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1950-07-17 第8回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十七日(月曜日)    午前十時十分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四号   昭和二十五年七月十七日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。  一昨日に引続き順次質疑を許可いたします。鬼丸義齊君。    〔鬼丸義齊登壇拍手
  4. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私は講和問題と国内治安問題につきまして、吉田総理大臣並びに主管大臣お尋ねをいたしたいと思います。  講和の問題につきましては前議会以来朝野最も深き関心を持ちまして、あらゆる角度から真劍に検討論議を盡されておるところでありますが、その根本ともいうべき二三の点について吉田総理大臣に御所見を伺いたいと思います。  第一、講和條約は、條約の当事国対等立場において自由なる意思に基き締結をせられるべきものであるかどうか。即ち連合国戦時占領の権限に基き我が国に対する従来の終戰條約を更改するものであるかどうか。又これと離れて全然新たなる権利義務の設定をなすものであるかどうか。これらの問題について、前議会において本院同僚太田敏兄君から吉田総理大臣に対して質問をせられたのであります。これに対しまして総理大臣は、條約締結会議に当つて我々の主張を相手方がこれを容れないときには退席するまでのことである、かような御答弁がありました。ところがその翌日、総理はこの答弁取消になられたのであります。私は首相のこの答弁取消につきましては、事、国際問題の重要性に鑑みられて、その影響するところを考慮せられ、用心深くお取消しなつたものであろうと一応了承いたしておつたのであります。併しながら終戰後五年亘つて国民ひとしく待望にかかつておりまする講和條約の締結の時期もいよいよ近きにありという吉田首相のお見通しもありまするとき、かような重要なる事項を曖昧に付して置くということはできません。何となれば、万一この條約の性質が非対等岩間の條約であつて命令服従的性質を帯びるものであるといたしましたならば、我々国民として講和條約に関する研究は全く徒労に帰するからであります。で、私の卑見を以ていたしまするならば、戰争終了につき連合国我が国に対する権利義務関係は、ポツダム宣言によつて極めて明確になつております。従つてこれを一方的に増減変更することは許されないことは勿論であります。果してそうだといたしまするならば、これを離れて新らしき権利義務関係を有効に設定せんとするものであつて一方が命令し他方がこれに服するという、非対等岩間命令服従関係ではあり得ないのではなかろうか。即ち條約本来の趣旨に基き、当事国双方対等関係において、その自由意思従つてなされたるものでなければならないと思うのであります。もとより條約内容の決定に当りましては、現実の問題として、そのときの主観的事情は勿論、あらゆる客観的情勢をも考慮に入れられて、或いはときに若干不本意なる條件をも忍従しなければならない場合がありましよう。又これを拒否することもあり得ると思います。これは普通一般契約締結の場合と何ら異なるべきものではないのであろうと思います。併しながらその根本的の観念におきましては、飽くまで対等岩間自由意思の合致によつて締結せられるものでなければならないと思うのであります。この意味においては、吉田総理大臣の前議会における太田議員に対しまする御答弁は、誠に適切なものであつて、何らお取消し理由はないであろうと思われます。この点に対しまする総理の御見解をこの際明確にして頂きたいと思うのであります。  第二には、太平洋戦争終結我が国連合国に対して無條件降伏をしたものであるかどうか、この点について吉田総理大臣お尋ねをいたします。  従来、吉田総理大臣初め私も又国民部分と共に、太平洋戦守我が国の無條件降伏によつて終止符が打たれたものであるという解釈をしておつたのであります。併しながらこの問題は、しかく簡単に片付けらるべき問題ではなく、太平洋戦争終結については、我が国軍隊はその場において銃を捨て鉾を収めて無條件降伏をしたのでありますが、軍隊以外の事項は、我が国連合国との間において締結せられたる終戰條約成立によつて終了したものであるとの説をなす者があるのであります。而してその理由といたしましては、戰争は最悪の結果に終つたことは事実であるが、この戦争終了事情を法理的に見るときは、アメリカほか連合国ポツダムにおいて定められたる宣言文記載事項を、我が国がこれを応諾したことによつて我が国連合国との間における戦争終結意思が合致し、ここに戦争は終了いたしたものであつて、この終戰條約における條件は同宣言第五以下において明記せられておるところであつて、この條件の大部分は、我が国連合国に対して極めて重大なる義務を負わされておることば事実であるが、又一方においては連合国といたしましても、同宣言第五項においては、我が国に対し同宣言記載條件以外は何らの要求をなさざること、又第八項においては我が国主権存在範囲を認められ、第九項においては、武装を解除せる我が国軍隊を各自の家庭に帰し、平和的且つ生産的の生活を営ましむるの機会を與えられたること、第十項において、日本人民族として奴隷化せしむるがごときことはしないということ、第十一項において、平利産業ため使用する原料の入手及び将来世界貿易への参加を許可すること、第十二項において、我が国民が平和安全正義の新秩序を保ち、且つ貨任ある政府の樹立せられたるときは、連合国占領軍日本を撤收するという義務を明記している等々、終戰條約当事国権利義務は極めて明確になつているのであります。これを一方的に増減することはできないのは言うまでもありません。ただ同宣言の第十三項二おいて、日本国政府に対し、全日本軍隊の無條件降伏宣言すべきことを命ぜれておりますが、これを以て終戰條約全体を無集約降伏と断ずることば当を得ないと思うのである。(拍手ドイツはヒツトラーが戰死し、完全に敗戰して、みずから管理するの能力なく、連合国の前に降伏し、その管理を連合国に委ねる外、途がなかつたのでありまするが、これこそ真の国際法上無條件降伏と見るべきであつて我が国の場合は連合国より峰約の條件を示され、我が国がこれを受諾したることによつて戰争終結となつたのでありまするのみならず、幾多の制限を受けておりまするけれども、その主権は依然とし嚴存し、これをドイツの場合と同一に論ずることは妥当でない。  要しまするに、同宣言第十三項において日本国政府に対し軍隊の無條件降伏宣言を命ぜられておりますことと、連合国軍隊日本国占領の事実等の現実の姿を見て、一般に無條件降伏のごとくみなすに至つたものであると思われるというのであります。果して然りといたしますならば、この点の解釈如何によりましては、やがて締結せられんといたしまする講和條約の性質を決定いたしまする上において重大なる関係を有するものでありまするから、この点についてこの際これを明白にして置く必要があると思いますので、吉田総理大臣のこの点に対する御見解を伺いたいと思います。(拍手、「答弁しつかり」「重大問題だぞ」と呼ぶ者あり)  第三「太平洋戰争終結当時の客観情勢は、世界いずれの国民も、戰争の非を悟らざる者なく、現にヤルタ会談を初め幾多国際的会談におきましても、心から平和を愛好せんとする気分が充ち満ちておつたのであります。かかる情勢の下において、我が国は新憲法第九條において戰争並びに交戰権キ放棄するの規定を設け、世界にこれを宣言し、以て平和の水先案内たらんことを期したのであります。然るにその後の国際情勢はますます複雑を極め、殊に最近勃発いたしましたる朝鮮問題等ため二、我が国の無防備が却つて戰争誘発導火線となり、加うるに世界安全保障関係等から新たなる考え方をなす者の出て来たことは、我が国といたしましては大いに注目すべき問題であろうと思うのであります。