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1950-10-20 第8回国会 参議院 労働委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月二十日(金曜日)    午前十時二十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○公共企業体労働関係法改正に関す  る調査の件 (右の件に関し証人証言あり)   —————————————
  2. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では大変お待たせ申上げました。只今から本日の委員会開会いたしますが、本日は公共企業体労働関係法改正に関します問題につきまして、それぞれ各專門の立場においでになります方々の御意見を伺いまして、それを参考にいたすわけでございます。只今から各証人のかたの御意見を順次お伺いすることにいたしますが、ちよつと証人方々に申上げますが、証言をなされる前に、参議院規則の第百八十五條により一応御宣誓をお願いいたしたいと思います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕     宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 荒井誠一郎         証人 星加  要         証人 平林  剛         証人 小林 直人         証人 関口  泰         証人 今井 一男         証人 加賀山之雄         証人 秋山孝之輔
  3. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それから時間でございますが、午前中に四人お伺いすることに一応予定をいたしております。それでお一人の御発言の時間を大体どういうふうにいたしましようか、二十分前後といたしまして、ちよつとお書過ぎるわけでございますので、そういうふうに時間のことを計らつてよろしゆうございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では証人のかたに申上げますが、大体二十分前後のお時間でおつしやつて頂きたいと存じます。  それでは公共企業体仲裁委員長荒井誠一郎氏にお願いいたします。
  5. 荒井誠一郎

    証人荒井誠一郎君) 公労法改正参考案についての意見を述べろということでございますので、意見を申述べます前に一言お断り申上げて置きますことは、仲裁委員長という御指名でありますが、仲裁委員会委員間におきましてこれについて別に打合せはいたしておらないのであります。それは個個の委員をお呼び出しいたすとのことでありますので、却つて打合せをせず個々にその專門の知識、又経験に基いて意見を申上げたほうが適当かと思つてかくいたした次第であります。従いまして委員長意見ということでありませんで、委員長たる荒井誠一郎意見というようにお聞取りを願いたいと思うのであります。  公労法改正参考案をお示しがありました十六條並びに第三十五條改正でありまするが、私といたしましては、この改正仲裁裁定履行を確実ならしめる一つの方法であると考えますので、趣旨において適当であると考えるのであります。勿論この條文につきまして尚研究を要する点があると思いまするが、技術的にはもう一応御研究を願う点があるかと思います。それから趣旨において適当ではなかろうか、こう考えております。国会において御審議になる際に、これに必要なる措置が提案されますれば、国会審議の上においても便宜も多いことと思いますので、この意味において極めて適当であると思います。ただ私この本案に直接の関係ではありませんが、この改正の実行について極めて密接の関係のあることについて一言申述べて置きたいと存じます。それは従来仲裁裁定が実行困難に陥つたその理由にはいろいろございます。十六條、三十五條関係もありますですが、これは実際上の問題といたしまして、勿論履行についての財源等関係も考慮されるのでありまするが、併し最も重視されたことは、恐らくは公務員との給與等に関する権衡の問題であると存じます。公共企業体職員給與等は、これは公共企業体自身の性格に基きまして決定すべきであつて公務員等とは別の関係にあるということは、仲裁裁定においてもしばしば述べられておるところでありまして、又国会における質疑応答においてもそれが明らかにされておると思うのであります。併しながら同じ政府公共企業職員でありまして、公共企業体職員である者もあります。御承知の通り国鉄専売職員、これが五十数万人あります。その外に公共企業職員でありまして公共企業体でない職員、これが四十数万人あると思います。郵便、電信、電話だけでも四十万人という数に上つておるのであります。公共企業体職員給與が特別なものであるといたしましても、同じ政府公共企業に従事する者でありまして、公共企業体職員にはなつておらず、公務員法の適用を受けまして公務員として活動いたしております者がありますれば、これの権衡政府において考えるということも又当然のことのようにも思うのであります。事実問題としてさようになると考えられるのであります。これが延いては一般公務員というものとの関係影響をいたしておるのでありまして、これらの関係から理論上においては、公共企業体職員給與は別のものであると、これが明らかに現われるにしましても、実際の問題としまして権衡問題が次に論ぜられるのではないかと思われるのであります。そこでこれは他の審議会等においても議論されておるのでありますが、やはり公共企業職員全部につきまして、或る特殊の体系によりまして一般の行政にあずかつておりまする政府職員とは別のものである、こういたしましてその間の権衡がとれるようになりますれば、国鉄専売等公共企業体職員労働條件改善等につきまして、他の公共企業職員と同様に扱われまして、これらが各企業体の実態に基いて労働條件を改善して行くということが行われれば、公共企業体全体として労働問題の解決に役立つばかりでなく、公共企業体労働條件改善等についてその解決が容易になるのではないかと思うのであります。  こういう十六條、三十五條改正、これは結構でありますが、併しこれを実行するにつきましておのずからその前提というものがあるかと考えますので、これらの前提につきまして、できるだけ公労法趣旨が達成せられるような方法に向うことが必要であるかと思うのでありますが、こういう法案の御審議の際に、国会委員会におきましてそういう点にも御配慮を願いますれば大変都合がいいのではなかろうかと平素考えておるのでありますが、丁度この機会に私の意見を述べさして頂いた次第でございます。
  6. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 皆さんのほうにお諮りいたしますが、質問はどういたしましようか、お一人お一人が済んでからにいたしましようか、まとめてあとからにいたしましようか。
  7. 中村正雄

    中村正雄君 一応証人証言終つてから一括してやつたら如何ですか。
  8. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでよろしゆうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは次に国鉄労働組合委員長星加要氏にお願いいたします。
  10. 星加要

    証人星加要君) 只今指名をされました国鉄労働組合委員長星加要でございます。公労法改正につきまして、当労働委員会におきまして過去の実績に鑑みこれの改正を図られておるということにつきましては、我々といたしまして感謝に堪えないところであります。国鉄労働組合が、公共企業体労働関係法によつて労資関係を律せられるようになつて参りましたが、この際重要な問題は、そのために我々は争議権を放棄しなければならないという、労働組合からいたしますならば、重大な問題に逢着したわけであります。それは公共企業体労働関係法第十七條において、あらゆる争議行為というものは禁止され、且つ十八條におきましては、それに伴うところの罰則がつけられておるのであります。従いまして我々は事実上、労働組合運動大衆運動であり、且つは合法的な運動である限りにおいて、事実上におきまして争議行為というものが禁止をされた、法樺を以て禁止をされたという現実になつております。併しながらこれを諸外国に例を取つて見ますのに、最も模範とせられましたところの、米国におけるTVA模範としまして日本公共企業体というものを考え、且つは公共企業体労働関係法を作つたわけでありますが、併し米国公共企業体、即ちTVAにおきましては、この労働関係法という法律がありません。ただ労使間において協約を結んでおるのであります。その協約が有効である限り、労働組合側としては賃金その他労働條件に関する交渉がうまく行くから、それを理由として争議等は行わないという相互の紳士協約になつておる。それは双方を満足せしめるところの協約が存在する限りにおいてそういうことをやらないということになつておる点が、精神上大いに異なつておると考えられるのであります。これは労使間の問題につきましての本質というものは、やはり実質的解決に俟つというところに重きを置かれておるので、日本公共企業体労働関係法というものとの感覚の相違というものが大いに異なつておるのではなかろうかと考える。で、我々といたしましても、将来におきまして公共企業体労働関係法改正という点は、この点にまで延びて行くべきであろうと考えられる次第であります。併しながらこれは労働組合自体の問題並びにその他の客観情勢等が勘案されるところが大きいのでありますから、今日において可及的に最もこの公共企業体労働関係法の障害となつておるような條文を、これを改正して行くという点につきましては異論のない点であります。その点、本委員会が十六條と三十五條改正を先ず取上げられたということにつきましては、我々といたしまして異存のないところであります。で、その趣旨におきましては我々は賛成であります。これは私共の経験に徴しまして、第一回の仲裁裁定を受取りましたが、その経験よりますと、やはり第十六條において、予算上、資金上不可能な協定内容については、政府が拘束されるものではないという、この文章のために誠意ある取扱政府がしなかつたように考える。それは必要な予算をつけて国会に諮るということをしなかつた。そういうことのために国鉄労働組合ごときは、民主的な組合運動として仲裁裁定によるところの手段を以て公労法従つて労使間の紛争解決したいという念願に燃えて、第一回の裁定を実施されることを念願し、いろいろの運動もいたしました。又組合員は、約千名に上りますが、これが全国におきましてハンガー・ストライキを行なつて政府の反省を促し、輿論の喚起に努めたのであります。当時におけるところの輿論を代表しました新聞論調その他において、公労法裁定に対するところの政府並びに運輸当局が用いる最後点等が明らかにされまして、やはり公労法の文句の上において多少の逃げ途があるから、それに藉口して誠意のない態度を示すのではないかというふうに、輿論組合側態度を支持したと私は考えております。今回の改正案につきましては、この重要なポイントであるところの不可能な資金支出を内とする協定について、政府はこれを履行さすために予算上、資金上必要な手続国会に対してするというふうに明白に、この趣旨を明文化されたという点につきまして、これは今後公共企業体労働関係法が真に立法の趣旨に副うところの法律になるのではないかと考えまして、我々としても是非ともこのような改正が実現するよう希望しておる次第であります。  次に労働組合側として尚考えておりますことは、国会承認が得られなかつたときは、次の国会において、第十六條で定めたような手続を再びとつて貰いたいという意思を持つております。それでこの第十六條改正案そのままで行きますと、先ず国会にこのようにして提出するのだという一回限りの措置が書かれております。けれどもその国会に上程される時期その他におきまして、現実の問題は継続審議ということがなされておるのであります。従いまして継続審議等に対しましても、れは必要止むを得ざる限り継続審議ということは避けるべきである、その国会において速やかに結論を出すべきであると思いますが、併し裁定というものがいつの時期において出されるかも知れない。又過去の事実に徴しましても、継続審議という事実もあつたわけであります。国鉄の第二次裁定のごときは、第七国会継続審議、第八臨時国会で又継続審議、来たるべき、予想されております第九臨時国会で第二次裁定の問題の結論が出ようとしております。こういうふうな取扱はまずいということは当然のことであつて、これは引延ばしということになつておるのではなかろうかと考えます。又止むを得ざる事情も多少はある。けれどもこういうふうにしないということは本旨であるのと同時に、裁定が出されるという時期が国会終了直前であつて、そうして審議未了に終るというふうなことも又なきに上もあらずと考えられますので、継続審議については、任意に国会において御決定になつておるようであります。従いまして国会開会の時期或いは仲裁裁定の出る時期、或いは国会におけるところの真に止むを得ざるところの理由等によりまして、その裁定がどのようになるのかという点の明文も或いは必要ではなかろうかと考えておりまして、国鉄労組並びに専売労組等公共企業体労働組合においては、国会承認が得られなかつたときは、次期の国会に第一項の定めるところに従い重ねて承認を求めなければならないという但書を付けたいという考えであります。  次に我々といたしましても、公共企業体労働関係職員というものが世の中から孤立してあるものではないという点はよくわかつておりますので、民間賃金或いは公務員との関係というものを考慮されねばならないということは当然であります。併しながら民間賃金と、それから国家公務員の貸金との関連ということがあるということは当然であるけれども、従つて公共企業体労働者賃金というもの、或いは大きく言いまして労働関係というものの特異性というものが全然なくてよいかどうかという点になりますと、やはりそれぞれの特異性というものが生かされて然るべきであります。それで公共企業体においては仲裁裁定というものを以て最後の判定とし、その裁定に従うことを以て労使関係の平和を保つて公共企業体としての公共性を一〇〇%に発揮しようとするものでありますから、この仲裁裁定という特異性を無視することは、公務員との関係若しくは民間との関係等を如何に考慮してもそれは当らないのではないかと私共は考えております。従いまして公共企業体労働関係一般性公務員との関係若しくは民間との関係ということほ考えられても、仲裁裁定というものに対しては、それが公共企業体であるところの特質であるから、これを曲げるための要素とはならないのであるという点をはつきりさせて頂きたいと考える次第であります。尚公務員との関連ということは、企業性質上余ほど民間労働者労働條件よりも密接であるように考えられます。併し公務員関係におきましては、人事院というものがありまして、人事院によるところの勧告が政府においてなされる。それが公務員特色であります。人事院がこの公共企業体労働関係労働條件をも勘案して、そうして国家公務員のことをやるべきである。又公共企業体においてもこれは公務員のことを考えるとしましても、それはそのほうで処置がつけられる。我々のほうとしては、法律に定めるところによるところの特色を生かして仲裁裁定というものが行われる、それが実施をされて行くという点に、真に各方面の條件を考慮しつつ、尚且つその法律によつて労働関係を律して行こうとする趣旨が生きて来るということを信じて疑いません。  従いまして第十六條並び関連をいたします第三十五條改正に対しましては、我々として満腔の敬意を表しこれに賛成をする次第であります。同時に若しお考えを願うならば、若し国会において承認が得られなかつたときには次の国会においても尚これが審議をされるのである。この点は先に御説明申上げましたように、時期その他の問題、或いは一応の理由等によつて、これが次の国会においてもやられなければならないという必要もあるわけでありますから、成文上の問題は法律專門家のほうにおいてお考えを願いまして、そういう趣旨が生きるとするならば生かして頂きたいというのが私の考えであります。
  11. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では次に、全専売労働組合執行委員長平林剛氏にお願いいたします。
  12. 平林剛

