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1950-07-27 第8回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十七日(木曜日)    午前十一時三分開会   —————————————   本日の会議に付した事件鉄道公安職員職務に関する法律案衆議院提出)   —————————————
  2. 北村一男

    委員長北村一男君) それではこれより開会いたします。速記を止めて。    午前十一時四分速記中止    ——————————    午前十一時三十八分速記開始
  3. 北村一男

    委員長北村一男君) 速記を始めて下さい。これより鉄道公安職員職務に関する法律案を議題といたしまして質疑の継続をいたしますから御発言を願います。
  4. 一松定吉

    一松定吉君 問題はこの小型武器使用の点に関してでありますが、前回以来お尋ね申上げておりましたこの小型武器使用する場合を、今少しく明確に規定する必要があるということを私は考えております。先ず前回にも引用いたしましたように、警察官等職務執行法の第七條拳銃使用の場合のいろいろな制限が設けられておりますることは皆様御承知通りでございます。それから海上保安官拳銃使用に関しましては、これ又昭和二十四年十一月十七日に海上保安庁長官大久保氏から拳銃使用及び取扱規定というものを掲げられておりまして、その第四條で詳細なる取扱に関する注意規定せられております。こういうように拳銃使用について海上保安庁規則といい、警察官等職務執行法規定といい、非常に細心なる注意を以てこの使用についての制限をいたしておるゆえんのものは、拳銃使用の如何によつては重大なる人権蹂躙若しくは人身被害を與えるというようなことを恐れて、こういう鄭重なる規定があるものと私は考えておるのであります。それならば同じ鉄道公安職員に対して拳銃使用せしめる場合にも、これと同じような規定を設けるということが必要であると私は考えておるのでありますが、この点について第八條の「やむを得ない必要がある場合を除いては、武器使用してはならない。」というだけの、至つて茫漠たる規定のみに止めておるということは、これは海上保安官若しくは警察官に対する拳銃使用制限と甚だしき相違のあることを私は認めるのでありますが、この点については、提案者においては、ただこれだけの記載でよろしいというお考えであると思うのでありますが、よろしいという考えでありまするならば、何故に警察官海上保安官と差異を設けても別に差支えないという、よつて来たるその理由一つ説明願います。
  5. 佐瀬昌三

    衆議院議員佐瀬昌三君) 第八條規定鉄道公安職員武器使用する場合に一つの限界を示すべく設けられた規定であります。而してその意味は、自己又は他人生命又は身体保護上、職務執行上止むを得ざる場合に限定するという趣旨でありまして、刑法に言う正当防衛或いは緊急避難にこれを比較するならば、むしろその範囲内に拳銃使用制限して行くという意味合であるのであります。ただ一松委員から御質疑がありましたように、その文意を現わすために、警察官等職務執行法七條に比べるとやや用語の上において物足らないものがあるのでありますが、その精神は今申上げましたように決して鉄道公安職員に対して、その武器使用を野放図に認めるということは毛頭ないのであります。而も私共は今申上げましたように、むしろ生命身体保護の必要上、而も犯罪捜査の必要上止むを得ざる場合、言い換えますれば、その状態においては拳銃使用しなければならないという客観的な事情が存在し、且つ又それに応じてその武器使用が止むを得ざるものであつて、全体から考えるならば相当であるというふうに判断される場合にのみこれを許すということであります。勿論その具体的な意味を明確にするためには、或いは警察官等職務執行法七條のごとくに、言葉の上においてこれを表現するということも一つの方法であるかと思うのでありますが、少くとも衆議院法務委員会における提案理由といたしましては、この程度文意を以て必要且つ十分ではなかろうかと思惟した結果であります。併し勿論本法案通過した場合におきましては、鉄道公安職員監督者において、武器使用に関する規則を制定する。只今質疑の上にも現われたように、海上保安官に対すると同様な措置が講ぜられると共に、又その使用等に対する十分なる鉄道公安職員に対する訓練が行われて、私は人命擁護という上においても、公安職員職権濫用等が十分予防されて、その運営に遺憾なきを期している次第であります。
  6. 一松定吉

