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1950-11-25 第9回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月二十五日(土曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 小川 半次君 理事 西村 榮一君       大村 清一君    小川原政信君       近藤 鶴代君    仲内 憲治君       並木 芳雄君    山本 利壽君       武藤運十郎君    高田 富之君       中村 寅太君    黒田 寿男君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務次官  太田 一郎君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君  委員外出席者         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         経済安定事務官         (経済計画室         長)      佐々木義武君         專  門  員 佐藤 敏人君 十一月十一日  委員渡部義通辞任につき、その補欠として田  中堯平君議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員今野武雄君及び田中堯平君辞任につき、そ  の補欠として川上貫一君及び高田富之君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十四日  委員尾関義一辞任につき、その補欠として栗  山長次郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月二十四日  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法  律案内閣提出第二号)の審査を本委員会に付  託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国政調査承認要求に関する件  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法  律案内閣提出第二号)  国際情勢等に関し説明聽取     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 これより委員会を開催いたします。  まず第一に国政調査承認要求の件についてお諮りいたします。本委員会といたしましては前会と同様、本委員会におきまして衆議院規則第九十四條によりまして、国政調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じます。ここに調査承認要求書を朗読いたします。    国政調査承認要求書  一、調査する事項   (一)、国際経済に関する総合的調査   (二) 講和会議に関する諸問題  二、調査の目的   (一)、国際経済の現状及び動向調査し、国民経済並びに国策樹立に資す   (二)、講和問題に関連するわが国の内外の政治的、経済的動向を検討し、基本的国策樹立のため準備研究を行う  三、調査方法   官民各方面より意見聽取及び資料要求  四、調査期間    本会期中   右によつて国政に関する調査をいたしたいから、衆議院規則第九十四條により承認を求める   昭和二十五年十一月二十五日      外務委員長 守島 伍郎    衆議院議長幣原喜重郎殿  ただいまの国政調査承認要求書議長に提出したいと存じますが、御異議ございませんか。
  3. 黒田寿男

    黒田委員 私はその條項の中に、もう一つ朝鮮問題に関する件を入れていただきたいと思うのです。講和問題とそれから国際経済ということだけでしたが、もう一項つけ加えていただきたいと思いますが、いかがでございましようか。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 皆さんそれに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 守島伍郎

    ○守島委員長 それではそれをつけ加えましてさようとりはからうことにいたします。     ―――――――――――――
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案内閣提出第二号を議題といたします。政府側より提出理由説明を求めます。政務次官。     ―――――――――――――    日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案     日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律   日本政府在外事務所設置法昭和二十五年法律第百五号)の一部を次のように改正する。   第三條第十三号を第十四号とし、第十三号として次の一号を加える。   十三 文化的活動に関する事務を行うこと。   第十三條に次の一項を加える。  2 前項に規定する所掌事務範囲は、特別の必要がある場合においては、外務省令の定めるところにより、在外事務所ごと制限することができる。     附 則   この法律は、公布の日から施行する。     ―――――――――――――
  7. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案に関しまして、その提案の理由を御説期申し上げたいと存じます。  御承知の通り、第七国会におきまして日本政府在外事務所設置法が成立いたしまして、まずアメリカ合州国内のニユーヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ホノルル、シヤトルの五箇所に在外事務所設置されましたが、その後同法第二條第二項に基きまする日本政府在外事務所増設令によりまして、本年の十月ストックホルム、パリ、リオデジヤネイロ、サンパウロ、カラチ、ニユーデリー、カルカツタ、ボンベイ、ブラツセル、モンテヴイデオ、この各市に、また本月に入りましてからオランダのへーグに、それぞれ在外事務所が増設されたので、ございす。これらの在外事務所がつかさどつております事務は、在外事務所設置法の第三條の第一号から第十三号までに列記してありまする事項をつかさどつておるのでございますが、さきに申し上げましたパリ日本政府在外事務所におきましては、フランス側意向関係方面承認に基きまして、同條に掲げております事務のほかに、文化的活動に関する事務をつかさどることに相なりまして、また一方同條の十一号に掲げております日本人遺産保護管理に関する事務は行わないことに相なつたのでございます。このようにいたしまして、在外事務所設置する相手国意向によりまして、それが総司令部によつて認められました場合には、在外事務所設置法第三條に掲げておりまする所掌事務につきまして、あるいは新たに加えたり、あるいは制限する必要がしばしば起ることが予想されるのでございます。ところでその所掌事務追加法律によつて明かに定められております事項に関する追加でございますので、法律改正することによつて行われなければならないと考えまして、ここに同法第三條第十三号として「文化的活動に関する事務を行うこと。」を加えまして、パリ日本在外事務所活動に支障を来さないよう処置いたしたいと存じます。と同時に一方所掌事務範囲制限は、在外事務所のありまする所在国の実情によ今後予想されますから、これらは外務省令によつて定めることといたしたのであります。このような改正によりまして、今後在外事務所所掌事務に関する追加制限に関する一般的な方針を確立いたしますと同時に、さしあたりパリにありまする日本政府在外事務所についで、必要な文化的活動に関する事項をつけ加えまするのが、この法律案を提出いたしました理由でございます。  どうぞ愼重御審議を願いまして、すみかに御協賛を願いまするようにお願いを申し上げる次第でございます。
  8. 守島伍郎

    ○守島委員長 法案につきまして御質疑はございませんが。
  9. 小川原政信

    小川原委員 ただいまお読みになりました中に、日本人遺産保護管理に関する事務が行われないことになつた、こう書いてございますが、これはどういう理由日本人遺産を取扱われないのか、この理由を明らかにしてもらいたい。
  10. 島津久大

    島津政府委員 フランスの場合は、フランス国内法日本在外事務所がこの種の事務を行うことができない関係になつております。
  11. 小川原政信

    小川原委員 單にそれだけでは、ちよつとわれわれ納得ができぬのでありますが、フランス国法がどういう国法であつて日本人遺産というものが管理できないか、こういう点を明らかにせねばならぬ、こう思うのでありますが、われわれ日本人から考えるならば、なるほど講和はないのでありますけれども、遺産管理するということは何も不法なことではないし、当然のことである。ことに在外事務所を設けるということになりますならば、生命の次は財産である。その財産自分の国のものが自分の国で管理できないというのはどういう理由によるか、これを明らかにしておくことは、将来われわれ国民として大いに考えねばならない重点であると思うのでありますが、政府におさしつかえない限りは明らかにしていただきたい。もしこれが重要な方面関係が濁るというのならば、秘密会でも開いて、そうしてこのことを明らかにしていただけないならば、国民といたしましてはこの点はただ簡單に一項を抹殺するのみということだけでは納得できないのであります。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  12. 島津久大

    島津政府委員 これはフランス国内法でそういうことになつておりますので、日本政府在外事務所設置に関するフランス政府覚書にも、この種の事務は除外するということになつておりまして、これを総司令部の方でこの通りにしてほしいという日本政府に対する覚書で確認をしておるのであります。こういうことはフランスに限りませず、各国の国内法によつてできないことがあり得るのでありまして、特にそのほかに事情があるわけではございません。
  13. 小川原政信

    小川原委員 それではこの問題につきましては保留をいたしておきます。
  14. 大村清一

    大村委員 この法律案には、特別の必要がある場合において制限をすることがあるということが載つておりますが、必要によつて拡張をする場合もあるような御説明がただいまあつたのであります。それはいかなる根拠に基いて権限拡張されるのでありますか。
  15. 島津久大

    島津政府委員 拡張はしない建前でありまして在外事務所権限は、先ほど政務次官から御説明申し上げましたように、法律の第三條一から十三まで列挙せられました仕事ができることになつております。それで今回問題になりました文化に関する事務は、この十三号の中に入つておりませんので、特に法律改正していただきまして、その権限をつけ加えるということにいたすわけであります。しかし実際問題としましては、変化に関する仕事フランスだけできるのでございまして、ほかの在外事務所では文化関係仕事は取扱い得ない、それは所在国意向によるわけであります。また文化関係以外でも、ただいま御説明申し上げましたような遺産事務というものも取扱い得ない事務所があります。そういたしますと、十三号から新たに加わりました十四号の事務を全部行い得る事務所もあり得ますし、あるいは一部行い得ない事務所もあるわけであります。その点は日本政府でかつて制限するという意味ではなくて、所在国意向と総司令部意向というものでなし得ないという事務について、省令を出して定めるという考えでございます。
  16. 大村清一

