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1950-11-29 第9回国会 衆議院 地方行政委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月二十九日(水曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 龍野喜一郎君 理事 藤田 義光君    理事 門司  亮君       生田 和平君    大泉 寛三君       門脇勝太郎君    川本 末治君       小玉 治行君    清水 逸平君      橋本登美三郎君    吉田吉太郎君       鈴木 幹雄君    床次 徳二君       山手 滿男君    大矢 省三君       木村  榮君    立花 敏男君       大石ヨシエ君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         全国選挙管理委         員会委員    長  世吉君         総理府事務官         (全国選挙管理         委員会事務局長         事務代理)   石渡猪太郎君         地方財政委員会         委員長     野村 秀雄君         総理府事務官         (地方財政委員         会事務局長)  荻田  保君         地方自治政務次         官       小野  哲君         総理府事務官         (地方自治庁次         長)      鈴木 俊一君         総理府事務官         (地方自治庁公         務員課長)   藤井 貞夫君  委員外出席者         総理府事務官         (地方財政委員         会財務部長)  武岡 憲一君         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 十一月二十八日  トラツクに対する自動車税軽減等に関する請  願(辻寛一紹介)(第一一号)  同(渡邊良夫紹介)(第一二号)  地方公務員給與改訂等に伴う平衡交付金補正  の請願(山崎岩男君外一名紹介)(第八五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  地方公務員法案内閣提出第一号)  地方公共団体議員及び長の選挙期日等臨時  特例に関する法律案内閣提出第七号)  地方財政確保に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  まず地方公共団体議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案議題といたして、これより質疑に入ります。門司亮君。
  3. 門司亮

    門司委員 私は選挙に関しまして大橋法務総裁にお聞きをしておきたいと思うのであります。それは前回の委員会で、選挙管理委員会に対しまして、一応質問をいたしました。その質問内容と同じでありますが、実は大阪府の茨木市の問題といたしまして、市会で一名の議員に対して、市会を侮辱しあるいは市会議員としての行動として、あまりおもしろくないことがあつたということが議題に取上げられまして、茨木市会におきましては懲罰委員会を設置いたしまして、その懲罰委員会決議に基いて、これが本会議に上程され、本会議におきましては成規賛成者を得まして、遂に除名決定いたしたのであります。ところがたまたま教育委員選挙が行われるにあたりまして、茨木市の選挙管理委員会では、他に一名の死亡欠格者がありましたことのために、これとあわせて市会議員二名の補欠選挙を、同時選挙として行う旨の告示をいたしたのであります。選挙管理委員会がそのような告示をいたしましたので、教育委員選挙にあわせて二名の市会議員補欠選挙を行うということを、市民一般が承知いたしまして、おのおの立候補をいたしまして、選挙を進めて参つたのでありまするが、途中で除名されました議員行政裁判所に出訴をいたしまして、同時に身分の仮保障の請求をいたしましたところ、裁判所はこれに対しまして仮決定の承認を與えて参りました結果、選挙管理委員会欠格者として告示いたしました者が、身分の仮保障決定いたしましたことのために欠格者に該当しない、こういうことになつて参りましたので、選挙管理委員会といたしましては、告示は二名にしたのでありますが、そういういきさつがありましたので、やむを得ず一名を取消しまして、そうして選挙は一名にして行つたのであります。問題は單にこれだけでありますが、ここで考えなければなりませんことは、選挙の途中において、選挙管理委員会告示いたしましたその内容にきわめて大きな異動を生じておるのであります。このまま選挙をしたということが一体適法であつたかということ、それがよかつたかということについては、選挙管理委員会にこの前お聞きをいたしましたが、選挙管理委員会といたしましても、事務局長あるいは管理委員長からの答弁は、当時出席がなかつたので求められておりませんが、係の方の答弁によりますと、この告示の当初と違つた状態にあるので、当然取消すべきであるか、選挙告示の全体を取消すべきであるか、あるいは一部を取消すべきであるかということについては、選挙管理委員会としては十分な結論を得ていない。しかし当時茨木市からそういう問合せがあつたが、それはすでに告示をしているので、一名だけを取消し選挙は行う。こうなつて参りますと、立候補をいたしまする者の側から見ますと、定員が二名の選挙をいたします場合と一名の選挙をいたします場合とにおきましては、非常に大きな違いがありますので、おのずからここに選挙をいたしました者と選挙管理委員会との間に、話によりますと損害賠償とか何とかいうようないろいろな問題まで実は起つて来る。私どももあるいはそういうことも起りかねない時代であるというように、実は考えるのであります。問題は選挙自体の問題でありますが、次に問題になつて参りますのは議決権行政権関係であります。それで、国会はむろん立法府でありまするが、少くとも都道府県あるいは市町村自治体におきましても、議決機関議決いたしましたことが、行政裁判所のそうした仮処分によつてこれがくつがえされる、一時それの執行が停止されるというようなことになつて参りますると、議決機関といものの権威は、まつたくなくなつてしまうのであります。そういうことは私は法律家ではありませんからどうかと思いますが、かりに国会で一人の議員除名いたしました場合に、これと同じような問題が起つて参りますならば、国会議決権というものが行政処分によつてくつがえされるというようなことは、非常に大きな問題ではないか、こう考えるのであります。従つてこの問題は單に茨木市のそうした選挙の際における困つた話というだけではなくして、この際議決権行政権との問題を、明確にしておく必要があるのではないかというように考えておりますので、これについての大橋法務総裁の御意見を、ひとつお伺いしたいと思うのであります。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 地方自治体議決機関議決に対しまして、これを法律上の争いといたしまして訴えをいたす、これは私ども行政事件訴訟特例法によつて、当然できるものと考えております。
  5. 門司亮

    門司委員 むろん自治法の中に出訴することができる規定があるということは、承知いたしておりまするが、われわれは全員が、ことにそういう身分関係する問題でありまするので、愼重な態度をとらなければならないと思います。問題になつて参りますのは、先ほど申し上げましたような議決権と、行政権の問題がありますると同時に、具体的にも——これが選挙中でありましたからまだ取消したということで、一応問題は処理されたようになつておりますが、もし選挙が終了いたしておりまして、そうして片一方には住民総意の上で、選挙が行われて当選者がきまつた片一方では仮処分が成立して、身分保障されたということになつて参りますると、議員が二人できる。一人の補欠選挙行つたことのために、議員が二人できるというような結果が必ず生ずると思う。その結果に対して一体どつちが正しいのであるか、こういう問題についての見解をなおひとつお伺いしておきたい。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 行政庁処分に対する裁判所の判決または決定の結果といたしまして、ただいま御指摘のように、制度上矛盾するような結果を生ずるということは理論上は考えられます。しかしながら実際上はそういうことはなかろうと考えております。
  7. 門司亮

    門司委員 実際上はなかろうと考えておるというお話でありますが、私は実際上あると思うのであります。選挙が終了いたしますと、必ず当選者がきまりますので、必ず議員が二人でき上る。私は実際上の問題を申し上げておるのであります。そうすると一応除名なつておりまする者が、その後でもこれの訴訟ができまするので、訴訟して身分保障されて来るということになりますと、一体その場合の矛盾というものは、どういうふうにこれを解決するかということであります。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その場合はおのずから道があろうと考えております。
  9. 門司亮

    門司委員 おのずから道があろうでは、これは済まされない問題であります。現実の問題として起り得る問題でありますので、ひとつこの点は、もしそうしたことがあつた場合には、一体行政権が優先するのか、住民選挙行つた場合にも、その選挙を間違いの選挙であつたとして、これを取消すことができるのかどうかということであります。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は選挙が行われた後においても、なお裁判所がその除名処分執行停止をするというようなことは、なかなか実際問題としてはなかろうと考えております。
  11. 門司亮

    門司委員 きわめて常識的な言葉でありますが、少くとも裁判所議決機関がきめましたところの執行を停止する権能を持つておると考えられて参りますならば、その権能を発揮いたしますには、適当な理由がなければならないと考えておる場合に、一方においては事実上選挙が行われたから、君の申立ては不都合であるということで、これは現在の法律では処断はできないと考えておる。もし裁判所がそういうことで処断をするということになつて参りますと、現在行われておる処断一体どういう考え方で、そういうことをやつたかということであります。これは私は公正な行政庁の取扱いとは言えない、一方において議員ができてしまつたから、君のりくつは正しいのではあるが、しかし片方ではできておるのであるから、やむを得ぬというようなことで、くつがえされるということになると、現在行われておりまする身分保障も、私は正しい意味ではそれを解釈するわけには行かない。これは單なる経過法的の考え方をして、経過によつてこれを処断すべきではない。私は当然裁判所身分の仮保障をすべき原因があつて、これを仮保障したと考えておりますならば、この仮保障はどこまでも消えるものではない、正しい申立てでありまするならば、裁判所としては、いついかなる場合でもこれを取上げるべきである。現行法ではそれ以外に方法はないと考えておりまするが、その辺は一体どうなつておりますか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 事は裁判所裁判のことでございまして、私どもといたしましては、これが適当であつたかどうかというような批評をする立場にはないわけであります。しかしながらこの裁判というものについて考えられますることは、裁判所がいろいろな事態を総合いたしまして、そうして公益等を勘案した上で、適切なりと判断せられて裁判されたことと考えるのであります。
  13. 門司亮

    門司委員 私が聞きたいと思うことは、そういう問題をなるほど適切に処置するであろうということが、あるいは裁判一つの行き方かもしれない。要するにトラブルを起さないように問題を処理することが、一つ裁判方法かもしれませんが、しかし問題は現実の問題として、そういう問題が起つて参りまする場合に、先ほどから申し上げておりまするように、事態をどういうふうに処理して行くかということについては、單に常識上考えられて、もうすでに一方で議員もきまつておることであるから、いまさら身分保障もできないというような常識的なものの考え方でやられる、ということになつて参りますると、先ほど大橋さんの御答弁のように、議決いたしましたものよりも、行政権の方がそれをくつがえすといいますか、一時それを停止することができるのだということが、はつきりいえるということになつて参りますと、たとい選挙が行われておりましても、その選挙の行われたことを無効として、これを宣言することができるだけのはつきりした根拠がなければ、こうした場合においても、少くとも議会議決でありますから、相当尊重しなければならない、それをくつがえすだけの根拠のあるものが、單に選挙が終つておるから君の申立てはもうこれで取上げるわけに行かぬということだけでは、私は済まされぬと考えるのであります。もしそれではそうした場合に行われた選挙を無効だとして取消すことが、一体できるかどうかということであります。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この行政事件訴訟特例法の第一〇條に「第二條の訴の提起があつた場合において、処分執行に困り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、裁判所は、申立に困り又は職権で、決定を以て、処分執行を停止すべきことを命ずることかできる。」こういうことが書いてございます。従いましてこの場合に裁判所執行停止を命ずるか命じないかということは、これを放置しておくならば償うことのできない損害が起る、それを避けるために緊急の必要がある、こういう判断をされるということが前提になるわけでございます。従いまして選挙がすでに行われておるか、あるいはまだ行われておらないかということは、この償うことのできない損害が生ずるかどうかという條文を適用する場合に、非常に重要な関係があると、かように私は考えましたので、先ほどのようにお答えを一応いたしたわけであります。しかしながらこれはこの法律規定根拠といたしまして、常識的に考えお答えであることは申すまでもないのであります。
  15. 門司亮

    門司委員 それ以上のことは選挙管理委員会に聞いた方がいいと思いますが、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、先ほどのようになるほど行政訴訟はできるのでありますが、その場合に議決権と、もう一つはさつき申し上げました行政権の問題であります。これがもし総裁お話のようだといたしますると、市会総意によつて議決をして除名したというのが——私はいろいろな理由はあるとは思いまするが、少くとも議会議決に対しましては、やはり相当な権威を保持しなければならない。そういうことが一つありますると同時に、市会議決権というものは、かりに出訴することができるというようなことにつきましては、いろいろ不都合にあつた場合等において、あるいは民事上の問題その他でいろいろな問題があつて、これが行政訴訟になるということは、一応考えられるのでありまするが、その場合に行政訴訟行政訴訟といたしまして、さつき申し上げましたように、これが議決権行政権との関係であります。單に出訴することができるから、議決権よりも行政権の方が強いのだという解釈をしていいのかどうか。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 たとい議決機関処分でありましようとも、行政処分に対しまして不服の訴えは一般的に許されておる、かように考えております。
  17. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、議決権に対する効力というものは、一体どの辺まであるかという問題であります。議決権御存じのように、いろいろな問題を議決いたして参りまするが、その場合におきましても、ことに議員身分に関する問題というのは、かなり大きな問題でありまするし、もしこれが今の仮処分によつて身分決定するということになつて参りますと、できて参りまするものは、市会のほとんど全員——この茨木市の当時の速記録を読んで見ますと、ほとんど全員に近いほどの議員——わずか三名かそこらの反対があつたと思いまするが、あとは全員賛成をしておりまする場合に、單に裁判所行政処置によつてその決議をくつがえして、まつたく信頼しない議員発言、あるいは除名された議員発言というものが、やはり市会で大きく反映して来るということになつて参りますと、おそらくこの人も、身分が仮保障されたということになりますると、議場に出て来るでございましようし、そういたして参りますると、これらの人の発言というものが、相当大きな問題になつて来る、と同時にこういうことが地方自治体の円満なる遂行の上に、一体正しい行き方であるかどうかということであります。ほかのいろいろな議決いたしました事項に対しましての訴訟であるとか何とかいうことなら、これは多少の意見はあると思いまするが、しかし事、人の問題でありまするために感情もありましようし、いろいろな問題も起つて参りまするので、市会はそう簡單に円満には行かないと考えております。市会が円満に遂行できないような、あるいは市会議決いたしましても、行政権かこれより上に力を持つているのだということになつて参りますると、市会議決権というものは非常に軽んぜられる形をとつて参りまして、いろいろ弊害を起して来ると考えられまするが、その点に対する総裁のお考えと、もう一つついでに承つておきたいのでありまするが、かりに仮処分決定いたしまして身分保障されましても、それなら再度市会でこれの除名決議するというようなことができるかどうか。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 議決権を尊重いたすという上から申しまして、議決機関議決に対して執行停止裁判があるということがおもしろくないという御意見だと拜聽いたしたのでありまするが、これはしかし現在の法制の建前といたしましては、議決権にも必ずしも誤りはないわけでない。従いましてその議決機関議決に対しましても、関係者からこれが取消し訴えを求めることができる。そうして取消し訴えを一方において求めております場合に、その取消しの目的となつておる議決行為を、そのまま執行せしめますと、一方において取消しを求むる者のために、償うことのできないような損失を生ずるおそれがある。従いましてかれこれどちらの利益をこの場合具体的に重く見るかということを判断して、適正に裁判されるということを期待して、この條文ができておると思うのであります。もとよりこれを運用いたすにあたりましては、議決機関議決権というものを、でき得る限り尊重するという精神をもつて運用しなければならぬことは申すまでもない次第であります。具体的なこの事件におきまして、はたしてかような精神が守られておつたかどうかということになりますると、これは裁判所裁判に対する批評になりまするので、私の立場としてはお答えを差控えさせていただきたいと存ずるのであります。  次にこの除名処分執行停止なつておりまする際において、重ねて議決機関除名決議をすることができるかどうかという御質問でございましたが、この点につきましては、新しく除名理由が発生いたしましたる場合におきましては、当然その新たなる理由原因といたしまして、新しき除名決議をすることは、一向妨げのないものと考えるのであります。
  19. 門司亮

    門司委員 そうなつて参りますると、まつたくこの議決権よりも行政権の方が上に行くのだという解釈に、私は結論がなると思いますが、一体そういうことがもし許されるといたしまするならば、地方議会議決権というものは、何度も申し上げますように、非常に薄弱になつてしまつて、ほとんど効力がなくなりはしないか。それと同時に、これが及ぼしまする影響というもりは、裁判所でもそう非常識なことをしないでございましようが、市会全体の意思でこれを除名するということも、裁判所に対抗できる道を一応開くというのは、私も必ずしもむだではないと考えておりまするが、しかし一方におきましては、御存じのようにすでに選挙告示しておる。先ほどお話を引例いたしますると、常識的にものを見て参りますと、片一方ではすでに選挙告示して、選挙の行われておる最中に、一体裁判所がこれに対して仮決定を與えるということは、先ほど申し上げておりますように、選手の効力自体に非常に大きな影響を将来持つで来る危險性を持つておりまするので、一体今かれこれは申し上げられないという意見でございましたが、むろん裁判所行つておりますることについて、法務総裁として意見がましいことを甘い、さらにさしずも何もできないことは、われわれもよく存じております。下級の裁判所におきましても、判事の行つたことに対しで、上級の裁判所から命令をする、取消しをするということは許されるわけでないことは、十分承知いたしておりますが、そういうことが大橋さん個人の考えとして、適切であつたかどうかということであります。この点をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 行政事件訴訟特例法の第十條第二項は、先ほど申し上げましたように、処分執行が行われました場合においては、償うことのできたいような損害が起るかもしれない。それを避けるために、緊急の必要がある場合には、処分執行停止をしてもよろしい、こういう規定に相なつております。しかして一方において、選挙告示が行われておる、選挙が始まつておる、その結果選挙がそのまま行われまして、当選人決定するということになりますと、除名処分取消しを求めている原告の側から申しますと、これは償うべからざる損害が差追つて来ている、こういう状態であります。そしてこの状態を避けるために、緊急の措置としては当然執行停止ということが考え得るわけでありまして、私はこの場合にかような措置が行われるということは当然考え得られることであると存じます。
  21. 門司亮

    門司委員 選挙管理委員会の方はおいでになつていますか。
  22. 前尾繁三郎

    前尾委員長 お見えになつております。
  23. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、選挙管理委員会の方にお聞きしたいと思います。今の大橋さんの意見だといたしますと、提訴いたされますときに、その提訴の終末を待たなければ、当然告示をして選挙を行うということが不都合のように考えるのでありますが、選挙管理委員会はどういうふうにお考えなつておりますか。
  24. 石渡猪太郎

    石渡説明員 ただいまの御質問でございますが、茨木の場合は公職選挙法規定に基きまして教育委員の退学が行われます際に、市町村議員の欠けたものがございました場合には、通常の場合では補欠選挙を行う必要がないときでも、同時に選挙を行わなければならない、こういう規定に基きまして選挙管理委員会としては裁判余地なく、同時に選挙を行わなければならないのであります。ただいまのような選挙事態効力につきまして、あるいは当選効力につきまして提訴なつております場合におきましては、これは選挙を行うことはできませんのですが、その他の場合の提訴につきまして、訴訟が係属中にあるという理由をもちましては、選挙行つてはならないという法律上の規定がございませんので、その場合には補欠選挙執行しなければならぬ、こういうふうになつております。裁量の余地がなくなつておりますから、そういうふうなことになつたのであります。
  25. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、これは現実の問題として、実際、今、先ほども申し上げており、また御承知のような問題が起つておるのでありますが、これは一つ法律のポケツトというか、一つの穴であるというふうに解釈してさしつかえございませんか。
  26. 石渡猪太郎

    石渡説明員 必ずしも法律欠陷というふうに断定はできないのではないか、議論余地はあろうかとも存じますけれども欠陷であるというふうには考えておりません。
  27. 門司亮

    門司委員 議論余地だけで私は済まされない、それで私は考えますのは、これは私は法律欠陷でなければならないと考えております。そういたしますと選挙管理委員会はどうしてこれを取消しなつたかということであります。これは当然欠員があるから告示されたのであつて、それが法律欠陷、私の申し上げておりますのは、片方は訴訟いたしておりますので、その訴訟の結果、あるいは勝訴になるかもしれない、勝訴になつた場合は当然議員たる資格が生れて来るのであります。そうすると選挙行つたこと自体を全部取消さなければならぬということができ上がつて来ると思います。議員が二人、一人の定員をふやすというわけには参りませんので、これを防止することのためには、あるいは選挙法の中にそういう身分関係において提訴が行われておるという場合には、その判決を待つまでは、補欠選挙は行えないという規定が設けられておれば、今度のような間違いはなかつたと思います。これは行政権議決権の問題は別にして、そういう規定がないから、今のようなお話が出て来ると思います。それを選挙管理委員会で、法律欠陷でなかつたという御答弁なつて参りますと、一体どういうふうに結末をつけることができるかということであります。私はどこまでもこれは一つ法律の穴であつたというふうに、解釈する方がよいのではないかと考えるものでありますが、やはりそうお考えになりませんか。
  28. 石渡猪太郎

    石渡説明員 ただいまの問題は、類似の問題といたしまして、リコールの手続が進行中でございますとか、あるいは訴訟が係属中であるという場合におきましても、なおただいまの例示のありましたような、補欠選挙は行わなければならないような規定なつておりまして、御指摘のように、確かに議論余地のある問題であろうと思いますが、だからと申しまして、その場合に、補欠選挙は全部できないことにしてしまうということにつきましても、若干の疑問があるように思うのであります。
  29. 門司亮

    門司委員 大橋さんに聞きたいのですが、今の選挙管理委員会の御答弁では、選挙管理委員会としては、大体欠員として選挙を行うことが正しい。いろいろ議論はあると思うが、法律上の欠陷とも今のところ考えておらないという御答弁があつたのでありますが、もしその通りだといたしますると、非常にデリケートな問題ができて参りまして、一体これをどう処理すればいいかということが次の問題になる。  もう一つお聞きしておきたいと思いますことは、議決に対していろいろな提訴をすることができるということは、私は一応道を開くべきであると考えておりますが、必ずしも市会が横暴をしないとも限りませんので、あるいは市会の横暴に対して、多少の正論を通すということで、行政訴訟も必要ではなかろうかということは一応考えられるのでありますが、こういう身分の問題に関してやはりこの議決いたしますこと、それからもう一つは、條例その他に対しまする議決につきましては、あるいはこれを三分の一かの署名を求めて、そうして條例その他を変更することを請求する権利を、住民は実は持つておるわけであります。しかしそのことについてもし不平の議員があつて、それがその議決は無効であるということの訴訟をいたしました場合にも、やはりこれと同様な取扱いが受けられるかどうかということであります。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法律上の解釈といたしましては、行政処分内容のいかんにかかわらず、特例法の第十條第二項というものは適用があるということになつております。しかしもとよりこれが運用にあたりまして、裁判官の良識ある判断によつて行われるものと考えますので、あまり非常識な欠陷が起ることはなかろうと考えるのであります。
  31. 門司亮

    門司委員 もう一つ聞いておきたいと思いますことは、仮処分は取消すことができるはずでありますが、仮処分取消しの要求は、市会としてそういう処置がとれるものであるかどうか。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 市会といたしましては、さような道は開かれておりません。
  33. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、仮処分取消しは、市会として市会議決でこれを要求することができないということになりますると、まつたく一方的の裁判官の物の考え方だけで、市会議決権が簡單に停止されるということになつて参るのでありますが、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 結果といたしましては、そういうことになると思います。
  35. 門司亮

    門司委員 これ以上大橋さんとの議論はいたしませんが、結果としてそういうことになるということになつて参りますと、これにも私は非常に大きな問題があるのじやないかというように考えるのであります。同時にこれは自治庁の長官に伺つておきたいと思いますが、自治法の中に御存じのように一応いろいろそうした出訴することも、提訴することもできるとありますけれども、しかし除名の問題に関連いたしましては、何らかの方法を講じておきませんと、こういう問題が繰返されて起つて参りまして、そうして必ず市会議決したことを、ある程度くつがえすような処置に出ずるものが私はたくさん出て来ると思う。そうすると市会権威というものは、まつたく疑われることになりますと同時に、市会あるいは市町村会が将来円満に遂行ができなくなる事態を引起して、地方自治体は非常に運営上困る問題が出て来はしないかというように考えております。と同時に、少くともこの市会権威というものに対する市民の信頼というものも、また薄くなつて来ると思う。これは何らかのやはり方法を講ずべきじやないかというように考えるのでありますが、自治庁の長官として、この地方自治法の建前から、どういうふうにお考えになりますか。
  36. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 御説しごくごもつとものように伺います。よく考究いたしまして、考慮いたしたいと思います。
  37. 門司亮

    門司委員 よく考究してというようなお話でありますが、よく考究してということになると、それ以上私が聞いてもやはり同じようなことだと思います。しかしこういう矛盾を自治庁の長官として十分認識されるかどうかということであります。これについては私は具体的に申し上げまするならば、あるいはこれを防止することのためには、この除名処分等に対しましては、提訴する期間を一応設けておく。この期間内にこれを提訴するというようなことを、はつきりして来ますならば、今の茨木市のような問題は私は起らぬと思う。選挙管理委員会は、先ほど法的には何ら欠陷はない。問題ではあるが、ポケツトではないというお話でありますけれども、私は大きなポケツトだと思います。ポケツトでなければこういう問題は起らぬと思う。それを補いますことのために、地方自治法にそういう規定を設けるか、あるいは選挙法の中にそういう規定を設けるか、いずれこれは防止することを考えておきませんと、單に茨木市の問題として発生した一つの問題だけで、私は済まされぬと思いますか、その点に対する自治庁の長官としてのお考えをひとつ伺つておきたいと思います。
  38. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 事務当局から詳しく御説明申し上げます。
  39. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 だんだん門司委員から、議会議決が違法でありました場合、その一つの例として除名議決等につきましての措置をどう考えるか、また選挙を行うべき事由自体について確定的なことになつておりません場合に、選挙を行うことがよいかどうかという点について、いろいろお話がございましたが、私ども現行の立法の上におきましては、議会議決につきましては、特にそれが違法であります場合におきましては、地方団体の長が裁判所に出訴するという自治法の單独規定があります。しかし一般的には行政事件訴訟特例法によりまして、違法な行政処分については出訴の道がありますが、議会議決自体について、一般的に明確に出訴するというような規定は、必ずしも明瞭でございません。この点はそういう違法な議会議決につきまして、どういうふうにいたしますか、今裁判所がいろいろ仮処分等を行われておると思うのでございます。そういう例はいずれも地方自治の上におきましては、地方的な紛糾になつておる問題でございまして、そういう場合に、もし仮処分というようなものが、はたして適法に行われるかどうか、これらの点につきましては、制度上さらに私ども研究する必要があると思つております。それから今のリコール等がありました場合におきまして、まだリコールについて訴訟が残つておる、そういうような際に、ただちに次の選挙手続に入つて行くというように、現在手続上なつておりますけれども、これにつきましても、そういうような行き方がはたして適当であるかどうか、ただいま岡野国務大臣から申し上げましたように、地方自治庁といたしましては、今後さらに制度上の問題として、研究して参りたいと考えております。
  40. 門司亮

