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1950-12-03 第9回国会 衆議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月三日(日曜日)     午後二時五十三分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 龍野喜一郎君 理事 藤田 義光君    理事 門司  亮君    大泉 寛三君       門脇勝太郎君    川本 末治君       清水 逸平君   橋本登美三郎君       吉田吉太郎君    鈴木 幹雄君       床次 徳二君    山手 滿男君       大矢 省三君    久保田鶴松君       木村  榮君    立花 敏男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         地方自治政務次         官       小野  哲君         総理府事務官         (地方自治庁次         長)      鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁公         務員課長)   藤井 貞夫君  委員外出席者         議     員 松澤 兼人君         議     員 八百 板正君         議     員 加藤  充君         議     員 今野 武雄君         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 十二月一日  委員木村榮辞任につき、その補欠として林百  郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として木村  榮君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員塚田十一郎辞任につき、その補欠として  佐藤親弘君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐藤親弘辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員小玉治行辞任につき、その補欠として田  中元君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月三十日  全国選挙管理委員会法の一部を改正する法律案  (倉石忠雄君外七名提出衆法第三号) 同日  公共事業費起債認可拡張請願河原伊三郎  君紹介)(第一二一号)  地方公務員給与改訂に関する請願河原伊三  郎君紹介)(第一二二号)  地方税法の一部改正に関する請願畠山鶴吉君  紹介)(第一二四号)  地方公務員給与引上げ等財源に関する請願(  吉武惠市君紹介)(第一二五号)  市町村民税適正化に関する請願川野芳滿君  紹介)(第一二六号)  物部小学校舎災害復旧費起債認可請願(  大石ヨシエ紹介)(第一三八号)  国有林野所在町村に対する平衡交付金増額の請  願(前田郁紹介)(第一四三号) 十二月二日  国費支弁職員身分切替に関する請願成田知  巳君紹介)(第二〇三号)  給与改訂及び地方公務員法制定等に関する請願  (成田知巳紹介)(第二〇四号)  福知山市警察吏員定員増加に関する請願(有  田喜一紹介)(第二〇六号)  県立地方病院建設に関する請願志田義信君紹  介)(第二一九号)  高岡市より庄西地区分離反対に関する請願(  橘直治紹介)(第二六三号)  地方公務員法制定反対に関する請願小川半次  君紹介)(第二六四号)  地方公務員給与改訂に関する請願小川半次  君紹介)(第二六五号)  木材に対する引取税撤廃請願村上勇君紹  介)(第二六九号)  揚繰網漁網に対する課税適正化請願田口長  治郎君紹介)(第三〇三号) の審査を本委員会に付託された。 十一月二十九日  起債事業早期承認に関する陳情書  (第一九号)  地方公務員給与ベース改訂等に伴う財源措置  に関する陳情書  (第二二号)  消防団員待遇改善等に関する陳情書外一件  (第五〇号)  行政事務再配分に関する陳情書  (第七〇号)  中央集権反対に関する陳情書  (第九二号)  都道府県議会事務局職員身分確立に関する陳  情書(第九  三号)  議員選挙当選並びに失格の結果報告に関する陳  情書(第九  四号)  国と地方公共団体との負担区分に関する陳情書  (第九五  号)  地方議会議長予算執行権に関する陳情書  (第九七号)  地方財政確立に関する陳情書  (第一〇六号) 十二月二日  地方債わく拡大に関する陳情書  (第一三一号)  公職選挙法の一部改正に関する陳情書  (第一三五号)  自治金融公庫創設に関する陳情書  (第一三六号)  地方平衡交付金決定額に関する陳情書外十件  (第  一八六号)  地方公務員給与ベース改訂及び年末手当に関  する陳情書外九件  (第一八九号)  同(  第一九五号)  公共事業費に対する国庫補助率引上げ等に関す  る陳情書  (第一九七号)  固定資産税制度改善に関する陳情書  (第二〇二号)  消防団員に対する災害補償制度確立に関する陳  情書  (第二〇五号)  地方自治法中一部改正に関する陳情書  (第二〇六  号)  公共事業費起債全額承認に関する陳情書  (第二〇  七号)  昭和二十五年度県財政收拾策樹立に関する陳情  書  (第二一二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  地方公務員法案内閣提出第一号)     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  地方公務員法案を議題として、質疑を続行いたします。  なおこの際お諮りいたします。八百板正君、赤松勇君、青野武一君、今野武雄君、加藤充君より委員外の発言を求めておられますが、これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前尾繁三郎

    前尾委員長 異議なしと認め、これを許すことにいたします。  なお時間につきましては、理事会申合せによりまして、社会党の諸君に合せて一時間、共産党の諸君には三十分ということにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それではさよう決します。今野武雄君。
  5. 今野武雄

    今野武雄君 先ほどちようど質問途中だつたので、さらに続けたいと思うのであります。公職選挙法にある個々面接というのは、教員その他地方公務員はできないということになるわけでありますか。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公職選挙法禁止禁止として、やはり、地方公務員法のほかに並行的に適用になるはずであります。
  7. 今野武雄

    今野武雄君 許されている個々面接、それができないというのですか。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 選挙運動として行われまする個々面接というのは、結局公の選挙または投票において、投票するように、またはしないように勧誘運動をするということになつて参ると思います。
  9. 今野武雄

    今野武雄君 先ほど特別市の選挙のことについてお答えなつたうちで、今までのことはこれは取締る法律がなかつたのだというお話だつたのです。そうすると、私ども考えるのに、今までのことは当然憲法に許されている基本的人権、つまり政治的活動の自由、そういう見地からなされていたのだと思いますけれども、その点はいかがですか。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、これらの事項法律上放任されておつたのであつて基本的人権ではなかつたと思います。
  11. 今野武雄

    今野武雄君 そうすると、今まで教員その他の地方公務員については、これは基本的人権でなかつたのでありますか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 基本的人権はどういうことであるかということは、憲法に列挙いたしておりまするので、この投票を勧誘する行為であるとか、あるいは署名運動を企画し、これを主宰するというような行為は、憲法上の基本的人権と認むべき範囲に属しておらないと考えます。
  13. 今野武雄

    今野武雄君 そうすると、憲法はそういうことについては、何も保障していないということになるのですか。つまり公務員ばかりでなく、一般の八が選挙運動をすることに対して、憲法は何らの保障をしていないということですか。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点は解釈上非常に微妙な点でありまするが、少くとも従来は基本的人権であるなしにかかわらず、とにかく禁止はされておらなかつたのですが、今度提案いたしましたる地方公務員法は、これを禁止しようという趣旨です。
  15. 今野武雄

    今野武雄君 私の聞いておりますのは、そうすると政治的活動、その中には選挙運動も入るわけでありますが、こういうことについては日本国憲法は何らの保障をしていない。單に放任しているにすぎないということになるのであるか、その点をお伺いしたいと思います。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 憲法のどの条項を見ましても、政治的活動の自由などということは書いてございませんので、公の選挙において公務員選挙する権利とか、そういうものはございますけれども、これを勧誘するとか、あるいは署名運動を主宰する、そういうような事柄憲法において保障いたしておる基本的人権の埒外にあると存じます。
  17. 今野武雄

    今野武雄君 選挙する自由があれば、やはり選挙運動ということが従来からも当然なこととしてあるわけなんです。すると憲法というのは周到にいろいろなことを規定している基本法であるということに心得ているのですが、憲法上は何も保障されていない、單なる慣行的な権利にすぎない、こういうようにお考えになりますか。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは憲法保障されたる自由にあらずして、従来は法律上放任されたがゆえに、自然に自由になつておつた事柄であると考えます。
  19. 今野武雄

    今野武雄君 そうなるとどうもたいへん考えが違つて来ることになるのですが、時間があまりありませんから、その点については承服しかねるということで保留しておきます。というのは、やはり憲法というものは、そういうような行動について、重要な権利については基本になる規定であると心得ておるのであります。従つて今まで放任されておつたけれども、これは憲法によつて一般人々選挙運動をすることも当然保障されておる、そういうふうにわれわれは考えておるわけであります。そういうことになりますと、今度の選挙運動制限というものは、憲法によつて保障されておる権利の侵害であり、従つてこれに罰則等も加えてありまするけれども、これは無効であると私ども考えておるわけであります。その点さつきのように、憲法上当然保障されている権利じやないという見地なら、これはどうにもしようがないのですから、これはお答えがなくてもけつこうだと思います。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今野君の御質問に関連いたしまして申し上げますが、憲法保障されておる基本的権利といたしましては、公の選挙または投票に特に関係ある事項は、憲法の二十一条に集会、結社、表現の自由という基本的権利を掲げてあります。この範囲におきましては、従来憲法保障されておるわけであります。しかしながらこの三十六条に掲げられたるいろいろな事項のうちではそのらち外に出るものもございます。このらち外に出るものは、従来基本的権利として憲法保障されたるものにあらずして、何ら法律上の制限がなくて、その結果放任せられておつたがために、自由であつたというものもあるわけであります。この点をお含みを願つておきます。そうしてまた、憲法基本的権利として保障されたものでありましても、公共福祉のため必要ある場合におきまして、これを法律によつて制限することは、憲法上訴されたるものであります。従いまして、基本的人権制限がただちに憲法違反であるというような考えは、私としてはとらざるところであります。
  21. 今野武雄

    今野委員 少し総裁お答えが違つて来たわけでありまするが、選挙運動などは、おもに表現の自由ということに基いて行われておるのだと、われわれは考えるのでありまするが、その点はいかがですか。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 選挙運動は、一般的に表現の自由として、基本的人権範囲に属する事項が、実際問題といたしまして相当多いと思います。ただ私の申し上げましたのは、三十六条に掲げられておりまする事柄すべてが、ただちにその範囲に属しないだろう、そのらち外のものもあるであろうということを申し上げた次第であります。
  23. 今野武雄

    今野委員 そのことにも承服しかねるけれども、ともかく憲法に基いて、今まで選挙運動は当然の権利として、国民がやつて来たものだと思うのであります。その点は大橋法務総裁の場合には、大体において認められておると思うのですが、その点どうですか。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 たとえばそそのかすとか、あおるとかいうことになりますと、これがはたして單なる表現と認める範囲事柄だけであるか、あるいはその他の行為にわたる場合もあるかもしれない。表現範囲内に属する行為として行われまする場合には、これは当然今仰せられましたるごとく、基本的人権範囲であると申さなければなりません。
  25. 今野武雄

    今野委員 その点について論議すると、長くなつてしまうから、簡單にしますけれども、とにかくそそのかすとかあおるとか、こういう言葉憲法にはないのですよ。それでやはり基本的人権というものは、最大限に考えて行かなければならないと思うのです。ですから表現の自由ということの中に、みんな包括されると私は思いますけれども、それはさておき、ともかく先ほどは今まで法律がなかつたから放任されていたんだとおつしやつたけれども、実はそうではなくして、憲法保障されておる国民の当然の権利として、今までは行われておつたんだということを、お認めになることになると思うのですけれども、その点いかがですか。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 基本的人権範囲に属しまする表現の自由ということについては、先ほど申し上げましたるごとく、憲法によつて保障せられておつたものであります。
  27. 今野武雄

    今野委員 だから先ほど言つたように、今まで選挙運動が自由にできたのは、地方公務員でもそれは憲法上の権利に基いてできていた。たとえばいろいろなポスターを掲げるとか、そのほかいろいろな行為ができていた、こういうことになるわけですが、そうですがと言つておるのです。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういうわけであります。
  29. 今野武雄

    今野委員 そうなると、つまり今度の法規には憲法保障されておる人権を無視するとか、あるいはそれを蹂躙する、こういう項目が含まれておる、こういうことになりますが、その点はいかがですか。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回の法規は、憲法基本的人権を保護すると同時に、社会公共福祉を保護するという、この憲法精神に基きまして、選挙運動の一部を制限しようという憲法精神に沿うた措置であるわけであります。
  31. 今野武雄

    今野委員 時間の関係もありますから、私この程度にとどめておきます。
  32. 加藤充

    加藤(充)委員 大橋さんの見解によれば、法律できめればどんなことでもきめられるというようにお聞きしたのですが、憲法九十八条並びに憲法前文と思い合せて、法律できめられることは形式の上の制約並びに内容制約があると思うのですが、その点はいかがですか。
  33. 大橋武夫

    大橋国務大臣 基本的人権に関する制限というのではなく、基本的人権というものはその半面におきまして、この権利あるいはその内容なつておりますところの自由というものを、各個人は全体の利益のために用いなければならぬということになつております。従つて基本的人権というものは、全体の利益のために用いられるということが、本来の基本的人権そのもの性質であり、本質でありますから、この本質を生かすために、公共福祉見地に基きまして、基本的人権の行使が全体の利益のためになるという、そういう線に内容づけて行くというのが、この基本的人権に関する法律根本観念であります。従いまして、これは單なる制限というより、むしろ基本的人権をして真に基本的人権の本来の使命をより一層明確にしようという性質を持つた法規であると考えます。
  34. 加藤充