    大村委員 なお念のためにお尋ねいたしておきますが、ただいま政務次官の御説明の中に、私の聞き誤りかも存じませんが、必要によつて権限拡張する場合もあるという御説明があつたと思うのであります。何か具体的に御指定なさるという意味でありますか。それとも一号ないし十二号の以外の点において拡張されるというようなことはどうも納得できないのでありますが、その辺はどういうことになりますか、私の聞き誤りでありますれば取消しますが、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  17. 草葉隆圓

    草葉政府委員 私の御説明申し上げた中にはつきりしない点があつたかとも存じますが、所掌事務範囲制限は、在外事務所所在国のいろいろな事情によりまして種々変化を来すことがあると予想されますから、今回の改正によりまして五條の二項といたしまして「前項に規定する所掌事務範囲は、特別の必要がある場合においては、外務省令の定めるところにより、在外事務所ごと制限することができる。」こういう意味でございます。
  18. 北澤直吉

    北澤委員 先ほど小川原委員から、日本人遺産保護管理に関する事務という問題につきまして御質問がありましたが、この職午前の状態では、外国にある日本人遺産保護管理については、日本領事館がやる場合と、それから所在国裁判所がこれをつかさどる場合と、両方あつたと思うのでありますが、フランスは、日本領事がやらずに、裁判所がこれをつかさどる、こういうことになつてつたと思うのであります。そういう場合におきましては、日本人遺産保護管理に関する事務は、やはりその国の法律従つて、その国の裁判所にまかせるという以外にないと思うのでありますが、そのフランス事情につきまして、御説明題いたいと思います。
  19. 西村熊雄

    西村説明員 一体領事が駐在国で、どういう程度職権在留民保護のために行使するかということは、大体通商航海條約に規定してあります。しかし通商航海條約を見ましても、必ず所在国法令従つてその職務を執行することが明定されておるわけであります。こうい機関が駐在国でどういう職権を行使するかということは、通商航海條約と、駐在国国内法令の既定、この二つによつて判断するほかないわけであります。フランス民法によりますと、遺産管理というものは、フランス裁判所に帰属させられておりますので、外国駐在領事館が関與する余地がないわけであります。その点は日本民法を見ましても、ほぼこれに近くなつております。そういうようなわけでございますから、在外事務所設置されるについて、フランス側からは新しい事務所というものは、フランスにおける日本人遺産保護という点については、フランス裁判所專管事項であるので及ばないのであるということで、特に断つて来たような次第でございまして、これは従前からそうであつたのであります。別に新例ではないのであります。
  20. 高田富之

    高田(富)委員 ただいまの御説明の中で、フランスだけで特に文化関係事務をやるような御説明でありましたが、それはどういう事情によるものであるか、具体的にはどういう仕事内容が予想されるか、それを御説明願いたいと思います。
  21. 島津久大

    島津政府委員 これは特にフランス政府の方から文化関係仕事をやらしたいという申出があつたのであります。この関係で九月十四日付で総司令部外交局から、日本政府あて覚書が参つております。その中には、この事務所は在パリ日本人学生活動を統制し、及び一九五〇年四月八日付連合国最高司令官の総司令部回覧第八号によつて定められた制限内で、文化交換に関する問題を、フランス国外務省文化関係の部との間に処理することができるということがあげられておるのであります。具体的に実際どういう仕事がございますか、その点まではまだはつきりとはいたしておりません。いずれ事務所が開設されまして、事務所フランス外務省との間の話合いで具体的なことはきまつて参ると思うのであります。
  22. 高田富之

    高田(富)委員 学生活動を統制するということは、何か想像されるようなことはありませんか。どういう非情でそういうようなことを向うで言うて来たかということですね。
  23. 島津久大

    島津政府委員 特に事情もないと思いますが、フランスは特に文化関係仕事に熱心であるということから来ておると思うのです。
  24. 守島伍郎

    ○守島委員長 別に御質問ございませんか――それでは本案につきましての質疑はこれで終了いたします。     ―――――――――――――
  25. 守島伍郎

    ○守島委員長 次に国際情勢等に関する件を議題といたします。今日は政府側から積極的に御説明がないそうでございますから、ただちに質疑に入ります質疑通告順に許します。北澤君。
  26. 北澤直吉

    北澤委員 三点ばかり伺いたいのですが、第一点は、対日講和條約に対する見通しの点であります。最近新聞によりますと、対日講和條約につきまして、アメリカその他連合国の間に予備交渉が行われておりまして、大分この問題が具体的に促進されておるように伝えられておるのであります。ただいまのところでは、アメリカの方からある案を示して、連合国意見を求めておるようでありますが、アメリカ以外の連合国の側の意見がまとまつてアメリカに返事が出て、そうしてアメリカ連合国だけの講和会議と申しますか、そういうものを開く段取りになると思うのでありますが、連合国相互の間のいわゆる講和会議というものは、大体いつごろになる見込みでありますか。その点お伺いいたします。
  27. 草葉隆圓

    草葉政府委員 対日講和見通しにつきましては、実は昨日も総理から施政方針の演説の中にもちよつと申し上げておつた通りでございますが、最近は早い期間に行われるだろうという予測がしばしば伝わつておりますけれども、具体的にこれがいつごろということは、現在の情勢ではなかなか判断いたしかねる情勢だと存じます。この点どうぞ御了承願います。
  28. 北澤直吉

    北澤委員 過般のアメリカ中間選挙におきまして、共和党相当進出いたし、従つてアメリカの議会におきます民主党と共和党との勢力分野に相当大きな変化を来したわけでございますが、この共和党進出によりまして、対日講和の問題が促進されるものとお考えになりますか、その点伺いたいと思います。
  29. 草葉隆圓

    草葉政府委員 先般のアメリカ中間選挙におきまして、共和党相当進出をいたしました事実につきましては、ただいまの北澤委員のお話の通りでございますが、これが対日講和に対する影響については、現在私どもといたしましては、従来のアメリカの態度を続けて来る、かように考え、特別な転換というものを強く考えておらないのでありますが、国際情勢がかように相なりましたので、いろいろな意味におきまして早期を希望いたしておる次第であります。
  30. 北澤直吉

    北澤委員 先般もダレス国務省顧問が、講和條約については日本意見も聞くのだ、こういうふうに言つたよう新聞に書いてあつたと思うのであります。そうしますと日本意見連合国あるいはアメリカが正式に開くのは一体いつごろになりますか。その点伺いたいと思います。
  31. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これも報道では伝わつておりますが、事実さような方法で向けられて来るのか、またその時期がいつごろであるかということにつきましても、現在判断いたしかねておる次第であります。この点も御了承願います。
  32. 北澤直吉