即も現にアメリカ評論家のウオルター・リツプマン氏は朝鮮事件に関連して、日本を完全に又永久に武装解除せしめたることの誤まりを認め、日本国内暴動と外部からの侵略を除くために再軍備の必要を説き、又過般来朝せられましたるアメリカブラツドレー統合参謀本部議長ば、欧州を守るため西ドイツの再武装を許すべきであると、同国の上院委員会において意見を述べられております。その他ワシントンの官辺筋、或いは軍部側、国会、言論界等におきましても、民主主義諸国は、共産主義諸国と戰う第三次大戰の恐怖を除去するためドイツ及び日本の再軍備を許すべきであるという意見が表明せられておるのであります。又今朝の新聞によつて見ましても、ワシントン・ポスト新聞社のごときは、その社説において、大陸の事情が一変した事実に鑑み、單に日本に基地を置くというような目先のことだけでなく、東亜政策の中心は日本の将来にかかつているから、日本自衛兵力を認め、日本人協力を得ることが更に大切なことではなかろうか。日本政治的、経済的に東亜安定勢力として復興させなければ西太平洋の平和は確保されないということを強調しております。これがため我が国民の間におきましても、この点について真剣なる関心を拂つておる者も相当あるやに聞いております。併しながらこの問題は、日本がすでに新憲法において世界平和の大理想宣言しておりまする立場上、軽々に論議すべきものではないと思いまするが、この際、国論統一ため、お差支ない限りこの点に対する総理大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。  第四、国内治安の問題について吉田総理大臣並びに主管大臣にお伺いをいたします。  戰争の惡影響によつて国民道義は全く地に落ち、法を犯して少しも恥ずることなき風潮のありますることは誠に寒心に堪えないのであります。今や国民の大部分、殊に都市生活をいたしておりまする者のごときは、大なり小なり一人として強権窃盗被害を蒙むらない者はない。又多少でも闇売闇買経験なき者は殆んどあるまいと言われております。一方、刑務所はいずれも過剰拘禁に慎み、行刑の目的ば殆んど崩壊の状態にあり、官公吏官紀紊乱は全くその極に達し、射倖行為の殷賑、不良青少年跳梁跋扈映画館、カフエー、あいまい屋、怪しげなる風俗壊乱出版物の頒布等々、挙げ来たりますれば正に人生の一大修羅場の観なきを得ません。かくのごときは單に国民生活を脅すばかりでなく、ポツダム宣言第七項に示しまするがごとくに、日本が平和的新秩序の建設せられるに至りますまでは連合国日本を占領することになつておる点等から併せ考えまするとき、この国内秩序の確立は実に焦眉の急と言わなければならんと思います。たまたま今回朝鮮事件の勃発に伴い、マッカーサー元帥より警察並びに海上保安部員数増加のお許しが出た二とは、国民と共に甚だ心強さ々感ずる次第でありまして、速かに適切なる整備拡充を図り、万全を期せられたいと思うのであります。これに対しまする主管大臣の対策の詳細をこの際承わりたいと思います。  第五、警察問題については、従来事故が甚だ多くして定員が少いため既発事件の処理にのみ沒頭せられ、予防警察の方面におきましては殆んど顧られざるの憾みがあつたのであります。尚このたび増員せられましたる警察官警察予備隊として国家非常の場合にのみ使用するものであるかどうか。或いは又在来の警察官と同様の勤務に就かしめるのであるかどうか。この点に対する主管大臣の御所見を伺いたいと思います。  最後に、警察官武器使用について吉田総理大臣の御所見を承わりたい。日本警察官はこのたび新たに増員すべきものを合しまして二十万人と海上保安部員全員に対してピストルの携帶を許されることと思います。この警察官武器使用につきましては、警察官等職務執行法第七條によつて警察官は犯人の逮捕、若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対しまする防衛、又は公務執行妨害に対しまする抵抗抑止ため必要ありと認めたるときは、武器使用してその者を殺傷しても構わないことになつておりますことは御承知通りであります。この規定昭和二十三年の七月十二日に井律第百三十六号を以て定められたのでありますが、爾来二ヶ年の間においてすでに十数件の殺傷被害者を出すに至つております。これがため一般から痛烈なる批判を受けておるのであります。申すまでもなく、憲法第十三條におきましては、個人の生命自由は最大に尊重することを明記し、従つてたとえ重大犯罪を犯した者でありましても、教養の高き裁判官を以て組織いたしまする裁判所において一審、二審、三審と極めて丁重なる審理の上、その判決が確定するにあらざれば死刑若しくは自由刑を科することはできないのであります。然るに比較的教養の低い警察官が、刹那の判断によつて国民生命を奪い、又はこれを傷け、而もそれが真犯人であると否とに拘わらず何らの法的責任がないというがごときは、誠に危險千万なことであつて、一刻も早くこれを改正して、国内暴動とか又は外敵の侵略等の場合を除きまして、その他は刑法のいわゆる正当防衛又は緊急危難範囲においてのみ使用を許すということに改めらるべきであると思いますが、この点に対しまする吉田総理大臣の御所見を伺いたいと思います。  尚、私は與えられましたる時間の余裕を借りまして、吉田総理大臣に対して国家ため一言苦言を呈したいと思うのであります。(「謹聽片々」と呼ぶ者あり)大臣は老躯を携げ文字通り我が国有史以来の難局に当り、生命も名誉も投げ出してひた向きに祖国再建ために挺身せられておりますることは、野党の立場にありまする私共におきましても明らかにこれを看取することができるのでありまして、誠に奪い存在であると思います。然るに大臣は、とかく反対者議論を聞くことを非常にお厭いになるように見受けられます。(「その通り」と呼ぶ者あり)このことは往々独善に陷り易く、ただに民主政治に反するばかりでなく、甚だ危險を孕むものであると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)今後は進んで反対論に耳を傾け、大臣の叡智を以てこれを取捨し、以て万全を期することが肝要であるかと思います。今や我が国はますます困難の度が加わりつつあるのであります。而も再度の失敗は許されない状態であります。何とぞ自愛自重せられまして、角を矯めて牛を殺すようなことを真似ては大変だと思います。聊か卑見を呈しまして降壇いたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  條約が対等の地位に立つて国家間において締結せられることは当然のことでありまして、但しポツダム宣言受諾及び無條件降伏に関する條約は、條約そのものが日本受諾によつて成立いたしたのでありますが、併しながらその條約は終戰によつて完了いたしたものではなくて、その條約による日本の條約上の義務は今尚存在いたしておるのであります。但し私がこの講和條約の言明に対して取消をいたしたのは、気持は今も、原則はそうでありますが、併しながら條約は飽くまでも対等で行くべきものであつて、條約は、日本国講和條約は日本国受諾によつて成立するのであるという意味を申したのでありますが、言葉が足りなくて、そのため国際間に誤解を生ずる虞れがありまするから、取消したのであります。今申す通り日本国としては、今尚ポツダム宣言受諾及び無條件降伏によつて戰いが終つた、停職になつたというこの條約によつて日本国が負わされておる義務は、今尚存続いたしておるのであります。即ち戰勝国戰敗国関係は存続いたしておるのであります。又ポツダム宣言なるものは連合国日本国その他に対して宣言いたしたので、その当時の解釈はすでに明らかになつております。連合国はこれは一方的に宣言いたしたのである。その記載せられておる事項連合国としては飽くまでもこれを守る。但し戰敗国と申すかが、これをそのポツダム宣言に記載されておる條項権利として引用することはできないのであるということは、当時明らかに宣言されておるのであります。故に講和條約において立場対等であるということを申しても、戰勝国戰敗国、又無條件降伏義務は存続いたしておるものと御承知を願いたいのであります。  次に再軍備の問題でありますが、これは帝国憲法によつて明らかに再軍備を放棄し若しくは戰争を放棄いたしておるのであります。