    加藤(充)委員 全体の福祉公共利益というようなことを強調される点もわかるのですが、それを強調し過ぎて、全体の福祉公共の安寧とか、利益とかいうようなことのために、個体の主張なり利益が抹殺されてしまえば、それこそフアシズムであり、全体主義だと思います。そういう事柄についていま少し得心の行ける説明を開きたいと思うのですが、先ほど来の御見解を承つておりますれば、明らかに憲法上の基本的人権として保障されておりまして、しかも全体ということのために抹殺されてはならない個々権利であるというふうに、厳粛に規定されている諸行為を、放任行為であると言つたり、あるいは解釈上微妙であるけれどもこう思うというような見解を、一方的に吐露されるということはいたし方がないにいたしましても、無責任きわまるものだと私どもは思います。先日来問題になつておりました、地方公務員法の中に盛られた罰則規定が、実に尨大な量を占めるのでありますが、この事態が公務員法精神とまつたく相反しまするし、その罰則解釈並びに罰則を認めた態度、理由につきましても、どうも憲法基本的人権の点から考えてみましても、それに基いた日本刑法並びに刑法を裏づける多数的な、あるいは現在の権威的な一応の解釈としても、どうも理解しがたいところが多いのであります。そういう点でこの法律はいずれ制定されるにしましても、根本的には今申し上げました憲法九十八条並びに憲法前文に照して、人民あるいは公務員行動というものは何人にも制限されず、何らの権威並びにいかなる形式法律をもつてしても、その基本的人権個々の具体的な利益というもの、あるいは主張というものを粉碎したり、踏みにじつたものは、これは無効であるというおおらかな、厳粛な条規に基いて保障されて、行動は留保されるべきものだと、われわれは考えております。それでお尋ねをしたい点ですが、三十四条は、犯罪隠匿協力義務を強要したりあるいは過去に犯罪を犯した公務員が自首して出るというような、まことに道義的な、同時に基本的人権にも関連いたしますが、そういうものまでも制約したものでは断じてあり得ないと私ども解釈いたしまするが、その点重ねて御回答をお願いいたしたいと思うのであります。
  35. 大橋武夫

    大橋国務大臣 抽象的に犯罪隠匿と言われましても、ちよつとお答えいたしかねるのでありますが、三十条に掲げてありますことは、職務性質上みだりにこれを他に漏洩すべからざるところの、そういう秘密を他人に漏らしてはいけないこういうことを書いただけでありまして、犯罪その他に特に関係のある条項ではありません。
  36. 加藤充

    加藤(充)委員 このたび政府では地方公務員法給与、さらに年末手当の問題などにつきましては、冗費節約というようなことも、その財源のうちに数え立てておるようでありますが、手元にあります地方新聞の記事を見ましても、全然もう火の車地方財政であります。それで中には紙や鉛筆まで節約するというような事例も出ておりますし、三割節約令を出したというような大阪市の例も出ておる。京都市ではおえら方も茶果だけで宴会を済ませる、あるいは集会をする。京都府ではこの問題に基いて、いわゆる宴会政治廃止というようなことが、冗費節約の中心的な問題である。それ以外に手がないというような対策も講ぜられておりますが、やはりいろいろなことで、これは公団その他の実例から見ても明らかでありまするように、上層高級幹部腐敗堕落、そうして人民の膏血であるところの税金税金を湯水のごとくこれを犯罪的に、不道義的に扱つておるということは明瞭であります。そういうふうなものも、これを職務上知り得た秘密というようなぼやつとしたことで、それを正常な形にもどすというような、やむにやまれない自分たちの生活の問題にも関連し、あるいは地方政治民主化正常化明朗化ということにも関連いたします。そういうような問題も三十四条に制約される問題であるかどうか、真剣な問題であります。歳末手当の一銭二銭の問題にも関連する問題でありますので、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  37. 大橋武夫

    大橋国務大臣 会計経理のことは、これは会計法規によつて処理されるものでありまして、それがいかに処理されておるかというような事柄は、性質上これは職務上知り得たる秘密事項となる場合は、ほとんどまれであると考えます。
  38. 加藤充

    加藤(充)委員 そうするとそういうふうなことの、いわゆる摘発というようなこと、新聞の好んで用いる字句を用いますれば、摘発闘争と坊間言われておりまするようなことは、荘十四条とは何ら関係がないものと解釈してよろしいでしようか。
  39. 大橋武夫

    大橋国務大臣 摘発闘争というのはどういうことでありますか、よくわかりませんが、不正の摘発というのと会計上の問題でありまする場合におきましては、特にその会計上の支出をいたしましたる目的となつた事柄が、特別な職務上の秘密事項でない限り、一般的な支出事項は、これは職務上の秘密とはならないと考えます。
  40. 加藤充

    加藤(充)委員 それでは犯罪隠匿、隠滅の協力義務公務員にないということ、それから公務員といえども犯罪に加担したような者は、私は犯罪に加担いたしましたと言つてざんげをする、まことに当然の行為は、三十四条にかからないものだと、一般的に理解してさしつかえないというような御答弁だと思いまするが、それでよろしいですか。
  41. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまの加藤君の御質問は、その通りに私ども考えます。
  42. 加藤充

    加藤(充)委員 これは先日来も質疑で何回も問題になつたところなのでありますが、これを職務上の知り得た秘密であるとか、内々でなれ合つてつたのだから、お前もどうだというようなことでふたをされると、臭いものにふたをしろ主義的の、高級官吏尨大堕落腐敗と、人民に対する大きな公僕たる責任の違反行為がこれで押えられて来ます。その結果は上級の官吏のもとに唯々諾々として動いて何も言うことができない。そうして、々として腐敗堕落一般化してしまうことになる。公務の職務はその他の罰則規定と相まちまして、一部少数の高級官僚的な支配者、同時にその背後の一部の権力者に奉仕するということになりはしないかと思う点が、多々あるのでありまするが、今の大橋法務総裁の、一般的でありまするけれども、三十四条の規定解釈について御答弁を伺いましたが、やはりわれわれはこういうふうな規定適用につきましても、こういう規定を設けるべきではないことはもちろんでありまするが、こういう規定ができましても、そういうことは地方行政民主化ということになるわけでありまして、こういうような適用は十分に考慮すべきであることを、ひとつ申し上げておきたいと思うのであります。地方新聞を見ましても、財源の粛正、緊縮行政だなんて言つておりますが、その面がサボタージュされたり、このような刑罰法規公務員義務として、職務としてふたをかぶされますと、勢いそれは苦しい地方財政火の車はその斥力が徴税の強行となつて参ります。こういうような部分的な公務員の自由を制限するこの条文制定は、一般地方民に対する大きな重圧になつて来てしまうということなのでありまして、それは大きくいえば一般日本国民憲法上の原文的な言葉でいえば市民といい、人民と称すべき人々の非常な基本人権制限になり、それの無視蹂躙にもなると思うのでありますが、こういうような条文規定については、先ほど申し上げましたように絶対反対である。同時にそれは根本的には憲法違反であり、同時にまたその適用については、先ほど来申し上げましたような希望を持つておるものなのですが、この点最後に大橋さんの御意見を承りたいと思います。
  43. 大橋武夫

    大橋国務大臣 適用上の御注意につきましては、私も加藤君とまつたく同感でございます。ただかくのごとき規定憲法違反するという点は、先ほど申し上げましたる趣旨によりまして御同意できかねます。
  44. 今野武雄

    今野委員 先ほどの私の質問に対する大橋さんのお答えは、初めから終りに至るまでずいぶんかわつたと思うのです。この法律について閣議やその他で相談があつたときに、必ずこれは法務総裁ともあろうものが、重大な関心を持つてこれをごらんになつたと思う。そのときにはやはり憲法上の権利制限であるというふうに考えないで、そうしてこれに同意されたかどうか、その点をもう一ぺん伺つておきたい。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 閣議の内容につきましては、ここで申し上げる限りでないと思いますが、立案の過程におきまして、この事項憲法上の自由権の制限であるということは、十分考えているわけであります。しかしながらその制限と申しますのは、先ほど申し上げました通り、憲法上の基本的権利としての公務員のこれらの行為について、かような制限をいたすことがかえつてその基本的権利の目的を達成し得るゆえんである、こういう趣旨をもちましてこれを立案いたしたわけであります。
  46. 今野武雄

    今野委員 ただいまのお話ですけれども公共福祉とかそういうような点について、どうも重く考えられて、どうも全体主義的なんだろうと加藤君も言いましたけれども先ほどの御答弁内容では、これは個人としての基本的人権、そういうような面については、非常にうかつにすごされて来たという印象をわれわれは受けざるを得ない。そうしておいて、公共福祉という面については非常に強く考えておられる。その印象からどうしても大橋総裁のお考えは全体主義に傾いている、こういうふうに考えざるを得ないのであります。この点はなはだ遺憾とわれわれは考えているわけであります。これで質問を終ります。
  47. 加藤充

    加藤(充)委員 これはほかでも質問が出ると思いますが、大体憲法的な立場から私申し上げるのですが、公務員のいろいろな制約自体は、この公務員たる身分だ何だかんだというようなことで、あるいは政府並の解釈で、その当不当は私ここで言いませんけれども、一応はそういうことがかりにあつたとしましても、この条文罰則などを見ますと、明らかに三十六条の第三項というような、これは先日も問題になりましたが、何人もというようなことは、公務員外の一般人々の当然の基本的人権であり、民主的な権利の第一原則であり、その基礎的前提ともなるべきところのイロハのイの字の選挙活動、選挙連動というようなものを、この地方公務員法公務員を取締るということに便乗して、広く一般選挙活動を制限したり、罰則をもつて臨むというようなことになつているのは、この地方公務員法の性格並びにその制定の理由から見て、はなはだしく越権であり、同時に根本的に憲法違反であると、私どもは思うのでありますが、この点をお伺いしたいと思うのであります。
  48. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この法案の題目は地方公務員法なつておりますので、地方公務員でない人についての罰則を、この法案の中に盛り込んであることは不当ではないかというお話でございますが、これは他の観点からいたしますと、一般人の行為ではありますが、しかし地方公務員政治活動をそそのかすもしくはあおるという、地方公務員に対してかような行為をいたした者を処罰する趣旨であり、かつまたこの規定の結果といたしまして、地方公務員政治的な中立性というものが保障される。こういう趣旨でございますから、必ずしもこの法案の中にこの条文があるから、不当ではないかというふうには私ども考えない次第であります。
  49. 加藤充

    加藤(充)委員 趣旨はわかりましたが、憲法規定刑法の存在しておりますところのそういう点から見て、そういう必要があれば、しかも罰則の問題なのでありますから、他の独立の罰則内容とした法律提出され、それできめるという形式をとるべきであつて公務員法行為制約に便乗して、一般人々罰則的なものまできめるということは明らかに越権である。そういう必要があることは大橋さんの言う意思はそれなりにはわかりますけれども、そういう必要がかりにありといたしましても、その制裁をきめる手続なり形式というものは、他の独立の法律的なものでなければならないと思うのであります。これは憲法解釈から見ても、刑法の刑罰に関する基本的人権の問題から見ても、まことに明瞭な常識であると私ども考えまするが、いかがでありますか。
  50. 大橋武夫

    大橋國務大臣 御意見として拝聴いたします。
  51. 大矢省三

    ○大矢委員 これは私はきのうの合同審査会のときにも、特にこの点を聞いておりまして、どうしても私どもにはわからない。この点がまたこの法律で一番重要な点である。争議行為並びに政治活動に対する制限と、罰則である。政務次官はしばしば職員に対しては政治活動に罰則はないのだ、こういうことを何べんも答弁されている。ところが、われわれ法律には至つてしろうとですが、これを何回読みましても、結局はこれは大きな罰則がある。と申しますものは、今加藤君が問題にされました第三十六条の三項です。「何人も前二項に規定する政治行為を行うよう職員に求め、職員をそそのかし、」これは誘惑煽動ということでしようが、それは何人もというんですから、必ず職員が入つている。一切、外部内部を問わず、何人もやつたらいかぬというのですから。それに職員はないんだ、職員はないんだと言う。どうもわからぬ。それに対しての罰則は三年以下の懲役、十万円以下の罰金。それは御承知の通り六十一条です。そこで私はこの点を抽象的でなしに具体的にお聞きしたいのですが、たとえば前二項というのはどう書いてあるかと申しますと、「公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。」と書いてある。たとえば一例を申しますと、法務総裁が今度立候補せられて、それで学校の校長さんに私今度立候補したからよろしく頼むということは、つまり投票を勧誘することである。しかもこれになると、ただちにあなたは三年以下の懲役ということに該当することになる。これは明らかです。従つてまた職員の間でも、そういうことをやればただちにひつかかる。そうではないというならば、法律のどこにあるか。私は何回読んでもわからない。何人もということを害いてある限り、これは職員、非職員を問わず、全体にかかつて来る。はがきなどを出すと、はがきは必ず証拠になる。職員に向つてはがきを出せば、職員は自由党のだれだれから来ましたからといつて、これにひつかかることになる。従つて私はこの法をどうしてつくつたか知りませんが、これは選挙法に規定しておるならともかく、国家公務員法あるいは地方公務員法というものは、公務員は関心を持つて調べるかわかりませんが、一般国民公務員法にどんな罰則があるか調べていない。だから知らぬ者を自然自然にそういうことに陥らせることは、たいへんな問題なんです。そこで私どものお聞きしたいことは、こういう規定は、いわゆる公職選挙法規定したらどうか。なぜここへ持つて来て、しかもこういうふうな危險きわまりなき三年以下の懲役という非常に重い刑を科さなければならぬ理由があるかわからぬから、この点をこの間から何回も私は愼重に聞いておりますけれども、これは全部ひつかかることになります。つまり投票してくださいという勧誘をしただけでひつかかるのですが、この点特に職員がひつかからぬということは、あとから詳しいことは政務次官に聞きますが大橋さんはいそがしいのだから、大橋さんの御答弁だけを先に聞きたい。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 大矢さんの仰せられました候補者が学校の校長に対して、自分が立候補するからよろしく頼む、これは選挙において投票するように勧誘運動をする行為になります。そこでこれを候補者がいたしました場合におきましては、單に選挙投票を勧誘することは、公務員が他人に向つてつた場合にのみ禁止されるわけであります。従いまして候補者が公務員に対してそれをやつたからといつて禁止されることにはなつておらないわけであります。  それからもう一つ、何人もというこの何人もというのは、ここに書いてあります通り、第三項に投票をするようにまたはしないように勧誘運動をするように職員に頼むことであります。つまり選挙運動を職員にしてくれということでありまして、その人に投票を上てくれという意味ではございません。従いまして選挙運動公務員に頼んだ場合は、自分のために運動をしてくれということを頼む、あるいは運動するように公務員をそそのかした場合が第三項の「何人も」ということになりますから、この場合におきましては、たとえば候補者が学校の職員に対して、自分の選挙運動をやつて大いに投票を集めてくれということを依頼いたしました場合は、これは第三項の違反となる、こういう趣旨でございます。
  53. 大矢省三