    一松定吉君 私のお尋ねしたいのは今あなたの御説明のようなことでなくて、警察官等職務執行法七條海上保安官拳銃使用規定、こういうような詳細なる規定を設けてこの使用制限を加え、濫りに使用のできないよう、濫りに身体生命に危険を及ぼさないように、深甚注意規定してある。然るにこの鉄道保安職員拳銃使用に対してはそういう規定を設けてない。それは何故これを設けなかつたのか、設ける必要がないということであるならば、どういうわけでそういう必要がないとお認めになつたのか、必要があるというならば、今あなたのおつしやるように、これが通過の曉において、この使用に関する詳細なる取扱規定だとか、或いは訓練とかというようなことをさせるので必要がないからしなかつたというのであるか、若しそうであるならばですね、これら鉄道公安職員上司が、本法通過後において、そういう規則を設けるのだというようなことは、何で決めるのか、或いは本法の附則でもそういうことを書いてあるのか、或いは書いてなくても上司がそういう訓示規定を設けるというのか、そういう点をもう少し明らかにしておかないと、拳銃使用というような重大な結果を招来することについてはなるたけ深甚注意を與えるように、拳銃使用者にそれらのことを頭の中に打込んでおくようにしなければ危険だと、こう私は思うのであるが、その点について御説明を願いたい。こういう意味なんであります。
  7. 安部俊吾

    衆議院議員安部俊吾君) この点に関しましては、先程より小委員長である佐瀬議員より御説明申上げたのでありますが、私よりも又提案者といたしまして御説明申上げたいのであります。それは提案者の方といたしましては必要がないと思うのです。これで十分だと私は考えておるのであります。なぜならばこの拳銃使用という目的は具体的に申上げますならば、その公安職員職務執行に当りまして、或いは抵抗する、或いは又二人、三人というような団体を組んだ者が暴力的に抵抗をするとか、或いは又逃走するとか、そういう場合に、公安職員自身がその職務を遂行するに当つて身体の危険を感じた、或いは自分保護者身体の危険を感じたという場合には、止むを得ずそれは正当防衛のために使用するという意味でありまして、併し又その外に沢山のいろいろな條件があります。例えて申しますならば、その拳銃を不注意に磨いておるとか、或いはいろいろ掃除するというような場合、たとえそれに彈丸がこもつておらないと考えても、人のおるところでは、これは不注意にそういうものを掃除してはならんというのは当然であります。これは英米法のテクニカル・タームから言えば、ネグリゼントと申しまして、当然注意すべきことを怠つたので、刑法上の犯罪となり、又大勢の公衆の中で射的の練習をした。そのためにその公衆の一人か、又は数人に危害を與えるに至つた場合は、即ちコントリビーテング・ネグリゼントということになるのであります。更に怠慢、意識的に……惡意を持つた怠慢でやる。こういうものは当然刑法で罰せられるのでありまして、たとえそれが公安官でありまして、職務遂行のためにピストルを携行するのでありましても、そういうものは許さないということは当然法律の中に包含されておるのでありまして、或いは又逮捕するとか、容疑者が逃亡した場合、発砲する、威嚇発砲をする必要がありましても、たくさん群衆がいるのに発砲すれば、その容疑者以外に、外の方面危害を加える場合がある。こういう場合は当然発砲することができないのであります。そういうふうに数え挙げればいろいろな具体的なことがあるのであります。その制限する場合に、一々こういう場合にはこういうことでなければならんというならば、若しも具体的に挙げた條項以外に、條項に漏れたものならば当然それは発砲してよろしいというように解釈されては困るのであつて、これは本当に必要欠くべからざる、止むを得ざる、やはり公安官というものの職務遂行上それは止むを得ざる身体の危険、或いは自分保護すべきところの者の身体の危険を感ずるとき、これを使用するんだという意味において、止むを得ざるということは、これはいろいろの意味を包含したところの止むを得ざるのでありまして、それで十分意味は盡くされておる、こういうふうに考えたんであります。若しもこれが他の條項のように、この場合、この場合というように挙げるならば、それは余程たくさんの場合を想像して、仮定して挙げなければならんのであります。苟くも公安官にいたしまして、権利の保護のために又は人権擁護のために、その公安官たるところの職務を遂行する者といたしましては、オーディナリ・プルーデンスと言いまして、普通の常識、判断力を持つているところの公安職員に対しては、十分にそれに対しては指示、教育もするのでありまして、この程度において十分その意味は盡くされるのである、そういうふうに考えたのであります。これを一松委員のようにいろいろな條項を、これを的確に並べるとするならば、非常な長文のものになりまして、その條項のうちに当篏まらんもの、或いは具体的に言うことができなかつたものは、それは自分解釈でやつてもいいと、反対解釈される慮れがあるのであります。私共は十分考え提案した次第であります。
  8. 一松定吉

