○岩木哲夫君 私は
国民民主党を代表いたしまして、この際重ねて
総理大臣並びに
関係主管大臣に
お尋ねいたしたいと存じます。
今回の不幸なる
朝鮮の戰局が今後どのように変化して参りますか、予測し難いといたしましても、その
国際的様相から長期化の
状態に入るであろうことは殆んど想像に難くないのでありまして、
従つて我が国に及ぼす直接間接の影響は極めて重大であることは
首相も又しばしば指摘されておるところであります。最近
アメリカにおいては、すでに超非常時的総動員計画に諸般の体制を切換えつつありまして乃至は英仏その他東西に緊迫を告げておる
関係各国にいたしましても、
政治経済上に相当の変化を来たしつつあることは注目すべきことであります。こうした中に、国連各国とはもとより、その指導主力をなしまする
アメリカとは、取りわけ密接な
関係に置かれておりまする
我が国の
立場は、又反対に一方においては貿易上で事実上交流されておりまするアジア並びに南方のスターリング地域との経済
関係につきまして、如何なる方法と考えを持
つて行くかにつきましては、
我が国の
立場におきましては極めて重大なる
現実の問題であると思う。
政府は今般の
朝鮮事件は
我が国にと
つて有利であると言明されておりますのは、どの点とどのような
見解を持
つて言われておるかをこの際
お尋ねいたしたいのであります。(
拍手)或いはそれは
早期講和が近いと考えられる点を
首相は言われるのかも知れませんが、然らばその
早期講和とはどのような
内容を想像して有利と
解釈しておるのか、又はただ
講和が早いというだけの感じを以て有利と独断されておるのか、或いはその他のものであるといたしますれば、それは何を指しておるのかをこの際その
所見と共に承わりたいのであります。
第二に
お尋ねいたしたいのは、
首相の念願する
講和体制の前提は国論の統一にあると言われておりまするが、それは
首相は如何なる方式とその熱意を具現いたさんとしておるかにあるわけであります。先の衆議院総選挙の当時と現在とは、
国際情勢も
国内政治経済の上にも著しく変化を来たしておりまするが、而も今回のこの予測せなかつた新らしい事態に対する新らしい
国論統一の方式は、衆議院解散が或いは最も適切と考えられる点があるのでありますが、
政府はこの方法を果してとる考えがあるかないかどうか。若し然らざるといたしますれば、他に如何なる手段方法を以てこの
国論統一を具体化せんとするのであるかを承わりたいのであります。
そこで私は、
吉田自由党内閣が先般の参議院選挙を内閣の運命にかかわるものだといたしまして、その必死の選挙工作として、行詰れる財政、行詰れる経済
状態を打開せんといたしまして、わざわざ国会開会中に池田大蔵
大臣を洋行さして、その土産談を宣伝せんと試みたり、或いはできるかどうか分らないような公約なるものを投票の三日前に突如として放送したり、(「あさましいぞ」と呼ぶ者あり)あの苦肉の策や、或いは又わが党苫米地最高委員長が抱懐する
講和問題に限り、
国論統一を念願とする超党派外交
政策を侮蔑いえしたかと思いますと、後から同調を申入れたり、或いは社会党に拒否されて、今度は中止を相談して見たり、その不定見や、或いは
憲法の精神に則り当然の永世中立諭を掲げる母校の南原総長を曲学阿世の徒と潮けるなどのことを憤然とや
つておる精神
状態を、今更我々は非難せんとするのでありませんけれども、ただ憂うべきは、
国家国民の代表たり
総理大臣たる大政党の管領が、この重大なる時局に際し、当初の付和の
理想とする
国論統一を確立すべき責任の地位にありながら、ただ徒らに自分の主義、自論に同調せぬ
講和論を以て空念仏と罵倒し、或いはエデンの花園を荒す者は天罰観福に到るであろうなどの威嚇をして、無風の刺戟を與えて国論を封殺せんといたしておることは、むしろ
総理大臣自身から
国論統一の前提を打ち壊し、或いは惑乱しているのではあるまいかと案ずる諸点が少くないのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)これは
国民といたしましても極めて遺憾と言わなければなりません。これ恰も曾ての東條翼賛内閣のワン・マン
政治、ワン・マン
議会以上の不幸なる姿を再現しつつあるかの感を内外に印象付けているのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)私は