    門司委員 もう一つ大橋さんにお聞きしておきたいと思います。最後に私は確かめておきたいと思いますことは、提訴の問題であります。実は提訴の問題については、手続きの欠陥があつたということでありますならば、これは当然私は提訴すべきであると考えております。手続上の何らの欠陥はない。茨木の場合におきましても、これは詳しく速記録を読むと長くなりますから、私は省略いたしますが、理由をあげて、そしてそれに対して市会といたしましては懲罰委員会を設置いたしまして、懲罰委員会に付託をいたしまして、徴罰委員会はきわめて短い時間ではありますが、とにかく懲罰委員会の一応の審議を経まして、その懲罰委員会の結果が本会議に報告されて、本会議でこれが採択をされているのであります。従つて市会の手続上の問題につきましては、私は何らの落度がなかつたというように考えている。そうなつて参りますと、提訴いたしましたものは、その手続上の問題でなくして、おそらくはこの内容について不都合であつたというようなことが、提訴理由なつている。この提訴処分はここに書いてありますので、これを読めばわかりますが、そういうことになつている。そういたしますと、もし裁判所がそれを取上げて仮処分を認めたということになつて参りますと、明らかに自治権の侵害になつて来はしないか。手続上の問題に不都合があつたというならば、これはやむを得ないと思います。議決がおかしいのだということになれば、これは一つの問題になると思いますが、しかしそういう手続はずつとふまれておつて議決に至ります問において法律上何らの落度がございません。ただその除名をいたします者の具体的な項目について、自分は不平があるのだということになつて参りますと、それを行政裁判所が取上げて云々するということは、私は議決権の侵害ではないか、こう解釈するのでありますが、大橋法務総裁のお考えはどうであるか、伺いたいと思います。
  41. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在の法制として裁判所にかようの権能が認められておるのでございまして、裁判所といたしましては、その法律上許されたる権能を発動いたしたのみでありまして、これをもつて理行法上自治権の侵害なりということはできないと私は考えております。
  42. 門司亮

    門司委員 現行法上自治権の侵害ではないというように総裁解釈されると私は思いますが、法の精神は私は必ずしもそうではないじやないかと思う。おそらく行政裁判所議決権まで侵害して、議決権に対する容喙をするというようなことはなかろうと私は考えておりますが、これがもし法的にそういうものがあるとするならば、私どもはこの点は、やはり将来の問題として十分研究すべき課題ではないか、こういうふうに考えておりますので、総裁のこの際の御意見を承つておきたいと思いますのと、それからもう一つは、これは非常に変なことを聞くようでありますが、もし国会でこれを除名した場合に、一体どういうことになるのか、それを伺いたいと思います。
  43. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国会決議というものは、これは行政事件の対象となつておりません。従いまして国会議員につきまして成田所との間にかような問題を生ずるおそれはございません。
  44. 門司亮

    門司委員 ちよつとこの機会に感想だけを聞かしておいていただきたいと思います。さつき言いましたように、行政手続の上で不都合があつた場合は、これは当然その上不都合に対して、議決が無効だということは言えると思います。手続上間違いがあつたということに対しては、十分提訴理由になると思いますが、議決内容に関して、それが不都合であつたか、なかつたかということまで裁判所が出て来るということは、ある程度議決権に対する一つ行政権の侵害ではないかというように考えておりますが、この点に対する考え方を伺つておきたいと思います。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まずこれは用語だけの問題でございまするが、裁判所執行停止をいたすということは、これは行政権というべきものではなく、司法権の、発動であると私は考えております。そうしてかような争いにつきまして、それが手続上の問題ばかりでなく、実質上な点が理由とされる場合におきましても、現在の法律上の争いについては、すべてこれを司法権によつて解決するというのが、現在の制度上の建前になつております。従いまして、この場合におきまして、内容上の点を不服として提訴が行われるという制度も、現在の制度としては、当然のことでありますし、またこれを取上げて裁判所執行停止をするということも、当然のことであると考えるのであります。ただ具体的の事件について、はたしてこの場合の裁判所裁判が適切であつたかどうかという問題は、別個の問題でありますが、制度上の問題といたしましては、私はこれは当然のことである、かような感想を持つております。     —————————————
  46. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それではこれに対する質疑は後刻にまた行うことといたしまして、これより地方公務員法案議題として質疑を続行いたします。門司委員
  47. 門司亮

    門司委員 この前の会議で、大臣の説明書に対する質問を総括的に申し上げまする前提といたしまして、大体具体的の法案の説明でないことについてのみ発言をいたしておきましたので、これから大臣の説明につきまして、具体的なことについて少しお伺いしておきたいと考えておるのであります。  第一に聞いておきたいと思いますことは、きのうも人事院総裁、さらに保利労働大臣に十分お聞きをしたことでありますが、この中にあります、公共団体に勤めております者の中立性の解釈であります。地方公共員は中立性を十分保たなければならないという解釈でありますが、その点はどういうふうに大臣はお考えなつておるか。私どもはこの中立性ということは、何もすべての中立性でなくして、市政あるいは府県政を運用いたして行きます場合において、これがあくまでも中立性でなければならないということは、おのおの市あるいは都道府県の定めております條例、あるいは議決されました事項について執行をいたします場合に、その執行の過程において、これが一党一派にことさらに偏したり、あるいはそのことのために住民に非常に迷惑をかけるというようなことがあつてはなりませんので それらの職務の執行の上においては、もちろん中立性が必要かと考えております。しかし自分の持つております思想であるとか、あるいは政治上の信念であるとかいうものの活動までも、これによつて禁ずるということは、ここに言われております地方公務員の中立性と、それから地方公務員の政治活動が禁止されておりますこと、この面において私は非常に大きな矛盾を感じておるのであります。従つて大臣の考えておられますこの地方公務員の中立性というものについてのお答えを、この機会にひとつ願つておきたいと思います。
  48. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 門司委員の御質問お答え申し上げます。中立性と申しますことは、読んで字のごとく、中立性でございまして、憲法に保障されておりますところの思想とかなんとかいうものを、剥奪するというわけではございません。しかしながら公務員は、国家公務員でも地方公務員でも同じでありまして、みな全体の奉仕者としてやつておるわけでございます。その全体の奉仕者たる立場というものを認めて、そうしてその中立という意義を解釈して行かなければならぬと考えます。でございますから、地方における職務に対して、中立性を持つと同時に、また一般の政治、国政に対しても中立を保たなければならぬ、こう私は考えております。
  49. 門司亮

    門司委員 さつき大臣の御答弁の中にありましたように、決して信條であるとかなんとかいうような中立性でないということになつて参りますると、ここに具体的にいろいろなことが説明書の中にも書かれておりますが、私どもといたしましては、この政治的の制限をどうしてもしなければならないということについては、今の御答弁だけでは解釈ができないのであります。従つて中立性の意義については、私はこれ以上申し上げましても、今までしばしば申し上げておりますので議論にわたりますから、これ以上にはこの機会には申し上げませんが、いずれ逐條審議の際にこれを申し上げて、さらに私ども意見を申し上げたいと思うのでありますが、もう一つ聞いておきたいと思いますることは、この法律では日本の全体の自治体に対しまして、一つ法律で取締ろうということになつておる。ところが御存じのように、日本の公共団体というものは、一万数百ありまして、そうしておのおのそのやつております内容も異つておりまするし、一方においては公営事業であり、一方においてはそれが同じ仕事をしておりますものが、私企業で行われておる都市も実はあるわけであります。そうなつて参りますと、これが一方では公共事業であるということのために、その仕事に従事いたしておりまするものが政治的の活動が十分できない。一方におきましては、これが私企業であるということのために、どんな政治活動をしてもちつともさしつかえがないというようなことになつて参りますと、政治活動という国民に與えられた大きな権利を、地方公務員が制約されるということだけではなくして、そのおのおのの企業体についてやはりそういうものが出て来て、非常に跛行的なものをこしらえ上げるのではないかというふうに考えておりまするが、この点に対するお答えを願いたい。
  50. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 門司委員の御質問お答え申し上げます。なるほどお説はしごくごもつともでございます。同じような仕事をしておりながら、片方は私企業で経営せられておる。片方はまた公共団体の事業として行われておると申しますことが、社会の現状でございますから、われわれといたしましては少くとも地方の経営しておるものについては、地方の公務員たるの立場において、これを拘束して行くということが当然だろうと思います。でございますから社会情勢が変化しておりますので、ほかの私企業に対しては自由にされておるのに、公共団体が経営しておるものの従事員は、特別の制限を付せられなければならぬということは、これはいたし方がないのではないかと思うのであります。この点はいたしかたがないという一言に書きはしないかと思います。
  51. 門司亮

    門司委員 その次に問題になりますのは、例の政治的活動の禁止と同時に、労働者に対しまする労働三法の適用を除外するという問題でございます。この問題もさつき申し上げましたように、事業の業態がおのおの異なつておりますので、公営事業でやつておりますところにはこれが適用される、それから私企業のところにはこれが適用されないということは、さつきの政治的活動と同じようになります。その場合にこれが住民に及ぼす影響であります。住民に及ぼしまする影響は、これが私企業であろうと、公営事業でありましようとも、この事業体というものはまつたく同じでありますので、同じようなことが考えられる。そこで一つ地方の全体の自治体に対して、従業員に対して当てはめて参ります法律としての矛盾は、ここに大きな一つの欠陥がありはしないかと考える。一方は公営企業体であるというが、公共団体の事業の経営形態であることのために、争議も起すことができない、あるいは団体交渉もこの法律によりますと完全な団体交渉ではない。一方の都市はこれが私の方の業で行つておりますことのためにそれが許されている、こういうことになると思いますが、もし一方の私の業の方の労働団体が能業を行い、あるいは怠業を行うという場合の市民に及ぼしまする影響というものは、一体どうであるかということ、これが許されるとするならば、やはり同じように地方の公共団体の経営いたしておりまする従業員といえども、市民に及ぼす影響が同じであるとするならば、これはやはり労働者としての権利を一応認むべきではないかというように考えておりまするが、この点に対するお考えはどうでございますか。
  52. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 門司委員の御質問お答え申し上げます。これはどうしてもいたし方がない次第でございます。
  53. 門司亮

    門司委員 いたし方がないというのでは私ども困るのでありますが、それはそのくらいにしておきまして、その次に聞いておきたいと思いますことは、この法律を大臣は非常にいい法律だというようなことを、最後に書いてあるようでありますが、これを保護規定としての完全な法律とお認めになつておるのか。取締規定としてこれを一応お考えなつておるのか。この説明書には——さらにお話を伺いますと、これは保護規定であるから非常にいい法律だということで、自画自讃されておるようでありますが、この点ひとつもう一応お答え願いたいと思います。
  54. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は公務員にとつては非常にいい保護規定である、また地方の自治行政をやつて行くものに対しては、行政方法としても非常にいい方法である、合せて両方とも非常にいい方法である、こう考えております。
  55. 門司亮

    門司委員 今の大臣の御答弁ではありまするが、少くとも労働者が持つておりまする権利、憲法で保障されておりまする国民としての権利、これが大幅に制約されるのでは、それが労働者の保存法とは言えないと思う。あるいは行政を行いまするものの両から申しますると、働く者のすべてを縛り上げておいて行えば、これは奴隷のように使うことができるということになつて参りまして、これが一番いいかもしれない。それはいかに一方的のものの見方であつて、そこに働いておりまするものの観点から行きますると、当然の国民の権利でありますこの労働三法の適用、あるいは海員法の適用などは、なさるべきではないかと考えている。私がそういうことを申し上げるのは、この点を大臣からはつきり承りたいのであります。マッカーサー書簡の出ました場合においては、しかもその書簡の中にも情勢に応ずるという字句が使つてあると思いますが、いろいろな諸般の事情から、あるいは国民的の批判の上に立つて、どうも多少の行き過ぎがあるのではないかというようなことが感じられておつた考えている。しかし現在の状態においては、私どもはそういうことは全然ないと考えておると同時に、地方の公共団体は御存じのように決して役所ではございません。官庁ではないということである。これはどこまでも地方行政を行いまするサービス・センターであるというものの考え方が私は正しいと思う。そういう考えでありますると同時に、そこに働いておりまする従業員の諸君が、これも自分たちは公務員であるということが、十分目覚されて参りまするならば、憲法で定められておりまする通りに、いわゆる公の奉仕者であるということを十分自覚いたしておりまして、その上に現在のように労働組合の行動といえども、それが民主的に行われて行くということになつて参りまするならば、これに労働三法の適用をいたしましても、私は何らの危險性もなければ、また危惧することもない。ことに先ほど申し上げておりまするように、一つのサービス・センターでありまする以上は、市民と密接不可能の関係を持つておりますので、もし地方の公共団体に勤務をいたしておりまする諸君が、不当の怠業をしたり、不当なストライキをやるというようなことになつて参りまするならば、これは地方住民が許さないだろうと考えている。およそ地方住民の支持を受けないで、それらの労働団体の諸君の行為が成功しようとは考えられない。従つて地方の公務員に対してはおのずから国家公務員とその趣きを異にしているのではないか。ことに国家公務員に対しては、私は労働三法の適用をするなり、あるいは政治的自由は人として與えなければならぬと考えておるのでありますが、地方の公共団体は公共公務員とは大きな開きを持つている。同時に地方の公共団体は御承知のように、国家の機関ほどに大きな権限を持つていないのであります。自治庁が言つておりますように、自治の力が非常に確立されて、一切を国の法律でするということでなくして、地方の條例、規則によつてこれを行うといつておりましても、これもやはり地方住民総意の上できめられております一の條例であり、あるいは規則でありまするために、これによつて権限が非常に拡大されたとは考えられない。ただ今まで国が一本でやつておりまして、非常に官僚的の画一的の事務が、住民的と申しますか、民主的と申しますか、そういう事務の形態にかわつて来たというだけでありまして、こういう点から考えて参りましても、この労働者に対しまする見方が、大臣の考え方と非常に違つていると、こう考えざるを得ないのでありますが、そういう点に対する現在の地方の公共団体の労働組合のあり方、それから社会の情勢、さらにサービス・センターとしての地方の公共団体であるというようなことを、大臣は率直にお認めになりますかどうか。
  56. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。お説しごくごもつともでございます。このマツカーサー書簡が出た当時よりは、情勢がかわつておるということは私も認めます。でありますから国家公務員法に比べまして地方公務員法というものは、非常に緩和されておる次第でございます。お説に従いますれば、地方住民の自治でやつて行つて、そしてその自治に目ざめて、ほんとうにサービス・センターとしてやつて行くというようなことになれば、もう昔ありましたように法三章でやつて行つてさしつかえないのであります。しかしながら私は現在の段階といたしましては、地方自治行政というものを公正妥当に、円満にやつて行くためには、この程度の地方公務員法というものはなければならぬという認識を持つて、この法案を出しておる次第でございます。
  57. 門司亮

    門司委員 大臣の認識であれば、これはそれ以上私は追究いたしませんが、もしそうだといたしますると、問題として残りますものは、この法にありまする例の除外された特別職であります。これは何度も申し上げるのでありますが、この法律によりますると、中立性の問題をさつき私お話をいたしましたが、この従業員といいまするか、公務員といいまするか、ここに下級の公務員だけが中立性を保たなければならないということであります。御存じのように上級の公務員といいまするか、市長であるとか、あるいは都道府県知事であるとか、あるいはその地のほんとうに行政権を持つておりまする諸君は、おのおの政治活動が十分にできる、こういうことになつておるのであります。そうすると行政権、権力を持つておりまする者のみが政治活動ができて、権力を持たない者が政治活動をすることは危險だということは、いささか私は法の上に矛盾がありはしないかと考えております。むしろ禁ずるならば十分政治的意図を行うことができる権限を持つておりまする上の方の諸君に、これを適用すべきであつて、それの指揮命令に従わなければならないというおのおのの自治体で規則を定めておりまするときに、指揮命令に従つて動いておりまする者に、ことさらに追打ちをかけるような、こうした政治的な活動を禁ずるという必要は私はないと思いまするが、この辺の法的の矛盾を、大臣は一体どのようにお考えになりますか。
  58. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。知事とか市町村長に対して縛らないで、下級の職員ばかりを縛ることはおかしいじやないか、こういう御議論でございます。しかしながら御承知の通り地方自治ということは、やはり在民全体の意思にまかせて、その行政をやつて行かせるというのが趣旨であります。そういたしますと、知事並びに市町村長は、公選によりましてその地方の一般の民衆の輿論の支持、すなわち選挙によつて当選して来るものでございますから、その地方の民主的な意思を代表しておる人物でございますので、その人のやることに対しては、私は縛る必要はないと思います。それは明らかに憲法に対して、違反とは申しませんけれども、憲法の精神に反するものじやないかと思います。
  59. 門司亮

    門司委員 きようはあまりこれから先のことの議論は私避けたいと思います。あと逐條のときに時間を十分とつて、ひとつ議論をいたしたいと考えておりまするが、最後に聞いておきたいと思いますことは、この法律が施行されまして、その後における地方自治体のすべての事業の運営に関してであります。今日まで地方自治体の仕事といわず、すべての日本のこうした官業、あるいは仕事——今全部は官業とは申されないかもしれませんが、公共団体の仕事というものは、いわゆるお役所式の仕事であるという非難を、実は受けておるのであります。これはどこに一体原因があるかと申し上げますと、具体的に申し上げますならば、お役所式の仕事というものは、能率が非常に上らないということと、もう一つは現状を無視したいわゆる規則一点張りの仕事をしておる、従つて仕事には非常に大きなむだがあるということが、今日お役所式の仕事と言われておる一つ原因であります。なお具体的に言うなら、一つの役所で一つの道路を電気局が掘りかえして、そのあと水道局が来てまた掘り返す、さらにまたそのあとガス局が来て同じ道路を掘り返しておる。そうしてそれが舗装されたりはがされたり、舗装されたりはがされたりするということが、しばしば見受けられる。こういう統一性がないということ、これはやはり役所が一つの型にはまつた仕事をしているから、そういうことになる。それから勤務におきましても、朝の一定の時間からおのおの役所に出所をして、それから現場に行くというようなことで、非常に能率が上つておらないというようないろいろなお役所仕事の弊害を、実は認めないわけには行かない。また世間でおおよそ能率の上らぬものに対して、これをお役所仕事と申しております。その原因一体どこにあるかということである。これは今までの役所が、あまりにも民間とかけ離れた役所であるという物の考え方がここに来ているんじやないかと思う。お役所である、従つて一切規則ずくめであつて、所管の外にはちよつとも出られないというようなこと、働いております者の意見がちよつともこれに加えられておらない、ただ上の指揮命令に従つて——働いておるものからしまして、これは非常にむだだ、むしろこうすればいいと考えていても、そういう意見発言することが非常に困難であつた。またできなかつたというような事態が、今日のお役所仕事をこしらえておると思いますが、その上に御承知のように民間の企業と、まつたく同じような仕事をしておりまするのに、一方には労働三法が適用されて、自分たちの地位の向上、生活の安定のために経済的の闘争が十分行えるようになつている、一方においてはそれができないということになつて参りますと、この物の考え方から参りまするときに、能率上の開きというものは、まことに大きくなりはしないかと思う。われわれは身分保障されている、しかし仕事のことについては、これだけをしなければならない、あるいはこうしなければならないということではならないのである、というような考え方がもし起つて参りまするならば、せつかくこの法律身分保障して、これを保護法であると言つておきながら、片方で労働者の権利を大幅に剥奪いたしておりますことのために、この保護法といわれております法律自体が、地方公共団体の諸般の事業遂行の能率の上に、非常に大きな影響をして来はしないかということが、実は考えられるのであります。そこでお聞きをしておきたいと思いますることは、そういうことが将来この法律を施行して一体予想されないかどうかということである。そういうことを私は聞きますのは、お役所仕事でもいいというようなお考えがあるかしれませんが、お役所仕事という場合に、一体損しておるものはだれであるかということである。役所の事業のすべての経費は、御存じのように住民から取立てております税金であることは間違いない。この税金の上になされておりまする仕事が十分なされていないで、ここにむだがあつたということになりますと、住民の負担は非常に大きなものであるというように考えられる。むだな負担を住民は制度の上に強要されるということになつて参るのであります。それと同時にそこに働いておりまする従業員の諸君が、経済的な自分たちの地位が確保できない。自分の生活の安定をする道を開くことができないということになつて参りまするならば、だれが一体この法律で得をするかということである。住民も損をすれば、そこで働いておりまする公務員諸君も損をするというような法律をこしらえることが、一体いいか悪いかということである。これは單にこの法律の字句の解釈であるとか、あるいはいろいろな問題でなくして、具体的にそういう問題が必ず起つて来ると思う。この具体的な矛盾を大臣はどういうふうに、解決なさる御意思をお持ちになつておるか。
  60. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。お役所仕事が能率が上らない、こういうことは私も民間におりまして、よく存じておる次第でございます。しかしながらこれは国民全般のカルチユアが向上しなければ、改善できないものだと思います。でございますからこの新憲法になりまして、知事とか市町村長というものが公選になりまして、そうしていろいろの人が出て来る。ことにそういうような欠陥があることを国民が認めますならば、そういうようなことを改善して行くような人を選んで来るだろうと思います。でございますから要は国民のカルチユアが進ん来て、お役所仕事をお役所仕事でないように民主的にやつて行くような首長が出て来まして、指導して行くことだらうと思います。それはかすに時日をもつてしなければならぬと思います。しかしながらこの地方公務員法を施行したがために、お役所仕事がますます悪くなるのではないかということは、これは御議論でもございますけれども、私の考えとは違いますことを申し上げておきたいと思います。
  61. 門司亮

    門司委員 考え方が違うというならば、意見の相違で、これ以上議論はできないと思いますが、しかし私はもう一つ念を押したいと思います。今国民の常識が非常に伸びて行つて、全体が発達して行けばそういうことはないというお考えでありますが、私は少くとも働いております者に対しましては、というよりもむしろ国民全体に一つの理想と希望がなければならないと考えておる。ことに労働者の理想と、労働者が希望いたしておりますものは生活の安定でなければならない。この生活の安定を得ることのための手段として、労働者に與えられておりますいわゆる労働三法というような基本的な権利が、公務員法で大幅に制限されて参りますと、ここに働いております諸君の理想も希望もこのことのために私は消滅しなければならないではないかというように考えられる。働いております者が何らの理想も希望も持たないで、ただ牛や馬のように働けと言いましても、なかなかそれでは能率が上らぬと思う。もしそれを牛や馬のように考えて能率を上げさせようとすれば、牛や馬と同じようにむちを打つて使うより方法がないと私は思う。おのおのの労働者が労働者であるということを自覚し、公務員が公務員であるということを自覚して、ほんとうにお役所仕事でなくなるようにいたしますことのためには、おのおの持つております労働者の権利というものが十分認められて、與えるものを與えて、なおかつ労働者に対しまして、この自覚を要求するということは私は必要だと思うが、與えるものも與えないでおいて、全体の常識が発達すれば、それが解決するのだということでは、私はなかなか全体の常識というものは発達するどころか、こういうことでは政治的に自由に活動もできない。いわゆる自分たちの意見というものを、十分に当局に対して対等の立場で述べることができない。申し合せたこともこれは協約とは考えられない。いわんや労働者の最後の権利でありまするストライキあるいは怠業等もできない。そういう手段に訴えるということは、これは一面理事者あるいは経営者側に対する訴えでありますとともに、やはりそれと同時に世間に対する労働組合の厳正なる批判を求めます行動の一つの現われと、われわれは考えなければならない。ストライキは單に業者との間の取引のためにやるのではなく、ストライキの意義は、やはり一面においてはこうした行動において、全部の国民にこの労働者の持つておる考え方が正しいものかどうかということを、批判させることの一つの機会でもなければならない。そうしてこれらの国民全体の支持がなければ、ストライキもなかなか成功はしないのであります。われわれはこういうことを考えて参りますと、今の大臣のお言葉では單に労働者を——働いておりまする地方公務員をむち打つて、むるやりに能率を上げさせるという方向に進めて行くのではないかというふうに考えられるのでありまするか、大臣はこの法律が施行されてもそういうことは断じてない。労働者の地位あるいは生活の向上というようなものは、この法律で断じて保障ができる、こういうふうにお考えなつておりますかどうか。
  62. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 最後に門司委員のおつしやつた通りに考えております。
  63. 門司亮

    門司委員 それならば私はもう一つ聞いておきますが、この大臣の説明書の中には制約された部面は非常に少いのでありまして、保護規定であるというようなことだけを、非常に強く打ち出すように書かれておるのでありますが、一体そういうことを十分にあがない得る條文が、この中のどの面にあるかということを、この機会に一応お示しを願つておきたいと思います。
  64. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 事務当局をもつて詳しく御説明申し上げさせます。
  65. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方公務員の利益の保護という見地から、どのような点をこの法案において考慮しているかということでございますが、これにつきましては過般も申し上げたと存じますが、特に目次のところをごらんいただきますと、第三章の第八節に福祉及び利益の保護という一節を設けております。この点は国家公務員法に比較いたしまして、体裁の上におきましても、考え方を明確に示すつもりで、特にこのような節を設けた次第でありまして、その内容は厚生福利制度、公務災害補償制度というような点をうたつておりますが、これは要するに共済制度あるいは恩給の制度、あるいは災害補償の制度というようなものにつきまして、現状の各種の欠陷がありますことを考えつつ、今後の厚生福利、災害補償の方式を示しているつもりであります。ただ基本的には、昨日も申し上げましたように労働基準法はこれを排除いたしておりませんので、労働基準法自体は労働組合法なり労働関係調整法と異なりまして、労務者の最低の勤務の基準を示したものでございますので、全体の奉仕者としての地方公務員の性格に反する部分以外の部分は、すべてこれを適用することといたしておりますので、そういう意味で利益は完全に確保されているというふうにも私ども考えているのであります。  さらに百八節の第三款、第四款には勤務條件に関する措置の要求、不利益処分に関する審査の請求という二つの点を書き加えておりますが、これによりまして積極的に地方公務員としての現在の勤務條件に不服があります場合に、それを改善向上するための措置の要求を人事委員会になして、それを審査してもらう。その結果につきましては、人事委員会が自分の責任に属することは自分でやりますし、また他の行政機関の責任に属することは、そういうふうに指示することによりまして、積極的に勤務條件の改善向上をする道が開かれておるのであります。さらに人事行政の具体的な措置として、いわゆる不利益な処分の行われました場合におきましては、これをさらに再審査をする。その再審査の結果によつて今までの処置を取消す。あるいはこれを回復するというような各種の方式を認めております。またこの再審査のためには、いわゆる裁判機関と同様に、特に証人の出頭でございますとか、書類の提出等につきましては、罰則をもつてその励行を保障しておりまして、その不利益処分審査が的確、公正に行われるようにいたしておるのであります。なおほかにちよつと前にさかのぼりますが、第五節の分限及び懲戒という点をごらんいただくならば、地方公務員身分というものは法律なり、いわば地方法律とも申すべき條例に基く事由及び手続によらないならば、一切その地位を奪うことができないということに明確に規定をいたしておりまして、地方公務員身分というものを的確に保障いたしておるつもりでございます。この点は懲戒につきましても、同様に懲戒の事由、懲戒の手続というものはすべて法律なり、法律にかわるべき條例をもつてしなければならぬというふうにうたつておりまして、身分保障に遺憾なきを来しておるのであります。またその一つ前の節の給與なり勤務時間その他の勤務條件、この点をごらんいただきましても、地方公務員の給與というものは、国の公務員、あるいは他の地方団体の公務員、あるいは民間の同種従業者との給與の状態との権衡を十分考慮しつつ、これを定めて行かなければならぬというようになつております。かように実体的な規定につきましても、さらにそれぞれ利益保護の点を考えておりますと同時に、人事機関、すなわち基本でありますところの人事機関の構成につきましても、かつては独任制の人事委員というような構想を考えておつた時代もございまするが、そういうことはやはり身分保障し、公務員の利益を保護する見地から適当でないということで、ひとしく人事委員会なり公平委員会は、合議制をとることにいたしております。こういうようなことによつて地方公務員法全体といたしましては、やはり地方公務員の利益を保護し、身分保障するという性格を的確に打ち出しておるつもりであるのでございます。
  66. 門司亮