    ○大矢委員 それを私が言つておる。従つて職員がこういうふうに勧誘した場合には、六十一条の罰則に抵触する。それから何人もということは、今申しましたように候補者であろうがあるまいが、たれでもこの第二項の一号に書いてあるように「公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。」ということで、運動をしてくれということで手紙を出せば、候補者でもすぐにひつかかる。そこで私はその点を強く言つている。これは地方公務員法だから、何人もということは公務員に限つたものだと解釈していた。ところがいろいろ聞いておりますと、全体だと言う。公務員というものは公平な中立性を保たねばいかぬ。それをそそのかしたり、あおつたりした者はいかぬというこの法律をつくつた精神が、公務員を対象としていることは申すまでもないのですが、政治活動並びに争議行為に対して、誘惑煽動した場合ということになつている。かつて今から三十年前に労働争議を禁止された治安維持法第十七条に、労働争議を誘惑煽動した者に対しては、三箇月以下の懲役に処するということで、西尾末廣氏が二箇月の懲役を受けた。それは三十年前である。一体普通の人ならば別でありますが、少くとも公務員は相当な学識を持ち、しかも十分テストして採用された常識もあり、判断力もあり、しかも相当に社会的な地位もある人である。これに対してそういう誘惑煽動に乗るという前提に立つてものをこしらえるということは、私は公務員に対する非常な侮辱じやないかと思う。もちろん多数の中にはあるかもしれません。しかしそういう誘惑煽動に来るものなりという前提のもとに、それを罰するんだということで、強い罰則をつけてこの法が制定されているということは、一体公務員をどう考えているのか。まるで一般の労働階級のように考えているのか。この点私は非常に重要であると思う。法律ができれば、これは知らぬということは許されまい。私は知らなかつたからと言つてのがれるわけには参らぬのですから、少くともそれを納得して法を心から守るという権威あるものでなければならぬ。何か誘惑煽動されるものだ、した者も、された者も、それに対しては三年の懲役または十万円以下の罰金に処するということになつている。これは昔の一般人を扱うような気持で、この法律ができておる。しかもそういう言葉を至るところに使つておるというところに、法の権威の上から私ははなはだ疑問を持つておる。率直に言えばそうじやない。そういう人もあるからこしらえた人だと言われるかもしれませんが、これを見たときに公務員が非常に残念がると思いますから、私はこの機会にそれを聞きたい。
  54. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公務員がすべてお話のように誘惑煽動には乗らないという前提に立ちますと、かような規定は確かに必要はないと思います。しかし私どもといたしましては、現在の状況から見て、この規定は必要であると考えて載せた次第であります。
  55. 大矢省三

    ○大矢委員 それから「前二項に規定する政治行為を行うよう職員に求め、」云々とありますが、その場合の第四号にこういうことがある。「文書又は図画を地方公共団体の庁舎、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体の庁舎、施設、又は利用させること。」とありますが、この施設、庁舎というのは施設内とあれば別ですけれども、施設というのは、御承知の通り国においても地方公共団体においてもたくさんある。一例を申しますと掲示板も施設に違いない。そういうものにもし何人も掲示をするならば、三年以下の懲役、十一万円以下の罰金に処するということになる。二項の規定を犯した場合これまたひどいということで、われわれ常識で考えられぬが、この点はどうですか。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 三年以下の懲役または十万円以下の罰金をもつて禁止しておりますのは、第三項の行為だけでございまして、お話の公務員がみずから庁舎に張紙したり、あるいは他人を使つて張紙をさせるということは禁止はいたしてございますが、しかしそれを犯しました場合にはその公務員に対して懲戒の場合はある。しかしそれだけでは罰にならない。何人といえども他人が公務員に対してかようなビラを施設に張れといつて公務員に頼んだ場合に、その頼んだ人だけが今の項で罰せられる。こういう趣旨でございます。
  57. 大矢省三

    ○大矢委員 それであるならば庁舎に何んぼ張つてもかまわぬですか、こういうふうに頼まずにやつたのなら…。  それから二項の規定とか三項の規定とかいうことをしきりに言われますが、三項の規定の頭に、何人も前二項に規定する政治行為をなしてはいかぬというのだから、それではもし職員がやらずに第三者がやつた場合には、その第二項の四号の規定というものをやつてもさしつかえないのですか、この点です。
  58. 大橋武夫

    大橋国務大臣 第二項は職員に対する禁止規定でございますから、職員以外の人がこれらの張紙をした場合は、当然との第二項は関係ございません。それから先ほど仰せられました公共団体の施設に、職員に頼まずに第三者が勝手に張つた場合はどうであるか。これも第二項または第三項の規定には関係のない事柄であります。
  59. 大矢省三

    ○大矢委員 よくこれを見てください。二項はそれはわかつています。それは職員のやることです。その次の三項に劈頭に、何人も前二項に規定する政治行為云々と書いてある。どなたがやつてもいかぬということが書いてある。何べん見てもそう書いてある。その点は……。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 大矢さんは「何人も前二項に規定する政治行為」云々と、そこでおやめになるからいけないので、それからずつと終いまで続いて読んでいただきまして、そういう政治行為を行つてはいけないではなくて、行うように職員に要求したり、あるいは職員を誘惑したり、煽動したり、その要求、誘惑、煽動がいけない。こういう規定に相なつております。
  61. 大矢省三

    ○大矢委員 ぼくはその点は読んでおる。だからぼくが先ほどつたのはこうです。大矢だれそれにということでは引つかかるが、大矢学校の校長にという言葉を使つたら職員であるということは明らかだ。その職員に頼んで手紙を出したりなどした場合は引つかかりますかということを言つておる。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 職員に対して手紙を出したりするということは書いてない。それから政治行為を要求というその政治行為というのは、單に投票を要求するのではなくて、運動を要求する。そういう行為は引つかかる。こういう趣旨でございます。
  63. 大矢省三

    ○大矢委員 それでは庁舎の施設等に掲示するということを、職員に頼んだりすることは引つかかるのですか。かりにわれわれが大阪なら大阪の施設に対して、ビラを職員に頼んで張るということはさしつかえないのですか。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この規定には関係ございません。
  65. 大矢省三

    ○大矢委員 それでよくわかりました。  それから第三十七条のいわゆる争議行為ですが、これも同一に罰せられておるのですが、この争議行為というのは何というかそそのかし、あおつてはならぬ、そういうのも一部にはあるかもしらぬが、私が先ほど申しましたように、少くとも国家公務員あるいは地方公務員としての人格、あるいは一般常識の水準、そういうものは相当に高いと私は見ておるが、一般に同一に扱つて立法されたのか、それを扱われるときはどういうお考えであつたか。その点をひとつ…。
  66. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 すべての公務員が、必らずその誘惑煽動に乗るということはないと思います。しかし公務員の中で、かりにもそういうようなことに乗つて争議行為をするというような結果になりますならば、これはやはり全体の奉仕者としての性格から申して、適当でない。そういうことを保障いたしますために、そのような外部からの煽動というようなことを排除し、しかもそれを励行するのには刑罰をもつてすることが必要である。かように考えたわけでございます。
  67. 大矢省三

    ○大矢委員 また元へもどるようですが、あらためて重ねてひとつお尋ねします。職員には罰則がないということを言われたが、こういう行為をやつた場合はあるということを小野さんはお認めになりますか。
  68. 小野哲

    ○小野政府委員 お答えいたします。第三十六条の点について先般来御質問がありまして私がお答えしました趣旨は、職員自体が第三十六条に掲げてあるような政治的目的をもつて政治行為をした場合においては、公務員関係にかんがみまして罰則適用はない。こういうことの御説明をいたしておりますので、第三十六条第三項の問題とは、おのずから別の観点からの趣旨でありますので、この点御了承を願いたいと存じます。
  69. 大矢省三

    ○大矢委員 観点はどつちの観点でもいいですが、公務員がこの行為をやつたときには六十一条以下の適用を受けるかどうか。ないないと言つておるが、それはあることは事実です。
  70. 小野哲

    ○小野政府委員 私が申しておりますのは公務員自体が自分で政治行為をした場合には、公務員関係から考えて懲戒処分の対象になる。しかし第三十六条第三項の問題は、何人も云々ということになつておりますので、この点は職員が受身の立場になるわけであります。その点が第三十六条一項、二項と、第三項の場合は違うので、この第三項において何人もの中にも職員が含まれておりますから、この点については罰則適用があるし、内容がおのずから違う、こういうことを先ほど来申し上げておるわけであります。職員自身が政治行為をする場合におきましては罰則適用はないのであるこういうことであります。
  71. 大矢省三

    ○大矢委員 何べん聞いてもわからぬのだが、罰則というものは三十六条の二項の一、二、三、四とあるこの行為を職員がやつた場合は、職員は何人の中に入るので、職員は入らないと言つておるのが、どうも私にはわからぬ。何人の中に職員が入るのですか。それについて……。
  72. 小野哲

    ○小野政府委員 それはただいま申し上げたように、何人といえどもという中には職員も包含されておる、こういうふうに御承知を願います。
  73. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この際お諮りいたします。  ただいま議員田中織之進君、同松澤兼人君、及び松井政吉君の主君より、委員外の発言を求めております。これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議ないものと認めて、主君に発言を許すことにいたします。なお先ほど理事会申合せの、社会党一時間には変更ありませんから、この点御了解の上発言を願います。松澤兼人君。
  75. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 第一に小野政務次官にお伺いいたしたいのであります。午前中の連合審査会におきまして、私、淺井人事院総裁質問したのでありますが、淺井人事院総裁は、ここに配付せられております人事委員会の機構によつては、十分に人事行政の責任を全うすることができない、多少そういう点について疑念があるというお話があつたのでありますが、地方自治庁がお出しになりました都道府県、五大市において、人事委員会が二十人の事務局の職員ということで、はたしてやつて行けるかどうかという点を御質問申し上げます。
  76. 小野哲

    ○小野政府委員 午前の連合審査会の際に御質問がございまして淺井総裁から、多少少いのではないかという御答弁があつたことも承知いたしております。ただその際に私からも敷衍的に申し上げたかと思いますが、国家公務員制度を創設いたしました際に、またその後において、新たなる制度を立案企画いたして行かなければならない関係上、相当の人手を要するという点は、これは理解ができると思うのであります。ただ今回この法律案考えておる人事委員会等を設けます場合においては、大体国家公務員制度が確立の段階にございますために、諸般の事柄を取扱うにつきましても、これらの制度を参照し、また長をとつて、これを地方公務員制度の上にも反映させて行くというふうなことも考えられますので、大体都道府県及び五大市には、平均いたしまして二十へ程度の職員でやり得るのではないか、こういう考えのもとに地方自治庁といたしましては、お手元へ差上げたような資料を作成いたしたわけでございます。
  77. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そういたしますと問題は二つにわかれると思うのでありますが、かりに人事院が新たな制度の立案企画ができれば、人事院の制度というものは縮小されるであろうという問題が、ただいまの御答弁から当然帰結されるわけであります。それと同時に、もう一つは、それでは地方の人事管理に関する自主権がないではないかという問題が生じて来ると思うのであります。私ども地方公務員というものは、同じく公務員ではあるけれども、これを画一的な法律をもつて制限するということが、不合理であるという信念の上に立つているのでありまして、そこではどこまでも自主性というものが、確立されなければならない。従つてこの人事委員会の事務局というものが二十人で十分である、それは国家公務員に対する、人事院において決定された、あるいは立案されたものの長をとるというのでありますが、それでは人事院が研究した結果をとるのと、それからその地方の自主性あるいは特殊性というものは、どういう限界でお定めになるか、その辺御答弁願いたいと思います。
  78. 小野哲

    ○小野政府委員 かねて申し上げておりますように、地方公務員法案が、地方公共団体の自主性を尊重する考え方が織り込まれておるということは御了承願えるかと思うのでありますが、先ほどお触れになりましたように、人事院の規模が今後どういうふうになるかということは、私から批判をいたしますことは不適当であろうと思いますので避けたいと思います。もちろん都道府県五大都市におきましても、その規模の大小なり、あるいはまた人事委員の多少というふうな点がございますので、二十人だけで十分であるということは、私ただいまのところ断言はいたしかねると思います。しかしながら大づかみに考えまして、大要観察からいたしますと、この程度で運営され、また同時に公務員制度というものから考えますと、その性格におきまして国家公務員制度と、地方公務員制度とはある程度、その質において共通な部面もあるのではないかと考えられますので、従つて私のこの考え方が必ずしも地方公共団体の自主的な運営あるいは自主権を阻害するものであるということには、なるまいと考えられます。
  79. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それではかりにこの二十人という人事委員会の事務局が、平均的な数字であるとして、具体的な例をもつて言いますならば、たとえば東京都などにおきましては、どのくらいの人事委員会の事務局の職員があれば、ほんとうに科学的、能率的な人事管理ができるというふうにお考えになりますか。
  80. 小野哲

