○
加藤(充)
委員 日本共産党を代表して本
法案に
反対の
意見を申し述べます。
まず形式的に問題を見ました場合に、
ベースという
言葉が一応通用しておりまする立場から言いますならば、現行の六千三百七円
ベースにXをプラスしたものでなければならないと思いますし、私
どもは次に述べるような理由をも
つて、現行六千五百円
ベースに少くとも五千四百円を一律に加えた額、いわゆる九千七百円
ベースをとるべきであると思うにもかかわらず、本案はそれを採用しておらぬという点がまず
反対の第一点であります。なぜ九千七百円
ベースをとれというのか。それをとりきれない
給與案に対してわが党か
反対するか。九千七百円
ベースは全
公務員労働者のむりからぬ統一した要求である。
民間給與に比して正当な、まさしく
給與上のつり合いを得た妥当な額である。この点について付言いたしますが、
先ほど民主党の
平川君からの御
発言もあ
つたようでありますけれ
ども、
国家といえ
ども、勤労者たる
公務員の雇い主としての性格におきまして、雇い主としての責務におきましては、民間の
一般事業主体と別個なものではあり得い性格を本質的に持
つているものだと思うからであります。朝鮮事変以来の
経済的な諸計数、労働者に関する労働省の毎月の勤労統計や、全国工業
平均賃金、その他によ
つて案出した正当な額を加味するならば、当然にそれはいわゆる九千七百円
ベースならざるを得ないのであります。そもそも
人事院の
勧告案の立つところの計数的な基礎にいたしましても、それ自体が非常に性質上問題が多い、むずかしいものであるということを認めるにやぶさかでありませんが、私
どもの手元に集められました京都の一例をも
つてしても次のようなことが言われるのであります。京都のCPS、FISの調査世帯数は著しく少くて、それぞれ約二百五十、千二百にすぎない。京都市における調査地域ははなはだ局限されておりまして、伏見とか上京とか下京の三区にすぎなくて、官庁労務者の多い左京区、東山区、中京区の調査が行われていないというのであります。また調査世帯数の真実の
報告は調査員によ
つていろいろ加工されて、むしろ真実をゆがめられて修正され、真実が削除されて行われているということも訴えられて来ております。特に調査の信頼度が少いということについては、総理府の統計局調べの京都市のFIS、CPSと、京都市の総務局統計課の調査と、はなはだしく相違しており、総理府の方が著しく低くな
つている、こういうような実例を訴えて来ているのでありまして、この点から見ますならば、
先ほど言いましたように六千三百円
ベースにXをプラスするというような建前に立
つたといたしましても、
人事院の
勧告案がそれ自体科学的な、合理的な、しかも真実に裏づけられたものであるとは言い得ないのでありますけれ
ども、しかし本
法案がその問題の多い
人事院の
勧告案すらも無視しているという点においては、わが党はこれに
反対せざるを得たいのであります。それ自体問題の余地のある
人事院の
勧告すらも無視したというこのことは、現在の制度上
公務員に関する
給與、人事管理の点についての
人事院の存在の意義と関連して、まことに重大なるものを
意味しておる本
法案であることを、私は
指摘せざるを得ないのでありまして、また同時にきのうも失礼な
言葉をはきましたけれ
ども、
人事院はほんとうに日曜娯楽版のラヂオの放送のように、ふらふらふんらのようなその腰をしつかりと固めた態度と、毅然としてこの際
責任を全うするというような熱情を込めて、形式的 論議じやなしに、
公務員の
生活を守り、その上に人事管理を執行するという
責任のある熱情を裏づけとされた態度をこの際表明しないだらば、まさしく
人事院自体は、その労働者のためにならざるところの本質を、この機会に暴露したものになることを私はここに
指摘し、
人事院の奮起を促さざるを得ないのであります。さもなければ、
人事院は
人事院規則、あるいはまたこのたび上程されております
地方公務員法、そしてまた
先ほど問題を含んだまま通過しました
国家公務員法の制約の諸規則と相ま
つて、まさしくそれは一方的な締め上げ的な機関、機能、役割を持