    門司委員 今の御説明はよく承つておりますし、また私どもも法案をよく読んでおりますので、よく了承はしております。ただその場合に、たとえば最後に申し上げました人事委員会の構成、あるいは人事委員の公正なる決定と申しましても、三人の委員が二人おれば話合いができるということになつております。これは非常に危險を持つておると私は考えておる。これを嚴正にやろうとするならば、なぜ全員出席しなければ議決のできないようなことにしておかないかということが考えられると同時に、総括して申し上げますならば、今いろいろ申されましたようなことは、大体労働二法なりを適用すれば事の足りることであります。ことさらにこれを除いて、今お話になりましたようなことは——一々私は申し上げなくてもよいと思いますが、もしそれだけ労働者の立場を保護するというお考えがございますならば、ことさらにややこしい規定を設けないで、この場合にはやはり労働三法というものを十分適用され、そうして労働者の権利というものを大幅に考えてやることこそが、そういう法律をこしらえる前提の條件でなければならないと私は考えておる。一方において権利をとつておいて、そうしてこういうことにするということは、私ども考えられない。ことに人事委員の問題でありますが、この人事委員の問題は、これは仲裁裁判としての性格をかなり欠いておると思う。そういたしますと、この面についても私どもは今説明のようなわけには、なかなか参らないのではないかというふうに考えるのであります。ことに小さな都市に参りまして、人事委員会を置かない公平委員会の場合等につきましては、ことさらにそういう感じを持つものであります。それと同時に職員に対しまするいろいろな懲戒その他に対する職員の権利でありますが、これにつきましても今までのあるいは道府県の職員の勤務の條例であるとか、あるいは市町村のそれらに関する條例であるとかいうようなものを見て参りましても、今までもそう下都合は起らなかつたのではないかと考えておる。ことに基準法なり、その他が完全に適用されて参りますならば、その面で今ことさらに説明されましたようなことは、すべてこれはカバーできるのではないかというように、われわれは考えております。従つて今の御答弁だけでは承服しかねますので、きようはこれ以上は総括的な質問はいたしませんが、ただいままで大臣なり、あるいは当局のお答えになりましたことを一応基準といたしまして、いずれ各條審議の際に、なお詳細に聞きただしたいということを申し上げておきます。
  67. 立花敏男

    ○立花委員 時間の関係もありますので、私は委員会に出されました地方財政委員長の意見書の問題を、委員会で問題にしていただきたいと思うのです。
  68. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それは午後やりますから……。
  69. 立花敏男

    ○立花委員 私の質問を続けますと、多少長くなりますが……。
  70. 前尾繁三郎

    前尾委員長 総括質問をやつてください。
  71. 立花敏男

    ○立花委員 それをやりますにつきましては、地方財政委員会委員長並びに大蔵省関係を呼んでいただきたいと思います。それからこれをやるにつきまして希望があるのですが、実はこの問題は私ども地方行政委員会だけが結論を出しましても、解決のつかない問題でございまして、問題は補正予算に関係しておるわけであります。聞くところによりますと、予算委員会は今週の……。
  72. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花君、その問題は午後やりますから、総括共同をお願いします。
  73. 立花敏男

    ○立花委員 やるのについての議事進行の意見を申し上げます。
  74. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それは午後からいろいろ意見を伺いますから……。
  75. 立花敏男

    ○立花委員 それでできたら至急に委員会としても態度をきめまして、問題の性質上、予算委員会が終了しない前に、緊急に事態を運ぶ必要があると思う。委員長にさいぜんお聞きしますと、與党の方でもまだ態度がきまらないというふうなお話のようでございますが、それではやはりたとい委員会に諮られましても、與党としての態度がきまつておりませんと、問題の決定が非常に遅れますので、そういうこともお含みの上、なるべく早く委員会で態度がきめられますように御準備願いたいと思います。それだけお願いしておきます。  それから議事進行につきまして、朝の大橋総裁は何しに来たかわからぬのですが、門司君だけの質問が許されまして、どうもおかしな審議だつたと思う。きようの公報によりましても、選挙法の問題が議題なつておりますし、私も委員長大橋さんに質問したいからと言つておきましたし、委員部の方にもきようの議題を聞きまして、それでは私も質問するからと言つておいたのですが……。
  76. 前尾繁三郎

    前尾委員長 選挙法の問題で呼んだのですから、あなたの質問はそれ以外の質問のように伺いましたから……。
  77. 立花敏男

    ○立花委員 あとできようの公報を見せてもらつて、そうしてその問題について質問するからと言つておいたわけです。とにかくたつた一人の質問だけ許して、ああいう形でぱつぱつとやられては、委員会は何をやつておるかわからぬ。大橋さんは何のために来たのかわからぬ。あの質問は、きようの議題とは関係のない問題だと思う。ああいう形で議事が運営されては私は困る。それで少し苦言を呈しておきます。  それから岡野さんにお聞きしたいと思うのですが、最初に結論から申しますと、地方公務員法の逐條審議に入るのですが、しかし逐條審議に入らなくても、大体今までの総括的な質問結論は出ておると思うから、これを撤回なさる御意思があるかないか、最初にお聞きしておきたい。
  78. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 絶対に撤回する意思は持つておりません。
  79. 立花敏男

    ○立花委員 もちろんそうだろうと思う。今までのあなたのそういう態度が非常に間違つてつたということが、もう事実において証明されておる。実は地方税法の審議のときに、あの際もあなたはその席からそういうひとつも反省をなさらないような態度で、天下一品の税法なんだ、これをやれば地方財政は確立をし、地方住民の税金が安くなるのだというようなことを言われた。ところが地方財政委員会委員長が来られて、これでは地方財政は破綻する、税金はとれません、制限外課税をやらなければいけないし、法定外課税をやらなければいけない、そういうことを言つておるはずです。あなたがそういう態度をおとりになることが間違つてつたということが、地方税法の現実の姿に現われておる。あなたは絶対撤回する意思はないとおつしやいますが、私はこの際撤回していただきたいということを、最初に要望しておきます。私がこれを撤回していただきたいと申しますのは、いろいろな角度から今まで一般質問をやつて来たのでありまして、財政の問題、あるいは行政事務再配分の問題、あるいは給與の問題、あるいは国家公務員法との関係の問題、これを今までずつとやつて来たわけです。これは時間の引延ばしでもありません。だてや酔狂でやつたわけでもありません。その結論が総合されまして、いよいよきよう一般質問結論を出さなければならないときになつて来たが、各般の今までの総括質問の結果として、もうこれ以上は逐條審議に入らなくても大体わかつておる。だからこれは審議の必要がないということが、私どもの一般の考え方なんです。この点は大臣と考え方が違いますので、ひとつこれから詳しくその各項目にわたつての、一般質問結論を私の方から出しまして、それについて大臣がどうお考えなつておるか、ひとつ聞いておきたいと思います。  まず第一に財政の問題でございますが、地方財政が完全に破綻しておるということは、大体結論が出ておりますが、これは大臣はどう考えますか。
  80. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 破綻してしまつておるというようなことは私は存じておりません。
  81. 立花敏男

    ○立花委員 ところが私どもが受取つておりますこの地方財政委員会委員長野村秀雄さんの国会に対する意見書の結論といたしまして、こういうことが書いてある。「右に述べた地方財源所要額に対する措置が十分に行われぬ場合は、地方財政の円滑なる運営に重大なる支障を来すものと認める。」こう書いてあるのです。御承知のように地方財政委員会は、この前の前の国会で、これも地方財政委員会ができましたら、十分に地方財政の確立ができ、地方財政の円滑なる運営ができるという建前のもとに、そういう御説明のもとにつくられたものなのです。その責任のある権威のある委員会が、こういう重大な意見を付して、すでに私どもの手元に意見書が出て来ておる。これはもう事実なのです。この事実の上に立つて、なお岡野国務大臣は地方財政は破綻していないとおつしやるのかどうか。またさいぜん申し上げましたように、委員長自身がそこへ来られまして、もう制限課税も、法定外独立税も、あるいは寄附もぢやんぢやんやつているのだということを言つておるわけなのです。事業税ですら制限税率以上とつておるのだということを言つておるわけです。これで地方の財政が円滑に行つているというふうに、お考えなつておるとすると、これは明らかに大臣のお考え違いだし、そういうお考え方地方公務員法を、そういう不安定な基盤の上におつくりになるということは、明らかに間違いだと思う。だからこの点をもう少し真情を吐露して、どういうふうにお考えなつておるか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  82. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私の答弁はいつも真情を吐露して申し上げておるので、決してうそやいつわりを申しておるわけではございません。地方財政が破綻に瀕しておるとかなんとかいう御意見でございますが、破綻していないと私は認めております。
  83. 立花敏男

    ○立花委員 実は神戸事件が問題になつております。朝鮮人の問題が問題になつておりまして、朝鮮人があたかも暴動を起したとか、共産党がこれを使嗾しているとかいうふうに、新聞では宣伝されております。しかしながら神戸の税金の問題を申し上げますと、これは新聞でも神戸の朝鮮人の問題は反税闘争の一部だというふうに伝えられておりまして、税金の問題がやはり発端であるということは、周知の事実だと思います。それで神戸の税金の問題を申し上げるのですが、神戸では市民税の納入者は約十七、八万しかいないわけです。ところがこれに対して異議申請、減免申請を出しておる者が四万人ございます。遺憾ながら共産党がおせわして出しましたのは、千人に満たない、ほとんど自発的に十七、八万人のうちの四万人という市民が減免申請、異議申請を出しているわけなのです。それから第一期の神戸の市民税に対しまして納まりましたものは四割、納まらないものが六割ある、こういう基盤の上に朝鮮人事件が起つているわけなのです。いくら市会決定いたしました市民税にいたしましても、あるいは国会が民主的に決定したという地方税法でありましても、実際善良な市民が六割も納められない、自然発生的に二割以上の方が減免申請を出さなければいけない、こういう事態が実は神戸の税金の状態なのです。この上で朝鮮人事件が起つているわけなのです。従つてこういう税金の問題でトラブルが起きますのは、決して朝鮮人だけではないわけなのであります。善良な市民の六割以上が納められないような税は、いかに民主的な仮面をかぶりましようと、これはもう税金ではない強奪であるというふうに私ども考えております。これが実は神戸事件の真相なのですが、こういうむちやくちやな、住民がああいう形で何とかしなければ自分の生活も経営も守れないような、そういう收奪をしなければいけない立場に追込まれました地方財政というものは、これは明らかに破綻していると私ども考えます。地方財政は何のために存在するのか、地方財政は地方住民の生活を守るために存在するのだと思うのです。この地方財政が守るべき地方住民の生活を破綻に陥れておる。暴動を起さなければいけない、六割が拂えない、こういうような状態において、地方財政があなたの考えるように円滑に行つておるとは私ども考えない。ここまでひとつ深く掘り下げてお考え願いたいと思います。そうしないと問題の根本は解決しない。こういうあぶない、ややこしい財政の基盤の上に立つて地方公務員の政治活動を制限し、労働三法を剥奪するような公務員法ができますことは、地方公務員をまつたく奴隷的な状態に陥れることなのです。マッカーサー元帥の書簡にありますように、マッカーサー元帥の書簡は御承知のように、二つの部分から成つております。一つは公務員の組合活動を制限しろという部分と、もう一つは公務員の経済的な生活、あるいはその他の利益を保護しろという部分があるわけなのです。ところが御承知のように公務員の給與は一般給與よりずつと低いのです。しかも現在のこの低い給與は、人事院総裁がはつきり申されましたように、二年半前三十箇月前にきめられた給與なのです。こういう給與で黙つてがまんして来ておる地方公務員に対しまして、今のようなこの地方公務員法を施行し、かつ一方この破綻している、円滑には行つていない地方財政をそのままにしておいて、こういう地方公務員法を通すということは、私ども納得できない。だから大臣はその点で地方財政をどういうふうにお考えなつておるのか。このままで行つて地方公務員の給與が、完全に支給できるとお考えなつておるのか。それがはつきりしない以上は、私どもはこの地方公務員法の詳細にわたる審議には入れない。私どもは明らかに地方財政は破綻している。こういう事態の上に、一方的に取締る地方公務員法を審議することはむだだと思う。そういう地方財政の上に立つて、そういうことをほうつておきながら、地方公務員法だけをやろうとすること自体が、実は地方公務員法の反動性を示しておる。内容は見なくてもわかつている。これからますます苦しくなる地方公務員に文句を言わないで、運動をやらせないようにするための地方公務員法であるということは明らかなのだ。だからこの点はひとつ愼重にもう一度御答弁願いたいと思います。
  84. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほどから地方財政が破綻しているということで、るる神戸事件を御説明に相なつたのでございますが、一万数百ある地方自治体の中で、一事件が起きたから地方の財政が破綻に瀕しているというような印象に受取れましたが、それは大きな間違いだと思います。なるほどただいまの社会情勢から申しましては、国民は経済的に非常に困つております。でございますから、税金を納めるについて苦しいことは重々お察ししておる次第でございます。しかしながらただ神戸事件が起きたから、地方財政が破綻に瀕しておるのではないか、その破綻に瀕している地方財政をうつちやらかしておいて、公務員法を出すなんてけしからぬじやないか、こういう御意見には私は全面的に御賛成申し上げるわけには参りません。
  85. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花君に申し上げますが、質問はもう少し簡潔に願います。
  86. 立花敏男

    ○立花委員 もう少しすなおにひとつ私の言うことを聞いてもらいたいと思う。と申しますのは、私は神戸事件だけを取上げているのではないので、神戸事件一つの例に言つておるわけなのです。決して神戸の市民税だけが、日本中で集まりが悪いわけではないのです。住民税の全国的な成績の結果はわかつておるわけなのです。あるいは地方税全体の現在の徴收率は、もうすでにわかつているわけなのです。全体として二割、三割近い程度しかとつていないわけなのです。これはおわかりだと思います。このことから推しまして、私がさいぜん申し上げました神戸の市民税が六割納まつていない、減免申請が四割出ているということは、決して神戸だけの特殊事情ではありません。これは全国的な現象なのです。だから私が神戸事件を取上げましたのは、神戸事件一つの象徴的な現われである、皆さんもよく御存じの例を引いて言つたにすぎないのです。全国的に地方財政はそういう苦しい立場に陥つておる。野村委員長が御説明されましたのも、あるいはこの意見書をお出しになりましたのも、どつかある特定の地方財政が苦しいからというので、意見書をお出しになつているのではない。ここにお書きになつているように、あの特定の地方財政の上に重大な支障を来すのだというのは、どつかの特定な町、市、県の運営に支障を来すといつておるのではない、野村委員長が全般的に取上げている問題、つまり現在の最も顕著な例をあげて御説明しただけなのです。そういうあいまいな、委員会で何か答弁しなければならないというような答弁ではなしに、ほんとうに地方財政の責任者、地方行政の責任者、また内閣の一閣僚として、心の底から地方財政をお考えになる立場から御答弁願いたいと思います。
  87. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方税が最近実施されまして——いろいろの事実もございましよう。なるほど徴收に困難を感じていることも私は認めております。しかしながら何十年とやつておるところの国税の徴收もやはり十分なる徴收ができないような今日の世の中でございます。でございますから、地方税の徴收が十分に行つていないということは当然のことでございます。われわれといたしましては、これをますますとつて行くようにしたい、こう考えて努力しておる次第であります。そうであればこそ地方公務員の地位を確保し、同時に安心して仕事ができるようにしてやりたいというのが、この地方公務員法を出したゆえんでございます。
  88. 立花敏男

    ○立花委員 きのうもあまりあげ足をとるような質問はするなと言われたので、その点は注意しておるのですが、この公務員法が出まして、地方公務員が安心できるというようにお考えになるのはおかしいのです。私どもは安心できないと考えおるから、地方財政の問題をどうお考えなつておるか聞きたいのです。地方公務員が十分な給與をもらえるような地方財政ではない、こういう具体的な現実に直面しているわけです。この間もこの委員会へ神奈川県の知事と、それから茨城県の知事が、全国知事会議の代表としてお見えになりまして、一月から事業は全部できない、従つて職員の給與も抑えない、こういうことを言われたのです。このことは私も両県の知事からこの場で承りました。そういう事態に立ち至つておると思うのであります。その際に地方公務員法をつくりまして、財政の問題をほつたらかしにしておいて、安心して仕事ができるようにするのだということは、これはあまり片手落ちな考え方だと思うのです。きのうも全国市長会議をやつております。きようは全国知事会議をやつております。その人たちの考え方がどういう考え方かということは、あなたがお知りにならないことはないと思います。あなたの言つておられるように、地方財政が円滑に行つておるという意思表示を市長会議がやつておりますか。知事会議がやつておりますか。あまり独断的なお考え方行政をやられましては、地方は困ると思う。また公務員も困ると思います。どうしてもあなたは現在の地方税は円滑である。地方税は完全に行つている。地方公務員は安心しておつても、給與がもらえないようなことはない。生活に苦しむことはないと言われるのでしたら、ひとつ具体的な例を示してもらいたい、端的に申しましても、年末の手当の支給の目標もないわけです。ベース・アツプの目標もないわけです。地方公務員は何を目当てにして安心できるのか、具体的にお示し願いたいと思います。
  89. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。後ほど財政委員長がお見えになるそうでありますから、地方財政のことについてはひとつ專門的の立場にいられるところの地方財政委員長から、お聞きを願いたいと思います。私は地方の財政はやつと基礎ができたばかりであつて、まだ過渡的の時代であるから、いろいろお示しのように地方財政が困つておることだけは認めます。しかしこれがまつたく破綻してしまつて何もできないのだという情勢だとは私は見ておりません。これは意見の相違でございますから、これ以上議論を申しましても、おそらく御納得の行く御答弁はできないと思いますから、御了承願いたいと思います。
  90. 立花敏男

    ○立花委員 これ以上大臣を困らすような質問をするのが能じやありませんから打切ります。あとで地方財政委員長が来られましたとき、この問題を意見書の審議と同時にひとつやつていただきたい。  ついででございますので、地方財政の破綻の結果起りました二、三の実例だけを言つておきますが、私のおります神戸では、二十五年度のあとの予算を四分の一天引きしてしまいました。そうして事業も何も全部やらないということを、この間の市会決定いたしました。それからこれは予算の面だけで、公務員には直接関係はありませんが、私ちよつとメモを忘れましたが、ある町では予算の困窮から、二割五分の人員整理を発表しております。こういうふうに二割ないし二割五分あるいは三割近い予算の削減をやらなければやつていけないということが、具体的な現象として現われかけておるのです。この問題の事実だけを大臣お含みおき願いたい。それから財政の問題は意見の相違になるから、これくらいで終りまして、地方行政調査委員会議から神戸さんに出てもらいまして、行政事務の再配分、地方行政の今後のあり方について意見を承つたのでありますが、これも私ども納得の行かない方向に行つておる、こういう結論に達せざるを得ないのです。しかも神戸さんのお言葉によりますと、十二月十日ごろに国会に勧告案をお出しになるように、大体確定したということでございましたが、遺憾ながらそれの説明はほとんどなかつたのです。門司委員からも、要項でも出してくれないかということを言われましたが、要項も出せないということで、何らの説明もない、御承知のように十二月十日というと、あと十日ほどしかないわけです。しかもその内容すらわれわれには示してもらえない、しかもあらましを聞きましたところ、非常に重大な変革が地方行政の上に加えられようとしております。しかも聞くところによりますと、来年の地方選挙以前に行おうという考えがあるようです。もちろん来国会に提出されるのでございますから、おそらく来国会中に決定されるようになるのでありましようが、こういう重大な変革が最近のうちに行われようとしておる。しかも地方行政の変革のあり方が、私ども納得が行かないのです。神戸さんのお考えをただしましたところ、市町村に重点を置いて、府県を軽く見て行く行き方、それから市町村。單位を、現在よりは人口の上で非常に高めまして、そして大幅な配合をやつて行くのだというような考え方、あるいは地方行政事務の問題につきましても、教育行政の問題あるいは職業安定所の問題その他で、民生に重大な関係のある行政事務が、非常に画期的に総合配分されようとしているわけなんです。このことは私ども幸い神戸委員長からお祈願つたのですが、一般の国民は何も知らない。しかも三万以上に差します地方自治体もおそらくこの問題は知らないと思う。こういうことが早急にまつたく寝耳に水のような形で行われようとしておる。このことは地方公務員にとりましても、自分の職場の問題、あるいは定員の問題、あるいは仕事の問題で重大な問題なんです。この問題がこういう形で行われようとしておる。しかもその内容がわれわれには何も示されていない。こうなりますと、私ども地方公務員法の問題だけを取上げることはできないのです。私が最初に指摘いたしましたように、あなたの地方公務員法の提案理由のほとんどただ一つだと言つてもいい理由は、最近行われるこの勧告の問題なんです。地方行政の再配分の問題なんです。それが今言つたような形で、われわれには要綱すら示されない。しかもそれが急速の間にでつち上げられようとしておる。こういう、状態のもとにおいて、私ども地方公務員法だけを審議することはできない。悪く解釈いたしますと——これがほんとうの解釈だろうと思いますが、いかなる職場の変更があつても、定員の増減があつても、いかなる仕事の転換があつても、お前たちは文句を言わずにだまつておれ、そういうためにこの地方公務員法がつくられるといつても過言ではないと思う。従つてどもは、この行政事務の再配分がほんとうに国民の納得の行くように、地方自治体の納得の行くようになるまでは、地方公務員法は審議すべきではないと考えております。そういうことをはつきりしないでおいて、地方公務員法をお出しになる。そういうことがはつきりしないままにお出しになる地方公務員法は、さつき言いましたように、地方、務員の意見を無視するための法律であるというふうに、断定せざるを得ないのです。
  91. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花君、討論ではないのですから質疑を願います。
  92. 立花敏男

    ○立花委員 だからその点を、地方行政の再配分の問題を、大臣はどういうふうにお考えなつておるか、それと地方公務員法との関係がどういうものだとお考えなつておるかお聞きしたい。
  93. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 調査委員会議のことにつきましては、すでに御答弁済みでございますから、重ねて申し上げる必要はないと思います。
  94. 立花敏男

    ○立花委員 木で鼻をくくつたといいますか、これは質問しても何にもならないようなことになるわけですが、しかし地方行政事務の再配分は、まつたく重大な問題でありまして、日本の町も村も——あなたのお生れになつたところはどこか知りませんが、とにかく私どもはそれぞれの町や村で生れております。非常に長い伝統と、しきたりをもつて来てでき上つております町や村でございまして、單に人口の問題とか、あるいは地方財政を緊縮する問題とか、こういう問題だけから配置統合されてはたいへんだと思う。私ども地方行政調査委員会議が、この案を国民に十分納得の行くように、なぜお示しにならないのか、なぜ急にそういうふうにやらなければいけないのかというところに、重大な疑義を感じております。あの人たちはアメリカへ行つて何を見て来たのか、アメリカで何を学んで来たのか私どもは知りませんが、アメリカへ行きます直前に、神戸委員長は道州制の問題云々を発表されておるのです。しかもアメリカから帰つて来られて、倉皇として、この意見書、勧告書をお出しになり、早急の間にやられようとすることに、私どもは重大なる疑問を持たざるを得ないのですが、こういうことを大臣も深くお考えの上、私どもといたしましては、そういうことが明らかにならない以上は、地方公務員法の審議はむだだという意見を持つておるということを、ひとつお含みおき願いたい。  それから給與の問題についてお尋ねいたしたいのです。給與の問題で、まず年末の問題から行きたいと思いますが、大臣は、一般国家公務員には年末手当が半月分出ますし、あるいはベース・アップの予算も組まれまして、大体出る見通しがあるようであります。もちろん一般国家公務員にいたしましても、これは非常に不満だ。年末手当につきましても、二箇月あるいは三箇月の要求が出ております。これは私は当然だと思うが、一応半月分あるいは一斉のベース・アップが、不満ではあるが予算化されております。しかし地方公務員の方は、これがないわけなんです。地方公務員の中でも教職員関係だけは多少の予算的措置が組まれておるということは、池田大蔵大臣もそこで証言されましたから、そうだろうと思いますが、地方公務員に対しましては、ほとんど何もないわけなんです。きのう大石委員から発言がありましたように、われわれの歳費は上ります。私どもも年末手当は半月分もらえるそうです。ところが地方公務員には何もない。そういう状態のもとに置きながら、そういう見通しのもとに置きながら、地方公務員法を審議することが、はたして地方公務員の勤労意欲を増すことになるとお考えなつているのかどうか。なぜそういう状態のもとで地方公務員法だけを審議しなければいけないのか。大臣は、以上いました地方公務員の年末手当の問題あるいはベース・アツプの問題について、どういうお見通しをお持ちになるかお聞きしたい。
  95. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 地方財政も非常に苦しいことはよく存じておりますけれども、国家公務員の方でベース・アツプをし、同時に半箇月でも年末手当を出すということになれば、地方でも出すようにするだろうと思つております。
  96. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花敏男君、大臣ちよつと所用があるのでお急ぎですから、簡潔にやつてください。
  97. 立花敏男

    ○立花委員 だから私の質問はあとにして、意見書を先にやつたらどうかと言つたのです。
  98. 前尾繁三郎

    前尾委員長 しかし、もつと簡潔に質問ができるでしよう。
  99. 立花敏男

    ○立花委員 なぜそんなに急ぐのですか。
  100. 前尾繁三郎

    前尾委員長 大臣がちよつと所用があるから……。
  101. 立花敏男

    ○立花委員 では帰つてもらつて、あしたなり書からでも続けましよう。急ぐ必要はない。
  102. 前尾繁三郎

    前尾委員長 とにかく簡潔にやつてください。
  103. 立花敏男

    ○立花委員 簡潔にといつて、これ以上簡潔にはやれない、重大な問題だから。腹が減つたからやめましよう。
  104. 前尾繁三郎

    前尾委員長 続けてやつて済ましてください。
  105. 立花敏男

    ○立花委員 ぼくはあまりむだなことを言つていないつもりなんですがね。どうしますか。
  106. 前尾繁三郎

    前尾委員長 続行してください。
  107. 立花敏男

    ○立花委員 給與の問題でも、大臣は地方が出すだろうと考えているとおつしやられましたが、財源はないわけなんです。どういうふうに地方が出せるか、その見通しをどういうふうにお持ちになつているのか、それをお聞かせ願いたいのです。
  108. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 でございますから、後刻地方財政委員長が来て、その点に対しては御説明申し上げますと申し上げた。私自身としてはとにかく地方では出せると、こう考えております。
  109. 立花敏男

