を設けて行つた方がよいかということについては、相当研究をいたさなければならない点があると思うのであります。單純労務者通常現業職員と言われておりますが、この職員につきましては何らか別途の措置を講じてはどうだろう、こういう御意見相当出ておるのでありまして、ただ一般の税によつてその経費がまかなわれておるという点から申しまして、一応一般職としてこれを取扱う建前をとつておるのでありますが、将来国家公務員法における扱いとも考え合せまして、具体的にどういうふうな処置をとるかということについては、政府におきましても十分に検討をいたして参りたい、かように考えているわけであります。従いましてただいま御指摘になりましたような事柄につきましても、これをどの程度扱い方にして行くかということも、おのずから結論が出て来るのではないかと思うのでございますが、さしあたりこの法律案建前国家公務員法との取扱い上の均衡を失しないように考えなければならない点から、この法律案におきましては、一般職として取扱うということにいたしておる次第であります。
  5. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 今の政務次官お話で大体了承いたしました。ただ将来において国家公務員法と合せて、この点について御研究願いたいと思います。なお一つお聞きしたいのですが、この條項によりますと、国家公務員法試験通つた者は、地方公務員の採用の場合において、この規定がそのまま準用せられることになつておりまするが、これは当然な措置考えてまするが、反面、地方人事委員会試験通つた者が、国家公務員に採用せられる場合においては、この規定がないようでありまするが、その点についての御見解をお伺いいたしたいと思います。
  6. 藤井貞夫

    藤井政府委員 お答えいたします。ただいま御指摘のように地方公務員法におきましては、国家公務員相当試験に合格いたしました者は、これを地方相当職種についての選考に合格したものとみなすことができるというふうになつておるわけでございます。しかしながら反面、地方公務員試験につきましては、相当職種についての試験に合格いたしました者を国家において同様の取扱いをされていないという点は、不都合ではないかというお話のように承つたのでございますが、この点についてはお話通り現状では、そういうふうになつております。しかしながら現在の取扱いといたしましても、相当包括的な、すなわち任用資格等につきましては、これに相当する者という條項がございまするので、この條項の活用によりまして、おのずからそこに妥当な線が引かれて参るというふうに期待をいたしまするとともに、将来国家試験制度がさらに拡充されて参りまする段階におきまして、また地方試験国家試験とが同様の権威を持つということに相なりましたあかつきにおきましては、人事院におきましても人事院規則に基きまして、かような取扱いがなされて参ることを期待いたしておる次第でございます。
  7. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 大体お話はわかりましたが、国家公務員法の一部改正が行われない限りは、この地方公務員法による人事委員会試験を通過した者は、国家公務員として採用できない、その点はその通りであります。従つて小野政務次官の申しました労務者の問題と、この点については、将来国家公務員法の一部改正の問題の場合においては、特に御考慮なさつて、常に地方国家との人事交流が可能なように、特に御配慮願いたいと思います。以上をもつて私の質問を打切ります。
  8. 前尾繁三郎

  9. 山手滿男

    山手委員 時間がございませんので、大体要点たけ重点的に大臣にお聞きしたいと思います。この法案の中心は、何と申しましても地方公務員政治活動制限の問題であろうと思うのでありまするが、この三十六條の規定は、その第五項に、「本條の規定は、職員政治的中立性を保障することにより、地方公共団体行政の公正な運営を確保するとともに職員利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。」こういうことが書いてあるのでありまするが、その辺のところを、大臣からこれを書きおろしたときの気持というふうなものを、もう少し具体的にお伺いしておきたいと思うのであります。
  10. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。これは特にこの條項において、そういうような規定を置いておりますが、しかしこの趣旨は、地方公務員法全体がそういう意味においてつくられておるのでございまして、書かなくてもいいことなのでございますけれども政治的行為、すなわち特に人権として尊重されておる政治活動制限を、公務員限つてするという意味におきまして、いわゆる一つ制限規定でございますから、制限する場合には特の愼重中立性を保障すること、すなわち本人の身分を十分に尊重してやるという意味において、注意の意味において書き加えておるわけでございます。この趣旨は、この法案をつくります全体の趣旨でございまして、書かなくてもいいような條項でございますけれども一般の国民としては、当然自由にあるべきものを、公務員であるがために制限する、その場合には最も公平、愼重に、また職員利益を保護するということを趣旨にしてやらなければいかぬ。蛇足でございますけれども、特に人権保護公務員保護意味において書き加えた次第でございます。何かはかに詳しいことでも御説明申し上げてよろしければ、政府委員から申し上げます。
  11. 山手滿男

    山手委員 この條文目的と言いますか、なぜこういうものを設けたかということは、今大臣の御答弁の中にもありましたように、この公務員中立性を保障するということが目的であろうと思うのであります。ところがこの規定から行きますと、もう全面的に地方公務員政治活動というものはできないという状態になるのであります。しかしながらこの法案の全部を通読して見ますと、地方公務員職権による影響力というものの及ばない地域にまで、政治的な中立性を強く要望することは必要がないのじやないかということが、強く感ぜられるのでございますが、その点についてどういうふうにお考えでありますか。
  12. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。大体において公務員として職務を忠実に守つて行きますれば、その地域において生活活動をしておるのでありますから、その地域だけに限ればいいような次第でございますけれども、しかし事実上公務員が職場を離れて、よその方面へ出て行つて活動するというようなことについては、おそらく予想されないと思いますから、広汎に限つてもそれでいいのじやないか、こう思つております。
  13. 山手滿男

    山手委員 今私がお尋ねいたしましたところの第三十六條の第五項というものの行政の公正な運営を確保するとともに、職員利益を保護することを目的とする、そういう趣旨で解釈され、運用されたければならないというところに、私は書かなくてもいいものを書いたという意味ではなしに、書かなければならない原因があるのだ、かように思つておるのであります。全面的にとにかく政治活動を禁止いたしまして、憲法によつて保障されておる個人としての権利までも、侵して行くというふうな状態に持つて行くということが、本法案本旨ではないのだ。できるだけその中立性を、職権の及ぶ影響力のあるところに限つて、その限度においてこれを制限して、よくそこを調和して行こうという考え方の方が、私は公務員のと言いますか、地方自治本旨によく沿つて行くゆえんではないかとかように考えるのでありますが、どういうふうにお考えでありますか。
  14. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お話は一応ごもつともでございますけれども地方公務員――東京都の人が青森県へ政治活動に行つたり何かされると、これは結局その公務員が、ほんとうの公務員の職責を果す点において、じやまになりはせぬか、こう思いますから、これで実際はあまり影響ないことじやないかと思います。
  15. 山手滿男

    山手委員 大臣の御答弁は、事実をまげた御答弁じやないかと思うのです。地方公務員の中にもいろいろな人があるのでありましようが、地方一つの市の吏員とか、あるいは町村吏員というふうなものが、ゆえなくして大阪府のものが青森県に選挙運動に行くというようなことは、それはもちろん想像することができないのであります。しかしそういうふうな下級吏員というものの政治的な影響力と言いますか、職権による影響力、そういう影響力があるからこそ、公共性があるからこそ、そういう職員は政治的に中立を守らなければならぬし、それが要請されるゆえんが出て来るのでございますが、そういうふうなわずかな地域にしか影響力が及ばないようなものが、たとえばAの町村からのB町村に行つたつて自分の職を奉じておりますところの、出身地の村には何ら関係のないことでございますから、運動しましても、大して地方自治本旨に反するような行動はしないと考える。それは決して大阪府の者が青森に行くとか、北海道に行くとかいうことでなしに、ごく近接な所で、当然これは起り得る問題であろうと思う。たとえていえば一人の町村吏員が、自分の親戚の者が立候補した。しかしそれは自分の奉職している公共団体管轄区域じやない。一里か二里離れたところで立候補した、それに応援に行く。その土地にとにかく犬馬の労をとりに行くというようなことは、これは今までの日本のしきたりからいたしましても、当然なことであります。それをむやみやたらに公共性というようなことで縛り上げて完全に地方公務員政治活動を締め上げてしまうということは事実と相違いたしまして、かえつて相当効果があるのではないかと思う。その点について大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  16. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。たとえて申しますれば、私は芦屋に住んでおりますが、芦屋の学校へ出ている教員とか、また芦屋市役所吏員、そういうものが一体芦屋に住んでおるかというと、そうではなく西宮や本庄村に住んでおるというようなことでありまして、自分の住んでおるところはここである。そして勤めておる市役所は、別の地方団体であるというような場合に、職員があまり混乱を起してはいけない、こういうことも考慮に入れておる次第であります。
  17. 山手滿男

    山手委員 どうも大臣の御答弁は、非常にしどろもどろと言いますか核心をついておらないように私は思う。取締りの緩急の点とか、あるいはその間にいろいろ幾分の困難があるというようなことではない。これは本質的にこの法案からにじみ出て参りますところの政治活動を、徹底的に禁止するという方向についてです。それはあくまで徹底的に禁止するという考え方ではなしに、公共性というものと、個人の持つております基本的な、憲法に保障された権利というものをどういうふうに調和して行くかということに、このねらいがなければいかぬし、特別の配慮がされなければならぬと思うのでありますが、必要以上のところにまで、何ら影響力の及ばない公共性を強く要求する必要のないところにまで、政治活動制限をきつくやりまして、縛り上げて行こうとするところに親心がない、そういうことによりまして、地方公務員というのは、山間僻陬の地におきましては、唯一のインテリでありますし、穏健な、しかも進歩的な、日本民主化の推進のにない手であると、私は思つておるのでございます。それなのに、そういう日本民主化のためにはきわめて必要な存在の芽を頭からぶつつぶしてしまうというような法案になつて行きはせぬか、逆効果の方が多いのではないかということについて、私はもう少し明快に御答弁願いたいと思うのでございます。
  18. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これは私は観点の相違だと思うのでございます。お説の点はしごくごもつともでございまして、その通りでございますけれども、しかし国家公務員法あたりと比較しまして、そして政治活動制限するという意味におきましては、私に地方公務員としても、このくらいな制限をして行かなければならぬ、こういう次第でやつたわけでございまして、仰せのごとくいろいろ御議論もございましようけれども地方公務員の一貫した体系といたしましては、この程度が一番いいのじやないか、こう考えておる次第でございます。
  19. 山手滿男

    山手委員 こういう制限を全面的に地方公務員まで及ぼして行くということになると、私はつり合い上から申しましても、いろいろな制限を今後各界にやつて行かなければならないのじやないかと思うのであります。なぜかと申しますると、同じ公務員でございましても、これは国家公務員についても同様なのでございますが、比較的上級な者と下級公務員との影響力というものは、きわめて差がひどいのであります。上級公務員は、最近におきますと、参議院の選挙があれば、すぐ次官級のところが退官をして出る、そうして退官あいさつをじやんじやん出して、合法的な脱法行為をどんどんやつている。何のことはない、それは退官あいさつのための退官あいさつじやなくて、選挙に備えるということで、きわめて明らかなる職権濫用をやつておることは明白なる事実でございます。そういたしますと、やはり今後地域的に全面的に禁止するということではなくて、これは時間的にも、退官後二年なり、三年なりというものは、公職にはつけないとか、いろいろな制限を、もつと厳格にやつて行かないと、地方公務員なんかのように、きわめて影響力のない者とのつり合いがとれて行かないようになると私は考えるのでございますが、大臣はどうお考えでございますか。
  20. 岡野清豪

    岡野国務大臣 いろいろお説もございましようけれども、しかし私は地方公務員というものの立場から考えまして、やはりこのくらいな制限はあつてしかるべきである。またそういうような大官方面のことは、また別に考えなければならぬだろうと考えます。今のお説の実情は私も認めます。でございますから、その大官政治活動というものに対して、いろいろ弊害でもあれば、またこれは別な観点からその大官に対する態度を考え直さなければならぬ、こう考えております。
  21. 山手滿男

    山手委員 どうもあまり御親切な御答弁が得られないのでございますが、まあこのぐらいにいたしておきまして、次に五十五條でございますが、五十五條規定をいたしておりますところの職員団体当局との交渉の問題でございますが、この場合、交渉を申し入れた場合には、その当局交渉に応じなければならないのかどうか、その辺のデリケートな雰囲気を、もう少し御説明願いたいと思います。
  22. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 交渉に関してお尋ねでございますが、これは登録を受けた職員団体に対しまして、交渉することができるという一つ権利を認めておるわけでございまして、この相手方になりました当局は、これに応ずる義務があると、私ども考えております。
  23. 山手滿男

    山手委員 応ずる義務があるということが、はつきりわかつてけつこうだと思うのでありますが、そういたしますと、当局が応じまして交渉を開始いたしましたならば、当局職員団体との交渉は、どういう立場交渉をすることになるのか、言いかえまするならば、対等立場交渉し、対等のとりきめをなすということになるのかどうかその点をひとつはつきりしておいていただきたいと思います。
  24. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 労働法体系において言つておりますような罷業なり、あるいは団体協約について意見が合わなかつた場合の調停、仲裁、そういうような一つ裏打ちを持ちました意味での対等立場交渉はできない、かように解釈しております。
  25. 山手滿男

    山手委員 そういうものの裏打ちをされたような対等交渉ではないという話でございましたが、そこでこの書面による申合せを結ぶという裏打ちが、この後にされておるわけでありまするが、その辺と、その対等という立場を、もう少し私はよく関連さしてお話を承りたいと思います。
  26. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方公共団体当局と、職員団体との間におきまして交渉をいたします。要するにこれは話合いをいたすわけでございまするが、その話合いの結果として意思合致がございました場合におきまして、これを單に口頭の話合いによる意思合致のままにとどめておきませんで、書面による申合せということにして、その意思合致を明確ならしめておるというのが、この書面による申合せを結ぶという意味でございます。
  27. 山手滿男

    山手委員 書面による申合せを結ぶということなんでございまするが、その場合、協定と申しまするか、あるいは労働三法にうたわれておりまする協約というふうなものと、書面による申合せというものとの響きというものが、どういうふうに違うとお考えなのか。私はもつとはつきりしておいていただきたいと思います。
  28. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 勤労を公務に捧げておりまする者と、單なる私企業に従事いたしておりまする者との間におきましては、そこにやはり全体の住民奉仕者であるかないかという意味の違いがあるわけでございまして、そういう建前におきまして、その公務員使用者は全住民であるわけでございまして、私企業の場合におきまするように、管理者が同時に使用者であるというような立場に立たないわけでございまするから、私企業の場合におきまするような意味団体協約というような形のものはないわけでございまするが、しかしながら條例なり規則なり、法令等に牴触しない限りにおきまして、話合いの結果意思合致するということは、当然あり得るわけでございまして、それを書面によつてさらに明確にいたしておくということでございます。
  29. 山手滿男

    山手委員 その場合書面によつて明確にしておくというふうなことでございまするが、何らかの故障によりまして、書面による申合せが履行不十分な状態になるとか、あるいは蹂躪されるとかいうふうな場合に、職員組合はどういう措置がとり得るか。その点をもう少し承つておきたい。
  30. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 申合せの結果といたしまして、その申合せに基きまして、地方公共団体当局はそれぞれこれに一定の道義上の責任を持つことに相なると思いまするが、その問題に関しまして、たとえば給料をさらに千円上げてもらいたい。そういうふうな條例をひとつ次の議会に提案するように努力してもらいたい、こういうようなことにつきまして、地方団体の長との間にもしも意思合致しないという場合を考えてみますると、もしも長がその一旦約束いたしましたことに関しまして、なかなか実施の措置に入らないというような場合に関しましては、勤務條件に関する措置要求という第四十六條に規定いたしておりまする方式によりまして、人事委員会に対して適当な措置がとられるように、要求をすることができるわけでございます。
  31. 山手滿男

    山手委員 そこで第八條に、人事委員会は、「職員給與勤務時間その他の勤務條件に関する措置要求を審査し、及び必要な措置を執ること」ができるというふうに書いてあります。ところがその前を見ますると、第七号には人事委員会は「職員に対する給與支拂を監理する」ということが書いてあります。必要な措置をとるということが規定されてありまして、人事委員会は当然必要なる持置をもつて臨まなければいかぬ。しかしながらまた第七号におきましては、「給與支拂を監理する」という條項が一項入つておるのでございますが、そういうものの関連は、どういうふうに解釈したらよろしいのでございましようか。
  32. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今御指摘の第八條第九号にございまする勤務條件に関する措置要求を審査して必要な措置をとることと申しますることの具体的な手続は、四十六條ないし四十八條規定をいたしておるわけでございまして、その必要なる措置といたしましては、審査の請求がございましたならば、人事委員会はこれを審査いたして、自己の権限に属する事項は自分でこれをやり、他の機関の権限に属する事項は必要な勧告をする、こういうことになつておるわけでございます。第七号の方は、これは給與に関する、たとえば給料表というような條例、いろいろございまするが、そういう成規の手続に従つて、各任命権者が給與を支給しておるがどうかということを監督し、見る、こういう意味でございます。これは全然別の問題であります。
  33. 山手滿男

    山手委員 しかし私は全然別個なものとは解釈しきれないような條項ではないかと思う。今の必要な措置要求した場合にこの措置要求の内容というものが、書面による申合せの履行というふうな内容を持つておりました場合に、これは当然この法律によつて履行を請求しておるのでございます。ところがこの八條の第七号を見ますると、職員給與がこの法律及び條例に適合して行われることを確保するために監理するというふうになつておるのであります。書面による申合せの履行を請求いたしまして、そうしてその必要な措置をとつてもらうということは、この第七号の法律ということの中にも、広義に含まれて行かなければいかぬ。当然そう解釈すべきが、この條文で行きますと妥当なものと考えるのであります。これを別個と言われるところに私は疑義があるのであります。
  34. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第五十五條をごらんいただきますと、五千五條規定いたしておりますことは、「職員団体は、法令、條例地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程にてい触しない限りにおいて、」書面による申合せを結ぶことができる。と申しておるのであります。そこでたとえば給料の基礎ベースを千円上げてくれるようにひとつ條例を提出してくれ、こういうことはそれ自体としては第五十五條の第二項には牴触いたさないと思いまするが、そのこと自体は、法律要求のありましたそれによつて給與を支給しておるかどうかということを監理せよという、第八條七号の、その場合の法律の中には含まれて来ないことになるわけでありまして、これはこの交渉の結果何らかの形において給料表が改正されるということに相なりまするならば、その改正された給料表を、定めておりまする條例に適合して行われておるかどうかということは、監理の対象に相なりまするが、まだ海のものとも山のものともわからない、そういう要求自体を基準にいたしまして、給與支拂いを監理するということは、これは不可能なことでございます。
  35. 山手滿男

