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1950-07-18 第8回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十八日(火曜日)    午前十時十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和二十五年七月十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第四日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。  昨日に引続き順次質疑を許可いたします。曾祢益君。    〔曾祢益登壇拍手
  4. 曾禰益

    曾祢益君 私は日本社会党を代表いたしまして、総理施政方針演説に対しまして、特に国際問題に関連いたしまして若干の質問を申上げたいと存じます。  第一は講和問題であります。  吉田首相講和問題に関する構想は、全面講和のごときは抽象的には望ましいといたしましても現実的には不可能である。であるから、講和を肯んずる国々との間のいわゆる單独講和又は多数講和日本から進んで求むべきである。これを最近になつて早期講和という表現を用いて唱道されているものと言えるでありましよう。日本が速かに講和條約を締結いたしまして、特定條件の下に自主独立国として再び国際社会に復帰を認められることの緊要なことにつきましては、誰しも異論のないところと存じます。併しながら今日国民の求めているところのものは、必ずしも講和條そのものではないのであつて日本自主独立と、日本憲法に印した安全保障と、世界平和の確保の三つなのであります。殊に総理言葉を借りて言えば、「我が国軍備撤廃の結果、我が安全保障如何にするかということが常に国民の懸念の中心であつた」に拘わらず、従来政府故意にこの点に触れることを避けて参つたのであります。第一の自主独立回復は、講和條約の締結によることが原則であることは言うまでもないところであります。併しながら元来講和條そのものは、過去の交戦状態の終結を法的、條約的に確認すること、従つて平常の国交を回復すること、又軍事占領を終結いたしまして内政の自主回復すること等の効果は持つておるものの、講和條約それ自身日本安全保障世界平和を作り出す性質のものでもなく、又そのような効果を持つておるものではないのであります。従つて吉田首相のごとく、中期講和に努めさえすれば万事うまく行くかの印象内外に與えることは、決して正しい問題の捉え方ではないのであります。(拍手国民の知らんとするところのものは、安全保障や平和問題を如何にするかであつて、この点を故意にはぐらかすやり方と言わなければならないと存じます。而も現実の問題として早期講和論米英との單独講和論なのであるから、その場合に日本安全保障アメリカ側安全保障とが絡み合いまして、講和後におけるアメリカ側の兵力の駐屯とか或いは軍事基地留保というような問題が必然的に考えられて来るのであります。このことを切離してひたすら早期講和を唱えることこそ全く非現実的な空念仏に外ならないのであります。(拍手)我々は夙に、日本講和問題の正しいあり方は、講和條約、安全保障及び平和確保の三位一体的な取扱い方にあることを唱えて参つたのであります。而してなかんずくその中心問題が安全保障でなければならず、日本憲法に即した、日本経済自立の基礎を形作る安全保障世界的集団保障でなければならず、従つて講和條約の形式はいわゆる全面的なものを強く要望すべきであつて日本がみずから進んで單独講和を唱えることには絶対反対して参つたのであります。(拍手)この態度社会党のいわゆる全面講和論であります。  さて、この全面講和を阻む国際的な要因は、決して首相衆議院における鈴木茂三郎氏に対する答弁に言われたごとく、過去におけるソ連邦の講和会議の方式に関する独自の見解ばかりではないのであります。現下情勢におきましては、むしろ日本という戦略要地に対する米ソ陣営の相異なつた要請が最大の難関であることは周知の事実であります。そこで真に全面講和が望ましいという観点に立つ限り、而して日本としてなし得る限度において物事を考えるならば、日本としては、日本を非軍事化し、軍事的に中立化し、いずれの陣営にも特別の軍事的利益を與えない方向で両陣営の間の話合いの余地を残すように努むべきことが当然でありましよう。このことが我々の唱える中立的態度意味であります。而して、このことは安全保障国連に求めることと何ら矛盾せず、皆これと調和しておるのであります。併しながら外交には相手方のあることであります。従つて如何日本が主観的に善意を持つてつても、そればかりでは解決できません。況んや通常の外交権すらなき日本のことでありますから、複雑深刻な現下国際情勢において我々の希望が直ちに達成されることは期待し得ないでありましよう。  その場合の次善の策として、いきなり西欧陣営に軍事的、政治的にもまつしぐらに飛び込もうというのが吉田首相意向のように存じますが、それは今一つ可能性を忘れた、或いはこれを無視したやり方であると言わねばなりません。即ち我々は前に申しました講和條約、安全保障及び平和確保の三位一体的に考えた場合に、差当り世界の平和をこれ以上一層危險ならしめないで、日本安全保障を事実上処理しつつ、而も講和條約に上らないで日本自主性回復する途がありはせぬかを一層真劍に研究し、且つこれを連合国に要請すべきであります。このことは、連合軍占領下において、日本に対し内外政治経済自主性を恰かも講和條約が締結されたと同様の程度まで付與せんことを意味するものであります。この議論に対して、恐らく吉田首相は完全な自主権回復講和條約による外はないではないか、この一言で片付けるお考えかも知れませんが、それは独善と独断以外の何ものでもないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)そのような簡單な原則論では片附けられないところに日本講和問題の特殊性があるのであります。私はここにその道の専門家であられる吉田首相に対しまして、西ドイツ占領條例或いは戰争終了宣言等の先例を詳しく引合いに出す必要は毫も認めないのであります。併し西ドイツ日本との相違を知りつつも尚且つ若し米英にして真に單独講和を断行する意向がありとするならば、條約によらざる講和、即ち広汎なる自主権回復についても大きな手が打てる筈であると信ずるのであります。以上の点につきまして首相の御見解を質したいと存じます。  第二に質問いたしたい点は安全保障であります。  我々社会党が夙に安全保障について国連による世界的集団保障を求めるという態度を決定いたしましたのに対比いたしまして、政府は殊更にその態度を曖昧にして参つたのであります。第七国会におきまして、吉田首相はみずから武力を持たない自衛権というようなことを申されたのでありますが当時の客観情勢から見まして、而も総理のこれ以上の説明を回避した態度は、ややもすれば特定国との軍事協定を暗示したようにとられたのであります。而もこの度の朝鮮事件が始まりまして、国連安全保障理事会が拒否権問題の暗礁を巧みに避けまして制裁発動を敢行いたしまするや、突然国連を支持謳歌する態度に出で、施政方針演説中におきましても、安全保障の拠りどころを国連に求める構想を頗る及び腰且つ煮え切らない態度ながらヒントしておるのであります。私は過去における政府の無定見を余りこの際問題にしたくはございませんが、この際、次の点だけを問題にいたしたいと存ずるのであります。  その一は、政府はこの際日本安全保障形式特定国との軍事協定によるべきではないという明確な態度を打ち出すべきであります。  その二は、これと表裏の関係に立つことでありまするが、日本憲法に印した安全保障国連による世界的集団保障であつて、この保障に均霑することは日本国民権利であり、連合国も道義的の責任があることを明確にすべきであります。日本国憲法前文におきまして、「日本国民は、恒久の平和を念願し、‥‥平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と言い、又第九條におきまして、「日本国民は、正義秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」て戰争を放棄し、非武裝誓つたのであります。このことは日本安全保障国連集団保障によつて確保されることを予想したものであることは申すまでもないのであります。次に、同じく前文の末尾にあるところの、「われらは、平和を維持し、專制と隷従、圧迫と偏狹を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と言い、更に「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに專念して他国を無視してはならない」云々と言つておりまするところのものは、大西洋宣言を確認した彼の連合国共同宣言精神敗戰日本にも適用する意図の現われでありまして、我が憲法を承認した連合各国は、道義的にこのような待遇と前述のような国連による安全保障日本に與える責任があることを指摘したいのであります。我々が日本国憲法を守る限り、而して我々みずからが冷たい戰争現実に眼を奪われて、世界一つであるという理想を捨てて、一方の陣営とのみの軍事的な提携を図らない限り、我々日本国民の奪うべからざる権利としてこれらの待遇安全保障連合国各国に対してひとしく要求することができると存ずるのであります。このことは、日本の無條件降伏の事実とか講和会議の席上における日本代表待遇というような問題とは全然別個でありまして、我々は何ら憚る必要がないのであります。