(「帝国憲法というものはないよ」と呼ぶ者あり)この趣旨は、私は日本国民が飽くまでも、喜んでこの憲法受諾……この憲法に同意を與えたのみならず、政府としてもこの憲法従つて行動いたしたい。即ち再軍備の趣意は国民の希望するところにあらず、又政府の考えているところではないのであります。外国の有力な新聞その他において如何様なことがありましても、日本国独自の立場から再軍備はいたすべきものでないと、私は確信いたすのであります。又国民の考えもここにあると思います。何となれば、既往において軍備を持つたがために、故に無謀な戰争に至つたのみならず、内政におきましても相当いろいろな問題を起して、いわゆる軍部とか、或いは軍部主張憲法その他を無視せられて行われたような事実は、沢山過去において我々がにがにがしい経験として記憶に尚新たなるところであります。今日少しの軍備を持つということは却つて危險であるのであつて日本が曾て不完全なる軍備を持つたがために、遂に世界戰争に介入する、或いはドイツと共に世界職印を惹き起したという非難を受けて、そのために今日の敗戰その他の、甚だ国民としては非常な苦難を生じたものでありまして、軍備は軽々しくいたすべきものではない。軍備をいたした結果が遂に軍備拡張になり、又国民の負担、又歴史において拭うべからざる汚辱を生ずるということがあるのでありますから、再軍備議論は、国民として又政府として考えたくないものであると私は思うのであります。(拍手)  治安の問題につきましては、これは主管大臣に讓りますが、最後に私に対する苦言の御意見は富んで拝聽いたします。私も今後は気を付けます。(「実行せい、実行を」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣大橋武夫登壇拍手
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 鬼丸議員にお答えを申上げます。  マツカーサー元帥の書簡に基きまする警察力の増強につきましては、政府といたしましては目下総司令部と緊密なる連絡の下に、その組織、性格その他の具体的な計画について速かに実施いたしますよう努力中でございます。(「その内容を言え」と呼ぶ者あり)  次に武器の濫用を避けよという御所見に関しましては、国家地方警察本部におきまして、同様の趣旨の下に折角配慮いたしつつあることを申上げます。(「ただそれだけか」と呼ぶ者あり、拍手)     —————————————
  7. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 細川嘉六君。    〔細川嘉六登壇拍手
  8. 細川嘉六

    細川嘉六君 私は日本共産党を代表して、総理大臣吉田茂君の施政演説に関し質問いたします。  朝鮮戰争がどうなるか。これがために第二次世界戰争が起されるであろうか。国民は毎日不安の念にかられておる。これが我が国民のありのままの気持であります。これを政治に活かすことが為政者のなすべきことである。然るに政府は、朝鮮戰争に際し、いわゆる警察的措置をとつているという国際連合方針協力することは当然であり、又その措置をとつていると言つておるのであります。併し国際的にも、又国内的に見ましても、かような措置には如何なる根拠があるのでありましようか。我が国講和條約も締結しておらない。国際連合にも加盟しておらない。又我が国憲法戰争の放棄を誓約しているのであります。これらの点を政府は全く度外視しているのであります。まさか政府はこれを総司令部の要請であるとは言いますまい。ポツダム宣言襲名国ソ連中国イギリスアメリカの四大国のいずれもがこれを要請する筈がない。ポツダム直言はこのことを明確に示しております。吉田君のなさんとし、又なしていることは、平和を望んでいる国民要望に反して、戰争に巻き込まれる途を選んでいるものである。而も何らの根拠なくしてこれを行わんとしているのである。吉田君は一体如何なる根拠に基いてかかる方針をとられるのであるか。これを先ずお伺いしたい。  政府国際的警察行動協力することは、世界の平和を確保するためであり、世界の信用を得て早期講和を達成し得ると称している。吉田君も承知通り朝鮮戰争に関し、ソ連は、この戰争韓国政府の挑発によつて起されたものであるとし、且つこれに干渉すべきではないと主張し、アメリカ政府との間に重大な意見対立をなしております。四大国の間にこの意見対立があり、国際連合も又二つに分れている。この場合において政府が一方に協力するがごときことは、不幸な租界の戰争……対立を促進し、第三次世界戰争を惹き起す役割を果すことになるのみならず、直接には、政府措置朝鮮戰争に関與するものであつて、これはひとり朝鮮に止まらず、同機革命情勢にある中国その他アジア諸国民の不信と憤激とを将来長く我々国民に蒙むらせるものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)我々国民の生存にとつて、これら諸国民との関係切つても切れないものであり、親密でなければならないのであります。この故に政府措置は、世界の平和に対し、戰争に省き込まれまいとする国民の念願に対し、全く無責任であることを明らかにしておる。今日世界の大勢を見るとき、ソ連を初め、人口八億を超える社会主義人民民主主義諸国国民とその指導者は平和を守ることに全力を挙げておる。又資本主義諸国においても人民平和擁護運動は極めて活溌であります。伝え聞くところによると、アメリカ国内においても戰争負担戰争の惨禍について深刻な反省がなされておる。平和擁護運動日ごとに拡大しておるのであります。この全世界に亘る一大平和運動に応えて、日本においてもあらゆる形の国民運動をますます活溌に、ますます強化しなければならないではありませんか。この世界に拡がる平和擁護運動によつて第三次世界大戰は必ずや防止することができる。(拍手)この平和擁議国民運動を助け、これを盛り上げることによつてこそ、初めて日本は平和を維持し、みずからの安全が保障せられ、国民の待望する全面講和、そうして占領軍撤退が実現するのである。吉田君は、全面理想だが、不可能だから單独を採ると言つておられるが、全面講和は、国民がこれを欲し、これを求めるならば、必ず実現されるものである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)全面講和ポツダム宣言に保障されているばかりでなく、現にソ連中国等が賛成し、唱道し、実行しつつあるところであります。然るに政府全面講和に対する国民要望を抑え、果ては危險思想呼ばわりをし、又極めて一方的見解の下に、意識的にソ連、中華人民共和国の誹謗をこれ努め、なし崩しに單独講和を実行し、全面講和への途をみずから閉ざしておる。このような政策の結果はすべて今日のざまではありませんか。吉田君言うところの單独講和方針で進むならば結局講和後の占領軍撤退も実現し難く、民族を結局戰争に巻き込み、民族の隷属と破滅を招くことは必定であります。今日協力体制を云々する吉田君の方針を聞くに及んで、單独講和が如何に危險であり、これが取りも直さず戰争への道であることがいよいよはつきりして来ております。ましてや西欧諸国岡においても、例えばイギリスのごとく、或いはインドのごとく、その立場は微且つ妙であります。外交通を以て任ずる吉田君がこれを知らざる筈はありますまい。このような国際情勢の下で、仮に自由党の諸君の立場を前提とするとしましても、吉田君のごときいわゆる協力体制ではなく、より愼重な方針が選ばるべきであると思います。況んや敢て弾圧と恫喝のお先棒を担ぎ、この国会までもう翼賛国会化さんとするがごときは、その危險もさることながら愚も又極まれりと言うべきであります。(拍手吉田君は正に幕末の井伊直弼のごとき存在である。(笑声)総理大臣吉田君に聞くが、言うところの協力体制とは、実際上ソ連を初め、隣邦中華人民共和国に対し敵対乃至は挑戰する結果にならざるを得ないが、敢てこのような結果に陷ることも辞さないつもりであるか。又かような方針が果して微妙な国際情勢に処する日本民族立場として是なりと信じなさるか。又近くはアジアの諸国民を友人とし、顧客とすることに障害にならないとお考えになりますか。