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1950-12-06 第9回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月六日(水曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 西村 榮一君       植原悦二郎君    大村 清一君       小川原政信君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    近藤 鶴代君       仲内 憲治君    福田 篤泰君       並木 芳雄君    松本 瀧藏君       山本 利壽君    武藤運十郎君       川上 貫一君    高田 富之君       中村 寅太君    黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 吉田  茂君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務次官  太田 一郎君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君  委員外出席者         議     員 若林 義孝君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 十二月四日  委員川上貫一君及び高田富之辞任につき、そ  の補欠として風早八十二君及び横田甚太郎君が  議長の指名委員に選任された。 同月五日  委員風早八十二君及び横田甚太郎辞任につき、  その補欠として川上貫一君及び高田富之君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月二日  在外公館等借入金返還促進に関する請願田口  長治郎紹介)(第三〇一号) 同月四日  在外胞引揚国民運動強化に関する請願(若  林義孝君外一名紹介)(第四四六号) の審査を本委員会に付託された。 同月二日  海外同胞救出国民運動費国庫負担陳情書外一  件(  第一三八号)  沖繩日本復帰促進に関する陳情書  (第一四六号)  海外胞引揚促進陳情書  (第一八四号) 同月五日  海外胞引揚促進陳情書  (第二二  八号)  在外公館等立替金即時返還に関する陳情書  (第二四三号)  密入国者取締費全額国庫負担陳情書  (  第二九〇号)  在外公館等立替金即時返還に関する陳情書  (第三一五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件。  国際情勢等に関する件   請願  一、在外公館等借入金返還促進に関する請願(    成田知巳紹介)(第一三号)  二、同(坪内八郎紹介)(第一二八号)  三、同(大西禎夫紹介)(第一二九号)  四、同(田口長治郎紹介)(第三〇一号)  五、外国人登録事務費全額国庫負担請願(岡    田五郎紹介)(第五四号)  六、小笠原諸島の日本復帰に関する請願菊池    義郎紹介)(第一二七号)  七、在外胞引揚国民運動強化に関する請願    (若林義孝君外一名紹介)(第四四六号)   陳情書  一、海外胞引揚促進陳情書    (第三二号)  二、同(第六四号)  三、同(第    一八四号)  四、海外同胞救出国民運動費国庫負担陳情書    (第八    八号)  五、同外三件    (第一一三号)  六、同外一件    (第一三八号)  七、外国人登録事務費全額国庫負担陳情書    (第四〇号)  八、在外公館等立替金即時返還に関する陳情書    (第九一号)  九、歯舞諸島、千島列島及び南西諸島の復帰に    関する陳情書    (    第四九号) 一〇、海外移民促進に関する陳情書    (第一〇八号) 一一、沖繩日本復帰促進に関する陳情書    (第一四六    号)   追加日程  一、海外胞引揚促進陳情書    (第二二八号)  二、在外公館等立替金即時返還に関する陳情書    (第二四三号)  三、密入国者取締費全額国庫負担陳情書    (第二九〇号)  四、在外公館等立替金即時返還に関する陳情書    (第三一五号)     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず請願審査をいたします。日程第一、在外公館等借入金返還促進に関する請願成田知巳紹介第二一号より、日程第四、同田口長治郎紹介第三〇一号までを一括議題といたします。紹介議員説明を求めます。紹介議員がおられませんから、専門員よりかわつてその趣旨説明を求めます。
  3. 佐藤敏人

    佐藤専門員 第一三号請願高松市五番町高松市役所内川野嘉平紹介議員成田知巳君。  本請願要旨は、われわれは、在外公館等借入金整理準備審査会法に基いて、確認請求書政府に提出してあるが、引揚げたら即時政府より支払うという公館等借入金確認もせず、その上、借入金換算方法も支払時期も全然わからない実情である。ついては、政府は、公定換算物価指数に基く換算方法をもつて在外公館借入金をすみやかに返還するとともに、もしその実現が困難ならば、引揚者金融公庫を特設して関係者の苦境を打開されたいというのであります。  第一二八号、第一二九号、第三〇一号はこれと同趣旨であります。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 これにつきまして政府の御意見はございませんか。
  5. 太田一郎

    太田政府委員 在外公館借入金審査はだんだん進捗しておりまして、すでに審査済みのものが一万九千件ございますが、これにつきましてはでき得る限りすみやかに確認証書を発給いたしたいと思つて準備をいたしております。それから支払いについての具体的な問題は、目下大蔵省で研究いたしております。レートをどうするか、支払い時期をどうするかということにつきましては、いろいろ問題がございますので、外務省といたしましては、現在正確な意見を申し述べることは差控えたいと考えております。
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかに御質疑はございませんか。
  7. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 在外公館借入金の問題について、この調査の進行状態についていろいろ聞き合せ、照会をいたしますると、ことごとくこれは秘密事項であるというふうにして教えてくれない。先般も私は具体的な問題を持つてつたわけでありますが、管理局においては何らこれに対して誠意あるところの態度を示さない。やがてこれは政府から地方長官を通じて発表するから、それまで待て、こういう話であります。何がゆえに一体かくのごとき問題に特に秘密を守るという必要があるか、もう少し親切に実情について教えるというような態度が必要じやないかというように思いまするが、それらの点についてお答えを願いたいと思います。
  8. 太田一郎

    太田政府委員 御指摘のような不親切な点は、今後十分注意いたします。もし具体的な問題がありましたならば、ぜひお知らせ願いたいと思います。
  9. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかに御質疑はございませんか。——それではただいまの日程第一より第四までの、在外公館等借入金返還促進に関する請願は、採択の上内閣に送付すべきものと決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 守島伍郎

    ○守島委員長 異議がなければさようとりはからいます。     —————————————
  11. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは次に移ります。  日程第五、外国人登録事務費全額国庫負担請願岡田五郎紹介、第五四号を議題といたします。紹介議員説明を求めます。——おいでにならぬようでありますから、専門員説明を求めます。
  12. 佐藤敏人

    佐藤専門員 請願文書表第五四号、請願者滋賀長浜市長加田桂三紹介議員岡田五郎君。  本請願要旨は、外国人登録事務は、外国人の入国に関する措置を適切に実施し、外国人に対する諸般の取扱いの適正を期することを目的とするももので、主として国の利害に関する事務に属するものと思われるが、その経費負担につきこれを市長村にゆだねられていることは、窮乏せる地方財政下その負担は、きわめて大きい。ついては、同事務経費全額国庫をもつて負担されたいというのであります。
  13. 守島伍郎

    ○守島委員長 これについて政府に御意見ございませんか。
  14. 太田一郎

    太田政府委員 私どもといたしましては、予算の許す範囲内において何らかの解決の策を見出したいと存じておりまして目下都道府県に的確なる資料を求めるほか、係官をも派遣いたしまして対策を研究中であります。なるべくすみやかに御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  15. 守島伍郎

    ○守島委員長 御質疑はございませんか——なければちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  16. 守島伍郎