然るに政府の従来の態度は、ややもすれば一国との軍事協定を肯定せんとするがごとき傾きがありました。このことが如何軽卒であるかにつきまして、私は一例を挙げたいと存じます。北大西洋同盟條約に加盟したノールウエーがソ連に対しまして、ノールウエーが攻撃されるか或いは攻撃を以て威嚇されない限り、他国に対して軍事当地を提供しないことを約束した事実があるのでございます。更にこの度の施政方針演説や過日の記者団会見における総理言葉は、一方におきまして国連ので全保障をヒントしつつ、他方におきまして「自由国家群と共に」とか、「自由主義国家一員として」とかいう表現を用いられて、西欧民主陣営とのみの提携を強調する余りに、如何にも国連そのもの二つに分裂することを予想し、或いはこれを歓迎するのではないかというような印象を與えていることは、甚だ不謹愼だと言わなければならないのであります。(拍手日本国民といたしましては、当然に国連二つ世界の架橋の役割を演ずることを祈念すべきであつて、我々のなし得る限り、同じ理想の象徴であるところの我が憲法を守り、冷たい戰争の緩和に向つて努力すべきだと思うのであります。(拍手)この点に関して総理の明確なる見解を質したいと存じます。  第三は朝鮮問題であります。  凡そ平和問題に関する基本的な態度といたしましては、憲法に定めましたごとく、正義秩序に基く国際平和の維持を出発点としなければならないのであります。一切の暴力による秩序の破壊や侵略に対しましては、利己的な孤立主義によらず、道義的な排撃と非協力を以てすることが必要であります。この意味から我々は、日本安全保障についても、永世中立孤立主義に満足せず、国連主義をとつているのであります。又侵略判定につきましては、現下国際社会の段階におきましては国連判定に待つ外はないのでありまして、その判定を道義的に支持すべしとするのが我が社会党態度でございます。今日国際共産主義陣営が行なつている平和攻勢なるものは、彼らの陣営侵略に対してはこれを解放と称してこれを肯定せしめんとし、これに対する抵抗を予め挫いて置こうという意図であつて日本共産党の展開している平和反戰運動がこの線に連なる謀略であることは申すまでもないのであります。飜つてこの度の朝鮮問題を見るとき、我々は北鮮武力統一は断じて是認すべきでないところでありまして、国連判定に対しましては精神的支援立場をとるものであります。併しながら日本が、国といたしまして、政府といたしまして、国連措置に対して積極的に協力すべきや否や。この問題は全然別個の問題であります。現に国連加盟国においてすら援助問題なかんずく武力援助につきましては、その国の立場々々によりまして区々別々でありましてなかなか愼重なものがあるのであります。これらの事例につきましては詳しくは申上げませんが、例えばスエーデンのごとき或いはインドのごとき、その態度を御覽になればはつきりお分りだろうと存ずるのであります。我が国立場考えまするときに、先ず我が国連合軍占領下にあつて国家としての意思を表示すべき地位にないのでありまして而も環境上、朝鮮問題は特に我々として愼重を期すべきであります。然るに従来の政府言動首相言動は、はつきり国家として国連の決定に対してでき得る限りの援助をなすべきであるというのであります。談一たび日本安全保障の問題に触るるや、独立国ではないとか、占領下にあるとか、かような理由で言明を避けんとせられる首相が、朝鮮問題となると言わなくともいいことまで、しやべるとは、如何なる理由によるものであるか。(拍手)我々はその意図那辺にありやは暫らくおきまして、極めて軽卒、不謹愼と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  首相は、或いはこの際進んで国連援助態度を示すことによつて我が国国際的地位の向上、即ちお得意の早期講和の実現に資したいとのお考えかも知れませんが、我々は国連加入又は国連による安全保障の適用を受ける場合においても、我が国特殊性即ち非武裝、非軍事性と調和する條件、換言するならば、我が方の協力限界愼重考えなければならないのであります。即ち首相の言うごとく、「今はできることに限界がある」のではなくて、「占領下にあろうがなかろうが、日本としてなし得ることには当然に限界がある」のであります。この点を内外に明らかにしなければならないと存じます。更に又首相言葉の中には、反共国際十字軍に進んで一枚加わりたいというような、好戰的な、ドンキホーテ的な臭いがするのは、我々の断乎として排撃するところであります。(拍手反共と言いさえすれば米英側に評判がいいと思うのは、これは首相独断でありまして、日本反動保守化はいわゆる早期講和にも惡影響があるのではないかと指摘したいのであります。この際、政府といたしましてなすべきことは、政府及び国民降伏文書に基く義務として、又その建前の下に、連合軍に服従協力することである。ただその際、連合国関係業務に携わる労働者権利利益の擁護に万全を期することが必要であると存じます。これらの点に関しまして首相及び労働大臣見解を質したいと存じます。  第一四はいわゆる超党派外交についてであります。  私は首相がすでに超党派外交を、少くとも我々社会党に関しましては断念されたような言辞でありますので、今更古いことを詮索することは止めたいと存じます。ただ一言申したいことは、他党の考えでもよくこれを消化して行こうという大らかな気持と謙虚な態度がなくてはならないし、又自分考えを率直に告げる誠意がなくてはならない。早期講和というスローガンの下にただ默つてついて来いと言わんばかりの態度をとつて、うまく行かないとなると相手立場は依然として理解せぬままに惡口雑言を言うようなことでは、初めからまじめに超党派外交考える資格がなかつたことを証明するに外なりません。(拍手)特に全面講和永世中立紛争介入論アブサードであるというがごとき、又中立論共産党のシンパだと断ずるごとき、反共の一念に凝り固まつた老いの一徹、吉田さんの気持としては了解し得るのでありますが、(拍手)一国の首相の言としては沙汰の限りであると言わざるを得ないのであります。(拍手中立永世中立共産党の第五列だと言うに至つては、スエーデンやスイスのごとき立派な民主陣営に対する重大なる侮辱であると言わなければならない(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)と共に、国際共産主義謀略のあの手この手を知りつつも、尚且つ一つ世界理想を追求するところの天野文部大臣を含めた世界知識層の物笑いでありましよう。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手社会党の中に共産党的な考えがあるやの首相の談も誹謗の一語に盡きます。憲法に即した、国際紛争に積極的に介入しない外交方針と、日本安全保障国連集団保障に求め、侵略に対する道義的な排撃を明確にしておる我々と、国際共産主義の奴隷となつ日本共産党が、いつの間にか嚴正中立の看板を取り外し、向ソ一辺倒に切り換えながら、全面講和を口にし、平和運動を唱えるのと、如何に本質的に違うかにつきましては、夙に良識ある人士が了解しているところであります。  それはさておき、首相超党派外交をお止めになるのは御勝手でございまするが、そのことは、国民の関心の的であるところの講和問題や安全保障問題を国会を通じて十分論議し、以て世論を啓発するの必要性を毫も軽減するものではないのであります。従来ややもすれば首相国会におけるこの種の問題の論議を有害無益であるかの見解をお持ちのようでありましたが、これは大きな誤まりでありまして、国表百年の大計を定めるこの大問題につきましては、民意に問うて国の進路を定めなければならないと存ずるのであります。この意味から言いまして、本国会におきまして首相は本院の外務委員会を大いに活用して、進んでみずから外務委員会に出席して、胸襟を開いてこの問題を論議する意向をお持ちではないか。若し時間の不足を云々されるならば、外相を兼任するという総理の自信の程は暫らくおきまして、やはり專任外相を設けるのが適当と思うが、これらの点に関する総理の御見解を伺いたいと存じます。(拍手)  最後に警察問題であります。  我々は首相マ元帥書簡に基く国家警察予備隊設置海上保安力増強に関して、特高や政治警察を復活する意向がない、このことを衆議院鈴木氏の質問に対する答弁等におきまして明言され、又日本の再武裝意向がないことを、昨日、本院における鬼丸君に対する答弁において明言されたことを諒とするものであります。我々はこの二つ原則の下に、治安確保の見地から、このたびの警察増強原則的に肯定せんとするものであります。併しながら尚若干重大な問題があるのであります。第一、この警察隊警察法の枠内で作られ民主的な管理の下に置かれなくてはならない。いわゆる政府直轄思想政治警察に通ずるものであつて、これは甚だ危險であると存じます。第二に、人員、裝備等につきましては、国民経済客観情勢との振合いによつて彈力的考えるべきである、かように考える次第であります。第三に、財源につきましては、マ元帥書簡に示された方法もあるのでありまするが、むしろ予算の組替えによつて不生産的な冗費を節減し、財源を捻出することが一層望ましいのではないか。第四に、本件の実施に当りましては、政府の準備整い次第、立法化及び予算化措置を講じ、国会の承認を求めた方が、真にマ元帥書簡精神に即すると思うが如何。  以上の点につきまして、首相法務総裁及び大蔵大臣見解を質したいと存じます。これを以ちまして私の演説を終りたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  私が單独講和を主張するのは、進んで單独講和を主張するようなお話であるが、私はそういうことを申したことはない。