    証人平林剛君) 私が専売労働組合中央執行委員長平林であります。公共企業体労働関係法改正参考案について意見を求められましだが、私兵はこの公共企業体労働関係法については、かねがね主張して参りましたように、余りよい法律ではないと思つておるわけであります。ただこの参議院労働委員会におきまして、とにかくこの公共企業体労働関係法を少しずつ改正をして行こうという傾向や、その御努力に対しては誠に賛成をいたすところであります。私共は公共企業体労働関係法というものが。そもそも第一條に掲げられておりますように、本当公共の利益を擁護し、真に労働者保護法になつておるかどうかについて非常な疑問を持つておるわけです。公共企業体労働関係法の中にいろいろ矛盾に満ちたものが多くあるように思います。煙草を作つておる専売事業のようなものが、これから罷業権を取り、団体交渉を制限しているようなこの法律が、それが公共福祉を擁護している、或いは煙草のような嗜好品についてただ税金をたくさん取つておるから、その税金関係労働者の基本的な権利である罷業権まで取つてしまうというような法律は、どうも私共賛成し難いものであつたわけです。特に私共の基本的な権利であつた争議権を奪う代りに、調停仲裁という機関を設けた、だからこれをうまく運営して行けばそれに代るものになるだろう、こういうような御趣旨のように見えますが、私共の今までの体験からいたしますと、まだその運営はうまく行かないので、法律そのものに根本的な欠陥があるのか、それは今後に待たなければならぬと思いますか。とにかく我々の経済的労働條件を保護するための法律だというふうに今もつで考えるわけには行かないのであります。だから適当な機会に私はこの公共企業体労働関係法が制定をされました当時に遡つて一つ全面的な検討を額つて、そしてこれが真に公共福祉を擁護し、労働者権利を擁護する法律に書き改めて貰いたいと考えておるわけであります。  今回労働委員会において御決定になりました法第十六條の改正と三十五條につきまして私共の意見を申上げますと、この法第十六條が、改正参考法案通り改正をされましても、私はそれだけでは本当意味改正にはならないと考えておるわけであります。現行の第十六條第二項にあります。「前項の協定をしたときは、政府は、その締結後十日以内に、これを国会に付議して、その承認を求めなければならない。」これはこの現行解釈からだけでも、私はこの間起きましたように、政府裁定に対して承認であるだか不承認であるだかわからないような国会への提出の仕方をするという解釈が生れて来ないように思うわけであります。現行解釈から行きましても、政府裁定承認を求めるための措置国会にとることは当然であると考えております。我々の理解する限り、この裁定というものは、当事者双方最後決定として服従することになつておるのでありますから、法の第一條第二項にも明確に書いてありますように、この法律で定める手続に関與する関係者は最大限の努力をせよと、こういうふうに書いてあるのでありますから、私は昨年における国鉄裁定や、本年における専売裁定とつ政府態度は、今でも誤りがあつたのではないかと思うのです。若し誤りでないとすれば、重大な、法の趣旨から言つて矛盾を犯しておるように思います。こういう意味で今の法でも正しく解釈さえして頂ければ差支えなかつたものではないかと思うのでありますが、併し前回の経験に鑑みて、政府はその履行のためというふうに明確な義務を挿入するということで、曾つてのようなあいまいな態度をとつて貰わない、こういう意味であるならば、公労法趣旨のように余計な紛争はなくなるために、私はそういう意味で今回の改正参考案は反対する理由がないと思うわけであります。併しそれだまでは本当意味改正にならないのではないか、こう考えますのは、この公企労法と裏はらの関係にあります予算総則日本専売公社法改正が考慮されておらないように見えるからであります。法第十六條にあります予算上、資金上不可能な支出内容とする協定又は裁定、こういうものは主として賃金問題が多いと思います。この場合昭和二十五年の政府機関予算の中にあります予算総則というものと、それから日本専売公社法の中の第五章の会計の條章の存在というものは、労働組合賃金に関する団体交渉を、実質的に骨抜きにしておるように思うのであります。私共の体験といたしまして、賃金に関する団体交渉を何回か続けて参りましたけれども、或る場合には全く無意味なような感じをいたして参りました。或る場合にはナンセンスを感ずるような場合もあつたわけであります。私はこの中にあります予算上、資金上不可能な支出内容とする裁定というものは、仮に今後あるといたしましても、少くとも予算上、資金上不可能な支出内容とする協定というものは、全く現在のままではあり得ないと、こういうふうにさえ考えておるわけであります。予算総則の中には、特に私共の賃金を、何んでもいわゆる給與と名のつくものは一切合財ひつくるめて三十六億六千四百万円というふうに規定をしております。このために、私共は一般的に、もう三十六億六千四百万円以上の賃金に関する交渉は無駄じやないか、こういうような印象を與えておりますし、事実組合員の多くは、もうそう考えて私共が賃金交渉を起すにいたしましても、半分以上は諦めておるわけであります。いつか又棚からぼた餅が落ちて来たら何んとかなるだろうという気持で、賃金に関する団体交渉の意欲なんというものはすつかり消えてしまつておると言つてもいいと思うわけです。それから大体国家予算というものは、もう今から来年のことを編成をしておりますように、こういう予算総則がありますと、実質的には我々の賃金というものを政府公社のほうで勝手にきめてしまうということになつておるようであります。特に我々の賃金というものは、双方団体交渉できめなさいというふうに法律では規定をしておりますけれども、実際にはそんなことは順序として踏まれなくて、はなからお前たちの給與はこれだけだ、こういうふうにきめて、あとはその枠の中であとからやつて団体交渉の形ばかりをやつておる。政府のほうの方針がきまるならば、我々の賃金そつちのほうからきまつて来るというような、こういうような状態に陷つておるのであります。これは私は公労法八條の第二項に、団体交渉の範囲として、賃金と書いてありますけれども、実際上は賃金というものを削除してあるのと同じことだと考えておるわけであります。例えば今度専売公社法のほうから考えて見ましてもそうでありますが、専売公社職員給與は、生計費並びに国家公務員及び民間企業従業者給與その他の事情を考慮して定めなければならない。こうありましても、いつもその他の事情というほうが優先してしまいまして、根本的に給與原則である算出根基なり、或いは賃金とはどうやつてきめられるかという原則的な立場によつて我々が賃金をはじくというわけには全く行かない。そういうことをやつても全く喜劇でしかない。そんなような状態でありまして、給與を定める原則というものは、すつかりぶち壊わされておるというように考えるのであります。我々が何かの事情で、例えば今度の朝鮮動乱影響によりまして、どうしても物価が変動したように思う、或いは最近の台風の被害によつて物価が上昇した、こういう場合に我々の生活が困難を極めて参ります。それで一時金支給或いは特別手当の要求をしたいと思いましても、政府方針決定しない以上は、交流は自主的に行われていない。専売公社と我々の代表者との間における自主的な団体交渉というのは存在していない。こういうわけで、専売公社交渉委員なんというのは、失礼な言い方かも知れませんが、私共並んで交渉しておりましても、もう人形のような感じしか得られないのです。専売公社交渉委員は、賃金に関する限と木偶の坊と全く変りはないくらいな状態でありまして、これは私は別に専売公社交渉委員がそういう人だというわけじやなくて、日本専売公社法にも、はつきり基低になる給與総額の枠を超えて何か定るというわけには行かない、こういうふうになつておるのでありますから、そういう意味で、あながち交渉委員の無能を言うわけではありませんが、結局これも専売公社法改正をどうしても必要としておる、こういうふうに考えるのであります。だからとにかく我々はこの公企労法改正に並行いたしまして、予算総則のような賃金交渉を自主的に否認しているようなものは一つなくして欲しい。それから日本専売公社法の一部改正を以て公共企業体の自主性を確立して貰いたいと思うのであります。そして専売公社に認められました総予算というものは、専売公社の自主性において、総裁の権限において企業の発展と運営のために活用することのできるように改めて貰いたいと思うのであります。そして専売公社交渉委員は、専売公社を一個の人格体として自主性のある団体交渉ができるようにして貰いたいと思うわけです。私は如何に公共企業体労働関係法の中で、団体交渉の慣例を作るために、やれ交渉委員はどうだ、やれ会議はどうだ、こういう立派なことを幾ら並べましても、魂の入つていないものは幾ら規定をされても何もならないように考えるのであります。そういう意味で、十六條につきましては、並行して只今のような点を十分お考えを願いたいと思うのであります。  それから法第三十五條につきましても、この改正案は、その内容については特別の変化がないように思います。むしろ私共としては三十五條におきます但書は、これは削除して貰いたい。このくらいに考えておるわけであります。なぜかと申しますと、大体三十五條の前段にありますように、「当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」こういうふうに当事者双方ふ義務付けておりますが、ちよつと考えて見ますと、政府並びに専売公社のほうに、対しては法第十六條のように、まあ強いて言えば逃げ途のようなものを作つております。労働者は如何に不利益な裁定が仮にあつたといたしましても、若し不服従をとれば法律に違反したということで、明確に法の権利を受けることもできなければ馘首をされる、こういうふうにさえ規定をしてあるくらいに、労働者にとつては私はこれは不利な法律だと思つておる。片方のほうに対しましては、政府並びに公社に対しては誠に都合のよいように、十六條を見れば大体わかるにもかかわらず、念には念を入れておるというような形式で印象付けられております。そういう意味から行きましても、むしろ私はできますれば削除するというくらいな考え方を持つて頂きたいと思つておるわけであります。そういう意味から行きまして、この三十五條に並行いたしまして、私其はこういうくらいに労働者は不平等というふうに考えられるくらいに義務付けを負わせられておるのでありますから、若しそれでは三十五條の義務を履行しない場合、政府並びに公社はどういう措置を受けるのか、こういう意味から考えまして、私はこの公労法の唯一の最大の欠点である労働者の基本的な條件としての罷業権條件付でもよいから與えるべきである、こういうふうに強調いたしたいのであります。つまり職員及びその組合は、紛争が生じたときといえども、本法の定める手続に従いまして平和的に紛争解決することに努力をいたします。併し調停申請が行われてから三十日を経過しても尚解決しないときは、争議権を付與する。但し裁定の行われたときには三十五條に従つて絶対に服従するものでありますから、それで争議行為を尚続ける場合には法の定めるところによつて制裁でも罰則でも與える、こういうふうにして傑作付の罷業権を認めるべきではないか、認めて貰いたい、と思うのであります。罷業権を與えるというと、すぐにストライキをやるつもりだとか、或いは危険なものを與えるとかというような考え方が一般に行われておりましたが、現在のような段階においては、むしろ本来の労働者の基本的権利を復縁するという意味において、又公企労法の中におけるいろいろな批判を正しく下すという意味におきましても、條件付の罷業権をこの際與えるべきではなかろうか、このように考えるのであります。なぜ私がこのような主張をいたすかと申上げると実質上今までも行われて参りました何度かの裁定について、まだ結末さえついておらないという條項が多いのであります。私共の組合におきましても、専売裁定というものが行われましてから、給與のほうについてよ、いわゆるベースのほうについては、形はとられるようになりましたけれども、その中における賞與制度を確立せよという條項については未だに実現しておらないというような状態であります。専売裁定には明らかに我我の努力によつて財源を殖やすことができる、又我々の努力によつて経費の節減が件われたときは、その余剰額を以て労働組合と協議して賞與制度というようなものを作つて支給するようにしたらどうか、こういう裁定が行われております。これは先ほど申上げましたように、当然の結果として政府は最大限の努力をするために国会に対しその必要な手続をすべきだと思うのです。つまり予算総則の中に、若し職員努力によつて経費が節減できたとき、或いは従業員の努力によつて益金が殖えたというようなときには、これを賞與金として配分することができると、こういうような條項を入れられるべきでありますし、或いは専売公社法の中にもそういうことができるような権限を與え、法律改正を積極的にするのが、私はこの三十五條にありますように、絶対にこれに服従して、そして必要な措置をとるものだ、こう思つておるのでありますが、それさえ未だに解決しておらない、こういうような例を申上げましても明瞭な通りに、どうしても私共に絶対に服従せよ、若しそういうことに服従せず、何かあつた場合にはこれは何か罰則を加える、こうある以上は、私共は政府か或いは公社がその履行を怠つたときにはこれに対する措置をとるようなこと、こういうことについても検討を加えるべきではないか、こういう意味で制限付でもよいから、この際罷業権を與えるべきである。こういうふうに考えまして、以上が、全般的な公労法改正をするという参議院意見であり、十六條と三十五條については只今のような意見を持つておることを申上げた次第であります。
  13. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では次に専売公社中央調停、委員長小林直人氏にお願いいたします。
  14. 小林直人