又言うところの協力体制とは、勢の赴くところ敢て戰争に巻き込まれることも止むなしと解釈してよいか。  政府單独講和の論拠の中心は我が国安全保障にあるようであるが、一体どこの国が我が国の安全を脅かすのであるか。ソ連も中華人民共和国も我が国に軍事基地を持つていない。又求めていない。却つて中ソ同盟條約によれば、日本及び日本を支持する国の侵略政策危險に対し同盟條約を結んでおるわけであります。このことは軍国主義の根絶を根本目的としておるところのポツダム宣言が古田君の下では棚上げにされ、職印犯罪人の追及が徹底せず、重要産業の軍需産業化が実行せられ、軍国主義が温存育成されておることに原因しているではありませんか。ソ連侵略戰争に出ないことは世界の諸国民が知つておる。アメリカ政府も又このことを承知しておる。それどころかソ連世界平和擁護の先頭に立つて真剣に努力しておる。(「嘘を言うな」と呼ぶ者あり)どこに嘘がある(「馬鹿」と呼ぶ者あり、笑声)吉田君も又これを知るが故に、却つて故意にソ連のいわゆる政治侵略政策という虚構を国民に吹き込もうとしているのであります。そこでいわゆる政治侵略の正体は何でふるか。何らの魔術もない。事は極めて簡單明瞭でもる。我が国民の切実にして緊要な生存上の必要は、生活の安定と向上を保障し、国の独立と自由を確立し、戰争の脅威を克服することである。(「そうだ」「共産党はどうした」と呼ぶ者あり)この必要が人民民主主義によらなければ解決し得ないことは政府現実政治そのものが余すところなく実証しておるではないか。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手政府安全保障の名においてこの重大且つ痛切な国民的必要を隠蔽し抑庄せんとしているのである。吉田君の安全保障という呪文のために、国民生活の窮乏、載争準備費の負担が増大し、戰争に巻き込まれ、民族の独立が失われようとしている。(「北鮮はどうした」と呼ぶ者あり)吉田君の安全保障論は大変高い限りたき犠牲を国民に拂わせるものである。我々国民朝鮮戰争に直面するに及んで、一層痛切に戰争政策に反対し、更に進んで世界平和を擁護し、民族の独立と自由を確保し、全面講和を一日も早く達成しなければならないことを痛感させられるに至つたのであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)我が国安全保障は、実に世界の平和を求むる諸国人民と共に平和擁護特に全面講和の運動を巻き起し、これを広汎に展開せんとすることに上つてこそおのずから保障されるのである。安全保障は他人から投げ與えられるものではありません、断じてない。総理大臣吉田君は国連による安全保障を唱えておるが、国連自体が二つに分れておる今日、その一方に協力することは却つて安全を脅かすことになりはしないか。(拍手)又聞くが、君の言わんとするところは、特定の国に日本の安全を委ね、従つてその特定国に対し軍事基地はもとより、進んでその経費を負担し、その他あらゆる主権の束縛に甘んずる方針であるか。明確な御答弁を願いたい。  全面講和を妨害し協力体制をとる政府が、又我々国民の労働権・生活権を抑圧し剥奪しているのは不思議ではない。今や失業者、半失業者は約二千万人に達しておる。失業問題は深刻な様相を帶びて来ておる。(笑声)植民地的失業の性格を明確にして来ておる。(「嘘言うな」と呼ぶ者あり)簡單な一二の例を挙げるならば、東北地方の深刻な窮迫振りは想像するに余りあることであり、十四歳乃至は十八歳の子供連を甚だしきは前借五百円、或いは五貫目の「いも」と引き換えに人身売買が行われておる。ここ東京都においても、例えば五反田の職業安定所で六月二十六日、輪番制の施行をめぐり、自由労働者と当局の交渉が行われた際に、四人の子供を抱えた婦人が子供が沢山いるから何とかして下さいと哀願したところ、労働課長の岡田某はこの婦人を突き飛ばし、その上脇を蹴りつけ、第三、第四肋骨に不完全骨折を與えたという事例が起つております。これはもとより一係官の問題ではない。この種の事件は吉田内閣の労働政策の下では枚挙に遑がないのである。(「共産党の煽動によるものだ」と呼ぶ者あり)又就業労働者においても植民地的低賃金と人権の無視は日常茶飯事となつておる。ピストルと棍棒がこれを支配しておる。特に朝鮮戰争が起り、首相のいわゆる協力体制がとられて以来、各種の工場においては日曜も取上げられ、未曾有の労働強化が行われ、甚だしぎは威嚇の下に軍夫同機の作業が行われておるのであります。外国資本系統事業所中には労働組合の結成さえ禁止されております。これらの不法に対し正直に良心に従つて抗争する者は、不逞の輩、暴力革命主義者という口実で彈圧されております。  租税負担も又今次の協力体制の下にいよいよ加重せられ、植民地的な不法徴收が強行されておる。この不法な重大な課税に対して全国にこれに対する鬪争が甚だしい勢いを以て起ることは目に見えるようであります。これに対し大蔵大臣はどうするのか。不足税……未納税千二百億円を徴收するつもりであるかどうかお伺いしたい。これらの最大多数の国民大衆のために鬪うことが、果して政府の口癖になつておる過激な少数者が法の秩序を乱し人民の自由を暴圧するものと言えるであろうか。(「その通り」と呼ぶ者あり)政府は何が故にかような不法と弾圧を強化しているのか。これこそ單独講和ためであり、いわゆる協力体制ためであります。  労働大臣保利君は、爆発寸前にある失業者の問題に関し、又数々の不法に関し、又協力下における労働強化に関し、如何なる所見を持つておられるかお伺いしたい。  更に人民に対する重圧が強化されようとしておる。政府單独講和体制のためにかねて立案して来た特別警察の設置をこの機に乗じて実行せんとしている。この特別警察の設置が旧特高制度の復活であり、同時に軍隊の再組織でないと果して言えるか。古田君に明らかに御答弁を願いたい。(「もつとはつきり言え」と呼ぶ者あり)又果して一名の旧軍人、旧特高、旧憲兵、旧特務機関員をこの組織のうちに入れないという確約ができますかどうか。(「できないだろう」と呼ぶ者あり)又果して外国人顧問乃至嘱託を置き、実質上外国人の指揮下に服するがごときことなしとの保証を與えられるかどうか。明確に御答弁をお願いいたします。(「できないだろう」と呼ぶ者あり)終戰前、時の政府戰争準備のために共産党を非合法化した。思えば第二次吉田内閣組閣当初から我が党の非合法化と彈圧を図ちて来たのは、実に今日只今のごとき事態に対する準備でないと言えるか。  次に特に吉田君に伺うが、韓国軍に対する日本人の参加に対し政府は如何なる方針であるか。平壌放送によれば多数の日本人がすでに参加していると伝えられている。これに対し政府は如何に説明されるか。又旧朝鮮駐屯の日本軍人が種々なる口実の下に朝鮮戰争に参加せんとしていると言われておりますが、これら軍人の動静に関し政府は如何なる方針を以て対処しておられるか。又万一参加した場合に如何なる措置をとられんとするのであるかお伺いしたい。  古田君は独立心と愛国心を十分あの施政演説のうちで述べておられる。私が以上述べて来たつたごとく、真の愛国心、真の独立心は吉田君の方針のうちにあるのではなくて、実に吉田君のこの政策に反対する者の側にこそあるのであります。(「その通り」「共産党には分らないよ」と呼ぶ者あり)顧みるに、我々国民は旧支配階級によつて惹き起された太平洋戰争なるもののお蔭で丸裸かになり、更に一切の軍備を撤廃し戰争を放棄することとなつた。(「もつと勉強して来い」と呼ぶ者あり)又大事な独立をも失つたのであります。この我が国の大破局のうちにこそ我々国民の進むべき大道が明示されております。即ちそれは人民民主主義の大道であります。我々国民がそれぞれ生き甲斐のある社会を建設することである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これは同時に世界に向つて軍備撤廃、平和擁護、民主主義の徹底を高らかに唱え得る世界立場であることを我々は知つている。この真の(「共産化と言え」と呼ぶ者あり)大確信の下に堂々と行進をしなければならん我々の立場であります。国民立場であります。