全面講和は望ましい、望ましいが事実国際情勢ができないじやないか、できないとするなら早期講和を希望する、希望すれば自然全面講和ならざる講和考えざるを得ないということを申しただけであります。  又問題は、国の自主性独立性安全保障を含みたる講和は、これが国民の要求するところであつて、これを含まざる講和は無意味であるというようなお話でありますが、国の自主性、国の独立は、これは戰争状態が止まつて、そうして日本国際団体一員となる、即ち講和條約ができて、ここに自主性ができ、独立性ができるのであります。これを求むるがために早期講和を早くせよと申すので、又安全保障を伴わない講和條約ができてもこれは無意味でありますから、講和條約ができる以上は、自然安全保障は伴うものであると御了承を願いたいと思う。又然らば如何なる安全保障を‥‥これは今日そこまで講和問題が進んでおりません。成るべく早く講和をいたしたい、講和條約、講和会議に持ち来たしたいということが今日の問題であつて、然る後に安全保障はどうするかというような問題はこの次に来たるべき問題でありますが、その前に国として安全保障をどうする、こうするということは、これは私が常に申しておる通り国民が自由な討議をし、自由な意見を発表するがいい。この点について私は曾て自由な発表を阻止したことはないのであります。又国連に加入する権利がある——権利があるということは、これは非常な誤解であります。日本には言う権利はないのであります。許す許さないは国連の自由でありますが、併しながら国連に加入することを許さるるような状態を作ることが、今日我々が努むべきことであつて権利として要求し得るのではないのであります。これは非常な誤解であります。又ノールウエーその他の事例をお引きになりましたが、ノールウエー独立国であります。国際団体一員であります。我が国は未だその一員になつておらないから、その一員たることに努むべきものであるということを申しておるのであります。  超党派外交云々お話もありましたが、超党派外交は私がみずから進んでは主張いたしておらないのであります。(「おかしいぞ」と呼ぶ者あり)併しながらそのこと自身は大変結構である。賛意を表しております。が、すでに社会党は入らぬという以上は問題になりません。(笑声)  又候約問題について、国会において政府として所信を述ぶべきものであるというお話でありますが、そういう御意見はあなたの意見であつて、私は政府として今日そういう具体的の問題について、入ることがいいか惡いか、これは大いに問題であると思うのであります。国際的の問題であると思うのであります。併しながら国民意見は自由であり、国民の自由な意見発露によつて連合国相手国十分日本の輿論、民論を傾聽するであろうと思いますから、自由な意見発露、発言を求めておるのであります。  專任外相を置けというお話でありますが、これは置きませんということは、しばしば申した通りであります。(「どうして」と呼ぶ者あり、笑声)  警察問題については只今考究中であります。全体の構想について十分練つた上でお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣保利茂登壇拍手
  6. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 進駐軍関係の労務者の立場の保護につきましては、労働法規の示すところに従いまして実施いたしております。朝鮮事変以来特に変化いたした事態はございませんし、又これを変更する考えも持つておりません。(「なつていないよ」「なあんだ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣大橋武夫登壇拍手
  7. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 特別警察隊の問題につきましては、只今総理大臣から申上げた通りで御承知を願いたいと思います。(笑声拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国家警察予備隊設置並びに海上保安庁の増強に関する予算的措置につきましては、只今申上げられません。(拍手)     —————————————
  9. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 奥むめお君。    〔奥むめお登壇拍手
  10. 奥むめお

    奥むめお君 自分生活に照し合せて政治を批判し、自分生活に直結するよい政治の在り方を求めておりますところの多くの消費者立場から、私は日常の問題について御質問申上げたいのでございます。  政府は治安維持の必要から警察力の増員を発表いたされましたが、さぞ沢山の予算が要ることだろうと思います。私達は再建を急ぐ日本の復興と治安を衷心から願いますが故に、敢えて警察力による、力によつて抑えられた治政というものが如何に危險なものであるか、心ある者はきつと将来の不安を更に深刻に感じておるだろうということを申上げたいのであります。首相によつてエデンの園と謳われましたこの日本の国内で、親は子供のために飢えております。失業者を持つておる家族や、給料の遅配欠配に悩んでいる気の毒な家庭の台所向きを大臣は御存じあるのでありましようか。学業よりも食うことに追われて、多くの少年や青年達が全く青春の希望を失つておるのであります。中小企業の倒産は相次ぎ、親子心中はその辺の住民の涙をしぼつておるのであります。こういうふうな中で国民は税金に搾り取られたあとの津で、どうして生活を立てようかと毎日生き悩んでおるのが今日の実情であると言わねばなりません。又農家におきましてもいろいろ破産に瀕しておる実例が社会に現われておりますが、中でも二男三男の将来の結婚の問題、生計の立て方は一体どうなるんだろうかと、みんな生きる希望さえ失つておるのでございますが、これが国民大衆の多くの実情でありますが、こういう人々を温かく包んで思いやりのある施策を與えることこそ政治の本領であると私は確信するのでございます。然るに総理大臣は「経済安定の度を加えた今日」と言われております。それではどこに国民生活の安定、経済の安定があるのでございますか。国民生活の安定なくしてどうして治安の確保がございましようか。この頃の著しい傾向として、国民生活の不安と不満に忍び寄る過激思想があるのであります。(拍手)又反アメリカ思想も又一部国民の煽動や鼓吹によるだけではなくして、実に国民生活のこの動搖と不安を温床として芽生えておるということを政府はお考え頂きたいのであります。(拍手)  総理大臣に特に申上げたい。去年の総選挙の頃、自由党は絶対多数をお勝ち取りになりました。これは自由党の候補者に対する国民の期待というよりも、吉田総理大臣、吉田総裁その人に対する信望であつたのでございます。吉田さんのあの不屈の力を感じた国民は、吉田さんを信頼して、この人が総理大臣になつたならば、自分の力では伝えようもない、微力な国民の力では訴えるすべもない日常の辛さ、悲しさを、きつと進駐軍当局にも伝えてくれるであろう。又自分達に寛大な処置をとるように、その筋に願つてもくれるであろう。この吉田さんに対する期待が、非常に大きく働いて、自由党の天下が今日来ておるのだと、私は考えるのでございます。然るに歴代内閣の中でも、吉田内閣は極めて高圧的で、国民の輿論に耳を傾けようともしなそうで、(「その通り」と呼ぶ者あり)むしろアメリカの威光をかさに着て、強引に押切ろうとさえ見えるのでございます。(拍手国民感情はこれでは反撥せざるを得ないのであります。(拍手、「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)このために反政府即反米というような思想も又出て来るといたしましたならば、誠に責任は重大である。(「その通り」と呼ぶ者あり)又アメリカが世界の歴史にない寛大な温かい思やりで、降伏した曾ての敵国である日本に対してこのように五年にも亘つて援助を贈られておるこの行為に対しても、それでは誠に相済まぬことではないかと思うのであります。私はこの意味におきまして、警察力増強に多くの予算を今割こうとしていらつしやられる政府に対して、それと並んで、或いは警察力増強以上に国の治安保持に必要なところの国民生活の安定、国民生活感情の安定というような問題にあらゆる施策を立てて、予算をこの方面にも沢山廻して、そうして国民が喜んで政府の施策に協力するような体制を急いで立てて頂きたいと思うのでありますが、これは大蔵大臣にお伺いしたいのでございます。大蔵大臣は(「考えなし」と呼ぶ者あり)警察力増強予算措置をおとりになるに当りまして、この方面の国民生活感情の安定のために予算をお割きになるということは、おありになりませんか。如何ですか。  尚、私がお問い合せしたいことは、すべて国民生活の安定にかかつておるのでございますが、主食についても朝鮮の戰争が始まりましてから非常な不安を抱いておるのでございます。戰争は長引くものと見なければなりますまいが、政府はこの国民の主食確保如何なる方策を持つておられるのか伺いたい。主食を多量に海外に仰ぐ程不安なことはないのであります。この不安をなくさなければなりません。私共は農民の生産意欲高揚のために適切な施策を行うこと、同時に農業生活に希望を與えて、明日の増産を期する将来の計を立てることが、今こそ非常に必要だと思うのでありますが、如何でありましようか。先ず米麦熱の政府の買上価格を引上げることも農民に希望を與えることでありましよう。