    一松定吉君 今安部さんの御説明によると、成る程安部さんがこれを使用するならば、あなたのお考えでその通りに行くのです。ところがこの鉄道公安官というものが、あなたのように法律に明るくはない。それから又外国の法令がどうあるとか、判決例がどうあるとかいうことは知らない。それでそういう人に、やはり丁寧親切に使用することができる場合を示しておくということが、それらの人をして誤りなからしめるために、必要なんだ。それが、この警察等職務執行法の第七條ができ、海上保安官に対する拳銃使用に関する訓示規定ができたゆえんなんだ。あなたのような解釈をこういう者は知らないのです。ただ止むを得ない場合ということをさえ書いて置けば誰でも、今あなたと同じような観念で、拳銃使用する場合、使用することができない場合の判断ができるならば、これは実に結構です。そうありたいのです。ありたいのであるが、併しながら公安官というような者は、そういうような法律解釈についての知識が乏しい者です。それだから特に私はこれだけではいけないのではないか、やはり警察官職務執行、若しくは海上保安官拳銃使用に関する訓示規定というようなものが必要でなければならんじやないかとこうお尋ねしたのです。あなたのお答えのうちで若し列挙主義を採れば、列挙に外れておつた場合には使用しても、それで危害が生じても、それは不問に付することになるから云云という御意見は、それは私は賛成できません。そういうときは漏れないように書いて置けばいいのです。列挙的に書けなければ、多少そこに数項目を列挙して、以上これに類する行為についてはしいうような概括的な法律用語を使えば、あなたのように規定が漏れたから云々という疑いを少くすることができる立法技術があることは御承知通りです。今あなたは漏れたときは困るから列挙主義にしないのだ、列挙しないことによつて危害を多く及ぼすということは、これは比較したときは比較にならないのです。だから私はやはり「やむを得ない」というような、こういう規定だけであるならば、これに対して特別に法律に、この止むを得ない場合の解釈訓示規定で何とかするというような規定を設けて置くか、或いは取扱規則というものを、海上保安庁取扱規定のように特に設けさせることを法文に認つて置くか何かすれば、あなたのそのような御心配はなくなる。又私が心配していることはなくなるのであるから、そういうことを我々立法者として、必要があるかないかについて提案者にお尋ねしているのであります。これは一つ本当に実地に行うときにおいて、あなたのようなお考えを持つて拳銃使用すればこれは間違いは起りませんよ、これは法律家でないのですから、法律知識のない連中ですから……、鉄道公安官だから法律知識があるということは言えません。だからそういうような深甚注意を拂わせるような規定を、この海上保安庁職員、若しくは警察官に対して認めたと同じようなことを、規定する必要があると思いますのでお尋ねしたわけで、その点はどうぞ惡しからず、私はこれが通過することについては反対しないのです。これが通過して安心して拳銃使用ができるようにしたいというので質問しているのですから、その点は虚心坦懐にお答え願いたいと思います。
  9. 安部俊吾