    北澤委員 それではいよいよ講和條約の内容について連合国の間の意見がまとまり、それがまた日本との話もきまつて講和條約に調印するということになるのでございますが、講和條約に調印する場合には、前もつて国会あるいは国会外務委員会というようなものに、非公式の連絡があるのかどうか。もちろん調印後におきましては、講和條約でありますので、国会審議に正式に付されて、條約の批准というものがあると思うのでありますが、実際問題としまして、調印する前に国会に適当な方法で御連絡があるのがどうか、その点も手続の問題として伺いたいと思います。
  33. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この点につきましては、前会もこれに関連した御質問伺つたのでございますが、そのときの状態によりましていろいろ考えられて来ると思います。従つてあるいはそれ以前に、先ほど御質問の中にも少しは触れておりましたように、あるいは意見を求められるか、あるいはこれに対する時間的な、国内でのそれぞれの方法がとり得るかというような点につきましても、実はその融和の状態によりまして考えられて来ると存じますので、ここで今かような状態たということのもとにお答えすることは困難であろうと存じます。この点もひとつ御了承願いたいと思います。
  34. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは、新聞にもいろいろ報道されておりますが、アメリカ連合国との間にいろいろ意見交換をいたしております。対日講和條約の内容については、大体七項目新聞に出ておるのでありますが、あの新聞報道アメリカ側の持つておりまする対日講和の案の内容そのものであるかどうか、その点につきましては私ども承知しないのでありますが、あの新聞に出ておりまする対日講和條約の内容の七項目というものについてみますと、相当程度われわれ日本国民希望というものも織り込まれておるようでありますが、ただ私はあれにつきまして、もし日本国民の一人として希望を申し述べまするならば、特に申し上げたいことは領土の問題であります。あれによりますと、琉球諸島小笠原諸島信託統治としアメリカがこれを統治するということになつております。それから南樺太千島、台湾及び澎湖島というものは、英・米・ソ・華、この四大国において講和條約の調印後一年間にきめる、もしきまらなかつた場合には、国際連合においてこれをきめるというふうになつておるのでありますが、われわれ日本国民の立場から申しますと、琉球諸島あるいは小笠原諸島というものは、本来歴史的に日本領土であつたのでありますから、できるならばこれはひとつ日本に帰属するようにしてもらいたい。もしどうしても連合国側事情によりまして、琉球小笠原諸島アメリカ信託統治にする場合には、ある期限を付してもらいたい。その必要がなくなつた場合には、日本領土にするというふうな期限をつけてもらいたいというようなことを、われわれは希望するわけであります。特に琉球諸島のうちの奄美大島は、歴史的にもこれは鹿児島県の一部であつたのでありますから、奄美大島のようなものは、ぜひとも日本領土に帰属さしてもらいたいというふうな希望を持つておるのであります。それから千島歯舞諸島の問題でありますが、私はこの夏衆議院外務委員会から派遣せられまして、北海道に参りまして、千島歯舞諸島返還の問題につきまして、現地の人々の意見をつぶさに聽取して参つたのでありますが、ここで詳しいことを申し上げる必要はないと思うのでありますけれども、歯舞諸島はこれはもともと北海道の一部でありまして、千島ではないのであります。それからまた南千島の択捉、国後、これは安政元年日露の條約によりまして、日本領土であるということがはつきりきまつておるものでありまして、徳川時代以来南千島というものは日本領土に属しておつたのであります。こういうものが現在ソ連占領下に入つておるわけでありますが、これはいわゆるヤルタ協定において、千島ソ連に引渡すということが書いてある結果、そういふうなつたと思うのでありますが、このヤルタ協定にいわゆる千島というものは、一体南千島あるいは歯舞諸島までも含む意味であるかどうか、この点は非常に問題だと思うわけであります。従いまして、今度の講和会議におきまして、もし日本意見が聞かれるという場合におきましては、特に南千島あるいは歯舞諸島というものは、もともと日本のものだ、ヤルタ協定にいわゆる千島に入つておらないのだというような点をも、ひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。この領土の問題は、日本人としましては非常に大きな問題でありますので、希望はいろいろあるのでありますが、しかしながら、連合国におきましても、いわゆる大西洋憲章と申しますか、英米共同宣言、あるいはそれを確認した連合国共同宣言というようなものによりましても、連合国はこの戰争によつて領土の拡大を欲しない、また人民の意思に反して領土の変更をしないというようなことをも声明せられておりますので、この領土の問題につきましては、もう少し日本側希望というものを取入れるようにお願いしたいと思うのでありますが、政府はこういう点について一体どういう考えを持つておられるのでありますか。もしいろいろな事情がありまして、現在はつきりした意見を申し述べ得ないというならばやむを得ないのでありますが、この点についてお伺いいたします。
  35. 草葉隆圓

    草葉政府委員 信託統治の問題については、期限をつける方向に強く希望するという御意見と承つたのでありますが、信託統治そのものは、御意見通りに無期限なものではないというのが原則だと考えております。またお述べになりました千島なり琉球なり奄美大島なり、その他の歯舞島なりの帰属問題につきましては、その最終決定連合国決定にかかることになつてはおりますが、政府といたしましては、実は日本とこれらの諸島との歴史的な関係、あるいは地理的関係はもちろんのこと、民族的な関係等につきましても、必要な資料を整えまして、連合国側の了解を得まする手段を盡しつつあるのでありまして、この点に対してはさよう御了承をお願い申し上げます。
  36. 北澤直吉

    北澤委員 最後にもう一点だけお伺いしておきます。昨日も総理大臣が施政方針の中でお述べになつておるのでありますが、講和條約を受入れる日本の態勢としましては、なるべく早く日本の経済の自立を確保することが必要であるということでありまして、この点はまことに同感であります。講和條約を結びましても、日本の経済が自立できないということでありますれば、日本の政治の独立というものも十分に確保できないと思うのでありまして、問題はしからば日本はいつになつたら経済の自立ができるかという点でございますが、過般発表になりましたアメリカのグレイ委員会の報告によりますと、明年の中ごろになると日本の国際貸借はバランスがとれて、自立ができるというふうな報告も出ておるのでありますが、しかしながら、この来年の半ばにおきまする日本の国際貸借のバランスというものは、戰前の半分の国際收支であります。従いまして、日本国民の生活水準という点から申しますと、来年の中ごろにバランスのとれる日本の国際貸借では、戰前の国民の生活水準に比べて、相当低い生活水準というものを規定することになると思うのであります。私どもは、單なる国際貸借のバランスということではなくして、やはり日本の経済、日本国民の生活水準を安定さすという前提の上に立つて日本経済の自立ということを考えなければならぬと思うのでありますが、もし日本の国際貸借がバランスがとれる、従つて今後は日本に対して、アメリカは経済援助をする必要がないということでありましたならば、その後におきましては、経済の援助ではなくして――金をもらうのではなしに、借款というような形において、日本の経済に対してアメリカの援助をお願いしたいと思うのでありますが、これに対しまして政府のお考えを承りたいと存じます。
  37. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 ただいまお話のありましたグレイ報告に関しましては、その内容並びに内容を築き上げました基礎データといつたようなものに関しまして、詳細を原文で知りたいと思いまして、ホール・コピーの入手方を司令部の方にお頼みいたしまして、目下ワシントンの方に問合せ中であります。従いましてただいまのところでは、新聞に発表された程度の事実でもつてこれは判断する以外に方法はないのでありますけれども、新聞にありますように、来年度の六月の末でもつて援助が打切られて、国際收支がバランスされる、そこでその際生活水準は戰前に比べて若干下まわるというふうな結論のように、新聞では出ておるのでありますけれども、今までのところでは、政府といたしましては、御承知のように定定本部に自立経済審議会をことしの夏以来設けまして今までずつと検討中でありまして、近く中間報告を出し得る程度にまで審議が進みつつありますが、その経過からある程度判断いたしますと、来年の六月の末に国際收支がバランスするということは、ちよつと今のところでは考えられないような状況になつております。それからもしたつて小さいスケールで国際收支をバランスした場合、従つて援助がもし打切られた場合には、御承知のように生活水準は非常に――非常にと申しますか、今までよりははるかに低い水準にやむを得ずなるというようなかつこうになるのじやなかろうかと思つております。もう一点は、援助が打切られる際には今の見返り資金がなくなりますので、国内の資本蓄積が非常に減少いたしますから、これに対する対策をどうするかということの三つの問題が起ります。  もう少し原本を見ませんと、はつきりしたことを申し上げられませんけれども、今までの審議会の考え方といたしましては、ちようど今御質疑がありましたように、自立経済というのは單に国際收支がバランスしたという経済じやなくて、あるいは輸出、あるいは特需等にたえ得るような生産水準の高い経済状態であつて、同時にそれが生活水準も高まつて国内的には社会不安等をかもし出さないような経済というふうな強い経済を内容に盛つたものを、自立経済といたしたいというふうに考えておりますので、單に国際收支がバランスしたというだけでは、自立経済と考えないというふうに、目下の作業の途中では考えながらいろいろ施策を考えております。ただいまのところでは大体そんな程度であります。
  38. 北澤直吉