併しこれが消費者価格を引上げることを伴いますならば、これも今日の現状において堪え難いのでございますが、幸いにして米の生産者から消費者に渡る中間経費の米六十キロについて千六百四十円というものが計上されておるのでございます。これは大き過ぎるのでございますから、これを削る措置をとりましたならば、農民の生産者価格を引上げるということは決して不可能でないのでございますが、米価審議会におきまして、生産者側からも消費者側からも中間経費の問題をとり上げますけれども、政府の一顧だも得られなかつたのでございます。農林大臣の御答弁が願いたいのでございます。  又米や麦に農民の課税が非常に大きいことが今日の農家の破産の原因になつておると言わなければなりません。地租を軽くして欲しい。農家の反当り支出を見ましても、労力費、肥料代の次に非常に大きくなつているのが租税でございます。私共はこれを又農地改良その他の増産のために農村に大幅に予算を廻して頂きたい。見返資金によることもできますでしよう。又は輸入補給金を二百億円ぐらい減らすこともできるのではありますまいか。債務償還費を流用することも絶対にできないというわけのものではなさそうなことは、警察力増強によつても明らかなのでございます。(拍手)これによつて農村の二男、三男も救われ、農村の増産体制も立てられるということになりましたら、国民の不安な感情も余程緩和されるのではないかしらと思います。  又第三に、着物は大丈夫ですか。朝鮮の戰争以来、衣料の原料又は纖維製品に関連するあらゆる産業に関係している者が非常な不安を感じておりますが、大丈夫であるとしたら、どのようにして大丈夫なのであるか。政府はその見通しをここで答弁して頂きたいのでございます。  首相は貿易の躍進を喜んで、今後更に貿易の促進に力をいたされるとおつしやつたのでありますが、紡績などの国内向けがこの輸出優先主義によつて犠牲になつていることを私達はしばしば聞くのでございます。これは貿易振興と言いましても、日本の輸出の増加は中小企業を潤しているものではありません。ただ仕事を止めるわけにいかないので操業するというだけで、採算割れの仕事で機械を動かしているに過ぎないのですから、その製品は売急いで叩かれ放題なんです。こういう政府の輸出優先主義によりまして、内地向けの原料の供給にも支障を来たしているし、又犠牲も大きいのでございますが、この関連産業は又同じように直接間接の不利益と損失を余儀なくされているということにつきましては、家庭の主婦連は又台所を脅かされる新しい問題として非常な不安を感じておるのでありますから、政府の御答弁を願いたいのでございます。  次に、私は義務教育費を是非国庫の負担にして保証して貰いたい。多くの親達は今日子供を学校へやつているために、その負担に堪えられない苦しさでございます。今六大都市の学童に向つてアメリカから寄贈されたメリケン粉がございます。これをパンに拵えて、おかずを添えて、そして子供達に完全給食しようという方針があるのでございますが、僅かに一日二円か三円の費用が多くの親達にとつては負担に応じ切れないという意見が非常に多いものですから、遂に二月に実施するところが四月になり、四月に実施する予定のところがまだ手が着けられないという僞らざる実情がこの通りなのでございます。私共の主婦連合会が、昨年度一ケ年間の東京の家庭の義務教育にやつている子供のために親が使つている金を調査しましたときの結果を見ますと、学童一人当りについて支出した額は、これは教科書、材料費、遠足費、給食費、PTAの関係の費用その他合せて一年生で四千二百七十八円、二年生で五千二百三十四円、三年生で六千九円、四年生で七千五十一円、五年生で七千八百八十二円、六年生で八千八十三円、一年上になるごとに千円くらいずつ高くなつている。これが着物や食べ物やおやつを拔きにした全く学校関係に余儀なく出すところの費用なのでございます。この調査で見ますと、年收十万円くらいの家庭の家計費はその二割を学童のために割かなければならない。子供の三人も持ちましたら、その二割を学童のために割いているというのでございます。文部省は地方税実施と併せて標準義務教育費の法案を出す予定でおられまして、多くのPTA関係や親達が期待しておつたのでありますが、いつの間にかどこかへ流れてしまつたのでございます。文部省のこの案によりますと、学童一人当り三千二百円と計上されております。多くの親達が実際に拂つている費用は到底それくらいでは勘定できないのでございますが、併しないよりもよろしい。文部省が標準義務教育費の法律案を成るべく近い国会に提出して、審議して、これを実施する用意をお持ちであるかどうかを聞きたいのでございます。  尚、消費生活協同組合の育成に対する政府の御方針が伺いたい。今日のような社会不安、生活不安に国民の大多数が悩み苦しみ拔いておりますときにこそ、愛と協同を建前として、又合理的な共同購入とお互いに利用し合う協同事業をいたそうとしております消費生活協同組合は、今日こそ大いに太鼓を叩いて宣伝して、これを極力助けて、全国の職域にも、地域にも、農山漁村にも拡げて行かなければならないと思うのでございますけれども、法律を作つただけで政府はその保護育成の途を講じていないのでございます。二十三年の吉田内閣のときに、これは單独法として作られましたけれども、消費生活協同組合法ができましてからは、その前まで持つていたところの保護規定さえも失つてしまつている。奪われてしまつたのです。多くの組合はそのために潰れました。又現に潰れかかつているものが非常に多いのでございます。私共は生活協同組合法がこの国会を通過しますときに、最も近い機会にこれを改善するという申合せで通したのでございましたが、未だにその機会がない。組合はその行う事業によつて組合員及び会員に最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてはならぬと書かれています。又組合員の外の者にその事業を利用させてはならぬと枠を決められている生活協同組合、これを全く営利法人と同率の課税にしたのでございます。何という不合理でございましよう。又生協法のできる前には、即ち産業組合法によつていた時代には、農林中央金庫から融資の途が開かれておりまして非常に助かつたのでありますが、それに代る生協融資の途がないのであります。そればかりか、この九月が産業組合法から生協法への切替え期限で生活協同組合の途が断ち切られるものですから、今農林中央金庫では、前にすでに貸してある金さえ早く拂つて呉れないと帳尻が付かないと言つて催促されているような状態なのでございます。又地方税法が若しも通りますならば、来年の一月まで延ばされたとしても、附加価値税によりまして多くの生活協同組合は大きな打撃を受ける。固定資産税又住民税、いろいろな問題が生活協同組合を脅かしているのでありますけれども、特別な措置を図ろうとする何らの動きもまだ見えないのは誠に残念だと思うのでございます。尚、生活協同組合は戰前までは、米の配給が統制でなかつたときは、主食を扱うことが一番大きい事業量であつたのでございまして、その経営の基礎もこれに頼つていたということができるのでありますけれども、この八月を以て切替えられる主食の取扱に対しまして、生活協同組合は除外されております。公団の従業員を優先的に扱う建前で切替えは今進められております。来年の一月になつたら消費生活協同組合も主食が扱えるじやないかという話でございますけれども、その問の五ケ月間の実績をどういたします。我々は配給所の不親切さ、配給所のごまかし、配給所の生意気に倦き捲きして来たのにも拘わらず、又公団関係の者しか主食を扱うことができない。戰前に生活協同組合が扱つておる米だけは精白度も確かだ、量目も間違いがない、安心して買えるという信用を得ておりましたのですのに、その仕事を行う途を阻まれておるということは、厚生大臣はどのようにお感じでありましようか。又その途を開く措置をとつて頂くわけには参らないか。(拍手)  尚、厚生大臣に併せてお伺いしたいのは、妊娠中絶を少くともここ三年間、希望する者には自由に行えるように優生保護法を改めて欲しいということです。日本の人口増加率の大きいことが世界の関心を深くしております。政府はこの狹められた国土に溢れる程の人口を持つておる日本について苦慮せられておることと思うのでありますが、国民自身においても、より一層自分の問題として切実にこれを考え、切実に苦労しておるのでございます。できることなら適当な数の子供を適当な期間をおいて生みたいのです。併しそれの正しい方法は一体どうしたらいいのだ。まだ宣伝も啓蒙も行き亘つておりませんから、ほんの一部の少数知識階級の手にこれが握られておるだけで、一番産兒制限を必要とするところの貧しい或いは無知な階層の人々には殆んど知られていないし、行うすべも知られていないのでございます。私共は厚生省が避妊薬や避妊の器具の許可制度をとつていらつしやることに大変期待を持ちました。併しながら去年あたりこれらは大きな新聞紙、雑誌の広告によりまして売出されて、非常に売れて非常に儲かつたらしいのでございますが、この頃はとんと広告も見られない。売上げも非常に減つた。何故でございましようか。これは私はそれらの器具や薬が避妊に効かないというのではないのです。効かないものもあるでしよう。又惡徳な者の手によつて出されたものもございましよう。併しそれよりも、その使い方を知らない。その効用を理解していないのです。これに対しましてはもつと国のすみずみにまで避妊の正しい方法を教えなければならないから、大急ぎでこれのために力を注がねばならん。併しながらそれを待つというのには、現実の差追つた生活の不安でございます。この生活の不安を幾分でも緩和するために、私はせめてここ三年間、日本の人口問題緩和にも多少はなるでしよう。