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金森国会図書館長 本年の四月から九月に至りまする
図書館の
運営経過の
報告を申し上げます。
大体が
数字にわたるものでありまして、非常にこまかいところに触れております。おまわしいたしておきました
数字の表をごらんくださりつつ、お
開取りを願いますると、いくらかわかると思います。いろいろ
項目がたくさんにな
つておりまするが、まず組織の問題であります。これは大体従前の形に
従つておりまして、格別な変化もございません。
現在
中央館は
一つの局と六つの部と
一つの分館を持
つておりまするし、
支部の
図書館は、各
官庁等のものが二十二ありまして、そのほかに、
上野と東洋文庫、
静嘉堂というような特殊のものがありまして、合計いたしまして二十五にな
つておるのであります。
衛星図書館という
言葉がもし使えますならば、私の方の
図書館は
衛星図書館とでも申しまするか、
中央に
一つの星があ
つて、そのまわりにたくさんの星がとり囲んでおる、こういう形に漸次
発展しつつあるのであります。内部の機構におきましては、特別なかわりもございませんけれ
ども、小さいながらもややかわりましたのは、さきにちよつと申しましたが、労働科学に関する
書物を四万冊ばかり急に手に入れたことから起
つております。ゲツチンゲン大学等にありました労働科学の
書物、その中には相当古い珍しい
書物をも含んでおりまするが、その
書物を四万冊ばかり無料で手に入れたのであります。これは種々なる関係におきまして、祖師ヶ谷大蔵に現在置いてあります。これは
書物を置く関係もありまするし、また
書物を
利用する関係もあります。その結果といたしまして、労働科学資料課というものを
一つつくりまして、いわば小さい
図書館がそこにできておる。そのための機構の変化があるのであります。
次にもしできまするならば、本年中にと思
つておりましたが、いかようになるかはよくわかりませんけれ
ども、さきにも申しました
三宅坂のところに、
政治法律の専門
図書館をつく
つて、特に
議会に都合のいいように運用しようと考えております。その結果その準備の
部局を設けております。
部局と申しましても、ほんの名前だけのことであります。
次に人事の面に移ると、これはごくわずか昨年
増員されております。その都度規則の改正をして、
議会の御承認を得ておりまするが、九月一日の現在で申しますると、定員が五百二十六人にな
つておるのであります。しかし実員は五百二十五人でありまして、一人だけ欠員を持
つております。それに当りまする欠員もただいまは補充をいたしております。
次に
国会に対する奉仕という点がございまして、大体私
どもの
図書館は、
議会の
調査に資するということが念願でありまするから、そのためにいろいろ御命令によ
つて調査をすることもありまするし、御命令を待たずして
調査することもありまするが、この刷りものの比較的初めの一というところにありまするように、この六箇月の間に百四十件
調査を求められまして、それに対してお答えをしておるのでありますが、そのほかにごく略式の
調査要求がありまして、それは二百十八件あるのであります。この点は
外国の事例などを見ますると、こんなわずかな
数字ではいけないのであります。アメリカでは一年間に三万件という
数字が出ております。これはせりもちと申しまするか、私
どもの方ばかりでもできませんので、次第にその時期が来る。今回の
増員はやはりそういうことをよく果すという目的でできております。とにかくその六箇月には正式には百四十件でありました。それからまた
調査を求められずとも、私の方で
調査をいたしまして、それを
印刷物等にして配るというのが表の二のところにございまして、今までいろいろな形で
印刷あるいは謄写をいたしまして頒布したものが、この関係において二十一冊出ております。そのうちの一部分はその余りと申しますか、
調査を広く活用いたしまするために、世間
一般に配布するというものもございます。その刷りものの表のしまいの方にあります世界人権宣言などというものは、牧野専門
調査員が
作成せられまして、今回の十二月の人権週間等には相当これを普及し得るものと考えております。
それから次に少し違いますけれ
ども、やはりその関係で、
国会分館において
議会の方々の閲覧事務を主としてや
つております。私
どもの
図書館は
議会にサービスをしておりますけれ
ども、場所によ
つて調子が違いまして、一番十分にサービスをしておりますのは、
国会の
建物の中にある
国会分館であります。次には
本館であります。世間で議員の方々が本をお読みにならないなんということをうわさしておりますけれ
ども、それは
本館の方においでにならないというだけでありまして、分館の方はかなり
利用せられております。その結果が、