    ○小野政府委員 具体的な数字につきまして、私から詳細にお答えいたしかねる部分もございますので、いずれまた補足的に御説明いたすことにいたします。御承知のように、人事委員会ができました場合におきましては、この法律案に基いて、それぞれの所掌事務が担当されることになるわけであります。また同時に、たとえば県で申しますならば、県知事、すなわち任命権者として国有の仕事も残されて来るわけであります。これらの点から申しまして、その間のあんばいをいたす場合においては、東京都のごとく相当大規模のところと、あるいは県にいたしましても人品その他職員の数から申しまして、比較的規模の小さいところとは、おのずから差等ができて来るであろうということは、常識的に考えて判断するごとにかたくないのでございます。
  81. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 東京都につきまして具体的にどのくらい、人事委員会に職員を置いたらいいかという御質問でございますが、この点に関しましては、私どもまだ研究の過程でございまして、自信を持つてこれだけがよろしいということは申し上げられないと存じておりますが、ごく概略に申しまして、五十人から百人くらいの人がいりはしないか、これはやはり仕事の着手の順序、段取り等によつてつて参りますることと、職階制のようなものを現実に実施いたして参りますような段階になつて参りますれば、若干ふえて参ると思いますが、当初は大体五十人くらいから出発して、逐次充実して行くということになりはしないかと思います。
  82. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは具体的な問題について東京都では現在人事管理をしておるのにどのくらいの八が、そこに使用されておるかという点について承りたい。
  83. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 ただいまここに正確な資料を持つておりませんので、私の個人的なことを申し上げまして恐縮でありますがちようど私も東京都に勤務いたしておりまして、人事関係の仕事をやつてつたごとがございますので、現在もそれ以来あまり大差がないように感じておるのであります。私がありました当時の人事課の職員は全体で六十名足らずであつたと思います。ただ御承知でもありますように、それぞれの各局におきまして若干任命権を知事から局長に委任しておるものがあるわけであります。先刻もこの委員会で申し上げたのでありますが、雇等の任免権は、これを局長に委任いたしておる、そういう点もございますし、また昇給の手続を進めますような場合に、人事課が全部これを審査いたし、また書類を作るということでは、非常に手続上たいへんでございますので、各局にはそれぞれ庶務係というのがございまして、庶務係で局内人事の関係を取扱つておる者があるわけでございます。これは大体各局四、五名ずつおるということにいたしまするので、全体といたしましては、人事関係の職員は、面接的に申し上げますと百名程度の者がこの任に当つておると思います。但し交通局につきましては、労務関係は一応別個になつておりますので、この関係の職員がこれに若干加わることを御承知願いたいと思います。
  84. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私そういう人事委員会の事務局というものができましても、やはり国有の人事管理に関する事務というものが、当然都道府県五大市その他人事委員会を設置した市に残るのではないか、こう思うのでありましで、その割合はどういうふうになりますか。
  85. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 たとえば県の知事の部局で申し上げますと、現在人事課なり秘書課なり職員課なりというような名称で、人事主管の課がございます。この職員数は大体二十名から三十名でございます。これは具体的にやつてみませんとはつきりしたことは一言えないと思いますが…     〔「知事が五十人というのに二十人ではおかいじやないか」と呼ぶ者あり〕 平均であります。私の大体の考え方では、知事の事務部局だけをとつてみました場合におきましては、もちろん人事委員会の事務局の数は多くなつて参ると思います。それ以外にそれぞれの部に、先刻申し上げました東京都の局に当るものに人事の主管の職員がおります。それらはやはりあまり減少できません。今松澤さんがお話になりましたように、任命権者自体の仕事というものは、もちろん残つて参るわけでありまして、その者は当然存置されて参ります。そこで知事の補助部局でありまする総務部の人事課関係の職員につきましては、その若干の仕事が人事委員会に移つて行く。人事に関する総合、調査、企画、そのような事務も現在人事課で行つておりますので、その関係の仕事は若干人事委員会の事務局の方に移つて参ることに相なるというふうに考える次第でございます。たとえば神奈川等の場合で申しますと、私これは正確な数字は知つておりませんが、大体五十名くらいというふうにいたしまするならば、その若干の人員は人事委員会の方へもまわつて参りまして、大まかな数字で申しますれば、大体三十名から四十名ということで、人事課の職員と大体同じ数になる目途をつけておる次第でございます。
  86. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そういたしますと現在総務局あるいは総務部というもので人事管理をやつておる、職員のある者は人事委員会の事務局に行く、ある者は総務部あるいは総務局に残るということになりますと、地方自治庁におきまして、それぞれ都においても道府県におきましても、職員の進退及び身分に関する事項というものが、総務部あるいは総務局の所管事項なつておるのであります。従いましてこれと今回の人事委員会の制度というものは、当然ここに何か調整が加えられなければならないと思うのでありますが、この地方自治法改正法律案等についてお考えなつておることがありますか。
  87. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 今の御指摘の点は、地方自治法の百五十八条の知事の事務局の編成について書いてありますところで、総務部の所管事項として「職員の進退及び身分に関する事項」というのがございます。その点に関連しての御質疑であろうと考えるのであります。百五十八条に書いてありまする総務部所管の人事というのは、これは知事の補助機関でありまする職員の任命権を知事が持つておりまする関係上、その関係においてそれらの所管事務を行いまする部局といたしまして総務部があるという意味合いになるのでありまして、今度新しく実施せられまする人事委員会の所管事務とは、おのずから別個のものになるというふうに考えておる次第であります。
  88. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それは政府委員がお考えになることは御自由であります。しかしながら地方自治法において総務部の「職員の進退及び身分に関する事項」こうあります限りにおいては、総務部は職員の人事管理に関する全責任を負うというふうに解釈しなければならないと思います。ここで地方公務員法が新しくできて、そこでまた人事管理をやるとすれば、当然そこの職務の分掌というものが明らかにされなければならないわけであります。でありますから、かりにここで職員の進退及び身分に関する事項で、人事委員の決定されたものを、この総務部において行うということであれば、それでよろしいわけであります。そうでなくしてこちらの方にも職員の進退及び身分に関する事項が、專門的に総務部に所属されておる。しかも一方におきましては、地方公務員法において、人事委員会が職員の進退及び身分に関する事項を取扱うということであれば、法律としては重複しておるか、あるいは誤りであるといわなければならぬ。この間の調整はどうなさるお考えでありますか。ただいまの御見解はそれでよろしいと思います。しかし法律というものは、そういうあいまいな、ただ一人の政府委員見解によつて左右されるものではないと思いますから、その点ひとつ明らかにしていただきたい。
  89. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいま御疑問の点はごもつともでございますが、百五十八条は、都道府県知事の補助部局の事務分掌を定めておるものでございます。御承知のように、このほかにたとえば選挙管理委員会とか、監査委員というのがございます。これらにつきましての職員任免というような問題は、それぞれの選挙管理委員会なり、監査委員会の条章に書いておるのでございます。従つて百五十八条に書いてあります職員の進退及び身分に関する事項というのは、知事の補助職員の進退及び身分に関する事項と解するのが、法律上の解釈としては当然でございまして、現にそういうふうに運用いたしておるのでございます。そのゆえに現在都道府県におきましては、各任命権者がまつたくばらばらに人事を行い得る体制になつておりますので、そこで人事委員会というような、いわば都道府県における中央人事行政機関が必要になる、こういうことなんでございます。
  90. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは重ねてお伺いいたしますが、人事委員会において職員の進退及び身分その他分限に関することを決定し、あるいはこれを遂行するということになりますと、この百五十八条に書いてあります知事の権限としては、どういうことをなさるのでありますか。
  91. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この地方公務員法規定しておりますることは、任命権の所属に変更を加えるものではありませんので、任命権を都道府県知事が行う場合におきまするわくをきめておるわけであります。ただ直接に人事委員会が行いまするものは、たとえば不利益処分の審査とかいうようなものがございまするけれども、本来的な都道府県知事の人事に関する権限は、これは何ら変更をいたしておりません。人事委員会と都道府県知事との関係は、御承知のように、任用に際しては人事委員会が行つた試験、それに基く任用候補者名簿によつて提示せられました者から任用いたしまするとか、あるいは分限懲戒等に対しましては、一定の条例ですべて定められることになりまするが、そういう条例に基いてやるとかいうような、それぞれのわくがはまりまするけれども、本来の任命権自身には変更がない、かように考えております。
  92. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そういたしますと、人事委員会において選考したり、あるいはまたは昇給させるという決定をした者は、知事が無条件でこれに服従して、総務局あるいは総務部における人事管理の規定に従いまして、これを昇給させる、任命するということになりますか。
  93. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 それらに関しましては、地方公務員法に基きまして、条例によつて第一次的に必要なるわくができます。また特にこの法律規定いたしておりまする事項につきましては、人事委員会規則ができる場合もございまするが、そういうようなわくに従つて、職員の進退及び身分を決定する、こういうことになるわけでございます。
  94. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そのわくに従つて行うということでありますが、わくは一応わかつておるのであります。しかし最終的にはやはり知事あるいは市長ということになつて来ると思うのです。そういたしますと、結局わく外については、知事としては何らの人事管理に対する発言権がないということになりますか。
  95. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 人事委員会なり、あるいは公務員に関する条例等におきまして、特にわくを設けておりません所は、これは任命権者が本来的な進退及び身分に関する権限を自由に行使できるわけであります。
  96. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 わくを設けてないという、そのわくのないところは、どういうところですか。
  97. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 このわくは、任用、任免いずれもわくがございますが、たとえば研修につきましては、任命権者がやらなければならないということが書いてございまするが、その研修を一体どういう方法でやるかということは、これは任命権者にまつたく許されておることでございまして、そういうようにその他いろいろ規定はございますが、大体そういうようなことであります。
  98. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうすると選考、任免、進退ということについては、知事は何らの権限もないということになりますか。
  99. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 任用に関しましては、任用候補者名簿の中から知事は任用しなければならないという制約を受けます。しかしながらこの法律考えておりまする職階制は、人事委員会を置きまする所だけに限定をいたしておりまして、そういう意味の、やかましい試験によるというようなことは、そういう団体だけに限られるのでありまして、その他の、人事委員会を置いておりません所では、競争試験によりましても、あるいは選考によつてもよろしいという、任用上の実情に即する緩和された方式を考えております。
  100. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 重ねてお伺いしますが、そういたしますと、都道府県知事及び五大市、その他人事委員会を置いております市の長におきましては、いわゆる選考、それから進退その他身分に関する事項は、何らの権限がないということでございますか。
  101. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 何らの権限がないということではございませんで、たとえば提示されました五人の候補者の中からどれを選ぶかということは、任命権者の自由なる裁量にまかされておるわけでございます。
  102. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それで大分明らかになりましたが、しかしそれにいたしましても、地方自治法の百五十八条というものは、地方公務員法ができましたら、多少ここに修正なり、あるいは改正なりということが必要であるというふうに考えるのでありますが、この点につきまして、やはりどこまでもこれはこの通りでよろしいというお考えでございますか。
  103. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 御説のごとく、地方自治法百五十八条の運用に関しましては、若干の変更を来しまするが、法律の字句自体を変更する必要はないと考えております。
  104. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは問題をかえまして、人事委員会委員あるいは構成の問題について少しくお伺いしたいと祝うのです。第九条におきまして、「委員は、人格が高潔で、地方自治の本旨及び民主的で能率的な事務の処理に理解があり、且つ、人事行政に関し識見を有する者のうちから、議会の同意を得て、地方公共団体の長が選任する。」ということになつております。これは午前中の質問においても、多少触れたのでありますが、はたしてこういう人が都道府県及び五大市、その他人事委員会を置く市において、得られるであろうかということを、非常に懸念するのであります。これがもし選挙でありますならば、多少はそういう懸念もなくなるでありましようが、單に地方団体の長が選考いたしまして、議会の同意を得てこれを選任するということであれば、非常に選考の範囲も狭くなり、この資格の点において疑義が生ずる心それはないかということを考えるのでありますが、はたして自治庁におきましては、ほんとうにこの九条の二項に規定してありますような、りつぱな資格のある人事委員が得られるというお考えでありますか。
  105. 小野哲

