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1950-10-21 第8回国会 参議院 労働委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月二十一日(土曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○公共企業体労働関係法改正に関す  る調査の件  (右の件に関して証人の証書あり)   —————————————
  2. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では只今から開会いたしますが、公労法改正に関連いたしまして、それに資するために各専門家方々の御意見を拝聴することにいたしましたので、先生方お忙しいところおいで頂きまして有難うございました。それでは先ず早稲田大学教授戒能通孝先生にお願いいたします。  では各証人方々に申上げますが、証書をなされる前に、参議院規則第百八十五條によりまして宣誓をして頂かなくてはなりませんので、お手許にお配りした宣誓書の御朗読をお願いいたします。    〔総員起立証人は次のように宣誓をか行なつた〕    宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。    証     人 藤林 敬三    証     人 峰村 光郎     証     人 戒能 通孝
  3. 戒能通孝

    証人戒能通孝君) 御趣旨賛成いたしますが、もう少し明瞭な言葉で御趣旨を現して頂くことを切望いたすわけであります。
  4. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 御質問は又あと皆さんが御説明になつてからお願いいたします。  それでは次に慶応大学教授峰村光郎氏にお願いいたします。
  5. 峰村光郎

    証人峰村光郎君) ちよつと私電車事故で遅れてしまつたのですが、御趣旨伺つて意見を申上げたいと思いますが、どういう御質問でございましようか。
  6. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは峰村さんにはあとでお願いいたすことにいたし余す。それでは国有鉄道中央調委員長藤林敬三氏にお伺いいたします。
  7. 藤林敬三

    証人藤林敬三君) 私は十六條、三十五條の御案は一応これで結構だと思いますが、併しこれは一つ考え方で、私はもう一つ実は考え方があるんじやないかというふうに思つておるのでございます。と申しますのは、三十五條のほうに、元の現行法もそうでございますし、改正意見も、第一項はそのまま書いてありますが、第一項のほうに、仲裁裁定は、労使双方最終的決定としてこれを拘束すると、こういうふうに響いてあるのでございますが、この條文がありさえすればそれでいいのじやないかというふうに考えるのであります。ただそれだけでは国鉄専売公社労働関係を、仲裁制度というものを認めて調整して行くというのには勿論足りませんですが、それは私は現行法解釈がどのようであるか、法律専門家でございませんので詳しくは存じませんですけれども、仮に例えば国有鉄道法第三十九條、これは私ここへ持つて来ている法文改正前のでございまするが、改正條文を持つて来なかつたために元ので申しますと、日本国有鉄道は、予算作成後に生じた避けることのできない事由により、必要がある場合に限り追加予算を調整し云々と書いてあるのでございます、私はこの予算作成後に生じた避けることのできない事由というものを、第三十五條仲裁裁定は、労使双方拘束するという條文から行きまして、そういう仲裁裁定が出れば、労使双方がこれで拘束されてしまうのだということは、避けることのできない事由であるというように、むしろ引つ掛りで行くことができるならば、私はこういう十六條はむしろ全部削除してしまつでもこれで通るのじやないかと実は思うのでございます。ただその場合に、ここに十六條改正案の御意見もそうでございますが、原案もそうでございまして、政府云々ということが入つておりますが、実は私は仲裁裁定拘束するものは、勿論政府であつた国会であつたりするものではないと思います。それは国鉄労働組合とを拘束するものでございます。ところがその場合にいろいろに一つ考え方の分れがあるのじやないかと私は思つておるのでございますが、それは現行法改正の御趣旨でもその点がやや不明瞭であるのじやないかと思いまするが、よく言われるところでありますが、国鉄公共企業体としては、やはり企業的性格というものを当然持たされなければならない。ただ併し全額国家出資でございますから、政府なり国会なりが、その国鉄事業運営に関しては重大な関心を持つことはこれは当然でございます。ただその場合に、重大な関心を持つというのは、出資者としての国家がやはり重大な監督地位に立つということであつて然るべきと私は思うのでございます。そこで仲裁裁定拘束力を発揮して国鉄当局縛つた、まあ国鉄当局は給與問題について、今の予算の枠内ではどうにもならんということになれば、追加予算作つてこれを国会承認をして貰うという手をとる。この場合に予算審議される国会審議権は、勿論仲裁裁定を、これを拘束したり制限したりすることは、これは到底できるものではございませんが、併し国会審議は、仲裁裁定国会拘束したり制限したりするものではない、もとよりそういう見解に置くべきではなくして、ただその場合には政府なり国会は、国鉄企業に対しては監督地位にあるという意味で、そこに関與をして頂くという形で、止むを得ず国鉄にこれこれの費用が要るとなれば、そういう意味でこれを御審議決定願うというような工合にさえなつておれば、私は実は十六係は要らないのじやないかと思います。ここに況んや、政府云々というような言葉が出て来ることは、これは公共企業体労働関係法がございまして、直接的には政府関係はないのじやないかと私は思つております。出て来れば、それは国鉄当局労働組合が出て来るならわかりますが、ここへ政府が出て来るのは私はわからん。というのは、こういう考え方があるのは、やはり現行国鉄法々見ましてもそうでございますし、公共企業体労働関係法も、大体その点が公共企業体という名を冠しながら、その企業体たる方向に一足飛びには勿論行かんのでございましようが、併しその方向に衣で持つて行くのだという考え方があるようでないようで、実はこの点がぼやけていると思うのであります。若しもその点がはつきりしているならば、私は仲裁裁定政府拘束したり、国会拘束したりなど当然すべきものでもないし、そんなことをする必要も私はない。縛るのは当局を縛る。縛らせて置いて、当局は、それは国家出資のものでございますから、予算が必要だと思えば、その必要な予算はその都度止むを得ない理由があるならば、先ほど引用いたしました国鉄法三十九條に従つて、これを政府なり国会なりに要請する。そこで認められる。併し政府なり国会なりから見て、どうもそういう裁定が内容的に思わしくない、こういうような状況では国鉄事業はうまく行かん。こういう監督上の御見解があるならば、それはその見解国鉄総裁の首のすげ換えをするなりなんなり、又これは後ほど私も、私共だけの意見が別にあるのでございますが、仲裁委員会がけしからんとおつしやるならば、仲裁委員会委員を場合によつては変えることができるというのが現行法でございますし、又何も今日の仲裁委員会のああいう委員任命の仕方と、ああいう形で仲裁委員会がなくちやならんものでもない。別の機構なり委員任命の仕方なり、いろいろ仲裁委員会委員の構成も考えることができる。そういう意味国会政府監督国鉄なり仲裁委員会に対して満足の行くような民主主義的な行き方の状態にこれを持つて行きさえすればいいのであつて、何もそういう今の現行法なり、現在の状態なり、何か非常にわかつたようなわからないような非常にぼやけたことでいることは、私は必ずしも今後の状態においてよくするものではないと思つております。  この改正の御案が、現行法に比べて、むしろ私は比較的に申すならば、こに大賛成であります。是非こういう工合にして頂けるならして頂きたいと思いますが、併し私は、これはそういう比較的なことを申上げて甚だ恐縮でございますが、以上申述べましたような見解からしまして、私はこれで問題がスムースに解決されてしまうとは実は思つていないのであります。むしろ改正されるならば、国鉄法などのほうをもつと改正して頂いて、公労法現行法のままでも、要するに国鉄企業体である、それで公労法精神はこの企業体である国鉄労使関係の調整をやつて行くのだという趣旨に副うように、いわば組合改正案が、頂きましたあれにも載つておりますが、組合改正意見の中にもそういうことが出ておつたと思いますが、折角公労法作つて置きながら、その公労法趣旨を、別の国鉄法なり何なり、いろいろな法令、規則というようなもので、公労法精神を踏みにじつているというようなことは甚だ面白くないという意見組合改正の中にも附帶してあつたようでありますが、その点は私はその通りだと思つている。従いましてそういう点の、何か方向で、公労法の十六條、三十五條と言わず、国会においてもよろしくいろいろな点の改正について御努力を賜ることを、実は関係者とし乃至は国民の一人としてこの際皆さんにお願いをしたいと思つておるのであります。
  8. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは、次に慶応大学教授峰村光郎氏にお願いいたします。
  9. 峰村光郎