    衆議院議員安部俊吾君) 只今一松委員の御発言は御尤もであります。極めて法案に対して親切丁寧に、この法案を極めて完全に近いものにしよう、こういう御親切の御発言でありまして、我々もこれを了承してよく一松委員の御発言の内容は了解するのであります。そうではありますけれども、私は單に公安官というものは、そういうような法律的知識があればいいが、ない場合は困るというようなことは、これ少し心配し過ぎる点があるのじやないかとも考えられるのであります。何故ならば、普通の人にいたしましても、公安官にいうような特別の職務のない人にいたしましても、私が先程申上げたようなことをやるならば、これはやはり刑法上の罪を犯したことになるのであります。公安官職務遂行以外にそれを濫用するということは、これは当然できないわけでありまして、その他いろいろな場合におきましても、そういうことはこれは刑事上の被告になるわけでありまして、当然そういうような心配はないと思うのであります。又先程こういう条件を列挙すれば、その列挙したところに漏れたものがジヤステイフアイされる、正当化されるということは、そうであるというのではないので、そういうように解釈し得られる場合もあるのじやないかということを申上げたのでありまして、その点につきましては、一松委員のおつしやる通りであります。尚、この点につきまして、小委員長である佐瀬議員からもお答え申上げます。
  10. 佐瀬昌三

    衆議院議員佐瀬昌三君) 只今衆議院法務委員長説明に若干補足させて頂きたいのでありますが、要するに本法案において拳銃使用制限しようという立法趣旨を貫徹するためには、我々衆議院法務委員会としては、第八條程度で必要且つ十分であるというふうに考えたのであります。その二つの理由は、鉄道公安職員監督官庁である運輸大臣において、あたかも海上保安官に対する拳銃使用制度取扱規定に対応するような大臣訓令を発すると、又そのために現に当局においてその立案中であるということをも聞いておりますので相待つて武器使用制限適正化を図るために万全の策が得られるという予想の下に、本法案程度を以て提案いたした次第であります。併しながら、尚参議院法務委員会において、第八條用語がその趣旨を現わす上において適切でない、或いは不十分であるというお考えがあるならば、私共は参議院において適当な言葉を以てその立法趣旨を貫徹せられんことを、この際望んで止まない次第であります。
  11. 一松定吉

    一松定吉君 そこでもう一度、まあ御質問というよりも、むしろ御相談の方がいいんじやないかと思うのですが、この海上保安庁法の第二十條には、こういうことがあるのです。丁度この鉄道公安職員に関するこの第八條と同じ規定がある。「海上保安官は、その職務を行うに当り特に自己又は他人生命又は身体保護に関し、やむを得ない必要がある場合を除いては、武器使用してはならない。」この第八條規定は、この海上保安官に対する二十條の規定と同じものです。そうしてこの海上保安庁法の第三十三條には、「この法律に定めるものの外、海上保安庁職員の種類及び所掌事項云々「に関し、必要な事項は、政令でこれを定める。」という規定があるのです。そうしてそのいわゆる三十三條の、必要なことは政令でこれを定めることができるという法律を受けて、ここに海上保安庁達第五十七号というさつき私の引用したのが出ているが、これは実によくできている。だからして、あなた方の御提案なつたこの鉄道公安職員武器を持たせるということも、この海上保安職員拳銃を携えているのと同じことを言うのです。而も第二十條にちやんとこういう規定があります。そうして、この規定を細かに噛み砕いて誤りなからしめるためにその達が出ておる。その達の出る根拠は、三十三條に、「必要な事項は、政令でこれを定める。」ということになつてつて、これに基いて達が出ておる。ここまで注意してやれば、私は満足なんです。だから私はこれはこういうようにした方がよいとさつきから考えておるのですが、これはさつきからあなた方が、参議院でこれを修正することは差支えないと言うておられるので、これに御反対ではなかろうと思うのですが、如何ですか。これは至れり盡せりです。あなた方のと同じ規定が第二十條にあるのです。
  12. 小木貞一

    衆議院專門員小木貞一君) 今お尋ねの点でございますが、本法案におきましては、第六條で「鉄道公安職員捜査に関する職務は、運輸大臣監督する。」と、こういうことになつておりまするので、これは要するに捜査上やるものでありまするから、この規定監督運輸大臣訓令を発して万遺憾なきを期したい。海上保安庁長官がやつたと同じような厳重な武器使用制限についての訓令を出したいと、目下それを立案中である。こういうことであります。
  13. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、あなたの御解釈は、第六條に「捜査に関する職務」とあるから、その捜査に関する職務の中には武器使用も含むと、こういうのですか。
  14. 小木貞一