吉田首相が本当に
国論統一こそ
講和の絶対
條件と考えるならば、ただ無暗に
国民を侮蔑することなく、たとえ他党が
全面講和・永世中立論を
主張いたしましても、これ盡く憂国至誠の送りである以上、虚心坦懐に、よりよき真理と誠実を探究且つ切礎琢磨して、大同に統一するの大乗的襟度を以て行くことができないのかどうかを
お尋ねいたしたいのであります。果して
首相はこの
国論統一の具体方策としては、今この際どのような考えと方法を持
つているかを
お尋ねいたしたいのであります。
次に第三点としてお開きいたしたいことは、米英その他列国は常に
日本の民主化独立と経済自立に援助を與えられていることは、我々
国民といたしましても大いに感制するところでありますが、今
首相の言われましたように、
早期講和が近付きつつあると考えるならば、その
講和締結後における我々
日本の平和的自主運営には、全
国民一丸の忠実なる努力と責任によらなければならないのでありまするが、要はその
講和の具体的
内容というものが、又全
国民最大の
関心事でありますることにつきまして、これは併せて更生
日本祖国万年のこの大計基礎をなすものであると思うのであります。そこで私はこの際許さるるならば、
安全保障の問題はもとより、
政治の自主性の回復の問題、及び領土、交通、産業、経済、教育、人口等の諸問題について、せめて
国民の真摯なる念願を
連合国に今より披瀝しておくことは、決して無駄でもなく不穏当なことでもないと信ずるのでありますが、着想はこれらに対し如何なるお考えと方法を持
つておられるかを
お尋ねいたしたいのであります。
次に第四点としまして共産党対策についてお聞きいたしたいと思います。
政府が今回且つ現にとられております共産党対策は、我々も又異論のないところでありまするが、ただ問題は裏面活動に現われた主義
指導者やその行動
範囲を彈圧するのみが策の根本ではないと思うのであります。要はその抜本的なる手段でありまして、共産主義が生れんとする種、育ち拡がらんとする苗を植えない、蒔かないことであります。そこで我々の指摘いたしたいことは、一昨年
吉田内閣が出現以来、殊にここ一ヶ年以来の共産主義活動は
全面的に拡大し、殊に
官公吏或いは公共事業従業員乃至は知識青年層並びに学生層に夥しい勢いで蔓延しつつあることであります。取りわけ全国の各大学学生層には、想像以上に多数の共産主義乃至はそれに近い過激思想を唱える者が急増いたし、それが近来各種の場面に不穏なる言動とな
つて現われ、学生の本分逸脱も甚だしきを見受けるのでありまして、我々はこの大切な祖国の次代を背負う有為の青年学徒が、かくも多数かかる
状態に陷りつつあることを最も悲しみ且つ憂うるものでありますると共に、又かかる傾向は断じて放任すべからざる由々しき事態と言わなければなりません。こうした
状態に対し、
吉田総理大臣並びにその責任の地位にありまする天野文部
大臣は、如何なる考えを以てこれらに処せんといたしておるのかを承わりたいと思うのでありまするが、又併せて
吉田内閣に対し猛省をこの際促して見たいと思うのであります。それは
吉田内閣が
議会に絶対多数を獲得いたしましてから、仮に他よりまじめで公正な
議論があ
つても、これを
理由なく封殺排除して、多数の威力を横暴化し、或いは民主的
議会制度を軽視壟断して、常に独裁
政治を強行せんとする独善とその冷酷さが、如何に
一般社会はもとより特にこの純真な青年学徒層に想像以上に惡い刺戟を與えているかについて、よくお考えを願いたいと思うのであります。更にその行う財政経済
政策が、いわゆる優勝劣敗的な自由経済に基く高度の資本主義構想に片寄り過ぎて、頑固な右翼政党の本領を遺憾なく発揮せらるるところに、一方これらの犠牲によ
つて生ずる
被害者たる多数残余の
国民の悲劇が、或いは不景気或いは倒産、失業、
生活苦、重税苦とな
つて追詰められてその破局の果ては不満怨嗟となり、
政府に対し或いは社会に対し反磁心となり過激思想とな
つて、共産主義者に逐になりつつあるこの見えざる多くの実態は、正に共産主義を製造いたしているものは
吉田内閣の反動
政治そのものであると深く私は憂慮するのであります。(
拍手)そこで私は、この憂うべき事態と現象に附し、
総理は如何なる対策を講ぜんとするのであるか。従来の独善