    証人峰村光郎君) 改正参考案を拝見いたしまして私の感じましたことを簡單に申上げますが、十六條の改正案は、私は大体原文とさして大きな違いはないと考えております。こういう改正をしたら旧法解釈上顕著な違いが出て来るということについては、旧法でもこれと同じような解釈もできないわけではないと思います。先ほど藤林教授から、十六條の政府は、というのは、公社作つて置きながらその間非常にぼやけているというお説は、私ここで初めて伺つたのでありますが、全くその通りだと思います。それは公社政府とは同じという解釈をして行けばいいじやないかと言うけれども、やはり法文で別の公社法作つた以上は、すつきりさして行くのが建前ではないかと考えておりますので、只今藤林教授のお説は、その点は全く賛成です。それから他の点は、この案でも私はこれで一応結構だと思います。仮にこうすればどれだけ旧法よりより具体的によくなるかというふうなことは、立法趣旨でも伺つて見たらもう少し考え直すことができると思いますが、三十五條につきましても、私はむしろ現行法原文のままでいいじやないか、これを但書以下を除いて、新しく第二項を附けて行く具体的な意味がどこにあるか。もう少し問題を実質的に考えて行けば、このような形式的な改正だけに止まるべきではなく、もつと法の実態に触れた新しい改正案なり、或いは新しい條文を設けるなり、或いは削除するなりというふうなことも、より以上の重要性を以て並び考えられて然るべきではないか、かように考えますが、併しこの案を拝見して、特にこの欠点というふうなことは私は感じません。ただどれだけプラスになるかということに対しては、今直ちに肯定的な、全面的にこれに置き換えた方がいいという結論は申上げかねると思います。以上であります。
  10. 戒能通孝