    衆議院惡用員小木貞一君) さように解釈いたしております。
  15. 一松定吉

    一松定吉君 含むから、それでこの海上保安庁の達と同じようなものを運輸大臣がこれによつてすると、こういうのですか。それは併しながら、運輸大臣がしないと言えばせんのですから、やはり法律でそういう示唆を與えて置くという方がよいのではないですか。これは六條にあると、こじつけてそういうことを言うよりも、やはり丁寧親切に、この海上保安庁法にあるように政府としてとういうものを拵えるという御覚悟があれば結構ですが、併し、これは政府提案したのではないのですから、これは衆議院提案したのですから、政府は、そういうことまで含ませるのだというならば、知らん顔をしておればそれで済むのです。だから、やはり特にこの海上保安庁法の三十三條の規定のようなものを設けて、そうして政府をしてそういう訓示規定のようなものを出させることを示唆して置けば結構なんです。併し、あなたの言うように、「捜査に関する職務は、運輸大臣監督する。」とあるけれども、「監督する。」とあるから武器使用に関する詳細な訓示ができるのだということは、直ちにはこれは頷かれんのですね。
  16. 小木貞一

    衆議院專門員小木貞一君) 私共はこの六條にあります運輸大臣が当然に詳細な監督をすることができるというように考えておつたわけでございまして、尚、運輸省、鉄道当局の方に聞きますと、目下立案中であると、こういうふうに承わつておりますので、今の点はそれで十分であると実は信じておつたわけであります。
  17. 一松定吉

    一松定吉君 それでは運輸大臣に来て頂いて、運輸大臣がそこまで引受けて呉れるということであるならば、それは私は反対しません。それならば、一つ運輸大臣の御出席を得て、その御意見を承わる必要が生ずるのです。それでは、そういうように願いましよう。
  18. 北村一男

    委員長北村一男君) 了承いたしました。一松委員よろしうございますか、次回に運輸大臣出席を……。
  19. 一松定吉

    一松定吉君 運輸大臣に来て頂いてその説明をして頂いて、引受けてくれるということを速記録に留めておいてくれれば、それで反対しません。
  20. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 只今一松委員から第八條に関しまして、各方面亘つて質疑が行われたのでありまするが、当委員会に付託されまして、委員会より要求いたしました結果、昭和二十三年の七月、警察官等職務執行法の施行されましてから以来、警察官拳銃使用によつて事故の発生いたしました国警の概況の調査結論をお願いいたしました結果、御提出願いましたところによりますると、昭和二十三年七月から本年六月までの間に国警だけで扱いました事故といたしまして、この報告に従いますれば、発生件数が総計八百二十三件でございます。その中これによつて死亡いたしました者が三十八人、負傷いたしました者が八十六人、約二ケ年間におきまして、国警だけの職員拳銃使用によつて生じました事故がこれだけの数字に当つております。御承知のごとくに、拳銃の携帶をあまねく警察官使用せしむることになりましたのは極く最近のように承わつております。国警職員中におきましても、拳銃の補給が足りないために、極めて僅かな者のみに限つて拳銃使用を許しておるということでありまするが、これによつて見ましても、尚且つこれだけの大きな被害が生じております。更に又これに加えまして、御承知のごとく自治体警察があります。今後国警は勿論、自治体警察におきましても、すべて拳銃使用を許されることだと思います。同時に海上保安庁といい、麻薬取締員といい、或いは税関といい、更に又本件の鉄道公安職員、それぞれ拳銃使用を許すことになりまするが、この全部に許されましたる結果について今より考えて見まするならば、誠に寒心に堪えないのじやないか、本法律案を起草するに当りましては、こうした既発事件に対しまする調査も定めて御調査になり、そうしてその考慮の上において尚且つこの制度をこの際設けて行くことの方が適当であるというようなことの趣旨において、この法案が起草されたのであるかどうか、この点についてこの際お伺いいたしたいと思います。尚私の只今お尋ねいたしましたごとくに、今後これによつて生じます事故の点についてのお見通しも併せて伺いたいと思います。
  21. 佐瀬昌三