    北澤委員 先ほど質問の際に申し上げたのでありますが、もしそういうふうに日本の国際收支がバランスがとれて、従つて日本を経済的に援助する必要がないというふうにアメリカ考えた場合には、日本は借款か何かの形で、別の意味の経済の援助を受けるような考えを持つておりますかどうか、その点を伺います。
  39. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 ただいまのところではいわゆるリリーフ。今までありましたエイド。ガリオア、エロアの関係は、あるいは講和條約等ができますと、形式的にはかわるだろうと思いますけれども、ただいま申し上げましたように、どうしても来年の六月の末で国際收支が大きな規模でバランスするということは考えられませんので、その以後の問題に関しましては、何かの形式で――形式はかわつても実質の伴ういわゆる援助と申しますか、投費と申しますか、そういつたようなものを今後とも懇請する必要があるのではないかと、ただいまのところ考えております。
  40. 守島伍郎

    ○守島委員長 北澤君、ほかの方もありますから簡單に願います。
  41. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点でございますが、先ほどのグレイ報告によりますと、とにかく来年の中ごろから日本の経済は收支のバランスがとれて自立する、こういうふうになつております。これまで日本でもいろいろな議論があつたのでありまして、日本はお隣の中国との貿易が本格的に復活しなければ、日本の経済の自立はできないというふうな議論が、国内に非常に多かつたのでありますが、今度のグレイの報告によりますと、現在のように中共との貿易が本格的に復活しなくても、日本の経済の自立はできる、国際貸借のバランスはとれる、こういうふうな意見のようでありますが、一体政府におきましては、中共との貿易が復活せられれば、それに越したことはないのでありますが、やはり中共との貿易がなくても、日本の経済の自立はできるという考えでありますか、この点だけを伺いまして私の質問を終ります。
  42. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 その点はただいまいろいろ作業中でありまして、まだ先ほど申し上げましたように結論には達しておりませんですけれども、東南アジア等に相当思い切つた経済援助等がありまして、中共の購買力にかわる購買力がつきまして、その結果、日本の生産財あるいは消費財等が東南アジアに出まする場合には、しばらくの間は――中共との関係が好転すればこれに越したことはありませんけれども、そうでなくても、ある程度の規模で輸出貿易が伸びるということは考えられるのじやなかろうか、こういうふうに考えております。
  43. 守島伍郎

    ○守島委員長 並木君。
  44. 並木芳雄

    ○並木委員 私は領土の問題でお尋ねしたいと思います。それは南樺太についての問題なのですが、ヤルタ協定というものが日本関係ない、正本はヤルタ協定に拘束されないという前提のもとにお尋ねいたします、ポツダム宣言の第八のところに、「カイロ宣言の條項は履行せらるべく、また日本国の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれらの決定する諸小島に局限せらるべし」こう書いてあります。政府はしばしばこれを引用して、ここで、はつきりしておるのだから、これに書いてない大きな土地というものは、問題にならないというふうに表明されておつたと思います。ただ私はヤルタ協定日本を拘束しない、こういう前提のもとに立ちますと、カイロ宣言の英文の方を見ましたときに、「ザ・タームス・オブ・ザ・カイロ・デイクラレイシヨン・シヤル・ビー・キヤリツド・アウト・アンド」と書いてある、このアンドの文字をもう一度取出さなければならないのです。もしこのアンドというものがここに翻訳されておる通り、また並記的に書かれておるアンドであるならば、これは私は宣言の書き方の形式において少しおかしいのじやないかと思うのです。全然別にあげられてしかるべきじやないか、特に第八項目に「カイロに宣言の條項は履行せらるべく」とそこへ続いて書かれておる以上は、その結果として、このアンドというものは、当然日本国の主権は本州、北海道云々というふうに行くべきが妥当ではないかというふうに考えられるのです。そうすると領土の問題に関しては、結局カイロ宣言がすべてだ、そのほかのものには拘束されないのだ、しからばカイロ宣言を見ましたときに、南樺太を返還すべきであるというような、要するに南樺太についての條項は全然ないのです。そこで私はこの機会にヤルタ協定が全然日本を拘束しないかどうかということを再びお尋ねして、その前提のもとにただいま質問申し上げました点に対する政府の所見はいかがであるか、これをお尋ねしたいのであります。
  45. 西村熊雄

    西村説明員 並木委員の御質問の点に関しましては、今年の二月十五日の本委員会におきまして詳細御答弁申し上げております。それに一語も加えることがありませんから、それによつて御承知願いたいと思います。御質問も全然前会と同じでございます。
  46. 並木芳雄

    ○並木委員 質問は同じだとおつしやいましたけれども、あのときは樺太ということを特に具体的にはあげておりません。私の質問はこの「アンド」の解釈について政府の所見を聞いたにすぎなかつたわけであります。あのときはたしか島津局長の答弁であつたろうと思うのです。それでその後時日も経過しておりますから、今日もう一度これを再検討した結果というものをお聞きしたい。従つてもしただいま私が申し上げましたような点が、政府でも理由ありとせられるならば、一応も二応もこういう点を連合国の方に申入れをする余地があるのではないか、少くとも日本政府の疑問という形になりますか、要望という形になるかはわかりませんけれども、いずれにしてもこれはそういうふうに解釈せらるべきではないか、従つて南樺太の点についても、少くとも彈力性があるのではないかということは、申し入れる余地があるのではないかという意味において御質問申し上げたのですから、その点についての見解を披瀝していただきたいと思います。
  47. 西村熊雄

    西村説明員 御質問に対しまして、私の二月十五日の答弁をもう一度繰返して読まさしていただきます。「むろん並木委員もおつしやいましたように、日本領土の問題はカイロ宣言で、最初に三国間の連合国側の最高意思は表示されております。その後四十五年の二月に至つて三国の巨頭指導者間にヤルタ協定ができまして、そうしてポツダム宣言は同四十先年の七月になつてできております。従つて私ども察するに、四十五年の七月にポツダム宣言が三巨頭の間につくられた場合に、三巨頭の頭の中にはヤルタ協定というものがあつたであろうというふうに解釈いたします。そういうふうな事情考えてみれば、アンドはしかり、しこうしてというふうな意味に解釈される、」こういうふうに考えます。
  48. 並木芳雄

    ○並木委員 しかり、しこうしてはどういう意味になりますか、私の質問はその結果としてという意味ではないかという質問なのですから……。
  49. 西村熊雄

    西村説明員 カイロ宣言では南樺太には全然触れなかつたのであります。しかし一九四五年の二月のヤルタ協定におきまして、三国は日本から南樺太千島を引離すということを協定いたしたわけであります。その後同じく七月にポツダム宣言ができまして、第八項日本領土問題に関する條項になつておるわけであります。冒頭にカイロ宣言は履行する、こういつております。その後段に日本に残しておく領土範囲を横板的に規定しておるわけであります。前半のカイロ宣言は、日本から引離すという形の宣言であります。後半は積極的に日本に残す地域の範囲決定いたしておるわけであります。後半に南樺太は入つておりません。従つて今申し上げましたように、カイロとポツダム宣言のこの二つの協定の中間にヤルタ協定があつて南樺太日本から離すということが三国間に協定されておるわけであります。従つて後半において、積極的に日本領土として残す範囲を定めるという形で規定した場合に、南樺太日本に残すということに入らないことになつたわけであります。そういうふうに解釈しておるわけであります。
  50. 並木芳雄

    ○並木委員 その解釈は、結局ヤルタ協定というものは、日本関係を持ち、日本を拘束するというふうな解釈をとられますか。
  51. 西村熊雄

    西村説明員 ヤルタ協定は、日本ヤルタ協定の当時国ではございません。ヤルタ協定は、繰返し申す通り三国間の協定であります。従つて三国間だけに拘束力があるわけであります。しかしその内容がかりにどういう形で対日平和條約に取入れられるかは、これは将来の問題でありまして、従つて今日予測することはできないのであります。今日まで連合国間にある日本領土の処分に関するいろいろな協定が、最終的に日本に対していかなる結果となつて現われるかということは、対日平和條約ができてみなければ何とも申し上げられません。
  52. 並木芳雄