    山手委員 そういたしますと、この監理ということは、具体的にはどういうことを含むのであるか。地方公共団体は、御承知のように今日地方財政がきわめて不如意でございます。平衡交付金はわずかしかないし、起債のわくはきわめてきゆうくつになつておる、地方税はほとんど半分しか入つて来ないというふうな状態になつております。その場合に市町村議会の方に、いろいろなことを申し出るとかなんとかいう、あるいは理事者か任命権者、そういうものにいろいろ協力を申し出るというふうなことが、私は監理ではないかと思うのでございまするが、その場合に人事委員会は、現実に地方自治体の金庫に金がない場合に、どういうふうにしてこれを監理するか、監理の具体的な内容というものはどういうものをいつておるのかお伺いしたいのであります。
  36. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第八條の第七号におきまして、「職員に対する給與支拂を監理する」ということを申しておりまするのは、要するに給與が適正に行われておるかどうか、條例合致して、あるいは法律合致して行われておるかどうかということを見るわけでございます。この二十六ページのところをごらんいただきますと、「給與に関する條例には、左の事項を規定する。」と、こう書いてあります。たとえばここで「昇給の基準に関する事項」というのがございますが、昇給の時期に達しておるのにかかわらず、いまだ昇給をしないようた例がありはしないかどうか。あるいは超過勤務手当を支給すべきであるにもかかわらず、いまだこれを支給しないものがありはしないかどうかというようなことを監視いたしますのが、第八條第七号の規定いたします人事委員会職員給與に関する監理権でございます。
  37. 山手滿男

    山手委員 鈴木次長の御説明でございますが、第七号のこの監理という規定からいたしますならば、第二十五條の給料表や何かのことにあずかるとか、あるいは適正に行われておるかどうかを見て行く、こういうふうなものは私は監理じやないというような響きがあるように思う。この点私はどうも今の説明では納得行かないのでございますが、それはそれだけといたしまして、五十九條でございますが、五十九條の「地方自治庁は、地方公共団体の人事行政が、この法律によつて確立される地方公務員制度の原則に沿つて運営されるように協力し、及び技術的助言をすることができる。」という條項でございますが、この條項は私はどうも地方自治本旨と行き違つた逆の條項じやないかというふうな気がするのであります。それを入れなければならなくなつた理由というのを、ひとつお示し願いたいと思います。
  38. 小野哲

    小野政府委員 一応お読みになりまして、そういうふうな感じをお受けになるのじやないと思うのでありますが、地方自治庁設置法によりまして、地方自治庁におきましては、政府地方団体との間に立ちまして、種々調整あるいは連絡の職務に当ることになつておるわけでありまして、この新しい地方公務員制度が確立されますと、かような地方自治庁本来の使命にかんがみまして、これが適正に運用されるように、あるいは技術的な助言をしたり、あるいはまた御相談相手になるということは、地方自治庁の本来の任務として当然のことであろうと思うのであります。決してこれがために特に監督権を行使するとか、さような意味合いのものではございませんので、従つてただいま御心配になつておりますような地方自治体の自主権に対して拘束を與えるというふうな意図のもとに、立案をされたものではないのでございます。
  39. 山手滿男

    山手委員 これはそうおつしやるのが当然だろうと思いますが、法律の体裁といたしましては、地方自治庁の設置の本旨からいいましても、これは当然なことであつて、私は五十九條の規定はむしろこの法律には入れなかつた方がよかつたのじやないかという気がいたすのであります。いろいろあるのでございますが、ほかにも質問の通告者もあるようでございますから、私はこの程度質問を打ち切つておきたいと思います。
  40. 大泉寛三

    ○大泉委員 関連してお伺いいたします。山手さんの質問に対して大臣答弁が、自分が本案に初めから賛意を表しておる立場と、あまり違つておりますので、伺いたいと思います。山手さんのおつしやるのは、地方公務員を、影響力のない他の区域外において政治活動制限するということは、何ら制限する必要はないのじやないかという御質問に対して、大臣は取締りの点とか、あるいはわれわれの考えている以外の答弁をされたのであります。私はこの地方公務員政治活動を禁止するのが目的であることは、はつきりしていると思う。だからこれは他の区域外の場所であろうと、何ら区別すべきものではない。そして権力を持つている者、いわゆる影響力のある者、知識の程度において地方民の指導的な立場にある者が、政治活動をするということは、結局官僚的な政治活動になり、あるいはまた往年の軍部が政治に関與して政治を独裁的に牛耳つておつたと同じことになる。こういうようなことが、結局地方政治の公正を脅かして危險に導く、こういう立場から、私は今度の地方公務員に対する政治活動の禁止を規定しているのであると思うのです。その点において私ども考え大臣考えは、ちよつと違つておりますから、この際しつかりした御答弁を承つておきたいと思うのであります。
  41. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの御説はその通りでございまして、その通りであればこそ、やはりこの原案になつておる次第でございます。それで例を申し上げますと、芦屋に住んで西宮の市役所に勤めておるという人間が、西宮の市役所吏員であるから、西宮だけで政治活動制限して、ほつておいたら芦屋でやるということになるものですから、それで結局大泉さんのお説の通り趣旨で出ておる次第なのでございまして、私の説明の仕方がまずいものですから、そういう誤解が起きたと思うのであります。
  42. 藤田義光

    ○藤田委員 私は人事院総裁にいろいろ質問したいのでございますが、質問の途中に見えましたら、人事院総裁に移りたいと思います。幸い岡野国務大臣もお見えになつておりますから、四、五点お伺いいたしたいと思います。  まず第一点は、この五十五條規定でございます。先ほど山手委員からも御質問がありましたが、書面による申合せという原案になつておりますが、これを協定にした方がすつきりするのじやないか。たとえば英語に直せば同じアグリーメントという言葉である。申合せとされた理由をいま一度お伺いしておきたいと思います。
  43. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これは御承知の通りに、その第一項に「但し、これらの交渉は、当該地方公共団体当局団体協約を締結する権利を含まないものとする。」こういうことに実はなつております。それで第二項でそれを受けておるものですから、もしこれを協定するということになりますと、団体協約でもできるのじやないか、こういうような疑いがあるという考えで、申合せという言葉に直しておる次第でございます。
  44. 藤田義光

    ○藤田委員 国家公務員法とこの法案を比較いたしまして、最も重大なる相違点は、三十六條と附則の二十項だと思います。三十六條に関しましては、先般来るる質問もありましたし、先ほど山手委員質問いたしておりましたので、割愛いたします。附則の二十項におきまして、公営企業に従事する職員の別途の取扱い規定してあります。これは地方財政法六條にいう、いわゆる公営企業従事者は、たとえば国家公務員における国鉄、專売従業員と同列に考えてよろしいかどうかという点でございます。あるいはこの二十項に基きまして、公営企業法というものをおつくりになる考えのほかに、いま一本労働関係法というようなものもおつくりになりまして、單純労務者のごときものを将来それに包含されるような御予定もありますかどうか、この際お伺いいたしておきます。  さらにこの第二十項に基く特別の法律というものは、大体いつごろおつくりになる御予定でありますか、この三点をお伺いしておきたいと思います。
  45. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。附則の第二十項でございますが、これは本来この法案をつくります経緯から申しますと、こういうことを考える筋合いではなくて、地方行政と申しまするのは、ほとんどサービス行政でございますから、こういうことが本来の地方の仕事である。こういう意味におきまして、一般公務員と何ら差別することはいらないじやないかというような意向で、実はこれを二十項に加えましたことは、ごく最近のことなのでございます。しかしながらよく考えてみますと、国家においても国鉄とか、專売公社とかいうようなものが、特別扱いを受けておる。同時に地方においても、やはり地方財政法第六條でございましたか、にあげられておりますところの公営企業と申しますものは、それによく似ておるものであるから、これはやはり何とか別扱いにした方がいいだろうというような考えから二十項を入れまして、それで急速にそれに対する特別の法的措置をしたい、こういう考えで附則にあげておるわけでございます。これに対してはもうすでに構想をまとめまして、立案をしつつある次第でございまして、最も近い機会においてこれをやつて行きたい、こう考えます。  それからその次の点は現業員の点であろうと存じますが、これもやはり同じことでございまして、地方公共団体におきまして、ほんとうの現業だけをやつておる人と普通の一般職員、すなわち行政事務に携わつておる公務員とは、若干性質に差があるように認めます。ただしかしこれは国家公務員法におきまして、そういうような現業を取扱つている人も、やはり同じく一律に国家公務員法によつて律せられておるような関係もありまして、これについては国家公務員法と並行しまして、地方公務員法においても現業を別扱いにしようと考えておりますが、それにはやはり国家公務員法の現業のものを合せて一連として、何とか新しい法案をつくろう、こういうことになつております。これも今関係方面並びに人事院あたりと交渉を続けておるので、これもできるだけ早い機会にわけてしまいたい、こう考えております。
  46. 前尾繁三郎

    前尾委員長 藤田君、人事院総裁は、渉外関係で出席できないそうでございます。
  47. 藤田義光

    ○藤田委員 先般もちよつと質問いたしましたが、重ねてこの機会にお尋ねしておきたいのでございますが、いわゆる單純労務者はこの原案が通過すると仮定いたしますると、地方公務員法によりまして、一般公務員と同列な扱いを受けるわけでありますが、仕事の実態が相当一般公務員と相違いたしておりますが、この一般公務員單純労務者を同列に取扱うことの弊害は、先般るる申し上げましたが、もし一般公務員と同列に扱つた場合、單純労務者に対して何か特別な利益がありますかどうか、立案者にこの際お聞きしておきたいと思うのであります。
  48. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 現在御承知のように、地方公務員法に関しましては、例の政令二〇一号というのが適用に相なつておりまして、この状態におきましては、かりにいろいろ不利益な処分がございましても、これを何ら持出すところがございませんのでありまして、いわば切捨てごめんのようなかつこうにもなつておるのでございますが、この地方公務員法案が適用されるということに相なりますならば、たとえばその意に反して免職をさせられたというような場合におきましては、この法律規定によります不利益処分の審査というようなことが行われるわけでございますし、さらに基本にさかのぼりましても、この法律なり條例の定めておりまする事由に該当いたしません限りは、その地位を奪われないというような身分の保障もございます。しかもこの法案が、職員利益保護のために規定しておりまするような面が、適用せられることになつて参るわけでございまして、現在よりはさらに身分の保障がつくなり、利益が擁護できるであろう、かように考えております。
  49. 藤田義光

    ○藤田委員 第八節に規定いたしております職員の福祉及び利益の保護に基くいわゆる恩給法的な規定でございますが、たとえば四十四條に「退職年金又は退職一時金の制度は、すみやかに実施されなければならない。」という規定がございますが、これに関しまして全国地方公務員に対し、何か画一的な法律でもお考えになつておりますかどうか、考えておられるとすれば、いつごろ具体化されるのか、お伺いしておきたいと思います。
  50. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方公務員の恩給制度と申しますか、退職金あるいは退職一時金の制度でございますが、これは藤田委員も御承知のように、現在非常にばらばらに相なつておるのでございまして、従来官吏でありましたものにつきましては、恩給法が適用されることになつておりまするが、その他の者につきましては、あるいは地方団体の恩給に関する條例によつて行われておりますけれども、雇用人のような地位にあります者につきましては、都道府県の国家公務員共済組合に入つております者が、長期の給付を受けることに相成つております以外には、市町村等におきましては、そのような保証がまだないのでございます。これはすみやかにそういうような雇用人の地位にあります者につきましても、そのような差別的な待遇を一切やめまして、ひとしく恩給の利益を受けるようにいたさなければならないと存じておりまするが、もつと全体の問題として考えますると、国の公務員地方公務員とは交流がございまするし、そういうような場合の在職年限の通算というような問題も考えなければなりませんし、また地方公共団体公務員相互の間におきまして、警察におきましても、消防におきましても、あるいは教育公務員にいたしましても、相互の交流が相当あるわけでございまして、この間の在職年限の通算というようなことも必要でございます。そういうような見地から、将来の問題といたしましては、地方公務員全体を通じましての一つの恩給制度を確立し、それと国家公務員の恩給制度との間に結びつけをつける必要がある、かように考えておるのでございまして、現在社会保障制度審議会で養老年金その他のことにつきましての勧告案が出ておりまするが、そういうようなものとの関連におきまして、また国家公務員の恩給制度も目下改革案が逐次研究せられつつありますので、そういうものとにらみ合せまして、地方公務員全体を通じましての恩給制度の確立ということに、努力をいたして参りたいとかように考えております。
  51. 藤田義光

    ○藤田委員 あと二点ですが、五十七條の、いわゆる職務と特殊の責任を持てる職員に対する特例法、すなわち鈴木次長の御説明に、いわゆる教職員の特例法は、大体いつごろ具体化されますかということ、及び具体化される場合におきまする政府の所管官庁を、この際はつきりさせておいていただきたいと思います。
  52. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 五十七條の規定を基礎にいたして存立いたしまする教育公務員特例法でございますが、これに関しましては地方公務員法案との関係におきまして、若干調整を要するところがございますので、そのようなものに関しましては、地方自治省と文部省両当局の間におきまして、共同いたしまして改正案をすでに用意をいたし、目下関係方面と打合せ中でございまして、この法案が国会において、審議せられ御可決いただきまするならば、すみやかにそれに即応いたしまして、教育公務員特例法案の方の改正法立案を提案するようにいたしたい、かように考えております。
  53. 藤田義光

    ○藤田委員 政府当局において立案された場合におきまして、担当する官庁はどちらになりますか、ただいまの自治省の御説明では、自治省と文部省の共同研究のようでありますが、その点をお伺いしておきたいと思います。
  54. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは地方公務員であるという点におきまして、地方自治庁が所管をいたしまするし、教育公務員であるという点におきまして、文部省が所管をいたすわけでございまして、両省庁の共管事項でございます。
  55. 藤田義光

    ○藤田委員 最後にお尋ねいたしたいのでありますが、この公務員法が実施されますると、いろいろ制限が加わる反面において、職員に対するいろいろな恩典も規定されております。いろいろな見地からして、公務員の研修ということが非常に重大な問題になつて参ります。この点に関しまして簡單に先般小野政務次官のお答えをいただきましたが、この際岡野国務大臣に、自治に携わる公務員の研修に関しまして、何か具体的な構想がありましたら詳細この際御発表願いまして、われわれの審議の参考に供したいと存じます。
  56. 岡野清豪

    岡野国務大臣 先般政務次官からお答え申し上げたと私伺つておるのでありますが、御承知の通りに新憲法によりまして、地方の自治というものはすつかり形貌を異にいたしまして、新しい自治制度というものが、これから行われなければならぬ。こうなりますと今まで携わつておつたところの地方公務員では、十分な新しい制度の自治行政というものができて行かないじやないかという懸念を、藤田委員もお持ちでございましようが、われわれとしては特にそういうことを考えている次第でございます。でありますから、この新自治行政というものを、新憲法通りにやつて行きますためには、今までいられる地方公務員の方の再教育をして行かなければならぬ、こういうことがまず第一。また新しく地方行政に携わらんとする地方公務員に対して、ほんとうの意味の近代化したところの自治行政をする人を養成しなければならぬ。こういうようなことも考えられるわけでございます。私の構想といたしましては、まずとりあえず研修をやるということもうたつてございますが、もう一歩前進いたしまして、できるならば、自治大学というような機関を創設いたしまして、全国地方公務員に対して、りつぱな公務員になつていただける教育をして行きたい。こう考えまして、私は三、四箇月以来構想を練つておつたのでございます。しかるところ、これは関係方面でもたいへん私の考えに対して賛意を表して全面的の協力をする。こういうような内意を受けている次第であります。その自治大学の構想といたしましては、むろんただいま自治省においていろいろ起案をしましたことがございますが、これを概括して申し上げますれば、自治大学をつくつて、一面古い吏員の再教育をするという人を教育する。こういうこともございますし、またその機関の大学の中に、いろいろ施設を設けて、世界各国の知識をとり入れまして、自治研究を進めて行く、また同時に地方公共団体がいろいろの施設をしたり、またいろいろな立案をする。そういうようなことがございます場合に、それに相談に応じて、参考のいろいろな意見なり立案をしてやろう、こういうこともございますし、また自治団体がお互いに相連絡するように、自治会館をつくりまして協議するような方法もとりますし、また図書館をつくるとか、もしくは模範的の職員をつくつて地方公共団体が最も経費を節減して、また国民の福利施設をやつて行く、健康を保險して行くというようなことも指導し、同時にその指導する機関もつつて行きたい。またもう一つは、もしできますならば、單に日本内地において再教育するばかりでなく、地方公務員の自治大学を卒業いたしました優秀なる者を世界各国に派遣しまして、外国の知識も與えてやる。こういうことにしたい。その時期といたしましては、ただここではまず公式に御発表申し上げるわけには行きませんけれども、私の考えといたしましては、アメリカの大きな財団から相当な御援助を願えるような見通しがついておる次第でございます。そういうことができますれば、地方公務員が再教育され、また新しく公務員にならんとする人が、りつぱな地方行政の知識を得る。また見解を広くするためには優秀な人は外国にまで行ける。こういうようなことで、地方自治の確立をする意味におきまして、地方公務員が非常な希望を持つて公共団体の自治に專念する。こういうような精神的なねらいも持つている。大体そういうような構想を持つている次第でございます。
  57. 門司亮

    ○門司委員 きのう大体二十三條までの質問をいたしておきましたので、きようは二十四條から末項までの総括的の各條にわたる私どもの質しておきたいことを一言聞いておきたいと考えているのであります。その前に同僚各位に御了解を得ておきたいと思いますることは、昨日の午前中は、ほとんど委員の出席がなくて、審議がはばまれております。従つて本日の審議に対しましては、委員長もそのつもりでおつていただきたい。と申しますのは、私に相当な時間を貸していただきたいということであります。私個人は出て参つておつたのでありまするが、與党の委員の出席がきわめて惡く、昨日は午前中の審議をサボつておつたのであります。私どもはこういうような法案に対して、その審議の時間をサボつたということについては、その責任は……。     〔発言する者多し〕
  58. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛にしてください。今までずいぶん逐條審議も合同審査もいたしましたから、ダブらぬようにしてやつていただきたいと思います。
  59. 門司亮