    証人(小林直人君) 参議院の皆様が公労法施行後の事態に鑑みて、院議として公労法改正を御発案なさるということにつきましては、私共この公労法の運用をあずかる者といたしまして誠に深甚の感謝を申上げる次第であります。で、お示しを頂きました改正参考案十六條と三十五條につきまして私少しく自分の意見を申上げる次第でございますが、十六條につきましては、参考案に私は心からの賛意を表します。三十五條につきましては、その第二項に関する限り幾分の私見を申上げて見たいと思いまするので、暫く御溝聽頂きたいと思います。  この参議院改正案の範囲というものについて私が感じましたのは、公労法改正するとなりますと、その第一章から始めまして、種々様々の議論があり得るのでありまして、又運用面に照しましても、技術的な改正も必要かと考えておりますけれども、これらは恐らく政府提出を期待できる範囲でありましようから、十六條と、三十五條をお選びになられた御趣旨というものが、議員提出にあらざれば好結果を期待できない範囲に問題を集約して、私共の御意見を参酌せられるのではないかと思いまして、大変その御趣旨に賛意を表する次第でございます。何分にも政治的にからまる法規でございますので、何としても政府提出で全部の改正を期待できるわけには行かない。改正と称して或いは改惡になるかも知れない。又当事者双方改正を欲しないようなことが改正されるかも知れないというふうなわけでありまして、この法律ばかりは政府提出のみでは期待できないというように私共ひそかに思つておりましたところ、図らずも参議院から、その私共の苦にするところの部分に限つて議員提出の法案を御考究遊ばされて、すでに幾たびかの試案を経て参考案に掛つておられることを拝見しまして深甚の感謝を重ね重ねいたす次第であります。これを拝見いたしますと、十六條につきましては我が意を得たりと感じておりますわけでありますが、三十五條改正につきまして私の意見があると思いますところをこれから申上げたいと思います。  本来公労法は基本的な労働法の特別法であり、労働法規の特別法に当るものであります。それでこの三十何ヶ條かの公労法の殆んど全部は、本質的に労働関係に関する規定でありまして、特別労働法と見てよろしいものであります。ところがそれらの規定の中に交わりまして、現行規定上第十六條と三十五條の、現行法では但書になつておりますこの二つの規定は、これを他の多数の法規と同様、労働法的な規定であると解してよいかどうかという理論的な問題があるのであります。私共は理論的にも、又実際の運用に当つていろいろ実施面を考えての上からも、これは労働法規の中にちりばめられた財政法規である、一般財政法の特別規定である、公共企業体労働関係に適用すべき特別財政法規である、こういうふうに理論的にも、実際的にも考えたいのでございます。そうして図らずもその特別労働法規にちりばめられた財政的性質を有する法規二つに対して、ここに参議院が特別の御注目を向けられてその是正を図られるということについては、誠に妥当であることを感ずる次第でございます。本法は本来争議権という大切な労働者の賜物を濫用することなく、もうそれを奥の殿にしまつてもつと理性的にその争議権を実施したと丁度同じような結論を平和的、有効的に実現して行こう。そのためには労使対等の原則に則る模範的な団体交渉をさせて、集団労働條件を労働協約で結実さして行こう。こういうところに何としても眼目があるのでございます。従つてこういう考えから出発しまして十七條において争議権を奪い、そしてその他の各條におきまして団体交渉の立派な慣行と育成を期しておるわけでございます。そこで私共運用の面に当る者にとりましては、この労使団体交渉がその法の企図したごとく模範的に、理想的に行われ得るような素地を作つてやらなければならない。この公労法によつてそういう場所が與えられなければならないと思うのでございます。それで数字の調停にも携りました経験から行きますと、労使の対等の原則による団体交渉というものが理想的に行われるためには、若しその団体交渉に使用者側が誠意がない場合には、労働者側としては争議権を行使してもよいというところに憲法の保障があるのでありますから、それに匹敵するだけの中立的な一方に遠慮のないよりどころがなければなりません。事実その調停に苦心しましても、まあ争議権がないから何とか言つておりや通る、こういうふうな御気分がちよつとでも公社側にあります際には、何としても団体交渉はもう進行しません。それで結局そういうよりどころと理解されるものが三十五條にございます仲裁委員会裁定ということになると思います。これが争議権の代償として與えられたものであるかどうかということが学者間の議論となつておりますけれども、私共濫用の上からも、理論の上からも争議権を奪つて、而も対等の原則による同体交渉ができる場として與えられた制度であるということは、これはもう一言の疑いもない事案であろうと思います。そういう機能を営むべく仲裁委員会裁定の制度があると見てよろしかろと思います。そうなりますと、仲裁委員会裁定というものが労使双方に独立した機関であるばかりでなく、政府とか、政治勢力とかいうものからも独立してまでも、世の中の條理というものを代表するような一つの独立機関でなければならない。その裁定の効力がやはり独立機関にふさわしい最終的効果を発生するものでなければならない。その仲裁委員会裁定の効力が、めぐつて来て又政府その他によつて否定されるような、そういう弱体の効果であつては、本当のこれが企図しております労使対等による模範的な団体交渉のその裏付けとしては到底役目を果せないということを私共実地に経験するわけでございます。それでこれは公労法というものが、争議の発生を予防して、対等の団体交渉によつて平和的、有効的に労使関係を打ち立てて行くという企図の上からは、法規以前的に、超法規的に仲裁裁定というものの性質が、そういう最終的なものであつて、独立した効力を発生するものでなければならないという要請を感ずるわけでございます。そういうふうに前提しましてこれらの諸規定を眺めますと、現行法の十五條に、労使双方は雇用の基礎的條件を毎年労働協約にすべく一回以上の団体交渉を行わなければならない、そうしてそこでできた労働協約が十六條によつて、その財政措置を明記されておると思うのでございます。それから労働協約が実らずに団体交渉が決裂した場合におきましては、仲裁が結局において発動して、三十五條一項において仲裁判断が下されたときには、当事者双方は最終的決定としてこれに服従しなければならない旨が規定してあつて、まさに争議権に代る裏付けとなつておるわけでございます。そうして最終的な決定である仲裁裁定現実履行されるための財政措置として、その但書が現行法にあるわけでございます。それですから三十五條の本文と但書とは、本文のほうは、本来的な労働法規、争議を行なつてその後に取り結ばれた労働協約と丁度同じような機能を営むところの労使間の関係の設定なんでございます。但書のほうは、そういうふうに労働関係が当事者間ですでに設定されたものの財政的実現の措置なんです。ですからこれは財政法的な性質の規定であります。二つは極く軽率に結び付けられておりますけれども、理論的には別條に明記して、性質を明らかにして本来規定さるべき規定であると思うのでございます。そういうふうにして読んで参りますと、十六條というものは、これは長い條文でありますが、全部十五條によつてできた労働協約の財政措置が書かれた財政法的性質の規定である。それから三十五條のほうは、本文は本来的な労働関係規定でありまして、但書は丁度協約の場合の十六條に匹敵するところの仲裁裁定に附随する財政措置規定、こういうふうに考えていいわけであります。仲裁裁定は、今申上げましたように、争議権の実施に代る最終的裏付けでありますので、その現実履行を援けるところの財政的措置につきましても、最終的裏付けにふさわしい最終処理的なものであるまいかと理論的にも思うし、実際の上からもそう考えるわけであります。若しこれが、財政措置を始めたところが途中で難関に逢着して実施ができない、行き詰る、更に何らかのものが助け船を出して来る、或いはこれが棚上げになつてしまうというようなことでありますと、その本文であります仲裁裁定の最終的裏付けであるという性質そのものが根本的に損われてしまいますので、これはどうしてもこの財政的措置は最終的措置にふさわしいところの断定的な処置でなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。そう見て行きますと、十五條に対する十六條は、今回の御改正を以て私は、私共実施に当る者として誠に運用がし易い法規になつて有難いと思うわけでございますが、三十五條の二項として、今度御改正の企図になつておりますところの規定のほう、これを読みますと、「公共企業体予算上、資金上不可能な資金支出内容とする事項について裁定の行われたときは、第十六條の定めるところによる。」、こういうふうにある、この規定につきましては、私はこの規定であつても、今の但書よりはずつとその趣旨を正解せしめるいい規定ではありますけれども、方向としては私共は賛意を表するのでありますけれども、併し最終的決定に対する最終処置であるというところの性格がこれに出て来ない、何か途中でジグザグする危險性を多分に包蔵している、その点の担保が少しもあり得ないという点において私自身、まあ自分一人の考えとしましては、ちよつと心配になる改正である、こういう感じがいたす次第でございます。然らばどんなふうな考え方をしたならばこの問題が改まるかと申しますと、これは仲裁委員会の仲裁判断というものは、これは結局するところ、民事訴訟法の第八編でございましたか、仲裁判断の規定がありますけれども、その中の八百條に仲裁判断の効力の規定がありまして、仲裁判断というものは当事者間において確定した裁判所の判決と同一の効力を有すると、こういう旨が民事訴訟法八百條にございますが、何かこの條文を準用し得るような極く簡單明白なお考えを願うことはできまいか、こういうことを御提案申上げる次第であります。仲裁裁定の効力については、民事訴訟法八百條を進用するというふうな考え方で、もう少しく三十五條二項について、この参考案を御吟味願えないか、こういうふうなことを感ずる次條であります。若しそのようなふうにいたしますと、仲裁判断の仲裁の裁定が下された以上は、裁定結論に対しまして、国会審議は行われないことになります。これが国会審議権の阻害になりはしないかという御懸念が一応起るのでございますが、私はその点はそうでないと思うわけであります。国会審議権は、個々の事案が起るごとに個々の審議を盡すのが一つの方法でございますし、法律によつて包括的にその種のことの一貫審議をして、法律規定で効力を與えてしまうという方法国会の議決を経たことになるのである、そういう徹底した行き方を以つてしてもできるのではなかろうか、この例はもう多々あるのでございまして、例えば極く卑近な例を挙げますと、不法行為という制度が民法に規定してある、国鉄その他の予算官庁がときどき列車事故を起していろいろ一般市民に損害をかける、勿論これは予算にはありません。併しそうやつて被害弁償の訴訟を起され、損害賠償の額が法律上確定したといたしましよう、そうすると確定判決に基いて、国鉄のそういう予算はありつこないのでございますが、国鉄の所有金に対して、例えば国庫に預けてある国鉄所有金に対して、その確定判決を基にして履行を迫るということは、これは凡百行われていることであつて、誰も疑つておらない。今日までずつと行われておる、今日も疑問もなく過ごしておるのである。そういうふうに不法行為制度というものが、法律であらかじめ定めてありますと、こういう不時の災害その他の損害に対して損害を賠償するという事柄につきましては、その個々のことについて国会審議をせずとも、法律一般的に包括的に権限を與えて、裁判所の審査で以て直ちに履行を追つても、国会審議権を損なわないような趣旨になつておるわけであります。それで本件の場合におきましては、三十五條仲裁裁定を最終的裏付けとしての品位を與えるためには、そういうような方向においての御処置を願えたらば最も適正簡明にこの公労法をして価値あらしめるではなかろうか、こういうふうに思う次第でございます。  私の只今申上げる意見が、若し極端論のように解されるといけないのでありますが、仲裁委員会の人的構成を今日の現行法のように愼重に、政府当事者双方も参加して愼重に練つて人選する手続になつておる以上、そこに極端分子が現われて来て、国の方針と著しく反するような仲裁判断を下すはずもなく、そうしてこの問題は労働関係の微妙な点に触れるのであつて政府当局或いは国会としても、必ずしも適任者ばかりがおらないのであるが、專門的な仲裁委員会政府の利害を代表して十分な審査を盡して仲裁裁定をする場合におきましては、過去における幾つかの仲裁裁定の例に見るごとく、その裁定が十分国の利益、国の予算を勘案したものであり、職員に対して不当な利益を與えるものでなく、適正な労働関係の維持発展を図るものであるということは、ほぼ認めることができるではないかと思いますので、そういう事実をここに引用いたしますと、私の申上げるような断定的な考え方をいたしましても、法律の目的を達するのに資することではなかろうか、こういうふうなことを思う次第でございます。誠に言い過ぎかも知れませんけれども、その点を御考慮を煩わした上で、愼重に三十五條の御審議を盡して頂きたいと思う次第でございます。十六條と三十五條政府提出によつては改善を期待できない規定でございますので、是非とも院議を以てこの参考案に見るがごとき方法において御善処を頂くことは、私共実際に労働関係そのものに立入つて犬馬の労を執つている者としては誠に心嬉しいことでありまして、感謝申上げる次第でございます。以上簡單でございますが、これで……。
  15. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 以上各証人意見の御開陳がございましたが、その御意見に対しまして御質問のおありになりますかたは御発言願います。
  16. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 小林証人にお伺いしたいのですが、この三十五條但書は全然削除したほうがいいというお考えのようにも思われるのでありますが、これは削除のままでいいのでありますか。
  17. 小林直人

    証人(小林直人君) 私の考えは、削除の考えではないのでございます。三十五條の、この参考案で申しますと、第一項のほうは、これは本来的な労働法規、労働関係を律した規定であります。この規定だけでは予算が伴わないときに立往生になつてしまう危險があります。單なる好意的な期待だけでこの重大な問題を片付けるわけに行きませんから、第二項において財政措置を講ずるところの規定が是非とも必要だと私は感ずるわけでありますが、併し法律若しくは確定判決があります場合には、予算をそれに応ずるだけのものを作らなければならないというところの別の義務が国にも国会にもあることになりますので、若しこの仲裁裁定が確定判決と同一の効力があるものなんだというふうなことになつて参りますと、予算措置は勿論もう疑問なくとられ得るというように感じまして、そういうふうな最終的財政措置をここに御規定願えれば有難いと、こう考えます。私もこの点は素人考えでございますから、皆様にただ御建議申上げるだけでございます。
  18. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そういたしますと、三十五條の本文のほうを、現在のように当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない、この表現では足りないというお考えでしようか。先ほど民事訴訟法の八百條を御引用なさつたのでありますが、そういう点との関連においてもう一度御意見を聞かして頂きたいと思います。
  19. 小林直人