    ○守島委員長 速記を始めて。  外務大臣がお見えになりましたから、請願の件は中止いたしまして、ただいまより国際情勢等に関する件を議題といたしまして、吉田外務大臣に対し質疑を行うことにいたします。  なお質疑に入るに先だち、ちよつとお断りいたしておきますが、質疑の時間につきましては、あらかじめ理事会で御相談いたしまして、各党の割当を決定いたしておりますから、質疑の通告をなさつた方はお約束の時間をかたくお守りくださいますようにお願いいたします。それから最後にもし少しでも時間の余裕がございましたならば、そのときに関連質問とかそのほかの質問をお許しすることにいたします。  それではこれより質疑を許します。佐々木君。
  17. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 時間の関係上一括して質問をいたしたいと思います。国際連合不拡大方針にもかかわらず、朝鮮事件中共軍の介入によりまして、遂に南北朝鮮の内乱から中共国連の全面的な衝突に移行し、ここにまつたく新しい宣戦布告なき戦争の新段階に突入いたしまして、戦火は今や鴨緑江の国境を越えて、遠く満州、中国にも波及せんとするかの様相を示しておるのであります。このときにおきまして、昨日来ワシントンにおいて行われつつありまするトルーマン大統領アトリー首相の両巨頭会談こそは、戦争妥協かのかぎを握るものとして、全世界の注目を集めておるのでありまして、世界情勢は文字通り空前の危機をはらんでいるものと思います。戦争の惨禍を身をもつて体験し、従つてそのゆえ、だれよりも世界平和を求めてやまないわれわれ日本人は、この外交交渉による事態のすみやかなる解決に一縷の希望を託し、その成功を心から祈つておるものではありますが、しかし中共側の不法なる要求の前に、国連側が甘んじて妥協を求めんとするならば、それは国連権威とその存在理由を喪失するという結果にもなるのではなかろうかと思います。ゆえに国連権威を保持し、アジアにおける侵略の脅威を一掃するためには、結局武力解決以外に道がなかろうかと考えるのであります。もしその国連中共に対して本格的戦いによつて武力解決の道を選びまするならば、勢いのおもむくところは、必ずや米・ソ戦争ないし第三次世界大戦に発展するのではないかとも案ぜられるのでありまして、ここに総理米ソ戦争は起るまいという希望的観測よりも、結局は世界戦争にまで発展するのではなかろうかという、国民一般の疑問と不安と恐怖の方が、より強く支配しているのではなかろうかと思われるわけであります。そこでかくのごとき国民心理の動揺を鎮静し、戦局の変転に一喜一憂する国民安定感を与えるためにも、あるいはまた民主主義国家陣営の団結と協力によつて世界平和確保の一翼を日本が進んで担当するためにも、政府はこの際従来の消極的国連協力態度から百歩前進いたしまして、ここに国連に対する積極的全面的協力態勢根本方針を確立し、重大時局に処する政府並びに国民の心構えを明示することが、政府のなすべき緊急事であると私は考えるわけでありますが、政府のこの国連協力態勢強化についての御所信をまず第一に承りたいのであります。  次には、いわゆる超党派外交なるものについて総理の真意をこの際私は確認をしておきたいと存じます。まず原則論から申しますならば、私は、外交問題については、常に超党派的でなければならないとか、国論を統一しなければならないとかいうことに、無条件には賛成することができません。いやしくも政党というものが、主義綱領のもとに集まる同志的な結合体であるといたしますならば、その主義綱領の相違によつて、各政党の政策が異なるのがあたりまえのことでありまして、外政のみがひとりその範疇外になければならぬという理由はないと考えるのであります。総理が、社会党を加えた超党派外交実現困難であると指摘されたことは、まことにしごくごもつともなことであると考えるわけであります。さらにまた憲政の常道論から申しましても、常に建設的な反対意見の存在することこそ、かえつてときには必要であり、またときには有利であり、またときには理想的であるのであります。ざらにまた現実論から申しますなれば、いわゆる超党派外交なるもののねらいは、申すまでもなく、党派を超越することでありながら、これを現実問題としてながめまするときに、そこにはあまりにも各党の間に一党利党略の醜い底流があることも否定できない事実であると私は思います。そして一般国民も、かくのごとき不明朗にして、その実現可能性の少い超党派外交をいつまでも望んでいるとは考えません。むしろ国民は、政府が長く超党派外交の五里霧中に低迷することなく、講和の難局は吉田内閣において責任をもつて担当するという、毅然たる態度の表明こそ待望しておるのではなかろうかと考えるわけであります。野党側の一部には、理不尽な国会解散論を主張する向きもありまするが、前回の総選挙講和会議を予想して国民の信任を問うたものであり、近くは本年六月の参議院選挙においても、講和の方式や安全保障等の具体的問題が論争の焦点となつたのであります。そしてその結果、国論圧倒的支持を受けた多数党をもつて組織いたしましたところの現内閣が、講和を担当すべきことは論をまたないのであります。従つて理不尽きわまる国会解散論のごときは、講和促進を阻害する以外の何ものでもないのでありまするから、吉田内閣は千万人といえどもわれ行かんの態度をもつて国会解散の俗論のごときを完封、封殺してほしいと思うのでありますが、これらに対する総理の御所信も承つておきたいのであります。  最後にもう一点は、共産主義活動に対する政府態度についての質問を簡単に試みたいと思います。マルクス・レーニンの鉄則に立つ共産主義が、その根本理念において、すでに非合法活動を特質とするものであることは言うまでもないのでありまするが、特にこの二月のコミンフオルムの一喝を食つた日本共産党が、戦後とつて来ておりましたところの平和革命欺瞞的戦術の仮面を脱ぎ捨てまして、しかも野坂自己批判なるものを発表して以来というものは、彼らはみずから武力革命を公言しておる現状であります。今回の神戸朝鮮人騒擾事件を初めとするところの、最近の一連のゲリラ的暴動事件のごときも、中共朝鮮反撃攻勢と相呼応する国際的暴力革命前哨戦とも考えられ得るのであります。マッカーサー元帥は、去る七月七日のアメリカ独立記念日における日本人に対するメッセージにおいて、破壊と暴力と捕殺を常套手段とする共産主義運動合法性を与えることは疑問であると指摘しておりまするが、われわれは祖国の独立とその再建のためにも、今こそこのマッカーサー元帥日本人に対する提言に対し、良識と叡知をもつてこたえなければならない段階に到達しておると考えるわけでありまして、政府共産党解散あるいはその非合法化等について、真剣に考えるべき必要があるのではなかろうかと考えるわけでありますが、これらに関する所信を明らかにされたいのであります。  なおこれは政務次官に御質問することになつてつたわけでありますが、今回の神戸事件に関連して、朝鮮人等外国人に対する強制帰還について政府ポツダム政令準備中であるとも伝えられておりまするが、これ等の対策等についても承つておきたいと思います。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 国連協力に対する政府所信を、というお話でありますが、これは絶えず私が議会において報告いたしておる通りに、政府として、また国民として、できるだけの協力を払う。御質問趣意は、もつと積極的にやらないかという御趣意だろうと思いますが、できればそうしたいと思います。思いますが、今日の今において政府及び国の立場として、積極的もいろいろ意味合いがありますが、国連希望に応じてその要求通り、あるいは希望通りの線に沿うて、輸送その他に協力するという以上に、たとえば義勇軍を組織するとかなんとかいうようなことは今日考えておりませんが、政府の力の及ぶ限り、国連協力して、そうして国連の力を強めるようにはいたしております。これ以上にということになると、実際問題でありますが、こういうことをしてもらいたい、ああいうことをしてもらいたいという要求には、なるべく応じております。積極的にこちらからこうしたら、ああしたらという立場におらないものでありますから、やむを得ず、考えはありましても御希望のような積極的に出られませんが、しかし消極的には相当の力を尽しております。この程度お答えをする以外に方法がないと思います。  超党派外交については、私は趣意けつこうであるからして常にその実現には努める。しかしながら今日において私どもが動くというと、それが党利党略のためであるとか、あるいは政府のためにというような、邪推であるか、うわさが立つものでありますから、むしろ消極的態度をとつております。これは政府熱意とか私の熱意によつてこの超党派外交が進めらるべきものでないのであつて超党派外交が真に国家のためになり、この時局に処して国のために利益であるという同じ考え各党が持つて来て、政府熱意であるとか総理大臣熱意ということは問題にならずに、期せずして各党超党派外交を進めて行くべきであるという点に帰一いたすならば、すなわち国の刻下の全局から考えて、超党派外交はこのときにおいて最も時宜を得たという信念といいますか、考えにおいて一致するということになればできますが、今日のように少しでも動くというと、それが党利党略のためにやるのであるとか、政府の都合のいいことをやるのであるというように曲解せられる空気においては、かえつて消極的態度をとる方が利益ではないか、こう私は考えてその線で行動をしております。(佐々木委員国会解散については……。」と呼ぶ)国会解散は断じていたしません、ただいまのところ…。(笑声)  それから共産党非合法化ということについては、これは政府としても考えないことはないのでありますが、なるべく避けたいと思います。思想が違うからといつて、ただちにそれが治安に支障を生ずるとか、紊乱をするとか、暴力革命をするような行動が形において現われて来たときには政府考えますが、なるべく非合法化は避けたい。共産党といえども日本人でありますから、どうかしてその間に融和ができればけつこうである。万々できなければそういうやむを得ない場合も考えなければなりませんが、今日においてただちに非合法化ということは、なるべく考えたくないというような線で進んでおります。
  19. 草葉隆圓

    草葉政府委員 朝鮮人騒乱事件等に関連して政府ポツダム政令でその強制退去を処置するような風聞があるがどうかという御質問であつたと思いますが、外国人登録令に違反しておりません場合は、強制退去という方法はとり得ないことは御承知の通りであります。ただ現在の登録令につきまして、退去を強制いたします場合の手続については、なおいろいろと研究すべき余地もありますので、そういう点を研究しております程度であります。
  20. 守島伍郎

    ○守島委員長 並木君。
  21. 並木芳雄

    並木委員 私は朝鮮の新事態伴つて、ドツジ氏の声明に関連して対日援助費外資導入終戦処理費米国からのクレジツトなどについて総括的な質問をしてみたいと思います。  ドツジ氏は一昨四日、日本を去るにあたつて声明を発表しております。その中で米国の対日援助予算削減され、遂に打切られて、見返り資金からの融資が削減され、しまいには打切られるという事業がほとんど認識されていないように見受けられると言つて日援助費削減または早期打切りが必至であることを警告しております。このことは過日グレイ報告の中にも明らかになつておるところでございます。吉田首相外務大臣はこれに対しどういう対策をもつて臨まれんとしておられるか。首相見返り資金を当てにしてもだめだ、ごみための中をいくらあさつても、結局ごみためにすぎないとの車中談を行つておりますが、これで見ると首相はすでに今日あるを覚悟し、いやむしろあきらめて捨てぜりふを残したのではないかとさえ思われる。しかし対日援助費が減らされ、また打切られるということは、日本にとつてこれはゆゆしい大打撃といわざるを得ないのであります。そこで首相としてはあくまでこれが継続を懇請すべきであると思われますが、この点どうなつておりますか。それとも首相見返り資金ごみためだと言つておるのですから、もつともつと雄大な構想をもつて日本の苦しい財政経済を乗り切る具体策があるのかどうか。首相はしばしば貧乏な日本は、外資導入以外に方法はないと言つて外資依存一本やりで来ているように見受けられます。しかし外資導入だけでこの困難を切り拔けることができるのかどうか。第一最近の国際情勢から外資導入はうまく行つているのかどうか、これをお伺いしたいのであります。ドツジ氏は日本の将来の開発は、国内資本源に依存するものであり、日本にとつての基本的な問題はこの国内資本源を動員、改善することであると声明の中でうたつております。国内資本源に依存せよとのドツジ氏の構想と、外資導入に依存せよとの首相構想とは、明らかに矛盾しておるのではないかと思われます。首相国内資本源をいかにして動員し、かつ改善するつもりでございますか、その具体案をお伺いいたします。  私は対日援助資金削減されたり、打切られたりすれば、これと同時に終戦処理費もまた削減、打切られなくては、日本はとうていやつて行けないと思います。対日講和が遅れているのは国内事情ではなくて、客観情勢のしからしめるところであると言われておりますし、一昨日の予算委員会でも、首相朝鮮の新事態に際して、対日講和が遅れるのではないかとの答弁をされておるのであります。しかも政府は、ただいま首相答弁にもありました通り朝鮮動乱をめぐつて国連協力の線をはつきり出しておる。こういう事情考えますときに、私どもはあくまでも対日援助費は継続されなければいけない。そうでなければ日本はやつて行けないのじやないか。しかしどうしても打切られるのであるならば、首相としては対日援助費と交換に終戦処理費削減、または打切りを懇請すべきであると思いますが、首相にその決意ができているかどうか。あるいはまたすでに懇請しておられるかどうか。最後にこれとともに、私はアメリカからの日本へのクレジツト設定をぜひ実現してもらいたいと念願しておるものであります。対日借款について首相はどうお考えになつておりますか。  以上ドツジ氏の声明国際情勢をめぐつての対日援助費外資導入終戦処理費、対日借款について首相の明快なる御答弁をお願いする次第であります。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、私は対日援助資金により、日本経済をささえて行くということ自身が、はなはだ好ましからざる構想であると思うのであります。なるべくは自立いたしたい。よその援助なしに、よそのお恵みなしに日本が自立して行く状態をつくりたいと思うのであります。ゆえに対日援助資金はむしろ減ることを希望するくらいに考えて、なるべくおせわになりたくないと思います。従つて日援助資金が減るがために、われわれの方から懇請をしてまで、ふやしてくれという勇気は私にはないので、しからばどうするか。敗戦の今日、百年に近い間蓄積した財力が敗戦によつて消耗された今日において、援助なくして立たないじやないか。その通りであつて、それで援助を得ておつたのですが、なるべくこの援助は短かい間にこれを打切つて、そうして自立経済に移行したい。これはたれもそう考えるのでありますが、従つてまたアメリカが今日増税また増税をして、そうして日本と同じように国民は相当増税に苦しんでおると思いますから、そこへもつて来て日本がさらに対日援助資金を増してくれということを言つて行けば、アメリカ国民もありがたくないのみならず、われわれもまた甘んじて人のおせわになりたくないと考えますから、なるべく援助は少くして、そのかわり自立で行きたい。自立で行くとすれば、結局外資ということになると思います。あるいはクレジツトということになるか、いずれにしても慈善事業でない形において、日本経済を自立の方に持つて行きたいというのが私の念願であります。そこで対日援助資金はドツジ氏が言われた通り、減る傾向であり、減るが当然であろうと思います。何となれば日本経済が自立しつつあるのだ、復興しつつあるのだとこう言つておるのであるから、従つて援助資金が減るということも当然なことであり、むしろ減らしてもらいたいというくらいに考えておる。それだけまた外資導入に努めなければならないと思います。  外資導入に対して現在どうであるかと言えば、これは有形無形の間にと言つてもいいような事態で、相当無形な——無形というか、われわれの知らぬ間に相当入つていると思います。一昨年あたりからの日本経済活動は相当活発なところが見えますが、これは自力でもつてつたのではなく、結局外資がいろいろな形において入つて来、また輸出が増進されているが、現に復興しつつあるのであつて、輸出の増進についても自然外国人が金を一時融通する。銀行が一時融通するとか、あるいは各商社に金を貸すとかいうこと、小型な形においては相当入つて来つつあるようにも考えられる。また政府の報告によつてみても、外資導入を許可したものが何件か忘れましたが、相当な数に上しております。現に申請というか相談を受けておる向きも相当ある。これに対してどうするかと言つて外資委員会等において研究の題目となつているものも相当あります。でありますから現に有形無形を通じて外資が入つて来ており、またこの外資の入つて来ることを奨励する立場政府としてあるのであります。いわんや、いわゆる何といいますか、ワールド・バンクに加入を許される、加入を許されるということは結局日本外資を、アメリカの資本を導入する資格のある国と公然と認められることになるのでありますから、ワールド・バンクに加入を許されるようなことになれば、外資は一層有力に入つて来るだろうと思います。その機運を醸成したいと思つて政府はできるだけの努力をいたしておるのであります。そこでドツジ氏の言われる国内資本源を云々という話と、私の外資導入とは決して矛盾しておらないのであります。これは過日もドツジ氏と話したのでありますが、日本の資源はまことに乏しい。従つて原料は外国の輸入にまたなければならない。外国の輸入によつて原料の輸入が促進せられることをわれわれは最も要望するのであるが、そのうちにも日本の資源として残つておるものは労働力と水力資源だ。日本にとつて有利なことは、この水力源の培養ということにある。この点については十分努力してもらいたいと言いましたが、安い動力をつくり上げることによつて日本の産業は発達し得ると思います。今日日本に残されておる最も有力な資源である水力電気の源泉を培養するということが、さしあたつての急務であると思いますから、それで水力電気の開発ということに主力を注ぎたいと考えております。すなわち安い電力を供給することによつて、その他の産業が自然に培養せられる。また安い電力を持つことによつて——日本の資源といつても今言つた通り、はなはだ資源は乏しいのであるが、安い水力電気は相当の資源になるわけですから、まず第一着にこれを開発して行く。それがやがて他の資源を開発することになりますから、ドツジ氏の言われることも私の言うことも、決して矛盾しておらないと思います。  終戦処理費はだんだんと減らしたいと思つております。これは客観情勢といいますか、朝鮮事件とかその他の臨時の事件がありますから、彼我ともに減らしたいということにおいては一致しておるのでありますが、ただ海外事情の変転に上つて、多少希望通りにならない点もあるのであります。しかし減らすことについては、関係方面も最も減らすことに努めておりますから、これは希望が達せられることは、そうむずかしくはないであろうと思います。  それからクレジットでありますが、これは外資導入の一部と考えております。
  23. 守島伍郎