    ○小野政府委員 人事委員会の運営が、委員にその人を得なければならないという点につきましては、私もまつたく同じような気持を持つておるものであります。今お話がありましたように、それでは公選によつてはどうだろうか、こういう御意見があるようにも伺つたのでありますが、委員会委員の選任につきましては、いろいろの方法が行われておりますことは、御承知の通りであります。ただ今回の人事委員会の所掌事項等から考えますと、人事行政に関しまして技術的な要素が多分に含まれておりますのと、またこの委員会の重要性にかえがみまして、できるだけ適当な人材を当てるように選考して行くことが必要であろう、こういう考え方から、公選によつて出ておりまする地方公共団体の長が選任するのでありますが、議会の同意を得て愼重にこれを行つて行くということによつて、この趣旨が全うされるのではないか、かように思つておるのであります。同時に、地方自治制度自体が、新憲法の施行以来、各地方住民に対しましても、だんだんと習熟して参つておりますがために、この人選につきまして当該府県あるいは市において人がないというふうなことは、私はなかろうと考えておる次第であります。
  106. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は午前中の連合審査会においても申し上げたのでありますが、委員会制度の運用というものは、非常に現在の日本においては困難であるということを考えまして、少くともボス的勢力を地方自治から排除するという意味から申しますと、地方公共団体の長が議会の同意を得て、これを選任するということよりは、広く一般の公選による委員の選考をした方が適当であると思うのでありますが、この公選による人事委員の選任と、それから地方公共団体の長が議会の同意を得て選任するという方法と、その利害得失について御所見を承りたいと思うのです。
  107. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 公選によつて人事委員を選んだ場合との利害得失についてのお尋ねでございますが、ここにございますように、委員につきましては「人格が高潔で、地方自治の本旨及び民主的で能率的な事務の処理に理解があり、且つ、人事行政に関し識見を有する者」こういう積極的な選考要件を掲げておるわけでありまして、こういうような趣旨に合致するものであるかどうかということの認定を、選挙一般に対して求めますことは、やはり相当困難ではないか。地方自治体の長でありまするとか、議会の議員でありまするとか、一般的な地方自治のことに携わりまする者に関しまして、その最高の機関になりますものを直接選挙にするということは、これは住民自治の本旨から申しましても、けつこうだと存ずるのでありますが、人事委員のような專門的な技術的な行政機関の構成員を選びます方法といたしましては、直接選挙ということはやはり適当ではないと考えておるのでございます。なお経費の点から申しましても、直接選挙によりますることは、相当の経費を要しますので、かれこれ考えまして、従来のこの種特別職の選考の方式を採用いたした次第であります。
  108. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ただいま技術的な人物を選考する場合においては、これは法律趣旨の通りにやつた方がいいというお考えでありますが、しかしそれは一つのりくつでありまして、たとえば教育委員のようなものも、これは相当技術的な問題があると思うのであります。しかし教育委員のような技術的あるいは專門的な知識が必要である者でも、やはり公選によつているのでありまして、この点お言葉でありますけれども、私は教育委員選挙と同じように、人事委員というものは選挙によるべきであると考えますが、教育委員の場合と、人事委員の場合とはそこに何らか相違がございますか。
  109. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 私教育のことにつきましては明るくございませんので申し上げられませんが、聞くところによりますれば、教育委員はやはり委員に選ばれる人はしろうと言いますか、教育に必ずしも識見を持つておる人々というような積極的な要件は、少くとも法律の上にはございませんし、また事実その運用の方式におきましても、必ずしもそういうことが絶対の要件であるというふうには聞いておりません。むしろ一般的に広く選挙民の直接選挙によつて選ぶという方式を採用せられたものであろうと思うのであります。しかしながら人事委員に関しましては、このような積極的な要件を付しておりまして、こういう趣旨の人を選考するというのには、やはり長と議会との合致に基きまして選びます方が、一般選挙によつて行いますものよりも、適当ではないかというように考えられるのでありまして、こういうような方式の方がよろしいというような見解もあることを私ども聞いておりますので、その御趣旨に沿うた次第でございます。
  110. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その点は一つの見方でありまして、教育專門家が教育委員になることがいいと言う人もありますし、教育は全然何も知らない上ろうとが教育委員会委員になることがいいという人もあります。これはただいま次長がお引きになりました一部の風評あるいは評判でありまして、これは必ずしも一方的に教育技術についてはうとくて、しろうとの方がいいということは、ただ一概には片づけられないと思うのです。そこで問題を逆に考えてみまして、たとえば公安委員会委員の選任は、相当厳重な資格上の制限があつたと記憶しております。もし議長あるいは知事の選任ということになりますならば、われわれが心配しておりますボス的な勢力を排除する意味において一定の制限を加えることが、必要ではないかと考えるのでありますが、たとえば公安委員の選任の場合と、人事委員の選任の場合、その点についてお考えを承りたいと思います。
  111. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 公安委員に対しまして、御指摘のごとく官歴等がありましたものを排除いたしておりますが、これは警察の特別の要請に基くものと存じますが、人事委員会につきましてはそういうような消極的に要件を排除する方法をとりませんで、むしろ積極的にどういう要件を必要とするかということを、法規中に書き加えまして、長が議会の同意を求めます場合には、こういう要件に合致した人であるかどうかということを、みずから認定し、議会にも認定してもらいまして、選ぶという方式が適切であると考えた次第でございまして、こういう積極的要件を設けましたことの結果として、人事委員に選ばれる者は民主的であると同時に、能率的な事務の処理に理解がある者が選ばれる。こういう積極的な要件になつております。
  112. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 積極的な要件はなるほどわかるのであります。しかし一方においてはいわゆるボス勢力の排除ということが、絶対不可欠の要件であると思うのであります。この点について何らかの措置が講じられなければならないと思います。たとえばリコールといつたような制度がそれでありますが、この法律によると、そういう点が考慮せられていないのでありますから、こういうように、たまたま地方公共団体の長が議会の同意を得て選任した者に対して、世間一般が見て不適当だと考えられる人物がいたならば、それに対してリコールをするという方法が考えられておりますが、いかがですか。
  113. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これはその少しあとの方に、委員職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認めたという場合におきましては、地方団体の長が議会の同意を得て、これを罷免するという方式をとつております。人事委員につきましてはこういうように、一面積極的な要件を設けますとともに、他面その職務を行うに適しない非行があるという場合におきまして、これを排除する方式をとつておりまして、これによつて人事委員につきましては、一面御心配のようなボス的勢力の排除ができると考えておりますし、また一旦選ばれました者が、結果において適当でなかつたという場合におきましては、この方法によつてこれを排除することができると考えておるのであります。
  114. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 なるほど第六項において、そういう規定があることは承知しております。しかしここでは心身の故障のため、職務の遂行に堪えない場合、それから委員職務上の義務違反及び委員たるに適しない非行という点があげられているのであります。しかしながら別段非行というでもありませんが、たまたま選任せられた者が、あの人はこういう人物である、あるいはこういうことをやつているといつたような、いわゆる非行にも当らない、義務違反にも当らない、しかしだれが見ても、これは一種のボスであるということが考えられる場合、これを罷免するということは非常に困難であります。非行があつた、たとえば人事委員でありながら、他人に暴行を加えたというようなことは、これは明らかに非行があつたと言えると思うのであります。しかしながらそういつた事実はないけれども、たとえば何か暴力団の陰にあつて、それらの暴力団を指揮あるいは指導していた、黒幕になつてやつたというように、本人には別段非行ということはない、義務違反もない、あるいは心身故障でもない、こういうような場合には、罷免することは非常に困難であると思うのであります。そういう場合、これはリコールにでもよらなければ、罷免することは困難だと思いますが、いかがですか。
  115. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 人事委員に関しましては、一面その職務性質から申しまして、ことにこの法案におきましては、不利益処分の審査でありますとか、勤務条件に関する措置の要求というような項は、機能の十全なる発揮を期しておりまするので、他面この人事委員の身分を保障するということも、考えて行かなければならぬのであります。そういう点から考えまして、人事委員の地位を非常に不安定にいたしておくということは、これまたほんとうに落ちついて人事行政に專念することが困難でございます。これは国の人事委員に関しましても、すでに御承知のごとくその身分の保障があるわけでございまして、特に国家の訴追に基いて、しかも最高裁判所において彈劾をするような措置が定められておりまして、それ以外の方法は許されておらぬような状態でございます。そういうようなものとの権衡等から考えまして、地方議会におきまして彈劾をするというような方式をとることだけで十分ではないか、身分保障の点から考えまして、また実際上の運営の問題として考えてみましても、この第九条の第六項の規定の運用で、十分所期の目的は達し得る。かように考えておるのであります。
  116. 松澤兼人

    ○松澤委員 ただいま人事委員の彈劾訴追の問題が出ましたが、中央の人事官は国会の意思によつて、彈劾訴追の手続をとるのであります。しかるに人事委員の場合は議会から彈劾訴追というか、あるいは罷免の要求をするという規定ではない、その点ははつきり違つておると思うのです。しかも国家の場合は、ボス勢力というものはそう介入はできないと思います。問題は、やはり地方の人事委員に対してボス勢力が入つて来るということなのです、従いまして、もし国の人事官に対して国会が彈劾訴追の手続をとられるのは別であります。しかしながらここではやはり議会の同意を得て、地方公共団体の長がこれを罷免する、どこまでもその意思の発動は、地方公共団体の長ということになつておるように思うのであります。そうしますと国の場合とちようど逆でありまして、もしも地方議会の側からそういう意思が発動して彈劾訴追あるいは罷免の要求ということができれば別であります。そういう点私どもは、国の場合においてはボス勢力の支配ということは、相当困難であると思うのでありますが、地方においてはそれが非常に容易であるというか、ボス勢力に支配される危険性が非常に多いということを心配して、むしろリコールの制度をとることが必要ではないか、こう考えているのです
  117. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この第六項は、任命権の発意が長にあり、これを議会の同意を得て選ぶという、地方公共団体の各種委員の任命の一般的の方式を踏襲しておるのでございまして、罷免につきましても、任命権者が任用いたしました際と同じような方式自体につきましては、いはば一般方式を適用したにすぎないのであります。ただいま御指摘の、地方議会の方からの自主性による彈劾ができないではないかというお尋ねでございますが、これにつきましては、もちろん地方議会が県政調査、市政調査ということに驚きまして、人事委員会の行政の運営が不適当でございますならば、その調査の結果に基きまして、長に対してそのことを要求いたす結果として、こういうような方式による彈劾をすることが可能になるわけでございます。もしも議会の総意に基くそういうような彈劾の要求に対して、長がこれに応じない場合におきましては、これはまたおのずから、たとえば長に対する不信任決議でございますとか、あるいは住民のリコールの請求でございますとか、そういうような運営上の方式によつて解決が可能である、かように考えております。
  118. 松澤兼人

    ○松澤委員 鈴木さんはそういうふうにおつしやいますけれども、この六項の規定を読んでみると、そうではなくて、どこまでもその発意は長でなければならない。長が云々の要件があつた場合に、議会の同意を得てこれを罷免する。従つてその間には地方議会の意思というものは入つておらない。こういう罷免をする場合においては、あとにあります「この場合においては、議会の常任委員会又は特別委員会において公聴会を開かなければならない。」ということが、むしろ最後の手続としてとられておるのであつて、議会が自主的にそういうことを発意することが規定されておらない。もしも議長がどこまでもそういう発意を議会においてすることができると仰せになりますならば、これは別であります。その点、もう一度はつきりとお答え願いたいと思うのであります。
  119. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは地方自治法の第百条の規定によりまして、地方団体の議会は当然に団体事務に関する一般的な調査権がございますので、それに基きまして、今の人事委員会の行政運営に関しまする調査は当然可能でございます。そういうことの一切の運営の結果が、長の施策に反映するというのは、これは一般に他の行政の面におきまして同様でございます。この方式に関しましては、たとえば公安委員等につきましても、それと同じような形の彈劾の方式がとられておるのでございまして、こういうような方式で参りまして、さほどの支障はないと私ども考えておるのであります。
  120. 松澤兼人

    ○松澤委員 それでは、長がみずからの発意をもつて、議会の同意を得てこれを罷免するという法律の建前であるけれども、この前に議会が自発的にだれだれの人事委員は適当でないからという決定があれば、地方公共団体の長はそれに従つてやらなければならない。もし長がそれに従つてやらない場合には、別に地方自治法規定によつて不信任等の行為がとられるというふうに了解してよろしうございますか。
  121. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 御説のごとくでありまして、地方団体の長が、こういう規定を発動いたしまするにあたりましては、たとえば御指摘のごとく議会のそういう要求に基きまして、やるということもございましようし、あるいはたとえば監査委員が監査をいたし、その結果に基きまして、あるいは長がその他の方法によつて得ましたところの情報を基礎にいたしまして、長がその規定を発動するということになると思います。
  122. 松澤兼人

    ○松澤委員 なおこの件に関しまして申上げておきたいことは、国の場合にはやはりこういうふうに、まあ長ではありませんけれども、総理大臣が国会の同意を得て人事官の任命をしておる。その場合においてもやはり議会の側から彈劾訴追の手続をとられれば、これが罷免ということになる。その最初の選任の形式は同じ形式をとつております。ここで罷免の場合は違つた形式がとられている。それがわれわれとしては不満であつて、むしろ議会側からはつきりとこれを罷免するという手続が、この中に盛られていなければならない、こう考えるのであります。ただいまのお話で大分わかりましたが、しかし法律としては、やはり国の場合と同じように——任命についてはなるほどこうである。しかし罷免の場合において、やはり国と同じような方法によつて、議会の側から罷免の要求もしくは彈劾訴追の手続がとられることが、——少くともリコールをやらないということであれば、そういう手続をおとりになることが適当である、こう考えますが、いかがでございましよう。
  123. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 御見解は確かに一つの御見解でございますが、地方自治制度の建前におきましては、大体任命権者が罷免をいたします場合におきましては、やはり最初の任命の際と同じような方式をとつておるのが通例でございまして、先ほど申し上げましたように、公安委員に関しましても同様な方式をとつておりますので、そういう方式のようにいたした次第でございます。
  124. 八百板正

    八百板正君 ただいま人事委員会の問題につきまして、第九条の二項におきまして、「議会の同意を得て、地方公共団体の長が選任する。」ということが定められているのでありますが、こういうふうになりますと、議会の長は通常において政党の公認のもとに公選せられる場合が多いのでありますから、従つてこの政党所属の政党員の色彩を強く持つておりますところの公選せられたる自治体の長が、自分の腹心を出すということは当然考えられ得るであろうと思うのであります。この点を防ぐために「委員のうち三人以上が同一の政党に属することとなつた場合においては、」云々ということが定められて、これを防ごうとする規定考えられたように思われるのでありますが、しかしながら実際において政党に所属するかしないかということは、必ずしも明瞭でない場合が多いのでありまして、この点についてどういう考慮が払われておるか、この点のお答えをいただきたいのであります。
  125. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいま御指摘になりましたごとく、政党に関しまして二人以上が同一政党になりました場合におきましては、あとからその政党に入つてつた者を罷免するという建前によりまして、同一政党員が多数になりますことを防止いたしておりますが、しかしながら個人がいかなる政治的意見を持ち、いかなる政党に所属するかということは、本来自由な問題でありまして、政治行為の制肘に関しましても、いかなる政党に個人が所属するかということに関しましては、何ら法は制限を加えないという建前で立案をいたしておるのであります。人事委員の場合に関しても、その政党所属自体について、何ら問題にいたしていないのであります。ただそれが三人以上になりまして、ある政党の要素が強く働くということは適当ではございませんので、そういうものを排除いたしておるわけであります。また任用にあたりましても、長と議会の意思との合致によつて、初めて人が得られるようにいたしておりますので、私どもといたしましては、こういうような方式で、人事委員会が特にある党派ために動くというようなことがないようにできるのではないか、また先ほど来の御質問にございました彈劾の方法をさらに併用いたしまして、そういうようなことが防止できる、かように考えております。
  126. 八百板正

    八百板正君 そうしますと党に所属しておるかおらないかということは、この法律を運用するうちに当然問題になるわけでありますが、党に所属しておるかおらないかという決定は、何を基準にして考えられておりますか。
  127. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは現在といたしましては、政治資金等規正法あるいは公職選挙法あるいは団体等規正令というようなものによつて考えられております政党、こういうようなものを一つの目途に考えておるのでございます。
  128. 八百板正