然るに誠に不幸不運なことには、政府は全くこれと逆の方向を我々国民に強行し、隷属と戰争と反動とへの道へ押し進めているのではありませんか。  最後吉田君にお聞きしたい。現在世界情勢は原子爆弾、水素爆弾を使用せられる危險を孕んでおります。世界最初の原爆の洗札を受けた国の首相として、吉田君はこれを使用することに対し如何なる感懐を抱いておるか、且つこれを阻止するために如何なる努力をなされるのでありましようか。原爆に対し不安を抱いている日本国民並びに低界の前に、首相見解を明らかにして貰わなければなりません。  満堂の同僚諸君、いずれの党派を問わず、我々は我が民族の運命が決定せられる本国会、この議席に坐つている。あの戰争中の翼賛議会はここで開かれました。あの戰争への道もここで決定されました。これは忘れてはならない。この故に我々は吉田君の協力体制と称する翼賛国会化に対し、この企らみに対し断呼鬪わなければなりません。これこそが我々が生きる、我々国民世界に立つて行く道であります。これを以て終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  私は、日本国をして戰争に介入せしめんとするとか或いは第三世界戰争を巻き起すようにするとかというような、只今お話がありましたが、そういう気持は断じてないのであります。(「断じてやつている」と呼ぶ者あり)又全面講和については、しばしば申しているところでありますが、結構なことではあるができないからいたし方ないと申すのみであります。何となれば昨日も申した通り、対日講和は三、四年前に第一次吉田内閣が辞職をするときには、その秋にはできるであろうという見通しであつたのであります。それが今日までできない。何が故にできないのであるか。これはソ連その他の反対があるためであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)若し只今お話のように全面講和ができるならば、ソ連が対日講和を希望し、若しくは積極的に参加するならば、我々は早く平和を楽しむことができたのでありまするが、これを妨げるソ連と平和をしろ、或いは平和関係に入れ、(「反対のことを言つている」と呼ぶ者あり)全面講和をしろということを言うのは、できないことを強いるものであつて、それは細川君自身平和関係に入ることを希望しないのであると思う。  又この国会は翼賛国会とは違うのであります。誰が翼賛国会にすると申したか。断じて私はしたことがないのであります。(「しつつある」と呼ぶ者あり)しつつあると考えられるのは、そう言われる諸君が翼賛国会を希望するからであろうと思うのであります。(拍手)  次に申しますが、若し細川君の言われるがごとく日本国が共産化したならば、隣国たるソヴイエトと友好関係に入り得るでありましようが、共産主義に、或いは共産主義国となることは国民承知せざることであります。故に細川君の説は賛成ができません。  その他のことは所管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇
  10. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 細川君は、我が国に二千万の失業者が溢れているということを言われますが、共産党の方ではときどきそういうことを言われておりますようでありますけれども、政府は失業状況につきましては、先日岡田議員に申しました通りでございます。朝鮮事変以来、日本の労働状況、特に労働強化、労働運動に対して断圧するの傾向があるということでございますが、さようなことは全くございません。又朝鮮事変以来の労務状況につきましても、特段に変つた様相はございません。  尚、五反田の職業安定所の騒擾のことのお話でございますが、私の方では職業安定所の職員が傷害を受けたということは承知いたしておりますが、御指摘のようなことはないと思います。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇
  11. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 千二百億円の滯納を徴收するかという御質問でございますが、適時適当な方法によりまして徴收いたします。(拍手)    〔細川嘉六君発言の許可を求む〕
  12. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 細川君、何ですか。
  13. 細川嘉六

    細川嘉六君 再質問いたしたいと思います。
  14. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 再質問ですか。九分間残つておりますから、再質問を許します。細川嘉六君。    〔「やれ」「まだ分らないのか、頭が惡いぞ」と呼ぶ者あり〕    〔細川嘉六登壇拍手
  15. 細川嘉六

    細川嘉六君 吉田君の御答弁では、私が答弁を求めました水素爆彈、原子爆彈に関する御所見は述べられておりません。(「答弁無用」と呼ぶ者あり)更に全面講和についてはソ連中国も何も努力していないというような御答弁でありますが、これは全く反対のことを言つておられる。これは答弁になつておりません。事実に即して御答弁を願いたい。誹謗を盛んにやつておられたことは(「それは共産党だ」と呼ぶ者あり)事実明らかなことである。そんなことでは片付きません。事実に即して中国及びソ連が如何に努力して来たかを見なければなりません。そうでなければ答弁になつておりません。  それから翼賛議会にこの議会がなろうとしておるということを私が申しましたことに対して、何も政府はそんなことを言つた覚えがない——、言つた言わぬではないのです。今回に至るまで、この国会においてなされたこと、それが段々とこの国会にまでなり、これが一体(「同じことをやめろ」と呼ぶ者あり)その内容は何であるか。それについて私は申したのであります。これは翼賛国会にしようとする、じくじくと進んで来た道である。これについては反対のことを言つておられる。言うた言わぬじやないのであります。事実を私は言つておるのであります。誠に危險千万なことがここに行われておるのであります。それについて(「危險千万は共産党だ」と呼ぶ者あり)私はここで大臣諸君にかれこれと的確な答弁を求める気はありません。のらりくらりと、その場を言葉の上で滑つて行くことは大臣諸君の今までの慣例であります。それでありますから、九分間ありますけれども、私はこれを追及いたしません。ただ今申した点についてはつきりして頂きたい。(「答弁の必要なし」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  水素爆彈その他の危險については私も同感であるが、危險なことは更に水素爆彈ばかりではないのであります。共産主義は甚だ世界の脅威であります。(拍手)その脅威をことごとくここで以て細川君と議論する時間はありません。又その他の問題については、細川君のお話は多くは独断若しくは曲解でありまして、私は一々ここで答弁をする義務を持たないと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)     —————————————
  17. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 岩木哲夫君。    〔岩木哲夫君登壇拍手