    ○門司委員 努めてダブらぬようにいたします。その前に一応岡野国務大臣にお聞きいたしたいことは、財政上の問題であります。これは先ほどからいろいろ議論されておりますように、この法律が通過いたしますと、ただちに出て参ります問題は、この人事委員会を設置しなければならない五十一の団体であります。都道府県が四十六と五大都市との五十一の団体に、この委員会をただちに設置しなければならない。そういたしますと、これの経費は非常にたくさんいるということが、実は言われているのであります。せんだつての知事会議に――というよりも、むしろ知事の代表としておいでになりました内山神奈川県知事の言によりますれば、大体これは五十人くらいの人間が必要である、同時に神奈川県等においては、庁舎を持合せておらない。東京都においても私は同じだと思います。従つて庁舎の設備からしなければならない。そうすると相当多額の費用を要する。従つてそれらの費用の面も一応考えてもらいたい。こういう話が実はあつたのであります。ところが地方自治庁から参考に出されておりますものは、わずか二十名でよいというような算定の基礎が出されて、参考案としてわれわれに配付されている。知事は新しい庁舎が必要であり、それには調度調弁費というものが見積られていない。單に人件費を二十人ぐらいに見積つて書いている。こういうことで一体この法律を完全に遂行するということは私は困難であると思う。こういう点からそれぞれ人事委員会の設置に対する物の考え方というものは、なるたけ攻撃の少いようにするという形で、この出された参考資料というようなものは、まつたく私どもの目をごまかすと言うと語弊がありますが、ごく少数に見積というような、刺激をなるたけ少くするような考え方でやられているということは、実施のあかつきに大きな支障があるのではないか、こう実は考えるのであります。  そこで財政の問題でお伺いいたしておきたいと思いまするが、地方財政が満足に十分やつて行けなければ、地方公共団体運営はできないということはわかり切りている。ことに現在問題になつておりまするものは、地方公務員の年末の賞與であるとか、あるいは来年の一月から給與ベースの改訂によりますところの増給であるとか、これらに要します費用は、すでに御承知のように、当然地方の負担分、あるいは平衡交付金の後における地方の増加分というようなものを、地方財政委員会が最小限度に見積つて参りましても、百二十三億いる。  なお地方公共団体は七百九十億の経費の中から百分の五の四十億を節約することとして、なおかつ八十三億の費用がなければとうていやつて行けない。これは起債は別であります。それにもかかわらず、政府では三十五億しかないというようなことではとうていやつて行けないというような陳述があり、さらに勧告が国会に内閣を通じてなされて、当委員会では、その問題を一応とり上げて参りまして、これを全会一致で政府に善処方を要望するように、予算委員会にこれを回付した。こういう実情にありまするときに、私どもは財政の問題についての今までの質疑応答の中に、大臣は財政の問題については自分の所管の外である。従つて自分地方財政委員会意見を取次ぐ役目ではあるが、しかし責任はあたかもないような言辞が弄せられ、ことに予算委員会におきまする大臣の発言は、自分はただその間の使いである、メツセンジヤー・ボーイのようなものであるとまで極言されたのであります。しかもその場合における大臣の最後の答弁の中には、閣内におけるこれらの責任自分にあるということを言われておる、ここに非常に大きな矛盾がある。大臣責任を追究しなければならない。今までわれわれは大臣立場というのは、法規の命ずるところ、なるほど地方財政委員会は大なる所管事項ではないでありましようが、しかしわれわれは大臣があくまでも地方財政の問題については閣内における責任者として、答弁要求することに努めて参りましたが、大臣は先ほど申し上げましたように、自分はただ單なるお使いにすぎないというようなことで、今日まで過されておる、こういうことと、予算委員会においては、閣内における責任自分であるということを言われております。この答弁の食い違いに対して、予算委員会におきましては、今までそういう言葉があつたとすれば、速記録を調べて全部取消すということを、大臣ははつきり明言されております。従つて私はこういう予算を伴います重要な問題が出て参つておりますときに、あくまで地方財政に対しまして、大臣はこの席で申されましたことも、自分責任の上において答弁されたように解釈していいのか、あるいは單なるお使いとして答弁されたということに解釈していいのか、その点をまず最初に明確にしておきませんと、予算委員会における大臣答弁と、本委員会における大臣答弁との食い違いが出て参りますので、その点を一応この機会にただしておきたいと考えておるのであります。
  60. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。先般の予算委員会において申し上げましたことについて、重ねて御質疑がございましたが、連絡員であるとか、メッセンジヤー・ボーイであるというようなことは、小林委員が私に対してそうおつしやつた言葉なのでありまして、お調べになればわかります。この際はつきり申し上げたいと思つておりますことは、(「まつたくその通りじやないか」と呼び、その他発言する者あり)静かにお聞きください、地方自治庁設置法の中に私の立場がはつきり書いてあります。と申しますことは、第三條に国と地方公共団体の連絡をはかることというのが、私の職責の一つとしてあるわけであります。それで連絡をするのが私の仕事である、こう申したのであります。それから第九條に「地方自治影響を及ぼす国の施策の企画立案及び運営に関し、地方自治権擁護の立場から必要な意見を内閣及び関係行政機関に申し出ること。」ということがございます。その意味におきまして、私は自治権擁護の立場を尊重いたしまして――地方財政委員会という独立の権限を持つているものでありますが、この地方財政委員会要求に対して、ここに書いてある通りに必要な意見を内閣に申し出て、そうして努力した次第でございます。でございますから、いずれお聞きになると思いますから先走つて申し上げますが、地方財政委員会が八十三億も要求しておるのに三十五億しか政府は出さないではないか、こういうことでございます。その使いわけを申し上げますれば、私は地方財政委員会が八十三億ほしいということは十分認めまして、八十三億やつてもらわなければならぬということに努力をいたしております。従つて閣内においていろいろ議論もし、勉強も奮闘もしまして、そうして最初の補正予算では平衡交付金は九億しか出なかつたのを、三十五億まで押し上げて出してもらうことにしたのでございます。しかしそれが八十三億要求しておるにかかわらず、三十五億しか出たかつたということは、中央の財源がどうしても三十五億しか出ない、こういうような閣議の意見になりまして、それで決定したわけでございます。でございますから、私は三十五億で不足であるということは、地方財政委員会立場に立ちまして申し上げました。しかし今度は三十五億でがまんしてもらわなければならぬということは、閣僚の一人としてがまんしていただきたい、こういうような立場になつておるのであります。そういう次第でございますから、私はこの連絡の職責を十分盡くすと同時に、内閣に対して地方財政委員会の希望を、十分反映さして努力したことは、皆様おそらくお認めと存じます。私が地方財政委員会との連絡関係において、いかなる立場にあるか申しますならば、地方財政委員会に対し、地方財政に関する資料の提供を求めること、これだけでございます。しかしながら地方財政委員会との関係は、御承知の通りに第九條に「地方自治権擁護の立場から必要な意見を内閣及び関係行政機関に申し出ること。」ということの職責がございますから、地方財政委員会もひつくるめて、両者の間に立つて大いに努力して、連絡しておる次第でございます。
  61. 門司亮

    ○門司委員 そういたしますと、大臣のお考えは、地方自治庁の設置法に書いてある通り自分は動いておるから、財政上の問題については依然としてただ單に収次ぐだけである。閣内において自分はそれを取次いで、そうしてできるだけの努力をした。それ以上のことは自分には考えられないというか、むしろ自分の努力を認めてもらいたいというお話でありました。われわれも努力を認めぬわけではないのであります。実は大臣の努力も大いに認めておるわけであります。そこで私の聞いておきたいと思いますことは、もし大臣がそういうお考えであるといたしますと、この地方財政を十分責任を持つて、ほんとうに閣内に反映して、そうして国の財政と地方の財政とが対等立場において、これを閣内において十分審議のできるような何らかの措置を講じなければ、地方財政というものは永久に国の財政の下に置かれる、というと語弊がありますが、第二次的に考えられて、地方財政が非常に困る状態に陥る結果、今日のような状態が出て来るということを、われわれは考えておりますが、この間に対する大臣の所信を、きわめて簡單でよろしいのでありますが、御披瀝が願えるならばけつこうだと思います。
  62. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただこれは私の微力のいたすところでございます。ただいま御説明申し上げましたように、地方財政に対しましては、この設置法に書いてあります通りの職責しか勤まりませんけれども、もし私が非常に有力でございましたら、おそらく地方財政が思う通りにやつて行けるのだろうと思います。でございますから、結局といたしまして、この前塚田委員仰せのごとく、八十三億というものを要求しておる。それをそのまま予算にとつて来いといつて、とつて来石刀がありますれば、この地方自治擁護の立場から必要な意見を内閣に通告しただけで、とれるのでありますけれども、しかしそれがとれなかつたということは、結局私の微力のいたすところでございます。この点は御了承願います。(「委員会の決議はどうするのだ」「そんなことは問題はない」と呼び、その他発言する者あり)しばらくお待ちください。でございますから、国会に対して責任をとれとおつしやれば、結局私出身が責任をとらなければならない、こういうことになります。(「その通り」)その通りでございます。
  63. 門司亮

    ○門司委員 私は大臣に対して、実はそういう答弁を求めたわけではない。大臣が微力であるとか微力でないとかいうことで、これが左右されるようなことであつては、地方財政が非常に不安であります。従つて大臣がいずれの大臣でございましようとも、これが十分閣内に反映して、そしてさつき申し上げましたように、国の財政と地方財政とが同じような立場で、審議のできるような、何らかの法的処置をここで講じられておかないと、いつまでもこういう状態に置かれるということは、地方財政の面から見て非常に危險だ、こう考えておりますので、この点が今の地方財政法に定めております地方財政委員会の権限と、さらに自治省設置法によります、今大臣が読まれました規定だけでは、われわれは安心ができませんので、これはどんなに有力な大臣がおいでになりましても、私ども安心ができない。そこで安心のできるように、何らかの法的処置を講ずる必要が、もう私は生まれておると思う。それに対する大臣のお考えは一体どうであるかということをお聞きしておるのであります。
  64. 岡野清豪

    岡野国務大臣 門司さんのお説の通りでございます。でありますから私はこれは制度の欠陥だと存じます。でございますからできれば地方自治権擁護のために、今後りつぱに地方財政が国の財政と同じような歩調で、また地方を大いに財政的に確立してやらなければならないということが考えられた場合には、内閣の主管の事項としてすぐ取上げられるように、法的に変更をして行かなければ、私は目的が達せられない、こう考えております。
  65. 門司亮

    ○門司委員 私は今の大臣答弁でいいと思いますが、さらにこの議会に突つ込んで、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、この場合、ただ内閣の所管というだけではなくして、他の法的処置によつて、ある程度こういう問題の解消ができるのではないかと考えられる。それはたとえば従来ありました地方配付税法が廃止されて、平衡交付金法にかわつて来ております。従来の地方配付税法によりますならば、当然地方の団体が既得権として所得税並びに法人税の百分の三十三、一四を地方に還元しなければならないという法律に基いて、今の平衡交付金相当いたしまする金額というものが、地方の当然の権利として、現在の地方財政委員会でございまするが、旧来の自治庁の財政課において、これが十分に処置ができたのであります。ところがその権限がまつたくとられてしまいまして、地方から参つて来ますところの財政需要額と收入とを見合せて、そのアン・バランスだけを平衡交付金によつて支給するというようなことで、その力というものが大きく国の予算の中に関係を持つような形になつて参りましたので、第一義的に国の予算が考えられて、地方の今やかましく言われておりまする旧来の地方配付税に匹敵いたしまする平衡交付金が非常に削減されても、地方としては何らこれに対して文句を言うことができない。さらに地方財政委員会としても、法的根拠がございませんから、これまたいかんともしがたいというような状態になつておりますので、私はこの地方財政平衡交付金法の改正をする御意思があるかどうかということを、この機会にあわせてお聞きしておきたいと思うのであります。
  66. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私今回補正予算の件につきましてその非常な難関にぶつかつたのでございます。でございますから、門司さんのお説とはまつたく同感でございまして、今後いろいろな方面において法律改正でもして、地方財政がほんとうに確立するようにして行かなければならぬ、私はこういう考えを持つております。
  67. 藤田義光

    ○藤田委員 先ほど来門司委員地方財政に関する非常に有益たる質問があつておりますが、実は先般当委員会で決議をしております。少くともわれわれといたしましては党利党略を離れまして、先ほど来大臣の御答弁もありました通り、法の不備、欠陷もある、しかし現実に非常に深刻な地方財政の状態であるから、これを打開するために、何らかの国会の意思表示をしたいという、いわゆる地方財政を愛する一念から出た決議であつたと思います。従つてこの際委員長にお尋ねをし、意見をお聞きしたいのは、おそらくごく最近の機会に、本会議において、委員長地方公務員法の報告をされるだろうと思います。その際におきまして、先ほど来岡野大臣答弁されました通り、現在の機構法令にはいろいろ欠陷がございます。これは当委員会の一致した見解であるということを、ぜひ一つ会議において言及していただきたい。と同時に非常に冷静、中正なる立場から、ああいう決議もあつたというようなことを一言加えていただきまして、当委員会で常に地方財政に直接関連して審議しておるわれわれといたしまして、この際法の不備もあり、実際の機構にも欠点があるということを認めながら、そのままこの国会を通すということは、いかにも国会の審議権の建前からいたしましても、特に新憲法下、委員会が国会の中心機閥になつておる建前からも、非常に不自然ではないかと思いますので、この際委員長のお気持を拜聽いたしまして、ぜひ本会議ではその点を含めた御報告を願いたいと思いますが、いかがお考えでありますか。
  68. 前尾繁三郎

    前尾委員長 考慮しましよう。
  69. 門司亮

    ○門司委員 それでは逐條に入りたいと思います。私は、昨日は、例の十四條と一十六條の関係を一応あわせて聞いておりまするので、この機会に二十六條は省略したいと考えておるのであります。ただちに二十八條に移りたいと思いますが、三十八條に書いてありまする適格性の問題であります。この適格性ということは非常にむずかしい問題でありまして、これの認定を一体どういう形で行われるかということと、それから今までの地方行政の中で、私が最も杞憂いたしておりまするものは、この中に書いてありまする制度の改廃であるとか、あるいは定数の改廃であるとかいうようなことで、予算の減少というようなことから、あるいは一課一係というものが廃止されて、そのことのために必然的に人員の整理が行われるということは、この法律で見まするならば、至つて当然であつて、この通りでなければならないと考えておりまするが、地方に参りますると、われわれの体験したところでは、これが人事を更新するというか、人事の更迭をむりにしいることのために、一つの課あるいは係が廃止されてそういうことが行われるようなことが往々にしてあるのであります。従つてこれらの問題は、私はこの機会に、やはり職員の自由なる権利を保護いたしまするためには、惡い言葉で言えばそういう陰謀といいまするか、ときの各課係の改廃のできないような規定の制定が、この機会に必要でなければ、どんなに擁護するといいましても、理事者の考え方で、そういう課を廃して明日また同じような課をこしらえるというようなことを、今までの地方の自治体には、私ども往々にして散見したのでありまするが、この点の防止がなされていないようでありまするが、それに対するお考えは一体どういうお考え方をお持ちになつておられますか。
  70. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この職員の分限に関しますることは、この法律に直接規定いたしておりまするほかは、すべて條例によらなければならないということにいたしておりまして、地方議会の自主的なる決定がなければ、地方限りにおきましては制度的な改正ができないという建前に相なつておりまするから、それぞれ地方の実情に応じまして、地方法律ともいうべき條例において、御心配になるようなことがないように、規定されるであろうと考えております。かりに具体的に不利益なる処分が行われました場合におきましては、どういう理由で、そういう処分をするかという処分説明書を、本人に必ず交付する建前にいたしておりまするし、その他の審査の問題もございますので、そういうことによつて事後にくつがえされる危險がございまするから、任命権者といたしましても、十分愼重に事を運ぶであろう、かように考えております。
  71. 門司亮

    ○門司委員 鈴木さんは実際をよく知らぬのじやないかと思うのですが、法律はこういうことで一応納得ができるのでございますが、しかし実際問題として、條例できめまする予算の改廃等については、市会にかけると思いますが、――大きな問題はむろんかけなければなりませんが、その場合にもさつき申しましたように、課の廃止、あるいは係の廃止というようなことは、條例で定められるのであります。これが今までは往々にして陰謀的に、たとえばあの局長はどうもけしからぬ。しかし首を切る理由がないから、あの局をひとつ小さくして、局長をなくしておいて、まず一段階として局をなくすということが考えられて、まず首を切られる。しかしその局が必要であるからといつて三月なり半年たつと、また同じような局ができ上つて、新しいポストができるというようなことが、今まで往々にしてあつたのであります。従つて私は、やはりそういうものをここに十分に列記しておかないと、そういう陰謀的の職員の身分に関することの不利益な処分が行われる危險性がありやしないかということであります。これが一つと、非常に急いでおいでになりますので、二十八條は全部一まとめにしてお伺いしますが、二十八條規定の中の最も私が憂慮いたしますものは、この規定の本文に休職という文字が入つておらない。そうして三項には降任、免職、休職という文字が八つておる。ここに私は大きな一つの問題があると思います。この休職の処置というものは、在々にして長年休んでおります病人等にはこういう処置をとられておる。これは結核その他の問題については処置が私はとられると思いますが、どうして一体この本文にそれを入れかかつたかということ――三項に休職という文字を入れて、二十八條の本文の中にこれが入つておらないか、この点をひとつお聞きしておきたいこと。もう一つは、二項の二に、「刑事事件に関し起訴された場合」こう書いてありますが、なるほど検事が起訴いたしまする場合には、罪があるとして一応起訴することには間違いはないのであります。従つて一応これは最も犯罪を犯した者に近い容疑者であるということを申し上げても、決して間違いではない、しかし裁判の結果、いろいろな事情から、刑の裁量等というようなことでなくして、全然それが事実無根であつたという場合が、必ずしもないわけではないのであります。これらの救済規定が設けてない。日本の刑事訴訟法にありましても、この無実の罪によつて拘束されております間というものは、これを当然弁償することになつておるというような規定を設けておるにもかかわらずこの法律の中には、それらの者を救済する規定を設けておらない。ただ單に起訴された者に対しては、免職あるいは降職するというようなことになつておりますが、この処置はあまり苛酷過ぎはしないかと考えておりますが、その点は一体どういうふうにお考えになうておるか。
  72. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 二十八條の二項におきまして、「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」これを休職の事由に該当させておいて、一定の年限がたつたら免職になるかならぬかという点を明確にしてないのは、どういうわけかという点が第一点のお尋ねのようでありますが、これがかりに休職中の者でございましても、これを免職いたしまする場合におきましては、やはり二十八條の第一項の分限の規定に該当いたさなければ、これを免職することはできないわけであります。従つて現在一応休職にいたしておきまして、あと一定年限たてば当然免職になるというようなことには、相ならぬわけであります。  それから刑事事件に関し起訴された場合は、どうするかということでございますが、これは御承知のように、刑事事件に関して起訴されました場合におきまして、裁判の結果をまつて事をきめるということが、愼重なる手続を要することとしては適切であろうと思いまするので、刑事事件に関し起訴されました場合には、これを一応休職にすることができるといたしておるのであります。必ず休職にしなければならないという従来の建前をとりませんで、休職にすることができるという建前にいたしております。しかし休職にいたしましても、それを免職いたしまするかどうかということは、その後裁判の結果を見、あるいはその進行状況とにらみ合せて、またその他の免職の事由等がございましたならば、そのときには免職というようなことが行われるかも存じませんが、そのこと自体ではただちに免職ができるということには相ならぬのであります。
  73. 門司亮