    ○立花委員 だから、大臣としては出せるとただ考えているだけなんで、何も具体的な資料もお持ちにならない、具体的な実情も把握されていないのです。それが実際の、現存の地方公務員の給與の問題なんです。何もない、ただもう出せるだろうというような当てずつぽうなんです。そういう状態のもとで地方公務員法をお出しになるということはおかしいのです。出せないものを、出せるだろうとあなたがお考えなつているだけで、これでは公務員は年の瀬は越せないのです。だからその点がはつきりするまでは地方公務員法の審議はすべきじやない。給與ももらえない。年も越せない、ベース・アツプもできないとい、状態のもとに地方公務員を置いておい、そうして地方公務員法をつくるということは、これは反動的な立法だといわざるを得ない。鈴木次長の大矢委員に対するお答えでは、たといそれが給與の問題で協約をやつても、地方の條例の関係でそれは無効だということが、新聞に発表されておりましたが、給與の問題で許されました話合い、あるいはそれを文書にしましたものでも、何かちよつとしたあれにひつかかりますれば、それは無効だというような状態です。それが地方公務員法の給與の扱い方なんです。給與の問題について何らの見通しがない場合に、しかも給與の問題についてそういう規定をしておる地方公務員法を私どもは審議することはできない。これは地方公務員の生活の問題でありますので、この点は強く反対をしておきます。  それからもう一つは、この間から大矢委員あるいは門司委員が取上げて、非常に問題にされておりますが、現業員の問題です。この問題についても何ら結論は出ていないのです。私どもは、この問題は当然この地方公務員法と並行的に審議すべき問題であると考えております。何となれば、地方公務員の過半数は実は現業職員なんです。水道、ガス、電気、交通あるいは清掃、道路、そういうものを全部合せますと、おそらく地方公務員の七割近くはこの現場従業員なんです。この現場従業員の立法があとにされまして、残りの二割ないし三割にしかすぎない一般地方公務員の立法だけをお急ぎになる。しかもあとで出ます地方の現場職員に対する立法は、この地方公務員法がやはり一応の基準になりましてきめられることは明らかである。私はきのう保利労働大臣に、現場労働者あるいは現場職員の立法については、地方公務員法から行くのじやなしに、あくまでも労働組合法を適用するという建前から行つてもらいたいということをお願いしておきましたが、私どもの観察するところによりますと、おそらく残りの地方公務員も、地方公務員であるとの建前から、地方公務員法に準じて取締り的な法律がつくられるであろうということは明らかなんです。しかもこの四種の現業関係の立法にいたしましても、あるいは四種以外の十数種の現業の立法にいたしましても、その内容もその時期も明示されておらない。内容も時期もわからない。まつたく雲をつかむような話なんです。さいぜん言いましたように、地方公務員の三判に満たない部分の立法しかやらないで、あとの七割近くのものはほつたらかしておいて、いつどんなものができるかわからない状態において、私どもはこの地方公務員法だけをやることはできない。岡野国務大臣は、この現業員に対する立法についての内容あるいは時期について、明確なる御答弁がしてもらえるかどうか、ひとつお願いいたします。
  110. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。地方の吏員は今約百三十一万くらいに上つています。それからあなたのお説による公営企業体の職員並びに、いわゆる現業と称するもの、これは十三万であります。(「違う、違う」と呼ぶ者あり)もし違いましたら訂正いたしますけれども、私はそう心得ております。
  111. 立花敏男

    ○立花委員 五大都市だけでも十何万あるじやないですか。
  112. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 でございますから、あとで申し上げると言つております。間違つておりましたら取消します。そういうふうに私の申し上げることに対して一々反駁された日には、答弁余地はありません。でございますから、私は百三十一万の地方公務員のうちで、公営企業並びに現業に関する者は十二、三万、こう見ておるのでございます。これが私のただいまの知識でございますので、もし間違つておりましたら取消して、詳しい数字を提出します。  第一段はそれで終りまして、第二段といたしまして現業の問題でございますが、これは御承知の通り、同じ種類のものが国家公務員法では、普通に取扱われておるのでございます。そして地方公務員法は国家公務員法に準じてつくつたのでございますから、国家公務員法とあわせて考えたい、こういう考えでおります。そういたしますれば、国家公務員法とわれわれの方と互いに協議して、一定の方針をつくらなければならぬ。それにはまだ着手しておりませんから、内容を申し上げるわけには行かない、またそういう交渉がただ單に政府部内ばかりでなく、いろいろの方面との交渉を、しなければならぬから、いつになるかという時期は申し上げられぬと、こう申し上げたのです。
  113. 立花敏男

    ○立花委員 あなたの言われたことはわかつているから言つているのです。あなたは内容も、時期も言えないと言うから、それではそれらのことが判明するまで、地方公務員法の審議を待とうじやないかということを言つているわけなんです。あなたを言われたことはわかつているから言つているのです。そういう状態だからやめようじやないかと言うのに、あなたは撤回する意思はないということを言つている。それで、私どもはこの問題はあくまでも全体の地方公務員の問題として審議すべき問題である、一部分だけを切り離してやつて、あとはいつやるか、どうなるかわからぬということではいけないということを言つているわけなんです。
  114. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。政府といたしましては、一旦国会に提出いたしました以上は、必ずこれを御審議願いたいという希望を持つて出しておるのでございます。ここで御審議をなさるか、なさらぬかということは、国会決定することであつて、政府の決定することではございません。
  115. 立花敏男

    ○立花委員 審議しないというが、審議しているのです。これは審議をやつているわけです。これはあなたの方でひとつおやめになつたらどうかという審議をやつているのです。
  116. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 もう一度申し上げます。政府といたしましては、これをぜひ審議にかけていただきたいとして国会へ提出しておるものでございます。同時に、政府として撤回するかどうかとおつしやるから、撤回いたしませんと申し上げた。でございますから、国会で御審議を願いたい、しかし御審議をする、せぬということは国会の御意思であつて、政府の意思ではございませんから、国会でおきめになつてくださいませ。
  117. 立花敏男

    ○立花委員 その点だけは非常にわかつているようです。  それから国家公務員法との関係に移りたいと思いますが、問題は、さいぜん門司君あたりからも出ましたように、国家公務員法の改悪が、マ書簡によつてポツダム政令が出たあとでつくられました情勢と今とでは非常に違つておる。しかも現在のところでは、ああいう緊急措置をとらなければならない状態はどこにも見当らない。地方の公務員はまつたくまじめに、まつたく忠実にその仕事をやつております。この状態のもとで、なぜ地方公務員法をやらなければいけないのか、これは大きな問題なんです。しかも政府がこの地方公務員法をおつくりになる重大な理由は、国家公務員との均衡を失せないように、国家公務員法に準じてやるのだ、こういうことを言つておられますが、この国家公務員法は、今までの経過におきまして、完全に失敗であつたということが、これはまた証明されておるのです。証明済みになつております。国家公務員法に準じて、なぜこんな時代に合わないものをおつくりになるのか、私にはそれがわからない。岡野国務大臣は国家公務員法についてどういうお考えをお持ちになつておるか。
  118. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。日本は法治国でございます。そうして国会の審議を経て法律なつておるものが現存しておる以上は、これはりつぱ法律である。われわれとして遵奉しなければならぬ国家の法律であるということを、私は前提といたしております。もしあなたのお説ならば、国家公務員法というものが何も役に立たない、失敗である。失敗であつたら、国家の最高機関であるところの国会が、これをお取消しなつたらいかがでございましよう。
  119. 立花敏男

    ○立花委員 国会々々とおつしやいましても、国会は共産党もありますし、自由党もありますし、その他たくさんおりますから、簡單には行かない。私どもは国家公務員法が出されたときから反対だといつておる。あなたが取消せとおつしやるならば、私どもいつでも取消します。あなたはそれなら自由党にひとつ賛成してもらつたらどうか。
  120. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 御答弁申し上げます。国会に民意を代表した全国民の代表が集まつて、これに国政をゆだねることが民主主義の本旨でございます。でございますから一部の議員だとか一部の人が反対であつても、大多数の国会議員がこれを支持しておる以上は、やはりこれが民主的の政治であると私は考えます。
  121. 立花敏男

    ○立花委員 もうこれはあげ足取りになるかもしれませんが、だから私はさつき税金の例でも言つたわけです。あなたが天下の良法だ、これが天下一品の税法だといつてお出しになつ地方税法が、末端の現実なつて参りますと、税金もとれない、六割が納められない、四万人が異議申請を出すという状態なつておる。これが幾ら地方税法が国会で御決定されたから、あるいは地方税を徴收する市條例が市会を通過したから、これはりつぱなものだ、国民の支持を受けておるといつても、それはだめです。実際の面において否定されつつある。これをお考えにならぬで形式だけで法律が存在しておるから、これは日本の法律だ、そんなことを言つたつて問題にならない。だから私が言つております国家公務員法が悪法だということも、この年末に至つてわかつておるじやありませんか。事実が証明しておるのです。国家公務員法が規定しておりますところの国家公務員の給與の改善の問題だけをとりましても、今に至るまで国家公務員法に規定されておる当然のやるべき措置が何ら行われていないわけなんです。ただひたすらに国家公務員の取締りの面だけがやられておるわけです。これをこの間淺井人事院総裁にも申しましたが、二回にわたる人事院の勧告が完全に無視されておるわけです。この間に、国家公務員は、人事院の勧告案と、六三べース——これも政府の決定なんですが、これとの差額を積り積りましただけでも、二万数千円の赤字がこの年末にあるわけです。これが解決されないということ自体が、国家公務員法が国家公務員にとつては憲法であるということになるわけなんです。二回にわたる人事院の勧告が完全に無視されておる。あるいは公労法によりますところの国鉄の裁定が、これも完全に無視されておる。こういう状態のもとにおいて、国家公務員法は悪法であるということを断言してもいいと思う。しかもこの出されました地方公務員法は、国家公務員法に準じてつくる、国家公務員との均衡上、こういうものをつくるのだということを、あなたは言われておるわけなんです。單なる法律上の均衡とか、国家公務員と頭をそろえるためとかいう簡單なことで、地方公務員の生活が無視されてはたまらない。生活権が剥奪されてはたまらない。だから国家公務員法が明らかにもう現在破綻しておるという事実を御認識になつた上で、この地方公務員法はもう存在価値がない。あなたの言われる唯一の理由である、国家公務員法に準じてつくるということは、これは明らかに間違つておるということをお認めになるかどうか。
  122. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は立花さんの御議論にはどうも承服できない。法治国であつて、国家公務員法が現存しておるのです。そしてまた地方税法も現存しておるのです。その現存しておるものが、これはあなた方の立場から見れば御不満もありましようし、またいろいろ欠陥のあるところを御指摘になるでしよう。一体国家の法律をつくるのはだれがつくるのです、国会でしよう。国会が国家の最高機関でございます。でございますから、ほんとうにそういうことが悪いというならば、国会でお直しになつたらいかがですか。税法もお直しになる権限を持つておる、公務員法もお直しになる権限を持つておる。ですからお直しになつた上でそういうことをおつしやつていただきたい。私は現存の国家公務員法というものがいい法律であるから現存しておるのだと思う。だからそれに従つてわれわれは地方公務員法もつくるのだ、こういう議論です。もう議論です。ともかく権限といたしましては私の申し上げた通りだと思います。
  123. 野村專太郎

    野村委員 議事進行に関して……。ただいま提案になつておるのは、地方公務員法についての質疑でございました。むろんこれに対する関連の質疑は当然考えるのでありまするが、今拜聽いたしておりますると、立花議員は国家公務員法について主として質疑が行われておるようであります。この点に対する政府側との質疑応答は、見解の相違に立つ点が多いのですから、委員長におかれましても、関連をする点においてはやむを得ないと思いますが、なるべく重複しないように御留意を願いたい。午前においては大体これにて休憩を願いたいと思います。
  124. 立花敏男

    ○立花委員 野村さんの御意見は、非常に常識的な御意見だと思いますので、その方向へ進めたいと思います。しかしこのごろ八百屋さんが箱入りのりんごを買いますが、そのりんごの箱をあけて見まして、三つ四つ切つてみて、中が腐つておれば、あとはやはり切つて見ないでも腐つたものとして売るわけです。だから地方公務員法を審議いたす場合も、地方財政あるいは地方行政あるいは国家公務員法の関係、こういうものを周囲から固めて行つて、一般的な結論として、この地方公務員法もやはりだめだ、もう逐條審議に行く必要はないようなものだという結論も出せるわけなんです。これは何も皆さんに強制しておるわけではありません。私どもといたしましては、今まで数日間にわたつて行いました以上の一般的な質問によりまして、そういう結論が出たから、これはもうここらあたりでやめた方がりこうじやないかということを言つておるわけです。
  125. 大矢省三

    ○大矢委員 大臣が急がれるようでありますから、私は特に簡潔にお尋ねを申し上げたいと思う。大臣の説明書の中には、これは保護法である、その大きな理由は、いろいろ今までに、ごく公平にやる、人事委員会並びに公平委員会をつくつて、任免、懲戒あるいはその昇給その他についても協議できるということで、特に最後に地方公務員の福利を増進し、利益の保護をはかり、職員が安んじてその職務に精励することができる。こういうことがありまして、それに一審重要なことは、私が申すまでもなく、人事委員会並びに公平委員会の問題であります。私はせんだつてお尋ね申し上げましたところ、人事委員会の権限というものは、国家公務員法の人事院とかわりはない。これによつて保護される、ところがこの国家公務員法の人事院と比べてこの権限において、これは非常に軽いがどういうわけか、保護されないじやないかと言つたときに、いや、そうではないと言つておりましたが、私は具体的に例を申し上げます。この法案の骨子といいますか、精神といいますか、これが生かされなければならぬのでありまして、その人事院の権限については、御承知の通り国家公務員法の人事院は、まず政府に向つて人事院の予算の請求権を持つている。さらにこれをもし政府が修正しようとした場合には、今度はそれと並行して、同じ修正したものと人事院から出たものと二つを国会に出せといつて、いわゆる人事院の財政権というものを非常に強く認めておる。ところがこれには一つもない。従つて人事委員が、人事委員会の費用あるいは調査その他について、地方自治体議会に対して、長に対して請求できるような権限を持つていない。それからいま一つは、人事委員の常務であります。これには常務であつてもよろしい、非常務であつてもよろしい、特に公平委員会は非常務ということをわざわざ規定しておる、こういう重大な人事の問題をあずかる場合に、先ほど同僚からも述べられましたように、わずかに三人できめる。それが非常務であつてもかまわぬ、こういうようなことでは、私は大都市あるいは府県においては、とうてい人事の公正、ほんとうの保護法であるべき、いわゆる保護ができないと思う。一体人事委員会の構成、権限——ことに私が非常に驚くべきことは、一万数百に余る自治体に向つて、一切を画一的にこれを適用しようとすることである。これが私はかつての中央集権的な、われわれが排撃した内務省の再現だと思う。私は岡野さんにその点を特に尋ねたいのです。あなたが入られて後に、今度の地方税の改正のときに、いわゆる基準を示しているのであつて、率のごときは、その地方地方の、情勢に応じて変更していいのだというので、われわれは地方自治体の自治権を非常に尊重するという建前から、そういうことも許されるだろうと思つておりましたが、案にたがわずそうではない。もしまたその率までとらないと、平衡交付金をやらないという、これは強迫だということを言いますが、そういうようなことでもらえない。従つてどうしてもそこまでとらなければならない。その財政が地方で非常に困難だ、これはむりだと思つてつても、そこまでとらないと、平衡交付金をくれないから、勢いそこまでとるということになる。今度の説明の中にも、あるいは答弁の中にも、地方自治体の自治権というものを強く認めておる、こう説明しながら、実際はそうではないのです。画一的にせられておる。そういうふうな一番大事な人事委員の権限あるいは非常務、しかも画一的にこれを認めているということことが、私は中央集権的のはなはだしいものであると考えるので、そのアウト・ラインといいますか、大綱の大臣の考え方が、私のような考えとどんな相違があるか。また人事委員の構成につき権限についても、相当に私は相違があると思うが、その点はどういうふうにお考えかお聞きしたい。特に私はこれは大臣に、最も画一的に行うということと、それから権限の問題を第一にお聞きしたい。
  126. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私は大綱を見ているだけでございますから、その詳しい御納得の行く説明は、政府委員をもつて御説明申し上げます。
  127. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 人事委員会自身が必要といたしまする予算につきまして、特別に国の人事院について認められておりますと同じような、特別な地位、権限を與えたらどうかというような御趣旨の点があるようでございますが、国の人事院の場合につきまして、こういう規定がありますることは、私ども承知しておるわけでございますが、地方の人事委員会につきまして、すべて一律にこの種の権限を認めますことが、地方自治の自主性という点から申して必要であるかどうか、そこまで本来的な権限でないものを、書き加えて行く必要があるかどうかという点について、疑問を持ちまして、私どもといたしまして、この点は特に法案の中には規定をいたさないことにいたしたのであります。現在教育委員会につきまして、ややこの種の規定がございますが、これと予算編成当局者との間におきまするいろいろな問題は、ちようど人事院と政府との間におきまして、過去の経緯に徴して若干の問題がございますと同じように、いろいろ問題があるのでございまして、やはり予算の編成あるいは財政との調整という点から参りますと、この種の規定が必ずしも適切に運用せられないというような事例もあつたように考えられますので、むしろ規定の面からはこれを落して、実際の地方の運用にまかした方が、かえつて良好な結果を收めるであろう、かように考えたのであります。  それから人事委員会の委員を非常勤にすることでは、目的を達しないではないかというお尋ねでございますが、これはやはり地方に常勤にするか、非常勤にするかの選択の余地を與えたわけでございまして、常勤に一律にいたしますことが、普通の市町村等におきまして、あるいは都道府県の場合におきましても、比較的職員の数の少いようなところにおきましては、必ずしも必要がない場合もありはしないかというふうに考えまして、選択の余地を残した次第であります。しかしながら御指摘のような大都市、あるいは職員の数の多くを擁しておりますような都道府県におきましては、実際問題として、常勤になる場合が多いと思いますが、規定の上におきましては、選択の余地を残し、地方の自主性を尊重いたしたのであります。
  128. 大矢省三

    ○大矢委員 今答弁を聞きましても、私はどうもこれが保護法のほんとうの本質だとは考えられないのでございます。その理由はこの地方公務員法の保護あるいはまたねらいとするところの一番かんじんな人事委員、まあわれわれ国民から申しますれば裁判官、このだれにも捉われない、しかも公平な立場において人事一切をやろう、こういうのでありますから、非常に公平な公平委員会というものは文字通り公平なしかも財政的にも独立した機関でなければならぬ。そういうところの長に任命され、しかも非常務である。こういうことで地方人事が、ほんとうに公平な、裁判官のような立場なつてやられると思うことが、私はすでに間違いだと思う。従つて私は、この権限はもつと強くあつて、初めて保護法の目的が達するのではないかと思いますが、それは立案者の考えと相違がありますから、それは別として、次に一体自治庁はものを立案するに当つてだんだん悪くして行く。あなたたちがこの草案をごらんになつたら、国家公務員法の場合の政治活動の制限というものは、ごくわずかな大綱をきめて、あとは人事院規則にまかしておる。ところがこれには非常に数倍もこまかくしておる。こんなにこまかく刻んで、そしてあとは條例にまかすといつて一体何を條例にまかすのですか。こういうふうにいわゆる活動の範囲を非常にこまかくしようということは、これは官吏の考え方であるし、いわゆる官僚といいますか、今までもその感じが非常に強くなつておる。私はこの点は民間から出られた、非常に世情に明るい岡野国務大臣のもとで、こういうものをつくられて、ここまで縛るということ、しかも画一的に縛るということは、私はどうも大臣のために惜しむ。実際私はまじめにそう考えておる。国家公務員のあの当時の事情よりか、非常に自省して来てよくなつておるこの地方公務員に対して、もつとこまかくこまかくと、こんなにいつて縛りつけるというこの考え方が、私は内務省の再現たというのです。それから一万に余る地方自治体の公務員に対して、画一的にここまで縛らなければならぬ必要がどこにあるか。従つて地方自治体の自主権を尊重する尊重すると言うけれども、この事実によつて尊重してはおらぬです。この点が私ども一体政治活動をなぜこんなにこまかく、前の国家公務員よりかさらにこまかくし、さらに事態がそれよりか悪くあつたならば、これは弊害があるから、こうした力が地方公共団体のためにも、住民のためにもけつこうだと思うのだけれども、だんだんよくなつて行くものを、なぜ一体こんなにこまかく縛りつけなければならぬか。これが私は官僚的であり、画一的にものをやろうとする中央集権的な自治の破壊であるし、さらに日本民主化の大きな逆行であるということを、私はこの機会に強く言つて、いやそれでいいのだというならば、もつと根拠がありそうなものでありますから、私はそれをお聞きしたい。
  129. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私のためにたいへんごひいきの言葉をいただきまして、ありがとうございます。ただしかし国家公務員法ではごく簡單にしてありますけれども、人事院規則では実にわれわれが読んでもわからないような文句か使つてあるほど、詳しくいろいろな條項があげてあります。しかしやはり人事院規則というものは法に委任されてつくられたものでありますから、人民の権利を縛るという点においては何ら差がないわけであります。でございますから、国家公務員法全体といたしましては非常にむずかしい、また非常に広汎な制限をしておるように存じます。けれども地方公務員といたしましてはそれを緩和いたしまして、人事院規則にきめられているような縛り方はしておらぬはずであります。でございますから、同じく法律でやりますものならば、人事院規則のようなことにしないで、やはり一つ法律にまとめておいた方がよくはないかという考え方から、この中に入れておる次第でございます。
  130. 大矢省三

    ○大矢委員 もう一つそれでは具体的に申します。これは鈴木さんの方がかえつていいかもしれませんが、かつて人事院で、今度除外されたといいますか、四つの企業に対するいわゆる企業法と申すべきものを立案されて、すでに私どもの方にまわつてつて、それを見たのです。もちろんそれは相当前にできたもので、地方公企業職員法案という自治庁でつくられた法案ですが、これの内容を見ますと、非常に厳重ないわゆる政治連動禁止の規定が織込まれておる。それは十三條でありますが、その十三條において地方公共のための私企業の電気、ガス等に対してこまかくこれを禁止しておる。御承知のように公共企業体の運輸あるいは国鉄、それから專売公社は政治運動の禁止はないのです。これだけに政治活動の禁止をやろうと自治庁としては考えておる。時を同じくして、ちようど労働省でこれに対して地方公営事業労働関係等に関する法律案の要綱が出ているが、それには何らこれを禁止してない。政治活動の政の字も出ていない。一体なぜこれほど地方自治体関係している労働者を憎むのか。私は憎むのだと言つても決して過言ではないと思う。ことごとにそうしていじめつける。先ほど鈴木さんが実は特別現業員といいますか、單純労務には労働基準法だけは適用しておる、労働基準法を適用していると言えば、労働者をえらい保護しているように聞えるけれども、しかしながらそれにまた最後にこういうことを書いてある。但しこの地方公務員法に抵触しない範囲において、これの監督権を労働基準局にゆだねると書いてある。抵触しないというのは、ほとんど抵触するとすれば実行できない。ただこれをちよつと出して、しかもそれは抵触しない限りにおいてこれを保護すると言つている。何もかもそつくり取上げて、一体どうしようというのです。従つてこれが同じ政府部内で、同じ国としてかくあるべしということがこれほどに違うのです。労働省の案と、しかも公企業に対するものの見方が、同じ地方公共企業に対して出す法律案を立案するにあたつてそれだけ違う。そこで私は、きのうはこれは当然労働省が立案すべきでないかと聞いたら、公企業を私もやりますと労働大臣が言つておられるのです。ここに自治庁の理解がないといいますか、あるいはほんとうの内務官僚の前の根性そのままを出しているということを私は言いたい。私は何も好んで反対的な立場に立つてつているのではない。事業に相違している。こういうことを立案して出しても、これほど違うのだ。そして憎む立場に立つているということは、何とかして縛り上げてやろう、何とかしてもぎとつてやろうというような、かにの甲羅をはぎ、足をもぎとるような感じを私はしみじみ考えさせられる。この点を私はただ抽象的に言つているのではない。あなたたちが草案した案を私たちがそのままもらつて、そしてこういう考え方、こういう考え方と次々に行つて、しかもだんだん悪くなつている。私はこの前も言つたように、今年の七月に出たときの案は、十二種目にわたつたものをとつてある。今度はまたそれを入れている。なぜ一体こんなことをするのか。しかもあつてつたのではない。自治庁の案でとつておきながら、またこれを逆もどりしている。私はこういうことはどうしてもわからぬ。従つてもしあなたたちがこれは正しいからどうしてもやる、わずか日にちを数日に残した臨時国会に、しやにむに通さなければならぬというのならば、私はほかに何か意図があると思う。それではたして地方の公務員の将来における活動が、ほんとうに安心して活発に何らの陰ひなたなく良心的に勤務ができると思うならば、それは実情を知らないわけであります。  私はさらにもう一ぺん言いますが、今度の罰則においても非常に緩和してあるという。今までは法律的罰則をもつてつて来ておる。今度は單なる職を解除するというひとつの行政処分の罰則をしたというけれども、それは労働者の気持がわからない。労働者は一箇月監獄に行くよりも、何年か勤めて首を切られる方がつらい。それで緩和した緩和したといつておる。罰則できのう同僚かしも尋ねられたように、裁判中は首を切られないのです。それでやつたといえばすぐ首を切られる。こんな苛酷の法律をつくつて一体それで緩和したというのか、罰則を緩和しているというようなことは、労働者の実情を知らない公務員法である。私はこの点をあまり長く言いませんけれども、この法の立案に対する心構えにおいて、私どもとはるかに、遠い点、がある。この点は、鈴木さんが今申しましたように、どういうふうにこんなに違つて来、今度だんだん悪くなつて来たかということを、これも簡單でよろしいから聞きたい。
  131. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方自治庁が立案をいたしまする法案につきまして、いろいろの例をおあげくださいまして、やつておることが非常に制限的で、何でもかんでも権利をもぎとればよろしい、こういうような考え方でやつたのではないかというような趣旨のお尋ねでございますが、私どもはそのような考え方で立案をいたしたことはまつたくございません。地方公務員法の立案につきましては、やはり基準になるべきいろいろの考えがございます。マツカーサーの書簡にいたしましても、また近代的な公務員制度の理念にいたしまても、いろいろの基準になるべき問題がございまして、そういうような考え方から問題を展開いたして行つております。これを一体労働法的に書いて参りますか、あるいは公務員法という体系から書いて参りますか、これはいろいろ考え方があると存じますが、私どもは要するに政府のもとに働きますものといたしまして、政府が決定せられましたその方針に基いて、立案をいたしておるのでございまして、特定の意図を持つてどもが立案しておるということはまつたくないのでございます。さらに地方自治庁には御承知のごとく地方自治委員会議というものがございまして、この地方自治委員会議には各地方団体の会長が参加をされておられます。また学識経験の方も入つておられます。地方自治庁が法律案なり政令案なりを立案いたします場合には必ず次官会議なり、閣議をいたします前に、この自治委員会議の議を経ることが、法律上の要件になつております。そこにおいてかりにどのような案が出て参りましても、十分審議を盡しまして、そうしてさらに政府としての最終案としてきまるものでありまして、その過程の案をとらえられまして、いろいろ御論議いただきますことは、私どもとしては非常に迷惑に存ずるのでございます。  それから懲戒処分、政治的行為の制限につきまして、地方公務員法案におきましては、懲戒処分によつてただちにこれを排除してしまうから、国の場合に比較いたしまして、かえつて強いものである、こういうような趣旨の御見解でございまするが、これはまつたく事実に相反するものでございます。国家公務員法におきましては、一面におきまして、公務員がある服務違反の問題がございました場合におきましては、刑事裁判は公務員法上の懲戒処分と何ら関係なくどんどん進んで参りまするし、懲戒処分もまたこれと独立に進んで参ります。古い官吏制度のもとにおきましては、このような場合におきましてはまず刑事裁判が確定をいたしました後において、官吏の懲戒処分行つて行く、こういう建前でありましたが、国家公務員法におきましてはこのような点を改めまして、刑事裁判と懲戒処分とが同時に並行して行くように相なつております。一面においては刑罰を科せられ、一面においては懲戒処分も科し得る、こういう建前になつております。またこの地方公務員法案におきましては、政治的行為の違反があつた場合に、必ずこれを懲戒処分によつて解職するというようなことは毛頭規定いたしておりません。懲戒処分のうちには戒告でございまするとか停職でございまするとか、減給、免職でございまするとか四つの種類の懲戒処分方法規定いたしておるのでございまして、このうちのどれを具体的の場合に採用するかは、これは任命権者の権限でございます。これをただそういうことをすることができると書いてあるだけでございまして、必ず懲戒処分をしなければならないとも書いていないのであります。この点は昨日も龍野委員からお尋ねがあつたのでございまするが、懲戒処分をしなければならないというふうに、むしろ書いたらどうかという御議論もございましたくらいで、この法案におきましては懲戒処分をすることができるとこう書いてあるだけであります。
  132. 大矢省三

