○金子
委員 毒物及び
劇物取締法案につきまして、その要旨には賛成でございます。ただこの
法案の
内容から見まして、この
法律を実施いたしましたときに、いろいろと取扱い並びに末端におきまして疑義が生じて来るということが
考えられまするので、その点について強く要望いたしまして、賛成いたしたいと思うのであります。
その第一点といたしまして、はたしてこの
取締りが、
毒物劇物を消費しておる末端の階級までできるかどうかということは、非常に問題であります。そこに疑義が出て参りますと、当然そこに取締法を過度に用いたために、
営業上の支障というふうな問題が出て参るのであります。たとえば各種の工場におきまして——相当大規模な工場において
毒物劇物を取扱う場合には、この法によ
つてやることは当然でありまするけれ
ども、小規模の、たとえて言うならば、町鍛冶屋が毎日のこぎりを打つのにこれを使うというような場合、あるいは全国的に農山村で病虫害の防除剤として使うというときに、これを譲渡していけないという問題について、はたして実際にこの法が生きて行くかというと、実際生きて行かない。なぜならば、農村における農薬というようなものは、だれもが一定の貯蔵所を持
つて、一定の消費量をにらんで買うものでなくて、病気ができたときに、あるいは虫害の起つたとき、これを使うのでありまするから、当然隣りの家からも借りて参りまするしあるいは貸し合いもする、くれ合いもするというのが、実際行われている状態でありますので、この点につきまして、この
法案の
条文通りに機械的な解釈をして支障を来さないようにしなければならないということがまず第一点であります。
第二の問題は、販売の
許可制、すなわち第八条第三号の問題あります。地方長官が事業管理人の資格を与える場合に、この項目によりますると、試験を受けるということにな
つておりますが、実際上試験を受けるということになりますると、現在農薬というものは、
毒物劇物としての
一般関心は少いのでありまするけれ
ども、実際におきましては非常な
重要性を持
つております。しかもこれを取扱
つておる機関がどれくらいあるかというと、全国約三万ぐらいの機関が扱
つておる。これらの人たちは薬学校を出た人でもなく、主として農学校事業ないしは女の事務員が店舗で売買しているのが今の状態であります。そうして農薬の問題は、当局者は劇物の問題として
考慮されておると思いますが、
一般常識といたしましては、非常に軽視されておるのであります。これは量的にも、あるいは実際の配給されておる面から行きましても、非常に膨大なものでありまして、たとえば、今二十五年度におよそ供給されるだろうことを国が計画を立てている数二だけを見ましても、砒素剤が千八百トンであります。それから砒酸石灰が千五百トン、砒酸マンガンが百トン、硫酸ニコチンが百二十トン、水銀剤が五百トン、水銀の塗抹剤が六百五十トン、これだけでも四千六、七百トンになるのであります。しかもそのほかに病害防除として重要な銅剤というものをこの中に包含するならば、銅剤だけでも二千四百トンから消費するのであります。なおこのほかに
考えてみまするならば、農産地帯で使うところのホルマリン、昇汞、それから薫蒸剤として使いますところのクロルピクリン、二硫化炭素、こういうものを加えますると、非常に大きな数量であり、しかもこれらのものは、先ほど申し上げたように協同組合の一つの購買品として取扱
つておるというのが現状でございます。その現状を、私
どもはそのままでよいとは申し上げませんが、これに対して、もしその試験の資格というようなものがむずかしい問題になりますると、ちようど最近現われておるところの看護婦試験と同じように、理想に過ぎて現実の上に非常に支障を来すということが一つと、もう一つ
考えなくてはならぬことは、その資格というものをある程度の高いものにしておく、言いかえれば、この第一号にある薬剤師というような形にしておきますると、この農産資材としての農薬が非常に数量が厖大であり、
従つてその取扱いマージンが非常に大きなものになりまするから、そこで資格を持
つている人たちの商権擁護として、別な経済問題を起して参るのであります。この問題はか
つて十数年前から、農村の購買
関係と商権擁護運動と、大きな摩擦を来ました例が多々あるのであります。そこで今の
法案の程度にそのまま解釈いたしますると、その問題を起して来る。その結果といたしましては、肥料に次ぐ農薬でありまするから、生産上重大なものである。それを遠くの町まで買いに行かなければならない、あるいは農村のために尽そうとする協同組合の業務上に支障が来るということになりますならば、増産運動に非常な影響を持つのでありまするから、この点につきましては、十分省令ないしは通牒によりまして、この
弊害が起らないように、農業薬剤に対しては別個な
考え方で取扱
つていただきたい、こういうことを強く私は要望申し上げます。
本来ならば、こういう重要な問題がありまするがゆえに、当然私の方といたしましては修正、それができないならば反対すべきでありますけれ
ども、実際上のここの審議の扱い方といたしまして、かりに反対いたしましたところで、現段階としまして多数決で当然この
法案は通る。通
つてしまうならば、私
どもが心配しておる問題がそのまま法令化されることをおそれますから、むしろここに真剣な気持で、まじめに私
どもとしては要望いたしておきましたし、か
つての
質問におきましても、
政府当局のそれに対するお答えがありましたがゆえに、その点を強く要望いたしまして賛成いたしたいと思います。