    ○守島委員長 武藤君。
  24. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 私は第一に戦争に対する原子爆弾の使用ということについて政府の見解をお伺いしたい。中共朝鮮に介入しまして、戦局はどうなるか予測は許されない実情であります。トルーマンは都合によれば、原子爆弾を使用するかもしれぬというようなことを言われたそうでありますが、この原子爆弾の使用ということについて、政府はどういうようにお考えになつておるか、御意見を承りたいのであります。  それから第二には、もしこれに賛成でないとなれば、そういうものは使わないでもらいたいという意思表示を政府としてはするかどうか。  それからさらに、私は国際法上の根処は知りませんが、国連軍が朝鮮の作戦行動について、事実上日本を軍事基地として使つておるのではないかと思うのでありますが、今まで日本が爆撃されないということがむしろふしぎなのでありまして、いつ爆撃されるか、わからないということも考えられるわけであります。これに対して政府は防衛あるいは避難について、どういうような考えがあるか、この三点をお伺いしたいと思います。
  25. 吉田茂

    吉田国務大臣 原子爆弾の使用せられないようにと希望はいたします。しかしながら積極的にこういう問題を取上げてどうこうするということは、現在日本政府として、あるいはその他の国連との間の関係において、問題になつておりませんからお答えいたしません。  それから空襲されたときの危険ですが、いまだ空襲されておりませんからして——空襲される以前において、準備は相当整つておるものと御承知願いたい。
  26. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 それからこれは再三質問になられたことと思うのですが、日本の安全保障に関しまして、政府では国連に安全保障を求めるというお話でありますが、われわれもこれに賛成であります。しかし政府考え国連に加入をしてそれを求めるというのか、加入しないで求めるというのか、これを伺いたい。  それから加入するについては、安全保障理事会の承認がなければならないと思うのですが、それができる見込みがあつて、加入して保障を求めるというのであるかどうかということを伺いたい。
  27. 吉田茂

    吉田国務大臣 安全保障は国連によるとのみ考えておるわけでもなく、そうはつきりと申した覚えはありません。また安全保障なるものは、将来講和条約の内容をなすものでありますから、政府はこれに対してお答えをいたしません。
  28. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 別に私は首相のあげ足をとるわけではございませんけれども講和条約というものは相当現実の問題として、政府国会考えなければならない段階になつておると思うのであります。従いまして講和条約の内容であるということになりますれば、なおのことわれわれは考慮をいたす必要があり、国会で討議しておく必要があるのではないかと思うのであります。従いまして私は納得のできる他の理由お答えがないというなら別でありますけれども講和条約の内容をなすかもしれぬからお答えができないということではなしに、できるだけお答え願いたいと思います。
  29. 吉田茂

    吉田国務大臣 私もできるだけお答えしたいと考えるのでありますが、しかし私の言うのは政府として意見が述べられない、国会において国民として安全保障はどうしたらいいかということは、常に申すことでありますが、自由はまた率直に論議せられることを希望するのであります。これは政府としては決してとめもいたさなければ、また妨害もいたしません。ただ港政府当局者として安全保障はこうする、ああするということは、まだ講和条約の内容も示されておらない今日、かれこれ論議することは避けたい、こういう趣旨であります。
  30. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 次に安全保障の問題と全面講和の問題について、もう一度政府の御見解をはつきり伺つておきたいのでありますけれども、私ども考えるところによりますと、政府国連に安全保障を求めるということでありますし、われわれもそうであります。安全保障を国連に求めるという点におきましては、政府考えもわれわれの考えも、その限りでは一致しておると思うのでありますけれども、それならばどういう形で求めるかということになりますと、これは必ず全面講和、単独講和という講和の形に関係があると思うのであります。もし日本国連に安全保障を求めるということになりますと、万一日本が侵略を受けた場合におきまして、その侵略を排除するための制裁を決定いたしますのは、やはり安全保障理事会だと思うのであります。ところが米ソを含む常任理事国の同意がない限りは、制裁が発動できないということになつておるだろうと思うのであります。先般の朝鮮の問題については、偶然にもソビエトが欠席いたしましたために、その賛否にかかわりなく、発動が行われましたけれども、ソビエトが出席しており、アメリカも出席しておるという場合におきましては、米ソを含む常任理事国がこれに賛成をしなければ、日本に対するどこかからの侵略に対する制裁の発動はできないと見なければならない。そうしますと、それができるためには、どうしても米ソ両国を含む全面講和ができておらなければ、前提がないわけだと思うのであります。もしアメリカならアメリカだけと講和ができておつて、ソビエトと講和ができておらなければ、ソビエトと日本との間には友好関係がないのはもちろん、むしろ法律的には戦争状態があるという形になつておるのでありますから、日本に対する侵略というようなものが、かりに起つたというふうにアメリカ圏で考えておりましても、ソビエトではまだ戦争状態にある日本に対して、どちらが侵略国だかわからない。元来日本は侵略国としての戦争状態が続いておるのでありますから、これに対して侵略ということはないというような有力な反対意見も出るでありましようし、拒否権を発動するための有力な根拠ともなるであろうと思うのであります。そういうふうに考えてみますと、国連に安全保障を求めるということと、全面講和ということとは、たての両面でありまして、うらはらだと思う。一方において国連に安全保障を求めるといつておりながら、一方で単独講和でよいというようなことは、理論的にも矛盾があり、実際においても行い得ないのではないかというふうに考える。従つて国連に安全保障を求めるという以上は、全面講和を主張しなければ意味がない、こういうふうに考えるのでありますが、その間の考え方を吉田首相から伺いたい。
  31. 吉田茂

    吉田国務大臣 安全保障を国連に求めるといつたところが、国連が承知しなければ、それだけの話であり、全面講和といつたところが、いつも申すことでありますが、全面講和けつこうなことであるが、日本平和関係に入りたくないと言えば、これを強制するわけに行かない。ちようど超党派外交をわれわれは希望しても、社会党が拒絶せられればそれまでのことと同じ事態であると思います。
  32. 守島伍郎

    ○守島委員長 社会党はあと二分ばかりありますが……。西村君。
  33. 西村榮一

    西村(榮)委員 簡単にお尋ねいたします。私は予算委員会における総理大臣答弁の中に、今までは講和会議の時期が測定されて大体見当がついたが、今日の段階においては見当がつかなくなつたという御答弁があつたのですが、それは率直な御答弁だと私は思います。事実また今日において、私どもしろうとが考えましても、講和会議が、この国際情勢の険悪化によつて急転直下解決するか、あるいは当分たな上げになるかというふうな不安感を、国民がすべて持つと思うのであります。万一対日講和会議がたな上げというふうな状態で、講和会議より以上の重要なる国際情勢が生れて来て、それが延期されるというような場合におきましては、一体日本というものの自主権の回復と独立の問題をどう解決するか、これは総理大臣としての明確な態度が今日困難であれば、政府講和会議にかわる次善の策というようなものも、一応準備して臨む心構えを持つておらなければならないのではないか、これが第一点。  それから激変するこの国際情勢に際会いたしまして、わが国は政治的には中立という立場をとることが、憲法と、並びにその具体的な国際的地位においては正しいのではないか。ただ自由と平和を守るためにおいては日本国民協力すべきであるが、しかしその理想的な問題は別として、現実の政治的な解決としては、しかも基本的には、日本の外交の重点はアジアに置くべきである。日本には外交権がないから、政府としてアジアの外交政策をどうするかということは、具体的には困難であると思いますが、しかし日本の外交の重点はアジアの諸国に置くべきである、その心構えを持たねばならない、私はこう考えるのでありますが、以上の二点について総理のお考えを承りたい。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 この間あなたの御質問に対して答えた場合に一見込みがつかないとは申さなかつたつもりであります。朝鮮事変の進展によつて講和が早くなりはしないかと希望しておつたが、今度の朝鮮における事変の変転のために、あるいはわれわれの予期以上に延びはしないかということを憂えるということを申したので、私は英米あるいは連合国の多くは、日本との講和を早くしたいという念においては、少しもかわりないと思います。あとは対日講和以上に重大な問題が発生したから、その処理に没頭するのは当然であつてその結果いくらか対日講和は、希望があつても、延びるのであろう、こう申したつもりであります。  もう一点は……。
  35. 西村榮一