    八百板正君 その党に入つておるかおらないかという点については、その基準にするものが非常に不明確にならざるを得ないだろうと思うのでありますが、こういうことになりますと、事実上あるいは特定の党に所属する公共団体の長が、自分の腹心を人事委員に選任するためには、党籍を離脱さしても入れるというようなことも当然に考えられるわけでありまして、どうしてもこの点を防ぐためには、先ほど質問にも述べられましたように、この選任の形式を自治体の長に発意させるということでなく、議会そのものに持たせるというような方法をとつた方が、よろしかろうと考えるのでありますが、その点どういうようにお考えになられておりますか、この関連においてもう一度承つておきたいと思います。
  129. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この法案自体といたしましては、人事委員の政党所属関係は、一応形式的押えておりまして、今申しましたような法に基きます政党の所属員でなければよろしい、こういう建前にいたしましても、あるいは分限懲戒にいたしましても、すべて公正でなければならない。また不平等の取扱いを禁止いたしております。要するにこの地方公務員法の全体を流れておりまする精神は、人事行政の運営にあたつては公正でなければならない。いかなる政治的所見あるいは政治的所属関係にありましても、運営は公正にやる、こういうことはあくまでも人事委員会に対する絶対的要件といたしておりますので、それに違反いたしました場合におきましては、先ほど申しましたような趣旨による彈劾が行われ得るであろうことを、私ども考えておるのでありまして、それによつて全体的に保障ができると考えております。
  130. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ただいまの条文の第九項でありますが、はなはだ迂遠な、字句の質問をしましてまことに恐縮でありますが、「委員は、他の地方公務員の職を兼ねることができない。」という「他の」というのはどこにかかつておりますか。他の地方公共団体とかかつておるのか、あるいは地方公共団体の他の職務を兼ねてはならないというふうに解釈をいたすのでありますか、どちらでございましようか。
  131. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この「他の地方公務員」というのは、他の地方公共団体公務員という意味ではございませんで、一切他の地方公務員を兼ねてはならない、こういう意味でございます。
  132. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それではこの使い方が少し問題があるのではないかと思うのですが、いかなる他の地方公務員の職を兼ねてはならない、こう書いてあれば御説の通り解釈できますが、「他の地方公務員の職を兼ねることができない」というと、多少そこに疑義があるように思う。法律的にいえばそれでもいえばそれでもいいかもしれませんが、われわれしろうとが読みます場合に、他の地方公共団体の職を兼ねてはならない、あるいは地方公共団体の他の公務員の職を兼ねてはならない、いろいろ解釈ができるのであります。もしこれをしていてあなたのおつしやるようにするとすれば、「委員はいかなる他の地方公務員の職を兼ねてはならない。」こうしなければならないと思うのであります。
  133. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この案の第二条におきまして、地方公務員という言葉の下に(地方公共団体のすべての公務員をいう。以下同じ。)こういうふうに書いております。地方公務員と申します場合には、要するにすべての地方団体の公務員一般職、特別職含めての公務員、こういう意味でありまして、「他の」というのはそれをすべて言つている。自分以外のその他の地方公務員、こういつ意味でございます。今御指摘のような意味は、松澤さんの仰せになるような意味に解釈をしていただいてけつこうであります。
  134. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは十三条に行きまして、先ほど八百板君から発言がありましたところの政党所属の問題であります。この政党所属の問題はまだ多少疑義があると思いますが、十三条におきましては、「すべて国民は、」となつております。従いまして職員に対しましても平等の取扱いをしなければならないというのであります。しかし現実におきましては、やはり政治的所属関係によつて、差別されるという事案があると思うのでありまして、これはこの法律が施行されたならばそういうことはなく、いかなる政党に所属していてもさしつかえないというふうに解釈されますか。
  135. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その点は松澤さんの仰せになります通りに私ども考えております。
  136. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 しかし、たとえばレツド・パージなどの問題におきましては、共産党党員及びこれの同調者ということになつております。事案そういう方針で現在レツド・パージというものが行われているように、私は聞いているのであります。地方公務員に対するレツド・パージということがもし行われる場合においては、やはり共産党、あるいはその同調者ということがレッド・パージの一つの基準になりはしないかと思う。そうなりますと、明らかにたといいかなる政党に所属していても、不利益な取扱いを受けない、差別されないという点と抵触すると思うのでありますが、これはどちらが優先するか、どちらが優位にあるか、その点御説明願いたいと思います。
  137. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 單にいかなる党の党員に属するかということだけでは、罷免の理由にはならないのであります。ただそれがいわゆる暴力的な破壊行為を目的とする団体であるということの認定を受ける、たとえば団体等規正令のそういうような条項に該当していたという場合におきましては、現に公務員であります者も当然失格いたしますが、そうでありません限りは、いかなる政党に所属しておりましても、これは何らそれ自体によつては罷免の理由にはなりません。分限及び懲戒はすべて公正でなければならない。またすべて法律なり、条例に基く事由がなければその意に反して罷免されないということを保障しておりまして、そういうような法律なり、条例で定めております条項に該当しない限りは罷免されない。こういうことになるわけであります。
  138. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それではつきりいたしましたが、共産党党員もしくはこれの同調者であるという理由だけでは罷免されない。それが暴力的な行為をするとか、他の条件によつて処分されるという場合は別でありますけれども、ただ特定の政党に所属している、たとえば社会党でもそうでありますが、そういうことだけでは決して差別されない、不利益な取扱いを受けないということは、今お伺いしたのでありますが、その通りでありますか。
  139. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その点は今申し上げた通りでございまして、たとえば二十八条に分限の規定がございますが、ここに職員は、左の条項に該当する場合には、その意に反して免職できる、こう書いてありますが、その条項に該当いたしません限り、あるいは懲戒免職に関する規定に該当いたしません限りはその地位を失わない。こういう建前をとつているわけであります。
  140. 立花敏男

    ○立花委員 この問題は非常に重要な問題であります。特に私ども共産党員にとりましては重要な問題でありますこの間保利労働大臣がおいでになりました場合も、保利労働大臣が本会議でやはりこの問題にお触れになつて、現在の共産党の行動から見て、そういうおそれのある者は首切るのだという発言をなさいましたので、この委員会で特にもう一度お聞きしたわけです。そうしたらやはり本会議と同様な発言をなさいました。ところがきようの午前中の連合審査会におきまして大橋法務総裁は、そうじやない、やはり事実に基いてやるのだということをおつしやられました。今また松澤君の発言に対しまして鈴木次長は、やはり午前中の大橋法務総裁の御返答と同じような趣旨のことをお答えなつております。やはり依然として残りますのは、保利労働大臣と大橋法務総裁との考え方の中に、非常に大きな根本的な違いがあるということです。この点はここに両方ともいらつしやいませんので、問題は解決できないわけなんでございますが、そういう意見の不統一があるということを、自治庁の方でもはつきり知つておいていただきたいと思います。これは私どもといたしましては、ぜひとも統一をしていただかなければいけない問題だと思います。これは決して共産党だけの問題ではなくして、地方公務員にとりましても重大な問題であります。昨年も現実にこの問題が起つておりますし、ただいまにおいても昨年のレツド・パージの問題が、労働委員会あるいは裁判所等でまだ三十件ばかり係争中として残つております。しかも特に最近に至りまして、また山口県の下松市でレツド・パージが起つている。この地方財政の窮迫の度合いが加わつて参りますと、ますますこのレツド・パージが行われる危險性が出て来るわけであります。従つてこれはこの際特に重要な問題だと思いますので、この二人の閣僚の言葉の食い違いを、根本的に糾明したいと思います。岡野さんがいらつしやいますから、岡野さんよりひとつお願いいたしたいと思いますが、意見の不統一を根本的に修正していただくようにお願いいたします。やはり私どもといたしましては、党員であるからといつて首を切られることには絶対に反対でありまして、事実に基いて厳正にやつていただきたい、これを特にお願いいたします。
  141. 八百板正

    八百板正君 ただいま十三条の問題につきまして質問が続けられているわけでありますが、この中に第十六条第五号ということが明らかにされております。これは「政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、」ということが明瞭に法文の中に入れられてあるのでありますが、これは一体そういう政党とはどの政党を指しているのか、御答弁をいただきたいと思います。
  142. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これはたとえば団体等規正令におきまして、こういうような条項に該当する政党であると認定されたようなものが、該当するわけでありまして、現に団体等規正令によりまして解散せられましたような政党あるいは政治的な団体があるわけであります。政党と申しますか、いろいろな団体がありますが、そういうようなものはこれに該当するわけであります。
  143. 八百板正

    八百板正君 そういうものがありますならば、今までありましたものをずつとひとつ具体的にお示しを願いたいと思います。法律をつくりますからには、ただ漠然と予想して、想定の上に立つてこういう明文をつくることはどうかと思いますし、将来運営をいたします上にも重大だと思いますので、この際暴力をもつて破壊することを主張する政党として、今日まで扱つてつた事例を、全部ひとつ教えていただきたいと思います。
  144. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは国家公務員法におきましても、これに相当するような条項規定のありますことは、御承知の通りであろうと思いますが、団体等規正令に違反をいたしましたために、解散せられました政治的な団体等は、ただいま私手元に資料を持つておりませんけれども政府においては所管の部局があるわけでありまするから、その方と連絡をいたしまして、後刻御連絡を申し上げます。
  145. 八百板正

    八百板正君 こういうことを明文にされる以上は、もつと具体的に何々党というふうに、はつきり言えるだろうと思うのでありまして、その点御遠慮なくおつしやつていただきたいと思います。
  146. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは団体等規正令の適用を受けまするならば、現に解散させられてしまつておる団体でございまして、従つて私今ここで、はつきりどういうものがありましたか、記憶いたしておりませんので、後刻申し上げます。
  147. 八百板正

    ○八百板委員 こういう重大な問題を法文の上に明記する場合に、具体的にどういうものがあつたという事例を、一例も示すことができないということは、提案者の立場としてまことに了解に苦しむのでありますが、ほんとうに一つも御存じないのですか。
  148. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは政治的な思想団体等で、主として右翼関係のものが多かつたと思います。そういうようなものがこの条項に該当いたすわけでありますが、それはただいま申し上げましたように、後刻取調べをいたして御報告申し上げます。
  149. 八百板正

    ○八百板委員 そういたしますと、そういう団体は右翼関係にあつたという事例を、具体的なものとしてお答えになつたのでありまするが、右翼関係だけにあつた、こういうふうに考えてよろしいのでありますか。
  150. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 私の今記憶いたしておりまする限りにおきましては、左翼関係にそういうようなものに該当いたしたものがありますかどうか、はつきりと記憶いたしておりません。おそらくないことと思います。  なおちよつと申し上げますが、これに該当いたしましたものとして新鋭大衆党、大和報国運動本部、こういう二つのものがございます。
  151. 八百板正

    八百板正君 こういう法律規定いたしまするために資料となつたものは、右翼関係のそういう事例であつたということを御説明になつたのでありまして、左翼関係ではなかつたというふうな意味にお聞きいたしたのでありまするが、そういたしますと、今までの結果に徴して予想せられる場合を考えて、こういう法律をつくられたのだと思うのであります。従つてそういう主として右翼関係の、暴力で破壊することを主張する政党を頭においてそれに適用する。そういう方針のもとに、この法律がつくられたと解釈してよろしゆうございますか。
  152. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 別に右翼であるからとか、左翼であるからとかいうこと自体では、何ら区別をいたす考えは持つておりません。ここの第五号に書いてありますことは、要するに「日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体」でございますから、これは右翼であろうと、左翼であろうと、いやしくもこの条項に該当いたしまするものは、この適用を受けるということになるわけであります。
  153. 八百板正

    八百板正君 政党に所属するということ、入党するということは、同時に党活動に従事するということを誓うところの一つの形式であろうと考えるのでありまするが、党員であることだけはよろしいが、党活動に従事することについては制限する、こういうふうに考えられるこの規定は、大きな矛盾を持つているのではないかと思うのでありますが、どのように考えられておられますか、御見解をお示しいただきたいのであります。
  154. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これはそれぞれその政党の綱領によることであろうと存じます。政党に属しておるからといつて必ず一定の暴力的な行動を要求する政党のみではないと考えます。
  155. 八百板正

    八百板正君 この暴力的云々の問題とは別に、いずれ後ほどその点について詳細にお尋ねいたしたいと思いますが、第六節におきまして、いろいろと政治活動の制限をやつておるのであります。第十三条において、こういうふうな規定を定めておきながら、党員としての当然の政治的活動をあとの方において制限したという点が、この十三条の精神を無意味なものにしておるのではないか、こういう意味においてお尋ねいたしたのでありまして、そういう立場からただいまの点についてのお答えを、あらためていただきたいと思います。
  156. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 先ほど来申し上げましたように、個人が特定の政党に所属し、あるいはその他の政治的所属関係に入り、あるいはいかなる政治的な意見を抱くかということは、それ自体としては、公務員の全体の奉仕者である基本的な性格と矛盾いたしませんので、これは自由に持つていいわけでありますが、ただその政治的な所属関係あるいは意見に基きまして、一定の——三十六条に規定いたしておりますような範域を出まして行為をいたします場合には、公務員政治的中立性というものに齟齬いたしますので、そういうことを禁止しようという趣旨でございまして、この三十六条の本旨は、單に制限することが目的ではなくて、職員の政治的中立性を保障し、その結果として、行政の公正な運営を確保することを目的といたしますとともに、他面職員がそういう政治的な行為に巻き込まれることの結果として、その地位を失うというようなことのないように、職員の身分を保障しようという、職員の利益保護を第二の目的としておるのでありまして、そういう両面からの制限を加えておるわけであります。基本的な政治的な意見として、あるいは政治的な所属関係として、どうあるかということ自体には、これは何ら制限することはないのであります。
  157. 八百板正