    証人(小林直人君) 三十五條参考案の第一項は労働法的効力を規定したものである、財政法的効力までこれでもう規定は済んでいるというふうに考えることは少しく危険である、やはり明文を財政法的効力について設けたほうがいいと、こういう私は考えでございますが、その財政法的な分についての規定をどんなふうに設けるかについては、只今参考案から何とか民訴八百條を準用するというような方向に方向付けたような御規定を御考慮頂けないでしようか。
  20. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 小林さんのおつしやるように、三十流條の本文は労働法規的な観点から規定されておつて、但書はむしろ財政法的なものであるという、性質が別個のものであるから、但書で以て書くべき筋合いでない、又第二項として置くことも考慮の余地ありと、こういうお考えだということはわかるのですが、本文は労働法規的なもので、簡單に考えれば労働関係調整法の三十四條でありますね。「仲裁裁定は、労働協約と同一の効力を有する。」、この法律と変らないわけでございますね。ただこの場合の労働関係調整法の仲裁裁定は、当事者の意見に基いて行われるからこういう表現をしておる。併し公共企業体労働関係法における仲裁裁定は、当事者双方の意思にかかわらず行われる場合もあるという、こういうことからこういう表現をしておるのだと思いますが、併しそれと同時に、これによつて裁判所自身の確定判決と同じく効力を持たせることも又性質が違うわけですね。
  21. 小林直人

    証人(小林直人君) ちよつと附言いたしますが、それは違うことになりますのですが、一般民間企業では、財政法上の顧慮が必要でありませんので、財政規定がそこには欠除しておるわけであります。ところが公共金業体の予算制度というものは、短日月に廃止になるようなことは到底考えられないので、今後相当永続的に予算制度は持続すると考えなければならん、そうしますと、歳出予算の拘束力その他予算制度から来る履行而の制約というものを何とか立派に排除する規定を置かなければ、結局実施価で行詰まる、こう私は感ずるわけであります。それではどういうふうにしてそれを補うかといいますと、丁度この参考案のような、十六條の例によるというふうにも行くことができるし、それからもう一歩進めて、確定判決と同じだから、これはもう是非予算を組まなければならんというふうに仕組んで行くこともできると、こういうようにちつと素人考え考えたわけであります。
  22. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 重ねてお尋ねしますが、本文のほうは、仲裁委員会裁定に対しては、予算外たると既定予算の範囲たると、既定の資金支出の中であろうと外であろうと問わないのである。こういう表現が一つ出ればいいわけですか。
  23. 小林直人

    証人(小林直人君) さようでございます。この仲裁裁定内容が、公労法規定によつて常に履行を保護されるということが出て来ればよいわけであります。
  24. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そういうような表現をしろと、つまり仲裁裁定の効力そのものについては、予算なり資金の問題はもう全然関係はないのだと、最終的な拘束力はそれでもう直ちに発生するのだと、ただ手続が残るのだと、こういうふうに表現したらよいのだ、こういうお考えでございますか。
  25. 小林直人

    証人(小林直人君) さようでございます。私の考えはそういう考えでございます。実は現行法の解釈について、この議院から頂きました解釈趣旨のことがいろいろ書いてありました中に、結局十六條の国会に提出承認を求めるという件は多く儀礼的な承認を求めるにあつたのだと、これで反対をして立往生させるというような趣旨ではなかろうというような好意的な御解釈も出ておるようでありますが、そういうものであるとすれば、むしろ今度のような場合と逆行的な解釈が出て困難する危険も将来ありますので、そこをもう一歩正確にして、あと財政処理の手続が残るだけであつて、その履行すべき義務としては政府をも拘束すべく確定済みだと、こういう趣旨が明確になつておればよいと、こう思うわけであります。
  26. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 その点で政府をも拘束するのでございましようか。裁定の効力は何としても当事者双方以外には一応及ばないのだが……。
  27. 小林直人

    証人(小林直人君) 本来の労働法的効力は当事者双方しか及ばないと思います。ところが公共企業体は、財政的に、経理的に、政府機関の介在を要しますので、そこでそういう機関をも拘束する処置を講じなければならない、それが私の申上げる財政法的処置でございます。それでその財政法的処置を上手に表現、設定して頂きたいというわけであります。
  28. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 小林証人に重ねてお尋ねいたしまするが、その点は、今おつしやつたような観念的な非常にきちつとしたお立場というものからお考えになることも考えられると同時に、公労法の第一條の第二項によつて政府自身も関係者として、裁定そのものの効力は当事者以外には及ばないが、政府はそれによつて手続を、第一條の第二項によつて、その関係者として義務があるのだと、こういうような考え方にはなりませんでしようか。
  29. 小林直人

    証人(小林直人君) 三十五條の二項が若しないとすれば、一條の二項の関係者の協力質任によつてそういう解釈を導くより外に仕方がなかろうと私は思つております。現に或る程度関係官庁がそういう御協力をして下さる向きもありますが、又拘束力なしとしてまあまちまちの態度をとつていらつしやるので、そこの点を何とか御調整なさる必要がなかろうか、こう思うわけでございます。
  30. 中村正雄

    中村正雄君 小林証人にお尋ねするわけなんですが、堀木委員から言われたことにも関係するわけですが、もともとこの改正をするという趣旨が、いろいろあるわけでありまして、ただ公共企業体労働関係者から罷業権を取りました代りに、それに代るべき制度として仲裁委員会という制度を設けたということにつきましては、それぞれ議論はありますけれども、その効力をどの程度まで持つて行くかについての議論であつて、本質についてはあらゆる学者も反対ではないと思うのです。それで第十五條並びに第十六條の関係でありますが、これは現在の公労法だけで第一條第二項に示してあります趣旨が、そのまま貫徹するわけには行かない。前に平林証人ですか、言われましたように、本当公労法趣旨を貫徹するためには、一つには予算総則にありますような貸金の枠ということを全部削除しなければいけない。又鉄道なり或いは専売の基本法でありますそれぞれの法律改正いたしまして、経営者側を代表する人に賃金に関する団体交渉の当事者能力を與えるような法規の改正をしなければいけないということは勿論承知でありますが、ただ全般的な改正が今の段階においては至難でありますので、一応争議権に代るべき仲裁委員会の制度という公労法規定されておりますこの制度が、国鉄の筋一次裁定、第二次裁定等によりまして非常に誤解を生じておつた。従つて公労法の精神を少くともこの法律の中だけでは通すような、誤解のないような條文にしたいというのが大体今度の改正趣旨なのです。従つて今三十五條でおつしやいましたように、現行法律でありますると、三十五條にありまする仲裁委員会裁定というものが、一応最終的決定であると、こう本文では明示いたしておりますが、但書を以ちまして、併し予算上、資金上不可能なものであるならば、それだけは最終的決定にならないんだというような解釈の仕方も成り立つ。これでは小林証人がおつしやいましたように、労働法規と財政法規とをこんがらかせたような條文になつておる、これではいけないということで改正しましたように、三十五條の一項で、仲裁委員会裁定は、当事者双方に対しては最終的な効力があるんだというふうにいたしまして、二項では、それに対する履行の義務付けを政府に與えるような二項にしたわけなんです。従つて現行の三十五條とは分類の仕方におきまして、考え方におきまして根本的に違うような表現方法を用いたわけなんです。一方はこれは完全な労働法規であり、二項のほうは一つの政府に対する義務付けを言つたわけです。一項の最終的決定という面につきましては、何ら制限された規定ではない、こういうふうに考えたわけなんです。従つて五條を受けました十六條を、まあ手続においては同じようにしなければいけないので、十五條の労働協約というものが、当事者双方におきましては直ちに効力があり、これは一つの法律的なものでありまして、これを履行するについての政府の監督機関でありますので、政府並びに国会の一つの手続規定したものが十六條でありまして、従つて十六條は、十五條協約につきましての効力については何ら関係しておらない條文、それと同じように三十五條の二項も、第一項の効力につきましては何ら制限した條文ではないと、こういうふうに、但書を取つてしまいまして、第二項を附置したわけなんです。ただ最初証書がありましたように、一つの、三十五條にきめておりまする仲裁委員会裁定といつたようなもので、直ちに執行力ある債務名義にすることがいいか惡いか、これは個々の具体的な事件でなくして、従事員全体に対する賃金その他の裁定問題を含みますので、これはやはり直ちに執行力ある債務名義にするよりも、やはり国会審議権もありますし、政府の監督権もありますし、そういう関係で、やはり予算というものが国会審議するのであれば、国会に対して予算審議をして貰わなくちやいけないという義務付けをすることが、やはり公共企業体の性質に合うんではないかと、これは個々の鉄道その他の、事故等による私法事件のような損害賠償のものであれば、これは確定判決としまして、執行力ある債務名義にしてもいいでしようけれども、この裁定自体を直ちに執行力ある債務名義にすることよりも、そういうことについての国会審議をしなければいけないという義務付けを、監督官庁の政府に要求するということがいいじやないかというので、三十五條は一項と二項とを全然別個にいたしまして、二項は一項の制限規定ではないという意味に書き改めたわけなんですが、そうしますと小林証人のおつしやるのと大体趣旨は一致しておると思うんですが、これについて何か御議論あるでしようか。
  31. 小林直人

    証人(小林直人君) 三十五條の一項が本来的な当事者間の労働関係上の規定、第二項が現行法のような誤られ易い但書から離れて、その一項で定められた労働関係が財政的に実現される手続である、こういう御趣旨で御規定があるということは、私完全に認めまして、大変賛意を表するわけでございます。ただ三十五條仲裁裁定の場合、裁定実現の手続と、それから十五條協約を実現する十六條の手続とが全然同一のような参考案が、若しやして仲裁裁定が最終的なものであるということを、何かその手続中に混乱し誤解させる原因を将来作りはしないかということを案じまして、ちよつと私としても適当かどうかとも思いますけれども、民訴八百條のような簡單明白な、政府を拘束する效果規定を何とか御勘案願えないものかと、こういうふうな、本当にこれは私共としては素人的な御提案を申上げるわけでありまして、それを皆様專門家が熟議して頂いて、丁度いいところに收めて頂けば、私の趣旨が通るわけであります。参考案のままでも、私は大いにこれは改正の面目ありと考えております。
  32. 中村正雄

    中村正雄君 私は今小林証人のお話を聞きまして、感じとしてそういう感じを一般の人がお受けになるのも御尤もだと思いますが、これは労働関係の根本的な態度でありますが、私は労働協約と、それから仲裁の裁定、これは私は同じものと考えたらいいんじやないかと思うんです。言い換えれば、当事者双方の話合いででき上つたものが労働協約であり、話合いがつかないものが裁定であるわけなんですね。そういたしますと、誰しも労働関係については話合いを第一に望むが、併し話合いができない場合に第三者の裁定があると、即ちでき上つたものは、話合いでできたものも法律と同じような効力があり、裁定法律と同じような効力があるものだと考えたらいいわけでありますので、言い換えれば最善の策が労働協約であり、次善の策が仲裁の裁定と、こういうふうになるんじやないかと思うのです。従つて協約の実現方法でありましようとも、裁定の実現方法でありましようとも、或いは協約に対する片方の当事者の義務付けも、裁定に対する義務付けも私は同じウエートで考えたらいいんじやないか、従つて協約のほうは、これは平時のものだからそう強くないが、裁定は異常時のものだから強いという感じはしますけれども、内容についての法律から見た効力は同じものだから、いわゆる協約に対しまする政府の義務付けも、裁定に対する義務付けも僕はこれは同じ方法でいいんだ、こう考えているわけなんです。従つて三十五條の本文自体、これは最終的な効力があるという規定は、労働協約につきましても当事者双方に対して効力を持つ、こう規定されておりますわけでありますから、従つて履行の義務付けにつきましては、十五條に対する義務付けも三十五條に対する義務付けも私は同じ手続でいいと、こういうふうに考えているわけなんです。従つて先ほど申上げましたように三十五條裁定自体を直ちに実行力のある債務名義にするということであれば、十五條の労働協約も同時に実行力のある債務名義にしなくちや僕は不適当だとこう考えるわけです。従つて三十五條には当然十六條と同じことを全部書くべきであるけれども、立法技術上それはやめまして、十六條によるとしたわけなんで、三十五條は全然制限しておらないということが私たちの考えなんです。
  33. 小林直人