又かわいい子供の出生を悲劇に終らせないためにも役つでしよう。ともかくここ三年間を限つて妊娠中絶の手術を広く開放して、自由にできるように優生保護法を改正して行きたいと思うのでございますが、厚生大臣は如何ようにお考えになりますか。無論これは営利を目的とする者に任せることはできないのでございます。  最後に私は綱紀粛正について総理大臣に責任の所在を聞いたいのでございます。政府の要人、官僚、政党の幹部、公団関係の人々の相次ぐ不正行為、又疑いなど、責任ある地位におる者としてあるまじきことが至るところに行われて、その所業に対して一体責任はどこにあるのかと国民は口を合せ、腹を立て、又疑問を持つておるのでございます。(拍手)最近にも贈收賄、着服の廉で大蔵省から五十七名が送検されました。五千万円を超える不正事実だというのでございますが、国民は税金なんか拂う気になれぬと言つております。(拍手)八つの公団が揃いも揃つて不正な濫費をして、(拍手)実に五十一億に上る大きなごまかしが明るみに出ているのであります。ごうごうたる世間の非難攻撃でありますが、政府にこれが聞えぬのでございましようか。(拍手)まだ一番大きい食糧公団の不正が出て来ていない。世間ではこうも言つております。(拍手)これに対する最高の監督者たる責任は一体どこにあるのでございまして、どなたがこれをお負いになるのでございますか。(「吉田総理大臣」だと呼ぶ者あり)遡つて昭和電工の事件がございます。近くは五井産業の事件がございます。ときの最高政府の要人が、幾人か問題に関連ある者として召喚されております。政党の重要な幹部も法に問われるという事態を生じているのであります。これは私共国民が最も遺憾に存じているところなのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手首相施政方針演説の中にも、一言もこれらの官吏の不正な行為に対して反省の言葉がおありになりませんでした。又公団の不始末に対して、監督官庁としての責任の陳弁もございませんでした。更に政党幹部などの破廉恥な行為に対して反省を求められるような苦言も聞かれなかつたということは、私共何と申上げたらよろしうございましようか。巷に漲る声なき声を私が代表して、総理大臣初め各大臣に訴えざるを得ないのでございます。(拍手)  終戰以来社会の道義は頽廃しまして、人の心は荒み、青少年の上にも非常に惡影響を及ぼしまして、若い者の犯罪が急激に増加しているのでございます。この二三年は特に赤の魔手に動かされて、惡質な犯罪も増加しておると見られるのでございますが、政府はこの点に心を留めて法的措置を種々とられておる。又治姿対策に苦慮されて、警察力の増強を図られているというようなことも、誠に諒とすべきだと思うのでございますが、政治の根本義から言いますならば、こうした法的措置以上に、民心の不満、社会不安の原因を取除くということ、その温床を作らないようにするということに皆が懸命に努力して、国民から疑惑の眼を以て見られないようにする。国民から信頼せられる政治を行うように心掛けるということが、最も大事だと私は敢えて申上げたいのでございます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  11. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  国民生活の安定が政治の要諦であるという御意見は誠に御尤もであり、又政府としましても無論御同感であります。故に今日まで政府として極力国民生活の安定に努めるために、或いはインフレーシヨンを止める、或いは減税をする、或いは失業問題に相当の‥‥(「相当か」と呼ぶ者あり)相当の予算を組んでいるのであります。(笑声拍手)かくのごとく政府としては国民生活安定に努力していることは予算面によつて御了解ができると思うのであります。このたび警察力増強ということになりましたのは、朝鮮問題等に鑑みましても、いつ共産軍が日本の国土を侵すとか治安を乱す、或いは又人心にどういう企らみをするか分らないというような不安がありますので、この不時の事変に備うるために警察力を増強いたすことにしたのであります。決して彈圧政策のためにいたすのではないのであります。  又綱紀粛正についてお話がありましたが、御尤もであります。政府としては、今日まで公団その他官僚等に不正の問題があつたときには、仮借なく摘発もいたし、法の命ずるところによつて処置いたしておるのであります。今後においてもなすますこの方針は決して変えませんのみならず、一層その点については注意いたしますから、さよう御承知を願います。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国民生活の安定につきまして努力いたしておりますことは、只今総理大臣よりお答えいたした通りでございます。何分にも長い間の戰争、而も非常な負け方をいたしましたので、国民全般が困つておることは十分承知いたしております。併し昨年来国民生活の安定に努力いたしました結果、最近の生活状況は奥議員の御承知辺通りに割に楽になりつつあるということが言えるのであります。(笑声拍手)即ち市場は売手の市場から買手の市場に変りました。(「その通り」と呼ぶ者あり)今御用聞きが我我の家庭に来るようないわゆる昔ながらの日本に帰りつつあるということは、何人も否定できないと思うのであります。数字上から申しましても、消費者物価指数は昨年の平均に比べまして毎月々々下つてつております。昨年の四月は一四〇であつたのが本年の一月は一三〇になり、五月が一二六であります。四月は一二四でありました。こういうふうな下り方で、我々が本当に胸に手を当てて見れば、消費者は楽になつた、楽になりつつあるということが言えると思うのであります。(「その通り」「お前らだけだ」と呼ぶ者あり)併し我々はそれに満足せずに今後とも国民生活の安定を図らなければならんと努力いたしておるのであります。で、私として、国民生活の安定をいたしますのには、先ず第一に減税をすることであると思うのであります。減税をしますと同時に、社会政策的、社会保障的施設を拡充し、或いは又お話通りに義務教育費に思い切つた予算を組みたい、こういう考えであるのであります。従いましてお尋ねの債務償還費につきましても、来年度はいたしません。今年度は予定しておるものを警察費等に使います。今後におきまして必要に応じたならば、是非とも債務償還費を崩さなければ増税しなければならんというような場合が起りましたならば、何も債務償還費を減らさぬとは言わないのであります。只今のところの状態では警察費に当てるという考えでおるのであります。  尚、大蔵省の涜職事件につきまして、新聞をお引きになつてお話になりましたが、事実は不正を働いた者が八名あるのでございます。五千数百万円というようなことは事実無根でございます。で、一千万円の金額を緊急工事費に使いました。このことはあるのでありまして、不正の事実は、検察当局の発表によりますと八名不正の事実がありまして、うち二名は個人的利益のだめに公金を二十三万円費消いたしております。そうして他の六名は業者から收賄をいたしました。この八名の不心得者を出したということは誠に遺憾でありまして、今後綱紀の粛正に十分の注意をいたしますが、不正事実は二十三万円と二十六万円、不正者は八名でございます。御了承を願います。(拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇拍手
  13. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) 奥議員にお答え申上げます。  朝鮮問題で食糧は大丈夫かという問であります。大丈夫だとお答えいたします。それは四ケ月分の貯蔵を持つておるということが一つ。それからこれを食べておるうちに「いも」も買入れます。麦も買入れます。お米もできて参ります。そうして又輸入も順調に入つておるということをどうぞ御信じ願いたいと思う次第でございます。  又これにつれて日本の農業の自給度を高めることについての御高説でありますが、これは全くその通りでありまして、我々といたしましても、農村の自給度を十分高めまして輸入を成るべく少くしたいと考える次第でございます。これにつきましては、税金の方面におきましても、農村所得を十分増すように努めたいと思う次第であり、問又農地改良その他農村の工業化というようなあらゆる方面に亘りまして、農民に希望を與えるように施策を講じたいと考えておる次第でございます。  それから生活協同組合についてのお尋ねでありましたが、生活協同組合が前に主食を取扱つてつて、これが生活協同組合の主な收入になつてつたということでありまするが、これはその通りでありまするが、八月から主食の取扱いを変更するにつれて、その取扱い面を、公団に関係しておつた人を優先的にして協同組合を除外するようなお言葉でありましたが決して除外いたしません。対等にやりたいと思いますが、ただ失業者を出すということが忍びないので、これを多少猶予を認めるようなことがあるかも知れませんが、その点御賢察を願いたいと思います。尚来年の四月からこの切換えいたしまするので、そのときにはどうぞ十分実力を御発揮あらんことをお願いする次第であります。(拍手)    〔国務大臣周東英雄君登壇拍手