    八百板正君 この問題に関連してお尋ねすることは、まことに多いのでありまして、おそらく今晩中お尋ねしても、話はつかないのではないかと思いますが、ただいまお答えがありました点について、もう少しお尋ね申し上げたいと存じます。政治活動を制限した趣旨は、職員の利益を保護することを目的として定められたものであるということを述べられたのでありますが、そのことを示されました第三十六条の五項の規定には、それと並べて、「地方公共団体の行政の公正な運営を確保するとともに」ということが、述べられておるのであります。従つて前段においていろいろと定められておりますところの政治活動が積極的に行われるといたしましても、そのことが地方行政の公正な運営を確保することが困難にならない限りにおいては、自由、積極的な活動が行われてよろしい。こういうふうに考えてよろしいのであるか、この点について伺いたい。
  158. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 政治行為制限は、ただいまお述べになりましたような、地方公共団体の行政が、公正に運営されるということが一面の要件でありますが、それだけではございませんで、同時に職員の利益を保護するということが、また一つの要件であります。その両面から政治行為制限範囲考えておる次第であります。
  159. 八百板正

    八百板正君 政治活動の問題に関連して参りましたので、少し順序を飛ばしまして、第六節の服務に関する問題について、少しくお尋ねいたしたいと思うのであります。この点は同僚議員によつて再三にわたつて質問が繰返されたものと存ずるのでありますが、この問題は非常に関連するところが大きいと考えまするので、さらに詳細なるお尋ねをいたしたいと考えるのであります。第三十条におきましては「服務の根本基準」を定めておるのでありますが、さらに三十五条におきまして「職務に專念する義務」というものを定めておるのであります。この点二重の定めとなるように考えるのでありまするが、この点はどのようにお考えになりうるか、御答弁をいただきたいと思います。
  160. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第三十条は、見出しにもございますように、服務の根本基準を定めたものでございまして、「すべて職員は、全体の奉仕者として公共利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに專念しなければならない。」という根本精神、いわば以下に書いてございまする各服務に関する基本を貫く精神を書いたものでございまして、第三十五条はそれの一つ具体的なる事項として、職務に專念する義務規定した次第でございます。
  161. 八百板正

    八百板正君 第三十条におきましては、服務の根本的、基本考え方を述べ、第三十五条においては、職務に專念する義務に関する具体的なものを述べたということを、御答弁なつておりまするが、具体的なものを規定いたしまするためには、条文もまた具体的なものでなければならないと思うのであります。ところが三十五条を読んで参りますると、「職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」というような、きわめて具体的でないことを述べたのでありまするが、これを具体的に適用いたしまするためには、どのような用意と考えをもつて提出せられておるのでありますか。この適用に関する具体的なる説明を述べていただきたいと思うのであります。
  162. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 服務に関する規定は、ことに職務專念義務等につきましては、いわゆる精神的な趣旨をうたつた規定が多いのでありまするから、事柄自体といたしまして、抽象的に説かれれて参りますことは、やむを得ない結果である場合が多いと思います。ここで書いてございますのは勤務時間、それはそれぞれの地方団体で定められるわけでございまするが、「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責」というのは、それぞれ職務として定められましたその職責遂行のために用い、そうしてその「当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」後段に書いてありまするに他の事務に従事してはいけないという趣旨をうたつておるわけであります。但しこれにつきましては、その上の方に「法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、」こう規定しております。条例におきましてはこれに対する例外的な措置として、たとえ選挙管理委員会の書記という立場にありまする地方公務員が、平生選挙がありませんときにおきましては、ひまがあるというような場合に、たとえば国勢調査に関する事務の方に行つて働く。こういうことはそれに対する一つの例外でございますが、その他地方団体においてその種の例外を考えられるわけであります。
  163. 八百板正

    八百板正君 訓示としての言葉でありますならば、ある程度これを了解することができるのでありますが、法律の明文として書きます場合には、もつと具体的なものでなければ、いろいろの弊害を招くおそれがあるだろうと私は考えるのでありまして、この際にこれらの点について明確な考え方を探し当てるということは、立法の委員会として必要なことであろうと私は考えるのであります。勤務時間中職務上の法意力をその職務遂行のために用いるということがあるのでありますが、私は心理学者ではございませんので、詳細なる科学的な基礎に立つて、そういうことを述べることはできないのでありますが、私の常識上聞いておりましたところになりますと、人間の能力上一つの事柄に対して精神力をほかにそらさないで集中して行くということは、ほんのわずかの数十秒しかできないということを、私は聞いておるのであります。従つて職務遂行中に職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用いる、こういう言葉によつて示されたようなことを、実際において職員が行うということは、私はおそらく不可能ではなかろうかと思うのであります。しかもその注意力が職責遂行のために用いられておるかおらないかということを判定するには、まことに困難な場合が多かろうと思うのであります。あるいは職務中においてぼんやりほかのことを考えておつたとか、妄想にふけつてつたとかいうようなことがあつても、上司がこれを職責遂行のために精神力のすべてを打ち込んでおらなかつたというふうに認定いたしますならば、それによつて上司からこの問題を取上げて職務に対して專念する義務を怠つたという非難を理由として、その責を追究せられる場合が起り得るだろうと思うのでありまして、このような無形の規定は上司に利用せられる場合が、非常に多いだろうと思うのであります。そういう意味からこの条項は削るべきものであると思うのでありますが、どうしても入れなければならなかつた理由を、この際もう一ぺんよく聞かせていただきたいと思うのであります。
  164. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 すべての注意力か職責遂行に用いるということを規定しておるのではございませんで、職務上の注意力、こういうことであります。御指摘のように心理的に申して注意力を常に集中して、一つのことに持続的に向けるということは不可能でございましようし、そのような非常識のことを要求しておるわけではもちろんないわけでありまして、これが運営に当りましては自主的に地方自治の趣旨に即しまして、常識的に運営せられることであろうと、私ども期待いたしておるのであります。
  165. 八百板正

    八百板正君 その前の三十四条には、「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。」というふうな規定があるのでありますが、私どもの今日見て参りましたところによりますと、とかくお役所の仕事にはたいていのものにマル秘や極秘のはんこを押されるようでありまして、どこまでほんとうに秘密であるかどうかということを制定するに苦しむ場合が、非常に多いのであります。ことに職務の公正な運営をせられまする場合においては、秘密というようなものはだんだん少くなつて来るのだろうと、私は考えるのでありまするが、一体この秘密というものはどういうものをお考えに入れられて、法文の上に明記いたしましたか、この点お答え願いたい。
  166. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これはここにございまするように、職務上知り得た秘密でございまして、この秘密は要するに今お話がございましたような、單にある時期まで発表することが適当でないというような程度の、そういうような程度の、そういう発表の時期について秘密性を要するという程度のものでなく、やはりその事柄自体において秘密を必要とするというようなものであろうと考えております。
  167. 八百板正

    八百板正君 時期的に秘密というものではなくて、そのこと自体が秘密を必要とするものであるという御意見でありまするが、そういたしますると、そのこと自体が秘密であるかどうかという決定は、だれがどのような基準によつてせられるのでありますか、こういうような場合について、少しくお考えを示していただきたいと思います。
  168. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 要するにこれに違反しました場合には、懲戒処分の対象になるわけでございまして、その懲戒処分は結局任命権者が行うわけでございまするから、任命権者がこれに該当するかどうかということを、一応認定して処置をいたします。しかしながら事後におきまして、不利益処分の審査という問題がございまして、懲戒処分の行使にあたりましては、処分説明書といますものを本人に交付いたします。本人はそれをもらいまして不利益処分の審査をしてもらうことになつておるのでございまするが、その際におきましては、人事委員会がこれに該当するかどうかということを判定をいたします。さらにこれに違反するかしないかということにつきましては非常に問題でございまするから、最終的には裁判所においても判定せられる、こういうことになつております。
  169. 八百板正

    八百板正君 秘密はそれ事態として秘密なものである場合を、指すのであるというお話でありまするが、しかしながらそれ自体秘密なものであつても、時間の経過に従つて、その秘密を必要としない、あるいはその漏洩を処罰する必要のないような事態が、必ずあり得るであろうと私は思うのでありまするが、そういう場合にもなおかつ当時秘密であつたものは退いた後においても、そのことが追究せられるというふうな規定は、少し苛酷な場合が起り得るのではないかと思うのでありますが、この点についてどのようにお考えになりますか。
  170. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは職務上知り得た秘密と、こうなつておりまして、問題のときにおきまして、それがすでに秘密でなくなつたという場合におきましては、その問題自体においては、秘密を漏らしたということにはもうならぬと私は思います。
  171. 八百板正

    八百板正君 先ほど関連いたしまして少しくお尋ねいたしたのでありまするが、第三十六条の政治行為制限の点についてでありまするが、党員であることはいいが、党活動に従事するということについては制限がある、こういうふうに考えられるのでありますが、「結成に関与し、」というふうな言葉を使つておりまするが、結成以外の場合においては、当然にこの問題はなくなると考えてはよろしいのでありますか。
  172. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 結成以外の場合においては党活動は自由であるかということでございますか。
  173. 八百板正

    八百板正君 そうです。
  174. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは結成以外におきましても、たとえば役員になつてはいかぬ。それから団体の構成員となる、要するに党員を獲得するために、あるいは他党派の党員とならないように勧誘運動してはいけないということを書いておるわけを書いておるわけでございます。
  175. 八百板正

    八百板正君 この三十六条の二項の二号に署名運動を企画し、積極的に関与することとあるのでありますが、積極的という言葉を使われましたからには、消極的に関与する場合はさしつかえないというふうにも考えられますが、この点はどのようにお考えなつておられますか。
  176. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その通りでございます。
  177. 八百板正

    八百板正君 大体において政党に所属するということは、政党の決党の決議に従うという義務を負う場合が多いのでありまして、従つて党の決議に従つて署名運動に従い、党の方針に基いて消極的にこれに同意する、こういう形において事実上こういうことが行われることはさしつかえないと考えてよろしいのでありますか。
  178. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは党がかりに特定の知事のリコール運動をやるという計画を立てまして、それをその党に属しておる地方公務員に対して要求をいたしたといたしますならば、その者が單にそれに対して署名をするという程度のことは、もちろんさしつかえないわけであります。
  179. 八百板正

    八百板正君 ただいまの項目の五のところに、「前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治行為」ということがありますが、これは条例に定める場合は、どんな場合を考えておられまするか、御明示をいただきたい。
  180. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この条例は何でもかんでも定めていいという趣旨ではございませんので、この五項に「本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。」こう書いてございまして、条例を制定するということは、まさに本条の規定の運用の一つでありまして、従つてこの五項に違反するようなものは、やはり違法なる条例であるということになるのであります。具体的にどういうものであるかと申しますならば、現在の人事院規則におきまして規定されておりますような項目の中の一つ、三つというものが、これに該当するのではないかと思います。
  181. 八百板正

    八百板正君 五項の規定により当然にその運営の方向が定められるのであるから、その心配はないというふうにお答えであります。でありまするならば、具体的なものを詳細に明示いたしまして、これ以外の事柄を条例によつて定めても無効だというふうにされた方が、法の体裁としては親切な書き方のように考えられるのでありますが、この点はどうお考えになりますか。
  182. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは地方自治法一般規定によりまして、そのような条例は無効になるわけでございまするから、当然行政事件訴訟特例法によりますところの訴訟の対象になると思うのであります。
  183. 八百板正

    八百板正君 次に「政治行為を行うよう職員をそそのかし、若しくはあおつてはならず、」というようなことが書かれておるのでありますが、このあおつてはならないというふうなことが、このあとにもちよちよ言葉が出ておるのでありまするが、そういう事例を具体的にひとつお示しを願いたいと思うのであります。
  184. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 たとえばある公務員が、ひとつ公務員の中で大いに選挙運動をやつて、ここから千票ばかり集めてやろうという決意を、みずから固く持つておりまする場合に、他の者がそれをさらに煽動して、すでに決定されておる意思を、さらに強力に遂行させるということがあおるということでございます。
  185. 八百板正

    八百板正君 先ほども一つの事例について、具体的な事案のお示しをお願いしたのでありますが、お示しがなかつたのであります。この問題については、具体的にあおつた事例などがおありになるから、こういうことが記載せられたのだろうと思うのでありまして、ひとつ具体的に自治体において自治体の職員がどこにおいてどういうことがあつたというふうな点を、お示しをいただきたいと思うのであります。
  186. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 私がただいま引例いたしました例は一つの具体的な例で、その数なり名前を的確に申し上げなかつただけでございまするが、そういうようなことを申し上げますることはいかがかと存じまするので、今申し上げましたことを実際あつた一つの例というようなことで御記憶をいただきたいと思います。
  187. 八百板正

    八百板正君 申し上げることはいかがかと思うというふうなお話でありまするが、さしつかえなかろうと考えまするので、各地方々々の自治体について、各地域の例などを少しく述べていただきたいと思います。
  188. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今要するに具体的にだれがどうしたかというようなことは、直接御参考にはならぬと思いまするので、事実だけを申し上げたわけでありまして、今申し上げました——あるいは百票とか二十票とかいろいろあるでありましようが、要するに特定の公務員に対して、そういうような票数を獲得することをある党が要求をいたし、それに基いてやつたというようなことになりますると、これに該当するようなことになるのであります。
  189. 八百板正

    八百板正君 人からあおられたり、そそのかされたりして政治行為に入るのではなくして、期せずしてこれらの定められたようなことが、各人の自発的意思によつて一斎に行われたというふうな場合は、どうなりますか。
  190. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 自発的に行われました場合におきましても、たとえば第二項の第一号に該当するような場合におきましては、制限に反することに相なります。
  191. 八百板正

    八百板正君 争議行為等の禁止規定に対しまして「同盟罷業、怠業その他の争議行為」ということが記載されておりまするが、「同盟罷業、怠業その他の争議行為」というのは、どういう争議行為をさしてお書きになつたのでありまするか。
  192. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その他の争議行為と申しまするのは、たとえば当然なすべき労務提供ということが十ありまする場合に、たとえば四とか五しかやらないというようなことが、その他の争議行為ということになります。
  193. 八百板正