    証人(小林直人君) 今のお話は誠に御尤もでございまして、私も十六條の手続が労働協約に対する実現手続である、労働協約仲裁裁定とは労働関係の性質上同価値でなければならん。これは議論なく私共も同じ考えを持つわけでございます。論点をいろいろ複雑にする問題ですから申上げなかつたのですが、十六條の手続が若しその仲裁の場合をも包括する手続であるとするならば、先ほどどなたか証人のかたが言つておられましたように、若し仮に不承認が出たらどうなるんであろうか。それから又国鉄のかたが言つておられましたように、一同不承認なら次期国会にもう一遍承認手続を出して頂きたいという案が出ますように、何かそこに最終的なものでないものがあるわけなんです。私はその印象を残したくないものですから、三十五條のほうはせめてそういうことがないように……それから実際の運用面から見ますと、協約の場合にそれほど最終的な御尊重を頂かなくとも、仲裁の場合に限つて本格的な御尊重を頂けば何とか運用上のやりくりはつく、こういうふうな幾分妥協的な見地から、せめて三十五條のほうは簡單明瞭な最終決定が望ましい、こう実は心で思つているわけでございます。
  34. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう一つ十六條について星加証人にお聞きしたいのですが、国会承認が得られなかつたときは、次期の国会において重ねて承認を求めなければならないと、こういう規定が欲しいという考えなんですね、国会承認が得られなかつたときに継続審議でありますとかいうふうなことを予想されておりますか、国会予算承認しなかつたとき、そのときに又改めて出すのですか。
  35. 星加要

    証人星加要君) これは本質的に言いますと、私共はやはりこれは債権を持つているというので、前回の国会承認を得られなかつたとするならば、次期国会において再びその審議をして貰つて、そうして債権を認めて貰つて、それを実現させたい。国会がこれを否認するということは間違いなんだということの意味を含んでおりますけれども、それはそうあからさまに言うことは問題になりますので、又国会考え方というものは或いは質の点においても変るかも知らんと思うんです。一応いろいろの次期がありますから……、国会が解散になりまして、次の国会が新しく選ばれて来るというような場合に、一旦国会で否認されたものは殆んどもうその裁定というものはそこで死んでしまつて、新しく出直して裁定について審議をされるということでもまあ困る。国会が解散になるということになりますと、その原因はまあいろいろあろうかと思いますけれども、裁定の問題についてこれを実施するや否やという場合に、この問題を以て解散が起らないとも私は保証はできんと考えております。従いましてそういう点をお含みでお聞きになつておると思いますが、それのみならずそれに附加えましたことは、裁定が出ました時期が国会終了真際であるというような場合において、一応その国会にかかつたけれども、そこのところでは究極において審議未了というような形になりますが、調査承認ができなかつたというような事態も想像されるから、それで次の国会において又それを提出して貰うんだということにしておりますので、要はこの意味合いは端的に申上げると一旦裁定が出たならばその裁定というものは必ず実施をして貰わねばならん。それがために一応国会承認が受けられなかつたとしても次の国会に又審議をされて、そうして承認されるというような余地を残したい、それにはいろいろの事由もあるけれども、それはまあ国会解散、若しくは裁定が出た時期とかいうものを具体的には指していることになると思います。原則的には一旦国会承認にならなかつたものを次の国会承認するというのは甚だおかしいわけです。その国会において必ず承認をして貰うということはこれはまあ裁定の性質上認めて貰う、それが原則的な取扱い。時期その他特殊な理由によつて、その国会において承認すべきではあつたけれども承認することが事実上できなかつた。それで次の国会を待たねばならんというときには、次の国会に再び提出されるのであるという表現であります。
  36. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そうするとこの問題は何でございますか、国会審議する期間がなかつたというふうな場合だけを予想されているんですか。それともそうでない場合も全部かかつて来るのか。そのときに政府は必ず前のものを出さなくちやならん、この問題が判然としないような気がするのですね。特に公労法の十六條で以てこういう短時日を限つて政府手続をしなければならん、こう言つている場合にはこれはむう当然労働者権利を擁護する面から見まして、少くともこの立法の趣旨から言えば当然きまるべき問題である。たた不幸にしてそれが審議の期間が少いために審議ができないというような場合に、国会みずからが現在のように継続審議をするというふうな関係考えられる。又しかのみならず他の諸般の情勢から、よく政府が言われる諸般の情勢からこの継続審議をしたほうがいいという考え方から行く場合もあるだろうとは思いますが、どうもこの規定が出るとその法の趣旨から言うて非常に私はおかしいような気がするのでございます。やはりむしろ端的にないほうがすべての効力についてのはつきりした規定になるのじやなかろうか、こういうふうな気がしますが、その点について重ねてもう一度お伺いいたします。
  37. 星加要

    証人星加要君) おつしやられるところはまあその通りであると思います御趣旨の点については不賛成ではありませんけれども、その継続審議ということが又全然ないとするならばこれはどうなるかということを考えた場合に、やはり問題になつて来ると思う。でこれは私この継続審議ということにつきましては甚だ問題があつたように聞いております。けれども一応こうするんだということで便宜的と言いますか、まあ政治的な取扱としてこの問題を継続審議に持つて来ておられるという点、これは政府の性質その他にもよりますが、その際に我々が最小限度に守り得る点はやはり継続審議というような形を残して、そして次に来て又戰うというふうな余裕を残したいということが一つと、それからもう一つ、これは理論上言えるか言えませんか、とにかくこういうことがあるのです。実例におきましては片山内閣の崩壊の原因というものは〇・八の支給という問題にありました。勿論それのみとは私は言いませんけれども、やはり直接の原因というものというものは大きくそういう点で見られるのであります。それで仲裁裁定を実施するに当つて議会が解散になる。で與党、野党間の問題になつてまあ国会解散というような事態を生じた場合には、これは継続審議だと次の国会で又やるというような若し明文がなかつたとしたならば、その国会において審議未了終つてしまつたので、一事不再理というような論拠を以て慣行上これは又次の国会に上堤されないということになりましても困るという観点もあります。従いましてこれは原則的なことではなしに一応そういう非常事態的な事態を想像し、若しくは誠実な取扱によつてこれが葬られるというような点を考慮しての安全措置というような意味合いを今日においては尚捨て切れんものがあるというふうな現実上の判断で考えられておるわけです。原則的にはとにかく裁定が出て、国会開会中ならば十日以内に国会に上提し、又閉会中ならば開会したら五日以内にやつて貰うといつことになつておりますが、これは継続審議になつておるものといえどもなかなか……、第七国会継続審議になりましたが、それが第八国会にかかりましたのはやはり国会末期である。これが約束通りに、明文通りには行きかれておる実情等から見まして、労働組合側からするならばこういうものは事実不用であります。且つこれに藉口して裁定の実施等がずるずる延ばされて行くのではないかという危険を感ずる一方、安全措置として尚必要があるように考えられたので言うておるのであります。
  38. 中村正雄

    中村正雄君 星加証人のおつしやることは僕は運営上御尤もだと思うのでありますが、ただそういう点も考えたから我々は三十五條をこういうふうにしたと考えておるのです。と申しますのは今までの経験に徴しまして仲裁委員会裁定というものが当事者双方を最終的に決定する。従つて債権、債務というものは完全に成立して効力を発生するものだと、こう考えるのが正しいという考え方と、それから三十五條の但書によりまして十六條関係のものは国会が若しも否決した場合はその債権、債務が消滅する、こういう考え方があつたわけなんです。従つてあとから申しました考え方ではいけないというので、三十五條をはつきりといたしまして但書を取つてしまつた。従つて仲裁委員会裁定は最終的な効力で当事者双方を拘束する。従つて債権、債務は三十五條によつてはつきりと存続し効力を発生する。そういたしまして併しながら履行の実現について鉄道なり専売というところはやはり予算国会審議して貰わなければならないから十六條の手続をとる、従つて十六條において履行のための財政措置躍を国会に出して承認を得なければならない。言い換えればそれに要する予算をこしらえて、国会予算の取きめをしなければならないというふうにしたのです。従つて十六條によつて出された予算というものが、国会におきまして時間がなくて次の国会継続審議になるという場合は、これは運用上大して支障はありませんが、この予算ではいけないということで否決された場合にどうなるかということが第一の問題になると思う。否決された場合でも現行の三十五條があればそれによつてその裁定が消滅するという解釈の仕方も成り立つので、それではいけない。たとえその予算国会において否決になりましてもその裁定自体の効力はそのまま存続いたしておるものだというふうにしなければいけないというので、三十五條を新たに改正したわけなんです。そういたしますれば今例を申上げましたように、若しも国会におきましてその予算自体が否決になりましても、否決する理由はいろいろあると思います。例をとつて申上げますと、仮にこの裁定を実現するに十億の金が要る。この金は運賃の値上げによつて行おうという予算書が出るかも知れません。そのときに国会審議におきましても十億の金を出すことは止むを得ないが、運賃の値上げは困るという面で否決になるかも知れません。そうなれば政府としては別の面から予算書を作つて出すという方途を考えて置かなければ、三十五條乃至十六條の目的は達せられないということになります。従つて十六條には期間の制限というものがある。そうなれば一旦否決になつて次の国会、或いはその次の国会において出そうとすれば、十日若しくは五日という期間の制限によつて出せない。こういう関係になりますので、十六條自体から行きますれば、この適用によつて予算は出せませんけれども、三十五條によりまして、仲裁委員会裁定はそのまま効力を持つておるわけですからこの債務の履行のために別な形で予算を出すことはこれま支障もないし、当然出さなければいけな。従つて一つの国会におきまして否決になりましても、次の国会に十六條の予算としては出せないが、三十五條裁定を実現するための債務履行のための予算であればどの国会にでも出せるものだ、こういうふうに考えなければならないというので、三十五條をはつきり区切つたわけですから、三十五條條文から見ますれば、星加証人のおつしやつたような懸念は明文を置かなくても解決できると考えます。
  39. 星加要

    証人星加要君) 私はこの三十五條の第二項を見まして、この三十五條の第二項は要するに第十六條の第一項をそのまま書いたということになると解釈をしております。要するに裁定が出た。そうして裁定を実施するために政府予算を組んで国会に提出をする。国会に提出をして否決になつたならば、国会承認を得られなかつたということになつてしまいます。それでその後債権が消滅するのかしないのかということは、再び国会にそれの承認を求めることができるかできないかということにかかるのではなかろうかと思う。そこで中村さんのほうはそれが再びかけ得るんだということであるならば、それが第三十五條内容であるとするならば、私のほうは蛇足であるということになります。従いましてそういう表現は要りませんけれども、若しそういうことがここで確認されておらないとするならば、債権という点を正確にするために、先に申上げましたような末項を一つ一項附加えるという点が必要になつて来ると思う次第であります。
  40. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう少上伺いたいのですが、特にさつき平林証人が言われましたので、平林証人にお伺いしたいのですが、何か十七條で制限付争議権の裏付がなくてはどうも困る、労働者権利を擁護するに足りないと、こういう観点から言われたのでありますが、その点で十七條に何か調停から仲裁に移る間に争議行為が行われてもいいんだというようなことで三十日と言われたか、言われなかつたか記憶していないのですが、そうすると仲裁そのものは、調停が二ヶ月の間に行われないときには仲裁に入りますね、そうするとあなたの話は、調停、仲裁に入つたときは争議権がなくなつてしまう。そうすれば調停中の争議権が、二ヶ月を一ヶ月に短縮して一ヶ月の間は争議ができると、こういう考え方なんですか。
  41. 平林剛

    証人平林剛君) それは先ほど申上げたのは、調停委員会に付議されましてから二ヶ月は調停委員会で処理される。ところが私が例を述べて申上げた通りの状態が今日の状態でありますから、調停委員会の調停案が尊重され、而も調停が非常に長引くというようなことでないためには、調停に付されてから一ヶ月ぐらいたつたら争議権が付與されてもよいのではないか。こういうふうにいたしますと、第一に調停という存在そのものを軽視するような傾向がなくなりますし、調停そのものについての権威というものが生れて来るであろう。而も調停委員会の調停作業を促進するという意味もあつて労働者権利を擁護することができると思うわけであります。そこでそれが継続されて二ヶ月たつ、仲裁に参りましても仲裁はすぐ出るというわけではない。これは仲裁の裁定が出るまでは争議権がある。これが私申上げました條件付の争議権を與えよということであります。だから仲裁に行きましても裁定が出るまでは争議権を確保しておる。そうして裁定が出たらば法の示す三十五條によつて絶対にこれに服従をする、こういう考え方であります。
  42. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 御趣旨はよくわかりましたが、それは何でありますか、あなたの御趣旨は……ここに手許に国鉄労働組合公労法改正というものを持つておるのですが、それには仲裁委員会に付されたときからとなつておるものですから、どういう御趣旨かなということを考えたわけです。あなたの御説明は仲裁裁定が出るまでは争議行為をやつてもいいんだ、こういう御趣旨のように承わるのですが、そうすると基本的にお聞きしたいことは、調停にしても、仲裁にしても平和裡に労使間の労働條件を改善しようとする努力、それは争議権の裏付がなくちやいけないと言われる理由がわからないのですか……。
  43. 平林剛