    ○門司委員 おそらくそういうことになると思う。そういうのは、一番最初に聞きましたように、この本文の中に私はこういうことを、はつきり明記しておくべきであつた。本文の中に明記しないで、言い訳的にこういう休職という文字が一番最後に使われておるということは、法律の体裁からいつて、私は非常に疑義を生む危險を持つていると思う。  大分急がれておるから、それ以上聞きませんが、二十九條は質問を省略するといたしまして、次の三十一條でありますが、三十一條の宣誓の問題であります。この宣誓の問題について、服務の宣誓はどういうことを考えられておるのかということ、これは非常に重要な問題でありまして、御存じのように、憲法第十九條には思想及び良心の自由が認められておのであります。この良心の自由というのは、一体どういうふうに御解釈になつておるか。市の條例その他が非常に惡いものであつて、良心的にこれに賛成ができないが、しかしそこに就職しようとすれば、その良心を曲げてこの宣誓をしなければならないかということであります。これは一体憲法の第十九條との関連は、どういうようにお考えになつておるか。
  74. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 一般の市民が公務員としての生涯を選ぶかどうかということは、その公務員のまつたく自由なる自己の意思決定に基くわけでございます。ひとたび公務員になるということを決定いたしました場合においては、ここにありまするような形の服務の宣誓を行う。これは公務員としての性格が全住民奉仕者であるということから、派生いたして参りますることでありまして、当該地方の公共の利益のために服務する、こういうことを宣誓いたしますることは、むしろ公務員としての服務を公正ならしめる上において、適切であろうと思います。
  75. 門司亮

    ○門司委員 一応そういう解釈も私はできるかと思いますが、これは非常にむずかしい問題でありまして、職を求めまする者が、ほんとうに職のない、ことに現在のような状態のときにおきましては、自分の良心を曲げても職が欲しいということで、結局職につくというようなことになつて来ると思いますると、この宣誓は正しい宣誓ではないということである。私はこの点をもう少し明快にしておきたいと思うのであります。
  76. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ここで宣誓と申しまするのは、これは大体国の場合の一つの例でございまするが、たとえば「自分は主権が国民に存することを認める日本憲法に服従し、かつこれを擁護することを固く誓います」ということと、「かつ国民全体の奉仕者として公務を民主的かつ能率的に運営すべき責務を自覚し、国民の意思によつて制定せられた法律を尊重し、誠実かつ公正に職務を執行することを固く誓います。」こういう趣旨の服務の宣誓を、それぞれの地方団体において行うことになるわけでございまして、御心配のような良心の自由を拘束するというようなことは、全然ないつもりであります。
  77. 門司亮

    ○門司委員 私にはよく納得が行かぬのでありますが、次の三十四條をひとつお聞きしたいと思います。三十四條は御存じのように、秘密事項の問題であります。ここに職務上知り得た秘密を漏らしてはならないということが書いてあるのでありまするが、もとより秘密を守らなければならないということは、官吏としては当然であります。従つてこの法律だけを見まする場合には、一応これが秘密であるということは当然であるように聞えまするが、実際問題として、現在の官庁で行つておりまする秘密の範囲であります。御存じのように官庁には非常に秘密という言葉が多くて、そしてそれにはマル秘があつたり、極秘があつたり、あるいは四角な秘があつたり、いろいろな秘があるのでありまするが、一体こういうものがすべて秘密事項と考えられておるかどうか。秋はこの秘密事項に対しましては、ある一定のいわゆる定めがなければならないと考えておりまするが、この條項にはそういう定めがないようでありまするが、何でもかでも課長さんや局長さんなんかがマル秘の判を押せば、それはもう絶対に秘密事項であるというように考えて参りますると、非常に取扱いが困難になりまするのと、それからさらに秘密事項に対しまする概念といいまするか、そういうものが法律で一応ある程度のとりきめといいますか、制約がなされておりませんと、今までの官僚の秘密主義――いわゆる表に対する秘密主義であります。裏では決して秘密主義ではありません。そしてこれは問題を起しておりますが、この官僚の最も惡い面であります表に対する秘密主義が、ことさらに大きくなつて、知るべきはずの人が知つておらないで、知らなくてもいい人――單に利害関係のあるような人たちだけが裏から、マル秘であろうと極秘であろうと、よく御存じになつているというようなことが、私はここに出て来ると思う。ここに官僚の秘密主義の弊害が生まれて来ると思いますので、秘密主義の制度を設けられることはけつこうでありますが、秘密の事項に関しましては、もう少し詳しくここに事例をはつきりしておくべきではなかつたかと思うのであります。これに対する御意見はどうでありますか。
  78. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 職務上の秘密に属する事項の発表とか、あるいは証人になりました場合の発表、そういうようなことに対しましては、それぞれたとえば地方議会につきましては地方自治法、その他いろいろ規定があると存じまするが、そういうもので考えておりまするのと同じような意味におきまして、職務上の秘密に関する事項を考えておるわけでございまして、これはそれぞれの地方公共団体におきまして、職務上の秘密に属するものとして、明確に定めておりまするものであるということに相なると思います。
  79. 門司亮

    ○門司委員 そういたしますると、「知り得た秘密」と書いてありまするので、たとえば税務吏員その他がいろいろなことで財産上の調査をし、あるいはいろいろな身上の調査をいたすと思いますが、これは主としてそういう個人に対する非常に大きな信用に関係しておりますものの秘密であるのか、あるいは市町村行政の上における秘密事項であるのか、その点をもう少しここに明確に記載をしておいていただいた方がいいと考えますが、この点に対する考え方は、一体どうでありますか。
  80. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 職務上相手のいろいろ個人的な事項について知り得た事項、こういうものを多くの法令等におきましては、秘密事項として漏らしてはいけないということを規定いたしておるものが多いわけでございますが、そういうものももちろんここに入るわけでございます。
  81. 門司亮

    ○門司委員 その次には三十六條でありますが、三十六條の政治活動に対しまする問題については、非常に長い間議論がされておりまするし、また私も相当突つ込んで実はお伺いをしておりまするので、この條項についてはきわめて簡單に一言だけお聞きしておきたいと思います。それはもう申し上げるまでもなく十分御存じのように、憲法で定められておりまする基本的人権というものが、この一つ法律で大幅に制約されようとしておる。従つてこれに対しで私どもは実際の問題として、こういうことを制約するということには、非常に反対であります。しかし地方公務員であるという建前から、ある程度の制約は、私どもは必要だと思うが、それに対して全面的にこの規定のようにまつたく何もできない――「公の選挙又は投票において投票するように、又はしないように勧誘運動をすること。」はできないとなつておりますと、これは選挙運動というものは、まつたくしてはならない。投票だけの権利を認めておるということである。こういうことではほんとうに自由に與えられた選挙権利というものが、非常に冒涜されまするので、私どもはこの事項については絶対に反対をいたしておりまするが、しかし今まで長い間各委員からいろいろ聞かれておりますので、私は答弁要求はいたしません。  この機会にもう一つつておきたいと思います。政治行為というものの中で、公務員の問題について特にお聞きをしておきたいと思いますことは、地方自治法の十二條でありまするか、それに定めておりまする、例のリコールの問題であるとか、あるいは條例の改廃に対しまする運動であります。これは一体政治運動と御解釈になつておるかどうか、この点をひとつ明確にしておいていただきたい。
  82. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方自治法に定めております解散、解職の請求等におきまする投票は、三十六條第二項において言つておりまする公の投票の一つでございます。
  83. 門司亮

    ○門司委員 私がさつき聞いておりますのは、住民條例の改廃を請求する権利を持つております。この自治法に定められた住民権利とこれは一体どういうように関連を持つか、これは政治運動であるとあなたの方はお認めになるかどうか。
  84. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ここに書いておりまするのは、ただいま條例の改廃について、たとえば署名運動を企画するということに相なりますると、これは第二項第二号の「署名運動を企画し、」ということに該当いたしまして、政治的行為制限にひつかかることになると思います。
  85. 門司亮

    ○門司委員 そういたしますると、地方自治法に定めておりまするこの住民権利というものが、たた單に署名運動であるからいけないということになつておりますと、この署名の範囲は――そうなると私はだんだん拡げて聞かなければなりませんが、この署名というものは一体いかなるものを署名というのかということであります。たとえばいろいろ社会的に運動がある。平和を促進しようというような署名運動がある。これも一体一切できないのか。一切の署名運動というものをやめるのか。たとえばPTAがある問題を陳情しようといたしまする場合に、このPTAの会員であることのために公務員はこれにも参画することができないのか、そういうふうに署名というものを、非常に広義に解釈されて参りますと、選挙運動あるいは政治活動以外に、非常に大きな制限を受ける結果になると、私は考えておりまするが、こうなつて参りますと、地方公務員というものはまつたく自由を束縛されて、ほんとうに朝役所へ行つて晩に帰つて来れば、それでいいということだけに限られてしまうということでは、地方公務員としての與えられた基本的人権というものは非常に阻害されて、人としてのまじめな生活が、私はできなくなるというように考えておるが、この署名の範囲をそういうように拡大、拡張していいのか、どの辺までこれを拡大して考えられておるか。
  86. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 非常に政治的行為制限が強いように仰せになりますが、職員が單に政党の党員になる、あるいはある政治的の識見を持つ、あるいは政党の党大会におきまして、單に自己の考えていることを主張する、あるいは新聞、雑誌等に單に研究の労作を主張する、こういうようなことは一向にさしつかえないのでございます。今の和運動に対しまする署名というようなことに関しましても、もしもそれが「特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持」したり、反対したりする目的がないのでございまするならば、一向にさしつかえないわけでございます。
  87. 門司亮

    ○門司委員 どうも今鈴木さんの御答弁では、われわれはつきりわからぬのであります。従つて私はその限界を実は聞いておるのでありまして、これが地方公共団体影響しないものであつたら、いいとかいうようなことを言つておりますが、たとえば純真たPTAの会員であつて、学校が壊れておるから、これを直してもらいたいというような運動も、これは地方自治体に大きな影響を持つております。そういうものも、鈴木さんの答弁では一切政治活動であるかどうかということを伺つたのでありますが、一切署名運動はいかぬということになるのでありますか。
  88. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいま御引例になりましたようなことは、まつたく自由であります。
  89. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、署名の範囲というものを、この法律でも今少し明確にしておかぬと、私はそういう疑義が必ず起ると思います。さつき申し上げておりまするように、PTAの問題も地方自治体に、財政的に非常に大きな関連を持つておりますので、あなたはここでいいと言われておるが、これを曲げて解釈されると、必ず地方の自治体に関係するということで、これは明らかに政治行為だということになる。従つて私はこの点をもう少し明確にしていただきたいと申し上げておる。
  90. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この点は法律案の上に明確に規定いたしておりますので、ただいま申し上げましたことは、法律の言葉をそのまま私は申し上げたのであります。
  91. 門司亮

    ○門司委員 それならばこう解釈してよろしゆうございますか、特定の団体あるいは政治結社でないものが行う、いわゆる政治に常時関連しない団体の行う署名運動というものは、いかなるものがやつてもいいかということであります。そこでもしそうだといたしますと、さつきのリコールの問題が起ります。リコールをやりますものは、必ずしも政治団体に所属している者がやるとは限らぬと私は考えております。そうすると、政治団体の行為ではない。従つてリコールの署名をするということはいいか、私は疑問が出て来ると思います。そういう点を私は明確にしていただきたいと思います。
  92. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この政治的行為制限は、一方において政治的目的を持つている、一方においてここに列挙せられた政治的行為に該当する、この二つの要件が合致いたして、初めてここに禁止せられる政治的行為になるのでございまして、政治的目的は、ここに明確に「特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて」――これが一つの政治的目的であります。いま一つは「公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、」この二つが政治的目的でございまして、この二つの政治的目的をもつて署名運動を企画し、主宰をするという場合には該当いたすわけでございまするが、單に政治的団体に所属しておる者がやつたからというだけでは、ただちにこの結果に相ならぬのであります。
  93. 門司亮

    ○門司委員 そういうことになつて参りますると、私はこの解釈の上から行きまして、いわゆる住民権利を定めるこの地方自治法改正を一応しておきませんと、どうしてもそういう誤解を生じて来るおそれがあるというふうに考えておりまするが、地方自治法改正をされる御意思があるかどうか。
  94. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その必要は全然ないと考えます。
  95. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に松澤兼人君。
  96. 松澤兼人

    松澤委員 私の方もむりに審議を延ばすつもりはないのであります。門司君が大体逐條的に逐つて行きますならば、私どもも別にあらためて第一章、第一條からやる意思はございません。その点はよく御了解くださいまして、門司君が飛ばしたところでありますが、三十五條の「職務に專念する義務」ということについて少しお伺いしたいと思います。  職務に專念する義務ということは、まことにけつこうな規定でありまして、これはもちろん公共団体から給與を受けている職員としては、当然のことであると思うのであります。しかしここで問題になりますことは、この規定国家公務員法の中にあるのでありまして、国家公務員法では百一條に「職務に專念する義務」というのがありまして、大体この三十五條規定が最初にあり、それから第二項があつて、第三項には御承知のように政府から給與を受けながら、職員団体のために活動することはいけないという規定があるのであります。この規定地方公務員法によりますと、五十二條職員団体規定の最後の五項のところに「職員は、地方公共団体から給與を受けながら、職員団体のためその事務を行い、又は活動してはならない。」こういう規定があるのであります。これが国家公務員法の第百一條第三項但書に規定しておりまするところでは、但し、職員人事院によつて認められまたは人事院規則によつて定められた條件または事情のもとにおいては、職員団体の活動をすることができるという立て方になつております。この百一條の規定を分割して「職務に專念する義務」とそれから給與を受けながら職員の団体のために活動をすることはできないという、こういう立て方につきましては、私は別に異議をさしはさみませんけれども国家公務員法においても、但書において、人事院または人事院規則が定める條件または事情のもとにおいては、職員団体のために活動することができるという規定があるのに、なぜここのいわゆる職務に專念する義務の中において、それを規定されなかつたのであるか。この点であります。
  97. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 御指摘のごとく国家公務員法の立て方とは、若干違つておりまするけれども規定をいたしておりまする事項に関しましては、何ら差異を設けておらないつもりでございます。と申しまするのは、第五十五條の第一項の前段におきまして「登録を受けた職員団体は、條例で定める條件又は事情の下において、職員給與勤務時間その他の勤務條件に関し、当該地方公共団体当局交渉することができる。」ということを、明確に規定いたしております。これは何も執務時間内においてやるということを、わざわざここに書いてあるのではないのでございまして、要するに勤務時間中において、しかも給與を受けながら、地方公共団体当局職員団体交渉できるということを規定しているところに、この実益があるのでありまして、ここに書いております意味は、ただいま御指摘に相なりました三十五條の職務に專念する義務並びに五十二條の第五項の給與を受けたがらやつてはいけない、こういう二つの規定に対する特例規定といたしまして、職員団体給與を受けながら、かつ勤務時間中において、当該地方公共団体当局交渉することができる、こういう趣旨で書いておるのであります。ただそれに関しましては、條例が定める條件または事情のもとにおいてやらなければならぬ、こういうことであります。そのことは御指摘になりました国家公務員法の百一條の第三項におきまして、但書に「人事院によつて認られ又は人事院規則によつて定められた條件又は事情の下において」という制限と、全く同じでございまして、何ら他意あるものではないのでございます。
  98. 松澤兼人

    松澤委員 五十五條を御引用になりましたから私もそのところに触れます。なるほど條文の体裁はまつたく同じになつておるのであります。しかし国家公務血法におきましては、「職員は、」となつており、こちらの方は「登録を受けた職員団体は、」ということになつており、登録を受けた職員団体は云々ということは十分わかるのであります。しかしながら国家公務員法では別段その規定がなくて、職員が国から給與を受けながら、そういういわゆる專従者の仕事をすることができるという規定になつておる。五十五條はそうではなくして、登録を受けた職員団体のみが、勤務時間中に当局交渉することができるということで、この幅は相当大きなものだと思うのであります。この点についてはいかがですか。
  99. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいま御指摘の点は、第三十五條の特例といたしまして、職員が一定の団体のために事務を行うということは、この條例にこれを定めまして、そういうことが可能になるように考えております。
  100. 松澤兼人

    松澤委員 どういうふうになるのですか。個人職員給與を受けながら、條例で定める條件のもとにおいて、組合の職員団体の活動に従事することができるということは、どこにその條文があるのですか。
  101. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この五十五條は、要するに職員団体交渉することができると申しますることは、結局団体という抽象的なるものがあるわけではないのでございまして、結局自然人である職員交渉することができるということであります。職員が要すると勤務時間中給與を受けながら交渉することができる。こういうことを五十五條は同時にうたつておるものと、私ども解釈いたしております。
  102. 松澤兼人

    松澤委員 ここには「登録を受けた職員団体は」ということが書いてあるのでありまして、たとい職員団体でも登録を受けない職員団体もある。登録を受けない職員団体は、條例の定める條件及び事情のもとにおいて、いわゆる勤務時間中に交渉することはできない。それから個人としても、職員給與を受けながら、そういう職員団体の活動に参加することはできない。消極的にいえばそういう結論が生じて来ると思うのでありますが、どういう條文個人もできるし、登録をされていない職員団体もできるということになりますか。
  103. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この点は先ほど申し上げましたように、第三十五條に基きまする條例の中で、組合事務に專従いたしまする者に対しまして、休暇を與えるということを、規定せられるであろうことを予定いたしておりまして、将来條例につきましての準則等を示しまする場合におきましては、その趣旨を明らかにいたしたいと考えているのであります。
  104. 松澤兼人

    松澤委員 三十五條では、特別な定めがあれば、「勤務時間及び職務上の注意力」云々と書いてありまして、これは職務に專念しなければならないという規定であります。従いまして條例に特別の定めがある場合には、極端のことをいえば、職務に專念しなくてもよいという結果が生れて参ります。しかし今申しましたように、国家公務員法の中に規定しているように、職員は、人事院に認められ、または人事院規則の定める條件または事情のもとにおいて、職員団体が活動するという、積極的な容認というか、承認の規定が、どこにもないのであります。今申しましたように、專従者の問題は、この條例で定めればよいということは、あなたの見解でありまして、私はこの條文を読みまして、そういう結果は生れて来ないと思うのです。
  105. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 三十五條は今申し上げました通りの解釈を私どもいたしておりますが、五十五條で、登録を受けた職員団体は、当局交渉することができるといいますのは、さつきも申し上げましたように、職員団体を構成しておる職員が、給與を受けながら、かつ勤務時間中において交渉することができるということでございまして、国家公務員法の第百一條の第三項に「職員は、政府から給與を受けながら、職員の団体のため、その事務を行い、又は活動してはならない。但し、」云々とこう書いてございますが、それと同じような結果になると、私ども解釈いたしておるのであります。
  106. 松澤兼人