  18. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 私は国民民主党を代表いたしまして、この際重ねて総理大臣並びに関係主管大臣お尋ねいたしたいと存じます。  今回の不幸なる朝鮮の戰局が今後どのように変化して参りますか、予測し難いといたしましても、その国際的様相から長期化の状態に入るであろうことは殆んど想像に難くないのでありまして、従つて我が国に及ぼす直接間接の影響は極めて重大であることは首相も又しばしば指摘されておるところであります。最近アメリカにおいては、すでに超非常時的総動員計画に諸般の体制を切換えつつありまして乃至は英仏その他東西に緊迫を告げておる関係各国にいたしましても、政治経済上に相当の変化を来たしつつあることは注目すべきことであります。こうした中に、国連各国とはもとより、その指導主力をなしまするアメリカとは、取りわけ密接な関係に置かれておりまする我が国立場は、又反対に一方においては貿易上で事実上交流されておりまするアジア並びに南方のスターリング地域との経済関係につきまして、如何なる方法と考えを持つて行くかにつきましては、我が国立場におきましては極めて重大なる現実の問題であると思う。政府は今般の朝鮮事件我が国にとつて有利であると言明されておりますのは、どの点とどのような見解を持つて言われておるかをこの際お尋ねいたしたいのであります。(拍手)或いはそれは早期講和が近いと考えられる点を首相は言われるのかも知れませんが、然らばその早期講和とはどのような内容を想像して有利と解釈しておるのか、又はただ講和が早いというだけの感じを以て有利と独断されておるのか、或いはその他のものであるといたしますれば、それは何を指しておるのかをこの際その所見と共に承わりたいのであります。  第二にお尋ねいたしたいのは、首相の念願する講和体制の前提は国論の統一にあると言われておりまするが、それは首相は如何なる方式とその熱意を具現いたさんとしておるかにあるわけであります。先の衆議院総選挙の当時と現在とは、国際情勢国内政治経済の上にも著しく変化を来たしておりまするが、而も今回のこの予測せなかつた新らしい事態に対する新らしい国論統一の方式は、衆議院解散が或いは最も適切と考えられる点があるのでありますが、政府はこの方法を果してとる考えがあるかないかどうか。若し然らざるといたしますれば、他に如何なる手段方法を以てこの国論統一を具体化せんとするのであるかを承わりたいのであります。  そこで私は、吉田自由党内閣が先般の参議院選挙を内閣の運命にかかわるものだといたしまして、その必死の選挙工作として、行詰れる財政、行詰れる経済状態を打開せんといたしまして、わざわざ国会開会中に池田大蔵大臣を洋行さして、その土産談を宣伝せんと試みたり、或いはできるかどうか分らないような公約なるものを投票の三日前に突如として放送したり、(「あさましいぞ」と呼ぶ者あり)あの苦肉の策や、或いは又わが党苫米地最高委員長が抱懐する講和問題に限り、国論統一を念願とする超党派外交政策を侮蔑いえしたかと思いますと、後から同調を申入れたり、或いは社会党に拒否されて、今度は中止を相談して見たり、その不定見や、或いは憲法の精神に則り当然の永世中立諭を掲げる母校の南原総長を曲学阿世の徒と潮けるなどのことを憤然とやつておる精神状態を、今更我々は非難せんとするのでありませんけれども、ただ憂うべきは、国家国民の代表たり総理大臣たる大政党の管領が、この重大なる時局に際し、当初の付和の理想とする国論統一を確立すべき責任の地位にありながら、ただ徒らに自分の主義、自論に同調せぬ講和論を以て空念仏と罵倒し、或いはエデンの花園を荒す者は天罰観福に到るであろうなどの威嚇をして、無風の刺戟を與えて国論を封殺せんといたしておることは、むしろ総理大臣自身から国論統一の前提を打ち壊し、或いは惑乱しているのではあるまいかと案ずる諸点が少くないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)これは国民といたしましても極めて遺憾と言わなければなりません。これ恰も曾ての東條翼賛内閣のワン・マン政治、ワン・マン議会以上の不幸なる姿を再現しつつあるかの感を内外に印象付けているのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)私は吉田首相が本当に国論統一こそ講和の絶対條件と考えるならば、ただ無暗に国民を侮蔑することなく、たとえ他党が全面講和・永世中立論を主張いたしましても、これ盡く憂国至誠の送りである以上、虚心坦懐に、よりよき真理と誠実を探究且つ切礎琢磨して、大同に統一するの大乗的襟度を以て行くことができないのかどうかをお尋ねいたしたいのであります。果して首相はこの国論統一の具体方策としては、今この際どのような考えと方法を持つているかをお尋ねいたしたいのであります。  次に第三点としてお開きいたしたいことは、米英その他列国は常に日本の民主化独立と経済自立に援助を與えられていることは、我々国民といたしましても大いに感制するところでありますが、今首相の言われましたように、早期講和が近付きつつあると考えるならば、その講和締結後における我々日本の平和的自主運営には、全国民一丸の忠実なる努力と責任によらなければならないのでありまするが、要はその講和の具体的内容というものが、又全国民最大の関心事でありますることにつきまして、これは併せて更生日本祖国万年のこの大計基礎をなすものであると思うのであります。そこで私はこの際許さるるならば、安全保障の問題はもとより、政治の自主性の回復の問題、及び領土、交通、産業、経済、教育、人口等の諸問題について、せめて国民の真摯なる念願を連合国に今より披瀝しておくことは、決して無駄でもなく不穏当なことでもないと信ずるのでありますが、着想はこれらに対し如何なるお考えと方法を持つておられるかをお尋ねいたしたいのであります。  次に第四点としまして共産党対策についてお聞きいたしたいと思います。政府が今回且つ現にとられております共産党対策は、我々も又異論のないところでありまするが、ただ問題は裏面活動に現われた主義指導者やその行動範囲を彈圧するのみが策の根本ではないと思うのであります。要はその抜本的なる手段でありまして、共産主義が生れんとする種、育ち拡がらんとする苗を植えない、蒔かないことであります。そこで我々の指摘いたしたいことは、一昨年吉田内閣が出現以来、殊にここ一ヶ年以来の共産主義活動は全面的に拡大し、殊に官公吏或いは公共事業従業員乃至は知識青年層並びに学生層に夥しい勢いで蔓延しつつあることであります。取りわけ全国の各大学学生層には、想像以上に多数の共産主義乃至はそれに近い過激思想を唱える者が急増いたし、それが近来各種の場面に不穏なる言動となつて現われ、学生の本分逸脱も甚だしきを見受けるのでありまして、我々はこの大切な祖国の次代を背負う有為の青年学徒が、かくも多数かかる状態に陷りつつあることを最も悲しみ且つ憂うるものでありますると共に、又かかる傾向は断じて放任すべからざる由々しき事態と言わなければなりません。こうした状態に対し、吉田総理大臣並びにその責任の地位にありまする天野文部大臣は、如何なる考えを以てこれらに処せんといたしておるのかを承わりたいと思うのでありまするが、又併せて吉田内閣に対し猛省をこの際促して見たいと思うのであります。それは吉田内閣が議会に絶対多数を獲得いたしましてから、仮に他よりまじめで公正な議論があつても、これを理由なく封殺排除して、多数の威力を横暴化し、或いは民主的議会制度を軽視壟断して、常に独裁政治を強行せんとする独善とその冷酷さが、如何に一般社会はもとより特にこの純真な青年学徒層に想像以上に惡い刺戟を與えているかについて、よくお考えを願いたいと思うのであります。更にその行う財政経済政策が、いわゆる優勝劣敗的な自由経済に基く高度の資本主義構想に片寄り過ぎて、頑固な右翼政党の本領を遺憾なく発揮せらるるところに、一方これらの犠牲によつて生ずる被害者たる多数残余の国民の悲劇が、或いは不景気或いは倒産、失業、生活苦、重税苦となつて追詰められてその破局の果ては不満怨嗟となり、政府に対し或いは社会に対し反磁心となり過激思想となつて、共産主義者に逐になりつつあるこの見えざる多くの実態は、正に共産主義を製造いたしているものは吉田内閣の反動政治そのものであると深く私は憂慮するのであります。(拍手)そこで私は、この憂うべき事態と現象に附し、総理は如何なる対策を講ぜんとするのであるか。従来の独善政治的傾向を少しは改められるおつもりであるかどうかをお尋ねいたしたいのでありますると共に、この際、私は要望いたしたいことは、この危險なる青年学徒の思想を立て直し、その前途に希望と光明を與え得る熱意を総理大臣は天下に披瀝し、そうしてこの若き次代を背負う青年の思想を善導して参りますることは、即ち又国論統一の一助にもたると考えるのであります。  