図書館の貸出しと申しまするか、帯出者が四千四百二十七人、貸出し書数六千八百三十四ということにな
つておりますから、そこに来て閲覧された方は相当にたくさんあるのであります。勘定はできませんけれ
ども、まずその数を基本にしてその測定ができる。その数の数倍に当るだろうという予想をしております。
それからこれと少し違いますけれ
ども、関連して申しますが、私の方で主として明治時代の大きな
政治家等が自分で手控えをつくられたりあるいは自分で座辺に置かれたというものがありまして、散逸の姿にな
つております。そういうものは、
日本の憲法
政治の資料として貴重なものであります。その散逸を防ぎます
意味で、
議会の
建物の四階に部屋を特別にいたしまして、そこに集めておりますその概況を申し上げますが、伊藤博文、岩倉具視というような方のところから六千七百七十冊の
文献を
買い取
つております。それから
予算の関係で
買い取れないものにつきましては、西周、津田真道、森有礼、前田正名、伊藤巳代治というような家にあります
書物をお預かりをしております。これは数はそんなに多くはございませんが、それでも千百九十四冊ございまして、それ相当の
意味を持
つておるものであります。
それから次に少し飛びまして、
行政司法各部門の奉仕のことを御
説明申し上げまするが、
中央に
図書館があ
つて、各
官庁に
支部図書館を置いて、その全体の間の融通をはか
つて行くという制度は、
日本特有のものでありまして、まだ
外国にも生れていない、いわば研究課題として扱
つていいものだと思
つておりまするが、私
ども極力その面において加力をしております。その結果と申しまするか、この
行政、
司法各
支部図書館の
活動は、実質上は近ごろ相当めきめきと発達しております。表の五のところにございますが、おそらくは多くの方が意外と思われるくらいに
活動しておるのでありまして、たとえば閲覧者だけを見ましても、この六箇月間に、この表にありますように、相当の数に上
つております。また
書物をそこから借り出すというものも非常に多いのであります。そのうちの貸出しの
書物を計算して見ますれば、五万九千三百三十六冊にな
つております。こういうことは、いわば縁の下の力持ちみたいに外からは見られておりまして、各
官庁に
支部図書館があ
つても、大した
活動をしていないのじやないか、いつ行
つて見ても、何やら陰鬱な物置のような感じがする、こういうようなことをときどき聞きまするけれ
ども、私、各
支部図書館をまわ
つて見ますると、
経済的に恵まれませんために、幾分乱雑な点がないとも言えませんけれ
ども、今申しましたように、貸出し
図書数が五万九千三百三十六冊あるというようなことは、相当大きな
数字であります。また閲覧の
図書も十三万四千六百三十六冊という
数字にな
つております。これは私の方の
図書館の
仕事の中で相当重点を置くべきところではなかろうか。
日本のような
調査その他の発達不十分なところにおきましては、
支部図書館の行き道というものが、相当注目に値するものと考えております。時間もございませんので、
印刷物によ
つて大体ごらんになることを願います。
次に
一般の人に対しまして、世間
一般に対しましては、どういうような
効果を持
つておるかと申しますと、これも第十の表に、月別の閲覧者がありまして、出ておりますが、相当大きな計数にな
つております。合計いたしますると、この六箇月間に
図書館に来て本を読んだ人が、二十二万四千七百二十一人という数にな
つておりまして、この数はいろいろのものを含んでおりまするが、とにかく漸次
発展の勢いにあることだけはわかるものと思います。
なおいろいろこまかい
調査をしておりまするが、さらに
図書館らしくないと申しますか、つまり特殊な
活動といたしては、学術
文献摘録ということをや
つておるのであります。これがいいか悪いかということにつきましては、多少のまだ研究内容を含んでおります。と申しまするのは、今世界的に
図書及び
知識を流通させるということが行われておりまして、
図書館が一番世界的に働いております。
外国へ送りまする
書物、
外国から受取りまする
書物というものが
——先の方に出ておりまするが、相当たくさんのものでありまして、こちらから送るものも一年に三万一千冊ずつあるということになり、向うから来るものも、勘定のできない点もありまするが、相当の数に上
つております。あるいはまた
外国からいろいろな資料をわれわれの
図書館を経由して求められるものもございまして、私
どもの方の手を経由して
外国へ送つたものも八千九百四十冊ありますし、あるいは国内から
外国に発送したものも三万六百冊というふうにな
つておりまするが、その線に沿いまして
一つの問題は、
日本で雑誌等において研究せられた
知識の中身が
外国にもわかるようになりたい。これは
外国側の希望が強いのでございます。科学の雑誌が主でありまするが、つまり物理学、化学に関しまするいろいろな雑誌が出る、その論文の中に現われておりまする一番