    西村(榮)委員 外交の重点をアジアの諸国に置くという心構えが必要じやないかということです。
  36. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはそうありたいものだと思います。しかしながらヨーロツパから申せば、やはりヨーロツパの関係が自然、重大というか、関心をよけい持つであろうのみならず、今まで持つているのであつて、東南アジアといいましても、結局はヨーロツパ的の問題を一番先に考えるということは自然であろうと思います。しかし日本から申すと、アジア問題も、連合国あるいは国連において決しておろそかにしてもらいたくないとは思いますけれども、これは客観情勢の帰趨によつてきまることであつて日本としていかんともできないことであると思います。
  37. 守島伍郎

    ○守島委員長 福田君。
  38. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 私は四つの点で外相に御答弁をお願いいたしたいと思います。  第一の点は、十一月三十日の米国トルーマン大統領の記者会見におきまして、中共軍に対し日本人部隊を使うかとの記者団の質問に対し、橋に着いたときに橋を渡ると述べたとの報道に関しまして四日の予算委員会でも総理に対して質問がされたのであります。総理がこれに対しましてとやかく所見を述べられなかつたことは、もとより当然のことでありますが、ただ橋に着いたときに橋を渡るという意味を、とり違えておる向きがあるように思いますので、この点をはつきりしておきたいと思います。この言葉は、まだ橋に着いていない、すなわちそういう決定をくだすべき時期には来ていない。決定を下す時期が来たら、そのときに下すという意味の慣用語でありまして、従来の記者会見、たとえば九月十四日の対日講和問題におけるトルーマン大統領の会見談におきましても、同じ言葉を使つております。従いまして、将来日本人部隊を使用するというような決定が下されるであろうというがごとき、積極的な意味ではないと私は考えておりますが、この点に対する外務大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。またこのような直接日本にとりまして重大かつ微妙な関係にある外国からの報道に関しましては、報道陣ともよく連絡をされまして、政府はもつと正確かつ敏速親切に国民にその真相を伝え、無用なデマや、心配をかけないようにすべきであろうと思いますが、これに対しますお考えをお伺いいたしたいと思います。  第二は、邦人引揚げ問題につきまして国連におもむいておるわが国代表一行の活動につきましては、留守家族は非常に大きな期待を持つておるのでありますが、その後国連におきまする引揚げに関する上程問題はどうなつておりますか、それにつきまして具体的にお伺いいたしたいと存じます。  第三は、終戦以来本年の十月十二日までに、米国を初めといたしまして、ベルギー、カナダ、英国、フランス、イタリー、タイ、スペイン、スイス等の各国に留学のために渡航いたしました日本人の学生の数は、教授を含めまして八百七十四名に上つております。またガリオア資金のほか、米国民間の、たとえばグルー・フアウンデーシヨンのごとき活動も活発に開始されております。またフランス政府は日仏学院建設のためにすでに二千五百万円を支出し、イギリスにおきましても、今般日本人留学生制度を創設しまして、目下学生の選考を行つておる田であります。またイタリア等からも、日本の美術界の権威者を派遣してくれというような申込みをして来ているのでありまして、日本文化の紹介及び外国文化の攝取はぜひ世界平和のために、かつまた新日本建設のためにも、きわめて重要な事柄であります。以上のごとく活発なる文化交流が見られますことは、まことに御同慶にたえないと思います。かかる文化交流の動きに対しまして、政府はいかなる積極的な方策と企画をお持ちになるか。さらにまたこれらの欧米の動きに対応しまして、アジア諸国との文化交流に対しまして、政府はいかなる積極的な具体案をお持ちになつておりますか、この点に対するお考えを承りたいと思います。  最後に戦後におきまするわが国経済の中心問題が、貿易にあることは論をまたないところであります。現にわが国は二十箇国との間に貿易協定を締結いたしまして、昭和二十四年度輸入総額七億九千七百万ドルのうち、協定国からの輸入は一億四千三百万ドル、また輸出におきましても総額の七〇%に当る三億三千万ドルが協定国によつて占められておる現状であります。これは総司令部その他各方面の努力のたまものと感謝にたえません。しかしながら一方翻つて考えますと、輸入の面において協定国からのそれが、輸入総額のわずか一八%にしかすぎない。この点はわが国輸入貿易が依然として米国のみに依存しておるという事柄を意味いたしまして、対日援助もあるいは打切られるかもしれないということが先ほどのお話にございましたが、このような時期にあたりまして、一段の反省と努力が必要ではないかという感じがいたすのであります。  戦前からわが国はアジア諸国その他に工業製品を輸出しまして、そのかわりにアジア諸国からも、多量の原料を輸入するという伝統的貿易政策をとつて来たのでありますから、この意味から申しましても、協定国からの輸入に一段の努力を払う必要があるのではないか。そのためにはこれら諸国の経済事情をさらによく調査されまして、有効適切な協定をつくられることに努力をせられるとともに、協定の運用にあたりましても、あとう限りコマーシヤル・ベーシスの上に立ちまして、機動的に運用するようにしなければならないと存じます。この点についてはもとより軍政と民政、及びその他の客観状況も違いますが、西ドイツにおきましては、すでに昨年の十一月に通商協定締結権が与えられております。かつその協定は自主的に運営せられておるということを承知しておるのでありますが、政府におきましては、貿易の自主性につきまして、その運用についていかなる努力をせられておりますか、この点についてお伺いいたします。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 トルーマン大統領声明趣旨は、あなたの御解説の通りであろうと思います。しかしこれは私としてはオフイシアル・テキストを見たわけでもないのでありますし、ことにまた大統領の言明でありますからして、これに対して言論は避けたいと思います。それからかかる場合にその真相を発表して、国民に対して外交上の知識といいますか、国際上の正確な知識を与えるのがいいじやないか、これは御同感でありまして、そのためにいろいろな文書を出しておりますが、これを外交白書なりといつて、社会党の方からしきに攻撃を受けております。しかしこれは情報部の出したものであつて、白書と言わるるのは少々当らないように思います。またこれを読まなかつた私が、はなはだ怠慢なりと言われることは、はなはだ心外に思うので、外務省の出しておる書類がすべて外交白書で、一々目を通さなければならぬということになると、外務大臣は辞職をした方がいいことになる。そういうようなわけで、十分その点はなお努めます。また外務省もそうでありますが、各省ともになるべく事実を事実軒なりとして説明を加えるなり、また発表するなりして、啓蒙は少々言葉が過ぎるかもしれませんが、宣伝、説明等にはなお注意をいたさせます。  それから引揚問題の国連上程、これは事務当局からお答えをいたします。  次に文化交流のお話はごもつともであります。また文化交流を希望している向きもだんだん出て参ります。ことにフランス政府は熱心な希望があります。たしかあれはフランスの在外事務所には、特に法律までかえて、文化に対しての交流といいますか、事務を取扱うように権限を付与して、そのために法律を上程場……(「外務大臣ですよ、あなたは」と呼ぶ者あり)答弁の正確を期するために事務当局とも私語いたしておるわけでありますから、そうどうぞつつ込まずにおいてください。(笑声)それからなお御承知でありましようが、最近グルー前大使から文化交流に対する基金の寄付があつたものですから、これを土台として日本側からも相当の基金を集めて、文化交流運動の助けにしたいというようなことなども考えて、文化交流については政府も相当熱心に考えておりますから、この点は御了承願いたいと思います。  それから貿易についてのお話でありますが、ごもつともであります。政府としても輸入の促進には相当関心を持つて、スターリング・エリアとの通商についても注意を払つておるのでありますが、今日のところはスターリング・エリアは、いわゆるコンヴエンシヨナル何とかというので、こちらが買えば向うが売るというような主義をとつておるものでありますから、思う通りに参りませんが、この主義も日本としては今日輸入の促進をはからなければならぬ現状におるのでありますから、イギリス側、スターリング・エリア側とも十分の話合いをしたいと考えて、それぞれ話合いもいたしております。
  40. 守島伍郎

    ○守島委員長 事務当局からのはあとにしていただきまして、それでは山本君、あなたは五分だけでございます。
  41. 山本利壽

    ○山本(利)委員 朝鮮事変はすでに対岸の火事ではなくて、わが国にとつても重大な段階にあるように思われますが、先ほど自由党の佐々木君は、満州から中国へ及ぶ形勢にあるといわれるが、最近の情報では南鮮に及んで日本にまで来るのではないかということをみんな心配しておるのであります。     〔委員長退席、佐々木(盛)委員長   代理着席〕  一体われわれとしては、国連軍に勝つてもらうよりほかに手はない状態にありますけれども、そのためにはわが国民としては、よほどの覚悟をして協力せねばならないと考えます。協力するためには、物事の真相を知るということであります。今日まで吉田首相国民に発表せられるところは、とかく楽観的なことであり、そのなさるところもすべてなり行きまかせといつたようなところが見えるのであります。これは真相を御発表にならないから、国民がさようにとるのかもしれませんけれども超党派外交等につきましても、ついて来たい者は来い、いやならやめておけといつた態度が見えるのであります。しかし今こそ各政党はもちろん、全国民に強く呼びかけ、協力一致の態勢をとらねばならぬときではないかと私は考える。国家の首班たる者は、ときには懇請してでも、この態勢をとるべきであつて、自然にでき上るまで待つというのは、少し物事の見方が甘いように考えるのであります。東条内閣のときに、国民はただついて行きさえすれば勝てると思つていましたが、大事なことはすべて国民秘密にされておつたために、みじめなあの敗戦を見ました。今度はただ吉田首相におすがりしておりさえすれば、再び国際場裡に復活できると国民は安心しておるのでありますが、現段階の重大性が秘密にされていては、再び国民は失望のふちに沈むようなことはないかと憂うるのであります。  そこで率直にいろいろな点についてお答えを願いたいと思うのでありますが、まず第一に先般来問題となつております電力再編成に関するポ政令の原因をなしたマッカーサー書簡のようなものも、突然マッカーサー元帥から発せられたのではなくて、十一月二十日に政府の出したレポートに基いた回答であるということを聞きますが、それはほんとうでありましようか。  第二番目にその書簡の発表を、司令部が許さないと政府筋で言つているように聞きますが、ほんとうに司令部はこの発表を禁止しているのでありましようか。まずこの二点についてお答えを願いたいと思います。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 マツカーサー書簡の発表その他筆につきましては、政府は始終申しておりますが、一体外交文書あるいは政府間のとりかわされた公文書を、相手方の承知なしに、政府が独断でもつて発表するということは信義にも関することでありますから、政府といたしましていたしません。公文書であります。従つて次にその内容がどうこうということについてはお答えはできません。     〔佐々木(盛)委員長代理退席、委   員長着席〕
  43. 山本利壽