    衆議院議員佐瀬昌三君) 鬼丸委員の御質疑通り、私共提案書としては十分警察官拳銃使用による人身傷害事故を認識した上で、それを鉄道公安職員については成るべく阻止して、人身擁護目的を達する半面において、鉄道犯罪が御承知の四十二万件という画期的な数字を示している現況に徴し、又最近に鉄道を中心とした惡質犯罪の続出する傾向に善処するために、本法案のごとく鉄道公安職員捜査活動をする必要を認め、刑事訴訟法則つてその目的を達成せしめる必要性に基いて本法案立案したような次第であります。併しながら御疑念になつたような点については、先程来提案者として御説明申上げたごとく八條なり或いはこれに呼応する厳重な取扱訓示規定の設置によつて十分人命擁護半面において達成できるという確信を持つている次第であります。
  22. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 丁度八條に関連いたしましてもう一点伺いたいと思いまするのは、刑法の三十六條の正当防衛にありまする程度を超えたる場合の処分についてであります。八條に掲げてありまする職務執行に当り自己又は他人生命身体保護に関して、止むを得ない必要がある場合にこれを使用して殺傷したという結果を生じた。これが即ち拳銃使用によりまする場合の一つの範疇になつております。そこで更に刑法正当防衛規定を制定いたしまするに当つては、概ねこの規定によつて大体人命を尊ぶべしの趣旨には叶うのであるけれども、更に加えて、仮に正当防衛の要件を具えたる場合であつても、その結果が著しくその程度を超えたという場合においては、刑を減軽若しくは免除するという極めて裁量の余裕ある規定を設けられまして、一段と濫用防ぐことになつておりますることは承知通りであります。従いましてこの八條規定を設けるのであるといたしましたならば、やはり刑法三十六條にありまする程度超過の場合と同様なる規定をここに掲げることが必要ではないか。然らざれば前の要件を具えている行爲に基く一切のものは、すべて法令によつて罪の成立を阻却するということになります。その補足の規定を書きますることによつて、初めてこの程度を超した結果発生に対しまする点について責任を本人が負うということになるのじやないかと思います。この規定の中に一切包含しているのであるから、それは余分であるというような或いはお考えでこの規定だけで足りるとお考えなつたかどうか、この点を一つ伺いたい思います。
  23. 佐瀬昌三

    衆議院議員佐瀬昌三君) 第八條に基いた行動は、いわゆる防衛による行為になるわけであります。従つて刑法三十五條によつて、それは違法性を阻却する、適法な行為として是認されることにも相成るわけであります。ただ併しながら刑法三十五條の一般的解釈からいたしまして、防衛に基く行為であれば、すべて無制限に違法性を阻却するかということになりますると、それはやはり一定の限界があるわけであつて、形式的には防衛に基く行為でありましても、実質的に例えば権利の濫用である、職権の濫用であるというふうに、その妥当な範囲を逸脱した場合には、やはり違法性を具備して、例えば殺傷罪といつたようなものが成立することになるというふうに解釈するのが一般的な見解であると私は考えております。従いまして鉄道公安職員が第八條に基いた行為であるという外形的な要件を具備いたしておりましても、具体的な場合にそれが妥当な範囲を超えているというふうに認定される場合は、いわゆる権利の濫用として犯罪になる。そこに公安職員もおのずから第八條に基く行動には刑法の制約があるのだ。かように解釈して差支えないと思います。
  24. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 最後に御説明になりました刑法の制約によつて、それを賄うという御意見でありまするが、すでに刑法三十六條にも正当防衛規定を設け、更にこれが程度を超えた場合においての処分方法につきまして、やはり法定減刑と申しまするか、この二項の規定というものは正当防衛による行為であつても、程度を超えた場合には尚且つこれは許さないのだという規定を一面になすと同時に、併しながらこの法というものは一般法規とはおのずから区別すべきものである。従つて同じような行為があつてもそれを減軽する場合がある、免除する場合がある。かくしていわゆる法定減刑、免除の規定を設けておりますることによつて、この種の行為についての万全を期しているがごとく承知しているのであります。故に、ここに八條を作りまする場合には、やはり刑法の万全を期した規定にまでこれを盛り上げて行つたならば、更に一段と八條というものが生きて行くのじやないか。かように実は存ずるが故に只今質問をしたわけであります。その点については依然としてやはり八條だけで以て賄つて足れり、こういうふうなお考えであるか、重ねて伺つておきます。
  25. 佐瀬昌三