    証人戒能通孝君) 先ほど申上げましたことに少し補充さして頂きたいと思います。藤林先生お話を伺つておりまして、御説の通りだと存じましたけれども、ただ日本国有鉄道法の三十九條というのについて見ますと、政府追加予算国会に提出する義務というものが載つていなかつたかと存ずるのでございます。従つて公労法の第十六條の規定が今度この形になることによりまして、政府国会承認を求める手続を強制しておるという点におきまして、私はこの御改正案というものに対して支持いたしたいわけなんでございます。  それから峰村先生のおつしやいましたこと、やはり私も現行法の下においてもこれと殆んど同じような解釈ができるのではないかという御意見でございましたし、私もそうではないかと存じておりますのでございますが、併し、現行法の点につきましては、もうすでに相当に別個の問題が出て参りまして、いろいろな意見の対立があるように存じますので、その点を何らかの意味で整理して頂くことが望ましいことではないかと存ずるのでございます。この意味におきまして、この改正の御趣旨というものにつきまして、私としてはやはり改正そのものと申しますか、言葉を明瞭な形にした改正というものを切望いたすわけでございます。
  11. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では以上で各証人の御意見御開陳が終つたわけでございますが、これに対しての御質問のおありになりますかたは御発言を願います、
  12. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 賀來労政局長は来ておりますか。
  13. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 賀來労政局長は出張のため、今日は御欠席の通告がございました。
  14. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 折角おいで願つても、実はこつちが少し私は改正の御趣旨なり何なりの御説明がおろそかになつていたのではないかという気もするのでございますが、今藤林先生にお聞き申上げたいのですけれども、実は藤林先生は事実上御関係が深いのですが、先ほど戒能証人の言われましたように、日本国有鉄道法だけに追加予算提出義務がある、それは運輸大臣を通じて大蔵大臣に対してあるわけなんですね、この点はやはり戒能先生お話のように、政府国会提出義務を負わしておる、而も今までの法文の書き万では、政府は如何なる拘束も受けるものではないというふうな書き方であつたのですが、今度のは十六條で以て、政府はそういう仲裁裁定が出たときにはどうしなければならないかという政府義務のほうを先に積極的に書こうと、こういうことで書いたのでございますが、そういう点についてむしろ、峰村先生現行法変りがないじやないかとおつしやいますが、そういう点でむしろ従来の……無論従来の法律でも素面に解釈すれば大した変りがないとおつしやることは私共わかるのでございますが、むしろそういうあいまいな政府拘束するものではないというふうな書き方よりは、その際に政府が何をすべきか、そうして出すものは何だ、仲裁裁定そのものであるか、それに伴つて予算上の処置かどうかという点を明らかにした点は、少くとも従来より異つておると思うのでございますが、それらについてもう少し追込んだ御意見を承われれば結構だと思います。
  15. 藤林敬三

    証人藤林敬三君) 今堀木委員から質問というよりむしろ御注意のような御発言を頂きましたが、至極御尤もでございまして、私は自分の考えを強く述べまして、皆様の御苦心のあるところを十分に触れませんで甚だ恐縮でございましたが、御説の通り私も実はこの二つの箇條の改正に関する御案に対しましては、今十六條の第一項の、政府云々というところに最もこの御苦心があり、又今堀木委員の御説明通り私がこの点をこれだけはつきりさせて頂けば、まだ審議中だと聞いております国鉄裁定の問題なども、当初の裁定予算をくつつけないで議会に政府はお出しになるというようなことで、裁定趣旨承認できないということを承認して貰うというような、こういう形で国会に出されたようでございますが、ああいうような非常に我々から考えますと、あれではちよつと趣旨も十分了解できないし、問題が、ああいうことをされたのでは労使双方の問題がうまく解決できないということを非常に強く感じました一人といたしましては、このお説の通り十六條の第一項の政府云々という、この御改正の文面は私といたしましては御苦心のあるところと見て大変賛成でございます。併し先ほど私は別の意見ということで申上げまして、別の意見ということで申上げますと、今戒能さんからも私の法律知識の足りないところを補つて頂きまして十分よく私も了解はするのでございますが、併し私は私の先ほど開陳いたしました意見から言うと、ここの政府云々という文句を公労法の中へ入れなくて、例えば国鉄法のようなものの中へこれを入れることはできないものだろうかどうだろうか、そうして又そういうことをあえて申しますゆえんは、先ほど申しましたように、私は公労法公共企業体労働関係法でございますから、面接的にはこの公社組合との労働関係の問題を処理するのであつて、そこに政府が直接に出て来ることは、私は或る意味においておかしいと、言い過ぎかも知れませんが、出て来なくても実はいいのじやないか、政府とか国会とか出て来なくてもいいのじやないかというふうに私は実は思つております。併しそれらのものが全然出て来なくて問題が解決いたしますならば、それは国鉄法などのきめ方の中でおきめ下さればいいのではないだろうかというように考えるのでございます。併しこれも私は法律家でないので、そういう乱暴な意見と思われるかも知れませんが、意見を率直に申上げますと、或いは公労法のほうが国有鉄道法よりは法律としてそのウエイトがあるのだから、こつちに入れて置いたほうがいいのだというようなことが法律的に言えるならば、又そこでウエイトの問題がございましようけれども、併し私はそういう工合公労法公労法としてすつきりした形へ持つて行くという考え方一つ考え方ではなかろうかということを申上げた次第でございます。   まあそういうことを主に申上げまして、折角の御苦心のあるところに余り触れませんでしたが、今御注意を頂きましたので、私はこの御苦心は十分に買つて、若し今日私のような意見が入れられないとすれば、この改正が是非御苦心通りうまく実を結ぶことを我々といたしましては希望する次第でございます。
  16. 原虎一