政治的傾向を少しは改められるおつもりであるかどうかを
お尋ねいたしたいのでありますると共に、この際、私は
要望いたしたいことは、この
危險なる青年学徒の思想を立て直し、その前途に希望と光明を與え得る熱意を
総理大臣は天下に披瀝し、そうしてこの若き次代を背負う青年の思想を善導して参りますることは、即ち又
国論統一の一助にもたると考えるのであります。
次に池田大蔵
大臣にお聞きいたしたいと存じます。
アメリカは西欧諸国に対し、東西における防共
防衛強化の
ために再
軍備計画の拡大を要請すると共に、
アメリカ自体におきましても準戰時体制に切替えられつつあり、殊に当面する
朝鮮戰局の長期化価向等は、
我が国財政と産業経済の上に重大なる変化が生ずることは、又当然とも言わなければならないのであります。そこで
お尋ねいたしたいのは、先ず財政上の問題といたしまして、今回の
警察予備隊等の設置増強に伴いまする経費年間約二百億見当が、仮に今年度分はその半額といたしましても、この百億が旧債務償還の予定資金流用によるその穴埋めは如何なるものを以て当てんとするのであるか。又それによ
つて生ずる財政上の変化と、もう一点は地方税が前の
議会において否決された場合に、
政府は直ちに旧税法の復活の
措置を講ずべきに拘わらず、これをそのまま放任されたことによ
つて当然徴税し得べき八月一日までの徴税不能額は約三百九十億に及んでいることにつきまして、今回仮に地方税法が通過いたしましても、これが実際徴税実施入るのはどうしても十月、十一月と見なければならないのでありますが、而もこれが四月一日に遡及して課税せんといたしても、その後の四、五ヶ月の間に果して一ヶ年分の徴税総額一千九百億がどれだけ徴收でき得るかどうかは、すでに大きな問題とな
つて来つつあるのでありまして、ましてや現に国税が尚千二百億以上滯納しているこの実情に対して、この上更に増税の地方税千九百億の全額徴收は殆んど至難でありまして、結局地方税は四五百億程度の徴收不能、或いは困難な
状態に陷る観察が各方面の一致せるところであります。然りといたしますれば、現在
政府は地方自治体の財政空白を平衡交付金の大幅繰上げ支給と預金部資金の一時流用等で取敢えず賄
つておりまするが、一方ではこれが又時期的に非常にずれて参りまして、地方財政の空白はますます甚だしくな
つて参ると考えるのでありますが、こうなると結局更に中央資金の大量操作の余儀なきに至ります場合、
政府はこれに如何なる方法と手段とをとらんといたしておるのか。又地方自治体に貸しておりまする預金部資金の引上げや、地方自治体自身がおのおの
一般市中銀行等より借入れている返済が果して円滑にでき得る見込があるかどうかにつきましても、重大なる関連
事項でありまするが、蔵相はこれらに対し如何なる処置方法をとらんとするかをお伺いいたしたいのであります。若し以上の困難な事態が起るといたしますれば、先の
警察予備隊等の経費約百億、地方自治体に関しまする必要資金の合計が余程低めに見ても四五面億を要するとされた場合、その補慎財源はいずれに求めんとするのであるか。又こうしたことによりまして一層の金融梗塞が発生し、産業資金上に及ぼすものは著大なるものであると考えるのでありますが、将来日銀券の発行高、民間資金の融資の計画、現在とりつつある産業経済構造計画に対する財政金融
政策の見通し、処置を承わりたいのであります。
次に第四点として
お尋ねいたしたいのは、
政府は最近経済白書で、三月末現在でその予算歳入予定額の九五%の徴税を挙げていると言われているのでありますから、四月以降は残りの五%分、即ち約二百二十億の滯納分を督促徴收すればよい勘定であるが、只今も細川議員からお縛れいたしましたる
通り、それを千二百億以上強硬な手段で取ろうといたしておることにつきましては、一体
政府は何故必要以上の予算歳入額以上の税金を吸上げんといたしておるのか。かくのごとく誠に厖大たる水増割当を依然として行な
つていることにつきまして
お尋ねいたしたいのであります。
横尾通産
大臣にも
お尋ねいたしたいのでありますが、時間の
関係上省略いたしまして、
最後に岡野
国務大臣に
お尋ねいたしたいのであります。
政府は先の国会で当参議院が地方税法を否決したので、地方自治体の財政は非常に迷惑していると、これを恰かも参議院の責任のごとく言
つておられますが、原案のまま若し通