根本の論点というものが
外国によくわかりますれば、それが研究者に非常に利益を与える。こういう
書物そのものではない、
書物の目録でもない、けれ
ども、目録を少し引伸ばしたような
文献摘録というものが、たくさん
要求せられております。しかし
日本でだれがこれに応ずるかということになりますと、現在のところでは、十分それに応じた
活動をしておるものは、ございません。私
ども図書館の
仕事かというと、これはちよつと
図書館の
仕事を超越しておるのじやないか日録、索引をこしらえて、中身のアブストラクトをつくるのは行き過ぎだ。そういう疑問もございます。しかしこういう疑問を言
つておりますると、世界の要望に合うことができませんので、ひとまず私の方でこれを始めております。
日本で発行されておりまする学術論文のうち、とりあえず自然科学関係の論文の摘録を収集、整理いたしまして、
外国と交渉をして、それが世界的な
印刷物の上に載
つて来る、こういうこと。これは試みの
仕事と申しまするか、あるいは
よそでほんとうにや
つてくれれば、そつちへまかしていい
仕事かもしれないと思うのでありますが、そういうことを本年の七月三十一日以後始めたわけであります。これはいろいろな影響がありまするので、四方の様子見つつ進行をしておるありさまでございます。
それからまた刊行
出版物と申しまするか、私の方で若干の
出版物をこしらえております。その
出版物は
国立国会図書館法の中に
要求せられておるものもありまするし、それ以外のものもございますけれ
ども、表の第十四というところに出ております。そのうちの一番おもなものに雑誌記事索引というのがありまして
日本で出ておりまする
人文科学の雑誌、自然科学の雑誌の、これまた数はたくさんございますが、そのうちの相当の数を網羅いたしまして、その記事の索引をこしらえて、毎月一箇月分ずつ締め括りをいたしまして
印刷に付しております。これはまだ
日本でよく知れわた
つていない形でもありますけれ
ども、近ごろ
外国から相当これに注目をされまして、
外国の
文献と交換もいたしております。
一般に売り出してもおります。それから収書通報というもの、これは特殊なものでありまして省略いたしまするが、国内
出版物目録という
印刷物を私
どもの方で発行しております。これは
法律によ
つて要求せられておるものでありまするが、例の警察上の取締りがなくな
つてから、
日本ではどういう
出版物が出ているのかほとんどわかりません。どこへ行
つて聞きましても、
出版物の網羅的なリストはないのでございます。私の方でもこれをつくる適当な手段もございません。けれ
ども中央図書館は自然に納本の義務や、いろいろな関係がございまして、大
よその
出版物を知り得ることもございまして、これを継続して発行しておりますが、これは相当困難な事業であります。
この
印刷カードということは先ほ
ども少し申しましたが、
印刷カードは現在相当こしらえておりまして、今までこの六箇月間におきましては六十二万二千二百九十一枚
作成をいたしました。これは六十二万と申しましても、
一つのものについてたくさんこしらえてございますから、種類は一万五千八百二十九冊分に該当しておりまするが、とにかく六十二万の
カードをつく
つて、
日本及び
外国にこれをまわし、またわれわれ
図書館が非常に活用しておるのであります。
それから次に写真複製業務というのがございます。いろいろな
書物または
書物に似たものでありまするが、それを映画のフイルムのようなものに写しまして、
書物のかわりに使うマイクロフイルムというものが、世界の趨勢としまして発達して来ております。私
どもの方の
図書館でも二年前から、何とかしてこれを
実行したいものと思
つておりましたけれ
ども、実は
予算もございませんし、機械を
外国から買うということが
経済上手配もできなかつたのであります。ところが細々ではありまするけれ
ども、幸いに
一つの写真を写す
設備を私の方で預か
つておくということができまして、それを活用いたしまして、この六箇月間には一万四千九百三こまを撮影しております。その大部分は
外国ではフーバー・ライブラリーであるとか、そのほかの、あるいはハーヴアードなどへも行
つておると思
つておりますが、
外国に行
つております。また
日本の中におきましても、建設省その他の
官庁側からして、相当御希望もあるのであります。これはおもに保存しておきたいところの文書類
——書物でなくて文書類の保存あるいは古い速記録で余部のなく
なつたもの、こういうものが一番適しておりまするが、ともかくも一万五千こまだけや
つております。但し機械は私
どもの方のものではございません、遺憾ながらアメリカの
国会図書館から借用をしておるわけであります。
大体そんなふうでございまして、一生懸命にや
つておりまして、大体において順調に動いておる。こうお答えできると考えております。