    原虎一君 証人皆さんにお開きしたいのですが、この改正狙いは、申すまでもなく今堀木委員からも言われておりましたが、二回に亘つて国鉄裁定が行われまして、而も仲裁が行なわれましたのを、政府現行法を、我々から言いますれば曲げて解釈している。これは私は委員会でも政府責任を、本会議においても追及したのですが、労働省みずからが公労法解釈書を出しております。これは名前は一局長名前で出しておりますけれども、実際は労働省法規課作つた言つていいものであります。その解釈には、私共が改正案を今作つておりますように解釈すべきものとしての解釈書を明確に出しておる。そういうものを出して置きながら、政府はいろいろ実際の問題にぶつかつて来ますと、第一回の仲裁裁定に対しても、第二両の仲裁裁定に対しても同様に、予算措置を付けて出すべきものであるという労働省法規課解釈をしているにもかかわらず、それは間違つた解釈として予算措置を付けないで国会に出して来たわけ6あります。裁定そのものの善悪を審議する責任国会にあるかのごとく政府解釈し出したわけであります。そこにこの法を作つた我々の未熟な点と言いますか、そういう点もありまして、これはスムースに解釈して、今改正案にしますれば当然政府責任を以て予算を出して来るようにしなければならん、法を作つたときの精神を明らかにここにしたい、こういう狙いかあるわけであります。それともう一つは、これは先ほど堀木委員から言われた通りでありまして、私共は先ずその点が狙いでありまして、十六條をこうすれば、現在起つている法の不備から来るいろいろな諸問題を解決し得る。そのためには一番十六條と三十五條との関係を明確にすればいいじやないかという考えであるわけでありまして、勿論国鉄法でありますとか、公社法というものを修正しても、当然裁定に対する履行の予算上の措置というものが政府責任が起きて来るようなやり方もあると思いまするが、それよりもこれが一番手つ取り早いではないかという考え作つておるわけであります。それからもう一つ問題になりますのは、これは昨日の委員会証人の方方から御意見伺つたのでありますが、本日はその点が出ておりませんのでお伺いいたしたいと思うのでありますか、この改正の案で行きますと、仲裁裁定が行なわれますれば、公社労働組合との債権債務関係が生じて参りまして、よしその決定に基きまして政府が新しい私共の改正案に基いて当然予算措置を付けて国会に出しましても、それを予算国会が否決した場合に、裁定そのもの債権債務関係はどうなるか。私共改正案から行きますると、やはり債権債務関係公社労働者との間に残つているというふうな解釈を以てこれは改正しておるわけでありまして、この点についてお考えを、御意見を伺えますれば幸いだと思います。
  17. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 今の御質問に関連してついでに併せてお聞きしたいことがあります。それは三十五條の実は但書でございますが、やめまして二項にいたしましたことは、昨日も論議がございましたのですが、これは別條にしたほうがいいという議論もありますし、又全体としての配列の考え方もあろうと思うのでございますが、要するに但書で行きますと、当事者双方とも最終的決定として服従しなければならないという、あたかも裁定効力そのものに対しての但書のごとく見える、但書がそういう疑いか起るかも知れないという、又そういう解釈をする人かあえてなきにしもありませんので、むしろ第二項に切離して行く。そして第一項のほうは、仲裁裁定は、今お話のありましたように最終的に労使双方拘束するのである。債権債務は発生するのである。こういう考え方で、そして但書を二項にいたしまして、これは財政法上の問題、性質財政法上の問題だから当然但書と本文とは法律性質が違うものでありますから、二項にして書いたほうがいいじやなかろうか、そうしてそれを判然とさせる。私共実は但書を取りまして二項にいたしましたのは、そういう含みも考えたわけでございます。そういうことが法律的に見ましてお考えがどうかということを伺わして頂くと、今の質問と関連してはつきりして参ると、こう思つております。
  18. 峰村光郎

    証人峰村光郎君) 只今堀木委員から私党ほど伺いました疑点について非常に御鄭重な御説明がございましたので、私も大変御草案の御苦心の点はわかつたのでございます。それで私が先ほど本改正の具体的な点を申上げまして、できれば皆が素直に解釈するということを私は予定しておつたのでありますが、先ほど戒能教授が言われたように、すでにいろいろな食違いが起つており、そういう点を整理し明確にして疑点を残さないという点でこの十六條の案を出したのでございます。で三十五條但書を廃し、第二項にのみ財政上の点を特に別個に扱うという御趣旨を伺いまして、私は草案現行法よりもよりベターであるという趣旨がわかつたのでございます。特に十六條の、政府国会に対して承認を求める義務を正当に出したということと関連して、私はこれは政府という言葉の中に、公社政府と一緒に含めて考えて今まで解釈しておるのでありますが、今後もそうこの原案でも考えてよかろうかと考えますが、草案はこの点をもう少し活かすならば、当然第十七條の問題に関連して来るのではないかというような気がするのであります。十六條の第一項では、政府が表に出ている。十七條では今度は全く同じ理由公社を炎に出すならば、特に公社関係の職員の組合から罷業権を剥奪しているということは、必ずしも中和的解決狙つた最上の策ということはできないのではないか。平和的解決狙いには、やはり争議権を或る特定の條件の下に認めても一向差支えない。例えばそういう問題が起つた場合に、仲裁裁定手続によつて先ず平和的の解決に努力するという平和義務双方に起る、その手続進行中は争議行為をしないというような、たしか労働専門員の御案にも、或いは一案としてあつたかと思いますが、そういうふうな改正を十七峰でされたらこの十六條の今度の改正はもつと裏付があり活きて来はしないか。而も平和的解決に対して何ら目をつむつたり避けてはいないという感じがするのでございます。その点はそれだけ申し上げて置きます。それからもう一つ裁定後の債権債務、これは戒能教授から御説があると思いますが、私発言のついでに申上げて見たいと思うのでありますが、私は裁定があつて当事者拘束する。債権債務が、やれ解除條件付かい停止條件付だというような限定の解釈をすべきではなくて、やはりそれは一応債権債務が確定した、こういうふうに考えて行くべきではないかと考えております。
  19. 戒能通孝

    証人戒能通孝君) 裁定及び協定に基く債権債務の問題でありますが、私も只今峰村教授のおつしやつたことに意見を同じにしておるものでございます。とにかく公共企業体労働関係法というものは、これは公社とそれから政府との関係を問題にしておるわけでございますから、公社組合との関係については現行第十六條の規定というものは無関係であつていいものではないかと思います。一旦協定なり裁定なりができれば、それが公社組合とを拘束することは、これは問題ないのじやないかと思うのであります。ただ具体的な問題になつて参りますと、それを予算上若しくは金繰り上実現できるかできないかという問題が残つて来るわけでございまして、予算乃至金繰りの問題として実現できない場合に初めて貧血が必要になり、予算が必要になつて参りますので、その意味においてこの第十六條というものができて来るのじやないかと思います。従つてこの第十六條の問題は、公社それから組合というものを除外しで考えなくちやならない。公社がつまり政府にこれらの手続をして貰わなければならないという趣旨に私読んでおるわけでございます。ですから只今お話ございました通り債権債務の問題は又別個に考えなくちやならない。十六條の問題ではないというふうに私読んでおるわけでございます。従つて今度のこの改正参考案がその趣旨を明瞭にされまして、そして政府はただ予算、それから資金上の手続について国会承認を得るという、そういう点を明白になさつておる点におきまして私非常に結構か御案があると考えておるわけでございます。
  20. 藤林敬三