次に池田大蔵大臣にお聞きいたしたいと存じます。アメリカは西欧諸国に対し、東西における防共防衛強化のために再軍備計画の拡大を要請すると共に、アメリカ自体におきましても準戰時体制に切替えられつつあり、殊に当面する朝鮮戰局の長期化価向等は、我が国財政と産業経済の上に重大なる変化が生ずることは、又当然とも言わなければならないのであります。そこでお尋ねいたしたいのは、先ず財政上の問題といたしまして、今回の警察予備隊等の設置増強に伴いまする経費年間約二百億見当が、仮に今年度分はその半額といたしましても、この百億が旧債務償還の予定資金流用によるその穴埋めは如何なるものを以て当てんとするのであるか。又それによつて生ずる財政上の変化と、もう一点は地方税が前の議会において否決された場合に、政府は直ちに旧税法の復活の措置を講ずべきに拘わらず、これをそのまま放任されたことによつて当然徴税し得べき八月一日までの徴税不能額は約三百九十億に及んでいることにつきまして、今回仮に地方税法が通過いたしましても、これが実際徴税実施入るのはどうしても十月、十一月と見なければならないのでありますが、而もこれが四月一日に遡及して課税せんといたしても、その後の四、五ヶ月の間に果して一ヶ年分の徴税総額一千九百億がどれだけ徴收でき得るかどうかは、すでに大きな問題となつて来つつあるのでありまして、ましてや現に国税が尚千二百億以上滯納しているこの実情に対して、この上更に増税の地方税千九百億の全額徴收は殆んど至難でありまして、結局地方税は四五百億程度の徴收不能、或いは困難な状態に陷る観察が各方面の一致せるところであります。然りといたしますれば、現在政府は地方自治体の財政空白を平衡交付金の大幅繰上げ支給と預金部資金の一時流用等で取敢えず賄つておりまするが、一方ではこれが又時期的に非常にずれて参りまして、地方財政の空白はますます甚だしくなつて参ると考えるのでありますが、こうなると結局更に中央資金の大量操作の余儀なきに至ります場合、政府はこれに如何なる方法と手段とをとらんといたしておるのか。又地方自治体に貸しておりまする預金部資金の引上げや、地方自治体自身がおのおの一般市中銀行等より借入れている返済が果して円滑にでき得る見込があるかどうかにつきましても、重大なる関連事項でありまするが、蔵相はこれらに対し如何なる処置方法をとらんとするかをお伺いいたしたいのであります。若し以上の困難な事態が起るといたしますれば、先の警察予備隊等の経費約百億、地方自治体に関しまする必要資金の合計が余程低めに見ても四五面億を要するとされた場合、その補慎財源はいずれに求めんとするのであるか。又こうしたことによりまして一層の金融梗塞が発生し、産業資金上に及ぼすものは著大なるものであると考えるのでありますが、将来日銀券の発行高、民間資金の融資の計画、現在とりつつある産業経済構造計画に対する財政金融政策の見通し、処置を承わりたいのであります。  次に第四点としてお尋ねいたしたいのは、政府は最近経済白書で、三月末現在でその予算歳入予定額の九五%の徴税を挙げていると言われているのでありますから、四月以降は残りの五%分、即ち約二百二十億の滯納分を督促徴收すればよい勘定であるが、只今も細川議員からお縛れいたしましたる通り、それを千二百億以上強硬な手段で取ろうといたしておることにつきましては、一体政府は何故必要以上の予算歳入額以上の税金を吸上げんといたしておるのか。かくのごとく誠に厖大たる水増割当を依然として行なつていることにつきましてお尋ねいたしたいのであります。  横尾通産大臣にもお尋ねいたしたいのでありますが、時間の関係上省略いたしまして、最後に岡野国務大臣お尋ねいたしたいのであります。  政府は先の国会で当参議院が地方税法を否決したので、地方自治体の財政は非常に迷惑していると、これを恰かも参議院の責任のごとく言つておられますが、原案のまま若し通つていたら、国民の迷惑はどこへ持つて行つたらよいのかをお尋ねしたいのであります。元来この責任は全く政府並びに與党にあると私は指摘せざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)それは地方税法が通るか通らないかまだ分らない先に、政府は独善的にもその與党の絶対多数に物を言わせて、旧税法停止の法律案を三月三十一日にすでに通過決定せしめたことの責任をお忘れではありますまい。我が参議院は地方税法が若し不成立の場合、地方自治体の迷惑があつてはならんと考えて、前国会の最終日より一日前即ち五月一日の午後の大会議でこれが採決の態度を決定し、万一の場合を慮つて政府及び地方自治体の苦境を察して、野党側より進んでこの余裕ある処置を選んで、若し否決された場合、政府は先に申上げたような旧税法の復活処置を直ちに講ずべきに拘わらず、この手段をどうしたものかとらず、慢然として五月二日の両院協議会に臨んだのであります。この総議会におきましても到底参議院側との妥結の見通しが付かないに拘わらず、依然として旧税法復活の処置をとらない。これでは地方自治体の財政空白が生ずるからというので、我々参議院の地方行政委員会におきましてはその全議員の提出法律案におきまして、旧税法復活の処置をとらんといたしたのであるが、政府がこれに協力しませんことによつて不幸にしてその実現の運びに至りませず、今日地方自治体の財政空白の生じておる最大原因は正にここにあるのでありまして、私はこの際、参議院の名誉のためにも又その責任の所在を明らかにする立場におきましても、ここに一言申上げたいと思うのであります。(拍手)尚、我々は重ねて申上げたいことは、先に地方税法案について、本来地方自治とその財政の確立を図るために中央地方の税制を改革せんとするシヤウプ使節団の意図せられるところには全く賛意を表するものでありまするが、我々が先にこの法律案に同意しなかつたのは、シヤウプ使節団に出されておつた幾多の政府資料に誤まりと不統一があつたからであります。折角のシヤウプ使節団の草案によるものでありながら、こうした資料といろいろ提出いたしました政府の助言に重大なる誤まりがあつたから、シヤウプ使節団草案の地方税法が非難されるに至つたことは誠に私は不幸と思うのであります。特にそれは附加価値税、固定資産税等の算定基準をなす資料が、自治庁、安本、通産省、おのおのまちまち不統一でありまして、或るものは昭和二十年九月即ち終戰面後のあのどさくさの杜撰な資料であり、或るものは昭和二十二年、三年、四年といろいろ多岐に亘つて、てんでんばらばらの資料が提出されておることによつて、その課税客体、倍数、倍率、把握率の矛盾撞著が幾多現われておることに問題があるのであります。又政府は中央地方を通ずる税財政の総合化を強調いたしておりまするが、事実は全くその一貫性を欠いておりまして、例えば中央財政の緊縮と地方財政の膨脹八百六十七億とは全く食い違つた方途に向つておるのであります。尤もこのうち公共事業費三百億は幾分総合性が強いて言えばないではないという点もありまするけれども、決して総合化の健全なものだとば言えません。その内容は東京や大阪の知事の交際費が八百万円や七百万円に増加したり、食糧費と称する何だか分らないような予算が膨脹いたしてみたり、決して健全な中央地方の財政経済の一貫性だとは断定し難いのであります。こうした状態等に鑑みまして、我々は今回政府が再提案されました地方税法案に対しましては更に審議を途げんとするものでありまするが、元来両院協議会におきまして、衆議院側を代表し自由党最高幹部が出席されました。その両院協議会におきまする衆議院側の修正意見と今回提出された修正意見とは著しく開きがあるのであります。これは将来の修正点として温存して置くのかどうかをこの際承わりたいのでありますが、我々におきましても、今回の地方税法案に対しましては、無理でない、妥当な修正意見を強く堅持いたしておるつもりでありますが、これらに対して岡野国務大臣は如何なる御所存、御意見を持つておられるかをお聞きいたしたいのであります。以上を以て終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  朝鮮のこの度の事変が我が国にいい影響があるだろうと申した趣意は、昨日もここで弁明いたした通りであります。