    ○大矢委員 ぼくはこれで最後にしますが、しきりにマツカーサー書簡を盾にとつていいますが、ひとつ文章を読んでみます。これはあとで読んでいただきます。前文がありますが、一般労働者の場合で、次に公務員に関しては「「自らもしくは選ばれた代表を通じて、雇用條件の改善を求めんがため自由にその意見、見解もしくは不満を表明する個人的もしくは団体的の妨げらるることなき権利」を有している。」と、こう書いてあるのであります。十分権利があるというのです。それを曲解して、できるだけこれを狭くしようとする。自分たちに有利なことだけをとつてやろうというのだから、こういうことをもつとよく読んで、大いにこの権利を伸ばしていただくようにしてもらいたい。それから今いう規定が、やつてもいいし、やらぬでもいい。そのときの任命者がきめることだというが、それはあればそれだけの罰があるということなんです。やつてもやらぬでも、その罰則があるからやることにきまつた。そういう三百代言的なことではいけない。そんなやつてもやらなくてもいいのなら、規定を除いたらいいと思う。あとで公平に読んでもらえば、そこにおのずからもつと親心があつてしかるべきだと私は思う。それ以上は尋ねません。
  133. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは暫時休憩いたしまして、三時から再開いたします。     午後一時五十五分休憩      ————◇—————     午後三時三十六分開議
  134. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは先ほどに引続きまして地方公務員法を議題といたし、質疑を続行いたします。  まず総則並びに第三章人事機関についての質疑を続行していただきたいと思います。門司亮君。
  135. 門司亮

    門司委員 それでは第一章から質問いたします。目的でありますが、この目的には御存じのように、法律の一番最後に、「地方公共団体行政の民主的且つ能率的な運営を保障し、もつて地方自治の本旨の実現に資することを目的とする。」こう書いてあるのであります。能率的な運営を保障するということでありますが、これは一体どういう意味で、能率的な事務の運営を保障するのか。この保障は前段の公務員の利益とかあるいはその他のことを保障するという意味ならば一応わかりますが、これについては、その前にさらに「福祉及び利益の保護並びに団体等人事行政に関する根本基準を確立する」と書いてある。これで一体地方行政の運営が能率的に保障されるのかどうかということであります。これは常識的に一応考えますると、いわゆる身分が十分に保障されておれば、必然的に能率の増進にもなつて来る。従つて運営も非常に円滑になつて来るということが一応言えるかもしれない。しかしそれを保障するという字句で、しかもここで「保障し」とはつきり言い切つてあるのでありますが、この能率的な運営を保障するという意味を、もう少し詳しくお聞かせ願いたいと思います。
  136. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今門司さんがお読みくださいましたように、この第一條の「地方公共団体の人事機関並びに地方公務員の任用、職階制、給與、勤務時間その他の勤務條件」云々と書いてありまして、「……等人事行政に関する根本基準を確立することにより」、と書いてありまするのが、要するに下にありますことの手段であります。こういう手段によつて地方団体の行政の民主的かつ能率的な運営を保障する、そしてその結果として地方自治の本旨の実現というものに資すことができる、そういうこと全体がこの地方公務員法の目的である。文句の上ではそういう意味でございます。実質的に申しますれば、直接能率に関係のございますものは、たとえば研修でございますとか、勤務成績の評定、あるいは分限及び懲戒の確立、あるいは福祉及び利益の保護、そういうようなこと、さらにさかのぼつて任用につきまして、いわゆる成績主義の任用方式を採用する。また職階制によつて仕事の配分というものを確立し、これと人の地位との結びつきを明確にいたしまして、仕事、職の配分を合理的に、科学的にするというようなことによりまして、地方行政の民主的な、かつ能率的な運営が保障せられる、かように考えておるのであります。
  137. 門司亮

    門司委員 そうしますと、この法律内容と非常に大きな食い違いを持つているのじやないかと私は思うのであります。この法律内容は人事委員会その他が設けられて、この前段にありまするような公務員の任用であるとか、あるいは勤務時間であるとかいうことが、いろいろ書いてありまするが、この内容に、公務員に最も大きな影響を持つておりまする、先ほどからいろいろ議論なつおりまする政治活動であるとか、あるいは労働三法の適用をしないとかいうようなことが、この前段の目的の中にはちつとも書いてないのであります。ただわずかに、もし書いてあるとすれば、給與、それから勤務時間、その他の勤務條件というところにだけ書いてあるのでありまして、そのほかのことはちつともこれに書いてない。そういたしますると、この目的の第一條自体が、この法案の内容とかなり大きな食い違いを持つておることを書いてあるのじやないかと私は思う。もう少し平たく言うならば、羊頭狗肉とでも申しますか、第一條の目的には非常に都合のいいことが書いてあるが、内容はそれ以上にわたる、労働者にとつてきわめて不利益なことがたくさん書いてあるというように、私ども解釈いたしまするので、この一條の趣旨は労働條件等に関する三法の適用をしないことが、一体どれだけ身分保障することになるかということである。この点は人事委員会その他があるとお考えになるかもしれませんが、実際上の問題としては、人事委員会におきましては、十分の働きをしようとは私は考えられない。国における人事委員会と同じことでありまして、人事委員会がどんな勧告をいたしましたところで、一向それの実現が見られないというような実情を考えて参りますると、地方の公共団体では、ことさらにそういうものの保障はできない。従つてさつきから申し上げておりまするように、この能率的な運営を保障するというようなことは、とうてい望みがたいとわれわれは思つております。従つてどうかもう一応この第一條の目的が、この全法案を貫く目的であるというように、一体解釈なつておるかどうか。もし解釈されておるとするならば——むろん私は解釈されておると言われると思いますが、解釈されておるとするならば、この目的の中に掲げられておりません政治的の制限、あるいは労働三法の適用の除外というようなことが、なぜ一体目的の中に書かれていないか。それらを除外し、それらを適用しないことがこの地方公共団体行政の民主的、かつ能率的な運営を保障するということになるのかということを、もう一応はつきり御説明が願いたいと思います。
  138. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 労働三法を適用しないということが、この第一條の「確立することにより」という、その手段のどこに入つておるかということでありますが、これは目次をごらんいただきますと、大体おわかりと思いますが、たとえば今の政治的行為の制限の問題は、第六節服務のところに規定をいたしてございます。それから労働條件といいますか、勤務條件の問題、これは第四節に規定をしてございます。さらに勤務條件に関する措置の要求というのは、第八節の第三款に書いてございます。要するに、そういうような目的の中に書いてありますことは、この地方公務員法案規定をいたしておりますることを、すべて集約して書き上げたものでございまして、従つてすべてこれを包含しておるというふうに考えております。  それから労働三法の適用を排除いたして、どうして一体身分保障ができるかということでございますが、これは昨日も申し上げましたように、労働三法と申しましても、私どものこの案におきまして排除いたしておりまするのは、労働組合法と労働関係調整法だけであります。労働基準法並びに船員法はこれを原則的に適用いたしておりまして、たとえば従業規則でございまするとか、司法警察官の職権でございまするとかというような二、三のもののみを除外いたしておりまするが、これは公務員の性格にかんがみて、それを適用することば適当でないというのでやめたにすぎないのであります。およそ勤労者の地位の保障ということにつきましては、労働組合法なり、あるいは労働関係調整法というような労働法の体系におきまして、これを保障することも一つ方法でありますし、また国家公務員あるいは地方公務員につきましては、このような公務員法の体系の中において、その地位を保障するということも一つ方法であると思います。これはなぜそのような二つの体系を区別しておるかと申しますれば、要するに勤労を公務に捧げております者と、私企業に従事いたしております者との間におきましては、その間におのずから性格上の差違があるわけでありまして、先日もいろいろお話が出ましたように、全体の住民の奉仕者という性格において勤務いたします公務員といたしましては、おのずから公共の福祉という見地から、本来有しております各種の権利につきまして、そこに若干の制約をこうむるというのは、やむを得ないことであると思うのであります。しかも、そういうような勤務関係に入るか入らないかということは、本人がそういう公務員の地位を選ぶか、選ばないかという、本人の意思にかかわつておるわけでございまして、そういう点から考えますと、このような体系におきまして、すなわち労働法の体系とは別個の体系ではございますが、公務員としての体系におきまして、その地位を保障する、こういうような考え方に立脚いたしておるのであります。そのような方法によつても、十分公務員の利益なり福祉を保護し、あるいは身分保障することが可能である、かように考えておるのであります。
  139. 門司亮

    門司委員 私が一番先に聞きましたように、能率的な運営を保障すると言つておりますが、この保障という字句で、はたしてこの一條の條文にありますようなことが一体保障できるかどうかということであります。この保障という意味は冒頭に聞きましたように、一体何を意味しているかということである。いわゆるこういうものすべてを保障しているのであるか、あるいはさつきも申し上げましたように、従業員のそういうものすべてを人事委員会その他で十分保護して行く、従つてこれは地方的に能率的の運営を保障するという対外的の保障であるのか、あるいは対内的の保障であるのか、一体どつちを保障するのか、その点をもう一応伺つておきます。
  140. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この保障と申しますのは、地方公務員法自体がいわばわくの法律でございます。本来地方公務員に関する制度は、それぞれの地方公共団体において適宜に実施いたすのが、一番地方団体の特殊性をたつとんだ形になると思いますが、それを国家公務員法よりは相当簡素な形でございますが、この程度の基本的な事項を肯定いたしまして、そういう原則に従つて、人事行政を運用するようにするということを、法律規定をいたして保障する。こういう意味でございます。従つてこれは地方団体並びに地方団体の人事機関に対しましては、一定の事項を行うように要求をいたし、また行う場合には、こういうふうにしなければならないという原則を、法律上定めてこれを要求する。また一方地方公務員の方につきましても、ある事項につきましては、法律上要求をいたしますが、同時に、ある問題、たとえば分限とか徴戒とかいうようなことにつきましては、その地位を法律によつて保障する。こういうところにこの保障という意味があるのでございます。
  141. 門司亮

    門司委員 そうしますと、これは地方公務員に限つた保障であつて、対外的の地方自治体の運営に対する保障ではないというように、解釈してよろしゆうございますか。
  142. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 そうではございませんで、今申し上げましたように、地方公共団体に対して、たとえば都道府県なり五大市は人事委員会をつくらなければならない。あるいは分限とか懲戒というものは、必ず條例で定める手続によつてやらなければならないというようなふろに、地方団体自体に対しましてもこれを義務づけております。また地方団体の人事委員会に対しましても、一定の事項を義務づけておるわけであります。そういう意味におきまして、それを対内と申しますか、対外と申しますか、表現はいろいろあろうと存じますが、とにかくそういう意味で保障をいたしておるのであります。
  143. 門司亮

    門司委員 私にはその言葉自身がよくわからないのでありますが、およそ法律を定めまする場合に、ことに地方自治体関係する法律でありまする関係においては、二つのものの考え方がぜひなされなければならない。一つは、そこで働いておりまするすべての国家公務員の身分に対してこれを保障するとか、あるいは身分をどうするとかいうような、働いておりまする者の対内的な一つ保障方法がある。これによつて地方の、ここに書いてありまするような行政が民主的にかつ能率的にやつて行けるというようなことが一応考えられる一つのものの考え方があります。そういうただそれのみによつて内部的にこういう規定を設けることが、さつき申し上げましたように、地方団体の運営に非常に能率的であるというものの見方と、同時にもう一つの見方というものは、法律を定めます場合には、やはり地方公共団体の相手方でありまする地方住民の利益というものも考えて行かなければならない。従つてこの場合の字句は、前段で申し上げましたように、これで公務員のすべての身分保障しているから、おそらく地方公共団体行政の民主的かつ能率的な運営ができるであろうという希望的観測の上に立つて、この保障という文字が使われておるのか、あるいは地方住民にはつきりと、これは保障するということが言えるのかどうかということであります。これは法律をこれから先審議いたします場合に、非常に重要な問題でありますので、当局の意見をこの場合にはつきりと私は聞いておきたいと思いますが、私が前段で申し上げましたようなことで、解釈していいのかどうかの問題であります。
  144. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今門司委員の仰せになりましたようなことでけつこうだと思います。要するに、こういうような方法によりまして、地方公務員の性格を明らかにし、その利益を保護し身分保障するというようなことによつて地方行政の民主化並びに能率化に資することが、結局今御指摘になりましたように、地方住民の利益をそれによりて向上して行くのだ……。けさほどいろいろ御意見のございましたような、そういうお役所仕事にならないように持つて行くような気持を持つているのであります。
  145. 門司亮

    門司委員 そういうふうにこれの字句の定義がはつきりいたして参りますると、この法律の特に問題になつて参りますものは、盛られております性格でありますが、この性格は、この全文を見て参りますると、地方公務員の利益を擁護して、これによつて地方住民に対して民主的かつ能率的の運営のできることを保障するというような法律では、私は必ずしも内容的にはないと思います。しかしそういうことは、これから先の議論によつてこれを逐次解決して行きたいと考えております。従つて第一條に対しましては、この保障するという意味を、当局の解釈はそういうふうな解釈だということに一応了承しておきます。ただここでつけ加えておきますことは、この全文をずつと読んで参りますと、このままのことが施行されるといたしますと、おそらくこの第一章に掲げてあります、当局の希望的観測の上に、この運営が民主的かつ能率的に行われるようにこれを保障するというようなことは、おそらくわれわれには考えられない事態が、内容の審議の際に必ず出て来るであろうということを、一応先に申し上げておきたいと思うのであります。  それから第二條につきましては、ことさらにこれがどうでなければならないという考えを私どもつておりませんので、私といたしましては、この点の質問はいたしません。  次に第三條でありますが、第三條において「地方公務員の職は、一般職と特別職とに分ける。」こういうことになつておるのであります。そうしてその特別職については、いろいろここに書いてあるのでありますが、さらにこの法律の全部を見て参りますると、あるいは五十七條といい、あるいは附則の一番未項、二十項に書いてありまする地方財政法の六條に規定する公営企業に従事する職員の身分取扱いといい、ことさらに別の法律でいろいろなものを解決するように、法文ができておるのでありますが、これをなぜ一体この三條の中にはつきり織り込まなかつたのかということであります。
  146. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまの御質問の趣旨は、公営企業に従事いたしております職員、あるいは單純労務に従事しております職員を、特別職として第三條の第三項にさらに掲げるべきではなかつたか、こういうことだと思います。この点につきましては、私どももその従事いたしております勤労の性質並びにそのものの属します会計の関係というようなこと、いろいろ考慮いたしたのでございます。その結果といたしまして到達いたしました結論は、第一に公営品企業の職員につきましては、やはりいわゆる独立採算制をもつて運営をいたしておりますから、たとえば賃金の値上げというようなことにつきましても、そこだけがやはり特別に扱い得る立場にございます。現に公営企業に従事いたします職員につきましては、政府もいろいろ給與問題等についても、常に独立採算制という建前で別扱いになつておりますので、そのような点からいたしましても、これは特別に扱うことが実情にも即する。また国家公務員法の体系におきまして、專売、国鉄というものを別扱いにいたしております趣旨からいたしましても、そういうようなものについては、別個に考えて行くのが適当であろうということで、これは附則の二十項に別に規定いたした次第であります。従つて一応はこれは一般職という建前でございますが、この法律をすべて通用しないで、特別の法律ができるまでの間は従前の例によるのだ、こういうことにいたしております。なおこの際二十項の問題について若干申し上げておきたいと存じます点は、昨日来いろいろ御論議がございましたが、この公営企業につきましては、公営企業の一切の組織を、今の部とか局とかいうような、ああいう普通の行政事務を処理いたします局なり部の組織のままでいいかどうか、この点にも相当研究を要する点がございますので、この点にもひとつ研究をして行きたい。同時に会計経理につきましても、私企業と同じような効率的な経済の運営をいたしますためには、現在の予算制度というようなものだけでは、必ずしも適切に経営の状況を把握いたすことが困難でありますので、会計経理についてもやはり別個に検討を加えて行きたい。同時に職員の身分取扱いと申しますか、あるいは労働関係と申しますか、こういうようなものに関しましても、そういう性格から申して、特別に考えて行きたい、こういうようなことについての法律を別個に考えたい、こういうことでございます。労働関係のことのみ今までお話が出ておりましたが、そういう趣旨がございますので、あわせて申し上げておきたいと思うのであります。  それから單純労務の問題につきましては、昨年いろいろ現業職員という言葉において、御論議がございました通りでございまして、いわば国家公務員なり、地方公務員なりを通じての問題だと私ども考えております。そういうような両者を相通じての問題として研究をし、どういう点について特別の取扱いをするかということを研究して行く、こういうことに相なつておりまするので、一応国家公務員と同じような建前に、現業職員といたしましては地方公務員法を適用いたしまするが、その特例についてはできるだけ早い機会に研究をし、措置をとつて行きたい、こういうふうに考えておるのであります。
  147. 門司亮

    門司委員 法律のていさいといいまするか、運用といいまするか、——については、いろいろ私は議論はあると思いまするが、少くとも法律の申に抽象的ではありまするが、とにかく特殊の事業をする者については、別の法律でこれを定めるというような條文を設けてあるということと同時に、そういうものをこの五條の規定の中に集約して入れるということが、私は法律のていさいというか、法律の完備したものというか、そういう一集を使いまするならば、やはり一律にこの法律でこれを律すべきである。この法律の中に、但しこういうものは追つて除外するであろうというようなことが書かれておるということになりますると、この法律自体が未完成のものであるというような感じを、われわれは受けるのであります。さつき申し上げたような五十七條に規定してあるもの、あるいは最後の項に規定してありますような規定を織り込むということが、今の御答弁のような形でできないとするならば、この法律自体を未完成のものであるというふうに解釈してさしつかえないかどうか。
  148. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいま御指摘の公営企業の職員に関しましては、今後さらに成案を得まして国会に提案し、御審議を願わなければならない、こういうことに相なつておるのでありまして、その意味におきましては、まだ全部整つておらぬという点があるわけであります。
  149. 門司亮

    門司委員 これは非常に重大なことでありますが、最後の特別の独立採算制だけでなくて、私に五十七條の問題も、一緒にくるめてこれを持つて来ることが正しいと考えておりますが、これが入れられておりませんので、従つて先ほど申し上げましたように、未完成のものだ、こう私は考えておる。しかし今鈴木さんのお話でも、全部は整つていないというようなお話がございましたので、これを鈴木さんのお話そのままに受取つて、もう一応確認しておきたいと思いますることは、この法律によつては、地方公共団体の職員全体が、第一條の目的を達し得るには、まだ未完成のものであるというふうに解釈してもさしつかえないかどうか。
  150. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今私ども考えといたしましては、一般職につきましての規定といたしましては、これで整備いたしておると思うのでありまするが、今の公営企業に従事いたしておりまする職員に関しましては、公営企業の組織なり、会計、経理に合せまして、労働関係の問題につきましても、これを検討をいたして行きたい。それをすみやかに国会に提案をいたし、地方公務員の体系全体として完備するようにいたしたいと思います。
  151. 門司亮

    門司委員 その御答弁ははずれているのであります。私は何も独立採算制の例の問題だけ——いわゆる地方財政法の六條に規正してありまするものだけを言つておるのではなくて、五十七條に特殊の業務に携わるものについては、これは別に法律で定めるということがはつきりと書いてあるのであります。そしてあなたの御説明の中でも、あなた自身が、それはおそらく公立学校の職員は含まれるであろうということを説明しておる。三條の中にそういうややこしい規定を設けないで、いわゆる未完成の法律だというようなていさいをつくらないで、一応完成された法律だというようにしてもらいませんと、この第一條の保障するということは当てはまらないのでありまして、未完成の法律によつて住民に対して民主的かつ能率的な運営を保障するということを律することは、私は少しこの法律は行き過ぎだと思います。従つて私が申し上げておきたいと思いますることは、五十七條及び末項に規定してありまするところのものが、この中に織り込まれておりませんので、従つてこの法律全体が未完成のものであるというように解釈してさしつかえないかどうかということであります。
  152. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 五十七條の特例として規定いたすべき事項といいますものは、今お話のございました、たとえば教育公務員でございますとか、あるいは警察職員あるいは消防職員といつたものにつきまして、特例考えられるわけでございます。しかしながらその特例は、五十七條の但書に書いてありますように、「第一條の精神に反するものであつてはならない。」こうなております。従つてかりに特例規定いたしましても、第一條の精神を逸脱しないという考え方で、特例考えるべきものと思つております。その特例というのは、要するに職務と責任の特殊性に基いての特例でございますから、おのずからそこに限度があるわけでございます。要するにこの地方公務員法案自体といたしましては、地方公務員全体に対して適用せられる基本的な権利を定めておるものというように考えておるのであります。
  153. 門司亮

    門司委員 どうも私はその点がはつきりしないのですが、私が言つておりますのは、先ほど申し上げておりますように、なるほど五十七條の最後に、一條の目的に反してはならないということが書いてあります。私はその通りだと思います。またそうでなければならぬと思いまするが、そういう特例を一応設けて、そして法律——たとえて言いますならば、これは私は三つの法律にわけられるのじやないか。一つの基本法がこれであつて、そして財政法の六條に関係するようなものを別にこしらえ、さらにそのほかに特殊なものについても一応考えられるというように、三つにこれがわかれて来る一つの性質を持つていはしないかということが考えられるのであります。しかしそれがもしそういう性格を持つているとすれば、三つの法律がそろわなければ、この法律を完成したものとは言い得ないということであります。従つて私はそういうややこしいものにするよりも、この三條の中に明確にそれをうたつて、そしてその幅を縮めたらどうかということです。適用しないものは適用しないとして、そのほかにこういう法律を設けるということに——今の考え方から行きますと、五十七條を入れて三つの段階ができて来ると考えておるのでありますが、これが二つの段階といいますか、もう一度法律をこしらえれば、それできちんとでき上るような法律に、これを集約することの方が、はつきりするということであります。ことに先はほどから教員であるとか、あるいは消防、警察と言われておりまするが、教員につきましては、すでに教育公務員に対する特例が出ております。施行令も出ております。警察に対しても、消防に対しても、警察法、消防法があります。何もこの地方公務員法のやつかいにならなくてもそれはある。しかもそれが第二條で、すべてこれに抵触するものは一応取消すようになつておる。そうすると私の考え方では、今の教育公務員法というものより、この法律の方が必然的に優先して来るという形になつて来はしないか。そうなつて参りますると、今鈴木さんの言われましたようなことでは、ここに全体が一般職として含められて来た現在ですら、教育公務員法によつて多少の任免権等はきめられておりますが、それがその法律が適用されないで、この法律の二條によつて優先するということになつて参りますと、人事委員会の中で、そういうような任免権がここにできて来るというように、われわれは一応解釈ができるのでありますが、それをまたはずすというのが、五十七條の規定だと私は考えますが、こういうまわりくどい、ややこしいことをしないで、この三條の中にそういうものをずつと入れて行つた方が、法律のていさいが明確になりやしないか。従つて何度も申し上げますが、私の意見は、この法律ではきわめて未完成なものであるというふうに解釈してさしつかえないものかどうか。
  154. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方公務員法の一つのねらいといたしまして、現在種種雑多な法律なり政令なりで書き上げられておりまするものを、可能なる限度においてこれを統合いたしまして、統一のある一つ地方公務員法というものにしようというねらいを持つております。そこで地方公務員があまりにもいろいろ別な法律で扱われるということは、これは基本的には適当でない、かように考えております。しかしながら、今御指摘になりましたような教員、あるいは別にたとえば警察、消防といつたような職員につきましては、その職務につきまして相当特殊性を持つておる、責任においても特殊性を持つておりますので、そういうものに対しましては、この統一法典であります地方公務員法を原則として適用して参りまするけれども、その職務と責任に基きます特別な点だけは、その特例法で定めて行く、こういうような考え方をもつて立案をいたしておるのであります。従いましてそういうようなものが若干出て参りましても、そのゆえをもつて地方公務員法案が未完成であるということではないと思うのであります。これはやはり公務員法の体系上、さような考え方をいたしておるのでありまして、国家公務員につきましても、たとえば警察でありますとか、教員でありますとかにつきましては、特別の規定がございまするし、また予備隊等につきましても、特別の規定があるわけでございます。しかし原則的には国家公務員法が適用になつている、こういう体系と類似した体系になつているわけであります。
  155. 門司亮