    証人藤林敬三君) 先ほど原委員から裁定が労資双方拘束し、債権債務関係が生ずると考える場合に、政府によつて国会に出された資金上、予算上の措置が、国会をうまく通過……国会承認を得なかつたという場合にはどうなるのだという御質問であつたかと思うのですが、私は今日の状況では、そういう場合もあり得るのじやなかろうかと、御質問者の御懸念の通り私もありはしないかと思うのでございます。と申しますのは、国会予算審議を含め、とにかく国権の最高機関でございますから、何物を以てしてもこれを拘束したり制限したりすることはできない、或いはすべきものではないと思います。だからそういうことはあり得ると私も思います。併しそれを予想いたしまして先ほど私は自分の意見を述べたのでございますが、併し万一そのような事態がここに発生をいたしましたということになりますと、そこで問題は、これは組合の案を参考にこのあとに響いて頂きまして、そこを私も見ましてそこに現われておる意見でございますが、一度或る期の国会でうまく行かなかつたらやはり債権債務が残つておるのだから、政府としては次期国会に改めて又その予算上、資金上の措置国会に対してとる、そこでいけなかつたら又とるといつたような、何何でもとにかくその債権債務関係をうまく処理するためには、政府としては一度の国会でいけなければ次期の国会というような工合義務付けられる、こういうような方法が一つ考えられるのでございますが、併しこれは国の政治なり、国会の運営からいうと、必ずしもこういう工合にしてやることに私は賛成はしかねるのでございます。我々は民主主義の政治から言えば、そういうことを何回もやらなければならんというほど、これは無札千万な話はないのでございまして、やはり一度の国会で十分な密蔵を以ておやり下さることを我々としては期待しておるものであります。併しそれは万一予測せられる事態は、それは経済上、産業上いろいろな理由でどうもこれはむずかしいということで否決される場合があると思いますが、併しそれは否決されないで、実はそこはまあ非常にむずかしいと考えますが、下手すると言い方の如何により、又考え方の如何によつては、仲裁裁定が、結局に、面接ではございませんが、間接にしろ国会審議権を制限したりするとかいうような工合考えられては困るのでございますが、併しそうではなくて、私はやはりそれらを国会が正直に言つてスムースに活かして頂くというように実は政治を持つて行かないと、折角公労法仲裁委員会ができても何んにもならないということになる。そこで私はそれでは国会のほうで仲裁委員会の意義を活かして頂くということになりますと、今度は、併し場合によつては率直な話が、これはどうも今の実情上因るのだということかあつても我慢してこれは国会で呑んで頂く、併し客観的に言つて呑んで頂いたが、こういう内容の裁定では困る、国の全体の状況から言つて非常に困るということになりますと、次に問題は、そういう裁定を下した委員会に対して、その点で国会に不信任的空気があつたというような事態がそこに私は出ると思う、無理に呑まされたということになれば……。そうすれば現在の仲裁委員会の機構なり何んなりに対してこれを改める必要がある。もつと国会として信頼の赴ける、或いは政府として信頼の置ける仲裁委員会なり何んなりをこしらえるということにして、そうしてそこで十分満足が行ける機構なり、状態なりがあれば、そこで出されたものは、これは無條件で呑んで行くということは、ちよつと先ほど申上げましたように、何んですが、やはり政治として、民主主義政治としては私は呑んで頂くような工合に運ばるべきではなかろうかと思います。従いまして原委員の御賛同のようた御懸念も私は実は持つておるのでございますが、併しこういう懸念が事実問題として出て来るということはあり得ることだと思いますが、若し万一出たとすれば、私は日本の民主主義政治、殊に国会政治というものの将来に対しては、そういうことがぼつぼつ出て来たのでは非常にむしろ歎かわしいと考えるのであります。従いまして、そういう歎かわしい事態の発生しないように一ついろいろな方面の御改正々、そういう懸念が大きければ大きいだけに御改正を考慮願いたいと思つて実は先ほどいろいろ発言をいたしましたような次第でございます。
  21. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 もう一つお尋ねいたしたいのですが、実は峰村先生でしたか、政府公社衣一体だとお考えになつておるお考えですね、実は私共は裁定そのものの効力は、両当事者間に労働協約で締結されたと同一の効力が発生するということも考えて、結局三十五條但書を取つたと申上げたのですが、それと同時に十六條を御覧願いますと、協定又は裁定は、それに記載された日附を以て履行の開始日とする。という非常に重大な法文にないような、まだ未熟で私どう考えたらいいかと思うような文句もありますが、これは従来は、それに記載された日附に遡つて効力を発生するというので、効力そのものの発生に、履行の問題でなしに、債権債務の発生そのものは停止條件か、解除條件か、解除條件というのは、少しこれは増田君も変な解釈をされて、これはやめたはずでありますが、いずれにしても効力が停止條件なのかという問題があつたわけでありますが、それをわざわざ履行と、効力の問題に関係なしに履行という文字を使つたわけでございますが、併しいずれにいたしましても政府そのものは直ちに裁定によつて拘束するのでないのだ、併し公労法の第一條の第二項には、「この法律で定める手続関與する関係者は、」ということがあるのでございます、「経済的紛争をできるだけ防止し、且つ、主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を盡さなければならない。」こういう文句があるのでございます。私共はこの規定によると、これは全体立法論としては、確かに藤林先生の言われるように、公労法自体に余り出ていないという御議論もあるのですが、そういう観点から一般の労組法、労調法の関係を原則的にできるだけ取入れろ、こういう御議論も出ると思うのでありますか、ともかくも一般的な解釈の必要なことも認めますが、それを別にして、最小限度必要なときと申しますると、この二項によつて政府は少くとも努力をしなければならない。政府はその点についての法律上の義務は免れない。そうすると、十六條でございますね、少くともそういうものについて予算を出して承認を求めることをしなくちやいけないし、それも五日とか十日という期間は貰わなくちやいけない。こういうふうに考えてはいるんでございますが、むしろ実は証人としてお話になりましたような、この政府公共企業体と一緒になつて、同一の拘束を受けるのだというふうな御意見なんでございましようか、その点についてもう少し御意見を拝聴いたしたいと思います。
  22. 峰村光郎