    松澤委員 ちつとも同じくない。全然違うと私は思う。片方は団体ですし、片方は個人です。少しも同じくないと思う。これを同じだとお読みになるということは、よほどどうかしていると思う。はつきりと国家公務員法の百一條で「但し、職員は、」とこう書いてある。片方は「登録を受けた職員団体」と書いてある。これは大きな相違があるということは、おわかりになると思うのですが、御好意でもつて職員団体に加入しておる者は、個人として勤務時間中でも一定の條件のもとにおいて当局交渉することはできるというふうに、解釈されないことはありません、それは次長の御好意によつて、そういうことはできるようになるかわかりませんけれども法律條文からいえば、片方は個人職員であるし、片方は団体であるし、しかもそれは登録を受けた団体ということになる。これは大きな相違だろうと思います。
  107. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第百一條の第三項の解釈は、松澤さんの方が詳しいかも存じませんが、今問題になつておりまする第三項の但書は「人事院によつて認められ又は人事院規則によつて定められた條件又は事情の下において、第九十八條規定により認められた行為をすることができる。」といいますのは、その前の本文を受けておるわけでありまして、本文は、職員団体のために、職員がその事務をやるかやらないかということをいつておるわけでありまして、それに対する例外として、こういうことをいつておるわけでございますから、職員が單に職員としてやるということをいつておるのではないのであつて職員団体のことをいつておると思うのであります。そうして職員の団体と申しますのは、国家公務員法におきましても、同様に職員団体として一定の條項に該当しておるものだけをいつておるわけでありますから、その間に何ら差異はないと私ども考えております。
  108. 川本末治

    ○川本委員 本法案は本文が六十二條、附則二十項という、あまり大部なものではありません。しかるに本委員会は本国会の開会当初から、連日日曜をも加えまして、長時間にわたつて審査を続けております。その間文部、労働、人事の各委員との連合審査も二日間これをやり、さらに委員外資問をも数時間許しておりまして、各委員の御質疑を承つておりますると、すでに同じところを二回、三回繰返して御質疑になつておるところもないとはいえない例が、現状でありますので、さように繰返しておりましては際限がございませんから、この辺で質疑を打切られんことを、動議として提出いたします。
  109. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ただいま川本末治君から、質疑終局の動議が提出せられましたので、採決いたします。同君の動議に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  110. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立多数。よつて川本君の動議のごとく、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  それでは午後三時より再開し、本案に対する討論、採決に入ります。  それまで暫時休憩いたします。     午後一時六分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十六分開議
  111. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは再開いたします。地方公務員法案を議題として、これより討論に入ることといたしますが、ただいま藤田義光君外三名より提出の民主党修正案及び門司亮君外二名提出の日本社会党修正案が、それぞれ委員長の手元に提出されております。この際まず床次徳二君より民主党の修正案についてその趣旨の説明を求めます。床次徳二君。
  112. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま上程せられました地方公務員法案に対する修正案に対しまして、提案者を代表いたしまして趣旨の弁明を行います。一応修正案を朗読いたします。  以上が案文であります。以下簡單にその御説明を行いたいと存じます。  第一項は今回人事委員会及び公平委員会の設置に関しまして、その権限を強化いたしまするとともに、その経費の簡素化をはかりたい、かつその権能を強力にいたしたいと考えておるものであります。すなわち原案におきましては、人事委員会、公平委員会いずれも公共団体みずから設置しあるいはこれを共同により設置し、あるいはその事務の一部を委託するという三段階に定められておりまするが、この人事委員会の職務の重大性にかんがみまして、でき得る限り有力なる人事委員会あるいは公平委員会たらしむるために、みずから設置するか、あるいはでき得る限り多数のものをもつて共同して、しかも内容の充実した委員会たらしめんとするのであります。あわせてこれによつて経費の軽減を期待しておるのであります。  なおその職能につきましては、第二項に掲げましたことく、従来委員会におきましては審査しその他必要なる措置をとるとなつておりましたのを、明かに「審査」の下に「判定」という字句を加えまして、国家公務員法におきまして、人事院規則による公平委員会が判定ということをいたしまするのと同じように、ここに「審査」のほかに「判定」なる言葉を明らかに加えまして、もつて審査に対する処置の明確を期しまして、職員利益保護の完全を期した次第であります。  第三項は、人事委員会の構成に関するものでありますが、人事委員会、公平委員会いずれも三人を定員といたしておりまするが、規定には「二人以上」の出席をもつて議事を行うことになつておりますが、しかしながら人事委員会のごとき重要な職務にありましては、全員出席せしめることが、その会の性質上当然であると存じまして、これを「全員」に改めんとするものであります。  第四項、これはいわゆる政治行為の制限に関するものでありますが、原案におきまするところの第一項におきましては、職員が政党その他の政治団体の結成に関與することを禁止しているのでありますが、さらに第二項におきましても、公の選挙等におきまして、五項目にわたりまして、ほとんど政治行為を全面的に禁止しておるのであります。これがために公務員政治活動は、完全に禁止されたような結果になるのでありまして、ひいては公務員個人に対して保障せられましたところの、憲法のいわゆる基本権をも制約せられるところのおそれがあると考えるのでありまして、わが国におきまするところの民主政治の発展のためには、あるいは著しい障害を與うるものと考えるのであります。原案の立法の趣旨におきましては、公務員の政治的中立を確保するということに急なるのあまり――公務員といたしましての立場からその職分、身分上の影響に対しまして、ある程度までの政治活動を禁止するということは、一応考えられるのでありまするが――その職分身分上の関係影響のない区域まで、政治活動を禁止するということは、まことにこれは無用であるばかりではなしに、むしろ有害であると考えるのであります。この修正案におきましては、現在の社会の実情にかんがみまして、直接職分に影響のないところの区域におきましては、第一号ないし第三号の選挙運動あるいは署名運動、あるいは寄付募集の問題、あるいは第五号の條例で定めるところの行為につきましては、これを自由にまかしたのであります。なおその禁止せんとするところの区域の規定につきましては、適用上におきまするところの疑義を生じないことく、これを明瞭に規定いたしたのでありますが、たとえば都道府県の職員に関しましては、その勤務するところの都道府県の区域、市町村吏員にありましては、その市町村の区域、学校職員等につきましては通学区域のありまする場合はその区域、通学区域のなき場合におきましては、その設置者たるところの市町村の区域その他の機関に勤務するところの職員に対しましては、その機関の所在するところの市町村の区域に定めんとするのでありまして、もつぱら日本の実情に沿うごとくいたしたのであります。およそ本法の対象となりますところの都道府県市町村職員及び教育職員は、わが国におきましては、いわゆる知識階級であります。しかもその職務の性質上、最も政治問題に対しましては、理解ありと認められる人々でありまして、百三十万に達するのであります。将来わが国の民主主義の発展のためにも重大なる責務を負うべき人々であるのであります。これらの人々に全面的に政治活動を禁止するということは、まことにこれは無理解であると考えるのであります。あるいは過去におきましては、これらの人人の中に少数の者にあやまちを犯したものもあつたかと思うのでありますが、これは敗戦によりました急激なる政治社会制度の変革に遭遇いたしました場合の、一つの現象であつたのでありまして、今日におきましては相当批判を受け、またみずからも反省を加えておる次第であるのでありまして、今回修正せんとするところの程度が、わが国におきましては、最も適切であるというふうに考えるのであります。これによつてこそ、ほんとうに公務員中立性を保持し、しかも民主政治の進展に役立ち得るものと考えておるのであります。  次に第五項におきましては、これは先ほど申し上げましたところの人事委員会、公平委員会の職務に関連いたしました字句の修正でありまして、「審査を行い、」の下に「事案を判定し、」を加えまして、判定の行為を明らかに規定いたしました。  また第六項におきましても同様「審査」の下に「判定」を加えた字句の整理であります。  第七項、第五十五條中におきまして、「申合せ」を「協定」に改めておりますが、私どもは公無員に対しましては、いわゆる団体協約を適用し、労働三法を、そのまま準用するという考えはないのであります。やはり公務員には公務員といたしましての、特別なる団体協約というものを考えなければならないと思います。しかるに原案におきましては、まことにその団体との交渉の結果につきまして、これを「申合せ」なるがごとき字句をもつて表現いたしておるのでありまして、その申合せの拘束力に対しましても、すこぶる疑義を持ちやすいところの表現なのでありまして、私どもはここにこれを「協定」という字に改めまして、しかもその協定は当該公共団体並びに職員団体の双方におきまして、誠意並びに責任をもつてこれを実施しなければならないという意味を明らかにいたしまして、もつて職員団体並びに公共団体の間に、円滑にしかも有効に、その身分の保障に役立たしめんということを考えておるのであります。  第八項におきましては、第五十七條中の改正であります。第五十七條におきましては、特別なる職務あるいは責任ある任務に従事するところの職員に対する例外規定でございますが、この中には公立学校の職員等を、政府においては予想しておられますが、しかしながらこの特例におきましては、軍に教職員のみならず、当然その職務の性質上、責任においても特例の認められるところの、いわゆる單純労務に従事する者に対しましても、特例を及ぼすべきものと考えるのであります。人によりましては、あるいは單純労務は、これは公営企業職員と同じく、公労法の規定をまつがよろしいという考え方もあると思いますが、私どもはやはり單純労務に関しましては、一般職の中においてこれを規定し、しかもその実情に符合するがごとく、第五十七條において特例を設けることが適当であると信ずるのであります。しかもこの教職員に関しましては、いずれ特別規定をつくることに対しましては、政府も予想しておるところでありますので、明らかに法文中に「公立学校の教職員」云々の字句を加えまして、彼らに対しまして、特別なる規定を行う方針なることを、明らかにいたしたいと思うのであります。  以上ただいま提案いたしましたところの修正案の趣旨でございまするが、これを要するに、合同の修正案は、国家公務員法を制定いたしました当時と今日との社会事情の変遷にかんがみまして、最も実情に合うがごとく、これを規定いたしまするとともに、さらに地方公務員の特殊性にかんがみまして、その公共的性質を勘案いたしました上、地方自治並びに民主政治に対して、貢献せしめんとしておるのであります。  なお地方公務員の国民への奉仕、服務の公共性を十分考慮いたしますと同時に、この見地から労働組合と同一な権限を與うるということに対しましては、これをとらないのでありまするが、地方公務員なる範囲内におきまして、可及的にその政治上の中立性、並びにその身分地位の保障に対しまして、遺憾なきを期した次第であります。かくしてこそほんとうに地方自治の円満なる運営ができ得るものと考えておるのでありまして、私どもの提案いたしました趣旨は、この法律によつて将来適用を受けんとするところの百三十万の大部分の強い要望の存するところでありまして、どうか各位の御賛成を得たいと存ずる次第であります。
  113. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に門司亮君より、日本社会党修正案について、その趣旨の説明を求めます。門司亮君。
  114. 門司亮

    ○門司委員 私は日本社会党を代表いたしまして地方公務員法に対する私どもの修正の意見を申し述べたいと考えておるのであります。  最初に修正案を一応朗読いたしまして、さらにその趣旨の説明をいたしたいと考えております。  以上が私どもの本法案に対する修正案であります。これの説明をきわめて簡単に申し上げたいと思います。第八條中にこういう規定を設けましたのは、五十五條規定中「申合せ」を「協定」に改めて参りまして、その協定を遂行ずることのために、人事委員会の権能の中に、この條項を加えて、参りまして、そうして先ほど申し上げました五十五條の中に、さらにわれわれは提訴の権限を持つことを要求いたしておりますので、その提訴のありました場合における取上げられた問題については、これを地方公共団体当局に勧告することができるように規定いたしておりますので、この第八條において人事委員会の職能の中に、それをぜひ挿入する必要ができて参りましたので、第八條に、かくのごとき條項を挿入して参つたのであります。さらに同條の第二項に第二号としてこれと同じような規定を挿入するのであります。るが、これは前の規定人事委員会に適用され、後の規定は公平委員会もこれと同様なことをなし得ることにしておくことが必要だと考えましたので、われわれはここに人事委員会並びに公平委員会がともに協定に対しまする事項について職員団体要求を審査し、及び必要な勧告を当局にすることができるということを、さきに申し上げましたように、人事委員会の職能の中に、これを明記いたしたいと考えて、かく改めて参つたのであります。  次に、同條第三項中に「第九号及び第十号並びに」と、こう書いておりますものは、これに従いまする條文の配置の関係であります。  次に、三十六條の三項中「左に掲げる政治的行為」とあるのにかわりまして、「勤務時間中又は地方公共団体の庁舎若しくは施設において第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をしてはならず、」云々という規定を設けて参りましたのは、これは憲法で定められております通り地方公共団体職員は、もとより、公の奉仕者であるという観念のもとに、当然行動をしなければたらないのでありまして、その理念に基いて参りまするならば、あくまでも地方公共団体職員は、中立性を一面保つことが必要であるということは、当然考えられるのでありまするが、しかしながら一面日本の国民として與えられておりまする政治活動が、原案によりまするならば、全部これが封殺されて参つておりまして、ほとんど政治活動は投票たけしかできないというような状態に相なつており、これではまつたく日本国民としての政治的自由がたくなつたと申しても、あえて過言ではないほどの苛酷な取締條項になつておりまするので、これを私どもは、公務員として中立性を保たせるために、勤務時間中であるとか、あるいは公共団体の庁舎の中であるとかいうような、当然中立性を保たなければならない職務上の関係と、その庁舎の中、あるいは施設の中において、公のものを利用して選挙運動するということは、公務員中立性にかんがみていかがかと考えまするので、これだけを禁止いたしまして、公務員中立性をこれによつて保つと同時に、基本的人権でありまする政治的の自由を、ここに私どもは認めることが、日本国民としての正しい法律の定め方ではなかろうかと考えて、政治行為に対しましては、かように條文改正をいたして参つたのであります。  次に第五十三條中のものでありまするが、「(以下本節中」を「(この法律において」と改めることになつておりまして、きわめて簡単ではございまするが、実はこの條文は、御存じのように、地方公共団体職員団体結成の問題に関連いたしておりまするので、法律の擁護と申しまするか、さらに法律効果的の考え方から申し上げまするならば、單に「本節中」というような言葉にあらずして、「この法律において」と改めて、これを強くすることの方が、この五十二條の団体の結成その他に対する、私は大きな力となるというように考えて参りまして、これを軍に「以下本節中」といつて、この法律の一部分で、これを規定するというようなことでなくして、明らかにこの法律において、これを改正する必要があると考えて参りまして、ここに「(以下本節中」を「(この法律において」と改めて参りたいと考えているのであります。そうして同條の第五項の次に但書を加えておりまするが、この但書は、国家公務員法の九十八條の規正と大体同じような状況のもとに置かれることが、地方公共団体におきましてもあり得ると考えておりまするので、実はこれと同様な規定をここに挿入する必要があると考えて、この條項を但書として挿入いたしたのであります。  次に五十五條の見出しの「(交渉)」を「(交渉及び協定に関する勧告の要求)」に改めて参りましたのは、五十五條は御存じのように、地方公共団体職員の団体といたしましては最重要な項目になつておりまするので、單にこれが「交渉」という字句だけではとうてい足りませんし、ことに本文によりまするならば、対等の地位に立つて交渉をすることもできない。あるいはその他協定にあらずして、申合せであるとかあるいは勧告をするとかいうようなことができないようになつておりまするが、われわれは労働者の持つておりまする固有の権利、いわゆる団結の権利と、罷業の権利と、さらに交渉権利というものが、地方公務員であると同時に、労働者でありまする場合には、やはり当然考えられなければならないと思う。その場合に、地方公務員であるということにおいてこの制限を非常に大きくするということはいかがかと考えておりまするので、單に「交渉」という文字でなくして「交渉」及び協定に関する勧告の要求」ということにこれを改めまして、そうして公務員利益を擁護することが正しいと考えて、かく見出しを改めて参つたのであります。従いまして同條第二項中の「申合せ」を「協定」と改めて参つたのであります。これは委員会等におきましても同じような意見があつたと思いまするが、協定ということと中合せということは、その筋の、あるいは関係方面の解釈から行きますならば、まつたく同一だということを聞いておるのであります。日本流にこれを考えて参りますると、申合せというのは非常に軽い意味のものであるが、協定という言葉は、それよりさらに加重されたものであるという観念が日本人の通念と考えておるのであります。従つて、單に関係方面が同一の言葉であるからといつて日本法律をこしらえまするときに、日本流にこれを考えてここに字句を挿入いたしまするときに、われわれは、働いておりまする地方公務員の不利益になるというような建前の上に立つて、この「申合せ」という字句が使つてあるのでございまするたらば、この法自体の本旨にも反すると考えているのであります。従いまして、本法案が当同の説明するように、もし地方公務員利益を擁護するものであるとするならば、当然これは日本の言葉にかえる場合には「協定」と改めることが正しいと考えて参りまして、これを「協定」と改めて参つたのであります。  その次の「職員団体は、第二項の規定により結ばれた協定を当該地方公共団体当局が履行しないと認めたときは、人事委員会又は公平委員会」にこれの履行を要求することができるというように改めて参りましたのは、対等立場に立つて、もし交渉をするということが、公の奉仕者ということから疑義があるといたしまするならば、少くとも協定いたしましたものに対しましては、当然当該市町村理事者は、これを実行すべきでありまするが、それを実行しなかつた場合においては、ただ單に人事委員会がそれをきめ得るというだけのことでなくして、当然地方公共団体に勤めておりまする職員諸君が、人事委員会に対してこれを提訴することができる。そうしてその提訴に基いて人事委員会あるいは公平委員会が、おのおの公正な審議または適当な審査を行つて、そうして当局にこれを勧告できるようにすることが、私どもは正しいと思うのであります。いわゆる約束不履行に対して、これを人事委員会に提訴し、人事委員会はこれを当局に勧告する。ここに條文を入れておかなければ、どんなに都合のよい申合せをいたして参りましても、その約束の履行はきわめて困難であると考えまするので、私どもはここに職員団体に対しまして提訴の権限を與えることが、事を円満に途行するゆえんであると考えるところから、かく挿入いたして参つたのであります。  次の四十八條の場合におきまして、「地方公共団体当局は、正当な理由がなくして、第一項の規定による職員団体との交渉を拒んではならない。」という規定を設けて参りましたのは、よし対等立場になくても、お互いが人格を信頼してもし地方公共団体職員団体から要求がありまするならば、正当な理由がなくしてその交渉を拒んではたらたい。これは非常に重要な問題でありまして、具体的に申し上げまするならば、忙しいとかあるいはいろないろ理由をくつつけて、これを拒んでいると、いたずらにその間に紛争を起す原因に相なつて参りまするので、これらの紛争を除去いたしまするためにも、どうしても正当の理由なくしてこれを拒むことができないという、相互間に約束づけた責任性を持たせることが、私どもは事が円満に運ぶゆえんであると考えると同時に、地方公共団体職員利益を擁護するために、かくいたして参つたのであります。  次に五十七條の規定でありまするが、五十七條は、原案におきましては御存じのように、ただ特殊性ある事業に従事するものに対しましまては「別に法律で定める」というような漠然とした規定に相なつておりまするので、私どもはこの漠然たる規定を、なお詳細にここに規定して、そうして法律において当然行うべきものを、なるたけ記載するということが、法の運用の建前の上において、将来紛争を起さない一つの原因となると考えまするとともに、この五十七條の條項を明確にする必要があると考えて参りまして、ここに現業の機関あるいはその他の企業に従事するものであるとか、あるいは地方財政法の六條に規定いたしておりまするものを除いておりまするが、その他の単純な労務に雇用されまするものにつきましては、これを許して行きたいということをここに明確にするということ。但しその場合におきまして、管理または監督的な地位にあるものであるとか、あるいは機密の事務に携わるものに対しましてはこれは労働組合法にも規定いたしておりまする通り、これを各職員団体に包含するということは、いかがかと考えておりまするので、これを除きまして、そうして現業または單純なる労務に雇用される者に対しては、これを改めて特殊の法律を制定するということに定めまするとともに、当然公立学校の職員に対しましても、これを適用すべきであると考えて参つたのであります。「公立学校の教職員(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する校長、教員及び事務職員をいう。)」ということを、規定いたしておりまするのは、これは教職員の定義をここに表わして参つたのであります。  次に六十一條の四号を削るということにかつております。これは説明をしなくてもすでに十分おわかりだと思いまするが、この規定は、私どもがこの地方公務員法目的を円満に遂行いたしますることのために支障を来しまする関係から、これを削除して参つたのであります。  次に六十二條の「第六号」を「第五号」に改めて参りますのは、前に削除いたしました関係から、注文の整理上かく改めて参つたのであります。  最後の附則の第二十項の「(昭和二十三年法律第百九号)」を削りまするのは、前條において、五十七條の修正の場所に「地方財政法」と書いて、その下に「(昭和二十三年法律第二百九号)第六條に規定する公企業を除く。」と…記しておりますので、法文の整理L7 れを削除して参つたもので他意はないのであります。  以上が大体本修正案を提出いたしました理由であります。
  115. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ただいまの両修正案について、質疑があればこれを許します。質疑は簡単にしてください。
  116. 立花敏男