    八百板正君 争議行為につきまして、組合の決議が経済条件を獲得するために、一定の行動を決定いたしました場合には、当然にそれを組合員一般に対して周知徹底しなければならないということが、組合員として当然起つて来るだろうと思いまするが、そういう場合に組合の執行機関が決定いたしましたことを連絡するという行為は、どこまで自由にされ、どこまで制限せられるというふうに考えてよろしいのでありまするか、この点をお伺いしたい。
  194. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 争議をいたすことを組合の執行機関がきめまして、それを三十七号の後段にございますように、そそのかすあるいはあおるというようなことになりますれば、これに該当することになるわけであります。
  195. 八百板正

    八百板正君 そそのかしまたはあおつたりするのではなくして、單に事務的に決定した事項を伝達連絡する、こういう行為については、さしつかえないと考えてよろしいですか。
  196. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これはその事実問題でございまして、名前は連絡でございましようとも何でありましようとも、この事態に該当いたしますれば、制限されることに相なろうと存じます。
  197. 八百板正

    八百板正君 その点まことに不明瞭なる規定のように考えられるのでありまするが、またこの点については、あらためてもう少し明確にする機会をいただくといたしまして、次に雇用上の権利をもつて対抗することができなくなるということが、次の項目にありまするが、この場合に私が考えまするに、地方公共団体と申しましても、ピンからキリまであるのでありまして、わずかに五人か七人くらいの少数の職員によつて、まかなわれておるような団体の場合においては、あとの方で定められておりまする団体交渉をいたしまする場合には、当然に職務を怠つたと同じような結果になることは、予想するにかたくないのでありまして、こういうことになりますると、一番守りがたいところの小さな職場の職員が、勤務条件を改善するために努力したということによつて職務を怠つたという理由を付せられて、事実上その行為が不可能になる場合が、まことに多く想像せらるるのでありまするが、この点特に封建制の強い下部の自治体などでは、勤務条件の低下を来たすような結果に、ならざるを得ないだろうと思うのでありまするが、この点につきましてどのような見解をお持ちでありまするか、お答えをいただきたいのであります。
  198. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 職員団体に属しておりまするものが、勤務条件の改善のために当局と交渉をいたす場合におきまして、職務專念の義務等に縛られて交渉できなくなり、はしないかというような御疑問でありまするが、これは第五十五条にもございまするように「条例で定める条件又は事情の下において、」交渉することができると書いてございまして、このようなことはやはり一つの条件の中に加えられることになろうと思いまするが、要するにここに書いてありますることは、勤務時間外においてやることは当然やれるわけでございますが、勤務時間中においても、当局と交渉することができるという趣旨を、これは含んでおるのでございまするし、さらに三十五条の職務專念義務規定の中にも、「法律又は条例に特別の定がある場合を除く」と書いてありますが、ここもやはり団体交渉いたしまするために、職務を一時離れるというようなことも、この条例においてこれを除くというふうに暑くべきものであろう、かように考えております。
  199. 前尾繁三郎

    前尾委員長 八百板君、委員外の発言、けつこうですが、少し詳細に過ぎて時間が非常にかかるようですが、できるだけ整理して簡單にお願いします。——それでは松澤君。
  200. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは先ほどは人事委員会の権限や、あるいは委員の任命につきまして、御質問申し上げましたが、次に地方公務員給与関係の問題について、少しお尋ねしたいと思います。給与関係条文は、十四条におきまして、地方公共団体給与、それから勤務時間、その他勤務条件が社会一般の情勢に適応するよう随時適当な措置が講ぜられなければならない、と書いているのであります。この点は地方公務員の保護の上からいいまして、まことにけつこうな規定だと思います。しかしただ漠然とこういうふうに書いてありましても、財源の点において、十分確保せられていなければ、この法律条文は結局死文になつてしまうのであります。従いましてこれが実際地方公共団体に行われなかつた場合には、この法律としては、どういう措置が講ぜられているか、この点につきましてお伺いしたい。
  201. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは今御指摘のように、要するに物価が上りまして、生活費が高くなる。生活費ということは、二十四条の第三項をごらんいただきますれば、生計費というようなことも職員給与の一つの条件として考慮しなければならぬようになつておりまするが、そういうようなものが変化いたして参りました場合においては、それに応じて給与を上げて行かなければならぬ。こういう基本的なことをうたつておるわけでございまして、御指摘のようにこれにはただちに財源問題が附帯をして参るわけでございまするが、その場合にもしも適当な財源がない場合に、どうするかということでございまするが、これはやはり地方団体といたしましては、給与の問題といたしましても、あるいはその他の各種の経費にいたしましても、常にこれを十全に充たすということは、困難な場合があろうと思います。そういう場合におきまして、どの程度を給与に振り向けるかということは、これはそれぞれの予算編成者並びに地方議会の認定の問題になつて来るわけでございまして、そこで予算編成書なり、ことに議会におきまして、第十四条の規定がどの程度に運用せられているかというようなことが、審議の中心になろうと存じまするが、審議の結果事がきまりまして、それが十四条から客観的にいつて離れているかどうかというようなことがあると思いますけれども、それはやはり地方の一つの政治的な問題ということになつて来るであろうと思います。
  202. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ただいまの御説明を聞いておりましても、結局適応しているかどうか、あるいはまた適応させているかどうか、だれもこれを判断するものがない。だれもこれは判断できない。つまり客観的な基準がないのであります。従つてこれはどこまでも原則的な規定であつて、これを強制することは何人もできない。従いましてこれをもし職員が情勢に適応していないということで、情勢に適応するように要求する場合におきましては、やはり職員団体等の力によつてこれを適応されるようにしなければならないと思うのであります。しかしそれには強制力がないのでありまして、これに対して、地方公共団体が十四条の義務違反した場合には、やはりそれ相当の罰則規定なり、何かの制裁規定がなければこの条文は生きて来ない、そう思うのであります。それに対してお考えを伺いたい。
  203. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この規定は要するに地方の人事行政の運用の方針についての一つの原則を書いた原則的規定でございまして、これに違反したからこれを処罰するというような趣旨において、運用せらるべきものではないと思うのであります。これをどの程度に実現するかということは、これはやはり一面地方の財政の状況と関連がある問題でありまするから、それは地方議会において政治的に適当に運用せられるであろうと思われるのでありますが、ただ技術的な問題といたしましては、職員団体が人事委員会に持ち出しまするならば、勤務条件に関する措置の要求といたしまして、これを審査して勧告するという法律上の道もあるわけでございます。
  204. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この十四条から、必然的に先ほどお話のありました二十四条の三項というものが生れて来るのであります。従いましてただいま問題となりました十四条は、どこまでも原則的な規定である。しかも第四節において給与、勤務時間その他の勤務条件というものが、具体的に示されておるわけであります。従いましてその三項において「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」こうありまして、さらにそのあと二十六条が続きまして、給与を決定する条件の変化があつた場合には、給与表に定める給与額を増減することが適当であると考えた場合には、勧告をするというふうに、これで一貫した給与の体系が生れておるのであると思うのであります。従いまして、それでは三十四条に示されてありますこの「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与」こういうことは先ほど来私が心配しておりますいわゆる地方の人事委員会において、こういうことを正確に時々情勢に適応したように研究調査をして、給与の体系を立てることが、はたして可能であろうか、あるいはそういう資料がどこから得られるか、どういう資料に基いてこういうことを計算するかということになつて参りますと、国の場合においても、給与を決定する特別CPSとか、あるいは普通のCPSとかいつたようなものが時間的なずれがある。そういう点からいいまして、給与を定める場合あるいは地域給を定める場合に、必ずしも特別CPSだけを採用するということが困難であるし、他にいろいろの方法が採用せられなければ、地域給を定める場合においても完全とはいえない。そういう点を考えてみて、わずかばかりの職員を持つておる三人の人事委員会において、そういう計算が適切に行われるかどうかということを、非常に懸念するもであります。この点御自信がありますかどうですか。
  205. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 御指摘の点はごもつともでありますが、今の大体調査の対象といたしましては、国の場合でございますと、全国的でございまするが、この場合はそれぞれ各地方団体の区域内の調査でございますし、また今のCPS、CPIというような資料、あるいは人事院におきましてできました資料、あるいは地方自治庁等においてできました資料、あるいは他の地方団体でできました資料というようなものは、相互の協定によりまして、その人事委員会に送付するような規定を設けております。この技術的な專門的な資料の交換ということの保障によりまして、今お話のございましたような問題につきましても、それぞれの地方人事委員会といたしましては、人手が少くして、苦労なくして同じような結論を早くつかむことができるというように考えております。
  206. 松澤兼人

    ○松澤委員 なるほど仰せのように、特別CPSやあるいはレギユラーなCPSというようなものなど利用するというような方法もありますし、あるいはまたその市あるいは都道府県等でつくられたものを利用するという方法もある。そういう方法を利用するならば、早く情勢に適応することができるということも考えられるであります。しかしながら、やはり普通のCPSや、あるいは特別CPSというものは、御承知のようになかなか早くは使えない状態であります。従つて可能なる範囲において利用するとすれば、商工会議所なりあるいは市あるいは県の商工課、あるいは経済局というようなところでつくつたものを、利用する以外にはないと思います。従いまして、そういうようなものは、はたして真実性を持つているかどうかということ、そういう点において私は相当疑問があると思うのでありまして、この点はたして真実の給与体系をつくる上において、利用する価値があるかどうかという点、御確信がありますればお答えを願いたいと思います。
  207. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 それらの点につきましては、松澤委員の方が、はるかに御專門であると存じますので、私から申し上げるのはいかがかとも存じますが、御指摘のように、そういうような早くでき上りますものは、それだけに正確度が少いということは言えると思います。但しこの船井表の改訂というようなことに関しましては、国の場合におきましても、大体同様な原則に基く改訂が行われるわけでありまするから、地方におきましても、大体それと同じような手段を追うて行われる場合が多いであろうというふうに考えております。
  208. 松澤兼人

    ○松澤委員 国の場合において、職員の給与が改訂された場合には、おそらく地方公共団体の職員の給与も改訂せられるというこの原則は、私も同感であります。しかしながら、もしそうなると、財源の問題であります。国の方は何とかしてやりくりができるけれども地方にその財源がないという場合、御承知のように現在でも八十三億のことが問題になつているのであります。これを国が出さないということになれば、国と均衡のとれた給与ということはできないわけです。でありますから、これもやはり一種の空文にひとしいものになつて、財源がなければ、国の給与に均衡のとれたものでなければならないと言つたところで、ない袖は振れないという結果になつて、この条文もまた死んでしまいやしないかということを懸念する、この点はいかがですか。
  209. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 問題が財源のことになつて参りますならば、これはまた財政の原則との間の調整ということになつて来るわけでありますが、しかし人事行政を公正に行い、安心して地方公務員がその職に当りまするようにいたしますためには、こういうような規定を置きますことが、結果において地方公務員利益を場保護し、行政を伸ばして行く結果になるであろうというふうに考えたのでございます。
  210. 松澤兼人

    ○松澤委員 ではその次の問題でありますが、民間事業の従事者の給与ということが書いてあります。これは国全体の民間事業の従事者の給与と均衡をとるという意味でございましようか。あるいは地方公共団体の民間給与というものでありましようか。この点は相当大きな開きがあると思うのですが、いかがでございましようか。
  211. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ここは要するに、地方公務員給与を定めます場合に、考慮をいたさなければならないフアクターを書いておるわけでございまして、一般の生計費、それから国なり、他の地方公務員給与、それと民間事業の従事者の給与という三つのファクターを書いておるわけでありまして、それらを考慮いたしまして、当該地方公共団体公務員給与を定めよう、こういう趣旨でございます。
  212. 松澤兼人

    ○松澤委員 はつきりしないのでありますが、民間の事業というのは、やはり国全体の民間の平均給与額というものを、その決定の要件となさるのか、あるいはまたその地方その地方の民間事業の労働者の給与の平均額と申しますか、あるいは上下ということになりますか、その辺のところははつきりしておかないと、相当大きな影響がある、こう思うのであります。
  213. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは全国一般の同一業種に属しまする平均賃金をとりまするか、当該地方のものをとりまするか、二通り道があると思いまするが、私ども考えといたしましては、やはり第一次的には、当該地方、同一地方の同一業態の勤労者に対して、通常支払われておるような賃金を、一つの考慮の要素として考えるべきである、かように考えております。
  214. 松澤兼人

    ○松澤委員 そういうことでありますと、私は民間事業の従事者の給与というものと均衡のとれた給与が、はたして地方公務員に与えられるかどうかということは、非常に問題だろうと思うのであります。今日国の場合におきましても相当の開きがある。また地方におきましても、やはり三割から四割近い給与の開きがあると思うのでありますが、今それではこういう条文によりまして、民間事業の給与を勘案して決定するということになりますと、これまた財源の問題で、相当大きな支障を来すということになりはしないかと思う。そこではたしてこの条文が有効に実施せられるかどうか。この点につきまして御所信を承りたいのであります。
  215. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 民間事業の従事者の給与が当該地方において非常に高いというような場合に、職員の給与をそれにいきなり引上げて行くということにつきましては、お話のように非常に問題がある場合が多いと思います。この点は先ほど来申し上げまするように、民間事業の従事者にのみ引合わせるということでございませんで、やはり国なり、他の地方公務員との間におきましても、権衡をとらなければならぬと考えるのであります。財源の問題に関しましては、やはり地方議会において重要度に応じて、これを振り当てをするようにいたすほかはないと思うのであります。
  216. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは、きようは日曜日でもありますから、この程度にして……。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  217. 松澤兼人

    ○松澤委員 無条件で散会ならいいです。
  218. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは本日はこの程度にしまして、明日正午前十時から開会いたします。     午後五時五十九分散会