  14. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 衣料の供給量について御心配のようなお話でありましたが、只今原綿の輸入童確保につきましては、対日援助資金の中におきまして一億ドル余ございまするし、四半期別に定めておりまする外資の予算も十分に組んでありまするので、この点は御心配は要らんかと思います。ただ今日の問題といたしましては供給量が問題でありまして、それにつきましても最近紡績四百万錘の制限が取れましたので、でき得る限り早く段々とこの紡錘の量も殖えますれば供給量が殖えることと存じます。御承知のように輸出に重点が置かれて内需を圧迫しやせんかという点も御尤もでありますが、時局の如何に拘わらず私共は最低量の国民衣料は確保するように目下計画いたしておりまするから、御心配をお取り下さるようにお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣天野貞祐君登壇拍手
  15. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 只今承わりました義務教育に関するお話は実にその通りでございまして、一体、憲法において義務教育無償の原則が確立されておるのに拘わらず、実際においては非常に高い月謝をめいめいが出しておるという事実は、実に残念千万なことだと私は考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういう点については、大蔵大臣も只今ここに、義務教育の予算については思い切つた考慮をするというお話でございますので、私共もその線に沿うて大いに義務教育の充実ということに努めたい考えでございます。それについては標準義務教育費の確保ということは是非共これは必要なことでございます。決して文部省はそれを流しておるわけではございません。私は是非それをやりたい考えで、できるだけ早い機会にここに御提出して御承認を得たい考えでございます。標準義務教育費の確保をいたすということになれば、先程お話の義務教育費全額国庫負担ということは、差当つて考えないでもよいというように考えております。(拍手)    〔国務大臣黒川武雄君登壇拍手
  16. 黒川武雄

    国務大臣(黒川武雄君) お答えいたします。  消費生活協同組合法が施行一年有半にしまして、只今凡そ一千の組合ができておりますが、現在の経済情勢によりまして、甚だ運営が困難であるということは事実でございます。政府といたしましては積極的な振興対策の樹立の必要を痛感しておるのでございまして、経営の合理化の指導に努めると共に、組合に対する資金の斡旋等に努力中でございます。  第二問にお答えいたします。生活困窮者に対して経済的理由から人工妊娠中絶を許すかどうかということは、昨年第五国会におきまして、優生保護法の一部改正のとき大いに論議されたのでございますが、結局單に貧困という理由から胎兒の生命を絶つということは許されぬという理由で、母体の健康を著しく害する虞れある場合にのみ認められることになつたのでございます。その事情は今日におきましても変つていないのでありまして、單に経済的理由のみで中絶を認めることは適当でないと考えるものでございます。政府といたしましては、全国に優生結婚相談所を設けまして、受胎調節の正しい知識の普及により、この問題の解決に努める所存でございます。(拍手)     —————————————
  17. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  18. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして一般質問をいたしたいと思うのであります。  申すまでもなく今日の内外情勢は極めて重大でありまして、若し一歩を誤まるならば思わざる結果を招くことも我々は想像に難くないのであります。従いまして、政治の衝に当る者はこの内外情勢について十分見通しを付けて、それと共に国民の輿論が如何に動いておるかということを察して、適切な施策を講じなければならんのであります。ところが現在の吉田内閣によりまするところの内政、外交外交と申しましても内政‥‥内政の諸問題につきましては極めて見通しを欠くものがあり、国民の輿論に何ら応えるところがないと言わなければならんのであります。  先ず朝鮮の問題であります。この朝鮮の問題が果して第三次大戰へ発展する口火となるかどうかはもとより今後の推移に待たなければならんのでありまするが、併し單なる内戰の状態から国際戰争に発展せんとする傾向を持つことだけは我々としても十分これを認めなければならんのであります。我が国としましては憲法前文並びに第九條によりまして、我々は一切の戰争を放棄する、軍備を放棄する、交戰権をすら放棄すると内外に声明しまして、平和国家を建設することに我々は決意を固めたのであります。従つて我々としましては、この憲法前文並びに第九條のこの精神に基きまして、飽くまでも平和国家を建設し、苟くも国際紛争に介入するがごときことは嚴に戒めなければならないと存ずるのであります。然るに去る三日の次官会議に提案されたと言われるところのものについて見まするというと、日本はアメリカの軍事行動に当然協力すべきだという意向であつたと伝えられておるのであります。若しこれが事実とするならば、誠に重大であると申さなければなりません。日本政府が占領軍の命令に服従し、そうして占領行政を忠実に行うということと、進んで日本がアメリカの軍事行動に協力するということとは、嚴密に区別しなければなりません。若しもこの二つを区別しないで進んでアメリカの軍事行動に協力するということになつたならば、それは取りも直さずみずから進んで国際紛争に介入する結果となり、(「その通り」と呼ぶ者あり)憲法の規定に反するばかりでなく、平和を念願している国民の意思をも踏みにじるものと申さなければならぬのであります。一度朝鮮に事件が勃発しますると、国民はひたすら戰争に反対する意思を表明しております。一日も早く平和に戻ることを望んでいるということは、皆さんもストツクホルムのアツピールに応えまして平和投票が各地において数手数万と集められているところの事実に徴しても明らかなのであります。又あの映画の「きけわだつみの声」の前に連日満員の盛況を続けているこの事実によりましても、如何国民が平和を要望しているかということをはつきり見ることができるのであります。いや、日本の国内ばかりではない。平和を要望する声は世界に充ち満ちております。ストツクホルムのアツピールに対するアメリカでの反響も、先般AFPの電報によりましてすでに百万の署名がとられたという、その百万の中の四十万が朝鮮に事件が起つてから署名されたということが報道されているのであります。このような情勢の中におきまして、我我は吉田首相に対しまして次の三点について質問をいたしたいのであります。  先ず第一に、吉田首相は施政方針の演説の中で以て、「赤色侵略者がその魔手を振いつつあり、日本がすでにその危險にさらされている。」こういうことを述べております。本当に平和を念願する国民が、平和国家、民主国家を再建しようとして努力しているとき、果して何人がこれを侵略するでありましよう。むしろ危險を感ずるのは、平和国家よりは戰争国家、民主国家よりはフアツシヨの国家を望んでいる人々、(「その通り」と呼ぶ者あり)取りも直さず吉田首相、その與党である自由党の諸君が最も危險を感じているのであると申さなければならぬのであります。(拍手吉田君は果してこれに対してどういう見解を持つておられるか。  第二に、進んで朝鮮事件に介入しようとする意図のあることは、次官会議に上程されたと伝えられるところの内容からも我々は了解できるのであります。又首相は国際連合に協力するのだ、その建前で朝鮮事件関係するのだ、こう言うかも知れません。併しまだ独立の主権を回復してないところの日本であり、そうして又国際連合に参加もしていない日本としては、このような国際連合に協力するというような態度政府みずから主張するということは先走つた考で、出過ぎた態度だと申さなければならぬのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)首相はこの際国民の平和の念願に聞き、この際は国際紛争に飽くまでも介入しないという決意を持つべきだと思うが、この点について首相はどう考えられるか。  第三の問題は、朝鮮事件についての見通しはどうかということであります。恐らく首相吉田君は、国際社会に復帰していない今日の日本として、それを言うべきときではないと答えられるかも知れん。併しながら一国の首相として政治の衝に当る者が一定の見通しを付けないで、行き当りばつたりの政治を行おうとするならば、それが如何に危險なものであるかということは、ここにくどくどしく申上げるまでもないのであります。首相は一体この朝鮮事件についてどういう見通しを持つておるか。これが果してどういう発展を遂げて行くだろうかということについて率直な見解をお尋ねいたしたいのであります。  次には講和問題についてお伺いしたいのであります。国民は一日も早く講和條約が締結され、日本国際社会に復帰する、そしてどこの国とも日本が自由に交際することができるようになる、これが国民を挙げての熱望しているところだと申さなければなりません。併し国民がどんな講和を望んでおるかということにつきましては、これは我々としても十分論議を盡さなければならん。ところか吉田首相は、この国民の望んでおるところの講和はいわゆる單独講和である、全面講和ではない、こういうことを申しておるのでありますが、先般の参議院の選挙は、国民がどういう講和を望んでおるかということをはつきり示しておると思う。即ち與党である自由党の諸君は挙つて單独講和論を主張された。野党側は全面講和論を主張しておる。その投票の結果はどうか。自由党は投票総数の三割五分九厘であります。多数を占めてはおらんのであります。