つていたら、
国民の迷惑はどこへ持
つて行つたらよいのかを
お尋ねしたいのであります。元来この責任は全く
政府並びに與党にあると私は指摘せざるを得ないのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)それは地方税法が通るか通らないかまだ分らない先に、
政府は独善的にもその與党の絶対多数に物を言わせて、旧税法停止の法律案を三月三十一日にすでに通過決定せしめたことの責任をお忘れではありますまい。我が参議院は地方税法が若し不成立の場合、地方自治体の迷惑があ
つてはならんと考えて、前国会の最終日より一日前即ち五月一日の午後の大
会議でこれが採決の態度を決定し、万一の場合を慮
つて政府及び地方自治体の苦境を察して、野党側より進んでこの余裕ある処置を選んで、若し否決された場合、
政府は先に申上げたような旧税法の復活処置を直ちに講ずべきに拘わらず、この手段をどうしたものかとらず、慢然として五月二日の両院協
議会に臨んだのであります。この総
議会におきましても到底参議院側との妥結の見通しが付かないに拘わらず、依然として旧税法復活の処置をとらない。これでは地方自治体の財政空白が生ずるからというので、我々参議院の地方行政委員会におきましてはその全議員の提出法律案におきまして、旧税法復活の処置をとらんといたしたのであるが、
政府がこれに
協力しませんことによ
つて不幸にしてその実現の運びに至りませず、今日地方自治体の財政空白の生じておる最大原因は正にここにあるのでありまして、私はこの際、参議院の名誉の
ためにも又その責任の所在を明らかにする
立場におきましても、ここに一言申上げたいと思うのであります。(
拍手)尚、我々は重ねて申上げたいことは、先に地方税法案について、本来地方自治とその財政の確立を図る
ために中央地方の税制を改革せんとするシヤウプ使節団の意図せられるところには全く賛意を表するものでありまするが、我々が先にこの法律案に同意しなか
つたのは、シヤウプ使節団に出されておつた幾多の
政府資料に誤まりと不統一があつたからであります。折角のシヤウプ使節団の草案によるものでありながら、こうした資料といろいろ提出いたしました
政府の助言に重大なる誤まりがあつたから、シヤウプ使節団草案の地方税法が非難されるに
至つたことは誠に私は不幸と思うのであります。特にそれは附加価値税、固定資産税等の算定基準をなす資料が、自治庁、安本、通産省、おのおのまちまち不統一でありまして、或るものは
昭和二十年九月即ち
終戰面後のあのどさくさの杜撰な資料であり、或るものは
昭和二十二年、三年、四年といろいろ多岐に亘
つて、てんでんばらばらの資料が提出されておることによ
つて、その課税客体、倍数、倍率、把握率の矛盾撞著が幾多現われておることに問題があるのであります。又
政府は中央地方を通ずる税財政の総合化を強調いたしておりまするが、事実は全くその一貫性を欠いておりまして、例えば中央財政の緊縮と地方財政の膨脹八百六十七億とは全く食い違つた方途に向
つておるのであります。尤もこのうち公共事業費三百億は幾分総合性が強いて言えばないではないという点もありまするけれども、決して総合化の健全なものだとば言えません。その
内容は東京や大阪の知事の交際費が八百万円や七百万円に増加したり、食糧費と称する何だか分らないような予算が膨脹いたしてみたり、決して健全な中央地方の財政経済の一貫性だとは断定し難いのであります。こうした
状態等に鑑みまして、我々は今回
政府が再提案されました地方税法案に対しましては更に審議を途げんとするものでありまするが、元来両院協
議会におきまして、衆議院側を代表し自由党最高幹部が出席されました。その両院協
議会におきまする衆議院側の修正
意見と今回提出された修正
意見とは著しく開きがあるのであります。これは将来の修正点として温存して置くのかどうかをこの際承わりたいのでありますが、我々におきましても、今回の地方税法案に対しましては、無理でない、妥当な修正
意見を強く堅持いたしておるつもりでありますが、これらに対して岡野
国務大臣は如何なる御所存、御
意見を持
つておられるかをお聞きいたしたいのであります。以上を以て終ります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