    ○並木委員 これは私もなお考えてみます。とにかく西村局長の答弁も非常にむずかしくて、一ぺんにここで消化し切れないような点もありますので、考えることにいたしまして、それに関連してもらう一つ領土の点で諸小島という項目に関連して、先ほど北澤委員もちよつと触れられましたけれども、私は琉球、小笠原、この二つについて自分の所属する政党の方でも、これはぜひ日本に返還をしてほしいという決定を見ておりますので、質問いたしますが、先般の対日講和会議内容案には、これを信託統治の地域にしたいというようなことが報ぜられておるのですが、日本としてはこれを返してもらいたい、こういう私たちの希望と、そこにギヤツプが出て来た。これを北澤委員も触れられたのですが、この場合に、諸小島ではないからという根拠で、アメリカが対日講和條約の中に切り離したのか、それとも観念的にはやはりこの二つはいずれも諸小島である、しかしながらほかの目的のためにポツダム宣言の第八項にいう諸小島に含ませないのだという暫定的な措置なのか、この点なのであります。そういたしますと私の聞きたいのは、信託統治ということは、期限が来たときには当然この二つは日本の方へ返さるべきであるかどうか、その可能性が当然出て来るのではないか、こういうことを聞きたいのであります。
  53. 西村榮一

    西村(榮)委員 関連して、先ほど並木委員質問ヤルタ協定によつて日本が拘束を受けるかいなかということについては、これはきわめて重要であるのでありまして、先ほど来の西村條約局長の答弁は、カイロ宣言とポツダム宣言、その中に織り込まれた日本領土の問題については、法律解釈としてはりつぱな御答弁だつたのであります。問題はその中に解決できていないものは、それは講和会議において戰勝国の正義と純理をたつとぶ平和愛好の熱意いかんによつて決定されるとともに、日本の政治力によつてこれが正義をゆるがし、純理の決定をある程度まで動かし得るものと思うのであります。私はその意味において、今外務省の局長から政治的解釈を承ろうと思つておりません。しかしながら先ほど並木委員が発言された中に、ヤルタ協定において日本は拘束を受けるのかどうかという点になると、これは重要であるのであります。私はそれについて西村條約局長にお伺いしておきたい事務的な問題は、一体ヤルタ協定というものは、われわれは巷間そういうふうな三巨頭の間における協定が成立しておるということは承つておるのでありますが、一体日本政府関係国からヤルタ協定というものが存在しておるのだということについて、公式な通告を受けたことがあるのか、受けたならばその事実を知らしていただきたい。少くとも私の承るところによりますと、カイロ宣言並びにポツダム宣言は、われわれは終戰條約の受諾のときに、その基礎的な條件として承つておるのであります。終戰後、條約を受諾した後に、初めてヤルタ協定というものが存在するということをちらほら聞いただけなのでありまして、しからば私は日本国民はこのヤルタ協定の拘束を法律的にも政治的にも受くることは寸毫もないと解釈しておる。しかもその後といえども、日本政府に対してヤルタ協定の存在を関係国から示されたことがあるかどうか、これを一応承つておきたい。
  54. 西村熊雄

    西村説明員 ヤルタ協定の存在を関係国から公式に通報を受けたという事実はございません。終戰後ヤルタ協定関係政府によつて公表されましたことによつて、われわれとしてはその存在を知つた次第でございます。
  55. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、これは話が若干政治論になるのでありますがカイロ宣言においては、日本から引離す領土の問題が大体確定され、ポツダム宣言には、日本に與うる領土が確定されたという先ほどの御答弁で、私もそういうふうに解釈いたしております。しからばその中間に存在して未決定な部分は、私の解釈するように、戰勝国全体の正義と純理と、同時に、平和愛好の熱意と、日本の真に平和的な純理に立脚するこの主張が認められるかどうかというところにおいて、将来講和会議において決定される、私は政治的にこう解釈しておるのですが、御答弁が困難であればこれはいずれ――総理大臣はここへはめつたに見えませんから、予算委員会ででも総理大臣に聞きますが、事務当局の御見解としては一体どうなのか。そういうふうなことの解釈が、一応日本人として共通点を見出し得るならば、並木君の御質問の要点の基本的な問題の解決、見通しというものが大体つくのではないか、さしつかえなかつたら、事務当局はワン・マン首相に怒られない程度においてひとつ御答弁を願いたい。
  56. 太田一郎

    ○太田政府委員 先ほど来の條約局長の御説明は、カイロ宣言、ポツダム宣言、ヤルタ協定等に対する事務的の見解をお答えしたのであります。その際條約局長から申し上げました通りヤルタ協定というものは日本がポツダム宣言を受諾したときには日本は知らなかつた。しかしながらヤルタ協定当事国の間にはそういう協定を結んだのでありますから、これは拘束力がある、従いまして日本領土についてそういうヤルタ協定を結びました当事国が相談をして日本領土をきめるわけでありますからして、ヤルタ協定日本に対して拘束力がないからといつて関係がないというふうに言うことはできない。こういうふうに考えておる次第であります。
  57. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は今の太田さんの御答弁は承服いたしません。私はあなたの御意見を根本的に否定し得る根拠がありますが、今は関連質問でありますから………。それからあなたに御注意申し上げておくが、先ほど安本当局が中共貿易について御答弁になつておる。この貿易に対する考え方と、あなたが外交自警その他において発表された、あるいは従来の答弁と根本的に食い違いがございます。私はこれらとあなたの御答弁のその食い違いはどこにあるかというと、著しく他の特定国家に気がねした法律解釈に基いての往々にして詭弁がある、これはあなたの答弁は注意されなければならないと私は事のついでに申し上げておきますが、今外務省の官吏諸君から政治的の解釈を聞いておるのではない。従つてもつと法律的の解釈、あるいは外交技術の上に立つ解釈の説明というものはあなたは将来すなおに、ありのままにならないとえらくとつちめられることがあります。これは私は注意しておきます。現に安本の説明と外務省の説明とが貿易の問題で食い違いがある。今の説明にしても私はあなたの説明に反対である。しかしながら今その反対の根拠を明らかにすることは政治道徳上遠慮しておきます。いずれ他の機会にどつさりやります。反対だけは申し上げます。
  58. 西村熊雄

    西村説明員 冒頭の並木委員の御質問に対する返事をする前に、西村委員の関連質問が出て、先に答弁をいたしましたので、並木委員の御質問に今お答えさしていただきます。並木委員の御質問ははつきりわかりませんのでございましたが、要するに御質問の趣旨は、沖縄や小笠原という島は、ポツダム宣言にいう、いわゆる「諸小島」であるかどうか、こういう点であつただろうと思いますが私どもはその「諸小島」に属しておると考えております。  質問の第二点は、信託統治なつたとして、その信託統治が終れば、当然日本に返るのであるかという御質問ではなかつたかと思いますが、信託統治については、先刻政務次官が御答弁なさいましたように、制度の本質上永久的なものではない、こういう御答弁がございました。しかし沖縄、小笠原その他の信託統治、これはアメリカの方で検討されておる段階にありまして、はたして最終的解決の場合にどうなるかという見通しも、まだつきかねておりますので、直接関連して御答弁申し上げるのは差控える方がいいと存じますが、一体にただ信託統治の制度の一般論といたしまして、信託統治というものは憲章によりますれば、その統治地域の独立と自治とを推進するような趣旨で行うべきものであるということが、大きな目的の一つに掲げられてございます。今日までできました幾多の信託統治協定の例によりますと、大体期限は明定されない場合が多いのでございますが、明確に期限を制定されておる場合もあります。一例をあげますれば、イタリア旧植民地であります。ソマリランドは、十箇年が信託統治、十箇年後は独立ということが明定されておるようであります。しかしながら、まだこの信託統治は発足いたしておりません。要するにこの制度の根本趣旨は、いわゆる当該地域の住民の意思というものが一番ものを言うのでございまして信託統治制度の終了後のその地域のステータスがどうなるかということは、一言かいつまんで申し上げれば、当該地域の住民の意思であろうと思います。これはしかしわれわれと関連ある問題としてではなしに、ただ信託統治制度の一般論として御参考のため御答弁申し上げたので、誤解のないようにお願いいたします。
  59. 並木芳雄