    ○山本(利)委員 この問題の論議は時間がありませんから一応控えまして、次にワシントン一月発AFP特電によりますと、マツカーサー元帥は米軍のアジアからの撤退に反対する意味のことを、トルーマン大統領に申し送つたということでありますが、これを裏返して考えてみると、アメリカには米軍をアジアから撤退せよという意見が、相当あるのではないかと思われるのであります。米国の政策が依然欧州第一主義であることは、各種の情報から明らかなことでありますが……。
  44. 守島伍郎

    ○守島委員長 簡単に要領だけお願いいたします。
  45. 山本利壽

    ○山本(利)委員 今日米軍の撤退ということが行われては、わが国の安全が保障せられないことになりますので、ただいまのこの問題に関するアメリカの情報、及び万一そういうけはいがある場合には、国会その他を通じて、さようなことのないようにという懇請の意思を、表示する御意思があるかどうかということを承りたい。  いま一点、朝鮮事件の成行きによつては、講和会議も遅れる可能性のあることは、吉田首相の認められておちれるところでありますが、たとい講和会議が延びても、米国の好意によつて、いわゆる事実上の講和は進められ行くものと思いますが……。
  46. 守島伍郎

    ○守島委員長 山本君時間が参りました。
  47. 山本利壽

    ○山本(利)委員 この次の段階において、日本が一番与えてほしいと思われることは何であるか。種々首相においては構想があると思いますが承りたいと存じます。
  48. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。今日アメリカの兵隊を日本から撤退するという話は、具体的にわれわれは承知しておらないのみならず、多分これはないと私は確信いたします。日本を放棄して、日本を無防備のままにうつちやつておくということは断じてない。私は今まで接触した方面からの話合いから考えてみても、それは信じません。でありますからこれは御安心になつていいと思います。  それからその次は事実上の講和が進むであろうが、その場合に何を一番希望するか、これは何にいたしてみても外資導入であり、また貿易の促進、ことに輸入貿易の促進考えなければならぬと思いますから、この点については政府も十分努力をいたしておりますし、また努力いたすつもりであります。
  49. 守島伍郎

    ○守島委員長 時間がありませんから、次に川上君。
  50. 川上貫一

    川上委員 私は時間がありませんので、五つの点だけをまとめて総理大臣にお尋ねいたします。  アメリカ朝鮮の内戦に対しまして原爆を使用する意思のあることを明らかにしたいと思います。政府は労働階級や大衆の広汎な反対にもかかわらず、一も二もなく協力を推し進めて来られて、朝鮮事件への干渉は遂に日本人戦争に使うというようなことになつたり、あるいは原爆を使用するというところまで推し進めて来たと思う。特に原爆の使用を推し進めたことは世界に大衝撃を与えまして、イギリスやフランスは明らかに反対の意思を表明しておると思う。アトリー首相はみずから大統領を訪問しておられる。ことにこの原爆を最初に使用されました日本人にとつては、非常に大きな底知れぬ恐怖である。この重大な事態に対しまして、総理日本総理大臣であるという理由だけでなしに、かような事態をもたらすに至つた外国の政策に一も二もなく協力されて、これに日本人をかり立てておるところの責任者として、重大な責任を負うべきであると思う。これに対して総理は責任をお感じになりますか、あるいは何にもお感じになりませんか、この点をお尋ねしたい。  第二点、総理の眼中には、ただアメリカがあるばかりだと思う。総理が言われる単独講和はただアメリカに従属することである。さらに総理の言われる国連協力ということはアメリカに迎合し、アメリカ協力して戦争するということである。だからこそ政府は臆面もなく外交白書なるものを出して、全面講和あるいは明らかにソ中両国に敵という烙印を押しておる。総理はこれは知らぬと言われるが、総理がこういうお考えであるからこそ出しておる。しかるに国際情勢は事実上単独講和などは、なかなかできつこはない状態になりつつある。ことに最近朝鮮事件を契機とし、トルーマン声明以来イギリス、フランスはもちろん、世界各国の動向によつていよいよ確実になつたことは、私は第一に中共を対日講和から除外することは、絶対にできない情勢に来たと思う。  第二に、ソ同盟が参加する。現実の問題として国際的な日程に上つて来た。これは外交通の総理にはわかると思う。かようにして全面講和可能性と単独講和の不可能性は、もはや動かしがたい事実となつて現われて来ておる。こういう情勢を前にして、総理は今までの考えをおかえになる気構えはありませんか。今までの考えはどこまでもお進めになりますか、これが第二点。
  51. 守島伍郎

    ○守島委員長 川上君、簡単に……。
  52. 川上貫一

    川上委員 もう三点です。第三点は、講和吉田内閣でやるとおつしやつておられますが、講和に対する態度はすでにはつきりしておると思うのであります。この中で第一に講和締結後における全占領軍の即時撤退というポツダム宣言第十二項は講和の要件であると思います。しかるに十月二十六日、アメリカがマリク・ソ同盟代表に手交したというアメリカ政府の対日講和に関する覚書によれば、日本の再軍備が認められ、かつアメリカの陸海空軍基地が保有され、あるいは駐兵されるということに内容がなつておると思うが、総理大臣はかような提案に賛成でありますか、これははつきりお聞きしたい。  次に第四点、総理大臣は対日講和において、琉球及び小笠原等が国連の信託統治に移され、アメリカの管理下に置かれ、事実アメリカの戦略的前進基地として規定される、こういうことに御反対になりますか、どうですか。  第五点は警察予備隊は事実上の軍隊である、このことは本国会におきまして、もはや疑いの余地なきほど質疑応答されておると思う。軍隊の訓練を受けておると思う。しかも各部隊の最高指揮官といわれますものは、アメリカの軍人であるといわれておる。かようなことは明らかに日本の再武装であり、事実上の軍隊の設定である。しかも各部隊の最高指揮官が日本人でないということになりますと、これは非常にわからぬ問題であつて、このことは、かつてアメリカの主張で採択されました、極東委員会の決定に完全に違反し、日本の事実上の再武装が行われ、講和以前において日本は軍事的な、ポツダム宣言に完全に違反する方向に、政府みずからの手によつて推し進められておると思いますが、この点総理はどうお考えになりますか。  以上の点を一つ一つについてお答えを願いたい。
  53. 吉田茂

    吉田国務大臣 一つ一つお答えをいたします。原子爆弾のお話でありますが、原子爆弾は、アメリカが必ず使用するとも、はつきり申しておるように考えませんのみならず、これは日本外務大臣として、お答えをする限りでないと思いますから、お答えいたしません。  また、私の眼中アメリカのみという御判断でありますが、あたかも共産党の眼中にソビエトあるのみと、こう言われるのと同じようなわけであつて、あえてお答えをいたしません。  講和後に占領軍が撤退するかどうか、これは講和後になつてから御相談いたします。  琉球、小笠原の信託云々、これも現在問題になつておらないのであつて講和条約の内容をなすものであろうと考えますから、お答えはいたしません。  また警察予備隊の最高指揮官は私でございまして、アメリカ人ではないのであります。(笑声)
  54. 川上貫一

    川上委員 総理答弁はなつておらぬ。国民はその点の総理の心持を聞きたいと思つているのである。今のような答弁が、日本国民を保護し、人民の生命財産を守る総理大臣答弁ですか。無責任きわまると思う。
  55. 守島伍郎

    ○守島委員長 川上君、もう時間がありません。次は黒田君。ちよつと申し上げますが、答弁も入れまして十分でありますから、どうか簡単に願います。
  56. 黒田寿男

    ○黒田委員 一つの問題だけ……。これは質問と申しますよりか、吉田さんに、むしろ、御教示をお願いしたいと思う。それはわが国の外交方針といたしましての、中立性の問題に関係いたしにまして、私は多少疑念を持つている点がありますので、これについてお教え願いたいと思うのであります。  たとえば、自由党の人々が、米国第一主義で行くとか、あるいは共産党の諸君が、向ソ一辺倒で行くとか、こういう議論をなさいますことは、私は自由であると思います。しかしながら、政府といたしまして、また日本国といたしましては、そのようなことが許されるかどうかということを、私は疑問に思つている。すなわち中立性以外の態度をとることが許されるのであるかどうかという疑問が私にはあるのであります。こういうことを考えながら、政府の外交白書で示されました態度を見まして、私は非常に疑問を持つのであります。外交白書に書いてあるように、単純に、あるいは奔放に、あるいは無責任に、中立罵倒というようなことが放言し得られるかどうかということに対して、私には疑問があるのであります。なぜそういう疑問を起すかと申しますと、第一には、われわれは現在わが国の置かれております地位の正確な認識の上に立つて物事を考えなければならない。わが国は、御承知のように、まだ国家といたしまして、自由な意意表示をし、自由な行動をとり得るというような立場に置かれていないのであります。すなわち意思表示につきましても、行動につきましても、一定の制限のもとに置かれておるということを、いつも忘れてはならないと考える。どういう制限であるかと申しますと、まず日本は降伏文書のもとに置かれておるということであります。この降伏文書はポツダム宣言に淵源するものでありますから、そのポツダム宣言、そのポツダム宣言はカイロ宣言を吸收しておりますから、そのカイロ宣言、それから日本の降伏条項に基く義務を完遂するにつきまして準拠すべきもの、原則及び基準を定めておるものが降伏後の対日基本政策でありますから、この降伏後の対日基本政策にも私どもは制限され、拘束されておるということになるのであります。これらの国際的文書に表示されました基本方針のもとに置かれておるという一定の制限を、私どもは受けておる。この制限は講和条約が効力を発生する時期の到来するまでの期間は、わが国に対しまして有効であることをわれわれは認識しておかなければなりません。そしてこれらの政策のもとに置かれておりますこと、これらの政策を日本に適用することを決定した勢力が米・英・ソ・中国でありまして、これらの勢力は現在複雑な対立の状態に置かれておりますけれども、わが国がその対立を含んだ勢力のもとに、そのすべての国に対しまして降伏状態にあるという事実を忘れてはならぬと思うのであります。このような条件のもとで、国際間に処しなければならぬということになつて参りますと、日本が降伏しておりますいずれの国に対しても、日本としては友好関係を保つべき義務があるのではなかろうか、私はそういうふうに考えるのであります。具体的に申しますれば、たとえば米・英・ソ・中国が日本の降伏しております主要な相手方でありまして、よしこれらの国々が二つの勢力に対立しておるといたしましても、降伏文書が有効であります期間である現在では、先に述べましたような条件下にわが国はあることを考えますときに、一つの勢力につき他の勢力を敵視するというような態度は、許されないのではないか、こういう疑問が私にはある。少くとも敵視いたしました国に対しましては、その国にもわが国は降伏しておるのでありますから、このような態度は極力避けねばならぬのではないか。将来の問題といたしましては、わが国がそれらの国々に同時に降伏しておきながら、ある国に対して敵性的内容の条件を含むがごとき講和を受諾するということがありますれば、これはその国に対する降伏条件の違反となると私は思う。従つてどもは、このような条約を締結することはできぬのではないかと思う。
  57. 守島伍郎