あとの全面講和を主張した側の野党派がむしろ多数を占めておる。これによつて国民がどういう講和を望んでおるかということはもはや言わずして明らかだろうと思う。然るに吉田君は施政方針の演説の中で、既往の行きがかりに囚われることなく、小異を捨てて大同に就き云々ということを述べておる。若し小異を捨てて大同に就くとするならば、国民の大半が望んでおるところの全面講和に国論を統一してこそ、初めて私は吉田君の言うところの早期講和への希望というものが達せられるものだと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)  本来、全面講和單独講和かという議論は、昨年の秋以来、両院においても、又院外においても非常に多くの議論のある問題であります。併しこの問題は国際法上から、それから又日本現実立場からこれを考究すべき問題でありまして、これを政治的に利用したり、或いは政治的何らかのためにしようとする考えがありまするならば、これは日本にとつても、又世界の平和にとりましても、由々しい結果をもたらすものと申さなければなりません。国際法上の問題につきましては、私はくだくだしくここに申上げるまでもなく、すでに一九四二年一月一日の連合国宣告が全面講和の線を決定いたしまして、そしてこれは戰争中幾たびか国際会議において確認をされておる問題である。日本が敗戰の当時受諾いたしましたポツダム宣言もこの確認の上に立つておるものと申さなければならんのであります。このことは外交家を以て自任しておるところの吉田君が‥‥恐らく吉田君も知つておるところであります。又連合国のその後の態度について見ましても、單独講和について何ら正式の取決めなり或いは声明なりが行われたことはないのであります。否、曾祢君も指摘しておつたように、世界の有識者、学者、政治家の諸君は、むしろ全面講和を促進することが世界平和に貢献するのだということを述べておる、例えばアメリカのウオルター・リツプマン氏であるとか、或いはヘンリー・ウオーレス氏であるとか、その他アメリカばかりではなく、イギリスの先般亡くなりましたラスキー教授も、全面講和の意義というものを、特に今日の情勢の下において如何にそれが重大であるかということの意義について強調しているのでありまして、私共はこれらの有識者達の意見を十分に聞き、国民が挙つてどこの国とも自由に交際し、どこの国とも自由にお付き合いのできるような国を一日も早く作り上げるように努力してこそ、首相としての立場があるのではないかと考えるのであります。そこで私は講和問題について次の三点をお尋ねしたいのであります。  吉田君は去る十一日の記者団会見におきまして、それから又施政方針の演説の中でも、全面講和は全く現実から遊離した言論であるのみならず、みずからを共産党謀略に陥れんとする危險千万な思想であると述べているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは驚くべき独断であります。これは曾祢君も指摘されておつたのでありますが、若し全面講和がそのように危險千万な思想であるとするならば、現に閣員の一人であるところの天野文相のごとき、平和問題懇談会の全面講和論に署名している一人である。若しそうだとするならば、天野文相自身が危險千万な思想の持主ということにもなる。いや、そればかりではない。国民が大半全面講和を望んでいるとするならば、国民大半を危險思想の持主と烙印しようとするのでありましようか。これに対する吉田首相の明快な答弁をお願いしたいのであります。  それから第二の問題は、單独講和によりまするならば、成る程局部的には平和が回復するかも知れん。併しそのため全面講和が却つて困難になるのであります。只今曾祢君への答弁におきまして吉田首相は、全面講和を望んでいるのだ、併し現実情勢がそれを可能にしない、止むを得ず單独講和だ、こういう答弁のようであります。併し全面講和を望んでいると言うが、單独講和が締結されるならば、全面講和への道は塞がれてしまう。日本が一方の陣営に参加することによつて、もう一つ陣営との対立は非常に激化して来る。(「そうだ」と呼ぶ者あり)いわば日本がその激化の糸口になる。従つて全面講和を希望しても、單独講和が成立するならば全面講和への道は杜絶すると申上げなければならん。日本の再建という立場から申すならば、日本は中国と最も密接な関係をこれまでも持つて来た。今後も中国との関係を無視して日本の経済なり或いはそれによるところの再建を考えることはできないのであります。又中国としても、日本戰争した国々の中では一番犠牲を拂い、最も長い間日本戰争して最も沢山の人命を失つている国であります。そういう国を除外して若し日本講和をするとしたならば、日本の経済の再建が遅れるばかりでなく、ますます世界の平和にとつて不幸な結果をもたらさざるを得ないと言わざるを得ないのであります。それでも尚、吉田君は單純講和でも止むを得ないのだ、こういう主張をなさるのでありましようか。その点について御答弁をお願いしたいのであります。  第三に、講和後の安全保障の問題である。吉田君は十一日の記者団会見におきまして、永世中立などの念仏を唱えている者は、日本早期講和を害し、世界誤解を招くことになるということを述べております。そうして吉田君のその意図におきましては、恐らく特定国と特殊な関係を結び、特に軍事的な政治的な関係を通して日本安全保障を考慮したいという意向のようであります。併しながらそのような政治的な軍事的な関係特定国と結びまして、例えば軍事協約を締結する、或いは軍事基地を供與するというようなことになりましたならば、却つてそれこそが世界誤解を招くものではないでありましようか。只今曾祢君の質問に対する答弁の中で吉田君は、安全保障講和後の問題である、だからそれについては答えられない、むしろ今の段階においてはその安全保障については自由な言論に従うということを答えておられる。ところが永世中立などの念仏を唱えているというようなことで以て、自分意見に反対する者をすべて非とする態度をとつている。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この吉田君の態度こそが世界誤解を招く最も重要なものであると申さなければならんと思う。これに対する吉田君の所見を伺いたい。  次に警察の問題であります。警察の問題につきましては恐らく改正すべき点がありましよう。只今奥議員からも、警察の問題は生活の問題に結び付いている、それこそが根本的な問題だというお話がありました。確かにそうであります。又その運営につきましても制度の民主的な運営がここで確立されなければ、幾ら警察力を増強いたしましても、それによつて果して日本の治安乃至はその他の警察上の諸問題が解決するものとは言うことができないのであります。一体警察の本来の任務というのは、御承知のように、国民生活を保護し、これを犯す者に対して取締を行うことが、警察の本来の任務であります。ところが最近の警察の様子を見ますると、次第に権力化、フアツシヨ化への方向をとつており、言論自由も、集会結社の自由も、いわゆる憲法上に基本的人権と呼ばれるものが次々に警察の力によつて剥奪され、或いは制限されようとしており、曾ての明治憲法の下においても、これ程ひどい警察力によるところの圧迫はなかつたと想像されるような状態が現われつつある。例えば先般、集会、デモの禁止声明を発した警視総監のあの行為のごときがその例証と申上げることができる。一行政職員の声明で以て憲法上の自由権を制限乃至は禁圧することが正しいことであろうか。而もその一行政職員の声明についての政治的な責任につきましては、過日岡崎官房長官は、政府においてはこれを関知しない、こう答えているのであります。成る程警察は公安委員会の下に立つている。従つて政府は面接これに対して命令指揮の系統を持つてはおらんかも知れん。併しながら政府は一切の施政施策に対して責任を負うところのものである。自分の直接管轄でないから責任が負えないというのでは、一体誰が責任を負うのでありましよう。更に又警察が如何にボスの組織や或いは官界・政界の腐敗した人々と結託しているかは、只今奥議員から質問されたことでありまするから、私は略しますが、ああいうような形が今日警察の中に現われており、国民を護るべきものがむしろ今日は国民の怨府となつているのが実情であります。今回の警察力並びに海上保安庁職員の増強の問題がマツカーサー書簡によつて要請された。併しこの問題は政府の最近の発表によりますというと、ポ政令によつて行わんとしているということであります。マツカーサー書簡は決してポ政令によつてこれを増強せいということは要請しておらん。これを立法の手続によつて増強するか、それともその他の手続によつて増強するかは政府責任である。ところが政府はこれをポ政令によつて行おうとしている。これは新憲法精神に反することであります。御承知のように明治憲法下には緊急勅令の規定が存在しておりました。或いは財政上の緊急処分の規定が存在しておりました。併し新らしい憲法はそれらの緊急の勅令なり或いは緊急処分なりの規定というものを全然認めないという方針をとつておる。而もその上、今日は国会の開会中であります。何を好んで新憲法精神に反するところのポ政令によつて警察力の増強をしようとするのでありましよう。私はどこにその理由があるかを法務総裁にお尋ねしたいと思う。  それからもう一つ、警察制度につきましては自治体警察も国家警察も公安委員会の下に統轄されておる。ところが今回設置されるところの警察予備隊は政府に直属する、つまり政治的にこれを使われるという結果もそこには生れて来るのであります。