    証人平林剛君) 一般労働者の場合にやはり争議権が與えられておる。これは私は専売公社の従業員といえども同様であると考えておるわけですが、特にたばこを作つておる、こういう従業員はどういう理由争議権をなくさなければならないか、私はこの公企労法が制定された当時のことを考えて参りますと、いわゆる専売事業に従事しておる者は、当時の政治情勢、労働情勢に巻き込まれた、巻添を食つたものだと今でも思つておるわけであります。ただ問題はよく政府並びに大蔵大臣が言うように、専売益金を確保することが公共福祉だということが、私共専売公社をその中に含めた唯一の理由のように考えられたのです。ですからそういう意味において、これは政府の財政政策が専売公社における専売益金に頼らなくなるような時代、そういうような財政政策が行われるようなことこそが望ましいのであつて嗜好品のようなものにあの厖大な税金をかけるというような財政政策をとつてつては我々国民は困る。こういうような時代がいつか来るわけです。私共はそういう時代を作りたいと思つているので、そういう時代は来る。これは本質的に私共が労働者の立場から考えた場合に今でも同じだということが言える。そういう労働者からどうして罷業権を取るかという理由考えた場合に、罷業権は本質的に與えられている。こういうふうに考えるわけであります。ですからそういう意味から罷業権を與えるということが先ず第一に本質的な希望です。それから罷業権があるということで平和裡に労働者並びに労働組合交渉をしないということになるということは、私そんなことは絶対にあり得ないと思います。私が罷業権條件付でもよいから與えよということは、決して平和裡に交渉解決するという努力を放棄することではない。厳重に公共労法の中にもそれぞれ法律措置が並べられておりまして、みだりに争議をやるものではないことになつております。そういう意味から條件罷業権を與えるということは決して平和裡に物事を解決し、処理をして行く努力を放棄することでないことは言うまでもないのでございます。そこで実際の問題として私共が体験をいたして参りましたところによると、労働者は滅多にこんなものを使うべきものでもありませんし、どうも罷業権を政治的に使うとか、或いは何かを企図するためにやるとかいうことには以前より反対をして来たものでありまして、この罷業権が與えられたからといつて、決して無駄な使い方をしない。こういうふうに考えているのでありますが、これをなくしたために現在のような労働情勢なり、専売公社におけるような状態が生まれて来ている。私はこういうふうに思うのでありまして、これは公務員法が制定されてから、或いは公共企業体労働関係法が制定されてからにおける今日の日本の労働運動を見ていたら、これは明瞭にわかる。明らかにこういう法律労働組合そのものを弱めて来た、民主的な労働組合そのものの力を弱めて行く。言い換えれば労働者権利をだんだんに縮小して来たということが言えるのでありますから、そういう意味において私は罷業権というものは、対等な立場において労働者に資本家並びに当局と折衝をさせるためには與えてくれるべきものだ、それがないためにいろいろな、すぐにでも解決するようなものも、或いは言を左右にして解決しない。こういうことを考えますので、先ほどのようなことを主張したわけであります。
  44. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 じや重ねてお聞きしますが、大体御趣旨の点はわかりました。要するに罷業権を奪うこと自身についてすでに議論がある。罷業権を奪う、殊に専売について罷業権を奪う、公共企業体労働関係法専売に入れるということ自身についての根本的な理論から発生しておるのだと思うのですが、それならば公共企業体労働関係法そのものに専売を入れること自分を考えなければいけない問題ではなかろうかということが、先ず第一点として考えられるのです。それから一般の労組法なり、労調法によりますところの規定でも公益事業については冷却期間がある。その冷却期間を設ける必要がないか、ただ條件付とおつしやいますが、條件付と言うのは仲裁裁定のあつたときにそういう行為をやめて研究する、こういうことだけである、こういうふうに了解していいのですか。
  45. 平林剛

    証人平林剛君) 私が申上げるのは、専売公社公共企業体という名前の中に入れることの可否ということではないのです。基本的にこの専売公社のような事業を公共企業体という名称にしようが、或いは別な名称にしようが、これは本質的に私の主張しておるものとは関係のないことであります。私が主張しておりますのは、そうでなくて、労働者としての権利公共企業体というものに入れてあつても與えて置いてもよい。こういうふうに考えておるわけです。これが憲法の保障するところの労働者の基本的な権利を失つておらない法律だと、こういうふうに言えると思う。そこで公益事業の場合の冷却期間のことでありますが、これは或る意味において私が申上げたものもそういう性質のものは含まれておるように思うわけです。つまむ調停委員会に持出して行くような性質のものは双方が担当対立してしまつて、どうしようもないというものが持出されておる、こういうのが現在までの事情であります。将来においても私共は公共企業体趣旨にもありますように、本来は団体交渉解決して行く。能う限り双方の自主的な交渉によつて団体交渉解決して行く。こういう建前をとるべきだと考えておりまして、第三者の判断を仰ぐ、第三者の裁定を仰がなければならないというのは、これはもう当事者双方では解決できないという問題を持つて行くべきだと考えておりますから、そういう意味において少くとも三十日たつてからそういうような争議権を、條件付の争議権を與えられるということは公益事業における冷却期間に相当するものと考えて頂いてよい。こういうふうに判断をしておるわけであります。
  46. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうも冷却期間についての御解釈がおかしいように思うのですが、労調法によればこの調停が出てから冷却期間の請求がなされたその三十日を、普通の労働関係調整法の三十七條の三十日間というものは調停にかかつて三十日は黙つて行こら、そしてそのあと争議行為が無條件に発生すると、こういうお考えですか。
  47. 平林剛

    証人平林剛君) その通りであります。
  48. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 他にございませんか。それでは一応午前の会をこれで閉ずることにいたしますが、各証人方々にはお忙しい中をおいで頂きまして、大変有益な御意見を伺うことができましたことを厚く御礼申上げます。では午前はこれで閉じますが、午後は何時に再会いたしますか。    〔「二時」と呼ぶ者あり〕
  49. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは午後二時に再会いたします。それまで休憩に入ることにいたします。    午後零時四十四分休憩    —————・—————    午後二時二十四分開会
  50. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは大変時間も経過いたして参りましたので、午後の会議を開始いたすことにいたします。今日は午前に引続きまして午後も公共企業体労働関係法改正に対するそれぞれの立場の御專門的な御意見をお伺いするわけでございます。最初に証人のかたにちよつと申上げて置きたいのでございますが、今日午後は御四人のかたに御発言を頂くわけでございますので、時間の都合もございますから、大体午前と同じく御一人の御発言の時間を二十分内外にいたしたいと、こう存じておりますので、さようお含みおき頂きたいと思います。  では先ず最初に公共企業体仲裁委員の関口泰氏からお願い申上げます。
  51. 関口泰

    証人(関口泰君) 私は証人に呼出されたのでございますが、仲裁委員としましては九月三十日に海野委員の洋航不在中職務代理を委嘱するというようなことでありましで、それ以来まだ二十日にもなりませんので、仲裁委員として何らの経験も知識もないわけであります。一昨々日でしたかこの材料を頂きまして、それから一通り拝見しただけなのであります。でありますから只今委員長の申されたような專門意見というのはおこがましいと思うのであります。ただこれを拝見しまして一般市民と申しますか、素人の感じたところを簡單に申上げるにとめようと思つております。実は第十六條をこういうふうに改正される。公労法につきましてはまあ新聞なんかで見ましても、できる時も可なりいろいろ納得の行きかねる、素人にはわかりにくいことがたくさんあつたのでありまするが、それを改正するならば、恐らくもつとたくさん箇所があつたんではないかと思いまするが、特にこの十六條と三十五條を緊急にこれだけ取出して改正しなければならないということについては、そう私切実に考えないのであります。ただ現行法でもこういうような解釈ができるのじやないか。ただこれを改正しまして協定裁定とを協定又は裁定というように一つにしてしまつていいのか知らんというような気心ちよつとするのであります。現行のような但書でこれを片付けるというのも納得行きかねるので、三十五條みたいにしたのも如何かと思うのでありまするが、何か協定又は裁定について政府は云々というのが、つまり協定だからして政府を拘束するものではないということを言つたのだろうと思うのでありまするが、仲裁の裁定がそのままで協定と同じように取扱われていいかというような気もしないではないのであります。併しこの停止條件付とか何とかいうようなことは今日とにかくとしまして、仲裁委員会裁定が最終的の決定であるということを国会がお決めになつて、それが尊重されさえすればいいんではないかと考えるのであります。そして予算上拘束はされない。併しその最終的決定である仲裁委員会裁定というものは無論尊重される。でありまするからそういう場合にこの両者を、予算と両方との関係をなめらかにするためには、むしろ手続規定みたように政府を拘束するものではないとか何とかいうようなことよりも、この改正案のほうがいいかと思うのであります。そういう意味においては改正して、先ほども申しましたが、改正して惡いというのではない。ただ現行法でも或る程度同じことじやないのかと素人には考えられるということを申しただけでありまして、改正案に反対といろわけではありません。むしろこのほうがわかり易いかも知れない。ただ協定裁定を一つにしていいものか、或いは日附を以て履行の開始日とする。というような言葉も熟していないのじやないかというような気がするのでありますけれども、これも成るほど遡つて効力を発生するというのでは続きが惡いような感じもしますが、そんなことは私から申上げないでもいいでありましよう。不明瞭な意見でありまするがこの両條に対しての意見を申上げました次第であります。
  52. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 御質問は又午前と同じく一括して御願いすることにいたします。  では次に同じく公共企業体仲裁委員の今井一男氏からお願い申上げます。
  53. 今井一男

    証人(今井一男君) 今回参議院におかれまして、暫く問題となりました十六條、三十五條の点について改正案を御審議下さるということは関係者としまして深く敬意を表したいと存ずるところでありますが。この問題につきましてはすでに午前中各証人からもいろいろ申上げたことがあるだろうと思いますので、こちらへお呼び出しにあずかりましたのは、実はこの問題が中心であろうとは存じますけれども、この機会に外にも問題点ででき得れば御勧告を願つたほうがいいのではなかろうかと思う点を、頂きました時間の二十分の範囲内で申上げさして頂きたいと存じます。尚最後に簡單に十六條、三十五條についても触れさして頂きたいとかように存じますが、よろしうございますか。
  54. 赤松常子