    ○立花委員 ただいま御説明を受けましたが、しかし私どもは、この修正案をいただきましたのはわずか開会直前二、三分でございまして十分まだのみ込めませんので、従つて委員長のお言葉ではありますが、詳細に質疑をしなければならないかもわかりません。その点あらかじめ断つておきます。  民主党の修正案に対しまして質疑をいたしたいと思います。大体から見まして、民主党の修正案は、單に字句的な修正であるというように私ども受取るので承りますが、個々の條項にわたりましてお尋ねいたしますと、最初の二ページ目にあります第二章中の「第八條第一項第九号及び第二項第一号中「審査し、」の下に「判定し、」を加え、同條第七項中「決定」を「決定(判事を含む。)」に改める。」とありますが、この決定の効力について、実は重大な問題があるのではないかと思うのでございますが、決定の効力につきまして具体的にどういうふうな効力があるとお考えでございましようか、これをひとつ承らしていただきたい。
  117. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの御質問は、この注文の取扱いにおきまして、審査という宇が入つておりましてこれに対して政府考え方におきましては、審査の中に判定というか行為を含んでおるというふうな考え方でありましたが、やはり審査をしました以上は、その審査の結論、決定というものを明瞭にいたすことが取扱い上必要と存じまして、またこの決定を明らかにいたしますことが、当事者に対する利益と存じまして、ここに明らかに「判定」という字句を加えたのであります。  なお同條第七項中の「決定」に関しましても、やはり決定と判定と別個のもののように考えられまするが、用語の誤りをただす意味におきまして、後者の決定の中には判定という行為も含むのだ、ということを明らかにいたしまして規定いたした次第であります。
  118. 立花敏男

    ○立花委員 御修正になりました趣旨はよくわかつたのでありますが、私どもが疑問を持ちますのは、はたしてこういう字句の変更だけで、どれだけの効力が附加ざれたのか、どれだけの実効を持つものなのか、もう少し具体的に申しますと、当局が審査の中には判定も含むというふうに理解されておりました場合の審査と、こういう御修正をなさいました決定との間には、どれだけの実効上の差異があるのか、こういうことをひとつ具体的に承らしていただきたい。
  119. 床次徳二

    ○床次委員 実効上の差異は、ただいま御説明申し上げましたように、この判定という行為がはつきりいたしますると、当事者におきましては、当然自分に加えられましたところの結論が、いかなる結果になつたかということをすぐ知り得るのであります。單に審査といたしましただけにおきましては、必ずしも当事者自体が知り得ないというところに、非常に不合理なところがあると存じます。この点当局の原案におきまして足りなかつたところを補いまして、当事者の保護に遺憾なきを期した次第であります。
  120. 立花敏男

    ○立花委員 そういたしますと、審査と決定との差異は、審査した結果を明らかになし得る、当事者が審査の結果を明らかに知り得るということに効果があるというふりに、御答弁がありましたように了解するのでございますが、私どもの聞いておりますのは、單に結果を知り得た、審査の結果が明らかになつたということだけの問題を尋ねておるのではございませんで、それが実際に労働者の具体的な利益として、どういうふうに労働者の生活なり、経済的な要求なりに、実効を持ち得るかということを尋ねておるのであります。
  121. 床次徳二

    ○床次委員 これは言葉の問題であるというふうにお考えになられると思うのでありますが、われわれの感じといたしましては、審査ということと、判定という一つの画然たる行為は、ずつと効果において重いものである。たとえば法律上の効果におきまして、それに基いてあと提訴云々という字句がございませんでも、原案よりも効果相当加重されておるということを私どもは期待しておるのであります。
  122. 立花敏男

    ○立花委員 御説明によりまして、審査よりも結果が明らかになるという意味におきまして、ある程度の――一歩前進とまでは行きませんが、半歩ぐらいは前進したように承知いたしますが、しかし民主党とされましては、さらに実効のある、百尺竿頭一歩を進めると申しますか、数歩を進められまして、この決定は、拘束力のあるものにまで、修正なさる御意思はないのかどうか、承りたい。
  123. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの点は、この修正において十分であると存じております。
  124. 立花敏男

    ○立花委員 その次のページに参りまして第五号、第六号、第七号、ずつと関連しておるのでございますが、この当事者間に申合せを行うという原案に対しまして、それを協定という言葉にお改めになつたのでありますが、これも單に言葉をむずかしくしたというぐらいだと思うのでありますが、この場合にも、やはり原案にありまする対等立場を認めないという根本的な関係には、かわりがない上での協定ということだと思うのでございますが、これではいくら言葉がかわりましても、対等立場でない、單なる上からのお情け的なこの協定を受けましては、何にもならないと思うのでありますが、やはり民主党の方でも、対等立場でないということは、十分御承認なさつた上での修正でございますが、その点をひとつ承らしていただきたい。
  125. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま御質問がありましたが、これは、言葉の問題にあるというふうに軽くお考えのようでありますが、日本語におきまして、申合せという取扱いと、協定というものにつきましては、われわれの実際に感じますところの拘束力において、社会的に非常に差があることを御承知願いたいと思うのであります。日本人はそういうふうに解釈しておる。われわれの常識といたしまして、協定の方が、申合せよりも責任がはるかに重大であるというふうに考えるのであります。なお特にこの三項におきましてはつきりと、協定に関しましては当事者双方において誠意と責任をもつて履行しなければならぬということを特につけ加えてあることによりましても、従来の中合せという言葉よりも、それだけ拘束力が強くなつて、おるということを御承知を願いたいと思う。  なお対等立場というお尋ねでありますが、これに関しましては、公務員という特別な立場におきまして、公共団体との交渉を認めておるのであります。いわゆる団体協約とは別なものであるというふうに私ども考えております。
  126. 立花敏男

    ○立花委員 あくまでもこの公務員当局との関係は、対等立場において交渉ができないことを是認なさるのかどうか、これをまず承りたいのでございますが、そういうことを前提といたしますと、言葉の上の修正が行われましても、やはりその効果といたしましては、今床次委員から御説明がありましたように、ただ日本語の感じ方として拘束力が出て来るというようなものにしかすぎないのじやないかと思う。あるいは第三項をお加えになりまして、「前項の協定は、当該地方公共同体の当局及び職員団体の双方において、誠意と責任をもつて履行しなければならない。」とございますが、そういう大前提のもとにおきましては、これは單なる精神的な拘束力でございまして、何ら実質的には効力がないと思うのでございますが、この場合におきましても、やはり民主党といたされましては、こういう修正をなさる以上は、さらに数歩を進められましてあくまで対等立場でこういう協定をし、対等立場において相互が誠意と責任をもつて履行するというふうに改められるのが、至当と考えるのですが、そうでなくてもよいというふうにお考えかどうか。
  127. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまのお尋ねは、私どもはこの修正が最善と存じまして修正案を出した次第でありまして、いかようにお考えになるかは、これは見解の相違であります。なおこの修正は第五十五條第一項は原案のままに残してある修正でございますから、協約の精神は第五十五條第一項の規定をそのまま引受けておる、かように御解釈をいただきたいのであります。
  128. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花君、簡潔に願います。
  129. 立花敏男

    ○立花委員 それでは民主党の方はそれでがまんいたします。  それから社会党の方の修正案についてお聞きしたいと思うのですが、まず修正案をお出しになつた根本的な考え方をお尋ねいたしたいと思うのでございます。御承知のように、地方公務員は、あの日本の労働組合に対しまして、最初の最も反動的な弾圧的な政令であるところの二百一号によりまして、私どもの仲間である地方公務員は非常に極端な労働條件のもとに置かれております。この状態を社会党とされましては、どういうふうにお考えになるのか。この状態を打破すべきか、そのままで置いておくべきか。また打破すべきだとすれば、どういう方法でおやりになる御意向があるのか。またこの修正案とポツダム政令との関係を、ひとつ御説明願いたいと思います。
  130. 門司亮

    ○門司委員 非常に広汎な御質問なので、長い時間をかけてお話をすることがいいと思いますが、私どもが修正案を出しましたのは、原案に対する修正案でありまして、地方公務員に対するわれわれの概念的の理論をここで述べておりますならば、非常に長くなりますと同時に、実際の問題としてそれがどういうふうにこの修正案の中に盛り込まれておるかどうかということについての具体的の質問は、実は今なかつたのであります。私が説明いたしましたのは、この法律案に基きます各條項に対する、この原案全体に対してのわれわれの意見でありまして、ここに私は別個の法律を提出したわけではないのであります、従つてわれわれがもし地方公務員法というものを必要として出すといたしますならば、その概念はどうであるかというようなお尋ねなら、私十分お答えをすることができると思いますが、ただわれわれがこの修正案を出しましたのは、政府が出しております地方公務員法案というものは、一面これによつて地方公務員利益を非常に大幅に擁護するということが、大体提案の趣旨のように私どもは承つておる。しかし案の内容を見てみますならば、その保護の面はきわめてわずかであつて、そうして大体取締りの方針が最も重点に考えられておりますので、その取締りの最も強い政治活動の面、あるいは労働運動の活動の面に対して、私どもはできるだけわれわれの要望に沿う修正をしたいということが、私がここにこの修正案を出した趣旨であります。同時にポツダム政令との関係でありますが、ポツダム政令が出ておりますことは、すでに御存じのように、ボ政令それ自体は、おそらく日本の規律の情勢におきましては、政府責任において多少のしんしやくはできるかとは存じますが、しかし至上命令であるというようなことが、往々にして政府当局も使われておるし、また占領下にあります日本の国におきましては、ある程度はやむを得ぬものがあるかともわれわれは考える。そういうふうに考えて参りますと、ポツダム政令とこれの関連は、この法律が制定されて参りますたらば、この法律にもありますように、政令二百一号というものは当然廃止されなければならない、こう考えておるのであります。さらに先ほどから申し上げておりますような理念の問題でありますが、少くともこの原案に対します理論は、委員会における私の質疑の中にもあつたと思いますが、政府の言つております近代的の公務員としての理念という点に対しては、実は非常に疑問が残されておるのであります。この近代的の公務員としての理念ということについては、政府当局はアメリカの例を引いて参りましたが、アメリカの例を引くということは正しい見方ではない。日本憲法に定めております、公務員は、公の奉仕者であるということが、新しい公務員としての近代的理念ではなかろうかと、私ども考えておるのであります。従つてこの新しい理念に基いて、やはり公の奉仕者としての一つの行き方を定めるということが、ある程度必要ではなかろうかと考えておりますが、しかしこの原案に対して私どもはただちにこれがいいものであり、これに同調するものでは決してないのであります。たださつき申し上げましてように、原案に対するわれわれの利益を、どの程度大幅にこの中に織り込んで、そうして原案では非常に重い取締りの法規を、どれだけ緩和するかということが、私がこの修正案を提出した理由であります。
  131. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花君、質疑は中身についてお話ください。
  132. 立花敏男

    ○立花委員 最初にお断りしたように、この修正案をお出しになりましたお考えを承らしていただきましたので、必然的に一般的になつたのは当然だと思います。具体的問題につきましてお尋ねいたしますが、第三十六條の第二項の問題でございますが、政治活動制限を、勤務時間中または地方公共団体の庁舎もしくは施設に限定されました。これはこの原案よりも非常に進歩しておると私ども思いますが、しかしわれわれにとりましては、これは深く考えますと、やはり実際の面では改善にならないのじやないか。と申しますのは、労働者あるいは地方公務員の人たちが生活いたしておりますのは、職場なんです。地方公共団体の庁舎で生活をしております。しかも生活の大部分が勤務時間中に制約されております。一日の大部分が庁舎で働かされ、また一日の時間の大部分が勤務時間中なんです。その以外は通勤に費されるか、あるいは家に帰つて寝るか、こういう点から考えますと、生活のほとんど大部分は勤務時間中であり、また場所といたしましては庁舎あるいは施設でやつているのが現状なんです。庁舎あるいは施設は、勤労者にとりましては――兵隊にありましては城塞とでも申しますか、自分の生活の本拠なんです。しかもここにおきます政治活動が禁止されるということになりますと、労働者にとりましては、言葉の上では庁舎だけに限定して、狭いところなんだから、それ以外はどこでやつてもいいのだというふうに観念上はとれますが、実際上の問題といたしましては、庁舎自体がその生活の大部分または本拠であるのだから、そこにおける政治活動を禁止されましては、政治活動の自由が他において許されたといたしましても、やはり実質上は政治活動の禁止になることは明らかなのであります。これは勤時間中におきましても同様でありまして、生活の大部分が勤務時間中であります場合に、勤務時間外での政治活動はいいと申されましても、やはりその人間にとりましては、生活中の大部分の時間において政治活動が禁止される。こういうふうに時間的に見ましても、場所的に見ましても、実質的に勤労者の政治活動に重大なる制限を加えると思うのでありますが、この点で、はたしてわれわれ民主団体また民主政党にとりましては致命的な問題である政治活動に対する制約が、大幅に緩和されたとお考えかどうか。この問題は、憲法上からも基本的人権として、われわれに許されております政治活動が、そのいうふうな字句の上では、広汎に制約が解かれたというように見えますが、実質上は重大なる制約をこうむるということに対しまして、社会党はどういうふうにお考えかこれをひとつ承りたい。
  133. 門司亮

    ○門司委員 お答えいたしたいと思いますが、長くお話をする必要もないと思います。よく考えていただきたいと思いますることは、今憲法で定めた基本的人権ということを言われておりますが、同じ憲法の第十五條には、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」こう書いてある。その次には「すべて公務員は、全体の俸仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」ということが、はつきり明記いたしてあるのであります。地方公共団体の建物は、申し上げるまでもなく決して一部の人のものではございません。さらに勤務時間中と申し上げまするのは、地方公共団体住民に対しまする一つの奉仕といいますか、俸給をもらつておりまする関係から、これに奉仕いたしまするところのみずからの職場であります。従つて勤務時間中は当然公の奉仕の時間の中に含まれると思うのであります。働いておりまする職場は、生活の一部であるとは考えておりまするが、働いておりまする職場が生活の全体とは、われわれは受け取りにくいのであります。ことに公務員であります以上は、先ほどから申し上げておりまするように、職場で勤務いたしております間は公の奉仕者である。公の承仕者でおりまする者が、その勤務中において一部の政党のために政治運動をするということは、これは明らかに私は憲法を否定した理念ではなかろうかと考えざるを得ないのであります。従つて私は当然お互いが生活をいたしておりまするときに、共同の施設の中でありまするものは、やはりこれはお互いに個人のものでもなければ、一部の少数の人のものでもない、いわゆる地方に住んでおりまする住民全体のものでおるということ、その中で、これまた一部の政党のために利用するということは、公の奉仕者としての憲法規定から見れば、やはり一つのはずれた行為ではなかろうかと私は考えておるのであります。従つてこの程度公務員としての愼みはぜひしていただきたい。そうして公務員中立であるという理念は、これによつて十分私は具現されると思う。それ以上のこの原案にありまするよう。な取締りは、これは立花君が申されましたように、憲法に定めた基本的人権を大いに剥奪し、これをないがしろにした一つの悪法であるということを考えておりまするが、私どもは先ほど申し上げておりまするような観点に立つて、この程度の制約はやむを得ざるものであると思つております。、
  134. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花君、簡単に願います。
  135. 立花敏男

    ○立花委員 もうあと一つだけです。門司君のお答えでございますが、非常に憲法をお引きになりましたが、私もここに憲法を書いてある本を持つておりますが、遺憾ながら門司君のお引きになつたことは間違いないと思います。しかし同時に公の奉仕者である公務員を選定する権利を、国民の間に置いておるということは当然なのである。しかし同時にこの憲法の中には、公務員であるから基本的人権を剥奪せよということはどこにも書いてない。重大な問題である。公共の福祉をたてにとつて、労働三法を剥奪し、あるいは憲法の基本的人権公務員から剥奪していいということはどこにも書いてない。またわれわれが無條件に受諾いたしましたポツダム宣言によりましても、あるいは極東委員会の労働十六原則によりましても、公務員であるがゆえに基本的人権を剥奪し、政治活動を禁止するということは、どこにも書いてないわけなのです。だからこの点をひとつ深くお考えくださいましたたらば、われわれ民主団体、特に民主政党にとりまして、致命的な問題であるこの政治活動の禁止を、單に庁舎だけに、あるいは勤務時間中だけだからといつて、われわれは見のがすことはできない。これはわれわれにとりましては本質的な問題だと思うのです。その点を深く考慮くださるように、切にお願いいたします。  それから最後にもう一つ団体交渉の問題でございますが、社会党の修正案は団体交渉を認めぬような修正案だというふうに、私ども風聞に聞いておりましたが、ただいまいただきました修正案によりますと、そうでないようにも見えるのでございますが、大体基本的な労働組合の権利としての団体交渉権というものは、この修正案ではどうなつているのか、ひとつ詳細に御説明を願いたいと思います。
  136. 門司亮