    門司委員 そうしますと、五十七條のところで少し議論をしなければなりませんが、われわれが今まで考えておりました五十七條の意味と、非常に大きな開きを持つて来るように私ども考えるのであります。そうなつて参りますると、これはもう一応大臣にでもよくこの法律の趣旨を聞かないと、どうもただちにこれの逐條審議に入ることは危險性を持つておると思います。今、の鈴木さんのお話のように、教員であるとか、警察であるとかいうものが、特別の法令をもつてこれが運用されておりまするときに、その法令はそれなら二條の規定によつて、すべて私は抹消されるように考えるのであるが、この中で生きているものがやはりあるのでしようか。たとえば教員の規定法律と施行令と三つあるわけでありますが、そうしてこれには教員の任免権の問題が規定してあるはずであります。これは一体どつちが残るのでございますか。
  156. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 先ほどちよつとその点にもお触れになつたようでございますが、教育委員会が教員の任命権を持つておるという点は、何ら異動を生じません。この任命権につきましては、あとの第六條に「地方公共団体の長」云々とありまして、教育委員会「その他法令又は條例に基く任命権者は」と、こう書いてあります。この任命権は何ら変更いたすものではございません。
  157. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、教員に関する公務員法は、任命権だけは残つて、あとは全部なくなるというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  158. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 いや、決してそのようなことではございません。どういう点が調整を要するかということは文部当局と御相談をいたし、政府といたしましても、教育公務員特例法の調整を要すべき点につきましては、目下別に法律業を用意しつつある次第でございます。
  159. 門司亮

    門司委員 その点ですが、私は五條に、そういう一般職として当然一つ法律で律することのできないような職種については、ここではつきり明示しでおいて、具体的に言うならば、たとえば七月案に書かれておりました、あるいは十二の現業と目されるようなものを、もし五十七條ではずされるというようなお気持があるならば、ここにはつきり明記して、おくということが、法律の建前から行くならば、非常にいいのであつて、そして今のお話のように、五十七條に規定してあるが、教員の職務に対しても、いまだに文部省との間に話合いをしておるのだということになつて参りますと、とりあえずこの法律で一応みんな縛つてしまうのだということになつて参りますと、この法律は仮定の法律であつて従つて私は仮定の法律は未完成の法律であると当然に解釈されるべきであると、こう考えております。この点をもう一応はつきり伺つておきます。
  160. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その事実は今ここで申し上げましたような事実でありまして、それを未完成とおつしやるたら、それは未完成という言葉で表現していただいてもけつこうだと思いますが、私は未完成という言葉は、必ずしもその事態を表わすに適当でないと考えております。
  161. 門司亮

    門司委員 それでは一応この條項については——私ばかり、そういつまでもしやべつているわけにも行きませんので、一応私は基本的なものとして話をおくのでありますが、その次の第四條の規定であります。これに今のはただちに触れて参るのであります。そうしてこれは一般職に——特別職に掲げてあります三項、そこに六つ掲げてありますが、これ以外のものは、すべて一般職としてこれを適用する、こういうふうになつておるのであります。従つて先ほどから申し上げておりますような、いろいろな職種を持つておりますものも、一応この四條で全部適用を受けると、私は常識的に解釈できるのでありますが、その通りでありますか。
  162. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その通りでございます。ただ一般職に属します公営企業の職員だけが、附則の二十項で適用をはずされる、こういうことでございます。
  163. 門司亮

    門司委員 そうすると、最後の項に書いてありますものだけが、この法律の適用を受けないということになつて、そうしてこれは依然として政令二百一号の適用があるというように解釈してさしつかえございませんか。
  164. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その通りであります。
  165. 門司亮

    門司委員 その次の項の人事委員会及び公平委員会の件でありますが、これは先ほどから問題になつておりまするように、一体人事委員会の方で——ここに書いてありまするような人事委員会が、はたして正しい見解を持つて、ほんとうに地方公務員の利益を擁護して行こうといたしまするには、権限があまりにも少な過ぎるのじやないかと私どもは思う。ただ單にいろいろな苦情を取上げるとかなんとかいうようなことではなくて、これには当然人事委員会一つ規定として、仲裁、裁定的の性格をこの中に十分織り込んで行く方が、運用上正しい結果が出るのじやないかというように私は考えますが、その点のお考えはどうか。
  166. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 仲裁、裁定につきましての問題を取上げたらどうかということでございますが、これにつきましては、いわゆる職員団体と地方公共団体の当局との間におきまして、口頭あるいは書面によつて合致しました意思がございました場合におきましては、それが実現をされるわけでございまするが、その実現について調停仲裁という制度をとるかどうかということでございますが、これにつきましては、そういう体系をとりませんで、やはり公務員としての性格にかんがみまして、勤務條件に関する措置の要求の審査、あるいは不利益処分審査というような形において、人事委員会がこれを取上げる、かような建前にいたしておるのでございまして、この建前は、国家公務員法の建前に準じたものでございます。
  167. 門司亮

    門司委員 建前とは考えられるかもしれませんが、そうなりますと、その建前は單なる建前だけであつて、実際の申合せ等が文書によつてとりかわしを受けております場合には、道徳的にはどうしてもそれを履行しなければならぬと思う。その場合にはやはりこういう機関が一つつて、それが当然裁定すべき拘束力を持たないと、道徳上どんなに協約をしても、聞かなければこれは何にもならないことであつて従つて人事機関というものは、ただ苦情の内容を調査するだけであつて、何らの権能がないということになりますと、これはあつてもなくてもいいというようなことになりはしないかというように、われわれは考えておるのでありますが、その点のお考えはどうでございますか。
  168. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 かりに前の団体と地方公共団体当局の間におきましては、合致しました意思を書面によつて申合せして、残しました場合におきましては、今お話のような合理的な責任が残るわけでありますが、これにつきましてもしも当局が実施いたされないいうような場合におきましては、職員団体といたしましては、ここにございまするような勤務條件に関する措置の要求という方式で、人事委員会に持ち出しまして、人事委員会においてこれをお取上げしてもらいたい、それぞれ人事委員会が自己でやれますものは自分でやりますし、他の人事当局がやるべきものは、これに対して指示をするというようなことによつて措置ができると思います。
  169. 門司亮

    門司委員 それはただそんなことで取上げて、そうして人事委員会の処置のできるものは、もちろん人事委員会がやらなければならぬことはわかり切つたことでありまして、これは單にそういうものを移して行つても、人事委員会というものは、この法律で定められておりますような労働者の利益を保護する機関にはならないと私に思います。従つてどうしてもやはりそういう仲裁、裁定のある種の権限を與えておかなければ、権威がなくなるのではないかと思います。どんなに他の機関が処理するものであるからといつても、人事委員会としてはただ通牒を発しただけであつて、その責任は負わないということになつて参りますと、これは仏つくつて魂入れないようなもので、人事委員会の機能というものは、まつたく発揮することはできないような状態でありますので、これをもう少し明確に記載して行く御意思はないかどうか。
  170. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは公務員の性格から考えまして、要するに勤労を公務に捧げております者と、私企業に従事いたしております者との間の、一つの性格上の違いから派生して来るわけでございまして、調停、仲裁というような建前の現在の措置をとりますよりも、この第四十六條に先ほど未御説明をいたしております勤務條件の措置に関する要求の規定がありますが、要するに職員は人事委員会に対して給與、勤務時間、その他の勤務條件に関して、地方団体当局によつて適当な措置がとられるべきことを要求することができる、この要求がありますならば、人事委員会は、その次の條にございまする口頭審理その他の方法による審査を行い、その結果に基いて自分でやれることは自分でやる。その他の事項はその事項に関して権限を有する地方公共団体の機関に対して必要な勧告をする、こういう手続についてはさらに四十八條に規定してございまするが、このような方式によつて利益保護がはかり得るものと考えております。また公務員の性格からして、このような利益保護の方式が適切である、かように考えております。
  171. 門司亮

    門司委員 懸念いたしておりますものは、この法律で団交権が完全に認められておれば、あるいはそれでいいかもしれしません。しかしこの法律では御存じのように、国交権はこのまま読んでみますと、対等な立場でこういう団体交渉を行い得ない、従つて文書によつてとりかわしてもそれは団体協約でないということになつておりますと、人事委員会ぐらいがこれを仲裁、裁定するというような権限を持つていないと、おそらく地方公務員の利益というものは、たといいろいろ人事委員会に申し出ることが出て参りましても、あるいは人事委員会がこれを当該公共団体の首脳部の方へ勧告をいたしましても、それは非常に弱いものであつて、單なる一片の書類のとりかわし、書類の送達の現われにすぎないものである。実効は何もないのじやないかというように実は考えるのであります。従つて二の項にはぜひそうした人事委員会のある程度の仲裁、裁定式の権限を持つということは、さつき申し上げておりますように、この団体交渉権でない、団体協約でないということが認められている以上は、そういう機関を設けることの方が、人事委員会を設ける趣旨に最も合致するのだというように考えておるのであります。これで当局は十分に目的が達せられる、包含されるのだと御解釈になるのかどうか、もう一度御答弁願いたい。
  172. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 勤務條件に関する行政措置の要求がありました場合においては、口頭審理その他の方法による審査を行うということでございまして、愼重なる手続により行うものでございまするし、私どもといたしましては、これによつて利益保護の方法をはかり得ると、さように考えて、おります。
  173. 門司亮

    門司委員 これは見解の相違でありますから、それ以上は聞きませんが、そういうことでどんなに審査だけを愼重にいたしましても、結論的にそれが実行されなければ何にもならないことであつて審査の愼重が必ずしも効果的ではないというように、われわれは解釈するのであります。むしろわれわれは効果を上げることの方が有効でなければならないということであります。  その次に聞いておきたいことは、第七條第二項に「他の地方公共団体との契約によりその地方公共団体の人事委員会に委託して第八條第一項に規定する人事委員会の事務を処理させることができる。」というように実はなつているのでありまするが、この他の地方の公共団体の人事委員会に委託するということはどういうことか、事例として上げられるかということであります。この事例をお聞かせ願いたい。
  174. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは現在でも、たとえば営造物等につきまして、他の地方公共団体の持つておりまするものを使わしてもらうというような契約を結んで、それを使う。あるいは他の地方公共団体の区域の中に、こつちの地方団体の営造物をつくりまして、それをその所在地の地方団体とともに使うというような、一種の委託的な関係を現に地方自治庁において認めておりますが、それと同じような観念に基きまして、密接するような、あるいは非常に密接な関係がございまする甲、乙二つの地方団体におきまして、一が一の人事委員会に委託するというようなことがあり得ると考えておるのであります。あるいは大都市の隣接の市が人事委員会を設けませんで、隣接の大都市に人事事務を委託する。あるいは県にそのようなことを委託するようなことが可能であるのであります。
  175. 門司亮

    門司委員 私はもう少しはつきりした事例を実は承りたいのであります。今のようなお話ははなはだ抽象的でありまして、たとえば他の地方の公共団体の中に、自分の公共団体の建物があつて、それを共同で使つている場合に、これをどうするということでありまするが、これは実際上の問題として、やはり地方の公務員でありまする以上は、当該地方公共団体の人事委員会においてこれを裁定するというか、取上げて行かないと、これを他に委嘱するということは、まことに事務上の手続から言うと、そつちの方に勤務しているから、すべてのことはそつちの方でいいようにやつてもらいたいという委託ができた方が便利だと思います。しかし一つの公共団体の中におりまする職員として、自分の勤めておりまする場所によつて、自分の利益を保護し、さらに自分の苦情を聞いてくれる人事委員会が別のところであるということは、これは実際上の運営としてどうか、こう考えるのでありますが、これでさしつかえないように当局はお考えなつているかどうか。
  176. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 お答えいたします。ただいまの門司さんのお話にありました通り、ここで共同設置の方式なり、あるいは委託処理の方式なりを認めましたのは、ただいまお話がありましたように、経費の節約なり、あるいは事務の便利という見地から、このような方式を單独設置のほかに認めた次第であります。この場合に、もし地方団体が自己の意思によつて決定をいたしまする場合におきましては、そのいずれの方式によるもまたさしつかえありません。しかし委託するということに必定をいたしました限りにおきましては、人事委員会の権限のあるものを委託し、またはあるものを委託しない、そういう自由はこの規定においては認めておらないのでありまして、全部の事務を他の人事委員会に委託するか、あるいは全部を委託せしめないか、そのいずれかになるわけであります。しかしみずからが公務員でありますからして、やはりみずからの地方団体において、すべてこれを設置する方がよかろうという決定がなされます場合におきましては、もちろんすべてこれを当該市の当局の自由意思にまかせておる次第でありますので、そのいずれの方式によることも、何らさしつかえがないということになると思う次第であります。
  177. 門司亮

    門司委員 それからその次の任命権者の問題であります。六條の任命権者のことについては、この一項にずつと書いてありますることは、別段これにはこうということも書いてありませんが、第二項に「前項の任命権者は、同項に規定する権限の一部をその補助機関たる上級の地方公務員に委任することができる。」という規定があります。ここに「上級の地方公務員に」、という字句を使つておりまするが、この「補助機関たる上級の地方公務員」ということは、一体現在の職階制の上で、どの辺までを規定されておるのか。
  178. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 お答えいたします。この上級という言葉でございますが、どの程度までを上級というかというお尋ねでございますが、上級下級の区別は、御疑問のありますように、これは相対的なものでありまして、一般的にこれから上は上級である。これから以下は下級だというふうな線を引くことはむずかしいと思うのでありまして、個々具体的な場合に決定をいたして参るよりほかしかたがないと考えますが、現在におきましても、御承知のように、たとえば本庁関係でも雇用員の任免につきましては、県におきましては部長にこれが委任されております。そういう事例がございます。また地方事務所というふうに、本庁から遠隔の土地にあるものにつきましては、一々本庁まで持つて参りますことも、人事行政の面からいつておもしろくございませんので、特に雇用員等につきましては、地方事務所長にその任免を委任しておるというような実情があるわけであります。またそのようなことを認めますることが、人事行政の迅速な、また円滑な処理の上に必要であるというふうに認められますので、このような規定を置いたわけであります。
  179. 門司亮

    門司委員 そういたしますると、この規定は任命権者が自由にその権限を委嘱することができるという解釈でありますが、われわれが考えますには、こういう人事委員会が一方においてありまして、そうして愼重に取上げられておりまするときに、出先のそうしたものに簡單に任命権者が委嘱するということについては、多少の危險といいまするか危惧の念を持つのでありまするが、それらのものは條例で定めた範囲というように、何か限定する方がいいのじやないかと考えますが、この点をお伺いいたしたいと思います。
  180. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 お説の点はごもつともなことと存じますが、ただここに権限の一部というふうにはつきり書いてございまして、全体の権限をすべてこの補助機関たる者に委任することは、もちろん法の認めるところではございませんし、先刻申し上げましたように現実に行われておりまするのは、雇用員につきまして特にその任命というようなものを委嘱しておるのでありまして、これが懲戒等の処分なつて参りまする場合におきましては、あるいは事の性質から考えて任命権者が、みずからこれを保持して行くということに相なるようなことになろうと思われるのでありまして、それらの点は運用の全きを得るように、私たちといたしましても十分配慮いたしまして、指導に当つて参りたいというふうに考えております。
  181. 門司亮

    門司委員 自治庁がこれを配慮してお考えになりましても、自治庁は実際勧告といいまするか、ある程度の示唆はできると思いますが、なかなか地方公共団体がその通りに言うことを聞くか聞かぬか問題でありまして、ここに一部の権限を委任することができるということは、どうしてもこれらのものこそ、やはり地方の條例にまつというようにして、明らかにこの権限の委譲される面をきめておきませんと、これは非常に大きな問題、将来に残すということができやしないか。今のように考えて、たとえば罷免する場合におきましても、人事委員会、公平委員会等がなるほどその権限を持つかしれませんが、任命権者が罷免までもも委任した、あるいは片方は委任されたものと考えておつたというようなことで、トラブルを起すことが実はしばしばあるわけであります。実際問題といたしましては、はつきりした任命権者である地方の公安委員会の持つておりまする権限ですら、たまたま署長が二人できたというような実例がないわけではありませんので、これは任免権者がはつきりいたしておりまして、そうして公安委員会がこれを任免するということになつておりながら、署長が二人できるというようなことは、理論上は考えられないのでありますが、実際上の問題としてそういうものができておる。そこでやはりこれらの権限の範囲というものは、やはりその地方の公共団体の議会議決を経て、明確に任命権者に委議するような規定を設けて置くということが、法律としてきめるにはそういうことが正しいのでにないかと考えておりますので、この点に対する当局のお考えをもう一応お願いしたい。
  182. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 事柄の重要性からなるべく愼重に事をやつて参らなければならないという門司委員のお説には賛成でございますが、実際問題といたしまして、任命権を委譲いたしまする場合におきましては、訓令とか、その他の様式で一般に公示されることに相なると思いまするし、また任命権を委譲されました者は、これはその限りにおいて任命権を代行することになるわけであります。もしその任命権を委讓せられました者の任命権の行使に関しまして、いろいろ不都合な点がございますれば、これに対しましてはもちろん人事委員会行政のいわゆる一般的な監督、あるいは不利益処分審査等の適用、があるわけでございまするので、その点の不都合というような面は、運用の面からいつて適当に処置されて参るのではないかというふうに、私は考えておる次第であります。
  183. 門司亮

    門司委員 当局はもつと率直に認めたらどうですか、何でも言い訳をしなければならぬというような物の考え方でなくて——私別に修正案を出しておるわけじやありませんのですが、われわれがこの法律を審議して行く上に、そういうことはあなたの方で率直に認めるものは認めて行くというような態度をとつていただいた方が、私どもとしてもよけい言わなくても済むわけでありますので、ひとつ率直に意見だけを言つておいていただきたいのであります。何でもかでもこしらえたものが——自分たちとしては万全を期しておるつもりでお出しになつておるとけ思いまするけれども、ひとつあまり固執しないようにお願いをしたいと思うのであります。  その次に聞いておきたいと思いますことは、人事委員会を置くのは、御存じのように都道府県と、さらに五大市だけに限られておりますが、これを限つた理由をお聞かせて願いたいと考えておるのであります。
  184. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 人事委員会をどの程度の地方団体まで設けたらよろしいかということにつきましては、いろいろ御議論もあるところと存じますが、やはり先ほどお話の出ましたように、一面経費の節域というような点も考慮いたし、また機構がいたずらに複雑になるというようなことも防がなければなりませんので、そのような点と、また今の人事行政の公正なる運営という点等を考慮いたしまして、結局人事委員会につきましては、都道府県並びに実力において都道府県と同等でありますところの五大市というものにつきまして、これを必置の機関といたしまして、その他の市につきましては、これを設置するしないは自由にいたしたような次第であります。
  185. 門司亮

    門司委員 それはわかつておりますが、もう少しはつきりした理由です。五大市は都道府県と同じような実力と経済力を持つておるから、これはやるのだということになつて参りますと、原則といたしましては都道府県だけでいいというようなお考えのように解釈してもさしつかえございませんか。
  186. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 都道府県につきましては、たとえば一番職員数の少いと思われますような奈良県でございましても、大体六千人くらいの職員がいろいろ合せますとおります。それで大体の基準から申しまして、職員数が千人くらいございますところでは、やはり人事委員会を設ける方が適当の場合が多いのではないかというふうに考えたのでございますが、人口で申しますと二十万以上くらいの市が、大体そのような基準に当ると思いますけれども、しかし市につきましては強制設置というようなことでなく、やはり自主的にそれを置くか置かないかを決定させる、こういう建前にいたしまして、最も大きな地方団体である都道府県とこれに匹敵する五大市についてのみ強制設置という建前をとつた次第であります。
  187. 門司亮

    門司委員 一応自治権を尊重したような形は見受けられるのでありますが、実際上の問題といたしまして、五大市に次ぎます多くの人口を持つております市の事務というものは、やはり相当な公務員を持つておりますし、それから條件もほとんど五大市と違わないような條件のもとに、環境的にも置かれておると私は考えるのであります。従つてこれを任意にするということは、実はどうかと考えるのであります。もしでき得るなら、こういう面につきましても、たとえば市なら市に限つて置くということが、行政上の処置としては望ましいのでありまして、行政上の処置の上からこういう規定だけでは、全部の地方の公共団体に従事いたしております公務員の利益は擁護されない。たとえば横浜と川崎のようなものでありますが、横浜といいましても、川崎といいましても、勤務いたしております公務員の生活環境、あるいは生活に対しますすべての條件は、ほとんど同じであります。従つて横浜に起り得る條件は、川崎にも必ず起り得るであろうということは、想像にかたくないのであります。そういたして場合に、片方には委員会があつて十分に保護してくれるが、片一方には委員会がなくて公平委員会があり、権限は同じだといいますが、実際の機能は相当違つて来ると思います。これは経費その他の面から考えますならば、あるいは置かない方がいいかもしれませんが、しかし制度として設けております以上は、公務員の同じような利益を擁護いたします立場から考えますと、やはり五大市だけに限らないで、相当な市以上はこれに包含されるということの方が私は正しいのではないかというように考えるのでありますが、この点に対するお考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  188. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 御説も一応理由があると存ずるのでございますが、先ほど来申し上げましたように、地方団体の自主性を尊重いたします見地から、市につきましては、五大市以外にはこれを設置するしないは市の自主的な決定にゆだねる、こういう建前をとつたのでございまして、結果におきまして、御指摘のような市によりましてはつくられる可能性が非常に多いであろうというふうに考える次第であります。
  189. 門司亮

    門司委員 それからその次の二項でありますが、その二行目に「地方自治法第百五十五條第二項の市以外の他の市と共同して人事委員会を置き、若しくは他の地方公共団体との契約によりその地方公共団体の人事委員会に委託して……。」こういう字句を使つておりますこの「共同」という文字でありますが、人事委員会というようなものが、一体共同で置けるかどうかということであります。共同で置きます場合に私どもが問題になると考えますのは、たとえば二つの自治体によつて一つ委員会を構成するということになつて参りますと、委員の三人の選出の比率であります。これらにいたしましても、私はそう簡單に決定づけられないものができるのではないかというように考えるが、この共同で置くことのできる、ということを設けられたその趣旨をひとつ御説明願いたいと思います。
  190. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 今までるる御説明をして参りましたように、この地方公務員法の立案にあたりましては、いわゆる近代的な公務員制度の理念と、それから地方公共団体の自主性というようなものの調整を、いかにはかつて参るかというような点に重点を置いて物事を考えております。その際にやはりもう一つ考慮いたさなければなりませんのは、先刻から御指摘もございましたように、公共団体の経費をできるだけ少くして行くという点も、一つの重要な考慮すべき点であるのであります。そういう面からいろいろの方式について考慮をいたしたわけでありまして、その結果としてこのような共同設置の方式なり、あるいは委託処理の方式なりも適当ではないかということで認めることにいたしたいということで、この法案を出したわけであります。  共同ということでございますが、これは正直のところあまりほかには類例のない制度でございます。しかしながら現在の公共団体の相互間の共同事務の共同処理方式と申しますか、これは門司さんよく御承知でありますように、組合、それから先刻次長からも御説明申しましたような常造物の共同使用、この二つが実は認められておらないのであります。しかしながら組合ということになつて参りますと、組合自身にまた管理者を置きましたり、あるいは議会を置くというようなことで、非常な経費がかかるわけでございます。そういうようなことでなくして、もう少し簡素な方式で同じ目的が達成せられる方式はないかというような点を考えまして、共同設置方式というものを提案いたしたわけでございます。この点はたとえば地方開発の関係の審議会でございますとか、あるいは先般御審議を願いました地方税法案におきます固定資産の評価員でありますとか、そういうところにその萌芽が漸次きざしつつあるのでありまして、このような方式を採用いたしますことが公共団体の多様性と、その経費節減に資することが、大なるところがあろうということを考えたからにほかならないのであります。しかしながら今御指摘がございましたような委員の選任等につきまして、いろいろ困難のあることも当然予想せられるところでございます。とかしそれらの点は各公共団体の議会議決を経まして、そこで完全に一致いたし、また規約によつてこれを置いて行くわけでございますので、その共同設置になります前にそれらの選任の方式、またそれぞれの公共団体関係のものといたしまして、何人を一方の市から出すか、何人を他の市に配属するかというような点は、お互いに両者の完全な意見の一致を見ました上に、このような処理方式が採用されることに相なると思いますので、実施の運用面からはさしあたり支障は起らないのではないかというふうに存じております。
  191. 門司亮

    門司委員 ただいま指摘されましたような一つの事務を処理する、あるいは税金の問題について、これの分配の方法をどうするかというようなこととは、人事の問題は違うのでありまして、事務的に処理されるものではありません。人の問題であります関係から、事務的にものを考えておるということに私は間違いがあるのではないか、従つて共同によつて人事委員会を置くということについては、もう少しこれの検討をする必要があると私ども考えておるのであります。それからこの機会に申し上げることはどうかと思いますが、たまたまこういう言葉が使われたので申し上げるのでありますが、鈴木君の場合にも、よく近代的公務員の理念ということを申されるのですが、この言葉の解釈一体どういうことでありますか。近代的公務員の理念ということの解釈を、この際承つておきたいと思います。
  192. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 非常に学問的なお尋ねであります。はたして私に申し上げられる資格があるかどうか疑問でございますが、私どものごく貧弱なる頭脳で了解しております程度のことを申し上げますと、この理念がだんだんと徹底して来たのは、アメリカの近代的人事行政ということのように承知しております。民主主義の原則に従つて、ある公職者が選挙されました場合においては、自己の施策を行うために、今までの在職者をすべて放逐いたしまして、自己の所信に合致するものを登用して行く、あるいは自己と特別の関係のあるものを登用して行く、こういう形で公務員制度というか、公務員政策がとられたのが初期のアメリカにおける人事行政の方式であつたそうでございますが、そういう方式を改めて、すなわち選挙の際の一つの獲物の配分というような感じにこれを用いませんで、ほかに成績主義に基く人の登用、また一旦登用せられましたものにつきましては、正確なる勤務成績の許定等によりまして、その能力の実証に基いて爾後の昇進、その他を行う、また身分の廃除につきましても、必ず法定の一定の手続によつて、これを処理して行く、こういうようなことが近代的な人事行政の持つて行き方であろうと了解しておるのであります。この法案自身は、そういうような諸原理、諸原則を取り入れたつもりでございますので、この法案自体がいわばそれを再現しておる、かように考えております。
  193. 門司亮