    委員長赤松常子君) よろしうございます。
  55. 今井一男

    証人(今井一男君) この公労法は申すまでもなく二十三年七月のマ書簡によつてできたものでございまして、マ書簡は言うまでもなく国家公務員に対しまして従来の労働法規の適用から一切除外いたしまして国家公務員法というものを適用し、政治的活動その他一切の労働関係の法規を区別するために発せられた書簡であります。この際、国鉄専売につきましては国家公務員と切り離す、こういつた趣旨がはつきり出ておりますので、従いましてあの書簡に掲げてあります争議権の否定、及び調停仲裁関係以外をのけましたならば、同じ一般の労働法規の観念によつて律せらるべきものだと思うのでありますが、現在の公労法はそれが非常に歪められておるように見受けられるのであります。まあ俗語で申しますと下駄をはいた嫌いが多分に私としては感ぜられるのであります。例えば労働法規の、労働組合法にいたしましても労調法にいたしましても、基準法にいたしましても、第一條にはそれぞれ労資対等の原則であるとか、人たるに価する生活であるとか、或いは公正なる解決であるとかいつた文句が掲げられてありまするが、公労法一條におきましては單に公共企業体の正常なる運営を確保する。公共企業体のことばかり心配されておるような書き方で出ております。これはやはり労資対等の原則とか或いは公正なる解決とかいつた立場を第一條から謳つて出て行く必要があるのではなかろうかと存ずるのであります。それが一つ、それから次には第四條のオープン・シヨップの問題であります。労働組合法との権衡から申しましてもこういつたことは実際の運営に任せるのが一番至当であろうかと思うのであります。事実このために非常にたくさんの組合ができるといういうようなことになりますというと、経営者としても非常に仕事の上に困る問題も起つて参りますので、現状は幸いにして労資共に工合よく運営しておられますけれども、併しながら法文がこうなつておるということは実は余計なことではなかろうかと考えるのであります。それかろ組合員の卸囲を政令に讓つておるということなども、労組法との権衡上妥当を欠くのではないか。特に一説によりますと、公共企業体政府とは一体であるというような議論もあるようでありまして、私はそう考えませんけれども、そういつた見方をとりますというと、政令に譲るなんということは余りほめた方法ではなかろうかと思うのであります。  それから第五條の不当労働行為につきましても若干問題があると思います。第五條の中に特に組合員であるということを理由として職員として雇い入れないという文句がございますが、職員でなければ組合員になれないということははつきりしておるのでありますからして、この職員として雇い入れないという言葉は恐らく実用の価値がないのではないか、私はちよつとナンセンスのように感じます。それからその後段のほうに「組合に加入しなかつたことをもつていかなる不利益な取扱も受けない。」、これはオーブン・シヨップ制と関係するという説明になつておるようでありますが、この点も非常に疑問があります。労働協約は申すまでもなく組合員にだけ適用されるのが原則でありますからして、たくさんの組合の存在を前提としますれば、こういう事自体は起り得ると思うのであります。のみならずこういつた規定国家公務員法にも確か見受けなかつた規定でありまして、これも労組法との権衡上からも又裁判所における取扱の上からもおかしいのではないかと感ずるのであります。それから不当労働行為の場合労働組合法によりますと、御承知の通り団体交渉を正当の理由がなくてすれば不当労働行為になりますが、これは公労法にはございません。公社にはそういうたことはない。こういう前提から出発しておるのかも知れませんが、最近団体交渉の問題につきましては可なり議論もされておりますし、やはり労資対等の原則から申せば、私はやはり労組法と歩調を合わせるほうがベターであると考えます。  それから第七條の専従職員の数を公社が一方的に決定できるということは、労資対等の原則から申しますと、全くひどい規定だと思います。この法律を非常に字句的に忠実に解しますというと、専従職員を一名も許可しない、一名も任命しないということも私には可能ではなかろうかと解されます。国鉄のような五十万の組合でも一朝にして無力にすることができるのではないか、かような感じを持つものであります。少くとも労資対等の原則から一方的にきめさせるという建前は抹殺の要があるのではなかろうかと感じます。  それから厄介な法律としまして第八條団体交渉の範囲の規定でありますが、この書き方が実際無理であります。第一項におきまして管理運営の事項は対象にできないと言つて、第二項において次の事項はできる。できるとできない両方から書くということは重複するか、間があくかどつちかであります。団体交渉の対象になるか、ならないかというようなことは、むしろ実際の運営に任せるほうがベターで、労組法と調子を合わせるべきである。かように感ずるものであります。特に第一項におきまして公社のこの管理運営に関する事項は団体交渉の対象にならないといたしますと、こういつた規定のない労働組合法におきましては一般労働組合は管理運営に関する事項はすべて団体交渉ができる。こういう反対解釈も可能になりはしないか、却つて困ることになりはしないか。従つて団体交渉の範囲というものはまあ厳密に申しますと問題点は起りますが、その問題点は調停や仲裁で多年の経験によつてうまく解決して行く問題だと、こういうふうに感ずるものであります。それから第九條以下の交渉單位の問題でありますが、交渉委員考え方がこの法文を読んで見ますというと、非常にあいまいに私としては感ぜられるのであります。と申しますのは、組合の代表として交渉委員考えないで、職員の代表として考える、それがオープン・シヨツプである。而も一つの組合品は他の職員代表と相談をして交渉委員をきめる。その交渉委員に対してはすべて一人の代表者を選ぶ、こういつた仕組になつております。交渉委員というのは申すまでもなく団体交流をし、団体協約を結ぶ印を押す委員であります。ところが十一條には交渉委員公共企業体の総ての職員を代表する排他的代表者である。ということになつております。すると労働組合に加入しようとしまいと、実際の職員権利を代表できるというような、いわば労働組合の基本建前でありますところの労働組合組合員のために団体協約団体交渉をするという建前の例外をなすような書き方に見受けられるのであります。若し私のそう言うのが間違であればよろしうございますが、法文が若しそういうふうに解釈されますと、これは労働組合の基本的な建前とぶつかる問題でありまして、私相当に検討の要があるのではなかろうかと思うものであります。幸いにして現在のところ国鉄にも一つの組合しかございませんし、実行問題には別に専売におきましても、国鉄におきましても支障はないようであります。併し法文がそうなつておるということは今後にやはり紛議の基になる虞れがあると思うのであります。このぐらいにいたしましてあと十六條のことを一言申上げたいと思いますが、マ書簡の狙いは、私といたしましては国家公務員に対してはルーズベルト大統領の解釈を持つて参りまして、政府国家公務員の組合は団体交渉をする間柄にない。若しするのならば公務員国会とやるべきだ、こういつた考え方によりまして結局人事院というものをこしらえまして、人事院決定が直接国会と繋がる、こういつた考え方を持つことによりまして公務員の組合が倒閣運動等を起すような、政治的に走るような途を防いだもの、こう解釈されるのであります。と同様の意味におきまして国鉄専売につきましては公社と組合が団体交渉をやる、その結論が得られない場合においてはこれを又国会に持込んで国会で処理して頂く、こういつた狙いであろうと感じられ、又こういつたことによりましてそれまでありました日本公務員の労働運動のゆがめられた一切の問題が解決されるというのがマ書簡の狙いだと思うのであります。そういつた見地に立ちますれば、十六條の問題も実は先ほど関口さんのおつしやいましたように、現行法におきましても問題は少いのじやなかろうかと思われるのであります。特に英文からいたしますというと十分に解釈されて来る問題でありまして、先ず行政内部における手続でありますところの政府の流用承認権がここに出て来る余地がないということはその後の国鉄、專売の予算総則給與に関する一ヶ條が入りますところから明瞭に言える点でありまして、その意味から十六條の一項に関する点におきましては、すでに政府解釈もお変りになつたのではなかろうかと こういつた感じがいたすのであります。併しそれにいたしましても、関口委員のお話のようにそれを明瞭ならしめるということは確かに実益のあるところでありますが、併しながら不可能な資金支出という言葉をこのままにしておきますということは、やはり若干の問題が存しやしないか。その意味におきまして国会手続を経なければ処理できないようなものが不可能な支出であるといつたような形容詞的のものを承認する余地がないものというようなことを私としては感じました。大した点ではございませんが、そういう感想も持ちます。それにいたしましても国会におけるこの問題の審議は、国民の債権債務に関する協定裁定を、そのものを審議するのではなくて、財政上の見地から予算的に、資金的に御覽頂くという建前からはつきりされた点におきましては、この参考案は確かに優れておると思うのであります。ただかようにいたしましても私はやはり私の想像でありますが、問題が起り得るのじやないか。例えば退職手当につきまして今の予算で十分カバーできるという意味協定ができた、従つて国会にも全然お諮りしなかつた。ところが一年のおしまいになつて非常にたくさんの退職者が出たために、前の協定では予算で抑えなくなつた。その場合にはやはり予算の補正なり追加なりということを国会にお願いしなければならない問題が起つて参りましようが、結局この問題は、この協定なり裁定なりと同時に、これが私共の解釈によりますれば、一般の物を買入れるとか、何とかいう契約関係と同じようにその協定裁定と同時に新しい権利関係におきましてはつきりするという点がございませんというと、いろいろ想像しますとやはりこれでも引つかかる。解釈如何によりましてはごたごたの起ることはあり得るのでございます。飽くまではつきりさせようと思いますれば、そのほうの関係民間労働組合関係と全く同じように解釈し、ただ予算支出権は国会の議決を経なければ成立しないといつた点をはつきり打立てることによつて、一切の問題が解決できるのではなかろうか、こういつた感じを持つものであります。甚だ取りとめもない、少し問題を広く取上げて失礼いたしました。
  56. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では次に日本国有鉄道総裁加賀山之雄氏にお願いいたします。
  57. 加賀山之雄

    証人(加賀山之雄君) 私は日本国有鉄道総裁加賀山之雄でございます。この問題を申し上げる前に、この国有鉄道の経営者側といたしまして、その立場について一言述べさして頂きたいと思うのでありますが、申すまでもなくこの労使間の問題は何といたしましても自主的に両者の間で解決するということを根本的建前として行かなければならんということは私共重々承知いたしておるのでございまして、労働組合側とも常にかような話合い、いろいろな協定をいたしておるという実情でございますが、特に給與予算に関する問題となりますと、これは後にも申上げますが、国有鉄道当局といたしましては極めて自主性を欠いておるのでございまして、その点に関するいわゆる協約協定というものは自主的には、なかなか單独には解決し得ないのが従来の例に相成つております。従つて必ず仲裁委員会並びに調停委員会を煩わし、更に政府国会を煩わすということに相成つておるのでございまして、只今も第二次裁定継続審議中に属しますこと甚だ恐縮に存じておる次第でございます。  次に昨年六月からいわゆる公共企業体として機構が改編せられたのでございますが、それ以来一年半に相成りますが、建前といたしましては、いわゆる公務員の立場とは、従事員の立場は異なつたものと観念せられるわけでありますが、実情としてまだ非常に日が短いために、まだ公務員と判然と区別あれ、又全然別の建前で行くというような考えはなかなか実際問題としては困難な立場にありますが、給與に関しましても私共といたしましては、公務員とは別個に体系水準を考えて行くべきものであるというふうに観念をいたしておる次第であります。  以上の二点を前提といたしまして、この公共企業体労働関係法第十六條の改正法律案に関して意見を述べさせて頂きたいと思うのでございますが、先ほど今井委員が述べられましたように、本委員会がこの條項の改正に意を用いられましたことは、我々といたしまして非常に敬意を拂いたいと存ずる次第であります。先ず第一に公共企業体仲裁委員会裁定政府を拘束するような御趣旨改正することになるわけでございますが、これは仲裁委員会裁定を権威付けることとなるのでありまして、公共企業体労働関係法の立法の経過並びに精神からいたしましても、当然のことと考えられるのでありますが、ただこれは関口仲裁委員のお言葉にもあつたように存ずるのでありますが、協定又は裁定というふうに協定をも一緒に含めて規定されておる。これは国有鉄道は御承知のように現行法上予算措置につきましては、いろいろと政府の統制を受けておるのでございまして、それのみならず職員給與につきましては国有鉄道法第四十四條の規定におきまして、その基準に関して給與について給與準則を定めなければならない。日本国有鉄道が自主的に給與の準則を定めなければならないということに相成つておりながら、予算的にほ当該年度の予算の中で給與の額として定められた額を超えるものであつてはならないというふうに、非常に制限を受けておる次第でございます。従いまして協定をいたすような場合当然これらの條項が問題になるわけでございまして、願わくばこの点につきましても併せてこの際御考慮を頂くならば先ほど申しました点から申しまして、大変有難いことであるというふうに存ずるのであります。  次に現行法に基きましても、いつも基準として、又如何なる場合が予算上、資金上不可能な支出であるかというふうなことに関しましては明確を欠いておるのでございますが、改正案におきましてもこの点は同様に明確でないというふうに拝見するのであります。この点につきましても特に御考慮を頂くならば大変有難い、そのように存ずるのであります。最後改正案裁定協定の効力が永久に存続する建前のように改正されてあると存ずるのでありますが、債務が裁定協定で効力を発生してそのまま永久に存続するということは、いつまでもすつきりとした状態にならないということになりまして、当事者といたしましては甚だこれはいわゆる紛争解決するということにならないということになるのでありまして、この点を、例えば国会の御承認がないときは裁定の効力はどうなるのかというような点について明らかにして頂くならば、これ又大変当事者としては右難いことである、かように存ずるのであります。以上極く概括的に意見を申上げた次第でございますが、尚詳細な点に関しましては小林局長、片岡局長等が参つておりますので、後お問い質し頂ければ御答弁申上げたいと存じます。
  58. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では次に日本専売公社秋山孝之輔氏にお願いいたします。
  59. 秋山孝之輔

    証人秋山孝之輔君) 私も只今の国有鉄道の総裁と同様な公共企業体の管理者の一人として、公共企業体としては全く性格が国有鉄道と専売公社は同様なものでありまして、常に人件費等につきましては独自の見解を以てなし得ないという点は常に不本意に存じておる次第でありますが、前議会にも問題に相成りました仲裁裁定は大蔵大臣の承認を得ればこれに応じ得るということから議会の問題になつたような次第でございますが、このたびのこの改正案につきましては全く我々経営者と組合側との地位を明確にする点において一歩前進したものと思いまして、この両者の関係を明瞭ならしめる改正案でありますから、この点は誠に結構なことと私は賛意を表する次第でございます。同時に又この国会を通過して法制化するようお骨折を願いたいと思うわけでございます。尚最後只今加賀山総裁からお話になりました国会が我我に対して裁定承認され、然るにかかわらず我々が予算上、資金上これを履行し得ないという場合には、将来この責務が継続するものか否や、それで打切られるものであるか、この点もこのたびの改正案において明快に御決定になるならば誠に結構なことだと思う。大体私の申上げたいと思うことは簡單でありますけれどもそれだけです。
  60. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 以上で各証人意見の御開陳がございましたが、それに関しまして御質問のあるかたの御発言を願います。
  61. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今井さんに特にお聞きしたいのですが、そうすると何ですか、先ほど言われるような裁定協定がその私権と同様な関係において定まるものであるということが、どいうふうにこれじや表現できていないというお考えでございましようか。
  62. 今井一男

    証人(今井一男君) 私も非常に急いで申上げましたので言葉使いが不適当なところがあつたと思いますが、ありましたら御丁承願いたいと思うのですが、私といたしましてはこの條文の建前が公労法に書いてないところはすべて労働組合法による。労働組合法の労働協約に関する規定は全面的にこちらに適用になるという建前からいたしますれば、その点ははつきりしておると思うのであります。併し現在そういつたことにつきまして確かに議論が行われております。のみならず現行法におきましては協定そのもの、裁定そのものを国会にかけるというような規定になつておりますが故に、特にその点については疑の義生じ得る余地が残つております。今回の参考案によりますというと、それが裁定そのもの、協定そのものでなくて、予算上の措置だけをかけると、こういつた点がはつきりいたしますれば、恐らくこの議論も余ほど下火になるのではなかろうかと思うのでありますが、そういつた点からいたしますと、下火になればよろしうございますが、その点に疑問もございますのでやはり国会承認、不承認ということは協定裁定そのものの効力に影響を及ぼすものではなくて、予算上、財政上の監督権の立場からこの支出をしてよろしい、して惡いということをおきめになりますことが、又私としては條理上わかつておるような仕組に思いますが、反対の意見も極めて強力でございますので、この点の立場をはつきりお出し頂くことが、より基本的な解決にまあ有力な根拠になるのではなかろうかと、かような感想を申上げたにとどまります。
  63. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それでは重ねてお尋ねしますが、この三十五條の従来の但書を抜きまして第二項として但書の分を挙げたのですが、それから十六條はそのとき政府は何をすべきかということに重点を置いてやりましたのですが、それで不十分だというお話を更に突つ込んで具体的に考えて見ると、三十五條に何か最終的拘束力を発するということについて、予算とか資金とかに関係なしにそうなるのだという、こういうようなことが明文上必要だとこういうお考えでしようか。
  64. 今井一男