    ○門司委員 重ねてお尋ねでございまするので、さきの問題は希望でありましたので、この際お答えする必要はないかと思いまするが、誤解を招くといけないと思いますので、私ども考え方を、もう一度ここで申し上げておきたいと思います。それは勤務時間中であるとか、あるいは公の建物を利用するというようなことは、公の奉仕者としては当然できないことでありまするし、また社会通念から申し上げましても、たとえば現在ありまする各民間の企業におきましても、勤務時間中に政治運動をしてもいいという規定は、おそらく何人といえども承認することはなかろうかと思う。ことにこれが公の仕事をいたしておりまする――お互いの血税によつて税金を納め、そうしてその上に打立てられておりまするところの地方公共団体の事務の時間に、一部の団体の運動をするということは、住民が一体これを承知するかどうかということです。私どもはそういうことには、せつかくの御希望ではございましたが、この際沿うわけにはなかなか参らぬかと思うのであります。單に基本的人権だけを考えましたならば、今の御説のように私どもはあくまでもそれを主張して参るのでございますが、しかしお互いが生きております以上は、やはり制約された中に、ことに公共団体に奉仕するものといたしましては、公共団体自分のもの――ということは少し語弊があるかもしれませんが、自分の所属する限られた団体のためにこれを占有することは、これは地方住民に対する一つめ反逆の行為ではなかろうか、こういうふうに私どもは解釈するのでありますが、そして私は最大限の政治活動を禁止するということになれば、これ以上政治活動を禁止することはできないと思う。ここに私どもはこの規定を設けたということで、ひとつ御了承を願つておきたいと思います。  次に団体交渉権のことでありますが、これもいろいろな問題があると私は思うのでふります。しかし団体交渉権の問題は、原案によりますと、まつたく対等立場でないということが書かれております。私ども対等立場でないということについては、一応の疑義を実は持つておるものであります。労働者として、労働條件の要求、労働條件の問題に対して、これを改善いたしまする場合における私どもの基本的人権というものは、当然これは尊重されなければならない。従つて労働者としての私どもの持つておりまする労働三法の適用というものは、ここに行わなければならないことは当然であります。これもさつき申し上げましたような、これが地方公務員でありますることのために、これをただちに営利を事業といたしまする私企業と同じようなものの考え方において実施することが、一体正しい理念であるかどうかということについては、私どもといたしましては、はつきりそれを正しい理念だということが言えるかどうかということについての、多少の疑問を持つておる。しかし現在の日本の労働運動といい――私どもは将来の日本の労働組合もかくあるべきだと考えておりまするが、労働組合がほんとうに民主的の立場に訓練されて、そうしてみずから公の奉仕者であるということの自覚と責任の上に運用されて参りまするならば、労働者に対しまして労働三法を適用する。すなわち、正しい対等立場に立つて交渉する権利を授けて参りましても、断じて間違いないことであろうと私ども考えておる。一面地方公共団体でありますることのために、住民と直結いたしておりますことのために、おそらく不当な労働行為がありますならば、それは住民がなかなか承知しないのであつてそうしてこれが制約されるであろうということと、さらにもう一つはサービス・センターであるという性格を持つておりまする地方公共団体に勤めておりまする人たちは、同じように地方住民と密接不可分の関係を持つておりますので、そう軽々しくこれができるものとは、われわれは考えない。従つて労働三法を適用することを全面的にここに規定いたしましても、何ら不都合はないと、私は基本的には考えておるのであります。しかしこの法律建前といい、あるいは種々の関係から――私はあえてここで関係という官葉を使つたのでありますが、種々の関係から、現在の情勢では、私どもが基本的に考えておりますことが許されたいといたしますならば、われわれは第二次の案といたしましてはここに掲げておりまするように、その協定いたしましたものが、忠実に履行されるのをお互いに責任を持ち、さらに履行されなかつた場合には、人事委員会にこれを提訴して、その実現方のために法的にこれを処置して行きまするところの規定が、原案にはかけておりますので、それをこの程度規定は織り込んで、労働三法を完全に適用を受けない地方公務員諸君に対しましては、これによつて保護する規定を設けて参りたいと考えておりまして、五十五條の單に「交渉」とありまするものを、交渉及び協定に関する勧告の要求ということに改めて参りまして、労働者の持つておりまする基本的人権といいまするか、基本的権利というものを、ここに大幅に具現することのために努めて参つたのであります。
  137. 立花敏男

    ○立花委員 簡單ですからもう一つ……。われわれがうわさに聞いておりました社会労の修正案に、団体交渉権が認められたのだということが間違いないのだということがわかりましたので、この点は了解いたします。  それから私の意見に対する門司君のお答えの中に、庁舎では、あるいは勤務時間中には、政治活動はやりたくてもできないような條件だとおつしやつたのでございますが、これは実際の地方公務員の労働條件、勤務條件の中におきましては非常に実態が違うのではないか、地方公務員は職場において、勤務時間中において政治活動をやりたいと非常に望んでおります。社会党の新聞を読みたい、あるいは社会党の新聞の配布を受けたいということを望んでいるわけなのです。同様に共産党の新聞も読みたいということを望んでおる地方公務員は多数にございます。こういうことがやりたくてもできないのが現状だというふうな認識は、少し行き過ぎじやないか、職場の大衆はもう生活の圧迫に耐えきれなくなりましてこれをどうかして改善いたしたい。それには政治活動をする以外にないということをほんとうに心の底から確信いたしまして、どうしても職場の中において、あるいは勤務時間中においても、許された時間でできるだけ政治活動をやりたいと願つているのが実際の地方公務員の実情だ。またそれが念願するところだと思うのです……。
  138. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花君討論じやありませんから……。
  139. 立花敏男

    ○立花委員 この実態をはつきりと御認識願いますように、この実態が見のがされますと、やはりほんとうに下積みになつて働いております地方公務員にとりましては、重大な権利の侵害、利益の破壊ということになつて参るだろうと思いますので、この点を特に留意していただくようにお願い申し上げます。
  140. 門司亮

    ○門司委員 誤解があつてはいかぬからもう一度申し上げておきますが、立花君の意見の中に執務時間中に許された時間ということがありました。私は執務時間中に許されて政治活動をするという事務規定は設けられないと思います。公の奉仕者である以上は、やはり勤務時間から離れた休憩時間その他に、いろいろ新聞を読むということは自由だと思つておりますが、私はそういうことはどうしても受取れません。もし社会党の人間で勤務時間中に政治活動がしたいという人は、私の常識では考えるわけには参らぬというふうに考えております。
  141. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは討論に入ります。以上の修正案を一括して討論に付します。床次徳二君。
  142. 床次徳二

    ○床次委員 私はただいま提案になりました政府の原案に対しまして、先ほど修正の意見を申し上げましたが、原案そのものに対しましては、反対の意を表する次第であります。  本法案国家公務員法と相並びまして、地方に民主的、科学的人事行政の制度の理念、態勢を導入いたしまして、国民の奉仕者としての公務員の身分を確立せんとする目的なのでありますが、しかしながら今日の地方自治制度の実情を見て参りますると、行、財政の方面におきまして、制度は一応整備を見たようでありまするが、その運営におきましては、遺憾ながら日が浅いのでありまして今日の特に重大なる問題は、いわゆる地方財政の危機を招いておるのであります。本委員会におきましても、この地方財政の確立に関しましては、非常な苦慮を拂つておるのであります。  御承知の通り地方税法あるいは地方財政平衡交付金等につきましては、その運用よろしきを得ぬ今日におきまして、地方財政が重大なる危機に瀕しておるのでありまして、今日におきましては地方の財政はもとより、さらに地方勤務するところの地方公務員の身分、待遇の保持につきましても、著しい憂慮を抱かれております。かかる情勢のもとにおきまして、今日ここに地方公務員法が制定せられんとしておるのでありまして、この点に対しましては大いに注意を喚起いたしたいと思うのであります。政府はこの点におきまして最も必要な地方財政の確保ということに対する重大なる措置を行わずして、この法案を提案しようというところに大きな誤りがあるのではないかと第一に指摘いたしたいのであります。しかも本案の中におきましては先ほど修正の意見を申し上げましたが、数点にわたりまして疑問を残しておるのでありまして、私どもはその点同意を表しがたいのであります。  第一に公務員の地位を確保すべきところの人事委員会、公平委員会の機能におきまして、なお遺憾の点が少くないのであります。われわれはかかる委員会が十分なる活動をいたしまして、今日認められましたところの公務員の身分の保障に対しまして、十二分な活動をいたすことを要望するものであります。  さらに第二の問題は、特に公務員政治活動の問題、これに対しましては修正案におきまして、るる説明を申し上げました関係上、ここには省略いたしたいのでありますが、特にこの機会において申し上げたいのは、今日政府公務員中立性を保障せんがために、著しく政治活動制限し、公務員利益を保護すると申しながら、かえつてこれを失つておるという状態になりつつあるのでは次いか、いわば角をためて牛を殺すというようなたぐいであると思うのであります。しかももしも本法が運用せられる場合におきましては、その運用の実際におきましては、本人に対する政治上の基本人権をも制限するおそれがあると思いまするが、さらに第三者に対しましても、不測の脅威を與えまして将来政治に対する関心を著しく放棄することになるのではないかというふうに考えられるのであります。  本案におきましては、特に先ほど第一項、第二項について申し上げましたが、しかしこの三項におきまして重要なる規定がおるのであります。一般人に対する職員の政治行為の禁止規定が加えられており、しかもこれに関しましては重大なる罰則がついておるのでありまして、三年以下の懲役、または十万円以下の罰金ということになつておるのであります。これは職員に対しては非常に大きな問題でありまして、今後絶対に政治に対しては不関與の態度をとることになるのではないか。これは何と申しましても健全なる民主政治への発展に対しまして、重大なる阻害があると信ずるのであります。  なおこの点に関しましては、私どもは十二分に皆様方の反省を要望いたしたいと思うのでありまして、この政治活動の禁止に関しましては、むしろ時代に対して逆行しつつあるのではないかということを信ずる次第であります。  第五に、私ども遺憾の意を表したいのは、職員に対しまして、その利益を保護するために職員団体の結成が認められておりまするが、先ほど申し述べましたことく、団体協約に関しましては、まことにその交渉の面において貧弱なるものがあるのであります。私ども公務員一般労務者と同等なる立場において見ようとはいたさないのであります。しかしたがらその公共の労務者たる立場を特に強調するのあまり、その交渉権に対しまして著しく制限を加えるということは、これまた行き過ぎだと存じます。われわれはいわゆる団体協約にあらずして、しかも公務員にふさわしいところの団体協約を行い、もつて両者の間の調節をいたしまして、十分なる効果を與えんことを要望するものでありまして、この点政府の原案に対しましてはいささか遺憾の意を表せざるを得ないのであります。  第四点におきまして、今日残されておるところのいわゆる單純労務者なるものの身分の保障に関しましては、政府考えによりましてはこれは十分な救済が得られないと考えております。公共企業従事職員に関しましては別の規定を設けられるとのことであり、教育職員に関しましても特別な規定があるのでありますが、いわゆる一般現業員に対しましては、これを一律に一般職といたしまして規定することは、今日の現状においては、その保護となるよりも失うところが多いというように考えるのであります。その任用、職階、給與勤務、分限、懲戒等の問題に対するよりも、むしろこれらの人たちには、権利、厚生という部面におきまして十一分な努力をいたさなければなりません。このためにはむしろ特別な、取扱いをいたす方がよろしいと思うのでありまして、この点は政府におかれましても十分考えることを必要とすると私どもは存ずるのであります。  以上はなはだ簡單ではありますが、私どもは今日の地方公務員法規定の内容におきまして、まことにその環境において不十分であるのみならず、その内容においてなお修正の必要のある点が多々残されておることを見出すのでありまして、これに対しましては賛意を表することができないのであります。なお今日の時代におきましては、相当の情勢の変化を見受けられるのでありまして、これに対してはやはり時代に応じた進歩改善を見てしかるべきものと考えております。原案におきましては、この考慮を欠いておることについて、まことに遺憾に存ずるのであります。なお今日私どもは近く講和会議を迎えるのであります。民主国民といたしまして一大飛躍を期待しておるときに、原案のごとく、まことに公務員に対して消極的あるいは退嬰的な態度をもつて臨んでおられるということに対しましては、賛意を表しがたいのでありまして、私は原案に対しまして反対の意を表するものであります。  なお社会党門司委員その他より提案されましたところの別の修正案に関しましては、大体の修正点においては、われわれの提案いたしたものと軌を一にするのでありますが、最も重大なる問題は第三十六條に関するものであります、私どもは、政治活動の範囲を、この修正案に示されましたことく、勤務時間中、あるいは公共団体の庁舎、あるいは施設内に限るということに関しては、このあまりに狭きことを信ずるのであります。今日の日本の実情から申しまして、公務員の職務、身分等の関係から、これが公共方面に及ぼす影響は、單にここに列挙せられた範囲に限らないのであります。その及ぼす影響は少くとも私どもの提案して参つた範町内において考えられるのでありまして、われわれの修正いたしました範囲内において、当然政治活動制限はあるべきであります。これよりも狭い範囲の区域を限定し、その区域以外においては政治活動を自由といたしますことについては、私どもは賛意を表し得ないのであります。  以上はなはだ簡單でありますが、原案並びに門司委員その他の提案によりまする修正案に反対の意を表するものであります。
  143. 前尾繁三郎

  144. 野村專太郎

    ○野村委員 私は自由党を代表いたしまして、今提案になつております国民民主党、社会党の両修正案に対しましては、部分的には理解のできる節もあるのですが、特に民主党の修正案に対してはその同調の度合も深いのですが、結論といたしまして、両修正案に対しましては遺憾ながら反対をし、原案に賛成の意を表せんとするものであります。  わが国の地方制度は、新憲法施行以来、地方自治確立の線に沿いまして、逐次画期的改革を遂げたのでありまするが、ひとり公務員の制度につきましては、よるべき基準が今日なお旧態のままでありまして、新時代の要諦には沿いがたいのでありまして、さきに制定施行されました国家公務員法と相並んで、近代的な公務員制度の理念に基く地方公務員法を制定上、国及び地方を通ずる全体の公務員制度を確立することは、行政自体の円滑な運営のためにも、公務員自身の地位の保障のためにも必要でありまして、原案の制定はすでに地方自治法制定の際、予想されたのでありまして、爾来久しきにわたつて懸案であつたのであります、これが私が原案に賛成を表し、その成立を希望する根本的理由であります。もとより具体的な法案に対しては、見方の相違によりまして異論の生ずることも当然でありまして、反対される論にも傾聽に値するものもありましようが、一面には、その難点を強調するのあまり、その長所をも無視するようなきらいがあるのであります。  そもそも本法の目的は、本法案第一條の明示するところでありますが、人事行政に関する根本基準を確立することによりまして、地方公共団体行政の民主的かつ能率的な運営を保障することにあるのであります。しかしてその目的を達成するために、幾多の工夫をこらして公務員の地位や権利を擁護するとともに、一面一定の規制を公務員の行動に加えております。思うにこれは、地方公務員地方公共団体の公務に従事する公務員たる身分と、また他人に労務を提供する労務者たる地位をあわせ有することから来る、当然の帰結といわなければならぬのであります。  最も論議の中心となりました政治的行為制限や、いわゆる労働三法の適用除外にいたしましても、これをもつてただちに憲法の認めた基本的人権を侵害し、国民の政治活動の自由や労働者の特権を地方公務員から剥奪するものと断ずるということにはならぬと思います。全体の奉仕者たる公務員には、まずその身分に伴うところの、一般国民や普通の労働者とは異なる特別の制限があることはもとより当然でありまして、これによつて行政の公正な運行が期待せられ、地方住民の信頼を確保し得るとともに、地方公務員はよく中正の立場を堅持することができ、その地位が保障せられるのであります。すなわち制限利益保護のための必須の要件でありまして、行政の公正と公務員利益との双方を保護するのであります。このことは国家公務員とまつたく軌を一にするのでありまして、單に制限の外形をとらえて、本法案地方公務員の保護法にあらずして取締法なりとする説には、くみすることができないのであります。現に住民の委託によつて公務につき、公器を擁しながら、全体の奉仕者たるべき中正の立場を忘れ、みだりに一党一派に偏した政治活動を行い、住民の指揮を受けたような事例もあるのでありまして、また不当な外部の勢力や団体の威圧を受け、公務員がその中正を維持せんがために、公務員みずから法的規制による保護を希望するものの多き現状におきましては、本法案は時宜を得たものと信ずるのであります。労働三法を直接そのままの姿におきまして適用しないといつても、労務者権利を奪つて労働保護のほかに置いたのではなくて、地方公務員という別個の法の体系において、これを規定したのでありますし、政治的中立のための制限は、同時に公務員の公務遂行の公正と、身分の保障となるのでありまして、近代公務員制度の根本原理であることを承視せねばならぬと思うのであります。何よりもまず本法案には、人事機関、任用、職階制、勤務時間、分限及び懲戒、服務等、人事行政が公正かつ合理的に行われることを保障するために、種々の新しい制度を設け、地方公務員が全体の奉仕者としての立場を伴う近代的公務員の基準を定めるとともに、さらに進んでその権利を守り、福祉及び利益の保護をはかるために、厚生福利制度や、公務災害補償制度の原則を定め、勤務條件に関する措置要求や、不利益処分に関する審査の請求をなし得る道を開き、また職員団体についても、その適正なる行動の基準を定めておるのであります。これらは地方公務員の福祉を増進し、その地位の安定を保障し、職員をして安んじて積極的に公務に専念せしめるために必要不可欠の要件であります。これによつて従来の不明確な関係を一掃し、地方公務員には適正な利益の保護が確立し、地方公共団体理事者側においては、人事行政のよるべき基準が與えられるのでありまして、地方住民には行政の民主的かつ合理的な運営を保障することになるのであります。従来よりも職場の明朗と住民の信頼感の増大を期待し得るものと信ずるのであります。  また本法案の立案には、地方公共団体の自主性を確保し、あわせて地方公共団体の多種多様性に即応せしめることに配意をいたしまして、国家公務員法に示された新しい公務員制度のよつて立つ原理との間の調整に、苦心が拂われておるのであります。職員の職務の性質及び責任のいかんによつては、特例法の道も開かれるのでありまして、公企業関係等には別な立法も予定されておるのでありまして、画一の弊害はなく、広く一般地方公務員にも共通する普遍的な根本基準法として、本法はすみやかにこれを制定する必要があると信ずるのであります。  人事委員会につきましては、その無力を強調し、地方財政の現状においては各種の保護規定も実効を収めがたいとの理由をもつて、本案に反対せられますが、地方財政の制度は確立せられ、その緒についておりまする今日、ひとり公務員制度を空白のまま放任することは適当でないと信ずるのであります。両者相並んでその実をあげるよう努力すべきであると思うのであります。おおよそいかなる法案も、異なつた面から見たあらゆる要請を遺憾なく許容することは、もとより望みがたいのでありまして、要は法の実際の運用におきまして、各般の條件を勘案しつつ、その要請に応ずるようくふうをこらすとともに、時代の推移や情勢の変化に応じ、実績に徴して改善を加え、もつて法の完璧を期するほかはないと思うのであります。  私は以上の見地から、本法案のすみやかなる成立を希望し、残された地方制度の改革の重要な空白面を充足し、もつて地方自治確立に寄與せんとするものであります。私は以上の見解をもつて両修正案に反対し、原案に賛成の意を表する次第でございます。
  145. 前尾繁三郎