即ち従来安全保障とか或いは局外中立とかいうような議論は、畢竟第三次世界戰争の勃発というような場合に、日本は全然防禦のない国としてその危險にさらされる、我が国の安全はその場合どうするのかという懸念から、いろいろな議論が出たのでありますが、更に万一の場合には、日本の、もつと具体的に申せば米国軍は引揚げるのではないかというような考え方からいろいろ議論されたのでありますが、この朝鮮事変によつて、国連の態度により、若しくは米国政府の態度等によつて、平和は飽くまでも擁護するのであるというこの態度、政策は、日本国民に、日本の安全について安全感を増したろうと考えらるるので、私はいい影響であるであろうと申したのであります。その他に議論はないのであります。又国論統一国論統一と言われるが、私は国論統一を唱えたことはないのであります。国論統一ということは、お話のいわゆる独善・独裁の考えから出た思想であると言つていいであろうと思うのでありますが、政府ひとりが国論を統一し、若しくは政府が指導する程、うぬぼれを政府は持つておらないのであります。私はむしろ国論の自由な、講和に対して自由なる意見の発露を求めておるのであります。講和問題に対しては国民議論か最も自由に発露せしむることがいわゆる民主主義であり、又国論が正当に発露せられた場合においては、連合国は必ずこれを考慮に入れるであろう。何となれば、民意に反する講和條約は結局実行ができない(「ちつとおかしいぞ」と呼ぶ者あり)ということになるのでありますから、連合国は必ず自由に発露せられた国民議論は喜んで耳を傾けるであろうと私は考えますから、講和問題に対する国民意見の自由の発表、これはますますいたすべきものであると考えて、曾て国論の統一ということを私は申したことはないのであります。ただ講和促進のためには飽くまでも日本国民が挙げて平和に邁進する、平和論を堅持する、民主主義の発達に飽くまでも協力するという、このことが早期講和を招来するゆえんで彫るということを常に申しておるところであります。従つて国論統一ために衆議院を解散する意思は毛頭ないのであります。又共産主義が近頃非常に激化したと言われまするが、これは参議院の過般の選挙等において見られても、共産主義共鳴者はその投票数において非常に激減いたしたのであります。(「飛んでもない」「どのくらい減つたか次字を言え」と呼ぶ者あり)又学生唐が云々というお話でふりますが、従来学生層に対しては、いわゆる彈圧と申すか、或いは抑制と申すか、成るべく自由な政治をいたしたいと考えて、学生の自由行動は成るべく束縛いたさないように政府としては考えておつたのでありまするが、最近の学生殊に共産学生の態度は目に余るものがありますから、これに対して適当な処置をとつた。これが社会の表面に現われて、恰かも学生層の間に共産主義が彌蔓するに最近至つたように見えるかも知れませんが、これは只今申上げたような次第であります。  又私が独裁であり独善であるということでありますが、私自身はそういう考えは持つておりませんから、従つて私の従来の態度を急に改める考えは毛頭ございません。(「度し難し」と呼ぶ者あり、笑声、拍手)    〔国務大臣天野貞祐君登壇拍手
  20. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 学生は、只今おつしやいましたように、次代を担つて行く人達でありますから、私もどうかしてこの学生を本当によく指導して行きたいということを常々深く考えております。それにつきましては、とにかく学生が将来の指導者になるのでございますが、今後の社会における指導者というのは、いずれかの方面におけるエキスパートでなければならないということは当然であると思います。今日どういう思想を持つておられる方でも、その指導力を発揮しておられる人は、皆学生時代には相当の研究をされ、勉強をされた方だと思うのです。この研究とか勉強とかいうことにもやはり適齢期というものがあつて、或る時十分にやらなければできないという心配があると思うのです。それでありますから、私は、どうかして学生をもつと落ちついて勉強させたいと思つております。(「できないこと言うな」と呼ぶ者あり)でありますから、一方においては学生の生活を保護して、力があるのに経済力のない学生は、アルバイト等に煩わされないで以て十分勉強ができるということを計画いたしております。現にいたしてもおりますけれども、それが小規模でありますから、もつと大きくそういうことを計画いたしたいと思つております。他方においては、私はもつと学問的な研究というものを大いに奬励したい。学問に対する情熱をもつと燃やしたい。学生はどういう領域のことでもいいからして、大いに研究をすべきだと思います。そういう研究に対する情熱というものも、現在の学生生活において足らないと思います。こういう考えを私は抱いているのでございます。以上であります。(「幾らそんなことを言つても駄目だよ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  21. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。  御質問の第一点は、警察予備隊の費用を本年度一般会計の債務償還費より出す、このことはマツカーサー元帥の指令の通りでございます。而して債務償還費から警察予備隊等の費用を出しました後の補充はどうするかという御質問でございますが、この補充は要りません。五百億の国債償還が警察予備隊等に取られただけ償還が少くなるのでございますが、その償還費を又増税とかによつて埋める考えはありません。償還費が減るだけでございます。  第二点は、地方税法案の前国会におきまする不成立によりまして、今後の地方税法を八月一日から施行した場合に、徴收が十分に行けるかどうかという御質問でございます。この前の国会に出しました案は納期が概ね四回となつております。これを三回に切下げまして、そうして八月から施行いたしまするならば、私は千九百億の徴收ができると考えておるのであります。殊に最近におきましては、会社等において納税証券とか、或いは納税準備とか、こういう準備をいたしておりますので、支障なく行けると考えておるのであります。尚、八月以降は、国税の滯納もあるし、相当引上げ超過になり、納税資金等に困るだろうという御質問であつたのでありますが、私の計画では、第二四半期は殆んど引上げ超過がない。殊に七月におきましては二百億余りの撒布超過の計画でおるのであります。最近相当信用状態も高まつて参りまして、活況を呈しつつあるのでございますから、この徴税には余り心配はないと思います。  尚、滯納千二百億円の整理をどうするかというお話でございましたが、昨年もこの滯納税金は七百数十億円だつたのでございます。千二百億円の滯納はいろいろ種類がございます。申告納税の課税もあるのでありましようし、又源泉課税の所得税もございます。法人税も二戸億以上、或いは酒税とか物品税筆各種の税に跡がつておりますので、各税の性質に応じまして適当な計画を立てて、そうして政府資金の流し込みと同時に引上げるようにいたしたいと考えておるのであります。  尚、貯金部資金の引上げをどうするかというお話でございますが、お話の通りに昨年の暮百億円の引上げをいたしました。尚又地方団体におきまして只今二百億円ばかりの短期融費をいたしております。この問題は政府指定預金の百五十億円とからみまして、而して債務償還費と関係せしめまして、適当な措置を講じたいと思つておるのでありますが、何分にも只今金詰りの状態でありますので、政府の指定預金のみならず、昨年末の百億円の貯金部指定預金も、今のところ暫らくこのままで過ごしたいと考えておるのであります。(拍手
  22. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 岡野国務大臣答弁は他日に留保されたいとの趣きでございます。  本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十二分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)