つたものになるということにならざるを得ない。そしてまたその非難に対していかに陳弁したところで、事実の解決にはならないことを申し上げざるを得ないのであります。以上がこの
法案に
反対をいたします形式的な論点であります。
第二には、その
内容について
反対の
意見を申し上げたいと思うのであります。六千三百円の
ベースをきめました当時においては、少くとも
生活給というものが中心にな
つてベースが考えられたのであります。この
ベースがはたして
生活給を
保障しておるかどうかについては論外といたしましても、そういう点が一応問題に
なつたことは特筆さるべきであります。しかしながらこのたびのいわゆる千円
ベース・アツプといわれております本
法案の
内容を見まするならば、それは
生活給を無視し蹂躙して、そしてその結果が形式的に明らかに
人事院の
勧告を蹂躙した形で出て来た。いわゆる
平均給與という形にな
つて現われて来たのであります。そのことで最も端的にその矛盾の現われております点は、いわゆる三千五十円の十八歳独身の最下級の生きとし十ける者の食わなければならぬ人々の問題でありまして、三千五十円で一人前の
成年男子が食えるか、問題はこの一事で片づけ得ると思うのであります。
平川君の
発言遮り、それは八千円
ベースであるとか、あるいはいろいろな粉飾された
ベースの加工よりも、まさしく三千五十円
ベースであるといわざるを得ない、そういう本質を持
つたものだと言われましたが、まさしくその
通りだと思うのであります。
予算措置、
財源の裏づけというような点から、
政府は極力いろいろな口実を構えていかに粉飾しようとも、ない金は出せないというようなことにた
つて来ておりますが、これはあたかも戰争中の主食の配給が、軍用米を全部天引きいたしまして、残りのものでお前
たち民間人は食らえ。それで
生活維持のカロリー数が出ようが出まいが、これだけで食
つておれというようなことで、
幾多のやみ取引や、たけのこ
生活や、あるいはいろいろな犯罪や、まさしく気の弱い者に街頭に栄養失調で餓死をして行
つたというような結果をもたらしましたあの
考え方と、まさしく同じであり、金がないのだからこれだけしかしようがない。それだけで
生活が保てるかといえば、そんなことはか
つてにお前
たちが処理しろということになれば、まさしくこれは人に食えない、
公務員に食えたい給料を押しつけたところの、まことに人を食
つたやり方であり、極端な
言葉を許されるならば、それはま
つたく、くそ食らえというような人を食
つたやり方で、これほど無慈悲な、残忍な、人道を無視したやり方はないと思うのであります。しかもこういうような
ベースを押しつけながら、一方においては
先ほど申し上げましたような、
地方公務員法の上程を急ぎ、
先ほど通過いたしました
国家公務員法、それに基きますところの
人事院のいろいろな罰則、制裁、組合活動の禁止、制約、こういうようなものと相まちまして、まさしく実体的にこの
法案は天皇制官僚の再現の方向に導くものである。一方に天くだり的な押しつけ命令を唯々諾々として公共のためだ、
国家のためだとかいうことにな
つて、文字
通り人民に伝達をすることになります。しかもその結果食えないのは食えないのでありますから、そこには意識すると、いなとにかかわらず、悪質良質を加えまして腐敗が起り、怠慢が起りまして、その電圧は物質的に
精神的に
一般公務員の主人公であるところの
一般の人民に事実上の
負担を増大させる結果にな
つてしまうと思いますの外れこれは大きく言
つて民主的な、
国家の
公務員の人事管理の点にも重大な危機を告げるのであると信ぜざるを得ないのであり、その点をここに
指摘せざるを得ないのであります。
内容から見まして、上級に厚く下級に薄い、これは明らかなことでありまして、しかも
人事院の次長の御
説明にもあ
つたかと思うのでありますが、昔ならば金鶏勲章に相当するようなものに対しては拔群の成績を上げたものに対しては、特進的な二号の
昇給を許すというようなことすら設けた点、これは超勤
手当の不拂いというようなもの 自主的な、自発的な超勤であるとい
つて何