    ○並木委員 外国の方でちらほらと、小笠原、琉球などは小島ではないのだからということで、これは問題にならないというような説をなす人もあるようでありましたので、私は政府の所見を伺いましたところ、今はつきり西村條約局長から、政府としてはポツダム宣言のいわゆる諸小島に入るものであるという明快なる答弁がありましたので、安堵したわけです。  それからあとの信託統治の大体目的というものが、主としてその土地の自主独立を推進して行くことにあつた。これはおそらく過去の実績がその通りなんでしよう。ただこのごろ出て来ました、この前局長から説明のあつた戰略的信託統治という場合は、おのずからまたそこに違つた目的が出て来るのではないかと思うです。もしこれが戰略的信託統治であつたならば、その目的が終つたときには、当然私がさつき申し上げましたような事態になるのではないかと思いますが、その点はいかがでしようか。
  60. 西村熊雄

    西村説明員 ちつと私は今判断いたしかねます。
  61. 並木芳雄

    ○並木委員 この際、講和條約が結ばれましてから日本国際連合に加盟するという問題が当然起るのですが、そのときに国連憲章と国内法との関係、こういうものについて政府の所見を聞いておきたいと思います。これも実は国連憲章とアメリカ国内法との間で、抵解する点があつたということを聞きましたので、国連憲章と国内法との関係、その他また宣言あるいは條約、いろいろむずかしい文字がありますけれども、そういうものとの関係を、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
  62. 西村熊雄

    西村説明員 国際連合憲章も條約の一種でございます。でありますから御資問は、條約と国内法との関係がどうであるか、こういうことに帰着いたします。その問題は各国の憲法または憲法的慣行によつてつて参ります。わけて大体二種類にお考えくださればけつこうでございます。一つは、條約と国内法とは直授の関係を持たない。国内法体系と條約体系とが、相並列して存在するという考え方であります。その場合には、條約と国内法と矛盾するような場合があまましても、当然一方が改廃されるということはなくて、具体的に申し上げますれば、別に国内法改正の措置をとつて、そうして両法体系の調整をはかるという制度をとつておる、憲法ない上憲法的慣行をとつておる国がございますと同時に、もう一つのグループは、條約は即国内法である。国家が條約を批准し、または條約に加入し、または署名と同時に効力が発生する條約に署名いたした場合には、当然国内法としての効力を持つという制度、そういつた憲法的慣行をとつている国と、二つございます。日本はそのどちらに属するかと申しますと、明治憲法のもとにおきましても、政府の公の解釈は後者でございます。條約即国内法である。従つて條約と国内法と矛盾する場合には、條約が優先いたしまして、法律が修正される、こういう慣行で参つております。しかしながら実際立法上の慣行といたしましては、できるだけ條約を批准し、または條約に加入する前に、国内法を條約に合せて改正したあと、批准または加入をするというふうに努力されて来ておりますが、必ずしもそれによらないで、條約即法律ということで、国内法改正した例も相当ございます。明治憲法のもとにおいても、公の解釈は、條約即法律であるという憲法上の慣行がとられて来ておつたわけであります。新憲法にありましても、その点は全然同一だと思います。ことに新憲法においては、最後に近く例の最高法規という章がありまして、その中には、條約は最高法規として誠実に遵守しなければならないと明文も、新たに置かれましたことでございますし、明治憲法のときより、よけい明白に條約即国内法という関係に立つわけでございます。そういうふうに考えておるわけでございます。
  63. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、條約ができました場合に、それが日本の憲法と抵触する場合でも、必ずしも憲法を先に改正してかからなくてもいいというわけですね。そういう場合もあり得る。日本の建前として……。
  64. 西村熊雄

    西村説明員 今御指摘の点は、全然別問題でございます。今申し上げましたのは、一国の憲法のもとにおいて、條約も法律も、同じく憲法によつて規定されております。いわゆる国家の権能として、制定されるわけであります。一つの憲法のもとにおいてできる條約と国内法とが、どういうような関係に立つかというのが御質問であつたので、その点に対して御答弁申し上げたわけであります。今御質問になりました、條約と憲法との関係はどうなるかというのは、全然新たな問題であります。私の先刻申し上げました答弁によつては、全然それには解決が與えられておりません。條約と憲法との関係、これは非常にむずかしい問題でありまして、今まで私が拝見した憲法の先生の著作にも、国際法の本などにもあまり取上げられていない問題であります。と申しますのは、條約締結権というものも、要するに憲法によつて規定されておりますから、その憲法が既定している條約締結権によつて締結された條約と、憲法との関係がどうなるかという問題になつて来るわけであります。その点については私はほんとうの私見でありますが、こういうふうに考えております。ここにある一つの條約があるとする。その條約を批准し、または條約に加入する。いわゆるその條約を確定的に国内に対して効力を発生せしめれば、当然日本の憲法の條項に抵触する結果を来すというような場合には、その條約の締結の担当に当る政府というものが、非常に愼重に考えるだろうと思うのです。一体国内法との抵触問題が起る條約の締結すらも、政府はきわめて愼重であります。いわんや憲法の條項に相反するような内容の條約をつくろうという場合に、これを受諾するかしないかということは、政府としてはきわめて重大な問題であります。その段階において政府としては愼重考慮されるだろうと思います。かりにその場合、結論として、どうしてもこの條約というものは締結した方がよろしいという結論に達したとするならば、私の常識から見れば、必ず憲法改正というものが先に立つて、條約との矛盾を解消して、しかる後に條約を日本に対して確定的に成立させる。こういう手続をとられるだろうと思うのです。こういう問題は今まで起つたことがございませんし、先例もございませんし、学者先生も論じておられませんし、憲法に非常に興味を持つておられる方々の御意見をたたきましても、まだ結論を得ておらない未熟の問題であります。この未熟の問題について私個人の意見を申し上げただけでありまして、そういう軽い意味でお聞き願います。
  65. 高田富之

    高田(富)委員 本日の朝刊にも出ておりますが、ソ同盟のマリク代表がダレス顧問に対しまして、対日講和の問題についての質問書を手交したということでありますが、その中の一項目にも、日本の再軍備の問題についてどういうふうに考えているかというふうな事項があるわけであります。この機会に情報をちよつと承つておきたいと思うのですが、日本の再軍備ということにつきまして、米国あたりの国論の最近における動向、さらにこれに関連して諸外国の本問題に関する輿論の動向につきまして、最近のわかつております範囲で御説明願いたいと思います。
  66. 島津久大

    島津政府委員 再軍備についてどういうような動きがあるかという御質問でありますが、これは大体外電その他で御承知のことと思うのであります。それ以外につけ加えて申し上げることはございません。講和の基礎となつておりまする七項目というものが報道せられまして、それに関連しまして日本の軍備を禁止しないだろうというふうな報道も伝わつておるのは御承知の通りであります。これに関しましてフイリピンとかニユージーランド、濠州その他で危惧を持つておるというような情報もございます。それ以外に再軍備問題が具体的に、あるいはまたもつと公的なかつこうで取上げられておるという情報は持つておりません。
  67. 高田富之

    高田(富)委員 この問題は非常に重要な問題だと思うのです。それで日本国内といたしましては、極力そういう問題についての危惧を取除くために、ポツダム宣言の趣旨にのつとりました平和国家としての態勢を整えるというこの努力を、政府は積極的にやらなければならぬことにもちろんだと思いますが、遺憾ながら最近のいろいろな動きを見ますと、明らかに表面には言つておりませんけれども、事実上再軍備を希望し、かつ現在すでにその準備を進めておるかのごとき感を、国内的にも国際的にも與えるような徴候が次第に顕著になつて来ておるのではないかと考えるのであります。たとえば前国会の終了直後にできました警察予備隊、あるいは海上保安庁の増強のようなものにつきましても、その後の情報はいろいろ調査によりますと、これの訓練の内容であるとかいろいろな面から見まして、明らかにこれは軍隊であり、かつこれが日本圏内の日本の軍隊というよりは、外国式に訓練されつつある軍隊であるというようなことも次第に広く流布されつつあるわけであります。しかもこれは国会にかけられずにできたものであるし、また軍人等の追放の解除、あるいは学校等における国旗掲揚であるとか、君が代の合唱であるとかいうようないろいろな面から見まして、軍国主義的な傾向が濃化しつつあるという点は非常に重大だと思います。そこでこの点につきまして、最近の追放解除になりました軍人の動向についてどういう調査をされておるか、わかつておりましたら御報告願いたい。また今後の軍人の追放解除の見通し等について御説明願いたいと思います。
  68. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま高田委員の御質問の追放関係は、これは外務省で御答弁申し上げる筋ではないと思います。ただ国際関係におきまするポツダム宣言の忠実な履行ということについては、最近さような傾向ではなく、どこまでも忠実な履行に向つて政府も努力をいたしておりますことを御了承願いたいと存じます。
  69. 高田富之