    門司委員 どうもなかなかむずかしい問題で、私もこういうところで実は議論したくなかつたのでありますが、そういう言葉が使われて何だか法案自身の内容がぼかされて来るようなことになつて参りますので、ことさらに聞いたのでありますが、この近代的の公務員としての理念というものは非常に解釈が広いのであつて、單に今鈴木さんが話されましたような事柄だけではこれは済まされない。これについては御存じのように公務員としての理念をどこから持つて来るかということは、おそらく日本の憲法から考えて来ることが、私は正しいと考えておる。今までの日本の憲法にはこういうことは書いておりませんで、新しい今度の憲法に初めて公務員のあり方というものを、一応明示しておるわけでございます。従つてどもは何もアメリカの例を引かなくても、日本の憲法に基く公務員としての立場から立論した方が、理論上明確になり得るのではないかというように、実は考えておるのであります。従つてわれわれが考えて参りますと、公への奉仕者であるということが憲法で明確にされております以上は、この理念に基いて公務員に対する理念というものがやはり出て来なければならない。そういたして参りますと、公への奉仕者である、だから基本的人権というものも、ある程度制約することができる。さらに国民に與えられております選挙権、政治的な活動も大幅に制約することができる、こういうことが必ずしも近代的な公務員の理念ではない、こういうふうに実は解釈をするのでありますが、国民の当然の権利は、これを固有の権利として十分認めて、そしてその上に憲法で定めております公への奉仕者であるという自覚と責任を持ち得る公務員制度というものが行われることが、きわめて短い言葉で申し上げますならば、正しい意味の近代的な公務員理念でなければならない。これをむりに近代的の公務員の理念という言葉で押しつけて行つて、そしてそれを行わしめるためには、政治的な活動ということを自由にやらしてはいけない、あるいは公への奉仕者であるということをむりに押しつけることのためには、使われておる側が国民を相手にして、ストライキをやるというようなことはけしからぬいうことが法律で定められて、その理念を達成しようということは逆の行き方だと思います。もし正しい意味の公務員としての理念を発揚しようとするならば、先ほど申し上げておりますように、真に地方公務員なり、国家公務員が、公務員としての自覚と責任の上にそれを果すべきものであつて、これを法律で強要して、そしてお前たちはこうすることが理念に合致するのだということで、これを束縛するという行き方には、われわれは承服できないのであります。ところがこの法律にはしばしばこういう言葉が使われておりますが、法律内容は後段で申し上げましたように、そこへむりに持つて行くことのために、政治的の活動行為というものを大幅に制限したり、あるいは労働者としての固有の権利を剥奪したりするということは、これは理事者の方からむりにこの近代的の公務員としての理念を押しつけたものであつて、これによつて今あなた方がお考えなつておる、近代的の公務員としての理念の具現には決してならない。またなるということは強制された行き方であつて、決して正しい意味の理念の具現にはならないというように解釈するのでありますが、これ以後この法律を審議する上には、そういう学問的の議論にわたるような言葉はなるたけ使わないようにして、実際上の問題でこれを議論して行きたいと思うのでありますが、議論することがいいというなら、一日でも、二日でもこのことだけで議論してさしつかえないと思いますが、それも非常に迷惑だと思いますから、なるたけそういうわからぬこと、縁の遠い抽象的なことによつて、この法律を一律しようというような考え方だけは、ひとつ愼んでもらいたいというよりも、控えてもらいたいということをこの機会に私は申し上げておきます。  それからその次に聞いておきたいと思いますことは、第八條に書いてあるのでありますが、人事委員会の権限の問題でありさらに公平委員会の権限の問題でありますが、十一までここにずつと書いてあります。この十一までの項目の全部は、人事委員会が事務を処理するということであつて、これは人事委員会の権限ではないと考えております。従つて先ほどから申し上げられておりますように、これを勧告すると言いましても、これは單に事務の処理であつて、何らの権限はない。四項に「人事行政の運営に関し、任命権者に勧告すること。」と書いてありまして、ここで勧告という文字を使つておりますが、第八條には「人事委員会は、左に掲げる事務を処理する。」とありまして、事務を処理すればいいということで、さきに申し上げましたことがはつきりここに書いてあるのです。何ら権限は與えておらない。勧告すると四項にはつきり書いておきながら、この勧告は單なる事務の処理であるというふうに考えて参りますと、一片の紙に書いたものを送達するにすぎない、これを送つてやるにすぎないのであつて、何らの権威を持たない。従つてこの第八條の解釈をもう少し私は強いものにしたいと考えておりますが、この点に対する当局のお考え一体どうであるか。
  194. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは門司さんの言われるような意味も十分わかるのでございますが、今まで政府の提案いたしましたいろいろの法律の表現方式としては、特定の機関の権限の内容を表現いたしまする場合に、ある特定の事務を処理するというような、こういう方式の表現を用うる場合が非常に多いのであります。事務を処理すると申しましても、別にこれは権限がないのだというような意味では毛頭ないのでございまして、たとえば地方自治法等においても地方公共団体が、いろいろの事務を処理する、こういう言葉を使つておりますが、それは最も広い意味における表現でございまして、要するにこれは権限の範囲を示したのであります。他のいかなる機関もこういう種類の権限を持たないわけでありまして、人事委員会に対して特にこういう権限を與えた、こういう意味であります。
  195. 門司亮

    門司委員 処理という言葉と権限の問題でありますが、私はなおこれにつけ加えて申し上げたいと思いますことは、この処理されたというか、当局では権限というお話であるかもしれませんが、これを受けて立つておりますところの勧告を受けたいろいろの機関は、これに対してどういう責任を負わなければならないかということが、これにはつきり明記されていないのであります。この点一体どうお考えになりますか。
  196. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 勧告という言葉は、すでにいろいろの立法例に用例があるのでございますが、單に法律上の根拠なくして申す勧告とは違いまして、法律において一定の場合に勧告する権限を與えました場合におきましては、相手方に対してその勧告を受ける法律上の義務を課しておるということが言えると思うのであります。但しその勧告をそのまま実行するかしないかということは、その勧告を受けました相手方の、これは自主的の決定にまつわけでありますが、とにかく人事行政に関しまする有権的な人事委員会から任命権者に対して勧告がありましたならば、これはやはり尊重せられるであろうと、私は期待いたしておるのであります。
  197. 門司亮

    門司委員 むずかしい問題でありまして、珍重するであろうということを考えて、立案者の考え方がそうであつたということだけで、一体その勧告が重要視されたものと考えて、ここで勧告するという文字を使つて、これを今お話のように実行されるだろうということになつて参りますと、やはり抽象的文字でありまして、受け入れる方でこれを重要視しなければならないとか何とかいうような、ある程度拘束力を持たないとまつたく死文です。拘束力を持たないで、ただ勧告したり常識的に聞くだろうということだけでは、私はこの人事委員会決定というものは死文にひとしいと思います。この点についてどういうふうにお考えなつておりますか。常識的にあなたならおそらくやられるであろうが、あなた以外の任命権利というものは、なかなか人事の勧告をすなおに受取らないと思うが、せめてごく弱い言葉で、「これを尊重しなければならない」というくらいの言葉をここに入れて、やはりある程度の拘束力持つていないと、何ら効果もない死文にひとしいと解釈できるのでありますが、そういうふうにお考えにならないかどうか。
  198. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 人事委員会の権限は第八條に列挙いたしてございまするが、人事委員会の権限の中で、あくまでも人事委員会考えておりますることを、そのまま実現をして行かなければならぬ。また実現せしめなければならないというような種類の事項につきましては、表現の方法をかえておりまして、たとえば職階制に関しましては、六号にございまするが、六号に計画を立案し、及びこれを実施すること、こう書いてございます。そういうふうに人事委員会の持つております権限の中で、あくまでもその実現をはかつて行かなければならぬものにつきましては、このような書き方で、それぞれ各項に列挙いたしておるのであります。その他の一般的問題につきましては、やはり人事委員会の勧告というものを強制的、義務的なものにいたしますことはいかがかと考えまして、それはやはり各任命権者に対しまする人事行政運営上の一つ考え方を示すものとしてこれを扱う。こういう機能を人事委員会の権限の一つに加えたわけでございまして、人事委員会が持つておりまする権限の種類に関しまして、それぞれ強弱の色彩を持つた働き方を與えておるわけでございます。
  199. 門司亮

    門司委員 これは人事委員会の使命の問題でありますので、もう少し聞いておきたいと思いますが、ただいま鈴木さんの引例されました第六号であります。職階制に関する計画を立案し、これを実施するということが書いてありますが、この職階制というのは実際は地方公務員にとりましては、必ずしもいいことばかりをきめるわけではございませんので、こういう問題に対して人事委員会は非常に権限を持つてつて、大切な人事行政に対する問題に対してはただ勧告しつぱなし、相手方はこれについて何ら考慮を拂わなくても、反面から解釈すればいいということになる。その次の九号の給與の問題、勤務時間の問題、こういう問題についても必要な措置をとるということになつておりますが、その次の十号にもやはり同じように必要な措置をとる、こういうふうに書いてありますが、その「必要な措置」というのは何を意味するのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  200. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 職階制につきましては、たまたま引例として用いまして、それが必ずしも適当でなかつたと思いまするが、職階制の実施につきましては、さらに十分の準備期間を持ちましてこれをやつて行く予定で、施行の上でも段階をつけておるのであります。今御指摘の第九の「勤務條件に関する措置の要求を審査し、及び必要な措置を執ること。」というのは、さつきちよつと申し上げました第四十六條の関係でございます。四十七條に、その結果に基いて、その権限に属する事項については、みずからこれを実行しなければいかぬ、こういうようになつております。その他の事項については、権限を有する地方公共団体の機関に対して必要な勧告をする、かように相なつております。  それから四十九條には、今の第十の不利益な処分審査規定がございますが、ここで懲戒処分をするということは不利益な処分でありますが、そういう場合に、必ず説明書を交付しなければならぬ。職員は説明書の交付を請求することができる、こういう権利を與えておる。任命権は請求を受けた日から十五日以内に説明書を交付しなければならない。交付しなくても、不利益な処分審査の請求を持ち出すことができる。交付を受けた後三十日以内に審査請求ができるというのが四項の規定でございます。その結果とるべき措置というのが第五十條にあるわけでありまして、ここでは第二項に、人事委員会審査の結果に基いて処分を承認する、修正する、あるいは取消しする。必要がある場合には、とられた不当な措置を是正をして、それを回復するための指示をしなければならぬというような強い権限を認めておる次第でございます。
  201. 門司亮

    門司委員 いずれ今の四十六條以下の問題につきましては、四十六條のところで私はもう少し申し上げたいと思うのでありますが、それは單に措置をとるということを四十六條で規定してみましても、公務員が給與に関する問題を地方公共団体に要求して、それに対する事務的な問題に対する措置であると考えておりまして、実行する措置でないように実は四十六條を解釈するのであります。従つて四十六條において、なおこれに対する質問をいたしたいと思います。  その次に聞いておきたいと思いますることは、人事委員会の規則の九條であります。九條の問題として聞いておかなければなりませんことは、ここにずつといろいろ欠格條項が書いてあります。そして欠格條項の中で、二人以上が同一の政党に属することになつた場合には、これらの者のうちの一人を除き、他の者は地方公共団体の長が議会の同感を得て罷免することができる、こういうふうに書いてあるのでありますが、この地方公務員法のねらいとしておしまするものは、こうした政党の運動を全部実は禁じておるにもかかわらず、これを監督すると言いまするか、そのかわりに保護するという規定でありまする法の精神を最も強く運用しなければならない、人事委員会が政党に所属している者でいいという規定は、この法律の建前から言つて、実はどうかと私ども考えるのであります。従つてこの問題は三人の中で二人が同じ政党に属することはいけないが、おのおのが政党に属していい。そこで單なる政党に属するということについて、ここで聞いておきたいことは、政党の幹部であつてもいいかどうかということであります。
  202. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 お話のごとく、人事委員につきまして公正なる服務を要求されるということは、私どもつたく同感でございまして、同じ條文の第十項に第三章第五節というのは、第六節の誤りでございまして、「第三章第六節の規定は、委員の服務に準用する。」、こうなつております。これはいろいろお話のありました第六節の各種の服務に関する規定、政治的行為の制限をも含めました服務の規定か、すべてこの人事委員には準用に相なつておるのであります。そこで三十六條のたとえば政治的行為の制限の規定も準用になつております。三十六條第一項の規定は職員が單に政党員となることは何らこれは禁止いたしておりません。政党の役員となつてはいけない。また政党の結成に関與してはならないというようにしております。また政党の構成員となるように勧誘運動をしてはいけないということだけでありまして、政党員になることは一向一般職員に対しましても禁止いたしておりません。そこで今御指摘の第五項でございますが、委員のうちの二人以上が同一の政党に属するというような事態も、第六節の規定を準用いたしますると出て来るわけでございまして、單に政党の中に入るということだけが認められておるわけでございますから、そういうことがあり得るわけであります。しかしながら万一にもそういうようなことがありましたならば、あとから政党に加わつたために、ある人が入つたために二人以上が同一政党になつた、こういうような事態が起りますので、そのあとから入つた者を議会の同意を得て罷免をするこういうようにいたしておるのであります。
  203. 門司亮

    門司委員 私どもといたしましては、今誤植だと言つておられましたですね。第三章第五節は第六節ですね。その通りですね。
  204. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 その通りです。
  205. 門司亮

    門司委員 これは誤植なら誤植でいいのでありますが、誤植と一応解釈いたしておきますが、私は一応誤植でないと解釈しておつたのでおかしいと思つたのでありますが、実際言いますと、これは誤植が非常に多いのであります。これは余談でありますが、わずかなこの法律の中に二十六、七箇所誤植があるのであります。この法律がいかにずさんなものであるかということがわかるのでありまして、実際の法律自体を見て私は驚いたのであります。たしか二十七箇所ないし八箇所あるはずだと思います。ことにこういう節を一つ間違えるというような大きな誤植を持つておりまして、きわめてずさんな出し方がされておるということが、私には考えられるのでありますが、そういうことは別といたしまして、われわれはもしそうだといたしまするならば、この公務員の政治的活動を非常に大きく制約いたしておりまして、先ほど申し上げましたように、政治的に地方行政が運営されることを戒めております以上は、人事委員会はでき得るなら、ここにあります字句を使わないで、いずれの政党にも正式に所属しない人が望ましいではないかというように、実は考えるのであります。他人の政治活動を監督する者が、やはり政党に所属しておりますと、政治活動をしないとは実はえないのであります。單に政党に所属しておつて、そうしてこれが投票するだけだというようなことは、なかなかないじやないかというように考えておりますので、他人の政治活動を非常に制約しております建前から申しますと、当然これは政党に所属しない人が望ましいということをこの法律に書かれることがいいじやないか。他の公共委員会であるとか、あるいは選挙管理委員会であるとかいうようなものとはこれは違いますので、その点は一体どういうふうにお考えなつておりますか。
  206. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 御見解は一つの見解とは存じますが、今の国家公務員法におきましても、人事官に対して單に政党員であることを禁じておりません。政党員であることはさしつかえないことになつているのであります。全体の健全としていろいろ基本的人権の問題について、活がございましたが、やはり單に党員となるということ、投票権を行使するというようなこと自体は、これは国民に広く平等に許さるべきことでありますので、そういうようなことについてまでも制限をすることはいかがであろうか、かように考えております。
  207. 門司亮

    門司委員 時間が遅くなつておりますので、私一人でしやべつておりますから、この辺でやめたいと思います。  次は十一條でありますが、この十一條には委員が二人以上出席しなければ会議を開くことができないということになつております。なおその次には「公平委員会又は人事委員会の議事は、出席委員の過半数で決する。」こう書いてありますように、これは当然全員出席しなければ過半数になりませんので、二人以上と書いてあるから、これは三人と解釈すればそれでいいのでありますが、もし二人であつた場合には、これは過半数という数字は出て来ません。従つて二つの條文を読むと、これは三人以上でなければならぬということになる。三人以上ということは全員であります。ことさらにまわりくどくどうして一体二人以上でなければならないというような字句をこの場合使つているか。これは何かはかに考え方があるのですか。
  208. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 一応御疑問になると存じますが、これは要するに会議の原則をそのまま持つて来ただけでありまして、ただ構成員が三人でございますので、ちよつと読みますとそのような感じがいたしますが、要するに二人以上集まらなければ会議を開いてはいけない。従つて二人ならば会議を開いてもよろしいということになるわけであります。そして第二項の方では、議事は出席委員の過半数で決するということでありますから、三人出ておりました場合におきましての過半数は二人でございまして、一人では過半数を過ぎませんので、やはり二人になりませんと過少数にはならぬわけであります。
  209. 門司亮

    門司委員 それは非常におかしいと思います。そういう解釈をすれば、曲げてでもかりに議事が過半数で開かれるといたしますと、これは二人で開くわけでありまして、そうすると、議事の運営でありますが、二人の場合は全会一致でなければならないということになつて参りますので、もう一つここに規定を設けておかないと非常に誤解ができる。二人の場合は、これは過半数であるから、出席委員は過半数である。従つて会議を開くことができる。しかし過半数になるには、二人が賛成しなければ過半数にならない、ということは、全員賛成がなければ過半数でないということになるのであります。一体過半数ということと、全員ということはどこで区別をつけるか。過半数であるということが全員にならない場合には、過半数という言葉は使われないと思う。全員の場合は過半数という言葉を使う必要がないと思う。これはどう考えても、このままの規定ではいろいろ疑問が生じやすいことと考えますので、自治庁の役人のように、十分割切れる諸君だけが集まつていればいいのでありますけれども、過半数議事を開いて、その過半数で決するということになると、三人の場合は全員でなければ過半数にならない。三人の場合でもそういう意見が出る。こういうことはどうも私にははつきりしたことが見出せないのでありますが、ひとつもう一項これに加えて、そういう間違いの、曲げた解釈のないように、三人の過半数は二人だから、二人が出席していればいい。全員でなければならぬというようなややこしい解釈をしなくてもいいような法律解釈ができないものでしようか。
  210. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今の全員で決するというのと、過半数で決するというのとでは、原理的に非常に大きな違いがありますが、構成員が三人になつて参りますと、その違いが非常に接近して参ります。しかし三人の場合におきましても、全員で決するということになりますと、三人出ております場合には三人でありますが、過半数ということになれば、三人の場合には二人でいいわけであります。ところが出席者が二人ということになりますと、過半数ということと全員ということは同じことになるわけであります。これは三人の場合と二人の場合を通じて規定いたしておりますので、一つの言葉で表現をいたすといたしますならば、過半数という方が適切であるとかように考えます。のみならず国の人事官の会議につきましても何様な規定があるのであります。
  211. 門司亮

    門司委員 国の人事委員会規定で、そういうことがあるから、これでいいという筋合いのものではないと思う。それが間違いであるならば、直すべきだ。これはあげ足をとつて非常におかしいようでありますが、会議が二人以上で開かれる場合の過半数というのは、全体の数字の過半数ではないと私は考えております。三人の場合を予想した過半数ではない。会議に三人おれば、二人の場合の過中数がその会議に限つて私は採用さるべきだ、こう解釈するのが正しいと思う。この委員会は三人だから、二人が過半数だということになりますと、出席していない者をこの構成要素の中に加えて解釈をして行くということは、議事の運営上は疑問があると思う。これはいずれの場合でも、会議がかりに開かれておりまするならば、その会議出席しておる者の過半数でなければならないと思う。この規定から見ますと、二人以上でなければ開くことができない。しかも議事は過半数でなければならないということになりますと、二人以上の場合の会議の過半数は、今のお話では一人一人になれば過半数にならぬ。二人とも賛成しなければ過半数にならないから適用しないということでありますが、この点は議事の運営上非常に疑問があると思う。だからこういう字句に対しては、もう少し明確に書いておいてもらわぬと、こういうところから往往にして疑義を生ずる問題ができて来やしないかというように考えるのであります。出席しない者の一人を仮定してものをきめるということは、私はどうかと思う。これは出席議員の過半数ということが、私は議事の運営上正しいと思う。
  212. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第十一條の第二項は、人事委員会または公平委員会の議事は、出席員の過半数で決する、こう書いてあります。そこで出席している委員は二人でありますから、その二人の半数というのは一人でありまして、過半数ということになれば二人であります。これはきわめて事実明白であろうと思います。
  213. 藤田義光

    ○藤田委員 ごらんの通り與党席がほとんど空席となつておりますが、與党議員はこの五大法案を審議忌否されたやに、われわれは了解しますがいかがでございましようか。実は門司君が重大な発言中でありますから、定足数を欠いてやしないかと思いまして、一応御参考までに申し上げておきます。どうでしようか。
  214. 前尾繁三郎

    前尾委員長 どうぞ進行してください。     〔「具体的な提案をやれ」「これで採決しようか」と呼び、その他発発言する者多し〕
  215. 山手滿男

    ○山手委員 議事進行について……。昨日も私から地方財政委員長の出席を求めてお約束をしておいたのでございますが、この時間になつてまだ御出席がないのでございます。きようも知事会議もやつておりますが、地方に対する交付金の問題その他きわめて重大な問題が山積をしておりますし、その地方の熱望というものはきわめて強固なるものがあるのでございます。でありましてこの地方公務員法の審議にあたりましても、この問題をどうしても解決して、並行してかからなければならないという建前なんでございますが、野村さんの地方財政委員長の御出席はいかがでございましようか。
  216. 前尾繁三郎

    前尾委員長 今も参議院に行つております。さつきからずいぶん請求しておるのです。もうしばらく……。
  217. 門司亮

    門司委員 これで大体第十二條までの私の質問はないわけでありますが、あと十二條は事務的な規定でありますので、これは別段この法案にきわめて重要な関係があるとは実は考えられませんので、質問はいたしませんが、先ほどから私が申し上げておりますように、第一章から第二章に掲げてありまするこの法の基本となるべき法案の中にも、先ほどからいろいろ御答弁がありましたように、私どもは実はたくさんの疑義を持つものであります。それと同時にこの法案はきわめて未完成なものであると思う。地方の公務全体を縛ろうとするには、きわめて未完成なものである。従つてこういう未完成のものを出さなければならなかつた経緯を、ひとつ小野さんからでもよろしゆうございますから、この機会にお聞かせいただきたい。どうしてこれらの未完成のものを出さなければならなかつたか。
  218. 小野哲

    ○小野政府委員 お答えいたします。この法律案が未完成であるかどうかは、これは主観的な問題でありまして、私は必ずしも御意見に同感を表するものではございません。ただこの法律案をこの国会になぜ出さなければならなかつたかということは、これは主管の国務大臣からもすでに説明をいたしておると存じますけれども、さらに重複して私から申し上げますならば、現行の地方公務員制度がきわめて古い、いわば旧態依然たる状態にありますので、ものによりましては、地方公務員の地位なり、身分なりを保障するためには非常に不十分である。また人事行政の点から申しましても、きわめて不合理であるというふうなさらいがないことはないのであります。しかるところこの地方公務員法案は、地方自治法の改正の際にあたりましても、すみやかに地方の職員について総合的な法律をきめなければならないということで、政府としてもできるだけの準備を進めて参つたのでありますけれども、いろいろの事情から遅れて参つたのでございますので、政府としては一日も早く出さなければならぬような情勢に置かれておりましたために、できるだけ近い機会の国会に提案をいたしたい、こういうことになりましたので、幸いに関係各方面との協議も整いましたので、この法律案をこの国会に提案するに至つたような次第でございます。
  219. 床次徳二

    ○床次委員 門司委員から大体御質問がありましたので、なお漏れました点について二、三お尋ねいたしたいと思います。第七條の人事委員会または公平委員会の設置の問題でありますが、先ほど御説明がありましたごとく、公共団体が自分で置いてもよろしいし、あるいは共同で置いてもよろしい、あるいは委託で置いてもよろしい、この点は非常に地方団体の自主性を認めておられるのでありますが、本来から申しまして、この人事行政なるものの委託という問題は少しいかがか、あまりに自主性を認めておりながら、しかし自治団体自体がこういう人事の問題を委託するということは、少し取扱いが軽率に失するのではないかと思うのでありますが、この点はどういう御意見でありましようか。
  220. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 人事に関します問題は、地方団体の組織の上におきまして。最も重要な問題であることは御説の通りでございますが、しかしこの委託方式もあくまでも関係地方団体の理事機関なり、議決機関なりの意思の合致によりまして行うものでございますから、自主性をそこなうことはない、かように考えるのであります。大体が非常に職員数の少いようなところが、多いような市に委託するというようなことが考えられるわけでございまして、それをすべて自主的な決定にゆだねておるわけでございますので、そう支障はないというふうに考えております。
  221. 床次徳二

    ○床次委員 それから政府委員にお尋ねしたいのですが、将来実際にこの法案が動いて参りますときに、人事委員会あるいは公平委員会が、どのような形でもつて設置されるかということを御想像しておられるかどうか。相当の数の委員会ができるようにお考えになるのか、あるいは少数で足りる形になるか。この間もお話になりましたが、あるいは府県一つでまかなえるのじやないかという感じもいたしますし、あるいは各府県の地方のブロツクぐらいに置いておくというような形になるか。この点は、いかようにお考えになりましようか。共同でもつて一つ置いて、府県の便利なところで、これをやらせるという形も考えられると思うのです。実際にどれくらいの数が置かれるということを見通しておられるか。あるいは先ほどお話になりましたが、人口三十万以上くらいのものが大体置く、その他は共通あるいは事務委託をもつてつて行くというふうな予想をしておられるかどうかということ、承りたいと思います。
  222. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 お答えいたします。この法案が実施されました後の人事委員会の設置が、大体どういうことになるかという見通しの問題でございますが、これはあくまで見通しでございまして、どういうふうに確定いたしますか、はつきり申し上げますことのできないことは当然でございますが、大体私たちといたしましては、第七條第一項にございます都道府県、五大市は、これはもちろん申すまでもありませんが、その他の市につきましては、大体その規模あるいは職員数というような点並びに本法で実現いたそうといたしておりまする公務員制度の必要の緊要度というような点を、総合勘案いたしました結果、先刻次長が申し上げましたように、大体人口二十万以上くらい、こういうところでは大体職員数が、今までのいろいろな経験から徴しまして、一千人以上の職員数を持つような規模の公共同体においては、本法で規定いたしておりますような一連の任用制度、あるいは職階制制度というものを、実施されますことが適当な規模のものであるというふうに考えておるわけでありまして、実際の問題といたしましては、三十万程度以上の市には單独で人事委員会が置かれることになるのではないかと考えております。実際問題として、ここにはございますけれども、共同設置の方式とか、あるいは事務委託の方式というものは、あまりとられないことになるのではないかというふうに想像いたしております。
  223. 床次徳二