一つ当然拂うべきところの
手当を出さない。そうして一方においては特進的な
昇給制度を設けたということは、性格的に軍事的な昔の特進制度を思い出さざるを得ないとともに、非常な労働強化に相なると思うのであります。
給與昇給期間の短縮の問題についても、上級に厚く下級に薄いことは、先日の公聽会ですか、公述人の方々の
意見の中にも現われた
通りであります。このたびの千円の
ベース・アツプというようなものは事実上参
生活給でありますところの
地域給を
引下げたり、あるいは事実上院
生活給でありますところ
調整号俸を動かしたりいたしまして、まことに残忍な方法でありまして、千円の
ベース・アツプというようなことは数次の今までの下級
職員を中心にした大量の首切り、今申し上げました点と相ま
つて、これはまさしくやらずぶ
つたくりのやり方である。朝鮮事変以来、主食の値上り、家賃、地代、あるいは地方税の
増額と合せるならば、失うものばかりであ
つて、このことによ
つてプラスする幾ばくも持たないということであり、
政府の
説明によりましても、一〇%から一三%の事実上のわずかな手取りの
増額では、この
経済的な荒波をまともに食
つて生きて行くことは、
公務員としてまともに
生活する限りできないといわざるを得ないのであります。そこで
先ほど申し上げ幸したように、そこへ持
つて来て
国家公務員法と
地方公務員法の制定とにらみ合せるならば、まさしくこれは悪逆なるやり方ここにきわまれりと言
つても過言でないと思うのであります。
これらが
内容の点から見た
反対意見でありますが、
財源がないという
政府の逃げ口上は絶対に許されないと思うのであります。国連協力の口実のもとに事実上日本の政治、
経済、
従つて予算というものが非常に戰時的な性格を持つで来たものである。そういう方面をほんとうに民主的な平和的な点からこれを徹底的に批判し、徹底的に組みかえるならば、われわれは今金がないということは言われないのでありまして、これは明らかに
予算の組み方あるいは現在の吉田
内閣の政治の基本方針が、この当然拂うべきところの
公務員の
給與すらも拂わずに、ひたすら他の戰争政策へまつしぐらに突き進んでおるためのしわ寄せが、
公務員の面から言
つても、こういうようなべらぼうな、残忍な
給與ベースというようなことに相な
つて来たものであ
つて、
予算がないということは
簡單に見ても許されないと思うのであります。なお
公務員の低
ベース、低
給與、それから労働強化は、いろいろなことで肺病王国といわれておる日本民族のあまり名誉にならない大きな地盤を
公務員の
人たちがつくり出していると思うのであります。つまびらかな
数字は今ここに持ち合せておりませんが、占領下にある西ドイツの
生活すらが日本の
生活水準の三倍に達し、アメリカあたりの労働者の最低労働賃金が一時間七十五セントである。大体において月給六百ドルであるというようなことをわれわれは聞いております。そうなれば一体日本人はアメリカ人の何分の一の
生活をしておるのか。アメリカの
経済的、政治的なあるいけ歴史的なものと、日本のそれと、一時に竹馬に乗
つたり何かして背比べはいたされないといたしましても、肺病王国というような点、こういう劣悪な
給與水準、民間あるいは
公務員をおしなべてのこういう劣悪な水準というものが基礎であり、私はこの
給與法の
審議をやるにあたりまして、日本民族の
生活水準ということを、講和の
内容とも関連さして、私
どもはいま少し
責任と熱情と民族に対する愛情を持
つて強く
考慮する必要があるのではないか。ひたすらに
地域給の
引下げだとか、あるいは
号俸調整の問題だとか、
民間給與との関連だとか、言
つておりまするが、問題は、それは当然でありまするが、ただこまか過ぎる、みみつち過ぎるという感もなきにしもあらずでありまして、こういう点すらか
考慮されておらないこの
法案には、私
どもは断固として——大きく言えば日本民族の立場から、あるいはまた働く人の立場から、また小さく言えば
国家公務員の立場から、私
どもは断固として
反対せざるを得ないのでありまして、これらがわが党がこの
法案に
反対をするおもな理由であります。