    ○守島委員長 黒田君、もう時間がありません。
  58. 黒田寿男

    ○黒田委員 では結論を申します。そこでわが国は、今こういうような条件のもとに置かれておりますから、すべての降伏国に対しましては、友好関係を維持する義務がある、中立性を維持する義務があるのではないかという疑問が私にはある。この中立性と申しますのは、もとより国際法にあります中立国という意味ではありません。漠然と中立性と申しておきたいと思いますが、とにかくこういう条件のもとにわが国が置かれておるのではなかろうか。そう考えると、外交白書にあるように、どつちかにつけ、中立というようなものは敵前逃亡だというようなことを言うてよろしいか、そういう疑問が後輩として私にはあるのでありますから、ひとつ大先輩としての吉田さんの御意見を承りたい。  最後ちよつと申し上げておきます。ここで私が中立性を問題にしておりますのは、講和条約成立までの期間、すなわちわが国が今申しましたような条件のもとに置かれておる、このことを考えるから、中立性を表示しなければならぬ状態にあると考えねばならぬのではなかろうか、というのである。自分の自由な意思を、わが国が将来独立いたしました後に発表する、どういう国につこう、ああいう国につこう、あるいは中立をとろう、これは私はそのときには自由に意思表示してよろしいと思う。また個人としてそういう意思表示をしてもよろしいが、国とし、政府としては現在ではそういう意思表示を自由に行うことは許されない。どうしても中立維持、友好関係維持、こういう態度でなければならぬのではないかという疑問があるのであります。そこで私は外交白書の方針がどうも合点が行きませんので、きようはこれだけ、ひとつ吉田総理大臣から御教示いただきたいと思います。これで私の質問を終ります。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 どうも先輩は、始終後輩から教わるのが常習でありますし、あえて教えるほどの地位でもありませんから、お教え申しかねます。しかし私から見れば、中立性もおかしな話だと思うのであります。今日日本は無条件降伏して連合国司令官の指揮のもとにあるのでありますから、中立性もおかしな話であると思います。われわれとしては、一に降伏条約の規定に従つて行動する以外に自由はないと私は考えます。また外交白書云々というお話でありますが、先ほども申した通り、外交白書はいわゆる俗説でありまして、政府としては、あるいは外務省としては、情報部から出した一つの、事実を事実としての記載にすぎないのであつて、これを外交方針とか、あるいは外交政策を述べたものとお考えになりましたら間違いでありますから、お考え直しを願いたいと思います。
  60. 守島伍郎

    ○守島委員長 栗山君。
  61. 栗山長次郎

    ○栗山委員 観測はいろいろございますけれども講和会議も近い時勢だと存じますので、この際総理の御所見を承つて、そういつたときの国内態勢の備えにいたしますとか、また国民の注意を喚起したいという意味でお伺いいたしたいことは、外交活動の諸機関、詰めて申せば外交機関ということができましよう。それと国民の国際性の高揚、国民外交というのがいいかもしれません。さらに日本軍が侵略いたしました地域の対日感情は非常に険悪でありますので、こういう地域に対して何らか感情緩和の善処方法はないものかというような点についてでございます。  占領下の渉外事務は、激変に伴う急場に応じて、その都度処理された観があり、各省各庁ごとに機関を持ち、いわばきわめて多元的であります。これが実務処理の上に若干便利でありましようけれども、やがて逐次統合した方がよいのではないかと考えます。また日本戦争に負けます前のわが国の外交というのは、外務、陸軍、海軍、それに大蔵省の財務というようなものが海外に出ておりまして、まつたく別建で活動いたしており、ことに外務と軍部のごときは二元的であつて、その弊害はかなり顕著に現われておつたのでありますが、再発足をします日本外交としては、この轍を踏みたくない。これについては今から研究もし、企画を立てなければならぬと思いますが、そういうような点。  次に最近在外事務所を本数箇所にこしらえることが許され、これは幸いに外務省で一元化されておるようでありますが、こういう場合でありますので、必要に応じてその都度便宜的にいろいろな方法が行われるということになると、結局外へ出る機関というものが統合を欠くことになりはしないか。従つて考えておかなければならぬだろう。さらに外務官吏についてでありますが、現在は外務官吏の数が千五百数十名と聞いております。終戦の当時にはそれが約九百名おりました。事変前の昭和七年には二千八百名で、そのうち六百名は在外の外交官吏である。こういうことにかんがみまして、将来の外交官吏、または外交機構というものについてぼつぼつお考えであろうと思いますので、お聞きしておきたいと存じますが、世界の情勢もまつたくかわつておりますし、日本としても財政的に多数の官吏をまかなうことができないという面もありますので、なかなか兼ね合いがむずかしかろうと存じますけれども、何か御所見がありましたならば、承つておきたく存じます。  それから第二には、国民の国際性の高揚、国民外交と申してもいいのでありますが、外交本能というもの……。
  62. 守島伍郎

    ○守島委員長 栗山君、お急ぎください。
  63. 栗山長次郎

    ○栗山委員 私は当てはめられた時間は心得ております。  そういうような観点から見まして、文化国家日本国民に示唆を与えるようなことを、ここで取上げられることを望みたいのでございます。日本国民は島国にとじこもつて国際性が比較的少い。最近海外に出ました官吏などの中にも、国際性がきわめて薄くて、言葉ができないというようなことから、新聞にまでたたかれている例がございますが、私どもはこういう際に国民の外交本能、国際性の高揚というようなことをまじめに考えたいと思うのであります。  第三の点は、日本軍が侵略しました地域、ことにフイリツピン以南の諸国における対日感情が非常に悪いのでありますが、どうも隣邦中国が、世界的な共産革命を信条としておる中共の政権下にありますために、あまり中国に期待をしても多くを望むことはできないということから、南方の方に対する日本の貿易上の関心が自然と高まるのでありますが、今のようではなかなかむずかしくはないか、かように考えます。と申して、盲貿易打開のためには、日本から幸い方々に出ることが許されておりますが、こういう目的のために日本から出ることが許されるかどうか、これは一つの研究課題でありましようけれども、あるいは国際的な平和団体であるとか、宗教団体というものに橋渡しをしてもらつて、できるだけのことをするとか、また文化使節の交換をするとか、一言で申せば国民使節的なものをつくつて、おわびをするということも一つの方法であろうと思います。向うから来るという気づかいはないのでありますから、こちらでやる。また国会等で適当な時期に、日本軍が侵略しました地域に対して、何と申しますか、陳謝決議というようなものでも出しますれば、よほど糸口が明くのではないかと考えますが、それらの点について御所見を承りたいと思います。
  64. 吉田茂

    吉田国務大臣 外務省の機構は、外交停止の状態にあるものでありますから、なるべく縮小して経費のかからないようにするために、ずいぶんむりな減員までも行つて、御指摘のように戦前とは比較にならないほど少い省員でもつて事務をとつております。さて将来どうするか。ことに講和後になつてどうするかということになれば、人員も人員でありますが、機構のことも考えなければならぬ。また情勢も戦前とはよほど違つておりますから、これに対応して外務省の機構も整備しなければならぬと思つて、研究はいたしております。  それから国民外交の話でありますが、これは今日外交使節、国民使節を派遣するとかなんとかという自由を持つておりませんから、日本に対して悪感情を持つ国に対しては、なるべくその国の感情を害しないように、その国との間に友好関係を進めるように、政府としても、あるいは国民としても、その行動に十分注意して行くほか、積極的にどうこうという施策を許す事態に今日なつておりませんから、これは講和後の問題と思います。ただそれまではなるべく友好関係を増進するように、政府としても態度を愼みたいと考えます。  今御指摘の海外に行く官吏が相当いろいろな問題を起すということは政府も認めております。在外公館と申しますか、在外事務所からの報告もありましたので、各省にその報告をまわして各省官吏の注意を促すようにいたしました。
  65. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは総理とは十二時までとのお約束でありまして、すぐ帰らなければならぬそうでありますからごく簡単に……。
  66. 菊池義郎

    菊池委員 日本の再軍備につきまして総理はしばしばお答えになつて、たとい許されても再軍備はせぬ方がよろしいということをおつしやられましたが、再軍備というような大げさなことでなぐ、今までのような軍備を持てば当然日本は財政的につぶれます。ただ国連に対するところの申訳のため、国連に安全保障を頼むならば、日本としても国際道義の上から申しまして、形式的な軍隊は持たなければならない、私は当然そうならなければならぬと思うのであります。七万五千の警察隊を持つだけの金があるならば、今までの徴兵制度によるならば、三十万ないし四十万の軍隊を維持することができるということを、専門家も言つているくらいでありますが、向うからして許されるまでもなく、反共列国から日本の再軍備を要求されて来た場合でも、今日の情勢においてもなおかつ総理は持たぬ方がいいとお考えになりますか。濠州、フイリピンその他の何を考えられて、まあ今までのお言葉は微妙な心づかいからのお言葉であろうと思いますが、それでは日本の再軍備を要望しておりますところのアメリカ国民の反感を買う結果になるのではないかとも考えるのでありますが、いかがでありましよう。  それからもう一つは、講和会議が締結されましたあかつきにおいては、国会解散するということが、しきりと政府筋の意向として伝えられておりますが、これに対する総理の御意向をお伺いしたい。
  67. 吉田茂

    吉田国務大臣 再軍備の要求があつても私は応じたくない、あくまでも憲法の趣意、精神を守つて私は行くべきであると今確信しております。  また、ただいまの講和国会解散するかということは、これは将来に属することでありまして、講和の見通しも今日つかないときでありますから、講和後どういうような状態になりますか。その政治の自主性において対処すべきものと思いまして、今日講和後には必ず国会解散するというような考えは毛頭持つておりません。
  68. 山本利壽