  146. 松澤兼人

    松澤委員 私は日本社会党を代表いたしまして、社会党が提出いたしました地方公務員法の修正案に賛成いたしまして、原案であります地方公務員法案に対して反対するものであります。  一般的に申し上げますならば、この法律は新しい近代的あるいは科学的な公務員制度を建設するという、国家及び地方一貫した理念によつてつているということは、よくわかるのであります。われわれもまた封建的官僚主義を打破する意味におきまして合理的、科学的な公務員制度を樹立するという点においては、決してこれに反対するものではないのであります。しかしながら私どもは、すでに国家公務員法の中に含まれている各種の問題につきましては、今日の段階において、あらためてこれを検討する必要があると考えておるのでありまして、あのときの、あの情勢のもとにあつて成立いたしました国家公務員法は、現在の段階におきましては修正を要する箇所が相当あると存ずるのであります。この地方公務員法は、多少その中において疑義があり、また修正、改正を必要とする現在の国家公務員法にならつて、できたものでありまして、多少は地方の特殊性ということが、考えられていることは否定はできません。しかしわれわれは、国家公務員法そのものに対する修正なり、あるいは改正なりの意見を持つておりますために、その原則を全面的に取入れてありますところの地方公務員法に対しましては反対をせざるを得ない。これが一般的なあるいは原則的な反対の理由であります。従いまして、私どもはどこまでもこの地方公務員法は、一般的基準を定める法律であるべきであつて、むしろ私どもは通則もしくは基準法としてこれを考え、大部分のものは地方自治の本義に即しまして、これを條例なり、あるいは地方公共団体の民意なり、あるいはまたそのもとにおける規則等に譲ることが、必要であると考えられるのであります。しかるに最初から最後まで読んで見まして、この法律が非常に画一的であり、また中央集権的なにおいが多分にしているという気持を禁ずることができないのであります。特に人事機関の問題にいたしましても、書いてありますように、人事院の方針が非常に取入られているのであります。人事院そのものが今日いろいろと問題となつており、あの厖大な機構をもつてして、国家公務員に対する十分の保護、あるいは厚生の面において盡していないという議論が起つているのでありまして、人事院そのものの原則を、地方に適用するということに困難があるばかりでなく、地方人事委員会の貧弱なる機構をもつてしては、おそらく国家がつくりました人事管理の原則すらも、これに適用することが困難でありはしないか。こういう点も考えてみまして、一応画一的、中央集権的にできておりますこの法律の実際の運用が、種々たる困難に遭遇するであろうということが、容易に想像されるのであります。自治権の確立の意味から言いまして私どももつと自由なる裁量が地方公共団体に與えられた、ければならないと思う。こういう点がこの地方公務員法を判断する最も重要な基準となるのであります。  第二に申し上げたいことは、先ほど床次君からも申されましたが、財源の裏づけが確立されていない地方に対して、この厖大な地方公務員制度を天下り的に押しつけることに、非常なる危険があるということであります。八十三億の地方財政委員会の勧告すらも、十分に考慮せられておらない、従いまして、国家公務員に対する千円のベース・アツプ及び年末手当半箇月分を見ても、現在これと同じように国の給與によらなければたらない地方公務員給與というものが、はたして財源の裏づけのない今日、実施せられるかどうかということが、非常に疑問であるのであります。従いまして、財源の裏づけはまた別途の方法を講ずべきで、地方公務員法の中に、これを包含することは妥当でないかもわかりませんが、たとい別途に財源の問題を考慮するにいたしましても、少くとも国あるいは地方、民間の給與と均衡のとれた給與を保障するという地方公務員法建前を、もし百パーセント額面通りに受取るといたしますならば、地方の財政はまた大いたる困難に遭遇しなければならないと考えるのであります。従いまして、財源の裏づけが何ら考慮をせられておらないときに、地方公務員制度を革新的に改めて行くということには、われわれは賛成しかねるのであります。  その次に申し上げたいことは、政治活動制限の問題でありまして、これはすでに先ほど修正意見を申し上げました同僚門司君からも、これに触れたのでありますから、簡單に申し上げたいと思います。私はマツカーサー元帥の公務員制度に対する書簡は、その大部分がやはり国家公務員に対する一つの指示であうたと思うのであります。これはいろいろ見解があるでしようが、少くとも国家権力に関與しておる公務員に対しましては、もちろんそこに重大な制限があることは考えなければなりません。しかしたがら地方行政というものは、権力的な行為の部分というものは、きわめてわずかでありまして、よく言われますように一種のサービス・センターである。サービスをやるということが中心である。従いましてそこでは国家公務員に対する政治上の拘束あるいは制限というものと、またこの重大な政治的な制限があるべきであつて、これを同一の規範によつて束縛するということは妥当を欠くと、私ども考えるのであります。私どもに言わせますならば、いわゆる特別の政治運動というものは禁止すべきであつて選挙運動というものは、どこまでも、これは自由にすべきである、こういう考えを持つているので、あります。従いまして私どもはこの政治活動国家公務員と同じように禁止するという、この地方公務員法の理念に対しましては、これに反対をしなければならないのであります。  次に組合活動の問題につきましては、原則的に考えますならば、もちろん地方公共団体職員は、いわば單なる一つの勤労者である。他に仕事がなかつたために、たまたま地方公共団体に使用せられておる。それは何ら国家の権力なり、もしくは行政権にタツチしようという考えを持つているのではない。たまたまそこに就職の機会があつたから、そこに就職しているというだけでありまして、その労働条件なり、あるいはまたその勤労なりというものは、これは軍に民間あるいは民間に準ずる人々の勤労と同じことであると考えるのであります。従いまして原則的には、私どもは労働三法を適用する、もしくは労働三法の大部分をこれに適用することが必要であると思うのであります。ただしかしながら、これはその地方公務員の特殊性というものに基いて、争議権まで含めたものが適当かどうかということにつきまして、私は消極的な意見を持つておるのであります。しかしながら団結権及び団体協約権という、この三つの権限は、どこまでもこれは保障せられなければならないと考えるのであります。従いましてこれまで地方公務員が、地方公共団体の長などと団体協約を結んでおつた既得の権利というものは、どこまでも尊重せられなければならないのでありまして、この法律により、もしくは政令二〇一号によつて、これを一方的に剥奪するということは、適当でないと考えるのであります。従いまして組合活動の点につきましても、私どもは十分なる考慮が拂われておらないこの地方公務員法に対しましては、反対の意思を表明せざるを得ません。特に私どもはTVAにおいてとられております、いわゆる人事管理の問題は、これをわれわれの模範として、せめて団体協約までは締結し、この団体協約の完全なる履行の機関をこの地方公務員法において規定しなければならないと思うのであります。人事管理の問題につきましては、いろいろの方々から指摘されました。私もまた今日この法律の中に規定されておりますような人事機関では、ほんとうに公正なる取扱いができないし、十分なる保護がこの法律によつては期待できないであろうという、悲観的な一つの見方をしているものであります。従いまして私どもは現在のような人事機関でありますならば、かえつてしばしば言われますように、取締りの面が強く出て来て、保護の面が閑却されるという結果になることをおそれるのでありまして、これも私どもはこの法律に賛成のできたい一点であります。  最後に申し上げたいことは現業の問題であります。これは附則の二十條におきまして、一応公営企業であります四企業に対しましては、別わくをもつて規定することになつております。しかし現業であるという点におきましては、単純労務に対しましても、あるいは教育公務員に対しましても、別個の取扱いをすべきであつて、われわれはどこまでもこれらの人々は第三條の特別職に規定すべきであると考えるのであります。しかるにこの法案におきましては、これらの人々が一括して一般職として取扱われ、ただそのうちのあるものだけが例外的に――あるいは特例法によつて規定されるとか、あるいはまた別個の団体によつて公企業労働関係法のようなものによつて規定されるということが、現在約束されているだけでありまして、それはいかなる取扱い、いかなる特例法、あるいは公企業闘係労働法というものが出るかということが、明らかにせられていない限り、われわれはそれをただ法律條文そのままを百パーセント認めまして、これを承認するということはできないのであります。従いましてこれらの四企業に対する特別の法律、もしくは五十七條に規定されてありますところの特例法全般を見たければ、地方公務員法規定に賛成することができないのであります。これら以上申し上げました点につきまして、私どもはその反対の理由としまして、原案に対しては反対し、そうして社会党の修正案に対しては賛成するものであります。
  147. 前尾繁三郎

    前尾委員長 木村榮君。
  148. 木村榮

    ○木村(榮)委員 私は日本共産党を代表いたしまして、ただいまの政府原案並びに社会党、民主党の修正案を含めて、反対の意見を申し述べたいと思います。  現在の国内的または国際的の諸情勢を見ますと、何と申しましても日本の国の独立、自由、平和ということが、最も大きな問題だ、と思うのであります。ところでこの独立と平和、自由を勝ちとるためには、何といつて日本の労働者階級を先頭といたしまして、農民、インテリゲンチヤ、こういつたいわゆる進歩的な階級が大きく力を結集いたしまして、一大運動を展開しないことにおいては、この私たち日本国民の大目的が達成されないのは当然のことである。そこでそういつた情勢を見ますと、いわゆる公務員と称するものの大部分は、常識的に見ましても、大体インテリゲンチヤ階級の所属が多い。従つて当然こういつた社会情勢になつて来ますと、この労働者階級を先頭とする進歩的な方向へ力を結集する傾きが、当然起つて来るわけである。ところがそういつた段階におきまして、当面大きく問題になつて来ますのは、御承知のように日本の人民大衆は全面講和を主張し、日本の独立のために戦う方向を示しておる。こういつた場合におきまして、日本の政党の諸情勢を見ますと、社会党並びに共産党は御承知のように、全面講和を主張いたしております。従つてとの進歩的階級に所属をして、運動をしなければならないところの公務員の諸君が、当然この社会党並びに共産党の方向を支持して、大きく日本の独立と平和のための、一大運動を起すというのは当然のことである。まずこのような方向を圧殺して、そうして日本を戦争の基地として、また植民地奴隷としての方向に押し進めるのが、現政府の方針であるのは、あらゆる政策において端的に表明されておる。こういつた方向を押しつけることこそが、最も重大な基本的人権を無視し、政治活動の全面的禁止ということが、この法案に盛られた最も大きなねらいとなつて現われている。こういつた基本的な立場に立つことが、私たちがこの法案に対して反対せざるを得ないところの一番大きな根本的な原因である。そこで御承知のように植民地行政をやつて行きますには、何と申しましても封建的な世の中の基盤、そのものが最も便利がよく、東南アジア諸国を見ましても、世界の諸情勢を見ましても、この封建的な諸情勢、そこにおいては人民の権力、こういつたものはきわめて低い、この方向を利用いたしまして、陶際的帝国主義者どもが無謀なる政策を着々と実現しようとしておる。こういつた方向を考えますと、ただいま上程になつておりますところのこの法案が、こういつた方向を圧殺するための最も具体的な現われとして全国津々浦々にまで影響を及ぼすわけである。そこで、このことは、この法案の内容を一つ一つ見ますと、各方面に現われております。こういつたことは、長い間の審議の課程におきまして、わが党の立花委員が、相当質問時間の間に意見をも付して申し述べておりますから、私は時間の関係上省略させていただきますが、こういうことがこの法案でやられるようになつて来ますと、具体的に現われますのは、高級官僚がかつての天皇制時代のような強力な存在となつて、そうして下級官僚をどんどんとやつつける。忠実とは一体何ぞやということを私が質問いたしましたら、そこにおられます鈴木次長は、忠実というのは上の命令をはいはいと言つて聞くことである、こういうことをちやんと答弁しております。ここに現われておりますように、名前はなるほど忠実とはうまいことを言つておりますが、その内容たるや、上の命令をだまつて、はいはいと言つて聞くことが、最も上等な忠実である、こういうわけであります。これを見てもわかるように、とにかく何のことはたい、上からがんがん押えつけて、言うことを聞かない者は首を切つてやる、首を切られるのがいやならば、だまつて、はいはい言つて働けということを、この法律案によつて最も合理化しようという陰謀である。こういう方向を私たちは発見する。またおもしろいことにはこの法案を盛んに急いで、二箇月間でどうこうというふうな規定があつて、とにかくどんどんやつておられる。そうすると、大体の方針を見ますと、この間関係委員長も言つておりましたが、大体日本行政機構を改革しろ、その内容には道州制の問題その他の問題があるらしいのでございますが、こういつた問題も含めて今の構勢を見ますと、今こそ衆議院においては自由党が第一党で、圧倒的勢力を持つておりますが、大体その屋根骨である農村などは、相当ぐらついておる。そこでこの調子で行くと、来年の選挙には社会党の方が元気がよさそうだ、民主党の方も元気がよさそうだ、従つて一般人民大衆が、今の政府に対しては相当批判的である。その相当大きな推進力は、農村においてもまた中小都市においても、市役所やあるいは県庁の従業員諸君で、最初私が申し上げましたように知識階級であればこそ、進歩的な政党を支持して闘うのが当然である。その力は恐るべきものであるというので、今にしてこの力を圧殺しておかぬと、来年の春の各種選挙におきましては、惨敗をする危險があるというので、うろたえてしやにむにこれを通そうとしておる。これははつきり現われている。こういうわけで、この法案は実はえらそうに擬装はしておりますが、もはや自由党が動揺おくあたわず、何とかしてこの自分たちの態勢を挽回せんがために、こういう無謀な、基本的権利も何もないものを出して、強引に押し切ろうとしているこの態度は、政府委員諸君の答弁の中にもはつきり現われている。岡野国務大臣初めその他の政府委員は、とにかくまあしようがない、かつてにせよ、こういうふうで、いわば向う様のお袖にすがつて、どうでもお助けくださいという答弁しかできないところにも、端的に現われている。こういうことでどこから突いてみても、こういうばかなものは、ほんとうは出せないはずだ。それを出さなければならぬところに、私が今まで申し上げたような、もはやどうにもこうにもやつて行けないところの状況である。こういうように断定をいたします。  まだまだ申し上げますと、とてもたくさんあるのでございますが、これはかつて日本国がいわゆる満州国を制定いたしまして、満州においていろいろな行政上の措置をやつたことと非常によく似ておる。こういつたふうなことを考えましても、もはやこの法案のねらいがどこにあるかということを考えますと、私たちといたしましては、独立と平和のためには、断固としてこの洪案に反対せざるを得ない。(発言する者あり)だまつて聞きなさい。ついでにちよつと申し上げますが、社会党の修正案は、なるほど非常にいいようでございますが、ただ私たちが非常に残念に思う点は、この修正案だけでは、公務員、たとえば市なら市の清掃人夫の方たちが、休憩時間に休憩しています建物の中、あるいは部屋の中で、みんなが寄り合つて政治の話はできません。この修正案ではそういうことになつている。やはり休憩時間も勤務時間ということになるそうですから、こういうことになる。この点がこの修正案では解決ついていない。だからそういう点はとにかく、根本的に政治活動というものの禁止を解除して、絶対に政治活動は自由であるということを認めなければならぬ。なぜならば、日本公務員諸君は、戦後民主主義的な風潮によつて相当知識程度が高くなつています。ここでこういう勤務時間に政治の話をしては悪い、いい――こういうことを言つていいとか悪いとかいうくらいのことは、国民的常識において理解をし、実行いたします。特にこういうことを設けますから、裏の方でこそこそでもやることになつて、かえつて事務能率が上らなくなつて、かえつて不平不満が増大して、結果的には一般国民民に迷惑をかけるようなことになる。日本の国民の常識に訴えて、このくらいのことは勤務時間に、そろばんをやつておつたり、あるいは帳簿をつけながら、何で政治の話なんかできますか。このくらいのことは常識でわかつておる。だからそういうことは法文なんかで規定しなくても、この公務員諸君の良識に訴えておけば、十分その方がよりよく円滑に事務能率が上つて行くと私ども考える。こういう点で、人をばかにして、人を奴隷にして、向う様の、よそ様の言うことを聞くような奴隷的人間、ただ着物は洋服を着てネクタイをつけておりますが、この点ではかつて中国の苦力と同じような状態に持つて行こうという、きわめて非人間的な法案だということが言えます。  このくらいにしてやめますが、自由党の賛成論に至つては、これは簡明に申し上げますと、政府の提案理由の説明をもう一ぺんたさつたと同じ話である。しかもこの内容を要約いたしますと、鈴木次長が答弁をいたしましたその内容を、もう一ぺん要約してここで読み上げられたという、まことに貧弱きわまる賛成討論であつて、笑うべきものであるということを私は申し上げる。こういうことで、皆さん方が天下の代議士として一般から選び出されて、民主主義なんということは、ちやんちやらおかしくて言えた話ではない。(笑声)そういうわけで、このような法律案は撤回されなければならぬ。このような法律案を出して、あなた方が自分たちの思うように、皆が言うことを聞くと思つたらとんでもない間違いで、大反撃をくらつて、来年か再来年ぐらいは、自由党なんかというものは、完全に抹殺されるということを私は特に付言いたしまして、反対討論にかえます。
  149. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたしますが、この際ちよつと念のために採決の順序について申し上げますと、門司亮君外二名提出の日本社会党の修正案につき採決いたしました後、次に藤田義光君外五名提出の国民民主党の修正案について採決をいたしまして、最後に原案について採決をいたします。  それではまず門司亮君外二名提出の日本社会党の修正案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  150. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立少数、よつて本修正案は否決されました。  次に藤田義光君外三名提出の国民主党の修正案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  151. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立少数。よつて本修正案は否決されました。  それでは原案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  152. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決されました。(拍手)  この際お諮りいたしますずが、衆議院規則第八十六條の報告書作成の件は、委員長に御一任願いたいと思います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決します。  それでは次会は明日午前十時より開会し、本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時三十一分散会