    高田(富)委員 それでは最近戰争の危險性も非常に迫つて来ておるというふうな空気の中で、わが国といたしましては、積極的に平和の擁護をするための輿論を喚起することは非常に必要であります。また世界的にもそういつた大きな各国民の平和擁護の戸に相和して政府は積極的にこの各国民の平和運動等に対しては、援助をしなければならぬと考えるわけであります。現在世界に起つておる平和擁護の運動に対する政府の見解を聞きたいと思うのです。それから各地で平和擁護のための民間の連動がありますが、これに対しまして政府はいかなる積極的な援助の手を講じておるかどうかということを、はつきりと言明していただきたいと思います。
  70. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの問題も、外務省からお答え申し上げるのはちよつと筋違いではないかと存じますので、この点はここで申し上げることを御遠慮申し上げます。
  71. 高田富之

    高田(富)委員 今日は外務大臣も来ておりませんから、あまり大きい問題を御質問するのもむりかと思いますので、もう一つ法律的なことをお伺いしておきたいのですが、講和が成立しましたならば、今までのいわゆるポ勅関係で出ましたいろいろな政令はみんな当然無効になるべきものと考えるのでありますが、その点はどういうふうにお考えですか。ポ勅自体もこれは無効になると思いますが、その点はどうですか。
  72. 西村熊雄

    西村説明員 平和條約が成立すれば、従前出ておりますポ勅が当然無効になる、そういうふうには考えておりません。
  73. 高田富之

    高田(富)委員 そうすると、法律的には当然無効でなくても、主権の完全な回復ということが、講和を念願するわれわれ全国民の中心問題でありますが、主権を完全に回復するためには、やはりポツダム宣言受諾に伴つて発する命令、これによりまして、たとえば前々国会でありましたか、食確法の議会における不成立の際に、ああいうのを出してこれを施行した。あるいは現に問題になつております電力問題にいたしましても、当然われわれが審議しなければならないものも、これに便乗いたしまして政府はああいうことをやつてしまつておる。これは明らかにに国会の自主性を無視するばかりでなく、わが国の主権がこういうふうになつておることの悲劇であつて、昨日の国会における野党のとつた態度の中にはつきり現われておる通り、全国民のまつたく痛恨おくあたわざる事実であります。従つてこういうふうなことをなくする、これこそが講和の第一の目的であります。政府としましては法律的に当然無効にならぬといたしましても、こういうふうなものを講和の際には全部無効として、そうして完全に国会を中心とする主権の自立的な確立をはかるという態度でなければならぬと考えるのでありますが、その点についての見解を付いたいと思います。
  74. 太田一郎

    ○太田政府委員 これは法務府の所管だと思いますが、ごく簡單にお答えいたします。講和條約ができました後に、ポツダム政令というものがなくなるということは当然のことだろうと思います。そういうものは講和條約後は出ないということはその通りであろうと思います。それから講和條約前に行われましたところの日本の非軍事化でありますとか、民主化に関するいろいろな措置というものは、将来正本が民主国家、平和愛好国家として発展して行く上において必要なものは、十分これを尊重して行かなければならない。今まで出たものが当然無効になるというふうには考えておりません。
  75. 守島伍郎

    ○守島委員長 高田君もうございませんか。――それでは佐々木君。
  76. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 多くの委員諸君は、政府委員に対して政策的なことは聞かない、あるいは尋ねても答弁を求めることはむりであるというふうな発言をされておるようでありまするが、私は本日はわが党切つての有能な草葉政務次官もお見えになつておりまするし、かつまた新憲法におきまして外交関係を処理するのは政府職権でございます。特に吉田総理大臣は今日講和会議を控えまして、まつたく寧日なきありさまでございまして、このときにおきまして草葉政務次官は吉田総理にかわつてこの外交関係を処理すべき立場に立つておられるわけであります。従つて大いに政策的なことも担当されておるわけであります。あなたは今日の清和会議に臨む国民の運命を決定する重大なる外交政策を背中にしよつておるという十分な自負のもとに御答弁を願いたいと思います。  それで私は時間も進ん参りましたので結論を簡單に申し上げますが、昨日の吉田総理大臣の施政方針演説の中におきましても、一日も早く一国でも多くの国との講和條約を締結したいということを訴えられております。このときにおきまして先般外務省が情報部の名前をもつて発表いたしました(朝鮮の動乱とわれらの立場」という、いわば外務省が発表した外交白書ともいうべきものがございますが、ここにおきまして全面講和というようなことは、共産党の謀略であるということを明らかに断定されております。しかもそれは第四の結論、結びの項目においてこのことを、断定されております。そこでただいま政府は全面講和というものは全然可能性はない――このパンフレツトによりますならば、理論的にもあり得ないというようなことが書いてあります。従つてソ連並びにその衛星国を含んだ全面講和というものは、現実には可能性はないと私も同感をいたしておるわけでありますが、政府がこのように明確に意思を表明しておるのでありまするから、この際あらためて全面講和というものは全然政府考えてもおらぬというふうに解釈していいものかどうかということを承つておきます。
  77. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま佐々木委員の御質問にありましたように、政府は一日も早く一国でも多く講和を結ぶことを熱望いたしておりますることは、昨日総理が衆議院で演説いたした通りでございます。従つて一国でも多くというのは、全部でありまする場合には全部ということに相なりまするが、実質的におきまして、なお外交白書で申し上げましたように、国内に全面講和という輿論が一部にありまする関係を分解いたしましてかかりやすくする意味において、いわゆる外交白書を出したような次第であります。従つて現在におきましては、昨日総理が申しました一日も早く一国とも多く対日講和が結ばれることを熱望いたしておる次第であります。
  78. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一度繰返して聞いておきまするが、ソ連あるいはソ連の共産主義衛星国というようなものを加えた講和会議というものは可能性がない、こういうふうにお考えになつておるものかどうか。
  79. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ことに外交白書を例にとつてのお話でございましたが、ソ連及びソ連の衛星国を加えた全面講和という意味であろうと考えます。そういう意味におきましての国内の動きが相当全面講和という意味において暗示する点を外交白書は取上げておる、現在政府は全面講和を全然不可能なものとして排撃するというのではなく、これはいわゆる一日も早く一国とも多くという意味においての現実の問題と、それから国民の理想の問題と、両方の点からおのおのの立場において主張したのが外交白書であり、昨日の総理の演説である、かように御了承願いたいということを申し上げたいと思います。
  80. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はもとよりただいま吉田内閣の考えておる多数国との講和というものには、全面的賛成をする意味から実は聞いておるのでありますけれども、今回の「朝鮮動乱と日本の立場」という外代白書にいたしましても、その他の外務省の責任において、あるいは外務省が相当糸を引いておりまするたくさんな出版物によりましても、理論的にももう全面講和というようなことはあり得ないんだというようなことを明らかに発表されております。そういう点から考えますると、ただいまの御答弁の中には非常な矛盾、あるいはことさらな詭弁というようなことも含まれておるようでありますが、この問題は別に深く突き進んで質問をいたさないことにいたしておきます。そこでこの外交白書の中に出ております結論の項目の中におきましても、朝鮮の動乱というものは、二つの世界が一致して希望するわが国のあり方もなければ、両者が共同でわが国の安全を保障してくれる共通の基盤もないことをはつきりと教えておるということを明らかにされております。こういう点から見ますならば、日本の将来の安全保障というものは、アメリカ的な世界のブロツクの中に依存することによつて目的を達する、こういうふうにしか解釈できないわけであります。二つの世界の衝突、二つの世界の対立は必然なものであるというふうに断定しておられますところから割出しますならば、国際連合に対してすらも、これではあまり安心ができないというような結論になつて来るわけなのであります。御承知のように国際連合の中にはソ連も加入をいたしておるわけでありまするから、この二つの世界が一致して日本の安全保障を約束してくれることは絶対にないのだという考え方から出発いたしますならば、今日の政府は将来の日本の安全保障はアメリカ的な世界に依存する以外にない、こういうふうなお考えであるかどうか。
  81. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本の安全保障というものを国際連合を中心にして考えて行くという意味におきましては、同様でありするが、国際連合の中の動きを外交自若において少しこまかく取上げながら、現実の姿をなるべくわかりやすく説いておるところに、ただいまの問題が起つて来ると思います。政府といたしましては、全般的な国際連合の姿においての日本の安全保障、これは当然常に持つておりまする点でございます。従つて現実の姿が、あるいは国際連合のいろいろな決議等の動きによりまして、安全保障の行き方が総会において強化されるというような姿においてその時代々々にかわつて来ることもありましようが、全般といたしましては、国際連合を中心にした安全保障というものが考えられて来る、かように存じております。
  82. 黒田寿男