    ○山本(利)委員 アメリカにおいてはグレイ委員会の報告に基いて、世界経済振興のために未開発資源の開発が考えられているということを聞きますが、東亜諸地域における実施計画には、日本人をぜひ参加さしていただきたいと思うのであります。地理的に見ても日本人の技術と経験とを用いるということは、開発事業の効果を上げる点からいつても、また日本人としても大いに有意義なことであると思いますが、この点に関する総理の御努力をお願いしたいと思うのでありますが、いかがでありますか。(拍手)
  69. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見は伺つておきます。なるべくそういうふうにいたしたいと私も考えております。
  70. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは福田君に対する事務当局の御答弁がございますか。
  71. 太田一郎

    太田政府委員 簡単にお答えいたします。お尋ねの今米国に行つておりますところの国民代表の方々の問題でありますが、あの問題はこの前も申し上げました通り、第三委員会において今研究されているのであります。ところが御承知の通り第三委員会におきましては、人権擁護に関する問題とそれから情報の自由に関する問題それから国際難民の問題というような議題がたくさんございますので、日独の引揚問題はあとまわしにされておりましたが、最近得ましたところの情報によりますと、一両日中に取上げられることになるだろうということでございます。
  72. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは再び請願の件に移ります。日程第六、小笠原諸島の日本復帰に関する請願菊池義郎紹介、第一二七号を議題といたします。紹介議員説明を求めます。菊池君。
  73. 菊池義郎

    菊池委員 これは小笠原島領土復帰期成連盟の請願であります。朗読いたします。  請願書  私たち小笠原六千数百の全島民は、昭和十九年七月軍官の命令により急遽着のみ着のままで祖父母の代から住みなれた故郷をあとにして総引揚げをいたしましたが、爾後すでに六箇年余りを経過いたし、その間昭和二十一年四月以来数度にわたり、マッカーサー元帥に帰郷の嘆願書を提出し、かつ昭和二十四年五月には衆議院に、昭和二十五年一月には参議院に請願書を提出する一方、東京都知事にも懇請し、全国地方自治協議会連合会会長として総司令部に小笠原島民の帰郷並びに行政権復帰の嘆願書を提出する等あらゆる努力を傾注して参りましたが、いまだに帰郷が許されざるのみか、最近のワシントン電報にて、小笠原諸島を国連の信託統治にするというニュースが伝えられたため、私たち全島民は呆然としています。もしそのことが事実となつたならば、私たち小笠原島民は最大なる不幸に遭遇せねばなりません。  一体小笠原島は歴史的に見て、日本人の発見にかかるものであり、小笠原島という名称も、その発見者と伝えられる小笠原貞頼の名によつたものであり、ボニン・アイランドといわれるのも、日本語の無人島から転化したものと思われます。国家として同島を領有する目的のもとに実地調査を行つたのは、延宝三年(一六七五年)の日本政府の調査が初めてのことであり、その後日本政府はさらに文久元年(一八六一年)及び明治八年(一八七五年)の二回にわたる調査を経て、明治九年(一八七六年)これを日本領土としたものであります。この間一八三〇年に五名の欧米人と二十数名のカナカ土人が来て同島に定住するようになつたのですが、彼らは国籍を異にする人々がたまたま一団となつて来島したものであり、日本が小笠原島をその領土に編入するに及んですべて日本に帰化し、その後は血縁的にも文化的にもわれわれ内地人と何ら異ならない人々となつたのであります。このような事情からして小笠原島が日本領土であることは、当然と考えなければならぬと思います。  爾来七十年、私たちの祖先の開拓の努力が結実して、六千数百名の日本人が居住するようになり、私たちもこの島に生れ、この島に育ち、漁業、冬季蔬菜類、かん上よ、薬草等の栽培に努力して、この島から生産される産物で何不自由なき生計を営んで来たのであります。  以上のことからこの島が侵略によつて日本が奪取したものでないことは一目瞭然であり、従つてカイロ宣言に基きこの島の主権が講和とともに日本復帰することは当然と信じられるのであります。しかるにも上私たちの郷土であるこの島が日本から分離されるならば、よつて生ずる私たちの運命は、絶望以外の何ものでもないでしよう。  私たちの多くは、いまだに定職もなく、飢えと居住難に悩まされ、辛うじて生命を維持しているにすぎません。ほとんど島の生活以外に知らない私たちにとつては、内地の生活環境の中では暮しが立ちません。  私たち全小笠原島民の代表は、本件に関して特に昭和二十五年十月、マッカーサー元帥に帰郷促進と領土復帰に関する嘆願書を提出いたしました。講和条約の締結にあたつては、政府はもとより各政党におかせられても、領土復帰の主張がなされるものと確信していますが、小笠原島は如上の史的事実よりしても、特に貴院の御深慮を煩わしたく、ここに全小笠原島民を代表上て請願いたす次第であります。
  74. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側から何か御意見はございませんか。
  75. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの請願の点につきましては、まことにごもつともだと存じまするが、小笠原島の帰属の点につきましては、講和条約後決定される問題でございまして、今まで再三御答弁申し上げておりますように、この小笠原島はその歴史的、あるいは地理的、あるいは民族的な状態から申しましても、十分その状態を知つてもらいまするように、従来からも連合国側にしばしば陳情をいやしておるのであります。この点御了承願いたいと思います。
  76. 守島伍郎

    ○守島委員長 何かはかに御質疑はございませんか。
  77. 並木芳雄

    並木委員 今小笠原へ渡航するのはどういうふうになつておりますか。許可の手続とか、そういうものは……。
  78. 太田一郎

    太田政府委員 小笠原への渡航、復帰の問題につきましては、たびたび本委員会でも御質問がありました。私どもといたしましては、連合国の方にその希望を伝達しておるのでありますが、今までのところ、移りました後の生活状態というようなことについて、いろいろ懸念されておりまして、あそこは日本人以外の者の子孫のみしか、今日のところ居住を許されていないという実情であります。
  79. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかに御質疑はございませんか。——質疑がなければ、ただいまの日程第六の請願は、これを採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認めます。しからばさよう決定いたします。     —————————————
  81. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第七、在外胞引揚国民運動強化に関する請願若林義孝君外一名紹介、第四四六号を議題といたします。紹介議員説明を求めます。若林義孝君。
  82. 若林義孝

    若林義孝君 単なる紹介議員としてでなしに、海外胞引揚げに関する特別委員会委員長としての立場も含んだ意味で趣旨弁明をし、お願いいたしたいと思います。過般国会が中心になりまして、海外抑留同胞の引揚げに関する国民一大運動がこの春以来展開されておるのでありまして、相当効果を上げ得ておると思うのであります。それに関しましてこの請願が出ておるのでありまして、その結論は、全国的運動を大々的に展開せんがために、これに要する経費国家が支出することは、本問題の性格上当然のことである。よつてすみやかにこれが国庫支出の方途を講ぜられたい。右とともに、国民一般の啓発を兼ねた運動とともに、財源として割増金付同胞救出切手の発行を行うべき措置を、急速に講ぜられたいというのでありまして提出者は、在外同胞帰還促進全国協議会副委員長の上島善一君から出ておるのであります。先ほど申しましたように、国会中心の一大国民運動に関連してのことでございますので、むしろこれは国会側から出されても当然のことのような趣旨なのであります。過般各議員諸君からは五百円ずつのこれに対する醵金をお願いいたして続けておるのでありまするけれども、今日この運動は財源の枯渇のために、一頓座を来すおそれがありはせぬかと考えるのであります。全国留守家族の方たちは、過去五年間にわたりましてあらゆる困難に打ちかち、この運動の中核をなして来ておるのであります。海外で抑留されておるというその根本原因は何によるものかといえば、いわゆる国家の一大方針に基いた結果がかくつておるのでありまして、この運動を留守家族のみ、また一般国民のみの自発的な運動にゆだねておくということは当を得てない。これがいわゆる国会議員諸君が中心になつて国民運動を推進したゆえんなのでありまして、ドイツのごときは、すでにこの国民運動は政府の財源をもととしてなされておると聞き及んでおるのであります。私は名目が国民運動であるから、政府の関知せざるところであるというようなことでなしに、やはり政府国民も打つて一丸となつて国民運動ということが言い得ると思う。国民だけがやるのでなければ国民運動と言えないというような狭い解釈でなしに、国をあげての運動である。もつとも厚生省の方からは、国民愛の運動というので、三百余万円がこれの運動に関連して支出はされておるのでありますけれども、しかし名目はあくまでも愛の運動というために出されておるのであります。この救出運動を国民運動として堂々と国費の支弁が願えますならばというのが請願趣旨であります。おそらくこの国民運動の中核をなしておられます全国会議員諸君の意向でもあると考えますので、何とぞ愼重審議の上、御採択、実現を期せられんことを希望する次第であります。
  83. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府の御説明がございますれば……。
  84. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この国民運動に対しまして議員の皆さん方が平素並々ならぬ御努力を願つております点を感謝いたします。また政府はこの運動に対しまする十分なる理解を持つておるつもりであります。ただ問題は、どこまでもやはり民間運動の形がこの運動には最もふさわしくないか。ことにその財源の問題が中心の問題になつて来ると存じますが、この問題につきましても、いろいろと民間運動として、あるいは共同募金等の方面もまだ開拓の余地がありはしないかと存じまするが、政府が直接これに関係いたしまするよりは、現在ではむしろやはり民間運動としての性格の方がいいのではないか、いろいろ国際的関係等を考えまして、現在さように考えております。
  85. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  86. 並木芳雄

    並木委員 この間アメリカへ行きました三人はどういう資格で行つたのでありますか。中山さんら三人、あれは民間の代表という資格ですか、それとも政府の職員という資格ですか。
  87. 太田一郎

    太田政府委員 中山、斎藤両氏は国民代表、外務省から参りました倭島管理局長は、それに随行します専門家ということで参りました。
  88. 並木芳雄

    並木委員 費用はどうですか。
  89. 太田一郎

    太田政府委員 政府の費用でございます。
  90. 並木芳雄

    並木委員 あれもやはり一種の引揚げ促進国民運動の一環だと思うのです。今若林議員が御説明されましたことは、もつともだと思います。これは何ゆえに民間運動としてやつてもらう方がいいかという根拠は、今草葉次官は示されませんでしたけれども、やはりああいうことが行われる以上、非常にけつこうなことなんですから、この趣旨は十分くんで努力していただきたいと思います。  これは紹介議員に私はお尋ねするのでありますが、それほどの御熱意を持つているならば、国会にも海外胞引揚特別委員会ができており、若林さんは特にその中の非常に熱心な人であることを知つているが、その委員会で一つの決議か何かされたらどうかと思うのですが、そういうことはやつておられないのですか。
  91. 若林義孝