    証人峰村光郎君) 私は最初に申上げましたように、本当は政府という言葉かここに出て来るのは、十六條に政府と言わなくても、当然経済的紛争をできるだけ防止するために関係者が努力するということは、今御指摘の一條第二項にございますが、本来ならば、最初戒能教授が言われたように、この政府という言葉が、ここでしつくりした用語のようには考えなかつたのでございますが、原案の御起草の御趣旨をずつと伺つて参りますと、そうすると私は政府並びに公社は、というふうな意味を簡略に政府と、まさか政府だけが経済的紛争を解決するに適当な努力をすればいいということを言つておるのでなく、当事者は当然協定なり仲裁なりの拘束力を受けますから、入つて来るのじやないか、そういうふうに考えたものですから、私はこの政府を恐らく政府並びに公社は、と、こういうふうに読んで行つて差支えはないのじやないか。それは公社なんというのは入れなくても当然だろうということになると、それでもいいと思います。若しも公社は入れたつて予算措置をする、手続きをする権限がないじやないか。そういうことを政府にさせる義務は十分公社側にもある、そういう意味で私は先ほど大ざつぱに政府イコール公社というふうにこう考えたものですから、実は要ると申上げたのはそんなふうな考え方からでございまして、お話はよくわかりますが、私の申上げた点は大体そういうふうに考えております。
  23. 藤林敬三

    証人藤林敬三君) 今日我々はここへ呼ばれましたから、趣旨から言うと私の方から質問をしては非常に合わないようでございますが、それを一つだけこの條分の改正案関係があるので……。
  24. 赤松常子

    委員長赤松常子君) どうぞ。
  25. 藤林敬三

    証人藤林敬三君) この十六條に、「協定又は裁定については、」と書いてございますが、この協定というのがどういうものを意味されるのか。これは現行法もございますが、改正のほうは、「又は裁定に」という言葉をお入れになつたのでございまして、裁定のほうはわかりますが、協定というのはどういう…私が質問をいたしますゆえんは、実は私は調停関係でございまして、実は争議権はないし、調停案は法的拘束力はなし、それから予算上、資金上の問題については、いろいろ金縛りの状態にある。御承知の通り私は嘗てこの二月の初めに調停はできぬというので打切をやつたのも、そういう状態では非常に困るということでございます。併しここに書いてある協定という言葉が、仮に調停案を出した際に、その調停案は非常に満足なものであると労使双方でお考え下すつて、調停はすぐそれを以て労使間の協定書と仮にするというふうなことが、これはまあ労使関係の、民間などで言えば大概普通のことでございますが、そういうふうな事態を公共企業体の場合に考えでのこれは協定ということでございますか、その点を実はお伺いしたい。
  26. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 要するに従来とも協定は、労働協約乃至は労働協約よりも公共企業体労働組合ときめましたものという意味で、労働協約だけだという意味でもないということは御承知の通りだと思います。従つて協定と書いておる中に、裁定も入るのだということも又そこに考え方一つあるのですね。ですから協定と裁定は別個に書かなくてもいいじやないか、こういう議論もあるのであります。併し少くとも先ほど十七條改正して、仲裁の効力に対して争議権裏付け、制限的な争議権裏付けというものを考えろという工合お話もあるのでありますが、ともかくも裁定というものは、争議権を奪つた代償だと考えられるのが、この公共企業体裁定の特質だと私は思うのでございますが、そういう意味裁定一つ取上げて置くほうがはつきりするのじやなかろうか、こういう意味において裁定一つ別個に取上げて書きました次第なんです。その協定について、今御例示の要するに調停案が提示されて、公社側とそうして組合側とが不満足だと蹴つた場合までは考えておりませんが、例えば専売の場合のごとく、公社も或いは組合も呑もうという気があつてできたものだつたら当然入つて来るわけですね。ただそれが公社側に呑めないという理由が、先ほど藤林証人の御指摘のように、場合によると財政法政府が裏におつて拘束するために呑めないという場合も事実問題としては起り得る。それからそういう公社法改正そのものが先だという御議論の理由はわかるのであります。わかりますが、と同町に公社側が呑んでしまえば政府予算措置をしなければならんということになることも今度はつきりするのじやなかろうか、こういう考え方であります
  27. 藤林敬三

    証人藤林敬三君) 大変そういう御意見を伺いまして……
  28. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 但し労働委員会の公定された解釈ではございませんので、打明けた話を申上げますと、起草者の一員の考え方はこうである申上げたのです。
  29. 藤林敬三