    黒田委員 私は委員長から委員会にお諮り願いたいと思うのですが、ただいま外交白書に関する内容の一端が佐々木君の方から御質問になつております。実は私自身としましては、今回初めてこの委員会委員になりましたので、過去の審議のことをよく存じておりません。委員会の記録も読んでおりますけれども、まだ全部読んでいませんが、前国会が終了されました後、今回の国会が始まります間に、外交白書というものが出ました。これを拝見いたしますと、非常に問題があるように思います。質問したい点もありまするし、また意見といたしましても私いろいろな意見があると思います。外務省が公にこういうものを発表したということは、非常に私は重要な問題だと思いますので、もし過去におきまして正式にこれを取上げまして特に論議せられたいという機会がなかつたとしますれば――あるいはまたあつたとしましても、きわめて一部分の触れ方にすぎなかつたと思いますので、もう一度私はあらためて、最も適当な近い機会に、責任のあることでありますから、できれば外務大臣にも出ていただきまして、外交白書を中心にいたしましての委員会を特に開いていただきたい、これをひとつお諮り願いたいと思います。私もいろいろ質問したいと思いますけれども、実は前のことがよくわかりませんので押えておりましたが、ちようど今佐々木君からそういうこれに関連した質問が出ておる際でありますので、できますならば私はそうすることを委員会にお諮り願いたいと思います。
  83. 守島伍郎

    ○守島委員長 理事会で御相談いたしまして――私の希望としては、なるべくそういう会合を持ちたいと思います。皆さん御異議ございませんでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 守島伍郎

    ○守島委員長 それではそういうことにいたします。
  85. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それではただいまの御提案によりまして、いずれあらためてゆつくり承ることにいたしますか、最後に一点だけ承つておきます。要するにこの外交白書の根本に流れておりまするものは、共産主義運動というものが非常な破壊的工作をやり、今後もその破壊的工作がますます顕著になつて行く傾向があることを明らかに指摘しております。そういうことから考えますると、今日の共産主義運動並びに日本の共産党の運動というものが、日本の対日講和に対してどういう影響をもたらしておるか、非常な悪影響をもたらしておるものである、あるいは日本講和会議の促進を妨害しておるものではないか、こういうふうに私は考えるわけでありますが、政府はどのように考えておりますか。
  86. 草葉隆圓

    草葉政府委員 破壊的思想を持つたものに対する考えに対しましては、昨日総理から演説いたした通りであります。ただ融和会議を控えました日本の現状におきましては、この講和会議に対する国民考え方が、私どもはなるべく――先ほどどなたかの御意見にもありましたように、熱烈に日本国民の態度を、示す方向に向うて来ることを希望もいたしておりますし、そういうふうに考えておる次第でございます。ただここに一つの政党が講和に対する妨害の態度をとつておるかどうかということは、今私どもがここで御答弁申し上げない方がいいじやないかと思います。
  87. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 外務省が政府の責任において発表された外交白書において、共産党というものは明らかに破壊的な工作をとつておるのだ、しかもこの動向というものは今後ともますます顕著になるということを結論において明らかに断定されております。ただいまの政務次官の御答弁によりますると、まことにあいまい、これと矛盾するような御答弁である。あなたは特にわが自由党から出ておられまする政務次官でもございます。これらの点についてはもつと明確な態度を天下に明らかにしていただきたいと思います。
  88. 草葉隆圓

    草葉政府委員 もちろん、外交白書に申しておりまする主流については、お話の通りであります。(「主流とは何だ」と呼ぶ者あり)主流と申しますのは、思想の流れにおきましては、お話の通りであります。世界の動きに対しまして、私ども共産主義の革命思想が、日本に対しましても対日講和についてこれを不十分な状態に持つて来る、あるいは場合によるとたいへん都合が悪い、国民の意思かのごとく現わして来るという状態につきましては、まことに遺憾に存ずる次第でありまして、その点が昨日総理が申された点であります。
  89. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はもう一点で質問を打切つておきまするが、先ほど民主党の並木委員から発言がありました超党派外交についてちよつと所信を申しておきます。私はいわゆる一般に伝えられておりまする超党派外交なるものの目的、内容というものを、不幸にして正しくは把握いたしておりませんけれども、いわゆる世に伝えられておりまする超党派外交なるものについて考えまするならば、何も私は外交政策が超党派的でなければならぬとは考えません。山来いやしくも天下の公党が主義綱領というものを掲げ、その中から割出されて来ますところの政策というものが、それぞれ異なつておることは、あたりまえのことでありまして、外交政策につきましても、各党各派の立場によつてその政策がかわつて来ることは当然のことであろうと考えます。しかもこういう外交問題というものは、社会党も言つておりまするように、新国会法の生命ともいうべき常任委員会、すなわちこの外務委員会において、国民の環視の中で、ガラス張りの中でやるべきものでありまして、今川の伝えられまする超党派外交などというものを見ますと、私は自由党ではありまするが、しかしながらどうもその間におきましては、率直に申して各党各派の党利党略的なにおいがしないわけでもございません。従つてまたそういう一部の間において、外交関係を壟断するということになりますと、とかく秘密外交に堕するという傾向も否定することはできないのじやないかと私は考えるわけであります。従つて私はわが党の立場からもまたこの外務委員会の立場からも、いわゆる伝えられておりまするような超党派外交なんていうものは、すみやかに打切つてほしいということを、外務委員会の権威においても私たちは考えておる次第であります。そこでこれはまた後ほど委員長とも相談をして、外務委員会としても態度を明確にいたしたいと考えておるわけでありますが、この際外交関係り処理を担当しておられまする政務次官は、この超党派外交というものに対して、どういうふうな考えを持つておられるか。かえつてあなた方にとつても、こんなものは迷惑ではなかろうかと私は考えておるわけでありますが、ひとつ政府の御見解を承りたいと思います。
  90. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの佐々木委員のお話にありましたように、外交問題は大いに外務委員会において検討、討議をすべきものであるという御意見ごもつともだと思います。ただ伝えられておりまする超党派外交というのは、そういう場合においても、外交の問題については一国の将来に正しい、いい影響の来すような政策を十分各党が申合せ、打合せて臨もうじやないかという趣旨におきましては、決して相分離するものではないと存じております。従つてこれもこの前並木委員の御質問に対して、私はたいへんけつこうだと申し上げた点であります。
  91. 守島伍郎

    ○守島委員長 もう時間もございませんが、ほかに御質問ございませんか。
  92. 西村榮一

    西村(榮)委員 先ほど黒田君から外交白書についての討論、懇談、質疑の機会を與えるようにということであつたのですが、これは委員長御承知の通り外交白書が発表せられましてから、その問題を中心に委員会を開きたいということを幾たびか希望しのでありまするが、外交白書を発表して以来、外務大臣が本委員会に出席されていない。従つて一体それは先ほどの申合せでよろしいと委員長は快諾されたのですが、一体あなたはその快諾をするについて、どれだけ総理大臣をひつぱり出す自信がおありなのか、ひとつ承りたいと思います。
  93. 守島伍郎

    ○守島委員長 ちよつと速記をとめて……。     〔速記中止〕
  94. 守島伍郎

    ○守島委員長 速記を始めてください。それでは理事会によくお諮りいたしまして、次の委員会を開くことといたします。今日はこれで散会いたします。     午後零時二十六分散会