    若林義孝君 前国会委員会におきまして、このことが問題になつたのでありますが、主として外務省の方から支出されておるのは、引揚げに関するものであります。定着援護の費用であるならば、厚生省であります。引揚委員会といたしましても、外務省の方にお出かけを願つて、これに関してのお考えを聞くつもりでおつたのでありますけれども、幸いこの請願が本委員会にお取上げになつたものでありますから——ちよつと私そのかつこうがわからぬのでありますが、先ほどの政務次官のお話では、あくまでも民間運動でなければならぬということでありますが、私はおそらくソ連への気がねで、政府がそうさしておるのじやないかと思うような気持になるから、民間運動の方がいいというお気持であろうと思うのでありますけれども、しかしながらいかに国家が支出いたしましても、とにかく声を大にして、ソ連地区、中共地区におる者を一刻も早く帰らしてやりたいということは、言う、言わぬにかかわらず、政府の意思だと思うのであります。これを国民とともに政府が声を大にするということは、ちつともさしつかえがないのじやないかと私は思うのでありますから、ひとつ政府で十分御検討も願い、またわれわれ国会といたしましても、検討に検討を重ねた上、結論を出すべきだと考えておるのでありまして、このままであつては、国会中心にこの一大運動を展開いたしましたことに対しては、国会の面目にも関すると思うのであります。おそらく各府県の方からもこれと同様の陳情がお手元に届いておると考えるのでありまして、これをもしおろそかにし、軽々しく取扱つて行けば、政府自身の引揚げに対する意思がきわめて冷酷なものであるということにもなりますし、先ほど政府御当局から御説明がありましたように、人道的に、人権擁護の意味から、国連の総会においてもこれが取上げられるのでありますから、日本政府もこの運動に対して、私はその名義はどんな名義でもいいと思うのでありますが、政府国民もこれに対してあげて熱意があるということを、示すべきときであると考えるのでありまして、さきほどの政務次官のあまりにあつさりし過ぎる御答弁だけでは、満足しかねると思うのでありますから、何とぞひとつ委員各位の御熱意に訴えて、政府を御鞭撻願いたいとお願いいたします。
  92. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 これは重大問題でありますからお聞きいたしたい。ただいま引揚げ国民運動の展開が必要であるという趣旨におきましては、私も全面的に賛成であります。また今日遺家族たちの運動に対する非常に熱心な熱意のもかかわらず、引揚運動が財政的な窮迫を告げておるということに対しても、私は心から同情するわけでありますが、先ほど草葉政務次官は、民間運動とした方がいいであろう、こういうようなお話でありますが、請願趣旨は、民間団体に国費を支弁してくれということが重点なのであります。そこで私はこの際承つておきたいのでありますが、民間団体に政府が国費を支出するというようなことが、一体新憲法においてゆるされるかどうか。外務当局にこの点についての根本的な認識の誤りがありはせぬかと私は考えますので、特にこの点に注意を喚起するとともに、政府の所見のほどを私は承つておきたいと思います。
  93. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この運動そのものが、民間運動として従来も進んでおるし、今後も大いにお進めを願うことはけつこうである。費用の点につきましても、直接この民間運動に現在国費を使うというのは、私は困難ではないかと思います。むしろその財源は別ないわゆる民間運動としての方法をお考え願いたい。しかし政府はもちろんこの問題につきましては、従来もそうでございますが、今後とも一層大いなる理解と、なお民間運動に期待するところも大きい点があります。さよう御承知を願いたいと思います。
  94. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は政務次官の、しない方がいいだろうというようなことについての意見を聞いているのではなくて、憲法第八十九条の規定に従つて「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」という規定から、法律上そういうことができるかできないかという、法理論の立場から私は承つておるわけであります。
  95. 草葉隆圓

    草葉政府委員 それは憲法の規定の通りに、ならないとなつておりますから、支出は困難であると思います。
  96. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そこで考えられますことは、実際の実情は困つておられるわけでありますから、これを何とかして救わなければならぬわけでありますが、何か引揚げ費用の流用等の面において便宜上なし得る措置があるかどうか。引揚げ関係の方がお見えになつておりますれば、そのことを承つておきたいと思います。
  97. 草葉隆圓

    草葉政府委員 政府としましても、願意は十分了解するところでありまして、今の点につきましては、今後大いに研究の上へ何か名案ができましたら、またお伝えいたしたいと思います。
  98. 並木芳雄

    並木委員 さつきの次官の答弁を聞いておると、この請願はせつかくここまで持つて来ても、御趣旨けつこうだけれども、御期待通りの金は出ないことになつて来る。それで困るからこそ皆さんが請願されておる。今佐々木委員から、憲法の条項に基けばできないのだろうというお話があつたが、それは当然なんです。ところがこれはいろいろ便法がある。あの憲法というものは、軍国主義時代に、日本の諸団体を軍国主義に統合するために利用した、そういうことがいけないから、特に八十九条を設けて禁止しておる。しかしこれは、たとえば政府が共同主催者になるとか、あるいは地方団体が後援者怒るとか、いろいろの方法によつてできるのです。最近青年団とか婦人会などの問題でも、せつかく民主的に盛り上つて来た団体が、費用がないために、くずれかかつている。そういうような点で、これもやはり憲法にひつかかつて来るので、何とかこういうものに対して、ほかの点では触れないで、単純に経済的な援助をする。——経済的な援助をしたために政府の言う通りにやれといつたのが過去の災いなんですから、そういうことをしなければいい。民間団体のよい分子だけはどんどん伸ばしてやつてただ足らない経済的の援助だけをする。それには確かに憲法に抵触しないような便法があると思う。そういうところの努力をしてもらいたい。いかがですか。
  99. 若林義孝

    若林義孝君 今のに関連して……。文部省なんかにおいても私立学校には憲法のままで行けば補助は与えられないのでありますが、堂々と与えておるのでありますから、私はこれはあたたかい心持が、国民の中に外務省から伝わつて行くような措置を早急にひとつおとりくださるように、通り一ぺんの法律的解釈で済ますことなしに、ほんとうに困つている留守家族の心情を察すれば、私は何らかの措置が講ぜられる必要があるのじやないかと思うのであります。
  100. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先ほど申し上げましたように、政府といたしましても熱烈なるこの運動に対しまして理解を持ち、また引揚げの一日も早からんことを念じております。ただ問題は今の財源の問題でございます。このことにつきましては、先ほど申し上げましたように、十分また研究をいたしまして、お伝えしたいと思います。
  101. 守島伍郎

    ○守島委員長 ほかに御質疑はございませんか。——それでは政府側の御意見もございますし、また皆さんのいろいろ御意見がございまするが、これはとにかく内閣に送付いたしまして、十分好意的に考慮していただくということにいたしまして、日程第七の請願はこれを採擇の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認めまして、さようとりはからいます。     —————————————
  103. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは陳情書日程の審議に移ります。  日程第一海外胞引揚促進陳情書、第三二号より日程第三、同、第一八四号までを一括議題といたします。専門員より説明を求めます。
  104. 佐藤敏人

    佐藤専門員 第三二号、海外胞引揚促進の陳情  陳情者  福島県若松市馬場下五ノ町十六番地石山半四郎外一名  終戦以来五箇年余を経た今日、いまなお三十数万余の同胞が異郷の地に残留せしめられている現状は、まことに黙視できないところである。ついては、海外抑留同胞の煩悶苦惱と、留守家族の心情に思いをいたし、これら抑留者の消息発表と、その引揚促進方につき一段の配慮をせられたい、というのであります。  第六四号、第一八四号は同趣旨であります。
  105. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側より何か御意見がございますか。ございませんか。御質疑はございませんか。——質疑がなければ、ただいまの陳情書は本委員会において了承いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  107. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは次に移ります。日程第四、海外同胞救出国民運動費国庫負担陳情書より、日程第八の在外公館等立替金即時返還に関する陳情書までは、先ほど審議いたしました請願と同趣旨でございますので、審査を省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  109. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に日程第九、歯舞諸島、千島列島及び南西諸島の復帰に関する陳情書議題といたします。専門員より説明を求めます。
  110. 佐藤敏人

    佐藤専門員 第四九号、陳情者 東京都千代田区平河町二丁目六番地全国市長会会長 金刺不二太郎  歯舞諸島、千島列島及び南西諸島の日本復帰については、同島住民はもちろん全国民のひとしく熱呈するところであるから、講和条約締結の際には、これら諸島を、わが国土として復帰せられるよう連合軍当局と折衝せられたいというのであります。
  111. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側の御意見ございませんか。御質疑ございませんか。——質疑がなければ、ただいまの陳情書はこれを了承するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  113. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に日程第一〇、海外移民促進に関する陳情書議題といたします。専門員より説明を求めます。
  114. 佐藤敏人

    佐藤専門員 第一○八号、陳情者冨山市富山県議会議長 高原耕造  人口問題に関し、わが国の現況は、産児制限、優生問題が政策の一環として具体化してはいるが、根本的政策である移民問題が行われないことは遺憾であるから、過剰人口問題解決のため、海外移民の促進をはかられたいというのであります。
  115. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府委員に御意見ございませんか。御質疑ございませんか。——院なければ次に移ります。     —————————————
  116. 守島伍郎

    ○守島委員長 日程第一一、沖縄の日本復帰促進に関する陳情書議題といたします。専門員より説明を求めます。
  117. 佐藤敏人

    佐藤専門員 第一四六号、陳情者東京都千代田区有楽町石川ビル船越事務所内沖縄諸島日本復帰期成会 伊江朝助外三十四名  講和会議も、いよいよ軌道に乗りつつある今日、旧日本領土たる沖縄諸島を復帰されるよう盡力されたい、というのであります。
  118. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側に御意見ございませんか。御質疑ございませんか。——質疑がなければ、ただいまの陳情書はこれを了承するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  120. 守島伍郎

    ○守島委員長 なおこの際お諮りいたしますが、昨日本委員会に送付されました海外胞引揚促進陳情書、第二二八号、在外公館等立替金即時返還に関する陳情書、第二四三号、及び第三一五号、密入国者取締費全額国庫負担陳情書、第二九〇号、以上四件を日程に付加し、審査を進めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なしと認め、ただいまの四件を日程に追加いたします。  なお、海外胞引揚促進陳情書、第二二八号、在外公館等立替金即時返還に関する陳情書、第二四三号及び第二二五号の三件は、先ほど審議いたしました請願と同趣旨でありますので、審査を省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければ、さようとりはからいます。     —————————————
  123. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは最後の、密入国者の取締費全額国庫負担陳情書、第二九〇号を議題といたします。専門員より説明を求めます。
  124. 佐藤敏人

    佐藤専門員 陳情第二九〇号、陳情者、全国自治体公安委員会協議会会長小畑惟清。  自治体警察は密入国者の取締りに従事しておるが、その費用は自治体として財政的に少からぬ負担となつておる。本件のごとき国境警備にひとしい任務のために要する費用は当然国において支弁せらるべきものと信ぜられるので、これらの費用の全額国庫負担を期せられるよう努力せられたいというのであります。
  125. 守島伍郎

    ○守島委員長 政府側に御意見ございませんか。御質疑ございませんか。——それでは本陳情書は本委員会において了承いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  126. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十九分散会