    衆議院議員佐瀬昌三君) 実は刑法の領域におきましても、刑法第三十五條の法令又は正当な業務上の行為、これを一括して正当行為と称しておりますが、この正当行為は違法性を阻却するのだ。併しながらその正当行為にも一定の限界があるのであつて、それを超過した場合はいわゆる過当行為である。この三十六條の正当防衛の過ぎたるものが過剰防衛であり、三十七條緊急避難を過ぎたるものが過剰避難である。同じように三十五條の正当行為についても過当行為、或いは過剰行為というものを認めて刑の減免を規定したらどうかという立法論はすでに御承知のごとく相当強く主張せられておる点であります。併しながら解釈論といたしましては、やはり刑法三十五條の正当行為を過ぎたるいわゆる過当行為についても過剰防衛と同じように扱つていいのであるという解釈を下されております。判例としてその点を明解にされたものは、私寡聞にしてまだ知りませんけれども、少くとも学説の上では、そういう形によつてやはり処理ができるのだということになつておるように承知しておるのであります。現に私もその説を実は、主張している一人であります。さて本法の第八條において、やはりそういう趣旨を含めて、規定したならば非常に立派な規定になるのではないかという鬼丸委員の御見解に対しては、私はやはりそういう意味において非常に敬意を表するのでありますが、ただ第八條は特別法でありまして、特別法にさような規定を設けて刑法規定の不十分なところを補うというのは、聊か特別法の埓外ではなかろうか。理想的には特別法にさような規定を設けてこれを一般法である刑法に導入するというのも立法方式としては一つの行き方でありますけれども、この際にはかかる特別法或いは刑法の未解決な問題を解決する規定を設けるというのは、少し目的が大き過ぎはしないかというような考え方から、私共は第八條にはさような刑の減免といつたような規定を設けることはいたさなかつたのでありますが、併しそれは只今申上げましたように、刑法の一般原則によつて適当に解決されるというふうに考えたから、さように規定を省略いたした次第であります。
  26. 北村一男

    委員長北村一男君) まだ論議は盡きませんので、明日午後一時から委員会を開会して、更に御質疑を御継続願うことにいたしたいと思いますが、如何ですか。
  27. 岡部常

    ○岡部常君 一つだけ……。本法に  小型武器」と示してありますのは何を意味しますか。簡單に……。
  28. 小木貞一

    衆議院專門員小木貞一君) これは拳銃意味するものでございます。例えば海上保安庁法も、警察官等職務執行法にも皆武器と書いてありますので、武器の規格、大きさが分らないのでありますが、本法ではそれを小型武器といたして、拳銃のことを意味する。こういうことにいたしたのであります。
  29. 北村一男

    委員長北村一男君) それでは本日はこれで散会いたします。    午後零時二十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     北村 一男君    理事            宮城タマヨ君            鬼丸 義齊君    委員            鈴木 安孝君            長谷山行毅君            山田 佐一君            齋  武雄君            棚橋 小虎君            岡部  常君            一松 定吉君            須藤 五郎君   衆議院議員    法務委員長   安部 俊吾君            田嶋 好文君            佐瀬 昌三君   政府委員    国家地方警察本    部次長     溝淵 増巳君    法務政務次官  高木 松吉君    法務府検務局長 高橋 一郎君   衆議院事務局側    常任委員会專門    員       小木 貞一君