    証人藤林敬三君) 私は「又は裁定」という言葉をお入れになつたことにつきましては、今堀木委員の御説明でよくわかりましたが、私も問題自体を非常にはつきりさすという意味でこれは賛成でございます。ただあえて理窟を言えば、この頃実は協定というのはどのようにできて来るかということについてはいろいろな場合がある。実はこうお書きになつたことに対しても、私は実はこう考えていたのでございます。従来は裁定云々と書いてございませんから、事態が変なことになつたとも考えられるのですが、併し常識的に考えましても、仲裁裁定労使双方拘束する、拘束されると労使双方は、仲裁裁定裁定でございますから、労使双方関係としては、労使双方仲裁裁定の文言通りの協定をお結びになつたか、或いはその仲裁裁定の原則、そこでできた債権債務そのものを侵さない限りにおいて、多少これに尾鰭をつけた協定をお結びになるということは、私はあり得るじやないか、だから協定という意味はそうしても出て来ることでもあるし、それから又私が先ほど申しましたように、調停案を双方が御受講になつて、調停案通りの協定をお結びになつた。多少これに尾鰭をくつつけて調停案とされるということがあり得るのじやないか、その場合に私のほうから希望的意見を申しますと、この十六條の協定という中で、現行法の場合もそうでございますが、改正の場合にも特に調停案によつてそのような工合労使双方が呑んだら、その場合に政府予算止め措置国会に対してしなければなちんという義務を実は発生さして頂きたい。そうすることによつて公共企業体公共企業体としての独自の存在を示し得るというように私は考えるのであります。是非そういう解釈が一般に通るようになるように努力をお願いしたいと存ずる次第であります。
  30. 中村正雄

    ○中村正雄君 今堀木さんから御説明つたように、附言して申しますと、この十六條に裁定という言葉を入れたこと、三十五條の場合は、十六條を引用いたしておりますので、当然裁定と呼び換えておるわけですけれども、これは疑義を生ずる余地のないように入れたというわけで、前と全然変つているわけじやないのです。  それからもう一つ調停の場合でありますが、十六條は十五條を受けてできておる條文でありますので、前の條文と同じように協定という言葉を使つておるけれども、労使双方が受諾する調停案は、当然これは協定と同じ内容になるわけですから、その場合も含まれると私は誰が考えても間違ない解釈だと思つております。
  31. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 藤林証人にお聞きいたしますが、今の文でも、協定の場合に調停案を労使双方が呑んだならば、当然出さなくちやいけないのでございましようか。あと政府が綱を引張つてつて呑ませないという行為があることは認められますが、呑んではんこを押しちやつた以上は、今の問題でも当然政府措置する義務があると、こう思うのでございますがね。
  32. 藤林敬三

    証人藤林敬三君) 私は実は今回ここに呼ばれますまで、非常に迂闊なことでございますが、公労法現行法の十六條の協定という文句は、これがどうであるかということを余り考えておりませんでした。これはいわゆる改正案で、協定又は裁定について云々というようになつたときに、私は協定又は裁定という言葉を入れるということがどういうことになるかということでいろいろ考えましたあげく、そういうところの考え方がはつきりいたしました。非常に迂闊なことでありますが、それを率直に申上げたのであります。併しながら私がこういう関係者でありながら、そういう点が迂闊であつたことは誠に申訳ないのでございますが、私だから迂闊であつたので外の人は知つてつたのだと言われるとそうであるかも知れませんが、私のような例もなきにしもあらずでありますので、公労法解釈をはつきりそういう工合にしで頂くことによつて、成るほど問題はここだけで幾ら解釈をはつきりさして見たところで解決しないことは御説の通りであります。  そこで十六條の協定の意味、それに続く政府云々というところに引つかかつたのだという、政府義務との関連をはつきりして頂くと同時に、こういう事実がスムースに行くように公共企業体條文を変えて頂くとか、或いは政府財政法改正方向へ問題を発展さして頂くとか、大蔵大臣運輸大臣国鉄総裁との間の予算上、資金上の問題の関係をどうするとか、国鉄予算の中のいろいろな操作をどうするというところにまでお考え一つ及ぼしで頂くように是非して頂きたいと思うのであります。そういうのも、やはり基礎は十六條の公労法の協定の解釈はこれこれだということをはつきりさせることによつて、それから逆に推して頂くようにお願いしたいと思います。
  33. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 もう一つお聞きしたいのですが、戒能先生、フアンズと書いてあるのでありますね。これは「ザ・エクスペソデイチユアー・オブ・フアソズ・ノツト・アペイラブル・フローム・ザ・アプロープリエーテツド・コーポレーシヨン・バジエツト・オアー・アベイラブル・コーポレーシヨン・フアンズ・」、こう書いてあるのでありますが、これは現今のやりくりもそうだと思うのでありますが、現金のやりくりだけでございましようか。或いは予算して例えは基金のきまる場合、運用資金でございますか、そういうもののきまる場合もあるのでありますね。そうい6年額幾らという金がきまりますと、そういうものも両方含まないのでありましようか
  34. 戒能通孝