    証人(今井一男君) 私もそこまでこの問題を具体的に掘り下げて字句の按配まで実は案を持つておりません。
  65. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実は午前中にちよつと小林さんからお話があつたのですが、その問題はそれじやこの程度にいたしまして、更に先ほど丁度今井証人と加賀山証人とお二人から、同じかと思いますが、如何なる場合が予算上、資金上不可能かというふうな点についてまだその点の解決がこの法文についてない、こういうお話があつたように思うのですが、その点について予算上、資金上不可能な資金支出というものは国会の議決を経たとか何とか、その形容詞がなければいけない。こういうお考えなのでしようか。
  66. 今井一男

    証人(今井一男君) 私の解釈によれば現行法でもそこははつきりしておると思うのであります。というのは、第一項の前段と後段との噛合せからはつきり出て来ると思うのでありますけれども、一方に財政法、会計法というものの存在からそれに対する強力な反対説のあることは御承知の通りでありまして、今度はそれが前段と後段という関係でなく、一つのセンテンスにおさまつておるのみならず予算上、資金上必要なる手続国会に対してなす。こういつた意味におきまして不可能な資金支出内容とするというのは、うしろの文句によつて縛られるというふうに読むのが当然のことだと私共は思いますけれども、併しながら今まででもセンテンスは二つに切れておりますが、英文では切れておらないというようなところから、従来でも疑問がないと言えば疑問がなかつたとも言えるのでありまして、その意味から若干の疑義が又残りはしないかということを恐れて申上げたのでありまして、平たく読めば私は堀木委員の仰せのように疑義を持つこと自体が無理だとは全然考えておりません。
  67. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 重ねてお尋ねしますが、そうすると、希望すべきことは、国会の議決を経た公共企業体予算上、資金上、こういうことでございますか、入れたのは……。
  68. 今井一男

    証人(今井一男君) 強いて入れれば国会による所定の手続がなされなければ資金支出が不可能な内容協定又は裁定については所定の手続、実にくどい話でありますけれども、まあくどい意味におきまして普通の法文の解釈としてはまあなくて十分なことと思います。
  69. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 加賀山証人にお尋ね申上げますが、今確かあなたも予算上、資金上不可能な資金支出内容とするというのはどういう場合かということをお開きになつたと思いますが、今、今井証人の言われたような意味で言われたのでございましようか。
  70. 加賀山之雄

    証人(加賀山之雄君) 同様な意味においてでございます。
  71. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 いや更に重ねてお尋ねしますが、要するにここに協定という文句がありましても、予算総則規定乃至は日本国有鉄道法の四十四條がある以上は、この協定という字句は殆んど要らないのだ、こういう意味なんでございますか。
  72. 加賀山之雄

    証人(加賀山之雄君) 要らないと申しますと語弊があるのでございますが、入つておりましてもこの四十四條のほうで消されてしまつて、非常に効果の少いものになろうかと、こういう意味でございます。
  73. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それから加賀山証人と秋山証人にお聞きするのでございますが、債務が永久に存続するような形は困る、こういうお話なんでございますが、それについてどういうお考えがあるのか、御両所からお聞かせを願いたいと思います。
  74. 加賀山之雄

    証人(加賀山之雄君) 私は成案を持つているわけではないのでございますが、これもまあ先ほどの問題と同じように、解釈上そういう十年も百年も後までの予算が可能になるというときまで続くというようなことは常識上考えられないことと存じますが、併しこれは解釈の問題になると思うので、そこを何か明文で明らかにして置いて頂いたほうが非常に明確になつていいという希望だけを申上げて置きます。
  75. 秋山孝之輔

    証人秋山孝之輔君) 私の考えもその債務が今加賀山総裁のお話になつたように常識から考えれば、そう長くは続かないものと思いますけれども、やはりはつきりして明確にして頂いたほうがよろしい、こういう意味であります。
  76. 中村正雄

    中村正雄君 加賀山さんにお尋ねしたいのですが、今の最後の債務の問題なんですが、これは現行法のときに現在非常に解釈が違うわけなんで、現在の三十五條ですと、債務というものは国会審議にかかつておるというような解釈になつているので、これが公労の精神から言つておかしいというので、政府公共企業体国会とがそれぞれ別個な人格を持つているものであり、而も仲裁委員会裁定というものは、一つの労働組合と一つの公共企業体とを統治するものであつて政府国会裁定とは何も閣係ないというような方向にしなければいけないというので、三十五條の但書を消しまして、第一項としましては仲裁委員会裁定当事者双方を最終的に拘束する、こういうふうに書き改めたわけなんです。従つて当事者双方と言えば公共企業体労働組合でありまして、政府国会裁定自体の拘束力については何も関係ない。反対に公共企業体が債務の履行をする場合におきましては、やはり予算自体が国会審議を経ているので、その手段を第二項にきめ、十六條に裁定協定一括いたしましての履行の手段をきめておるわけなんで、この場合裁定の効力を一定の時まで存続するように何らか明確な線を置かなくちやいけないという御意見はよくわかるわけですが、そうすれば実際問題としてどういうふうにしたらいいだろうか。国会審議に繋がつているわけですけれども、これはどこまでも債務の履行だけが、公共企業体の特質上予算国会審議を経なければいけないから、国会のほうでやるという仲裁委員会裁定自体には国会政府も拘束力を受けるわけじやないので、当事者双方と言えば、どこまでも公共企業体労働組合ですから、その債権債務をいう明確にするような線を引くかというようなことについては、何か御名案がありませんか。
  77. 加賀山之雄

    証人(加賀山之雄君) 名案と言われましても大変困惑するわけでございますが、それはまあ先ほどの「予算上又は資金上、不可能な資金支出」とは、どういうことを一応基準にして、どういう場合に言うのかということにも関連して来るように思うのでありまして、例えば国会が最終の決定として提出された予算、これはこれを限度として給與を出すべきであるという承認がつた、或いはそれ以外に承認があつた。来年度の予算になつて今度は余裕が出て来る場合がある。そういつた場合に前の裁定で当事者が拘束されているから、前の裁定をそのまま翌年度に持越して、その範囲内の余裕が出れば予算上、資金上可能な支出考えねばならんというふうに解釈されはしないかと思うのでありまして、従つて一つの裁定があつたという事実を、一つの時期を以てその効力を発生できる時期に定めるということが私共として望ましい。これが翌年度或いは翌々年度までずつといつまでも今後も第一次、第二次、第三次と裁定が続いて、それが皆効力として当事者に残つて行くのであるというような考え方を持たれても非常に妙な労働関係ができてしまう。ただ成文上どうしたらいいかということについては私共不敏で、まだ成案を持つておるわけじやないので、御考慮願えれば大変有難いというふうに思つております。
  78. 中村正雄

    中村正雄君 私の御名案といつてお聞きしたのは成文上、こういう條文をこしらえればいいというのじやなくして、構成の問題からお尋ねしたわけなんですが、勿論裁定がそのまま履行になれば消滅するのは当然でありまして、履行になりません場合のことをお考えだろうと思うのですが、そうしますと、一応公共企業体労働組合との双方を拘束して、そうしてそれを履行するために、いわゆる予算上、資金上不可能な支出履行するためには、別途国会に対する予算手続をやらなければいけないという方向をとつておるわけでしようが、若し国会承認する承認しないというようなことは、これは裁定自体ではなくて、裁定履行するための一つの予算的、財政的措置国会承認するかしないかということをやるという建前に十六條、三十五條はなつておるわけなんで、若し国会承認した、それでもその裁定が効力を失うとしますれば……、仲裁委員会を第一審にして、国会を第二審にするような構成に持つて行かなくちやいけないだろうと思うのです。それは公労法考え方とはやはり違つておるわけなんで、現在の公労法考え方で行けば国会を第二審にするようなことは現在十六條、三十五條から見ても考えていないわけなんです。国会政府並びに仲裁委員会は別個のものであり、又政府公共企業体とは別個のものであるということにする限りにおいては、消滅の時期はやはり履行しなければ消滅ないということしか制度の構成上言えないと思うのです。従つて私がお尋ねしておるのは、どういう制度がいいだろうかという意味の御名案をお伺いしたわけなんです。
  79. 加賀山之雄

    証人(加賀山之雄君) 問題の中心になるのはいつも予算でございますから、その予算が中心に審議されて、この予算が不承認になればこれは別に一審二審というふうに考えられなくても、国会としては国民の意思を代表して最終的な決定をされたものとして、一向差支えないのじやないかという気持もするのですが、どうも私その辺の法律関係は不敏でわからないのでございます。
  80. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 参考案から離れたことですが、加賀山証人及び秋山証人公共企業体の財政的自主性がないことを歎いておられるのですが、法律案は政府が出すでしようが、これは公共企業体の総裁として至急それを改正なされます御意思、つまり財政の自主性を回復するための手続を至急おとりになる御意思があるかどうかということを、お話し願うと非常に結構だと思います。
  81. 加賀山之雄

    証人(加賀山之雄君) 機会あるごとに私共といたしましては努力をいたしておるのでございますが、ただ企業伏としての一方的意思のみではなかなか改正の機運に向わないという実情がございますので、これらの点につきましても政府並びに国会におきまして御理解のある御援助をお願いしたい、かように考えておる次第であります。まだ具体的手続を経る段階まで行つておらないというふうに申上げます。
  82. 秋山孝之輔

    証人秋山孝之輔君) 今堀木委員の非常に御理解ある同情的御質問でありましたが、私はこの公共企業体というものについていろいろ考えて見ておりますが、これは單に予算措置とかそういうことだけではなかなか解決しない問題であります。非常に根本論になるのでありますが、まだその根本論について私の意見として、申上げるほどの具体的な案に到達しておらないのであります。大体これは只今加賀山さんの御話になつたように、公共企業体が如何に足掻いても大体の空気がそこに醸成されない限りは、私はむずかしい問題だと思つておりまして、まだこういう案を持つておる、こういう時期にこういうステップをとろう、こういうところまで実は考えておらんのであります。
  83. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 外に何か…。
  84. 加賀山之雄

    証人(加賀山之雄君) もう一つ附加えて置きます。只今申しましたのは言葉が足りませんでしたが、この自主性を得るということは私共の考え方といたしまして、法制的な意味でこの解決を図るということも一つの方法であると存じますが、併しながら私共今努力を集中しておりますことは、内部において経営を十分に自主的に合理化する、その点からの自主性をいわゆる実体的にと言いますか得てということ、又予算の編成を極めて丹念に良心的にいたしまして、その面から自然に自主性を生んで行くというふうな立場を我々はとつて努力を続けておる段階でございまして、まだ法制的にそれをするという段階に至つていない、かように言葉を附加えて置きます。
  85. 今井一男

    証人(今井一男君) これは余計なことですが、只今の中村委員の御意見に対しては、私も実は意見を述べる際にその問題について若干触れたかつた点もあるのですが、甚だ僣越でありますが、一言申上げますと中村委員の御提議になりました問題は第一次裁定のときに、仲裁委員の中でも議論いたしまして、結局三人三様の見解になつた問題であります。私は併しながら中村委員のおつしやつたことが理論的にも正しいのみならず、一般の労組法との関係からもそうなくてはならない。のみならず予算は一つでありますからして、従つて前のほうの履行を強制すれば、あとの新しい要求はできなくなるということにおきまして、結局自然に妥協で解決する、新しい協定によつてできて行くと思うのであります。そういつたことまで放棄して何もかもお世話をすることはむしろ余計だと思う。その意味におきまして私の少数意見でありますが、総裁等の意見とは前からその趣を異にしておることを余計なことでありますけれども、そういつたとにかく地についた団体交渉の慣行というものが公労法の精神から言つても望ましいのではないかというふうに考えます。  それからもう一つ出しやはりついでに一言申上げますと、公社の自主性も極めて大事なことでありますが、先ほどの堀木委員のお話でありますけれども、実は普通の予算では御承知の通り人件費というものは、極めて特殊な意義を持つた予算上の拘束を受ける仕組になつておることは、これは長い間の歴史でありますけれども、これは公社予算におきましては流用を総裁限りでできますように、極めて企業経営に弾力性を持たせる建前において予算ができておるにかかわらず、人件費につきましては今年度予算総則におきまして、全く官庁と同じに扱つておる。これを経営者の立場から申しますと、人件費で使おうと物件費で使おうと、これは経営の操作から申せば同じことであります。人件費に限つてかくのごとく縛るということ自身、経営者としても極めてやりにくい点ではないか。先ず総則を直して頂くことが私は公社の自主性には一番肝心なことである。又従来二十四年度にはなかつたことが二十五年度になつて初めて入つたという点は、特に参議院労働委員会におかれましては、愼重な御考慮を願いたいと思います。余計なことでありますが……。
  86. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 他にございませんか。質問は終了してよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では各証人の皆様大変お忙しいところを御出席頂きまして、公労法改正に対し有益な御意見を頂きましたことを厚く感謝いたします。それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後三時二十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     赤松 常子君    理事            一松 政二君            原  虎一君    委員            城  義臣君            中村 正雄君            山花 秀雄君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   証人    公共企業体仲裁    委員長     荒井誠一郎君    公共企業体仲裁    委員      今井 一男君    公共企業体仲裁    委員      関口  泰君    日本国有鉄道総    裁       加賀山之雄君    日本専売公社総    裁       秋山孝之輔君    国鉄労働組合副    執行委員長   星加  要君    全専売労働組合    執行委員長   平林  剛君    専売公社中央調    停委員長    小林 直人君