政治的に警察隊が使われる結果どういう事態を生ずるかというようなことについては、私共ここに尚くだくだしく申上げる必要はない。すでに明治憲法下において思想の彈圧或いは一切の自由の彈圧のために警察が動員されたあのことを想像して頂けば十分であろうと思う。この点について法務総裁の所見を伺いたい。  もう一つ財政上の問題について警察関係からお尋ねしたいと思うのは、今回の増強に伴うところの予算上の措置の問題。伝えられるところによるというと、債務償還費をこれに流用するということであります。ところが財政法の規定によりまするならば、他に振り当てられたところの予算を振向けようとする、流用するという場合には、当然国会の承認を得なければならん。この点について一体大蔵大臣はどういう見解を持つておられるか。財政上の措置もやはりポ政令と同じような形で以てこれを支出しようと考えていられるのであるかその点についてお尋ねしたい。  最後に、時間がありませんから失業問題についてお尋ねしたいと思います。今日失業問題が極めて重大な危機にあることは私からくだくだしく申上げるまでもない。到るところ巻に今日失業者は氾濫している。これは昨年の行政整理をきつかけといたしまして民間産業の企業整理がどんどんその後行われた結果でありまして、恐らく今日の最も重要な問題の一つであると申上げなければならん。就業状態はどうかと申しますると、第七国会における政府の説明によりまするというと、昨年の行政整理では御承知のように二十万人近い人々が馘首された。そのうち他に就職し得たものは僅かに七万人である。そうしますというと十数万人の人々が今日尚依然として失業線上に群れておるという結果になつて来ると思う。これは行政整理の犠牲者だけの話です。ましてや民間産業の犠牲者をこれに含めるならば、今日の就業状態は全く憂慮すべきものではないかと思う。今日各所の職業安定所の前に、あの職を求めて群れておるところの何千人、何万人の人々を皆さん御覽になるがいい。朝の暗いうちから立ち盡して、そうしてその日の一日の職を求めておる。中には職にアブれる日も最近非常に多くなつて来た。幸いにして職にありついても一日の労働賃金が僅かに二百四十二円、それでも一ケ月まるごと働くことができるなら或る程度問題は解決するかも知れん。併しアブれて、実際に就労するのは一ケ月の中の十五日とか二十日という状態になつておる。ところがこれに対する対策はどうか。相も変らず輸出産業を中心とする民間産業の振興だけで、これに吸收する、これが政府の説明であります。ところがその輸出産業はどうか。御承知のように最近の日本の輸出産業は全く行詰りの状態であります。例の為替レートが三百六十円に釘付けにされている結果、到底伸びようがない。そこへ持つて来まして、中国との貿易関係が自由にならん。こういう事情がありまして、輸出産業は決して伸びない。公共事業はどうか、一千億を計上した。失業対策事業費はどうか、四十億を計上した。これで以てどうにか、何とかしのぎを付けて行こうというのが政府の説明のようであります。併しながら労働省の失業対策審議会の報告によりまするというと、本年度の年間日雇労働者は毎日平均五十三万人と推定せられております。この中の二十四万人が公共事業、民間産業に吸收され、残り二十九万人は失業対策事業の対象となる。ところが本年度の予算では、年間一日平均約十万人の就労を充たすのみであります。あとの十九万人の日雇労働者の就労は特に何ら保障せられておらん。で、失業対策審議会におきましては、少くとも九十億の金がなければ、この二十九万の日雇労働者の就労を保障することができないと言つておる。最近各職業安定所におきまして日雇労働者の職よこせ鬪争が頻発しております。要するにこれは失業対策事業費が非常に少いという結果そうなつておるのでありまして、これは政府としても十分考えなければならん問題で、根本的に考えなければならん問題であり、これに対しては従つて又根本的な対策を講じなければならんと思う。これに対する労働大臣の所見を伺いたいと思う。  私はこれまで各質問者に対する各大臣の答弁を聞いておるのでありますが、上行うところ下これに倣う。(笑声吉田君の答弁は非常に不親切であります。どうぞ国民が納得する‥‥大臣諸君は決して私が、議員が質問しているのではない。国民の代表者として、国民の声を私共がここに開陳しているのでありますから、その点を了解されて、親切な御答弁をお願いしたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  朝鮮問題については、私は国連が平和を擁護し増進せんがためにする行動たるが故に、これに精神協力をいたしたいと申したのであつて朝鮮事件に介入するとは断じて申しておらないのであります。介入いたしませんから、従つて朝鮮問題の見通しは申すことができないのであります。  又全面講和單独講和によつて妨げられると言わるるが、妨げられるかどうかはこれは客観情勢によるものでありまして、全面講和は我々は好むところであるが、客観情勢ができないから單独講和で甘んずるより仕方がないじやないか、日本国と平和関係に入ろうと思う国と速かに平和関係に入るべきであるというのが私の申しているところであります。ソ連、中国が日本と、我が国と平和関係に入りたくないというのをこれを強いて入らしむることはできないのであります。  又安全保障についての私の意向なるものを想像せられたが、御想像であるから答弁はいたしません。  永世中立は念仏なりと申したゆえんは、ベルギーのごとき永世中立国が、二回も大戰争のたびごとにその中立を侵されたのであります。日本とソヴイエトの間における中立條約は、ソヴイエトによつて侵害せられたのであり、守られなかつたのであります。これから考えて見て、私は中立論永世中立を以て、国土、国の安全を守らんと欲するものは念仏なりと申すゆえんであります。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫登壇拍手
  20. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 堀君にお答え申上げます。  警察力の増強の問題につきましては、具体的な計画を目下検討中でございまして、今国会の会期中に実施いたすかどうか分らないような状況であります。従いまして国会の開会中にポツダム政令を出すかどうかということはまだ決まつておりません。  又この新らしい警察力の政治警察化につきましての御心配につきましては、政府も同感でございまするが、この性格を如何に規定するかについては、同様目下検討中でございまするから、御了承を願います。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 警察予備隊等の予算的措置につきましては、先般お答え申上げた通り、只今お答えする段階に至つていないのであります。誠に遺憾でございまするが、御了承願いたいと思います。  次に、労働問題につきまして三百六十円の為替レートの問題にお触れになつたようでありまするが、我が国の一ドル三百六十円レートは、内外共に非常な信用を加えて参りまして、今これを変えるというふうな気持はございません。(拍手)    〔国務大臣保利茂登壇拍手
  22. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 失業の状況と、これに対する政府の対策につきましては、先日岡田議員の御質問お答えいたした通りでございます。ただ問題にせられております日雇労務者の救済措置を、輸出産業を中心とする民間産業の振興に待つというような手ぬるい考えは持つておらないことは御承知の通りでございます。今後の日雇労務者の救済措置につきましては、特に見返資金によりまする公共事業の実施、一般公共事業の全面的の実施と、そして失業対策費四十億の繰上実施によりまして、日雇労務者の就労状況を改善する考えでございまして、尚それらによつて足らざる分は失業保險の運用によつて善処いたしたいと考えておるものでございます。尚、今後の失業情勢に対しましては、来年度の予算編成におきまして十分考慮して行く考えであります。(拍手
  23. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 昨日の岩木哲夫君の質疑に対し、岡野国務大臣答弁いたしたいとの趣きでありまするから、この際許可いたします。岡野国務大臣。    〔国務大臣岡野清豪君登壇拍手
  24. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 昨日岩木君の御質問の第一点は、前回の国会において衆議院側が修正意見を出したのを、それを政府は取入れたかどうか、こういうような御趣旨だと承わつております。政府といたしましては、その修正意見並びに各般の新情勢を勘案いたしまして、できる限りの努力をいたしまして関係方面と折衝いたし、そうしてできましたのが新税法案でございまして、この新税法案は今日の現段階における客観情勢上、これが最良の案と存じて出しておる次第であります。  第二点といたしまして、民主党の修正意見をどう見るか、こういうような御質問のように伺います。私はまだその内容をつまびらかにしてはおりませんけれども、私といたしましては最善の考慮を沸いたいと存じております。(拍手
  25. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第広報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十一分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第四日)