    証人戒能通孝君) 私英文読みましてブラック・デイクシヨナリーを引いて見たらフアンドとフアンズとの間に多少差があるらしいことを発見いたしたのであります。フアンドと申しますと基金とか資本金とかいう言葉に使つておるようであります。フアンズと言いますとマネー・イン・フアンドとかキャッシュとかいうような言葉が出ておりまして、外に公債基金みたいなこともフアンズと申すようであります。とにかく複数形の形になりますと一番先のところへ持つて来まして現金というような形で出て来ておりますので、予算があつても現今がなくて、そこで借入金が必要だと、それに対して国会の同意が必要だという、そういうようなことが起つて来たときも考慮されると、そういう英文になつておるように私読んだのでございます。こういうふうに例えば現行十六條におきましても同じような問題が出て来るのでありますが、予算があつても併し現金がないので借入金をしなければならない、そこでそれを国会承認を求めるために出したということになると、国会が否認しますと、現今がないので抑えないということになつて来ると思います。現金ができればこれは当然拂つてもいい、拂わなければならんお金であるというふうに読むのが正しいのじやないかと思うのであります。言い換えるならば、公社国会承認を得ることができませんというと、時効にかかつた債務のような一種の自然債務を負担しておるのであります。そして支拂の責任はないけれども、とにかく債務は負担しておる。従つて支拂の責任が発生するような事態が新しく出て来た場合に、支拂の責任を現実に負担しなくてはならない趣旨に私読んでいいのではないかと解釈したのであります。ところがこの前の公労法の訴訟事件におきます政府側の準備証拠におきまして、この資金上という言葉を可なり特殊なように解釈していたように私思うのでありますが、この特殊な意味解釈することは、日本語の上では可能であると思いますが、英文として提出されたものから見ますと、余り特殊々解釈をしてはいけないのではなかろうか、非常に素直に読んで先ほど命繰りと申しましたのは、少し言葉が悪うございましたけれども、もつと素直に読んで政府に金があるときとか、政府に命がないときとか、そんなような素直な気持で読むのが正しいのじやないかと、こう思うのであります。ちよつとお答えにならなかつたかも知れませんが、私の気が付きました点ではさようなことでございます。
  35. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 大体手持資金というのが一番よく現わすのでございますか。
  36. 戒能通孝

    証人戒能通孝君) 多分そんなことじやないかと存じましたです。
  37. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 他に御質問ございませんでしようか。それでは一応質問を終了いたしたと見てよろしうございますか。    〔「異議なしと呼ぶ者あり」〕
  38. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では各証人の皆様にはお忙がしい中を御出席頂きまして、公労法改正に資する有益な御意見をお聞かせ下さいましたことを厚く御礼申上げます。  では今日の委員会はこれで散会いたします。    午前十一時四十一分散会  出席者は左の通り。    委員長     赤松 常子君    理事            一松 政二君            原  虎一君    委員            城  義臣君            中村 正雄君            山花 秀雄君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   証人    国鉄中央調停委    員長      藤林 敬三君    早稲田大学教授 戒能 通孝君    慶応義塾大学教    授       峰村 光郎君 昭和二十五年十月二十一日(土曜日)会議録第四号一頁一段の三十行より末行までを次の通り追加訂正する。
  39. 戒能通孝

    ○證人(戒能通孝君) 公労法改正参考案というものを拝見しまして、御趣旨は大変結構でございます。私としては基本的な点におきましては勿論賛成いたします。この賛成理由につきましては、頂きました関係資料第七集の二十六ページ以下に中村委員の御説明がございました。この御説明に対して、私も全般的に賛成し、且つ敬意を表するものであります。だが、正直に申しましてこの改正参考案というふうなものは、これは少しく読んで分り難い点があるのじやないかという感じがいたすのでございます。私共読みましても分りません点が、はつきりいたさない点があるわけでございます。こういう労働関係法の本質というものは、労働春の方々に一目瞭然で明瞭に分るということが望ましいのではないかと思いますので、その点におき幸して御趣旨がもう少しはつきりした形で出して頂ければ尚ありがたいのではないかと考えたわけでございます。頂きました関係資料の第七集に第一案と第二案なる二つが載つておりまして、第一案の方を拝見いたしまして、これにもう少し言葉を加えて頂くならばもつと分り易くなつて来るのではないかという感を私は持つたわけでございます。  第一案の第十六峰の方について見ますると、公共企業体予算上文は資金上不可能な云々というのがございます。この資金上という言葉は恐らく金繰り上というふうに言う方がより正当じやないかと考えておるのでございます。というのは、現行公労法の第十六條の英文の方を見てみますとる、この資金という言葉はフアンズと現わされておるわけでございます。英語の辞書を開いてみましたところが、ファンドというのは基金という意味にとつていいようでございます。併しフアンズという複数形をとつている場合には、現金とか手持ちの現金とかいうふうな訳が付いておるわけでございます。ですから全繰り上というふうな意味じやないかという感じがいたしますので、この点もう少し何か適当な言葉をここにお当て下さることがより英訳に近いことになりはしないかと思うわけでございます。  それから第二番目の点は、第一案の第十六條の第一項でございますが、お終いの方……、又そのような協定又は裁定に基いて如何なる資金と雖も支出してはならないという文字のところに持つて来て、又はそのような裁定に基いて政府は如何なる資金と雖もというふうに、「政府は」という言葉を入れた方がより明瞭という感じがいたすわけでございます。これに基きまして裁定若しくは協定は、これは一応私としては公社拘束するものなのじやないか、ただ併し公社予算上若しくは公社の金繰り上、どうしても政府の援助を受けなければ出せない場合に、政府が自分の力だけで援助し得たときには、国会承認を得てそうして援助しなければならないのでありますが、この点が明瞭にされていないのではないかという感じを持つたのでございまして、大分余計なことを申上げて恐縮でございましたけれども、私としては御精神は非常に賛成いたすのでございますが、より明瞭な言葉がこの場合に作られて頂くことを切望いたすものでございます。
  40. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 委員長にお聴きしますが、一案、二案というのはどれでございますか、何かそういうものが出ておるのでございますか
  41. 戒能通孝

    ○證人(戒能通孝君) この参考案については発言を取消させて頂きます。
  42. 磯部巌

    ○専門員(磯部巌君) お願いします。
  43. 戒能通孝

    ○證人(戒能通孝君) 御趣旨は非常に賛成いたしますが、もう少し明瞭な言葉で御趣旨を表して頂くことを切望いたすわけでございます。