    ○床次委員 人事委員の取扱いまする仕事を見て参りますと、研究、調査等の問題も相当あります。具体的な職員に関する問題もありますが、一般的な問題もある。こういうものは、地方団体がいろいろ多様性は持つておりまするが、相当の部分は共通なものがあると思うのです。従つてこれは人事委員会を正式に持ちましたもの以外の市町村にも、これを連絡することが便利ではないか。公平委員会を置くだけの小さな町村におきましても、やはり人事委員会結論というものを利用して行くということが、職員の待遇改正その他の人事の行政の上から見ても、非常に役に立つのだと思いまするが、一応この規定から参りますると、公平委員会の方は、そういう方面の研究の機関を持たない、資料も少いというふうにも見えるのでありますが、この点人事委員会と公平委員会ができるだけ少い組織でもつて、その効果を共通でもつて利用し合うという趣旨を、もう少し明瞭に——活用すると申しますか、利用し合うという方法をお考えにならないかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  224. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 お答えいたします。床次委員の御発言の御趣旨は、まことに私たちといたしましても、同感であります。その点につきましては、いろいろ研究をいたしたのでありますが、その結果、情報の交換あるいは知識の交換というようなことは、これは人事行政の適正は運営を確保いたしまするために、ぜひとも必要であろうと思われまして、その点につきましては、八條の人事委員会の権限の規定の第六項に、人事委員会または公平委員会は、人事行政に関する技術的及び專門的な知識、資料その他の便宜の授受のために、国または他の地方公共団体の機関との間に、協定を結ぶことができるというふうに書いてございまして、これによつて今お述べになりましたような趣旨は、十分に達成できるのではないかというふうに考えておる次第であります。
  225. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま御答弁がありましたが、お互いができるだけ連絡して参りましたならば、いわゆる狭義の、何と申しますか、人事委員会の仕事は、各自治団体でもつて、そう個々に置かなくても、相当の部分共同でもつてつて行けるのではないかと思いまするが、従来から各地方に職員課、あるいは人事に関する係もおりますので、ある程度のものは共通で行ける。特に問題となる八、九、十ですが、こういうのはそうしよつちゆうあるわけのものでもございませんから、これだけは大体共通の一つのもので足りるのではないかと思うのでありまするが、そのお見通しはいかがでございますか。九、十というものは相当多数ケースが出て来ることを予想しておられましようか。
  226. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 人事委員会の権限の中の九と十の項について、どの程度の仕事の分量があるだろうかというような趣旨に関してのお尋ねでございますが、この勤務條件に関する措置の要求あるいは不利益処分審査というものは、やはり相当の分量が出て来るのではないかと考えております。しかしそれぞれの町村等で申しますれば、たとえば年末に際しての給與等についての要求でございますとかいうようなものが、第一の問題として考えられまするし、またたとえば行政整理で身分を失つたというようなものがありました場合の不利益処分審査というようなことが考えられまするので、町村等におきましても、やはりこれらに該当する事例はあることは若干あるであろう、かように考えております。
  227. 床次徳二

    ○床次委員 次にお尋ねいたしたいことは、先ほど門司さんから御質問がありましたところの両委員会審査の権限でありまするが、仲裁、裁定というような問題に関しましては、適当でないというようなお考えをお持ちになつておられるようでありますが、この際、裁定の権限までこの委員会に與えるということに対しまして、非常に多くの支障があるかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思います。先ほど門司委員からは、このことについて御質疑がありましたが、どうしても裁定の権限を持たせることは都合が悪いという積極的な理由がありますれば、お述べをいただきたいと思います。
  228. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 公務員の問題に関しまして、職員団体と地方公共団体の当局との間に、書面による申合せ、あるいは口頭の意思の合致がございまして、その内容を実現をして行くための一つの手段、方法として調停なり仲裁という方法がとれるかとれないかということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、公務員というものの性格から申しまして、罷業権あるいは調停、仲裁というものを裏づけといたします意味のいわゆる団体交渉の権利というものは、認められないと思うのであります。そういう建前をとつて参りますというと、それの問題につきまして調停、仲裁に持ち出して行くという形は、一応いたさないと考えておるのでございまして、そのかわりに、先ほど申し上げましたような勤務條件に関する措置の要求でございますとか、不利益処分審査というような形において、これを取扱いたい、かように考えているのであります。
  229. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの裁定の問題に関しましては、あるいは裁定という言葉が従来仲裁、裁定等に相当強く使われております関係上、この言葉がここに使うのにはやや適当でないというような御趣旨のようにも伺つたのでありまするが、公務員に対しまして、やはり單に審査、勧告という形でなしに、ある程度まで事柄を解決して行くという意味におきましては、一つの解決点まで到達しておくことの方が、委員会としての職能を発揮するために非常によいのではないかという意味においてお尋ねしたわけであります。この点は一応さらに研究いたしたいと思いますが、ついででありますからもう一つお尋ねいたしたいと思います。  人事院規則にありまする公平委員会等におきましては、「判定」という字を使つて、いろいろ不利益処分に対する審査請求に当つておると思います。この判定という事柄、あるいは判定という性質、こういうものをこの委員会の中に持ち込むことはできないか、どうか。これを持ち込むことが人事委員会あるいは公平委員会の性質を著るしく害するかどうかということについて、御意見を承つておきたいと思います。
  230. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 判定という言葉を人事院の場合と同じに用いてはどうかということでございますが、これは不利益処分に関する審査の請求という、この四十九條並びに五十條の規定の中におきまして、これを審査という形において取上げております。言葉は判定と審査と違いますが、要するに口頭審理をやり、しかも公開をしてやるということを、一つの條項としてうたつておりまして、職員が口頭審理、公開審理を要求いたしまたならば、必ず公開の口頭審理で行かなればならぬということになつておるわけでありまして、手続としてはまさに裁判と同じような手続で進められるわけでございます。またその際の結果を審査の結果と申しておりまするが、これは判定と申しましても実質においてはかわりはないと思います。ここにありますように処分を証人し、修正し、あるいは取消し、必要がある場合においては、職員が受けるべきであつた給與その他の給付を回復するため、必要でかつ適切な措置をさせる等、その職員がその処分によつて受けた不当な取扱いを是正するための指示をしなければならない、こう書いておりまして、しかもこの指示につきましては、特に罰則におきましてこの指示に従わない者に対しては罰則を付しております。すなわち形は審査というようなことではございまするけれども、これは実質的には裁判と同じような、相当強い保障をいたしている次第でございます。
  231. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは野村委員長がお見えになりましたから、地方財政の問題を議題といたします。山手滿男君。
  232. 山手滿男

    ○山手委員 野村さんの方からお出しになりましたところの意見書を実は昨日受取りましたが、あなたの方からお出しになりました、この平衡交付金を百三十億出せという意見書、われわれはこれで十分だとは考えないのでございまするが、この程度のことでも何とかやつてもらうならば、私は地方のゆとりがないものも相当ずつて行けるのではないか、こういう気がするのでございます。しかしながら現実には補正予算で三十五億しか出されなかつた現状にあるのでございますが、昨日あるいは一昨日大蔵大臣に来てもらつて、いろいろ意見を聞いたところによりましても、きわめて遺憾な点がある。こういうふうに大蔵大臣自身も認めておいでになるのでございますが、その点地方財政委員会委員長としてどういうふうにお考えか、もう一度お伺いしたいと思います。
  233. 野村秀雄

    野村政府委員 百三十三億は政府の補正予算の決定前、すなわち公務員に対する年末給與一箇月という数字に基いて提出いたしました。その後国家公務員一箇月給與というのが、半箇月給與に相なりましたために、その額を約四十億減じ八十八億に修正いたしまして、当委員会意見書として提出いたしたわけでございます。この点を御了承願つておきます。  なおただいまの御質問の御趣旨については、私ども地方財政に関係しておるものといたしまして、この八十数億の平衡交付金の要求というものは、地方財政としても最小限のものを要求したのであります。これがさらに減額せられて三十五億ということに相なつては、地方財政として現在及び将来においていかなる事態になるであろうか。非常に現在及び将来を心配しておるのであります。過日も委員会において申し上げたのでありますが、あるいは法定外の課税をなすとか、標準率以上の税率を課する、あるいは寄付金をとるとか、あるいは事業を繰り延べたり、中止したりするようなことになりはしないか。また地方のそれぞれの団体の財産を売り食いするようなことになりはしないであろうか。こういうことになつては、まことに地方財政のため、地方自治のため、さらに国のために遺憾にたえないと存じます。私ども地方財政に関係しておるものとしては、これが收拾について実に言うべからざる心配と苦心とをいたしておるのであります。
  234. 山手滿男

    ○山手委員 先日私から平衡交付金の返還の件につきまして質問いたしましたところが、荻田事務局長の方から返しやすいようにして返してもらうつもりである、こういうふうな御答弁があつたように思つております。返しやすい方法についてどういうような方法をとつておられるかという質問をいたしまして、それに対して二、三お答えがあつたのでございますが、聞くところによりますと、返還をしなければいかぬ市町村などがございます。ところが返還しなくてもいい市町村もございます。ところが今度新たに三十五億の割振りをされるとこに、これは府県單位で割振つて、そして今後もらうところはいいのでございますが、返還をしなければならぬ分は、三十五億を差引してお渡しになつて、府県單位で押えておつて、出さなければいかぬ方の側からもらつて、さらに今後もらわなければならぬ方の平衡交付金は府県が責任を持つて埋めて行けというふうな府県單位で振り割つて行くという処置をとられておるやに承つておるのでございますが、そういうことをおやりになつたかどうか、私お伺いしたいと思います。
  235. 野村秀雄

    野村政府委員 私どもはこの意見書を国会へ提出いたしまして、国会の公正なる御判断にまつて、最後の御決定を見るものと思いまして、三十五億の配分についてはいろいろ事務的には考えておりますけれども、三十五億そのものについての配分については、まだ何も考えておりません。八十八億のわれわれの要求ができるだけ当国会において実現し得るように、実は希望しておるのであります。
  236. 山手滿男

    ○山手委員 わかりました。そういたしますと、その問題はこういうことじやないかと思います。今後平衡交付金をさらにお渡しにならなければいかぬ市町村もある。引揚げられる市町村もある。しかしこの三十五億とは別箇にそういうことがあるわけですが、その場合には府県のわくで、たとえていえば愛知県で名古屋市からはまだ四、五千万円引揚げなければいかぬ、しかし多治見市には相当渡さなければいかぬ、こういうことになつておるといたしますと、愛知県のわくで県が責任を持つてそれを操作して行くというふうなやり方で、平衡交付金の返還そのほかについて、御処置をとられつつあるやに承るのでございますが、そういうことはございませんか。
  237. 武岡憲一

    ○武岡説明員 その点につきまして、私からお答え申し上げます。さきに概算交付いたしました交付金の還付の問題につきましては、別途に規則をつくつたわけでございますが、そのうち大体半額程度を本年中十二月の十五日までに返していただくということにいたしたのでございまして、この半額分の還付につきましては、地方府県ごとに、市町村の中で返還せられまする額の二分の一と、さらに追加交付しなければならない部分との差額を今回支給をいたしまして、各府県で市町村の実情に応じて、具体的な還付の金額並びに時期をきめていただく、こういう操作を今回についてはお願いいたしておるのであります。
  238. 山手滿男

    ○山手委員 そういたしますと、それは府県が責任を持つてやるというふうなかつこうになるのでございますか。その操作は府県單位におやりになるというわけじやないのですか。
  239. 武岡憲一

    ○武岡説明員 操作は府県單位に、府県においてやつていただくことになるのであります。
  240. 山手滿男

    ○山手委員 そういたしますと、これはたいへんなことになるのでございます。なぜかというと、この地方財政は今委員長のおつしやつたように、市あるいは町村そのほかにおきまして、きわめて憂慮すべき状態なつておる。割振つてもらつた今をすでに使つてしまつておる。それを今現金を回收するか何かいたしまして、十二月の中旬過ぎまでに、半額を返すということは容易ならぬ事態が起る。今現に、御承知のように、給與のベース・アツプもやらなければならぬ、年末給與の支出も相当なものにかさんで来る、それに加えていろいろな事業なんかやつている。もう使つてしまつた分をさらに半分返せと言われても、その返す町村というものは非常に困ると私は思うのです。ところがそれを返す方と、割振つて新たに追加交付する方とは、府県が責任を持つて、府県のわくの中でお前たちがやれというようなことになると、隣同士の市町村でけんかをするようなことになる。地方自治庁の方ではうまくおのがれになつたと思うのでありますが、それではあまり地方がかわいそうじやないか。お互いに、お前のところが返さぬからおれの方の財源が困つておるのだというようなことで、これはたいへんなことになる。その点はとういうふうにお考えであるか。またどういうふうにうまくおやりになるつもりであるか、お伺いをしたい。
  241. 武岡憲一

    ○武岡説明員 市町村の中には、御指摘のように、今回ただちに半額還付するのに、相当困難な事情のある町村もあろうと思います。しかしながらまた一方におきましては、税收等におきまして、今回の規定改正によりまして、相当多額の徴税の見込みのある町村もあるわけでございまして、それらの確実に相当額の税の徴收見込みのついておりますところにおきましては、半額以上あるいは場合によりましては、全額あるいは三分の二というような額も還付してもらおうと思つておるのであります。そこらのところにつきましては、各町村の具体的な事情は、一々私の方でもわかりかねますので、その点の操作を県にお願いいたしておるわけであります。
  242. 山手滿男

    ○山手委員 その操作を県にお願いをしておるというふうに簡單におつしやるのでございますが、それは県としてはたいへんな迷惑でございます。それはなかなか容易なことじやないだろうと思う。これは委員長、とくとお考え願いたいのでありますが、その半額年末に返せという金額、これは道徳的に見れば、あれは概算渡しであつて、お前らに返してもらうのだということで、これは返さなければいかぬ性質のように見えるのでありますが、現実の問題としては、そんなに市町村の財政というものはやさしいのではないと私は思う。そういたしますと、どうしても平衡交付金の増額をしてもらうか何か、そういうところの強力な措置がとられなければ、個人もそうでありましようが、市町村も年が越せないのではないかと思う。その平衡交付金の返還という問題について、委員長のお考えをひとつお伺いしたい。
  243. 野村秀雄

    野村政府委員 先ほど武岡部長から御説明申し上げたように、この十二月十五日にはぜひ返していただきたいというように通牒を出しております。しかし現実の問題として返せぬところについては、これはわれわれとしてまた特に考えたいと思います。この点は返してもらうという建前で処理して行きたいと思つております。
  244. 大矢省三

    ○大矢委員 例の災害地の概算拂いの交付金の問題ですが、これは災害地によつては税金の免除をしたり、あるいは徴收の延期をしたりしているのですが、ことに救助法によつての率というものと、実際に使つた当時の金というものは非常な差額がある、これは非常に物価の値上りをしたりしていることを計算なしに、必要なものに対して市町村がやつているから、そういう非常な莫大な支出をしている。そこで概算拂いでもらつた、それは十二月の半ばごろまでに返せ、税金はとれない、こういうことで、私聞くところによりますと、災害地の概算拂いの交付金に対しては、これは御破算にするということを聞いておるのですが、どういうことになつておるか、一応この機会にお聞きしたい。
  245. 武岡憲一

    ○武岡説明員 災害地の概算交付を御破算にするというのは、どういう趣旨でございましようか。
  246. 大矢省三

    ○大矢委員 今申しましたような理由で、特別に災害を受けておつて、実際上徴收ができない。しかも救助法による率よりもさらに多くの金を使つておる。そこで災害地に限つて特例を設けて、もう取上げられないという、そういうことにきまつたのではないのですか。それとも、どうしても十二月の十五日ですか、それまでによけい行つたものはとらなければならぬというのか。それならば今給料も拂えないところが相当あるが、たいへんなことになると思う。その点は災害地に対する特別扱いはされておるのか、されぬのかということです。
  247. 武岡憲一

    ○武岡説明員 今回の半額還付の問題につきましては、ただいま御指摘のように、特別に災害があつたりしまして、実際の会計の運営に非常に困つて、歳計現金もないというような市町村があり得るということは想像されます。それから必ずしも災害がなくとも、先ほどお話のございましたように、今ただちにこれを返すことについて、相当困難な事情のある町村のあることも承知いたしておるのでございますが、一応建前といたしましては、先ほど申し上げましたような操作をいたしまして、その一方において半額以上も返せるような団体の税收入が、相当徴收の見込みがありまして、還付するのに困らないような団体につきましては、必ずしも半額ということでなく、半額以上の還付ということもわれわれとしては期待をいたしておるわけであります。ただそれを一々どこが返さない、どこが全額返せるというような個々的な指定は、私の方でいたしかねますので、原則的には先ほど申し上げたような措置をとつておるのでございますが、現実に今おつしやつたような事情がありまして、どうしても私の方でお願いをいたしましたような措置のとれないようなところにつきましては、別途考慮いたさなければならぬであろう。これは現実の問題として、そういう操作を考えざるを得ないのじやないかということは考えております。
  248. 大矢省三

    ○大矢委員 くどいようですが、それでは災害に対しては、何ら特別の措置を講じない、拂えるところは拂つてもらいたい、しかし実際上拂えないところには特別に考慮をする、こういうのですか。
  249. 武岡憲一

    ○武岡説明員 還付の問題につきましては、今回の半額のみで解決する問題でありませんし、さらにあとの処置につきましては、今の考えとしては、来年一月本決定をいたしまして、交付金の正確な交付額が決定いたしましたあかつきに清算をすることになつております。そのときまでに問題のすべてを解決しなければならぬわけでございまして、今回はとりあえずその第一次の措置をいたしておるわけであります。そこで今回のものにつきまして、私の方でお願いいたして飾りますような措置が、事実上できないような町村につきましては、別途しかるべく考慮をいたしたい、かように考えております。
  250. 門司亮

    門司委員 いろいろ問題が粉しておるようですが、この機会に少しさかのぼつてお聞きしておきたいと思います。実は交付されましたものを、大体各府県あるいは市町村で消費いたしておりまして、そうして返還が非常に困難たということは、おわかりだろうと思いますが、その原因はどこにあるかというと、あるいは私の聞き違いかもしれませんが、地方財政委員会事務局かどこからか、本年度の予算編成の際に、平衡交付金の支給は、大体昨年度の七割ないし八割くらいかと考えられるというような示唆を與えられておるのじやないかと考えるのです。その示唆に基いて、各都道府県並びに市町村は予算を編成いたしまして、そうして事業の運営を営んでおると思う。従つて今まで配分されておりますものも、そのわくの中であれば大体返還するものでないという考え方のもとに、公共団体のすべての事業が運営されているのではないか、そこに返せということになつて参りましたので、地方の公共団体としては、事業は進めておるが、金がなくなるということで、これを中止しなければならないというわけで、非常に迷惑しておるのじやないかと解釈するのですが、地方財政委員会事務当局から、さきに申し上げましたような、昨年度のこのくらいのものが大体配付せられるであろうから、そのつもりで予算を組んでみたらどうかという示唆が與えられたかどうか。
  251. 武岡憲一

    ○武岡説明員 ただいま門司さんがおつしやいましたような趣旨の示唆は、当時の地方自治庁はいたしておりません。本年度の当初におきまして、予算編成をいたします際に、平衡交付金も今後どれくらい来るか交付の目当がつきませんし、地方税法もまだ成立いたしておらないということで、各団体とも予算の編成につきましては、どういう目安で組んだらいいかということについて、相当迷つてつたわけであります。その当時地方自治庁として、予算編成について注意をいたしました点は、昨二十四年度の一般財源に比べまして、ある程度のものは、税收のほか交付金をもつて、財源的措置保障すべき最低線を目安として示されたのであります。その線は昨年の各団体の一般地方税、府県税收入と、それに配付税の第一極から第四種までのもの、それから今回の税法の改正によりまして、廃止になります補助金、いわゆるA補助金と言つておりますが、それを合算したものの最低九割のもの、今日の新税法による税收額と、今回交付する平衡交付金との額が、昨年の一般財源の九割以下にならぬように、この点までは考えようということは、地方自治庁といたしまして、団体に示唆したわけであります。その線において、各団体は目安をつけて予算を計上しておる、こういうことだと思うのであります。ただもしおつしやいましたような趣旨で解釈をして、そういうふうな予算を編成しておるところがあるといたしますれば、これは何かの誤解じやないかと考えております。     —————————————
  252. 床次徳二

    ○床次委員 当委員会におきましては、地方財政の確保につきまして、かねがね検討いたしておりますが、現在まで審査いたしました結果から見ますと、非常に懸念すべき点が多いのであります。特に今回野村地方財政委員会委員長から御報告もいただきまして、この点が明瞭になりましたので、私どもが平素から心配いたしておりましたことが、如実に現われて来たものと存じます。なおこの問題に関しまして、大蔵省からいろいろ所見を伺いましたが、私どもは大蔵大臣の説明によつては満足できない。大蔵大臣の言われますことについては、多分に、いまだ地方財政の実情に対して認識を持つておられないと思われる点が少くないのであります。現状のままに推移いたしましたならば、本年におきましてはもちろん、将来の地方財政に対しまして、非常に悪影響を與えるということを憂うるものであります。ここに地方財政確保に関しまして当委員会として意思表示をいたしまして、もつて必要な措置を講じたいと思います。ここに緊急動議として、地方財政確保に関する件に対して、皆様方の御決議をいただきたい。なお委員長におかれまして、その決議に基きまして、国会決議として、それぞれの処置をとり、政府をしてすみやかに必要な措置を講じ得るように、お運びをいただきたいと思います。委員各位の御賛同を得たいと存ずる次第であります。ここにその大要を朗読いたします。   地方財政の現状は、このままに推移するときは、その円滑なる運営に重大なる支障を来すおそれがあると認められる。これがためには、地方財政委員会意見書に述べられたごとく、地方財政平衡交付金を増額するとともに、シヤウプ二次勧告に示された措置をすみやかに講ずる必要があると認める。政府はすみやかに適当なる措置を講ぜられたい。   右決議する。 以上の通りであります。  皆様方の御賛同を得たいと思います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  253. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは、さよう決定いたします。
  254. 山手滿男

    ○山手委員 この決議案はこの委員会で満場一致きまつたわけでございますすが、予算委員会は、もちろんこの決議案の趣旨に基いて、動いていただかなければならぬと存ずるのであります。委員長の方でいろいろ関係方面とも折衝される必要もあるかと思いますが、本会議でこの趣旨を決議するように、予算委員会はもう数日のうちに終りに追つて来ておりますので、できるだけすみやかにこの決議を本会議に上程し得るように、はつきりやつていただきたいと思います。
  255. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいま山手委員から発言がございましたが、ちよつと字句の関係その他で誤解があるといけませんから、私から補充いたします。決議案と申しましたが、実は地方財政確保に関する件を当委員会として決議したわけでございます。本会議と違いまして、決議案ではございません。委員長の職責におかれまして、地方財政確保に関する件を関係方面にしかるべく善処していただきたい。それ以上具体的にいろいろ申し上げることは、委員長の職責でちやんときまつておりますから差控えたいと思いますが、万事よろしくお願いいたします。
  256. 前尾繁三郎

    前尾委員長 承知いたしました。
  257. 門司亮

    門司委員 今藤田君からせつかく御意見がございましたが、私どもにはどうもぴんと来ないのであります。実は当委員会先ほど決議いたしました事項につきましては、單に当委員会決議というようなことでなくて、地方財政の上からきわめて重大な問題でありまするし、特に都道府県の知事が会議を開き、あるいは市町村長が会議を開き、それぞれ地方自治体は、今日この問題を非常に大きな問題として取上げて参つておるのであります。従つて今本委員会で法定をいたしました案件につきましては、これをぜひ本会議に一応上程をいたしまして、そうして全議員の意想として、ひとつ政府にこれを送達することが、私は決議いたしましたことの最も効果的のものであるというように考えておりますので、ただ單に当委員会できめるということでなくして、実際の効力といたしましては、そういう手続が当然とらるべきである。同時にこの委員会意見というものは、これは何も関係方面の了解はいらぬと思いますので、一応予算委員会に、われわれの意思表示を委員長を通じて行つていただきたい。さらに運営委員会にこれを諮つていただきまして、私が先ほど申し上げましたようなことの実現をするために努力をしていただきたい、こう考えておるのであります。この点についてひとつ一応のお諮りを願いたいと思います。
  258. 河原伊三郎

    ○河原委員 床次聽二君提出の決議案は、本来ならばこれは決議案を要せずして、議員の手で、どうにでもできる権限を持つた議員が政府に要望する。または関係方面に要望するといつた趣旨に基いておるものでありまして、私どもといたしましては、穏健なる方法をもつて——平衡交付金を増額いたしますれば、増税をいやしますか、他の面を削るかのどちらかをしなければならぬわけでありまして、そういつたことにつきましては、穏健なる方法で趣旨を貫徹したいという民主党方面の意に賛成したのでありまして、ただこれを増額しさえすれば、ほかはどうなつてもいいというような趣旨でない意味の賛成でありますので、そういつた意味合いにおきまして、ただこの問題だけを取上げて、そうしてほかは顧みないというふうな行き方の門司君の意見には、同調しがたいのであります。
  259. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この決議案については万場御異議なかつたのですが、この取扱い方については、あとでよく御相談してきめることにいたしましよう。
  260. 門司亮

    門司委員 今委員長の裁量で、あとで相談するというお話でありますが、今の河原委員の御意見でありますが、私どもはそういう意見には承服しかねるのです。これが認められなければ税金をよけいとらなければならぬからというお話があつたのですが、私どもはもしこれを認めることのために、地方住民の負担が非常にふえるとは実は考えておらないのです。これは予算の内容を見ますと、私どもはそれらのものを出し得る可能性は十分あると思つている。そういうことを十分検討しないで、ただちにこれは税金に関係するからけしからぬということは——どもは政府與党ではありませんので、政府の立場に立つて物を考えるということだけは、この機会にぜひ避けていただきまして、われわれの立場においてこれを要求するということに、ひとつ御決定を願わなければ、大蔵大臣のような気持で議論をいたしますと、いつまでたつて議論のけりがつきません。
  261. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それだけの決議をしたということにして、本日はこれには散会いたしたいと思いますが……。
  262. 立花敏男

    ○立花委員 もう一つ地方財政委員会に念を押しておきたいのですが、この間、平衡交付金の取扱い方につきまして、荻田局長がこれはもう地方にかつてに使わすのだというふうに言われたのですが、この意見書によりますと、明らかに地方公務員の給與ベースの改訂。年末手当支給等のため八十八億円と、はつきり書いてあります。だからあなた方のような考えで、地方へやつてしまつて地方がかつてに使うのだということになつて参りますと——どもこれに賛成いたしますのは、多分に地方公務員の年末手当あるいはベース・アツプの財源が得られるのだという建前のもとで、賛成している。だから私どもはこの額だけで賛成をしたのではなしに、そういう詳細な点の地方財政委員会意見賛成したわけであります。この点が明確にやはり下までおりるように、ひとつお願いしたいと思いますが、この点委員長はどういうふうにお考えなつておりますか。
  263. 荻田保

    ○荻田政府委員 平衡交付金は、この法律をごらんになればおわかりになります通り、算定の基礎というものと使途というのは、全然別の問題であります。算定の基礎にこの新しい経費を入れたわけでございます。使途につきましては、法律で條件をつけることはできない。しかしおのずから財政需要に応じてこれだけふえたのでありますから、原則としては、地方団体は新しい財政需要に応じて、これを使うということは期待できます。     —————————————
  264. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この際お諮りいたしますが、ただいま審議中の地方公務員法案について、人事委員会及び文部委員会よりそれぞれ本委員会と連合審査会を開会会したい旨申入れがありました。なお労働委員会におきましても、近く申し入れるとのことでありますので、これら三委員会と連合審査会を開くことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  265. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお連合審査会開会の日時は、各委員長と協議いたしますが、本委員会といたしましては、十二月二日午前十時より開会することにいたしたいと思います。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後六時十七分散会